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特表2024-537920光干渉断層血管造影方法、装置、電子機器及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】光干渉断層血管造影方法、装置、電子機器及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20241008BHJP
   A61B 3/12 20060101ALI20241008BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61B3/10 100
A61B3/12 300
G01N21/17 630
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541122
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 CN2022120404
(87)【国際公開番号】W WO2023045991
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】202111109543.3
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524108617
【氏名又は名称】トワードピ (ベイジン) メディカル テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(74)【代理人】
【識別番号】100220423
【弁理士】
【氏名又は名称】榊間 城作
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シャオ
【テーマコード(参考)】
2G059
4C316
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB12
2G059EE02
2G059EE09
2G059FF02
2G059MM01
2G059MM02
2G059MM05
2G059MM09
2G059MM10
2G059MM14
4C316AA10
4C316AA11
4C316AB02
4C316AB11
4C316AB16
4C316FB29
(57)【要約】
本出願は、光干渉断層血管造影方法、装置、電子機器及び記憶媒体を提供する。該方法は、目標領域に対してAスキャンをN回繰り返して得られるN個の干渉スペクトル信号である、目標領域の時間領域信号を取得するステップと、K個のスケールに基づいて、N個の干渉スペクトル信号のうち、各干渉スペクトル信号をスケール変換して、N×k個のスケール変換信号を得るステップと、各スケール変換信号をフーリエ変換して対数を取ることで、対数空間における軸方向周波数領域信号を得て、前記軸方向周波数領域信号をノイズ除去するステップと、K個のスケールに基づいて、N×k個のノイズ除去された軸方向周波数領域信号をkグループの単一スケール信号に分割し、各グループの単一スケール信号に対して無相関化計算を行って単一スケールの血流信号を得るステップと、kグループの単一スケールの血流信号に基づいて、マルチスケールの血流信号を得るステップと、マルチスケールの血流信号に基づいて、血流像を得るステップとを含む。本出願は、血流信号の認識精度が向上する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標領域に対してAスキャンをN回繰り返して得られるN個の干渉スペクトル信号である、前記目標領域の時間領域信号を取得するステップと、
k個のスケールに基づいて、N個の前記干渉スペクトル信号のうちの各前記干渉スペクトル信号をスケール変換して、N×k個のスケール変換信号を得るステップであって、k個の前記スケールに基づいて、何れかの前記干渉スペクトル信号をスケール変換することは、K個の前記スケールのそれぞれに基づいて、前記何れかの干渉スペクトル信号を分解して、前記何れかの干渉スペクトル信号に対応するk個の前記スケール変換信号を得ることを含むステップと、
各前記スケール変換信号をフーリエ変換して対数を取ることで、対数空間における軸方向周波数領域信号を得て、前記軸方向周波数領域信号をノイズ除去するステップと、
k個のスケールに基づいて、N×k個のノイズ除去された前記軸方向周波数領域信号をkグループの単一スケール信号に分割して、各グループの前記単一スケール信号に対して無相関化計算を行って単一スケールの血流信号を得るステップと、
kグループの前記単一スケールの血流信号に基づいて、マルチスケールの血流信号を得るステップと、
前記マルチスケールの血流信号に基づいて、血流像を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする光干渉断層血管造影方法。
【請求項2】
前記干渉スペクトル信号がサンプリング時間帯Tに対応し、K個の前記スケールのそれぞれに基づいて、前記何れかの干渉スペクトル信号を分解して、前記何れかの干渉スペクトル信号に対応するk個の前記スケール変換信号を得るステップは、
k個の前記スケールのうちの何れかのスケールに基づいて、前記何れかの干渉スペクトル信号を分解して、前記何れかの干渉スペクトル信号が前記何れかのスケールに対応するスケール変換信号を得る操作を含み、当該操作は、
前記何れかのスケールに対応する分解信号を特定するステップであって、前記分解信号が前記サンプリング時間帯Tにおける信号であり、前記分解信号が少なくとも1つの時間グループを含み、前記時間グループが隣接する第1時間帯及び第2時間帯、隣接する2つの前記第1時間帯、又は、隣接する2つの前記第2時間帯を含むステップと、
前記第1時間帯に対応する前記何れかの干渉スペクトル信号に順方向信号を乗算して第1信号を得るステップと、
前記第2時間帯に対応する前記何れかの干渉スペクトル信号に逆方向信号を乗算して第2信号を得るステップと、
少なくとも1つの前記第1信号及び少なくとも1つの前記第2信号に基づいて、前記何れかの干渉スペクトル信号が前記何れかのスケールに対応するスケール変換信号を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対数空間における前記軸方向周波数領域信号をノイズ除去して、ノイズ除去された前記軸方向周波数領域信号を得るステップは、
分割閾値を特定するステップを含み、
前記軸方向周波数領域信号の振幅が前記分割閾値以上である場合、前記ノイズ除去された軸方向周波数領域信号は、前記対数空間における軸方向周波数領域信号と等しく、
前記軸方向周波数領域信号の振幅が前記分割閾値よりも小さい場合、前記ノイズ除去された軸方向周波数領域信号は、前記分割閾値と等しい、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記分割閾値を特定するステップは、
クラスタリングアルゴリズムに基づいて、全ての前記軸方向周波数領域信号に対応するノイズ信号を抽出するステップと、
前記ノイズ信号に基づいて分割閾値を特定するステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各グループの前記単一スケール信号に対して無相関化計算を行って単一スケールの血流信号を得るステップは、
前記各グループの前記単一スケール信号の1次統計量、2次統計量及び3次統計量を決定するステップと、
前記1次統計量、2次統計量及び3次統計量に基づいて無相関化計算を行って前記単一スケールの血流信号を決定するステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
各前記スケール変換信号をフーリエ変換して対数を取ることで、対数空間における軸方向周波数領域信号を得た後に、
位相相関アルゴリズムに基づいて、前記軸方向周波数領域信号の全てをアライメント操作するステップを更に含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
k個のスケールに基づいて、前記N個の前記干渉スペクトル信号のうちの各前記干渉スペクトル信号をスケール変換する前に、前記時間領域信号のうち、各前記干渉スペクトル信号を分散補償するステップを更に含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
目標領域に対してAスキャンをN回繰り返して得られるN個の干渉スペクトル信号である、前記目標領域の時間領域信号を取得するための取得モジュールと、
