IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オハイオ・ステイト・イノベーション・ファウンデーションの特許一覧

特表2024-538070個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞
<>
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図1
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図2
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図3
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図4
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図5
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図6
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図8
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図9
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図10
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図11
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図12
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図14
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図15
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図16
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図
  • 特表-個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞 図
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】個別に調節されたトロピズムを有する操作された細胞外小胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20241010BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20241010BHJP
   A61K 35/33 20150101ALI20241010BHJP
   A61K 35/30 20150101ALI20241010BHJP
   A61K 35/34 20150101ALI20241010BHJP
   A61K 35/407 20150101ALI20241010BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20241010BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20241010BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20241010BHJP
   A61K 35/35 20150101ALI20241010BHJP
   A61K 35/39 20150101ALI20241010BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241010BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20241010BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20241010BHJP
【FI】
C12N5/10
A61K35/12
A61K35/33
A61K35/30
A61K35/34
A61K35/407
A61K35/36
A61K35/28
A61K35/15
A61K35/35
A61K35/39
A61K45/00
C12N15/12
C12N15/63 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522092
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 US2022078211
(87)【国際公開番号】W WO2023064953
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/256,127
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514137997
【氏名又は名称】オハイオ・ステイト・イノベーション・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イギータ-カストロ,ナタリア
(72)【発明者】
【氏名】ギャレゴ-ペレス,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】サラザール-プエルタ,アナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA60
4C084AA17
4C084NA13
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB33
4C087BB37
4C087BB44
4C087BB45
4C087BB47
4C087BB48
4C087BB51
4C087BB52
4C087BB63
4C087BB65
4C087NA13
(57)【要約】
本明細書において、標的細胞に対する所望の細胞トロピズムを有する細胞外小胞(EV)を操作するための方法が開示される。この方法は、標的細胞の系統に向けて体細胞をリプログラミングし、これらのリプログラミングされた細胞によって産生された所望の細胞トロピズムを有するEVを回収することを含む。いくつかの実施形態では、これらのEVを使用して、診断用及び/又は治療用カーゴを、それを必要とする対象の標的細胞に送達することができる。したがって、本明細書において、リプログラミングされた細胞を操作して、治療剤を標的細胞に送達する治療用EVを産生することを含む、対象における疾患又は状態を治療する方法も開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的細胞に対する所望の細胞トロピズムを有する操作された細胞外小胞(EV)を産生するための方法であって、
(a)体細胞を標的細胞系統に向けてリプログラミングし、リプログラミングされた細胞を産生するように構成された、少なくとも1つのリプログラミング転写因子をコードする核酸配列を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを、前記体細胞の集団に細胞内送達することと、
(b)前記リプログラミングされた細胞から前記EVを回収することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記体細胞が、線維芽細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的細胞系統が、グルタミン酸作動性ニューロンであり、前記リプログラミング転写因子が、Ascl1、Brn2、Myt1l、及びNeurdoD1からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記標的細胞系統が、ドーパミン作動性ニューロンであり、前記リプログラミング転写因子が、Ascl1、Lmxla、及びNurr1からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記標的細胞系統が、心筋細胞であり、前記リプログラミング転写因子が、GATA4、HAND2、Myocd、Tbx5、mIR-1、及びmIR-133からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記標的細胞系統が、運動ニューロンであり、前記リプログラミング転写因子が、Ascl1、Brn2、Myt1l、Lhx3、Hb9、IsI1、及びNgn2からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記体細胞が、筋芽細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記標的細胞系統が、肝細胞であり、前記リプログラミング転写因子が、Hnf4α、Hnf1α、Hnf6、CEBPA、ATf5、Prox1、p-53-siRNA、及びc-Mycからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記標的細胞系統が、メラニン細胞であり、前記リプログラミング転写因子が、MITF、SOX10、PAX3からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記標的細胞系統が、内皮細胞であり、前記リプログラミング転写因子が、Etv2、Foxc2、及びfli1からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記標的細胞系統が、造血前駆細胞及び成熟細胞であり、前記リプログラミング転写因子が、Oct4である、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記標的細胞系統が、単球様前駆細胞であり、前記リプログラミング転写因子が、Sox2及びmIR-125bからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記標的細胞系統が、シュワン細胞であり、前記リプログラミング転写因子が、Sox10及びEGR2からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記標的細胞系統が、心筋前駆細胞であり、前記リプログラミング転写因子が、ETS2及びMESP1からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記標的細胞系統が、脂肪細胞であり、前記リプログラミング転写因子が、Prdm16及びC/EBPβからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記体細胞が、内皮細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記標的細胞系統が、造血前駆細胞であり、前記リプログラミング転写因子が、Fosb、Gfi1、Runx1、及びSpi1からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記体細胞が、膵臓外分泌細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記標的細胞系列が、β細胞であり、前記リプログラミング転写因子が、活性化MAPK及びSTAT3からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記リプログラミングされた細胞からの前記EVが、前記細胞が完全に分化する前である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記リプログラミング転写因子が前記体細胞に送達された12時間~48時間後に、前記EVが、前記リプログラミングされた細胞から回収される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記リプログラミングされた細胞が、系統特異的マーカーを発現するが、完全な系統分化の1つ以上のマーカーを欠いている、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記EVが、少なくとも1つの標的化リガンドで装飾されている、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記標的化リガンドが、グルタミン酸標的化リガンドである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記リプログラミングされた細胞を操作して、前記EV内にカプセル化される治療用カーゴを産生することを更に含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記EVに治療用カーゴを担持させることを更に含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月15日に出願された、米国仮出願第63/256,127号の利益を主張し、これは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
エクソソームは、自然に分泌されるナノ小胞であり、ほぼ全ての生理学的及び病理学的プロセスにおける細胞間コミュニケーションにおけるそれらの役割について、最近、科学及び臨床コミュニティで大きな関心を集めている。これらの30~100nmサイズの小胞は、細胞から細胞外空間に放出され、最終的には厳密に調節された方法で生体液に放出される。それらの分子組成は、それらの起源の細胞を反映し、特定の細胞又は組織トロピズムを付与し、それらの生物学的活性を強調し得る。エクソソーム及び他の細胞外小胞(EV)は、生体液生検を介して新規の非侵襲的マーカーの魅力的な供給源を表すタンパク質、核酸(DNA、mRNA、及び調節RNA)、脂質及び代謝産物の特定のセットを運ぶ。エクソソームシャトル分子は、その生物学的活性を維持し、レシピエント細胞を調節及びリプログラミングすることができる。エクソソームのこの多面的な性質は、それらを新規の診断用センサーとして、並びに治療エフェクター及び薬物送達ベクターとして特徴付けるがん治療を改善するために非常に有望である。EVの治療用ペイロード及び標的化挙動を含む自然な生物学的活性は、遺伝子操作及び化学操作を介して調整することができる。しかしながら、好適な細胞標的化リガンドを特定及び試験するには時間がかかる。所望の細胞トロピズムを有するEVを設計するために、改善された方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書において、標的細胞に対する所望の細胞トロピズムを有する細胞外小胞(EV)を操作するための方法が開示される。この方法は、標的細胞の系統に向けて体細胞をリプログラミングし、所望の細胞トロピズムを有するこれらの「リプログラミングされた細胞」によって産生されたEVを回収することを含む。
【0004】
いくつかの実施形態では、体細胞をリプログラミングすることは、リプログラミング転写因子(TF)をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを体細胞に細胞内送達することを含む。表1に、TFをリプログラミングする例を提供する。
【0005】
いくつかの実施形態では、EVは、リプログラミング転写因子が体細胞に送達された12時間~5日後に(リプログラミング転写因子が体細胞に送達された12、24、36、又は48時間後、及び1、2、3、4、又は5日後を含む)、リプログラミングされた細胞から回収される。したがって、いくつかの実施形態では、「リプログラミングされた細胞」は、標的系統に向けてリプログラミングされるが、完全には分化していない。いくつかの実施形態では、「リプログラミングされた細胞」は、標的細胞系統の前駆細胞を示す細胞マーカーを発現する。
【0006】
いくつかの実施形態では、リプログラミングされた細胞は、系統特異的マーカーを発現するが、完全な系統分化の1つ以上のマーカーを欠いている。
【0007】
いくつかの実施形態では、これらのEVを使用して、診断用及び/又は治療用カーゴを、それを必要とする対象の標的細胞に送達することができる。したがって、本明細書において、リプログラミングされた細胞を操作して、治療剤を標的細胞に送達する治療用EVを産生することを含む、対象における疾患又は状態を治療する方法も開示される。
【0008】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】神経線維腫を治療するために、SCのトロピズムが増強されたデザイナーEVを、エクスビボで作製し、インビボで展開することを示す。
図2A】線維芽細胞と比較して、SC由来のEVがSCによってどのように優先的に内在化されるかを示す。他方では、線維芽細胞由来のEVは、線維芽細胞に対するトロピズムの向上を示す。図2Cは、SC由来EVが、大きなプラスミドコピー(約10kb)及び転写産物を担持することができることを示す。図2Dは、デザイナーEVを用いたSCへの成功した送達を示す。*p<0.05。
