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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】工作機械の状態を監視する方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/18 20060101AFI20241008BHJP
   G05B 19/4155 20060101ALI20241008BHJP
   G05B 19/401 20060101ALI20241008BHJP
   G05B 19/404 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G05B19/18 W
G05B19/18 X
G05B19/4155 V
G05B19/401
G05B19/404 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521171
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2022077837
(87)【国際公開番号】W WO2023061850
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】CH070373/2021
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599172531
【氏名又は名称】ライシャウァー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディーツ,クリスティアーン
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB06
3C269BB03
3C269CC02
3C269DD02
3C269EF07
3C269EF25
3C269EF57
3C269EF80
3C269EF89
3C269MN05
3C269MN13
3C269MN14
3C269MN26
3C269PP02
3C269PP06
3C269QC06
3C269QD02
3C269QD10
3C269QE01
(57)【要約】
本発明は、試験サイクルが実行され、この試験サイクルにおいて、機械軸のうちの少なくともいくつかが作動され、関連付けられた状態データが求められる、複数の機械軸を有する工作機械1の状態を監視する方法に関する。これに基づいて、状態診断が行われ、この状態診断において、状態データは基準値と比較される。基準値は、複数の基準機械2、3、...、nにおける複数の基準試験サイクルにおいて取得された基準状態データから求められる。
【選択図】図3


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機械軸を有する工作機械(1)の状態を監視する方法であって、
少なくとも一部の前記機械軸が作動され、関連付けられた状態データ(Z)が測定によって求められる試験サイクルを実行することと、
前記状態データ(Z)を少なくとも1つの基準量(LL、UL;μ、σ;μ-μ;σ-σ)と比較する状態診断を実行することと、
を含み、
少なくとも1つの前記基準量(LL、UL;μ、σ;μ-μ;σ-σ)は、基準状態データ(Z)から求められ、前記基準状態データ(Z)は、複数の基準機械(2、3、...、n)における複数の基準試験サイクルにおいて取得されたものであることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
少なくとも1つの前記基準量(LL、UL;μ、σ;μ-μ;σ-σ)は、少なくとも1つのタイプの状態データ(Z)の許容限界(LL、UL)を含み、
前記許容限界(LL、UL)は、少なくとも1つの統計的基準値(μ、σ)に基づいて自動的に設定され、
前記統計的基準値(μ、σ)は、前記基準状態データ(Z)の統計分析によって求められる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの前記統計的基準値(μ、σ)は、少なくとも1つのタイプの基準状態データ(Z)の期待値(μ)と、それぞれのタイプの前記基準状態データ(Z)の分散(σ )のインジケーターとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記試験サイクルは、異なる時点において数回繰り返され、ワークピース(23)が、前記試験サイクルの合間に前記工作機械(1)を用いて加工され、
前記状態診断は、数回の試験サイクルにおいて取得された状態データ(Z)を少なくとも1つの前記基準量(LL、UL;μ、σ;μ、...、μ、σ、...、σ)と比較する比較評価を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記比較評価は、
複数の前記試験サイクルから取得される前記状態データ(Z)の少なくとも1つの統計値(μ、σ)を求めることと、
前記統計値(μ、σ)と少なくとも1つの前記基準量(LL、UL;μ、σ;μ、...、μ、σ、...、σ)との比較を行うことと、
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記比較評価は、
前記複数の試験サイクルから取得される前記状態データ(Z)の推移を、時間の関数として又は前記工作機械を用いて加工されたワークピースの数の関数として分析することと、
この分析の結果を少なくとも1つの前記基準量(LL、UL;μ-μ;σ-σ)と比較することと、
を含み、
前記推移を分析することは、好ましくは、状態のインジケーター(Z)の将来の値を外挿することを含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも2つの状態クラス(A~D)が、前記基準状態データ(Z)から形成され、
各状態クラス(A~D)について、少なくとも1つの統計的基準値(μ、...、μ、σ、...、σ)が計算され、
前記状態診断において、前記状態データ(Z)は、前記状態クラス(A~D)の前記統計的基準値(μ、...、μ、σ、...、σ)と比較される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記状態診断の結果に応じて、アクションを誘発することを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記アクションは、診断メッセージをユーザーに発行することを含み、
前記診断メッセージは、好ましくは、前記工作機械(1)から空間的に離れている端末装置(48)にネットワークを介して送信され、前記端末装置において出力され、
前記送信は、メッセージングサービスを介して、プッシュメッセージによって、又は電子メールによって任意選択で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記工作機械(1)においてワークピース(23)を加工する少なくとも1つのプロセスパラメーターを、前記状態診断の結果の関数として自動的に変更すること、
を含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記状態データ(Z)は、以下のタイプのデータ、すなわち、
少なくとも1つの位置センサー(19)を用いて求められ、少なくとも1つのコンポーネントの公称位置からの位置偏差を示す位置偏差データ、
少なくとも1つの運動センサー(18)を用いて求められ、少なくとも1つの前記コンポーネントの振動状態を示す振動データ、及び/又は
少なくとも1つの前記コンポーネントの駆動モーターにおける電流消費を示す電力データ、
を含み、及び/又は、
