(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】剛性のある非可撓性繊維強化断熱複合材
(51)【国際特許分類】
C04B 32/00 20060101AFI20241010BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20241010BHJP
C04B 30/02 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C04B32/00 A
F16L59/02
C04B30/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519945
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 IB2022059886
(87)【国際公開番号】W WO2023062605
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506229844
【氏名又は名称】アスペン エアロゲルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス エー.ザフィロポーロス
(72)【発明者】
【氏名】キャスリン イー.デクラフト
(72)【発明者】
【氏名】ウェンティン トン
【テーマコード(参考)】
3H036
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB13
3H036AB18
3H036AC06
(57)【要約】
本開示は、繊維材料が埋め込まれて強化された金属酸化物マトリックスを含む非可撓性複合断熱材に関する。具体的には、本開示は、熱電池などのための非可撓性複合断熱材の使用に関する。本明細書で提供される低熱伝導率の非可撓性複合断熱材は、熱電池設計の機械的要件を満たすことが可能であるが、さらに市販の断熱材と比較して改良された取り扱い性を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非可撓性複合断熱材であって、金属酸化物マトリックス、不透明化化合物、及び任意にポリマー結合剤を含む繊維材料を含み、前記非可撓性複合断熱材が、前記繊維材料で強化されており、前記非可撓性複合断熱材が、約0.20g/ccを超える密度及び約10,000psiを超える曲げ弾性率を有する、前記非可撓性複合断熱材。
【請求項2】
非可撓性複合断熱材であって、繊維材料が埋め込まれて強化された金属酸化物マトリックスを含み、前記繊維材料が、任意に、ポリマー結合剤を含み、不透明化化合物が、前記金属酸化物マトリックス全体に分散されており、前記非可撓性複合断熱材が、約0.20g/ccを超える密度を有し、前記不透明化化合物が、前記複合断熱材内の金属酸化物含有量に対して約40重量%を超えて存在する、前記非可撓性複合断熱材。
【請求項3】
前記繊維材料のほぼ全部または一部が、前記金属酸化物マトリックスの厚さ方向に対して垂直に整列している、請求項2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項4】
前記金属酸化物が、シリカ、アルミナ、チタニア、セリア、イットリア、バナジア、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項5】
前記金属酸化物マトリックスが、シリカを含む、請求項4に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項6】
前記金属酸化物が、圧縮エアロゲルマトリックスである、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項7】
前記不透明化化合物が、B4C、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、Ag
2O、Bi
2O
3、TiC、WC、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄チタン、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(I)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、酸化鉄チタン(イルメナイト)、酸化クロム、炭化ケイ素、またはそれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項8】
前記不透明化化合物が、炭化ケイ素である、請求項7に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項9】
前記繊維層が、有機ポリマー系繊維、無機繊維、炭素系繊維、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項10】
前記無機繊維が、ガラス繊維、岩石繊維、金属繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、バサルト繊維、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項9に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項11】
前記無機繊維が、ガラス繊維を含む、請求項10に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項12】
前記ガラス繊維が、シリカ系ガラス繊維である、請求項11に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項13】
前記繊維層が、短繊維、織物材料、不織材料、マット、フェルト、中綿、ロフティ中綿、チョップドファイバー、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項14】
前記ポリマー結合剤が、ポリビニルアルコールを含む、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項15】
10mm未満の平均厚さ及び10%未満の厚さのばらつきを有する、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項16】
600℃で約60mW/m・K以下の熱伝導率を有する、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項17】
約0.20g/cc~約1.0g/ccの範囲の密度を有する、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項18】
約10,000psi~約100,000psiの範囲の曲げ弾性率を有する、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項19】
前記複合材が、有機部分を実質的に欠いている、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項20】
前記複合材が、機械的に圧縮された材料である、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項21】
前記不透明化化合物が、前記複合断熱材内の金属酸化物含有量に対して約40重量%~約60重量%の範囲で存在する、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項22】
先行請求項のいずれか1項に記載の非可撓性複合断熱材を含む、熱電池。
【請求項23】
熱電池の性能を改善する方法であって、先行請求項のいずれか1項に記載の非可撓性複合断熱材を前記熱電池に組み込むことを含む、前記方法。
【請求項24】
非可撓性複合断熱材を調製する方法であって、
a.金属酸化物マトリックス、不透明化化合物、及び任意にポリマー結合剤を含む繊維材料を含む、強化エアロゲル複合材を提供すること、
b.低酸素雰囲気または空気雰囲気中で前記エアロゲル複合材を熱処理に暴露することであって、前記熱処理は、500℃~700℃の間の1つ以上の温度に暴露することを含む、前記暴露すること;ならびに
c.前記繊維材料の主方向に対して垂直な方向に前記エアロゲル複合材を機械的に圧縮し、それにより、前記非可撓性複合断熱材を調製すること
を含む、前記方法。
【請求項25】
前記非可撓性複合断熱材の密度が、前記強化エアロゲル複合材の密度よりも約5~100倍高い、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
600℃における前記非可撓性複合断熱材の前記熱伝導率が、実質的に同じ組成を有する非圧縮強化エアロゲル複合材と比較して実質的に変化しない、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記熱処理の合計時間が、1分~120分である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記エアロゲル複合材が、体積の80%未満で圧縮される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記エアロゲル複合材が、約500psi~約10,000psiの圧力下で圧縮される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記金属酸化物マトリックスが、シリカを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記金属酸化物マトリックスが、圧縮エアロゲルマトリックスである、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記不透明化化合物が、前記非可撓性複合断熱材内の金属酸化物含有量に対して約40重量%~約60重量%の範囲で存在する、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
非可撓性複合断熱材を製造する方法であって、
a.キャスト表面及び平坦なキャストフレームを提供することであって、前記キャストフレームの内側境界が、前記キャスト表面上のキャスト領域を取り囲む、前記提供すること、
b.ゾルゲル溶液を提供すること、
c.前記ゾルゲル溶液を不透明化化合物と組み合わせること、
d.前記繊維材料を前記キャスト領域に配置すること、
e.前記ゾルゲル溶液を前記キャスト領域内の前記繊維材料と混合すること、
f.前記ゾルゲル溶液をゲル材料に移行させ、それにより、強化ゲルを形成すること、
g.前記強化ゲル組成物を乾燥させて、強化エアロゲル複合材を生成すること、
h.低酸素雰囲気または空気雰囲気中で、前記強化エアロゲル複合材を500℃~700℃の処理に加熱すること、ならびに
i.前記エアロゲル複合材を、約500psi~約10,000psi下で機械的に圧縮し、それにより、前記非可撓性複合断熱材を調製すること
を含む、前記方法。
【請求項34】
前記ゾルゲル溶液が、TEOS及び/またはMTESを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記低酸素雰囲気が、5体積%未満の酸素を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記乾燥が、二酸化炭素を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記非可撓性複合断熱材が、約0.20g/cc~約1.0g/ccの範囲の密度を有する、請求項24または請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記非可撓性複合断熱材が、約10,000psi~約100,000psiの範囲の曲げ弾性率を有する、請求項24または請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記不透明化化合物が、前記非可撓性複合断熱材内の金属酸化物含有量に対して約40重量%~約60重量%の範囲で存在する、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年10月15日に出願された米国仮出願第63/256,123号(全体が参照により本明細書に組み込まれる)に対する優先権を主張する。
【0002】
政府の支援
本発明は、US Air Force Nuclear Weapons Centerによって与えられた補助金番号FA9422-17-C-8001の下で政府の支援で行われた。政府は、本発明に関して特定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本開示は、一般に、熱電池などのための複合断熱材に関する。より具体的には、本開示は、繊維材料で強化された金属酸化物マトリックスを含む、取り扱い性が向上した非可撓性複合断熱材、その調製方法、及び電池構成要素を断熱するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
熱電池は、通常、350℃~600℃で動作する高温電源である。そのような電池は、熱で起動されて電気を生成する電気化学セルを使用する。これらの電気化学セルは、一般に、正常または通常動作温度で固体であり非導電性であるイオン伝導性溶融塩で隔てられた好適なアノード要素及びカソード要素を含む。電池セルが、電解質の融解温度を超えると、電解質は、溶融または融解して導電性になり、電池が機能して、周知の電気化学反応により電気を生成し得る。そのような熱電池の代表例は、米国特許第3,558,363号に見出すことができる。
