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特表2024-537871植物ステロール系農業用組成物及びそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】植物ステロール系農業用組成物及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   A01N 45/00 20060101AFI20241008BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20241008BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20241008BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20241008BHJP
   C05D 9/02 20060101ALI20241008BHJP
   C05F 11/10 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A01N45/00
A01P21/00
A01N25/04 101
A01N25/30
C05D9/02
C05F11/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024521000
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2022077984
(87)【国際公開番号】W WO2023057640
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】21306420.7
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】522409998
【氏名又は名称】エリシット・プラント
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アイメリック・モリン
(72)【発明者】
【氏名】ソランジュ・ヴィレット
(72)【発明者】
【氏名】シャルレーヌ・ブシロン
【テーマコード(参考)】
4H011
4H061
【Fターム(参考)】
4H011AB03
4H011BA05
4H011BB03
4H011BC06
4H011DA16
4H061AA01
4H061DD12
4H061EE06
4H061EE11
4H061FF03
4H061HH08
4H061JJ02
4H061KK02
4H061KK03
4H061LL25
(57)【要約】
植物ステロールの混合物を含有する親油性液滴を含むサスポエマルションの形態にある多相農業用組成物であって、親油性液滴が、水性相中に分散されており:親油性液滴と水性相との界面に位置され、水性相に可溶性であるSF(WATER SF1)及び親油性液滴に可溶性であるSF(OIL SF1)の中から選択される、少なくとも1種の第1の界面活性剤(SF1)と、水性相中に懸濁されている少なくとも1種の第2の界面活性剤(SF2)であり、水性相に不溶性の粒子の形態を有する、第2の界面活性剤(SF2)とを更に含む、農業用組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物ステロールの混合物を含有する親油性液滴を含むサスポエマルションの形態にある多相農業用組成物であって、前記親油性液滴が、水性相中に分散されており、
- 前記親油性液滴と前記水性相との界面に位置され、前記水性相に可溶性であるSF(WATER SF1)及び前記親油性液滴に可溶性であるSF(OIL SF1)の中から選択される、少なくとも1種の第1の界面活性剤(SF1)と、
- 前記水性相中に懸濁されている少なくとも1種の第2の界面活性剤(SF2)であり、前記水性相に不溶性の粒子の形態を有する、第2の界面活性剤(SF2)と
を更に含む、
農業用組成物。
【請求項2】
植物ステロールの混合物が、組成物の0.2質量%から10質量%の間、有利には0.5質量%から7質量%の間、好ましくは1質量%から5質量%の間を占めることを特徴とする、請求項1に記載の農業用組成物。
【請求項3】
前記植物ステロールの混合物が、植物ステロール混合物のうちの少なくとも30質量%を占めるβ-シトステロールと、残りは、適切には、カンペステロール、スチグマステロール及びブラシカステロールを100%まで含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の農業用組成物。
【請求項4】
前記第1の界面活性剤が、組成物の0.2質量%から10質量%の間を占め、前記第2の界面活性剤が、組成物の0.01質量%から5質量%の間を占めることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の農業用組成物。
【請求項5】
- 少なくとも1種のWATER SF1及び少なくとも1種のSF2、又は
- 少なくとも1種のOIL SF1及び少なくとも1種のSF2、又は
- 少なくとも1種のWATER SF1、少なくとも1種のOIL SF1、並びに少なくとも1種のSF2
を含有することを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の農業用組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の第1の界面活性剤(OIL SF1及び/又はWATER SF1)、並びに少なくとも1種の第2の界面活性剤(SF2)を含有することを特徴とし、且つ第1の界面活性剤(OIL SF1及び/又はWATER SF1)が第2の界面活性剤(SF2)と同一であることを特徴とする、請求項5に記載の農業用組成物。
【請求項7】
前記第1の界面活性剤OIL SF1及び/又はWATER SF1、並びに前記第2の界面活性剤(SF2)が、脂肪酸糖エステルであることを特徴とする、請求項6に記載の農業用組成物。
【請求項8】
脂肪酸糖エステルが、ステアリン酸スクロースであることを特徴とする、請求項7に記載の農業用組成物。
【請求項9】
前記脂肪酸糖エステルが、
- 20質量%から80質量%の間の、有利には70%のステアリン酸サッカロースであり、モノエステル含有量が、20質量%から80質量%の間の範囲の、有利には70%のステアリン酸サッカロース、残りが、ジ-、トリ-及び/又はポリエステルの混合物である、ステアリン酸サッカロースと、
- 20質量%から80質量%の間の、有利には30%のパルミチン酸サッカロースであり、モノエステル含有量が、20質量%から80質量%の間の範囲の、有利には70%のパルミチン酸サッカロース、残りが、ジ-、トリ-及び/又はポリエステルの混合物である、パルミチン酸サッカロースと
を含有する混合物の形態にあることを特徴とする、
請求項7に記載の農業用組成物。
【請求項10】
WATER SF1が、ポリオキシエチレンソルビタンエステルの群から選択され、OIL SF1が、ソルビタンエステルの群から選択され、SF2が、天然の界面活性剤の群から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の農業用組成物。
【請求項11】
WATER SF1が、モノオレイン酸ポリエチレングリコールソルビタン(Tween 80)であり、OIL SF1が、モノラウリン酸ソルビタン(Span 20)であり、SF2が、ダイズレシチンであることを特徴とする、請求項10に記載の農業用組成物。
【請求項12】
WATER SF1が、ポリオキシエチレンソルビタンエステルの群から選択され、OIL SF1が、ソルビタンエステルの群から選択され、SF2が、脂肪酸糖エステルを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の農業用組成物。
【請求項13】
WATER SF1が、Tween 80であり、OIL SF1が、Span 20であり、SF2が、ステアリン酸スクロースであることを特徴とする、請求項12に記載の農業用組成物。
【請求項14】
(i)植物ステロールの混合物が、β-シトステロールを含有し、これが、植物ステロール混合物のうちの少なくとも30質量%を占め、残りが、適切には、カンペステロール、スチグマステロール及びブラシカステロールを100%まで含有し、
(ii)第1の界面活性剤OIL SF1及び第2の界面活性剤(SF2)が、ステアリン酸スクロースである、
請求項1に記載の農業用組成物。
【請求項15】
- 植物医薬製品、例えば植物成長調整剤、殺真菌剤、静真菌剤、殺細菌剤、静細菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、寄生虫駆除剤、殺線虫剤、モグラ駆除剤若しくは除草剤、
- 植物が、真菌感染、細菌感染、ウイルス感染、害虫攻撃及び/若しくは雑草との競争に対抗することを可能にする天然の機序に基づく生物防除製品、
並びに/又は
- 栄養素、例えば微量栄養素又は肥料
を含む群から選択される少なくとも1種の有効成分を含むことを特徴とする、
請求項1から14のいずれか一項に記載の農業用組成物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物を収容する農業用キットであって、少なくとも1種の有効成分が、
- 植物医薬製品、例えば植物成長調整剤、殺真菌剤、静真菌剤、殺細菌剤、静細菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、寄生虫駆除剤、殺線虫剤、モグラ駆除剤若しくは除草剤、
- 植物が、真菌感染、細菌感染、ウイルス感染、害虫攻撃及び/若しくは雑草との競争に対抗することを可能にする天然の機序に基づく生物防除製品、
並びに/又は
- 栄養素、例えば微量栄養素又は肥料
を含む群から選択される、
農業用キット。
【請求項17】
栄養素が、ホウ素(B)及びモリブデン(Mo)化合物であることを特徴とする、請求項16に記載の農業用組成物又は農業用キット。
【請求項18】
ホウ素化合物が、酸として添加され、モリブデン化合物が、水塩として添加され、有利には、ホウ酸及びモリブデン酸ナトリウム二水和物であることを特徴とする、請求項17に記載の農業用組成物又は農業用キット。
【請求項19】
少なくとも1種のホウ素化合物の濃度が、0.01から2wt%の間、好ましくは0.5から1.8wt%の間を占め、少なくとも1種のモリブデン化合物の濃度が、0.002から1wt%の間、好ましくは0.003から0.5wt%の間を占めることを特徴とする、請求項17又は18に記載の農業用組成物。
【請求項20】
OIL SF1及びSF2としてステアリン酸スクロースを含むことを特徴とする、請求項19に記載の農業用組成物。
【請求項21】
前記親油性液滴が、植物ステロール混合物のうちの少なくとも30質量%を占めるβ-シトステロールと、残りは、適切には、カンペステロール、スチグマステロール及びブラシカステロールを100%まで含有する植物ステロールの混合物を含有し、前記親油性液滴が、水性相中に分散されており、
SF1及びSF2がステアリン酸スクロースである
- 親油性液滴と水性相との界面に位置される少なくとも1種の第1の界面活性剤(SF1)であり、親油性液滴に可溶性である(OIL SF1)第1の界面活性剤(SF1)と、
- 水性相中に懸濁されている少なくとも1種の第2の界面活性剤(SF2)であり、水性相に不溶性の粒子の形態を有する、第2の界面活性剤(SF2)と、
- 0.01から2wt%の間、好ましくは0.5から1.8wt%の間の少なくとも1種のホウ素化合物と、
- 0.002から1wt%の間、好ましくは0.003から0.5wt%の間の少なくとも1種のモリブデン化合物と
を更に含むことを特徴とする、
請求項1に記載の農業用組成物。
【請求項22】
前記ホウ素化合物が、ホウ酸であり、前記モリブデン化合物が、モリブデン酸ナトリウム二水和物であることを特徴とする、請求項21に記載の農業用組成物。
【請求項23】
請求項1から15及び17から22のいずれか一項に記載の組成物の、又は請求項16から18のいずれか一項に記載のキットの少なくとも組成物の、希釈からもたらされるスラリー。
【請求項24】
請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であって、
a)植物ステロールの混合物を含む親油性相を調製する工程であって、任意選択で前記植物ステロールの混合物を加熱する、工程と、
b)水性相を調製する工程であって、任意選択で前記水性相を加熱する、工程と、
c)同時に、第1の界面活性剤OIL SF1を工程a)の親油性相に添加する工程、及び/又は第1の界面活性剤WATER SF1を工程b)の水性相に添加する工程と、
d)親油性相を水性相と混合し、エマルションが得られるまで撹拌する工程と、
e)前記エマルションを冷却する工程と、
f)第2の界面活性剤(SF2)を、エマルションの水性相中に第2の界面活性剤の固体粒子の均質な懸濁液が得られるまで撹拌しながら、このようにして得たエマルションの水性相に添加する工程と
を含む、方法。
【請求項25】
請求項21に記載の組成物を製造する方法であって、
a)植物ステロールの混合物を含む親油性相を調製する工程であり、任意選択で前記植物ステロールの混合物を加熱する、工程と、
b)水性相を調製する工程であり、任意選択で前記水性相を加熱する、工程と、
c)同時に、第1の界面活性剤OIL SF1を工程a)の親油性相に添加する工程、及び
d)親油性相を水性相と混合し、エマルションが得られるまで撹拌する工程と、
e)前記エマルションを冷却する工程と、
f)第2の界面活性剤(SF2)を、エマルションの水性相中に第2の界面活性剤の固体粒子の均質な懸濁液が得られるまで撹拌しながら、このようにして得たエマルションの水性相に添加する工程と
を含み、
前記ホウ素及びモリブデン化合物が、エマルションが形成される前に水性相に添加され、且つ/又はエマルションが形成された後に直接エマルション中に添加される、
方法。
【請求項26】
栽培植物のための予防的処理の方法であって、非生物的及び/又は生物的ストレスの開始前に、植物に、請求項25に記載のスラリーを適用することにある、非生物的及び/又は生物的ストレスに関する乾物の損失を制限するための、方法。
【請求項27】
非生物的ストレスが、水ストレスに相当する形態であることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記生物的ストレスが、真菌感染、細菌感染、ウイルス感染、害虫攻撃及び/又は雑草との競争からもたらされることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記スラリーが、葉面噴霧によって、0.1L/ha~15L/haの組成物の投与量、有利には1L/ha~5L/haの投与量において適用されることを特徴とする、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記栽培植物が、ダイズ、トウモロコシ、オオムギ、キビ、コムギ及びヒマワリを含む群の中から選択されることを特徴とする、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記栽培植物が、モハ、ススキ、キビ類、ソルガム、ピーナッツ、ナタネ、プロテインピー、フィールドピー、ソラマメ、ルピナス、亜麻、ムラサキウマゴヤシ、ブドウ、ビーツ、ジャガイモ、マメ、レタス、パセリ及びラディッシュを含む群の中から選択されることを特徴とする、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
請求項24に記載の方法によって得られうる、多相農業用組成物。
【請求項33】
請求項25に記載の方法によって得られうる、多相農業用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業に関し、詳細には栽培植物、特に畑で育つ植物に関し、且つこの栽培植物における非生物的及び/又は生物的ストレスへの曝露に関連した、乾物の損失を含む有害作用の予防に関する。それゆえ、本発明は、植物ステロール系組成物、その製造の方法、この希釈された組成物を含むスラリー、及びその使用、詳細には非生物的及び/又は生物的ストレスへの曝露によって誘発される有害な作用の開始を標的とする予防的処理の方法におけるその使用に関与する。
【背景技術】
【0002】
植物、すなわち農作物植物、特に観賞植物は、様々な形態のストレスに供されている。詳細には、植物は、それらの環境に恒常的に曝露され、非生物的ストレス因子(干ばつ、寒冷、霜、塩分濃度等)を逃れられない。同時に、それらはまた、生物的ストレス因子、すなわち生きている又は生物侵襲性の有機体(ウイルス、真菌、細菌、昆虫、害虫等)の、より一般には植物病原体の有害な作用からもたらされるストレスにも曝露されている。
【0003】
本発明の目的では、「非生物的ストレス」は、生きている植物性有機体における生きていない刺激、例としては農作物における気候危険を指す。
【0004】
本発明の目的では、「植物病原体」は、伝染することができる及び/又は植物部に侵入してその中で疾患を引き起こすことができる病原体を指す。
【0005】
一般に、これらの非生物的及び生物的ストレスは、植物における、形態学的、生理学的、生化学的及び分子的な変化を引き起こし、1ヘクタール当たりの農作物収穫高の減少、すなわち乾物の生産又は量における減少をもたらす。
【0006】
換言すると、栽培植物、例えば畑での栽培植物は、これらの多様な形態のストレスに供され、これは、最適条件下で栽培される植物(水の供給、日光/夜間の期間、非生物的及び/又は生物的ストレスへの曝露の不在等の観点における制御条件)と比べて、他の作用の中でも、植物による乾物の生産における減少を招くことになる。
【0007】
非生物的ストレス、特に水のストレス(又は干ばつ)に対抗するために、農業従事者は、彼らの農作物ローテーションを単純化することによって、且つ冬の農作物を優先させることによって適合してきた。この単純化の最初の結果は、野生で成長する植物(雑草)の増大するリスク及び植物医薬製品への害虫の抵抗性が進展することになるだけでなく、その年の同じ期間における生産物の大規模な適用に起因する水汚染の増大するリスクでもある。第2の結果は、タンパク質生成植物(豆類)と比べたデンプン生産植物(特にわら穀類)の不均衡な栽培である。加えて、干ばつに対抗するために、農業従事者は広域の農作物灌漑に頼り、これは環境問題及び経済問題へと至らせる。
【0008】
生物的ストレスに対する闘いに関して、農業従事者は、天然の機序に依存する化学的又は生物防除製品を使用する。しかしながら、ヒトの健康にとっての、及び環境にとってのそれらの潜在的な毒性を仮定して、農業における化学物質の使用には議論がある。したがって、使用されるこれらの製品の効果を最適化しながら、その量をできるだけ最小化する必要がある。
