(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】主デバイスおよび補助デバイスを備えるエンドプレートを具備する燃料電池、燃料電池シャフトにアクセスするための方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/247 20160101AFI20241008BHJP
H01M 8/248 20160101ALI20241008BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241008BHJP
【FI】
H01M8/247
H01M8/248
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520012
(86)(22)【出願日】2022-10-03
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2022077483
(87)【国際公開番号】W WO2023061792
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516284345
【氏名又は名称】サフラン・パワー・ユニッツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クイントン,ロマン
(72)【発明者】
【氏名】アブー,ソフヤネ
(72)【発明者】
【氏名】ブソ,パトリス・ダニエル・クロード
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA25
5H126BB06
5H126FF08
(57)【要約】
本発明は、複数のセルおよび複数の流体フローシャフトを備えるスタック(2)と、2つのエンドプレート(3)と、複数の牽引部材とを具備する燃料電池(1)であって、少なくとも1つのエンドプレート(3)が、フローシャフトと整列された少なくとも1つのアクセス開口部(51)、およびフローシャフトにおいて主本体(50)をスタック(2)に対して付勢するために主本体に主圧縮を適用するように構成された少なくとも1つの主牽引部材(T1)を有する主デバイス(5)と、補助本体をスタック(2)に対して付勢するように構成された補助デバイス(6)とを備え、補助圧縮が、スタック(2)のフローシャフトからある距離だけ離れて適用され、主デバイス(5)が、補助デバイス(6)に対して取外し可能に取り付けられる、燃料電池(1)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池(1)であって、スタック軸(X)に沿って整列された複数のセル、およびスタック(2)内の複数の流体フローシャフト(20)を備えるスタック(2)と、スタック軸(X)に沿ってスタック(2)の端部に配置された2つのエンドプレート(3)と、スタック(2)を圧縮するためにエンドプレート(3)を互いに接続する複数の牽引部材とを具備し、少なくとも1つのエンドプレート(3)が、
フローシャフト(20)と整列された少なくとも1つのアクセス開口部(51)を備える主本体(50)、およびスタック(2)のフローシャフト(20)において主本体(50)をスタック(2)に対して付勢するために主本体(50)に主圧縮を適用するように構成された少なくとも1つの主牽引部材(T1)を備える主デバイス(5)と、
補助本体(60)、および補助本体(60)をスタック(2)に対して付勢するために補助本体(60)に補助圧縮を適用するように構成された少なくとも1つの補助牽引部材(T2)を備える補助デバイス(6)であって、補助圧縮が、スタック(2)のフローシャフト(20)からある距離だけ離れて適用され、主デバイス(5)が、補助デバイス(6)に対して取外し可能に取り付けられ、主デバイス(5)が、補助牽引部材(T2)が補助本体(60)に補助圧縮を適用するときに取り外されるように構成される、補助デバイス(6)と
を備えることを特徴とする、燃料電池(1)。
【請求項2】
スタック(2)が、中央部と、フローシャフト(20)が形成される周辺部とを備え、補助本体(60)が、主にスタック(2)の中央部で補助圧縮を適用するように構成される、請求項1に記載の燃料電池(1)。
【請求項3】
補助本体(60)が、中央部と、中央部に対して突出して延びる少なくとも1つのタブ(61)とを備え、補助牽引部材(T2)が、タブ(61)に取り付けられる、請求項2に記載の燃料電池(1)。
【請求項4】
スタック(2)が、中央部と、フローシャフト(20)が形成される周辺部とを備え、主本体(50)が、主にスタック(2)の周辺部で主圧縮を適用するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料電池(1)。
