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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】筋萎縮性側索硬化症を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20241010BHJP
   A61K 31/551 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/551
A61P25/00
A61P21/00
A61P43/00 111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519285
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 US2021055238
(87)【国際公開番号】W WO2023063959
(87)【国際公開日】2023-04-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522273872
【氏名又は名称】ウールジー・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】WOOLSEY PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】マカリスター,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブソン,スヴェン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA35
4C084MA52
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZA221
4C084ZA941
4C084ZC201
4C086BC54
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA12
4C086NA14
4C086ZA22
4C086ZA94
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、180~240mg/日の用量の経口ファウスジルを用いた散発性ALS患者の治療に関する。これにより、改訂版ALS機能評価尺度を使用して測定した場合、少なくとも3か月間の平均低下が25~50%減少すると予想される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
散発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)を有する患者を治療する方法であって、治療有効量のrhoキナーゼ阻害剤を前記患者に経口投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記患者が古典的なALSを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者が、前頭側頭型認知症(ALS-FTD)を伴うALSを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記患者が、下位運動ニューロンの関与のみを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が、上位運動ニューロンの関与のみを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ALS患者が、Tar DNA結合タンパク質43(TDP-43)封入体を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記治療が、改訂版ALS機能評価尺度(ALSFRS-R)で測定した場合、少なくとも3か月間にわたる低下の50%の低減をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記治療が、筋消耗の低減および随意筋の麻痺の低減をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記rhoキナーゼ阻害剤がイソキノリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記イソキノリン誘導体が、ファスジルまたはその薬学的に許容される塩である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記患者が、塩酸ファスジルで治療される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記イソキノリンがM3である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記患者が、90~240mg/日の1日用量で治療される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記1日用量が180mg/日である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記1日用量が240mg/日である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記用量が、1日を通して3等分に分けて投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記用量が、1日を通して2等分に分けて投与される、請求項14または15に記載の方法。
【請求項18】
ファスジルが持続放出製剤で投与される、請求項14または15に記載の方法。
【請求項19】
前記散発性ALS患者が、遺伝的に男性である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記散発性ALS患者が、遺伝的に女性である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、ルー・ゲーリック病として一般的に知られており、運動ニューロンに影響を及ぼす致命的な神経変性疾患であり、随意運動の制御の進行性喪失をもたらす。それは、上位運動ニューロンおよびその皮質脊髄軸索路(側索硬化症)の変性と関連しており、下位運動ニューロンおよびその軸索の喪失と関連しており、これは、筋消耗(筋萎縮)および随意筋の麻痺につながる(Mitsumoto et al., 1998)。上位運動ニューロンは、大脳皮質または脳幹の運動領に由来し、標的筋肉の刺激に直接関与する運動ニューロンの下の運動情報を移動させる。それらの機能不全は、歩行、動き、および発話を妨げる連続的な筋収縮により硬直を引き起こす。下位運動ニューロンは、脳幹および脊髄を筋線維に接続する。それらの機能不全は、筋萎縮、痙攣の小さな局所的で不随意の筋収縮を引き起こす。ALSを有する多くの個体は、症状の発症から48か月以内、および最も多くは発症から3~5年以内に、呼吸不全で死亡する。
【0002】
ALSは、他の神経変性状態と同様に、遺伝因子、環境因子、および加齢関連機能不全の組み合わせによって引き起こされると考えられている。遺伝因子は別として、年齢および男性はALSのリスクを増加させる。いくつかの研究は、喫煙、ボディマス指数、身体運動、金属への職業的および環境的な曝露、殺虫剤、β-メチルアミノ-L-アラニン、頭部損傷、ならびにウイルス感染など、ALSの環境リスク因子を示唆している。しかしながら、これらの因子とALSの因果関係はまだ確立されていない(Masrori 2020)。
【0003】
ALS症例の約90~96%は散発性であり、遺伝性の遺伝子変異によって家族性であるのは5~10%に過ぎない。
【0004】
ALSはまた、運動ニューロンおよびCNSにおけるタンパク質封入体との関連性がある。散発性ALSおよび家族性ALSはどちらも、異常な蓄積TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)凝集体との関連性があり、これは細胞間でプリオン様に広がっていると考えられている。TDP-43は、ALSにおける運動ニューロンにおける神経病理学的凝集体の主要形態を構成する、主要な誤って折り畳まれ、誤った場所に局在化され、ユビキチン結合したタンパク質である。TDP-43は、RNAのスプライシングおよび安定性ならびにマイクロRNAを調節する、DNA/RNA結合タンパク質である。TDP-43は通常、転写で機能する細胞核に局在するが、誤って折り畳まれたTDP-43凝集体はサイトゾル内に凝集し、転写欠損を引き起こす可能性のある細胞核の機能喪失をもたらす。ALS病因がTDP-43機能の喪失と関連しているか、あるいは凝集体および細胞質の誤った局在化に関連する病理と関連しているかは不明である。
【0005】
タンパク質恒常性の失敗、興奮毒性、神経炎症、ミトコンドリア機能不全および酸化ストレス、オリゴデンドロサイト機能不全、細胞骨格障害および軸索輸送欠損、RNA代謝の妨害、核原形質輸送欠損、ならびにDNA修復障害など、複数の分子経路がALSの病因に関与している。興味深いことに、ALSに関連する遺伝子の多くは、タンパク質の品質管理および分解、RNA代謝、ならびに細胞骨格輸送および軸索輸送という主要な経路にクラスター化しているようにみえる(Masrori 2020)。
【0006】
Rhoキナーゼ(ROCK)阻害剤ALS。ALSを含む神経変性の様々な動物モデルにおけるrhoキナーゼ阻害剤の使用について取り組んだ多くの刊行物がある。ほとんどのモデルは、ALS(または他の神経変性疾患)表現型を再現できないという点で欠損しているか、またはALS患者のわずか5~10%である家族性ALSのみに関連する。一例として、米国特許第9,980,972号は、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)タンパク質に変異を有するSOD1 G93マウスモデルにおいてファスジルを使用することを記載している。この特許は、1日当たり体重1kg当たり10~1200ng、または1日当たり体重1kg当たり1~12mgで、家族性の初期段階のALSをファスジルで治療することを特許請求する。ヒトは治療されなかった。さらに、SODにおける変異は、家族性ALSにのみ関連し、これは、特許請求の範囲が限定されている理由である。SODモデルのマウスは、脊髄運動ニューロンの成人発症神経変性および麻痺につながる進行性運動障害を発症する。さらに、元のSOD1-G93Aマウス(Gurney et al., 1994に元々の記載がある)は、その後、症状の発症および重症度に有意に影響を与える異なる遺伝的背景および導入遺伝子発現レベルを有する株のファミリーに分岐している。一つの刊行物が述べたように、「動物モデルでは、ヒトにおける治療応答を予測することができておらず、筋電図検査の臨床的に支持された診断適用を超えるヒトALSに対する検証されたバイオマーカーはない。」(Menke 2016)。
