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特表2024-537897分解可能な近赤外光増感剤、並びにその調製方法および使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】分解可能な近赤外光増感剤、並びにその調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/40 20060101AFI20241008BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20241008BHJP
   A61K 31/555 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61K33/40
A61K41/00
A61K31/555
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P17/00
A61P31/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522688
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 CN2022124995
(87)【国際公開番号】W WO2023020631
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】202111196449.6
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】524141854
【氏名又は名称】北京▲協▼同▲創▼新研究院
(71)【出願人】
【識別番号】524141865
【氏名又は名称】广▲東▼粤港澳大湾区▲協▼同▲創▼新研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼俊▲龍▼
(72)【発明者】
【氏名】朱孟良
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼航
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼字舒
(72)【発明者】
【氏名】王炳武
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA11
4C084NA06
4C084NA20
4C084ZB26
4C084ZB35
4C084ZC02
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA31
4C086HA22
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA06
4C086NA20
4C086ZA89
4C086ZB26
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、分解可能な近赤外光増感剤、その調製方法および応用を開示しており、光増感剤の技術分野に属する。上記分解可能な近赤外光増感剤は、ポルフィリン系化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、非共有結合複合体、錯体、およびプロドラッグから選択されるいずれか1種であり、上記ポルフィリン化合物の構造は、式1に示す通りである。本発明は、上記の分解可能な近赤外光増感剤の調製方法および応用を開示している。本発明の分解可能な近赤外光増感剤によれば、光照射により活性酸素を生成するとともに分解され、光照射終了後、光増感剤が光活性を有しない低毒性物質に完全転化され、従来技術における光増感剤の残存問題が効果的に解決される。
【化1】



【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分解可能な近赤外光増感剤であって、ポルフィリン系化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、非共有結合複合体、錯体、およびプロドラッグから選択されるいずれか1種であり、前記ポルフィリン化合物の構造は、式1に示す通りであり、
【化1】


式中、
【化2】


はそれぞれ独立して、
【化3】


から選択されるいずれか1種であり、
ArおよびArとも置換又は未置換されたフェニル基であり、
、R、R、R、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルファニル基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、アミド基、C-Cアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換されたC-Cアルキル基、置換又は未置換されたC1-8アルコキシ基、置換されたメルカプト基、C-Cアルキルリン酸基、C-Cアルキルカルボキシル基、C-Cアルキルスルホン酸基、C-Cアルケニルアルキル基、C-Cアルケニル基、C-Cアルキニルアルキル基、C-Cアルキニル基、C-Cアルケニルオキシ基、およびC-Cアルキニルオキシ基から選択されるいずれか1種であり、
Mは金属イオンであって、Mg、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Ga、Al、Pd、およびPtから選択されるいずれか1種であることを特徴とする、分解可能な近赤外光増感剤。
【請求項2】
前記Arおよび前記Arは、それぞれ独立して、
【化4】


であり、
式中、R、R10、R11、R12、およびR13は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルファニル基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、アミド基、C-Cアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換されたC-Cアルキル基、置換又は未置換されたC-Cアルコキシ基、置換されたメルカプト基、C-Cアルキルリン酸基、C-Cアルキルカルボキシル基、C-Cアルキルスルホン酸基、C-Cアルケニルアルキル基、C-Cアルケニル基、C-Cアルキニルアルキル基、C-Cアルキニル基、C-Cアルケニルオキシ基、およびC-Cアルキニルオキシ基から選択されるいずれか1種であることを特徴とする、請求項1に記載の分解可能な近赤外光増感剤。
【請求項3】
前記金属イオンは、Mg、Zn、Cd、Al、およびGaから選択されるいずれか1種であることを特徴とする、請求項1に記載の分解可能な近赤外光増感剤。
【請求項4】
前記ポルフィリン化合物の具体的な構造は、
【化5】


から選択されるいずれか1種であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の分解可能な近赤外光増感剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の分解可能な近赤外光増感剤の調製方法であって、下記の手順1~3を含み、
第1中間生成物を調製する手順1において、水熱反応釜の中で、ポルフォジラクトン100mgと、前記ポルフォジラクトンに対して30~50倍当量に相当するアルカリとを、5mL~20mLの第1溶媒に溶解させ、80℃~200℃で24h~72h反応させて、第1中間生成物を得て、反応式は以下に示す通りであり、
【化6】


第2中間生成物を調製する手順2において、手順1で得られた第1中間生成物100mgを、5mL~50mLの第2溶媒の中で水溶性修飾反応を行わせ、第2中間生成物を得て、反応式は以下に示す通りであり、
【化7】


目標生成物を調製する手順3において、手順2で得られた第2中間生成物100mgと、前記第2中間生成物に対して10倍当量に相当する金属塩とを、20~100mLの第3溶媒に溶解させ、20℃~80℃で2h~16h反応して、式1に示す目標生成物を得て、反応方程式は以下に示す通りである、
【化8】


ことを特徴とする、分解可能な近赤外光増感剤の調製方法。
【請求項6】
手順1において、
前記アルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ナトリウムメトキシド、およびカリウムtert-ブトキシドから選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物であり、
前記第1溶媒は、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、およびテトラヒドロフランから選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物であり、
前記反応温度を100℃~150℃とし、反応時間を48h~72hとすることを特徴とする、請求項5に記載の分解可能な近赤外光増感剤の調製方法。
【請求項7】
前記第2溶媒は、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、およびヘキサノールから選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項5に記載の分解可能な近赤外光増感剤の調製方法。
【請求項8】
前記金属塩は、マグネシウム塩、クロム塩、マンガン塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩、銅塩、亜鉛塩、カドミウム塩、ガリウム塩、アルミニウム塩、パラジウム塩、および鉛塩から選択されるいずれか1種であり、
前記第3溶媒は、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、クロロホルム、およびジクロロメタンから選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物であり、
前記反応の温度を20℃~60℃とし、反応時間を3h~5hとすることを特徴とする、請求項5に記載の分解可能な近赤外光増感剤の調製方法。
【請求項9】
前記金属塩は、マグネシウム塩、亜鉛塩、カドミウム塩、ガリウム塩、およびアルミニウム塩から選択されるいずれか1種であることを特徴とする、請求項8に記載の分解可能な近赤外光増感剤の調製方法。
【請求項10】
光動力治療薬の調製における、活性成分としての請求項1~4のいずれか1項に記載の分解可能な近赤外光増感剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分解可能な近赤外光増感剤、並びにその調製方法および使用に関し、光増感剤の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
がんは人間の健康を深刻に脅かす疾患の一つとして、致死率が極めて高く、人間の命の安全に危害を及ぼす「最強の殺し屋」となっている。例えば、手術による切除、放射線療法および化学療法などの現在がん治療の主要方法に比較して、光動力療法(Photodynamictherapy、PDTと略記する)は、非侵襲的治療法の一種として、治療時間、治療効果、薬剤耐性、および毒性や副作用等の点から有利であり、がん、腫瘍、皮膚疾患、抗菌等の分野において大きな潜在力を示している。光動力療法の作用メカニズムは、生体内に光増感剤を注入し、血液循環によって光増感剤を病巣まで到達させた後、病巣に累積させ、病巣領域に特定の波長の光を局所的に照射することで、光増感剤を励起し、活性酸素種(Reactive Oxygen Species、ROSと略記する)を放出させ、病変組織血管の直接損傷、破壊および免疫ストレスを引き起すなどの手段により病変細胞を殺し、治療の目的を達成する。光動力療法は、活性酸素種の生成メカニズムの違いによってI型又はII型に分類され、電子又はプロトンの移動によって光増感剤からラジカルを生成し、高活性なラジカルと分子状酸素との相互作用を経て、スーパーオキシアニオンを生成し、さらに反応してヒドロキシラジカル、過酸化水素などの活性酸素を生成するものをI型光動力反応とし、これによる損傷を第I類損傷と呼び、光増感剤が励起状態のエネルギを周囲の酸素分子に伝達してそれが一重項酸素になるようにするものをII型光動力反応と呼び、これによる損傷をII類損傷と呼ぶ。
【0003】
光動力療法の効果は主に光増感剤の性質に依存する。光増感剤は強い光毒性を持ちながら生体に毒性や副作用のないものである。近年、光増感剤の種類は次第に増え、現在まで既に3世代がある。第1世代の光増感剤は、主にポルフィリン系混合物であり、第2世代の光増感剤は、異なる構造タイプを有するポルフィリン誘導体単量体と、活性分子に結合する合成化合物とを指し、第3世代の光増感剤は、光増感剤と、モノクローナル抗体又はステロイド、脂質、ペプチド、ヌクレオシド、ヌクレオチドなどの他の小さな生体活性分子とが結合して得られる、標的機能を有する光増感剤である。しかしながら、光動力治療の臨床応用の範囲は、依然として限度があり、これは、主に、(1)ほとんどの光増感剤はまだ短波長による励起を必要とするが、短波長の光は透過深度が不十分であり、深層病巣への有効な照射が困難であること、(2)酸素依存性が高いため、酸素欠乏実体腫瘍に対する光動力治療の効果に限界があること、(3)水溶性が乏しくて、体内で凝集が起こりやすく、かつ特異性に欠けること、(4)光増感剤の構造が安定で、体内での分解代謝が遅いことためである。
【0004】
従来の光増感剤は、治療深度に限界があり、酸素依存性が高く、腫瘍への標的性が乏しい等の欠点があるため、光動力療法の臨床応用における治療効果を強く制限している。また、光動力治療を受けた後、体内に残存する光増感剤は完全に代謝されるまでに長い時間を要することが多い。残存する光増感剤は、光に暴露されると、依然として活性酸素種を生成し続け、強い光毒性を示して、組織や細胞へある程度の損傷を与えられることから、患者に対して治療を受けた後長期間にわたって光を避けるよう要求しているが、数ヶ月にわたってずっと暗闇と恐怖の中で生活することにより、患者の心身の健康に深刻な影響を及ぼす可能性がある。したがって、光動力治療を実施した後、光増感剤を適時に無効化して、光増感剤の残存による安全性の問題を回避することは、光動力療法の臨床応用における難点となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑みて、従来技術の不足を補うためには、新たな分解可能な近赤外光増感剤、その調製方法及び応用を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1の目的として、分解可能な近赤外光増感剤を提供する。
【0007】
上記技術的課題を解決するための本発明の構成は以下の通りである。
【0008】
分解可能な近赤外光増感剤であって、ポルフィリン系化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、非共有結合複合体、錯体、およびプロドラッグから選択されるいずれか1種であり、上記ポルフィリン化合物の構造は、式1に示す通りであり、
【化1】


