IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファンダメンタル ソリューションズ コーポレーションの特許一覧

<>
  • 特表-抗生物質感受性試験 図1
  • 特表-抗生物質感受性試験 図2
  • 特表-抗生物質感受性試験 図3
  • 特表-抗生物質感受性試験 図4A
  • 特表-抗生物質感受性試験 図4B
  • 特表-抗生物質感受性試験 図4C
  • 特表-抗生物質感受性試験 図5A
  • 特表-抗生物質感受性試験 図5B
  • 特表-抗生物質感受性試験 図5C
  • 特表-抗生物質感受性試験 図6
  • 特表-抗生物質感受性試験 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】抗生物質感受性試験
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
C12Q1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522443
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 US2022046574
(87)【国際公開番号】W WO2023064472
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/256,059
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519223675
【氏名又は名称】ファンダメンタル ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】キトル、ジョセフ ディー.
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA06
4B063QQ03
4B063QQ06
4B063QQ08
4B063QR66
4B063QX01
(57)【要約】
抗生物質に対する細菌の感受性を決定する方法であって、対照試料を作成するために、生きた細菌細胞を含む患者試料の一部分を細菌増殖培地に移す工程と、試験試料を作成するために、前記患者試料の別の部分を、所定量の抗生物質または所定量の抗生物質のライブラリーが添加された細菌増殖培地に移す工程と、細菌増殖中に、前記対照試料および前記試験試料の両方の細菌増殖培地にアルキン修飾非カノニカルアミノ酸を添加する工程であって、前記アルキン修飾非カノニカルアミノ酸は、前記増殖中の細菌の表面タンパク質、内部タンパク質、またはその両方に取り込まれる、添加する工程と、前記生きた細菌細胞を検出可能に標識するために、クリックケミストリーを使用して、アルキン含有タンパク質をアジド修飾検出分子と反応させる工程と、検出可能なシグナルを生成する方法を用いて、前記標識された細菌細胞を検出する工程と、および、前記対照試料によって生成されたシグナルと前記試験試料によって生成されたシグナルとを比較する工程であって、前記対照試料と前記試験試料との間の検出可能なシグナルの減少は、前記所定の抗生物質または前記所定の抗生物質のライブラリーに対する感受性を示す、比較する工程と、を含む、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗生物質に対する細菌の感受性を決定する方法であって、
(a)対照試料を作成するために、生きた細菌細胞を含む患者試料の一部分を細菌増殖培地に移す工程と、
(b)試験試料を作成するために、前記患者試料の別の部分を、所定量の抗生物質または所定量の抗生物質のライブラリーが添加された細菌増殖培地に移す工程と、
(c)細菌増殖中に、前記対照試料および前記試験試料の両方の細菌増殖培地にアルキン修飾非カノニカルアミノ酸を添加する工程であって、前記アルキン修飾非カノニカルアミノ酸は、前記増殖中の細菌の表面タンパク質、内部タンパク質、または表面タンパク質および内部タンパク質の組み合わせに取り込まれる、添加する工程と、
(d)前記生きた細菌細胞を検出可能に標識するために、クリックケミストリーを使用して、アルキン含有タンパク質をアジド修飾検出分子と反応させる工程と、
(e)検出可能なシグナルを生成する方法を用いて、前記標識された細菌細胞を検出する工程と、および、
(f)前記対照試料によって生成されたシグナルと前記試験試料によって生成されたシグナルとを比較する工程であって、前記対照試料と前記試験試料との間の検出可能なシグナルの減少は、前記所定の抗生物質または前記所定の抗生物質のライブラリーに対する感受性を示す、比較する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記患者試料が、体液または他の身体源に由来する生物学的試料である、方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記抗生物質が、クロラムフェニコール、または他の抗生物質、または他の抗生物質の組み合わせである、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記非カノニカルアミノ酸が、アルキン修飾ではなくアジド修飾であり、および、前記検出分子がアジド修飾ではなくアルキン修飾である、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記アルキン修飾非カノニカルアミノ酸が、L-ホモプロパルギルグリシンである、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記アジド修飾検出分子がビオチン化リガンド、フルオロアジドプローブ、または蛍光色素である、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記検出可能なシグナルを生成する方法が、蛍光ベース、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)ベース、P5G7細胞またはP2D8細胞を含む細胞ベース、ドットブロットベース、または顕微鏡ベースである、方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記シグナルが定量可能であり、シグナルの所定量が抗生物質の最小阻害濃度を示す、方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記方法が、マルチウェルプレートまたはマイクロプレート上で実行されるハイスループット法であり、前記マルチウェルプレートまたはマイクロプレートのタイプが、フィルタープレートを含み、および、前記マルチウェルプレートまたはマイクロプレートで複数の種類の抗生物質を試験できる、方法。
【請求項10】
