IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フイルメニツヒ ソシエテ アノニムの特許一覧

特表2024-537974硫黄含有プロフレグランス化合物を含む改善された香料組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】硫黄含有プロフレグランス化合物を含む改善された香料組成物
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20241010BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20241010BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20241010BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20241010BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C11B9/00 H
A61K8/46
A61Q13/00 101
A61Q19/10
A61Q5/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518091
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2022079212
(87)【国際公開番号】W WO2023067063
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】21203732.9
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アルノー ストリュイゥ
(72)【発明者】
【氏名】グレン フェアホフニク
(72)【発明者】
【氏名】穂積 太郎
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC761
4C083AC762
4C083AC861
4C083CC23
4C083CC33
4C083KK02
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種の香料原料と、少なくとも1種の硫黄含有プロフレグランス化合物とを含む香料組成物であって、硫黄含有プロフレグランスからの硫化水素の形成を促進する19重量%超の香料原料を含まない香料組成物に関する。本発明はさらに、このような香料組成物を調製するための方法、ならびに本発明による香料組成物を含む消費者製品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の香料原料と、少なくとも1種の硫黄含有プロフレグランス化合物とを含む香料組成物であって、硫黄含有プロフレグランスからの硫化水素の形成を促進する19重量%超の香料原料を含まない、香料組成物。
【請求項2】
前記硫黄含有プロフレグランスからの硫化水素の形成を促進する前記香料原料が、前記硫黄含有プロフレグランス化合物と1:1(w/w)の割合で混合され、50℃で2週間貯蔵された場合に、硫化水素臭を誘発する、請求項1記載の香料組成物。
【請求項3】
前記香料組成物が、前記硫黄含有プロフレグランスからの硫化水素の形成を促進する10重量%超、好ましくは5重量%以下の香料原料を含まない、請求項1または2記載の香料組成物。
【請求項4】
前記香料組成物中の、前記硫黄含有プロフレグランスからの硫化水素の形成を促進する前記少なくとも1種の香料原料と、前記少なくとも1種の硫黄含有プロフレグランス化合物との重量比が2.4:1~0である、請求項1から3までのいずれか1項記載の香料組成物。
【請求項5】
前記硫黄含有プロフレグランス化合物が、式:
【化1】
[式中、
a)wは、1~10000の整数を表し;
b)nは、1または0を表し;
c)mは、1~6の整数を表し;
d)Pは、水素原子、または発香性のα,β-不飽和ケトン、アルデヒド、またはカルボン酸エステルを生成しやすい基を表し、かつ式:
【化2】
[式中、波線は、前記PとSとの間の結合の位置を示し;
は、水素原子、C~Cアルコキシル基、またはC~C15直鎖状、環式、もしくは分枝鎖状のアルキル基、アルケニル基、もしくはアルカジエニル基を表し、任意に1個~4個のC~Cアルキル基で置換され;
、R、およびRは、互いに独立して、水素原子、芳香環、またはC~C15直鎖状、環式、もしくは分枝鎖状のアルキル基、アルケニル基、もしくはアルカジエニル基を表し、場合によりC~Cアルキル基で置換され;または基R~Rのうち2個もしくは3個は互いに結合して、5個~20個の炭素原子を有し、かつ前記基R、R、R、またはRが結合している前記炭素原子を含む飽和もしくは不飽和環を形成し、この環は、場合によりC~C直鎖状、分枝鎖状、もしくは環式のアルキル基もしくはアルケニル基で置換され;ただし、基Pのうちの少なくとも1個は、上記で定義された式(II)のものである]
で表され;
e)Gは、1個~22個の炭素原子を有する環式、直鎖状、脂環式、もしくは分枝鎖状のアルキル基、環式、直鎖状、脂環式、もしくは分枝鎖状のアルケニル基、フェニル基、アルキルフェニル基、またはアルケニルフェニル炭化水素基から誘導される(m+1価を有する)多価基を表し、前記炭化水素基は、場合により置換され、ハロゲン、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、チオール、チオエーテル、アミン、第四級アミン、およびアミドからなる群から選択される1個~10個の官能基を含み;かつ
f)Qは、水素原子(この場合、w=1、およびn=1である)、またはポリ(アルキルイミン)、ペプチド(例えば、リジン)からなる群から選択されるポリマーもしくはコポリマー、またはセルロース、シクロデキストリン、およびデンプンからなる群から選択される多糖類、またはカチオン性四級化ケイ素ポリマー、またはさらに、式A-1)、A-2)、A-3)、B-1)、B-2)、C-1)、C-2)、およびC-3):
【化3】
[式中、斜線は、前記モノマー単位とGとの間の結合の位置を示し;
Yは、酸素原子もしくは硫黄原子、またはNR基を表し;
o、p、q、r、s、t、u、およびvは、全て、互いに独立して、0~1の分数を表し、o+p+q=1、r+s=1、およびt+u+v=1であり、ただし、oまたはpのいずれか、ならびにrおよびtは0ではなく;
は、水素原子または天然もしくは非天然のアミノ酸、例えばグリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、メチオニン、グルタミン、アスパラギン、スレオニン、セリン、ロイシン、イソロイシン、バリン、チロシン、またはトリプトファンからの側鎖を表し;
は、同時にまたは独立して、水素原子、またはC~C16炭化水素基を表し;
は、同時にまたは互いに独立して、
- 水素原子もしくはハロゲン原子;
- 酸素原子および硫黄原子からなる群から選択される1個~4個のヘテロ原子を任意に含むC~C炭化水素基;
- 式COOR[式中、Rは、水素原子、任意に1個~30個の酸素原子を含むC~C60アルキル基、もしくはアルケニル基を表す]のカルボン酸基;
- OR基、もしくはCOR基;または
- 窒素原子によって結合されたピロリドン単位
を表し;かつ
Mは、水素原子、アルカリ金属イオン、またはアルカリ土類金属イオンを表す]
からなる群から選択されるモノマー単位に由来するポリマーもしくはランダムコポリマーを表す]
のものである、請求項1から4までのいずれか1項記載の香料組成物。
【請求項6】
前記硫黄含有プロフレグランス化合物が、式:
【化4】
[式中、Rは、C~C20アルキル基、またはアルケニル基、好ましくはC~C15アルキル基、またはアルケニル基、より好ましくはC12アルキル基を表す]
からなる群から選択される化合物、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項1から5までのいずれか1項記載の香料組成物。
【請求項7】
前記硫黄含有プロフレグランス化合物が、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタン-2-オン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-2-オン、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1から6までのいずれか1項記載の香料組成物。
【請求項8】
前記硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する前記香料原料が、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、2-フェニルエタノール、(+/-)-2-フェニル-1-プロパノール、インドール、1-(2-ナフチル)エタノン、(+/-)-αテルピネオール、メチル2-((1RS,2RS)-3-オキソ-2-ペンチルシクロペンチル)アセタート、(+/-)-3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オール、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール、(+/-)-3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、(-)-R-3,7-ジメチル-6-オクテンニトリル、(+/-)-(2,5-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2-イル)メタノール、(+/-)-2,2,2-トリクロロ-1-フェニルエチルアセタート、(+/-)-2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール、シクロヘキシリデン(フェニル)アセトニトリル、(+/-)-3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール、(+/-)-3,7-ジメチル-3-オクタノール、2-エトキシナフタレン、(+/-)-1,5-ジメチル-1-ビニル-4-ヘキセニルアセタート、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカ-3/4-エン-8-イルプロパノアート、(+/-)-2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、(-)-(2E)-2-エチル-4-[(1R)-2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル]-2-ブテン-1-オール、アリル3-シクロヘキシルプロパノアート、(+/-)-1-(2-tert-ブチル-1-シクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、(4E)-3,3-ジメチル-5-[(1R)-2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル]-4-ペンテン-2-オール、(3Z)-3-ヘキセン-1-イルサリチラート、1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン、(+)-2-{(1S)-1-[(1R)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-メチルプロピルプロピオナート、1-[(1RS,2RS)-1,2,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-2-ナフタレニル]エタノン/1-((2RS,3RS)-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタノン/1-[(2RS,3RS,8aRS)-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,5,6,7,8,8a-オクタヒドロ-2-ナフタレニル]エタノン/1-[(1RS,2RS,8aSR)-1,2,8,8-テトラメチル-1,2,3,5,6,7,8,8a-オクタヒドロ-2-ナフタレニル]エタノン/1-[(2RS,3RS,8aRS)-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,6,7,8,8a-オクタヒドロ-2-ナフタレニル]エタノンの混合物、(+/-)-3-endo/exo-メトキシ-7,7-ジメチル-10-メチレン-ビシクロ[4.3.1]デカン、(3aRS,5aSR,9aSR,9bRS)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、3-メチル-4/5-シクロペンタデセン-1-オン、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1から7までのいずれか1項記載の香料組成物。
【請求項9】