式中、
【化2】


は、それぞれ独立して、
【化3】


から選択されるいずれか1種であり、
ArおよびArとも置換又は未置換されたフェニル基であり、
、R、R、R、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルファニル基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、アミド基、C-Cアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換されたC-Cアルキル基、置換又は未置換されたC1-8アルコキシ基、置換されたメルカプト基、C-Cアルキルリン酸基、C-Cアルキルカルボキシル基、C-Cアルキルスルホン酸基、C-Cアルケニルアルキル基、C-Cアルケニル基、C-Cアルキニルアルキル基、C-Cアルキニル基、C-Cアルケニルオキシ基、およびC-Cアルキニルオキシ基から選択されるいずれか1種であり、
Mは金属イオンであって、Mg、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Ga、Al、Pd、およびPtから選択されるいずれか1種である。
【0009】
本発明の分解可能な近赤外光増感剤のメカニズムを説明すると、以下の通りである。
【0010】
本発明は、ポルフィリン系化合物の構造を修飾することで、化合物の光物理的および光化学的性質を調整し、光増感剤分子の近赤外吸收、発光特性、並びにI型およびII型光動力治療上の効力を実現し、光増感剤の分子構造におけるラクトン単位は、活性酸素物種と反応可能であり、光照射で活性化すると、光活性を有しない低毒性物質に転化し、次第に光増感剤が分解される。
【0011】
本発明の分解可能な近赤外光増感剤による有利な効果としては、以下の通りである。
【0012】
1、本発明の分解可能な近赤外光増感剤は、光照射により活性酸素を生成するとともに分解され、光照射終了後、光活性を有しない低毒性物質に完全転化することで、従来技術における光増感剤の残存問題を効果的に解決できる。
2、本発明の分解可能な近赤外光増感剤は、吸収スペクトルが近赤外域(700nm~900nm)にあり、且つ消衰係数が大きく、励起光の組織への透過深度がより大きいことから、光源による組織への損傷を減少するのに有用である。
3、本発明の分解可能な近赤外光増感剤は、強い蛍光を有することから、蛍光標識に用いられて光増感剤の分解程度をリアルタイムでモニタリングすることができる。
4、本発明の分解可能な近赤外光増感剤は、細胞および生体レベルで高い光毒性を示していることから、活性成分として光動力治療薬の調製に用いられる。
【0013】
本発明は、上記の構成を基にして、以下のように改善することもできる。
【0014】
さらに、上記Arおよび上記Arは、それぞれ独立して、
【化4】


であり、
式中、R、R10、R11、R12、およびR13は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルファニル基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、アミド基、C-Cアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換されたC-Cアルキル基、置換又は未置換されたC-Cアルコキシ基、置換されたチオ基、C-Cアルキルリン酸基、C-Cアルキルカルボキシル基、C-Cアルキルスルホン酸基、C-Cアルケニルアルキル基、C-Cアルケニル基、C-Cアルキニルアルキル基、C-Cアルキニル基、C-Cアルケニルオキシ基およびC-Cアルキニルオキシ基から選択されるいずれか1種である。
【0015】
上記のさらなる構成による有利な効果としては、異なる応用ニーズに対応できるように、異なる置換基によって光増感剤の溶解度と反応性を調整し、生体適合性の修飾と機能の変化を実現できる。
【0016】
さらに、上記金属イオンは、Mg、Zn、Cd、AlおよびGaから選択されるいずれか1種である。
【0017】
上記の更なる構成による有利な効果としては、蛍光や活性酸素を生成する光増感剤の効力を制御し、光増感剤の安定性を向上させ、光増感剤の暗毒性をさらに低下させることで、生物安全性を向上させる。
【0018】
また更に、上記ポルフィリン化合物の具体な構造は、
【化5】


から選択されるいずれか1種である。
【0019】
本発明は、第2の目的として、上記分解可能な近赤外光増感剤の調製方法を提供する。
【0020】
上記技術的課題を解決するための本発明の構成は以下の通りである。上記分解可能な近赤外光増感剤の調製方法であって、下記の手順1~3を含み、
第1中間生成物を調製する手順1において、水熱反応釜の中で、ポルフォジラクトン100mgと、前記ポルフォジラクトンに対して30~50倍当量に相当するアルカリとを、5mL~20mLの第1溶媒に溶解させ、80℃~200℃で24h~72h反応させて、第1中間生成物を得て、反応式は以下に示す通りであり、
【化6】


第2中間生成物を調製する手順2において、手順1で得られた第1中間生成物100mgを、5mL~50mLの第2溶媒の中で水溶性修飾反応を行わせて、第2中間生成物を得て、反応式は以下に示す通りであり、
【化7】


目標生成物を調製する手順3において、手順2で得られた第2中間生成物100mgと、前記第2中間生成物に対して10倍当量に相当する金属塩とを、20~100mLの第3溶媒に溶解させ、20℃~80℃で2h~16h反応させて、式1に示す目標生成物を得て、反応式は以下に示す通りである。
【化8】