図2B】線維芽細胞と比較して、SC由来のEVがSCによってどのように優先的に内在化されるかを示す。他方では、線維芽細胞由来のEVは、線維芽細胞に対するトロピズムの向上を示す。
図2C】SC由来EVが、大きなプラスミドコピー(約10kb)及び転写産物を担持することができることを示す。図2Dは、デザイナーEVを用いたSCへの成功した送達を示す。*p<0.05。
図3A】全身送達後にマウスの坐骨神経(挫傷後)において優先的に蓄積されたSC由来EVを示す。図3Bは、標識されたEVを示す、図3Aの破線の四角形の高倍率画像を示す。図3Cは、挫傷後の坐骨神経において、線維芽細胞由来EVが蓄積を示さなかったことを示す。
図4A】線維芽細胞と比較して、筋芽細胞由来EVが筋芽細胞によってどのように優先的に内在化されるかを示す。他方、線維芽細胞由来EVは、線維芽細胞に対するトロピズムの向上を示す(*p<0.05)。
図4B】線維芽細胞と比較して、筋芽細胞由来EVが筋芽細胞によってどのように優先的に内在化されるかを示す。他方、線維芽細胞由来EVは、線維芽細胞に対するトロピズムの向上を示す(*p<0.05)。
図4C】全身送達後にマウスの筋組織(例えば、腓腹筋)に優先的に蓄積された筋芽細胞由来EVを示す。白色の矢印は、組織においてEV内で、筋細胞の複数の核に隣接し、DAPI(青色)で対比染色した、緑色蛍光タンパク質(GFP)カーゴを含む標識EV(紫色)の共局在化を指す。
図4D】線維芽細胞由来EVが、全身EV送達後に筋組織(例えば、腓腹筋)に蓄積を示さなかったことを示す。
図5A】N2Aニューロンが、ニューロンにリプログラミングするようにプライミングされた線維芽細胞に由来するEVを効果的に内在化することを示す(約100%の取り込み効率)。
図5B】N2Aニューロンが、対照EVと比較して、線維芽細胞をリプログラミングすることに由来するEVに対して高い親和性を示すことを示す。*p<0.05。
図6A】SOX10単独のリプログラミング因子又はSOX10+EGR2の組み合わせを用いた線維芽細胞のトランスフェクションの24時間後に回収された操作されたEVが、EV処置の6時間後の線維芽細胞と比較して、SCによってどのように優先的に内在化されるかを示す(*p<0.05)。
図6B】SOX10単独のリプログラミング因子又はSOX10+EGR2の組み合わせを用いた線維芽細胞のトランスフェクションの24時間後に回収された操作されたEVが、EV処置の6時間後の線維芽細胞と比較して、SCによってどのように優先的に内在化されるかを示す(*p<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示をより詳細に記載する前に、本開示が、記載される特定の実施形態に限定されず、そのため、当然ながら、変動し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるので、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0011】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確にそうでないことを指示しない限り、下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限との間の各介在値と、その記述された範囲内の任意の他の記述された値又は介在値が、本開示内に包含されることを理解されたい。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、独立して、より小さな範囲に含まれてもよく、また、記述された範囲内の任意の明確に除外された限定を前提として、本開示内に包含される。記述された範囲が、上限及び下限の一方又は両方を含む場合、それらの含まれた上限及び下限の一方又は両方を除外する範囲もまた、本開示に含まれる。
【0012】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似又は均等の任意の方法及び材料もまた、本開示の実施又は試験に使用することができるが、ここで好ましい方法及び物質を本明細書に記載する。
【0013】
本明細書で引用された全ての刊行物及び特許は、各個々の刊行物又は特許が、参照により本明細書に組み込まれることを明確にかつ個別に示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれ、引用された刊行物に関連して方法及び/又は物質を開示し、説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日以前のその開示のためのものであり、本開示が、先行開示のためにそのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。更に、提供した公開日は実際の公開日とは異なる可能性があり、これらは独立して確認する必要があり得る。
【0014】
本開示を読むと当業者には明らかであろうように、本明細書に記載及び例示される個々の実施形態の各々は、本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得る、又はそれらと組み合わされ得る個別の成分及び特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序、又は論理的に可能な任意の他の順序で実施され得る。
【0015】
本開示の実施形態は、別段の指示がない限り、当該技術分野の範囲内である、化学、生物学などの技法を用いる。
【0016】
以下の実施例は、当業者に、本明細書において開示及び特許請求された方法及びプローブの使用方法の完全な開示及び説明を提供するために示される。数値(例えば、量、温度など)に関して精度を保証するように努力がなされてはいるが、いくらかの誤差及び偏差が考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部は、重量部であり、温度は、℃であり、圧力は、大気圧又はその付近である。標準温度及び圧力は、20℃及び1気圧と定義されている。
【0017】
本開示の実施形態が詳細に説明される前に、別段の指示がない限り、本開示は、特定の材料、試薬、反応物質、製造プロセスなどに限定されないので、変化し得ることが理解されるであろう。また、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではないことを理解されたい。本開示では、ステップは、論理的に可能である場合には異なる順序で行われ得ることも可能である。
【0018】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明示的に別様に示さない限り、複数の参照物を含むことに留意する必要がある。
【0019】
定義
「対象」という用語は、投与又は治療の標的である任意の個体を指す。対象は、脊椎動物、例えば、哺乳動物であり得る。したがって、対象は、ヒト又は獣医患者であり得る。「患者」という用語は、臨床医、例えば、医師の治療下にある対象を指す。
【0020】
「治療的に有効な」という用語は、使用される組成物の量が、疾患又は障害の1つ以上の原因又は症状を軽減するのに十分なものであることを指す。このような軽減は、低減又は改変を必要とするだけであり、排除である必要はない。
【0021】
「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、妥当な利益/リスク比に見合った過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題若しくは合併症もなくヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適な化合物、物質、組成物、及び/又は剤形を指す。
【0022】
「担体」という用語は、化合物又は組成物と組み合わせた場合に、その意図される使用又は目的のために、化合物又は組成物の調製、保存、投与、送達、有効性、選択性、又はいかなる他の特徴を補助又は促進する、化合物、組成物、物質、又は構造を意味する。例えば、担体は、活性成分の任意の分解を最小限に抑え、対象における任意の有害な副作用を最小限に抑えるように選択することができる。
【0023】
「治療」という用語は、疾患、病的な状態、又は障害を治癒し、軽減し、安定化し、又は予防する意図を有する患者の医学的管理を指す。この用語は、積極的治療、すなわち、具体的に疾患、病態、又は障害の改善に向けた治療を含み、また、原因治療、すなわち、関連する疾患、病態、又は障害の原因の除去に向けた治療も含む。加えて、この用語は、緩和治療、すなわち、疾患、病態、又は障害の治癒ではなく、症状の軽減のために設計された治療;予防的治療、すなわち、関連する疾患、病態、又は障害の発症を最小限に抑える、又は部分的に若しくは完全に阻害することに向けた治療;並びに支持治療、すなわち、関連する疾患、病態、又は障害の改善に向けた別の特定の治療法を補完するために用いられる治療を含む。
【0024】
「阻害する」という用語は、活性、応答、状態、疾患、又は他の生物学的パラメータの減少を指す。これには、活性、応答、状態、又は疾患の完全な除去が含まれ得るが、これらに限定されない。これはまた、例えば、天然又は対照のレベルと比較して、活性、応答、状態、又は疾患の10%の低減を含み得る。したがって、低減は、天然又は対照のレベルと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%、又はその間の任意の量の低減であり得る。
【0025】
「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合又は修飾ペプチド結合、例えば、ペプチドイソスターなどによって互いに結合したアミノ酸を指し、20個の遺伝子コードされたアミノ酸以外の修飾アミノ酸を含有し得る。ポリペプチドは、翻訳後処理などの、自然プロセス、又は当該技術分野で周知の化学修飾技法のいずれかによって修飾することができる。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、及びアミノ又はカルボキシル末端を含む、ポリペプチドの任意の場所で生じ得る。同じ種類の修飾は、所与のポリペプチドにおけるいくつかの部位に同じ又は変動する程度で存在し得る。また、所与のポリペプチドは、多くの種類の修飾を有し得る。修飾としては、限定なしに、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、共有結合架橋又は環化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスフィチジルイノシトールの共有結合、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、システイン又はピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ化、メチル化、ミリストイル化、酸化、perg化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、及びアルギニル化などのアミノ酸のタンパク質への転移-RNA媒介付加が挙げられる。(Proteins-Structure and Molecular Properties 2nd Ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York(1993)、Posttranslational Covalent Modification of Proteins,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York,pp.1-12(1983)を参照されたい)。
【0026】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸配列」という用語は、アミノ酸残基を表す略語、文字、記号、又は単語のリストを指す。本明細書で使用されるアミノ酸の略語は、アミノ酸の従来の1文字コードであり、以下のように表される:A、アラニン、B、アスパラギン又はアスパラギン酸、C、システイン、Dアスパラギン酸、E、グルタミン酸塩、グルタミン酸、F、フェニルアラニン、G、グリシン、Hヒスチジン、Iイソロイシン、K、リジン、L、ロイシン、M、メチオニン、N、アスパラギン、P、プロリン、Q、グルタミン、R、アルギニン、S、セリン、T、トレオニン、V、バリン、W、トリプトファン、Y、チロシン、Z、グルタミン又はグルタミン酸。
【0027】
本明細書で使用される場合、「核酸」という語句は、DNA若しくはRNA、又はDNA-RNAハイブリッド、一本鎖又は二本鎖、センス又はアンチセンスにかかわらず、ワトソン-クリック塩基対形成による相補的な核酸へのハイブリダイゼーションを可能にする、天然に存在する又は合成オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを指す。核酸はまた、ヌクレオチド類似体(例えば、BrdU)、及び非ホスホジエステルヌクレオシド間結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)又はチオジエステル結合)を含み得る。具体的には、核酸は、限定されないが、DNA、RNA、cDNA、gDNA、ssDNA、dsDNA、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」は、塩基部分、糖部分、及びリン酸部分を含有する分子である。ヌクレオチドは、それらのリン酸部分及び糖部分を通して、一緒に結合し、ヌクレオシド間結合を生成することができる。「オリゴヌクレオチド」という用語は、一緒に結合した2つ以上のヌクレオチドを含有する分子を指して使用されることがある。ヌクレオチドの塩基部分は、アデニン-9-イル(A)、シトシン-1-イル(C)、グアニン-9-イル(G)、ウラシル-1-イル(U)、及びチミン-1-イル(T)であり得る。ヌクレオチドの糖部分は、リボース又はデオキシリボースである。ヌクレオチドのリン酸部分は、五価リン酸である。ヌクレオチドの非限定的な例は、3’-AMP(3’-アデノシン一リン酸)又は5’-GMP(5’-グアノシン一リン酸)であろう。
【0029】
ヌクレオチド類似体は、塩基、糖、及び/又はリン酸部分に何らかの種類の修飾を含有するヌクレオチドである。ヌクレオチドに対する修飾は、当該技術分野において周知であり、例えば、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、及び2-アミノアデニン、並びに糖又はリン酸部分における修飾を含むであろう。
【0030】
ヌクレオチド代替物は、ヌクレオチドと同様の機能特性を有するが、ペプチド核酸(PNA)などのリン酸部分を含有しない分子である。ヌクレオチド代替物は、ワトソン-クリック又はフーグスティーン様式で核酸を認識するが、リン酸部分以外の部分を通して一緒に結合した分子である。ヌクレオチド代替物は、適切な標的核酸と相互作用するときに、二重らせん型構造に適合することができる。
【0031】
「ベクター」又は「構築物」という用語は、ベクター配列が結合している別の核酸を細胞に輸送することが可能な核酸配列を指す。「発現ベクター」という用語は、細胞による発現に好適な形態で(例えば、転写制御エレメントに結合した)遺伝子構築物を含有する任意のベクター(例えば、プラスミド、コスミド、又はファージ染色体)を含む。「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドがベクターの一般的に使用される形態であるため、交換可能に使用される。更に、本発明は、同等の機能を果たす他のベクターを含むことが意図される。
【0032】
「作動可能に連結された」という用語は、核酸の別の核酸配列との機能的関係を指す。プロモーター、エンハンサー、転写及び翻訳停止部位、並びに他のシグナル配列は、他の配列に作動可能に結合した核酸配列の例である。例えば、転写制御エレメントへのDNAの作動可能な結合は、そのようなDNAの転写が、DNAを特異的に認識し、結合し、転写するRNAポリメラーゼによってプロモーターから開始されるような、DNAとプロモーターとの間の物理的及び機能的関係を指す。
【0033】
本明細書の目的のために、所与のヌクレオチド又はアミノ酸配列Cの、所与の核酸配列Dに対する(to、with、又はagainst)配列同一性%(代替的に、所与の配列Dに対する(to、with、又はagainst)特定の配列同一性%を有するか、又は含む所与の配列Cとして表現することができる)は、以下のように計算され:
100×分数W/Z、