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3/4-エン-8-イルアセタート、(Z)-3-ヘキセニルアセタート、2-メトキシ-4-(2-プロペン-1-イル)フェノール、パチュリ油、4-(2-メチル-2-プロパニル)シクロヘキシルアセタート、アリル(2/3-メチルブトキシ)アセタート、2-メトキシ-4-[(1E)-1-プロペン-1-イル]フェノール、(3Z)-3-ヘキセン-1-オール、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアセタート、ヘキシルアセタート、1,1’-オキシジベンゼン、1-メトキシ-4-メチルベンゼン、(1R,2R)-1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イルアセタート、1-フェニルビニルアセタート、エチル(E)-3-フェニル-2-プロペノアート、(+/-)-3,7-ジメチル-1-オクタノール、エチルブタノアート、1,1,2,3,3-ペンタメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-4H-インデン-4-オン、アリル(シクロヘキシルオキシ)アセタート、ラバンジン油、(2,2-ジメトキシエチル)ベンゼン、2-メチルブチルブチラート、3-メチルブチルブチラート、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルブタノアート、および1,4-ジオキサシクロヘプタデカン-5,17-ジオン、メチル2-ヒドロキシベンゾアート、アセトフェノン、アリルヘキサノアート、(3Z)-ヘキサ-3-エン-1-イルメチルカーボネート、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される香料原料を含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の香料組成物。
【請求項10】
硫化水素捕捉剤を含み、好ましくは、前記硫化水素捕捉剤は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン、エトキシル化アルキルジエタノールアミン、1,1’,1’’,1’’’-[1,2-エタンジイルジ(ニトリロ)]テトラ(2-プロパノール)、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択されるアミンである、請求項1から9までのいずれか1項記載の香料組成物。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の香料組成物を含む、消費者製品。
【請求項12】
パーソナルケア製品またはホームケア製品、好ましくは、布地用コンディショナー、シャワージェル、またはリンスオフヘアコンディショナーである、請求項11記載の消費者製品。
【請求項13】
酸性のpH値、好ましくは5.5未満、好ましくは2.5~5.5のpHを有する、請求項11または12記載の消費者製品。
【請求項14】
好ましくはベンゾイソチアゾリン-3-オン、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される防腐剤を含む、請求項11から13までのいずれか1項記載の消費者製品。
【請求項15】
硫黄含有プロフレグランス化合物を少なくとも1種の香料原料と混合して、前記硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する19重量%超の香料原料を含まない香料組成物を得る工程を含む、香料組成物を調製するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の香料原料と、少なくとも1種の硫黄含有プロフレグランス化合物とを含む香料組成物であって、硫黄含有プロフレグランスからの硫化水素の形成を促進する19重量%超の香料原料を含まない、香料組成物に関する。本発明はさらに、このような香料組成物を調製するための方法、ならびに本発明による香料組成物を含む消費者製品に関する。
【0002】
発明の背景
硫黄含有プロフレグランスを含む香料組成物は、香料産業で広く使用されている。しかしながら、香料組成物中の硫黄含有プロフレグランスの少なくとも一部が酸化され、腐卵臭に匹敵する不快臭を有する硫化水素が形成される危険性がある。
【0003】
1種以上の硫黄含有プロフレグランスを含む香油において、硫化水素の形成を低減するための幾つかの試みがなされてきた。あるアプローチでは、形成された硫化水素を捕捉することができる捕捉剤分子を香料組成物に添加することで、硫化水素の不快な知覚が防止される。例えば、無臭塩の形成によって硫化水素を捕捉することができる硫化水素捕捉剤分子として、トリエタノールアミンが使用されることが多い。
【0004】
しかしながら、硫黄含有プロフレグランスを含む香料組成物がホームケア製品またはパーソナルケア製品などの消費者製品に組み込まれる場合、上記の硫化水素捕捉の概念はもはや十分に機能しない。特に、布地用コンディショナー配合物またはシャワージェルなどの酸性の消費者製品では、捕捉された硫化水素が再び捕捉剤分子から放出され、最終的な消費者製品における不快な腐卵臭の形成につながることがある。
【0005】
このため、消費者製品における硫化水素の形成および/または放出を低減するために、ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT)、メチルクロロイソチアゾリノン(CIT)、またはメチルイソチアゾリノン(MIT)などの防腐剤を消費者製品に添加することが多い。しかしながら、最近、このような防腐剤は、規制上の圧力を受けるようになり、近い将来、このような消費者製品から取り除く必要性が生じる可能性がある。
【0006】
上記に鑑みて、香料組成物内および消費者製品内それぞれの硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成に関して、上記の問題に対する代替的な、かつ/または改善された解決手段を見出す必要がある。
【0007】
本発明の文脈において、驚くべきことに、1種以上の硫黄含有プロフレグランス化合物の他に香料組成物中に含まれる香料原料の中には、前記1種以上の硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の放出を促進するものがあることが分かった。したがって、本発明は、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を減少させるために、そのような不利な香料原料が限られた量である香料組成物を対象とする。
【0008】
詳細な説明
本発明は、少なくとも1種の香料原料と少なくとも1種の硫黄含有プロフレグランス化合物とを含む香料組成物であって、硫黄含有プロフレグランスからの硫化水素の形成を促進する19重量%超の香料原料を含まない、香料組成物に関する。
【0009】
「香料組成物」は、約20℃の液体であり、快楽作用を付与することができる組成物であると理解されるべきである。すなわち、香料組成物として考えられるべき組成物は、単に匂いを付与するというだけではなく、嗅覚の知覚をポジティブまたは心地良いように付与または変更することができるものとして、香料分野の当業者が認識するものでなくてはならない。
【0010】
本発明によれば、香料組成物は、少なくとも1種の硫黄含有プロフレグランス化合物を含む。
【0011】
プロパフューム、またはプロフレグランスは、PRM(香料原料)とも呼ばれる香料化合物の1種、2種、または3種を、外部からの作用によって放出し、PRMの賦香効果を延長することができる化合物である。これにより、プロパフューム化合物の(化学的)開裂によって、香料原料がプロパフューム化合物から放出される。典型的には、プロパフューム自体は、揮発性が低く、理想的には(ほぼ)無臭である。プロパフュームは、有利には、ソフトウェアEPIwin v.3.10(2000、米国環境保護庁で入手可能)を使用する計算によって得られるように、0.01Pa未満の蒸気圧によって特徴付けることができる。一実施形態によれば、蒸気圧は、0.001Pa未満である。プロパフュームはまた、有利には、270を上回る、さらには300を上回る、さらには350を上回る分子量によって特徴付けられる場合がある。「プロパフューム」または「プロフレグランス」という用語は、例えばA. Herrmann, Angew. Chem. Int. Ed., 2007, 46, pp. 5836-5863に報告されているような、当該技術分野における通常の意味を有する。
【0012】
プロパフューム化合物の開裂につながる外部からの作用は、光の場合がある。「光」とは、いかなる特定の波長にも限定されない任意の形態の電磁放射を意味する。このようなプロパフューム化合物からのPRMの放出は、通常、より短波長(より高いエネルギー投入量)であると、より効果的である。
【0013】
ある種のプロパフューム化合物の開裂は、空気/酸素によっても誘発される場合がある。これにより、PRMは、空気(周囲空気)または酸素の存在下で、酸化によりプロパフューム化合物から放出され得る。
【0014】
さらに、PRMは、ある種のプロパフューム化合物から、熱によって放出される場合がある。「熱」とは、温度上昇により引き起こされる任意のエネルギー投入を意味する。
【0015】
さらに、PRMは、ある種のプロパフューム化合物から、水分によって放出される場合がある。そのようなプロパフューム化合物は、水により引き起こされる開裂を受けやすい化学結合を示す場合があり、したがって水の存在下で開裂され得る。場合によっては、あるpH値で、開裂が誘導かつ/または後押しされることがある。
【0016】
さらに、PRMは、ある種のプロパフューム化合物から、酵素に曝露されることで放出される場合がある。そのようなプロパフューム化合物は、酵素の存在下で効率的に切断され得る化学結合を示す場合がある。
【0017】
場合により、PRMは、1つのタイプの放出メカニズムのみでなく、例えば空気/酸素、および水分による放出といった、上記のタイプのうち2種以上に同時に基づいて、ある種のプロパフューム化合物から放出される場合がある。
【0018】
本発明によれば、香料組成物は、少なくとも1種の硫黄含有プロフレグランス化合物を含むため、前記硫黄含有プロフレグランス化合物には、前記化合物の酸化時に、不快な硫化水素を形成するリスクがある。
【0019】
特定の実施形態において、香料組成物は、1種、2種、3種、4種またはそれ以上の硫黄含有プロフレグランス化合物を含む。好ましくは、香料組成物は、1種または2種の硫黄含有プロフレグランス化合物を含む。より好ましくは、香料組成物は、1種の硫黄含有プロフレグランス化合物を含む。
【0020】
特定の実施形態において、硫黄含有プロフレグランス化合物は、式:
【化1】
[式中、
a)wは、1~10000の整数を表し;
b)nは、1または0を表し;
c)mは、1~6の整数を表し;
d)Pは、水素原子、または発香性のα,β-不飽和ケトン、アルデヒド、またはカルボン酸エステルを生成しやすい基を表し、かつ式:
【化2】
[式中、波線は、前記PとSとの間の結合の位置を示し;
は、水素原子、C~Cアルコキシル基、またはC~C15直鎖状、環式、もしくは分枝鎖状のアルキル基、アルケニル基、もしくはアルカジエニル基を表し、任意に1個~4個のC~Cアルキル基で置換され;
、R、およびRは、互いに独立して、水素原子、芳香環、またはC~C15直鎖状、環式、もしくは分枝鎖状のアルキル基、アルケニル基、もしくはアルカジエニル基を表し、場合によりC~Cアルキル基で置換され;または基R~Rのうち2個もしくは3個は互いに結合して、5個~20個の炭素原子を有し、かつ前記基R、R、R、またはRが結合している炭素原子を含む飽和もしくは不飽和環を形成し、この環は、場合によりC~C直鎖状、分枝鎖状、もしくは環式のアルキル基もしくはアルケニル基で置換され;ただし、基Pのうちの少なくとも1個は、上記で定義された式(II)のものである]
で表され;
e)Gは、1個~22個の炭素原子を有する環式、直鎖状、脂環式、もしくは分枝鎖状のアルキル基、環式、直鎖状、脂環式、もしくは分枝鎖状のアルケニル基、フェニル基、アルキルフェニル基、またはアルケニルフェニル炭化水素基から誘導される(m+1価を有する)多価基を表し、前記炭化水素基は、場合により置換され、ハロゲン、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、チオール、チオエーテル、アミン、第四級アミン、およびアミドからなる群から選択される1個~10個の官能基を含み;かつ
f)Qは、水素原子(この場合、w=1、およびn=1である)を表すか、またはポリ(アルキルイミン)、ペプチド(例えば、リジン)からなる群から選択されるポリマーもしくはコポリマー、またはセルロース、シクロデキストリン、およびデンプンからなる群から選択される多糖類、またはカチオン性四級化ケイ素ポリマー、またはさらに、式A-1)、A-2)、A-3)、B-1)、B-2)、C-1)、C-2)、およびC-3):
【化3】
[式中、斜線は、前記モノマー単位とGとの間の結合の位置を示し;
Yは、酸素原子もしくは硫黄原子、またはNR基を表し;
