(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】外科器具又は顕微手術器具用の1つ以上の小型把持面を製造する方法、及び1つ以上の把持面を備える小型外科器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20241008BHJP
B23H 9/00 20060101ALI20241008BHJP
B23H 7/02 20060101ALI20241008BHJP
A61B 34/30 20160101ALN20241008BHJP
A61B 17/06 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
A61B17/00
B23H9/00 Z
B23H7/02 K
A61B34/30
A61B17/06 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522394
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 IB2022059771
(87)【国際公開番号】W WO2023062553
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】102021000026186
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518132307
【氏名又は名称】メディカル・マイクロインストゥルメンツ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDICAL MICROINSTRUMENTS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】バッケレーティ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ピエロッティ,ネーリ
(72)【発明者】
【氏名】ラッツァーリ,ジョルジョ
(72)【発明者】
【氏名】シミ,マッシミリアーノ
【テーマコード(参考)】
3C059
4C130
4C160
【Fターム(参考)】
3C059AA01
3C059AB05
3C059DA06
3C059HA01
3C059HA04
3C059JA03
4C130AA42
4C130AB02
4C160BB11
(57)【要約】
ワイヤ電気侵食による製造する方法であって、切削ワイヤ(3)を備えるワイヤ電気侵食加工機(2)を提供することと、少なくとも1つのワークピース(11)をワイヤ電気侵食加工機に取り付けることと、ワイヤ電気侵食により表面マイクロトポグラフィー(20)の作製することと、山部(12)と谷部(13)とを含む第1の切削経路(21)に従ってワークピース(11)に第1の貫通切削を実行し、それにより、第1の切削経路(21)の前記山部と前記谷部とに対応するレリーフ(15)と凹部(16)とを含むワークピース上の露出部分(14)を露出させることと、を含む。外科器具は、表面マイクロトポグラフィーを含む少なくとも1つの把持面を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ電気侵食によって外科器具(1)のエンドエフェクタ(29)の把持面(23)を製造する方法であって、
切削ワイヤ(3)を備えるワイヤ電気侵食加工機(2)を提供することと、
少なくとも1つのワークピース(11)を前記ワイヤ電気侵食加工機に取り付けることと、
ワイヤ電気侵食により表面マイクロトポグラフィー(20)を作製することと、
を含み、
前記表面マイクロトポグラフィー(20)を作製することは、
山部(12)と谷部(13)とを含む第1の切削経路(21)に従って、少なくとも1つの前記ワークピース(11)に対して第1の貫通切削を実行し、それにより、少なくとも1つのワークピースにおいて、前記第1の切削経路(21)の前記山部と前記谷部とに対応するレリーフ(15)と凹部(16)とを含む少なくとも1つの露出部分(14)を露出させるステップと、
次に、回転軸(R-R)の周りで前記切削ワイヤ(3)に対して少なくとも1つの前記ワークピース(11)を回転させる回転ステップと、
次に、山部(12)と谷部(13)とを含む第2の切削経路(22)に従って、前記ワークピース(11)の少なくとも1つの同一の前記露出部分(14)に第2の貫通切削を実行し、それにより、少なくとも1つの前記露出部分(14)において、溝(18)によって区切られた複数の隆起島(17)を有する表面マイクロトポグラフィー(20)を作製するステップと、
を含む、
方法。
【請求項2】
作製された前記表面マイクロトポグラフィーはストレート横断チャネル(19)を有し、前記ストレート横断チャネル(19)は、少なくとも1つの規定可能な横方向において、前記ワイヤ電気侵食加工機(2)の前記切削ワイヤ(3)のゲージよりも狭い、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのワークピース(11)を成形する成形ステップを更に含み、
前記成形ステップは、外科器具(1)用の少なくとも1つの把持リンク(30)を作製し、
前記把持リンク(30)は、一体に作られた、前記表面マイクロトポグラフィーを有する前記把持面(23)を含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのワークピース(11)を成形する成形ステップを更に含み、
前記成形ステップは、外科器具(1)のリンクに固定される少なくとも1つの部品(34)を作製して、前記表面マイクロトポグラフィーを有する前記把持面(23)を含む前記外科器具(1)の把持リンク(30)を作製することを含み、及び/又は、
前記方法は、少なくとも1つの前記部品(34)を、前記把持リンク(30)の本体の固定座(33)に固定することを更に含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記成形ステップは、好ましくは互いに直交する2つの切削面において2つの成形貫通切削を実行することを含む、
請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記成形ステップは、前記表面マイクロトポグラフィーを作製するステップの後に実行され、及び/又は、
前記表面マイクロトポグラフィーを作製するステップと前記成形ステップとの間に、前記回転軸(R-R)の周りで前記切削ワイヤに対して前記ワークピースを回転させる更なる回転ステップが実行される、
請求項3から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記回転軸(R-R)は、前記ワークピース(11)の前記露出部分(14)から出る方向と平行に延び、及び/又は、
前記回転軸(R-R)は、前記切削ワイヤ(3)の延伸方向と直交し、且つ少なくとも1つの前記ワークピース(11)の長手延伸方向と直交して延びる、
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記回転ステップは、少なくとも1つの前記ワークピース(11)を前記切削ワイヤ(3)に対して45°を超える角度で回転させることを含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの前記ワークピース(11)を前記ワイヤ電気侵食加工機に取り付けることは、工具を提供することと、少なくとも1つの前記ワークピース(11)を前記工具に取り付けて前記ワイヤ電気侵食加工機(2)に取り付けることとを含み、
又は、
少なくとも1つの前記ワークピース(11)を前記ワイヤ電気侵食加工機に取り付けることは、ロボットアームを提供することと、少なくとも1つの前記ワークピース(11)を前記ロボットアームに取り付けることとを含み、前記回転ステップは、好ましくは、前記ロボットアームを操作することによって実行され、
又は、
前記ワイヤ電気侵食加工機(2)を提供することは、少なくとも1つの回転軸を有する前記ワークピース用の位置決めシステムを、前記ワイヤ電気侵食加工機に設けることを含む、
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記ワークピース(11)上に初期粗面化を実行するステップ、すなわち、少なくとも部分的平坦化を実行し、それにより、前記ワークピースにおいて加工される実質的に平坦な表面を露出させるステップを更に含み、
前記初期粗面化を実行するステップは、前記表面マイクロトポグラフィーを作製するステップの前に行われる、
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の切削経路と前記第2の切削経路とのうちの少なくとも1つの切削経路(21又は22)は、経路モジュールユニット(UM)を含み、前記経路モジュールユニット(UM)は、少なくとも1つの山部(12)と少なくとも1つの谷部(13)とを含み、所定の周期で繰り返す、
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、把持動作を行う動作状態にあるときに、互いに結合されることが意図された2つの把持面(23、43)を作製する、
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法の実行において、オーステナイト相への相転移の発生を回避するように、マルテンサイト鋼ブロックから開始して前記表面マイクロトポグラフィー(20)を作製することにより材料が加工される、
請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の方法によって作製された前記表面マイクロトポグラフィー(20)を有する少なくとも1つの把持面(23)を含む把持エンドエフェクタ(29)を備える外科器具(1)。
【請求項15】
各々の前記隆起島(17)は鋭い自由端を有する、
請求項14に記載の外科器具(1)。
【請求項16】
前記隆起島の間の前記溝(18)は、湾曲した凹状の底部を有し、好ましくは、実質的に円形状の底部を有する、
請求項14又は15に記載の外科器具(1)。
【請求項17】
開閉自由度に沿って相互に移動可能な2つの把持面(23、34)を備え、
前記把持面(23、43)のそれぞれが前記表面マイクロトポグラフィー(20)を含む、
請求項14から16のいずれか1項に記載の外科器具(1)。
【請求項18】
一方の前記把持面(23)の前記隆起島(17)は、他方の前記把持面(43)の前記溝(18)内に受容され、その逆も同様である、
請求項17に記載の外科器具(1)。
【請求項19】
前記把持面(23)はマルテンサイト鋼で作製される、
請求項14から18のいずれか1項に記載の外科器具(1)。
【請求項20】
前記把持面(23)は、1平方ミリメートル当たり50から300個の隆起島17の密度を有し、好ましくは、前記隆起島17の密度は、1平方ミリメートル当たり60から240個の隆起島(17)の密度である、
請求項14から19のいずれか1項に記載の外科器具(1)。
【請求項21】
