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特表2024-537856調整可能な光学部で視力を矯正する眼科インプラント、及び、その製造方法と使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】調整可能な光学部で視力を矯正する眼科インプラント、及び、その製造方法と使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
A61F2/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520701
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 US2022077352
(87)【国際公開番号】W WO2023060017
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/262,073
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504363706
【氏名又は名称】スター サージカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【弁理士】
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 香子
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】ホリディ,キース
(72)【発明者】
【氏名】オシッポフ,アレクセイ,ヴィ.
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴンズ,ジュリアン,ディー.
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB01
4C097CC01
4C097SA04
4C097SA05
4C097SA07
4C097SA08
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、眼科インプラント、その使用及び製造方法に関する。眼科インプラントは、透明な光学部と、光学部に結合する非光学周辺部とを含む。透明な光学部の材料は、可視光を通過させるように適合されている。非光学周辺部は、可視光を吸収するように適合された光吸収材料で作られている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科インプラントであって、
調整可能な直径を有する透明な光学部と、
前記光学部に結合して前記光学部から周囲に延在する非光学周辺部とを含み、
前記非光学周辺部は、眼の溝に係合するようにサイズ及び形状が構成され、
前記透明な光学部は、可視光を通過させるように適合された透明光学材料で作られ、
前記非光学周辺部は、可視光を吸収するように適合された光吸収材料で作られ、
前記透明光学材料と前記光吸収材料とは、房水及び平衡塩類溶液(BSS)の一方又は両方に曝露されたときに互いに5%以内となる線形膨潤度を有する、
眼科インプラント。
【請求項2】
前記透明光学材料と前記光吸収材料とは、房水及び平衡塩類溶液(BSS)の一方又は両方に曝露されたときに互いに1%以内となる線形膨潤度を有する、請求項1に記載の眼科インプラント。
【請求項3】
前記透明光学材料は、前記光吸収材料とは異なり、かつ、前記光吸収材料に結合される、請求項1に記載の眼科インプラント。
【請求項4】
前記非光学周辺部は、前記光学部の周縁から前記眼科インプラントの半径方向の最外面まで延材する、請求項1に記載の眼科インプラント。
【請求項5】
前記非光学周辺部は、前記光学部に隣接し、かつ、前記光学部から前記非光学周辺部の支持構造まで延びる移行ゾーンを含む、請求項1に記載の眼科インプラント。
【請求項6】
前記透明光学材料と前記非光学周辺部の材料とは、同じ構成成分を含むが、1つ以上の可視光吸収成分が周辺非光学部分の材料に存在している、請求項1に記載の眼科インプラント。
【請求項7】
前記透明光学材料と、前記非光学周辺部の材料とは、前記非光学周辺部の材料が1つ以上の光吸収成分を含むことを除いて、同じ構成成分を含み、
前記非光学周辺部の材料は、紫外線を遮断する色素を含んでいない、請求項1に記載の眼科インプラント。
【請求項8】
前記調整可能な光学部の直径、及び、それを取り囲む前記非光学周辺部は、前記眼科インプラントが治療を意図している視覚障害に基づいてサイズ設定されている、請求項1に記載の眼科インプラント。
【請求項9】
前記光学部は、1~7mmの直径を有する、請求項8に記載の眼科インプラント。
【請求項10】
前記眼科インプラントは単焦点眼科インプラントであり、
前記光学部は、4~7mmの直径を有する、請求項9に記載の眼科インプラント。
【請求項11】
前記眼科インプラントは、老視を治療するための眼科インプラントであり、
前記光学部は、3~5mmの直径を有する、請求項9に記載の眼科インプラント。
【請求項12】
前記眼科インプラントのレンズが、拡大された被写界深度を提供する形状である、請求項11に記載の眼科インプラント。
【請求項13】
前記レンズは、前記光学部の異なる部分から任意で連続的に変化して、様々な度数を提供できる形状である、請求項12に記載の眼科インプラント。
【請求項14】
前記レンズは、度数が徐々に変化するように形作られており、
それによって前記度数は中心から外縁に向かって変化し、任意的に放射方向に対称となる、請求項13に記載の眼科インプラント。
【請求項15】
前記度数の変化は、前記中心から前記外縁に向かって連続的に増加するもの、又は、前記中心から前記外縁に向かって連続的に減少するものである、請求項14に記載の眼科インプラント。
【請求項16】
前記眼科インプラントは、高度の異常視を治療するための有水晶体眼科インプラントであり、
前記光学部は、2~5mmの直径を有する、請求項9に記載の眼科インプラント。
【請求項17】
前記光学部は、高程度の収差を治療するために、1~3mmの直径を有する、請求項9に記載の眼科インプラント。
【請求項18】
レンズの幅が10~14mmである、請求項1に記載の眼科インプラント。
【請求項19】
レンズが屈折異常を矯正する形状である、請求項1に記載の眼科インプラント。
【請求項20】
レンズが近視を矯正する形状である、請求項1に記載の眼科インプラント。
【請求項21】
前記レンズは、乱視も矯正する形状である、請求項20に記載の眼科インプラント。
【請求項22】
レンズが遠視を矯正する形状である、請求項1に記載の眼科インプラント。
【請求項23】
前記レンズは、乱視も矯正する形状である、請求項22に記載の眼科インプラント。
