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  • 特表-プラスミドDNAの抽出 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】プラスミドDNAの抽出
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20241008BHJP
   B01F 23/53 20220101ALI20241008BHJP
   B01F 33/452 20220101ALI20241008BHJP
   B01F 35/213 20220101ALI20241008BHJP
   B01F 35/75 20220101ALI20241008BHJP
   B01F 35/222 20220101ALI20241008BHJP
   B01F 35/51 20220101ALI20241008BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20241008BHJP
   B03D 1/02 20060101ALI20241008BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20241008BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20241008BHJP
   C12N 1/06 20060101ALI20241008BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C12N15/10 100Z
B01F23/53
B01F33/452
B01F35/213
B01F35/75
B01F35/222
B01F35/51
B01F35/71
B03D1/02
C12N1/20 C
C12N1/00 U
C12N1/06
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520758
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2022077388
(87)【国際公開番号】W WO2023057351
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】2114428.2
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・ブローム
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ピトケネン
(72)【発明者】
【氏名】リンダ・ハーグマン
(72)【発明者】
【氏名】アンニカ・モリソン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4G035
4G036
4G037
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029AA23
4B029BB02
4B029CC01
4B029DG08
4B065AA26X
4B065BD03
4B065BD14
4B065BD22
4B065CA23
4G035AB46
4G035AE02
4G036AC23
4G037AA02
4G037AA11
4G037AA18
4G037DA30
4G037EA04
(57)【要約】
プラスミドDNAの抽出のための細菌細胞のアルカリ溶解、中和、及び清澄化を実施するための使い捨て混合バッグの方法、システム、及び使用。この方法は、細菌細胞の懸濁液を準備し、前記細菌細胞のアルカリ溶解を実施するためにアルカリ溶解液を使い捨て混合バッグに準備する工程であって、前記使い捨て混合バッグが内蔵型ミキサーを含む工程を含む。この方法は、アルカリ溶解中、使い捨て混合バッグ中の内容物を内蔵型ミキサーによって混合する工程と、中和液を使い捨て混合バッグに添加することによってアルカリ溶解を停止する工程と、浮上型凝集剤を使い捨て混合バッグに添加することによって実施される、アルカリ溶解後の使い捨て混合バッグ中の内容物を清澄化する工程であって、少なくとも2つの相が使い捨て混合バッグ内で分離され、前記相の1つが、プラスミドDNAを含む中和されて清澄化されたアルカリ溶液である工程とを更に含む。中和されて清澄化されたアルカリ溶液は、使い捨て混合バッグから取り出されて濾過される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスミドDNAの抽出のための細菌細胞のアルカリ溶解、中和、及び清澄化を実施するための方法であって、
- 細菌細胞の懸濁液を準備し、前記細菌細胞のアルカリ溶解を実施するためにアルカリ溶解液を使い捨て混合バッグ(3)に準備する工程(S1)であり、前記使い捨て混合バッグ(3)が内蔵型ミキサー(5)を含む工程と;
- 前記アルカリ溶解中、前記使い捨て混合バッグ(3)中の内容物を前記内蔵型ミキサー(5)によって混合する工程(S2)と;
- 中和液を前記使い捨て混合バッグ(3)に添加することによって前記アルカリ溶解を停止する工程(S3)と;
