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特表2024-537954繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 2/06 20060101AFI20241010BHJP
   D01F 6/60 20060101ALI20241010BHJP
   D01F 6/62 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
D01F2/06 Z
D01F6/60 311Z
D01F6/62 302Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572660
(86)(22)【出願日】2022-10-09
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 CN2022123963
(87)【国際公開番号】W WO2024065863
(87)【国際公開日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】202211217105.3
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520409833
【氏名又は名称】青島邦特生態紡織科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO BANGTE ECOLOGICAL TEXTILE TECHNOLOGY CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】Room 715,Poly Center,No.8 Qingda san Road,Laoshan District,Qingdao,Shandong Province,China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】山 伝雷
(72)【発明者】
【氏名】姜 明亮
(72)【発明者】
【氏名】劉 殷
(72)【発明者】
【氏名】楊 金宇
【テーマコード(参考)】
4L035
【Fターム(参考)】
4L035EE08
4L035EE11
4L035EE13
4L035JJ05
4L035JJ14
4L035JJ18
4L035JJ26
4L035KK10
(57)【要約】
本発明は、繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法であって、改質植物源粉末の作製ステップと、改質ナノシリカの作製ステップと、改質高分子マトリックスの作製ステップと、改質共同混合ステップとを備える繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法を提供する。改質された高分子マトリックスと改質植物源粉末との間には、分子間力がより強くなる。その結果、ポリブチレンサクシネートにおける植物源粉末中の活性物質の付着力が強化され、複合材料の作製や紡糸過程中の損失が減少される一方、複合材料の熱安定性及び耐酸・アルカリ性がある程度に向上される。その結果、作製された複合材料は、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリプロピレン、スパンデックス、リヨセル、モダール、アセテート繊維、ビスコース繊維、キュプラ繊維などの複数種類の繊維の紡糸工程に適用可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法であって、
改質植物源粉末の作製ステップと、改質ナノシリカの作製ステップと、改質高分子マトリックスの作製ステップと、改質共同混合ステップとを備え、
前記改質植物源粉末の作製ステップは、
植物源粉末を無水エタノールに置き撹拌した後、濾過し、濾液を集めて植物源溶液を取得する手順と、
前記植物源溶液に界面改質剤を添加して改質することにより、改質植物源粉末を取得する手順と、
を備え、
前記界面改質剤は、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン及び3-(2,3-エポキシプロピル)プロピルトリオキシシランであり、
前記γ-アミノプロピルトリエトキシシラン及び3-(2,3-エポキシプロピル)プロピルトリオキシシランは、質量比が1.5~2.5:0.2~0.8である、
ことを特徴とする繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法。
【請求項2】
前記改質の条件は、150~200W、20~40℃の条件で5~15min超音波処理した後、pHを7.5~8.5に調整し、温度を50~60℃に上昇して10~20min反応させ、室温まで冷却し、無水エタノールを蒸発し、55~75℃で十分に乾燥することである、
