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特表2024-538076ステレオシリンプロモーター及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ステレオシリンプロモーター及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20241010BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20241010BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241010BHJP
   C12N 15/52 20060101ALI20241010BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241010BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20241010BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241010BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C12N15/63 Z
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/52 Z
C12N15/09 100
C12N15/864 100Z
A61P43/00 105
A61P27/16
A61K48/00
A61P43/00 107
A61K31/7088
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522122
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 US2022046444
(87)【国際公開番号】W WO2023064388
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/254,930
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/307,484
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/338,605
(32)【優先日】2022-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520299511
【氏名又は名称】デシベル セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DECIBEL THERAPEUTICS,INC.
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー、ラーズ
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ギブソン、タイラー
(72)【発明者】
【氏名】シュワンダー、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】サビン、レア
(72)【発明者】
【氏名】ドラモンド サミュエルソン、メーガン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA56
4C084NA14
4C084ZA341
4C084ZA342
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB221
4C084ZB222
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA56
4C086NA14
4C086ZA34
4C086ZB21
4C086ZB22
(57)【要約】
本開示は、蝸牛及び前庭の有毛細胞を含め、STRCを内因性発現する有毛細胞に所望の発現産物を発現させるために使用することができる、ステレオシリン(STRC)プロモーターならびにそれを含有するベクターを提供する。本明細書に記載されるSTRCプロモーターは、異種発現産物をコードする導入遺伝子等のポリヌクレオチドに機能的に連結され、難聴または前庭機能障害を有するかまたはそれらを発症するリスクのある対象の治療に使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヌクレオチドであって、異種発現産物をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された、配列番号48または配列番号48のヌクレオチド280~560を含むその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性を有するSTRCプロモーターを含む、前記ポリヌクレオチド。
【請求項2】
ポリヌクレオチドであって、異種発現産物をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された、(i)配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性、あるいは(ii)配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含むその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性を有するSTRCプロモーターを含む、前記ポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記STRCプロモーターが、配列番号48に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記STRCプロモーターが、配列番号48の配列を有する、請求項1または3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド280~560を含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド280~564を含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド124~560を含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド124~564を含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド1~560を含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記STRCプロモーターが、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
