(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】メソテリン結合タンパク質及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/30 20060101AFI20241010BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20241010BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241010BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241010BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241010BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241010BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241010BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241010BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241010BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241010BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
C07K16/46
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521815
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 US2022078075
(87)【国際公開番号】W WO2023064876
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518452881
【氏名又は名称】テネオバイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】マリク・チャウダリー,ハルバニ・カウール
(72)【発明者】
【氏名】アレン,ニコール
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA92Y
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体及びメソテリン結合タンパク質、抗メソテリン抗体及びその抗体断片、抗体-薬物複合体、合成免疫受容体、並びにそれを含む診断用薬が開示される。また、前述のいずれかを含む医薬組成物、並びにMSLN発現と関連している疾患の治療及び/若しくは診断及び/又は監視における前述のいずれかの使用も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、前記シングルドメイン抗体が、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
【請求項2】
メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、前記シングルドメイン抗体が、
(i)配列番号1又は配列番号9と比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、
(ii)配列番号2、配列番号7、又は配列番号10と比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、
(iii)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、又は配列番号8と比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
【請求項3】
メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、前記シングルドメイン抗体が、
(i)配列
GGSISX
1SYY(配列番号53)を含むVH相補性決定領域1(CDR1)であって、
式中、X
1がN又はSである、VH CDR1と、
(ii)配列
IYX
2SGX
3X
4(配列番号68)を含むVH CDR2であって、
式中、X
2がH又はYであり、X
3がN又はSであり、且つX
4がT又はIである、VH CDR2と、
(iii)配列
X
5X
6QX
7GVGATTTEEY(配列番号54)を含むVH CDR3であって、
式中、X
5がT、V、又はAであり、X
6がS又はTであり、且つX
7がD又はNである、VH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
【請求項4】
メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、前記シングルドメイン抗体が、
(i)配列番号1及び配列番号9から選択される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、
(ii)配列番号2、配列番号7、及び配列番号10から選択される配列を含むVH CDR2と、
(iii)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号8から選択される配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
【請求項5】
メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、前記シングルドメイン抗体が、
(a)それぞれ配列番号1、2、及び3の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(b)それぞれ配列番号1、2、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(c)それぞれ配列番号1、2、及び5の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(d)それぞれ配列番号1、2、及び6の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(e)それぞれ配列番号1、7、及び8の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(f)それぞれ配列番号9、2、及び6の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(g)それぞれ配列番号9、2、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;又は
(h)それぞれ配列番号1、10、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
【請求項6】
メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、前記シングルドメイン抗体が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
【請求項7】
前記VH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3配列が、ヒトVHフレームワーク中に存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載のシングルドメイン抗体。
【請求項8】
メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、前記シングルドメイン抗体が、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
【請求項9】
メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、前記シングルドメイン抗体が、配列番号11~19から選択される重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
【請求項10】
前記シングルドメイン抗体が、ヒトMSLNに特異的に結合する、請求項1~9のいずれか一項に記載のシングルドメイン抗体。
【請求項11】
前記シングルドメイン抗体が、約10
-9M~10
-6MのK
DでヒトMSLNに結合する、請求項1~10のいずれか一項に記載のシングルドメイン抗体。
【請求項12】
前記シングルドメイン抗体が、単離されたシングルドメイン抗体である、請求項1~11のいずれか一項に記載のシングルドメイン抗体。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載のシングルドメイン抗体を含む、メソテリン結合タンパク質。
【請求項14】
前記メソテリン結合タンパク質が、ヒトMSLNに特異的に結合する、請求項13に記載のメソテリン結合タンパク質。
【請求項15】
前記メソテリン結合タンパク質が、CD3に更に特異的に結合する、請求項13又は14に記載のメソテリン結合タンパク質。
【請求項16】
前記メソテリン結合タンパク質が、ヒトCD3に更に特異的に結合する、請求項13~15のいずれか一項に記載のメソテリン結合タンパク質。
【請求項17】
前記メソテリン結合タンパク質が、単離されたモノクローナル抗体である、請求項13~16のいずれか一項に記載のメソテリン結合タンパク質。
【請求項18】
請求項1~11のいずれか一項に記載のシングルドメイン抗体を含む、抗体-薬物複合体。
【請求項19】
請求項1~11のいずれか一項に記載のシングルドメイン抗体を含む、抗メソテリン抗体。
【請求項20】
前記抗メソテリン抗体が、多重特異性である、請求項19に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項21】
前記抗メソテリン抗体が、MSLN以外の腫瘍特異的抗原に更に特異的に結合する、請求項19又は20に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項22】
前記抗メソテリン抗体が、二重特異性である、請求項19~21のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項23】
前記抗メソテリン抗体が、CD3に更に特異的に結合する、請求項19~22のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項24】
前記抗メソテリン抗体が、ヒトCD3に更に特異的に結合する、請求項19~23のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項25】
前記抗メソテリン抗体が、CD3結合VH領域を更に含む、請求項19~24のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項26】
前記抗メソテリン抗体が、IgG1又はIgG4サブタイプのものである、請求項19~25のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項27】
前記抗メソテリン抗体が、軽鎖可変(LV)領域と対合するCD3結合VH領域を更に含む、請求項19~26のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項28】
前記CD3結合VH領域が、
(i)配列番号20~25のいずれか1つと比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、
(ii)配列番号26と比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、
(iii)配列番号27~30と比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む、請求項25又は27に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項29】
前記CD3結合VH CDR1が、配列番号20~25から選択される配列を含む、請求項28に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項30】
前記CD3結合VH CDR2が、配列番号26の配列を含む、請求項28又は29に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項31】
前記CD3結合VH CDR3が、配列番号27~30から選択される配列を含む、請求項28~30のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項32】
前記CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号31~48のいずれか1つの前記CDR1、2、及び3に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項25又は27~31のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項33】
前記CD3結合VH領域が、
(i)配列
GFTFX
8X
9YA(配列番号55)を含むVH相補性決定領域1(CDR1)であって、
式中、X
8がD、A、又はHであり、且つX
9がD又はNである、VH CDR1と、
(ii)配列ISWNSGSI(配列番号26)を含むVH CDR2と、
(iii)配列
AKDSRGYGX
10YX
11X
12GGAY(配列番号56)を含むVH CDR3であって、
式中、X
10がD又はSであり、X
11がR又はSであり、且つX
12がL又はRである、VH CDR3と、を含む、請求項25又は27に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項34】
前記CD3結合VH領域が、配列番号31~48のいずれか1つの前記CDR1、CDR2、及びCDR3を含む、請求項25又は27に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項35】
前記CD3結合VH領域中の前記VH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3配列が、ヒトVHフレームワーク中に存在する、請求項25~34のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項36】
前記CD3結合VH領域が、配列番号31~48のいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項25~35のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項37】
前記CD3結合VH領域が、
(a)それぞれ配列番号20、26、及び27の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(b)それぞれ配列番号20、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(c)それぞれ配列番号20、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(d)それぞれ配列番号21、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(e)それぞれ配列番号22、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(f)それぞれ配列番号23、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(g)それぞれ配列番号24、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(h)それぞれ配列番号20、26、及び30の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(i)それぞれ配列番号25、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;又は
(j)それぞれ配列番号24、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、請求項25~36のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項38】
前記CD3結合VH領域が、配列番号20、26、及び27の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、請求項37に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項39】
前記軽鎖可変領域が、配列番号52のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む、請求項27~38のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項40】
前記軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号49、50、及び51の配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、請求項27~39のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項41】
前記VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3配列が、ヒトVHフレームワーク中に存在する、請求項27~40のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項42】
前記軽鎖可変領域が、配列番号52に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項27~41のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項43】
前記抗メソテリン抗体が、ヒトMSLNに特異的に結合する、請求項19~42のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項44】
前記抗メソテリン抗体が、単離された抗体である、請求項19~43のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項45】
メソテリンに特異的に結合する抗体断片であって、前記抗体断片が、請求項19~44のいずれか一項に記載の抗メソテリン抗体の断片を含む、抗体断片。
【請求項46】
前記抗体断片が、三鎖抗体様分子である、請求項45に記載の抗体断片。
【請求項47】
請求項13~46のいずれか一項に記載の少なくとも1つのメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項48】
請求項1~12のいずれか一項に記載のシングルドメイン抗体をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項49】
請求項13~17又は19~46のいずれか一項に記載のメソテリン結合タンパク質、抗メソテリン抗体、又は抗体断片をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む、組成物。
【請求項50】
請求項48又は49に記載のポリヌクレオチド又は組成物を含む、組換え発現ベクター。
【請求項51】
請求項50に記載の組換え発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項52】
メソテリンの発現と関連している疾患の治療を必要とする対象において治療を行う方法であって、前記対象に、請求項13~46のいずれか一項に記載の少なくとも1つのメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片を投与することを含む、方法。
【請求項53】
前記メソテリンの発現と関連している疾患が、中皮腫、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、及びトリプルネガティブ乳癌から選択される、請求項52に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月14日に出願された米国仮特許出願第63/255,887号明細書、2021年10月14日に出願された米国仮特許出願第63/255,891号明細書、2022年1月26日に出願された米国仮特許出願第63/303,422号明細書、及び2022年7月27日に出願された米国仮特許出願第63/392,569号明細書に対する優先権の利益を主張するものであり、これらの各々内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書と同時に提出された、コンピュータにより読み込み可能なアミノ酸配列表は、その全体が参照により組み込まれ、下記のように識別される:2022年10月12日に作成された「10184-WO02_SEC_Sequence_Listing」という名称の70,499バイトのXMLファイル。
【0003】
本明細書において、メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体及びメソテリン結合タンパク質、抗メソテリン抗体及びその抗体断片、抗体-薬物複合体、合成免疫受容体、並びにそれを含む診断用薬が開示される。前述のいずれかを含む医薬組成物、並びにMSLNの発現と関連している疾患の治療及び/若しくは診断及び/又は監視における前述のいずれかの使用も開示される。
【背景技術】
【0004】
メソテリン(MSLN;CAK1;UniProt Q13421;HGNC ID 7371としても知られる)は、種々の悪性腫瘍細胞上で細胞表面糖タンパク質として広範に発現される腫瘍関連抗原である。メソテリン(MSLN)は、ヒト卵巣癌(OVCAR-3)細胞を有するマウスの免疫化によって生成されたモノクローナル抗体(mAb)K1を使用して、1992年に Pastanらによって最初に同定された(Chang,et al.,Int J.Cancer.(1992)50:373-81)。MSLNは、ヒト膵臓癌細胞株HPC-Y5から精製され、巨核球増強能力を有することが示された。MSLN遺伝子は、71kDaの前駆体タンパク質をコードし、この前駆体タンパク質は、フーリンによって2つの生成物:巨核球増強因子(MPF;31kDa)と呼ばれるアミノ末端脱落(shed)断片及びGPI結合を通して細胞膜に連結したままである、グリコシル・ホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型糖タンパク質MSLN(40kDa)に切断される。MSLNタンパク質は、ARM型リピートを有する超らせん中に組織化される。
【0005】
MPF及びMDLNの両方は生理活性を示すが、それらの正確な生物学的機能は不明なままである。メソテリン遺伝子が相同組換えによって破壊されたノックアウトマウスが調製された(Bera,T.K.and Pastan,I.(2000)Mol.Cell.Biol.20:2902-2906)。解剖学的異常、血液学的異常、又は生殖異常は検出されておらず、少なくともこれらのノックアウトマウスでは、メソテリンの機能が成長又は生殖に必須ではないことが示されている。MSLNは、以前に卵巣癌抗原として同定された腫瘍細胞の表面に存在するムチン様糖タンパク質である、MUC16(CA125)と特異的に相互作用する。MSLNは、腫瘍細胞の増殖及び移動に関連しており(Rump A et al.,J Biol Chem.2004 Mar 5;279(10):9190-8)、メソテリン-MUC16相互作用は、細胞接着、浸潤、及び転移において機能すると提案されている。例証として、腹膜の内側におけるメソテリンの発現は、卵巣癌の転移形成の優先的な部位と相互に関連し、メソテリン-MUC16結合は、卵巣腫瘍の腹膜転移を促進すると考えられている(Gubbels,J.A.et al.(2006)Mol.Cancer.5:50)。
【0006】
MSLNは、中皮腫、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、及びトリプルネガティブ乳癌を含むいくつかの腫瘍型で高度に発現される(Hassan et al.,Eur J Cancer(2008)44:46-53;Ordonez,Am J Surg Pathol(2003)27:1418-28;Ho et al.,Clin Cancer Res(2007)13:1571-5)。しかしながら、MSLNの正常組織の発現は、胸膜、心膜、及び腹膜における中皮細胞、並びに正常な卵巣、卵管、及び扁桃腺の表面上皮に限定されており、MSLNを抗体-薬物複合体、モノクローナル抗体、及びCAR-T細胞療法のための有望な標的にする(Hassan R et al.,J Clin Oncol.2016 Dec;34(34):4171-4179)。更に、MSLN結合剤は、ある特定の種類の癌の診断及び予後のためのマーカーとして使用することができ、これは、微量のメソテリンがメソテリン陽性癌を有する一部の患者の血液中で検出され得るためである(Cristaudo et al.,Clin.Cancer Res.13:5076-5081,2007)。MSLNの過剰発現は、例えば、肺腺癌及びトリプルネガティブ乳癌における予後不良と関連している。
【0007】
その細胞表面上での発現に加えて、メソテリンはまた、ADAM17/TACEの作用を通して血清中に脱落される。脱落メソテリンの血清レベルは、卵巣癌及び他の癌を有する患者で上昇している。脱落血清メソテリンについてのELISA試験法であるMESOMARK(登録商標)は、人道的使用のためにFDAによって承認されており、中皮腫の診断又は監視における助けとなり得る。脱落メソテリンはまた、単独で又は他のマーカーと一緒になって、他の癌型の診断又は予後を補助するために使用されている。脱落メソテリンの血清レベルと疾患との相関は、癌の進行におけるメソテリンタンパク質の潜在的な役割を示唆した。
【0008】
従って、メソテリンの発現と関連している疾患のための追加的且つ効果的な治療薬及び診断用薬が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Chang,et al.,Int J.Cancer.(1992)50:373-81
【非特許文献2】Bera,T.K.and Pastan,I.(2000)Mol.Cell.Biol.20:2902-2906
【非特許文献3】Rump A et al.,J Biol Chem.2004 Mar 5;279(10):9190-8
【非特許文献4】Gubbels,J.A.et al.(2006)Mol.Cancer.5:50
【非特許文献5】Hassan et al.,Eur J Cancer(2008)44:46-53
【非特許文献6】Ordonez,Am J Surg Pathol(2003)27:1418-28
【非特許文献7】Ho et al.,Clin Cancer Res(2007)13:1571-5
【非特許文献8】Hassan R et al.,J Clin Oncol.2016 Dec;34(34):4171-4179
【非特許文献9】Cristaudo et al.,Clin.Cancer Res.13:5076-5081,2007
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書において、メソテリン(MSLN)、例えば、ヒトMSLNに特異的に結合するシングルドメイン抗体が開示される。
【0011】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、
(i)配列
GGSISX1SYY(配列番号53)を含むVH相補性決定領域1(CDR1)であって、
式中、X1がN又はSである、VH CDR1と、
(ii)配列
IYX2SGX3X4(配列番号68)を含むVH CDR2であって、
式中、X2がH又はYであり、X3がN又はSであり、且つX4がT又はIである、VH CDR2と、
(iii)配列
X5X6QX7GVGATTTEEY(配列番号54)を含むVH CDR3であって、
式中、X5がT、V、又はAであり、X6がS又はTであり、且つX7がD又はNである、VH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも85%(例えば、85%、90%、95%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも90%(例えば、90%、95%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、
(i)配列番号1又は配列番号9と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、
(ii)配列番号2、配列番号7、又は配列番号10と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、
(iii)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、又は配列番号8と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、各アミノ酸修飾は、もしあれば、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、各アミノ酸修飾は、もしあれば、表A1に列挙される保存的アミノ酸置換である。
【0015】
いくつかの実施形態では、VH CDR1は、配列番号1又は配列番号9と比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、VH CDR2は、配列番号2、配列番号7、又は配列番号10と比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、VH CDR3は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、又は配列番号8と比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、アミノ酸欠失である。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、アミノ酸付加である。
【0016】
いくつかの実施形態では、VH CDR1は、配列番号1及び配列番号9から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、VH CDR2は、配列番号2、配列番号7、及び配列番号10から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、VH CDR3は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号8から選択される配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、
(i)配列番号1及び配列番号9から選択される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、
(ii)配列番号2、配列番号7、及び配列番号10から選択される配列を含むVH CDR2と、
(iii)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号8から選択される配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、
(a)それぞれ配列番号1、2、及び3の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(b)それぞれ配列番号1、2、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(c)それぞれ配列番号1、2、及び5の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(d)それぞれ配列番号1、2、及び6の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(e)それぞれ配列番号1、7、及び8の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(f)それぞれ配列番号9、2、及び6の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(g)それぞれ配列番号9、2、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;又は
(h)それぞれ配列番号1、10、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、VH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3配列は、ヒトVHフレームワーク中に存在する。
