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特表2024-537914高硬度低合金熱間圧延鋼及びその製造方法
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  • 特表-高硬度低合金熱間圧延鋼及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】高硬度低合金熱間圧延鋼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20241008BHJP
   C21D 8/02 20060101ALI20241008BHJP
   C22C 38/46 20060101ALI20241008BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C22C38/00 301W
C21D8/02 A
C22C38/46
C21D9/46 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523937
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 IB2022060094
(87)【国際公開番号】W WO2023067544
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】202131047704
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518201418
【氏名又は名称】タタ スチール リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ゴッシュ,チラディープ
(72)【発明者】
【氏名】クマール,ラーフル
【テーマコード(参考)】
4K032
4K037
【Fターム(参考)】
4K032AA01
4K032AA05
4K032AA11
4K032AA16
4K032AA19
4K032AA23
4K032AA31
4K032AA36
4K032BA01
4K032CA02
4K032CA03
4K032CB02
4K032CC03
4K032CC04
4K032CD02
4K032CD03
4K037EA01
4K037EA06
4K037EA11
4K037EA15
4K037EA17
4K037EA20
4K037EA27
4K037EA32
4K037EB05
4K037EB11
4K037EB12
4K037EC01
4K037FA02
4K037FA03
4K037FB00
4K037FC03
4K037FC04
4K037FD02
4K037FD03
4K037JA06
(57)【要約】
耐摩耗性、衝撃靱性、硬度、及び溶接性が改善された高硬度低合金熱間圧延鋼が提供される。高硬度低合金熱間圧延鋼は、重量%で表される以下の組成:C:0.10~0.25、Mn:1.05~1.5、Si:0.25~0.35、Cr:0.15~0.25、Mo:0.05~0.15、Ni:0.45~0.55、Al:0.15~0.25、炭素当量:0.34~0.69を含み、残部が鉄(Fe)及び不可避の不純物である。高硬度低合金熱間圧延鋼は、最大10%のフェライト、最大10%のオーステナイト、最大20%のパーライト、最大20%のベイナイト及び60~100%のマルテンサイトの微細構造を含む。高硬度低合金熱間圧延鋼は、引張強さ≧600MPa、全伸び10~20%、硬度≧200Hv、及び降伏強さ≧500MPaを示す。上記組成の高硬度低合金熱間圧延鋼ストリップの製造方法(100)も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で表される以下の組成:
炭素(C):0.10%~0.25%、
マンガン(Mn):1.05%~1.5%、
クロム(Cr):0.15~0.25%、
ケイ素(Si):0.25%~0.35%、
ニッケル(Ni):0.45%~0.55%、
アルミニウム(Al):0.15~0.25%、
モリブデン(Mo):0.05%~0.15%、バナジウム:最大0.03%、炭素当量:0.34~0.69を含み、残部が実質的に鉄及び付随的な不純物である高硬度低合金熱間圧延鋼であって、最大10%のフェライト、最大10%のオーステナイト、最大20%のパーライト、最大20%のベイナイト及び60~100%のマルテンサイトの微細構造を含む、高硬度低合金熱間圧延鋼。
【請求項2】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼は、硬度(HV 1kg)≧200Hvを有する、請求項1に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼。
【請求項3】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼は、200~460Hvの範囲の硬度(HV 1kg)を有する、請求項2に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼。
【請求項4】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼は、引張強さ≧600MPaを有する、請求項1に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼。
【請求項5】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼は、降伏強さ≧500MPaを有する、請求項1に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼。