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法。
【請求項3】
前記界面改質剤の添加量は、植物源粉末の質量の0.5%~1%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法。
【請求項4】
前記改質ナノシリカの作製ステップは、
50~60℃の条件下で、ナノシリカをN-メチルピロリドンに添加し、80~100kHzの超音波周波数で20~30min超音波分散し、シリコン含有不飽和改質剤及び安定化助剤をさらに添加し、10~20h反応させた後、遠心分離、エタノール洗浄、真空乾燥を経て中間体を取得する手順と、
前記中間体を蒸留水に置き、100~120kHzで15~25min超音波処理し、窒素保護の条件でエチレングリコールジメタクリレートを添加し、温度を80~100℃に上昇し、過酸化安息香酸tert-ブチルエステルを添加して2~6h反応させ、遠心分離、水洗、乾燥を経て改質ナノシリカを取得する手順と、
を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法。
【請求項5】
前記ナノシリカとシリコン含有不飽和改質剤と安定化助剤との質量比は、90~120:0.5~1.5:0.01~0.05であり、
前記中間体とエチレングリコールジメタクリレートと過酸化安息香酸tert-ブチルエステルとの質量比は、60~80:90~100:1~2である、
ことを特徴とする請求項4に記載の繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法。
【請求項6】
前記シリコン含有不飽和改質剤は、質量比が0.4~1.2:1.5~2であるビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シランとγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランとの混合物であり、
前記安定化助剤は、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、p-ヒドロキシアニソール、及び1,1-ジフェニル-2-トリニトロフェニルヒドラジンの1種類又は複数種類の組み合わせを含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法。
【請求項7】
前記改質高分子マトリックスの作製ステップは、
ポリブチレンサクシネートにポリエチレングリコールとカチオン性デンプンと改質ナノシリカとの混合物を添加し、1500~2500r/minの条件で十分に混合した後、ミキサーに置いて溶融・共同混合することにより、前記改質高分子マトリックスを取得する手順を備え、
前記ポリブチレンサクシネートとポリエチレングリコールとカチオン性デンプンと改質ナノシリカとの質量比は、40~50:10~20:4~8:1~5である、
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法。
【請求項8】
前記改質共同混合ステップは、
前記改質植物源粉末及び前記改質高分子マトリックスを550~750r/minの回転速度の条件で、比率で共同混合し、4~8℃/minの速度で温度を110~120℃までゆっくり上昇して6~10h反応させた後、乾燥的な改質助剤を添加し、温度を130~140℃まで上昇し続け、10~20min溶融・共同混合し、押出、冷却を経て、前記繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料を取得する手順を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法。
【請求項9】
前記改質植物源粉末の添加量は、改質高分子マトリックスの質量の4~12%である、
ことを特徴とする請求項8に記載の繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法。
【請求項10】
前記改質高分子マトリックスと改質助剤との質量比は、4~8:2~6であり、
前記改質助剤は、質量比が2~4:0.5~1.5である微結晶セルロースとポリヒドロキシブチレートとの混合物である、
ことを特徴とする請求項8に記載の繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子複合材料の技術分野に関し、具体的には、繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維は、天然繊維と人工合成繊維との2種類に分類される。そのうち、天然繊維は、吸湿性、通気性及び着心地が良いなどの利点を有し、人工合成繊維は、耐摩耗性が強く、生地がスムーズであり、変形しにくいなどの利点を有する。人々の生活水準の向上及び概念の変化に伴い、繊維のヘルスケア機能への要求がますます高まるとともに、グリーン・環境保護の概念にも注目されている。また、植物は、コストが低くて安全で環境に優しいため、多くの企業は、植物抽出物を繊維に添加して天然の機能性を繊維に与える。
