(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】横に離間し、長手方向に延在するくさび当接面を有する切削インサート、工具ホルダ、及び切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/04 20060101AFI20241010BHJP
B23B 29/04 20060101ALI20241010BHJP
B23B 27/16 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B23B27/04
B23B29/04 A
B23B27/16 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517386
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 IL2022051098
(87)【国際公開番号】W WO2023079546
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アサド,シモン
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046EE15
3C046MM01
3C046PP00
(57)【要約】
突切り及び旋削作業のために使用される切削工具であって、切削インサートは、工具ホルダ内に解放可能に固着可能である。切削インサートは、インサート上面とインサート下面とを含み、上面及び下面の少なくとも一方は、2つの収束するインサート係合くさび面を有するインサート係合機構を含む。工具ホルダは、締結顎面とベース顎下面とを有するインサート受入れスロットを含み、締結顎面及びベース顎下面の少なくとも一方は、2つの収束するスロット係合くさび面を有するスロット係合機構を含む。組立て時、切削インサートは、インサート受入れスロット内に解放可能に締結される。少なくとも1つのインサート係合機構は、インサート係合くさび面及びスロット係合くさび面でのみ少なくとも1つのスロット係合機構に当接する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具(20)であって、前記切削工具(20)は、
インサート長手方向軸(A)を画定する方向で長手方向に細長い切削インサート(22)と、
締結部分(60)を備える工具ホルダ(24)と
を備え、前記切削インサート(22)は、
2つの対向するインサート端面(32)、及び前記インサート長手方向軸(A)回りで2つの対向する前記インサート端面(32)の間に延在するインサート外周面(30)であって、前記インサート外周面(30)は、細長い対向するインサート上面(26)及びインサート下面(28)と、2つの対向するインサート側面(33)とを備え、一体切削部分(34)を有する前記インサート端面(32)の少なくとも一方で前記インサート上面(26)及び前記インサート下面(28)を接続する、インサート端面(32)及びインサート外周面(30)と、
前記インサート長手方向軸(A)を含み、2つの対向する前記インサート側面(33)の間の中間を通過するインサート長手方向平面(P1)と、
前記インサート長手方向軸(A)を含み、前記インサート上面(26)と前記インサート下面(28)との間を通過するインサート中央平面(M)と、
前記インサート中央平面(M)に直交して向けられ、前記インサート長手方向平面(P1)内に含まれるインサート垂直軸(V)と、
前記インサート長手方向平面(P1)に直交して向けられ、前記インサート中央平面(M)内に含まれるインサート横軸(L)と、
前記インサート上面(26)及び前記インサート下面(28)の少なくとも一方に形成される少なくとも1つの細長いインサート係合機構(40)と
を備え、少なくとも1つの前記インサート係合機構(40)は、インサート係合機構長手方向軸(I)に沿って前記インサート端面(32)の間の方向で長手方向に延在し、
少なくとも1つの前記インサート係合機構(40)は、2つのインサート係合くさび面(46)を備え、2つの前記インサート係合くさび面(46)は、前記インサート係合機構長手方向軸(I)に沿って延在し、インサート係合鋭角(θ)を画定し、前記インサート係合鋭角(θ)は、
a)前記インサート係合角(θ)が内角であるように、2つの前記インサート側面(33)からの方向で外側に収束することによって、又は
b)前記インサート係合角(θ)が外角であるように、2つの前記インサート側面(33)からの方向で内側に収束することによって
画定され、
2つの前記インサート係合くさび面(46)はそれぞれ、インサート当接面(50)を備え、各前記インサート当接面(50)で画定される前記インサート係合角(θ)は、90°以上、110°以下であり、
前記締結部分(60)は、
2つの対向する締結部分側面(63)、及び前記工具ホルダ(24)の前端部で2つの対向する前記締結部分側面(63)の間に延在する締結部分前端面(64)と、
前記締結部分前端面(64)に開口し、前スロット開口(65)を形成し、スロット長手方向軸(C)を画定する方向で長手方向に細長いインサート受入れスロット(62)と
を有し、前記インサート受入れスロット(62)は、
締結顎面(70)を備える上締結顎(66)と、
前記締結顎面(70)に面するベース顎下面(72)を備える下ベース顎(68)であって、前記上締結顎(66)は、前記下ベース顎(68)に対して弾性的に変位可能である、下ベース顎(68)と、
前記締結顎面(70)と前記ベース顎下面(72)との間に延在するスロット後面(74)と、
前記スロット長手方向軸(C)を含み、前記締結顎面(70)及び前記ベース顎下面(72)に交差するスロット長手方向平面(P1’)と、
前記スロット長手方向軸(C)を含み、前記締結顎面(70)と前記ベース顎下面(72)との間の中間を通過するスロット中央平面(M’)と、
前記スロット中央平面(M’)に直交して向けられ、前記スロット長手方向平面(P1’)内に含まれるスロット垂直軸(V’)と、
前記スロット長手方向平面(P1’)に直交して向けられ、前記スロット中央平面(M’)内に含まれるスロット横軸(L’)と、
前記締結顎面(70)及び前記ベース顎下面(72)の少なくとも一方に形成される少なくとも1つの細長いスロット係合機構(78)と
を備え、少なくとも1つの前記スロット係合機構(78)は、スロット係合機構長手方向軸(S)に沿って前記前スロット開口(65)と前記スロット後面(74)との間の方向で長手方向に延在し、
少なくとも1つの細長い前記スロット係合機構(78)は、2つの細長い対向するスロット係合くさび面(84)を備え、前記スロット係合くさび面(84)は、前記スロット係合機構長手方向軸(I’)に沿って延在し、2つの前記締結部分側面(63)から2つの前記インサート係合くさび面(46)の方向と同じ外側方向又は内側方向で収束することによってスロット係合鋭角(θ’)を画定し、
2つの前記スロット係合くさび面(84)はそれぞれ、スロット当接面(92)を備え、前記スロット当接面(92)のそれぞれで画定される前記スロット係合角(θ’)は、90°以上、110°以下であり、
前記切削インサート(22)は、前記上締結顎(66)と前記下ベース顎(68)との間に解放可能に締結され、
少なくとも1つの前記インサート係合機構(40)は、前記インサート当接面(50)及び前記スロット当接面(92)で少なくとも1つのスロット係合機構(78)に当接する、切削工具(20)。
【請求項2】
少なくとも1つの前記インサート係合機構(40)は、前記インサート当接面(50)及び前記スロット当接面(92)のみで少なくとも1つの前記スロット係合機構(78)に当接する、請求項1に記載の切削工具(20)。
【請求項3】
各前記インサート当接面(50)は、平坦であり、
各前記スロット当接面(92)は、前記スロット長手方向軸(C)に直交する平面で取られる断面図において凸状に湾曲する、請求項1に記載の切削工具(20)。
【請求項4】
2つの前記インサート係合くさび面(46)は、前記インサート係合角(θ)が内角であるように2つの前記インサート側面(33)からの方向で外側に収束し、
2つの前記スロット係合くさび面(84)は、前記スロット係合角(θ’)が外角であるように2つの前記締結部分側面(63)からの方向で外側に収束する、請求項1に記載の切削工具(20)。
【請求項5】
2つの前記インサート係合くさび面(46)は、前記インサート垂直軸(V)の方向で測定されるインサート係合高さ(H)を有し、前記インサート係合高さ(H)は、0.5mm未満であり、
2つの前記スロット係合くさび面(84)は、前記スロット垂直軸(V’)の方向で測定されるスロット係合高さ(H’)を有し、前記スロット係合高さ(H’)は、0.5mm未満である、請求項1に記載の切削工具(20)。
【請求項6】
2つの前記インサート係合くさび面(46)は、前記インサート横軸(L)に沿った横方向で互いからインサート係合横距離(d)で離間し、前記インサート係合横距離(d)は、前記インサート係合高さ(H)の5倍を超え、
2つの前記スロット係合くさび面(84)は、前記スロット横軸(L’)に沿った横方向で互いからスロット係合横距離(d’)で離間し、前記スロット係合横距離(d’)は、前記スロット係合高さ(H’)の5倍を超える、請求項5に記載の切削工具(20)。
【請求項7】
