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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】COVID19 mRNAワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/215 20060101AFI20241008BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20241008BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20241008BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20241008BHJP
   C12N 15/50 20060101ALI20241008BHJP
   C12N 15/88 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
A61K39/215 ZNA
A61P31/14
A61K48/00
A61K31/7105
A61K9/14
A61K47/24
A61K47/14
A61K47/28
C12N15/50
C12N15/88 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520533
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 US2022045424
(87)【国際公開番号】W WO2023056045
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/251,384
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/331,925
(32)【優先日】2022-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.LABRASOL
2.CREMOPHOR
3.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】524121214
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(71)【出願人】
【識別番号】524122772
【氏名又は名称】フー ハイタオ
(71)【出願人】
【識別番号】524122783
【氏名又は名称】ワイスマン ドリュー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】フー ハイタオ
(72)【発明者】
【氏名】ワイスマン ドリュー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC06
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE23
4C076FF70
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB33
4C085BA71
4C085CC31
4C085EE01
4C085EE05
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA43
4C086NA14
4C086ZB33
(57)【要約】
より有効なコロナウイルスワクチンを提供する解決策が発見された。この解決策は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(S)をコードするmRNAワクチン(mRNA-S)と組み合わせた、SARS-CoV-2核タンパク質(N)をコードするmRNAワクチン(mRNA-N)である。化学的に修飾されたmRNA-N(シュードウリジン)および/または化学的に修飾されたmRNA-S(シュードウリジン)は、合成して脂質ナノ粒子(LNP)にパッケージングすることができる。マウスモデルおよびハムスターモデルにおいて、mRNA-N単独は免疫原性でありかつプライム-ブースト筋肉内免疫処置後のマウス肺におけるウイルス負荷を有意に減少させ得ることが示された。加えて、組み合わせmRNA-N/mRNA-Sワクチン接種は、mRNA-S単独のワクチン接種よりも実質的に強力である、SARS-CoV-2に対する防御を誘導する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナウイルス核タンパク質(N)タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む操作されたメッセンジャーリボ核酸(mRNA)を含む、SARS-CoV-2ワクチン。
【請求項2】
コロナウイルススパイク(S)タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む操作されたメッセンジャーリボ核酸(mRNA)を含む、SARS-CoV-2ワクチン。
【請求項3】
コロナウイルススパイク(S)タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む操作されたメッセンジャーリボ核酸(mRNA)をさらに含む、請求項1記載のワクチン。
【請求項4】
前記Nタンパク質が、SEQ ID NO:3に対して90、95、99、または100%同一である核酸セグメントによってコードされる、請求項1または請求項3記載のワクチン。
【請求項5】
前記Sタンパク質が、SEQ ID NO:6に対して90、95、99、または100%同一である核酸セグメントによってコードされる、請求項2~4のいずれか一項記載のワクチン。
【請求項6】
前記mRNAが直鎖状である、請求項1~5のいずれか一項記載のワクチン。
【請求項7】
5'UTRをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項記載のワクチン。
【請求項8】
3'UTRをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項記載のワクチン。
【請求項9】
ポリアデニル化セグメントをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項記載のワクチン。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項記載のmRNAをコードする、DNA構築物。
【請求項11】
脂質ナノ粒子(LNP)に含まれる請求項1~10のいずれか一項記載のmRNAを含む、ワクチン組成物。
【請求項12】
前記LNPが、イオン化可能なカチオン性脂質、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG-脂質を含む、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項記載のワクチンを含む、請求項11記載の組成物。
【請求項14】
請求項1、請求項2、または請求項3記載のワクチンを含む、請求項11記載の組成物。
【請求項15】
対象において抗原特異的免疫応答を誘導する方法であって、前記対象において抗原特異的免疫応答を生じさせるために、請求項1~10のいずれか一項記載のワクチンまたは請求項11~14のいずれか一項記載の組成物を、単独でまたは組み合わせで前記対象に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項16】
前記ワクチンが、プライム-ブーストレジメンを用いて投与される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
ブースト用量が、プライム用量の2、3、4、5、または6週間後に投与される、請求項16記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の段落
本出願は、2021年10月1日に出願された米国特許仮出願第63/251,384号および2022年4月18日に出願された同第63/331,925号の優先権を主張する国際出願であり、その各々は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府資金による研究に関する声明
なし。
【0003】
配列表の参照
37 CFR 1.821~1.825によって要求される配列表が、本出願と共に電子的に提出されている。配列表は、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0004】
背景
SARS-CoV-2は、2019年後期に中国の武漢地域で最初に発見されたコロナウイルスである。SARS-CoV-2は、MERS-CoVおよびSARS-CoVと同様に、ベータコロナウイルスであり、そのすべてはコウモリに起源を有する。現在、米国、中国、および他の国由来の数人の患者から入手可能ないくつかの配列があり、これは、このウイルスが動物保有者から単一で最近出現した可能性が高いことを示唆する。このウイルスによって引き起こされるこの疾患の名称は、コロナウイルス疾患2019であり、COVID-19と略される。COVID-19の症状は、COVID-19確定症例について軽度の症状から重症の疾病および死亡までにわたる。
【0005】
上記に示されるように、SARS-CoV-2は、それが起源である可能性が高いコウモリコロナウイルスに対して強い遺伝子類似性を有するが、センザンコウなどの中間保有宿主が、関与していると考えられる。分類学的関連から、SARS-CoV-2は、重症急性呼吸器症候群(SARS)関連コロナウイルス種の株として分類される。
【0006】
コロナウイルスは、エンベロープRNAウイルスである。主要な表面タンパク質は、宿主細胞受容体に対する結合およびウイルス膜と宿主細胞膜との融合を媒介する、大きな三量体スパイク糖タンパク質(S)である。Sタンパク質は、それぞれ、受容体結合および膜融合を担う、N末端のS1サブユニットおよびC末端のS2サブユニットから構成される。アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、およびデルタコロナウイルスのCoV三量体S構造の最近の低温電子顕微鏡再構成により、51サブユニットは、2つの別個のドメイン:N末端ドメイン(51 NTD)および受容体結合ドメイン(51 RBD)を含むことが明らかになった。SARS-CoV-2は、ヒトアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合するのにその51 RBDを利用する。
【0007】
COVID-19パンデミックの急速な拡大により、SARS-CoV-2ワクチンの開発が、グローバルヘルスの優先事項になった。2019年後期に新規SARS-CoV-2ウイルスが最初にヒトで観察されてから、800万人超が感染し、数十万人がCOVID-19の結果として死亡した。世界保健機関は、2020年1月30日に、2019-nCoVのアウトブレイクを国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態と宣言した。
【0008】
FDAにより承認されたPfizer/BioNtech mRNAワクチンを含む現在のCOVID19ワクチンは、大部分はウイルススパイクタンパク質(S)を標的とする。ウイルスバリアントの出現および速い蔓延に伴い、Sタンパク質のみを標的とするワクチンアプローチは、有効性が低くなると考えられる。
【0009】
特にSARS-CoV-2のバリアントが特定されているため、追加のコロナウイルスワクチンおよびこれらのワクチンを投与するための方法の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0010】
概要
追加のコロナウイルスワクチンおよびワクチンの組み合わせを、本明細書に記載する。ある特定の態様は、SARS-CoV-2核タンパク質(N)をコードするmRNAワクチン(mRNA-N)に向けられている。化学的に修飾されたmRNA-N(シュードウリジン)を合成して脂質ナノ粒子(LNP)にパッケージングした。マウスモデルにおいて、mRNA-Nは免疫原性でありかつプライム-ブースト筋肉内免疫処置後のマウス肺におけるウイルス負荷を有意に減少させ得ることが示された。mRNA-N CoVID19ワクチンアプローチは、SARS-CoV-2およびそのバリアントと闘うために、承認されたCOVID19ワクチンを補完することができる。
【0011】
ある特定の態様は、コロナウイルス核タンパク質(N)タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む操作されたメッセンジャーリボ核酸(mRNA)(mRNA-N)を含む、SARS-CoV-2ワクチンに向けられている。Nタンパク質は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列に対して90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を有することができる。Nタンパク質は、
またはそのRNAカウンターパート(SEQ ID NO:3)に対して80、85、90、95、96、97、98、99%から、100%まで同一であるDNAによってコードされることができる。
【0012】
別の態様において、ワクチンは、コロナウイルススパイク(S)タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを有する、操作されたメッセンジャーリボ核酸(mRNA)(mRNA-S)を含むことができる。Sタンパク質は、SEQ ID NO:5のアミノ酸配列に対して90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を有することができる。Sタンパク質は、
またはそのRNAカウンターパート(SEQ ID NO:6)に対して80、85、90、95、96、97、98、99%から、100%まで同一であるDNAによってコードされることができる。ある特定の局面において、mRNAワクチンは、Nタンパク質およびSタンパク質を含むポリタンパク質をコードすることができる。ポリタンパク質は、Nタンパク質とSタンパク質との間に自己切断部位またはプロテアーゼ切断部位を含むことができる。
【0013】
ある特定の態様において、mRNA-NワクチンおよびmRNA-Sワクチンは、別々に投与される。ある特定の局面において、mRNA-Nワクチンは、第1の脂質または担体に含まれ、mRNA-Sワクチンは、第2の脂質または担体に含まれる。mRNA-N脂質または担体組成物およびmRNA-S脂質または担体組成物は、同じ製剤(共製剤(co-formulation))または異なる製剤に製剤化することができる。mRNA-NおよびmRNA-Sは、同時投与されることができる。句「同時投与される」は、ある特定の所望の時間内の2つの組成物(例えば、mRNA-NおよびmRNA-S)の患者または対象への投与を指す。ある特定の局面において、2つの組成物は、同時に投与される。他の局面において、2つの組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20分、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20時間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20日、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20週間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20ヶ月(その間のすべての値および範囲を含む)で投与される。mRNA-N組成物、mRNA-S組成物、またはmRNA-NおよびmRNA-S組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、またはそれ以上の回数投与することができ、投与の間は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20分、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20時間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20日、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20週間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20ヶ月である。
【0014】
ある特定の局面において、mRNAは、直鎖状RNAまたは環状RNAである。RNAまたはDNAは、5'UTR、3'UTR、および/またはポリアデニル化セグメントまたは部位のうちの1つまたは複数を有することができる。
【0015】
ある特定の態様は、本明細書に記載されるような、mRNA-Nワクチン、mRNA-Sワクチン、またはmRNA-NおよびmRNA-Sの両方をコードするDNA構築物に向けられている。
【0016】
ある特定の態様は、本明細書に記載される1つまたは複数のmRNAワクチンを含む、脂質ナノ粒子(LNP)に向けられている。LNPは、イオン化可能なカチオン性脂質、ホスファチジルコリン、コレステロール、PEG-脂質、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0017】
本発明のある特定の局面は、SARS-CoV-2のより保存されたタンパク質であるウイルス核タンパク質をコードする、ヌクレオシド修飾されたCoVID19 mRNAワクチン(mRNA-Nと命名される)に向けられている。加えて、ワクチン接種のためにmRNA-Nを臨床的に承認されたmRNA-Sと併用することにより(mRNA-S+N)、SARS-CoV-2デルタバリアントおよびオミクロンバリアントに対する堅牢な防御が誘導される。したがって、記載される技術は、SARS-CoV-2バリアントに対する次世代ワクチンアプローチを提示する。
【0018】
他の態様は、対象において抗原特異的免疫応答を誘導する方法であって、前記対象において抗原特異的免疫応答を生じさせるために、本明細書に記載される1つまたは複数のmRNAワクチンを前記対象に投与する工程を含む、前記方法に向けられている。mRNAワクチンは、1用量あたり0.1、0.5、1、5、10 mgのmRNA、またはその間の任意の値もしくは範囲の用量で投与することができる。特定の局面において、mRNAは、1用量あたり0.5~2μgの用量で投与される。ある特定の局面において、ワクチンは、プライム-ブーストレジメンを用いて投与される。ブースト用量は、プライム用量の2、3、4、5、または6週間後に投与することができる。
【0019】
「核酸ワクチン」とは、対象における発現のためにプロモーターの制御下にある異種核酸分子を含むワクチンを指す。異種核酸分子は、プラスミドなどの発現ベクター中に組み込むことができる。「DNAワクチン」とは、核酸がDNAであるワクチンを指す。「RNAワクチン」とは、核酸がRNA(例えば、mRNA)であるワクチンを指す。
【0020】
参照ポリペプチド(またはヌクレオチド)配列に関する「配列同一性パーセント(%)」または「に対して同一の配列%」とは、配列を整列させ、必要な場合にはギャップを導入して最大の配列同一性パーセントを達成した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、参照ポリペプチド(ヌクレオチド)配列中のアミノ酸残基(または核酸)と同一である候補配列中のアミノ酸残基(または核酸)のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のアライメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを用いて、当技術分野における技能内である様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列をアライメントするための適切なパラメータを決定することができる。
【0021】
本発明の他の態様が、本出願を通して議論される。本発明の1つの局面に関して議論される任意の態様は、本発明の他の局面に同様に適用され、その逆もまた同じである。本明細書に記載される各態様は、本発明のすべての局面に適用可能な本発明の態様であると理解される。本明細書で議論される任意の態様を、本発明の任意の方法または組成物に関して実施することができ、その逆もまた同じであることが企図される。さらに、本発明の組成物およびキットを、本発明の方法を達成するために使用することができる。
【0022】
特許請求の範囲および/または明細書において用語「含む(comprising)」と併せて用いられる場合の単語「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、「1つの(one)」を意味し得るが、「1つまたは複数の」、「少なくとも1つの」、および「1つ以上の」の意味とも一致する。
【0023】
本出願を通して、用語「約」は、値が、値を決定するために使用されているデバイスまたは方法についての誤差の標準偏差を含むことを示すために用いられる。
【0024】
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、代替案のみを指すように明示的に示されない限り、または代替案が相互に排他的でない限り、「および/または」を意味するために用いられるが、本開示は、代替案のみならびに「および/または」を指す定義を支持する。
【0025】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる場合、単語「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などの含む(including)の任意の形態)、または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの含有する(containing)の任意の形態)は、包括的または無制限であり、追加の言及されていない要素または方法工程を除外しない。
【0026】
本明細書で用いられる場合、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、「含有する(containing)」、「を特徴とする(characterized by)」、またはそれらの任意の他の語尾変化は、他に明示的に示される任意の限定を条件として、言及される構成要素の非排他的な包含を包含することを意図する。例えば、要素(例えば、構成要素または特徴または工程)のリストを「含む」化学組成物および/または方法は、必ずしもそれらの要素(または構成要素または特徴または工程)のみに限定されず、明白には列挙されていないか、または前記化学組成物および/または方法に固有の他の要素(または構成要素または特徴または工程)を含み得る。
【0027】
本明細書で用いられる場合、移行句「からなる(consists of)」および「からなる(consisting of)」は、特定されていない任意の要素、工程、または構成要素を除外する。例えば、特許請求の範囲において用いられる「からなる(consists of)」または「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲を、それに通常付随する不純物(すなわち、所与の構成要素内の不純物)を除いて、特許請求の範囲において具体的に言及される構成要素、材料、または工程に限定することになる。句「からなる(consists of)」または「からなる(consisting of)」が、前提部の直後ではなく、特許請求の範囲の本文の節に現れている場合、句「からなる(consists of)」または「からなる(consisting of)」は、その節に示されている要素(または構成要素または工程)のみを限定し;他の要素(または構成要素)は、全体として特許請求の範囲から除外されない。
【0028】
本明細書で用いられる場合、移行句「から本質的になる(consists essentially of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」は、文字どおり開示されたものに加えて、材料、工程、特徴、構成要素、または要素を含む化学組成物および/または方法を定義するために用いられるが、ただし、これらの追加の材料、工程、特徴、構成要素、または要素が、特許請求される発明の基本的かつ新規な特徴に物質的に影響を及ぼさないことを条件とする。用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、「含む(comprising)」と「からなる(consisting of)」との中間点を占める。
【0029】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、本発明の精神および範囲内の様々な変更および修飾が、この詳細な説明から当業者に明らかになるため、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の具体的な態様を示すが、例示のみを目的として与えられることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある特定の局面をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書に提示される明細書の態様の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面のうちの1つまたは複数を参照することによって、よりよく理解され得る。
