(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】治療抵抗性うつ病を含むうつ病の治療のための2-フルオロデスクロロケタミン
(51)【国際特許分類】
A61K 31/13 20060101AFI20241010BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20241010BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61K31/13
A61P25/24
A61K45/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520807
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 IB2022060011
(87)【国際公開番号】W WO2023067505
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524126482
【氏名又は名称】クリアマインド・メディシン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CLEARMIND MEDICINE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ゴラン,エゼキエル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA52
4C084MA59
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA12
4C084ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA29
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA79
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA12
4C206ZC75
(57)【要約】
治療抵抗性うつ病の治療のための方法および組成物が記載される。より詳細には、本発明は、2-フルオロデスクロロケタミン(2-FDCK)の投与が、うつ病を治療するため、特に、治療抵抗性うつ病を治療するために有効であることを実証する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
うつ病、任意には、難治性または治療抵抗性うつ病を治療する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の2-フルオロジクロロケタミン(2-FDCK)を投与することを含む方法。
【請求項2】
2-FDCKが、約0.01mg/kg~約1.5mg/kgの範囲の量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2-FDCKが、約0.2mg/kg~約0.5mg/kgの範囲の量で投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
2-FDCKが、約0.01mg~約1000mgの範囲の量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
2-FDCKが、約1mg~約100mgの範囲の量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
2-FDCKが、組成物の一部を形成し、該組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
組成物が、静脈内投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
組成物が、鼻腔内投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
組成物が、経口投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
2-FDCKが、単位剤形組成物で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
2-FDCKが、1mg~1,000mgの範囲の単位剤形である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの抗うつ薬を投与することをさらに含む、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの抗うつ薬が、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、三環系化合物、セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニンノルアドレナリン作動性再取り込み阻害剤;ノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性薬剤および非定型抗うつ薬からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの抗うつ薬が、イミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、ノルトリプチリン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、マプロチリン、アモキサピン、トラゾドン、ブプロピオン、クロミプラミン、フルオキセチン、デュロキセチン、エスシタロプラム、シタロプラム、セルトラリン、パロキセチン、フルボキサミン、ネファザドン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、レボキセチン、リチウム、ミルタザピン、フェネルジン、トラニルシプロミン、モクロベミド、カヴァ-カヴァ、セントジョーンズワート、S-アデノシルメチオニン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、ニューロキニン受容体拮抗薬およびトリヨードチロニンからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの抗うつ薬が、フェネルジン、トラニルシプロミン、モクロベミド、イミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、ノルトリプチリン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、クロミプラミン、アモキサピン、フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、フルボキサミン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、ミルタザピンおよびブプロピオンからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
2-FDCKが、自己投与または専門家の指示の下で投与される、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
2-FDCK、任意に少なくとも1つの抗うつ薬、および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、請求項1~16のいずれかに記載の方法における使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月18日出願の「治療抵抗性うつ病を含むうつ病の治療のための2-フルオロデスクロロケタミン」と題する米国仮出願第63/256,728号に対する優先権を主張する。本出願はまた、米国特許法365条(c)の下に、2013年3月15日出願の米国特許出願第13/837,539号に対する優先権および利益を主張する。上記各出願の開示の全体は、参照することにより本出願に組み込まれる。
技術分野
本発明は、うつ病を治療するための方法および組成物に関する。より詳細には、本発明は、難治性または治療抵抗性うつ病を治療するための2-フルオロデスクロロケタミン(2-FDCK)の投与に関する。
【背景技術】
【0002】
うつ病、または大うつ病性障害(MDD)は、すべての医学的障害の中で最も障害を引き起こす病気の1つであり、生涯有病率は約17%である(Kessler et al.、Arch Gen Psychiatry. 62(6):593-602 (2005))。それは人生の早い段階で頻繁に現れ、慢性的な経過をたどり、冠状血管疾患、糖尿病、骨粗鬆症などの他の医学的病気の予後に悪影響を与える可能性がある。
【0003】