前記タイプのデータから導出されるデータを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記状態データ(Z)を前記求めることは、測定データのスペクトル分析を含み、
前記スペクトル分析は、好ましくは、離散的な励起周波数又は励起次数のスペクトル強度値を求め、
前記状態データ(Z)は、前記スペクトル強度値又は前記スペクトル強度値から導出される量を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記状態データ(Z)は、2つ以上のソースからの測定データから又は2つ以上の前記機械軸の作動に関する測定データから導出される少なくとも1つの特定状態インジケーターを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記状態データ(Z)は、歯切り盤を用いて加工された歯付きワークピースが歯車アセンブリに設置され、前記歯車アセンブリにおいて相手歯車とともに転がり運動を行うときに、EOL試験台上でのEOLスペクトルにおいて、どの次数で励起が予想されるのかを示す予測EOLデータを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記基準状態データ(Z)は、データベース(DB)に記憶される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
評価コンピューター(45)が、状態の分析を行うために前記データベース(DB)にアクセスし、
前記評価コンピューター(45)は、好ましくは、前記工作機械から空間的に離れて配置され、ネットワーク接続によって前記工作機械(1)に接続される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記状態データ(Z)が基準状態データ(Z)として将来の試験サイクルに利用可能となるように、前記状態データ(Z)を前記データベース(DB)に記憶することを含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
複数の機械軸を有する工作機械(1)の状態を監視する装置であって、
プロセッサ(451)と、コンピュータープログラムが記憶された記憶媒体(452)とを備え、
前記コンピュータープログラムは、前記プロセッサにおいて実行されると、以下のステップ、すなわち、
前記工作機械(1)の試験サイクルにおいて、少なくとも一部の前記機械軸が作動され、関連付けられた測定が行われ、前記測定によって求められた状態データ(Z)を受信するステップと、
前記状態データ(Z)が少なくとも1つの基準量(LL、UL;μ、σ;μ-μ;σ-σ)と比較される状態診断を実行するステップと、
を実行し、
少なくとも1つの前記基準量(LL、UL;μ、σ;μ-μ;σ-σ)は、基準状態データ(Z)から求められ、前記基準状態データ(Z)は、複数の基準機械(2、3、...、n)における複数の基準試験サイクルにおいて取得されたものである、前記装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の機械軸を有する工作機械の状態を監視する方法に関する。工作機械は、歯付きワークピースを加工する歯切り盤、特に歯車研削盤とすることができる。
【背景技術】
【0002】
工作機械でワークピースを加工する際に、指定された公称形状に対する実際に製造されたワークの実形状との公差として現れる製造偏差が自然に発生する。製造偏差は、とりわけ、工作機械の様々なコンポーネントの故障や摩耗によって、又は、コンポーネントの不適切な組み立てによって引き起こされる可能性がある。例えば、製造偏差は、駆動部が工作機械のスライドを機械コントローラーによって指定された公称位置以外の位置に移動させること、スピンドルのベアリングが摩耗すること、又は振動が十分に減衰するように機械部品が互いに適切に接続されていないことなどによって、引き起こされる可能性がある。
【0003】
したがって、保守対策を適時行うことができるように、製造偏差をもたらす可能性がある機械コンポーネントの故障や摩耗、取り付けエラー、工作機械に関するその他のエラーを、可能な限り早期に検出することが望ましい。このために、ワークピースを加工する前、又は加工が中断している間に、工作機械に対して、一部又は全ての機械軸を系統的に移動させて、関連する測定を実行する試験サイクルを実施することが知られている。このプロセスでは、例えば、指定された公称位置からのそれぞれの機械軸の位置偏差や、振動データを記録することができる。そして、測定結果に基づいて、機械又は個々の機械軸の状態が評価される。測定結果は、例えば、指定された許容限界と比較することができる。許容限界によって制限された許容範囲を越えている場合には、対応する機械軸の故障を示し、保守対策を開始することができる。
【0004】
許容限界を設定することは、多くの専門知識を必要とする非常に困難な作業である。許容限界を設定することは、反復的なプロセスであり、エラーが発生しがちである。その上、信号は、通常、数十個~百個を超えるセンサーから取得されるので、この作業には、非常に多くの時間を要する可能性がある。
【0005】
特許文献1は、実際のデータを求めるために測定装置でワークピースを測定する、歯切り盤の機械形状を監視する方法を開示している。実際のデータは、機械の軸の幾何学的な設定値の偏差を求めるために、仕様データと関連付けられる。複数のワークピースについての幾何学的な設定値に対する偏差が記憶され、機械の軸の幾何学的な変化を求めるために、記憶された偏差の統計的評価が行われる。この統計的評価は、短期評価及び長期評価を含む。これらの評価は、プロセス偏差が自動的に検出されるように、相互に関連付けられる。この方法は、監視された機械を用いて加工されたワークピースに関して取得される測定値に基づいている。
【0006】
特許文献2は、測定値がワークピースの加工中に記録される微細加工プロセスを監視する方法を開示している。測定値は正規化され、これらの正規化された値から、ワークピースの加工誤差と既知の方法で相関関係にある加工プロセスのパラメーターが計算される。このような方法で、プロセス偏差を検出することができる。この文献は、機械のコンポーネントの状態を監視することについては、何も記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3229088号
【特許文献2】国際公開第2021048027号
【発明の概要】
【0008】
第1の態様において、本発明の目的は、特別な専門知識を必要とせずに、工作機械(加工ツール)の状態を客観的に評価できる工作機械の状態を監視する方法を提供することである。
【0009】
この目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。更なる実施形態は、従属請求項に規定される。
【0010】
したがって、複数の機械軸を有する工作機械の状態を監視する方法が提供され、以下のステップ、すなわち、
少なくとも一部の機械軸が系統的に作動され、関連付けられた状態データが測定によって求められる試験サイクルを実行するステップと、
状態データを少なくとも1つの基準量と比較する状態診断を実行するステップと、
を含む。
【0011】
本方法は、少なくとも1つの基準量が、基準状態データから求められ、当該基準状態データが、複数の基準機械における複数の基準試験サイクルにおいて取得されたものであることを特徴とする。
【0012】