【0021】
本発明の分解可能な近赤外光増感剤の調製方法のメカニズムを説明すると、以下の通りである。
【0022】
本発明の手順1において、ポルフォジラクトンを基質とし、アルカリ性条件下で一つのラクトン基を環状共役構造に転化して、共役度を増大させる。ポルフォジラクトンにおけるフェニル基のオルト位のフッ素は、求核置換反応が発生可能であり、ラクトン基の開環した後の2つのヒドロキシル基は、アルカリ性条件下で、隣接するフッ素を攻撃して2つの新しい五員環を形成し、大環の剛性構造を安定させることができる。かかる化学反応式は、
【化9】


である。
【0023】
本発明の手順2において、ベンゼン環上の置換反応によって、R~R13にアミノ基、ヒドロキシル基、シアノ基、およびメルカプト基などの活性基を導入し、さらなる反応修飾を経て、第4級アンモニウム基、スルホン酸基、カルボキシル基、およびグリコシル基などの構造を有する水溶性分子が得られる。
【0024】
本発明の手順3において、第1中間生成物および第2中間生成物は、大環状テトラピロール配位子として良好な配位機能を有することで、様々な金属イオンをキレート化することができ、異なる金属イオンを選択することにより、加熱条件下で、中心金属の異なる目標生成物が得られる。
【0025】
本発明の分解可能な近赤外光増感剤の調製方法による有利な効果としては、以下の通りである。
【0026】
1、本発明は、全体的な合成経路が簡潔で、収率が高く、再結晶法で精制するため、さらに簡便である。
2、本発明は、反応条件が温和で、反応安全性が高く、有害物質の流出がなく、汚染が減少する。
3、本発明は、コストが安く、操作が容易で、市場の見込みが広く、規模化や応用拡大に適する。
【0027】
本発明は、上記の構成を基にして、以下のように改善することもできる。
【0028】
さらに、手順1において、上記アルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ナトリウムメトキシド、およびカリウムtert-ブトキシドから選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物である。
【0029】
上記の更なる構成による有利な効果としては、強アルカリの使用を避け、反応操作の安全性を向上させる。
【0030】
また更に、上記アルカリは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、トリエチルアミン、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミンから選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物である。
【0031】
更に、手順1において、上記第1溶媒は、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、およびテトラヒドロフランから選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物である。
【0032】
更に、上記第1溶媒は、水と、アセトニトリルとを体積比1:(2~10)で混合した溶媒、又は水と、テトラヒドロフランとを体積比1:(2~10)で混合した溶媒である。
【0033】
上記の更なる構成による有利な効果としては、上記パラメータを採用することにより、反応の収率が向上できる。
【0034】
また更に、上記第1溶媒は、水と、アセトニトリルとを体積比1:(5-10)で混合した溶媒、又は水と、テトラヒドロフランとを体積比1:(5-10)で混合した溶媒である。
【0035】
更に、手順1において、上記反応温度を100℃~150℃とし、反応時間を48h~72hとする。
【0036】
上記の更なる構成による有利な効果としては、上記の反応パラメータを採用することにより、副反応の発生が減少し、後処理が容易となり、反応の収率が向上できる。
【0037】
更に、手順2において、上記第2溶媒は、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、およびヘキサノールから選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物である。
【0038】
上記の更なる構成による有利な効果としては、第2溶媒として上記のようなものを採用することにより、後処理が容易となり、反応の収率が向上する。
【0039】
更に、上記第2溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、およびリン酸トリメチルから選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物である。
【0040】
更に、手順3において、上記金属塩は、マグネシウム塩、クロム塩、マンガン塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩、銅塩、亜鉛塩、カドミウム塩、ガリウム塩、アルミニウム塩、パラジウム塩、および鉛塩から選択されるいずれか1種である。
【0041】
上記の更なる構成による有利な効果としては、上記のような第3溶媒への金属塩の溶解度が良く、得られる目標生成物の構造が安定である。
【0042】
また更に、上記金属塩は、マグネシウム塩、亜鉛塩、カドミウム塩、ガリウム塩、およびアルミニウム塩から選択されるいずれか1種である。
【0043】
また更に、上記金属塩は、醋酸塩、塩化塩、硫酸塩、硝酸塩、およびリン酸塩から選択されるいずれか1種である。
【0044】
また更に、上記金属塩は、醋酸塩、塩化塩、および硝酸塩から選択されるいずれか1種である。
【0045】
更に、手順3において、上記第3溶媒は、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、クロロホルム、およびジクロロメタンから選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物である。
【0046】
上記の更なる構成による有利な効果としては、溶媒への金属塩の溶解度を高め、溶媒の使用量を低減し、反応の後処理を簡潔化する。
【0047】
また更に、上記第3溶媒は、メタノール、エタノール、アセトニトリル、およびアセトンから選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物である。
【0048】
また更に、上記第3溶媒は、メタノール又はエタノールである。
【0049】
更に、手順3において、上記反応の温度を20℃~60℃とし、反応時間を3h~5hとする。
【0050】
上記の更なる構成による有利な効果としては、反応時間を短縮し、反応の転化率を向上させる。
【0051】
本発明は、第3の目的として、上記分解可能な近赤外光増感剤の応用を提供する。
【0052】
上記技術的課題を解決するための本発明の構成は以下の通りである。
【0053】
光動力治療薬の調製における、活性成分としての上記分解可能な近赤外光増感剤の応用である。
【0054】
本発明の分解可能な近赤外光増感剤の応用による有利な効果としては、上記の分解性近赤外光増感剤が持つ分解性特性により、光増感薬物の新しい代謝モデルが開拓されて、新しい光動力治療モデルの実現が期待され、薬学的および社会的な面から積極的な意義がある。
【0055】
本発明は、上記の構成を基にして、以下のように改善することもできる。
【0056】
更に、上記光動力治療薬は、上記分解可能な近赤外光増感剤と、薬学的に許容される補助剤とを含み、剤形は粉剤、注射剤、エマルションから選択されるいずれか1種である。
【0057】
上記の更なる構成による有利な効果としては、光動力治療薬を様々な剤形の薬物に製造でき、様々な投与経路に適用する。光動力治療薬における分解可能な近赤外光増感剤は、拡散、循環又は標的投与により罹患部位に集まり、薬効が迅速で、薬の用量が正確で、作用が確実である。
【0058】
投与経路は、注射投与および外用投与が好ましい。注射投与は、皮内、皮下、筋内、局所又は静脈内投与であってもよく、外用投与は、湿布、塗擦又は塗布などの手段で罹患部位に投与することを含む。
【0059】
また更に、上記補助剤は、溶媒、乳化剤、等張化剤、界面活性剤、および酸化防止剤から選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物である。
【0060】
上記の更なる構成による有効な効果としては、上記補助剤を採用して様々な剤形の薬物を製造でき、光動力治療薬の安定性を高め、光動力治療薬としての作用を調整して生体適合性を改善できる。上記補助剤は、いずれとも投与経路又は投与方式に適合し、人体に毒作用のない不活性成分であるべきである。
【0061】
また更に、上記溶媒は、エタノール、プロピレングリコール、N,N-ジメチルホルムアミド、およびジメチルスルホキシドから選択されるいずれか1種である。
【0062】
上記のまた更なる構成による有利な効果としては、異なる剤形への薬物の溶解度を促進し、光動力治療薬の単位剤形あたりの、活性成分の用量を0.01mg~20gとする。
【0063】
また更に、上記界面活性剤は、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポロシャム、ステアリン酸ナトリウム、およびTween-80から選択されるいずれか1種である。
【0064】
上記のまた更なる構成による有利な効果としては、上記界面活性剤を採用することで、乳化および湿潤作用を発揮し、活性成分の剤形への溶解度と安定性を高め、浸透機能を高める。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】本発明の実施例1で調製して得られた第1中間生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトル(H1-NMR)である。
図2】本発明の実施例2で調製して得られた第2中間生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
図3】本発明の実施例3で調製して得られた目標生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
図4】本発明の実施例4で調製して得られた参照化合物のプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
図5】本発明の実施例5で調製して得られたマグネシウム錯体のプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
図6】本発明の実施例5で調製して得られたカドミウム錯体のプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
図7】本発明の実験例6において、実施例3で調製して得られた目標生成物の紫外可視吸収スペクトルである。
図8】本発明の実験例6において、実施例3で調製して得られた目標生成物の蛍光発光スペクトルである。
図9】本発明の実験例7において、実施例3で調製して得られた目標生成物が存在する場合、ジヒドロエチジウム(DHE)の発光スペクトルの光照射時間による変化を表す図である。
図10】は本発明の実験例7において、ジヒドロエチジウム(DHE)の特徴的発光強度の光照射時間による変化を表す図である。
図11】本発明の実験例7において、実施例3で調製して得られた目標生成物が存在する場合、1,3-ジフェニルベンゾフラン(DPBF)の吸収スペクトルの光照射時間による変化を表す図である。
図12】本発明の実験例7において、実施例3で調製して得られた目標生成物の1,3-ジフェニルベンゾフラン(DPBF)に対する分解速度を表すグラフである。
図13】本発明の実験例8において、実施例3で調製して得られた目標生成物および1,3-ジフェニルベンゾフラン(DPBF)の吸収スペクトルの光照射時間による変化を表す図である。
図14】本発明の実験例8において、実施例3で調製して得られた目標生成物のパワー強度による光分解速度の変化を表す図である。
図15】本発明の実験例8において、実施例3で調製して得られた目標生成物の光分解過程を表す高速液体クロマトグラフである。
図16】本発明の実験例9において、実施例3で調製して得られた目標生成物の細胞光毒性を検出した図である。
図17】本発明の実験例9において、実施例3で調製して得られた分解生成物の細胞光毒性を検出した図である。
図18】本発明の実験例10において、リソソームプローブの蛍光信号を表す図である。
図19】本発明の実験例10において、実施例3で調製して得られた目標生成物の蛍光信号を表す図である。
図20】本発明の実験例10において、リソソームプローブと目標生成物との重ね合わせた蛍光信号を表す図である。
図21】本発明の実験例11において、実施例3で調製して得られた目標生成物の深度1mmにおける生体蛍光イメージングを表す図である。
図22】本発明の実験例11において、実施例3で調製して得られた目標生成物の深度4mmにおける生体蛍光イメージングを表す図である。
図23】本発明の実験例11において、実施例3で調製して得られた目標生成物の深度7mmにおける生体蛍光イメージングを表す図である。
図24】本発明の実験例11において、実施例3で調製して得られた目標生成物の深度10mmにおける生体蛍光イメージングを表す図である。
図25】本発明の実験例12において、実施例3で調製して得られた目標生成物および光対照群のマウスの腫瘍体積変化を表す図である。
図26】本発明の実験例12において、実施例3で調製して得られた目標生成物および光対照群のマウスの体重変化を表す図である。
図27】本発明の実験例12において、実施例3で調製して得られた分解生成物群のマウス腫瘍体積変化を表す図である。
図28】本発明の実験例12において、実施例3で調製して得られた分解生成物群のマウス体重変化を表す図である。
図29】本発明の比較例1において、実施例3で調製して得られた目標生成物の連続光照射下での紫外可視吸収スペクトルである。
図30】本発明の比較例1において、実施例3で調製して得られた目標生成物の連続光照射下での蛍光発光スペクトルである。
図31】本発明の比較例1において、実施例4で調製して得られた参照化合物の連続光照射下での紫外可視吸収スペクトルである。
図32】本発明の比較例1において、実施例4で調製して得られた参照化合物の連続光照射下での蛍光発光スペクトルである。
図33】本発明の比較例2において、実施例3で調製して得られた目標生成物の光照射0minでの細胞イメージングを表す図である。
図34】本発明の比較例2において、実施例3で調製して得られた目標生成物の光照射5minでの細胞イメージングを表す図である。
図35】本発明の比較例2において、実施例3で調製して得られた目標生成物の光照射10minでの細胞イメージングを表す図である。
図36】本発明の比較例2において、実施例4で調製して得られた参照化合物の光照射0minでの細胞イメージングを表す図である。
図37】本発明の比較例2において、実施例4で調製して得られた参照化合物の光照射5minでの細胞イメージングを表す図である。
図38】本発明の比較例2において、実施例4で調製して得られた参照化合物の光照射10minでの細胞イメージングを表す図である。
図39】本発明の比較例3において、実施例3で調製して得られた目標生成物の光照射0minでの生体蛍光イメージングを表す図である。
図40】本発明の比較例3において、実施例3で調製して得られた目標生成物の光照射5minでの生体蛍光イメージングを表す図である。
図41】本発明の比較例3において、実施例3で調製して得られた目標生成物の光照射10minでの生体蛍光イメージングを表す図である。
図42】本発明の比較例3において、実施例4で調製して得られた参照化合物の光照射0minでの生体蛍光イメージングを表す図である。
図43】本発明の比較例3において、実施例4で調製して得られた参照化合物の光照射5minでの生体蛍光イメージングを表す図である。
図44】本発明の比較例3において、実施例4で調製して得られた参照化合物の光照射10minでの生体蛍光イメージングを表す図である。
図45】本発明の比較例4において、実施例3で調製して得られた目標生成物により処理されたマウスの爪の写真である。
図46】本発明の比較例4において、光対照群のマウスの爪の写真である。
図47】本発明の比較例4において、実施例3で調製して得られた目標生成物により処理されたマウスのサーモイメージングの写真である。
図48】本発明の比較例4において、光対照群のマウスに対するサーモイメージングの写真である。
図49】本発明の比較例4において、実施例4で調製して得られた参照化合物により処理されたマウスの爪の写真である。
図50】本発明の比較例4において、実施例4で調製して得られた参照化合物により処理されたマウスのサーモイメージングの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下では、図面を参照しながら本発明の原理と特徴を説明するが、ここで挙げられる例は単に本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【実施例
【0067】
実施例1:第1中間生成物の調製
【化10】

