(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】自動車用レーダ装置のための較正装置配置、較正装置および較正方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20241008BHJP
G01S 13/74 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01S7/40 126
G01S13/74
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520980
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2022077666
(87)【国際公開番号】W WO2023057497
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】102021126144.9
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】ミラン、クビチェラ
(72)【発明者】
【氏名】オンドジェイ、ステイスカル
(72)【発明者】
【氏名】ミハル、マンドリーク
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AF03
5J070AH35
5J070AK40
5J070BC00
(57)【要約】
本発明は、較正装置配置(3)、較正装置(4)、および較正方法に関する。較正装置配置(3)は、自動車用レーダ装置(2)と、レーダ装置(2)に対して距離(8)を置いて配置された保持ユニット(5)、および較正装置(4)の第1の方向に間隔を置いて配置された較正対象物(6)を備える較正装置(4)と、を備える。レーダ装置(2)からすべての較正対象物(6)にレーダ波が放射されると、レーダ装置(2)により受信可能な戻り信号が、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを用いて解析可能となる。保持ユニット(5)を第1の方向に垂直な第2の方向に移動させながら、レーダ装置(2)の仰角および方位角(11,12)の較正を行うことができるように、FFTスペクトルにおける各変換された戻り信号のピーク位置が、区別可能であり、かつ関与する較正対象物(6)に対応可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用レーダ装置(2)のための較正装置配置(3)であって、前記自動車用レーダ装置(2)と、前記自動車用レーダ装置(2)に対して所定の距離(8)に配置された可動保持ユニット(5)、および前記保持ユニット(5)上の較正装置(4)の第1の方向において規定された位置に互いに離間して配置された少なくとも2つの較正対象物(6)を備える前記較正装置(4)と、を備え、前記自動車用レーダ装置(2)からすべての較正対象物(6)への同時のレーダ波放射時に、前記自動車用レーダ装置(2)によって受信可能な前記較正対象物(6)からの個々の戻り信号が高速フーリエ変換アルゴリズムを使用して解析可能であり、前記高速フーリエ変換スペクトル内の各変換された個々の戻り信号のピーク位置が、区別可能であり、かつ関与する前記較正対象物(6)に直接対応可能であり、その結果、仰角(11)および方位角(12)に対する前記自動車用レーダ装置(2)の較正が、前記第1の方向に垂直な第2の方向において開始位置(13)と終了位置(14)との間の前記所定の距離(8)で前記保持ユニット(5)を移動させながら実行可能である、較正装置配置(3)。
【請求項2】
前記較正対象物(6)が、人工ターゲットであり、前記レーダ装置(2)への前記戻り信号が、移動する対象物を模倣し、前記人工ターゲットの規定された特性により、前記高速フーリエ変換スペクトル内の規定されたピーク位置に位置する、請求項1に記載の較正装置配置(3)。
【請求項3】
前記戻り信号に前記高速フーリエ変換アルゴリズムを適用することにより、各戻り信号がレンジドップラー(15)プロットのレンジ軸(16)の個々のセグメント(17)に割り当て可能であり、前記個々のセグメント(17)が互いに異なる、前記レンジドップラープロット(15)が生成可能である、請求項2に記載の較正装置配置(3)。
【請求項4】
前記較正対象物(6)が、遅延線長(23)の遅延線(22)を有するアンテナであり、前記遅延線長(23)が、前記少なくとも2つの較正対象物(6)の較正対象物(6)ごとに異なる、請求項1に記載の較正装置配置(3)。
【請求項5】
前記戻り信号に前記高速フーリエ変換アルゴリズムを適用することにより、各戻り信号がレンジプロットのレンジ軸(16)の個々のセグメント(17)に割り当て可能であり、前記個々のセグメント(17)が互いに異なる、前記レンジプロットが生成可能である、請求項4に記載の較正装置配置(3)。
【請求項6】
各アンテナが、好ましくはバンドパスフィルタ(24)を介してスプリッタ(28)、周波数ミキサ(25)および/または増幅器(26)に電子的に接続されている、請求項4または5に記載の較正装置配置(3)。
【請求項7】
前記保持ユニット(5)が、前記少なくとも2つの較正対象物(6)が配置される基本要素(20)を備え、前記基本要素(20)が、基本位置と上昇位置との間で前記第1の方向に移動可能であり、各位置において、前記自動車用レーダ装置(2)からの前記レーダ波放射が、前記少なくとも2つの較正対象物(6)によって受信可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載の較正装置配置(3)。
【請求項8】
前記基本要素(20)が、所定のステップで、好ましくは仰角(11)および/または方位角(12)の5度のシフトに対応するステップで、前記基本位置と前記上昇位置との間で移動可能である、請求項7に記載の較正装置配置(3)。
【請求項9】
前記基本要素(20)が、直線状であり、前記第1の方向に平行に配置されている、請求項7または8に記載の較正装置配置(3)。
【請求項10】
前記基本要素(20)が、少なくとも前記少なくとも2つの較正対象物(6)の位置の間で湾曲し、好ましくは円形湾曲している、請求項7または8に記載の較正装置配置(3)。
【請求項11】
前記自動車用レーダ装置(2)が、3次元レーダである、請求項1から10のいずれか一項に記載の較正装置配置(3)。
【請求項12】
前記自動車用レーダ装置(2)が、ニアフィールドレーダまたは高精細レーダである、請求項1から11のいずれか一項に記載の較正装置配置(3)。
【請求項13】
可動保持ユニット(5)と、前記保持ユニット(5)上の前記較正装置(4)の第1の方向において規定された位置に互いに離間して配置された少なくとも2つの較正対象物(6)と、を備える較正装置(4)であって、請求項1から12のいずれか一項に記載の較正装置配置(3)によって構成可能である、較正装置(4)。
【請求項14】