【請求項5】
主本体(5)が周辺にある、請求項4に記載の燃料電池(1)。
【請求項6】
補助本体(60)が、スタック(2)に補助圧縮を適用するように構成されたメッシュを備え、メッシュが開口部を画定し、開口部を通してフローシャフト(20)がアクセス可能である、請求項3から5のいずれか一項に記載の燃料電池(1)。
【請求項7】
アクセス開口部(51)が、フローシャフト(20)の断面よりも小さい断面を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の燃料電池(1)。
【請求項8】
補助牽引部材(T2)が、補助圧縮を生成するように構成されたスプリングリーフ(7)の形態である、請求項1から7のいずれか一項に記載の燃料電池(1)。
【請求項9】
補助本体(60)が、スプリングリーフ(7)が取り付けられる少なくとも1つの溝(63)を備える、請求項8に記載の燃料電池(1)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の燃料電池(1)のスタック(2)の少なくとも1つのフローシャフト(20)にアクセスするための方法であって、エンドプレート(3)が、スタック(2)を圧縮し、少なくとも1つのエンドプレート(3)が、スタック(2)のフローシャフト(20)においてスタック(2)に対して主本体(50)を付勢する主圧縮を適用する主デバイス(5)と、スタック(2)のフローシャフト(20)からある距離だけ離れてスタック(2)に対して補助本体(60)を付勢する補助圧縮を適用する補助デバイス(6)とを備え、方法が、
フローシャフト(20)へのアクセスを覆わないように、主圧縮を停止するために、主デバイス(5)を取り外すことであって、補助デバイス(6)が補助圧縮を維持する、こと
からなるステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、推進エネルギーおよび非推進エネルギーを提供するために航空機に搭載されている燃料電池を修理する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、異なる流体の間の電気化学反応から電気エネルギーを作り出すために使用される。典型的には、燃料電池には水素および酸素が供給され、水素および酸素は、燃料電池内で反応して電気エネルギーを生成する。燃料電池は、スタック軸に沿って整列された複数のセルを備えるスタックを具備する。セルのスタックは、流体からの電気化学反応を可能にする。
【0003】
各セルは、2つの電極によって取り囲まれたイオン伝導性電解質からなり、2つの電極は相互接続プレートによって取り囲まれる。例として、「プロトン交換膜燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell)」の略語PEMFCで知られているプロトン交換膜タイプの燃料電池の場合、電解質は、プロトン伝導性ポリマー膜の形態をとり、電極は、プラチナなどの触媒を担持する多孔質媒体の形態をとる。電解質と電極のアセンブリは、略語MEAで知られている膜電極接合体と呼ばれる。各MEAは、その2つの対向する側で相互接続プレートを介して反応ガス(例えば、水素および空気中に存在し得る酸素)と接触した状態にされて、セルを形成する。
【0004】
知られている方法では、2つの隣り合うセルに属する、2つの相互接続プレートのアセンブリは、バイポーラプレートと呼ばれる。したがって、バイポーラプレートは、MEAのカソードと隣り合うMEAのアノードとの間に挿入される。バイポーラプレートは、一方ではアノード側の第1のMEAに燃料(水素)を供給し、他方ではカソード側の第2のMEAに酸化剤(酸素)を供給する。一般に、各バイポーラプレートは内部冷却回路を備えており、そこで伝熱流体が循環して熱を提供するか、または発熱反応によって作り出された熱を取り出す。
【0005】
セルによって生成された電流は、スタックの両端で、いわゆるコレクタ導体プレートによって回収される。燃料電池によって送達される電力は、セルの数(送達される電圧キャパシティ)、セルのアクティブな表面積(送達される電流キャパシティ)、および反応流体の流量(電流を作り出す電気化学反応の重要性)に応じている。
【0006】
セルのスタック全体は、アセンブリを保持しスタックの密封を保証するタイロッドによって接続された2つのいわゆるエンドプレートの間に圧縮されて保たれる。この密封は、バイポーラプレートとセルのMEAとの間に挿入されたシールによって提供される。エンドプレートは従来固体である、というのは、エンドプレートは、セルの表面上に均一な圧力を適用するとともに、スタックの内圧および温度変動の影響下で寸法的に安定していなければならないからである。
【0007】