【0007】
動物モデルに関する別の問題は、それらの多くが、変異対立遺伝子の高いコピー数を呈すること、すなわち、それらが、例えば、変異SODを過剰発現することである。これは、罹患した患者が一つの対立遺伝子に変異を有する、ヒト家族性ALSとも大きく異なる。TDP-43を示すTARDBP(TDP-43)マウスなどの他のモデルも、ヒトALSを複製しない過剰発現アプローチに依存する。
【0008】
ファスジルは、コンパッショネート使用ベースで三(3)名のヒトALS患者に投与された(Koch et al. 2020)。1名の患者は家族性ADSを有し、他の2名の患者はADSが推定された。患者は、20日間連続の就業日にわたり(週末を除外)、30mgのファスジルを1日2回静脈内投与された。安全性を超える決定的な結果はなかった。現在、ドイツ、スイス、フランスでは、同じ静脈内投与および投与スケジュールに従ってファスジルを点滴するための臨床試験が進行中である。(Lingor et al.,2019)。試験は、ファウスジル15mgを1日2回、ファスジル30mgを1日2回、および対応するプラセボの三つの並行群を治療するように設計されている。米国を拠点とする治験が提案されて追加されたがされなかった、多国籍治験の予期せぬ法的、管理上、財務上の複雑さを詳述した出版物を除き、治験に関する最新情報は2021年9月には入手できなかった。(Lingor 2021)。
【0009】
他の刊行物は、神経疾患およびタンパク質症関連の疾患を治療するためのファウスジルの非現実的な投与経路(例えば、脳室内注射)を使用することを開示しており、多くは適切な投与を使用していない。これに関して、動物で使用される用量をヒトにおける同じ用量に変換するための標準式が存在する。ヒト等価用量(HED)は、例えば、米国FDAによって使用されるのと同じ変換であるNair & Jacob(2016)の表1を使用して計算することができる。
【0010】
ALS集団の大部分を表してはいない、遺伝子変異を有する動物でだけでなく、ヒトでの非家族性ALSに利益を示す新しい治療法を提供するという重大なアンメットニーズが存在する。
【発明の概要】
【0011】
発明の概要
本発明は、ファスジルを使用した散発性ALS患者の治療を企図する。
【0012】
一実施形態では、患者は古典的なALSを有する。特定の実施形態では、患者は、下位運動ニューロンの関与のみを有する。
【0013】
別の特定の実施形態では、患者は、上位運動ニューロンの関与のみを有する。
【0014】
一実施形態では、患者は、前頭側頭型認知症(ALS-FTD)を伴うALSを有する。
【0015】
別の実施形態では、経口ファスジルは経口投与される。特定の実施形態では、ファスジルは、塩酸ファスジル半水和物である。
【0016】
一実施形態では、ファスジルは、1日当たり患者一人当たり180~240mgの1日用量で患者に経口投与される。
【0017】
別の実施形態では、ファスジルは、1日3回、1日当たり合計240mg/患者で、患者に投与される。
【0018】
さらなる実施形態では、ファスジルは、60mgで1日3回、合計180mg/患者/日で患者に投与される。
【0019】
別の実施形態では、治療される散発性ALS患者は、Tar DNA結合タンパク質43(TDP-43)封入体を有する。特定の実施形態では、病理学的TDP-43は、TDP-43をコードするTARDBP遺伝子における散発性変異に起因する。
【0020】
特定の実施形態では、散発性ALS患者は遺伝的に男性である。別の実施形態では、散発性ALS患者は遺伝的に女性である。
【0021】
一実施形態では、散発性ALS患者の治療は、6~12か月にわたって測定した場合、改訂版ALS機能評価尺度(ALSFRS-R)の低下率を50%超低減させる。
【0022】
さらに別の実施形態では、散発性ALS患者の治療は、少なくとも6か月間、改訂されたALSFRS-Rの安定化をもたらす。
【0023】
特定の実施形態では、散発性ALS患者の治療は、ALSFRSの12個の領域のうちの少なくとも一つの低下率の低減をもたらす。
【0024】
別の実施形態では、散発性ALS患者の治療は、筋消耗の低減および随意筋の麻痺の低減をもたらす。
【0025】
さらに他の実施形態は、患者の性別、年齢によって予測される、および患者が延髄性症状を呈さない、低い静的肺活量(SVC)を有するALS患者の治療を企図する。
【0026】
ある特定の実施形態は、≦36のALSFRSスコアを有するALS患者の治療を伴う。
【0027】
一部の実施形態は、塩酸ファスジルを用いたALS患者の治療を含み、ここで患者はまた、リルゾールおよび/またはエダラボンで治療される。
【0028】
別の実施形態では、ALS患者は、塩酸ファスジルで治療され、ここで患者はまた、タウルルソジオールおよびフェニル酪酸ナトリウムで治療される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、ファスジルを含む経口投与されるrhoキナーゼ阻害剤が、散発性ALSに使用され得るという発見に基づく。
【0030】
ROCK阻害剤
本発明の方法は、疾患または状態の治療におけるrhoキナーゼ(ROCK)阻害剤の投与を企図する。ROCK1(別名ROKβ、Rho-キナーゼβ、またはp160ROCK)およびROCK2(別名ROKα)の二つの哺乳類ROCK相同体が知られている(Nakagawa 1996)。ヒトでは、ROCK1およびROCK2の両方の遺伝子は、18番染色体上に位置する。二つのROCKアイソフォームは、その一次アミノ酸配列において64%の同一性を共有するが、キナーゼドメインの相同性はさらに高い(92%)(Jacobs 2006;Yamaguchi 2006)。両方のROCKアイソフォームは、セリン/トレオニンキナーゼであり、類似の構造を有する。
【0031】
多数の薬理学的ROCK阻害剤が知られている(Feng, LoGrasso, Defert, & Li, 2015)。イソキノリン誘導体は、ROCK阻害剤の好ましいクラスである。イソキノリン誘導体ファスジルは、旭化成工業(東京、日本)によって開発された最初の小分子ROCK阻害剤であった。ファスジルの特徴的な化学構造は、スルホニル基を介してホモピペラジン環に結合されたイソキノリン環からなる。ファスジルは、両方のROCKアイソフォームの強力な阻害剤である。インビボでは、ファスジルは、その活性代謝物ヒドロキシファスジル(別名、M3)への肝臓代謝を受ける。イソキノリン由来ROCK阻害剤の他の例には、ジメチルファスジルおよびリパスジルが含まれる。
【0032】
他の好ましいROCK阻害剤は、4-アミノピリジン構造に基づく。これらは、吉富薬品(Uehata et al.,1997)によって最初に開発され、Y-27632によって例示されている。さらに他の好ましいROCK阻害剤としては、インダゾール、ピリミジン、ピロロピリジン、ピラゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンザチオフェン、ベンズアミド、アミノフラザン、キナゾリン、およびホウ素誘導体が挙げられる(Feng et al., 2015)。一部の例示的なROCK阻害剤を以下に示す。
【化1】
【0033】
本発明によるROCK阻害剤は、ROCK1またはROCK2のいずれかに対してより選択的な活性を有してもよく、通常、PKA、PKG、PKC、およびMLCKに対して様々なレベルの活性を有する。一部のROCK阻害剤は、ROCK1またはROCK2に高度に特異的であってもよく、PKA、PKG、PKC、およびMLCKに対してはるかに低い活性を有してもよい。
【0034】
特に好ましいROCK阻害剤は、ファスジルである。ファスジルは、遊離塩基または塩として存在し得、半水和物などの水和物の形態であり得る。
【化2】
ヘキサヒドロ-1-(5-イソキノリンスルホニル)-1H-1,4-ジアゼピン一塩酸塩半水和物
【0035】
ファスジルは、ROCK、PKC、MLCKなどのタンパク質キナーゼの選択的阻害剤であり、治療は血管平滑筋の強力な弛緩をもたらし、血流の強化をもたらす(Shibuya 2001)。血管痙攣の特に重要なメディエーターであるROCKは、ミオシン軽鎖(MLC)ホスファターゼのミオシン結合サブユニットをリン酸化することによって血管収縮を誘導し、それによってMLCホスファターゼ活性を低下させ、血管平滑筋収縮を強化する。さらに、ファスジルが、eNOS mRNAを安定化させることによって内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)発現を増加させ、これが強力な血管拡張剤一酸化窒素(NO)のレベルの増加に寄与し、それによって血管拡張を強化する証拠がある(Chen 2013)。
【0036】
ファスジルは、約25分の短い半減期を有するが、インビボでその1-ヒドロキシ(M3)代謝物に実質的に変換される。M3は、そのファスジル親分子と類似した効果を有し、活性はわずかに増強され、半減期は約8時間である(Shibuya 2001)。したがって、M3は、分子のインビボ薬理学的活性の大部分に関与する可能性が高い。M3は、以下に示される二つの互変異性体として存在する:
【化3】
【0037】
ファスジルなどの本発明で使用されるROCK阻害剤は、薬学的に許容される塩および水和物を含む。無機酸および有機酸との反応を介して形成され得る塩。これらの無機酸および有機酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸、シュウ酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、マンデル酸、トリフルオロ酢酸、パントテン酸、メタンスルホン酸、またはパラ-トルエンスルホン酸として含まれる。
【0038】
