(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】廃プラスチック熱分解油の精製装置および精製方法
(51)【国際特許分類】
C10G 65/04 20060101AFI20241010BHJP
C10G 45/02 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C10G65/04
C10G45/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519379
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 KR2022016543
(87)【国際公開番号】W WO2023075438
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0146884
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヒジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム オクユン
(72)【発明者】
【氏名】キム カヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク ユンモ
(72)【発明者】
【氏名】イ ホウォン
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA22
4H129DA15
4H129KA06
4H129KB03
4H129KC03Y
4H129KD15Y
4H129KD22Y
4H129KD24Y
4H129MA01
4H129MA12
4H129MB14A
4H129MB14B
4H129NA01
4H129NA41
4H129NA43
4H129NA46
(57)【要約】
本開示は、廃プラスチック熱分解油および水素ガスが流入し、水素化処理触媒下で第1温度で水素化処理され、塩素が除去された流体が生成されるガードベッド100と、前記ガードベッド100から流体および水素ガスが流入し、水素化処理触媒下で第1温度よりも高い第2温度で水素化処理され、不純物が除去された精製油が生成されるメインベッド200と、前記メインベッド200から不純物が除去された精製油が回収される回収タンク300と、を含み、前記精製油が回収タンク300に回収される前まで、温度を290℃以上350℃未満に維持(maintaining)する、廃プラスチック熱分解油の精製装置に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチック熱分解油および水素ガスが流入し、水素化処理触媒下で第1温度で水素化処理され、塩素が除去された流体が生成されるガードベッドと、
前記ガードベッドから流体および水素ガスが流入し、水素化処理触媒下で第1温度よりも高い第2温度で水素化処理され、不純物が除去された精製油が生成されるメインベッドと、
前記メインベッドから不純物が除去された精製油が回収される回収タンクと、
を含み、
前記精製油が回収タンクに回収される前まで、温度を290℃以上350℃未満に維持(maintaining)する、廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項2】
前記廃プラスチック熱分解油は、沸点180℃以上、C10以上の中巨大炭化水素オイルを30重量%以上含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項3】
前記第1温度は、100℃超過300℃未満であり、前記第2温度は、300℃超過450℃未満である、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項4】
前記メインベッドの不純物が除去された精製油中の水分含量は、100ppm未満である、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項5】
前記メインベッドと回収タンクとの間に加熱手段をさらに含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項6】
前記ガードベッドおよびメインベッドの反応圧力は、60bar超過120bar未満である、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項7】
前記ガードベッドおよびメインベッドは、液体の時間当たりの空間速度(LHSV)の比が1:0.1~1:0.8である、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項8】
(S1)廃プラスチック熱分解油を水素化処理触媒下で第1温度で水素ガスで水素化処理し、塩素が除去された流体を生成するステップと、
(S2)前記流体を水素化処理触媒下で第1温度よりも高い第2温度で水素ガスで水素化処理し、不純物が除去された精製油を生成するステップと、
(S3)前記不純物が除去された精製油を回収するステップと、
を含み、
前記精製油を回収する前まで、温度を290℃以上350℃未満に維持(maintaining)する、廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項9】
前記廃プラスチック熱分解油は、沸点180℃以上、C10以上の中巨大炭化水素オイルを30重量%以上含む、請求項8に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項10】
前記第1温度は、100℃超過300℃未満であり、前記第2温度は、300℃超過450℃未満である、請求項8に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項11】