o、p、q、r、s、t、u、およびvは、全て、互いに独立して、0~1の間の分数を表し、o+p+q=1、r+s=1、およびt+u+v=1であり、ただし、oまたはpのいずれか、ならびにrおよびtは0ではなく;
は、水素原子または天然もしくは非天然のアミノ酸、例えばグリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、メチオニン、グルタミン、アスパラギン、スレオニン、セリン、ロイシン、イソロイシン、バリン、チロシン、またはトリプトファンからの側鎖を表し;
は、同時にまたは独立して、水素原子、またはC~C16炭化水素基を表し;
は、同時にまたは互いに独立して、
- 水素原子もしくはハロゲン原子;
- 酸素原子および硫黄原子からなる群から選択される1個~4個のヘテロ原子を任意に含むC~C炭化水素基;
- 式COOR[式中、Rは、水素原子、任意に1個~30個の酸素原子を含むC~C60アルキル基、もしくはアルケニル基を表す]のカルボン酸基;
- OR基、もしくはCOR基;または
- 窒素原子によって結合されたピロリドン単位
を表し;かつ
Mは、水素原子、アルカリ金属イオン、またはアルカリ土類金属イオンを表す]
からなる群から選択されるモノマー単位から誘導されるポリマーもしくはランダムコポリマーを表す]
のものである。
【0021】
Pの定義に使用される表現である「発香性のα,β-不飽和ケトン、アルデヒド、またはカルボン酸エステル」は、当業者により香料において賦香成分として使用されると認識される、α,β-不飽和ケトン、アルデヒドまたはカルボン酸エステルと理解される。一般に、前記発香性のα,β-不飽和ケトン、アルデヒド、またはカルボン酸エステルは、8個~20個の炭素原子、またはさらにより好ましくは10個~15個の間の炭素原子を有する化合物である。
【0022】
同じく、現在知られている発香性化合物を網羅する一覧を提供することは不可能ではあるが、これらは、上記のように定義される式(I)の化合物の合成に使用することができ、その後放出される。しかしながら、好ましい例として:α-ダマスコン、β-ダマスコン、γ-ダマスコン、δ-ダマスコン、α-イオノン、β-イオノン、γ-イオノン、δ-イオノン、β-ダマセノン、2-メチル-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン、1-[6-エチル-2,6-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル]-2-ブテン-1-オン、3-メチル-5-プロピル-2-シクロヘキセン-1-オン、2-メチル-5-(1-プロペン-2-イル)-2-シクロヘキセン-1-オン、2,5-ジメチル-5-フェニル-1-ヘキセン-3-オン、1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン、3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール、8-メチル-α-イオノンまたは10-メチル-α-イオノン、2-オクテナール、1-(2,2,3,6-テトラメチルシクロヘキシル)ブタ-2-エン-1-オン、4-(2,2,3,6-テトラメチルシクロヘキシル)ブタ-3-エン-2-オン、2-シクロペンタデセン-1-オン、4,4a-ジメチル-6-(1-プロペン-2-イル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-2(3H)-ナフタレノン、シンナムアルデヒド、2,6,6-トリメチルスピロ[ビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3,1’-シクロヘキサン]-2’-エン-4’-オン、エチル2,4-デカ-ジエノアート、エチル2-オクテノアート、メチル2-オクテノアート、メチル2-ノネノアート、エチル2,4-ウンデカジエノアート、4-メチルペンタ-3-エン-2-オン、オクタ-2-エン-4-オン、およびメチル5,9-ジメチル-2,4,8-デカトリエノアートを挙げることができる。
【0023】
特定の実施形態において、Pは、式(P-1)~(P-14):
【化4】
[式中、波線は、上記で示した意味を有し、点線は、単結合または二重結合を表し、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基、またはC~C直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基を表し、Rは、水素原子またはC~C直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基を表す]
からなる群から選択される基を、その異性体のいずれか1つの形で表す。
【0024】
特定の実施形態において、Pは、式:
【化5】
[式中、波線は、上記で示した意味を有し、点線は、単結合または二重結合を表し、Rは、水素原子またはメチル基である]
からなる群から選択される基を表す。
【0025】
特定の実施形態において、Pは、上記で定義される式(P-1)、(P-2)、(P-1)’、(P-2)’、(P-3)、(P-7)、(P-13)、(P-14)、または(P-14)’からなる群から選択される基を表す。Pは、上記で定義される式(P-1)、(P-1)’、(P-2)、(P-2)’、(P-3)または(P-14)’からなる群から選択される基を表すことが好ましい。
【0026】
特定の実施形態において、Gは、1個~22個の炭素原子を有する二価の環式、直鎖状、または分枝鎖状の、アルキル基、アルケニル基、アルカンジエニル基、またはアルキルベンゼン炭化水素基を表す場合があり、前記炭化水素基は、場合により置換され、かつエーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、チオール、チオエーテル、アミン、第四級アミン、およびアミドからなる群から選択される1個~10個の官能基を含む。
【0027】
特定の実施形態において、Gは、1個~22個の炭素原子を有する二価の直鎖状または分枝鎖状のアルキル炭化水素基を表し、前記炭化水素基は、場合により置換され、かつエーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、チオール、チオエーテル、アミン、第四級アミン、およびアミドからなる群から選択される1個~5個の官能基を含む。
【0028】
特定の実施形態において、Gは、2個~15個の炭素原子を有する二価の直鎖状または分枝鎖状のアルキル炭化水素基を表し、前記炭化水素基は、場合により置換され、かつエーテル、およびエステルからなる群から選択される1個~2個の官能基を含む。
【0029】
特定の実施形態において、Gは、3個~15個の炭素原子を有する二価の直鎖状アルキル炭化水素基を表し、前記炭化水素基は、場合により置換されており、かつ1個のエステル官能基を含む。
【0030】
特定の実施形態において、Gは、3個~14個の炭素原子を有する二価の直鎖状アルキル炭化水素基を表す。
【0031】
特定の実施形態において、Qは、水素原子、または上記で定義された式B-1の少なくとも1個の繰り返し単位を含むコポリマーを表す。
【0032】
特定の実施形態において、Qは、水素原子、または式B-1の少なくとも1個の繰り返し単位と、式B-2の少なくとも1個の繰り返し単位とを含むコポリマーを表す。
【0033】
特定の実施形態において、Rは、同時にまたは独立して、水素原子、またはC1-3アルキル基を表す。好ましくは、Rは、同時にまたは独立して、水素原子またはメチルもしくはエチル基を表す。より好ましくは、Rは、同時にまたは独立して、水素原子またはメチル基を表す。
【0034】
特定の実施形態において、プロパフューム化合物は、上記の式(I)によって定義され、その際、
- w=1、n=1、m=1であり、
- Pは、発香性のα,β-不飽和ケトン、アルデヒドを生成しやすい基を表し、式:
【化6】
[式中、R、R、およびRは、互いに独立して、水素原子、C~C10芳香環、またはC~C15直鎖状、環式、もしくは分枝鎖状のアルキル基、アルケニル基、もしくはアルカジエニル基を表し、場合によりC~Cアルキル基で置換され;または基R~Rのうち2個もしくは3個は互いに結合し、5個~20個の炭素原子を有し、かつ前記基R、R、R、またはRが結合している炭素原子を含む、飽和もしくは不飽和環を形成し、この環は、場合によりC~C直鎖状、分枝鎖状、もしくは環式のアルキル基もしくはアルケニル基で置換される]
で表され;
- Gは、任意に1個または2個の酸素原子、硫黄原子、および/または窒素原子を有する、2個~8個の炭素原子を有する環式、直鎖状、または分枝鎖状のアルキル、アルケニル、フェニル、アルキルフェニル、またはアルケニルフェニル炭化水素基から誘導される二価の基を表し;
- Qは、式B-1)[式中、Rは、C~C16炭化水素基を表す]から誘導されるポリマー、またはランダムコポリマーを表す。
【0035】
特定の実施形態において、硫黄含有プロパフューム化合物は、式:
【化7】
[式中、二重斜線は、別の繰り返し単位との結合を示す]
の繰り返し単位を少なくとも1個有する直鎖ポリシロキサンコポリマーである。
【0036】
式(III)のプロパフュームは、2-メチル-5-(プロパ-1-エン-2-イル)シクロヘキサ-2-エン-1-オンをフレグランス化合物として放出するが、これは、カルボンとしても知られている。カルボンは、2つのエナンチオマー、つまり、(R)-(-)-2-メチル-5-(1-プロペン-2-イル)-2-シクロヘキセン-1-オン(l-カルボン、またはカルボンラエボ)、および(S)-(+)-2-メチル-5-(1-プロペン-2-イル)-2-シクロヘキセン-1-オン(d-カルボン、またはカルボンデキストロ)の形で存在する。2種のエナンチオマーは、わずかに異なるミントの香調(odor tonality)を有すると報告されている。それにもかかわらず、双方のエナンチオマーは、コポリマーの製造および放出効率の観点から、同様の効果を有すると予想される。
【0037】
特定の実施形態において、硫黄含有プロパフューム化合物は、式(IV):
【化8】
[式中、
Pは、上記で定義されたのと同じ意味を有し;
Gは、2個~15個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基またはアルケニル基から誘導される二価の基を表し、場合により-OR、-(NR、-COOR、およびR基からなる群から選択される1個以上の基で置換され、ここで、Rは、水素原子、またはC~Cアルキル基またはアルケニル基を表し;かつ
Qは水素原子を表す]
のものである。
【0038】
特定の実施形態において、式(I)のプロパフューム化合物は、式a)~d):
【化9】
[式中、Rは、C~C20アルキル基またはアルケニル基、好ましくはC~C15アルキル基またはアルケニル基、より好ましくはC12アルキル基を表す]
の化合物、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0039】
特定の実施形態において、式(I)のプロフレグランス化合物は、メチルまたはエチル2-(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-2-イルアミノ)-3-(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-2-イルチオ)プロパナート、メチルまたはエチル2-(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-2-イルアミノ)-3-(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-2-イルチオ)プロパナート、メチルまたはエチル2-(2-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタン-4-イルアミノ)-3-(2-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタン-4-イルチオ)プロパナート、メチルまたはエチル2-(2-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-4-イルアミノ)-3-(2-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-4-イルチオ)プロパナート、3-(ドデシルチオ)-1-(6-エチル-2,6-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-1-ブタノン、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)-1-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)-2-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)-2-ブタノン、2-ドデシルスルファニル-5-メチル-ヘプタン-4-オン、2-シクロヘキシル-1-ドデシルスルファニル-ヘプト-6-エン-3-オン、3-(ドデシルチオ)-5-イソプロペニル-2-メチルシクロヘキサノン、2-(ドデシルチオ)-4-オクタノン、4-(ドデシルチオ)-4-メチルペンタン-2-オン、メチルまたはエチルN,S-ビス(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-2-イル)-L-システイナート、メチルまたはエチルS-(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-2-イル)-L-システイナート、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される場合がある。
