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特表2024-537883血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのコンピュータ実装方法およびシステム
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  • 特表-血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのコンピュータ実装方法およびシステム 図1
  • 特表-血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのコンピュータ実装方法およびシステム 図2
  • 特表-血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのコンピュータ実装方法およびシステム 図3
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  • 特表-血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのコンピュータ実装方法およびシステム 図5
  • 特表-血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのコンピュータ実装方法およびシステム 図6
  • 特表-血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのコンピュータ実装方法およびシステム 図7
  • 特表-血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのコンピュータ実装方法およびシステム 図8
  • 特表-血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのコンピュータ実装方法およびシステム 図9
  • 特表-血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのコンピュータ実装方法およびシステム 図10
  • 特表-血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのコンピュータ実装方法およびシステム 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのコンピュータ実装方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/49 20060101AFI20241008BHJP
   G06N 20/20 20190101ALI20241008BHJP
【FI】
G01N33/49 A
G01N33/49 Y
G06N20/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521247
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2022077297
(87)【国際公開番号】W WO2023057334
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】102021004988.8
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524130397
【氏名又は名称】ロボットドリームズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】RobotDreams GmbH
【住所又は居所原語表記】Stremayrgasse 16/IV, 8010 Graz, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル プーシキン
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリ シュルキン
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ チェルトコフ
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA02
2G045AA25
2G045CA02
2G045CA11
2G045CA12
2G045CA14
2G045CA15
2G045CA17
2G045CA20
2G045CA24
2G045JA01
2G045JA03
(57)【要約】
血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのコンピュータ実装方法であって、該方法は、以下:a)少なくとも1名の患者から血液パラメータを取得する工程であって、血液パラメータは、多くの血液像の単一細胞の測定された少なくとも2つの特性を含み、単一細胞は、白血球を含み、白血球の測定された特性には、サイズ、細胞質の顆粒度、および細胞核の構造が含まれるものとする工程;b)少なくとも1つの散布図を作成する工程であって、散布図の各軸は、単一細胞の測定された各種特性を含むものとする工程;c)少なくとも1つの散布図において少なくとも1つのクラスターを決定する工程であって、クラスターは、白血球の亜集団を含み、亜集団には、単球、リンパ球、好塩基球、好中球および好酸球が含まれるものとする工程;d)決定されたクラスターの特性要素を統合して1次元グローバルベクターを生成する工程であって、グローバルベクターにおける特性要素の配置は、関連するクラスターに従った配置を含むものとする工程;e)グローバルベクターの次元削減を行う工程;f)アンサンブルによって少なくとも1つの疾患を判定する工程であって、アンサンブルは、少なくとも1つの機械学習モデルおよび少なくとも1つの深層学習モデルを含み、少なくとも1つの機械学習モデルは、入力変数として少なくとも1つの削減されたグローバルベクターを受け取り、少なくとも1つの深層学習モデルは、入力変数として少なくとも1つの散布図画像を受け取るものとする工程;およびg)少なくとも1つの疾患の判定に関する少なくとも1つの結果を含むレポートを自動的に生成する工程を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのコンピュータ実装方法であって、前記方法は、以下:
a)少なくとも1名の患者から血液パラメータを取得する工程であって、前記血液パラメータは、多くの血液像の単一細胞の測定された少なくとも2つの特性を含み、前記単一細胞は、白血球を含み、前記白血球の測定された特性には、サイズ、細胞質の顆粒度、および細胞核の構造が含まれるものとする工程;
b)少なくとも1つの散布図を作成する工程であって、前記散布図の各軸は、前記単一細胞の測定された各種特性を含むものとする工程;
c)前記少なくとも1つの散布図の少なくとも1つにおいて少なくとも1つのクラスターを決定する工程であって、前記クラスターは、白血球の亜集団を含み、前記亜集団には、単球、リンパ球、好塩基球、好中球および好酸球が含まれるものとする工程;
d)前記決定されたクラスターの特性要素を統合して1次元グローバルベクターを生成する工程であって、前記グローバルベクターにおける前記特性要素の配置は、関連するクラスターに従った配置を含むものとする工程;
e)前記グローバルベクターの次元削減を行う工程;
f)アンサンブルによって少なくとも1つの疾患を判定する工程であって、前記アンサンブルは、少なくとも1つの機械学習モデルおよび少なくとも1つの深層学習モデルを含み、前記機械学習モデルは、入力変数として少なくとも1つの削減されたグローバルベクターを受け取り、前記少なくとも1つの深層学習モデルは、入力変数として少なくとも1つの散布図画像を受け取るものとする工程;および
