(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】浮遊画像用のスプライスディスプレイ装置及びそれを備えた多層表示機器
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20241008BHJP
【FI】
G02B30/56
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521182
(86)(22)【出願日】2022-10-08
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 CN2022123759
(87)【国際公開番号】W WO2023056921
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】202111172371.4
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522294453
【氏名又は名称】上海誉沛光▲電▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI YUPEI PHOTOELECTRIC TECHNOLOGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛磊
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199BA07
2H199BA17
2H199BA20
2H199BA32
2H199BA63
2H199BB01
2H199BB04
2H199BB06
2H199BB08
2H199BB12
2H199BB14
2H199BB20
2H199BB32
2H199BB52
2H199BB59
(57)【要約】
本発明は、浮遊画像用のスプライスディスプレイ装置及び当該スプライスディスプレイ装置を含む多層表示機器に関する。当該スプライスディスプレイ装置は、表示面上にターゲット画像を構成する表示光を発するように配置された表示モジュールと、表示光を受けて空中に浮遊画像を形成するように配置された複数の光学結像モジュールと、光をy方向において発散させるための一次元散乱スクリーンと、を備え、複数の光学結像モジュールのそれぞれは、表示面からのポイント光ビームがy方向において一次元散乱スクリーン上に収束されるための第1の一次元共役結像素子と、表示面からのポイント光ビームが、x方向において一次元散乱スクリーンが位置する平面とは異なる浮遊画像面に収束されるための第2の一次元共役結像素子とを含み、x方向およびy方向は、光学結像モジュールの主光軸にそれぞれ直交する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面上にターゲット画像を構成する表示光を発するように配置された表示モジュールと、
前記表示光を受けて空中に浮遊画像を形成するように配置された複数の光学結像モジュールと、
光をy方向において発散させるための一次元散乱スクリーンと、を備え、前記複数の光学結像モジュールのそれぞれは、
前記表示面からのポイント光ビームがy方向において前記一次元散乱スクリーン上に収束されるための第1の一次元共役結像素子と、
前記表示面からのポイント光ビームが、x方向において一次元散乱スクリーンが位置する平面とは異なる浮遊画像面に収束されるための第2の一次元共役結像素子とを含み、前記x方向および前記y方向はそれぞれ、前記光学結像モジュールの主光軸に直交する、ことを特徴とする浮遊画像用のスプライスディスプレイ装置。
【請求項2】
前記第1の一次元共役結像素子は主光軸に沿って前記表示面と前記第2の一次元共役結像素子との間に設けられ、
前記第1の一次元共役結像素子と前記第2の一次元共役結像素子とは、相対的に平行して設けられ、
前記第1の一次元共役結像素子のマイクロ構造ユニットと前記第2の一次元共役結像素子のマイクロ構造ユニットとは、直交して設けられ、および/あるいは
前記表示モジュールの表示面と前記一次元散乱スクリーンとが互いに平行して設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項3】
前記表示面から前記第1の一次元共役結像素子までの光路はaであり、前記表示面から前記第2の一次元共役結像素子までの光路はbであると、b≦2aを満たす、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項4】
前記表示モジュールは、複数の表示ユニットによりスプライスして構成されているか、または前記表示モジュールは、複数の個別の表示領域を有している、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項5】
前記複数の光学結像モジュールのx方向の像高さはx方向の物高さに等しい、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項6】
前記表示面に表示された前記ターゲット画像と前記浮遊画像面に現れた浮遊懸画像とは、正立結像関係である、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項7】
前記複数の光学結像モジュールは同じ構造を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項8】
前記一次元散乱スクリーンと前記第1の一次元共役結像素子との間の光路は、前記表示面と前記第1の一次元共役結像素子との間の光路にほぼ等しい、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項9】
前記表示面と前記浮遊画像面とは、前記第2の一次元共役結像素子に対してほぼ対称に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項10】
前記複数の光学結像モジュールのうちの少なくとも1つの光学結像モジュールは、x方向の光線を制限するのではなく、y方向に前記少なくとも1つの光学結像モジュールを通過する光線の高さを制限するための一次元開口絞りを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項11】
前記複数の光学結像モジュールは、前記y方向にミラーリングして設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項12】
前記複数の光学結像モジュールのうちの少なくとも1つの光学結像モジュールは、分光平板をさらに備え、前記第1の一次元共役結像素子と前記第2の一次元共役結像素子は、再帰反射スクリーンであり、前記表示光は前記分光平板により反射された後に前記第1の一次元共役結像素子に入り、前記第1の一次元共役結像素子により反射された後に更に前記分光平板により透過されて前記第2の一次元共役結像素子に入り、前記第2の一次元共役結像素子により反射された後に前記分光平板により反射された後に、前記浮遊画像面上に前記浮遊画像として形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの光学結像モジュールにより前記一次元散乱スクリーンに結像されたy方向の像高さは、前記第1の一次元共役結像素子と前記第2の一次元共役結像素子との間隔以上である、ことを特徴とする請求項2に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項14】