うつ病は、憂うつな気分、および活動への興味や楽しみが著しく減少することを特徴とする。その他の症状には、著しい体重減少または体重増加、食欲の低下または増加、不眠症または過眠症、精神運動性激越または遅滞、疲労またはエネルギーの喪失、無価値感または過度または不適切な罪悪感、思考力または集中力の低下または優柔不断、死について繰り返し考えること、自殺念慮、または自殺未遂が含まれる。さまざまな身体症状が現れることもある。抑うつ気分は、特に人生で挫折を経験した後によく見られるが、症状が閾値に達し、少なくとも2週間続く場合にのみうつ病障害と診断される。うつ病の重症度は、軽度から非常に重度までさまざまである。ほとんどの場合、一過性であるが、再発または慢性化する場合もある。人によっては、エピソードが1回だけで、発病前の機能に完全に戻る人もいる。しかし、最初に1つの大うつ病エピソードに苦しんだ人の50パーセント以上が、最終的には別のうつ病エピソードを発症する。
【0004】
うつ病は、男性よりも女性に多くみられる。単極性うつ病エピソードの有病率は、男性で1.9%、女性で3.2%と推定されており、12か月以内に男性の5.8%、女性の9.5%がうつ病エピソードを経験する。これらの有病率の数字は、集団によって異なり、一部の集団ではこれが高くなる場合がある。世界保健機関の調査によると、うつ病は障害を抱えながら生きる世界の主な原因であり、障害調整生存年数の第4位の主な原因であると報告されている。障害調整生存年とは、個人の生産的寿命の減少を示し、早期死亡率を考慮した尺度である(Murray et al.、Lancet. 349(9063):1436-1442 (1997))。
【0005】
うつ病の治療は、モノアミンオキシダーゼ阻害剤と三環系抗うつ薬の偶然の発見により、約半世紀前に革命を起こした。それ以来、より優れた副作用プロファイルを備えた多数の新しい薬剤が利用可能になったことにより、かなりの割合の患者を安全に治療できる我々の能力が大幅に向上した。しかしながら、新しい薬剤は主に、シナプス内のモノアミンレベルを増加させることによって主な生化学的効果を発揮することにより、既存の薬剤の効果を増強または強化するだけの薬剤である。
【0006】
残念なことに、現在のうつ病治療薬は、完全な効果が現れるまでに数週間から数か月かかり、その間、患者は症状に苦しみ続け、自傷行為や私生活や職業生活への損害の危険にさらされ続けている。実際、従来の抗うつ薬の作用発現までの数週間の遅れが大きな限界として認識されており、特に抗うつ薬を開始して最初の9日間にかなりの病的状態と高い自殺行動のリスクをもたらす(Jick et al.、Jama。292(3):338-343 (2004))。したがって、数時間または数日以内に抗うつ効果が急速に発現し、持続する薬理学的戦略は公衆衛生に多大な影響を与えるであろう。大うつ病患者は抗うつ薬治療に反応するが、一部の患者は、標準的な抗うつ薬による連続2コースの治療を受けても改善せず、いわゆる「治療抵抗性うつ病」(TRD)を患っているとみなされる。
【0007】
TRDは、おそらく複数の原因機構を有する不均一な状態を表す。TRD患者は、治療反応性MDDと同様の多様な症状、経過、病歴、および併発症状を示す。しかしながら、治療に反応する患者と反応しない患者を区別するものについてはほとんど知られていない。TRD患者と治療反応性MDD患者の病因または病態生理学がどの程度異なるかはほとんど不明のままであるが、幼少期のストレス歴が治療抵抗性を高め(Bernet et al.、Depress Anxiety. 9(4):169-74 (1999); Nanni et al.、Am J Psychiatry. 169(2):141-51 (2012); Williams et al.、Transl Psychiatry. 3; 6():e799 (2016))、TRD患者は脳回路機能に違いを示す(Dunlop et al.、Am J Psychiatry. 174(6):533-545 (2017))という報告がいくつかある。それにもかかわらず、その発症機序は不明である
【0008】
ケタミン(対応するS-およびR-エナンチオマーのラセミ混合物)は、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬であり、鎮痛、麻酔、幻覚、解離効果、血圧と気管支拡張など、ヒトに対して幅広い影響を及ぼす。ケタミンは、主に全身麻酔の導入と維持に使用される。その他の用途には、集中治療における鎮静、鎮痛(特に救急医療)および気管支けいれんの治療などがある。ケタミンは、うつ病の治療にも有効であることが示されている(特に、他の抗うつ薬治療が効かなかった患者において)。大うつ病性障害の患者において、ケタミンはさらに、2時間以内に作用する急速な抗うつ効果をもたらすことが示されている。米国食品医薬品局は、2019年、他の抗うつ薬を試したが効果がなかった成人(TRD)のうつ病の治療に、経口抗うつ薬と併用したSpravato(登録商標)(エスケタミン、S-ケタミンの表記、ケタミンの「S」エナンチオマー)点鼻薬を承認した。S-ケタミンエナンチオマーは、NMDA受容に対する効力または親和性が高いため、より低い投与量が可能になる可能性がある。しかしながら、Spravato(商標登録)の投与による鎮静および解離に起因する重篤な有害事象のリスク、および薬物の乱用および誤用の可能性があるため、リスク評価およびリスク緩和戦略(REMS)の下、米国では制限された流通システムを通じてのみ入手可能である。Spravato(登録商標)は、認定された治療センターで医療専門家の監督の下、患者自身が自己投与する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
うつ病、特に難治性または治療抵抗性うつ病患者に効果的な治療法を提供する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者は、驚くべきことに、うつ病患者の治療において、2-(2-フルオロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オン(2-FDCK)が、特にTRD 患者にとって、副作用の軽減につながる可能性がある、S-ケタミンと比較して予想外に平坦な用量反応曲線を有することを発見した。その結果、2-FDCKによるうつ病の治療は、患者の自己投与を可能にし、最終的には2-FDCKを処方薬として患者に低コストでOTCで(小売店を通して)販売できる可能性がある。
【0011】
開示の概略
本発明の1つの態様は、難治性または治療抵抗性うつ病の治療方法であって、それを必要とする患者に治療有効量の2-(2-フルオロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オン(2-FDCK)を投与することを含む方法を提供する。
【0012】
別の態様では、本開示は、難治性または治療抵抗性うつ病の治療方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の2-FDCKおよび少なくとも1つの抗うつ薬との併用療法を、薬学的に許容される担体とともに投与することを含む方法を提供する。
【0013】
いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約0.01mg/kg~約1.5mg/kgの範囲の量で投与される。他の実施態様では、2-FDCKは、約0.2mg/kg~約0.5mg/kgの範囲の量で投与される。さらに他の実施態様では、2-FDCKは、約0.01mg~約1000mgの範囲の量で投与される。さらなる実施態様では、2-FDCKは、約1mg~約100mgの範囲の量で投与される。
【0014】
いくつかの実施態様では、2-FDCKは、組成物の一部を形成し、該組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0015】
いくつかの実施態様では、組成物は、静脈内投与される。他の実施態様では、組成物は、鼻腔内投与される。他の実施態様では、組成物は、経口投与される。
【0016】
いくつかの実施態様では、2-FDCKは、単位剤形組成物で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、1mg~1,000mgの範囲の単位剤形である。
【0017】