前記STRCプロモーターが、配列番号1の配列を有する、請求項2または10に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記STRCプロモーターが、配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含むその機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド252~537を含む、請求項2または12に記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド120~537を含む、請求項13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド35~530を含む、請求項2または12に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
前記STRCプロモーターが、配列番号2の配列を有する、請求項2または12に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
前記異種発現産物が、タンパク質、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、遺伝子編集系の成分、またはマイクロRNAである、請求項1~16のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
前記タンパク質が、アクチン・ガンマ1(Actin Gamma 1)(ACTG1)、網膜Fascinアクチン束化タンパク質2(Fascin Actin-Bundling Protein 2、Retinal)(FSCN2)、ラディキシン(RDX)、POUクラス4ホメオボックス3(POU4F3)、TRIO及びF-アクチン結合タンパク質(TRIOBP)、Taperin(TPRN)、Xinアクチン結合リピート含有2(Xin Actin Binding Repeat Containing 2)(XIRP2)、アトーナル(Atonal)BHLH転写因子1(ATOH1)、転写抑制因子Growth Factor Independent 1(GFI1)、コリン作動性ニコチン性受容体アルファ9サブユニット(CHRNA9)、コリン作動性ニコチン性受容体アルファ10サブユニット(CHRNA10)、カルシウム及びインテグリン結合ファミリーメンバー3(CIB3)、カドヘリン23(CDH23)、プロトカドヘリン15(PCDH15)、キノシリン(Kinocilin)(KNCN)、Pejvakin(DFNB59)、MKRN2 Opposite Strand(MKRN2OS)、LIMホメオボックスタンパク質3(LHX3)、膜貫通チャネル様1(Transmembrane Channel Like 1)(TMC1)、ミオシン15(MYO15)、ミオシン7A(MYO7A)、ミオシン6(MYO6)、ミオシンIIIA(MYO3A)、ミオシンIIIB(MYO3B)、グルタレドキシンドメイン含有システインリッチタンパク質1(Glutaredoxin Domain Containing Cysteine-Rich Protein 1)(GRXCR1)、プロテインチロシンホスファターゼ、受容体型Q(PTPRQ)、後期角化膜(Late Cornified Envelope)6A(LCE6A)、リポキシゲナーゼ相同ドメイン含有タンパク質1(Lipoxygenase Homology Domain-containing Protein 1)(LOXHD1)、ADP-リボシルトランスフェラーゼ1(ART1)、ATPアーゼ細胞膜Ca2+輸送2(ATPase Plasma Membrane Ca2+ Transporting 2)(ATP2B2)、カルシウム及びインテグリン結合ファミリーメンバー2(CIB2)、電位依存性カルシウムチャネル補助サブユニットアルファ2デルタ4(CACNA2D4)、上皮成長因子受容体経路基質8(EPS8)、EPS8様2(EPS8L2)、エスピン(ESPN)、エスピン様(ESPNL)、ペリフェリン2(PRPH2)、溶質輸送体ファミリー8メンバーA2(SLC8A2)、ジンクフィンガーCCHCタイプ含有タンパク質12(Zinc Finger CCHC-Type Containing Protein 12)(ZCCHC12)、ロイシンリッチ膜貫通・O-メチルトランスフェラーゼドメイン含有(Leucine Rich Transmembrane and O-methyltransferase Domain Containing)(LRTOMT2、LRTOMT1)、USH1タンパク質ネットワーク成分ハーモニン(USH1C)、溶質輸送体ファミリー26メンバー5(SLC26A5)、Piezo型機械感受性イオンチャネル成分2(PIEZO2)、細胞外ロイシンリッチリピート及びフィブロネクチンIII型ドメイン含有1(Extracellular Leucine Rich Repeat and Fibronectin Type III Domain Containing 1)(ELFN1)、テトラトリコペプチドリピートタンパク質24(TTC24)、Dystrotelin(DYTN)、コイルドコイルグルタミン酸リッチタンパク質2(CCER2)、ロイシンリッチリピート及び膜貫通ドメイン含有タンパク質2(LRTM2)、電位依存性カリウムチャネルサブファミリーAメンバー10(KCNA10)、クラリン1(Clarin 1)(CLRN1)、クラリン2(Clarin 2)(CLRN2)、SKIファミリー転写コリプレッサー1(SKI Family Transcriptional Corepressor 1)(SKOR1)、Tctex1ドメイン含有タンパク質1(TCTEX1D1)、Fc受容体様B(FCRLB)、グルタレドキシンドメイン含有システインリッチタンパク質2(GRXCR2)、セルピンファミリーEメンバー3(SERPINE3)、Nescientヘリックス-ループヘリックス1(Nescient Helix-loop Helix 1)(NHLH1)、熱ショックタンパク質70(HSP70)、熱ショックタンパク質90(HSP90)、活性化転写因子6(ATF6)、真核生物翻訳開始因子2アルファキナーゼ3(PERK)、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ/エンドリボヌクレアーゼIRE1(IRE1)、ワーリン(Whirlin)(WHRN)、オンコモジュリン(OCM)、LIMホメオボックス1(Isl1)、膜貫通及びテトラトリコペプチドリピート含有4(TMTC4)、結合免疫グロブリンタンパク質(BIP)、または電位依存性カリウムチャネルサブファミリーQメンバー4(KCNQ4)である、請求項17に記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、核酸ベクター。
【請求項20】
前記核酸ベクターが、ウイルスベクターである、請求項19に記載の核酸ベクター。
【請求項21】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項20に記載の核酸ベクター。
【請求項22】