抗生物質に対する細菌の感受性を決定する方法であって、
(a)生きた細菌細胞を含む患者試料を得る工程であって、前記患者試料は、体液または他の身体源に由来する生物学的試料である、得る工程と、
(b)対照試料を作成するために、前記患者試料の一部分を細菌増殖培地に移す工程と、
(c)試験試料を作成するために、前記患者試料の別の部分を、所定量の抗生物質または所定量の抗生物質のライブラリーが添加された細菌増殖培地に移す工程と、
(d)細菌増殖中に、前記対照試料および前記試験試料の両方の細菌増殖培地にアルキン修飾非カノニカルアミノ酸を添加する工程であって、前記アルキン修飾非カノニカルアミノ酸は、前記増殖中の細菌の表面タンパク質、内部タンパク質、または表面タンパク質および内部タンパク質の組み合わせに取り込まれるものであり、および、前記アルキン修飾非カノニカルアミノ酸は、L-ホモプロパルギルグリシンである、添加する工程と、
(e)前記生きた細菌細胞を検出可能に標識するために、クリックケミストリーを使用して、アルキン含有タンパク質をアジド修飾検出分子と反応させる工程と、
(f)検出可能なシグナルを生成する方法を用いて、前記標識された細菌細胞を検出する工程と、および、
(g)前記対照試料によって生成されたシグナルと前記試験試料によって生成されたシグナルとを比較する工程であって、前記対照試料と前記試験試料との間の検出可能なシグナルの減少は、前記所定の抗生物質または前記所定の抗生物質のライブラリーに対する感受性を示す、比較する工程と、
を含む、方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、前記抗生物質が、クロラムフェニコール、または他の抗生物質、または他の抗生物質の組み合わせである、方法。
【請求項12】
請求項10記載の方法において、前記非カノニカルアミノ酸が、アルキン修飾ではなくアジド修飾であり、および、前記検出分子がアジド修飾ではなくアルキン修飾である、方法。
【請求項13】
請求項10記載の方法において、前記アジド修飾検出分子がビオチン化リガンド、フルオロアジドプローブ、または蛍光色素である、方法。
【請求項14】
請求項10記載の方法において、前記検出可能なシグナルを生成する方法が、蛍光ベース、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)ベース、P5G7細胞またはP2D8細胞を含む細胞ベース、ドットブロットベース、または顕微鏡ベースである、方法。
【請求項15】
請求項10記載の方法において、前記シグナルが定量可能であり、シグナルの所定量が抗生物質の最小阻害濃度を示す、方法。
【請求項16】
請求項10記載の方法において、前記方法が、マルチウェルプレートまたはマイクロプレート上で実行されるハイスループット法であり、前記マルチウェルプレートまたはマイクロプレートのタイプが、フィルタープレートを含み、および、前記マルチウェルプレートまたはマイクロプレートで複数の種類の抗生物質を試験できる、方法。
【請求項17】
抗生物質に対する細菌の感受性を決定する方法であって、
(a)生きた細菌細胞を含む患者試料を得る工程であって、前記患者試料は、体液または他の身体源に由来する生物学的試料である、得る工程と、
(b)対照試料を作成するために、前記患者試料の一部分を細菌増殖培地に移す工程と、
(c)試験試料を作成するために、前記患者試料の別の部分を、所定量の抗生物質または所定量の抗生物質のライブラリーが添加された細菌増殖培地に移す工程と、
(d)細菌増殖中に、前記対照試料および前記試験試料の両方の細菌増殖培地にアルキン修飾非カノニカルアミノ酸を添加する工程であって、前記アルキン修飾非カノニカルアミノ酸は、前記増殖中の細菌の表面タンパク質、内部タンパク質、または表面タンパク質および内部タンパク質の組み合わせに取り込まれるものであり、および、前記アルキン修飾非カノニカルアミノ酸は、L-ホモプロパルギルグリシンである、添加する工程と、
(e)前記生きた細菌細胞を検出可能に標識するために、クリックケミストリーを使用して、アルキン含有タンパク質をアジド修飾検出分子と反応させる工程であって、前記アジド修飾検出分子は、ビオチン化リガンド、フルオロアジドプローブ、または蛍光色素である、反応させる工程と、
(f)検出可能なシグナルを生成する方法を用いて、前記標識された細菌細胞を検出する工程と、および、
(g)前記対照試料によって生成されたシグナルと前記試験試料によって生成されたシグナルとを比較する工程であって、前記対照試料と前記試験試料との間の検出可能なシグナルの減少は、前記所定の抗生物質または前記所定の抗生物質のライブラリーに対する感受性を示す、比較する工程と、
を含む、方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記抗生物質が、クロラムフェニコール、または他の抗生物質、または他の抗生物質の組み合わせであり、および、前記検出可能なシグナルを生成する方法が、蛍光ベース、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)ベース、P5G7細胞またはP2D8細胞を含む細胞ベース、ドットブロットベース、または顕微鏡ベースである、方法。
【請求項19】
請求項17記載の方法において、前記非カノニカルアミノ酸が、アルキン修飾ではなくアジド修飾であり、および、前記検出分子がアジド修飾ではなくアルキン修飾である、方法。
【請求項20】
請求項17記載の方法において、前記シグナルが定量可能であり、シグナルの所定量が抗生物質の最小阻害濃度を示すものであり、前記方法が、マルチウェルプレートまたはマイクロプレート上で実行されるハイスループット法であり、前記マルチウェルプレートまたはマイクロプレートのタイプが、フィルタープレートを含み、および、前記マルチウェルプレートまたはマイクロプレートで複数の種類の抗生物質を試験できる、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
開示された本発明の主題は、一般に、感染症に使用するための診断システム、装置、および方法に関し、より具体的には、様々な抗生物質に対する細菌の感受性を直接検出するための迅速な抗菌性または抗生物質感受性試験に関する。
【0002】
細菌感染症を治療するために適切な抗生物質を選択するには、通常、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で細菌を同定し、標準的な抗生物質コースを選択するか、または、どの抗菌薬が特定の感染を引き起こす細菌の増殖を阻害するかを決定するための直接の抗生物質感受性試験によって達成される。細菌はPCRで同定できるが、PCRは同定された細菌の標準治療レジメンに対する感受性を直接確認するものではない。抗生物質による治療が効果的でなかったり不完全であったりすると、抗生物質耐性菌株の発生につながる可能性があり、これは医療において広く認識されている問題である。直接的な抗菌薬感受性試験または抗生物質感受性試験(AST)は、より効果的な治療レジメンを示唆するかもしれないが、このような試験ははるかに時間がかかり、労力がかかる。したがって、ハイスループットで、迅速、信頼性が高く、使いやすい、抗生物質のライブラリーに対する細菌の感受性を直接測定するためのアッセイが必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