前記切削インサート(22)は、第1のインサート係合機構(40)と第2のインサート係合機構(40)とを備え、前記第1のインサート係合機構は、前記インサート上面(26)に形成され、前記第2のインサート係合機構は、前記インサート下面(28)に形成され、
前記インサート受入れスロット(62)は、第1のスロット係合機構(78)と第2のスロット係合機構(78)とを備え、前記第1のスロット係合機構は、前記締結顎面(70)に形成され、前記第2のスロット係合機構は、前記ベース顎下面(72)に形成される、請求項1に記載の切削工具(20)。
【請求項8】
前記切削インサート(22)は、前記上締結顎(66)と前記下ベース顎(68)との間に弾性的に締結される、請求項1に記載の切削工具(20)。
【請求項9】
インサート長手方向軸(A)を画定する方向で長手方向に細長い切削インサート(22)であって、前記切削インサート(22)は、
2つの対向するインサート端面(32)、及び前記インサート長手方向軸(A)回りで2つの対向する前記インサート端面(32)の間に延在するインサート外周面(30)であって、前記インサート外周面(30)は、細長い対向するインサート上面(26)及びインサート下面(28)、並びに2つの対向するインサート側面(33)を備え、一体切削部分(34)を有する前記インサート端面(32)の少なくとも一方で前記インサート上面(26)及び前記インサート下面(28)を接続する、インサート端面(32)及びインサート外周面(30)と、
前記インサート長手方向軸(A)を含み、2つの対向する前記インサート側面(33)の間の中間を通過するインサート長手方向平面(P1)と、
前記インサート長手方向軸(A)を含み、前記インサート上面(26)と前記インサート下面(28)との間を通過するインサート中央平面(M)と、
前記インサート中央平面(M)に直交して向けられ、前記インサート長手方向平面(P1)内に含まれるインサート垂直軸(V)と、
前記インサート長手方向平面(P1)に直交して向けられ、前記インサート中央平面(M)内に含まれるインサート横軸(L)と、
前記インサート上面(26)及び前記インサート下面(28)の少なくとも一方に形成される少なくとも1つの細長いインサート係合機構(40)と
を備え、前記少なくとも1つのインサート係合機構(40)は、インサート係合機構長手方向軸(I)に沿って前記インサート端面(32)の間の方向で長手方向に延在し、
少なくとも1つの前記インサート係合機構(40)は、2つのインサート係合くさび面(46)を備え、2つの前記インサート係合くさび面(46)は、前記インサート係合機構長手方向軸(I)に沿って延在し、インサート係合鋭角(θ)を画定し、前記インサート係合鋭角(θ)は、
a)前記インサート係合角(θ)が内角であるように2つの前記インサート側面(33)からの方向で外側に収束することによって、又は
b)前記インサート係合角(θ)が外角であるように2つの前記インサート側面(33)からの方向で内側に収束によることによって
画定され、2つの前記インサート係合くさび面(46)は、前記インサート垂直軸(V)の方向で測定されるインサート係合高さ(H)を有し、前記インサート係合高さ(H)は、0.5mm未満であり、
2つの前記インサート係合くさび面(46)はそれぞれ、インサート当接面(50)を備え、各前記インサート当接面(50)で画定される前記インサート係合角(θ)は、90°以上、110°以下であり、
2つの前記インサート係合くさび面(46)は、前記インサート横軸(L)に沿って横方向で互いからインサート係合横距離(d)で離間し、前記インサート係合横距離(d)は、前記インサート係合高さ(H)の5倍を超える、切削インサート(22)。
【請求項10】
各前記インサート当接面(50)は平坦である、請求項9に記載のインサート(22)。
【請求項11】
2つの前記インサート係合くさび面(46)は、前記インサート係合角(θ)が内角であるように2つの前記インサート側面(33)からの方向で外側に収束する、請求項9に記載の切削インサート(22)。
【請求項12】
少なくとも1つの前記インサート係合機構(40)は、前記インサート係合機構長手方向軸(I)に沿って長さ方向に延在する細長いインサート係合突起(42)を備え、
前記インサート係合くさび面(46)は、前記インサート係合突起(42)の両横側に位置する、請求項9に記載の切削インサート(22)。
【請求項13】
少なくとも1つの前記インサート係合機構(40)は、前記インサート係合突起(42)の両横側に沿って長さ方向に延在する2つのインサート係合機構溝(44)を備える、請求項12に記載の切削インサート(22)。
【請求項14】
少なくとも1つの前記インサート係合機構(40)は、厳密に1つのインサート係合突起(42)と、厳密に2つのインサート係合溝(44)とを備える、請求項13に記載の切削インサート(22)。
【請求項15】
少なくとも1つの前記インサート係合機構(40)は、前記インサート横軸(L)に沿った方向で2つの前記インサート係合くさび面(46)の間に延在するインサート係合中心面(48)を備え、
前記インサート係合中心面(48)は、前記インサート係合機構長手方向軸(I)に沿った図において凹形に湾曲する、請求項12に記載の切削インサート(22)。
【請求項16】
前記インサート係合中心面(48)は、前記インサート長手方向平面(P1)によって交差される、請求項15に記載の切削インサート(22)。
【請求項17】
各前記インサート当接面(50)で画定される前記インサート係合角(θ)は、95°以上、100°以下である、請求項9に記載の切削インサート(22)。
【請求項18】
少なくとも1つの前記インサート係合機構(40)は、前記インサート下面(28)に形成され、
前記インサート長手方向平面(P1)の所与の側において、前記インサート係合くさび面(46)は、前記インサート長手方向平面(P1)より前記インサート側面(33)に近接する、請求項9に記載の切削インサート(22)。
【請求項19】
前記インサート下面(28)及び2つの前記インサート側面(33)は、インサート下平面(PL)を画定する前記インサート端面(32)の遠位で交差し、
前記インサート係合下面(28)に形成される2つの前記インサート係合くさび面(46)は、前記インサート中央平面(M)から離れる方向において前記インサート下平面(PL)を越えて延在しない、請求項18に記載の切削インサート(22)。
【請求項20】
少なくとも1つの前記インサート係合機構(40)は、前記インサート上面(26)に形成され、
前記インサート長手方向平面(P1)の所与の側において、前記インサート係合くさび面(46)は、前記インサート長手方向平面(P1)より前記インサート側面(33)から更に遠い、請求項9に記載の切削インサート(22)。
【請求項21】
前記インサート上面(26)及び2つの前記インサート側面(33)は、インサート上平面(PU)を画定する前記インサート端面(32)の遠位で交差し、
前記インサート上面(26)に形成される2つの前記インサート係合くさび面(46)は、前記インサート中央平面(M)から離れる方向において前記インサート上平面(PU)を越えて延在しない、請求項20に記載の切削インサート(22)。
【請求項22】
前記インサート係合横距離(d)は、1.5mm以上、2.5mm以下である、請求項9に記載の切削インサート(22)。
【請求項23】
前記切削インサート(22)は、第1のインサート係合機構(40)と第2のインサート係合機構(40)とを備え、前記第1のインサート係合機構は、前記インサート上面(26)に形成され、前記第2のインサート係合機構は、前記インサート下面(28)に形成される、請求項9に記載の切削インサート(22)。
【請求項24】
前記インサート係合機構長手方向軸(I)は、前記インサート長手方向軸(A)に平行である、請求項9に記載の切削インサート(22)。
【請求項25】
少なくとも1つの前記インサート係合機構(40)は、前記インサート長手方向平面(P1)回りに鏡面対称を呈する、請求項9に記載の切削インサート(22)。
【請求項26】
少なくとも1つの前記インサート係合機構(40)は、前記インサート長手方向軸(A)に対して、前記切削インサート(22)の一方の軸方向端部からもう一方の軸方向端部まで延在する、請求項9に記載の切削インサート(22)。
【請求項27】
締結部分(60)を備える工具ホルダ(24)であって、前記締結部分(60)は、
2つの対向する締結部分側面(63)、及び前記工具ホルダ(24)の前端部で前記締結部分側面(63)の間に延在する締結部分前端面(64)と、
前記締結部分前端面(64)に開口し、前スロット開口(65)を形成し、スロット長手方向軸(C)を画定する方向で長手方向に細長いインサート受入れスロット(62)と
を有し、前記インサート受入れスロット(62)は、
締結顎面(70)を備える上締結顎(66)と、
前記締結顎面(70)に面するベース顎下面(72)を備える下ベース顎(68)であって、前記上締結顎(66)は、前記下ベース顎(68)に対して弾性的に変位可能である、下ベース顎(68)と、
前記締結顎面(70)と前記ベース顎下面(72)との間に延在するスロット後面(74)と、
前記スロット長手方向軸(C)を含み、前記締結顎面(70)及び前記ベース顎下面(72)に交差するスロット長手方向平面(P1’)と、
前記スロット長手方向軸(C)を含み、前記締結顎面(70)と前記ベース顎下面(72)との間の中間を通過するスロット中央平面(M’)と、
前記スロット中央平面(M’)直交して向けられ、前記スロット長手方向平面(P1’)内に含まれるスロット垂直軸(V’)と、