TDP-43およびALSにおける他の異常
TDP-43は、主に細胞核内に位置し、遍在的に発現される必須DNA/RNA結合タンパク質である。TARDBP(TDP-43コード遺伝子)の欠失は、マウスの胚性段階で致死的である。
【0039】
TDP-43は、ALS患者の死後組織から観察される、ユビキチン化および過剰リン酸化した細胞質凝集体の主要成分である。異常なTDP-43は、ALS患者の約97%に、主に大脳皮質の運動ニューロンに、しかし脊髄にも存在する。TARDBPにおける50を超える変異が知られている。一般的に、ALSにおける病理学的TDP-43は、25または35kDのいずれかの切断型である。ALSでは、TDP-43の細胞核から細胞質への頻繁な誤った局在化があり、これは運動ニューロンにおける細胞輸送を遮断する可能性がある。
【0040】
ALS患者は、タンパク質の変異も示し、ユビキチン-プロテアソームおよびオートファジークリアランス系の破壊をもたらし、これは、切断TDP-43が不適切に分解されることをもたらす可能性がある。上記にもかかわらず、TDP-43がALS病理に寄与するか、または他の欠陥の傍観者であるかは不明であり、TDP-43を標的とすることは、神経変性、疾患の発症または進行を予防するには遅すぎる場合がある。
【0041】
人工的過剰発現に依存しない病理学的TDP-43の動物モデルは、ALS病理の特徴を再現しない。運動障害は微妙であり、より後の段階で発生する。これは、ALSに寄与する追加的かつ未知の機序があり、ALSの動物モデルは、特にTDP-43が過剰発現される場合、ヒトの疾患の病因および/または進行にほとんど関連性がないことを示唆する。
【0042】
ALSはまた、タンパク質分解経路および膜分解経路に関与するタンパク質をコードする遺伝子の変異と関連しており、タンパク質クリアランスの障害がALS(およびFTD)において病理学的であることを示唆する。これらには、p62、バロシン含有タンパク質(VCP)、ユビキチン2、およびオプチニューリンにおける変異が含まれ、これらはすべてオートファジーおよび/またはユビキチンプロテアソーム系(UPS)タンパク質分解経路のエフェクターである。この示唆は、C9orf72の不全を伴う観察により補強される。
【0043】
一部の散発性ALSおよび家族性ALS患者に関連する別の遺伝的欠陥は、非コード領域C9orf72遺伝子におけるGGGGCCのヘキサヌクレオチド反復増殖(HRE)の存在である。かかるHREは、ALSに関連する30倍を超えて発生するが、ほとんどの患者は、数百回または数千回の反復を有する。反復増殖は、C9orf72タンパク質機能を破壊し、ハプロ不全(機能喪失)をもたらすが、異常なタンパク質の病理学的産生ももたらすと考えられる。C9orf72中のHREは、RNA転写物の中断をもたらし、これは、次いで転写およびスプライシングに関与するRNA結合タンパク質を隔離し、運動ニューロンおよび前頭皮質ニューロン、海馬、小脳、ならびに脊髄の細胞核におけるタンパク質/RNA凝集体をもたらす。
【0044】
家族性ALSに関連する遺伝子における変異には、C9orf72、SOD1、TARDBP、FUSおよびTANK結合キナーゼ1(TBK1)から選択される遺伝子における単一遺伝子変異が含まれる。本開示は、それらの遺伝子変異による家族性(遺伝性)ALSを除外する。
【0045】
医薬組成物
本発明で使用可能なROCK阻害剤の医薬組成物は、概して経口であり、錠剤またはカプセルの形態であってもよく、即時放出製剤であってもよく、または制御放出製剤もしくは徐放性製剤であってもよく、これは、薬学的に許容される添加剤、例えばコーンスターチ、マンニトール、ポビドン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、および類似の物質を含有してもよい。ROCK阻害剤および/またはその塩を含む医薬組成物は、当該技術分野で知られている一つ以上の薬学的に許容される添加剤を含んでもよい。製剤としては、経口フィルム、口腔内崩壊錠、発泡錠、および食物に振りかけられるか、またはスラリーとして液体と混合されるか、または口に直接注がれて流し込まれることができる顆粒またはビーズが挙げられる。
【0046】
ROCK阻害剤、その塩および水和物を含有する医薬組成物は、医薬品技術分野で知られている任意の方法によって調製することができる。概して、こうした調製方法は、ROCK阻害剤またはその薬学的に許容される塩を担体もしくは添加剤、および/または一つ以上の他の副成分と会合させる工程と、次いで、必要に応じておよび/または望ましい場合、製品を所望の単回用量単位または複数回用量単位に成形および/または包装する工程とを含む。
【0047】
医薬組成物は、単一単位用量として、および/または複数の単一単位用量として、バルクで調製、包装、および/または販売することができる。本明細書で使用される場合、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別の量である。活性成分の量は、概して、対象に投与されるであろう活性成分の投与量、および/または例えば、かかる投与量の半分もしくは3分の1などのかかる投与量の簡便な割合と等しい。
【0048】
本発明の医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される添加剤、および/または任意の追加の成分の相対量は、治療される対象のアイデンティティ、サイズ、および/または状態に応じて、さらに組成物が投与される経路に応じて変化する。本発明の方法に従って使用される組成物は、0.001%~100%(w/w)の活性成分を含んでもよい。
【0049】
提供される医薬組成物の製造に使用される薬学的に許容される添加剤としては、不活性希釈剤、分散剤および/もしくは造粒剤、界面活性剤および/もしくは乳化剤、崩壊剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、潤滑剤、ならびに/または油が挙げられる。カカオバターおよび座薬ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、および芳香剤などの添加剤も、組成物中に存在してもよい。
【0050】
特定の実施形態では、本発明の方法で使用される医薬組成物は、希釈剤を含んでもよい。例示的な希釈剤としては、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウムラクトース、スクロース、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉糖、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0051】
特定の実施形態では、本発明の方法で使用される医薬組成物は、造粒剤および/または分散剤を含んでもよい。例示的な造粒剤および/または分散剤としては、ポテトスターチ、コーンスターチ、タピオカデンプン、グリコール酸デンプンナトリウム、粘土、アルギン酸、グアールガム、柑橘類パルプ、寒天、ベントナイト、セルロース、および木材製品、海綿、陽イオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニル-ピロリドン)(クロスポビドン)、カルボキシメチルデンプンナトリウム(グリコール酸デンプンナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(デンプン1500)、微結晶性デンプン、水不溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム(VEEGUM)、ラウリル硫酸ナトリウム、四級アンモニウム化合物、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0052】
特定の実施形態では、本発明の方法で使用される医薬組成物は、結合剤を含んでもよい。例示的な結合剤としては、デンプン(例えば、コーンスターチおよびデンプンペースト)、ゼラチン、糖類(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトールなど)、天然ゴムおよび合成ゴム(例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アイルランドコケの抽出物、パンワーガム、ガッティガム、イサポルの皮の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニル-ピロリドン)、ケイ酸マグネシウムアルミニウム(VEEGUM.RTM.)、およびカラマツアラビノガラクタン(larch arabogalactan))、アルギン酸塩、酸化ポリエチレン、ポリエチレングリコール、無機カルシウム塩、ケイ酸、ポリメタクリラート、ワックス、水、アルコール、ならびに/またはそれらの混合物が挙げられる。
【0053】
特定の実施形態では、本発明の方法で使用される医薬組成物は、防腐剤を含んでもよい。例示的な防腐剤としては、酸化防止剤、キレート剤、抗菌防腐剤、抗真菌防腐剤、抗原虫防腐剤、アルコール防腐剤、酸性防腐剤、および他の防腐剤が挙げられる。特定の実施形態では、防腐剤は酸化防止剤である。他の実施形態では、防腐剤はキレート剤である。
【0054】
特定の実施形態では、本発明の方法で使用される医薬組成物は、酸化防止剤を含んでもよい。例示的な酸化防止剤としては、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0055】
特定の実施形態では、本発明の方法で使用される医薬組成物は、キレート剤を含み得る。例示的なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩および水和物(例えば、エデト酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸二ナトリウムカルシウム、エデト酸二カリウムなど)、クエン酸およびその塩および水和物(例えば、クエン酸一水和物)、フマル酸およびその塩および水和物、リンゴ酸およびその塩および水和物、リン酸およびその塩および水和物、ならびに酒石酸およびその塩および水和物が挙げられる。例示的な抗菌性防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、およびチメロサールが挙げられる。
【0056】