以下は、開示された発明的主題の特定の例示的な実施形態の概要を提供する。この要約は、広範な概要ではなく、開示された発明的主題の重要なまたは重要な側面または要素を特定すること、またはその範囲を画定することを意図するものではない。しかしながら、開示された発明的主題を記載し請求するために使用される言語における不定冠詞の使用は、記載された発明的主題を限定することを何ら意図していないことを理解されたい。むしろ、「a」または「an」の使用は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【0004】
開示された技術の1つの実施形態は、抗生物質に対する細菌の感受性を決定するための方法を提供し、この方法は、生きた細菌細胞を含む患者試料を得る工程と、対照試料を作成するために、生きた細菌細胞を含む患者試料の一部分を細菌増殖培地に移す工程と、試験試料を作成するために、前記患者試料の別の部分を、所定量の抗生物質または所定量の抗生物質のライブラリーが添加された細菌増殖培地に移す工程と、細菌増殖中に、前記対照試料および前記試験試料の両方の細菌増殖培地にアルキン修飾非カノニカルアミノ酸を添加する工程であって、前記アルキン修飾非カノニカルアミノ酸は、前記増殖中の細菌の表面および/または内部タンパク質に取り込まれる、添加する工程と、前記生きた細菌細胞を検出可能に標識するために、クリックケミストリーを使用して、アルキン含有タンパク質をアジド修飾検出分子と反応させる工程と、検出可能なシグナルを生成する方法を用いて、前記標識された細菌細胞を検出する工程と、および、前記対照試料によって生成されたシグナルと前記試験試料によって生成されたシグナルとを比較する工程であって、前記対照試料と前記試験試料との間の検出可能なシグナルの減少は、前記所定の抗生物質または前記所定の抗生物質のライブラリーに対する感受性を示す、比較する工程と、を含む。
【0005】
患者試料は、体液または他の身体源に由来する生物学的試料であってもよい。抗生物質は、クロラムフェニコールまたは他の抗生物質、あるいは抗生物質の組み合わせであってもよい。非カノニカルアミノ酸はアルキン修飾ではなくアジド修飾であってもよく、検出分子はアジド修飾ではなくアルキン修飾であってもよい。アルキン修飾非カノニカルアミノ酸は、L-ホモプロパルギルグリシンであってもよい。アジド修飾検出分子は、ビオチン化リガンドであってもよい。アジド修飾検出分子は、フルオロアジドプローブであってもよい。検出可能なシグナルを生成する方法は、蛍光ベースであってもよい。検出可能なシグナルを生成する方法は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)ベースであってもよい。検出可能なシグナルを生成する方法は、P5G7細胞ベースまたはP2D8細胞ベースであってもよい。検出可能なシグナルを生成する方法は、ドットブロットベースであっても、顕微鏡ベースであってもよい。シグナルは定量可能であってもよく、シグナルの所定量は抗生物質の最小阻害濃度(最小有効量)を示してもよい。本方法は、マルチウェルプレートまたはマイクロプレート上で実行されるハイスループット法であってもよく、マルチウェルプレートまたはマイクロプレートの種類はフィルタープレートを含んでもよく、複数の種類の抗生物質がマルチウェルプレートまたはマイクロプレート上で試験されてもよい。
【0006】
開示される技術の別の実施形態は、抗生物質に対する細菌の感受性を決定する方法を提供し、前記方法は、生きた細菌細胞を含む患者試料を得る工程であって、前記患者試料が体液または他の身体源に由来する生物学的試料である、得る工程と、対照試料を作成するために、前記患者試料の一部分を細菌増殖培地に移す工程と、試験試料を作成するために、前記患者試料の別の部分を、所定量の抗生物質または所定量の抗生物質のライブラリーが添加された細菌増殖培地に移す工程と、細菌増殖中に、前記対照試料および前記試験試料の両方の細菌増殖培地にアルキン修飾非カノニカルアミノ酸を添加する工程であって、前記アルキン修飾非カノニカルアミノ酸は、前記増殖中の細菌の表面および/または内部タンパク質の組み合わせに取り込まれるものであり、および、前記アルキン修飾非カノニカルアミノ酸は、L-ホモプロパルギルグリシンである、添加する工程と、前記生きた細菌細胞を検出可能に標識するために、クリックケミストリーを使用して、アルキン含有タンパク質をアジド修飾検出分子と反応させる工程と、検出可能なシグナルを生成する方法を用いて、前記標識された細菌細胞を検出する工程と、および、前記対照試料によって生成されたシグナルと前記試験試料によって生成されたシグナルとを比較する工程であって、前記対照試料と前記試験試料との間の検出可能なシグナルの減少は、前記所定の抗生物質または前記所定の抗生物質のライブラリーに対する感受性を示す、比較する工程と、を含む。
【0007】
抗生物質は、クロラムフェニコールまたは他の抗生物質もしくは抗生物質の組み合わせであってもよい。非カノニカルアミノ酸は、アルキン修飾ではなくアジド修飾であってもよく、検出分子はアジド修飾ではなくアルキン修飾であってもよい。アジド修飾検出分子は、ビオチン化リガンドであってもよい。アジド修飾検出分子は、フルオロアジドプローブであってもよい。検出可能なシグナルを生成する方法は、蛍光ベースであってもよい。検出可能なシグナルを生成する方法は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)ベースであってもよい。検出可能なシグナルを生成する方法は、P5G7細胞ベースまたはP2D8細胞ベースであってもよい。検出可能なシグナルを生成する方法は、ドットブロットベースであっても、顕微鏡ベースであってもよい。シグナルは定量可能であってもよく、シグナルの所定量は抗生物質の最小阻害濃度(最小有効量)を示してもよい。本方法は、マルチウェルプレートまたはマイクロプレート上で実行されるハイスループット法であってもよく、マルチウェルプレートまたはマイクロプレートの種類はフィルタープレートを含んでもよく、複数の種類の抗生物質がマルチウェルプレートまたはマイクロプレート上で試験されてもよい。
【0008】