前記スロット長手方向平面(P1’)に直交して向けられ、前記スロット中央平面(M’)内に含まれるスロット横軸(L’)と、
前記締結顎面(70)及び前記ベース顎下面(72)の少なくとも一方に形成される少なくとも1つの細長いスロット係合機構(78)と
を備え、少なくとも1つの前記スロット係合機構(78)は、スロット係合機構長手方向軸(S)に沿って前記前スロット開口(65)と前記スロット後面(74)との間の方向で長手方向に延在し、
少なくとも1つの前記スロット係合機構(78)は、2つの細長い対向するスロット係合くさび面(84)を備え、前記スロット係合くさび面(84)は、前記スロット係合機構長手方向軸(I’)に沿って延在し、スロット係合鋭角(θ’)を画定し、前記スロット係合鋭角(θ)は、
a)前記スロット係合角(θ’)が外角であるように2つの前記締結部分側面(63)からの方向で外側に収束することによって、又は
b)前記スロット係合角(θ’)が内角であるように2つの前記締結部分側面(63)からの方向で内側に収束することによって
画定され、
2つの前記スロット係合くさび面(84)は、前記スロット垂直軸(V’)の方向で測定されるスロット係合高さ(H’)を有し、前記スロット係合高さ(H’)は、0.5mm未満であり、
2つの前記スロット係合くさび面(46)はそれぞれ、スロット当接面(92)を備え、各前記スロット当接面(92)で画定される前記スロット係合角(θ)は、90°以上、110°以下であり、
2つの前記スロット係合くさび面(84)は、前記横軸(L’)に沿って横方向で互いからスロット係合横距離(d’)で離間し、前記スロット係合横距離(d’)は、前記スロット係合高さ(H’)の5倍を超える、工具ホルダ(24)。
【請求項28】
各前記スロット当接面(92)は、前記スロット長手方向軸(C)に直交する平面で取られる断面図において凸状に湾曲する、請求項27に記載の工具ホルダ(24)。
【請求項29】
2つの前記スロット係合くさび面(84)は、前記スロット係合角(θ’)が外角であるように2つの前記締結部分側面(63)からの方向で外側に収束する、請求項27に記載の工具ホルダ(24)。
【請求項30】
少なくとも1つの前記スロット係合機構(78)は、前記スロット係合機構長手方向軸(S)に沿って長さ方向に延在するスロット係合溝(80)を備え、
前記スロット係合くさび面(84)は、前記スロット係合溝(80)の両横側に位置する、請求項29に記載の工具ホルダ(24)。
【請求項31】
少なくとも1つの前記スロット係合機構(78)は、前記スロット係合溝(80)の両横側に沿って長さ方向に延在する2つの細長いスロット係合突起(82)を備える、請求項30に記載の工具ホルダ(24)。
【請求項32】
少なくとも1つの前記スロット係合機構(78)は、厳密に1つのスロット係合溝(80)と、厳密に2つのスロット係合突起(82)とを備える、請求項31に記載の工具ホルダ(24)。
【請求項33】
少なくとも1つの前記スロット係合機構(78)は、前記ベース顎下面(72)に形成され、
2つの前記スロット係合くさび面(84)のそれぞれは、前記スロット係合くさび面(84)の軸方向範囲に沿って、非陥没スロット係合部分(88)と、前記スロット係合くさび面(84)の軸方向長さに沿って前記非陥没スロット係合部分(88)と前記締結部分前端面(64)との間に延在する陥没スロット係合部分(90)とを備え、前記陥没スロット係合部分(90)は、前記非陥没スロット係合部分(88)に対して陥没し、
前記スロット当接面(92)は、前記陥没スロット係合部分(90)に形成されない、請求項27に記載の工具ホルダ(24)。
【請求項34】
前記スロット係合機構長手方向軸(S)は、前記スロット長手方向軸(C)に平行である、請求項33に記載の工具ホルダ(24)。
【請求項35】
少なくとも1つの前記スロット係合機構(78)は、2つの前記スロット係合くさび面(84)の間に延在するスロット係合中心面(86)を備え、
前記スロット係合中心面(86)は平坦である、請求項27に記載の工具ホルダ(24)。
【請求項36】
前記スロット係合中心面(86)は、前記スロット長手方向平面(P1’)によって交差される、請求項35に記載の工具ホルダ(24)。
【請求項37】
2つの前記スロット係合くさび面(46)はそれぞれ、スロット傾斜面(94)を備え、
各前記スロット傾斜面(94)で画定される前記スロット係合角(θ’)は、95°以上、100°以下である、請求項27に記載の工具ホルダ(24)。
【請求項38】
前記スロット長手方向平面(P1’)の所与の側において、前記スロット係合くさび面(84)は、前記スロット長手方向平面(P1’)より前記締結部分側面(63)から更に遠い、請求項27に記載の工具ホルダ(24)。
【請求項39】
前記スロット係合横距離(d’)は、1.5mm以上、2.5mm以下である、請求項27に記載の工具ホルダ(24)。
【請求項40】
前記インサート受入れスロット(62)は、第1のインサート係合機構(78)と第2のインサート係合機構(78)とを備え、前記第1のインサート受入れスロットは、前記締結顎面(70)に形成され、前記第2のインサート受入れスロットは、前記ベース顎下面(72)に形成される、請求項27に記載の工具ホルダ(24)。
【請求項41】
少なくとも1つの前記スロット係合機構(78)は、前記スロット長手方向平面(P1’)回りに鏡面対称を呈する、請求項27に記載の工具ホルダ(24)。
【請求項42】
少なくとも1つの前記スロット係合機構(78)は、前記スロット長手方向軸(C)に対して、前記インサート受入れスロット(62)の一方の軸方向端部からもう一方の軸方向端部まで延在する、請求項27に記載の工具ホルダ(24)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の主題は、切削インサートが締結力によって工具ホルダ内に保持される種類の突切り及び溝旋削切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
突切り及び溝旋削のための切削工具は、切削インサートを工具ホルダ内に固着保持する締結機構を備え得る。
【0003】
工具ホルダは、ベース顎と締結顎とを有するインサート受入れスロットから構成でき、切削インサートは、ベース顎及び締結顎内に締結される。
【0004】
横切削力に対する切削インサートの安定性を改善するため、切削インサートは、上V字形隆起部と下V字形隆起部とを含み得る。ベース顎及び締結顎は、それぞれV字形隆起部と係合するV字形溝を含み得る。そのような切削インサート及び工具ホルダの例は、米国特許第8,696,262号明細書及び米国特許第9,120,239号明細書に開示されている。代替的に、隆起部を切削インサートに形成し得、溝を工具ホルダに形成し得る。そのような切削インサート及び工具ホルダの一例は、米国特許第7,887,267号明細書に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
横切削力に対して工具ホルダのインサート受入れポケット内に切削インサートを解放可能に締結する、改善された手段を有する切削工具を提供することは、本願の主題の一目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の主題の第1の態様によれば、切削工具が提供され、切削工具は、
インサート長手方向軸を画定する方向で長手方向に細長い切削インサートと、
締結部分を備える工具ホルダと
を備え、切削インサートは、
2つの対向するインサート端面、及びインサート長手方向軸回りでインサート端面の間に延在するインサート外周面であって、インサート外周面は、細長い対向するインサート上面及びインサート下面と、2つの対向するインサート側面とを備え、一体切削部分を有するインサート端面の少なくとも一方でインサート上面及びインサート下面を接続する、インサート端面、及びインサート外周面と、
インサート長手方向軸を含み、2つの対向するインサート側面の間の中間を通過するインサート長手方向平面と、
インサート長手方向軸を含み、インサート上面とインサート下面との間を通過するインサート中央平面と、
インサート中央平面に直交して向けられ、インサート長手方向平面内に含まれるインサート垂直軸と、
インサート長手方向平面に直交して向けられ、インサート中央平面内に含まれるインサート横軸と、
インサート上面及びインサート下面の少なくとも一方に形成される少なくとも1つの細長いインサート係合機構と
を備え、少なくとも1つのインサート係合機構は、インサート係合機構長手方向軸に沿ってインサート端面の間の方向で長手方向に延在し、
少なくとも1つのインサート係合機構は、2つのインサート係合くさび面を備え、インサート係合くさび面は、インサート係合機構長手方向軸に沿って延在し、インサート係合鋭角を画定し、インサート係合鋭角は、
a)インサート係合角が内角であるように、2つのインサート側面からの方向で外側に収束することによって、又は
b)インサート係合角が外角であるように、2つのインサート側面からの方向で内側に収束することによって
画定され、
2つのインサート係合くさび面はそれぞれ、インサート当接面を備え、各インサート当接面で画定されるインサート係合角は、90°以上、110°以下であり、
締結部分は、
2つの対向する締結部分側面、及び工具ホルダの前端部で締結部分側面の間に延在する締結部分前端面と、