g)少なくとも1つの疾患の判定に関する少なくとも1つの結果を含むレポートを自動的に生成する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記多くの血液像の血液パラメータを取得する工程が、血液学的分析装置からの取得を含むことを特徴とする、請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記グローバルベクターの次元削減を行う工程が、主成分分析を含み、前記グローバルベクターを、前記次元削減の前および/または後に標準化することを特徴とする、請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの散布図画像を、前記少なくとも1つの深層学習モデルに対して標準化することを特徴とする、請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記クラスターを決定する工程が、クラスター分析を含み、前記クラスター分析は、階層的クラスター法を含むことを特徴とする、請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの疾患を判定する工程が、ソフト投票法および/またはハード投票法を含むことを特徴とする、請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記削減されたグローバルベクターをアンサンブルで入力変数として受け取る前記機械学習モデルが、人工ニューラルネットワーク、k近傍法、ランダムフォレスト、アダブースト、勾配ブースティングマシン(GBM)および/またはサポートベクターマシン(SVM)を含むことを特徴とする、請求項1および3記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
少なくとも1つの散布図画像を入力変数として受け取る前記深層学習モデルが、畳み込みニューラルネットワークを含むことを特徴とする、請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記アンサンブルの全てのモデルを、予め作成されたデータベースに基づいて訓練し、前記データベースには、前記単一細胞の測定された特性および/または散布図が含まれ、前記データベースは、単一細胞の測定された新たな特性および/または散布図で拡張可能であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
少なくとも1つの結果レポートをコンピュータで生成し、前記結果レポートは、少なくとも1つの疾患に関するグラフィックおよび/または情報テキストおよび/または確率および/またはスコアを含み、前記結果レポートの表示は、コンピュータ機器および/またはモバイル機器および/または検査機器上の表示を含むことを特徴とする、請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
少なくとも1名の患者から血液パラメータを取得する工程であって、前記血液パラメータは、多くの血液像の単一細胞の測定された特性を含み、前記単一細胞は、赤血球および血小板を含み、1b)において、少なくとも1つの散布図に加えて、またはその代わりに、少なくとも1つのヒストグラムを作成し、ここで、前記ヒストグラムの軸の1つは、前記単一細胞の数を含み、1f)において、少なくとも1つの散布図画像に加えて、またはその代わりに、少なくとも1つのヒストグラム画像を、少なくとも1つの疾患の判定のためにアンサンブルの少なくとも1つの深層学習モデルの入力変数として使用し、請求項9におけるデータベースをヒストグラムで補完する工程をさらに含む、請求項1から10までのいずれか1項記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのシステムであって、前記システムは、演算ユニットと、それに接続されたメモリユニットと、入力ユニットとを備えたコンピュータを含み、前記システムは、
a)少なくとも1名の患者から分析機器によって取得された血液パラメータを、前記入力ユニットを通じて把握し、前記血液パラメータは、多くの血液像の単一細胞の測定された少なくとも2つの特性を含み、前記単一細胞は、白血球を含み、前記白血球の測定された特性には、サイズ、細胞質の顆粒度、および細胞核の構造が含まれ;
b)前記演算ユニットによって少なくとも1つの散布図を作成し、前記散布図の各軸は、前記単一細胞の測定された各種特性を含み;
c)前記演算ユニットによって、前記少なくとも1つの散布図の少なくとも1つにおいて少なくとも1つのクラスターを決定し、前記クラスターは、白血球の亜集団を含み、前記亜集団には、単球、リンパ球、好塩基球、好中球および好酸球が含まれ;
d)前記決定されたクラスターの特性要素を前記演算ユニットによって統合して1次元グローバルベクターを生成し、前記グローバルベクターにおける前記特性要素の配置は、関連するクラスターに従った配置を含み;
e)前記演算ユニットによって前記グローバルベクターの次元削減を行い;
f)前記演算ユニットを用いてアンサンブルによって少なくとも1つの疾患を決定し、前記アンサンブルは、少なくとも1つの機械学習モデルおよび少なくとも1つの深層学習モデルを含み、前記機械学習モデルは、入力変数として少なくとも1つの削減されたグローバルベクターを受け取り、前記少なくとも1つの深層学習モデルは、入力変数として少なくとも1つの散布図画像を受け取り;かつ
g)少なくとも1つの疾患の判定に関する少なくとも1つの結果を含むレポートを前記演算ユニットによって自動的に生成する
ように設計されている、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床検査診断学に関し、血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのコンピュータ実装方法について説明する。
【0002】
技術的背景
臨床血液分析は、細胞組成と血液形態の定量的評価に基づいて人体の全身的な病理学的プロセスを反映するため、実地医学において最も利用しやすい診断法の一つである。循環血液細胞は、人体のほとんど全ての組織に高流量で絶えず浸透しており、その成熟、活性化、増殖、老化の状態は、現在の病態生理学的状態を反映している。
【0003】
全血液像のルーチン測定は、何万もの血液細胞における単一細胞の特徴の測定を含み、これらの病態生理学的状態の包括的な概観を提供する。全てのルーチン血液像で、白血球の高次元の単一細胞情報が測定される。この場合、サイズ、複雑度、分葉度、顆粒度など様々な形態学的特徴が血液学的分析装置で測定され、成熟白血球の5つの亜集団である好中球、リンパ球、単球、好酸球、および好塩基球を判別することができる(Takubo T, Tatsumi N. Further evolution and leukocyte differential using an automated blood cell counter. Rinsho Byori. 1995 Sep;43(9):925-30. Japanese. PMID: 7474456.)。
【0004】
現在のところ、臨床的な判断は、いくつかの派生統計に基づいてのみ行われている。患者の血液像から得られる情報量は膨大であるため、医師はしばしば、これを臨床状況と関連づけて完全に解釈することができない。(Chaudhury A, Noiret L, Higgins JM. White blood cell population dynamics for risk stratification of acute coronary syndrome. Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Nov 14;114(46):12344-12349. doi: 10.1073/pnas.1709228114. Epub 2017 Oct 27. PMID: 29087321;PMCID: PMC5699055.)。
【0005】
