(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】低侵襲手術のための多機能デバイスおよびその方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/295 20060101AFI20241010BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20241010BHJP
A61B 17/062 20060101ALI20241010BHJP
A61B 17/04 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61B17/295
A61B18/14
A61B17/062
A61B17/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521756
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 IN2022050917
(87)【国際公開番号】W WO2023062654
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】202121046917
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524132966
【氏名又は名称】デノボ バイオイノベーションズ プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マモリア,ニキール
(72)【発明者】
【氏名】ラッダ,ヒマンシュ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160BB01
4C160BB18
4C160GG22
4C160KK03
4C160KK14
4C160MM32
4C160NN02
4C160NN03
4C160NN07
4C160NN10
4C160NN11
(57)【要約】
MISのための多機能デバイスは、ハンドル(200)、シャフト(700)、多機能ヘッドアセンブリ(300)、および関節ジョイント(800)を含む。ヘッドアセンブリ(300)は、縫合ユニット(1100)/(1400)、および縫合ユニットの上下の平面に位置する上側および下側把持装置ユニット(400)を含む。各把持装置ユニット(400n)は、軸(414)を中心として把持装置ユニット(400)の平面で回動し、組織または縫合糸を把持するとともに、軸(412)を中心として把持装置ユニット(400)の平面に垂直に回動し、結び目を引き締めるために把持された縫合糸を引っ張るように構成される。ヘッドアセンブリ(300)の構成により、把持装置ユニット(400)によって把持された場合、糸の緩い端部が針の円形ゾーン内に位置し、緩い端部の周囲で糸の針側部分を輪にすることが可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低侵襲手術のための多機能デバイスであって、
ハンドルと、
前記ハンドルの遠位端に結合されたシャフトと、
関節ジョイントを介して前記シャフトの前記遠位端に構成され、前記関節ジョイントにより、前記シャフトに対して2自由度で回動することができる多機能ヘッドアセンブリであって、
縫合ユニットと、
前記縫合ユニットの上の平面に位置する上側把持装置ユニットと、
前記縫合ユニットの下の平面に位置する下側把持装置ユニットと
を備える、多機能ヘッドアセンブリと
を備え、前記上側および下側把持装置ユニットの各々は、一対の把持装置を備え、前記把持装置は、組織または縫合糸を把持するために、前記対応する把持装置ユニットの前記平面において回動するとともに、前記把持された縫合糸を引っ張って結び目を引き締めるために、前記把持装置ユニットの前記平面に垂直に回動するように構成される、多機能デバイス。
【請求項2】
前記上側および下側把持装置ユニットの少なくとも一方の前記把持装置は、前記把持装置内で摺動するように構成された切断ブレードを備え、作動位置において、前記切断ブレードの刃先は、前記把持装置ユニットをはさみとして使用するために前記把持装置の把持面におけるスリットから突出する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記把持装置は、前記対応するブレードと係合するカムのセットを備え、前記カムのセットは、はさみロープによって前記ハンドル上に設けられたはさみ作動ボタンに結合され、前記はさみ作動ボタンを切断モード位置に動かすと、前記はさみロープが引っ張られて前記カムのセットが回転することにより、前記ブレードが前記スリットから突出し、前記はさみ作動ボタンを前記切断モード位置から動かすと、前記はさみロープが解放されて前記カムのセットが元に戻ることにより、ばねのセットが前記ブレードを前記スリット内で動かすことができる、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記ブレードは、前記ブレードが焼灼器として機能するために、直流電流および交流電流のいずれかが流れるように構成される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記シャフトは、外側管状ケーシングと、前記関節ジョイントを介して前記ヘッドアセンブリに結合された内側チューブとを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記内側チューブは、前記ハンドルの遠位端に位置する回転ノブに結合され、ユーザが前記回転ノブを回転させると、前記ヘッドアセンブリは、前記シャフトの長手方向軸を中心として回転する、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記関節ジョイントは、一対のロープを介してマニピュレータに結合され、前記マニピュレータは、前記マニピュレータのジョイスティックがユーザの親指で操作可能であるように前記ハンドル上に位置し、前記ジョイスティックの横方向および上下方向への動きにより、前記関節ジョイントは、前記シャフトの長手方向軸に垂直である2本の互いに垂直な軸を中心として前記ヘッドアセンブリを回動させ、それによって、前記ヘッドアセンブリに3回転自由度を提供する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記マニピュレータは、互いに重なり合って配置され、2本の互いに垂直な軸を中心とする回動のために前記ジョイスティックに結合された上側ジンバルおよび下側ジンバルを備え、各ジンバルは、前記マニピュレータを前記関節ジョイントに結合する前記それぞれのロープのための滑車に結合される、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記マニピュレータは、ロックボタンを備え、前記ロックボタンは、前記ジョイスティックとともに、前記ジンバルにストッパのセットを押し付け、前記ジンバルを互いに対し付勢して前記マニピュレータを任意の位置にロックするように構成され、前記ロックボタンを押下すると、前記ジンバルから前記ストッパが分離し、前記関節ジョイントを操作するための前記ジンバルの動きが可能になる、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記各把持装置は、前部本体および後部本体を備え、前記前部本体は、前記対応する把持装置ユニットの前記平面に平行な軸を中心とする回転のために前記後部本体に回動可能に結合され、前記後部本体は、ピニオンに結合され、前記ピニオンの回転は、前記対応する把持装置ユニットの前記平面に垂直な軸を中心とする前記把持装置の回動をもたらす、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記把持装置ユニットの各々は、前記対応する把持装置の前記ピニオンと係合するラックを備え、前記ラックを前記近位側へ引っ張ると、前記2つの把持装置は、組織または縫合糸を把持するために互いに向かって動く、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記把持装置ユニット各々の前記ラックは、第1のロープによって前記ハンドルにおける第1の滑車に結合され、前記滑車の回転により、前記ロープが引っ張られて、組織または縫合糸を把持するように前記把持装置を動かす、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記把持装置ユニットの各々の前記2つの把持装置の前記前部本体は、第2のロープによって前記ハンドルにおける第2の滑車に結合され、前記第2の滑車の回転により、前記第2のロープが引っ張られて、前記2つの把持装置ユニットの前記把持装置を、前記縫合糸の両端を引っ張って結び目を引き締めるために前記対応する平面に垂直に互いに離れる方向へ動かす、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記2つの第1の滑車および前記第2の滑車は、それぞれ対応する傘歯車と対応する把持装置作動ノブおよび結び目引締め作動ノブとに結合され、前記作動ノブは、前記作動ノブの1回目の押下により、前記対応する傘歯車が内側に動いてモータに結合された入力傘歯車と係合し、前記作動ノブの2回目の押下により、前記傘歯車が外側に動いて前記入力傘歯車から離脱するようなカム機構を有する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記作動ノブは、前記対応する滑車をロックすることによって前記対応する把持装置ユニットを作動位置にロックするための内蔵ロック機構を含み、前記ロック機構は、前記作動ノブを外側に引っ張ると前記滑車がロック解除され、前記把持装置ユニットが前記把持装置を対応する静止位置に戻すように構成される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記上側および下側把持装置ユニットは、前記把持装置上に構成された赤外線センサと圧力センサとのセットを備える、請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