開示された技術のさらに別の実施形態は、抗生物質に対する細菌の感受性を決定する方法であって、前記方法は、生きた細菌細胞を含む患者試料を得る工程であって、前記患者試料は、体液または他の身体源に由来する生物学的試料である、得る工程と、対照試料を作成するために、前記患者試料の一部分を細菌増殖培地に移す工程と、試験試料を作成するために、前記患者試料の別の部分を、所定量の抗生物質または所定量の抗生物質のライブラリーが添加された細菌増殖培地に移す工程と、細菌増殖中に、前記対照試料および前記試験試料の両方の細菌増殖培地にアルキン修飾非カノニカルアミノ酸を添加する工程であって、前記アルキン修飾非カノニカルアミノ酸は、前記増殖中の細菌の表面および/または内部タンパク質の組み合わせに取り込まれるものであり、および、前記アルキン修飾非カノニカルアミノ酸は、L-ホモプロパルギルグリシンである、添加する工程と、前記生きた細菌細胞を検出可能に標識するために、クリックケミストリーを使用して、アルキン含有タンパク質をアジド修飾検出分子と反応させる工程であって、前記アジド修飾検出分子は、ビオチン化リガンド、フルオロアジドプローブ、または蛍光色素である、反応させる工程と、検出可能なシグナルを生成する方法を用いて、前記標識された細菌細胞を検出する工程と、および、前記対照試料によって生成されたシグナルと前記試験試料によって生成されたシグナルとを比較する工程であって、前記対照試料と前記試験試料との間の検出可能なシグナルの減少は、前記所定の抗生物質または前記所定の抗生物質のライブラリーに対する感受性を示す、比較する工程と、を含む。
【0009】
抗生物質は、クロラムフェニコールまたは他の抗生物質もしくは抗生物質の組み合わせであってもよい。非カノニカルアミノ酸はアルキン修飾ではなくアジド修飾であってもよく、検出分子はアジド修飾ではなくアルキン修飾であってもよい。検出可能なシグナルを生成する方法は、蛍光ベースであってもよい。検出可能なシグナルを生成する方法は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)ベースであってもよい。検出可能なシグナルを生成する方法は、P5G7細胞ベースまたはP2D8細胞ベースであってもよい。検出可能なシグナルを生成する方法は、ドットブロットベースであっても、顕微鏡ベースであってもよい。シグナルは定量可能であってもよく、シグナルの所定量は抗生物質の最小阻害濃度(最小有効量)を示してもよい。本方法は、マルチウェルプレートまたはマイクロプレート上で実行されるハイスループット法であってもよく、マルチウェルプレートまたはマイクロプレートの種類はフィルタープレートを含んでもよく、複数の種類の抗生物質がマルチウェルプレートまたはマイクロプレート上で試験されてもよい。
【0010】
前述の概念および以下でより詳細に説明される追加の概念のすべての組み合わせ(ただし、そのような概念が相互に矛盾しないことを条件とする)は、本明細書に開示される発明的主題の一部であると企図され、本明細書に記載されるような利点を達成するために実施され得ることが理解されるべきである。開示されたシステム、装置、および方法の追加の特徴および態様は、例示的な実施例に関する以下の詳細な説明を読み、理解することにより、当業者には明らかになるであろう。当業者には理解されるように、本明細書に開示されるものの範囲および精神から逸脱することなく、さらなる実施形態が可能である。したがって、図面および関連する説明は、例示的なものであり、本質的に制限的なものではないとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、開示された発明的主題の1つまたは複数の例示的な実施形態を概略的に示し、上に与えられた一般的な説明および以下に与えられる詳細な説明と共に、開示された主題の原理を説明するのに役立ち、ここで、
【0012】
図1図1は、Cu(I)触媒を用いたアジド-アルキン環化付加反応(CuAAC)を用いたクリックケミストリー反応スキームを示している;
図2図2は、開示された抗生物質感受性試験(AST)の一般的なワークフローを示している;
図3図3は、細菌のビオチン化検出のためのドットブロットを示す一連の画像である;
図4図4A~4Cは、非カノニカルアミノ酸組み込み後の細菌のビオチン化検出を示す一連の画像である;
図5図5A~5Cは、クロラムフェニコール処理後の細菌のビオチン化検出を示す一連の画像である;
図6図6は、開示されたASTのELISA検出法を示す;および
図7図7は、100μg/mLクロラムフェニコールおよび200μg/mLニトロフラントインに対する大腸菌のAST応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、実施例について図を参照して説明する。参照数字は、様々な要素および構造を参照するために詳細な説明を通して使用される。以下の詳細な説明は、説明の目的のために多くの具体的な内容を含むが、当業者であれば、以下の詳細に対する多くの変形および変更が開示された発明的主題の範囲内であることを理解するであろう。したがって、以下の実施形態は、特許請求される主題に対する一般性を損なうことなく、また、特許請求される主題に限定を課すことなく、記載される。
【0014】
図を参照すると、開示されたAST(「BLAST」と呼ばれることもある)は、細菌を抗生物質の所定のライブラリーと培養した後、生きている細菌の数または量の変化を検出することによって抗生物質感受性を決定する。このアッセイは、生きている細菌は死滅した細菌よりも代謝とタンパク質の生産が著しく速く、アミノ酸を取り込んで新しく形成されるタンパク質に組み込む速度が速いという事実を利用している。このアッセイは、細菌培地中のメチオニンを、特定の反応性基を含む非カノニカルアミノ酸(ncAA)で置換し、それによって、生きている細菌の特異的検出を可能にする(例えば、Sherratt et al. Rapid Screening and Identification of Living Pathogenic Organisms via Optimized Bioorthogonal Non-canonical Amino Acid Tagging, Cell Chemical Biology 24, 1048-1055 (2017)を参照、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)一例の実施形態において、アッセイは、生きた細菌を首尾よく検出するための3つの重要な相互作用:(i)ncAAの細菌組み込み、(ii)ncAAの反応性基と、アジド基を有する標識(例えば、ビオチン化)リガンドとの間のクリックケミストリータイプの反応、および(iii)例えばCytoSPAR(商標)P5G7細胞などの所定のタイプの細胞を用いた、新たにビオチン化されたリガンドの検出を含む(Kittle et al., Development of a Surface Programmable Activation Receptor system (SPAR): A living cell biosensor for rapid pathogen detection, bioRxiv 687426; doi: https://doi.org/10.1101/687426、参照によりその全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれる)。