特定の実施形態では、医薬組成物は、ROCK阻害剤またはその塩とともに緩衝剤を含んでもよい。例示的な緩衝剤としては、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、第二リン酸カルシウム、リン酸、第三リン酸カルシウム、水酸化カルシウムリン酸塩、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウムと、水酸化アルミニウム、アルギン酸、発熱物質を含まない水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0057】
特定の実施形態では、本発明の方法で使用される医薬組成物は、潤滑剤を含んでもよい。例示的な潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、ベハン酸グリセリル、水素添加植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0058】
他の実施形態では、ROCK阻害剤またはその塩を含有する医薬組成物は、液体剤形として投与される。経口投与および非経口投与のための液体剤形には、薬学的に許容される乳濁液、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤が含まれる。活性成分に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(例えば、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ソルビタンのポリエチレングリコールおよび脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物などの、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含んでもよい。不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤、および芳香剤などのアジュバントを含み得る。非経口投与のための特定の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、Cremophor(商標)、アルコール、油、修飾油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、およびそれらの混合物などの可溶化剤と混合される。
【0059】
経口投与のための固体剤形には、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、および顆粒が含まれる。こうした固形剤形において、活性成分は、少なくとも一つの不活性の薬学的に許容される添加剤もしくは担体、例えばクエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、および/または(a)賦形剤または増量剤(デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸など)、(b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシアなど)、(c)保湿剤(グリセロールなど)、(d)崩壊剤(寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなど)、(e)溶解遅延剤(パラフィンなど)、(f)吸収促進剤(四級アンモニウム化合物など)、(g)湿潤剤(例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなど)、(h)吸収剤(カオリンおよびベントナイト粘土など)、ならびに(i)滑沢剤(タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなど)、ならびにそれらの混合物と、混合される。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、剤形は緩衝剤を含んでもよい。
【0060】
本発明の一部の組成物は、徐放性製剤または制御放出製剤に関する。これらは、例えば、拡散制御された生成物、溶解制御された生成物、浸食生成物、浸透圧ポンプシステム、またはイオン樹脂システムであってもよい。拡散制御された生成物は、水の流れおよびその後の溶解した薬剤の投与量からの退出を制御する、水不溶性ポリマーを含む。溶解制御された生成物は、緩徐に可溶化するポリマーを使用することによって、または薬剤のマイクロカプセル化によって、放出を制御するために様々な厚さを使用して、薬剤の溶解速度を制御する。浸食生成物は、担体基質の浸食速度によって薬剤の放出を制御する。浸透圧ポンプシステムは、浸透圧剤を含有する貯蔵部の中への半透膜を越える水の一定の流入に基づいて薬剤を放出する。イオン交換樹脂は、摂取されたときに、薬剤の放出が胃腸管内のイオン環境によって決定されるように、薬剤を結合するために使用され得る。
【0061】
ALSの診断、治療、および進行の監視方法
本発明は、散発性ALSをROCK阻害剤で治療することを企図する。一実施形態では、ROCK阻害剤はファスジルである。
【0062】
診断
ALSの診断は、臨床検査、電気生理学的検査および/または神経病理学的検査によって行うことができる。一実施形態では、ALS診断は、El Escorial診断基準(Brooks 1994)を使用して行われ、Airlie House and Awaji-shima基準(de Carvalho 2008)(Brooks 2011)で連続的に更新される。Awaji基準は、改訂版El Escorialに対する二つの変更を提案した。最初の変更は、筋電図検査および臨床データの両方を同時に使用して、下位運動ニューロン(LMN)機能不全の存在を決定することであった。第二の提案された変更は、重要性において繊維性攣縮の可能性に等しい、継続的な除神経の証拠として、線維束性攣縮の可能性を考慮することであった。
【0063】
一実施形態では、ALSの診断には、(1)臨床検査、電気生理学的または神経病理学的検査によるLMN変性の証拠の存在、(2)臨床検査による上位運動ニューロン(UMN)変性の存在、(3)病歴、臨床検査、電気生理学的検査によって決定される、ある領域または他の領域内の症状または徴候の進行性の伝播の存在、ならびに(4)観察された臨床徴候および電気生理学的徴候を説明する可能性のある他の疾患プロセスの電気生理学的または病理学的証拠の欠如、が必要である。
【0064】
診断カテゴリーには、確実なALS(LMNの存在、ならびに延髄領域および少なくとも二つの脊髄領域におけるUMN徴候、または三つの脊髄領域におけるLMNおよびUMN徴候の存在による臨床的または電気生理学的証拠)、可能性の高いALS(LMNおよびUMN徴候による臨床または電気生理学的証拠は、少なくとも二つの領域で、いくつかのUMN徴候がLMN徴候に対して必然的に吻側である)、および可能性のあるALS(一つの領域のみにおけるUMNまたはLMN機能不全の臨床徴候または電気生理学的徴候、または二つ以上の領域におけるUMN単独の徴候、またはUMN徴候に対して吻側のLMN)が含まれる。本発明は、確実な、可能性の高い、および可能性のあるALSを治療することを企図する。
【0065】
ALSの診断基準を以下の表1に要約する。
表1:
【表1】
【0066】
ALSの最も一般的な症状の臨床的特徴を、指定および発症部位別に以下の表2に示す(van Es 2017をもとに適合)。
表2:
【表2-1】
【表2-2】
【0067】
ALS表現型による分類は主に、UMNとLMNの相対的な関与、および関与の領域分布に基づく。
【0068】
診断は、臨床評価および電気生理学的評価を使用して達成することができる。電気生理学的検査には、筋電図(EMG)が含まれるが、これに限定されない。筋肉の超音波は、ALSの診断を補助し得る線維束性攣縮を検出することができる。場合によっては、局所麻酔下で筋肉の少量の試料を採取することを含む筋生検を実施する。
【0069】
他の疾患を除外するためのMRIを含む技術による脳および脊髄の撮像であるが、ALSを確認するための使用の確立は、ALSの不均一性のため、より少ない。様々な撮像技術がTurner et al. 2012でレビューされている。疾患を診断するための最も感度が高く、特異的な技術は、拡散テンソルMRI、MR分光法、PET、複数の神経画像処理法の組み合わせ、および経頭蓋磁気刺激を用いた神経画像処理である。拡散テンソルMRIおよびMR分光法を使用して、疾患経過を監視および予測することができる。(Bakulin 2019)。最近、一つのグループが、C904f72変異を有するALS患者と、認知障害を有するALS患者との間でのMRIの差異を報告した(van der Burgh et al., 2020)。
【0070】
ALSの診断では、他の症状は除外すべきである。ALSに似ている状態には、いくつかの形態の筋ジストロフィー、脊髄延髄筋萎縮症として知られる神経学的状態、脊髄内腫瘍、重症筋無力症として知られる神経から筋肉への伝達障害がある。
【0071】
Strong et al. 2017はまた、前頭側頭型スペクトラム障害に関連するALS(ALS-FTSD)の診断のための改訂版診断基準も報告した。これらの基準は、臨床的、電気生理学的、神経心理学的、遺伝的および神経病理学的な特徴を組み込んだのであり、ALSが、純粋な運動症候群として存在し得るが、しかしNeary基準またはHodges基準(Hodges 2001)(Neary 1998)によって定義される前頭側頭型認知症(ALS-FTD)と共存し得ることを認識した。
【0072】
運動ニューロン変性の他の症状は、社会的に無能力をまねき、および/または患者の生活の質に影響を与える場合があり、流涎症(流涎、過剰な唾液分泌、唾液の肥厚)、偽延髄麻痺情動不安定(病的な啼泣、笑い、またはあくび)、痙攣(特に夜間)、痙縮、うつ病および不安、不眠症(うつ病、痙攣、疼痛、および呼吸促迫によって引き起こされる)、便秘、ならびに疲労(中枢起源および/または末梢起源)を含む。多くの患者は、粘着力の強い痰を含む気管支分泌物を効果的に除去することが困難であると訴え、粘液蓄積はマイナスの予後因子である。
【0073】