各々の前記隆起島(17)は、2対の対向面(57、58)を備え、
2対の前記対向面(57、58)は前記隆起島(17)の前縁を形成し、前記前縁は、2対の前記対向面のうちの2つの隣接する面(57、58)が接合したときその間で形成される隆起したシャープエッジ(59)である、
請求項14から20のいずれか1項に記載の外科器具(1)。
【請求項22】
前記隆起したシャープエッジ(59)に対応する前記隣接する面は、それらの間に60度以下の角度を形成し、好ましくは30度から60度の角度を形成し、より好ましくは約45度の角度を形成する、
請求項21に記載の外科器具(1)。
【請求項23】
前記隆起したシャープエッジ(59)は凹状である、
請求項21又は22に記載の外科器具(1)。
【請求項24】
1対の前記対向面の全ての面(57、58)は凹面である、
請求項21から23のいずれか1項に記載の外科器具(1)。
【請求項25】
各々の前記隆起島(17)は、四角形の底部、例えば、菱形及び/又は長方形の底部を含む、
請求項14から24のいずれか1項に記載の外科器具(1)。
【請求項26】
前記把持面(23)は、ストレート横断チャネル(19)を含み、
前記ストレート横断チャネル(19)は、前記表面マイクロトポグラフィー(20)を作製するために用いられた前記切削ワイヤ(3)のゲージよりも小さいゲージを有する、
請求項14から25のいずれか1項に記載の外科器具(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科器具用の、表面マイクロトポグラフィー(micro-topography)を有する1つ又は複数の把持面を製造する方法に関する。
【0002】
本発明は更に、表面マイクロトポグラフィーを有する1つ又は複数の把持面を備える外科器具に関する。
【背景技術】
【0003】
ロボット手術装置は、当技術分野で一般に知られており、典型的には、中央のロボットタワー(又はカート)と、中央のロボットタワーから延びる1つ又は複数のロボットアームとを備える。各アームは、患者に対する外科手術を行うために、遠位側においてアームに取り付け可能な外科器具を移動させるための電動位置決めシステム(又はマニピュレータ)を備える。患者は通常、手術室にある手術ベッドに横たわり、手術室内では、ロボット装置の非滅菌部分による細菌汚染を避けるために、滅菌が確保されている。
【0004】
手術又は顕微手術用の関節型外科器具は通常、開閉時に相互に関節動作する一対の終端リンク(グリップ)を備え、一対の終端リンクのそれぞれは、針、及び、例えば、吻合処置又は他の外科的治療又は顕微手術治療を行うための縫合糸を扱うための自由端を有する。
【0005】
針及び縫合糸を満足に扱うためには、一般に、関節型外科器具の終端リンクの把持面に成形(molding)によってオフセットした隆起部と谷部とを作製し、これによって、外科用針の把持能力を高める。明らかに、把持面上に成形によって作製された前記オフセットした隆起部と谷部との寸法により、一般に薄い細長い本体である針及び縫合糸の扱いやすい最小サイズを決定する。
【0006】
針及び縫合糸の小型化は、患者への侵襲性を軽減し、回復時間を短縮させることを可能にするために、ロボット手術や顕微手術において特に望ましい。
【0007】
一般に、成形による凹凸のある把持面は、針及び縫合糸、並びに組織表面自身の小型化に対応するには粗すぎて、マイクロスケールでは効果がない。更に、成形により作製されたマイクロメトリック要素は、動作中に非常に損傷しやすい場合がある。
【0008】
特に、非常に高硬度の材料に対して冷間成形(cold molding)技術を使用することが非常に複雑になるため、スケールが小さくなるにつれて、隆起やシャープエッジ(sharp edges)の成形は非常に困難になる。仕上げ段階以降は硬度に影響を与える熱処理ができない。なぜなら、材料の相変態及び相対冷却により材料の変形が容易に生じ、その結果、局所的な収縮や亀裂が生じたり、隆起やシャープエッジの付近又はその対応部分において破断が発生したりする可能性があるためである。そのため、成形プロセスが非常に満足しないものになる。
【0009】
いくつかの既知の解決策は、剥離によって外科用エンドエフェクタの把持面に対して加工又は仕上げを実行することを提案している(例えば、ショットピーニング(shot peening)、サンドブラスト(sandblasting))。しかし、これらの技術でさえ、部品の更なる小型化には適しておらず、すなわち、この種の技術は本質的に、得られる把持面の形状を制御できないため、小型の外科用エンドエフェクタの把持面を作製するのには適していない。
【0010】
同じ出願人の国際公開第2017-064305号、欧州特許第3362218号、及び欧州特許第3597340号に示されているように、関節型外科器具のリンクを小型化するために、ワイヤ電気侵食(wire electro-erosion)によって作られた関節型外科器具が知られており、この技術は、「WEDM」、「ワイヤ切削」、「電気侵食」、「スパーク加工」、又は「スパーク侵食(spark-eroding)」としても知られている。この技術により、1つ又は複数のワークピースの切削面で貫通切削を行うことができる。ワークピースの長手方向の延伸に平行な軸の周りで切削装置を90°回転させることにより、ワークピースの位置を変更することなく、第2の切削面で第2の貫通切削を行うことができる。これにより、2次元の切削技術を用いて3次元の部品を作製することができる。2次元の貫通切削の1つは、把持面のプロファイルを形成する。したがって、ワイヤ電気侵食切削によって、ワークピースにおいて作製された表面は、常に切削ワイヤの長手方向と平行である。
【0011】
更に、金属、例えば、鋼などのワイヤ電気侵食プロセスは、固体から材料を除去することによって行われ、材料のコア(バルク)の変化を回避する。実際、電気侵食によって加工された部品のうち、小さくて薄い層だけが構造変化の影響を受ける。
【0012】
例えば、既知の文献WO-03-105705は、加工すべき単一の部品から開始し、ワイヤ電気侵食によって製造された顕微手術用鉗子を示している。当該顕微手術用鉗子において、開閉自由度を実現するため、一枚の被加工材料の本体に長手方向のギャップを切り込むことによって、鉗子の2つの部分(「ジョー」)を分離し、鉗子の前記2つの部分のそれぞれの本体を弾性的変形可能にする。鉗子の把持面は、把持面上で横方向に延びる特に鋭利な隆起部を有する鋸歯状のプロフィールに形成され、すなわち、切削ワイヤによって切削される。
【0013】
したがって、外科用針及び/又は小型の縫合糸をしっかりと器用に扱うことができるように、小型の外科用エンドエフェクタの把持能力を向上させる必要性を強く感じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、従来技術に関して指摘されている欠点を改善することである。
【0015】
この目的及び他の目的は、請求項1に記載の方法及び請求項14に記載の外科器具によって達成される。
【0016】
いくつかの有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0017】
本発明の一態様によれば、外科器具は、表面マイクロトポグラフィーを有する機能的表面を備える。機能的表面は、マイクロ手術針及び/又は小型縫合糸を把持するように適合された把持面であってもよい。把持面は、滑らかな組織及び/又は滑りやすい組織、並びに把持するのが難しい組織、並びに繊細な組織を扱うことを目的とすることができる。
【0018】
機能的表面は、非限定的な例として、ストロークエンド(stroke-end)、研磨、位置決め条件などで、外科処置又は顕微手術を実行するための、摩擦が増加した表面であってもよく、動作条件下で必ずしも把持動作を実行するには限らない。
【0019】
表面マイクロトポグラフィーは、ワイヤ電気侵食(WEDM)によって作製されることが好ましい。
【0020】
本発明の一態様によれば、外科器具は、少なくとも2つの把持面を含むエンドエフェクタを備え、2つの把持面は、互いに対向し、開/閉(把持)自由度において移動可能であり、少なくとも2つの把持面のうち、少なくとも1つの把持面は表面マイクロトポグラフィーを含む。
【0021】
表面マイクロトポグラフィーは、必ずしもワイヤ電気侵食プロセスによって作製される必要はないが、好ましくは、外科器具の少なくとも1つの把持面の表面マイクロトポグラフィーは、ワイヤ電気侵食によって作製される。
【0022】
表面マイクロトポグラフィーを含む把持面は、外科器具のエンドエフェクタの構成要素と一体に作製することができる。例えば、エンドエフェクタの把持リンクは、把持リンクの本体と一体に作られた前記把持面を含む(それは、把持リンク作動テンドンの終端要素及び/又は把持リンクの穴又はピンなどの接合要素と一体であってもよい)。
【0023】
表面マイクロトポグラフィーを含む把持面は、エンドエフェクタに対して別個の部品として作製され、エンドエフェクタに組み立てられることができる。例えば、エンドエフェクタの把持リンクは、固定座を形成する一体型壁を備え、その中に前記表面マイクロトポグラフィーを有する構成要素(「パッド」、プレート、ブロックなど)が(例えば、接着、連結、カップリングなどによって)前記固定シートに固定される。このような場合、ワイヤ電気侵食による製造方法は、手術器具のエンドエフェクタの把持リンクに固定される部品を形成する把持面に表面マイクロトポグラフィーを作製する。部品の固定は、必要に応じて取り外し可能にすることができる。
【0024】
表面マイクロトポグラフィーは、把持面の一部にのみ含まれることができる。例えば、表面マイクロトポグラフィーは、外科器具のエンドエフェクタの自由端の後ろであって、当該自由端を含まない把持面の長手方向バンド上にのみ作製することができる。表面マイクロトポグラフィーを有する把持面の第1部分は、外科用針又は顕微外科用針を把持するために使用することができ、一方、把持面の第2部分は、前記針を把持することとは別に又は同時に、縫合糸を把持するために使用することができる。
【0025】
把持面上の局所的に異なる特徴を有する部分のサイズ及び位置のおかげで、動作状態において、把持面が把持しなければならない組織又はデバイスに基づいて製造を適合させることが可能である。例えば、くぼみや打ち抜きのような鋭利なエッジを有する部分を、把持しにくい手術針や生体組織の把持に特化させることができ、同じ把持面の平坦な部分は、縫合糸又は損傷を受けていない生体組織を把持するために使用することができる。
【0026】
把持面は、長手方向において、局所的に異なる特徴を有する2つ以上の部分を備えて局所的に異なる特徴を有する横方向のバンドを形成することができる。これら横バンドの幅は、把持面が意図される臨床用途に応じて調整することができる。
【0027】
本発明の一態様によれば、ワイヤ電気侵食プロセス(WEDM)によって外科器具の少なくとも1つの把持面を製造する方法が提供される。この方法は、山部と谷部を含む切削経路に従って少なくとも1つのワークピースにおいて少なくとも1つの貫通切削を行う工程を含む。これにより、切削経路の山部及び谷部に対応するレリーフ(reliefs)及び凹部(recesses)を含む露出部分が生成される。