いくつかの実施態様では、方法は、少なくとも1つの抗うつ薬を投与することをさらに含む。特定の実施態様では、少なくとも1つの抗うつ薬は、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、三環系化合物、セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニンノルアドレナリン作動性再取り込み阻害剤;ノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性薬剤および非定型抗うつ薬からなる群から選択される。特定の実施態様では、少なくとも1つの抗うつ薬は、イミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、ノルトリプチリン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、マプロチリン、アモキサピン、トラゾドン、ブプロピオン、クロミプラミン、フルオキセチン、デュロキセチン、エスシタロプラム、シタロプラム、セルトラリン、パロキセチン、フルボキサミン、ネファザドン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、レボキセチン、リチウム、ミルタザピン、フェネルジン、トラニルシプロミン、モクロベミド、カヴァ-カヴァ、セントジョーンズワート、S-アデノシルメチオニン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、ニューロキニン受容体拮抗薬およびトリヨードチロニンからなる群から選択される。さらなる特定の実施態様では、少なくとも1つの抗うつ薬は、フェネルジン、トラニルシプロミン、モクロベミド、イミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、ノルトリプチリン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、クロミプラミン、アモキサピン、フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、フルボキサミン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、ミルタザピンおよびブプロピオンからなる群から選択される。
【0018】
いくつかの実施態様では、2-FDCKは、自己投与または専門家の指示の下で投与される。
【0019】
いくつかの実施態様では、2-FDCK、任意に少なくとも1つの抗うつ薬、および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、難治性または治療抵抗性うつ病の治療のための医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
(原文に記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な記載
定義
以下の用語は、別段の記載がない限り、次の意味を有するものと理解される。
【0022】
本明細書で使用される場合、「S-ケタミン」、「S-ケタミン塩酸塩」、および「エスケタミン」という用語は、ケタミンの(S)-エナンチオマー、(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサノン塩酸塩としても知られる、式:
【化1】
で示される、その対応する塩酸塩を意味するものとする。
【0023】
本明細書で使用される場合、「2-FDCK」、「フルオロケタミン」、および「2-フルオロデスクロロケタミン」という用語は、2-(2-フルオロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オンとしても知られる、式:
【化2】
で示される化合物である、塩素基がフッで置き換えられたケタミンの類似体である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「抗うつ薬」という用語は、うつ病を治療するために使用できる任意の薬剤を意味するものとする。適切な例には、フェネルジン、トラニルシプロミン、モクロベミドなどのモノアミンオキシダーゼ阻害剤;イミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、ノルトリプチリン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、クロミプラミン、アモキサピンなどの三環系化合物;マプロチリンなどの四環系化合物;ノミフェンシンなどの非環状物質;トラゾドンなどのトリアゾロピリジン類;フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、シトラプラム、エスシトラプラム、フルボキサミンなどのセロトニン再取り込み阻害剤;ネファザドンなどのセロトニン受容体拮抗薬;ベンラファキシン、ミルナシプラン、デスベンラファキシン、デュロキセチンなどのセロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害剤;ミルタザピンなどのノルアドレナリン作動性および特定のセロトニン作動性薬剤;レボキセチン、エディボキセチンなどのノルアドレナリン再取り込み阻害剤;ブプロピオンなどの非定型抗うつ薬;リチウム、カヴァ-カヴァ,セントジョーンズワートなどの天然物;s-アデノシルメチオニンなどの栄養補助食品;および甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンなどの神経ペプチド;ニューロキニン受容体拮抗薬などの神経ペプチド受容体を標的とする化合物;ならびにトリヨードチロニンなどのホルモンが含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
「キラル」という用語は、鏡像パートナーと重ね合わせられない性質を持つ分子を示す。
【0026】
本明細書で使用される「立体異性体」という用語は、同一の化学構造を有するが、空間内の原子または基の配置に関して異なる化合物を意味する。
【0027】
本明細書で使用される「エナンチオマー」という用語は、互いに重ね合わせることができない鏡像である、化合物の2つの立体異性体を示す。エナンチオマーの50:50混合物は、ラセミ混合物またはラセミ体と呼ばれ、化学反応またはプロセスにおいて立体選択または立体特異性が存在しない場合に発生することがある。
【0028】
本明細書で使用される立体化学的定義および規則は、一般的に、S. P. Parker、Ed.、McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (1984) McGraw-Hill Book Company、New York;およびEliel、E. and Wilen、S.、Stereochemistry of Organic Compounds (1994) John Wiley & Sons、Inc.、New Yorkに従う。多くの有機化合物は光学活性な形で存在し、すなわち、それらは平面偏光の面を回転させる能力を有している。光学活性化合物を記述する際、接頭辞DとL、またはRとS は、そのキラル中心に関する分子の絶対配置を示すために使用される。接頭辞dとlまたは(+)と(-)は、化合物による平面偏光の回転の符号を指定するために使用され、(-)またはlは化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdは右旋性である。
【0029】
「ラセミ混合物」または「ラセミ体」は、光学活性を持たない、2つの鏡像異性種の等モル(または50:50) 混合物である。ラセミ混合物は、化学反応またはプロセスにおいて立体選択または立体特異性が存在しない場合に発生することがある。
【0030】
化合物がさまざまな互変異性体で存在する場合、本発明は特定の互変異性体のいずれか1つに限定されず、すべての互変異性体を包含する。
【0031】
本開示には、化合物中に存在する原子のすべての可能な同位体を有する式Iの化合物が含まれる。同位体には、原子番号は同じだが質量数が異なる原子が含まれる。一般的な例として、限定ではないが、水素の同位体には三重水素と重水素が含まれ、炭素の同位体には11C、13C、および14Cが含まれる。
【0032】
特許請求の範囲を含め、本明細書で使用される「a」、「an」、および「the」などの単数形の単語には、文脈で明確に別段の指示がない限り、対応する複数形も含まれる。
【0033】
本明細書に数値範囲が示される場合は常に、示された範囲内に引用された任意の数値(分数または整数)が含まれることを意味する。第1の表示番号と第2の表示番号の間の「範囲にわたる/範囲」という語句、および第1の表示番号から第2の表示番号までの「範囲にわたる/範囲」という表現は、本明細書では互換的に使用され、第1および第2の表示番号およびその間のすべての分数および整数を含むことを意味する。
【0034】
本明細書に開示される範囲(dimensions)および値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。代わりに、別段の指定がない限り、そのような各範囲は、列挙された値と、その値を囲む機能的に同等の範囲の両方を意味することを意図している。たとえば、「10mg」として開示されている範囲は、「約10mg」を意味するものとする。
【0035】
