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特表2024-537982補強スリーブ内及びツール本体端部から延長可能な器具
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  • 特表-補強スリーブ内及びツール本体端部から延長可能な器具 図1
  • 特表-補強スリーブ内及びツール本体端部から延長可能な器具 図2A
  • 特表-補強スリーブ内及びツール本体端部から延長可能な器具 図2B
  • 特表-補強スリーブ内及びツール本体端部から延長可能な器具 図3
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  • 特表-補強スリーブ内及びツール本体端部から延長可能な器具 図5A
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  • 特表-補強スリーブ内及びツール本体端部から延長可能な器具 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】補強スリーブ内及びツール本体端部から延長可能な器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
A61F9/007 130F
A61F9/007 130
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519305
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 IB2022059558
(87)【国際公開番号】W WO2023073461
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/263,166
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】レト グリューブラー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ドラワ
(57)【要約】
補強スリーブを利用し且つ延長可能な到達範囲を備える針を用いる眼科手術用の外科用ツール。眼内への針の到達範囲は、患者の眼の外側の位置で、補強スリーブとカニューレを強制的に相互作用させることによって、動的に調整可能である。ツールの端部は、追加的な到達範囲のために針の延長を容易にするために引っ込められてもよい。更に、スリーブは、更に、患者の眼内の手術部位の方への針器具の更に大きな到達範囲のために、独立して引っ込められてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ツールであって、
外科的処置のために外科医によって手動固定するための端部を備えるツール本体と、
前記処置のために患者の組織領域への外科的アクセスを得るための、前記本体の前記端部から延在している外科用器具と、
前記組織領域での外科的処置中に前記器具を安定させるための、前記器具の周りの補強スリーブと、
前記本体の前記端部及び前記スリーブを近位に引っ込めるために、前記ツール本体端部に結合されて、前記外科医がカニューレ構造体を前記組織領域に隣接する位置で前記補強スリーブと接触させることに応答して、前記器具の到達範囲を延長させる付勢機構と
を含む、外科用ツール。
【請求項2】
前記ツール本体端部の前記引っ込みは、前記ツールの近位部分の方へ向かう、請求項1に記載の外科用ツール。
【請求項3】
前記付勢機構は、前記引っ込みを案内されるようにして支持するために、前記ツール本体端部のチャンバー内に収納されるバネである、請求項1に記載の外科用ツール。
【請求項4】
前記チャンバーは、前記引っ込みのためにサイズが小さくなる第1のチャンバーであり、前記ツールは、更に、前記器具の前記到達範囲を更に増大させるために、前記スリーブを更に引っ込めるためにサイズが小さくなる第2のチャンバーを含む、請求項3に記載の外科用ツール。
【請求項5】
更に、前記ツール本体端部から独立して前記スリーブを更に引っ込めるための支持体として機能するために、バネと前記補強スリーブとの間の境界として機能するベースを含む、請求項1に記載の外科用ツール。