【0005】
熱電池は、非常に高い電力密度と、多くの場合、20年を超えるメンテナンスフリーの保管寿命を提供するので、ほぼ例外なく軍事及び防衛用途に用いられている。しかし、熱電池は、特定の固有の制限及び欠点を有する。例えば、熱電池セルが作動する時、動作中に熱が発生し、これは、電子パッケージなどの近くの環境に悪影響を与える可能性がある。加えて、電池の有効寿命及び出力密度は、電解質が溶解した状態にある期間により制限される。時間とともに、熱が電池から逃げると、電解質が凍結し始め、その結果、インピーダンスが増加し、最終的にはイオン伝導がなくなることがある。
【0006】
電池セルの断熱材は、できるだけ長く、電解質を溶解状態に保つために系内に熱を保持することに関与する。また、断熱材は、熱散逸により周囲の系の構成要素の環境に、熱が悪影響を与えることを防ぐことにより、安全性の維持を保証する。
【0007】
電池セルの断熱材は、できるだけ長く、電解質を溶解状態に保つために系内に熱を保持することに関与する。また、断熱材は、熱散逸により周囲の系の構成要素の環境に、熱が悪影響を与えることを防ぐことにより、安全性の維持を保証する。多層の可撓性断熱材を、セルスタックに直接巻き付けて、セルスタックを軸方向に断熱することができる。この種の可撓性断熱材は、電池筐体(電池容器)の内面、外面、または内面と外面の両方を覆い得る。電池筐体が、エンドカバー(複数可)またはキャップ(複数可)を有する場合、断熱を向上させるために、剛性断熱材で作成される断熱ディスクを、セルスタックの上部及び下部に使用することができる。
【0008】
発泡体または繊維シートなどの従来のタイプの断熱材は、高温に耐え得るが、断熱または熱封じ込めの能力は比較的低い。そのような材料では、効果的な熱管理を行うために、断熱材の厚さを増加させなければならない。しかし、電池筐体のスペース要件により、モジュールのサイズ及びモジュール内のセル間のスペースが制限される。特に、小型の熱電池では、提供され得る断熱材の体積が、限定されるようになる。
【0009】
現在市販されている断熱材の例は、Promat Inc.(Tisselt,Belgium)から入手可能なミクロ多孔性断熱材であるMicrotherm(登録商標)剛性ボード/パネルである。Microthermは、ガラスクロスに埋め込まれたミクロ多孔性シリカ及び不透明化剤として炭化ケイ素を用いて作製された複合断熱材である。Microtherm(登録商標)は、高温では熱伝導率が低い(例えば、600℃で30mW/m-K)が、非常に脆く、取り扱い中及び型抜き時に粉塵が出る。熱電池は固有の用途に用いられる傾向があることを考慮すると、所与のフォームファクターは、通常、一般に新しい用途には使用されない。より優れた取り扱い性及び機械的完全性を備え、同等または改善された熱特性を備えた剛性断熱材が必要である。
【0010】
従って、熱電池全般、及び特に小型の熱電池を、起動後に、より長く動作し続けるために使用することができる方法及び材料に対する必要性が存在する。起動後の熱電池の動作寿命が問題にならない用途では、そのような方法及び材料は、断熱材の体積の要件を低減するために使用することができ、それにより、熱電池のサイズ及び質量の低減と、周囲環境の安全の維持を可能にする。
【発明の概要】
【0011】
エアロゲルなどの改良断熱材は、長寿命の熱電池での使用について、ある程度の注目を集めている。エアロゲル材料は、他の一般的な種類の断熱材、例えば、発泡体、ガラス繊維など、の約2~6倍の耐熱性を有することが知られている。エアロゲルは、断熱材の厚さを実質的に増加させないか、または追加の重量を加えることなく、効果的な遮蔽及び断熱を高め得る。
【0012】
剛性、取り扱い性、機械的完全性、熱伝導率などを含む様々な面において性能が改善された強化エアロゲル組成物を、個別に及び1つ以上の組み合わせで提供することが望ましいであろう。
【0013】
本開示の目的は、熱電池などに有用な従来の断熱材の少なくとも1つの欠点を解消または軽減することである。
【0014】
電池の動作時間及び性能を延長し、熱的安全性を維持するために使用することができる、熱電池などのための効果的な断熱材を開発するための非可撓性複合断熱材及びその調製方法が本明細書で提供される。
【0015】
本明細書で提供される非可撓性複合断熱材は、過剰な熱が環境に逃げることによる熱電池の使用に関連するリスクも減少させる。
【0016】
一態様では、本開示は、金属酸化物マトリックス、不透明化化合物、及び任意にポリマー結合剤を含む繊維材料を含む非可撓性複合断熱材に関し、非可撓性複合断熱材が、繊維材料で強化されている。いくつかの実施形態では、非可撓性複合断熱材は、約0.20g/ccを超える密度及び約10,000psiを超える曲げ弾性率を有する。
【0017】
別の態様では、本開示は、繊維材料が埋め込まれて強化された金属酸化物マトリックスを含む非可撓性複合断熱材に関し、繊維材料が、任意に、ポリマー結合剤を含み、不透明化化合物が、金属酸化物マトリックス全体に分散されている。いくつかの実施形態では、非可撓性複合断熱材は、約0.20g/ccを超える密度を有する。いくつかの実施形態では、不透明化化合物は、複合断熱材内の金属酸化物含有量に対して約40重量%を超えて存在する。
【0018】
一態様では、本開示で上述または後述される任意の態様及び実施形態による非可撓性複合断熱材を含む熱電池が本明細書に提供される。
【0019】
別の態様では、熱電池の性能の改善方法が本明細書で提供され、方法は、本開示で上述または後述される任意の態様及び実施形態による非可撓性複合断熱材を熱電池に組み込むことを含む。
【0020】
一態様では、非可撓性複合断熱材の調製方法が本明細書で提供され、方法は、以下を含む:金属酸化物マトリックス、不透明化化合物、及び任意にポリマー結合剤を含む繊維材料を含む、強化エアロゲル複合材を提供すること;低酸素雰囲気または空気雰囲気中でエアロゲル複合材を熱処理に暴露すること(熱処理は、500℃~700℃の1つ以上の温度に暴露することを含む);ならびに、繊維材料の主方向に対して垂直な方向にエアロゲル複合材を機械的に圧縮し、それにより、非可撓性複合断熱材を調製すること。圧縮すると、エアロゲル複合材の密度は、最大5~100倍増加する。いくつかの実施形態では、非可撓性複合断熱材の密度は、強化エアロゲル複合材の密度よりも約5~100倍高い。いくつかの実施形態では、強化エアロゲル複合材は、体積の80%未満で圧縮される。いくつかの実施形態では、強化エアロゲル複合材は、約500psi~約10,000psiの圧力下で圧縮される。一実施形態では、熱処理の合計時間は、1分~120分である。いくつかの実施形態では、600℃でのエアロゲル複合材の熱伝導率は、実質的に同じ組成を有する非圧縮強化エアロゲル複合材と比較して実質的に変化しない。
【0021】
別の態様では、非可撓性複合断熱材の製造方法が本明細書に提供され、方法は、以下を含む:キャスト表面及び平面キャストフレームを提供すること(キャストフレームの内側境界が、キャスト表面上のキャスト領域を囲む);ゾルゲル溶液を提供すること;ゾルゲル溶液を不透明化化合物と組み合わせること;繊維材料をキャスト領域に配置すること;キャスト領域内でゾルゲル溶液を繊維材料と混合すること;ゾルゲル溶液をゲル材料に移行させ、それにより、強化ゲルを形成すること;強化ゲル組成物を乾燥させて、強化エアロゲル複合材を生成すること;低酸素雰囲気または空気雰囲気中で、強化エアロゲル複合材を500℃~700℃の処理に加熱すること;ならびに、エアロゲル複合材を、約500psi~約10,000psi下で機械的に圧縮し、それにより、非可撓性複合断熱材を調製すること。いくつかの実施形態では、ゾルゲル溶液は、TEOS及び/またはMTESを含む。いくつかの実施形態では、低酸素雰囲気は、5体積%未満の酸素を含む。いくつかの実施形態では、乾燥ステップは、二酸化炭素を含む。いくつかの実施形態では、ゾルゲル溶液は、十分に分散された不透明化化合物と組み合わされる。
【0022】
上記の態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、繊維材料は、短繊維、織物材料、不織材料、マット、フェルト、中綿、ロフティ中綿、チョップドファイバー、またはそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、繊維材料のほとんど全てまたは一部が、非可撓性複合断熱材の厚さ方向に対して垂直に整列している。別の実施形態では、繊維材料のほとんど全部または一部が、非可撓性複合断熱材の厚さ方向に対して平行に整列している。1つ以上の実施形態では、非可撓性複合断熱材の厚さ方向は、z軸方向である。
【0023】
いくつかの実施形態では、金属酸化物は、シリカ、アルミナ、チタニア、セリア、イットリア、バナジア、またはそれらの任意の組み合わせを含む。好ましい実施形態では、金属酸化物は、シリカを含む。
【0024】
1つ以上の実施形態では、非可撓性複合断熱材は、圧縮エアロゲル複合材である。1つ以上の実施形態では、金属酸化物マトリックスは、圧縮エアロゲルマトリックスである。
【0025】
いくつかの実施形態では、不透明化化合物は、以下から選択される:B4C、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、Ag2O、Bi2O3、TiC、WC、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄チタン、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(I)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、酸化鉄チタン(イルメナイト)、酸化クロム、炭化ケイ素、またはそれらの混合物。好ましい実施形態では、不透明化化合物は、炭化ケイ素である。1つ以上の実施形態では、不透明化化合物は、複合断熱材内の金属酸化物含有量に対して約40重量%~約60重量%の範囲で存在する。
【0026】
いくつかの実施形態では、繊維層は、有機ポリマー系繊維、無機繊維、炭素系繊維、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、無機繊維は、ガラス繊維、岩石繊維、金属繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、バサルト繊維、またはそれらの組み合わせから選択される。好ましい実施形態では、無機繊維は、ガラス繊維を含む。より好ましい実施形態では、ガラス繊維は、シリカ系ガラス繊維である。
【0027】
いくつかの実施形態では、ポリマー結合剤は、ポリビニルアルコールを含む。
【0028】
1つ以上の実施形態では、非可撓性複合断熱材は、10mm未満の平均厚さ及び10%未満の厚さのばらつきを有する。
【0029】
1つ以上の実施形態では、非可撓性複合断熱材は、600℃で約60mW/m・K以下の熱伝導率を有する。
【0030】
1つ以上の実施形態では、非可撓性複合断熱材は、約0.20g/cc~約1.0g/ccの範囲の密度を有する。
【0031】
1つ以上の実施形態では、非可撓性複合断熱材は、約10,000psi~約100,000psiの範囲の曲げ弾性率を有する。
【0032】
1つ以上の実施形態では、複合材は、有機部分を実質的に欠いている。
【0033】
本技術の上記の態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。本技術の材料の1つ以上は、有利には、取り扱い性が向上した低熱伝導率の剛性複合断熱材を提供し得る。本明細書に開示される複合断熱材は、閉鎖系内に熱を保持し、閉鎖系に熱が届かないようにし、または部分的な閉鎖系内外の熱損失を最小限に抑えるために使用され得る。そのような剛性複合断熱材は、熱電池などでの使用に有用である。具体的には、本明細書に開示される剛性複合材は、熱電池用のエンドキャップ材料として使用することができる。
【0034】
本明細書に開示の非可撓性複合材は、熱電池設計の機械的要件を満たすことが可能であり、さらに、既存の技術と比較して優れた熱伝導率を提供する。加えて、本明細書で提供される複合材の厚さにより、断熱材の体積要件が高度に制限されている小型及び大型の両方の熱電池に対して効果的な熱管理が可能になる。
【0035】
本発明は、添付図面と併せて以下の詳細な説明を読むことにより、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図2A】セルスタックを軸方向に断熱するためにセルスタックに巻き付け得る可撓性断熱材を示す。
【
図2B】可撓性断熱材を含む電池筐体を概略的に示す。
【
図3A】本開示の非可撓性複合断熱材の画像を示す。
【
図3B】本開示の非可撓性複合断熱材を含む電池筐体のエンドキャップ(複数可)を概略的に示す。
【
図4】ZIRCAR Refractory Composites,Inc.から入手可能な既存の耐火セラミックエンドキャップ断熱材、RS-DR、及びRS-200に対する本技術の非可撓性複合断熱材の圧縮応力-歪曲線を示す。
【
図5】プロトタイプの構築及び試験のための本技術の非可撓性複合断熱材の熱伝導率曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
一般的な一態様では、本開示は、耐久性があり、取り扱いが容易であるエアロゲル組成物、例えば、強化エアロゲル複合材を提供し、これは、使用される材料の厚さ及び重量を最小限に抑えながら、好ましい熱特性、例えば、低い熱伝導率、熱伝搬、及び火伝播に対する耐性を有し、圧縮性、圧縮弾性、及びコンプライアンスに関して好ましい特性も有する。別の一般的な態様では、本明細書で提供されるエアロゲル組成物は、焼成及び/または圧縮などの熱処理を受けて、本開示の複合断熱材を得るのに適している。