【0068】
反応釜にテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフォジラクトン(303mg、0.3mmol)および炭酸カリウム(1.24g、9mmol)を加え、テトラヒドロフラン7mLおよび水1mLを添加して溶解させ、80℃で24h反応した後、加熱を停止して室温まで自然冷却し、反応溶媒を蒸発させて乾燥し、ジクロロメタンに溶解させ、珪藻土(200メッシュ)で濾過し、アセトン/石油エーテルで再結晶化し、濾過し、真空乾燥させ(-0.1Mpa、10h)、緑色固体の生成物である第1中間生成物180mgを得た。
【0069】
第1中間生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルは、図1に示す通りであった。特徴付けられたデータは、以下の通りであった。
【0070】
H NMR(CDCl,400MHz):δ9.62(d,J=4.8Hz,1H),9.39(d,J=2.8Hz,1H),8.69(d,J=4.8Hz,1H),8.53(d,J=3.6Hz,1H),-0.63(s,1H),-0.89(s,1H).19FNMR(CDCl,471MHz):δ-58.47(dd,J=19.7Hz,J=14.6Hz,1F),-59.39(d,J=6.6Hz,1F),-59.44(d,J=6.1Hz,1F),-59.60(dd,J=19.7Hz,J=14.6Hz,1F),-61.20(d,J=6.6Hz,1F),-61.25(d,J=7.1Hz,1F),-72.48(t,J=21.2Hz,1F),-73.61(t,J=20.1Hz,1F),-75.90(t,J=20.2Hz,1F),-77.55(t,J=20.2Hz,1F),-82.01(dd,J=19.7Hz,J=14.6Hz,1F),-82.78ないし-82.92(m,3F),-83.36(t,J=20.2Hz,1F),-83.66ないし-83.82(m,3F).HR-MS(ESI)m/z[M+H]:算出値:C4118 961.0174、実測値:961.0152。
【0071】
実施例2:第2中間生成物の調製
【化11】