反応流体および伝熱流体はエンドプレートで導入および放出され、エンドプレートは、スタックを通過するフローシャフト内で反応流体および伝熱流体を分散させる。これらのフローシャフトは、セル内に形成された開口部のスタックからもたらされる。例として、3つのシャフトが、スタックの一方の側から流体(必要に応じて2つの反応流体および1つの伝熱流体)を導入してセル内へ移動させ、他の3つのシャフトが流体をスタックの別の側から放出する。
【0008】
[
図1]を参照すると、スタック軸Xに沿って整列された複数のセルを備えるスタック102を具備する燃料電池101が示されている。タイロッド104は、エンドプレート103の外側部分を周辺で、スタック102に一定の圧縮力を適用するために、接続する。エンドプレート103は、スタック102のフローシャフトに通じるフローライン130を備える。
【0009】
燃料電池101内での電気化学反応中、反応流体は、MEAの組成物の一部である微量の酸で充填された状態になる。これらの微量のリン酸は、2つの燃料流体回路の出口に対応するフローシャフト内に、特に高温燃料電池の場合は水蒸気の形態で存在する。この酸は、特に、温度が通常運転温度未満である燃料電池の始動/停止ステップ中に、結晶化することがあり、これは流路を遮断し得る。このような遮断は、MEAの穿孔というリスクを伴うホットスポットにつながるおそれがある損傷を引き起こし得る。燃料電池の効率損失に加えて、発火および漏れリスクの可能性が増加する。
【0010】
燃料電池101の故障を回避するために、スタック102のフローシャフトを検査してクリーニングしなければならない。実際には、スタック102のシャフトにアクセスし、スタックをクリーニングし、エンドプレート103を交換するには、エンドプレート103を取り外す必要がある。エンドプレート103の取外しは、セルのスタック102を修復不能に破壊する圧力損失につながり、その結果、全体的な密封の損失、伝熱流体による膜の汚染、およびスタック102のセルの不整合が生じる。換言すると、スタックをクリーニングすることは、燃料電池101のリコミッショニングを妨げる重大な不利益につながるおそれがある。
【0011】
直接の解決策は、エンドプレート103に形成されたフローライン130によってシャフトを検査することであるが、これらの循環ライン130は、一般にシャフトの直径よりも小さい直径を有し、これは最適な検査/クリーニングを妨げる。
【0012】
さらに、エンドプレート103に形成されたフローライン130が湾曲していることがあり([
図1])、検査またはクリーニング用のツール、例えば樹脂を伴う内視鏡またはピペットを通すことを不可能とすることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、スタックの構造を劣化させることなく、スタックのフローシャフトを簡便に、迅速に検査およびクリーニングできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、スタック軸Xに沿って整列された複数のセル、およびスタック内の複数の流体フローシャフトを備えるスタックと、スタック軸Xに沿ってスタックの端部に配置された2つのエンドプレートと、スタックを圧縮するためにエンドプレートを互いに接続する複数の牽引部材とを具備する燃料電池に関する。
【0015】
この燃料電池は、少なくとも1つのエンドプレートが:
・フローシャフトと整列された少なくとも1つのアクセス開口部を備える主本体、およびスタックのフローシャフトにおいて主本体をスタックに対して付勢するために主本体に主圧縮を適用するように構成された少なくとも1つの主牽引部材を備える主デバイスと、
・補助本体、および補助本体をスタックに対して付勢するために補助本体に補助圧縮を適用するように構成された少なくとも1つの補助牽引部材を備える補助デバイスであって、補助圧縮は、スタックのフローシャフトからある距離だけ離れて適用され、主デバイスは、補助デバイスに対して取外し可能に取り付けられる、補助デバイスと
を備える点で、特徴的である。
【0016】
本発明により、エンドプレートは、2つの別個の独立した圧縮を適用するように構成される。主デバイスは、フローシャフトにアクセスできるように、着脱可能な方法で取り外すことができる。有利には、補助デバイスは、スタックの破壊を避けながら十分な圧縮を提供することを可能にする。有利には、スタックの、密封、整列の損失、または汚染が回避される。補助圧縮はフローシャフトからある距離だけ離れて実施されるので、補助デバイスは、フローシャフトへのアクセスを妨げず、フローシャフトの簡便なクリーニングを可能にする。
【0017】
好ましくは、各エンドプレートは、主デバイスと補助デバイスとを備える。エンドプレートは、有利には、均質な圧縮を保証するために同一の構造を有する。主牽引部材は、対向する主デバイスの間に取り付けられる。補助牽引部材は、対向する補助デバイスの間に取り付けられる。