【0038】
本明細書に提示される実施形態によれば、極めて低い熱伝導率、良好な機械的完全性、及び容易な取り扱い性を有する改良された複合断熱材は、本明細書に記載のエアロゲル複合材の圧縮により調製することができる。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、これは、主に、エアロゲル複合材が、特に機械的手段による圧縮時に熱伝導率(通常、mW/m-kで測定)を保持または増加させ得るという知見によるものであり得る。
【0039】
別の態様では、熱電池の安全性のための改良された複合断熱材は、本明細書に記載のエアロゲル複合材または圧縮エアロゲル複合材の焼成により調製することができる。動作中に、有機部分が依然として存在する場合、有機部分が分解して分解生成物が閉鎖系の内部に蓄積した時に、電池の安全性及び性能にリスクが生じ得るので、有機部分は、熱電池の安全性を向上させるために焼成により除去することができる。本明細書に記載の実施形態によれば、本技術の複合断熱材は、有機部分を実質的に含まない。
図1A及び
図1Bは、繊維材料300で強化された金属酸化物マトリックス200を含む、本開示の複合断熱材100を示す。
図1Aでは、繊維材料300のほぼ全部または一部は、非可撓性複合断熱材100の厚さ方向に対して垂直に整列しており、非可撓性複合断熱材100の厚さ方向は、z軸方向である。
図1Bでは、繊維材料300のほとんど全部または一部は、金属酸化物マトリックス200内でランダムに(例えば(多方向繊維配向角))整列している。
【0040】
圧縮及び/または焼成に適したエアロゲル及びエアロゲル複合材は、粒子強化、繊維強化、または非強化エアロゲルを含む様々な形態をとり得、いずれも、有機、無機、またはハイブリッドエアロゲルマトリックスを含む。好ましい形態は、強化材料、例えば、繊維材料を含む。好ましくは、繊維材料は、エアロゲルマトリックス全体に分散されている。単純な形態の繊維強化エアロゲル複合材は、機械的性能の向上などの様々な理由で、繊維材料が、マトリックス材料内に埋め込まれている。マトリックス材料は、ゾルゲル処理により調製することができ、その結果、非常に小さな孔(10億分の1メートルのオーダー)を有する構造を定義するポリマーネットワーク(無機、有機、または無機/有機ハイブリッドを含む)がもたらされる。ゾルゲル処理中のポリマーゲル化点の前に添加される繊維材料は、マトリックス材料を強化する。本発明の好ましい前駆体材料のエアロゲルマトリックスは、有機、無機、またはそれらの混合物であってよい。エアロゲルを調製するために使用される湿潤ゲルは、当業者らに周知のゲル形成手法のいずれかを介して調製され得:例としては、希薄金属酸化物ゾルのpH及び/または温度を、ゲル化が生じる点に調整することが挙げられる(R.K.Iler,Colloid Chemistry of Silica and Silicates,1954,chapter 6;R.K.Iler,The Chemistry of Silica,1979,chapter 5,C.J.Brinker and G.W.Scherer,Sol-Gel Science,1990,chapters 2 and 3(参照により本明細書に組み込まれる))。無機エアロゲルを形成するための材料の例は、金属酸化物、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ハフニア、イットリア、バナジアなどである。特に好ましいゲルは、入手が容易でコストが低いので、主に、加水分解ケイ酸エステルのアルコール溶液から形成される。
【0041】
本開示の実施形態によれば、非可撓性複合断熱材は、繊維強化エアロゲル複合材を、低酸素雰囲気または空気雰囲気中で熱処理に暴露すること;及び、エアロゲル複合材を機械的に圧縮することにより得ることができる。
【0042】
いくつかの例では、本明細書で提供される非可撓性複合断熱材を熱電池などに組み込むと、電池性能及び熱電池の動作時間が改善される。
【0043】
標準語の定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容に別途明確な指示のない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「または」という用語は、文脈に別途明示のない限り、一般に「及び/または」を包含する意味で用いられる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「約」は、おおよそ、または、ほぼを意味し、記載される数値または範囲の文脈では数値の±5%を意味する。一実施形態では、「約」という用語は、数値の有効数字による従来の丸めを含むことができる。さらに、「約「x」~「y」」という表現は、「約「x」~約「y」」を含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、「断熱材」という用語は、環境への熱の流れを減少させる材料、例えば、金属電池容器を指す。要素、例えば、層、領域、または基板が別の要素の「上(on)」または「上(over)」にあると呼ばれる場合、それは、他の要素の真上に存在し得るか、または、介在要素も存在し得ることも理解されるであろう。対照的に、要素が、別の要素の「真上(directly on)」または「真上(directly over)」にあると呼ばれる場合、介在する要素は存在しない。
【0046】
本明細書で使用する場合、「組成物」及び「複合材」という用語は互換的に使用される。
【0047】
エアロゲルは、相互接続された構造体のフレームワーク、フレームワーク内に統合されている対応する細孔のネットワーク、及び主に空気などのガスで構成される細孔のネットワーク内の間隙相を含む、オープンセルの多孔質材料の一種である。エアロゲルは、通常、低密度、高空隙率、大きな表面積、及び小さい細孔径を特徴とする。エアロゲルは、物理的及び構造的特性によって他の多孔質材料と区別することができる。
【0048】
本開示の文脈内で、「エアロゲル」、「エアロゲル材料」、または「エアロゲルマトリックス」という用語は、相互接続された構造体のフレームワークを含み、フレームワーク内に統合されている相互接続された細孔の対応するネットワークを有し、分散された格子間媒体として空気などの気体を含有するゲルを指し、これは、エアロゲルに起因すると考えられる以下の、(a)約2nm~約100nmの範囲の平均細孔径、(b)少なくとも80%以上の空隙率、及び(c)約100m2/g以上の表面積、という物理的及び構造的特性(窒素ポロシメトリー試験による)によって特徴付けられる。
【0049】
従って、本開示のエアロゲル材料は、先の段落に記載された定義要素を満たす任意のエアロゲルまたは他のオープンセル材料を含み、キセロゲル、クライオゲル、アンビゲル、ミクロ多孔性材料などとして他の方法でカテゴリ化されることができる材料を含む。
【0050】
またエアロゲル材料は、さらに、以下の、(d)約2.0mL/g以上、特に約3.0mL/g以上の細孔容積、(e)約0.50g/cc以下、特に、約0.3g/cc以下、さらに特に、約0.20g/cc以下の密度、及び(f)2~50nmの間の細孔径を有する細孔を含む全細孔容積の少なくとも50%を含む、さらなる物理的特性によって特徴付けられ得る。しかしながら、エアロゲル材料としての化合物の性質決定に、これらの追加の特性を満たす必要はない。
【0051】
本明細書で使用される場合、「焼成」という用語は、化学的、物理的、または構造的変化を材料にもたらすための、材料に適用される熱処理プロセスを指すが、材料中の熱分解、相転移、または揮発性画分の除去も指すことがある。焼成プロセスは、通常、製品材料の融点より低い温度で行われる。
【0052】
本開示の文脈内で、「エアロゲル組成物」または「エアロゲル複合材」という用語は、複合材の成分としてエアロゲル材料を含む任意の複合材を指す。エアロゲル組成物の例は、繊維強化エアロゲル複合材;不透明化剤などの添加元素を含むエアロゲル複合材;オープンセル型マクロ多孔質フレームワークによって強化されたエアロゲル複合材;エアロゲル-ポリマー複合材;及びエアロゲル微粒子、粒子、造粒体、ビーズ、または粉体を、結合剤、樹脂、セメント、発泡体、ポリマー、または同様の固体材料と組み合わせるような、固体または半固体材料に組み込む複合材を含むが、これらに限定されない。エアロゲル組成物は、一般に、本明細書に開示される様々なゲル材料から溶媒を除去した後に得られる。このようにして得られたエアロゲル組成物は、さらなる加工処理または処理を受け得る。種々のゲル材料はまた、溶媒の除去(または液体抽出もしくは乾燥)を受ける前に、当該技術でその他の方法で知られている、または有用である追加の加工処理または処理を受けてもよい。
【0053】
本開示のエアロゲル組成物は、強化エアロゲル組成物を含み得る。本開示の文脈内で、「強化エアロゲル組成物」という用語は、エアロゲル材料内に強化相を含むエアロゲル組成物を指し、強化相は、エアロゲルフレームワーク自体の一部ではない。強化相は、エアロゲル材料に弾性、適合性、または構造的安定性を提供する任意の材料であってよい。周知の強化材料の例としては、オープンセルマクロ多孔性フレームワーク強化材料、クローズドセルマクロ多孔性フレームワーク強化材料、オープンセル膜、ハニカム強化材料、ポリマー強化材料、ならびに繊維強化材料、例えば、短繊維、織物材料、不織材料、ニードル不織布、中綿、織物、マット、及びフェルトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
本開示の文脈内で、「繊維強化エアロゲル組成物」という用語は、強化相として繊維強化材料を含む強化エアロゲル組成物を指す。繊維強化材料としては、短繊維、織物材料、不織材料、バット、中綿、繊維、マット、フェルト、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。繊維強化材料は、有機ポリマー系繊維、無機繊維、炭素系繊維、またはそれらの組み合わせから選択されることができる。繊維強化材料は、ポリエステル、ポリオレフィンテレフタレート、ポリ(エチレン)ナフタレート、ポリカルボナート(例えば、レーヨン、ナイロン)、綿(例えば、DuPont製造ライクラ)、炭素(例えば、グラファイト)、ポリアクリロニトリル(PAN)、酸化型PAN、未炭化熱処理PAN(例えば、SGLカーボンSE(ドイツ)製造のもの)、ガラスまたはガラス繊維系材料(Sガラス、901ガラス、902ガラス、475ガラス、Eガラスなど)、石英のようなシリカ系繊維(例えば、Saint-Gobain製造のQuartzel)、Qフェルト(Johns Manville製造)、Saffil(Unifrax製造)、Durablanket(Unifrax製造)及び他のシリカ繊維、Duraback(Carborundum製造)、Kevlar、Nomex、Sontera(全てDuPont製造)、Conex(Taijin製造)のようなポリアラアミド繊維、Tyvek(DuPont製造)、Dyneema(DSM製造)、Spectra(Honeywell製造)のようなポリオレフィン、Typar、Xavan(両方ともDuPont製造)のような他のポリプロピレン繊維、Teflon(DuPont製造)、Goretex(W.L.GORE製造)などの商品名を持つPTFEのようなフルオロポリマー、Nicalon(COI Ceramics製造)のような炭化ケイ素繊維、Nextel(3M製造)のようなセラミック繊維、アクリル系ポリマー、羊毛、絹、アサ、皮革、スエードの繊維、PBO-Zylon繊維(Tyobo製造)、Vectan(Hoechst製造)のような液晶材料、Cambrelle繊維(DuPont製造)、ポリウレタン、ポリアミド、木部繊維、ホウ素、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼の繊維及びPEEK、PES、PEI、PEK、PPSなどの他のサーモプラスチックを含むが、これらに限定されない、材料の範囲を含むことができる。ガラスまたはガラス繊維系の繊維強化材料は、1つ以上の手法を用いて製造されてよい。特定の実施形態では、それらをカーディング及びクロスラッピングまたはエアレイドプロセスを用いて作製することが望ましい。例示的な実施形態では、カーディング及びクロスラッピングされたガラスまたはガラス繊維系の繊維強化材料は、エアレイド材料に優る特定の利点を提供する。例えば、カーディング及びクロスラッピングされたガラスまたはガラス繊維系の繊維強化材料は、強化材料の所与の坪量に対して一貫した材料厚さを与えることができる。特定の追加の実施形態では、最終エアロゲル組成物中の機械的特性及び他の特性を向上させるために、z方向に繊維を交絡する必要がある繊維強化材料をさらにニードル加工することが望ましい。
【0055】
本開示の文脈内で、「結合剤(binder)」または「結合剤(binding agent)」という用語は、他の材料を保持または引き寄せて機械的、化学的、接着または凝集によって凝集全体を形成する任意の材料または物質である。
【0056】
本明細書で使用される場合、「圧縮する」、「圧縮された」、「圧縮」、及びその他の文法的形式は、構造に圧力を加える行為、特に、構造の体積を減少させ、その密度を増加させる機械的な力を加える行為を指すことになる。本明細書で使用する場合、「圧縮エアロゲルマトリックス」という用語は、圧縮力を加えることにより体積が減少した、製造されたままのエアロゲルマトリックスを指す。圧縮力は、絞り、油圧プレスでの圧縮、圧延などを含み得るが、これらに限定されない。圧縮力は、エアロゲルマトリックス内に分散された繊維の主方向に対して平行または直交し得る。