式中、Wは、そのプログラムのC及びDのアラインメントにおける配列アラインメントプログラムによって同一マッチとしてスコアリングされたヌクレオチド又はアミノ酸の数であり、Zは、Dにおけるヌクレオチド又はアミノ酸の総数である。配列Cの長さが配列Dの長さに等しくない場合、C対Dの配列同一性%は、D対Cの配列同一性%に等しくないことが理解されるであろう。配列同一性パーセントを決定する目的でのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当該技術分野の技術の範囲内にある様々な方法で達成することができる。
【0034】
「特異的にハイブリダイズする」とは、プローブ、プライマー、又はオリゴヌクレオチドが、高いストリンジェンシー条件下で実質的に相補的な核酸(例えば、c-met核酸)を認識し、これと物理的に相互作用(すなわち、塩基対形成)し、他の核酸と実質的に塩基対形成しないことを意味する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という用語は、プローブと標的配列との間に少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%の配列同一性がある場合、ハイブリダイゼーションが一般的に起こることを意味する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、50%のホルムアミド、5XSSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5Xデンハルト溶液、10%のデキストラン硫酸、及び20μg/mlの変性、剪断した担体DNA(サーモン精子DNAなど)を含む溶液中で一晩インキュベーションし、続いて、ハイブリダイゼーション支持体を0.1XSSC中で約65℃で洗浄することである。他のハイブリダイゼーション及び洗浄条件は周知であり、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、特に第11章に例示される。
【0036】
「制御エレメント」又は「調節配列」は、宿主細胞タンパク質と相互作用して転写及び翻訳を行う、ベクターエンハンサー、プロモーター、5’及び3’非翻訳領域の非翻訳領域である。そのようなエレメントは、それらの強度及び特異性において変動し得る。
【0037】
「プロモーター」は、一般に、転写開始部位に関して相対的に固定された位置にあるときに機能するDNAの配列である。「プロモーター」は、RNAポリメラーゼ及び転写因子の基本的な相互作用に必要なコアエレメントを含有し、上流エレメント及び応答エレメントを含有することができる。
【0038】
「エンハンサー」は、一般に、転写開始部位から固定距離なしで機能し、転写単位に対して5’又は3’のいずれかであり得るDNAの配列を指す。更に、エンハンサーは、イントロン内及びコード配列自体内にあり得る。これらは、通常、10~300bpの長さで、シスで機能する。エンハンサーは、近くのプロモーターからの転写を増加させるように機能する。エンハンサーは、プロモーターのように、同様に多くの場合、転写の調節を媒介する応答エレメントを含有する。エンハンサーは、多くの場合、発現の調節を決定する。
【0039】
「内因性」エンハンサー/プロモーターは、ゲノムにおける所与の遺伝子と自然に結合しているものである。「外因性」又は「異種」エンハンサー/プロモーターは、その遺伝子の転写が結合したエンハンサー/プロモーターによって指示されるように、遺伝子操作(すなわち、分子生物学的技法)によって遺伝子と並置されるものである。
【0040】
デザイナートロピズムを有する操作された細胞外ビヒクル(EV)
本明細書において、標的細胞に対する所望の細胞トロピズムを有する細胞外小胞(EV)を操作するための方法が開示される。この方法は、標的細胞の系統に向けて体細胞をリプログラミングし、これらのリプログラミングされた細胞によって産生された所望の細胞トロピズムを有するEVを回収することを含む。
【0041】
例えば、プロ神経細胞応答を調節するデザイナーEVのための方法は、Ortega-Pineda,et al.Adv.Healthcare Mater.2022 11:210085に記載されている(これらのEV及びその後継の産生及び使用方法の教示のために、その全体が参照により組み込まれる)。
【0042】
体細胞のリプログラミング
体細胞を標的細胞にリプログラミングする方法が開示され、本方法は、リプログラミング転写因子をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを体細胞に細胞内送達することを含む。いくつかの実施形態では、核酸配列は、非ウイルスベクターに存在する。いくつかの実施形態では、核酸配列は、発現制御配列に作動可能に連結されている。他の実施形態では、核酸は、2つ以上の発現制御配列に作動可能に連結されている。
【0043】
いくつかの実施形態では、ドナー細胞は、皮膚細胞(例えば、線維芽細胞、ケラチノサイト、皮膚幹細胞)、脂肪細胞、樹状細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、膵臓細胞(例えば、管状上皮細胞)、肝臓細胞(例えば、肝細胞)、免疫細胞(例えば、T細胞、マクロファージ、骨髄由来サプレッサー細胞)を含むが、これらに限定されない、EVを産生することができる任意のドナー細胞であり得る。
【0044】
体細胞を標的細胞型にリプログラミングすることができる転写因子は、当該技術分野で既知である。成体生物に見出される細胞型の多様性は、各細胞型の特定の遺伝子発現パターンを定義及び強化する系統特異的転写因子(TF)によって開発の過程で生み出される。完全に分化した細胞は、4つのTF(YamanakaのTF)の組み合わせによる初代線維芽細胞における多能性の誘導によって、顕著な細胞運命の変化を起こすように刺激され得る(Vierbuchen T,et al.Biotechnol.2011 29(10):892-907)。これらの変換は、発生上重要なエピジェネティック情報の関連した欠失を伴う、成熟状態からより原始的な発生状態への復帰として理解されている(Vierbuchen T,et al.Nature.2010 463(7284):1035-41)。それにもかかわらず、直接的な系統のリプログラミングは、多能性幹細胞の使用と比較した場合、腫瘍発生のリスクが比較的低い代替方法を提供するため、再生医療における魅力的なアプローチと考えられている(Ruzittu S,et al.Direct Lineage Reprogramming:Harnessing Cell Plasticity between Liver and Pancreas.Cold Spring Harbor perspectives in biology.2019、Xu J,et al.Cell Stem Cell.2015 16(2):119-34)。
【0045】
直接的な系統のリプログラミングは、中間的な多能性段階を経ることなく、1つの系統から別の系統への機能的な細胞型の細胞運命の変換を誘導することができる。いくつかの研究では、胚発生又はそれらのインビボ切除に触発されて、単一のリプログラミングTF又はその組み合わせのいずれかを導入することによって、細胞の運命が切り替わる可能性が示されている(Sancho-Martinez I,et al.Nature Cell Biology.2012 14(9):892-9、Graf T,et al.Nature.2009 462(7273):587-94)。これらのTFの高い発現は、現在のエピジェネティックマークを克服し、標的細胞の形成を促進することを目的としている。このアプローチは、分化細胞のエピジェネティック安定性の従来の概念を再構築して、所望の細胞型を産生するための理想的な代替手段として探求されており、直接的な変換を介して機能的な細胞を生成するために急速に使用されている。
【0046】
生成された細胞は、通常、成熟細胞の同一性及び機能性を欠いているが、前駆細胞は、全体的なエピジェネティックリモデリングと相関する可塑的な遺伝子発現プロファイルを保持している。かなり開いたクロマチン構造を有する前駆細胞は、機能的に成熟した状態への再分化のための分化シグナルに応答することが可能になり、それらの細胞の増殖により、豊富な機能的な細胞の生成が可能になる(Xie B,et al.Cell Research.2019 29(9):696-710)。更に、表現型の変化を含む直接的な変化は、TFの過剰発現の数時間後から数日後に観察することができ、細胞増殖の不在下で進行することができる。
【0047】
正常な発生中に細胞運命のマスター調節因子として機能する「パイオニア」TFがあり、クロマチン及び共TFと相互作用する(Morris SA.Development.2016 143(15):2696-705)。多くの場合、リプログラミング戦略は、様々なTFの組み合わせを使用して、変換を補助することによって所望の細胞型のプログラムをオーバーレイし、あるTFは、運命の特定化を設定することができ、他のTFは、成熟を設定することができ、又は代替的に、元の細胞同一性を削除するためのリプレッサーとして機能することができる(Ruzittu S,et al.Direct Lineage Reprogramming:Harnessing Cell Plasticity between Liver and Pancreas.Cold Spring Harbor perspectives in biology.2019)。表1に、細胞をリプログラミングするための例示的なTFを提供する。
【表1-1】


【表1-2】


【表1-3】


【表1-4】

【0048】
WO2018/119091には、ETV2、FOXC2、及びFLU(「EFF因子」)を使用して、体細胞が血管形成細胞にリプログラミングされることが記載されている(これらのリプログラミング転写因子の教示に関して、参照により組み込まれる)。WO2020/028697には、体細胞をインスリン産生細胞にリプログラミングするためのPdx1、Ng3、Mafa、及びTcf3(「PMN-T因子」)の使用が記載されている(これらのリプログラミング転写因子の教示に関して、参照により組み込まれる)。いくつかの実施形態では、開示される方法の転写因子は、EFF又はPMN-T因子ではない。
【0049】
ウイルス及び非ウイルス媒介性技法を含む、様々な方法が当該技術分野で既知であり、細胞への核酸の導入に好適である。典型的な非ウイルス媒介性技法の例としては、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム媒介性導入、ヌクレオフェクション、ソノポレーション、熱ショック、マグネトフェクション、リポソーム媒介性導入、マイクロインジェクション、マイクロプロジェクタ媒介性導入(ナノ粒子)、カチオン性ポリマー媒介性導入(DEAE-デキストラン、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール(PEG)など)又は細胞融合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
いくつかの実施形態では、転写因子で標的細胞をトランスフェクションした後、細胞は次いで、トランスフェクトされた遺伝子(例えば、cDNA)をEVにパックすることができ、これは次いで、他の皮膚細胞を誘導して、インスリン産生細胞を形成することができる。したがって、Pdx1、Ng3、Mafa、及びTcf3を含む細胞から産生された細胞外小胞に体細胞を曝露することを含む、皮膚細胞をインスリン産生細胞にリプログラミングする方法も開示される。
【0051】
次いで、ドナー細胞によって分泌されたEVを培養培地から回収ことができる。次いで、これらのEVを皮膚細胞に投与して、それらをインスリン産生細胞にリプログラミングすることができる。いくつかの実施形態では、ドナー細胞は、皮膚細胞(例えば、線維芽細胞、ケラチノサイト、皮膚幹細胞)、脂肪細胞、樹状細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、膵臓細胞(例えば、管状上皮細胞)、肝臓細胞(例えば、肝細胞)、免疫細胞(例えば、T細胞、マクロファージ、骨髄由来サプレッサー細胞)を含むが、これらに限定されない、EVを産生することができる対象からの任意の細胞であり得る。
【0052】
エクソソーム及びマイクロベシクルは、サイズ及び表面タンパク質マーカーを含む、それらの生物発生プロセス及び生物物理学的特性に基づいて異なるEVである。エクソソームは、40~150nmのサイズの均質な小さい粒子であり、それらは通常、エンドサイトーシスリサイクリング経路に由来する。エンドサイトーシスでは、形質膜でエンドサイトーシス小胞が形成され、融合されて初期のエンドソームが形成される。これらは成熟し、腔内小胞が小胞内腔になる後期エンドソームとなる。リソソームと融合する代わりに、これらの多胞体は、形質膜と直接融合し、エクソソームを細胞外空間に遊離する。エクソソーム生物発生、タンパク質カーゴソート、及び遊離は、輸送に必要なエンドソームソート複合体(ESCRT複合体)、並びにAlix及びTsg101などの他の関連タンパク質を含む。対照的に、マイクロベシクルは、形質膜からの膜小胞の外向きの出芽及び分裂を通じて直接産生され、したがって、それらの表面マーカーは、起点の膜の組成に大きく依存する。更に、それらは、直径150~1000nmの範囲の、細胞外小胞のより大きく、より多くの異種性の集団を構成する傾向がある。しかしながら、両方のタイプの小胞は、機能的mRNA、miRNA及びタンパク質を受容細胞に送達することが示されている。
【0053】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、遺伝子がん、そのような送達に好適な微小粒子又はナノ粒子、エレクトロポレーションによるトランスフェクション、三次元ナノチャネルエレクトロポレーション、組織ナノトランスフェクションデバイス、そのような送達に好適なリポソーム、又は深層腫瘍組織ナノエレクトロインジェクションデバイスを介して、体細胞又はEVのためのドナー細胞に細胞内送達される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターを使用することができる。しかしながら、他の実施形態では、ポリヌクレオチドは、ウイルスによって送達されない。
【0054】
エレクトロポレーションは、細胞膜の透過性を増加させるために電界を細胞に印加し、カーゴ(例えば、リプログラミング因子)が細胞に導入されることを可能にする技法である。エレクトロポレーションは、外来DNAを細胞に導入するための一般的な技法である。
【0055】
組織ナノトランスフェクションは、並置する組織細胞メンバーを良性にナノポレートし、カーゴを細胞へと電気泳動的に駆動する、アレイされたナノチャネルを介して非常に強力かつ焦点の合った電界を印加することによって、カーゴ(例えば、リプログラミング因子)の細胞への直接的なサイトゾル送達を可能にする。
【0056】
一実施形態では、開示される組成物は、体重1kg当たり約0.1ng~約100g、体重1kg当たり約10ng~約50g、体重1kg当たり約100ng~約1g、体重1kg当たり約1μg~約100mg、体重1kg当たり約1μg~約50mg、体重1kg当たり約1mg~約500mg、及び体重1kg当たり約1mg~約50mgの非経口投与に相当する用量で投与される。代替的には、治療有効用量を達成するために投与される開示される組成物の量は、体重1kg当たり約0.1ng、1ng、10ng、100ng、1μg、10μg、100μg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、500mg以上である。
【0057】
ポリペプチド又は機能的核酸を発現するために、ヌクレオチドコード配列を適切な発現ベクターに挿入し得る。したがって、核酸配列が発現制御配列に作動可能に連結された、Pdx1、Ng3、Mafa、及びTcf3からなる群から選択されるタンパク質のうちの2つ、3つ、又は4つをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む非ウイルスベクターも開示される。いくつかの実施形態では、核酸配列は、単一の発現制御配列に作動可能に結合している。他の実施形態では、核酸配列は、2つ以上の別個の発現制御配列に作動可能に結合している。
【0058】
遺伝子配列並びに適切な転写及び翻訳制御エレメントを含有する発現ベクターを構築する方法は、当該技術分野において周知である。これらの方法には、インビトロで組換えDNA技術、合成技術、及びインビボでの遺伝子組換えが含まれる。そのような技法は、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press,Plainview,N.Y.,1989)、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons,New York,N.Y.,1989)に記載される。
【0059】
発現ベクターは、概して、挿入されたコード配列の翻訳及び/又は転写のための調節配列必要なエレメントを含有する。例えば、コード配列は、好ましくは、所望の遺伝子産物の発現を制御するのに役立つように、プロモーター及び/又はエンハンサーに作動可能に結合している。
