(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】カメラに基づくヘモグロビン検出
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20241010BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20241010BHJP
G01N 33/72 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
G01N21/27 B
G01N33/483 C
G01N33/72 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519561
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 US2022042692
(87)【国際公開番号】W WO2023064053
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501335771
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230891
【氏名又は名称】里見 紗弥子
(72)【発明者】
【氏名】サイモン シー マシューズ
(72)【発明者】
【氏名】アミット バナジー
(72)【発明者】
【氏名】パンカジ ジャイ パリシャ
【テーマコード(参考)】
2G045
2G059
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045AA36
2G045CB04
2G045DA51
2G045FA17
2G045FA19
2G045JA07
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB08
2G059BB12
2G059BB13
2G059CC16
2G059CC18
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE11
2G059FF01
2G059HH02
2G059HH06
2G059JJ02
2G059KK04
2G059MM01
(57)【要約】
試料中の分子を検出するための方法は、第1の波長で第1のフィルタを画像に適用することを含む。本方法はまた、第2の波長で第2のフィルタを画像に適用することを含む。本方法はまた、第3の波長で第3のフィルタを画像に適用することを含む。第1、第2及び第3の波長は所定の波長範囲内にあり、第1、第2及び第3の波長は互いに異なる。本方法はまた、第1、第2および第3のフィルタが画像に適用された後に、画像中の試料中の分子のスペクトルシグネチャを検出することを含む。本方法はまた、検出されたスペクトルシグネチャに少なくとも部分的に基づいて、分子が試料中に存在するか否かを決定することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の分子を検出する方法であって、
第1の波長で第1のフィルタを画像に適用する工程と、
第2の波長で第2のフィルタを前記画像に適用する工程と、
第3の波長で第3のフィルタを前記画像に適用する工程であって、前記第1、第2及び第3の波長は所定の波長範囲内にあり、前記第1、第2及び第3の波長は互いに異なる工程と、
前記第1、第2および第3のフィルタが前記画像に適用された後に、前記画像中の前記試料中の分子のスペクトルシグネチャを検出する工程と、
検出された前記スペクトルシグネチャに少なくとも部分的に基づいて、前記分子が前記試料中に存在するか否かを決定する工程とを含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記分子はヘモグロビンを含み、前記試料は便試料を含み、前記スペクトルシグネチャが反射率対波長グラフ上の曲線のV字型部分または曲線のW字型部分を含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記分子が存在するか否かを決定する工程は、前記分子が存在すると決定する工程を含み、前記方法はさらに、
免疫化学的糞便検査(FIT)を使用して、前記ヘモグロビンが前記便試料中に存在することを確認する工程と、
前記ヘモグロビンが存在することが確認された後に、試料が採取された人に大腸内視鏡検査を実施する工程とを含む、方法。
【請求項4】