【0057】
圧縮エアロゲル及びエアロゲル複合材は、より高い圧縮強度、弾性率、曲げ強度を示し、非圧縮形態と比較して熱伝導率を維持するか、または実質的に増加させないことができる。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、圧縮後、エアロゲルの孔径分布は、通常、かなりの量で減少及び低下する。そのような現象にもかかわらず、エアロゲルの高い表面積は、圧縮による影響を本質的に受けないことがあり、熱伝導率が改善されるか、または実質的に変化しない(特定の圧縮範囲内、例えば、約500psi~約10,000psi)。
【0058】
圧縮に適したエアロゲル及びエアロゲル複合材は、粒子強化、繊維強化、または非強化エアロゲルを含む様々な形態をとり得、いずれも、有機、無機、またはハイブリッドエアロゲルマトリックスを含む。好ましい形態は、2相のエアロゲル複合材であり、第1相が、低密度エアロゲルマトリックスを含み、第2相が、強化材料、例えば、繊維材料を含む。
【0059】
「曲げ弾性率(flexural modulus)」または「曲げ弾性率(bending modulus of elasticity)」という用語は、サンプルの長辺に垂直に力が加えられた時の、材料の硬さ/曲げ抵抗の尺度である(3点曲げ試験として既知)。曲げ弾性率は、材料が曲がる能力を示す。曲げ弾性率は、応力-歪曲線の最初の直線部分の傾きで表され、応力変化を、対応する歪変化で除算することにより計算される。従って、応力対歪の比が、曲げ弾性率の尺度である。曲げ弾性率の国際標準単位は、パスカル(PaまたはN/m2またはm-1.kg.s-2)である。実際に使用される単位は、メガパスカル(MPaもしくはN/mm2)またはギガパスカル(GPaもしくはkN/mm2)である。米国の慣用単位では、ポンド(力)/平方インチ(psi)で表される。
【0060】
本開示の文脈内では、「非可撓性」または「剛性」という用語は、マクロ構造の破損なしに曲がるまたはたわむ能力を有しないか、または能力が限られた材料を指す。本開示の非可撓性断熱材は、約10,000psi~約100,000psiの範囲の曲げ弾性率を有する。
【0061】
本開示の文脈内で、「添加剤」または「添加元素」という用語は、エアロゲルの製造前、製造中、または製造後にエアロゲル組成物に添加され得る材料を指す。添加剤を添加して、エアロゲル中の望ましい特性を変更しても、もしくは改善しても、またはエアロゲル中の望ましくない特性を打ち消してもよい。添加剤は、一般的には、前駆体液体へのゲル化の前、遷移状態材料へのゲル化の間、または固体もしくは半固体材料へのゲル化の後のいずれかで、エアロゲル材料に添加される。添加剤の例としては、マイクロファイバー、フィラー、強化剤、安定剤、増粘剤、弾性化合物、不透明化剤、着色または色素沈着化合物、放射吸収化合物、放射反射化合物、火災クラス添加剤、腐食防止剤、熱伝導性成分、熱容量を与える成分、相変化材料、pH調整剤、酸化還元調整剤、HCN緩和剤、オフガス緩和剤、導電性化合物、電気誘電体化合物、磁性化合物、レーダー遮断成分、硬化剤、収縮防止剤、及び当業者に既知の他のエアロゲル添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
特定の実施形態では、本明細書で提供される断熱複合材は、高温事象中に実行することができ、例えば、本明細書に開示される高温事象中に熱保護を与えることができる。高温事象は、少なくとも2秒間、少なくとも約1cm2の領域にわたる、少なくとも約25kW/m2、少なくとも約30kW/m2、少なくとも約35kW/m2、または少なくとも約40kW/m2の持続した熱流束によって特徴付けられる。約40kW/m2の熱流束は、一般的な発火(Behavior of Charring Solids under Fire-Level Heat Fluxes;Milosavljevic,I.,Suuberg,E.M.;NISTIR 5499;September 1994)から生じるものと関連している。特別な場合、高温事象は、少なくとも1分の持続時間、少なくとも約10cm2の領域にわたる約40kW/mの熱流束である。
【0063】
本開示の文脈内で、「熱伝導率」及び「TC」という用語は、材料または組成物の両側の2つの表面の間で、温度差が2つの表面の間にある状態で、熱を伝達する材料または組成物の能力の測定値を指す。具体的には、熱伝導率は、単位時間あたり且つ単位表面積あたりに伝達される熱エネルギーを温度差で除算したものとして測定される。それは、一般的には、mW/m*K(メートル*ケルビンあたりのミリワット)としてSI単位で記録される。材料の熱伝導率は、Test Method for Steady-State Thermal Transmission Properties by Means of the Heat Flow Meter Apparatus(ASTM C518,ASTM International,West Conshohocken,PA);Test Method for Steady-State Heat Flux Measurements and Thermal Transmission Properties by Means of the Guarded-Hot-Plate Apparatus(ASTM C177,ASTM International,West Conshohocken,PA);Test Method for Steady-State Heat Transfer Properties of Pipe Insulation(ASTM C335,ASTM International,West Conshohocken,PA);Thin Heater Thermal Conductivity Test(ASTM C1114,ASTM International,West Conshohocken,PA);Standard Test Method for Thermal Transmission Properties of Thermally Conductive Electrical Insulation Materials(ASTM D5470,ASTM International,West Conshohocken,PA);Determination of thermal resistance by means of guarded hot plate and heat flow meter methods(EN 12667,British Standards Institution,United Kingdom);またはDetermination of steady-state thermal resistance and related properties-Guarded hot plate apparatus(ISO 8203,International Organization for Standardization,Switzerland)を含むが、これらに限定されない、当技術分野で既知の試験方法によって決定され得る。異なる結果をもたらす可能性のある異なる方法により、本開示の文脈内で、明示的に別段の記載がない限り、熱伝導率測定値がASTM C518規格(Test Method for Steady-State Thermal Transmission Properties by Means of the Heat Flow Meter Apparatus)に従って、約37.5℃の温度で、周囲環境中の大気圧で、約2psiの圧縮荷重下で取得されることを理解されたい。ASTM C518に従って報告された測定値は、一般的には、圧縮荷重に対する任意の関連する調整を伴うEN 12667に従って行われた任意の測定値と良好に相関する。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル材料または非可撓性複合断熱材は、熱伝導率が、約40mW/mK以下、約30mW/mK以下、約25mW/mK以下、約20mW/mK以下、約18mW/mK以下、約16mW/mK以下、約14mW/mK以下、約12mW/mK以下、約10mW/mK以下、約5mW/mK以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲内である。特定の実施形態では、本開示のエアロゲル材料または非可撓性複合断熱材は、600℃で約60mW/mK以下の熱伝導率を有する。
【0064】
本開示の文脈内で、「密度」という用語は、エアロゲル材料または組成物の単位体積あたりの質量の測定値を指す。「密度」という用語は、一般に、エアロゲル材料の見かけの密度だけでなく、エアロゲル組成物のかさ密度を指す。密度は、一般的には、kg/m3、またはg/ccとして記録される。エアロゲル材料または組成物の密度は、当技術分野で既知の方法によって決定され得、この方法としては、限定されないが、Standard Test Method for Dimensions and Density of Preformed Block and Board-Type Thermal Insulation(ASTM C303,ASTM International,West Conshohocken,PA);Standard Test Methods for Thickness and Density of Blanket or Batt Thermal Insulations(ASTM C167,ASTM International,West Conshohocken,PA);Determination of the apparent density of preformed pipe insulation(EN 13470,British Standards Institution,United Kingdom);またはDetermination of the apparent density of preformed pipe insulation(ISO 18098,International Organization for Standardization,Switzerland)が挙げられ得る。異なる結果をもたらす可能性のある異なる方法により、本開示の文脈内で、密度測定が、特に記載のない限り、ASTM C167規格(Standard Test Methods for Thickness and Density of Blanket or Batt Thermal Insulations)に従って厚さ測定に2psiの圧縮で取得されることを理解されたい。特定の実施形態では、本開示の非可撓性複合断熱材は、密度が、約0.20g/cc~約1.2g/ccの範囲、具体的には、約0.20g/cc~約0.80g/ccの範囲、より具体的には、約0.20g/cc~約0.60g/ccの範囲である。
【0065】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、目的の特徴または特性の完全またはほぼ完全な程度または程度を示す定量的状態を指す。本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」という用語は、分析物、サンプル、溶液、培地、サプリメント、賦形剤などが、干渉化合物、不純物、汚染物質、またはそれらの同等物を少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも98.5%、または少なくとも99%、または少なくとも99.5%、または少なくとも100%含まないことを意味する。
【0066】
本明細書において使用される場合、「ほぼ全て」という用語は、80%以上、好ましくは、85%以上、より好ましくは、90%以上、さらにより好ましくは、95%以上、最も好ましくは、99%以上を指す。
【0067】
最適な断熱のために、熱伝達の放射成分を低減するために、本開示のエアロゲルまたは複合断熱材を不透明にすることができる。ゲル形成前の任意の時点で、不透明化化合物を、ゲル前駆体を含む混合物中に分散してもよい。不透明化化合物の例は、以下を含み、これらに限定されない:B4C、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、Ag2O、Bi2O3、TiC、WC、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄チタン、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(I)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、酸化鉄チタン(イルメナイト)、酸化クロム、炭化ケイ素、またはそれらの混合物。複合断熱材中の不透明化化合物は、複合断熱材中の金属酸化物含有量に対して、約10重量%~約80重量%の範囲、好ましくは、約40重量%~約60重量%の範囲で存在する。
【0068】
本明細書で使用される場合、「よく分散している」という用語は、ゾルゲル溶液中に存在する不透明化化合物がバルクで凝集しない効果を指し、より具体的には、ゾルゲル溶液中に単一粒子もしくは繊維として、または1束あたり3~4個以下の粒子もしくは繊維の小束として、存在する不透明化化合物を指す。
【0069】
エアロゲル組成物
エアロゲルは、相互接続したオリゴマー、ポリマー、またはコロイド粒子から最も一般的に構成される相互接続構造体のフレームワークとして記載される。エアロゲルフレームワークは、無機前駆体材料(例えば、シリカ系エアロゲルの製造に使用される前駆体);有機前駆体材料(例えば、炭素系エアロゲルの製造に使用される前駆体);ハイブリッド無機/有機前駆体材料;及びこれらの組み合わせを含む、種々の前駆体材料から作成され得る。