図1】マウスにおけるプライム用量の3週間後の血清学的解析を図示する。
図2】マウスにおけるmRNA-N誘導性防御を図示する。
図3】ハムスターにおけるmRNA-N誘導性防御を図示する(SARS-CoV-2デルタバリアント)。
図4】SARS-CoV-2デルタバリアントに対する組み合わせmRNAワクチン接種研究の図示。
図5】感染の2日後(2DPI)のPCRによって定量した肺におけるウイルスコピーを図示する。
図6】感染の4日後(4DPI)のPCRによって定量した肺におけるウイルスコピー(Log10)を図示する。
図7】マウスにおけるmRNA-Nワクチンの免疫原性。(a)モックまたはmRNA-Nワクチン接種後のマウス脾臓における全CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞活性化の解析。5週目(ブースターの2週間後)に収集した脾細胞を、マウスCD3、CD4、CD8、およびCD44について染色した。全CD4+ T細胞および全CD8+ T細胞上のCD44の発現を、フローサイトメトリーによって検討し、CD4+ T細胞またはCD8+ T細胞におけるCD44+の%として示した。(b)マウス脾臓におけるワクチン特異的T細胞のICS測定。T細胞におけるサイトカイン発現についての代表的なFACSプロットを示した。(c~d)モック群とmRNA-Nワクチン群との間の、脾臓におけるサイトカイン陽性、N特異的CD4+(c)またはCD8+(d)T細胞の%の比較。(e)IFN-γ ELISPOTによって測定した、脾臓におけるN特異的T細胞のレベルの比較。データは、106個の脾細胞あたりのスポット形成細胞(SFC)として示した;エラーバーは、平均値のSDを示した。(f)プライム(3週目)またはブースター(5週目)ワクチン接種後の血清N特異的結合IgGのELISA測定。プライムまたはブースターワクチン接種後の個々の血清試料について、示された血清希釈度(プライムについては1:2700;ブースターについては1:72900)でのOD値を示した。(g)プライムおよびブースターワクチン接種後のモック群とワクチン群との間の、N特異的結合IgGエンドポイント力価(EPT)の比較。(h)WT SARS-CoV-2を用いたプラーク減少中和試験(Plaque Reduction Neutralization Test)(PRNT)によって測定した、血清中和活性。モック群およびワクチン群の個々の血清試料のPRNT50を示した。LOD:検出限界。陰性対照および陽性対照を含めた。一元配置分散分析またはスチューデントのt検定を、統計解析に用いた。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001、**** p<0.0001。
図8】マウスおよびハムスターにおけるmRNA-N誘導性防御。(a)ワクチン接種およびチャレンジ後のマウスの肺におけるSARS-CoV-2ウイルスRNAコピー(Log10)。Balb/cマウス(8匹/群)に、0週目および3週目にモックおよびmRNA-Nをワクチン接種し、続いて、マウスに適応したSARS-CoV-2株(2×104 pfu)での鼻腔内チャレンジを行った。感染の2日後(2DPI)に、肺における絶対ウイルスRNAコピーを、標準曲線を含んだqRT-PCRによって定量し、モック群とワクチン群との間で比較した。(b)ワクチン接種およびチャレンジ後のハムスターの肺におけるSARS-CoV-2ウイルスRNAコピー(Log10)。ハムスター(12匹/群)に、0週目および3週目にモックおよびmRNA-Nをワクチン接種し、続いて、SARS-CoV-2デルタ株(2×104 pfu)での鼻腔内チャレンジを行った。2DPI(n=6)および4DPI(n=6)に、肺における絶対ウイルスRNAコピーを定量し、モック群とワクチン群との間で比較した。(c)0日目から4DPIまでのモック群とワクチン群との間の、ハムスターの体重減少の比較(平均値±SD)。(d)ワクチン接種およびチャレンジ後のハムスターの肺におけるSARS-CoV-2ウイルスRNAコピー(Log10)。モック群、mRNA-N群、およびCD8枯渇を伴うmRNA-N群のデータを示した。一元配置分散分析またはスチューデントのt検定を、統計解析に用いた。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001、**** p<0.0001。
図9】mRNA-S単独と比較した、デルタバリアントに対する併用mRNA-S+Nワクチン接種によって誘導される防御。(a)ワクチン接種およびチャレンジ後のマウスの肺におけるウイルスRNAコピー(Log10)。Balb/cマウス(8匹/群)に、0週目および3週目にモック、mRNA-S単独、および併用mRNA-S+Nをワクチン接種し、続いて、マウスに適応したSARS-CoV-2株(2×104 pfu)での鼻腔内チャレンジを行った。2DPIに、肺における絶対ウイルスRNAコピーを定量した。(b~c)ワクチン接種およびチャレンジ後の、ハムスターの肺(b)または鼻洗浄液(c)におけるウイルスRNAコピー(Log10)。ハムスター(12匹/群)に、0週目および3週目にモック、mRNA-S単独、および併用mRNA-S+Nをワクチン接種し、続いて、デルタ株(2×104 pfu)での鼻腔内チャレンジを行った。2DPI(n=6)および4DPI(n=6)に、肺(b)または鼻洗浄液(d)における絶対ウイルスRNAコピーを定量した。(d)ウイルス感染の0日後から4日後(DPI)までのモック群とワクチン群との間の、ハムスターの体重減少の比較(平均値±SD)。一元配置分散分析を、統計解析に用いた。LOD:検出限界(102コピー)。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001、**** p<0.0001。
図10】オミクロンバリアントに対する併用mRNA-S+Nワクチン接種によって誘導される防御。4群のハムスター(n=10;群1~4)に、0週目(プライム)および3週目(ブースト)に空のLNP(モック)、mRNA-S(2μg)、mRNA-S(4μg)、またはmRNA-S+N(各々について2μg)を、i.m.経路を介してワクチン接種した(a~d)。mRNA-S+N(各々について2μg)をワクチン接種したが、ウイルスチャレンジの前(-D6および-D3)に2用量のCD8枯渇抗体を受けた第5の群(n=10)もまた、防御におけるCD8細胞の役割を調べるために含めた(e~f)。ブースターワクチン接種の2週間後(5週目)に、すべてのハムスターに、SARS-CoV-2オミクロン株(2×104 pfu)での鼻腔内チャレンジを行った。(a~b)2DPI(n=5)(a)および4DPI(n=5)(b)のウイルスチャレンジ後のハムスター(群1~4)の肺におけるウイルスRNAコピー(Log10)。(c)2DPIのウイルスチャレンジ後のハムスターの鼻洗浄液におけるウイルスRNAコピー(Log10)。(d)ウイルス感染後0日目から4日目までの群1~4の間の、ハムスターの体重変化の比較。*は、mRNA-S+NとmRNA-S(2μg)およびmRNA-S(4μg)との統計的比較を意味する。(e)モック群、mRNA-S+N群、およびmRNA-S+N/CD8枯渇群の間の、2DPIおよび4DPIのハムスターの肺におけるウイルスRNAコピー(Log10)の比較。(f)モック群、mRNA-S+N群、およびmRNA-S+N/CD8枯渇群の間の、ハムスターの体重変化の比較。(f)において、*は、mRNA-S+NとmRNA-S+N/CD8枯渇との統計的比較を意味する。一元配置分散分析またはスチューデントのt検定を、統計解析に用いた。LOD:検出限界。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001、**** p<0.0001。
図11】マウスおよびハムスターにおけるmRNA-Sおよび併用mRNA-S+Nワクチン接種の免疫解析。3群のBalb/cマウス(7匹/群)に、上記に示されたように、0週目および3週目にモック、mRNA-S(2μg)、または併用mRNA-S+N(各々について2μg)をI.M.ワクチン接種した。血液/血清および脾細胞を、示された時に収集し、免疫解析に供した。(a~b)マウス脾臓におけるS特異的CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞のICS測定。個々のサイトカイン陽性、S特異的CD4+(a)またはCD8+(b)T細胞の%を検討し、モック群とワクチン群との間で比較した。(c~d)マウス脾臓におけるN特異的CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞のICS測定。個々のサイトカイン陽性、N特異的CD4+(c)またはCD8+(d)T細胞の%を検討し、モック群とワクチン群との間で比較した。(e)脾臓における抗原特異的T細胞のIFN-γ ELISPOT測定。データは、106個の脾細胞あたりのSFC#として示した。(f~g)マウスにおけるプライム(3週目)またはブースター(5週目)ワクチン接種後の、血清S特異的(f)またはN特異的(g)結合IgGのELISA測定。抗体エンドポイント力価(EPT)を、血清連続希釈(1:3比)に基づいて決定し、プライムおよびブースターワクチン接種後のモック群およびワクチン群について示した。(h)ハムスター血清中和活性。ブースターワクチン接種(5週目)後であるがウイルスチャレンジ前のハムスターから収集した血清試料(図3b)を、PRNTによって中和活性について測定した。各群の個々の血清試料のPRNT50を示し、異なる群の間で、および各群内のWTウイルスとデルタバリアントとの間で比較した。各プロットにおける点線は、各アッセイの検出限界(LOD)を示した。一元配置分散分析またはスチューデントのt検定を、統計解析に用いた。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001、**** p<0.0001。
図12】mRNA-Nワクチンの設計および特徴決定。(a)mRNA-Nワクチンの構造。全長SARS-CoV-2 Nタンパク質をコードするシュードウリジン修飾RNAを合成し、続いて、5'キャッピングおよび3'ポリAテーリングを行った。(b)mRNA-NによるSARS-CoV-2 Nタンパク質発現のウエスタンブロット確認。293T細胞に、2μgのmRNA-N-LNPまたはPBSを18時間トランスフェクトした。全タンパク質を、WB解析のために細胞から抽出した。SARS-CoV-2 Nタンパク質を、特異的な抗N抗体(MA5-29981)を用いて検出した。
図13-1】図13A~13L。マウスにおけるmRNA-Nワクチンの免疫原性。(A)実験設計およびタイムライン。2群のBALB/cマウス(n=7)に、0週目および3週目にPBS(モック)またはmRNA-Nワクチン(1μg)を筋肉内(i.m.)ワクチン接種した。ブースターワクチン接種前の3週目に、血液試料および血清試料を、抗体応答の解析のために収集した。ブースターワクチン接種の2週間後(5週目)に、マウスを安楽死させ、免疫解析に供した。(B)免疫処置後5週目のマウス脾臓における、全CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞活性化の解析。CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞上のCD44の発現を、フローサイトメトリーによって検討し、親集団のCD44+%として示した。(C)マウス脾臓におけるワクチン特異的T細胞を、ICSによって測定した。脾細胞を、SARS-CoV-2 Nペプチドプール(QHD43423.2)で刺激し、続いて、免疫染色およびフローサイトメトリー解析を行った。T細胞におけるサイトカイン発現の代表的なフローサイトメトリープロットを示す。(D)モック群とワクチン群との間の、脾臓におけるサイトカイン陽性、N特異的CD4+ T細胞の%の比較を示す。(E)モック群とワクチン群との間の、脾臓におけるサイトカイン陽性、N特異的CD8+ T細胞の%の比較を示す。(F)脾臓におけるN特異的T細胞を、IFN-γ ELISPOTによって測定した。データは、106個の脾細胞あたりのSFCとして示した。(G)プライム(3週目)またはブースター(5週目)ワクチン接種後の血清N特異的結合IgGについての、ELISA測定値を示す。プライムまたはブースターワクチン接種後の個々の血清試料について、示された血清希釈度(プライムについては1:2700;ブースターについては1:72900)でのOD450値を示す。(H)プライムおよびブースターワクチン接種後のモック群とワクチン群との間の、N特異的IgGエンドポイント力価(EPT)の比較を示す。(I)血清中和活性を、野生型SARS-CoV-2を用いたプラーク減少中和試験(PRNT)によって測定した。モック群およびワクチン群の個々の血清試料のPRNT50を示す。(I)における破線は、検出限界を示す。NC、陰性対照;PC、陽性対照。データは、中央値およびIQRとして提示する。マン・ホイットニー検定(F、G、H)またはクラスカル・ワリス検定(B、D、E)を、統計解析に用いた。** p<0.01、*** p<0.001。(J)代表的なフローサイトメトリープロットを、ジメチルスルホキシド(DMSO、陰性対照)またはホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA)/イオノマイシン(陽性対照)刺激後のT細胞におけるサイトカイン発現について示す。TNF-α、腫瘍壊死因子-α;IFN-γ、インターフェロン-γ;IL-2、インターロイキン-2。(K)IFN-γ酵素結合免疫吸着スポット(ELISPOT)アッセイによる、マウス脾臓におけるN特異的T細胞の検出についての代表的なプロットを示す。ELISPOT用の陽性対照(抗CD3刺激)および陰性対照(NC、培地のみ)もまた示す。モックはDMSOを示す。(L)連続希釈(1:3)した血清試料におけるN特異的結合IgGの酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)測定(1群あたりn=7)。IgGエンドポイント力価(EPT)の決定のための、プライム(左)およびブースター(右)ワクチン接種後の示された希釈度の血清試料についての平均光学密度(OD)値(±SD)を示した。
図13-2】図13-1の説明を参照のこと。
図13-3】図13-1の説明を参照のこと。
図13-4】図13-1の説明を参照のこと。
図13-5】図13-1の説明を参照のこと。
図14-1】図14A~14F。mRNA-Nワクチン接種は、マウスおよびハムスターにおいてSARS-CoV-2チャレンジに対する防御を誘導した。(A)マウスの実験設計およびタイムライン。2群のBALB/cマウス(n=8)に、0週目および3週目にPBS(モック)またはmRNA-Nワクチン(1μg)を筋肉内(i.m.)ワクチン接種した。ブースターワクチン接種の2週間後(5週目)に、マウスに、マウスに適応した(MA)SARS-CoV-2(2×104 pfu)の鼻腔内チャレンジを行った。感染の2日後(2DPI)に、肺におけるウイルス負荷を解析して、ワクチン誘導性防御を評価した。(B)モック群とワクチン群との間の、マウス肺におけるウイルスRNAコピーの比較を示す。ウイルスRNAコピーは、RT-PCRによって定量し、1mgの肺組織あたりのLog10コピーとして表した。(C)モック群とワクチン群との間の、マウス肺におけるウイルス力価の比較を示す。ウイルス力価は、プラークアッセイによって定量し、1gの肺組織あたりのLog10 FFUとして表した。(D)ハムスターの実験設計およびタイムライン。3群のハムスターを調査した。最初の2群(1群あたりn=12)に、0週目および3週目にモックまたはmRNA-N(2μg)をi.m.ワクチン接種し、続いて、5週目にSARS-CoV-2デルタチャレンジを、ならびに2DPI(n=6)および4DPI(n=6)にウイルス負荷解析を行った。第3の群(n=6)は、これらのハムスターに、ウイルスチャレンジの6日前および3日前にCD8+ T細胞枯渇のための2用量の抗体を腹腔内注射したことを除いて、同じmRNA-Nワクチンおよびその後のウイルスチャレンジを受けた。ウイルス負荷を、2DPIに解析した(n=6)。(E)モック群とワクチン群との間のハムスター肺におけるウイルスRNAコピー(Log10ウイルスコピー/mg)の比較を、2DPIおよび4DPIに収集した試料について示す。(F)モック群とワクチン群との間のハムスター肺におけるウイルス力価(Log10 FFU/g)の比較を、2DPIおよび4DPIに収集した試料について示す。(G)ハムスターの体重減少の比較を、モック群およびワクチン群について0日目から4DPIまで示す。(H)3群の間のハムスターの肺におけるウイルスRNAコピー(Log10ウイルスコピー/mg)の比較を、2DPIに収集した試料について示す。(F)における破線は、検出限界を示す。データは、適切な場合は中央値およびIQRとして提示する。マン・ホイットニー検定(B、C、G)またはクラスカル・ワリス検定(E、F、H)を、統計解析に用いた。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001。
図14-2】図14-1の説明を参照のこと。
図14-3】図14-1の説明を参照のこと。
図15-1】図15A~15I。MA-SARS-CoV-2に対するマウスにおける、およびデルタに対するハムスターにおける、mRNA-SおよびmRNA-S+N誘導性防御の解析。(A)マウスの実験設計およびタイムライン。3群のマウス(1群あたりn=8)に、0週目および3週目にモック、mRNA-S(1μg)、またはmRNA-S+N(各々について1μg)をワクチン接種(i.m.)し、続いて、MA-SARS-CoV-2(2×104 pfu)での鼻腔内チャレンジを行った。2DPIに、肺におけるウイルスRNAコピーおよび力価を定量した。(B)異なる群の間のウイルス力価の比較を、2DPIに収集したマウス肺について示す(1gあたりのLog10 FFU)。(C)2DPIでの異なる群の間の、マウス肺におけるウイルスRNAコピー(Log10ウイルスコピー/mg)の比較を示す。(D)ハムスターの実験設計およびタイムライン。3群のハムスター(1群あたりn=12)に、0週目および3週目にモック、mRNA-S(2μg)、またはmRNA-S+N(各々について2μg)をワクチン接種(i.m.)し、続いて、5週目にSARS-CoV-2デルタ株(2×104 pfu)での鼻腔内チャレンジを行った。2DPI(n=6)および4DPI(n=6)に、肺組織を、ウイルスRNAコピー、ウイルス力価、および病理学の解析のために採取し;鼻洗浄液を、ウイルスRNAコピーの解析のために収集し;ハムスターの体重もまたモニターした。(E)2DPIおよび4DPIの異なる群の間の、ハムスター肺におけるウイルス力価(Log10 FFU/g)の比較を示す。(F)ハムスター肺におけるウイルスRNAコピー(Log10ウイルスコピー/mg)の比較を、2DPIおよび4DPIに収集した試料を用いて異なる群の間で示す。(G)ハムスター肺の組織病理学を示す。ハムスターから、チャレンジ後の肺組織(2DPI)を固定し、5μmの切片を切り出して、H&Eで染色した。左:モック免疫処置したハムスターの肺は、細気管支炎(矢印)および隣接する顕著な間質性肺炎(矢尻)を伴う気管支を示す;中央および右:mRNA-S(中央)またはmRNA-S+N(右)で免疫処置したハムスターの肺は、正常な気管支(星印)、細気管支(矢印)、および肺胞構造を示す。各画像のスケールバーは、1 mmを示す。(H)鼻洗浄液におけるウイルスRNAコピー(Log10ウイルスコピー/ml)の比較を、2DPIおよび4DPIの示された群の間で示す。(I)ハムスターの体重変化の比較を、異なる群の間で感染後0日目から4日目まで示す。それぞれ、2DPIの*は、mRNA-S+NとmRNA-Sまたはモックとの差を意味し;4DPIの**は、mRNA-S+NまたはmRNA-Sとモックとの差を意味する。(B、C、E、およびF)における破線は、アッセイ検出限界を示す。(B、C、およびE)の下部の数字は、検出限界を上回る結果を有する動物の割合を示す。データは、適切な場合は中央値およびIQRとして提示する。マン・ホイットニー検定(B、C)またはクラスカル・ワリス検定(E、F、H、I)を、統計解析に用いた。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001。
図15-2】図15-1の説明を参照のこと。
図16-1】図16A~16P。オミクロンに対するハムスターにおけるmRNA-SおよびmRNA-S+N誘導性防御の解析。(A)ハムスターの実験設計およびタイムライン。4群のハムスター(1群あたりn=10)に、0週目および3週目にモック(空のLNP)、mRNA-S(2μg)、mRNA-S(2μg)、またはmRNA-S+N(各々について2μg)をワクチン接種(i.m.)し、続いて、5週目にSARS-CoV-2オミクロン株(2×104 pfu)での鼻腔内チャレンジを行った。2DPI(n=6)および4DPI(n=6)に、肺組織を、ウイルスRNAコピー、ウイルス力価、および病理学の解析のために採取し;鼻洗浄液を、ウイルスRNAコピーの解析のために収集し;ハムスターの体重をモニターした。加えて、同じmRNA-S+Nがワクチン接種されたが、ウイルスチャレンジの前(-6日目および-3日目)に2用量の抗CD8β枯渇抗体(i.p.)を受けた、第5の群(n=10)を含めた。(B~E)ウイルスRNAコピー(1mgあたりのLog10ウイルスコピー)(BおよびD)ならびにウイルス力価(1gあたりのLog10 FFU)(CおよびE)を、2DPI(BおよびC)ならびに4DPI(DおよびE)に示された群から収集したハムスター肺において測定した。(F)ウイルス力価のプール解析を、2DPIおよび4DPIに収集したハムスター肺試料について示す。Log10 FFU/gを、異なる群の間で比較した。(G)ハムスター肺の組織病理学を、4DPIに収集した試料を用いて示す。モック:肺は、細気管支炎(矢印)および隣接する顕著な間質性肺炎(矢尻)を伴う気管支を示す;mRNA-S(2μg):肺は、細気管支周囲炎(矢印)、血管周囲炎(アスタリスク)、および多巣性間質性肺炎(矢尻)を示す;mRNA-S(4μg):肺は、顕著な間質性肺炎(矢尻)を示す;mRNA-S+N:肺は、正常な気管支、細気管支(矢印)、および肺胞構造を示す。各画像のスケールバーは、1 mmを示す。(H)2DPIおよび4DPIの異なる群の間の、鼻洗浄液におけるウイルスRNAコピー(Log10ウイルスコピー/ml)の比較を示す。(I)示された群の間の、ハムスターの体重変化の比較を示す。*は、mRNA-S+NとmRNA-S(4μg)との間の差を意味する。(J)モック群、mRNA-S+N(S+N)群、およびmRNA-S+N/CD8+ T細胞枯渇(S+N/CD8 Dep)群の間の、2DPIのハムスター肺におけるウイルスRNAコピー(Log10ウイルスコピー/mg)の比較を示す。(K)プール解析を、2DPIおよび4DPIの試料を合わせて、ハムスター肺におけるウイルスRNAコピーについて示す。(L)示された群の間の、ハムスターの体重変化の比較を示す。(L)において、*および**は、mRNA-S+NとmRNA-S+N/CD8 Depとの比較を意味する。破線は、検出限界を示す。(B~F)の下部の数字は、検出限界を上回る結果を有する動物の割合を示す。データは、適切な場合は中央値およびIQRとして提示する。クラスカル・ワリス検定を、統計解析に用いた。* p<0.05、** p<0.01。(M)モックLNP、mRNA-S(2μg)、mRNA-S(4μg)、またはmRNA-S+Nをワクチン接種したハムスターから、肺組織(2DPI)を固定し、5μmの切片を切り出して、ヘマトキシリン&エオシン(H&E)で染色した。4つの群すべて由来のハムスターの肺は、正常な気管支、細気管支、および肺胞構造を示す。各画像のスケールバーは、1 mmを示す。(N)オミクロンチャレンジの4日後の異なるワクチン接種群のハムスターの鼻洗浄液における、ウイルスRNAコピー(Log10)を示す。水平バーは、平均値を示す。1群あたりn=5。(O、P)ハムスターに、方法に記載されるように、-6日目および-3日目に、マウス抗ラットCD8β抗体(175μg、eBio341、機能グレード)または対照としてのPBSのいずれかを腹腔内注射した。2回目の抗体注射の3日後(0日目)に、脾細胞を、ハムスターから単離し、抗CD8β-フィコエリトリン(PE)(クローン:eBio341)で染色した。脾細胞におけるCD8+ T細胞のパーセンテージを、フローサイトメトリーによって検討した。(O)2匹の対照ハムスター(対照、上)および2匹のCD8枯渇ハムスター(CD8-Dep、下)の脾細胞における、CD8染色の代表的なフローサイトメトリープロットを示す。脾細胞におけるCD8+(またはCD8hi)の%を示す。(P)枯渇効率は、対照ハムスターのものと比べた、枯渇ハムスターの脾細胞におけるCD8+ T細胞の%として表した(77%枯渇)。データは、平均値±SDとして提示した。
図16-2】図16-1の説明を参照のこと。
図16-3】図16-1の説明を参照のこと。
