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特表2024-537857リベットダイ、リベット取付け工具、および関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】リベットダイ、リベット取付け工具、および関連する方法
(51)【国際特許分類】
   B21J 15/30 20060101AFI20241008BHJP
   B21J 15/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B21J15/30 L
B21J15/00 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520720
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2022077647
(87)【国際公開番号】W WO2023057489
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】2114256.7
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520190665
【氏名又は名称】アトラス コプコ アイエーエス ユーケー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO IAS UK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ, サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ホレラング, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ, エリオット
(57)【要約】
完全管状または半管状のセルフピアッシングリベットを被加工物内に取り付けるように構成されたリベット取付け工具用のリベットダイであって、前記リベットが、軸部外径Dを有する、リベットダイ。リベットダイは、主本体と、主本体から垂下する装着ステムと、を備える。主本体は、中心軸線を中心とした略円筒形である。主本体は、上面を有する。ダイ空洞が、上面に形成されている。ダイ空洞は、中心軸線に沿って装着ステムを貫通して延在する中央中空部を含む。上面における中央中空部の直径は、軸部外径よりも小さい。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
完全管状または半管状のセルフピアッシングリベットを被加工物内に取り付けるように構成されたリベット取付け工具用のリベットダイであって、前記リベットが、軸部外径Dを有し、前記リベットダイが、主本体と、前記主本体から垂下する装着ステムと、を備え、
前記主本体が、中心軸線を中心とした略円筒形であり、
前記主本体が、上面を有し、
ダイ空洞が、前記上面に形成されており、
前記ダイ空洞が、前記中心軸線に沿って前記装着ステムを貫通して延在する中央中空部を含み、
前記上面における前記中央中空部の直径が、前記軸部外径よりも小さい、
リベットダイ。
【請求項2】
前記主本体の前記上面が、前記ダイ空洞を取り囲む外側環状壁を含む、請求項1に記載のリベットダイ。
【請求項3】
前記ダイ空洞が、前記中空部に隣接しかつ前記中空部の半径方向外側にあるテーパ領域を含み、前記テーパ領域が、前記軸線に面する表面によって画定されている、請求項1または2に記載のリベットダイ。
【請求項4】
軸部外径Dを有する完全管状または半管状のセルフピアッシングリベットを被加工物内に挿入するように構成されたリベット取付け工具であって、該リベット取付け工具が、アクチュエータによって往復移動可能なパンチの下に配置された、請求項1~3のいずれか一項に記載のリベットダイを含む、リベット取付け工具。
【請求項5】
製品または製品の構成要素を製造する方法であって、該方法が、請求項4に記載のリベット取付け工具を使用して被加工物の2つ以上の層を互いに締結するステップを含み、前記アクチュエータが、前記パンチを前進させて、軸部外径Dを有する完全管状または半管状のセルフピアッシングリベットを前記被加工物内に取り付ける、方法。
【請求項6】
主本体を備えるリベットダイであって、
前記主本体が、中心軸線を中心とした略円筒形であり、
前記主本体が、上面を有し、
ダイ空洞が、前記上面に形成されておりかつ前記中心軸線上に配置されており、前記ダイ空洞が、前記上面の略半径方向の基部部分によって部分的に画定されており、
前記ダイ空洞が、前記上面に配置された隆起した環状リムによって境界付けられており、前記リムが、前記上面のリム部分によって少なくとも部分的に画定されており、
前記上面が、前記基部部分および前記リム部分に隣接する移行部分を有し、前記移行部分が、第1および第2のセクションを含み、前記第1のセクションが、前記第2のセクションの半径方向内側に配置されており、
前記第1のセクションが、前記軸線が位置する平面において、前記第2のセクションの前記平面における曲率半径よりも小さい曲率半径を有する、
リベットダイ。
【請求項7】
前記第1のセクションの曲率中心が、前記上面の前記移行部分の前記第1のセクションの上方に配置されており、前記第2のセクションの曲率中心が、前記上面の前記移行部分の前記第2のセクションの下方に配置されている、請求項6に記載のリベットダイ。
【請求項8】
アクチュエータによって往復移動可能なパンチの下に配置された、請求項6または7に記載のリベットダイを含む、被加工物内にリベットを挿入するためのリベット取付け工具。
【請求項9】
製品または製品の構成要素を製造する方法であって、該方法が、請求項8に記載のリベット取付け工具を使用して被加工物の2つ以上の層を互いに締結するステップを含む、方法。
【請求項10】
リベット取付け工具用のリベットダイリベットダイであって、該リベットダイが、主本体を備え、
前記主本体が、中心軸線を中心とした略円筒形であり、
前記主本体が、上面を有し、
ダイ空洞が、前記上面に形成されておりかつ前記中心軸線上に配置されており、
前記ダイ空洞が、前記上面に配置された隆起した環状リムによって境界付けられており、
外側ランドが、前記環状リムを縁取り前記上面に配置されており、かつ前記環状リムの半径方向外側に配置されており、
前記中心軸線に対して平行な前記リムの最大高さが、前記ダイ空洞の最大高さおよび前記外側ランドの最大高さよりも大きい、
リベットダイリベットダイ。
【請求項11】
前記外側ランドが、前記中心軸線に対して略垂直に位置するように略平坦である、請求項10に記載のリベットダイ。
【請求項12】
前記環状リムが、第1の環状面と、前記第1の環状面の半径方向外側にある第2の環状面と、を備え、前記第1の環状面が、前記第2の環状面の第2の勾配よりも大きい第1の勾配を有し、各勾配が、関連する面の、前記関連する面に沿った半径方向位置に応じた前記軸線に沿った位置の変化率の大きさとして定義されている、請求項10または11に記載のリベットダイ。
【請求項13】
軸部外径Dを有するリベットを取り付けるように構成されたリベット取付け工具用の、請求項10~12のいずれか一項に記載のリベットダイであって、前記環状リムの前記最大高さを有する部分の、前記軸線に対して垂直な最小直径が、前記軸部外径Dよりも小さい、リベットダイ。
【請求項14】
アクチュエータによって往復移動可能なパンチの下に配置された、請求項10~13のいずれか一項に記載のリベットダイを含む、被加工物内にリベットを挿入するためのリベット取付け工具。
【請求項15】
製品または製品の構成要素を製造する方法であって、該方法が、請求項14に記載のリベット取付け工具を使用して被加工物の2つ以上の層を互いに締結するステップを含む、方法。
【請求項16】
軸部外径Dを有するリベットを被加工物内に挿入するように構成されたリベット取付け工具であって、アクチュエータによって往復移動可能なパンチの下に配置された、請求項13に記載のリベットダイを含む、リベット取付け工具。
【請求項17】
製品または製品の構成要素を製造する方法であって、該方法が、請求項16に記載のリベット取付け工具を使用して被加工物の2つ以上の層を互いに締結するステップを含み、前記アクチュエータが、前記パンチを前進させて、軸部外径Dを有するリベットを前記被加工物内に取り付ける、方法。
【請求項18】
(A)被加工物が、i)AA7xxxアルミニウム合金、ii)AA6xxxアルミニウム合金、もしくはiii)ダイカストアルミニウムのうちの1つ以上の層を備え、
かつ/または、
(B)前記方法が、前記被加工物を加熱することなく室温で実施される、
請求項5、9、15、および17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記製品が、自動車である、請求項5、9、15、17、または18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項5、9、15、17、18、または19のいずれか一項に記載の方法を用いて製造された製品または製品の構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リベットダイ、そのようなダイを組み込むリベット取付け工具、および関連する方法に関する。本発明のリベットダイ、リベット取付け工具、および方法は、セルフピアッシングリベットによる継手の形成であって、該シート材を含む被加工物内に該リベットが挿入されるものに特に適用されるが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
セルフピアッシングリベットは、3つの主な形態をとる。半管状、完全管状、および中実のセルフピアッシングリベットがある。中実のセルフピアッシングリベットは、通常、頭部および中実(非中空)の軸部を備える。中実のセルフピアッシングリベットを使用して被加工物内に継手を形成する場合、被加工物の材料のスラグがリベットによって打ち抜かれて(すなわち、被加工物から除去されて)、被加工物を貫通する穴が形成され、穴がリベットによって充填される。次いで、被加工物および/またはリベットの軸部は、被加工物とリベットとの間の噛み合い(interlock)による継手を形成するように変形される。そのような継手は、リベットによって充填される穴を形成するために被加工物の材料のスラグが除去されているという事実に起因して、応力および/または腐食の影響をより受け易い可能性がある。
【0003】