【請求項6】
前記器具は、眼科手術を支援するために約25よりも大きいゲージであり、並びに前記器具は、更に、鉗子、ハサミ、スクレーパ、バックフラッシュツール、ジアテルミープローブ、照明用プローブ及び硝子体切除処置用のポートのうちの1つを支持する、請求項1に記載の外科用ツール。
【請求項7】
前記器具は硝子体切除プローブであり、及び前記器具は、患者の眼から硝子体液を吸い上げるためにカッターに開口する前記ポートが設けられた針である、請求項6に記載の外科用ツール。
【請求項8】
外科用システムであって、
眼の外面に位置決めするためのカニューレ;及び
ツールの端部にある補強スリーブから延在する器具を備える外科用ツールであって、前記器具は前記眼内への所与の到達範囲を有し、前記所与の到達範囲は、前記ツール内の付勢機構によって延長可能であり、前記端部及びスリーブの引っ込みを容易にする、外科用ツール
を含む、外科用システム。
【請求項9】
前記付勢機構は、前記ツールの第1のチャンバー内のバネであり、前記ツールは、更に、第2のチャンバーと、前記器具の追加的な到達範囲のために前記スリーブを前記第2のチャンバー中へ独立して更に引っ込めるのを容易にするための、前記バネの近位端部にあるベースとを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
鉗子応用、ハサミ応用、スクレーパ応用、バックフラッシュツール応用、ジアテルミープローブ応用、及び前記器具を介した前記眼内の硝子体切除処置のうちの1つで使用するための、請求項8に記載の外科用システム。
【請求項11】
眼科手術を行う方法であって、前記方法は、
患者の眼の外部の位置にカニューレを位置決めすること;
前記カニューレを経由して、前記眼内の手術部位に隣接する位置に外科用ツールの器具を位置付けること;
前記カニューレにおいて前記ツールを安定させるために、前記器具の周りに補強スリーブを用いること;及び
前記スリーブと一緒に前記ツールのツール端部を強制的に引っ込めることによって、更に前記手術部位の方へ前記器具の到達範囲を延長させること
を含む、方法。
【請求項12】
更に、前記ツール端部から独立して前記スリーブを強制的に引っ込めることによって、前記手術部位の方へ前記器具の前記到達範囲を更に延長させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ツール端部及び前記スリーブの一方の前記強制的な引っ込めは、前記ツール内のバネによって案内される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ツール端部の前記強制的な引っ込め及び前記スリーブの独立した引っ込めは、連続して及び一致しての一方で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
更に、前記部位において外科的処置を行うことを含み、前記処置は、鉗子、ハサミ、スクレーパ、バックフラッシュツール、ジアテルミープローブ、照明用プローブ、及び前記器具として硝子体切除針のうちの1つを用いる、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、発明者がReto Grueebler及びKlaus Dorawaである、2021年10月28日に出願された「EXTENDIBLE IMPLEMENT FROM WITHIN A STIFFENING SLEEVE AND TOOL BODY END」という名称の米国仮特許出願第63/263,166号の優先権の利益を主張するものであり、あたかも本明細書に十分且つ完全に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
長年にわたって低侵襲外科的処置の分野において多くの劇的な進歩が起こってきた。したがって、自然発生的な患者の傷害及び治癒時間は劇的に減少している。例として、眼科手術の領域においては、以前はアクセス不能であった損傷した又は劣化した組織を、低侵襲処置によって修復したり直接点検したりする(serviced)ことができる。例えば、特定の処置に関わらず、処置の少なくとも一部には硝子体切除術が含まれることが一般的である。硝子体切除とは、患者の眼から硝子体液の一部又は全部を除去することである。濁った硝子体液の除去に限定された手術の場合、場合によっては、硝子体切除術が処置の大半を占める可能性がある。しかしながら、硝子体切除術は、白内障手術、網膜修復手術、黄斑ひだ形成症又は多くの他の問題に対処する手術を伴う可能性がある。