【請求項24】
レンズが乱視を矯正する形状である、請求項1に記載の眼科インプラント。
【請求項25】
前記光学部の中心厚さが100~400ミクロンであり、任意的に100~200ミクロンである、請求項1に記載の眼科インプラント。
【請求項26】
前記非光学周辺部における眼の溝と係合する周辺領域の厚さが、50~200ミクロンである、請求項1に記載の眼科インプラント。
【請求項27】
前記光学部の縁の厚さが、700ミクロン未満である、請求項1に記載の眼科インプラント。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願のクロスリファレンス)
本出願は、2021年10月4日に出願された米国仮出願 63/262,073の優先権を主張するものであり、前記米国仮出願の開示の全体が、目的を問わずに本明細書において援用される。
【0002】
以下の文献の記載事項は、目的を問わず、その全体が本明細書に援用される。
米国特許第10,485,655号
国際公開第2017/156077号
米国特許出願公開第2019/0076242号明細書
【0003】
(参照による組み込み)
本明細書中で言及されているすべての刊行物および特許出願は、これらの刊行物や特許出願が個別かつ具体的に援用されたときと同様の程度で、本明細書において援用される。
【背景技術】
【0004】
眼内レンズ(例えば、眼内コラーマーレンズ(ICL))の周辺部(例えば、ハプティック部)が、入射光とレンズの 1 つ以上の表面との間の相互作用によって引き起こされる視覚障害を防止または最小化するように適合されることには利点があり得る。加えて又は代替的に、眼内レンズの寸法(例えば、眼内レンズの直径、中心厚さ、周辺厚さ)の調整等、より多くのカスタマイズ方法や調整オプションを提供することにも、利益があり得る。本開示は、これらの利点の1 つ以上を提供し得る眼内レンズ及び製造方法を含む。
【発明の概要】
【0005】
本開示の1つの態様は、眼科インプラントであって、透明な光学部と、前記透明な光学部に連結されその周辺に延びる非光学周辺部とを含み、前記非光学周辺部は、眼の溝に係合するような大きさおよび構成であり、前記透明な光学部は、可視光が通過できる透明な光学材料で作られており、前記非光学周辺部は、可視光を吸収する光吸収材料で作られている。また、この態様には、請求項のいずれかに記載された眼科インプラントやレンズの特徴を適宜組み合わせることができる。
【0006】
本開示の1つの態様は、単焦点の眼科インプラントであって、直径が4~7mmである透明な光学部と、前記透明な光学部に連結されてその周辺を延び、かつ、周辺部が眼の溝に係合するようにサイズ設定された非光学周辺部とを含み、前記透明な光学部は、可視光が通過できる透明な光学材料で作られており、前記非光学周辺部は、可視光を吸収する光吸収材料で作られている。また、この態様には、請求項のいずれかに記載された眼科インプラントやレンズの特徴を適宜組み合わせることができる。
【0007】
本開示の1つの態様は、老視を治療するための眼科インプラントであって、老視を治療するための拡張された焦点深度で構成された透明な光学部と、前記透明な光学部に連結されてその周辺を延び、かつ、周辺部が眼の溝に係合するようにサイズ設定された非光学周辺部とを含み、前記透明な光学部は、可視光が通過できる透明な光学材料で作られており、前記非光学周辺部は、可視光を吸収する光吸収材料で作られている。また、この態様には、請求項のいずれかに記載された眼科インプラントやレンズの特徴を適宜組み合わせることができる。
【0008】
本開示の1つの態様は、有水晶体眼内レンズであって、透明な光学材料で作られた透明な光学部を含み、前記光学部は、-15D~-30D又は+5D~+15Dの度数を有し、直径が2~5mmであり、中心の厚さとエッジの厚さとの差が500ミクロン未満であり、前記透明な光学部に連結されてその周辺を延び、かつ、周辺部が眼の溝に係合するようにサイズ設定された非光学周辺部を含む。また、この態様には、請求項のいずれかに記載された眼科インプラントやレンズの特徴を適宜組み合わせることができる。
【0009】
本開示の1つの態様は、眼内レンズであって、透明な光学材料で作られかつ直径が1~3mmである透明な光学部と、前記透明な光学部に連結されてその周辺を延び、かつ、周辺部が眼の溝に係合してレンズを眼に固定できるようにサイズ設定された不透明な非光学周辺部とを含む。また、この態様には、請求項のいずれかに記載された眼科インプラントやレンズの特徴を適宜組み合わせることができる。
【0010】
本開示の1つの態様は、視力を矯正する方法であって、レンズを後眼房に配置することを含み、前記レンズは、透明な光学材料で作られた透明な光学部と、光学部に結合されそこから周囲に延びる不透明な非光学周辺部とを含み、前記レンズは、透明な光学材料で作られた透明な光学部と、光学部に結合されそこから周囲に延びる不透明な非光学周辺部とを含み、前記非光学周辺部は、可視光を吸収するように適合された光吸収材料で作られ、その周辺部分が眼の溝に係合してレンズを眼に固定できるようにサイズ設定されており、レンズを後眼房に配置することは、眼の中にレンズを固定するために周辺部を眼の溝とを接触させること、及び、前記非光学周辺部に入射する可視光を前記非光学周辺部に吸収させることを含む。また、この態様には、請求項のいずれかに記載された視力を矯正する方法についての特徴を適宜組み合わせることができる。
【0011】
本開示の1つの態様は、単焦点レンズを移植する方法であって、単焦点レンズを後眼房に配置することを含み、前記単焦点レンズは、可視光を通過させる光学材料で作られ、かつ、直径が4~7mmの透明な光学部と、可視光を吸収するように適合された光吸収材料で作られた不透明な非光学周辺部とを含み、前記非光学周辺部は、前記光学部に連結されてその周辺を延び、かつ、周辺部が眼の溝に係合してレンズを眼に固定できるようにサイズ設定された不透明な非光学周辺部とを含む。単焦点レンズを後眼房に配置することは、レンズを眼内に固定するために周辺部を眼の溝と接触させ、レンズの周辺部に入射する可視光を前記周辺部に吸収させることを含む。また、この態様には、請求項のいずれかに記載された単焦点レンズを移植する方法の特徴を適宜組み合わせることができる。
【0012】
本開示の1つの態様は、老視を治療する方法であって、後眼房内にレンズを配置することを含み、前記レンズは、老視を治療するための拡張された焦点深度で構成され、かつ、3~5mmの直径を有する透明な光学材料で構成された透明な光学部と、可視光を吸収するように適合された光吸収材料で作られた不透明な非光学周辺部とを含み、前記非光学周辺部は、前記透明な光学部に連結されてその周辺を延びており、後眼房内にレンズを配置することは、レンズを眼内に固定するために周辺部を眼の溝と接触させ、レンズの周辺部に入射する可視光を前記周辺部に吸収させることを含む。また、この態様には、請求項のいずれかに記載された老視を治療する方法の特徴を適宜組み合わせることができる。