【0003】
特許番号が「CN201710846179.6」であり発明の名称が「植物源の抗菌機能付きの融点の異なる二成分系着色ポリエステル繊及びその作製方法」である中国特許には、ポリエステル繊維に植物抽出物を添加する植物源ポリエステルが提供されている。しかし、ポリエステルチップと植物抽出物との混合・押出中、温度が高すぎるため、多量の植物抽出物が失活し、植物活性成分が損失され、その結果、生産コストが高くなってしまう。
【0004】
特許番号が「CN201310140966.0」であり発明の名称が「植物源の抗菌機能及び芳香香り付きのビスコース繊維及びその作製方法」である中国特許には、植物源の抗菌剤及び芳香剤をビスコース繊維に添加することが記載されている。そのうち、植物源の抗菌剤はペパーミント抽出物とイサティス根抽出物との混合粉末であり、芳香剤はマイクロカプセルにより被覆されるペパーミント油である。しかし、抽出物は、粒径が小さすぎるため、紡糸原液において凝集・沈殿する現象が発生しやすいため、抽出物を繊維に直接添加すると、繊維の力学的性能がある程度に影響されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術に存在する問題を解決するために、繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法を提供し、以下のような発明の目的を達成する。
【0006】
1.繊維の紡糸中に植物源の活性物質が大量に損失されるという問題を解決し、小粒径の植物活性顆粒がロードマトリックス中に凝集しやすくて不均一に分散する現象を回避し、
【0007】
2.熱安定性、耐酸・耐アルカリ性に優れ、各種の繊維の紡糸工程に適され、用途が広く、工業レベルの大量生産、販売及びプロモーションに適された多機能植物源の複合材料を作製し、
【0008】
3.さまざまな種類の繊維マトリックスに対する付着効果が優れ、植物源の活性成分の損失が軽減され、繊維に自然で持続的な生物学的活性が与えられるとともに繊維の力学的性能が改善される多機能植物源の複合材料を作製する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の技術案を採用した。
【0010】
繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法であって、改質植物源粉末の作製ステップS1と、改質ナノシリカの作製ステップS2と、改質高分子マトリックスの作製ステップS3と、改質共同混合ステップS4とを備える繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法。
S1.改質植物源粉末の作製
S11.粒径が50~100nmである植物源粉末を無水エタノールに置き、10~20min十分に撹拌した後、濾過し、濾液を集めて植物源溶液を取得し、
【0011】
S12.S11に記載の植物源溶液に界面改質剤を添加し、150~200W、20~40℃で5~15min超音波処理した後、pHを7.5~8.5に調整し、温度を50~60℃に上昇して10~20min反応させ、室温まで冷却し、無水エタノールを蒸発し、55~75℃で十分に乾燥することにより、改質植物源粉末を取得する。
ただし、S11に記載の植物源粉末は植物抽出物であり、その具体的な種類が限定されず、本システムに適用可能である。
【0012】
好ましくは、S12に記載の界面改質剤は、質量比が(1.5~2.5):(0.2~0.8)であるγ-アミノプロピルトリエトキシシラン及び3-(2,3-エポキシプロピル)プロピルトリオキシシランであり、前記界面改質剤の添加量は、植物源粉末の質量の0.5%~1%である。
S2:改質ナノシリカの作製
【0013】
S21:50~60℃の条件下で、ナノシリカをN-メチルピロリドンに添加し、80~100kHzの超音波周波数で20~30min超音波分散し、シリコン含有不飽和改質剤及び安定化助剤をさらに添加し、10~20h反応させた後、遠心分離、エタノール洗浄、真空乾燥を経て中間体を取得し、
【0014】
S22:S21に記載の中間体を蒸留水に置き、100~120kHzで15~25min超音波処理し、窒素保護の条件でエチレングリコールジメタクリレートを添加し、温度を80~100℃に上昇し、過酸化安息香酸tert-ブチルエステルを添加して2~6h反応させ、遠心分離、水洗、乾燥を経て改質ナノシリカを取得する。
【0015】
好ましくは、S21に記載のナノシリカとシリコン含有不飽和改質剤と安定化助剤との質量比は、(90~120):(0.5~1.5):(0.01~0.05)である。
【0016】
さらに、前記シリコン含有不飽和改質剤は、質量比が(0.4~1.2):(1.5~2)であるビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シランとγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランとの混合物である。