前記デバイスは、前記赤外線センサと前記圧力センサとの前記セットおよび前記モータに動作可能に結合されたコントローラを備え、前記コントローラは、前記赤外線センサからの信号に基づいて、把持されている前記組織の厚さに関するフィードバックを提供するように構成され、さらに、前記圧力センサからのフィードバックに基づいて、前記感知された圧力が予め定められた圧力値を超えると前記モータのさらなる回転を停止するように構成される、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記コントローラは、前記把持された組織における血流を示す、前記赤外線センサからの前記信号における脈動に基づいて、前記把持された組織における血管の存在を検出するように構成され、さらに、血管が検出された場合、前記デバイスのユーザに警告を発する用に構成される、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記ハンドルは、前記縫合ユニットを作動させるための主要トリガを備え、前記主要トリガは、前記主要トリガが押下されると縫合滑車が回転して前記縫合滑車の周囲に巻き付けられた縫合ロープを引っ張るように前記縫合滑車に結合され、前記縫合ロープは、前記縫合ユニットの駆動機構に結合されており、前記縫合ユニットの前記主要トリガ、前記縫合滑車、および前記駆動機構は、前記主要トリガを1回完全に押下すると前記縫合ユニットの前記縫合針が180度回転し、前記主要トリガを2回目に押下すると、前記主要トリガが前記1回目の押下から解放されて開始位置に戻った後、前記縫合針が追加の180度回転して1回転するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
前記ハンドルは、機能シフトボタンと、前記デバイスのコントローラに動作可能に結合された小トリガとを備え、前記機能シフトボタンは、把持動作、切断動作、結び目引締め動作、焼灼動作、および縫合動作の間で選択するために構成され、前記コントローラは、前記小トリガが押下されると、前記機能シフトボタンの位置に基づいて前記選択された機能を作動させる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
低侵襲手術のための多機能デバイスであって、
ハンドルと、
前記ハンドルの遠位端に結合されたシャフトと、
前記シャフトの前記遠位端に構成されたヘッドアセンブリであって、少なくとも組織を把持するための一対の把持装置を備える少なくとも1つの把持装置ユニットを備えるヘッドアセンブリと
を備え、前記少なくとも1つの把持装置ユニットの前記把持装置の各々は、前記把持装置内で摺動するように構成された切断ブレードを備え、作動位置において、前記切断ブレードの刃先は、前記把持装置ユニットをはさみとして使用するために前記把持装置の把持面におけるスリットから突出する、多機能デバイス。
【請求項22】
前記ブレードは、前記ブレードが焼灼器として機能するために、直流電流および交流電流のいずれかが流れるように構成される、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記少なくとも1つの把持装置ユニットは、赤外線センサのセットを備え、前記デバイスは、前記赤外線センサからの信号における脈動に基づいて、前記把持された組織における血管の存在を検出するためにコントローラを備え、前記信号は、前記把持された組織における血液の存在を示し、前記コントローラはさらに、血管が検出された場合、前記デバイスのユーザに警告を発するように構成される、請求項21に記載のデバイス。
【請求項24】
低侵襲手術のための多機能デバイスであって、
ハンドルと、
前記ハンドルの遠位端に結合されたシャフトと、
前記シャフトの前記遠位端に構成されたヘッドアセンブリであって、少なくとも組織を把持するための一対の把持装置を備える少なくとも1つの把持装置ユニットを備えるヘッドアセンブリと
を備え、前記把持装置ユニットは、前記把持された組織の損壊を防ぐために前記把持装置ユニットの作動を制御するために、前記把持されている組織の厚さおよび把持中に前記組織にかかる圧力に関するフィードバックを提供するために前記把持装置に構成された赤外線センサと圧力センサとのセットを備える、多機能デバイス。
【請求項25】
低侵襲手術のための多機能デバイスであって、
ハンドルと、
前記ハンドルの遠位端に結合されたシャフトと、
前記シャフトの前記遠位端に構成されたヘッドアセンブリであって、少なくとも組織を把持するための一対の把持装置を備える少なくとも1つの把持装置ユニットを備えるヘッドアセンブリと
を備え、
前記少なくとも1つの把持装置ユニットは、前記把持装置に構成された赤外線センサのセットを備え、
前記デバイスは、前記赤外線センサからの信号における脈動に基づいて、前記把持された組織における血管の存在を検出するためにコントローラを備え、前記信号は、前記把持された組織における血液の存在を示し、前記コントローラはさらに、血管が検出された場合、前記デバイスのユーザに警告を発するように構成される、多機能デバイス。
【請求項26】
低侵襲手術中に組織の縫合、結紮、および結び目の引締めを行うための方法であって、
縫合ユニットと、前記縫合ユニットの上の平面に位置する上側把持装置ユニットと、前記縫合ユニットの下の平面に位置する下側把持装置ユニットとを備え、前記上側および下側把持装置ユニットの各々の把持装置が、前記対応する把持装置ユニットの前記平面において回動するとともに、前記把持装置ユニットの前記平面に垂直に回動し、前記縫合ユニットから離れる方向に動くように構成される、低侵襲手術のためのデバイスを提供するステップと、
上側把持装置ユニットおよび下側把持装置ユニットによって、前記対応する把持装置を前記それぞれの把持装置ユニットの前記平面において動かすことによって、前記組織を把持するステップと、
前記縫合ユニットの縫合針によって、前記縫合針に固定された縫合糸が前記組織を貫通および横断するように、前記把持された組織を刺すステップと、
前記把持された組織を解放するステップと、
前記上側および下側把持装置ユニットの一方によって、前記縫合糸の自由端部が、前記縫合針の動きによって画定された円形ゾーン内に位置するように、前記縫合糸の前記自由端部を把持するステップと、
前記縫合針を少なくとも360度動かし、前記縫合糸を前記縫合糸の前記自由端部の周囲に巻き付けて1つのループを作り、結び目の種類に応じてそれを繰り返すステップと、
前記上側および下側把持装置ユニットの他方によって、前記縫合糸の針側部分を把持するステップと、
前記上側および下側把持装置ユニットの前記把持装置を、前記それぞれの把持装置ユニットの前記平面に垂直に動かし、前記縫合糸の結び目を引き締めるステップと
を備える方法。
【請求項27】
低侵襲手術のための縫合ユニットであって、
上側トラックおよび下側トラックを備える一対の半円より大きな円形のトラックと、針トラックとを有するハウジングと、
前記針トラックに沿って動くように前記針トラック内に配置された縫合針と、
前記上側トラックおよび前記下側トラックの少なくとも1つと係合するパックであって、前記下側トラックと係合している場合、前記パックの動きによって前記縫合針の動きがもたらされるように、前記縫合針に押し付けられて前記縫合針と係合し、前記上側トラックと係合している場合、前記パックは前記縫合針から持ち上がり、前記縫合針に動きをもたらすことなく動くパックと、
前記パックを前記上側トラックおよび前記下側トラックに沿って動かすための駆動機構と
を備え、
前記上側トラックおよび前記下側トラックは、前記パックが前記下側トラックの端部まで動くと上方に移動して前記上側トラックと係合し、前記パックが前記上側トラックの端部まで逆方向に動くと下方に移動して前記下側トラックと係合するように、両端において互いに接続される、縫合ユニット。
【請求項28】
前記駆動機構は、スコッチヨーク機構である、請求項27に記載の縫合ユニット。
【請求項29】
前記上側トラック、下側トラック、および前記針トラックは、前記ハウジングの内周および外周のいずれかに構成される、請求項27に記載の縫合ユニット。
【請求項30】
低侵襲手術のための縫合ユニットであって、
ハウジングの外周に構成された針トラックを備えるハウジングと、
前記針トラックに沿って動くように前記針トラック内に配置された縫合針と、
前記ハウジングの前記外周の周囲に構成されたベルトであって、前記ベルトの動きに伴い前記縫合針を前記針トラックに沿って動かすために前記縫合針に押し付けられるベルトと、
前記ハウジングの前記外周の周囲で前記ベルトを動かすための複数の滑車と
を備え、
前記複数の滑車の1つは、前記ベルトを駆動するために可撓性回転シャフトによってモータに結合される、縫合ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、手術器具の分野に関する。特に、本開示は、手術中の把持、縫合、結紮、結び目の引締め、切断、および焼灼の機能を含む低侵襲手術のためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
背景説明には、本発明を理解する上で有用であり得る情報が含まれる。本項は、ここで提供される情報のいずれかが先行技術である、または本特許請求の対象となる発明に関連すること、あるいは明示的または暗示的に参照される任意の公表文献が先行技術であることを認めるものではない。
【0003】
20世紀最後の20年間において、外科技術の最も重要な進歩の1つは、低侵襲手術(MIS)の導入によって象徴される。