【請求項6】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼は、10~20%の範囲の全伸びを有する、請求項1に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼。
【請求項7】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼のMn含有量は、中心線偏析を回避するために1.8wt.%未満に保持される、請求項1に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼。
【請求項8】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼のC含有量は、室温で前記オーステナイトを安定化するのに役立つ、請求項1に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼。
【請求項9】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼のSi含有量は、セメンタイトの形成を部分的に遅延させるために0.25~0.35wt.%の間の範囲に保持される、請求項1に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼。
【請求項10】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼は、重量%で表される組成:C-0.15、Mn-1.1、Si-0.3、Cr-0.2、V-0.03、Ni-0.5、Al-0.2、Mo-0.1、炭素当量0.43を含み、残部が鉄(Fe)及び不可避の不純物である、請求項1に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼。
【請求項11】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼は、重量%で表される組成:C-0.21、Mn-1.47、Si-0.3、Cr-0.2、Ni-0.5、Mo-0.1、炭素当量0.55を含み、残部が鉄(Fe)及び不可避の不純物である、請求項1に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼。
【請求項12】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼は、220~380Hvの範囲の硬度(HV 1kg)を有する、請求項10に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼。
【請求項13】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼は、300~460Hvの範囲の硬度(HV 1kg)を有する、請求項11に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼。
【請求項14】
高硬度低合金熱間圧延鋼シートを製造するための方法(100)であって、
重量%で表される組成:C:0.10~0.25、Mn:1.05~1.5、Si:0.25~0.35、Cr:0.15~0.25、Mo:0.05~0.15、Ni:0.45~0.55、Al:0.15~0.25、炭素当量:0.34~0.69を有し、残部が鉄(Fe)及び不可避の不純物である鋼スラブを鋳造することと、
前記鋼スラブを1150℃超の温度まで再加熱することと、
仕上げ圧延が温度(TFRT)で行われるように、前記鋼スラブを約70%変形するまで熱間圧延して鋼シートを製造することであって、TFRTが830℃~890℃の範囲で変化することと、
室温に達するまで5℃/s~60℃/sの範囲の冷却速度で冷却して、前記高硬度低合金熱間圧延鋼シートを得ることと
含む方法(100)。
【請求項15】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼は、最大10%のフェライト、最大10%のオーステナイト、最大20%のパーライト、最大20%のベイナイト及び60~100%のマルテンサイトの微細構造を含む、請求項14に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼シートを製造するための方法(100)。
【請求項16】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼は、引張強さ≧600MPa及び降伏強さ≧500MPa、10~20%の範囲の全伸びを有する、請求項14又は15に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼シートを製造するための方法(100)。
【請求項17】
FRTは、870℃である、請求項14に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼シートを製造するための方法(100)。
【請求項18】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼は、重量%で表される組成:C-0.15、Mn-1.1、Si-0.3、Cr-0.2、V-0.03、Ni-0.5、Al-0.2、Mo-0.1、炭素当量0.43を含み、残部が鉄(Fe)及び不可避の不純物である、請求項14に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼シートを製造するための方法(100)。
【請求項19】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼は、重量%で表される組成:C-0.21、Mn-1.47、Si-0.3、Cr-0.2、Ni-0.5、Mo-0.1、炭素当量0.55を含み、残部が鉄(Fe)及び不可避の不純物である、請求項14に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼シートを製造するための方法(100)。
