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  • 特表-協働型デルタ・ロボット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】協働型デルタ・ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20241008BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B25J11/00 D
B25J19/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520816
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 EP2021077455
(87)【国際公開番号】W WO2023057050
(87)【国際公開日】2023-04-13
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載年月日:令和3年5月20日、掲載アドレス:https://www.youtube.com/watch?v=6pdZOA1GHwo 掲載年月日:令和3年5月20日、掲載アドレス:https://www.youtube.com/watch?v=IfXamnej514 掲載年月日:令和3年5月20日、掲載アドレス:https://www.youtube.com/@Wyzo-sidebot 掲載年月日:令和3年5月16日、掲載アドレス:https://thewyzo.com/technical-specifications/ 掲載年月日:令和3年4月29日、掲載アドレス:https://www.youtube.com/watch?v=I_ecEnnIziM 掲載年月日:令和3年4月1日、掲載アドレス:https://www.youtube.com/watch?v=2dTVlEDVbJY 掲載年月日:令和3年3月10日、掲載アドレス:https://www.youtube.com/watch?v=rZW63uSw1qM 掲載年月日:令和3年3月8日、掲載アドレス:https://thewyzo.com/
(71)【出願人】
【識別番号】524126596
【氏名又は名称】デモレ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソユリス、フランク
(72)【発明者】
【氏名】ユング、 ヴィクトル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィアモーズ、クリスティアン
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707HS27
3C707KS36
3C707KT01
3C707KT04
3C707LU01
3C707MS06
3C707MS08
3C707MS14
(57)【要約】
本発明は、固定基部2と、各自のモータ7によって各々駆動される3つの運動連鎖機構4、5、6によって基部2に接続されている、可動バスケット3と、を備える協働型デルタ・ロボット1に関し、ロボットが、ロボットの周囲の第1の安全区域内の物体又は生物の存在を検知するための第1の手段8を備えることと、ロボットが、運動連鎖機構4、5、6のうちの1つ又はバスケット3と物体又は生物との間の接触を検知するための手段を備えることと、ロボットが、第1の安全区域内において物体又は生物が検知されたときにモータの速さを第1の速さから第2の速さへと下げるように、及び、運動連鎖機構4、5、6又はバスケット3と物体又は生物との間の接触が検知されたときにモータを停止させるように構成されているモータ制御ユニットを備えることと、を特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定基部(2)と、各自のモータ(7)によって各々駆動される3つの運動連鎖機構(4、5、6)によって前記基部(2)に接続されている、可動バスケット(3)と、を備える、協働型デルタ・ロボット(1)であって、
前記ロボットは、前記ロボットの周囲の第1の安全区域内の物体又は生物の存在を検知するための第1の手段(8)を備え、前記ロボットは、前記運動連鎖機構(4、5、6)のうちの1つ又は前記バスケット(3)と物体又は生物との間の接触を検知するための手段を備え、前記ロボットは、前記第1の安全区域内において物体又は生物が検知されたときに前記モータの速さを第1の速さから第2の速さへと下げるように、及び、運動連鎖機構(4、5、6)又は前記バスケット(3)と物体又は生物との間の接触が検知されたときに前記モータを停止させるように構成されているモータ制御ユニットを備えることを特徴とする、協働型デルタ・ロボット(1)。