【0004】
一般に腹腔鏡手術または内視鏡手術として知られている低侵襲手術は、様々なデバイス/器具を挿入し、手術箇所にアクセスするために、患者の腹部に5~12mmのサイズの小さな切開を4~5箇所行うことによって行われる。外科手術全体は、病変組織に直接触れることなく、または手術部位を直接目視することなく、患者の体外からツールハンドルを操作することによって行われる。術野は、腹壁の切開の1つを介して腹腔内に挿入された腹腔鏡(小型カメラ)によって目視される。手術部位の腹腔鏡視野は、腹腔鏡内の小型カメラによって捕捉され、2Dビデオモニタ上で外科医に表示される。
【0005】
従来の開腹アプローチをMIS技術に段階的に置き換えることにより、小さな組織外傷、小さな傷跡、最低限の血液損失、少ない痛み、早い回復時間、および早期の退院などの患者の利益が、一貫した所見として残されている。低侵襲手術(MIS)は、増え続ける外科処置で一般的になり、ほぼ全ての開腹手術に代わって用いられ得る。
【0006】
腹腔鏡手術は、患者の懸念の全てを解決する驚異的な技術であるが、それに必要な器具を持たない外科医に求められる要求が増大した。外科技術の進歩および新たな手術ツールの可用性にもかかわらず、腹腔鏡下の縫合および結紮の複雑さがMIS処置の普及への障壁であり続けることにより、腹腔鏡手術によって可能になる利益が患者から奪われている。
【0007】
MIS中、外科医は、長さのある剛性器具を用いて全ての手順を行うという技術的課題に直面する。各々の用途に応じて、外科医は、特定の器具を使用し、外科処置を通して器具を交換し続ける必要がある。把持には腹腔鏡用把持装置が使用され、組織の切断には腹腔鏡用はさみが使用され、組織の焼灼には、外科医が焼灼器を挿入し、フットパドルを用いて焼灼器を操作する必要がある。体内縫合のためには、外科医は、最初に腹腔内に針を挿入し、次に腹腔鏡用把持装置および針ホルダを用いて縫合を完了しなければならない。このため、外科医の手足は全て異なる器具に占有される。
【0008】
手術時間の大半が様々な器具の交換に費やされ、器具を絶えず交換しなければならないことによって外科医の集中力に影響が及ぼされる。この手術時間の増加により、患者に用いられる麻酔量が増え、長時間の麻酔による合併症が起こりやすくなる。
【0009】
また、組織は外科医の手に直接触れず、2Dビジョンであるため、外科医は組織の深さおよび厚さを知覚できない。必要な経験がない場合、大きな力によって組織が破損することがある。
【0010】
腹腔鏡下体内縫合とは、縫合材料を用いて体内で組織を近付けることを意味する。体内で一連の結び目を作るために、1つの腹腔鏡用針ホルダおよび把持装置と、縫合糸を有する針とが使用される。この技術は、針を操作して1つの針ホルダから次の針ホルダに針を受け渡し、一連の結び目を作る技術を必要とする。
【0011】
腹腔鏡下体内縫合は、適合性が高く、柔軟かつ経済的であり、市販の器具を使用するので、好適な方法である。腹腔鏡下縫合は最も基本的であるが、実行および学習が最も困難である。これが、腹腔鏡手術の普及への大きな障壁と考えられる。腹腔鏡下縫合は、縫合針、腹腔鏡用針ホルダ、および把持装置を用いて行われる。
【0012】
体内縫合は、把持装置を用いて組織を把持することから始まり、針ホルダによって縫合針を把持すること、組織の吻合端を横断して針を駆動すること、針ホルダを再調整すること、組織の他方の端部を把持し、他方の吻合端を横断して針を駆動すること、3つの結び目を作ること、縫合糸の両端を引っ張って結び目を引き締めること、および糸を切断して終了することの繰り返しとみなされる。
【0013】
理想的には、針は、(1)針先と、(2)針駆動力との方向が同一であるように方向付けられるべきであり、両方に関する最適な方向は、組織抵抗に対して真正面の90°である。針が大きな抵抗なく容易に刺さり得るように組織を緊張させるために、組織は縫合前に把持されるべきである。組織が把持されずに針が刺されると、組織が裂ける場合があり、針の経路が変わることがある。
【0014】
体内縫合は、縫合の各ステップに関して、限られた自由度の環境における反復的な両手が協調した動きを必要とする。縫合中、外科医は、適切な構えを見つけるために絶えず針の向きを変える必要がある。針を正確に位置合わせするために、連続的な把持および解放動作が必要である。標準的な針ホルダの構造により、体内縫合中の針の向きは完全に制御可能ではなく、各ステッチの実行前に針を位置決めするために複数回の把持および解放運動が必要とされる。これには訓練が必要であり、手術時間の延長がもたらされ得る。必要な経験および実践がない場合、これらの制約は外科医の労力を増大させて肉体的疲労を招き、その結果、過失レベルの増加および不十分な縫合の質がもたらされる一方、精神的ストレスの結果、手術時間および麻酔使用量が増加する。これらの要因により、腹腔鏡手術は、人間工学的に厳しいものになる。
【0015】
現在、市場には、単一の器具を用いて上述した機能の全てを外科医に支援することができるデバイスは存在しない。
【0016】
有望な解決策の1つは、単孔式腹腔鏡下手術(SILS)であり、これは、1箇所の切開が行われ、この単一の切開箇所を通して複数の器具が挿入される、低侵襲外科手術の一種である。これは主に、腹部の切開数を低減し、早期回復させるために開発された。この開発にもかかわらず、SILSは、外科医が全ての器具を単一の入口を通して挿入し、所望の機能のためにそれらを繰り返し交換しなければならないことによって手術の複雑性が高まるため、一般的に行われていない。上述の観点から、従来のデバイスは、器具の先端が外科医の手と逆方向に動き、外科医は、針の制御が不十分で自由度が制限された条件下で針の位置および向きを決めなければならないために非常に骨の折れる操作となるので、時代遅れで非効率的である。この欠点により、プロセスは非常に退屈で消耗するものになり、急な学習曲線を必要とする。
【0017】
したがって、従来の腹腔鏡手術デバイスの欠点を克服する、腹腔鏡手術中に特に把持、切断、焼灼、縫合、および結紮を容易にすることが可能な改善された腹腔鏡手術デバイスへの要望が存在する。
【0018】
本明細書における全ての公表文献は、個々の公表文献または特許出願が参照によって組み込まれることが明確かつ個別的に示されている場合と同様に、参照によって組み込まれる。組み込まれた参照文献における用語の定義または用法が、本明細書で規定されたその用語の定義と矛盾する、または反する場合、本明細書で規定された用語の定義が適用され、参照文献における用語の定義は適用されない。
【0019】
本明細書の説明および以下に続く特許請求の範囲を通して使用される場合、「a」、「an」、および「the」の意味は、文脈上例外が明示されない限り、複数への言及を含む。また、本明細書の説明で使用される場合、「in」の意味は、文脈上例外が明示されない限り、「in」および「on」を含む。
【0020】
本明細書における値の範囲の記載は、単に、その範囲内にある個々の値の各々を個別に言及する簡潔化された方法として機能することが意図されている。本明細書において例外が示されない限り、個々の値の各々は、本明細書に個別に記載されるのと同様に本明細書に組み込まれる。本明細書で説明される方法は全て、本明細書において例外が示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行われてよい。本明細書の特定の実施形態に対して提供されるあらゆる例、または例示的な言葉(たとえば「たとえば~などの」)は、単に、本発明を明らかにすることが意図されており、特許請求対象となる本発明の範囲に制限を設けるものではない。本明細書における言語は、本発明の実施に不可欠な任意の特許請求対象でない要素を示すものと解釈されてはならない。
【0021】
本明細書に開示される本発明の代替要素または実施形態のグループは、限定として解釈されるものではない。各グループの要素は、個別に、またはグループの他の要素や本明細書に存在する他の要素との任意の組み合わせで参照され、特許請求対象になり得る。グループの1または複数の要素は、便宜性および/または特許性の理由でグループに包含され、またはグループから削除されてもよい。そのような包含や削除が生じた場合、本明細書は、修正されたグループを含み、添付の特許請求の範囲において用いられる全てのマーカッシュグループの記述を満たすとみなされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本開示の一般的な目的は、従来の手術デバイスの欠点を克服することである。
【0023】
本開示の目的は、腹腔鏡手術中に特に把持、切断、焼灼、縫合、結紮および結び目の引締めを容易にする、腹腔鏡手術のための単一のデバイスを提供することである。
【0024】
本開示の別の目的は、単一の器具を用いてほとんどの腹腔鏡機能を行うことができ、それによって、各機能のために器具を切り換える必要性を解消する腹腔鏡手術デバイスを提供することである。
【0025】
本開示の別の目的は、把持力の制御を可能にするフィードバックベースの組織の把持を含む腹腔鏡手術デバイスを提供することである。
【0026】
本開示の別の目的は、血管の不慮の損傷を防止するために、把持された組織における血管の存在を検出するための機構を含む腹腔鏡手術デバイスを提供することである。
【0027】
本開示の別の目的は、ヘッドアセンブリの動きに関して空間内に6自由度を包含する腹腔鏡手術デバイスを提供することである。
【0028】
本開示の別の目的は、体内縫合、結紮、および結び目の引締めのプロセス全体を単一のプロセスに自動化する腹腔鏡手術デバイスを提供することである。
【0029】
本開示の別の目的は、体内縫合のプロセス中の複数回の針の把持および解放運動を回避する腹腔鏡手術デバイスを提供することである。
【0030】
本開示の別の目的は、手術ロボットシステムに容易に組み込むことが可能な腹腔鏡手術デバイスを提供することである。
