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特表2024-537936基材の表面上にナノ粒子を生成するための方法及びそのような基材を含む部品
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  • 特表-基材の表面上にナノ粒子を生成するための方法及びそのような基材を含む部品 図1A
  • 特表-基材の表面上にナノ粒子を生成するための方法及びそのような基材を含む部品 図1B
  • 特表-基材の表面上にナノ粒子を生成するための方法及びそのような基材を含む部品 図2
  • 特表-基材の表面上にナノ粒子を生成するための方法及びそのような基材を含む部品 図3
  • 特表-基材の表面上にナノ粒子を生成するための方法及びそのような基材を含む部品 図4
  • 特表-基材の表面上にナノ粒子を生成するための方法及びそのような基材を含む部品 図5
  • 特表-基材の表面上にナノ粒子を生成するための方法及びそのような基材を含む部品 図6
  • 特表-基材の表面上にナノ粒子を生成するための方法及びそのような基材を含む部品 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-17
(54)【発明の名称】基材の表面上にナノ粒子を生成するための方法及びそのような基材を含む部品
(51)【国際特許分類】
   B82B 3/00 20060101AFI20241009BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20241009BHJP
   C23C 26/00 20060101ALN20241009BHJP
   C23C 14/58 20060101ALN20241009BHJP
   A01N 25/34 20060101ALN20241009BHJP
【FI】
B82B3/00
B82Y30/00
C23C26/00 B
C23C14/58 C
A01N25/34 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515101
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 FR2022051694
(87)【国際公開番号】W WO2023037077
(87)【国際公開日】2023-03-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506126266
【氏名又は名称】イドロメカニーク・エ・フロットマン
(71)【出願人】
【識別番号】521372183
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ジャン・モネ・サン・テティエンヌ
(71)【出願人】
【識別番号】503161615
【氏名又は名称】ウニベルシテ クロード ベルナール リヨン 1
(71)【出願人】
【識別番号】520328442
【氏名又は名称】アンスティチュ・ナシオナル・デ・シアンス・サプリケ・リヨン
(71)【出願人】
【識別番号】512079439
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ ロレーヌ
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリー-アリックス・ルロワ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ジェラール・ピュピエ
(72)【発明者】
【氏名】ソレーヌ・ダソンヌヴィル
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ステイエ
(72)【発明者】
【氏名】アレハンドロ・ボロト
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー・ブリュイエール
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フランソワ・ピエソン
(72)【発明者】
【氏名】マティルド・プルダン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フィリップ・コロンビエ
(72)【発明者】
【氏名】フローラン・ブールカール
(72)【発明者】
【氏名】フローレンス・ガレリー
【テーマコード(参考)】
4H011
4K029
4K044
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011BB18
4H011DA08
4K029AA02
4K029AA24
4K029BA21
4K029CA05
4K029DC04
4K029DC16
4K029DC39
4K029FA04
4K029GA00
4K044AA01
4K044AA02
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA02
4K044BA06
4K044BA12
4K044BB03
4K044BB11
4K044CA13
4K044CA41
(57)【要約】
本発明は、基材の表面上にナノ粒子を生成するための方法であって、- 周期表の第4、5、13、及び14列からの少なくとも1種の元素、及び少なくとも1種の貴金属又は遷移金属を含む材料で作製された基材を提供するステップと、- 1fsから100psの間のパルス持続時間、0.01J/cmから100J/cmの間のパルス当たりのフルエンス、100nmから5000nmの間の波長、及び1から1000の間の点当たりのパルスの数で基材をレーザー照射するステップと、- 基材の表面上に少なくとも1つのナノ粒子を生成するステップであって、少なくとも1つのナノ粒子が、少なくとも貴金属又は遷移金属を含み、基材の化学組成とは異なる化学組成を有する、ステップとを含む、方法に関する。本発明はまた、そのようなナノ粒子を含む部品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面上にナノ粒子を生成するための方法であって、
自由表面を有する基材を提供するステップであって、基材が、
元素の周期分類の第4、5、13、及び14列からの少なくとも1種の元素、特に、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、V(バナジウム)、Al(アルミニウム)、又はSi(ケイ素)、好ましくは、Ti及び/又はZrのうちの少なくとも1種の元素、