したがって、提案された方法では、状態データは、多数の機械の多数の状態を示す測定データ又は当該測定データから導出される量として取得可能である。これらの機械は、ここでは「基準機械」と称し、対応する状態データは、「基準状態データ」と称する。基準状態データは、データベースに記憶することができる。基準状態データは、特に、基準機械の加工が中止している間に、基準機械において複数の試験サイクルを実行することによって取得されたものである。これらの試験サイクルは、「基準試験サイクル」と称する。「基準機械」、「基準試験サイクル」及び「基準状態データ」という用語は、基準機械が特に信頼できる機械であること、基準試験サイクルが特に慎重に実行された試験サイクルであること、又は基準状態データが特に信頼できるデータであることを示唆することを意図するものではない。むしろ、これらの用語は、評価対象の機械を、比較の基準としてその状態が利用される機械と論理的に区別するために使用されているにすぎない。基準状態データには、以前の試験サイクルにおいて、評価対象の機械について取得された状態データを含めることもできる。この点において、評価対象の機械も、それ自体が基準機械のうちの1つとして役立てることができる。ただし、基準状態データは、評価対象の機械自体だけを用いて取得された状態データに限定されるものでないことは極めて重要である。むしろ、本発明の本質的な点は、複数の機械からの状態データを別の機械の評価に使用可能にすることである。
【0013】
これは、実際には、基準試験サイクルの大部分が、基準機械の加工が中止している間に実行され、その一方で、対応する基準機械が「良好な」状態、すなわち、当該基準機械が欠陥のないワークピースを作製することが可能な状態にあるという前提に基づいている。実際には、僅かな回数の試験サイクルだけが、「不良な」状態に関わることになる。なぜならば、そのような「不良な」状態は、通常、製造偏差に基づいてすぐに検出され、除去されるからである。したがって、多くの基準機械及び多くの基準試験サイクルにわたる統計的な平均において、基準状態データは、本質的に基準機械の「良好な」状態を示している。この知識が、評価対象の機械の自動的な状態診断を行うのに利用される。評価対象の機械自体についての事前の知識は、これには必要とされない。
【0014】
評価対象の機械自体の先行する試験サイクルからの履歴上の状態データを考慮するだけでは十分でない。例えば、評価対象の機械には、当初から欠陥のあるベアリングが取り付けられていることもあり、そのため、機械の耐用年数の全体にわたってこの機械から取得される状態データは、完全なベアリングが取り付けられていた場合よりも大幅に悪化する。それでも、ベアリングに欠陥があるにもかかわらず、場合によっては許容可能なワークピースを作製することが可能な場合がある。評価対象の機械の状態データを、他の機械における測定によって取得された基準状態データ、又はそれらの基準状態データから導出された基準量と比較することによってのみ、評価対象の機械に問題があることを認識し、この問題を特定することが可能となり、欠陥のあるベアリングを検出することができる。
【0015】
基準機械は、好ましくは、評価対象の工作機械と同様のものである。基準機械は、評価対象の機械と同一である必要はない。本文脈において、機械は、サイズ、設計及び軸の配置が概ね同一である場合には、評価対象の機械と「同様」であるとみなされる。実際には、例えば、同じ製造元の同じタイプの機械は、同様であるとみなされる。ただし、機械は、例えば、それらの付加的な機器などにおいて、異なる場合がある。
【0016】
基準状態データは、特に、評価対象の機械に対するものと同じタイプの試験サイクルを基準機械を用いて実行することによって、すなわち、基準機械の機械軸が系統的に移動され、基準測定が行われる試験サイクルを実行することによって取得することができる。また、評価対象の機械についての試験サイクルにおいて求められた状態データは、その後、同じ機械又は別の機械の将来の試験サイクルの基準状態データとして役立つように、それ自体をデータベースに改めて記憶することができる。
【0017】
試験サイクルにおいて求められた測定データは、機械コントローラーによって指定された公称位置からの少なくとも一部の可動コンポーネントの位置偏差を特徴付ける位置偏差データ、及び/又は少なくとも一部の可動コンポーネントの振動状態を特徴付ける振動データを含むことができる。位置偏差データは、従来技術からよく知られているような位置センサーを用いて取得することができる。振動データは、同様に従来技術においてよく知られている加速度センサー等の運動センサーを使用して求めることができる。測定データは、少なくとも1つの可動コンポーネントの駆動モーターにおける電流消費を特徴付ける電力データも含むことができる。他の様々なタイプのデータも考えられる。そのようなデータは、個別のセンサーによって取得することもできるし、機械コントローラーから直接読み出すこともできる。
【0018】
測定された量から導出される状態データは、様々なタイプのデータを含むことができる。例えば、状態データは、個々の位置偏差又は瞬間的な振動振幅等の直接的な測定データを含むことができる。一方、状態データは、数学的処理又はアルゴリズム的処理によって測定データから生成される量も含むことができる。そのような状態データは、例えば、測定データの平均値、測定データから導出される他の統計的な量、又はそのような統計的な量から導出される量であってもよい。測定データからの状態データの計算は、測定データ、特に、位置偏差データ、振動データ及び/又は電力データのスペクトル分析(特に、次数分析)を含むことができる。スペクトル分析は、指定された周波数の範囲又は次数の範囲にわたる測定データのスペクトル強度値を求めるのに使用される。そして、状態データには、選択された離散的な周波数値又は次数におけるスペクトル強度値、又はこれらの値から導出される量、例えば、指定された周波数範囲若しくは次数範囲にわたるそのような強度値の合計、若しくはスペクトルに適用されるピークフィッティングルーチンの結果を含めることができる。状態データには、測定された量の完全な時系列及び/又は完全なスペクトルも含めることができる。
【0019】
状態データには、2つ以上のソース(特に、2つ以上のセンサー)からの測定データ及び/又は2つ以上の機械軸の作動に関する測定データから導出される特定のインジケーター(特定状態インジケーター)を含めることができる。そのような特定インジケーターは、非常に具体的なエラーの原因に関する結論を得ることを可能にすることができる。
【0020】
工作機械が歯切り盤、特に、創成歯切り盤である場合に、状態データには、歯切り盤を用いて加工された歯付きワークピースが歯車アセンブリに設置され、歯車アセンブリにおいて相手歯車とともに転がり運動を行うときに、EOL試験台(EOL:end-of-line(ライン末端))上でのEOLスペクトルにおいて、どの次数で励起が予想されるのかを示す予測EOLデータも含めることができる。提案された方法は、その場合に、評価されている機械を用いて製造されるワークピースに関して、ノイズ問題が発生すると予想される次数の自動的な予測を可能にする。この手順及び更なる実施形態の根底にある考察に関しては、本出願と同日付けで出願された同じ出願人の「歯切り盤の状態を監視する方法」という発明の名称の特許出願を参照されたい。この特許出願の内容は、その全体が参照により本開示に援用される。
【0021】
基準量は、様々な種類の量とすることもできる。一般的に言えば、基準量は、上述した状態データと同じ方法で求められる基準状態データそのものとすることもできるし、数学的処理又はアルゴリズム的処理、特に、基準状態データの統計分析によって基準状態データから生成される量とすることもできる。
【0022】
基準量は、特に、少なくとも1つのタイプの状態データの少なくとも1つの許容限界を含むことができる。この場合に、許容限界は、該当するタイプの基準状態データの統計分析によって求められる少なくとも1つの統計的基準値に基づいて、コンピューターによって自動的に設定される。このようにして、許容限界は、もはや多くの時間と労力を要して手動で設定する必要はなく、許容限界の設定に専門知識も必要とされない。
【0023】