【0013】
本開示の1つの態様は、有水晶体レンズを移植する方法であって、有水晶体レンズを後眼房に配置することを含み、前記有水晶体レンズは、透明な光学材料で作られ、-15D~-30D又は+5D~+15Dの度数を有し、直径が2~5mmであり、中心の厚さとエッジの厚さとの差が500ミクロン未満である透明な光学部と、可視光を吸収する材料で作られ、前記光学部に連結されてその周辺を延びる非光学周辺部とを含み、有水晶体レンズを後眼房に配置することは、レンズを眼内に固定するために周辺部を眼の溝と接触させ、レンズの周辺部に入射する可視光を前記周辺部に吸収させることを含む。また、この態様には、請求項のいずれかに記載された有水晶体レンズを移植する方法の特徴を適宜組み合わせることができる。
【0014】
本開示の1つの態様は、患者に視力矯正を提供する方法であって、眼に収差がある患者の場合において、レンズを後眼房に配置することを含み、前記レンズは、透明な光学材料で作られかつ直径が1~3mmの光学部と、可視光を吸収する材料で作られ、前記光学部に連結されてその周辺を延びる非光学周辺部とを含み、有水晶体レンズを後眼房に配置することは、レンズを眼内に固定するために周辺部を眼の溝と接触させ、レンズの周辺部に入射する可視光を前記周辺部に吸収させることを含む。この態様には、請求項のいずれかに記載された患者に視力矯正を提供する方法の特徴を適宜組み合わせることができる。
【0015】
本開示の1つの態様は、眼用レンズの製造方法であって、透明な光学材料からなる光学ロッドを作成する工程と、光を吸収する可視光吸収材料で作られた周辺部ロッドを作成する工程と、前記周辺部ロッドに円筒状の流路を形成する工程と、前記光学ロッドを前記円筒状のチャネルに配置する工程と、前記光学ロッドを前記周辺部ロッドに接着して、中央透明領域と周辺可視光吸収領域を有する接着ロッドを形成する工程とを含む。この態様には、請求項のいずれかに記載された眼用レンズの製造方法の特徴を適宜組み合わせることができる。
【0016】
本開示の1つの態様は、眼用レンズの製造方法であって、この製造方法は、非光学な周辺部ロッド内を通って延びる円筒状の流路に光学ロッドを配置する工程を含み、前記光学ロッドは透明な光学材料からなり、前記周辺部ロッドは可視光吸収材料からなり、前記製造方法は、前記光学ロッドを前記周縁部ロッドに接着して、中央の透明領域と周縁の可視光吸収領域とを有する複合ロッドを形成する工程を含む。この態様には、請求項のいずれかに記載された眼用レンズの製造方法の特徴を適宜組み合わせることができる。
【0017】
本開示の1つの態様は、眼内レンズであって、透明な光学部と、可視光吸収材料を含んだ非光学周辺部とを含み、前記光学部は、周辺部の軸に平行かつオフセットされた軸を含む。この態様には、請求項のいずれかに記載されたレンズの特徴を適宜組み合わせることができる。
【0018】
本開示の1つの態様は、眼内レンズであって、透明な光学部と、可視光吸収材料を含んだ非光学周辺部とを含み、前記非光学周辺部は、前記光学部に隣接して貫通する1つ又は複数の開口部を含み、前記1つ又は複数の開口部は、レンズの周辺部に向かって傾斜している。この態様には、請求項のいずれかに記載されたレンズの特徴を適宜組み合わせることができる。
【0019】
本開示の1つの態様は、眼内レンズであって、透明な光学部と、可視光吸収材料を含む非光学周辺部とを含み、前記非光学周辺部は、前記光学部に隣接して貫通する1つ又は複数の開口部を含み、前記1つ以上の開口部は、それぞれ、前記光学部の軸と平行ではない軸を有する。この態様には、請求項のいずれかに記載されたレンズの特徴を適宜組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(1A)及び(1B)は、例示的なレンズの上面図(前面図)及び側面図であって、それぞれ、可視光が通過できる透明な材料で作られた透明な光学部を含み、その非光学周辺部も可視光が通過できる透明な材料で作られたレンズを示すものである。
【0021】
図2】(2A)及び(2B)は、例示的なレンズの上面図(前面図)を描いたものであって、可視光が通過できる透明な材料で作られた透明な光学部と、可視光を吸収する光吸収材料で作られた非光学周辺部とを含むレンズを示すものである。
【0022】
図3】(3A)及び(3B)は、例示的なレンズを描いたものであって、可視光が通過できる透明な材料で作られた透明な光学部と、可視光を吸収する光吸収材料で作られた非光学周辺部とを含むレンズを示すものである。
【0023】
図4】(4A)及び(4B)は、例示的なレンズを描いたものであって、可視光が通過できる透明な材料で作られた透明な光学部と、可視光を吸収する光吸収材料で作られた非光学周辺部とを含むレンズを示すものである。
【0024】
図5】(5A)及び(5B)は、例示的なレンズを描いたものであって、可視光が通過できる透明な材料で作られた透明な光学部と、可視光を吸収する光吸収材料で作られた非光学周辺部とを含むレンズを示すものである。
【0025】
図6】(6A)、(6B)、(6C)及び(6D)は、それぞれ、例示的なレンズを描いたものであって、可視光が通過できる透明な材料で作られた透明な光学部と、可視光を吸収する光吸収材料で作られた非光学周辺部とを含むレンズを示すものである。
【0026】
図7】(7A)は、比較的小さい直径の光学部、及び、非光学周辺部の開口部を含む例示的なレンズを描いたものである。
【0027】
(7B)は、(7A)のレンズが含んでいる周辺部の開口部の側面図を描いたものである。
【0028】
図8】(8A)及び(9A)は、製造されたレンズを描いたものであって、可視光が通過できる透明な材料で作られた透明な光学部と、可視光を吸収する光吸収材料で作られた非光学周辺部とを含むレンズを示すものである。
【0029】
図9】(10A)、(10B)、(10C)及び(10D)は、レンズの例示的な製造方法を示している。
図10】(10E)及び(10F)は、レンズの例示的な製造方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示は、眼内に配置するように構成されたレンズなどの眼科インプラントに関する。一例として、本明細書に記載されたレンズは、虹彩と水晶体嚢との間の後眼房に配置されるように構成され得る。本明細書のレンズは、任意的に、拡張被写界深度レンズとして構成されても良い。本明細書における発明の概念は、眼の他の部分に埋め込まれたレンズに適用されても良いし、様々な種類の視力矯正(例えば、老視、近視、乱視、角膜の損傷または疾患、水晶体の損傷または疾患など)用に構成されたレンズに適用されても良い。