前記(S2)の不純物が除去された精製油中の水分含量は、100ppm未満である、請求項8に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項12】
前記(S1)ステップおよび前記(S2)ステップの水素化処理時の反応圧力は、60bar超過120bar未満である、請求項8に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項13】
前記(S1)ステップおよび前記(S2)ステップの水素化処理時の液体の時間当たりの空間速度(LHSV)の比が1:0.1~1:0.8である、請求項8に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチック熱分解油の精製装置および精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックは、石油を原料として製造されたものであり、リサイクル度が低く、ゴミとして廃棄処分されていることが多い。このような廃棄物は、自然状態で分解されるのに長時間がかかるため、土壌を汚染させ、深刻な環境汚染を引き起こしている状況である。廃プラスチックをリサイクルするための方法として、それを熱分解してオイルに転化させることができ、それを廃プラスチック熱分解油という。
【0003】
しかし、廃プラスチックを熱分解して得られた熱分解油は、一般的な方法で原油から製造されるオイルと比較して塩素、窒素、金属などの不純物含量が高いため、ガソリン、ディーゼル油などの高付加価値燃料として直ちに用いることができず、精製工程を経なければならない。
【0004】
このように、廃プラスチック熱分解油に含有された塩素、窒素、金属などの不純物を除去するための精製方法として、水素化処理触媒下で廃プラスチック熱分解油と水素を反応させて脱塩素化/脱窒素化する方法、または塩素吸着剤を用いて廃プラスチック熱分解油に含有された塩素を吸着除去する方法などが知られている。
【0005】
具体的に、米国登録特許第3935295号公報には、様々な炭化水素オイルから塩化物汚染物質を除去するための技術が開示されている。前述した技術は、第1反応器にて水素化処理触媒下でオイルを水素化処理し、この際に生成された塩化水素(HCl)と精製されたオイルを含む流体を第2反応器に流入させた後、前記流体に含まれた塩素成分を吸着剤により吸着除去する従来技術である。
【0006】
しかし、前述した従来技術のように、水素化処理触媒下でオイルと水素を反応させる場合、精製されたオイルとともに生成される塩化水素などの塩素化合物と窒素化合物が反応してアンモニウム塩(NH4Cl)を生成し、このアンモニウム塩は、様々な工程トラブルを引き起こす。具体的に、オイルと水素が反応して反応器の内部に生成されるアンモニウム塩は、反応器の腐食を引き起こし、耐久性を減少させるだけでなく、差圧の発生、それによる工程効率の低下などの多くの工程トラブルを引き起こす。
【0007】
また、従来の廃プラスチック熱分解油に含有された不純物を除去するための精製方法として、水素化処理触媒下で水素化処理して精製する方法とともに、水処理して不純物を除去する工程が行われている。しかし、一般的な廃プラスチック熱分解油中の水分は、通常、0.2~1重量%存在し、前記水処理により廃プラスチック熱分解油中の水分含量が過度に多くなる。これは、工程全体で腐食を引き起こし、工程効率を低下させるだけでなく、触媒に影響を与え、触媒の耐久性が低下することで、精製装置の安定した運転を行うことができないという問題を引き起こす。
【0008】
したがって、塩素および窒素を含む不純物が含有された廃プラスチック熱分解油の精製工程において、塩素成分と窒素成分が反応してアンモニウム塩(NH4Cl)が生成されないようにするか、またはその生成を最小限に抑え、水分を最小化することで、腐食および触媒の耐久性の低下を防止する廃プラスチック熱分解油の精製装置および方法が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国登録特許第3935295号公報(登録日:1976年01月27日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示の目的は、塩素および窒素を含む不純物が含有された廃プラスチック熱分解油の精製工程において、アンモニウム塩(NH4Cl)が生成されないようにするか、またはその生成を最小限に抑え、反応器の腐食および差圧の発生を抑制し、耐久性および工程効率が向上した廃プラスチック熱分解油の精製装置および方法を提供することにある。
【0011】
本開示の他の目的は、塩素および窒素を含む不純物が含有された廃プラスチック熱分解油の精製工程において、水分を最小化して反応器の腐食および触媒の耐久性の低下を防止することで、工程安定性が向上した廃プラスチック熱分解油の精製装置および方法を提供することにある。
【0012】
本開示のまた他の目的は、塩素、窒素、金属などの不純物含有量およびオレフィン含有量が非常に低く、品質に優れた廃プラスチック熱分解油の精製装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、廃プラスチック熱分解油および水素ガスが流入し、水素化処理触媒下で第1温度で水素化処理され、塩素が除去された流体が生成されるガードベッド100と、前記ガードベッド100から流体および水素ガスが流入し、水素化処理触媒下で第1温度よりも高い第2温度で水素化処理され、不純物が除去された精製油が生成されるメインベッド200と、前記メインベッド200から不純物が除去された精製油が回収される回収タンク300と、を含み、前記精製油が回収タンク300に回収される前まで、温度を290℃以上350℃未満に維持(maintaining)する、廃プラスチック熱分解油の精製装置を提供する。