- 浮上型凝集剤を前記使い捨て混合バッグに添加することによって実施される、前記アルカリ溶解後の前記使い捨て混合バッグ(3)中の内容物を清澄化する工程(S4)であり、少なくとも2つの相が前記使い捨て混合バッグ内で分離され、前記相の1つが、プラスミドDNAを含む中和されて清澄化されたアルカリ溶液である工程と;
- 前記使い捨て混合バッグから中和されて清澄化された前記アルカリ溶液を取り出す工程と(S5);
- 中和されて清澄化された前記アルカリ溶液を濾過する工程(S6)と、を含む方法。
【請求項2】
清澄化する工程(S4)が、酸性環境で気体を放出する塩を含む浮上型凝集剤の溶液を前記使い捨て混合バッグ(3)の注入口(7)にポンプ(27)によって送り込むことによって、前記使い捨て混合バッグ(3)に浮上型凝集剤の前記溶液を添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
浮上型凝集剤の前記溶液が60~150gAHC/Lを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
細菌細胞の懸濁液を準備し、アルカリ溶解液を前記使い捨て混合バッグ(3)に準備する工程(S1)が、最初に細菌細胞の懸濁液の第1の量(V1)を前記使い捨て混合バッグ(3)にポンプで送り込む工程を含み、次にアルカリ溶解液の第2の量(V2)を前記使い捨て混合バッグ(3)にポンプで送り込む工程を含み、アルカリ溶解液の第2の量(V2)をポンプで送り込む前記工程が0.5~3分の期間中に実施され、混合の前記工程(S2)が、アルカリ溶解液が前記使い捨て混合バッグにポンプで送り込まれる前記期間の少なくとも一部の間に実施される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
中和液を前記使い捨て混合バッグ(3)に添加することによって前記アルカリ溶解を停止する工程(S3)が、pH4.5~6.0の酢酸カリウム2.5~10Mからなる中和液を1~8℃の温度で添加することによって実施され、前記方法が、前記中和液の添加中、前記使い捨て混合バッグ中の内容物を前記内蔵型ミキサー(5)によって混合する工程を更に含み、ゲノムDNAの断片化及び/又は崩壊を回避するために、前記アルカリ溶解を停止するこの工程(S3)中の混合速度がアルカリ溶解の工程中の混合速度よりも低く維持される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
アルカリ溶解液の添加の開始から中和液の添加の終了まで計測した前記アルカリ溶解の全時間が、10分未満又は6分未満である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記使い捨て混合バッグ(3)へのアルカリ溶解液の添加及び/又は中和液の添加及び/又は浮上型凝集剤の添加が、前記使い捨て混合バッグ(3)の底部分(3a)に配置された前記使い捨て混合バッグ(3)の注入口(7)を介して提供され、前記使い捨て混合バッグ(3)の前記内蔵型ミキサー(5)も前記使い捨て混合バッグ(3)の底部分(3a)に設置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記使い捨て混合バッグ(3)中の内容物、並びに/又は前記使い捨て混合バッグ(3)内側の1つ又は複数の位置に配置された、及び/若しくは前記注入液ライン(21)及び/若しくは前記放出液ライン(31)と連結した、1つ又は複数のセンサー(55)によって、使い捨て混合バッグ(3)に連結された注入液ライン(21)及び/若しくは放出液ライン(31)中の内容物の1つ又は複数のパラメータを感知する工程を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
1つ又は複数の前記センサー(55)によって検出され感知されたパラメータに基づいて、内容物のポンプによる前記使い捨て混合バッグ(3)への出し入れ、及び/又は前記使い捨て混合バッグ(3)中の前記内蔵型ミキサー(5)の混合速度を制御する工程を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記使い捨て混合バッグ(3)の外側から前記内蔵型ミキサー(5)を前記ミキサー(5)に直接接触することなく磁気によって制御する工程を更に含み、前記内蔵型ミキサー(5)が磁気インペラである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
過剰な気体及び清澄化する前記工程(S4)中に生じる可能性のある泡を前記使い捨て混合バッグ(3)に設置された通気弁デバイス(11)を介して放出する工程を更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、前記使い捨て混合バッグ(3)及びポンプ(27、37)が連結された制御システム(51)によって制御された自動化方法である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記使い捨て混合バッグ(3)が、滅菌されており、前記使い捨て混合バッグに設けられた少なくとも1つの注入口(7)及び少なくとも1つの放出口(9)に無菌連結器を備えた柔軟なプラスティックバッグである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の細菌細胞のアルカリ溶解、中和、及び清澄化を実施するための使い捨て混合バッグの使用であって、前記使い捨て混合バッグ(3)が、少なくとも1つの注入口(7)、少なくとも1つの放出口(9)、通気弁デバイス(11)、及び内蔵型ミキサー(5)を含む、使用。