【0003】
眼科手術及び硝子体切除術の例に従うと、硝子体液自体は繊維を含んだ透明なゲルであり、これは、細長いプローブが眼に予め配置されたカニューレを通して挿入されると、細長い針によって除去され得る。より具体的には、硝子体切除プローブは、記載されるように、針がツールから現れた状態で外科医によって把持位置で保持される外科用ツールである。針は、硝子体液を除去するための中央チャネルを含む。更に、カニューレは、毛様体扁平部などの眼の前部のオフセットされた位置に戦略的に位置する構造的支持用の導管を提供する。このようにして、プローブ針は、患者の水晶体又は角膜への損傷を回避するやり方で、眼内に案内されるようにして挿入されてもよい。
【0004】
針は、図示されるように、一般に、毛様体扁平部の切開の位置に予め位置決めされたカニューレ及びトロカールアセンブリによって案内及び支持される。それゆえ、針は、外科的処置を実施するために眼の内部に確実に前進させることができる。当然ながら、硝子体切除用のプローブ針と同様に、他の様々な外科用器具を様々な異なる外科的目的のためにカニューレ及びトロカールアセンブリを通して同様に前進させることができる。これらは、鉗子、ハサミ、照明用プローブ装置、及びスクレーパ、バックフラッシュツール、又はジアテルミープローブなどの他の器械を含み得る。
【0005】
長年にわたり、記載した硝子体切除術などの低侵襲手術では、ますます精密になる外科的手技に対してますます小型化した器具が用いられてきた。例えば、従来約23ゲージであった可能性のある硝子体切除プローブ針は、約25又は27ゲージとなっている可能性がある。これは、約0.5mm(ミリメートル)をちょうど下回るサイズから約0.4mm未満のサイズまで針の直径を減らすことを意味する。硝子体切除プローブ針は、長さが数ミリメートルであって中空である可能性があることを考慮すると、この益々細くなるゲージ器具は非常に可撓性がある可能性がある。他の装置に関しても、硝子体切除プローブカッター針を含め、器具のサイズが次第に小さくなるにつれて、同様の可撓性の課題が出現する可能性がある。
【0006】
外科用器具の柔軟性又は可撓性の増大は、処置中の外科医にとって必ずしも有用ではない。一般的に言えば、外科医は、器具の硬さの程度によって、より良好に支援され、これにより、より大きな程度の制御を提供する。すなわち、器具の可撓性がより小さい場合、外部にいる外科医による器具の手動操作が、確実に手術部位に伝達される可能性が高い。そのため、例えば、硝子体切除処置の場合、プローブはグリップを含んでもよく、グリップから針が眼における前述したカニューレ構造体に向かって且つそれを通って延びている。より大きく且つより硬い補強スリーブが、カニューレの構造支持体から延び、ツールの本体及びグリップに向かって戻ってもよい。それゆえ、補強スリーブの存在により、少なくとも、外科医の把持位置と眼の前方との間の空間においては、針の屈曲が避けられる/減少される可能性がある。むしろ、グリップから眼の表面におけるピボット位置(例えば、補強スリーブがカニューレに接触する場所)への確実且つ信頼性のある直線的な運動の伝達が示される。繰り返しになるが、眼内に存在し、補強スリーブによって構造的に拘束されない針の実際の長さは限定される。それゆえ、針の屈曲は更に最小限にされる。
【0007】
残念ながら、詳述したような補強スリーブを用いることは、そのような処置に著しい外科的制約を加える。具体的には、スリーブの使用によって寸法制約が生じる。例えば、1cm(センチメートル)のスリーブが3cmの針に使用される場合、事実上2cmの針作業長さが患者の眼内での処置に用いられる。すなわち、スリーブをカニューレと把持位置との間に挟む際にスリーブをしっかりと維持することは、針が患者の眼内のちょうど2cmの深さに位置決めされることを意味する。カニューレを無理により深い位置にすることは、実際には、カニューレの位置において眼に傷害を与えざるを得ずに行うことは可能ではない。繰り返しになるが、より浅い部分に針を動かすことによって、スリーブの安定性を緩和するため、その支持をもたらす恩恵のほとんどを失う。