【0070】
無機エアロゲルは、一般に、金属酸化物または金属アルコキシド材料から形成される。金属酸化物または金属アルコキシド材料は、酸化物を形成することができる任意の金属の酸化物またはアルコキシドに基づいていることができる。それらのような金属としては、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、バナジウム、セリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。無機シリカエアロゲルは、従来、シリカ系アルコキシド(例えば、テトラエトキシシラン)の加水分解及び縮合を介して、またはケイ酸もしくは水ガラスのゲル化を介して作成される。シリカ系エアロゲル合成のための他の関連する無機前駆体材料としては、ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムなどの金属ケイ酸塩、アルコキシシラン、部分加水分解アルコキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、部分加水分解TEOS、TEOSの縮合ポリマー、テトラメトキシシラン(TMOS)、部分加水分解TMOS、TMOSの縮合ポリマー、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-n-プロポキシシランの部分加水分解及び/または縮合ポリマー、ポリエチルシリケート、部分加水分解ポリエチルシリケート、モノマーアルキルアルコキシシラン、ビス-トリアルコキシアルキルもしくはアリールシラン、多面体シルセスキオキサン、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
本開示の特定の実施形態では、Silbond H-5(SBH5、Silbond Corp)など、前加水分解TEOSは、市販のものが使用されてもよく、またはゲル化プロセスに組み込まれる前にさらに加水分解されてもよい。部分加水分解TEOSまたはTMOS、例えばポリエチルシリケート(Silbond40)またはポリメチルシリケートも、市販のものが使用されてもよく、またはゲル化プロセスに組み込む前にさらに加水分解されてもよい。
【0072】
無機エアロゲルは、少なくとも1つの疎水基、例えば、アルキル金属アルコキシド、シクロアルキル金属アルコキシド、及びアリール金属アルコキシドを含有するゲル前駆体も含むことができ、これらは、安定性及び疎水性などのゲルに特定の特性を付与する、または改善することができる。無機シリカエアロゲルは、具体的には、アルキルシランまたはアリールシランなどの疎水性前駆体を含むことができる。疎水性ゲル前駆体を一次前駆体材料として使用して、ゲル材料のフレームワークを形成してもよい。しかしながら、疎水性ゲル前駆体は、アマルガムエアロゲルの形成に単純な金属アルコキシドと組み合わせたco-前駆体としてより一般的に使用される。シリカ系エアロゲル合成のための疎水性無機前駆体材料としては、トリメチルメトキシシラン(TMS)、ジメチルジメトキシシラン(DMS)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン(DMDS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、エチルトリエトキシシラン(ETES)、ジエチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン(DMDES)、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン(PhTES)、ヘキサメチルジシラザン、及びヘキサエチルジシラザンなどが挙げられるが、これらに限定されない。上記の前駆体のいずれかの任意の誘導体を使用してもよく、具体的には、他の化学基の特定のポリマーを上記の前駆体の1つ以上に加えても、または架橋してもよい。
【0073】
有機エアロゲルは、一般に、炭素系ポリマー前駆体から形成される。これらのようなポリマー材料としては、限定されないが、レゾルシノールホルムアルデヒド(RF)、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、アクリレートオリゴマー、ポリオキシアルキレン、ポリウレタン、ポリフェノール、ポリブタジエン、トリアルコキシシリル末端ポリジメチルシロキサン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリフルフラール、メラミン-ホルムアルデヒド、クレゾールホルムアルデヒド、フェノール-フルフラール、ポリエーテル、ポリオール、ポリイソシアネート、ポリヒドロキシベンゼン、ポリビニルアルコールジアルデヒド、ポリシアヌレート、ポリアクリルアミド、種々のエポキシ、寒天、アガロース、キトサン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。一例として、有機RFエアロゲルは、一般的には、アルカリ条件下でレゾルシノールまたはメラミンとホルムアルデヒドとのゾル-ゲル重合から作成される。
【0074】
有機/無機ハイブリッドエアロゲルは、主に(有機修飾シリカ(「ormosil」))エアロゲルから構成される。これらのormosil材料は、シリカネットワークに共有結合している有機成分を含む。ormosilは、一般的には、有機修飾シラン、R-Si(OX)3と、従来のアルコキシド前駆体、Y(OX)4との加水分解及び縮合によって形成される。これらの式では、Xは例えばCH3、C2H5、C3H7、C4H9を表し得、Yは例えばSi、Ti、Zr、またはAlを表し得、Rはメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、メタクリレート、アクリレート、ビニル、エポキシドなどの任意の有機フラグメントであり得る。またormosilエアロゲル中の有機成分は、シリカネットワーク全体に分散しても、またはシリカネットワークに化学的に結合してもよい。
【0075】
エアロゲルの調製方法
エアロゲルの調製は、一般に、以下を含む:i)ゾルゲル溶液を形成するステップ;ii)ゾルゲル溶液からゲルを形成するステップ;ならびに、iii)革新的な処理及び抽出によりゲル材料から溶媒を抽出して、乾燥エアロゲル材料を得るステップ。このプロセスは、特に、シリカエアロゲルなどの無機エアロゲルの形成に関連して、以下でより詳細に説明する。しかし、本明細書に提供される具体例及び説明は、本開示を特定タイプのエアロゲル及び/または調製方法に限定することを意図するものではない。本開示は、別途記載のない限り、当業者らに既知の任意の関連調製方法で形成された任意のエアロゲルを含み得る。
【0076】
無機エアロゲルを形成する最初のステップは、一般に、アルコール系溶媒中で、限定されないが、金属アルコキシド前駆体などのシリカ前駆体の加水分解及び縮合によるゾルゲル溶液の形成である。無機エアロゲルの形成における主な変数は、ゾルゲル溶液に含まれるアルコキシド前駆体の種類、溶媒の性質、ゾルゲル溶液の処理温度及びpH(酸または塩基の添加により変化し得る)、ならびにゾルゲル溶液内の前駆体/溶媒/水の比を含む。ゾルゲル溶液を形成する際のこれらの変数を制御すると、ゲル材料の「ゾル」状態から「ゲル」状態への後続の移行中に、ゲルフレームワークの成長及び凝集の制御を可能にし得る。得られるエアロゲルの特性が、前駆体溶液のpH及び反応物のモル比により影響されるが、ゲルの形成を可能にする任意のpH及び任意のモル比が本開示で使用され得る。
【0077】
ゾルゲル溶液は、少なくとも1つのゲル化前駆体を溶媒と混合することにより形成される。ゾルゲル溶液の形成に使用するのに適した溶媒は、1~6の炭素原子、特に、2~4の炭素原子の低級アルコールを含むが、当業者らに知られているような他の溶媒も使用され得る。有用な溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、テトラヒドロフランなどが挙げられるが、これらに限定されない。所望の分散レベルを達成するために、またはゲル材料の特性を最適化するために、複数の溶媒を組み合わせることもできる。従って、ゾルゲル及びゲル形成ステップに最適な溶媒の選択は、ゾルゲル溶液に組み込まれる特定の前駆体、充填剤、及び添加剤;ならびに、ゲル化及び液体抽出の目標処理条件、ならびに最終的なエアロゲル材料の望ましい特性、に依存する。
【0078】
水も、前駆体-溶媒の溶液中に存在し得る。水は、金属アルコキシド前駆体を金属水酸化物前駆体に加水分解するように作用する。加水分解反応は、以下であり得る(例としてエタノール溶媒中のTEOSを使用する):Si(OC2H5)4+4H2O→Si(OH)4+4(C2H5OH)。結果として生じる加水分解された金属水酸化物前駆体は、個々の分子として、または分子の小さな重合(またはオリゴマー化)コロイド状クラスターとして、「ゾル」状態で溶媒溶液中に懸濁したままである。例えば、Si(OH)4前駆体の重合/縮合は、以下のように生じ得る:2Si(OH)4=(OH)3Si-O-Si(OH)3+H2O。この重合は、重合した(またはオリゴマー化した)SiO2(シリカ)分子のコロイドクラスターが形成されるまで継続し得る。
【0079】
溶液のpHを制御し、前駆体材料の加水分解及び縮合反応を触媒するために、酸及び塩基を、ゾルゲル溶液に組み込むことができる。前駆体反応を触媒し、より低いpHの溶液を得るために、任意の酸が使用され得るが、例示的な酸としては、HCl、H2SO4、H3PO4、シュウ酸、及び酢酸が挙げられる。同様に、前駆体反応を触媒し、より高いpHの溶液を得るために、任意の塩基が使用され得、例示的な塩基は、NH4OHを含む。
【0080】
強塩基は、前駆体反応を触媒し、より高いpHの溶液を得るために使用され得る。前駆体反応を触媒するために強塩基を使用すると、疎水性無機前駆体材料(例えば、MTESまたはDMDES)の含有量を、弱塩基(例えば、NH4OHを含む塩基)を使用して得られるよりも大幅に高くすることができる。本開示の文脈内では、「強塩基」という用語は、無機塩基と有機塩基の両方を指す。例えば、本明細書の実施形態による強塩基は、リチウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、バリウム、ストロンチウム、及びグアニジニウムからなる群から選択されるカチオンを含む。別の例では、前駆体反応を触媒するために使用される塩基性触媒は、触媒量の水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化グアニジン、水酸化ナトリウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化コリン、水酸化ホスホニウム、DABCO、DBU、グアニジン誘導体、アミジン、またはホスファゼンを含み得る。
【0081】
本開示のエアロゲル組成物の厚さは、15mm以下、10mm以下、5mm以下、4mm以下、3mm以下、2mm以下、1mm以下、0.5mm以下、0.3mm以下、または上述の厚さの任意の組み合わせ間の厚さの範囲であり得る。
【0082】
エアロゲル組成物は、より弾性のある複合生成物を得るために、様々な強化材料で強化され得る。強化材料は、湿った強化ゲル組成物を生成するために、ゲル化プロセスの任意の時点でゲルに添加することができる。次に、湿ったゲル組成物は、強化エアロゲル組成物を生成するために乾燥され得る。
【0083】
エアロゲル組成物は、熱伝達の放射成分を減少させるために不透明化剤を含むことができる。ゲル形成前のいずれかの時点で、不透明化化合物またはその前駆体を、ゲル前駆体を含む混合物中に分散させ得る。不透明化化合物の例としては、限定されないが、炭化ホウ素(B4C)、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、Ag2O、Bi2O3、カーボンブラック、グラファイト、酸化チタン、酸化(鉄/チタン)、酸化アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、酸化(鉄/チタン)(イルメナイト)、酸化クロム、炭化物(例えば、SiC、TiCもしくはWC)、またはこれらの混合物が挙げられる。不透明化化合物前駆体の例としては、TiOSO4またはTiOCl2が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、添加剤として使用される不透明化化合物は、炭化ケイ素のウィスカまたは繊維を除外することができる。エアロゲル組成物が電気デバイス、例えば障壁層としての電池または他の関連用途での使用に意図される場合、不透明化剤を含む組成物は、望ましくは、高い体積抵抗率及び表面抵抗率を有する高い絶縁耐力を有することができる。それらのような実施形態では、不透明化剤として使用される炭素添加剤は、非導電性であり、または修飾され、導電率を低減させることができる。例えば、不透明化剤を表面酸化させて、導電率を低減させることができる。いくつかの実施形態では、固有の導電率を有する炭素質添加剤を、電気デバイスで使用することを意図したエアロゲル組成物中の不透明化剤として使用することができる。それらのような実施形態では、導電性炭素質添加剤は、電気デバイスで使用するのに適した絶縁耐力を有する組成物を与えるように、パーコレーション閾値を下回る濃度で使用されることができる。
【0084】