【0015】
L-ホモプロパルギルグリシン(HPG)はアルキン修飾ncAAであり、タンパク質生成中にメチオニンを模倣する。HPGが細菌増殖培地中に存在すると、培地中で増殖している細菌は、新たに合成されたタンパク質にHPGを組み込む。アルキン基は細菌細胞には天然には存在せず、活発なタンパク質合成を行う細菌にとって特異的な反応基として機能する。HPGはわずか30分の培養期間後に細菌から検出されるため、プロセス全体が比較的高速になる。
【0016】
アルキン基は、クリックケミストリーとしてより一般的に知られている銅触媒アルキン-アジド環化付加反応(CuAAC)の1成分である(例えば、Atwal et al., Clickable methionine as a universal probe for labelling intracellular bacteria, Journal of Microbiological Methods 169 (2020) 105182;およびLi et al., Fluorogenic "click" reaction for labeling and detection of DNA in proliferating cells, BioTechniques 49:525-527 (July 2010)を参照、これらはいずれも、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。アジド基を持つリガンドがアルキン基と出会うと、反応によって不可逆的な環構造が形成される(図1参照)。細菌がHPGを取り込んだ後、内部タンパク質や表面タンパク質を含む、メチオニンアミノ酸を含むあらゆるタンパク質にアルキン基が見出される可能性がある。CuAAC反応は生きた細菌をその表面で特異的に標識するので、いくつかの実施形態では、細胞溶解はアッセイの必要な側面として排除され得る。しかしながら、他の実施形態では、細胞溶解は、アッセイ最適化のため、およびアッセイによって生成されるシグナル量を増加させるために採用され得る。開示されたアッセイの一般的なワークフローを図2に示す。このアッセイは、患者試料にもよるが、わずか5時間で抗生物質感受性を検出することが実証されている。
【0017】
開示されたアッセイでは、どの検出分子を選択するかによって、蛍光、細胞、ブロッティング、およびELISAベースの方法を含む複数の検出方法を使用することができる。抗生物質感受性を検出するために、対照試料(抗生物質処理なし)から生成されるシグナルを抗生物質で処理した試料と比較し、それによって抗生物質感受性に相関する細菌タンパク質産生の変化を検出する。
【0018】
材料と方法
【表1】
【0019】
開示されたアッセイを実施するためのプロトコルの例には、以下のアッセイ方法を実施することが含まれる。培養および再懸濁容量は、方法を通して一定に保持される(すなわち、培養が1mLであった場合、さらなる工程で適切な培地1mLに再懸濁される)。ハイスループットのマイクロプレート法は、開示されたアッセイの一態様であり、以下に概説する。
【0020】
培地およびバッファーの調製
1.以下のサプリメントを指定された最終濃度になるように加え、補充M9培地を調製する:100μM CaCl、1mM MgSO4、16.65mM グルコース、1X MEM ビタミン混合物。
2.メチオニン阻害増殖培地(MIGM)を、補充M9培地に以下のアミノ酸を指定された最終濃度になるように加えて調製する:L-リジン(100μg/mL)、L-スレオニン(100μg/mL)、L-フェニルアラニン(100μg/mL)、L-イソロイシン(50μg/mL)、L-ロイシン(50μg/mL)、およびL-バリン(50μg/mL)。
3.補充M9でL-ホモプロパルギルグリシンとL-メチオニンの2.5mg/mL原液をそれぞれ調製する。これはMIGMに添加する各アミノ酸の50倍原液である。
4.100μMのCuSO4、200μMのL-ヒスチジン、2mMのアスコルビン酸ナトリウム、および100μMのビオチンアジド(CCB-ビオチン)または488-アジド(CCB-488)をPBS(pH7.5)に溶解し、クリックケミストリーバッファー(CCB)を調製する。
【0021】
細菌培養および試料調製
1.患者試料調製は、大腸菌調製に基づく。
2.大腸菌を寒天プレート上に37℃で一晩静置する。
3.単一コロニーを選択し、LBに接種して37℃で一晩、穏やかに撹拌する。
4.LB培養物を補充M9に加え(LB:M9=1:4)に加え、37℃で穏やかに撹拌しながら2時間培養する。
【0022】
生きている細菌のアルキン標識
1.この方法は、以下の表2に示すように、6つの異なる実験条件下で細菌を培養する。
a.典型的なアッセイでは、患者試料をHPG/検出アジドなし(陰性対照)、HPG/検出アジド(陽性対照)、および、HPG/選択薬剤/検出アジドで処理する。
2.LB/M9培養物をペレット化し、補充M9で再構成する。
3.培養物を3つの等量に分割し、ペレット化してMIGMで再構成する。
4.200プルーフエタノールで薬剤原液を調製する。
a.この研究では、モデル抗生物質としてクロラムフェニコールという薬剤を使用した。水溶性が低いため、無水エタノールで50mg/mLの原液を作り、MIGMで50μg/mLに希釈した。この結果、0.1%エタノール溶液が得られた。
5.対照エタノールを2つの培養物に添加し、薬剤原液を1つの培養物に添加する。
6.穏やかに撹拌しながら37℃、30分間培養する。
7.表2に概説されているように、適切な培養物にHPGまたはメチオニンの原液を加える。
8.同じ条件でさらに2時間培養する。
9.細菌をペレット化し、PBSで3回洗浄する。
【0023】
【表2】
【0024】
アルキン修飾細菌のビオチンおよび蛍光標識
1.ペレットをPBSに再懸濁し、各培養を2つの等量に分け、一方には488-アジドを、もう一方にはビオチンアジドを投与する。
2.細菌をペレット化し、CCB-ビオチンバッファーまたはCCB-488バッファーに再懸濁する。
3.穏やかに撹拌しながら37℃、30分間培養する。
4.細菌をペレット化し、PBSで3回すすぐ。
【0025】
蛍光およびビオチン化検出法
1.細菌がクリックケミストリー反応を行っている間に、P5G7細胞を室温で30分間解凍させる。
2.抗ビオチン抗体(最終濃度5μg/mL)を細胞に添加し、さらに室温で30分間培養する。