【0008】
当然ながら、標的外科的位置がカニューレ及び眼の表面から2cmを上回る場合、これは、前述したスリーブを用いることによって、必要な外科的アクセスを防げることを意味する。同様に、標的位置は軽く2cmを下回ってもよく、これにより、針が行き過ぎて患者の眼を傷つけることとなり得る。標的外科的位置はまた、同処置の最中、眼内の様々な深さに広がってもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
外科用ツールが提供される。ツールは、外科的処置のために外科医によって手動で固定される端部を備える本体を含む。ツールの器具は、処置を容易にするために端部内から延在する。処置の最中に器具を安定させるために、器具の周りに補強スリーブが設けられる。ツール本体の端部に付勢機構が結合され、付勢機構は、外科的処置部位に隣接する位置で補強スリーブがカニューレ構造体に接触することに応答して、器具を案内されるようにして延長させるために、その引っ込みを可能にする。付勢機構は、補強スリーブに更に結合されて、器具をまだ更に延長させるために、その引っ込みを案内されるようにして容易にし得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】動的に延長可能な器具の一実施形態によって支援される針を用いる外科用ツールの側方からの斜視図である。
図2A】内部付勢機構を強調している、図1の外科用ツールの端部の縦断面図である。
図2B】器具を延長させるために端部が応答してシフトされた状態の、図2Aのツール端部の縦断面図である。
図3】ツールの補強スリーブの位置のシフトによって器具が更に延長された状態の、図2Bのツール端部の縦断面図である。
図4A】内部付勢機構の代替的な実施形態を用いる、図1のツール端部の縦断面図である。
図4B】器具の十分な延長のために付勢機構が十分につぶれている状態の、図4Aのツール端部の縦断面図である。
図5A】器具が初期位置にある状態の、図1のツールによって実施される外科的処置の概要図である。
図5B】器具が十分に延長された状態の、図5Aの外科的処置の概要図である。
図6】動的な延長によって支援される器具を用いて低侵襲外科的処置を実施する一実施形態を要約するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、本開示の理解をもたらすために、多数の詳細が記述される。しかしながら、説明される実施形態は、これらの特定の詳細なしに実施され得ることが当業者に理解されるであろう。更に、具体的に説明する実施形態において依然として企図される多数の変形形態又は修正形態が採用され得る。
【0012】
実施形態を、ある特定の種類の外科的処置を参照して説明する。特に、硝子体切除プローブの概要を図1に示す。例えば、おそらく硝子体出血に対処するための硝子体液除去が、図5A及び図5Bを参照して述ベられ得る。当然ながら、鉗子ツール、ハサミ又は任意の数の他の光学外科手術機器が、本明細書で詳述するような延長可能な器具の実施形態を用い得る。これらは、照明用プローブ装置、及びスクレーパ、バックフラッシュツール、又はジアテルミープローブなどの他の器械を含み得る。更に、硝子体切除処置について本明細書で主に説明するが、本明細書中に詳述する硝子体切除プローブの実施形態は、網膜剥離、黄斑ひだ形成症、黄斑円孔、硝子体浮遊物、糖尿病性網膜症又は様々な他の眼の状態に対処するために用いられ得る。更に、硝子体切除術及び他の眼科手術は、多くの場合、相当に細い器具の使用から利するが、他のタイプの手術は、本明細書中に詳述する独特なアーキテクチャ及び技法から利することがある。実際に、支持用補強スリーブが、延長可能な到達範囲の器具又は針と組み合わせて用いられる限り、かなりの恩恵を得る可能性がある。
【0013】