「約」という用語は、温度、時間、量、濃度などの数値指定の前に使用される場合、範囲を含む近似値を示し、たとえば(+)または(-)10%、5%、1%、またはその間の部分範囲または部分値ずつ変化する可能性があり、パラメーターと測定の性質に応じて異なる。いくつかの実施態様では、用量に関して使用される「約」という用語は、用量が+/-10%変動する可能性があることを意味する。値の範囲がリストされている場合、それは各値と範囲内のサブ範囲を包含することを意図している。
【0036】
「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(having)」という用語およびそれらの活用語は、「含むがこれらに限定されない」を意味する。
【0037】
「からなる」という用語は、「を含み、それに限定される」を意味する。
【0038】
特に断りのない限り、「生理食塩水」という用語は、0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液を意味する。
【0039】
本明細書で使用される「方法」という用語は、特定のタスクを達成するための方法、手段、技術および手順を示し、これには、既知の方法、手段、技術および手順、または既知の方法、手段、技術および手順から化学、薬理学、生物学、生化学および医学の専門家によって容易に開発される方法、手段、技術および手順が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
対象化合物の「投与」または「投与する」という用語は、治療を必要とする対象に、本発明の化合物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される溶媒和物、またはそれらの溶媒和物を提供することを意味する。
【0041】
本明細書で使用される「組成物」または「医薬組成物」という用語は、2-FDCKなどの少なくとも1つの化合物、またはその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つ、場合によっては2つ以上の担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、賦形剤などの他の薬学的に許容される化学成分との混合物を示す。
【0042】
本明細書で使用される「有効量」または「治療有効量」という用語は、治療対象の疾患または症状の1つまたは複数の症状をある程度軽減する、投与される2-FDCKの十分な量を示す。その結果、病気の兆候、症状、原因の軽減および/または緩和、あるいは生物学的システムのその他の望ましい変化が生じる可能性がある。たとえば、治療的使用のための「有効量」は、疾患症状の臨床的に有意な減少を提供するために必要とされる、本明細書に開示される化合物を含む組成物の量である。個々の症例における適切な「有効」量は、用量漸増研究などの技術を使用して決定されうる。
【0043】
本発明が薬剤の組み合わせによる療法に関する場合、「治療有効量」とは、組み合わされた効果が所望の生物学的または医学的反応を引き出すように合計される薬剤の組み合わせの量を意味するものとする。たとえば、2-FDCKとセロトニン再取り込み阻害剤を含む併用療法の治療有効量は、一緒にまたは連続して服用したときに治療上有効であり、相乗効果をもたらす可能性がある併用効果を有する2-FDCKの量とセロトニン再取り込み阻害剤の量であろう。さらに、治療有効量での併用療法の場合、その組合せの各成分の量は、個別に治療有効である場合もあれば、そうでない場合もあることが、当業者には認識されるであろう。
【0044】
投与される最適な用量は、当業者によって容易に決定され得、使用される特定の化合物(1つまたは複数)、投与方法、製剤の強度、および疾患状態の進行によって変化する。さらに、患者の性別、年齢、体重、食事、投与時間、および併用疾患/薬剤など、治療される特定の患者に関連する要因により、投与量を調整する必要が生じる。
【0045】
1つの実施態様では、2-FDCKは、約0.01mg~約1000mgの範囲、またはその範囲内の任意の量もしくは範囲、好ましくは約0.01mg~約500mg、またはその範囲内の任意の量もしくは範囲、好ましくは約0.1mgから約250mgの用量、またはその範囲内の任意の量または範囲で投与される。別の実施態様では、2-FDCKは、約0.01mg~約1000mgの範囲の用量で投与され、好ましくは0.01mg、0.025mg、0.05mg、0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、および500mgからなる群から選択される。
【0046】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、本明細書に記載の化合物の生物学的活性または特性を破棄しない、担体または希釈剤などの材料を示す。このような物質は、望ましくない生物学的影響を引き起こすか、またはそれが含まれる組成物の成分と有害な相互作用を起こすことなく、個体に投与される。
【0047】
本明細書で使用される「担体」という用語は、細胞または組織への2-FDCKの取り込みを促進する化合物または薬剤を示す。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語には、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(抗菌剤、防カビ剤など)、等張化剤、吸収遅延剤、塩類、保存料、薬物安定剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香料、染料など、および当業者には知られているように、それらの組み合わせが含まれる(たとえば、Remington's Pharmaceutical Sciences、18th Ed. Mack Printing Company、1990、pp. 1289-1329; Remington: The Science and Practice of Pharmacy、21st Ed. Pharmaceutical Press 2011; およびその後のバージョンを参照)。従来の担体が有効成分と不適合である場合を除き、治療用組成物または医薬用組成物におけるその使用が企図される。
【0048】
本明細書で使用される「低下した」または「低下する」または「減少する」という用語は、一般に、統計的に有意な量の減少を意味する。しかしながら、誤解を避けるため、「低下した」とは、本明細書で定義されている基準レベルと比較して少なくとも10%の減少、たとえば、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%減少を含むそれ以下(すなわち、実質的に検出されないか、検出レベル未満)の減少、あるいは基準レベルと比較して10~100%の間の任意の減少を意味する。
【0049】
本明細書で使用される場合、「標準」または「基準」という用語は、うつ病に罹患していない健康な個人など、比較のためのベースラインを定義する単純な基準でありうる。
【0050】
本明細書で使用される場合、任意の疾患または障害の「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、または「治療(treatment)」という用語は、1つの実施態様では、疾患または障害を改善すること(すなわち、疾患の進行またはその臨床症状の少なくとも1つを遅らせるか、停止させるか、または軽減すること)を示す。別の実施態様では、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、または「治療(treatment)」は、患者には認識できないものも含め、少なくとも1つの身体的パラメータを軽減または改善することを示す。さらに別の実施態様では、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、または「治療(treatment)」は、物理的に、(たとえば、認識可能な症状の安定化を通じて)、生理学的に、(たとえば、生理的パラメータの安定化を通じて)、またはその両方で、疾患または障害を調節することを示す。さらに別の実施態様では、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、または「治療(treatment)」は、疾患または障害の開始、発症、または進行を予防または遅らせることを示す。
【0051】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、治療によって生物学的、医学的、または生活の質において利益を受けるヒトなどの温血動物を示す。対象は、哺乳類および非哺乳類であり得る。哺乳類の例として、ヒト、チンパンジー、類人猿、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ;ウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、モルモットなどが挙げられるが、これらに限定されない。非哺乳類の例として、鳥類、魚類などが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施態様では、対象は、ヒトである。それは、本明細書に開示される疾患または障害の治療が必要であると診断されたヒトであってもよい。