図17図17A~17I。併用mRNA-S+Nワクチン接種は、マウスおよびハムスターにおいて抗原特異的免疫応答を誘導する。免疫原性実験設計およびタイムライン:3群のBALB/cマウス(1群あたりn=7)に、0週目および3週目にモック、mRNA-S(1μg)、または併用mRNA-S+N(各々について1μg)をワクチン接種(i.m.)した。血液試料および血清試料を、3週目(ブースター前)に収集して、抗体応答を測定した。ブースターの2週間後(5週目)に、ワクチン誘導性T細胞および抗体応答を測定した(A~G)。(AおよびB)マウス脾臓(5週目)におけるS特異的CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞のICS測定を示す。個々のサイトカイン陽性CD4+(A)またはCD8+(B)T細胞の%を、モック群とワクチン群との間で比較した。(CおよびD)マウス脾臓(5週目)におけるN特異的CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞のICS測定を示す。個々のサイトカイン陽性CD4+(C)またはCD8+(D)T細胞の%を、モック群とワクチン群との間で比較した。(E)脾臓(5週目)における抗原特異的T細胞のIFN-γ ELISPOT測定を示す。データは、106個の脾細胞あたりのSFCとして示した。(FおよびG)血清S特異的(F)またはN特異的(G)結合IgGのELISA測定を、マウスにおけるプライム(3週目)またはブースター(5週目)ワクチン接種後に収集した試料について示す。抗体エンドポイント力価(EPT)を、血清連続希釈に基づいて決定し、異なる群の間で比較した。(H)血清試料を、ブースターワクチン接種(5週目)後であるがウイルスチャレンジ前に、ハムスター(n=12)から収集した。試料を、PRNTによって中和活性を測定するために用いた。個々の血清試料についてのPRNT50中和力価を、異なる群の間で、および野生型ウイルスとデルタバリアントとの間で比較した。破線(F、G、H)は、各アッセイの検出限界を示す。データは、適切な場合は中央値およびIQRとして提示する。クラスカル・ワリス検定を、統計解析に用いた。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001、**** p<0.0001。(I)モック、mRNA-S、または併用mRNA-S+Nワクチン接種後のマウス脾臓におけるS特異的およびN特異的T細胞を検出するための、代表的なIFN-γ ELISPOTを示す。IFN-γ ELISPOT用の陽性対照(抗CD3刺激)および陰性対照(培地のみ)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
説明
以下の議論は、本発明の様々な態様に向けられている。用語「発明」は、任意の特定の態様を指すこと、または別の方法で本開示の範囲を限定することを意図しない。これらの態様のうちの1つまたは複数が好ましい場合があるが、開示される態様は、特許請求の範囲を含む本開示の範囲を限定するとして、解釈されるべきではなく、または別の方法で用いられるべきではない。加えて、以下の説明は、広い応用を有し、かつ任意の態様の議論は、その態様の例であることのみを意味し、特許請求の範囲を含む本開示の範囲がその態様に限定されると暗示することを意図しないと、当業者は理解するであろう。
【0032】
治療学および診断学の分野における現在の関心は、細胞、組織、臓器、および最終的には対象にとって有益な生理学的アウトカムをもたらす、核酸を設計し、合成し、かつ送達するための能力および方法である。核酸は、関心対象のペプチドまたはポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(mRNA)などの、リボ核酸(RNA)であることができる。1つの有益なアウトカムは、核酸の細胞内翻訳、および少なくとも1つのコードされた関心対象のペプチドまたはポリペプチドの産生である。特に興味深いのは、ワクチン接種の目的で抗原をコードするリボ核酸(RNA)などの、核酸を設計し、合成し、かつ送達する能力である。
【0033】
核酸ワクチン(NAV)の少なくとも1つの構成要素が核酸分子である、NAVの設計、調製、製造、製剤化、および/または使用のための組成物(薬学的組成物を含む)および方法が、本明細書に記載される。特に、核酸ワクチン(NAV)の少なくとも1つの構成要素が、感染性微生物、特にSARS-CoV-2に由来する抗原をコードするポリヌクレオチド、RNAポリヌクレオチド、および/またはmRNAである、NAVの選択、設計、調製、製造、製剤化、および/または使用のための組成物(薬学的組成物を含む)および方法が、本明細書に記載される。また、本明細書に記載されるNAVの選択、設計、および/または利用のためのシステム、プロセス、デバイス、およびキットも提供される。ある特定の態様は、ワクチンをコードするDNAの宿主である産生細胞株を含む、mRNAワクチンを作製および製造するために使用することができる、そのようなmRNAワクチンをコードするDNAに向けられている。
【0034】
SARS-CoV-2は、ヒトにおいて重症呼吸器疾患を引き起こす可能性がある。SARS CoV-2ウイルススパイク(S)タンパク質は、SARS-CoV-2が利用する侵入受容体であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合する。コロナウイルスのスパイク(S)タンパク質は、主要な表面タンパク質であり、感染患者における中和抗体の標的であり(Lester et al., Access Microbiology 2019; 1)、したがって、ワクチン設計のための可能性のある防御抗原と考えられる。
【0035】
SARS-CoV Nタンパク質は、セリン/アルギニンに富む(SRリッチ)ドメイン(SRD)を含有する構造化が不十分な連結領域(LKR)によって連結された2つの別個のRNA結合ドメイン(N末端ドメイン[NTD]およびC末端ドメイン[CTD])を含有する。正のアミノ酸のために、SARS-CoVのN-NTDおよびN-CTDは、ウイルスRNAゲノムと結合することが報告されている。LKRは、オリゴマー化を改善することができる。しかし、SARS-CoV-2 Nタンパク質の分子特性は、まだ完全には明らかにされていない。
【0036】
追加のコロナウイルスワクチンは、SARS-CoV-2核タンパク質をコードするmRNAワクチン(mRNA-N)、およびSARS-CoV-2スパイクタンパク質(S)をコードするmRNAワクチン(mRNA-Spp)バリアントとして、本明細書に記載される。ある特定の態様は、SARS-CoV-2に対して対象にワクチン接種するために、mRNA-N、mRNA-S、またはmRNA-NおよびmRNA-Sワクチンを使用する。
【0037】
研究により、mRNA-N単独は、ハムスターにおいてSARS-CoV-2デルタバリアントの穏やかであるが有意な抑制(約2~2.5倍)を誘導することが示されている。SARS-CoV-2に対するmRNA-Nの抑制効果は、(マウスに適応したSARS-CoV-2株を用いて)マウスモデルにおいて確認されている。mRNA-S単独(S2P)は、デルタバリアントの強い抑制を誘導する(2DPI:約45倍の低減)。組み合わせmRNAワクチン接種(N/S)は、相乗効果を実証しており、抑制を実質的に増強する(約450倍)。
【0038】
I. 核酸ワクチン(NAV)
本明細書に記載される核酸ワクチン(NAV)は、1つまたは複数のコロナウイルス抗原をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド(プラットフォームまたは構築物)を含む。ポリヌクレオチド構築物は、mRNAなどの抗原コードRNAポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチド構築物は、少なくとも1つの化学的修飾を含むことができる。提供される配列は、配列のセンス鎖であることができるが、当業者は、相補的なアンチセンス配列を同様に、容易に特定するであろう。また、ヌクレオチド配列は、DNA配列であるデオキシリボースアデニン、グアニン、チミン、シトシン(AGTC)、および/またはRNA配列であるリボースアデニン、グアニン、ウラシル、シトシン(AGUC)として提示されてもよく;当業者は、RNAまたはDNAの対応物を容易に特定するであろう。
【0039】
本発明のNAV組成物は、アジュバントを含むがそれらに限定されない、他の構成要素を含み得る。アジュバントはまた、1つまたは複数のNAVと共に、またはそれと組み合わせて投与され得る。1つの局面において、アジュバントは、感染の存在に関してT細胞および/またはB細胞および/またはNK細胞をプライミングするための共シグナル(co-signal)として作用する。アジュバントは、任意の経路、例えば、筋肉内注射、皮下注射、IV注射、または皮内注射によって同時投与され得る。本発明において有用なアジュバントは、天然または合成のアジュバントを含み得るが、それらに限定されない。アジュバントは、以下のクラスのいずれかから選択することができる:(1)無機塩、例えば、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムもしくはリン酸カルシウムゲル;(2)オイルエマルジョンおよび界面活性剤ベースの製剤、例えば、マイクロ流体化界面活性剤安定化水中油型エマルジョン、精製サポニン、水中油型エマルジョン、安定化油中水型エマルジョンを含む、エマルジョン;(3)粒子状アジュバント、例えば、ビロソーム(インフルエンザヘマグルチニンを組み込んだ単層リポソームビヒクル)、サポニンと脂質との構造化複合体、ポリラクチドコグリコリド(PLG);(4)微生物誘導体;(5)内在性ヒト免疫調節物質;(6)金粒子などの不活性ビヒクル;(7)微生物由来のアジュバント;(8)張力活性(tensoactive)化合物;(9)炭水化物;またはそれらの組み合わせ。
【0040】
具体的なアジュバントには、非限定的に、以下が含まれ得る:カチオン性リポソーム-DNA複合体JVRS-100、水酸化アルミニウムワクチンアジュバント、リン酸アルミニウムワクチンアジュバント、硫酸アルミニウムカリウムアジュバント、alhydrogel、ISCOM(商標)、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、CpG DNAワクチンアジュバント、コレラ毒素、コレラ毒素Bサブユニット、リポソーム、サポニンワクチンアジュバント、DDAアジュバント、スクアレンベースのアジュバント、Etx Bサブユニットアジュバント、IL-12ワクチンアジュバント、LTK63ワクチン変異体アジュバント、TiterMax Goldアジュバント、Ribiワクチンアジュバント、Montanide ISA 720アジュバント、コリネバクテリウム由来のP40ワクチンアジュバント、MPL(商標)アジュバント、AS04、AS02、リポ多糖類ワクチンアジュバント、ムラミルジペプチドアジュバント、CRL1005、死滅コリネバクテリウム・パルヴム(Corynebacterium parvum)ワクチンアジュバント、Montanide ISA 51、百日咳菌(Bordetella pertussis)構成要素ワクチンアジュバント、カチオン性リポソームワクチンアジュバント、アダマンチルアミドジペプチドワクチンアジュバント、Arlacel A、VSA-3アジュバント、アルミニウムワクチンアジュバント、Polygenワクチンアジュバント、Adjumer(商標)、藻類グルカン、Bay R1005、Theramide(登録商標)、ステアリルチロシン、Specol、アルガムリン(Algammulin)、Avridine(登録商標)、リン酸カルシウムゲル、CTA 1-DD遺伝子融合タンパク質、DOC/アラム複合体、ガンマイヌリン、Gerbuアジュバント、GM-CSF、GMDP、組換えhIFN-ガンマ/インターフェロン-g、インターロイキン-1β、インターロイキン-2、インターロイキン-7、Sclavoペプチド、Rehydragel LV、Rehydragel HPA、ロキソリビン、MF59、MTP-PEリポソーム、ムラメチド(Murametide)、Murapalmitine、D-Murapalmitine、NAGO、非イオン性界面活性剤ベシクル、PMMA、タンパク質コクレアート(Cochleate)、QS-21、SPT(抗原製剤)、ナノエマルジョンワクチンアジュバント、AS03、Quil-Aワクチンアジュバント、RC529ワクチンアジュバント、LTR1920ワクチンアジュバント、大腸菌(E. coli)易熱性毒素、LT、無定形アルミニウムヒドロキシホスファートスルファートアジュバント、リン酸カルシウムワクチンアジュバント、Montanide Incomplete Seppicアジュバント、イミキモド、レシキモド、AF03、フラジェリン、ポリ(I:C)、ISCOMATRIX(登録商標)、Abisco-100ワクチンアジュバント、アルブミン-ヘパリン微粒子ワクチンアジュバント、AS-2ワクチンアジュバント、B7-2ワクチンアジュバント、DHEAワクチンアジュバント、共刺激分子に対する抗体を含有するイムノリポソーム、SAF-1、センダイプロテオリポソーム、センダイ含有脂質マトリックス、スレオニルムラミルジペプチド(TMDP)、Ty粒子ワクチンアジュバント、ブピバカインワクチンアジュバント、DL-PGL(ポリエステルポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド))ワクチンアジュバント、IL-15ワクチンアジュバント、LTK72ワクチンアジュバント、MPL-SEワクチンアジュバント、コレラ毒素mCT-E112Kの非毒性変異体E112K、および/またはMatrix-S。本発明のNAVと同時投与され得る他のアジュバントには、インターフェロン、TNF-アルファ、TNF-ベータ、ケモカイン、例えばCCL21、エオタキシン、HMGB1、SA100-8アルファ、GCSF、GMCSF、グラニュライシン、ラクトフェリン、オボアルブミン、CD-40L、CD28アゴニスト、PD-1、可溶性PD1、L1もしくはL2、またはインターロイキン、例えばIL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-21、IL-23、IL-15、IL-17、およびIL-18が含まれるが、それらに限定されない。これらは、同じコードされたポリヌクレオチド上の、例えばポリシストロニックのNAVと、またはアジュバントおよび抗原をコードする別々のmRNAとして、投与され得る。
【0041】
本発明のNAVは、その結合価が異なっていてもよい。結合価とは、NAVポリヌクレオチド中の抗原性構成要素の数を指す。いくつかの態様において、NAVは、一価(モノシストロニック)である。いくつかの態様において、NAVは、二価(バイシストロニック)である。NAVの抗原性構成要素は、単一のポリヌクレオチド上にあってもよく、または別々のポリヌクレオチド上にあってもよい。
【0042】
NAV組成物の「有効量」は、標的組織、標的細胞型、投与の手段、ポリヌクレオチドの物理的特徴(例えば、サイズ、および修飾ヌクレオシドの程度)およびNAVの他の構成要素、ならびに他の決定因子に少なくとも一部基づいて、提供される。一般に、有効量のNAV組成物は、細胞における抗原産生の機能として、誘導されたかまたは高められた免疫応答を提供する。
【0043】
免疫応答の活性化。様々な態様によって、本明細書に開示されるポリヌクレオチドを含むNAVは、ワクチンとして作用し得る。本明細書で用いられる場合、「ワクチン」とは、生物、例えば、哺乳類生物(ヒトなど)において免疫を刺激し、誘導し、引き起こし、または改善する組成物、例えば、物質または調製物を指す。好ましくは、ワクチンは、予防的および/または治療的な免疫を含む、1つまたは複数の疾患または障害に対する免疫を提供する。NAVは、健康な個体に対する能動的な免疫処置スキームの一部として、または潜伏期中の感染早期に、または症状の発症後の活動性感染中に、予防的にまたは治療的に投与され得る。
【0044】
ワクチンにおけるまたはワクチンとしてのRNAの使用は、免疫応答を生成する安全性、実現可能性、適用可能性、および有効性の点で、DNAを細胞中に組み込むことを含む従来の遺伝子ワクチン接種の欠点を克服する。RNAはより容易に分解されるため、RNA分子は、DNAワクチンよりも有意に安全であると考えられる。RNAは、生物の外に速やかに排出され、ゲノム中に組み込まれて細胞の遺伝子発現に制御不能な様式で影響を及ぼすことはできない。また、RNAワクチンが、自己免疫疾患または抗DNA抗体の生成のような重症の副作用を引き起こす可能性もより低い(Bringmann et al., Journal of Biomedicine and Biotechnology, 2010)。RNAのトランスフェクションは、細胞の細胞質中への挿入のみを必要とし、これは、核中への挿入よりも達成するのが容易である。しかし、RNAは、細胞の細胞質においてRNアーゼ分解および他の自然分解を受けやすい。ある特定の局面において、mRNAワクチンは、ワクチン接種された対象の細胞においてコードされたポリペプチドを発現するように構成される。
【0045】
1つの態様において、本発明のNAVのポリヌクレオチドは、他の予防化合物または治療化合物と共に投与され得る。非限定的な例として、予防化合物または治療化合物は、アジュバントまたはブースターであってもよい。本明細書で用いられる場合、ワクチンなどの予防組成物を指す時に、用語「ブースター」は、予防組成物の上乗せの投与を指す。ブースター(またはブースターワクチン)は、予防組成物のより早期の投与後に与えられ得る。予防組成物の初期投与とブースターとの間の投与の時間は、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、15分、20分、35分、40分、45分、50分、55分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、1日、36時間、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、10日、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、18ヶ月、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、またはそれ以上であり得るが、それらに限定されない。
【0046】
ある特定の局面において、本発明のNAVのポリヌクレオチドは、鼻腔内に、筋肉内に、または皮内に投与され得る。
【0047】
ある特定の局面において、NAVは、記憶ブースターワクチンとして使用することができ、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50年、またはそれ以上の期間にわたって、抗原記憶を高めるために投与される。
【0048】
II. NAVポリヌクレオチド
ある特定の態様によって、ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの関心対象のポリペプチド(抗原または免疫原)をコードする。本発明の抗原は、コロナウイルスに由来する野生型であってもよく、または修飾された、操作された、設計された、もしくは人工のものであってもよい。それらは、本明細書に記載される特徴の任意の組み合わせを有していてもよい。ある特定の態様において、抗原は、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)のSタンパク質、Nタンパク質、またはSタンパク質およびNタンパク質に由来する。
【0049】
ある特定の態様は、1つまたは複数の関心対象のペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸分子に向けられている。そのようなペプチドまたはポリペプチドは、抗原または抗原性分子として働く。用語「核酸」は、その最も広い意味では、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物および/または物質を含む。これらのポリマーは、多くの場合、ポリヌクレオチドと呼ばれる。本発明の核酸またはポリヌクレオチドには、リボヌクレオチドアナログまたは修飾体を含んでも含まなくてもよい、リボ核酸(RNA)が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの態様において、本開示のポリヌクレオチドは、メッセンジャーRNA(mRNA)であるか、またはメッセンジャーRNA(mRNA)として機能する。本明細書で用いられる場合、用語「メッセンジャーRNA」(mRNA)は、少なくとも1つのポリペプチド(天然に存在する、天然に存在しない、または修飾されたアミノ酸のポリマー)をコードし、インビトロ、インビボ、インサイチュ、またはエクスビボで翻訳されて、コードされたポリペプチドを産生することができる、任意のポリヌクレオチドを指す。
【0050】
ある特定の局面において、環状である本発明のポリヌクレオチドは、「環状ポリヌクレオチド」または「circP」として知られている。本明細書で用いられる場合、「環状ポリヌクレオチド」または「circP」は、実質的にRNAのように作用し、かつRNAの特性を有する、一本鎖環状ポリヌクレオチドを意味する。用語「環状」はまた、circPの任意の二次配置または三次配置を包含することを意味する。
【0051】
1つの態様において、本発明のポリヌクレオチドの少なくとも1つの関心対象のポリペプチドをコードする領域の長さは、約30ヌクレオチド長よりも大きい(例えば、少なくとも約35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,500、および3,000、4,000、5,000、6,000、7,000ヌクレオチド、または約35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,500、および3,000、4,000、5,000、6,000、7,000ヌクレオチド超)。本明細書で用いられる場合、そのような領域は、「コード領域」または「コードする領域」または「オープンリーディングフレーム(ORF)」と呼ばれ得る。
【0052】
1つの態様において、本発明のポリヌクレオチドは、メッセンジャーRNA(mRNA)であるか、またはメッセンジャーRNA(mRNA)として機能する。本明細書で用いられる場合、用語「メッセンジャーRNA」(mRNA)は、少なくとも1つの関心対象のペプチドまたはポリペプチドをコードし、インビトロ、インビボ、インサイチュ、またはエクスビボで翻訳されて、コードされた関心対象のペプチド、ポリペプチドを産生することができる、任意のポリヌクレオチドを指す。
【0053】
1つの態様において、本発明のポリヌクレオチドは、構造的に修飾されてもよく、または化学的に修飾されてもよい。本明細書で用いられる場合、「構造的」修飾とは、2つ以上の連結されたヌクレオシドが、ヌクレオチド自体に対する有意な化学的修飾を伴わずに、ポリヌクレオチドにおいて挿入、欠失、重複、反転、またはランダム化されているものである。構造的修飾をもたらすために、化学結合が必ず破壊されて再形成されるため、構造的修飾は、化学的性質のものであり、したがって化学的修飾である。しかし、構造的修飾は、異なるヌクレオチドの配列を結果としてもたらすことになる。例えば、ポリヌクレオチド「ATCG」は、「AT-5meC-G」に化学的に修飾され得る。同じポリヌクレオチドは、「ATCG」から「ATCCCG」に構造的に修飾され得る。ここでは、ジヌクレオチド「CC」が挿入されており、ポリヌクレオチドに対する構造的修飾を結果としてもたらす。
【0054】
ある特定の局面において、ポリヌクレオチドは、同じヌクレオシドタイプのすべてもしくはいずれかの均一な化学的修飾、もしくは修飾の集団、または同じヌクレオシドタイプのすべて、いずれかの測定されたパーセントの化学的修飾であるがランダムな組み込みを伴うものを有し、例えばここで、すべてのウリジンが、ウリジンアナログ、例えばシュードウリジンによって置き換えられる。別の態様において、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド全体を通して、同じヌクレオシドタイプのうちの2つ、3つ、または4つの均一な化学的修飾を有し得る(例えば、すべてのウリジンおよびすべてのシトシンなどが、同じように修飾される)。
【0055】
本発明のポリヌクレオチドが、化学的におよび/または構造的に修飾される場合、ポリヌクレオチドは、「修飾ポリヌクレオチド」と呼ばれ得る。
【0056】
ポリヌクレオチド構造。伝統的に、mRNA分子の基本的な構成要素には、少なくともコード領域、5'UTR、3'UTR、5'キャップ、およびポリAテールが含まれる。本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、mRNAとして機能し得る。態様は、コード領域、ならびに5'UTR、3'UTR、5'キャップ、およびポリAテールのうちの1つまたは複数を有するmRNAに向けられている。本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、mRNAとして機能し得る。
【0057】
