(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】アンモニアベース光触媒反応器システム及び方法
(51)【国際特許分類】
C01C 1/10 20060101AFI20241010BHJP
C01B 3/04 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C01C1/10 Z
C01B3/04 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521256
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 US2022047729
(87)【国際公開番号】W WO2023076270
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520000216
【氏名又は名称】シジジー プラズモニクス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カハティワダ,スマン
(72)【発明者】
【氏名】シャー,シュレヤ
(72)【発明者】
【氏名】ガーデジ,サイド アリ
(72)【発明者】
【氏名】チャップマン,ジョナサン モリス
(72)【発明者】
【氏名】ロバトジャジ,ホセイン
(72)【発明者】
【氏名】グローズ,モルガン
(57)【要約】
【課題】改善されたアンモニアベース光触媒反応器システム及び方法の提供。
【解決手段】アンモニアベース光触媒反応器システム及び方法が提供される。特徴例としては、光触媒反応器の一部を構成するLEDが発生した熱の除去用クーラントとして水及び/又はアンモニアを利用するクーラント循環システム、室温~132.4℃で1~113.4Barのいずれかにアンモニアガスを圧縮し、第2のコンプレッサーの必要性を排除し、且つ最適化反応器変換を選択し、温度及び圧力が、下流分離に適切な状態でガス相を維持するように選ばれる、光反応器入口よりも前の単一コンプレッサー、一方若しくは両方の下流コンプレッサーの必要性及び-又は負温度で液状アンモニアを貯蔵する必要性のどれかを排除して、それにより室温貯蔵を許容するために、-33℃~室温及び大気圧~113.4barのどれかでアンモニアを貯蔵すること、生成物ストリームがアンモニアスクラバーに実質的に直接提供されて副生成物として水酸化アンモニウムを生成し、インハウスで又は消費者向け製品としてのどちらかで使用するように、コンプレッサー、コンデンサー、及び2相セパレーターを排除すること、PSAシステムをメンブレンH2及びN2セパレーターに置き換えること、反応器下流コンプレッサー、コンデンサー、2相セパレーター、及びスクラバーを排除して、バックフラッシュとしてアンモニアを分離する第1のPSA並びにH2及びN2を分離する第2のPSAを含む、一例では第1のPSAシステム及び第2のPSAシステム間にコンプレッサーを含む2つのPSAシステムに置き換えること、並びにPDA反応器の下流に組合せメンブレン分離並びに実質的に1つのみのガスクーラー及びPSAシステムを備え、それにより複数の下流コンポーネント、たとえば、1つ以上のコンプレッサー、コンデンサー、セパレーター、スクラバー、及び/又はドライヤーなどを排除するPDA反応器が挙げられる。
【選択図】
図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア分解光触媒反応器、及び
前記アンモニア分解光触媒反応器でLED冷却用クーラントとして液状アンモニアを利用するクーラント循環システムであって、前記液状アンモニアは、前記アンモニア分解光触媒反応器からの生成物ストリームから回収される、クーラント循環システム、
を含むシステム。
【請求項2】
アンモニア分解光触媒反応器、及び
前記アンモニア分解光触媒反応器でLEDを冷却するクーラントとして水を利用するクーラント循環システムであって、熱エネルギーは、冷液状アンモニアを介して前記クーラントから除去される、クーラント循環システム、
を含むシステム。
【請求項3】
前記アンモニア分解光触媒反応器の入口よりも前にフィードストリーム中に位置決めされた単一コンプレッサーのみを含み、前記コンプレッサーが、おおよそ20℃から132.4℃の臨界温度までの範囲内の温度でおおよそ1Barから113.4Barの臨界圧力までの範囲内の圧力にアンモニアガスを圧縮し、それにより第2のコンプレッサーの必要性を排除する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
昇温及び昇圧のフィードアンモニアの貯蔵用単一壁タンクをさらに含み、前記昇温が、その上端で周囲温度を含む範囲内であり、前記昇圧が、113.4barの臨界圧力までであり、前記昇温及び昇圧が、それにより、前記光反応器でLEDを冷却するために使用される循環クーラントを冷やす必要性を排除し、前記昇温及び昇圧がまた、それにより、前記貯蔵用単一壁タンクを2重壁にする必要性を排除し、前記昇温及び昇圧が、減少量のアンモニア蒸気を前記貯蔵用単一壁タンクで発生させることによりコンプレッサーデューティーを低減する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
前記低減されたコンプレッサーデューティーがオーバーヘッド圧縮システムの省略を許容する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記光反応器よりも後に前記生成物ストリーム中に位置決めされた段間冷却付き多段コンプレッサーをさらに含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
おおよそ-33℃~20℃の温度範囲及びおおよそ大気圧から113.4barの臨界圧力までの範囲内の圧力のフィードアンモニアの貯蔵用タンクをさらに含み、それにより一方又は両方の下流コンプレッサーの必要性を排除し、前記フィードアンモニアが、前記アンモニア分解光触媒反応器に供給される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項8】
前記アンモニア分解光触媒反応器からの生成物ストリームが、コンプレッサーもコンデンサーも2相セパレーターも作用させることなく、アンモニアスクラバーに直接提供され、それによりアンモニア分解の副生成物として水酸化アンモニウムを生成する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項9】