【0021】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも85%(例えば、85%、90%、95%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも90%(例えば、90%、95%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19から選択された重鎖可変(VH)領域を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、ヒトMSLNに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、約10-9M~10-6MのKDでヒトMSLNに結合する。
【0024】
いくつかの実施形態ではシングルドメイン抗体は、単離されたシングルドメイン抗体である。
【0025】
また、本明細書において、本明細書に記載されるようにメソテリンに特異的に結合するシングルドメイン抗体を含むメソテリン結合タンパク質が開示される。
【0026】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、ヒトMSLNに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、約10-9M~10-6MのKDでヒトMSLNに結合する。
【0027】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、メソテリン以外の1つ以上の標的抗原に更に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、多重特異性である。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、二重特異性である。
【0028】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、CD3に更に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、ヒトCD3に更に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、ヒトCD3イプシロンに更に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、CD3イプシロン(配列番号69):K73及びS83;並びにCD3デルタ(配列番号70)K82及びC93から選択される少なくとも1つの残基を含むCD3上のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、CD3上のエピトープは、K82、E83、S84、T85、V86、Q87、V88、H89、Y90、R91、M92、C93によって定義されるCD3イプシロンの領域を含む。いくつかの実施形態では、CD3上のエピトープは、K73、N74、175、G76、S77、D78、E79、D80、H81、L82、S83によって定義されるCD3イプシロンの領域を含む。いくつかの実施形態では、エピトープは、CD3デルタ及びCD3イプシロンの両方の残基を有する立体構造エピトープを含む。いくつかの実施形態では、立体構造エピトープは、残基CD3ε K73及びS83;CD3δ K82及びC93の各々を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、CD3結合VH領域を更に含む。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、軽鎖(LV)領域と対合するCD3結合VH領域を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、
(i)配列番号20~25のいずれか1つと比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、
(ii)配列番号26と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、
(iii)
配列番号27~30のいずれか1つと比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、各アミノ酸修飾は、もしあれば、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、各アミノ酸修飾は、もしあれば、表A1に列挙される保存的アミノ酸置換である。
【0032】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH CDR1は、配列番号20~25のいずれか1つと比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH CDR2は、配列番号26と比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH CDR3は、配列番号27~30のいずれか1つと比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、アミノ酸欠失である。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、アミノ酸付加である。
【0033】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH CDR1は、配列番号20~25から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR2は、配列番号26の配列を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH CDR3は、配列番号27~30から選択される配列を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号31~48のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号31~48のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して、少なくとも85%(例えば、85%、90%、95%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号31~48のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して、少なくとも90%(例えば、90%、95%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号31~48のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して、少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、CDR3結合VH領域は、配列番号31~48のいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、
(i)配列
GFTFX8X9YA(配列番号55)を含むVH相補性決定領域1(CDR1)であって、
式中、X8がD、A、又はHであり、且つX9がD又はNである、VH CDR1と、
(ii)配列ISWNSGSI(配列番号26)を含むVH CDR2と、
(iii)配列
AKDSRGYGX10Y X11X12GGAY(配列番号56)を含むVH CDR3であって、
式中、X10がD又はSであり、X11がR又はSであり、且つX12がL又はRである、VH CDR3と、を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3配列は、ヒトVHフレームワーク内に存在する。
【0038】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号31~48のいずれか1つに対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号31~48のいずれか1つに対して、少なくとも85%(例えば、85%、90%、95%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号31~48のいずれか1つに対して、少なくとも90%(例えば、90%、95%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号31~48のいずれか1つに対して、少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、
(a)それぞれ配列番号20、26、及び27の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(b)それぞれ配列番号20、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(c)それぞれ配列番号20、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(d)それぞれ配列番号21、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(e)それぞれ配列番号22、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(f)それぞれ配列番号23、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(g)それぞれ配列番号24、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(h)それぞれ配列番号20、26、及び30の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(i)それぞれ配列番号25、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;又は
(j)それぞれ配列番号24、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号52のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号49、50、及び51の配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む。いくつかの実施形態では、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3配列は、ヒトVHフレームワーク中に存在する。
【0041】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号52に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号52に対して、少なくとも85%(例えば、85%、90%、95%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号52に対して、少なくとも90%(例えば、90%、95%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号52に対して、少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、抗メソテリン抗体又はその断片である。いくつかの実施形態では、抗メソテリン抗体は、モノクローナル抗体又はその断片である。いくつかの実施形態では、抗メソテリン抗体は、単離されたモノクローナル抗体又はその断片である。
【0043】
いくつかの実施形態では、抗メソテリン抗体は、抗IgG1抗体である。いくつかの実施形態では、抗メソテリン抗体は、抗IgG2抗体である。いくつかの実施形態では、抗メソテリン抗体は、抗IgG4抗体である。
【0044】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、抗体断片である。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、重鎖のみ抗体である。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、三鎖抗体様分子(TCA)である。
【0045】
いくつかの実施形態では、抗メソテリン抗体又はその断片は、Fc領域を更に含む。いくつかの実施形態では、抗メソテリン抗体又はその断片は、バリアントFc領域を更に含む。いくつかの実施形態では、バリアントFc領域は、ヘテロ二量体化改変を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、サイレンシングされたFc領域である。
【0046】
また、本明細書において、本明細書に記載されるメソテリンに特異的に結合するシングルドメイン抗体をコードするポリヌクレオチドが開示される。
【0047】
また、本明細書において、本明細書に記載されるメソテリン結合タンパク質をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む組成物が開示される。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、抗メソテリン抗体又はその断片である。
【0048】
また、本明細書において、本明細書に記載されるメソテリンに特異的に結合するシングルドメイン抗体を含む組換え発現ベクター、並びに組換え発現ベクターを含む宿主細胞が開示される。
【0049】
また、本明細書において、本明細書に記載されるメソテリン結合タンパク質をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む1つ以上の組換え発現ベクター、並びに1つ以上の組換え発現ベクターを含む宿主細胞が開示される。
【0050】
また、本明細書において、本明細書に記載されるメソテリンに特異的に結合するシングルドメイン抗体を含む合成免疫受容体、並びに合成免疫受容体を含む細胞が開示される。
【0051】
また、本明細書において、本明細書に記載されるメソテリンに特異的に結合するシングルドメイン抗体を含む抗体-薬物複合体が開示される。いくつかの実施形態では、抗体-薬物複合体は、例えば、メソテリンの発現と関連する疾患、例えば、増殖性疾患又は癌などの検出又は監視などの診断的用途で使用するためのものである。
【0052】
また、本明細書において、メソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、又は抗メソテリン抗体若しくはその断片と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が開示される。
【0053】
また、本明細書において、メソテリンの発現と関連している疾患の治療を必要とする対象において治療を行う方法であって、対象に、治療有効量の、少なくとも1つの本明細書に記載されるメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、若しくは抗体断片を投与することを含む、方法が開示される。いくつかの実施形態では、メソテリンの発現と関連している疾患は、増殖性疾患及び癌から選択される。いくつかの実施形態では、癌は、中皮腫、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、及びトリプルネガティブ乳癌から選択される。
【0054】
また、本明細書において、メソテリンの発現と関連している疾患の治療で使用するための、本明細書に記載されるメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、若しくは抗体断片が開示される。いくつかの実施形態では、メソテリンの発現と関連している疾患は、増殖性疾患及び癌から選択される。いくつかの実施形態では、癌は、中皮腫、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、及びトリプルネガティブ乳癌から選択される。
【0055】
また、本明細書において、メソテリンの発現と関連している疾患の治療のための医薬品の製造における、本明細書に記載されるメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、若しくは抗体断片の使用が開示される。いくつかの実施形態では、メソテリンの発現と関連している疾患は、増殖性疾患及び癌から選択される。いくつかの実施形態では、癌は、中皮腫、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、及びトリプルネガティブ乳癌から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1A】本開示の例示的なシングルドメイン抗体についての代表的なCHO細胞結合用量曲線を示し、ここでは、CHO細胞はヒトMSLNを発現する。
【
図1B】本開示の例示的なシングルドメイン抗体についての代表的なHeLa細胞結合用量曲線を示す。
【
図1C】本開示の例示的なシングルドメイン抗体についての代表的なCHO細胞結合用量曲線を示し、ここでは、CHO細胞はMSLNタンパク質を発現しない。
図1A~1Cにおいて、PEの平均蛍光強度は、バックグラウンド(すなわち、二次検出抗体のみとインキュベートされた細胞)に対する倍数としてプロットされた。
【
図2A】本明細書に記載の抗体配列を含む抗MSLN細胞外結合ドメインを含むCAR-T構造の概略図である。
【
図2B】CHO-huMSLN(**p=0.0075)及びHeLa(**p=0.0015)を含む抗MSLN 394556 CARでトランスフェクトしたJurkat細胞のT細胞活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
定義:
いくつかの実施形態では、「約」は、測定可能な数値変数に関連して使用される場合、変数の示された値及び示された値の実験誤差内(例えば、平均の95%信頼区間内)又は示された値の±10%のいずれか大きい方である変数の全ての値を指す。いくつかの実施形態では、数値範囲は、範囲を定義する数(すなわち、端点)を含む。
【0058】
値の範囲が提供される場合、文脈が別途明確に指示しない限り、その範囲の上限と下限との間の下限の単位の10分の1までの各介在値及びその記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在値は、本開示内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、記載された範囲内で特に除外される制限に従い、独立して、同様に本開示内に包含されるより小さい範囲に含まれ得る。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか又は両方を除外する範囲も本開示に含まれる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」及び「1つの(an)」という用語は、特に別段の指示がない限り、「1つ以上」を意味する。更に、「1つ以上」及び「少なくとも1つ」は、本明細書では互換的に使用される。更に、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、単数形の用語は、複数形を含み、複数形の用語は、単数形を含む。
【0060】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、一般的に、2つの軽鎖ポリペプチド(例えば、それぞれ約25kDaである軽鎖ポリペプチドなど)と、2つの重鎖ポリペプチド(例えば、それぞれ約50~70kDaである重鎖ポリペプチドなど)とを含む四量体免疫グロブリンタンパク質を指す。「軽鎖」又は「免疫グロブリン軽鎖」という用語は、本明細書で使用される場合、アミノ末端からカルボキシル末端へと、単一の免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)及び単一の免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン(CL)を含むポリペプチドを指す。免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン(CL)は、ヒトカッパ(κ)定常ドメイン又はヒトラムダ(λ)定常ドメインであり得る。「重鎖」又は「免疫グロブリン重鎖」という用語は、アミノ末端からカルボキシル末端へと、単一の免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1(CH1)、免疫グロブリンヒンジ領域、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン2(CH2)、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン3(CH3)、及び任意選択的に免疫グロブリン重鎖定常ドメイン4(CH4)を含むポリペプチドを指す。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(Δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)及びイプシロン(ε)として分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEと定義する。IgGクラス及びIgAクラス抗体は、それぞれサブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4並びにIgA1及びIgA2に更に分けられる。IgG、IgA及びIgD抗体の重鎖は、3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を有し、IgM及びIgE抗体の重鎖は、4つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3及びCH4)を有する。免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、サブタイプを含む任意の免疫グロブリンアイソタイプ由来であり得る。抗体鎖は、CLドメインとCH1ドメインとの間(即ち軽鎖と重鎖との間)及び2つの抗体重鎖のヒンジ領域間で、ポリペプチド間ジスルフィド結合を介して、互いに連結されている。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体であり、IgG1型、IgG2型、IgG3型、又はIgG4型のものであり得る。
【0061】
免疫グロブリン鎖の可変領域は、一般に、3つの超可変領域(「相補性決定領域」又はCDRと呼ばれることの方が多い)によって接合された比較的保存されているフレームワーク領域(FR)を含む同一の全体構造を示す。それぞれの重鎖/軽鎖対の2本の鎖に由来するCDRは、典型的には、フレームワーク領域によって整列されることで、標的タンパク質(例えば、MSLN又はCD3)の特定のエピトープに特異的に結合する構造を形成する。N末端からC末端に、天然に存在する軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の両方は、典型的には、以下のこれらの要素の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4。これらのドメインのそれぞれにおいて位置を占めるアミノ酸に番号を割り当てるための付番方式が考案されている。このナンバリングシステムは、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(1987 and 1991,NIH,Bethesda,MD)、又はChothia & Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothia et al.,1989,Nature 342:878-883において定義されている。所与の抗体のCDR及びFRが、この方式を使用して同定され得る。免疫グロブリン鎖のアミノ酸に関する他の付番方式としては、IMGT(登録商標)(the international ImMunoGeneTics information system;Lefranc et al.,Dev.Comp.Immunol.29:185-203;2005)、及びAHo(Honegger and Pluckthun,J.Mol.Biol.309(3):657-670;2001)が挙げられる。本開示のいくつかの実施形態では、「CDR」は、Lefranc,MP et al.,IMGT,the International ImMunoGeneTics database,Nucleic Acids Res.,27:209-212(1999)において定義されているような抗体の相補性決定領域を意味する。
【0062】
「フレームワーク領域」又は「FR」残基は、本明細書で定義されるような超可変領域/CDR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0063】
本明細書の抗体残基は、Kabatナンバリングシステム及びEUナンバリングシステムに従ってナンバリングされている。Kabatナンバリングシステムは、一般に、可変ドメインの残基(重鎖のおよそ1~113の残基)を指す場合に使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)による)。「EUナンバリングシステム」又は「EUインデックス」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域の残基を指す場合に使用される(例えば、Kabat et al.,前出、において報告されるEUインデックス)。「KabatにおけるEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基の番号付けを指す。本明細書において別段の記載がない限り、抗体の可変ドメイン中の残基番号への言及は、Kabatナンバリングシステムによる残基番号付けを意味する。本明細書において別段の記載がない限り、抗体、シングルドメイン抗体、抗体断片などの定常ドメインの残基番号への言及は、EUナンバリングシステムによる残基のナンバリングを意味する。
【0064】
本明細書で使用される場合、「抗メソテリン抗体」は、メソテリン(MSLN)に特異的に結合する抗体である。
【0065】
本明細書中で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、即ち、集団を構成する個々の抗体は、わずかに存在し得る可能性のある天然に存在する変異を除いて同一である。典型的には、異なる決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体は、一般的に、抗原上の単一の決定基を対象とする。非限定的な例として、本開示によるモノクローナル抗体は、Kohler et al(1975)Nature 256:495により最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得、組換えタンパク質作製法(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照されたい)によっても作製され得る。
【0066】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことを意図される。本開示のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的突然変異誘発により導入される突然変異又はインビボでの体細胞突然変異により導入される突然変異)を含み得る。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことを意図しない。
【0067】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」は、一般的に、例えば、VH、VHH、VL、(s)dAb、Fv、軽鎖(VL-CL)、Fd(VH-CH1)、重鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2又は「r IgG」(重鎖及び軽鎖からなる「半抗体」)などの完全長抗体の断片、又は完全長抗体の修飾された断片、例えば、三鎖抗体様分子、重鎖のみ抗体、単鎖可変断片(scFv)、di-scFv若しくはbi(s)-scFv、scFv-Fc、scFv-ジッパー、単鎖Fab(scFab)、Fab2、Fab3、ダイアボディ、単鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(Tandabs)、タンデムdi-scFv、タンデムtri-scFv、以下:(VH-VL-CH3)2、(scFv-CH3)2、((scFv)2-CH3+CH3)、((scFv)2-CH3)又は(scFv-CH3-scFv)2の通りの構造により例示される「ミニボディ」、マルチボディ(例えば、トリアボディ又はテトラボディ)及び単一ドメイン抗体(例えば、他の可変領域又はドメインと無関係に抗原又は標的に特異的に結合する、VHH、VH又はVLであり得る1つの可変領域のみを含むナノボディ又は単一可変ドメイン抗体)を指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、「重鎖のみ抗体」という用語は、2つの重鎖ポリペプチド(例えば、それぞれ約50~70kDaである重鎖ポリペプチドなど)からなる二量体免疫グロブリンタンパク質を指す。「重鎖のみ抗体」は、従来の抗体で見出される2つの軽鎖ポリペプチドを欠如する抗体断片である。いくつかの実施形態では、「重鎖のみ抗体」は、CH1ドメインの非存在下で、VH抗原結合ドメインとCH2及びCH3定常ドメインとを含むホモ二量体抗体である。いくつかの実施形態では、重鎖のみ抗体は、フレームワーク1、CDR1、フレームワーク2、CDR2、フレームワーク3、CDR3及びフレームワーク4から構成される可変領域抗原結合ドメインから構成される。いくつかの実施形態では、重鎖のみ抗体は、抗原結合ドメイン、ヒンジ領域の少なくとも一部及びCH2及びCH3ドメインから構成される。いくつかの実施形態では、重鎖のみ抗体は、抗原結合ドメイン、ヒンジ領域の少なくとも一部及びCH2ドメインから構成される。いくつかの実施形態では、重鎖のみ抗体は、抗原結合ドメイン、ヒンジ領域の少なくとも一部及びCH3ドメインから構成される。CH2及び/又はCH3ドメインがトランケートされている重鎖のみ抗体も本明細書中に含まれる。本明細書に記載の重鎖のみ抗体は、IgGサブクラスに属し得るが、IgM、IgA、IgD及びIgEサブクラスなどの他のサブクラスに属する重鎖のみ抗体も本明細書中に含まれる。いくつかの実施形態では、重鎖のみ抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブタイプ、例えばIgG1又はIgG4サブタイプに属し得る。いくつかの実施形態では、重鎖のみ抗体は、IgG1又はIgG4サブタイプのものであり、CHドメインの1つ以上が抗体のエフェクター機能を変化させるように修飾される。いくつかの実施形態では、重鎖のみ抗体は、IgG4サブタイプのものであり、CHドメインの1つ以上が抗体のエフェクター機能を変化させるように修飾される。いくつかの実施形態では、重鎖のみ抗体は、IgG1サブタイプのものであり、CHドメインの1つ以上が抗体のエフェクター機能を変化させるように修飾される。エフェクター機能を変化させるCHドメインの修飾は、本明細書中で更に記載される。重鎖のみ抗体の非限定的な例は、例えば、国際公開第2018/039180号パンフレットに記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「シングルドメイン抗体」は、抗体の重鎖可変ドメインの全て若しくは一部、又は軽鎖可変ドメインの全て若しくは一部を含有する一本鎖ポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である。
【0070】
本明細書で使用される場合、「三鎖抗体様分子」又は「TCA」という用語は、3つのポリペプチドサブユニットを含むか、本質的にそれらからなるか又はそれらからなり、そのうちの2つが、モノクローナル抗体の1本の重鎖及び1本の軽鎖又は抗原結合領域及び少なくとも1つのCHドメインを含むそのような抗体鎖の抗原結合断片を含むか、本質的にそれらからなるか又はそれらからなる抗体様分子を指す。この重鎖/軽鎖対は、第1の抗原に対する結合特異性を有する。第3のポリペプチドサブユニットは、CH1ドメインの非存在下でCH2、及び/又はCH3、及び/又はCH4ドメインを含むFc部分と、第2の抗原のエピトープ又は第1の抗原の異なるエピトープに結合する1つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、2つの抗原結合ドメインなど)とを含み、そのような結合ドメインが抗体重鎖又は軽鎖の可変領域に由来するか又はそれと配列同一性を有する重鎖抗体を、含むか、本質的にそれからなるか又はそれからなる。そのような可変領域の一部は、VH及び/又はVL遺伝子セグメント、D及びJH遺伝子セグメント又はJL遺伝子セグメントによってコードされ得る。可変領域は、再編成されたVHDJH、VLDJH、VHJL又はVLJL遺伝子セグメントによってコードされ得る。
【0071】
本明細書で使用される場合、「抗原結合断片」は、完全長の重鎖及び/又は軽鎖に存在するアミノ酸の少なくとも一部を欠くが、それでもなお抗原に特異的に結合し得る、抗体の一部のことである。抗原結合断片としては、単鎖可変断片(scFv)、ナノボディ(例えば、ラクダ重鎖抗体のVHドメイン;VHH断片、Cortez-Retamozo et al.,Cancer Research、Vol.64:2853-57,2004を参照されたい)、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、Fd断片及びCDR断片が挙げられるが、これらに限定されず、ヒト、マウス、ラット、ウサギ又はラクダなどの任意の哺乳動物供給源に由来し得る。