評価対象の機械の許容限界は、ここでは、上記のように、基準状態データの統計分析によって求められる。多数の同様の機械における多数の先行する試験サイクル中の基準状態データの統計分布に関する知識は、評価対象の機械の許容限界を自動的に規定するのに利用される。これは、基準状態データが平均して「良好な」状態を特徴付けるだけでなく、検討対象のコンポーネント又は機械のタイプに特有となるように統計的に変動するため、評価対象の機械においても同様の統計的特性を有する変動が予想できるという仮定に基づいている。
【0024】
特に、統計的基準値として、基準状態データの期待値及び当該基準状態データの分散(又は、等価的な標準偏差)のインジケーターを計算することができる。次いで、監視対象の機械の対応する状態データの許容限界を、例えば、標準偏差の所定の倍数に対応する距離で期待値を中心に対称的に設定することができる。
【0025】
試験サイクルは、異なる時点において数回繰り返すことができ、これらの試験サイクルの合間に、ワークピースは工作機械を用いて加工され、試験サイクルは、工作機械がワークピースと加工噛み合いをしていない加工が中止している間に実行される。例えば、加工中に、工作機械のコンポーネントの摩耗又は故障が発生する可能性がある。これをより良好に検出するために、状態診断は、数回の試験サイクルからの状態データと少なくとも1つの基準量との比較評価を含むことができる。
【0026】
特に、比較評価は、比較統計的評価を含むことができる。比較統計的評価は、
複数の試験サイクルから取得される状態データの少なくとも1つの統計値を求めることと、
統計値と少なくとも1つの基準量との比較を行うことと、
を含む。
【0027】
このようにして、試験サイクルごとの状態データの統計的変動を特に分析に使用可能にすることができる。例えば、状態データの値の強い変動は、この状態データの値の平均値が数回の試験サイクルにわたって異常を示していない場合であっても、コンポーネントの故障を示している可能性がある。この点において、数回の試験サイクルから少なくとも1つのタイプの状態データの値の分散の尺度は、統計値として役立たせることができる。
【0028】
有利な実施形態では、機械コンポーネントの差し迫った故障を適時に検出するために、時間の関数として又は処理されたワークピースの数の関数としての機械の状態の時間的推移が、状態診断の一部として分析される。このために、複数の試験サイクルから取得される状態データの推移は、時間の関数として又は加工されたワークピースの数の関数として分析することができ、この分析の結果は、少なくとも1つの基準量と比較することができる。特に、この推移の分析は、状態データの将来の値の外挿を含むことができる。外挿のために、状態データの回帰分析を、例えば、多項式関数、特に2次関数を用いて行うことができ、この回帰分析の結果を少なくとも1つの基準量と比較して、例えば、コンポーネントの故障の予想される時期を予測することができる。この手法は、外挿される状態データが特定のコンポーネントの品質と直接相関する状態データであるときに特に有益である。このようにして、コンポーネントの差し迫った故障を早期の段階で予測することができ、故障が発生する前に適切な対策を講じることができる(「予測保守」)。
【0029】
いくつかの実施形態では、状態診断のために、データベースに記憶された基準状態データを少なくとも2つの状態クラス(例えば、「良好」及び「不良」、又は、より精緻な変形形態では、「新品状態」、「中程度の状態」、「危険な状態」、及び「欠陥のある状態」)に分類することができる。次いで、状態クラスのそれぞれについて、少なくとも1つの統計的基準値が、基準状態データから計算され、状態診断のために、状態データは、少なくとも2つの状態クラスの統計的基準値と比較される。このようにして、機械又はそのコンポーネントの状態の差別化した評価を可能にする評価パラメーターを求めることができる。
【0030】
請求項8
状態診断の結果に応じて、アクションを誘発することができる。例えば、診断メッセージをユーザー(例えば、保守要員)に発行することができる。この診断メッセージは、工作機械から空間的に離れている端末装置に、ネットワークを介して送信されるようにしてもよく、この端末において出力されるようにしてもよい。これは、例えば、SMS又はWhatsApp、プッシュメッセージ等のメッセージングサービス、又は電子メールによって行うこともできる。例えば、選択されたコンポーネント及び/又は監視された機械の全体的な状態についての診断メッセージには、2、3、4、又はそれ以上の離散値、例えば、「良好」及び「不良」、又はより差別化された実施形態では、「良好」、「中程度」、「危険」及び「欠陥」を示すことができる評価パラメーターを含めることができる。状態診断の結果は、端末装置を用いて適宜可視化することができる。端末装置は、例えば、デスクトップコンピューター、ノートブックコンピューター、タブレットコンピューター、又はスマートフォンとすることができる。これによって、1つ以上の機械の状態を何処からでも監視することが可能になる。
【0031】
加えて又は代替的に、状態診断の結果に応じて、工作機械におけるワークピースの加工中に、少なくとも1つのプロセスパラメーター、例えば、スピンドルの回転速度を自動的に変更したり、プロセスで推奨される事項を工作機械のユーザーに自動的に発行したりすることもできる。極端な場合には、それ以降の加工を自動的に停止することもできる。
【0032】
状態診断は、異なるコンポーネントの状態を識別するために、状態データと、少なくとも2つの異なるタイプの状態データについての基準状態データとの比較統計分析を含むことができる。例えば、異なる周波数における振動信号のスペクトル強度等のいくつかのタイプの状態データは、2つのコンポーネントの摩耗によって影響を受け得るが、その影響の受け方は異なる。これらの2つのタイプの状態データについて、状態データと基準状態データとの比較統計分析を行うことによって、求められた状態インジケーターの原因となる摩耗状態にあるコンポーネントに関する結論を得ることができる。
【0033】
既述したように、基準状態データは、好ましくはデータベースに記憶される。このデータベースは、監視されている機械から遠隔に配置することができる。このデータベースは、クラウドで、例えば、サービスとして複数のユーザーによって共有されるコンピューティングリソースの形態で実装することもできる。評価コンピューターは、データベースにアクセスして状態の分析を行うことができる。この評価コンピューターは、好ましくは工作機械から空間的に離れて配置される。この評価コンピューターは、ネットワーク接続によって工作機械に接続される。この評価コンピューターも、物理的に単一の装置である必要はなく、クラウドに実装することができる。端末装置は、ネットワーク、特にインターネットを介して評価コンピューターと通信する。
【0034】
本発明は、複数の機械軸を有する工作機械の状態を監視する装置であって、上記方法を実行するように構成される、装置も提供する。装置は、プロセッサと、コンピュータープログラムが記憶された記憶媒体とを備え、コンピュータープログラムは、プロセッサにおいて実行されると、以下のステップ、すなわち、
工作機械の試験サイクルにおいて、少なくとも一部の前記機械軸が作動され、関連付けられた測定が行われ、前記測定によって求められた状態データを受信するステップと、
状態データが少なくとも1つの基準量と比較される状態診断を実行するステップと、
を実行し、
少なくとも1つの基準量は、基準状態データから求められ、当該基準状態データは、複数の基準機械における複数の基準試験サイクルにおいて取得されたものである。
【0035】
本発明による方法に関する上記説明は、必要な変更を加えて上で、本発明による装置にも当てはまる。
【0036】
本発明は、対応するコンピュータープログラムを更に提供する。このコンピュータープログラムは、不揮発性記憶媒体上に記憶することができる。
【0037】
