(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】液晶光学システム
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20241008BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20241008BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20241008BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1343
G02F1/1334
G02F1/1337 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521037
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 FR2022051882
(87)【国際公開番号】W WO2023057721
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(71)【出願人】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ サイアンティフィク
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク モンディオ
【テーマコード(参考)】
2H088
2H092
2H189
2H290
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088GA02
2H088GA03
2H088GA13
2H088JA04
2H088JA05
2H088JA06
2H088KA26
2H088KA27
2H088MA20
2H092GA14
2H092HA04
2H092KB23
2H092PA02
2H092PA03
2H092PA11
2H092QA06
2H092QA07
2H092QA08
2H092QA15
2H092RA10
2H189AA03
2H189AA23
2H189AA29
2H189DA04
2H189EA03Y
2H189EA07X
2H189JA04
2H189JA05
2H189JA06
2H189JA14
2H189JA15
2H189LA05
2H189MA15
2H189NA07
2H290AA73
2H290BA31
2H290BB02
2H290BF14
2H290BF51
2H290CB32
(57)【要約】
本発明は、液晶及び二色性色素を用いる電気制御可能な可変偏光子(100)から構成される、光学システム(1000)を提案する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶光学システム(1000、1000’、1001、1002、1003)であって、可変偏光子(100、100’、101、102)と称される、可変偏光性電気切り替え可能な装置を有し、前記可変偏光子が:
- 第1及び第2の透明電極(21,22)であって、電界E2を、前記第1及び第2の電極との間に有し、前記第1及び第2の電極は、同一平面上にあり、異なる電位の、特には方向r0において細長い、第1及び第2の電気伝導性ストリップ(21,22)を交互に形成している、第1及び第2の透明電極(21,22)、
- 電気活性層(3)であって、ネマティックである液晶及び二色性色素を含む材料でできている、電気活性層(3)、
を含む、液晶光学システム(1000、1000’、1001、1002、1003)。
【請求項2】
前記液晶が、前記可変偏光子のオフ状態においてねじれネマティックである、請求項1に記載の液晶光学システム(1000、1000’、1001、1002、1003)。
【請求項3】
前記可変偏光子が、静的偏光フィルムを有さない、請求項1又は請求項2に記載の液晶光学システム(1000、1000’、1001、1002、1003)。
【請求項4】
前記電界E2が、交流電界である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶光学システム(1000、1000’、1001、1002、1003)
【請求項5】
前記可変偏光子が、第1及び第2の機能状態を有し:
- オフ状態である前記第1の機能状態において、非偏光入射光から、前記可変偏光子は、第1の軸に沿った電界P1の第1の成分、及び前記第1の軸に垂直な第2の軸に沿った電界P2の第2の成分を有する、出力光を、以下によって定義される第1の偏光比で送ることができ:
【数1】
rp1は、少なくとも70%、又はさらには少なくとも90%であり、t1は、前記第1の軸に沿った380~800nmの波長における全透過率であり、T2は、前記第2の軸に沿った380~800nmの波長における全透過率であり、
- オン状態である前記第2の機能状態において:
前記非偏光入射光から、前記可変偏光子は、出力光を、以下によって定義される第2の偏光比で送ることができ:
【数2】
rp2は、少なくとも30%、さらには少なくとも50%であり、
T’1は、前記第1の軸に沿った380~800nmの波長における全透過率であり、T’2は、前記第1及び第2の電極との間のゼロではない電圧に対する、前記第2の軸に沿った380~800nmの波長における全透過率である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶光学システム(1000、1000’、1001、1002、1003)。
【請求項6】
前記第1及び第2の電気伝導性ストリップが、方向r0において細長く、
前記可変偏光子は:
- 前記電気活性層の主面上かつ前記第1及び第2の電極上にあり、特にはP1がr1に垂直でありかつP2がr1に垂直である、方向r1の一方向性平面アンカー層(4’)、
- 及び前記電気活性層(3)の別の主面上にある、方向r2、好ましくはr1とは分離した方向r2の別の一方向性平面アンカー層、
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶光学システム。
【請求項7】
r1が、r2と90°±15°、さらに好ましくは90°±5°の角度を形成し:
- r0が、r1と最大で15°、さらには最大で5°の角度を形成し、前記液晶が、正の誘電異方性を有し、
- 又はr0が、r1と90°±15°、さらには最大で90°±5°の角度を形成し、前記液晶が、負の誘電異方性を有する、
請求項6に記載の液晶光学システム。
【請求項8】
上記可変偏光子に対向する静的偏光子を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の液晶光学システム。
【請求項9】
前記可変偏光子、及び静的偏光子、若しくは電気制御される偏光感受性装置が、透明結合層によって、特には光学接着剤、又は熱可塑性層、特には積層中間層によって、分離され若しくは連結されており、又は前記可変偏光子が、前記第1及び第2の電極を担持する要素を有し、これは、前記静的偏光子を形成する、請求項1~8のいずれか一項に記載の液晶光学システム(2000、3000、4000)。
【請求項10】
前記可変偏光子と対向する、電気制御可能な偏光感受性装置を有し、特に、前記電気制御可能な偏光感受性装置は、好ましくは焦点円錐ドメインを含む、ネマティック液晶を用いる可変散乱性電気制御可能な装置である、請求項1~9のいずれか一項に記載の液晶光学システム。
【請求項11】
ドメインが、焦点円錐ドメインであり、特に2つの欠陥線を有し、これは、特に一方が楕円であり、他方が双曲線であり、好ましくは、前記焦点円錐ドメインが、方向bに平行な線状ネットワークを、特に液晶を表面上でアンカリングするために、形成する、請求項10に記載の液晶光学システム。
【請求項12】
液晶を用いる前記可変散乱性電気制御可能な装置が、電気活性層を有し、前記電気活性層が、前記液晶を有し、かつ前記可変偏光子のオフ状態における出力光の偏光P1と0°±15°又は90°±15の角度を形成する前記方向bを有する、請求項11に記載の液晶光学システム。
【請求項13】
積層グレージングユニット(3000、4000)であって:
- 透明である、第1の追加のガラスシート(8)、
- 熱可塑性、特にはEVA又はPVBの、積層中間層、
- 第2の追加のガラスシート(8’)、又は透明なプラスチックシート、
を含み、前記第1及び第2の追加のガラスシートの、F2及びF3と称される、主内側面が、互いに対向しており、請求項1~12のいずれか一項に記載の光学システムが、好ましくは前記面F2及びF3の間にあり、好ましくは前記積層中間層内にある、積層グレージングユニット(3000、4000)。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の光学システムを備える、乗り物グレージング(3000、4000)。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の光学システムを備える、建物用グレージング(2000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶による電気制御可能な装置を有する、液晶光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶システムは、第1及び第2の電気活性液晶セルが互いに対向する形態で存在し、光を透過させること、又はそれを遮断することのいずれも可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的の一つは、交互に電気光学特性を変化させ、又は新しい機能性も提供する、液晶システムを開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的のために、本発明は、可変偏光子と呼ばれる、(透過において)可変偏光を有する電気切り替え可能な装置を含む、液晶光学システムを提案し、可変偏光子は、以下を含む:
- 第1の透明電極。これは、第1及び第2の電極の間に電界E2を有し、特には共通の担体要素上の電気伝導性層の形態(同一平面上の構成)であり、第1及び第2の電極(好ましくは層状)は、同一平面上(好ましくは自己支持型ではなく共通の担体要素上)にあり、異なる電位を有する第1及び第2の電気伝導性ストリップ(例えば、金属)、特には方向r0に細長いストリップ(直線状、好ましくは直線に囲まれている形状)を、交互に形成している。
- 電気活性層。これは、サブミリメートルの厚さ、さらには最大で100μm、かつ少なくとも50nm、特には50nm~50μm、さらには100nm~20μm、より好ましくは少なくとも1μm又は5μmの厚さであり、電気活性層は、サーモトロピック材料でできており、(好ましくは)これは、以下を含む(又は以下からなる):
- 液晶(好ましくはサーモトロピック)。これは、ネマティックであり、湾曲しており又は湾曲しておらず、好ましくは(アンカー層の作用によって)ねじれており、オフ状態において無電力であり、かつ/又はコレステリックであり-(好ましくは材料において重量について主成分(好ましくは少なくとも50重量パーセント、70重量パーセント、80重量パーセント、85重量パーセントの上記液晶)であり、特に、液晶は、メソゲンを、例えばポリマー鎖無しで、含み、又はポリマーの主鎖若しくは側鎖内に組み込まれているメソゲン基(「LCP」と称される類)を含み、特に、液晶は、サイズが最大で50nm、20nm、又は10nm(かつEp2未満)であり、特に複数の液晶の混合物(純粋の、非LCPの場合)であり、したがって複数のメソゲンである。
- 二色性色素(特には溶解状態にあるもの、特には液晶中にあるもの)。例えば最大で30重量パーセント、20重量パーセント、10重量パーセント、5重量パーセントの二色性色素(1つ又は複数の二色性色素)であり、二色性色素は、特には最大で50nm、20nm、又は10nm(かつEp2未満)のサイズであり;特に液晶及び二色性色素は、同等のサイズ、例えばそれぞれ20nm未満又は10nm未満である。
- 随意にポリマー(好ましくは、非架橋)又はポリマーの前駆体。好ましくは最大で20重量パーセント、15重量パーセント、10重量パーセント、5重量パーセント又は1重量パーセントのポリマー(又はポリマー及びポリマーの前駆体)が含まれ、例えば電気活性層は、そのタイプ(PDLC又はPSLC)ではない。
- 好ましくは、スペーサー。これは、特にEp2以下の高さ(さらには比較的大きな寸法)のものであり、周辺部にあり(誘電体であり、透明であり、若しくは随意に、例えばmylarなどでできている、フレームによってマスクされていない)、かつ/又は電気活性層(誘電体であり、透明であり、特にはプラスチック、ガラス、シリカであり、好ましくはサブセンチメートルであり、特にはビーズである)中に分散されている。
- 随意に他の添加剤(二色性色素以外)。例えば色づけ粒子、例えば金属ナノ粒子(金、銀、両者の合金など)若しくは金属酸化物ナノ粒子(酸化タングステン、酸化スズなど)など、又はさらには任意の他の非二色性色素、又は任意の他の光吸収分子、好ましくはEp2以下の高さのもの(さらにはEp2以下の比較的大きな寸法のもの)。
【0005】
好ましくは、電気切り替え可能な電気活性層は、誘電体シールによって、特にはポリマー性のものによって周辺部において(材料と接触している(又は周辺スペーサーによって分離されている)、主面のエッジにおいて)シールされる。
【0006】
このように設計された、可変偏光子は、オフ状態である第1の機能状態では、偏光P1(支配的)を有する偏光を送ることができ、オン状態である第2の機能状態では、P1とは異なる第2の偏光P2(好ましくは支配的)を有する偏光を送ることができる。
【0007】
本発明は、様々な分野、特には建物(窓、仕切り、グレージング床)、特には都市空間において、又は道路、海、鉄道、若しくは空中の乗り物(ウィンドシールド、サイドルーフ、サンルーフなど)において適用される。
【0008】
建物又は乗り物のグレージング内に組み込まれる場合、他の装置は、外向き又は内向きのいずれかで方向づけられてよい。
【0009】
可変偏光子自体は、1つ又は複数の偏光子、例えば、交差偏光子及びアナライザーを必要することなく、作動する。特に、可変偏光子は、静的偏光フィルムを有しなくてよい。
【0010】
可変偏光子の切り替え時間は、数秒未満でありうる。光学システムの切り替え状態は、可逆的であり、(ある程度)即時である。
【0011】
可変偏光子は、液晶の複数の層を必要とせず、液晶の1つの層のみ(シングルセルシステム)を必要として、可変偏光子を形成する。
【0012】
光学システムの光学特性は、以下によって調整可能でありうる:
- 電界E2(好ましくは交流電界している)の切り替えオフ又は適用によって、かつ電圧レベルU2の選択によって;
- P1と呼ばれる(支配的な)出力偏光の、後に詳述する、別の偏光感受性装置の特性方向bに対する方向の選択、特にはP1がbに対して実質的に平行又は実質的に垂直である方向の選択によって。
【0013】
可変偏光子に関して、二色性色素は、液晶に従い、好ましくはオフ状態でねじれている液晶に従い、可変偏光機能を提供する上で重要な役割を果たす。可変偏光を有する可変偏光子は、好ましくは透明であり、オフ状態及びオン状態の両方において、最大で10%又は最大で1%又は最大で0.5%のヘイズを有する。
【0014】
U2は、120V未満、又はさらには80V未満でありうる。
【0015】
設定値の関数として、U2を適用すること(さらにはU2のレベルを選択すること)がありうる。このようにして、可変偏光子を制御するための手段が、提供されうる。
【0016】
光学システムは、最大で1cm、又は最大で5mm、又は最大で1mmの厚さを有しうる。
【0017】
可変偏光子は、最大で5mm、又は最大で1mm、又は最大で0.5mmの厚さを有しうる。
【0018】
第1及び第2の電極(好ましくは層状)は、同一平面上にあり、平面の切り替えをもたらす。
【0019】
光学特性に影響を与えるパラメータは、特に以下の通りである:
- 液晶を、特にはメソゲンの混合物(特には、動作温度範囲及びオン状態での電圧レベルの低下について)、及びそれらの誘電異方性から、選択すること;
- ありうる限り吸収の少ない電極(基材がある場合はそれらの基材)の透明レベル、及びストリップ状の電極の場合、ストリップの密度(これによって、ストリップ間の間隔を小さくすることによって電気電圧を下げ、液晶を切り替えせずにゾーンを小さくして、オフ/オンコントラストを高める);
- 二色性色素(二色比など)を、特に可視領域において最も高いかつ一定の吸収スペクトルを有するように、選択すること;
- 電気活性層の厚さ。
【0020】
本発明による光学システムの光学特性評価は、いずれの側でも行われる。
【0021】
しかしながら、(r0に沿って)ストリップ状の電極を有する側を出る光は、P1(r0に垂直であり、好ましくは、一方向性アンカー層が、ストリップ状の電極上のr0に平行なr1に沿う)に比較的さらに従って偏光され、ストリップ状の電極の無い側を出るときはP2に比較的さらに従って偏光される。これは、二色性色素を有するプラスチック(延伸されている)フィルムでありうる。
【0022】
第1(第2それぞれ)の電極は、電気伝導性層(単層又は多層、特には1つ又は複数の堆積物)、特には無機のもの、特には最大で200nmの厚さの電気伝導性層(担体要素上の、好ましくは担体要素とアンカー層との間の電気伝導性層)を有してよく、(又はさらにはこれらからなってよく)、特にはエッジにおいて電流供給手段(ストリップ-バスバー-特には金属、銅、銀などでできているもの)を有する。
【0023】
好ましくは、電気伝導性ストリップの密度は、ありうる限り最大である(ストリップの幅はありうる限り小さく、ストリップ間の間隔はありうる限り小さい)。
【0024】
このようにして、電位差は、同じ平面内に位置し、かつ電気的に2つずつ絶縁される、2つの「端子」間に適用される。
【0025】
E2は、ほとんどが平面にある(第1及び第2の電極に平行)。
【0026】
電気伝導性を維持しながら、ストリップは、ONモードでの「偏光子」力を向上させるために、できるだけ細いことが求められる。また、ストリップ間の幅(換言すれば、電気伝導性のない絶縁ストリップ)をありうる限り小さくし、それによって、適用される電位差を小さくすることが求められる。
【0027】
例えば、電気伝導性ストリップ及び/又はストリップ間の幅(絶縁ストリップ)は、最大で50μm又は最大で30μm又は最大で10μmである。
【0028】
例えば、絶縁ストリップは、蛇行配置を形成し、電気伝導性層の第1のゾーンは、コイルの第1の絶縁ストリップの第1の部分、及びコイルの最後の絶縁ストリップの最後の部分によって、層の第2のゾーンと絶縁される。
【0029】