【0052】
本明細書で使用される場合、対象が生物学的、医学的、または生活の質においてそのような治療によって利益を受ける場合、その対象はその治療を「必要としている」ということである。
【0053】
うつ病および治療抵抗性うつ病(TRD)
本明細書で使用する場合、「うつ病」または「大うつ病性障害(MDD)」という用語は、大うつ病性障害、単極性うつ病、治療抵抗性うつ病、抵抗性うつ病、不安性うつ病、双極性うつ病および気分変調症(気分変調性障害とも称される)を含むものと定義されるものとする。好ましくは、うつ病は、大うつ病性障害、単極性うつ病、治療抵抗性うつ病、抵抗性うつ病、不安性うつ病、または双極性うつ病である。
【0054】
うつ病は、悲しみ、活動への興味の喪失、およびエネルギーの低下によって特徴付けることができる。その他の症状には、自信と自尊心の喪失、不適切な罪悪感、死や自殺の考え、集中力の低下、睡眠と食欲の障害などが含まれる。さまざまな身体症状が現れることもあり得る。抑うつ気分は、特に人生で挫折を経験した後によく見られるが、症状が閾値に達し、少なくとも2週間続く場合にのみうつ病障害と診断される。うつ病は、軽度から非常に重度まで重症度が異なり、単極性および双極性うつ病、ならびに季節性感情障害(SAD)が含まれる。うつ病は通常、小児および青少年のうつ病のプロファイルを定義するために、悲観主義、集中力の低下、睡眠障害、快感消失、疲労、孤独、自尊心の低さ、および身体的訴えの8つの基本的な側面にも特徴付けられる。うつ病は、特発性疾患(関連する身体疾患を伴わない)として発生する場合もあれば、身体疾患、特に多くの神経変性疾患の精神症状である場合もある。
【0055】
うつ病のレベルを評価する際に適用される当該技術分野で知られている尺度には、以下が含まれる:
(1)ハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton Depression Rating Scale) 28-Item: primary outcome measure (Hamilton M. J.、Neurol Neurosurg Psychiatry 1960; 23:56-62; Hamilton M.、Br J Social Clin Psychology 1967; 6:278-296)。
(2)コロンビア自殺重症度評価尺度(Columbia-Suicide Severity Rating Scale)(Posner K. et al.、Am J Psychiatry. 2011; 168(12): 1266-77)。
(3)臨床全般改善度尺度-重症度および改善(Clinical Global Improvement Scale-Severity and Improvement)(Guy W. Clinical Global Impression (CGI) ECDEU Assessment manual for Psychopharmacology. Rockville、Md.: U.S. Dept Health Education and Welfare 1976)。
(4)自己記入式簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptoms、Self-Report version)(Trivedi M. H. et al.、Psychol Med. 2004; 34(1):73-82)。
(5)簡潔な健康リスク追跡(Concise Health Risk Tracking)(Trivedi M. H. et al.、J Clin Psychiatry. 2011; 72(6):757-64)。
(6)MGH 認知機能および身体機能質問票(MGH Cognitive and Physical Functioning Questionnaire)(Fava M. et al.、Psychother Psychosom. 2009; 78(2):91-7)。
(7)生活の質に関する楽しみと満足感の質問票(Quality of Life Enjoyment and Satisfaction Questionnaire)(Endicott J. et al.、Psychopharmacol Bull. 1993; 29(2):321-6)。
(8)簡易精神症状評価尺度(Brief Psychiatric Rating Scale)(Andersen J. et al. Psychopathology. 1989; 22(2-3):168-76; Hafkenscheid A.、Acta Psychiatr Scand. 1991; 84(3):294-300)。
(9)ベースラインとフェーズ3の終了時のみ-神経認知テストバッテリー:即時および遅延の言葉の想起、理解の速さ、前後のデジットスパン、N-バックテスト、およびトレイルメイキングタスク(Trandafir A. et al.、Schizophr Res. 2006; 81(2-3):217-26)。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「難治性または治療抵抗性うつ病」および略語「TRD」は、少なくとも2種類の抗うつ薬、好ましくは2種類以上の抗うつ薬、より好ましくは2~3種類の抗うつ薬の適切な投与の抗うつ薬に反応しない大うつ病性障害として定義されるものとする。
【0057】
当業者であれば、所定の抗うつ薬の適切な投与に対する応答の失敗は、遡及的または将来的に決定することができることを認識するであろう。1つの実施態様では、適切な抗うつ薬投与に対する反応の失敗の少なくとも1つが将来的に決定される。別の実施態様では、適切な抗うつ薬投与に対する反応の失敗のうち少なくとも2つが将来的に決定される。別の実施態様では、適切な抗うつ薬投与に対する反応の失敗のうち少なくとも1つが遡及的に決定される。別の実施態様では、適切な抗うつ薬投与に対する反応の失敗のうち少なくとも2つが遡及的に決定される。
【0058】
特定の理論に束縛されることを意図しないが、発明者は、同じ方法で投与した場合、2-FDCKの用量反応曲線がケタミンの用量反応曲線よりも平坦であることを観察した(
図1を参照)。用量反応の違いは、うつ病の治療に使用するのに十分なほど大きく、同じ症状の治療にケタミンを使用する現在の実践に固有の欠点の多く(たとえば、有害な副作用)を解消する方法で使用することができる。衰弱性の副作用が発生するリスクが軽減されるため、TRDに対する2-FDCK の使用からは、クリニック訪問の所要時間の短縮、最終的に患者の自己投与が可能になる可能性(コストのさらなる削減)、および/または 2-FDCKの店頭販売への承認の可能性など、いくつかの利点が得られる。対照的に、
図2に示すように、2-DCKおよびOPCEなどの他のアリールシクロヘキサミンは、低用量で急激に上昇し始める用量反応曲線を有しており、ケタミンの代替治療法としてはあまり適していない。
【0059】
医薬組成物および組み合わせ
本開示の医薬組成物は、少なくとも2-FDCKを1つ以上の薬学的に許容される担体とともに含む。
【0060】
当業者であれば、適切で既知の一般に受け入れられている細胞モデルおよび/または動物モデルを使用したインビボ試験とインビトロ試験の両方が、所定の疾患を治療または予防する試験化合物の能力を予測できることを認識するであろう。
【0061】
本発明が組み合わせの投与に関する場合、化合物は、同時に、逐次的に、別々に、または単一の医薬組成物中で共投与され得る。化合物が別々に投与される場合、1日に与えられる各化合物の投与の回数は必ずしも同じである必要はなく、たとえば、1つの化合物の活性持続時間が長以下脳性がある場合、投与頻度は低くなる。さらに、化合物は、同じまたは異なる投与経路を介して、治療期間中の同じまたは異なる時点で、分割または単一の組み合わせ形態で同時に投与され得る。したがって、本発明は、同時または交互治療のすべての投与計画を包含するものとして理解され、用語「投与」はそれに応じて解釈されるべきである。
【0062】