【0072】
N,N-ジメチルホルムアミド5mLに第1中間生成物(94mg、0.10mmol)およびジメチルアミン塩酸塩(1.6g、20mmol)を加え、混合物を還流して36h反応させた後、室温まで冷却し、脱イオン水50mLを加えて沈殿させ、濾過し、真空乾燥させ(-0.1Mpa、10h)、窒素ガスの保護下で、リン酸トリメチル5mLに上記生成物80mgおよびトリフルオロメタンスルホン酸メチル0.5mLを加え、混合物を室温で24h反応させ、ジクロロメタン50mLを加えて沈殿させ、遠心分離し(4000r、10min)、固体をジクロロメタン20mLで洗浄し、真空乾燥させ(-0.1Mpa、10h)、紫色固体の生成物である第2中間生成物100mgを得た。
【0073】
第2中間生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルは図2に示す通りであった。特徴付けられたデータは以下の通りであった。
【0074】
H NMR(CDOD,400MHz):δ9.74(d,J=5.6Hz,1H),9.45(d,J=3.6Hz,1H),9.13(d,J=5.2Hz,1H),8.83(d,J=4.8Hz,1H),4.19(d,J=4.0Hz,36H).19FNMR(CDOD,471MHz):δ-135.25(t,J=15.0Hz,1F),-136.12(dd,J=26.3Hz,J=12.2Hz,2F),-136.88(t,J=16.0Hz,1F),-137.56(d,J=11.8Hz,1F),-137.62(d,J=13.1Hz,1F),-138.01(t,J=14.1Hz,1F),-138.31(d,J=15.5Hz,2F),-139.32(d,J=15.0Hz,2F),-140.62(t,J=14.6Hz,1F),-141.49(t,J=13.2Hz,1F).HR-MS(ESI)m/z[M]4:算出値:C534214 4+ 280.0771、実測値:280.0767。
【0075】
実施例3:目標生成物の調製
【化12】

【0076】
第2中間生成物(110mg、0.1mmol)および酢酸亜鉛(200mg、1mmol)をメタノール20mLに溶解させた。混合物を室温で一晩撹拌し、蒸発して乾燥させた。アセトニトリル5mLに溶解させ、遠心分離し(4000r、5min)、上澄み液を収集し、ジクロロメタン50mLを加えて沈殿させ、遠心分離し(4000r、10min)、真空乾燥させ(-0.1Mpa、10h)、緑色固体の生成物である目標生成物--分解可能な近赤外光増感剤分子110mgを得た。
【0077】
目標生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルは図3に示す通りであった。特徴付けられたデータは以下の通りであった。
【0078】
H NMR(CDOD,400MHz):δ9.51(d,J=5.2Hz,1H),9.32(d,J=4.4Hz,1H),8.85(d,J=4.8Hz,1H),8.65(d,J=4.4Hz,1H),4.18(s,36H).19FNMR(CDOD,471MHz):δ-136.39(dd,J=27.7Hz,J=12.7Hz,2F),-136.71(t,J=14.6Hz,1F),-137.13(t,J=14.6Hz,1F),-137.95(dd,J=28.2Hz,J=13.2Hz,2F),-138.78(d,J=15.5Hz,2F),-138.90(s,1F),-138.99(s,1F),-140.03(d,J=16.0Hz,2F),-141.28(t,J=13.2Hz,1F),-142.04(t,J=12.7Hz,1F).HR-MS(ESI)m/z[M]4:算出値:C534014Zn4+ 295.5555、実測値:295.5557。
【0079】
実施例4:参照化合物の調製
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフォラクトン(298mg、0.3mmol)を出発反応物とした以外、他の手順は実施例1~3と同様にして、参照化合物--分解不可な光増感剤を調製した。
【化13】

【0080】
参照化合物のプロトン核磁気共鳴スペクトルは図4に示す通りであった。特徴付けられたデータは以下の通りであった。
【0081】
H NMR(CDOD,400MHz):δ9.21(d,J=4.4Hz,2H),8.64(d,J=4.4Hz,2H),8.24(s,2H),4.16(d,J=9.2Hz,36H).19FNMR(CDOD,471MHz):δ?137.15(dd,J=34.8Hz,J=16.9Hz,4F),-138.82(t,J=20.7Hz,2F),-139.49(d,J=20.2Hz,4F),-139.64(s,2F),-142.36(t,J=14.6Hz,2F).HR-MS(ESI)m/z[M]4:算出値:C544214Zn4+ 291.0619、実測値:291.0620。
【0082】
実施例5:中心金属の異なる錯体の調製
【化14】