このような絶縁ストリップの配置を、電気伝導性層を除去することによって、特にはレーザービームによって、提供することがありうる。ストリップの厚さの限界は、レーザービームのサイズによって与えられる。ストリップ間の距離の限界は、レーザービームの動きによって決まる。
【0030】
有利には、電界E2は、交流電界であり、好ましくは第1及び第2の電極の間で適用される電圧U2は、最大で120Vである。
【0031】
E2は、好ましくは50Hz以上の周波数、例えば100Hz、1kHz又は2kHzの周波数を有する、交流電界である。電圧は、ピーク電圧(Vpeak)を意味することを意図される。
【0032】
U2の選択は、制御されてよく、特に、装置と通信しているセンサーによって収集されるデータ(温度、明るさなど)に基づいて(電力供給源を制御して)調整されてよい。
【0033】
好ましくは、可変偏光子は、オフ状態である機能状態において、偏光P1(支配的)を有する光を出力として(特に第1及び第2の電極側へ)送ることができ、オン状態(以下で詳述する第2の機能状態)において、P1に対して垂直である第2の偏光P2(好ましくは支配的)を有する光を出力として送ることができる。
【0034】
より広義には、可変偏光子は、以下のような第1及び第2の機能状態を有しうる:
- オフ状態である(電圧が無い)第1の機能状態において、(特に第1及び第2の電極とは反対側への)入射光から、可変偏光子は、第1の軸に沿った(偏光)電界P1の第1の成分、及び第1の軸に垂直な第2の軸に沿った(偏光)電界P2の第2の成分を有する(偏光)出力光を、(特に第1及び第2の電極側へ)以下によって定義される第1の偏光比で送ることができる:
【0035】
【0036】
rp1は、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%、さらには少なくとも95%であり、T1は、第1の軸に沿った380~800nmの波長における全透過率、又はさらには少なくとも400~600nm、さらには380~640nmで平均化される全透過率であり、T2は、(第1及び第2の電極間のゼロである第1の電圧に対する)第2の軸に沿った380~800nmの波長における全透過率、又はさらには少なくとも400~600nm、さらには380~640nmで平均化される全透過率である。
【0037】
- オン状態である(電力が供給されている)第2の機能状態において:
(特に第1及び第2の電極とは反対側への)非偏光入射光から、可変偏光子は、出力光を、(特に第1及び第2の電極側へ)以下によって定義される第2の偏光比で送ることができる:
【0038】
【0039】
rp2は、少なくとも30%、さらには少なくとも50%又は60%である。
【0040】
T’1は、第1の軸に沿った380~800nmの波長における全透過率、又はさらには少なくとも400~600nm、さらには380~640nmで平均化される全透過率であり、T’2は、(第1及び第2の電極間のゼロではない第2の電圧に対する)第2の軸に沿った380~800nmの波長における全透過率、又はさらには少なくとも400~600nm、さらには380~640nmで平均化される全透過率である。
【0041】
そして、当然のことながら、可変偏光子は、オン状態において多数の機能状態を有する。特に、液晶のアンカリング力が液晶の一部について克服される、閾値電圧があり、電圧が増加すればするほど、液晶は、さらに再配向し、好ましくは最大で80Vである飽和電圧まで、再配向する。
【0042】
そして、適用される電圧U2に従って変化する偏光比を有することがありうる。
【0043】
電気活性層の誘電異方性は、ゼロではなく、負又は正でありうる。
【0044】
1つの有利な構成において、可変偏光子は、以下を含む:
- 電気活性層の主面上の(に接触し)、かつ第1及び第2の電極上の(に接触し)、方向r1である、一方向性平面アンカー層であって、特にP1は、r1に垂直であり、P2は、r1に平行であるもの、
- 及び電気活性層の主面上の(に接触し)、方向r2、好ましくはr1から分離している方向r2である、別の一方向性平面アンカー層。
【0045】
特に、r1は、r2と90°±15°、さらに好ましくは90°±5°の角度を形成し(そして、ネマティック液晶は、オフ状態において強いねじれを有し):
- r0は、r1と最大で15°、さらには最大で5°の角度を形成し、液晶は、正の誘電異方性を有し、
- 又はr0は、r1と90°±15°、さらには最大で90°±5°の角度を形成し、第2の液晶は、負の誘電異方性を有する。
【0046】
光学システムは、上記可変偏光子に対向している静的偏光子を有してよく、この静的偏光子は、偏光軸、特にはP1を吸収するように配置される偏光軸(P1に垂直な偏光軸)、又はP2を吸収するように配置される偏光軸(P2に垂直な偏光軸)によって、規定される。
【0047】
静的偏光子として、偏光軸を形成する方向(光吸収方向と直交する方向)に、延伸されている二色性色素を有する、プラスチックフィルムでできているものが挙げられうる。特に、静的偏光子は、所定の偏光を遮断するように設計されうる。
【0048】
いくつかのケースがありうる:
- 可変偏光子の出力における光が、P1に沿っており(オフ状態)、偏光子はP1を実質的にブロックし、それによって、オフ状態の光学システムは、掩蔽/暗転する。
- 可変偏光子の出力における光が、全体的にP2に沿っており(オン状態)、偏光子は実質的にP1をブロックし、それによって、オン状態の光学システムは、P2に沿ったままであり、掩蔽しない。
- 可変偏光子の出力における光が、P1に沿っており(オフ状態)、偏光子は実質的にP2をブロックし、それによって、オフ状態の光学システムは、P1に沿ったままであり、掩蔽しない。
- 可変偏光子の出力における光が、全体的にP2に沿っており(オン状態)、偏光子は実質的にP2をブロックし、それによって、オン状態の光学システムは、掩蔽/暗転する。
【0049】
静的偏光子は、好ましくは可変偏光子と同様の形状であり、要件に応じて可変偏光子の全部又は一部にわたって延在しうる。
【0050】
光学システムは、可変偏光子と静的偏光子との間で光を脱偏光させることができる光学素子を有しないものでありうる。
【0051】
光学システムは任意のサイズのものでありうる;なぜなら、偏光子は少なくとも1mの長さの表面上で、簡単に作製されうるからである。
【0052】
偏光子の間に、ディフューザーを配置することを避けるのが望ましい場合がある。
【0053】
もちろん、可変偏光子と静的偏光子との間で掩蔽又は反射する、任意の不透明な要素を避けうる。
【0054】
装置、特には電気切り替え可能な装置、特には特性方向b(焦点円錐ドメインを有するPSLC液晶装置のbに沿っている一方向性アンカー層)の装置が追加された場合、(装置のオフ状態に対して)以下のような移行を選択することがありうる:
(a)P1がbに垂直な場合、マスクされていないオフ状態からマスクされるオン状態へ(U2の機能としてマスクの効果が増加する)。
(b)又は、P1がbに平行な場合、マスクされるオフ状態からマスクされていないオン状態へ(U2の機能としてマスクの効果が減少する)。
【0055】
装置、特には偏光感受性であり、かつ電気切り替え可能な装置は、好ましくは可変偏光子と同様の形状であり、要件に応じて可変偏光子の全部又は一部にわたって延在しうる。
【0056】
光学システムは、可変偏光子とこの偏光感受性装置との間に、光を脱偏光させることができる光学素子を有しないものでありうる。
【0057】
光学システムは、任意のサイズのものでありうる;なぜなら、これらの装置は、少なくとも1mの長さの表面上で、簡単に作製されうるからである。
【0058】
可変偏光子とこの偏光感受性装置との間には、ディフューザーを配置することを避けるのが望ましい場合がある。
【0059】
もちろん、可変偏光子とこの偏光感受性装置との間で掩蔽又は反射する、不透明な要素を避けることもありうる。
【0060】
一実施形態では、可変偏光子及び静的偏光子(好ましくは、二色性色素を有するプラスチックフィルム)、並びに/若しくは電気制御可能な偏光感受性装置は、透明結合層によって、特には光学接着剤、若しくは熱可塑性層、特には積層中間層によって、分離されかつ連結されており、又は可変偏光子は、上記可変偏光子を形成する、第1及び第2の電極を担持する要素を有する。
【0061】
透明結合層は、無色であってよく、又は着色されていてよい。
【0062】
透明結合層は、最大で0.5mm、又はさらには0.1mmの厚さを有しうる。
【0063】
光学システムは、例えば(モノリシック又は積層)グレージングなどの、曲率に適応するように柔軟である、平坦又は湾曲したものでありうる。そして、モノリシックグレージング上で、又は例えば上記積層グレージング内で、湾曲される。
【0064】
本発明による光学システムは、可変偏光子と対向している、(電気制御可能な)偏光感受性装置、特には上記装置への入射光の偏光状態に依存する光学応答を有するもの、特には、好ましくは焦点円錐ドメインを含む、ネマティック液晶を用いる可変散乱性電気制御可能な装置、特には参照により組み込まれる国際公開第2020/065038号に記載されているもの、を有しうる。
【0065】
欠陥線ドメインは、ヘイズ(散乱力)が顕著であるので、好ましい。スメクチック(メソ)相の焦点円錐ドメインが、参照により組み込まれる国際公開第2020/065038号に記載されているように、好ましい。
【0066】