【0018】
好ましくは、スタックが、中央部と、フローシャフトが形成される周辺部とを備え、補助本体が、主にスタックの中央部で補助圧縮を適用するように構成される。したがって、補助圧縮は、フローシャフトからある距離だけ離れて適用される。
【0019】
本発明の一態様によれば、補助本体が、中央部と、中央部に対して突出して延びる少なくとも1つのタブとを備え、補助牽引部材が、タブに取り付けられる。タブは、スタックの外側で、スタックを横切ることなく牽引を実施することを可能にする。補助牽引部材は、主デバイスに力を及ぼすことなくタブに力を及ぼす。
【0020】
好ましくは、スタックが、中央部と、フローシャフトが形成される周辺部とを備え、主本体が、主にスタックの周辺部で主圧縮を適用するように構成される。したがって、主圧縮は、フローシャフトに直接拘束が及ぼされることを可能にする。
【0021】
好ましくは、主本体は、分散された平面的な力をエンドプレートが適用するように、補助本体と形状嵌合することによって協働するように構成された凹みを備える。
【0022】
好ましくは、高い均一な圧縮を保証するために、主圧縮は補助圧縮よりも高い。
【0023】
好ましくは、フローシャフトに力を適用するために、主本体は周辺にある。一態様によれば、主本体は、別個の部分でスタックに補足的な力を適用するために補助本体を部分的に覆う。別の態様によれば、主本体は、補助本体を完全に覆う。
【0024】
本発明の一態様によれば、補助本体が、スタックに補助圧縮を適用するように構成されたメッシュを備え、メッシュが開口部を画定し、開口部を通してフローシャフトがアクセス可能である。したがって、補助本体は、メッシュを通したフローシャフトへのアクセス性を確保しながら、スタックにわたって分散される圧縮力を及ぼすことを可能にする。
【0025】
好ましくは、アクセス開口部は、フローシャフトの断面よりも小さい断面を有する。したがって、主本体は、フローシャフトの周辺全体にわたって主圧縮力を及ぼすことができる。
【0026】
好ましくは、補助牽引部材が、補助圧縮を生成するように構成されたスプリングリーフの形態である。複数のスプリングリーフの使用により、複数の独立した分散された圧縮力を及ぼすことが可能になる。
【0027】
好ましくは、エンドプレートは、主牽引部材によって行われる圧縮中に補助牽引部材に張力をもはや生成しないように構成される。補助牽引部材は、主デバイスが所定の位置にあるときに取外し可能であるように構成される。
【0028】
本発明の一態様によれば、補助本体は、スプリングリーフが取り付けられる少なくとも1つの溝を備える。スプリングリーフは、工具を使わずに簡単に設置する/取り外すことができる。スプリングリーフは、スタックの加圧に適応することができ、主デバイスが取り付けられるとすぐに取り外すことができる。
【0029】
また、本発明は、前に提示したような燃料電池のスタックの少なくとも1つのフローシャフトにアクセスするための方法であって、エンドプレートが、スタックを圧縮し、少なくとも1つのエンドプレートが、スタックのフローシャフトにおいてスタックに対して主本体を付勢する主圧縮を適用する主デバイスと、スタックのフローシャフトからある距離だけ離れてスタックに対して補助本体を付勢する補助圧縮を適用する補助デバイスとを備え、方法が:
・フローシャフトへのアクセスを覆わないように、主圧縮を停止するために、主デバイスを取り外すことであって、補助デバイスが補助圧縮を維持する、こと
からなるステップを含む。
【0030】
補助圧縮は、フローシャフトの周辺で、フローシャフトからある距離だけ離れて適用され、これにより、フローシャフトへのアクセスを妨げることなく、スタックを破壊することを回避することが可能になる。
【0031】
好ましくは、本方法は、特にクリーニングまたは修理を行うために、主デバイスの取外し後にフローシャフトを検査するステップを含む。
【0032】
本発明はまた、取外しステップの前に:
・補助牽引部材を装着して、スタックのフローシャフトからある距離だけ離れて、補助デバイスの補助本体をスタックに対して付勢する補助圧縮を適用すること
からなるステップを含む、方法に関する。
【0033】
好ましくは、補助牽引部材は、対向するエンドプレートに属する2つの補助デバイスの間に取り付けられる。
【0034】
有利には、補助牽引部材は、メンテナンス動作中にのみ設置され、これにより、通常動作中の燃料電池の質量およびコストを制限することが可能になる。有利には、同じ補助牽引部材を異なる燃料電池に使用することができる。
【0035】