【0009】
これらの異なるタイプのストレスと対抗するために、非生物的又は非生物的ストレスへの曝露に続いて、界面活性剤の混合物、例えばステアリン酸スクロースとβ-シトステロールとを植物に適用することからなる治癒的処理が提案されてきた。これは、例えば、本出願者の文献WO2019/030442 A1の場合であり、これは、80質量%のステアリン酸スクロース及び20質量%のβ-シトステロールを含有し、水中で3%に希釈された、組成物の適用を説明している、
【0010】
同様に、文献WO2018/229710は、ストレス因子の存在において適用可能なところで、植物成長を刺激するための組成物を記載しており、この組成物は、25質量%超の量の懸濁液中に植物ステロールの混合物を含む、濃縮懸濁液の形態にある。その目的は、植物ステロールの濃度を上昇させて、より少ない量での適用を可能にすることである。実際には、適用される組成物の量は、400g/haである。組成物は、1%から5%の間のそれぞれの量で存在する湿潤剤及び/又は界面活性剤を更に含有する。懸濁液は、粒径が10μmを下回るまで異なる構成成分を粉砕することによって得られる。この文献は、組成物が、同じ未粉砕組成物と比べてより良好な生物刺激効果を呈することを示している。この組成物の欠点のうちの1つは、コストに宿り、このことは、それが含有している多量の植物ステロールに関連し、植物ステロールの価格が特に高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2019/030442 A1
【特許文献2】WO2018/229710
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明が解決することを主張している課題は、非生物的及び生物的ストレスの観点において高い効率を呈しながら、可能な最少量を適用して、乾物の少量の損失のみをもたらしうる代替的な植物ステロール系組成物を開発するというものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのため、出願者は、もはや溶液又は懸濁液を提案するのではなく、むしろ水中油型エマルションを提案することによって、文献WO2019/030442 A1及びWO2018/229710に記載されている界面活性剤系及び植物ステロール系組成物を完成させ、その水性相は微粒子形態にある界面活性剤を含有し、この組成物はまた、以下に多相組成物と称される。
【0014】
そのため、出願者は、最も驚くべきことに、本発明の組成物が、適用される植物ステロールの量を大幅に減らし、それにより、処理コストの削減を可能にすることを解明した。
【0015】
本発明の組成物が、予防的ケアとして、すなわちストレスの開始前に、農作物植物に適用されるとき、非生物的及び/又は生物的ストレスの有害な作用における更なる低減、特に乾物の損失及び1へクタール当たりの収穫高においてもたらされる減少を可能にしたこともまた観察された。
【0016】
本出願者は、水性相中に存在する界面活性剤が、組成物の湿潤特性において、及びクチクラを通した、特にエピクチクラのワックス(クチクラの表面の最外部に位置されたワックス)の可溶化を通した、及び角皮素層の内部に存在するワックスのうちのいくつかの又は全ての可溶化を通した、組成物の貫通において特定の役割を演じ、それにより水性系材料のためのアクセス経路を創製すると仮定した。
【0017】
エピクチクラのワックスは、液滴が適切に延展することを阻止する角度の創製の主要因であると考えられる葉の表面上に「結晶」を形成するように見える。
【0018】
そのため、微粒子界面活性剤は、したがって、これらのワックスの可溶化を可能にすると考えられ、且つこれらの角度の存在を低減する、更には除去すると考えられる。同時に、水性相中に存在する界面活性剤は、角皮素の構成成分分子同士間の結合を緩めることを確実にして、それにより植物ステロールの混合物を含有する液滴の、植物の細胞膜中への浸透を促進すると考えられる。
【0019】
結果として、植物の細胞膜中へのその拡散を改善することによって組成物中に含有される植物ステロールの量を低減させて、先行技術の組成物によって付与されたものと少なくとも同様の、普通はそれよりも良好な、植物についての有益な効果を得ることが可能である。
【0020】
第1の界面活性剤、すなわち油滴と水性相との界面に存在するものは、エマルションを安定させることにおいて従来の役割を果たす。
【0021】
結果として、且つ第1の態様によれば、本発明は、植物ステロールの混合物を含有する親油性液滴を含むサスポエマルションの形態にある多相農業用組成物であって、親油性液滴が、水性相中に分散されており、
- 親油性液滴と水性相との界面に位置され、水性相に可溶性であるSF(WATER SF1)及び親油性液滴に可溶性であるSF(OIL SF1)の中から選択される、少なくとも1種の第1の界面活性剤(SF1)と、
- 水性相中に懸濁されている少なくとも1種の第2の界面活性剤(SF2)であり、水性相に不溶性の粒子の形態を有する、第2の界面活性剤(SF2)と
を更に含む、農業用組成物に関する。
【0022】
本記載では、親油性液滴はまた、油滴とも名付けられる。
【0023】
組成物は、それが2つの別々の油相と水相とを含むことにおいて「多相」であるとみなされるが、水性相がまた、固体粒子から作製された第3の相も含有すると仮定すると、それは、懸濁液として又はエマルションとして説明することはできない。したがって、それは、サスポエマルションと説明されうる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
組成物の第1の特徴によれば、少なくとも1種の第1の界面活性剤(SF1)は、親油性液滴と水性相との界面に位置され、且つ水性相に可溶性であるSF(WATER SF1)、及び親油性液滴(OIL SF1)に可溶性であるSFの中から選択される。一般に、WATER SF1とOIL SF1とは、それらの疎水性部分及び親水性部分の割合によって互いに異なる。実際には、WATER SF1の親水性/疎水性バランスは、OIL SF1のそれよりも高い。対照的に、OIL SF1の親水性/疎水性バランスは、WATER SF1のそれよりも高い。特定の実施形態では、WATER SF1とOIL SF1とは同一である。
【0025】
組成物の第2の特性によれば、少なくとも1種の第2の界面活性剤(SF2)は、水性相中に懸濁されており、この第2の界面活性剤は、水性相に不溶性の粒子の形態を有する。
【0026】
本発明の文脈では、表現「水性相に不溶性」は、所与の温度及び大気圧において、微視的又は巨視的レベルにおいて、水と共に均質な溶液を形成することの不能を提示する化合物を指す。
【0027】
対照的に、言葉「可溶性」は、所与の温度及び大気圧においてそれが液体に添加されるとき、不溶性粒子を残すことなく均質な溶液へと至らせる化合物を指す。
【0028】
有利には、第1の界面活性剤(WATER SF1)は、少なくとも2g/Lの濃度において80℃にて加熱された水に可溶性である。
【0029】
有利には、第1の界面活性剤(OIL SF1)は、少なくとも2g/Lの濃度において110℃にて加熱された油相に可溶性である。
【0030】
有利には、25℃にて実際に観察された第2の界面活性剤(SF2)の水中可溶性の限界は、10mg/L未満、好ましくは5mg/L未満、より好ましくは2mg/L未満である。
【0031】
本出願者は、このように配合されて、予防策として、すなわちストレスの開始前に、有効量で農作物植物に適用された植物ステロール組成物が、非生物的及び/又は生物的ストレスの有害な作用、特に乾物の損失及び収穫高1ヘクタール当たりでもたらされた減少における、低減を可能にしたことに留意した。
【0032】
「有効量」は、本明細書で使用されるとき、有益な又は所望の結果に影響を及ぼすのに十分な量である。
【0033】
詳細には、本発明の組成物は、植物成長を改善するという利点、及びその間に栽培植物がしおれ点を下回る日の数を低減するという利点を提示する。そのため、植物は、非生物的及び/又は生物的ストレスへの曝露の有害な作用と、より対抗することができる。
【0034】
換言すると、非生物的及び/又は生物的ストレスの開始前の、本発明の組成物の、栽培植物への適用は、容易に使用可能な土壌貯水量(EUSWR)において費やされる時間を増やし、且つしおれ点を下回って費やされる時間、すなわち土壌生存貯水量(SSR)において費やされる時間を減らす。
結果は、乾物生産及び/又は収穫高の改善である。
【0035】
本発明の目的では、用語「容易に使用可能な土壌貯水量」(又はEUSWR)は、栽培植物が、その蒸散(又は蒸発散量)を減らすことなしに、水ストレスを経験することなしに、又はその成長を制限することなしに引き出すことができる、使用可能な土壌貯水量(USWR)の割合を指す。EUSWRは、一般に、土壌の深さ及び栽培される植物の種に応じて、USWRの40%~80%を占める。
【0036】
本発明の目的では、用語「土壌生存貯水量」(又はSSR)は、栽培植物が引き出すことができないUSWRの割合を指す。植物は、結果的に水ストレスの状態にあり、その理由は、その蒸散(又は蒸発散量)が低減されないためである。したがって、栽培植物はその成長を制限し、又は更にはしおれる。
【0037】
本発明の目的では、用語「しおれ点」(又はWP)は、それを下回ると植物がその成長に必要な水をもはや吸引できない、すなわちその点を下回る点で、根と植物との間の張力が高く、根がもはや土壌から水を引き出すことができない土壌水分状態を指す。したがって、それは、それを下回ると栽培植物が完全にEUSWRを消費し、可逆的にではあるがしおれることになり、収穫高に悪影響を有する、閾値である。このパラメータは、具体的には、例えば、中性子プローブ、張力計又は時間領域反射測定法(TDR)水分メーターの手段による土壌湿度の測定を通じて決定される。しおれ点は、畑の能力に依存し、多様な土壌のタイプによる植物に利用可能な水の量に依存し、栽培される植物の多様性に依存する。
【0038】
本発明の目的では、用語「収穫高」は、種子であれ実であれ、乾物であれ緑色物であれ、又はワインであれ、所与の栽培面積にわたり収穫された生産物の量を指す。
【0039】
本発明の目的では、用語「栽培植物」は、天然に存在する植物とは対照的に、人間によって、栽培される、すなわち蒔かれ、植えられ、活用される全ての植物を指す、
【0040】
「植物」により、全ての植物及び植物個体、例えば所望である及び所望ではない野生植物、品種及び変種植物(変種植物又は植物育種者の権利によって保護可能であってもなくても)が意味される。品種及び変種植物は、従来の増殖方法及び育種方法によって得られる植物とすることができ、これは、倍加単数体、原形質融合、ランダムな及び直接の変異原性、分子の若しくは遺伝子マーカーの使用による、又は生物工学及び遺伝子工学方法による等の1つ又は複数のバイオテクノロジー方法により補助されうる又は補給されうる。
【0041】
用語「植物」は、全体の植物、並びに芽の植物性器官/構造(例えば、葉、茎及び根茎)、根、花及び花の器官/構造(例えば、包葉、萼片、花弁、雄蕊、心皮、葯及び胚珠)、種子(胚、内胚乳及び種皮を含む)及び実(成熟した卵巣)、植物組織(例えば、維管束組織、地上組織等)並びに細胞(例えば孔辺細胞、卵細胞等)、並びにその子孫が挙げられるがこれらに限定されないそれらの部分を含む。「実」及び「植物製品」は、収穫後に更に利用される任意の植物製品であると理解され、例えば適切な意味における実、植物により生成される経済的価値の任意のものであるナッツ、木等であると理解される。
【0042】
別の特徴として、SF2の添加前に組成物中に存在する親油性液滴のほとんどは、有利には、親油性液滴のうちの少なくとも90%(Dv90エマルションとも名付けられる)が、0.01μmから70μmの間、好ましくは0.1μmから50μmの間、最も好ましくは0.1μmから20μmの間からなる直径を有し、ピーク最大値が、レーザー回析により決定されて好ましくは10μm未満、有利には0.5μmから7μmの間、好ましくは2μmから6μmの間である。
【0043】
本発明の必須の性質は、組成物が、SF1及びSF2と称される少なくとも2種の界面活性剤を含有していることである。
【0044】
したがって、組成物は、油滴と水性相との界面に位置されている第1の界面活性剤(SF1)を含有する。この第1のSFは、水性相に可溶性であるSF(WATER SF1)及び油滴に可溶性であるSF(OIL SF1)の中から選択される。
【0045】
したがって、油滴と水性相との界面において、組成物は、
- 少なくとも1種のWATER SF1、又は
- 少なくとも1種のOIL SF1、又は
- 少なくとも1種のWATER SF1及び少なくとも1種のOIL SF1
を含有しうる。
【0046】
組成物はまた、第2の界面活性剤(SF2)も含有する。
【0047】
第2の界面活性剤(SF2)は、粒子の形態にある。
【0048】
有利には、本発明の組成物の粒子のうちの少なくとも90%(Dv90サスポエマルションとも名付けられる)は、1μmから1000μmの間、有利には10μmから250μmの間からなる直径を有し、ピーク最大値は、レーザー回析により決定されて好ましくは10μmから100μmの間である。
【0049】
換言すると、組成物は、
- 少なくとも1種のWATER SF1及び少なくとも1種のSF2、又は
- 少なくとも1種のOIL SF1及び少なくとも1種のSF2、又は
- 少なくとも1種のWATER SF1、少なくとも1種のOIL SF1、並びに少なくとも1種のSF2
を含有しうる。
【0050】
組成物の製造の方法を容易にするために、組成物は、少なくとも2種のSF、及びそれぞれ少なくとも1種のOIL SF1及び/又はWATER SF1、並びに少なくとも1種のSF2を含有し、OIL SF1又はWATER SF1とSF2とは同一である。
【0051】
例として、WATER SF1とOIL SF1との両方として脂肪酸糖エステルを使用することができ、その理由は、それらが異なる温度にて油に及び水に可溶性であるためである。
【0052】
実際に、WATER SF1、OIL SF1及びSF2は、親油性液滴中又は水中の所望の可溶性に従って、以下の群の中から選択される:
- アニオン性界面活性剤、有利にはその極性頭部基が、カルボキシレート、スルホネート又はスルフェートの各アルコールであるアニオン性界面活性剤、
- カチオン性界面活性剤、有利にはその極性頭部基が、アミン、第四級アミン又は第四級アンモニウムエステルであるカチオン性界面活性剤、
- 両性界面活性剤、有利にはベタイン誘導体又はリン脂質、
- 中性界面活性剤、有利にはエトキシレート、アルカノールアミン、アルキルグルカミド、ポリオールエステル、アルキルモノグルコシド又はアルキルポリグリコシド、ポリオールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(特にTween 20、Tween 21、Tween 22、Tween 23、Tween 24、Tween 28、Tween 40、Tween 60、Tween 61、Tween 65、Tween 80)、又はソルビタンエステル(特にSpan 20、Span 40、Span 60、Span 65、Span 80、Span 83、Span 85、Span 120)、
- 天然の界面活性剤、有利にはレシチン、好ましくはダイズレシチン、又はアミノ酸に由来する界面活性剤;及び天然の原材料から合成された界面活性剤、有利にはポリオール誘導体、好ましくは脂肪酸糖エステル;好ましい脂肪酸糖エステルは、ステアリン酸サッカロース、パルミチン酸サッカロース、及びそれらのポリエステル、又はこれらの混合物である。
【0053】
本明細書の残り及び特許請求の範囲において、用語「ステアリン酸スクロース」と「ステアリン酸サッカロース」とは区別なしに使用される。同様に、「パルミチン酸スクロース」と「パルミチン酸サッカロース」とは区別なしに使用される。
【0054】
本明細書において及び特許請求の範囲において、表現「ステアリン酸サッカロース」は、純粋なステアリン酸サッカロース、又はほとんどステアリン酸サッカロースを含有する脂肪酸のサッカロースエステルの混合物を指す。純粋なステアリン酸サッカロースの例は、CAS number[136152-91-5]に相当する。ほとんどステアリン酸サッカロースを含有する脂肪酸のサッカロースエステルの混合物の例は、例えばCAS number[25168-73-4]又は[84066-95-5]に相当する。
【0055】
本明細書において及び特許請求の範囲において、表現「パルミチン酸サッカロース」は、純粋なパルミチン酸サッカロース、又はほとんどパルミチン酸サッカロースを含有する脂肪酸のサッカロースエステルの混合物を指す。純粋なパルミチン酸サッカロースの例は、CAS number[110539-62-3]に相当する。ほとんどパルミチン酸サッカロースを含有する脂肪酸のサッカロースエステルの混合物の例は、CAS number[26446-38-8]に相当する。
【0056】
好ましくは、組成物は、少なくとも1種のOIL SF1又はWATER SF1、及び少なくとも1種のSF2を含有し、それらの両方が、脂肪酸糖エステルを含む群の中から選択される。
【0057】
実際には、これらのエステルは、周囲温度にて固体である。天然に親油性の化合物であることで、それらは水性相に可溶性であり、したがってSF2の役割のための候補である。それらはまた、油滴に可溶性であるが、それらが、当業者によって容易に決定されうるそれらの溶融温度まで事前の加熱を受けるという条件においてのみである。この理由により、それらはまた、OIL SF1の役割のための候補でもある。このことは、OIL SF1とOIL SF2とがなぜ同じでありうるかを説明している。
【0058】
脂肪酸糖エステルはまた、WATER SF1とOIL SF1との両方としても使用することができる。事実、スクロースエステルは、一般に、高温にて水に可溶性である。それは、例えば、およそ80℃にて水に可溶性であるステアリン酸スクロースに関与している。
【0059】
有利には、脂肪酸糖エステルは、ステアリン酸サッカロース、パルミチン酸サッカロース及びそれらのポリエステル、又はこれらの混合物である。
【0060】
特定の実施形態によれば、第1の界面活性剤、この場合、OIL SF1若しくはWATER SF1及び/又は第2の界面活性剤SF2は、ステアリン酸スクロース、又は、有利には、ステアリン酸サッカロース及びパルミチン酸サッカロースを含有する混合物を含有する。
【0061】
特定の実施形態によれば、第1の界面活性剤(OIL SF1)及び/若しくは(WATER SF1)並びに/又は第2の界面活性剤(SF2)は、以下:
- 20質量%から80質量%の間の、有利には70%のステアリン酸サッカロースであり、モノエステル含有量が、20質量%から80質量%の間の範囲の、有利には70%のステアリン酸サッカロース、残りが、ジ-、トリ-及び/又はポリエステルの混合物である、ステアリン酸サッカロースと、
- 20質量%から80質量%の間の、有利には30%のパルミチン酸サッカロースであり、モノエステル含有量が、20質量%から80質量%の間の範囲の、有利には70%のパルミチン酸サッカロース、残りが、ジ-、トリ-及び/又はポリエステルの混合物である、パルミチン酸サッカロースと
を含有する混合物である。
【0062】
特定の実施形態によれば、第1の界面活性剤OIL SF1及び/若しくはWATER SF1並びに/又は第2の界面活性剤SF2は、ステアリン酸スクロース(好ましくはCAS number[25168-73-4]又は[84066-95-5])である。好ましくは、組成物は、1種の第1の界面活性剤OIL SF1又はWATER SF1及び1種の第2の界面活性剤SF2を含有し、ここで、OIL SF1又はWATER SF1及びSF2は、ステアリン酸スクロースである。
【0063】
別の特定の実施形態によれば、第1の界面活性剤OIL SF1及び/又は第2の界面活性剤SF2は、パルミチン酸スクロース、好ましくはCAS[26446-38-8]である。
【0064】
別の特定の実施形態によれば、第1の界面活性剤OIL SF1はステアリン酸スクロース(好ましくはCAS number[84066-95-5]又は[25168-73-4])であり、第2の界面活性剤SF2はパルミチン酸スクロース、好ましくはCAS number[26446-38-8]であり、又は第1の界面活性剤OIL SF1はパルミチン酸スクロースであり、第2の界面活性剤SF2はステアリン酸スクロースである。
【0065】
別の特定の実施形態によれば、第1の界面活性剤OIL SF1はステアリン酸スクロース(好ましくはCAS number[84066-95-5]又は[25168-73-4])又はパルミチン酸スクロース、好ましくはCAS number[26446-38-8]であり、第2の界面活性剤SF2はダイズレシチンCAS[8002-43-5]である。
【0066】
特定の実施形態によれば、第1の界面活性剤(SF1)は、組成物の0.2質量%から10質量%の間を占め、第2の界面活性剤(SF2)は、組成物の0.01質量%から5質量%の間を占める。
【0067】
有利には、第1の界面活性剤(OIL SF1)は、第2の界面活性剤(SF2)と同一である。この場合、第1の界面活性剤は、好ましくは組成物の3質量%から7質量%の間を占め、第2の界面活性剤は、好ましくは組成物の0.1質量%から2.5質量%を占め、有利にはステアリン酸スクロース(好ましくはCAS number[25168-73-4]又は[84066-95-5])である。
【0068】
上に挙げたように、特定の実施形態では、組成物は、少なくとも1種のWATER SF1、少なくとも1種のOIL SF1及び少なくとも1種のSF2を含有する。
【0069】
有利には、WATER SF1はポリオキシエチレンソルビタンエステルの群から選択され、OIL SF1はソルビタンエステルの群から選択され、SF2は天然の界面活性剤の群から選択される。
【0070】
好ましい一実施形態では、WATER SF1はモノオレイン酸ポリエチレングリコールソルビタン(Tween 80)であり、OIL SF1はモノラウリン酸ソルビタン(Span 20)であり、SF2はダイズレシチン(CAS[8002-43-5])である。
【0071】
別の実施形態では、WATER SF1はポリオキシエチレンソルビタンエステルの群から選択され、OIL SF1はソルビタンエステルの群から選択され、SF2は脂肪酸糖エステルを含む群から選択される。
【0072】
別の実施形態では、WATER SF1はTween 20であり、OIL SF1はSpan 85であり、SF2はステアリン酸スクロース(好ましくはCAS number[25168-73-4]又は[84066-95-5])である。
【0073】
別の好ましい実施形態では、WATER SF1はTween 80であり、OIL SF1はSpan 20であり、SF2はステアリン酸スクロース(好ましくはCAS number[25168-73-4]又は[84066-95-5])である。
【0074】
特定の実施形態によれば、本発明の植物ステロール混合物は、遊離植物ステロール及び/又は共役植物ステロールを含有し、この共役植物ステロールは、有利には、植物ステロールエステル、植物ステロールグリコシド、アシル化植物ステロールグリコシド、及びこれらの混合物を含む群の中から選択される。
【0075】
本発明の文脈における遊離植物ステロールの例には、β-シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、コレステロール及びブラシカステロール、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0076】
本発明の文脈における植物ステロールエステルの一例は、エステル化β-シトステロールのものである。
【0077】
本発明の文脈における植物ステロールグリコシドの例には、β-シトステロール-β-D-グルコシド及びグルコシルスチグマステロールが挙げられる。
【0078】
本発明の文脈におけるアシル化植物ステロールグリコシドの例には、16:0シトステリルグルコース、18:1シトステリルグルコース、16:0スチグマステリルグルコース及び18:1スチグマステリルグルコースが挙げられる。
【0079】
特定の実施形態によれば、植物ステロールの混合物はまた、少なくとも1種の植物ステロール生合成経路の前駆体、又は少なくとも1種のその誘導体も含有する。これは、例えば、スクアレン、スクアラン、メバロネート及びシクロアルテノールを含む群の中から選択される分子とすることができる。
【0080】
特定の実施形態によれば、本発明の文脈における植物ステロール混合物は、β-シトステロールを含有する。
【0081】
有利には、植物ステロール混合物は、β-シトステロールを含有し、植物ステロール混合物のうちの少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも35質量%を占めるβ-シトステロールと、残りは、具体的且つ適切には、カンペステロール、スチグマステロール及びブラシカステロールを100%まで含有する。
【0082】
一例として、本発明の植物ステロール混合物は、油性種子、例えばダイズ、松の種子、ヒマワリ種子又はナタネから得られる植物ステロールの抽出物とすることができる。この植物ステロール混合物の1つの可能な例は、CAS number[949109-75-5]を有する原材料である。本発明の植物ステロール混合物は、木パルプへの転換後に松の木から得られる植物ステロールの抽出物とすることもできる。
【0083】
特定の実施形態によれば、植物ステロール混合物は、組成物の0.2質量%から10質量%の間、有利には0.5質量%から7質量%の間、好ましくは1質量%から5質量%の間を占める。
【0084】
特定の実施形態によれば、本発明の組成物は以下を含有する:
- β-シトステロールを含む混合物であって、有利には混合物の少なくとも30質量%を占め、カンペステロール、スチグマステロール及びブラシカステロールと共にある、混合物、並びに
- ステアリン酸サッカロースを含む第1の界面活性剤(OIL SF1)及び/又は第2の界面活性剤(SF2)であって、有利には、ステアリン酸サッカロースとパルミチン酸サッカロースとを含有する混合物。
【0085】
別の特定の実施形態によれば、本発明の組成物は以下を含有する:
- CAS number[949109-75-5]に相当する植物ステロールの混合物、及び
- ステアリン酸スクロースである第2の界面活性剤(SF2)と同一である第1の界面活性剤(OIL SF1)、例えばCAS number[84066-95-5又は25168-73-4]。
【0086】
特定の実施形態によれば、植物ステロールの混合物の、第1の界面活性剤(SF1)及び第2の界面活性剤(SF2)に対する質量比は、0.01から15の間、有利には0.1から5の間である。
【0087】
特定の実施形態によれば、本発明の組成物はまた、以下:
- グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールを含む群の中から選択される少なくとも1種の流動化剤であって、平均分子量が、100から、好ましくは200から8000Daの間、有利には200から1000Daの間であり、好ましくは200Daに等しく、より好ましくは400Daに等しく、この流動化剤は、有利には、組成物の1質量%から15質量%の間、有利には2質量%から8質量%の間を占める、少なくとも1種の流動化剤、
並びに/又は
- レシチン、脂肪アルコール、例えばオレイルアルコール;脂肪酸、例えばオレイン酸、リノール酸;グリセリド、トリグリセリド、植物油、有利にはダイズ油、ブドウ種子油、シーバックソーンオイル、トウモロコシ油、ナタネ油若しくはヒマワリ油を含む群の中から選択される植物ステロール(又は脂肪物質)のための少なくとも1種の可溶化剤であって、有利には、組成物の1質量%から30質量%の間、有利には4質量%から15質量%の間を占める、少なくとも1種の可溶化剤、
並びに/又は
- シラン、シロキサン、トリグリセリド、脂肪酸の混合物、脂肪酸メチルエステルの混合物を含む群の中から選択される少なくとも1種の湿潤剤であって、有利には、テトラデカン酸メチル、ヘキサデカン酸メチル及びオクタデカン酸メチル、又はこれらの混合物を含み、有利には組成物の0.1質量%から5質量%の間を占める、少なくとも1種の湿潤剤、
並びに/又は
- 天然のキレート剤、有利にはフィチン酸ナトリウム、又はアミノ酸系キレート剤;及び合成キレート剤、有利には、2,2'-ビピリジン、ジメルカプトプロパノール、エチレングリコール-ビス(2-アミノエチル)-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、サリチル酸又はトリエタノールアミン、好ましくはEDTAを含む群の中から選択される少なくとも1種のキレート剤であって、有利には、組成物の0.01質量%から5質量%の間を占める、少なくとも1種のキレート剤、
並びに/又は
- ベンジルアルコール、安息香酸及びその塩、特に安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸及びその塩、特にデヒドロ酢酸ナトリウム、サリチル酸及びその塩、ソルビン酸及びその塩、特にソルビン酸カリウム、2-フェニルエタノール、フェノキシエタノール、フェニルプロパノール、及び好ましくはベンジルアルコールを含む群の中から有利には選択される少なくとも1種の保存剤であって、有利には組成物の0.01質量%から5質量%の間を占める、少なくとも1種の保存剤
を含む群の中から選択される少なくとも1種の成分も含有する。
【0088】
当然ながら、全ての上記成分は、上に列挙したものよりも多くの特性を有することができる。
【0089】
別の実施形態によれば、本発明の組成物はまた、クエン酸及びその塩、酒石酸及びその塩、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、レシチン、トコフェロール、ポリフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルオール、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、リコペンを含む群から選択される抗酸化剤も含有する。
【0090】
特定の実施形態によれば、本発明の組成物は、有利には以下:
- 組成物の0.2質量%~30質量%の少なくとも第1の界面活性剤及び第2の界面活性剤であって、好ましくは同一であり、有利にはステアリン酸サッカロースであり、更により有利にはCAS number[84066-95-5]又は[25168-73-4]を有するステアリン酸サッカロースである、少なくとも第1の界面活性剤及び第2の界面活性剤、
- 組成物の0.2質量%~10質量%のβ-シトステロールを含有する植物ステロールの混合物であって、このβ-シトステロールは、有利には、混合物の少なくとも30質量%を占め、残りは、カンペステロール、スチグマステロール及びブラシカステロールの混合物を含み、総体的な混合物は、更により有利には、CAS number[949109-75-5]に相当する、植物ステロールの混合物、
- 組成物の1質量%~15質量%の流動化剤であって、有利にはポリエチレングリコールであり、数平均分子量(Mn)が、200から8000Daの間、有利には200から1000Daの間、好ましくは400Daに等しく、又は先に挙げた植物油である、流動化剤、
- 組成物の0.1質量%~5質量%の湿潤剤であって、有利には脂肪酸メチルエステル、好ましくはテトラデカン酸メチル、オクタデカン酸メチル、及びヘキサデカン酸メチル、又はこれらの混合物を含む脂肪酸メチルエステルである、湿潤剤、
- 組成物の0.01質量%~5質量%の保存剤、有利にはベンジルアルコール、
- 組成物の0.01質量%~5質量%の天然又は合成のキレート剤、有利には先に記載したもの、好ましくはEDTA、
並びに
- 残りは水である(水、100%まで適量)
を含む。
【0091】
別の態様によれば、本発明は、先に記載した組成物の希釈から得られたスラリーに関する。
【0092】
本発明の目的では、したがって、用語「スラリー」は、水中で希釈された本発明の組成物、又は水と1種又は複数の有効成分とを含有する溶液中で希釈された本発明の組成物を指す。畑において植物に適用される生産物は、スラリーである。
【0093】
有利には、本発明のスラリーの粘度は、200cP以下、有利には1cPに等しい又は厳密に1cP超であり、且つ100cP以下である。本発明の文脈では、該粘度は、Anton Paar QC300粘度計を用いて測定され、この測定はDG26測定システムを用いて周囲温度でなされる。
【0094】
有利には、本発明のスラリーのpHは、5から8の間、好ましくは5から7の間、更により有利には6から7の間である。
【0095】
本発明の文脈では、本出願者は、スラリーとして組成物を希釈することが、依然として水性相中の懸濁液にある第2の界面活性剤の固体成分の可溶化を可能にし、又は可溶化形態において存在する第2の界面活性剤の量を増加させ、これにより効果的なスラリーを確実にし、したがってより効果的な本発明の組成物を確実にすると仮定している。
【0096】
特定の実施形態によれば、本発明の植物ステロールと界面活性剤との混合物は、少なくとも1種の有効成分と合わされる。
【0097】
本発明の目的では、用語「有効成分」は、植物が、好ましくは非生物的及び/又は生物的ストレスに対抗することを可能にする製品を指し、有利には、
- 植物医薬製品、例えば植物成長調整剤、殺真菌剤、静真菌剤、殺細菌剤、静細菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、寄生虫駆除剤、殺線虫剤、モグラ駆除剤(talpicide)若しくは除草剤、
- 植物が、真菌感染、細菌感染、ウイルス感染、害虫攻撃及び/若しくは雑草との競争に対抗することを可能にする天然の機序に基づく生物防除製品、
並びに/又は
- 有機又は無機の栄養素、例えば微量栄養素又は肥料
を含む群から選択される。
【0098】
用語「殺細菌剤」は、本明細書で使用されるとき、死亡率を高める又は細菌の増殖速度を阻害する物質の能力を指す。
【0099】
用語「殺虫剤」及び用語「殺虫剤の」は、昆虫の死亡率を高める又は成長速度を阻害する物質の能力を指す。本明細書で使用されるとき、用語「昆虫」は、「昆虫」鋼における全ての有機体を含む。
【0100】
用語「殺線虫剤」及び「殺線虫剤の」は、線虫の死亡率を高める又は成長速度を阻害する物質の能力を指す。一般に、用語「線虫」は、卵、幼虫、その有機体の若い及び成熟した形態を含む。
【0101】
用語「殺ダニ剤」及び「殺ダニ剤の」は、蛛形綱、ダニ目に属する外部寄生虫の死亡率を高める又は成長速度を阻害する物質の能力を指す。
【0102】
植物成長調整剤は、以下からなる群から選択することができる:
- 抗オーキシン:クロフィブリン酸、2,3,5-トリ-ヨード安息香酸、
- オーキシン:4-CPA、2,4-D、2,4-DB、2,4-DEP、ジクロロプロップ、フェノプロップ、IAA(インドール-3-酢酸)、IBA、ナフタレンアセタミド、α-ナフタレン酢酸、1-ナフトール、ナフトキシ酢酸、ナフテン酸カリウム、ナフテン酸ナトリウム、2,4,5-T、
- シトキニン:2iP、6-ベンジルアミノプリン(6-BA)、2,6-ジメチルピリジン、キネチン、ゼアチン、
- 枯葉剤:カルシウムシアナミド、ジメチピン、エンドタール、メルホス、メトキスロン、ペンタクロロフェノール、チアジアズロン、トリブフォス、トリブチルホスホロトリチオエート、
- エチレンモジュレーター:アビグリシン、1-メチルシクロプロペン(1-MCP)、プロヘキサジオン(プロヘキサジオンカルシウム)、トリネキサパック(トリネキサパック-エチル)、
- エチレン放出剤:ACC、エタセラシル、エテフォン、グリオキシム、ジベレリン:ジベレリン、ジベレリン酸、
- 成長阻害剤:アブシジン酸、アンシミドール、ブトラリン、カルバリル、クロルホニウム、クロルプロファム、ジケグラック、フルメトラリン、フルオリダミド、フォサミン、グリホシン、イソプリモール、ジャスモン酸、マレイン酸ヒドラジド、メピコート(塩化メピコート、五ホウ酸メピコート)、ピプロクタニル、プロヒドロジャスモン、プロファム、2,3,5-トリ-ヨード安息香酸、
- モルファクチン:クロルフレン、クロルフレノール、ジクロルフルレノール、フルレノール、
- 成長遅延剤:クロルメコート(塩化クロルメコート)、ダミノジド、フルルプリミドール、メフルイジド、パクロブトラゾール、テトシクラシス、ウニコナゾール、メトコナゾール、
- 成長刺激剤:ブラッシノリド、フォルクロルフェヌロン、ヒメキサゾール、
- 非分類の植物成長調整剤/未知の分類:アミドクロル、ベンゾフルオル、ブミナフォス、カルボン、塩化コリン、シオブチド、クロフェンセット、クロキシフォナク、シアナミド、シクラリニド、シクロヘキシミド、シプロスルファミド、エポコレオン、エチクロゼート、エチレン、フェンリダゾン、フルプリミドール、フルチアセット、ヘプトパルギル、ホロスルフ、イナベンフィド、カレタザン、ヒ酸鉛、メタスルフォカルブ、ピダノン、シントフェン、トリアペンテノール。
【0103】
殺真菌剤及び静真菌剤は、以下:
- 呼吸阻害剤