【0031】
本開示の別の目的は、単孔式腹腔鏡下手術において外科医を支援することが可能な腹腔鏡デバイスを提供することである。
【0032】
本発明の他の目的および利点は、本発明の好適な実施形態の例示のために組み込まれ、本発明の範囲を限定することは意図されない添付図面と併せて読んだ場合、以下の説明から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本開示の態様は、手術器具に関する。特に、本開示は、把持、縫合、結紮、結び目の引締め、組織切断、および焼灼の機能/機構が組み込まれた低侵襲手術デバイス(以下、腹腔鏡手術デバイスとも称される)に関する。
【0034】
実施形態において、提案される低侵襲手術のためのデバイスは、ハンドルと、ハンドルの遠位端に結合されたシャフトと、関節ジョイントにより、ヘッドアセンブリがシャフトに対して2自由度で回動することができるように、関節ジョイントを介してシャフトの遠位端に構成された多機能ヘッドアセンブリとを含む。ヘッドアセンブリは、縫合ユニットと、縫合ユニットの上の平面に位置する上側把持装置ユニットおよび縫合ユニットの下の平面に位置する下側把持装置ユニットを備える一対の把持装置ユニットとを含む。上側および下側把持装置ユニットの各々は、組織または縫合糸を把持するために、対応する把持装置ユニットの平面において回動するとともに、把持された縫合糸を引っ張って結び目を引き締めるために、把持装置ユニットの平面に垂直に回動するように構成された一対の把持装置を備える。
【0035】
上側および下側把持装置ユニットの少なくとも一方の把持装置は、把持装置内で摺動するように構成された切断ブレードを含んでよく、作動位置において、切断ブレードの刃先は、把持装置ユニットをはさみとして使用するために把持装置の把持面におけるスリットから突出する。
【0036】
シャフトは、外側管状ケーシングと、関節ジョイントを介してヘッドアセンブリに結合された内側チューブとを含んでよい。内側チューブは、ユーザによって回転ノブを回転させると、ヘッドアセンブリがシャフトの長手方向軸を中心として回転するように、ハンドルの遠位端に位置する回転ノブに結合され得る。
【0037】
関節ジョイントは、一対のマニピュレータロープを介してハンドルに設けられたマニピュレータに結合され得る。マニピュレータは、マニピュレータのジョイスティックがユーザの親指で操作可能であるようにハンドル上に位置してよい。ジョイスティックの横方向および上下方向への動きにより、関節ジョイントは、シャフトの長手方向軸に垂直である2本の互いに垂直な軸を中心としてヘッドアセンブリを回動させ、それによって、ヘッドアセンブリに3回転自由度を提供する。
【0038】
マニピュレータは、互いに重なり合って配置され、2本の互いに垂直な軸を中心とする回動のためにジョイスティックに結合された上側ジンバルおよび下側ジンバルを含む。各ジンバルは、マニピュレータを関節ジョイントに結合するそれぞれのマニピュレータロープを引っ張るための滑車に結合され得る。
【0039】
マニピュレータは、ジョイスティックとともに、ジンバルにストッパのセットを押し付け、ジンバルを互いに対し付勢してマニピュレータを任意の位置にロックするように構成されたロックボタンを含んでよい。ロックボタンを再び押下すると、ジンバルからストッパが分離し、関節ジョイントを操作するためのジンバルの動きが可能になる。
【0040】
把持装置の各々は、前部本体および後部本体を含んでよい。前部本体は、対応する把持装置ユニットの平面に平行な軸を中心とする回転のために後部本体に回動可能に結合され得る。後部本体は、ピニオンに結合されてよく、ピニオンの回転は、対応する把持装置ユニットの平面に垂直な軸を中心とする把持装置の回動をもたらす。
【0041】
把持装置ユニットの各々は、対応する把持装置のピニオンと係合するラックを含んでよく、ラックを近位側へ引っ張ると、2つの把持装置は、組織または縫合糸を把持するために互いに向かって動く。把持装置ユニット各々のラックは、把持装置ロープによってハンドルにおける対応する滑車に結合されてよく、滑車の回転により、把持装置ロープが引っ張られて、組織または縫合糸を把持するように把持装置を動かす。ラックの動きは、把持装置を閉じる力が制御されるように、フィードバックに基づいて制御され得る。
【0042】
滑車は、対応する傘歯車および把持装置作動ノブに結合されてよく、把持装置作動ノブは、把持装置作動ノブの1回目の押下により、対応する傘歯車が内側に動いてモータに結合された入力傘歯車と係合し、把持装置作動ノブの2回目の押下により、傘歯車が外側に動いて入力傘歯車から離脱するようなカム機構を有する。
【0043】
把持装置作動ノブは、対応する滑車をロックすることによって対応する把持装置ユニットを作動位置にロックするための内蔵ロック機構を含んでよく、ロック機構は、把持装置作動ノブを外側に引っ張ると滑車がロック解除され、把持装置ユニットが付勢力によって把持装置を開位置に戻すように構成される。
【0044】
低侵襲手術のための多機能デバイスの別の実施形態において、デバイスは、ハンドルと、ハンドルの遠位端に結合されたシャフトと、シャフトの遠位端に構成されたヘッドアセンブリとを含む。ヘッドアセンブリは、少なくとも組織を把持するための一対の把持装置を有する少なくとも1つの把持装置ユニットを含む。少なくとも1つの把持装置ユニットの把持装置の各々は、把持装置内で摺動するように構成された切断ブレードを含み、作動位置において、切断ブレードの刃先は、把持装置ユニットをはさみとして使用するために把持装置の把持面におけるスリットから突出する。ブレードは、ブレードが焼灼器として機能するために、直流電流および交流電流のいずれかが流れるように構成され得る。
【0045】
低侵襲手術のための多機能デバイスの別の実施形態において、デバイスは、ハンドルと、ハンドルの遠位端に結合されたシャフトと、シャフトの遠位端に構成されたヘッドアセンブリとを含む。ヘッドアセンブリは、少なくとも組織を把持するための一対の把持装置を有する少なくとも1つの把持装置ユニットを含む。把持装置ユニットは、把持された組織の損壊を防ぐために把持装置ユニットの作動を制御するために、把持されている組織の厚さおよび把持中に組織にかかる圧力に関するフィードバックを提供するために把持装置に構成された赤外線センサと圧力センサとのセットを含む。
【0046】
低侵襲手術のための多機能デバイスの別の実施形態において、デバイスは、ハンドルと、ハンドルの遠位端に結合されたシャフトと、シャフトの遠位端に構成されたヘッドアセンブリとを含む。ヘッドアセンブリは、少なくとも組織を把持するための一対の把持装置を有する少なくとも1つの把持装置ユニットを含む。少なくとも1つの把持装置ユニットは、把持装置に構成された赤外線センサのセットを含み、デバイスは、赤外線センサからの信号における脈動に基づいて、把持された組織における血管の存在を検出するためにコントローラを含み、信号は、把持された組織における血管の存在を示す。コントローラはさらに、血管が検出された場合、デバイスのユーザに警告を発するように構成される。
【0047】
本開示の実施形態は、低侵襲手術中に組織の縫合、結紮、および結び目の引締めを行うための方法を提供し、この方法は、縫合ユニットと、縫合ユニットの上の平面に位置する上側把持装置ユニットと、縫合ユニットの下の平面に位置する下側把持装置ユニットとを有する、低侵襲手術のためのデバイスを提供するステップを含む。上側および下側把持装置ユニットの各々は、対応する把持装置ユニットの平面において回動するとともに、把持装置ユニットの平面に垂直に回動し、縫合ユニットから離れる方向に動くように構成される。この方法はさらに、上側把持装置ユニットおよび下側把持装置ユニットによって、対応する把持装置をそれぞれの把持装置ユニットの平面において動かすことによって組織を把持するステップと、縫合ユニットの針によって、縫合針に固定された縫合糸が組織を貫通および横断するように、把持された組織を刺すステップと、把持された組織を解放するステップと、上側または下側把持装置ユニットの一方によって、縫合糸の自由端部が針の動きによって画定された円形ゾーン内に位置するように、縫合糸の自由端部を把持するステップと、針を少なくとも360度動かし、縫合糸を縫合糸の自由端部の周囲に巻き付けて1つのループを作り、結び目の種類に応じてそれを繰り返すステップと、上側および下側把持装置ユニットの他方によって、縫合糸の針側部分を把持するステップと、上側および下側把持装置ユニットの把持装置を、それぞれの把持装置ユニットの平面に垂直に動かし、結び目を引き締めるステップとを含む。
【0048】
また別の実施形態において、本開示は、上側トラックおよび下側トラックを備える一対の半円より大きな円形のトラックと、針トラックとを有するハウジングと、針トラックに沿って動くように針トラック内に配置された縫合針と、所与の時間に上側トラックまたは下側トラックと係合するパックとを有する、低侵襲手術のための縫合ユニットを提供する。パックは、下側トラックと係合している場合、パックの動きによって縫合針の動きがもたらされるように、縫合針に押し付けられ、上側トラックと係合している場合、パックは縫合針から持ち上がり、縫合針に動きをもたらすことなく動く。縫合ユニットはさらに、パックを上側トラックおよび下側トラックに沿って動かすための駆動機構を含む。上側トラックおよび下側トラックは、パックが下側トラックの端部まで動くと上方に移動して上側トラックと係合し、パックが上側トラックの端部まで逆方向に動くと下方に移動して下側トラックと係合するように、両端において互いに接続される。
【0049】
縫合ユニットの駆動機構は、スコッチヨーク機構であってよく、上側トラック、下側トラック、および針トラックは、ハウジングの内周および外周のいずれかに構成され得る。
【0050】