a)第1の核酸ベクターであって、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする第1のポリヌクレオチドに機能的に連結された、配列番号48または配列番号48のヌクレオチド280~560を含むその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性を有するSTRCプロモーターを含む、前記第1の核酸ベクターと、
b)ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする第2のポリヌクレオチドを含む、第2の核酸ベクターと、を含む、2ベクター系。
【請求項23】
a)第1の核酸ベクターであって、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする第1のポリヌクレオチドに機能的に連結された、(i)配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性、あるいは(ii)配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含むその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性を有するSTRCプロモーターを含む、前記第1の核酸ベクターと、
b)ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする第2のポリヌクレオチドを含む、第2の核酸ベクターと、を含む、2ベクター系。
【請求項24】
前記STRCプロモーターが、配列番号48に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項22に記載の2ベクター系。
【請求項25】
前記STRCプロモーターが、配列番号48の配列を有する、請求項22または24に記載の2ベクター系。
【請求項26】
前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド280~560を含む、請求項22に記載の2ベクター系。
【請求項27】
前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド280~564を含む、請求項22に記載の2ベクター系。
【請求項28】
前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド124~560を含む、請求項22に記載の2ベクター系。
【請求項29】
前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド124~564を含む、請求項22に記載の2ベクター系。
【請求項30】
前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド1~560を含む、請求項22に記載の2ベクター系。
【請求項31】
前記STRCプロモーターが、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項23に記載の2ベクター系。
【請求項32】
前記STRCプロモーターが、配列番号1の配列を有する、請求項23または31に記載の2ベクター系。
【請求項33】
前記STRCプロモーターが、配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含むその機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項23に記載の2ベクター系。
【請求項34】
前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド252~537を含む、請求項33に記載の2ベクター系。
【請求項35】
前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド120~537を含む、請求項34に記載の2ベクター系。
【請求項36】
前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド35~530を含む、請求項23または33に記載の2ベクター系。
【請求項37】
前記STRCプロモーターが、配列番号2の配列を有する、請求項23または33に記載の2ベクター系。
【請求項38】
前記第1のポリヌクレオチドが前記第2のポリヌクレオチドと部分的に重複する、請求項22~37のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項39】
前記第1のポリヌクレオチド及び前記第2のポリヌクレオチドが、少なくとも200塩基(b)の長さの重複領域を有する、請求項22~38のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項40】
前記第1の核酸ベクター及び前記第2の核酸ベクターが、哺乳類細胞に導入された場合、相同組換えを受けて、全長ステレオシリンタンパク質をコードする組換えポリヌクレオチドを形成する、請求項22~39のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項41】
前記第1の核酸ベクターが、前記第1のポリヌクレオチドの3’に位置するスプライスドナーシグナル配列を含み、
前記第2の核酸ベクターが、前記第2のポリヌクレオチドの5’に位置するスプライスアクセプターシグナル配列を含む、請求項22~37のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項42】
前記第1の核酸ベクターが、前記第1のポリヌクレオチドの3’に位置するスプライスドナーシグナル配列及び前記スプライスドナーシグナル配列の3’に位置する第1の組換え誘導領域を含み、
前記第2の核酸ベクターが、第2の組換え誘導領域と、前記組換え誘導領域の3’及び前記第2のポリヌクレオチドの5’に位置するスプライスアクセプターシグナル配列と、を含む、請求項22~37のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項43】
前記第1のポリヌクレオチドと前記第2のポリヌクレオチドは重複しない、請求項22~37、41、及び42のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項44】
前記第1の核酸ベクターが、前記組換え誘導領域の3’に位置する分解シグナル配列をさらに含み、
前記第2の核酸ベクターが、前記組換え誘導領域と前記スプライスアクセプターシグナル配列との間に位置する分解シグナル配列をさらに含む、請求項42または43に記載の2ベクター系。
【請求項45】
前記第2の核酸ベクターが、前記第2のポリヌクレオチドに機能的に連結された、配列番号48または配列番号48のヌクレオチド280~560を含むその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性を有するSTRCプロモーターをさらに含み、前記STRCプロモーターが、前記第2のポリヌクレオチドの5’に位置する、請求項22~37のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項46】