欠陥ドメインは、一般的には、各々2つの欠陥線を有し、焦点円錐ドメインであり、対をなし、特に、一方は異なる偏心度を有する楕円形、及び他方は双曲線であり、したがって、「楕円-双曲線焦点円錐ドメイン(elliptic-hyperbolic focal conic domain)」又はEHFCDという名称がそれらに与えられる。
【0067】
好ましくは、ネマティックであり、ドメインは、特にはスメクチックメソ相(メソ相P’)の、焦点円錐ドメインであり、特には2つの欠陥線を有し、これは、好ましくは一方が楕円であり、他方が双曲線である(EHFCD)。
【0068】
焦点円錐ドメイン、特にEHFCDは、好ましくは方向bに平行な線状ネットワークを形成する。
【0069】
この偏光感受性装置の液晶は、好ましくは、FA1表面上又はFA2表面上(平面配向面と称される)の所与の方向bにおいて、全体的にある程度組織化されている。それらのダイレクタn-又は長軸-は、全体的にこの第1の方向bに沿っており、bは特に、この平面配向面と接触している一方向性平面アンカー層の(研磨)軸である(液晶とこの固体層との間の相互作用を発生させる)。
【0070】
液晶による可変散乱を有する上記電気制御可能な装置は、液晶(ネマティックであり、好ましくは焦点円錐ドメインを含む)を有する電気活性層を有し、方向bは、可変偏光子(第1及び第2の電極)のオフ状態における出力光の偏光P1と0°±15°若しくは0°±5°の角度、又はP1に垂直なr1と0°±15°若しくは0°±5°の角度、又は偏光P1と90°±15°若しくは90°±5°の角度(又はr1と90°±15°の角度)を形成する。
【0071】
このように、本発明によれば、偏光感受性可変散乱を有する上記電気制御可能な装置と、上記可変偏光子との組み合わせは、広い範囲の利用可能な光学特性、特には広い範囲のヘイズ及び光透過率を有することを可能にする。
【0072】
建物又は乗り物のグレージング内に組み込まれる場合、この偏光感受性装置は、外向き又は内向きのいずれであってよい。
【0073】
上記偏光感受性装置は、好ましくは、可変偏光子と同様の形状であり、要件に応じて、可変偏光子の全部又は一部にわたって延在しうる。
【0074】
光学システムは、偏光感受性装置と可変偏光子との間で光を脱偏光させることができる光学素子を有しないものでありうる。
【0075】
偏光感受性装置と可変偏光子との間には、ディフューザーを配置することを避けるのが望ましい場合がある。
【0076】
もちろん、偏光感受性装置と可変偏光子との間で掩蔽又は反射する、任意の不透明な要素を避けることもありうる。
【0077】
偏光感受性装置に可変偏光子を加えた光学システムは、最大で1cm又は5mm又は1mmの厚さを有しうる。
【0078】
偏光感受性装置は、最大で5mm又は1mm又は0.5mmの厚さを有しうる。
【0079】
偏光感受性装置の光学特性に影響を及ぼすパラメータは、特に以下の通りである:
- 液晶を、特にはメソゲンの混合物(特には、動作温度範囲及びオン状態での「アンカリング解除」のための電圧レベルU1について)、及びそれらの誘電異方性から、選択すること、
- 電気活性層の厚さ、
- アンカー層の選択。
【0080】
特に、電界が適用されていない場合(又は所定の電圧の場合)のヘイズ値は、二次元欠陥のサイズ又はタイプ、それらの密度、電気活性材料の厚さ、液晶の選択、ポリマーネットワーク(架橋度、重合条件)、モノマー、並びにポリマー及び液晶の屈折率における差に基づいて、変化しうる。
【0081】
特に、電界を適用されていない場合(又は所定の電圧の場合)のヘイズ値は、液晶の配向、特には第1の液晶の長(分子)軸と、第1の電気活性層の表面に平行な平面に沿って偏光される光の偏光軸との間の角度に基づいて変化するであろう。
【0082】
ヘイズHは、好ましくは、拡散透過率DT及びLTに関連する積算光透過率間の比として定義される。
【0083】
有利には、偏光感受性装置の電界E1は、交流電界であり、好ましくは適用される電圧U1は、最大で120Vである。好ましくは、電極は、分離した平面内にあり、液晶は、正の誘電異方性(電界E1の周波数に依存しない)を有する。
【0084】
E2及び/又はE1は、好ましくは50Hz以上の周波数、例えば100Hz、1kHz又は2kHzの周波数で、交流電界である。電圧は、ピーク電圧(Vpeak)を意味することを意図される。
【0085】
可変散乱を有する電気制御可能な装置は、入射光の偏光に依存する光学応答を有する。
光の偏光に対するこの差別化された応答は、以下によって誘起される:
- 二次元トポロジカル欠陥のフォームファクター、内部構造であって、特には欠陥線、特にはスメクチックメソ相の、非トーリック焦点円錐ドメイン、(非「TFCD」)、の欠陥線の、フォームファクター、内部構造、及び/若しくは異なるドメイン(特には「TFCD」を含むスメクチックメソ相の焦点円錐ドメイン)の配置。特にはそれらの形状、それらの配向、それらの対称性の程度は、例えばランダムに、不規則に分布し、分布は、アンカリング条件(必要に応じて調整可能な二次元アンカー層、例えば多方向アンカーなど)によって規定される。
【0086】
偏光感受性スメクチック焦点円錐ドメイン(換言すれば、焦点円錐ドメイン)の様々な構造の例は、Ling Maらによる刊行物「Smectic Layer Origami Preprogrammed Photoalignement」、Advances Materials 2017 1606671 ページ1~7に示されている。
【0087】
好ましい実施形態では、可変偏光子は、オフ状態である第1の機能状態において、偏光P1を有する光を送ることができ、偏光感受性装置は、表面上に第1の方向bの方向性アンカー層を有し、可変偏光子は、P1が、0°±20°、又はより好ましくは0°±5°のbとの角度を形成するように、配置される(特に、r2は、0°±20°、又はより好ましくは0°±5°のbとの角度を形成する)。
【0088】
一実施形態において、可変偏光子は、オフ状態である第1の機能状態において、偏光P1を有する光を送ることができ、偏光感受性装置は、表面上に、第1の方向bの方向性アンカー層を有し、可変偏光子は、P1が90°±20°又はより好ましくは±5°のbとの角度を形成するように(特に、r1が、90°±20°又は好ましくは±5°のbとの角度を形成するように)、配置される。
【0089】
一方向性平面アンカーとして、フルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン、PTFE、又はテフロン(登録商標)など(ポリマー鎖が、堆積の際のテフロンバーの変位方向に沿って整列しているもの)を用いうる。
【0090】
一方向性平面アンカーは、例えばテクスチャー化、平面アンカー層の研磨(ラビングとも呼ばれる)によって、例えばナノグルーブ又はマイクログルーブを含むことによって、液晶のダイレクタnの天頂配向及び方位角配向を固定する。
【0091】
研磨には、ベルベット生地でできているものを用いうる。
【0092】
垂直なアンカリングの場合、最も一般的に用いられる層は、オクチルトリクロロシラン(OTS)、及びN,N-ジメチル-N-オクタデシル-3-アミノプロピルトリメトキシシランクロリド(DMOAP)、又はポリイミドなどに基づく。
【0093】
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)又はさらにはアルカンチオールの混合物に基づく層も、垂直なアンカリングを生成しうる。
【0094】
1つ以上のアンカー層は、例えば液体経路によって堆積される。
【0095】
1つのアンカー層は、例えば、以下の通りである:
- 好ましくは誘電体(特にはアモルファス、ポリマー性のもの、及び/又は無機のもの、ガラス)であり、これは、表面の機能化を有する;特には、ポリイミド、ポリビニルアルコール(PVA)に基づく層であり、例えば平面アンカリング用のものである。
【0096】
二色性色素は、異方性有機分子であってよく、これは、光学異方性を有し、細長く、特には棒状である。これは、材料中に溶解しており、特には液晶中に溶解している。(各)二色性色素の%は、溶解度の限界を超えないように調整される。特に、1つ(又は複数)の二色性色素であって、液晶と化学的に相溶性のあるものが選択される。
【0097】
特に、(各)(細長い、棒状の)二色性色素は、長い分子軸を有してよく、吸収は、長軸又は短軸に沿って変化する。
【0098】
二色性色素は、電気活性層の液晶の配向によって制御され、作用中の電界(E2)の影響下での液晶の移動(回転)は、電界に整列する傾向があり、二色性色素の移動(回転)をもたらし、長軸も、電界に整列する傾向がある。
【0099】
このようにして、二色性色素の吸収は、入射光の偏光に対するその配向に基づいて変化する。逆に、吸収異方性を示さない、非二色性色素は、電場に対して鈍感であるか、又はあまり敏感ではなく、吸収も変化させないであろう。このような色素を、所望の色合いを調整するために加えうる。
【0100】
二色性色素の複数の類があり、それらは、特に、Mark T Simsによる出版物「dies as guests in ordered systems: current understanding and future directions」Liquid Crystals,2016,Vol43,NOS.13-15,ページ2363~2374に記載されている。
【0101】
本発明による二色性色素は、AZO(-N=N)を有する、特には棒状の、アゾ色素でありうる。アゾ色素に化学変化を誘起することがありうるし、例えばエステル基が組み込まれる(上記刊行物のページ2366参照)。
【0102】