しかし、未熟な顆粒球を決定することによって感染症を早期に発見したり、非典型的な特徴を持つ(白血球)の計数を行うことによっていくつかの悪性疾患の予後を判定したりする試みが早くから行われており、全血液像の大きな可能性が認識されている(Statland BE, Winkel P, Harris SC, Burdsall MJ, Saunders AM. Evaluation of biologic sources of variation of leukocyte counts and other hematologic quantities using very precise automated analyzers. Am J Clin Pathol. 1978 Jan;69(1):48-54. doi: 10.1093/ajcp/69.1.48. PMID: 563672.)。
【0006】
確かにこのような努力は限定的な成功に終わっているが、臨床的意思決定支援の改善の可能性を示唆している(Gijsberts CM, den Ruijter HM, de Kleijn DPV, Huisman A, Ten Berg MJ, van Wijk RHA, Asselbergs FW, Voskuil M, Pasterkamp G, van Solinge WW, Hoefer IE. Hematological Parameters Improve Prediction of Mortality and Secondary Adverse Events in Coronary Angiography Patients: A Longitudinal Cohort Study. Medicine(Baltimore). 2015 Nov;94(45):e1992. doi: 10.1097/MD.0000000000001992. PMID: 26559287;PMCID: PMC4912281.)。
【0007】
以下の論文では、統計的・数学的アプローチを用いた白血球分析による急性冠症候群(ACS)の診断法について検討がなされた(Chaudhury A., Noiret L., Higgins J. White blood cell population dynamics for risk stratification of acute coronary syndrome. Proceedings of the National Academy of Sciences, 2017;114(46), S.12344-12349)。
【0008】
分析システムから提供されるデジタルデータの量が増加するにつれて、患者や医療機関の利益のために利用可能な診断情報の有効性を高めるべく、人工知能(AI)分野の機械学習手法を適用する可能性が高まっている(Pieszko K., Hiczkiewicz J., Budzianowski P., Rzezniczak J., Budzianowski J., Blaszczynski J., Slowinski R., Burchardt, P. Machine-learned models using hematological inflammation markers in the prediction of short-term acute coronary syndrome outcomes. Journal of Translational Medicine, 2018;16(1):334)。
【0009】
概要
患者に対するメディカルケアの質を向上させるために、疾患、特に血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するための代替法を提案することが課題であると考えることができる。
【0010】
この課題は、独立請求項1の特徴を有するコンピュータ実装方法により解決される。有利な実施形態および発展形態は、従属請求項および以下の説明から得ることができる。
【0011】
血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのコンピュータ実装方法であって、該方法は、以下:a)少なくとも1名の患者から血液パラメータを取得する工程であって、血液パラメータは、多くの血液像の単一細胞の測定された少なくとも2つの特性を含み、単一細胞は、白血球を含み、白血球の測定された特性には、サイズ、細胞質の顆粒度、および細胞核の構造が含まれるものとする工程;b)少なくとも1つの散布図を作成する工程であって、散布図の各軸は、単一細胞の測定された各種特性を含むものとする工程;c)少なくとも1つの散布図において少なくとも1つのクラスターを決定する工程であって、クラスターは、白血球の亜集団を含み、亜集団には、単球、リンパ球、好塩基球、好中球および好酸球が含まれるものとする工程;d)決定されたクラスターの特性要素を統合して1次元グローバルベクターを生成する工程であって、グローバルベクターにおける特性要素の配置は、関連するクラスターに従った配置を含むものとする工程;e)グローバルベクターの次元削減を行う工程;f)アンサンブルによって少なくとも1つの疾患を判定する工程であって、アンサンブルは、少なくとも1つの機械学習モデルおよび少なくとも1つの深層学習モデルを含み、少なくとも1つの機械学習モデルは、入力変数として少なくとも1つの削減されたグローバルベクターを受け取り、少なくとも1つの深層学習モデルは、入力変数として少なくとも1つの散布図画像を受け取るものとする工程;およびg)少なくとも1つの疾患の判定に関する少なくとも1つの結果を含むレポートを自動的に生成する工程を含む方法が提案される。
【0012】
本発明による方法の実施について、以下にさらに説明する。
【0013】
患者は、医療機関の緊急治療室に入っている。血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす急性冠症候群(ACS)が疑われる。最初の静脈全血を、肘脈から、例えば4mlの採血用真空システムを用いて、例えばVacutestチューブ(KIMA、イタリア)に採取し、例えば7.2mgのK3EDTAチューブ壁の内面に塗布する。次いで、このサンプルを用いて、本発明による方法で疾患を判定する。ここで、サンプリングは本方法の一部ではない。
【0014】
採血後、チューブを逆さにし、水平および垂直に30秒間回転させて撹拌する。その後、例えばCELL-DYN Sapphire(Abbott Laboratories、米国)などの自動血液学的分析機器で、オープンモードで臨床血液検査を行う。ここで、全血液像の単一細胞を高次元で測定し、図1に例として示すように、測定値には、単一細胞の特性が含まれる。
【0015】
測定値は、例えばFCSファイルとして、または別の形式で分析機器からコピーされ、機械的処理のために、アクセス可能なPC、モバイルコンピュータ機器またはクラウドに転送される。これらの測定値には、白血球の特性としての血液パラメータが含まれ、白血球には、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球および単球が含まれ、特性には、サイズ、顆粒度、分葉度および複雑度が含まれる(図2)。
【0016】
機械的処理とは、例えば図3に示すように、測定された特性を、少なくとも1つの散布図にサイズ対複雑度および/またはサイズ対分葉度で重ねてプロットすることにより、少なくとも3つの亜集団(好中球、リンパ球、単球)を自動的に判別することである。Abbott Cell-DYN Sapphireでは、各細胞の軸方向光損失(ALL)の測定により細胞のサイズが決定され、角度間散乱強度(IAS)の測定により細胞質および核の複雑度が決定され、偏光側方散乱強度(PSS)の測定により分葉度が決定される。
【0017】
その特性に応じて判別された亜集団の決定は、階層的クラスター分析により自動的に行われ、ここで、階層的クラスター分析とは、データセットの類似性構造を発見するための手法であると理解され、ここで、クラスターは、他のクラスターの測定変数よりも互いの距離が短い測定変数で構成される(図3)。階層的クラスター分析に加えて、以下のクラスターアルゴリズムも使用可能である:K-Means、K-Medians、Affinity Propagation、Mean-shift、スペクトラルクラスタリング、ウォード階層的クラスタリング、DBSCAN、OPTICS、混合ガウスおよびBirch。