半管状のセルフピアッシングリベットは、一般に、頭部と、中央リベット空洞を画定する部分的に中空の軸部と、を有し、中央リベット空洞は、リベット頭部を完全には貫通せずに延在するため、リベットの長さに沿って途中までしか延在しない。完全管状のセルフピアッシングリベットは、中央リベット空洞を画定する中空頭部および中空軸部を有し、中央リベット空洞は、リベットの長さ全体を貫通して延在する。中央リベット空洞は、リベットを貫通し、頂部から底部まで(すなわち、リベットの頭部および軸部の両方を貫通して)延在する中空部によって画定されている。半管状のリベットおよび完全管状のリベットの両方は、パンチによってシート材のワーク内に打ち込まれ、頂部シート(または被加工物が2枚以上のシートを含む場合には複数のシート)を貫通し、底部シートとの機械的噛み合いを形成する。リベットの頭部が頂部シートの上面と実質的に同一平面にあることが望まれることが多い。底部シートが貫通していないため、例えば、従来のリベットまたは中実のセルフピアッシングリベットと比較して、完成した継手に腐食が発生するリスクが低減される。本明細書に記載の発明は、接合中に被加工物から材料のスラグを除去しない半管状および完全管状のセルフピアッシングリベットとともに使用することのみを意図している。
【0004】
接合プロセスでセルフピアッシングリベットを使用すると、最初にシート材に穴を穿ち、リベットを挿入し、次いでリベットの突出端部を据え込む必要がある従来のリベット締めと比較して、製造ステップの数が削減される。セルフピアッシングリベットの取り付けは、通常、リベットが挿入されている間に被加工物を支持するためのダイを使用する。ダイは、平坦な表面を有し得るか、またはリベット軸部の変形を助けて必要な噛み合いを形成するために、被加工物材料の塑性流動を収容および/または導くための空洞を有し得る。
【0005】
セルフピアッシングリベッティングは、しばしば、接着剤と組み合わされて自動車産業において大きな商業的成功を収めてきており、自動車産業では、軽量化、およびこれによるエネルギー消費削減の利益のために、アルミニウムのような軽量材料が車体パネルおよび他の部品に採用されている。アルミニウムの高い熱伝導率、低い融解範囲、および酸化表面膜を形成する傾向のために、高強度アルミニウムなどのアルミニウムを特に鋼鉄にスポット溶接することは、しばしば困難または実現不可能である。
【0006】
より最近では、自動車産業において、高強度の板金を使用する動きがある。従来のリベットおよび/またはダイは、いくつかの被加工物、例えば、6000系および7000系のアルミニウム合金のような厚いスタック、高強度の軽金属合金で作製された被加工物での使用には必ずしも適さないことが確かめられている。当技術分野で周知のように、6000系および7000系のアルミニウム合金は、それぞれAA6xxxおよびAA7xxx合金と呼ばれることもある。
【0007】
AA6xxxおよびAA7xxx合金に加えて、本明細書に記載の発明は、アルミニウムダイカスト材料での使用に適している。
【0008】
このような材料のより高い強度および低い延性は、一般に、リベットが接合動作中により高い応力を受けることを意味し、これは、従来の平坦なダイまたは浅いダイ空洞を有するダイが使用されたときに悪化する。従来のダイと組み合わせて利用される従来のセルフピアッシングリベットは、最終的な継手が満足のいく品質であることを保証するために、リベット軸部の変形を制御可能なままにする方法では、これらの高い応力に耐えることができない。より高い強度の材料からリベットを製造することのみでは、一般に所望の結果を得ることができない。なぜなら、対応する延性の低下によって、リベット軸部が挿入中に変形しようとする際にリベット軸部に亀裂が生じ得るためである。満足のいく強度および耐食性を有する好適な継手を形成するために、リベットの軸部は、座屈することなく材料の頂部シートを貫通するのに十分なカラム強度を有する一方で、裂けたり割れたりすることなく反復可能かつ予測可能な方法で挿入中に外側に広がる必要がある。
【0009】
必要な取付け力を大幅に増加させる必要なく、高強度材料でセルフピアッシングリベット継手を生成することが望ましい。また、リベット取付け作業に必要な取付け力を低減することが望ましい。そのようにすることは、より低コストのリベット取付け装置を使用して満足のいく継手を形成することができ、かつ/またはリベット取付け作業中にリベット取付け装置に及ぼされる力を低減することによって、リベット取付け装置の寿命および信頼性が向上することとなることを意味する。
【0010】
最後に、高強度の被加工物に満足のいくリベット継手を形成するための考えられている1つの方法は、リベット取付け作業の前または最中に被加工物を加熱し、それによって被加工物を軟化させることである。このような要件は、リベット取付け作業の複雑さを増大させるだけでなく、リベット取付け作業を実施するためのコストおよびエネルギー要件も増大させる。したがって、被加工物を加熱する必要がない、すなわち、リベット取付け作業を略室温で実施することができる、リベット取付け作業を実施する方法を提供することが望ましい。
【0011】
本発明の1つの目的は、上述したか否かにかかわらず、既存の装置および方法の欠点を回避または緩和するリベットダイ、リベット取付け工具、および関連する方法を提供すること、ならびに/または改善されたもしくは代替のリベットダイ、リベット取付け工具、もしくは方法を提供することである。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、完全管状または半管状のセルフピアッシングリベットを被加工物内に取り付けるように構成されたリベット取付け工具用のリベットダイであって、前記リベットが、軸部外径Dを有し、リベットダイが、主本体と、主本体から垂下する装着ステムと、を備え、主本体が、中心軸線を中心とした略円筒形であり、主本体が、上面を有し、ダイ空洞が、上面に形成されており、ダイ空洞が、中心軸線に沿って装着ステムを貫通して延在する中央中空部を含み、上面における中央中空部の直径が、軸部外径よりも小さい、リベットダイが提供される。
【0013】
本発明のこの態様によるダイが被加工物に対してリベット取付け作業を実施するために使用される場合、リベットの中央中空部は、被加工物の下部シートからの材料が流入することができる大きな容積を提供する。リベット取付けプロセス中に被加工物の下部シートの材料を中空部内に収容することにより、半径方向外側に流れる被加工物の下部シートの材料の量が減少する。リベット取付けプロセス中に半径方向外側に流れる被加工物の下部シートの材料の量を減少させることにより、被加工物の下部シート内の圧痕が圧縮された折り目に発展することによって生じる亀裂の可能性を最小限に抑えることができる。このダイ形状の他の利点は、本明細書においてさらに後述する。
【0014】
主本体の上面は、ダイ空洞を取り囲む外側環状壁を含み得る。
【0015】
ダイ空洞は、中空部に隣接しかつ中空部の半径方向外側にあるテーパ領域を含むことができ、テーパ領域は、軸線に面する表面によって画定されている。
【0016】
テーパ領域は、被加工物の下部シートの材料の中空部内への変位を容易にするように作用し、それによって、上述の中空部の利点を最大化する。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、軸部外径Dを有する完全管状または半管状のセルフピアッシングリベットを被加工物内に挿入するように構成されたリベット取付け工具であって、リベット取付け工具が、アクチュエータによって往復移動可能なパンチの下に配置された前述の態様によるリベットダイを含む、リベット取付け工具が提供される。
【0018】
本発明の第3の態様によれば、製品または製品の構成要素を製造する方法であって、該方法が、本発明の前述の態様によるリベット取付け工具を使用して被加工物の2つ以上の層を互いに締結することを含み、アクチュエータが、パンチを前進させて軸部外径Dを有する完全管状または半管状のセルフピアッシングリベットを被加工物内に取り付ける、方法が提供される。
【0019】
本発明の第4の態様によれば、主本体を備えるリベットダイであって、主本体が、中心軸線を中心とした略円筒形であり、主本体が、上面を有し、ダイ空洞が、上面に形成されておりかつ中心軸線上に配置されており、ダイ空洞が、上面の略半径方向の基部部分によって部分的に画定されており、ダイ空洞が、上面に配置された隆起した環状リムによって境界付けられており、リムが、上面のリム部分によって少なくとも部分的に画定されており、上面が、基部部分およびリム部分に隣接する移行部分を有し、移行部分が、第1および第2のセクションを含み、第1のセクションが、第2のセクションの半径方向内側に配置されており、第1のセクションが、軸線が位置する平面において、第2のセクションの前記平面における曲率半径よりも小さい曲率半径を有する、リベットダイが提供される。
【0020】
本発明のこの態様によるダイが被加工物に対してリベット取付け作業を実施するために使用されるとき、移行部分は、被加工物の下部シートの材料がダイ空洞から離れるように移動する際に、被加工物の下部シートの材料を半径方向外側に誘導するのを助ける。この結果、亀裂の形成の可能性が最小限に抑えることにより、被加工物の接合がより高品質になる。このダイ形状の他の利点は、本明細書においてさらに後述する。
【0021】
第1のセクションの曲率中心は、上面の移行部分の第1のセクションの上方に配置され得、第2のセクションの曲率中心は、上面の移行部分の第2のセクションの下方に配置されている。
【0022】
本発明の第5の態様によれば、アクチュエータによって往復移動可能なパンチの下に配置された本発明の第4の態様によるリベットダイを含む、被加工物内にリベットを挿入するためのリベット取付け工具が提供される。
【0023】
本発明の第6の態様によれば、製品または製品の構成要素を製造する方法であって、該方法が、本発明の第5の態様によるリベット取付け工具を使用して被加工物の2つ以上の層を互いに締結することを含む、方法が提供される。
【0024】
本発明の第7の態様によれば、リベット取付け工具用のリベットダイリベットダイであって、リベットダイが、主本体を備え、主本体が、中心軸線を中心とした略円筒形であり、主本体が、上面を有し、ダイ空洞が、上面に形成されておりかつ中心軸線上に配置されており、ダイ空洞が、上面に配置された隆起した環状リムによって境界付けられており、外側ランドが、環状リムを縁取り上面に配置されており、かつ環状リムの半径方向外側に配置されており、中心軸線に対して平行なリムの最大高さが、ダイ空洞の最大高さおよび外側ランドの最大高さよりも大きい、リベットダイリベットダイが提供される。
【0025】
本発明のこの態様によるダイが被加工物に対してリベット取付け作業を実施するために使用されるとき、環状リムおよび外側ランドは協働して、被加工物の下部シートの材料がダイ空洞から離れるように移動する際に、被加工物の下部シートの材料をダイに向かって半径方向外側かつ下方に誘導するのを助ける。この結果、被加工物に亀裂が生じる可能性を最小限に抑え、被加工物の皿形変形を最小限に抑えることによって、被加工物により高品質の接合がもたらされる。このダイ形状の他の利点は、本明細書において以下でさらに論述する。
【0026】
外側ランドは、中心軸線に対して略垂直に位置するように略平坦であり得る。
【0027】