本発明の好ましい実施形態が、以下で図面を参照して説明される。図面は、本発明のこれらの好ましい実施形態の例示を目的とするものであり、これらの好ましい実施形態の限定を目的とするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、創成研削盤の概略図である。
図2図2は、測定データの分析を示す図である。
図3図3は、サービスサーバーを介してデータベースと通信するいくつかの同様の創成研削盤を有するネットワークの概略図である。
図4図4は、基準状態インジケーターの値の統計分布を示す図である。
図5図5は、第1の例による状態診断を示す図である。
図6図6は、第2の例による状態診断を示す図である。
図7図7は、創成研削盤を監視する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[創成研削盤の例示的な構造]
図1は、歯車創成研削盤1の形態の工作機械の一例を示しており、以下、これを略して「機械」とも称する。機械1は、機械ベッド11を有し、この機械ベッド上で、ツールキャリア12が半径方向の送り方向Xに沿って変位可能にガイドされる。ツールキャリア12は、軸方向スライド13を保持し、軸方向スライド13は、ツールキャリア12に対して送り方向Zに沿って変位可能にガイドされる。研削ヘッド14は、軸方向スライド13に取り付けられており、加工対象の歯車のねじれ角に適合するように、X方向(いわゆるA軸)に平行に延びる旋回軸の周りに旋回することができる。また、研削ヘッド14は、ツールスピンドル15を研削ヘッド14に対してシフト方向Yに沿ってシフトさせることができるシフトスライドを保持する。ウォーム形状の歯型の砥石(研削ウォーム)16が、ツールスピンドル15にクランプされている。研削ウォーム16は、ツールスピンドル15によって駆動されて、ツール軸Bの周りを回転する。
【0040】
機械ベッド11には、旋回軸C3の周りの少なくとも3つの位置の間で旋回することができるタレットの形態の旋回ワークピースキャリア20も搭載されている。2つの同一のワークピーススピンドルが、ワークピースキャリア20に直径方向に互いに対向して取り付けられている。これらのワークピーススピンドルのうち、関連するテールストック22を伴う一方のワークピーススピンドル21のみが図1において見えている。ワークピースは、ワークピーススピンドルのそれぞれにクランプされ、ワークピース軸C1又はC2の周りを回転するように駆動可能である。図1に見えているワークピーススピンドル21は、このワークピーススピンドル21にクランプされたワークピース23を、研削ウォーム16を用いて加工することができる加工位置に位置している。180°オフセットされ、図1において見えていないもう1つのワークピーススピンドルは、完成したワークピースをこのスピンドルから取り除くことができるとともに新たな未加工部材をこのスピンドルにクランプすることができるワークピース交換位置に位置している。ドレス装置30が、ワークピーススピンドルに対して90°オフセットされて取り付けられている。
【0041】
機械1は、このように、対応する駆動部の制御下で移動させることができるスライド又はスピンドル等の多数の可動コンポーネントを有する。これらの駆動部は、技術の世界では、多くの場合に「NC軸」若しくは「機械軸」と称されるか、又は、「軸」と略称される。場合によっては、この呼称には、スライド又はスピンドル等の駆動部によって駆動されるコンポーネントも含まれる。
【0042】
機械1は、多数のセンサーも有する。例として、2つのセンサー18,19のみが図1に概略的に示されている。センサー18は、研削スピンドル15のハウジングの振動を検出する振動センサーである。センサー19は、ツールキャリア12に対するZ方向に沿った軸方向スライド13の位置を検出する位置センサーである。一方で、機械1は、これらに加えて、複数の更なるセンサーも備える。これらのセンサーには、特に、1つの直線軸の実際の位置をその都度検出する更なる位置センサーと、1つの回転軸の回転位置をその都度検出する回転角センサーと、1つの軸の駆動電流をその都度検出する電流センサーと、1つの駆動されるコンポーネントの振動をその都度検出する更なる振動センサーとが含まれる。
【0043】
機械1の全ての駆動される軸は、機械コントローラー40によってデジタル制御される。機械コントローラー40は、いくつかの軸モジュール41と、制御コンピューター42と、制御パネル43とを備える。制御コンピューター42は、制御パネル43からのオペレーターコマンドと、機械1の様々なセンサーからのセンサー信号とを受信し、これらから軸モジュール41に対する制御コマンドを計算する。また、制御コンピューター42は、動作パラメーターを制御パネル43に表示用に出力する。軸モジュール41は、それらの出力においてそれぞれ1つの機械軸の制御信号を提供する。
【0044】
監視装置44が、制御コンピューター42に接続されている。
【0045】
監視装置44は、機械1に関連付けられた別個のハードウェアユニットとすることができる。監視装置44は、それ自体既知のインターフェース、例えば既知のProfinet(プロフィネット)規格を介して制御コンピューター42に接続することもできるし、ネットワーク、例えばインターネットを介して制御コンピューター42に接続することもできる。監視装置44は、空間的に機械1の一部であってもよいし、機械1から空間的に遠隔に位置していてもよい。
【0046】
監視装置44は、機械の動作中に制御コンピューター42から様々な異なる測定データを受信する。制御コンピューターから受信する測定データの中には、制御コンピューター42によって直接取得されたセンサーデータ、及び制御コンピューター42によって軸モジュール41から読み出されたデータが含まれ、例えば、様々な機械軸の目標位置及び軸モジュールにおける目標電流消費を示すデータが含まれる。
【0047】
監視装置44は、任意選択で、更なるセンサーからのセンサーデータを測定データとして直接受信するそれ自身のアナログセンサー入力及び/又はデジタルセンサー入力を有することができる。更なるセンサーは、通常、実際の加工プロセスの制御に直接必要とされないセンサー、例えば、振動を検出する加速度センサー、又は温度センサーである。
【0048】
監視装置44は、代替的に、例えば、制御コンピューター42のプロセッサにおいて実行される機械コントローラー40のソフトウェアコンポーネントとして実装することもできるし、以下でより詳細に説明するサービスサーバー45のソフトウェアコンポーネントとして設計することもできる。図1には、それに応じてサービスサーバー45のプロセッサ451及びメモリデバイス452が示されている。
【0049】
監視装置44は、サービスサーバー45と直接、又は、インターネット及びウェブサーバー47を介して通信する。サービスサーバー45は、同様に、データベースDBを有するデータベースサーバー46と通信する。これらのサーバーは、機械1から遠隔に位置していてもよい。サーバーは、物理的に単一の装置である必要はない。特に、サーバーは、いわゆる「クラウド」における仮想ユニットとして実装されてもよい。
【0050】
サービスサーバー45は、ウェブサーバー47を介して端末装置48と通信する。端末装置48は、特に、受信データ及びそれらの評価を可視化するウェブブラウザーを実行することができる。端末装置には、特別な計算能力は要求されない。例えば、エンドデバイスは、デスクトップコンピューター、ノートブックコンピューター、タブレットコンピューター、携帯電話等とすることができる。
【0051】
[ワークピースロットの加工]
完全性を期すために、以下では、ワークピースが機械1を用いてどのように加工されるのかを説明する。
【0052】