前記第1の一次元共役結像素子と前記第2の一次元共役結像素子との間隔は、200mmより小さい、ことを特徴とする請求項13に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項15】
前記分光平板は、前記第1の一次元共役結像素子と前記第2の一次元共役結像素子との間に傾斜して設けられ且つ前記表示面と前記浮遊画像面との間にあり、前記分光平板は偏光分光平板であり、前記少なくとも1つの光学結像モジュールは、
前記第1の一次元共役結像素子と前記分光平板との間に設けられた第1の位相遅延板と、
前記第2の一次元共役結像素子と前記分光平板との間に設けられた第2の位相遅延板と、を備える、ことを特徴とする請求項12に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項16】
前記第1及び第2の位相遅延板は、光軸方向と前記再帰反射スクリーンのマイクロ構造ユニットの延びる方向との間の角度が22.5°または67.5°となる1/2λ波長板である、ことを特徴とする請求項15に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項17】
前記複数の光学結像モジュールのうちの少なくとも1つの光学結像モジュールは、予め定められた角度範囲を通過する光線に用いられたフィルタ素子をさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項18】
前記一次元散乱スクリーンは、全体の散乱スクリーンであるか、または複数の個別の散乱スクリーンから構成される、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項19】
前記スプライスディスプレイ装置は、前記主光軸に沿って前記複数の光学結像モジュールと前記一次元散乱スクリーンとの間に設けられた少なくとも1つの光線偏向ユニットをさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項20】
少なくとも1つの光線偏向ユニットは、フレネルレンズを備える、ことを特徴とする請求項19に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項21】
前記スプライスディスプレイ装置は、前記主光軸に沿って前記一次元散乱スクリーンと前記浮遊画像面との間に設けられたレンズアレイをさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項22】
前記表示モジュールは、三次元ディスプレイである、ことを特徴とする請求項1から請求項21のいずれか一項に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項23】
請求項1から請求項22のいずれか一項に記載のスプライスディスプレイ装置と、
前記スプライスディスプレイ装置の光学的下流に設けられ、表示面が前記浮遊画像面と異なる位置にある透明表示装置と、を備える、ことを特徴とする多層表示機器。
【請求項24】
前記透明表示装置は、透明ディスプレイを備えるか、または画像を透明/半透明フィルムに投影することにより実現される、ことを特徴とする請求項23に記載の多層表示機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施例は、全般的に光場三次元表示技術に関し、より具体的には、浮遊画像用のスプライスディスプレイ装置及び当該スプライスディスプレイ装置を備えた多層表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの表示技術の中で、空中浮遊ディスプレイ技術は画像を空気の中に表現することができ、視聴者に強烈な視覚衝撃と本物でも偽物でもある感覚体験を与えることができるため、多くの研究者の注目を集めている。
【0003】
従来の浮遊表示技術には主に以下の3つのカテゴリがある。第1のカテゴリは伝統的な光学レンズ結像、例えば凹面反射鏡プラス分光鏡の構造であり、当該光学構造はこのような表示システムが最初に提案した方案である。照明された実際の物体またはLCDにより表示された内容は、分光鏡により反射されて凹面反射鏡に入り、光線は凹面反射鏡の収束作用を経て再び分光鏡を通過した後、その反対側に結像される。このとき、観察者は空中浮遊の映像を見ることができる。この技術方案の浮遊画像の結像サイズは小さく、歪みなどの収差は深刻である。第2のカテゴリは集成結像原理を利用することである。このような方式はマイクロレンズアレイといくつかの画像セルアレイから構成され、画像セルにおいて同一の画像情報を表示する点から発せられた光線が、対応するマイクロレンズを通過して空間中に収束されて浮遊像点を形成する。このような方式の利点は、表示装置の厚さが超薄型であり、厚さは基本的にディスプレイの厚さであることである。欠点は分解率が低く、コストが高いことである。
【0004】
第3のカテゴリは特殊なマイクロ構造で構成された「負屈折率スクリーン」を用いて浮遊結像を行い、主に以下のいくつかの種類がある。a.逆反射構造プラスビームスプリッタであり、当該構成は、主にガラス微小ビーズまたはマイクロプリズムアレイから構成された。この構造により、反射光線と入射光線とが互いに平行で方向が逆の効果を得ることができる。表示源から発せられた光線はビームスプリッタを介して逆反射構造に入射し、逆反射構造を通過した反射光線は、入射光線の反対方向に沿って再びビームスプリッタを通過して、その反対側に収束して結像される。b.二層平面鏡アレイであり、この方案は、上下二層平面鏡アレイから構成され、2層間の平面鏡ユニットが互いに垂直である。表示源から発せられた光線が当該平面鏡アレイで反射された後に、もう一つ側で収束して結像される。c.マイクロ凸台構造アレイであり、この方案はマイクロ凸台構造アレイで構成され、表示源から発せられた光線がマイクロ凸台構造の2回の反射を経て、もう一つ側で収束して結像される。このような技術案の利点は、収差がないことである。欠点はゴースト像が存在し、「負屈折率スクリーン」は加工コストが高く、システムの体積が大きいことである。
【0005】
シーンのニーズに応じて、浮遊画像の必要なサイズが異なる。従来技術では、上記のような様々な浮遊表示技術が存在するが、浮遊表示装置に表示された浮遊画像のサイズは一般的にメーカー設計段階で限定され、使用時に調整できない。
【0006】
このように、ユーザが異なるアプリケーションシーンに基づいて異なるサイズの浮遊画像を表現させることを望む場合、通常は異なるサイズの浮遊ディスプレイ装置を購入する必要がある。浮遊ディスプレイ装置のメーカーにとっては、異なるユーザニーズに対して異なる浮遊表示装置(特に異なるサイズの画像表示ユニットに適合するために異なる光学システムを設計する)を設計し、1つずつ適合させる必要があり、それによって大きな人手と材料資源が消費される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の例示的な実施例は、従来技術における上記および/またはその他の問題点を克服するためになされたものであり、特に、単一のモジュラー設計を利用して様々なサイズの浮遊画像のシームレスなスプライスを実現することができる同時に、より低い製造コストとよりコンパクトな光学レイアウトを有することができる浮遊画像用のスプライスディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