k個のスケールに基づいて、N個の前記干渉スペクトル信号のうちの各前記干渉スペクトル信号をスケール変換して、N×k個のスケール変換信号を得るためのスケール変換モジュールであって、k個の前記スケールに基づいて、何れかの前記干渉スペクトル信号をスケール変換することは、K個の前記スケールのそれぞれに基づいて、前記何れかの干渉スペクトル信号を分解して、前記何れかの干渉スペクトル信号に対応するk個の前記スケール変換信号を得ることを含むスケール変換モジュールと、
各前記スケール変換信号をフーリエ変換して対数を取ることで、対数空間における軸方向周波数領域信号を得て、前記軸方向周波数領域信号をノイズ除去するための周波数領域変換モジュールと、
k個のスケールに基づいて、N×k個のノイズ除去された前記軸方向周波数領域信号をkグループの単一スケール信号に分割して、各グループの前記単一スケール信号に対して無相関化計算を行って単一スケールの血流信号を得るための無相関化モジュールと、
kグループの前記単一スケールの血流信号に基づいて、マルチスケールの血流信号を得るための融合モジュールと、
前記マルチスケールの血流信号に基づいて、血流像を得るための撮像モジュールと、を備える、
ことを特徴とする光干渉断層血管造影装置。
【請求項9】
1つ又は複数のプロセッサと、
メモリと、を備え、
1つ又は複数のコンピュータプログラムは、メモリに記憶され、1つ又は複数のプロセッサによって実行するように配置され、
前記1つ又は複数のコンピュータプログラムは、請求項1~7の何れか1項に記載の光干渉断層血管造影方法を実行するために用いられる、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
プロセッサによってロードされ、請求項1~7の何れか1項に記載の光干渉断層血管造影方法を実行するコンピュータプログラムが記憶されている、
ことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、光干渉断層撮影の分野に関し、特に、光干渉断層血管造影方法、装置、電子機器及び記憶媒体関する。
【背景技術】
【0002】
光干渉断層撮影技術(OpticalCoherenceTomography、OCT)は、高感度、高分解能、高速、非侵襲的撮影方式であり、眼底疾患の診断に広く用いられ、眼科疾患の検出及び治療に大きな意義を持っている。
【0003】
断層撮影方式として、OCTは、光の干渉性を利用して、眼底をスキャンし撮像し、1回のスキャンを1つのAスキャン(A-scan)と呼び、隣接する連続的な複数のスキャングループを合わせて1つのBスキャン(B-scan)と呼び、B-scanは、一般的に見られるOCT断面であり、医療診断におけるOCTの最も重要な撮影方式である。
【0004】
OCT分野では、OCTA(OCTAngiography、光干渉断層血管造影)は、近年進んできた新しい技術である。網膜OCTAマップは、網膜の血流の形状や、血流の分布等を直観的に表示することができ、眼底疾患の診断に重要である。静止した眼球では、眼底で動く物質は、血管内を流れる血球だけであるため、OCTAでは、血管内を流れる赤血球を造影剤として、動く血球によるOCT信号の差を測定し、血流情報を提供し、網脈絡膜血管の三次元構造を迅速且つ非侵襲的に再構築し、これにより、血管網の可視化を実現することができる。血管造影では、同じ位置を数回繰り返し撮像し、数回撮像されたB-scan間の差分を計算して、現在位置の血流信号を得る必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、OCTAの軸方向の分解能が高いため、脈動のジッタノイズの影響を受けやすく、撮像効果に誤差が生じやすい。そのため、一般的には、軸方向の分解能を下げてノイズの影響を低減させるが、軸方向の分解能を下げると、血流信号の認識精度が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
血流信号の認識精度を向上させるために、本出願は、光干渉断層血管造影方法、装置、電子機器及び記憶媒体を提供する。
【0007】
第1態様によれば、本出願は、以下の光干渉断層血管造影方法を提供する。
【0008】
光干渉断層血管造影方法は、
目標領域に対してAスキャンをN回繰り返して得られるN個の干渉スペクトル信号である、前記目標領域の時間領域信号を取得するステップと、
k個のスケールに基づいて、N個の前記干渉スペクトル信号のうちの各前記干渉スペクトル信号をスケール変換して、N×k個のスケール変換信号を得るステップであり、k個の前記スケールに基づいて、何れかの前記干渉スペクトル信号をスケール変換することは、K個の前記スケールのそれぞれに基づいて、前記何れかの干渉スペクトル信号を分解して、前記何れかの干渉スペクトル信号に対応するk個の前記スケール変換信号を得るステップと、
各前記スケール変換信号をフーリエ変換して対数を取ることで、対数空間における軸方向周波数領域信号を得て、前記軸方向周波数領域信号をノイズ除去するステップと、
k個のスケールに基づいて、N×k個のノイズ除去された前記軸方向周波数領域信号をkグループの単一スケール信号に分割して、各グループの前記単一スケール信号に対して無相関化計算を行って単一スケールの血流信号を得るステップと、
kグループの前記単一スケールの血流信号に基づいて、マルチスケールの血流信号を得るステップと、
前記マルチスケールの血流信号に基づいて、血流像を得るステップと、を含む。
【0009】
上述した実施例によれば、血流信号は、局所的な変動を有する非定常信号であり、1つの干渉スペクトル信号は、1回のスケール変換後に複数のセグメントに分解されるため、その後の無相関化計算を行う場合、異なる時間における同一の目標領域に対応する各セグメントの干渉スペクトル信号に対応する軸方向周波数領域信号を比較することができ、セグメントを分解して比較するによって、非定常状態の変動信号をより正確に捉えることができ、正確な血流信号の抽出が可能となる。
【0010】
更に、1つの干渉スペクトル信号を複数のスケールで変換し、各スケールに対応する分解セグメントの数が異なり、つまり、セグメントを分解して比較するスケールが異なるため、異なるスケールで非定常信号の変動を測定することができる。そのため、1つの干渉スペクトル信号を、同時にスケール変換して複数のスケールの融合を行うことで、単一スケールの誤判定率を低減することができ、血流信号の抽出精度及び処理効率を向上させることができる。また、1回の干渉スペクトル信号のうち、ポイントの全てが保持されるため、画像のより多くの詳細を復元することができ、S/N比を向上させることができる。
【0011】
実現可能な実施例では、前記干渉スペクトル信号がサンプリング時間帯に対応して、K個の前記スケールのそれぞれに基づいて、前記何れかの干渉スペクトル信号を分解して、前記何れかの干渉スペクトル信号に対応するk個のスケール変換信号をステップことは、
k個の前記スケールのうちの何れかのスケールに基づいて、前記何れかの干渉スペクトル信号を分解して、前記何れかの干渉スペクトル信号が前記何れかのスケールに対応するスケール変換信号を得る操作を含み、該操作は、
前記何れかのスケールに対応する分解信号を特定するステップであって、前記分解信号が前記サンプリング時間帯Tにおける信号であり、前記分解信号が少なくとも1つの時間グループを含み、前記時間グループが隣接する第1時間帯及び第2時間帯、隣接する2つの前記第1時間帯、又は、隣接する2つの前記第2時間帯を含むステップと、
前記第1時間帯に対応する前記何れかの干渉スペクトル信号に順方向信号を乗算して第1信号を得るステップと、
前記第2時間帯に対応する前記何れかの干渉スペクトル信号に逆方向信号を乗算して第2信号を得るステップと、
少なくとも1つの前記第1信号及び少なくとも1つの前記第2信号に基づいて、前記何れかの干渉スペクトル信号が前記何れかのスケールに対応するスケール変換信号を得るステップと、を含む。
【0012】
上述した実施例によれば、スケールに対応する少なくとも1つの時間グループに基づいてサンプリング時間帯Tを分割し、順方向信号及び逆方向信号に基づいて干渉スペクトル信号を異なるの少なくとも1つの第1信号と少なくとも1つの第2信号に分割し、干渉スペクトル信号のセグメント化を実現し、該スケールに対応するスケール変換信号を得る。
【0013】
実現可能な実施例では、対数空間における前記軸方向周波数領域信号をノイズ除去して、ノイズ除去された前記軸方向周波数領域信号を得るステップは、
分割閾値を特定するステップを含み、