低侵襲手術のための縫合ユニットの別の実施形態において、縫合ユニットは、ハウジングの外周に構成された針トラックを有するハウジングと、針トラックに沿って動くように針トラック内に配置された縫合針と、ハウジングの外周の周囲に構成されたベルトであって、ベルトの動きに伴い針を針トラックに沿って動かすために縫合針に押し付けられたベルトとを含む。ハウジングの外周の周囲でベルトを動かすために複数の滑車が配置される。複数の滑車の1つは、ベルトを駆動するために可撓性回転シャフトによってモータに結合される。
【0051】
本発明の主題事項の様々な目的、特徴、態様、および利点は、同様の番号が同様の構成要素を表す添付図面とともに、以下に示す好適な実施形態の詳細な説明から明らかになる。
【0052】
添付図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部に組み込まれて本明細書の一部をなすものである。図面は、本開示の典型的な実施形態を示し、記述とともに、本開示の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1A】本開示の実施形態に係る、開示された低侵襲手術のためのデバイスの典型的な左側面図、右側面図、および上面図をそれぞれ示す。
【
図1B】本開示の実施形態に係る、開示された低侵襲手術のためのデバイスの典型的な左側面図、右側面図、および上面図をそれぞれ示す。
【
図1C】本開示の実施形態に係る、開示された低侵襲手術のためのデバイスの典型的な左側面図、右側面図、および上面図をそれぞれ示す。
【
図2】本開示の実施形態に係る、デバイスのハンドルの典型的な透視斜視図を示し、内部の様々な構成要素が示される。
【
図3】本開示の実施形態に係る、デバイスのヘッドアセンブリの典型的な分解図を示す。
【
図4A】本開示の実施形態に係る、デバイスのヘッドアセンブリの把持装置ユニットの典型的な分解図を示す。
【
図4B】本開示の実施形態に係る、デバイスのヘッドアセンブリの把持装置ユニットの典型的な上面図を示し、一対の把持装置による組織の把持が示される。
【
図5A】本開示の実施形態に係る、把持装置ユニットのはさみ機能を可能にする特徴を示す、把持装置ユニットの把持装置の典型的な図を示す。
【
図5B】本開示の実施形態に係る、把持装置ユニットのはさみ機能を可能にする特徴を示す、把持装置ユニットの把持装置の典型的な図を示す。
【
図5C】本開示の実施形態に係る、把持装置ユニットのはさみ機能を可能にする特徴を示す、把持装置ユニットの把持装置の典型的な図を示す。
【
図6】本開示の実施形態に係る、ヘッドアセンブリの様々な機能を可能にする様々な要素を示す、デバイスの典型的なブロック図を示す。
【
図7A】本開示の実施形態に係る、デバイスのシャフトの典型的な図を示す。
【
図7B】本開示の実施形態に係る、デバイスのシャフトの典型的な図を示す。
【
図8A】本開示の実施形態に係る、ヘッドアセンブリをシャフトに結合する関節ジョイントの典型的な上面図および斜視図をそれぞれ示す。
【
図8B】本開示の実施形態に係る、ヘッドアセンブリをシャフトに結合する関節ジョイントの典型的な上面図および斜視図をそれぞれ示す。
【
図9】本開示の実施形態に係る、デバイスのマニピュレータの典型的な分解図を示す。
【
図10】本開示の実施形態に係る、デバイスの様々な把持装置ユニットの駆動機構および結び目引締め作動ノブにモータを結合するための配置の典型的な斜視図を示す。
【
図11A】本開示の実施形態に係る、デバイスの縫合ユニットの細部を示す。
【
図11B】本開示の実施形態に係る、デバイスの縫合ユニットの細部を示す。
【
図11C】本開示の実施形態に係る、デバイスの縫合ユニットの細部を示す。
【
図12】本開示の実施形態に係る、縫合ユニットとともに使用される縫合針の典型的な図を示す。
【
図13A】本開示の実施形態に係る、縫合ユニットの機能を示す。
【
図13B】本開示の実施形態に係る、縫合ユニットの機能を示す。
【
図13C】本開示の実施形態に係る、縫合ユニットの機能を示す。
【
図13D】本開示の実施形態に係る、縫合ユニットの機能を示す。
【
図14A】縫合ユニットの代替実施形態の典型的な分解図を示す。
【
図14B】縫合ユニットの代替実施形態の典型的な分解図を示す。
【
図15A】本開示の実施形態に係る、結紮および結び目の引締めを示すヘッドアセンブリの典型的な図を示す。
【
図15B】本開示の実施形態に係る、結紮および結び目の引締めを示すヘッドアセンブリの典型的な図を示す。
【
図16】本開示の実施形態に係る、開示されたデバイスのヘッドアセンブリを用いて縫合、結紮、および結び目の引締めを行うための方法に関する典型的な方法フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下は、添付図面に示される本開示の実施形態の詳細な説明である。実施形態は、本開示を明確に伝達するために詳細である。ただし、提供される詳細の程度は、予想される実施形態の変形例を限定することを意図されておらず、逆に、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の主旨および範囲に収まる全ての修正例、均等物、および代替例を包含することが意図されている。
【0055】
添付の特許請求の範囲の各々は、別個の発明を定義するものであり、侵害の目的で、特許請求の範囲に記載された様々な要素または限定に対する均等物を含むものと認識される。文脈に依存して、以下の「本発明」への言及は全て、場合によっては特定の実施形態のみを指すことがある。他の例では、「本発明」への言及は、特許請求の範囲の必ずしも全てではなく1または複数に記載された主題事項を指すことが認識される。
【0056】
本明細書において様々な用語が使用される。特許請求の範囲において使用される用語が定義されていない場合、出願時の刊行物および交付済みの特許に反映されるように、当業者がその用語に与えた最も広い定義が与えられるべきである。
【0057】
本明細書で説明される実施形態は、把持、切断、焼灼、縫合、結紮、および結び目の引締めを行うための機能を有する多機能な低侵襲手術用デバイスに関する。このデバイスは、縫合ユニットと、縫合ユニットの上の平面に位置する上側把持装置ユニットおよび縫合ユニットの下の平面に位置する下側把持装置ユニットを備える一対の把持装置ユニットとを含む独自の多機能ヘッドアセンブリに基づく。把持装置ユニットの各々は、2本の異なる軸を中心として回動する機能を有する一対の把持装置を含み、軸の一方は、把持装置を把持装置ユニットの平面に垂直に移動させるために平面上にあり、他方は、把持装置を把持装置ユニットの平面に垂直に回動させるために平面に垂直である。
【0058】
把持装置ユニットの平面における把持装置の動きにより、組織および縫合糸を把持することが可能であり、把持装置ユニットの平面に垂直な動きにより、結び目を引き締めるために把持された糸を引っ張ることが可能である。
【0059】
開示されたデバイスは、複数の構造的特徴および機能について説明されるが、必要性および用途に応じて異なる特徴および機能の組み合わせを有する異なる構成でデバイスを構成することが可能であり、そのような変形例は全て、いかなる制限もなく、本開示の範囲内に収まることを理解すべきである。
【0060】
ここで、それぞれ開示された腹腔鏡手術デバイスの左、右、および上からの図が開示される
図1A~
図1Cを参照すると、デバイス100は、ハンドル200と、ハンドル200の遠位端でハンドル200に結合されたシャフト700と、関節ジョイント800によってシャフト700の遠位端に結合された多機能ヘッドアセンブリ300とを含んでよい。
【0061】
関節ジョイント800は、ハンドル200に設けられたマニピュレータ900を用いて、ヘッドアセンブリ300が、シャフト700の長手方向軸に垂直である2本の互いに垂直な軸を中心として回動することを可能にし得る。ヘッドアセンブリは、ハンドル200に設けられた回転ノブ206を回転させることによって、シャフト700の長手方向軸を中心として回転することもできる。したがって、ヘッドアセンブリは3回転自由度を有し、外科医が腹腔鏡手術中にマニピュレータ900および回転ノブ206を用いてヘッドアセンブリ300を遠隔から操作するために役立つ。
【0062】
ヘッドアセンブリ300、関節ジョイント800、およびシャフト700の直径は8~12mmの範囲であってよく、デバイスの長さは250mm~400mmの範囲であってよく、手術の性質に依存して選択されることにより、全ての種類の低侵襲外科手術に適している。また、当業者には明らかである適切な改変によって、他の種類の外科手術に用いることも可能である。
【0063】
ヘッドアセンブリ300は、
図3に示すように、縫合ユニット、縫合ユニットの上の平面に位置する上側把持装置ユニット、および縫合ユニットの下の平面に位置する下側把持装置ユニットを包含する。縫合ユニットの両側に1つずつ2つの把持装置ユニットを有することにより、また、対応する把持装置ユニットの平面で回動するとともに、把持装置ユニットの平面に垂直に回動する把持装置を把持装置ユニットに有することにより、デバイス100は、組織の把持、縫合、結紮、結び目の引締め、切断、および焼灼など、複数の外科手術ステップを処理する独自の方法を可能にし、それら全てが、ハンドル200に設けられた機能シフトボタン204を用いて機能を切り換えることが可能な単一のハンドヘルドデバイスを用いて達成される。したがって、これまで標準的であった、体内外科手術のプロセス中に複数のデバイスを使用し、複数回の把持および解放運動を行うことが回避され、体内外科手術がより効率的になる。
【0064】