具体的には、本発明の例示的な実施例は表示面上にターゲット画像を構成する表示光を発するように配置された表示モジュールと、前記表示光を受けて空中に浮遊画像を形成するように配置された複数の光学結像モジュールと、光をy方向において発散させるための一次元散乱スクリーンと、を備え、前記複数の光学結像モジュールのそれぞれは、前記表示面からのポイント光ビームがy方向において前記一次元散乱スクリーン上に収束されるための第1の一次元共役結像素子と、前記表示面からのポイント光ビームが、x方向において前記一次元散乱スクリーンが位置する平面とは異なる浮遊画像面に収束されるための第2の一次元共役結像素子とを含み、前記x方向および前記y方向はそれぞれ、前記光学結像モジュールの主光軸に直交する、ことを特徴とする浮遊画像用のスプライスディスプレイ装置を提供する。
【0009】
上記の例示的実施例によるスプライスディスプレイ装置では、表示モジュールと複数の結像モジュールによって空中に浮遊画像が形成されると同時に散乱スクリーンを利用して第2の方向に大きな視角範囲を形成することができるため、大きいサイズの浮遊表示を実現することができる。このようなスプライスディスプレイ装置は、特定のサイズの浮遊画像に対して異なる光学結像システムを設計する必要はなく、必要な浮遊画像の大きさに応じて表示モジュール、適切な数量の結像モジュール、散乱スクリーンを選択するだけであり、また小さいサイズの光学素子は大きいサイズの光学素子よりも加工しやすいため、異なるサイズの浮遊表示を実現することに対して明らかにコストを低減した。また、このようなスプライスディスプレイ装置は、従来技術における大きいサイズの浮遊表示装置よりも明らかに厚みが減少し、よりコンパクトになっている。
【0010】
本発明の別の例示的な実施例によれば、上記の例示的な実施例によるスプライスディスプレイ装置と、前記スプライスディスプレイ装置の光学的下流に設けられ、表示面が前記浮遊画像面と異なる位置にある透明表示装置と、を備える、ことを特徴とする多層表示機器を提供する。
【0011】
他の特徴および態様は、以下の詳細な説明、図面、および請求項によって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、本発明の例示的な実施例について添付の図面を参照しながら説明することによって、より本発明をよりよく理解されるであろう。添付の図面において、
【0013】
【
図1】本発明の実施例による浮遊画像用のスプライスディスプレイ(Splice Display)を示す模式的ブロック図である。
【
図2】本発明の実施例による一次元散乱スクリーンを含むスプライスディスプレイを示す模式図である。
【
図3】本発明の実施例による光学結像モジュールと一次元散乱スクリーンの第1の方向と第2の方向においてのそれぞれの光線伝搬を示す原理模式図である。
【
図4】表示モジュール上の画素点が複数の光学結像モジュールを通って第1の像面における同一点に結像されることを示す模式図である。
【
図5】一次元再帰反射スクリーンの例示的構造を示す。
【
図6】本発明の選択可能な実施例による光学結像モジュールの模式的ブロック図である。
【
図7】再帰反射スクリーンの二次反射光線と一次反射光線を示す模式図である。
【
図8】本発明の選択可能な実施例による光学結像モジュールを示す模式的ブロック図である。
【
図9】超マイクロルーバー構造を示す構造例である。
【
図10】本発明のもう一つの選択可能な実施例による光学結像モジュールを示す模式的ブロック図である。
【
図11】再帰反射スクリーンの一次反射光線を示す模式図である。
【
図12】本発明のもう一つの選択可能な実施例による光学結像モジュールを示す模式的ブロック図である。
【
図14】本発明の好ましい実施例によるスプライスディスプレイ装置を示す模式的構造図である。
【
図15】本発明の実施例による多層表示機器を示す模式図である。
【
図16】マイクロ投影により実現される透明表示装置を示す模式図である。
【
図17】多層表示機器により裸眼3D表示が実現されることを示す模式図である。
【
図18A】三次元ディスプレイを用いた表示モジュールを示す説明的模式図である。
【
図18B】三次元ディスプレイを用いた表示モジュールを示す説明的模式図である。
【
図18C】三次元ディスプレイを用いた表示モジュールを示す説明的模式図である。
【
図19】選択可能の光線偏向ユニットを含むスプライスディスプレイ装置を示す模式図である。
【
図20】選択可能のレンズアレイを含むスプライスディスプレイ装置を示す模式図である。
【
図21】選択可能のマイクロレンズアレイを含むスプライスディスプレイ装置の一部分を示す模式図である。
【
図22】選択可能でミラーリングして設けられた光学結像モジュールを含むスプライスディスプレイ装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明するが、これらの実施形態の具体的な説明において、簡潔に説明するために、本明細書では、実際の実施形態の全ての特徴を完全に説明することは不可能であることに留意されたい。理解されるべきことは、いずれかの実施形態の実際に実施される過程において、いずれかのエンジニアリングプロジェクトまたは設計プロジェクトの過程において、開発者の具体的な目標を達成するために、システム関連または商業関連の制約を満たすために、様々な具体的な意思決定が行われることがよくあるように、これもある実施形態から別の実施形態へと変化することがある。また、理解できるのは、このような開発には複雑で冗長な努力が必要であるかもしれないが、本発明に開示した内容に関連する当業者にとっては、本開示で開示された技術内容を基に行われる設計、製造又は生産等の変更の一部は既存の技術的手段に過ぎず、本開示の内容が不十分であると理解すべきではない。
【0015】
別段の定義がない限り、特許請求の範囲及び明細書において使用される技術用語又は科学用語は、当該発明が属する技術分野において一般的な技能を有する者が理解する一般的な意味を有するものでなければならない。本発明特許出願の明細書及び特許請求の範囲において使用されている「第1」、「第2」及び類似の語句は、いかなる順序、数量又は重要性を示すものではなく、単に異なる構成部分を区別するために使用されている。「1つ」や「1」などの類似語は数量制限を示すものではなく、少なくとも1つ存在することを示している。「備える」又は「含む」等の類似の語句は、「備える」又は「含む」の前にある素子又は物体が「備える」又は「含む」の後に列挙された素子又は物体及びその均等な素子を包含することを意味しており、他の素子又は物体を排除するものではない。「接続」や「つながる」などの類似の語句は物理的あるいは機械的な接続に限定するものではなく、直接的なものか間接的なものかに限定下するものでもない。「AはBにほぼ等しい」という語句は、プロセス製造における公差、すなわちAとBの数値が互いの±10%以内であることを考慮することを意味する。
【0016】
説明の便宜上、光は光路に沿って光ビームにおいて光学的な「上流」位置から光学的な「下流」位置へ伝搬すると考えられる。したがって、光路における光学素子の相対位置も、これら二つの用語で記述することができる。
【0017】