【0040】
好ましくは、式(I)のプロフレグランス化合物は、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(Haloscent(登録商標)D)、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-1-オン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-2-オン(Haloscent(登録商標)I)、および4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタン-2-オン(Haloscent(登録商標)I)、2-(ドデシルチオ)-4-オクタノン、2-(ドデシルスルホニル)オクタン-4-オン、4-(ドデシルチオ)-4-メチルペンタン-2-オン、メチルまたはエチルN,S-ビス(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-2-イル)L-システイナート、メチルまたはエチルS-(4-オキソ-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-2-イル)-L-システイナート、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。好ましくは、式(I)のプロフレグランス化合物は、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(HaloScent(登録商標)D)、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-2-オン(HaloScent(登録商標)I)、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタン-2-オン(HaloScent(登録商標)I)、またはそれらの混合物である場合がある。好ましくは、式(I)のプロフレグランス化合物は、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(HaloScent(登録商標)D)、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタン-2-オン(HaloScent(登録商標)I)、および4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-2-オン(HaloScent(登録商標)I)の混合物である。
【0041】
別の好ましい実施形態において、式(I)の硫黄含有プロフレグランス化合物は、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(HaloScent(登録商標)D)である。
【0042】
別の好ましい実施形態において、式(I)の硫黄含有プロフレグランス化合物は、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタン-2-オン(HaloScent(登録商標)I)と、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタン-2-オン(HaloScent(登録商標)I)との混合物である。
【0043】
特定の実施形態において、香料組成物は、少なくとも1種の硫黄含有プロフレグランス化合物を、香料組成物の総重量に対して、少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも1重量%、さらにより好ましくは少なくとも2重量%の量で含む。
【0044】
別の特定の実施形態において、香料組成物は、少なくとも1種の硫黄含有プロフレグランス化合物を、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%の量で含む。
【0045】
特定の実施形態において、香料組成物は、少なくとも1種の硫黄含有プロフレグランス化合物を、香料組成物の総重量に対して、0.05重量%~50重量%、好ましくは0.1重量%~30重量%、より好ましくは1重量%~25重量%、より好ましくは2重量%~25重量%、さらにより好ましくは2重量%~15重量%の量で含む。
【0046】
本発明によると、香料組成物は、少なくとも1種の香料原料を含む。
【0047】
「香料化合物」または「香料原料」は、快楽作用を付与するために香料調製物または組成物における活性成分として使用される化合物であり、つまり、心地良い匂いを付与または調香するという主目的のために使用される。換言すれば、香料化合物と見なされるべき化合物は、単に匂いを有するだけではなく、組成物の匂いをポジティブに、または心地良いように付与または調香することができるものとして香料分野の当業者によって認識される必要がある。
【0048】
香料原料は、当業者に周知であり、その性質は、本明細書において詳細に説明しつくせるものではなく、いずれの場合も網羅的な説明とはならないであろう。当業者は、一般的な知識に基づいて、かつ意図された使用または用途、および達成することが望ましい官能効果に従って、香料原料を選択することができる。これらの賦香成分の多くは、S. Arctanderによる書籍、Perfume and Flavor Chemicals、1969年、Montclair, N.J., 米国、またはその最新版、および香料分野における豊富な特許文献などの参照文書に列記されている。
【0049】
特定の実施形態において、香料組成物は、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3/4-エン-8-イルアセタート、(Z)-3-ヘキセニルアセタート、2-メトキシ-4-(2-プロペン-1-イル)フェノール、パチュリ油、4-(2-メチル-2-プロパニル)シクロヘキシルアセタート、アリル(2/3-メチルブトキシ)アセタート、2-メトキシ-4-[(1E)-1-プロペン-1-イル]フェノール、(3Z)-3-ヘキセン-1-オール、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアセタート、ヘキシルアセタート、1,1’-オキシジベンゼン、1-メトキシ-4-メチルベンゼン、(1R,2R)-1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イルアセタート、1-フェニルビニルアセタート、エチル(E)-3-フェニル-2-プロペノアート、(+/-)-3,7-ジメチル-1-オクタノール、エチルブタノアート、1,1,2,3,3-ペンタメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-4H-インデン-4-オン、アリル(シクロヘキシルオキシ)アセタート、ラバンジン油、(2,2-ジメトキシエチル)ベンゼン、2-メチルブチルブチラート、3-メチルブチルブチラート、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルブタノアート、1,4-ジオキサシクロヘプタデカン-5,17-ジオン、メチル2-ヒドロキシベンゾアート、アセトフェノン、アリルヘキサノアート、(3Z)-ヘキサ-3-エン-1-イルメチルカーボネート、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される香料原料を含む。
【0050】
前記PRMは、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進しないと理解されるべきである。
【0051】
特定の実施形態において、香料組成物は、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進しない少なくとも1種の香料原料を含む。
【0052】
特定の実施形態において、香料組成物は、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3/4-エン-8-イルアセタート、(Z)-3-ヘキセニルアセタート、2-メトキシ-4-(2-プロペン-1-イル)フェノール、パチュリ油、4-(2-メチル-2-プロパニル)シクロヘキシルアセタート、アリル(2/3-メチルブトキシ)アセタート、2-メチルブチルブチラート、3-メチルブチルブチラート、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルブタノアート、1,4-ジオキサシクロヘプタデカン-5,17-ジオン、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される香料原料を含む。
【0053】
特定の実施形態において、香料組成物は、2-メトキシ-4-[(1E)-1-プロペン-1-イル]フェノール、(3Z)-3-ヘキセン-1-オール、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアセタート、ヘキシルアセタート、1,1’-オキシジベンゼン、1-メトキシ-4-メチルベンゼン、(1R,2R)-1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イルアセタート、メチル2-ヒドロキシベンゾアート、アセトフェノン、アリルヘキサノアート、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される香料原料を含む。
【0054】
特定の実施形態において、香料組成物は、1-フェニルビニルアセタート、エチル(E)-3-フェニル-2-プロペノアート、(+/-)-3,7-ジメチル-1-オクタノール、エチルブタノアート、1,1,2,3,3-ペンタメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-4H-インデン-4-オン、アリル(シクロヘキシルオキシ)アセタート、ラバンジン油、(2,2-ジメトキシエチル)ベンゼン、(3Z)-ヘキサ-3-エン-メチルカーボネート、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される香料原料を含む。
【0055】
特定の実施形態において、香料組成物は、香料原料であるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3/4-エン-8-イルアセタート、(Z)-3-ヘキセニルアセタート、2-メトキシ-4-(2-プロペン-1-イル)フェノール、パチュリ油、4-(2-メチル-2-プロパニル)シクロヘキシルアセタート、アリル(2/3-メチルブトキシ)アセタート、2-メチルブチルブチラート、3-メチルブチルブチラート、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルブタノアート、および1,4-ジオキシクロヘプタデカン-5,17-ジオンを含む。
【0056】
特定の実施形態において、香料組成物は、香料原料である2-メトキシ-4-[(1E)-1-プロペン-1-イル]フェノール、(3Z)-3-ヘキセン-1-オール、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアセタート、ヘキシルアセタート、1,1’-オキシジベンゼン、1-メトキシ-4-メチルベンゼン、(1R,2R)-1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イルアセタート、メチル2-ヒドロキシベンゾアート、アセトフェノン、およびアリルヘキサノアートを含む。
【0057】
特定の実施形態において、香料組成物は、香料原料である1-フェニルビニルアセタート、エチル(E)-3-フェニル-2-プロペノアート、(+/-)-3,7-ジメチル-1-オクタノール、エチルブタノアート、1,1,2,3,3-ペンタメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-4H-インデン-4-オン、アリル(シクロヘキシルオキシ)アセタート、ラバンジン油、9-デセン-1-オール、および(2,2-ジメトキシエチル)ベンゼンを含む。
【0058】
特定の実施形態において、香料組成物は、少なくとも1種の香料原料を、香料組成物の総重量に対して、10重量%~95重量%、より好ましくは20重量%~90重量%、さらにより好ましくは30重量%~80重量%の量で含む。
【0059】