環状ポリヌクレオチド構造。ある特定の局面は、環状または環式であるポリヌクレオチドに向けられている。名称が暗に示すように、環状ポリヌクレオチドは、本質的に環状であり、これは、末端が、ライゲーション、共有結合、同じタンパク質もしくは他の分子もしくは複合体との共通の会合、またはハイブリダイゼーションによるかどうかにかかわらず、何らかの様式で連結されていることを意味する。少なくとも1つの関心対象のペプチドまたはポリペプチドをコードする環状ポリヌクレオチドまたはcircPは、環状RNAまたはcircRNAとして知られている。本発明のNAVの抗原は、1つまたは複数の環状RNAまたはcircRNAによってコードされ得る。本明細書で用いられる場合、「環状RNA」または「circRNA」とは、少なくとも1つの関心対象のペプチドまたはポリペプチドをコードすることができる環状ポリヌクレオチドを意味する。
【0058】
本明細書で用いられる場合、「ポリペプチド」とは、最も多くの場合にペプチド結合によって互いに連結された、アミノ酸残基(天然または非天然)のポリマーを意味する。用語は、本明細書で用いられる場合、任意のサイズ、構造、または機能のタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを指す。1つの態様において、関心対象のポリペプチドは、本明細書に記載されるようなポリヌクレオチドによってコードされた抗原である。
【0059】
ポリペプチドに言及する場合の「置換バリアント」とは、ネイティブ配列または出発配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その代わりに同じ位置に異なるアミノ酸が挿入されたものである。置換は、単一であってもよく、そこでは分子中の1つのアミノ酸のみが置換されており、または複数であってもよく、そこでは2つ以上のアミノ酸が同じ分子中で置換されている。
【0060】
本明細書で用いられる場合、用語「保存的アミノ酸置換」は、配列中に通常存在するアミノ酸の、類似したサイズ、電荷、または極性の異なるアミノ酸での置換を指す。保存的置換の例には、イソロイシン、バリン、およびロイシンなどの非極性(疎水性)残基による、別の非極性残基の置換が含まれる。同様に、保存的置換の例には、アルギニンとリジンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間、およびグリシンとセリンとの間などの、1つの極性(親水性)残基による別の極性残基の置換が含まれる。さらに、リジン、アルギニン、もしくはヒスチジンなどの塩基性残基による別の塩基性残基の置換、またはアスパラギン酸もしくはグルタミン酸などの1つの酸性残基による別の酸性残基の置換は、保存的置換の追加的な例である。非保存的置換の例には、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、メチオニンなどの非極性(疎水性)アミノ酸残基による、システイン、グルタミン、グルタミン酸、もしくはリジンなどの極性(親水性)残基の置換、および/または極性残基による非極性残基の置換が含まれる。
【0061】
ポリペプチドに言及する場合の「挿入バリアント」とは、ネイティブ配列または出発配列中の特定の位置のアミノ酸のすぐ隣に1つまたは複数のアミノ酸が挿入されたものである。アミノ酸の「すぐ隣」とは、アミノ酸のα-カルボキシ官能基またはα-アミノ官能基のいずれかに接続されていることを意味する。
【0062】
ポリペプチドに言及する場合の「欠失バリアント」とは、ネイティブアミノ酸配列または出発アミノ酸配列中の1つまたは複数のアミノ酸が除去されたものである。通常、欠失バリアントは、分子の特定の領域において1つまたは複数のアミノ酸が欠失している。
【0063】
ポリペプチドに言及する場合の「共有結合誘導体」は、有機タンパク質性もしくは非タンパク質性の誘導体化剤でのネイティブタンパク質もしくは出発タンパク質の修飾、および/または翻訳後修飾を含む。共有結合修飾は、伝統的に、タンパク質の標的アミノ酸残基を、選択された側鎖もしくは末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることによって、または選択された組換え宿主細胞において機能する翻訳後修飾の機構を活用することによって導入される。結果として生じた共有結合誘導体は、生物学的活性に、イムノアッセイに、または組換え糖タンパク質の免疫親和性精製用の抗タンパク質抗体の調製に重要な残基の特定を対象とする、プログラムにおいて有用である。そのような修飾は、当技術分野における通常の技能内であり、過度の実験を伴わずに行われる。
【0064】
本明細書で用いられる場合、ポリペプチドに言及する場合の用語「末端(termini)」または「末端(terminus)」は、ペプチドまたはポリペプチドの先端を指す。そのような先端は、ペプチドまたはポリペプチドの最初のまたは最後の部位に限定されるだけではなく、末端領域における追加のアミノ酸を含み得る。本発明のポリペプチドベースの分子は、N末端(遊離アミノ基(NH2)を有するアミノ酸によって終わる)およびC末端(遊離カルボキシル基(COOH)を有するアミノ酸によって終わる)の両方を有することを特徴とする。本発明のタンパク質は、いくつかの場合に、ジスルフィド結合によってまたは非共有結合力によって集まった複数のポリペプチド鎖から構成されている(マルチマー、オリゴマー)。これらの種類のタンパク質は、複数のN末端およびC末端を有することになる。あるいは、ポリペプチドの末端は、場合によっては、有機コンジュゲートなどの非ポリペプチドベースの部分で開始または終了するように修飾されてもよい。
【0065】
いくつかの態様において、コードされたポリペプチドバリアントは、参照ポリペプチド(例えば、Sタンパク質またはNタンパク質)と同じかまたは類似した活性を有し得る。一般に、本発明の特定のポリヌクレオチドまたはポリペプチドのバリアントは、本明細書に記載されるかつ当業者に公知の配列アラインメントプログラムおよびパラメータによって決定される場合、その特定の参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対して、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%であるが100%未満の配列同一性を有する。アラインメントのためのそのようなツールには、BLASTスイートのものが含まれる(Stephen F. Altschul, Thomas L. Madden, Alejandro A. Schaffer, Jinghui Zhang, Zheng Zhang, Webb Miller, and David J. Lipman (1997), "Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search programs", Nucleic Acids Res. 25:3389-3402.)。他のツールは、本明細書に、具体的には「同一性」の定義に記載される。
【0066】
BLASTアルゴリズムにおけるデフォルトパラメータには、例えば、期待閾値10、ワードサイズ28、マッチ/ミスマッチスコア1、-2、ギャップコスト線形が含まれる。任意のフィルターを、例えばホモ・サピエンス(Homo sapiens)の、種特異的リピートの選択と同様に、適用することができる。
【0067】
細胞膜透過ポリペプチド。本明細書に開示されるポリヌクレオチドはまた、1つまたは複数の細胞膜透過ポリペプチドをコードし得る。本明細書で用いられる場合、「細胞膜透過ポリペプチド」またはCPPとは、分子の細胞取り込みを促進し得るポリペプチドを指す。本発明の細胞膜透過ポリペプチドは、1つまたは複数の検出可能な標識を含有し得る。ポリペプチドは、部分的に標識されてもよく、または全体を通して完全に標識されてもよい。ポリヌクレオチドは、検出可能な標識を完全にコードしてもよく、部分的にコードしてもよく、または全くコードしなくてもよい。細胞膜透過ペプチドはまた、シグナル配列を含み得る。本明細書で用いられる場合、「シグナル配列」とは、タンパク質翻訳中に新生タンパク質のアミノ末端に結合しているアミノ酸残基の配列を指す。シグナル配列は、細胞膜透過ポリペプチドの分泌をシグナル伝達するために用いられ得る。
【0068】
1つの態様において、ポリヌクレオチドはまた、融合タンパク質をコードし得る。融合タンパク質は、異種タンパク質またはペプチドを治療タンパク質に機能的に連結することによって作り出され得る。本明細書で用いられる場合、「機能的に連結された」とは、治療タンパク質と異種タンパク質またはペプチドとが、細胞中に導入された時に複合体の発現を可能にするような方法で接続されていることを指す。好ましくは、治療タンパク質は、融合タンパク質の形成において異種タンパク質またはペプチドに共有結合で連結され得る。
【0069】
非翻訳領域(UTR)を有するポリヌクレオチド。本発明のポリヌクレオチド(例えば、本発明のNAVにおいて特徴とされる抗原コードポリヌクレオチド)は、非翻訳領域として作用するかまたは機能する、1つまたは複数の領域または一部を含み得る。ポリヌクレオチドが、少なくとも1つの関心対象のポリペプチドをコードするように設計される場合、ポリヌクレオチドは、これらの非翻訳領域のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0070】
定義によって、遺伝子の非翻訳領域(UTR)は、転写されるが、翻訳されない。mRNAにおいて、5'UTRは、転写開始部位から始まり、開始コドンまで続くが、開始コドンを含まない;一方、3'UTRは、終止コドンの直後から始まり、転写終結シグナルまで続く。UTRの調節特徴は、とりわけ、分子の安定性を増強するために、本発明のポリヌクレオチド中に組み込むことができる。
【0071】
天然の5'UTRは、翻訳開始において役割を果たす特徴を有する。それらは、リボソームが多くの遺伝子の翻訳を開始するプロセスに関与することが一般的に知られている、Kozak配列のようなシグネチャを保有する。5'UTRはまた、伸長因子結合に関与する二次構造を形成することが知られている。特定の標的臓器の豊富に発現している遺伝子において典型的に見出される特徴を操作することによって、本発明のポリヌクレオチドの安定性およびタンパク質産生を増強することができる。
【0072】
他の非UTR配列がまた、ポリヌクレオチド内の領域またはサブ領域として用いられ得る。例えば、イントロンまたはイントロンの一部分の配列が、本発明のポリヌクレオチドの領域中に組み込まれ得る。イントロン配列の組み込みは、タンパク質産生およびポリヌクレオチドレベルを増大させ得る。
【0073】
特徴の組み合わせが、隣接領域に含まれてもよく、かつ他の特徴内に含有されてもよい。例えば、ORFには、強力なKozak翻訳開始シグナルを含有し得る5'UTR、および/またはポリAテールの鋳型化された付加のためのオリゴ(dT)配列を含み得る3'UTRが隣接し得る。5'UTRは、同じ遺伝子および/または異なる遺伝子由来の第1のポリヌクレオチド断片および第2のポリヌクレオチド断片を含み得る。
【0074】
様々な遺伝子由来のUTRが、ポリヌクレオチドの領域中に組み込まれ得る。さらに、任意の公知の遺伝子の複数のUTRが、利用され得る。野生型領域のバリアントではない人工UTRを提供することもまた、本発明の範囲内である。これらのUTRまたはその一部分は、それらが選択された転写産物におけるのと同じ配向で置かれてもよく、または配向もしくは場所が改変されてもよい。したがって、5'UTRまたは3'UTRは、反転されてもよく、短くされてもよく、長くされてもよく、1つもしくは複数の他の5'UTRもしくは3'UTRと共に作製されてもよい。本明細書で用いられる場合、UTR配列に関連する用語「改変された」は、UTRが、参照配列に対して何らかの方法で変更されていることを意味する。例えば、3'UTRまたは5'UTRは、上記で教示されるような配向もしくは場所の変更によって、野生型もしくはネイティブUTRに対して改変されてもよく、または追加のヌクレオチドの包含、ヌクレオチドの欠失、ヌクレオチドのスワッピングもしくは転位によって改変されてもよい。「改変された」UTR(3'であろうと5'であろうと)をもたらすこれらの変更のいずれかは、バリアントUTRを含む。
【0075】
1つの態様において、隣接領域は、そのタンパク質が共通の機能、構造、特徴、特性を共有する転写産物のファミリーから選択される。例えば、関心対象のポリペプチドは、特定の細胞、組織において、または発生中のある時に発現されるタンパク質のファミリーに属していてもよい。これらの遺伝子のいずれか由来のUTRを、同じファミリーまたは異なるファミリーのタンパク質の任意の他のUTRと交換して、新たなポリヌクレオチドを作り出してもよい。本明細書で用いられる場合、「タンパク質のファミリー」は、最も広い意味で、少なくとも1つの機能、構造、特徴、局在化、起源、または発現パターンを共有する、2つ以上の関心対象のポリペプチドの群を指すように用いられる。
【0076】
3'UTRおよびAUリッチエレメント。天然または野生型の3'UTRは、それに埋め込まれたアデノシンおよびウリジンのストレッチを有することが知られている。これらのAUリッチシグネチャは、特に、ターンオーバー率が高い遺伝子に多く存在する。それらの配列の特徴および機能的特性に基づいて、AUリッチエレメント(ARE)は、3つのクラスに分けることができる:クラスI AREは、Uリッチ領域内にAUUUAモチーフのいくつかの分散されたコピーを含有する。c-MycおよびMyoDは、クラスI AREを含有する。クラスII AREは、2つ以上の重なり合ったUUAUUUA(U/A)(U/A)九量体を有する。このタイプのAREを含有する分子には、GM-CSFおよびTNF-αが含まれる。クラスIII ARESは、あまりよく明らかにされていない。これらのUリッチ領域は、AUUUAモチーフを含有しない。c-Junおよびミオゲニンは、このクラスの2つのよく研究された例である。
【0077】
5'キャップを有する領域。天然mRNAの5'キャップ構造は、核外搬出に関与して、mRNAの安定性を増大させ、かつmRNAキャップ結合タンパク質(CBP)に結合し、これは、成熟環式mRNA種を形成するために、CBPとポリ(A)結合タンパク質との会合を通して、細胞におけるmRNAの安定性および翻訳能力を担う。キャップは、さらに、mRNAスプライシング中の5'近位イントロン除去の除去を補助する。
【0078】
内在性mRNA分子は、5'端キャップ付加されて、mRNA分子の末端グアノシンキャップ残基と5'末端転写センスヌクレオチドとの間に5'-ppp-5'-三リン酸結合を生成し得る。この5'-グアニル酸キャップは、次いで、メチル化されてN7-メチル-グアニル酸残基を生成し得る。mRNAの5'端の末端および/または前末端(ante-terminal)転写ヌクレオチドのリボース糖はまた、任意で、2'-O-メチル化され得る。グアニル酸キャップ構造の加水分解および切断を通した5'-デキャッピングは、分解のために、mRNA分子などの核酸分子を標的とし得る。
【0079】
いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、キャップ部分を組み込むように設計され得る。本発明のポリヌクレオチドに対する修飾は、デキャッピングを阻止し、したがってmRNAの半減期を増大させる、非加水分解性キャップ構造を生成し得る。キャップ構造の加水分解は、5'-ppp-5'ホスホロジエステル結合の切断を必要とするため、修飾ヌクレオチドが、キャッピング反応中で用いられ得る。例えば、New England Biolabs(Ipswich,Mass.)由来のワクシニアキャッピング酵素が、5'-ppp-5'キャップにホスホロチオアート結合を作り出すために、製造業者の指示書に従ってα-チオグアノシンヌクレオチドと共に用いられ得る。α-メチル-ホスホナートおよびセレノ-ホスファートヌクレオチドなどの、追加の修飾グアノシンヌクレオチドが用いられ得る。
【0080】
追加の修飾には、糖の環の2'-ヒドロキシル基上での(上述のような)ポリヌクレオチドの5'-末端および/または5'-前末端ヌクレオチドのリボース糖の2'-O-メチル化が含まれるが、それらに限定されない。複数の別個の5'-キャップ構造を、mRNA分子として機能するポリヌクレオチドなどの、核酸分子の5'-キャップを生成するために用いることができる。
【0081】
本明細書で合成キャップアナログ、化学的キャップ、化学的キャップアナログ、または構造的もしくは機能的キャップアナログとも呼ばれるキャップアナログは、キャップ機能を保持しながら、その化学構造が天然の(すなわち、内在性の、野生型の、または生理学的な)5'-キャップとは異なる。キャップアナログは、化学的に(すなわち、非酵素的に)もしくは酵素的に合成され、かつ/または本発明のポリヌクレオチドに連結され得る。
【0082】
例えば、アンチリバースキャップアナログ(ARCA)キャップは、5'-5'-三リン酸基によって連結された2つのグアニンを含有し、ここで、1つのグアニンは、N7メチル基および3'-O-メチル基を含有する(すなわち、N7,3'-O-ジメチル-グアノシン-5'-三リン酸-5'-グアノシン(m7G-3'mppp-G;これは、等価的に3' O-Me-m7G(5')ppp(5')Gと称され得る))。もう一方の修飾されていないグアニンの3'-0原子は、キャップ付加されたポリヌクレオチドの5'末端ヌクレオチドに連結される。N7-および3'-O-メチル化されたグアニンは、キャップ付加されたポリヌクレオチドの末端部分を提供する。
【0083】
キャップの別の例は、mCAPであり、これは、ARCAに類似しているが、グアノシン上に2'-O-メチル基を有する(すなわち、N7,2'-O-ジメチル-グアノシン-5'-三リン酸-5'-グアノシン、m7Gm-ppp-G)。
【0084】
ウイルス配列。オオムギ黄化萎縮ウイルス(BYDV-PAV)、ヤーグジークテ(Jaagsiekte)ヒツジレトロウイルス(JSRV)、および/または地方病性鼻腫瘍ウイルスの翻訳エンハンサー配列などであるがそれらに限定されない、追加のウイルス配列(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる国際公開番号WO2012129648を参照されたい)を、操作して、本発明のポリヌクレオチドに挿入することができ、インビトロおよびインビボで構築物の翻訳を刺激することができる。トランスフェクション実験を、関連する細胞株において実施することができ、タンパク質産生を、トランスフェクション後12時間、24時間、48時間、72時間、および7日目に、ELISAによってアッセイすることができる。
【0085】
IRES配列。さらに、内部リボソーム進入部位(IRES)を含有し得るポリヌクレオチド(例えば、本発明のNAVにおいて特徴とされる抗原コードポリヌクレオチド)が提供される。IRESは、ピコルナウイルスRNAの特徴として最初に特定され、5'キャップ構造の非存在下でタンパク質合成を開始する際に重要な役割を果たす。IRESは、唯一のリボソーム結合部位として作用する場合があり、またはmRNAの複数のリボソーム結合部位のうちの1つとして働く場合がある。1つよりも多い機能的リボソーム結合部位を含有するポリヌクレオチドは、リボソームによって独立して翻訳されるいくつかのペプチドまたはポリペプチドをコードする場合がある(「マルチシストロニック核酸分子」)。ポリヌクレオチドが、IRESを有して提供される場合、さらに任意で、第2の翻訳可能領域が提供される。本発明に従って用いることができるIRES配列の例には、非限定的に、コクサッキーウイルスB3(CVB3)、ピコルナウイルス(例えば、FMDV)、ペストウイルス(CFFV)、ポリオウイルス(PV)、脳心筋炎ウイルス(ECMV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、古典的豚熱ウイルス(CSFV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、またはコオロギ麻痺ウイルス(CrPV)由来のものが含まれる。
【0086】
ポリAテール。RNAプロセシング中に、安定性を増大させるために、アデニンヌクレオチドの長い鎖(ポリAテール)が、mRNA分子などのポリヌクレオチドに付加され得る。転写の直後に、転写産物の3'端が、3'ヒドロキシルを遊離するように切断され得る。次いで、ポリAポリメラーゼが、アデニンヌクレオチドの鎖をRNAに付加する。ポリアデニル化と呼ばれるプロセスは、例えば、およそ80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、または250残基長を含む、およそ80~およそ250残基長であることができる、ポリAテールを付加する。
【0087】
本発明によって、ポリAテール上の末端基は、本発明のポリヌクレオチド(例えば、本発明のRNAVにおいて特徴とされる抗原コードポリヌクレオチド)中に安定化のために組み込まれ得る。本発明のポリヌクレオチドは、デス-3'ヒドロキシルテールを含み得る。それらはまた、Junjie Li, et al.(Current Biology, Vol. 15, 1501-1507, 2005)によって教示されるような、構造部分または2'-Oメチル修飾を含み得る。
【0088】
ポリヌクレオチドは、ヒストンmRNAを含む代替のポリAテール構造を有する転写産物をコードするように設計され得る。これらのmRNAは、3'ポリ(A)テールの欠如によって区別され、その機能は、代わりに、安定なステム-ループ構造およびその同族ステム-ループ結合タンパク質(SLBP)によって引き受けられ;後者は、ポリアデニル化mRNA上のPABPのものと同じ機能を果たす。
【0089】
特有のポリAテールの長さは、本発明のポリヌクレオチド(例えば、本発明のNAVにおいて特徴とされる抗原コードポリヌクレオチド)にある特定の利点を提供する。
【0090】
一般に、存在する場合、ポリAテールの長さは、30ヌクレオチド長よりも長い。別の態様において、ポリAテールは、35ヌクレオチド長よりも長い(例えば、少なくとも約35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,500、および3,000ヌクレオチド、または約35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,500、および3,000ヌクレオチド超)。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドまたはその領域は、約30~約3,000ヌクレオチド(例えば、30~50、30~100、30~250、30~500、30~750、30~1,000、30~1,500、30~2,000、30~2,500、50~100、50~250、50~500、50~750、50~1,000、50~1,500、50~2,000、50~2,500、50~3,000、100~500、100~750、100~1,000、100~1,500、100~2,000、100~2,500、100~3,000、500~750、500~1,000、500~1,500、500~2,000、500~2,500、500~3,000、1,000~1,500、1,000~2,000、1,000~2,500、1,000~3,000、1,500~2,000、1,500~2,500、1,500~3,000、2,000~3,000、2,000~2,500、および2,500~3,000ヌクレオチド)を含む。
【0091】
1つの態様において、ポリAテールは、ポリヌクレオチド全体の長さまたはポリヌクレオチドの特定の領域の長さに対して設計される。この設計は、コード領域の長さ、特定の特徴もしくは領域の長さに基づいてもよく、またはポリヌクレオチドから発現される最終産物の長さに基づいてもよい。
【0092】
この文脈において、ポリAテールは、ポリヌクレオチドまたはその特徴よりも、長さが10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%長くてもよい。ポリAテールはまた、それが属するポリヌクレオチドの画分として設計されてもよい。この文脈において、ポリAテールは、構築物の全長、構築物領域、または構築物の全長からポリAテールを引いたものの10、20、30、40、50、60、70、80、もしくは90%、またはそれ以上であり得る。さらに、操作された結合部位およびポリA結合タンパク質に対するポリヌクレオチドのコンジュゲーションは、発現を増強し得る。
【0093】
開始コドン領域。いくつかの局面において、ポリヌクレオチドは、開始コドン領域に類似しているか、または開始コドン領域のように機能する領域を有し得る。1つの態様において、ポリヌクレオチドの翻訳は、開始コドンAUGではないコドン上で開始し得る。ポリヌクレオチドの翻訳は、ACG、AGG、AAG、CTG/CUG、GTG/GUG、ATA/AUA、ATT/AUU、TTG/UUGなどであるがそれらに限定されない、代替開始コドン上で開始し得る。非限定的な例として、ポリヌクレオチドの翻訳は、代替開始コドンACG上で始まる。別の非限定的な例として、ポリヌクレオチド翻訳は、代替開始コドンCTGまたはCUG上で始まる。さらに別の非限定的な例として、ポリヌクレオチドの翻訳は、代替開始コドンGTGまたはGUG上で始まる。
【0094】
開始コドンまたは代替開始コドンなどであるがそれらに限定されない、翻訳を開始するコドンに隣接するヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの翻訳効率、長さ、および/または構造に影響を及ぼすことが知られている。(例えば、Matsuda and Mauro PLoS ONE, 2010 5:11を参照されたく;その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。翻訳を開始するコドンに隣接するヌクレオチドのいずれかをマスクすることは、ポリヌクレオチドの翻訳開始の位置、翻訳効率、長さ、および/または構造を改変するために用いられ得る。