【0072】
抗体をパパインで消化すると、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片(その各々が単一の抗原結合部位を有する)と、残部の「Fc」断片(免疫グロブリン重鎖定常領域の第1のドメイン以外の全てを含有する)が生成される。Fab断片は、軽鎖及び重鎖由来の可変ドメイン並びに軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含有する。このように、「Fab断片」は、1つの免疫グロブリン軽鎖(軽鎖可変領域(VL)及び定常領域(CL))と1つの免疫グロブリン重鎖のCH1領域及び可変領域(VH)とから構成される。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。「Fd断片」は、免疫グロブリン重鎖由来のVHドメイン及びCH1ドメインを含む。Fd断片は、Fab断片の重鎖成分を表す。
【0073】
免疫グロブリンの「Fc断片」又は「Fc領域」は、一般に、2つの定常ドメイン、すなわちCH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意選択によりCH4ドメインを含む。本開示のいくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質(例えば、抗メソテリン抗体断片(例えば、TCA又は重鎖のみ抗体など)など)は、免疫グロブリンに由来するFc領域を含む。Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4免疫グロブリン由来のFc領域であり得る。いくつかの実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG1又はヒトIgG2免疫グロブリン由来のCH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。Fc領域は、C1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、及び貪食などのエフェクター機能を保持し得る。他の実施形態では、Fc領域は、エフェクター機能を低減又は排除するように修飾され得る。
【0074】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。エフェクター機能の非限定的な例としては、C1q結合、CDC;Fc受容体結合、ADCC、ADCP、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御などが挙げられる。そのようなエフェクター機能は、一般に、受容体、例えばFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB1、FcγRIIB2、FcγRIIIA、FcγRIIIB受容体、及び低親和性FcRn受容体などの受容体と相互作用するFc領域を必要とし、当技術分野において知られる様々なアッセイを使用して評価することができる。
【0075】
「死滅した」又は「サイレンシングされた」Fcは、例えば、血清半減期の延長に関して活性を保持するように突然変異されているが、高親和性Fc受容体を活性化しないか、又はFc受容体に対する親和性が低下しているものである。
【0076】
「ネイティブ配列Fc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。ネイティブ配列ヒトFc領域としては、例えば、天然配列ヒトIgG1 Fc領域(非A及びAアロタイプ)、ネイティブ配列ヒトIgG2 Fc領域、ネイティブ配列ヒトIgG3 Fc領域及びネイティブ配列ヒトIgG4 Fc領域並びにそれらの天然のバリアントが挙げられる。
【0077】
「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸の修飾、例えば1つ以上(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上)のアミノ酸の置換により、ネイティブ配列Fc領域のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含む。例示的には、いくつかの実施形態において、バリアントFc領域は、ネイティブ配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域と比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば約1~約10個のアミノ酸置換、例えば天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域における約1~約5個のアミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態では、本明細書におけるバリアントFc領域は、ネイティブ配列Fc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、例えば、それと少なくとも約85%の相同性、例えば、それと少なくとも約90%の相同性、例えば、それと少なくとも約95%の相同性、例えば、それと少なくとも約99%の相同性を有する。
【0078】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ二量体化変化」は、ヘテロ二量体Fc領域、即ちFc領域のA鎖及びB鎖が同一のアミノ酸配列を有さないFc領域の形成を促進する、Fc領域のA鎖及びB鎖(即ちFc領域を含む2つの鎖、ここで、一方の鎖は、本明細書では「A」鎖と呼ばれ、他方は「B」鎖と呼ばれる)の変化を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化変化は非対称であり得、即ち、特定の変化を有するA鎖は、異なる変化を有するB鎖と対形成し得る。これらの変化はヘテロ二量体化を促進し、ホモ二量体化を不利にする。ヘテロ-又はホモ-二量体が形成されたかどうかは、例えば、一方のポリエチレン鎖がダミーFcで他方がscFv-Fcである状況においてポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定してサイズ差によって評価することができる。そのような対形成したヘテロ二量体化変化の1つの非限定的な例は、いわゆる「ノブ及びホール」置換である。例えば、米国特許第7,695,936号明細書及び米国特許出願公開第2003/0078385号明細書を参照されたい。本明細書で使用される場合、1対のノブ及びホール置換を含むFc領域は、A鎖中に1つの置換を含み、B鎖中に別の置換を含む。例えば、IgG1 Fc領域のA及びB鎖における以下のノブ及びホール置換が、未修飾のA及びB鎖で見出されるものと比較して、ヘテロ二量体形成を増加させることが見出されており、本開示の非限定的な実施形態において、採用され得る:1)一方の鎖におけるY407T及び他方の鎖におけるT366Y;2)一方の鎖におけるY407A及び他方の鎖におけるT366W;3)一方の鎖におけるF405A及び他方の鎖におけるT394W;4)一方の鎖におけるF405W及び他方の鎖におけるT394S;5)一方の鎖におけるY407T及び他方の鎖におけるT366Y;6)一方の鎖におけるT366YとF405A及び他方の鎖におけるT394WとY407T;7)一方の鎖におけるT366WとF405W及び他方の鎖におけるT394SとY407A;8)一方の鎖におけるF405WとY407A及び他方の鎖におけるT366WとT394S;及び9)Fcの一方のポリペプチドにおけるT366W及び他方のポリペプチドにおけるT366SとL368AとY407V。そのような変化の代わりに又はそれに加えて、新たなジスルフィド架橋を作り出す置換は、ヘテロ二量体形成を促進することができる。例えば、米国特許出願公開第2003/0078385号明細書を参照されたい。IgG1 Fc領域におけるそのような変化としては、限定されないが、以下の置換が挙げられる:一方のFcポリペプチド鎖におけるY349C及び他方のFcポリペプチド鎖におけるS354C;一方のFcポリペプチド鎖におけるY349C及び他方のFcポリペプチド鎖におけるE356C;一方のFcポリペプチド鎖におけるY349C及び他方のFcポリペプチド鎖におけるE357C;一方のFcポリペプチド鎖におけるL351C及び他方のFcポリペプチド鎖におけるS354C;一方のFcポリペプチド鎖におけるT394C及び他方のFcポリペプチド鎖におけるE397C;又は一方のFcポリペプチド鎖におけるD399C及び他方のFcポリペプチド鎖におけるK392C。追加的又は代替的に、例えば、CH3-CH3界面における1つ以上の残基の電荷を変化させる置換は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2009/089004号パンフレットに記載されるように、ヘテロ二量体形成を増強することができる。そのような置換は本明細書では「電荷対置換」と呼ばれ、電荷対置換の1つの対を含むFc領域は、A鎖における1つの置換及びB鎖における異なる置換を含む。電荷対置換の非限定的な例としては、以下が挙げられる:1)一方の鎖におけるK409D又はK409Eプラス他方の鎖におけるD399K又はD399R;2)一方の鎖におけるK392D又はK392Eプラス他方の鎖におけるD399K又はD399R;3)一方の鎖におけるK439D又はK439Eプラス他方の鎖におけるE356K又はE356R;及び4)一方の鎖におけるK370D又はK370Eプラス他方の鎖におけるE357K又はE357R。更に、両方の鎖における置換R355D、R355E、K360D又はK360Rは、他のヘテロ二量体化変化と共に使用される場合、ヘテロ二量体を安定化することができる。特定の電荷対置換は、単独で又は他の電荷対置換と共に使用することができる。電荷対置換の単一の対及びそれらの組み合わせの特定の例としては、以下が挙げられる:1)一方の鎖におけるK409Eプラス他方の鎖におけるD399K;2)一方の鎖におけるK409Eプラス他方の鎖におけるD399R;3)一方の鎖におけるK409Dプラス他方の鎖におけるD399K;4)一方の鎖におけるK409Dプラス他方の鎖におけるD399R;5)一方の鎖におけるK392Eプラス他方の鎖におけるD399R;6)一方の鎖におけるK392Eプラス他方の鎖におけるD399K;7)一方の鎖におけるK392Dプラス他方の鎖におけるD399R;8)一方の鎖におけるK392Dプラス他方の鎖におけるD399K;9)一方の鎖におけるK409DとK360Dプラス他方の鎖におけるD399KとE356K;10)一方の鎖におけるK409DとK370Dプラス他方の鎖におけるD399KとE357K;11)一方の鎖におけるK409DとK392Dプラス他方の鎖におけるD399KとE356KとE357K;12)一方の鎖でのK409DとK392D及び他方の鎖でのD399K;13)一方の鎖でのK409DとK392Dプラス他方の鎖でのD399KとE356K;14)一方の鎖でのK409DとK392Dプラス他方の鎖でのD399KとD357K;15)一方の鎖でのK409DとK370Dプラス他方の鎖でのD399KとD357K;16)一方の鎖でのD399Kプラス他方の鎖でのK409DとK360D;又は17)一方の鎖でのK409DとK439Dプラス他方の鎖でのD399KとE356K。これらのヘテロ二量体化変化のいずれも、本明細書に記載のバリアントFc領域を含むポリペプチドにおいて使用することができる。
【0079】
いくつかの非限定的な実施形態では、バリアントFc配列は、EUインデックス位置234、235及び237でFcγRI結合を低減するためにCH2領域に3つのアミノ酸置換を含み得る(Duncan et al.,(1988)Nature 332:563を参照)。EUインデックス位置330及び331における補体C1q結合部位における2つのアミノ酸置換は、補体結合を減少させる(Tao et al.,J.Exp.Med.178:661(1993)及びCanfield and Morrison,J.Exp.Med.173:1483(1991)を参照されたい)。ヒトIgG1又はIgG2残基の233~236位での置換並びにIgG4残基の327、330及び331位での置換は、ADCC及びCDCを大幅に低下させる(例えば、Armour KL.et al.,1999 Eur J Immunol.29(8):2613-24;及びShields R.L.et al.,2001.J Biol Chem.276(9):6591-604を参照されたい)。ヒトIgG4のFcアミノ酸配列(UniProtKB番号P01861)は、本明細書では配列番号76として示される。サイレンシングされたIgG1は、例えば、Boesch,A.W.,et al.,“Highly parallel characterization of IgG Fc binding interactions.”MAbs,2014.6(4):p.915-27に記載されており、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0080】
ジスルフィド結合を形成することが可能な領域が欠失されているか、又は特定のアミノ酸残基がネイティブFcのN末端で除去されているか、又はメチオニン残基が付加されているものを含むが、限定されない、他のFcバリアントが可能である。従って、いくつかの実施形態では、抗体の1つ又は複数のFc部分は、ジスルフィド結合を排除するために、ヒンジ領域に1つ又は複数の変異を含み得る。また別の実施形態では、Fcのヒンジ領域を完全に除去し得る。更に別の実施形態では、抗体は、Fcバリアントを含み得る。
【0081】
更に、Fcバリアントは、補体結合又はFc受容体結合をもたらすためにアミノ酸残基を置換(突然変異)、欠失又は付加することにより、エフェクター機能を除去するか又は実質的に低下させるように構築され得る。例えば、限定ではなく、欠失は、C1q結合部位などの補体結合部位において生じ得る。免疫グロブリンFc断片のこのような配列誘導体を調製するための技術は、国際公開第97/34631号パンフレット及び国際公開第96/32478号パンフレットで開示されている。更に、Fcドメインは、リン酸化、硫酸化、アシル化、グリコシル化、メチル化、ファルネシル化、アセチル化、アミド化などによって修飾され得る。
【0082】
低下したエフェクター機能を有する抗体及び抗体断片には、EUナンバリングによるFc領域残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ以上の置換を有するものが含まれるが、これらに限定されない(例えば、米国特許第6,737,056号明細書を参照されたい)。いくつかの実施形態では、低下したエフェクター機能を有するバリアントFc領域は、EUナンバリングによるアミノ酸位置265、269、270、297及び327の2つ以上での置換を含み、これにはEU番号によるアラニンへの残基265及び297の置換(即ちEUナンバリングによるD265A及びN297A)を伴う、いわゆる「DANA」Fcバリアントが含まれる(例えば、米国特許第7,332,581号明細書を参照されたい)。いくつかの実施形態では、低下したエフェクター機能を有するバリアントFc領域は、以下の2つのアミノ酸置換:D265A及びN297Aを含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、エフェクター機能は、グリコシル化を排除する定常領域における突然変異、例えば「エフェクターレス突然変異」によって低下される。いくつかの実施形態では、エフェクターレス突然変異は、CH2領域におけるN297A又はDANA突然変異(D265A+N297A)である。Shields et al.,J.Biol.Chem.276(9):6591-6604(2001)。いくつかの実施形態では、エフェクターレス突然変異は、CH2領域におけるN297G又はDANG突然変異(D265A+N297G)である。いくつかの実施形態では、バリアントFc領域は、N297でグリコシル化を欠いており、例えば、バリアントFc領域は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2014/153063号パンフレットに記載されているように、N297でグリコシル化を欠いているバリアントFc領域である。或いは、低下された又は除去されたエフェクター機能をもたらす追加の突然変異としては、K322A及びL234A/L235A(LALA)が挙げられる。或いは、エフェクター機能は、生産技術、例えばグリコシル化しない宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli))における発現又はエフェクター機能を促進するのに効果がないか又はあまり効果的でない変化したグリコシル化パターンをもたらす宿主細胞における発現を介して低下又は排除することができる(例えば、Shinkawa et al.,J.Biol.Chem.278(5):3466-3473(2003))。
【0084】
いくつかの実施形態では、野生型ヒトFc領域の位置329(EUナンバリング)のプロリン(P329)は、グリシン又はアルギニン又はFcのP329とFcgRIIIのトリプトファン残基W87及びW110との間に形成されるFc/Fcγ受容体界面内のプロリンサンドイッチを破壊するのに十分な大きさのアミノ酸残基で置換される(Sondermann et al.,Nature 406,267-273(20 Jul.2000))。いくつかのさらなる実施形態では、Fcバリアント領域における少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D又はP331Sである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びL235A又はヒトIgG4 Fc領域のS228P及びL235Eであり、全てEUナンバリングによる(例えば、その全体が参照により組み込まれる米国特許第8,969,526号明細書を参照されたい)。
【0085】
いくつかの実施形態では、バリアントFc領域は、グリシンで置換されたヒトIgG Fc領域のP329を有し、バリアントFc領域は、ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びL235A又はヒトIgG4 Fc領域のS228P及びL235Eにおいて少なくとも2つのさらなるアミノ酸置換を含み、残基は、EUナンバリングに従って番号付けされる(例えば、米国特許第8,969,526号明細書を参照されたい)。いくつかの実施形態では、P329G、L234A及びL235A(EUナンバリング)置換を含むバリアントFc領域は、ヒトFcγRIIIA及びFcγRIIAに対する低減された親和性を示す。
【0086】
いくつかの実施形態では、バリアントFc領域は、三重突然変異:EUナンバリングによる位置P329、L234A及びL235Aにおけるアミノ酸置換(P329/LALA)を含む(例えば、米国特許第8,969,526号明細書を参照されたい)。いくつかの実施形態では、バリアントFc領域は、以下のアミノ酸置換:EUナンバリングによるP329G、L234A、及びL235Aを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、抗体又は抗体断片は、T366W突然変異を含むバリアントヒトIgG4 CH3ドメイン配列を含み、これは、本明細書中では、任意選択的にIgG4 CH3ノブ配列と呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、抗体又は抗体断片は、T366S突然変異、L368A突然変異及びY407V突然変異を含むバリアントヒトIgG4 CH3ドメイン配列を含み、これは、本明細書中では、任意選択的にIgG4 CH3ホール配列と呼ばれ得る。本明細書中に記載のIgG4 CH3変異は、抗体二量体中の第1の単量体の第1の重鎖定常領域に「ノブ」を置き、抗体二量体中の第2の単量体の第2の重鎖定常領域に「ホール」を置き、それによって抗体中の重鎖ポリペプチドサブユニットの所望の対の適切な対合(ヘテロ二量体化)を促進するために、いずれかの好適な方法で利用され得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗体又は抗体断片は、S228P突然変異、F234A突然変異、L235A突然変異及びT366W突然変異(ノブ)を含むバリアントヒトIgG4 Fc領域を含む重鎖ポリペプチドサブユニットを含む。いくつかの実施形態では、抗体又は抗体断片は、S228P突然変異、F234A突然変異、L235A突然変異、T366S突然変異、L368A突然変異及びY407V突然変異(ホール)を含むバリアントヒトIgG4 Fc領域を含む重鎖ポリペプチドサブユニットを含む。
【0089】
「Fab’断片」は、CH1ドメインのC末端において、抗体ヒンジ領域に由来する1つ以上のシステイン残基を有するFab断片である。
【0090】
「F(ab’)2断片」は、ヒンジ領域において重鎖間のジスルフィド架橋によって連結されている2つのFab’断片を含む二価の断片である。
【0091】
「Fv」断片は、抗体由来の完全な抗原認識部位及び結合部位を含有する最小の断片である。この断片は、緊密な非共有結合状態にある、1つの免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)と1つの免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)との二量体からなる。この構成において、各可変領域の3つのCDRが相互作用して、VH-VL二量体の表面上で抗原結合部位が画定される。単一の軽鎖又は重鎖の可変領域(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFv断片の半分)は、VH及びVLの両方を含む結合部位全体よりも親和性が低いが、抗原を認識してこれに結合する能力を有する。
【0092】
「単鎖可変抗体断片」又は「scFv断片」は、抗体のVH領域及びVL領域を含み、これらの領域は、単一のポリペプチド鎖に存在し、任意選択により、Fvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするペプチドリンカーをVH領域とVL領域との間に含む(例えば、Bird et al.,Science,Vol.242:423-426,1988;及びHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.85:5879-5883,1988を参照されたい)。
【0093】
「ナノボディ」は、重鎖抗体の重鎖可変領域である。そのような可変ドメインは、そのような重鎖抗体の完全に機能的な最小の抗原結合断片であり、分子質量は、わずか15kDaである。Cortez-Retamozo et al.,Cancer Research 64:2853-57,2004を参照されたい。軽鎖を欠く機能的重鎖抗体は、特定の種の動物、例えばコモリザメ、テンジクザメ並びにラクダ科(Camelidae)、例えばラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカ及びラマでは天然に生じる。これらの動物において、抗原結合部位は、単一ドメインであるVHHドメインに縮小されている。これらの抗体は、重鎖可変領域のみを使用して抗原結合領域を形成し、即ち、これらの機能的抗体は、構造H2L2を有するのみの重鎖のホモ二量体(「重鎖抗体」又は「HCAbs」と呼ぶ)である。ラクダ化VHHは、報告によれば、ヒンジドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含有し、CH1ドメインを欠くIgG2定常領域及びIgG3定常領域と再結合する。ラクダ化VHHドメインは、抗原に高親和性で結合し(Desmyter et al.,J.Biol.Chem.,Vol.276:26285-90,2001)、溶液で高い安定性を有する(Ewert et al.,Biochemistry,Vol.41:3628-36,2002)ことが判明している。ラクダ化重鎖を有する抗体を生成する方法は、例えば、米国特許出願公開第2005/0136049号明細書及び米国特許出願公開第2005/0037421号明細書に記載されている。別の足場は、サメV-NAR足場とより密接に適合するヒト可変様ドメインから作製することができ、長い貫通性のループ構造のフレームワークを提供し得る。
【0094】
本明細書で使用される場合、「抗原結合タンパク質」という用語は、1つ以上の標的抗原に特異的に結合するタンパク質を指す。抗原結合タンパク質は、一般に、抗原に特異的に結合する抗原結合断片を含み、且つ任意選択的に、抗原結合断片が、抗原結合タンパク質の抗原への結合を促進するコンフォメーションをとることを可能にする骨格又はフレームワーク部分を含むタンパク質である。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は抗体又は抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、一本鎖ポリペプチドに、又は複数のポリペプチド鎖に組み込まれた1つ以上の抗原結合断片を含むタンパク質を含み得る。例えば、抗原結合タンパク質としては、ダイアボディ(例えば、欧州特許第404,097号明細書、国際公開第93/11161号パンフレット、及びHoUinger et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.90:6444-6448,1993参照);イントラボディ;ドメイン抗体(単一のVL若しくはVHドメイン、又はペプチドリンカーによって連結された2つ以上のVHドメイン;Ward et al,Nature,Vol.341:544-546,1989を参照されたい);マキシボディ(Fc領域に融合した2つのscFv、Fredericks et al,Protein Engineering,Design & Selection,Vol.17:95-106,2004及びPowers et al,Journal of Immunological Methods,Vol.251:123-135,2001を参照されたい);トリアボディ;テトラボディ;ミニボディ(CH3ドメインに融合したscFv;Olafsen et al,Protein Eng Des Sel.,Vol.17:315-23,2004を参照されたい);ペプチボディ(Fc領域に接続した1つ以上のペプチド、国際公開第00/24782号パンフレットを参照されたい);線形抗体(相補的軽鎖ポリペプチドと一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH-CHl-VH-CHl)、Zzjpate.et al,Protein Eng.,Vol.8: 1057-1062,1995を参照されたい);小モジュラー免疫薬(米国特許公開第20030133939号パンフレットを参照されたい);並びに免疫グロブリン融合タンパク質(例えば、IgG-scFv、IgG-Fab、2scFv-IgG、4scFv-IgG、VH-IgG、IgG-VH、及びFab-scFv-Fc;例えば、Spiess et al,Mol.Immunol.,Vol. 67(2 Pt A):95-106,2015を参照されたい)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0095】
本明細書で使用される場合、「メソテリン結合タンパク質」は、メソテリンに特異的に結合する抗原結合タンパク質である。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質はまた、メソテリン以外の1つ以上の標的抗原に結合してもよい。
【0096】
本開示の抗体及び抗体断片(例えば、重鎖のみ抗体及び三鎖抗体様分子など)は、2つ以上の結合特異性を有する抗体及び抗体断片である多重特異性抗体及び抗体断片を含む。本明細書で使用される場合、「多重特異性」という用語は、「二重特異性」(すなわち、2つの結合特異性)及び「三重特異性」(すなわち、3つの結合特異性)、並びに高次の独立した特異的結合親和性、例えば、高次のポリエピトープ特異性を含む。
【0097】
本明細書で使用される場合、「単離された」分子(例えば、抗体、抗体断片、シングルドメイン抗体、メソテリン結合タンパク質など)は、その天然環境の成分から同定且つ分離され、及び/又は回収された分子である。その天然環境の混入成分は、分子の診断的又は治療的使用を妨害し得る物質であり、例えば、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質であり得る。いくつかの実施形態では、単離された分子は、(1)ローリー法による決定で単離された分子が95重量%を超えるまで、例えば、99重量%を超えるまでなど、(2)スピニングカップ配列決定装置の使用によってN末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を十分に得られる程度まで、又は(3)クマシーブルー若しくは例えば、銀染色を用いて、還元条件下又は非還元条件下でSDS-PAGEによって均質になるまで精製される。いくつかの実施形態では、単離された分子は、1つの精製工程を含むプロセスによって調製される。
【0098】
本明細書で使用される場合、「抗体-薬物複合体」は、別の部分、例えば、ペイロードなど、例えば、放射性核種などに結合される抗体又は抗体断片を指す。
【0099】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」は、単一の抗体又は抗体断片が結合する抗原分子の表面上の部位である。一般に、抗原は、数個又は多くの異なるエピトープを有し、多くの異なる抗体及び抗体断片と反応する。この用語には、具体的には、線状エピトープと立体構造エピトープとが含まれる。立体構造エピトープ及び非立体構造エピトープは、前者への結合が変性溶媒の存在下で喪失されるが、後者への結合は喪失されないという点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基(エピトープの免疫優性成分とも呼ばれる)と、結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば、特異的な抗原結合ペプチドによって効果的にブロックされるアミノ酸残基など(言い換えれば、アミノ酸残基は、特異的な抗原結合ペプチドのフットプリント内にある)と、を含み得る。
【0100】
本明細書で使用される場合、「ポリエピトープ特異性」は、同じ又は異なる標的上の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。
【0101】
「対象」、「個体」及び「患者」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、処置について評価され及び/又は処置されている哺乳動物を指す。対象はヒトであり得るが、他の哺乳動物、例えば、ヒトの疾患に対する実験室モデルとして有用な哺乳動物など、例えば、マウス、ラットなども含まれる。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0102】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、患者における疾患の進行の遅延若しくは停止、対象の症状の数若しくは重症度の減少又は対象が疾患の症状を有さない持続期間の頻度若しくは長さの増加を含む、対象における疾患のあらゆる改善を包含する。
【0103】
本明細書中で使用される場合、「エフェクター細胞」という用語は、免疫応答の認識相及び活性化相とは対照的に、免疫応答のエフェクター相に関与する免疫細胞を指す。例示的免疫細胞としては、骨髄又はリンパ起源の細胞、例えば、リンパ球(例えば、B細胞及び細胞溶解性T細胞(CTL)を含むT細胞)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、多形核細胞、例えば、好中球、顆粒球、肥満細胞及び好塩基球を含む。いくつかのエフェクター細胞は、特異的Fc受容体(FcR)を発現して特異的免疫機能を果たす。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、ナチュラルキラー細胞などのADCCを誘導することができる。例えば、FcRを発現する単球、マクロファージは、標的細胞の特異的死滅及び免疫系の他の成分への抗原の提示又は抗原を提示する細胞への結合に関与する。
【0104】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、核酸分子において、この核酸分子が連結されている別の核酸の輸送が可能な核酸分子を指すことが意図される。ベクターの一種である「プラスミド」は、環状二本鎖DNAループを指し、追加のDNAセグメントがこれに連結され得る。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、このウイルスベクターでは、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムに連結され得る。ある特定のベクターは、このベクターが導入された宿主細胞中での自律複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクターなど)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクターなど)は、宿主細胞への導入時にこの宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、それにより宿主のゲノムと一緒に複製される。更に、ある特定のベクターは、それらが作動可能に連結されている遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書においては、「組換え発現ベクター」と称する。いくつかの実施形態では、組換えDNA技術において使用するための発現ベクターは、プラスミドの形態である。