【0028】
このような方法により、切削ワイヤを用いた貫通切削によって表面マイクロトポグラフィーを作製することができ、表面マイクロトポグラフィーのレリーフ及び凹部は、切削ワイヤと平行であり、互いに平行である。
【0029】
切削中に切削ワイヤで得られるレリーフ及び凹部を有するこのようなマイクロトポグラフィーを作製するによって、把持能力が向上し、このような解決策が外科器具の把持面を作製するのに適したものになっている。
【0030】
切削ワイヤの直径は、マイクロトポグラフィーの隣接するレリーフ間のピッチを調整するために選択することができる。
【0031】
貫通切削によって形成される凹部の少なくとも一部は、マイクロトポグラフィーの横方向の貫通切削であってもよく、実質的に同等のゲージ、又は切削を行うために用いられる切削ワイヤの直径よりわずかに大きいゲージを有する、把持面上のチャネルを通る直線を横断する。前記凹部の少なくとも一部によって形成される横方向の貫通チャネル切り込みを設けることによって、外科用針又は顕微外科用針、並びに縫合糸を受け入れることができる横方向座部を形成することができる。
【0032】
本発明の一態様によれば、外科器具は、互いに対向し、開閉(グリップ)自由度において移動可能な少なくとも2つの把持面を含むエンドエフェクタを備え、当該エンドエフェクタにおいて、両方の把持面は表面マイクロトポグラフィーを有し、表面マイクロトポグラフィーのレリーフと凹部とは、切削ワイヤと平行であり、全てが互いに平行である。
【0033】
把持面のレリーフの配置は、開閉自由度の閉鎖条件下で、一方の把持面のレリーフが他方の把持面のレリーフに当接するように選択することができる。レリーフ間のピッチを調整することで、可変ピッチの平行レリーフを有するマイクロトポグラフィーを実現することができる。
【0034】
把持面のレリーフの配置は、開閉自由度の閉鎖条件下で、一方の把持面のレリーフが他方の把持面のレリーフに対してオフセットされるように選択することができる。一方の把持面のレリーフは、他方の把持面の凹部の側壁又は底壁に当接することができる。これにより、把持面のストレート横断貫通チャネルのゲージ(gauge)を縮小することができ、更に縮小したゲージの針をしっかりと受けるように適合させることができる。
【0035】
ストレート横断チャネルの方向は、把持面を含む把持端要素、例えば、先端リンクの長手延伸方向に対して横方向であることが好ましい。
【0036】
本発明の一態様によれば、ワイヤ電気侵食(WEMD)プロセスによって外科器具の少なくとも1つの把持面を製造する方法が提供される。この方法は、山部と谷部とを含む第1の切削経路に従って、少なくとも1つのワークピースにおいて少なくとも第1の貫通切削を実行する工程を含む。次に、少なくとも1つのワークピースを回転させる。次に、山部と谷部とを含む第2の切削経路に従って、当該ワークピースの同じ露出部分に対して第2の貫通切削を実行する。
【0037】
相互に回転された2つの貫通切削を実行することにより、溝によって区切られた複数の隆起島が形成され、第1の切削と第2の切削との効果の統合により得られたテクスチャを有するマイクロトポグラフィーが前記露出部分に形成される。これにより、第1の切削によって作られたレリーフは、第2の切削によって作られた凹部によって中断され、隆起島が形成される。同時に、第1の切削によって作られた凹部は、第2の切削によって作られた凹部と連通し、隆起島を区切る溝を形成することができる。
【0038】
このような方法により、作製された表面マイクロトポグラフィーは、少なくとも1つの規定可能な横方向においてワイヤ電気侵食加工機の切削ワイヤの直径よりも狭いストレート横断経路チャネルを有する。
【0039】
これにより、更に小さいゲージの外科用針又は顕微手術用針を把持することができる把持面を形成することが可能となる。
【0040】
ワイヤ電気侵食によって行われた第1切削及び第2切削の2次元切削経路は、把持面の所望の3次元形状が得られるように選択することができる。
【0041】
第1切削と第2切削との間のワークピースの回転は、把持面の所望の3次元形状が得られるように選択することができる。
【0042】
第1の切削経路及び/又は第2の切削経路の切削パラメータを調整することにより、把持面のストレート横断チャネルのゲージを調整することができる。
【0043】
本発明の一態様によれば、外科器具は、少なくとも2つの対向する把持面を備え、これらの把持面は、開閉(グリップ)自由度において相互に移動可能なエンドエフェクタを備える。両方の把持面は、ワイヤ電気侵食プロセスによって作製された表面マイクロトポグラフィーを含み、当該ワイヤ電気侵食プロセスは、山部と谷部とを含む第1の切削経路に従って少なくとも1つのワークピースに少なくとも第1の切削を実行する工程を含む。次に、少なくとも1つのワークピースを回転させる。次に、山部と谷部とを含む第2の切削経路に従って、当該ワークピースの同じ露出部分において第2の貫通切削を実行する。
【0044】
隆起島はそれぞれ鋭い自由端を有していてもよい。隆起島の間の溝は湾曲した凹状の底部、例えば、実質的に円形状であってもよい。第1及び/又は第2の切削経路の切削パラメータを調整することにより、例えば、全て実質的に同一高さにある溝底や、全て実質的に同一高さで片持ち式に延びる隆起島を作製することができる。
【0045】
把持面の配置は、第1把持面の隆起島が第2把持面の溝に収容されるように選択することができ、その逆も同様である。
【0046】
提案された解決策によれば、ワイヤ電気侵食による製造プロセスによって、制御され、繰り返し可能な方法で把持面にマイクロトポグラフィーを作製することが可能である。
【0047】
提案された解決策により、把持面にマイクロトポグラフィーを作製することができ、当該把持面は、特に、針や小型縫合糸などの小型の細長い要素の把持を、より強固に、且つより正確にすることができる。
【0048】
したがって、器用さが向上し、極度の小型化に適応できる外科用把持ツールを提供することが可能となる。
【0049】
提案された解決策により、製造に用いられるワイヤ電気侵食加工機の切削ワイヤのゲージよりも小さいゲージの横方向マイクロチャネルを有する1つ又は複数の把持面を得ることが可能である。
【0050】
提案された解決策により、動作状態において結合されること、例えば、微小手術針や小型縫合糸に対して把持動作を及ぼすことが意図された2つの把持面を作製することができる。
【0051】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下に簡単に説明する添付図面を参照して、限定されない例として示される本発明の好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。本開示における「ある」実施形態(「an」 ebodiment)や「ある」動作モード(「an」 operating mode)への言及は、必ずしも同じ実施形態又は同じ動作モードを指すわけではなく、少なくとも1つの実施形態又は動作モードとして理解されるべきことに留意されたい。更に、簡潔性及び図面の総数を削減するため、ある図が複数の実施形態及び複数の動作モードの特徴を示すために使用される場合があり、また、図の全ての要素が所定の実施形態又は所定の動作モードに必ずしも必要ではない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1A】一実施形態に係るロボット手術システムの不等角投影図
【
図2】一実施形態に係るワイヤ電気侵食加工機を示す図であって、可能な動作モードに従って、ワークピースがワイヤ電解加工機に取り付けられている
【
図3A】一実施形態によるワイヤ電気侵食加工機用の工具を含む支持体を示す垂直正面図であって、可能な動作モードに従って、複数のワークピースが工具に取り付けられている
【
図3B】一実施形態によるワイヤ電気侵食加工機用の工具を含む支持体を示す斜視図であって、可能な動作モードに従って、複数のワークピースが工具に取り付けられている
【
図3C】一実施形態によるワイヤ電気侵食加工機用の工具を含む支持体を示す投影図であって、可能な動作モードに従って、複数のワークピースが工具に取り付けられている
【
図3D】一実施形態によるワイヤ電気侵食加工機用の工具を含む支持体を示す投影図であって、可能な動作モードに従って、複数のワークピースが工具に取り付けられている
【
図4】一実施形態による回転軸支持体を備えたワイヤ電気侵食加工機を示す投影図であって、可能な動作モードに従って、複数のワークピースが工具に取り付けられている
【
図5】一実施形態による協働ロボットアームを有する支持体及び切削ワイヤを示す概略図であって、可能な動作モードに従って、複数のワークピースが工具に取り付けられている
【
図6】可能な動作モードに従って、複数の表面マイクロトポグラフィーを含むワークピースを示す図
【
図7A】可能な動作モードに従って、貫通切削を実行する工程を示す図
【
図7B】
図7Aの貫通切削によって得られた露出部分を有するワークピースを示す図
【
図7C】
図7Aの貫通切削によって得られた表面マイクロトポグラフィーを有する外科器具の先端リンクを示す斜視図
【
図7D】
図7Aの貫通切削によって得られた表面マイクロトポグラフィーを有する部品又はインサートを示す斜視図
【
図8A】可能な動作モードに従って、第2の貫通切削を実行する工程を示す図
【
図8B】
図8Aの第2の貫通切削の終わりに露出部分を有するワークピースを示す図
【
図8C】
図8Aの第2の貫通切削の終わりに表面マイクロトポグラフィーを有する外科器具の先端リンクを示す斜視図
【
図8D】
図8Aの第2の貫通切削の終わりに表面マイクロトポグラフィーを有する部品又はインサートを示す斜視図
【
図8E】一実施形態による複数の隆起島を含む表面マイクロトポグラフィーの斜視図
【
図9】可能な動作モードに従って、表面マイクロトポグラフィーを含むワークピースを示す図であって、破線は、一実施形態による、表面マイクロトポグラフィーを有する把持面を備える外科器具の先端リンクの形状プロファイルを示す
【
図10A】一実施形態による、先端リンク本体と一体に作製された、表面マイクロトポグラフィーを有する把持面を備える先端リンクを示す図
【
図10B】一実施形態による、先端リンク本体と一体に作製された、表面マイクロトポグラフィーを有する把持面を備える先端リンクを示す図
【
図10C】一実施形態による先端リンクの分解図であって、部品又はインサートが表面マイクロトポグラフィーを含む
【
図11A】可能な動作モードによる切削経路の一部を示すグラフ
【
図11B】可能な動作モードによる切削経路の一部を示すグラフ
【
図12A】可能な動作モードによる、第1の貫通切削の第1の切削経路の一部と、第2の貫通切削の第2の切削経路の一部とを比較するグラフ
【
図12B】可能な動作モードによる、第1の貫通切削の第1の切削経路の一部と、第2の貫通切削の第2の切削経路の一部とを比較するグラフ
【
図13A】いくつかの実施形態による外科器具の把持面の概略図
【
図13B】いくつかの実施形態による外科器具の把持面の概略図
【