浮遊ディスプレイ装置は、通常画像表示ユニットと光学システムとを含み、その中、画像表示ユニットは直接表示または間接投影の方式を用いて光学システムの被写体面上に元の画像を表現し、その後、画像光が光学システムにより空中に浮遊画像として形成される。大きいサイズの浮遊表示を実現しようとすると、より大きな光学素子を加工する必要があり、これにより加工コストの急速な上昇と光学素子の精度の低下を招くことがある。そこで、画像表示ユニットと複数の光学システムを備え、空中に複数の浮遊子画像を形成し、複数の浮遊子画像をスプライスして完全な浮遊画像を形成する浮遊画像用のスプライスディスプレイ装置を提案した。この技術方案は、浮遊画像のシームレスなスプライスを実現すると同時に、低い製造コストを有し、浮遊ディスプレイ装置をよりコンパクトにすることができる。
【0018】
図1は本発明の実施例による浮遊画像用のスプライスディスプレイ(Splice Display)装置100を示す模式的ブロック図である。
図1を参照すると、本発明の実施例に係るスプライスディスプレイ装置100は、表示モジュール110と複数の光学結像モジュール120
1~nとを備えることができる。表示モジュール110は、ターゲット画像を構成する表示光を発するように配置されることができる。複数の光学結像モジュール120
1~nは、空中に浮遊画像を形成するように表示モジュール110から発せられた表示光を受光するように配置されることができる。各光学結像モジュール120
iは、被写体面10、第1の像面15、及び第2の像面20を画定する。表示モジュール110(特にその表示面)は、複数の光学結像モジュールの被写体面10に配置されている。表示モジュール110上の画素点から発せられた光線は、複数の光学結像モジュール120
1~nのうちの少なくとも1つの光学結像モジュールにより第1の像面15にy方向において収束され、第2の像面20にx方向において収束されることができる。
【0019】
本発明の実施例では、表示モジュール110は、複数の表示ユニットによりスプライスされて構成されてもよいし、単一の表示装置であってもよく、単一の表示装置は単一の完全な表示領域であってもよいし複数の個別の表示領域を有してもよく、このようにして、表示モジュール110は、y方向に沿って配列された複数の表示部を備えることができる。各表示部は、ターゲット画像の対応する部分を表示するように配置されることができる。表示モジュール110に表示されたターゲット画像と、複数の光学結像モジュール1201~nの浮遊画像面(すなわち、第2の像面20)に表現した浮遊画像とは、y方向において正立結像関係とすることができる。
【0020】
本発明の実施例によるスプライスディスプレイ装置100は、
図2に示すように、y方向に光を発散するように第1の像面15上に放置された一次元散乱スクリーン130をさらに備えることができる。本発明の実施例では、一次元散乱スクリーン130は、全体の散乱スクリーンであってもよいし、複数の個別の散乱スクリーンで構成されてもよい。本発明の一部分の実施例では、表示モジュール110の表示面は、一次元散乱スクリーン130と互いに平行して設けられることができる。
【0021】
図3は本発明の実施例による光学結像モジュール120と一次元散乱スクリーン130の第1の方向と第2の方向においてのそれぞれの光線伝搬を示す原理模式図である。光学結像モジュール120は、第1の一次元共役結像素子121と第2の一次元共役結像素子122とを備え、被写体面10、第1の像面15および第2の像面20を画定することができる。第1の一次元共役結像素子121は、被写体面10上の点(b1、o、b2)からの光束が第1の像面15上にy方向において収束されるように、第1の方向(y方向)に結像するためのマイクロ構造ユニットを有することができる。一次元散乱スクリーン130は、y方向に光線を発散するために第1の像面15上に配置されることができる。第2の一次元共役結像素子122は、被写体面10上の点(a1、o、a2)からの光束が第2の像面20上にx方向において収束されるように、第2の方向(x方向)に結像するためのマイクロ構造ユニットを有することができる。第1の一次元共役結像素子121のマイクロ構造ユニットと第2の一次元共役結像素子122のマイクロ構造ユニットとは、直交して設けられることができる。第1の方向及び第2の方向は、それぞれ光学結像モジュール120の主光軸に直交する。第1の一次元共役結像素子121は、主光軸に沿って、被写体面10と第2の一次元共役結像素子122との間に設けられることができる。第1の一次元共役結像素子121及び/又は第2の一次元共役結像素子122は、透過式であってもよく、反射式であってもよい。例として、第1の一次元共役結像素子121及び/又は第2の一次元共役結像素子122は、一次元再帰反射スクリーン、一次元格子透過アレイ、一次元ホログラフィック回折格子などであってもよい。このような共役結像素子を採用する利点は、位置関係(被写体と像)が共役であり、画像が拡大せず、収差がないことである。
【0022】
本発明のいくつかの実施例では、一次元散乱スクリーン130と第1の一次元共役結像素子121との間の光路は、被写体面10と第1の一次元共役結像素子121との間の光路にほぼ等しく、且つ、一次元散乱スクリーン130はy方向に光を発散することができる。あるいは、被写体面10から第1の一次元共役結像素子121までの光路(距離)をaとすることができ、被写体面10から第2の一次元共役結像素子122までの光路(距離)をbとすると、b≦2aを満たすことができる。浮遊画像の高さ(一次元散乱スクリーン130までの距離)は2*(b-a)である。あるいは、光学結像モジュール120の被写体面10と第2の像面20は、第2の一次元共役結像素子122に対してほぼ対称に設けられることができる。あるいは、第1の一次元共役結像素子121と第2の一次元共役結像素子122とは、相対的に平行して設けられることができる。あるいは、光学結像モジュール120は、x方向に光の通過を制限するのではなく、y方向に光学結像モジュール120を通過する光線の高さを制限するための一次元開口絞りを有してもよい。好ましく、第1の一次元共役結像素子121は、このような一次元開口絞りとして設けられることができる。
【0023】
図示するように、x方向において、被写体面10における被写体点a1、o、a2から発せられた光線は、第2の一次元共役結像素子122により第2の像面20上においてa1”、o”,a2”に結像される。y方向において、被写体点b1、o、b1から発せられた光線は、第1の一次元共役結像素子121により一次元散乱スクリーン130に結像されて、像点b1’、o’、b2’を形成する。像点b1’、o’、b2’の光線は、散乱スクリーン130によってy方向に散乱されることで、y方向に大きな視角範囲を形成する。光学結像モジュール120は、x方向の像高さ(第2の像面20上)がx方向の被写体高さ(被写体面10上)に等しくてもよく、また、y方向の像高さ(第1の像面15上)が、y方向の被写体高(被写体面10上)に等しくてもよく、y方向の被写体高さ(y方向拡大光学システムが存在する場合)よりも大きくてもよい。本発明の実施例では、複数の光学結像モジュール1201~nは、同じ構造を有してもよい。
【0024】