本発明は、一例として与えられる以下の説明を読み、非限定的な例として与えられる以下の図を参照することによって、より良く理解されよう。図中、同様の対象には同一の参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図2】第1の実施形態による燃料電池の概略図である。
【
図3】主デバイスと補助デバイスとを備えるエンドプレートの一部分の拡大部の概略図である。
【
図4】主デバイスなしでの[
図3]の概略図である。
【
図5】補助デバイスなしでの[
図3]の概略図である。
【
図6】スタックに形成された流体フローシャフトの概略図である。
【
図7】第2の実施形態による燃料電池の概略図である。
【
図8】主デバイスなしでの[
図7]の概略図である。
【
図9】コレクタプレートおよびスタックを除いた[
図7]の概略図である。
【
図10】下から見た、第2の実施形態によるエンドプレートを概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図面は、本発明を実現するために本発明を詳細に表すものであり、当然、適用可能な場合には、本発明をより良く定義するために前記図面を使用することができることに留意されたい。
【0038】
本発明は、「プロトン交換膜燃料電池(Proton-Exchange Membrane Fuel Cell)」の略語PEMFCで知られているプロトン交換膜タイプの燃料電池の分野に関する。好ましくは、燃料電池は、推進機器に電力を供給するために航空機に搭載されている。
【0039】
[
図2]を参照すると、スタック軸Xに沿って整列された複数のセルを備えるスタック2を具備する燃料電池1が示されている。各セルは複数の流体フロー開口部を備え、前記流体フロー開口部は、スタック2内に複数の流体フロースタック20を形成するためにスタック軸Xに平行に整列される(
図4から6)。
【0040】
セルのスタック2は、流体、特に水素および酸素からの電気化学反応を可能にする。この例では、各セルは、略語MEAで知られている膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly)を備える。各MEAは、その2つの対向する側で相互接続プレートを通して反応ガス(例えば、水素および空気中に存在し得る酸素)と接触した状態にされて、セルを形成する。知られている方法では、2つの隣り合うセルに属する、2つの相互接続プレートのアセンブリは、バイポーラプレートと呼ばれる。したがって、バイポーラプレートは、MEAのカソードと隣り合うMEAのアノードとの間に挿入される。したがって、バイポーラプレートは、一方では第1のMEAに燃料(水素)を供給し、他方ではカソード側の第2のMEAに酸化剤(酸素)を供給する。一般に、各バイポーラプレートは内部冷却回路を備えており、そこで伝熱流体が循環して熱を提供するか、または発熱反応によって作り出された熱を取り出す。MEAとバイポーラプレートとを交互にしたもので形成されるそのようなスタック2は先行技術で知られており、さらに詳細には提示されない。
【0041】
この例では、[
図2]を参照すると、燃料電池1はセルによって生成された電流を集めるように、スタック2の両端に位置決めされたコレクタプレート4をさらに備える。知られている方法では、燃料電池1によって送達される電力は、セルの数(送達される電圧キャパシティ)および反応流体の流量(電流を作り出す電気化学反応の重要性)に応じている。
【0042】
[
図2]を参照すると、燃料電池1は、スタック軸Xに沿ってスタック2の両端に配置された2つのエンドプレート3と、スタック2を圧縮するためにエンドプレート3を互いに接続する複数の牽引部材とをさらに具備する。
【0043】
本発明によれば、[
図3]を参照すると、少なくとも1つのエンドプレート3は:
・フローシャフト20([
図4])と整列された少なくとも1つのアクセス開口部51を備える主本体50、およびスタック2のフローシャフト20において主本体50をスタック2に対して付勢するために主本体50に主圧縮を適用するように構成された少なくとも1つの主牽引部材T1とを備える主デバイス5と、
・補助本体60、および補助本体60をスタック2に対して付勢するために、補助本体60に補助圧縮を適用するように構成された少なくとも1つの補助牽引部材T2を備える補助デバイス6であって、補助圧縮は、スタック2のフローシャフト20からある距離だけ離れて適用され、主デバイス5は、補助デバイス6に対して取外し可能に取り付けられる、補助デバイス6と
を備える。
【0044】
本発明により、流体フローシャフト20にアクセスするために主デバイス5を取り外すことができる。スタック2には主圧縮がもはや適用されないが、補助デバイス6が常に補助圧縮を提供するのでスタック2は破壊されない。補助圧縮はフローシャフト20からある距離だけ離れて行われるので、補助デバイス6はフローシャフト20へのアクセスを妨げず、これは後述するようにフローシャフト20の実際のクリーニングを可能にする。