【0083】
第1中間生成物(110mg、0.1mmol)および酢酸マグネシウム/酢酸カドミウム/酢酸銅/酢酸マンガン(10eq.)をN,N-ジメチルホルムアミド10mLに溶解させた。混合物を150℃で8h反応させた後、加熱を停止して室温まで自然冷却し、反応溶媒を蒸発させて乾燥し、ジクロロメタンに溶解させ、珪藻土(200目)で濾過し、アセトン/石油エーテルで再結晶化して、中心金属がそれぞれマグネシウム、カドミウム、銅、マンガンである錯体を得た。
【0084】
マグネシウム錯体のプロトン核磁気共鳴スペクトルは図5に示す通りであった。特徴付けられたデータは以下の通りであった。
【0085】
H NMR(CDCl,400MHz):δ9.47(d,J=4.8Hz,1H),9.29(d,J=4.4Hz,1H),8.48(d,J=4.8Hz,1H),8.38(d,J=4.4Hz,1H).HR-MS(ESI)m/z[M+H]:算出値:C4118MgN 982.9868、実測値:982.9887。
【0086】
カドミウム錯体のプロトン核磁気共鳴スペクトルは図6に示す通りであった。特徴付けられたデータは以下の通りであった。
【0087】
H NMR(CDCl,400MHz):δ9.61(d,J=4.4Hz,1H),9.48(d,J=4.0Hz,1H),8.67(d,J=4.8Hz,1H),8.60(d,J=4.4Hz,1H).HR-MS(ESI)m/z[M+H]:算出値:C41CdF18 1072.9063、実測値:1072.9077。
【0088】
銅錯体:HR-MS(ESI)m/z[M+H]:算出値:C41CuF18 1021.9314、実測値:1021.9299。
【0089】
マンガン錯体:HR-MS(ESI)m/z[M+H]:算出値:C4118MnN 1013.9398、実測値:1013.9410。
【0090】
実験例6:光物理性質の検出
実施例3で調製して得られた目標生成物について、紫外可視吸収スペクトルおよび発光スペクトルの走査を行った結果、図7および図8に示す通りであった。図7より、目標生成物の吸収スペクトルは可視域と近赤外域をカバーでき、600nm~750nmの赤-近赤外域で強い吸收を有することが分かった。図8より、目標生成物について光励起を行った結果、蛍光スペクトルも近赤外域に位置することが分かった。これにより、目標生成物は光動力治療又は生体蛍光イメージングにおいて組織への透過深度が深いことが分かった。
【0091】
実験例7:活性酸素物種の検出
空気雰囲気で、実施例3で調製して得られた目標生成物の水溶液(10μM)にスーパーオキシドアニオンラジカルプローブとしてジヒドロエチジウム(DHE)を加え、光照射条件を700nmの発光ダイオードランプ、1.25mW/cmとした場合、ジヒドロエチジウムがスーパーオキシドラジカルにより酸化されて生成した酸素化エチジウムの蛍光が検出され、蛍光強度は光照射時間の延長につれて強くなった。その結果、図9および図10に示すように、目標生成物は光照射下でスーパーオキシドアニオンラジカルを生成する効力を有することを示唆している。
【0092】
一重項酸素の燐光発光は水分子により容易にクエンチされ、目標生成物より生成された一重項酸素は化学捕捉による分光光度法で測定した。1,3-ジフェニルベンゾフラン(DPBF)は最も一般的な一重項酸素捕捉剤であり、1,3-ジフェニルベンゾフラン(DPBF)は一重項酸素と迅速に反応して無色の物質を生成でき、紫外可視吸収スペクトルよりその特徴吸収ピーク(416nm)における吸光度の変化を測定することで、一重項酸素の含有量を反映する。光照射条件を700nmの発光ダイオードランプ、1.25mW/cmとした場合、1,3-ジフェニルベンゾフラン(DPBF)の416nmにおける特徴吸収は次第に弱くなり、その結果、図11および図12に示すように、目標生成物は光照射下で一重項酸素を生成する効力を有することを示唆している。
【0093】
実験例8:自己分解のモニタリング
実験例7のテストにおいて、光照射条件を700nmの発光ダイオードランプ、1.25mW/cm、0~2minとした場合で、1,3-ジフェニルベンゾフラン(DPBF)の416nmにおける特徴吸収は次第に弱くなる。光照射強度を増加し、照射時間を延長して、光照射条件を700nm発光ダイオードランプ、10mW/cm、2~4minとした場合、目標生成物の440nm、710nmおける特徴吸収は顕著に減少し、その結果、図13に示すように、光照射により目標生成物が分解されたことを示唆している。また、図14に示すように、分解速度は光照射強度の増加につれて顕著に速くなった。
【0094】
HPLCによって光分解過程をさらにモニタリングしたところ、光照射条件を700nmの発光ダイオードランプ、2.5mW/cm、0~10minとした場合、目標生成物の特徴ピークは照射時間の延長につれて次第に低くなり、5minの時点に生成された新たな特徴ピーク(分解生成物)は次第に増強し、分解生成物を収集した結果、図15に示すように、目標生成物は光照射下で自己分解され、分解生成物に転化されることを示唆している。
【0095】
実験例9:細胞光毒性
実験に用いた細胞はHeLaヒト子宮頸がん細胞であった。細胞は10%不活化ウシ胎児血清(碩華から購入、500mL)と1%ペニシリン-ストレプトマイシン(コーニングから購入、100mL)を添加したDMEM完全培地(源葉から購入、500mL)で培養し、培養温度を37℃とし、培養雰囲気を5%二酸化炭素とした。
【0096】
継代培養したHeLa細胞をトリプシンで消化した後、培地中に適切な濃度で分散させた。分散させたHeLa細胞を平底96ウェルプレートに接種し、1ウェルあたりの培地を200μLとし、細胞数を約104個とし、ブランク対照群とし細胞の無い培地1群を確保した。暗環境下で細胞を24h培養した後、培地を除去し、新鮮な培地100μLおよび予め調製された目標生成物の混合液100μL、或いは、新鮮な培地100μLおよび実施例3で調製された分解生成物の混合液100μLを加え、サンプルの濃度勾配が0~4μMとなるように希釈した。暗環境下で24h培養を続けた後、培地を除去し、各ウェルをpH7.4のPBS緩衝液で3回洗った。各ウェルにPBS緩衝液100μLを入れ、光照射条件を700nm発光ダイオードランプ、2.5mW/cm、10minとした。各ウェルからPBS緩衝液を除去し、新鮮な培地200μLを入れ替え、24h培養を続けた。培養完了後、培地を除去し、各ウェルをPBS緩衝液で3回洗う。その後、培地で調製された10%のCCK-8試薬(Cell Counting Kit-8)100μLを各ウェルに入れ、2h培養した。この過程で、CCK-8試薬中の2-(2-メトキシ-4-ニトロフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウムモノナトリウム塩(WST-8)は電子結合試薬の補助下で生細胞より還元されて水溶性の黄色ホルマザン生成物となり、これにより溶液の450nmにおける吸光度を変化させ、その変化値は生細胞数に正比例する。酵素結合免疫吸着アッセイを用いて各ウェルの450nmにおける吸収変化を測定し、下式により各インキュベート濃度での細胞生存率を計算した:
【0097】
CV=(As-Ab)/(Ac-Ab)×100%。
【0098】
ここで、CVは細胞生存率を指し、As、AcおよびAbはそれぞれインキュベート用化合物群の細胞の吸光度、ブランク群の細胞の吸光度およびブランク対照群の吸光度を指す。
【0099】
各インキュベート濃度での細胞生存率からHeLa細胞株における目標生成物の半数致死濃度IC50を計算したところ、1.0μMであった。図16に示すように、目標生成物の細胞光毒性を検出した図において、目標生成物は光照射下で強い光毒性を有する。図17に示すように、分解生成物の細胞光毒性を検出した図において、その分解生成物は光毒性を有していない。
【0100】
実験例10:細胞蛍光イメージング
継代培養したHeLa細胞をトリプシンで消化した後、培地中に適切な濃度で分散させた。分散させたHeLa細胞を共焦点シャーレに接種し、細胞を24h培養した後、予め調製された目標生成物の培地溶液100μLを加え、サンプルが10μMの濃度となるようにする希釈した。12hインキュベートした後、リソソーム緑色蛍光プローブを加え、15min共インキュベートした後、培地を除去し、pH7.4のPBS緩衝液を用いて3回洗った。ISS集積レーザー走査型共焦点蛍光寿命イメージングシステムで蛍光イメージングを行い、超連続レーザーを使用して700nmにおいて励起し、715nmハイパスフィルタにより、目標生成物の蛍光信号を収集し、レーザー機器を使用して488nmにおいて励起し、525/50nmバンドパスフィルタにより、リソソームプローブの蛍光信号を収集した。
【0101】
図18に示すように、リソソームプローブの蛍光信号を表す図において、リソソームプローブは緑色チャンネルにおいて強い蛍光信号を示した。
【0102】
図19に示すように、目標生成物の蛍光信号を表す図において、目標生成物は近赤外域において強い蛍光信号を示した。
【0103】
図20に示すように、リソソームプローブと目標生成物との重ね合わせた蛍光信号を表す図において、目標生成物の近赤外蛍光と、リソソームプローブの緑色蛍光とはよく重ね合わせられ、目標生成物は近赤外生細胞蛍光イメージングプローブとしての潜在力を持ち、リソソームに位置していることを示唆している。
【0104】
実験例11:生体蛍光イメージングの深度
生体実験におけるすべての動物実験は中国の動物実験実施規則を厳守して行われ、マウスは、5週齢、オス、体重16~25gのBALB/Cヌードマウスを使用した。マウスの腹部皮下に目標生成物のPBS溶液100μL(0.2mg/mL)を注射し、投与量は0.2mg/kgとした。投与してから30min後、マウスをイメージング装置に入れ、2L/minの酸素ガスと2%イソフルランとの混合ガスの雰囲気内で麻酔させた。目標生成物の励起波長は710nmとし、画像の採集波長は750nmとした。注射部位にマウスの皮(1mm/層)を重ね、信号が消えるまで蛍光信号の強度変化をモニタリングした。
【0105】
図21に示すように、目標生成物の深度1mmにおける生体蛍光イメージングを表す図において、目標生成物はウス皮下で強い蛍光信号を示した。
【0106】
図22に示すように、目標生成物の深度4mmにおける生体蛍光イメージングを表す図において、検出される目標生成物の蛍光信号はやや弱くなっている。
【0107】
図23に示すように、目標生成物の深度7mmにおける生体蛍光イメージングを表す図において、検出される目標生成物の蛍光信号はイメージングの深度増加につれてにさらに弱くなっている。
【0108】
図24に示すように、目標生成物の深度10mmにおける生体蛍光イメージングを表す図において、目標生成物の蛍光信号はその蛍光信号が深度10mmにおいても効果的に検出可能であることを示唆している。
【0109】
実験例12:動物レベルにおける薬物光治療の例
生体実験におけるすべての動物実験は中国の動物実験実施規則を厳守して行われ、マウスは、5週齢、オス、体重16~25gのBALB/Cヌードマウスを使用した。各マウスの右後肢皮下にHeLaヒト子宮頸がん細胞100μL(5×10)を接種し、腫瘍モデルを構築し、2週間後に実験を行った。
【0110】