【0031】
本開示の一態様は、視力を矯正するように構成された移植可能なレンズに関するものであり、必要に応じて特定の治療用途に適合するように調整可能なものである。本明細書のレンズは、透明な光学部の周辺に結合されたされた非光学部を含む場合がある。本明細書における周辺部は、一般にハプティック部と呼ばれるものを参照したものであり、1つ又は複数のハプティック部を含むものである。前記周辺部は、一般に、眼科インプラントに構造的支持を提供する。また、前記周辺部は、一般に、眼の組織(例えば、溝である)に係合して、光学部を中心位置に配置できるような、大きさ及び構造を有している。
【0032】
本明細書で説明されたレンズは、光が通過して網膜に達することができる透明な光学材料からなる透明な光学部を含む。透明な材料は、例えば、シリコン、アクリル、またはヒドロゲルを含むことができる。透明材料は、疎水性材料または親水性材料を含み得る。透明材料はCollamerRを含んでもよい。
【0033】
本明細書のレンズは、可視光を吸収するように適合された可視光吸収材料で作られた非光学周辺部を含んでもよい。前記非光学周辺部の可視光吸収材料は、光吸収材料に可視光吸収特性を付与する1つ以上の構成成分または薬剤を含み、例えば、チタン、黒曜石、金、二酸化チタン、炭化ケイ素、炭素、木炭、すす、または、電磁スペクトルにおける可視光部分の全体を吸収する有機色素が挙げられる。
【0034】
いくつかの例では、非光学周辺部は、光学部と同じ1つ又は複数の成分や薬剤を含むことができ、同時に、1つまたは複数の可視光吸収成分または可視光吸収剤も含んでも良い。単なる例示であるが、本明細書における非光学周辺部は、シリコン、アクリル、またはヒドロゲルを含み、同様に、チタン、黒曜石、金、二酸化チタン、炭化ケイ素、炭素、木炭、すすまたは有機色素を1つ以上を含み得る。また、いくつかの例に限られるが、非光学周辺部の材料が1つ以上の可視光吸収成分または可視光吸収剤を含んでもよいことを除き、光学部及び非光学周辺部の材料は、同じ又は実質的に同じ構成要素を含んでも良い。例えば、光学部はCollamerRを含む一方、非光学周辺部は、CollamerR及び1つ以上の可視光吸収成分または可視光吸収剤を含んでもよい。
【0035】
いくつかの例に限られるが、非光学周辺部(1つ以上の可視光吸収成分又は薬剤を含む)が光学部の材料に含まれる紫外線遮断色素成分を含まないことを除いて、光学部の材料及び周辺部の材料は、同じ又は実質的に同じ構成要素を含んでも良い。非光学周辺部は、1つ以上の可視光吸収成分または可視光吸収剤を含むため、例えば、非光学周辺部は、紫外線遮断色素成分を含む必要がない場合がある。例示に過ぎないが、光学部はCollamerRを含んでも良い一方、非光学周辺部は、紫外線遮断色素成分(これに限られず、1つ以上の可視光吸収成分または薬剤)を含まないCollamerRを含んでもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、非光学周辺部における可視光遮断色素成分が紫外線をも遮断することが利点となる場合がある。例えば、一部の視力矯正用途の場合において、レンズの非光学周辺部が瞳孔まで拡がる(図5参照)ことがあり、この場合には、非光学周辺部も紫外線を遮断できれば、紫外線が網膜に到達するのを防ぐことでき利点となり得る。他の実施形態では、非光学周辺部における可視光遮断色素成分が紫外線をも遮断することについて、利点が殆ど又は全く無い場合がある。
【0036】
いくつかの例に限られるが、非光学周辺部で可視光を遮断する有機又は無機の色素成分は、非光学周辺部のベースポリマーと架橋されてもよい。
【0037】
本明細書の非光学周辺部は、一般に、眼科インプラントに構造的支持を提供する。また、前記非光学周辺部は、一般に、眼の組織(例えば、溝である)に係合して、光学部を中心位置に配置できるような、大きさや構造を有している(但し、以下の実施形態のいくつかでは、光学部が中心に配置されない場合がある。)。したがって、本明細書の非光学周辺部は、構造支持部分とも呼ばれる場合がある。用途によっては、レンズの周辺構造支持部分が、レンズの光学部とは異なる機械的特性を持つことが望ましい場合がある。例えば、光学部及び周辺構造支持部分は、異なる光学的特性及び異なる機械的特性を有する2つの異なる材料から作製され得る。一例に過ぎないが、光学部よりも硬い非光学周辺部が提供されることが望ましい場合もあるし、非光学周辺部が光学部よりも硬さが小さいことが望ましい場合もある。したがって、光学部および非光学周辺部の材料は、レンズの異なる部分に所望の光学的及び機械的特性を与えるように選択され得る。一例に過ぎないが、非光学周辺部の材料は光学部の材料と実質的に異なっていてもよく、非光学周辺部は1つ以上の光吸収材料を含むこともできる。
【0038】
図1の(1A)及び(1B)は、透明な光学部110を含む例示的なレンズ100を示しており、透明な光学部110は、レンズを通る房水の流れを提供できる大きさ及び位置にある中心穴140を含む。また、レンズ100は、光学部110に結合され、そこから放射状に延びる非光学周辺部120を含む。非光学周辺部120は、本明細書で説明されるように、任意的(必須なものではなく)に、光を吸収する光吸収材料でに作られ得る。また、レンズ100は、光学部110を周囲の非光学周辺部120に接続または結合する移行ゾーン150を含む。本明細書の移行ゾーン150は、レンズ100の一部として考えることができ、光学部110と非光学周辺部120との間の移行部分として機能する。本明細書の移行ゾーンは、任意的に、光学部の一部ではなく、非光学部の一部として考えることができる。図1の(1A)及び図2の(2B)は、図示された任意のフットプレートを含むプレート又はプレート状ハプティック部を含んだ非光学周辺部120を示しているが、本明細書のレンズは、他の周辺部の構成を有しても良い。
【0039】
図2図7では、非光学周辺部が黒塗り領域で示されている点に注意すべきである。一方、図1の(1A)及び(1B)も、1つ又は複数の可視光吸収材料を備えた非光学周辺部を含むレンズの任意的な例を示しているが、黒塗りされずに非光学周辺部が示されている。本明細書における可視光を吸収する非光学周辺部は、黒塗り領域(図2~7で示され、製造後のレンズをより詳しく描いたもの)として描かれても良いし、図1の(1A)及び(1B)として描かれても良いことが理解される。
【0040】