前記所定の波長範囲は450nmから690nmの間であり、前記第3の波長は前記第1および第2の波長の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記スペクトルシグネチャを検出する工程は、
前記所定の波長範囲内の前記スペクトルシグネチャに対して、連続体除去を実施するステップと、
前記連続体除去が実施された後、前記スペクトルシグネチャの吸収特性の帯域比を決定するステップであって、前記帯域比に少なくとも部分的に基づいて、前記分子が前記試料中に存在すると決定するステップとを含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記連続体除去は、線形補間を使用して実施され、前記吸収特性を維持しながら、前記スペクトルシグネチャから勾配を除去する、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、前記連続体除去を実施するステップは、
重みと前記第1の波長における前記吸収特性の値との第1の積を決定することと、
前記重みの補数と前記第2の波長における前記吸収特性の値との第2の積を決定することと、
前記第1の積と前記第2の積との和を決定することとを含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記帯域比は、前記和と前記第3の波長における吸収特性の値との比を含む、方法。
【請求項9】
請求項5に記載の方法であって、前記帯域比は、前記画像中の各画素について決定される、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記帯域比の集計に少なくとも部分的に基づいて、前記試料中に存在する前記分子の量を決定するステップをさらに含む、方法。
【請求項11】
便試料中のヘモグロビンを検出する方法であって、
カメラで前記便試料の画像を取り込む工程と、
前記画像が取り込まれる際に、第1の波長で第1の帯域透過フィルタを前記画像に適用する工程と、
前記画像が取り込まれる際に、第2の波長で第2の帯域透過フィルタを前記画像に適用する工程と、
前記画像が取り込まれる際に、第3の波長で第3の帯域透過フィルタを前記画像に適用する工程であって、前記第1、第2及び第3の波長は450nmから690nmの間であり、前記第3の波長は前記第1および第2の波長の間である、工程と、
前記第1、第2および第3の帯域透過フィルタが前記画像に適用された後に、前記画像中の前記便試料中の前記ヘモグロビンのスペクトルシグネチャを検出する工程であって、前記スペクトルシグネチャは吸収特性を含み、前記スペクトルシグネチャを検出する工程は、
線形補間を使用して、前記吸収特性を維持しながら前記スペクトルシグネチャから勾配を除去して、450nmから690nmの間の前記スペクトルシグネチャに対して連続体除去を実施するステップを含み、前記連続体除去を実施するステップは、
重みと前記第1の波長における前記吸収特性の値との第1の積を決定することと、
前記重みの補数と前記第2の波長における前記吸収特性の値との第2の積を決定することと、
前記第1の積と前記第2の積との和を決定することとを含み、
前記画像中の各画素について前記吸収特性の帯域比を決定するステップであって、前記帯域比は、前記和と前記第3の波長における吸収特性の値との比を含む、ステップを含む、工程と、
前記画像中の画素について前記帯域比を集計する工程と、
前記帯域比の集計に少なくとも部分的に基づいて、前記ヘモグロビンが前記便試料中に存在すると決定する工程とを含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記第1の波長が約639nmから約647nmであり、前記第2の波長が約623nmから約631nmであり、前記第3の波長が約628nmから約636nmである、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、前記スペクトルシグネチャが反射率対波長グラフ上の曲線のV字型部分または曲線のW字型部分を含む、方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、前記帯域比の集計に少なくとも部分的に基づいて、前記便試料中に存在する前記ヘモグロビンの量を決定する工程をさらに含む、方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法であって、前記ヘモグロビンが前記便試料中に存在すると決定された後に、免疫化学的糞便検査(FIT)を使用して、前記ヘモグロビンが前記便試料中に存在することを確認する工程をさらに含む、方法。