【0017】
さらに、前記安定化助剤は、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、p-ヒドロキシアニソール、及び1,1-ジフェニル-2-トリニトロフェニルヒドラジンの1種類又は複数種類の組み合わせを含む。
【0018】
好ましくは、S22に記載の中間体とエチレングリコールジメタクリレートと過酸化安息香酸tert-ブチルエステルとの質量比は、(60~80):(90~100):(1~2)である。
S3:改質高分子マトリックスの作製
【0019】
ポリブチレンサクシネートにポリエチレングリコールとカチオン性デンプンと改質ナノシリカとの混合物を添加し、1500~2500r/minの条件で十分に混合した後、ミキサーに置いて溶融・共同混合することにより、前記改質高分子マトリックスを取得する。
【0020】
好ましくは、S3に記載のポリブチレンサクシネートとポリエチレングリコールとカチオン性デンプンと改質ナノシリカとの質量比は、(40~50):(10~20):(4~8):(1~5)である。
【0021】
好ましくは、S3に記載のポリエチレングリコールは、水酸基価が170~208mgKOH/g、分子量が540~660であり、前記溶融・共同混合の温度は、180~200℃である。
S4:改質共同混合
【0022】
S12に記載の改質植物源粉末及びS3に記載の改質高分子マトリックスを550~750r/minの回転速度の条件で、比率で共同混合し、4~8℃/minの速度で温度を110~120℃までゆっくり上昇して6~10h反応させた後、乾燥的な改質助剤を添加し、温度を130~140℃まで上昇し続け、10~20min溶融・共同混合し、押出、冷却を経て、前記繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料を取得する。
【0023】
好ましくは、S4に記載の改質植物源粉末の添加量は、改質高分子マトリックスの質量の4~12%であり、前記改質高分子マトリックスと改質助剤との質量比は、(4~8):(2~6)であり、前記改質助剤は、質量比が(2~4):(0.5~1.5)である微結晶セルロースとポリヒドロキシブチレートとの混合物である。
【0024】
前記多機能植物源の複合材料は、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリプロピレン、スパンデックス、リヨセル、モダール、アセテート繊維、ビスコース繊維、キュプラ繊維などの紡糸過程に適用可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、上記技術案を採用することにより、以下のような技術効果を達成した。
【0026】
1.本発明では、質量比が(1.5~2.5):(0.2~0.8)であるγ-アミノプロピルトリエトキシシラン及び3-(2,3-エポキシプロピル)プロピルトリオキシシランによって改質植物源粉末を改質することにより、小粒径の植物源粉末と高分子マトリックスとの間の界面性能を改善し、ポリブチレンサクシネートにおける植物源粉末の分散均一度を向上させ、小粒径の植物活性顆粒がロードマトリックス中に凝集しやすくて不均一に分散する現象を軽減することができる。
【0027】
2.ナノシリカをシリコン含有不飽和改質剤に添加すると、シリコン含有不飽和改質剤とナノシリカの表面のシラノールとを相互作用することにより、ナノシリカの界面性能を改善することができる。また、安定化添加剤を添加することにより、改質をより安定に進行させ、改質反応の進行へある程度に影響するシリコン含有不飽和改質剤間の架橋を回避することができる。中間体にエチレングリコールジメタクリレート及び過酸化安息香酸tert-ブチルエステルを添加することにより、シリコン含有不飽和改質剤の一端をナノシリカに接続させ、もう一端をエチレングリコールジメタクリレートに接続させ、ナノシリカの表面にエチレングリコールジメタクリレートを被覆させて、ナノシリカに対する改質を完了させる。
【0028】
3.本発明では、改質された高分子マトリックスと改質植物源粉末との間には、分子間力がより強くなる。その結果、ポリブチレンサクシネートにおける植物源粉末中の活性物質の付着力が強化され、複合材料の作製や紡糸過程中の損失が減少され、検定によると、植物源活性成分の損失率が3%未満である一方、複合材料の熱安定性及び耐酸・アルカリ性がある程度に向上される。その結果、作製された複合材料は、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリプロピレン、スパンデックス、リヨセル、モダール、アセテート繊維、ビスコース繊維、キュプラ繊維などの複数種類の繊維の紡糸工程に適用可能である。この複合材料を上記繊維に添加することにより、優れた抗菌効果を奏し、黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンス、及び大腸菌に対する抗菌率がいずれも95%以上であり(「GB/T20944.3-2008振動法」により検定される。)