【0014】
本開示の一実施形態において、前記廃プラスチック熱分解油は、沸点180℃以上、C10以上の中巨大炭化水素オイルを30重量%以上含んでもよい。
本開示の一実施形態において、前記第1温度は、100℃超過300℃未満であり、前記第2温度は、300℃超過450℃未満であってもよい。
【0015】
本開示の一実施形態において、前記メインベッド200の不純物が除去された精製油中の水分含量は、100ppm未満であってもよい。
本開示の一実施形態において、前記メインベッド200と回収タンク300との間に加熱手段250をさらに含んでもよい。
【0016】
本開示の一実施形態において、前記ガードベッド100およびメインベッド200の反応圧力は、60bar超過120bar未満であってもよい。
本開示の一実施形態において、前記ガードベッド100およびメインベッド200は、液体の時間当たりの空間速度(LHSV)の比が1:0.1~1:0.8であってもよい。
【0017】
また、本開示は、(S1)廃プラスチック熱分解油を水素化処理触媒下で第1温度で水素ガスで水素化処理し、塩素が除去された流体を生成するステップと、(S2)前記流体を水素化処理触媒下で第1温度よりも高い第2温度で水素ガスで水素化処理し、不純物が除去された精製油を生成するステップと、(S3)前記不純物が除去された精製油を回収するステップと、を含み、前記精製油を回収する前まで、温度を290℃以上350℃未満に維持(maintaining)する、廃プラスチック熱分解油の精製方法を提供する。
【0018】
本開示の一実施形態において、前記廃プラスチック熱分解油は、沸点180℃以上、C10以上の中巨大炭化水素オイルを30重量%以上含んでもよい。
本開示の一実施形態において、前記第1温度は、100℃超過300℃未満であり、前記第2温度は、300℃超過450℃未満であってもよい。
【0019】
本開示の一実施形態において、前記(S2)の不純物が除去された精製油中の水分含量は、100ppm未満であってもよい。
本開示の一実施形態において、前記(S1)ステップおよび(S2)ステップの水素化処理時の反応圧力は、60bar超過120bar未満であってもよい。
【0020】
本開示の一実施形態において、前記(S1)ステップおよび(S2)ステップの水素化処理時の液体の時間当たりの空間速度(LHSV)の比が1:0.1~1:0.8であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本開示に係る廃プラスチック熱分解油の精製装置および方法は、塩素および窒素を含む不純物が含有された廃プラスチック熱分解油の精製工程において、アンモニウム塩(NH4Cl)が生成されないようにするか、またはその生成を最小限に抑え、反応器の腐食および差圧の発生を抑制し、耐久性および工程効率が向上するという効果がある。
【0022】
また、本開示に係る廃プラスチック熱分解油の精製装置および精製方法は、精製工程において、水分を最小化して反応器の腐食および触媒の耐久性の低下を防止することで、工程安定性が向上した廃プラスチック熱分解油の精製装置および方法を提供することができる。
【0023】
また、本開示に係る廃プラスチック熱分解油の精製装置および方法は、塩素、窒素、金属などの不純物含有量およびオレフィン含有量が非常に低く、品質に優れるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示に係る廃プラスチック熱分解油の精製装置を図式化して示した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る廃プラスチック熱分解油の精製装置および方法について詳しく説明する。
本明細書に記載されている図面は、当業者に本発明の思想が十分に伝達できるように例として提供されるものである。したがって、本発明は、提示される図面に限定されず、他の形態に具体化されてもよく、上記の図面は、本発明の思想を明らかにするために誇張して示されてもよい。
【0026】
本明細書で用いられる技術用語および科学用語は、特に定義しない限り、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付図面において、本発明の要旨を不要に曖昧にする公知の機能および構成に関する説明は省略する。
本明細書で用いられる用語の単数の形態は、特に指示しない限り、複数の形態も含むものと解釈されてもよい。
【0027】
本明細書で用いられる数値範囲は、下限値と上限値、その範囲内での全ての値、定義される範囲の形態と幅から論理的に誘導される増分、そのうち限定された全ての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限の全ての可能な組み合わせを含む。本発明の明細書において、特に定義しない限り、実験誤差または値の四捨五入により発生し得る数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0028】
本明細書で言及される「含む」は、「設ける」、「含有する」、「有する」、「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であって、追加的に列挙されていない要素、材料、または工程を排除するものではない。
本明細書において、特に言及せずに用いられた%の単位は、特に定義しない限り、重量%を意味する。
【0029】