【0095】
終止コドン領域。1つの局面において、ポリヌクレオチドは、3'非翻訳領域(UTR)の前に少なくとも1つまたは2つの終止コドンを含み得る。終止コドンは、TGA、TAA、およびTAGから選択され得る。1つの局面において、ポリヌクレオチドは、終止コドンTGAおよび1つの追加の終止コドンを含む。さらなる態様において、追加の終止コドンは、TAAであり得る。別の態様において、本発明のポリヌクレオチドは、3つの終止コドンを含む。
【0096】
シグナル配列。本明細書に記載されるポリヌクレオチドはまた、治療的に関連する部位へのポリペプチドの輸送を促進する追加の特徴をコードし得る。タンパク質の輸送を助ける1つのそのような特徴は、シグナル配列である。本明細書で用いられる場合、「シグナル配列」または「シグナルペプチド」とは、それぞれ、コード領域またはコードされたポリペプチドの5'(またはN末端)に組み込まれる、長さが約9~200ヌクレオチド(3~60アミノ酸)である、それぞれポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。これらの配列の付加は、1つまたは複数の分泌経路を通して、コードされたポリペプチドの小胞体への輸送を結果としてもたらす。いくつかのシグナルペプチドは、タンパク質が輸送された後に、シグナルペプチダーゼによってタンパク質から切断される。
【0097】
タンパク質切断シグナルおよび部位。ある特定の局面において、本発明のポリペプチド(例えば、抗原ポリペプチド)は、様々なタンパク質切断シグナルおよび/または部位を含み得る。
【0098】
1つの態様において、本発明のポリペプチドは、少なくとも1つのタンパク質切断部位を含有する、少なくとも1つのタンパク質切断シグナルを含み得る。タンパク質切断部位は、N末端、C末端に、N末端とC末端との間の任意のスペース、例えば、限定されないが、N末端とC末端との中間、N末端と中間点との間、中間点とC末端との間、およびそれらの組み合わせに位置し得る。
【0099】
1つの態様において、本発明のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが少なくとも1つのコードされたタンパク質切断シグナルを含有するように、操作され得る。コードされたタンパク質切断シグナルは、開始コドンの前、開始コドンの後、コード領域の前、コード領域内、例えば、限定されないが、コード領域の中間、開始コドンと中間点との間、中間点と終止コドンとの間、コード領域の後、終止コドンの前、2つの終止コドンの間、終止コドンの後、およびそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない、任意の領域に位置し得る。
【0100】
1つの態様において、本発明のポリヌクレオチドは、少なくとも1つのタンパク質切断部位を含有する、少なくとも1つのコードされたタンパク質切断シグナルを含み得る。コードされたタンパク質切断シグナルは、シグナラーゼ切断シグナル(SEQ ID NO:10)、プロタンパク質転換酵素(またはプロホルモン転換酵素)、トロンビンおよび/または第Xa因子タンパク質切断シグナルを含み得るが、それらに限定されない。
【0101】
コドン最適化。本発明のNAVに含有されるポリヌクレオチド、その領域または一部またはサブ領域は、コドン最適化され得る。コドン最適化法は、当技術分野で公知であり、いくつかの目標のうちの1つまたは複数を達成する取り組みにおいて有用であり得る。これらの目標には、妥当なフォールディングを確実にするために標的生物および宿主生物においてコドン頻度を一致させること、mRNAの安定性を増大させるかもしくは二次構造を低減させるためにGC含量を偏らせること、遺伝子の構築もしくは発現を損ない得るタンデムリピートコドンもしくは塩基ランを最小化すること、転写および翻訳制御領域をカスタマイズすること、タンパク質輸送配列を挿入もしくは除去すること、コードされたタンパク質中の翻訳後修飾部位(例えば、グリコシル化部位)を除去/付加すること、タンパク質ドメインを付加、除去、もしくはシャッフルすること、制限部位を挿入するかもしくは欠失させること、リボソーム結合部位およびmRNA分解部位を修飾すること、タンパク質の様々なドメインが妥当にフォールディングできるように翻訳速度を調整すること、またはポリヌクレオチド内の問題のある二次構造を低減させるかもしくは排除することが含まれる。コドン最適化ツール、アルゴリズム、およびサービスは、当技術分野で公知であり、非限定的な例には、GeneArt(Life Technologies)、DNA2.0(Menlo Park Calif.)からのサービス、および/または独自の方法が含まれる。1つの態様において、ORF配列は、最適化アルゴリズムを用いて最適化される。
【0102】
いくつかの態様において、5'UTR領域および/または3'UTR領域は、隣接領域として提供され得る。複数の5'UTRまたは3'UTRが、隣接領域に含まれてもよく、同じ配列または異なる配列であってもよい。何も含まない隣接領域の任意の部分が、コドン最適化されてもよく、いずれも、コドン最適化の前および/または後に、1つまたは複数の異なる構造的修飾または化学的修飾を独立して含有し得る。
【0103】
インビトロ転写-酵素的合成。本明細書に記載されるポリヌクレオチドをコードするcDNAは、インビトロ転写(IVT)システムを用いて転写され得る。システムは、典型的には、転写緩衝液、ヌクレオチド三リン酸(NTP)、RNアーゼ阻害剤、およびポリメラーゼを含む。NTPは、インハウスで製造されてもよく、供給業者から選択されてもよく、または本明細書に記載されるように合成されてもよい。NTPは、天然NTPおよび非天然(修飾)NTPを含む本明細書に記載されるものから選択され得るが、それらに限定されない。ポリメラーゼは、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、および、ポリヌクレオチド(例えば、修飾核酸)を取り込むことができるポリメラーゼなどであるがそれらに限定されない、変異体ポリメラーゼから選択され得るが、それらに限定されない。
【0104】
固相化学合成。本明細書に記載されるキメラポリヌクレオチドまたは環状ポリヌクレオチドは、固相技法を用いて全体的または部分的に製造され得る。
【0105】
ポリヌクレオチドまたは核酸の固相化学合成は、分子が、固体支持体上に固定化され、反応物溶液中で段階的に合成される、自動化法である。不純物および過剰な試薬は洗い流され、各工程の後にいかなる精製も必要とされない。プロセスの自動化は、コンピュータ制御の固相合成装置で適用できる。固相合成により、いくつかのポリヌクレオチドまたは核酸の商業的利用可能性をもたらす、比較的大規模でのポリヌクレオチドまたは核酸の迅速な生産が可能になる。さらに、これは、ポリヌクレオチド配列または核酸配列における化学的修飾の部位特異的導入において有用である。これは、天然核酸の修飾誘導体を設計する際に不可欠なツールである。
【0106】
液相化学合成。単量体構成単位の連続付加による本発明のキメラポリヌクレオチドまたは環状ポリヌクレオチド(例えば、本発明のNAVにおいて特徴とされる抗原コードポリヌクレオチド)の合成は、液相で行われ得る。共有結合が、単量体の間に、または成長する鎖の末端官能基と入ってくる単量体との間に形成される。反応に関与しない官能基は、一時的に保護されなければならない。各単量体構成単位の付加後に、反応混合物は、次の単量体構成単位を付加する前に精製されなければならない。鎖の1つの末端にある官能基は、次の単量体構成単位と反応できるように脱保護されなければならない。液相合成は、労力および時間がかかり、自動化することができない。限界にもかかわらず、液相合成は、依然として、短いポリヌクレオチドを大規模に調製するのに有用である。システムは、均質であるため、大過剰の試薬を必要とせず、この点で費用対効果が大きい。
【0107】
合成法の組み合わせ。各々上記で議論された合成法は、それ自体の利点および限界を有する。これらの方法を組み合わせて限界を克服する、試みが行われてきた。そのような方法の組み合わせは、本発明の範囲内である。
【0108】
III. 修飾
ある特定の態様において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、様々な置換および/または挿入を含むことができる。本明細書で用いられる場合、用語「化学的修飾」または適切な場合は「化学的に修飾された」は、アデノシン(A)、グアノシン(G)、ウリジン(U)、チミジン(T)、またはシチジン(C)リボヌクレオシドまたはデオキシリボヌクレオシドに関する、それらの位置、パターン、パーセント、または集団のうちの1つまたは複数における修飾を指す。一般に、本明細書において、これらの用語は、天然に存在する5'末端mRNAキャップ部分におけるリボヌクレオチド修飾を指すことを意図していない。ポリペプチドにおいて、用語「修飾」は、20アミノ酸の正規セットと比較した修飾を指す。
【0109】
修飾は、様々な別個の修飾であってもよい。いくつかの態様において、領域は、1つ、2つ、またはそれ以上の(任意で異なる)ヌクレオシドまたはヌクレオチド修飾を含有し得る。いくつかの態様において、細胞に導入された修飾ポリヌクレオチドは、非修飾ポリヌクレオチドと比較して、細胞において低減した分解を示し得る。
【0110】
本発明のNAVのヌクレオチドは、例えば、糖、核酸塩基、またはヌクレオシド間結合に対して(例えば、連結ホスファートに対して/ホスホジエステル結合に対して/ホスホジエステル骨格に対して)、任意の有用な修飾を含むことができる。ピリミジン核酸塩基の1つまたは複数の原子は、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいチオール、置換されていてもよいアルキル(例えば、メチルもしくはエチル)、またはハロ(例えば、クロロもしくはフルオロ)で置き換えられるかまたは置換されていてもよい。ある特定の態様において、修飾(例えば、1つまたは複数の修飾)は、糖およびヌクレオシド間結合の各々に存在する。本発明による修飾は、リボ核酸(RNA)のデオキシリボ核酸(DNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロック核酸(LNA)、またはそれらのハイブリッドへの修飾であり得る。追加の修飾が、本明細書に記載される。
【0111】
非天然修飾ヌクレオチドは、所望の機能または特性を達成するために、鎖の合成中または合成後にポリヌクレオチドに導入され得る。修飾は、ヌクレオチド間結合、プリン塩基もしくはピリミジン塩基、または糖に対するものであり得る。修飾は、化学合成でまたはポリメラーゼ酵素で、鎖の末端にまたは鎖の他のどこかに導入され得る。
【0112】
修飾ポリヌクレオチド分子。本発明はまた、ポリヌクレオチド分子の、例えば、本発明のNAVの、構成単位、例えば、修飾リボヌクレオシド、および修飾リボヌクレオチドを含む。例えば、これらの構成単位は、本発明のポリヌクレオチドを調製するために有用であることができる。
【0113】
糖に対する修飾。ポリヌクレオチド中に組み込まれ得る修飾ヌクレオシドおよび修飾ヌクレオチドは、リボ核酸の糖に対して修飾することができる。例えば、2'ヒドロキシル基(OH)を、多数の異なる置換基で修飾するかまたは置き換えることができる。2'位の例示的な置換には、H、ハロ、置換されていてもよいC1~6アルキル:置換されていてもよいC1~6アルコキシ;置換されていてもよいC6~10アリールオキシ;置換されていてもよいC3~8シクロアルキル;置換されていてもよいC3~8シクロアルコキシ;置換されていてもよいC6~10アリールオキシ;置換されていてもよいC6~10アリール-C1~6アルコキシ、置換されていてもよいC1~12(ヘテロシクリル)オキシ;糖(例えば、リボース、ペントース、または本明細書に記載される任意のもの);ポリエチレングリコール(PEG)、-O(CH2CH2O)nCH2CH2R(ここで、Rは、Hまたは置換されていてもよいアルキルであり、かつnは、0~20(例えば、0~4、0~8、0~10、0~16、1~4、1~8、1~10、1~16、1~20、2~4、2~8、2~10、2~16、2~20、4~8、4~10、4~16、および4~20)の整数である); 2'-ヒドロキシルが、C1~6アルキレンまたはC1~6ヘテロアルキレン架橋によって同じリボース糖の4'-炭素に接続されており、例示的な架橋が、メチレン、プロピレン、エーテル、またはアミノ架橋を含んでいた、「ロック」核酸(LNA);本明細書で定義されるようなアミノアルキル;本明細書で定義されるようなアミノアルコキシ;本明細書で定義されるようなアミノ;および本明細書で定義されるようなアミノ酸が含まれるが、それらに限定されない。
【0114】
一般に、RNAは、酸素を有する5員環である糖基リボースを含む。例示的な非限定的修飾ヌクレオチドには、(例えば、S、Se、またはメチレンもしくはエチレンなどのアルキレンでの)リボース中の酸素の置き換え;(例えば、リボースをシクロペンテニルまたはシクロヘキセニルで置き換える)二重結合の付加;(例えば、シクロブタンまたはオキセタンの4員環を形成する)リボースの環縮小;(例えば、アンヒドロヘキシトール、アルトリトール、マンニトール、シクロヘキサニル、シクロヘキセニル、およびホスホルアミダート骨格も有するモルホリノなどの、追加の炭素またはヘテロ原子を有する6員環または7員環を形成する)リボースの環拡大;多環式形態(例えば、トリシクロ);ならびにグリコール核酸(GNA)(例えば、リボースが、ホスホジエステル結合に付着されたグリコール単位によって置き換えられている、R-GNAまたはS-GNA)、トレオース核酸(リボースが、α-L-トレオフラノシル-(3'→2')で置き換えられている、TNA)、およびペプチド核酸(2-アミノ-エチル-グリシン結合が、リボースおよびホスホジエステル骨格に取って代わっている、PNA)などの「アンロック」形態が含まれる。糖基はまた、リボース中の対応する炭素のものとは反対の立体化学的配置を有する、1つまたは複数の炭素を含有することができる。したがって、ポリヌクレオチド分子は、例えば、アラビノースを糖として含有する、ヌクレオチドを含むことができる。そのような糖修飾は、2012年10月3日に出願された国際出願番号PCT/2012/058519(代理人整理番号M9)および2013年6月20日に出願された米国特許仮出願第61/837,297号(代理人整理番号M36)に教示されており、その各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0115】
核酸塩基に対する修飾。本明細書に記載される場合、「ヌクレオシド」は、糖分子(例えば、ペントースもしくはリボース)またはその誘導体を、有機塩基(例えば、プリンもしくはピリミジン)またはその誘導体(本明細書では「核酸塩基」とも呼ばれる)と組み合わせて含有する、化合物として定義される。本明細書に記載される場合、「ヌクレオチド」は、リン酸基を含むヌクレオシドとして定義される。修飾ヌクレオチドは、本明細書に記載されるような、任意の有用な方法によって(例えば、1つまたは複数の修飾ヌクレオシドまたは非天然ヌクレオシドを含むように化学的に、酵素的に、または組換えで)合成され得る。ポリヌクレオチドは、連結されたヌクレオシドの1つまたは複数の領域を含み得る。そのような領域は、可変の骨格連結を有し得る。連結は、標準的なホスホエステル結合であってもよく、その場合、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチドの領域を含むことになる。
【0116】
修飾ヌクレオチド塩基対形成は、標準的なアデノシン-チミン、アデノシン-ウラシル、またはグアノシン-シトシン塩基対だけではなく、ヌクレオチドおよび/または非標準塩基もしくは修飾塩基を含む修飾ヌクレオチドの間に形成される塩基対も包含し、ここで、水素結合ドナーおよび水素結合アクセプターの配置は、非標準塩基と標準塩基との間、または2つの相補的な非標準塩基構造の間の水素結合を可能にする。そのような非標準塩基対形成の1つの例は、修飾ヌクレオチドであるイノシンとアデニン、シトシン、またはウラシルとの間の塩基対形成である。
【0117】
修飾ヌクレオシドおよび修飾ヌクレオチドは、修飾核酸塩基を含むことができる。RNAにおいて見出される核酸塩基の例には、アデニン、グアニン、シトシン、およびウラシルが含まれるが、それらに限定されない。DNAにおいて見出される核酸塩基の例には、アデニン、グアニン、シトシン、およびチミンが含まれるが、それらに限定されない。そのような修飾核酸塩基(天然に存在するものと天然に存在しないものとの区別を含む)は、2012年10月3日に出願された国際出願番号PCT/2012/058519(代理人整理番号M9)および2013年6月20日に出願された米国特許仮出願第61/837,297号(代理人整理番号M36)に教示されており、その各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0118】
IV. 薬学的ワクチン組成物
本発明は、NAVならびにNAV組成物および/または複合体を、任意で1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて含む、薬学的組成物を提供する。本発明は、NAVならびにNAV薬学的組成物および複合体を、任意で1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて提供する。薬学的組成物は、任意で、1つまたは複数の追加の活性物質、例えば、治療的活性物質および/または予防的活性物質を含み得る。本発明の薬学的組成物は、無菌かつ/またはパイロジェンフリーであり得る。薬剤の製剤化および/または製造における一般的な考察は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 21' ed., Lippincott Williams & Wilkins, 2005(参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)において見出され得る。
【0119】
いくつかの態様において、組成物は、ヒト、ヒト患者、または対象に投与される。本開示の目的で、句「活性成分」は、一般に、本明細書に記載されるように送達される、NAVまたはその中に含有されるポリヌクレオチド、例えば、抗原コードポリヌクレオチド、例えばRNAポリヌクレオチドを指す。
【0120】
本明細書で提供される薬学的組成物の説明は、主として、ヒトへの投与に適している薬学的組成物に向けられているが、そのような組成物は、一般に、任意の他の動物、例えば、非ヒト動物、例えば非ヒト哺乳類への投与に適していることが、当業者によって理解されるであろう。組成物を様々な動物への投与に適しているようにするための、ヒトへの投与に適している薬学的組成物の修飾は、よく理解されており、通常の熟練した獣医薬理学者は、そのような修飾を、たとえあったとしても単に通常の実験で、設計および/または実施することができる。薬学的組成物の投与が企図される対象には、ヒトおよび/もしくは他の霊長類;ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウス、および/もしくはラットなどの商業的に関連する哺乳類を含む哺乳類;ならびに/または家禽、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、および/もしくはシチメンチョウなどの商業的に関連する鳥類を含む鳥類が含まれるが、それらに限定されない。
【0121】
本明細書に記載される薬学的組成物の製剤は、薬理学の技術分野で公知のまたは今後開発される任意の方法によって、調製され得る。一般に、そのような準備の方法は、活性成分を、賦形剤および/または1つもしくは複数の他の補助的成分と合わせる工程、ならびに次いで、必要かつ/または望ましい場合には、産物を、所望の単一用量単位または複数用量単位に分割、成形、および/または包装する工程を含む。
【0122】
本発明による薬学的組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤、および/または任意の追加成分の相対量は、処置される対象の同一性、サイズ、および/または状態に応じて、かつさらに組成物が投与されることになる経路に応じて、変動する。例として、組成物は、0.1%~100%、例えば、0.5~50%、1~30%、5~80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0123】
製剤。本発明のNAVは、(1)安定性を増大させる;(2)細胞トランスフェク ションを増大させる;(3)(例えば、デポー製剤からの)持続放出もしくは遅延放出を可能にする;(4)生体内分布を改変する(例えば、特定の組織もしくは細胞型を標的とする);(5)インビボでコードされたタンパク質の翻訳を増大させる;かつ/または(6)インビボでコードされたタンパク質(抗原)の放出プロファイルを改変するために、1つまたは複数の賦形剤を用いて製剤化することができる。任意のおよびすべての溶媒、分散媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散助剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤などの伝統的な賦形剤に加えて、本発明の賦形剤は、非限定的に、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コアシェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、NAVをトランスフェクトされた細胞(例えば、対象中への移植用)、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣物、およびそれらの組み合わせを含むことができる。
【0124】
したがって、本発明の製剤は、1つまたは複数の賦形剤を、各々、NAVの安定性を増大させ得る、NAVによる細胞トランスフェクションを増大させる、ポリヌクレオチドにコードされたタンパク質の発現を増大させる、かつ/またはポリヌクレオチドにコードされたタンパク質の放出プロフィールを改変する量で含むことができる。さらに、本発明のポリヌクレオチドは、自己組織化核酸ナノ粒子を用いて製剤化され得る。
【0125】
本明細書に記載される薬学的組成物の製剤は、薬理学の技術分野で公知のまたは今後開発される任意の方法によって、調製され得る。一般に、そのような準備の方法は、活性成分を、賦形剤および/または1つもしくは複数の他の補助的成分と合わせる工程を含む。
【0126】
本開示による薬学的組成物は、バルクで、単一単位用量として、および/または複数の単一単位用量として、調製、包装、および/または販売され得る。本明細書で用いられる場合、「単位用量」とは、予め決定された量の活性成分を含む、薬学的組成物の離散量を指す。活性成分の量は、一般に、対象に投与される活性成分の投与量、および/または、例えば、そのような投与量の2分の1もしくは3分の1などの、そのような投与量の都合のよい画分に等しい。
【0127】
本開示による薬学的組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤、および/または任意の追加成分の相対量は、処置されている対象の同一性、サイズ、および/または状態に応じて、かつさらに組成物が投与されることになる経路に応じて、変動し得る。例えば、組成物は、0.1%~99%(w/w)の活性成分を含み得る。例として、組成物は、0.1%~100%、例えば、0.5~50%、1~30%、5~80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0128】
いくつかの態様において、本明細書に記載される製剤は、少なくとも1つのポリヌクレオチド、例えば、抗原コードポリヌクレオチドを含有し得る。非限定的な例として、製剤は、1、2、3、4、または5つのポリヌクレオチドを含有し得る。
【0129】
1つの態様において、本明細書に記載される製剤は、1つのタイプよりも多いポリヌクレオチド、例えば、抗原コードポリヌクレオチドを含み得る。1つの態様において、製剤は、直鎖状形態および環状形態のキメラポリヌクレオチドを含み得る。別の態様において、製剤は、環状ポリヌクレオチドおよびIVTポリヌクレオチドを含み得る。さらに別の態様において、製剤は、IVTポリヌクレオチド、キメラポリヌクレオチド、および環状ポリヌクレオチドを含み得る。
【0130】
V. リポソーム、リポプレックス、および脂質ナノ粒子
本発明のNAVは、1つまたは複数のリポソーム、リポプレックス、または脂質ナノ粒子(LNP)を用いて製剤化することができる。1つの態様において、NAVの薬学的組成物は、リポソームを含む。リポソームは、主に脂質二重層で構成され得る、かつ栄養素および薬学的製剤の投与のための送達ビヒクルとして用いられ得る、人工的に調製されたベシクルである。リポソームは、直径が数百ナノメートルであり得る、かつ狭い水性区画によって分離された一連の同心円二重層を含有し得る多層ベシクル(MLV)、直径が50 nmよりも小さくあり得る小型単細胞ベシクル(SUV)、および直径が50~500 nmであり得る大型単層ベシクル(LUV)などであるがそれらに限定されない、異なるサイズのものであることができる。リポソームの設計は、不健康な組織に対するリポソームの付着を改善するため、またはエンドサイトーシスなどであるがそれらに限定されない、事象を活性化するために、オプソニンまたはリガンドを含み得るが、それらに限定されない。リポソームは、薬学的製剤の送達を改善するために、低いかまたは高いpHを含有し得る。