【請求項16】
試料中の分子を検出するためのシステムであって、
前記試料の画像を取り込むように構成されたカメラと、
コンピューティングシステムであって、
第1、第2および第3のフィルタが前記画像に適用された後に、前記画像中の前記試料中の分子のスペクトルシグネチャを検出し、
検出された前記スペクトルシグネチャに少なくとも部分的に基づいて、前記分子が前記試料中に存在するか否かを決定するように構成された、コンピューティングシステムとを含む、システム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムであって、前記第1、第2および第3のフィルタは、前記画像が取り込まれる前に前記カメラのレンズに適用され、前記第3のフィルタの波長は、前記第1および第2のフィルタの波長の間である、システム。
【請求項18】
請求項16に記載のシステムであって、前記第1、第2及び第3のフィルタは、前記画像が取り込まれた後に前記コンピューティングシステムによって適用され、前記第3のフィルタの波長は、前記第1及び第2のフィルタの波長の間である、システム。
【請求項19】
請求項16に記載のシステムであって、前記スペクトルシグネチャを検出することは、
所定の波長範囲内の前記スペクトルシグネチャに対して連続体除去を実施することと、
前記連続体除去が実施された後に、前記スペクトルシグネチャの吸収特性の帯域比を決定することであって、前記分子が、少なくとも部分的に前記帯域比に基づいて、前記試料中に存在すると決定されることとを含む、システム。
【請求項20】
請求項16に記載のシステムであって、前記分子はヘモグロビンを含み、前記試料は便試料を含み、前記コンピューティングシステムが、前記ヘモグロビンが前記便試料中に存在すると決定した後に、前記ヘモグロビンが前記便試料中に存在することを確認するように構成された免疫化学的糞便検査(FIT)をさらに含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、試料中の分子を検出するためのシステムおよび方法に関する。より具体的には、本開示は、カメラに基づく(例えば、スペクトルに基づく)便試料中のヘモグロビン検出のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大腸内視鏡検査は、大腸癌のスクリーニング、又は大腸及び直腸内の他の異常の検出に一般的に使用される内視鏡的処置である。大腸内視鏡検査では、長くて柔軟なチューブ(すなわち、大腸内視鏡)が直腸に挿入される。チューブの先端に小さなビデオカメラがついており、医師は結腸全体の内部を観察することができる。必要であれば、大腸内視鏡検査中に、ポリープ又は他の種類の異常な組織を、スコープを通して切除することも可能である。また、大腸内視鏡検査中に組織試料(例えば、生検)を採取することも可能である。しかし、簡便かつ非侵襲的な大腸がんのスクリーニングの代替となるシステム及び方法があれば便利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示の一態様によれば、試料中の分子を検出するための方法が開示される。本方法は、第1の波長で第1のフィルタを画像に適用することを含む。本方法はまた、第2の波長で第2のフィルタを画像に適用することを含む。本方法はまた、第3の波長で第3のフィルタを画像に適用することを含む。第1、第2及び第3の波長は所定の波長範囲内にあり、第1、第2及び第3の波長は互いに異なる。本方法はまた、第1、第2および第3のフィルタが画像に適用された後に、画像中の試料中の分子のスペクトルシグネチャを検出することを含む。本方法はまた、検出されたスペクトルシグネチャに少なくとも部分的に基づいて、分子が試料中に存在するか否かを決定することを含む。
【0004】
便試料中のヘモグロビンを検出するための方法もまた開示される。本方法は、カメラで便試料の画像を取り込むことを含む。本方法はまた、画像が取り込まれる際に、第1の波長で第1の帯域透過フィルタを画像に適用することを含む。本方法はまた、画像が取り込まれる際に、第2の波長で第2の帯域透過フィルタを画像に適用することを含む。本方法はまた、画像が取り込まれる際に、第3の波長で第3の帯域透過フィルタを画像に適用することも含む。第1、第2、及び第3の波長は450nmから690nmの間である。第3の波長は、第1の波長と第2の波長との間である。本方法はまた、第1、第2および第3の帯域透過フィルタが画像に適用された後に、画像中の便試料中のヘモグロビンのスペクトルシグネチャを検出することを含む。