廃プラスチック熱分解油を精製するにあたり、水素化処理触媒下でオイルと水素を反応させる場合、精製されたオイルとともに生成される塩化水素などの塩素化合物と窒素化合物が反応してアンモニウム塩(NH4Cl)を生成し、このアンモニウム塩は、様々な工程トラブルを引き起こす。具体的に、オイルと水素が反応して反応器の内部に生成されるアンモニウム塩は、反応器の腐食を引き起こし、耐久性を減少させるだけでなく、差圧の発生、それによる工程効率の低下などの多くの工程トラブルを引き起こす。
【0030】
また、従来の廃プラスチック熱分解油に含有された不純物を除去するための精製方法として、水素化処理触媒下で水素化処理して精製する方法とともに、水処理して不純物を除去する工程が行われているが、前記水処理により廃プラスチック熱分解油中の水分含量が多くなり、これは、工程全体で腐食を引き起こし、工程効率を低下させるだけでなく、触媒に影響を与え、触媒の耐久性が低下することで、精製装置の安定した運転を行うことができないという問題がある。
【0031】
そこで、本開示は、廃プラスチック熱分解油および水素ガスが流入し、水素化処理触媒下で第1温度で水素化処理され、塩素が除去された流体が生成されるガードベッド100と、前記ガードベッド100から流体および水素ガスが流入し、水素化処理触媒下で第1温度よりも高い第2温度で水素化処理され、不純物が除去された精製油が生成されるメインベッド200と、前記メインベッド200から不純物が除去された精製油が回収される回収タンク300と、を含み、前記精製油が回収タンク300に回収される前まで、温度を290℃以上350℃未満に維持(maintaining)する、廃プラスチック熱分解油の精製装置を提供する。
【0032】
前記廃プラスチック熱分解油は、廃プラスチックを熱分解して生成された炭化水素オイル混合物であってもよく、この際、廃プラスチックは、廃合成樹脂、廃合成繊維、廃合成ゴム、廃ビニルなどの合成高分子化合物に関連する固相または液相のゴミを含んでもよい。
【0033】
前記炭化水素オイル混合物は、炭化水素オイルの他に、塩素化合物、窒素化合物、金属化合物などの不純物を含んでもよく、炭化水素中に塩素、窒素、または金属が結合した化合物形態の不純物を含んでもよく、オレフィン形態の炭化水素を含んでもよい。具体的に、廃プラスチック熱分解油は、窒素300ppm以上、塩素30ppm以上を含有してもよく、オレフィン(Olefin)20体積%(1atm、25℃基準)以上、共役ジオレフィン(Conjugated diolefin)1体積%(1atm、25℃基準)以上、水分0.1~1重量%以上を含有してもよい。ただし、前記不純物含量は、廃プラスチック熱分解油に含まれてもよい具体的な例示にすぎず、廃プラスチック熱分解油の組成はこれに限定されない。
【0034】
本開示の一実施形態において、前記廃プラスチック熱分解油は、沸点180℃以上、C10以上の中巨大炭化水素オイルを30重量%以上含んでもよい。具体的に、前記廃プラスチック熱分解油は、沸点180℃以上、C10以上の直鎖状パラフィンおよびα-メチルパラフィンを含む炭化水素オイルを30重量%以上含んでもよく、C10以下のナフサを含む炭化水素オイルを30重量%以下含んでもよい。前述した炭化水素オイル組成を満たす廃プラスチック熱分解油を原料として用いる場合、オリゴマー化またはクラッキング(cracking)などの付加的な工程なしに水素化処理だけで精製工程を行うことができ、精製工程前/後の反応物と生成物との間の分子量分布の差がほぼなしに不純物を除去できるという効果がある。
【0035】
前記ガードベッド100は、廃プラスチック熱分解油および水素ガスが流入し、水素化処理触媒下で第1温度で水素化処理され、塩素が除去された流体が生成されることができる。
【0036】
前記メインベッド200は、前記ガードベッド100から流体および水素ガスが流入し、水素化処理触媒下で第1温度よりも高い第2温度で水素化処理され、不純物が除去された精製油が生成されることができる。
【0037】
前記ガードベッド100およびメインベッド200で除去される各成分の種類は、反応温度に応じて決められることができる。前記ガードベッド100の水素化処理は、第1温度で行われることで塩素が除去され、メインベッド200の水素化処理は、第1温度よりも高い第2温度で行われることで窒素を含む不純物が除去されることができる。
【0038】
前記水素化処理が行われるガードベッド100およびメインベッド200が複数連結されて水素化処理が行われるが、ガードベッド100で塩素が先に除去された後、メインベッド200で窒素を含む不純物が除去されるようにすることで、反応器内のアンモニウム塩(NH4Cl)の生成および蓄積を最小化することができる。
【0039】
本開示の一実施形態において、前記第1温度は、100℃超過300℃未満であり、前記第2温度は、300℃超過450℃未満であってもよい。
前述した第1温度の範囲で水素化処理される場合、塩素が集中的に除去されることができ、前記第1温度は、具体的には120~250℃、より具体的には150~230℃であってもよい。
【0040】
前述した第2温度の範囲で水素化処理される場合、窒素を含む不純物を除去することができ、また、生成された精製油中の水分含量を最小化し、工程中の腐食を防止し、触媒の不活性化を防止することができる。300℃以下である場合、廃プラスチック熱分解油中の水分を効果的に除去することができず、工程中に腐食を引き起こし、前記水分は、触媒の耐久性に影響を与え、触媒の活性を低下させるという問題がある。450℃以上である場合、Thermal cracking副反応が発生し、cokingなどの触媒の不活性化を引き起こすという問題が発生し得る。前記第2温度が具体的には350~420℃、より具体的には370~400℃である場合、工程中の腐食問題の解決、触媒の活性を維持できる点で好ましい。
【0041】