自動車用レーダ装置(2)と、前記自動車用レーダ装置(2)に対して所定の距離(8)に配置された可動保持ユニット(5)、および前記保持ユニット(5)上の較正装置(4)の第1の方向において規定された位置に互いに離間して配置された少なくとも2つの較正対象物(6)を備える前記較正装置(4)と、を備える較正装置配置(3)を用いて実行される自動車用レーダ装置(2)のための較正方法であって、
前記自動車用レーダ装置(2)からすべての較正対象物(6)へ同時にレーダ波放射するステップ(S1)と、
前記較正対象物(6)により、前記レーダ波および前記自動車用レーダ装置(2)への個々の戻り信号の放射を受信するステップ(S2)と、
前記自動車用レーダ装置(2)により前記個々の戻り信号を受信するステップ(S3)と、
高速フーリエ変換アルゴリズムを使用して、受信した前記戻り信号を解析するステップ(S4)と、
前記高速フーリエ変換スペクトル内の各変換された個々の戻り信号のピーク位置が区別可能であり、かつ関与する前記較正対象物(6)に直接対応可能であることを考慮して、前記第1の方向において前記規定された位置に対して前記自動車用レーダ装置(2)の較正を実行するステップ(S5)と、
前記第1の方向に垂直な第2の方向における開始位置(13)と終了位置(14)との間の位置で前記第1の方向において前記規定された位置の較正を実行するために、上記のステップ(S1からS5)を繰り返しながら、前記第2の方向において前記開始位置(13)と前記終了位置(14)との間の前記所定の距離(8)で前記保持ユニット(5)を移動させるステップ(S6)と、を含む、較正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用レーダ装置の較正装置配置に関する。本発明はさらに、そのような較正装置配置に含まれる較正装置、およびそのような較正装置配置で実行される自動車用レーダ装置の較正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両は、レーダ装置に対して車両の周囲の対象物の距離、角度または速度を決定するための検出システムとしてレーダ装置を備えることができる。レーダ装置は、典型的には、無線またはマイクロ波領域の電磁波を生成する送信機と、送信アンテナと、受信アンテナと、受信機と、プロセッサとを備える。レーダ装置が送信した電波は、車両周辺の対象物で反射される。反射された電波を意味する戻り信号は、レーダ装置によって受信され、対象物の位置および速度に関する情報を与える。「レーダ(radar)」は、略記であり、Radio Detection and Rangingの略である。
【0003】
レーダ装置によって提供される車両の周囲の対象物に関するデータは、例えば、レーンアシスタントなどの運転者支援システムによって使用することができる。しかしながら、運転者支援システムに信頼できるレーダデータを提供するためには、レーダ装置を正確に較正する必要がある。
【0004】
米国特許出願公開第2017/0212215号明細書は、明確に定義されたターゲットを有する試験ステーションによって車両に取り付けられたレーダセンサユニットの位置ずれを判定するための方法および装置を示している。ターゲットで反射された受信レーダ波に基づいて、ターゲットの存在、位置および距離を決定し、ターゲットの実際の位置および距離と比較して、レーダ装置を較正するためのデータを提供することができる。ターゲットは、レーダセンサユニットまで既知の距離に配置されたコーナーリフレクタである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0212215号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、自動車用レーダ装置の較正手順の持続時間が短縮される解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、独立請求項の主題によって解決される。
【0008】
本発明の一態様は、自動車用レーダ装置のための較正装置配置に関する。較正装置配置は、自動車用レーダ装置と較正装置とを備える。自動車用レーダ装置は、例えば、車両に搭載されるレーダセンサである。あるいは、自動車用レーダ装置は、好ましくは車両に取り付けられるように構成されたスタンドアロン装置である。車両は、自動車、例えば自動車、バスまたはトラックであることが好ましい。車両は、較正装置配置の構成要素と考えることもできる。自動車用レーダ装置は、例えば、車両の周辺領域に面する車両の前部または後部に配置される。自動車用レーダ装置は、車両のバンパーの前方または後方に配置することができる。車両および/またはスタンドアロンの自動車用レーダ装置は、自動車用レーダ装置の較正中は静止している。
【0009】
較正装置は、可動保持ユニットを備える。可動保持ユニットは、自動車用レーダ装置に対して所定の距離に配置される。可動保持ユニットは、自動車用レーダ装置が位置する車両の部分から約1メートル離れた距離に配置されることが好ましい。あるいは、例えば、0.2メートル、0.5メートル、0.7メートル、0.8メートルもしくは0.9メートルのより小さい距離、またはこれらの値の間の任意の距離が可能である。あるいは、より大きな距離、例えば、1.2メートル、1.5メートル、2メートル、3メートル、4メートルもしくは5メートル、またはこれらの値の間の任意の距離を選択することができる。言い換えれば、可動保持ユニットは、自動車用レーダ装置から1メートルより近くに、またはより遠くに配置することができる。しかしながら、レーダ装置の送信アンテナおよび/または受信アンテナを意味する、レーダ装置のアンテナのニアフィールドゾーンに配置される場合、レーダ装置のニアフィールドゾーンに保持ユニットを配置することに起因して必要な補正を実行するために、レーダ装置によって測定されたデータに補正アルゴリズムを適用することができる。
【0010】
さらに、較正装置は、少なくとも2つの較正対象物を備える。少なくとも2つの較正対象物は、保持ユニット上の較正装置の第1の方向において規定された位置に互いに離間して配置される。好ましくは、第1の方向は、較正装置の高さ方向である。好ましくは、較正装置の高さ方向は、レーダ装置を搭載した車両の高さ方向に対応する。較正装置の高さ方向は、自動車用レーダ装置の高さ方向でもあることが好ましい。保持ユニットには、各較正対象物が固定されている。言い換えれば、保持ユニット上の、好ましくはレーダ装置に対する各較正対象物の位置は、較正プロセス中に既知である。保持ユニットに固定される代わりに、またはそれに加えて、較正対象物は、例えば、保持ユニットのステップモータによって、保持ユニットに沿って移動可能であり得る。好ましくは、例えば車両に対する保持ユニットの移動に起因する、2つの較正対象物の互いに対する変位が防止される。
【0011】
好ましくは、最初に、較正装置は、高さ方向において第1の較正対象物がレーダ装置の真向かいに配置されるように、レーダ装置の高さに調整される。これは、例えば、レーダ装置の中心点と第1の較正対象物との間の直接的な理論的接続線が、レーダ装置付き車両と較正装置との両方が位置する地面に対して平行であることを意味する。