【請求項20】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼は、220~380Hvの範囲の硬度(HV 1kg)を有する、請求項18に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼シートを製造するための方法(100)。
【請求項21】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼は、300~460Hvの範囲の硬度(HV 1kg)を有する、請求項19に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼シートを製造するための方法(100)。
【請求項22】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼のための飽和冷却速度は、20~30℃/sの範囲内に存在する、請求項18又は19に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼シートを製造するための方法(100)。
【請求項23】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼の最大硬度(HV 1kg)は、360~380Hvの範囲である、請求項18又は22に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼シートを製造するための方法(100)。
【請求項24】
前記高硬度低合金熱間圧延鋼の最大硬度(HV 1kg)は、450~460Hvの範囲である、請求項19又は22に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼シートを製造するための方法(100)。
【請求項25】
前記鋼スラブは、前記スラブの厚さに応じて20分~2時間の間、1150℃~1250℃の間の温度まで再加熱される、請求項14に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼シートを製造するための方法(100)。
【請求項26】
前記鋼シートの厚さは、4mm~8mmの範囲である、請求項15~20のいずれか一項に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼シートを製造するための方法(100)。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載の高硬度低合金熱間圧延鋼から製造された部品。
【請求項28】
前記部品は、L&E装置の構造及び耐摩耗用途で使用され、特に、採鉱及び土木工事用途で使用される、請求項27に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
[0001] 本発明は、高硬度低合金熱間圧延鋼、より具体的には耐摩耗性及び衝撃靱性が改善された高硬度耐摩耗性熱間圧延鋼と、高硬度低合金熱間圧延鋼の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
[0002] 摩耗には、活動的な物体種と対向する物体種との間の相対運動による、任意の表面からの材料の漸進的な崩壊が含まれる。これは、機械的作用又は化学反応のいずれかによって起こり得る。L&E又は採鉱セクターのような特定のエンジニアリング用途では、耐アブレシブ摩耗性材料は需要が高い。驚くべきことに、アブレシブ摩耗だけによって全摩耗損失の63%もが生じており、これは望ましくない。より良い設計により、或いはいくつかの代替材料を選択することにより、これは大幅に減少させることができる。しかしながら、部品の新しい設計は他の関連リスクを伴うことが多く、また必ずしも経済的に実行可能な代替品になるとは限らない。逆に、より良い材料の選択は、より良い選択肢であると考えられることもある。
【0003】
[0003] 近年、耐摩耗用途の大部分に、マルテンサイト又は焼戻しマルテンサイト系微細構造を含有する中~高炭素鋼が使用されている。鋼の耐摩耗性は、鋼マトリックス中で生成され得るマルテンサイトの量に正比例する表面硬度によって大幅に改善される。言い換えれば、微細構造中のマルテンサイトの量が多いほど、鋼の硬度は高くなる。これが、耐摩耗用途のためにマルテンサイト系鋼を製造するという一方向の努力が全世界で行われていることの理由である。しかしながら、マルテンサイトを生じさせることは、特に低合金鋼では困難な課題である。
【0004】
[0004] 本開示は、上記の1つ若しくは複数の制限又は従来技術に関連する任意の他の制限を克服することに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の目的
[0005] 本発明の目的は、従来技術の問題を解決し、L&E及び採鉱用途のための高硬度低合金熱間圧延耐摩耗性鋼を開発することである。
【0006】
[0006] 本発明の別の目的は、以下の重量%の組成:C:0.10~0.25、Mn:1.05~1.5、Si:0.25~0.35、Cr:0.15~0.25、Mo:0.05~0.15、Ni:0.45~0.55、Al:0.15~0.25、炭素当量:0.34~0.69を有し、残部が鉄(Fe)及び不可避の不純物であり、且つフェライト、オーステナイト、パーライト、ベイナイト及びマルテンサイトからなる微細構造を有する高硬度低合金熱間圧延鋼シートを提供することである。
【0007】
[0007] 本発明の別の目的は、熱間圧延操作中にランアウトテーブル(ROT)において仕上げ圧延後の冷却速度を制御することにより、十分な量のマルテンサイトを有する高硬度低合金熱間圧延鋼を製造するための方法を提示することである。