まだ加工されていないワークピース(未加工部材)を加工するために、ワークピースは、自動ワークピースチェンジャーによって、ワークピース交換位置にあるワークピーススピンドルにクランプされる。ワークピースの交換は、加工位置にあるもう1つのワークピーススピンドルにおける別のワークピースの加工と並行して行われる。加工対象の新たなワークピースがクランプされ、別のワークピースの加工が完了すると、加工対象の新たなワークピースを有するスピンドルが加工位置に移動するように、ワークピースキャリア20はC3軸の周りに180°旋回される。旋回プロセスの前及び/又は間に、歯合せ動作が、関連付けられた歯合せプローブを用いて実行される。このために、ワークピーススピンドル21が回転され、ワークピース23の歯溝の位置が、歯合せプローブ24を用いて測定される。転がり角が、これに基づいて求められる。
【0053】
加工対象のワークピース23を保持するワークピーススピンドルが加工位置に到達すると、ツールキャリア12をX軸に沿って移動させることによって、ワークピース23は、研削ウォーム16と衝突することなく噛み合わされる。ワークピース23は、この時、転がり噛み合いした研削ウォーム16によって加工される。加工中に、ワークピースは、半径方向Xの送りを一定として、Z軸に沿って連続的に前進される。加えて、ツールスピンドル15は、研削ウォーム16の未使用のエリアを連続的に加工に使用するために、ゆっくりと且つ連続的にシフト軸Yに沿って移動される(いわゆるシフト移動)。
【0054】
ワークピース加工と並行して、完成したワークピースは、もう1つのワークピーススピンドルから取り除かれ、別の未加工部材がこのスピンドルにクランプされる。
【0055】
一定数のワークピースを加工した後、研削ウォーム16を使用し続けたことにより、研削ウォームの切れ味が過度に悪くなり及び/又は歯面の形状が過度に不正確になった場合には、研削ウォームはドレスされる。このために、ワークピースキャリア20は、ドレス装置30が研削ウォーム16と対向する位置に達するように±90°旋回される。このとき、研削ウォーム16は、ドレスツール33を用いてドレスされる。
【0056】
[試験サイクル]
加工が中止されている間に、監視装置44は機械コントローラー42と連携して試験サイクルを実行し、機械1の個々のコンポーネント又は全てのコンポーネントの状態が調べられる。そのような試験サイクル中に、選択された一部の機械軸又は全ての機械軸が系統的に作動され、機械に対する測定が行われる。
【0057】
例えば、直線的に移動可能なコンポーネントのそれぞれが、関連付けられた機械軸とともに移動し、そのコンポーネントの現在の瞬間的な位置が、上述の位置センサーを用いて連続的に又は選択された位置について求められる。この処理から、仕様(公称位置)と測定(実際の位置)との間の位置偏差が求められ、監視装置44に送信される。同じことが、回転駆動されるスピンドルについても行うことができ、その場合には、回転角センサーが位置偏差を求めるのに使用される。
【0058】
選択されたコンポーネント(特にスライド及びスピンドル)の振動挙動も、該当するコンポーネントが割り当てられた機械軸によって駆動されている間に求められる。これらのコンポーネントに接続された振動センサーが、このために使用される。振動測定の結果も、監視装置44に送信される。
【0059】
さらに、機械軸の駆動モーターの消費電力が求められる。例えば、軸モジュール41内に組み込まれた電流センサーを、このために使用することができる。加えて、駆動モーターの温度及び他の測定量も求めることができる。
【0060】
この全ては、1つの機械軸が単独で作動されている間に行うことができる。ただし、2つ以上の機械軸が同時に作動されるときの機械の挙動が記録されるように、2つ以上の機械軸を組み合わせて作動させることも可能である。この場合に、例えば、単一の機械軸が作動するときの振動挙動のみに基づいて予想されるよりも大きな振動が増幅されて発生する可能性もあるし、2つの機械軸が同期して作動するときにのみ求めることができるコントローラーのエラーが検出される可能性もある。
【0061】
加えて、機械の減衰挙動を調査するために、意図的に振動を発生させ、様々な機械コンポーネントの応答を記録することが考えられる。そのような調査から、機械コンポーネント間の接合部の品質に関する結論を得ることができる。特に、自動周波数応答測定を行うことができる。
【0062】
監視装置44は、受信された測定データから様々な状態データを求める。これらの状態データによって、機械又はその個々のコンポーネントの状態についての直接又は間接的な結論を得ることが可能になる。
【0063】
状態データは、測定データから選択することにより及び/又は測定データを数学的に処理して分析することによって得られる。状態データのいくつかの例は、以下に示されている。
【0064】
a)基本インジケーター
単一のセンサーからの信号を選択又は数学的に分析することによって得られ、単一のコンポーネントの状態に関する結論を導き出すことを可能にする特定のタイプの状態データを、以下では基本インジケーターと称する。
【0065】
基本インジケーターの一例は、位置偏差インジケーターである。これは、例えば、異なる公称位置における同じコンポーネントについての、単一の測定された位置偏差又はいくつかの測定された位置偏差の平均とすることができる。位置偏差インジケーターは、関連するコンポーネントの位置決め精度を直接的に示す。
【0066】
別の例は、移動プロセス中の駆動モーターの最大電流消費である。この最大電流消費は、例えば、関連する機械軸の過度の摩擦又はジャミングに関する結論を導き出すことを可能にする。
【0067】
第3の例は、移動プロセス中の振動センサーからの信号の平均振幅(例えばRMS値)である。平均振幅は、コンポーネントの振動傾向に関する直接的な結論を導き出すことを可能にする。
【0068】
単一の移動プロセスの振動信号のスペクトル分析から求められる特定の振動インジケーターも基本インジケーターと称することができる。具体的には、選択された離散的な励起周波数又は励起次数におけるスペクトル強度を求めることができる。これらの強度は、基本インジケーターとして直接機能することもできるし、これらの強度から、簡単な数学的演算、例えば、加算又は平均によって基本インジケーターを計算することもできる。
【0069】
これは、ツールスピンドルに接続された振動センサーからの時間信号と、フィルタリング及びFFT演算によって時間信号から取得することができるスペクトルとを例として、図2に示されている。監視装置は、例えば、時間信号からRMS振幅を計算することができる。監視装置は、複数の離散的な周波数値の近くのスペクトルを評価して、それらの周波数値におけるスペクトルの強度を求めることもできる。これらの離散的な周波数値は、例えば、ワークピース回転速度の特定の倍数(「次数」)とすることができる。図2のスペクトルは、そのような周波数値におけるいくつかの明確に視認できるピークを含む。
【0070】
例えば、ツールの回転速度及びその整数倍(すなわち、整数次数)における強いピークは、ツールスピンドルにおける偏心を示す可能性がある。ツールの回転速度の特定の整数倍又は非整数倍(整数次数又は非整数次数)におけるピークは、ツールスピンドルにおけるベアリングの損傷を示す可能性がある。ベアリングの次数が知られている場合には、影響を受けるベアリングをピークの次数から特定することが可能な場合がある。場合によっては、個々の欠陥パターンへの割り当ては、鑑別診断によってのみ行うことができる。例えば、ピークの相互の相対強度比を分析するだけで、機械のどのコンポーネントがピークの原因であるかについての結論を導き出すことを可能にすると考えられる。
【0071】
最も単純なケースでは、特定の周波数の範囲又は次数の範囲におけるピークの強度を単に加算するだけで、コンポーネント全体の包括的な基本インジケーターを取得することができる。これは、コンポーネントの状態不良の個々の原因(偏心又はベアリング損傷等)に関する結論を導き出すことを可能にするものではないが、最初の段階で当該コンポーネントの故障を検出し、適切な保守対策を開始するには十分なものとすることができる。