【0012】
自動車用レーダ装置からすべての較正対象物への同時レーダ波放射時に、自動車用レーダ装置が受信可能な較正対象物からの個々の戻り信号は、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを用いて解析可能であることが好ましい。レーダ装置は、電波範囲、特にマイクロ波範囲の電波を放出し、放出された電波はレーダ波と呼ばれる。したがって、すべての較正対象物は、特定の時点に放射されたレーダ波を受信する。レーダ装置は、例えば、レーダ装置および車両の長さおよび高さ方向の両方に延在する規定の領域、すなわちレーダ装置に対して方位角および仰角にわたって延在する領域にわたってレーダ波を放射することができる。各較正対象物は、放射されたレーダ波を受信し、レーダ装置に信号を送り返す。しかしながら、各較正対象物は、放射された電波を単に反射するのではなく、個々の戻り信号を生成することが好ましい。個々の戻り信号は、好ましくは、較正対象物の個々のシグネチャを含む受信レーダ波の反射に基づく修正信号である。したがって、戻り信号は較正対象物ごとに異なる。
【0013】
戻り信号がレーダ装置によって受信されると、それらはレーダ装置の較正を実行するために解析される。そうするために、FFTアルゴリズムを使用することができる。FFTアルゴリズムは、例えば、各戻り信号の離散的なFFTを計算する。FFTアルゴリズムを適用することにより、受信された各戻り信号は、例えば波長であるその元の領域から、周波数領域における対応する戻り信号の表現に変換される。これをすべての戻り信号に対して行うことによって、FFTスペクトル内の戻り信号の表現が作成される。FFTスペクトルにおける各変換された個々の戻り信号のピーク位置は区別可能であり、関与する較正対象物に直接対応する。言い換えれば、FFTスペクトル内の変換された個々の戻り信号の各々のピーク位置は、関与する較正対象物に直接対応することができる。これは、各戻り信号がその変換後にFFTスペクトル内の特定の位置に位置することを意味する。関与する較正対象物は、それぞれの戻り信号を放出した較正対象物である。
【0014】
FFTプロットによって表すことができる、計算されたFFTスペクトル内の様々なピークが識別可能である。これらのピークの各々は、少なくとも2つの較正対象物のうちの1つに接続可能である。これは、それぞれの較正対象物に接続されたFFTプロットのピークを解析すると、それぞれの較正対象物とレーダ装置との間の距離および/または較正対象物の相対速度を計算できることを意味する。この計算を行うために、例えば、戻り信号の構造に関する情報、すなわちそれぞれの較正対象物の仕様、保持ユニット上のそれぞれの較正対象物の位置、ならびに保持ユニットのレーダ装置までの距離が考慮される。戻り信号の構造に関する情報は、例えば、較正対象物へのリンクを提供する戻り信号の個々の部分が作成される規則を含む。これにより、第1の方向における較正対象物の位置に対してレーダ装置の直接的な較正を行うことができる。これらの位置が高さ方向であれば、仰角のキャリブレーションが可能である。
【0015】
必要な計算ステップは、計算装置、例えばラップトップまたは固定コンピュータなどの個々の装置によって実行することができる。あるいは、レーダ装置は、計算装置を備えることができる。計算装置は処理ユニットを備える。
【0016】
また、第1の方向に垂直な第2の方向において、保持ユニットを開始位置と終了位置との間で所定の距離だけ移動させながら、第2の方向における開始位置と終了位置との間の位置で第1の方向の位置についてレーダ装置の較正が可能である。言い換えると、第1の方向の位置の較正は、第2の方向の変化する位置で行われる。第2の方向の位置は、好ましくは開始位置と終了位置との間の第2の方向の連続移動によって変化する。好ましくは、開始位置および終了位置は、高さ方向に垂直な自動車用レーダ装置の水平面上に位置する。この例では、方位角に対するレーダ装置の較正も可能である。水平面は、レーダ装置および車両の長さ方向および横方向に延在する。水平面は、高さ方向に対して垂直に、すなわち垂直に整列している。開始位置および終了位置は、好ましくは第2の方向におけるレーダ装置の視野またはカバレッジエリアの対向する縁部に規定された位置である。視野またはカバレッジエリアは、レーダ装置を車両に取り付けることによって空間的に限定することができる。すなわち、開始位置と終了位置との間の移動に沿って、異なる方位角で行われるように仰角のキャリブレーションが行われる。これを少なくとも複数の方位角にわたって継続すれば、車両に搭載された3次元レーダ装置の詳細な較正が可能となる。
【0017】
方位角および仰角は、レーダ装置を中心とする球を使用する水平座標系を指す。水平面内の無線装置に対して異なる角度を意味する平面内の角度は、方位角と呼ばれる。水平に整列した方位角に対して垂直な角度は、仰角または代替的に高度角と呼ばれる。換言すれば、仰角の較正とは、レーダ装置に対して垂直な方向の較正を行うことを意味し、方位角の較正とは、自動車用レーダ装置に対する水平面内の較正を意味する。
【0018】
開始位置と終了位置との間の保持ユニットの移動は、好ましくは連続的な移動であり、この移動の間、較正対象物への同時レーダ波放射が行われる。これは、車両の周囲に向かうすべての可能な放射方向でレーダ装置の完全な較正を提供するために、開始位置と終了位置との間の移動、好ましくは較正装置の横方向の移動のみが必要であることを意味する。しかしながら、好ましくは垂直に配置された較正対象物に起因して、レーダ装置を少なくとも2つの仰角について較正するために必要な、較正装置の垂直方向または高さ方向を意味する第1の方向への直接的な移動はない。これにより、すべての仰角の較正データが同時に測定されるため、迅速な較正手順が得られる。したがって、自動車用レーダ装置の較正手順の持続時間が短縮される。さらに、説明された較正装置配置は、特に開始位置と終了位置との間の移動が、例えば較正装置の移動ユニットによって実行される自動である場合、手動のサポートとは無関係である。
【0019】
本発明のこの態様の実施形態の以下の例では、較正対象物が保持ユニット上の高さ方向において異なる位置に配置されると仮定する。あるいは、較正対象物は、較正装置の横方向、好ましくは車両および/またはレーダ装置の横方向において異なる位置に配置することができる。横方向は、好ましくは、レーダ装置および/または車両の長さおよび高さ方向に対して垂直である。開始位置と終了位置との間の移動は、高さ方向である。これにより、最初に方位角の較正が行われ、続いて高さ方向の移動に沿って異なる仰角で方位角の較正が行われる。
【0020】