【0105】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」は、発現ベクターが導入されている細胞を指す。「宿主細胞」は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も指す。ある特定の改変が変異又は環境的影響のいずれかに起因して後続世代において生じ得るため、そのような子孫は、事実上、親細胞と同一であり得ないが、依然として本明細書において使用される用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。例示的な組換え宿主細胞としては、CHO細胞、HEK293細胞、NS/0細胞、及びリンパ球細胞などのトランスフェクトーマ(transfectomas)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
「KD」(M)という用語は、本明細書で使用される場合、Octet QK384機器(Fortebio Inc.,Menlo Park,CA)をキネティクスモードで使用して、バイオレイヤー干渉法によって決定される特定の抗原結合相互作用の解離平衡定数を指す。例えば、抗マウスFcセンサーにマウスFc融合抗原を載せ、次いで、抗体含有ウェルに浸漬して、濃度依存性結合速度(kon)を測定する。抗体解離速度(koff)を最終段階で測定し、ここで、センサーを緩衝液のみを含有するウェルに浸漬する。KDは、koff/konの比である。(さらなる詳細については、Concepcion,J,et al.,Comb Chem High Throughput Screen,12(8),791-800,2009を参照されたい)。
【0107】
本明細書で使用される場合、分子(例えば、タンパク質、抗体、又は抗体断片など)は、類似の結合アッセイ条件下で、他の無関係なタンパク質に対する親和性と比較して、標的抗原に対してかなり高い結合親和性を有しており、その結果、標的抗原を識別することができる場合に、標的抗原に「特異的に結合する」。抗原に特異的に結合する分子は、≦1×10-6Mの平衡解離定数(KD)でその抗原に結合し得る。分子は、KDが≦1×10-8Mである場合、「高親和性」で抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の分子は、ヒトMSLN及び/又はヒトCD3に≦5×10-7MのKDで結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の分子は、ヒトMSLN及び/又はヒトCD3に≦1×10-7MのKDで結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の分子は、ヒトMSLN及び/又はヒトCD3に≦5×10-8MのKDで結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の分子は、ヒトMSLN及び/又はヒトCD3に≦2×10-8MのKDで結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の分子は、ヒトMSLN及び/又はヒトCD3に≦1×10-8MのKDで結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の分子は、ヒトMSLN及び/又はヒトCD3に≦1×10-9MのKDで結合する。
【0108】
親和性は、種々の技術を用いて判定されてもよく、その非限定的な例は、親和性ELISAアッセイがある。いくつかの実施形態では、親和性は、表面プラズモン共鳴アッセイ(例えば、BIAcore(登録商標)ベースのアッセイ)によって判定される。この方法論を用いて、結合速度定数(ka単位:M-1s-1)及び解離速度定数(kd単位:s-1)を測定することができる。次に、平衡解離定数(KD単位:M)は、運動速度定数の比(kd/ka)から算出することができる。いくつかの実施形態では、親和性は、Rathanaswami et al.,Analytical Biochemistry,Vol.373:52-60,2008に記載されているような結合平衡除外法(KinExA)などの速度論的方法によって決定される。KinExAアッセイを用いて、平衡解離定数(KD、M)及び結合速度定数(ka、M-1s-1)を測定することができる。これらの値から、解離速度定数(kd、s-1)を算出することができる(KD×ka)。他の実施形態では、親和性は、Kumaraswamy et al.,Methods Mol.Biol.,Vol.1278:165-82,2015に記載され、Octet(登録商標)システム(Pall ForteBio)で用いられているようなバイオレイヤー干渉法により決定される。速度定数(ka及びkd)並びに親和性定数(KD)は、バイオレイヤー干渉法を使用して実時間で算出することができる。
【0109】
本明細書で使用される場合、「[Y]結合VH CDR」は、VH領域のCDRを指し、ここでは、VH領域は、標的[Y]に特異的に結合する。
【0110】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」又は「アミノ酸残基」という用語は、アラニン(Ala又はA);アルギニン(Arg又はR);アスパラギン(Asn又はN);アスパラギン酸(Asp又はD);システイン(Cys又はC);グルタミン(Gln又はQ);グルタミン酸(Glu又はE);グリシン(Gly又はG);ヒスチジン(His又はH);イソロイシン(Ile又はI):ロイシン(Leu又はL);リシン(Lys又はK);メチオニン(Met又はM);フェニルアラニン(Phe又はF);プロリン(Pro又はP);セリン(Ser又はS);スレオニン(Thr又はT);トリプトファン(Trp又はW);チロシン(Tyr又はY);及びバリン(Val又はV)からなる群から選択されるアミノ酸などの当該技術分野で認められる定義を有するアミノ酸を指すが、修飾、合成、又は希少アミノ酸が必要に応じて使用されてもよい。一般に、アミノ酸は、非極性側鎖(例えば、Ala、Cys、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Val);負電荷側鎖(例えば、Asp、Glu);正電荷側鎖(例えば、Arg、His、Lys);又は無電荷極性側鎖(例えば、Asn、Cys、Gln、Gly、His、Met、Phe、Ser、Thr、Trp及びTyr)の存在によって分類することができる。
【0111】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸修飾」としては、アミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又はそれらへの挿入、及び/又はそれらの置換が挙げられるが、これらに限定されない。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを行って、最終コンストラクトに至ることができるが、但し、最終コンストラクトは、所望の特性を有するものとする。アミノ酸の変化は、グリコシル化部位の数又は位置の変化などの抗体コンストラクトの翻訳後プロセスも変え得る。好ましい置換(又は置き換え)は、保存的置換である。しかしながら、最終コンストラクトが標的抗原に結合する能力を保持している限り、あらゆる置換(非保存的置換を含む)が想定される。
【0112】
当業者は、本明細書に記載の抗体及び抗体断片の保存的バリアントが産生され得ることを認識するであろう。dsFv断片又はscFv断片などの抗体断片において採用されるそのような保存的バリアントは、VHとVL領域との間の正確なフォールディング及び安定化のために必要な重要なアミノ酸残基を保持し、分子の低pI及び低毒性を保つために、残基の電荷特性を維持する。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換(例えば、最大1個、最大2個、最大3個、最大4個、又は最大5個のアミノ酸置換)は、収量を増加させるために、VH及び/又はVL領域において行うことができる。例えば、表A1に記載されるものなどの、機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的アミノ酸置換の表は、当業者に周知である。
【0113】
【0114】
本明細書で使用される場合、「合成免疫受容体」は、免疫エフェクター細胞上で発現され、且つ標的抗原に特異的に結合するように操作されている人工細胞受容体(例えば、人工T細胞受容体、人工NK細胞受容体など)である。
【0115】
本明細書で使用される場合、参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」又は「配列同一性パーセント(%)」は、配列をアラインさせ、必要であれば、最大の配列同一性%を達成するためにギャップを導入した後の、配列同一性の一部として保存的置換を考慮しない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアライメントは、当業者の範囲内である様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインするための適切なパラメータを決定し得る。しかしながら、本明細書の目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。
【0116】
「医薬組成物」という用語は、有効成分の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態であり、製剤が投与される対象に対して許容できない毒性を有する追加成分を含有しない製剤を指す。そのような組成物は、無菌である。「薬学的に許容可能な」賦形剤(例えば、ビヒクル、添加剤)は、使用される有効成分の有効用量を提供するために対象哺乳動物に合理的に投与され得るものである。
【0117】
本明細書で使用される場合、「無菌」組成物は、無菌であるか、又は全ての生きている微生物及びそれらの胞子を含まないか若しくは基本的に含まない。本明細書で使用される場合、「凍結」組成物は、0℃未満の温度のものである。
【0118】
本明細書で使用される場合、「安定な」組成物は、その中のタンパク質が貯蔵時にその物理的安定性、及び/又は化学的安定性、及び/又は生物学的活性を基本的に保持するものである。いくつかの実施形態では、組成物は、貯蔵時、その物理的及び化学的安定性並びにその生物学的活性を基本的に保持する。保存期間は、一般に、組成物の意図された有効期間に基づいて選択される。タンパク質安定性を測定するための様々な分析技術が当技術分野で利用可能であり、例えばPeptide and Protein Drug Delivery,247-301.Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones.A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90)(1993)で概説されている。安定性は、選択された温度において、選択された期間にわたって測定され得る。安定性は、凝集体形成の評価(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて濁度を測定することにより且つ/又は目視検査により);陽イオン交換クロマトグラフィー、画像キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)又はキャピラリーゾーン電気泳動を用いて電荷不均一性を評価することにより;アミノ末端又はカルボキシ末端配列の分析;質量分光分析;還元されたインタクトな抗体を比較するためのSDS-PAGE分析;ペプチドマップ(例えば、トリプシン又はLYS-C)分析;抗体の生物学的活性又は抗原結合機能の評価などを含む様々な異なる方法で定性的及び/又は定量的に評価され得る。不安定性には、以下のいずれかの1つ又は複数が含まれ得る:凝集、脱アミド化(例えば、Asn脱アミド化)、酸化(例えば、Met酸化)、異性化(例えば、Asp異性化)、クリッピング/加水分解/断片化(例えば、ヒンジ領域断片化)、スクシンイミド形成、不対システイン、N末端伸長、C末端プロセシング、グリコシル化の相違など。
【0119】
本開示のいくつかの実施形態は、メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体に関する。具体的には、本開示は、ヒトメソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体に密接と関連しているファミリーを提供する。このファミリーのシングルドメイン抗体は、本明細書に定義され、表S1及びS2に示すCDR配列のセットを含み、表S3に記載される配列番号11~19の提供される重鎖可変領域(VH)配列によって例示される。シングルドメイン抗体のこのファミリーは、臨床的治療剤としてのそれらの有用性に寄与する多くの利益を提供する。実例として、シングルドメイン抗体は、ある範囲の結合親和性を有するメンバーを含み、所望の結合親和性を有する特定の配列の選択を可能にする。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、
(i)配列
GGSISX1SYY(配列番号53)を含むVH相補性決定領域1(CDR1)であって、
式中、X1がN又はSである、VH CDR1と、
(ii)配列
IYX2SGX3X4(配列番号68)を含むVH CDR2であって、
式中、X2がH又はYであり、X3がN又はSであり、且つX4がT又はIである、VH CDR2と、
(iii)配列
X5X6QX7GVGATTTEEY(配列番号54)を含むVH CDR3であって、
式中、X5がT、V、又はAであり、X6がS又はTであり、且つX7がD又はNである、VH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも85%(例えば、85%、90%、95%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも90%(例えば、90%、95%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号12のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号13のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号14のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号15のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号16のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号17のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号18のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号19のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、
(i)配列番号1又は配列番号9と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、
(ii)配列番号2、配列番号7、又は配列番号10と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、
(iii)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、又は配列番号8と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、(i)配列番号1と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR1と、(ii)配列番号2と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、(iii)配列番号3と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、(i)配列番号1と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR1と、(ii)配列番号2と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、(iii)配列番号4と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、(i)配列番号1と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR1と、(ii)配列番号2と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、(iii)配列番号5と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、(i)配列番号1と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR1と、(ii)配列番号2と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、(iii)配列番号6と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、(i)配列番号1と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR1と、(ii)配列番号7と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、(iii)配列番号8と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、(i)配列番号9と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR1と、(ii)配列番号2と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、(iii)配列番号6と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、(i)配列番号9と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR1と、(ii)配列番号2と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、(iii)配列番号4と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、(i)配列番号1と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR1と、(ii)配列番号10と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、(iii)配列番号4と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、各アミノ酸修飾は、もしあれば、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、各アミノ酸修飾は、もしあれば、表A1に列挙される保存的アミノ酸置換である。
【0136】
いくつかの実施形態では、VH CDR1は、配列番号1又は配列番号9と比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、VH CDR2は、配列番号2、配列番号7、又は配列番号10と比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、VH CDR3は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、又は配列番号8と比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、アミノ酸欠失である。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、アミノ酸付加である。
【0137】
いくつかの実施形態では、VH CDR1は、配列番号1及び配列番号9から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、VH CDR2は、配列番号2、配列番号7、及び配列番号10から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、VH CDR3は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号8から選択される配列を含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、
(i)配列番号1及び配列番号9から選択される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、
(ii)配列番号2、配列番号7、及び配列番号10から選択される配列を含むVH CDR2と、
(iii)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号8から選択される配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、
(a)それぞれ配列番号1、2、及び3の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(b)それぞれ配列番号1、2、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(c)それぞれ配列番号1、2、及び5の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(d)それぞれ配列番号1、2、及び6の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(e)それぞれ配列番号1、7、及び8の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(f)それぞれ配列番号9、2、及び6の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(g)それぞれ配列番号9、2、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;又は
(h)それぞれ配列番号1、10、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、それぞれ配列番号1、2、及び3の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、それぞれ配列番号1、2、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、それぞれ配列番号1、2、及び5の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、それぞれ配列番号1、2、及び6の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、それぞれ配列番号1、7、及び8の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、それぞれ配列番号9、2、及び6の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、それぞれ配列番号9、2、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、それぞれ配列番号1、10、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号12のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号13のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号14のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号15のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号16のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号17のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号18のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号19のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、VH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3配列は、ヒトVHフレームワーク中に存在する。
【0143】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも85%(例えば、85%、90%、95%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも90%(例えば、90%、95%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号12に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号13に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号14に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号15に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号16に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号17に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号18に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号19に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19から選択された重鎖可変(VH)領域を含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号12の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号13の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号14の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号15の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号16の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号17の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号18の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号19の重鎖可変(VH)領域を含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、ヒトMSLNに特異的に結合する。
【0148】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、約10-9M~約10-6MのKDでヒトMSLNに結合する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、≦5×10-7MのKDでヒトMSLNに結合する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、≦1×10-7MのKDでヒトMSLNに結合する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、≦5×10-8MのKDでヒトMSLNに結合する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、≦2×10-8MのKDでヒトMSLNに結合する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、≦1×10-8MのKDでヒトMSLNに結合する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、≦1×10-9MのKDでヒトMSLNに結合する。
【0149】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である。
【0150】
いくつかの実施形態ではシングルドメイン抗体は、単離されたシングルドメイン抗体である。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、単離されたヒトシングルドメイン抗体である。
【0151】
本開示のいくつかの実施形態では、本明細書に記載されるメソテリンに特異的に結合するシングルドメイン抗体を含むメソテリン結合タンパク質に関する。
【0152】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、
(i)配列
GGSISX1SYY(配列番号53)を含むVH相補性決定領域1(CDR1)であって、
式中、X1がN又はSである、VH CDR1と、
(ii)配列
IYX2SGX3X4(配列番号68)を含むVH CDR2であって、
式中、X2がH又はYであり、X3がN又はSであり、且つX4がT又はIである、VH CDR2と、
(iii)配列
X5X6QX7GVGATTTEEY(配列番号54)を含むVH CDR3であって、
式中、X5がT、V、又はAであり、X6がS又はTであり、且つX7がD又はNである、VH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも85%(例えば、85%、90%、95%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも90%(例えば、90%、95%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号12のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号13のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号14のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号15のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号16のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号17のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号18のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号19のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、
(i)配列番号1又は配列番号9と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、
(ii)配列番号2、配列番号7、又は配列番号10と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、