前記第2の核酸ベクターが、前記第2のポリヌクレオチドに機能的に連結された、(i)配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性、あるいは(ii)配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含むその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性を有するSTRCプロモーターをさらに含み、前記STRCプロモーターが、前記第2のポリヌクレオチドの5’に位置する、請求項22~37のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項47】
前記第1の核酸ベクターが、前記第1のポリヌクレオチドの3’に位置する、N末端インテイン(N-インテイン)をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項22~37、45、及び46のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項48】
前記第2の核酸ベクターが、前記STRCプロモーターと前記第2のポリヌクレオチドとの間に位置する、C末端インテイン(C-インテイン)をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項45~47のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項49】
前記N-インテイン及び前記C-インテインが、分割インテイントランススプライシング系の成分である、請求項48に記載の2ベクター系。
【請求項50】
前記ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする前記第1のポリヌクレオチド及び前記ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする前記第2のポリヌクレオチドがイントロンを含まない、請求項22~49のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項51】
前記2ベクター系が、哺乳類の有毛細胞に全長ステレオシリンタンパク質の有毛細胞特異的発現を誘導する、請求項22~50のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項52】
前記ステレオシリンタンパク質が、配列番号3に対して少なくとも85%の配列同一性を有するヒトステレオシリンタンパク質である、請求項22~51のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項53】
前記第1のベクター及び前記第2のベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項22~52のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項54】
請求項19~21のいずれか1項に記載の核酸ベクターまたは請求項22~53のいずれか1項に記載の2ベクター系及び薬学的に許容される担体、希釈剤、もしくは賦形剤を含む、組成物。
【請求項55】
有毛細胞に異種発現産物を発現させる方法であって、前記有毛細胞を、請求項19~21のいずれか1項に記載の核酸ベクターと接触させることを含む、前記方法。
【請求項56】
ヒト有毛細胞にステレオシリンタンパク質を発現させる方法であって、前記ヒト有毛細胞を、請求項22~53のいずれか1項に記載の2ベクター系と接触させることを含む、前記方法。
【請求項57】
前記接触が、対象内において行われる、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
感音性難聴を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象を治療する方法であって、請求項19~21のいずれか1項に記載の核酸ベクター、請求項22~53のいずれか1項に記載の2ベクター系、または請求項54に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【請求項59】
耳鳴を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象を治療する方法であって、請求項19~21のいずれか1項に記載の核酸ベクターまたは請求項54に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【請求項60】
前庭機能障害を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象を治療する方法であって、請求項19~21のいずれか1項に記載の核酸ベクター、請求項22~53のいずれか1項に記載の2ベクター系、または請求項54に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【請求項61】
有毛細胞再生の誘導または増加を必要とする対象においてそれを行う方法であって、請求項19~21のいずれか1項に記載の核酸ベクターまたは請求項54に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【請求項62】
有毛細胞の成熟の誘導または増加を必要とする対象においてそれを行う方法であって、請求項19~21のいずれか1項に記載の核酸ベクターまたは請求項54に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【請求項63】
有毛細胞の損傷または細胞死の阻止または減少を必要とする対象においてそれを行う方法であって、請求項19~21のいずれか1項に記載の核酸ベクター、請求項22~53のいずれか1項に記載の2ベクター系、または請求項54に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【請求項64】
有毛細胞の生存の増加を必要とする対象においてそれを行う方法であって、請求項19~21のいずれか1項に記載の核酸ベクター、請求項22~53のいずれか1項に記載の2ベクター系、または請求項54に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【請求項65】
有毛細胞機能の改善を必要とする対象においてそれを行う方法であって、請求項19~21のいずれか1項に記載の核酸ベクター、請求項22~53のいずれか1項に記載の2ベクター系、または請求項54に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【請求項66】
STRCの発現の増加を必要とする対象においてそれを行う方法であって、請求項22~53のいずれか1項に記載の2ベクター系または請求項54に記載の組成物を治療的有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【請求項67】