【0060】
「制御エレメント」又は「調節配列」は、宿主細胞タンパク質と相互作用して転写及び翻訳を行う、ベクターエンハンサー、プロモーター、5’及び3’非翻訳領域の非翻訳領域である。そのようなエレメントは、それらの強度及び特異性において変動し得る。
【0061】
「プロモーター」は、一般に、転写開始部位に関して相対的に固定された位置にあるときに機能するDNAの配列である。「プロモーター」は、RNAポリメラーゼ及び転写因子の基本的な相互作用に必要なコアエレメントを含有し、上流エレメント及び応答エレメントを含有することができる。
【0062】
「エンハンサー」は、一般に、転写開始部位から固定距離なしで機能し、転写単位に対して5’又は3’のいずれかであり得るDNAの配列を指す。更に、エンハンサーは、イントロン内及びコード配列自体内にあり得る。これらは、通常、10~300bpの長さで、シスで機能する。エンハンサーは、近くのプロモーターからの転写を増加させるように機能する。エンハンサーは、プロモーターのように、同様に多くの場合、転写の調節を媒介する応答エレメントを含有する。エンハンサーは、多くの場合、発現の調節を決定する。
【0063】
「内因性」エンハンサー/プロモーターは、ゲノムにおける所与の遺伝子と自然に結合しているものである。「外因性」又は「異種」エンハンサー/プロモーターは、その遺伝子の転写が結合したエンハンサー/プロモーターによって指示されるように、遺伝子操作(すなわち、分子生物学的技法)によって遺伝子と並置されるものである。
【0064】
バイオテクノロジーで使用されるプロモーターは、遺伝子発現の制御の意図された種類に従った異なる種類のものである。それらは、一般に、構成的プロモーター、組織特異的又は発達段階特異的プロモーター、誘導性プロモーター、及び合成プロモーターに分けることができる。
【0065】
構成的プロモーターは、実質的に全ての組織における発現を指示し、環境及び発達因子とは、完全ではないにしても、ほとんど無関係である。それらの発現は通常、内因性因子によって条件付けられないため、構成的プロモーターは通常、種にわたって、更には界にわたって活性である。構成的プロモーターの例としては、CMV、EF1a、SV40、PGK1、Ubc、ヒトベータアクチン、及びCAGが挙げられる。
【0066】
組織特異的又は発生段階特異的プロモーターは、特定の組織(複数可)又は特定の発生段階における遺伝子の発現を誘導する。植物の場合、脈管系、光合成組織、塊茎、根、及び他の植物性器官、又は種子及び他の生殖器官における遺伝子を発現するか又は発現に影響を及ぼすプロモーターエレメントは、異種系(例えば、遠く関連する種、又は他の界でさえも)に見出すことができるが、最大の特異性は、一般に、相同プロモーター(すなわち、同じ種、属、又は科に由来する)で達成される。これはおそらく、転写因子の協調発現がプロモーターの活性の調節に必要であるためである。
【0067】
誘導性プロモーターの性能は、内因性因子ではなく、人工的に制御することができる環境条件及び外部刺激に条件付けられる。この群内には、光、酸素レベル、高温、低温、及び創傷などの非生物学的因子によって調節されるプロモーターがある。これらの因子のいくつかは、実験環境の外で制御することが困難であるため、目的の生物において天然に見出されない、化学化合物に応答するプロモーターが特に興味深い。同じように、抗生物質、銅、アルコール、ステロイド、及び除草剤に応答するプロモーターは、他の化合物の中でも、自由自在に、かつ他の生物学的又は非生物学的因子とは独立して、遺伝子活性の誘導を可能にするように適合及び精製されている。
【0068】
真核生物細胞生物学の研究のために最も一般的に使用される2つの誘導性発現系は、Tet-Off及びTet-Onと名付けられる。Tet-Offシステムは、Escherichia coli細菌に見られる1つのタンパク質TetR(テトラサイクリンリプレッサー)と、ヘルペス単純ウイルスに見られる別のタンパク質VP16の活性化ドメインとを融合させることによって作製されるテトラサイクリントランスアクチベーター(tTA)タンパク質を利用する。得られたtTAタンパク質は、特定のTetOオペレーター配列でDNAに結合することができる。ほとんどのTet-Offシステムでは、そのようなTetO配列のいくつかの反復は、CMVプロモーターなどの最小限のプロモーターの上流に配置される。最小限のプロモーターを有するいくつかのTetO配列の全体は、テトラサイクリン応答エレメント(TRE)と呼ばれる。なぜなら、それは、そのプロモーターの下流の遺伝子(複数可)の発現の増加によってテトラサイクリントランスアクチベータータンパク質tTAの結合に応答するからである。Tet-Offシステムでは、TRE制御遺伝子の発現は、テトラサイクリン及びその誘導体によって抑制され得る。それらはtTAに結合し、TRE配列に結合することができなくなり、それによってTRE制御遺伝子のトランス活性化を防止する。Tet-On系は、同様に機能するが、逆の方法で作動する。Tet-Offシステムにおいては、tTAは、Tet-Onシステムにおいてテトラサイクリン又はドキシサイクリンなどのその誘導体の1つに結合していない場合にのみオペレーターに結合することができ、rtTAタンパク質は、テトラサイクリンに結合している場合にのみオペレーターに結合することができる。したがって、ドキシサイクリンの系への導入は、遺伝子産物の転写を開始する。Tet-Onシステムは、その応答性が速いため、Tet-Offシステムよりも好ましいことがある。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される転写因子をコードする核酸配列は、同じ発現制御配列に作動可能に連結されている。代替的に、配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントを使用して、マルチ遺伝子又はポリシストロニックのメッセージを作成することができる。IRESエレメントは、5’メチル化Cap依存性翻訳のリボソーム走査モデルをバイパスし、内部部位で翻訳を開始することができる。IRESエレメントは、異種オープンリーディングフレームに結合させることができる。複数のオープンリーディングフレームを一緒に転写することができ、それぞれがIRESによって分離され、ポリシストロニックメッセージを作成する。IRESエレメントにより、各オープンリーディングフレームは、効率的な翻訳のためにリボソームにアクセス可能である。複数の遺伝子を、単一のプロモーター/エンハンサーを使用して効率的に発現させ、単一のメッセージを転写することができる。
【0070】
発現制御配列に作動可能に結合した本明細書に開示される1つ以上のポリヌクレオチドを含有する非ウイルスベクターが開示される。そのような非ウイルスベクターの例としては、オリゴヌクレオチドを単独で、又は好適なタンパク質、多糖、若しくは脂質製剤と組み合わせて含む。非ウイルス方法は、ウイルス法に対して特定の利点を提示し、単純な大規模産生及び低い宿主免疫原性がそのわずか2つである。以前は、低レベルのトランスフェクション及び遺伝子の発現は、非ウイルス方法を不利な状況に保持したが、ベクター技術の最近の進歩は、ウイルスのものと同様のトランスフェクション効率を有する分子及び技法をもたらした。
【0071】
好適な非ウイルスベクターの例としては、pIRES-hrGFP-2a、pCMV6、pMAX、pCAG、pAd-IRES-GFP、及びpCDNA3.0が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
開示される組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わせて治療に使用することができる。「薬学的に許容される」とは、いかなる望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、又はそれと接触する薬学的組成物の他の成分のいずれとも有害な様式で相互作用することなく、生物学的に又は別途望ましくないものではない材料、すなわち、核酸又はベクターとともに、対象に投与され得る材料を意味する。担体は、当業者には周知のとおり、活性成分のあらゆる分解を最小限に抑え、対象におけるあらゆる有害な副作用を最小限に抑えるように、必然的に選択され得る。
【0073】
材料は、溶液、懸濁液(例えば、微小粒子、リポソーム、又は細胞に組み込まれる)中であってもよい。これらは、抗体、受容体、又は受容体リガンドを介して、特定の細胞型を標的にし得る。以下の参考文献は、特定のタンパク質を腫瘍組織に標的化するための本技術の使用例である(Senter,et al.,Bioconjugate Chem.,2:447-451,(1991)、Bagshawe,K.D.,Br.J.Cancer,60:275-281,(1989)、Bagshawe,et al.,Br.J.Cancer,58:700-703,(1988)、Senter,et al.,Bioconjugate Chem.,4:3-9,(1993)、Battelli,et al.,Cancer Immunol.Immunother.,35:421-425,(1992)、Pietersz and McKenzie,Immunolog.Reviews,129:57-80,(1992)、及びRoffler,et al.,Biochem.Pharmacol,42:2062-2065,(1991))。「ステルス」及び他の抗体共役リポソーム(結腸がんを標的とする脂質媒介性薬物を含む)などのビヒクル、細胞特異的リガンドを介したDNAの受容体媒介性標的化、リンパ球指向性腫瘍標的化、及びインビボでのマウス神経膠腫細胞の高度に特異的な治療的レトロウイルス標的化。以下の参考文献は、腫瘍組織に特定のタンパク質を標的化するための本技術の使用例である(Hughes et al.,Cancer Research,49:6214-6220,(1989)、及びLitzinger and Huang,Biochimica et Biophysica Acta,1104:179-187,(1992))。概して、受容体は、構成的又はリガンド誘導のいずれかのエンドサイトーシスの経路に関与する。これらの受容体は、クラスリン被覆ピット内でクラスター化し、クラスリン被覆小胞を介して細胞内に入り、受容体が選別される酸性化エンドソームを通過し、次いで細胞表面にリサイクルされるか、細胞内に貯蔵されるか、又はリソソーム中で分解されるかのいずれかである。内部移行経路は、栄養素の取り込み、活性化タンパク質の除去、巨大分子のクリアランス、ウイルス及び毒素の日和見進入、リガンドの解離及び分解、並びに受容体レベルの調節などの様々な機能を果たす。多くの受容体は、細胞型、受容体濃度、リガンドの種類、リガンド価、及びリガンド濃度に応じて、2つ以上の細胞内経路に従う。受容体媒介性エンドサイトーシスの分子機構及び細胞機構は、概説されている(Brown and Greene,DNA and Cell Biology 10:6,399-409(1991))。
【0074】
好適な担体及びそれらの製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(19th ed.)ed.A.R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA 1995.に記載されている。典型的には、製剤を等張性にするために、製剤に適切な量の薬学的に許容される塩が使用される。薬学的に許容される担体の例としては、生理食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液が挙げられるが、これらに限定されない。溶液のpHは、好ましくは、約5~約8であり、より好ましくは、約7~約7.5である。更なる担体としては、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの徐放性調製物が挙げられ、このマトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、リポソーム、又は微粒子の形態である。例えば、投与経路及び投与される組成物の濃度に応じて、ある特定の担体がより好ましい場合があることは、当業者には明らかであろう。
【0075】
薬学的担体は、当業者に既知である。これらは、最も典型的には、生理的pHの滅菌水、生理食塩水、及び緩衝液などの溶液を含む、ヒトへの薬物投与のための標準的な担体である。これらの組成物は、筋肉内又は皮下に投与することができる。他の化合物は、当業者が使用する標準的な手順に従って投与されるであろう。
【0076】
薬学的組成物は、選択される分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤、表面活性剤などを含んでもよい。薬学的組成物はまた、抗微生物剤、抗炎症剤、麻酔剤などのような1つ以上の活性成分を含んでもよい。
【0077】
非経口投与のための調製物には、滅菌水溶液又は非水溶液、懸濁液、及びエマルジョンが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には、生理食塩水及び緩衝媒体を含む、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョン、又は懸濁液が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、又は固定油が含まれる。静脈内ビヒクルには、流体及び栄養補充剤、電解質補充剤(リンゲルデキストロースに基づくものなど)などが含まれる。保存剤及び他の添加剤、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスなども存在し得る。
【0078】
局所投与用の製剤には、軟膏、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、点滴剤、座薬、噴霧剤、液剤、及び粉剤が含まれてもよい。従来の薬学的担体、水性基剤、粉末基剤又は油性基剤、増粘剤などが、必要となるか又は望ましい場合がある。
【0079】
経口投与のための組成物には、粉剤又は顆粒剤、水又は非水媒体中の懸濁液又は溶液、カプセル剤、サシェ剤、又は錠剤が含まれる。増粘剤、香料、希釈剤、乳化剤、分散助剤、又は結合剤が望ましい場合がある。
【0080】
本組成物のうちのいくつかは、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、及びリン酸などの無機酸、並びにギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、及びフマル酸などの有機酸との反応によって、又は水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、並びにモノ、ジ、トリアルキル、及びアリールアミン、及び置換エタノールアミンなどの有機塩基との反応によって形成される薬学的に許容される酸又は塩基付加塩として潜在的に投与され得る。
【0081】
薬学的組成物を含む本明細書に開示される組成物は、局所治療又は全身治療が所望されるかどうか、及び治療される領域に応じて、いくつかの方法で投与され得る。例えば、開示される組成物は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、又は経皮的に投与することができる。組成物は、局所鼻腔内投与又は吸入剤による投与を含む、経口、非経口(例えば、静脈内)、筋肉内注射、腹腔内注射、経皮、体外、眼科的、膣内、直腸、鼻腔内、局所など投与することができる。
【0082】
EVを生産するためのリプログラミングされた細胞の操作
いくつかの実施形態では、これらのEVを使用して、診断用及び/又は治療用カーゴを、それを必要とする対象の標的細胞に送達することができる。したがって、本明細書において、リプログラミングされた細胞を操作して、治療剤を標的細胞に送達する治療用EVを産生することを含む、対象における疾患又は状態を治療する方法も開示される。
【0083】
いくつかの実施形態では、開示されるEVは、細胞によって分泌され得る任意の小胞であり得る。細胞は、アポトーシス小体(1~5μm)、微小胞(100~1000nmのサイズ)、及びエクソソームとして知られるエンドソーム起源の小胞(50~150nm)を含む、広範な直径及び機能を有する細胞外小胞(EV)を分泌する。
【0084】
開示される細胞外小胞は、当該技術分野で既知の方法によって調製され得る。例えば、開示される細胞外小胞は、真核生物細胞において、細胞標的化リガンドをコードするmRNAを発現させることによって調製され得る。いくつかの実施形態では、細胞はまた、治療用カーゴをコードするmRNAを発現する。細胞標的化リガンド及び治療用カーゴのためのmRNAは、開示されるEVを産生するための好適な産生細胞にトランスフェクションされるベクターから発現され得る。細胞標的化リガンド及び治療用カーゴのためのmRNAは、同じベクターから発現されてもよく(例えば、ベクターが細胞標的化リガンドのためのmRNA及び別個のプロモーターからの治療用カーゴを発現する場合)、又は細胞標的化リガンド及び治療用カーゴのためのmRNAは、別個のベクターから発現されてもよい。細胞標的化リガンド及び治療用カーゴのためのmRNAを発現させるためのベクターは、開示される細胞外小胞を調製するために設計されたキットにパッケージングされ得る。