- Qo部位における複合体IIIの阻害剤、例えば、アゾキシストロビン、クメトキシストロビン、クモキシストロビン、ジモキシストロビン、エネストロブリン、フェナミンストロビン、フェノキシストロビン/フルフェノキシストロビン、フルオキサストロビン、クレソキシム-メチル、メトミノストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、ピラメトストロビン、ピラオキシストロビン、トリフロキシストロビン、ピリベンカルブ、トリクロピリカルブ/クロロジンカルブ、ファモキサドン、フェナミドン、
- Qi部位における複合体IIIの阻害剤:シアゾファミド、アミスルブロム、
- 複合体IIの阻害剤:フルトラニル、ベノダニル、ビキサフェン、ボスカリド、カルボキシン、フェンフラム、フルオピラム、フルトラニル、フルキサピロキサド、フラメトピル、イソピラザム、メプロニル、オキシカルボキシン、ペンフルフェン、ペンチオピラド、セダキサン、テクロフタラム、チフルザミド、
- 他の呼吸阻害剤(例えば複合体I、脱共役剤):ジフルメトリム、
- ニトロフェニル誘導体:ビナパクリル、ジノブトン、ジノカップ、フルアジナム;フェリムゾン;有機金属化合物:酢酸フェンチン、塩化フェンチン又は水酸化フェンチン;アメトクラジン;及びシルチオファム、
- ステロール生合成阻害剤(SBI殺真菌剤)
- C14デメチラーゼ阻害剤(DMI殺真菌剤):トリアゾール:アザコナゾール、ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、ジニコナゾール-M、エポキシコナザール、フェンブコナゾール、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアフォール、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イプコナザール、メトコナゾール、ミクロブタニル、オキシポコナゾール、パクロブトラゾール、ペンコナゾール、プロピオコナゾール、プロチオコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメフォン、トリアジメノール、トリチコナゾール、ウニコナゾール、
- イミダゾール:イマザリル、ペフラゾエート、プロクロラズ、トリフルミゾール;ピリミジン、ピリジン及びピペラジン:フェナリモール、ヌアリモール、ピリフェノックス、トリフォリン;デルタ14-レダクターゼ阻害剤:アルジモルフ、ドデモルフ、ドデモルフ-アセテート、フェンプロピモルフ、トリデモルフ、フェンプロピジン、ピペラリン、スピロキサミン;3-ケトレダクターゼの阻害剤:フェンヘキサミド、
- 核酸合成阻害剤
- フェニルアミド又はアシルアミノ酸殺真菌剤:ベナラクシル、ベナラキシル-M、キラル-アキシル、メタラキシル、オフラセ、オキサジキシル;その他:ヒメキサゾール、オクチリノン、オキソリン酸、ブピリメート、5-フルオロシトシン、
- 細胞分裂及び細胞骨格の阻害剤
- チューブリン阻害剤:ベンズイミダゾール、チオファネート:ベノミル、カルベンダジム、フベリダゾール、チアベンダゾール、チオファネート-メチル;トリアゾロピリミジン、
- 細胞分裂阻害剤:ジエトフェンカルブ、エタボキサム、ペンシクロン、フルオピコリド、ゾキサミド、メトラフェノン、ピリオフェノン、
- アミノ酸及びタンパク質合成の阻害剤
- メチオニン合成阻害剤(アニリノ-ピリミジン):シプロジニル、メパニピリム、ピリメタニル;タンパク質合成阻害剤:ブラスチシジン-S、カスガマイシン、塩酸カスガマイシン水和物、ミルジオマイシン、ストレプトマイシン、オキシテトラシクリン、ポリオキシン、バリダマイシンA、
- シグナル伝達阻害剤
- MAP/ヒスチジンキナーゼ阻害剤:フルオロミド、イプロジオン、プロシミドン、ビンクロゾリン、フェンピクロニル、フルジオキソニル;Gタンパク質阻害剤:キノキシフェン、
- 脂質及び膜合成阻害剤
- リン脂質生合成阻害剤:エジフェンホス、イプロベンフォス、ピラゾホス、イソプロチオラン、過酸化脂質:ジクロラン、キントゼン、テクナゼン、トルクロフォス-メチル、ビフェニル、クロロネブ、エトリジアザール;リン脂質生合成及び細胞壁堆積:ジメトモルフ、フルモルフ、マンジプロパミド、ピリモルフ、ベンチアバリカルブ、イプロバリカルブ、バリフェナレート、及び
- 細胞膜浸透性に影響を及ぼす化合物及び脂肪酸:プロパモカアルブ、プロパノカルブ-ヒドロクロリド脂肪酸アミド、
- 多部位作用を有する阻害剤
- 無機活性物質:ボルドー混合物、酢酸銅、水酸化銅、オキシ塩化銅、塩基性硫酸銅、硫黄;チオ-及びジチオカルバメート:フェルバム、マンコゼブ、マネブ、メタム、メチラム、プロピネブ、チラム、ジネブ、ジラム;有機塩素化合物(例えばフタリミド、スルファミド、クロロニトリル):アニラジン、クロロタロニル、カプタフォール、カプタン、フォルペット、ジクロフルアニド、ジクロロフェン、ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロルフェノール及びその塩、フタリド、トリルフルアニド、及びその他:グアジニン、ドジン、ドジン遊離塩基、グアザチン、グアザチン-アセテート、イミノクタジン、イミノクタジン-トリアセテート、イミノクタジントリス(アルベシレート)、ジチアノン、
- 細胞壁合成阻害剤
- グルカン合成の阻害剤:バリダマイシン、ポリオキシンB;メラニン合成阻害剤:ピロキロン、トリシクラゾール、カルプロパミド、ジシクロメット、フェノキサニル、
- 植物ディフェンス誘発剤
- アシベンゾラル-S-メチル、プロベナゾール、イソチアニル、チアジニル、プロヘキサジオン-カルシウム;ホスホネート:フォセチル、フォセチル-アルミナム、リン酸及びその塩、
- 作用の未知のモード
- ブロノポール、シノメチオナト、シフルフェナミド、シモキサニル、ダゾメット、デバカルブ、ジクロメジン、ジフェンゾコート、ジフェンゾコート-メチルスルフェート、ジフェニルアミン、フェンピラザミン、フルメトバー、フルスルファミド、フルチアニル、メタスルフォカルブ、ニトラピリン、ニトロタール-イソプロピル、オキシン-銅、ピカルブトラゾクス、プロキナジド、テブフロキン、テクロフタラム、トリアザオキシド
の群の中から選択することができる。
【0104】
殺虫剤化合物は、以下からなる群から選択することができる:
- カルバメートの部類からのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤:アルジカルブ、アラニカルブ、ベンジオカルブ、ベンフラカルブ、ブトカルボキシム、ブトキシカルボキシム、カルバリル、カルボフラン、カルボスルファン、エチオフェンカルブ、フェノブカルブ、フォルメタネート、フラチオカルブ、イソプロカルブ、メチオカルブ、メトミル、メトルカルブ、オキサミル、ピリミカルブ、プロポキスル、チオジカルブ、チオファノクス、トリメタカルブ、XMC、キシリカルブ及びトリアザメート、
- オルガノホスフェートの部類からのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤:アセフェート、アザメチホス、アジンホス-エチル、アジンホスメチル、カズサフォス、クロレトキシフォス、クロルフェンビンホス、クロルメホス、クロピリフォス、クロルピリフォス-メチル、クーマホス、シアノホス、デメトン-S-メチル、ジアジノン、ジクロルボス/DDVP、ジクロトホス、ジメトエート、ジメチルビンホス、ジスルフォトン、EPN、エチオン、エトプロホス、ファムフール、フェナミホス、フェニトロチオン、フェンチオン、フォスチアゼート、ヘプテノホス、イミシアホス、イソフェンホス、イソプロピルO-(メトキシシアミノチオ-ホスホリル)サリチレート、イソキサチオン、マラチオン、メカルバム、メタミドホス、メチダチオン、メビフォス、モノクロトホス、ナラド、オメトエート、オキシデメトン-メチル、パラチオン、パラチオン-メチル、フェントエート、ホレート、ホサロン、ホスメット、ホスファミドン、ホキシム、ピリミホス-メチル、プロフェノフォス、プロペタムホス、プロチオフォス、ピラクロフォス、ピリダフェンチオン、キナフォス、スルフォテップ、テブピリムフォス、テメホス、テルブフォス、テトラクロルビンホス、チオメトン、トリアザホス、トリクロルフォン、バミドチオン、
- GABA作動性塩化物チャネル拮抗薬:
- シクロジエン有機塩素化合物:エンドスルファン;又はM-2.Bフィプロレス(フェニルピラゾール):エチプロール、フィプロニル、フルフィプロール、ピラフルプロール又はピリプロール、
- ピレトロイドの部類からのナトリウムチャネルモジュレーター:アクリナトリン、アレトリン、d-cis-トランスアレトリン、d-トランスアレトリン、ビフェントリン、ビオアレトリン、ビオアレトリンS-シクロペンテニル、ビオレスメトリン、シクロプロトリン、シフルトリン、ベータシフルトリン、シハロトリン、ラムダ-シハロトリン、ガンマ-シハロトリン、シペルメトリン、アルファ-シペルメトリン、ベータ-シペルメトリン、シータ-シペルメトリン、ゼータ-シペルメトリン、シフェノトリン、デルタメトリン、モムフルオロトリン、エムペントリン、エスフェンバレレート、エトフェンプロクス、フェンプロパトリン、フェンバレレート、フルシトリネート、フルメトリン、タウ-フルバリネート、ハルフェンプロクス、イミプロトリン、メペルフルトリン、メトフルトリン、ペルメトリン、フェノトリン、プラレトリン、プロフルトリン、ピレトリン(ピレトルム)、レスメトリン、シラフオフェン、テフルトリン、テトラメチルフルトリン、テトラメトリン、トラロメトリン、トランスフルトリン、DDT及びメトキシクロル、
- ネオニコチノイドの部類からのニコチン酸アセチルコリン受容体作動薬:アクテアミプリド、クロチアニジン、シクロキサプリド、ジノテフラン、フルピラジフロン、イミダクロプリド、ニテンピラム、スルホキサフロル、チアクロプリド、チアメントキサム、
- スピノシンの部類からのアロステリックニコチン酸アセチルコリン受容体活性剤:スピノサド、スピネトラム、
- メクチンの部類からの塩化物チャネル活性剤:アバメクチン、安息香酸エマメクチン、イベルメクチン、レピメクチン又はミルベメクチン、
- 若いホルモン模倣物:ヒドロプレン、キノプレン、メトプレン、フェノキシカルブ又はピリプロキシフェン、
- 非特異性多部位阻害剤:臭化メチル及び他のハロゲン化アルキル、クロロピクリン、スフルリルフルオリド、ホウ砂又は酒石催吐薬、
- 選択的同翅類供給阻害薬:ピメトロジン、フロニカミド、ピリフルキナゾン、
- ダニ成長阻害剤:クロフェンテジン、ヘキシチアゾクス、ジフロビダジン又はエトキサゾール、
- ミトコンドリアATPシンターゼの阻害剤:ジアフェンチウロン、アゾシクロチン、シヘキサチン、フェブタチンオキシド、プロパルギット又はテトラジフォン、
- 酸化的リン酸化の脱共役剤:クロルフェナピル、DNOC又はスルフラミド;M-13ニコチン酸アセチルコリン受容体チャネル阻害薬:ベンスルタップ、カルタップヒドロクロリド、チオシクラム、チオスルタップナトリウム、
- キチン生合成0型(ベンゾイルウレア部類)の阻害剤:ビストリフロン、クロルフルアズロン、ジフルベンズロン、フルシクロキスロン、フルフェノキスロン、ヘキサフルムロン、ルフェヌロン、ノバルロン、ノビフルムロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、
- キチン生合成1型の阻害剤:ブポロフェジン、
- 脱皮かく乱物質:クロマジン、
- エクディソン受容体作動薬:メトキシフェノジド、テブフェノジド、ハロフェノジド、フフェノジド又はクロマフェノジド、
- オクトパミン受容体作動薬:アミトラズ、
- ミトコンドリア複合体III電子伝達阻害剤:ヒドラメチルノン、アセキノシル、フロメトキン、フルアクリピリム又はピリミノストロビン、
- ミトコンドリア複合体I電子伝達阻害剤:フェナザキン、フェンピリキシメート、ピリミジフェン、ピリダベン、テブフェンピラド、トルフェンピラド、フルフェネリム又はロテノン、
- 電位依存性ナトリウムチャネル阻害薬:インドキサカルブ、メタフルミゾン、
- 脂質合成の阻害剤、アセチルCoAカルボキシラーゼの阻害剤:スピロジクロフェン、スピロメシフェン又はスピロテトラマト、
- ミトコンドリア複合体II電子伝達阻害剤:シエノピラフェン、シフルメトフェン又はピフルブミド、並びに
- ジアミドの部類からのリアノジン受容体モジュレーター:フルベンジアミド、クロルアントラニリプロール(リナキシピル)、シアントラニリプロール(シアジピル)、
- その他:アフィドピロペン。
【0105】
本明細書で使用されるとき、「生物防除製品」は、天然の機序を使用する作用剤又は製品と定義される。それらは、単独で又は他の植物保護方法との組み合わせにおいて使用されうる1組のツールを形成して、統合された害虫管理において農作物の敵に対抗する。4種:
>補助的なマクロ有機体(侵略者と闘うための):農作物を生物侵略者から保護するための統合されたアプローチにおいて使用される、無脊椎動物、昆虫、ダニ又は線虫
>以下を含む植物医薬製品:
微生物(侵略者を制御するための):農作物を害虫及び疾患から保護する又は植物活力を上昇させるのに使用される、真菌、細菌及びウイルス
>化学伝達物質:昆虫フェロモン及びカイロモン。これらは、昆虫の害虫の飛行の跡をたどるのに、且つ崩壊を通じて又はわなで捕獲することを通じて昆虫個体群を制御するのに使用することができる
>天然の物質:植物、微生物、動物又は鉱物の各源から得られるこれらの物質は、天然の環境中に見出され、生物防除製品として使用される
の主なタイプの生物防除剤がある。
【0106】
栽培植物の従来の処理は、有効成分(植物医薬製品及び/又は生物防除製品及び/又は栄養素)を栽培植物に適用することからなり、詳細には、ここで、それらは植物の表面との相互作用の唯一の手段によって効果をもたらす。保護的役割がクチクラによって果たされるとすると、それらは、受動手的拡散の手段により、植物中への浸透をほとんど受けない又は全く受けない。
【0107】
予想外に、出願者は、本発明の植物ステロールと界面活性剤との組み合わせが少なくとも1種の有効成分と合わされたとき、これが、有効成分の、先に記載されたクチクラ及び植物細胞膜経路機序の手段によって、植物細胞中への拡散及び受動的浸透を促進することに留意した。したがって、本発明に記載される組成物又はスラリーは、植物における有効成分のより高濃度又はより高量の存在を可能にする。組成物又はスラリーが、好ましくはストレスの開始前に適用されるという条件において、植物中の有効成分の浸透移行性の作用が観察され、今度は、生物的ストレスに対する闘いの促進へと至らせる。加えて、組成物又はスラリーは、これらの有効成分の有効性の改善を確実にしながら、使用される有効成分の投与量の低減を可能にする。
【0108】
本発明は、少なくとも1種の、上に挙げた有効成分を含有する、上に開示した組成物に関する。
【0109】
本発明の別の目的はまた、上に記載した本発明の組成物(希釈前)と少なくとも1種の有効成分とを別々に収容する農業用キットでもある。
【0110】
使用において、本発明の組成物は、農業従事者によって有効量の有効成分と混合され、次いで希釈されて、植物に適用されるスラリーを得てもよい。
【0111】
別の選択肢は、本発明の組成物を希釈してスラリーを得、それに次いでのみ、そのスラリーに少なくとも1種の有効成分を添加することである。
【0112】
特定の実施形態では、本発明は、上に開示した組成物、すなわち植物ステロールの混合物を含有する親油性液滴を含む、サスポエマルションの形態にある多相農業用組成物であって、該親油性液滴が、水性相中に分散されている、農業用組成物に関する。組成物は:
- 親油性液滴と水性相との界面に位置され、水性相に可溶性であるSF(WATER SF1)及び親油性液滴に可溶性であるSF(OIL SF1)の中から選択される、少なくとも1種の第1の界面活性剤(SF1)と、
- 水性相中に懸濁されている少なくとも1種の第2の界面活性剤(SF2)であり、水性相に不溶性の粒子の形態を有する、第2の界面活性剤(SF2)と、
- 有機又は無機の、少なくとも1種の栄養素、有利にはホウ素及びモリブデン化合物
を更に含む。
【0113】
本発明の文脈では、表現「ホウ素化合物」及び「モリブデン化合物」は、それら自体を、化学的元素、分子(有機の、無機の又は有機金属の)、共有結合化合物又は塩の形態へと提示する全ての化学的化合物を包含する。
【0114】
特定の実施形態によれば、ホウ素(B)及びモリブデン(Mo)化合物は、ホウ酸モリブデン又は一ホウ酸ジモリブデン、又はこれらの組み合わせを含む群から選ばれる単一の分子を形成する。
【0115】
それらの形態及び性質に応じて、ホウ素及びモリブデン化合物は、水溶性塩として若しくは酸として水性相中に存在することができ、有機金属分子として親油性液滴中に存在することができ、又は水性相中と親油性液滴中との両方に存在することができる。
【0116】
ホウ素化合物が本発明の組成物に添加されるとき、それは、水溶性塩として又は酸として添加されうる。それが水溶性塩として添加されるとき、その塩は、四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、又はその化学式における少なくとも1個、2個、3個又は4個のホウ素原子を含有する、単独で取られる又はこれらの組み合わせで取られる任意の他の塩を含む群から選ばれる。
【0117】
実際には、ホウ素化合物含有塩は、無水物であってもよく又は複数の水分子との複合体であってもよい。
【0118】
優先的には、ホウ素化合物は、酸として添加され、それはホウ酸である。
【0119】
モリブデン化合物が水溶性塩として本発明の組成物に添加されるとき、その塩は、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウム、二ケイ化モリブデン、二硫化モリブデン(IV)、酸化モリブデン(IV)、酸化モリブデン(VI)を含む群から選ばれる。
【0120】
実際には、Mo化合物含有塩は、無水物であってもよく又は複数の水分子との複合体であってもよい。
【0121】
優先的には、Mo塩は、モリブデン酸ナトリウム無水物である。
【0122】
好ましい一実施形態では、Mo化合物は水塩として添加され、Boは酸として添加され、有利にはホウ酸及びモリブデン酸ナトリウム二水和物である。
【0123】
ホウ素化合物がホウ素化合物含有有機金属分子として本発明の組成物に添加されるとき、それは、単独で又はこれらの組み合わせで取られて、アルキルホウ酸(メチルホウ酸、エチルホウ酸、プロピルホウ酸、フェニルホウ酸)、トリメチルボロキシン、トリメトキシボロキシン、ボレート化合物(トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリプロピルボレート、トリフェニルボレート、及び他のジ-又はトリ-アルキル置換ボレートの各化合物)、ボラン化合物(トリメチルボラン、トリエチルボラン、トリプロピルボラン、トリフェニルボラン及び他のジ-又はトリアルキル置換ボランの各化合物)、ホウ酸のピナコールエステル(フェニルホウ酸ピナコールエステル、ベンジルホウ酸ピナコールエステル、ビス(ピナコラト)二ホウ素及びホウ酸のアルキル置換ピナコールエステル)、異性体又はクロソ-カルボラン(オルト-、メタ-及びパラ-カルボラン)を含む群から選ばれる。