【0018】
その後、少なくとも3つの亜集団の要素をソートし、統合してグローバルベクターを生成し、
【数1】
ここで、グローバルベクターは、その特性に応じて判別された少なくとも3つの亜集団のベクターを含み、
【数2】
ここで、リンパ球ベクターは、少なくとも2つの特性(サイズおよび複雑度)を含み、単球ベクターは、少なくとも2つの特性(サイズおよび複雑度)を含み、好中球ベクターは、少なくとも2つの特性(サイズおよび複雑度)を含む。当然のことながら、ここで1つ以上の他の特性、例えば分葉度も考慮することができるため、好中球ベクターは、以下のようになり得る:
【数3】
【0019】
その後、[0,1]または[-1,1]の範囲で値を新たにスケーリングするか、または平均値が0でかつ標準偏差が1(単位分散)となるようにデータを再スケーリングすることにより、各特性要素を有するグローバルベクターを標準化することができ、
【数4】
ここで、ベクター{u}は、予め作成されたデータベースのグローバルベクターの特性要素の平均値を表し、
【数5】
ベクター{s}は、予め作成されたデータベースのグローバルベクターの要素の標準偏差を表す;
【数6】
【0020】
標準化の後に、主成分分析(PCA)が適用される。PCAは、標準化の前または標準化の代わりに適用することもできる。PCAの目的は、標準化されたグローバルベクターの特徴の次元を削減しつつ、特徴の可変性(情報)をできるだけ保持することである(Dunteman G.H. Principal Component Analysis, 1989)。ベクターのサイズが大きいと、このデータに基づく予測モデルが再学習される危険性があるため、機械学習で問題が生じることがある(Kabari L.G., Nwame B.B., Principal Component Analysis(PCA)~An Effective Tool in Machine Learning, International Journals of Advanced Research in Computer Science and Software Engineering, ISSN: 2277-128X(Volume-9, Issue-5))。さらに、表記の多くが冗長であるかまたは相関性が高い場合があり、このことも同様に診断精度の低下を招き得る。さらに、PCAによって、計算速度も大幅に向上する。PCAに加えて、スパース主成分分析、カーネル主成分分析、切り捨て特異値分解、独立成分分析、非負値行列因子分解、および潜在的ディリクレ配分も使用可能である。
【0021】
PCAにより、グローバルベクターの要素数をnから主成分の数pへと削減し、
【数7】
ここで、削減されたベクターの要素x・・・xは、主成分を表す。主成分の数pは、次元削減前のグローバルベクターの要素数n以下であり、すなわち、p≦nである。PCAの後、削減されたグローバル主成分ベクターは、例えば図4に示すように、少なくとも1つの機械学習モデルの入力変数ベクターとして使用される。
【0022】
機械学習は人工知能の一分野であり、経験から知識を「人工的に」生成することの総称である。人工システムは例から学習し、学習段階が完了した後にそれらを一般化することができる。これを行うために、機械学習アルゴリズムは訓練データに基づいて統計モデルを構築する。つまり、学習段階で提供された例は単に記憶されるのではなく、学習データのパターンや規則性が認識される。このようにして、システムは未知のデータを評価することもできる(学習転移)。
【0023】
予測に少なくとも2つの(機械)学習モデルが使用される場合、これはアンサンブルと呼ばれる。アンサンブルは、複数のモデルが同じ問題を解決するために訓練され、より良好な結果を達成するために組み合わされる機械学習パラダイムであり(Langley P., Elements of Machine Learning, 1996)、アンサンブルは、人工ニューラルネットワークおよび/またはk近傍モデルおよび/またはランダムフォレストモデルおよび/または決定木および/またはアダブーストモデルおよび/または勾配ブースティングマシン(GBM)および/またはブートストラップ集約モデルおよび/またはスタッキング汎化モデルおよび/またはロジスティック回帰モデルおよび/またはベイズモデルおよび/またはサポートベクターマシン(SVM)を含むことができる。
【0024】
例えば図4に示されるようなグローバルベクターを、少なくとも1つの機械学習モデルの入力変数として使用しつつ、例えば図5に示されるような少なくとも1つのグローバル散布図を、少なくとも1つの深層学習モデルの入力行列の形態の入力画像として使用し、ここで、グローバル散布図は、少なくとも1つの散布図からなり、深層学習モデルは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を含むことができる。
【0025】
深層学習の分野では、CNNは人工ニューラルネットワークの一種であり、視覚画像の解析に最もよく使用される(Valueva, M.V.;Nagornov, N.N.;Lyakhov, P.A.;Valuev, G.V.;Chervyakov, N.I.(2020). “Application of the residue number system to reduce hardware costs of the convolutional neural network implementation”. Mathematics and Computers in Simulation. Elsevier BV. 177: 232-243. doi:10.1016/j.matcom.2020.04.031. ISSN 0378-4754.)。CNNは実質的に、交互に繰り返されるフィルタ層(畳み込み層)および集約層(プーリング層)と、最後に1つ以上の「通常の」全結合ニューロン(密/全結合層)層とからなる。CNNはそのフィルタを用いて、位置に関係なく画像中の構造を認識する。ここで、フィルタの種類は事前に定められているわけではなく、ニューラルネットワークが学習する。フィルタのレベルが上がるごとに、ネットワークの抽象化レベルも上がる。どの抽象度が最終的にバックレイヤーを活性化させるかは、認識すべき事前に定められたクラスの特徴によって決定される。
【0026】
散布図は、例として図6に示すように、白血球の単一細胞の測定された特性を、サイズ対複雑度、サイズ対顆粒度、サイズ対分葉度、複雑度対顆粒度、複雑度対分葉度、顆粒度対分葉度で互いにプロットすることによって作成される。分析機器によっては、例えば細胞サイズ、細胞複雑度、および細胞含有物の3つの特性のみなど、測定される特性がより少ないことも考えられる。実質的に全ての分析機器で少なくとも2つの特性、すなわち細胞のサイズおよび複雑度が測定され、最も単純な散布図では少なくともこれら2つの特性が互いにプロットされると仮定できる。図6の個々の散布図をグローバル散布図に追加することができ、その際、グローバル散布図では個々の散布図の順序を入れ替えることができる。
【0027】
本方法における疾患の判定は、訓練済みの複数の機械学習モデルおよび深層学習モデルの票の総和が決定されること(ハード投票)を特徴とし、その際、例えば図7に示すように、最も票の多い疾患の診断が選択される。
【0028】
あるいは疾患の診断の判定は、本方法において、訓練済みの複数の機械学習モデルおよび深層学習モデルの確率の総和が計算されること(ソフト投票)を特徴とし、その際、例えば図8に示すように、疾患の診断は、各アンサンブルの最大の総和確率の加重平均値から出力される。
【0029】
機械学習モデルおよび深層学習モデルは、例として図9に示すように、予め作成されたデータベースに基づいて訓練され、その際、データベースは、測定された血液パラメータからなる。データベースは、2つのデータセットX訓練およびX試験に分けられ、X訓練はモデルの訓練に使用され、X試験はモデルの品質評価に使用される。