【請求項15】
前記使い捨て混合バッグ(3)が、滅菌されており、少なくとも1つの前記注入口(7)及び少なくとも1つの前記放出口(9)に無菌連結器を備えた柔軟なプラスティックバッグである、請求項14に記載の使い捨て混合バッグの使用。
【請求項16】
プラスミドDNAの抽出のための細菌細胞のアルカリ溶解、中和、及び清澄化を実施するためのシステムであって:
- 少なくとも1つの注入口(7)、その内の1つが清澄化相放出口(9)である少なくとも1つの放出口(9)、通気弁デバイス(11)、及び内蔵型ミキサー(5)を含む使い捨て混合バッグ(3)と;
- 前記使い捨て混合バッグ(3)の少なくとも1つの前記注入口(7)の少なくとも1つに連結され、前記使い捨て混合バッグ(3)に添加される流体を含む流体供給源(A、B、C、及びD)に連結するための少なくとも1つの連結器(23a~d)を有する少なくとも1つの注入液ライン(21)と;
- 少なくとも1つの注入液ライン(21)に連結された少なくとも1つの注入ポンプ(27)と;
- 前記使い捨て混合バッグ(3)の前記清澄化相放出口(9)に連結された放出液ライン(31)と;
- 前記放出液ライン(31)に連結された少なくとも1つの放出ポンプ(37)と;
- 前記使い捨て混合バッグ(3)から取り出された中和されて清澄化されたアルカリ溶液を前記清澄化相放出口(9)を介して収集するために前記放出液ライン(31)に連結された収集バッグ(41)と;
- 前記使い捨て混合バッグ(3)の前記清澄化相放出口(9)から取り出された内容物が前記収集バッグ(41)に向かう途中でフィルター(43)によって濾過されるように、前記放出液ライン(31)に連結され、前記清澄化相放出口(9)と前記収集バッグ(41)との間に設置されたフィルター(43)と;
- 少なくとも1つの前記注入ポンプ(27)、少なくとも1つの前記放出ポンプ(37)、及び前記使い捨て混合バッグ(3)の前記内蔵型ミキサー(5)を制御することができるミキサーコントローラ(53)に連結された制御システム(51)であり、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法に従って内容物を前記使い捨て混合バッグ(3)にポンプで送り込み、内容物を前記使い捨て混合バッグ(3)から送り出し、前記内容物を前記使い捨て混合バッグ中で混合するために、少なくとも1つの前記注入ポンプ(27)、少なくとも1つの前記放出ポンプ(37)、及び前記使い捨て混合バッグ(3)中の前記内蔵型ミキサー(5)を制御するために構成されている制御システム(51)と、を含むシステム。
【請求項17】
前記使い捨て混合バッグが、滅菌されており、少なくとも1つの注入口及び少なくとも1つの放出口に無菌連結器を備えた柔軟なプラスティックバッグである、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記使い捨て混合バッグ(3)が、pH、温度、濁度、及び伝導度の1つ又は複数等の前記使い捨て混合バッグ(3)中の内容物の1つ又は複数のパラメータを感知するために構成された少なくとも1つのセンサー(55)を含む、請求項16又は17に記載のシステム。
【請求項19】
前記制御システム(51)が、前記清澄化相放出口(9)の近くに配置されたセンサー(55)から感知された特性に基づいて、少なくとも1つの前記放出ポンプ(37)が内容物を前記使い捨て混合バッグ(3)からポンプで送り出すのを制御するために構成されている、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスミドDNAの抽出のための細菌細胞のアルカリ溶解、中和、及び清澄化を実施するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
大腸菌(e-coli)等の細菌細胞からプラスミドDNAを抽出するための公知の方法は、アルカリ溶解方法において細菌細胞を溶解する第1の工程を含む。アルカリ溶解液は、細菌細胞の懸濁液に提供され、それによって細胞の溶解が開始される。溶解は、中和液の添加によって適切な時間後に停止され、沈殿物/凝集物の形成が即座に引き起こされる。凝集物は周囲の溶液と同様の密度であり、全体に分散して認められる。凝集物除去のための最も一般的な方法は、濾過及び/又は遠心分離技術を要する。凝集物中の粒状物質の粒度分布が広いため、フィルターが目詰まりする危険性が高いので、全般的に濾過は1工程では不可能である。むしろ、十分な清澄化を達成するために、事前の遠心分離工程の有無に関わらず、様々な濾過工程、珪藻土等の濾過助剤の組合わせが一般的に使用される。
【0003】
IP.com番号:IPCOM000146505Dでは、凝集物除去を簡便化する方法が開示されている。溶解は、上述の典型的な手順に従って実施されるが、炭酸水素アンモニウムは、中和後に添加され、凝集物が表面に浮遊して安定した層を形成する原因となる。炭酸水素アンモニウムの添加によって二酸化炭素の気泡が生じ、泡は凝集物質を運んで表面に上昇して、液体表面に浮遊層を形成する。得られた溶液は透明で、粒状物質が大部分取り除かれており、傾瀉され得る。
【0004】
プラスミドDNAの抽出のための方法はまだ改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、プラスミドDNAの抽出のための改善された方法及びシステムを提供することである。