【0045】
この第1の実施形態では、[
図3]を参照すると、主デバイス5は、取付け位置において補助デバイス6の一部を覆うように構成されているが、補助デバイス6を完全に覆うこともできることは言うまでもない。[
図4]に示されるように、補助デバイス6は肩部64を備え、肩部64に主デバイス5が載り、力を及ぼすことができる。後述するように、主デバイス5によって適用される圧縮力は、補助デバイス6によって適用される圧縮力を補足することも、完全に取って代わることもある。
【0046】
[
図3]を参照すると、主本体50は、スタック2のフローシャフト20と整列された3つのアクセス開口部51を備える。主本体50は周辺にあり、補助デバイス6が取り付けられる内側開口部を備える。好ましくは、主デバイス5は、フローシャフト20につながるアクセス開口部51をそれぞれ備える内側ラインと、外部流体コネクタを受け入れるのに適した外側開口部とを備える。前述したように、内側ラインは直線であっても湾曲していてもよく、主本体50の厚さにつながっていてもよい。
【0047】
この例では、スタック2は、フローシャフト20が形成されている周辺部分と、フローシャフト20をもっていない中央部分とを備え、中央部分は、スタック2のアクティブゾーンを形成する。
【0048】
主デバイス5は、スタック2のフロースタック20に対してスタック2に主圧縮を適用するために、複数の主牽引部材T1をさらに備える。特に、主本体50は、フローシャフト20の開口部の周辺に対して力を適用する。好ましくは、アクセス開口部51は、主本体50がフローシャフト20の開口部の周縁部と連続的に接触することができるように、フローシャフト20よりも小さい断面を有する。言い換えると、主圧縮はフローシャフト20のすぐ近傍に適用され、これにより最適な圧縮が保証される。この例では、分散された主圧縮を保証するために、約10個よりも多い主牽引部材T1が使用される。主デバイス5は通過開口部を備え、通過開口部内に、主牽引部材T1、特に[
図2]に示されるように他方のエンドプレート3に接続されたタイロッドが取り付けられるが、他の牽引部材も適切であり得ることは言うまでもない。
【0049】
図4および5に示されるように、主圧縮は、アクセス開口部51とスタック2のフローシャフト20との流体連通を可能にするようにオリフィス40を備えるコレクタプレート4を介して、スタック2のフローシャフト20に適用される。
【0050】
この第1の実施形態では、
図3および4を参照すると、補助デバイス6は、フローシャフト20からある距離だけ離れて、特にスタック軸Xに沿ったスタック2の中央部分でスタック2に補助圧縮を適用するように構成された補助本体60を備える。この例では、補助本体60は、タイロッドの形態での補助牽引部材T2を備え、補助牽引部材T2は、補助本体60から突出して延びるタブ61に取り付けられており、別のエンドプレート3に接続されるように構成される。好ましくは、補助牽引部材T2は、主牽引部材T1よりも少なく、主圧縮よりも低いがスタック2を破壊することを避けるのに十分な補助圧縮を適用するように構成される。有利には、補助デバイス6は、主デバイス5が着脱可能な方法で取り外されているときに、フローシャフト20へのアクセスを覆わないままで補助圧縮を適用することを可能にする。
【0051】
次に、フローシャフトにアクセスするための方法の例示的実施形態を提示する。
【0052】
図2および3に示されるように、初期位置では、エンドプレート3がスタック2に取り付けられており、補助デバイス6は、中央で補助圧縮を適用し、主デバイス5は、スタック軸Xに沿ってスタック2に周辺で主圧縮を適用する。有利には、主デバイス5は、各フローシャフト20の直接的な圧縮を可能にする。主圧縮は、好ましくは補助圧縮よりも高い。
【0053】
前に提示したように、主デバイス5は、肩部64を介して補助デバイス6に圧縮を適用するが、別個に圧縮を行うこともできることは言うまでもない。
【0054】
第1の態様によれば、主デバイス5は、補助デバイス6に追加の圧縮を適用し、主デバイス5が所定の位置にあるとき、すべての牽引部材T1、T2が張力をかけられる。第2の態様によれば、主デバイス5は、補助デバイス6の圧縮に取って代わる圧縮を適用する。その結果、主デバイス5が所定の位置にあるとき、補助牽引部材T2は張力をかけられない。
【0055】