一実施形態は、較正対象物が人工ターゲットであることを含む。自動車用レーダ装置への戻り信号は、移動する対象物を模倣する。人工ターゲットは、放射されたレーダ波を受信し、人工ターゲットが現在動いていることを示す特定の信号セグメントを含む戻り信号を送り返す装置である。したがって、人工ターゲットは古典的なコーナーリフレクタではない。人工ターゲットはターゲットの動きを模倣するので、例えば、ドップラー周波数は戻り信号に含まれる。戻り信号は、人工ターゲットの定義された特性のためにFFTスペクトル内の定義されたピーク位置に位置する。言い換えれば、人工ターゲットは、FFTスペクトル内の個々の戻り信号のピーク位置とそれぞれの較正対象物、この場合は人工ターゲットとの間の区別可能かつ直接対応可能な関係を可能にする。例えば、FFTアルゴリズムを適用した後に保持ユニット上に配置された2つ以上の人工ターゲットを選択することにより、各人工ターゲットの戻り信号は、FFTスペクトル内の定義されたピーク位置に配置され、したがって識別され、それによって送出された人工ターゲットと直接相関することができる。これにより、レーダ装置の受信した戻り信号データ内の個々の較正対象物の各々の明確かつ容易な識別が可能になる。
【0021】
代替的または追加的に、一例では、較正対象物は、保持ユニット上の較正対象物の位置に対応する方向からレーダ装置に向かって実際に移動しているターゲットであり得る。この場合、例えば、ターゲットをレーダ装置に向かって移動させるために、経路案内要素が較正装置に含まれる。
【0022】
さらなる実施形態は、戻り信号にFFTアルゴリズムを適用することによって、レンジドップラープロットが生成可能であることを含む。生成されたレンジドップラープロットでは、各戻り信号は、レンジドップラープロットのレンジ軸の個々のセグメントに割り当てることができ、個々のセグメントは互いに異なる。レンジドップラープロットの1つの軸には、距離を意味するレンジがプロットされている。別の軸では、例えば、ドップラー周波数がプロットされる。これに関連して、所定の較正対象物とレーダ装置との間の距離を記述するためにレンジが使用され、このレンジは、この実施形態では、自動車用レーダ装置に対する人工ターゲットの距離であり得る。しかしながら、人工ターゲットは、放射されたレーダ波の単なる反射ではない特定の戻り信号を生成するので、この距離は実際の距離を指す必要はない。代替的または追加的に、人工ターゲットは、放射されたレーダ波の反射を表す戻り信号を提供するケーブルを備えることができる。しかしながら、人工ターゲットは受動人工ターゲットである。これは、人工ターゲットとレーダ装置との間の実際の距離が、例えば人工ターゲットの定義された特性、保持ユニット上のその位置、および保持ユニットのレーダ装置までの距離を考慮に入れて、例えば計算装置によって最初に決定されなければならないことを意味する。しかしながら、決定されたピーク位置のレンジは、自動車用レーダ装置の較正に必要なそれぞれのデータを計算するために評価される。したがって、人工ターゲットは、較正装置配置のための合理的な較正対象物である。
【0023】
代替的な実施形態は、較正対象物が、遅延線長の遅延線を有するアンテナであることを含む。遅延線長は、少なくとも2つの較正対象物の各々の較正対象物ごとに異なる。これは、保持ユニットがいくつかの個別のアンテナを保持することを意味し、これらは異なる遅延線長によって区別することができる。遅延線は、それぞれのアンテナのアンテナケーブルのケーブル長によって実現することができる。較正対象物としてのアンテナの使用は、最初に放射されたレーダ波がアンテナによって受信され、次にそれが内部アンテナ電子機器を通過するという観測に基づいており、その結果、遅延線長は、アンテナからレーダ装置に返送される戻り信号に影響を及ぼす。内部アンテナ電子機器は、例えば、ケーブルのみを備えることができる。これにより、遅延線はすべて異なる遅延線長を有するため、各アンテナは異なる戻り信号を放射する。したがって、戻り信号は、より長い遅延線長を有するアンテナからの戻り信号に対して時間遅延される。アンテナは、費用対効果の高い較正対象物である。さらに、アンテナは、レーダ装置の周囲で静止対象物として機能し、レーダ装置の較正中にドップラー周波数が観測されないので、必要な計算ステップを削減する。
【0024】
さらに、一実施形態は、戻り信号にFFTアルゴリズムを適用することによって、各戻り信号がレンジプロットのレンジ軸の個々のセグメントに割り当て可能であり、個々のセグメントが互いに異なるレンジプロットが生成可能であることを含む。較正対象物としてのアンテナのために、移動物体は模倣されず、その結果、レンジドップラープロットではなくレンジプロットにおいて戻り信号が表現される。しかしながら、各アンテナは特定の遅延線長を有し、それにより、すべての受信された戻り信号は、依然として、レンジ軸上の範囲セグメントによって微分可能であるため、FFTスペクトル内の特定のピークに対応することができる。最短遅延線を有するアンテナの戻り信号は、典型的には、より長い遅延線長を有するアンテナの戻り信号と比較して、最小レンジ値、すなわち最小レンジセグメントにおいてFFTスペクトル内に配置される。したがって、較正対象物としてアンテナを用いることにより、レーダ装置の迅速かつ容易な較正が可能となる。較正のための計算は、例えば、それぞれのアンテナの既知の遅延線長、それぞれのアンテナに対応するピーク値の測定レンジ、保持ユニット上のアンテナの位置、および保持ユニットのレーダ装置までの距離に少なくとも基づく。
【0025】
代替的または追加的に、人工ターゲットまたは遅延線を有するアンテナの代わりに、較正対象物は、レーダ装置までの異なる所定の距離を有するコーナーリフレクタであってもよい。これは、例えば、各コーナーリフレクタがレーダ装置に対して異なる距離を有し、したがって上述のようにレンジ内で区別できるように、コーナーリフレクタがポール上に垂直に整列される場合に達成される。
【0026】
さらに、一実施形態は、各アンテナが、好ましくはバンドパスフィルタ、周波数ミキサおよび/または増幅器を介してスプリッタに電子的に接続されることを含む。スプリッタは、例えば方向性結合器と呼ぶことができる電力分配器である。スプリッタは、アンテナによって受信された信号をコピーおよび/または複製することを意図しており、これは、レーダ波の受信による信号を意味する。次いで、コピーは、例えば、計算装置による後の解析のために記憶することができる。これは、較正装置が開始位置と終了位置との間を移動している場合、較正装置の複数のアンテナによって連続的にレーダ波が受信されるため有利である。次いで、例えば、自動車用レーダ装置によって戻り信号を受信した後に、受信した戻り信号および放射されたレーダ波に関する情報の両方がすべて利用可能であるように、すべての対応するデータが保存および記憶される。記憶されたデータは、例えば、レーダ装置の較正値を決定するために較正装置によって使用され得る。バンドパスフィルタ、周波数ミキサおよび/または増幅器は、容易かつ費用効果の高い機器でさらに処理される信号を提供するために使用される。例えば、ミキサは、信号のダウンコンバージョンおよびその後のアップコンバージョンに使用される。言い換えれば、これらの電子部品は、合理的な信号準備を提供する。スプリッタの代わりに、オンスイッチおよびオフスイッチを使用することができる。しかしながら、スプリッタは、並列測定を直接可能にするという利点を有する。