スペクトルシグネチャは吸収特性を含む。スペクトルシグネチャを検出することは、線形補間を使用して、吸収特性を維持しながらスペクトルシグネチャから勾配を除去して、450nmから690nmの間のスペクトルシグネチャに対して連続体除去を実施することを含む。連続体除去を実施することは、重みと第1の波長における吸収特性の値との第1の積を決定することと、重みの補数と第2の波長における吸収特性の値との第2の積を決定することと、第1の積と第2の積との和を決定することとを含む。スペクトルシグネチャを検出することはまた、画像中の各画素について吸収特性の帯域比を決定することを含む。帯域比は、前記和と第3の波長における吸収特性の値との比を含む。本方法はまた、画像中の画素について帯域比を集計することを含む。本方法はまた、帯域比の集計に少なくとも部分的に基づいて、ヘモグロビンが便試料中に存在すると決定することを含む。
【0005】
試料中の分子を検出するためのシステムも開示される。本システムは、試料の画像を取り込むように構成されたカメラを含む。システムはまた、コンピューティングシステムを含む。コンピューティングシステムは、第1、第2、および第3のフィルタが画像に適用された後に、画像中の試料中の分子のスペクトルシグネチャを検出するように構成される。コンピューティングシステムはまた、検出されたスペクトルシグネチャに少なくとも部分的に基づいて、分子が試料中に存在するか否かを決定するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態による、試料中の分子を同定するためのシステムの概略図である。
【
図2】
図2Aは、一実施形態による、ヘモグロビンを含む便の試料の画像を示す図である。
図2Bは、一実施形態による、便のみ(すなわち、ヘモグロビンを含まない)の試料の画像を示す図である。
【
図3】一実施形態による、ヘモグロビンを含む便の試料対便のみの試料を示すグラフである。
【
図4】一実施形態による、便中のヘモグロビン濃度の増加に伴う、ヘモグロビン検出における用量応答を示すグラフである。
【
図5】一実施形態による、複数の異なる濃度におけるヘモグロビンの反射率対波長を示すグラフである。
【
図6】一実施形態による、画像中のスペクトルシグネチャの検出を示すグラフである。
【
図7】一実施形態による、試料中の分子を検出するための方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、現在開示されている主題を、本開示の全ての実施形態ではないが、いくつかの実施形態が示された添付図面を参照して、より完全に以下に説明する。同一の番号は、全体を通して同一の要素を指す。現在開示されている主題は、多くの異なる形態で具体化され得るものであり、本明細書に記載されている実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用される法的要件を満たすように提供される。実際、前述の説明および関連する図面に提示された教示の利益を有する、本開示の主題が関係する分野の当業者には、本明細書に記載された本開示の主題の多くの変形および他の実施形態が思い浮かぶであろう。したがって、本開示された主題は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、変形および他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。
【0008】
図1は、一実施形態による、試料中の分子を同定するためのシステム100の概略図である。分子は、ヘモグロビン、ビリルビン、カルプロテクチン、アルブミン、脂肪酸、硫化水素などであってもよく、又はそれらを含んでもよい。試料は、便、尿、唾液、別の生物学的検体、もしくはそれらの組み合わせであってもよく、又はそれらを含んでもよい。
図2Aは、一実施形態による、ヘモグロビンを含む便の試料210Aの画像200Aを示し、
図2Bは、一実施形態による、便のみ(すなわち、ヘモグロビンを含まない)の試料210Bの画像200Bを示す。
【0009】