(iii)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、又は配列番号8と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、(i)配列番号1と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR1と、(ii)配列番号2と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、(iii)配列番号3と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、(i)配列番号1と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR1と、(ii)配列番号2と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、(iii)配列番号4と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、(i)配列番号1と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR1と、(ii)配列番号2と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、(iii)配列番号5と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、(i)配列番号1と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR1と、(ii)配列番号2と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、(iii)配列番号6と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、(i)配列番号1と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR1と、(ii)配列番号7と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、(iii)配列番号8と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、(i)配列番号9と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR1と、(ii)配列番号2と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、(iii)配列番号6と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、(i)配列番号9と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR1と、(ii)配列番号2と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、(iii)配列番号4と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、(i)配列番号1と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR1と、(ii)配列番号10と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、(iii)配列番号4と比べて、最大2個(例えば、1個、2個、0個)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、各アミノ酸修飾は、もしあれば、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、各アミノ酸修飾は、もしあれば、表A1に列挙される保存的アミノ酸置換である。
【0165】
いくつかの実施形態では、VH CDR1は、配列番号1又は配列番号9と比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、VH CDR2は、配列番号2、配列番号7、又は配列番号10と比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、VH CDR3は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、又は配列番号8と比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、アミノ酸欠失である。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、アミノ酸付加である。
【0166】
いくつかの実施形態では、VH CDR1は、配列番号1及び配列番号9から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、VH CDR2は、配列番号2、配列番号7、及び配列番号10から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、VH CDR3は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号8から選択される配列を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、
(i)配列番号1及び配列番号9から選択される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、
(ii)配列番号2、配列番号7、及び配列番号10から選択される配列を含むVH CDR2と、
(iii)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号8から選択される配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、
(a)それぞれ配列番号1、2、及び3の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(b)それぞれ配列番号1、2、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(c)それぞれ配列番号1、2、及び5の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(d)それぞれ配列番号1、2、及び6の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(e)それぞれ配列番号1、7、及び8の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(f)それぞれ配列番号9、2、及び6の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(g)それぞれ配列番号9、2、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;又は
(h)それぞれ配列番号1、10、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、それぞれ配列番号1、2、及び3の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、それぞれ配列番号1、2、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、それぞれ配列番号1、2、及び5の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、それぞれ配列番号1、2、及び6の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、それぞれ配列番号1、7、及び8の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、それぞれ配列番号9、2、及び6の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、それぞれ配列番号9、2、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、それぞれ配列番号1、10、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号12のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号13のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号14のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号15のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号16のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号17のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号18のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号19のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、VH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3配列は、ヒトVHフレームワーク中に存在する。
【0172】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも85%(例えば、85%、90%、95%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも90%(例えば、90%、95%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号12に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号13に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号14に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号15に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号16に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号17に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号18に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号19に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)を有する重鎖可変(VH)領域を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11~19から選択された重鎖可変(VH)領域を含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号11の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号12の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号13の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号14の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号15の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号16の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号17の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号18の重鎖可変(VH)領域を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号19の重鎖可変(VH)領域を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、ヒトMSLNに特異的に結合する。
【0177】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、約10-9M~約10-6MのKDでヒトMSLNに結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦5×10-7MのKDでヒトMSLNに結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦1×10-7MのKDでヒトMSLNに結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦5×10-8MのKDでヒトMSLNに結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦2×10-8MのKDでヒトMSLNに結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦1×10-8MのKDでヒトMSLNに結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦1×10-9MのKDでヒトMSLNに結合する。
【0178】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、メソテリン以外の1つ以上の標的抗原に更に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、多重特異性である。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、二重特異性である。
【0179】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、CD3に更に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、ヒトCD3に更に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、約10-9M~約10-6MのKDでヒトCD3に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦5×10-7MのKDでヒトCD3に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦1×10-7MのKDでヒトCD3に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦5×10-8MのKDでヒトCD3に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦2×10-8MのKDでヒトCD3に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦1×10-8MのKDでヒトCD3に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦1×10-9MのKDでヒトCD3に結合する。
【0180】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、約10-9M~約10-6MのKDでヒトMSLN及び/又はCD3に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦5×10-7MのKDでヒトMSLN及び/又はCD3に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦1×10-7MのKDでヒトMSLN及び/又はCD3に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦5×10-8MのKDでヒトMSLN及び/又はCD3に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦2×10-8MのKDでヒトMSLN及び/又はCD3に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦1×10-8MのKDでヒトMSLN及び/又はCD3に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、≦1×10-9MのKDでヒトMSLN及び/又はCD3に結合する。
【0181】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、ヒトCD3イプシロンに更に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、CD3イプシロン(配列番号69):K73及びS83;並びにCD3デルタ(配列番号70)K82及びC93から選択される少なくとも1つの残基を含むCD3上のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、CD3上のエピトープは、K82、E83、S84、T85、V86、Q87、V88、H89、Y90、R91、M92、C93によって定義されるCD3イプシロンの領域を含む。いくつかの実施形態では、CD3上のエピトープは、K73、N74、175、G76、S77、D78、E79、D80、H81、L82、S83によって定義されるCD3イプシロンの領域を含む。いくつかの実施形態では、エピトープは、CD3デルタ及びCD3イプシロンの両方の残基を有する立体構造エピトープを含む。いくつかの実施形態では、立体構造エピトープは、残基CD3ε K73及びS83;CD3δ K82及びC93の各々を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、CD3結合VH領域を更に含む。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、軽鎖(LV)領域と対合するCD3結合VH領域を含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、ヒトCD3に特異的に結合する密接と関連しているシングルドメイン抗体のファミリーに属すことができる。このファミリーのシングルドメイン抗体は、本明細書に定義され、表S4及びS5に示すCDR配列のセットを含み、表S6に記載される配列番号31~48の提供される重鎖可変領域(VH)配列によって例示される。これらのCD3結合VHドメイン及びそれらの関連する軽鎖可変ドメイン(表S7及びS8に記載されるような)を含む多重特異性分子は、例えば、公開されたPCT出願公開第WO2018/052503号パンフレットに記載されるような有利な特性を有しており、その開示は、その全体で参照により本明細書に組み込まれる。MSLNに特異的に結合する本明細書に記載のシングルドメイン抗体のいずれも、CD3結合ドメイン及び本明細書に記載の固定された軽鎖ドメインと組み合わされて、多重特異性メソテリン結合タンパク質を生成することができる。
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、
(i)配列番号20~25のいずれか1つと比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、
(ii)配列番号26と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、
(iii)
配列番号27~30のいずれか1つと比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、(i)配列番号20と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、(ii)配列番号26と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域2(CDR2)と、(iii)配列番号27と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域3(CDR3)と、を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR2は、配列番号26の配列を含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、(i)配列番号20と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、(ii)配列番号26と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域2(CDR2)と、(iii)配列番号28と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域3(CDR3)と、を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR2は、配列番号26の配列を含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、(i)配列番号20と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、(ii)配列番号26と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域2(CDR2)と、(iii)配列番号29と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域3(CDR3)と、を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR2は、配列番号26の配列を含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、(i)配列番号21と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、(ii)配列番号26と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域2(CDR2)と、(iii)配列番号28と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域3(CDR3)と、を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR2は、配列番号26の配列を含む。
【0195】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、(i)配列番号22と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、(ii)配列番号26と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域2(CDR2)と、(iii)配列番号28と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域3(CDR3)と、を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR2は、配列番号26の配列を含む。
【0196】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、(i)配列番号23と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、(ii)配列番号26と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域2(CDR2)と、(iii)配列番号28と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域3(CDR3)と、を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR2は、配列番号26の配列を含む。
【0197】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、(i)配列番号24と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、(ii)配列番号26と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域2(CDR2)と、(iii)配列番号28と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域3(CDR3)と、を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR2は、配列番号26の配列を含む。
【0198】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、(i)配列番号20と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、(ii)配列番号26と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域2(CDR2)と、(iii)配列番号30と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域3(CDR3)と、を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR2は、配列番号26の配列を含む。
【0199】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、(i)配列番号25と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、(ii)配列番号26と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域2(CDR2)と、(iii)配列番号29と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域3(CDR3)と、を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR2は、配列番号26の配列を含む。
【0200】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、(i)配列番号24と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、(ii)配列番号26と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域2(CDR2)と、(iii)配列番号29と比べて、最大2個(例えば、0個、1個、又は2個など)のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域3(CDR3)と、を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR2は、配列番号26の配列を含む。
【0201】
いくつかの実施形態では、各アミノ酸修飾は、もしあれば、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、各アミノ酸修飾は、もしあれば、表A1に列挙される保存的アミノ酸置換である。
【0202】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH CDR1は、配列番号20~25のいずれか1つと比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH CDR2は、配列番号26と比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH CDR3は、配列番号27~30のいずれか1つと比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、アミノ酸欠失である。いくつかの実施形態では、最大1個のアミノ酸修飾は、アミノ酸付加である。
【0203】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH CDR1は、配列番号20~25から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR1は、配列番号20の配列を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR1は、配列番号21の配列を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR1は、配列番号22の配列を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR1は、配列番号23の配列を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR1は、配列番号24の配列を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR1は、配列番号25の配列を含む。
【0204】
いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR2は、配列番号26の配列を含む。
【0205】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH CDR3は、配列番号27~30から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR3は、配列番号27の配列を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR3は、配列番号28の配列を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR3は、配列番号29の配列を含む。いくつかの実施形態では、CH3結合VH CDR3は、配列番号30の配列を含む。
【0206】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号31~48のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号31~48のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して、少なくとも85%(例えば、85%、90%、95%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号31~48のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して、少なくとも90%(例えば、90%、95%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号31~48のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して、少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0207】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号31のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号32のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号33のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号34のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号35のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号36のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号37のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号38のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号39のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号40のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号41のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号42のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号43のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号44のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号45のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号46のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号47のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)は、配列番号48のCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。
【0208】