締結部分前端面に開口し、前スロット開口を形成し、スロット長手方向軸を画定する方向で長手方向に細長いインサート受入れスロットと
を有し、インサート受入れスロットは、
締結顎面を備える上締結顎と、
締結顎面に面するベース顎下面を備える下ベース顎であって、上締結顎は、下ベース顎に対して弾性的に変位可能である、下ベース顎と、
締結顎面とベース顎下面との間に延在するスロット後面と、
スロット長手方向軸を含み、締結顎面及びベース顎下面に交差するスロット長手方向平面と、
スロット長手方向軸を含み、締結顎面とベース顎下面との間の中間を通過するスロット中央平面と、
スロット中央平面に直交して向けられ、スロット長手方向平面内に含まれるスロット垂直軸と、
スロット長手方向平面に直交して向けられ、スロット中央平面内に含まれるスロット横軸と、
締結顎面及びベース顎下面の少なくとも一方に形成される少なくとも1つの細長いスロット係合機構と
を備え、少なくとも1つのスロット係合機構は、スロット係合機構長手方向軸に沿って前スロット開口とスロット後面との間の方向で長手方向に延在し、
少なくとも1つの細長いスロット係合機構は、2つの細長い対向するスロット係合くさび面を備え、スロット係合くさび面は、スロット係合機構長手方向軸に沿って延在し、2つの締結部分側面から2つのインサート係合くさび面の方向と同じ外側方向又は内側方向で収束することによってスロット係合鋭角を画定し、
2つのスロット係合くさび面はそれぞれ、スロット当接面を備え、スロット当接面のそれぞれで画定されるスロット係合角は、90°以上、110°以下であり、
切削インサートは、上締結顎と下ベース顎との間に解放可能に締結され、
少なくとも1つのインサート係合機構は、インサート当接面及びスロット当接面で少なくとも1つのスロット係合機構に当接する。
【0007】
本願の主題の第2の態様によれば、インサート長手方向軸を画定する方向で長手方向に細長い切削インサートが提供され、切削インサートは、
2つの対向するインサート端面、及びインサート長手方向軸回りでインサート端面の間に延在するインサート外周面であって、インサート外周面は、細長い対向するインサート上面及びインサート下面、並びに2つの対向するインサート側面を備え、一体切削部分を有するインサート端面の少なくとも一方でインサート上面及びインサート下面を接続する、インサート端面及びインサート外周面と、
インサート長手方向軸を含み、2つの対向するインサート側面の間の中間を通過するインサート長手方向平面と、
インサート長手方向軸を含み、インサート上面とインサート下面との間を通過するインサート中央平面と、
インサート中央平面に直交して向けられ、インサート長手方向平面内に含まれるインサート垂直軸と、
インサート長手方向平面に直交して向けられ、インサート中央平面内に含まれるインサート横軸と、
インサート上面及びインサート下面の少なくとも一方に形成される少なくとも1つの細長いインサート係合機構と
を備え、少なくとも1つのインサート係合機構は、インサート係合機構長手方向軸に沿ってインサート端面の間の方向で長手方向に延在し、
少なくとも1つのインサート係合機構は、2つのインサート係合くさび面を備え、インサート係合くさび面は、インサート係合機構長手方向軸に沿って延在し、インサート係合鋭角を画定し、インサート係合鋭角は、
a)インサート係合角が内角であるように2つのインサート側面からの方向で外側に収束することによって、又は
b)インサート係合角が外角であるように2つのインサート側面からの方向で内側に収束によることによって
画定され、2つのインサート係合くさび面は、インサート垂直軸の方向で測定されるあるインサート係合高さを有し、インサート係合高さは、0.5mm未満であり、
2つのインサート係合くさび面はそれぞれ、インサート当接面を備え、各インサート当接面で画定されるインサート係合角は、90°以上、110°以下であり、
2つのインサート係合くさび面は、インサート横軸に沿って横方向で互いからあるインサート係合横距離で離間し、インサート係合横距離は、インサート係合高さの5倍を超える。
【0008】
本願の主題の第3の態様によれば、締結部分を備える工具ホルダが提供され、締結部分は、
2つの対向する締結部分側面、及び工具ホルダの前端部で締結部分側面の間に延在する締結部分前端面と、
締結部分前端面に開口し、前スロット開口を形成し、スロット長手方向軸を画定する方向で長手方向に細長いインサート受入れスロットと
を有し、インサート受入れスロットは、
締結顎面を備える上締結顎と、
締結顎面に面するベース顎下面を備える下ベース顎であって、上締結顎は、下ベース顎に対して弾性的に変位可能である、下ベース顎と、
締結顎面とベース顎下面との間に延在するスロット後面と、
スロット長手方向軸を含み、締結顎面及びベース顎下面に交差するスロット長手方向平面と、
スロット長手方向軸を含み、締結顎面とベース顎下面との間の中間を通過するスロット中央平面と、
スロット中央平面直交して向けられ、スロット長手方向平面内に含まれるスロット垂直軸と、
スロット長手方向平面に直交して向けられ、スロット中央平面内に含まれるスロット横軸と、
締結顎面及びベース顎下面の少なくとも一方に形成される少なくとも1つの細長いスロット係合機構と
を備え、少なくとも1つのスロット係合機構は、スロット係合機構長手方向軸に沿って前スロット開口とスロット後面との間の方向で長手方向に延在し、
少なくとも1つのスロット係合機構は、2つの細長い対向するスロット係合くさび面を備え、スロット係合くさび面は、スロット係合機構長手方向軸に沿って延在し、スロット係合鋭角を画定し、スロット係合鋭角は、
a)スロット係合角が外角であるように2つの締結部分側面からの方向で外側に収束することによって、又は
b)スロット係合角が内角であるように2つの締結部分側面からの方向で内側に収束することによって
画定され、
2つのスロット係合くさび面は、スロット垂直軸の方向で測定されるあるスロット係合高さを有し、スロット係合高さは、0.5mm未満であり、
2つのスロット係合くさび面はそれぞれ、スロット当接面を備え、各スロット当接面で画定されるスロット係合角は、90°以上、110°以下であり、
2つのスロット係合くさび面は、横軸に沿って横方向で互いからあるスロット係合横距離で離間し、スロット係合横距離は、スロット係合高さの5倍を超える。
【0009】
本願の主題の第4の態様によれば、切削工具が提供され、切削工具は、
工具ホルダの締結部分内に保持される、上記した種類の切削インサート
を備える。
【0010】
上記は概要であり、以下で説明する特徴は、任意の組合せで本願の主題に適用可能とし得る、例えば、以下の特徴のいずれかは、切削工具、切削インサート又は切削ホルダに適用可能とし得ることを理解されたい。
【0011】
少なくとも1つのインサート係合機構は、インサート当接面及びスロット当接面でのみ少なくとも1つのスロット係合機構に当接し得る。
【0012】
各インサート当接面は、平坦とし得る。各スロット当接面は、スロット長手方向軸に直交する平面で取られる断面図において凸状に湾曲し得る。
【0013】
2つのインサート係合くさび面は、インサート係合角が内角であるように2つのインサート側面からの方向で外側に収束し得る。2つのスロット係合くさび面は、スロット係合角が外角であるように2つの締結部分側面からの方向で外側に収束し得る。
【0014】
2つのインサート係合くさび面は、インサート垂直軸の方向で測定されるインサート係合高さを有し得、インサート係合高さは、0.5mm未満である。2つのスロット係合くさび面は、スロット垂直軸の方向で測定されるスロット係合高さを有し得、スロット係合高さは、0.5mm未満である。
【0015】
2つのインサート係合くさび面は、インサート横軸に沿って横方向で互いからあるインサート係合横距離で離間し得、インサート係合横距離は、インサート係合高さの5倍を超える。2つのスロット係合くさび面は、スロット横軸に沿って横方向で互いからあるスロット係合横距離で離間し得、スロット係合横距離は、スロット係合高さの5倍を超える。
【0016】
切削インサートは、第1のインサート係合機構と第2のインサート係合機構とを備え得、第1のインサート係合機構は、インサート上面に形成され、第2のインサート係合機構は、インサート下面に形成される。インサート受入れスロットは、第1のスロット係合機構と第2のスロット係合機構とを備え得、第1のスロット係合機構は、締結顎面に形成され、第2のスロット係合機構は、ベース顎下面に形成される。
【0017】
切削インサートは、上締結顎と下ベース顎との間に弾性的に締結し得る。
【0018】
各インサート当接面は、平坦とし得る。
【0019】
2つのインサート係合くさび面は、インサート係合角が内角であるように2つのインサート側面からの方向で外側に収束し得る。
【0020】
少なくとも1つのインサート係合機構は、インサート係合機構長手方向軸に沿って長さ方向に延在する細長いインサート係合機構突起を備え得る。インサート係合くさび面は、インサート係合突起の両横側に位置し得る。
【0021】
少なくとも1つのインサート係合機構は、インサート係合突起の両横側に沿って長さ方向に延在する2つのインサート係合機構溝を備え得る。
【0022】
少なくとも1つのインサート係合機構は、厳密に1つのインサート係合突起と、厳密に2つのインサート係合溝とを備え得る。
【0023】
少なくとも1つのインサート係合機構は、インサート横軸に沿った方向で、2つのインサート係合くさび面の間に延在するインサート係合中心面を備え得る。インサート係合中心面は、インサート係合機構長手方向軸に沿った図において凹形に湾曲し得る。