【0072】
個々のピークの強度を求め、それらを基本インジケーターとして使用する代わりに、完全なスペクトルの全ての値を状態量として使用することも考えられる。
【0073】
b)特定インジケーター
特定インジケーターは、種々のソース(特に、種々のセンサー)からの測定量、又は2つ以上の機械軸が作動されるとき、例えば、機械軸が連動して動作するときの単一のセンサーからの測定量の数学的組み合わせ又はアルゴリズム的組み合わせから得られる状態データとすることができる。そのような状態のインジケーターは、問題の状態の原因に関する非常に具体的な結論を導き出すことを可能にすることができるが、機械の個々のコンポーネントの相互作用に関する具体的な知識を必要とする。
【0074】
そのような特定インジケーターの一例は、一方において直線軸の駆動モーターの平均電流消費と、他方において広い周波数範囲にわたる加速度センサーのスペクトル強度とを含む計算から得られる状態量である。そのようなインジケーターは、例えば、該当する直線軸の摩擦増加の原因(例えば、摩耗したボールスクリュー駆動部)を絞り込むことを可能にすることができる。
【0075】
そのような特定インジケーターの別の例は、以下の計算を行うことによってツールスピンドル及びシフトスライドの連動した動作について求められる状態量である。
【数1】
ここで、ΔφWZは、研削ウォームの回転角の変化を示し、mは、研削ウォームの歯直角モジュールを示し、zは、研削ウォームの条数を示し、γは、研削ウォームのリード角を示し、ΔYは、シフト距離を示す。回転角の変化ΔφWZ及びシフト距離ΔYは、量ZSFが0になるように選ばれる。その場合に、0からの偏差は、位置誤差(ラグ誤差)を示す。この点において、試験サイクルにわたるZSF又はZSFの最大値は、そのような位置誤差の特定インジケーターとみなすことができる。
【0076】
コンポーネントの全体的な評価のための全体的な状態インジケーターも、該当するコンポーネントを特徴付ける全ての状態データから形成することができる。このように、各コンポーネントの状態は、1つのインジケーターのみによって表される。1つの全体的な状態インジケーターが問題を示している場合には、個々の状態量を使用してトラブルシューティングを実行することができる。
【0077】
そのような特定インジケーターの計算を可能にする相関は、多くの場合に、多くの機械にわたる非常に大きなデータセットのデータ分析(例えば、既知の損傷パターンと割り当てられた基本インジケーターとの相関分析)によってのみ明らかになる。特定インジケーターは、多くの場合に、特定のタイプの機械に固有のものであり、他のタイプの機械に容易に転用することができない。
【0078】
[データベース]
次に、図3を参照してデータベースDBの機能を説明する。監視対象の機械1及び複数の同様の機械2、3、...、nは、ウェブサーバー47を介して、サービスサーバー45と、データベースDBを有するデータベースサーバー46とに接続されている。
【0079】
これらの機械のそれぞれは、それぞれの機械の動作中に、特定のデータをデータベースDBに連続的に送信する監視装置を備える。このデータは、特に、機械の一意の識別子と、タイムスタンプと、上述したとおりの複数の状態データとを含む。このデータは、任意選択で、更なるデータ、例えば、試験サイクルに続いて処理されるワークピースに関するデータ、例えば、達成されたワークピース品質のインジケーターも含めることができる。
【0080】
これらのデータは、データベースDBに記憶される。その結果、時間の経過とともに、データベースは、多くの異なる試験サイクルにおいていくつかの同様の機械について得られた非常に大量の状態データを収容する。これらの状態インジケーターは、以下では基準状態データと称する。
【0081】
[基準状態インジケーターの評価]
基準状態量は、統計的に評価することができる。そのような統計的評価は、特に、基準状態量の典型的な変動挙動を把握し、これに基づいて、監視対象の機械の状態量の許容限界を規定するために行うことができる。機械のライフサイクルにわたる状態量の変化も統計的に評価することができ、特定の機械の現在の状態量をデータベースに記憶された基準状態量と比較して、例えば、コンポーネント摩耗の兆候を自動的に得ることができる。
【0082】
これについては、いくつかの例を使用して以下でより詳細に説明する。
【0083】
a)許容限界の自動化設定
図4を参照して、以下は、データベース内のデータを用いて、監視対象の機械1の状態データの許容限界を、どのように設定することができるのかの一例である。対応する計算は、サービスサーバー45によって実行することができる。
【0084】
データベースは、多くの同様の機械における多数の試験サイクルの基準状態データの値を含む。これらの値は、大部分が、欠陥なく動作していた機械について取得されたものであると仮定することができる。なぜならば、欠陥は、通常、遅かれ早かれいつかは検出され、除去されるからである。この点において、基準状態データの値は、摩耗したコンポーネントを有する機械に起因する統計的な異常値は僅にあるだけで、本質的に、欠陥のない機械について予想されるとおりの統計的な分布をしていると仮定することができる。
【0085】
図4は、任意のタイプの基準状態データの値の分布の一例を示している。横軸には、基準状態データの値がプロットされ、縦軸には、棒グラフとして、等しい値の間隔(「ビン」)の相対頻度がプロットされている。本例における基準状態データの値の分布は本質的に正規分布に対応し、その密度関数も図4に点線でプロットされていることがわかる。図4の分布は、期待値μと、標準偏差σ又は分散σ とをそれぞれ有する。
【0086】
「期待値」という用語は、ここでは、「サンプル平均値」という用語と同義的に使用される。「分散」という用語は、ここでは、サンプル平均値からのサンプルの値の平均二乗偏差を示すのに使用される。「標準偏差」は、分散の平方根である。
【0087】
この統計分布に基づいて、監視対象の機械の対応する状態データの下側許容限界LL及び上側許容限界ULを自動的に求めることができる。このために、適切な密度関数(ここでは、正規分布の密度関数)を基準状態データの値の分布にあてはめて、期待値μ及び標準偏差σが求められる。実際には、このあてはめは、より多くの基準状態データがデータベースに存在するほど、より正確な結果が得られる。期待値μを中心に対称的な範囲[μ-p・σ,μ+p・σ]として許容範囲を規定することができる。ここで、係数pは、許容限界が期待値から標準偏差の何倍離れているのかを示す正の実数である。よく知られているシックスシグマ6σ(ただし、これは、通常、異なる目的に使用されるものである)によると、例えば、p=6を選ぶことができる。顧客の要求する公差がそれほど厳しくない場合には、より大きな係数pを選ぶことができる。
【0088】
将来の各試験サイクルにおいて、サービスサーバー45は、その時、該当する状態データを許容限界LL、ULと比較する。図2には、そのような許容限界が、いくつかのタイプの状態データについて概略的に描かれている。状態データの値が許容範囲から外れるとき、サービスサーバー45は、適切なアクションを誘発する。例えば、サービスサーバー45は、SMS、プッシュメッセージ、又は電子メールを保守要員に送信することができる。任意選択で、サービスサーバーは、将来の加工動作に影響を与えることもできるし、機械1における加工を一時的に停止することもできる。
【0089】
b)状態クラスの定義
コンポーネントの状態のより差別化された評価を行うことができるように、基準状態データの値を2つ、3つ、4つ又はそれよりも多くの状態クラスに分類することが考えられる。これは、単に値そのものに基づいて行うこともできるし、更なる情報に基づいて行うこともできる。例えば、基準状態データを分析すると、基準状態量が「より良好な」値を突然示す時点が常に存在することを示すことができる。その場合に、この突然の改善は、コンポーネントの保守又は交換の結果であると結論付けることができる。