【0085】
治療用カーゴ
開示される細胞外小胞には、治療剤が担持されてもよく、これらの細胞外小胞は、薬剤を標的細胞に送達される。好適な治療剤としては、治療薬(例えば、低分子薬)、治療用タンパク質、及び治療用核酸(例えば、治療用RNA)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、開示される細胞外小胞は、治療用RNA(本明細書では「カーゴRNA」とも称される)を含む。
【0086】
例えば、いくつかの実施形態では、細胞標的化タンパク質はまた、細胞外小胞が細胞から分泌される前に、カーゴRNAを細胞外小胞にパッケージングするためにカーゴRNAに存在する1つ以上のRNAモチーフに結合するRNAドメイン(例えば、融合タンパク質の細胞質C末端)を含む。そのため、タンパク質は、「細胞標的化タンパク質」及び「パッケージタンパク質」の両方として機能し得る。いくつかの実施形態では、パッケージタンパク質は、細胞外小胞担持タンパク質又は「EV担持タンパク質」と称され得る。
【0087】
核酸治療剤、予防剤、及び診断剤の代表的な例としては、DNAプラスミドベクター(例えば、発現ベクター)、RNA分子(例えば、iRNA、siRNA、リボザイム、アプタマー、repRNA、gRNA/sgRNA(CRISPRベースの遺伝子編集のためのガイドRNA/シングルガイドRNA))、及びmRNAが挙げられる。
【0088】
開示される細胞外小胞のカーゴRNAは、任意の好適な長さのものであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、カーゴRNAは、少なくとも約10nt、20nt、30nt、40nt、50nt、100nt、200nt、500nt、1000nt、2000nt、5000nt、又はそれ以上のヌクレオチド長を有し得る。他の実施形態では、カーゴRNAは、約5000nt、2000nt、1000nt、500nt、200nt、100nt、50nt、40nt、30nt、20nt、又は10nt以下のヌクレオチド長を有し得る。なお更なる実施形態では、カーゴRNAは、これらの想定されるヌクレオチド長の範囲内のヌクレオチド長、例えば、約10nt~5000ntの範囲又は他の範囲のヌクレオチド長を有し得る。開示される細胞外小胞のカーゴRNAは、比較的長いものであってもよく、例えば、カーゴRNAは、mRNA又は別の比較的長いRNAを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、治療用カーゴは、細胞によって分泌された後にEVに担持される膜透過性薬理学的化合物である。
【0090】
EVへの低分子RNAの担持を達成するために、トランスフェクションベースのアプローチが提案されている。他の報告は、細胞内の低分子RNAのベクター誘導発現を使用して、EVへの低分子RNA担持を達成することができることを示している。代替的に、EVドナー細胞を小型RNAで直接トランスフェクトしてもよい。腫瘍細胞を化学療法薬とともにインキュベーションすることは、薬物をEVにパッケージングする別の方法でもある。薬物担持EVの形成を刺激するために、細胞に紫外線を照射してアポトーシスを誘導する。膜融合性リポソームなどの代替的アプローチもまた、薬物のEVへの担持をもたらす。
【0091】
いくつかの実施形態では、治療用カーゴは、濃度勾配を介した拡散によってEVに担持される。
【0092】
gRNA
いくつかの実施形態では、治療RNAは、ガイドRNA(gRNA)である。ガイドRNAは、Casヌクレアーゼを標的核酸分子上の標的配列に誘導し得、ガイドRNAがハイブリダイズし、Casヌクレアーゼが標的配列を切断又は調節する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、ヌクレアーゼと結合し、ヌクレアーゼによる切断の特異性を提供する。いくつかの実施形態では、ガイドRNA及びCasタンパク質は、リボ核タンパク質(RNP)を形成し得る(例えば、CRISPR/Cas複合体)。いくつかの実施形態では、CRISPR複合体は、タイプII CRISPR/Cas9複合体であり得る。いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas複合体は、Cpf1/ガイドRNA複合体などのタイプV CRISPR/Cas複合体であり得る。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、単一タンパク質のCasヌクレアーゼ、例えば、Cas9タンパク質又はCpf1タンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、Cas9タンパク質による切断を標的とする。
【0093】
いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼシステムのためのガイドRNAは、CRISPR RNA(crRNA)及びtracrRNA(tracr)を含む。いくつかの実施形態では、crRNAは、標的核酸分子上の標的配列に相補的であり、標的配列とハイブリダイズする標的化配列を含み得る。crRNAはまた、tracrRNAの一部に相補的であり、tracrRNAの一部とハイブリダイズするフラッグポールを含み得る。いくつかの実施形態では、crRNAは、細菌のCRISPR遺伝子座から転写された天然に存在するcrRNAの構造を平行にしてもよく、標的配列は、CRISPR/Cas9システムのスペーサーとして機能し、フラッグポールは、CRISPR遺伝子座上のスペーサーに隣接する反復配列の一部に対応する。
【0094】
ガイドRNAは、crRNAの標的配列を介して、目的の任意の配列を標的化し得る。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの標的化配列と、標的核酸分子上の標的配列との間の相補性の程度は、約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%であり得る。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの標的化配列及び標的核酸分子上の標的配列は、100%相補的であり得る。他の実施形態では、ガイドRNAの標的化配列及び標的核酸分子上の標的配列は、少なくとも1つのミスマッチを含み得る。例えば、ガイドRNAの標的化配列及び標的核酸分子上の標的配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のミスマッチを含み得る。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの標的化配列及び標的核酸分子上の標的配列は、1~6つのミスマッチを含み得る。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの標的化配列及び標的核酸分子上の標的配列は、5つ又は6つのミスマッチを含み得る。
【0095】
標的化配列の長さは、使用するCRISPR/Casシステム及び構成要素に依存する。例えば、様々な細菌種に由来する様々なCasタンパク質は、最適な標的化配列の長さが異なる。したがって、標的化配列は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、又は50超のヌクレオチド長を含んでもよい。いくつかの実施形態では、標的化配列は、18~24ヌクレオチド長を含み得る。いくつかの実施形態では、標的化配列は、19~21ヌクレオチド長を含み得る。いくつかの実施形態では、標的化配列は、20ヌクレオチド長を含み得る。
【0096】
フラッグポールは、機能的なCRISPR/Cas複合体の形成を促進するために、tracrRNAと十分な相補性を有する任意の配列を含み得る。いくつかの実施形態では、フラッグポールは、同じCRISPR/CasシステムにおけるtracrRNAに相補的な天然に存在するcrRNAの配列(「タグ」又は「ハンドル」とも呼ばれる)の全部又は一部を含み得る。いくつかの実施形態では、フラッグポールは、天然に存在するCRISPR/Casシステム由来の反復配列の全て又は一部を含み得る。いくつかの実施形態では、フラッグポールは、短縮又は改変されたタグ又はハンドル配列を含み得る。いくつかの実施形態では、tracrRNAと、2つの配列のうちの短い方の長さに沿ってtracrRNAとハイブリダイズするフラッグポールの部分との間の相補性の程度は、約40%、50%、60%、70%、80%、又はそれ以上であり得るが、100%未満である。いくつかの実施形態では、tracrRNA及びtracrRNAとハイブリダイズするフラッグポールの部分は、tracr上に1つ以上のバルジ構造及び/又はtracrとフラッグポールとの間のゆらぎ塩基対の存在のために、2つの配列のうちの短い方の長さに沿って100%相補的ではない。標フラッグポールの長さは、使用するCRISPR/Casシステム又はtracrRNAに依存し得る。例えば、フラッグポールは、10~50ヌクレオチド長、又は50ヌクレオチド超の長さを含み得る。いくつかの実施形態では、フラッグポールは、15~40ヌクレオチド長を含み得る。いくつかの実施形態ではフラッグポールは、20~30ヌクレオチド長を含み得る。いくつかの実施形態では、フラッグポールは、22ヌクレオチド長を含み得る。デュアルガイドRNAを使用する場合、例えば、フラッグポールの長さには上限がない場合がある。
【0097】
いくつかの実施形態では、tracrRNAは、天然に存在するCRISPR/Casシステム由来の野生型tracr RNA配列の全て又は一部を含み得る。いくつかの実施形態では、tracrRNAは、野生型tracrRNAの切断又は改変バリアントを含み得る。tracr RNAの長さは、使用するCRISPR/Casシステムに依存し得る。いくつかの実施形態では、tracrRNAは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、又は100超のヌクレオチド長を含み得る。ある特定の実施形態では、tracrは、少なくとも26ヌクレオチド長である。追加の実施形態では、tracrは、少なくとも40ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、tracrRNAは、例えば1つ以上のヘアピン構造若しくはステムループ構造又は1つ以上のバルジ構造などの特定の二次構造を含み得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、2つのRNA分子を含み得、本明細書において「デュアルガイドRNA」又は「dgRNA」と称される。いくつかの実施形態では、dgRNAは、crRNAを含む第1のRNA分子と、tracrRNAを含む第2のRNA分子と、を含み得る。第1のRNA分子及び第2のRNA分子は、crRNA上のフラッグポールとtracrRNAとの間の塩基対合を介してRNA二重鎖を形成し得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、単一のRNA分子を含み得、本明細書において「シングルガイドRNA」又は「sgRNA」と称される。いくつかの実施形態では、sgRNAは、tracrRNAに共有結合したcrRNAを含み得る。いくつかの実施形態では、crRNA及びtracrRNAは、リンカーを介して共有結合され得る。いくつかの実施形態では、シングルガイドRNAは、crRNA上のフラッグポールとtracrRNAとの間の塩基対合によって、ステムループ構造を含み得る。いくつかの実施形態では、sgRNAは、Cas9タンパク質によるRNA誘導DNA切断を媒介することができる「Cas9 sgRNA」である。いくつかの実施形態では、sgRNAは、Cpf1タンパク質によるRNA誘導DNA切断を媒介することができる「Cpf1 sgRNA」である。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、Cas9タンパク質と活性複合体を形成し、RNAガイドDNA切断を媒介するのに十分なcrRNA及びtracrRNAを含む。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、Cpf1タンパク質と活性複合体を形成し、RNAガイドDNA切断を媒介するのに十分なcrRNAを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、カーゴは、ガイドRNAをコードする発現カセットを含む。したがって、「ガイドRNA核酸」は、ガイドRNA(例えば、sgRNA又はdgRNA)及び1つ以上のガイドRNAをコードする核酸であるガイドRNA発現カセットを指し得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、核酸は、DNA分子であり得る。いくつかの実施形態では、核酸は、crRNAをコードするヌクレオチド配列を含み得る。いくつかの実施形態では、crRNAをコードするヌクレオチド配列は、天然に存在するCRISPR/Cas系からの反復配列の全て又は一部によって隣接される標的化配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、tracrRNAをコードするヌクレオチド配列を含み得る。いくつかの実施形態では、crRNA及びtracrRNAは、2つの別々の核酸によってコードされ得る。他の実施形態では、crRNA及びtracrRNAは、単一の核酸によってコードされ得る。いくつかの実施形態では、crRNA及びtracrRNAは、単一の核酸の反対側の鎖によってコードされ得る。他の実施形態では、crRNA及びtracrRNAは、単一の核酸の同一の鎖によってコードされ得る。いくつかの実施形態では、発現カセットは、sgRNAをコードする。いくつかの実施形態では、発現カセットは、Cas9ヌクレアーゼsgRNAをコードする。来る実施形態では、発現カセットは、Cpf1ヌクレアーゼsgRNAをコードする。
【0102】
ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列は、プロモーター、3’UTR、又は5’UTRなどの少なくとも1つの転写又は調節制御配列に作動可能に連結され得る。一実施例において、プロモーターは、tRNAプロモーター、例えばtRNALys3、又はtRNAキメラであり得る。Mefferd et al.,RNA.2015 21:1683-9、Scherer et al.,Nucleic Acids Res.2007 35:2620-2628を参照されたい。ある特定の実施形態では、プロモーターは、RNAポリメラーゼIII(Pol III)によって認識され得る。Pol IIIプロモーターの非限定的な例にはまた、U6及びH1プロモーターが含まれる。いくつかの実施形態では、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列は、マウス又はヒトのU6プロモーターに作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態では、発現カセットは、修飾核酸である。ある特定の実施形態では、発現カセットは、修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、発現カセットを安定化し、その組み込みを防止する5’末端修飾(例えば、修飾ヌクレオシド又はヌクレオチド)を含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、各鎖に5’末端修飾を有する二本鎖DNAを含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、5’末端修飾として、反転したジデオキシ-T又は逆位の脱塩基ヌクレオシド若しくはヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、例えば、FAM、ROX、TAMRA、及びAlexaFluorを含む、ビオチン、デスチオビオチン-TEG、ジゴキシゲニン、及び蛍光マーカーなどの標識を含む。
【0103】
ある特定の実施形態では、2つ以上のガイドRNAは、CRISPR/Casヌクレアーゼシステムとともに使用され得る。各ガイドRNA核酸は、CRISPR/Casシステムが2つ以上の標的配列を切断するように、異なる標的化配列を含無場合がある。いくつかの実施形態では、1つ以上のガイドRNAは、CRISPR/Cas複合体内の活性又は安定性などの、同じ又は異なる特性を有し得る。2つ以上のガイドRNAが使用される場合、各ガイドRNAは、同じ又は異なる発現カセット上にコードされ得る。2つ以上のガイドRNAの発現を駆動するために使用されるプロモーターは、同じであっても異なっていてもよい。