以上、本発明の例示的な実施例による浮遊画像用のスプライスディスプレイ装置100について説明した。この装置では、表示モジュールと複数の結像モジュールにより空中に浮遊画像が形成されると同時に散乱スクリーンを利用して第2の方向に大きな視角範囲を形成することができるため、大きいサイズの浮遊表示を実現することができる。このようなスプライスディプレー装置100は、特定のサイズの浮遊画像に対して異なる光学結像システムを設計する必要はなく、必要な浮遊画像の大きさに応じて表示モジュール、適切な数の結像モジュール、散乱スクリーンを選択するだけであり、また小さいサイズの光学素子は大きいサイズの光学素子よりも加工しやすいため、異なるサイズの浮遊表示を実現することに対して明らかにコストを低減した。また、このようなスプライスディスプレイ装置100は、従来技術における大きいサイズの浮遊表示装置よりも明らかに厚みが減少し、よりコンパクトになっている。
【0025】
x方向については、光学結像モジュールの物理的構造及び光学的特性はほぼ同じであってもよいので、光学素子のサイズをさらに小さくして加工を容易にするために、x方向においてもいくつかの組の上記スプライス表示装置によってさらにスプライスで形成されることができることが理解される。
【0026】
中心の視野の光線の受光テーパ角が大きく、エッジ光線の受光テーパ角が小さいため、個別の光学結像モジュール120iに対して、中心の輝度がエッジ輝度より大きく、輝度ムラを引き起こす可能性がある。輝度ムラの問題を効果的に改善するために、表示モジュール110上の画素点から発せられた光線を複数の光学結像モジュール1201~nにより同一点に結像させることができる。
【0027】
図4を参照すると、表示モジュール110の表示面における画素点(例えば、a、b、c、d、e、f)は、複数の光学結像モジュール120
1~n(
図4ではb、cが第1の光学結像モジュール120
1及び第2の光学結像モジュール120
2のみを示しているが、当業者は、画素点から発せられた光は、すべての複数の光学結像モジュール120
1~nによってと理解できる)により、第1の像面15(散乱スクリーン130がここに放置されている)における同一点(例えば、a1、b1、c1、d1、e1、f1)に結像される。
【0028】
本発明の選択可能な実施例では、複数の光学結像モジュール120
1~nのうちの少なくとも1つの光学結像モジュール120は、被写体面から発せられた光線を反射するための分光平板をさらに備える。分光平板の使用には、表示モジュールから発せられた光が人の目に直接的に入射されるのを阻止することと、光路を折り畳む(例えば、光学長さをz方向からy方向へ変換する)ことにより、光学モジュールの厚さを減少させることという利点がある。本発明の選択可能な実施例では、第1の一次元共役結像素子121と第2の一次元共役結像素子122は、再帰反射スクリーン(RMA)であってもよい。一次元再帰反射スクリーンの例は、
図5に示すように、一次元再帰反射スクリーンの表面に任意的に照射された光線は、一部分が元の角度に従って反射される。
【0029】
図6は本発明の選択可能な実施例による光学結像モジュールを示す模式的ブロック図である。図に示すように、表示面/被写体面10における表示光は、分光平板123により反射された後に、第1の一次元共役結像素子(一次元再帰スクリーン)121に入り、第1の一次元共役結像素子121により反射された後に、再び分光平板123により透過されて第2の一次元共役結像素子再帰スクリーン122に入り、第2の一次元共役結像素子122により反射された後に、再び分光平板123により反射された後に、第2の像面20に浮遊画像として形成されることができる。
【0030】
本発明の選択可能な実施例において、光学結像モジュール120の第1の像面15におけるy方向の像高さは、第1の一次元共役結像素子121と第2の一次元共役結像素子122との間の間隔以上である。例として、光学結像モジュール120の第1の像面15におけるy方向の像高さは、200mm未満であってもよく、第1の一次元共役結像素子121と第2の一次元共役結像素子122との間の間隔は200mm未満であってもよい。
【0031】
図6に示すように、本実施例では、分光平板123は、第1の一次元共役結像素子121と第2の一次元共役結像素子122との間に傾斜して設けられ且つ光学結像モジュール120の被写体面10と第1の像面15との間にあることができ、第1の一次元共役結像素子121と第2の一次元共役結像素子122とが相対的に平行して設けられることができる。光学結像モジュール120の被写体面10に配置された表示モジュール110(特にその表示面)と第1および第2の一次元共役結像素子121、122は互いに垂直に設けられることができ、分光平板123はそれぞれ表示面、第1の一次元共役結像素子121および第2の一次元共役結像素子122と角度で設けられることができ、45°角で設けられることが好ましい。
【0032】
選択可能な実施例では、一次元散乱スクリーン130と第1の一次元共役結像素子121との間の光路は、表示モジュール110と第1の一次元共役結像素子121との間の光路とほぼ等しいことができる。表示モジュール110及び第2の像面20における浮遊画像は、第2の一次元共役結像素子122に対してほぼ対称に設けられることができる。好ましくは、第1の一次元共役結像素子121は、光学結像モジュール120を通った光線の高さをy方向において制限するように光学結像モジュール120の開口絞りとして設けられることができ、例えば、y方向通光開口を100mm以下に設けられる。
【0033】
図7を参照すると、再帰反射スクリーンにとって、再帰反射スクリーンのマイクロ構造上で二次反射された光線こそは結像光線であり、一次反射された光線はゴースト像を形成する可能性のある迷光である。したがって、
図8に示すように、好ましい実施例では、光学結像モジュール820は、第1の一次元共役結像素子821と分光平板823との間に設けられたフィルタ素子824を備えることができ、光線角度セレクタとして使用され、小角度光線で大角度光線を吸収することができる。フィルタ素子824は、超マイクロルーバー構造(Microlourver)であってもよく、めっき膜を用いて実現してもよい。超マイクロルーバー構造の例は、
図9に示すように、小角度光線(通常±25度の範囲内の光線)で大角度光線を吸収するように使用されることができ、このように正常な表示光線は通過することができ、一次反射された光線は角度が大きいために吸収され、ゴースト像を除去する役割を果たすことができる。フィルタ素子824は第2の一次元共役結像素子822の一次反射によるゴースト像を除去するために、第2の一次元共役結像素子822と分光平板823との間にさらに設けられることができると理解されてもよい。
【0034】
本発明のもう一つの選択可能な実施例では、偏光吸収によりゴースト像が除去されることができる。
図10を参照すると、光学結像モジュール1020は、第1の再帰反射スクリーン1021と第2の再帰反射スクリーン1022との間に設けられた偏光分光平板1023に加えて、更に、第1の1/2λ波長板1025、第2の1/2λ波長板1026及び偏光板1027を備える。偏光分光平板は平板上に偏光分光膜をめっきすることによって実現されてもよいし、または偏光分光平板1023が偏光分光膜(APF)1024を平板表面に貼り付けることで形成されてもよい。第1の1/2λ波長板1025は、第1の再帰反射スクリーン1021の入光側(例えば、第1の再帰反射スクリーン1021と分光平板1023との間)に設けられてもよく、第2の1/2λ波長板1026は、第2の再帰反射スクリーン1022の入光側(例えば、第2の反射板1022と分光平板1023との間)に設けられてもよい。1/2λ波長板1025及び1026の光軸方向と一次元再帰反射スクリーンマイクロ構造方向との間の夾角は、22.5°又は67.5°であってもよい。偏光板1027は、分光平板1023と第2の像面20との間に設けられてもよい。