他の色素は、アントラキノンであり、これらは、一般的には縮合環であるか、又は置換基を付加することによって棒状になる。二色性色素(発色団)の例は、この上記刊行物の表1にある。
【0103】
本発明に対して適切である二色性色素の例は、さらに、1994年にSpringerによって出版された、L.M.Blinovらによる書籍「Electrooptic effect in Liquid Crystal Materials」、特に「Optical Anisotropy and Dichroism」と題する2.3章、及び表2.2を含む、66ページ~68ページに記載されている。
【0104】
例えば、青色色素の場合、極大吸収波長として630nm±10nm、吸収帯外の波長として430nm±50nm又は±10nmを選択することがありうる。例えば、三井化学によって販売されている、色素M412を挙げてよい。
【0105】
例えば、赤色色素の場合、極大吸収波長として500nm±10nm、吸収帯外の波長として650nm±50nm又は±10nmを選択することがありうる。例えば、三井化学によって販売されている、色素SI-426を挙げてよい。
【0106】
例えば、黄色色素の場合、極大吸収波長として400nm±10nm、吸収帯外の波長として600nm±50nm又は±10nmを選択することがありうる。例えば、三井化学によって販売されている、色素SI-486を挙げてよい。
【0107】
例えば、黒色色素の場合、三井化学から販売されている、色素SI-428を挙げてよい。可変偏光子は以下を含みうる:
- 第1の透明誘電体要素であって、ストリップでできている第1及び第2の電極(同一平面上構成)、並びにさらにはアンカー層、好ましくはr1に従って一方向性であるものを担持し、第1の要素が、上記誘電体支持体とは異なるか、又はこれに対応する、ガラスシート又は透明ポリマー性シートから選択されるもの。
- 第2の透明誘電体要素であって、好ましくは一方向性の、r2に従う、少なくとも1つのアンカー層を担持し、第2の要素が、(随意の外部引っかき防止層を有する)ガラスシート又は透明ポリマー性シートから選択されるもの。
【0108】
光学システムは、例えば(モノリシック又は積層)グレージングの、曲率に適応するように柔軟である、平坦又は湾曲したものでありうる。そして、それは、モノリシックグレージングユニット上で、又は例えば上記積層グレージング内で、湾曲される。
【0109】
本発明はまた、以下を含む、随意に湾曲した積層グレージングに関する:
- 特には厚さ0.7mm~4mmの、第1のガラスシート
- 熱可塑性、特にはEVA又はPVBの、積層中間層、
- 第2の追加のガラスシートであって、特には厚さ0.7mm~4mm、若しくはさらには0.7mm未満のもの、又は他にはプラスチックシート、例えばポリカーボネート又はPMMAなどのもの(特にはPU積層中間層を有するもの)。
【0110】
第1及び第2の追加のガラスシートの、F2及びF3と称される、主内側面は、互いに対向しており、前述の光学システムは、好ましくは面F2とF3との間にあり、好ましくは積層中間層内にある;好ましくは、第1及び第2の電極を担持している第1の要素は、ポリマー性であり、さらには(r2のアンカー層側にある)第2の要素もポリマー性である。
【0111】
好ましくは、熱可塑性積層中間層は、光学システム(可変偏光子など)のエッジを取り囲む。
【0112】
光学システムのエッジ面は、積層中間層(又は第1のシート)の最も外側のエッジ面に対して後退しうる。
【0113】
好ましくは、随意の層担持シート(基材、支持体、第1及び第2の要素)は、好ましくは、最大で0.7mm、さらには最大で0.3又は0.2mmの厚さである。ガラスシートについて、薄型ガラス(1mm未満)、さらには超薄型ガラス(UTG)を選択することもありうる。
【0114】
追加のガラスシートの一方は、着色されていてよく、他方は、クリア又は超クリアであってよい。熱可塑性積層中間層は、無色(クリア、超クリア)であってよく、又は着色されていてよい。
【0115】
上記担体要素について、又は他には積層グレージング及び/若しくは複層グレージングの、追加のガラスシート若しくはグレージングについて、クリアガラス又は超クリアガラスを選択することがありうる。クリアガラスは、典型的には約0.05~0.2重量パーセントの量の酸化鉄を含有する一方で、超クリアガラスは、一般的には約0.005~0.03%の酸化鉄を含有する。
【0116】
積層グレージング及び/又は複層グレージングの、追加のガラスシート又はグレージングは、それでもなお、例えば青、緑、灰色又は青銅色などで、着色されうる。
【0117】
積層グレージング及び/又は複層グレージングの、着色された追加のガラスシート又は着色されたグレージングは、好ましくは10%以下の光透過率TLを有しうる。
【0118】
ガラスは、好ましくはソーダ石灰シリカタイプであるが、それは、ホウケイ酸ガラス又はアルミノホウケイ酸ガラスタイプでもありうる。ガラスの厚さは、一般的には0.5mm~19mm、好ましくは0.7mm~9mm、特には2mm~8mm、又はさらには4mm~6mmの範囲内である。
【0119】
熱可塑性積層中間層は、硬質又は可撓性要素への接続を提供する。このポリマー性積層中間層は、特に、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ウレタン、ポリウレタン(PU)、アイオノマー、ポリオレフィン系接着剤、熱可塑性シリコーン、又は多成分若しくは単成分の樹脂、熱架橋性(エポキシ、PU)樹脂、若しくは紫外線架橋性(エポキシ、アクリル樹脂)樹脂に基づく層でありうる。
【0120】
PVB中間層は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、特にはウィンドスクリーンの場合、楔形であってよく、すなわち、積層グレージングの上部から下部に向かって楔形に減少する、断面を有してよく、それによって、二重像を避ける。PVB中間層は、随意に防音かつ/又は着色される。防音PVB中間層は、特にはポリビニルブチラール(PVB)及び可塑剤に基づく、振動音響減衰特性を有する粘弾性プラスチックでできている少なくとも1つの「中央」層を含み、かつさらに標準的なPVBでできている2つの外部層を含み、中央層は2つの外部層の間にある。
【0121】
随意に、一方又は両方の外部層は、積層グレージングの上部から下部に向かってくさび状に減少する断面を有し、振動音響減衰特性を有する粘弾性プラスチックでできている層は、積層グレージングの上部から下部に向かって変化しない断面を有する。音響シートの一例として、欧州特許第0 844 075号明細書を挙げうる。
【0122】
積層グレージングの第1及び/又は第2のグレージングは、(美的表現又は所望の光学効果に応じて)クリアガラス(厚さ4mmで光線透過率TLが90%以上であるもの)、例えば標準的なソーダ石灰組成のガラス、例えばSaint-Gobain GlassのPlanilux(商標)などであってよく、又は超クリアガラス(厚さ4mmで光線透過率TLが91.5%以上であるもの)、例えば、0.05%未満のFeIII又はFe2O3を含むソーダ石灰シリカガラス、例えばSaint-Gobain GlassのガラスDiamant(登録商標)、若しくはPilkingtonのガラスOptiwhite(商標)、若しくはSchottのガラスB270(商標)など、又は国際公開第2004/025334号に記載されている別の組成のガラスなどであってよい。Saint-Gobain Glass社のPlaniclear(商標)ガラスも選択しうる。
【0123】
第1及び/又は第2のグレージングのガラスは、中立(色づけ無し)であってよく、又は(僅かに)着色されていてよく、特に灰色又は緑色であってよく、例えばSaint-Gobain GlassのTSAガラスなどであってよい。第1及び/又は第2のグレージングのガラスは、硬化タイプ若しくはアニーリングタイプの化学若しくは熱処理、若しくは強化(特に、より優れた機械的強度を得るために)を受けうるし、又は半強化されうる。
【0124】
光透過率TLは、照度D65を用いて、ISO9050:2003規格に従って測定されてよく、直接透過及びありうる拡散透過の両方を考慮した、全透過率(特には可視領域にわたって積分され、人間の目の感度曲線によって重み付けされるもの)であり、測定は、例えば、積分球を備えた分光光度計を用いて、実施され、所定の厚さにおける測定値は、その後、必要に応じて、4mmの基準厚さに、ISO9050:2003規格に従って変換される。
【0125】
本発明による光学システムを、グレージング、特にはモノリシック(平坦及び/又は湾曲している)のもの内に組み込んでよく、光学システムは、ストリップ、特には周辺ストリップを、グレージングの主面の一部にわたって形成する。
【0126】
上記で定義した本発明による光学システムを、乗り物又は建物において用いることがありうる。
【0127】
それを、特には次のように用いうる:
- 建物内の内部仕切り(2つの部屋の間又は1つの空間内)、道路、鉄道、船舶、又は航空機の乗り物内(2つのコンパートメントの間、タクシー、バス、列車内など)、特にはグレージングのシャワー又は浴槽の壁として、
- ガラスドア(玄関ドア又は通用ドア)、窓(一重、二重、三重ガラス)、天井、タイル(床又は天井)、トイレのドア、住宅又は街路備品のグレージング部分、
- 自動車(乗用車、トラック、バス、コーチなど)用のグレージング、したがって、道路、鉄道、船舶(ボート)の乗り物、ウィンドスクリーン、サイドグレージング、ルーフ用などのグレージング。