【0008】
[0008] 本発明の別の目的は、前記組成の範囲内で可能な最大硬度を得るための飽和冷却速度を推定することである。
【0009】
[0009] 本発明のさらに別の目的は、耐摩耗性、衝撃靱性、硬度、及び溶接性が改善された高硬度低合金熱間圧延鋼を製造するために、提案された化学組成に対して熱機械的プロセスと熱処理プロセスとを組み合わせる、より容易な新しい製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
[0010] 本概要は、耐摩耗性、衝撃靱性、硬度、及び溶接性が改善された高硬度低合金熱間圧延鋼と、高硬度低合金熱間圧延鋼シートの製造方法とに関する概念を導入するために提供される。この概念は、以下の詳細な説明でさらに説明される。本概要は、特許請求される主題の重要な特徴又は必須の特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を限定するために使用されることを意図するものでもない。
【0011】
[0011] 本発明の一態様において、高硬度低合金熱間圧延鋼が提供される。高硬度低合金熱間圧延鋼は、重量%で表される以下の組成:炭素(C):0.10%~0.25%、マンガン(Mn):1.05%~1.5%、クロム(Cr):0.15~0.25%、ケイ素(Si):0.25%~0.35%、ニッケル(Ni):0.45%~0.55%、アルミニウム(Al):0.15~0.25%、モリブデン(Mo):0.05%~0.15%、バナジウム:最大0.03%、炭素当量:0.34~0.69を含み、残部が実質的に鉄及び付随的な不純物である。高硬度低合金熱間圧延鋼は、最大10%のフェライト、最大10%のオーステナイト、最大20%のパーライト、最大20%のベイナイト及び60~100%のマルテンサイトの微細構造を含む。
【0012】
[0012] 実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼は、硬度(HV 1kg)≧200Hvを有する。実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼は、200~460Hvの範囲の硬度(HV 1kg)を有する。
【0013】
[0013] 実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼は、引張強さ≧600MPaを有する。実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼は、降伏強さ≧500MPaを有する。実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼は、10~20%の範囲の全伸びを有する。
【0014】
[0014] 実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼のMn含有量は、中心線偏析を回避するために1.8wt.%未満に保持される。実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼のC含有量は、室温でオーステナイトを安定化するのに役立つ。実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼のSi含有量は、セメンタイトの形成を部分的に遅延させるために0.25~0.35wt.%の間の範囲に保持される。
【0015】
[0015] 実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼は、重量%で表される組成:C-0.15、Mn-1.1、Si-0.3、Cr-0.2、V-0.03、Ni-0.5、Al-0.2、Mo-0.1、炭素当量0.43を含み、残部が鉄(Fe)及び不可避の不純物である。
【0016】
[0016] 実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼は、重量%で表される組成:C-0.21、Mn-1.47、Si-0.3、Cr-0.2、Ni-0.5、Mo-0.1、炭素当量0.55を含み、残部が鉄(Fe)及び不可避の不純物である。
【0017】
[0017] 実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼は、220~380Hvの範囲の硬度(HV 1kg)を有する。
【0018】
[0018] 実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼は、300~460Hvの範囲の硬度(HV 1kg)を有する。
【0019】
[0019] 本発明の別の態様において、高硬度低合金熱間圧延鋼シートを製造するための方法が提供される。本方法は、重量%で表される組成:C:0.10~0.25、Mn:1.05~1.5、Si:0.25~0.35、Cr:0.15~0.25、Mo:0.05~0.15、Ni:0.45~0.55、Al:0.15~0.25、炭素当量:0.34~0.69を有し、残部が鉄(Fe)及び不可避の不純物である鋼スラブを鋳造することを含む。本方法は、鋼スラブを1150℃超の温度まで再加熱することも含む。本方法は、仕上げ圧延が温度(TFRT)で行われるように、鋼スラブを約70%変形するまで熱間圧延して鋼シートを製造することをさらに含む。TFRTは、830℃~890℃の範囲で変化する。本方法は、室温に達するまで5℃/s~60℃/sの範囲の冷却速度で冷却して、高硬度低合金熱間圧延鋼シートを得ることを含む。
【0020】
[0020] 実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼は、最大10%のフェライト、最大10%のオーステナイト、最大20%のパーライト、最大20%のベイナイト及び60~100%のマルテンサイトの微細構造を含む。