前記第1温度と第2温度の差は50~350℃、具体的には50~280℃、より具体的には50~200℃であってもよいが、これは例示にすぎず、第1温度と第2温度の差はこれに限定されない。
【0042】
前記メインベッド200の不純物が除去された精製油中の水分含量は、100ppm未満であってもよい。前述したように、メインベッド200の反応温度を300℃超過450℃未満にして廃プラスチック熱分解油中の水分を効果的に除去することで、水分含量が100ppm未満の精製油を得ることができる。具体的には80ppm未満であってもよく、より具体的には60ppm未満であってもよい。
【0043】
具体的に、前記ガードベッド100内には、水素化処理触媒が設けられている第1反応領域が存在する。前記反応領域に廃プラスチック熱分解油と水素ガスが流入し、第1温度で水素化処理され、廃プラスチック熱分解油から塩素が除去され、一部のオレフィンと金属不純物もともに除去されることができる。具体的に、水素化処理触媒下で廃プラスチック熱分解油の水素添加反応が起こり、廃プラスチック熱分解油からほとんどの塩素が除去され、塩化水素が生成される。さらに、廃プラスチック熱分解油からオレフィンの一部が除去され、その他の金属不純物が除去される。このように脱塩素化されたオイル、塩化水素、および未反応水素を含む流体は、メインベッド200に流入する。
【0044】
前記ガードベッド100は、別のガス排出口が存在しなくてもよく、これにより、前記ガードベッド100の脱塩素化されたオイル、塩化水素、および未反応水素を含む流体は、そのままメインベッド200に流入することができる。
【0045】
前記メインベッド200内には、水素化処理触媒が設けられている第2反応領域が存在する。前記第2反応領域に前記ガードベッド100から流体および水素ガスが流入し、第2温度で水素化処理され、流体から不純物が除去されることができる。前記流体中の塩化水素、未反応の水素ガスとともに、窒素、酸素、硫黄などを含む不純物が全て除去されることができ、この過程で塩化水素、アンモニア、水蒸気、硫化水素などを含む混合ガスが生成されることができる。前記メインベッド200は、第2反応領域の上部に混合ガスを排出するガス排出口が設けられ、第2反応領域の下部に不純物が除去された精製油を排出するオイル排出口が設けられることができる。第2温度で水素化処理された流体中の混合ガスがガス排出口を介して排出されることで、不純物が除去された精製油が生成されることができる。
【0046】
前記回収タンク300に前記メインベッド200から不純物が除去された精製油が回収されることができる。精製油は、前記メインベッド200のオイル排出口から移送され、回収タンク300に回収されることができ、前記回収タンク300に回収される前まで、温度を290℃以上350℃未満に維持(maintaining)することができる。
図1に示すように、精製油が回収タンク300に回収される前まで、温度を290℃以上に維持(maintaining)することで、精製油中に存在する残量の不純物からアンモニウム塩(NH
4Cl)が生成されるのを防止することができ、水分含量が最小化された高品質の精製油を得ることができる。精製油を回収する前までの温度が290℃以下に下がる場合、水分が凝縮されるか、またはアンモニウム塩(NH
4Cl)の生成による差圧の発生可能性があり、温度が350℃以上である場合、Thermal cracking副反応の発生による触媒の不活性化の可能性がある。
【0047】
本開示の一実施形態において、前記メインベッド200と回収タンク300との間に加熱手段250をさらに含んでもよい。前記加熱手段がメインベッド200と回収タンク300との間に設けられることで、回収タンク300に回収される前まで、温度を290℃以上に維持(maintaining)することができる。前記加熱手段としては、例えば、電気ヒータ、スチームヒータ、エアドライヤなどを用いてもよく、これは一例として示したものにすぎず、前記加熱手段はこれに限定して解釈されるものではない。
【0048】
本開示の一実施形態において、前記ガードベッド100および前記メインベッド200の反応圧力は、60bar超過120bar未満であってもよい。60bar以下の低い圧力条件では塩素および窒素を含む不純物を効果的に除去できないという問題があり、120bar以上の高い圧力条件ではアンモニウム塩(NH4Cl)の生成が促進されるという問題がある。具体的には65bar~110barであってもよく、より具体的には70bar~100barであってもよい。
【0049】
本開示の一実施形態において、前記ガードベッド100およびメインベッド200は、液体の時間当たりの空間速度(LHSV)の比が1:0.1~1:0.8であってもよい。それを満たす場合、ガードベッド100およびメインベッド200を介して効果的に不純物を除去することができ、水素化処理触媒の活性を高活性に長期間維持することができ、工程効率が向上するという効果がある。
【0050】
前記ガードベッド100に流入する廃プラスチック熱分解油および前記メインベッド200に流入する流体と水素の1気圧基準での体積流量比は1:300~3,000であってもよい。前記体積流量比は、水素化処理を行うことができる程度であればよく、1気圧基準での体積流量比が具体的には1:300~3,000であってもよく、より具体的には1:500~2,500であってもよい。ただし、これは一例として説明したものにすぎず、これに限定されない。
【0051】