少なくとも1種の貴金属又は1種の遷移金属、特に、元素の周期分類の第8~11列からの少なくとも1種の貴金属又は1種の遷移金属、特に、Au(金)、Ag(銀)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Cu(銅)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、好ましくは、Cu、Ag、及び/又はAuのうちの少なくとも1種、
を含む化学組成を有する材料で作製されている、ステップと、
1fsから100psの間のパルス時間、0.01J/cmから100J/cmの間のパルスフルエンス、100nmから5000nmの間の波長、及び1から1000の間の処理される点当たりのパルスの数を有するパルス放射を生成するレーザー放射源によって基材の自由表面の少なくとも一部を照射するステップと、
基材の材料から基材の自由表面上に少なくとも1つのナノ粒子を生成するステップであって、少なくとも1つのナノ粒子が、少なくとも貴金属又は遷移金属を含み、基材の化学組成とは異なる化学組成を有する、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
レーザーが、1fsから100psの間の持続時間のパルスを発する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
表面を、1kHzから25GHzの間の繰り返し周波数で繰り返されるレーザーパルスによって照射する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
スキャナを使用して基材の自由表面の上方でレーザーを走査するステップ、及び/又は回転台、特に電動回転台を使用してレーザーに対して基材の自由表面を移動させるステップを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも、
元素の周期分類の第4、5、13、又は14列からの1種の元素と、
1種の貴金属又は1種の遷移金属、特に、元素の周期分類の第8~11列からの少なくとも1種の貴金属又は1種の遷移金属と、
を含む化学組成を有する材料で作製された少なくとも1つの基材を含み、
基材が、表面を有し、その少なくとも一部が、少なくとも1つのナノ粒子を含むナノ構造を有し、少なくとも1つのナノ粒子が、少なくとも貴金属又は遷移金属を含み、基材の化学組成とは異なる化学組成を有する、
部品。
【請求項6】
元素の周期分類の第4、5、13、又は14列からの少なくとも1種の元素が、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、V(バナジウム)、Al(アルミニウム)、又はSi(ケイ素)、好ましくは、Ti及び/又はZrのうちから選択されることを特徴とする、請求項5に記載の部品。
【請求項7】
元素の周期分類の第8~11列からの少なくとも1種の貴金属又は遷移金属が、Au(金)、Ag(銀)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Cu(銅)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、好ましくは、Cu、Ag、及び/又はAuのうちから選択されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の部品。
【請求項8】
少なくとも1つのナノ粒子が、1nmから200nmの間の特徴サイズを有することを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の部品。
【請求項9】
少なくとも1種の貴金属又は遷移金属を含む少なくとも1つのナノ粒子が、Au、Ag、Pt、Pd、Cu、Fe、Co、又はNi、好ましくは、Cu、Ag、及び/又はAuのうちの1種を含むことを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の部品。
【請求項10】
少なくとも1つのナノ粒子が結晶化されていることを特徴とする、請求項5から9のいずれか一項に記載の部品。
【請求項11】
ナノ構造が、周期的起伏を更に含むことを特徴とする、請求項5から10のいずれか一項に記載の部品。
【請求項12】
周期的起伏が、200nmから1000nmの間の空間周期性に従って、表面上で周期的に繰り返されることを特徴とする、請求項5から11のいずれか一項に記載の部品。
【請求項13】
少なくとも1つのナノ粒子が、起伏のうちの1つの稜線上に形成されていることを特徴とする、請求項11又は12に記載の部品。
【請求項14】
基材の表面の一部のみがナノ構造を有することを特徴とする、請求項5から13のいずれか一項に記載の部品。
【請求項15】
第4、5、13、及び14列からの少なくとも1種の元素が、処理された材料の表面上に酸化物の層を形成することを特徴とする、請求項5から14のいずれか一項に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面機能化方法、すなわち、少なくとも1つの特性を表面に追加して、表面に少なくとも1つの新たな機能を与えるための、例えば、その化学反応性を増加させるための方法に関する。
【0002】
本発明は、より具体的には、所定の材料で作製された基材の表面上にナノ粒子を生成することによる表面機能化方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ベース材料と称される所定の材料で作製された基材の表面上にナノ粒子(すなわち、特徴サイズが数百ナノメートル未満である粒子)を生成することによって、そのようにして処理された材料に新たな機能を与えることが可能になる。これは特に、得られる比表面積が処理前の材料の比表面積よりも大きいという事実、及びナノ粒子が、それらの非常に小さなサイズを理由に、より高い割合の低配位原子(ナノ粒子の縁部又は頂点に配置されている)を有し、それによって、特に反応性(多数の活性サイト)がナノ粒子にもたらされるという事実によるものである。更に、材料の表面にナノ構造を追加することによって、その濡れ性特性が改変され、したがって、親水性又は非常に疎水性の表面を制御された手法で得ることができる。
【0004】
そのような機能は、例えば、抗微生物(抗菌又は殺ウイルス性)表面に対して興味深い利点を付与し得る。
【0005】