図13C】いくつかの実施形態による外科器具の把持面の概略図
【
図14】一実施形態による、閉じた構成にある外科器具の2つの把持面を示す斜視図
【
図15A】一実施形態による、閉じた構成にある外科器具の2つの把持面を示す図
【
図15C】一実施形態による、閉じた構成にある外科器具の2つの把持面を示す図であって、把持面の1つのみが表面マイクロトポグラフィーを含む
【
図16】いくつかの実施形態による、外科器具の把持面の概略図
【
図17】いくつかの実施形態による、外科器具の把持面の概略図
【
図18】いくつかの実施形態による、外科器具の把持面の概略図
【
図19】いくつかの実施形態による、外科器具の把持面の概略図
【
図20】いくつかの実施形態による、外科器具の把持面の概略図
【
図21】いくつかの実施形態による、外科器具の把持面の概略図
【
図22】いくつかの実施形態による、外科器具の把持面の概略図
【
図23】実施形態による、開閉自由度の閉鎖構成にある外科器具のエンドエフェクタの斜視図であって、明瞭のためにある部品(シャフト又はロッドなど)が省略されている
【
図24】一実施形態による表面マイクロトポグラフィーを有する把持面を示す顕微鏡写真画像
【
図25A】可能な動作モードによる方法のブロック図
【
図25B】可能な動作モードによる方法のブロック図
【
図25C】可能な動作モードによる方法のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0053】
本明細書全体を通して「実施形態」という言及は、実施形態に関連して説明される所定の特徴、構造、又は機能が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の様々な部分における「実施形態において」という表現は、必ずしも全て同じ実施形態を指すわけではない。更に、例えば異なる図面に示されている所定の特徴、構造、又は機能は、1つ又は複数の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。同様に、本明細書全体を通して「動作モード」と言及されている場合、動作モードに関連して説明されている所定の特徴、構造、又は機能が、本発明の少なくとも1つの動作モードに含まれていることを意味する。したがって、本明細書のさまざまな部分における「動作モード」という表現は、必ずしも全て同じ動作モードを指すわけではない。更に、例えば異なる図面に示されている所定の特徴、構造、又は機能は、1つ又は複数の動作モードで任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0054】
一般的な実施形態によれば、ワイヤ電気侵食(一般に採用されている用語によれば、「ワイヤ放電加工」、又は「WEMD」、又は「スパーク電気侵食」)による製造方法が提供される。
【0055】
この方法は、切削ワイヤ3を備えるワイヤ電気侵食加工機2を提供する工程を含む。
【0056】
切削ワイヤ3は、好ましくは、動作状態において、ワイヤ電気侵食加工機2の2つのヘッド4、5の間で長手方向に延びる。切削(すなわち、電気侵食)を実行するために、切削ワイヤ3は、それ自体既知の方法で、切削ワイヤ3の長手方向の延伸に対して実質的に直交する送り方向W(又は切削方向W)の切削経路に沿って前進する。すなわち、送り方向は、加工機2の2つのヘッド4、5間の切削ワイヤ3の延伸のスライド方向に対して実質的に直交する。2つのヘッド4、5のそれぞれは、切削ワイヤ3用のリール(reel)6又は巻き付き/巻き戻しローラ6と関連付けることができる。動作状態では、切削ワイヤ3は一方のリールから巻き戻されながら他方のリールに巻き付けられ、ヘッド4、5は切削ワイヤ3を送り方向W(又は切削方向W)に案内してワークピースを切削する。
【0057】
図2に例示されているように、ワイヤ電気侵食加工機2は、好ましくは、動作条件下で少なくとも1つのワークピースにおける電気侵食がその内部で起こる誘電液で満たされるタンク7を備える。電気侵食加工機2は、更に、ポンプ9及びフィルタが取り付けられた油圧ダクト8を含む油圧回路を備え、ポンプ9及びフィルタはタンク7から誘電液を引き出して濾過し、油圧回路の最後に、ノズル10で誘電液をワークピースに向ける。
【0058】
この方法は、更に、少なくとも1つのワークピース11をワイヤ電気侵食加工機2に取り付ける工程を含む。
【0059】
少なくとも1つのワークピース11は、ワークピース11の長手延伸方向と実質的に一致する長手方向軸X-Xを有する細長い、例えば、円筒形の本体を有することができる。
【0060】
少なくとも1つのワークピース11は、好ましくは金属などの導電性材料で作られるか、又は導電性材料でコーティングされている。
【0061】
有利的には、この方法は、ワイヤ電気侵食加工機2によって少なくとも1つのワークピース11上に表面マイクロトポグラフィーを作製する工程を更に含む。
【0062】
図7A及び
図7Bに概略的に示すように、表面マイクロトポグラフィーを作製する工程は、山部12及び谷部13を含む(第1の)切削経路21に従ってワークピース11に(第1の)貫通切削を実行する工程を含む。前記第1の貫通切削により、ワークピース11上に露出部分14が露出される。露出部分14は、前記第1の切削経路21の前記山部12及び谷部13に対応するレリーフ15と凹部16とを含む。言い換えれば、第1の切削経路21が山部12と谷部13とを含むため、ワークピースの露出部分14にレリーフ15と凹部16とが形成される。例えば、切削ワイヤ3によって形成される前記レリーフ15は、第1の貫通切削中に、実質的に直線方向に沿って切削ワイヤ3と平行に延びる隆起部(ridges)又は尖端部(cusps)であってもよい。例えば、切削ワイヤ3によって形成され凹部16は、湾曲した底部を有する開口チャネルであってもよく、当該チャネルは、実質的に直線状に延び、レリーフ15の隆起部又は尖端部と平行であり、したがって、第1の貫通切削中に切削ワイヤ3と平行する。
【0063】
可能な動作モードによれば、ワイヤ電気侵食加工機2にワークピース11を取り付ける工程は、切削ワイヤ3に対してワークピースを傾斜させて取り付けることを含む。言い換えれば、ワークピース11の長手方向軸X-Xは、
図7Aに概略的に示すように、切削ワイヤに対して平行でもなく、垂直でもない方向に予め配向される。これにより、第1貫通切削による露出部分14のレリーフ15及び凹部16(例えば、隆起部及び開口チャネル)の方向は、例えば、
図7Bに示すように、ワークピース11の長手延伸方向X-Xに対して平行でもなく垂直でもない方向に向くことになる。
【0064】
可能な動作モードによれば、ワイヤ電気侵食加工機2にワークピース11を取り付ける工程は、ワークピースを切削ワイヤ3に平行であるか又は直交するように取り付けることを含む。言い換えれば、ワークピース11の長手方向軸X-Xは、切削ワイヤ3に対して平行又は垂直となるように配向される。
【0065】
好ましい動作モードによれば、第1の貫通切削を実行する工程の後に、この方法は、回転軸R-Rを中心に切削ワイヤ3に対してワークピース11を回転させる工程を含む。また、回転工程の後、この方法は、ワークピース11の同じ露出部分14上に、山部12と谷部13とを含む第2の切削経路22を有する第2の貫通切削を実行する更なる工程を含む。
【0066】
好ましくは、前記回転軸R-Rは、ワークピース11の露出部分14から出る方向と平行に延びる。ワークピースの露出部分14がレリーフ15と凹部16とを含む場合、出る方向は、露出部分14に対して全体的に直交する方向として理解され、前記レリーフ15のうちの1つの上昇する(又は下降する)前面に対して局所的に直交する方向を示すことを意図するものではない。例えば、ワークピース11の露出部分14が湾曲した底部を有する開口チャネルの形態の凹部16を備える場合、前記回転軸R-Rに平行な出口方向は、前記凹部16の前記開口チャネルの底部からの出口方向として理解される。
【0067】
例えば、
図7Bに示すように、露出部分14から出る方向は、当該図では紙から出る方向として理解される。
【0068】
好ましくは、前記回転軸R-Rは、切削ワイヤ3の延伸に対して直交し、かつ、少なくとも1つのワークピース11の長手延伸方向X-Xに対しても直交する。
【0069】
可能な動作モードによれば、回転工程は、少なくとも1つのワークピース11に関連付けられた支持体24を回転させることによって実行される。可能な動作モードによれば、回転工程は、前記支持体24に動作可能に接続できるモータ25によって実行される。
【0070】
実施形態によれば、例えば
図3Aに示されるように、前記支持体24は、ワイヤ電気侵食加工機2に取り付けられたワイヤ電気侵食加工機用の製造治具又は工具を含む。例えば、前記治具は、前記回転軸R-Rを中心とした回転により折り畳まれる折り畳み治具である。
【0071】
実施形態によれば、例えば
図4に示されるように、前記支持体24はワイヤ電気侵食加工機2の回転軸を含む。例えば、前記回転軸は、前記回転軸R-Rと一致する。回転軸の下流に取り付けられた更なる治具又は工具を設けることができる。
【0072】
実施形態によれば、例えば
図5に示すように、前記支持体24は、ロボットアームのエンドエフェクタ、例えば擬人化ロボットアーム(anthropomorphic robotic arm)の把持エンドエフェクタを含む。例えば、前記回転軸R-Rは、擬人化ロボットアームの関節軸、及び/又は、支持体24を形成するロボットアームに堅固に関連付けられた規定可能な制御ポイントの回転軸と一致することができる。
【0073】
このような方法により、ワークピース11の露出部分14に、溝18によって区切られた複数の隆起島17を有する表面マイクロトポグラフィー20を作製することが可能である。好ましくは、前記溝18は前記隆起島17を完全に区切る。従って、前記表面マイクロトポグラフィー20は、ワイヤ電気侵食プロセスによって作られたマイクロテクスチャ(micro-texturing)となる。
【0074】
ワークピース11の同じ露出部分14上の角度αの2つの非平行且つ互いに傾斜した貫通切削のそれぞれは、ワークピース上に複数の実質的に直線状のレリーフ及び凹部を形成する。そして、2つの貫通切削の凹凸の組み合わせ又は交差により、溝18によって区切られた複数の隆起島17が形成され、それによって表面マイクロトポグラフィー20が作製される。例えば、溝18は、第1の貫通切削及び第2の貫通切削によって作られた凹部16の結合により生じる。
【0075】
実施形態によれば、表面マイクロトポグラフィー20の隆起島17は、実質的に、回転軸R-Rに平行な方向において溝18の高さから片持ち状に突き出る突起である。
【0076】
このような方法により、表面マイクロトポグラフィー20は、ワークピース11の長手方向X-Xに直交する少なくとも1つの規定可能な方向において、ワイヤ電気侵食加工機2の切削ワイヤ3のゲージよりも狭いストレート横断チャネル19を有する。このような方法により、切削ワイヤ3のゲージよりも狭いストレート横断チャネル19を有する表面マイクロトポグラフィー20を含む外科器具1用の把持面23を、ワイヤ電気侵食によって作製することが可能であり、切削ワイヤ3のゲージよりも小さいゲージを有する把持すべき細長い要素(縫合針及び/又は縫合糸など)をしっかりと把持するように適合することができる。