図2の(2A)及び(2B)は、透明な光学部210を含む例示的なレンズ200を示しており、レンズ200は、レンズを通る房水の流れを提供できる大きさ及び位置にある中心穴240を含む。レンズ200は、光学部210に結合され、そこから放射状に延びる非光学周辺部220も含み、これは、本明細書で説明されるように、光を吸収する光吸収材料で任意に作製され得る。また、レンズ200は、光学部210を非光学周辺部220に接続または結合する移行ゾーン250を含む。図2の(2A)及び(2B)は、図示された任意のフットプレートを含むプレート又はプレート状ハプティック部を含んだ非光学周辺部220を示しているが、本明細書のレンズは、他の周辺部の構成を有しても良い。
【0041】
可視光吸収材料で作られた周辺部を含む本明細書のレンズは、レンズに1つ以上の利点を与えるだけでなく、所望に応じて光学的設計を調整または適合させるための多くの選択肢を生み出すことができる。例えば、可視光を透過する従来の周辺部や、例えば、移行ゾーンは、場合によっては、ハローグレア現象等の視覚障害を引き起こす可能性があります。例えば、夜間において、より多くの光を取り込むために瞳孔が開き、レンズの非光学周辺部の表面と相互作用する光がハロー現象や他の障害、症状、または光視異常を引き起こす可能性がある。本明細書で説明された可視光を吸収する周辺部は、光の通過を防ぎ、ひいては入射光と周辺部の非光学面との相互作用で引き起こされる視覚障害を防ぐことができる。
【0042】
本明細書のレンズに光を吸収する周辺部を組み込むことの追加の例示的な利点は、レンズの光学部の1つ以上の寸法(例えば、直径、光学部の中心の厚さ、光学部の周辺の厚さ)についてより多くの設計オプションを可能にするなど、光学の設計のさらなるカスタマイズまたは調整が可能になり得ることである。いくつかの特定の用途では、本明細書のレンズは、虹彩と水晶体嚢の間の溝に配置されてもよい(嚢内に生来のレンズまたは交換用IOLが入っている)。これはスペースが限られた眼の領域であり、これは、占有スペースをできるだけ小さくし、虹彩にかかる力をできるだけ少なくすること、水晶体への接触を完全に避けること、レンズの残りの部分もできるだけ薄くして、占有スペースをできるだけ小さくし、虹彩にかかる力を最小限に抑えることの点で、比較的非常に薄い光学部(たとえば200ミクロン以下)を設けることが有益であり得る。例えば、虹彩に力を加えると角度が小さくなり、それによってシュレム管を通る房水の排出が減少し、眼圧が上昇する可能性がある。さらに、水晶体への接触は、外傷性白内障を引き起こす可能性がある。追加的又は代替的に、一部のレンズ (および治療) では、光学部の直径が比較的小さいことが有利な場合がある。可視光吸収成分を含まない周辺部について、光学部の直径を小さくすると、本質的に周辺部の半径方向内側の範囲が増加し、周辺部の非光学面がさらに半径方向内側に広がり、それによって不要な光散乱の可能性が高まる。しかしながら、本明細書に記載されるように、1つ以上の光吸収成分を周辺部に組み込むことにより、非光学周辺部での可視光の散乱を防ぐ周辺部分が形成される。したがって、1つ以上の可視光吸収成分を組み込んだ周辺部分は、不要な可視光散乱を引き起こすことなくさらに半径方向内側に延在することができる。実際、周辺部分が可視光吸収成分を含む場合、周辺部の非光学面からの可視光の散乱を心配することなく、光学部の直径を必要なだけ小さくすることができる。
【0043】
前述の設計オプションの一例として、単焦点レンズの光学部(例えば、図2の(2A)及び(2B)に示される)は、比較的大きな直径を有することができるが、例えば老視を治療するレンズである場合は、一般に、典型的な単焦点レンズの光学部に対して比較的小さい光学部を有することが望ましい場合がある。例えば、米国特許第10485655号及び第10881504号に記載されているような、いくつかの拡張被写界深度レンズについて、これらの特許は目的を問わず、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。光学部の直径を比較的小さくすることは、視軸(図1の(1B)の側面図に示される「軸」)から放射方向に遠い光線、すなわち、角膜及び水晶体に対して中心光線よりも法線角度が大きい入射光の管理を回避できる点で利点がある。さらなる例として、米国特許第10485655号及び第10881504号に記載されているものが、目的を問わずそれらの全体が本明細書に参照して組み込まれる。異なる屈折力を持つ異なる視覚領域を提供するために、光学部が十分な大きさの直径を有することに利点がある場合がある。ここで、前記視覚領域は、様々な距離にある物体をはっきりと見ることができる十分な可視強度を提供できるような十分な大きさをもつ。図3の(3A)及び(3B)は、老視を治療するための拡張被写界深度レンズとして構成され得る例示的なレンズ300を示す。一般に、上記のレンズは、レンズ設計として、さまざまな距離からの光を同時に網膜に焦点を合わせるように調整及び最適化された光学部の直径を有している。これにより、上記のレンズは、老視により水晶体が硬くなった場合でも、距離(例えば、40cm、67cm、80cm、2m、又は、さらに遠くの距離)を隔てた物が良く見えるという利点がある。
【0044】
単焦点眼科レンズは、前後の曲面からの光の屈折によって機能する。一般に、上記の前後の曲面は異なる態様で湾曲しており、そのためにレンズの厚さが光学部の表面全体で変化する。一般に、図1の(1A)及び(1B)で示されるように、近視を矯正するための負の度数のレンズでは、中心が薄く、周辺が厚くなっている。また、遠視を矯正したり、眼の水晶体と代替するための正の度数のレンズの場合は、中心が厚く、周辺が薄くなっている。また、患者の所望の視力矯正に応じて、比較的高度数のレンズを移植することが望ましい場合がある。しかしながら、(正の度数及び負の度数に関わらず)高い度数のレンズは、より高い度数を提供するために、低い度数のレンズよりも、光学部の全体に亘って厚さの変化を大きくする必要がある。図1の(1B)に中心と周辺との厚さの変化が概略的に示されるように、例示的な一実施形態では、軸Aに沿った中心の厚さが150ミクロンであってもよい。また、例えば、半径1.0mmの位置での厚さは193ミクロンであっても良く、半径1.5mmの位置での厚さは216ミクロンであっても良く、半径2.25mmの位置での厚さは382ミクロンであっても良く、半径3.0mmの位置での厚さは、たとえば565ミクロンであっても良い。この例のレンズは、-9.5Dの度数を持ち得る。また、これらの例示的な厚さは、例えば、図2の(2A)及び(2B)のレンズ200にも適用され得る。また、レンズの機械的強度を維持するためにレンズが最低限度の厚さを有する必要があるため、レンズは度数が増加するにつれて厚くなり、負の度数のレンズでは周辺部が最も厚く、正の度数のレンズでは中心部が最も厚くなる。また、レンズの周辺部が可視光吸収成分を含んでいない場合、周辺部は、半径方向内側に延在する長さを大きくできず、本明細書で説明されるように、望ましくない散乱が発生することになる。したがって、一般に、光学部は、周辺部からの望ましくない散乱を防ぐ半径方向の範囲(直径)を有する。