前記軸方向周波数領域信号の振幅が前記分割閾値以上である場合、前記ノイズ除去された軸方向周波数領域信号は、前記対数空間における軸方向周波数領域信号と等しく、
前記軸方向周波数領域信号の振幅が前記分割閾値よりも小さい場合、前記ノイズ除去された軸方向周波数領域信号は、前記分割閾値と等しい。
【0014】
上述した実施例によれば、分割閾値に基づいて、軸方向周波数領域信号をノイズ低減して分割することで、S/N比を向上させる。
【0015】
実現可能な実施例では、前記分割閾値を特定するステップは、
クラスタリングアルゴリズムに基づいて、全ての前記軸方向周波数領域信号に対応するノイズ信号を抽出するステップと、
前記ノイズ信号に基づいて分割閾値を特定するステップとを含む。
【0016】
上述した実施例によれば、教師なし学習によりノイズ信号を抽出し分割閾値を特定し、軸方向周波数領域信号によって閾値を自動的に決定することで、分割閾値の決定精度を向上させ、S/N比を向上させることができる。
【0017】
実現可能な実施例では、各グループの前記単一スケール信号に対して無相関化計算を行って単一スケールの血流信号を得るステップは、
前記各グループの前記単一スケール信号の1次統計量、2次統計量及び3次統計量を決定するステップと、
前記1次統計量、2次統計量及び3次統計量に基づいて無相関化計算を行って前記単一スケールの血流信号を決定するステップとを含む。
【0018】
上述した実施例によれば、高次の統計量を利用することで、単一スケールの信号からより有用な情報を抽出し、無相関化計算を行うことができ、単一血流スケールの信号の抽出精度を向上させる。
【0019】
実現可能な実施例では、各前記スケール変換信号をフーリエ変換して対数を取ることで、対数空間における軸方向周波数領域信号を得た後に、
位相相関アルゴリズムに基づいて、全ての前記軸方向周波数領域信号に対してアライメント操作を実行するステップを更に含み、
前記ノイズ除去された軸方向周波数領域信号は、アライメント操作後の前記軸方向周波数領域信号に基づいてノイズ除去した信号である。
【0020】
上述した実施例によれば、アライメント操作は、ジッタが軸方向周波数領域信号への干渉を低減し、S/N比を改善する効果を達成する。
【0021】
実現可能な実施例では、k個のスケールに基づいて、N個の前記干渉スペクトル信号のうちの各前記干渉スペクトル信号をスケール変換する前に、前記時間領域信号のうち、各前記干渉スペクトル信号を分散補償するステップを更に含む。
【0022】
第2態様によれば、本出願は、以下の光干渉断層血管造影装置を提供する。
【0023】
光干渉断層血管造影装置は、
目標領域に対してAスキャンをN回繰り返して得られるN個の干渉スペクトル信号である、前記目標領域の時間領域信号を取得するための取得モジュールと、
k個のスケールに基づいて、N個の前記干渉スペクトル信号のうちの各前記干渉スペクトル信号をスケール変換して、N×k個のスケール変換信号を得るためのスケール変換モジュールであって、k個の前記スケールに基づいて、何れかの前記干渉スペクトル信号をスケール変換することは、K個の前記スケールのそれぞれに基づいて、前記何れかの干渉スペクトル信号を分解して、前記何れかの干渉スペクトル信号に対応するk個の前記スケール変換信号を得ることを含むスケール変換モジュールと、
各前記スケール変換信号をフーリエ変換して対数を取ることで、対数空間における軸方向周波数領域信号を得て、前記軸方向周波数領域信号をノイズ除去するための周波数領域変換モジュールと、
k個のスケールに基づいて、N×k個のノイズ除去された前記軸方向周波数領域信号をkグループの単一スケール信号に分割して、各グループの前記単一スケール信号に対して無相関化計算を行って単一スケールの血流信号を得るための無相関化モジュールと、
kグループの前記単一スケールの血流信号に基づいて、マルチスケールの血流信号を得るための融合モジュールと、
前記マルチスケールの血流信号に基づいて、血流像を得るための撮像モジュールと、を備える。
【0024】
上述した実施例によれば、血流信号は、局所的な変動を有する非定常信号であり、1つの干渉スペクトル信号は、1回のスケール変換後に複数のセグメントに分解され、その後の無相関化計算を行う場合、異なる時間における同一の目標領域に対応する各セグメントの干渉スペクトル信号に対応する軸方向周波数領域信号を比較することができ、セグメントを分解して比較するによって、非定常状態の変動信号をより正確に捉えることができ、正確な血流信号の抽出が可能となる。
【0025】
また、1つの干渉スペクトル信号を複数のスケールで変換し、各スケールに対応する分解セグメントの数が異なり、つまり、セグメントを分解して比較するスケールが異なるため、異なるスケールで非定常信号の変動を測定することができる。従って、1つの干渉スペクトル信号に対して、同時にスケール変換して且複数のスケールの融合を行うことで、単一スケールの誤判定率を低減することができ、血流信号の抽出精度及び処理効率を向上させる。また、1回の干渉スペクトル信号のうち、ポイントの全てが保持されるため、画像のより多くの詳細を復元することができ、S/N比を向上させることができる。
【0026】
実現可能な実施例では、前記スケール変換モジュールは、何れかの前記スケールに基づいて、前記何れかの干渉スペクトル信号を分解し、前記スケール変換信号を得る場合、具体的には、
前記干渉スペクトル信号がサンプリング時間帯Tに対応することと、
何れかの前記スケールに対応する分解信号を特定することであって、前記分解信号が前記サンプリング時間帯Tにおける信号であり、前記分解信号が少なくとも1つの時間グループを含み、前記時間グループが隣接する第1時間帯及び第2時間帯、隣接する2つの前記第1時間帯、又は、隣接する2つの前記第2時間帯を含むことと、
前記第1時間帯に対応する前記干渉スペクトル信号に順方向信号を乗算して第1信号を得ることと、
前記第2時間帯に対応する前記干渉スペクトル信号に逆方向信号を乗算して第2信号を得ることと、
少なくとも1つの前記第1信号及び少なくとも1つの前記第2信号に基づいて、前記スケール変換信号を得ることのために用いられる。
【0027】
実現可能な実施例では、前記装置は、対数空間における前記軸方向周波数領域信号をノイズ除去するノイズ除去モジュールを更に備え、ノイズ除去された前記軸方向周波数領域信号を得る場合、具体的には、
分割閾値を特定するために用いられ、
前記軸方向周波数領域信号の振幅が前記分割閾値以上である場合、前記ノイズ除去された軸方向周波数領域信号は、前記対数空間における軸方向周波数領域信号と等しく、
前記軸方向周波数領域信号の振幅が前記分割閾値よりも小さい場合、前記ノイズ除去された軸方向周波数領域信号は、前記分割閾値と等しい。
【0028】
実現可能な実施例では、前記ノイズ除去モジュールは、分割閾値を特定する場合、具体的には、
クラスタリングアルゴリズムに基づいて、全ての前記軸方向周波数領域信号に対応するノイズ信号を抽出することと、
前記ノイズ信号に基づいて分割閾値を特定することとのために用いられる。
【0029】
実現可能な実施例では、前記無相関化モジュールは、各グループの前記単一スケール信号に対して無相関化計算を行って単一スケールの血流信号を得る場合、具体的には、
前記各グループの前記単一スケール信号の1次統計量、2次統計量及び3次統計量を決定することと、
前記1次統計量、2次統計量及び3次統計量に基づいて無相関化計算を行って前記単一スケールの血流信号を決定することとのために用いられる。
【0030】
実現可能な実施例では、前記装置は、アライメントモジュールを更に備え、前記アライメントモジュールは、具体的には、対数空間における軸方向周波数領域信号得た後、
位相相関アルゴリズムに基づいて、全ての前記軸方向周波数領域信号に対してアライメント操作を実行するために用いられ、
前記ノイズ除去された軸方向周波数領域信号が、アライメント操作後の前記軸方向周波数領域信号に基づいてノイズ除去した信号である。
【0031】
実現可能な実施例では、前記装置は、分散補償モジュールを更に備え、前記分散補償モジュールは、具体的には、
k個のスケールに基づいて、前記N個の前記干渉スペクトル信号のうちの各前記干渉スペクトル信号をスケール変換する前に、前記時間領域信号のうち、各前記干渉スペクトル信号を分散補償するために用いられる。
【0032】
第3態様によれば、本出願は、電子機器を提供する。
【0033】
電子機器は、
1つ又は複数のプロセッサと、
メモリと、を備え、
1つ又は複数のコンピュータプログラムは、メモリに記憶され、1つ又は複数のプロセッサによって実行するように配置され、