【0131】
1つの態様において、本明細書に記載される薬学的組成物は、非限定的に、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)リポソーム、Marina Biotech(Bothell, Wash.)由来のDiLa2リポソーム、1,2-ジリノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、およびMC3(参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、US20100324120)から形成されるものなどのリポソーム、ならびに、Janssen Biotech, Inc.(Horsham, Pa.)由来のDOXIL(登録商標)などであるがそれらに限定されない、低分子薬物を送達し得るリポソームを含み得る。
【0132】
例として、リポソームは、Jeffsらによって記載されているように、55%コレステロール、20%ジステロイルホスファチジルコリン(DSPC)、10% PEG-S-DSG、および15% 1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)を含有することができるが、それらに限定されない。別の例として、ある特定のリポソーム製剤は、Heyesらによって記載されているように、48%コレステロール、20% DSPC、2% PEG-c-DMA、および30%カチオン性脂質を含有し得るが、それらに限定されず、ここで、カチオン性脂質は、1,2-ジステアルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(1,2-distearloxy-N,N-dimethylaminopropane)(DSDMA)、DODMA、DLin-DMA、または1,2-ジリノレニルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)であることができる。
【0133】
ペプチドおよびタンパク質。本発明のNAVは、ポリヌクレオチドによる細胞のトランスフェクションを増大させるために、ペプチドおよび/またはタンパク質と共に製剤化することができる。1つの態様において、細胞膜透過ペプチド、ならびに細胞内送達を可能にするタンパク質およびペプチドなどであるがそれらに限定されないペプチドが、薬学的製剤を送達するために用いられ得る。本発明の薬学的製剤と共に用いられ得る細胞膜透過ペプチドの非限定的な例には、細胞内空間への送達を促進するポリカチオンに付着された細胞膜透過ペプチド配列、例えば、HIV由来のTATペプチド、ペネトラチン(penetratin)、トランスポータン(transportan)、またはhCT由来の細胞膜透過ペプチドが含まれる(例えば、Caron et al., Mol. Ther. 3(3):310-8 (2001);Langel, Cell-Penetrating Peptides: Processes and Applications (CRC Press, Boca Raton Fla., 2002);El-Andaloussi et al., Curr. Pharm. Des. 1(28):3597-611 (2003);およびDeshayes et al., Cell. Mol. Life Sci. 62(16):1839-49 (2005)を参照されたく、そのすべては、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。組成物はま た、組成物の細胞内空間への送達を増強する細胞膜透過剤、例えば、リポソームを含むように製剤化することができる。本発明のNAVは、細胞内送達を可能にするために、Aileron Therapeutics(Cambridge, Mass.)およびPermeon Biologics(Cambridge, Mass.)由来のペプチドおよび/またはタンパク質などであるがそれらに限定されない、ペプチドおよび/またはタンパク質に複合体化され得る(Cronican et al., ACS Chem. Biol. 2010 5:747-752;McNaughton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2009 106:6111-6116;Sawyer, Chem Biol Drug Des. 2009 73:3-6;Verdine and Hilinski, Methods Enzymol. 2012; 503:3-33;そのすべては、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。
【0134】
細胞。本発明のNAVは、エクスビボで細胞中にトランスフェクトすることができ、これが続いて、対象中に移植される。1つの非限定的な例として、患者または対象由来の血液の試料を、PBMC集団を活性化するために、抗原またはアジュバントまたはその両方で処置してもよく、ここで、1つまたは複数は、本発明のNAVによってコードされる。この活性化された試料または特定の細胞のサブセットを、次いで、ドナー患者に戻し、それによって免疫系を活性化し得る。この活性化PBMCワクチンは、本開示のNAVのいずれかを用いて設計され得る。非限定的な例として、薬学的組成物は、肝臓および骨髄系細胞に修飾RNAを送達するための赤血球、ウイルス様粒子(VLP)において修飾RNAを送達するためのビロソーム、ならびに修飾RNAを送達するためのMAXCYTE(登録商標)(Gaithersburg, Md.)由来およびERYTECH(登録商標)(Lyon, France)由来などであるがそれらに限定されない、エレクトロポレーション細胞を含み得る。ポリヌクレオチド以外のペイロードを送達するための赤血球、ウイルス粒子、およびエレクトロポレーション細胞の使用の例が、記録されている(Godfrin et al., Expert Opin Biol Ther. 2012 12:127-133;Fang et al., Expert Opin Biol Ther. 2012 12:385-389;Hu et al., Proc Nat Acad Sci USA. 2011 108:10980-10985;Lund et al., Pharm Res. 2010 27:400-420;Huckriede et al., J Liposome Res. 2007; 17:39-47;Cusi, Hum Vaccin. 2006 2:1-7;de Jonge et al., Gene Ther. 2006 13:400-411;そのすべては、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。
【0135】
懸濁製剤。いくつかの態様において、NAV、水不混和性油デポー剤、界面活性剤および/もしくは共界面活性剤、ならびに/または共溶媒を含む、懸濁製剤が提供される。油と界面活性剤との組み合わせにより、NAVを有する懸濁製剤が可能になり得る。水不混和性デポー剤におけるNAVの送達が、デポー剤から周囲の生理学的環境へのNAVの持続放出を通して生物学的利用能を改善するため、およびヌクレアーゼによるポリヌクレオチド分解を阻止するために用いられ得る。
【0136】
いくつかの態様において、NAVの懸濁製剤は、ポリヌクレオチド、油性溶液、および界面活性剤の組み合わせを用いて調製され得る。そのような製剤は、ポリヌクレオチドを含む水性相と、油および界面活性剤を含む油性相とを含む、二部システムとして調製され得る。懸濁製剤のための例示的な油には、ゴマ油およびMiglyol(飽和ヤシ油およびパーム核油由来のカプリル酸およびカプリン酸の脂肪酸とグリセリンまたはプロピレングリコールとのエステルを含む)、コーン油、大豆油、落花生油、蜜ろう、および/またはパーム種子油が含まれ得るが、それらに限定されない。例示的な界面活性剤には、Cremophor、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール、transcutol、Capmul(登録商標)、labrasol、ミリスチン酸イソプロピル、および/またはSpan 80が含まれ得るが、それらに限定されない。いくつかの態様において、懸濁液は、エタノール、グリセロール、および/またはプロピレングリコールを含むがそれらに限定されない、共溶媒を含み得る。
【0137】
凍結保護剤。いくつかの態様において、NAV製剤は、凍結保護剤を含み得る。本明細書で用いられる場合、用語「凍結保護剤」は、所与の物質と組み合わされた場合に、凍結時に生じるその物質に対する損傷を低減させるかまたは排除するのを助ける、1つまたは複数の剤を指す。いくつかの態様において、凍結保護剤を、凍結中にNAVを安定化させるために、NAVと組み合わせる。-20℃~-80℃でのNAVの凍結保存は、ポリヌクレオチドの長期(例えば、36ヶ月)の安定性に有利であり得る。いくつかの態様において、凍結/融解サイクルを通しておよび凍結保存条件下で、ポリヌクレオチドを安定化させるために、凍結保護剤をNAV製剤に含める。本発明の凍結保護剤には、スクロース、トレハロース、ラクトース、グリセロール、デキストロース、ラフィノース、および/またはマンニトールが含まれ得るが、それらに限定されない。トレハロースは、一般に安全とみなされている(GRAS)として食品医薬品庁(Food and Drug Administration)によって列記されており、市販の薬学的製剤において一般的に用いられている。
【0138】
増量剤。いくつかの態様において、NAV製剤は、増量剤を含み得る。本明細書で用いられる場合、用語「増量剤」は、製剤への所望の粘稠度および/または製剤構成要素の安定化を付与するために製剤に含まれる、1つまたは複数の剤を指す。いくつかの態様において、増量剤は、「薬学的に洗練された」ケーキをもたらすように凍結乾燥NAV製剤に含まれ、長期(例えば、36ヶ月)の保存中の凍結乾燥NAVを安定化させる。本発明の増量剤には、スクロース、トレハロース、マン ニトール、グリシン、ラクトース、および/またはラフィノースが含まれ得るが、それらに限定されない。いくつかの態様において、凍結保護剤と増量剤との組み合わせ(例えば、スクロース/グリシンまたはトレハロース/マンニトール)が、凍結中のNAVの安定化、および凍結乾燥用の増量剤の提供の両方のために含まれ得る。
【0139】
投与。本発明のNAVは、治療的に有効なアウトカムを結果としてもたらす、任意の経路によって投与され得る。非経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、および/またはエリキシルが含まれるが、それらに限定されない。
【0140】
注射可能な調製物、例えば、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液は、適している分散剤、湿潤剤、および/または懸濁剤を用いて、公知の技術に従って製剤化され得る。無菌の注射可能な調製物は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤および/または溶媒中の無菌の注射可能な溶液、懸濁液、および/またはエマルジョンであり得る。注射可能な製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通した濾過によって、および/または、使用前に滅菌水もしくは他の無菌の注射可能な媒体に溶解もしくは分散させることができる滅菌固体組成物の形態にある滅菌剤を組み込むことによって、滅菌することができる。
【0141】
ワクチン接種または免疫処置は、ワクチン接種レジメンまたは免疫処置レジメンを用いて;例えば、1つまたは複数のワクチンまたは免疫学的組成物もしくは免疫原性組成物を「プライム」として投与し、その後、1つまたは複数のワクチンまたは免疫学的組成物もしくは免疫原性組成物を「ブースト」として投与して、行うことができる。本発明によるプライム-ブーストレジメンは、任意の年齢の対象において用いることができる。「プライム-ブースト」という用語は、少なくとも1つの免疫原、抗原、またはエピトープを共通して有する2つのワクチンまたは免疫原性組成物もしくは免疫学的組成物の連続投与を指す。プライミング投与(プライミング)は、第1のワクチンまたは免疫原性組成物もしくは免疫学的組成物のタイプの投与であり、1回、2回、またはそれ以上の投与を含み得る。ブースト投与は、第2のワクチンまたは免疫原性組成物もしくは免疫学的組成物のタイプの投与であり、1回、2回、またはそれ以上の投与を含み得、例えば、毎年の投与を含み得るか、または本質的にそれからなり得る。プライムおよびブーストは、対象に提示される共通の免疫原、抗原、またはエピトープがある限り、同じ組成物または異なる組成物であることができる。
【0142】
投薬。本発明は、NAVを本発明に従って、それを必要とする対象に投与する工程を含む方法を提供する。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、および全身状態、疾患の重症度、特定の組成物、その投与様式、その活性様式などに応じて、対象ごとに異なる。本発明による組成物は、典型的には、投与の容易さおよび投与量の均一性のために、単位剤形で製剤化される。しかし、本発明の組成物の1日総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医が決定し得ることが理解されるであろう。任意の特定の患者のための具体的な治療的に有効な、予防的に有効な、または適切な画像化用量レベルは、処置されている障害および障害の重症度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康、性別、および食事;使用される特定の化合物の投与時間、投与経路、および排出速度;処置の持続期間;使用される特定の化合物と組み合わせてまたは同時に用いられる薬物;ならびに医学的技術分野で周知の同様の要因を含む、様々な要因に依存する。
【0143】
ある特定の態様において、本発明による組成物は、1日あたり対象体重について約0.0001 mg/kg~約100 mg/kg、約0.001 mg/kg~約0.05 mg/kg、約0.005 mg/kg~約0.05 mg/kg、約0.001 mg/kg~約0.005 mg/kg、約0.05 mg/kg~約0.5 mg/kg、約0.01 mg/kg~約50 mg/kg、約0.1 mg/kg~約40 mg/kg、約0.5 mg/kg~約30 mg/kg、約0.01 mg/kg~約10 mg/kg、約0.1 mg/kg~約10 mg/kg、または約 1mg/kg~約25 mg/kgを送達するのに十分な投与量レベルで、1日に1回または複数回、所望の治療効果、診断効果、予防効果、または画像化効果を得るために投与され得る(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、国際公開番号WO2013078199に記載される単位用量の範囲を参照されたい)。所望の投与量は、1日に3回、1日に2回、1日に1回、1日おき、3日ごと、毎週、2週間ごと、3週間ごと、または4週間ごとに送達され得る。ある特定の態様において、所望の投与量は、複数の投与(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、またはそれ以上の投与)を用いて送達され得る。複数の投与が使用される場合、本明細書に記載されるものなどの分割投薬レジメンが用いられ得る。
【0144】
本発明によると、NAVは、分割用量レジメンで投与され得る。本明細書で用いられる場合、「分割用量」とは、単一単位用量または1日総用量の2つ以上の用量への分配、例えば、単一単位用量の2回以上の投与である。本明細書で用いられる場合、「単一単位用量」とは、1用量/1回/単一経路/単一接触点で、すなわち、単一の投与事象での、任意の治療的投与の用量である。本明細書で用いられる場合、「1日総用量」とは、24時間の期間で与えられるかまたは処方される量である。それは、単一単位用量として投与されてもよい。1つの態様において、本発明のNAVは、分割用量で対象に投与される。NAVは、緩衝液のみにおいて、または本明細書に記載される製剤において製剤化され得る。
【0145】
いくつかの態様において、本発明のNAV化合物および/または組成物は、2つ以上の用量で投与され得る(本明細書で「複数用量投与」と呼ばれる)。そのような用量は、同じ構成要素を含んでもよく、または前の用量には含まれていない構成要素を含んでもよい。そのような用量は、前の用量と比較して、同じ質量および/もしくは体積の構成要素、または改変された質量および/もしくは体積の構成要素を含み得る。いくつかの態様において、複数用量投与は、反復用量投与を含み得る。本明細書で用いられる場合、用語「反復用量投与」は、実質的に同じ質量および/または体積で提供される実質的に同じ構成要素を含む反復用量の、連続して投与されるかまたはレジメン内の2つ以上の用量を指す。いくつかの態様において、対象は、反復用量応答を示し得る。本明細書で用いられる場合、用語「反復用量応答」は、反復用量投与レジメン内で投与された別の用量のものとは異なる、反復用量に対する対象における応答を指す。いくつかの態様において、そのような応答は、NAVを含む反復用量に応答したタンパク質の発現であり得る。そのような態様において、タンパク質発現は、反復用量投与レジメン内で投与された別の用量と比較して上昇する場合があり、またはタンパク質発現は、反復用量投与レジメン内で投与された別の用量と比較して低減する場合がある。タンパク質発現の変化は、約1%~約20%、約5%~約50%、約10%~約60%、約25%~約75%、約40%~約100%、および/または少なくとも100%であり得る。反復用量レジメンの一部として投与されたmRNAの発現の低減であって、投与されたRNAから翻訳されるタンパク質のレベルが、反復用量レジメン内の別の用量と比較して40%超低減する、低減は、本明細書で「反復用量耐性」と呼ばれる。
【0146】
VI. キットおよびデバイス
本発明は、本発明の方法を便利にかつ/または有効に実施するための様々なキットを提供する。典型的には、キットは、使用者が対象の複数の処置を行うこと、および/または複数の実験を行うことを可能にするのに十分な、構成要素の量および/または数を含む。
【0147】
1つの局面において、本発明は、本発明のNAV分子(任意のタンパク質またはポリヌクレオチドを含む)を含む、キットを提供する。1つの態様において、キットは、1つまたは複数の機能的な抗原またはその機能断片を含む。
【0148】
キットは、抗原の翻訳可能領域を含む第1のポリヌクレオチドを含む、タンパク質産生のためのものであることができる。キットは、製剤組成物を形成するための、パッケージングおよび指示書および/または送達剤をさらに含み得る。送達剤は、生理食塩水、緩衝液、または送達剤を含み得る。
【0149】
1つの態様において、緩衝液は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸塩、および/またはEDTAを含み得る。別の態様において、緩衝液は、生理食塩水、2 mMカルシウムを含む生理食塩水、5%スクロース、2 mMカルシウムを含む5%スクロース、5%マンニトール、2 mMカルシウムを含む5%マンニトール、乳酸リンゲル液、塩化ナトリウム、2 mMカルシウムを含む塩化ナトリウム、およびマンノースを含み得るが、それらに限定されない。さらなる態様において、緩衝液は、沈殿させてもよく、または凍結乾燥させてもよい。各構成要素の量を、一貫し、再現性がある、より高い濃度の生理食塩水または単純な緩衝液製剤を可能にするために、変動させてもよい。構成要素はまた、ある期間にわたっておよび/または様々な条件下で緩衝液中のポリヌクレオチドの安定性を増大させるために、変動させてもよい。
【0150】
1つの局面において、本発明は、標的細胞中に導入された時に翻訳可能領域によってコードされたタンパク質の所望の量を産生するのに有効な量で提供された、翻訳可能領域を含むポリヌクレオチドを含む、タンパク質産生のためのキットを提供する。
【0151】
デバイス。本発明は、関心対象のポリペプチドをコードする、例えば、抗原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むRNAVを組み込み得る、デバイスを提供する。これらのデバイスは、ヒト患者などの、それを必要とする対象に直ちに送達するのに利用可能な製剤中のポリヌクレオチドを合成するための試薬を、安定な製剤中に含有する。
【0152】
投与のためのデバイスは、本明細書で教示される単回投薬レジメン、複数回投薬レジメン、または分割投薬レジメンに従って、本発明のNAVを送達するために使用され得る。
【0153】
細胞、臓器、および組織への複数回投与のための当技術分野で公知の方法およびデバイスは、本発明の態様として本明細書に開示される方法および組成物と併せた使用について企図される。これらには、例えば、複数の針を有する方法およびデバイス、例えば管腔またはカテーテルを使用するハイブリッドデバイス、ならびに熱、電流、または放射線駆動機構を利用するデバイスが含まれる。
【0154】
1つの態様において、NAVは、少なくとも3本の針を介して、3つの異なる、任意で隣接する部位に、同時にまたは60分間以内に、皮下にまたは筋肉内に投与される(例えば、4、5、6、7、8、9、または10部位に、同時にまたは60分間以内に投与)。
【実施例
【0155】
VII. 実施例
以下の実施例および図は、本発明の好ましい態様を実証するために含まれる。実施例または図に開示される技法は、本発明の実施において良好に機能することが本発明者らによって発見された技法を表し、したがって、その実施のための好ましい様式を構成すると考えることができると、当業者は理解するべきである。しかし、本開示に照らして、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示されている具体的な態様において多くの変更を行うことができ、依然として同様のまたは類似した結果を得ることができると、当業者は理解するべきである。
【0156】
方法:
mRNA-NおよびmRNA-Sの生成。融合前安定化(prefusion-stabilized)SARS-CoV-2 Sタンパク質をコードする修飾mRNA(mRNA-S-2P;またはmRNA-Sと呼ぶ)およびSARS-CoV-2 Nタンパク質をコードする修飾mRNA(mRNA-N)を、T7 RNAポリメラーゼを用いてインビトロで合成した(Pardi et al., Methods Mol Biol, 2013, 969:29-42)。UTPの代わりに、1メチルシュードウリジン(m1Ψ)-5'-三リン酸を用いて、ヌクレオシド修飾mRNAを作製した。修飾mRNAは、5'-キャップ付加され、発現の最適化のためにポリアデニル化テールを含有する。すべてのmRNAを、セルロース精製によって精製した(Baiersdorfer et al., Mol Ther Nucleic Acids, 2019, 15:26-35)。
【0157】
mRNA-LNPパッケージング。mRNAを、動物免疫処置のために脂質ナノ粒子(LNP)にカプセル化した(Maier et al., Mol Ther, 2013, 21(8):1570-8)。LNP製剤は、イオン化可能なカチオン性脂質、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG-脂質を含有する。
【0158】
マウス免疫処置、試料収集、およびSARS-CoV-2チャレンジ。動物試験は、国立衛生研究所の実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)における推奨に従って実施した。動物プロトコルは、テキサス大学医学部(University of Texas Medical Branch)の施設内動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)(IACUC)によって承認された。マウス試験のために、6週齢の雌BALB/cマウス(1群あたり5匹)を、それぞれ、0週目(プライム)および3週目(ブースト)のプライム-ブーストアプローチを用いて、モック対照としてのPBS(50μl)または1μgのmRNA-Nワクチン(50μl)のいずれかで筋肉内(i.m.)免疫処置した。
【0159】
血液/血清試料を、ブースト前日(プライム後)およびチャレンジ前日(ブースト後)に、すべてのマウスから収集した。2回目のワクチン接種の2週間後(5週目)に、すべてのマウスに、マウスに適応したSARS-CoV2 CMA4株(2×104 pfu)での鼻腔内チャレンジを行った(Muruato et al., bioRxiv, 2021;Ku et al., Nat Commun, 2021, 12(1):469)。感染の2日後(2DPI)に、マウスを安楽死させ、肺組織の等価部分を、q-PCRまたはプラークアッセイによるウイルス負荷の定量のために収集した。
【0160】