前記対象が、難聴を有するかまたはそれを発症するリスクがある、請求項61~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記対象が、前庭機能障害を有するかまたはそれを発症するリスクがある、請求項61~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記対象が、STRCの変異を有する、請求項58、60、及び63~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記対象が、STRCの変異を有すると特定されている、請求項58、60、及び63~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記方法が、前記2ベクター系または前記組成物の投与前に、前記対象をSTRCの変異を有すると特定することをさらに含む、請求項58、60、及び63~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記対象が、聴覚消失、常染色体劣性16(DFNB16)を有する、請求項58、60、及び63~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記核酸ベクター、前記2ベクター系、または前記組成物が、内耳に局所投与される、請求項58~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
請求項1~18のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項19~21のいずれか1項に記載の核酸ベクター、請求項22~53のいずれか1項に記載の2ベクター系、または請求項54に記載の組成物を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
難聴は、公衆衛生上の主要な課題であり、学齢児童のほぼ15%及び65歳までの3人に1人が罹患していると推定されている。最も一般的なタイプの難聴は感音性難聴という、蝸牛有毛細胞等の内耳の細胞の異常または内耳から脳に投射する神経経路の異常により引き起こされるタイプの難聴である。感音性難聴は多くの場合、後天性であり、音響性外傷、疾患または感染症、頭部外傷、耳毒性薬物、及び加齢を含め、原因は様々である。また、内耳の発生及び機能に関与する遺伝子の変異等の遺伝的原因の感音性難聴もある。そのような90超の遺伝子の変異が同定されており、これには、常染色体劣性、常染色体優性、及びX連鎖の様式で遺伝する変異が含まれる。そのような常染色体劣性型感音性難聴の1つはSTRC遺伝子の変異と関連している。ステレオシリンは、染色体15q15上のSTRC遺伝子によってコードされる大型タンパク質であり、ゲノムの約19kbに及ぶ29のエクソンを含有する。STRC遺伝子は縦列重複し、その場合、第2のコピーがエクソン20に未成熟終止コドンを含有し、それによりSTRC偽遺伝子を生じさせる。先行研究では、常染色体劣性非症候性感音性難聴の家族においてSTRCの変異が同定されている(非特許文献1)。ステレオシリンタンパク質の発現は有毛細胞の毛束の不動毛に限られており、ステレオシリンタンパク質は、聴覚装置が正常に機能するために必要とされる先端部横方向のコネクター及び蓋膜接着クラウンを形成すると考えられている(非特許文献2、非特許文献3)。ステレオシリン欠損マウスは、接着欠損を伴う異常な有毛細胞束及び聴覚障害を示すことが示されている(非特許文献4)。
【0002】
蝸牛有毛細胞の発生、生存、または完全性を破壊する要因、例えば、遺伝子変異、疾患または感染症、耳毒性薬物、頭部外傷、及び加齢は同様に前庭有毛細胞に影響を与える場合があり、したがって、それらもまた、回転性めまい、浮動性めまい、及び平衡失調等の前庭機能障害に関与している。実際、有毛細胞の発生または機能を破壊する変異を有する患者は、難聴と前庭機能障害の両方、またはいずれかの障害を単独で呈し得る。米国の40歳以上の成人の約35%が平衡障害を示しており、この割合は年齢と共に劇的に増加し、日常活動の混乱、気分及び認知機能の低下、ならびに高齢者の転倒発生の増加をもたらす。
【0003】
近年、難聴及び前庭機能障害を治療するための取り組みでは、可能な解決法として遺伝子治療に対する注目が高まっているが、難聴及び前庭機能障害にそれぞれ頻繁に関与する蝸牛の有毛細胞または前庭系の有毛細胞を特異的に標的とする手法はほとんどない。感音性難聴及び前庭機能障害の治療のための、有毛細胞を標的とする新たな治療法が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Verpy et al.,Nat.Genet.29:345-9(2001)
【非特許文献2】Avan et al.,PNAS 116:25948-57(2019)
【非特許文献3】Verpy et al.,J.Comp.Neurol.519:194-210(2011)
【非特許文献4】Verpy et al.,Nature 456:255-8(2008)
【発明の概要】
【0005】
本発明は、特定の細胞型において、目的遺伝子、例えば、有毛細胞の機能、再生、もしくは生存を促進または改善する遺伝子の発現を促進するための組成物及び方法を提供する。本明細書に記載の組成物及び方法は、内耳の蝸牛有毛細胞及び前庭有毛細胞において導入遺伝子の発現を誘導することができるポリヌクレオチドに関する。本明細書に記載のポリヌクレオチドは、例えば、タンパク質または抑制性RNA等の所望の発現産物をコードするポリヌクレオチドに、機能的に連結され得、また、難聴(例えば、感音性難聴)または前庭機能障害(例えば、回転性めまい、浮動性めまい、平衡失調、両側前庭障害、動揺視、もしくは平衡障害)を治療または予防するためにヒト対象等の対象に投与され得る。本発明はまた、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された本明細書に記載のポリヌクレオチドを含有する第1の核酸ベクターと、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドを含有する第2の核酸ベクターとが含まれる2ベクター系も提供し、それらを、ステレオシリン遺伝子(STRC)の変異と関連する難聴または前庭機能障害を有するかまたはそれらを発症するリスクのある対象を治療するのに使用することができる。
【0006】
第1の態様では、本発明は、異種発現産物をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された、(i)配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)、あるいは(ii)配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530が含まれるその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターが含まれる、ポリヌクレオチドを提供する。
【0007】