【0006】
本発明の更なる目的は、閉鎖システムで自動化された方法を実施するために適切な、プラスミドDNAの抽出のための方法及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これは、個別の特許請求の範囲で定義されたような方法、使用、及びシステムによって実現される。
【0008】
本発明の一態様では、プラスミドDNAの抽出のための細菌細胞のアルカリ溶解、中和、及び清澄化を実施するための方法が提供される。前記方法は:
- 細菌細胞の懸濁液を準備し、前記細菌細胞のアルカリ溶解を実施するためにアルカリ溶解液を使い捨て混合バッグに準備する工程であり、前記使い捨て混合バッグが内蔵型ミキサーを含む工程と;
- アルカリ溶解中、使い捨て混合バッグ中の内容物を内蔵型ミキサーによって混合する工程と;
- 中和液を使い捨て混合バッグに添加することによってアルカリ溶解を停止する工程と;
- 浮上型凝集剤を使い捨て混合バッグに添加することによって実施される、アルカリ溶解後の使い捨て混合バッグ中の内容物を清澄化する工程であり、少なくとも2つの相が使い捨て混合バッグ内で分離され、前記相の1つが、プラスミドDNAを含む中和されて清澄化されたアルカリ溶液である工程と;
- 使い捨て混合バッグから中和されて清澄化されたアルカリ溶液を取り出す工程と;
- 中和されて清澄化されたアルカリ溶液を濾過する工程と、を含む。
【0009】
本発明の別の態様では、本発明の方法による細菌細胞のアルカリ溶解、中和、及び清澄化を実施するための使い捨て混合バッグの使用であって、前記使い捨て混合バッグは、少なくとも1つの注入口、少なくとも1つの放出口、通気弁デバイス、及び内蔵型ミキサーを含む、使用が提供される。
【0010】
本発明の別の態様では、プラスミドDNAの抽出のための細菌細胞のアルカリ溶解、中和、及び清澄化を実施するためのシステムが提供され、前記システムは:
- 少なくとも1つの注入口、その内の1つが清澄化相放出口である少なくとも1つの放出口、通気弁デバイス、及び内蔵型ミキサーを含む使い捨て混合バッグと;
- 使い捨て混合バッグの少なくとも1つの注入口の少なくとも1つに連結され、使い捨て混合バッグに添加される流体を含む流体供給源に連結するための少なくとも1つの連結器を有する少なくとも1つの注入液ラインと;
- 少なくとも1つの注入液ラインに連結された少なくとも1つの注入ポンプと;
- 使い捨て混合バッグの清澄化相放出口に連結された放出液ラインと;
- 放出液ラインに連結された少なくとも1つの放出ポンプと;
- 使い捨て混合バッグから取り出された中和されて清澄化されたアルカリ溶液を清澄化相放出口を介して収集するために、放出液ラインに連結された収集バッグと;
- 使い捨て混合バッグの清澄化相放出口から取り出された内容物が収集バッグに向かう途中でフィルターによって濾過されるように、放出液ラインに連結され、清澄化相放出口と収集バッグとの間に設置されたフィルターと;
- 少なくとも1つの注入ポンプ、少なくとも1つの放出ポンプ、及び使い捨て混合バッグの内蔵型ミキサーを制御することができるミキサーコントローラに連結された制御システムであり、本発明の方法に従って内容物を使い捨て混合バッグにポンプで送り込み、内容物を使い捨て混合バッグからポンプで送り出し、使い捨て混合バッグ中で内容物を混合するために、前記制御システムが少なくとも1つの注入ポンプ、少なくとも1つの放出ポンプ、及び使い捨て混合バッグ中の内蔵型ミキサーを制御するために構成されている制御システムと、を含む。
【0011】
このようにして、プラスミドDNAの抽出のための方法において、溶解、中和、及び清澄化工程のために使い捨て混合バッグを使用することによって、この方法は閉鎖システムで実施することができ、この方法は容易に自動化することができる。混合は、使い捨て混合バッグ中に設置された内蔵型ミキサーによって実施することができる。このミキサーは、例えば、使い捨て混合バッグの外側から磁力によって制御することが可能で、これによってバッグ内の内容物はバッグの外側から直接機械的に接触することなく混合することができる。これによって、プラスミドDNAの抽出中、閉鎖的取り扱いを維持することができ、これは有利である。細菌細胞を取り扱う場合、周囲環境の汚染を回避することが重要で、この溶解方法における使い捨て混合バッグの使用は、汚染の危険性を大幅に減少させる閉鎖的方法を可能にする。更に、この方法は、本発明による方法及びシステムで容易に自動化することができる。ポンプは、内容物を使い捨て混合バッグにポンプで出し入れするために制御することができ、ミキサーはバッグ内の内容物を混合するために制御することができる。これによって、使い捨て混合バッグの使用は、この方法によるプラスミドDNAの抽出を実施するために有利である。使い捨て混合バッグの使用は、より多くの手動の介入が関与している従来の公知の方法よりも正確で迅速な方法を提供する。更に、内蔵型ミキサーのおかげで、手動混合と比較して、より制御された混合を提供することができる。
【0012】
本発明の一部の実施形態では、清澄化する工程は、酸性環境で気体を放出する塩を含む浮上型凝集剤の溶液を使い捨て混合バッグの注入口にポンプによって送り込むことによって、使い捨て混合バッグに浮上型凝集剤の溶液を添加することを含む。これによって、気泡は混合バッグ中の内容物の上面まで上昇し、凝集物を上面に向かって運び、それによって混合バッグ中では凝集物を含む上相及び中和されて清澄化されたアルカリ溶液を含む下相が形成される。