システム100は、カメラ110、コンピューティングシステム120、および検査デバイス130を含んでもよい。一実施形態においては、カメラ110、コンピューティングシステム120、検査デバイス130、またはそれらの組み合わせは、単一のデバイス中に併設されてもよい。例えば、システム100の少なくとも一部は、スマートフォン、タブレット、ラップトップなどを含むか、その一部であるか、またはそれらに接続してもよい。カメラ110は、その中に分子を有していても有していなくてもよい試料(例えば、試料210A、210B)の1つまたは複数の画像(例えば、画像200A、200B)を取り込むように構成されていてもよい。画像200A、200Bの取り込みの一部として、1つまたは複数のフィルタ(例えば、112、114、116の3つが示されている)を適用してもよい。一実施形態においては、フィルタ112、114、116は、カメラ110のレンズに適用されてもよい。例えば、フィルタ112、114、116は、カメラ110のレンズを覆う薄膜フィルタであってもよいし、薄膜フィルタを含んでもよい。膜フィルタは、単一の試料について3つの画像(各フィルタごとに1つの画像)が取り込まれるように、手動で変更されてもよい。別の実施形態においては、フィルタ112、114、116は、カメラ110のCCD焦点面に(例えば、直接)組み込まれていてもよい。さらに別の実施形態においては、ベイヤーパターンフィルタアレイが使用されてもよい。さらに別の実施形態では、フィルタ112、114、116は、コンピューティングシステム120によって画像200A、200Bに適用されてもよい。
【0010】
コンピューティングシステム120は、画像200A、200Bを解析して、試料(例えば、便)中の分子(例えば、ヘモグロビン)の存在および/または量を検出するように構成されてもよい。より具体的には、コンピューティングシステム120は、分子を含む試料と分子を含まない試料とを区別するために、分子に固有のスペクトルシグネチャを検出するように構成されてもよい。
図3は、一実施形態による、ヘモグロビンを含む便の試料210A対便のみの試料210Bを示すグラフである。一例においては、試料中の分子の量が増加するにつれて、分子の検出可能性もまた用量応答的に増加する。これは、一実施形態による、便中のヘモグロビン濃度の増加に伴う、ヘモグロビン検出における用量応答を示すグラフである、
図4に示されている。より具体的には、特定の波長特徴の比、及び複数の種類の計算にわたるこれらの結果値の定量的比較は、ヘモグロビンを含む試料を含まない試料から識別するのに役立ち得る。
【0011】
検査デバイス130は、免疫化学的糞便検査(FIT)デバイス又は他の診断検査/情報であってもよく、又は含んでいてもよい。検査デバイス130が試料(例えば、便)中の分子(例えば、ヘモグロビン)を検査するのは、カメラ110及びコンピューティングシステム120が試料中の分子の存在及び/又は量を検出しようとする前、同時、又は後であってもよい。例えば、検査デバイス130は、コンピューティングシステム120に接続し、カメラ110およびコンピューティングシステム120が画像に基づく検出を実施した後に、分子に対する二次検査システムとして機能するように構成され得る。
【0012】
図5は、一実施形態による、複数の異なる濃度におけるヘモグロビンの反射率対波長を示すグラフである。各ヘモグロビン曲線は、様々な種類の試料においてその存在を検出するために使用され得る1つまたは複数のスペクトルシグネチャ(例えば、フィンガープリントとも称される)510を有し得る。スペクトルシグネチャ510は、文字V(V特徴とも称される)および/または文字W(W特徴とも称される)に似ている場合がある。スペクトルシグネチャ510は、所定の波長範囲内に存在し得る。所定の波長範囲は、約450nm~約690nm、約575nm~約625nm、または約600nm~約650nmであり得る。
【0013】
以下でさらに詳細に説明するように、コンピューティングシステム120は、分子(例えば、ヘモグロビン)のスペクトルシグネチャ510の存在を検出するための、画像200A、200Bに対するスペクトル処理アルゴリズムを実装していてもよい。これを達成するために、アルゴリズムは、スペクトル連続体除去および/または帯域比解析を利用してもよい。連続体除去は、線形補間を使用して、1つまたは複数のスペクトル吸収特性520A、520Bを維持しながら、スペクトルシグネチャ510の勾配を除去してもよい。本明細書において、スペクトル吸収特性とは、スペクトル曲線の形状の変化を指す。連続体除去は、所定の波長範囲内で実施されてもよい。
【0014】
連続体除去が実施された後、次に、吸収特性520A、520Bの1つまたは複数について帯域比を決定して、吸収特性520A、520Bの比を測定してもよく、これは、試料中に存在する吸収特性520A、520Bに関連する化学物質の量を示唆する。一実施形態において、点520Bの反射率値が分子を表し得、点520Aの反射率値が分母となり得る。比(例えば、分子/分母)は、正である(すなわち、ヘモグロビンが存在する)とき1以上であり得る。