環状リムは、第1の環状面と、第1の環状面の半径方向外側にある第2の環状面と、を備え、第1の環状面が、第2の環状面の第2の勾配よりも大きい第1の勾配を有し、各勾配が、関連する面の、関連する面に沿った半径方向位置に応じた軸線に沿った位置の変化率の大きさとして定義されてもよい。
【0028】
リベット取付け工具用のリベットダイは、軸部外径Dを有するリベットを取り付けるように構成され得る。環状リムの最大高さを有する部分の、軸線に対して垂直な最小直径は、軸部外径Dよりも小さくてもよい。
【0029】
本発明の第8の態様によれば、アクチュエータによって往復移動可能なパンチの下に配置された本発明の前述の態様によるリベットダイを含む、被加工物内にリベットを挿入するためのリベット取付け工具が提供される。
【0030】
本発明の第9の態様によれば、製品または製品の構成要素を製造する方法であって、該方法が、本発明の前述の態様によるリベット取付け工具を使用して被加工物の2つ以上の層を互いに締結することを含む、方法が提供される。
【0031】
本発明の第10の態様によれば、軸部外径Dを有するリベットを被加工物に装入するように構成されたリベット取付け工具であって、アクチュエータによって往復移動可能なパンチの下に配置された本発明の第6の態様によるリベットダイを含む、リベット取付け工具が提供される。
【0032】
本発明の第11の態様によれば、製品または製品の構成要素を製造する方法であって、該方法が、本発明の前述の態様によるリベット取付け工具を使用して被加工物の2つ以上の層を互いに締結することを含み、アクチュエータが、パンチを前進させて、軸部外径Dを有するリベットを被加工物内に取り付ける、方法が提供される。
【0033】
上述の方法のいずれかにしたがって、被加工物は、i)AA7xxxアルミニウム合金、ii)AA6xxxアルミニウム合金、もしくはiii)ダイカストアルミニウムのうちの1つ以上の層を備え得る。
【0034】
方法は、被加工物を加熱することなく室温で実施され得る。
【0035】
製品は、自動車であり得る。
【0036】
本発明の第12の態様によれば、上述の方法のうちのいずれかを用いて製造された製品または製品の構成要素が提供される。
【0037】
上記の本発明の各態様では、ダイ空洞は、使用中に、リベット取付け作業を受けている被加工物の一部分を受容するように構成され得る。
【0038】
本発明の一態様の特徴に関して上述した利点は、同じまたは同等の特徴を有する本発明の他の態様にも等しく適用される。本発明の任意の1つの態様に関連して上述した任意の特徴は、適切な場合には、本発明の他の態様のうちのいずれかと組み合わせることができる。
【0039】
次に、添付の図を参照して、本発明の特定の実施形態を例示としてのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】リベット取付け工具の斜視図である。
図2図1の装置の一部を通る断面図である。
図3a】リベットが被加工物内に取り付けられる際の異なる段階における、既知のリベット取付け工具、リベット、および被加工物の一部分を通るコンピュータシミュレーション断面図を示す。
図3b】(図3aと同様)
図3c】(図3aと同様)
図3d】(図3aと同様)
図3e】(図3aと同様)
図3f】(図3aと同様)
図4】リベットが被加工物内に取り付けられている特定の段階における、図3の既知のリベット取付け工具、リベット、および被加工物の拡大コンピュータシミュレーション断面図を示す。
図5a】リベットが被加工物内に取り付けられる際の異なる段階における、本発明の一実施形態によるリベット取付け工具、リベット、および被加工物の一部分を通るコンピュータシミュレーション断面図を示す。
図5b】(図5aと同様)
図5c】(図5aと同様)
図5d】(図5aと同様)
図5e】(図5aと同様)
図5f】(図5aと同様)
図6a】リベットが被加工物内に取り付けられる際の異なる段階における、本発明の別の実施形態によるリベット取付け工具、リベット、および被加工物の一部分を通るコンピュータシミュレーション断面図を示す。
図6b】(図6aと同様)
図6c】(図6aと同様)
図6d】(図6aと同様)
図6e】(図6aと同様)
図6f】(図6aと同様)
図7図6に示すリベット取付け工具の一部であるダイの一部分を通る概略拡大注釈付き断面図である。
図8】本発明のさらなる実施形態によるリベット取付け工具のダイを通る断面図を示す。
図9a】リベットが被加工物内に取り付けられる際の異なる段階における、本発明の一実施形態によるリベット取付け工具(図8に示すダイを含む)、リベット、および被加工物の一部分を通るコンピュータシミュレーション断面図を示す。
図9b】(図9aと同様)
図9c】(図9aと同様)
図9d】(図9aと同様)
図9e】(図9aと同様)
図9f】(図9aと同様)
図10】本発明のさらなる実施形態によるリベット取付け工具のダイを通る断面図を示す。
図11a】リベットが被加工物内に取り付けられる際の異なる段階における、本発明の一実施形態によるリベット取付け工具(図10に示すダイを含む)、リベット、および被加工物の一部分を通るコンピュータシミュレーション断面図を示す。
図11b】(図11aと同様)
図11c】(図11aと同様)
図11d】(図11aと同様)
図11e】(図11aと同様)
図11f】(図11aと同様)
図12図10に示すダイを含む本発明によるリベット取付け装置の一部分を通る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、リベット挿入装置2および関連するキャリアを示している。キャリアは、上顎6および下顎8を有するCフレーム4を備える。Cフレームの下顎8上に、ダイアセンブリ10が設けられている。リベット挿入装置2は、以下でさらに説明するように、ダイアセンブリ10の上に配置された被加工物(図示せず)内にリベットを挿入する。
【0042】
リベット挿入装置2は、円筒形ハウジング14およびノーズアセンブリ16内で軸線方向に移動する慣性駆動往復パンチ(図1では見ることができない)を駆動するように作動する電気駆動装置12を備える。慣性電気駆動装置が示されているが、他の形態の駆動装置が使用されてもよい。例えば、電気駆動装置は、パンチを直接駆動する(かつパンチの位置に関するリアルタイムフィードバックに基づいて制御され得る)電気モータを備え得る。別の例では、油圧駆動装置が使用されてもよい。しかしながら、電気駆動装置は、作動液(作動液を送達することは困難な場合があり、作動液が漏れると健康および安全上のリスクをもたらす可能性がある)の送達を必要としないため、好ましい場合がある。往復パンチは、ノーズアセンブリ16から被加工物(図示せず)を通してリベットを挿入するために使用される。リベット挿入装置2は、(以下でさらに説明するように)リベットの挿入中およびリベットの直立中にノーズアセンブリ16を被加工物上にクランプするために使用され得る追加の駆動装置(図では見えない)をさらに備え得る。電気駆動装置12および追加の駆動装置は、独立して制御可能(例えば、制御装置を使用して)であってもよい。追加の駆動装置は、例えば、電気駆動装置または油圧駆動装置であり得る。ノーズアセンブリ16を被加工物上にクランプするために使用され得る駆動装置の一例は、米国特許第5752305号明細書に記載されている。
【0043】
リベットは、送達管(図示せず)を介して空気またはガスの圧力下でノーズアセンブリ16に供給される。次いで、リベットが被加工物を通して挿入される。代替的な構成では、リベットは、キャリアテープでノーズアセンブリ16に搬送されることによって供給されてもよい。
【0044】
制御システム23が、ノーズアセンブリ16へのリベットの搬送を制御するように構成されており、かつ往復パンチの動作を制御するように構成されている。制御システム23はまた、パンチを動かす駆動装置およびノーズを動かす駆動装置のような、リベット挿入装置2の他の部分を制御し得る。制御システム23は、プロセッサおよびメモリを備えることができ、メモリは、リベット挿入装置2の動作に関する命令を記憶する。プロセッサは、命令を処理し、リベット挿入装置2の動作を制御する出力を提供し得る。
【0045】
ダイアセンブリ10は、図2により詳細に示されている。ダイアセンブリ10は、顎8を貫通する中空部19内に受容されたダイホルダアダプタ18によってCフレーム4の下顎8上に支持されたダイ13を含む。ダイ13は、中心軸線を中心とした略円筒形であり、取付け工具10に対向することになる開口したダイ空洞21を画定する頭部(または主本体)20と、中心軸線に沿って延在し、中心軸線に対して半径方向に延在する環状面23が頭部20の下側に画定されるように、頭部20に比べて縮径された垂下ステム22と、を有する。アダプタ18は、略円筒形の本体を有し、この本体は、Cフレーム4の顎8内の中空部19内にぴったりと嵌合する第1の端部25と、ダイの環状面23が第2の端部26の上面27に着座するようにダイステム22を受容する第2の中空端部26と、を有する。アダプタ18と、中空部19がその中に画定されたアーム14の表面の上面28との間には、例えばOリングなどのシール部材が設けられてもよい。アダプタ本体は、その外周面の途中に設けられ、半径方向外向きに延在するフランジ29を有し、半径方向に延在する面のうちの1つは、中空部19のすぐ周りのアーム14の上面28に着座している。第2の中空端部26は、内側に向かってテーパ状になっており、頭部20の下側面23が支持された環状の上面27において終端している。円筒形の中空部30は、アダプタ本体内において第2の端部26からその長さに沿って実質的に中間の位置まで延在し、滑り嵌めまたは摩擦嵌めによってダイステム22を受容する。本体はまた、2つの小径通路によって貫通されている。第1の小径通路31は、第1の端部25から円筒形中空部30まで本体の中心長手方向軸線に沿って延在し、第2の小径通路32は、第1の通路31からフランジ29の周囲まで半径方向に延在する。各場合において、通路は、それぞれ拡大された第1および第2の入口ポート33、34を有し、加圧空気を供給するためのホースへの接続を可能にする。通路31、32および入口ポート33、34は、本発明を理解するために重要ではないので、これらに関するこれ以上の説明は省略する。
【0046】
他の実施形態では、Cフレームの下顎8の中空部19は、ダイホルダアダプタ18を無くすことができるように縮径されており、この場合、中空部19の周りの領域内のCフレームの下顎8は、ダイのステムを介してダイを直接保持するように機能することを理解されたい。
【0047】
図3は、リベットが被加工物内に取り付けられる際の異なる段階における、既知のリベット取付け工具、リベット、および被加工物の一部分を通るコンピュータシミュレーション断面図である。特に、この図は、システム内の任意の所与の点における計算された応力を示している。この図では、コンピュータシミュレーション図を示すこの文書内の他の図と同様に、リベットおよび被加工物内の応力レベルのみが示されている。すなわち、ダイ、ノーズ、およびパンチ内の応力レベルは示されていない。