更に、例えばCu又はAg(それらの抗微生物特性で知られる元素)をナノ粒子の形態で表面上に露出することによって、表面と接触する微生物の分解及び破壊に関して、そのようにして処理された表面の反応性を増加させることが可能になる。これによって、汚染された物体に接触することによって誘発される、人が多く集中する環境における汚染を減少させること(例えば病院、医療現場におけるヘルスケア関連の感染を低減すること)が可能になる。この処理は、例えば、手と定期的に接触する部品、例えば、ドアの取手若しくは標識、手すり、バー、蛇口、又は換気若しくは浄水システム等で適用されうる。
【0006】
表面を機能化することによって、不均一系触媒作用の文脈において、触媒表面を生成することも可能になり得、環境触媒作用、工業化学、及びファインケミカルでの応用がある。
【0007】
これは、例えば、求められる反応に対する公知の触媒特性を有する元素(貴金属又は遷移金属)のナノ粒子を表面上に生成することによって可能である。
【0008】
貴金属(例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、又はパラジウム(Pd))のナノ粒子の生成は、プラズモニクスの分野でも興味深いものであり、これらのナノ構造の表面プラズモン共鳴を使用するデバイスによる、生物学、医学、触媒作用における分子検出での応用がある。
【0009】
支持体材料(ここでは基材と称される)の表面上でのナノ粒子の生成は、様々な方法によって行われうる。
【0010】
最も一般的なものは、ナノ粒子を生成する材料の外部供給を介して実施される。堆積は、浸漬によって、コーティングによって、遠心分離によって、又はナノ粒子が充填された溶液での電気泳動によって実施されうる。
【0011】
或いは、ナノ粒子は、供給された材料を使用してインサイチュで生成されうる:これは、電着、気相堆積、又は真空蒸着の場合であり、しばしば、高温アニーリングが続く。
【0012】
これらの様々な方法の欠点は、ナノ粒子の支持体へのナノ粒子の接着性が弱いことである:粒子は、処理された材料の表面上に単に置かれているだけであるため、当該の部品の使用の最中に剥がれる可能性及び環境に放出される可能性がある。
【0013】
基材上に分散されたナノ粒子の使用に関連する更なる問題は、成長、凝集、及び「コーキング」、すなわち、炭化水素環境における金属ナノ粒子の表面上の炭素の蓄積に対するナノ粒子の傾向であり、それによって、より低い化学活性がナノ粒子にもたらされる。
【0014】
更に、ナノ粒子が充填された溶液でのコーティングによる堆積は、事前にナノ粒子を調製すること及び取り扱うことを伴い、それによって、作業者の健康のリスクが生じる。
【0015】
これらの様々な弱点を回避するために、支持体材料からナノ粒子を生成することが着想された。
【0016】
図1は、そのような原理を非常に概略的に示す:図1Aに表されるようにベース材料上(基材の表面上)に堆積したナノ粒子を得る代わりに、ナノ粒子を、図1Bに表されるように基材の材料から生成し、それによって、基材の表面上におけるより良好な固定部をナノ粒子に与える。
【0017】
これについて、比較的最近開発された1つの方法は、例えば、ナノ粒子の酸化還元離溶(redox exsolution)(固相再結晶としても知られている)である。
【0018】
英国特許出願公開第2566104号の文書には、例えば、触媒活性遷移金属を酸化条件下で一般式ABOのペロブスカイト結晶のBサイトにおいて置換し(例えば、ペロブスカイトLaSr1-3x/2TiO中のニッケル(Ni)、式中、Laはランタンを指し、Srはストロンチウムを指し、Tiはチタンを指し、Oは酸素を指す)、得られた材料を還元雰囲気で高温に加熱し、それによって、その体積からの、ペロブスカイトの表面上の金属ナノ粒子(この例ではNi)の放出が誘発される、方法が記載されている。そのようにして得られた粒子は、粒子が根付いている、支持体との強い相互作用を有し、これは、支持体材料からの粒子の成長から生じたものである。しかしながら、この方法は、上記の組成物及び結晶相の基材処理に限定される。
【0019】
金属表面からナノ粒子を生成するためのレーザー照射方法も提案されている;この場合、ナノ粒子は、照射された基材材料と同じ化学組成を有する:Ag表面上に形成されたAgナノ粒子、Cu表面上に形成されたCuナノ粒子。これは、例えば、中国特許出願公開第2874686号の文書に記載されている。
【0020】
以下の論文も、表面上にナノ粒子を生成するための様々な方法に関する:
- Hamad等、Femtosecond Laser-Induced, Nanoparticle-Embedded Periodic Surface Structures on Crystalline Silicon for Reproducible and Multi-utility SERS Platforms、ACS Omega 3 (2018)18420~18432頁、
- Neagu, D.等、Nano-socketed nickel particles with enhanced coking resistance grown in situ by redox exsolution、Nat. Commun. 6 (2015) 8120、
- Guay J.M.等、Laser-induced plasmonic colours on metals、Nature communications 8 (2017) 16095、
- Fan等、J. Appl. Phys. 115, 124302 (2014)及びJ. Appl. Phys. 114, 083518 (2013)、
- Mohan等、Applied Physics A; Materials Science & Processing、Springer, Berlin, DE、第86巻、第1号、10月28日、2006年、73~82頁。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】英国特許出願公開第2566104号
【特許文献2】中国特許出願公開第2874686号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Hamad等、Femtosecond Laser-Induced, Nanoparticle-Embedded Periodic Surface Structures on Crystalline Silicon for Reproducible and Multi-utility SERS Platforms、ACS Omega 3 (2018)18420~18432頁