【0027】
あるいは、少なくとも1つの較正対象物、好ましくは複数の較正対象物は人工ターゲットであり、少なくとも1つの他の較正対象物、好ましくは複数の他の較正対象物はアンテナである。
【0028】
さらに、一実施形態は、保持ユニットが基本要素を備えることを含む。基本要素上に、少なくとも2つの較正対象物が配置される。基本要素は、基本位置と上昇位置との間で第1の方向、好ましくは高さ方向に移動可能である。基本位置と上昇位置との間の移動を可能にするために、高さ調整装置を保持ユニットに含めることができる。高さ調整装置は、例えば、保持ユニットに含まれる手動で操作可能な装置である。高さ調整装置は、例えば伸縮自在なスティックとすることができる。好ましくは、スティックは、較正対象物が配置される基本要素に接続される。スティックの伸長は、代替的または追加的に、好ましくは電気モータの手動または電子作動時に、電子モータによって実行することができる。基本位置と上昇位置との間の各位置において、自動車用レーダ装置からのレーダ波放射は、少なくとも2つの較正対象物によって受信可能である。例えば、較正装置が、較正装置の高さ方向の2つの異なる位置に正確に2つの較正対象物を備える場合、これらの2つの較正対象物は、少なくとも1つのさらなる位置において上方または下方に移動することができる。これは、較正のための測定が基本要素の異なる高さ位置で繰り返される場合、複数の特定の高さ位置、すなわち複数の特定の仰角からの較正データを受信することができることを意味する。したがって、例えば、局所的に詳細な較正を依然として実行しながら、較正対象物を少なくすることが可能である。
【0029】
基本要素の1つの高さ設定で方位角の較正を実行し、その後に、高さ設定を変更し、仰角の十分に詳細な較正が達成されるまで、変更された高さ設定の開始位置と終了位置との間の移動を繰り返すことなどが可能である。
【0030】
別の実施形態は、基本要素が所定のステップで基本位置と上昇位置との間で移動可能であることを含む。好ましくは、各ステップは、仰角の5度のシフトに対応する。これは、好ましくは各ステップによって、自動車用レーダ装置とそれぞれの較正対象物との間の角度が5度増加または減少することを意味する。基本要素の高さ方向の上方への移動は、例えば、開始位置と終了位置との間の水平移動をこの高さで繰り返すために、仰角5度ごとに停止される。これは、例えば、第1の較正対象物が0度の仰角に配置され、他の較正対象物が10度および20度に配置される場合、基本要素の上方への移動後に、較正対象物は5度、15度および25度の仰角に配置されることを意味する。好ましくは、終了値または5度ごとの仰角からのデータが提供される。これにより、大量の較正対象物を必要とせずに、完全な較正手順が得られる。したがって、較正対象物の数は2つ、3つ、4つ、または5つに制限され得るが、高さ方向または別の最初に詳細なデータを得ることが可能であり、代替的な方位角の仰角の詳細で完全な較正を可能にするので、較正装置配置は費用対効果が高い。
【0031】
別の実施形態によれば、基本要素は直線状であり、第1の方向に平行に配置される。好ましくは、自動車用レーダ装置の鉛直方向に平行に配置される。基本要素は、例えば、湾曲部または縁部のないスティックであってもよい。しかしながら、異なる較正対象物は、人工的なターゲットおよび/またはアンテナの使用のために区別可能である。このような直線状の基本要素は、製造および調整が容易である。
【0032】
異なる実施形態では、基本要素は、少なくとも湾曲した少なくとも2つの較正対象物の位置の間にある。好ましくは、それは、基本要素の少なくともこれらの部分において円形に湾曲している。この実施形態では、異なる較正対象物は、例えば、レーダ装置が湾曲した基本要素によって形成される円セグメントの中心点に位置するように湾曲している、湾曲した基本要素上に位置合わせされるため、レーダ装置までの距離がすべて同じである。このような基本要素により、すべての較正対象物は、自動車用レーダ装置から同時に放射されたレーダ波を同時に受信するため、開始位置と終了位置との間の移動中に、どの受信信号が1つの特定の位置に対応するかを決定するために時間補正測定を必要としない。
【0033】
さらに、自動車用レーダ装置が3次元レーダであることを含む実施形態がある。3次元レーダは、垂直方向および水平方向を意味する3方向すべてのレーダ波を同時に放射することができる。通常、このような3次元レーダを較正するためには、多くの異なる較正ステップを実行する必要がある。しかしながら、較正対象物を第1の方向、好ましくは高さ方向に整列させるために、3次元レーダ装置の視野またはカバレッジエリア内のすべてのエリアのデータを得るために、第2の方向、好ましくは水平方向、すなわち横方向の掃引のみが必要である。仰角の較正を行うのに十分なデータを得るために、第1の方向、好ましくは高さ方向への移動が必要ないように、保持ユニット上に十分な数の較正対象物があれば、特に有利であろう。これは、例えば、5度の仰角(または代替的にまたは追加的に方位角)ごとに較正対象物が保持ユニット上に配置される場合である。
【0034】
別の実施形態では、自動車用レーダ装置は、ニアフィールドレーダまたは高精細レーダである。これにより、較正を実行するのに十分な品質のレーダデータを維持しながら、例えば1メートルの比較的近い較正距離が可能になる。
【0035】
較正対象物から離れた保持ユニットは、レーダ周波数吸収器によって少なくとも部分的に覆われ得る。したがって、レーダ周波数吸収材料は、較正対象物を除く較正装置のレーダ装置に面するすべての部分を覆うことが好ましい。これにより、例えばFFTスペクトル内のそれぞれの信号によって見える背景ノイズ信号が低減され、例えば、レンジドップラープロットまたはレンジプロット内の拡大された信号ピーク面積をもたらすことができる。較正対象物の周りのレーダ周波数吸収材料を使用することにより、背景ノイズを大幅に低減することができ、その結果、特に戻り信号に起因する実際のピークが背景ノイズと区別できないレンジ軸のオーバーラップセグメントにおいて、より正確な結果が得られる。
【0036】
本発明の別の態様は、較正装置に関する。較正装置は、可動保持ユニットと、保持ユニット上の較正装置の第1の方向において規定された位置に互いに離間して配置された少なくとも2つの較正対象物とを備える。較正装置は、上述の較正装置配置のために設計される。上述の較正装置配置の一実施形態または実施形態の組み合わせによって説明される較正装置の特徴は、本発明の較正装置の実施形態であると考えられる。
【0037】