認知的および行動上の変化は、いくつかの形態のALSの固有の構成要素である。上述のように、ALS患者の5~15%は前頭側頭型認知症(FTD)も有し、ALS患者の最大50%はFTDのスペクトル内の認知的または行動上の変化を有する。正式な診断基準を満たさない認知的または行動上の変化を伴う疾患症状は、以下の三つのカテゴリーのうちの一つに分類することができる:行動障害を伴うALS、実行機能不全を伴うALS、およびALS非実行機能不全。感情鈍麻および共感の喪失は、最も一般的な行動症状であり、一方、流暢さ、言語、社会的認知、および実行機能は、最も頻繁に影響を受ける認知領域である(van Es 2017)。
【0074】
ファスジルによる散発性ALS患者の治療
一実施形態では、経口ファスジルで治療される患者は、散発性ALSを有する。別の実施形態では、散発性ALS患者はTDP-43関連ALSを有する。
【0075】
特定の実施形態では、患者は古典的なALSを有する。別の特定の実施形態では、患者は延髄発症型ALSを有する。
【0076】
一実施形態では、散発性ALS患者は、別のタンパク質症関連神経変性疾患を有さない。
【0077】
さらなる実施形態では、経口ファスジルで治療される散発性ALS患者は、前頭側頭型認知症(FTD)を有しない。別の実施形態では、散発性ALS患者はALS-FTSDまたはALS-FTDを有する。
【0078】
一実施形態では、経口ファスジルで治療される散発性ALS患者は、遺伝的に男性である。
【0079】
別の実施形態では、経口ファスジルで治療される散発性ALS患者は、年齢が40~75歳である。特定の実施形態では、経口ファスジルで治療される散発性ALS患者は、年齢が50~65歳である。
【0080】
さらなる実施形態では、経口ファスジルで治療される散発性ALS患者は、年齢が20~39歳である。
【0081】
一実施形態では、散発性ALS患者は、経口塩酸ファスジル半水和物で治療される。
【0082】
本発明の治療方法に従って、治療有効量のROCK阻害剤またはその薬学的に許容される塩が、散発性ALS患者に1日1回または複数回投与される。最も低い治療有効量のファスジルは、例えば、1日当たり90mgであり、概して、1日の全用量を得るために2~3等分して投与される。最も高い治療有効用量は、一つ以上のALS症状の軽減に依然として有効であるが、しかし許容できないレベルまたは有害事象を誘発しない、最高用量として経験的に決定され得る。ファスジルは、例えば、一般的に240mgを超える1日用量では投与されない。
【0083】
好ましい投薬方式の一つは、経口即時放出製剤を使用して、180mgの総1日用量で、1日3回60mgの塩酸ファスジル半水和物での治療を含む。他の1日用量は、1日当たり90mg~180mg(1日2回)の範囲である。さらなる投薬方式は、90mgの塩酸ファスジル半水和物を、即時放出製剤を使用して1日2回のみ、180mgの総1日用量で治療することを含む。他の実施形態では、塩酸ファスジルは、180mgまたは240mgの即時放出製剤を使用して、1日1回投与されてもよい。1日当たり240mgを超えると、薬剤の腎臓への影響は一般的に許容できない。ROCK阻害活性に基づいて、当業者は、ファスジルについて提供された投与範囲を他のROCK阻害剤について容易に推定することができる。
【0084】
別の実施形態は、徐放性剤形で、1日1回90~240mgの塩酸ファスジル半水和物を用いた治療を含む。徐放性の総1日用量180mgの塩酸ファスジル半水和物を用いた治療が好ましい。一般的に、徐放性剤形は、180~240mgの塩酸ファスジル半水和物を含有する。
【0085】
本発明による組成物を投与する方法は、一般的に少なくとも1日間継続される。一部の好ましい方法は、最大30日間、または最大60日間、またはさらには最大90日間、またはさらにはそれを超えて治療する。60日間を超える治療が好ましく、少なくとも6か月間の治療が特に好ましい。正確な治療期間は、患者の状態および治療に対する応答に依存する。最も好ましい方法は、治療が症状の発症または出現の後に開始することを企図する。
【0086】
本明細書に記載される用量範囲は、提供される医薬組成物の成人への投与の指針を提供することが理解されよう。例えば、子供または青年に投与される量は、医師または当業者によって決定することができ、成人に投与される量よりも低いか、または同じであり得る。
【0087】
本発明による組成物を投与する方法は、一般的に少なくとも1日間継続される。一部の好ましい方法は、最大30日間、または最大60日間、またはさらには最大90日間、またはさらにはそれを超えて治療する。60日間を超える治療が好ましく、少なくとも6か月間の治療が特に好ましい。正確な治療期間は、患者の状態および治療に対する応答に依存する。
【0088】
併用療法
一部の実施形態では、ファスジルは、ALSまたはその症状を治療する第二の治療剤と組み合わせて投与される。こうした実施形態のうちのいくつかでは、第二の治療剤は、リルゾール、エダラボン、テトラベナジン、マシチニブ、トフェルセン、ラブリズマブ-wevz、間葉系幹細胞(MSC)-神経栄養因子(NTF)細胞、AMX0035(フェニル酪酸塩およびタウルルソジオール)、タランパネル、タモキシフェン、メチルコバラミン、Aeol 10150から選択される。
【0089】
特定の実施形態では、散発性ALS患者は、約50~100mg日で、ファスジルをリルゾールまたはエダバロン(edavarone)と組み合わせて投与される。特定の実施形態では、リルゾールは、50mgを1日2回投与される。
【0090】
他の薬剤も、ALSの症状、または呼吸機能、摂食、うつ病および不安、疼痛、構音障害、嚥下障害、流涎症、不眠症、行動もしくは気分、ならびに便秘を含む関連する併存疾患の症状を治療するために同時投与することができる。
【0091】
別の実施形態では、ファスジルは、ALSの症状を治療または軽減するために使用された他の薬剤と同時投与することができる。こうした薬剤には、抗うつ剤、ベンゾジアゼピン、アミルトリプチリン、臭化水素酸デキストロメトルファン/硫酸キニジン、抗炎症薬剤、筋肉弛緩薬(バクロフェン、ボツリヌス毒素)、抗痙攣薬(ガバペンチン、バルプロ酸ナトリウム)、抗コリン薬(臭化グリコピロニウム)、アトルバスタチン、炭酸リチウム、avanier 07-ACR-123(Zenvia(登録商標))、SB-509、サリドマイド、アリモクロモル 、オランザピン、メマンチン、タモキシフェン、ピオグリタゾン、クレアチン一水和物、ボツリヌス毒素B型、ドロナビノール、コエンザイムQ10、エシタロプラム(Lexapro(登録商標))、フェニル酪酸ナトリウム、R(+)プラミペキソール二塩酸塩一水和物、バルプロ酸ナトリウム、シクロスポリン、コルチコステロイド、および/またはモダフィニルが含まれる。
【0092】
第二の治療剤は、逐次的にまたは同時に投与される。
【0093】
一実施形態では、患者は、テトラベンザイン(tetrabenzaine)と組み合わせてファスジルを投与される。特定の実施形態では、テトラベンザインは、12.5~100mg/患者/日の用量で投与される。
【0094】
別の実施形態では、患者は、抗炎症薬と組み合わせてファスジルを投与される。
【0095】
さらなる実施形態では、患者は、プロテアソーム活性を強化する薬剤と組み合わせてファスジルを投与される。そのような薬剤としては、プロフラビンピモジド、シクロスポリンA、ミフェプリストン、クロルプロマジン、ロペラミド、ジピリミゾール、メチルベンゼトニウム、ベラパミル、ウルソール酸、ベツリン酸、ロリプラム、DPCPX、PD169316、PAP1、PA26、PA28、TCH-165、MK-886、およびAM-404が挙げられる。
【0096】
別の実施形態では、患者は、オートファジーを強化する薬剤と組み合わせてファスジルを投与される。一実施形態では、オートファジーエンハンサーは、BRD5631、カルバマゼピン、ラパマイシン、トレハロース、トリフルオペラジンニグルジピン、メトホルミン、炭酸リチウム、バルプロ酸ナトリウム、およびABT-737である。
【0097】
さらなる実施形態では、ファスジルで治療される患者は、うつ病に対して治療されている。特定の実施形態では、患者は、シタロプラムまたはエシタロプラムなどの抗うつ薬で治療される。
【0098】
ファスジル治療後のALSの進行の評価
ALSの進行は、様々な方法を使用して進行性の臨床的衰弱を測定することによって評価される。一つの評価は、改訂版ALS機能評価尺度(ALSFRS-R)であり、これはLMN機能不全によって駆動され、病理組織学的変化とはかけ離れた粗い障害尺度に基づいており、ALS疾患進行の標準的な尺度である(Cedarbaum 1999)。ALSFRS-Rは、合計48ポイントの12の質問から構成される。ファスジルによるALSFRS-Rの改善は、治療後の経時的なベースラインからの変化で測定することができる。ALSFRS-Rは、未治療のALS患者と比較して進行を遅らせるためにも使用することができる。ALS患者は、平均して月に約1ポイントのALSFRS-Rの低下を示す。一部の進行ははるかに迅速であり、および一部の進行ははるかに遅いが、ほとんどの患者は、月当たり0.5~1.5ポイントの喪失を示す。ALSFRSの12の領域は、発話、唾液分泌、嚥下、食材を切ること、更衣および衛生、寝返り、歩行、階段を登ること、呼吸困難、起座呼吸および呼吸不全を評価する。
【0099】
筋脱力の進行には、筋萎縮を測定するための強度試験(筋肉)、超音波およびMRIを用いた末梢神経および筋肉の撮像、呼吸機能評価(肺の試験)、ならびに延髄機能障害試験(嚥下、舌、唇および頬の強度)も含まれ得る。
【0100】
手持ち式筋力測定(HHD、定量的ミオメトリーとも呼ばれる)は、ALS臨床試験における筋力の評価に一般的に使用される方法論である。筋肉の電気生理学的評価を使用して、疾患進行を測定することもできる。これらには、個々の筋肉を神経支配する運動単位の数を定量化するために使用される神経伝導評価である、複合運動活動電位(CMAP)および運動単位数推定値(MUNE、MUNIX)が含まれる。例えば、Tufts Quantitative Neuromuscular Exam(TQNE)または四肢等尺性筋力の正確な試験(ATLIS)を使用した等尺性試験を使用して、上肢および下肢の筋肉を測定することができる。(Andres 2013)。ATLISは、腕および脚の12個の筋肉群において等尺性筋力を測定する。電気インピーダンスミオグラフィー(EIM)はまた、どのように電流が筋肉を通って流れるかを、評価するためにも使用される。
【0101】