コンプレッサーもコンデンサーもスクラバーもなんら適用することなく、前記アンモニア分解光触媒反応器からの生成物ストリームを直接受け取るアンモニアスクラバーをさらに含み、それにより副生成物として水酸化アンモニウムを生成する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムのアウトプットに圧力スイングアドソーバー(PSA)システムをさらに含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムのアウトプットにメンブレンH2及びN2セパレーターをさらに含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項12】
バックフラッシュとしてアンモニアを分離する第1の圧力スイングアドソーバー(PSA)システム、及び
H2及びN2を分離する第2のPSAシステム、
をさらに含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1及び第2のPSAシステムが、コンプレッサー、コンデンサー、2相セパレーター、及びアンモニアスクラバーの代わりである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1のPSAシステム及び前記第2のPSAシステム間にコンプレッサーをさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
アンモニア分解光触媒反応器システムにおける複数のLEDの冷却方法であって、前記方法は、前記複数のLEDに近接して液状アンモニアを循環させて前記複数のLEDが発生する熱を除去することを含み、前記液状アンモニアは、前記アンモニア分解光触媒反応器からの生成物ストリームから回収される、方法。
【請求項16】
アンモニア分解光触媒反応器システムにおける複数のLEDの冷却方法であって、前記方法は、前記複数のLEDに近接して水を循環させて前記複数のLEDが発生する熱を除去することを含む、方法。
【請求項17】
おおよそ-33℃~20℃の温度範囲及びおおよそ大気圧から113.4barの臨界圧力までの範囲内の圧力でフィードアンモニアを貯蔵することをさらに含み、それにより一方又は両方の下流コンプレッサーの必要性を排除し、前記フィードアンモニアが、前記アンモニア分解光触媒反応器に供給される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
メンブレンH2及びN2セパレーターを介して前記アンモニア分解光触媒反応器からの生成物ストリームを分離することにより別々のH2及びN2生成物ストリームを生成することをさらに含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項19】
反応器システムの生成物ストリーム出口のメンブレンセパレーター、
生成物ストリームガスクーラー、及び
アンモニア及び窒素の分離用圧力スイングアドソーバー(PSA)システム、
を含む光触媒アンモニア分解反応器システム。
【請求項20】
フィードアンモニアストリームが水素、窒素、及び未変換アンモニアを含む生成物ガスに変換されるアンモニア分解反応を触媒する複数のLEDを有する光触媒アンモニア分解(P-DA)反応器であって、前記複数のLEDは、クーラントが循環される冷却ブロック熱交換器により冷却される、P-DA反応器、
大気圧の液状アンモニアを貯蔵するアンモニアタンクであって、前記アンモニアタンクは、前記フィードアンモニアストリームを前記P-DA反応器に供給し、前記アンモニアタンクにより供給された前記フィードアンモニアストリームは、前記フィードアンモニアストリームがガス状態で前記P-DA反応器に供給されるように前記クーラントからの熱エネルギーを用いて気化される、アンモニアタンク、
前記生成物ガスが、前記アンモニアタンク、アンモニアクーラー、第1のアンモニアコンデンサー、及びリサイクルコンプレッサーを含むアンモニアリサイクルループを介して圧縮及び冷却された後、前記P-DA反応器からの前記生成物ガスを冷却するターボエキスパンダー、
前記ターボエキスパンダーにより冷却された前記生成物ガスを低減する第2のアンモニアコンデンサー、
前記冷却ブロック熱交換器を介して循環する前記クーラントから熱エネルギーを除去することにより前記低減された生成物ガスを加熱するプレヒーター、及び
前記プレヒーターから前記加熱された生成物ガスを受け取って水素及び未回収水素と窒素との混合物を含むテールガスをアウトプットする圧力スイングアドソーバー(PSA)システム、
を含む光触媒反応器システム。
【請求項21】
前記クーラントが水である、請求項20に記載の光触媒反応器システム。
【請求項22】
前記生成物ガスから液状アンモニアを除去する複数のノックアウトセパレーターをさらに含み、前記液状アンモニアが前記アンモニアリサイクルループに戻される、請求項20又は21に記載の光触媒反応器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001] 本国際出願は、2021年10月25日出願の米国仮特許出願第63/271,337号に基づく利益を主張し、さらにまた特定的にはその出願の出願時のカラー図面に例示される特徴を含めて米国仮特許出願第63/271,337号の全体を参照により組み込む。
【0002】
分野
[0002] 本開示は、工業化学生産の分野、特定的にはアンモニアベース光触媒反応器システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] 光触媒反応器(本明細書では「光反応器」ともいわれる)、たとえばSyzygy Plasmonics Inc.により開発されたものなどは、光触媒作用及び化学品の変換を可能にするために発光ダイオード(LED)を含みうる。このLEDは、電気エネルギーを光エネルギー及び熱エネルギーに変換する。光エネルギーは、光触媒により利用されるが、熱エネルギーは、典型的には廃物とみなされ、たとえばほぼ100℃などの具体的に示されたLED動作温度未満にLEDの温度を維持するために常に除去が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004] 改善されたアンモニアベース光触媒反応器システム及び方法が、かかる光触媒反応器システム及び方法のための改善されたLED冷却機構を含めて、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