- 投影又は逆投影スクリーン、
- 店舗の窓、特にはブース用の窓。
【0128】
もちろん、それは、グレージング(トランサムタイプの仕切り及び窓など)の全部又は一部を形成しうる。
【0129】
したがって、建物のグレージングは、前述したような光学システム、特にはモノリシック、二重、又は三重のグレージング(積層グレージングの有無は問わない)の仕切り、窓などを備えうる。
【0130】
したがって、乗り物グレージングユニット、特には道路用乗り物用のグレージングユニットは、前述の光学システム、特には(光学システムが1つ又は複数の周辺バンドを形成している)ウィンドシールド、サンルーフ、(モノリシックな又は積層された)サイドグレージング、特にはクォーターガラスを備えうる。
【0131】
本発明による積層グレージング、特には自家用車(フロントガラス等)又はトラック用のものは、特に第1のシート、第2のシート、及び10cm~40cmの曲率半径について、1つ又は複数の方向に湾曲させ(曲げ)られてよい。バス、列車、トラクターの場合は、平坦にさせられうる。
【0132】
本発明による光学システムは、積層された、特には湾曲したグレージング内に組み込まれてよく、それぞれ外部及び内部グレージングと呼ばれる、第1及び第2のグレージング間にあり、グレージングの上方部分にわたって周辺ストリップを形成し、スタックの外面と称されるエッジ面は、第1の不透明な周辺層、特には外部グレージング(好ましくは面F2上)にわたるエナメルによって、外側からマスクされ、かつ/又はスタックの内面と称されるエッジ面は、不透明な周辺層、特には内部グレージング(例えば面F4上、又はさらには面F3上)にわたるエナメルによって、内側からマスクされる。
【0133】
本発明による湾曲積層グレージング、特にはウィンドスクリーン又はサイドグレージングは、好ましくは少なくとも70%、さらには少なくとも75%、又はさらには少なくとも80%である、-クリアガラスペインにおける-TLを有しうる。
【0134】
本発明による湾曲積層グレージング、特にサンルーフは、最大で10%、さらには1%~6%の光透過率TLを有しうる。
【0135】
自動車のルーフの場合、以下の基準の少なくとも1つ、又はすべてが好ましい:
- 最大で10%、さらには4~6%である、エネルギー透過率TE、
- 最大で10%、さらに好ましくは4~5%である、エネルギー反射率RE(好ましくは面F1側)、
- 30%未満、さらには26%未満、さらには20~23%である、太陽エネルギーの全透過率TTS。
【0136】
第1及び第2のグレージング(特にウインドシールド)の曲げは、例えば国際公開第2010/136702号に記載されているように、1つ又は複数の方向に行いうる。
【0137】
乗員コンパートメント内の加熱を抑えるために、又は空調の使用を抑えるために、グレージング(好ましくは外部ガラス)の少なくとも1つは着色され、積層グレージングはまた、日射を反射又は吸収する層を、好ましくは面F4上又は面F2若しくはF3上に、有してよく、特には「TCO層」として知られる、透明電気伝導性酸化物層(面F4上)、又はさらには少なくとも1つのTCO層を含む薄層のスタック、又は少なくとも1つの銀層を含む薄層のスタック(F2又はF3上)を有してよく、その銀層又は各銀層は、誘電体層の間に配置される。
【0138】
本発明による光学システムは、他の電気制御可能な装置、例えばエレクトロルミネッセンスシステム(無機点源LED、有機ダイオード、又はOLED、TFEL(薄いフィルムを有する)のセット)を有するものなどと組み合わせて用いられうる。両者は、(積層中間層の)積層グレージング内で、対向又は隣接しうる。
【0139】
本発明による光学システムは、特には積層グレージング内で、別の電気制御可能な装置、例えばエレクトロルミネッセンス電気制御可能な装置、特にはLED、OLED、TFELなどと組み合わせて、用いられうる。本発明の他の詳細及び特徴は、以下の添付図面に関連して与えられる以下の詳細な説明から明らかになるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0140】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態における、静的偏光子10に関連する、液晶及び二色性色素を用いる電気制御可能な可変偏光子100を有する、光学システム1000の概略断面図を示す。
【0141】
【
図1】
図2は、
図1の可変偏光子において用いられ、ストリップ状であり、2つずつ給電される、電極の正面図である。
【0142】
【
図2】
図3は、本発明の第2の実施形態における、静的偏光子10’に関連する、液晶及び二色性色素を用いる電気制御可能な可変偏光子100から構成される、光学システム1000’の概略断面図を示す。
【0143】
【
図3】
図4は、本発明の第3の実施形態における、偏光感受性電気制御可能な装置20に関連する、液晶及び二色性色素を用いる電気制御可能な可変偏光子100から構成される、光学システム1001の概略断面図を示す。
【0144】
【
図4】
図5は、オフ状態である第1の機能状態における、
図1の可変偏光子の斜視概略部分図である。
【0145】
【
図5】
図6は、所定の電圧U2でのオン状態である第2の状態における、
図1の可変偏光子の斜視概略部分図である。
【0146】
【
図6】
図7は、オフ状態である可変偏光子の第1の機能状態における、可変偏光子、及び可変偏光子と同様の構造を有するが、電極を有しない交流静的偏光子を含むシステム1002の斜視概略部分図である。
【0147】
【
図7】
図8は、オン状態である可変偏光子の第2の機能状態における、可変偏光子、及び
図7の交流静的偏光子の、斜視概略部分図である。
【0148】
【
図8】
図9は、交流静的偏光子が90°回転している
図7の変形例での、オフ状態である可変偏光子の第1の機能状態における、可変偏光子、及び可変偏光子と同様の構造を有するが、電極を有しない交流静的偏光子を有する、
図1の可変偏光子の斜視概略部分図である。
【0149】
【
図9】
図10は、オン状態である第2の機能状態における、可変偏光子、及び
図9の交流静的偏光子の、斜視概略部分図である。
【0150】
【
図10】
図11は、r2に沿った(に平行な)偏光で照射される可変偏光子の、380~630nmの波長λの関数としての、全透過率TTに対応する5つの曲線の一組を示す。
【0151】
【
図11】
図12は、r2に垂直な偏光で照射される可変偏光子の、380~630nmの波長λの関数としての、全透過率TTに対応する5つの曲線の一組を示す。
【0152】
【
図12】
図13は、本発明による光学システム2000を備える、グレージングの概略断面図を示す。
【0153】
【
図13】
図14は、本発明による光学システム3000を備える、積層グレージングの概略断面図を示す。
【0154】
【
図14】
図15は、
図14の変形例において、可変偏光子100及び静的偏光子10に加えて偏光感受性電気制御可能な装置20を追加した、本発明による光学システム3000を備える積層グレージングの概略断面図である。
【0155】
【
図15】
図16は、本発明による光学システム4000を備える、積層グレージングの正面図を示す。
【0156】
【
図16】
図17は、本発明による光学システム4000を備える、積層グレージングの概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0157】
図に示す要素は、縮尺通りではない。
【0158】
図1は、本発明の第1の実施形態における、静的偏光子10(二色性色素を含む延伸されているプラスチックフィルム)に関連する、液晶及び二色性色素を用いる電気制御可能な可変偏光子100を有する、光学システム1000の概略断面図を示す。
図2は、
図1の可変偏光子100において用いられ、ストリップ状であり、2つずつ給電される、電極の正面図である。
【0159】
直交座標系X、Y、Zを定義する。
【0160】
電気制御可能な偏光子100は、この場合、出力側で(その同一平面上の電極21、22の側で)、液晶の表面をアンカリングする第1の方向r1を特徴とし(オフ状態)、さらには、出力の反対側で、液晶の表面をアンカリングする第2の方向r2を特徴とする。
【0161】
可変偏光子100は、第1及び第2の機能状態を有し:
- この場合オフ状態である第1の機能状態において、(その同一平面上の電極21、22の側への)非偏光入射光(同じ強度の垂直成分Pa及びPbによって概略的に表され、kはZに沿った光の伝搬ベクトルである)から、可変偏光子は、軸Xに沿った(r1に垂直な)偏光電界の第1の成分P1、及びYに垂直な軸Yに沿った偏光電界の第2の成分P2を有する、偏光出力光を、第1の偏光比で送ることができ、これは、以下によって定義される。
【0162】
【0163】
rp1は、好ましくは、少なくとも70%又は90%、さらには少なくとも95%である。T1は、Xに沿った380nm~800nmの波長における全透過率であり、T2は、Yに沿った380nm~800nmの波長における全透過率である(したがって、P1はP2に対して超支配的である)。
【0164】
オン状態である第2の機能状態において、電圧U2(同一平面上ストリップ内の、2つずつの、電極の間)で:
非偏光入射光から、可変偏光子は、偏光出力光を、第2の偏光比で送ることができ、これは、以下によって定義される。
【0165】