【0124】
モリブデン化合物が有機金属分子として本発明の組成物に添加されるとき、それは、四酢酸二モリブデン、ステアリン酸モリブデン、及び他のモリブデンのカルボン酸を含む群から選ばれ、ここで、カルボンキシレート配位子は、2個から18個の間の炭素である。
【0125】
有利には、ホウ素及びモリブデン化合物が水性相中に存在する。
【0126】
使用において、且つ好ましい一実施形態によれば、ホウ素及びモリブデン化合物を含有する本発明の組成物は希釈されて、植物に適用されるスラリーを得る。
【0127】
この実施形態では、本出願者は、ホウ素及びモリブデン化合物の濃度が、希釈前に、すなわちスラリーを得る前に、総ての組成物の0.002から2質量%の間に含まれるときに特に効率的であったことに留意した。
【0128】
組成物が栄養素としてホウ素(B)及びモリブデン(Mo)化合物を含有するとき、それらの濃度は、それぞれ、少なくとも1種のホウ素化合物の0.01から2wt%の間、好ましくは0.5から1.8wt%の間、好ましくは約1.5wt%を占め、且つ少なくとも1種のモリブデン化合物の0.002から1wt%の間、好ましくは0.003から0.5wt%の間、好ましくは約0.25wt%を占める。
【0129】
実際には、ホウ素(B)化合物/モリブデン(Mo)化合物の比は、0.1から10の間からなる。
【0130】
特定の実施形態では、本発明は、植物ステロール混合物のうちの少なくとも30質量%を占めるβ-シトステロールと、残りは、適切には、カンペステロール、スチグマステロール及びブラシカステロールを100%まで含有する植物ステロールの混合物を含有する親油性液滴を含む、上に開示されたサスポエマルションの形態にある多相農業用組成物であって、該親油性液滴は水性相に分散されており、
SF1及びSF2がステアリン酸スクロースである
- 親油性液滴と水性相との界面に位置される少なくとも1種の第1の界面活性剤(SF1)であり、親油性液滴に可溶性である(OIL SF1)第1の界面活性剤(SF1)と、
- 水性相中に懸濁されている少なくとも1種の第2の界面活性剤(SF2)であり、水性相に不溶性の粒子の形態を有する、第2の界面活性剤(SF2)と、
- 0.01から2wt%の間、好ましくは0.5から1.8wt%の間、好ましくは約1.5wt%の少なくとも1種のホウ素化合物と、
- 0.002から1wt%の間、好ましくは0.003から0.5wt%の間、好ましくは約0.25wt%の少なくとも1種のモリブデン化合物と
を更に含む、農業用組成物に関する。
【0131】
その実施形態では、植物ステロールの混合物は、好ましくは組成物の0.2質量%から10質量%の間、有利には0.5質量%から7質量%の間、好ましくは1質量%から5質量%の間を占める。
【0132】
有利には、第1の界面活性剤は、組成物の0.2質量%から10質量%の間を占め、第2の界面活性剤は、組成物の0.01質量%から5質量%の間を占め、有利には、ホウ素化合物はホウ酸であり、モリブデン化合物は、モリブデン酸ナトリウム二水和物であり、好ましくは水性相中に存在する。必要な場合、組成物は、
- 植物医薬製品、例えば植物成長調整剤、殺真菌剤、静真菌剤、殺細菌剤、静細菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、寄生虫駆除剤、殺線虫剤、モグラ駆除剤又は除草剤、
- 植物が、真菌感染、細菌感染、ウイルス感染、害虫攻撃及び/又は雑草との競争に対抗することを可能にする天然の機序に基づく生物防除製品、
を含む群から選択される少なくとも1種の有効成分を更に含む。
【0133】
別の選択肢は、ホウ素及びモリブデン化合物を含有していない組成物を、ホウ素及びモリブデン化合物を含有している水で希釈してスラリーを得ることである。その場合、ホウ素及びモリブデン化合物の濃度は、結果として適合される。
【0134】
別の態様では、本発明は、先に説明した多相組成物を製造する方法に関し、これは、
a)植物ステロールの混合物を加熱することを含む、親油性相を調製する工程と、
b)工程a)と同時に又は工程a)の前に、この水性相を加熱することを含む、水性相を調製する工程と、
c)同時に、第1の界面活性剤OIL SF1を工程a)の親油性相に添加する工程、及び/又は第1の界面活性剤WATER SF1を工程b)の水性相に添加する工程と、
d)親油性相を水性相と混合し、エマルションが得られるまで撹拌する工程と、
e)エマルションを冷却する工程と、
f)第2の界面活性剤(SF2)を、水性相中に固体粒子の均質な懸濁液が得られるまで撹拌しながら、このようにして得たエマルションに好ましくは20℃から25℃の間の周囲温度にて添加する工程と
からなる。
【0135】
存在するとき、流動化剤、可溶化剤、有利には湿潤剤が親油性相に添加され、必要に応じて、キレート剤、保存剤及び/又抗酸化剤が水性相に添加される。
【0136】
いくつかの実施形態では、湿潤剤が水相中で使用されてもよく、抗酸化剤が油相中に添加されてもよい。
【0137】
特定の実施形態によれば、第1の界面活性剤、この場合はOIL SF1は、第2の界面活性剤(SF2)と同一であり、その結果、分散体の油滴と水性相との界面に存在する界面活性剤は、固体粒子の形態にある水性相中に存在する界面活性剤と同一である。
【0138】
特定の実施形態によれば、流動化剤は、ポリエチレングリコールであり、有利には、200又は400g/molのモル質量を有するポリエチレングリコールである。
【0139】
特定の実施形態によれば、湿潤剤は、好ましくは、テトラデカン酸メチル、オクタデカン酸及びヘキサデカン酸メチルを含む、脂肪酸メチルエステルの混合物である。
【0140】
実際には、
- 親油性相の調製は、高温にて、好ましくは約70℃から約140℃の間、好ましくは約90℃から約120℃の間の範囲にて、より好ましくは約110℃にて行われ、
- 水性相の調製は、高温にて、好ましくは約50℃~約90℃の間、好ましくは約70℃から約90℃の間の範囲にて、より好ましくは約80℃にて行われ、
- 撹拌は、親油性液滴のエマルションが得られるまで、この親油性液滴のうちの少なくとも90%が、好ましくは0.01から70μmの間、好ましくは0.1から50μmの間、最も好ましくは0.1から20μmの間を含む直径を有し、ピーク最大値がレーザー回析により決定して10μm未満、有利には0.5から7μmの間、好ましくは2から6μmの間であるまで行われ、
- エマルションの冷却は、20℃から30℃の間、好ましくは20℃から25℃の間の温度が達せられるまで行われ、
- 第2の界面活性剤(SF2)のエマルションへの添加は、水性相中の固体粒子の均質な懸濁液が得られるまで、且つこの粒子のうちの少なくとも90%が、1から1000μmの間、有利には10から250μmの間からなる直径を有し、ピーク最大値がレーザー回析により決定して好ましくは10から100μmの間であるまで行われる。
【0141】
本発明によれば、ホウ素及びモリブデン化合物は、エマルションが形成される前に水性相中に及び/若しくは親油性相中に添加され、且つ/又はエマルションが形成された後に直接エマルション中に添加される。
【0142】
ホウ素及びモリブデン化合物の化学的形態(酸、水溶性塩若しくは有機金属分子)に応じて、それは親油性相に若しくは水相に、のいずれかに添加され、又はエマルションが形成される前に親油性相と水相との両方に添加され、且つ/又はエマルションが形成された後に直接エマルション中に添加される。
【0143】
組成物が、酸として存在するホウ素及びモリブデン化合物を含有するとき、水溶性塩、ホウ素及びモリブデン化合物は、エマルションが形成される前に水性相中に(実際には上記の工程b))、又はエマルションが形成された後に直接エマルション中に、のいずれかにおいて添加される(実際には工程d)の終わりから工程f)の終わりまで)。
【0144】
組成物が、有機金属分子として存在するホウ素及びモリブデン化合物を含むとき、ホウ素及びモリブデン化合物は、親油性相に添加される(実際には上記の工程a))。
【0145】
特定の実施形態によれば、組成物がホウ素(B)及びモリブデン(Mo)化合物を含有するところでは、それらは、水性相に、上に記載した工程b)とc)との間に添加される。
【0146】
別の実施形態によれば、組成物が、ホウ素(B)及びモリブデン(Mo)化合物を含有するところでは、それらはエマルションが形成された後に直接エマルション中に添加される(実際には工程d)の終わりから工程f)の終わりまで)。
【0147】
本発明はまた、上記方法により得られうる組成物にも関する。
【0148】
別の態様によれば、本発明は、先に説明した組成物又はスラリーの、栽培植物の、生物的及び/又は非生物的ストレスへの曝露を阻止するための、使用に関する。
【0149】
そのため、本発明はまた、非生物的及び/又は生物的ストレスに関する乾物の損失を制限することを目的とする栽培植物のための予防的処理の方法であって、この非生物的及び/又は生物的ストレスの開始前に、植物に先に説明した組成物又はスラリーを適用することにある。
【0150】
有利には、本発明の意味内で、植物は、畑において、又は例えばポット中又はグリーンハウス中で制御条件下で水耕法を用いて栽培され、好ましくは、本発明の文脈では、植物は畑で栽培される。
【0151】
一般に、非生物的ストレスは、収穫高における又は乾物の生産における減少の原因となり、且つ干ばつ(水の不足若しくは水ストレス)、極端な温度(熱ストレス)、過剰な水(洪水)、霜、風、土壌塩分(塩ストレス)、紫外線照射、一定の栄養素への不十分なアクセス、ストレス誘引特性を有する土壌(化学的組成物、酸化還元電位等)、又は物理的損傷、及び有利には干ばつ及び/若しくは極端な温度からもたらされる。
【0152】
特定の実施形態によれば、非生物的ストレスは水ストレスに相当する。別の実施形態では、非生物的ストレスは熱ストレスに相当する。
【0153】
本発明の目的では、用語「水ストレス」は、そこで栽培植物の水含有量がしおれ点よりも低い状態を指す。
【0154】
本発明の目的では、句「非生物的ストレスの開始前に」は、特に水ストレスの観点における、その間に有用な土壌貯水量が適切に充填されている期間を指し、すなわち有用な土壌貯水量が、しおれ点に達する瞬間まで十分に又は完全に満たされている(畑での能力)瞬間から経過している時間を指す。
【0155】
本発明の目的では、句「非生物的ストレスの開始前に」は、特に熱ストレス(又は極端な温度)の観点における、各植物種及びこれらの種の各発育段階についての霜及び/又は花イモチ病への脆弱性の時点前の期間を指す。換言すると、それは、水供給等の全ての他の農作物条件から離れて、植物の成長及び発育に好ましくない温度を指す。
【0156】
干ばつに関して、本出願者は、本発明の組成物又は本発明のスラリーが、栽培植物に予防的に適用されるとき、すなわち非生物的ストレスの発生の前に適用されるとき、気孔の閉鎖を誘発し、したがって蒸発散量における減少を誘発することに留意した。結果として、植物の水消費は、収穫高の減少を引き起こすことなしに、すなわち乾物の生産における減少を引き起こすことなしに、低減する。
【0157】
換言すると、本発明はまた、水ストレスの開始前に、この植物に、先に説明した組成物又はスラリーを適用することからなる、水ストレスの条件下での栽培植物による水の消費を低減する方法にも関する。
【0158】
本出願者は、組成物が、ダイズ、トウモロコシ、ヒマワリから選ばれる植物におけるこの特定の効果に特に効率的であったことに留意した。
【0159】
実際には、生物学的機序は、本発明の組成物又はスラリーによって、特に低いレベルの植物ステロール、したがってβ-シトステロールにおいて発揮され、植物に水ストレスへの抵抗性の改善をもたらす植物の活力の刺激:
- 根系の発育の刺激が、植物にアクセス可能な水供給量を高めること、
- 植物中のβ-シトステロールにより送られたメッセージが、部分的な気孔の閉鎖を誘発し、それにより、蒸発散量に起因する水の損失を制限すること
へと至らせる。
【0160】
本発明の目的では、句「植物の活力の刺激」は、例えば、植物の水ストレスへの抵抗性を改善する、植物の多様な代謝経路の刺激を指す。
【0161】
有利には、上に記載した生物学的機序は、植物の総体的活力における、より一般には植物の健康における、改善に至らせる。
【0162】
用語「植物の健康」又は「植物健康」は、増大した、収穫高、植物の活力、収穫植物部分の品質、及び非生物的及び/又は生物的ストレスへの耐性等の、単独で又は互いに組み合わせたいくつかの態様によって決定される、植物及び/又はその製品の状態であると定義される。
【0163】
したがって、植物にアクセス可能な水供給の程度、及びこの供給の消費率は、その伝達が植物ステロール、詳細にはβ-シトステロールに関与するシグナルによって調節される。これらの2つの機序が、植物によるアクセス可能な水の最適化された消費へと至らせる。
【0164】
より正確には、水ストレスへの耐性の効果が観察され、この効果は、本発明において使用されるβ-シトステロールによって、及びストレスへの曝露前の組成物又はスラリーの適用によって特に誘発される。
【0165】
特定の一実施形態では、本発明は、塩ストレスに関する乾物の損失を制限することを目的とする、栽培植物のための予防的処理の方法に関し、これは、植物に、先に説明した組成物又はスラリーに適用することからなる。
【0166】
特定の実施形態によれば、収穫高における又は乾物生産における減少をもたらす生物的ストレスの観点において、それが真菌感染及び/又は細菌感染及び/又はウイルス感染及び/又は害虫攻撃及び/又は雑草との競争であれ、これは、栽培植物において生きている植物病原体の有害な作用により引き起こされうる。
【0167】
例えば、植物の真菌感染は、ブドウ、トマト又はジャガイモにおけるウドンコ病、コムギにおけるセプトリア、オオムギにおけるミカヅキグサ、又はわら穀類及びブドウにおける粉末状ウドンコ病であり得、植物の細菌感染は、根頭がんしゅ病、潰瘍病又はファイアーフライト病であり得、植物のウイルス感染は、モザイク病又は黄萎ウイルスであり得、栽培植物を攻撃することができる害虫には、アブラムシ、ノミ、カブトムシ又は松くい虫が挙げられる。
【0168】
詳細には、本発明の組成物又はスラリーは、有利には、その頻度に影響を及ぼすことなく、真菌疾患の強度の低下を助ける。
【0169】
本発明の目的では、句「生物的ストレスの開始前に」は、特に真菌感染の観点において、最初の兆候が現れる前の期間を指し、例えば、栽培植物の葉及び/又は茎に最初の斑点が現れる前の期間を指す。
【0170】
本発明の目的では、句「真菌疾患の強度」は、栽培植物の葉のうちの全てにおける疾患の平均強度を指す。葉における疾患の強度は、疾患により覆われている葉の表面積である。
【0171】
本発明の目的では、句「真菌疾患の頻度」は、そこに疾患又は斑点が観察されうる葉の数を指す。
【0172】
上記のことから、本発明の組成物又はスラリーが、感染、詳細には真菌感染の開始前に植物に適用されるとき、本発明の予防的処理を受けていない植物と比べて、葉の斑点又は脱色の表面積における減少へと至らせることが、結果として生じる。
【0173】
本出願者はまた、本発明の組成物又はスラリーが、植物の成長及び発育を改善させること、特にスラリーがストレスの開始前に適用されるときに若い苗木のそれを改善させることも留意した。詳細には、これらの改善は、スラリーが種子吸水膨潤を介して適用されるときに更により有利である。
【0174】
したがって、本発明はまた、非生物的及び/又は生物的ストレスの開始前に、好ましくは種子吸水膨潤を介して、先に説明した組成物又はスラリーを適用することからなる若い苗木の成長及び発育を刺激する方法にも関する。したがって、本発明の方法は、その間に若い苗木が非生物的及び/又は生物的ストレスに曝露される時間の期間を制限する。更に、種子吸水膨潤を介して適用される製品の効果は経時的に続き、その理由は、本発明の組成物又はスラリーで処理された植物が、非生物的及び/又は生物的ストレスに、より耐性があるためである。
【0175】
実際には、非生物的及び/又は生物的ストレスの観点において、若い苗木は成体の植物よりも壊れやすい。本発明の組成物又は本発明のスラリーで処理された若い苗木は、この処理を受けなかった苗木よりも速く、完全な成熟(成体の植物段階)の状態に達する。
【0176】
予想外に、本出願者は、本発明の第1及び第2の界面活性剤が、クチクラの状態を変更し、それらを透過性にし、すなわちそれらが、植物ステロールの混合物が内部に向けて貫通して、植物の葉の内部成分、例えば植物細胞に達することを可能にすることに留意した。
【0177】
換言すると、本発明の界面活性剤は、種皮バリアの交差、更には種皮の破断を促し、したがって発芽を促す。次に、植物ステロール、詳細にはβ-シトステロールの混合物の外生の寄与は、苗木の成長及び発育を刺激することに役立つ。本発明の組成物又はスラリーは、このように、おそらくは1種又はいくつかの有効成分と合わされて、好適な組成物と、前に挙げた特異的サイズの粒子の形態にある植物ステロールの送達を可能にするシステムとの組み合わせを通じて、植物ステロール、詳細にはβ-シトステロールの効果的な外生の供給を可能にする。
【0178】
本発明の目的では、句「植物ステロールの送達」は、水性相の手段による、疎水性である植物ステロールの輸送を指す。
【0179】
更に、本発明の組成物の水性相中に懸濁液中の固体粒子の形態において存在する第2の界面活性剤は、エピクチクラのワックスを可溶化することを助け、この組成物の構成成分化合物のためのクチクラを通じて容易な経路を付与する。
【0180】
上記のことから、その間に苗木がストレスに供されうる期間が短縮されることが、結果として生じる。
【0181】
本発明の化合物が特定のタイプの作用を実施する製品、例えば殺真菌剤又は殺生物剤ではないという事実は、広範な農作物についての広域のスペクトルの使用を考えることを可能にし、これは、特に、保護を改善し、したがって、それについて入手可能な植物医薬製品の数がほとんどゼロである少数の農作物の収益性を改善させることができる。
【0182】
実際には、本発明の組成物又はスラリーは、栽培植物の、葉に噴霧することによって、散水、灌漑、種子吸水膨潤、種子コーティング、滴下灌漑若しくは重力灌漑によって、土壌への組み入れ、親水性農作物媒質の添加によって、又は浸漬によって、適用される。
【0183】
本発明の目的では、
- 用語「葉面噴霧」は、葉の上面及び/又は下面を覆う多量の微滴を形成するスラリーの加圧プロジェクションを指し、
- 用語「灌漑」は、水の供給の、植物の根系により取り上げられる土壌溶液への添加を指し、