3.細菌ペレットをPBSに再懸濁し、蛍光検出用に300μLとっておく。
4.細菌をペレット化し、DMEMに再懸濁する。
5.細菌がペレット化している間に、各実験条件を100μLずつ3回繰り返した黒色プレートを準備する。これをトップリード蛍光プレートリーダーで読み取る。(Ex/Em:500/521最適、積分時間1秒)。
6.各実験条件混合物を30μLを白色プレートに二重に加える。
7.ルミノメーターを用意し、1秒間の積分時間と20分間の速度論的読み取りでプレートを読み取る。
8.P5G7細胞/抗体混合物を各ウェルに90μLずつピペットで入れ、直ちに読み取る。
【0026】
ドットブロット検出
1.メタノールに5分以上浸し、PVDF膜を調製する。
2.余分なメタノールを除去し、直ちに各条件混合液2μLを活性化膜に添加する。
3.膜を完全に乾燥させる。
4.膜をメタノールでさらに5分間再活性化する。
5.余分なメタノールを除去し、ブロッキングバッファーで膜を覆い、室温で1時間、穏やかに揺り動かす。
6.膜をアビジン-HRP溶液(PBS-Tで1/2000希釈)に浸し、室温で1時間、穏やかに揺り動かす。
7.膜をPBS-Tで3回(各10分)すすぐ。
8.膜をECLに5分間浸し、ブロットを画像化する。
【0027】
ELISAベースの検出
1.高吸着96ウェルマイクロプレートの各ウェルに200μLのストレプトアビジン・コーティング溶液(PBS中5μg/mL)を加え、蓋をして4℃で一晩培養する。
2.洗浄バッファー(PBS-T、0.05% tween-20添加PBS)でプレートを1回洗浄する。
3.ASTから細菌をストレプトアビジンコートプレートのウェルに入れ、室温で1時間吸着させる。
4.プレートを洗浄バッファーで3回すすぐ。
5.ブロッキングバッファーでプレートを室温で1時間ブロッキングする。
6.アビジン-HRPをブロッキングバッファーで1/500に希釈し、ウェルに加える。マイクロプレートを室温で1時間培養する。
7.プレートを洗浄バッファーで3回すすぐ。
8.各ウェルにTMB溶液100μLを入れ、室温で30分間培養する。
9.各ウェルに停止液(1N HCL)100μLを入れる。
10.各ウェルの450 nmの吸光度を測定する。
【0028】
データ分析
1.P5G7細胞ベースの検出の場合、180秒から540秒までの曲線下面積を、これらの時点間のすべてのRLU測定値を合計し、測定値間の時間を乗じて求める。グループ間でAUC値を比較し、ビオチン化の検出を決定する。
2.蛍光検出の場合、蛍光色素の検出を判定するために、各グループ間のRFU測定値を比較する。
3.最終的に、抗生物質感受性は、対照条件(アジド-ビオチンまたはアジド-488を含むHPG)が薬剤を含む条件よりも大きなシグナルを示す場合に検出される。
【0029】
ハイスループット・マイクロプレート法
A.フィルタープレート法は、ハイスループット法として使用できる。
B.細菌の増殖を含め、すべての工程をプレート上で行うが、作業量は300μLに減らす。
C.患者試料をプレートの複数のウェルに加え、細菌をペレット化するのではなく、培地をプレートで濾過する:
1.分光光度計を用いて一晩培養した培養物のOD600を測定する。
2.一晩培養したものを、1:32(一晩培養したLB培地:補充M9培地)の割合で、M9培地に接種する。96ウェルフィルタープレートの各ウェルに、接種した補充M9培地を0.3mLずつ加える(半透明プレートを使用する場合はウェルをスキップする)。
3.フィルタープレートを37℃で、250rpmで2時間振とうしながら培養する。
4.プレートを濾過して培地を除去し、PBSで1回洗浄する。表3に記載されているように異なる抗生物質を含むMIGM培地にペレットを再懸濁する。
5.フィルタープレートを37℃、250rpmで30分間振とうしながら培養する。
6.プレートを濾過して培地を除去し、ペレットを表3にあるように異なる抗生物質と各アミノ酸を含むMIGM培地にペレットを再懸濁する。
a.以下のように16(0.3mL/ウェル)の培養条件を調製する:
b.L-メチオニン(50μg/mL)を含むMIGMで4培養
c.L-ホモプロパルギルグリシン(50μg/mL)を含むMIGMで4培養
d.L-ホモプロパルギルグリシン(50μg/mL);クロラムフェニコール(100μg/mL)を含むMIGMで4培養
e.L-ホモプロパルギルグリシン(50μg/mL);ニトロフラントイン(200μg/mL)を含むMIGMで4培養
7.250rpmで振とうしながら、37℃で2時間培養する。
8.プレートをろ過し、PBSで3回すすぐ。ペレットを488-アジド(50μM)を含むクリックケミストリーバッファー(CCB)またはバッファー単独で再構成する(表3)。
a.試験条件は以下の通り:
i.L-メチオニン/488-アジド
ii.L-メチオニン単独
iii.HPG/488-アジド
iv.HPG/488-アジド/クロラムフェニコール
v.HPG/488-アジド/ニトロフラントイン
vi.HPG単独
9.ピペッティングで十分に混合し、37℃で30分間培養する。
10.プレートをPBSで3回すすぎ、バッファーをすべて除去する。
11.蛍光プレートリーダーで、励起484、発光524でシグナルを読み取る。
【0030】
結果
図1は、Cu(I)-触媒アジド-アルキン環化付加(CuAAC)を用いたクリックケミストリー反応スキームを示す。図2は、開示された抗生物質感受性試験(AST)の一般的なワークフローを示す。
【0031】
図3は、細菌のビオチン化検出のためのドットブロットを示す一連の画像であり、開示されたASTからの2μLの細菌がPVDF膜上に配置され、アビジン-HRP/ECLで検出された。対照のビオチン化細菌は、大腸菌をNHS-ビオチンと室温で30分間反応させることにより生成した。ドットブロットは、アビジン-HRPを用いたビオチン化の簡便な検出法である。図3は、対照細菌(NHS-ビオチン反応によって標識されたビオチン化大腸菌)とHPGを受けた菌のみを用いたドットブロットを示しており、この条件下でクリックケミストリー反応が成功していることを示している。
【0032】
ビオチン化細菌をよりよく検出するために、蛍光およびP5G7細胞発光検出法が開発された。図4A~4Cは、ncAA組み込み後の細菌のビオチン化検出を示す一連の画像である。HPGまたはメチオニン対照およびアジド結合検出分子のいずれかを受けた細菌の蛍光(図4A)またはP5G7ベースの検出(図4B~4C)を示す。蛍光は、蛍光フィルターセットを用いて、Victor X5蛍光プレートリーダーで測定した。図4Bは、20分間にわたる発光の速度論的読み取りを表す。陽性対照は280万RLUでピークを示したが、図には示していない。図4Cは、中央のパネルのデータから計算した曲線下面積(AUC)である。図4A~4Cは、ncAA、HPGを組み込んだ細菌を特異的に検出する両方の方法の成功を示している。メチオニンと488-アジドを受けた細菌は、フルオロアジドを受けなかった細菌よりも高い蛍光シグナルを示したことから、何らかのオフターゲット反応が起こっていることが示唆される。しかし、このシグナルはHPG/488-アジド群からの陽性シグナルに比べると小さい。