【0024】
インサート係合中心面は、インサート長手方向平面に交差し得る。
【0025】
各インサート当接面で画定されるインサート係合角は、95°以上、100°以下とし得る。
【0026】
少なくとも1つのインサート係合機構は、インサート下面に形成し得る。インサート長手方向平面の所与の側において、インサート係合くさび面は、インサート長手方向平面よりインサート側面に近接し得る。
【0027】
インサート下面及び2つのインサート側面は、インサート下平面を画定するインサート端面の遠位で交差し得る。インサート下面に形成される2つのインサート係合くさび面は、インサート中央平面から離れる方向でインサート下平面を越えて延在することはない。
【0028】
少なくとも1つのインサート係合機構は、インサート上面に形成し得る。インサート長手方向平面の所与の側において、インサート係合くさび面は、インサート長手方向平面よりインサート側面から更に遠くし得る。
【0029】
インサート上面及び2つのインサート側面は、インサート上平面を画定するインサート端面の遠位で交差し得る。インサート上面に形成される2つのインサート係合くさび面は、インサート中央平面から離れる方向でインサート上平面を越えて延在することはない。
【0030】
インサート係合横距離は、1.5mm以上、2.5mm以下とし得る。
【0031】
切削インサートは、第1のインサート係合機構と第2のインサート係合機構とを備え得、第1のインサート係合機構は、インサート上面に形成され、第2のインサート係合機構は、インサート下面に形成される。
【0032】
インサート係合機構長手方向軸は、インサート長手方向軸に平行とし得る。
【0033】
少なくとも1つのインサート係合機構は、インサート長手方向平面回りに鏡面対称を呈し得る。
【0034】
少なくとも1つのインサート係合機構は、インサート長手方向軸に対して、切削インサートの一方の軸方向端部からもう一方の軸方向端部まで延在し得る。
【0035】
各スロット当接面は、スロット長手方向軸に直交する平面で取られる断面図において凸状に湾曲し得る。
【0036】
2つのスロット係合くさび面は、スロット係合角が外角であるように2つの締結部分側面からの方向で外側に収束し得る。
【0037】
少なくとも1つのスロット係合機構は、スロット係合機構長手方向軸に沿って長さ方向に延在するスロット係合溝を備え得る。スロット係合くさび面は、スロット係合溝の両横側に位置し得る。
【0038】
少なくとも1つのスロット係合機構は、スロット係合溝の両横側に沿って長さ方向に延在する2つの細長いスロット係合突起を備え得る。
【0039】
少なくとも1つのスロット係合機構は、厳密に1つのスロット係合溝と、厳密に2つのスロット係合突起とを備え得る。
【0040】
少なくとも1つのスロット係合機構は、ベース顎下面に形成し得る。2つのスロット係合くさび面はそれぞれ、これらの軸方向範囲に沿って、非陥没スロット係合部分と、軸方向長さに沿って、非陥没スロット係合部分と締結部分前端面との間に延在する陥没スロット係合部分とを備え得、陥没スロット係合部分は、非陥没スロット係合部分に対して陥没する。スロット当接面は、陥没スロット係合部分に形成されることはない。
【0041】
スロット係合機構長手方向軸は、スロット長手方向軸に平行とし得る。
【0042】
少なくとも1つのスロット係合機構は、2つのスロット係合くさび面の間に延在するスロット係合中心面を備え得る。スロット係合中心面は、平坦とし得る。
【0043】
スロット係合中心面は、スロット長手方向平面に交差し得る。
【0044】
2つのスロット係合くさび面はそれぞれ、スロット傾斜面を備え得る。各スロット傾斜面で画定されるスロット係合角は、95°以上、100°以下とし得る。
【0045】
スロット長手方向平面の所与の側において、スロット係合くさび面は、スロット長手方向平面より締結部分側面から更に遠くし得る。
【0046】
スロット係合横距離は、1.5mm以上、2.5mm以下とし得る。
【0047】
インサート受入れスロットは、第1のインサート係合機構と第2のインサート係合機構とを備え得、第1のインサート受入れスロットは、締結顎面に形成され、第2のインサート受入れスロットは、ベース顎下面に形成される。
【0048】
少なくとも1つのスロット係合機構は、スロット長手方向平面回りに鏡面対称を呈し得る。
【0049】
少なくとも1つのスロット係合機構は、スロット長手方向軸に対して、インサート受入れスロットの一方の軸方向端部からもう一方の軸方向端部まで延在し得る。
【0050】
本願をより良好に理解し、本願をいかに実際に実行し得るかを示すため、次に、添付の図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図2】
図1に示される切削工具の分解斜視図である。
【
図3】
図2に示される切削インサートの側面図である。
【
図4】
図2に示される切削インサートの底面図である。
【
図5】
図2に示される切削インサートの上面図である。
【
図6】
図2に示される切削インサートの端面図である。
【
図8】
図2に示されるインサート受入れスロットを示す、工具ホルダの締結部分の側面図である。
【
図11】切削インサートがインサート受入れスロット内に締結されている、締結部分の側面図である。
【
図12a】
図11の線XIIa-XIIaに沿って取られた切削工具の断面図である。
【
図12b】
図11の線XIIb-XIIbに沿って取られた切削工具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
説明を簡単、明快にするため、図示の要素は、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことは了解されよう。例えば、要素の一部の寸法は、明快のために他の要素に対して誇張される場合がある、又はいくつかの物理的構成要素は、1つの機能ブロック若しくは要素内に含まれる場合がある。更に、適切であるとみなされる場合、参照数字は、対応する又は類似の要素を示すように図面の間で繰り返される場合がある。
【0053】
以下の説明では、本願の主題の様々な態様を説明する。説明のために、特定の構成及び詳細は、本願の主題に対する完全な理解をもたらすように、十分詳細に示される。しかし、本願の主題を本明細書に提示される特定の構成及び詳細を伴わずに実行し得ることは、当業者には明らかになるであろう。
【0054】
まず、本願の主題のいくつかの実施形態による、突切り又は立削りに使用される種類の切削工具20を示す
図1及び
図2に注意を向けられたい。切削工具20は、切削インサート22と、工具ホルダ24とを有し、切削インサート22は、工具ホルダ24内に解放可能に締結される。
【0055】
次に、
図3を参照すると、切削インサート22は、インサート長手方向軸Aを有し、インサート長手方向軸Aに沿って、工具ホルダ24と同じ方向で細長い。切削インサート22は、2つの対向するインサート端面32と、2つのインサート端面32の間に延在するインサート外周面30とを含む。インサート外周面30は、インサート長手方向軸A回りに延在する。インサート長手方向軸Aは、2つのインサート端面32に交差し得る。インサート外周面30は、細長い上面26と、細長い上面26に対向する細長いインサート下面28とを含む。インサート外周面30は、2つの対向するインサート側面33を含み、インサート側面33は、細長いインサート上面26及びインサート下面28を接続し、2つのインサート端面32も接続する。例えば、米国特許第2017/0320143号明細書に示される典型的なインサートとは対照的に、切削インサート22には締結部材のための貫通ボアがない。
【0056】
図3~
図6を参照すると、切削インサート22は、インサート長手方向平面P1を有し、インサート長手方向平面P1は、インサート長手方向軸Aを含み、インサート側面33の間の中間を通過する。インサート長手方向平面P1は、インサート上面26及びインサート下面28並びにインサート端面32に交差する。切削インサート22は、インサート中央平面Mを有し、インサート中央平面Mは、インサート長手方向軸Aを含み、インサート上面26とインサート下面28との間の中間を通過する。インサート中央平面Mは、インサート端面32及びインサート側面33に交差する。切削インサート22は、インサート垂直軸Vを有し、インサート垂直軸Vは、インサート中央平面Mに直交して向けられ、インサート長手方向平面P1内に含まれる。インサート垂直軸Vは、インサート上面26及びインサート下面28に交差する。切削インサート22は、インサート横軸Lを有し、インサート横軸Lは、インサート長手方向平面P1に直交して向けられ、インサート中央平面M内に含まれる。インサート横軸Lは、インサート側面33に交差する。
図3及び
図6を参照すると、本願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート上面26及び2つのインサート側面33は、インサート上平面PUを画定するようにインサート端面32の遠位で交差し得る。同様に、インサート下面28及び2つのインサート側面33は、インサート下平面PLを画定するようにインサート端面32の遠位で交差し得る。インサート上平面PU及びインサート下平面PLは、インサート中央平面Mに(また互いに対して)平行とし得る。
【0057】