【0104】
テンプレート核酸
本明細書に開示される製剤は、テンプレート核酸を含み得る。テンプレートを使用して、Casヌクレアーゼの標的部位において又はその近傍において核酸配列を改変又は挿入してもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、テンプレートは、相同組換えにおいて使用されてもよい。いくつかの実施形態では、相同組換えにより、テンプレート配列又はテンプレート配列の一部が標的核酸分子に組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、単一のテンプレートが提供されてもよい。他の実施形態では、相同組換えが2つ以上の標的部位で生じ得るように、2つ以上のテンプレートが提供され得る。例えば、細胞における単一の遺伝子又は細胞における2つの異なる遺伝子を修復するために、異なるテンプレートが提供され得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのテンプレートの複数のコピーが、細胞に提供される。いくつかの実施形態では、異なるテンプレートは、独立したコピー数又は独立した量で提供され得る。
【0106】
他の実施形態では、テンプレートは、核酸の開裂部位でのDNA鎖の侵入を伴う相同性指向修復に使用されてもよい。いくつかの実施形態では、相同性指向修復により、編集された標的核酸分子中にテンプレート配列が含まれるようになってもよい。いくつかの実施形態では、単一のテンプレートが提供されてもよい。他の実施形態では、異なる配列を有する2つ以上のテンプレートが、相同組換え修復によって2つ以上の部位で使用され得る。例えば、細胞における単一の遺伝子又は細胞における2つの異なる遺伝子を修復するために、異なるテンプレートが提供され得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのテンプレートの複数のコピーが、細胞に提供される。いくつかの実施形態では、異なるテンプレートは、独立したコピー数又は独立した量で提供され得る。
【0107】
更に他の実施形態では、テンプレートは、非相同末端結合によって媒介される遺伝子編集において使用されてもよい。いくつかの実施形態では、テンプレート配列は、開裂部位近くの核酸配列に類似しない。いくつかの実施形態では、テンプレート又はテンプレート配列の一部が組み込まれる。いくつかの実施形態では、単一のテンプレートが提供されてもよい。他の実施形態では、異なる配列を有する2つ以上のテンプレートが、非相同末端結合によって2つ以上の部位に挿入され得る。例えば、細胞における単一の遺伝子又は細胞における2つの異なる遺伝子を編集するために、異なるテンプレートが提供され得る。いくつかの実施形態では、異なるテンプレートが、独立したコピー数で提供され得る。いくつかの実施形態では、テンプレートは隣接する末端逆位反復(ITR)配列を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、テンプレート配列は、標的細胞の内因性配列に対応し得る。本明細書で使用される場合、「内因性配列」という用語は、細胞に固有の配列を指す。「外因性配列」という用語は、細胞に固有ではない配列、又は細胞のゲノム内の固有の位置が異なる位置にある配列を指す。いくつかの実施形態では、内因性配列は、細胞のゲノム配列であってもよい。いくつかの実施形態では、内因性配列は、染色体配列であっても染色体外配列であってもよい。いくつかの実施形態では、内因性配列は、細胞のプラスミド配列であってもよい。いくつかの実施形態では、テンプレート配列は、開裂部位において又はその近傍の細胞における内因性配列の一部と実質的に同一であってもよいが、少なくとも1つのヌクレオチド変化を含む。いくつかの実施形態では、テンプレートを用いて切断された標的核酸分子を修復することにより、標的核酸分子のうちの1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、又は置換を含む変異をもたらし得る。いくつかの実施形態では、変異は、標的配列を含む遺伝子から発現されるタンパク質に1つ以上のアミノ酸変化をもたらし得る。いくつかの実施形態では、変異は、標的遺伝子から発現されるRNAに1つ以上のヌクレオチド変化をもたらし得る。いくつかの実施形態では、変異は、標的遺伝子の発現レベルを変化させ得る。いくつかの実施形態では、変異は、標的遺伝子の発現の増加又は減少をもたらし得る。いくつかの実施形態では、変異は、遺伝子ノックダウンをもたらし得る。いくつかの実施形態では、変異は、遺伝子ノックアウトをもたらし得る。いくつかの実施形態では、変異は、遺伝子機能の回復をもたらし得る。いくつかの実施形態では、テンプレートを用いて切断された標的核酸分子の種複は、標的遺伝子のエクソン配列、イントロン配列、調節配列、転写制御配列、翻訳制御配列、スプライシング部位、又は非コード配列の変化をもたらし得る。
【0109】
他の実施形態では、テンプレート配列は、外因性配列を含み得る。いくつかの実施形態では、外因性配列は、外因性配列が標的核酸分子に組み込まれると、細胞が組み込まれた配列によってコードされるタンパク質又はRNAを発現することができるように、外因性プロモーター配列に作用可能に連結されたタンパク質又はRNAコード配列を含み得る。他の実施形態では、外因性配列が標的核酸分子に組み込まれると、組み込まれた配列の発現は、内因性プロモーター配列によって調節され得る。いくつかの実施形態では、外因性配列は、染色体配列又は染色体外配列であり得る。いくつかの実施形態では、外因性配列は、タンパク質又はタンパク質の一部をコードするcDNA配列を提供し得る。更に他の実施形態では、外因性配列は、エクソン配列、イントロン配列、調節配列、転写制御配列、翻訳制御配列、スプライシング部位、又は非コード配列を含み得る。いくつかの実施形態では、外因性配列の組み込みは、遺伝子機能の回復をもたらし得る。いくつかの実施形態では、外因性配列の組み込みは、遺伝子ノックインをもたらし得る。いくつかの実施形態では、外因性配列の組み込みは、遺伝子ノックアウトをもたらし得る。
【0110】
テンプレートは任意の好適な長さであり得る。いくつかの実施形態では、テンプレートは、10、15、20、25、50、75、100、150、200、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、又はそれ以上ヌクレオチド長を含み得る。テンプレートは一本鎖核酸であり得る。テンプレートは、二本鎖又は部分的に二本鎖の核酸であり得る。ある特定の実施形態では、一本鎖テンプレートは、20、30、40、50、75、100、125、150、175、又は200ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では,テンプレートは、標的配列を含む標的核酸分子の一部(すなわち「ホモロジーアーム」)に相補的である、核酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、テンプレートは、標的核酸分子上の切断部位の上流又は下流に位置する配列に相補的であるホモロジーアームを含み得る。いくつかの実施形態では、テンプレートは、それぞれ切断部位の上流及び下流に位置する配列に相補的である第1のホモロジーアーム及び第2のホモロジーアーム(第1及び第2のヌクレオチド配列とも呼ばれる)を含み得る。テンプレートが2つのホモロジーアームを含む場合、各々のアームは同一の長さ又は異なる長さであり得、ホモロジーアーム間の配列は、ホモロジーアーム間の標的配列に実質的に類似又は同一であり得るか、又は全体的に無関係であり得る。いくつかの実施形態では、テンプレート上の第1のヌクレオチド配列と切断部位の上流の配列との間、及びテンプレート上の第2のヌクレオチド配列と切断部位の下流の配列との間の相補性の程度は、テンプレートと標的核酸分子との間の相同組換え、例えば、高い忠実性の相同組換えを可能にし得る。いくつかの実施形態では、相補性の程度は、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約98%、約99%、又は約100%であり得る。いくつかの実施形態では、相補性の程度は、約95%、約97%、約98%、約99%、又は約100%であり得る。いくつかの実施形態では、相補性の程度は、少なくとも98%、99%、又は100%であり得る。いくつかの実施形態では、相補性の程度は、100%であり得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、テンプレートは、隣接する末端逆位反復(ITR)配列を含むssDNA又はdsDNAを含む。いくつかの実施形態では、テンプレートは、ベクター、プラスミド、ミニサークル、ナノサークル、又はPCR産物として提供される。
【0112】
化学的に修飾されたRNA
修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドは、治療用RNAに存在し得る。「修飾された」RNAという用語は、標準的なA、G、C、及びU残基の代わりに又はそれらに加えて使用される1つ以上の天然に存在しない及び/又は天然に存在する構成要素又は構造の存在を指す。いくつかの実施形態では、修飾されたRNAは、非標準的なヌクレオシド又はヌクレオチドによって合成され、本明細書では「修飾された」と呼ばれる。修飾ヌクレオシド及びヌクレオチドとしては、(i)ホスホジエステル骨格結合における改変、例えば、非架橋のリン酸酸素の1つ若しくは両方、及び/又は、架橋リン酸酸素の1つ以上の置き換え(例示的な骨格修飾)、(ii)リボース糖の成分、例えば、リボース糖の2’ヒドロキシルの改変、例えば、置き換え(例示的な糖修飾)、(iii)リン酸部分の「脱リン酸型」リンカーによる大規模な置き換え(例示的な骨格修飾)、(iv)非標準的な核酸塩基によるものを含め、天然に存在する核酸塩基の修飾又は置き換え(例示的な塩基修飾)、(v)リボースリン酸骨格の置き換え又は修飾(例示的な骨格修飾)、(vi)オリゴヌクレオチドの3’末端又は5’末端の修飾、例えば、末端リン酸基の除去、修飾若しくは置き換え、又は部分、キャップ、若しくはリンカーのコンジュゲーション(そのような3’又は5’のキャップ修飾は、糖及び/又は骨格の修飾を含み得る)、並びに(vii)糖の修飾又は置き換え(例示的な糖修飾)のうちの1つ以上を含み得る。
【0113】
上に列挙された修飾を組み合わせて、2、3、4、又はそれ以上の修飾を有し得るヌクレオシド及びヌクレオチド(まとめて「残基」)を含む修飾RNAを提供することができる。例えば、修飾残基は、修飾糖及び修飾核酸塩基を有し得る。いくつかの実施形態では、RNAの各々の塩基は修飾され、例えば、全ての塩基がホスホロチオエート等の修飾リン酸基を有する。ある特定の実施形態では、RNA分子のリン酸基の全て又は実質的に全てがホスホロチオエート基で置き換えられる。いくつかの実施形態では、修飾RNAは、RNAの5’末端に又はその近傍に少なくとも1つの修飾された残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾RNAは、RNAの3’末端に又はその近傍に少なくとも1つの修飾された残基を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、RNAは、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の修飾残基を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、RNAの5’及び3’末端の各々に1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の修飾残基を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、5、10、15、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000個、又はそれ以上の修飾残基を含む。いくつかの実施形態では、修飾されたRNAにおける位置の少なくとも5%(例えば、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は約100%)が、修飾されたヌクレオシド又はヌクレオチドである。
【0115】
修飾されていない核酸は、例えば、細胞ヌクレアーゼによって分解されやすい場合がある。例えば、ヌクレアーゼは核酸のホスホジエステル結合を加水分解し得る。したがって、一態様では、本明細書に記載のRNAは、例えば、ヌクレアーゼに対する安定性を導入するために、1つ以上の修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドを含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載のカーゴRNAは、例えば、ヌクレアーゼに対する安定性を導入するために、1つ以上の修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の修飾されたRNA分子は、インビボ及びエクスビボの両方で、細胞集団に導入された場合、低減された自然免疫応答を示し得る。「自然免疫応答」という用語は、サイトカイン(特にインターフェロン)発現及び放出の誘導及び細胞死を含む、一本鎖核酸を含む外来性核酸に対する細胞応答を含む。
【0116】
骨格修飾のいくつかの実施形態では、修飾残基のリン酸基は、1つ以上の酸素を異なる置換基によって置き換えることによって修飾され得る。更に、修飾残基、例えば修飾核酸中に存在する修飾残基は、本明細書において記載されるように、非修飾リン酸部分の修飾リン酸基による大規模な置き換えを含み得る。いくつかの実施形態では、リン酸骨格の骨格修飾は、帯電していないリンカー又は非対称な電荷分布を有する帯電したリンカーのいずれかをもたらす改変を含み得る。
【0117】
修飾リン酸基の例は、ホスホロチオエート、ホスホロセレネート、ボラノリン酸、ボラノリン酸エステル、水素ホスホネート、ホスホロアミデート、アルキル又はアリールホスホネート、及びホスホトリエステルを含む。非修飾リン酸基中のリン酸原子は、アキラルである。しかしながら、非架橋酸素のうちの1つの、上述の原子又は原子群のうちの1つによる置き換えは、リン原子をキラルにすることができる。立体リン原子は、「R」配置(本明細書においてRp)又は「S」配置(本明細書においてSp)のいずれかを有し得る。骨格は、架橋酸素(すなわち、リン酸をヌクレオシドに連結する酸素)の、窒素(架橋ホスホロアミデート)、硫黄(架橋ホスホロチオエート)、及び炭素(架橋メチレンホスホネート)による置き換えによってもまた修飾できる。置き換えは、いずれかの架橋酸素又は両方の架橋酸素において生じ得る。
【0118】
リン酸基は、ある骨格修飾において、非リン含有連結基によって置き換えることができる。いくつかの実施形態では、帯電したリン酸基は、中性部分によって置き換えることができる。リン酸基を置き換えることのできる部分の例は、非限定的に、例えば、メチルホスホン酸、ヒドロキシルアミノ、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチル、カルバメート、アミド、チオエーテル、エチレンオキシドリンカー、スフホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ(methylenehydrazo)、メチレンジメチルヒドラゾ(methylenedimethylhydrazo)、メチレンオキシメチルイミノ(methyleneoxymethylimino)を含み得る。
【0119】
リン酸リンカー及びリボース糖が、ヌクレアーゼ耐性ヌクレオシド又はヌクレオチドの代替物によって置き換えられている核酸を模倣できるスキャフォールドもまた構築できる。そのような修飾は、骨格及び糖修飾を含み得る。いくつかの実施形態では、核酸塩基は、代替骨格によって係留され得る。例は、非限定的に、モルホリノ、シクロブチル、ピロリジン、及びペプチド核酸(PNA)核酸塩基代替物を含み得る。
【0120】
修飾ヌクレオシド及び修飾ヌクレオチドは、糖に対する1つ以上の修飾、すなわち糖修飾を含み得る。例えば、2’ヒドロキシル基(OH)は、修飾されていてもよく、例えば、多くの異なる「オキシ」又は「デオキシ」置換基によって置き換えることができる。いくつかの実施形態では、2’ヒドロキシル基に対する修飾は、ヒドロキシルが2’-アルコキシドイオンを形成するように更に脱プロトン化されることがもはや起こり得ないので、核酸の安定性を増強し得る。
【0121】