【0077】
これにより、ワイヤ電気侵食による当該製造方法で作られた表面マイクロトポグラフィー20のマイクロテクスチャの極度の小型化が促進される。
【0078】
ストレート横断チャネル19のゲージは、回転軸R-Rの周りの回転角度αの選択、及び第1又は第2の切削経路21、22の2つの隣接する山部12の間のピッチの選択によって調整することができる。
【0079】
可能な動作モードによれば、回転角度αは30°~120°の範囲であり、言い換えれば、回転工程は、切削ワイヤ3に対して、ワークピース11を30°~120°の回転角度αだけ回転させることを含む。
【0080】
可能な動作モードによれば、回転角度αは45°よりも大きく、例えば、45°~120°の間である。可能な動作モードによれば、回転角度αは60°以上である。
【0081】
表面マイクロトポグラフィー20に形成されたストレート横断チャネル19のストレート横断方向は、切削ワイヤ3によって実行される第1及び第2の貫通切削の方向と平行ではない。
【0082】
好ましい実施形態によれば、ストレートチャネル19の方向は、ワークピース11の長手方向軸X-Xに対して直交する。一実施形態によれば、ストレート横断チャネル19の方向は、ワークピース11の長手方向軸X-Xに対して傾斜しているが、長手方向軸X-Xに対して直交しない。
【0083】
ストレート横断チャネル19の方向は、切削パラメータ、例えば、切削ワイヤに対するワークピース11の回転角度、及び/又は切削ワイヤに対するワークピース11の初期位置決め角度、及び/又は切削経路21、22の2つの隣接する山部12の間のピッチなどに作用することによって調整することができる。
【0084】
実施形態によれば、第1の切削経路21は、少なくとも1つの山部12と少なくとも1つの谷部13とを含む経路モジュラーユニットUMを備え、当該経路モジュラーユニットUMは、例えば、
図11A及び
図11Bに示されるように、第1周期T1又は第1工程T1と等しい周期で繰り返される。第1周期T1は、固定又は可変であってもよい。例えば、第1周期T1は、切削経路21の2つの隣接する山部12の間の空間的又は時間的距離として求めることができる。パスモジュラーユニットUMは、複数の山部12を含むことができる。第1の切削経路21の第1モジュラーユニットUMに関して説明したのと同様な特徴及び特性は、第2周期T2を有する第2の切削経路22の第2モジュラーユニットUMにも適用できる。第1の切削経路21の第1モジュラーユニットUMは、第2の切削経路22の第2モジュラーユニットUMと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0085】
図12Aに例示されるように、実施形態によれば、第2の切削経路22は第2の経路モジュラーユニットUMを有し、第2の経路モジュラーユニットUMは、第1の切削経路21の第1経路モジュラーユニットUMと等しく、それに対してオフセットされている。
【0086】
図12Bに例示されるように、実施形態によれば、第1の切削経路21は第1の経路モジュラーユニットUMを有し、第1の経路モジュラーユニットUMは、第2の切削経路22のモジュラーユニットUMに対して3倍の周期T1を有する。言い換えれば、図示の第1周期T1は、第2周期T2の3倍に実質的に等しい。
【0087】
周期性は、切削ワイヤ3のゲージを選択することによって得ることができる。例えば、ゲージが異なる2つの異なる切削ワイヤを使用することができ、第1の切削ワイヤは第1の切削経路21に沿って第1の貫通切削を行うために使用され、第2の切削ワイヤは第2の切削経路22に沿って第2の貫通切削を行うために使用される。
【0088】
少なくとも1つの切削経路21、22、好ましくは、切削経路21、22の両方が、複数の尖端を含むことができる。
【0089】
鋭いレリーフ15を生成するように適合された山部12を描写するために、切削経路21又は22は、ワークピース11の外側に別のリング状経路26を描写することができる。言い換えれば、鋭いレリーフ15を作製し、そして狭いステアリング(steering)/ブレイキング(breaking)角を有する非連続の破断経路(broken path)を作製するために、切削経路21又は22は、
図11A及び
図11Bに例示されているように、高さ27(例えば、ワークピース11の外縁及び/又は取得される表面マイクロトポグラフィー20の外縁に対応する)を超えて延びることができる。
【0090】
好ましい実施形態によれば、表面マイクロトポグラフィー20に形成された複数の前記隆起島17のうち、少なくともいくつかの島、好ましくは全ての島は、鋭い自由端28を有する。
【0091】
実施形態によれば、表面マイクロトポグラフィー20に形成された複数の前記隆起島17のうち、少なくともいくつかの島、好ましくは全ての島は、溝18の高さから延びる実質的にピラミッド形状を有する。例えば、ピラミッド形状は、溝の高さで四角形(例えば、平行四辺形、正方形、長方形)の基部を有する。隆起島17の当該ピラミッド形状の側壁は、湾曲して凹状であってもよく、又は平坦で、出口方向に対して(したがって、回転軸R-R)傾斜し、実質的に三角形であってもよい。
【0092】
可能な動作モードによれば、表面マイクロトポグラフィー20を作製する工程を含む当該方法更に、平坦化を行い、又は、少なくともワークピース11の局所において平坦化を行い、前記第1の切削21の加工を受けようとする平坦化された表面を露出させる工程を含む。例えば、平坦化工程は、ワークピース11から材料を除去することを含むことができる。ワークピース11は円筒状の本体を有し、平坦化工程は、ワークピース11の円筒状の本体の円筒面の一部を平坦化して、ワークピース11の長手方向延伸軸X-Xに平行な実質的に平坦な表面を作製することを含むことができる。言い換えれば、可能な動作モードによれば、この方法は、ワークピース11に初期粗面化工程を実施し、すなわち、少なくとも部分的な平坦化を施して、実質的に平坦なワークピース11上に、加工される平坦な表面を露出させる更なる工程を含む。当該初期粗面化工程は、表面マイクロトポグラフィーを作製する工程の前に実行することができる。当該初期粗面化工程は、表面マイクロトポグラフィーを作製する工程の一部であり、ワイヤ電気侵食加工機2の切削ワイヤ3によって実行することができる。
【0093】
当該初期粗面化工程は、少なくとも1つのワークピース11をワイヤ電気侵食加工機2に取り付ける工程の前に行うことができる。例えば、ワークピース11は、1つ以上のギャップを含み、1つ以上のギャップのそれぞれが加工される平坦な表面を有することができる。
【0094】
表面マイクロトポグラフィー20を作製する工程は、加工対象となる平坦面の一部及び/又は全体に表面マイクロトポグラフィーを作製することができる。
【0095】
実施形態によれば、隆起島17間の溝18の少なくとも一部、好ましくは、溝18の全てが湾曲した凹状の底部を有する。好ましくは、凹状の底部は実質的に円形状であり、すなわち、実質的に円弧を描く輪郭を有する。
【0096】
溝18の高さ、すなわち溝18の底部の高さは、表面マイクロトポグラフィー20の全ての溝18について実質的に同じであってもよい。これは、全て同じ高さにある谷部13を有する第1の切削経路21及び第2の切削経路22を実施することで、ワークピース11に同じ深さで貫通切削を実行することによって達成することができる。
【0097】
隆起島17の自由端28の高さは、複数の前記隆起島17の全てについて同じであってもよい。これは、全て同じ高さにある山部12を有する第1の切削経路21及び第2の切削経路22を実施することで、ワークピース11に同じ深さで貫通切削を実行することによって達成することができる。
【0098】
隆起島17の突出方向における広がりは、複数の前記隆起島17の全てについて実質的に同じであってもよい。
【0099】
可能な動作モードによれば、少なくとも1つの前記ワークピース11上に複数の表面マイクロトポグラフィー20を作製することができる。
【0100】
可能な動作モードによれば、複数の前記表面マイクロトポグラフィー20のうち、2つの表面マイクロトポグラフィー20は、動作状態において向かい合うように意図され、すなわち、それらが互いに向き合う把持面23、43を形成し、互いに向き合う把持面23、43は、共同で把持動作、例えば、共同で外科用針及び/又は縫合糸に対して把持動作を及ぼすことを意図しているときには、例えば、それぞれの把持リンク30、40に属する。このような場合、実施形態によれば、一方の把持面23の隆起島17の配置は、他方の把持面43の隆起島17の配置に対してオフセットされ、これによって、把持面23、43が閉じた構成で閉じられると、例えば
図14に示されているように、一方の把持面23の隆起島17が他方の把持面23の溝18に挿入され、その逆もまた同様である。例えば、一方の把持面23の隆起島17の自由端28は、他方の対向する把持面の溝18の底壁に当接することができる。これにより、閉じた外科器具を使用して、更に小さいゲージのストレート横断チャネル19を作製することができる。
【0101】
可能な動作モードによれば、例えば、
図6に示すように、1つのワークピース11は複数の表面マイクロトポグラフィー20を含む。例えば、複数の前記表面マイクロトポグラフィーは、1つのワークピース11に沿って長手方向に間隔をあけて配置される。
【0102】
可能な動作モードによれば、少なくとも1つの前記ワークピース11を含む複数のワークピース11が提供される。
【0103】
可能な動作モードによれば、少なくとも1つの前記ワークピースを含む複数のワークピース11が提供され、複数の前記ワークピース11は、支持体24に取り付けられ、切削ワイヤ3が、少なくとも1つの切削面において、一度に複数の前記ワークピース11のうち最大で1つのワークピース11と交差するように配置される。好ましくは、複数の前記ワークピース11は、支持体24に取り付けられ、切削ワイヤ3が少なくとも2つの切削面において、一度に複数の前記ワークピース11のうち最大で1つのワークピース11と交差するように配置される。好ましくは、複数の前記ワークピース11は、支持体24に取り付けられ、切削ワイヤ3が少なくとも3つの切削面において、一度に複数の前記ワークピース11のうち最大で1つのワークピース11と交差するように配置される。
【0104】
可能な動作モードによれば、複数の表面マイクロトポグラフィー20が同一のワークピース11上に作製され、これらの表面マイクロトポグラフィー20は、例えば、ワークピース11の長手延伸に沿って互いに連続し、対応する複数の把持面23を形成することができる。
【0105】
可能な動作モードによれば、この方法は、少なくとも1つのワークピース11を成形する更なる工程を更に含む。
【0106】
好ましい実施形態によれば、成形工程は、外科器具1用の少なくとも1つのリンク30又は40を作製し、前記リンク30には、例えば、
図9に示されるように、前記表面マイクロトポグラフィー20を含む把持面23が設けられる。
【0107】