端面32の少なくとも一方に位置し、端面32の少なくとも一方と一体に形成される(即ち、単一の一体構造を有する)のは、切削部分34である。切削部分34は、インサート上面26に関連する切れ刃36を有し得る。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、2つの切削部分34があり得る。そのような構成において、切削インサート22は、両端が刃先交換可能であり、インサート横平面P2回りに鏡面対称を呈し得、インサート横平面P2は、インサート長手方向軸Aに直交して向けられ、インサート横軸Lを含み、インサート端面32の間の中間を通過する。代替的に、切削部分34の一方は、インサート下面28(図示せず)に関連し得、この場合、切削インサート22は、インサート横平面P2回りに鏡面対称を呈さないが、代わりに、インサート横軸I回りに180°の回転対称を呈し得る。切削インサート22は、高さ方向(即ち、インサート垂直軸Vに沿った方向)よりも幅方向(即ち、インサート横軸Lに沿った方向)で細くし得る。
【0058】
図4~
図7bを参照すると、切削インサート22は、少なくとも1つの細長いインサート係合機構40を含み、インサート係合機構40は、インサート上面26及びインサート下面28の少なくとも一方に形成される。即ち、少なくとも1つの係合機構40は、インサート上面26及び/又はインサート下面28に形成される。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削インサート22は、第1のインサート係合機構40と第2のインサート係合機構40とを含み得、第1のインサート係合機構40は、インサート上面26に形成され、第2のインサート係合機構40は、インサート下面28に形成される。即ち、インサート上面26及びインサート上面28のそれぞれは、これらに形成されるインサート係合機構を有する。
【0059】
少なくとも1つのインサート係合機構40は、インサート端面32の間の方向で、インサート係合機構長手方向軸Iに沿って長手方向に延在する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート係合機構長手方向軸Iは、インサート長手方向軸Aに平行とし(インサート長手方向軸Aからずらし)得る。少なくとも1つのインサート係合機構40は、インサート長手方向軸Aに対して、切削インサート22の一方の軸方向端部からもう一方の軸方向端部まで延在し得る。
【0060】
図4~
図5及び
図7a~
図7bを特に参照すると、本願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのインサート係合機構40は、インサート係合機構長手方向軸Iに沿って長さ方向に延在する細長いインサート係合突起42を含み得る。少なくとも1つのインサート係合機構40は、インサート係合突起42の両横側に沿って長さ方向に延在する2つのインサート係合機構溝44を含み得る。2つの離間するインサート係合溝44は、好ましくは、インサート係合溝44の全長に沿って他方から離間し、好ましくは、互いに平行である。したがって、各インサート係合溝44は、インサート係合突起42とインサート側面33の一方との間に位置する。好ましくは、少なくとも1つのインサート係合機構40は、厳密に1つのインサート係合突起42と、対向するインサート側面33の間の厳密に2つのインサート係合溝とを合計で含み得る。
【0061】
少なくとも1つのインサート係合機構40は、2つの細長い対向するインサート係合くさび面46を含む。一方のインサート係合くさび面46は、各溝44と関連し得る。2つのインサート係合くさび面46は、インサート係合機構長手方向軸Iに沿って延在する。即ち、2つのインサート係合くさび面46は、インサート係合機構長手方向軸Iの方向で長さ方向に延在する。2つのインサート係合くさび面46は、インサート垂直軸Vに沿った図においてインサート係合機構長手方向軸Iの両側に位置する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサートくさび面46は、インサート係合突起42の両横側に位置し得る。
【0062】
2つのインサート係合くさび面46は、インサート長手方向軸Aに向かう方向で、反対の横方向で(即ち、インサート横軸Lに沿って反対方向で)傾斜する。2つのインサート係合くさび面46は、インサート係合鋭角θを画定するように互いに向かって収束する。インサート係合角θは、インサート長手方向軸Aに沿った図において測定される。
【0063】
図7a及び
図7bに示されるように、少なくとも1つのインサート係合機構40がインサート係合突起42を含む(即ち、少なくとも1つのインサート係合機構40が雄部材を含む)構成において、2つのインサート係合くさび面46は、2つのインサート側面33からの方向で外側に(即ち、インサート長手方向軸Aから離れて)収束し、インサート係合鋭角θが内角であるようにする。そのような場合、2つのインサート係合くさび面46は、互いから離れて向き得る。
【0064】
代替的に、少なくとも1つのインサート係合機構40は、雌部材を含み得る。そのような構成(図示せず)において、2つのインサート係合くさび面46は、2つのインサート側面33からの方向で内側に(即ち、インサート長手方向軸Aに向かって)収束し、インサート係合角θが外角であるようにする。2つのインサート係合くさび面46は、互いの方に向き得る。前者の構成が好ましい。詳細な説明及び特許請求の範囲の全体にわたり、「内角」は、部材の内側に測定される部材面の2つの面成分の間の角度を指す一方で、「外角」は、部材の外側に測定される部材面の2つの面成分の間の角度を指すことを了解されたい。
【0065】
図7aに戻ると、本願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのインサート係合機構40は、インサート上面26に形成し得る。インサート長手方向平面P1の所与の側において、インサート係合くさび面46は、インサート長手方向平面P1よりインサート側面33から更に遠くし得る。2つのインサート係合くさび面46は、インサート中央平面Mから離れる方向でインサート上平面PUを越えて延在することはない。言い方を変えれば、2つのインサート係合くさび面46は、インサート中央平面M及びインサート長手方向軸Aと同じインサート上平面PUの側にある。
【0066】
図7bに戻ると、本願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのインサート係合機構40は、インサート下面28に形成し得る。インサート長手方向平面P1の所与の側において、インサート係合くさび面46は、インサート長手方向平面P1よりインサート側面33に近接し得る。インサート下面28に形成される2つのインサート係合くさび面46は、インサート中央平面Mから離れる方向でインサート下平面PLを越えて延在することはない。言い方を変えれば、2つのインサート係合くさび面46は、インサート中央平面M及びインサート長手方向軸Aと同じインサート下平面PLの側にある。
【0067】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、(インサート上面26及びインサート下面28に形成される)2つのインサート係合機構40を伴う構成において、インサート上面26に形成された第1のインサート係合機構40に属する2つのインサートくさび面46は、インサートくさび面46の軸方向長さを除き、インサート下面28に形成された第2のインサート係合機構40に属する2つのインサート係合くさび面46と同一である。少なくとも1つのインサート係合機構40は、インサート長手方向平面P1回りに鏡面対称を呈し得る。
【0068】
2つのインサート係合くさび面46は、インサート横軸Lに沿って横方向で互いからインサート係合横距離dで離間する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート係合横距離dは、1.5mm以上、2.5mm以下とし得る。好ましくは、インサート係合横距離dは、2.13mmに等しくし得る。
【0069】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのインサート係合機構40は、2つの離間するインサート係合くさび面46の間に延在するインサート係合中心面48を含み得る。即ち、2つのインサート係合くさび面46は、インサート係合中心面48の両横側に位置する。インサート係合中心面48は、インサート係合機構長手方向軸Iに沿った方向で長さ方向に延在する。インサート係合中心面48は、インサート係合機構長手方向軸Iに沿った図において凹形に湾曲し得る。したがって、インサート係合突起42の頂点は、細長いインサート凹面49を含み得る。インサート係合中心面48(及びインサート凹面49)は、インサート長手方向平面P1に交差し得る。
【0070】
再度
図7a~
図7bを参照すると、2つのインサート係合くさび面46は、インサート垂直軸Vの方向で測定されるインサート係合高さHを有する。インサート係合高さHは、0.1mmを超える。インサート係合高さHは、0.5mm未満である。好ましくは、インサート係合高さHは、0.2mmに等しくし得る。インサート係合高さHが0.5mm未満であるために、2つのインサート係合突起42は、それほど破損しやすくない。インサート係合横距離dは、インサート係合高さHの5倍を超える。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート係合高さHは、インサート中央平面Mに平行に向けられる2つの離間するインサート正接平面TPの間で測定し得、2つの離間するインサート正接平面TPは、極終端点で各インサート係合くさび面46に正接する(即ち、終端点は、インサート係合くさび面46がインサート垂直軸Vに対して方向を変化させる場所に位置する)。