またデバイスは、外科医が6自由度(DoF)によって複雑な解剖学的位置に到達するための容易なアクセスも提供し、この6自由度は、上述した3DoFに、シャフト700の長手方向直線運動と、デバイス100全体の操作によるヘッドアセンブリ300の横方向および上下の運動を含む2つの直線運動とを足したものである。外科医は、ハンドル上のマニピュレータ900のジョイスティック908を用いてヘッドアセンブリを回動させることができる。ジョイスティック908は、対応するスロット内を4方向、すなわち、左右および上下に動かされ得る。ジョイスティック908が右へ動かされると、ヘッドアセンブリ300は右へ動き、逆も同様である。同様に、ジョイスティック908が上方へ動かされると、ヘッドアセンブリ300は上方へ動き、逆も同様である。ジョイスティック909は、外科医の親指が届くように配置される。回転ノブ206は、ヘッドアセンブリを、シャフト700の長手方向軸の周囲で360度回転させることができる。
【0065】
図2は、
図1A~
図1Cを参照し、ハンドル200のさらなる細部を示す。ハンドル200は、外科医がハンドルを容易に把持し、容易に操作できるように、銃の人間工学を有する。ハンドルは、上面、下面、背面、右面、および左面を備える5つの表面を有する。ハンドル200の上面は、結び目引締め作動ノブ214および機能シフトボタン204を含む。また、ヘッドアセンブリ300を回転させるための回転ノブ206も上面に含まれる。結び目引締め作動ノブ214は、結び目の引締めを作動させるために使用され得る。機能シフトボタン204は、把持、切断、結び目の引締め、焼灼、および縫合の間で機能を切り換えるために使用され得るスライドスイッチであってよい。
【0066】
上面と接合するハンドル200の背面は、ヘッドアセンブリ300を上下および左右に回動させることによってヘッドアセンブリ300を操作するためのマニピュレータ900のジョイスティック908を含む。マニピュレータ900は、ヘッドアセンブリ300を所望の向きにロックするためのロック機構を含む。ジョイスティック908の位置は、外科医が親指を用いて容易に使用可能であり、ジョイスティック908を手放すだけでロックすることができるように、人間工学的に設計される。
【0067】
ハンドル200の下面は、2つの銃型トリガ、すなわち1つの主要トリガ208および1つの小トリガ210を含む。主要トリガは、ヘッドアセンブリ300に組み込まれた縫合ユニットの針を駆動するために使用され、小トリガ210は、機能シフトボタン204が適切な位置に動かされた後、把持、切断、焼灼、および結び目の引締めのいずれか1つを行うために使用され得る。
【0068】
ハンドル200の右面は、スライドボタンであってよいはさみ作動ボタン222(
図1Bを参照)を含んでよい。はさみ作動ボタン222をはさみ位置に摺動させると、把持装置ユニットの把持装置の把持面におけるスリットからブレードが突出することによって、ヘッドアセンブリの把持装置ユニットがはさみに変換され得る。ここで、はさみを作動させることにより、把持した箇所で組織が切断され得る。さらに、機能シフトボタン204が焼灼位置にある場合、ブレードは、焼灼のためにACまたはDC電流を受け取ることができる。
【0069】
ハンドル200の左面は、下側把持装置ユニットのための把持装置作動ノブ212Lを含み、ハンドル200の右面は、上側把持装置ユニットのための把持装置作動ノブ212Rを含む。把持装置作動ノブ212Lおよび212Rは、トグルボタンとして構成され、把持装置作動ノブ212L/212R(個々/集合的に把持装置作動ノブ(複数も可)212と称される)を1回目に押下すると、たとえばモータ218などの駆動手段が対応する把持装置ユニットに係合し、把持装置作動ノブ212を2回目に押下すると、対応する把持装置ユニットからモータ218が離脱する。把持装置作動ノブ212は、把持力を微調整するために手動で回転させることもできる。選択された把持装置ユニットにモータが係合し、機能シフトボタン204が把持位置に動かされると、小トリガを押下することにより、対応する把持装置ユニットが作動し、場合によって組織または糸が把持される。
【0070】
把持装置作動ノブ212は、対応する把持装置ユニットを把持位置に保持するための内蔵ロック機構を有し、把持装置作動ノブ212が引き抜かれると、対応する把持装置ユニットがロック解除され、把持装置は、把持装置ユニットの把持装置に対する付勢力で開位置に動くことによって把持された組織または縫合糸を解放する。
【0071】
ハンドル200の上面は、把持装置作動ノブ212と同様に機能する結び目引締め作動ノブ214を含む。具体的には、結び目引締め作動ノブ214が押下されると、モータ218は、上側および下側把持装置ユニットの両方に結合され、把持された糸を引っ張って結び目を引き締めるために、両方の把持装置ユニットの両方の把持装置を把持装置ユニットの平面に対して垂直に動かす。
【0072】
図2に示し、さらに
図10にも示すように、把持装置作動ノブ212および結び目引締め作動ノブ214の各々は、たとえば傘歯車1002-1、1002-2、および1002-3などの傘歯車に結合され、これらは、対応するノブ212/214が押下されると、内側へ動き、モータ218に結合された入力傘歯車1004と係合する。傘歯車1002が入力傘歯車1004と結合した結果、モータ218の回転は、把持装置作動ノブ212に結合された第1の滑車1006-1および1006-2および結び目引締め作動ノブに結合された第2の滑車1006-3などの対応する滑車(以下、個々/集合的に滑車(複数も可)1006と称される)に伝達される。滑車1106は、それらの周囲にそれぞれのロープが巻き付けられており、このロープは、滑車1006の回転によって引っ張られると、対応する機能のために把持装置ユニットを作動させる。
【0073】
主要トリガ208は、主要トリガ208が押下されると縫合滑車216が回転し、縫合滑車216に巻き付けられた縫合ロープ220を引っ張るように、縫合滑車216に結合され得る。縫合ロープ220は、ヘッドアセンブリ300の縫合ユニットの駆動機構に結合され得る。主要トリガ208、縫合滑車216、および縫合ユニットの駆動機構は、主要トリガ208を1回完全に押下することにより縫合ユニットの縫合針が180度回転するように構成され得る。主要トリガ208を2回目に押下すると、主要トリガ208が1回目の押下から解放されて開始/解放位置に戻った後、針をさらに180度回転させて1回転させることができる。異なる実施形態において、縫合ユニットを作動させるための機械化手段を提供することが可能であり、モータ218は、滑車を駆動させて把持ユニットと同じように縫合ロープ220を引っ張るために使用され得る。
【0074】
図3は、縫合ユニット1100/1400、縫合ユニット1100/1400の上の平面に位置する、たとえば把持装置ユニット400-1などの上側把持装置ユニット、および縫合ユニット1100/1400の下の平面に位置する、たとえば把持装置ユニット400-2などの下側把持装置ユニット(以下、個々/集合的に把持装置ユニット(複数も可)400と称される)を有するヘッドアセンブリ300の分解図を示す。2つの把持装置ユニット400は、一般に構造上同様であってよく、すなわち一方が他方の鏡像であってよい。
【0075】
図4Aは、たとえば把持装置402-1および把持装置402-2(個々/集合的に把持装置(複数も可)402と称される)などの一対の把持装置を含み得る把持装置ユニット400の分解図を示す。各把持装置402は、前部本体404および後部本体406を含んでよい。前部本体404は、対応する把持装置ユニット400の平面に平行な軸412を中心として回転するために、たとえばヒンジジョイントなどによって、後部本体406に回動可能に結合され得る。各把持装置402の後部本体406は、ピニオン408の回転によって把持装置402が把持装置ユニット400の平面に垂直な軸414を中心として回動するように、ピニオン408に結合され得る。
【0076】
実施形態によると、把持装置ユニット400の各々は、両面ラック410を含んでよい。ラックの両面は、
図4Bに示すように、ラック410を近位側に引っ張ることによって2つの把持装置402が組織450または縫合糸を把持するために互いに向かって動くように、把持装置ユニット400の2つの把持装置402のピニオン408と係合してよい。
【0077】
把持装置ユニットの各々のラック410は、滑車の回転によって把持装置ロープが引っ張られ、組織または縫合糸を把持するために把持装置402が動くように、把持装置ロープによって、ハンドル200のモータおよび歯車駆動機構1000(
図10を参照)の対応する第1の滑車1006-1および1006-2に結合され得る。
【0078】
実施形態によると、把持装置ユニット400の各々の2つの把持装置の前部本体404は、第2の滑車1006-3の回転によって結び目引張ロープ416が引かれ、
図15Bに示すように、結び目の引締めのために縫合糸の両端を引っ張るために、2つの把持装置ユニットの把持装置の前部本体を対応する平面に垂直に互いに離れる方向へ動かすように、結び目引張ロープ416によって、ハンドル200の第2の滑車1006-3(
図10を参照)に結合され得る。
【0079】
実施形態によると、把持装置ユニット400は、
図5Bに示すように、把持装置402の把持面に位置する赤外線センサ452および圧力センサ454のセットを含んでよい。対向する把持装置402に位置する一対の赤外線センサ452は、把持された組織450の厚さを決定するために、デバイスのコントローラに動作可能に結合され得る。把持装置ユニット400の2つの把持装置402の対向表面に設けられた2つの赤外線センサ452の一方は、発光センサであってよく、他方は、把持された組織450を通過した後で発光センサによって放出された赤外線放射を受け取る受信センサであってよい。組織450を通過することによる赤外線放射の強度の損失は、コントローラによって、把持された組織の厚さを推定するために用いられ得る。組織450の推定厚さは、コントローラによって、把持中のモータ218の制御された作動のために用いられ得る。
【0080】