実施形態によれば、成形工程は、インサートなどの少なくとも1つの部品34、例えば、表面マイクロトポグラフィー20を有する「パッド」又はプレートを作成し、当該部品34は、外科器具1及び/又は把持リンクにしっかりと固定される自由端部分に固定されるように意図される。例えば、前記部品34は、外科器具1に溶接又は接着されることが意図されている。例えば、前記部品34は、前記表面マイクロトポグラフィー20を含む第1の面と、研磨することができ、外科器具1の一部に固定されることを意図した反対側の第2の背面とを含むことができ、例えば、前記部品34は、外科器具1の把持部、例えば、把持リンクに固定されることが意図されており、そのとき、前記表面マイクロトポグラフィー20は把持リンクの把持面23に形成される。表面マイクロトポグラフィー20を含む把持面23は、エンドエフェクタとは別個の部品として作製され、エンドエフェクタに組み立てられ、実施形態によれば、エンドエフェクタの把持リンクは、単一部品で固定座33を形成する壁を備え、前記表面マイクロトポグラフィー20を含む部品34又はインサート34(例えば、パッド、プレート、ブロックなど)が、前記固定座33に(例えば、接着、インターロック、フックなどによって)固定される。
【0108】
可能な動作モードによれば、成形工程は、2つの成形貫通切削を行うことを含む。前記2つの成形貫通切削は、好ましくは、互いに直交する2つの切削面でワークピース11に実行される。前記2つの成形貫通切削は、ワイヤ電気侵食加工機2の切削ワイヤ3によってワークピース11に実行されることが好ましい。したがって、この動作モードによれば、切削ワイヤ3を介してワークピース11に少なくとも4つの切削が行われ、そのうち、2つの切削は表面マイクロトポグラフィー20を作製する工程に属し、2つの切削は成形工程に属する。
【0109】
成形工程の2つの成形貫通切削の間に、前記回転軸R-Rに直交する第2の成形回転軸を中心にワークピース11を実質的に90°に等しい角度で回転させる更なる工程を含めることができる。好ましくは、前記第2の成形回転軸は、少なくとも1つのワークピース11の長手方向延伸軸X-Xと一致するか、又は平行である。この回転工程は、前記支持体24を回転させることによって達成することができる。
【0110】
好ましい動作モードによれば、成形工程は表面マイクロトポグラフィーを作製する工程の後に実行される。表面マイクロトポグラフィー20を作製する工程と成形工程との間に、前記回転軸R-Rを中心に、切削ワイヤ3に対してワークピースを回転させる更なる工程を含めることができる。これにより、例えば、成形工程の前に、ワークピース11を切削ワイヤ3と整列するように配置したり、又は切削ワイヤ3と直交するように配置したりすることができる。このとき、表面マイクロトポグラフィー20を作製する工程の第2のマイクロテクスチャ貫通切削の終了時に、ワークピース11は切削ワイヤ3に対して傾斜している。
【0111】
このような方法により、表面マイクロトポグラフィーを作製する工程のマイクロテクスチャ切削の間でのワークピース11の交換が回避される。これにより、極度の小型化に適した改善された切削精度が可能となり、必要に応じて一回の初期キャリブレーション手順が可能になる。
【0112】
このような方法により、成形工程の複数の成形貫通切削の間、並びに、表面マイクロトポグラフィーを作製する工程の前記成形切削と前記マイクロテクスチャ切削との間での、支持体24上のワークピース11の交換又は再配置が回避される。これにより、極度の小型化に適した向上した切削精度が可能となり、必要に応じて一回の初期キャリブレーション手順が可能になる。
【0113】
成形工程は、少なくとも前記表面マイクロトポグラフィー20をワークピース11の支持体24から分離する工程を含むことができる。例えば、第2の成形貫通切削により前記分離工程が得られる。このような場合には、成形工程の前に、ワークピース11の長手方向延伸軸X-Xと平行又は一致する回転軸を中心に、切削ワイヤ3に対してワークピース11を回転させる更なる工程を含めることが可能である。
【0114】
前述したように、取り付け工程は、少なくとも1つのワークピース11を支持体24に取り付けることを含み、回転工程は、切削ワイヤ3に対して前記支持体24を回転させることを含むことができる。
【0115】
可能な動作モードによれば、取り付け工程は、少なくとも部分的に前記支持体24を形成するツール又は治具を用意し、少なくとも1つのワークピース11を、当該ツールに取り付けて、そして、当該ツールをワイヤ電気侵食加工機2に取り付けることを含む。例えば、前記ツール又は治具は、対向する非平行な位置決め面31、32を備えることができ、位置決め面31、32は、ワイヤ電気侵食加工機2上にツール位置決め当接部(abutment)を形成し、前記表面マイクロトポグラフィー20を作製する工程を実行するために、少なくとも1つのワークピースを便利に配置することを意図されている。成形工程を実行するために、少なくとも1つのワークピースを適した方法で配置するためには、更に少なくとも1つの位置決め当接部を設けることができる。実施形態によれば、前記ツール又は治具は折り畳み可能であり、回転工程は、切削ワイヤ3に対してツールを回転させることによって実行される。治具又はツールの対向する位置決め面31、32の間の角度は、表面マイクロトポグラフィー20を作製する工程の貫通切削の間のワークピース11の回転角度と関連することができ、したがって、位置決め面31、32の間の角度は、表面マイクロトポグラフィー20を作製する工程の第1の貫通切削で形成されたレリーフ15の間(または凹部16の間)の角度と、第2の貫通切削で形成されたレリーフ15(及び凹部16)の間の角度とは関連することができる。したがって、結果として得られるストレート横断チャネル19のゲージは、治具又はツールの対向する位置決め面31、32の間の角度の選択によって決めることができる。
【0116】
支持体24のツール又は治具は、表面マイクロトポグラフィー20を作製する工程における、回転軸R-Rを中心にワークピース11を回転させ、そして、必要に応じて成形工程における更なる回転を実行するための1つ以上のモータ25に動作可能に接続することができる。例えば、前記1つ以上のモータ25は、前記ツール又は治具を含む支持体24を回転させる。
【0117】
可能な動作モードによれば、取り付け工程は、
図5に概略的に示すように、前記支持体24を形成するロボットアームを設けて、前記少なくとも1つのワークピースを前記ロボットアームに取り付けることを含む。例えば、前記ロボットアームは、把持終端を備え、当該把持終端は、例えば、把持部を備える把持治具を介在させることによって、前記少なくとも1つのワークピース11を、直接的又は間接的に把持することができる。ここでの「把持」という用語は、ロボットアームが少なくとも1つのワークピースに、例えば、前記把持治具を介在すること、例えば、ねじ止め及び/又は結合されることにより、直接又は間接的に固定される実施形態も含むことを意味する。この動作モードによれば、回転工程は、好ましくは、ロボットアームを動作させることによって実行される。ロボットアームは、2つ以上の軸を備えることができる(例えば、「ピッチ・ヨー」型のロボットアームであってもよい)。
【0118】
可能な動作モードによれば、ワイヤ電気侵食加工機2を提供する工程は、少なくとも1つの回転軸(例えば、回転スピンドル)を備えるワークピース11の位置決めシステムをワイヤ電気侵食機械2に提供することを含み、
図4に概略的に示すように、前記支持体24を少なくとも部分的に形成する。この場合、回転工程は回転軸を操作することによって実行することができる。電気侵食加工機2のワークピース11の前記位置決めシステムは、少なくとも2つの非平行な回転軸を含むことができる。
【0119】
提案された解決策により、表面マイクロトポグラフィー20上のバリの形成及びバリ除去の回避において利点を有する製造プロセスを実行することが可能であり、同時に、エッジ及びシャープエッジが精密であるため、把持が容易になり、手術器具1の把持面の把持機能が向上することができる。
【0120】
提案された解決策により、非常に高い切削精度を有する非常に鋭利なエッジ及びマイクロテクスチャを作製することが可能な材料除去による製造プロセスを実行することが可能となる。これにより、小型化された把持面の作製や小型化されたマイクロテクスチャリングプロセスが可能である。
【0121】
提案された解決策により、予め規定可能な方向で剛性物体を把持するように適合された外科器具1の把持面を作製することが可能である。
【0122】
一般的な実施形態によれば、表面マイクロトポグラフィー20を含む少なくとも1つの機能的表面を備える外科器具1が提供される。
【0123】
少なくとも1つの機能的表面は、把持面23であってもよい。
【0124】
少なくとも1つの機能的表面は、支持面、位置決め面などであってもよい。
【0125】
表面マイクロトポグラフィーは、好ましくは、前述した動作モードのいずれか1つに従って、ワイヤ電気侵食によって作製される。
【0126】
好ましくは、外科器具1は、2つの対向する把持面23を備え、把持面23の表面マイクロトポグラフィー20の少なくとも一方、更には両方がワイヤ電気侵食によって作製することができる。
【0127】
2つの把持面23は、共同で外科用又は顕微手術用の針及び/又は縫合糸を把持する動作を実行するように意図されている。
【0128】
一方の把持面23の表面マイクロトポグラフィーは、他方の対向する把持面23の表面マイクロトポグラフィーからオフセットされていてもよい。
【0129】
把持面23の表面マイクロトポグラフィーは、第1把持面と第2把持面との間の対応するピッチ又は周期T1、T2を有する互いに平行なレリーフ15及び凹部16を有するタイプである。そして、一方の把持面23のレリーフ15を他方の把持面のレリーフに対してオフセットして配置することができ、これにより、一方の把持面のレリーフが、それと互いに向かい合い、例えば他方の把持面の凹部16に当接する。
【0130】
例えば、切削ワイヤ3によって形成される前記レリーフ15は、第1の貫通切削中に切削ワイヤ3と平行に、実質的に直線方向に延びる隆起部又は尖端部であってもよい。例えば、切削ワイヤ3によって形成される凹部16は、湾曲した底部を有する開口チャネルであってもよく、当該開口チャネルは、実質的に直線状に延び、レリーフ15の隆起部又は尖端部と平行であり、そして、第1の貫通切削中に切削ワイヤ3と平行する。
【0131】
隆起島17が設けられている場合、好ましくは、把持面23が閉じた構成にあるときに、一方の把持面23の隆起島17が他方の把持面23の溝18に収容されるように、他方の把持面23の隆起島17に対してオフセットされている。
【0132】
実施形態によれば、前記表面マイクロトポグラフィー20は、把持面23の一部のみに属することができる。例えば、表面マイクロトポグラフィーは、外科器具のエンドエフェクタのリンク30の自由端37の後ろの把持面の長手方向のバンドにのみに作製することができ、その自由端37には含まれない。表面マイクロトポグラフィー20を備える把持面23の第1部分は、外科用又はマイクロ外科用の針を把持するために使用することができ、第2部分38は、前記針を把持するのとは別途に、又は同時に、縫合糸を把持するために使用することができる。