2’ヒドロキシル基修飾の例は、アルコキシ又はアリールオキシ(OR、式中、「R」がアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、又は糖であり得る)、ポリエチレングリコール(PEG)、O(CHCHO)CHCHORであって式中Rが、例えば、H又は任意選択的に置換されたアルキルであり、nが、0~20の整数であり得るもの(例えば、0~4、0~8、0~10、0~16、1~4、1~8、1~10、1~16、1~20、2~4、2~8、2~10、2~16、2~20、4~8、4~10、4~16、及び4~20)を含み得る。いくつかの実施形態では、2’ヒドロキシル基修飾は、2’-O-Meであり得る。いくつかの実施形態では、2’ヒドロキシル基修飾は、2’-ヒドロキシル基をフッ素で置き換える2’-フルオロ修飾であり得る。いくつかの実施形態では、2’ヒドロキシル基修飾は、2’ヒドロキシルが、例えばC1-6アルキレン又はC1-6ヘテロアルキレン架橋を介して同一のリボース糖の4’炭素へと接続し得る「ロックド」核酸(LNA)を含んでいてもよく、例示的な架橋としては、メチレン、プロピレン、エーテル、又はアミノ架橋、O-アミノ(ここで、アミノは、例えば、NH、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、若しくはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、若しくはポリアミノであり得る)、及びアミノアルコキシ、O(CH-アミノ(ここで、アミノは、例えば、NH、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、若しくはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、若しくはポリアミノであり得る)を含み得る。いくつかの実施形態では、2’ヒドロキシル基修飾は、リボース環がC2’-C3’結合を欠失している「アンロックド(unlocked)」核酸(UNA)を含み得る。いくつかの実施形態では、2’ヒドロキシル基修飾は,メトキシエチル基(MOE)、(OCHCHOCH、例えばPEG誘導体)を含み得る。
【0122】
「デオキシ」2’修飾は、水素(すなわち、デオキシリボース糖(例えば、部分的にdsRNAのオーバーハング部分で))、ハロ(例えば、ブロモ、クロロ、フルオロ、若しくはヨード)、アミノ(アミノが、例えば、-NH、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、若しくはアミノ酸であり得る)、NH(CHCHNH)CHCH-アミノ(アミノが、例えば、本明細書に記載のものであり得る)、-NHC(O)R(Rが、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、若しくは糖であり得る)、シアノ、メルカプト、アルキル-チオ-アルキル、チオアルコキシ、並びにアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル及びアルキニルを含むことができ、任意選択的に、例えば、本明細書に記載のアミノで置換され得る。
【0123】
糖修飾は、1つ以上の炭素を含み、リボースにおける対応する炭素のものとは反対の立体化学配置を有する糖基を含み得る。したがって、修飾核酸は、糖として例えばアラビノースを含むヌクレオチドを含み得る。修飾核酸はまた、脱塩基糖をも含み得る。これらの脱塩基糖はまた、構成要素の糖原子の1つ以上において更に修飾され得る。修飾された核酸はまた、L型である1つ以上の糖(例えばL-ヌクレオシド)を含み得る。
【0124】
修飾核酸に組み込むことのできる本明細書において記載される修飾ヌクレオシド及び修飾ヌクレオチドは、核酸塩基とも呼ばれる修飾塩基を含み得る。核酸塩基の例は、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、及びウラシル(U)を含むが、これらに限定されない。これらの核酸塩基は、修飾されて、又は完全に置き換えられて、修飾核酸に組み込むことのできる修飾残基をもたらすことができる。ヌクレオチドの核酸塩基は、独立して、プリン、ピリミジン、プリン類似体、又はピリミジン類似体から選択することができる。いくつかの実施形態では、核酸塩基は、例えば、天然に存在する塩基、及び塩基の合成誘導体を含み得る。
【0125】
薬学的組成物及び投与
好適な担体及びそれらの製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(19th ed.)ed.A.R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA 1995.に記載されている。典型的には、製剤を等張性にするために、製剤に適切な量の薬学的に許容される塩が使用される。薬学的に許容される担体の例としては、生理食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液が挙げられるが、これらに限定されない。溶液のpHは、好ましくは、約5~約8であり、より好ましくは、約7~約7.5である。更なる担体としては、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの徐放性調製物が挙げられ、このマトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、リポソーム、又は微粒子の形態である。例えば、投与経路及び投与される組成物の濃度に応じて、ある特定の担体がより好ましい場合があることは、当業者には明らかであろう。
【0126】
薬学的担体は、当業者に既知である。これらは、最も典型的には、生理的pHの滅菌水、生理食塩水、及び緩衝液などの溶液を含む、ヒトへの薬物投与のための標準的な担体である。これらの組成物は、筋肉内又は皮下に投与することができる。他の化合物は、当業者が使用する標準的な手順に従って投与されるであろう。
【0127】
薬学的組成物は、選択される分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤、表面活性剤などを含んでもよい。薬学的組成物はまた、抗微生物剤、抗炎症剤、麻酔剤などのような1つ以上の活性成分を含んでもよい。
【0128】
非経口投与のための調製物には、滅菌水溶液又は非水溶液、懸濁液、及びエマルジョンが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には、生理食塩水及び緩衝媒体を含む、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョン、又は懸濁液が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、又は固定油が含まれる。静脈内ビヒクルには、流体及び栄養補充剤、電解質補充剤(リンゲルデキストロースに基づくものなど)などが含まれる。保存剤及び他の添加剤、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスなども存在し得る。
【0129】
局所投与用の製剤には、軟膏、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、点滴剤、座薬、噴霧剤、液剤、及び粉剤が含まれてもよい。従来の薬学的担体、水性基剤、粉末基剤又は油性基剤、増粘剤などが、必要となるか又は望ましい場合がある。
【0130】
経口投与のための組成物には、粉剤又は顆粒剤、水又は非水媒体中の懸濁液又は溶液、カプセル剤、サシェ剤、又は錠剤が含まれる。増粘剤、香料、希釈剤、乳化剤、分散助剤、又は結合剤が望ましくあり得る。
【0131】
本組成物のうちのいくつかは、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、及びリン酸などの無機酸、並びにギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、及びフマル酸などの有機酸との反応によって、又は水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、並びにモノ、ジ、トリアルキル、及びアリールアミン、及び置換エタノールアミンなどの有機塩基との反応によって形成される薬学的に許容される酸又は塩基付加塩として潜在的に投与され得る。
【0132】
薬学的組成物を含む本明細書に開示される組成物は、局所治療又は全身治療が所望されるかどうか、及び治療される領域に応じて、いくつかの方法で投与され得る。例えば、開示される組成物は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、又は経皮的に投与することができる。組成物は、局所鼻腔内投与又は吸入剤による投与を含む、経口、非経口(例えば、静脈内)、筋肉内注射、腹腔内注射、経皮、体外、眼科的、膣内、直腸、鼻腔内、局所など投与することができる。
【0133】
方法
本明細書において、開示されるEVを使用して標的細胞に診断用又は治療用カーゴを送達するための方法が開示される。したがって、本明細書において、標的細胞に関連する任意の疾患又は状態を治療するための方法も開示される。
【0134】
疾患
いくつかの実施形態では、開示されるEVを使用して、NF1を送達することによって、神経線維腫症1型(NF1)を治療することができる。NF1担持EVは、末梢神経における疾患シュワン細胞(SC)を、SC標的化リガンドによる機能化を介して、又は線維芽細胞をSCにリプログラミングして、SCに対するトロピズムを有するEVを産生し、NF1に対する治療用カーゴを効率的に送達することによって、選択的に標的とする。
【0135】
いくつかの実施形態では、開示されるEVを使用して、IL-4、IL-10、FGF7、mIR-146aなどの抗炎症性カーゴを送達することによって、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を治療することができる。抗炎症性カーゴを担持した操作されたEVは、損傷した肺の肺胞微小環境における特定の細胞成分を優先的に標的化し、炎症を抑制し、ARDSを有する患者の回復を促進する。
【0136】
いくつかの実施形態では、開示されるEVを使用して、Pdx1、Ngn3、又はMafAなどの転写因子を送達することによって、II型糖尿病を治療することができる。インスリン産生表現型への膵管細胞の細胞リプログラミングを誘導するための転写因子の標的化送達ビヒクルとしての操作されたEV。
【0137】
いくつかの実施形態では、開示されるEVを使用して、Acsl1、Brn2、Myt1lなどの転写因子を送達することによって、神経学的状態(神経変性疾患、脳、及び神経損傷)を治療することができる。神経細胞における電気生理学的活性を調節し、非神経細胞における神経新生促進性リプログラミング及び機能化されたEVベースの脳に対する療法の潜在的な展開を駆動する、リプログラミング転写因子を担持したEV。いくつかの実施形態では、開示されるEVを使用して、ドーパミン又はドーパミンを増強する前駆体(例えば、DRD1、DRD2、DRD3、DRD4、DRD5及びトランスポーターDAT1などのドーパミン遺伝子)を送達することによって、神経学的状態(神経変性疾患、脳及び神経損傷)を治療することができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、開示されるEVを使用して、Timp3及びRarres2などの抗転移及び抗腫瘍遺伝子を送達することによって、がんを治療することができる。骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の非ウイルストランスフェクションは、操作されたEVを放出することができ、標的化された様式で、腫瘍細胞/組織における抗転移及び抗腫瘍遺伝子の移行及び過剰発現を調節することができる。
【0139】
いくつかの実施形態では、開示されるEVを使用して、Etv2、Fli1、及びFoxc2などの血管形成促進性転写因子を送達することによって、創傷治癒を促進させる。血管形成促進性転写因子を担持したEVは、ヒト線維芽細胞の内皮細胞への直接的なリプログラミングを誘導し、損傷後の治癒を促進し、再生医療用途のための血管形成済皮膚移植片を開発する可能性がある。
【0140】
いくつかの実施形態では、開示されるEVを使用して、FOXF1及び/又はBrachyuryなどの転写因子を送達することによって、腰痛を治療することができる。操作されたEVは、ヒト髄核(NP)細胞などの椎間板(IVD)における変性細胞を健康な同化促進性表現型へとリプログラミングさせ得る転写因子を送達して、プロテオグリカンを増加させ、並びに健康なIVDの構造及び機能を維持するために重要である炎症、異化、及び疼痛に関連する因子を減少させることができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、開示されるEVを使用して、CEBPα及びPU.1などの転写因子を送達することによって、石灰沈着性大動脈狭窄を治療することができる。罹患した弁に選択的にリプログラミング転写因子を送達し、内皮細胞の細胞リプログラミングを治癒促進(M2)マクロファージ様表現型へと誘導し、石灰化組織の吸収を促進させ、炎症を低減するEVベースの治療薬。
【0142】
いくつかの実施形態では、開示されるEVを使用して、shRNA、miR、siRNAなどのアミロイドベータアンタゴニストを送達することによって、アルツハイマー病(AD)を治療することができる。皮膚由来EVは、疾患の発症及び進行におけるAD(3×Tgad)のモデルを使用して探索されてきた。これらの皮膚由来のEVは、ニューロンによって優先的に取り込まれることが見出されており、これらの細胞にmRNAを導入することができる。海馬におけるアミロイドベータの増加並びにグリオーシスの増加は、ADモデルで見出されており、これは、EVによって媒介され得る。皮膚由来EVはまた、cDNA、mRNA、及びタンパク質の送達のために脳組織/細胞を標的化することも見出されており、これは、治療的性質であり得る。海馬におけるADの進行もまた、EVによって部分的に媒介されることが見出されており、したがって、EVは、治療用カーゴをADに罹患した細胞に送達するために活用される可能性がある。
【0143】
いくつかの実施形態では、開示されるEVを使用して、Etv2、Fli1、及びFoxc2などの血管形成促進性転写因子を送達することによって、脳卒中を治療することができる。転写因子による線維芽細胞のトランスフェクションは、血管新生促進性/血管新生転写産物を担持したエクソソームを産生する傾向がある。これは、頭蓋内灌流の増加が、部分的には、エクソソーム駆動のオートクライン及び/又はパラクラインの脈管新生及び血管新生によって調節され得ることを示唆する。
【0144】
いくつかの実施形態では、開示されるEVを使用して、Etv2、Fli1、及びFoxc2などの血管形成促進性転写因子を送達することによって、末梢神経損傷を治療することができる。組織ナノトランスフェクション(TNT)を介したリプログラミング因子遺伝子を使用することによって、血管分布の増加、マクロファージ浸潤の減少、及び電気生理学的パラメータの回復の改善をもたらす、挫傷神経への血管形成細胞療法の送達。
【0145】
産生方法
投与
開示されるEVは、任意の好適な手段によって対象に投与され得る。ヒト又は動物対象への投与は、非経口、筋肉内、脳内、血管内、皮下、又は経皮投与から選択され得る。典型的には、送達方法は、注射によるものである。好ましくは、注射は、筋肉内又は血管内(例えば、静脈内)である。医師は、各特定の患者に必要な投与経路を決定することができるであろう。
【0146】
EVは、好ましくは、組成物として送達される。組成物は、非経口、筋肉内、脳内、血管内(静脈内を含む)、皮下、又は経皮投与のために製剤化され得る。非経口投与のための組成物には、緩衝剤、希釈剤、及び他の好適な添加剤も含有し得る滅菌水溶液が含まれ得る。EVは、EVに加えて、薬学的に許容される担体、増粘剤、希釈剤、緩衝液、防腐剤、及び他の薬学的に許容される担体又は賦形剤などを含み得る薬学的組成物中で製剤化され得る。
【0147】
非経口投与は、概して、皮下、筋肉内、又は静脈内などの注射によって特徴付けられる。非経口投与のための製剤には、注射の準備ができている滅菌溶液、皮下錠剤を含む、使用直前に溶媒と組み合わせる準備ができている凍結乾燥粉末などの滅菌乾燥可溶性製品、注射の準備ができている滅菌懸濁液、使用直前にビヒクルと組み合わせる準備ができている滅菌乾燥不溶性製品、及び滅菌エマルジョンが含まれる。溶液は、水性又は非水性のいずれかであり得る。
【0148】