さらに、圧力センサ454は、把持装置ユニット400の作動中にコントローラにフィードバックを与えるために、把持装置402の先端、正確には把持装置402の前部本体404に設けられ得る。具体的には、コントローラは、感知された圧力が予め定められた圧力値を超えると、モータ218のさらなる回転を停止させることができる。これにより、把持中に把持された組織450を押し潰すことによって損傷させることが防止され得る。ただし、何らかの理由により、ユーザが、より高い圧力で組織を把持する必要があると感じた場合、対応する把持装置作動ノブ212を回転させて、把持された組織450に対する把持圧力を高めることができる。
【0081】
実施形態によると、赤外線センサ452は、把持された組織の血管の存在を検出するためにも使用され得る。これは、把持装置ユニット400がはさみまたは焼灼器として使用される場合に重要であり得る。赤外線センサ452に結合されたコントローラは、把持された組織450における血流を検出するように構成され得る。決定された血流値における脈動は、血管の存在として解釈され得る。コントローラは、血管を検出すると、たとえばブザーなどによってユーザへの警告を発することができる。赤外線センサ452の配置は、正常な組織と、血液の灌流が低下している病変組織とを区別するためにも使用され得る。
【0082】
図5A~
図5Cは、把持装置ユニット400の把持装置402の前部本体404の特徴を示し、この特徴により、把持装置ユニット400をはさみまたは焼灼器に変換することが可能である。
図5Aに示すように、前部本体404は、前部本体404の把持面502に位置するスリット504を含んでよい。
図5Bは、スリット504から突出する、前部本体404内で摺動可能に構成されたブレード506を示す。ブレード506は、
図5Cに示すように、たとえばカム552-1および552-2(集合的にカム552と称される)などの一対のカムを作動させることによってスリット504から突出するように作られ得る。カム552は、一方のカム552がガイドプレート554の上面、他方のカム552がガイドプレート554の下面に位置するように、ガイドプレート554に回動可能に固定されてよく、
図5Cに示すように、間にガイドプレートが位置するY形ブレード506の2本の脚と係合してよい。ブレード506を引込み位置まで内側に付勢するためのばね556が存在し得る。
【0083】
カム552は、
図5Bに示すように、1または複数のはさみロープ508を介してハンドル200のはさみ作動ボタン222に結合され得る。理解され得るように、両方の把持装置402のブレード506は、把持装置ユニット400がはさみとして機能するために突出する必要があり、したがって、両方の把持装置402のはさみロープは、同時に引っ張るためにはさみ作動ボタン222に結合される必要がある。
【0084】
実施形態によると、ブレード506は、把持装置ユニット400が焼灼器として機能するために電流源に接続されることもできる。この機能は、機能シフトボタン204を焼灼モードにシフトすることによって作動することができ、その後、小トリガ210が押下されると、コントローラは、間に保持された組織にACまたはDC電流が流れるように把持装置ユニット400のブレード506を通る回路を完成させる。
【0085】
図6は、デバイスの様々な機能を可能にする様々な要素を示す、デバイス100の制御機構のブロック図である。図示されるように、デバイスのコントローラ600は、ハンドル200に設けられた機能シフトボタン204、小トリガ210、およびモータ218に動作可能に結合され得る。またコントローラは、把持装置ユニット400のセンサ452、454およびブレード506にも動作可能に結合され得る。コントローラは、プロセッサおよびメモリも含み得る電子回路基板に具体化され得る。メモリは、たとえば赤外線センサ452の信号に基づいて把持された組織の厚さを推定するために、ルックアップテーブルを格納してよい。機能シフトボタン204の位置に基づいて、コントローラ600は、小トリガ210が押下されると、選択された機能を達成するためにデバイスの適切な要素を作動させることができる。たとえば、機能シフトボタン204が焼灼モードである場合、コントローラ600は、小トリガ210が押下されると、把持装置ユニット400のブレード506に焼灼のための電流を供給することができる。同様に、機能シフトボタン204が把持モードである場合、コントローラは、作動した把持装置ユニット400の把持装置間の組織の厚さを決定するために赤外線センサ452からのフィードバックを受け、モータ218を作動させて必要な回転角度だけ回転させることができる。またコントローラは、組織450が押し潰されて損傷することを防ぐために、感知された圧力が予め定められた圧力値を超えるとモータ218の回転を停止させるために、圧力センサ454からのフィードバックも受けてよい。
【0086】
図7Aおよび
図7Bは、シャフト700の2つの異なる図を示す。シャフト700は、外側ケーシング702と、外側ケーシング702内に同軸配置された内側チューブ704とを含んでよい。内側チューブ704の近位端は回転ノブ206に固定され、遠位端は関節ジョイント800の近位端に固定され得る。内側チューブ704は、関節ジョイント800を介してハンドルからヘッドアセンブリ300まで様々なロープを搬送することができる。外側ケーシング702と内側チューブ704との間の環状空間は、手術中の患者の腹腔に灌流液を供給するために使用され得る。灌流液は、
図7Bに示すように、外側ケーシング702に設けられた灌流ポート706を通って供給され得る。
【0087】
図8Aおよび
図8Bは、それぞれ関節ジョイント800の上面図および斜視図を示す。関節ジョイント800は、第1のヨーク802、第2のヨーク804、およびそれぞれピボットジョイントによって第1のヨーク802を第2のヨーク802に結合する中間ヨーク806を含んでよい。2つのピボットの軸は、2つの互いに垂直な軸において2自由度を提供するために互いに垂直である。各ピボット軸は、マニピュレータロープ810を介してマニピュレータ900に関節ジョイント800を結合するために、たとえば滑車808などの滑車を有してよい。
【0088】
図8Bに示すように、ヨーク802、804、および806は、示されるように、たとえばはさみロープ508などの様々なロープをシャフト700からヘッドアセンブリ300に通すための穴850を含んでよい。
【0089】
図9は、マニピュレータ900の分解図を示す。マニピュレータは、摺動のために重なり合って配置された、たとえばジンバル902-1および902-2(集合的および個々にジンバル(複数も可)902と称される)などの2つの湾曲ジンバルを含む。各ジンバル902には、たとえばジンバル902-1におけるスロット906-1およびジンバル902-2におけるスロット906-2(集合的および個々にスロット(複数も可)906と称される)などのスロットが存在し得る。ジョイスティック908は、ジンバル902をスロット906の方向へ動かすためにスロット906と係合する。ジンバルには、滑車912-1および912-2(以下、集合的および個々に滑車(複数も可)912)が結合される対応する歯車と係合する歯車904-1および904-2が組み込まれる。滑車は、マニピュレータ900を関節ジョイント800に結合するためのマニピュレータロープ810を搬送することができる。
【0090】
マニピュレータは、ジョイスティック908に伸縮自在に結合されたロックボタン910を含む。ジョイスティック908から突出するロックボタンの下端は、下側ジンバル902に支持されたストッパ914を含む。ジョイスティック908の下端は、上側ジンバル902と係合するストッパも担持する。ロックボタンは上方向に付勢され、それによって2つのストッパ914は、互いにジンバル902を押し付けてジンバルを任意の位置にロックすることにより、マニピュレータを任意の位置にロックする。ロックボタン910を押下すると、ストッパ914がジンバル902から離れる方向に動くことにより、ジンバル902が互いに対して動くことが可能である。ジンバル902の動きは、それぞれの歯車904を介してそれぞれの滑車912に伝達される。
【0091】
図10は、上述したように機能する把持および結び目引締め動作中に2つの把持装置ユニット400の把持装置402を動かすためのモータおよび歯車駆動機構1000の図である。
【0092】
図11A~
図11Cは、ヘッドアセンブリ300の縫合ユニットの実施形態の細部を示す。低侵襲手術のための縫合ユニット1100は、上側トラック304および下側トラック306を備える半円より大きな円形に平行に配置された一対のトラックと、針トラック310を有するハウジング302を含んでよい。針トラック310は、
図12に示すように、針トラック310に沿って縫合針1200を動かすために、たとえば縫合針1200(単純に針1200とも称され、本明細書において2つの用語は相互置換的に使用される)などの縫合針を収容するように構成され得る。上側トラック304、下側トラック306、および針トラック310は、ハウジング302の異なる表面上に同軸配置され得る。たとえば、
図11Aおよび
図11Cに示すように、上側トラック304および下側トラック306は、ハウジング302の内周上にあってよく、針トラック310は、上側および下側トラック304および306の軸に垂直な平坦面上にあってよい。あるいは、
図11Bに示すように、上側トラック304および下側トラック306は、ハウジング302の外周上にあってよく、針トラック310は、上側および下側トラック304および306の軸に垂直な平坦面上にあってよい。
【0093】
縫合ユニット1100は、任意の所与の時間に上側トラック304および下側トラック306の一方と係合するパック312をさらに含んでよい。パック312は、下側トラック306と係合している場合、縫合針1200と係合して縫合針1200に押し付けられ、パック312の動きによって針トラック310に沿った縫合針1200の動きがもたらされ、パック312が上側トラック304と係合している場合、パック312は縫合針1200から持ち上がり、縫合針1200に動きをもたらすことなく動く。