、100回水洗濯後の抗菌性損失率が1%未満(平均値)であり、防ダニ効果が優れており、ダニ回避率が99%まで高くなり(「GB/T24253-2009 紡織物 防ダニ性能評価」により検定される。)、100回水洗濯後のダニ回避損失率が2%未満(平均値)であり、帯電防止効果がよく、表面抵抗率がいずれも1×10Ω・cm未満であり(「GB/T24249-2009帯電防止清潔織物」により検定される。)、改質助剤を添加するにより、改質植物源粉末を改質高分子マトリックスにより均一に付着させるともに複合材料の可塑性を向上させる。繊維マトリックスに添加することにより、繊維との適合性がよくなるため、繊維の力学性能が向上される。
【0029】
4.本発明で作製される多機能植物源の複合材料は、化学繊維の強度、分解可能性、抗菌、防ダニ、帯電防止等の効果を向上させる上に、繊維表面における各種の染料の作用力をさらに高め、化学繊維の染色性を向上させることができ、また、繊維の染色温度を低下させることができ、20~40℃でポリエステル及びナイロンに対して優れた染色効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに説明する。
実施例1 繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法
【0031】
繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法は、改質植物源粉末の作製ステップS1と、改質ナノシリカの作製ステップS2と、改質高分子マトリックスの作製ステップS3と、改質共同混合ステップS4とを備える。
S1.改質植物源粉末の作製
S11.粒径が100nmである植物源粉末を無水エタノールに置き20min十分に撹拌した後、濾過し、濾液を集めて植物源溶液を取得し、
【0032】
S12.S11に記載の植物源溶液に界面改質剤を添加し、200W、40℃で5~15min超音波処理した後、pHを8.5に調整し、温度を60℃に上昇して20min反応させ、室温まで冷却し、無水エタノールを蒸発し、75℃で十分に乾燥することにより、改質植物源粉末を取得する。
S11に記載の植物源粉末は、緑茶抽出物とスイカズラ抽出物とペパーミント抽出物と海藻抽出物との混合物である。
【0033】
ただし、S12に記載の界面改質剤は、質量比が2.5:0.8であるγ-アミノプロピルトリエトキシシラン及び3-(2,3-エポキシプロピル)プロピルトリオキシシランであり、前記界面改質剤の添加量は、植物源粉末の質量の1%である。
S2:改質ナノシリカの作製
【0034】
S21:60℃の条件下で、ナノシリカをN-メチルピロリドンに添加し、100kHzの超音波周波数で30min超音波分散し、シリコン含有不飽和改質剤及び安定化助剤をさらに添加し、20h反応させた後、遠心分離、エタノール洗浄、真空乾燥を経て中間体を取得し、
【0035】
S22:S21に記載の中間体を蒸留水に置き、120kHzで25min超音波処理し、窒素保護の条件でエチレングリコールジメタクリレートを添加し、温度を100℃に上昇し、過酸化安息香酸tert-ブチルエステルを添加して6h反応させ、遠心分離、水洗、乾燥を経て改質ナノシリカを取得する。
S21に記載のナノシリカとシリコン含有不飽和改質剤と安定化助剤との質量比は、120:1.5:0.05である。
【0036】
前記シリコン含有不飽和改質剤は、質量比が1.2:2であるビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シランとγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランとの混合物である。
【0037】
前記安定化助剤は、質量比が1:1である2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールとp-ヒドロキシアニソールとを含む。
S22に記載の中間体とエチレングリコールジメタクリレートと過酸化安息香酸tert-ブチルエステルとの質量比は、80:100:2である。
S3:改質高分子マトリックスの作製
【0038】
ポリブチレンサクシネートにポリエチレングリコールとカチオン性デンプンと改質ナノシリカとの混合物を添加し、2500r/minの条件で十分に混合した後、ミキサーに置いて溶融・共同混合することにより、前記改質高分子マトリックスを取得する。
S3に記載のポリブチレンサクシネートとポリエチレングリコールとカチオン性デンプンと改質ナノシリカとの質量比は、50:20:8:5である。
S3に記載のポリエチレングリコールは、水酸基価が208mgKOH/g、分子量が660であり、前記溶融・共同混合の温度は200℃である。
S4:改質共同混合
【0039】