[0005] 本明細書に示される一実施形態は、アンモニア分解光触媒反応器と、光触媒反応器でLED冷却用クーラントとして液状アンモニアを利用するクーラント循環システムと、を含むシステムに関し、液状アンモニアは、光触媒反応器からの生成物ストリームから回収される。
【0006】
[0006] 本明細書に示される他の一実施形態は、アンモニア分解光触媒反応器と、光触媒反応器でLEDを冷却するクーラントとして水を利用するクーラント循環システムと、を含むシステムに関し、熱エネルギーは、冷液状アンモニアを介してクーラントから除去される。
【0007】
[0007] いくつかの開示された実施形態は、光触媒反応器の入口よりも前にフィードストリーム中に位置決めされた単一コンプレッサーのみを含みうるとともに、コンプレッサーは、おおよそ20℃から132.4℃の臨界温度までの範囲内の温度でおおよそ1Barから113.4Barの臨界圧力までの範囲内の圧力にアンモニアガスを圧縮し、それにより第2のコンプレッサーの必要性を排除する。
【0008】
[0008] いくつかの開示された実施形態は、昇温及び昇圧のフィードアンモニアの貯蔵用単一壁タンクを含みうるとともに、昇温は、その上端で周囲温度を含む範囲内であり、昇圧は、113.4barの臨界圧力までであり、昇温及び昇圧は、それにより、光反応器でLEDを冷却するために使用される循環クーラントを冷やす必要性を排除し、昇温及び昇圧はまた、それにより、タンクを2重壁にする必要性を排除し、昇温及び昇圧は、減少量のアンモニア蒸気をタンクで発生させることによりコンプレッサーデューティーを低減し、このことにより、オーバーヘッド圧縮システムをシステムから省略できるようにする。
【0009】
[0009] いくつかの開示された実施形態は、光反応器よりも後に生成物ストリーム中に位置決めされた段間冷却付き多段コンプレッサーを含みうる。
【0010】
[0010] いくつかの開示された実施形態は、おおよそ-33℃~20℃の温度範囲及びおおよそ大気圧から113.4barの臨界圧力までの範囲内の圧力のフィードアンモニアの貯蔵用タンクを含んで一方又は両方の下流コンプレッサーの必要性を排除しうるとともに、フィードアンモニアは、光触媒反応器に供給される。
【0011】
[0011] いくつかの開示された実施形態は、コンプレッサーもコンデンサーも2相セパレーターも作用させることなく、アンモニアスクラバーに直接提供される光触媒反応器生成物ストリームを含みうることから、アンモニア分解の副生成物として水酸化アンモニウムを生成する。
【0012】
[0012] いくつかの開示された実施形態は、コンプレッサーもコンデンサーもスクラバーもなんら適用することなく、光触媒反応器からの生成物ストリームを直接受け取るアンモニアスクラバーを含みうることとから、副生成物として水酸化アンモニウムを生成する。
【0013】
[0013] いくつかの開示された実施形態は、システムのアウトプットに圧力スイングアドソーバー(PSA)システムを含みうる。
【0014】
[0014] いくつかの開示された実施形態は、システムのアウトプットにメンブレンH2及びN2セパレーターを含みうる。
【0015】
[0015] いくつかの開示された実施形態は、バックフラッシュとしてアンモニアを分離する第1の圧力スイングアドソーバー(PSA)システム並びにH2及びN2を分離する第2のPSAシステムを含みうる。たとえば、第1及び第2のPSAシステムは、コンプレッサー、コンデンサー、2相セパレーター、及びアンモニアスクラバーを置き換えうる。他の一例では、コンプレッサーは、第1のPSAシステム及び第2のPSAシステム間に提供される。
【0016】
[0016] 本明細書に示される他の一実施形態は、アンモニア分解光触媒反応器システムにおける複数のLEDの冷却方法に関する。本方法は、複数のLEDが発生する熱を除去するために複数のLEDに近接して液状アンモニアを循環させることを含み、液状アンモニアは、光触媒反応器からの生成物ストリームから回収される。
【0017】
[0017] 本明細書に示されるさらに他の一実施形態は、アンモニア分解光触媒反応器システムにおける複数のLEDの冷却方法に関する。本方法は、複数のLEDが発生する熱を除去するために複数のLEDに近接して水を循環させることを含む。
【0018】
[0018] いくつかの開示された実施形態は、おおよそ-33℃~20℃の温度範囲及びおおよそ大気圧から113.4barの臨界圧力までの範囲内の圧力のフィードアンモニアを貯蔵して一方又は両方の下流コンプレッサーの必要性を排除することを含みうるとともに、フィードアンモニアは、光触媒反応器に供給される。
【0019】
[0019] いくつかの開示された実施形態は、メンブレンH2及びN2セパレーターを介して光触媒反応器からの生成物ストリームを分離することにより別々のH2及びN2生成物ストリームを生成することを含みうる。
【0020】
[0020] 本明細書に示される他の一実施形態は、反応器システムの生成物ストリーム出口のメンブレンセパレーター、生成物ストリームガスクーラー、並びにアンモニア及び窒素の分離用PSAシステムを含む光触媒アンモニア分解反応器システムに関する。
【0021】
[0021] 本明細書に示されるさらに他の一実施形態は、フィードアンモニアストリームが水素、窒素、及び未変換アンモニアを含む生成物ガスに変換されるアンモニア分解反応を触媒するために複数のLEDを有する光触媒アンモニア分解(P-DA)反応器を含む光触媒反応器システムに関する。複数のLEDは、クーラントが循環される冷却ブロック熱交換器により冷却される。システムは、大気圧の液状アンモニアを貯蔵するアンモニアタンクをさらに含み、タンクは、フィードアンモニアストリームをP-DA反応器に供給し、タンクにより供給されたフィードアンモニアストリームは、フィードアンモニアストリームがガス状態でP-DA反応器に供給されるようにクーラントからの熱エネルギーを用いて気化される。システムは、生成物ガスが、アンモニアタンク、アンモニアクーラー、第1のアンモニアコンデンサー、及びリサイクルコンプレッサーを含むアンモニアリサイクルループを介して圧縮及び冷却された後、P-DA反応器からの生成物ガスを冷却するターボエキスパンダーをさらに含む。システムは、ターボエキスパンダーにより冷却された生成物ガスを低減する第2のアンモニアコンデンサー、冷却ブロック熱交換器を介して循環するクーラントから熱エネルギーを除去することにより低減生成物ガスを加熱するプレヒーター、並びにプレヒーターから加熱生成物ガスを受け取って水素及び未回収水素と窒素との混合物を含むテールガスをアウトプットするPSAシステムをさらに含む。クーラントは、いくつかの実施形態例では水でありうる。
【0022】