前記1つ又は複数のコンピュータプログラムは、上記の光干渉断層血管造影方法を実行するために配置される。
【0034】
第4態様によれば、本出願は、以下のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【0035】
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、プロセッサによってロードされ、上記の光干渉断層血管造影方法を実行するコンピュータプログラムが記憶されている。
【0036】
以上をまとめて、本出願は、少なくとも以下の有益な技術効果を含む。
【0037】
1つの干渉スペクトル信号は、1回のスケール変換後に複数のセグメントに分解され、その後の無相関化計算を行う場合、異なる時間における同一の目標領域に対応する各セグメントの干渉スペクトル信号に対応する軸方向周波数領域信号を比較することができ、セグメントを分解して比較するによって、非定常状態の変動信号をより正確に捉えることができ、正確な血流信号の抽出が可能となる。また、1回の干渉スペクトル信号のうち、ポイントの全てが保持されるため、画像のより多くの詳細を復元することができ、S/N比を向上させることができる。同時に、1つの干渉スペクトル信号を複数のスケールで変換し、各スケールに対応する分解セグメントの数が異なる、即セグメントを分解して比較するスケールが異なるため、異なるスケールで非定常信号の変動を測定することができる。従って、1つの干渉スペクトル信号に対して、同時にスケール変換して且複数のスケールの融合を行うことで、単一スケールの誤判定率を低減することができ、血流信号の抽出精度及び処理効率を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本出願の実施例に係る光干渉断層血管造影方法の模式的なフローチャートである。
図2図2は、時間領域信号をマルチスケール変換する模式図である。
図3図3は、本出願の実施例に係る(a)硝子体血流像、(b)深部画像、(c)浅部血流像である。
図4図4は、本出願の実施例のステップS021~ステップS023の模式的なフローチャートである。
図5図5は、本出願の実施例のステップS031~ステップS033の模式的なフローチャートである。
図6図6は、本出願の実施例の単一スケール信号に基づいて無相関化計算を行う模式図である。
図7図7は、本出願の実施例の光干渉断層血管造影装置の概略図である。
図8図8は、本出願の実施例の電子機器の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図1図8を参照して、本出願を更に詳細に説明する。
【0040】
当業者は、本明細書を読んだ後、必要に応じて、創造的貢献なしに本願の実施例に補正を加えることができるが、本願の特許請求の範囲に含まれる限り、特許法によって保護される。
【0041】
以下、本出願の実施例の目的、技術的手段及び利点をより明確にするために、本出願の実施例における図面を参照しながら、本出願の実施例における技術案を明確かつ完全に説明する。記載された実施例は本出願の実施例の一部であり、実施例の全てではないことは明らかである。本願の実施例に基づいて、当業者が創造的な工夫を要することなく得られる他の全ての実施例は、本願の保護範囲に含まれる。
【0042】
また、本明細書において、「及び/又は」という用語は、単に関連する対象の関連関係を説明し、3種類の関係が存在し得ることを示し、例えば、A及び/又はBは、Aのみが存在し、A及びBの両方が存在し、又は、Bのみが存在することを示すことができる。また、本明細書において「/」は、特に指定がない場合、一般に、関連対象が「又は」の関係にあることを示す。
【0043】
本出願において提出される技術案の理解を容易にするために、先ず、本出願の説明に導入される幾つかの要素を説明する。以下の説明は、本願の実施例の内容を理解する観点から、これらの要素の理解を容易にするために過ぎず、必ずしも全ての可能な場合を網羅するものではないことを理解されたい。
【0044】
(1)Aスキャン:深度方向においてサンプルから反射された深度反射輪郭について、1回のAスキャンによって1つの干渉スペクトル信号を得て、サンプルの1つの軸方向の深度の画像情報はすべて干渉スペクトル信号に含まれ、それをフーリエ変換して、1つのサンプルの1つの軸方向深度の画像を得る。
【0045】
(2)Bスキャン:隣接し連続的、かつ、異なる位置にある複数の干渉スペクトル信号(Aスキャン信号)(例えば、N1個の干渉スペクトル信号)を含む。各干渉スペクトル信号は、X個のポイントを含み、これらのスペクトルは、N1×Xのデータパケットを構成する。具体的には、時間領域での光干渉断層撮影技術は、深度方向のスキャンが必要であり、OCTの高速のリアルタイム撮影に不利である。周波数領域での光干渉断層撮影システムは、サンプルアーム及び参照アームの干渉スペクトルをフーリエ変換することで、深度方向(Z方向)の全ての情報(A-スキャン信号)を得ることができ、深度方向の機械的スキャン(A-スキャン)を必要とせず、横方向のスキャン(X方向走査及びY方向走査)のみが必要であり、1回のX方向走査によってBスキャン画像を形成し、Y方向走査によってOCT三次元信号を形成する。
【0046】
(3)OCTAシステムの軸方向の分解能は、サンプルの軸方向の深度断層撮像を分解可能な最小距離を意味する。各干渉スペクトル信号に含まれるX個のポイントは、OCTAシステムの軸方向の分解能によって決定され、OCTA画像の横方向分解能と軸方向の分解能とが互いに相関しない。OCTAシステムは、横方向分解能に依存せず、おおよそ(1~15um)の軸方向の分解能を提供することができ、軸方向の分解能は、主に幅光源の干渉長さに依存する。
【0047】
(4)S/N比は、画像における信号とノイズとの比を計算して画像を評価する指標であり、グローバル評価基準である。OCTA画像について、S/N比の値が大きいほど、画像におけるスペックルノイズが少なく、画像のノイズ除去効果が高く、画質が良い。
【0048】
本出願の実施例は、電子機器によって実行される光干渉断層血管造影方法を提供している。図1を参照して、該方法は以下のステップを含む。
【0049】
ステップS101において、目標領域の時間領域信号を取得する。
【0050】
ここで、時間領域信号は、目標領域に対してAスキャンをN回繰り返して得られるN個の干渉スペクトル信号である。時間領域信号の式は、I(i,x,t)であり、i=1、2、・・・Nである。Xは、スキャン位置(即ち、目標領域)であり、tは、現在のAスキャンにおけるスキャン時間点であり、各Aスキャンに対応する時間は、サンプリング時間帯Tである。一般的には、Aスキャンのスキャンレートは、通常、毎秒7000回、毎秒10000回・・・となるように設定される。
【0051】
ここで、1回のAスキャンによって取得された干渉スペクトル信号をフーリエ変換して、サンプルの深度情報を得ることができる。1つの干渉スペクトル信号に対応するデータポイントが多いほど、フーリエ変換された画像のポイントが多くなり、画像の分解能も高くなる。血管造影の場合、高分解能の画像は、異なる組織、異なるレベルの血流信号をより正確に認識することができる。
【0052】
1回のAスキャンの時間(サンプリング時間帯T)は、人為的に設定される時間であり、1回のAスキャンの時間を設定する際に、入射光のパワーや、サンプルの反射率や、測定深度及び深度情報の取得速度等の情報を考慮する必要がある。例えば、在弱散乱媒体では、OCTシステムの感度により検出可能な最小光信号が決定され、強散乱媒体では、OCTシステムの感度により最大撮像深度が決定される。1回のAスキャンの信号取得時間を延長し、深度情報の取得速度を低下させることで、OCTの感度を向上させることができる。
【0053】
定常信号を分析する場合、最も一般的、かつ、最も重要な分析方法は、フーリエ変換であるが、フーリエ分析においてグローバル変換(1つのサンプリング時間帯Tに対応)を用いるため、非定常信号の最も基本的な性質である信号の時間-周波数局所性を表現することができない。本出願の実施例に検討する血流信号は、非定常信号である。
【0054】
血流信号の変動を抽出するために、分割スペクトル振幅―無相関化血管撮影(split-spectrumamplitude-decorrelationangiography、SSADA-OCT)について改良のアルゴリズムを提出した。SSADAは、OCTスペクトル全体を幾つかの狭いバンドに分割し、これらのバンドごとに、異なるBスキャン間の相関性を計算し平均化する。具体的なステップは、データ処理中に、異なる位置のバンドパスフィルタ(例えば、等間隔に配置された4つのバンドパスフィルタ)によってスペクトラムを分離し、該ステップは、スペクトル分割と呼ばれる。そして、各Bスキャンのペアの間で得られるM個の独立の無相関化画像に基づいて得られる画像は、軸方向の分解能が低く、横方向の分解能が同じのものである。