【請求項2】
前記ロボットは、前記ロボットの周囲の第2の安全区域内の物体又は生物の存在を検知するための第2の手段を備え、前記第2の安全区域は、前記第1の安全区域よりも小さく且つその中に含まれており、前記モータ制御ユニットは、前記第2の安全区域内において物体又は生物が検知されたときに、前記モータの速さを前記第2の速さから第3の速さへと下げるように構成されている、請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記モータ(7)は、直接駆動モータである、請求項1又は2のいずれかに記載のロボット。
【請求項4】
物体又は生物の存在を検知するための前記第1及び/又は前記第2の手段(8)は、安全レーザ・スキャナ、或いはカメラ又は光若しくはビーム・バリアのような他の光電子保護デバイスである、請求項1から3までのいずれか一項に記載のロボット。
【請求項5】
前記運動連鎖機構(4、5、6)のうちの1つ又は前記バスケット(3)と物体又は生物との間の接触を検知するための前記手段は、前記モータ(7)の各々が及ぼすトルクを判定しこれをトルク閾値と比較するための手段を備える、請求項1から4までのいずれか一項に記載のロボット。
【請求項6】
前記運動連鎖機構(4、5、6)のうちの1つ又は前記バスケット(3)と物体又は生物との間の接触を検知するための前記手段は、前記モータ(7)の前記速さを判定しこれを速さ閾値と比較するための手段を備える、請求項1から5までのいずれか一項に記載のロボット。
【請求項7】
前記運動連鎖機構(4、5、6)のうちの1つ又は前記バスケット(3)と物体又は生物との間の接触を検知するための前記手段は、各運動連鎖機構(4、5、6)及び前記バスケット(3)の位置を判定しこれを意図する位置と比較するための手段を備える、請求項1から6までのいずれか一項に記載のロボット。
【請求項8】
前記モータ制御ユニットは、前記判定されたトルクが前記トルク閾値より大きい場合、及び/又は、前記判定された速さが前記速さ閾値より大きい場合、及び/又は、運動連鎖機構(4、5、6)又は前記バスケット(3)の前記位置が前記意図された位置と等しくない場合に、前記モータ(7)を停止させるように構成されている、請求項1から7までのいずれか一項に記載のロボット。
【請求項9】
前記固定基部(2)は、可動フレーム(9)に取り付けられている、請求項1から8までのいずれか一項に記載のロボット。
【請求項10】
前記フレームは、前記ロボットを移動させるための車輪、有利には格納可能な車輪を備える、請求項9に記載のロボット。
【請求項11】
前記制御ユニットに命令するための命令ユニット(10)を備え、前記命令ユニットは、使用者が前記バスケット(3)の動きをプログラムすることを可能にするグラフィカル・インターフェース(11)を備える、請求項1から10までのいずれか一項に記載のロボット。
【請求項12】
前記命令ユニット(10)は、前記第1の安全区域及び/若しくは前記第2の安全区域の大きさ、並びに/又は、前記トルク閾値の値、並びに/又は、前記速さ閾値の値を設定することを可能にする、請求項11に記載のロボット。
【請求項13】
前記命令ユニット(10)は、前記第1の速さ、前記第2の速さ、及び/又は前記第3の速さを設定することを可能にする、請求項11又は12のいずれかに記載のロボット。
【請求項14】
前記制御ユニットは、前記第1の安全区域内で物体又は生物が検知されない場合に前記モータをそれらの最高速さで駆動させるように構成されている、請求項1から13までのいずれか一項に記載のロボット。
【請求項15】
前記バスケット(3)は、グリッパを着脱可能に取り付けるための手段(12)を備える、請求項1から14までのいずれか一項に記載のロボット。
【請求項16】
前記グリッパにより吸引力を発生させるための手段を備える、請求項15に記載のロボット。
【請求項17】
前記フレーム(9)は、フォークリフトと相互作用するように構成されている側方脚部(12)を備える、請求項1から16までのいずれか一項に記載のロボット。
【請求項18】
物体又は生物の存在を検知するための前記第1及び/又は前記第2の手段(8)は、前記フレーム(9)上に装着されている、請求項1から17までのいずれか一項に記載のロボット。