【0048】
図3aは、リベット取付けプロセスの第1の段階を示している。被加工物40は、対向するノーズアセンブリ16とダイ13との間に受容されて示されている。被加工物は、2.0mmの厚さを有するアルミニウム7075 T61Aの上部シート40aと、3.0mmの厚さを有するアルミニウム7075 T61Aの下部シート40bと、を備える。
【0049】
ダイ13は、DG11-100(Atlas Copco IAS UK limitedより入手可能)であり、(ダイの軸線に対して平行な)深さAが1.0mmのダイ空洞21を有する。
【0050】
図3bは、リベット取付けプロセスの第2の段階を示す。リベット42は、パンチ44によって被加工物40の上部シート40a内に打ち込まれる。
【0051】
図示のリベット取付けプロセスでは、リベット42は、パンチ44によってダイ13に向かって380mm/sの速度および約70kNの最大駆動力で打ち込まれる。
【0052】
この場合、リベット42はBG0G46Eセルフピアッシングリベット(Atlas Copco IAS UK limitedより入手可能)である。リベット42は、頭部42aと、中央リベット空洞42cを画定する部分的に中空の軸部42bと、を有する。
【0053】
図3bにおいて、リベット42の軸部42bの先端が被加工物40の上部シート40a内に打ち込まれ、その結果、上部シート40aの材料の一部が中央リベット空洞42cによって受容される。被加工物の上部シート内にリベットが打ち込まれることにより、被加工物の下部シートは、被加工物40の下部シート40bの一部分がダイ13のダイ空洞21内に受容されるように変形する。
【0054】
リベット軸部の先端は、材料の上部シートの60~70%(シートの厚さに関して)入り込んでいる。中央リベット空洞の容積(リベット中空部の容積とも呼ばれ得る)の約30~40%が、被加工物の上部シートの材料で充填される。高レベルの応力(約2000MPa)がリベットの軸部の先端に観測される。被加工物の下部シートは、ダイ空洞の底部を画定する表面と接触している。ダイ空洞の底部に接触する被加工物の部分内の応力は、650MPaの領域にある。材料だれ(roll over)(図4に関連してより詳細に後述する)が、ダイ半径方向前縁21aに存在する。ダイ半径方向前縁21aは、被加工物と接触するダイの上面の部分であり、この段階の間に被加工物と接触するダイ空洞の底部を画定する上面の部分の半径方向外側に離隔しているが、半径方向に最も近い部分である。ダイ半径方向前縁は、被加工物の下部シート内に圧痕を形成している。
【0055】
この図およびこれ以降の図において、被加工物内の矢印は、リベットが被加工物に打ち込まれている結果として被加工物の関連部分に及ぼされる力の相対的な大きさおよび方向を示す。
【0056】
図3cは、リベット取付けプロセスの第3の段階を示す。この段階では、リベットは、被加工物内にさらに打ち込まれており、リベットの軸部が被加工物40の上部シート40aを完全に貫通し、リベット42の軸部42bの先端が被加工物の下部シート40bに接触している。被加工物の上部シートの材料は、中央リベット空洞をほぼ完全に充填している。第2の段階と比較して、第3の段階では、被加工物40の下部シート40bのより多くの部分がダイ13のダイ空洞21内に受容されるように、被加工物の下部シートがさらに変形されている。これはまた、第2の段階と比較して、第3の段階では、被加工物(特に、下部シート)のダイ圧痕がより大きいとも言える。第2の段階と比較して、第3の段階におけるリベットの軸部42bは、リベットの中心長手方向軸線に対してわずかに外側に広がっている。
【0057】
この段階では、リベット(特に、リベットの軸部の先端)は、上部シート材を完全に貫いている。約2000MPaの応力が、リベット軸部の先端からリベット軸部の長さを通って伝播している。中央リベット空洞の容積の約90%以上が、被加工物の上部シートの材料で充填されている。リベットの軸部の広がりの開始は、リベットの軸部の先端が被加工物の下部シートを穿刺し始めるときに見られる。被加工物の下部シートの材料は、ダイの中心から、ダイ空洞内で、ダイ空洞の側壁21bに向かって半径方向に流れ始めている。
【0058】
図3dは、リベット取付けプロセスの第4の段階を示している。この段階では、リベット42の軸部42bの先端が被加工物の下部シート40b内にわずかに侵入しているように、リベットが被加工物内にさらに打ち込まれている。第3の段階と比較して、第4の段階では、被加工物40の下部シート40bのより多くの部分がダイ13のダイ空洞21内に受容されるように、被加工物の下部シートがさらに変形されている。第3の段階と比較して、第4の段階におけるリベットの軸部42bは、リベットの長手方向軸線に対してわずかに外側に広がっている。
【0059】
この段階では、(軸線に平行な)リベットの長さの約50%超が被加工物内に挿入されており、軸部の先端は被加工物の下部シートに侵入している。中央リベット空洞の容積は、被加工物の材料で完全に充填されている。被加工物の下部シートの材料は、ダイ空洞内で半径方向外側に流れ続ける。被加工物の下部シートと、ダイ空洞21の半径方向外側にあるダイのリム21dを画定するダイの上面の略半径方向の略平坦な部分21cとの間に撓みが存在する。この撓みは、リベット挿入中の(リベットおよびダイによって及ぼされる)被加工物への高レベルの圧縮力、および被加工物の下部シート内の高い張力によるダイ内の被加工物の下部シートの材料の半径方向の流れによって引き起こされる。
【0060】
図3eは、リベット取付けプロセスの第5段階を示している。この段階では、リベット42の軸部42bのより多くが被加工物の下部シート40b内に侵入しているように、リベットが被加工物内にさらに打ち込まれている。第4の段階と比較して、第5の段階では、被加工物40の下部シート40bのより多くの部分がダイ13のダイ空洞21内に受容されるように、被加工物の下部シートがさらに変形されている。第4の段階と比較して、第5の段階におけるリベットの軸部42bは、リベットの長手方向軸線に対してわずかに外側に広がっている。
【0061】
この段階では、(軸線に対して平行な)リベットの長さの約75%超が被加工物内に挿入されている。リベットおよび被加工物の上部シートの変位により、被加工物の下部シートがさらに半径方向外側方向に流れる。ダイ空洞(ダイポケットとも呼ばれ得る)から流出する被加工物の材料は、ダイ空洞の底部を画定するダイの表面上の被加工物によって及ぼされる圧縮力と組み合わせられて、シートの撓みを増大させ、被加工物40に「皿形に変形した(dished)」外観を与える。
【0062】
第2の段階でダイ半径方向前縁21aに形成された最初のロールオーバ圧痕は、この圧痕がダイのリム21dを画定するダイの上面の略平坦な部分21cの上に位置するように、下部シートがダイ半径方向前縁21aの上を半径方向外側に移動するにつれて半径方向外側に移動している。
【0063】
図3fは、リベット取付けプロセスの最終的な第6の段階を示している。この段階では、リベット42の軸部42bのさらに多くが被加工物の下部シート40b内に侵入するように、リベットが被加工物内にさらに打ち込まれている。加えて、リベットの頭部42aは、リベットの頭部42aが被加工物の上部シートの上面の部分と実質的に同一平面になるようにパンチによって打ち込まれている。第5の段階と比較して、第6の段階では、被加工物40の下部シート40bのより多くの部分がダイ13のダイ空洞21内に受容されるように、被加工物の下部シートがさらに変形されている。第5の段階と比較して、第6の段階におけるリベットの軸部42bは、リベットの長手方向軸線に対してわずかに外側に広がっている。リベットの軸部が被加工物の上部シートおよび下部シートの両方によって受容されることと、リベットの軸部が外側に向かって広がることとの組合せにより、リベットと被加工物の上部シートおよび下部シートとの間に噛み合いが形成され、したがって、被加工物の上部シートと下部シートとの間に継手が形成される。
【0064】
第6の段階では、リベットの頭部42aの下側42dは、下側42dが被加工物の頂部シート40aとほぼ同一平面になるように着座させられる。リベットと被加工物のシートとの間(したがって、被加工物のシート自体の間)の最大の噛み合いが、ここでは達成されている。残りのリベット取付けプロセス中に形成された被加工物の上部シートと下部シートとの間の隙間は、上部シートと下部シートとを互いに締め付けるリベットの頭部42aの作用によってここで縮小される。被加工物の底部シートは、最大の半径方向変位を達成している。プロセスのこの段階では、リベット取付けプロセス中のいかなる時点でも被加工物に一切接触しないダイの上面の部分があることが分かる。被加工物の下部シートの大部分がリベット取付けプロセス中にダイ(特に、ダイ空洞を形成するダイの表面の部分)に接触しないことを考えると、被加工物の下部シートの前記部分は、リベット取付けプロセス中に支持されていないという結果になる。これにより、ダイに対する被加工物の過度の移動および/または亀裂の発生が生じ得ることになり、その結果、被加工物のシート間のリベット継手が不十分になり得る。
【0065】
第2の段階でダイ半径方向前縁21aに形成された被加工物の下部シート内の圧痕は、ダイのリム21dを画定するダイの上面の略平坦な部分21cの上に依然としてある。リベット頭部位置の最終的な着座によって、このエリアにさらなる応力がかかる可能性がある。
【0066】
図4は、被加工物内に取り付けられているリベットの特定の段階における、図3の既知のリベット取付け工具、リベット、および被加工物を通る拡大コンピュータシミュレーション断面図である。特に、図は、上述したようなリベット取付けプロセスの第4の段階が示されている。
【0067】
既に論述したように、ダイ半径方向前縁21aは、被加工物40の下部シート40b内に圧痕40cを作り出す。リベット取付けプロセスが継続すると、例えば、図4に示すような第4の段階によって、圧痕40cは、下部シート40bの材料の半径方向外側への変位の間に改質または発展して小さな重なりまたは折り目40dを形成する。
【0068】
リベット取付けプロセスが進行すると、折り目は、被加工物の下部シートの半径方向外側への移動により、ダイ半径方向前縁で圧縮される。折り目は、ほぼ完全に圧縮されて、ダイ空洞内の下部シートの外面の残りの部分と同一線上の面を形成し得る。しかしながら、圧縮された折り目と下部シートの外面の残りの部分との間にはわずかな隙間が残る。この小さな隙間により、上述のリベット取付けプロセスを使用して形成されたリベット継手に周方向および/または半径方向の亀裂が生じる可能性があると考えられる。明らかに、リベット継手内に亀裂が形成される可能性は、被加工物のシート間のそのようなリベット継手が不十分であることを意味する。
【0069】
ダイの既知の形状に対するリベット取付けプロセスに関する上記の問題を考慮して、本出願人は、不十分な継手形成の問題に対するいくつかの代替的な解決策を検討した。
【0070】