[0022] いくつかの実施形態は、生成物ガスから液状アンモニアを除去する複数のノックアウトセパレーターをさらに含み、液状アンモニアは、アンモニアリサイクルループに戻される。
【0023】
[0023] これらの、さらには他の実施形態、態様、利点、及び代替形態は、適宜添付図面を参照して下記の詳細な説明を読めば当業者に明らかになるであろう。さらに、この概要並びに本明細書に提供される他の説明及び図は、単なる例として実施形態を例示することが意図されるにすぎず、このため、数多くの変形形態が可能である。例として、構造要素及びプロセスステップは、特許請求された実施形態の範囲の枠内にとどまって、再構成、組合せ、分配、排除、又は他の形での変化が可能である。
【0024】
図面の簡単な説明
[0024] 添付図面は、本開示のシステム、装置、デバイス、及び/又は方法の理解を深めるために含まれるとともに、本明細書に組み込まれてその一部を構成する。図面は、必ずしも原寸通りとは限らず、各種要素のサイズは、明確さを期して歪んでいたり、及び/又は理解を促進するためにきわめて単純化された表現として例示されたりすることもある。図面は、本開示の1つ以上の実施形態を例示し、説明と合わせて本開示の原理及び操作を明白する役割を果たす。
【0025】
[0025] 本国際出願は、米国仮特許出願第63/271,337号の出願時のカラー図面にカラーで例示された特徴を参照により具体的に組み込む。出願人の特許請求発明の徹底的な理解に必ずしも必要とされるとは限らないが、上述したカラーリングは、白黒図面及び添付の明細書本文への補足に役立つ働きをしうる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】[0026]第1の実施形態例に従ってアンモニアベース光触媒反応器システムを例示するプロセスフロー図である。
【
図2】[0027]第2の実施形態例に従ってアンモニアベース光触媒反応器システムを例示するプロセスフロー図である。
【
図3】[0028]実施形態例に従って2つの冷却ブロックジオメトリーを例示する断面図である。
【
図4】[0029]少なくとも一実施形態例に従ってアンモニアベース光触媒反応器システム用の温度-圧力設計ゾーン例を例示する相図である。
【
図5】[0030]温度の関数として2相間のシミュレート相転移例を例示する相変化図である。
【
図6】[0031]アンモニア冷却ブロックを利用した実施形態例に従ってモデル化温度場シミュレーション結果及び質量分率シミュレーション結果を例示するカラーグラジエント図である。
【
図7】[0032]第3の実施形態例に従ってアンモニアベース光触媒反応器システムを例示するプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
[0033] システム、装置、デバイス、及び/又は方法の例が本明細書に記載されている。「例」という語は、「例、事例、又は例示の働き」を意味するものとして用いられることが理解されるべきである。「例」であるとして本明細書に記載されるいずれの実施形態又は特徴も、必ずしも他の実施形態又は特徴よりも好ましい又は有利なものとして解釈されるべきではないが、ただし、そのように明記されている場合はこの限りではない。そのため、本明細書に提示される主題の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用可能であるとともに、他の変更を加えることが可能である。本明細書に記載の態様は、具体的な実施形態、装置、又は構成に限定されるものではなく、このため、当然ながら多様である。本明細書に一般的に記載される及び図に例示される本開示の態様は、多種多様な異なる構成で配置、置換、組合せ、分離、及び設計が可能であることが、簡単に理解されるはずである。また、本明細書で用いられる用語は、特定態様のみを説明することを目的とするものであり、本明細書に具体的定義がない限り、限定を意図するものでないことが理解されるべきである。
【0028】
[0034] 本明細書全体を通して、とくに文脈上必要とされない限り、「comprise(~を含む)」及び「include(~を含む)」という語並びに変化形(たとえば、「comprises(~を含む)」、「comprising(~を含む)」、「includes(~を含む)」、「including(~を含む)」、「has(~を有する)」、及び「having(~を有する)」、)は、明記された成分、特徴、要素、若しくはステップ、又は成分、特徴、要素、若しくはステップの群の包含を意味することが理解されるであろうが、いずれかの他の成分、特徴、要素、若しくはステップ、又は成分、特徴、要素、若しくはステップの群の除外を意味するものではない。
【0029】
[0035] さらに、とくに文脈上示唆されない限り、図の各々に例示される特徴は、互いに組合せで使用されうる。そのため、図は、すべての例示された特徴が各実施形態に必要であるとは限らないことを理解したうえで、1つ以上の実施形態全体の成分態様として一般にみなされるべきである。
【0030】
[0036] 本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、とくに文脈上明確に規定されない限り、複数の参照対象を含む。
【0031】
[0037] 範囲は、「約」が付された1つの特定値から及び/又は「約」が付されたもう1つの特定値までとして本明細書で表すことが可能である。かかる範囲で表されるとき、他の一態様は、この1つの特定値から及び/又は他の特定値までを含む。同様に、値が近似値として表されるとき、前に付された「約」の使用により、この特定値は、他の一態様を形成することが理解されるであろう。範囲の各々の端点は、他の端点との関連で及び他の端点とは独立しての両方で有意であることが、さらに理解されるであろう。
【0032】
[0038] 本明細書又は特許請求の範囲における要素、ブロック、又はステップのいずれの計数も、明確を期すものである。そのため、かかる計数は、これらの要素、ブロック、又はステップが特定配置を遵守すること又は特定順序で行われることを必要とする又は示唆するものと解釈されるべきではない。
【0033】
I.概要
[0039] 光触媒反応器システムに利用可能なLED冷却機構の1つは、水冷LED熱交換器である。たとえば、冷却ブロックの形態でありうるかかる熱交換器は、LEDで発生した熱エネルギーを除去するように構成可能である。この熱除去プロセス時、流入水は、LED熱交換器を通り抜けて(LEDが発生した熱を除去する)そこから出る際に温度が増加する。完全バランスオブプラントを備えたシステムでは、この加熱水に含有されるエネルギーは、プラント又はシステムの全体エネルギー効率を改善するためにプラントの他の箇所で使用可能である。