【非特許文献2】Neagu, D.等、Nano-socketed nickel particles with enhanced coking resistance grown in situ by redox exsolution、Nat. Commun. 6 (2015) 8120
【非特許文献3】Guay J.M.等、Laser-induced plasmonic colours on metals、Nature communications 8 (2017) 16095
【非特許文献4】Fan等、J. Appl. Phys. 115, 124302 (2014)及びJ. Appl. Phys. 114, 083518 (2013)
【非特許文献5】Mohan等、Applied Physics A; Materials Science & Processing、Springer, Berlin, DE、第86巻、第1号、10月28日、2006年、73~82頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、本発明の目的は、特に、対象となる触媒特性、抗微生物特性、及び/又はプラズモニック特性を有する化学元素、すなわち、例えば貴金属又は遷移金属を含むナノ粒子に関して、良好な接着性を有するナノ粒子を、ナノ粒子が生成される表面に経時的に形成することである。
【0024】
更なる目的は、コスト、処理条件、及び処理可能な部品(形状、化学的性質、耐熱性、又は耐薬品性)の点で要求の少ない、単純かつ工業化可能な機能化方法を提供することである。
【0025】
更なる目的は、ナノ粒子を取り扱うことを回避することを可能にする方法を提供することである。
【0026】
別の更なる目的は、処理すべき表面のゾーンを場合によってマイクロメートル分解能で細かく選択することが可能であり、かつ部品の体積に少ない影響を有することが可能でありながら、処理された表面の局所的な機能化を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
先に引用した目的を少なくとも部分的に達成するために、本発明の第1の態様によると、基材の表面上にナノ粒子を生成するための方法であって、
- 自由表面を有する基材を提供するステップであって、基材が、
・ 元素の周期分類の第4、5、13、及び14列からの少なくとも1種の元素、特に、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、V(バナジウム)、Al(アルミニウム)、又はSi(ケイ素)、好ましくは、Ti及び/又はZrのうちの少なくとも1種の元素、
・ 少なくとも1種の貴金属又は1種の遷移金属、特に、元素の周期分類の第8~11列からの少なくとも1種の貴金属又は1種の遷移金属、特に、Au(金)、Ag(銀)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Cu(銅)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、好ましくは、Cu、Ag、及び/又はAuのうちの少なくとも1種、
を含む化学組成を有する材料で作製されている、ステップと、
- 1fsから100psの間のパルス時間、0.01J/cmから100J/cmの間のパルスフルエンス、100nmから5000nmの間の波長、及び1から1000の間の処理される点当たりのパルスの数を有するパルス放射を生成するレーザー放射源によって基材の自由表面の少なくとも一部を照射するステップと、
- 基材の材料から基材の自由表面上に少なくとも1つのナノ粒子を生成するステップであって、少なくとも1つのナノ粒子が、少なくとも貴金属又は遷移金属を含み、基材の化学組成とは異なる化学組成を有する、ステップと
を含む、方法が提案されている。
【0028】
ここで、ナノ粒子は、特徴サイズが数百ナノメートル未満である粒子を指す。
【0029】
したがって、本発明は、基材の材料の化学元素を偏析させることによって、上記の公知の方法に対する代替的なインサイチュナノ粒子生成の解決策を提案する。
【0030】
この方法は、処理される表面上でのナノ粒子の形成を誘発する、材料の表面に適用される(位置及び深さが)極めて局所化された加熱を使用する。
【0031】
実際に、いわゆる超短レーザー照射は、処理される表面の局所化された加熱を誘発する:レーザー材料の相互作用は、約15ナノメートルの典型的な深さにわたって起こり、供給されたエネルギーは、処理される基材の材料において約100ナノメートルの典型的な深さにわたって熱及び圧力波の形態で伝播される。
【0032】
この処理の効果で、(約100ナノメートルのスケールで)基材の表面からの材料が分解され、基材の初期材料の少なくとも1種の構成金属元素が基材の表面に向かって拡散して、金属ナノ粒子を形成する。
【0033】
そのような方法を理由に、ナノ粒子は、処理される材料の化学元素の一部で構成されているが、この材料とは異なる化学組成を有する(化学偏析効果)。
【0034】
これらのナノ粒子は、基材の材料の化学組成とは異なる化学組成を有するため、基材の材料の表面上で、所与の文脈において一般により有利な、基材の材料の反応性特性とは異なる反応性特性を有する元素を露出させることが可能である。
【0035】
例えば、少なくとも1つの抗微生物特性を表面に付与するためには、Cuが有利な触媒特性及び抗微生物特性を有する元素であるため、銅(Cu)ナノ粒子を生成することが1つの可能性である(銀(Ag)についても同じことが言える)。
【0036】
したがって、例えば、ベース材料が、少なくともジルコニウム(Zr)及び銅(Cu)を含む合金である場合、本発明による処理は、ZrCu合金の表面上にナノ粒子の形態でのCuの化学偏析を誘発する。したがって、そのようにして処理された材料の化学反応性が(ナノ粒子の添加によってより大きくなった外部環境に面する表面積の展開、並びにベース材料の反応性と比較してより大きなナノ粒子の反応性を理由に)増加させられることから、化学活性表面が得られ、すなわち、それによって、例えば抗微生物機能について求められる化学反応を促進すること又は可能にすることができる。
【0037】
これらの応用例は、限定的なものではなく、この方法は、ナノ構造、特にナノ粒子による表面機能化が必要とされうる他の範囲で使用されうる。
【0038】
したがって、この方法には、ナノ粒子を得るための他の方法に比べて、以下に列挙されるようないくつかの利点がある。
- そのようにして基材から生成された粒子は、その表面に良好な機械的固定部を有する;