- 用語「種子吸水膨潤」は、溶液含有組成物中の種子の浸水を指す。
【0184】
有利には、組成物は、栽培植物に、葉面噴霧によって、0.1L/ha(ヘクタール)~15L/ha、好ましくは1L/ha~5L/haの組成物の投与量において適用される。実際には、必要とされる投与量の組成物が水中で希釈されてスラリーを得る。次いで、スラリーは、植物に、30から400L/haの間、有利には50から200L/haの間の体積において適用される。
【0185】
特定の一実施形態では、組成物は、2.5質量%の植物ステロールを含有し、組成物の必要とされる投与量は、1L/ha~5L/haの範囲である。これは、植物に適用される植物ステロールの投与量が25から125g/haの間であることを意味する。実際には、本発明の組成物は、植物に直接適用されなくてもよく、スラリーを形成すべく希釈される必要がある。本実施形態では、スラリーは、植物に、詳細には葉面噴霧によって、体積50~200L/haにおいて適用される。
【0186】
スラリーは、好ましくは、植物の葉が土壌を覆うときの段階の間に適用される。
【0187】
有利には、本発明のスラリーは、葉面噴霧及び/又は灌漑及び/又は種子吸水膨潤によって1回のみ適用される。
【0188】
本発明はまた、先に説明した組成物又はスラリーの、
- 栽培植物の、非生物的ストレスへの耐性を増大させるための、及び/又は
- 栽培植物に影響を及ぼす生物的ストレスの強度を低減させるための、
使用にも関する。
【0189】
本発明はまた、先に説明した組成物又はスラリーの、栽培植物のための生物刺激資材としての、使用にも関する。
【0190】
本発明はまた、先に説明した組成物又はスラリーの、栽培植物の収穫高又は乾物生産を改善するための、使用にも関する。
【0191】
本発明はまた、先に記載した組成物又はスラリーの、栽培植物についてのより深い根の発育を促進するための、使用にも関する。
【0192】
本発明はまた、先に記載した組成物又はスラリーの、栽培植物の気孔の開閉を制御するための、使用にも関する。
【0193】
本発明はまた、先に説明した組成物又はスラリーの、栽培植物の植物的発育及び/又は開花を改善するための、使用にも関する。
【0194】
本発明はまた、植物ステロールと、界面活性剤、特にポリオールと、具体的には先に説明した組成物又はスラリーとの混合物を含む組成物の、農作物植物の茎を強化して生理的倒伏へのその耐性を改善するための、より低い種子充填、品質の損失、収穫高の損失及び収穫の困難さを含みうる、倒伏の有害作用を改善するための、使用にも関する。
【0195】
本発明はまた、先に説明した組成物又はスラリーの、植物医薬の殺真菌剤又は生物防除製品の有効性を改善するための、使用にも関する。
【0196】
特定の実施形態によれば、栽培植物は、クロロフィリアン植物、有利には、穀類、油種子及びタンパク質農作物;ブドウ;根及び根茎を有する植物;園芸植物;芝;野菜;ハーブ及びスパイス;木の農作物;又は加工用原材料の生産を意図された産業用農作物の畑の農作物を含む群の中から有利には選択される。好ましくは、栽培植物は、ダイズ、トウモロコシ、オオムギ、キビ、モハ、ススキ、キビ類、ソルガム、ピーナツ、コムギ、ナタネ、ヒマワリ、プロテインピー、フィールドピー、ソラマメ、ルピナス、亜麻、ムラサキウマゴヤシ(truncated alfalfa)、ブドウ、ビーツ、ジャガイモ、マメ、レタス、パセリ及びラディッシュを含む群の中から選択される。
【0197】
組成物、スラリー、本発明の組成物を製造する方法、非生物的及び/又は生物的ストレスを予防する処理方法、及び先に説明した使用は、植物医薬製品に関連する社会的要請に正確に応じるという利点:
- 畑で適用することができ、農作物植物の成長を刺激するのに効果的である植物ステロール濃度を提示することができ、非生物的及び/又は生物的ストレスに対処することができる
- 環境に優しい
- ヒトの健康に安全である
- 農作物植物の多様性の観点において使用が多彩である
- 抵抗性を誘発しない
- 環境条件を改善する
- 経済的メリットがある
- 規制に関するメリットがある
を提示する。
【0198】
本発明、及びそれがもたらす利点は、以下の図面及び実施例において、より可視化され、これらは、本発明を非包括的に例示するように付与される。
【図面の簡単な説明】
【0199】
図1】本発明の組成物の粒径分布。
図2】本発明の組成物の顕微鏡写真。
図3】マイクロプロットにおける栽培に伴う、水ストレスの条件下での、本発明の組成物で処理されたダイズの深い根の発育を示す。
図4】マイクロプロットにおける栽培に伴う、水ストレスの条件下での、本発明の組成物で処理されたダイズの深い根の発育を示す。
図5】幅広型畝における栽培に伴う、水ストレスの条件下での、ヒマワリ農作物の収穫高を示す。
図6】本発明の組成物の、ブドウ農作物のウドンコ病への感受性を低下させる能力を例示する。
図7】典型的な農業実践において利用される使用の条件下での、ブドウ農作物のウドンコ病への感受性を低下させる、本発明の組成物の能力を例示する。
【実施例
【0200】
1.本発明による組成物の調製
1.1.組成物の配合(Table 1(表1)を参照されたい)
本発明の化合物又は分子の任意の質量パーセンテージは、本発明の全ての質量を指し、これは、100を付与する全ての成分の和に対することを意味する。この質量パーセンテージは、wt%と記号化することができる。
【0201】
【表1A】
【0202】
【表1B】
【0203】
1.2.組成物の製造:
本発明による多様な組成物を、
(i)植物ステロール、油界面活性剤SF1(存在する場合)、テトラデカン酸メチル、及び存在するときにはヘキサデカン酸メチル、オクタデカン酸メチ及び溶媒を含む親油性相を、約110℃にて調製する工程と、
(ii)水、存在する場合には水界面活性剤SF1、及び存在する場合にはベンジルアルコールを含む親水性相を、所与の温度にて調製する工程と、
(iii)工程(i)の親油性相を、工程(ii)の親水性相と混合して、親油性液滴の体積のうちの少なくとも90%が0.1から20μmの間からなる直径を有し、最大ピークがレーザー回析により決定して2から6μmの間が得られるまで撹拌する工程と、
(iv)エマルションを約20℃の周囲温度に冷却する工程と、
(v)第2の界面活性剤SF2をエマルション中に約20℃の周囲温度にて添加して、粒子のうちの少なくとも90%が10から250μmの間からなる直径を有し、水性相中に懸濁され、最大ピークがレーザー回析により決定して10から1000μmの間が得られるまで撹拌する工程と
を含んで製造する。
【0204】
組成物1の粒径分布を図1に、組成物1の顕微鏡写真を図2に、示す。
【0205】
図1に示すように、
- 水性相中に分散された親油性液滴のうちの少なくとも90%は0.1から20μmの間からなる直径を有し、ピーク最大値がレーザー回析により決定して2から6μmを有し、
- 第2の界面活性剤(SF2)のうちの少なくとも90%は10から250μmの間からなる直径を有する粒子の形態にあり、ピーク最大値がレーザー回析により決定して好ましくは10から100μmの間を有する。
【0206】
図2に示すように、1により指定される第2の界面活性剤(SF2)の粒子は、2により指定される親油性液滴よりもはるかに大きい。
【0207】
2.実施例1によるスラリーの、制御条件下での、ダイズ農作物の水ストレスへの感受性を低下させる能力の評価
本試験のこの目的は、詳細には植物による土壌水分の消費の観点における、本発明のスラリーのダイズへの適用の効果を明示することである。該方法は、本発明のスラリーで処理した植物(処理済みモダリティ)の発育及び水含有量を、水ストレス(スラリーの適用に続いて1週間、水を供給しない)の文脈における未処理の植物のもの(対照モダリティ)に比較することに関与する。この評価は、実験室成長チャンバの制御条件下で実施する。
【0208】
2.1.装置及び方法
2.1.1.実験の設定の説明
実験の設定の説明をTable 2(表2)に提示する。
【0209】
【表2】
【0210】
2.1.2.検討した処理モダリティ
検討したモダリティの説明をTable 3(表3)に提示する。
【0211】
【表3】
【0212】
スラリーを、実施例1の組成物を水に希釈して得、葉面噴霧によって、温度28℃及び相対湿度70%の制御条件下、体積80L/haにおいて1回のみ適用する。
【0213】
2.1.3.データ収集方法
いくつかのパラメータを考慮し、すなわち以下である:
- ダイズ植物の発育段階の規則的観察を、三出葉の数をカウントすることによって実施した;
- 各モダリティについての水含有量の評価。実際に、実験が終わるとき、新鮮物の質量(FW)を、5つの植物のうちの4つについて測定する。次いで、それらの植物を2週間乾燥させて、乾物(DW)の質量を決定する。計算式(FW-DW)/FWが、植物の水含有量を付与する;
並びに
- 最後の植物から三出葉を取り、デシケーター中に置いて、その植物の水含有量を直ちに評価する、研究。このパラメータを、乾物測定から得た結果と合わせることになる。
【0214】
2.2.結果
結果をTable 4(表4)に提示する。
【0215】
【表4】
【0216】
2.3.結論
本試験は、本発明のスラリーを、発育の初期段階(V3段階)にあるダイズに適用するとき、水ストレスの期間に続く、より多い水含有量と共に、改善した植物発育が得られる(葉の数が14.79%増加する)ことを示している。その一方で、水ストレスの条件下、対照モダリティ植物はそれらの葉を失い(-3.36%)、それらの水含有量は、処理済み植物の水含有量よりも少ない。
【0217】
この証拠は、同一の成長条件下、本発明のスラリーで処理した植物は、その土壌水分の消費を最適化してその成長を増大させ、その乾燥を制限することを示している。したがって、そこで貯水量がしおれ点に達する瞬間は遅れ、植物は、より長い期間の間、その水分快適ゾーン(すなわちEUSWR)に残る。
【0218】
3.マイクロプロット中の栽培に伴う、実施例1によるスラリーの、ダイズ農作物の、実際の条件下での水ストレスへの感受性を低下させる能力の評価
本試験のこの目的は、実施例1によるスラリーのダイズへの適用が、植物による土壌水分消費における減速をもたらすことを明示することである。該方法は、本発明のスラリーで処理した植物(処理済みモダリティ)の収穫高を、そこで植物の水の必要性が叶えられていない文脈における未処理植物の収穫高(対照モダリティ)と比べて評価することに関与する。この評価は畑で実施する。
【0219】
3.1.装置及び方法
3.1.1.実験の設定の説明
実験の設定の説明をTable 5(表5)に提示する。
【0220】
【表5】
【0221】
3.1.2.検討したモダリティ
検討したモダリティの説明をTable 6(表6)に提示する。
【0222】
【表6】
【0223】
スラリーを、実施例1の組成物を水中で希釈して得、葉面噴霧によって、温度22℃、相対湿度75%、風なしという条件下、体積80L/haにおいて1回のみ適用する。
【0224】
3.1.3.データ収集方法
異なるモダリティに対応するマイクロプロットを、ドローンにより実施するNDVI画像化を用いて観察した。60cm容量性プローブを使用して、考慮する処理モダリティに従って植物の貯水量を評価した。事実、このようなプローブは、水消費並びに植物の根系の深さ及び程度の動態を決定することを可能にする。容量性プローブを、4回の反復試験の最後の間に挿入し(セクション3.1.2を参照されたい)、1つのプローブを対照のモダリティについて使用し、別のものを本発明のスラリーで処理したモダリティについて使用した。収穫日に、異なるマイクロプロットを別々に収穫し、それらの収穫高を研究した。更なる分析を、この収穫高の成分を調べることによって実施した。
【0225】
3.2.結果
3.2.1.容量性プローブ
根の深さのレベルを図3から図4に示す。
【0226】
この深さのレベル、具体的には目盛りの形状に付随するデータは、より浅い深さにおける根の発育が、処理済みモダリティについての方が、対照モダリティについてよりも進んでいることを示している。事実、目盛りは45cm(図3)及び55cm(図4)の深さにおいてより急速になることが明らかである。
【0227】
3.2.2.収穫高
結果をTable 7(表7)に提示する。
【0228】
【表7】
【0229】
3.3.結論
本試験は、本発明のスラリーを、発育の初期段階(V3段階)にあるダイズに適用するとき、特により深い根の発育を通じて、土壌水分の使用の改善が得られることを示している。結果として、本発明のスラリーで処理した植物は、より大きい貯水量から、すなわちより多量の利用可能な水から、利益を得、これは、未処理(対照)モダリティにおける植物と比べて、それが、より良好に水ストレスに耐えることを可能にする。
【0230】
スラリーで処理した植物について観察した水ストレスへの感受性のこの低下は、対照モダリティについての収穫高37.7ql/haと比べて、処理済みモダリティについては収穫高獲得+12.6%をもたらす。この効果は、Table 7(表7)中で付与するデータによって特に説明することができ、これは、この収穫高の全ての成分が改善したことを示している。詳細には、処理を受けた栽培植物は、より高いTKW値を提示している。換言すると、処理済み植物は、その種子が充填されたときに、サイクルの終了時の時間において水ストレスに影響されることがより少なかった。
【0231】
4.マイクロプロットにおける栽培に伴う、実際の条件下での、実施例1によるスラリーの、極端な水ストレスへのダイズ農作物の感受性を低下させる能力の評価
4.1.装置及び方法
4.1.1.実験の設定の説明
実験の設定の説明をTable 8(表8)に提示する。
【0232】
【表8】
【0233】
4.1.2.検討したモダリティ
検討したモダリティの説明をTable 9(表9)に提示する。
【0234】
【表9】
【0235】
スラリーを、実施例1の組成物を水に希釈することによって得、葉面噴霧によって、温度24℃、相対湿度66%、風なしという条件下、体積150L/haにおける1回のみ適用する。
【0236】
本試験は、降雨及び土壌組成物のレベルにより誘発する極端な水ストレスの条件下で行う。これは、ダイズが粘土質土壌において成長する非常に少ない降雨の事例である(粘土による水の強力な保持を考慮すると、水が植物に利用可能であるようにしない最大降雨イベント10mm)。
【0237】
4.2.結果
結果をTable 10(表10)に提示する。
【0238】
【表10】
【0239】
4.3.結論
本試験は、本発明のスラリーを、発育の初期段階(V2段階~R1段階)にあるダイズに適用するとき、収穫物の成分の全てが、極端な水ストレスの条件下で改善することを示している。最終的に、これは、本発明のスラリーで処理した栽培植物については、処理なしで栽培したものと比べて50%超の収穫高増加へと至らせる。
【0240】
5.幅広型畝における栽培での、本発明のスラリーの、実際の条件下でのダイズ農作物の水ストレスへの感受性を低下させる能力の評価
5.1.装置及び方法
5.1.1.実験の設定の説明
実験の設定の説明をTable 11(表11)に提示する。
【0241】
【表11】
【0242】
5.1.2.検討したモダリティ
検討したモダリティの説明をTable 12(表12)に提示する。
【0243】
【表12】
【0244】
スラリーを、実施例1の組成物を水に希釈することによって得、葉面噴霧によって、温度21℃、相対湿度72%、風なしという条件下、体積80L/haにおいて1回のみ適用する。
【0245】
5.2.結果
結果をTable 13(表13)に提示する。
【0246】
【表13】
【0247】
5.3.結論
本試験は、本発明のスラリーを、発育の初期段階(V3段階)にあるダイズに適用するとき、未処理植物について得た収穫高に比べて+22%超の収穫高増加を得ることを示している。
【0248】
6.幅広型畝における栽培での、実際の条件下での、本発明のスラリーのトウモロコシ農作物の水ストレスへの感受性を低下させる能力の評価
6.1.装置及び方法
6.1.1.実験の設定の説明
実験の設定の説明をTable 14(表14)に提示する。
【0249】
【表14】
【0250】
6.1.2.検討したモダリティ
検討したモダリティの説明をTable 15(表15)に提示する。
【0251】
【表15】
【0252】
スラリーを、実施例1の組成物を水中で希釈することによって得、葉面噴霧によって、温度23℃、相対湿度76%、風なしという条件下、体積80L/haにおいて適用する。
【0253】
6.2.結果
結果をTable 16(表16)に提示する。
【0254】
【表16】
【0255】
6.3.結論
本試験は、本発明のスラリーを、発育の初期段階(8~10枚の葉の段階)にあるトウモロコシに適用するとき、未処理トウモロコシについて得たものと比べて+7.3%の収穫高増加を得ることを示している。
【0256】
7.幅広型畝における栽培に伴う、実際の条件下での、本発明のスラリーの、ヒマワリ農作物の水ストレスへの感受性を低減する能力の評価
7.1.装置及び方法
7.1.1.実験の設定の説明
実験の設定の説明をTable 17(表17)に提示する。
【0257】
【表17】
【0258】
7.1.2.検討したモダリティ
検討したモダリティの説明をTable 18(表18)に提示する。
【0259】
【表18】
【0260】
スラリーを、実施例1の組成物を水に希釈することによって得、葉面噴霧によって、温度21℃、相対湿度72%、風なしという条件下、体積80L/haにおいて1回のみ適用する。
【0261】
7.1.3.データ収集方法
3.1.3.部を参照されたい。
【0262】
7.2.結果
7.2.1.容量性プローブ
結果を図5に提示する。
【0263】
これらのデータは、栽培したヒマワリの2つのモダリティ(処理あり又は処理なし)の間の動態及び根の深さにおける明らかな差を示している。
【0264】
より正確には、これらの結果は、本発明のスラリーで処理したヒマワリのしおれ点がより低いレベルにシフトし、これは結果として容易に使用可能な土壌貯水量(EUSWR)を増加させており、植物がストレスの状況にないことを可能にする、すなわち、長すぎる期間にわたり土壌生存貯水量(SSR)にあることを示している。この効果は、本発明で処理したヒマワリについてのより深い発根によって特に誘発される。
【0265】
累積する土壌湿度(5cmから55cmへ)の発展の分析は、土壌生存貯水量(SSR)が、本発明のスラリーで処理されたヒマワリについて経時的に低減するが、対照モダリティヒマワリについては同じレベルに残るという事実を強調している。
【0266】
土壌深さ(5cmから15cmの間)の関数としての毎日の水の消費傾向の分析は、本発明のスラリーで処理した植物が、より高く発育した根系から、詳細にはより深い発根から、利益を得、水を深さ5cmにおいて使用することが難しくなるとき、ヒマワリ植物が、より深いところからの光合成に必要な水を集めることを可能にすることを明示している。