【請求項19】
前記運動連鎖機構(4、5、6)のうちの1つ又は前記バスケット(3)と物体又は生物との間の接触を検知するための前記手段は、モータ(7)ごとに冗長性を有する、請求項1から18までのいずれか一項に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパラレル・ロボットの分野に、特にデルタ・ロボットの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
個人及び企業において産業ロボットの普及がますます進んでいる。産業ロボットは特に、高速で高精度の動きが要求される小さな物体の取り回しに、とりわけ、特に例えばクッキーなどの小さく脆い製品用の、製品パッケージング作業に需要がある。
【0003】
この市場の需要は、先行技術でよく知られているロボット・アームの開発によって有効に満たされてきた。
【0004】
食品産業及び製薬産業をはじめとする様々な産業で、デルタ・ロボットが利用されている。これらのロボットは、商品を搬送するコンベア又はベルト・コンベアを備える生産ラインの上に設置され、製品を集めて箱又は容器へと運ぶために様々な作業を行う。デルタ・ロボットは、基部と、通常は等距離に設置される少なくとも3つのモータと、で構成される。モータは、物体の取り回しを行うためのグリッパを一般に備えるバスケットの移動を可能にする、3つの運動連鎖機構(kinematic chain)を駆動するように設計される。デルタ・ロボットは、食品、製薬、及び電子機器を含む広範な産業にわたって、小部品の高速の取り回し及びピッキング作業の速さ及び汎用性を最大にするように、特別に設計されている。その独自のパラレル・リンク構造及び作業エンベロープによって、デルタ・ロボットは、従来のシリアル・リンク・ロボットでは実行できなかった要求の厳しい用途の自動化にとって理想的なものとなっている。
【0005】
先行技術で知られているデルタ・ロボットは極めて有用且つ高速であるが、使用者と協働することはできない。運動連鎖機構及びバスケットの高速移動は、近傍の使用者にとって危険なものである。それでもなお、その使用者はそのような協働が可能となることを歓迎するであろう。このことにより例えば、使用者が介入して例えば製品の品質管理又はメンテナンス作業を行うことのできる開かれた生産ラインに、デルタ・ロボットを実装することが可能になると考えられる。現在のところ、ロボットを特定の柵の中に置くだけでは、使用者の安全を保証することはできない。このような柵は大きなスペースを占め、結果としてロボットと使用者との間の真の協働を妨げる、大規模な生産ラインとなる。
【0006】
したがって、最大限の安全性を確保しながら使用者との協働を可能にするデルタ・ロボットが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目標は、先に述べた限界を克服するための進歩性を備えたデルタ・ロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、これらの目標は独立請求項の目的によって達成される。本発明のより詳細な態様は、従属請求項に、及び明細書に記載されている。
【0009】
より詳細には、本発明の目標は、固定基部と、各自のモータによって各々駆動される3つの運動連鎖機構によって基部に接続されている、可動バスケットと、を備える協働型デルタ・ロボット、によって達成され、ロボットは、ロボットの周囲の第1の安全区域内の物体又は生物の存在を検知するための第1の手段を備え、ロボットは、運動連鎖機構のうちの1つ又はバスケットと物体又は生物との間の接触を検知するための手段を備え、ロボットは、第1の安全区域内において物体又は生物が検知されたときにモータの速さを第1の速さから第2の速さへと下げるように、及び、運動連鎖機構又はバスケットと物体又は生物との間の接触が検知されたときにモータを停止させるように構成されているモータ制御ユニットを備える。
【0010】
このようなデルタ・ロボットを用いれば、安全性を保証しながら、ロボットと近傍の使用者の協働が可能になる。ロボットの周囲の第1の安全区域内の物体又は生物の存在を検知するための第1の手段と、モータ制御ユニットとによって、ロボットの近傍で生物及び/又は物体が検知された場合に、ロボットのモータの速さを、及びその結果運動連鎖機構の動きの速さを下げることが可能である。また更に、運動連鎖機構のうちの1つ又はバスケットと物体又は生物との接触を検知する手段と、モータ制御ユニットとによって、接触が検知されるとすぐに運動連鎖機構及びバスケットの動きを停止させることが可能である。このことにより、使用者の安全性を損なうことなく、ロボットを生物である使用者の近くに設置することができる。したがって本発明によるロボットは互いに近接した生産ラインに組み込むことができ、このことにより生産ラインの長さが短縮される。更に、安全性を確保するためにロボットを固有の柵の中に隔離する必要がもはやなくなる。