- この方法によって、高温湿式方法、又は真空処理を実装することを回避することが可能になり、そのため、本発明による方法を、作業環境に対する特定の制約なく、単純な品目の装置によって適用することができる:
- この方法は、広範囲の材料を機能化するために使用することができ、材料は、特定の結晶形態である必要はない;
- ナノ粒子の供給に関連して、健康リスクが軽減される。
【0039】
更に、次いで、加熱が材料の表面上で局所化されるため、材料の固体部分だけでなく、別の種類の基材上に堆積した前記材料のコーティングも処理することが可能である。したがって、プラスチック、金属、セラミック、又は複合材の部品は、上記の手段によって機能化することができる層でコーティングされている場合、機能化されうる。
【0040】
例えば、レーザーは、例えば1フェムト秒(1fs=10-15秒)から100ピコ秒(1ps=10-12秒)の間、好ましくは20fsから10psの間の持続時間の非常に短い光パルスを発する。
【0041】
例えば、表面を、1kHzから25GHzの間、特に1kHzから20GHzの間、例えば1kHzから100MHzの間、例えば1kHzから500kHzの間の繰り返し周波数で繰り返される、例えば表面上に直接集束されるレーザーパルスによって照射する。
【0042】
例えば、レーザービームは、一般に、約50μmの直径を有する。
【0043】
例えば、表面の点を処理するのに必要なパルスの数(レーザービームのサイズに応じる)は、1から1000の間である。
【0044】
例えば、ナノ粒子を生成するためのパルスフルエンス(表面積の単位当たりに受け取られるエネルギー)は、当該の材料の閾値フルエンス(材料がアブレーションされるフルエンス)未満であり、すなわち、例えば、数分の1J/cmオーダーである。このフルエンスは、処理すべき材料及び他のレーザー照射パラメータによって決まる。
【0045】
例えば、レーザー処理は、空気中又は不活性環境中で行われうる。
【0046】
レーザービームのサイズよりもサイズがかなり大きな大表面積を処理するために、スキャナを使用して部品の上方でビームを走査すること、又は回転台、特に電動回転台を使用してビームに向かい合った部品を移動させることが可能である。
【0047】
言い換えるなら、この方法は、例えば、スキャナを使用して基材の自由表面の上方でレーザーを走査するステップ、及び/又は回転台、特に電動回転台を使用してレーザーに対して基材の自由表面を移動させるステップを含み得る。
【0048】
実装形態の例では、使用されるレーザー源は、パルスレーザービーム、例えば超短(フェムト秒又はピコ秒)のものを生成するように構成されている。
【0049】
更に、超短レーザー処理は、固体又は液体を部品の表面と接触させる必要がなく、それによって、任意の形状の、更には複雑な部品を処理することが可能になる。
【0050】
処理すべき、すなわち、上記の処理の前の部品は、表面上の少なくとも1つの基材、すなわち、自由表面を有する基材を含む。
【0051】
処理すべき基材は、少なくとも表面上に、固体状態の材料を含む。
【0052】
材料は、例えば、元素の周期分類の第4、5、13、又は14列からの少なくとも1種の元素、特に、Ti、Zr、Hf(ハフニウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、V(バナジウム)、Al(アルミニウム)、又はSi(ケイ素)、好ましくは、Ti及び/又はZrのうちの少なくとも1種の元素、並びに少なくとも1種の貴金属又は1種の遷移金属、特に、元素の周期分類の第8~11列からの少なくとも1種の貴金属又は1種の遷移金属、特に、Au、Ag、Pt、Pd、Cu、Fe、Co、Ni、好ましくは、Cu、Ag、及び/又はAuのうちの少なくとも1種を含む。
【0053】
方法の実装の最中に、これらの元素は、表面上に拡散して、少なくとも1つのナノ粒子を形成し、これらの元素は、有利な触媒特性及び/又は抗微生物特性及び/又はプラズモニック特性を更に有する。
【0054】
第4、5、13、及び14列からの少なくとも1種の元素は、貴金属又は遷移金属よりも熱力学的に貴度が低く、照射後に形成されるナノ粒子中で、低い存在度を有するか、又は存在しない。それにもかかわらず、これは、処理された材料の表面上に約100ナノメートルの酸化物の層を形成し得る。
【0055】
実装形態の例では、処理前の基材の材料は、結晶質である。
【0056】
基材は、例えば、少なくとも50nm、又は100nm、例えば50nmから5μmの間、例えば100nmから5μmの間、例えば500nmから5μmの間の厚さを有する。
【0057】
実装形態の例では、処理すべき基材の粗さは、レーザービームのスケールで十分に低くなければならず、例えば、レーザースポットのスケールでの基材の表面の高さ変動は、レーザーの被写界深度に含まれていなければならない。
【0058】
処理すべき部品は、基材と同じ材料から完全になり得る(言い換えるなら、その体積全体が基材のみから形成されうる)か、又は上記の特徴を有する、基材からなるコーティングで表面が覆われた第1の材料で作製された支持体を含み得る。
【0059】
したがって、プラスチック、金属、セラミック、又は複合材の材料は、上記の手段によって機能化することができる層でコーティングされている場合、機能化されうる。
【0060】
別の態様によると、本発明はまた、元素の周期分類の第4、5、13、又は14列からの少なくとも1種の元素、特に、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、V(バナジウム)、Al(アルミニウム)、又はSi(ケイ素)、好ましくは、Ti及び/又はZrのうちの少なくとも1種の元素と、少なくとも1種の貴金属又は1種の遷移金属、特に、元素の周期分類の第8~11列からの少なくとも1種の貴金属又は1種の遷移金属、特に、Au(金)、Ag(銀)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Cu(銅)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、好ましくは、Cu、Ag、及び/又はAuのうちの少なくとも1種とを含む化学組成を有する材料で作製された少なくとも1つの基材を含み、基材が、表面を有し、その少なくとも一部が、少なくとも1つのナノ粒子を含むナノ構造を有し、少なくとも1つのナノ粒子が、少なくとも貴金属又は遷移金属を含み、基材の化学組成とは異なる化学組成を有する、部品に関する。
【0061】
そのような部品は、例えば、上記の特徴のうちの少なくとも一部を含む方法によって得られる。