マウスを番号によってランダムに群分けし、実験は、群ごとに6匹ずつ、光対照群(光照射)、暗対照群(目標生成物、分解生成物)および実験群(目標生成物+光照射、分解生成物+光照射)に分けた。暗対照群および実験群はそれぞれインサイチュ(in situ)注射で投与した。投与量を0.2mg/kgとし、インサイチュ注射で目標生成物または分解生成物のPBS溶液20μL(0.2mg/mL)を投与した。投与してから30min後、光対照群および実験群に対して照射治療を行い、光照射条件を700nm発光ダイオードランプ、100mW/cmとし、1匹当たり10min光照射した。治療完了後、マウスに対して遮光処理をせずに飼育かごに入れて飼育を続け、2日おきにノギスで腫瘍の体積を測定し、体重を量った。2週間治療した。
【0111】
図25に示すように、目標生成物および光対照群のマウスの腫瘍体積変化を表す図において、目標生成物は一回の光照射条件下で皮下腫瘍の成長を効果的に抑制できるが、目標生成物を投与しなった光対照群、および目標生成物を投与した暗対照群におけるマウスの腫瘍成長は迅速であった。
【0112】
図26に示すように、目標生成物および光対照群のマウスの体重変化を表す図において、実験群および対照群におけるマウスの体重は両方とも明らかに減少しなかった。
【0113】
図27に示すように、分解生成物群のマウスの腫瘍体積変化を表す図において、分解生成物は光照射および暗対照条件下で腫瘍の成長を抑制しておらず、分解生成物は光活性がなく、細胞や組織に損傷を与えないことを示唆している。
【0114】
図28に示すように、分解生成物群のマウスの体重変化を表す図において、分解生成物群の照射群および暗対照群におけるマウスの体重は明らかに減少せず、分解生成物は生体に明らかな副作用がないことを示唆している。
【0115】
比較例1:溶液における光増感剤の光分解過程の例
実施例3で得られた目標生成物を発光ダイオードランプの下に置いて照射し、光照射条件を700nm、10mW/cmとし、光照射過程で目標生成物の紫外可視吸収スペクトルおよび発光スペクトルを記録した。図29に示すように、目標生成物の440nm、710nmにおける特徴吸収は明らかに低下し、図30に示すように、目標生成物の740nmにおける特徴放出も次第に弱くなっている。その結果、光照射により目標生成物が分解されたことを示唆している。
【0116】
対照として、実施例4で調制された参照化合物を発光ダイオードランプの下に置いて照射し、光照射条件を640nm、10mW/cmとし、光照射過程で参照化合物の紫外可視吸収スペクトルおよび発光スペクトルを記録した。
【0117】
図31に示すように、参照化合物の連続光照射下での紫外可視吸収スペクトルにおいて、連続的な光照射条件下で、参照化合物の吸収スペクトルに変化が認められなかった。
【0118】
図32に示すように、参照化合物の連続光照射下での蛍光発光スペクトルにおいて、参照化合物の蛍光発光強度に明らかな変化が認められず、参照化合物は光照射条件下で分解しないことを示唆している。
【0119】
比較例2:細胞における光増感剤の光分解過程の例
HeLa細胞を共焦点シャーレに接種し、細胞を24時間培養した後、予め調製された目標生成物または参照化合物の培地溶液100μLを加え、サンプルが10μMの濃度となるように希釈した。12hインキュベートした後、pH7.4のPBS緩衝液を用いて3回洗った。ISS集積レーザー走査型共焦点蛍光寿命イメージングシステムで蛍光イメージングを行い、405nmにおいて励起し、715nmハイパスフィルタにより、目標生成物の蛍光信号を収集し、405nmにおいて励起し、670/50nmバンドパスフィルタにより、参照化合物の蛍光信号を収集した。
【0120】
図33に示すように、目標生成物の光照射0minでの細胞イメージングを表す図において、目標生成物は近赤外域で強い蛍光信号を有する。シャーレを発光ダイオードランプの下に置いて照射し、光照射条件を700nm、10mW/cmとし、5minごとに1回イメージングを行った。
【0121】
図34に示すように、目標生成物の光照射5minでの細胞イメージングを表す図において、光照射してから5min後、目的物の蛍光信号は明らかに弱くなった。
【0122】
図35に示すように、目標生成物の光照射10minでの細胞イメージングを表す図において、光照射してから10min後、目標生成物の蛍光信号はほとんどクエンチされ、細胞内の目標生成物は光照射下で自己分解されたことを示唆している。
【0123】
対照として、図36に示すように、参照化合物の光照射0minでの細胞イメージングを表す図において、参照化合物は強い蛍光信号を示した。シャーレを発光ダイオードランプの下に置いて照射し、光照射条件を640nm、10mW/cmとし、5minごとに1回イメージングを行った。
【0124】
図37に示すように、参照化合物の光照射5minでの細胞イメージングを表す図において、光照射してから5min後、参照化合物の蛍光信号は弱まっていない。
【0125】
図38に示すように、参照化合物の光照射10minでの細胞イメージングを表す図において、光照射してから10min後、参照化合物の蛍光信号の強度には明らかな変化が認められなかった。
【0126】
比較例3:動物レベルにおける光増感剤光の分解過程の例
生体実験におけるすべての動物実験は中国の動物実験実施規則を厳守して行われ、マウスは、5週齢、オス、体重16~25gのBALB/Cヌードマウスを使用した。各マウスの右後肢皮下にHeLaヒト子宮頸がん細胞100μL(5×10)を接種し、腫瘍モデルを構築し、2週間後に実験を行った。
【0127】
マウス腫瘍内にインサイチュ注射で目標生成物又は参照化合物のPBS溶液20μL(0.2mg/mL)を投与し、投与量を0.2mg/kgとした。投与してから30min後、マウスをイメージング装置に入れ、2L/minの酸素ガスと2%イソフルランとの混合ガスの雰囲気内で麻酔させた。目標生成物の励起波長を710nmとし、図像採集の波長を750nmとした。参照化合物の励起波長を650nmとし、図像採集の波長を690nmとした。
【0128】
図39に示すように、目標生成物の光照射0minでの生体蛍光イメージングを表す図において、目標生成物はマウス腫瘍の内で強い蛍光信号を示した。マウスの腫瘍部を発光ダイオードランプの下において照射し、光照射条件を700nm、100mW/cmとし、5minごとに1回イメージングを行った。
【0129】
図40に示すように、目標生成物の光照射5minでの生体蛍光イメージングを表す図において、光照射してから5min後、マウス腫瘍内の蛍光信号は明らかに弱くなり、目標生成物は光照射治療に伴い自己分解されることを示唆している。
【0130】
図41に示すように、目標生成物の光照射10minでの生体蛍光イメージングを表す図において、光照射してから10min後、マウス腫瘍内の蛍光信号は完全クエンチされ、目標生成物は、治療の完了に伴い、光活性を有しない分解生成物に完全転化された。
【0131】
対照として、図42に示すように、参照化合物の光照射0minでの生体蛍光イメージングを表す図において、参照化合物はマウス腫瘍内で強い蛍光信号を示した。マウスの腫瘍部を発光ダイオードランプの下において照射し、光照射条件を640nm、100mW/cmとし、5minごとに1回イメージングを行った。
【0132】
図43に示すように、参照化合物の光照射5minでの生体蛍光イメージングを表す図において、光照射してから5min後、マウス腫瘍内の蛍光信号は弱まっていない。
【0133】
図44に示すように、参照化合物の光照射10minでの生体蛍光イメージングを表す図において、光照射してから10min後、マウス腫瘍内の蛍光信号の強度には明らかな変化が認められず、参照化合物は光分解性能を有していないことを示唆している。
【0134】
比較例4:動物レベルにおける光増感剤の光増感副反応の例
生体実験におけるすべての動物実験は中国の動物実験実施規則を厳守して行われ、マウスは、5週齢、オス、体重16~25gのBALB/Cヌードマウスを使用した。マウスを番号によってランダムに群分けし、実験は、群ごとに3匹ずつ、目標生成物群、参照化合物群および光対照群に分けた。マウスの腹部皮下にそれぞれ目標生成物、参照化合物の溶液又はPBS溶液20μL(0.2mg/mL)を注射し、投与量を0.2mg/kgとした。注射した後、投与部位を照射し、目標生成物に対して光照射条件を700nm発光ダイオードランプとし、参照化合物に対する光照射条件を640nm発光ダイオードランプ、100mW/cmとし、1匹あたりに10min光照射を行い、光対照群に対しては処理をしなった。マウス状態を観察し、サーモイメージング装置でマウスの体温を記録した。その後、三群のマウスを擬似自然光に暴露し、10mW/cmで、1時間光照射した。
【0135】
目標生成物群および光対照群のマウスは自然光の照射を受けた場合、異常な反応を示さず、図45、46に示すように、マウスの四肢は力強く、爪の状態は正常であり、図47、48に示すように、体温に明らかな変化が認められなかった。
【0136】
参照化合物群のマウスは自然光の照射を受けた場合、明らかな光増感副反応を起こし、図49に示すように、運動能力の低下と筋肉の無力、爪の明らかなカールが現れ、図50に示すように、マウスの体温も明らかに低下した。
【0137】
ポルフィリン系化合物の水/エタノール/アセトニトリルなどの溶媒和物、タンパク質との非共有結合複合体およびプロドラッグについて、実施例6~12と同様な実験によって検証したところ、これらの物質にも実施例3の化合物と類似する効果が有していることが認められ、実施例3と異なる置換基を有する化合物については、周辺のベンゼン環上の置換基が大環本体の電子構造に及ぼす影響は無視でき、光増感剤分子は分解過程で構造中のラクトン単位に依存して光活性化により生成された活性酸素種と反応し、実施例6~12と同様な実験によって検証した結果、これらの物質も実施例3の化合物と類似の効果を有することが認められた。
【0138】
結論として、本発明の分解可能な近赤外光増感剤は、吸収スペクトルが近赤外域にあり、かつ消衰係数が大きく、参照化合物と比較すると、光照射により活性酸素を生成するとともに分解され、光照射終了後、光活性を有しない低毒性物質に完全転化される。従って、本発明の分解可能な近赤外光増感剤は細胞と生体レベルの両方で高い光毒性を示し、それが持つ強い蛍光は、蛍光標識に用いられて自身の分解程度をリアルタイムでモニタリングすることができる。
【0139】
上記の内容は単に本発明の好ましい実施例であり、本発明を限定するものではなく、本発明の精神と原則の範囲内で行われたいかなる修正、同等の置換、改良などは、すべて本発明の保護範囲に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
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図24
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図26
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図33
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図50
【手続補正書】
【提出日】2024-04-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分解可能な近赤外光増感剤であって、ポルフィリン系化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、非共有結合複合体、錯体、およびプロドラッグから選択されるいずれか1種であり、前記ポルフィリン化合物の構造は、式1に示す通りであり、
【化1】