【0033】
クロラムフェニコールは細菌のタンパク質合成を直接阻害するので、モデル抗生物質として選ばれた。図5A~5Cは、クロラムフェニコール処理後の細菌のビオチン化検出を示す一連の画像である。示されているのは、HPG、クロラムフェニコールまたは対照エタノール、およびアジド結合検出分子のいずれかを受けた細菌の蛍光検出(図5A)またはP5G7細胞ベースの検出(図5B~5C)である。蛍光は、蛍光フィルターセットを用いて、Victor X5蛍光プレートリーダーで測定した。図5Bは、20分間の発光の速度論的読み取りを示す。陽性対照は280万RLUでピークを示したが、図には示していない。図5Cは、中央のパネルのデータから計算された曲線下面積(AUC)である。図5A~5Cは、HPGとのインキュベーションの前に抗生物質を投与された細菌は、両方の検出方法においてシグナルが減少し、それによって開示されたアッセイが抗生物質感受性の検出に有効であることを示している。改良型サンドイッチELISA法の結果からも、これらの所見が確認された。図6は、開示したASTのELISA検出法を示しており、図5A~5Cで使用した細菌をストレプトアビジンでコートしたELISAプレート上に捕捉し、アビジン-HRP/TMBで検出した。
【0034】
図7は、100μg/mLクロラムフェニコールまたは200μg/mLニトロフラントインのいずれかで処理した場合の大腸菌のAST応答についての結果を示す。開始時の一晩の細菌培養物を、1:32に希釈した(一晩のLB培養物:補充M9培地)。検出は、アジド結合蛍光タグを用いて行った。細菌試料は以下のいずれかで処理した:HPG単独;HPG+クロラムフェニコール;HPG+ニトロフラントイン;またはメチオニン単独。その後、各試料をアジド結合した検出分子と反応させた。蛍光はMolecular Devices社のSpectramax M2で励起484、発光524で測定した。結果は、クロラムフェニコールまたはニトロフラントインで処理した試料は、非処理試料(HPG単独)と比較してシグナルが減少することを示している。これは、開示したアッセイが抗生物質感受性の検出に有効であることを示している。
【0035】
開示された技術の利点には以下のものが含まれる:アッセイは試料のプレーティングを必要としない;アッセイは細菌の複製を必要としない;アッセイは迅速であり、約2~5時間で完了することができる;アッセイ感度は尿路感染症(UTI)に対して適切な範囲内である;アッセイは細菌の厳密な同定を必要とせず、多細菌培養で機能する;および、アッセイは容易にカスタマイズすることができ、自動化することができ、数値読み出しを含むことができる。フィルタープレートを用いたアッセイは、プロセスの最初から最後まですべて同じプレートで行われるため、プロセスの自動化が容易である。
【0036】
本明細書に開示した方法および結果は、例示を意図したものであり、当業者には理解されるように、様々な置換および改変が可能である。例えば、開示されたアッセイの1つの実施形態において、アルキン修飾非カノニカルアミノ酸ではなく、アジド含有非カノニカルアミノ酸がアッセイにおいて使用され、このアジド含有非カノニカルアミノ酸は、アジド修飾検出分子ではなく、アルキン修飾またはアルキン標識検出分子と反応させられる。アミノ酸のアジドは、それぞれCu(I)触媒アルキン-アジド(CUAAC)またはCu(I)-遊離株-アルキン-アジドクリック化学(SPAAC)反応によって、末端アルキンまたは歪みアルキン(例えば、DBCO)-タグ付きレポーター分子で標識することができる。特定の細胞透過性クリック官能基化アミノ酸は、翻訳中にメチオニンの代わりにランダムに組み込まれるため、残基選択的タンパク質合成モニタリングに適している。開示されたアッセイの別の実施例では、検出可能なシグナルを生成する方法は、例えばFLAGタグのようなポリペプチドタンパク質タグ、およびタグ付きポリペプチドに特異的な標的検出器分子を利用する。別の実施例では、検出可能なシグナルを生成する方法は、ストレプトアビジンを含む標的検出分子が使用される場合、P2D8細胞ベースである(例えば、米国特許出願第16/353,337号を参照、この出願は、あらゆる目的で本明細書にその全体が組み込まれている)。
【0037】
開示されたアッセイのいくつかの実施形態では、増殖培地は所望のアミノ酸アナログを含み、単に細菌細胞が代謝するか、少なくともタンパク質合成を受けることを可能にする。いくつかの実施形態では、増殖培地はアミノ酸アナログとバッファーのみを含む。開示された方法を用いて、アルキン修飾非カノニカルアミノ酸を成長中の細菌細胞のタンパク質に組み込むことができるが、細菌細胞はまた、例えば、検出方法に内部細菌タンパク質を含めることによって検出可能なシグナルを増加させるために、アルカリ性バッファーを用いて溶解することもできる。あるいは、細胞を透過処理または固定してもよい。いくつかの実施形態には、標識タンパク質上のアルキン基と反応すると輝度(量子収率)が増加するフルオロアジドタグの使用が含まれ、それによって未反応のタグによるバックグラウンドが低くなる。他の実施形態には、検出分子として蛍光色素の使用が含まれる。例えば、Beatty et al., Selective Dye-Labeling of Newly Synthesized Proteins in Bacterial Cells, J. Am. Chem. Soc. 127: 14150-14151 (2005);およびShieh et al., Fluorogenic Azidofluoresceins for Biological Imaging, J. Am. Chem. Soc. 134(42): 17428-17431 (2012)を参照、これらはいずれも、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0038】
本明細書で議論されるように、開示されるアッセイは、マルチウェルプレートまたはマイクロプレートの使用を含むことができる。いくつかの実施形態において、プレートは、目的の細菌を選択的に結合するように前処理され、それにより、処理のシグナル対ノイズ比および選択性を改善する。フィルタープレートもまた、処理速度および効率を著しく改善するために使用され得る。このような実施形態は、非病原性細菌汚染物質が増殖の遅い病原体からのシグナルを圧倒する可能性のある、結核を例とする検査において有用であろう。いくつかの実施形態では、複数の抗生物質が単一のプレートで試験される。以下の表3は、開示された方法に従った標識およびタグ付けのためのプレートレイアウトの例である。