特定の実施形態において、香料組成物は、少なくとも1種の香料原料、および少なくとも1種の硫黄含有プロフレグランス化合物からなり、香料組成物は、18重量%超の、好ましくは15重量%超の、好ましくは12重量%超の、好ましくは10重量%超の、好ましくは8重量%超の、さらにより好ましくは5重量%超の硫黄含有プロフレグランスからの硫化水素の形成を促進する香料原料を含まない。
【0060】
特定の実施形態において、香料組成物中の、少なくとも1種の香料原料と、少なくとも1種の硫黄含有プロフレグランス化合物との重量比は、1000:1~1:10、好ましくは100:1~1:1、より好ましくは50:1~2:1である。
【0061】
特定の実施形態において、香料組成物中の、硫黄含有プロフレグランスからの硫化水素の形成を促進する少なくとも1種の香料原料と、少なくとも1種の硫黄含有プロフレグランス化合物との重量比は、2.4:1~0、好ましくは2:1~0、好ましくは1.8:1~0、好ましくは1.5:1~0、好ましくは1.2:1~0、好ましくは1.1:1~0、好ましくは1:1~0、好ましくは1:1.2~0、好ましくは1:1.5~0、好ましくは1:1.8~0、好ましくは1:2~0、好ましくは1:3~0、好ましくは1:10~0、より好ましくは1:100~0である。
【0062】
特定の実施形態において、香料組成物中の、硫黄含有プロフレグランスからの硫化水素の形成を促進する少なくとも1種の香料原料と、少なくとも1種の硫黄含有プロフレグランス化合物との重量比は、2.4:1~0.0001:1、好ましくは2:1~0.0001:1、好ましくは1.8:1~0.0001:1、好ましくは1.5:1~0.0001:1、好ましくは1.2:1~0.0001:1、好ましくは1.1:1~0.0001:1、好ましくは、1:1~0.0001:1、好ましくは1:1.2~0.0001:1、好ましくは1:1.5~0.0001:1、好ましくは1:1.8~0.0001:1、好ましくは1:2~0.0001:1、好ましくは1:3~0.0001:1、好ましくは1:10~0.0001:1、より好ましくは1:100~0.0001:1である。
【0063】
本発明によれば、香料組成物は、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する19重量%超の、好ましくは18重量%超の、好ましくは15重量%超の、好ましくは12重量%超の、好ましくは10重量%超の、好ましくは8重量%超の、さらにより好ましくは5重量%超の香料原料を含まない。
【0064】
特定の実施形態において、香料組成物は、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する少なくとも1種の香料原料を含む。
【0065】
香料組成物が、硫黄含有プロフレグランスからの硫化水素の形成を促進する香料原料を1種のみ含む場合、19重量%以下の量表示は、硫黄含有プロフレグランスからの硫化水素の形成を促進する単一の香料原料に関する。
【0066】
特定の実施形態において、硫黄含有プロフレグランスからの硫化水素の形成を促進する香料原料は、1:1(w/w)の割合で硫黄含有プロフレグランス化合物と混合し、50℃で2週間貯蔵すると、硫化水素臭を誘発する。つまり、香料組成物中に存在する各香料原料は、硫黄含有プロフレグランス化合物と1:1(w/w)の割合でそれぞれ混合し、50℃で2週間貯蔵すると、硫化水素臭を誘発することができる。1:1(w/w)の割合で、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(HaloScent(登録商標)D)と混合し、50℃で2週間貯蔵した時に、硫化水素臭を誘発することが好ましい。混合は、10mLのガラスジャー内で行われることが好ましい。香料原料は、そのまま使用しても、または溶媒に、例えば10%~50%の濃度で溶解させてもよい。
【0067】
特定の実施形態において、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する香料原料は、アルコール、好ましくはテルペン系アルコールの化学薬品クラスに属する。
【0068】
特定の実施形態において、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する香料原料は、4を上回るlogP(オクタノール-水の分配係数)を示す。
【0069】
特定の実施形態において、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する香料原料は、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、2-フェニルエタノール、(+/-)-2-フェニル-1-プロパノール、インドール、1-(2-ナフチル)エタノン、(+/-)-αテルピネオール、メチル2-((1RS,2RS)-3-オキソ-2-ペンチルシクロペンチル)アセタート、(+/-)-3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オール、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール、(+/-)-3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、(-)-R-3,7-ジメチル-6-オクテンニトリル、(+/-)-(2,5-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2-イル)メタノール、(+/-)-2,2,2-トリクロロ-1-フェニルエチルアセタート、(+/-)-2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール、シクロヘキシリデン(フェニル)アセトニトリル、(+/-)-3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール、(+/-)-3,7-ジメチル-3-オクタノール、2-エトキシナフタレン、(+/-)-1,5-ジメチル-1-ビニル-4-ヘキセニルアセタート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3/4-エン-8-イルプロパノアート、(+/-)-2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、(-)-(2E)-2-エチル-4-[(1R)-2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル]-2-ブテン-1-オール、アリル3-シクロヘキシルプロパノアート、(+/-)-1-(2-tert-ブチル-1-シクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、(4E)-3,3-ジメチル-5-[(1R)-2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル]-4-ペンテン-2-オール、(3Z)-3-ヘキセン-1-イルサリチラート、1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン、(+)-2-{(1S)-1-[(1R)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-メチルプロピルプロピオナート、1-[(1RS,2RS)-1,2,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-2-ナフタレニル]エタノン/1-((2RS,3RS)-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタノン/1-[(2RS,3RS,8aRS)-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,5,6,7,8,8a-オクタヒドロ-2-ナフタレニル]エタノン/1-[(1RS,2RS,8aSR)-1,2,8,8-テトラメチル-1,2,3,5,6,7,8,8a-オクタヒドロ-2-ナフタレニル]エタノン/1-[(2RS,3RS,8aRS)-2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,6,7,8,8a-オクタヒドロ-2-ナフタレニル]エタノンの混合物、(+/-)-3-endo/exo-メトキシ-7,7-ジメチル-10-メチレン-ビシクロ[4.3.1]デカン、(3aRS,5aSR,9aSR,9bRS)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、3-メチル-4/5-シクロペンタデセン-1-オン、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0070】
好ましい実施形態において、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する香料原料は、(-)-(2E)-2-エチル-4-[(1R)-2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル]-2-ブテン-1-オール、(+/-)-3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、(+/-)-3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0071】
好ましい実施形態において、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する香料原料は、(-)-(2E)-2-エチル-4-[(1R)-2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル]-2-ブテン-1-オールである。
【0072】
好ましい実施形態において、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する香料原料は、(+/-)-3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノールである。
【0073】
好ましい実施形態において、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する香料原料は、(+/-)-3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オールである。
【0074】
特定の実施形態において、香料組成物は、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する4重量%超の、好ましくは3重量%超の、より好ましくは2重量%超の香料原料を含まず、最も好ましくは、香料組成物は、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進するいかなる香料原料をも含まない、つまり、香料組成物は、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する香料原料を含まない。
【0075】
特定の実施形態において、香料組成物は、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する1重量%超の香料原料を含まない。
【0076】
特定の実施形態において、香料組成物は、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する0.5重量%超の香料原料を含まない。
【0077】
特定の実施形態において、香料組成物は、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する0.3重量%超の香料原料を含まない。
【0078】
特定の実施形態において、香料組成物は、硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する香料原料を、0.01重量%~1重量%、好ましくは0.1重量%~0.5重量%の量で含む。
【0079】
特定の実施形態において、本発明による香料組成物は、硫化水素捕捉剤を含む。
【0080】
「硫化水素捕捉剤」とは、硫化水素を捕捉することができ、その結果、硫化水素の不快臭が低減されるか、または感じられなくなるような化合物を意味する。
【0081】
特定の実施形態において、硫化水素捕捉剤は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン、エトキシル化アルキルジエタノールアミン、1,1’,1’’,1’’’-[1,2-エタンジイルジ(ニトリロ)]テトラ(2-プロパノール)、およびこれらの任意の混合物からなる群から選択されるアミンである。硫化水素捕捉剤は、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン、エトキシル化アルキルジエタノールアミン、1,1’,1’’,1’’’-[1,2-エタンジイルジ(ニトリロ)]テトラ(2-プロパノール)、およびこれらの任意の混合物からなる群から選択される第三級アミンであることが好ましい。