【0166】
rp2は、少なくとも30%、さらには少なくとも50%又は60%である。T’1は、第1の軸に沿った380~800nmの波長における全透過率であり、T’2は、第3及び第4の電極間の電圧U2bに関する、380~800nmの波長における第2の軸に沿った全透過率である。
【0167】
P2は、好ましくはP1に対して優勢である。
【0168】
可変偏光子の出力光の偏光は、楕円でありうる。
【0169】
そして、当然のことながら、可変偏光子は、オン状態において多数の機能状態を有する。特に、液晶のアンカリング力が液晶の一部について克服される、閾値電圧があり、電圧が比較的増加するほど、液晶はさらに再配向し、好ましくは最大で80Vである飽和電圧まで、再配向する。
【0170】
そして、適用される電圧U2に応じて変化する、以下の偏光比r(U2)を有することがありうる。
【0171】
【0172】
随意に、要件に応じて、静的偏光子10が追加され、それによって、オフ状態では、もはや光が無く(又はほとんど無く)-(
図1の十字で表される)、オン状態では(U2で)P2の軸に沿ってわずかな光が残る。
【0173】
より具体的には、可変偏光子100は、この順序で(物理的、固体)層のスタックを含む:
- 主面11’及び12’を有する第1の透明誘電体素要素1’であって、この場合、1.1mmの厚さのガラス-又は代替の形式では、プラスチック、例えばPETなどである、第1の透明誘電体素要素1’、
- 絶縁ストリップ23の間の第1のストリップ21及び第2/第1のストリップ22を含む、分離したストリップ2の、第1及び第2の透明電極 - シート抵抗100Ω/sq.、より広くは5~300Ω/sq.を有するITOのインジウムスズ酸化物層、
- 第1の透明誘電体要素1’(面11’)上、かつストリップ21、22上の、Yに沿った方向r1において透明である、第1の一方向性平面アンカー層4’、
- 第1のアンカー層4’と接触し、他の面の側にある面FA3と称される主面及び反対面FA4と称される主面を有する、色づけされた誘電体電気活性層3であって、この場合、厚さEp1(20μm未満)であり、以下を含む材料でできている、色づけされた誘電体電気活性層3:
- 液晶、
- 1つ又は複数の二色性色素(溶解状態)、
- 材料中に分散されているスペーサー、この場合ガラスビーズ、
- ポリマー性シール5、例えばエポキシアクリレート、この場合、シアノアクリレートでできている、ポリマー性シール5によって周辺がシールされている、層3、
- 第2の透明アンカー層4であって、この場合、Xに平行な方向r1に垂直な方向r2において一方向にアンカリングする、第2の透明アンカー層4、
- 主面11及び12を有する、(層4の)第2の透明誘電体要素1であって、この場合、1.1mmの厚さのガラス-又は代替の形式では、プラスチック、例えばPETなどである、第2の透明誘電体素要素1。
【0174】
電源を介した電力供給のために、伝導性テープ(図示せず)、特には金属伝導性テープ、例えば銅でできているテープが、周辺エッジに沿って、かつ周辺エッジ上に、接着結合によって固定され、電極21、22に接触している(1つの電極につき1つのテープ、テープは好ましくは反対側のエッジ上にある)。そして、これらのテープは、電力供給に接続される。電極21、22のエッジ面、及び電気活性層のエッジは、好ましくは、長方形(正方形)又はその他の形状の要素1、1’の、エッジに対して後退している。(ガラス)要素1、1’の厚さは、例えば0.7mm~4mmでありうる。それらは、アセンブリの比較的良好な機械的強度、及び/又は使用及び取り扱いの容易さのために、好ましくは100μm超、最大で300μmの厚さでありうるが、比較的高い柔軟性が望まれる場合には、例えば50μmまで下げることがありうる。
【0175】
以下に、作製工程をより正確に記載する。
【0176】
したがって、第1のアンカー層4’は、液晶の方向r1における一方向性平面アンカリングを、この層4と接触している表面において、(電場無しで)誘起する層である。
【0177】
第1のアンカー層4’は、第1の要素1’上で、厚さ約500nmのポリビニルアルコール(PVA;Sigma-Aldrich;分子量27kDa)の溶液をスピンコーティングすることによって、ITOストリップ21及び22上、かつストリップ23の間に堆積される。
【0178】
そして、第1のアンカー層4’を、方向r1に対して平行である方向r0において延在しているストリップと平行な方向r1にラビングする。
【0179】
したがって、第2のアンカー層4’は、第2の液晶の方向r2への一方向性平面アンカリングを、この層4と接触する表面において、(電場無しで)誘起する層である。
【0180】
第2のアンカー4は、厚さ約300nmのポリビニルアルコール(PVA;Sigma-Aldrich;分子量27kDa)の溶液をスピンコーティングすることによって、第2の要素1上に堆積される。そして、第2のアンカー層4を、r1に垂直な方向r2にラビングする。
【0181】
液晶3の電気活性層は、三井化学によって販売されているS428と呼ばれる黒色二色性色素(2重量%)とともに、ネマティック液晶(98重量%)から構成される。電気活性層の厚さは10μmである。
【0182】
図2に示されるように、例えば、絶縁ストリップ23は、蛇行配置を形成し、電気伝導性層の第1のゾーンは、コイルの第1の絶縁ストリップの第1の部分23aによって、かつコイルの最後の絶縁ストリップの最後の部分23bによって、層の第2のゾーンと遮断(絶縁)されている。
【0183】
導電性ストリップ21及び22は、r0及びr1に平行である。
【0184】
このような絶縁ストリップの配置を、特にはフェムト秒レーザービームによって、例えば直径30μmでストリップが15μmであるように、電気伝導性層を除去することによって提供することがありうる。ストリップの厚さの限界は、レーザービームのサイズによって決まる。ストリップ間の距離の限界は、レーザービームの動きによって決まる。
【0185】
液晶は、この場合、正の誘電異方性を示す。
【0186】
図3は、静的偏光子10’が90°回転し、したがってそれがP2に沿って偏光をカットしている点で、第1の実施形態と異なる、本発明の第2の実施形態における、静的偏光子10’(二色性色素を含む延伸されているプラスチックフィルム)に関連する、液晶及び二色性色素を用いる電気制御可能な可変偏光子100から構成される、光学システム1000’の概略断面図を示す。
【0187】
図4は、本発明の第3の実施形態における、偏光感受性電気制御可能な装置20に関連する、液晶及び二色性色素を用いる電気制御可能な可変偏光子100から構成される、光学システム1001の概略断面図を示す。
【0188】
【0189】
装置20は、以下の変更を加えられた、装置10と同様の層のスタックを有しうる:
- bに沿った方向性アンカー層、
- 平面アンカー層、
- (電気活性層の両側にある)平面電極、したがって(Zに沿った)垂直電界、
- 焦点円錐ドメインを有するネマティック液晶、特にEFHCD、
- 随意に色づけされた電気活性層であって、(架橋ポリマーを含む)PSCLタイプのもの。
【0190】
図5は、オフ状態である第1の機能状態における、
図1の可変偏光子の斜視概略部分図である。
【0191】
アンカー層4の表面において、(ディレクターn2によって定義される)液晶312及び二色性色素322は、(概して)r2に平行である。
【0192】
対立アンカー層4’の表面において、(ディレクターn1によって定義される)液晶310及び二色性色素320は、(概して)r1に平行である。
【0193】
この対立作用は、ネマティック液晶に、ねじれ変形を受けることを強制し、二色性色素は、ネマティックによって制御される。
【0194】
電気活性層3の厚さにおいて、(ディレクターn3によって定義される)液晶311及び二色性色素321は、r1及びr2と(概して)角度を形成する。
【0195】
図6は、所定の電圧U2でのオン状態である第2の状態における、
図1の可変偏光子の斜視概略部分図である。
【0196】
アンカー層4の表面において、(ディレクターn2によって定義される)液晶312及び二色性色素322は、r2に対して(概して)平行のままである。
【0197】
電気活性層3の厚さにおいて、(ディレクターn3によって定義される)液晶311及び二色性色素321は、概してr2に沿って整列する傾向がある。
【0198】
出力では、r1に対して垂直な偏光P1は減少し、準オフでありうる。
【0199】
第1の偏光比は、偏光P1(r1に対して垂直である)について以下のように定義されている:
【0200】
【0201】
第2の偏光比は、偏光P2(r1に対して平行であり、P1に対して垂直である)について以下のように定義されている:
【数7】
【0202】
T1は、P1の軸に沿った380~640nmの平均全透過率、T2は、P2の軸に沿った380~640nmの平均全透過率である。Perkin Elmer Lambda 900タイプの分光計が用いられた。
【0203】
適用される電圧U2の関数としての、r1とr2との比の相対評価を表1に示す。
【0204】
【0205】
電圧がゼロの場合、P1に沿った偏光がほぼ完全である。
【0206】
電圧が増加するにつれて、成分P2が増加する。
【0207】
図7は、(
図5に記載されている)オフ状態である可変偏光子の第1の機能状態における、可変偏光子、及び可変偏光子と同様の構造を有するが、電極を有しない交流静的偏光子を含むシステム1002の斜視概略部分図である。