【0021】
[0021] 実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼は、引張強さ≧600MPa及び降伏強さ≧500MPa、10~20%の範囲の全伸びを有する。実施形態において、TFRTは870℃である。
【0022】
[0022] 実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼は、重量%で表される組成:C-0.15、Mn-1.1、Si-0.3、Cr-0.2、V-0.03、Ni-0.5、Al-0.2、Mo-0.1、炭素当量0.43を含み、残部が鉄(Fe)及び不可避の不純物である。
【0023】
[0023] 実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼は、重量%で表される組成:C-0.21、Mn-1.47、Si-0.3、Cr-0.2、Ni-0.5、Mo-0.1、炭素当量0.55を含み、残部が鉄(Fe)及び不可避の不純物である。
【0024】
[0024] 実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼は、220~380Hvの範囲の硬度(HV 1kg)を有する。
【0025】
[0025] 実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼は、300~460Hvの範囲の硬度(HV 1kg)を有する。
【0026】
[0026] 実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼のための飽和冷却速度は、20~30℃/sの範囲内に存在する。
【0027】
[0027] 実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼の最大硬度(HV 1kg)は、360~380Hvの範囲である。
【0028】
[0028] 実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼の最大硬度(HV 1kg)は、450~460Hvの範囲である。
【0029】
[0029] 実施形態において、鋼スラブは、スラブの厚さに応じて20分~2時間の間、1150℃~1250℃の間の温度まで再加熱される。
【0030】
[0030] 実施形態において、鋼シートの厚さは、4mm~8mmの範囲である。
【0031】
[0031] 実施形態において、高硬度低合金熱間圧延鋼から製造された部品。実施形態において、この部品は、L&E装置の構造及び耐摩耗用途で使用され、特に、採鉱及び土木工事用途で使用される。
【0032】
[0032] 本開示の他の特徴及び態様は、以下の説明及び添付の図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】[0033]本発明の実施形態に従う高硬度低合金熱間圧延鋼シートの製造方法のフローチャートを示す。
図2】[0034]本発明の実施形態に従う高硬度低合金熱間圧延鋼シートの製造中、圧延(ホットストリップミルのランアウトテーブルにおける)後に行われる冷却技術の概略図を示す。
図3】[0035]本発明の実施形態に従う高硬度低合金熱間圧延鋼の例(鋼1及び鋼2)の冷却速度に対する硬度の変化のグラフ表示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[0036] この説明で参照される図面は、具体的に言及されない限り、一定の縮尺で描かれたと理解されるべきではなく、このような図面は本質的に例示的なものにすぎない。
【0035】
詳細な説明
[0037] 本開示の種々の例示的な実施形態の詳細な説明は、添付図面を参照して本明細書に記載される。実施形態は、本開示を明確に伝えるように本明細書に詳細に記載されることに注意すべきである。しかしながら、本明細書に提供される詳細の量は、実施形態の予期される変形を限定することを意図するものではなく、逆に、特許請求の範囲で定義される本開示の趣旨及び範囲内に含まれる全ての修正、等価物、及び代替を網羅することが意図される。
【0036】
[0038] また、本明細書において明示的に説明又は図示されていないが、本開示の原理を具体化する種々の配置が考案され得ることも理解されるべきである。さらに、本開示の原理、態様、及び実施形態、並びに特定の実施例を記載する本明細書中の全ての記述は、それらの等価物を包含することが意図される。
【0037】
[0039] 本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであって、例示的な実施形態を限定することは意図されない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が他に明白に示さない限り、複数形も含むことが意図される。さらに、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」及び/又は「含む(including)」という用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、整数、ステップ、操作、要素及び/又は構成要素の存在を規定するが、1つ若しくは複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しないことが理解されるであろう。
【0038】
[0040] また、いくつかの代替の実行では、記載された機能/動作は、図に記載されたものとは異なる順序で起こり得ることにも注意すべきである。例えば、連続して示される2つの図形は、実際には、同時に実行されてもよいし、或いは関与される機能/動作に応じて逆の順序で実行されることもある。
【0039】