【0011】
本発明の第1の好ましい実施例では、ロボットはロボットの周囲の第2の安全区域内の物体又は生物の存在を検知するための第2の手段を備え、第2の安全区域は第1の安全区域よりも小さく且つその中に含まれており、モータ制御ユニットは、第2の安全区域内において物体又は生物が検知されたときに、モータの速さを第2の速さから第3の速さへと下げるように構成されている。このことにより、第2の安全区域内で、すなわちロボットの直接の近傍で物体又は生物が検知された場合に速さを更に下げることができるため、安全性が更に向上する。
【0012】
本発明の別の好ましい実施例では、モータは直接駆動モータである。モータが直接駆動式であること、すなわちギアボックスがないことと、モータが発生可能なトルクに対して特にコンパクトであることとにより、運動連鎖機構のうちの1つ又はバスケットと生物又は物体との接触が検知されると、接触の即時の検知、及びモータの即時の、すなわち50ms未満、有利には10ms未満、特に2ms未満での、停止が可能になる。このことによりロボットの安全性が高まる。本発明によるロボットのモータは有利には、他の知られている協働型ロボットのモータと比較して、より高い比トルク(質量に対するトルク)及びより高いトルク密度(体積に対するトルク)を達成するように構成される。特に、本発明のロボットのモータは、少なくとも2N・m/kg、有利には少なくとも3N・m/kgの比トルクを達成するように構成される。
【0013】
本発明によるロボットは、ロボットと人との間に物理的な安全バリアを設けることなく人に非常に近接したところで作業することを意図した協働型ロボットである。ギアボックス付きのモータを通常使用するデルタ・ロボットとは異なり、本発明のロボットのモータは有利には、慣性の低減された直接駆動モータである。直接駆動と慣性の低減を組み合わせることによりロボットがより迅速に停止することが可能になり、ロボットの近くで作業をしている人が負傷するリスクが低減される。本発明のロボットのモータは有利には、少なくとも1,000N・m/kg・m、有利には少なくとも2,000N・m/kg・m、更により有利には少なくとも3,000N・m/kg・mのトルク密度を達成するように構成される。
【0014】
本発明の別の好ましい実施例では、物体又は生物の存在を検知するための第1及び/又は第2の手段は、安全レーザ・スキャナ、或いは、光電子センサ、カメラ、又は光若しくはビーム・バリアなどの、他の光電子保護デバイスである。このことにより、物体又は生物の検知を正確に行うことができる。これらの手段は有利には、水平面内で、好都合には成人の膝の高さで、物体又は生物の存在を検知するように構成され得る。しかしながら、垂直面若しくは斜面内、又は拡張した範囲内で存在を検知するように構成された手段を提供することも可能である。
【0015】
更に、これらの手段は、物体又は生物がロボットに近づいて来ているのかそれともロボットから遠ざかっているのかを検知するように構成され得る。物体又は生物がロボットから遠ざかっているが第1の安全区域内にあることが検知される場合、ロボットのモータの速さを安全に上げることができる。有利には、これらの手段は、ロボットに対する、特に運動連鎖機構及び/又はバスケットに対する、物体又は生物の移動の相対速さを判定するように構成される。このことにより、ロボットの速さを適宜調整することが可能になる。
【0016】
本発明の別の好ましい実施例では、運動連鎖機構のうちの1つ又はバスケットと物体又は生物との間の接触を検知するための手段は、モータの各々が及ぼすトルクを判定しこれをトルク閾値と比較するための手段を備える。このことにより、接触の確実な検知及びロボットの停止が保証される。実際には、1つ又は複数のモータが加えるトルクが予め有利に定められたトルク閾値以上である場合、ロボットは障害物に接触しており、安全上の理由からロボットを停止させねばならない。
【0017】