【0034】
[0040] 水に加えて、液状アンモニアなどの他の冷却流体に同一原理を適用可能である。特定的には、LED熱交換器で液状アンモニアを使用すると、新規廃熱管理ルート及び技術を用いたプロセス設計の新しい機会が生まれる。こうした熱管理ルート及び技術は、アンモニアスプリッティング(すなわち、アンモニアの光触媒分解)など、フィード(又はプロセスガス)としてアンモニアを使用するプラント、又は、たとえば、生成物としてアンモニアを生成するプラント(たとえば、光触媒アンモニア合成)を含めて、アンモニアベース光触媒反応器システムで利用されうる。
【0035】
[0041] いくつかのアンモニアベース光触媒反応器システム及び方法の例が示される。かかるシステム及び方法の特徴例としては、以下:(1)光触媒反応器の一部を構成するLEDが発生した熱の除去用クーラントとして水及び/又はアンモニアを利用するクーラント循環システム、(2)室温(たとえば、ほぼ20℃)~132.4℃(アンモニアの臨界温度)で1~113.4Bar(アンモニアの臨界圧力)のいずれかにアンモニアガスを圧縮し、第2のコンプレッサーの必要性を排除し、且つ最適化反応器変換の機会を提供する(すなわち、温度及び圧力は、下流分離に適切な状態でガス相を維持するように選ばれる)、光反応器入口よりも前の単一コンプレッサー、(3)一方若しくは両方の下流コンプレッサーの要求されるおそれのある典型的必要性及び/又は負温度で液状アンモニアを貯蔵する必要性のどれかを排除して、それにより室温貯蔵を許容するために、-33℃~室温及び大気圧~113.4bar(アンモニアの臨界圧力)のどれかでアンモニアを貯蔵すること、(4)生成物ストリームがアンモニアスクラバーに実質的に直接提供されて副生成物として水酸化アンモニウムを生成し、インハウスで又は消費者向け製品としてのどちらかで使用するように、コンプレッサー、コンデンサー、及び2相セパレーターを排除すること、(5)圧力スイングアドソーバー(PSA)をメンブレンH2及びN2セパレーターに置き換えること、(6)反応器下流コンプレッサー、コンデンサー、2相セパレーター、及びスクラバーを排除して、それらを、バックフラッシュとしてアンモニアを分離する第1のPSA並びにH2及びN2を分離する第2のPSAを含む、一例では第1のPSAシステム及び第2のPSAシステム間にコンプレッサーを含む2つのPSAシステムに置き換えること、(7)PDA反応器の下流に組合せメンブレン分離並びに実質的に1つのみのガスクーラー及びPSAシステムを備え、それにより複数の下流コンポーネント、たとえば、1つ以上のコンプレッサー、コンデンサー、セパレーター、スクラバー、及び/又はドライヤーなどの排除を許容するPDA反応器(光触媒アンモニア分解反応器)、の1つ以上が挙げられる。
【0036】
II.アンモニアベース光触媒反応器システム例
[0042]
図1及び2では、一般的機能の指標となるように異なるパターンで示されたフローライン(ルート又は通路)が利用される。すなわち、実線(一般的には
図1及び2の左側で、光反応器102の入口よりも前を含む)は、フィードライン及びシステム100(液状アンモニア冷却)の場合はアンモニア冷却ラインを意味し、破線(一般的には
図1及び2の左下及び右上)は、生成物ラインを意味し、且つダッシュとドットが交互に現れる線は、ユーティリティーライン(たとえば、水冷ライン)を意味する。同様に、組み込まれた米国仮特許出願第63/271,337号では、
図1及び2は、フローライン(ルート)が以下のカラースキームに従って着色されたプロセスフロー図である。すなわち、橙色着色線(一般的には
図1及び2の左側で、光反応器102の入口よりも前を含む)は、フィードライン及びシステム100(液状アンモニア冷却)の場合はアンモニア冷却ラインを意味し、緑色着色線(一般的には
図1及び2の左下及び右上)は、生成物ラインを意味し、且つ黒色線は、ユーティリティーライン(たとえば、水冷ライン)を意味する。また、これらのラインの各々の機能は、ラインが結合されたプロセスフロー図においてコンポーネントからも見分け可能である。
【0037】
[0043]
図1は、第1の実施形態例に従って液状アンモニア冷却光触媒反応器システム100を例示するプロセスフロー図である。システム100は、以下のコンポーネント:円筒状又は環状反応器セル104、環状冷却ブロック106、並びにフィードアンモニア110が進入して生成物ストリーム112(本明細書ではPDA生成物ともいわれる)が送出されるエンドキャップ108a-bを有するアンモニア分解光触媒(P-DA)反応器102を含む。P-DA反応器例102は、以下の操作範囲:最適化プラント効率に適した30~100%変換、最適化プラント効率に適した300~600℃温度範囲、15~2000PSIA(矩形反応器に対して)を有する。P-DA反応器102は、単に一反応器構成例にすぎず、特定の所望の用途及び操作環境に依存して、他の形状、サイズ、構成、相、及び/又は他の改変が行われうる。以下の出願、すなわち、国際出願PCT/US2018/039470号、国際出願PCT/US2018/039476号、国際出願PCT/US2020/013190号、国際出願PCT/US2020/013206号、国際出願PCT/US2021/042448号、及び国際出願PCT/US2022/031444号は、光反応器及び関連システムのさらなる説明を提供し、それらの全体が本願をもって参照により組み込まれる。
【0038】
[0044] システム100はまた、大気圧アンモニアタンク101、生成物クーラー114、生成物コンプレッサー116、アンモニアコンデンサー118、2相セパレーター120、NH3スクラバー122、蒸気回収コンプレッサー124、蒸気回収チラー126、ドライヤークーラー128、圧力スイングアドソーバー(PSA)システム130、及び、冷アンモニアポンプ132を含み、その一部又は全部は、本明細書にさらに詳細に記載される。システム100の例示例では、大気圧アンモニアタンク101及びアンモニアコンデンサー118は、以下の操作範囲:-33℃~室温の温度範囲で15~2000PSIAを有する。
【0039】
[0045] システム100では、P-DA反応器102は液状アンモニアで冷却される。以下の考察では、5kg-H2/日を生成するように構成されたアンモニア分解プラントが仮定される。
【0040】