エアロゲル組成物は、1つ以上の火災クラス添加剤を含むことができる。本開示の文脈内で、「火災クラス添加剤」という用語は、火災に対する反応の文脈では吸熱効果を有し、エアロゲル組成物に組み込まれることができる材料を指す。さらに特定の実施形態では、火災クラス添加剤は、火災クラス添加剤が存在するエアロゲル組成物の熱分解(T
d)の開始よりも高い100℃以下の吸熱分解(E
D)の開始を有し、また特定の実施形態では、火災クラス添加剤が存在するエアロゲル組成物のT
dよりも低い50℃以下のE
Dの開始も有する。換言すれば、火災クラス添加剤のE
Dは、(T
d-50℃)~(T
d+100℃)の範囲を有する:
【数1】
【0085】
ゾル(例えば、従来技術で理解されるような様々な方法でアルキルシリケートまたは水ガラスから調製されたシリカゾル)による取り込みまたはゾルとの混合の前に、それと同時に、またはさらにはそれに続いて、火災クラス添加剤を、エタノール及び任意選択で最大10vol%の水を含む媒体と混合する、またはその他の方法で媒体中に分散させることができる。混合物を、必要に応じて混合し、及び/または撹拌し、媒体中の添加剤の実質的に均一な分散を達成し得る。理論に拘束されることなく、上記に参照された粘土の水和形態及び他の火災クラス添加剤を利用すると、さらなる吸熱効果が得られる。例えば、ハロイサイト粘土(Applied Minerals,Inc.から商標名DRAGONITEで、またはImerysから単にハロイサイトとして市販されている)、カオリナイト粘土は、水和形態では水和水を昇温で放出すること(ガス希釈)によって吸熱効果を有するケイ酸アルミニウム粘土である。別の例として、水和形態での炭酸塩は、加熱または昇温で二酸化炭素を放出することができる。
【0086】
最終強化エアロゲル組成物を参照する場合、添加剤の量は、一般的には、最終強化エアロゲル組成物の重量パーセントと呼ばれる。最終強化エアロゲル組成物中の添加剤の量は、強化エアロゲル組成物の約1重量%~約50重量%、約1重量%~約25重量%、または約10重量%~約25重量%まで変動し得る。例示的な実施形態では、最終強化エアロゲル組成物中の添加剤の量は、強化エアロゲル組成物の約10重量%~約20重量%の範囲内である。例示的な実施形態では、最終強化エアロゲル組成物中の添加剤の量は、組成物の重量パーセントとして、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、または前述のパーセントのいずれかの間の範囲内である。特定の実施形態では、最終強化エアロゲル組成物中の添加剤の量は、強化エアロゲル組成物の約15重量%である。特定の実施形態では、最終強化エアロゲル組成物中の添加剤の量は、強化エアロゲル組成物の約13重量%である。例えば、炭化ケイ素のような添加剤を含むいくつかの好ましい実施形態では、エアロゲル組成物中に存在する添加剤の総量は、強化エアロゲル組成物の約10~20重量%、例えば約15重量%である。別の例として、添加剤が炭化ケイ素を含むいくつかの好ましい実施形態では、エアロゲル組成物中に存在する添加剤の総量は、強化エアロゲル組成物の約3~5重量%、例えば約4重量%である。
【0087】
複合断熱材及びその調製
本明細書において、金属酸化物マトリックス(例えば、エアロゲルマトリックス)、不透明化化合物、及び任意にポリマー結合剤を含む繊維材料を含む非可撓性複合断熱材が提供され、非可撓性複合断熱材は、繊維材料で強化されている。
【0088】
本明細書に開示の複合断熱材は、あらゆるタイプの予備電池(例えば、熱電池、液体オキシハライド電池)の安全性を向上させるために、密度、エアロゲル繊維比、添加剤含有量、及びエアロゲルの化学的性質に従って最適化された。
【0089】
非可撓性複合断熱材中の添加剤の量は、複合断熱材中の金属酸化物含有量の約40重量%~約80重量%、約40重量%~約70重量%、または約40重量%~約60重量%で変動し得る。例示的な実施形態では、金属酸化物含有量の重量パーセントとしての非可撓性複合断熱材中の添加剤の量は、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、または上述のパーセンテージのいずれかの間の範囲内である。例えば、炭化ケイ素などの添加剤を含むいくつかの好ましい実施形態では、非可撓性複合断熱材中に存在する添加剤の総量は、金属酸化物マトリックスの約40重量%である。特定の実施形態では、添加剤は、複数の種類であってよい。1つ以上の火災クラス添加剤が、非可撓性複合断熱材中に存在していてもよい。ケイ酸アルミニウム火災クラス添加剤を含むいくつかの好ましい実施形態では、添加剤は、非可撓性複合断熱材中に金属酸化物含有量に対して約60~80重量%で存在する。
【0090】
非可撓性複合断熱材は、通常、約0.20g/ccを超える密度及び約10,000psiを超える曲げ弾性率を有する。例えば、非可撓性複合断熱材の密度は、約0.20g/cc~約1.2g/ccの範囲、具体的には、約0.20g/cc~約0.80g/ccの範囲、より具体的には、約0.20g/cc~約0.60g/ccの範囲とし得る。
【0091】
金属酸化物マトリックス(例えば、繊維材料が埋め込まれて強化されたエアロゲルマトリックス)を含む非可撓性複合断熱材が本明細書で提供され、繊維材料が、任意に、ポリマー結合剤を含み、不透明化化合物が、金属酸化物マトリックス全体に分散されている。いくつかの実施形態では、非可撓性複合断熱材は、約10,000psiを超える曲げ弾性率を有し、不透明化化合物は、複合断熱材内の金属酸化物含有量に対して約40重量%を超えて存在する。
【0092】
いくつかの実施形態では、繊維材料のほとんど全部または一部が、金属酸化物マトリックス内でx-y平面に沿って整列している。一実施形態では、繊維材料のほとんど全部または一部が、非可撓性複合断熱材の厚さ方向に対して垂直に整列している。別の実施形態では、繊維材料のほとんど全部または一部が、非可撓性複合断熱材の厚さ方向と平行に整列している。1つ以上の実施形態では、非可撓性複合断熱材の厚さ方向は、z軸方向である。
【0093】
いくつかの実施形態では、繊維材料のほとんど全部または一部が、金属酸化物マトリックス内でランダムに整列している。
【0094】
本明細書に開示の非可撓性複合断熱材は、繊維強化エアロゲル複合材を熱処理(例えば、低酸素雰囲気または空気雰囲気中での焼成)に暴露すること;及び/またはエアロゲル複合材を機械的に圧縮することにより得ることができる。理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載のエアロゲル複合材の物理化学的特性及び/または機械的特性の一部または全部は、熱処理及び/または圧縮により変化し得る。いくつかの例では、本開示の非可撓性複合断熱材の多孔性、例えば、孔径、空隙率、密度、熱伝導率、及び/または曲げ弾性率は、焼成及び/または圧縮を受けていない実質的に同じ組成を有する繊維強化エアロゲル複合材のものとは異なる可能性がある。
【0095】
いくつかの実施形態では、非可撓性複合断熱材の密度は、焼成及び/または圧縮を受けていない強化エアロゲル複合材の密度よりも約5~100倍高い。
【0096】
いくつかの実施形態では、600℃でのエアロゲル複合材の熱伝導率は、実質的に同じ組成を有する非圧縮強化エアロゲル複合材と比較して実質的に変化しない。
【0097】
いくつかの実施形態では、本開示の複合断熱材は、有機部分を実質的に欠いている。
【0098】
いくつかの実施形態では、本開示の複合断熱材は、機械的に圧縮された材料である。
【0099】
例示的な実施形態では、複合断熱材は、約0.02mm~約10mmの範囲の厚さを有する。例えば、複合材は、約0.5mm~約10mmの範囲の厚さを有し得る。別の例として、複合材は、約0.5mm~約5mmの範囲の厚さを有し得る。別の例として、複合材は、約2mmの厚さ、約3mmの厚さ、または約4mmの厚さを有し得る。
【0100】
非可撓性複合断熱材の調製方法が本明細書で提供され、方法は、以下を含む:金属酸化物マトリックス、不透明化化合物、及び任意にポリマー結合剤を含む繊維材料を含む、強化エアロゲル複合材を提供すること;低酸素雰囲気または空気雰囲気中でエアロゲル複合材を熱処理に暴露すること(熱処理は、500℃~700℃の1つ以上の温度に暴露することを含む);ならびに、エアロゲル複合材を機械的に圧縮し、それにより、非可撓性複合断熱材を調製すること。いくつかの実施形態では、エアロゲル複合材の密度は、最大10~100倍増加する。
【0101】
いくつかの実施形態では、室温、100℃、200℃、300℃、400℃、500℃、及び600℃の非可撓性複合断熱材の熱伝導率は、実質的に同じ組成を有する非圧縮強化エアロゲル複合材と比較して実質的に変化しない。
【0102】
特定の実施形態では、本開示の非可撓性複合断熱材は、熱分解の開始が、約300℃以上、約320℃以上、約340℃以上、約360℃以上、約380℃以上、約400℃以上、約420℃以上、約440℃以上、約460℃以上、約480℃以上、約500℃以上、約550℃以上、約600℃以上、またはこれらの値の任意の2つの範囲内である。
【0103】
いくつかの実施形態では、熱処理の合計時間は、1分~360分、好ましくは、1分~120分である。いくつかの実施形態では、熱処理は、3分~50分、または5分~45分の範囲である。
【0104】
いくつかの実施形態では、エアロゲル複合材は、本開示の複合断熱材を形成するために、体積の80%未満で圧縮される。いくつかの実施形態では、エアロゲル複合材は、約1000psi~約10,000psiの圧力下で圧縮される。
【0105】
非可撓性複合断熱材の製造方法が本明細書で提供され、方法は、以下を含む:キャスト表面及び平面キャストフレームを提供すること(キャストフレームの内側境界が、キャスト表面上のキャスト領域を取り囲む);ゾルゲル溶液を提供すること;繊維材料をキャスト領域に配置すること;キャスト領域内でゾルゲル溶液を繊維材料と混合すること;ゾルゲル溶液をゲル材料に移行させ、それにより、強化ゲルを形成すること;強化ゲル組成物を乾燥させて、強化エアロゲル複合材を生成すること;低酸素雰囲気または空気雰囲気中で、強化エアロゲル複合材を、300℃~700℃、好ましくは、500℃~700℃の処理に加熱すること;ならびに、エアロゲル複合材を約1000psi~約10,000psiで機械的に圧縮し、それにより、非可撓性複合断熱材を調製すること。いくつかの実施形態では、ゾルゲル溶液は、TEOS及び/またはMTESを含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、乾燥は、超臨界流体を含む。いくつかの実施形態では、乾燥ステップは、二酸化炭素を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、低酸素雰囲気または空気雰囲気は、0.1体積%~5体積%の酸素を含む。
【0108】
熱電池への複合断熱材の使用
本開示は、本明細書に開示の非可撓性複合断熱材を含む熱電池を提供する。
【0109】
本開示の複数の実施形態によれば、熱電池の性能及び動作寿命は、本明細書で提供される非可撓性複合断熱材を組み込むことにより増加する可能性がある。
【0110】
熱電池は、適切な電池筐体内に複数のスタックされた電気化学セルを含む。
図2Bは、例示的な電池筐体500を示す。電池筐体は、熱電池などの予備電池を収容する。筐体は、金属、金属合金、またはそれらの組み合わせであり得る。好適な金属の非限定例としては、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、ニッケルメッキ鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、容器は、プレート、ブレード、グリッド、またはパネルの形態または形状を有する。いくつかの実施形態では、筐体は、円筒形を有する。
【0111】
熱電池のセルスタックは、
図2A及び
図2Bに示される複数層の柔軟な可撓性のある断熱ブランケットで包むことにより、熱損失に対し断熱され得る。次に、断熱セルスタックは、電池筐体500に挿入され、密封される。本開示の断熱材は、電池筐体500(電池容器)の内面510、外面520、または内面510と外面520の両方を覆い得る。
【0112】
電池筐体は、開放上部または閉鎖上部を含み得る。電池容器500は、開放底部または閉鎖底部も含み得る。1つ以上の端部(上端または下端)が開放されている場合、カバーは、端部530及び540上に含まれ得、これは、1つ以上の金属を含み得る。
図3Aに示される本開示の例示的な剛性複合断熱材は、エンドカバーの1つ以上の表面(内側及び外側)を覆い得る。
【0113】
複合断熱材は、単層として、または多層のスタックアップとして適用される。スタックアップは、各層に異なる密度及び/または組成を用いることができる。
【0114】
複合断熱材は、任意の方法、例えば、噴霧、圧延、キャスティング、または塗装などで電池容器に適用され、これは、硬質コーティング、実質的に硬質のコーティング、または剛性コーティングを提供する。
【0115】
複合断熱材は、1つ以上の層を含み得る。層は、同じでも異なってもよい。例えば、1つの層は、本技術の複合断熱材であり得、別の層は、セラミック層であり得る。他の層は、少なくとも約2600°F(1426℃)または約3450°F~約4980°F(約1900℃~約2750℃)の範囲内の融点を有する材料から選択することができる。
【0116】
熱電池に加えて、本明細書に開示の複合断熱材は、他の種類の予備電池、例えば、液体オキシハライド電池の電池筐体に適している。液体オキシハライド予備電池における様々な問題は、本明細書に開示の複合断熱材で解決することができる。
【0117】