【0013】
本発明の一部の実施形態では、この方法は、使い捨て混合バッグ中の内容物、並びに/又は使い捨て混合バッグ内側の1つ又は複数の位置に配置された及び/若しくは注入液ライン及び/若しくは放出液ラインと連結した、1つ又は複数のセンサーによって、使い捨て混合バッグに連結された注入液ライン及び/若しくは放出液ライン中の内容物の1つ又は複数のパラメータを感知する工程を更に含む。本発明の一部の実施形態では、前記使い捨て混合バッグは、pH、温度、濁度、及び伝導度の1つ又は複数等の使い捨て混合バッグ中の内容物の1つ又は複数のパラメータを感知するために構成された少なくとも1つのセンサーを含む。本発明の一部の実施形態では、この方法は、1つ又は複数のセンサーによって検出され感知されたパラメータに基づいて、内容物のポンプによる使い捨て混合バッグへの出し入れ、及び/又は使い捨て混合バッグ中の内蔵型ミキサーの混合速度を制御する工程を更に含む。
【0014】
このようにして感知されたパラメータは、ポンプ及び/又は内蔵型ミキサーを制御することによって方法及びシステムを制御、調整、及び最適化するために使用され得る。感知されたパラメータはまた、統計及び記録のために使用され得る。
【0015】
本発明の一部の実施形態では、前記使い捨て混合バッグは、滅菌されており、少なくとも1つの注入口及び少なくとも1つの放出口に無菌連結器を備えた柔軟なプラスティックバッグである。このようにして、使い捨て混合バッグは、本発明の方法によるプラスミドDNAの抽出のための細菌細胞のアルカリ溶解、中和、及び清澄化を実施するために容易に使用され得る。使い捨て混合バッグは、液体供給源に無菌的に容易に連結され得る。
【0016】
更なる実施形態は、詳細な説明及び添付の特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態によるプラスミドDNAの抽出のための細菌細胞のアルカリ溶解、中和、及び清澄化を実施するためのシステムの概略を示した図である。
図2】本発明の一実施形態によるプラスミドDNAの抽出のための細菌細胞のアルカリ溶解、中和、及び清澄化を実施するための方法のフローチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態によるプラスミドDNAの抽出のための細菌細胞のアルカリ溶解、中和、及び清澄化を実施するためのシステム1の概略を示した図である。本発明では、使い捨て混合バッグ3は、プラスミドDNAの抽出のために使用される。使い捨て混合バッグ3は、柔軟なプラスティック材料から形成されていてもよく、1回使用した後で廃棄されることが想定されている。使い捨て混合バッグ3は、直接機械的に接触することなく、すなわち、外部環境と接触することも汚染の危険性もなく、バッグの外側から制御することができる内蔵型ミキサー5を含む。内蔵型ミキサー5は、例えば、直接機械的に接触することなく混合バッグの外側から磁力によって制御される磁気インペラ5であってもよい。これによって、使い捨て混合バッグ3は、システムの外側の外部環境の汚染の危険性なく内容物を扱うことができる閉鎖系で使用するために適している。使い捨て混合バッグ3は、状況によっては同じ注入口/放出口であってもよい少なくとも1つの注入口7及び少なくとも1つの放出口9を更に含む(すなわち、場合によっては1つの注入口/放出口のみが使い捨て混合バッグに設置されていてもよい)。しかし、図1で示した例では、1つの単独の注入口7及び1つの単独の放出口9が設置されている。しかし、混合バッグ3に設置された注入口及び放出口の数はまた、複数であってもよい。放出口9は、本明細書では、本発明の方法に従って清澄化工程が実施された後に、中和されて清澄化されたアルカリ溶液を混合バッグ3からこの清澄化相放出口9を通して移すためのものであるので、清澄化相放出口9と呼ばれる。注入口7及び清澄化相放出口9の両方は、この実施形態では使い捨て混合バッグ3の底部分3aに設置されている。内蔵型ミキサー5も、使い捨て混合バッグ3の底部分3aに設置されている。このようにして、注入口7は内蔵型ミキサー5に接近して配置されているため、注入口7を通して導入された内容物の混合は、内蔵型ミキサー5によって効率的に実施されることが保証される。混合バッグ3の底部分3aにおける清澄化相放出口9の位置は、説明において更に論じられているが、この位置はSUバッグの内容物の下相のみの効果的な取り出しを可能にし、下相は溶解、中和、及び清澄化後にプラスミドDNAを含む中和されて清澄化されたアルカリ溶液になる。使い捨て混合バッグ3は、通気弁デバイス11を更に含むと適切である。通気弁デバイス11は、例えば、清澄化工程中の過剰な気体の放出を可能にして、及び/又は以下により詳細に記載しているように綿状物浮上中に生じる可能性のある泡の放出を可能にするために設置される。使い捨て混合バッグ3は、納品時に滅菌されて、その注入口7及び放出口9に無菌連結器を備えていてもよい。使用者は、使い捨て混合バッグ3とシステムのその他の部分及び以下に記載するように制御システムとを連結することができる。
【0019】