いくつかの実施形態では、CDR3結合VH領域は、配列番号31~48のいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号31のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号32のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号33のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号34のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号35のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号36のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号37のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号38のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号39のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号40のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号41のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号42のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号43のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号44のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号45のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号46のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号47のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号48のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。
【0209】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、
(a)それぞれ配列番号20、26、及び27の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(b)それぞれ配列番号20、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(c)それぞれ配列番号20、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(d)それぞれ配列番号21、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(e)それぞれ配列番号22、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(f)それぞれ配列番号23、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(g)それぞれ配列番号24、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(h)それぞれ配列番号20、26、及び30の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(i)それぞれ配列番号25、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;又は
(j)それぞれ配列番号24、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む。
【0210】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、それぞれ配列番号20、26、及び27の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、それぞれ配列番号20、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、それぞれ配列番号20、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、それぞれ配列番号21、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、それぞれ配列番号22、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、それぞれ配列番号23、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、それぞれ配列番号24、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、それぞれ配列番号20、26、及び30の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、それぞれ配列番号25、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、それぞれ配列番号24、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む。
【0211】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、
(i)配列
GFTFX8X9YA(配列番号55)を含むVH相補性決定領域1(CDR1)であって、
式中、X8がD、A、又はHであり、且つX9がD又はNである、VH CDR1と、
(ii)配列ISWNSGSI(配列番号26)を含むVH CDR2と、
(iii)配列
AKDSRGYGX10Y X11X12GGAY(配列番号56)を含むVH CDR3であって、
式中、X10がD又はSであり、X11がR又はSであり、且つX12がL又はRである、VH CDR3と、を含む。
【0212】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域中のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3配列は、ヒトVHフレームワーク内に存在する。
【0213】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号31~48のいずれか1つに対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号31~48のいずれか1つに対して、少なくとも85%(例えば、85%、90%、95%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号31~48のいずれか1つに対して、少なくとも90%(例えば、90%、95%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号31~48のいずれか1つに対して、少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0214】
いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号31に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号32に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号33に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号34に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号35に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号36に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号37に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号38に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号39に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号40に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号41に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号42に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号43に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号44に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号45に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号46に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号47に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD3結合VH領域は、配列番号48に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。
【0215】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号52のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号49、50、及び51の配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む。いくつかの実施形態では、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3配列は、ヒトVHフレームワーク中に存在する。
【0216】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号52に対して、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、95%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号52に対して、少なくとも85%(例えば、85%、90%、95%、少なくとも90%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号52に対して、少なくとも90%(例えば、90%、95%、少なくとも95%など)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号52に対して、少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0217】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、抗メソテリン抗体又はその断片である。
【0218】
いくつかの実施形態では、抗メソテリン抗体は、モノクローナル抗体又はその断片である。いくつかの実施形態では、抗メソテリン抗体は、単離されたモノクローナル抗体又はその断片である。
【0219】
いくつかの実施形態では、抗メソテリン抗体は、インタクトなIgG分子である。いくつかの実施形態では、抗メソテリン抗体は、インタクトなIgG1分子である。いくつかの実施形態では、抗メソテリン抗体は、インタクトなIgG2分子である。いくつかの実施形態では、抗メソテリン抗体は、インタクトなIgG4分子である。
【0220】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、インタクトなIgG分子の免疫学的に活性な部分である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、インタクトなIgG1分子の免疫学的に活性な部分である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、インタクトなIgG2分子の免疫学的に活性な部分である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、インタクトなIgG4分子の免疫学的に活性な部分である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、重鎖のみ抗体である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、TCAである。
【0221】
いくつかの実施形態では、抗メソテリン抗体又はその断片は、Fc領域を更に含む。いくつかの実施形態では、抗メソテリン抗体又はその断片は、バリアントFc領域を更に含む。いくつかの実施形態では、バリアントFc領域は、ネイティブ配列Fc領域との少なくとも約80%(例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%)の相同性を有する。
【0222】
いくつかの実施形態では、バリアントFc領域は、ヘテロ二量体化改変を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化改変は、ノブアンドホール置換を含む(例えば、バリアントIgG1 Fc領域において、1)一方の鎖におけるY407T及び他方の鎖におけるT366Y;2)一方の鎖におけるY407A及び他方の鎖におけるT366W;3)一方の鎖におけるF405A及び他方の鎖におけるT394W;4)一方の鎖におけるF405W及び他方の鎖におけるT394S;5)一方の鎖におけるY407T及び他方の鎖におけるT366Y;6)一方の鎖におけるT366YとF405A及び他方の鎖におけるT394WとY407T;7)一方の鎖におけるT366WとF405W及び他方の鎖におけるT394SとY407A;8)一方の鎖におけるF405WとY407A及び他方の鎖におけるT366WとT394S;又は9)Fcの一方のポリペプチドにおけるT366W及び他方のポリペプチドにおけるT366Sと、L368AとY407V)を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化改変は、新しいジスルフィド架橋を作り出す置換を含む(例えば、バリアントIgG1 Fc領域において、1)一方のFcポリペプチド鎖におけるY349C及び他方のポリペプチド鎖におけるS354C;2)一方のFcポリペプチド鎖におけるY349C及び他方のポリペプチド鎖におけるE356C;3)一方のFcポリペプチド鎖におけるY349C及び他方のポリペプチド鎖におけるE357C;4)一方のFcポリペプチド鎖におけるL351C及び他方のポリペプチド鎖におけるS354C;5)一方のFcポリペプチド鎖におけるT394C及び他方のポリペプチド鎖におけるE397C;又は6)一方のFcポリペプチド鎖におけるD399C及び他方のポリペプチド鎖におけるK392Cなど)。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化改変は、電荷対置換を含む(例えば、1)一方の鎖におけるK409Eプラス他方の鎖におけるD399K;2)一方の鎖におけるK409Eプラス他方の鎖におけるD399R;3)一方の鎖におけるK409Dプラス他方の鎖におけるD399K;4)一方の鎖におけるK409Dプラス他方の鎖におけるD399R;5)一方の鎖におけるK392Eプラス他方の鎖におけるD399R;6)一方の鎖におけるK392Eプラス他方の鎖におけるD399K;7)一方の鎖におけるK392Dプラス他方の鎖におけるD399R;8)一方の鎖におけるK392Dプラス他方の鎖におけるD399K;9)一方の鎖におけるK409DとK360Dプラス他方の鎖におけるD399KとE356K;10)一方の鎖におけるK409DとK370Dプラス他方の鎖におけるD399KとE357K;11)一方の鎖におけるK409DとK392Dプラス他方の鎖におけるD399KとE356KとE357K;12)一方の鎖でのK409DとK392D及び他方の鎖でのD399K;13)一方の鎖でのK409DとK392Dプラス他方の鎖でのD399KとE356K;14)一方の鎖でのK409DとK392Dプラス他方の鎖でのD399KとD357K;15)一方の鎖でのK409DとK370Dプラス他方の鎖でのD399KとD357K;16)一方の鎖でのD399Kプラス他方の鎖でのK409DとK360D;又は17)一方の鎖でのK409DとK439Dプラス他方の鎖でのD399KとE356Kなど)。
【0223】
いくつかの実施形態では、Fc領域は、サイレンシングされたFc領域である。いくつかの実施形態では、サイレンシングされたFc領域は、EUナンバリングに従うFc領域残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ以上(例えば、2つ以上など)の置換を含む。いくつかの実施形態では、サイレンシングされたFc領域は、グリコシル化を変更する置換を含む。いくつかの実施形態では、サイレンシングされたFc領域は、エフェクターレス突然変異(例えば、CH2領域におけるN297A、N297G、DANA突然変異(D265A+N297A)又はDANG突然変異(D265A+N297G)など)を含む。いくつかの実施形態では、サイレンシングされたFc領域は、K322A及びL234A/L235A突然変異を含む。
【0224】
いくつかの実施形態では、抗メソテリン抗体又はその断片は、CH1配列の非存在下で重鎖定常領域配列を更に含む。いくつかの実施形態では、抗メソテリン抗体又はその断片は、ヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、野生型ヒトIgG4ヒンジ領域配列(配列番号61)を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、S228P突然変異を含むバリアントヒトIgG4ヒンジ領域配列(配列番号62)を含む。いくつかの実施形態では、CH2ドメインは、野生型ヒトIgG4 CH2ドメイン配列(配列番号63)を含む。いくつかの実施形態では、CH2ドメインは、F234A突然変異、L235A突然変異又はF234A突然変異とL235A突然変異の両方を含むバリアントヒトIgG4 CH2ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CH3ドメインは、野生型ヒトIgG4 CH3ドメイン配列(配列番号65)を含む。いくつかの実施形態では、CH3ドメインは、T366W突然変異を含むバリアントヒトIgG4 CH3ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CH3ドメインは、T366S、L368A突然変異及びY407V突然変異を含むバリアントヒトIgG4 CH3ドメイン配列を含む。
【0225】
表S9は、ヒトIgG1及びIgG4 Fc領域配列の配列、並びに本明細書に記載の抗メソテリン抗体及びその断片に追加の所望の特性を付与し得る追加の突然変異(バリアント)を組み込むこれらの配列のバージョンを提供する。表S10は、例示的なヒトCD3イプシロン及びCD3デルタ配列を提供する。
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されるメソテリンに特異的に結合するシングルドメイン抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。
【0230】
本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されるメソテリン結合タンパク質をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む組成物に関する。いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質は、抗メソテリン抗体又はその断片である。
【0231】
本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されるメソテリンに特異的に結合するシングルドメイン抗体を含む組換え発現ベクター、並びに組換え発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0232】
本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に記載のメソテリン結合タンパク質をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む1つ以上の組換え発現ベクター、並びに1つ以上の組換え発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0233】
本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されるメソテリンに特異的に結合するシングルドメイン抗体を含む合成免疫受容体、並びに合成免疫受容体を含む細胞に関する。
【0234】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、ヒンジ領域を介して膜貫通ドメインに接続されており、例えば、OX40、CD27、CD28、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、又は4-1BBから得られる機能的シグナル伝達ドメインなどの共刺激ドメインに更に接続されている。いくつかの実施形態では、合成免疫受容体は、例えば、4-1BB及び/又はCD3ゼータなどの細胞内シグナル伝達ドメインをコードする配列を更に含む。
【0235】
本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に記載のメソテリン結合タンパク質(例えば、抗メソテリン抗体又はその断片など)を産生することであって、本明細書に記載の細胞を抗体の発現を許容される条件下で増殖することと、メソテリン結合タンパク質(例えば、抗メソテリン抗体又はその断片など)を細胞から単離することと、を含む産生することに関する。
【0236】
本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されるメソテリンに特異的に結合するシングルドメイン抗体を含む抗体-薬物複合体に関する。いくつかの実施形態では、抗体-薬物複合体中の薬物は、化学療法剤である。いくつかの実施形態では、抗体-薬物複合体中の薬物は、放射性核種である。いくつかの実施形態では、抗体-薬物複合体は、例えば、メソテリンの発現と関連する疾患、例えば、増殖性疾患又は癌などの検出又は監視などの診断的用途で使用するためのものである。
【0237】
本開示のいくつかの実施形態は、メソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、又は抗メソテリン抗体若しくはその断片と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物に関する。
【0238】
薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例としては、アジュバント、固体担体、水、緩衝液、又は治療的成分を保持するために当該技術分野において使用される他の担体、若しくはその組み合わせが挙げられる。
【0239】
本開示の医薬組成物は、保管のために、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態などにおいて、所望の純度を有するタンパク質を任意選択的な薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤と混合することによって調製される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition、Osol,A.Ed.(1980)を参照されたい)。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、使用する用量及び濃度でレシピエントに対して毒性がなく、それらには、限定されないが、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール;メチル若しくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン若しくはリシンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類及びグルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Znタンパク質錯体);並びに/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0240】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、例えば、組成物のpH、浸透圧、粘度、透明度、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解又は放出速度、吸着又は浸透を改変、維持又は保存するための製剤材料を含み得る。そのような実施形態では、好適な製剤材料としては、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンなど);抗微生物剤;抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝剤(例えば、ホウ酸塩、重炭酸塩、トリス-HCl、クエン酸塩、リン酸塩又は他の有機酸など);増量剤(例えば、マンニトール又はグリシンなど);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンなど);充填剤;単糖類;二糖類;及び他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノース又はデキストリンなど);タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなど);着色剤、香味剤及び希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(例えば、ナトリウムなど);防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸又は過酸化水素など);溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなど);糖アルコール(例えば、マンニトール又はソルビトールなど);懸濁剤;界面活性剤又は湿潤剤(例えば、pluronic、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベート80などのポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパールなど);安定性増強剤(例えば、スクロース又はソルビトール);等張性増強剤(例えば、アルカリ金属ハロゲン化物、塩化ナトリウム又は塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤並びに/或いは医薬アジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。治療使用のための分子を製剤化する方法及び好適な材料は医薬分野において知られており、例えばREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、18th Edition,(A.R.Genrmo,ed.),1990,Mack Publishing Companyに記載されている。本開示の医薬組成物として、液体組成物、凍結組成物、及び凍結乾燥組成物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0241】
非経口投与のための医薬組成物は、好ましくは、無菌であり且つ実質的に等張であり、適正製造基準(GMP)条件下で製造される。医薬組成物は単位剤形(例えば、単回投与のための剤形など)で提供され得る。製剤は、選択される投与経路に依存する。本明細書に記載のメソテリン結合タンパク質(例えば、抗メソテリン抗体及びその断片など)並びに抗体-薬物複合体は、静脈内注射若しくは注入によって投与され得るか、又は皮下投与され得る。注射による投与については、本明細書に記載のメソテリン結合タンパク質(例えば、抗メソテリン抗体及びその断片など)並びに抗体-薬物複合体は、水溶液中で、好ましくは生理学的に適合性のある緩衝液中で製剤化され、注射部位における不快感を低減させることができる。溶液は、上記で論じられるように、担体、賦形剤又は安定剤を含有し得る。或いは、本明細書に記載のメソテリン結合タンパク質(例えば、抗メソテリン抗体及びその断片など)並びに抗体-薬物複合体は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、滅菌パイロジェンフリー水で再構成するための凍結乾燥形態であり得る。この凍結乾燥材料を、例えば、注射用静菌水(BWFI)、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、又は凍結乾燥前にタンパク質が存在した同じ製剤中で再構成し得る。
【0242】
例えば米国特許第9,034,324号明細書において抗体製剤が開示される。同様な製剤が、本明細書に記載の抗メソテリン抗体及びその断片に使用され得る。皮下抗体製剤は、例えば、米国特許出願公開第20160355591号明細書及び米国特許出願公開第20160166689号明細書に記載されている。
【0243】
本開示のいくつかの実施形態は、メソテリンの発現と関連している疾患の治療を必要とする対象において治療を行う方法であって、対象に、治療有効用量の、本明細書に記載される少なくとも1つのメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片を投与することを含む、方法に関する。
【0244】
いくつかの実施形態では、投与は、腫瘍増殖又はメソテリン発現癌の転移の緩慢化若しくは阻害をもたらす。腫瘍細胞の増殖の低減の測定は、当該技術分野において周知である複数の異なる方法論によって決定することができる。非限定的な例としては、腫瘍寸法の直接測定、切除された腫瘍塊の測定及び対照被験者に対する比較、分析を向上させるための同位体又は発光性分子(例えば、ルシフェラーゼなど)を用いても用いなくてもよい画像診断技術(例えば、CT又はMRIなど)、及び同種のものが挙げられる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片の投与は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の対照抗原結合剤と比較した場合の腫瘍細胞のインビボ増殖の低減をもたらし、腫瘍増殖における100%の低減は、腫瘍の完全な応答及び消失を示す。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片の投与は、約50~100%、約75~100%、又は約90~100%の対照抗原結合剤と比較した場合の腫瘍細胞のインビボ増殖の低減をもたらす。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片の投与は、約50~60%、約60~70%、約70~80%、約80~90%、又は約90~100%の対照抗原結合剤と比較した場合の腫瘍細胞のインビボ増殖の低減をもたらす。
【0245】
疾患の治療のための有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか又は動物であるか、他の薬剤の投与及び処置が予防的であるか又は治療的であるかを含む多くの異なる因子に依存して変動する。通常、患者はヒトであるが、非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマなどのコンパニオン動物、ウサギ、マウス、ラットなどの実験用哺乳動物も処置され得る。処置投与量は、安全性及び有効性を最適化するために用量設定され得る。
【0246】
投与量レベルは、通常の技術を有する臨床医によって容易に決定され得、必要に応じて、例えば治療に対する対象の応答を変更するために必要に応じて変更され得る。単一の剤形を生成させるために担体材料と組み合わされ得る有効成分の量は、処置される宿主及び特定の投与方式に応じて変動する。
【0247】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片は、患者に非経口投与される。非経口投与とは、胃腸管経由以外の経路による分子の投与を指し、腹腔内、筋肉内、静脈内、動脈内、皮内、皮下、脳内、脳室内及び髄腔内投与が含まれ得る。
【0248】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片は、対象に静脈内投与される。
【0249】