【0035】
図10に示すように、表示面(すなわち、被写体面10)から発せられた光をs偏光(0度方向)とする(本願ではこれに限定されず、表示面から発せられた光は自然光であってもよい)と、偏光分光平板1023に照射されてから反射され、1/2波長板1025に照射されて、45度線偏光になり、その後、第1の再帰反射スクリーン1021に照射され、直角マイクロ構造により2回反射された後も依然として45度線偏光であり、再び第1の1/2λ波長板1025を通ってp偏光(90度方向)に変換され、偏光分光平板1023を通過して1/2波長板1026に照射され、45度線偏光になり、その後第2の再帰反射スクリーン1022に照射され、直角マイクロ構造により2回反射された後も依然として45度線偏光であり、再び第2の1/2λ波長板1026を通って、s偏光(0度方向)になり、偏光分光平板1023により再び反射され、偏光板1027に照射され、偏光板1027をs偏光が通って第1の像面15に配置された散乱スクリーン1030に照射される。
【0036】
第1の再帰反射スクリーン1021により一次反射された光線(ゴースト像光線、
図11に示すように)に対して、第1の1/2λ波長板1025を2回通っても依然としてs偏光(0度方向)であり、分光平板1023により元の経路を再帰反射されて通過できない。この例では、偏光板1027がs偏光を通過させp偏光を吸収するように設定されている。あるいは、偏光板1027は円偏光板であってもよく、このように設けられることにより、外部から光学結像モジュールに入射された光線が再び反射されて出るのを防ぐことができ、消光作用を果たすことができる。
【0037】
あるいは、第2の1/2λ波長板1026は、偏光分光平板1023の表面に設けられ、散乱スクリーン1030に向かっていることができ、偏光板1027はp偏光を通過させs偏光を吸収する。表示面(すなわち、被写体面10)から発せられた光をs偏光とすると、偏光分光平板1023に照射された後に反射され、第1の再帰反射スクリーン1021に照射されて反射され、第1の1/2λ波長板1025を2回通って、p偏光に変換され、偏光分光平板1023を通過した後に第2の1/2λ波長板1026を通過して45度偏光に変換され第2の再帰反射スクリーン1022に照射されて反射され、再び第2の1/2λ波長板1026を通ってs偏光になり、偏光分光平板により再び反射され、3回目で第2の1/2λ波長板1026を通ってp偏光になり、偏光板1027を通って第1の像面15に配置された散乱スクリーン1030に照射される。
【0038】
あるいは、光学結像モジュール1020は、x方向に光線の通過を制限するのではなく、y方向に光学結像モジュール1020を通過する光線の高さを制限するための一次元開口絞り1028を備えることもできる。前述したように、開口絞り1028は、個別で(図示のように)設けられてもよいし、第1の再帰反射スクリーン1021と一体化されてもよい。
【0039】
あるいは、光学結像モジュール1220は、1つまたは複数のレンズ(またはレンズ群)を備えることもできる。
図12を参照すると、光学結像モジュール1220は、第1の再帰反射スクリーン1221、第2の再帰反射スクリーン1222及び分光平板1223に加えて、第1のレンズ1224及び第2のレンズ1225を更に備えることもできる。第1のレンズ1224及び第2のレンズ1225は、y方向にのみ屈折度を有する柱面鏡であってもよい。レンズを増加させることにより、光学結像モジュール1220は、y方向において拡大の役割を有し、すなわち、第1の像面15における像高さが被写体面における物高さよりも大きくなる。第1のレンズ1024は、被写体面10と分光平板1223との間に設けられてもよく、第2のレンズ1225は、第2の再帰反射スクリーン1222と分光平板1223との間に設けられてもよい。好ましくは、第2のレンズ1225は、第2の再帰反射スクリーン1222と一体に形成されてもよい。例えば、第2のレンズ1225及び第2の再帰反射スクリーン1222に用いられるように、柱面鏡と一次元再帰反射スクリーンとを柱面鋸歯回折格子に一体成形することができる。
図13に示すように、柱面鋸歯回折格子のy方向は曲面であり、x方向は一次元鋸歯構造であり、鋸歯構造は頂角が90度の二等辺三角形構造である。
【0040】
あるいは、
図19を参照すると、スプライスディスプレイ装置100は、光学結像モジュール120から出射された光線をコリメートするための1つまたは複数の光線偏向ユニット140をさらに備え、コリメートされた光線はさらに散乱スクリーン130を通って、より均一な視野分布を得ることができる。好ましくは、光線偏向ユニット140は、レンズ間の継ぎ目が浮遊画像に表現されるのを回避するために等間隔のフレネルレンズであってもよい。例えば、光線偏向ユニット140はTIRフレネルレンズであってもよい。
【0041】
図14に示すように、好ましくは、表示モジュール110は単一のフラットパネルディスプレイであり、表示モジュールは単一の完全な表示領域であり、複数の光学結像モジュール120は、2つの直交する一次元再帰反射スクリーンと分光平板とを含む反射式構造を採用する。ディスプレイ上の1つの画素点aから発せられた光の一部分は光学結像モジュール1201により結像され、他の一部分は光学結像モジュール1202により結像され、最終的に散乱スクリーン130上で同一の像点a’に結像される。光学結像モジュール1201を通った光ビームは下画角のみを有し、光学結像モジュール1202を通った光ビームは上画角のみを有し、このような反射式構造のスプライス要求により、画素点aから発せられる光の中の一部分が再帰反射スクリーンによって遮られることで、一部分の視野が失われてしまうため、一次元散乱スクリーン130の役割は、像点a’点の光線をy方向に拡散させることにより、y方向に大角度で連続的な視野角が得られることである。一方、x方向のスプライスについては、再帰反射スクリーンなど、物理構造上の遮蔽が存在しないため、大角度で連続的な視野角が得られやすく、散乱スクリーンによる光束の拡散が不要である。このような構造を採用する利点は、光学システムが収差無のシステムであり、像面湾曲などの収差を補正する必要がなく、構造が簡単であり、被写体面、像面はx、yの二つの方向において大きさが等しい結像であり、画像に対して追加のスケーリング変換を行う必要がないことである。また、表示モジュールは完全な単一画像であるため、画像に対して追加のスプライス処理を行う必要がなく、各光学結像モジュールと表示モジュールについて1対1のスプライス位置合わせ処理をする必要もなく、製造の難易度を簡略化し、コストを削減した。同時に光学結像モジュールの中心とエッジ画素を通ったビームテーパ角の大きさがバランスされ、散乱スクリーン130に照射された異なる画素点によって形成されたビームエネルギーを接近させ、輝度を均一させた。
【0042】
あるいは、
図20を参照すると、スプライスディスプレイ装置100は、散乱スクリーン130の前に設けられたレンズアレイ150をさらに備えてもよく、ここで、y方向において、表示モジュール110の画像が光学結像モジュール120により散乱スクリーン130上に投影され、レンズアレイ150のうちの各サブレンズは、一つの画像領域に対応しており、浮遊画像の一部分を表示するように用いられ、散乱スクリーン130上で同一の画像情報を表す発光点が異なるサブレンズを通って空間中に1点に収束されることにより、y方向においてx方向に形成された浮遊画像面20と重ね合わせた浮遊画像面が形成されることを実現する。これにより、y方向における浮遊画像の空間的な位置決め問題の解決を促進することができる。