【0055】
しかし、上記のスペクトル分割によって、より正確な血流信号の変動を取得して、S/N比を向上させることができるが、干渉スペクトル信号の一部のデータポイントが廃棄されるため、復元された画像の軸方向の分解能が低下する。
【0056】
高い軸方向の分解能を保持し、変化した血流信号を正確に抽出できるようにするために、本出願の実施例は、1回のAスキャンに対応するデータポイントを全て保持し、血流信号の局所的な変化の性質に基づいて、1回のAスキャンに対応する信号を複数のセグメントの単位信号(即ち、1回のスケール変換)に分解し、各セグメントの単位信号内での血流信号の変化を分析することで、血流信号を正確に抽出する。
【0057】
ステップS102において、k個のスケールに基づいて、N個の干渉スペクトル信号のうち、各干渉スペクトル信号をスケール変換して、N×k個のスケール変換信号を得る。
【0058】
ここで、k個のスケールに基づいて何れかの干渉スペクトル信号をスケール変換することは、各スケールに基づいて何れかの干渉スペクトル信号を分解し、何れかの干渉スペクトル信号に対応するk個のスケール変換信号を得ることを含む。
【0059】
干渉スペクトル信号を1回でスケール変換する場合、干渉スペクトル信号を複数のセグメントの単位信号に分解し、在無相関化計算を行う場合、各セグメントの単位信号に対応する軸方向周波数領域信号を比較することができる。セグメントを分解して比較するは、1回の干渉スペクトル信号内の非定常の変動信号をより正確に捉えることができ、正確な血流信号の抽出が可能となる。
【0060】
1次干渉スペクトル信号を複数のスケールで変換し、各スケールに対応する分解セグメントの数が異なり、即ち、セグメントを分解して比較するスケールが変動するため、異なるスケールで非定常の変動信号を測定することができる。
【0061】
また、スペクトル分割際の周波数帯域の間に重なりが存在する可能性があり、計算を繰り返すと、計算効率の低下を招く恐れがあり、スペクトル分割と比べて、本出願の実施例では、1つの干渉スペクトル信号のうち、ポイントの全てを保持できるだけでなく、データの計算を繰り返すことも回避できる。
【0062】
ステップS103において、各スケール変換信号をフーリエ変換して対数を取ることで、対数空間における軸方向周波数領域信号を得る。
【0063】
ステップS104において、K個のスケールに基づいて、N×k個のノイズ除去された軸方向周波数領域信号をkグループの単一スケール信号に分割し、各グループの単一スケール信号に対して無相関化計算を行って単一スケールの血流信号を得る。
【0064】
本出願の実施例では、軸方向周波数領域信号をノイズ除去する原理は以下の通りである。モーションコントラストに対する無相関化アルゴリズムの定量的効果は、元のA-スキャン信号のノイズレベルに大きく依存し、信号強度の減衰(例えば、深部組織領域)により、ランダム性ノイズが徐々に主成分を占めるようになり、これにより、無相関値も大きくなり、無相関アーチファクトを生じる。例えば、通常、無相関演算に基づいて生成されるモーションコントラストは、ノイズのランダム性と赤血球の動きによる無相関を区別することができないため、S/N比の弱い領域が血流信号の領域として誤分類されやすい。その結果、血流像のコントラストに深刻な影響を与える。一方、ノイズ除去処理によって、ノイズ除去された軸方向周波数領域信号は、その後の無相関計算の時の該ランダムノイズ信号による誤差を低減又は除去することができる。
【0065】
ステップS105において、kグループの単一スケールの血流信号に基づいて、マルチスケールの血流信号を得る。
【0066】
ここで、1つのBスキャン信号は、異なる位置の複数のAスキャン信号を含む。ステップS101~ステップS104のステップ処理後、何れかの位置のAスキャン信号は、何れかの位置に対応するマルチスケールの血流信号である。1回のBスキャン信号の各位置のスケールの血流信号を分析することで、構造断面全体の血管信号を得ることができる。
【0067】
本出願の実施例では、最初に取得した1つの干渉スペクトル信号を、同時にスケール変換して複数のスケールで融合することで、血流信号の抽出精度及び処理効率を向上させることができる。
【0068】
ステップS106において、マルチスケールの血流信号に基づいて、血流像を得る。
【0069】
具体的には、可視化ソフトウェアを利用して、マルチスケールの血流信号を血管画像に転換する。図3は、融合したマルチスケールの血流信号に対応する(a)硝子体血流像、(b)深部画像、(c)浅部血流像である。複数のスケールの融合に基づいて、単一スケールにおける誤判定率が低減され、S/N比が向上し、異なる組織、異なるレベルに対応する血流信号を正確に認識することができる。
【0070】
本出願の実現可能な実施例では、図2及び図4を参照して、ステップS102において、何れかのスケールに基づいて、何れかの干渉スペクトル信号を分解して、スケール変換信号を得ることは、以下のステップを含む。
【0071】
ステップS021おいて、何れかのスケールに対応する分解信号を特定する。
【0072】
ここで、各スケールは、プリセットされた1つの分解信号に対応する。分解信号の形式は、以下に示す。
[1,1,-1,-1]
[1,1,-1,-1]
[1,-1,-1,1]
[1,-1,1,~1]
・・・
【0073】
ここで、分解信号は、サンプリング時間帯Tにおける信号であり、分解信号が少なくとも1つの時間グループを含み、時間グループが、隣接する第1時間帯及び第2時間帯、隣接する2つの第1時間帯、又は、隣接する2つの第2時間帯を含む。
【0074】
[1,1,-1,~1]を例にとって説明すると、該分解信号は、第1時間グループ(T1,T1)及び第2時間グループ(T2,T2)の2つの時間グループに対応する。第1時間グループは、サンプリング時間帯Tにおいて、第2時間グループの前方位置に位置する。
【0075】
また、[1,-1,-1,1]を例として説明すると、該分解信号は、第1時間グループ(T1,T2)及び第2時間グループ(T2,T1)の2つの時間グループに対応する。第1時間グループは、サンプリング時間帯Tにおいて、第2時間グループの前の位置に位置する。
【0076】
更に、k個の分解信号を表現しやすいために、k個のスケールに対応するk個の分解信号を行に配列し、非ゼロ直交信号Sを形成する。非ゼロ直交信号Sは、以下の式で示すことができる。
【数1】
【0077】
ステップS022において、第1時間帯に対応する干渉スペクトル信号に順方向信号を乗算して第1信号を得て、第2時間帯に対応する干渉スペクトル信号に逆方向信号を乗算して第2信号を得る。
【0078】
ここで、第1信号と第2信号とは異なる。図2を参照して、本出願の実施例で例示した分解信号は、矩形波信号であるが、本出願の実施例の第1信号及び第2信号は、他の形式の信号も含み、例えば、第1信号と第2信号との間で円滑な切り替わることができる。
【0079】
上記の例では、1は順方向信号であり、―1は逆方向信号であり、T1は順方向信号に対応し、T2は逆方向信号に対応する。
【0080】
ステップS023において、少なくとも1つの第1信号及び少なくとも1つの第2信号に基づいてスケール変換信号を得る。
【0081】
得られるスケール変換信号は、以下の式(2)で示す。
【数2】
【0082】
更に、K個のスケールに基づいて、N個の干渉スペクトル信号のうち、各干渉スペクトル信号をスケール変換して、N×k個のスケール変換信号を得る。つまり、
【数3】
【0083】
本出願の実施例では、異なる応用要求に応じて、異なるのスケール及び該スケールに対応する分解信号を設定することができる。スケール変換した後、各干渉スペクトル信号は、k個のスケール変換信号に対応し、N個の干渉スペクトル信号は、合計N×k個のスケール変換信号を得ることができる。
【0084】
本出願の実現可能な実施例では、ステップS101において、目標領域の時間領域信号を取得した後、k個のスケールに基づいて、N個の干渉スペクトル信号のうち、各干渉スペクトル信号スケール変換する前に、時間領域信号のうち、各干渉スペクトル信号を分散補償することを更に含む。
【0085】