本開示の実施形態による複合断熱材は、限定されないが熱電池の内側エンドキャップに適合する形状を含む、様々な最終製品に形成することができる。最も単純な構成では、複合断熱材は、シート、パネル、またはディスクの形態をとり得る。シートは、例えば、ロール製品として、連続的または半連続的に形成することができ、または、所望のサイズ及び形状のシートをより大きなシートから切断するかまたは他の方法で形成することができる。いくつかの実施形態では、シート材料は、内側エンドキャップ断熱材を形成するために使用することができる。いくつかの実施形態では、シート材料は、電池セル間に熱障壁を形成するために使用することができる。他の構成では、複合断熱材は、例えば、電池のパウチセルを収容するためにパウチに形成する、または円筒形電池セルを収容するために円筒に形成することができる。
【0118】
本開示の複合断熱材は、パネル、パイププリフォーム、ハーフシェルプリフォーム、エルボ、ジョイント、パウチ、シリンダー、ならびに断熱材の工業及び商業用途への適用において通常必要とされる他の形状を含む、様々な三次元形状に成形され得る。一実施形態では、複合断熱材は、ゲル前駆体材料が注入される前に、所望の形状に形成される。
【0119】
本開示の複合断熱材は、5mm未満の平均厚さ及び10%未満の厚さのばらつきを有し得る。
【0120】
上述のように、電池容器及び任意のエンドカバーは、金属または金属合金で作ることができる。好適な金属の非限定例としては、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、ニッケルメッキ鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0121】
方法/手法/結果
本開示の非可撓性複合断熱材は、低い熱伝導率、良好な機械的完全性、及び取り扱い性を有する。この複合材は、設置中及び使用中の相当量の圧縮力に耐えるように設計された。
【0122】
本開示の非可撓性複合断熱材は、繊維の種類、エアロゲル繊維比、添加剤含有量、焼成温度、及び圧縮後の層間剥離の可能性を考慮することにより設計される。本開示に従って作製された材料は、RS-DR及びZircal-45などの現在市販されている材料よりも利点がある。例えば、本技術の断熱材は、より良好な取り扱い性を有しながら、RS-DR及びZircal-45と比較して、600℃での熱伝導率が低い。
【0123】
本明細書に開示される複合断熱材は、密度、エアロゲル繊維比、添加剤含有量、及びエアロゲルの化学的性質に従って、電池セルアセンブリへの悪影響を最小限に抑え、最も予測可能であるように最適化された。例えば、本明細書に開示される非可撓性複合断熱材を調製するために使用されるエアロゲル繊維比及び添加剤含有量は、約0.20g/cc~約1.0g/ccの範囲の密度を有する複合断熱材をもたらした。非可撓性複合断熱材中の添加剤(例えば、不透明化剤及び/または火災クラス添加剤)の量は、複合断熱材内の金属酸化物含有量と比較して約40重量%以上であり得る。
【0124】
図4は、既存の耐火セラミックエンドキャップ断熱材(ZIRCAR Refractory Composites,Inc.から入手可能なRS-DR及びRS-200)に対する、電池プロトタイプ用の本明細書に開示される例示的な複合断熱材の応力-歪曲線を示す(約0.20g/cc~約1.2g/ccの範囲の様々な密度を有するECI-A、B、及びC)。例示的な複合断熱材の機械的性能を試験する前に、ECI-A、B、及びCを異なる圧力下で圧縮して、それぞれ、3.8mm、0.9mm、及び0.9mmの材料の厚さを得た。
【0125】
例示的な複合断熱材としては、約40重量%のシリカのシリカエアロゲル(TEOS/MTES)、Quartzelガラス繊維強化材、及び炭化ケイ素が挙げられる。材料を4~5mmの厚さでキャストした。既存の断熱材に合わせて、約4.2mm、約1.0mm、及び約1.0mm~約4.2mmの最終的な厚さを達成するように材料を設計した(
図2A、
図2B、
図3A、
図3B、及び
図4)。例示的な複合断熱材は、さらに、2つのクラスに分類することができ:1つは、1,000psiで事前圧縮され、もう1つは、約10,000psiで圧縮される。複合断熱材候補の機械的期待値を満たすことに加えて、熱伝導性能は、RS-DR及びZircal-45などの既存の材料よりも大幅に低い。
図5は、100℃~700℃の様々な温度に対する4つの例示的な複合断熱材(0.48g/cc、0.45g/cc、0.26g/cc、及び0.29g/ccの密度を有する)の熱伝導率を示す。本開示の複数の実施形態による、
図5に提示される4つの複合断熱材を、異なる圧力(6400psi、7900psi、800psi、1400psi)下で圧縮して、熱伝導率の測定前に、それぞれ、3.1mm、1.4mm、4.1mm、及び2.0mmの材料厚さを得る。
図5に示される例示的な材料の熱伝導率は、600℃で60mW/m-K未満である。比較のために、RS-DRは、熱伝導率(TC)が600℃で649mW/m-Kであり、Zircal-45は、TCが同じ温度で117mW/m-Kである。
【0126】
調製された非可撓性複合断熱材を、エンドキャップ断熱として必要なプロトタイプの寸法に機械加工し、電池構造内に設置して試験した。約1mm及び4.2mmの厚さを有する本開示の非可撓性複合断熱材をプロトタイプの構築に使用し、試験した。事前に調整された117°Fの温度で約50分間、開回路評価を実施した。ユニットを開き、断熱材の品質を評価した。本明細書に開示される複合断熱材を含有する全てのユニットについて、損傷、亀裂、または剥離の兆候は観察されなかった。
【0127】
例示的な実施形態を説明する際、明確にするために、特定の用語が使用される。説明の目的のために、それぞれの特定の用語は、少なくとも、同様の目的を達成するために同様の方法で動作する全ての技術的及び機能的等価物を含むことが意図される。さらに、特定の例示的な実施形態が複数の系の要素、装置の構成要素または方法のステップを含むいくつかの場合では、それらの要素、構成要素、またはステップは、単一の要素、構成要素、またはステップと置き換えられ得る。同様に、単一の要素、構成要素、またはステップは、同じ目的を果たす複数の要素、構成要素、またはステップと置き換えられ得る。さらに、例示的な実施形態をその特定の実施形態を参照して示され、記載されているが、当業者らであれば、本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において様々な置き換え及び変更が行われ得ることを理解するであろう。さらに、他の実施形態、機能、及び利点も本開示の範囲内にある。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0127
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0127】
例示的な実施形態を説明する際、明確にするために、特定の用語が使用される。説明の目的のために、それぞれの特定の用語は、少なくとも、同様の目的を達成するために同様の方法で動作する全ての技術的及び機能的等価物を含むことが意図される。さらに、特定の例示的な実施形態が複数の系の要素、装置の構成要素または方法のステップを含むいくつかの場合では、それらの要素、構成要素、またはステップは、単一の要素、構成要素、またはステップと置き換えられ得る。同様に、単一の要素、構成要素、またはステップは、同じ目的を果たす複数の要素、構成要素、またはステップと置き換えられ得る。さらに、例示的な実施形態をその特定の実施形態を参照して示され、記載されているが、当業者らであれば、本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において様々な置き換え及び変更が行われ得ることを理解するであろう。さらに、他の実施形態、機能、及び利点も本開示の範囲内にある。
本発明に関連する発明の実施形態の一部を以下に示す。
[実施形態1]
非可撓性複合断熱材であって、金属酸化物マトリックス、不透明化化合物、及び任意にポリマー結合剤を含む繊維材料を含み、前記非可撓性複合断熱材が、前記繊維材料で強化されており、前記非可撓性複合断熱材が、約0.20g/ccを超える密度及び約10,000psiを超える曲げ弾性率を有する、前記非可撓性複合断熱材。
[実施形態2]
非可撓性複合断熱材であって、繊維材料が埋め込まれて強化された金属酸化物マトリックスを含み、前記繊維材料が、任意に、ポリマー結合剤を含み、不透明化化合物が、前記金属酸化物マトリックス全体に分散されており、前記非可撓性複合断熱材が、約0.20g/ccを超える密度を有し、前記不透明化化合物が、前記複合断熱材内の金属酸化物含有量に対して約40重量%を超えて存在する、前記非可撓性複合断熱材。
[実施形態3]
前記繊維材料のほぼ全部または一部が、前記金属酸化物マトリックスの厚さ方向に対して垂直に整列している、実施形態2に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態4]
前記金属酸化物が、シリカ、アルミナ、チタニア、セリア、イットリア、バナジア、またはそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態5]
前記金属酸化物マトリックスが、シリカを含む、実施形態4に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態6]
前記金属酸化物が、圧縮エアロゲルマトリックスである、実施形態1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態7]
前記不透明化化合物が、B4C、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、Ag
2
O、Bi
2
O
3
、TiC、WC、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄チタン、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(I)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、酸化鉄チタン(イルメナイト)、酸化クロム、炭化ケイ素、またはそれらの混合物から選択される、実施形態1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態8]
前記不透明化化合物が、炭化ケイ素である、実施形態7に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態9]
前記繊維層が、有機ポリマー系繊維、無機繊維、炭素系繊維、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態10]
前記無機繊維が、ガラス繊維、岩石繊維、金属繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、バサルト繊維、またはそれらの組み合わせから選択される、実施形態9に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態11]
前記無機繊維が、ガラス繊維を含む、実施形態10に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態12]
前記ガラス繊維が、シリカ系ガラス繊維である、実施形態11に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態13]
前記繊維層が、短繊維、織物材料、不織材料、マット、フェルト、中綿、ロフティ中綿、チョップドファイバー、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態14]
前記ポリマー結合剤が、ポリビニルアルコールを含む、実施形態1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態15]
10mm未満の平均厚さ及び10%未満の厚さのばらつきを有する、実施形態1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態16]
600℃で約60mW/m・K以下の熱伝導率を有する、実施形態1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態17]
約0.20g/cc~約1.0g/ccの範囲の密度を有する、実施形態1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態18]
約10,000psi~約100,000psiの範囲の曲げ弾性率を有する、実施形態1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態19]
前記複合材が、有機部分を実質的に欠いている、実施形態1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態20]
前記複合材が、機械的に圧縮された材料である、実施形態1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態21]
前記不透明化化合物が、前記複合断熱材内の金属酸化物含有量に対して約40重量%~約60重量%の範囲で存在する、実施形態1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
[実施形態22]
先行実施形態のいずれか1項に記載の非可撓性複合断熱材を含む、熱電池。
[実施形態23]
熱電池の性能を改善する方法であって、先行実施形態のいずれか1項に記載の非可撓性複合断熱材を前記熱電池に組み込むことを含む、前記方法。