ここで図1を参照して説明すると、針の形の器具175を用いる外科用ツール101の側方からの斜視図が示されている。本明細書で詳述するように、ツール101によって行われる外科的処置は、器具175が動的に延長可能であることによって、支援され得る。具体的には、図示の実施形態のためのツール101は、補強スリーブ100を備える硝子体切除プローブである。このスリーブ100は、図5A及び図5Bに示すように、カニューレ構造体530に接触する点まで、比較的細い器具175の周りに支持構造を提供するように構成される。そのように接触すると、スリーブ100内から器具175が延在する程度は、本明細書で説明する様々な技術によって、劇的に調整され得る(延長(E)に留意)。一実施形態では、これは、近位端部又はシェル125方へ、ツール本体端部150をスリーブ100と全体的に一致して引っ込めることによって、達成され得る。このようにして、下記で説明するように、距離(d)が縮められ、且つ器具175は更に延長される。実際に、図1図2A及び図2Bの実施形態に関して、この端部150及びスリーブ100の全体的に統一された引っ込みは、延長(E)の増加を獲得するやり方である。しかしながら、下記で更に詳述するように、延長(E)を更に増加するために、(d)が縮められた後でも、端部オリフィス130中へのスリーブ100の別の更なる引っ込みが更に可能である。
【0014】
ここで、引き続き図1を特に参照して説明すると、針又は器具175は、上述したようなツール端部160並びに下記で更に詳述するような補強スリーブ100の引っ込み性ゆえに、延長(E)の程度に関して動的に調整可能であるとみなされる。図示の実施形態では、ツール101は、本明細書で更に詳述するような処置で利用され得る硝子体切除プローブである。しかしながら、様々な異なる外科的用途のための他のタイプの装置において、そのような動的な調整性が利用されてもよい。
【0015】
器具175は比較的細いとし得る。特に、長さ25~35mmの針器具175が、25よりも高いゲージのサイズであることは珍しくない。それゆえ、ステンレス鋼又は他の適切な耐久性のある外科用材料が用いられている場合であっても、針175だけでは、外科医の観点での望ましい硬さが不足している可能性があり、ある程度の屈曲が生じやすい可能性がある。
【0016】
針175によって示される前述の硬さの不足は、針175の周りに図示のスリーブ100を含むことによって対処され得る。図示のスリーブ100は、針がある量延長させられた状態(E)で、その把持要素又は端部150においてツール101から予め決められた距離、延在し得る。しかしながら、これは、処置の過程で外科医によって意図的に調整され得る。すなわち、外科医は、好都合にも、針器具175がどの程度の到達範囲又は延長(E)を獲得し得るかに対し、どの程度のスリーブ支持を提供するかの制御を施すことができる。これは、針175の到達範囲が所与の外科的処置の過程全体を通して変化する状態で動的に行われ得る。
【0017】
引き続き図1を参照して説明すると、ツール101は、ツール本体端部150の後方に近位部分を含み、これは、本明細書では、シェル125と呼ばれてもよい。シェル125は、人間工学的な支持体の1つの形として使用され得るか、又は、一実施形態では、シェル125は、外科医の好み次第で除去自在とし得る。例えば、硝子体切除プローブの場合、外科医は、シェル125が手の第1指間腔(perlicue)に置かれ、シェル内に装置構成要素を保護的に収容した状態で、親指と人差し指との間で端部150において装置を保持し得る。下記で更に説明するように、器具175は、硝子体液を制御された状態で吸い上げるためにそのポート177と相互作用するカッターを器具175内に支持し得る。そのような処置に関して、この努力における外科医の労力を独自に支え、容易にするのは、スリーブ100及び端部150内からの器具175の動的延長可能性(E)である。
【0018】
ここで図2Aを参照すると、内部付勢機構220を強調する図1の外科用ツール101の端部150の縦断面図が示されている。図示の実施形態では、機構220は、ツール端部150内でスリーブ100のベース230に対して作用するための、付勢チャンバー225内に固着されるバネである。ベース230がツール端部に固定されている状態で、スリーブ100によってベース230に加えられる力が、端部150の位置をシフトさせ、且つ距離(d)を縮めるように作用し得る。実際に、図2Bを更に参照して説明すると、これは、前述したように、200で端部150がシェル125に接触する状態で起こった。スリーブ100及び端部150が図示の通りシフトしている状態で、対応して延長の増加があってもよい(例えば図2Aの(E)から図2Bの(E’)へ)。