延髄機能障害は、舌、唇、および頬の強度のIowa Oral Performance Instrument測定を使用して測定することができる(Clark and Soloman 2012)。Sydney Swallow Questionnaireが有用である場合もある(Wallace et al. 2000)。
【0102】
呼吸筋の機能および筋力低下(横隔膜、延髄筋、副筋)の測定については、努力肺活量(FVC)が臨床試験で最もよく使用される測定の一つである。FVCは、最初の1秒で呼吸から排出される空気の量を測定することによって、患者によって可能な一回分の全呼吸量を測定する。これは、肺活量測定を使用して測定することができる。ALSにおける肺機能の他の尺度も研究されており、最大随意的吸気圧または呼気圧が含まれる。これは、ALS患者における疾患進行の指標である。また、患者の通常の緩徐な呼吸および呼気を測定する、静的肺活量(SVC)もしばしば使用される。
【0103】
使用され得る他の肺測定値には、最大中間呼気流量および咳の最大流量が含まれる。後者は、肺が空になったときの、咳を伴う。呼吸圧計はまた、最大吸気圧(MEP)を決定するために呼吸強度を評価することができる。
【0104】
多くの患者は、粘着力の強い痰を効果的に切ることが困難であると訴え、粘液蓄積はマイナスの予後因子である。したがって
【0105】
体重減少は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)において、より短い生存の予測因子である。
【0106】
高齢、延髄発症、早期呼吸機能不全、およびALSFRS-Rが低スコアである患者は、予後がより不良である。
【0107】
転帰
一実施形態では、ファスジルによる散発性ALS患者の治療は、進行ALSを低減または逆転させる。典型的には、これはALSFRS-Rを使用して測定され、ファスジルを用いた治療は、12個の領域のうちの一つ以上の低下速度を遅くする。平均低下率は月に1ポイントであるが、それはファスジル治療前の2~12か月にわたって経験的に決定されるべきであり、その後ファスジル治療の有効性は、ファスジル治療開始後の同じ期間にわたる進行を評価することによって決定される。ALSFRSに基づく低下の遅延または停止は、低下を逆転することと同様に、成功した治療とみなされる。
【0108】
一実施形態では、ファスジルによる散発性ALS患者の治療は、運動ニューロン脱髄または悪化の喪失を低減または逆転させる。より少ない悪化は、撮像、例えば拡散テンソルMRI、MR分光法、PET、経頭蓋磁気刺激を用いた神経画像処理、またはそれらの任意の組み合わせを含む技術によって測定され得る。
【0109】
別の実施形態では、散発性ALS患者のファスジルによる治療は、筋肉の悪化(萎縮)を改善し、筋肉の麻痺または収縮を低減し、筋肉の線維束性攣縮(単収縮)の伝播を低減または防止する。特定の実施形態では、ファスジルを用いた散発性ALS患者の治療は、四肢筋障害を低減する。筋脱力は、例えば、強度試験、筋力測定(手持ち式を含む)、力変換器(歪みゲージ)、電気生理学的評価、等尺性試験、ならびに超音波およびMRIを用いた末梢神経および筋肉の撮像などの任意の方法を使用して評価することができる。
【0110】
さらなる実施形態では、延髄機能障害は、例えば、舌、唇、および頬の強度のIowa Oral Performance Instrument測定値、またはSydney Swallow Questionnaireを使用して決定される、ファスジルを用いた散発性ALS患者の治療時に改善される。特定の実施形態では、散発性ALS患者のファスジル治療は、嚥下および摂食を改善し、嚥下障害の進行を低減または遅延させ、不明瞭言語(構音障害)を低減し、ALS患者が健康な体重を維持することを可能にする。臨床MRI、針EMG、Frenchay構音障害評価、嚥下造影検査(VFSE)、最大舌圧試験、および/またはEAT-10スクリーニングツールなどの評価、改善はまた、発話病理学者および栄養士によって評価され得る。
【0111】
別の特定の実施形態では、散発性ALS患者のファスジルによる治療は、呼吸機能を改善する。特定の実施形態では、ファスジル治療は、FVC%、酸素飽和を改善する。
【0112】
別の実施形態では、散発性ALS患者の治療は疲労を低減し、バランス不良を改善し、つまずきを低減し、握力を改善する。
【0113】
さらなる実施形態では、改善は、塩酸ファスジルで治療される前のスコアに対する、48ポイントALSFRS-R評価尺度スコア、または日常生活動作(ADL)サブスコアなどのその任意のサブスケールの改善によって測定される。別の実施形態では、スケールはALSAQ-40であり、これはALS患者における健康関連の生活の質を評価するために特異的に作成された疾患特異的な質問票である。(Jenkinson et al.,1999)。特定の実施形態では、改善は、ベースラインからのより高いスコアで生じる。別の実施形態では、低下することなく経時的に一貫したスコアは、ALSの進行の遅延の証拠である。
【0114】
別の実施形態では、改善は、ファスジルで治療されていない散発性ALS患者と比較して、ALSFRS-R評価尺度スコアの減少の遅延によって測定される。
【0115】
さらなる実施形態では、ファスジルを用いた散発性ALS患者の治療は、運動神経炎症を減少させる。
【0116】
別の実施形態では、本発明は、散発性ALS患者におけるTDP-43の蓄積を低減、逆転、または防止する方法を提供し、方法は、有効量のファスジルまたはその薬学的に許容される塩を当該対象に投与することを含む。
【0117】
別の実施形態では、TDP-43細胞質の誤った局在化は、ファスジルを用いた散発性ALS患者の治療時に低下する。
【0118】
実施形態では、TDP-43凝集、リン酸化および/またはユビキチン化は、散発性ALS患者をファスジルで治療すると、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%だけ減少する。
【0119】
他の実施形態では、ファスジル治療は、ALSの症状を低減または軽減する。
【0120】
一実施形態では、散発性ALS患者の治療は生存を改善する(死亡を遅らせる)。一実施形態では、生存は典型的な2年を超えて延長される。さらなる実施形態では、生存は、2年を超えて、3年を超えて、4年を超えて、および5年を超えて延長される。別の実施形態では、生存は3か月~1年だけ延長される。
【0121】
患者の部分集団
腎障害患者および/またはより高齢の患者(例えば、65歳以上)などの特定の患者部分集団は、即時放出製剤の代わりに、より低い用量または徐放性の製剤を必要とする場合がある。塩酸ファスジル半水和物は、腎疾患を有する患者に通常の用量で投与された場合、より高い定常状態濃度を有する場合があり、Cmaxを低下させるか、またはCmaxまでの時間を遅延させる(Tmaxを増加させる)ための、より低い用量が、必要とされる場合がある。
【0122】
腎機能障害は、年齢とともに、ならびに、肝硬変、慢性腎臓病、急性腎障害(例えば、造影剤の投与による)、糖尿病(1型または2型)、自己免疫疾患(狼蒼およびIgA腎障害など)、遺伝性疾患(多発性嚢胞腎疾患など)、ネフローゼ症候群、尿路の問題(前立腺肥大、腎結石および一部の癌などの状態による)、心臓発作、違法薬物使用および薬物乱用、虚血性の腎臓状態、尿路の問題、高血圧、糸球体腎炎、間質性腎炎、膀胱尿管、腎盂腎炎、敗血症を含む、多数の障害の結果として発生する。腎機能障害は、とりわけ、例えば肺動脈高血圧、心不全、および心筋症などの、腎機能障害とともに起こり得る非腎臓関連疾患を含む、他の疾患および症候群で起こる場合がある。
【0123】
腎機能は、血清(および/または尿)クレアチニンを使用して最も頻繁に評価される。クレアチニンは、筋細胞におけるクレアチンリン酸の分解生成物であり、一定速度で産生される。これは、主に糸球体濾過を通して、腎臓によって排出され、変化しない。したがって、血清クレアチニンの上昇は、腎機能障害のマーカーであり、糸球体濾過速度を推定するために使用される。
【0124】
血液中のクレアチニンの正常レベルは、成人男性ではおよそ0.6~1.2mg/dL、成人女性では0.5~1.1mg/dLである。クレアチニンレベルがこれらの数字を超えると、対象は腎機能障害を有し、したがって本発明に従って治療可能である。軽度の腎障害/機能不全は、1.2mg/dL~1.5mg/dLの範囲内で発生する。中等度の腎障害/機能障害は、1.5mg/dLを超えるクレアチニンレベルで発生すると考えられる。腎不全とみなされるものを含む重度の腎障害は、≧2.0mg/dLの血清クレアチニンレベル、または腎代替療法(透析など)の使用として定義される。軽度、中等度、および重度の腎障害を有する対象を治療することが特に企図される。
【0125】
患者のサイズは、腎機能のクレアチニンベースの推定値を使用する場合に考慮すべき重要な因子である。薬物クリアランスの単位は体積/時間(mL/分)であり、一方で慢性腎疾患の推定GFRの単位は体積/時間/標準サイズ(mL/分/1.73m2)である。概して、用量は、より小さな患者については下方に(例えば、1日当たり40~50mg)、より大きな患者については上方に(例えば、1日当たり120mg)調整されてもよい。より小さな男性は、約160ポンド以下であろう。より小さな女性患者は、約130ポンド以下の体重であろう。ボディマス指数が30以上の患者は、肥満とみなされる。
【0126】
さらに、より高齢の患者は、開始時にはより低い用量で、数日後または数週間後に推奨用量へ徐々に増加させる必要がある場合がある。別の実施形態では、予想される滴定は最大180~240mg/日の用量でも、より高齢の患者は、治療期間中にはより低い用量(例えば、90mg/日)である必要がある場合がある。
【0127】
本明細書に記載される用量範囲は、提供される医薬組成物の成人への投与の指針を提供することが理解されよう。例えば、子供または青年に投与される量は、医師または当業者によって決定することができ、成人に投与される量よりも低いか、または同じであり得る。
【実施例
【0128】
実施例1:ファスジルを用いた散発性ALSの治療 - ALS患者におけるファスジルHClのフェーズ2a非盲検予備安全性、有効性、およびバイオマーカー試験
【0129】