【0062】
したがって、例えば、少なくとも1つのナノ粒子は、有利な触媒特性、抗微生物特性、プラズモン特性、及び/又は疎水性特性を有する化学元素を含む。
【0063】
そのようにして形成されたナノ粒子は、例えば、例えば機械的応力下での、又は超音波の適用を任意選択的に伴う液体への浸漬による、損失率が低い。
【0064】
そのような損失は、応力の前後のSEM顕微鏡観察(例えば、図3Bに示されるような上面図による)で観察することができ、例えば、ナノ粒子の損失率は、ナノ粒子が、本発明による方法のおかげでありうるようには十分に表面に固定されていない場合、明らかとなるであろう。
【0065】
第4、5、13、及び14列からの少なくとも1種の元素の酸化物の層は、基材の表面上に、例えば、ナノ粒子の下方に任意選択的に形成されている。
【0066】
例えば、基材は、少なくとも50nm、又は少なくとも500nm、例えば50nmから5μmの間の厚さ(ナノ構造の頂点まで測定)を有する。
【0067】
例えば、部品は、固体であり、基材によってのみ形成されている。
【0068】
実施形態の例では、基材の厚さは、部品の種類、基材でコーティングされる任意選択的な支持体の種類及び表面状態、並びに求められる機能性(耐摩耗性、腐食、設計等)に応じて、100nmから5μmの間である。
【0069】
例えば、そのようにして得られたナノ粒子は、1nmから200nmの間の特徴サイズ、例えば平均直径を有する。
【0070】
例えば、少なくとも1種の貴金属又は遷移金属を含む少なくとも1つのナノ粒子は、Au、Ag、Pt、Pd、Cu、Fe、Co、又はNi、好ましくは、Cu、Ag、及び/又はAuのうちの1種を含む。
【0071】
例えば、ナノ粒子は、結晶化されている。
【0072】
有利な選択肢によると、ナノ構造は、周期的起伏を更に含む。
【0073】
そのような周期的起伏は、LIPPS(「レーザー誘発周期表面構造」)としても知られている。
【0074】
例えば、周期的起伏は、処理される基材の材料及び使用される照射パラメータに応じて、例えば、一般に200nmから1000nmの間の空間周期性に従って、表面上で周期的に繰り返される。
【0075】
具体例によると、少なくとも1つのナノ粒子は、そのような起伏の稜線(又は頂点)上に形成されている。
【0076】
添付の図面を参照して、本発明は、実施形態の例によると、明確に理解され、その利点は、目安として与えられるのであって決して限定するものではない以下の詳細な説明を読むことでより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】ナノ粒子が、堆積法(図1A)で得られたか、又は支持体材料からの生成法(図1B)で得られたかに応じて、基材上のナノ粒子の固定の違いを概略的に示す図である。
図2】本発明の実装形態による方法で得られた部品を概略的に示す図であり、この部品は、ナノ粒子が生成される表面上の基材でコーティングされた任意の支持体(金属、セラミック、複合材、又はプラスチック)を含む。
図3】本発明の実装形態の第1の例による方法で得られたナノ構造化表面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。
図4図3に示されるような本発明の実装形態の第1の例による方法で得られる化学偏析効果を示す図である。
図5】ZrOの薄層上のCuナノ粒子を示す稜線の上部をより詳細に示す図である。
図6】本発明の実装形態の第3の例による方法の実装によって得られた表面を示す図である。
図7】本発明の実装形態の第4の例による方法の実装によって得られた表面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
本発明の実装形態による方法は、ナノ構造、特にナノ粒子を材料の表面上に生成することによって材料を機能化することを可能にする。
【0079】
図1は、(図1Aに示される)従来技術の方法のように基材1の表面に添加されるナノ粒子2と、(図1Bに示される)本発明の実装形態による方法のように基材11から生成されるナノ粒子12との間の原理的な違いを示す。
【0080】
図1Bのシナリオから、ナノ粒子12が後に基材11の表面により良好に固定されることが明確である。
【0081】
本発明の実装形態による方法を実装するために、方法が適用される表面に少なくとも1つの基材11を含む処理すべき部品10が提供される。
【0082】
図2は、表面に基材11を含むそのような部品10を概略的に示す。この図は、処理すべきそのような部品10が、後に基材11でコーティングされる任意の支持体13(例えば、金属、セラミック、複合材、又はプラスチック)も含み得ることを示す。
【0083】
したがって、処理すべき部品は、その体積全体で同じ組成を有する塊状固体であり得るか、又はここに記載されている特徴を有するコーティング(すなわち、基材11)で表面が覆われた第1の支持体材料13で構成されうる。
【0084】
したがって、プラスチック、金属、セラミック、又は複合材の支持体材料が機能化されうる。
【0085】
この例では、基材11は、元素A及びBから形成された金属合金ABを含む。
【0086】
方法の実装形態の例によるレーザー処理によって誘発された局所化された加熱の効果で、基材11の材料の元素Aは、基材11の表面上に拡散し、ナノ粒子12は、主に元素Aに基づいて形成される。
【0087】
特に、ナノ粒子12を形成する元素は、ナノ粒子を形成するそれらの傾向で公知の元素であり、そのような元素を含む基材の表面が、例えば、フェムト秒(又はピコ秒)レーザーによって照射される場合、同じ元素のナノ粒子が表面上で観察されることが一般的である(例えば、照射されたAg表面上のAgナノ粒子)。
【0088】
したがって、これらのナノ粒子12は、基材の処理される材料の化学元素の一部から構成されているが、基材とは異なる化学組成を有する(化学偏析効果)。
【0089】
次いで、そのようなナノ粒子12は、図1Aに表されるように、基材11に十分に固定されている。
【0090】
ここで考慮される実装形態によると、これらのナノ粒子12を生成するために使用される方法は、基材11の材料の表面の超短(フェムト秒又はピコ秒)レーザービームによる照射である。
【0091】
超短レーザーは、例えば1fs(=10-15秒)から100psの間の持続時間の非常に短い光パルスを発する。
【0092】
レーザーの波長は、例えばここで100nmから5000nmの間、又は例えば400nmから1030nmの間である。
【0093】