[0046] P-DA反応器102からの生成物ストリーム112は、典型的には純成分を構成せず、むしろ3元系(N2+H2+NH3)である。したがって、かかる系でのアンモニアの露点は、(i)生成物ストリーム中のアンモニアの濃度及び(ii)系の圧力に依存する。低圧はアンモニアの露点を低下させ、一方、高圧は露点を増加させる。そのため、実用的目的では、実用的に達成可能な条件下でアンモニアが凝縮されるようにPDA生成物を加圧することが推奨される。圧縮仕事を低減するために、生成物クーラー114(たとえば、水クーラー)、たとえば、おおよそ0.5kWの冷却デューティーを有するものなどでPDA生成物温度を400℃からおおよそ35℃まで低減することが推奨される。生成物コンプレッサー116は、PDA生成物の圧力をたとえば50PSIAから400PSIAに増加させる。生成物コンプレッサー116からの圧縮生成物は、アンモニアコンデンサー118に直接送られる。生成物コンプレッサー116により高圧が付与されるので、アンモニアコンデンサー118のシェル側内で大気圧及び飽和温度(-32℃)の純アンモニアを蒸発させることによりアンモニア(PDA生成物中)のおおよそ95%を凝縮させることが可能である。
【0041】
[0047] アンモニアコンデンサー118からの凝縮アンモニアは、2相セパレーター120で回収され、一方、レフトオーバー痕跡アンモニア量は、スクラバー122で分離される。一例によれば、周囲条件に近い水がスクラビングに使用される。流量5kg/hrの水は、進入スクラバーガス状フィードを-32℃から後続PSAシステム操作に好適なおおよそ30℃~35℃に加熱するのに効率的であることが見いだされた。アンモニアは、水に溶解して反応し、いくらかの熱を放出しながら発熱反応でNH3+H2Oを形成するとともに、30℃~35℃でその系を平衡化させる。2相セパレーター120からの液状アンモニアは、大気圧タンク101に移送され、アンモニアの主要リザーバーとして作用する。大気圧タンク101内の圧力は、オーバーヘッド蒸気を回収システムに移出することにより大気圧条件近くに保たれる。蒸気回収システムは、(i)蒸気を50PSIA近くに圧縮し、圧縮時の断熱温度上昇がおおよそ70℃~75℃と予想される蒸気回収コンプレッサー124、及び(ii)蒸気を液化し、それをPDA反応器102に戻すための蒸気回収チラーシステム126、を使用する。さらに、圧縮蒸気の一部分は、フィードアンモニア110として反応器に供給され、一方、リザーバーではフィード液の定常供給が維持される。
【0042】
[0048] P-DA反応器102のLED冷却は、冷液状アンモニア循環回路を介するものである。冷アンモニアポンプ132は、大気圧アンモニアタンク101からアンモニアを受け取って、冷液状アンモニアをP-DA反応器102の冷却ブロック106に提供する。冷却ブロック106中の冷液状アンモニアは、P-DA反応器102中のLEDからの熱を吸収し、加熱アンモニアは、生成物ストリーム112と一緒に生成物クーラー114に供給され、続いて生成物ストリーム112と同一のルートを辿る(すなわち、コンプレッサー116、アンモニアコンデンサー118などを介して)。ドライヤークーラー128は、スクラバー120で発生したいずれかの発熱熱のみをクールオフし、それ以外はヒートシンクとして作用しないことに留意されたい。
【0043】
[0049] 液状アンモニア(Cp=80.8J/mol/K)は、水(Cp=75.38J/mol/K)と比較してわずかに高い熱容量を有するため、LEDで発生した廃熱を抽出する効率的流体として作用可能である。
図1に示されるシステム100は、リサイクル液状アンモニアによる冷却に加えて、フィード110としてP-DA反応器102に供給可能なアンモニアガスを追加的に生成する。これにより、非最適化光触媒反応器よりも改善された反応器エネルギー効率をもたらすことが可能である。
【0044】
[0050]
図1に例示される反応器システム100のような光反応器システムでは、ただし、アンモニアリサイクリングなしの場合、反応器効率(液状アンモニア冷却):=(LEDで発生した熱エネルギー+生成された水素中に貯蔵されたエネルギー(低位発熱量(LHV)使用))/(光エネルギーイン+熱エネルギーイン+アンモニア(反応及び未反応の両方)としてのエネルギーイン)。これは(壁電力×ドライバー効率×(1-LED効率)+g・LHV単位の生成水素)/(光エネルギーイン+熱エネルギーイン+アンモニア(反応及び未反応の両方)としてのエネルギーイン)として表すことが可能である。値例を代入すると、アンモニアリサイクリングなしで液状アンモニアにより冷却される反応器システムでは、以下の効率結果:(0.25×0.88×3487+0.33×0.88×4029+6385)/(3487+4029+7995)=(767+1170+6385)/15511=8322/15511=53.6%を与える。
【0045】
[0051]
図1に例示される反応器システム100のような光反応器システムでは、アンモニアリサイクリングありの場合、反応器効率(液状アンモニア冷却+アンモニアリサイクリング):=(LEDで発生した熱エネルギー+生成された水素中に貯蔵されたエネルギー(LHV使用))/(光エネルギーイン+熱エネルギーイン+アンモニア(反応)としてのエネルギーイン)。これは(壁電力×ドライバー効率×(1-LED効率)+g・LHV単位の生成水素)/(光エネルギーイン+熱エネルギーイン+アンモニア変換率×アンモニアエネルギーイン)として表すことが可能である。値例を代入すると、液状アンモニア及びアンモニアリサイクリングにより冷却される反応器システムでは、以下の効率結果=(0.25×0.88×3487+0.33×0.88×4029+6385)/(3487+4029+0.67×7995)=(767+1170+6385)/12873=8322/12873=64.7%を与える。
【0046】
[0052] LED及びIRランプの両方を利用する反応器システム(たとえば、反応器セル104のアニュラス内の又は反応器セル104の反応器床中に浸漬されたIRランプ(たとえば、出願人の国際出願PCT/US2022/031444号を参照されたい))では、反応器効率は、LED冷却に液状アンモニアを用いると(アンモニアリサイクリングなしの場合)55.5%から57.3%に改善すると計算され、アンモニアリサイクリングも組み込むと66.7%に増加する。前のパラグラフに示される式を用いると、LED及びIRランプの両方を利用する光反応器システムの計算効率は、以下:(1)反応器効率(アンモニアリサイクリングなしの液状アンモニア冷却)=(0.25×0.88×1013+7174)/(1013+ 3892+7995)=7397/12900=57.26%、(2)反応器効率(アンモニアリサイクリングありの液状アンモニア冷却)=(0.25×0.88×1013+7174)/(1013+3892+0.78×7995)=7397/11141=66.4%の通りである。