静脈内投与する場合、好適な担体としては、生理食塩水又はリン酸緩衝食塩水(PBS)、及びグルコース、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールなどの増粘剤及び可溶化剤を含有する溶液、並びにそれらの混合物が挙げられる。非経口製剤で使用される薬学的に許容される担体としては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝液、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁剤及び分散剤、乳化剤、封鎖剤又はキレート剤、並びに他の薬学的に許容される物質が挙げられる。水性ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張性デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロース及び乳酸リンゲル注射液が挙げられる。非水性非経口ビヒクルには、植物由来の固定油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、及びピーナッツ油が含まれる。フェノール又はクレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチル及びプロピルp-ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムを含む、静菌濃度又は静真菌濃度の抗菌剤が、複数回用量容器に包装された非経口製剤に添加されなければならない。等張剤としては、塩化ナトリウム及びデキストロースが挙げられる。緩衝液としては、リン酸塩及びクエン酸塩が挙げられる。抗酸化剤としては、重硫酸ナトリウムが挙げられる。局所麻酔剤には、プロカイン塩酸塩が含まれる。懸濁剤及び分散剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0149】
乳化剤としては、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)が挙げられる。金属イオンの封鎖剤又はキレート剤としては、EDTAが挙げられる。薬学的担体はまた、水混和性ビヒクルのためのエチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコール、並びにpH調節のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、又は乳酸を含む。薬学的に活性な化合物の濃度は、注射により所望の薬理学的効果を産生するための有効量が提供されるように調節される。正確な用量は、当該技術分野で知られているように、患者又は動物の年齢、体重、及び状態に依存する。
【0150】
単位用量の非経口製剤は、アンプル、バイアル、又は針を備えた注射器にパッケージングされ得る。非経口投与のための全ての製剤は、当該技術分野で既知であり、実施されるように、無菌である必要がある。
【0151】
治療有効量の組成物が投与される。用量は、様々なパラメータに従って、特に、治療される患者の状態の重症度、年齢、及び体重、投与経路、並びに必要なレジメンに従って決定され得る。医師は、任意の特定の患者に必要な投与経路及び投薬量を決定することができるであろう。最適な投薬量は、個々の構築物の相対的な効力に応じて変動し得、概して、インビトロ及びインビボ動物モデルで有効であることが見出されるEC50に基づいて推定され得る。概して、投薬量は、体重1kg当たり0.01mg~100mg/kgである。典型的な1日用量は、特定の構築物の効力、治療される対象の年齢、体重及び状態、疾患の重症度、並びに投与の頻度及び経路に従って、体重のkg当たり約0.1~50mg、好ましくは約0.1mg/kg~10mg/kgである。投与が筋肉内注射によるものであるか、又は全身(静脈内又は皮下)注射によるものであるかに応じて、異なる投薬量の構築物が投与され得る。
【0152】
好ましくは、単回筋肉内注射の用量は、約5~20μgの範囲にある。好ましくは、単回又は複数回の全身注射の用量は、体重の10~100mg/kgの範囲にある。
【0153】
構築物のクリアランス(及び任意の標的化された分子の分解)により、患者は、例えば、毎日、毎週、毎月、又は毎年1回以上、繰り返し治療されなければならない場合がある。当業者は、体液又は組織中の測定された滞留時間及び構築物の濃度に基づいて、投薬の反復率を容易に推定することができる。治療が成功した後、患者に維持療法を受けてもらうことが望ましい場合があり、構築物は、1日1回以上~20年に1回、体重1kg当たり0.01mg~100mg/kgの範囲の維持用量で投与される。
【0154】
本発明のいくつかの実施形態を記載してきた。それにもかかわらず、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の変更が行われ得ることを理解されたい。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【実施例
【0155】
実施例1:標的化送達のためのデザイナーEV
ナノトランスフェクションは、線維芽細胞を操作して、SCに対するトロピズムを有するEVを産生し、治療用ペイロードをSCに全身的に送達するために使用される(図1)。
【0156】
神経線維腫症1型(NF1)は、SCにおけるNF1遺伝子の変異/欠失によって駆動される。NF1には多くの重要な機能(例えば、Ras-GTPaseの調節)があるため、そのような変異/欠失は、神経線維腫につながる。したがって、NF1機能を回復させるための遺伝子療法が研究されている。レトロウイルス及びアデノ随伴ウイルスベクターは、NF1のGAP関連ドメインをトランスフェクトして、機能を回復させるために使用されている。しかしながら、これらの研究では、効率が低いことが多い。更に、ウイルスベクターは、カプシドサイズの制限のために、完全長NF1を運ぶことができない。
【0157】
ウイルスベクターは、遺伝子療法のゴールドスタンダードとなっている。しかしながら、有望であるが、ウイルスには、カプシドサイズの制約以外にもいくつかの制限がある。ウイルスベクター誘導免疫は、例えば、再投薬を妨げるか、又は生物学的安全性の懸念を引き起こす可能性がある。したがって、EVは、遺伝子療法のための有望な治療用担体として浮上してきた。ほとんどの担体システム(ウイルス又は合成)と比較して、EVは、大きなカーゴをパッケージングすることができ、生体適合性の改善、免疫原性の低減、安定性の強化、及び生物学的障壁を通過する生来の能力を示す。したがって、様々な疾患のための治療用EVのエンジニアリングにかなりの量の研究が費やされている。しかしながら、現在、NF1の治療用ペイロードを送達するためのデザイナーEVに関する研究が不足している。
【0158】
NF1の遺伝子療法を展開するためのEVベースのアプローチは、いくつかの実施形態では、線維芽細胞をSCにリプログラミングして、SCに対するトロピズムを有するEVを産生することによって産生される。
【0159】
全長NF1は、例示的な治療用カーゴとして使用されるが、提案されるEV技術は、異なるタイプの治療用カーゴ(例えば、CRISPR/Cas9)を送達するために使用され得る。
【0160】
SC由来のEVがSCに対してトロピズムを示すかどうかを評価するために、EVを、ナノトランスフェクトされたSC(ATCC)から単離した。Myt1lプラスミド(約10.4kb)を、大型のモデルカーゴとして使用した。ナノトランスフェクトされたSCに由来するEV及び線維芽細胞に由来するEVに曝露されたSCと線維芽細胞とのインビトロ共培養では、線維芽細胞と比較して、SC由来EVが、優先的にSCによって捕捉され、線維芽細胞由来EVに対してより高い親和性を示したことを示す(図2A~B)。qRTPCR分析は、EVが、MYT1Lをパッケージングすることができ、SCへの遺伝子導入を媒介したことを示す(図2C~D)。インビボでのトロピズムを試験するために、マウスの坐骨神経における挫傷を行って、SCの局所的な動員を誘導した。SC由来EVを標識し、尾静脈を介して送達し、次いで、6時間後に神経を採取した。神経のイメージングにより、SC由来EVが、挫傷部位に明確に蓄積していることが明らかになった(図3A~B)。まとめると、これらのデータは、SCに対するトロピズムがより高いEVを得る能力を実証する。SCは、豊富な細胞源ではないため、より容易に入手可能な細胞源(例えば、皮膚線維芽細胞)に由来するEVにSCトロピズムを付与する方法が開発されている。
【0161】
EVを、Pmax-GFPをコードするプラスミドでナノトランスフェクトされた筋芽細胞から単離して、筋芽細胞由来EVが筋芽細胞に対するトロピズムを示すかどうかを評価した。筋芽細胞に由来するEV及び線維芽細胞に由来するEVに曝露された筋芽細胞と線維芽細胞とのインビトロ共培養では、筋芽細胞由来EVが、線維芽細胞と同様に、筋芽細胞によって優先的に捕捉されることを示し、これは、線維芽細胞由来EVに対する親和性を更に明らかにした(図42A~B)。
【0162】
インビボ試験を行って、筋芽細胞由来EVのトロピズムを試験した。これらの実験では、筋芽細胞由来EVを標識し、尾静脈を介して送達し、6時間後に、異なる筋組織(例えば、三頭筋、四頭筋、腹部、腓腹筋)を採取した。筋組織のイメージングでは、筋芽細胞由来EVの蓄積が示され、シグナルが不在であった線維芽細胞由来EV(図4D)と比較して、標識されたEVのカーゴ(GFP)が、DAPI(青色)で対比染色された筋細胞の複数の核(図4C)と共局在していた。まとめると、これらのデータは、EVが筋芽細胞に由来する場合、筋組織に対するトロピズムがより高いEVを得る能力を実証する。
【0163】
研究は、ASCL1、BRN2、及びMYT1L(ABM)による線維芽細胞のナノトランスフェクションが、ニューロンへのリプログラミングにつながることを示している。リプログラミングプロセス中に放出されたEVがニューロンに対するトロピズムを示すかどうかを評価した(図5)。取り込み研究により、ABM-ナノトランスフェクトされた線維芽細胞から得られたEVが、対照EVと比較して、ニューロンによって優先的に内在化されたことが示される。これらの結果は、リプログラミングを使用して、他の細胞に対するトロピズムが強化された線維芽細胞からEVを作製する能力を強調する。
【0164】
実施例2:SC標的化送達のためのデザイナーEVの開発
SCに対するトロピズムが増強されたデザイナーEV製剤を開発する。これは、マウス皮膚線維芽細胞をプラスミドでナノトランスフェクトして、SCへの変換を促進することによって行われる(SOX10、EGR2)。作業仮説は、SCに変換するために「プライミングされた」線維芽細胞からのEVが、SCに対するトロピズムを示すことである。SCは、容易にEVを生成するための豊富な細胞源ではない。したがって、より容易に豊富な細胞に由来するEVにSCトロピズムを付与する方法が必要である。
【0165】
SCに変換する線維芽細胞に由来するEV:
EVは、それらが由来する細胞/組織に対してトロピズムを示す。データは、SC由来EVが、SCによって優先的に内在化され、リプログラミングアプローチを活用して、EVに対する細胞特異的なトロピズムを付与することができることを示す。ここで、線維芽細胞は、SCに変換され、EVが、リプログラミングプロセスの異なる段階で回収される。簡単に説明すると、線維芽細胞を、SOX10及びEGR219の発現プラスミドでナノトランスフェクトし、EVを、1~21日目に上清から回収する。シャムプラスミドでナノトランスフェクトされた線維芽細胞から単離されたEVは、対照として機能する。線維芽細胞のSC指向性リプログラミングは、7~21日目に、qRT-PCR、及びSC特異的マーカー(S100、O4、及びMPZ)に対する免疫染色によって評価される。NanoSightを使用して、EVの濃度及びサイズを定量化する。
【0166】
選択的取り込み:
デザイナーEV製剤の選択的SC取り込みを、SC及び線維芽細胞の共培養で評価する。SC(ATCC)及び線維芽細胞を、1:1の比率で混合する。細胞及びEVを、異なる波長(約490、560、及び650nm)のフルオロフォアで標識する。共培養物を、約10~1010EV/mlに曝露し、SCによる選択的取り込みと線維芽細胞による選択的取り込みを、共焦点顕微鏡によって評価する。SCに由来するEVを、陽性対照として使用する。結果は、リプログラミング因子SOX10単独又はSOX10+EGR2による線維芽細胞のトランスフェクションの24時間後に回収されたEVが、EV処理の6時間後の線維芽細胞と比較して、SCによって優先的に内在化されることを示す*p<0.05(図6A~B)。
【0167】
生体内分布:
CNF/pNFにおけるSCに対するトロピズムが増強されたEV製剤を特定するために、Nf1対立遺伝子がSOX10+細胞において不活性化され、cNF及びpNFの形成につながる、NF1のマウスモデルを使用する。簡単に説明すると、ホモ接合Nf1fl/flマウス(ストック番号:017640,JAX)を、タモキシフェン誘導性SOX10-CreERT2マウス(ストック番号:027651,JAX)と交配する。その子孫から、Nf1fl/-:SOX10-CreERT2+/0マウスをNf1fl/flマウスと交配させる。子孫の約25%は、Nf1flox対立遺伝子についてホモ接合遺伝子型を有し、SOX10-CreERT2対立遺伝子についてヘミ接合遺伝子型を有し(Nf1fl/fl:SOX10-CreERT2+/0)、実験系統として使用される。Nf1flox対立遺伝子についてはホモ接合性の子孫、SOX10-CreERT2対立遺伝子についてのヌル(Nf1fl/fl:SOX10-CreERT20/0)を対照として使用する。マウスを、約1ヶ月齢でタモキシフェンで治療する。EV製剤を、タモキシフェン導入後約6ヶ月後に尾静脈を介して注射し、cNF/pNF病変/症状(汚れた毛皮、円背、跛行、四肢麻痺)が確認される。SCに由来するEVを、陽性対照として使用する。EVを、MemGlowで蛍光タグ付けする。マウスに、毎日、約1012EV/グラム体重のボーラスを注射し、1~5回注射したマウスを比較する。最後の注射から24時間後にマウスを安楽死させ、cNF病変、脊髄/坐骨神経(pNFを検査するため)、肝臓、肺、脾臓、及び腎臓を採取し、IVISによって画像化して、EV分布を評価する。その後、組織を組織学的検査のために処理する。神経線維腫を、S100β、GAP43、SOX10、Iba1、及び肥満細胞に対して免疫染色する。組織切片におけるEVの存在を、共焦点イメージングによって定量化する。
【0168】
cNF/pNFへのNF1の送達:
SCに変換するようにプライミングされた線維芽細胞からのEVの回収のための最適な時点が特定されると、NF1プラスミドを、変換されている(又は変換された)線維芽細胞にナノトランスフェクトし、6~72時間後に、EVを上清から単離する。陽性対照EV及び陰性対照EVを得る。NF1の担持を、qRT-PCRによって評価する。EVは、毎日、約1012EV/グラム体重のボーラスで、尾静脈を介してタモキシフェン処置Nf1fl/fl:SOX10-CreRT2+/0マウスに送達され、1~5回注射されたマウスを比較する。生体内分布を評価する。NF1送達cNF/pNF及び機能を、NF1の場合、qRT-PCRによって評価し、ニューロフィブロミン、p-ERKに対する免疫染色、並びにSOX10+及び肥満細胞の定量によって評価する。追加の評価には、神経線維腫の数及び体積の定量化、並びにTUNEL及びBrdU染色が含まれる。EVがNF1を担持しているどうかを検証するために、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)を使用して、組織切片の蛍光タグ付き部分を単離し(タグ付きEVの蓄積を示す)、PCR/qRT-PCRを使用して、その位置でNF1プラスミド/mRNAを定量する。
【0169】
均等物及び参照による組み込み
本明細書で引用された全ての参考文献は、あたかも各個々の出版物、データベースエントリ(例えば、Genbank配列若しくはGeneIDエントリ)、特許出願、又は特許が、あらゆる目的のために、その全体が参照により具体的かつ個別に示され、組み込まれているのと同じ程度に、参照により組み込まれる。この参照による組み込みの記載は、米国特許法施行規則第1.57条(b)(1)に従って、全ての個々の出版物、データベースエントリ(例えば、Genbank配列若しくはGeneIDエントリ)、特許出願、又は特許に関連することが本出願人によって意図されており、これらの各々が、このような引用が参照により組み込まれる特定の記載に直接隣接していない場合でも、米国特許法施行規則第1.57条(b)(2)に準拠して明確に識別される。参照により組み込まれる特定の記載(存在する場合)を本明細書内に含めることは、参照により組み込まれるこの一般的な記載を決して弱めるものではない。本明細書における参考文献の引用は、その参考文献が関連する先行技術であるとの承認として意図したものでもなく、これらの出版物又は文書の内容又は日付についての承認を構成するものでもない。
【0170】
好ましい実施形態及び様々な代替実施形態を参照して、本発明を具体的に示し、説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細に様々な変更を加えることができることは、関連技術分野の当業者によって理解される。
【0171】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、開示される発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図8
図9
図10
図11
図12
図14
図15
図16
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【図
【国際調査報告】