[0041] 他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術及び科学用語を含む)は、例示的な実施形態が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、用語、例えば一般的に使用される辞書で定義されている用語は、関連技術の文脈におけるその意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書において明確にそのように定義されない限り、理想的な意味又は過度に形式的な意味で解釈されないことが理解されるであろう。
【0040】
[0042] 本発明に従う600MPaの最低引張強さを有する高硬度低合金熱間圧延鋼は、重量%で表される以下の組成:C:0.10~0.25、Mn:1.05~1.5、Si:0.25~0.35、Cr:0.15~0.25、Mo:0.05~0.15、Ni:0.45~0.55、Al:0.15~0.25、炭素当量:0.34~0.69を含み、残部が鉄(Fe)及び不可避の不純物である。高硬度低合金熱間圧延鋼は、最大10%のフェライト、最大10%のオーステナイト、最大20%のパーライト、最大20%のベイナイト及び60~100%のマルテンサイトの微細構造を含む。
【0041】
[0043] 高硬度低合金熱間圧延鋼は、硬度≧200Hvを有する。説明される例では、高硬度低合金熱間圧延鋼は、200~460Hvの範囲の硬度を有する。高硬度低合金熱間圧延鋼は、降伏強さ≧500MPa、及び10~20%の間の範囲の全伸びを有する。高硬度低合金熱間圧延鋼は、改善された耐摩耗性、衝撃靱性、硬度、及び溶接性を有する。
【0042】
[0044] 1つの説明される例(鋼1)では、高硬度低合金熱間圧延鋼は、重量%で表される組成:C-0.15、Mn-1.1、Si-0.3、Cr-0.2、V-0.03、Ni-0.5、Al-0.2、Mo-0.1、炭素当量0.43を含み、残部が鉄(Fe)及び不可避の不純物である。高硬度低合金熱間圧延鋼は、220~380Hvの範囲の硬度(HV 1kg)を有する。
【0043】
[0045] 別の説明される例(鋼2)では、高硬度低合金熱間圧延鋼は、重量%で表される組成:C-0.21、Mn-1.47、Si-0.3、Cr-0.2、Ni-0.5、Mo-0.1、炭素当量0.55を含み、残部が鉄(Fe)及び不可避の不純物である。高硬度低合金熱間圧延鋼は、300~460Hvの範囲の硬度(HV 1kg)を有する。
【0044】
[0046] 最低600MPaの引張強さを有する高硬度低合金熱間圧延鋼シートは、フェライト+パーライト+オーステナイト+ベイナイト+マルテンサイトからなる。微細構造中のマルテンサイトは、アブレシブ摩耗に対する優れた耐性を提供し、衝撃靱性を改善する。高硬度低合金熱間圧延鋼は、リフト&掘削装置の構造及び耐摩耗用途で使用される部品、特に、採鉱及び土木工事用途で使用される部品を製造するのに適している。
【0045】
[0047] 図1及び図2を参照すると、所望の組成の高硬度低合金熱間圧延鋼シートを製造する方法(100)が示される。ステップ(102)において、方法(100)は、重量%で表される組成:C:0.10~0.25、Mn:1.05~1.5、Si:0.25~0.35、Cr:0.15~0.25、Mo:0.05~0.15、Ni:0.45~0.55、Al:0.15~0.25、炭素当量:0.34~0.69を有し、残部が鉄(Fe)及び不可避の不純物である溶鋼を鋳造することを含む。溶鋼は鋳造装置で鋳造され、鋼スラブ(鋳造インゴット)が得られる。説明される例では、鋼は、従来の連続鋳造機又は薄スラブ鋳造機のいずれかで鋳造される。
【0046】
[0048] ステップ(104)において、方法(100)は、鋼スラブ(鋼鋳物)を1150℃超の温度まで再加熱することを含む。説明される例では、スラブは、スラブの厚さに応じて20分~2時間の間、1150~1250℃の間の範囲の温度まで再加熱される。また1250℃超の再加熱温度は、オーステナイトの過剰な結晶粒粗大化及び/又はスケール損失を引き起こし得るので望ましくない。
【0047】
[0049] ステップ(106)において、方法(100)は、仕上げ圧延が温度(TFRT)で行われるように、鋼スラブを約70%変形するまで熱間圧延して鋼シートを製造することを含む。説明される例では、TFRTは、830℃~890℃の範囲で変化し、より好ましくは870℃である。鋼スラブは、規定の組成で鋳造され、再加熱された後、熱間圧延される。より大きい厚さのスラブは、従来の熱間圧延ミルの粗圧延スタンドで粗圧延される。粗圧延は、再結晶温度よりも高温で行われる。次に、6又は7スタンドタンデム圧延機において仕上げ圧延が実行される。圧延は、830≦TFRT≦890℃になるように与えられる仕上げ圧延温度TFRTで仕上げられる。仕上げ圧延温度(TFRT)の上記範囲は、オーステナイト範囲で熱間圧延を仕上げるように選択される。ここで、TFRTは、熱機械的に制御された圧延を活用するために、Tnr未満に保持される。
【0048】
[0050] ステップ(108)において、方法(100)は、室温に達するまで5℃/s~60℃/sの範囲の冷却速度で冷却して、高硬度低合金熱間圧延鋼シートを得ることを含む。微細構造中の十分な量のマルテンサイト形成を保証するために、冷却速度は、5℃/s~60℃/sの間に保持される。
【0049】
[0051] 鋼を冷却して、最終微細構造中でより多量のマルテンサイトの発生を可能にし、改善された耐摩耗性、衝撃靱性、硬度、及び溶接性を生じさせ得る。得られた高硬度低合金熱間圧延鋼シートは、面積%で、最大10%のフェライト、最大10%のオーステナイト、最大20%のパーライト、最大20%のベイナイト及び60~100%のマルテンサイトで表される微細構造を有する。説明される例では、高硬度低合金熱間圧延鋼は、硬度≧200Hvを有する。より具体的には、200~460Hvの範囲である。高硬度低合金熱間圧延鋼シートは、600MPaを超える引張強さ、10~20%の範囲の全伸び、及び500MPaを超える降伏強さを示す。説明される例では、鋼シートの厚さは、4mm~8mmの範囲である。