前記水素化処理触媒としては、廃プラスチック熱分解油の炭化水素オイルに水素が添加される水素添加反応が行われるようにする触媒であれば、公知の種々のものが用いられてもよい。具体例として、水素化処理触媒は、水素化脱硫触媒、水素化脱窒素触媒、水素化脱塩素触媒、および水素化脱金属触媒などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含んでもよい。このような触媒は、脱金属化反応が行われると同時に、前述した温度などの条件に応じて脱窒素化反応または脱塩素化反応が行われるようにする。具体的な一実施形態として、前記水素化処理触媒能を有する活性金属を含んでもよく、好ましくは、支持体に活性金属が担持されてもよい。前記活性金属は、要求触媒能を有するものであればよく、例えば、モリブデン、ニッケルなどから選択されるいずれか1つ以上を含んでもよい。前記支持体は、活性金属を担持可能な耐久性を有するものであればよく、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコン、ナトリウム、およびマンガンチタンなどから選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含む金属;前記金属の酸化物;およびカーボンブラック、活性炭素、グラフェン、カーボンナノチューブ、および黒鉛などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含む炭素系材料;などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含んでもよい。具体的な一実施形態として、前記水素化処理触媒は、総重量に対してニッケル0.1~10重量%およびモリブデン0.1~30重量%を含む活性金属が担持された支持体である触媒であってもよい。ただし、これは具体的な一例として説明したものにすぎず、本開示はこれに限定して解釈されるものではない。
【0052】
また、本開示は、(S1)廃プラスチック熱分解油を水素化処理触媒下で第1温度で水素ガスで水素化処理し、塩素が除去された流体を生成するステップと、(S2)前記流体を水素化処理触媒下で第1温度よりも高い第2温度で水素ガスで水素化処理し、不純物が除去された精製油を生成するステップと、(S3)前記不純物が除去された精製油を回収するステップと、を含み、前記精製油を回収する前まで、温度を290℃以上350℃未満に維持(maintaining)する、廃プラスチック熱分解油の精製方法を提供する。
【0053】
前記廃プラスチック熱分解油は、廃プラスチックを熱分解して生成された炭化水素オイル混合物であってもよく、この際、廃プラスチックは、廃合成樹脂、廃合成繊維、廃合成ゴム、廃ビニルなどの合成高分子化合物に関連する固相または液相のゴミを含んでもよい。
【0054】
前記炭化水素オイル混合物は、炭化水素オイルの他に、塩素化合物、窒素化合物、金属化合物などの不純物を含んでもよく、炭化水素中に塩素、窒素、または金属が結合した化合物形態の不純物を含んでもよく、オレフィン形態の炭化水素を含んでもよい。具体的に、廃プラスチック熱分解油は、窒素300ppm以上、塩素30ppm以上を含有してもよく、オレフィン(Olefin)20体積%(1atm、25℃基準)以上、共役ジオレフィン(Conjugated diolefin)1体積%(1atm、25℃基準)以上、水分0.1~1重量%以上を含有してもよい。ただし、前記不純物含量は、廃プラスチック熱分解油に含まれてもよい具体的な例示にすぎず、廃プラスチック熱分解油の組成はこれに限定されない。
【0055】
本開示の一実施形態において、前記廃プラスチック熱分解油は、沸点180℃以上、C10以上の中巨大炭化水素オイルを30重量%以上含んでもよい。具体的に、前記廃プラスチック熱分解油は、沸点180℃以上、C10以上の直鎖状パラフィンおよびα-メチルパラフィンを含む炭化水素オイルを30重量%以上含んでもよく、C10以下のナフサを含む炭化水素オイルを30重量%以下含んでもよい。前述した炭化水素オイル組成を満たす廃プラスチック熱分解油を原料として用いる場合、オリゴマー化またはクラッキング(cracking)などの付加的な工程なしに水素化処理だけで精製工程を行うことができ、精製工程前/後の反応物と生成物との間の分子量分布の差がほぼなしに不純物を除去できるという効果がある。
【0056】
前記(S1)廃プラスチック熱分解油を水素化処理触媒下で第1温度で水素ガスで水素化処理し、塩素が除去された流体を生成するステップと、(S2)前記流体を水素化処理触媒下で第1温度よりも高い第2温度で水素ガスで水素化処理し、不純物が除去された精製油を生成するステップと、を含むことができる。
【0057】
前記(S1)および(S2)の水素化処理時に除去される各成分の種類は、反応温度に応じて決められることができる。前記(S1)の水素化処理は、第1温度で行われることで塩素が除去され、前記(S2)の水素化処理は、第1温度よりも高い第2温度で行われることで窒素を含む不純物が除去されることができる。
【0058】
前記(S1)ステップおよび(S2)ステップの水素化処理が連続的に行われるが、(S1)ステップで塩素が先に除去された後、(S2)ステップで窒素を含む不純物が除去されるようにすることで、反応器内のアンモニウム塩(NH4Cl)の生成および蓄積を最小化することができる。
【0059】
本開示の一実施形態において、前記第1温度は、100℃超過300℃未満であり、前記第2温度は、300℃超過450℃未満であってもよい。
前述した第1温度の範囲で水素化処理される場合、塩素が集中的に除去されることができ、前記第1温度は120~250℃、より具体的には150~230℃であってもよい。
【0060】
前述した第2温度の範囲で水素化処理される場合、窒素を含む不純物を除去することができ、また、生成された精製油中の水分含量を最小化し、工程中の腐食を防止し、触媒の不活性化を防止することができる。300℃以下である場合、廃プラスチック熱分解油中の水分を効果的に除去することができず、工程中に腐食を引き起こし、前記水分は、触媒の耐久性に影響を与え、触媒の活性を低下させるという問題がある。450℃以上である場合、Thermal cracking副反応が発生し、cokingなどの触媒の不活性化を引き起こすという問題が発生し得る。前記第2温度が具体的には350~420℃、より具体的には370~400℃である場合、工程中の腐食問題の解決、触媒の活性を維持できる点で好ましい。