【0082】
特定の実施形態において、香料組成物は、硫化水素捕捉剤を、0.1重量%~10重量%、好ましくは、0.5重量%~5重量%の量で含む。
【0083】
特定の実施形態において、硫化水素捕捉剤と、硫黄含有プロフレグランス化合物との割合は、2:1~1:20、好ましくは、1:1~1:10である。
【0084】
特定の実施形態において、香料組成物は、全体的に、または部分的にカプセル化されている。香料組成物はマイクロカプセルに封入してもよい。香料組成物は、コアシェル型マイクロカプセルに封入され、香料組成物は、シェルに囲まれたコアに含有されていることが好ましい。マイクロカプセルのシェルは、香料組成物を環境から保護する。シェルは、香料組成物を放出することができる材料から製造される。シェルは、シェルの破損、および/またはシェルを通した拡散により香料組成物を放出することができる材料から製造されることが好ましい。当業者は、前記マイクロカプセルを製造するためのプロセスを熟知している。
【0085】
シェルの性質は多岐にわたる場合がある。特定の実施形態において、マイクロカプセルのシェルは、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート(つまり、ポリアクリレートおよび/またはポリメタクリレート)、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリスルホンアミド、尿素とホルムアルデヒドとのポリマー、メラミンとホルムアルデヒドとのポリマー、メラミンと尿素とのポリマー、またはメラミンとグリオキサールとのポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される材料を含む。シェルはまた、ハイブリッド、つまり、有機-無機、例えば少なくとも2種の架橋された無機粒子から構成されるハイブリッドシェル、またはさらにはポリアルコキシシランマクロモノマー組成物の加水分解および縮合反応から生じるシェルであってもよい。
【0086】
特定の実施形態によれば、コアシェル型マイクロカプセルは、様々なカプセル化方法を使用することにより製造することも可能である。
【0087】
好ましい実施形態において、マイクロカプセルのシェルは、それぞれ独立して、アミノプラスト、ポリアミド、ポリエステル、ポリ尿素、およびポリウレタンシェル、およびそれらの混合物の群から選択してもよい。
【0088】
特定の実施形態において、マイクロカプセルのシェルは、例えばメラミン-ホルムアルデヒド、または尿素-ホルムアルデヒド、または架橋メラミンホルムアルデヒド、またはメラミングリオキサールなどのアミノプラストコポリマーを含む。
【0089】
特定の実施形態において、マイクロカプセルのシェルは、ポリ尿素を基礎とし、例えばイソシアネート系モノマー、および例えばグアニジンカーボネート、および/またはグアナゾールなどのアミン含有架橋剤から製造されるが、それらに限定されない。ある種のポリ尿素マイクロカプセルは、少なくとも2つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1種のポリイソシアネートと、アミン(例えば、水溶性グアニジン塩およびグアニジン)、コロイド安定剤または乳化剤、およびカプセル化香料からなる群から選択される少なくとも1種の反応物との間の重合による反応生成物であるポリ尿素壁を含む。しかしながら、アミンの使用は省略してもよい。
【0090】
特定の実施形態において、マイクロカプセルのシェルは、ポリウレタンを基礎とし、例えば、ポリイソシアネートおよびポリオール、ポリアミド、ポリエステル等から製造されるがこれらに限定されない。
【0091】
特定の実施形態において、マイクロカプセルは、複合コアセルベーションから生じるポリマーシェルを有し、その際、シェルは、場合により架橋される。
【0092】
特定の実施形態において、コアセルベートは、好ましくはタンパク質(例えば、ゼラチン)、ポリペプチド、または多糖類(例えば、キトサン)から選択され、最も好ましくはゼラチンである第1の高分子電解質、および好ましくはアルギン酸塩、セルロース誘導体、グアーガム、ペクチン酸塩(pectinate salt)、カラギーナン、ポリアクリル酸およびメタクリル酸、またはキサンタンガム、もしくはさらに植物性ガム、例えば、アカシアガム(アラビアガム)、最も好ましくはアラビアガムである第2の高分子電解質を含む。
【0093】
コアセルベートの第1の材料は、グルタルアルデヒド、グリオキサール、ホルムアルデヒド、タンニン酸、またはゲニピンなどの適切な架橋剤を使用して化学的に硬化させることができ、またはトランスグルタミナーゼなどの酵素を使用して酵素的に硬化させることができる。
【0094】
第2のポリマー材料は、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリスルホンアミド、尿素とホルムアルデヒドとのポリマー、メラミンとホルムアルデヒドとのポリマー、メラミンと尿素とのポリマー、またはメラミンとグリオキサールとのポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはポリ尿素および/またはポリウレタンからなる群から選択される場合がある。
【0095】
特定の実施形態において、本発明による香料組成物は、香料担体を含む。
【0096】
本明細書において、「香料担体」とは、香料の観点から実質的に中性である、つまり、付香成分の感覚刺激特性を大きく変化させない材料を意味する。前記担体は、液体または固体であってよい。
【0097】
液体担体としては、非限定的な例として、乳化系、つまり、溶媒および界面活性剤系、または香料に一般的に使用される溶媒を挙げることができる。香料に一般的に使用される溶媒の性質および種類は、詳細に説明しても網羅することができない。しかしながら、非限定的な例として、ブチレングリコールまたはプロピレングリコール、グリセロール、ジプロピレングリコールおよびそのモノエーテル、1,2,3-プロパントリイルトリアセタート、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、1,3-ジアセチルオキシプロパン-2-イルアセタート、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノ、クエン酸トリエチル、またはそれらの混合物などの溶媒を挙げることができ、これらが最も一般的に使用される。上記で特定されたもの以外の他の適切な香料担体には、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンもしくは他のテルペン、イソパラフィン、例えば商標Isopar(登録商標)(製造元:Exxon Chemical)として知られるもの、またはグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステル、例えば商標Dowanol(登録商標)(製造元:Dow Chemical Company)として知られるもの、または硬化ヒマシ油、例えば商標Cremophor(登録商標)RH 40(製造元:BASF)として知られるものもある。
【0098】
固体担体とは、付香された組成物または付香された組成物の幾つかの要素を化学的または物理的に結合することができる材料を指すことを意味する。一般に、そのような固体担体は、組成物を安定化するために、または組成物もしくは幾つかの成分の蒸発速度を制御するために使用される。固体担体は、当該技術分野で現在使用されており、当業者は、所望の効果を達成する方法を知っている。しかしながら、固体担体の非限定的な例として、吸収性ガムまたはポリマーまたは無機材料、例えば多孔質ポリマー、シクロデキストリン、木質材料、有機もしくは無機ゲル、粘土、石膏タルク、またはゼオライトを挙げることができる。
【0099】
固体担体の他の非限定的な例として、カプセル化材料を挙げることができる。このような材料の例としては、壁形成材料および可塑化材料、例えば、単糖類、二糖類、三糖類、天然デンプン、化工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセタート、ポリビニルアルコール、タンパク質、ペクチン、またはさらに参考文献、例えば、H. Scherz, Hydrokolloide: Stabilisatoren, Dickungs- und Geliermittel in Lebensmitteln, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr’s Verlag GmbH & Co., Hamburg, 1996に記載される材料が含まれる場合がある。カプセル化は当業者に周知の方法であり、例えば、噴霧乾燥、凝集、またはさらに押出などの技術を使用することによって実施される場合があり、またはコアセルベーションおよび複合コアセルベーション技術を含むコーティングカプセル化からなる。
【0100】
固体担体の非限定的な例として、アミノプラスト、ポリアミド、ポリエステル、ポリ尿素、またはポリウレタン型の樹脂、またはそれらの混合物(前記樹脂は全て、当業者に周知である)を含むコアシェル型カプセルを特に挙げることができる。これらコアシェル型カプセルには、重合、界面重合、コアセルベーション、またはそれら全てによって誘発される相分離プロセスのような技術(当該技術の全ては先行技術に記載されている)が使用され、これらは任意にポリマー安定剤、またはカチオン性コポリマーの存在下で行われる。
【0101】
樹脂は、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、2,2-ジメトキシエタナール、グリオキサール、グリオキシル酸アルデヒドまたはグリコールアルデヒド、およびそれらの混合物)と、例えば、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、メラミン、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、グアナゾールなどのアミン、ならびにそれらの混合物との重縮合により製造することができる。あるいは予備形成された樹脂であるアルキロール化ポリアミン、例えば商標Urac(登録商標)(製造元:Cytec Technology Corp.)、Cymel(登録商標)(製造元:Cytec Technology Corp.)、Urecoll(登録商標)またはLuracoll(登録商標)(製造元:BASF)として市販されているものを使用してもよい。
【0102】
他の樹脂としては、グリセロールのようなポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートもしくはキシリレンジイソシアネートの三量体、またはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット、またはキシリレンジイソシアネートの三量体のようなポリイソシアネートと、トリメチロールプロパンとの重縮合によって製造されるもの(商標タケネート(登録商標)として知られる;供給元:三井化学)であり、中でも、キシリレンジイソシアネートの三量体と、トリメチロールプロパンおよびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとの重縮合によって得られるものが挙げられる。
【0103】
特定の実施形態においては、本発明による香料組成物は、少なくとも1種の香料助剤を含む。
【0104】
「香料助剤」という用語は、色、特定の耐光性、化学的安定性などのさらなる追加の利点を付与することができる成分として理解される。付香基剤において一般的に使用される助剤の性質および種類は、詳細な説明では網羅しきれないが、そのような成分は、当業者によく知られていることに言及する必要がある。しかしながら、非限定的な具体例としては:粘度剤(例えば、界面活性剤、増粘剤、ゲル化剤、および/またはレオロジー調整剤)、安定剤(例えば、防腐剤、酸化防止剤、熱/光、および/または緩衝剤、またはキレート剤、例えばBHT)、着色剤(例えば、染料、および/または顔料)、防腐剤(例えば、抗菌剤、殺菌剤、防カビ剤、または抗刺激剤)、研磨剤、皮膚冷却剤、固定剤、防虫剤、軟膏剤、ビタミン類、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0105】
特定の実施形態において、香料組成物は、式:
【化10】
[式中、
12およびR10は、別々にかつ互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、好ましくは塩素、C~C直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基、アミノ基、またはベンジルアミノ基を表し;あるいはR12およびR10は、一緒になって、フェニル環もしくはピリジン環を表し、場合により1個~4個のC~C直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基もしくはアルケニル基、および/または1個~2個のハロゲン原子、好ましくは塩素原子で置換され;かつ