【0050】
[0052] 開示される本発明の方法(100)によると、フェライト+パーライト+ベイナイト+オーステナイト+マルテンサイト微細構造からなり、耐摩耗性、衝撃靱性、硬度、及び溶接性が改善された、最低600MPaの引張強さを有する高硬度熱間圧延鋼シートを製造することが可能である。このような鋼シートは、L&E装置の構造及び耐摩耗用途で使用される部品、特に、高い硬度と共に良好な耐アブレシブ摩耗性及び衝撃靱性が必須要件である採鉱及び土木工事用途で使用される部品を製造するのに適している。
【0051】
[0053] 本開示の以下の部分では、高硬度低合金熱間圧延鋼シートの組成における各元素の割合、及び特性の向上におけるその役割についての詳細が提供される。
【0052】
[0054] C:0.10~0.25%:炭素の存在は、どの市販の鋼においても避けられない。炭素は、鋼の強度を制御するために添加される。最終的な要件に応じて、炭素添加の重量百分率は変化する。オーステナイト領域から分配温度までの焼入れの後、微細構造は、主にオーステナイト及びマルテンサイトから構成される。ベースの鋼の分配温度及び組成に応じて、炭素は、過飽和マルテンサイトから拒絶される。この炭素は、マルテンサイトからオーステナイトへ移動する。オーステナイトの炭素濃縮の結果として、この相の安定性は増大する。その後、室温において、微細構造中のオーステナイトの存在は目に見えることもある。このオーステナイトは、鋼の機械的特性を改善する。したがって、言い換えると、鋼中の炭素の存在は、室温でオーステナイトを安定化するのに役立つ。しかしながら、炭素は鋼の溶接性を損なうので、鋼中で大幅に増大させることができない。したがって、本発明の鋼では、炭素含有量は0.10~0.25wt.%の間に制限される。
【0053】
[0055] Si:0.25~0.35%:Siは、鋼の製造プロセス中に効果的な脱酸剤として添加される。さらに、Siは、非常に効率的な固溶強化剤である。さらに、セメンタイトの析出は、Siによって大幅に遅延させることができる。これは、進行中のセメンタイト/マトリックス界面の前面におけるSiの蓄積に起因する。Siは、セメンタイト中での溶解性がほとんどないので、成長中のセメンタイト粒子によって拒絶され、界面においてSiの濃縮が生じる。ここで連続的な析出の場合、Siは、界面から離れて拡散するはずである。これは起こらない。結果として、これは、炭化物析出の代わりに炭素の分配が起こるのに有利な状況を作る。しかしながら、鋼中のSi量が多いほど、鋼表面の外観に関していくつかの操作上の問題が生じる。したがって、本研究のSi含有量は、0.25~0.35wt.%の間に制限される。
【0054】
[0056] Al:0.15~0.25%:Alも脱酸剤として溶鋼中に添加される。鋼中の窒素の存在により、AlN析出物を形成する環境が作られる。この析出物は、熱間圧延前に鋼スラブを再加熱する間の結晶粒成長を制限する。さらに、AlもSiと同様に、鋼中の炭化物の析出の抑制を示す。しかしながら、熱間圧延中には操作上の妨害を全く生じない。したがって、本発明の状況では、Alは0.15~0.25wt.%の間で添加される。
【0055】
[0057] Mn:1.05~1.50%:Mnは、穏やかな固溶強化剤である。延性から脆性への遷移温度を低下させる。さらに重要なことには、Mnはオーステナイト安定剤である。Mnは、加速冷却中のオーステナイトの分解を遅延する。結果として、オーステナイト領域において仕上げ圧延をより効果的に実施することができ、より大きい変形量を与えることができる。これは、より細かいフェライト粒径を生じ、次に、鋼の強度を増大させる。しかしながら、Mn含有量が高くなると、Mnの拡散性が低いために、鋼中で中心線偏析が起こる可能性が常にある。したがって、本発明の状況では、Mn含有量は、1.05~1.50wt.%の間に制限される。
【0056】
[0058] Cr:0.15~0.25%:Crは、鋼の焼入性を大幅に改善する。オーステナイト領域からの連続冷却中に、Crはパーライトの形成を遅延させる。したがって、公称冷却速度でのマルテンサイト事象の形成に役立つ。したがって、Cr含有量は、0.15~0.25wt.%の間に制限される。
【0057】
[0059] Mo:0.05~0.15%:Moも主に鋼の焼入性を改善するために添加される。Moはベイナイトの形成をある程度減じるが、パーライトの形成を大幅に遅延させる。このことを考慮して、Moは、0.05~0.15wt.%の範囲で添加される。
【0058】
[0060] Ni:0.45~0.55%:Niは主に、破壊靱性を改善するために鋼に添加される。Niは、変態温度を低下させることにより、結晶粒の微細化を引き起こす。これは次に、より良好な破壊靱性特性の原因となる粒界の数を増大させる。このことに留意して、Niは、本発明の状況では、0.45~0.55wt.%の範囲で添加されている。
【0059】
[0061] V:0.03%以下:Vは、フェライト領域でVN/VCを形成し、それにより、材料の強度を増大させる。これが本発明の鋼にVを添加する理由である。
【0060】
[0062] 微細構造:高硬度低合金熱間圧延鋼において所望される最終的な一連の特性は、フェライト、ベイナイト、パーライト、オーステナイト及びマルテンサイトの存在によって達成される。熱間圧延、制御冷却及び巻取条件は全て、最終的な微細構造及び特性の達成において重要である。相、すなわちフェライト、パーライト、オーステナイト、ベイナイト及びマルテンサイトのそれぞれの寄与は、以下に記載される。
【0061】
[0063] フェライト:最終的な熱間圧延微細構造は、少量の10%のフェライトを含有し、これは、上述の合金元素からの寄与によって強化される。
【0062】