本発明の別の態様は、上述の較正装置配置で実行される自動車用レーダ装置の較正方法に関する。較正装置配置は、自動車用レーダ装置と、自動車用レーダ装置に対して所定の距離に配置された可動保持ユニットと、保持ユニット上の較正装置の第1の方向において規定された位置に互いに離間して配置された少なくとも2つの較正対象物とを備える較正装置とを備える。本方法は、自動車用レーダ装置からすべての較正対象物へ同時にレーダ波放射するステップと、較正対象物により、レーダ信号および自動車用レーダ装置への個々の戻り信号の放射を受信するステップと、自動車用レーダ装置により個々の戻り信号を受信するステップと、FFTアルゴリズムを使用して受信した戻り信号を解析するステップと、FFTスペクトル内の各変換された個々の戻り信号のピーク位置が区別可能であり、かつ関与する較正対象物に直接対応可能であることを考慮して、第1の方向において規定された位置に対して自動車用レーダ装置の較正を実行するステップと、第1の方向に垂直な第2の方向における開始位置と終了位置との間の位置で第1の方向において規定された位置の較正を実行するために、上記のステップを繰り返しながら、第2の方向において開始位置と終了位置との間の所定の距離で保持ユニットを移動させるステップと、を含む。保持ユニット上の位置が高さ方向である場合には、FFTスペクトル内の変換された個々の戻り信号の各々のピーク位置が区別可能であり、かつ関与する較正対象物に直接対応可能であることを考慮して、仰角について自動車用レーダ装置の較正を実行するステップと、レーダ装置の水平面内の開始位置と終了位置との間の所定の距離で保持ユニットを移動させるステップと、自動車用レーダ装置の方位角の較正を実行するために、上記のステップを繰り返すステップと、を含む。上述の較正装置配置の個々の実施形態および個々の実施形態の組み合わせは、適用可能であれば、較正方法にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、自動車用レーダ装置2を備える車両1を示す。自動車用レーダ装置2は較正されるように想定される。そうするために、較正装置配置3が示されている。較正装置配置3は、レーダ装置2と較正装置4とを備える。較正装置配置3はまた、車両1を備えることができる。
【0040】
較正装置4は、可動保持ユニット5と、少なくとも2つの較正対象物6とを備える。較正対象物6は、保持ユニット5上の較正装置4の第1の方向の規定された位置に互いに離間して配置されている。第1の方向は、この例では、z方向に対応する較正装置4の高さ方向である。較正装置4の高さ方向は、本実施形態では、車両1および自動車用レーダ装置2の高さ方向に相当する。例示的にスケッチされた較正装置4は、合計4つの異なる較正対象物6を備える。あるいは、これは、2つ、3つ、5つ、またはそれ以上の較正対象物6、例えば最大10または20個の較正対象物6を備えることができる。
【0041】
較正装置配置3は、車両1および/または較正装置4の外部に配置することができる計算装置7をさらに備える。計算装置7は、較正に関連するすべての計算が自動車用レーダ装置2内で直接実行されるように、自動車用レーダ装置2自体に含まれることが可能である。代替的または追加的に、計算装置7は、個々の装置、例えば、ラップトップ、タブレット、スマートフォン、または据え置き型コンピュータであってもよい。
【0042】
可動保持ユニット5は、レーダ装置2に対して所定の距離8に配置される。所定の距離8は、例えば1メートル程度である。
【0043】
較正装置4は、保持ユニット5を高さ方向、すなわちz方向に上方または下方に移動させるように設計された高さ調整装置9を備える。較正装置4はまた、少なくとも1つのホイール10の助けを借りて水平方向に移動可能である。あるいは、較正装置4は、レール(ここでは図示せず)上を移動可能である。この場合、較正装置4は、アーム状装置として設計することができる。好ましくは、x方向およびy方向の移動を可能にするために、較正装置4のz方向の下部に配置された少なくとも2つのホイール、好ましくは4つのホイールがある。x方向およびy方向は、較正装置4、レーダ装置2および/または車両1の長手方向および横方向に対応する。
【0044】
較正中、典型的には、異なる仰角11に対する異なる較正が実行される。仰角11は、
図1において両矢印で表されている。
【0045】
図2は、較正装置配置3の概略上面図を示す。較正装置4のホイール10により、較正装置4は、第1の方向に垂直な第2の方向に異なる位置間で移動可能である。この例では、第2の方向は、較正装置4に対して横方向であり、y方向を意味する。
図2では、レーダ装置2の較正のための別の典型的な角度である方位角12が両矢印で描かれている。横方向の移動は、ここでは例示的に描かれている開始位置13と終了位置14との間で可能である。言い換えれば、較正装置4は、レーダ装置2の水平面内で開始位置13と終了位置との間を移動可能であり、水平面はx-y平面である。水平面内での移動中、較正装置4の移動が円セグメントに似た経路をたどるように、所定の距離8は、好ましくは一定のままである。
【0046】
図2には、自動車用レーダ装置2の較正を行うために行われる異なるステップが示されている。以下に説明する較正手順は連続的に記録されるが、記録されたデータに対して行われる処理ステップは、その後に、例えば計算装置7によってオフラインで行われることが可能である。
【0047】
好ましくは、第1のステップS1において、自動車用レーダ装置2は、すべての較正対象物6に対して同時にレーダ波を放射する。すべての較正対象物6は、ステップS2において、例えば放射されたレーダ波を受信し、個々の戻り信号を自動車用レーダ装置2に放射する。ステップS3において、好ましくは、個々の戻り信号が自動車用レーダ装置2によって受信される。その後に、例えばステップS4において、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを使用して受信した戻り信号を解析する計算装置7にデータを提供することができる。ステップS5では、仰角11に対する自動車用レーダ装置2の較正を行うことができる。これは、FFTスペクトルにおける各変換された個々の戻り信号のピーク位置が区別可能であり、関与する較正対象物6に直接対応可能であることを考慮することによって行われる。より一般的には、ステップS5において、自動車用レーダ装置2の較正は、高速フーリエ変換スペクトルにおける各変換された個々の戻り信号のピーク位置が区別可能であり、関与する較正対象物6に直接対応可能であることを考慮して、第1の方向の規定された位置に対して実行される。ステップS6では、保持ユニット5を開始位置13と終了位置14との間で移動させることが好ましい。この移動の間、前のステップS1~S5が連続的に繰り返され、異なる方位角12に対する較正が実行される。より一般的には、保持ユニット5は、上記のステップを繰り返しながら、開始位置13と終了位置14との間を第2の方向に移動して、第2の方向の開始位置13と終了位置14との間の位置で、第1の方向の規定位置の較正を行う。その後に、追加のステップS7において、決定された較正データを計算装置7から自動車用レーダ装置2に送信することができる。
【0048】