【0043】
あるいは、スプライスディスプレイ装置100は、散乱スクリーン130の前に配置されたマイクロレンズアレイ160をさらに備えてもよく、y方向において、光学結像モジュール120により表示モジュール110の画像が散乱スクリーン130に投影される。多視点三次元表示の原理を利用して、人の目が異なるビューエリア位置でマイクロレンズアレイを通して見るのは散乱スクリーン上の異なる領域である。
図21に示すように、視点1において観察位置が見える画像はa3b3、視点2において観察位置が見える画像はa2b2、視点3において観察位置が見える画像はa1b1である。このように、空間中における人の目のy方向の観察位置は異なるが、見える浮遊像面の位置はすべてabで固定されており、人の目が知覚する当該画像面は、光学結像モジュールが水平面上に形成された浮遊画像面20と重ね合わせる。これにより、y方向における浮遊画像の空間的な位置決め問題の解決をすることができる。
【0044】
また、
図22を参照して、スプライスディスプレイ装置100における複数の光学結像モジュール120はy方向にミラーリングして設けられてもよいので、共役結像素子121または122が重複使用可能であり、このように、複数の光学結像モジュール120のスプライスの部分のサイズを減少することができ、コストダウンの役割も果たす。
【0045】
本発明のもう一つの例示的な実施例によれば、多層表示機器も提供される。
【0046】
図15は、本発明の実施例による多層表示装置1500を示す模式図である。
多層表示装置1500は、前述のスプライスディスプレイ装置100と、透明表示装置200とを備えることができる。透明表示装置200は、スプライスディスプレイ装置100の光出射側(光学下流側)に設けられてもよい。透明表示装置200の表示面は、スプライスディスプレイ装置100の浮遊画像面20とは異なる位置にあり、具体的には浮遊画像面20とスプライスディスプレイ装置100との間にある。透明表示装置200は、透明OLED/LED/LCDディスプレイやフィルム(スライド)など、高い透過率を有することができる。
図16に示すように、透明表示装置200は、スプライスディスプレイ装置100の前に透明フィルム(フィルムヘイズが5%未満)を設置して、マイクロプロジェクターから画像を投射することにより得られることもできる。あるいは、当該透明フィルムは、光線に対して角度選択性を有し、大角度の光線に対しては散乱(投影画像)し、小角度の光線に対しては直接透過(浮遊画像)することができる。
【0047】
以上、本発明の例示的実施例による多層表示装置1500について説明した。当該多層表示装置1500は、表示面1と表示面2とを有し、スプライスディスプレイ装置100は表示面1(像面20)において浮遊画像を形成することができ、透明表示装置200は表示面2において異なる情報を表示することができる。このようにして、副次的な情報を表示面2に表現させ、重要な情報を表示面1に表現させることができ、これにより人々の情報取得の効率と体験度を向上させることができる。あるいは、
図17に示すように、表示面1と表示面2に同じ大きさの映像を表示させ、物体が鑑賞者から遠近することによる暗さや色の違いを利用し、さらに前後の物体映像を重ね合わせて鑑賞者に立体感を与えることにより、裸眼3D表示を実現することもできる。
【0048】
或いは、表示モジュール110は、裸眼三次元ディスプレイであってもよく、三次元ディスプレイは、多視点自由立体ディスプレイであってもよいし、光場ディスプレイであってもよい。
図18Aに示すように、通常の裸眼三次元ディスプレイは、フラットパネルディスプレイとマイクロ光学ユニットとから構成され、マイクロ光学ユニットは、マイクロレンズまたはスリット回折格子であってもよい。フラットパネルディスプレイは視差のある画像を生じて、マイクロ光学ユニットを経てから観察者の左右の目に別々に送り、人の目の両眼視差効果を利用して立体感を出す。
図18Bに示すように、表示モジュール110上のa1点は右目に入り、a2点は左目に入り、両眼視差の原理により人の目が見る点は、スクリーンの前方にあるa点である。スクリーン上のb1点は右目に入り、b2点は左目に入り、両眼視差の原理により人の目が見る点は、スクリーンの後方にあるb点である。左右の眼が共通してスクリーン上のc点を見ているため、c点の位置がスクリーン上にあることを感じる。これにより、従来の裸眼三次元ディスプレイが表現する3D画像は、スクリーンを深度中心とし前後一定の深度範囲内の3D画像である。見る時、人の目は三次元ディスプレイの物理画面に焦点を合わせるため、空間に浮いた三次元画像を感じることができず、体験に影響を与える。
【0049】
本発明における表示モジュール110は、当該問題をよく解決するように多視点/光場ディスプレイを採用してもよく、多視点/光場ディスプレイのスクリーン面が本発明の光学結像モジュール120により空間中に投影され、浮遊画像面として形成され、多視点/光場ディスプレイに視差画像を表示させることにより、空間中に浮遊画像面を深度中心とし前後の一定範囲の3D画像を形成することができる。
図17Cに示すように、浮遊画像面では、a点が前被写界深度面にあり、b点が後被写界深度面にあり、c点が表示装置の浮遊画像面にあり、これにより形成された3D画像は、完全に空中に浮いて、より良い3D効果の体験を有する。
【0050】
以上、本発明の例示的な実施例によるスプライスディスプレイ装置、使用される光学結像モジュール、及び多層表示機器について詳細に説明した。本発明の利点は、1)スプライスディスプレイ装置における単一の光学結像モジュールの構造が簡単であり、しかも必要な光学素子のサイズが小さく、加工が容易であり、コストを効果的に削減できることである、2)必要に応じて、特定の数量の表示領域を有する表示モジュール(又は特定の数量の表示ユニット)と特定の数量の光学結像モジュール及び散乱スクリーンを採用して、異なるサイズの浮遊表示を実現することができ、すなわち、スプライスしながら使用すると特に大きいサイズの浮遊表示の実現に有利である、3)光学結像モジュールを一度に設計して、必要な浮遊画像サイズによって対応する数量の同一光学結像モジュールを使用して浮遊画像のシームレスなスプライスを行えばよく、異なる浮遊画像サイズに対して異なる光学結像モジュールを設計する必要がない、4)スプライスディスプレイ装置の厚さが小さくて、薄型化や軽量化を実現する、5)スプライスディスプレイ装置は、無収差方式とすることができ、光学収差を補正する必要がなく、光学構造が簡単である。このスプライスディスプレイ装置を用いて、表示モジュールの空中での光場再構築が実現され、光場三次元表示技術である。表示モジュールにおける光ビームがx方向に沿って光学結像モジュールによって結像された像側開き角は、両眼視差条件を満たすように相対的に大きくすることで、画像の浮遊表示が実現可能である。
【0051】