[0064] パーライト:最終的な微細構造において、少量の微細なパーライト(最大20%)が観察される。少量の微細なパーライトは、最終的な微細構造に強度を付与する。
【0063】
[0065] オーステナイト:最終的な微細構造において、少量のオーステナイト(最大10%)が観察される。これは、最終的な製品に靭性を付与するために必須である。
【0064】
[0066] ベイナイト:最終的な微細構造において、少量のベイナイト(最大20%)が観察される。これは、製品の最終的な強度及び靭性に寄与する。
【0065】
[0067] マルテンサイト:最終的な熱間圧延微細構造は、60~100%のマルテンサイトを含有する。微細構造中のマルテンサイトは、最終的な熱間圧延鋼シートにおいて200~460Hvの硬度が達成されることを保証する。
【実施例
【0066】
[0068] 本開示のさらなる実施形態は、表1に示される高硬度低合金熱間圧延鋼の組成の例を用いてこれから記載される。種々の条件を評価するために、種々の実験及び試験を実験室規模で行った。
【0067】
[0069] 以下の要因を考慮して2つの合金を設計した:
・ より高いMs温度。
・ 溶接性の問題を排除するために低い炭素当量、及び衝撃靱性を改善するために低い炭素含有量。
・ 焼入れ中にベイナイト又はパーライトの形成を排除するためにより高い焼入性。
【0068】
[0070] 提案された合金の化学組成、その炭素当量(CE)値、並びに経験的に及び膨張率測定実験を通して計算されたMs温度は、表1に示される。
【0069】
【表1】

【0070】
[0071] 2つの異なる合金を設計し、40kgスケールで鋳造し、続いて熱間鍛造した。完全な均質化を保証するために、鍛造鋼プレートをまず1200℃で2時間オーステナイト化した。その後、プレートを70%熱間圧延した。仕上げ圧延温度(FRT)を約870℃に維持した。この後、熱間圧延プレートを、5℃/sから60℃/sまでの異なる冷却速度で室温まで冷却した。実際の工業的な設定では、これは、ROTセクションで達成される。詳細な熱間圧延スキームは、図2に示される。
【0071】
[0072] 室温まで冷却した後、標準的な金属組織学技術に従って、硬度測定用サンプルを調製した。これは、ビッカース硬度試験機において、10秒の滞留時間により1kgスケールで特徴付けられる。両方の鋼について測定された硬度値は、表2に示される。
【0072】
【表2】

【0073】
[0073] 冷却速度によるこの硬度値の変化は、両方の鋼について図3に絵で示される。図から、硬度値は、冷却速度の増大と共に増大するようである。しかしながら、ある範囲の後に飽和冷却速度が存在し、それを超えると硬度は変化しない。これも図3に示される。飽和冷却速度は、高硬度低合金熱間圧延鋼の場合、20~30℃/sの範囲に存在する。図から、30℃/sの冷却速度を超えると、硬度値は変化しないようである。さらに、鋼1の最大硬度(HV 1kg)は、360~380Hvの範囲である。鋼2の最大硬度(HV 1kg)は、450~460Hvの範囲である。2つの合金で経験される冷却速度を制御することにより、これらの鋼の達成可能な最大硬度値を活用することができ、これは、L&E及び採鉱用途で使用される耐摩耗性プレートの必須の特性である。
【0074】
[0074] 本発明は、耐摩耗性、衝撃靱性、硬度、及び溶接性が改善された高硬度低合金熱間圧延鋼を提供する。微細構造中に存在するマルテンサイトは、製造される鋼により高い硬度を提供する。開示される鋼は、L&E装置の構造及び耐摩耗用途で使用される部品、特に、採鉱及び土木工事用途で使用される部品を製造するのに適している。また本発明は、熱間圧延操作中にランアウトテーブル(ROT)において仕上げ圧延後の冷却速度を制御することにより、多量のマルテンサイトを有する高硬度低合金熱間圧延鋼を製造する方法も提供する。高硬度低合金熱間圧延鋼は、耐久性があり、費用対効果が高く、未来的且つ戦略的であり、より大きい安全率を伴う鋼の用途に向けて重要な寄与をする。さらに、高い硬度及び良好な耐摩耗性を有する鋼は、エンジニアリング、採鉱、建設、農業、港湾、電力及び冶金などのセクターで使用され得る。
【0075】
[0075]実験は高硬度低合金熱間圧延鋼シートの特定の組成に対して行われ、前の段落で得られた結果は、表1に示される組成に対するものであることを理解すべきである。しかしながら、この組成は、高硬度低合金熱間圧延鋼ストリップの他の組成にも拡張され得るので、本開示に対する限定であると解釈されてはならない。
【0076】
[0076] さらに、本明細書で使用される用語は、実施形態を説明するためだけのものであって、本開示を限定することは意図されない。上記で開示された特徴及び機能並びに他の特徴及び機能のいくつか、又はそれらの代替物は、他のシステム又は用途に組み合わせられ得ることが認識されるであろう。以下の特許請求の範囲により包含される本開示の範囲から逸脱することなく、現在不測の又は予期されない種々の代替、修正、変形、又は改善が、後に当業者によってそこに成される可能性がある。
【0077】
[0077] 特許請求の範囲は、最初に提示された際、及びそれらが修正され得る場合、現在不測の又は価値を認められていないものと、例えば、本出願人/特許権所有者などから生じ得るものとを含む、本明細書に開示される実施形態及び教示の変形、代替、修正、改善、等価物、及び実質的な等価物を包含する。
【0078】
[0078] 本発明の種々の実施形態について上記に記載されたが、その基本的な範囲から逸脱することなく、本発明の他のさらなる実施形態が考案され得る。本発明の範囲は、この後の特許請求の範囲によって決定される。本発明は、記載される実施形態、バージョン又は実施例に限定されるものではなく、これらは、当業者により利用可能な情報及び知識と組み合わせたときに、当業者が本発明を行い、使用できるようにするために含まれる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】