表面を、ここで1kHzから25GHzの間の周波数で繰り返されるレーザーパルスによって照射する。
【0094】
表面の点を処理するために使用されるパルスの数(約50μmのレーザービームサイズに対応する)は、ここで1から1000の間である。
【0095】
ナノ構造及び特にナノ粒子を生成するためのパルスフルエンス(表面積の単位当たりに受け取られるエネルギー)は、好ましくは、当該の材料の閾値フルエンス(材料がアブレーションされるフルエンス)未満であり、例えば、数分の1J/cmオーダーである。このフルエンスは、処理すべき材料及び他のフェムト秒レーザー照射パラメータ(ピコ秒レーザーも同様)によって決まる。
【0096】
レーザー処理は、空気中又は不活性雰囲気中で行われうる。
【0097】
これらの超短レーザー照射は、処理される表面の局所化された加熱を誘発する:レーザー材料の相互作用は、約15ナノメートルの典型的な深さにわたって起こり、供給されたエネルギーは、処理される材料において約100ナノメートルの典型的な深さにわたって熱及び圧力波の形態で伝播される。
【0098】
この処理の効果で、(約100ナノメートルのスケールで)表面からの材料が分解され、初期材料を形成する1種又は複数の元素が表面に向かって拡散して、ナノ粒子を形成する。
【0099】
レーザービームのサイズよりもかなり大きなサイズの大表面積を処理するために、例えば、スキャナを使用して部品の上方でビームを走査すること、又は回転台を使用してビームに面する部品を移動させることが可能である。
【0100】
処理すべき基材の材料は、好ましくは、固体状態であり、少なくとも金属元素から形成される。
【0101】
特に、この材料は、例えば、周期分類の第8~11列からの少なくとも1種の貴金属又は1種の遷移金属(例えば、Au、Ag、Pt、Pd、Cu、Fe、Co、Ni)、好ましくは、Cu、Ag、及び/又はAuを含む。次いで、これらの元素は、表面上に上昇してナノ粒子を形成する。これらの元素は、有利な触媒特性及び/又は抗微生物特性及び/又はプラズモニック特性を有する。
【0102】
これはまた、場合によって、(特に、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、V、Al、Siのうちから選択される)周期分類の第4、5、13、及び14列からの少なくとも1種の元素(例えば、金属又は非金属)、好ましくは、Ti及び/又はZrを含む。これらの元素は、先に引用した元素よりも熱力学的に貴度が低く、照射後に形成されるナノ粒子中で見い出されることがより稀である。他方で、これらは、処理された材料の表面上に、場合によって約100ナノメートルまでの厚さの酸化物の層を任意選択的に形成し得る。
【0103】
処理された材料は、任意選択的に結晶質である。
【0104】
処理すべき材料の表面は、好ましくは、(約10μmの特徴サイズの)レーザービームのスケールで十分に低い粗さを有する。
【実施例
【0105】
(実施例1:非晶質Zr0.5Cu0.5コーティング堆積を含む部品の処理)
実装形態の第1の例によると、方法は、Zr0.5Cu0.5コーティングを含む部品に適用される。
【0106】
この例では、ステンレス鋼金属部品が提供され、この部品が後に支持体を形成する。
【0107】
部品の表面を機能化するために、ここで、方法は、以下に記載されている元素を含むコーティングを堆積させる予備ステップを含む。
【0108】
50/50の原子百分率のZrCu合金の層は、真空堆積によって支持体上に適用される。
【0109】
これを行うために、支持体は、例えば、洗浄(脱脂、濯ぎ、及びブロー処理)され、次いで、基材ホルダに留められ、真空堆積機内に置かれる。
【0110】
支持体を置いた状態での機械の脱気及び加熱によって、堆積機内で10-7~10-5mbarオーダーの圧力を達成することが可能になる。支持体をストリップ処理して、表面上のいずれかの酸化物層を除去する。次いで、求められる組成(ここでは50/50のZrCu)の固体ターゲットが、マグネトロンカソードスパッタリングによって、処理すべき部品(ここでは支持体)の反対側でスパッタリングされる。そのようにして、約2μmの非晶質50/50ZrCu合金のコーティングが、ステンレス鋼支持体の表面上に得られる。同じ合金は、2つの金属ターゲットをスパッタリングすることによっても得ることができる(共スパッタリング法)。
【0111】
次いで、コーティングは、本発明の実装形態による方法のステップを受けてナノ粒子を生成する基材を形成する。
【0112】
次いで、(約800nmの波長を有する)フェムト秒レーザー処理が基材の表面の少なくとも1つのターゲット化された領域に適用され、そのような領域は、例えば、センチメートルサイズである。
【0113】
持続時間50fs及びフルエンス0.1J/cmの100回のパルスが、1kHzの周波数で、照射点ごとに印加される。処理すべき領域は、例えば、電動回転台を使用してビームによって走査される。
【0114】
図3は、その一部11aが上記の本発明の実装形態の第1の例による方法で処理された基材11の表面のSEM図を示す。
【0115】
図3Aでは、照射された一部11aは、約30μmの幅を有し、どちらの端部(図3Aの上部及び底部)でも、表面は、本発明による方法を受けていない。
【0116】
図3Bは、図3Aの詳細を示す。
【0117】
この図は、基材の表面の照射によって、周期的起伏22(LIPPS-レーザー誘発周期表面構造)及びナノ粒子12を含むナノ構造が生成されたことを示す。
【0118】
起伏22の空間周期性は、処理される材料及び使用されるレーザーの照射パラメータに従って、一般に、200nmから1000nmの間である。
【0119】
ここで、起伏22は、約300nmの平均高さ(谷の底部から隣接稜線の間で測定)及び約500nmの横方向の特徴サイズ(厚さ)を有する。
【0120】
ここで、ナノ粒子12は、より特定的には、起伏22上、特に起伏22の稜線上に存在する。
【0121】
ナノ粒子は、例えば、10nmから200nmの間の特徴サイズ(例えば、平均直径)を有し、例えば、結晶化されている。ここで、これらは、約50nmの特徴サイズを有する。
【0122】
図4及び図5は、図3の基材の断面を示す。
【0123】
図4では、図4Aは、TEM(透過型電子顕微鏡)像を示し、図4Bは、EDS(エネルギー分散分光法)マッピングを示し、画像4C、4D、及び4Eは、Cu、Zr、及びOの存在をそれぞれ示す。
【0124】
図5は、起伏22の上部をより詳細に示す。図5Aは、起伏22の上部のTEM像を示し、図5Bは、図5AのEDSマッピングを示し、像5C、5D、及び5Eは、Cu、Zr、及びOの化学マッピングをそれぞれ与える。