第1に、被加工物の下部シート内の圧痕に起因する亀裂が圧縮された折り目に発展する可能性を低減するために、本出願人は、より多くの材料を収容するためにダイ空洞の容積を増加させ、ダイ内の材料変位の量を潜在的に減少させることを検討した。
【0071】
第2に、リベット取付けプロセス中に被加工物の下部シートの大部分がダイに接触していない(したがって、支持されていない)ことに起因するダイに対する被加工物の過度の移動および/または亀裂の発生を低減するために、本出願人は、リベット取付けプロセス中の被加工物の変形中に被加工物の下部シートの表面との接触がより大きいダイプロファイルを検討した。被加工物の下部シートとのより大きな接触を有するそのようなダイプロファイルは、継手内の圧力および応力集中を低減し、したがって亀裂の可能性を低減させると考えられる。選択されたダイプロファイルは、材料の自然な流れおよび挙動を考慮し、望ましくない材料の流れを制限する。
【0072】
図5は、リベットが被加工物内に取り付けられる際の異なる段階における、本発明の一実施形態によるリベット取付け工具、リベット、および被加工物の一部分を通るコンピュータシミュレーション断面図である。
【0073】
図5に示すリベット取付け工具と図3および図4に示す既知のリベット取付け工具との唯一の違いは、ダイ13’が既知のダイの代わりに本発明の一実施形態によるダイであることである。
【0074】
ここでも、使用されるリベット42はBG0G46Eであり、被加工物40は、厚さ2.0mmの7075 T61A(7000系)アルミニウムの上部シート40aと、厚さ3.0mmの7075 T61A(7000系)アルミニウムの下部シート40bと、を備える。リベット取付け作業中のダイ13’に向かうパンチ44の速度は380mm/sであり、リベット取付け作業中にパンチがリベットに及ぼし得る最大力は約70kNである。
【0075】
ダイ13’は、中心軸線を中心とした略円筒形であり、開口したダイ空洞21’を画定する頭部(または主本体)20’と、中心軸線に沿って延在しかつ主本体20’と比較して縮径された垂下ステム(図示せず)と、を備える。
【0076】
主本体20’は、中心軸線Bを中心とした略円筒形である。主本体20’は、上面20a’を有する。ダイ空洞21’は、上面20a’に形成されており、中心軸線B上に配置されている。ダイ空洞21’は、上面20a’に配置された隆起した環状リム21d’によって境界付けられている。外側ランド20b’は、環状リム21d’を縁取り上面20a’に配置されている。外側ランド20b’は、環状リム21d’の半径方向外側に配置されている。本実施形態では、外側ランド20b’は、略平坦な、略半径方向の表面であり、すなわち、中心軸線Bに対して略垂直に位置する。他の実施形態では、これはそのようである必要はない。
【0077】
中心軸線Bに平行な(かつダイのステムがダイの主本体から垂下する方向とは反対の方向の)リム21d’の最大高さCは、ダイ空洞の最大高さDおよび外側ランドの最大高さEよりも大きい。本実施形態では、ダイ空洞の最大高さDは外側ランドの最大高さEよりも小さい。他の実施形態では、ダイ空洞の最大高さおよび外側ランドの最大高さは同じであってもよく、またはダイ空洞の最大高さは外側ランドの最大高さよりも大きくてもよい。
【0078】
環状リム21d’は、第1の環状面21e’と、第1の環状面21e’の半径方向外側にある第2の環状面21f’と、を備える。第1の環状面は、既知のダイ形状に関して上述したダイ空洞21の側壁21bと概ね同等であり、したがって、第1の環状面は、ダイ空洞の側壁と呼ぶことができる。
【0079】
第1の環状面21e’は、第2の環状面21f’の第2の勾配よりも大きい第1の勾配を有する。勾配の各々は、軸線に沿った関連する面の位置の変化率の大きさを、関連する面に沿った半径方向の位置の関数として定義したものである。換言すれば、勾配は、関連する面上の半径方向の位置の関数としての、軸線に対して平行な方向における関連する面の位置の変化率の大きさである(すなわち、表面が軸線に向かって内側に向いているか、軸線から離れて外側に向いているかによる影響は受けない)。
【0080】
特定の面の勾配は、以下のように、従来の方法で面上の2つの別個の点を参照して決定することができる。面上の第1の点が半径方向の位置(すなわち、軸線からの距離)R1および軸線方向の位置(軸線に沿った所与の点からの距離)A1を有し、面上の第2の点が半径方向の位置R2および軸線方向の位置A2(軸線に沿った同じ所与の点からの距離)を有する場合、表面の勾配Gは、以下によって与えられる。
G=|(A1-A2)/(R1-R2)|
【0081】
比較的大きな勾配を有する面は、比較的急であると言うことができ、比較的小さな勾配を有する面は、比較的緩やかであると言うことができる。
【0082】
第1の環状面21e’は内方、すなわち軸線に向かう方向を向いており、第2の環状面21f’は外側、すなわち軸線から離れる方向を向いている。
【0083】
本実施形態では、環状リム21d’は、第1の環状面21e’と第2の環状面21f’との間に配置された中間面21g’を備える。中間面は、略半径方向であり、すなわち、軸線に対して略垂直な方向に延在する。中間面は、略平坦な面であってもよく、または湾曲した略半径方向の部分であってもよい。
【0084】
第2の環状面21f’は、第1の環状面21e’よりも半径方向の広がりが大きい。すなわち、第2の環状面21f’上の2点間の半径方向の最大間隔は、第1の環状面21e’の2点間の最大半径方向間隔よりも大きい。
【0085】
図5に示すリベット取付けプロセスの段階は、図3に関連して既に述べたものと同等である。しかしながら、図5に示すリベット取付けプロセスと図3に示すリベット取付けプロセスとの間のいくつかの相違点を以下に述べる。
【0086】
上部シート材穿刺段階とも呼ばれ得る図5bに示す第2の段階では、リベット42の軸部の先端は、被加工物40の上部シート40aの厚さを通って約40~50%侵入している。中央リベット空洞の容積の約40%が、被加工物の上部シートの材料で充填されている。リベットの軸部の先端には、2000MPa程度の高レベルの応力が存在する。被加工物の下部シート40bは、リム21d’と接触しており、650MPaの領域の応力を受ける。下部シート40bは、ダイ空洞21’の容積の約50%を充填している。ダイ空洞内に受容された被加工物の下部シートの部分(および、ダイ空洞内に受容された部分の上方にある被加工物の下部シートの部分)は、より低い応力を受ける。
【0087】
上部シート穿刺段階とも呼ばれ得る図5cに示す第3の段階では、リベット42(特に、リベットの軸部の先端)は、被加工物の上部シート40aを完全に貫通している。2000MPaの領域の応力が、リベット軸部の先端からリベット軸部の全長にわたって伝播している。中央リベット空洞は、被加工物の上部シートの材料によって完全に充填されている。広がりの開始(すなわち、リベットの軸部が、リベットの長手方向軸線から外側に変形し始めること)は、リベット軸部の先端が被加工物の下部シートを穿刺し始めるときに見ることができる。ダイ空洞は、今や被加工物の下部シートの材料で完全に充填され、ダイ空洞内に受容された被加工物の下部シートの部分は、250MPaの領域の応力を示す。被加工物の下部シートの材料は、ダイの上面の上を、特に、ダイ20’のリム21d’の上を半径方向外側に流れ続ける。
【0088】
広がり開始段階とも呼ばれ得る図5dに示す第4の段階では、(軸線に対して平行な)リベットの長さの約60%以上が被加工物に挿入されており、先端が被加工物の下部シートに侵入している。中央リベット空洞は依然として完全に充填されている。リベット軸部は、被加工物の底部シート内に広がり始めている。ダイ空洞は、被加工物の底部シートの材料によって完全に充填されている。被加工物の下部シートは、ダイのリムの表面に沿って半径方向外側に広がり続けている。特に、被加工物の下部シートは、第2の環状面21f’に沿って流れ、第2の環状面21f’との接触を維持する。外側ランド20b’と被加工物の下部シートとの間には、概ね上方向の撓みが存在する。
【0089】
リベット広がりおよび材料乗越え段階とも呼ばれ得る図5eに示す第5の段階では、(軸線に対して平行な)リベットの長さの約75%以上が被加工物内に挿入されている。リベットは、被加工物の下部シート内に噛み合い、それによって、被加工物の上部シートおよび下部シートを噛み合わせる。リベットおよび被加工物の上部シートの材料の変位により、被加工物の下部シートの材料がダイの表面を横切ってさらに流れる。ダイ空洞から流出する被加工物の下部シートの材料は、被加工物によってダイ空洞の底面に及ぼされる圧縮力と組み合わせられて、シートの撓みを増大させ、被加工物に「皿形に変形した(dished)」外観を与える。
【0090】
リベット頭部同一平面段階またはサイクル終了段階とも呼ばれ得る図5fに示す第6の段階では、リベットの頭部の下側は、下側が被加工物の頂部(または上部)シートとほぼ同一平面になるように着座させられる。ここでは、リベットと被加工物の下部シートとの間、したがって被加工物の上部シートと下部シートとの間で、最大の噛み合いが達成されている。被加工物の下部シートの材料は、半径方向の最大変位を達成している。これは、ダイの上面が被加工物の下部シートに一切接触していない領域を強調する。
【0091】
図3fに示すように、既知のダイを使用するリベット取付けプロセスの第6の段階を、本発明によるダイを使用するリベット取付けプロセスの第6の段階と比較すると、本発明によるダイを使用して形成された継手は多くの利点を有することが分かる。
【0092】
第1に、本発明によるダイの場合、被加工物の下部シートの下面のより大きな表面積がダイと接触する。これは、リベット取付けプロセス中に被加工物がダイによってより多く支持されていることを意味する。リベット取付けプロセス中の被加工物の支持がより大きくなると、形成された継手における応力および望ましくない変形がより小さくなり、したがって継手の品質が向上する。
【0093】
第2に、本発明によるダイでは、ダイ空洞の底部/側壁と被加工物の下部シートとの間には隙間がない。逆に、既知のリベット形状の場合に存在する隙間は、リベット取付けプロセス中に、ダイ半径方向前縁が被加工物の下部シートに接触する点で余分な応力が生じることを意味する。既に述べたように、この結果、被加工物の下部シート内に圧痕が生じ、最終的に下部シートの材料に圧縮された折り目が形成され、したがって継手に亀裂が生じる可能性がある。本発明によるダイを使用することに起因する隙間の欠如は、継手の亀裂のリスクが低減されたより良好な継手をもたらす。
【0094】
第3に、本発明によるダイを使用して形成された継手は、既知の形状のダイを用いて形成された継手とは異なり、リベットに隣接する被加工物の上部シートと下部シートとの間にいかなる隙間も含まない。被加工物のシート間に隙間が無いことは、2つのシート間の継手がより強く、より安定していることを意味する。
【0095】