上記の説明は、限定的ではなく概略的なものであることが理解されるべきである。例えば、上述の実施例(および/またはその様々な態様)は、互いに関連して使用されてもよい。さらに、本発明の範囲を逸脱することなく、特定の条件または材料を本発明の様々な実施形態の教示に適合させるために多くの修正を加えることができる。本明細書に記載された材料のサイズおよびタイプは、本発明の様々な実施例のパラメータを定義するために使用されるが、様々な実施例は限定的であることを意味するものではなく、例示的な実施例である。上記の説明を読んだ場合、他の多くの実施例は当業者にとって明白であろう。したがって、本発明の様々な実施例の範囲は、添付の請求項及びこれらの請求項で保護請求される均等な形態の全体的範囲を参照して決定されるべきであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面上にターゲット画像を構成する表示光を発するように配置された表示モジュールと、
前記表示光を受けて空中に浮遊画像を形成するように配置された複数の光学結像モジュールと、
光をy方向において発散させるための一次元散乱スクリーンと、を備え、前記複数の光学結像モジュールのそれぞれは、
前記表示面からのポイント光ビームがy方向において前記一次元散乱スクリーン上に収束されるための第1の一次元共役結像素子と、
前記表示面からのポイント光ビームが、x方向において一次元散乱スクリーンが位置する平面とは異なる浮遊画像面に収束されるための第2の一次元共役結像素子とを含み、前記x方向および前記y方向はそれぞれ、前記光学結像モジュールの主光軸に直交する、ことを特徴とする浮遊画像用のスプライスディスプレイ装置。
【請求項2】
前記第1の一次元共役結像素子は主光軸に沿って前記表示面と前記第2の一次元共役結像素子との間に設けられ、
前記第1の一次元共役結像素子と前記第2の一次元共役結像素子とは、相対的に平行して設けられ、
前記第1の一次元共役結像素子のマイクロ構造ユニットと前記第2の一次元共役結像素子のマイクロ構造ユニットとは、直交して設けられ、および/あるいは
前記表示モジュールの表示面と前記一次元散乱スクリーンとが互いに平行して設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項3】
前記表示面から前記第1の一次元共役結像素子までの光路はaであり、前記表示面から前記第2の一次元共役結像素子までの光路はbであると、b≦2aを満たす、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項4】
前記表示モジュールは、複数の表示ユニットによりスプライスして構成されているか、または前記表示モジュールは、複数の個別の表示領域を有している、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項5】
前記複数の光学結像モジュールのx方向の像高さはx方向の物高さに等しい、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項6】
前記表示面に表示された前記ターゲット画像と前記浮遊画像面に現れた
浮遊画像とは、正立結像関係である、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項7】
前記複数の光学結像モジュールは同じ構造を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項8】
前記一次元散乱スクリーンと前記第1の一次元共役結像素子との間の光路は、前記表示面と前記第1の一次元共役結像素子との間の光路にほぼ等しい、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項9】
前記表示面と前記浮遊画像面とは、前記第2の一次元共役結像素子に対してほぼ対称に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項10】
前記複数の光学結像モジュールのうちの少なくとも1つの光学結像モジュールは、x方向の光線を制限するのではなく、y方向に前記少なくとも1つの光学結像モジュールを通過する光線の高さを制限するための一次元開口絞りを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項11】
前記複数の光学結像モジュールのうちの少なくとも1つの光学結像モジュールは、分光平板をさらに備え、前記第1の一次元共役結像素子と前記第2の一次元共役結像素子は、再帰反射スクリーンであり、前記表示光は前記分光平板により反射された後に前記第1の一次元共役結像素子に入り、前記第1の一次元共役結像素子により反射された後に更に前記分光平板により透過されて前記第2の一次元共役結像素子に入り、前記第2の一次元共役結像素子により反射された後に前記分光平板により反射された後に、前記浮遊画像面上に前記浮遊画像として形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項12】
前記第1の一次元共役結像素子と前記第2の一次元共役結像素子との間隔は、200mmより小さい、ことを特徴とする請求項
1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項13】
前記分光平板は、前記第1の一次元共役結像素子と前記第2の一次元共役結像素子との間に傾斜して設けられ且つ前記表示面と前記浮遊画像面との間にあり、前記分光平板は偏光分光平板であり、前記少なくとも1つの光学結像モジュールは、
前記第1の一次元共役結像素子と前記分光平板との間に設けられた第1の位相遅延板と、
前記第2の一次元共役結像素子と前記分光平板との間に設けられた第2の位相遅延板と、を備える、ことを特徴とする請求項
11に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項14】
前記第1
の位相遅延板及び第2の位相遅延板
のうち少なくとも1つは、光軸方向と前記再帰反射スクリーンのマイクロ構造ユニットの延びる方向との間の角度が22.5°または67.5°となる1/2λ波長板である、ことを特徴とする請求項
13に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項15】
前記複数の光学結像モジュールのうちの少なくとも1つの光学結像モジュールは、予め定められた角度範囲を通過する光線に用いられたフィルタ素子をさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項16】
前記スプライスディスプレイ装置は、前記主光軸に沿って前記複数の光学結像モジュールと前記一次元散乱スクリーンとの間に設けられた少なくとも1つの光線偏向ユニットをさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項17】
前記スプライスディスプレイ装置は、前記主光軸に沿って前記一次元散乱スクリーンと前記浮遊画像面との間に設けられたレンズアレイをさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項18】
前記表示モジュールは、三次元ディスプレイである、ことを特徴とする請求項1から請求項
17のいずれか一項に記載のスプライスディスプレイ装置。
【請求項19】
請求項
1に記載のスプライスディスプレイ装置と、
前記スプライスディスプレイ装置の光学的下流に設けられ、表示面が前記浮遊画像面と異なる位置にある透明表示装置と、を備える、ことを特徴とする多層表示機器。
【請求項20】
前記透明表示装置は、透明ディスプレイを備えるか、または画像を透明/半透明フィルムに投影することにより実現される、ことを特徴とする請求項
19に記載の多層表示機器。
【国際調査報告】