S12に記載の改質植物源粉末及びS3に記載の改質高分子マトリックスを750r/minの回転速度の条件で、比率で共同混合し、8℃/minの速度で温度を120℃までゆっくり上昇して10h反応させた後、乾燥的な改質助剤を添加し、温度を140℃まで上昇し続け、20min溶融・共同混合し、押出、冷却を経て、前記繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料を取得する。
前記改質植物源粉末の添加量は、改質高分子マトリックスの質量の12%である。
【0040】
S4に記載の改質高分子マトリックスと改質助剤との質量比は、8:6であり、前記改質助剤は、質量比が4:1.5である微結晶セルロースとポリヒドロキシブチレートとの混合物である。
実施例2 繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法
【0041】
繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法は、改質植物源粉末の作製ステップS1と、改質ナノシリカの作製ステップS2と、改質高分子マトリックスの作製ステップS3と、改質共同混合ステップS4とを備える。
S1.改質植物源粉末の作製
S11.粒径が70nmである植物源粉末を無水エタノールに置き15min十分に撹拌した後、濾過し、濾液を集めて植物源溶液を取得し、
【0042】
S12.S11に記載の植物源溶液に界面改質剤を添加し、180W、30℃で10min超音波処理した後、pHを8に調整し、温度を55℃に上昇して15min反応させ、室温まで冷却し、無水エタノールを蒸発し、65℃で十分に乾燥することにより、改質植物源粉末を取得する。
S11に記載の植物源粉末は、緑茶抽出物とスイカズラ抽出物とペパーミント抽出物と海藻抽出物との混合物である。
【0043】
ただし、S12に記載の界面改質剤は、質量比が2:0.5であるγ-アミノプロピルトリエトキシシラン及び3-(2,3-エポキシプロピル)プロピルトリオキシシランであり、前記界面改質剤の添加量は、植物源粉末の質量の0.8%である。
S2:改質ナノシリカの作製
【0044】
S21:55℃の条件下で、ナノシリカをN-メチルピロリドンに添加し、90kHzの超音波周波数で25min超音波分散し、シリコン含有不飽和改質剤及び安定化助剤をさらに添加し、15h反応させた後、遠心分離、エタノール洗浄、真空乾燥を経て中間体を取得し、
【0045】
S22:S21に記載の中間体を蒸留水に置き、110kHzで20min超音波処理し、窒素保護の条件でエチレングリコールジメタクリレートを添加し、温度を90℃に上昇し、過酸化安息香酸tert-ブチルエステルを添加して4h反応させ、遠心分離、水洗、乾燥を経て改質ナノシリカを取得する。
S21に記載のナノシリカとシリコン含有不飽和改質剤と安定化助剤との質量比は、110:1:0.03である。
【0046】
前記シリコン含有不飽和改質剤は、質量比が0.8:1.7であるビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シランとγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランとの混合物である。
前記安定化助剤は、質量比が1:1であるp-ヒドロキシアニソールと1,1-ジフェニル-2-トリニトロフェニルヒドラジンとを含む。
S22に記載の中間体とエチレングリコールジメタクリレートと過酸化安息香酸tert-ブチルエステルとの質量比は、70:95:1.5である。
S3:改質高分子マトリックスの作製
【0047】
ポリブチレンサクシネートにポリエチレングリコールとカチオン性デンプンと改質ナノシリカとの混合物を添加し、2000r/minの条件で十分に混合した後、ミキサーに置いて溶融・共同混合することにより、前記改質高分子マトリックスを取得する。
【0048】
S3に記載のポリブチレンサクシネートとポリエチレングリコールとカチオン性デンプンと改質ナノシリカとの質量比は、45:15:6:3である。
S3に記載のポリエチレングリコールは、水酸基価が190mgKOH/g、分子量が600であり、前記溶融・共同混合の温度は190℃である。
S4:改質共同混合
【0049】
S12に記載の改質植物源粉末及びS3に記載の改質高分子マトリックスを650r/minの回転速度の条件で、比率で共同混合し、6℃/minの速度で温度を115℃までゆっくり上昇して8h反応させた後、乾燥的な改質助剤を添加し、温度を135℃まで上昇し続け、15min溶融・共同混合し、押出、冷却を経て、前記繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料を取得する。
前記改質植物源粉末の添加量は、改質高分子マトリックスの質量の9%である。
【0050】
S4に記載の改質高分子マトリックスと改質助剤との質量比は、6:4であり、前記改質助剤は、質量比が3:1である微結晶セルロースとポリヒドロキシブチレートとの混合物である。
実施例3 繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法