【0094】
縫合ユニット1100は、上側トラック304および下側トラック306に沿ってパック312を動かすために、たとえば
図11Cに示す駆動機構350などの駆動機構をさらに含んでよい。駆動機構350のリンク314は、パック312を駆動するためにパック312に結合され得る。
【0095】
上側トラック304および下側トラック306は、たとえば
図11Aに示す傾斜トラック308などの傾斜トラックを介して、それらの両端で互いに接続されてよく、パック312が下側トラック306の端部まで動くと、パック312は上方に移動して上側トラック304と係合し、パック312が上側トラック304の端部まで逆方向に動くと、パック312は下方に移動して下側トラック306と係合する。駆動機構350は、縫合ロープ220を介して主要トリガ208に結合され得る。
【0096】
実施形態において、駆動機構350は、
図11Cに示すように、スコッチヨーク機構であってよい。ただし、他の機構も本開示の範囲内である。
【0097】
図12は、縫合ユニットとともに使用される縫合針1200の典型的な図を示す。縫合針1200は、240~270度の範囲の円周角Aを有する半円より大きな円形の針であってよい。好適な実施形態において、縫合針1200の円周角Aは、240度、または250度、または260度、または270度であってよい。縫合針は、尖鋭な先端および後端を有してよい。縫合糸1202は、縫合針1200の後端に固定され得る。
【0098】
図13A~
図13Dは、縫合ユニットの機能を示す。パック312が下側トラック306と係合している、
図13Aに示す縫合針1200の開始位置から始まり、ユーザが主要トリガ208を押下すると、結合された縫合滑車216が回転し、縫合ロープ220を引っ張って駆動機構350を駆動する。主要トリガ208を1回押下すると、
図13Bに示すように、縫合針1200は180度回転する。この時点で、パック312は下側トラック306の端に到達し、上側トラック304に移動する。ここで、主要トリガが解放されると、パック312は、針1200を駆動することなく上側トラック304と係合した状態で逆方向に動く。したがって、針は、
図13Cに示すのと同じ位置に留まり、パック312は、上側トラック304の端部に到達して下側トラック306に再び移動する。主要トリガ208を2回目に押下すると、縫合針1200は、追加の180度回転して1周し、主要トリガ208を解放することにより、
図13Dに示すように、パック312を開始位置に戻すことができる。
【0099】
図14Aおよび
図14Bに示す縫合ユニットの代替実施形態において、縫合ユニット1400は、縫合ユニット1100のようなパックの代わりにベルトによって縫合針1200が駆動されることに基づいてよい。縫合ユニット1400は、ハウジング1402の外周上に構成された針トラック1404を有するハウジング1402を含んでよい。縫合針1200は、針トラック1404に沿って動くために針トラック1404内に配置され得る。縫合ユニットは、ハウジング1402の外周の周囲に構成されたベルト1406を更に含んでよく、ベルト1406は、ベルト1406の動きとともに針トラック1404に沿って針1200を動かすように縫合針1200に押し付けられる。ハウジング1402の外周の周囲でベルト1406を動かすために、たとえば滑車1408などの複数の滑車が存在し得る。態様において、たとえば滑車1408などの複数の滑車の1つは、ベルト1406を駆動するために、
図14Bに示す可撓性回転シャフト1450によってモータ(不図示)に結合され得る。縫合ユニット1400は、手動で主要トリガ208を押下する代わりに、モータによる機械化駆動であってよい。
【0100】
図15Aおよび
図15Bは、それぞれ結紮および結び目の引締めを示す、ヘッドアセンブリの図である。針1200が把持された組織を刺した後、把持された組織は、たとえば把持装置作動ノブ212を外側に引っ張ることによって、把持装置ユニットを解放することによって解放され得る。ここで、ヘッドアセンブリ300は、上側または下側把持装置ユニット400の一方によって縫合糸1202の自由端部を把持するように操作されてよく、その結果、ヘッドアセンブリ300の構成により、縫合糸1202の緩んだ端部は、針1200の動きによって画定された円形ゾーン内に位置する。ここで、針1200は、縫合糸の自由端部の周囲に縫合糸を巻き付けて1つのループを作り、結び目の種類に応じてそれを繰り返すために、1周、すなわち360度、または必要な結び目の種類に依存してそれ以上動かされ得る。その後、他方の把持装置ユニット400は、縫合糸1202の針側部分を把持するために使用され得る。縫合糸1202の両側が2つの把持装置ユニット400によって把持されると、
図15Bに示すように、2つの把持装置ユニット400は、縫合糸1202のそれぞれの端部を引っ張って結び目を引き締めるために、把持装置ユニット400の平面に垂直に動くために作動され得る。特に、結び目の引締めは、結び目引締め作動ノブ214を押下し、その後、小トリガ210を押下することによって作動され得る。
【0101】
図16は、開示されたデバイス100のヘッドアセンブリ300を用いて縫合、結紮、および結び目の引締めを行うための方法に関する方法フロー図である。方法1600は、ステップ1602において、たとえば
図1~
図15Bに示すデバイス100などの、低侵襲手術のためのデバイスを提供することを含んでよい。方法1600は、ステップ1604において、たとえば
図4Aおよび
図4Bに示す把持装置ユニット400などの上側把持装置ユニットおよび下側把持装置ユニットによって、それぞれの把持装置ユニット400の平面において、たとえば
図4Aに示す把持装置402などの対応する把持装置を動かすことによって、たとえば
図4Bに示す組織450などの組織を把持することを含んでよい。方法1600のステップ1606は、縫合針1200に固定された、たとえば
図12に示す糸1202などの縫合糸が、組織450を貫通して横断するように、それぞれたとえば
図11A~
図11Cおよび
図14Aおよび
図14Bに示す縫合ユニット1100または1400などの縫合ユニットの、たとえば
図12に示す針1200などの針によって、把持された組織を刺すことであってよい。
【0102】
方法1600のステップ1608は、把持された組織450を解放することであってよく、ステップ1610は、縫合糸の自由端部が、針1200の動きによって画定された円形ゾーン内に位置するように、上側および下側把持装置ユニット400の一方によって縫合糸1202の自由端部を把持することであってよい。
【0103】
方法1600のステップ1612は、
図15Aに示すように、縫合糸の自由端部の周囲に縫合糸を巻き付けて1つのループを作り、結び目の種類に応じてそれを繰り返すように、針1200を少なくとも360度動かすことであってよい。ステップ1614において、方法1600は、上側および下側把持装置ユニット400の他方によって、縫合糸1202の針側部分を把持することを含んでよく、ステップ1616において、2つの把持装置ユニット400の把持装置402は、縫合糸1202の結び目を引き締めるために、それぞれの把持装置ユニット400の平面に垂直に動かされ得る。
【0104】
したがって、本開示は、腹腔鏡手術中の特に把持、切断、焼灼、縫合、結紮、および結び目の引締めの機能を含む、低侵襲手術のための多機能デバイス100を提供する。したがって、開示されたデバイス100は、複数のデバイスを必要とする低侵襲手術に関する従来の手順の欠点を克服し、その結果、プロセス中の複数の器具および複数回の把持および解放運動の必要性を解消する。様々な機能が機械化、すなわちモータ駆動されるため、デバイスは、当業者には自明である改変の後、手術ロボットとの統合のために修正することも可能である。
【0105】
上記は、本発明の様々な実施形態を説明するものであるが、本発明の他の実施形態およびさらなる実施形態は、本発明の基本範囲から逸脱することなく考案され得る。本発明の範囲は、以下に続く特許請求の範囲によって決定される。本発明は、説明された実施形態、バージョン、または例に限定されるものではなく、これらは、当業者が入手可能な情報および知識と組み合わせた場合に、当業者が本発明を製造および利用することを可能にするために含まれる。
本発明の利点
【0106】
本開示は、低侵襲手術中の把持、縫合、結紮および結び目の引締めのための従来の方法論の欠点を克服する改善された腹腔鏡手術デバイスを提供する。
【0107】
本開示は、腹腔鏡手術中に特に把持、切断、焼灼、縫合、結紮および結び目の引締めを容易にする、腹腔鏡手術のための単一のデバイスを提供する。
【0108】
本開示は、単一の器具を用いてほとんどの腹腔鏡機能を行うことができ、それによって、各機能のために器具を切り換える必要性を解消する腹腔鏡手術デバイスを提供する。
【0109】
本開示は、力の制御のために組織の把持中のフィードバック機構を含む腹腔鏡手術デバイスを提供する。
【0110】
本開示は、血管の不慮の損傷を防止するために、把持された組織における血管の存在を検出するための機構を含む腹腔鏡手術デバイスを提供する。
【0111】
本開示は、ヘッドアセンブリの動きに関して空間内に6自由度を包含する腹腔鏡手術デバイスを提供する。
【0112】
本開示は、体内縫合、結紮、および結び目の引締めのプロセス全体を単一のプロセスに自動化する腹腔鏡手術デバイスを提供する。
【0113】
本開示は、体内縫合のプロセス中の複数回の把持および解放運動を回避する腹腔鏡手術デバイスを提供する。
【0114】
本開示は、手術ロボットシステムに容易に組み込むことが可能な腹腔鏡手術デバイスを提供する。
【0115】
本開示は、単孔式腹腔鏡手術において外科医を支援することが可能な腹腔鏡デバイスを提供する。
【国際調査報告】