【0071】
図7a~
図7bを参照すると、2つのインサート係合くさび面46はそれぞれ、工具ホルダのインサート受入れスロット上の対応する面に当接するインサート当接面50を含む。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、各インサート当接面50は平坦とし得る。
【0072】
各インサート当接面50で画定されるインサート係合角θは、90°以上、110°以下である。各インサート当接面50で画定されるインサート係合角θが110°を超えると、インサート当接面50は、切削インサート22が横切削力CFを受けた際にインサート受入れスロット上の対応する当接面を越えて横に摺動しやすい。好ましくは、各インサート当接面50で画定されるインサート係合角θは、95°以上、100°以下とし得る。更に好ましくは、各インサート当接面50で画定されるインサート係合角θは、98.8°に等しくし得る。
【0073】
次に、本明細書に記載の切削インサート22を解放可能に保持する工具ホルダ24を示す
図8に注意を向けられたい。工具ホルダ24は、前方向D
Fから後方向D
Rまでを画定するホルダ長手方向軸Bを有する。本明細書及び特許請求の範囲全体にわたる用語「前方」及び「後方」の使用は、ホルダ長手方向軸Bの方向で、
図8及び
図11でそれぞれ左及び右に向かう相対的な位置を指すことを了解されたい。工具ホルダ24は、本体部分58と、工具ホルダ24の前端部に位置する締結部分60とを有する。締結部分60は、本体部分58と一体に形成し得る。締結部分60は、2つの対向する締結部分側面63と、締結部分60の前端部で締結部分側面63の間に延在する締結部分前端面64とを含む。締結部分60は、前スロット開口65を形成するように締結部分前端面64に開口するインサート受入れスロット62を有する。インサート受入れスロット62は、2つの対向する締結部分側面63に横に開口する。インサート受入れスロット62は、スロット長手方向軸Cを画定する方向で長手方向に細長い。インサート受入れスロット62は、上締結顎66と下ベース顎68とを有し、上締結顎66は、下ベース顎68に対して弾性的に変位可能である。上締結顎66は、締結顎面70を有する。下ベース顎68は、ベース顎下面72を有する。概して、締結顎面70は、ベース顎下面72に面する。インサート受入れスロット62は、締結顎面70とベース顎下面72との間に延在するスロット後面74を含む。スロット長手方向軸Cは、スロット後面74に交差し、前スロット開口65を通過する。スロット後面74の一部分は、軸方向停止部として働き得る。少なくとも締結部分60は、工具ホルダ24が突切り及び溝旋削作業に適しているようにブレード状である。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、工具ホルダ24全体を(ブロックに組み付け可能な)ブレードとし得る。スロット長手方向軸Cは、ホルダ長手方向軸Bに平行であり、ホルダ長手方向軸Bからずらし得る。
【0074】
図8~
図9を参照すると、インサート受入れスロット62は、スロット長手方向平面P1’を有し、スロット長手方向平面P1’は、スロット長手方向軸Cを含み、締結顎面70及びベース顎下面72に交差する。インサート受入れスロット62は、スロット中央平面M’を有し、スロット中央平面M’は、スロット長手方向軸Cを含み、締結顎面70とベース顎下面72との間の中間に交差する。インサート受入れスロット62は、スロット垂直軸V’を有し、スロット垂直軸V’は、スロット中央平面M’に直交して向けられ、スロット長手方向平面P1’内に含まれる。スロット垂直軸V’は、締結顎面70及びベース顎下面72に交差する。インサート受入れスロット62は、スロット横軸L’を有し、スロット横軸L’は、スロット長手方向平面P1’に直交して向けられ、スロット中央平面M’内に含まれる。スロット横軸L’は、締結顎面70とベース顎下面72との間の中間を通過する。インサート受入れスロット62は、スロット横平面P2’を有し、スロット横平面P2’は、スロット長手方向軸Cに直交して向けられ、スロット横軸L’を含み、前スロット開口65とスロット後面74との間の中間を通過する。
【0075】
図9及び
図10a~
図10bを参照すると、インサート受入れスロット62は、少なくとも1つの細長いスロット係合機構78を含み、少なくとも1つの細長いスロット係合機構78は、締結顎面70及びベース顎下面72の少なくとも一方に形成される。即ち、少なくとも1つのスロット係合機構78は、締結顎面70及び/又はベース顎下面72に形成される。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート受入れスロット62は、第1のスロット係合機構78と第2のスロット係合機構78とを含み得、第1のスロット係合機構78は、締結顎面70に形成され、第2のスロット係合機構78は、ベース顎下面72に形成される。即ち、締結顎面70及びベース顎下面72のそれぞれは、これらに形成されるスロット係合機構78を有する。
【0076】
少なくともスロット係合機構78は、前スロット開口65とスロット後面74との間の方向で、スロット係合機構長手方向軸Sに沿って長手方向に延在する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのスロット係合機構78は、スロット長手方向軸Cに対して、インサート受入れスロット62の一方の軸方向端部からもう一方の軸方向端部まで延在し得る。少なくとも1つのスロット係合機構78がベース顎下面72に位置する構成において、スロット係合機構長手方向軸Sは、スロット長手方向軸Cに平行とし得る(スロット長手方向軸Cからずらし得る)。
【0077】
図8及び
図10a~
図10bを特に参照すると、本願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのスロット係合機構78は、スロット係合機構長手方向軸Sに沿って長さ方向に延在するスロット係合溝80を含み得る。少なくとも1つのスロット係合機構78は、スロット係合溝80の両横側に沿って長さ方向に延在する2つの細長いスロット係合突起82を含み得る。2つの離間するスロット突起82は、好ましくは、スロット突起82の全長に沿って他方から離間し、好ましくは、互いに平行である。したがって、各スロット係合突起82は、スロット係合溝42と締結部分側面63の一方との間に位置する。好ましくは、少なくとも1つのスロット係合機構78は、厳密に1つのスロット係合溝80と、工具ホルダの両側の間、例えば、2つの対向する締結部分側面63の間の厳密に2つのスロット係合突起82とを合計で含み得る。2つのスロット係合突起82は、硬質である。即ち、2つのスロット係合係合突起82は変形可能ではない。
【0078】
少なくとも1つのスロット係合機構78は、2つの細長い対向するスロット係合くさび面84を含む。一方のスロット係合くさび面84は、各突起82と関連し得る。2つのスロット係合くさび面84は、スロット係合機構長手方向軸I’に沿って延在する。即ち、2つのスロット係合くさび面84は、スロット係合機構長手方向軸Sの方向で長さ方向に延在する。2つのスロット係合くさび面84は、スロット垂直軸V’に沿った図においてスロット係合機構長手方向軸I’の両側に位置する。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、スロット係合くさび面84は、スロット係合溝80の反対の長手方向両側に位置し得る。
【0079】
2つのスロット係合くさび面84は、スロット長手方向軸Cに向かう方向で、反対の横方向で(即ち、スロット横軸L’に沿った反対方向で)傾斜する。2つのスロット係合くさび面84は、スロット係合鋭角θ’を画定するように互いに向かって収束する。スロット係合角θ’は、スロット長手方向軸Cに沿った図において測定される。
【0080】
図10a及び
図10bに示されるように、少なくとも1つのスロット係合機構78がスロット係合溝80を含む(即ち、少なくとも1つのスロット係合機構78が雌部材を含む)構成において、2つのスロット係合くさび面84は、2つの締結部分側面63からの方向で外側に(即ち、スロット長手方向軸Cから離れて)収束し、スロット係合角θ’が外角であるようにする。そのような場合、2つのスロット係合くさび面84は、互いの方を向き得る。
【0081】
代替的に、少なくとも1つのスロット係合機構78は、雄部材を含み得る。そのような構成(図示せず)において、2つのスロット係合くさび面84は、2つの締結部分側面63からの方向で内側に(即ち、スロット長手方向軸Cに向かって)収束し、スロット係合角θ’が内角であるようにする。そのような場合、2つのスロット係合くさび面84は、互いから離れて向き得る。前者の構成が好ましい。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、スロット長手方向平面P1’の所与の側において、スロット係合くさび面84は、スロット長手方向平面P1’より締結部分側面63から更に遠くし得る。