較正対象物6は、例えば、人工的なターゲットとすることができる。人工ターゲットは、レーダ波を受信すると、自動車用レーダ装置2に対する動きを模倣するそれぞれの戻り信号を送信することによって、移動する対象物を模倣することができる。模倣された相対移動は、例えば、レーダ装置2に向かうまたはレーダ装置2から離れる較正対象物6の移動である。人工ターゲットの戻り信号は、FFTスペクトル内の所定のピーク位置に位置する。これは、人工ターゲットが、例えば、人工ターゲットによって送出された戻り信号内の周波数情報からこの情報を導出することができることを意味する明確な特性を有するためである。人工ターゲットから受信した戻り信号にFFTアルゴリズムを適用することにより、レンジドップラープロット15が生成される。レンジドップラープロット15の簡略化した例を
図3に示す。
【0049】
図3は、各戻り信号がレンジドップラープロット15内に値ピーク19を生成することを示す。ここでは、
図1および
図2に示す4つの異なる較正対象物6のために、4つの異なる値のピーク19が示されている。
図3のx軸上には、レンジ軸16が描かれている。y軸は周波数軸18であり、例えば、ドップラー周波数または模倣された移動する対象物の速度を表示することができる。レンジ軸16上には、異なる個々のセグメント17が示されている。言い換えれば、レンジ軸16は隣接する部分に分割され、これは代替的にレンジドップラービンと呼ばれ得る。ここで、各戻り信号は、レンジドップラープロット15のレンジ軸16の個々のセグメント17に割り当てることができ、個々のセグメント17は互いに異なる。ここでは、戻り信号間のレンジに重複がないように、各ピーク領域が互いに明確に区別可能であることが示されている。
【0050】
代替的または追加的に、較正対象物6はアンテナであってもよい。
図4では、較正対象物6としてアンテナを有する較正装置4が描かれている。保持ユニット5は、少なくとも2つの較正対象物6が配置される基本要素20を備える。基本要素20は、直線状であり、自動車用レーダ装置2の鉛直方向(z方向)に平行に配置することができる。あるいは、ここに示すように、基本要素20は、少なくとも較正対象物6の湾曲した位置の間にある。好ましくは、円形に湾曲している。
【0051】
保持要素5に備えられた高さ調整装置9は、基本位置と上昇位置(図示せず)との間で高さ方向(z方向)に基本要素20を移動させるように配置される。この移動の方向は、両矢印21で描かれている。高さ方向(z方向)の各位置において、レーダ装置2からのレーダ波放射は、少なくとも2つの較正対象物6によって受信可能である。好ましくは、高さ調整装置9は、所定のステップで基本要素20を移動させる。好ましくは、ステップは、5度の仰角11のシフトに対応する。これは、レーダ装置2とそれぞれの較正対象物6との間の角度が各段階で5度ずつ増加することを意味する。
【0052】
各アンテナがスプリッタ28に接続されていることがさらに示されている。スプリッタ28は、較正装置4の水平移動中に受信レーダ波の継続的な測定を可能にする。さらにまた、アンテナは、典型的には、バンドパスフィルタ24、周波数ミキサ25および増幅器26に接続される。さらにまた、各アンテナは、遅延線長23を有する遅延線22に接続される。遅延線長23は、少なくとも2つの較正対象物6の較正対象物6ごとに異なる。これは、例えば、アンテナ自身とスプリッタ28との間の各アンテナケーブルのケーブル長がアンテナごとに異なることを意味する。これは、様々な数のケーブルループで可視化される。
図4は、較正対象物6のz方向の最下部にある基準アンテナをさらに示す。基準信号は、典型的には77から81ギガヘルツ(GHz)の周波数レンジにある基準アンテナによって受信される。周波数ミキサ25の後に、8GHzと12GHzとの間の信号がスプリッタ28に送信される。あるいは、基準信号は別の周波数レンジにあり、および/または元の基準信号と比較してより低い周波数に変換されない。さらに、測定のための基準信号を提供するために局部発振器27が設けられる。
【0053】
人工的なターゲットの代わりにアンテナの場合、
図3と同様のプロットを計算することができる。レンジドップラープロット15の代わりに、各戻り信号がレンジプロットのレンジ軸16の個々のセグメント17に割り当て可能である単純なレンジプロットが生成され、個々のセグメント17は互いに異なる。レンジプロットは、レンジドップラープロット15とも呼ばれる。
【0054】
自動車用レーダ装置2は、ニアフィールドレーダまたは高精細レーダとすることができる3次元レーダである。
【0055】
図1、
図2、および
図4の例に代えて、またはこれに加えて、較正対象物6は、好ましくは車両1および/またはレーダ装置2(図示せず)の横方向である較正装置4の横方向(y方向)において異なる位置に配置することができる。横方向は、好ましくは、レーダ装置2および/または車両1の長さおよび高さ方向に対して垂直である。開始位置13と終了位置14との間の移動は、高さ方向である。これにより、最初に方位角12の較正が行われ、続いて高さ方向の移動に沿って異なる仰角11で方位角12の較正が行われる。
【0056】
要約すると、本発明は、視野の任意のカットにおける自動車用レーダ装置2の同時較正に関する。上述した方法を使用することにより、自動車用レーダ装置2の正確な較正に必要な機械的運動の大幅な低減が達成される。これは、方位角12に対するレーダ較正には、通常、レーダターゲット、例えばカラー反射器の機械的回転や、ターゲットによるレーダ装置2自体の回転は静的であるという考えに基づく。このようにして、較正データを得ることができる。しかしながら、この手法は、仰角11の較正が必要とされるときに面倒になり、このようにして、この回転運動の繰り返しを関心のある仰角11ごとに繰り返さなければならない。特定の高さの正確な設定および後続の測定の一貫性に関する技術的問題とは別に、そのような較正に必要な時間は、車両1のライン生産の終わりおよび/または作業場でのそのような較正を考慮すると非現実的になりつつある。
【0057】
利点として、FFTスペクトル内の値ピーク19を意味する任意のレンジドップラービンを使用して較正データをカバーすることができるという事実は、以下のようにしてレーダ装置2の視野内の複数のカットに対して同時に測定された較正装置4を容易に可能にする。例えば、定義された特性を有する人工ターゲットのセットは、レーダ装置2に対して異なる仰角11を表すために、例えば円上に垂直に配置することができる。これらの人工ターゲットが較正対象物6として用いられる。各較正対象物6を異なる範囲ビン、すなわちレンジプロットのレンジ軸16上の異なるセグメント17に有することにより、方位角12にわたるただ1回の掃引、または選択されたすべての仰角11に対するレーダ装置2の較正データの等価的に1回の回転が得られる。同様に、異なるドップラービンも使用することができ、これは、レンジドップラープロット15のレンジ軸16上の異なるセグメント17におけるピーク値19を意味する。異なるレンジビンを使用する利点は、単純な受信機および送信機が、異なる接続された遅延線、例えば、異なる長さの単純なケーブル(遅延線長23)で人工ターゲットを表すことができることである。
【0058】