【0125】
これらの図4及び図5によると、起伏がベース材料(ZrCu層)から本質的に形成されており、一方で、起伏の上部が約100ナノメートルのZrOの層を含むことが明らかである。最終的に、純粋な結晶化したCuのナノ粒子は、このZrO層に部分的に固定されて、起伏上に存在する。
【0126】
図5は、起伏の上部をより詳細に示し、ZrOの薄層上のCuナノ粒子(例えば、図5C)をより明確に示す(Oの存在は、図5Eでより明らかである)。更に、図5bは、ZrOの薄層が約130nmの厚さを持ち、一方で、Cuナノ粒子が約60nmの厚さの層を形成することを示す。
【0127】
したがって、上記の方法によって、更にZrOの薄層によって保護された、金属部品の表面上のCuナノ粒子を生成することが可能になる。したがって、(ナノ構造による)触媒、抗微生物、プラズモニック、疎水性の機能を、処理される部品に追加することができ、潜在的な応用がこれらの機能に関連付けられる。
【0128】
(実施例2:原子比の効果及び材料中に存在する元素の数)
本発明の実装形態による方法の効果は、Zr及びCuをベースとする他の非晶質基材の場合に、例えば、二元合金ZrCu1-x(式中、xは、0.35~0.65の間である)、三元合金ZrCu1-x-yTa(xの値の範囲については同じであり、yは0.15未満)、又はZr52.5Al10Cu27NiTi2.5等のより複雑な合金の場合に得ることができる。
【0129】
基材を形成するために、これらの材料は、例えばマグネトロンカソードスパッタリングによって、求められる組成の固体ターゲット又はいくつかの固体ターゲットのいずれかの薄層の形態で作製されうる。第2のシナリオ(いくつかのターゲットの共スパッタリング)では、異なるターゲット上に印加される電力は、そのようにして生成された層について求められる組成を得るように調節される。したがって、合金ZrCu1-x-yTaを生成するためには、Zr、Cu、及びTaそれぞれの3つのスパッタリングターゲットを使用することができ、これらのターゲット間の電力比は、求められるx及びyの比に従って調節される。
【0130】
レーザー照射パラメータは、ナノ構造化(ナノ粒子、及び任意選択的に起伏)及び化学偏析効果を得るために、合金の組成に応じて調節される。
【0131】
これらの異なるシナリオでは、レーザー照射処理後に、合金の表面上でのCuナノ粒子の形成が観察され、そのサイズ及び数は、基材の合金中のCuの割合に依存する。
【0132】
非晶質のままである強い傾向を有する合金、例えば、Zr52.5Al10Cu27NiTi2.5又はZr41.2Ti13.8Cu12.5Ni10Be22.5の組成の複雑な合金は、非晶質状態で、(限られた寸法の)塊状固体形態で得ることができる。
【0133】
レーザー照射は、上記と同じプロトコルによって塊状固体上で直接実施することができ、同じ又は同一の材料の層の結果と同様の結果が得られる。
【0134】
その化学的性質が以下に見られる(異なる化学的性質の支持体、又は均質な材料)、処理された材料の表面上で局所化された加熱効果を誘発する超短レーザー照射は、処理及びその効果に影響を与えない。
【0135】
(実施例3:基材の合金元素の化学的性質及び照射環境の効果)
上記のような組成の他の二元合金の基材を機能化することができる。
【0136】
したがって、Ti0.5Cu0.5の基材の照射によって、Cuナノ粒子の生成、Zr0.66Ag0.33の基材の照射ではAgナノ粒子の生成、及びZr0.5Au0.5の基材の照射ではAuナノ粒子の生成がもたらされる。
【0137】
基材の材料及びレーザー処理環境に応じて、生成されたナノ粒子は、合金の不動態化可能な元素によって形成された酸化物の上方に配置されて酸化物に固定されるか、又はこの酸化物の薄層の下方(又はその中)に配置されるかのいずれかであり得る。
【0138】
したがって、第1のシナリオは、例えば、Zr0.5Cu0.5合金の空気中でのレーザー処理によって得られ、生成されたCuナノ粒子は、表面上にあり、ZrOの層に固定されている。次いで、酸素が、再通気後の材料の不動態化から生じる。これは、Ti0.5Cu0.5合金の不活性環境中でのレーザー処理にも当てはまり、Cuナノ粒子は、TiOの層に固定されている。
【0139】
第2のシナリオは、例えば、Ti0.5Cu0.5合金の空気中でのレーザー処理の場合に得られ、Cuナノ粒子は、TiOの非常に薄い層の下方に配置されている。
【0140】
これは、例えば、図6によって示されている。
【0141】
この図において、図6Aは、Si支持体上のTi0.5Cu0.5基材の断面のTEM像を示し、図6Bは、図6Aの詳細のEDSマッピングを示し、像6C、6D、6E、及び6Fは、Cu、Ti、TiCu、及びOの存在をそれぞれ示す。
【0142】
図6BのEDSマッピングは、TiOの薄層の下方の一連のCuナノ粒子を示す。
【0143】
これらの図は、Ti0.5Cu0.5合金の空気中でのレーザー処理後に、Cuナノ粒子が、基材の表面上に形成されたTiOの薄層中又はその下方に配置されていることを示す。
【0144】
(実施例4:処理された材料の結晶性の効果)
処理された基材は、上記のZrCu1-x、ZrCu1-x-yTa、Zr52.5Al10Cu27NiTi2.5、Ti0.5Cu0.5の非晶質合金とは異なり、非晶質でなくてもよい。
【0145】
レーザー処理前にX線回折結晶相シグネチャ(X-ray diffraction crystalline phase signatures)を有するZr0.66Ag0.33及びZr0.5Au0.5の基材は、レーザー照射後に同じ表面ナノ粒子生成及び化学偏析効果を有し得る。
【0146】
これは、例えば、図7によって示されている。
【0147】
この図において、図7Aは、Si支持体上のZr0.66Ag0.33基材の断面のTEM像を示し、図7Bは、図7Aの詳細のEDSマッピングを示し、像7C、7D、7E、及び7Fは、Ag、Zr、ZrAg、及びOの存在をそれぞれ示す。
【0148】
図7BのEDSマッピングは、合金Zr0.66Ag0.33の空気中でのレーザー処理後に、Agナノ粒子が、ナノ結晶合金Zr0.66Ag0.33の表面上に形成されたZrOの層上に形成されることを示す。
【符号の説明】
【0149】
1 基材
2 ナノ粒子
10 部品
11 基材
11a 照射された一部
12 ナノ粒子
13 支持体
22 起伏
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】