【0082】
図8に戻ると、本願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのスロット係合機構78は、ベース顎下面72に形成し得る。2つのスロット係合くさび面84はそれぞれ、これらの軸方向範囲に沿って、非陥没スロット係合部分88と、陥没スロット係合部分90とを含み得、陥没スロット係合部分90は、非陥没スロット係合部分88と締結部分前端面64との間に延在する。陥没スロット係合部分90は、その軸方向長さに沿って、非陥没スロット係合部分88に対して陥没し得る。即ち、陥没スロット係合部分90は、非陥没スロット係合部分88よりスロット長手方向軸Cから更に遠い。非陥没スロット係合部分88は、締結部分前端面64から陥没スロット係合部分90で離間し得、陥没スロット係合部分90は、(スロット長手方向軸Cに沿って測定すると)2mm以下の陥没部分軸方向長さLRを有する。スロット当接面92は、陥没スロット係合部分90に形成されることはない。したがって、スロット当接面92は、締結部分前端面64から離間し得る。
【0083】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、第1のスロット係合機構が締結顎面70に形成され、第2のスロット係合機構がベース顎下面72に形成される2つのスロット係合機構78を伴う構成において、締結顎面70に形成される第1のスロット係合機構78に属する2つのスロットくさび面84は、スロットくさび面84の軸方向長さを除き、ベース顎下面72に形成される第2のスロット係合機構78に属する2つのインサート係合くさび面46と同一である。少なくとも1つのスロット係合機構78は、スロット長手方向平面P1’回りに鏡面対称を呈し得る。
【0084】
図10a~
図10bを参照すると、2つのスロット係合くさび面84は、スロット横軸L’に沿って横方向で互いからスロット係合横距離d’で離間する。スロット係合横距離d’は、インサート係合横距離d未満である。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、スロット係合横距離d’は、1.5mm以上、2.5mm以下とし得る。有利には、そのような構成は、安定した締結をもたらすように(以下で説明する)スロット当接面が十分に横に離間することを可能にする。好ましくは、スロット係合横距離d’は、1.9mmに等しくし得る。
【0085】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのスロット係合機構78は、2つのスロット係合くさび面84の間に延在するスロット係合中心面86を含み得る。即ち、2つのスロット係合くさび面84は、スロット係合中心面86の両横側に位置する。スロット係合中心面86は、スロット係合機構長手方向軸Sの方向で長さ方向に延在し得る。スロット係合中心面86は、平坦とし得る。スロット係合中心面86は、スロット長手方向平面P1’に交差し得る。
【0086】
本願の主題のいくつかの実施形態によれば、2つのスロット係合くさび面84はそれぞれ、スロット傾斜面94を含み得る。スロット傾斜面94は、平坦とし得る。各スロット傾斜面94で画定されるスロット係合角θ’は、各インサート係合くさび面46で画定されるインサート係合角θ未満とし得る。各スロット傾斜面94で画定されるスロット係合角θ’は、90°以上、110°以下とし得る。好ましくは、各スロット傾斜面94で画定されるスロット係合角θ’は、92.5°以上、97.5°以下とし得る。更に好ましくは、各スロット傾斜面94で画定されるスロット係合角θ’は、94°に等しくし得る。
【0087】
再度
図10a~
図10bを参照すると、2つのスロット係合くさび面84は、スロット垂直軸V’の方向で測定されるスロット係合高さH’を有する。スロット係合高さH’は、0.1mmを超える。スロット係合高さH’は、0.5mm未満である。好ましくは、スロット係合高さH’は、0.28mmに等しくし得る。スロット係合高さH’が0.5mm未満であるために、2つのスロット係合突起82は、硬質である。即ち、2つのスロット係合突起82は変形可能ではない。スロット係合横距離d’は、スロット係合高さH’の5倍を超える。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、スロット係合高さH’は、スロット中央平面M’に平行に向けられる2つの離間するスロット正接平面TP’の間で測定でき、2つの離間するスロット正接平面TP’は、極終端点で各スロット係合くさび面84に正接する(即ち、終端点は、スロット係合くさび面84がスロット垂直軸V’に対して方向を変化させる場所に位置する)。スロット係合高さH’は、インサート係合高さHを超え得る。
【0088】
図10a~
図10bを参照すると、2つのスロット係合くさび面84はそれぞれ、切削インサート22上の対応する面に当接するスロット当接面92を含む。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、各スロット当接面92は、それぞれ、隣接するスロット傾斜面94に移行し得る。各スロット当接面92は、スロット長手方向軸Cに直交する平面で取られる断面図において(即ち、
図12a~
図12bに示すように)凸状に湾曲し得る。
【0089】
各スロット当接面92で画定されるスロット係合角θ’は、90°以上、110°以下とし得る。各スロット当接面92で画定されるスロット係合角θ’が110°を超えると、インサート当接面50は、切削インサートが横切削力CFを受けた際にスロット当接面92を越えて横に摺動しやすい。好ましくは、各スロット当接面92で画定されるスロット係合角θ’は、95°以上、100°以下とし得る。
【0090】
図1及び
図2に戻って参照すると、切削工具20は、切削インサート22を有し、切削インサート22は、上締結顎66と下ベース顎68との間に解放可能に締結される。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削インサート22は、上締結顎66と下ベース顎68との間に弾性的に締結し得る。
【0091】
各インサート係合機構40は、対応するスロット係合機構78と係合する。2つのスロット係合くさび面84は、2つの締結部分側面63から2つのインサート係合くさび面46の方向と同じ外側方向又は内側方向で収束する。即ち、2つのインサート係合くさび面46が2つのインサート側面33からの方向で外側に収束する場合、2つのスロット係合くさび面84は、2つの締結部分側面63からの方向で外側に収束する。同様に、2つのインサート係合くさび面46が2つのインサート側面33からの方向で内側に収束する場合、2つのスロット係合くさび面84は、2つの締結部分側面63からの方向で内側に収束する。インサート係合角θが内角である場合、スロット係合角θ’は、外角であり、その逆も同様であることに留意されたい。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、
図11~
図12bも参照すると、インサート係合突起42は、スロット係合溝80内に位置し得る。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート係合溝44は、スロット係合突起82内に位置し得る。インサート凹面49は、占有されることはない。
【0092】
少なくとも1つのインサート係合機構40は、インサート当接面50及びスロット当接面92で少なくとも1つのスロット係合機構78に当接する。そのような構成は、横切削力CFに対して(即ち、スロット横軸L’の方向において)、インサート受入れスロット62内の切削インサート22に改善された安定性をもたらす。本願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのインサート係合機構40は、インサート当接面50及びスロット当接面92のみで少なくとも1つのスロット係合機構78に当接し得る。即ち、少なくとも1つのインサート係合機構40の残りは、少なくとも1つのスロット係合機構78の残りから離間し得る。同様に、インサート係合機構40の一部ではないインサート上面26及び/又はインサート下面28の残りは、スロット係合機構78の一部ではない締結顎面70及び/又はベース顎下面72の残りから離間し得ることに留意されたい。特に、スロット傾斜面94は、少なくとも1つのインサート係合機構40と接触することがないことに更に留意されたい。少なくとも1つのインサート係合機構40と少なくとも1つのスロット係合機構78との間の共通境界面は、鋸歯部を含むことがないことにまた更に留意されたい。こうした鋸歯部は、例えば、国際公開第2004/062839号で開示されるように、互いにかみ合う一連の交互の谷及び山を有し、可能性として、過剰に決定された構成をもたらし、据付けを不安定にする。
【0093】
本願の主題をある程度詳細に説明してきたが、以下で請求する本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく様々な改変形態及び修正形態を行い得ることを理解されたい。例えば、インサート係合くさび面46及び/又はスロット係合くさび面84は、例えば、米国特許第9,033,622号明細書で開示される切欠き(即ち、陥没)部分によって軸方向に離間する2つの構成要素面を含み得る。
【国際調査報告】