本発明によるシステムは、(例えば、1つ又は複数の無菌連結器を含むことによって)使い捨て混合バッグ3の少なくとも1つの注入口7の少なくとも1つに連結された、又は連結するように構成された少なくとも1つの注入液ライン21を更に含む。注入液ライン21はまた、使い捨て混合バッグ3に添加される流体を含む少なくとも1つの流体供給源A、B、C、及びDに連結するために、少なくとも1つの流体供給源連結器23a~dを含む。流体供給源連結器23a~dは、本発明の一部の実施形態では、無菌連結器であってもよい。図1で示した実施形態では、4つの流体供給源連結器23a~dが設置されており、4つの異なる流体供給源A、B、C、及びDが流体供給源連結器23a~dのそれぞれに1つずつ対応するように注入液ライン21に連結されていてもよい。別の実施形態では、別々の注入液ライン21が各流体供給源A、B、C、及びDのために使用されていてもよく、使い捨て混合バッグの別々の注入口7がまた、各流体供給源A、B、C、及びDのために使用されていてもよい。すなわち、複数の注入口7が使い捨て混合バッグ3に設置されていてもよく、使い捨て混合バッグ3に添加される異なる流体が、一部の実施形態では、異なる注入口7を介して添加されてもよい。更に別の実施形態では、2つ以上の流体供給源A、B、C、及びDが、この方法においてそれぞれ同じ流体供給源連結器23a~dに連結されていてもよい。このような実施形態では、注入液ライン21の流体供給源連結器23a~bの数は、4個未満、例えば、1、2、又は3個であってもよい。
【0020】
少なくとも1つの注入ポンプ27がまた、システム1に設置されている。注入ポンプ27は、少なくとも1つの注入液ライン21に連結され、流体供給源A、B、C、及びDからの流体を少なくとも1つの注入口7を介して使い捨て混合バッグ3にポンプで送り込むために構成されている。
【0021】
本発明によるシステムは、(例えば、1つ又は複数の無菌連結器を含むことによって)使い捨て混合バッグ3の清澄化相放出口9に連結された、又は連結するように構成された少なくとも1つの放出液ライン31を更に含む。少なくとも1つの放出ポンプ37がまた、システム1に設置されている。前記放出ポンプ37は放出液ライン31に連結されている。放出ポンプ37は、内容物を使い捨て混合バッグ3から清澄化相放出口9を介してポンプで送り出すために構成されている。システム1は、使い捨て混合バッグ3から取り出された中和されて清澄化されたアルカリ溶液を清澄化相放出口9を介して収集するために、放出液ライン31に連結された収集バッグ41を更に含む。システム1は、使い捨て混合バッグ3の清澄化相放出口9から取り出された内容物が収集バッグ41に向かう途中でフィルター43によって濾過されるように、放出液ライン31に連結され、清澄化相放出口9と収集バッグ41との間に設置されたフィルター43を更に含む。フィルター43は、例えば、デプスフィルター又はデッドエンドフィルターであってもよい。一部の実施形態では、フィルターは、残存する凝集物及び/又は粒状物質を効率的に除去するデプスフィルターである。
【0022】
システム1は、少なくとも1つの注入ポンプ27、少なくとも1つの放出ポンプ37、及び使い捨て混合バッグ3の内蔵型ミキサー5を直接接触することなく制御することができるミキサーコントローラ53に連結された制御システム51であって、図2を参照にして以下に説明する本発明の方法に従って、内容物を使い捨て混合バッグ3にポンプで送り込み、内容物を使い捨て混合バッグ3からポンプで送り出し、内容物を使い捨て混合バッグ3中で混合するために、少なくとも1つの注入ポンプ27、少なくとも1つの放出ポンプ37、及び使い捨て混合バッグ3中の内蔵型ミキサー5を制御するために構成されている、制御システム51を更に含む。制御システム51はまた、システムに設置されていてもよい任意のバルブ25a~dに連結されていてもよい場合がある。バルブ25a~dは、流体供給源A、B、C、及びDが連結していてもよい連結器23a~dと連結して設置されていることがわかる。これによって、どの液体供給源A、B、C、及びDが、注入液ライン21に連結されるかを制御することができる。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態による方法のフローチャートである。この方法は、プラスミドDNAの抽出のために細菌細胞のアルカリ溶解、中和、及び清澄化を実施するための方法である。方法の工程は、以下に順番に記載されている:
【0024】
S1:細菌細胞の懸濁液を準備し、前記細菌細胞のアルカリ溶解を実施するためにアルカリ溶解液を使い捨て混合バッグ3に準備する工程であって、前記使い捨て混合バッグ3が内蔵型ミキサー5を含む工程。一例として、細菌細胞の懸濁液は図1ではAによって表すことができるが、アルカリ溶解液は図1ではBによって表すことができる。本発明の一部の実施形態では、最初に細菌細胞の懸濁液が使い捨て混合バッグ3に添加され、次いでアルカリ溶解液が使い捨て混合バッグ3に添加される。図1で示したように、細菌細胞の懸濁液A及びアルカリ溶解液Bは、注入液ライン21を介して注入口7を通して混合バッグ3に添加される。注入ポンプ27は、細菌細胞の懸濁液A及びアルカリ溶解液Bを注入液ライン21を通してポンプで送り込むために使用される。細菌細胞の懸濁液の第1の量V1が、一部の実施形態では、最初に使い捨て混合バッグ3にポンプで送り込まれ、次いでアルカリ溶解液の第2の量V2が、使い捨て混合バッグ3にポンプで送り込まれる。第1及び第2の量、V1及びV2は、一部の実施形態では、等量であるが、溶液の濃度に応じて異なっていてもよい。アルカリ溶解液の第2の量V2を混合バッグ3にポンプで送り込む工程は、限定された期間中に実施されると適切である。注入ポンプ27及び注入液ライン21の寸法及び性能は、決められた時間範囲で迅速に移すことを可能にするために選択され得る。例えば、全アルカリ溶解液を混合バッグ3にポンプで送り込むために必要な期間は、0.5~3分の間又は0.5~1.5分の間になるように制御されてもよい。一部の実施形態では、この方法は、アルカリ溶解液を混合バッグに移す間に、混合バッグ内の内容物を混合する工程を含む。この混合する工程は、アルカリ溶解液が使い捨て混合バッグ3にポンプで送り込まれる間の前記期間の少なくとも一部の間に実施されてもよい。