非経口又は静脈内投与は、注射(例えば、針及びシリンジを使用)又は注入(例えば、カテーテル及びポンプシステムを介して)によって実施され得る。本開示による投与は、静脈内注射又は静脈内注入によるものであることが想定される。通常、静脈内(IV)注入は、ライン、ポート若しくはカテーテル(小型の可撓性チューブ)、例えば中心静脈アクセス、又は大静脈に留置されるカテーテルである中心静脈カテーテル(CVC)、又は末梢静脈に留置されるカテーテルである末梢静脈カテーテル(PVC)を介して投与される。一般に、カテーテル又はラインは、頸部の静脈(内頸静脈)、胸部の静脈(鎖骨下静脈若しくは腋窩静脈)、鼠径部の静脈(大腿静脈)又は腕の静脈(PICCライン若しくは末梢挿入型中心静脈カテーテルとしても知られる)を通して留置され得る。中心IVラインは、静脈を通して進められ、大型の中心静脈(通常、上大静脈、下大静脈)又は更に心臓の右心房に流入するカテーテルを有する。末梢静脈(PIV)ラインは、末梢静脈(腕、手、脚及び足の静脈)において使用される。ポートは、外部コネクタがない中心静脈ラインであり、代わりに、これは、シリコーンゴムで被覆され、皮膚の下に埋め込まれた小型リザーバを有する。薬剤は、皮膚に小さい針を刺し、シリコーンを突き刺してリザーバに入れることにより、断続的に投与される。針が引き抜かれると、リザーバカバーは自然に再封止される。カバーは、その耐用期間中に何百回もの針刺しを許容し得る。
【0250】
いくつかの実施形態では、メソテリンの発現と関連している疾患は、増殖性疾患及び癌から選択される。
【0251】
いくつかの実施形態では、癌は、中皮腫、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、及びトリプルネガティブ乳癌から選択される。
【0252】
本明細書に記載されるメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片は、他の抗癌剤の投与又は治療的処置(腫瘍の外科的切除など)も伴うことができる。任意の好適な抗癌剤は、本明細書に開示されるメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片と組み合わせて投与することができる。抗癌剤の例としては、限定されないが、化学療法剤、例えば、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、インターカレーション抗生物質、増殖因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、抗生存剤、生体応答調節剤、抗ホルモン剤(例えば、抗アンドロゲン剤など)及び抗血管新生剤などが挙げられる。他の抗癌治療としては、放射線療法及び標的癌細胞に特異的な他の抗体が挙げられる。
【0253】
いくつかの実施形態では、メソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片は、手術前、手術中、又は手術後に投与される。
【0254】
本開示のいくつかの実施形態は、メソテリンの発現と関連している疾患の治療で使用するための、本明細書に記載されるメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片に関する。いくつかの実施形態では、メソテリンの発現と関連している疾患は、増殖性疾患及び癌から選択される。いくつかの実施形態では、癌は、中皮腫、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、及びトリプルネガティブ乳癌から選択される。
【0255】
本開示のいくつかの実施形態は、メソテリンの発現と関連している疾患の治療のための医薬品の製造における、本明細書に記載されるメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片の使用に関する。いくつかの実施形態では、メソテリンの発現と関連している疾患は、増殖性疾患及び癌から選択される。いくつかの実施形態では、癌は、中皮腫、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、及びトリプルネガティブ乳癌から選択される。
【0256】
本開示のいくつかの実施形態は、癌と診断された対象からの試料を、本明細書に記載のシングルドメイン抗体又はメソテリン結合タンパク質と接触させ、シングルドメイン抗体又はメソテリン結合タンパク質の試料への結合を検出することによって、対象において、癌の診断を確定する方法に関する。対照試料へのシングルドメイン抗体又はメソテリン結合タンパク質の結合と比べて、試料へのシングルドメイン抗体又はメソテリン結合タンパク質の結合における増加は、癌の診断を確定する。いくつかの実施形態では、方法は、シングルドメイン抗体又はメソテリン結合タンパク質を特異的に認識する検出抗体を試料と接触させることと、検出抗体の結合を検出することと、を更に含む。
【0257】
本開示のいくつかの実施形態は、対象において、メソテリンの発現と関連している癌を検出する方法に関する。方法は、対象からの試料を本明細書に記載のシングルドメイン抗体又はメソテリン結合タンパク質と接触させることと、シングルドメイン抗体又はメソテリン結合タンパク質の試料への結合を検出することと、を含む。対照試料と比べて、シングルドメイン抗体又はメソテリン結合タンパク質の試料への結合の増加は、対象において癌を検出する。いくつかの実施形態では、方法は、シングルドメイン抗体又はメソテリン結合タンパク質を特異的に認識する検出抗体を試料と接触させることと、検出抗体の結合を検出することと、を更に含む。
【0258】
本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されるメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、若しくは抗体断片又はそれを含む医薬組成物と、使用説明書と、を含むキットに関する。キットは、少なくとも1つの追加の薬剤、例えば、化学療法薬などを更に含有し得る。キットは、典型的には、キットの内容物の意図される使用を示すラベルを含む。「ラベル」という用語は、本明細書で使用される場合、キット上で若しくはキットと共に供給されるか、又はそうでなければキットに添付される何らかの書面又は記録素材を含む。
【0259】
いくつかの実施形態では、キットは、診断用キットである。いくつかの実施形態では、キットは、生体試料、例えば、血液試料又は組織試料などにおいて、メソテリンを検出するために提供される。例えば、対象において、癌診断を確定するために、生検を実施して、組織学的検査用の組織試料を得ることができる。或いは、可溶性メソテリンタンパク質又は断片の存在を検出するために、血液試料を得ることができる。ポリペプチドを検出するためのキットは、典型的には、本開示によるシングルドメイン抗体又はメソテリン結合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体又はメソテリン結合タンパク質は、標識されている(例えば、蛍光標識、放射性標識、又は酵素標識など)。
【0260】
いくつかの実施形態では、キットは、標識を検出するための手段(例えば、酵素標識用の酵素基質、蛍光標識を検出するためのフィルターセット、二次抗体などの適切な二次標識、又は同種のものなど)を追加的に含んでもよい。キットは、緩衝液及び特定の方法の実践のために日常的に使用される他の試薬を更に含んでもよい。そのようなキット及び適切な内容物は、当業者に周知である。
【0261】
非限定的な例示的実施形態:
限定はされないが、本開示のいくつかの例示的な実施形態は、以下を含む。
1. メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、シングルドメイン抗体が、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
2. VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、実施形態1に記載のシングルドメイン抗体。
3. VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、実施形態1又は2に記載のシングルドメイン抗体。
4. VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態1~3のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体。
5. メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、シングルドメイン抗体が、
(i)配列番号1又は配列番号9と比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、
(ii)配列番号2、配列番号7、又は配列番号10と比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、
(iii)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、又は配列番号8と比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
6. 各アミノ酸修飾が、あるとすれば、保存的アミノ酸置換である、実施形態5に記載のシングルドメイン抗体。
7. VH CDR1が、配列番号1又は配列番号9と比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む、実施形態5又は6に記載のシングルドメイン抗体。
8. VH CDR2が、配列番号2、配列番号7、又は配列番号10と比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む、実施形態5~7のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体。
9. VH CDR3が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、又は配列番号8と比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む、実施形態5~8のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体。
10. 最大1個のアミノ酸修飾が、アミノ酸置換である、実施形態7~9のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体。
11. 最大1個のアミノ酸修飾が、保存的アミノ酸置換である、実施形態7~9のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体。
12. 最大1個のアミノ酸修飾が、アミノ酸欠失である、実施形態7~9のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体。
13. 最大1個のアミノ酸修飾が、アミノ酸付加である、実施形態7~9のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体。
14. VH CDR1が、配列番号1及び配列番号9から選択される配列を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体。
15. VH CDR2が、配列番号2、配列番号7、及び配列番号10から選択される配列を含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体。
16. VH CDR3が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号8から選択される配列を含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体。
17. メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、シングルドメイン抗体が、
(i)配列
GGSISX1SYY(配列番号53)を含むVH相補性決定領域1(CDR1)であって、
式中、X1がN又はSである、VH CDR1と、
(ii)配列
IYX2SGX3X4(配列番号68)を含むVH CDR2であって、
式中、X2がH又はYであり、X3がN又はSであり、且つX4がT又はIである、VH CDR2と、
(iii)配列
X5X6QX7GVGATTTEEY(配列番号54)を含むVH CDR3であって、
式中、X5がT、V、又はAであり、X6がS又はTであり、且つX7がD又はNである、VH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
18. メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、シングルドメイン抗体が、
(i)配列番号1及び配列番号9から選択される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、
(ii)配列番号2、配列番号7、及び配列番号10から選択される配列を含むVH CDR2と、
(iii)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号8から選択される配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
19. メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、シングルドメイン抗体が、
(a)それぞれ配列番号1、2、及び3の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(b)それぞれ配列番号1、2、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(c)それぞれ配列番号1、2、及び5の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(d)それぞれ配列番号1、2、及び6の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(e)それぞれ配列番号1、7、及び8の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(f)それぞれ配列番号9、2、及び6の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(g)それぞれ配列番号9、2、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;又は
(h)それぞれ配列番号1、10、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
20. メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、シングルドメイン抗体が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
21. VH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3配列が、ヒトVHフレームワーク中に存在する、実施形態1~20のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体。
22. メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、シングルドメイン抗体が、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
23. VH領域が、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有する、実施形態1~22のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体。
24. VH領域が、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性を有する、実施形態1~23のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体。
25. VH領域が、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態1~24のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体。
26. メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、シングルドメイン抗体が、配列番号11~19から選択される重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
27. シングルドメイン抗体が、ヒトMSLNに特異的に結合する、実施形態1~26のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体。
28. シングルドメイン抗体が、約10-9M~約10-6MのKDでヒトMSLNに結合する、実施形態1~27のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体。
29. シングルドメイン抗体が、単離されたシングルドメイン抗体である、実施形態1~28のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体。
30. 実施形態1~28のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体を含む、メソテリン結合タンパク質。
31. メソテリン結合タンパク質が、ヒトMSLNに特異的に結合する、実施形態30に記載のメソテリン結合タンパク質。
32. メソテリン結合タンパク質が、約10-9M~約10-6MのKDでヒトMSLNに結合する、実施形態30又は31に記載のメソテリン結合タンパク質。
33. メソテリン結合タンパク質が、CD3に更に特異的に結合する、実施形態30~32のいずれか1つに記載のメソテリン結合タンパク質。
34. メソテリン結合タンパク質が、ヒトCD3に更に特異的に結合する、実施形態30~33のいずれか1つに記載のメソテリン結合タンパク質。
35. メソテリン結合タンパク質が、ヒトCD3イプシロンに更に特異的に結合する、実施形態30~34のいずれか1つに記載のメソテリン結合タンパク質。
36. メソテリン結合タンパク質が、CD3イプシロン(配列番号69):K73及びS83;並びにCD3デルタ(配列番号70)K82及びC93から選択される少なくとも1つの残基を含むCD3上のエピトープに結合する、実施形態30~34のいずれか1つに記載のメソテリン結合タンパク質。
37. CD3上のエピトープが、K82、E83、S84、T85、V86、Q87、V88、H89、Y90、R91、M92、C93によって定義されるCD3デルタの領域を含む、実施形態36に記載のメソテリン結合タンパク質。
38. CD3上のエピトープが、K73、N74、175、G76、S77、D78、E79、D80、H81、L82、S83によって定義されるCD3イプシロンの領域を含む、実施形態36又は37に記載のメソテリン結合タンパク質。
39. エピトープが、CD3デルタ及びCD3イプシロンの両方の残基を有する立体構造エピトープを含む、実施形態36~38のいずれか1つに記載のメソテリン結合タンパク質。
40. 立体構造エピトープが、残基CD3εK73及びS83;CD3δK82及びC93の各々を含む、実施形態36~39のいずれか1つに記載のメソテリン結合タンパク質。
41. メソテリン結合タンパク質が、モノクローナル抗体である、実施形態30~40のいずれか1つに記載のメソテリン結合タンパク質。
42. メソテリン結合タンパク質が、単離されたモノクローナル抗体である、実施形態30~41のいずれか1つに記載のメソテリン結合タンパク質。
43. 実施形態1~28のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体を含む、抗体-薬物複合体。
44. 実施形態1~28のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体を含む、抗メソテリン抗体。
45. 抗メソテリン抗体が、エフェクター細胞に結合する、実施形態44に記載の抗メソテリン抗体。
46. 抗メソテリン抗体が、多重特異性である、実施形態44又は45に記載の抗メソテリン抗体。
47. 抗メソテリン抗体が、MSLN以外の腫瘍特異的抗原に更に特異的に結合する、実施形態44~46のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
48. 抗メソテリン抗体が、二重特異性である、実施形態44~47のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
49. 抗メソテリン抗体が、CD3に更に特異的に結合する、実施形態44~48のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
50. 抗メソテリン抗体が、ヒトCD3に更に特異的に結合する、実施形態44~49のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
51. 抗メソテリン抗体が、ヒトCD3イプシロンに更に特異的に結合する、実施形態44~50のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
52. 抗メソテリン抗体が、CD3イプシロン(配列番号69):K73及びS83;並びにCD3デルタ(配列番号70)K82及びC93から選択される少なくとも1つの残基を含むCD3上のイプシロンに結合する、実施形態44~50のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
53. CD3上のエピトープが、K82、E83、S84、T85、V86、Q87、V88、H89、Y90、R91、M92、C93によって定義されるCD3デルタの領域を含む、実施形態52に記載の抗メソテリン抗体。
54. CD3上のエピトープが、K73、N74、175、G76、S77、D78、E79、D80、H81、L82、S83によって定義されるCD3イプシロンの領域を含む、実施形態52又は53に記載の抗メソテリン抗体。
55. エピトープが、CD3デルタ及びCD3イプシロンの両方の残基を有する立体構造エピトープを含む、実施形態52~54のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
56. 立体構造エピトープが、残基CD3εK73及びS83;CD3δK82及びC93の各々を含む、実施形態55に記載の抗メソテリン抗体。
57. 抗メソテリン抗体が、CD3結合VH領域を更に含む、実施形態30~56のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
58. 抗メソテリン抗体が、IgG4抗体である、実施形態30~57のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
59. 抗メソテリン抗体が、IgG1抗体である、実施形態30~57のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
60. 抗メソテリン抗体が、軽鎖可変(LV)領域と対合しているCD3結合VH領域を更に含む、実施形態30~58のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
61. CD3結合VH領域が、
(i)配列番号20~25のいずれか1つと比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、
(ii)配列番号26と比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、
(iii)配列番号27~30のいずれか1つと比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む、実施形態57又は60に記載の抗メソテリン抗体。
62. CD3結合VH CDR1が、配列番号20~25のいずれか1つと比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む、実施形態61に記載の抗メソテリン抗体。
63. CD3結合VH CDR2が、配列番号26と比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む、実施形態61又は62に記載の抗メソテリン抗体。
64. CD3結合VH CDR3が、配列番号27~30のいずれか1つと比べて、最大1個のアミノ酸修飾を有する配列を含む、実施形態61~63のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
65. 最大1個のアミノ酸修飾が、アミノ酸置換である、実施形態62~64のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
66. 最大1個のアミノ酸修飾が、保存的アミノ酸置換である、実施形態62~65のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
67. 最大1個のアミノ酸修飾が、アミノ酸欠失である、実施形態62~64のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
68. 最大1個のアミノ酸修飾が、アミノ酸付加である、実施形態62~64のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
69. CD3結合VH CDR1が、配列番号20~25から選択される配列を含む、実施形態62~68のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
70. CD3結合VH CDR2が、配列番号26の配列を含む、実施形態62~69のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
71. CD3結合VH CDR3が、配列番号27~30から選択される配列を含む、実施形態62~70のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
72. CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号31~48のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも80%の配列同一性を有する、実施形態57又は60~71のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
73. CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号31~48のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、実施形態57又は60~72のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
74. CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号31~48のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、実施形態57又は60~73のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
75. CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号31~48のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態57又は60~74のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
76. CD3結合VH領域が、
(i)配列
GFTFX8X9YA(配列番号55)を含むVH相補性決定領域1(CDR1)であって、
式中、X8がD、A、又はHであり、且つX9がD又はNである、VH CDR1と、
(ii)配列ISWNSGSI(配列番号26)を含むVH CDR2と、
(iii)配列
AKDSRGYGX10Y X11X12GGAY(配列番号56)を含むVH CDR3であって、
式中、X10がD又はSであり、X11がR又はSであり、且つX12がL又はRである、VH CDR3と、を含む、実施形態57又は60に記載の抗メソテリン抗体。
77. CD3結合VH領域が、配列番号31~48のいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む、実施形態57又は60に記載の抗メソテリン抗体。
78. CD3結合VH領域中のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3配列が、ヒトVHフレームワーク中に存在する、実施形態57~77のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
79. CD3結合VH領域が、配列番号31~48のいずれか1つに対して、少なくとも80%の配列同一性を有する、実施形態57~78のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
80. CD3結合VH領域が、配列番号31~48のいずれか1つに対して、少なくとも85%の配列同一性を有する、実施形態57~79のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
81. CD3結合VH領域が、配列番号31~48のいずれか1つに対して、少なくとも90%の配列同一性を有する、実施形態57~80のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
82. CD3結合VH領域が、配列番号31~48のいずれか1つに対して、少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態57~81のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
83. CD3結合VH領域が、
(a)それぞれ配列番号20、26、及び27の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(b)それぞれ配列番号20、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(c)それぞれ配列番号20、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(d)それぞれ配列番号21、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(e)それぞれ配列番号22、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(f)それぞれ配列番号23、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(g)それぞれ配列番号24、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(h)それぞれ配列番号20、26、及び30の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(i)それぞれ配列番号25、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;又は
(j)それぞれ配列番号24、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、実施形態57~82のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
84. CD3結合VH領域が、配列番号20、26、及び27の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、実施形態83に記載の抗メソテリン抗体。
85. 軽鎖可変領域が、配列番号52のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む、実施形態60~84のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
86. 軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号49、50、及び51の配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、実施形態60~85のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
87. VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3配列が、ヒトVHフレームワーク中に存在する、実施形態60~86のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
88. 軽鎖可変領域が、配列番号52に対して少なくとも80%の配列同一性を有する、実施形態60~87のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