【0019】
図5A及び図5Bを参照して下記で詳述するように、なくなった距離(d)に等しい量の(すなわちE’への)延長の増加は、スリーブ100の遠位端部がカニューレ構造体530と相互作用するときの、外科的な好みの問題とし得る。それゆえ、外科医は、抵抗する付勢機構220によって案内されるように、安定したやり方で、針器具175の長さをおそらく数ミリメートルだけ動的に延長させることができる。それゆえ、外科的処置のために装置の到達範囲を制御したやり方で延長させることが利用可能とし得る。
【0020】
別の内部バネ240及びツール101の他の構成要素が図2A及び図2Bに示されていることに留意されたい。これらは、他のタイプの器具が用いられる場合に鉗子やハサミを作動させるなど、他の目的で用いられてもよい。しかしながら、下記で詳述する他の実施形態では、そのような内部構成要素は、器具175の更なる延長も支援するために用いられてもよい。
【0021】
ここで図3を参照すると、器具175が更に延長され得る(例えば(E”)まで)実施形態における図2Bのツール端部150の縦断面図が示されている。例えば、この実施形態では、上述のようなシェル125と接触するための端部150の位置のシフト後でも、ベース230は、追加的な延長(E”)を得るために追加的な距離(d’)だけシフトされ得る。例えば、一実施形態では、外科医によって加えられる追加的な力が、付勢機構(バネ220)の追加的な圧縮を可能にするために、ツール端部150からのベース230のすり動き(shearing)を得るために使用され得る。そのため、例えば、図5A及び図5Bを更に参照して説明すると、ひとたび外科医によって、スリーブ100とカニューレ530の接触点に向けて予め決められた力が加えられたら、端部150から離れたスリーブ100のすり動き及び追加的なシフトが得らえ得る。このようにして、患者の眼550の中への器具175の追加的な到達範囲が達成され得る(例えば、図示の追加的な延長(E”)まで)。或いは、下記で詳述するように、すり動きを全く必要とすることなく追加的な延長(E”)を得るために、異なる内部アーキテクチャが用いられてもよい(下記で説明する図4A及び図4B参照)。
【0022】
ここで図4Aを参照すると、図1のツール端部150の縦断面図が示されており、そのために、内部付勢機構の代替的な実施形態が用いられる。この場合、図2A及び図2Bに示すように付勢チャンバー225内の単一のバネ220を用いるのではなく、異なるアーキテクチャの別の近位チャンバー425が同様に用いられる。このようにして、図4Bの十分な延長(E”)を達成するために、異なるチャンバー225、425の連続的なシフト又は接近が用いられてもよい。下記で詳述するように、器具175の連続的なシフト及び延長のために個別のチャンバー225、425を用いることは、十分な延長(E”)を達成するために、ベース230を動かす目的でのすり動きが回避される可能性を意味する。
【0023】
引き続き図4Aを参照して説明すると、スリーブ100の端部は、ここでも、図5A及び図5Bに示すように、距離(d)を縮めるためにツール端部150のシフトを開始するやり方で、カニューレ530と接触するように構成される。これは、ここでも、図4Bに示すような端部150とシェル125との接触に関して見ることができる(接触点200参照)。ツール端部150のこのシフトを得るために、近位チャンバー425が接近させられる。ツール101の全体的な安定性のために、この接近及び距離の縮小に対するある程度の抵抗がもたらされることに留意されたい。例えば、ツール101の端部150と下部ハウジング400との間には、ほとんど又は全くクリアランスがないかもしれない。実際に、一実施形態では、これらの特徴150、400間に、予め決められた摩擦抵抗の程度がもたらされても、又は更には、近位チャンバー425内に空気圧、別のバネ、若しくは他の好適な抵抗があってもよい。抵抗が、付勢チャンバー420中を通って延びるバネ420よりも弱い力である限り、近位チャンバー425は、ベース230のシフトより先に接近させられ、且つ下記で説明するように更に器具が延長する。それゆえ、図示の実施形態では、器具175の延長は、近位チャンバー425を接近させて距離(d)を縮める端部150のシフトに連続して開始し得る。