【0030】
入力変数としてグローバルベクターを必要とするモデルの訓練および評価のために、これらのベクターは、上述のアプローチにしたがってデータセットから導き出され、
【数8】
ここで、nは、特性要素の総数を表し、mは、データセット中の患者数を表す。データセットは、上記のアプローチにしたがって標準化され、次にPCAアプローチにしたがって削減され、
【数9】
ここで、pは、主成分の数を表し、mは、データセット中の患者数を表す。
【0031】
入力変数としてグローバル散布図を必要とする深層学習モデルを訓練するために、これらのグローバル散布図は、上述の方法によってデータセットから導き出され、
【数10】
ここで、データセットは、m個のグローバル散布図からなり、mは、患者数を表す。
【0032】
真の疾患(陽性)または真の健康対照例(陰性)は、データセットの各グローバルベクターおよびグローバル散布図に対応する。真は、応答ベクターまたはワンホットエンコード応答行列Y訓練に統合される。ワンホットコーディングでは、カテゴリデータが、機械学習での使用のために数値データに変換される。ここで特に、カテゴリーの特徴は、「ワンホット」にコード化されるバイナリ特徴に変換され、つまり、ある特徴がこの列で表される場合は1、そうでない場合は0となる。
【0033】
モデルの訓練は、教師ありおよび/または半教師ありのアプローチにより訓練データセットについて行われる。教師あり学習は、機械学習の一分野である。ここで、学習とは、人工知能が規則性を再現する能力を指す。その結果は、応答行列Y訓練の専門家の知識によって知られており、システムの学習に利用される。学習アルゴリズムは、可能な限り確実な予測を行う仮説を見つけようとする。ここで、仮説とは、想定される出力値を各入力値に割り当てるマッピングであると理解すべきである(Rostamizadeh, Afshin., Talwalkar, Ameet.: Foundations of machine learning. MIT Press, Cambridge, MA 2012, ISBN 978-0-262-01825-8.)。したがって、この方法は、学習すべき予め定められた出力に基づいており、その結果は応答行列Y訓練。学習プロセスの結果は、既知の正しい結果と比較することができ、すなわち「監視」することができる(Guido, Sarah, Rother, Kristian:Einfuehrung in Machine Learning mit Python Praxiswissen Data Science. Heidelberg, ISBN 978-3-96009-049-6.)。
【0034】
半教師ありの学習とは、訓練中に、応答行列Y訓練の結果が既知(ラベル付き)の少量のデータを結果が未知(ラベルなし)の大量のデータと組み合わせる機械学習アプローチである。第1の工程では、予め作成されたデータベースのラベル付きデータを用いて第1のモデルを最初に訓練する。その後、ラベル付けされていないデータは、最初に訓練済みのモデルを用いて分類され、それによりラベル付けされる(擬似ラベル付け)。データベースを、ラベル付けされていないデータおよび対応する擬似ラベルで拡張して、次のモデルの訓練に使用することができる。ここで、擬似ラベルは、真の診断とみなされる。
【0035】
モデルを訓練し、アンサンブルに集約した後、試験データセットX試験についてアンサンブルの品質をチェックする。モデルの品質を推定する方法の一つは、結果を混同行列でグループ化することである。
【0036】
【表1】
【0037】
ここで、TNは真陰性、FNは偽陰性、FPは偽陽性、TPは真陽性の予測を表す。混同行列は、モデルによって正しくまたは誤って予測された疾患患者または健康患者の数を示す。ここで、感度:
感度=TP/(TP+FN)
は、陽性診断が正しく陽性と分類される確率を示す。例えば、医学的診断時の感度は、その疾患が実際に認識された患者の割合に相当する。ここで、感度に加えて、特異度:
特異度=TN/(TN+FP)
は、疾患の除外が正しく陰性と分類される確率を示す。例えば、医学的診断時の特異度は、疾患にかかっていないことが実際に確認された健康な人の割合に相当する。試験の特異度は、非感染者が実際に認識される確率を示す。
【0038】
実験的研究の一環として、サンクトペテルブルクの総合病院No.2と共同で、221件の例を含むデータベースをレトロスペクティブに作成した。110名の患者において、急性冠症候群の診断(STEMIの例55件、NSTEMIの例55件)が心臓専門医によって分類された。111名の患者では疾患が除外され、したがって、彼らは健康な対照例となった。全ての患者において、最初の血液サンプルを緊急治療室で採取し、CELL-DYN Sapphire型血液学的分析機器(Abbott Laboratories、米国)で測定した。データベースを、154件の例を含む訓練データセットX訓練と、67件の例を含む試験データセットX試験とに無作為に分けた。訓練データセットX訓練を、機械学習モデルおよび深層学習モデルの訓練に使用した。試験データセットX試験について、モデルの精度および性能を評価した。試験データセットX試験には、17件のSTE-ACS、18件のNON-STE-ACS、および32件の陰性対照例が含まれていた。モデルを訓練し、アンサンブルに集約した後、試験データセットX試験についてアンサンブルの品質をチェックした。その後、32名の健康な患者のうち30名が正しく健康であると分類され(TN)、35名の疾患の患者のうち34名が正しく疾患であると分類された(TP)。この結果、感度は97.14%、特異度は93.75%となり、このことは、アンサンブルの品質が非常に高いことを示している。例えば図11に示すように、説明した方法の精度をAbbott Technologiesの高感度トロポニン-I試験の精度と比較すると、説明した方法は、最初の血液検査直後に、より良好な感度および特異度を提供できることがわかる。
【0039】
訓練データセットに基づいて訓練され、試験データセットで高い精度を示した訓練済みのモデルを、血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を予測するための検査情報システム内の方法の一環で使用することができる。このデータベースは、ラベル付けされたおよび/またはラベル付けされていない新たな患者例でいつでも拡張可能であるため、より良好なモデルを取得し、かつ必要に応じて古いモデルの代替とするために、教師ありおよび/または半教師ありのアプローチでモデルを再訓練することができる。
【0040】
図10の例示的な図示では、血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患の診断におけるコンピュータ実装方法の全ての方法工程がまとめられている。
【0041】
提示された解決策の新規性は、血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定することを目的として、機械学習モデルおよび深層学習モデルのアンサンブルの入力変数として、白血球の測定された特性からクラスター分析により自動的に得られるグローバルベクターおよびグローバル散布図を、既存の類似品と比較して初めて使用することによって達成される。NSTE-ACSの診断の場合、実験的研究の一環では、例として図11に示すように、最初の血液サンプルの直後に、現代の従来の標準的な解決策よりも正確で迅速な結果を達成した。
【0042】
有利な実施形態では、多くの血液像の血液パラメータを取得する工程は、血液学的分析装置からの取得を含む。
【0043】
有利な実施形態では、グローバルベクターの次元削減を行う工程は、主成分分析を含み、グローバルベクターを、次元削減の前および/または後に標準化する。
【0044】
有利な実施形態では、少なくとも1つの散布図画像を、少なくとも1つの深層学習モデルに対して標準化する。これは好ましくは、関連する深層学習モデルへの転送前および/または転送中に行うことができる。
【0045】