OCTシステムの軸方向の分解能は、干渉分光信号の半値幅に反比例する。システムの実際の光路において、参照アームとサンプルアームとの間の分散物質の長さの差は、分散ミスマッチを引き起こし、干渉分光信号に位相の変化が導入され、干渉分光信号のスペクトルが広くなり、OCTA画像の軸方向分解能の低下とS/N比の低下を招く恐れがある。
【0086】
既知の分散ミスマッチは、コリメータ、走査対物レンズ、光ファイバー、被測定サンプルなどのシステム構成要素に由来する。被測定サンプルの深度が異なると、検出光が通過する分散媒質の長さが異なり、分散ミスマッチの量も異なるため、被測定サンプルの深度によって軸方向の分解能が異なる。従って、撮像深度範囲内の異なる深度における軸分解能を理論的な軸分解能に近づけるためには、深度の変化に伴う分散の補償が特に重要となる。
【0087】
現在、OCTAシステムの分散補償方式は、物理補償方式と数値補償方式に分けられる。物理補償方式は参照アームにハードウェアデバイスを追加することで両アーム間の分散ミスマッチを補償し、物理補償方式は光路にハードウェアデバイスを追加・変更する必要があるため、システムが複雑化し、他のノイズが導入され、コストが増大する。一方、数値補償法は、OCTAによって収集されたデータのみに対して分散ミスマッチを解消するための後続処理を実行すればよい。本出願の一実施例は、時間領域信号の分散を補償するために数値補償法を採用する。
【0088】
具体的には、数値補償法には主に以下の種類がある。
【0089】
第一は、反復補償法であり、即ち、Aスキャンされる空域の画質(例えば、鮮鋭度、レイリーエントロピーなど)を評価関数として、最適な補償効果が得られる分散補償係数を繰り返し探索する方法であり、MarKsらは、OCTAシステムの解像度を向上させるために、黄金分割法に基づく反復法を用いて分散補償を行っている。
【0090】
第二は、デコンボリューション法であり、即ち、サンプルの構造や材質に応じて、サンプルの深度につれて変化する分散パラメータのコンボリューションカーネルを計算し、デコンボリューション演算によって分散のミスマッチを除去する方法である。
【0091】
第三は、短時間フーリエ変換法であり、即ち、スペクトルを窓関数で分割し、異なる周波数の光によって補償されるべき分散位相を計算する方法である。
【0092】
第四は、空域抽出法であり、即ち、干渉スペクトル信号のスペクトラムに対して、所定の閾値に応じて窓関数を設定し、サンプルの異なる深度のガウスピーク信号を抽出し、対応するスペクトルをフィッティング法により得て、その2次と3次の分散項を除去することで、異なる深度の分散ミスマッチを補正する方法である。
【0093】
第五は、分散係数フィッティング法であり、即ち、反復法を用いてサンプルの異なる深度における分散係数を事前に計算し、サンプルの材料情報を取得し、サンプルの深い位置における弱い信号を補正する方法である。
【0094】
本出願の実施例では、ステップS101における時間領域信号に対して分散補償を行い、更新された時間領域信号を得た後、ステップS102において、k個のスケールに基づき、分散補償された時間領域信号の各干渉スペクトル信号をk個のスケールでスケール変換を行い、N×k個のスケール変換された信号を得る。
【0095】
OCTAのデータ取得の場合に、同一の位置において一定の時間間隔のBスキャンを連続して採集し、Bスキャン間の無相関信号を比較することによって微小血管画像を再構成する必要がある。データ取得の過程で、データは必然的にサンプルの動き、環境ノイズ、システムの振動などの影響により不連続になり、血管画像の歪みや破損として現れ、画像にモーションアーチファクトが生じる。サンプルの動きによって生じるアーチファクトは、OCTAの画質を著しく低下させ、組織微小血管の定量的検討に影響を与える。
【0096】
なお、呼吸や心拍、測定部位の意図しない揺れなど、様々なサンプルの動きの原因がある。心拍によるマイクロメートルスケールの皮膚の動きのような小さな動きでも、バックグラウンドノイズを増加させ、最終的に血管撮影の効果に影響を及ぼす。データ取得の間隔が長いほど、モーションアーチファクトが深刻であるため、モーションアーチファクトの除去は、OCTAの血管抽出アルゴリズムにおける重要な要素である。アーチファクト除去の主な方法は画像アライメントである。
【0097】
具体的には、動きの影響を受けた画像の歪みや切れなどを補正し、モーションアーチファクトのない画像を得ることを目的として、変換、補間、シフトなどの手法を含む画像アライメントを行う。
【0098】
本出願の実施例の場合、S/N比を低下させる主な影響因子は並進である。そのため、本出願の実施例の可能な形態では、ステップS103において、スケール変換された各信号をフーリエ変換し対数をとって、対数空間内の軸方向周波数領域信号を得た後、位相相関アルゴリズムに基づいて、全ての軸方向周波数領域信号に対してアライメント操作を実行することを更に含む。ここで、ノイズ除去された軸方向周波数領信号は、アライメント操作後の軸方向周波数領域信号に基づいてノイズ除去された信号である。
【0099】
位相相関アルゴリズムは、画像が並進移動する状況に対処することができる。対数極座標モデルと組み合わせたフーリエ-メリン(Fourier-Mellin、FMT)アルゴリズムは、フーリエ位相相関アルゴリズムの拡張であり、FMTは、回転及びスケーリングされた画像に直接対処することができる。このような周波数領域に基づく方法は、アライメントのために、画像のコンテンツ情報の全てを使用する。
【0100】
具体的には、並進移動処理を行うための位相相関アルゴリズムの過程は以下に示す。
【数4】
【0101】
上述した位相相関アルゴリズムに基づいて、ステップS103において、対数空間における軸方向周波数領域信号の全てを、上記の位相相関アルゴリズムに基づいてアライメント操作を行い、アライメントした軸方向周波数領域信号の全てを取得し、そして、アライメントした軸方向周波数領域信号の全てをノイズ除去することで、ノイズ除去された軸方向周波数領域信号を得る。
【0102】
本出願の実現可能な実施例では、図5を参照して、ステップS103の後、対数空間における軸方向周波数領域信号をノイズ除去して、ノイズ除去された軸方向周波数領域信号を得ることは、以下のステップを含む。
【0103】
ステップS031において、分割閾値を特定する。
【0104】
無相関アーチファクトのノイズ低減方法は以下の通りである。Aスキャン信号の変化を統計する場合、OCTAに対するノイズ信号の影響を分離するために強度閾値を設定し、強度マスクを生成することによって、S/N比が低いすべての信号を除去することにより、後続の無相関計算において、そのランダムノイズ信号による誤差を低減又は除去することができる。本願の実施例における分割閾値は強度マスクであり、分割閾値は、通常、人為的な経験に基づいて設定される。更に精度を向上させるために、本出願の実施例では、分割閾値を特定することは、クラスタリングアルゴリズムに基づいて、すべての軸方向周波数領域信号に対応するノイズ信号を抽出すること、及びノイズ信号に基づいて分割閾値を特定することを含む。
【0105】
クラスタリング法は、ノイズ信号を除去する目的を達成するために、信号中のクラスタを発見して、信号中の外れ値を見つけ出し除去するものである。本出願の実施例では、クラスタの集合から外れる信号がノイズ信号である。
【0106】
ここで、K-meansアルゴリズムは、伝統的な距離に基づくクラスタリングアルゴリズムであり、Kをパラメータとして入力し、K個の中心点をランダムに選択し、最終的にn個の対象をK個のクラスタに分割し、同じクラスタのメンバーは高い類似度を有し、異なるクラスタのメンバーは高い相違度を有する。具体的には、K-meansクラスタリングアルゴリズムにおけるクラスタリングの中心は、クラスタ内の全ての信号対象の属性の平均値を計算することによって特定され、ノイズ信号クラスの分布は、画像信号強度のK-meansクラスタリング分析を行うことによって得ることができる。
【0107】
具体的には、K-meansクラスタリングアルゴリズムに基づいてノイズ信号を抽出する流れは、ステップS11(図示せず)、ステップS12(図示せず)、ステップS13(図示せず)、ステップS14(図示せず)、及び、ステップS15(図示せず)を含む。
【0108】
ステップS11において、最遠点クラスタリング(farthest-firststrategy)を用いてK個のクラスタリングの中心を現在のクラスタリングの中心として選択する(Kは自然数である)。
【0109】