ハムスター免疫処置、試料収集、およびSARS-CoV-2チャレンジ。5群の3週齢の雄ゴールデンシリアハムスター(1群あたりn=12;2DPIは6匹、4DPIは6匹)が、それぞれ、PBS(モック)、mRNA-S(2 ug)、mRNA-N(2 ug)、mRNA-S+N(各々について2 ug)、mRNA-N(2 ug)(CD8枯渇を伴う)を、0週目(プライム)および3週目(ブースト)に受け、続いて、SARS-CoV-2デルタバリアント(104 pfu)での鼻腔内チャレンジを受けた。チャレンジの前に、血液/血清試料を、血清学的解析のために、ブースト前日(プライム後)およびチャレンジ前日(ブースト後)の各ハムスターから収集した。感染の2日後および4日後(2DPIおよび4DPI)に、すべてのハムスターを安楽死させ、鼻洗浄液試料および肺組織の等価部分を、q-PCRまたはプラークアッセイによるウイルス負荷の定量のために収集した。
【0161】
ELISAによる結合IgG。ELISAを用いて、マウス血清中のN特異的結合IgGを測定した。ELISAプレート(Greiner bio-one)を、DPBS中の1μg/ml組換えNタンパク質(40588-V08B;Sino Biological)で、4℃で一晩コーティングした。プレートを、洗浄緩衝液(0.05% Tween 20を含むDPBS)で3回、各回について5分洗浄し、次いで、DPBS中の8% FBSで、37℃で1.5時間ブロッキングした。プレートを、洗浄して、1ウェルあたり50μlのブロッキング緩衝液において連続希釈した血清と、37℃で1時間インキュベートした。BAL中の結合抗体の定量のために、収集したBAL液を、希釈せずにインキュベーションに用いた。ELISAは、二つ組で実施した。プレートを、再度洗浄して、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗マウスIgG二次抗体(Biolegend)(1:5000)と、37℃で1時間インキュベートした。最終の洗浄後に、プレートを、TMB 1-Component Peroxidase Substrate(Thermo Fisher)を用いて発色させ、続いて、TMB停止溶液(Thermo Fisher)を用いて反応を終わらせた。マイクロプレートリーダー(BioTek)を用いることによって、プレートを、450 nmの波長で30分以内に読み取った。
【0162】
肺組織におけるウイルスコピーのRT-PCR定量。肺組織を、秤量してホモジナイズし、続いて、Trizol LS(Invitrogen)を用いてRNAを抽出した。抽出したRNAの品質および定量化を、マイクロプレートリーダー(BioTek)によって検討した。SARS-CoV-2ウイルスコピーを、ウイルスE遺伝子に特異的なプライマーを用いた1ステップ定量的逆転写PCR(RT-qPCR)(Bio-Rad)によって定量した。量が既知の純粋なウイルスE RNAを、標準曲線の生成に用いた。絶対ウイルスコピー数を、標準曲線を用いて定量し、肺組織重量に対して正規化した。データは、Log10ウイルスコピー/mg肺組織として示した。
【0163】
実施例2
併用mRNAワクチン接種は、SARS-CoV-2オミクロンバリアントおよびデルタバリアントに対して堅牢な防御を誘導する
A. 結果
mRNA-Nワクチンの生成および免疫原性解析。コロナウイルスNタンパク質は、長続きしかつ広く反応するT細胞を誘導する、重要なウイルス抗原に相当するため、SARS-CoV-2(Wuhan-Hu-1株)の全長Nタンパク質をコードする1メチル-シュードウリジン修飾(m1Ψ)mRNAを設計して、生成した(図12A)。mRNA-Nワクチンの合成、精製、および脂質ナノ粒子(LNP)形成は、以前に記載されたように実施した(Pardi et al., Methods Mol Biol 969, 29-42, 2013;Baiersdorfer et al., Mol Ther Nucleic Acids 15, 26-35, 2019;Maier et al., Mol Ther 21, 1570-78, 2013)。mRNA-Nトランスフェクション後の細胞におけるNタンパク質の発現を、ウエスタンブロットによって確認した(図12B)。
【0164】
mRNA-Nの免疫原性を、BALB/cマウスにおいて評価した(図13A)。2群のマウス (1群あたりn=7)に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、モック)またはmRNA-N(1μg)をワクチン接種し、選択した用量は、マウスにおいて類似したmRNA-LNPを試験した以前の研究(Corbett et al., Nature 586, 567-71, 2020)に基づいた。ワクチン接種は、0週目(プライム)および3週目(ブースト)に、筋肉内(i.m.)に与えた。プライムワクチン接種の3週間後(ブースター当日)に、血清試料を、抗体応答の解析のために収集し;ブースターの2週間後(5週目)に、マウスを安楽死させて、免疫学的解析に供した(図13A)。最初に、T細胞応答を、脾細胞においてフローサイトメトリーによって検討した。T細胞の活性化および記憶に用いられるマーカーであるCD44発現に基づいて(Ponta et al., Nat Rev Mol Cell Biol 4, 33-45, 2003;Baaten and Bradley, Commun Integr Biol 3, 508-12, 2010)、モック対照と比較して、mRNA-Nは、脾臓において強いCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の活性化を誘導したことが観察された(図13B)。N特異的T細胞応答は、Nタンパク質(QHD43423.2)全体にわたる15merペプチドプールでの脾細胞の刺激後に、細胞内サイトカイン染色(ICS)によって測定した。T細胞におけるサイトカイン発現の代表的なフローサイトメトリープロットを、図13Cおよび図13Jに示す。モック対照と比較して、mRNA-Nは、高いN特異的なCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の応答を誘導した(3つのサイトカインすべてについてp<0.001)(図13Dおよび13E)。N特異的T細胞は、主に腫瘍壊死因子(TNF)-α(中央値:CD4+ T細胞について1.60%、およびCD8+ T細胞について0.77%)を、続いて、インターフェロン(IFN)-γおよびインターロイキン(IL)-2を発現するように見られた(図13Dおよび13E)。mRNA-Nワクチン誘導性T細胞応答をまた、IFN-γ酵素結合免疫吸着スポット(ELISPOT)アッセイによって評価した(図13K)。モック対照と比較して、ワクチンは、脾臓において高い数のN特異的T細胞を惹起した(モック対mRNA-Nのスポット形成細胞(SFC)/106脾細胞の中央値:6対638)(p<0.01)(図13F)。
【0165】
マウス血清試料中の抗体を、プライム免疫処置およびブースター免疫処置後に検討した。モック対照と比較して、プライム免疫処置は、強いN特異的結合IgG応答を誘導し(図13G;左パネル)、これは、ブースターによってさらに増強された(図13G;右パネル)。抗体エンドポイント力価(EPT)を決定するために、血清試料を連続希釈し、N特異的結合IgGをELISAによって検討した(図13L)。解析により、プライムワクチン接種後およびブースターワクチン接種後のIgG EPT中央値は、それぞれ、24,300および656,100であったことが示された(図13H)。最後に、血清中和活性を、プラーク減少中和試験(PRNT)によって決定した。予想されたように、ウイルス侵入を媒介するSタンパク質に対する曝露の欠如に基づいて、ワクチン接種動物のいずれにおいても、中和活性は検出されなかった(図13I)。合わせると、これらのデータにより、mRNA-Nワクチンは、高度に免疫原性であり、かつi.m.免疫処置は、堅牢なN特異的T細胞免疫および結合抗体応答を誘導することが示唆される。
【0166】
mRNA-N単独は、マウスおよびハムスターにおいて、SARS-CoV-2の穏やかであるが有意な制御を誘導する。N発現ワクチン単独での免疫処置が、SARS-CoV-2感染の免疫媒介性制御を誘導するかどうかは、不明のままであった。動物モデルにおけるmRNA-Nの有効性を評価した。最初に、2群のBALB/cマウス(1群あたりn=8)に、0週目(プライム)および3週目(ブースト)に、PBS(モック)またはmRNA-Nワクチンのいずれかをワクチン接種し、続いて、5週目にマウスに適応したSARS-CoV-2株(MA-SARS-CoV-2;2×104プラーク形成単位[pfu])での鼻腔内チャレンジを行った(Ku et al., Nat Commun 12, 469, 2021)(図14A)。感染の2日後(DPI)に、肺におけるウイルス負荷を、ウイルスRNAおよび感染力価について定量した。モック免疫処置対照と比較して、mRNA-Nでのi.m.免疫処置は、ウイルスRNAコピーにおいて(p<0.001)(図14B)およびウイルス力価において(p<0.001)(図14C)、穏やかであるが有意な低減を誘導した。i.m.経路と同じワクチン接種スケジュールおよびチャレンジ用量を用いた鼻腔内(i.n.)免疫処置後のマウスにおけるワクチンの防御効果もまた、評価した。i.m.ワクチン接種とは対照的に、i.n.ワクチン接種は、肺において著しいウイルス制御を誘導しなかった(図14Iおよび14J)。防御の欠如と一致して、いかなる抗体応答(結合IgG)も、mRNA-Nのi.n.免疫処置後の血清試料において誘導されなかった(図14K)。したがって、i.m.免疫処置を、すべてのその後の実験において使用した。
【0167】
次に、SARS-CoV-2デルタバリアントに対するワクチンを、野生型SARS-CoV-2株に感受性であるハムスターにおいて評価した。3つのコホートを調査した(図14D)。最初の2つ(1群あたりn=12)に、0週目および3週目にPBS(モック)またはmRNA-Nワクチン(2μg)をi.m.ワクチン接種し、続いて、SARS-CoV-2デルタ株(2×104 pfu)でのi.n.チャレンジを行った。より高いワクチン用量(2μg)を、ハムスターにおいて類似したmRNA-LNP COVID-19ワクチンを評価した以前の研究に基づいて選択した(Imai et al., Proc Natl Acad Sci U S A 117, 16587-95, 2020;Meyer et al, J Clin Invest 131, 2021)。各群について、2DPI(n=6)および4DPI(n=6)に、肺におけるウイルスRNAコピーおよび感染力価を、鼻洗浄液におけるウイルスRNAコピーと共にアッセイした。加えて、mRNA-Nワクチンを受けたが、インビボCD8+ T細胞枯渇を経験した、第3の群(n=6)を含めた(図14D)。これらのハムスターは、チャレンジの6日前および3日前に、2用量のCD8枯渇抗体(Hammerbeck and Hooper, J Virol 85, 9929-44, 2011;Prescott et al., Immunology 140, 168-178, 2013)を受け、肺におけるウイルスRNAコピーを、2DPIに解析した(n=6)。データにより、2DPIに、モック対照と比較して、mRNA-Nは、ウイルスRNAコピーおよび感染力価に対して統計的に有意であるが穏やかな影響を誘導したことが示された(図14Eおよび14F)(p<0.01)。4DPIには、モック対照と比較して、より甚大な効果が、ウイルスRNAコピーの低減(3倍の低減;p<0.05)(図14E)および感染力価の低減(173倍の低減;p<0.01)(図14F)において、ワクチンについて観察された。
【0168】
ハムスターの体重を、チャレンジ当日から4DPIまでモニターした。デルタへの感染は、モックワクチン接種群においてかなりの体重減少(4DPIに5%超)をもたらし;mRNA-Nワクチン接種ハムスターは、モックワクチン接種ハムスターと比較して、4DPIで体重減少の低減を示した(p<0.05)(図14G)。これらのデータにより、SARS-CoV-2デルタチャレンジに対してmRNA-Nワクチンによって与えられた、穏やかな防御が示された。加えて、CD8+ T細胞枯渇を伴ってまたは伴わずにmRNA-Nワクチンを受けた、ハムスターの肺におけるウイルスRNAコピーを比較した(図14H)。CD8+ T細胞枯渇は、ウイルス制御へのワクチンの効果をほとんど無効にし(図14H)、これは、SARS-CoV-2デルタチャレンジに対するmRNA-N誘導性防御におけるCD8+ T細胞の潜在的役割を示した。最後に、モック対照と比較して、mRNA-Nワクチン接種は、鼻洗浄液におけるウイルス負荷を低減させなかった(図14L)。これらの結果により、mRNA-N単独は、上気道において最小の影響を有し、それは恐らく、ワクチンが中和抗体を誘導できないためであることが示される。
【0169】
組み合わせmRNAワクチン接種は、SARS-CoV-2デルタバリアントに対して堅牢な防御を誘導する。mRNA-N単独が、免疫原性であり、かつSARS-CoV-2に対して穏やかな効力を惹起したことを実証した後、mRNA-NおよびS発現mRNAワクチン(mRNA-S)の両方からなる二価ワクチンを、バリアントに対するより堅牢な防御の誘導について試験した。したがって、mRNA-Nに加えて、Pfizer/BioNTechのBNT162b(Polack et al., N Engl J Med 383, 2603-15, 2020)およびModernaのmRNA-1273(Baden et al., N Engl J Med 384, 403-16, 2021)ワクチンに類似した、2つのプロリン変異を有する融合前安定化SARS-CoV-2 Sタンパク質を発現するm1Ψ修飾mRNAワクチンもまた生成させた(「mRNA-S-2P」と命名)(Wuhan-Hu1)。最初に、これらのワクチンを、BALB/cマウスにおいて試験した。3群のマウス(1群あたりn=8)を、0週目および3週目にPBS(モック)、mRNA-S(1μg)、または併用mRNA-S/mRNA-Nワクチン(mRNA-S+N;1μgの各mRNA)のいずれかで免疫処置し、続いて、5週目にMA-SARS-CoV-2株(2×104 pfu)でのi.n.チャレンジを行い;2DPIに、肺におけるウイルス力価およびRNAコピーを測定した(図15A)。モックワクチン接種と比較して、mRNA-S単独および併用mRNA-S+Nは両方とも、完全なウイルス制御を誘導し、肺において検出可能な感染ウイルスを有しなかった(図15B)。しかし、より感度が高いRT-PCRアプローチによるウイルスRNAの定量により、mRNA-SとmRNA-S+Nとの間の有意な差が明らかになった(p<0.001)(図15C)。モック対照と比較して、mRNA-S単独は、肺におけるウイルスRNAコピーの低減に非常に有効なままであり(8匹のうち7匹は、弱く検出可能なRNAを有し、8匹のうち1匹は、検出可能なRNAを有しない);しかし、mRNA-S+Nは、試験した8匹のマウスすべてにおいて、肺におけるウイルスRNAに対して完全な防御を誘導した(図15C)。
【0170】
2番目に、これらのワクチンを、ハムスターにおいてデルタバリアントに対して試験した。3群(1群あたりn=12)に、0週目および3週目にPBS(モック)、mRNA-S(2μg)、またはmRNA-S+N(各々について2μg)をワクチン接種し、続いて、5週目にi.n.チャレンジを行った。2DPI(n=6)および4DPI(n=6)に、ハムスターを、ウイルス負荷、肺の組織病理学的病変、および体重減少に基づいて、ワクチン誘導性防御について解析した(図15D)。2DPIに、モックワクチン接種と比較して、mRNA-S単独は、肺における感染ウイルスの実質的な制御を誘導した(6匹のうち2匹が、検出可能な力価を有する)のに対して、mRNA-S+Nは、完全なウイルス制御を誘導し、6匹のハムスターのいずれにおいても検出可能な力価を有しなかった(図15E)。4DPIに、mRNA-Sワクチン接種およびmRNA-S+Nワクチン接種は両方とも、肺におけるウイルスを完全に制御した(図15E)。ウイルスRNAの解析により、mRNA-SとmRNA-S+Nとの間のより甚大な差が明らかになった。モックワクチン接種と比較して、mRNA-S単独は、肺のウイルスRNAコピーを57倍低減させた(p<0.01)(図15F)。重大なことに、mRNA-Sと比べて、mRNA-S+Nは、2DPIにより堅牢なウイルス制御を誘導し、ウイルスRNAコピーをさらに12倍低減させた(mRNA-S対mRNA-S+Nについてp<0.05)(図15F)。モックワクチン接種と比較して、mRNA-S+Nは、ウイルスRNAコピー中央値の770倍の低減を誘導した(図15F)。類似した結果が、4DPIに観察された(図15F)。ウイルス負荷データと一致して、肺の組織病理学的解析により、2DPIに、デルタチャレンジが、モック免疫処置ハムスターにおいて、細気管支炎および間質性肺炎を含む、明らかな変化を引き起こしたことが示された(図15G)。mRNA-SまたはmRNA-S+Nをワクチン接種したハムスターはすべて、これらの病変から防御され、正常な気管支、細気管支、および肺胞構造を示した(図15G)。データは、臨床所見と一致して、mRNA-Sワクチン自体が、SARS-CoV-2デルタによって引き起こされる疾患に対して有効であることを示し(Lopez Bernal et al., N Engl J Med 385, 585-94, 2021)、さらに、mRNA-S+Nが、両方のモデルにおいて非常に防御的であったことを示す。
【0171】
鼻洗浄液におけるウイルスRNAコピーを、2DPIおよび4DPIに検討した。肺においてmRNA-Sによって提供された堅牢なウイルス制御とは異なり、mRNA-Sは、鼻洗浄液におけるウイルスRNAコピーの低減に、2DPI(モック対mRNA-S:3倍低減)および4DPI(5倍低減)の両方で、あまり有効ではなかった(図15H)。これらのデータにより、mRNA-Sは、疾患に対して強力な防御を誘導するが、デルタバリアントによる感染および上気道排出(shedding)に対しては低減した防御を誘導することが示唆される(Tang et al., Nat Med, 2021)。mRNA-S単独と比較して、mRNA-S+Nは、鼻洗浄液におけるより堅牢なウイルス制御を、2DPI(モック対mRNA-S+N:11倍低減;p<0.01)および4DPI(98倍低減;p<0.05)に誘導した(図15H)。合わせると、これらのデータにより、併用mRNA-S+Nワクチン接種は、mRNA-S単独と比較して、肺および上気道の両方においてSARS-CoV-2デルタ感染のより強力でかつより速い制御を誘導することが支持され、これは、このワクチンアプローチがまた、伝染のリスクを低減させ得ることを示す。
【0172】
体重解析により、デルタバリアントでのチャレンジが、モックワクチン接種ハムスターにおいて漸進的な体重減少を引き起こし、4DPIに5%超低下し(図15I)、これは、野生型SARS-CoV-2によって引き起こされるものに匹敵することが示された(Plante et al., Nature 592, 116-21, 2021)。モックワクチン接種と比較して、mRNA-S単独または二価のmRNA-S+Nは、3DPIおよび4DPIに、体重減少からハムスターを防御した(図15I)。最後に、mRNA-S単独と比較して、mRNA-S+Nは、2DPIでの体重減少の有意な低減を結果としてもたらした(p<0.05)(図15I)。
【0173】
組み合わせmRNAワクチン接種は、SARS-CoV-2オミクロンバリアントに対して堅牢な防御を誘導する。SARS-CoV-2オミクロンバリアント(BA.1)に対するmRNA-S+Nワクチン接種の効力を調査した。最初に、4群のハムスター(n=10)に、0週目および3週目に空のLNP(モック)、mRNA-S(2μg)、mRNA-S(4μg)、またはmRNA-S+N(各mRNAについて2μg)をワクチン接種した(図16A)。mRNA-S+Nによって増強された防御が、mRNAまたはLNPのより高い総用量のためであったかどうかを判定するために、mRNA-S(4μg)用量群を、もう1つの対照として含めた。ブースターの2週間後(5週目)に、すべてのハムスターに、SARS-CoV-2オミクロン株(2×104 pfu)での鼻腔内チャレンジを行った。2DPI(n=5)および4DPI(n=5)に、ウイルス負荷、肺における病理組織学的変化、および体重変化に基づいて、防御を解析した(図16A)。2DPIに、空のLNP対照と比較して、mRNA-S(2μg)は、ウイルスRNAコピー(12倍低減)および感染力価(3倍低減)に基づいて、肺におけるオミクロンバリアントの穏やかな制御のみを誘導した(図16Bおよび16C)。2μgのmRNA-Sと比較して、4μgのmRNA-Sのワクチン接種は、ウイルスRNAコピー(図16Bおよび16D)ならびに感染力価(図16Cおよび16E)に基づいて、2DPIおよび4DPIの両方で、匹敵するウイルス制御を誘導した。これらのデータにより、より高いmRNA-S用量は、オミクロンに対して顕著により強力な防御を提供しなかったことが示される。重大なことに、mRNA-S単独(2μgまたは4μgのいずれか)と比較して、併用mRNA-S+Nは、ウイルスRNAコピー(図16Bおよび16D)ならびに感染力価(図16Cおよび16E)に基づいて、オミクロンのより堅牢な制御を誘導した。2DPIに、mRNA-S+Nは、5匹のハムスターのうち4匹において完全なウイルス制御を誘導し、検出可能なウイルスRNAを有しなかった(図16B)。ウイルス力価は、匹敵する結果をもたらし:mRNA-S+N群における5匹のハムスターのうち4匹において、検出可能な感染ウイルスがなかったのに対し、mRNA-S(4μg)群における5匹のハムスターのうち4匹は、検出可能なウイルスを有していた(図16C)。類似した結果が、4DPIに観察された。mRNA-S単独と比べて、mRNA-S+Nワクチン接種は、さらに、ウイルスRNAコピー中央値を100倍低減させた(図16D)。最後に、2DPIおよび4DPIの肺試料のウイルス力価のプール解析により、mRNA-S群とmRNA-S+N群との間の有意な差が明らかになった(p<0.01)(図16F)。
【0174】
組織病理学的解析により、モックワクチン接種対照を含んで、2DPIのいずれのハムスターにおいても、肺にいかなる変化も示されなかった(図16M)。しかし、気管支炎および間質性肺炎を含むかなりの変化が、4DPIに明らかになった(図16G)。モックワクチン接種対照と比較して、mRNA-S単独をワクチン接種したハムスターは、2μg用量または4μg用量のいずれでも、依然として間質性肺炎および気管支周囲炎を含む病変を発症し;重大なことに、mRNA-S+Nワクチン接種は、すべての病変からハムスターを完全に防御し、正常な気管支、細気管支、および肺胞構造を有していた(図16G)。この所見は、上記のウイルス負荷データによって示された強力な防御と一致する。
【0175】
鼻洗浄液におけるウイルスRNAの解析により、mRNA-Sワクチン接種(2μgまたは4μg)は、上気道におけるSARS-CoV-2オミクロン排出に対して限定された効果を有し、LNP対照と比較してウイルスコピーを弱く低減させただけであったことが示された(図16H)。これは、mRNA-S誘導性中和からのオミクロンの強力な免疫逃避を示す可能性が高い(Cao et al., Nature 602, 657-63, 2022;Planas et al., Nature 602, 671-75, 2022;Liu et al., Nature 602, 676-81, 2022;Cele et al., Nature 602, 654-56, 2022)。鼻洗浄液におけるこの弱い防御効果は、4DPIまでにさらに減少した(図16N)。しかし、2DPIに、mRNA-S単独と比較して、mRNA-S+Nワクチン接種は、鼻洗浄液におけるウイルスRNAコピーの有意な低減を誘導し(3.3倍低減;p<0.01)(図16H)、これは、mRNA-S+Nワクチン接種がまた、上気道におけるオミクロンの追加制御を提供することを示した。
【0176】
体重解析により、(同じチャレンジ用量を用いた)ハムスターにおけるデルタ感染とオミクロン感染との間の差が強調された。デルタバリアントへの感染は、体重の漸進的な低下を引き起こした(図15I)のに対し、オミクロンに感染したハムスターは、4DPIまで体重の安定した増大を維持し(図16I)、これは、オミクロン感染が、動物モデルにおいてより減衰されるという報告と一致した(Halfmann et al., Nature, 2022;Shuai et al., Nature, 2022;Suzuki et al., Nature, 2022)。mRNA-S単独(2μgおよび4μg)と比較して、mRNA-S+Nワクチン接種は、体重の有意な増大をもたらした(3DPIおよび4DPIについてp<0.05)(図16I)。mRNA-S+Nワクチン接種ハムスターの体重増大は、以前に報告された非感染ハムスターのものに匹敵した(4DPIまでにおよそ6%増大)(Plante et al., Nature 592, 116-21, 2021)。これにより、mRNA-S+Nワクチン接種は、肺におけるウイルス負荷および病理学的効果に対するその堅牢な防御と一致して、オミクロン誘導性病的状態からハムスターを防御することが示される。
【0177】