有利な実施形態では、クラスターを決定する工程は、クラスター分析を含み、クラスター分析は階層的クラスター法を含む。
【0046】
有利な実施形態では、少なくとも1つの疾患を判定する工程は、ソフト投票法および/またはハード投票法を含む。
【0047】
有利な実施形態では、削減されたグローバルベクターをアンサンブルで入力変数として受け取る機械学習モデルは、人工ニューラルネットワーク、k近傍法、ランダムフォレスト、アダブースト、勾配ブースティングマシン(GBM)および/またはサポートベクターマシン(SVM)を含む。
【0048】
有利な実施形態では、少なくとも1つの散布図画像を入力変数として受け取る深層学習モデルは、畳み込みニューラルネットワークを含む。
【0049】
有利な実施形態では、アンサンブルの全てのモデルを、予め作成されたデータベースに基づいて訓練し、データベースには、単一細胞の測定された特性および/または散布図が含まれ、データベースは、単一細胞の測定された新たな特性および/または散布図で拡張可能である。したがって、モデルの精度を向上させるべく、モデルの訓練のために常に新たなデータでデータベースを拡張することができる。
【0050】
有利な実施形態では、少なくとも1つの結果レポートをコンピュータで生成し、結果レポートは、少なくとも1つの疾患に関するグラフィックおよび/または情報テキストおよび/または確率および/またはスコアを含み、結果レポートの表示は、コンピュータ機器および/またはモバイル機器および/または検査機器上の表示を含む。
【0051】
有利な実施形態では、本方法は、少なくとも1名の患者から血液パラメータを取得する工程であって、血液パラメータは、多くの血液像の単一細胞の測定された特性を含み、単一細胞は、赤血球および血小板を含み、b)において、少なくとも1つの散布図に加えて、またはその代わりに、少なくとも1つのヒストグラムを作成し、ここで、ヒストグラムの軸の1つは、単一細胞の数を含み、f)において、少なくとも1つの散布図画像に加えて、またはその代わりに、少なくとも1つのヒストグラム画像を、少なくとも1つの疾患の判定のためにアンサンブルの少なくとも1つの深層学習モデルの入力変数として使用し、請求項8におけるデータベースをヒストグラムで補完する、工程をさらに含む。
【0052】
本発明はまた、血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのシステムであって、該システムは、演算ユニットと、それに接続されたメモリユニットと、入力ユニットとを備えたコンピュータを含み、該システムは、a)少なくとも1名の患者から分析機器によって取得された血液パラメータを、入力ユニットを通じて把握し、血液パラメータは、多くの血液像の単一細胞の測定された少なくとも2つの特性を含み、単一細胞は、白血球を含み、白血球の測定された特性には、サイズ、細胞質の顆粒度、および細胞核の構造が含まれ;b)演算ユニットによって少なくとも1つの散布図を作成し、散布図の各軸は、単一細胞の測定された各種特性を含み;c)演算ユニットによって、少なくとも1つの散布図の少なくとも1つにおいて少なくとも1つのクラスターを決定し、クラスターは、白血球の亜集団を含み、亜集団には、単球、リンパ球、好塩基球、好中球および好酸球が含まれ;d)決定されたクラスターの特性要素を演算ユニットによって統合して1次元グローバルベクターを生成し、グローバルベクターにおける特性要素の配置は、関連するクラスターに従った配置を含み;e)演算ユニットによってグローバルベクターの次元削減を行い;f)演算ユニットを用いてアンサンブルによって少なくとも1つの疾患を決定し、アンサンブルは、少なくとも1つの機械学習モデルおよび少なくとも1つの深層学習モデルを含み、機械学習モデルは、入力変数として少なくとも1つの削減されたグローバルベクターを受け取り、少なくとも1つの深層学習モデルは、入力変数として少なくとも1つの散布図画像を受け取り;かつg)少なくとも1つの疾患の判定に関する少なくとも1つの結果を含むレポートを演算ユニットによって自動的に生成するように設計されている、システムに関する。
【0053】
システムはさらに、上述した1つ以上の方法工程を実行するように設計されていてよい。ここで注意すべきは、演算ユニットに接続されたメモリユニットは、対応するアルゴリズムを記憶し、実行のために演算ユニットに供給し、データを記憶し、アルゴリズムまたは本方法の実行時に演算ユニットに供給するように設計されていることである。入力ユニットは、外部からシステムにデータを転送できる任意の各装置であってよい。これは、データまたは信号インターフェース、入力装置、対応するインターフェースを備えたデータキャリア、またはその他の適切な各装置であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】レーザー光を用いて血液学的分析装置(Abbott Cell Dyn Sapphire)で測定される白血球の特性、すなわち、サイズ、分葉度、顆粒度、および複雑度を示す図である。これは、Abbott Cell Dyn Sapphire型の分析機器についての例である。他の、例えばSysmex型の分析機器では、細胞サイズ、細胞複雑度、および細胞含有物を測定することができる。上述したように、適切な分析機器では、通常は少なくとも2つの特性、すなわち、細胞サイズおよび内部複雑度を測定することができる。
図2】クラスター分析によって測定された特性に応じてソートされる白血球の一連の亜集団の例を示す図であり、亜集団には、好塩基球、好中球、リンパ球、単球、および好酸球が含まれる。全ての亜集団は、その特性によって説明される。
図3】測定された特性を、少なくとも2つの散布図にサイズ対複雑度およびサイズ対分葉度で直交座標上に重ねてプロットすることによる、少なくとも3つの特性(サイズ、複雑度、分葉度)に応じた少なくとも3つの亜集団(好中球、リンパ球、単球)の決定の例を示す図である。
図4】機械学習モデルの入力変数として使用されるグローバルベクターの標準化および削減の例を示す図である。
図5】深層学習モデルの行列形式の入力画像として使用されるグローバル散布図の例を示す図である。
図6】白血球の単一細胞の測定された特性を、サイズ対複雑度、サイズ対顆粒度、サイズ対分葉度、複雑度対顆粒度、複雑度対分葉度、顆粒度対分葉度で互いに個々の散布図にプロットすることによる、グローバル散布図の作成の例を示す図であり、グローバル散布図では個々の散布図の順序を入れ替えることができる。
図7】疾患判定のための上述されたハード投票法の例を示す図である。
図8】疾患判定のための同様に前述されたソフト投票法の例を示す図である。
図9】モデルの訓練および評価のためのデータベースの使用の例を示す図である。このデータベースには、測定された血液パラメータおよび対応する真の診断が含まれている(ラベル付きデータベース)。データベースは、X訓練およびX試験の2つの部分に分けられ、X訓練は訓練に使用され、X試験はモデルの評価に使用される。グローバルベクターを入力変数として必要とするモデルの場合、グローバルベクターは、X訓練およびX試験から上述のアプローチで得られる。グローバル散布図を入力変数として必要とするモデルの場合、グローバル散布図は、上述のアプローチで得られる。