【0090】
そのような事象は、基準状態データの全体において容易に特定することができ、そのような事象の直後の一定数の試験サイクルの基準状態データの値は、新品状態を示すクラスAに分類することができる。他方で、そのような事象の直前の一定数の試験サイクルの基準状態データの値は、危険状態を示すクラスCに分類することができる。クラスAとクラスCとの間の基準状態データの値は、平均的な使用状態を示すクラスBにソートすることができ、クラスCの値よりも「不良な」状態データの異常値は、欠陥状態を示すクラスDに分類することができる。
【0091】
様々な状態クラスへの分類は、基準状態データの値の突然の変化以外の基準に基づくこともできる。例えば、コンポーネントを用いて既に行われた加工動作の数に関する情報、該当するコンポーネントの稼働時間に関する情報、又は検査サイクル後に機械を用いて製作されたワークピースの品質に関する情報を、データベースに直接記憶しておくことが考えられる。その後、この情報を考慮に入れて、状態クラスへの分類を行うことができる。対応する分類は、例えば、機械学習アルゴリズム(MLアルゴリズム)を用いて行うことができる。
【0092】
基準状態データの値を、状態クラスのそれぞれについて個別に、統計的に分析することができる。例えば、期待値及び分散を状態クラスごとに個別に求めることができる。
【0093】
コンポーネントの摩耗状態に関する結論を導き出すために、状態量の現在の値を、例えば、様々な状態クラスの対応する基準状態量の期待値と比較することができる。
【0094】
c)いくつかの試験サイクルからの状態データの考慮:外挿及び統計分析
種々の試験サイクルからの状態データの値を考慮することによって、単一の値を考慮する場合よりも、いっそう適切にコンポーネントの状態を特徴付けることが可能である。
【0095】
図5は、時間の関数として又は連続する試験サイクルの関数として、状態量Zの値の一例を示している。Zの値は、試験サイクルごとに変化する。最初は、Zの値は、値μを中心に変動する。この値は、状態クラスAの対応する基準状態量の期待値である。したがって、状態が状態量Zによって特徴付けられたコンポーネントは、最初は、ほぼ新品の状態にあると結論付けることができる。しかしながら、時間とともに、Zの瞬時値は増加し、最初に、状態クラスBの対応する基準状態量の期待値であるμの値に達し、その後、状態クラスCの対応する基準状態量の期待値であるμの値に達する。したがって、該当するコンポーネントは、平均的な使用状態から危険状態に変化したと結論付けることができる。コンポーネントの故障の時期を予測するために、将来に対してZの値の外挿を行うことができる。これは、例えば、回帰分析によって行うことができる。図5には、一例として、2次回帰曲線が破線曲線として描かれている。予測される故障時期tは、この場合に、例えば、この曲線が状態クラスDの通常の値の範囲に達する時点であると推定することができる。このタイプの分析によって、コンポーネントが故障する前に、その予測保守が可能になる(「予測保守」)。
【0096】
いくつかの試験サイクルにわたって状態量の値を求めて、このように収集された値の全体の統計分析を行い、これらの値の分布を基準状態量の値の分布と比較することも考えられる。
【0097】
最も簡単な場合には、収集された値から状態量の瞬間的な期待値を単に求めて、基準状態量の期待値と比較することができる。「瞬間的な期待値」は、一定数の試験サイクルにわたる期待値である。
【0098】
期待値を比較する代わりに、他の統計パラメーターを比較することができる。例えば、状態クラスのそれぞれについて、基準状態量の値の対応する分散又は標準偏差を求めることができる。多くの場合に、コンポーネントが摩耗するにつれて、対応する状態量の期待値が変化するだけでなく、その分散も増加する。したがって、分散又は標準偏差を監視することによって、コンポーネントの摩耗状態に関する結論を導き出すことが可能になる。
【0099】
これは、図6に例示的に示されている。図6には、状態量の瞬間的な標準偏差σの時間的経過がプロットされている。時点t付近で標準偏差が突然強く増加し、状態クラスDにおける基準状態量の標準偏差にほぼ対応することを見て取ることができる。これは、対応するコンポーネントの突然の故障を示している。
【0100】
この場合に、統計パラメーターの「標準偏差」又は「分散」を監視することによって、対応する状態量の期待値が全く変化していない場合であっても、コンポーネントの故障の兆候を示すことができる。この点において、統計分析によって、個々の値しか監視されていない場合よりもはるかに高い信頼性で、コンポーネントの差し迫った故障又は実際の故障を検出することが可能になる。
【0101】
上述した種類の簡単な統計分析の代わりに、コンポーネントの状態に関する結論を導き出すために、例えば、特定の状態量のセットを基準状態量と相関させる分類アルゴリズムも使用することができる。この場合も、MLアルゴリズムをこのために使用することができる。
【0102】
d)結果の出力及び可視化
自動コンポーネント診断の結果は、例えば、各コンポーネントの状態が、緑(良好)、黄(要注意)又は赤(不良)として個別に評価される交通信号システムを用いて容易に可視化することができる。コンポーネントの状態に応じて、機械全体の状態の評価を同様に行うことができる。これによって、機械及びそのコンポーネントの状態の概要を非常に簡単に把握することができる。「予測保守」の意味で、差し迫った故障の兆候も出力することができる。
【0103】
コンポーネントのうちの1つをクリックすることによって、対応する評価をもたらした関連するデータを簡単に可視化することができる。
【0104】
可視化は、ウェブブラウザーを介して任意のエンドデバイス上で、プラットフォームに依存することなく行うことができる。他の評価の尺度も、それに対応してプラットフォームに依存することなく備えることができる。これによって、遠隔であっても分析が容易になる。特に、任意の機械の状態をクラウドを介して任意のモバイルデバイスから詳細に確認することができる。
【0105】
加えて、上記で既に説明したように、介入を必要とする状況が存在するときは、対応するメッセージを、SMS、プッシュメッセージ又は電子メールを介して自動的に送信することが考えられる。
【0106】
[フローチャート]
図7は、創成研削盤の状態を監視する方法を要約した一例示的なフローチャートを示している。
【0107】
ブロック110において、状態量の許容限界が最初に規定される。このために、比較可能な加工状況の基準状態量が、ステップ111においてデータベースから取り出され、ステップ112において統計分析される。この統計分析に基づいて、許容限界がステップ113において設定される。
【0108】
次いで、ブロック120において、試験サイクルが、これらの許容限界を使用して、その後の状態診断とともに実行される。機械のコンポーネントが移動され(ステップ121)、このプロセス中、測定データが連続的に取得される(ステップ122)。測定データから状態量が生成され(ステップ123)、記憶するためにデータベースに送信される(ステップ124)。ステップ125において、状態量が許容限界と比較され、この比較に基づいて、例えば、コンポーネントの状態評価のグラフィック出力などのアクションが誘発される。
【0109】
ブロック130において、機械コンポーネントの将来の故障が予測される。このために、現在の状態量が外挿され、将来の状態量が得られる(ステップ131)。ステップ132において、外挿結果が、基準状態量の統計値又は許容限界と比較され、この比較に基づいて、例えば、故障の予測時刻の出力などのアクションが誘発される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】