しかしながら、より高い度数のレンズの場合、薄い領域と厚い領域との間の厚さの差が比較的大きいため、レンズが非常に厚くなり、虹彩及び/又は生来の水晶体や水晶体嚢と望ましくない相互作用を引き起こす可能性がある。しかしながら、1つ以上の光吸収成分を周辺部に組み込むことにより、本明細書における周辺部での光の散乱の問題が回避される。したがって、高度数の光学部の直径をより小さくすることができる。そして、このような光学部の周囲及び前記周辺部は、光を吸収する周辺部を備えていないレンズのように厚くする必要がない。これにより、本明細書で説明される望ましくない組織の相互作用の可能性を防止し、又は、最小限に抑えることができる。したがって、水晶体をこすったり虹彩を押し上げたり、あるいはその両方を起こすほどレンズが厚くなるのを防ぐ観点から、光学部の直径をより小さくできることには利点があり得る。したがって、本明細書に記載されるように不透明な周辺部を組み込むことによって光学部の直径を減少させることができるため、より高い度数のレンズを設計でき、かつ、溝内に安全に移植することができる。本明細書で使用される「高度数」のレンズには、負の高度数レンズ及び正の高度数レンズの両方が含まれる。負の高度数レンズには、-15D又は-30D、若しくは、-15Dから-30Dまでのレンズが含まれる。本明細書における正の高度数のレンズには、+5Dもしくは+15D、または+5Dから+15Dまでのレンズが含まれる。これまで、平均的なサイズの眼の溝内に高度数のレンズを安全に移植することは難易度が高かった。図4の(4A)及び(4B)は、本明細書において高度数のレンズとして使用され得る例示的なレンズ400を示している。いくつかの実施形態では、本明細書の高度数レンズ(例えば、図4の(4A)及び(4B)のレンズ400)は、光学部の直径が例えば2~4mm、又は2.5~3.5mmの範囲とされ、具体的には、光学部の直径が、2.5mm、2.6mm、2.7mm、2.8mm、2.9mm、3.0mm、3.1mm、3.2mm、3.3mm、3.4mm又は3.5mmのいずれかとされる。いくつかの実施形態では、本明細書の高度数のレンズは、中心厚さが例えば100~200ミクロン、又は120~180ミクロン、又は130~170ミクロン、又は140~160ミクロン、又は150ミクロンとされる。また、任意的に、光学部のエッジの厚さは、例えば、200~700ミクロン、又は300~700ミクロン、又は400~700ミクロン、又は500~700ミクロンとされる。また、いくつかの実施形態では、本明細書の高度数(正・負を問わず)のレンズは、中心厚さと端部厚さとの差が、例えば、100~600ミクロン、又は200~600ミクロン、又は300~600ミクロン、又は350~550ミクロンとされる。
【0045】
本開示の追加の要素は、本明細書で説明された透明な光学部と不透明な非光学周辺部とを有するレンズであり、その光学部は、比較的小さい直径を有し、前記直径が例えば1~3mm、具体的には1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mmのいずれかとされる。また、その一例が図5の(5A)及び(5B)のレンズ500に示されている。この態様のレンズは、収差により視力が低下した眼に移植され得る。このような眼は、円錐角膜、過去の角膜移植、身体的損傷、又は、その他の理由の結果である可能性がある。この光学部は、眼の中心部において屈折矯正を提供し、眼の周辺から中心へと向かう可視光を遮断するように設計されている。網膜に到達して焦点を結ぶ可視光は目の中心部分のみを通過するため、瞳孔の大部分を通って入る光線は遮断される。網膜まで到達する光線が制限され、眼の一部の形状について通常よりも大きな変化が組み込まれることは、網膜に到達する光線を互いにより類似させることができ、ひいては、すべての構成が瞳孔に入射される場合よりも優れた画像が得られる。このようなレンズは、上記の治療を必要とする目に対して制限のないレンズと比べ、実質的に改善された視力を提供することができる。図5の(5A)及び(5B)は、比較的小さい直径の光学部(例えば、1~2mm)を有するICLを例示している。図5の(5A)は、可視光を吸収するように適合された例示的な周辺部520を示す。図5の(5B)は、参考として、周辺部の領域を破線で示しており、この破線領域は、従来設計におけるレンズでは光学部の一部となり得る部分を示す。代替的に、前記レンズは、移植時において、その透明な光学部が瞳孔の非中心部に位置するか、さもなければ瞳孔の中心に位置しないように、設計することができる。この構成は、例えば、角膜の中央部が選択的に損傷を受けることで収差が生じたり、より不透明になることにより、光路の中央部が周辺部よりも大きい収差が生じている場合において、望ましいと考えられる。
【0046】
図6の(6A)~(6D)は、それぞれ、図2の(2B)、図3の(3B)、図4の(4B)及び図5の(5B)のレンズを示すことで、例示的に光学部の直径の違いを示しており、可視光を吸収するように適合された周辺部が組み込まれた本明細書のICLの設計オプションを示している。図6の(6A)~(6B)は、レンズが治療しようとする視覚障害に応じて、本明細書のレンズの光学部および周辺部がどのように調整され得るかを示している。例えば、図2の(2B)および図6の(6A)に示されたレンズは、単焦点レンズとして設計されてもよく、乱視を矯正するように形成された単焦点レンズとして設計されてもよく、光学部の直径が例えば4~7mm、又は4.5~6.5mm、又は6.0mmであっても良い。例えば、図3の(3B)および図6の(6B)のレンズは、老視を治療するように適合されたICL(被写界深度が拡大されたレンズなど)や、屈折異常を矯正するように成形された単焦点レンズ、乱視を矯正するように成形されたレンズ、又は、屈折異常又は乱視を矯正するように成形されたレンズとして、設計されても良い。また、図3の(3B)および図6の(6B)のレンズは、例えば、光学部の直径が3~5mm、又は3.5~5mmであり、具体的には3.5mm、3.6mm、3.7mm、3.8mm、3.9mm、4.0mm、4.1mm、4.2mm、4.3mm、4.4mm、4.5mm、4.6mm、4.7mm、4.8mm、4.9mm、又は5.0mmのいずれかとされる。一例であるが、図4の(4B)や図6の(6C)のレンズは、高レベルの屈折異常や、乱視を伴う高レベルの屈折異常を矯正するための高度数のICLとして設計される場合がある。また、図4の(4B)や図6の(6C)のレンズは、例えば、光学部の直径が2~4mm、又は2.5~3.5mm、又は3.0mmとされる場合がある。一例に過ぎないが、図5の(5B)及び図6の(6D)のレンズは、屈折異常や乱視を伴う屈折異常も矯正できる治療用ICL(その例が本明細書で提供される)として設計される場合がある。図4の(4B)や図6の(6C)のレンズは、例えば、光学部の直径が1~3mm、又は1.5~2.5mm、又は2.00mmとされる。