89. 軽鎖可変領域が、配列番号52に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、実施形態60~88のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
90. 軽鎖可変領域が、配列番号52に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、実施形態60~89のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
91. 軽鎖可変領域が、配列番号52に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態60~90のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
92. 抗メソテリン抗体が、Fc領域を更に含む、実施形態44~91のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
93. 抗メソテリン抗体が、バリアントFc領域を更に含む、実施形態44~92のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
94. バリアントFc領域が、ヘテロ二量体化改変を含む、実施形態93に記載の抗メソテリン抗体。
95. Fc領域が、サイレンシングされたFc領域である、実施形態44~94のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
96. 抗メソテリン抗体が、ヒトMSLNに特異的に結合する、実施形態44~95のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
97. 抗メソテリン抗体が、約10-9M~約10-6MのKDでヒトMSLNに結合する、実施形態44~96のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
98. 抗メソテリン抗体が、単離された抗体である、実施形態44~97のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体。
99. メソテリンに特異的に結合する抗体断片であって、抗体断片が、実施形態44~98のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体の断片を含む、抗体断片。
100. 抗体断片が、ヒトMSLNに特異的に結合する、実施形態99に記載の抗体断片。
101. 抗体断片が、単離された抗体断片である、実施形態99又は100に記載の抗体断片。
102. 実施形態1~29のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体をコードする、ポリヌクレオチド。
103. 実施形態30~42のいずれか1つに記載のメソテリン結合タンパク質をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む、組成物。
104. 実施形態44~98のいずれか1つに記載の抗メソテリン抗体をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む、組成物。
105. 実施形態102~104のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド又は組成物を含む、組換え発現ベクター。
106. 実施形態105に記載の組換え発現ベクターを含む、宿主細胞。
107. 実施形態1~28のいずれか1つに記載のシングルドメイン抗体を含む、合成免疫受容体。
108. 実施形態107に記載の合成免疫受容体を含む、細胞。
109. メソテリンの発現と関連している疾患の治療を必要とする対象において治療を行う方法であって、対象に、実施形態30~101のいずれか1つに記載の少なくとも1つのメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片を投与することを含む、方法。
110. メソテリンの発現と関連している疾患の治療を必要とする対象において治療を行う方法であって、対象に、治療有効量の、実施形態30~101のいずれか1つに記載の少なくとも1つのメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片を投与することを含む、方法。
111. メソテリンの発現と関連している疾患が、増殖性疾患及び癌から選択される、実施形態110に記載の方法。
112. 癌が、中皮腫、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、及びトリプルネガティブ乳癌から選択される、実施形態111に記載の方法。
113. メソテリンの発現と関連している疾患の治療で使用するための、実施形態30~101のいずれか1つに記載のメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片。
114. メソテリンの発現と関連している疾患が、増殖性疾患及び癌から選択される、実施形態113に記載の使用のためのメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片。
115. 癌が、中皮腫、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、及びトリプルネガティブ乳癌から選択される、実施形態114に記載の使用のためのメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片。
116. メソテリンの発現と関連している疾患の治療のための医薬品の製造における、実施形態30~101のいずれか1つに記載のメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片の使用。
117. メソテリンの発現と関連している疾患が、増殖性疾患及び癌から選択される、実施形態116に記載の使用。
118. 癌が、中皮腫、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、及びトリプルネガティブ乳癌から選択される、実施形態117に記載の使用。
119. 実施形態30~101のいずれか1つに記載の少なくとも1つのメソテリン結合タンパク質、抗体-薬物複合体、抗メソテリン抗体、又は抗体断片と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【実施例】
【0262】
本開示がより完全に理解され得るように、以下の実施例が記載される。これらの実施例は、例示的な目的のためだけのものであり、いかなる方法によっても、本開示を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0263】
実施例1.MSLN発現細胞株及びオフターゲット細胞株への結合
本開示の例示的な抗MSLNシングルドメイン抗体についての細胞結合を、ヒトMSLNを発現するCHO細胞(CHO_huMSLN)及びMSLNタンパク質を発現しないCHO細胞(CHO-OFFtgt)を使用して評価した。ペレット状CHO細胞を、フロー緩衝液(1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、1%ウシ血清アルブミン(BSA)、及び0.1%NaN3)中に1.25×106個/mLで再懸濁した。抗体含有上清を、フロー緩衝液中で1:5に希釈し、40μLの細胞プラス10μLの希釈された抗体上清を4℃で30分間インキュベートした。細胞をフロー緩衝液で洗浄し、1.25μg/mLにフロー緩衝液で希釈したフィコエリスリン(PE)コンジュゲート二次抗体(Southern Biotech #2042-09)の50μL中に再懸濁し、4℃で20分間インキュベートした。2回の洗浄工程後に、細胞をフロー緩衝液中に再懸濁し、Guava easyCyte 8HTシステムを使用して分析した。表E1は、抗MSLNシングルドメイン抗体の標的結合活性をバックグラウンドのMFIシグナルに対する倍数として要約する。
【0264】
【0265】
実施例2.MSLN発現細胞株及びオフターゲット細胞株への結合
本明細書に記載の例示的な抗MSLNシングルドメイン抗体についての細胞結合用量曲線を、ヒトMSLNを発現するCHO細胞(
図1A)、HeLa細胞(
図1B)、及びCHO-OFFtgt細胞(
図1C)を使用して実施した。シングルドメイン抗体を、150nMの出発濃度に続いて3倍連続希釈し、8点用量曲線で試験した。細胞、抗体、及び試薬の全ての洗浄並びに希釈は、フロー緩衝液(1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、1%ウシ血清アルブミン(BSA)、及び0.1%NaN
3)を使用して実施した。細胞をペレット状にして、フロー緩衝液中に1×10
6個細胞/mLで再懸濁した。次いで、50μLの細胞を50μLの試験抗体と組み合わせて、4℃で30分間インキュベートし、続いてフロー緩衝液による洗浄工程を2回行った。次いで、細胞を、1.25μg/mLに希釈したPEコンジュゲート二次抗体(Southern Biotech #2042-09)の50μL中に再懸濁し、4℃で20分間インキュベートした。2回の洗浄工程後に、細胞をフロー緩衝液中に再懸濁し、BD Celestaシステムを使用して分析した。PE平均蛍光強度をバックグラウンド(二次検出抗体のみとインキュベートした細胞)の倍数としてプロットした。
【0266】
実施例3.MSLN発現細胞株での細胞結合EC50値
本開示の例示的な抗MSLNシングルドメイン抗体についての細胞結合EC50値を決定するために、細胞結合用量曲線を、HeLa細胞及びヒトMSLNを発現するCHO細胞で実施した。シングルドメイン抗体を、実施例2に記載されるように、150nMの出発用量に続いて3倍連続希釈し、8点用量曲線で試験した。変換されたデータを、非線形回帰曲線フィット(GraphPad Prism8.4.3で入手可能)を使用してxyグラフとしてプロットして、EC50(nM)を得て、これを表E2に要約する。
【0267】
【0268】
実施例4.結合親和性及びエピトープビニング
表E3は、本開示の例示的な抗MSLNシングルドメイン抗体についての親和性及びエピトープビンの情報を要約している。各シングルドメイン抗体の組換えヒトMSLN(R&D Systems、#3265-MS)に対する親和性を、Octet HTXを使用して、バイオレイヤー干渉法(BLI)によって測定した。AHC(Anti-hIgG Fc Capture)センサーを用いて、試験抗体を5μg/mLで固定化した。ベースライン読み取り後に、センサーを抗原溶液に浸漬させた(500nMで出発し、続いて7点、2倍希釈系列)。会合及び解離を、それぞれ180秒間及び240秒間測定した。標準1:1結合モデルを使用して、Octet Data Analysis v11.0 HT(ForteBio)によりデータを分析した。シングルドメイン抗体に対するエピトープビンを、Octet HTXを使用して、並行(in-tandem)競合BLI結合実験によって決定した。抗原(5μg/mL)を、センサー、Ni-NTAセンサーに装填し、その後キネティック緩衝液中でベースライン測定した。次いで、抗原被覆センターを、飽和濃度の抗体1中に浸漬させた。ここで、第2のベースライン測定を、300秒間に設定した。次いで、抗原-抗体1複合体を、抗体2溶液中に180秒間浸漬させて、次いで、解離させた。
【0269】
【0270】
実施例5.ヒト腫瘍細胞株によるCAR-T媒介T細胞活性化
CAR-T細胞活性を、Jurkat Tリンパ球細胞を抗MSLN CAR及び6×NFAT TKナノルシフェラーゼレポーターで製造業者のプロトコル(Lonza 4D-Nucleofector X;SE Cell Line 4D-Nucleofector X Kit L,#V4XC-1012;プログラムCL-120)に従って、トランスフェクトすることによって測定した。
図2Aは、本開示の抗体配列を含む抗MSLN細胞外結合ドメインを含む例示的なCAR-T構造の概略図である。トランスフェクトされたJurkat細胞を、ヒトMSLNを発現するように安定してトランスフェクトされたMSLN+CHO細胞、HeLa、又はMSLN陰性K562細胞と共に、加湿された、37℃、8%CO
2のインキュベーター内で10%FBS(ThermoFisher)を有するRPMI-1640(Fisher Scientific,Waltham,Massachusetts,USA)中で24時間共培養した。ルシフェラーゼ活性を、Promega Nano-Gloルシフェラーゼアッセイシステムを使用して、製造業者のプロトコル(カタログ#N1110)を使用して、SpectraMax i3xマルチモードマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で測定し、データをCARトランスフェクトJurkat及びMSLN陰性K562細胞株を含有する共培養に正規化した。対応のない両側t検定を使用して統計的有意性を決定した。結果を
図2Bに示す。
【0271】
特許、特許出願、論文、書籍及び学術論文が挙げられるが、これらに限定されない、本願で引用される全ての文書又は文書の一部は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。本開示の実施形態で記載されるものは、文脈が明確に別のことを示さない限り、本開示の1つ以上の他の実施形態と組み合わせることができる。
【0272】
開示される主題は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されることを意図するものではなく、代わりに、本開示の個々の態様の非限定的な例証として意図される。機能的に等価な方法及び構成要素は、本開示の範囲内である。実際、本明細書中に示され、記載されるものに加えて、開示される主題の様々な変更形態は、上記及び添付の図面から当業者には明らかであろう。そのような変更は、開示される主題の範囲内にあることが意図される。
【0273】
開示される主題の様々な実施形態及び/又は実施例の記載は、例証の目的で提示されているが、いかなる方法によっても網羅的又は限定的であることを意図していない。多くの変更及び変形形態は、記載される実施形態の範囲及び種子から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、実際の応用、又は市場において見られる技術に対する技術的改善を最も上手く説明し、及び/或いは開示される主題の理解を、当業者に可能にするために選択されている。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、前記シングルドメイン抗体が、VH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、2、及び3に対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
【請求項2】
メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、前記シングルドメイン抗体が、
(i)配列番号1又は配列番号9と比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、
(ii)配列番号2、配列番号7、又は配列番号10と比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、
(iii)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、又は配列番号8と比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
【請求項3】
メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、前記シングルドメイン抗体が、
(i)配列
GGSISX
1SYY(配列番号53)を含むVH相補性決定領域1(CDR1)であって、
式中、X
1がN又はSである、VH CDR1と、
(ii)配列
IYX
2SGX
3X
4(配列番号68)を含むVH CDR2であって、
式中、X
2がH又はYであり、X
3がN又はSであり、且つX
4がT又はIである、VH CDR2と、
(iii)配列
X
5X
6QX
7GVGATTTEEY(配列番号54)を含むVH CDR3であって、
式中、X
5がT、V、又はAであり、X
6がS又はTであり、且つX
7がD又はNである、VH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
【請求項4】
メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、前記シングルドメイン抗体が、
(i)配列番号1及び配列番号9から選択される配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、
(ii)配列番号2、配列番号7、及び配列番号10から選択される配列を含むVH CDR2と、
(iii)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号8から選択される配列を含むVH CDR3と、を含む重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
【請求項5】
メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、前記シングルドメイン抗体が、
(a)それぞれ配列番号1、2、及び3の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(b)それぞれ配列番号1、2、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(c)それぞれ配列番号1、2、及び5の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(d)それぞれ配列番号1、2、及び6の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(e)それぞれ配列番号1、7、及び8の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(f)それぞれ配列番号9、2、及び6の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(g)それぞれ配列番号9、2、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;又は
(h)それぞれ配列番号1、10、及び4の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
【請求項6】
メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、前記シングルドメイン抗体が、配列番号11~19のいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
【請求項7】
前記VH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3配列が、ヒトVHフレームワーク中に存在する、請求項
6に記載のシングルドメイン抗体。
【請求項8】
メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、前記シングルドメイン抗体が、配列番号11~19のいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
【請求項9】
メソテリン(MSLN)に特異的に結合するシングルドメイン抗体であって、前記シングルドメイン抗体が、配列番号11~19から選択される重鎖可変(VH)領域を含む、シングルドメイン抗体。
【請求項10】
前記シングルドメイン抗体が、ヒトMSLNに特異的に結合する、請求項1~9のいずれか一項に記載のシングルドメイン抗体。
【請求項11】
前記シングルドメイン抗体が、約10
-9M~10
-6MのK
DでヒトMSLNに結合する、請求項
10に記載のシングルドメイン抗体。
【請求項12】
前記シングルドメイン抗体が、単離されたシングルドメイン抗体である、請求項
11に記載のシングルドメイン抗体。
【請求項13】
請求項1~
9のいずれか一項に記載のシングルドメイン抗体を含む、メソテリン結合タンパク質。
【請求項14】
前記メソテリン結合タンパク質が、ヒトMSLNに特異的に結合する、請求項13に記載のメソテリン結合タンパク質。
【請求項15】
前記メソテリン結合タンパク質が、CD3に更に特異的に結合する、請求項
13に記載のメソテリン結合タンパク質。
【請求項16】
前記メソテリン結合タンパク質が、ヒトCD3に更に特異的に結合する、請求項
15に記載のメソテリン結合タンパク質。
【請求項17】
前記メソテリン結合タンパク質が、単離されたモノクローナル抗体である、請求項
13に記載のメソテリン結合タンパク質。
【請求項18】
請求項1~
9のいずれか一項に記載のシングルドメイン抗体を含む、抗体-薬物複合体。
【請求項19】
請求項1~
9のいずれか一項に記載のシングルドメイン抗体を含む、抗メソテリン抗体。
【請求項20】
前記抗メソテリン抗体が、多重特異性である、請求項19に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項21】
前記抗メソテリン抗体が、MSLN以外の腫瘍特異的抗原に更に特異的に結合する、請求項
19に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項22】
前記抗メソテリン抗体が、二重特異性である、請求項
20に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項23】
前記抗メソテリン抗体が、CD3に更に特異的に結合する、請求項
21に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項24】
前記抗メソテリン抗体が、ヒトCD3に更に特異的に結合する、請求項
23に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項25】
前記抗メソテリン抗体が、CD3結合VH領域を更に含む、請求項
23に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項26】
前記抗メソテリン抗体が、IgG1又はIgG4サブタイプのものである、請求項
19に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項27】
前記抗メソテリン抗体が、軽鎖可変(LV)領域と対合するCD3結合VH領域を更に含む、請求項
25に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項28】
前記CD3結合VH領域が、
(i)配列番号20~25のいずれか1つと比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)と、
(ii)配列番号26と比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR2と、
(iii)配列番号27~30と比べて、最大2個のアミノ酸修飾を有する配列を含むVH CDR3と、を含む、請求項
25に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項29】
前記CD3結合VH CDR1が、配列番号20~25から選択される配列を含む、請求項28に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項30】
前記CD3結合VH CDR2が、配列番号26の配列を含む、請求項
28に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項31】
前記CD3結合VH CDR3が、配列番号27~30から選択される配列を含む、請求項
28に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項32】
前記CD3結合VH領域中のVH CDR1、2、及び3のフルセット(組み合わせ)が、配列番号31~48のいずれか1つの前記CDR1、2、及び3に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項
25に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項33】
前記CD3結合VH領域が、
(i)配列
GFTFX
8X
9YA(配列番号55)を含むVH相補性決定領域1(CDR1)であって、
式中、X
8がD、A、又はHであり、且つX
9がD又はNである、VH CDR1と、
(ii)配列ISWNSGSI(配列番号26)を含むVH CDR2と、
(iii)配列
AKDSRGYGX
10YX
11X
12GGAY(配列番号56)を含むVH CDR3であって、
式中、X
10がD又はSであり、X
11がR又はSであり、且つX
12がL又はRである、VH CDR3と、を含む、請求項
25に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項34】
前記CD3結合VH領域が、配列番号31~48のいずれか1つの前記CDR1、CDR2、及びCDR3を含む、請求項
25に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項35】
前記CD3結合VH領域中の前記VH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3配列が、ヒトVHフレームワーク中に存在する、請求項
25に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項36】
前記CD3結合VH領域が、配列番号31~48のいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項
25に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項37】
前記CD3結合VH領域が、
(a)それぞれ配列番号20、26、及び27の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(b)それぞれ配列番号20、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(c)それぞれ配列番号20、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(d)それぞれ配列番号21、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(e)それぞれ配列番号22、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(f)それぞれ配列番号23、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(g)それぞれ配列番号24、26、及び28の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(h)それぞれ配列番号20、26、及び30の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;
(i)それぞれ配列番号25、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3;又は
(j)それぞれ配列番号24、26、及び29の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、請求項
25に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項38】
前記CD3結合VH領域が、配列番号20、26、及び27の配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、請求項37に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項39】
前記軽鎖可変領域が、配列番号52のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む、請求項
27に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項40】
前記軽鎖可変領域が、それぞれ配列番号49、50、及び51の配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、請求項
27に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項41】
前記VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3配列が、ヒトVHフレームワーク中に存在する、請求項
27に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項42】
前記軽鎖可変領域が、配列番号52に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項
27に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項43】
前記抗メソテリン抗体が、ヒトMSLNに特異的に結合する、請求項
19に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項44】
前記抗メソテリン抗体が、単離された抗体である、請求項
19に記載の抗メソテリン抗体。
【請求項45】
メソテリンに特異的に結合する抗体断片であって、前記抗体断片が、請求項
19に記載の抗メソテリン抗体の断片を含む、抗体断片。
【請求項46】
前記抗体断片が、三鎖抗体様分子である、請求項45に記載の抗体断片。
【請求項47】
請求項
13に記載の少なくとも1つのメソテリン結合タンパク
質と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項48】
請求項1~
9のいずれか一項に記載のシングルドメイン抗体をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項49】
請求項
13に記載のメソテリン結合タンパク
質をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む、組成物。
【請求項50】
請求項
48に記載のポリヌクレオチド又は組成物を含む、組換え発現ベクター。
【請求項51】
請求項50に記載の組換え発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項52】
請求項13に記載の少なくとも1つのメソテリン結合タンパク質を含む、メソテリンの発現と関連している疾患の治療を必要とする対象にお
ける、メソテリンの発現と関連している疾患の治療のための医薬組成物。
【請求項53】
前記メソテリンの発現と関連している疾患が、中皮腫、膵臓
がん、胃
がん、卵巣
がん、肺
がん、及びトリプルネガティブ乳
がんから選択される、請求項52に記載の
医薬組成物。
【請求項54】
請求項19に記載の抗メソテリン抗体又はその抗体断片をコードする一以上のポリヌクレオチドを含む組成物。
【請求項55】
請求項54に記載のポリヌクレオチド又は組成物を含む組換え発現ベクター。
【請求項56】
請求項55に記載の組換え発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項57】
請求項13に記載の少なくとも一つのメソテリン結合タンパク質と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項58】
請求項18に記載のシングルドメイン抗体を含む少なくとも一の抗体-薬物複合体と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項59】
請求項19に記載の少なくとも一つの抗メソテリン抗体と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項60】
請求項18に記載の少なくとも一つの抗体-薬物複合体を含む、メソテリンの発現に関連する疾患の治療を必要とする対象における、メソテリンの発現に関連している疾患の治療するための医薬組成物。
【請求項61】
前記メソテリンの発現に関連している疾患が、中皮腫、膵臓がん、胃がん、卵巣がん、肺がん、及びトリプルネガティブ乳がんから選択される、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項62】
請求項19に記載の少なくとも一つの抗メソテリン抗体又はその抗体断片を含む、メソテリンの発現に関連する疾患の治療を必要とする対象におけるメソテリンの発現に関連する疾患の治療のための医薬組成物。
【請求項63】
前記メソテリンの発現に関連している疾患が、中皮腫、膵臓がん、胃がん、卵巣がん、肺がん、及びトリプルネガティブ乳がんから選択される、請求項62に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】