【0047】
[0053]
図2は、第2の実施形態例に従ってアンモニアベース光触媒反応器システム200を例示するプロセスフロー図である。システム200は、
図1に例示されるアンモニア分解光触媒(P-DA)反応器102をそのコンポーネントと共に含み、コンポーネントは、システム100及びシステム200の両方で同一又は類似のものでありうる。同様に、
図2のシステム200に例示される他のコンポーネントの多くは、
図1のシステム100に例示されるものに類似又は同一のものであり、それゆえ、両方の図でまったく同様に番号付けされている。各個別コンポーネントの
図1に関連する説明は、
図2のまったく同様に番号付けされたコンポーネントに対して参照により組み込まれるが、ただし、他の意味で用いられている場合はこの限りではない。システム200は、以下:最適化プラント効率に適する30~100%変換率、最適化プラント効率に適する300~600℃温度範囲、及び15~2000PSIA(矩形反応器に対して)の通り特徴付けられた反応器操作範囲で5kg-H2/日を生成するように構成されたアンモニア分解プラント用として設計されている。アンモニア貯蔵タンク及びコンデンサー-33℃~室温の温度範囲での15~2000 PSIAの操作範囲を有する。
【0048】
[0054]
図2の実施形態では、P-DA反応器102は、例示されるように閉ループ水回路により冷却される。P-DA反応器102中のLEDにより加熱された熱水は、PDA反応器生成物の冷却に使用された熱水と組み合わされる。この組合せ熱ストリームは、大気圧の水クーラー134中の飽和アンモニアストリームを用いて冷却される。アンモニア液体/蒸気混合物は、大気圧アンモニアタンク101に送られる。プロセス全体は、チラー126である1つのみのメジャーヒートシンクを有する。ドライヤークーラー128は、スクラバーで発生したいずれかの発熱熱のみをクールオフし、それ以外はヒートシンクとして作用しないことに留意されたい。
【0049】
[0055]
図3は、モデリング及びシミュレーションに使用された実施形態例に従って2つの冷却ブロックジオメトリーを例示する断面図である(以下の考察及びジオメトリー300aに類似したヘリカルチャネル実装に関する
図6を参照されたい)。例示された冷却ブロックジオメトリー300a及び300bはどちらも、
図1及び2に示されるシステム100及び200中の熱交換器のコンポーネントとして、たとえば、円筒形状又は環形状を有する光反応器セル中のものなどとして使用されうる。特定的には、冷却ブロックジオメトリー300a又は300bは、LEDが発生した熱を循環クーラント(たとえば、水又はアンモニア)が除去しうるように、冷却ブロック106が反応器102中のLEDアレイに密に近接して配置されるようにしうる。冷却ブロックジオメトリー300aは、冷却ブロックシェルの内周全体をラップするヘリカルチャネルを有するものとして示される。冷却ブロックジオメトリー300bは、冷却ブロックシェルの内周に沿って鉛直方向に往復する鉛直チャンネルを有するものとして示される。
図3に例示される例以外に、他の冷却ブロックジオメトリーを使用しうる。
【0050】
[0056]
図4は、少なくとも一実施形態例に従ってアンモニアベース光触媒反応器システム用の温度-圧力設計ゾーン例を例示する相図である。
【0051】
[0057] 本明細書に示されるアンモニアベース光反応器設計では、以下の設計パラメーター例が適用される。第1に、圧力の増加により蒸発前に熱交換する余地を液体に与えるような1~5bar(絶対圧力)の入口圧力を利用しうる。第2に、より低い温度で液体に良好な熱交換を行う余地も与えるような入口温度(飽和直下)を利用しうる。
【0052】
[0058]
図5は、温度の関数として2相間のシミュレート相転移例を例示する相変化図である。アンモニアの相変化をシミュレートするには、
図5に例示される平滑遷移を必要とする。温度インターバルは、必要とされる平滑性及びメッシュサイズに影響を及ぼす。効果的な材質の性質は、相(質量分率)に基づいて計算される。すなわち、
【数1】
。熱源/シンクではなく相変化の潜熱(C
L)が熱容量に組み込まれる。
【0053】
[0059]
図6は、アンモニア冷却ブロックを利用した実施形態例に従って温度場シミュレーション結果及び質量分率シミュレーション結果を例示するモデリングシミュレーション結果である。
図6のシミュレーション結果のシェーディング(又はカラー)は、各例示されたシミュレーションの右下でスタートし、クーラントをヘリカルボトムツートップ構成で循環し、各例示されたシミュレーションの左下で送出した際(ヘリックスの内側を介してトップツーボトムで移動した後)、温度及び質量分率がそれぞれどのように変化するかを例示する。示されるように、クーラント温度は-40℃未満でスタートし、送出前にほぼ-15℃程度に加熱され、一方、質量分率は、0.3未満でスタートし、0.89に接近する質量分率に達した後、送出される。
【0054】
[0060]
図7は、第3の実施形態例に従ってアンモニアベース光触媒反応器システム700を例示するプロセスフロー図であり、これは、いくらか
図1及び2にそれぞれ例示されたシステム100及び200とは異なる。システム700は、P-DA反応器102を含み、これは、たとえば、
図1及び2との関連で以上に記載したP-DA反応器102に類似した又は同一のものでありうる。
【0055】
[0061] システム700はまた、システム100及び200に対して以上に記載したものに類似して、大気圧アンモニアタンク101、生成物クーラー114、生成物コンプレッサー116、第1のアンモニアコンデンサー118、圧力スイングアドソーバー(PSA)システム130を含む。そのうえ、システム700中の同様に番号付けされたコンポーネントは、たとえば、システム100及び200中のものに類似した又は同一の操作範囲を有しうる。上述したコンポーネントに加えて、システム700は、生成物/流出物熱交換器706、水クーラー708、反応器制御バルブ710(熱交換器706へのアンモニアのフローを制御するため)、リサイクル制御バルブ712(第1のアンモニアコンデンサー118への冷却アンモニアのフローを制御するため)、気化器714、アンモニアクーラー716、アンモニアリサイクルコンプレッサー718、第1のノックアウトセパレーター720、第2のノックアウトセパレーター722、第3のノックアウトセパレーター724、第2のアンモニアコンデンサー726、PSAプレヒーター728、及びターボエキスパンダー730を追加的に含む。