本発明の別の好ましい実施例では、運動連鎖機構のうちの1つ又はバスケットと物体又は生物との間の接触を検知するための手段は、モータの速さを判定しこれを速さ閾値と比較するための手段を備える。このことにより、ロボットの予期せぬ挙動を確実に検知することが可能になる。実際には、1つ又は複数のモータの速さが予め有利に定められた速さ閾値以上である場合、ロボットは計画外の動きをしており、接触エネルギーを制限して人の負傷を回避するために、及びこのことにより安全性を高めるために、停止させねばならない。
【0018】
本発明の別の好ましい実施例では、運動連鎖機構のうちの1つ又はバスケットと物体又は生物との間の接触を検知するための手段は、各運動連鎖機構及びバスケットの位置を判定しこれを意図する位置と比較するための手段を備える。このことにより、ロボットと使用者又は物体との間の接触を検知することで、安全性が高まる。
【0019】
本発明の別の好ましい実施例では、モータ制御ユニットは、判定されたトルクがトルク閾値よりも大きい場合、及び/又は、判定された速さが速さ閾値よりも大きい場合、及び/又は、運動連鎖機構又はバスケットの位置が意図された位置と等しくない場合に、モータを停止させるように構成されている。
【0020】
本発明の以下の好ましい実施例では、固定基部は可動フレームに取り付けられている。このことにより、ロボットを必要とされている正確な場所に移動させることが可能になる。このことは、ロボットを生産ラインに組み込む場合に特に有用である。ロボットの位置はこの場合、生産ラインに関連する現在の精確な要件に適合され得る。
【0021】
本発明の別の好ましい実施例では、フレームは、ロボットを移動させるための車輪、有利には格納可能な車輪を備える。これによりロボットの移動が容易になる。有利には、ロボットは、車輪を駆動するためのモータ、例えば電気モータを備える。ロボットはこうして、自らを要求された位置に移動させることができる。このような場合、モータに電力を供給するためのバッテリを備えたロボットを提供することが好ましい。
【0022】
本発明の更に別の好ましい実施例では、ロボットは制御ユニットに命令するための命令ユニットを備え、命令ユニットは使用者がバスケットの動きをプログラムすることを可能にするグラフィカル・インターフェースを備える。グラフィカル・ユニットによって、何らプログラミング言語の知識がなくても、プラットフォームの動きを容易にプログラムすることができる。グラフィカル・インターフェースは有利には触覚式及び/又は可搬式である。
【0023】
本発明の以下の好ましい実施例では、命令ユニットは、第1の安全区域及び/若しくは第2の安全区域の大きさ、並びに/又は、トルク閾値の値、並びに/又は、速さ閾値の値を設定することを可能にする。このことにより、これらのパラメータの値をロボットが設置されている環境に適合させることが可能になる。
【0024】
本発明の別の好ましい実施例では、命令ユニットは、第1の速さ、第2の速さ、及び/又は第3の速さを設定することを可能にする。このことにより、速さをロボットが設置されている環境に適合させることが可能になる。
【0025】
本発明の以下の好ましい実施例では、制御ユニットは、第1の安全区域内で物体又は生物が検知されない場合に、モータをそれらの最高速さで駆動させるように構成されている。更に、制御ユニットは、第1の安全区域内で生物又は物体が検知された場合に、ロボットが十分な安全性を確保しつつ最高速さに達するように構成される。十分な安全性とは、人体の様々な部位との最大許容接触圧力を規定した、ISO15066:2016(2021年)規格に適合していることと定義される。
【0026】
本発明の別の好ましい実施例では、バスケットは、グリッパを着脱可能に取り付けるための手段を備える。このことにより、ロボットを知られている市販のグリッパとともに使用することが可能になる。
【0027】
本発明の以下の好ましい実施例では、ロボットは、グリッパにより吸引力を発生させるための手段を備える。このことにより、物体をグリッパで操作することが可能になる。
【0028】
本発明の別の好ましい実施例では、フレームは、フォークリフトと相互作用するように構成されている側方脚部を備える。このことにより、ロボットを容易に移動させることが可能になる。
【0029】
本発明の更に別の好ましい実施例では、物体の存在を検知するための第1及び/又は第2の手段はフレーム上に装着されている。
【0030】