最後に、本発明によるダイを使用するリベット取付けプロセスを受けた被加工物の「皿形変形(dishing)」は、既知の形状のダイを使用してリベット取付けプロセスを受けた被加工物のものと比較して大幅に低減される。「皿形変形」自体は、リベットによって形成される継手の品質に悪影響を及ぼさないが、「皿形変形」は、結果として得られるリベット締めされた被加工物の形状が変形させられることを意味する。これは、美観上望ましくない可能性があり、かつ/または被加工物が正しく機能できることを妨げる可能性がある。
【0096】
本発明によるダイを使用して形成された継手の利点のすべては、隆起した環状リムの外側に外側ランドが存在すること、特に、外側ランドが環状リムの高さよりも小さい高さを有することに起因する。このようにして、リベット取付けプロセス中に、環状リムおよび外側ランドは協働して、被加工物の下部シートの材料がダイ空洞から離れるように移動する際に、被加工物の下部シートの材料をダイに向かって半径方向外側かつ下方に誘導するのを助ける。
【0097】
隆起した環状リムは、さらなる利点を提供する。図3に見られるように、既知のダイ形状では、リベット取付け作業中、被加工物の下側に接触するダイの最初の部分は、リベットが被加工物を穿刺する場所からかなりの半径方向距離にある外側リム21cである。このことは、リベットの下の被加工物の部分が、ダイ空洞の基部を形成するダイの上面の部分に接触するように被加工物が変形されるまで、最初は支持されないことを意味する。対照的に、図5に明確に見られるように、本発明によるダイでは、リベットが被加工物を穿刺する場所の、被加工物の概ね下にある位置に隆起したリムが存在するため、リベット締め作業中にリベットの下にある被加工物の部分は、リベット締め作業の全体にわたってダイによって支持される。これは、リベット取付けプロセス中に被加工物がダイによってより多く支持されていることを意味する。リベット取付けプロセス中の被加工物の支持がより大きくなると、形成された継手における応力および望ましくない変形がより小さくなり、したがって継手の品質が向上する。
【0098】
いくつかの実施形態では、環状リム21d’の前記最大高さを有する部分21g’の軸線Bに対して垂直な最小直径Fは、ダイが使用されるように構成されているリベットの軸部外径Sよりも小さい。特に、環状リムの前記最大高さを有する部分は、使用時に軸線Bに沿って延在しかつリベット取付け装置のパンチに最も近い環状リムの部分である。本実施形態では、それはダイ空洞の半径方向外側に隣接している。リベットの軸部外径Sは、(リベットの長手方向軸線に対応する)軸線Bに対して垂直な直径である。誤解を避けるために、リベットが非取付け(unset)状態(すなわち、リベットを使用してリベット取付け装置によってリベット締め作業が実施される前)にあるときに、軸部外径が測定される。軸部外径は、リベットの軸部の外面(すなわち、半径方向外側に面する表面)の直径である。通常、リベットの軸部の外面は、軸線に対して平行に延びるリベットの軸部の表面である。しかしながら、リベットの軸部の外面が軸線に対して平行に延びていないリベットの実施形態では、軸部外径は、リベットの軸部の先端の最大直径であると考えることができる。
【0099】
ダイが使用されるように構成されたリベットの軸部外径よりも小さい環状リムの最大高さ部分の最小直径を有することにより、これは、(図5cから図5fに示すように)リベットの軸部が外向きに広がる際に、隆起した環状リムの上にリベットの軸部を誘導するのに役立つ。これは、リベットが一貫した方法で変形するのを助け、それにより、リベット内の応力を低減し、リベットと被加工物との間の噛み合いを強化するのを助け、したがってより高品質の接合をもたらし得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、環状リム21d’の前記最大高さを有する部分21g’の、軸線Bに対して垂直な最小直径Fは、ダイが使用されるように構成されたリベットの軸部内径Iよりも大きい。リベットの軸部内径Iは、(リベットの長手方向軸線に対応する)軸線Bに対して垂直な直径である。誤解を避けるために、リベットが非取付け状態(すなわち、リベットを使用してリベット取付け装置によってリベット締め作業が実施される前)にあるときに、軸部内径が測定される。軸部内径は、リベットの軸部の内面(すなわち、半径方向内側に面する表面)の一部分の直径であり、前記一部分は、軸線に対して平行に延びる/横たわる。
【0101】
いくつかの実施形態では、ダイ空洞は、以下でより詳細に論述するタイプの中央中空部を含み得る。これらの実施形態のうちのいくつかは、以下でより詳細に論述するタイプのテーパ領域を含み得る。
【0102】
図6は、リベットが被加工物内に取り付けられる際の異なる段階における、本発明の別の実施形態によるリベット取付け工具、リベット、および被加工物の一部分を通るコンピュータシミュレーション断面図を示している。
【0103】
図6に示すリベット取付け工具と図3および図4に示す既知のリベット取付け工具との唯一の違いは、ダイ13”が既知のダイの代わりに本発明の一実施形態によるダイであることである。
【0104】
ここでも、使用されるリベット42はBG0G46Eであり、被加工物40は、厚さ2.0mmの7075 T61A(7000系)アルミニウムの上部シート40aと、厚さ3.0mmの7075 T61A(7000系)アルミニウムの下部シート40bと、を備える。リベット取付け作業中のダイ13”に向かうパンチ44の速度は380mm/sであり、リベット取付け作業中にパンチがリベットに及ぼし得る最大力は約65kNである。
【0105】
ダイ13”は、中心軸線を中心とした略円筒形であり、開口したダイ空洞21”を画定する頭部(または主本体)20”と、中心軸線に沿って延在しかつ主本体20”と比較して縮径された垂下ステム(図示せず)と、を備える。
【0106】
主本体20”は、中心軸線Bを中心とした略円筒形である。主本体20”は、上面20a”を有する。ダイ空洞21”は、上面20a”’内に形成されており、中心軸線B上に配置されている。ダイ空洞21”は、上面20a”の略半径方向の基部部分21h”によって部分的に画定されている。すなわち、基部部分21h”は略平坦であり、実質的に半径方向に延在する。換言すれば、基部部分21h”は、軸線Bに対して実質的に垂直な平面に横たわる。ダイ空洞21”は、上面に配置された隆起した環状リム21d”によって境界付けられている。リム21d”は、上面20a”のリム部分21i”によって少なくとも部分的に画定されている。本例では、リム部分は、軸線に対して概ね垂直な方向に延在する。しかしながら、他の実施形態では、このようにする必要はない。上面20a”は、基部部分21h”およびリム部分21i”に隣り合う移行部分21j”を有する。
【0107】
図7に最もよく見られるように、移行部分21j”は、第1のセクション21k”および第2のセクション21l”を含む。第1のセクション21k”は、第2のセクション21l”の半径方向内側に配置されている。図には、いくつかの曲率半径を示す注釈が付けられている。第1のセクション21k”は、軸線Bが位置する平面に曲率半径R1を有し、これは第2のセクション21l”の前記平面の曲率半径R2よりも小さい。
【0108】
第1のセクション21k”の(軸線Bが位置する平面における)曲率中心C1は、上面の移行部分の第1のセクションの上方に配置されており、第2のセクションの曲率中心C2は、上面の移行部分の第2のセクションの下方に配置されていることが分かる。説明におけるこの部分の文脈内で、上方および下方という用語が使用される場合、上方は、使用時に被加工物がダイと接触する場所に向かう方向を意味し、下方は、使用時に被加工物がダイと接触する場所から離れる方向を意味する。
【0109】
図6に示すリベット取付けプロセスの段階は、図3に関連して既に論述したものと同等である。しかしながら、図6に示すリベット取付けプロセスと図3に示すリベット取付けプロセスとの間のいくつかの相違点を以下に論述する。
【0110】
上部シート材穿刺段階としても知られる図6bに示す第2の段階では、リベットの軸部の先端は、被加工物の上部シートの厚さの50~60%に侵入している。中央リベット空洞42cの容積の約30%が、被加工物40の上部シート40aの材料で充填されている。リベットの軸部の先端には、約1900MPaの高レベルの応力が見られる。被加工物の下部シートは、ダイ空洞の底部21h”と接触している。ダイ空洞の上方の被加工物内の応力は、650MPaの領域にある。
【0111】
上部シート穿刺段階としても知られる図6cに示す第3の段階では、リベット(特に、リベットの軸部の先端)は、被加工物の上部シートを完全に貫通している。約2000MPaの応力が、軸部の先端から軸部の長さを通して伝播している。中央リベット空洞42cの容積全体が、被加工物の上部シートの材料によって充填されている。広がりの開始は、リベットの軸部の先端が被加工物の下部シートを穿刺し始めるときに見ることができる。良好なレベルのダイ圧痕(すなわち、材料がダイの上面のプロファイルに適合するように変形するとき)が被加工物の下部シート内に見られる。被加工物の下部シートの材料は、半径方向外側に流れ始めている。
【0112】
広がり開始段階としても知られ得る図6dに示す第4の段階では、(軸線に平行な)リベットの長さの約50%超が被加工物内に挿入されており、リベットの軸部の先端が被加工物の下部シートに侵入している。中央リベット空洞の容積は、被加工物の材料で完全に充填されている。被加工物の下部シートの材料は、ダイ空洞を充填し続け、ダイの上面の移行部分に沿って半径方向外側に移動し続ける。ダイ表面の平坦な外側リム部分と被加工物の下部シートとの間には、撓みが存在する。この撓みは、被加工物の下部シートがリム部分においてダイの表面の上方に離隔するようなものである。この撓みは、リベット挿入中の高レベルの圧縮、およびダイ空洞内での被加工物の下部シートの材料の高レベルの張力の半径方向の流れによって引き起こされる。
【0113】
リベット広がりおよび材料乗越え段階としても知られ得る図6eに示す第5の段階では、(軸線に対して平行な)リベットの長さの約80%超が被加工物内に挿入されており、リベットは被加工物の下部シート内に噛み合いを形成している。リベットおよび被加工物の上部シートの変位により、被加工物の下部シートが半径方向にさらに外側に流れる。ダイ空洞から流出する被加工物の下部シートの材料は、ダイ空洞の底部の表面に被加工物によって及ぼされた圧縮力と組み合わせられて、シートの撓みを増大させ、被加工物に「皿形に変形した(dished)」外観を与える。材料の皿形変形は、被加工物の材料をダイの上面の移行部分およびリム部分から離れるように上方に乗り越えさせ続ける。
【0114】
リベット頭部同一平面段階またはサイクル終了段階としても知られる図6fに示す第6の段階では、リベットの頭部の下側が着座させられており、その結果、リベットの頭部の下側は被加工物の上部シートとほぼ同一平面になる。ここでは、リベットと被加工物の下部シートとの間、したがって被加工物の上部シートと下部シートとの間で、最大の噛み合いが達成される。被加工物の上部シートと下部シートとの間の隙間は、リベットの頭部がシートを互いに締め付けることによって縮小される。