【0025】
細菌細胞の懸濁液は、例えば、大腸菌細胞の懸濁液であってもよい。アルカリ溶解液は、例えば、NaOH0.1~0.5M+0.1~1.0%SDSであってもよい。
【0026】
S2:アルカリ溶解中、使い捨て混合バッグ3中の内容物を内蔵型ミキサー5によって混合する工程。細菌細胞のアルカリ溶解は、混合バッグ3にポンプで送り込まれたアルカリ溶解液が、混合バッグ3に既に準備されている細菌細胞の懸濁液と接触するようになるとすぐに開始される。全アルカリ溶解液が混合バッグ3にポンプで送り込まれたとき、溶解は決められた時間範囲(分)の間継続する必要があり得るので、混合はこの時間中、又はこの時間の少なくとも一部の間実施される。
【0027】
S3:中和液を使い捨て混合バッグ3に添加することによってアルカリ溶解を停止する工程。中和液は図1ではCによって例示され得る。中和液を使い捨て混合バッグ3に添加することによってアルカリ溶解を停止する工程は、pH4.5~6.0の酢酸カリウム2.5~10Mからなる中和液を1~8℃の間の温度で添加することによって実施され得る。この工程はまた、中和液を添加するためにかかる時間中、使い捨て混合バッグ3中の内容物を内蔵型ミキサー5によって混合する工程を含む。しかし、アルカリ溶液中の混合速度と比較して、アルカリ溶解を停止するこの工程中では遅い混合速度を使用すると適切である場合がある。これは、ゲノムDNAの断片化を回避するためである。中和液Cを使い捨て混合バッグ3に注入ポンプ27によって移す時間は、できる限り短く維持できると適切である。
【0028】
アルカリ溶解液の添加の開始から中和液の添加の終了まで計測したアルカリ溶解の全時間は、10分未満又は6分未満に維持できると適切である。これによって、例えば、膜吸着体のクロマトグラフィーが関与する更に下流の方法工程において、その断片をプラスミドDNAから分離することが困難となり得るゲノムDNAの断片化の危険性が低い。混合速度はまた、混合中に生じ得る剪断力によるゲノムDNAの断片化/崩壊を回避するために、アルカリ溶解工程及び中和工程の両方において適切に調整する必要がある場合がある。
【0029】
アルカリ溶解を停止するための中和液の添加は、混合バッグ3中の内容物における沈殿/凝集物の形成を引き起こす。この凝集物は周囲の溶液と同様の密度であり、全体に分散している可能性がある。
【0030】
S4:浮上型凝集剤を使い捨て混合バッグ3に添加することによって実施される、アルカリ溶解後の使い捨て混合バッグ3中の内容物を清澄化する工程。浮上型凝集剤は溶液であってもよく、図1ではDによって例示され得る。浮上型凝集剤は、本発明では、酸性環境で気泡を生じる薬剤、適切には塩の溶液と定義される。前記気泡は、混合バッグ中の内容物の上面に上昇し、アルカリ溶液を停止する工程中に生じた凝集物を表面に運ぶ。凝集物は、これによって気泡と共に浮上し、混合バッグ3中の内容物の上相として層又はケークを形成する。このようにして、清澄化するこの工程中に少なくとも2つの相が使い捨て混合バッグ3内で分離され、前記相の1つが、プラスミドDNAを含む中和されて清澄化されたアルカリ溶液であり、前記相のもう一方は、粒状物質を含有する半固形上層を形成する凝集物である。浮上型凝集剤は、例えば、炭酸水素アンモニウム(AHC)、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、又は類似の薬剤等の酸性環境中で気体を生じる塩であってもよい。炭酸水素アンモニウムは、少なくとも2つの相に分離するために非常に効果的である。炭酸水素アンモニウムは、混合バッグ中の内容物の上相に凝集物を効率的に運び、上面に凝集物質の層を形成する。少量の凝集物は、混合バッグ3中の凝集物の上相の下に得られる中和されて清澄化されたアルカリ溶液中にまだ残っていることがある。
【0031】
清澄化する工程は、細菌細胞、アルカリ溶解液、及び中和液の添加のために使用されるのと同じ注入ポンプ27又は別の注入ポンプであってもよいポンプによって浮上型凝集剤の溶液をポンプで送り出すことによって、例えば、炭酸水素アンモニウムの溶液としての浮上型凝集剤又は類似の浮上型凝集剤を使い捨て混合バッグ3に添加する工程を含んでいてもよい。浮上型凝集剤は、他の流体の添加のために使用されるのと同じ注入口7であってもよく、別の注入口であってもよい、使い捨て混合バッグ3の注入口7を介して混合バッグ3に添加される。浮上型凝集剤の溶液は、例えば、AHC等の塩を1リットルあたり60~150g含んでいてもよい。例えば、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウム、又は炭酸水素ナトリウム等の塩の溶液であってもよい浮上型凝集剤の溶液の体積及び濃度は、塩溶液の添加後の使い捨て混合バッグ中の複合内容物における塩の濃度が2~15g塩/リットルの間隔内であるように準備することができると適切である。