【0133】
把持面における局所的に異なる特徴を有する部分のサイズ及び位置により、動作条件において把持面が把持しなければならない組織又はデバイスに基づいて製造を適応させることが可能である。例えば、ギザギザ(indentation)及び/又は打ち抜き(punching)のようなシャープエッジを有する部分は、手術針及び/又は把持しにくい生体組織を把持するために使われる。一方、同じ把持面のフラットな部分は、縫合糸又は損傷していない生体組織を把持するために使用することができる。
【0134】
前述したように、実施形態によれば、外科器具1は、2つの対向する把持面23、43を備え、両方の把持面が表面マイクロトポグラフィー20を含み、表面マイクロトポグラフィー20は、主に横方向に延び、互いに平行なレリーフ15と凹部16とを有する。隣接するレリーフ間のピッチは変化することができる。レリーフ15と凹部16との方向は、把持面23の長手方向延伸に対して横方向、好ましくは直交方向とすることができる。
【0135】
図16に例示されるように、外科器具1のそれぞれの把持リンク30、40の2つの対向する把持面23、43は、それぞれ、レリーフ15と凹部16とを有する表面マイクロトポグラフィー20を含む。両方の把持面の全てのレリーフ及び凹部は、互いに平行であり、それぞれの把持リンク30、40の長手方向延伸に対して横方向(好ましくは直交方向)に配向され、平行な隆起部を形成する。一方の把持面23のレリーフ15によって形成された隆起部が、他方の把持面43のレリーフ15によって形成された隆起部に面し、当接するように意図されている。各把持面23、43は第2の未加工部分38を備え、前記第2の未加工部分38は、両方の把持面23、43の表面マイクロトポグラフィー20の遠位側に配置され、未加工の遠位把持部分を形成する。この例では、レリーフ15によって形成された隆起部の間のピッチは一定又は可変であり、2つの把持面23、43において同じである。
【0136】
図17に例示されるように、外科器具1のそれぞれの把持リンク30、40の2つの対向する把持面23、43は、それぞれ、レリーフ15と凹部16とを有する表面マイクロトポグラフィー20を含む。両方の把持面の全てのレリーフ及び凹部は、互いに平行であり、それぞれの把持リンク30、40の長手方向延伸に対して横方向(好ましくは直交方向)に配向され、平行な隆起部を形成する。一方の把持面23又は43のレリーフ15によって形成された隆起部は、他方の把持面43又は23の凹部16の底部に面し、これに当接するように意図されている。各把持面23、43は第2の未加工部分38を備え、前記第2の未加工部分38は、両方の把持面23、43の表面マイクロトポグラフィー20の遠位側に配置され、未加工の遠位把持部分を形成する。この例では、レリーフ15によって形成された隆起部の間のピッチは一定又は可変であり、2つの把持面23、43において同じである。このような解決策により、電気侵食加工機2の切削ワイヤ3のゲージよりも小さいゲージを有するストレート横断貫通チャネル19を作製することができる。
【0137】
図18に例示されるように、外科器具1のそれぞれの把持リンク30、40の2つの対向する把持面23、43は、それぞれ、レリーフ15と凹部16とを有する表面マイクロトポグラフィー20を含む。両方の把持面の全てのレリーフ及び凹部は、互いに平行であり、それぞれの把持リンク30、40の長手方向延伸に対して横方向(好ましくは直交方向)に配向され、平行な隆起部を形成する。一方の把持面23のレリーフ15によって形成された隆起部が、他方の把持面43のレリーフ15によって形成された隆起部に面し、当接するように意図されている。この例では、レリーフ15によって形成された隆起部の間のピッチは可変であるが、2つの把持面23、43において同じであり、特に、レリーフ15間のピッチは、把持面23、43の遠位部分において減少する。第2の未加工部分38は、遠位端37の付近に設けることができる。
【0138】
図19に例示されるように、外科器具1のそれぞれの把持リンク30、40の2つの対向する把持面23、43は、それぞれ、レリーフ15と凹部16とを有する表面マイクロトポグラフィー20を含む。両方の把持面の全てのレリーフ及び凹部は、互いに平行であり、それぞれの把持リンク30、40の長手方向延伸に対して横方向(好ましくは直交方向)に配向され、平行な隆起部を形成する。一方の把持面23のレリーフ15によって形成された隆起部が、他方の把持面43のレリーフ15によって形成された隆起部に面し、当接するように意図されている。この例では、レリーフ15によって形成された隆起部の間のピッチは一定であり、2つの把持面23、43において同じである。第2の未加工部分38は、遠位端37の付近に設けることができる。また、把持面23、43の第2の未加工部分38は、近位に、表面マイクロトポグラフィー20に隣接して設けることができる。
【0139】
図20に例示されるように、外科器具1のそれぞれの把持リンク30、40の2つの対向する把持面23、43は、それぞれ、レリーフ15と凹部16とを有する表面マイクロトポグラフィー20を含む。両方の把持面の全てのレリーフ及び凹部は、互いに平行であり、それぞれの把持リンク30、40の長手方向延伸に対して横方向(好ましくは直交方向)に配向され、平行な隆起部を形成する。一方の把持面23又は43のレリーフ15によって形成された隆起部は、他方の把持面43又は23の凹部16の底部に面し、これに当接するように意図されている。この例では、レリーフ15によって形成された隆起部の間のピッチは一定であり、2つの把持面23、43において同じである。第2の未加工部分38は、遠位端37の付近に設けることができる。
【0140】
図21に例示されるように、外科器具1のそれぞれの把持リンク30、40の2つの対向する把持面23、43は、それぞれ、レリーフ15と凹部16とを有する表面マイクロトポグラフィー20を含む。両方の把持面の全てのレリーフ及び凹部は、互いに平行であり、それぞれの把持リンク30、40の長手方向延伸に対して横方向(好ましくは直交方向)に配向され、平行な隆起部を形成する。一方の把持面23のレリーフ15によって形成された隆起部が、他方の把持面43のレリーフ15によって形成された隆起部に面し、当接するように意図されている。それぞれのリンク30、40の遠位端37の付近に、把持面23、43はそれぞれ、弾性的可撓性を有する弾性要素41を更に備えている。前記弾性要素41の把持面23、43は、好ましくは未加工であり、弾性要素41において第2の未加工部分38を形成する。弾性要素41は、把持リンク30、40及び/又は把持面23、43の弾性的可撓性を有する部分であってもよい。
【0141】
図22に例示されるように、外科器具1のそれぞれの把持リンク30、40の2つの対向する把持面23、43は、それぞれ、レリーフ15と凹部16とを有する表面マイクロトポグラフィー20を含む。両方の把持面の全てのレリーフ及び凹部は、互いに平行であり、それぞれの把持リンク30、40の長手方向延伸に対して横方向(好ましくは直交方向)に配向され、平行な隆起部を形成する。一方の把持面23のレリーフ15によって形成された隆起部が、他方の把持面43のレリーフ15によって形成された隆起部に面し、当接するように意図されている。それぞれのリンク30、40の遠位端37の付近に、把持面23、43はそれぞれ第2の未加工部分38を更に備えている。
【0142】
前述したように、実施形態によれば、外科器具1は、2つの対向する把持面23、43を備え、両方の把持面は、レリーフ15と凹部16と有する表面マイクロトポグラフィー20を含む。実施形態によれば、少なくとも1つの表面マイクロトポグラフィー20(すなわち、少なくとも把持面23又は把持面43の表面マイクロトポグラフィー)は、溝18によって区切られた隆起島17を含む。例えば、
図14に示すように、一方の把持面23の隆起島17は、他方の把持面43の溝18に面し、溝18内に収容される。実施形態によれば、例えば
図15A-
図15Bに示すように、第2の部分38と表面マイクロトポグラフィー20との間に段差39が介在するように、把持面23の前記第2の部分38は、作製された表面マイクロトポグラフィー20に対して凹むように配置される。好ましくは、段差は、少なくとも1つの貫通切削によって作られた谷部13に対する山部12の高さよりも大きい量だけ突出する。
【0143】
前述したように、実施形態によれば、外科器具1は、2つの対向する把持面23、43を備え、前記把持面23、43のうちの1つのみが表面マイクロトポグラフィー20を含み、当該表面マイクロトポグラフィー20は、溝18によって区切られた隆起島17を形成するレリーフ15と凹部16とを有する。例えば、
図15Cに示すように、一方の把持面23は、溝18によって区切られた隆起島17を有する表面マイクロトポグラフィー20を含み、他方の対向する把持面43は実質的に平坦であり、すなわち、実質的に加工されておらず、すなわち、制御された表面マイクロトポグラフィー20を含まない。
【0144】
実施形態によれば、外科器具1のエンドエフェクタ29は関節式カフタイプ(articulated cuff type)のエンドエフェクタ29であって、当該エンドエフェクタ29は、それぞれが把持面23、43を備える2つの把持リンク30、40間の開閉G(又は把持G)自由度を少なくとも備える。エンドエフェクタ29の表面マイクロトポグラフィー20は、好ましくは、外科器具1の伝達インターフェース部分44から延びるスティック42、ロッド42、又はシャフト42の遠位端に配置される。エンドエフェクタ29は、好ましくは、開閉G自由度を規定する2つの把持リンク30、40と、2つの突起46を有する支持リンク45(又はクレビスリンク(clevis link)45)とを含む複数のリンクを備える。2つの把持リンク30、40は両方とも支持リンク45の突起46に関節接続されて、支持リンクと把持リンク30、40のそれぞれ又はその両方との間のヨーY自由度を規定している。把持リンク30、40は、好ましくは、それぞれ自由端37を備える。シャフト42に更なる接続リンク47を設けることができ、当該接続リンク47は、ピン52によってシャフト42の遠位端に固定され、支持リンク45に関節接続されててピッチP自由度を規定する。エンドエフェクタ29の更なる回転R自由度は、シャフト42の長手方向軸の周りに有することができる。例えば、
図23に示すように、作動テンドン48、49、50、51は、エンドエフェクタ29のリンクに接続されて複数の自由度を作動する。好ましくは、一対の拮抗テンドンが各リンクに接続される。図示の例では、把持リンク40は、一対のテンドン48、49によってヨー軸Y-Yを中心に反対方向に動かされ、テンドン51は、他の把持リンク30をヨー軸Y-Yを中心に動かす。一方、テンドン50は支持リンク45をピッチ軸P-Pを中心に動かす。
【0145】
好ましい実施形態によれば、例えば、