【0208】
交流静的偏光子3’は、r1及びr2を再現するr4及びr5に従う、同じ一方向性性アンカー層40、40’を有し、表面40(ネマティック315及び色素325)と、受動液晶層3’のコア(ネマティック314及び色素324)と、表面40’(ネマティック313及び色素323)との間のねじれネマティック液晶を有する。
【0209】
図8は、(
図6に記載されている)オン状態である可変偏光子の第2の機能状態における、可変偏光子、及び
図7の交流静的偏光子の、斜視概略部分図である。
【0210】
図9は、交流静的偏光子3’’が90°回転している
図7の変形例での、オフ状態である可変偏光子の第1の機能状態における、
図1の可変偏光子、及び可変偏光子と同様の構造を有するが、電極を有しない交流静的偏光子3’を有する、システム1002の斜視概略部分図である。
【0211】
図10は、オン状態である第2の機能状態における、可変偏光子、及び
図9の交流静的偏光子3’’の、斜視概略部分図である。
【0212】
図11は、r2に沿った(に平行な)偏光で照射される可変偏光子の、380~630nmの波長λの関数としての、全透過率TTに対応する5つの曲線の一組を示す。
曲線1はオンモードである(電圧U2が80Vに等しい)。
曲線2はオンモードである(電圧U2が60Vに等しい)。
曲線3はオンモードである(電圧U2が40Vに等しい)。
曲線4はオンモードである(電圧U2が20Vに等しい)。
曲線5はオフモードである(電圧U2は0Vに等しい)。
全透過率TTは、可変偏光子のオフ状態において、ほぼゼロである。全透過率TTは、電圧が適用されるにつれて増加する。
【0213】
図12は、r2に垂直な偏光で照射される可変偏光子の、380~630nmの波長λの関数としての、全透過率TTに対応する5つの曲線の一組を示す。
曲線1はオフモードである(電圧U2が0Vに等しい)。
曲線2はオンモードである(電圧U2が20Vに等しい)。
曲線3はオンモードである(電圧U2が40Vに等しい)。
曲線4はオンモードである(電圧U2が60Vに等しい)。
曲線5はオンモードである(電圧U2が80Vに等しい)。
全透過率TTは、適用される電圧とともに増加する。
【0214】
アセンブリ例
【0215】
図13は、本発明による光学システム1000を備える透明シート7(任意のありうる厚さ)を含む、グレージングアセンブリ2000の概略断面図を示す。
【0216】
静的偏光子10は、光学接着剤60によって透明ガラス又はプラスチック(例えば硬質)シート7に結合され、光学接着剤61によって可変偏光子100にも結合される。
【0217】
例えば、これは仕切り(垂直位置)である。
【0218】
アセンブリは、多重グレージング(二重又は三重グレージング)の一部を形成しうる。二重グレージングの場合、システム1000は、面F1側(慣例により外側面)、F2、F3;F4(慣例により内側面)上にありうる。三重グレージングの場合、スタックは、面F1側(外側面)、F2、F3;F4(外側面)上にありうる。シート7は、システム1000と同じ寸法であってよく、又はこれよりも大きくてよい。
【0219】
グレージングアセンブリ2000は、以下でありうる:
- 好ましくは、シャワー壁又は要素7の外部面上にある、シャワー壁、
- 好ましくは、湾曲した乗り物のグレージング、特には自動車内:ルーフ、サイドグレージング、ウィンドスクリーン、リアウィンドウ、又は要素7の、内部面(面「F4」)上にある、湾曲グレージング。
【0220】
特に、グレージングアセンブリ2000は、投影スクリーンとして機能しうる。
【0221】
図14は、光学接着剤60によって可変偏光子100と連結している静的偏光子10を含む、本発明による光学システム1000を備える、積層グレージング3000の概略断面図である。
【0222】
積層グレージング3000は、以下を有する:
- 透明である、第1の追加のガラスシート8、
- 熱可塑性、特にはEVA又はPVBの、積層中間層70、
- 第2の追加のガラスシート8’又は透明なプラスチックシート、
第1及び第2の追加のシートのF2及びF3と呼ばれる主内側面は、互いに対向しており、光学システム1000は、面F2とF3との間にあり、サブミリメートルの積層中間層内にあり、又は最大で2mmのものである。
【0223】
製造の際、3つの中間層シートを用いることがありうる:シート8、8’の内側面に対する2つの完全なシート72、73、及びシステム1000を収容するための開口部を有する中央シート71である。積層後、シート間の中間層(ドットで示される)は必ずしも識別可能ではない。開口部は、片側が、完全に開いているよりも、閉じられていることが好ましい。したがって、システム1000のエッジ全体が、積層中間層70によって囲まれている。もちろん、電力供給について、接続部がシステム1000から出ていてよく、さらにはグレージングの1つ以上のサイドエッジを越えて突出してよい。
【0224】
代替的には、2つの中間層シートを用いることもありうるし、システム1000が十分に薄く、例えば最大で0.2mmの厚さである場合、穴を有する中央シートは必要ではなくなる。
【0225】
シート8又は8’の一方が、無色であってよく、又は着色(灰色、緑色、青銅色など)されてよく、他方のグレージングが、クリア又は超クリア8’若しくは8でありうる。第1の中間層シートの一方が、着色(灰色、緑色、青銅色など)されてよく、(1つ又は複数の)他方が、クリア又は超クリアでありうる。シート8又は8’の一方が、プラスチックシート、例えばポリカーボネート又はPMMA(特にはPU積層中間層を有するもの)などによって、置き換えられうる。
【0226】
積層中間層70のエッジは、シート8、8’のエッジから(例えば、最大で5mm)後退しうる。
【0227】
システム1000は、例えば、シート8の主面の全体を実質的に覆い、この場合、さらには中央に配置される。システム1000のどちら側にも同じ幅のPVBが存在する。
【0228】
グレージング8、8’は平面であり、又は湾曲しており、システム1000は、この場合湾曲しているガラスシート8、8’の(1つ又は複数の)湾曲に適応することができる。
【0229】
光学システム1000は、仕切りでありうるし、又は乗り物のルーフでありうる。例えば、乗り物のルーフ用に、次のとおりである:
- シート8は、最も外側にあり、湾曲しており、随意に着色され、例えば3mmである。
- シート8’は、最も内側にあり、湾曲しており、好ましくはクリア又は超クリアであり、例えば3mm以下である。
- 積層中間層70は、PVBでできており、防音効果がありうるし、特には二層又は三層(シート71又は72又は73)でありうる。
【0230】
したがって、ルーフはまた、例えばダークブルーからライトブルーまで、電圧U1又はU2で、変化しうる色のものでありうる。
【0231】
図15は、
図14の変形例において、可変偏光子100及び静的偏光子10に加えて偏光感受性電気制御可能な装置20を追加し、電気制御可能な装置が光学接着剤60’によって静的偏光子10に接着されている、本発明による光学システム3000を備える積層グレージングの概略断面図である。
【0232】
1つの変形例では、静的偏光子10は除去される。
【0233】
図16及び
図17は、それぞれ、本発明による光学システム4000を備える積層グレージングの正面図及び概略断面図を示す。
【0234】
積層グレージング4000は、光学システム1000が、シート8の表面部分を、特には周辺ストリップを、例えば積層グレージングのほぼ全長にわたって上方長手方向エッジHに沿って、覆っている点で、
図14のものとは異なる。
【0235】
これは、例えば自動車のウィンドシールドである。
【0236】
この光学システム1000は、マージナルゾーン内にあり、ここでは、LTの基準及びヘイズの不存在の基準が、中央ゾーンZB内よりも自由である。
【0237】
したがって、この光学システム1000は、例えばダークブルーからライトブルーまで、電圧によって変化しうる色のものでもありうる。
【0238】
図17(断面図)に示すように、光学システム1000と下方長手方向エッジBとの間の中央中間層73の幅7aは、光学システム1000と上方長手方向エッジHとの間の中央中間層73の幅7bよりも大きい。
【0239】
変形例として、又は追加で、それは、ウィンドスクリーンの下方長手方向エッジBに沿って、全長又は長さの一部にわたって存在しうる。
【0240】
図16(乗り物の内部側の正面図)に示すように、ウィンドスクリーンは、例えばエナメル(黒色等)91’~94’でできている、第1の不透明フレームを、内側シート8’の自由面(F4)82’の短手方向及び長手方向エッジ上に有し、例えばエナメル(黒色等)91~94でできている、第2の不透明フレームを、外側シート8の自由面(F1)82の短手方向及び長手方向エッジ上に、有している。
【0241】
下方長手方向エッジ側にある、光学システム1000のエッジ面、及びさらには側方エッジ側にあるエッジ面も、エナメルフレームの層92、92’、93、93’、94、94’の間にあってよい(面していてよい)。例えば、接続部及び他の電流供給ストリップ(U1及びU2用)も、これらの層92、92’、93、93’、94、94’によってマスクされうる。
【0242】
1つの変形例では、それは、自動車のルーフ、例えば、着色された外側ガラス8及び/又は着色されたPVB71、並びに実質的にはガラス8、8’の主面全体を覆う光学システム1000を有する自動車のルーフである。
【国際調査報告】