【0051】
繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料の作製方法は、改質植物源粉末の作製ステップS1と、改質ナノシリカの作製ステップS2と、改質高分子マトリックスの作製ステップS3と、改質共同混合ステップS4とを備える。
S1.改質植物源粉末の作製
S11.粒径が50nmである植物源粉末を無水エタノールに置き10min十分に撹拌した後、濾過し、濾液を集めて植物源溶液を取得し、
【0052】
S12.S11に記載の植物源溶液に界面改質剤を添加し、150W、20℃で5min超音波処理した後、pHを7.5に調整し、温度を50℃に上昇して10min反応させ、室温まで冷却し、無水エタノールを蒸発し、55℃で十分に乾燥することにより、改質植物源粉末を取得する。
S11に記載の植物源粉末は、緑茶抽出物とスイカズラ抽出物とペパーミント抽出物と海藻抽出物との混合物である。
【0053】
ただし、S12に記載の界面改質剤は、質量比が1.5:0.2であるγ-アミノプロピルトリエトキシシラン及び3-(2,3-エポキシプロピル)プロピルトリオキシシランであり、前記界面改質剤の添加量は、植物源粉末の質量の0.5%である。
S2:改質ナノシリカの作製
【0054】
S21:50℃の条件下で、ナノシリカをN-メチルピロリドンに添加し、80kHzの超音波周波数で20min超音波分散し、シリコン含有不飽和改質剤及び安定化助剤をさらに添加し、10h反応させた後、遠心分離、エタノール洗浄、真空乾燥を経て中間体を取得し、
【0055】
S22:S21に記載の中間体を蒸留水に置き、100kHzで15min超音波処理し、窒素保護の条件でエチレングリコールジメタクリレートを添加し、温度を80℃に上昇し、過酸化安息香酸tert-ブチルエステルを添加して2h反応させ、遠心分離、水洗、乾燥を経て改質ナノシリカを取得する。
S21に記載のナノシリカとシリコン含有不飽和改質剤と安定化助剤との質量比は、90:0.5:0.01である。
【0056】
前記シリコン含有不飽和改質剤は、質量比が0.4:1.5であるビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シランとγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランとの混合物である。
前記安定化助剤は、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールである。
S22に記載の中間体とエチレングリコールジメタクリレートと過酸化安息香酸tert-ブチルエステルとの質量比は、60:90:1である。
S3:改質高分子マトリックスの作製
【0057】
ポリブチレンサクシネートにポリエチレングリコールとカチオン性デンプンと改質ナノシリカとの混合物を添加し、1500r/minの条件で十分に混合した後、ミキサーに置いて溶融・共同混合することにより、前記改質高分子マトリックスを取得する。
S3に記載のポリブチレンサクシネートとポリエチレングリコールとカチオン性デンプンと改質ナノシリカとの質量比は、40:10:4:1である。
S3に記載のポリエチレングリコールは、水酸基価が170mgKOH/g、分子量が540であり、前記溶融・共同混合の温度は180℃である。
S4:改質共同混合
【0058】
S12に記載の改質植物源粉末及びS3に記載の改質高分子マトリックスを550r/minの回転速度の条件で、比率で共同混合し、4℃/minの速度で温度を110℃までゆっくり上昇して6h反応させた後、乾燥的な改質助剤を添加し、温度を130℃まで上昇し続け、10min溶融・共同混合し、押出、冷却を経て、前記繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料を取得する。
前記改質植物源粉末の添加量は、改質高分子マトリックスの質量の4%である。
【0059】
S4に記載の改質高分子マトリックスと改質助剤との質量比は、4:2であり、前記改質助剤は、質量比が2:0.5である微結晶セルロースとポリヒドロキシブチレートとの混合物である。
【0060】
実施例1~3で作製された繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料を、それぞれビスコース繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維に3%の添加量で添加してそれらの性能を測定する。具体的には、表1、2、3を参照する。
【0061】
表1
【0062】
表2
【0063】
表3
【0064】
測定標準
力学性能:「GB/T3923.1-2013紡織物、織物の引張性能、破断強度及び破断伸び率の測定試料法」。
染色均一度:「ビスコースフィラメントの染色均一度の試験及び評価(FZ/T50015-2009)」により、グレーカードのレベルを測定する。