【0032】
S5:使い捨て混合バッグ3から中和されて清澄化されたアルカリ溶液を取り出す工程。中和されて清澄化されたアルカリ溶液は、清澄化工程において下相に分離され得るので、放出ポンプ37によって清澄化相放出口9を通して混合バッグ3から放出液ライン31を通して取り出すことができる。
【0033】
S6:中和されて清澄化されたアルカリ溶液を濾過する工程。混合バッグ3からの途中で、中和されて清澄化されたアルカリ溶液はフィルター43を通過する。これは、中和されて清澄化されたアルカリ溶液中に残存する粒状物質を効率的に除去する、例えば、デプスフィルター又はデッドエンドフィルター等の適切なフィルターであってもよい。濾過され、中和されて清澄化されたアルカリ溶液はその後収集バッグ41に収集され得る。
【0034】
本発明による方法は、混合バッグ3中の内容物又は注入液ライン若しくは放出液ライン21、31中の内容物の1つ又は複数のパラメータを感知する工程を更に含んでいてもよい。パラメータは、例えば、pH、温度、濁度、及び伝導度の1つ又は複数であってもよい。パラメータは、使い捨て混合バッグ3内の1つ若しくは複数の位置に配置された、又は注入液ライン若しくは放出液ライン21、31に直接関連した1つ若しくは複数のセンサー55によって感知され得る。このようにして、使い捨て混合バッグ3は、本発明の一部の実施形態では、例えば、pH、温度、濁度、及び伝導度の1つ又は複数等の混合バッグ3中の内容物の1つ又は複数のパラメータを感知するために構成された少なくとも1つのセンサー55を含む。例えば、濁度センサーが清澄化相放出口9の近くに設置されている場合、清澄化相のみが清澄化相放出口9を通って取り出されるため、清澄化相放出口9を通る放出がモニターされ得る。放出ポンプ37は、センサー出力に従って制御されることが可能で、清澄化相放出口9の近くに配置されたセンサー55からの出力が予め決定された閾値を上回る粒状物質の存在を検出し、内容物が中和されて清澄化されたアルカリ溶液ではなく凝集物であることを示した場合、ポンプを停止することができる。
【0035】
制御システム51は、清澄化相放出口9の近くに配置されたセンサー55から感知された特性に基づいて、少なくとも1つの放出ポンプ37が内容物を使い捨て混合バッグ3からポンプで送り出すのを制御するために構成されていてもよい。これによって、中和されて清澄化されたアルカリ溶液のみが使い捨て混合バッグ3から取り出され、フィルター43を介して収集バッグ41に送り出されることが保証され得る。これによって、使い捨て混合バッグ3から移されフィルター43を通る粒状物質は、無いか又は最小限であることが実質的に保証され得る。このような粒状物質は、そうでなければフィルター43の目詰まりを引き起こし、自動化方法に問題を引き起こす可能性がある。センサー55を使用することによって、この方法は効率的に自動化され得る。例えば、温度及び/又はpH及び/又は濁度及び/又は伝導度センサーは、文書化及び統計のためか、又はシステムの制御及びフィードバック制御のためにも混合バッグ3に設置され得る。制御システム51は、ミキサー速度の制御のため、及び/又は連結した流体供給源から混合バッグ3への流体のポンプによる送り込みの制御のためにセンサー出力を利用することができる。
【0036】
この方法は、過剰な気体、及び、例えば、清澄化する工程中に生じる可能性のある泡を使い捨て混合バッグ3に設置された通気弁デバイス11を介して放出する工程を更に含んでいてもよい。
【0037】
本発明による方法は、前記使い捨て混合バッグ3及びポンプ27、37が連結された制御システム51によって制御された自動化方法であってもよい。これによって、プラスミドDNAが効率的に抽出され得る閉鎖的で自動化されたシステムが提供される。プラスミドDNAの抽出のための閉鎖的使い捨てシステムは、使用した細菌による外部環境の汚染の危険性を最小限に抑えるために、GMPクラス分類環境又は類似の環境を必要とし得る方法で使用するために適切である。
【0038】
本発明は、図1及び図2を参照にして上述したような細菌細胞のアルカリ溶解、中和、及び清澄化を実施するための使い捨て混合バッグ3の使用に更に関する。上述したような使い捨て混合バッグ3は、少なくとも1つの注入口7、少なくとも1つの放出口9、通気弁デバイス11、及び内蔵型ミキサー5を含む。使い捨て混合バッグ3は、滅菌されており、少なくとも1つの注入口7及び少なくとも1つの放出口9に無菌連結器が設置された柔軟なプラスティックバッグであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
11 通気弁デバイス
21 注入液ライン
23a 流体供給源連結器
23b 流体供給源連結器
23c 流体供給源連結器
23d 流体供給源連結器
25a バルブ
25b バルブ
25c バルブ
25d バルブ
27 注入ポンプ
3 使い捨て混合バッグ
3a 底部分
31 放出液ライン
37 放出ポンプ
41 収集バッグ
43 フィルター
5 内蔵型ミキサー
51 制御システム
53 ミキサーコントローラ
55 センサー
7 注入口
9 放出口(清澄化相放出口)
図1
図2
【国際調査報告】