アンテナを保持する円形構造は垂直であってもよく、その場合、すべてのレンジビンがスペクトル内で探索され、手動で入力されなければならない。しかしながら、遅延線22を有するアンテナは、それぞれの較正対象物6として使用され、例えば、アンテナの位置の仰角11が10度異なるように離間して配置されている場合、FFTスペクトル内の各10個のレンジビンがレンジプロット内を意味するアンテナのピーク値19をもたらす。この場合、対応する戻り信号は、戻り信号にFFTアルゴリズムを適用した後に容易に区別可能である。
【0059】
基本要素20は、地面からのレーダの高さを調整するための垂直部分を備えることが好ましい。アンテナのセット全体は、高さ方向に手動で移動させることができ、これは、規定のステップで異なる仰角11に対して意味する。例えば、最初の測定は、仰角11の0度、10度、および20度で実行することができ、次いで、5度、15度、および25度に設定された別の測定値を測定して5度上昇させることによって実行することができる。ステップおよび間隔は、機械的寸法の試験に基づいて調整される。原則として、複数の仰角11の較正データを得るためには、基本位置と上昇位置との間のただ1つの機械的運動が必要である。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用レーダ装置(2)のための較正装置配置(3)であって、前記自動車用レーダ装置(2)と、前記自動車用レーダ装置(2)に対して所定の距離(8)に配置された可動保持ユニット(5)、および前記保持ユニット(5)上の較正装置(4)の第1の方向において規定された位置に互いに離間して配置された少なくとも2つの較正対象物(6)を備える前記較正装置(4)と、を備え、前記自動車用レーダ装置(2)からすべての較正対象物(6)への同時のレーダ波放射時に、前記自動車用レーダ装置(2)によって受信可能な前記較正対象物(6)からの個々の戻り信号が高速フーリエ変換アルゴリズムを使用して解析可能であり、前記高速フーリエ変換スペクトル内の各変換された個々の戻り信号のピーク位置が、区別可能であり、かつ関与する前記較正対象物(6)に直接対応可能であり、その結果、仰角(11)および方位角(12)に対する前記自動車用レーダ装置(2)の較正が、前記第1の方向に垂直な第2の方向において開始位置(13)と終了位置(14)との間の前記所定の距離(8)で前記保持ユニット(5)を移動させながら実行可能である、較正装置配置(3)。
【請求項2】
前記較正対象物(6)が、人工ターゲットであり、前記レーダ装置(2)への前記戻り信号が、移動する対象物を模倣し、前記人工ターゲットの規定された特性により、前記高速フーリエ変換スペクトル内の規定されたピーク位置に位置する、請求項1に記載の較正装置配置(3)。
【請求項3】
前記戻り信号に前記高速フーリエ変換アルゴリズムを適用することにより、各戻り信号がレンジドップラー(15)プロットのレンジ軸(16)の個々のセグメント(17)に割り当て可能であり、前記個々のセグメント(17)が互いに異なる、前記レンジドップラープロット(15)が生成可能である、請求項2に記載の較正装置配置(3)。
【請求項4】
前記較正対象物(6)が、遅延線長(23)の遅延線(22)を有するアンテナであり、前記遅延線長(23)が、前記少なくとも2つの較正対象物(6)の較正対象物(6)ごとに異なる、請求項1に記載の較正装置配置(3)。
【請求項5】
前記戻り信号に前記高速フーリエ変換アルゴリズムを適用することにより、各戻り信号がレンジプロットのレンジ軸(16)の個々のセグメント(17)に割り当て可能であり、前記個々のセグメント(17)が互いに異なる、前記レンジプロットが生成可能である、請求項4に記載の較正装置配置(3)。
【請求項6】
各アンテナが、好ましくはバンドパスフィルタ(24)を介してスプリッタ(28)、周波数ミキサ(25)および/または増幅器(26)に電子的に接続されている、請求項
4に記載の較正装置配置(3)。
【請求項7】
前記保持ユニット(5)が、前記少なくとも2つの較正対象物(6)が配置される基本要素(20)を備え、前記基本要素(20)が、基本位置と上昇位置との間で前記第1の方向に移動可能であり、各位置において、前記自動車用レーダ装置(2)からの前記レーダ波放射が、前記少なくとも2つの較正対象物(6)によって受信可能である、請求項
1に記載の較正装置配置(3)。
【請求項8】
前記基本要素(20)が、所定のステップで、好ましくは仰角(11)および/または方位角(12)の5度のシフトに対応するステップで、前記基本位置と前記上昇位置との間で移動可能である、請求項7に記載の較正装置配置(3)。
【請求項9】
前記基本要素(20)が、直線状であり、前記第1の方向に平行に配置されている、請求項
7に記載の較正装置配置(3)。
【請求項10】
前記基本要素(20)が、少なくとも前記少なくとも2つの較正対象物(6)の位置の間で湾曲し、好ましくは円形湾曲している、請求項
7に記載の較正装置配置(3)。
【請求項11】
前記自動車用レーダ装置(2)が、3次元レーダである、請求項
1に記載の較正装置配置(3)。
【請求項12】
前記自動車用レーダ装置(2)が、ニアフィールドレーダまたは高精細レーダである、請求項
1に記載の較正装置配置(3)。
【請求項13】
可動保持ユニット(5)と、前記保持ユニット(5)上の前記較正装置(4)の第1の方向において規定された位置に互いに離間して配置された少なくとも2つの較正対象物(6)と、を備える較正装置(4)であって、請求項1から12のいずれか一項に記載の較正装置配置(3)によって構成可能である、較正装置(4)。
【請求項14】
自動車用レーダ装置(2)と、前記自動車用レーダ装置(2)に対して所定の距離(8)に配置された可動保持ユニット(5)、および前記保持ユニット(5)上の較正装置(4)の第1の方向において規定された位置に互いに離間して配置された少なくとも2つの較正対象物(6)を備える前記較正装置(4)と、を備える較正装置配置(3)を用いて実行される自動車用レーダ装置(2)のための較正方法であって、
前記自動車用レーダ装置(2)からすべての較正対象物(6)へ同時にレーダ波放射するステップ(S1)と、
前記較正対象物(6)により、前記レーダ波および前記自動車用レーダ装置(2)への個々の戻り信号の放射を受信するステップ(S2)と、
前記自動車用レーダ装置(2)により前記個々の戻り信号を受信するステップ(S3)と、
高速フーリエ変換アルゴリズムを使用して、受信した前記戻り信号を解析するステップ(S4)と、
前記高速フーリエ変換スペクトル内の各変換された個々の戻り信号のピーク位置が区別可能であり、かつ関与する前記較正対象物(6)に直接対応可能であることを考慮して、前記第1の方向において前記規定された位置に対して前記自動車用レーダ装置(2)の較正を実行するステップ(S5)と、
前記第1の方向に垂直な第2の方向における開始位置(13)と終了位置(14)との間の位置で前記第1の方向において前記規定された位置の較正を実行するために、上記のステップ(S1からS5)を繰り返しながら、前記第2の方向において前記開始位置(13)と前記終了位置(14)との間の前記所定の距離(8)で前記保持ユニット(5)を移動させるステップ(S6)と、を含む、較正方法。
【国際調査報告】