本明細書で使用される場合、「併用療法(co-therapy)」、「併用療法(combination therapy)」、「補助治療(adjunctive treatment)」、「補助療法(adjunctive therapy)」および「併用治療(combined treatment)」という用語は、2-FDCKを1つまたは複数の薬剤と組み合わせて、そしてさらに場合によっては1つまたは複数の非定型抗精神病薬と組み合わせて、投与することによる、それを必要とする患者の治療を意味するものとし、ここで、抗うつ薬、エスケタミンと抗うつ薬は任意の適切な手段によって、同時、逐次、別々に、または単一の医薬製剤として投与される。2-FDCKと抗うつ薬が別々の剤形で投与される場合、各化合物の1日当たりの投与量は同じであっても異なっていてもよい。2-FDCKと抗うつ薬は、同じ投与経路で投与しても、異なる投与経路で投与してもよい。適切な投与方法の例としては、経口、静脈内(iv)、鼻腔内(in)、筋肉内(im)、皮下(sc)、経皮、および直腸が挙げられるが、これらに限定されない。化合物は、ポンプ装置の有無にかかわらず、頭蓋内または脊椎内の針および/またはカテーテルを介した送達によって、脳内、脳室内(intraventricular)、脳室内(intracerebroventricular)、くも膜下腔内、胸腔内、脊髄内および/または脊髄周囲の投与経路を含むがこれらに限定されない経路で神経系に直接投与することもできる。2-FDCKと抗うつ薬は、同時または交互の投与計画に従って、治療期間中の同時または異なる時間に、分割または単一の形態で同時に投与されてもよい。
【0063】
本明細書に記載の本発明の化合物の1つまたは複数を有効成分として含有する医薬組成物は、従来の医薬配合技術に従って、1つまたは複数の化合物を医薬担体と緊密に混合することによって調製することができる。担体は、所望の投与経路(経口、非経口など)に応じて多種多様な形態をとることができる。したがって、懸濁液、エリキシル剤および溶液などの液体経口製剤の場合、適切な担体および添加剤には、水、グリコール、油、アルコール、香料、保存剤、安定剤、着色剤などが含まれる;粉末、カプセル、錠剤などの固体経口製剤の場合、適切な担体および添加剤には、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などが含まれる。固形経口製剤は、主要な吸収部位を調節するために、糖などの物質でコーティングされるか、または腸溶コーティングされたりされてもよい。非経口投与の場合、担体は、通常滅菌水で構成され、溶解性または保存性を高めるために他の成分が添加されてもよい。注射可能な懸濁液または溶液は、適切な添加剤とともに水性担体を利用して調製することもできる。
【0064】
本発明の医薬組成物を調製するには、有効成分としての2-FDCK、および任意に少なくとも1つの抗うつ薬を、従来の医薬配合技術に従って医薬担体と緊密に混合するが、担体は、経口または筋肉内などの非経口など、投与に希望される製剤の形態に応じて様々な形態をとり得る。経口剤形の組成物を調製する際には、通常の医薬媒体のいずれかを使用することができる。したがって、たとえば、懸濁液、エリキシル剤および溶液剤などの液体経口製剤の場合、適切な担体および添加剤には、水、グリコール、油、アルコール、香料、保存剤、着色剤などが含まれる;たとえば、粉末、カプセル、カプレット、ジェルキャップおよび錠剤などの固体経口製剤の場合、適切な担体および添加剤には、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などが含まれる。投与の容易さのため、錠剤とカプセルは最も有利な経口投与単位剤形であり、この場合には固体の医薬担体が使用されるのは明らかである。必要に応じて、錠剤は標準的な技術により糖衣または腸溶コーティングされてもよい。非経口投与の場合、担体は通常滅菌水で構成されるが、溶解促進または保存などの目的で他の成分が含まれる場合もある。注射可能な懸濁液も調製することができ、この場合、適切な液体担体、懸濁剤などが使用され得る。本明細書の医薬組成物は、用量単位(たとえば、錠剤、カプセル、散剤、注射剤、小さじ一杯分など)ごとに、上記の有効用量を送達するのに必要な量の有効成分を含むことになる。本明細書の医薬組成物は、用量単位(たとえば、錠剤、カプセル、散剤、注射剤、小さじ一杯分など)ごとに、約0.01mg~約1000mg、またはその範囲内の任意の量または範囲を含んでもよく、約0.01mg/kg~約1.5mg/kg、またはその範囲内の任意の量または範囲、好ましくは、約0.01mg/kg/day~約0.75mg/kg、またはその範囲内の任意の量または範囲、好ましくは、約0.05mg/kg~約0.5mg/kg、またはその範囲内の任意の量または範囲、好ましくは、約0.1mg/kg~約0.5mg/kg、またはその範囲内の任意の量または範囲の各有効成分の用量で投与されてもよい。しかしながら、投与量は、患者の要件、治療される症状の重症度、および使用される化合物に応じて変更される場合がある。毎日の投与または定期的な投与のいずれかを使用することができる。
【0065】
好ましくは、これらの組成物は、錠剤、丸剤、カプセル、散剤、顆粒、滅菌非経口溶液または懸濁液、計量エアロゾルまたは液体スプレー、滴剤、アンプル、自動注射装置または坐剤などの単位剤形;経口、非経口、鼻腔内、舌下もしくは直腸投与、あるいは吸入もしくは吹送による投与である。あるいは、組成物は、週1回または月1回の投与に適した形態で提供されてもよい;たとえば、デカン酸塩などの活性化合物の不溶性塩は、筋肉内注射用のデポー製剤を提供するために適合させることができる。錠剤などの固体組成物の調製には、主な有効成分を医薬担体、たとえば、コーンスターチ、乳糖、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたはガムなどの従来の打錠成分、およびその他の医薬品希釈剤、たとえば、水と混合し、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の均一な混合物を含む固体の予備製剤組成物を形成する。これらの予備製剤組成物を均質であると呼ぶ場合、それは、組成物が錠剤、丸薬およびカプセルなどの同等に効果的な剤形に容易にさらに分割できるように、有効成分が組成物全体に均一に分散していることを意味する。次に、この固体の予備製剤組成物は、約0.01mg~約1,000mg、またはその中の任意の量もしくは範囲の各有効成分を含む、上記のタイプの単位剤形にさらに分割される。新規組成物の錠剤または丸薬は、コーティングするか、または他の方法で配合して、持続作用の利点をもたらす剤形を提供することができる。たとえば、錠剤または丸薬は、内側の投与成分と外側の投与成分を含むことができ、後者は前者を覆う封筒の携帯である。2つの成分は、胃内での崩壊に抵抗し、内部成分がそのまま十二指腸に通過するか、または放出が遅れることを可能にする腸溶層によって分離され得る。このような腸溶層またはコーティングには、さまざまな材料を使用することがで、そのような材料には、シェラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースなどの材料を含む多くのポリマー酸が含まれる。
【0066】
本発明の新規組成物を経口または注射による投与のために配合することができる液体形態には、水溶液、適切に風味付けされたシロップ、水性または油懸濁液、および綿実油、ごま油、ココナッツ油またはピーナッツ油などの食用油を含む風味付けされたエマルジョン、ならびにエリキシル剤および同様の医薬品ビヒクルが含まれる。水性懸濁液に適した分散剤または懸濁剤には、トラガカント、アカシア、アルギン酸塩、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはゼラチンなどの合成ゴムおよび天然ゴムが含まれる。
【0067】
本発明に記載の難治性または治療抵抗性うつ病の治療方法は、本明細書に定義される化合物のいずれかおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を使用して実施することもできる。医薬組成物は、約0.01mg~約1000mgの間の化合物、またはその中の任意の量もしくは範囲;好ましくは、約0.05mg~約500mgの化合物、またはその範囲内の任意の量もしくは範囲の各有効成分を含有することができ、選択された投与様式に適した任意の形態に構成され得る。担体としては、結合剤、懸濁剤、滑沢剤、香料、甘味料、保存剤、染料、およびコーティングが挙げられるがこれらに限定されない、必要かつ不活性な医薬賦形剤が含まれる。経口投与に適した組成物としては、丸剤、錠剤、カプレット、カプセル剤(それぞれ即時放出型、徐放型、持続放出型製剤を含む)、顆粒、および散剤などの固形剤、および溶液、シロップ、エリキシル、乳剤、および懸濁剤などの液剤が挙げられる。非経口投与に有用な剤型としては、滅菌溶液、乳剤および懸濁液などが挙げられる。
【0068】
有利には、本発明の化合物は、1日1回の用量で投与することができ、または1日の総用量を1日2、3または4回に分割して投与することができる。さらに、本発明の化合物は、適切な鼻腔内ビヒクルの局所使用を介して鼻腔内形態で、または当業者に周知の経皮皮膚パッチを介して投与することができる。経皮送達システムの形態で投与されるため、用量投与は、当然のことながら、投与計画全体にわたって断続的ではなく連続的になる。
【0069】