【0056】
[0062] システム700は、アンモニアフィードストックを燃料電池グレード水素に変換するためにP-DA反応器102を使用するように設計されたプラントで利用されうる。フィードアンモニア110は、P-DA反応器102中に供給され、水素、窒素、及び未変換アンモニアからなる生成物ストリーム112に変換される。生成物ストリーム112は、アンモニアタンクから取り出されたリサイクルループを用いて生成物クーラー114を介して冷却される。冷却生成物ストリーム112は、生成物ガスコンプレッサー116を介して圧縮される。第1及び第2のノックアウトセパレーター720及び722を介して液状アンモニアをノックアウトした後、生成物ガスは、ターボエキスパンダー730の出口を介してさらに冷却されてより多くの液状アンモニアをノックアウトし(第3のノックアウトセパレーター724を介して)、生成物ストリーム中50ppm未満のアンモニア濃度(第2のアンモニアコンデンサー726を介してフィードバックされる)をもたらす。次いで、生成物ガス(第2のアンモニアコンデンサー726からのアウトプット)は、PSAプレヒーター728を介して加熱され、PSAシステム130に通して送られ、燃料電池グレード水素702及び例示例では未回収水素と窒素との混合物であるテールガス704を生成する。
【0057】
[0063] システム700は、いくつかの点で他のシステム設計とは異なる。第1に、システム700は、LEDクーラント(たとえば、水)により除去されたエネルギーの熱インテグレーションを利用する。第2に、システム700は、システム100及び200のアンモニアスクラバー122をターボエキスパンダー730に置き換える。第3に、システム700は、アンモニアタンク101中の又はそれに関連する専用気化器の必要性を排除する。次に、これらの際立った特徴の各々をさらなる詳細に説明する。
【0058】
[0064] 第1に、システム700は、LEDクーラント(たとえば、水)により除去されたエネルギーの熱インテグレーションを利用する。P-DA反応器102は、LEDから発生した光を使用して反応にパワー供給する。このLEDは、冷却を保って操作する必要がある。これを達成するために、LEDは、インハウス設計水冷冷却ブロック/熱交換器に装着される。冷却ブロックを介する水循環は、LEDからの熱エネルギーを除去し、ひいては熱エネルギーを獲得する。水により除去された熱エネルギーを廃棄する代わりに、熱エネルギーは、反応器への液状アンモニアフィードの気化導入(気化器714を介する)のために部分的に利用される。さらに、ターボエキスパンダー730及び第3のノックアウトセパレーター724の出口からの冷生成物ガスは、水をクールダウンするために使用される(アンモニアクーラー716にフィードバックされる)。これにより、冷却ブロックに水を戻す前、従来のチラーユニットなしで操作が可能になる。
【0059】
[0065] 第2に、システム700は、システム100及び200のアンモニアスクラバー122をターボエキスパンダー730に置き換える。生成物ストリーム中の未変換アンモニアは、典型的には水を用いてシステムからスクラブされる。システム700では、システム100及び200のスクラバー122は、ターボエキスパンダーに置き換えられる。これにより、少なくとも4つの潜在的利点が提供される。これらの潜在的利点の第1は、スクラバーを稼働するために水を要しないので、システムに必要とされる水の合計量の低減である。第2の潜在的利点は、廃物発生の低減である。ターボエキスパンダー730は、スクラバー122を置き換えるので、スクラバー122が発生するおそれのある水酸化アンモニウム廃物は、システムから除去される。結果として、プラントは、有害水酸化アンモニウム廃物ストリームの安全貯蔵及び処分を提供する必要がないので、コストを削減し、他の潜在的利益を提供する。第3の潜在的利点は、ターボエキスパンダー730を介して生成物ストリームを冷却することにより、生成物ストリームから低濃度アンモニアをノックオフして、それを50ppm未満にすることができる点である。最後に、第4の潜在的利点は、LED冷却水から熱を除去するために冷却生成物ストリームを利用するので、その目的のためのチラーユニットの必要性の排除である。
【0060】
[0066] システム700とシステム100及び200との間の第3の際立った特徴は、システム700が、アンモニアタンク101中の又はそれに関連する専用気化器を必要としないことである。従来のアンモニアタンクは、液状形態で化学品が貯蔵されるような圧力及び室温下でアンモニアを貯蔵する。液状アンモニアは、ガス形態の大気圧及び温度を超えてP-DA反応器102に供給する必要がある。他の設計からのフィードアンモニアタンクは、典型的には、所要の圧力及び温度で反応器にガス状アンモニアを供給するために気化器に接続される。本システム700では、アンモニアタンク101で専用気化器を使用する代わりに、プロセスは、LED冷却ブロックに由来する水をアンモニア気化に利用するように(気化器714で)インテグレートされ、次いで、所望の反応圧力及び温度を達成するように反応器生成物ガスとさらにインテグレートされる。
【0061】
[0067] 以上のプラント設計変更の各々は、より良好な熱インテグレーションをもたらし、プラント設備投資及び操作費用を潜在的に削減する。このため、ひいては、より高いプラント効率を提供するとともに、有害廃物の発生を低減する。
【0062】
III.結論
[0068] 以上の詳細な説明は、添付図を参照しながら、本開示のシステム、装置、デバイス、及び/又は方法の各種特徴及び操作を明記する。本明細書及び図に記載の実施形態例は、限定することを意味するものではなく、真の範囲は、以下の特許請求の範囲により指示される。当業者には明らかなことであろうが、その範囲から逸脱することなく多くの修正及び変形を行うことが可能である。本明細書に記載のものに加えて、本開示の範囲内の機能的に均等なシステム、装置、デバイス、及び/又は方法は、以上の説明から当業者に明らかになるであろう。本明細書に一般的に記載される及び図に例示される本開示の態様は、多種多様な異なる構成で配置、置換、組合せ、分離、及び設計が可能であることが、簡単に理解されるであろう。かかる修正及び変形は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図される。最後に、本明細書に引用されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、あらゆる目的で本願をもって参照により本明細書に組み込まれられる。
【国際調査報告】