【0061】
前記第1温度と第2温度の差は50~350℃、具体的には50~280℃、より具体的には50~200℃であってもよいが、これは例示にすぎず、第1温度と第2温度の差はこれに限定されない。
【0062】
前記(S2)ステップの不純物が除去された精製油中の水分含量は、100ppm未満であってもよい。前述したように、(S2)ステップの反応温度を300℃超過450℃未満にして廃プラスチック熱分解油中の水分を効果的に除去することで、水分含量が100ppm未満の精製油を得ることができる。具体的には80ppm未満であってもよく、より具体的には60ppm未満であってもよい。
【0063】
具体的に、前記(S1)ステップの水素化処理は、第1温度で行われ、廃プラスチック熱分解油から塩素が除去され、一部のオレフィンと金属不純物もともに除去されることができる。具体的に、水素化処理触媒下で廃プラスチック熱分解油の水素添加反応が起こり、廃プラスチック熱分解油からほとんどの塩素が除去され、塩化水素が生成される。さらに、廃プラスチック熱分解油からオレフィンの一部が除去され、その他の金属不純物が除去される。このようにその他の不純物の除去、および脱塩素化されたオイル、塩化水素、および未反応水素を含む流体が生成される。
【0064】
前記(S2)ステップの水素化処理は、第2温度で行われ、前記流体から不純物が除去された精製油を生成することができる。前記流体中の塩化水素、未反応の水素ガスとともに、窒素、酸素、硫黄などを含む不純物が全て除去されることができ、この過程で塩化水素、アンモニア、水蒸気、硫化水素などを含む混合ガスが生成されることができる。
【0065】
前記(S3)不純物が除去された精製油を回収するステップは、前記(S2)の混合ガスを排出して除去し、前記精製油を混合ガスから気液分離して回収することができる。前記精製油を回収する前まで、温度を290℃以上350℃未満に維持(maintaining)することができる。前記温度を290℃以上に維持(maintaining)することで、精製油中に存在する残量の不純物からアンモニウム塩(NH4Cl)が生成されるのを防止することができ、水分含量が最小化された高品質の精製油を回収することができる。精製油を回収する前までの温度が290℃以下に下がる場合、水分が凝縮されるか、またはアンモニウム塩(NH4Cl)の生成による差圧の発生可能性があり、温度が350℃以上である場合、Thermal cracking副反応の発生による触媒の不活性化の可能性がある。
【0066】
本開示の一実施形態において、前記(S1)ステップおよび(S2)ステップの水素化処理時の反応圧力は、60bar超過120bar未満であってもよい。60bar以下の低い圧力条件では塩素および窒素を含む不純物を効果的に除去できないという問題があり、120bar以上の高い圧力条件ではアンモニウム塩(NH4Cl)の生成が促進されるという問題がある。具体的には65bar~110barであってもよく、より具体的には70bar~100barであってもよい。
【0067】
本開示の一実施形態において、前記(S1)ステップおよび(S2)ステップの水素化処理時の液体の時間当たりの空間速度(LHSV)の比が1:0.1~1:0.8であってもよい。それを満たす場合、(S1)ステップおよび(S2)ステップの水素化処理により効果的に不純物を除去することができ、水素化処理触媒の活性を高活性に長期間維持することができ、工程効率が向上するという効果がある。
【0068】
前記廃プラスチック熱分解油の精製方法において、さらに説明していない事項は、前述した廃プラスチック熱分解油の精製装置に記載された内容を参照すればよい。
【0069】
前記廃プラスチック熱分解油の精製装置または精製方法により得られる精製油は、不純物含量が極めて低く、例えば、塩素10ppm(重量)以下、窒素30ppm(重量)以下、硫黄10ppm(重量)以下、その他の金属成分10ppm(重量)以下、酸素0.1重量%以下、オレフィン10体積%以下、共役ジオレフィン(Conjugated diolefin)0.2体積%以下であってもよい。ただし、これは具体的な一例として説明したものにすぎず、これに限定して解釈されるものではない。
【0070】
本発明の一実施形態に係る廃プラスチックの精製装置または方法により得られる精製油は、様々な流動点を有してもよく、例えば、流動点が0℃以上と常温で固体であるワックスであってもよい。
【0071】
以下、実施例により詳しく説明するが、これらは本開示をより詳細に説明するためのものであり、本開示の権利範囲が下記の実施例により限定されるものではない。
【0072】
〔実施例1〕
図1に示すように、ガードベッド100、メインベッド200、および回収タンク300が直列に連結された装置を設計し、前記メインベッド200と回収タンク300との間に電気ヒータ250を設けた。前記装置を運転し、廃プラスチック熱分解油から不純物が除去された精製油を得た。
【0073】
原料として用いられた廃プラスチック熱分解油は、窒素(N)1,000ppm、塩素(Cl)700ppm、オレフィン(Olefin)18重量%以上、共役ジオレフィン(Conjugated diolefin)2.3重量%、水分1重量%の高濃度不純物を含有する炭化水素オイル混合物である。前記炭化水素オイル混合物には、ナフサ(bp<180℃、~C8)20重量%が含まれ、KERO 28重量%、LGO 16重量%、VGO 36重量%が含まれていることをSimdsit分析により確認し、全オレフィンは、Br Index分析により全オイルのうち40%を含むことを確認した。