【0267】
これらの結果は、本発明のスラリーでの処理が、根による、より良好な土壌探査へと至らせることを明らかに示している。
【0268】
したがって、本発明のスラリーで処理したヒマワリは、未処理ヒマワリ(33日)よりも短い期間の間(22.5日)、しおれ点を下回る。結果は、未処理モダリティと比べた、スラリーで処理したモダリティについての乾物の量における増加である。
【0269】
7.2.2.収穫高
結果をTable 19(表19)に提示する。
【0270】
【表19】
【0271】
7.3.結論
本試験は、本発明のスラリーを、発育の初期段階(花の芽の段階)にあるヒマワリに適用するとき、未処理ヒマワリについて得られるものと比べて+8.4%の収穫高増加が得られることを示している。
【0272】
8.本発明のスラリーの、農作物植物の茎を強化する能力、及び多様な主要農作物についてのその生理学的倒伏への耐性を改善する能力の評価
これらの試験の目的は、本発明のスラリーを多様な主要農作物に適用するとき、わらを強固にすること及び茎の強度を改善することを通じて倒伏への耐性が強化されることを明示している。高い植物の背が高いほど倒伏に弱いことに留意しなければならない。
【0273】
ここで提示する試験は制御条件下で実施し、実験の設定は幅広型畝に関与する。
【0274】
8.1.オオムギ
8.1.1.装置及び方法
8.1.1.1.実験の設定の説明
実験の設定の説明をTable 20(表20)に提示する。
【0275】
【表20】
【0276】
8.1.1.2.検討したモダリティ
検討したモダリティの説明をTable 21(表21)に提示する。
【0277】
【表21】
【0278】
スラリーを、実施例1の組成物を水に希釈することによって得、葉面噴霧によって、温度17℃及び風10km/hという条件下、体積80L/haにおいて適用する。
【0279】
8.1.1.3.データ収集方法
本発明のスラリーの適用の効果を2つのパラメータを用いて評価する:
- 茎の高さ(クラウンと穂との間の挿入高さ):これは、研究モダリティ1つ当たり10の植物において実施した破壊測定である
- 倒伏の程度:各研究モダリティについての、倒伏により引き起こされた損傷の目視観察
【0280】
8.1.1.4.分析
平均の茎の高さ値を、各研究モダリティにおける10の茎の高さに基づいて比較する。目視観察を実施して、倒伏に起因する損傷を評価する。
【0281】
8.1.2.結果
結果をTable 22(表22)に提示する。
【0282】
【表22】
【0283】
いずれの研究モダリティについても、倒伏に起因する損傷は観察しなかった。
【0284】
8.1.3.結論
本試験は、本発明のスラリーを、茎発育のキーとなる段階にあるオオムギに適用するとき、未処理植物のものと比べてより高い茎を得ることを示している。倒伏に起因する損傷は、処理済み植物がより高い茎に発育し、したがって倒伏により弱いという事実にもかかわらず、2つの研究モダリティのいずれについても観察していない。
【0285】
8.2.キビ
8.2.1.装置及び方法
8.2.1.1.実験の設定の説明
実験の設定の説明をTable 23(表23)に提示する。
【0286】
【表23】
【0287】
8.2.1.2.検討したモダリティ
検討したモダリティの説明をTable 24(表24)に提示する。
【0288】
【表24】
【0289】
スラリーを、実施例1の組成物を水に希釈することによって得、葉面噴霧によって、制御条件下、体積80L/haにおいて適用する。
【0290】
8.2.1.3.データ収集方法
2つの研究モダリティにおける植物を、目視検査(ドローン写真及び畑の端における裸眼観察)に供して、倒伏により引き起こされた損傷の程度を評価する。対照モダリティゾーンにおいて、横臥している植物を収容する広い面積は、生理学的倒伏に起因する損傷の証拠を付与した。茎の高さは、本試験では評価しなかった。
【0291】
8.2.2.結果
結果をTable 25(表25)に要約する。
【0292】
【表25】
【0293】
8.2.3.結論
本試験は、本発明のスラリーを遅い発育段階にあるキビに適用するとき、処理済み植物が茎の強度の改善から利益を得ることを示している。結果として、処理済み植物は横臥しておらず、対照モダリティにおける横臥している植物と比べて改善した葉の露出を提示している。ドローン写真は、この観察を支持している。未処理植物についてなされた観察とは対照的に、処理済み植物については横臥している植物の領域はない。
【0294】
8.3.コムギ
8.3.1.装置及び方法
8.3.1.1.実験の設定の説明
実験の設定の説明をTable 26(表26)に提示する。
【0295】
【表26】
【0296】
8.3.1.2.検討したモダリティ
検討したモダリティの説明をTable 27(表27)に提示する。
【0297】
【表27】
【0298】
スラリーを、実施例1の組成物を水中で希釈することによって得、葉面噴霧によって、温度21℃及び風5km/hという制御条件下、体積80L/haにおいて適用する。
【0299】
8.3.1.3.データ収集方法
両方の研究モダリティにおける植物を、いくつかのパラメータに従って調べる:
- 茎の高さ(クラウンと穂の挿入高さとの間)。これは、葉面噴霧の第2の適用7日後に、研究モダリティ1つ当たり10の植物において実施した破壊測定である。
- スパイク高さ(穂の挿入高さと最も高いスパイクレットとの間)。これは、葉面噴霧の第2の適用14日後に、研究モダリティ1つ当たり10の植物において実施した破壊測定である。
- 倒伏の程度:各研究モダリティについての、倒伏により引き起こされた損傷の目視観察。
【0300】
8.3.1.4.分析
10の茎の高さの平均値及び10のスパイクの高さの平均値を、各研究モダリティについて評価し、次いで比較する。各測定のために、目視観察を実施して、倒伏に起因する損傷を評価する。
【0301】
8.3.2.結果
結果をTable 28(表28)に要約する。
【0302】
【表28】
【0303】
8.3.3.結論
この試験は、本発明のスラリーの、発育の遅い段階におけるコムギへの二重の適用が、茎の高さ(約5cm)における初期の増大へと最初に至らせ、これは、発育サイクルが短縮したことを示している。それにもかかわらず、この段階において、倒伏に起因する損傷は観察していない。したがって、増大した茎の高さは、倒伏に起因する損傷へと至らせていない。茎の堅さは、本発明の適用に応えて改善されなければならない。加えて、処理済みモダリティについて観察したスパイクの増大した高さは、倒伏に起因する損傷に留意することなしに、植物の地上部組織の質量を増大させる。結論は、本発明の葉面適用が、植物が生理学的倒伏に良好に耐えることを可能にするということである。
【0304】
9.本発明のスラリーの、栽培ツル植物の、ウドンコ病への感受性を低下させる能力の評価
この試験の目的は、非生物的ストレスへの植物の耐性において、本発明のスラリーの適用の効果を評価することである。
【0305】
9.1.装置及び方法
9.1.1.実験プロットの説明
実験プロットの説明をTable 29(表29)に提示する。
【0306】
【表29】
【0307】
9.1.2.検討したモダリティ
検討したモダリティの説明をTable 30(表30)に提示する。
【0308】
【表30】
【0309】
本発明のスラリーの7回の適用が、殺真菌処理の、ツルへの通常の7回の適用に相当することに留意することが重要である。換言すると、殺真菌処理のこれらの7回の適用は、本発明のスラリーの適用に置き換えられる。加えて、この場合、本発明のスラリーの第1の適用は、生物的ストレスの開始前に実施される。したがって、これは、生物的ストレスに関連する乾物の損失を制限するという植物の予防的処理を構成する。
【0310】
9.1.3.データ収集方法
9.1.3.1.疾患発症の測定
疾患発症は、
- 疾患頻度:そこで疾患が観察される植物集団のパーセンテージ、及び
- 疾患強度(%における):全ての植物集団についての疾患の平均強度。したがって、1つの植物集団における強度は、疾患に覆われている植物集団の表面積に相当する(%で表す)
の、2つの相補的指標の使用を通じて評価する。
【0311】
サンプルサイズは、研究モダリティ1つ当たり200の個体(又はマイクロプロット1つ当たり50の個体)である。
【0312】
9.1.3.2.統計的分析
本試験のために実施した統計的試験は、
- 頻度同等(等しい平均)のためのボンフェローニ検定、及び
- 強度同等(等しい平均)のためのボンフェローニ検定
である。
【0313】
9.1.4.結果
植物集団において実施したカウントの結果を図6に提示する。
【0314】
9.1.4.1.頻度同等についての試験
頻度同等についてのボンフェローニ検定の結果をTable 31(表31)に提示する。
【0315】
【表31】
【0316】
これらの結果は、疾患が、スラリーで処理したツル植物において成長する植物集団において、未処理モダリティからの植物集団よりも広がりが有意に少ないことを示している。
【0317】
9.1.4.2.強度同等についての試験
結果をTable 32(表32)に提示する。
【0318】
【表32】
【0319】
これらのデータは、植物集団において観察する疾患の強度が、本発明のスラリーで処理したツル植物において、未処理対照モダリティのそれと比べて有意に低いことを示している。加えて、本試験は、疾患の強度が、本発明のスラリーをツルに適用することによって40%~50%低減しうることを示している。
【0320】
10.通常の農業実践における本発明の潜在的使用の評価
本試験の目的は、本発明のスラリーを、ウドンコ病に対する防御のための操作の技術的経路へと統合することの有用性を明示することである。それを実施例9と比べることができ、これは、不完全な処理プログラム、すなわちツルの寿命にわたり通常適用される処理に相当しないものの文脈において、組成物1から得た本発明のスラリーを適用する効果を明示することを目的とする。
【0321】
10.1.装置及び方法
10.1.1.実験プロットの説明
実験プロットの説明をTable 33(表33)に提示する。
【0322】
【表33】
【0323】
10.1.2.検討したモダリティ
検討したモダリティの説明をTable 34(表34)に提示する。
【0324】
【表34】
【0325】
10.1.3.データ収集方法
10.1.3.1.疾患発症の測定
9.1.3.1.部を参照されたい。
評価を、若い葉、古い葉及び植物集団について実施する。各器官について、サンプルサイズは、研究モダリティ1つ当たり400の個体(又はマイクロプロット1つ当たり100の個体)である。
【0326】
10.1.3.2.統計的分析
本試験のために実施した統計的試験は、
- 等しい頻度(等しい中央値)についてのクラスカル・ウォリス検定、及び
- 等しい強度(等しい中央値)についてのクラスカル・ウォリス検定
である。
【0327】
葉及び植物集団において実施したカウントの結果を図7に提示する。
【0328】
10.1.4.結果
10.1.4.1.頻度同等についての試験
結果をTable 35(表35)に提示する。
【0329】
【表35】
【0330】
これらの結果は、疾患の広がりが、本発明のスラリーで処理した植物についてと、従来の処理プログラムに供したものについてとで、同等である(有意な差がない)ことを示している。換言すると、従来の処理(Cu2+及び植物医薬製品)と、本発明のスラリーでの処理とは、等しく効果的である。
【0331】
10.1.4.2.強度同等についての試験
結果をTable 36(表36)に提示する。
【0332】
【表36】
【0333】
これらの結果は、疾患の強度が、本発明のスラリーで処理した植物についてと、従来の処理プログラムに供したものについてとで、同等である(有意な差がない)ことを示している。加えて、本発明のスラリーは、銅が行うのと同じ程度のウドンコ病に対する防御を付与しているように見える。
【0334】
11.農作物保護化合物を有する農業用混合物。相互作用コムギ/ジモセプトリア・トリティキ(zymoseptoria tritici)の実施例
本試験の目的は、本発明のスラリーの、操作の技術的経路中への適用を、低減投与量の殺真菌剤と合わせることにより、ケサリオコムギの、コムギの主要な葉の疾患ジモセプトリア・トリティキの原因となる病原体に対する防御の効率における差を明示することである。殺真菌剤処理頻度指数は、小さくなる。この比較は、参照対照(農業従事者の従来の殺真菌剤適用の日程)及び類似の対照(本発明のスラリーの適用なしの殺真菌剤投与量低減)と共に行う。
【0335】
11.1.装置及び方法
11.1.1.実験プロットの説明
2つの実験を導いた。
【0336】
実験プロット1の説明をTable 37(表37)に提示する。
【0337】
【表37】
【0338】
実験プロット2の説明をTable 38(表38)に提示する。
【0339】
【表38】
【0340】
11.1.2.検討したモダリティ
適用する殺真菌剤の投与量の低減は、葉の最終段階(T2)に基づく。農業従事者により適用される現在の投与量は0.5L/haであり、登録投与量は1.5L/haであり、試験する低減投与量は0.1L/haである。標的とする殺真菌剤は、呼吸阻害剤(ピラクロストロビンを有するQo部位での複合体IIIの阻害剤、及びフルキサピロキサドを有する複合体IIの阻害剤)である。
【0341】
適用する殺真菌剤の投与量の低減は、葉の最終段階(T2)に基づく。農業従事者により適用される現在の投与量は1L/haであり、登録投与量は1.5L/haであり、試験する低減投与量は0.1L/haである。標的とする殺真菌剤は、呼吸阻害剤(ピラクロストロビンを有するQo部位での複合体IIIの阻害剤、及びフルキサピロキサドを有する複合体IIの阻害剤)、並びにステロール生合成阻害剤(メトコナゾールを有するC14デメチラーゼ阻害剤)である。
【0342】
検討したモダリティの説明をTable 39(表39)に提示する。
【0343】
【表39】
【0344】
【表40】
【0345】
11.1.3.データ収集方法
11.1.3.1.疾患発症の測定
評価を、3つの葉のレベルについて実施し、下から上へ、プロット1においてF3、F2及びF1、並びにプロット2において1つの葉のレベル(F2)である。各モダリティについて、20の植物を測定により観察し、モダリティにより3つから4つの間の測定で観察する。疾患強度(兆候を示す葉の領域のパーセンテージ)を測定として考慮に入れる。
【0346】
11.1.4.結果
11.1.4.1.強度同等についての試験
結果をTable 41(表41)に提示する。
【0347】
【表41】
【0348】
【表42】
【0349】
これらの結果は、疾患の強度が、殺真菌剤単独の低減投与量の適用と比べて、投与量の低減が何であれ、本発明のスラリーで処理した植物、及び低減投与量(半分に低減した殺真菌剤処理頻度指数)の殺真菌剤について、より低いことを示している。
【0350】
11.1.4.2.収穫高についての試験
結果をTable 43(表43)に提示する。
【0351】
【表43】
【0352】
【表44】
【0353】
これらの結果は、本発明のスラリーの適用に伴う殺真菌剤の投与量を低減することによる収穫高の損失が、投与量の低減が何であれ、対照モダリティの収穫高と比べて、最小であることを示している。
【0354】
12.農作物保護化合物を有する農業用混合物。相互作用ツル/プラスモパラ・ウィティコラ(Plasmopara viticola)の実施例
本試験の目的は、本発明のスラリーの、操作上の技術的経路中への適用を、低減投与量の殺真菌剤と組み合わせることにより、ツルのべと病の原因となる病原体プラスモパラ・ウィティコラに対する、ツルの保護の効率における差を明示することである。そのため、殺真菌剤処理頻度指数(FTI)を下げることができる。比較を、類似の対照(本発明のスラリーの適用なしの殺真菌剤投与量低減)において行う。
【0355】
12.1.装置及び方法
12.1.1.実験プロットの説明
実験プロットの説明をTable 45(表45)に提示する。
【0356】
【表45】
【0357】
12.1.2.検討したモダリティ
開花は、従来の殺真菌剤によって保護される。開花前及び後に、殺真菌剤の投与量を50%低減させ、実施例1の組成物をスラリーに投与量1L/haにおいて添加する。関連する殺真菌剤は、銅である。
【0358】
検討したモダリティの説明をTable 46(表46)に提示する。
【0359】
【表46】
【0360】
12.1.3.データ収集方法
疾患発症の測定
評価を、植物集団において実施した。各実験の設定のために50の植物集団を測定により観察する。疾患発症を、2つの相補的指標の使用を通じて評価する:
- 疾患の頻度:そこにおいて疾患が観察される植物集団のパーセンテージ、及び
- 疾患の強度(%における):全ての植物集団についての疾患の平均強度。したがって、1つの器官における強度は、その疾患により被覆されている器官の表面積(%で表す)に相当する。
【0361】
12.1.4.結果
12.1.4.1.強度同等についての試験
結果をTable 47(表47)に提示する。
【0362】
【表47】
【0363】
これらの結果は、疾患の強度が、本発明のスラリーで処理した植物について、及び低減投与量の殺真菌剤(殺真菌剤処理頻度指数は半減した)について、低減投与量の殺真菌剤単独と比べて低いことを示している。
【0364】
12.1.4.2.収穫高についての試験
結果をTable 48(表48)に提示する。
【0365】
【表48】
【0366】
これらの結果は変動しているが、有意ではなく、このことは、本発明のスラリーの適用に伴い、低減投与量の殺真菌剤による収穫高の損失が、対照モダリティの収穫高と比べて最少であることを示している。
【0367】
12.1.5.結論
疾患の発現は、記載した処理を受けたモダリティ(低投与量の殺真菌剤と組み合わせた本発明のスラリーの適用)において、本発明のスラリーの適用なしで同じ処理を受けたモダリティ(低い投与量の殺真菌剤単独)におけるものよりも低い。そのため、本発明のスラリーの適用は、殺真菌剤分子の効率を増大させ、又はそれらの作用を補完し、そのため、低減投与量の処理についての、より良好な効率を確実にする。
【0368】
本発明のスラリーの、殺真菌剤噴霧混合物への添加は、殺真菌剤の濃度を低減させ、したがって、収穫高に有意に影響を及ぼすことなく、これらの処理のための殺真菌剤処理頻度指数を大きく低減させる。
【0369】
そのため、これらの試験を、本発明のスラリーを、「有効成分」を含有する殺真菌剤混合物と混合するとき、それは、それらの効率を増大させ、又はそれらへの補完物として作用し、このようにして、良好な衛生条件を維持して良好な収穫高を確実にしつつ、殺真菌剤処理頻度指数を大きく低減させる。