11は、水素原子、アルカリ金属原子、特にNaもしくはK、場合により、1個もしくは2個のハロゲン原子、および/または1個もしくは2個のメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、もしくはアミノ基で置換されるフェニル基もしくはベンジル基、アミン基、または場合により、1個もしくは2個の窒素、酸素、もしくはハロゲン原子で置換されるC~C直鎖状、分枝鎖状、もしくは環式の不飽和炭化水素基を表す]
のイソチアゾロンの中から選択される少なくとも1種の化合物を含む。
【0106】
本発明の特定の実施形態において、前記式(V)の化合物は、R12およびR10が別々にかつ互いに独立して、水素原子、塩素原子、またはメチル基を表すか、あるいはR12およびR10が一緒になってフェニル環を表し、R11が水素原子またはメチル基を表すものである。
【0107】
本発明の特定の実施形態によれば、前記式(V)の化合物は、1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン、4-または5-クロロ-2-メチルイソチアゾール-3(2H)-オン、または2-メチルイソチアゾール-3(2H)-オンからなるイソチアゾロンの群から選択され、またはより好ましくは5-クロロ-2-メチルイソチアゾール-3(2H)-オン、または1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オンであり、最も好ましくは1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オンである。
【0108】
本発明の特定の実施形態によれば、前記式(V)の化合物は、本発明の香料組成物中に、香料組成物の総重量に対して、0.0%~5%の重量濃度で存在する。本発明のより好ましい実施形態によれば、式(V)の化合物の濃度は、総重量の0.001%~3%、好ましくは0.005%~0.1%で含まれる。
【0109】
本発明の香料組成物は、現代香料、つまり、ファインパフューム、または機能性香料の全ての分野において、前記組成物が添加される消費者製品の匂いをポジティブに付与または調香するために有利に使用することができる。
【0110】
したがって、本発明の別の態様は、本発明による香料組成物を含む消費者製品に関する。
【0111】
明確化のために、「消費者製品」という用語は、それが適用される表面(例えば、皮膚、毛髪、生地、または硬質表面)に少なくとも心地良い付香効果をもたらすことが期待される消費者製品として理解されることに言及する。明確化のために、消費者製品は、非食用製品である。
【0112】
付香された消費者製品の成分の性質および種類は、本明細書においてより詳細な説明を保証するものではなく、いずれの場合も網羅的ではないであろう。当業者は、その一般的な知識に基づいて、かつ製品の性質および所望の効果に従ってそれらを選択することができる。
【0113】
適切な消費者製品の非限定的な例には、例えば、ファインパフューム、スプラッシュまたはオーデパルファン、コロンまたはシェーブまたはアフターシェーブローションなどの香水;例えば、液体、ポッドまたは固体洗剤またはタブレット洗剤、布地用柔軟剤、液体または固体香気増強剤、ドライヤーシート、布地用レフレッシュナー、アイロン水、紙、漂白剤、カーペットクリーナー、カーテンケア製品などの布地用ケア製品;例えば、ヘアケア製品(例えば、シャンプー、リーブオンまたはリンスオフヘアコンディショナー、カラーリング剤またはヘアスプレー、カラーケア製品、ヘアシェーピング製品)、デンタルケア製品、消毒剤、インティメイトケア製品などのボディケア製品;化粧品調製物(例えばスキンクリームまたはローション、バニシングクリーム、または消臭剤、または制汗剤(例えばスプレーまたはロールオン)、脱毛剤、日焼け用もしくは日焼け後用製品、ネイル製品、スキンクレンジング、メーキャップ);またはスキンケア製品(例えば石けん、シャワー用もしくは浴用ムース、オイルもしくはジェル、衛生製品もしくは足用/手用ケア製品);例えば、エアフレッシュナー、またはホームスペース(部屋、冷蔵庫、食器棚、靴または車)および/または公共スペース(ホール、ホテル、モールなど)で使用可能な「すぐに使える」粉末状のエアフレッシュナーなどのエアケア製品;または例えば、カビ取り剤、家具ケア製品、拭き取り布、食器用洗剤もしくは硬質表面(例えば、床、浴槽、サニタリー、または窓掃除用)クリーナーなどのホームケア製品;レザーケア製品;例えば、艶出し剤、ワックス、またはプラスチッククリーナーなどのカーケア製品が含まれる。
【0114】
本発明の香料組成物を組み込むことができる布地用洗剤または柔軟剤組成物の代表的な例は、国際公開第97/34986号、または米国特許第4,137,180号明細書、および米国特許第5,236,615号明細書、または欧州特許出願公開第799885号明細書に記載されている。使用可能な他の代表的な洗剤および柔軟剤組成物は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. 20, Wiley-VCH, Weinheim, p. 355 - 540 (2012); Flick, Advanced Cleaning Product Formulations, Noye Publication, Park Ridge, New Jersey (1989); Showell, in Surfactant Science Series, Vol. 71: Powdered Detergents, Marcel Dekker, New York (1988); Proceedings of the World Conference on Detergents (4th, 1998, Montreux, Switzerland), AOCS printなどの文献に記載されている。
【0115】
特定の実施形態において、消費者製品は、パーソナルケア製品またはホームケア製品、好ましくは布地用コンディショナー、シャワージェル、またはリンスオフコンディショナーである。
【0116】
特定の実施形態において、消費者製品は、酸性のpH値、好ましくはpH5.5未満、好ましくはpH2.5~pH5.5を有する。
【0117】
本発明による香料組成物を上記の様々な物品または組成物に組み込むことができる割合は、広範囲の値で変化する。これらの値は、付香される物品または製品の性質に依存する。
【0118】
特定の実施形態において、消費者製品は、消費者製品の総重量に対して、0.1重量%~10重量%、好ましくは0.2重量%~5重量%、より好ましくは0.3重量%~4重量%、さらにより好ましくは0.4重量%~3重量%の量で香料組成物を含む。
【0119】
特定の実施形態において、消費者製品は、硫黄含有プロフレグランスからの硫化水素の形成を促進する0.5重量%以下、好ましくは0.4重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下、さらにより好ましくは0.1重量%以下の香料原料を含む。
【0120】
特定の実施形態において、消費者製品は、0.0001重量%~0.5重量%、好ましくは0.01重量%~0.1重量%の硫黄含有プロフレグランスからの硫化水素の形成を促進する香料原料を含む。
【0121】
特定の実施形態において、消費者製品は、香料、布地用ケア製品、ボディケア製品、化粧品調製物、スキンケア製品、エアケア製品、またはホームケア製品である。好ましくは、消費者製品は、布地用柔軟剤、シャワージェル、またはリンスオフヘアコンディショナーである。
【0122】
特定の実施形態によれば、消費者製品はまた、例えばリシノール酸亜鉛、酢酸亜鉛、および/またはステアリン酸亜鉛などの亜鉛塩、ラウレス-3、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、プロピレングリコール、またはそれらの混合物を含む場合がある。
【0123】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の付香された消費者製品は、付香された消費者製品の総重量に対して、85重量%~100重量%の量の布地用柔軟剤活性基剤を含む液体布地用柔軟剤である。布地用柔軟剤活性基剤の主成分は、水または水性溶媒である。布地用柔軟剤活性基剤は、ジアルキル第四級アンモニウム塩、ジアルキルエステル第四級アンモニウム塩、ハンブルクエステル四級アンモニウム化合物(Hamburg esterquat)、トリエタノールアミン四級アンモニウム化合物(triethanolamine quat)、シリコーン、およびそれらの混合物を含む場合がある。任意で、布地用柔軟剤活性基剤は、液体基剤の総重量に対して0.05重量%~1重量%の量で、好ましくは塩化カルシウムからなる群から選択される粘度調整剤をさらに含む場合がある。
【0124】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の消費者製品は、消費者製品の総重量に対して、85重量%~100重量%の量で全用途向けクリーナー活性基剤を含む、全用途向けクリーナーである。全用途向けクリーナー活性基剤の主成分は、水または水性溶媒である。全用途向け活性基剤は、0%~4%、好ましくは1%~2%の量の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、0%~8%、好ましくは2%~4%の量の非イオン性界面活性剤、および0.1%~0.5%の量のクエン酸などの酸を含む場合がある。
【0125】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の付香された消費者製品は、付香された消費者製品の総重量に対して、85重量%~99.95重量%の量のリンスオフコンディショナー活性基剤を含むリンスオフコンディショナーである。リンスオフコンディショナー活性基剤の主成分は、水または水性溶媒である。リンスオフコンディショナー活性基剤は、セチルトリモニウムクロリド、ステアリルトリモニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、およびそれらの混合物を含む場合がある。
【0126】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の消費者製品は、消費者製品の総重量に対して、85重量%~100重量%の量の液体洗剤活性基剤を含む液体洗剤である。液体洗剤活性基剤の主成分は、水または水性溶媒である。液体洗剤活性基剤は、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、第二級アルキルスルホン酸塩(SAS)、第一級アルコール硫酸塩(PAS)、ラウリルエーテル硫酸塩(LES)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、メチルエステルスルホナート(MES)などのアニオン表面活性剤;例えば、アルキルアミン、アルカノールアミド、脂肪アルコールポリ(エチレングリコール)エーテル、脂肪アルコールエトキシレート(FAE)、エチレンオキシド(EO)およびプロピレンオキシド(PO)コポリマー、アミンオキシド、アルキルポリグルコシド、アルキルポリグルコサミドなどの非イオン性表面活性剤;またはそれらの混合物を含む場合がある。
【0127】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の消費者製品は、消費者製品の総重量に対して、85重量%~100重量%の量で固体洗剤活性基剤を含む固体洗剤である。固体洗剤活性基剤は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含む場合がある。固体洗浄剤活性基剤中の界面活性剤は、直鎖状アルケンベンゼンスルホン酸塩(LABS)、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、αオレフィンスルホナート(AOS)、メチルエステルスルホナート(MES)、アルキルポリグリコシド(APG)、第一級アルコールエトキシレート、および特にラウリルアルコールエトキシレート(LAE)、第一級アルコールスルホン酸塩(PAS)、石けん、およびそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。固形洗剤活性基剤は、さらに、TAED(テトラアセチルエチレンジアミン)などの漂白剤;緩衝剤;例えば、ゼオライト、炭酸ナトリウム、またはそれらの混合物などのビルダー;汚れ放出または汚れ懸濁ポリマー;例えば、セルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼ、またはそれらの混合物などの造粒酵素粒子;腐食防止剤;消泡剤;泡抑制剤;染料;例えば、珪酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物などの充填剤;例えば、過炭酸ナトリウム、または過ホウ酸ナトリウムなどの過酸化水素源;およびそれらの混合物からなる群から選択される、粉洗剤消費者製品に一般的に使用されるさらなる成分を含む場合がある。