【0047】
単焦点ICLとして適合され得る図2の(2A)及び(2B)のICL200は、不透明な周辺部220を含み、これは、光学部210と周辺部220との間の移行ゾーンに入射する可視光を遮断するのに役立つ。
【0048】
図3の(3A)及び(3B)のICL300は、老視を治療するように適合されており、不透明な周辺部320を含む。その大きさは、周囲の可視光線をブロックして網膜上の画像を改善するのに役立ち(前述)、光学部と周辺部との間の移行ゾーンに入射する可視光を遮断するだけでなく、組織を損傷することなくICLを比較的小さいスペースに適合させることにも役立つ。
【0049】
図4の(4A)及び(4B)のICL400は、高度数のレンズに適合されており、不透明な周辺部420を含む。その大きさは、光学部410と周辺部420との間の移行ゾーンに入射する光を遮断するだけでなく、組織を損傷することなくレンズを比較的小さいスペースに適合させる(前述)ものである。
【0050】
図5の(5A)及び(5B)のICL500は、治療用レンズとして適合させることができ、不透明な周辺部520を含む。その大きさは、中間周辺光線と周辺光線をブロックして網膜上の画像を改善 (前述)するのに役立つ。また、この大きさは、光学部510と周辺部520との間の移行ゾーンに入射する可視光を遮断できるだけでなく、組織を損傷することなくレンズが比較的狭いスペースに適合する(前述)のにも役立つ。
【0051】
いくつかの実施形態では、不透明な周辺部を有する本明細書のレンズは、円柱度数を含んで使用することで乱視を矯正できるように適合されても良い。このようなレンズは、放射方向について対称ではないが、レンズの厚さが変化する軸を持っている。このようなレンズは、球面レンズと同様、本明細書で説明された革新的な概念から恩恵を受けることができる。
【0052】
上記の例示的な利点は、本明細書のICLに不透明な周辺部が組み込まれることで提供される設計及び調整の選択自由度を示している。
【0053】
以下においてさらに詳細に説明するように、本明細書のレンズは、透明な光学部と、光学部の材料とは異なる可視光吸収材料で作られた非光学周辺部とを含むことができる。レンズが親水性材料で作られている場合、眼の水性環境に移植されている場合、または輸送のために液体(例えば平衡食塩水)の中に保管されている場合、非水和状態のレンズと比較してある程度膨潤する。光学部と非光学周辺部とにおいて一方が他方よりも大きく膨らむ場合、移植後において、光学部と非光学周辺部の間の結合領域に応力が作用して損傷する場合がある。また、これにより、光学部及び/又は周辺部を含むレンズが、移植後に望ましくない形状となることが想定され、光学部と非光学周辺部との間の座屈などにより、レンズの機能が損なわれる可能性がある。さらに、相対的な膨張の違いにより、光学部と周辺部との間の結合に力がかかる可能性があり、ひいては光学部と周辺部とが互いに剥がれる可能性があります。したがって、本明細書の光学部および周辺部は、それらが製造されるとき、パッケージ化されるとき及び/又は移植されるときにおいて、可能な限り同じ程度に膨潤するように、同じまたは実質的に同じ膨潤度を有し得る。本明細書で使用される膨潤度という語句は、拡張係数や他の同様の語句として参照される場合がある。本明細書で使用される膨潤度は、一般に、眼の自然な房水、又は平衡塩類溶液(BSS)などの同様の溶液にさらされた後に材料が膨潤する程度を指す。また、場合によっては、本明細書で使用される膨潤度という語句は、膨潤の前後における直線寸法、体積、または重量の変化によって特徴付けることができる。
【0054】
本明細書のいずれの例においても、透明な光学材料と可視光吸収材料とは、互いに同じ膨潤度を有し得る。また、本明細書のいずれの例においても、透明な光学材料と可視光吸収材料とは、互いに約5%以内、又は5%以内、又は1%以内となる、線形膨潤度を有する。また、上述の通り、光学部の材料は、周辺部の材料と実質的に同じであっても良い。一例として、光学部は、CollamerRを含んでもよく、周辺部はCollamerRを含んでもよく、または、紫外線遮断成分を含んでも含まなくても良い。これらの例では、材料はまったく同じではない可能性があるが、互いの膨潤度は約5%以内となり得る。本明細書の開示が、5%以内や1%以内等、互いに一定の割合以内の膨潤度を有する材料について言及しているときは、線形膨潤度、すなわち、材料が線形方向にどの程度大きくなるかについて言及している。例えば、特定の液体における膨潤度を測定するには、材料を準備 (乾燥) し、前記液体にさらしてから測定して、線形方向にどれだけ大きくなったかを測定して判断される。
【0055】
一例に過ぎないが、第1の光学材料は、BSSにおいて1.21の膨潤度を有し得る。1.21に対して5%以内の膨潤度とは、1.15~1.27を含む。また、1.21に対して1%以内の膨潤度とは、1.20~1.23を含む。なお、これらは、それぞれ、膨潤度が5%以内又は1%以内であることの一例である。
【0056】
中央穴140(及び本明細書における中央部又は他の部分のレンズの穴)は、本明細書で説明された、レンズを含まない眼における房水と同様の流れで、房水が眼全体に流れることを可能にする。中央穴は、内壁や穴の出入り口による可視光の散乱に起因する光学的障害を最小限にする観点から配置されているが、その配置によって散乱が完全に排除されるわけではない。房水の流れを可能にするためには、虹彩のサイズが変化する間の殆どにおいて、穴が瞳孔内に位置していなければならない。比較的小さい光学的領域を有するレンズ(例えば、図5の(5A)及び(5B)のレンズ500)の場合、1つ又は複数の穴740は、眼内の圧力の上昇を防ぐのに十分な時間、房水が1つ又は複数の穴740を通って流れることができるよう、光学部710(図7の(7A)及び(7B)で例示されるレンズ700に含まれる)の半径方向の外側かつ近傍にある可視光吸収領域である周辺部720に有利に配置される。1つ又は複数の穴740が、レンズの周辺に向かいかつ網膜から離れるように傾斜が付与される(図7の(7B)の部分断面図で示される)ことにより、散乱光がレンズ装着者にとって煩わしいものでは無くなり得る。穴の中心軸は、レンズの光軸に対して、ある角度(例えば、図7の(7A)及び(7B)に示す)で網膜の中心から離れる方向に傾斜され得る。この角度は、いくつかの実施形態では、例えば、10°と40°との間とされる(図7の(7B)参照)。また、いくつかの実施形態では、1つ又は複数の傾斜した穴の直径は、例えば、100~500ミクロン、又は200~400ミクロン、又は250~400ミクロン(一例として300ミクロン)となり得る。