図23に示されるように、エンドエフェクタ29のリンクには作動テンドンを案内するためのチャネルが存在しない。好ましい実施形態によれば、エンドエフェクタ29のリンクは、作動テンドンと接触する凸状起伏面(ribbed surfaces)53、54、55を備える。凸状起伏面53はピッチ軸P-Pに平行であり、接続リンク47に属し、起伏面53に接触する全てのテンドン48、49、50は、ピッチP、ヨーY、開閉G自由度が動く間に、凸状起伏面53上を摺動するように構成されている。凸状起伏面54は支持リンク45に属し、把持リンク40を移動させるためのテンドン48、49は、開閉G自由度が動く間に、凸状起伏面54上を摺動するように意図されている。一方、支持リンク45を動かすためのテンドン50は、凸状起伏面54上を摺動しない(巻き付き/巻き戻しに限定される)。凸状起伏面55はヨー軸Y-Yに平行であり、把持リンク40に属し、把持リンク40をヨー軸Y-Yの周りで動かせるためのテンドン48、49は、前記凸状起伏面55上を摺動しない。凸状起伏面56はヨー軸Y-Yに平行であり、把持リンク30に属し、把持リンク30をヨー軸Y-Yの周りで動かせるためのテンドン51は、前記凸状起伏面56上を摺動しない。
【0146】
作動テンドンは、好ましくは、作動されるリンク上に設けられたそれぞれの終端部位35に受容される。
【0147】
各リンクは単一部品で作製することができる。
【0148】
実施形態によれば、エンドエフェクタ29の各リンクは、ワイヤ電気侵食加工機2を用いたワイヤ電食成形(WEMD)によって作製される。例えば、前述した成形工程により、前記把持リンク30、40はそれぞれ凸状起伏面55、56を有するように作製することができる。
【0149】
一般的な実施形態によれば、上記の実施形態のいずれか1つによる少なくとも1つの外科器具1を含むロボット手術システム100が提供される。ロボット手術システム100は、少なくとも1つのマスター制御装置102の制御下で手術器具1の少なくともエンドエフェクタ29を動かすための少なくとも1つのロボットマニピュレータ101を更に備えることができる。マスター制御装置102は機械的に接地されていなくてもよく、追跡システムに関連付けられることができる。
【0150】
一般的な実施形態によれば、ワイヤ電気侵食加工装置が提供され、当該ワイヤ電気侵食加工装置は、ワイヤ電気侵食加工機2を備え、ワイヤ電気侵食加工機2は、前述した実施形態のいずれか1つによる切削ワイヤ3と、切削ワイヤ3に対して、ワークピース11の少なくとも1つの所定の方向において少なくとも1つのワークピース11を支持するための支持部24とを備える。
【0151】
支持体24は、好ましくは、前述した実施形態のいずれか1つによる支持体である。
【0152】
前述したように、溝によって区切られた隆起島17を有する表面マイクロトポグラフィー20は、ワイヤ電気侵食切削法によって作製される。これにより、非常に高い切削精度が得られ、尖った先端、及び/又は隆起、及び/又はシャープエッジを、非常に高い位置決め精度で実現することができる。更に、隆起島17の存在密度が非常に高く、好ましくは全てが尖っているようにすることが実現できる。更に、これらの隆起島17を、あまり弱くされることなく、それらを取り囲む溝の高さに対して特に細く、すなわち高くすることが可能である。
【0153】
実施形態によれば、表面マイクロトポグラフィー20は、1平方ミリメートルあたり50~300個の密度で配置された複数の隆起島17を示す。
【0154】
実施形態によれば、複数の隆起島17、好ましくはそれらの全ては、先端角度が60°未満、例えば約45°、好ましくは約30°を有する尖った自由端(尖端)を有する。
【0155】
ワイヤ電気侵食によるこのような製造方法を使用することにより、小型化に特に適した三次元表面マイクロトポグラフィー20が得られ、外科用マイクロニードルをしっかりと把持するのに適した把持面を形成することができる。
【0156】
ワイヤ電気侵食によるこのような製造方法を使用すると、材料の除去によって当該表面マイクロトポグラフィー20を実現することができ、材料に熱処理を施す必要がなくなる。実施形態によれば、材料は、マルテンサイト鋼ブロック(martensitic steel block)を出発物として、表面マイクロトポグラフィー20を作製することで処理される。マルテンサイト鋼はオーステナイト鋼(austenitic steel)よりも優れた機械的強度を持ち、オーステナイト相(austenitic phase)への相転移を起こさず、ミクロスケールで特に望ましいものである。
【0157】
隆起島17は、前述した2つの切削によって作られ、2対の対向面57、58を有し、実施形態によれば、前記2対の対向面57、58は互いに結合してピラミッドのような尖端を形成し、2つの隣接する面の接合部にはシャープエッジ59が形成される。言い換えれば、2対の対向面57、58が各隆起島17の先端を形成し、各隆起島17の2つの隣接する面の間に鋭い隆起が形成される。複数の隆起の接合部には隆起島17の尖端が形成される。実施形態によれば、隆起島17はそれぞれ、2対の対向面57、58を含み、これらの対向面は結合して、前記2対の対向面57、58の隣接する面の間に、隆起したシャープエッジ59を形成する。
【0158】
隆起したシャープエッジ59は、好ましくは凹状である。言い換えれば、切削ワイヤは、凹状の対向面57、58を形成し、これら凹状の対向面57、58は、凹状の隆起したシャープエッジ59で接合する。これによって、尖端28を有する隆起島17を更に細くすることが可能になる。
【0159】
ワイヤ電気侵食によって作製されることで、隆起島17の底部(すなわち、溝の高さにおいて)は四角形の底部、例えば、菱形、長方形、又は正方形の底部とすることができ、また、底部の形状は角度αの選択によって決めることができる。
【0160】
したがって、マイクロテクスチャ、すなわち、三次元マイクロトポグラフィーを得ることが可能であり、これにより、手術針などの把持対象物をよりよく把持するように把持能力が高められる。
【0161】
隆起島の隆起部及び端部が鋭い、すなわち、尖っていることは、しっかり把持することに有利であるために望ましい。隆起部の先端角度は、好ましくは60°未満、例えば約45°、及び/又は約30°に等しい。好ましくは、先端角度は30°~60°の範囲内にある。
【0162】
好ましくは、ワイヤ電気侵食によって切削ワイヤで作製された隆起島17の各面は、全て互いに平行な直線母線を有する起伏面であり、更に好ましくは、各対の面のうち対向する面は、全て互いに平行な直線母線を有する線織面である。
【0163】
隆起島17の各面は、湾曲面であってもよく、すなわち、全て互いに平行な直線母線を有する凹状の隆起面であってもよい。
【0164】
隣接する2つの面を形成する線織面の直線母線は、それらの間に角度αに等しい角度を形成することができる。
【0165】
実施形態によれば、把持面23は、1平方ミリメートルあたり60~240個の密度の隆起島17を有する。この密度は、把持面23の異なる部分で可変であってもよい。
【0166】
所定の実施形態や所定の動作モードで個別に又は組み合わせて提供され上記特徴によれば、前述したニーズに対する解決策を提供し、前述した利点を達成することが可能である。特に、以下の利点を達成することができる。
【0167】
顕微手術の実施及び手術器具の極小化をサポートする。
【0168】
12/0までの極小ゲージの針をしっかりと把持することができる。
【0169】
例えば、小型手術針とは、8/0(約150μm)以下、及び12/0(約50μm)以下のサイズの針を意味する。小型縫合糸とは、直径が50μm未満(例えば30μm以下)の縫合糸をいう。
【0170】
針、及び/又は縫合糸、及び/又は小さいの解剖学的領域に対して、把持能力が向上した小型で堅牢な外科用エンドエフェクタを製造することが可能である。
【0171】
ワイヤ電気侵食による製造方法で、切削ワイヤを複数回(例えば少なくとも5回)通過させることで、表面マイクロトポグラフィーを有する把持面を備えた小型外科用エンドエフェクタを製造することが可能である。これにより、加工中の熱応力を回避し、加工自身によりワークピースの結晶格子が変化することを防止することができる。したがって、この製造方法は、部品に表面マイクロトポグラフィーを作製するのに適応し、小型化された外科用エンドエフェクタの把持リンクを形成することができる。
【0172】
バリの形成及びバリ除去を回避し、把持能力を高めるために小型のシャープエッジを作製するための高精度な製造プロセスを提供する。
【0173】
把持能力が向上した手術器具を提供する。
【0174】
例えば、前記レリーフと凹部との分布によって、外科用又は顕微手術用針の所望の把持方向を事前に決定することが可能である。
【0175】
繰り返し可能であり、同時に多用途で、様々な臨床分野、特に外科分野に適用可能な製造プロセスを提供する。
【0176】
表面マイクロトポグラフィー加工を受ける機能的表面は、必ずしも把持動作に寄与する機能的表面とは限らない。
【0177】
特定の可能なニーズを満たすために、当業者は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、上記実施形態にいくつかの変更及び適応を加え、要素を他の機能的に同等のものに置き換えることができる。
【符号の説明】
【0178】
1 手術器具
2 ワイヤ電気侵食加工機
3 切削ワイヤ
4 加工機のヘッド
5 加工機のヘッド
6 切削ワイヤ用のローラ又は巻きコイル
7 タンク
8 油圧ダクト
9 ポンプ
10 ノズル
11 ワークピース
12 山部
13 谷部
14 露出部分
15 レリーフ
16 凹部
17 隆起島
18 溝
19 ストレート横断チャネル
20 表面マイクロトポグラフィー
21 切削経路、又は第1の切削の第1切削経路
22 第2の切削の第2切削経路
23 手術器具の把持面
24 ワークピースの支持体
25 モータ
26 外側リング状切削経路
27 エッジ高さ
28 隆起島自由端
29 手術器具の関節端、又はエンドエフェクタ
30 手術器具のエンドエフェクタのリンク又は把持リンク
31、32 ツール位置決め面
33 固定座
34 部品又はインサート
35 リンクテンドンの終端
36 ジョイント接合部
37 リンク自由端
38 第2の把持面部分
39 段差
40 手術器具のエンドエフェクタの第2リンク又は第2把持リンク
41 弾性要素
42 外科器具のスティック、又はロッド、又はシャフト
43 第2把持面
44 外科器具の伝達インターフェース
45 支持リンク
46 突起
47 接続リンク
48、49 把持リンク作動用の拮抗テンドン対
50 把持リンク作動用のテンドン
51 他の把持リンクの作動テンドン
52 シャフト固定ピン
53 接続リンクの凹状起伏面
54 支持リンクの凹状起伏面
55、56 把持リンクの凹状起伏面
57、58 隆起島の対向面
59 隆起島の隆起部又はシャープエッジ
100 ロボット手術システム
101 スレーブロボットマニピュレーター
102 マスター制御装置
R 回転自由度
P ピッチ自由度
Y ヨー自由度
G 開閉又は把持自由度
X-X ワークピースの長手方向
R-R 回転軸
α 回転角度
W 切削ワイヤの送り方向
UM 切削経路モジュラーユニット
T1,T2 モジュラー切削経路周期又はピッチ
【国際調査報告】