本方法は、主圧縮を停止するために主牽引部材T1を非アクティブ化することからなるステップと、主デバイス5を取り外すことからなるステップとを含む。主デバイス5を取り外すことにより主圧縮はなくなるが、補助デバイス6が依然として補助圧縮を提供するので、スタック2は破壊されない。好ましくは、主デバイス5が緩められるにつれて、補助牽引部材T2が張力をかけられ、ますます大きな力を受ける。補助圧縮は、フローシャフト20に直接適用されるのではなく、フローシャフト20からある距離だけ離れて適用される。したがって、操作者がフローシャフト20に直接アクセス可能であり、次いでフローシャフト20を検査する、クリーニングする、または修理を行うことができる。スタック2は封止されたままであり、これにより、スタック2のセルの汚染または不整合についての、いかなるリスクも回避される。
【0056】
換言すると、メンテナンス動作を行うために、補助デバイス6はその補助牽引部材T2によって所定の位置に留まり、操作者は、有利には主牽引部材T1のみに作用する。したがって、操作者は、注射器、内視鏡、または任意の他のデバイスをフローシャフト20に挿入することができ、フローシャフト20の内面は十分に、容易にアクセス可能である。
【0057】
取外し可能な主デバイス5を伴うエンドプレート3の使用により、特に酸の結晶化を取り除くために、燃料電池1のリスクのないメンテナンス動作を実施することができるようになる。
【0058】
図7から10を参照すると、第2の実施形態によれば、エンドプレート3は異なる構造を有する。特に、この第2の実施形態では、主デバイス5は、[
図7]に示されるように取付け位置において補助デバイス6を完全に覆うように構成されているが、補助デバイス6を部分的に覆うこともできることは言うまでもない。
【0059】
この第2の実施形態では、
図8および9を参照すると、補助デバイス6は、広い開口部を内部で区切っているメッシュから形成された補助本体60を備え、当該開口部からフローシャフト20がアクセス可能である。この例では、補助本体60は、分散された補助圧縮を保証するようにスタック2の周縁部まで延びており、これはスタック2の封止を保証するのに有利である。[
図10]を参照すると、主本体50は、補助本体60と形状嵌合することによって協働するための凹みを備える。
【0060】
補助圧縮を保証するために、補助デバイス6は、対向するエンドプレート3、特に[
図8]に示される対向するエンドプレート3の補助デバイス6と協働するように構成されたスプリングリーフ7の形態での補助牽引部材T2を備える。この例では、補助本体60は、その外縁部に、特に分散して、いくつかの溝63を備え、溝63にスプリングリーフ7が取り付けられる。
【0061】
図9および10に示されるように、各スプリングリーフ7は、エンドプレート3の補助デバイス6の溝63に接続された2つの端部71を有する。各端部71は、好ましくは、特に主デバイス5が所定の位置にあるときに溝63に簡便に各端部71を接続することができるように、フック形状を有する。好ましくは、各スプリングリーフ7は、その質量を制限するために追加される。スプリングリーフ7は、スタック2に対する補助デバイス6による補助圧縮を行うために、溝63で牽引を行うことを可能にする。好ましくは、各スプリングリーフ7は対称的であり、簡便で迅速な組立てを可能にする。
【0062】
補助デバイス6の補助本体60が、代替として、第1の実施形態に関して提示したように補助牽引部材T2と共に突出したタブを備えることもできることは言うまでもない。
【0063】
前と同様に、主デバイス5は、補助デバイス6に追加の圧縮を適用することができ、主デバイス5が所定の位置にあるとき、スプリングリーフ7は張力をかけられる。好ましくは、主デバイス5は、補助デバイス6の圧縮に取って代わる圧縮を適用する。その結果、主デバイス5が所定の位置にあるとき、スプリングリーフ7は張力をかけられない。したがって、スプリングリーフ7は、主デバイス5が所定の位置にあるときには取り外して、メンテナンス動作中にのみ使用することができる。有利には、これにより、燃料電池の質量およびコストを削減することが可能になる。好ましくは、スプリングリーフ7は、いくつかの異なる燃料電池1のメンテナンス中に、それらの燃料電池1と共に連続的に使用することができる。
【0064】
主デバイス5が緩められるとき、スタック2の高さが増加してもよく、何故なら、スプリングリーフ7が伸長して、十分な補助圧縮力を維持しながらこの高さ増加を補償するからである。
【0065】
フローシャフト20にアクセスするための方法は、第1の実施形態と同様な方法で実行することができ、何故なら、メッシュ補助本体60が、一方ではスタック2に対する補助圧縮を実現できるようにし、他方ではメッシュを通して各フローシャフト20に容易にアクセスできるようにする開口部を備えるからである。メンテナンス動作中、スプリングリーフ7は、分散された方法で補助圧縮を提供し、最適な封止を保証する。
【0066】
本発明により、メンテナンス動作(クリーニング、修理、またはその他)を人間工学的に、簡便に、迅速に実施することができる。
【国際調査報告】