図10】コンピュータ実装方法の全ての工程を例示的な図示でまとめて示す図である。本方法に先立って採取された患者の血液サンプルが、本発明による方法における検査に供され、これをここでは工程(1)と呼ぶ。工程(2)では、血液サンプルの単一細胞の特性が分析装置で測定される。工程(3)では、測定データが生データとしてコンピュータに転送される。工程(4)では、散布図が作成される。工程(5)では、クラスター分析によって、亜集団がその特性に応じて判別されて決定され、統合されてグローバルベクターが生成される。工程(6)では、グローバルベクターが標準化され、削減される。工程(7)では、削減されたベクターが、訓練済みの少なくとも1つの機械学習モデルの入力変数として使用され、一方で、(4)で得られた個々の散布図が統合されてグローバル散布図が生成され、これが訓練済みの少なくとも1つの深層学習モデルの入力画像として使用される。工程(8)では、ハードまたはソフト投票アプローチによる疾患の判定が行われる。工程(9)では、診断が、グラフィック面上に、または自動生成されたレポートの形で出力される。工程(11)では、新たな例でデータベースを拡張し、半教師ありのアプローチを使用して新たなモデルを訓練するために、予測された診断を、(3)で得られた対応する生データとともに、予め作成されたデータベースに格納することができる。予め作成されたデータベースを、生の測定データおよび対応する真の診断で工程(11)において拡張することもできる。データベースの目的は、モデルの訓練および評価である。ここで、データベースは、工程(12)および(13)で訓練データセットと試験データセットとに分けられる。工程(18)では、少なくとも1つの機械学習モデルの訓練および評価が行われ、その際、入力変数として、工程(14)および(17)で得られたグローバルベクターが使用される。工程(19)では、少なくとも1つの深層学習モデルの訓練および評価が行われ、その際、入力変数として、工程(15)および(16)で得られた散布図が使用される。工程(7)のモデルは、工程(18)および(19)で新たに訓練されたモデルが試験データセットでより良好な結果を達成する限り、工程(18)および(19)で新たに学習されたモデルにいつでも置き換えることができる。
図11】本発明の方法とAbbott Technologiesの高感度トロポニン-I試験との精度の比較を示す図である。
【0055】
説明された本方法は、患者が緊急治療室に入ってから最初の数分間に他の検査プロセスや機器による試験プロセスを受ける前に得られる臨床血液分析の結果に基づいて実施することができ、これにより、メディカルケアの質が著しく向上する。
【0056】
本方法を適用した結果「陽性」診断が確定した患者における本方法の適用例
以下の例は、本発明による方法をさらに説明するためものである。36歳の患者が、典型的な疼痛症候群の2時間後に「動脈硬化性心疾患、ST上昇を伴わない急性冠症候群、急性心不全、KillipクラスI」の仮診断を受けて治療室部門に入った。心電図検査が受付セクションで行われ、心電図上でも同様にSTセグメントの上昇は認められなかった。その後、検査室での検査のために静脈血サンプルが採取された。本方法外で採取された血液サンプルが検査に供され(図10の工程1)、その際、この検査には、高感度心筋トロポニンI法および臨床血液分析も含まれていた。実験室での研究の結果は以下のとおりであった:尿素4.2mmol/l(3.0~9.2);ALT16単位/l(0~55);AST12単位/l(5~34);総蛋白70g/l(64~83);クレアチニン74μmol/l(64~111);総ビリルビン6.2μmol/l(3.4~20).5);グルコース7.5mmol/l(3.9~5.5);カリウム3.7mmol/l(3.5~5.1);ナトリウム137mmol/l(135~145);イオン化カルシウム1.23mmol/l(1.13~1.32);APTV78.7秒(25.1~36.5);MNO0.97(0.2~0.5).90~1.20);プロトロンビン118.0%(70.0~140.0);プロトロンビン時間11.0秒(9.4~12.5);白血球12.4 10E9/l(4.0~9.0);(NEUT)好中球10.0×109/l(2.0~5.5);(NEUT%)好中球80.0%(48.0~78.0);(LYM)リンパ球1.79×109/l(1.20~3.00);(LYM%)リンパ球14.3%(19.0~37.0);(MON)単球0.57 109/l(0.09~0.60);(MON%)単球4.6%(3.0~11.0);(EOS)好酸球0.07×109/l(0.00~0.30);(EOS%)好酸球0.52%(1.00~5.00);(BAS)好塩基球0.07×109/l(0.00~0.06);(BAS%)好塩基球0.52%(0.00~1.00);(HGB)ヘモグロビン134g/l(130~160);(HCT)ヘマトクリット40.7%(40.0~48).0);(RBC)赤血球4.45 10×12/l(4.00~5.60);(MCH)赤血球中の平均ヘモグロビン濃度30.1pg(24.0~34.0);(MCHC)赤血球中の平均ヘモグロビン濃度32.9g/dL(30.0~38.0);(MCV)平均赤血球容積91.4fL(75.0~95.0);(RDW-CV)赤血球分布約11.0%(11.5~16.0%).5);(PLT)血小板262×109/l(180~400);(MPV)平均血小板容積11.5fL(7.4~10.4);心筋トロポニンI(高感度法)37.9ng/ml(基準値上限26.2ng/ml)。
【0057】
血液の測定後に(図10の工程2)、生の測定データがPCに転送された(図10の工程3)。その後、2つの散布図が訓練済み深層学習モデル用に生成され(図10の工程4)、これが統合されてグローバル散布図が生成された。並行して、4216個の要素を持つグローバルベクターが導出され(図10の工程5)、
【数11】
ここで、4216個の要素は、白血球の亜集団の測定された特性を表す。グローバルベクターは、平均値を削除し、所定のデータベースに基づき単一の分散にスケーリングすることによって標準化され、
【数12】
ここで、ベクター{u}は、予め作成されたデータベースのグローバルベクターの特性要素の平均値を表し、ベクター{s}は、予め作成されたデータベースのグローバルベクターの要素の標準偏差を表す。
【0058】
標準化後、特徴量の可能な限り大きな可変性(情報)を維持しつつ、特徴量の次元を4216要素から主成分と呼ばれる4要素に削減するためにPCAが適用された(図10の工程5)。主成分分析の適用後に、標準化されたグローバルベクターの4216要素全てが、4次元部分空間のベクターに削減された:
【数13】
【0059】
一見したところ、この削減されたベクターの値から患者診断のための情報を抽出することは困難である。この目的のために、訓練済みの機械学習モデルの複数のアンサンブルからの1つのアンサンブルが使用される。このアンサンブルは、人工ニューラルネットワークからのアンサンブル、k近傍モデルからのアンサンブル、ランダムフォレストモデルからのアンサンブル、アダブーストモデルからのアンサンブル、勾配木ブースティングモデルからのアンサンブル、およびサポートベクターマシンモデルからのアンサンブルからなり、個々のアンサンブルは、それぞれ予め作成されたデータベースで訓練されたものである。標準化され削減されたグローバルベクターは、全てのアンサンブルの入力ベクターとして使用され、一方で、グローバル散布図は、深層学習モデルに使用される。上記の場合、個々のアンサンブルによるACSについての票がカウントされる(ハード投票):
【表2】
【0060】
ハード投票法によるACSの最終結果は、陽性である。経皮的冠動脈インターベンションを行うことが決定された。患者は、冠動脈造影検査を受けた後、梗塞依存性冠動脈の経管的拡張術およびステント留置術を受けた。
【0061】
2018年6月7日の冠動脈造影No.7175:左型の血液循環。左冠動脈:主幹部-狭窄なし。前室間枝-口の狭窄5~50%、中間3分の1に亜閉塞。中間-近位3分の1に90%の狭窄。対角枝-狭窄なし。回旋枝(BB)-狭窄なし。鈍縁枝-狭窄なし。右冠動脈:低形成。鋭角枝:狭窄なし。後側壁枝(ROB)-狭窄なし。後室間枝-狭窄なし。
【0062】
2018年6月7日の冠動脈形成術およびPMVステント留置術No.7176:PMVの狭窄部(平均3分の1)BC 2.0×20.0mm、p=18atm。BC 2.0×20.0mm、p=16atmの中間3分の1に、2.75×33.0mmの薬剤コーティングを施したステントを留置。対照:TIMI IIIグレードの血流。2018年6月8日の2回の投影では、胸部X線画像で浸潤影は検出されなかった。根部は構造的で拡大せず、左は部分的に閉塞している。肺のパターンは、変更されなかった。横隔膜は輪郭がある。心陰影に特徴はない。洞は、ふさがっていない。
【0063】