【0128】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の付香された消費者製品は、付香された消費者製品の総重量に対して、85重量%~100重量%の量で含まれるシャンプーまたはシャワージェル活性基剤を含む、シャンプーまたはシャワージェルである。シャンプーまたはシャワージェル活性基剤の主な成分は、水または水性溶媒である。シャンプーまたはシャワージェル活性基剤は、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム、アルキルアンホ酢酸、コカミドプロピルベタイン、コカミドMEA、アルキルグルコシド、およびアミノ酸系の界面活性剤を含む場合がある。
【0129】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の付香された消費者製品は、付香された消費者製品の総重量に対して、85重量%~100重量%の量の石けん活性基剤を含む棒状石けんである。棒状石けん活性基剤は、弱酸の塩、典型的には、脂肪酸および水酸化ナトリウムのような強塩基である場合がある弱酸の塩を含む場合がある。
【0130】
特定の実施形態において、消費者製品は、好ましくはベンゾイソチアゾリン-3-オン、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される防腐剤を含む。
【0131】
特定の実施形態において、消費者製品は、香料組成物ベースの消費者製品中に存在し得るものは別として、硫黄含有プロフレグランスからの硫化水素の形成を促進する香料原料を含まない。
【0132】
特定の実施形態において、消費者製品は、本発明による香料組成物および消費者製品基剤からなる。消費者製品基剤に関して、成分(ingredients and components)は、消費者製品を機能させる、つまり、成分は、各消費者製品に特徴的であることを意味すると理解される。特徴的な成分の例は、個々の消費者製品について上記されている。したがって、消費者製品基剤は、例えば、布地用柔軟剤基剤、シャワージェル基剤、またはリンスオフヘアコンディショナー基剤であってよい。
【0133】
本発明の別の態様は、硫黄含有プロフレグランス化合物と、少なくとも1種の香料原料とを混合して、19重量%超の硫黄含有プロフレグランス化合物からの硫化水素の形成を促進する香料原料を含まない香料組成物を得る工程を含む、香料組成物を調製する方法に関する。
【0134】
本発明による香料組成物について言及した個々の実施形態は、本発明による方法にも該当する。
【0135】
実施例
実施例1
3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(HaloScent(登録商標)D)からの硫化水素の形成を促進する香料原料の同定:
個々の香料原料と、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(HaloScent(登録商標)D)とを、1:1(w/w)の割合で10mLのガラスジャー内で混合し、前記混合物を、2週間にわたり50℃で貯蔵することにより、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(HaloScent(登録商標)D)からの硫化水素の形成を促進する香料原料を同定した。2週間後に硫化水素臭(腐卵臭に類似)を知覚することができた場合、香料原料は、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(HaloScent(登録商標)D)からの硫化水素の形成を促進すると結論付けられる。
【0136】
以下の香料原料に上記の試験手順を施し、それらの香料原料が、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(HaloScent(登録商標)D)からの硫化水素の形成を促進することが見出され、硫化水素臭を、50℃で2週間の貯蔵時間で知覚することができた(以下の第1表を参照のこと):
【表1-1】
【0137】
【表1-2】
【0138】
上記から、アルコール、特にテルペン系アルコールが、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(HaloScent(登録商標)D)からの硫化水素の形成を促進すると同定された香料原料に多く見られることが確認できる。さらに、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(HaloScent(登録商標)D)からの硫化水素の形成を促進すると同定された幾つかの香料原料は、4を上回るlogP値を示す。
【0139】
実施例2
香料組成物の調製:
3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(HaloScent(登録商標)D)からの硫化水素の形成を促進しない香料原料と、3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(HaloScent(登録商標)D)とを、香料原料90%対HaloScent(登録商標)D10%の割合で混合して、3種の香料組成物を調製した。香料組成物中に存在する個々の香料原料は、重量ベースで同量であった。
【0140】
第1の香料組成物は、以下の化合物:
- 3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(HaloScent(登録商標)D);
- 硫化水素の形成を促進しない香料原料:トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3/4-エン-8-イルアセタート、(Z)-3-ヘキセニルアセタート、2-メトキシ-4-(2-プロペン-1-イル)フェノール、パチュリ油、4-(2-メチル-2-プロパニル)シクロヘキシルアセタート、およびアリル(2/3-メチルブトキシ)アセタート、2-メチルブチルブチラート、3-メチルブチルブチラート、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルブタノアート、および1,4-ジオキサシクロヘプタデカン-5,17-ジオン;
- ジプロピレングリコール;
を含んでいた。
【0141】
第2の香料組成物は、以下の化合物:
- 3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(HaloScent(登録商標)D);
- 硫化水素の形成を促進しない香料原料:2-メトキシ-4-[(1E)-1-プロペン-1-イル]フェノール、(3Z)-3-ヘキセン-1-オール、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアセタート、ヘキシルアセタート、1,1’-オキシジベンゼン、1-メトキシ-4-メチルベンゼン、および(1R,2R)-1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イルアセタート、メチル2-ヒドロキシベンゾアート、アセトフェノン、およびアリルヘキサノアート;
を含んでいた。
【0142】
第3の香料組成物は、以下の化合物:
- 3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)ブタン-1-オン(HaloScent(登録商標)D);
- 硫化水素の形成を促進しない香料原料:1-フェニルビニルアセタート、エチル(E)-3-フェニル-2-プロペノアート、(+/-)-3,7-ジメチル-1-オクタノール、エチルブタノアート、1,1,2,3,3-ペンタメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-4H-インデン-4-オン、アリル(シクロヘキシルオキシ)アセタート、ラバンジン油、および(2,2-ジメトキシエチル)ベンゼン、および(3Z)-ヘキサ-3-エン-1-イルメチルカーボネート;
を含んでいた。
【0143】
これら3種の香料組成物のいずれも、硫化水素の形成を促進せず、50℃で2週間貯蔵した後に、不快な硫化水素臭は知覚されなかった。
【0144】
第1の香料組成物に、硫化水素の形成を促進する香料原料((-)-(2E)-2-エチル-4-[(1R)-2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル]-2-ブテン-1-オール)を、量を変えて(香料組成物の総重量に対して、それぞれ5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、および40重量%)添加した。それぞれの量について、最終的な香料組成物をそれぞれ50℃で1週間および2週間貯蔵した際に、硫化水素の悪臭が知覚され得るか否かを試験した。
【0145】
第1の香料組成物についての結果を、以下の表2にまとめる。
【0146】
【表2】
【0147】
表2から、(-)-(2E)-2-エチル-4-[(1R)-2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル]-2-ブテン-1-オールの量が5重量%および10重量%であった場合、2週間貯蔵した後でも、硫化水素の不快臭を知覚することができなかったことが確認できる。しかしながら、(-)-(2E)-2-エチル-4-[(1R)-2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル]-2-ブテン-1-オールの量が20重量%(およびそれ以上)であった場合、50℃で1週間貯蔵した後でさえ、硫化水素の不快臭が知覚された。これにより、香料組成物中の(-)-(2E)-2-エチル-4-[(1R)-2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル]-2-ブテン-1-オールの量が19重量%までである場合、貯蔵時の硫化水素の不快臭が引き起こされないという結論が得られる。
【0148】
同様に、第2の香料組成物に、硫化水素の形成を促進する香料原料((+/-)-3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール)を、量を変えて(香料組成物の総重量に対して、それぞれ5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、および40重量%)添加した。それぞれの量について、最終的な香料組成物をそれぞれ50℃で1週間および2週間貯蔵した際に、硫化水素の悪臭が知覚され得るか否かを試験した。
【0149】
第2の香料組成物についての結果を、以下の表3にまとめる。
【0150】
【表3】
【0151】
表3から、(+/-)-3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノールの量が5重量%および10重量%であった場合、2週間貯蔵した後でも、硫化水素の不快臭を知覚することができなかったことが確認できる。しかしながら、(+/-)-3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノールの量が20重量%を上回った場合、50℃で1週間貯蔵した後でさえ、硫化水素の不快臭が知覚された。これにより、香料組成物中の(+/-)-3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノールの量が19重量%までである場合、貯蔵時の硫化水素の不快臭が引き起こされないという結論が得られる。
【0152】
同様に、第3の香料組成物に、硫化水素の形成を促進する香料原料((+/-)-3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール)を、量を変えて(香料組成物の総重量に対して、それぞれ5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、および40重量%)添加した。それぞれの量について、最終的な香料組成物をそれぞれ50℃で1週間および2週間貯蔵した際に、硫化水素の悪臭が知覚され得るか否かを試験した。
【0153】
第3の香料組成物についての結果を、以下の表4にまとめる。
【0154】
【表4】
【0155】
表4から、(+/-)-3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オールの量が5重量%および10重量%であった場合、2週間貯蔵した後でも、硫化水素の不快臭を知覚することができなかったことが確認できる。しかしながら、(+/-)-3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オールの量が20重量%を上回った場合、1週間貯蔵した後でさえ、硫化水素の不快臭が知覚された。これにより、香料組成物中の(+/-)-3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オールの量が19重量%までである場合、貯蔵時の硫化水素の不快臭が引き起こされないという結論が得られる。
【国際調査報告】