洗濯に対する色堅牢度:「GB-T/3921-2008紡織物の色堅牢度試験、石鹸洗濯に対する色堅牢度」。
抗菌率:「GB/T20944.3-2008振動法」。
ダニ回避率:「GB/T24253-2009紡織物の防ダニ性能に対する評価」。
表面抵抗率:「GB/T24249-2009帯電防止清潔織物」。
【0065】
表から分かるように、実施例1~3で作製された繊維紡糸用の多機能植物源の複合材料を、ビスコース繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維に添加することにより、繊維の力学性能が優れ、紡糸過程中に植物源の活性成分の損失率が低くなり、繊維の染色性能及び洗濯に対する色堅牢度がよく、且つ抗菌率がよく、黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンス、及び大腸菌に対する抗菌率がいずれも95%以上であり、100回水洗濯後の抗菌性損失率が1%未満(平均値)であり、防ダニ効果が優れており、ダニ回避率が99%まで高くなり、100回水洗濯後のダニ回避損失率が2%未満(平均値)であり、帯電防止効果がよく、表面抵抗率がいずれも1×10Ω・cm未満である。
【0066】
上記から分かるように、本発明で作製される多機能植物源の複合材料は、良好な熱安定性及び耐酸・アルカリ性を有し、複合材料の作製過程及び紡糸過程中での植物源の活性成分の損失を減少し、化学繊維をある程度に強化させて繊維機能性を与え、繊維表面における各種の染料の作用力をさらに高め、化学繊維の染色性を向上させ、また、繊維の染色温度を低下させることができ、20~40℃でポリエステル及びナイロンに対して優れた染色効果を奏することができる。
比較例1
【0067】
代表的な実施例2を選択し、質量比が3:0.1及び0.1:3であるγ-アミノプロピルトリエトキシシラン及び3-(2,3-エポキシプロピル)プロピルトリオキシシランをそれぞれに採用して改質植物源粉末を改質し、その他を実施例2と一致させる。改質共同混合時、比較例1で取得された改質植物源粉末は、改質高分子マトリックスにおいて凝集及び分散の不均一現象を依然として発生した。
比較例2
【0068】
代表的な実施例2を選択し、添加される界面改質剤の量を0とし、その他を実施例2と一致させる。比較例2としては、他の作製工程を変更させない場合、植物源粉末を高分子マトリックスと共同混合させる過程中に、凝集及び分散の不均一現象も発生した。これから分かるように、界面改質剤は、植物源粉末と高分子マトリックスとの混合性能を向上させ、改質植物源粉末と高分子全体との混合をより均一にさせ、さらに最終製品の品質をより安定させる。
比較例3
【0069】
代表的な実施例2を選択し、高分子マトリックスの作製ステップを除去し、改質植物源粉末とポリブチレンサクシネートとを直接に改質・共同混合させ、その他を実施例2と一致させる。比較例3としては、作製された複合材料を、それぞれビスコース繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維に3%の添加量で添加してそれらの性能を測定する。具体的には、表4を参照する。
【0070】
表4
【0071】
これから分かるように、改質された高分子マトリックスと改質植物源粉末との間には、分子間力がより強くなる。その結果、ポリブチレンサクシネートにおける植物源粉末中の活性物質の付着力が強化され、複合材料の作製や紡糸過程中の損失が減少さる一方、複合材料の熱安定性及び耐酸・アルカリ性がある程度に向上され、繊維の力学性能及び染色性能も向上される。
比較例4
【0072】
代表的な実施例2を選択し、改質助剤ステップを除去し、その他を実施例2と一致させる。比較例4としては、作製された複合材料を、それぞれビスコース繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維に3%の添加量で添加してそれらの力学性能を測定する。具体的には、表5を参照する。
【0073】
表5
【0074】
改質助剤を添加するにより、改質植物源粉末を改質高分子マトリックスにより均一に付着させるともに複合材料の可塑性を向上させる。繊維マトリックスに添加することにより、繊維との適合性がよくなるため、繊維の力学性能が向上される。
本発明に記載の比率は、特に断らない限り、いずれも質量比であり、上記パーセンテージは質量パーセンテージであり、原料はいずれも市場から購入される。
【0075】
最後に、上記は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するためのものではなく、前述実施例を参照しながら本発明を詳細に説明したが、当業者にとっては、依然として前述実施例に記載の技術案を修正したりその一部の技術特徴を同等に置き換えたりしてもよい。本発明の精神及び原理でなされたあらゆる修正、同等置換、改善などは、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。


【国際調査報告】