たとえば、錠剤またはカプセルの形態で経口投与する場合、有効薬物成分は、エタノール、グリセロール、水などの経口の非毒性の薬学的に許容される不活性担体と組み合わせることができる。さらに、所望または必要に応じて、適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色剤を混合物に配合することもできる。適切な結合剤には、デンプン、ゼラチン、グルコースまたはベータラクトースなどの天然糖、トウモロコシ甘味料、アカシア、トラガカントなどの天然および合成ガム、またはオレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれるが、これらに限定されない。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
液体は、たとえば、トラガカント、アカシアなどの合成ゴムおよび天然ゴム、メチルセルロースなどの適切に風味付けされた懸濁剤または分散剤中に形成される。非経口投与の場合は、滅菌懸濁液および溶液が望ましい。静脈内投与が必要な場合は、一般に適切な保存剤を含む等張製剤が使用される。
【0071】
本発明の医薬組成物を調製するには、エスケタミンを、必要に応じて少なくとも1つの抗うつ薬と組み合わせて、有効成分として、従来の医薬配合技術に従って医薬担体と緊密に混合すが、この担体は、投与に望ましい製剤の形態(経口または非経口など)に応じて多種多様な形態をとることができる。適切な薬学的に許容される担体は当技術分野でよく知られている。これらの薬学的に許容される担体のいくつかの説明は、American Pharmaceutical AssociationおよびPharmaceutical Society of Great Britainが発行する「医薬品添加剤ハンドブック」に記載されている。
【0072】
医薬組成物の製剤方法は、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets、Second Edition、Revised and Expanded、Volumes 1-3、edited by Lieberman et al; Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications、Volumes 1-2、edited by Avis et al; およびPharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems、Volumes 1-2、edited by Lieberman et al; published by Marcel Dekker、Inc
などの多数の出版物に記載されている。
【0073】
本発明の1つの態様では、難治性または治療抵抗性うつ病を治療する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の2-フルオロジクロロケタミン(2-FDCK)を投与することを含む方法が提供される。
【0074】
いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約0.01mg/kg~約1.5mg/kgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約0.1mg/kg~約0.5mg/kgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約0.1mg/kgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約0.15mg/kgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約0.2mg/kgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約0.25mg/kgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約0.3mg/kgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約0.35mg/kgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約0.4mg/kgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約0.45mg/kgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約0.5mg/kgの量で投与される。
【0075】
いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約0.01mg~約1000mgの範囲で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約5mg~約100mgの範囲で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約5mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約10mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約15mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約20mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約25mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約30mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約35mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約40mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約45mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約50mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約55mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約60mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約65mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約70mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約75mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約80mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約85mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約90mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約95mgの量で投与される。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、約100mgの量で投与される。
【0076】
いくつかの実施態様では、2-FDCKは、薬学的に許容される担体をさらに含む組成物の一部を形成する。1つの実施態様では、組成物は静脈内投与される。1つの実施態様では、組成物は鼻腔内投与される。1つの実施態様では、組成物は経口投与される。
【0077】
いくつかの実施態様では、2-FDCKは、単位剤形組成物で投与される。さらなる実施態様では、2-FDCKは、XXmg~YYmgの範囲の単位剤形である。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、XXmgの範囲の単位剤形である。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、QQmgの範囲の単位剤形である。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、WWmgの範囲の単位剤形である。いくつかの実施態様では、2-FDCKは、YYmgの範囲の単位剤形である。
【0078】