【0115】
被加工物の下部シートの材料は、最大半径方向変位を達成している。これは、ダイの上面が被加工物の下部シートに一切接触しない領域を強調する。
【0116】
下部シートとダイとの間の撓みによる被加工物の皿形に変形した(dished)外観は、完成した継手に残る。しかしながら、完成した継手は、既知の形状のダイを用いて形成された継手よりも改善されている。これについては、以下でより詳細に論述する。
【0117】
図3fに示すように、既知のダイを使用するリベット取付けプロセスの第6の段階を、図6fに示す本発明によるダイを使用するリベット取付けプロセスの第6の段階と比較すると、本発明によるダイを使用して形成された継手はいくつかの利点を有することが分かる。
【0118】
第1に、本発明によるダイの場合、被加工物の下部シートの下面がより大きな表面積でダイと接触する。これは、リベット取付けプロセス中に被加工物がダイによってより多く支持されていることを意味する。リベット取付けプロセス中の被加工物の支持がより大きくなると、形成された継手における応力および望ましくない変形が小さくなり、したがって継手の品質が向上する。
【0119】
第2に、本発明によるダイでは、ダイ空洞の底部/側壁と被加工物の下部シートとの間には隙間がない。既知のリベット形状の場合に存在する隙間は、リベット取付けプロセス中に、ダイ半径方向前縁が被加工物の下部シートに接触する点で余分な応力が生じることを意味する。既に論述したように、これは、被加工物の下部シート内に圧痕をもたらし、最終的に下部シートの材料に圧縮された折り目を生じさせ、したがって継手の亀裂をもたらし得る。本発明によるダイの使用に起因する隙間の欠如は、継手の亀裂のリスクが低減されたより良好な継手をもたらす。
【0120】
第3に、本発明によるダイを使用して形成された継手は、既知の形状のダイを用いて形成された継手とは異なり、リベットに隣接する被加工物の上部シートと下部シートとの間にいかなる隙間も含まない。被加工物のシート間に隙間が無いことは、2つのシート間の接合がより強く、より安定していることを意味する。
【0121】
本発明によるダイを使用して形成された継手の利益のすべては、ダイの上面が、第2のセクションの半径方向内側に配置された第1のセクションを有する移行部分を有し、第1のセクションは、第2のセクションの曲率半径よりも小さい曲率半径を有することに起因する。このようにして、リベット取付けプロセス中に、移行部分は、被加工物の下部シートの材料がダイ空洞から離れるように移動する際に、被加工物の下部シートの材料を半径方向外側に誘導するのを助ける。
【0122】
いくつかの実施形態では、ダイ空洞は、以下でより詳細に論述するタイプの中央中空部を含み得る。これらの実施形態のうちのいくつかは、以下でより詳細に論述するタイプのテーパ領域を含み得る。
【0123】
図8は、本発明のさらなる実施形態によるリベット取付け工具のダイを通る断面図である。
【0124】
ダイ13”’は、中心軸線Bを中心とした略円筒状であり、取付け工具に面する開口したダイ空洞21”’を画定する頭部(または主本体)20”’と、中心軸線に沿って(後述するダイの上面が面する方向とは反対の方向に)延在しかつ頭部20”’と比較して縮径された垂下ステム22”’と、を有する。
【0125】
主本体は上面20a”’を有し、ダイ空洞21”’は上面20a”’内に形成されている。ダイ空洞21”’は、中心軸線Bに沿って装着ステム22”’内に延在する中央中空部21m”’を含む。
【0126】
図9は、リベットが被加工物内に取り付けられる際の異なる段階における、本発明の一実施形態によるリベット取付け工具(図8に示すダイ13”’を含む)、リベット、および被加工物の一部分を通るコンピュータシミュレーション断面図を示している。図9aから図9fに示す段階の各々は、一般に、図3aから図3fの既知のリベット取付け装置に関連して示す段階と概ね同等である。
【0127】
リベットの中央中空部は、ダイがリベット取付けプロセスに関与するときに被加工物の下部シートからの材料が流れ込むことができる大きな容積を提供する。中空部の外側のダイの上面の残りは、リベット取付けプロセス中に十分な反力を被加工物に付与し、満足のいく継手を形成する。リベット取付けプロセス中に被加工物の下部シートの材料を中空部内に収容することにより、半径方向外側に流れる被加工物の下部シートの材料の量が減少する。リベット取付けプロセス中に半径方向外側に流れる被加工物の下部シートの材料の量を減少させることにより、被加工物の下部シート内の圧痕が圧縮された折り目に発展することに起因する亀裂の可能性が最小限に抑えられる。
【0128】
中央中空部の存在は、多くの他の利点を有する。
【0129】
中央中空部が事実上「無底(bottomless)」構造であることから、ダイ空洞は効果的な無制限の容積を有する。これには、リベット取付け作業の実施という観点からいくつかの利点がある。
【0130】
第1に、中空部は、リベットの頭部が被加工物の上面の下に収まるように、パンチがリベットを被加工物内に「過度に打ち込む(over-drive)」ことを可能にする。これは、被加工物に埋め込まれたリベットの通常よりも大きな容積の存在により、変位された被加工物の材料が中央中空部に受容されるためである。
【0131】
第2に、リベット取付け作業のためのパンチの駆動に伴う公差が増大される。リベット取付け装置のパンチが誤ってリベットを被加工物内に「過度に打ち込んだ」場合、これは問題にはならず、これは中空部が、被加工物内へのリベットの過度の打込みによって引き起こされた被加工物からの余分な材料を収容することができるからである。よって、本発明によるダイを含むリベット取付け装置は、既知の形状のダイを含むものと比較して改善されたプロセスウィンドウ(process window)を有すると言うことができる。
【0132】
第3に、従来のダイ形状では、ダイ空洞内の変位させられた被加工物の体積がダイ空洞の容積を超えるように、リベットが被加工物内に打ち込まれた場合、被加工物およびリベット(特に、リベットの軸部)内の圧力/応力は、被加工物およびリベットが圧縮されるにつれて増加することとなる。この結果、被加工物およびリベット内に追加の応力が生じ、形成された継手の品質に影響が生じる可能性がある。さらに、被加工物およびリベット内の応力が増加すると、ダイおよび/もしくはパンチまたはリベット取付け装置に及ぼされる力が増加することとなる。ダイおよび/またはパンチに及ぼされる力が増加すると、ダイおよび/またはパンチの動作寿命が短縮し得る。さらに、パンチに及ぼされる力が増加することは、増加した力に耐えることができる、パンチを駆動するためのより高価なアクチュエータが必要とされ得ることを意味し得る。中空部を組み込んだ本発明によるダイ形状は、これらの潜在的な問題を克服する。すなわち、被加工物は中央中空部によって受容され得るため、ダイ空洞は被加工物によって決して完全には充填されない。加えて、本発明によるダイを利用したリベット取付け作業中のリベット内の応力の低減は、従来の形状のダイと比較してより柔らかいリベットを使用できることを意味し得る。
【0133】
最後に、中央中空部が効果的に無制限の体積の材料を収容することができることから、本発明によるダイを利用することができる被加工物(およびリベット形状)に関してより大きな柔軟性が得られる。特に、既存のダイは、ダイ空洞の規定された容積を前提として、特定の被加工物(シートの規定された総厚を有する)および/またはリベット形状での使用にのみ最適であり得るが、本発明によるダイは、比較的広範囲の被加工物の総厚および/またはリベット形状での使用に適し得る。これは、異なるダイを使用する必要なく、同じダイを広範囲の異なるリベット取付け作業に使用できるため、有利である。したがって、既知のタイプのいくつかの異なるダイの代わりに本発明のタイプの単一のダイを使用することができ、それにより、いくつかの異なるリベット取付け作業を実施するために必要なダイの数およびコストを削減できる。
【0134】
本実施形態では、中央中空部21m”’は、装着ステム22”’を全長に渡り貫通して延在する。これは、他の実施形態ではそうである必要はない。例えば、中央中空部は、リベットダイの頭部を貫通し延在してもよいが、装着ステムを部分的にのみ通ってもよい。
【0135】
しかしながら、装着ステムを全長に渡る貫通して延在する中央中空部は、いくつかの潜在的な利点を有する。
【0136】
第1に、中空部がダイを貫通して延在するという事実は、ダイを介して被加工物を検査および/または被加工物にアクセスすることが可能であることを意味する。これは、図10および図11に示すダイ13”’を含む本発明によるリベット取付け装置10の一部分を通る断面図を示す図12に明確に見ることができる。ダイ13”’の中央中空部21m”’は、下顎8の下側から顎、アダプタ18、およびダイ13”’を通ってダイの上方までずっと延在する導管46の一部を形成する。これにより、ダイの下からダイを通りダイの上方まで至るアクセスが提供され得る。前記アクセスは、「見通し線(line of sight)」として呼ばれ得る。
【0137】
この特徴のいくつかの潜在的な用途には、i)リベット取付け作業の間(被加工物がリベット取付け装置内に配置されていない間)にパンチの特性を分析すること、ii)リベット取付け装置内に配置されたときの被加工物の特性、例えば、被加工物の有無、被加工物の厚さ、被加工物の材料、リベット取付け作業後に被加工物の下側に形成された「ボタン」の品質を分析すること、およびiii)リベット取付け作業後にダイから被加工物を排出するのを助けるための貫通中空部を介した圧縮空気または工具を使用すること、が含まれる。
【0138】
加えて、中央中空部は、比較的小さい直径のものであり得る。これを考慮すると、中央中空部は、「無底」(または貫通中空部)構造を有しない場合、被加工物からの切り屑、破片、埃、および/またはめっきなどの形態の汚染の蓄積により、閉鎖され易いかまたは不自然な形状になり易い可能性がある。貫通中空部の存在により、あらゆる汚染が蓄積することなく、中央中空部を通って落下することができる。さらに、ダイの装着ステム端部の中空部の開口部から圧縮空気または別の洗浄剤を中空部内に送り込むことで、中央中空部の汚染を能動的に除去することが可能である。
【0139】
いくつかの実施形態では、中央中空部21m”’の軸線Bに対して垂直な直径T(または最小直径)は、ダイが使用されるように構成されたリベットの軸部外径Sよりも小さい。特に、直径は、中央中空部が装着ステムを通過する際の中央中空部の直径であり得る。ダイがテーパ領域を含む場合(下記参照)、直径Tはテーパ領域の直径でなくてもよい。リベットの軸部外径Sによって意味されるものは、既に上述されており、ここでも同様に適用される。
【0140】