【0039】
【表3】
【0040】
開示されたアッセイのいくつかの実施形態は、例えば、反応性が高く触媒作用を必要としない歪みアジドまたは歪みアルキンの使用など、銅触媒作用を伴わないクリックケミストリーのバリエーションを利用する。例えば、Friscourt et al., A Fluorogenic Probe for the Catalyst-Free Detection of Azide-Tagged Molecules, J Am Chem Soc. 134(45): 18809-18815 (November 14, 2012)を参照、その全体はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれている。ELISAベースの検出法に加えて、病理検査室では蛍光顕微鏡検査が使用され、混合培養中のどの細菌が抗生物質に対抗しているかを区別できるという利点がある。このような複雑な画像ベースの方法は、結果を決定するための画像分析技術と人工知能(AI)ベースのソフトウェアを使用することで可能になる。
【0041】
特許、特許出願、論文、書籍、専門書、およびウェブページを含むがこれらに限定されない、本出願で引用されるすべての文献および類似資料は、かかる文献および類似資料の形式を問わず、参照によりその全体が明示的に組み込まれる。組み込まれた文献および類似資料の1つ以上が、定義された用語、用語の用法、記載された技術などを含むがこれらに限定されない、本出願と異なる、または矛盾する場合、本出願が支配する。
【0042】
前述したように、また本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、単数形および複数形の両方を指す。本明細書で使用される用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含む(containing)」、または「~によって特徴付けられる(characterized by)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の、暗黙の要素または方法工程を除外するものではない。本明細書に記載されるものと類似または同等の多くの方法および材料を使用することができるが、特定の好適な方法および材料が本明細書に記載される。文脈がそうでないことを示さない限り、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数値を含む。さらに、「1つの実施形態」への言及は、記載された特徴も組み込んだ追加の実施形態の存在を排除すると解釈されることを意図していない。さらに、明示的に反対の記載がない限り、特定の特性を有する要素または複数の要素を「含む」または「有する」実施形態は、その特性を有するか否かにかかわらず、追加の要素を含むことができる。
【0043】
「実質的に」および「約」という用語は、本明細書全体を通して使用される場合、または使用において、処理の変動に起因するような小さな変動を説明し、考慮に入れている。例えば、これらの用語は、±5%以下、例えば±2%以下、例えば±1%以下、例えば±0.5%以下、例えば±0.2%以下、例えば±0.1%以下、例えば±0.05%以下、および/または0%を指すことができる。
【0044】
下線および/または斜体の見出しおよび小見出しは、便宜上のみ使用され、開示された主題を限定するものではなく、開示された主題の説明の解釈に関連して参照されるものではない。当業者に公知であるか、または後に公知となる、本開示を通じて説明される様々な実施形態の要素に対する全ての構造的および機能的等価物は、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、開示される主題に包含されることが意図される。さらに、本明細書において開示されるものは、そのような開示が上記の説明において明示的に記載されているか否かにかかわらず、一般に専用されることを意図するものではない。
【0045】
開示された技術を実施する多くの代替方法があり得る。本明細書で説明される様々な機能および要素は、開示される技術の範囲から逸脱することなく、示されるものとは異なるように分割されてもよい。本明細書で定義される一般的な原理は、他の実装に適用されてもよい。所与のモジュールまたはユニットの異なる数が採用されてもよく、所与のモジュールまたはユニットの異なるタイプまたは種類が採用されてもよく、所与のモジュールまたはユニットが追加されてもよく、所与のモジュールまたはユニットが省略されてもよい。
【0046】
本開示に関して、「複数の」という用語は、2つまたは2つ以上を指す。特に明確に定義されない限り、「上側」および「下側」などの用語によって示される向きまたは位置関係は、開示される技術の説明を容易にし、説明を簡略化するためにのみ、図に示される向きまたは位置関係に基づくものであり、参照される装置または要素が特定の向きでなければならないこと、または特定の向きで構成若しくは動作されなければならないことを示すまたは暗示するものではなく、したがって、開示される技術を限定するものとして解釈されるべきではない。「接続された」、「取り付けられた」、「固定された」等の用語は、広い意味で理解されるべきである。例えば、「接続された」とは、固定接続、着脱可能接続、または一体接続、直接接続、または中間媒体を介した間接接続であってもよい。当業者にとって、開示された技術における上記用語の具体的な意味は、具体的な状況に応じて理解され得る。
【0047】
前述の概念および本明細書でより詳細に議論される追加概念(ただし、そのような概念が相互に矛盾しないことを条件とする)のすべての組み合わせは、開示される技術の一部であると企図されることを理解されたい。特に、本開示の末尾に現れる特許請求される主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示される技術の一部であると企図される。開示された技術は、例示的な実施形態の説明によって例示され、例示的な実施形態は、ある特定の詳細において説明されてきたが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に限定する意図はなく、いかなる方法においても限定する意図はない。当業者には、追加の利点および変更が容易に現れるであろう。したがって、開示された技術は、その広範な側面において、示され説明された特定の詳細、代表的な装置および方法、および/または例示的な実施例のいずれにも限定されない。したがって、一般的な発明概念の精神または範囲から逸脱することなく、そのような詳細から逸脱することができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7
【国際調査報告】