本開示の別の態様では、この方法は、少なくとも1つの抗うつ薬を投与することをさらに含む。いくつかの実施態様では、少なくとも1つの抗うつ薬には、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、三環系薬剤、セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニンノルアドレナリン作動性再取り込み阻害剤;ノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性薬剤および非定型抗うつ薬が含まれるが、これに限定されない。いくつかの実施態様では、少なくとも1つの抗うつ薬には、イミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、ノルトリプチリン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、マプロチリン、アモキサピン、トラゾドン、ブプロピオン、クロミプラミン、フルオキセチン、デュロキセチン、エスシタロプラム、シタロプラム、セルトラリン、パロキセチン、フルボキサミン、ネファザドン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、レボキセチン、リチウム、ミルタザピン、フェネルジン、トラニルシプロミン、モクロベミド、カヴァ-カヴァ、セントジョーンズワート、S-アデノシルメチオニン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、ニューロキニン受容体拮抗薬およびトリヨードチロニンが含まれるが、これに限定されない。いくつかの実施態様では、少なくとも1つの抗うつ薬には、フェネルジン、トラニルシプロミン、モクロベミド、イミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、ノルトリプチリン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、クロミプラミン、アモキサピン、フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、フルボキサミン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、ミルタザピンおよびブプロピオンが含まれるが、これに限定されない。
【0079】
本開示の別の態様では、2-FDCK、任意に少なくとも1つの抗うつ薬、および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、難治性または治療抵抗性うつ病の治療のための医薬組成物が本明細書で提供される。
【0080】
以下に提供される実施例および調製物は、本明細書に開示される化合物およびそのような化合物の調製方法をさらに説明および例示する。本開示の範囲は、以下の実施例および調製物の範囲によっていかなる形でも限定されないことが理解されるべきである。
【0081】
上に詳述し、以下の特許請求の範囲に記載した本発明のさまざまな実施態様および態様は、以下の実施例で実験的に裏付けられる。
【実施例】
【0082】
以下に提供される実施例および調製物は、本明細書に開示される化合物およびそのような化合物の調製方法をさらに説明および例示する。本開示の範囲は、以下の実施例および調製物の範囲によっていかなる形でも限定されないことが理解されるべきである。
【0083】
実施例1:2-FDCKは、マウス強制水泳試験における抗うつ効果を示す
概要
雄の10週齢C57BL/6Nマウス(Taconic)を試験の1週間前に飼育設備に順応させる。2日間のFSTパラダイムが採用されており、マウスは薬物の非存在下で10分間のテストにさらされ、翌日には薬物の存在下で6分間のテストが行われる。2-FDCKは、FSTの30分前に生理食塩水ビヒクル中で腹腔内(i.p.)投与される。すべての動物は薬物治療を受けておらず、これまでに行動検査を受けていない。
【0084】
材料および方法
動物
10週齢の雄C57BL6N/Tacマウスを、12:12時間の明暗サイクル下でケージ当たり4匹のマウスで飼育し、行動手順の前に約1週間順応させる。食事と水は自由に与えられる。すべての手順は、実験動物の管理と使用に関する米国国立衛生研究所のガイドに従った。
【0085】
薬物治療
2-FDCKは、生理食塩水ビヒクル(0.9% 塩化ナトリウム)に溶解される。2-FDCK用量反応実験では、マウスにビヒクルまたはさまざまな用量の2-FDCKを行動検査の30分前に腹腔内投与する。
【0086】
行動手順
マウスは、2日間の強制水泳テスト(FST)手順でテストされる。1日目に、注射手順に慣れるためにすべてのマウスに模擬腹腔内(i.p.)ビヒクル注射を行い、30分後、(26)±2°の温水(26cm×15cm)を半分ほど満たした5つの同一の円筒形チャンバー(24cm×15cm)のうちの1つにデータ収集なしで10分間入れる。2日目、マウスは30分前に腹腔内注射を受けた後、6分間のセッションで円筒内に置かれ、最後の4分間の不動時間が記録された。2-FDCKを受けたマウスは、ビヒクルのみを投与されたマウスと比較して、より短い不動時間を示した。
【0087】
実施例2:選択されたアリールシクロヘキサミンの用量反応曲線
安全上の理由から、新しい向精神薬を探索する場合-対数スケールは、化合物が活性であるかどうか、また活性がある場合にはどのような用量範囲であるかを把握するために、初回投与に採用される。
【0088】
OPCE、2-DCK、および2-FDCKを使用したこの最初の実験の後(参考のためにケタミンが後に研究に追加された)、対応して3mg、15mg、および30mgの用量がさらなる探索のための下限閾値として効果的であることが明らかであった。より高い用量が精神に及ぼす影響を調査するために、下限閾値用量を2、3、4倍することが決定された。数日ごとに、化合物の1つの一部をオーハウス・スカウト天秤で量り、詰め替え点鼻スプレーボトルを使用して点鼻スプレーによる投与の準備をした。
【0089】
目標は、効果に関して「+」ランクを獲得し、他に注目すべき観察結果ついて幻覚体験に対するシュルギン「+」ベースの評価システム(SHULGIN、A. T.、& SHULGIN、A. (1991). Pihkal: a chemical love story. Berkeley、CA、Transform Press、page 964)が、これらのさまざまなアリールシクロヘキサミンの1年間にわたる調査のために選択された。対象とする分子ファミリーと体験の種類は評価システムの元の設計とは異なっていたが、スケールのシンプルさは、いくつかの理由からこの種の探索に特に適している:
(1)新しい幻覚剤によってもたらされる体験は、言葉では言い表せなことが多い。新しい意識状態について議論するための言語は開発され、合意されなければならない。そしてこのプロセスは、多くの人々がその化合物を経験し、その効果についての議論を展開した後にごく自然に起こる。
(2) アリールシクロヘキサミンは、多くの場合、運動を阻害するか、または運動を変化させて、経験中に書くことを困難または不可能にする。
(3) 多くのアリールシクロヘキサミンの影響である解離性という性質により、複雑または詳細な決定に関連する焦点を当てるための長い時間枠は許容されない。
【0090】
したがって、強度の客観的な尺度を求めることなく、経験の強度を評価するには、単純な +、++、+++、++++ 1、2、3、4 として使用することが望ましいと考えられた。
【0091】
この研究から収集されたデータを次の表にまとめる:
表1
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0092】
すべての用量/反応曲線が同じグラフに適合する単位に用量が調整されている場合、データポイントを介してスプラインを実行すると、
図2に表示される曲線に質的に似た曲線が得られる。
【0093】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、当業者には多くの代替案、修正案、および変形案が明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内にあるそのような代替案、修正案、および変形案をすべて包含することが意図される。当業者であれば、実施例で論じた特定の方法および結果は、特許請求の範囲にさらに十分に記載されているように、単に本発明を説明するためのものであることを容易に理解するであろう。
【0094】
あたかも、個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、本明細書で言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は、参照によりその全体が同じ範囲で本明細書に組み込まれる。さらに、本出願における参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものとして解釈されないものとする。セクションの見出しが使用されている限り、それらは必ずしも限定的なものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】