ダイが使用されるように構成されたリベットの軸部外径よりも小さい中央中空部の直径を有することにより、これは、ダイの上面が被加工物(特にリベットの真下にある被加工物の部分)に十分な反力を及ぼすことを保証し、リベットが被加工物を完全には貫通(既に論述したように、これにより、継手の完全性が低下しかつ/または望ましくない腐食の影響を受け易くなり得る)しないことを保証する。
【0141】
いくつかの実施形態では、中央中空部21m”’の軸線Bに対して垂直な直径T(または最小直径)は、ダイが使用されるように構成されたリベットの軸部内径Iよりも大きい。リベットの軸部内径Iによって意味されるものは、既に上述されており、ここでも同様に適用される。代替的な実施形態では、中央中空部21m”’の軸線Bに対して垂直な直径T(または最小直径)は、ダイが使用されるように構成されたリベットの軸部内径Iよりも小さい。主本体20”’の上面20a”’は、ダイ空洞21”’を取り囲む外側環状壁を含む。環状壁またはリム21d”’は、上面20a”’のリム部分21i”’によって少なくとも部分的に画定されている。本例では、リム部分は、軸線に対して概ね垂直な方向に延在する。しかしながら、他の実施形態では、そうである必要はない。
【0142】
本実施形態のダイの上面は、図に見られるように、実質的にw字形の断面輪郭を有するダイ空洞を画定する。しかしながら、本発明は、中央中空部の存在に関して、ダイの任意の他の形状、例えば、ダイ空洞が、ダイ空洞の平坦な底部を画定するダイの上面の略半径方向の部分によって部分的に画定されているものに対しても同様に適用され得ることが理解されよう。そのようなダイの形状は、図10および図11に示されている。
【0143】
図10は、本発明のさらなる実施形態によるリベット取付け工具のダイを通る断面図を示している。ダイ空洞21”’は、上面20a”’の略半径方向の(平坦な)基部部分21h”’によって部分的に画定されている。図11は、リベットが被加工物にセットされる際の異なる段階における、本発明の一実施形態によるリベット取付け工具(図10に示すダイ13”’を含む)、リベット、および被加工物の一部分を通るコンピュータシミュレーション断面図を示している。図11aから図11fに示す段階の各々は、一般に、図3aから図3fの既知のリベット取付け装置に関連して示す段階と同等である。
【0144】
加えて、本発明の本態様による中央中空部は、図5から図7に関連して論述した本発明の他の態様によるダイ形状のいずれにも適用され得る。
【0145】
図8から図11に示す本発明の実施形態では、ダイ空洞21”’は、中空部21m”’に隣接しかつ中空部21m”’の半径方向外側にある、テーパ領域21n”’を含む。テーパ領域21n”’は、中空部の上端部、すなわち、ステム22”’から軸線Bに沿って最も遠くに配置された中空部の端部に配置されている。テーパ領域を画定する表面(またはダイの上面の一部分)は、軸線Bに面する。テーパ領域は、座ぐり(counter-sunk)領域/部分とも呼ばれ得る。
【0146】
テーパ領域は、被加工物の下部シートの材料の中空部内への変位を容易にするように作用し、それによって、上述の中空部の利益を最大化する。
【0147】
本明細書では、被加工物に対してリベット取付け作業を実施するためのリベット取付け装置の一部としての本発明によるダイの使用は、7000系アルミニウムの2枚のシートを備える被加工物に関連して説明される。本発明は、任意の適切なタイプの被加工物とともに使用され得ることが理解されよう。そのような被加工物は、任意の適切な材料のシート、2つ以上の任意の数のシート、および被加工物のシートの任意の適切な厚さを含み得る。
【0148】
さらに、本発明によるダイは、任意の適切な材料から形成された任意の適切なサイズおよび形状のリベットを利用するリベット取付けプロセスの一部として使用され得る。しかしながら、本発明は、セルフピアッシングリベットに最も関連性がある。
【0149】
リベット取付けプロセスを受ける被加工物は、任意の適切な被加工物であり得る。例えば、リベット取付けプロセスは、製品または製品の構成要素を製造するために用いられ得る。製品は、任意の適切な製品であり得る。場合によっては、製品は車両であり得る。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図3f
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図9e
図9f
図10
図11a
図11b
図11c
図11d
図11e
図11f
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
完全管状または半管状のセルフピアッシングリベットを被加工物内に取り付けるように構成されたリベット取付け工具用のリベットダイであって、前記リベットが、軸部外径Dを有し、前記リベットダイが、主本体と、前記主本体から垂下する装着ステムと、を備え、
前記主本体が、中心軸線を中心とした略円筒形であり、
前記主本体が、上面を有し、
ダイ空洞が、前記上面に形成されており、
前記ダイ空洞が、前記中心軸線に沿って前記装着ステムを貫通して延在する中央中空部を含み、
前記上面における前記中央中空部の直径が、前記軸部外径よりも小さい、
リベットダイ。
【請求項2】
前記主本体の前記上面が、前記ダイ空洞を取り囲む外側環状壁を含む、請求項1に記載のリベットダイ。
【請求項3】
前記ダイ空洞が、前記中空部に隣接しかつ前記中空部の半径方向外側にあるテーパ領域を含み、前記テーパ領域が、前記軸線に面する表面によって画定されている、請求項1または2に記載のリベットダイ。
【請求項4】
軸部外径Dを有する完全管状または半管状のセルフピアッシングリベットを被加工物内に挿入するように構成されたリベット取付け工具であって、該リベット取付け工具が、アクチュエータによって往復移動可能なパンチの下に配置された、請求項に記載のリベットダイを含む、リベット取付け工具。
【請求項5】
製品または製品の構成要素を製造する方法であって、該方法が、請求項4に記載のリベット取付け工具を使用して被加工物の2つ以上の層を互いに締結するステップを含み、前記アクチュエータが、前記パンチを前進させて、軸部外径Dを有する完全管状または半管状のセルフピアッシングリベットを前記被加工物内に取り付ける、方法。
【請求項6】
主本体を備えるリベットダイであって、
前記主本体が、中心軸線を中心とした略円筒形であり、
前記主本体が、上面を有し、
ダイ空洞が、前記上面に形成されておりかつ前記中心軸線上に配置されており、前記ダイ空洞が、前記上面の略半径方向の基部部分によって部分的に画定されており、
前記ダイ空洞が、前記上面に配置された隆起した環状リムによって境界付けられており、前記リムが、前記上面のリム部分によって少なくとも部分的に画定されており、
前記上面が、前記基部部分および前記リム部分に隣接する移行部分を有し、前記移行部分が、第1および第2のセクションを含み、前記第1のセクションが、前記第2のセクションの半径方向内側に配置されており、
前記第1のセクションが、前記軸線が位置する平面において、前記第2のセクションの前記平面における曲率半径よりも小さい曲率半径を有する、
リベットダイ。
【請求項7】
前記第1のセクションの曲率中心が、前記上面の前記移行部分の前記第1のセクションの上方に配置されており、前記第2のセクションの曲率中心が、前記上面の前記移行部分の前記第2のセクションの下方に配置されている、請求項6に記載のリベットダイ。
【請求項8】
アクチュエータによって往復移動可能なパンチの下に配置された、請求項に記載のリベットダイを含む、被加工物内にリベットを挿入するためのリベット取付け工具。
【請求項9】
製品または製品の構成要素を製造する方法であって、該方法が、請求項8に記載のリベット取付け工具を使用して被加工物の2つ以上の層を互いに締結するステップを含む、方法。
【請求項10】
リベット取付け工具用のリベットダイであって、該リベットダイが、主本体を備え、
前記主本体が、中心軸線を中心とした略円筒形であり、
前記主本体が、上面を有し、
ダイ空洞が、前記上面に形成されておりかつ前記中心軸線上に配置されており、
前記ダイ空洞が、前記上面に配置された隆起した環状リムによって境界付けられており、
外側ランドが、前記環状リムを縁取り前記上面に配置されており、かつ前記環状リムの半径方向外側に配置されており、
前記中心軸線に対して平行な前記リムの最大高さが、前記ダイ空洞の最大高さおよび前記外側ランドの最大高さよりも大きい、
リベットダイ
【請求項11】
前記外側ランドが、前記中心軸線に対して略垂直に位置するように略平坦である、請求項10に記載のリベットダイ。
【請求項12】
前記環状リムが、第1の環状面と、前記第1の環状面の半径方向外側にある第2の環状面と、を備え、前記第1の環状面が、前記第2の環状面の第2の勾配よりも大きい第1の勾配を有し、各勾配が、関連する面の、前記関連する面に沿った半径方向位置に応じた前記軸線に沿った位置の変化率の大きさとして定義されている、請求項10または11に記載のリベットダイ。
【請求項13】
軸部外径Dを有するリベットを取り付けるように構成されたリベット取付け工具用の、請求項10に記載のリベットダイであって、前記環状リムの前記最大高さを有する部分の、前記軸線に対して垂直な最小直径が、前記軸部外径Dよりも小さい、リベットダイ。
【請求項14】
アクチュエータによって往復移動可能なパンチの下に配置された、請求項10に記載のリベットダイを含む、被加工物内にリベットを挿入するためのリベット取付け工具。
【請求項15】
製品または製品の構成要素を製造する方法であって、該方法が、請求項14に記載のリベット取付け工具を使用して被加工物の2つ以上の層を互いに締結するステップを含む、方法。
【請求項16】
軸部外径Dを有するリベットを被加工物内に挿入するように構成されたリベット取付け工具であって、アクチュエータによって往復移動可能なパンチの下に配置された、請求項13に記載のリベットダイを含む、リベット取付け工具。
【請求項17】
製品または製品の構成要素を製造する方法であって、該方法が、請求項16に記載のリベット取付け工具を使用して被加工物の2つ以上の層を互いに締結するステップを含み、前記アクチュエータが、前記パンチを前進させて、軸部外径Dを有するリベットを前記被加工物内に取り付ける、方法。
【請求項18】
(A)被加工物が、i)AA7xxxアルミニウム合金、ii)AA6xxxアルミニウム合金、もしくはiii)ダイカストアルミニウムのうちの1つ以上の層を備え、
かつ/または、
(B)前記方法が、前記被加工物を加熱することなく室温で実施される、
請求項5、9、15、および17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記製品が、自動車である、請求項5、9、15、または17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項5、9、15、または17のいずれか一項に記載の方法を用いて製造された製品または製品の構成要素。
【国際調査報告】