mRNA-S+N誘導性防御におけるCD8+ T細胞の潜在的関与を調べるために、0週目および3週目に同じmRNA-S+Nワクチンを受けた別の群のハムスター(n=10)を含めた。オミクロンチャレンジの6日前および3日前に、ハムスターに、インビボCD8+ T細胞枯渇のための2用量の抗体を注射(i.p.)した(35, 36)(図16A)。CD8+ T細胞枯渇効率を、フローサイトメトリーによって確認した(図16O~16P)。枯渇を伴わないmRNA-S+Nワクチン接種と比較して、CD8+ T細胞枯渇は、2DPIで、肺におけるウイルスコピーの穏やかであるが有意な増大を結果としてもたらした(p<0.05)(図16J)。2DPI試料および4DPI試料のプール解析により、肺におけるウイルスRNAコピーに対するCD8+ T細胞枯渇の有意な効果が示された(p<0.01)(図16K)。体重解析により、mRNA-S+Nワクチン接種ハムスターまたはLNPワクチン接種ハムスターと比較して、CD8+ T細胞枯渇ハムスターは、2DPIおよび4DPIの両方で体重増加が低減したことが示され(図16L)、これもまた、mRNA-S+Nワクチン接種によるオミクロンに対する免疫防御におけるCD8+ T細胞の潜在的関与を示した。
【0178】
組み合わせmRNAワクチン接種は、堅牢なN特異的T細胞およびS特異的T細胞ならびに体液性免疫を惹起する。ワクチン接種によって誘導される抗原特異的免疫応答をよりよく理解するために、マウス免疫原性実験を実施し、ここでは、図13Aに記載されるものに類似した実験設計を用いて、3群のBALB/cマウス(1群あたりn=7)に、0週目および3週目にPBS(モック)、mRNA-S単独、またはmRNA-S+Nをワクチン接種した。5週目に収集したマウス脾細胞を、SペプチドプールまたはNペプチドプールで刺激し、ICSを行って、S特異的T細胞およびN特異的T細胞を特定した(図17A~17D)。データにより、併用mRNA-S+Nワクチン接種は、堅牢なS特異的(図17A~17B)およびN特異的(図17Cおよび17D)なCD4+ T細胞応答およびCD8+ T細胞応答を惹起したことが示された。検討したサイトカインの中で、TNF-αが、S特異的T細胞およびN特異的T細胞の両方によって高発現され、続いて、IFN-γおよびIL-2が発現された(図17A~17D)。mRNA-S単独と比較して、mRNA-S+Nワクチン接種は、S特異的CD8+ T細胞応答を強化するように見られた(IFN-γ+についてp<0.001、TNF-α+についてp<0.01)(図17B)。mRNA-S単独と比較した、mRNA-S+Nワクチン接種によるS特異的T細胞およびN特異的T細胞の誘導をまた、IFN-γ ELISPOTによって確認した(図17E、17I)。
【0179】
SまたはNに対する血清結合IgGを、ELISAによって測定し、データにより、類似したパターンが明らかになった(図17F、17G)。mRNA-S単独は、プライムワクチン接種後に、Sを標的とした堅牢な結合IgGを誘導した(図17F)が、Nに対してはせず(図17G)、これは、ブースターワクチン接種によって顕著に増強された(図17F)。mRNA-S単独と比較して、併用mRNA-S+Nは、プライムワクチン接種後に、Sタンパク質およびNタンパク質の両方に特異的な強い結合IgGを惹起し、その両方はまた、ブースターワクチン接種によって増強された(図17F、17G)。
【0180】
ワクチン誘導性血清中和活性を評価した。前記のハムスター試験において、血清試料を、ブースターワクチン接種後(5週目)、およびウイルスチャレンジ前に収集した。野生型SARS-CoV-2(WA1/2020)およびデルタバリアントに対するそれらの中和活性を、PRNTによって測定した(Liu et al., Nature 596, 273-75, 2021)。mRNA-Sワクチン接種ハムスター由来の血清は、野生型ウイルスに対して強い中和活性[野生型最大半量PRNT値(PRNT50):2667]を明示したが、デルタバリアントに対する中和活性は顕著に低減していた(デルタPRNT50:440;5.1倍低減)(図17H)。mRNA-S単独と比較して、併用mRNA-S+Nは、野生型ウイルス(p<0.001)およびデルタバリアント(p<0.0001)の両方に対してより強い血清中和活性を惹起した(図17H)。これらのデータは、mRNA-S単独と比較して強化された、併用mRNA-S+Nによって誘導されたS特異的CD8+ T細胞応答(図17B)と一致する。合わせると、免疫解析により、併用mRNA-S+Nワクチン接種は、N特異的免疫を誘導するだけではなく、mRNA-S単独と比較した場合に、より強いS特異的CD8+ T細胞応答および血清中和抗体活性も惹起することが示唆される。これらの応答は、集合的に、SARS-CoV-2デルタバリアントおよびオミクロンバリアントに対する防御の増強に寄与し得る。
【0181】
B. 材料および方法
mRNA合成およびLNP製剤化。mRNAワクチンによってコードされる抗原は、先祖伝来のSARS-CoV-2 Wuhan-Hu-1株(GenBank MN908947.3)に由来した。SARS-CoV-2全長Nを発現するヌクレオシド修飾mRNA(mRNA-N)または2つのプロリン変異を有する融合前安定化Sタンパク質を発現するヌクレオシド修飾mRNA(mRNA-S-2P)を、以前に報告されたように、直線化プラスミド鋳型上に対してT7 RNAポリメラーゼ(MegaScript、Thermo Fisher Scientific)を用いるインビトロ転写によって合成した(Pardi et al., Methods Mol Biol 969, 29-42, 2013)。ヌクレオシド修飾mRNAを作製するために、UTPを、1-メチルシュードウリジン(m1Ψ)-5'-三リン酸(TriLink、カタログ番号N-1081)で置き換えた。タンパク質発現の最適化のために、ポリAテールを、修飾mRNAの端に付加した。インビトロ転写したmRNAを、ScriptCap m7GキャッピングシステムおよびScriptCap 2'-O-メチルトランスフェラーゼキット(ScriptCap、CellScript)を用いてキャップ付加し(Pardi et al., Methods Mol Biol 969, 29-42, 2013)、続いて、以前に記載されたようにセルロース精製法を用いて精製した(Baiersdorfer et al., Mol Ther Nucleic Acids 15, 26-35, 2019)。精製したmRNAを、アガロースゲル電気泳動によって解析し、-20℃で凍結保存した。mRNAを、以前に報告されたように、イオン化可能なカチオン性脂質のエタノール性脂質混合物と水性緩衝系を用いて、脂質ナノ粒子(LNP)に製剤化した(Maier et al., Mol Ther 21, 1570-78, 2013;Jayaraman et al., Angew Chem Int Ed Engl 51, 8529-33, 2012)。製剤化したmRNA-LNPを、RNA濃度(1μg/μL)に従って調製し、動物の免疫処置のために-80℃で保存した。
【0182】
mRNA-Nによるタンパク質発現のウエスタンブロット解析。6ウェルプレート中の293T細胞(American Type Culture Collection、ATCC;CRL-3216)に、2μgのmRNA-N-LNPを直接トランスフェクトしたか、または(細胞のみの対照として)トランスフェクトしなかった。トランスフェクションの18時間後に、細胞を、ウエスタンブロット解析のためにRIPA緩衝液(Thermo Fisher Scientific)において溶解した。細胞溶解液を遠心分離し、続いて、マイクロプレートビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイキット(Pierce、Thermo Fisher Scientific)を用いた総タンパク質濃度の定量のために上清を収集した。等量のタンパク質を、4-15% SDSポリアクリルアミドゲル(Bio-Rad)を用いたSDS-PAGEによって分離した。タンパク質を、ニトロセルロースメンブレン(Bio-Rad)上に移した。メンブレンを、0.05% Tween-20(Thermo Fisher Scientific)を含有するトリス緩衝生理食塩水(TBS)(TBST)および5%(w/v)脱脂乾燥乳(Bio-Rad)において、室温で1時間ブロッキングし、続いて、抗SARS-CoV2ヌクレオカプシドマウスモノクローナル抗体(MA5-29981、Thermo Fisher Scientific;1:1000)と4℃で一晩インキュベートした。TBSTにおける洗浄(5分間を3回)後に、メンブレンを、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗マウスIgG(7076S、Cell Signaling;1:5000)と1時間インキュベートした。メンブレンを洗浄し、タンパク質を、ECL Western Blotting Substrate(Thermo Fisher Scientific)を用いて可視化した。
【0183】
マウスの免疫処置およびSARS-CoV-2チャレンジ。ワクチンの免疫原性および効力を、6週齢の雌BALB/cマウス(Jackson Laboratories;系統番号:000651)において評価した。免疫原性については、4群のマウス(1あたり7匹)を、それぞれ、0週目(プライム)および3週目(ブースト)に、PBS(モック対照)、mRNA-S(1μg)、mRNA-N(1μg)、または併用mRNA-S+N(各々について1μg)のいずれかで筋肉内(i.m.)免疫処置した。ワクチンまたは対照PBSは、1注射あたり50μLで投与した。血液試料および血清試料を、プライムワクチン接種の3週間後(ブースターワクチン接種前)に収集して、ワクチン誘導性抗体応答を測定した。すべてのマウスを、ブースターワクチン接種の2週間後(5週目)に安楽死させた。血液試料および血清試料および脾臓試料を、ワクチン誘導性の体液性免疫応答および細胞性免疫応答の解析のために収集した。
【0184】
チャレンジ試験については、別の4群のBALB/cマウス(1群あたり8匹)が、上記に示されたものと同じモック対照またはワクチンを受けた。ワクチン用量および免疫処置タイムラインは、上記の免疫原性試験と同一であった。ブースターワクチン接種の2週間後(5週目)に、すべてのマウスを、動物バイオセーフティーレベル(ABSL)-3の施設に移し、以前に報告されたように、マウスに適応したSARS-CoV2 CMA4株(2×104 pfu)での鼻腔内チャレンジを行った(Ku et al., Nat Commun 12, 469, 2021;Muruato et al., PLoS Biol 19, e3001284, 2021)(32、58)。ウイルスチャレンジの2日後に、すべてのマウスを安楽死させ、肺組織の等価部分を、SARS-CoV-2ウイルス負荷の定量のために収集した。
【0185】
ハムスターの免疫処置およびSARS-CoV-2デルタまたはオミクロンチャレンジ。デルタ株またはオミクロン株に対するワクチン誘導性防御を、ハムスターにおいて評価した。デルタチャレンジについては、4群の4~5週齢の雄ゴールデンシリアハムスター(1群あたり12匹)、系統HsdHan:AURA(Envigo;カタログ番号:8901M)に、0週目および3週目に、それぞれ、PBS(モック対照)、mRNA-S(2μg)、mRNA-N(2μg)、または併用mRNA-S+N(各々について2μg)のいずれかを筋肉内ワクチン接種した。オミクロンバリアントチャレンジについては、5群の4~5週齢の雄ゴールデンシリアハムスター(1群あたり10匹)に、空のLNP(モック対照)、mRNA-S(2μg)、mRNA-S(4μg)、mRNA-S+N(各々について2μg)、またはCD8+ T細胞枯渇を伴うmRNA-S+N(各々について2μg)を、i.m.ワクチン接種した。mRNA-S+N CD8+ T細胞枯渇群については、ウイルスチャレンジの6日前(-6日目)および3日前(-3日目)に、ハムスターに、以前に報告されたように、インビボCD8+ T細胞枯渇のために、175μgの抗ラットCD8β抗体(16-0080-38;eBio341;機能グレード;Thermo Fisher Scientific)を腹腔内(i.p.)注射した(Hammerbeck and Hooper, J Virol 85, 9929-44, 2011;Prescott et al., Immunology 140, 168-78, 2013)。ハムスターにおけるCD8+ T細胞枯渇は、脾細胞の免疫染色[抗CD8β-フィコエリトリン(PE);12-0080-82;eBio341;Thermo Fisher Scientific]およびフローサイトメトリー解析によって確認した。ワクチンまたはモック対照は、1注射あたり100μlで投与した。血清試料を、ウイルスチャレンジ前にすべてのハムスターから収集して、ワクチン誘導性中和抗体を測定した。ブースターワクチン接種の2週間後(5週目)に、ハムスターを、ABSL-3施設に移し、SARS-CoV2デルタ株(2×104 pfu)またはオミクロン株(2×104 pfu)での鼻腔内チャレンジを行った(World Reference Center for Emerging Viruses and Arbovirus:WRCEVA)。感染の2日後(2DPI)に、デルタでチャレンジした6匹のハムスターまたはオミクロンでチャレンジした5匹を、安楽死させた。鼻洗浄液試料および肺組織の等価部分を、ワクチン誘導性防御の様々な解析のために収集した。4DPIに、同じ手順を、各群におけるハムスターの半数(デルタは6匹およびオミクロンは5匹)について繰り返した。ハムスターの体重を、毎日モニターして、体重減少からのワクチン誘導性防御を評価した。
【0186】
ELISAによる結合IgG。血清試料中のワクチン誘導性のN特異的結合IgGおよびS特異的結合IgGを、ELISAによって測定した。プレート(Greiner bio-one)を、1μg/mLの組換えSタンパク質(40589-V08B1;Sino Biological)またはNタンパク質(40588-V08B;Sino Biological)で、4℃で一晩コーティングした。プレートを、3回(各回5分)洗浄し、次いで、ブロッキング緩衝液[ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中の8%ウシ胎児血清(FBS)]で、37℃で1.5時間ブロッキングし、続いて、洗浄して、1ウェルあたり50μLのブロッキング緩衝液において連続希釈した血清試料(初期希釈1:100;1:3連続希釈)と、37℃で1時間インキュベートした。プレートを、再度洗浄して、HRPコンジュゲート抗マウスIgG二次抗体(405306;BioLegend;1:3000)と、37℃で1時間インキュベートした。最終の洗浄後に、プレートを、TMB 1-Component Peroxidase Substrate(Thermo Fisher Scientific)を用いて発色させ、続いて、TMB停止溶液(Thermo Fisher Scientific)を用いて反応を終わらせた。マイクロプレートリーダー(BioTek)を用いることによって、プレートを、450 nmの波長で15分以内に読み取った。各試料についての結合IgGエンドポイント力価(EPT)を算出した。
【0187】
中和アッセイ。血清中和活性を、以前に報告されたように、標準的なプラーク減少中和試験(PRNT)によって検討した(Xie et al., Nat Med, 2021;Muruato et al., Nat Commun 11, 4059, 2020)。アッセイは、SARS-CoV-2野生型またはデルタ株を用いて、Vero E6細胞(ATCC;CRL-1586)で行った。簡単に述べると、血清試料を、熱不活性化して、2倍連続希釈(初期希釈1:10)し、続いて、100 pfuの野生型SARS-CoV2(USA-WA1/2020)またはデルタ株と、37℃で1時間インキュベートした。血清-ウイルス混合物を、6ウェルプレート中のVero E6細胞単層上に、37℃で1時間のインキュベーションのために置き、続いて、1.6%アガロース、2% FBS、および1%ペニシリン-ストレプトマイシンを含むMEMからなる2 mlのオーバーレイを、細胞単層に添加した。次いで、細胞を、37℃で48時間インキュベートし、続いて、0.03%の液体ニュートラルレッドで3~6時間染色した。プラーク数を計数し、PRNT50を算出した。各血清試料を、二つ組で試験した。
【0188】
細胞内サイトカイン染色(ICS)およびフローサイトメトリー。マウス脾細胞を、FACS緩衝液(PBS中の1% FBSおよび0.5 M EDTA)で洗浄し、10% FBS、2-メルカプトエタノール、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、Pen-Strep、およびL-グルタミンを補給した10 mM HEPESを含む完全RPMI-1640に再懸濁した。細胞を、共刺激のための1μg/mLの抗CD28(Invitrogen、14-0281-86)の存在下で、1μg/mLのSペプチドプール(JPT、PM-WCPV-S)(Swiss-Prot ID: P0DTC2)またはNペプチドプール(Miltenyi、130-126-698)(Protein QHD43423.2)で6時間刺激した。インキュベーションの最後の4時間で、タンパク質輸送阻害剤のブレフェルディン-Aを添加した。ホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA)およびイオノマイシンで刺激した細胞、またはジメチルスルホキシドのみで刺激した細胞を、それぞれ、陽性対照および陰性対照として含めた。刺激後に、細胞を最初に、CD4-ペリジニン-クロロフィル-タンパク質(PerCP)-Cy5.5(BioLegend、100540;クローン:RM4-5;0.2 mg/ml)、CD8-brillaint violet(BV) 711(BioLegend、100759;クローン:53-6.7;0.2 mg/ml)、およびCD44-BV510(BioLegend、103044;クローン:IM7;0.2 mg/ml)を含む表面マーカーについて染色した。表面染色は、氷上で30分間行った。PBSで洗浄した後、細胞を、生存率染色用のZombie-dye(BioLegend)で再懸濁し、室温で15分間インキュベートした。表面染色および生存率染色の後に、細胞を、固定緩衝液(BioLegend、420801)で固定し、透過/洗浄緩衝液(BioLegend、421002)で透過処理し、続いて、IFN-γ-BV605(BioLegend、505840;クローン:XMG1.2;0.2 mg/ml)、TNF-α-PE-Cy7(BioLegend、506324;クローン:MP6-XT22;0.2 mg/ml)、およびIL-2-アロフィコシアニン(APC)(Tonbo bioscience、20-7021;クローン:JES6-5H4;0.2 mg/ml)で、氷上で30分間、細胞内サイトカイン染色した。次いで、細胞を、透過/洗浄緩衝液で洗浄し、マルチパラメトリックフローサイトメーターFACS LSR Fortessa(BD Biosciences)で処理した。データは、FlowJo(TreeStar)を用いて解析した。
【0189】
IFN-γ ELISPOT。ELISPOTを、製造業者の指示書(Cellular Technology Ltd;MU IFN-γ)に従って行った。プレートを、抗IFN-γ捕捉抗体(Cellular Technology Ltd)で、4℃で一晩コーティングした。脾細胞(0.25×106個)を、SARS-CoV-2 Sペプチドプール(2μg/mL、Miltenyi Biotec、130-126-701)またはNペプチドプール(2μg/mL、Miltenyi Biotec、130-126-699)で、37℃で24時間、二つ組で刺激した。抗CD3(1μg/mL、Thermo Fisher Scientific、16-0031-82)で刺激した脾細胞または培地単独で刺激した脾細胞を、それぞれ、陽性対照および陰性対照として用いた。これに続いて、ビオチンコンジュゲート抗IFN-γ(Cellular Technology Ltd)と室温で2時間、次いで、アルカリホスファターゼコンジュゲートストレプトアビジンと30分間、インキュベートした。プレートを洗浄して、ImmunoSpot 4.0アナライザーを用いてスキャンし、スポットを、ImmunoSpotソフトウェア(Cellular Technology Ltd)で計数して、106個の脾細胞あたりのSFCを決定した。
【0190】
RNA抽出およびウイルス負荷のqPCR定量。RNAを、肺組織(マウスおよびハムスター)ならびに鼻洗浄液(ハムスター)から、TRIzol LS試薬(Thermo Fisher Scientific)を用いて、製造業者の指示書に従って抽出した。抽出したRNAの濃度および純度は、マルチモードプレートリーダー(BioTek)を用いて決定した。SARS-CoV-2ウイルスRNAコピーを定量するために、ワンステップRT-PCRを、iTaq Universal SYBR Green One-Step Kit(Bio-Rad)およびCFX Connect Real-Time PCR Detection System(Bio-Rad)を用いて行った。SARS-CoV-2 E遺伝子用のプライマーセット
を用いた。PCR反応液(20μL)は、プライマー(10μM)、RNA試料(2μL)、iTaq universal SYBR Green反応ミックス(2×)(10μL)、iScript逆転写酵素(0.25μL)、および分子グレードの水を含有していた。PCRサイクリング条件は、95℃で3分間、45サイクルの95℃で5秒間および60℃で30秒間であった。各RT-PCRについて、肺組織または鼻洗浄液におけるウイルスRNAの絶対コピーを定量するために、RNA標準(インビトロで転写された、SARS-CoV-2ゲノムのゲノムヌクレオチド位置26,044~29,883を含有する3,839 bp)を用いた標準曲線を含めた。
【0191】
プラークアッセイ。ホモジナイズした肺組織を、1%抗生物質-抗真菌剤(Gibco)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco)において連続希釈し、96ウェルプレート中のVero E6細胞(ATCC;CRL-1586)のコンフルエント単層に、37℃、5%CO2で45分間感染させた。感染後に、細胞を、1%抗生物質-抗真菌剤および0.85%メチルセルロース(Sigma-Aldrich)を補給した85%最小必須培地(MEM、Gibco)および15% DMEMの溶液で覆った。24~36時間後に、単層を、ホルマリン(Thermo Fisher Scientific)で少なくとも24時間固定した。単層を、DPBS(Sigma)で洗浄し、0.1%ウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich)および0.1%サポニン(Sigma-Aldrich)を補給したDPBSからなる透過化緩衝液中で、室温で30分間インキュベートした。透過化緩衝液を除去し、単層を、透過化緩衝液において希釈(1:3000)したSARS-CoV Nタンパク質に対するウサギポリクローナル抗体(Shinji Makino, Department of Microbiology & Immunology, UTMBから寄贈)と、4℃で一晩インキュベートした。過剰な抗体をDPBSで洗い流し、単層を、透過化緩衝液において希釈(1:2000)したHRPコンジュゲートヤギ抗ウサギIgG(Cell Signaling、7040)と、室温で1時間インキュベートした。過剰な抗体をDPBSで洗い流し、フォーカスを、KPL TrueBlue Peroxidase Substrate(SeraCare)を用いて染色した。ひとたびフォーカスが光学顕微鏡下で見えたら、過剰な基質を除去し、単層を水で洗浄した。ウェルを、Cytation7 Imagining Reader(BioTek)を用いて画像化した。フォーカスを手動で計数し、結果をフォーカス形成単位(FFU)として示した。
【0192】
肺の組織病理学。肺を、ハムスターから採取し、10%中性緩衝ホルマリンにおいて固定し、パラフィンに包埋した。薄い(5μm)パラフィン包埋切片を、スライドガラス上に置き、次いで、各々2分間のキシレンの3回の交換を用いて、パラフィンを試料から除去した。試料を水和し、続いて、ヘマトキシリン溶液において3分間染色した。次いで、スライドを、室温で少なくとも5分間、流れる水道水下で洗浄し、続いて、エオシンY溶液で2分間染色した。次いで、スライドを、再度脱水に供して、1回の交換あたり2分間のキシレンの3回の交換で浄化した。最後に、1滴の封入剤を添加して、カバーガラスを付着した。スライドを、病理学者が盲検様式で読み取った。
【0193】
統計解析。統計解析を、Graph-Pad Prism 8.0を用いて行った。統計的比較は、適切な場合は、対応のないスチューデントのt検定または一元配置分散分析のいずれかを用いて行った。値は、平均値または平均値±SDのいずれかとして提示した。両側p値を表示し、p値<0.05を有意とみなした。
図1
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図16-3】
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【手続補正書】
【提出日】2024-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024537847000001.xml
【国際調査報告】