以下の治療が行われた:β遮断薬、抗凝固薬、抗血小板薬2剤併用療法、スタチン(トランスアミナーゼ濃度の上昇のため、クレストールの用量を20~10mg/日減量)、胃保護薬。患者は、療養所でのリハビリ治療を拒否した。
【0064】
術後の段階で、動態観察における心筋トロポニンIの最高濃度は7522.5ng/mlに達した。入院は12日間続いた。最終診断は「動脈硬化性心疾患」であった。2018年6月7日に、STセグメントの上昇を伴わない左室前頭頂部高位側部の急性心筋梗塞。2018年6月7日に、冠動脈形成術およびステント留置術。患者は2018年6月19に退院し、居住地でさらに外来経過観察。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-06-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのコンピュータ実装方法であって、前記方法は、以下:
a)少なくとも1名の患者から血液パラメータを取得する工程であって、前記血液パラメータは、多くの血液像の単一細胞の測定された少なくとも2つの特性を含み、前記単一細胞は、白血球を含み、前記白血球の測定された特性には、サイズ、細胞質の顆粒度、および細胞核の構造が含まれるものとする工程;
b)少なくとも1つの散布図を作成する工程であって、前記散布図の各軸は、前記単一細胞の測定された各種特性を含むものとする工程;
c)前記少なくとも1つの散布図の少なくとも1つにおいて少なくとも1つのクラスターを決定する工程であって、前記クラスターは、白血球の亜集団を含み、前記亜集団には、単球、リンパ球、好塩基球、好中球および好酸球が含まれるものとする工程;
d)前記決定されたクラスターの特性要素を統合して1次元グローバルベクターを生成する工程であって、前記グローバルベクターにおける前記特性要素の配置は、関連するクラスターに従った配置を含むものとする工程;
e)前記グローバルベクターの次元削減を行う工程;
f)アンサンブルによって少なくとも1つの疾患を判定する工程であって、前記アンサンブルは、少なくとも1つの機械学習モデルおよび少なくとも1つの深層学習モデルを含み、前記機械学習モデルは、入力変数として少なくとも1つの削減されたグローバルベクターを受け取り、前記少なくとも1つの深層学習モデルは、入力変数として少なくとも1つの散布図画像を受け取るものとする工程;および
g)少なくとも1つの疾患の判定に関する少なくとも1つの結果を含むレポートを自動的に生成する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記多くの血液像の血液パラメータを取得する工程が、血液学的分析装置からの取得を含むことを特徴とする、請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記グローバルベクターの次元削減を行う工程が、主成分分析を含み、前記グローバルベクターを、前記次元削減の前および/または後に標準化することを特徴とする、請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの散布図画像を、前記少なくとも1つの深層学習モデルに対して標準化することを特徴とする、請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記クラスターを決定する工程が、クラスター分析を含み、前記クラスター分析は、階層的クラスター法を含むことを特徴とする、請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの疾患を判定する工程が、ソフト投票法および/またはハード投票法を含むことを特徴とする、請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記削減されたグローバルベクターをアンサンブルで入力変数として受け取る前記機械学習モデルが、人工ニューラルネットワーク、k近傍法、ランダムフォレスト、アダブースト、勾配ブースティングマシン(GBM)および/またはサポートベクターマシン(SVM)を含むことを特徴とする、請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
少なくとも1つの散布図画像を入力変数として受け取る前記深層学習モデルが、畳み込みニューラルネットワークを含むことを特徴とする、請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記アンサンブルの全てのモデルを、予め作成されたデータベースに基づいて訓練し、前記データベースには、前記単一細胞の測定された特性および/または散布図が含まれ、前記データベースは、単一細胞の測定された新たな特性および/または散布図で拡張可能であることを特徴とする、請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
少なくとも1つの結果レポートをコンピュータで生成し、前記結果レポートは、少なくとも1つの疾患に関するグラフィックおよび/または情報テキストおよび/または確率および/またはスコアを含み、前記結果レポートの表示は、コンピュータ機器および/またはモバイル機器および/または検査機器上の表示を含むことを特徴とする、請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
少なくとも1名の患者から血液パラメータを取得する工程であって、前記血液パラメータは、多くの血液像の単一細胞の測定された特性を含み、前記単一細胞は、赤血球および血小板を含み、1b)において、少なくとも1つの散布図に加えて、またはその代わりに、少なくとも1つのヒストグラムを作成し、ここで、前記ヒストグラムの軸の1つは、前記単一細胞の数を含み、1f)において、少なくとも1つの散布図画像に加えて、またはその代わりに、少なくとも1つのヒストグラム画像を、少なくとも1つの疾患の判定のためにアンサンブルの少なくとも1つの深層学習モデルの入力変数として使用し、請求項9におけるデータベースをヒストグラムで補完する工程をさらに含む、請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
血液細胞の形態学的特徴および細胞質の複雑度に影響を及ぼす疾患を判定するためのシステムであって、前記システムは、演算ユニットと、それに接続されたメモリユニットと、入力ユニットとを備えたコンピュータを含み、前記システムは、
a)少なくとも1名の患者から分析機器によって取得された血液パラメータを、前記入力ユニットを通じて把握し、前記血液パラメータは、多くの血液像の単一細胞の測定された少なくとも2つの特性を含み、前記単一細胞は、白血球を含み、前記白血球の測定された特性には、サイズ、細胞質の顆粒度、および細胞核の構造が含まれ;
b)前記演算ユニットによって少なくとも1つの散布図を作成し、前記散布図の各軸は、前記単一細胞の測定された各種特性を含み;
c)前記演算ユニットによって、前記少なくとも1つの散布図の少なくとも1つにおいて少なくとも1つのクラスターを決定し、前記クラスターは、白血球の亜集団を含み、前記亜集団には、単球、リンパ球、好塩基球、好中球および好酸球が含まれ;
d)前記決定されたクラスターの特性要素を前記演算ユニットによって統合して1次元グローバルベクターを生成し、前記グローバルベクターにおける前記特性要素の配置は、関連するクラスターに従った配置を含み;
e)前記演算ユニットによって前記グローバルベクターの次元削減を行い;
f)前記演算ユニットを用いてアンサンブルによって少なくとも1つの疾患を決定し、前記アンサンブルは、少なくとも1つの機械学習モデルおよび少なくとも1つの深層学習モデルを含み、前記機械学習モデルは、入力変数として少なくとも1つの削減されたグローバルベクターを受け取り、前記少なくとも1つの深層学習モデルは、入力変数として少なくとも1つの散布図画像を受け取り;かつ
g)少なくとも1つの疾患の判定に関する少なくとも1つの結果を含むレポートを前記演算ユニットによって自動的に生成する
ように設計されている、システム。
【国際調査報告】