【0015】
図6は、一実施形態による、画像中のスペクトルシグネチャの検出を示すグラフである。線610は、測定されたスペクトル(例えば、スペクトルシグネチャ510から)を表す。補間を使用して、測定されたスペクトル610の連続体(例えば、全体的な形状)の尺度であるスペクトル620を決定することができる。
【0016】
曲線630は、スペクトル620をスペクトル610で割ることによって決定され得る。これは、連続体除去と称され、測定されたスペクトル610の全体形状を効果的に除去し、スペクトル特徴(例えば、スペクトル吸収特性520A、520B)を保持(例えば、増強)する。連続体除去されたスペクトル630から、破線の垂直線640に沿って示されるように、帯域比を使用してスペクトル深度を決定することができる。
【0017】
図7は、一実施形態による、試料中の分子を検出するための方法700のフローチャートを示す。方法700の例示的な順序を以下に示すが、方法700の1つまたは複数のステップは、異なる順序で実施されてもよく、組み合わされてもよく、サブステップに分割されてもよく、繰り返されてもよく、または省略されてもよい。方法700の1つまたは複数のステップは、システム100によって実施されてもよい。
【0018】
方法700は、702のように、試料の1つまたは複数の画像を取り込むことを含んでもよい。例えば、これは、試料210Aを含む画像200Aを取り込むことを含んでもよい。画像200Aは、カメラ110で取り込まれ得る。
【0019】
方法700はまた、704のように、1つまたは複数のフィルタ112、114、116を画像200Aに適用することも含み得る。上述したように、フィルタ112、114、116は、カメラ110に、および/またはコンピューティングシステム120によって適用されてもよい。フィルタ112、114、116は、所定の波長範囲を透過させるように構成された帯域透過フィルタであってもよいし、該帯域透過フィルタを含んでもよい。上述したように、ヘモグロビンの場合、所定の波長範囲は、約450nm~約690nm、約575nm~約625nm、又は約600nm~約650nmであってよい。
【0020】
フィルタ112、114、116はそれぞれ、異なる波長を透過させるように構成されてもよい。第1のフィルタ112は第1の波長を透過させるように構成され、第2のフィルタ114は第2の波長を透過させるように構成され、第3のフィルタ116は第3の波長を透過させるように構成されてもよい。第3の波長は、第1の波長と第2の波長との間であってもよい。一例では、第1の波長は約639nm~約647nmであってもよく、第2の波長は約623nm~約631nmであってもよく、第3の波長は約628nm~約636nmであってもよい。別の例では、第1の波長は約643nmであってよく、第2の波長は約627nmであってよく、第3の波長は約632nmであってよい。
【0021】
方法700はまた、706のように、画像200A中のスペクトルシグネチャ510を検出することも含み得る。スペクトルシグネチャ510(例えば、V字形状及び/又はW字形状)は、コンピューティングシステム120によって検出されてもよい。スペクトルシグネチャ510は、フィルタ112、114、116が画像200Aに適用された後に検出されてもよい。スペクトルシグネチャ510は、検出される分子(例えば、ヘモグロビン)に固有であってもよい。上述したように、スペクトルシグネチャ510は、1つまたは複数の吸収特性520A、520Bを含み得る。
【0022】
一実施形態において、スペクトルシグネチャ510を検出することは、708のように、スペクトルシグネチャ510に対して連続体除去を実施することを含み得る。連続体除去は、所定の波長範囲内で実施されてもよい。連続体除去は、線形補間を使用して実施して、吸収特性(例えば、吸収特性520A)を維持しながら、スペクトルシグネチャ510から勾配を除去してもよい。一例では、連続体除去の実施は以下を含み得る:
w*r(λ1)+(1-w)*r(λ2)・・・式1
ここで、wは重み値を表し、r(λ1)は第1の波長における吸収特性520Aのスペクトルの値を表し、r(λ2)は第2の波長における吸収特性520Aのスペクトルの値を表す。重み値wは、検出される特定の分子に固有であってもよい。例えば、重み値wは、ヘモグロビンに対して0.5156であり得る。
【0023】
換言すれば、連続体除去を実施することは、重みと第1の波長における吸収特性520Aのスペクトルの値との第1の積を決定することと、重みの補数と第2の波長における吸収特性520Aのスペクトルの値との第2の積を決定することと、第1の積と第2の積との和を決定することとを含み得る。