【0074】
水素化処理触媒は、次の手順で前処理して触媒を活性化した。2.5重量%DMDS(dimethyl disulfide)が含まれたR-LGO留分をH2 60bar、170℃の条件で2時間処理した後、320℃まで温度を昇温した後、3時間維持して触媒を活性化した。
【0075】
具体的に、ガードベッド100の内部に水素化処理触媒であるNiMo/r-Al2O3、CoMo/r-Al2O3が設けられ、前記ガードベッド100の内部に廃プラスチック熱分解油と水素ガスがそれぞれ流入し、250℃、80bar、H2/Oil ratio 840、およびLHSV 0.4h-1の条件で水素化処理し、前記廃プラスチック熱分解油から塩素成分が除去され、副生成物として塩化水素が生成された。さらに、前記反応により廃プラスチック熱分解油から塩素成分の他に、オレフィンと金属不純物などがともに除去された。
【0076】
前記ガードベッド100内で塩素成分が除去された廃プラスチック熱分解油、塩化水素、および未反応水素ガスを含む流体は、メインベッド200に流入した。
【0077】
前記メインベッド200の内部に前記水素化処理触媒と同様のものが設けられ、前記メインベッド200の内部に流体および水素ガスがそれぞれ流入して、370℃、85bar、H2/Oil ratio 840、およびLHSV 0.7h-1の条件で水素化処理し、前記流体から窒素成分が除去され、副生成物としてアンモニアが生成された。さらに、窒素成分の他に、除去されていない微量の塩素成分、硫黄成分、酸素成分などのその他の残りの不純物がともに除去された。
【0078】
そして、前記メインベッド200の内部に存在するアンモニア、除去されていない微量の塩化水素、水、硫化水素、水素などを含む混合ガスは、前記メインベッド100のガス排出口を介して排出され、不純物が除去された精製油は、前記メインベッド200のオイル排出口を介して回収タンク300に回収された。メインベッド200から回収タンク300に回収される経路の温度は、電気ヒータ250により330℃に維持(maintaining)された。
【0079】
〔実施例2〕
実施例1において、ガードベッド100を160℃、85bar、メインベッド200を360℃、90barの条件で運転したことを除いては、実施例1と同様の方法で精製油を得た。
【0080】
〔実施例3〕
実施例1において、メインベッド200から回収タンク300に回収される経路の温度を300℃に維持したことを除いては、実施例1と同様の方法で精製油を得た。
【0081】
〔比較例1〕
実施例1において、ガードベッドの反応条件をメインベッドと同様にしたことを除いては、実施例1と同様の方法で精製油を得た。
【0082】
〔比較例2〕
実施例1において、前記メインベッド200と回収タンク300との間に電気ヒータ250を設けていないことを除いては、実施例1と同様の方法で精製油を得た。
【0083】
〔比較例3〕
実施例1において、前記ガード100とメインベッド200との間に洗浄タンクを設けて水処理するステップを行ったことを除いては、実施例1と同様の方法で精製油を得た。
【0084】
[評価例]
塩素(Cl)含量(ppm)および窒素(N)含量(ppm)は、ICP、XRF分析法により測定して示した。
【0085】
精製油を持続的に生産しつつ、圧力降下の問題なしに運転可能な時間を測定してアンモニウム塩(NH4Cl)の抑制効果を評価した。具体的に、圧力損失(delta P)が7barになるまでかかる最大運転時間を測定し、その結果を表1に示した。
【0086】
【0087】
上記表1を参照すると、実施例1~3の場合、回収された精製油中の塩素(Cl)および窒素(N)含量が数ppmレベルであり、水分含量が50ppm以下に低減された高品質の精製油を得ることができることを確認した。特に、メインベッドから回収タンクに回収される経路の温度を300℃以上にして行うことで、圧力損失前まで最大運転時間が19日と著しく向上することを確認した。
【0088】
これに対し、比較例1の場合、最大運転時間が5日と著しく短いことを確認することができ、これは、ガードベッドおよびメインベッドの両方とも370℃、85barの条件で水素化処理を行うことにより、アンモニウム塩(NH4Cl)の生成による圧力損失(delta P)が増加したことが主な原因と考えられる。
【0089】
また、比較例2の場合も、最大運転時間が5日と著しく短いことを確認することができ、これは、電気ヒータが設けられておらず、メインベッドから回収タンクに回収される経路の温度を調節できないことにより、アンモニウム塩(NH4Cl)が析出され、これにより、圧力損失(delta P)が増加したことが主な原因と考えられる。
【0090】
比較例3は、メインベッドの精製油中の水分(ppm)含量が800ppmと著しく高いことを確認することができ、これは、水処理工程を行ったことが主な原因と考えられる。前述したように、精製油中の高い水分含量は、工程全体で腐食を引き起こし、工程効率を低下させる問題を引き起こす。
【0091】
以上、実施例および比較例について説明したが、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態で製造されてもよく、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施可能であることを理解することができる。したがって、以上に記述された実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないことを理解しなければならない。
【符号の説明】
【0092】
100:ガードベッド
200:メインベッド
300:回収タンク
【国際調査報告】