【0057】
図8の(8A)は、図8は、光学部810および周辺部820を含む、製造された例示的なレンズ800を描写したものである。図8の(8A)は、レンズの前面図である。本明細書で説明されるように、周辺部820は可視光吸収材料で作られ、光学部810は透明な材料で作られる。本明細書で開示されたいずれのレンズの特徴も、例示的に示されたレンズ800の組み込むことができる。レンズ800は、中央開口840、及び、非光学周辺部820の一部となる移行ゾーン850も含んでいる。図8の(8A)は、結合又は接着位置890を示しており、この位置は一般に、光学部810の周辺が、周辺部820の内側領域に結合又は接着された環状領域を指す(例示的な製造方法が本明細書で説明される)。レンズ800は、任意的に、本明細書で説明されたレンズの特徴を含むことができる。また、レンズ800は、任意の寸法を含み、本明細書で説明された他の視力矯正にも適用することができる。
【0058】
図8の(9A)は、製造された例示的なレンズ900を描写したものであり、あらゆる点でレンズ800と同一または類似であり得る。レンズ900は、不透明な周辺部920に結合された透明な光学部910を含む。本明細書で説明されるように、周辺部920は可視光吸収材料で作られ、光学部910は透明な材料で作られている。本明細書で開示されたいずれのレンズの特徴も、例示的に示されたレンズ900の組み込むことができる。レンズ900は、非光学周辺部920の一部となる移行ゾーン950を含む。この例では、レンズ900は中央開口部を含まない。図8の(9A)は、結合又は接着位置990を示しており、この位置は一般に、光学部910が周辺部920に結合又は接着された環状領域を指す(例示的な製造方法が本明細書で説明される)。レンズ900は、任意的に、本明細書で説明されたレンズの特徴を含むことができる。また、レンズ900は、任意の寸法を含み、本明細書で説明された他の視力矯正にも適用することができる。
【0059】
本明細書の開示には、本明細書のレンズのいずれかを製造する方法も含まれる。図9及び図10に示される(10A)~(10F)は、ある製造手順を示すものであり、この製造手順は、1つ又は複数の可視光吸収材料を含む不透明な周辺部を含んだ本明細書のいずれかのレンズを製造するために任意的に用いられる。この方法は、光学部の材料を非光学周辺部の材料に結合することを含み得る。いくつかの実施形態では、光学部の材料は、非光学周辺部の材料に化学的に結合または接続される。例示的な製造方法は、光学部及び非光学部の初期材料となるロッドを作成することを含み得る。上記のロッドは、同じまたは実質的に同じ膨潤度(詳細は本明細書に記載)を有する材料で作製することができ、ロッドの1つは可視光吸収成分または可視光吸収剤を含む。例えば、図9の(10A)は、可視光吸収材料で作られた周辺部となるロッド1050と、透明材料で作られた光学部となる初期のロッド1010とを示す。図9の(10B)は、前記初期のロッド1010の直径をレンズの光学部の所望の直径まで小さくさせて形成された光学ロッド1010’を示す。ロッド1010および1010’の両方は、本明細書で使用される用語では光学ロッドとみなされる場合がある。この例におけるロッド1010’は、レンズの光学部の所望の直径に合わせてサイズが決められたロッドであるものの、ロッド1010及び1010’の両方が、本明細書で使用される光学ロッドとして考慮され得る。図9の(10C)は、ロッド1050を貫通して長手方向に延びる円筒形の穴又は経路1051が形成されたあとの周縁部ロッド1050’を示している。図9の(10C)はまた、図示の矢印の方向に穴又は経路1051内に配置されようとしているロッド1010’も示している。次いで、光学ロッド1010’の材料を周辺ロッド1050’の材料に接着または結合することができる。次に、光学ロッド1010’の材料を周辺ロッド1050’の材料に接着または結合することができる。これによって得られたものは、図9の(10D)に示されるように、「複合」ロッドとみなすことができる。図9の(10D)はまた、光学ロッドが周辺ロッドに挿入された後、結合される前のものも表現し得る。光学部の材料が周辺部の材料に接着されると、それらは一緒に結合されたとみなされる。図10の(10E)は、図9の(10D)に示される複合ロッドから小さな部分を切り出すことによって作成されたボタン1070を示す。ボタン1070は、中央透明セクション1072と、環状領域である結合位置1073で中央セクション1072に結合される周辺セクション1071とを含む。次に、例えば、光学部及び周辺部に所望の光学面や非光学面を旋盤加工及び/又はフライス加工する等の様々な表面形成ステップを経て、ボタン1070から眼用レンズ1073を形成することができる。(10A)~(10F)に示される例示的な方法は、本明細書に記載される任意のレンズを製造するために使用され得る。さらに、光学ロッドが最初に所望の直径を有するように作成される場合、(10A)~(10B)への移行に示されるように、直径を減少させる必要がない可能性がある。したがって、この例示的な方法では、このステップが必ずしも必要ではないことが理解される。さらに、(本明細書のレンズのいずれかの)周辺部および光学部は、好ましくは(必須ではない)共通または同じ軸を有し、それらが結合されたときにそれらの軸が揃うようにすべきである。
【0060】
また、本明細書に記載された又は請求項に記載された製造方法は、必ずしも(10A)~(10E)で示されるステップの全てを含む必要はないことも理解される。例えば、本明細書の製造方法は、光学ロッドを円筒形チャネル内に配置する(例えば、図9の(10C)の矢印で示す)こと、及び、図9の(10D)に例示されるように、光学ロッドを周辺部ロッドに接着又は付着して、透明な中央領域及び周辺の可視光吸収領域を有する複合ロッドを形成することを含むことができる。
【0061】
本明細書に記載された、1つ以上の光吸収材料からなる周辺部を代替するものとして、周辺部は、任意的に、光を散乱させ、かつ、散乱した光が不適切に収束しないように構成された1つ又は複数の外面を有するものでも良い。例えば、散乱面は、入射光を特定の方向ではないランダムな方向に散乱させるように構成されたものが望ましい。1つまたは複数の散乱面を有する周辺部は、任意的に、光学部と同じ材料で作製されてもよく、レンズは一体レンズとして製造されてもよい。また、レンズが製造された後、周辺部の表面の1つ又は複数が光を散乱するように修正されてもよい。非限定的な例示として、散乱面を作成する方法は、一般的に言えば、表面を粗くすることである。周辺部の前面及び後面のいずれか一方又両方は、本明細書で説明された光を散乱させる面として適合され得る。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】