ステップS12において、現在のクラスタリングの中心に応じて、すべての軸方向周波数領域信号をクラスタリングし、各軸方向周波数領域信号を最も近いクラスタリングの中心によって表されるクラスタにクラスタリングする。
【0110】
ステップS12において、現在の各クラスタの平均値を新しいクラスタリングの中心として計算する。
【0111】
ステップS13において、新しいクラスタリングの中心が前のクラスタリングの中心と同じであるか否かを判定し、同じである場合、ステップS14を実行し、同じでない場合、新しいクラスタリングの中心を現在のクラスタリングの中心として、ステップS12からステップS13を循環させる。
【0112】
ステップS14において、すべての新しいクラスタリングの中心のうち、任意の2つのクラスタリングの中心間の距離を計算する。
【0113】
ステップS15において、任意の2つのクラスタリングの中心間の距離が設定された基準閾値よりも大きいかどうかを判断し、大きい場合、任意の2つのクラスタリングの中心間の距離が設定された基準閾値よりも大きいクラスタの部分を選別し、選別されたクラスタに対応する軸方向周波数領域信号をノイズ信号とし、大きくない場合、ノイズ信号がないことを特徴付ける情報を出力する。
【0114】
ノイズ信号を得た後、ノイズ信号の分布統計処理を行い、ノイズ信号の平均及び分散を得て、平均及び分散に基づいて分割閾値を特定する。最適な閾値を選択する方法としては、具体的には、最大クラス間分散法が挙げられる。平均及び分散に基づいて閾値を特定する方法は当業者に周知されているため、本明細書では繰り返す説明しない。
【0115】
分割閾値を特定した後、分割閾値に対応する信号強度に基づいて軸方向周波数領域信号を分割し、有効ターゲットをノイズから分離して画像のS/N比を向上させることができる。
【0116】
ステップS032において、軸方向周波数領域信号の振幅が分割閾値以上である場合、ノイズ除去された軸方向周波数領域信号は、対数空間における軸方向周波数領域信号と等しい。
【0117】
ステップS033において、軸方向周波数領域信号の振幅が分割閾値より小さい場合、ノイズ除去された軸方向周波数領域信号は分割閾値に等しい。
【数5】
【0118】
ノイズ除去された軸方向周波数領域信号を得た後、無相関化アルゴリズムの原理に基づいて、血流の流れによる信号相関性の変化を利用して、隣接するBスキャン画像を差分分析し、血流信号を抽出する。
【0119】
本出願の実現可能な実施例では、図6を参照して、ステップS105において、各グループの単一スケール信号に対して無相関化計算を行って単一スケールの血流信号を得ることは、各グループの単一スケール信号の1次統計量、2次統計量及び3次統計量を決定することと、1次統計量、2次統計量及び3次統計量に基づいて無相関化計算を行って、単一スケールの血流信号を決定することとを含む。
【数6】
【0120】
統計学的な観点から、正規分布のランダム変数(ベクトル)の統計的特徴は、一次統計量及び二次統計量によって完全に表現することができる。例えば、ガウス分布のランダムなベクトルについて、その数学的期待値及び共分散行列を知れば、その結合確率密度関数を知ることができる。ガウスランダム過程について、その平均値及び自己相関関数(又は自己共分散関数)を知れば、その確率構造を知ることができ、即ち、その全体の統計的特徴を知る。
【0121】
しかし、ランダム変数やランダム過程がガウス分布に従わない場合、1次統計量や2次統計量ではその統計的特徴を完全に表現することができない。言い換えれば、1次統計量や2次統計量にすべての情報が含まれず、高次統計量にも多くの有用な情報が含まれる。
【0122】
信号処理において高次統計量を使用する主な動機としては、1)未知のパワースペクトルの加法性色ノイズの影響の抑制、2)非最小位相系の識別又は非最小位相信号の再構成、3)ガウス偏差による様々な情報の抽出、4)信号における非線形の検出・表現、及び非線形性系の識別などが挙げられる。
【0123】
従って、高次統計量信号処理法は、非ガウス信号の高次統計量から有用な情報、特に1次統計量や2次統計量から抽出できない情報を抽出する手法である。この観点から、高次統計法は、相関関数やパワースペクトルに基づくランダム信号処理法を補完する重要な手法であるとともに、2次統計法では解決できない多くの信号処理問題に対して手段を提供することができる。
【0124】
1次統計量、2次統計量及び3次統計量に基づいて無相関化計算を行って、単一スケールの血流信号を決定することは、下式を含む。
【数7】
【0125】
本出願の実現可能な実施例では、ステップS106において、kグループの単一スケールの血流信号に基づいて、マルチスケールの血流信号を得ることは、kグループの単一スケールの血流信号を重ね合わせてマルチスケールの血流信号を得ることを含む。
【数8】
【0126】
上述した実施例は、方法フローの観点から光干渉断層血管造影方法を説明したが、以下の実施例は、仮想モジュール又は仮想ユニットの観点から光干渉断層血管造影装置100を説明する。具体的には、以下の実施例を詳述する。
【0127】
本出願の実施例は、光干渉断層血管造影装置100を提供する。図7を参照して、光干渉断層血管造影装置100は、
目標領域に対してAスキャンをN回繰り返して得られるN個の干渉スペクトル信号である、目標領域の時間領域信号を取得するための取得モジュール1001と、
K個のスケールに基づいて、N個の干渉スペクトル信号のうち、各干渉スペクトル信号をスケール変換して、N×k個のスケール変換信号を得るためのスケール変換モジュール1002であって、k個のスケールに基づいて何れかの干渉スペクトル信号をスケール変換することは、各スケールに基づいて何れかの干渉スペクトル信号を分解して、何れかの干渉スペクトル信号に対応するk個のスケール変換信号を得ることを含むスケール変換モジュール1002と、
各スケール変換信号をフーリエ変換して対数を取ることで、対数空間における軸方向周波数領域信号を得るための周波数領域変換モジュール1003と、
K個のスケールに基づいて、N×k個のノイズ除去された軸方向周波数領域信号をkグループの単一スケール信号に分割し、各グループの単一スケール信号に対して無相関化計算を行って単一スケールの血流信号を得るための無相関化モジュール1004と、
kグループの単一スケールの血流信号に基づいて、マルチスケールの血流信号を得るための融合モジュール1005と、
マルチスケールの血流信号に基づいて、血流像を得るための撮像モジュール1006と、を備える。
【0128】
上述した実施例によれば、血流信号は、局所的な変動を有する非定常信号であり、1つの干渉スペクトル信号は、1回のスケール変換後に複数のセグメントに分解されるその後の無相関化計算を行う場合、異なる時間における同一の目標領域に対応する各セグメントの干渉スペクトル信号に対応する軸方向周波数領域信号を比較することができ、セグメントを分解して比較するによって、非定常状態の変動信号をより正確に捉えることができ、正確な血流信号の抽出が可能となる。
【0129】
また、1つの干渉スペクトル信号を複数のスケールで変換し、各スケールに対応する分解セグメントの数が異なり、つまり、セグメントを分解して比較するスケールが異なるため、異なるスケールで非定常信号の変動を測定することができる。従って、1つの干渉スペクトル信号に対して、同時にスケール変換して且複数のスケールの融合を行うことで、単一スケールの誤判定率を低減することができ、血流信号の抽出精度及び処理効率を向上させる。また、1回の干渉スペクトル信号のうち、ポイントの全てが保持されるため、画像のより多くの詳細を復元することができ、S/N比を向上させることができる。
【0130】
実現可能な実施例では、干渉スペクトル信号がサンプリング時間帯Tに対応し、スケール変換モジュール1002は、何れかのスケールに基づいて何れかの干渉スペクトル信号を分解しスケール変換信号を得る場合、具体的には、
何れかのスケールに対応する分解信号を特定することであって、分解信号がサンプリング時間帯Tにおける信号であり、分解信号が少なくとも1つの時間グループを含み、時間グループが隣接する第1時間帯及び第2時間帯、隣接する2つの第1時間帯、又は、隣接する2つの第2時間帯を含むことと、
第1時間帯に対応する干渉スペクトル信号に順方向信号を乗算して第1信号を得ることと、
第2時間帯に対応する干渉スペクトル信号に逆方向信号を乗算して第2信号を得ることと、
少なくとも1つの第1信号及び少なくとも1つの第2信号に基づいてスケール変換信号を得ることとのために用いられる。
【0131】
実現可能な実施例では、装置は、対数空間における軸方向周波数領域信号をノイズ除去するノイズ除去モジュールを更に備え、ノイズ除去された軸方向周波数領域信号を得る場合、具体的には、