【0370】
13.エマルションの保護の効率、対、プラスモパラ・ウィティコラ(Plasmopara viticola)に対するサスポエマルション、の比較
主な目的は、実施例1によるスラリーの能力、及び同じ配合のスラリーであるがSF2スクロースエステルが一切ないスラリーの、生体栄養性卵菌プラスモパラ・ウィティコラ、べと病の原因物質に対するブドウにおける保護を誘発する能力を調べることであった。
【0371】
ブドウの葉を、実施例1のスラリーで、及び同等ではあるがSF2遊離スクロースエステルなしのスラリーで、ランオフのポイントまで噴霧した。対照植物を同等の体積の超純水で処理する。処理48時間後に、2.104の胞子嚢/mLに調整した胞子嚢の懸濁液を葉の下表面に噴霧する。植物を、湿潤チャンバ(相対湿度90%から100%の間、温度18℃から23℃の間)中、暗がりで一晩置いた。播種6日後、「油の斑点」の兆候が、葉の向軸面上に出現した。葉1枚当たり5枚の葉のディスク(直径11mm)(すなわちモダリティ1つ当たり40枚のディスク)を取り、Plexiglas(登録商標)ボックス中に、湿ったワットマン紙に対して表を上にして置いた(相対湿度90から100%の間)。デバイスを20~22℃にて暗がりで一晩置き、胞子形成を誘発した。各葉のディスクにおける胞子形成のパーセンテージを、Visilog 6.9ソフトウェアを用いて評価した。
【0372】
【表49】
【0373】
実施例1のエマルションから調製したスラリーとサスポエマルションから調製したスラリーとの両方で、病原体播種48時間前に適用したスラリーは、対照の葉のディスクと比べて、ブドウの葉においてP・ウィティコラ(P. viticola)の胞子形成を低減した。驚くべきことに、Table 49(表49)にみられるように、実施例1からのサスポエマルションは、エマルションからの処理を行ったものよりも強力な保護を誘発した。
【0374】
14.実施例1によるスラリーの、エマルションに対する実際の条件下での水ストレスへのトウモロコシの感受性を低下させる能力の評価
主な目的は、実施例1によるスラリー、及び同じ配合であるが遊離スクロースエステルを欠くスラリーの、実際の畑において成長したトウモロコシにおいて水ストレス保護を誘発する能力を調べることであった。非対照モダリティについて、実施例1によるエマルションから調製したスラリーで処理したモダリティ(これは、SF2遊離スクロースエステルなしを意味する)について、及び実施例1によるサスポエマルションから調製したスラリーで処理した別のモダリティについて、収穫高を推定した。収穫高を、これら3つのモダリティについて推定した。Table 52(表52)は、この試験を要約している。
【0375】
14.1.装置及び方法
14.1.1.実験の設定の説明
実験の設定の説明をTable 50(表50)に提示する。
【0376】
【表50】
【0377】
14.1.2.検討したモダリティ
検討したモダリティの説明をTable 51(表51)に提示する。
【0378】
【表51】
【0379】
スラリーを、実施例1の組成物を水中で希釈することによって得、葉面噴霧によって、温度22℃、相対湿度75%、風なしの条件下、80L/haの体積において1回のみ適用した。
【0380】
14.1.3.データ収集方法
収穫したトウモロコシの質量のリアルタイム評価
【0381】
14.2.結果
結果をTable 52(表52)に付与する。
【0382】
【表52】
【0383】
15.ホウ酸及びモリブデン酸ナトリウムを含む本発明による組成物の調製
組成物(実施例10)をTable 53(表53)に付与する。
【0384】
【表53】
【0385】
(i)植物ステロール、ステアリン酸スクロース、ポリエチレングリコール400及びテトラデカン酸メチルを含む親油性相を約110℃において調製する工程と、
(ii)ベンジルアルコール、ホウ酸及びモリブデン酸ナトリウム二水和物を水中に含む親水性相の約80℃において調製する工程と、
(iii)工程(i)の親油性相と工程(ii)の水とを混合し、親油性液滴のうちの少なくとも90%が0.1から20μmの間からなる直径を有し、ピーク最大値がレーザー回析により決定して0.5から7μmの間で得られるまで撹拌する工程と、
(iv)エマルションを約20℃の周囲温度に冷却する工程と、
(v)粒子のうちの少なくとも90%が10から250μmの間からなる直径を有し、最大ピークがレーザー回析により決定して10から1000μmの間になるまで、ステアリン酸スクロースをエマルション中に約20℃の周囲温度にて添加し、水性相中に懸濁させる工程。
【0386】
16.実施例1による(Table 1(表1)を参照されたい)及び実施例10による(Table 53(表53)を参照されたい)スラリーの、ダイズ農作物の水ストレスへの感受性を低下させる能力の評価
この目的は、水ストレスに供され且つ異なる段階において実施例1から10の組成物の葉面適用で処理された種子で実施する、プランテーションでの、畑の試験におけるダイズ収穫高を評価することである。
【0387】
16.1.装置及び方法
16.1.1.実験の設定の説明
実験の設定の説明をTable 54(表54)に提示する。
【0388】
【表54】
【0389】
16.1.2.処理検討したモダリティ
検討したモダリティの説明をTable 55(表55)に提示する。
【0390】
【表55】
【0391】
本研究では収穫高を考慮する。
【0392】
16.2.結果
結果をTable 56(表56)に提示する。
【0393】
【表56】
【0394】
16.3.結論
この試験は、本発明のスラリーを、発育の初期段階(V3段階からV4段階の間)にあるダイズに適用するとき、収穫高が、実施例1の調製による組成物と、ほとんど実施例10の調製による組成物との両方について改善していることを示している。
【0395】
この証拠は、同一の成長条件下で、本発明のスラリー(そのスラリーを、実施例1から得るにしても実施例10から得るにしても)で処理した植物は、土壌水分のその消費を最適化して、その獲得生産高を上げ、その乾燥を制限することを示している。
【符号の説明】
【0396】
1 第2の界面活性剤(SF2)の粒子
2 親油性液滴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物ステロールの混合物を含有する親油性液滴を含むサスポエマルションの形態にある多相農業用組成物であって、前記親油性液滴が、水性相中に分散されて水中油型エマルションを形成しており、
- 前記親油性液滴と前記水性相との界面に位置され、前記水性相に可溶性であるSF(WATER SF1)及び前記親油性液滴に可溶性であるSF(OIL SF1)の中から選択される、少なくとも1種の第1の界面活性剤(SF1)と、
- 前記水中油型エマルション中に懸濁されている少なくとも1種の第2の界面活性剤(SF2)であり、前記エマルションに不溶性の粒子の形態を有する、第2の界面活性剤(SF2)と
を更に含む、
多相農業用組成物。
【請求項2】
植物ステロールの混合物が、組成物の0.2質量%から10質量%の間、有利には0.5質量%から7質量%の間、好ましくは1質量%から5質量%の間を占めることを特徴とする、請求項1に記載の農業用組成物。
【請求項3】
前記植物ステロールの混合物が、植物ステロール混合物のうちの少なくとも30質量%を占めるβ-シトステロールと、残りは、適切には、カンペステロール、スチグマステロール及びブラシカステロールを100%まで含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の農業用組成物。
【請求項4】
前記第1の界面活性剤が、組成物の0.2質量%から10質量%の間を占め、前記第2の界面活性剤が、組成物の0.01質量%から5質量%の間を占めることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の農業用組成物。
【請求項5】
- 少なくとも1種のWATER SF1及び少なくとも1種のSF2、又は
- 少なくとも1種のOIL SF1及び少なくとも1種のSF2、又は
- 少なくとも1種のWATER SF1、少なくとも1種のOIL SF1、並びに少なくとも1種のSF2
を含有することを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の農業用組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の第1の界面活性剤(OIL SF1及び/又はWATER SF1)、並びに少なくとも1種の第2の界面活性剤(SF2)を含有することを特徴とし、且つ第1の界面活性剤(OIL SF1及び/又はWATER SF1)が第2の界面活性剤(SF2)と同一であることを特徴とする、請求項5に記載の農業用組成物。
【請求項7】
前記第1の界面活性剤OIL SF1及び/又はWATER SF1、並びに前記第2の界面活性剤(SF2)が、脂肪酸糖エステルであることを特徴とする、請求項6に記載の農業用組成物。
【請求項8】
脂肪酸糖エステルが、ステアリン酸スクロースであることを特徴とする、請求項7に記載の農業用組成物。
【請求項9】
前記脂肪酸糖エステルが、
- 20質量%から80質量%の間の、有利には70%のステアリン酸サッカロースであり、モノエステル含有量が、20質量%から80質量%の間の範囲の、有利には70%のステアリン酸サッカロース、残りが、ジ-、トリ-及び/又はポリエステルの混合物である、ステアリン酸サッカロースと、
- 20質量%から80質量%の間の、有利には30%のパルミチン酸サッカロースであり、モノエステル含有量が、20質量%から80質量%の間の範囲の、有利には70%のパルミチン酸サッカロース、残りが、ジ-、トリ-及び/又はポリエステルの混合物である、パルミチン酸サッカロースと
を含有する混合物の形態にあることを特徴とする、
請求項7に記載の農業用組成物。
【請求項10】
WATER SF1が、ポリオキシエチレンソルビタンエステルの群から選択され、OIL SF1が、ソルビタンエステルの群から選択され、SF2が、天然の界面活性剤の群から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の農業用組成物。
【請求項11】
WATER SF1が、モノオレイン酸ポリエチレングリコールソルビタン(Tween 80)であり、OIL SF1が、モノラウリン酸ソルビタン(Span 20)であり、SF2が、ダイズレシチンであることを特徴とする、請求項10に記載の農業用組成物。
【請求項12】
WATER SF1が、ポリオキシエチレンソルビタンエステルの群から選択され、OIL SF1が、ソルビタンエステルの群から選択され、SF2が、脂肪酸糖エステルを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の農業用組成物。
【請求項13】
WATER SF1が、Tween 80であり、OIL SF1が、Span 20であり、SF2が、ステアリン酸スクロースであることを特徴とする、請求項12に記載の農業用組成物。
【請求項14】
(i)植物ステロールの混合物が、β-シトステロールを含有し、これが、植物ステロール混合物のうちの少なくとも30質量%を占め、残りが、適切には、カンペステロール、スチグマステロール及びブラシカステロールを100%まで含有し、
(ii)第1の界面活性剤OIL SF1及び第2の界面活性剤(SF2)が、ステアリン酸スクロースである、
請求項1に記載の農業用組成物。
【請求項15】
- 植物医薬製品、例えば植物成長調整剤、殺真菌剤、静真菌剤、殺細菌剤、静細菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、寄生虫駆除剤、殺線虫剤、モグラ駆除剤若しくは除草剤、
- 植物が、真菌感染、細菌感染、ウイルス感染、害虫攻撃及び/若しくは雑草との競争に対抗することを可能にする天然の機序に基づく生物防除製品、
並びに/又は
- 栄養素、例えば微量栄養素又は肥料
を含む群から選択される少なくとも1種の有効成分を含むことを特徴とする、
請求項1から14のいずれか一項に記載の農業用組成物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物を収容する農業用キットであって、少なくとも1種の有効成分が、
- 植物医薬製品、例えば植物成長調整剤、殺真菌剤、静真菌剤、殺細菌剤、静細菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、寄生虫駆除剤、殺線虫剤、モグラ駆除剤若しくは除草剤、
- 植物が、真菌感染、細菌感染、ウイルス感染、害虫攻撃及び/若しくは雑草との競争に対抗することを可能にする天然の機序に基づく生物防除製品、
並びに/又は
- 栄養素、例えば微量栄養素又は肥料
を含む群から選択される、
農業用キット。
【請求項17】
栄養素が、ホウ素(B)及びモリブデン(Mo)化合物であることを特徴とする、請求項16に記載の農業用組成物又は農業用キット。
【請求項18】
ホウ素化合物が、酸として添加され、モリブデン化合物が、水塩として添加され、有利には、ホウ酸及びモリブデン酸ナトリウム二水和物であることを特徴とする、請求項17に記載の農業用組成物又は農業用キット。
【請求項19】
少なくとも1種のホウ素化合物の濃度が、0.01から2wt%の間、好ましくは0.5から1.8wt%の間を占め、少なくとも1種のモリブデン化合物の濃度が、0.002から1wt%の間、好ましくは0.003から0.5wt%の間を占めることを特徴とする、請求項17又は18に記載の農業用組成物。
【請求項20】
OIL SF1及びSF2としてステアリン酸スクロースを含むことを特徴とする、請求項19に記載の農業用組成物。
【請求項21】
前記親油性液滴が、植物ステロール混合物のうちの少なくとも30質量%を占めるβ-シトステロールと、残りは、適切には、カンペステロール、スチグマステロール及びブラシカステロールを100%まで含有する植物ステロールの混合物を含有し、前記親油性液滴が、水性相中に分散されており、
SF1及びSF2がステアリン酸スクロースである
- 親油性液滴と水性相との界面に位置される少なくとも1種の第1の界面活性剤(SF1)であり、親油性液滴に可溶性である(OIL SF1)第1の界面活性剤(SF1)と、
- 水性相中に懸濁されている少なくとも1種の第2の界面活性剤(SF2)であり、水性相に不溶性の粒子の形態を有する、第2の界面活性剤(SF2)と、
- 0.01から2wt%の間、好ましくは0.5から1.8wt%の間の少なくとも1種のホウ素化合物と、
- 0.002から1wt%の間、好ましくは0.003から0.5wt%の間の少なくとも1種のモリブデン化合物と
を更に含むことを特徴とする、
請求項1に記載の農業用組成物。
【請求項22】
前記ホウ素化合物が、ホウ酸であり、前記モリブデン化合物が、モリブデン酸ナトリウム二水和物であることを特徴とする、請求項21に記載の農業用組成物。
【請求項23】
請求項1から15及び17から22のいずれか一項に記載の組成物の、又は請求項16から18のいずれか一項に記載のキットの少なくとも組成物の、希釈からもたらされるスラリー。
【請求項24】
請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であって、
a)植物ステロールの混合物を含む親油性相を調製する工程であって、任意選択で前記植物ステロールの混合物を加熱する、工程と、
b)水性相を調製する工程であって、任意選択で前記水性相を加熱する、工程と、
c)同時に、第1の界面活性剤OIL SF1を工程a)の親油性相に添加する工程、及び/又は第1の界面活性剤WATER SF1を工程b)の水性相に添加する工程と、
d)親油性相を水性相と混合し、エマルションが得られるまで撹拌する工程と、
e)前記エマルションを冷却する工程と、
f)第2の界面活性剤(SF2)を、エマルションの水性相中に第2の界面活性剤の固体粒子の均質な懸濁液が得られるまで撹拌しながら、このようにして得たエマルションの水性相に添加する工程と
を含む、方法。
【請求項25】
請求項21に記載の組成物を製造する方法であって、
a)植物ステロールの混合物を含む親油性相を調製する工程であり、任意選択で前記植物ステロールの混合物を加熱する、工程と、
b)水性相を調製する工程であり、任意選択で前記水性相を加熱する、工程と、
c)同時に、第1の界面活性剤OIL SF1を工程a)の親油性相に添加する工程、及び
d)親油性相を水性相と混合し、エマルションが得られるまで撹拌する工程と、
e)前記エマルションを冷却する工程と、
f)第2の界面活性剤(SF2)を、エマルションの水性相中に第2の界面活性剤の固体粒子の均質な懸濁液が得られるまで撹拌しながら、このようにして得たエマルションの水性相に添加する工程と
を含み、
前記ホウ素及びモリブデン化合物が、エマルションが形成される前に水性相に添加され、且つ/又はエマルションが形成された後に直接エマルション中に添加される、
方法。
【請求項26】
栽培植物のための予防的処理の方法であって、非生物的及び/又は生物的ストレスの開始前に、植物に、請求項23に記載のスラリーを適用することにある、非生物的及び/又は生物的ストレスに関する乾物の損失を制限するための、方法。
【請求項27】
非生物的ストレスが、水ストレスに相当することを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記生物的ストレスが、真菌感染、細菌感染、ウイルス感染、害虫攻撃及び/又は雑草との競争からもたらされることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記スラリーが、葉面噴霧によって、0.1L/ha~15L/haの組成物の投与量、有利には1L/ha~5L/haの投与量において適用されることを特徴とする、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記栽培植物が、ダイズ、トウモロコシ、オオムギ、キビ、コムギ及びヒマワリを含む群の中から選択されることを特徴とする、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記栽培植物が、モハ、ススキ、キビ類、ソルガム、ピーナッツ、ナタネ、プロテインピー、フィールドピー、ソラマメ、ルピナス、亜麻、ムラサキウマゴヤシ、ブドウ、ビーツ、ジャガイモ、マメ、レタス、パセリ及びラディッシュを含む群の中から選択されることを特徴とする、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
請求項24に記載の方法によって得られうる、多相農業用組成物。
【請求項33】
請求項25に記載の方法によって得られうる、多相農業用組成物。
【国際調査報告】