【0024】
ここで図4Bを参照して説明すると、両チャンバー225、425中を通って延びる付勢機構バネ420は、ここでは圧縮されて示されており、ベース230は、近位チャンバー425の接近及び図4Aの初期距離(d)の縮小後にシフトされる。すなわち、別の距離(d’)も、ここでは図示の延長位置(E”)へ器具を更に延長させるように縮められている。実際に、器具175にここでもたらされる追加的な到達範囲の量は、初期の端部の縮められた距離(d)プラスその後のベース230のシフト距離(d’)にほぼ等しい距離(D)である。すなわち、図5A及び図5Bを更に参照して説明すると、ひとたびスリーブ100がカニューレ530と接触すると、端部150の初期のシフトは、処置のために眼550内への器具175の初期の延長到達範囲を得るために、外科医によって制御して加えられ得る(例えば、端部150が近位チャンバー425を接近させて距離(d)を縮めるため)。この到達範囲は、ある程度の追加的な力を加えることにより、外科医によって更に延長され得る(例えば、ベース230が距離(d’)を移動するため)。
【0025】
上述の通りシフトの順序が起こることに特定の条件がないことは注目に値する。例えば、別の実施形態では、ベース230の移動は、直面する抵抗がより小さくなり、且つ器具175を延長させる最初のやり方として起こり得る。この実施形態では、近位チャンバー425の接近及び図4Aの距離(d)の縮小は、説明したようなベース230の移動後に起こり得る。更に、これらの動きは、他よりも器具175の延長に対する抵抗が特に多くも又は少なくもない状態で、相対的に一致して起こり得る。それにもかかわらず、端部150及び内部ベース230の双方の移動の動きを累積的に得ることが可能である限り、外科医は、器具175に追加的なある程度の到達範囲が与えられ、これは、下記で説明するように、手術に有益とし得る。
【0026】
ここで図5A及び図5Bを直接参照すると、図1のツール101を用いて実施される外科的処置の概要図が示されている。より具体的には、患者の眼550内へのツール器具175の到達範囲は、多面的な方法で初期位置(E)から十分な延長位置(E”)まで延長される。本明細書の実施形態に関し、これは、器具175の上側を覆うスリーブ100と一致した近位方向におけるツール端部150のシフトを含む。更に、スリーブ100は、器具175の追加的な到達範囲のために、端部150内で近位に補足的にシフトされ得る。
【0027】
引き続き図5A及び図5Bを参照して説明すると、患者の眼550の縦断面の概要が示されており、ここでは、処置は硝子体切除処置である。処置中、ツール101の器具175は、予め配置されたカニューレ530を通して挿入され、且つ領域510の方に向けられ、そこで硝子体液が除去される。吸引が行われ、且つポート177が硝子体液又は他の物質を吸い上げるために使用される。例えば、図示の処置において、領域510内で出血が起こる可能性があり、血液は硝子体液と共にポート177に引き込まれるようにする。
【0028】
説明したような処置では、針175は眼550の内部に達するが、針175を囲む補強スリーブ100は、眼550の内部に達しないことに留意されたい。むしろ、スリーブ100の端部は、カニューレ530の内部構造にしっかりと載置される。より具体的には、カニューレ内部構造は、処置中に補強スリーブ100の端部を受け入れて支持するように、漏斗状又は他の収容形態のものとし得る。更に、カニューレ530の中央には、針175の通過を可能にするのに十分な大きさのオリフィスが含まれる。当然ながら、オリフィスはまた、スリーブ100の同様の通過を可能にするには小さすぎる。そのため、例えば、一実施形態では、オリフィスは、26ゲージ及びそれより小さい針175(例えば、直径0.46mm以下)の通過を可能にするように、直径が約0.475mmであってもよい。同時に、このオリフィスはまた、25ゲージ及びそれより大きいスリーブ100(例えば、直径0.515mm以上)の通過を阻止する。当然ながら、上述したようなカニューレ530のオリフィスを通した針器具の通過を促し、スリーブの通過を阻むように、様々な異なる寸法の組み合わせを用いてもよい。