分割閾値を特定するために用いられ、
軸方向周波数領域信号の振幅が分割閾値以上である場合、ノイズ除去された軸方向周波数領域信号が、対数空間における軸方向周波数領域信号と等しい、
軸方向周波数領域信号の振幅が分割閾値よりも小さい場合、ノイズ除去された軸方向周波数領域信号が、分割閾値と等しい。
【0132】
実現可能な実施例では、ノイズ除去モジュールは分割閾値を特定する場合、具体的には、
クラスタリングアルゴリズムに基づいて、すべての軸方向周波数領域信号に対応するノイズ信号を抽出することと、
ノイズ信号に基づいて、分割閾値を特定することとのために用いられる。
実現可能な実施例では、無相関化モジュール1004は、各グループの単一スケール信号に対して無相関化計算を行って単一スケールの血流信号を得る場合、具体的には、
各グループの単一スケール信号の1次統計量、2次統計量及び3次統計量を決定することと、
1次統計量、2次統計量及び3次統計量に基づいて無相関化計算を行って、単一スケールの血流信号を決定することとのために用いられる。
【0133】
実現可能な実施例では、装置は、アライメントモジュールを更に備える。各スケール変換信号をフーリエ変換して対数を取ることで、対数空間における軸方向周波数領域信号を得た後に、アライメントモジュールは、具体的には、
位相相関アルゴリズムに基づいて、すべての軸方向周波数領域信号をアライメント操作するために用いられる。
【0134】
ここで、ノイズ除去された軸方向周波数領域信号は、アライメント操作后の軸方向周波数領域信号に基づいてノイズ除去された信号である。
実現可能な実施例では、装置は、分散補償モジュールを更に備える。分散補償モジュールは、具体的には、
K個のスケールに基づいて、N個の干渉スペクトル信号のうち、各干渉スペクトル信号をスケール変換する前に、時間領域信号のうち、各干渉スペクトル信号を分散補償するために用いられる。
【0135】
本出願の実施例に係る光干渉断層血管造影装置は、上記の方法実施例に適用されるが、ここで繰り返し説明しない。
【0136】
本出願の実施例は電子機器を提供する。図8に示すように、図8に示す電子機器1000は、プロセッサ1001とメモリ1003とを備える。ここで、プロセッサ1001とメモリ1003とは、例えば、バス1002を介して接続される。オプションとして、電子機器1000は、トランシーバー1004を更に備えてもよい。なお、実際の応用では、トランシーバー1004は、1つに限らず、該電子機器1000の構成は、本出願の実施例を限定するものではない。
【0137】
プロセッサ1001は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置)、汎用プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor、データ信号プロセッサ)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit、特定用途向け集積回路)、FPGA(Field Programmable Gate Array、フィールドプログラマブルゲートアレイ)又は他のプログラマブルロジックデバイス、トランジスタロジックデバイス、ハードウェアコンポーネント、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。本出願の開示内容にて説明した様々な例示的論理ボックス、モジュール、及び回路を実現又は実行することができる。プロセッサ1001は、1つ又は複数のマイクロプロセッサの組み合わせ、DSPとマイクロプロセッサの組み合わせなどを含む、コンピューティング機能を実現する組み合わせであってもよい。
【0138】
バス1002は、上述したコンポーネントの間で情報を転送するための経路を含んでもよい。バス1002は、例えば、PCI(Peripheral Component Interconnect、ペリフェラルコンポーネント相互接続規格)バス又はEISA(Extended Industry Standard Architecture、拡張業界標準構造)バスであってもよい。バス1002は、アドレスバス、データバス、制御バスなどに分けられることができる。なお、図8では、図示の便宜上、1本の太線だけで示しているが、バスが1本又は1種類しかないことを意味するものではない。
【0139】
メモリ1003は、ROM(Read Only Memory、読み取り専用メモリ)又は静的な情報及び命令を記憶可能な他のタイプの静的記憶装置、RAM(Random Access Memory、ランダムアクセスメモリ)又は情報及び命令を記憶できる他のタイプの動的記憶装置であってもよく、EEPROM(Electrically Erasable Programable Memory、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ)であってもよい。Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory、コンパクトディスク読み取り専用メモリ)又はその他の光ディスク記憶装置(圧縮ディスク、レーザーディスク、コンパクトディスク、デジタル汎用ディスク、ブルーレイディスクなどを含む)、磁気ディスク記憶媒体や他の磁気記憶装置、指令又はデータ構造の形態を有する所望のプログラムコードを搬送又は記憶するために使用可能であり、コンピュータによってアクセス可能な他の媒体であってもよい。これらに限定されない。
【0140】
メモリ1003は、本出願の技術案のアプリケーションコードを格納し実行するために使用され、プロセッサ1001によって実行が制御される。プロセッサ1001は、メモリ1003に格納されたアプリケーションコードを実行して、上記の方法の実施例に例示したことを実施する。
【0141】
ここで、電子機器は、携帯電話、ラップトップコンピュータ、デジタル放送受信機、PDA(パーソナルデジタルアシスタント)、PAD(タブレットコンピュータ)、PMP(ポータブルマルチメディアプレーヤ)、車載ナビゲーション端末などの車載端末などのモバイル端末、及びデジタルTV、デスクトップコンピュータなどの固定端末などが含まれるが、これらに限定されるものではない。また、サーバ等であってもよい。なお、図8に示す電子機器は単なる一例であり、本開示の実施例の機能や利用範囲を何ら限定するものではない。
【0142】
本出願の実施例は、コンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。コンピュータプログラムがコンピュータで実行されると、コンピュータに前述の方法実施例の対応する内容を実行させることができる。従来技術と比較して、本出願の実施例では、ユーザがある時間帯におけるあるサービスタイプを予約する場合、他のサービスタイプに対応する登録時間帯が既に占有されていると直接判断するのではなく、実際の占有時間帯及びそれに対応する時間帯占有閾値に基づいて、他の各サービスタイプについての実際の占有時間帯に関連する登録時間帯が既に占有されている否かを判断するものである。つまり、実際の占有時間帯に基づいて、それに関連する他のサービスタイプの登録時間帯が占有されていないと判断された場合、当該時間はまだユーザによって予約され得ると判断されるので、断片化された時間が低減され、資源の無駄が低減される。更に、医療従事者及び患者の待ち時間も低減され、診察の効率が改善される。
【0143】
なお、添付図面のフローチャートにおける各ステップは、矢印で示すように順番に示されているが、これらのステップは、必ずしも矢印で示す順序で順番に実行されるわけではない。本明細書に明示的に記載しない限り、これらのステップの実行に厳密な順序制限はなく、他の順序で実行されてもよい。更に、添付図面のフローチャートにおけるステップの少なくとも一部は、複数のサブステップ又は複数の段階を含んでもよく、これらのサブステップ又は段階は、必ずしも同一の時点に完了されるとは限らず、異なる時点に実行されてもよい。その実行順序は必ずしも順次ではなく、他のステップ又は他のステップのサブステップ又は段階の少なくとも一部と順番に又は交互に実行されてもよい。
【0144】
上記の説明は、本出願の実施例の一部に過ぎず、当業者にとって、本出願の原理から逸脱しない限り、様々な改良及び変更を行うことができ、これらの改良及び装変更も、本出願の保護範囲とみなされるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】