[実施形態24]
非可撓性複合断熱材を調製する方法であって、
a.金属酸化物マトリックス、不透明化化合物、及び任意にポリマー結合剤を含む繊維材料を含む、強化エアロゲル複合材を提供すること、
b.低酸素雰囲気または空気雰囲気中で前記エアロゲル複合材を熱処理に暴露することであって、前記熱処理は、500℃~700℃の間の1つ以上の温度に暴露することを含む、前記暴露すること;ならびに
c.前記繊維材料の主方向に対して垂直な方向に前記エアロゲル複合材を機械的に圧縮し、それにより、前記非可撓性複合断熱材を調製すること
を含む、前記方法。
[実施形態25]
前記非可撓性複合断熱材の密度が、前記強化エアロゲル複合材の密度よりも約5~100倍高い、実施形態24に記載の方法。
[実施形態26]
600℃における前記非可撓性複合断熱材の前記熱伝導率が、実質的に同じ組成を有する非圧縮強化エアロゲル複合材と比較して実質的に変化しない、実施形態24に記載の方法。
[実施形態27]
前記熱処理の合計時間が、1分~120分である、実施形態24に記載の方法。
[実施形態28]
前記エアロゲル複合材が、体積の80%未満で圧縮される、実施形態24に記載の方法。
[実施形態29]
前記エアロゲル複合材が、約500psi~約10,000psiの圧力下で圧縮される、実施形態24に記載の方法。
[実施形態30]
前記金属酸化物マトリックスが、シリカを含む、実施形態24に記載の方法。
[実施形態31]
前記金属酸化物マトリックスが、圧縮エアロゲルマトリックスである、実施形態24に記載の方法。
[実施形態32]
前記不透明化化合物が、前記非可撓性複合断熱材内の金属酸化物含有量に対して約40重量%~約60重量%の範囲で存在する、実施形態24に記載の方法。
[実施形態33]
非可撓性複合断熱材を製造する方法であって、
a.キャスト表面及び平坦なキャストフレームを提供することであって、前記キャストフレームの内側境界が、前記キャスト表面上のキャスト領域を取り囲む、前記提供すること、
b.ゾルゲル溶液を提供すること、
c.前記ゾルゲル溶液を不透明化化合物と組み合わせること、
d.前記繊維材料を前記キャスト領域に配置すること、
e.前記ゾルゲル溶液を前記キャスト領域内の前記繊維材料と混合すること、
f.前記ゾルゲル溶液をゲル材料に移行させ、それにより、強化ゲルを形成すること、
g.前記強化ゲル組成物を乾燥させて、強化エアロゲル複合材を生成すること、
h.低酸素雰囲気または空気雰囲気中で、前記強化エアロゲル複合材を500℃~700℃の処理に加熱すること、ならびに
i.前記エアロゲル複合材を、約500psi~約10,000psi下で機械的に圧縮し、それにより、前記非可撓性複合断熱材を調製すること
を含む、前記方法。
[実施形態34]
前記ゾルゲル溶液が、TEOS及び/またはMTESを含む、実施形態33に記載の方法。
[実施形態35]
前記低酸素雰囲気が、5体積%未満の酸素を含む、実施形態33に記載の方法。
[実施形態36]
前記乾燥が、二酸化炭素を含む、実施形態33に記載の方法。
[実施形態37]
前記非可撓性複合断熱材が、約0.20g/cc~約1.0g/ccの範囲の密度を有する、実施形態24または実施形態33に記載の方法。
[実施形態38]
前記非可撓性複合断熱材が、約10,000psi~約100,000psiの範囲の曲げ弾性率を有する、実施形態24または実施形態33に記載の方法。
[実施形態39]
前記不透明化化合物が、前記非可撓性複合断熱材内の金属酸化物含有量に対して約40重量%~約60重量%の範囲で存在する、実施形態33に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非可撓性複合断熱材であって、金属酸化物マトリックス、不透明化化合物、及び任意にポリマー結合剤を含む繊維材料を含み、前記非可撓性複合断熱材が、前記繊維材料で強化されており、前記非可撓性複合断熱材が、約0.20g/ccを超える密度及び約10,000psiを超える曲げ弾性率を有する、前記非可撓性複合断熱材。
【請求項2】
非可撓性複合断熱材であって、繊維材料が埋め込まれて強化された金属酸化物マトリックスを含み、前記繊維材料が、任意に、ポリマー結合剤を含み、不透明化化合物が、前記金属酸化物マトリックス全体に分散されており、前記非可撓性複合断熱材が、約0.20g/ccを超える密度を有し、前記不透明化化合物が、前記複合断熱材内の金属酸化物含有量に対して約40重量%を超えて存在する、前記非可撓性複合断熱材。
【請求項3】
前記繊維材料のほぼ全部または一部が、前記金属酸化物マトリックスの厚さ方向に対して垂直に整列している、請求項2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項4】
前記金属酸化物が、シリカ、アルミナ、チタニア、セリア、イットリア、バナジア、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項5】
前記金属酸化物マトリックスが、シリカを含む、請求項4に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項6】
前記金属酸化物が、圧縮エアロゲルマトリックスである、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項7】
前記不透明化化合物が、B4C、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、Ag
2O、Bi
2O
3、TiC、WC、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄チタン、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(I)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、酸化鉄チタン(イルメナイト)、酸化クロム、炭化ケイ素、またはそれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項8】
前記不透明化化合物が、炭化ケイ素である、請求項7に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項9】
前記繊維層が、有機ポリマー系繊維、無機繊維、炭素系繊維、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項10】
前記無機繊維が、ガラス繊維、岩石繊維、金属繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、バサルト繊維、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項9に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項11】
前記無機繊維が、ガラス繊維を含む、請求項10に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項12】
前記ガラス繊維が、シリカ系ガラス繊維である、請求項11に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項13】
前記繊維層が、短繊維、織物材料、不織材料、マット、フェルト、中綿、ロフティ中綿、チョップドファイバー、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項14】
前記ポリマー結合剤が、ポリビニルアルコールを含む、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項15】
10mm未満の平均厚さ及び10%未満の厚さのばらつきを有する、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項16】
600℃で約60mW/m・K以下の熱伝導率を有する、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項17】
約0.20g/cc~約1.0g/ccの範囲の密度を有する、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項18】
約10,000psi~約100,000psiの範囲の曲げ弾性率を有する、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項19】
前記複合材が、有機部分を実質的に欠いている、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項20】
前記複合材が、機械的に圧縮された材料である、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項21】
前記不透明化化合物が、前記複合断熱材内の金属酸化物含有量に対して約40重量%~約60重量%の範囲で存在する、請求項1または2に記載の非可撓性複合断熱材。
【請求項22】
請求項1又は2に記載の非可撓性複合断熱材を含む、熱電池。
【請求項23】
熱電池の性能を改善する方法であって、
請求項1又は2に記載の非可撓性複合断熱材を前記熱電池に組み込むことを含む、前記方法。
【請求項24】
非可撓性複合断熱材を調製する方法であって、
a.金属酸化物マトリックス、不透明化化合物、及び任意にポリマー結合剤を含む繊維材料を含む、強化エアロゲル複合材を提供すること、
b.低酸素雰囲気または空気雰囲気中で前記エアロゲル複合材を熱処理に暴露することであって、前記熱処理は、500℃~700℃の間の1つ以上の温度に暴露することを含む、前記暴露すること;ならびに
c.前記繊維材料の主方向に対して垂直な方向に前記エアロゲル複合材を機械的に圧縮し、それにより、前記非可撓性複合断熱材を調製すること
を含む、前記方法。
【請求項25】
前記非可撓性複合断熱材の密度が、前記強化エアロゲル複合材の密度よりも約5~100倍高い、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
600℃における前記非可撓性複合断熱材の前記熱伝導率が、実質的に同じ組成を有する非圧縮強化エアロゲル複合材と比較して実質的に変化しない、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記熱処理の合計時間が、1分~120分である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記エアロゲル複合材が、体積の80%未満で圧縮される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記エアロゲル複合材が、約500psi~約10,000psiの圧力下で圧縮される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記金属酸化物マトリックスが、シリカを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記金属酸化物マトリックスが、圧縮エアロゲルマトリックスである、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記不透明化化合物が、前記非可撓性複合断熱材内の金属酸化物含有量に対して約40重量%~約60重量%の範囲で存在する、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
非可撓性複合断熱材を製造する方法であって、
a.キャスト表面及び平坦なキャストフレームを提供することであって、前記キャストフレームの内側境界が、前記キャスト表面上のキャスト領域を取り囲む、前記提供すること、
b.ゾルゲル溶液を提供すること、
c.前記ゾルゲル溶液を不透明化化合物と組み合わせること、
d.前記繊維材料を前記キャスト領域に配置すること、
e.前記ゾルゲル溶液を前記キャスト領域内の前記繊維材料と混合すること、
f.前記ゾルゲル溶液をゲル材料に移行させ、それにより、強化ゲルを形成すること、
g.前記強化ゲル組成物を乾燥させて、強化エアロゲル複合材を生成すること、
h.低酸素雰囲気または空気雰囲気中で、前記強化エアロゲル複合材を500℃~700℃の処理に加熱すること、ならびに
i.前記エアロゲル複合材を、約500psi~約10,000psi下で機械的に圧縮し、それにより、前記非可撓性複合断熱材を調製すること
を含む、前記方法。
【請求項34】
前記ゾルゲル溶液が、TEOS及び/またはMTESを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記低酸素雰囲気が、5体積%未満の酸素を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記乾燥が、二酸化炭素を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記非可撓性複合断熱材が、約0.20g/cc~約1.0g/ccの範囲の密度を有する、請求項24または請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記非可撓性複合断熱材が、約10,000psi~約100,000psiの範囲の曲げ弾性率を有する、請求項24または請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記不透明化化合物が、前記非可撓性複合断熱材内の金属酸化物含有量に対して約40重量%~約60重量%の範囲で存在する、請求項33に記載の方法。
【国際調査報告】