本試験の目的は、ALS患者における、24週間にわたる経口ファスジルHCl半水和物180mg/日(60mg 1日3回)および240mg/日(80mg 1日3回)(即時放出錠剤)のバイオマーカーに対する予備安全性、有効性、および効果を評価することである。患者は、現在の用量のリルゾールまたはエダラボンを維持することができる。次の薬物クラスのうちの二つ以上の使用は許容されない:長時間作用型硝酸塩、β遮断薬、またはカルシウムチャネル遮断薬。(注:対象は薬物クラスのうちの一つを投与されていてもよい。)
【0130】
フェニル酪酸塩および/またはタウロウルソデオキシコール酸の使用は、試験中に強く非推奨であり、試験または試験治療の中止につながる可能性がある。
【0131】
本試験では、改訂版ALS機能評価尺度(ALSFRS-R)、静的肺活量(SVC)、および手持ち式筋力測定(HHD)の低下の傾きの変化に対するファスジルの効果を評価する。具体的には、試験の目的は以下のとおりである。
1.神経変性および炎症の血漿および脳脊髄液(CSF)バイオマーカーに対するファスジルの効果を評価すること。
2.筋肉喪失の血漿バイオマーカーに対するファスジルの効果を評価すること。
3.ALS患者におけるファスジルおよびその主要代謝物(M3)のCSF浸透を測定すること。
【0132】
試験デザイン
El Escorial改訂版ALS診断基準により定義される、可能性のあるALS、可能性が高く実験室の裏付けのあるALS、可能性が高いALS、または確実なALSを有する18~75歳の約20名の対象が、ALSFRS-Rがスクリーニング1の時点で4週間当たり平均0.5~1.5ポイント減少していることを条件として、本試験への組み入れに適格である(推定方法については、組み入れ基準3を参照)。本試験では、約20名の対象がスクリーニング1とV3/D1との間で、4週間当たり0.5~1.5ポイントの平均ALSFRS-R減少を有するように、十分な対象を登録する。評価可能とみなされない対象の置換が考慮されてもよい。
【0133】
同意後、参加者は2回のスクリーニング評価を受けるが、これは、治験薬の投与前の8週間にわたって行われる。スクリーニング1/V1(投与開始の8週間前)で、安全性評価と同様に、ALSFRS-R/SVC/HHDのALS評価を実施する。関連する組み入れ/除外基準を満たす対象は、約4週間後に2回目のスクリーニング(スクリーニング2/V2)のために来院し、ALSおよび安全評価が再び実施される。関連するスクリーニング2の試験登録基準を満たす対象は、試験に登録される。
【0134】
V3/1日目に、評価を実施し、治験薬の投与を開始する。投与は、180mg/日で開始され、少なくとも10名の対象が登録され、180mg/日で4週間安全に治療された後、後続の対象は、240mg/日で登録されてもよい。治験薬は24週間にわたり服用される。
【0135】
参加者は、安全性および服薬遵守を評価するために、第1週(V4)に実際に来院するかまたは電話連絡をする。追加の追跡調査来院は、4週目(V5)、8週目(V6)、12週目(V7)、18週目(V8)、および24週目(V9)に行われ、その間にALSFRS-R/SVC/HHDのALS評価が行われる。最終来院(V10)は、治療後の追跡評価のために、25週目(または早期終了の7±2日後)に実施される。
【0136】
血漿バイオマーカー収集は、登録と処置の開始時との間、ならびに12週目(V7)および24週目(V9)に行われる。CSFバイオマーカー収集は、登録と処置の開始時との間、および24週目(V9)に行われる。
【0137】
実験室安全評価および有害事象は、毎回の試験来院時に収集される。対象/介護者は、治験薬服薬遵守の記録を維持するよう求められ、これは毎回の来院時にレビューされる。
【0138】
患者の負担を最小限に抑えるために、来院/試験手順は、クリニックの外部(例えば、自宅または他の試料採取施設)で実施されてもよく、必要に応じて電話および/または遠隔医療によってインタビューが実施されてもよい。
【0139】
期間。試験の最長持続期間は以下の33週間である。
・スクリーニング1とスクリーニング2との間の4週間
・スクリーニング2と治療開始との間の4週間
・24週間の治療
・治療後の最終追跡調査来院までの1週間
【0140】
試験評価項目
安全性。安全性は、AEおよびSAEの発生率、臨床的に有意な身体検査および神経学的検査所見の異常、バイタルサインの変化、12誘導ECG、ならびに血液検査、血液化学検査、肝機能検査、および尿検査を調べることによって評価される。
【0141】
有効性。以下の有効性評価項目が評価される。
1.治療前に対する治療中の、ALSFRS-R低下の傾きの変化。
2.治療前に対する治療中の、静的肺活量(SVC)低下の傾きの変化。
3.治療前に対する治療中の、HHD測定値低下の傾きの変化。
【0142】
ALSFRS-R。ALSFRS-Rは、ALSを有する患者における障害の進行を監視するための検証済みの評価尺度であり、ALS患者における機能変化を監視するために利用される。スコアは、(i)延髄機能(発話、唾液分泌、嚥下)、(ii)微細な運動作業(手書き、食材を切ることおよび調理用具の取り扱い、胃瘻造設の有無、更衣および衛生)、(iii)大まかな運動作業(寝返り、歩行、階段を登ること)、および(iv)呼吸機能(呼吸困難、起座呼吸および呼吸不全)を含む各種四つの領域を評価する。
【0143】
領域内の各項目は、0(完全な機能喪失)から4(正常)のスコアに帰し、機能が保存されているときは48の最大スコアとなる。
【0144】
ALSFRS-Rを実施する評価者は、北東筋萎縮性側索硬化症コンソーシアム(NEALS)による認定を受けなければならない。代替証明書の使用は、スポンサーによる書面での承認を受けなければならない。ALSFRS-Rは、可能な場合、毎回の来院時に同じ評価者によって実施されるべきである。
【0145】
SVC。呼吸機能は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)における生存の重要な予測因子である。肺活量は、直立SVC法を使用して決定される。SVCは、試験において承認された、携帯用肺活量計を使用して測定され、評価はフェイスマスクを使用して実施される。各試験セッションに対して3回のSVC試験が必要であるが、最初の3回の試験について最も高いSVCと2番目に高いSVCとの間の変動性が10%以上である場合には、最大5回の試験が実施されてもよい。電子症例報告書(eCRF)には、最良の3回の試験のみが記録される。記録された最も高いSVCが適格性に利用される。スクリーニング後のすべての来院についてSVCを採点するために、少なくとも3回の測定可能なSVC試験を完了しなければならない。予測SVC値および予測SVCパーセント値は、Quanjerグローバル肺機能イニシアティブ方程式を使用して計算される。
【0146】
SVCを実施する評価者は、NEALSによる認定を受けなければならない。代替証明書の使用は、スポンサーによる書面での承認を受けなければならない。SVCは、可能な場合、毎回の来院時に同じ評価者によって実施されるべきである。
【0147】
筋力。筋力は、手持ち式ダイナモメーター(HHD)によって評価される。試験全体を通して、予め設定された力で「破損」するばね式装置を使用して、HHDによって得られた読取値を評価する。両手の握力ダイナモメトリーが取得され、キログラム単位での平均力が計算される。測定値は、それぞれの手で3度にわたり取得される。
【0148】
HHDを実施する評価者は、NEALSによる認定を受けなければならない。代替証明書の使用は、スポンサーによる書面での承認を受けなければならない。HHDは、可能な場合、毎回の来院時に同じ評価者によって実施されるべきである。
【0149】
探索試験。評価される他の評価項目は、以下に記載されるバイオマーカーである:
1.神経変性の血漿バイオマーカー(例えば、神経フィラメント軽鎖[NfL]およびリン酸化神経フィラメント重鎖サブユニット[pNfH])、炎症マーカー(例えば、IFN-γ、VCAM-1、ICAM-1、IL-1、IL-6、IL-17α、TNF-αおよびC1q)、ならびに神経細胞および/または星状細胞エクソソーム(例えば、IL-6、タウ、タンパク質キナーゼB[AKT]およびリン酸化AKT[p-AKT])における炎症および神経変性のマーカーの、前処置からの変化。
2.軸索変性および/またはアポトーシス(例えば、タウおよびNfL)のCSFバイオマーカー、炎症、ならびに薬物標的会合のマーカー(例えば、リン酸化タウ[p-タウ]、p-NfL PTEN、およびAKT/p-AKTの種)の、前処置からの変化。
3.筋肉喪失(例えば、アクチン、ミオシン、ミオシン軽鎖、トロポニン、チチン、ミオゼニン、アルファ-アクチニン、ネブリン、コフィリン2、トロポミオシン2、クレアチンキナーゼ、ミオグロビン、サルコスパン、インテグリンアルファ7、アグリン、ラミニン211、コラーゲンIV、コラーゲンVI、およびコラーゲン断片)の血漿バイオマーカーの、前処置からの変化。
4.24週間の処置後に測定された血漿ファスジル/M3代謝物濃度に対するCSFファスジル/M3代謝物濃度の比。
【0150】
CSFは、神経変性のバイオマーカーについて分析され、それは、以下を含み得るが、これらに限定されない。
・NfL
・リン酸化タウ種(例えば、P-tau181、pS202、pS386、Thr245、Thr377、Ser409)
・リン酸化NfL種(例えば、Ser26およびSer57)
・総タウ断片レベル
・他のタウ種
・炎症のマーカー(例えば、IFN-γ、VCAM-1、ICAM-1、IL-1、IL-6、IL-17α、TNF-α、C1q)
・標的係合の他のマーカー(例えば、PTENおよびAKT/p-AKT)
【0151】
結果
ALSFRS-R。180mg/日でのファスジル治療は、改訂版ALS機能評価尺度(ALSFRS-R)で測定すると、少なくとも3か月間の平均低下の約35~50%の低減をもたらすと予想される。
【0152】
一実施形態では、ALSFRS-Rの減少を、4週間当たり平均0.5ポイントから1.5ポイント(包括的)に軽減する(スクリーニング1のALSFRS-Rとスクリーニング1の少なくとも12週間前の最新のALSFRS-R尺度との間の変化を使用する場合)。以前の値が利用できない場合、低下率は次のように推定され得る:(スクリーニング時の48値)/[スクリーニングとALS症状発症との間の推定月数(脱力および/もしくは構音障害、ならびに/または嚥下障害)。
【0153】