別の好ましい実施例では、運動連鎖機構のうちの1つ又はバスケットと物体又は生物との間の接触を検知するための手段は、モータごとに冗長性を有する。このことは、手段のうちの1つに欠陥があっても安全性を確保するために特に有利である。特に、モータのトルク及び速さ並びに運動連鎖機構及びバスケットの位置を判定しこれらを比較するための手段を、モータごとに少なくとも2つ設けることによって、冗長性が達成される。これらの手段をモータ制御ユニットに接続するケーブルも、少なくとも2重になっているのが有利である。モータ制御ユニットの及び命令ユニットのソフトウェアは、この冗長性を考慮して設計されるのが有利である。
【0031】
本発明の特徴及び利点は以下の説明において、添付の2つの図面を参照した実施例の例示的且つ非限定的な実例によって、より詳細に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施例によるデルタ・ロボットの側面図である。
図2図1のロボットの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の一実施例による協働型デルタ・ロボット1の、図1は側面図を示し、図2は上面図を示す。ロボット1は、固定基部2に対するバスケット3の移動を可能にする、3つの運動連鎖機構4、5、6を備える。各運動連鎖機構4、5、6は各自のモータ7、有利には直接駆動モータを有する。バスケット3はグリッパ12を着脱可能に受けるように構成され、有利には、グリッパによって吸引力を加えるための手段(図示せず)を備える。
【0034】
ロボット1は、第1の安全区域及び/又は第2の安全区域内の物体又は生物の存在を検知するための手段8を更に備え、前記第2の安全区域は前記第1の安全区域よりも小さく且つその中に含まれている。図1及び図2のロボットは、フレーム9上の2つの異なる場所に設置された2つの手段8を備え、このことにより、複数の区域内で物体又は人間の存在を検知することが可能になっている。当然ながら、ただ1つの手段8又は3つ以上の手段を設けることも可能である。物体又は生物の存在を検知するための追加の手段を設けてもよいことに注意することが重要である。これらの手段は例えば、ロボットから距離を置いて設置された光電子センサとすることができ、これにより異なるエリアを、特にフレーム上に装着された手段ではカバーできない死角をカバーすることが可能になる。
【0035】
ロボット1はまた、運動連鎖機構又はバスケットと物体又は生物との間の接触を検知するための手段(ここでは図示せず)も備える。有利には、これらの手段は、安全な方法でロボットの位置及び速さを制御することに及び各関節に各モータが及ぼすトルクを制御することに専用の、命令ユニットを備える。特に、これらの手段は、各モータが及ぼすトルクを判定し、これをトルク閾値と比較するための手段を備える。これらの手段はまた、各モータの速さを判定しこれを速さ閾値と比較するために、有利に使用できる。最後に、これらの手段により、各運動連鎖機構の及びバスケットの位置を判定し、これらをその意図した位置と比較することが可能になる。及ぼされたトルクがトルク閾値より大きい場合、又は、判定された速さが速さ閾値より大きい場合、又は、ロボットの位置と意図する位置との間に乖離があると判定された場合には、安全を確保するためにモータ制御ユニットによってモータが停止される。
【0036】
図1及び図2に見られるように、ロボットは、モータ制御ユニット7に命令するように構成された命令ユニット10を備える。命令ユニット10は、バスケット3の動きを「WYSIWYG」プログラミングするための、グラフィカル・ユーザ・インターフェース11を備える。命令ユニットはまた、トルク閾値の値、速さ閾値の値、及び運動連鎖機構及びバスケットの判定された位置とモータを停止させる意図された位置との間の乖離の値を、使用者が入力することを可能にする。有利には、グラフィカル・インターフェースは触覚式である。
【0037】
ロボット1、より詳細にはフレーム9は、ロボットをフォークリフト・トラックで運搬可能にするように構成された脚部12を備え、このことにより、ロボットを必要とされる場所に容易に移動させることが可能になる。ロボットはまた更に、ロボット内に設置された1つ又は複数の電気モータによって有利に駆動され得る、自身を移動させるための車輪を備えてもよい。これらのモータに電力を供給するためのバッテリを1つ又は複数提供できると都合がよい。
【0038】
本発明にその実施に関して多くの変形が行われることは明らかである。実例として非限定的な実施例について記載したが、可能な全ての変形を網羅的に特定することは考えられないことが理解される。当然ながら、記載された手段を、本発明の範囲を超えることなく等価な手段で置き換えることは可能である。これらの修正は全て、デルタ・ロボットの分野の当業者の一般的知識の一部である。
図1
図2
【国際調査報告】