式中、
【化2】


はそれぞれ独立して、
【化3】


から選択されるいずれか1種であり、
ArおよびArとも置換又は未置換されたフェニル基であり、
、R、R、R、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルファニル基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、アミド基、C-Cアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換されたC-Cアルキル基、置換又は未置換されたC1-8アルコキシ基、置換されたメルカプト基、C-Cアルキルリン酸基、C-Cアルキルカルボキシル基、C-Cアルキルスルホン酸基、C-Cアルケニルアルキル基、C-Cアルケニル基、C-Cアルキニルアルキル基、C-Cアルキニル基、C-Cアルケニルオキシ基、およびC-Cアルキニルオキシ基から選択されるいずれか1種であり、
Mは金属イオンであって、Mg、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Ga、Al、Pd、およびPtから選択されるいずれか1種であることを特徴とする、分解可能な近赤外光増感剤。
【請求項2】
前記Arおよび前記Arは、それぞれ独立して、
【化4】


であり、
式中、R、R10、R11、R12、およびR13は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルファニル基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、アミド基、C-Cアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換されたC-Cアルキル基、置換又は未置換されたC-Cアルコキシ基、置換されたメルカプト基、C-Cアルキルリン酸基、C-Cアルキルカルボキシル基、C-Cアルキルスルホン酸基、C-Cアルケニルアルキル基、C-Cアルケニル基、C-Cアルキニルアルキル基、C-Cアルキニル基、C-Cアルケニルオキシ基、およびC-Cアルキニルオキシ基から選択されるいずれか1種であることを特徴とする、請求項1に記載の分解可能な近赤外光増感剤。
【請求項3】
前記金属イオンは、Mg、Zn、Cd、Al、およびGaから選択されるいずれか1種であることを特徴とする、請求項1に記載の分解可能な近赤外光増感剤。
【請求項4】
前記ポルフィリン化合物の具体的な構造は、
【化5】


から選択されるいずれか1種であることを特徴とする、請求項に記載の分解可能な近赤外光増感剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の分解可能な近赤外光増感剤の調製方法であって、下記の手順1~3を含み、
第1中間生成物を調製する手順1において、水熱反応釜の中で、ポルフォジラクトン100mgと、前記ポルフォジラクトンに対して30~50倍当量に相当するアルカリとを、5mL~20mLの第1溶媒に溶解させ、80℃~200℃で24h~72h反応させて、第1中間生成物を得て、反応式は以下に示す通りであり、
【化6】


第2中間生成物を調製する手順2において、手順1で得られた第1中間生成物100mgを、5mL~50mLの第2溶媒の中で水溶性修飾反応を行わせ、第2中間生成物を得て、反応式は以下に示す通りであり、
【化7】


目標生成物を調製する手順3において、手順2で得られた第2中間生成物100mgと、前記第2中間生成物に対して10倍当量に相当する金属塩とを、20~100mLの第3溶媒に溶解させ、20℃~80℃で2h~16h反応して、式1に示す目標生成物を得て、反応方程式は以下に示す通りである、
【化8】


ことを特徴とする、分解可能な近赤外光増感剤の調製方法。
【請求項6】
手順1において、
前記アルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ナトリウムメトキシド、およびカリウムtert-ブトキシドから選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物であり、
前記第1溶媒は、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、およびテトラヒドロフランから選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物であり、
前記反応温度を100℃~150℃とし、反応時間を48h~72hとすることを特徴とする、請求項5に記載の分解可能な近赤外光増感剤の調製方法。
【請求項7】
前記第2溶媒は、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、およびヘキサノールから選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項5に記載の分解可能な近赤外光増感剤の調製方法。
【請求項8】
前記金属塩は、マグネシウム塩、クロム塩、マンガン塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩、銅塩、亜鉛塩、カドミウム塩、ガリウム塩、アルミニウム塩、パラジウム塩、および鉛塩から選択されるいずれか1種であり、
前記第3溶媒は、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、クロロホルム、およびジクロロメタンから選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物であり、
前記反応の温度を20℃~60℃とし、反応時間を3h~5hとすることを特徴とする、請求項5に記載の分解可能な近赤外光増感剤の調製方法。
【請求項9】
前記金属塩は、マグネシウム塩、亜鉛塩、カドミウム塩、ガリウム塩、およびアルミニウム塩から選択されるいずれか1種であることを特徴とする、請求項8に記載の分解可能な近赤外光増感剤の調製方法。
【請求項10】
光動力治療薬の調製における、活性成分としての請求項1~4のいずれか1項に記載の分解可能な近赤外光増感剤の使用。
【国際調査報告】