SVC。傾きが疾患進行と相関することによる、傾きの減少。毎月20~50%程度の低下率のようである。別の実施形態では、低下率は月に平均2.5~3.0%未満である。特定の実施形態では、呼吸低下の率は、毎月平均1.5%ポイントまで遅くなる。
【0154】
筋力。手持ち式筋力測定(HHD)は筋力の尺度であり、スコアはALSの進行に伴い低下する。ファスジルによる治療は、ALS患者に起こる筋力の予想される低下を減少させることが期待される。
【0155】
バイオマーカー。ファスジル治療は、神経退化および軸索変性に関連するバイオマーカーの存在および/またはレベルを低減し、筋肉喪失に関連するバイオマーカーの量を25~50%低減することが予想される。あるいは、ファスジルを用いた治療は、ファスジルを投与されていない患者について報告されたものと比較して、神経退化および軸索変性に関連するバイオマーカーの存在および/またはレベルを低減し、筋肉喪失に関連するバイオマーカーの存在を低減することが期待される。
【0156】
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【0157】
本明細書に記載される各参考文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
散発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者を経口治療するのに用いるための、治療有効量のファスジルもしくはヒドロキシファスジル(M3)またはその薬学的に許容される塩を含む、経口医薬組成物
【請求項2】
患者が古典的ALSを有する、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
患者が、前頭側頭型認知症(ALS-FTD)を伴うALSを有する、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項4】
患者が、下位運動ニューロンの関与のみを有する、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項5】
患者が、上位運動ニューロンの関与のみを有する、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項6】
ALS患者が、Tar DNA結合タンパク質43(TDP-43)封入体を有する、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項7】
治療が、改訂版ALS機能評価尺度(ALSFRS-R)で測定した場合、少なくとも3か月間にわたる低下の50%の低減をもたらす、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項8】
治療が、筋消耗の低減および随意筋の麻痺の低減をもたらす、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項9】
医薬組成物が、ファスジルまたはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項10】
ファスジルが、塩酸ファスジルである、請求項9に記載の医薬組成物
【請求項11】
医薬組成物が、ヒドロキシファスジル(M3)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項12】
患者が、90~240mg/日の1日用量で治療される、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項13】
1日用量が180mg/日である、請求項12に記載の医薬組成物
【請求項14】
1日用量が240mg/日である、請求項12に記載の医薬組成物
【請求項15】
用量が、1日を通して3等分に分けて投与される、請求項12~14のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項16】
用量が、1日を通して2等分に分けて投与される、請求項12~14のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項17】
医薬組成物が、持続放出製剤の形態である、請求項15または16に記載の医薬組成物
【請求項18】
散発性ALS患者が、遺伝的に男性である、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項19】
散発性ALS患者が、遺伝的に女性である、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項20】
ファスジルが、塩酸ファスジル半水和物である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項21】
El Escorial改訂版筋萎縮性側索硬化症(ALS)診断基準により定義される、可能性のある散発性ALS、可能性が高く実験室の裏付けのある散発性ALS、可能性が高い散発性ALS、または確実な散発性ALSを有する患者を経口治療するのに用いるための、治療有効量のファスジルもしくはヒドロキシファスジル(M3)またはその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物であって、治療有効量のファスジルまたはヒドロキシファスジル(M3)が、180mg/日以上である、医薬組成物。
【請求項22】
治療前に、患者の改訂版ALS機能評価尺度(ALSFRS-R)が、4週間当たり平均0.5~1.5ポイント減少している、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
治療が、神経変性に関連する1つ以上のバイオマーカーの減少をもたらす、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項24】
1つ以上のバイオマーカーが、神経フィラメント軽鎖である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
患者のALSFRS-Rスコアが、36以下である、請求項21~24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
治療が、少なくとも6か月間毎日行われる、請求項21~25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
患者が、延髄性症状を有する、請求項21~26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
患者が、嚥下障害を有する、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
医薬組成物が、経口フィルム、口腔内崩壊錠、発泡錠、顆粒またはビーズの形態である、請求項21~28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
医薬組成物が、顆粒またはビーズの形態であり、食物に振りかけるか、液体と混合してスラリーを形成するか、または直接口に注いで流し込むことにより投与される、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
医薬組成物が、液体の形態である、請求項21~28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
液体が、乳濁液、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップまたはエリキシル剤である、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
患者が、リルゾール、エダラボン、タウルルソジオールおよび/またはフェニル酪酸ナトリウムでも治療されている、請求項21~32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0157
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0157】
本明細書に記載される各参考文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、以下の態様および実施形態を含む。
[1] 散発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)を有する患者を治療する方法であって、治療有効量のrhoキナーゼ阻害剤を前記患者に経口投与することを含む、方法。
[2] 前記患者が古典的なALSを有する、[1]に記載の方法。
[3] 前記患者が、前頭側頭型認知症(ALS-FTD)を伴うALSを有する、[1]に記載の方法。
[4] 前記患者が、下位運動ニューロンの関与のみを有する、[1]に記載の方法。
[5] 前記患者が、上位運動ニューロンの関与のみを有する、[1]に記載の方法。
[6] 前記ALS患者が、Tar DNA結合タンパク質43(TDP-43)封入体を有する、[1]に記載の方法。
[7] 前記治療が、改訂版ALS機能評価尺度(ALSFRS-R)で測定した場合、少なくとも3か月間にわたる低下の50%の低減をもたらす、[1]に記載の方法。
[8] 前記治療が、筋消耗の低減および随意筋の麻痺の低減をもたらす、[1]に記載の方法。
[9] 前記rhoキナーゼ阻害剤がイソキノリンである、[1]に記載の方法。
[10] 前記イソキノリン誘導体が、ファスジルまたはその薬学的に許容される塩である、[9]に記載の方法。
[11] 前記患者が、塩酸ファスジルで治療される、[9]に記載の方法。
[12] 前記イソキノリンがM3である、[9]に記載の方法。
[13] 前記患者が、90~240mg/日の1日用量で治療される、[1]に記載の方法。
[14] 前記1日用量が180mg/日である、[13]に記載の方法。
[15] 前記1日用量が240mg/日である、[13]に記載の方法。
[16] 前記用量が、1日を通して3等分に分けて投与される、[13]に記載の方法。
[17] 前記用量が、1日を通して2等分に分けて投与される、[14]または[15]に記載の方法。
[18] ファスジルが持続放出製剤で投与される、[14]または[15]に記載の方法。
[19] 前記散発性ALS患者が、遺伝的に男性である、[1]に記載の方法。
[20] 前記散発性ALS患者が、遺伝的に女性である、[1]に記載の方法。
【国際調査報告】