【0029】
スリーブ100がカニューレ530の内部構造に安定的に接続している状態で、外科医は、カニューレ530のピボット点を中心に針を操作することができる。このようにして、針175が眼550の内部にある状態で、ある種の安定した作業領域が得られる。更に、意図しない屈曲の懸念があるカニューレ530と図1のツール101との間に、スリーブ100によって補助的な剛性が提供される。
【0030】
上記で言及したように、硝子体切除処置の例に関して、この繊細な処置の最中、カッターが針器具175内で往復運動している。図示した手術には、別のカニューレ中を通って眼550内に達する照明装置525も含まれる。どちらの状況においても、カニューレ530は、強膜570においてオフセットして位置決めされる。このようにして、より繊細な角膜590及び水晶体580を回避し得る。
【0031】
更に、眼550の後ろ側の視界に入らない位置にある視神経及び網膜も、かなり繊細である。このことを念頭に置くと、補強スリーブ100は、針器具175が眼550の奥深くに意図せずに達することを防止する最初の役割を果たし得る。しかしながら、更に、上記で詳述した技術に従ってここに示すように、外科医は、器具175が案内されるようにして制御可能に延長到達範囲(E”)に到達するように、意図的に力を加えてもよい。
【0032】
ここで図6を参照すると、動的に延長可能な到達範囲を有する器具を用いて低侵襲外科的処置を実施する一実施形態を要約するフローチャートが示されている。615に示すように、外科的処置のために支持構造を提供するために、患者の眼の外部の位置にカニューレが位置決めされる。外科用ツールの針などの器具は、630で説明するように、カニューレのオリフィスを通って案内され得る。それゆえ、針は、外科用ツールからカニューレを越えて手術部位の方へ向かって延在し得る。しかしながら、645に示すように、針の周りに位置するツールの補強スリーブは、カニューレにおいてツールを安定化させ且つ器具の針を適切な位置に保持するために使用され得る。
【0033】
外科的処置のための上記のシナリオでは、器具の到達範囲は、初期のスリーブ支持位置から更に手術部位の方へ延長され得る(660参照)。具体的には、これは、675に示すように、ツール端部を引っ込めることによって起こり得、これはまた、器具の到達範囲の増大のために、同等のスリーブの引っ込みをもたらす。更に、スリーブは、ツール端部の引っ込みを越える追加的なある程度の引っ込みを受け得る(690参照)。上記で詳述したように、これらの引っ込みモードは、独立して発生しても、又は独立したスリーブの引っ込みに先行するツール端部の引っ込みと連続して発生してもよい(又は逆も同様)。更に、これらの累積的な引っ込みは、比較的同時に又は重なって行われてもよい。器具の到達範囲の累積的な増大のために複数の引っ込みモードが利用できる限り、処置のために外科医はかなりの恩恵が得られる。
【0034】
上述した実施形態は、比較的細い外科用器具を用いる外科的処置を支援するための補強スリーブの実際的な使用を可能にするアーキテクチャ及び手法を含む。しかしながら、器具による外科的アクセスを決定するために補強スリーブの長さに依存したままではなく、内部手術部位の方へ器具の到達範囲を延長させる複数の累積的なモードが、上述のように用いられてもよい。
【0035】
前述の説明は、現在の好ましい実施形態を参照して提示されている。しかしながら、開示されているが上記で詳述されていない他の実施形態及び/又は実施形態の特徴が採用され得る。更に、これらの実施形態が属する技術分野及び技術の当業者は、説明された構造及び動作方法における更に他の改変形態及び変更形態が、これらの実施形態の原理及び範囲から有意に逸脱することなく実施され得ることを理解するであろう。加えて、前述の説明は、説明し、添付の図面に示す正確な構造にのみ関係するものとして読み取るべきではなく、むしろ、それらの最大限且つ最も適正な範囲を有することになる以下の特許請求の範囲と整合し、それらを支持するものとして読み取るべきである。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
【国際調査報告】