【0024】
スペクトルシグネチャ510を検出することはまた、あるいは代わりに、610のように、スペクトルシグネチャ510中の吸収特性520Aの帯域比を決定することを含み得る。帯域比は、連続体除去が実施された後に決定されてもよい。一例では、帯域比は以下を含み得る:
帯域比=(w*r(λ1)+(1-w)*r(λ2))/r(λ3)・・・式2
ここで、r(λ3)は、第3の波長における吸収特性520Aのスペクトルの値を表す。換言すれば、帯域比の分子は、(式1からの)和を含み得、帯域比の分母は、第3の波長における吸収特性520Aのスペクトルの値を含み得る。
【0025】
一実施形態において、画像200Aは複数の画素を含んでもよく、スペクトルシグネチャ510は、1つまたは複数の画素について検出されてもよい(例えば、帯域比が決定されてもよい)。例えば、スペクトルシグネチャ510は、画像200A中の全ての画素について検出されてもよい(例えば、帯域比が決定されてもよい)。
【0026】
方法700はまた、712のように、画像200A中の画素について帯域比を集計することも含み得る。帯域比を集計するために、1つまたは複数の技法を使用することができる。例えば、1つの技法は、特定の閾値を超える値の数を集計またはカウントすることを含み、別の技法は、特定の空間領域にわたる値を集計またはカウントすることを含む。一実施形態においては、試料中の分子の濃度が所定の濃度閾値未満である場合に一方の技法を使用してもよく、試料中の分子の濃度が所定の濃度閾値を超える場合に他方の技法を使用してもよい。別の実施形態においては、複数の技術を組み合わせて複合体を作成してもよい。
【0027】
方法700はまた、714のように、分子(例えば、ヘモグロビン)が試料210A中に存在することを決定することも含み得る。分子が存在するという決定は、スペクトルシグネチャ510の検出、帯域比の決定、帯域比の集計、またはそれらの組み合わせに、少なくとも部分的に基づいていてもよい。方法700は、試料210A(例えば、便+ヘモグロビン)1グラム中の、所定の質量の分子(例えば、ヘモグロビン)を検出することが可能であり得る。所定の質量は、約5マイクログラム~約10マイクログラム、または約10マイクログラム~約20マイクログラムであってよく、これは、米国において従来のFIT検査で使用される閾値(すなわち、20マイクログラムのヘモグロビン/グラム便)以下である。
【0028】
方法700はまた、716のように、試料210A中に存在する分子の量を決定することも含み得る。存在する分子の量の決定は、スペクトルシグネチャ510の検出、帯域比の決定、帯域比の集計、他の数学的アプローチ、またはそれらの組み合わせに、少なくとも部分的に基づいていてもよい。別の実施形態においては、存在する分子の量の決定は、試料の画素からの帯域比スコアの関数であってもよい。「関数」の使用は、帯域比スコアを入力とし、試料に割り当てられる数値を生成する、任意のアルゴリズムを表すことができる。
【0029】
方法700はまた、718のように、検査デバイス130を使用して試料210A中に分子(例えば、ヘモグロビン)が存在することを確認することも含み得る。これはまた、あるいは代わりに、検査デバイス130を使用して試料210A中に存在する分子の量を決定することを含んでもよい。このステップは、ステップ702~716のうちの1つまたは複数のステップの前、同時に、または後に生じてもよい。例えば、このステップは、ステップ714および/またはステップ716における、画像に基づく決定に応じて生じてもよい。
【0030】
別の実施形態においては、検査デバイス130(例えば、FIT検査)を使用する代わりに、又はそれに加えて、患者について追加の診断情報を取得してもよい。例えば、患者の病歴又は検査データを使用して、スペクトル及びFIT単独を超える複数のリスク変数を含む、複合スコアを生成してもよい。
【0031】
方法700はまた、720のように、大腸内視鏡検査を実施することも含み得る。大腸内視鏡検査は、分子が存在するという決定(714における)、存在する分子の量の決定(716における)、分子が存在するという決定(718における)、またはそれらの組み合わせに、少なくとも部分的に応じて実施され得る。
【0032】
本開示は、その好ましい実施形態に関連して説明されているが、当業者には、添付の特許請求の範囲に定義される本開示の精神および範囲から逸脱することなく、具体的に説明されていない追加、削除、変形、および置換が行われ得ることが理解されるであろう。
【国際調査報告】