別の態様では、本発明は、異種発現産物をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された、配列番号48または配列番号48のヌクレオチド280~560が含まれるその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターが含まれる、ポリヌクレオチドを提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は、前述の態様のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有する核酸ベクターを提供する。
別の態様では、本発明は、(i)配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)、あるいは(ii)配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530が含まれるその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターを含有する、核酸ベクターを提供する。
【0009】
別の態様では、本発明は、配列番号48または配列番号48のヌクレオチド280~560が含まれるその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターを含有する、核酸ベクターを提供する。
【0010】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有する。
【0011】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、STRCプロモーターは配列番号1からなる。
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530が含まれるその機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有する。
【0012】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には配列番号2のヌクレオチド252~537が含まれるか、またはそれからなる。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には配列番号2のヌクレオチド120~537が含まれるか、またはそれからなる。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には配列番号2のヌクレオチド35~530が含まれるか、またはそれからなる。
【0013】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、STRCプロモーターは配列番号2からなる。
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号48に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有する。
【0014】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号48の配列を有する。
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には配列番号48のヌクレオチド280~560が含まれるか、またはそれからなる。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には配列番号48のヌクレオチド280~564が含まれるか、またはそれからなる。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には配列番号48のヌクレオチド124~560が含まれるか、またはそれからなる。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には配列番号48のヌクレオチド124~564が含まれるか、またはそれからなる。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には配列番号48のヌクレオチド1~560が含まれるか、またはそれからなる。
【0015】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、異種発現産物をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されている。
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、異種発現産物は、タンパク質、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、遺伝子編集系の成分(例えば、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、もしくはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)等のヌクレアーゼ、またはガイドRNA(gRNA))、またはマイクロRNAである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、アクチン・ガンマ1(Actin Gamma 1)(ACTG1)、網膜Fascinアクチン束化タンパク質2(Fascin Actin-Bundling Protein 2、Retinal)(FSCN2)、ラディキシン(RDX)、POUクラス4ホメオボックス3(POU4F3)、TRIO及びF-アクチン結合タンパク質(TRIOBP)、Taperin(TPRN)、Xinアクチン結合リピート含有2(Xin Actin Binding Repeat Containing 2)(XIRP2)、アトーナル(Atonal)BHLH転写因子1(ATOH1)、転写抑制因子Growth Factor Independent 1(GFI1)、コリン作動性ニコチン性受容体アルファ9サブユニット(CHRNA9)、コリン作動性ニコチン性受容体アルファ10サブユニット(CHRNA10)、カルシウム及びインテグリン結合ファミリーメンバー3(CIB3)、カドヘリン23(CDH23)、プロトカドヘリン15(PCDH15)、キノシリン(Kinocilin)(KNCN)、Pejvakin(DFNB59)、MKRN2 Opposite Strand(MKRN2OS)、LIMホメオボックスタンパク質3(LHX3)、膜貫通チャネル様1(Transmembrane Channel Like 1)(TMC1)、ミオシン15(MYO15)、ミオシン7A(MYO7A)、ミオシン6(MYO6)、ミオシンIIIA(MYO3A)、ミオシンIIIB(MYO3B)、グルタレドキシンドメイン含有システインリッチタンパク質1(Glutaredoxin Domain Containing Cysteine-Rich Protein 1)(GRXCR1)、プロテインチロシンホスファターゼ、受容体型Q(PTPRQ)、後期角化膜(Late Cornified Envelope)6A(LCE6A)、リポキシゲナーゼ相同ドメイン含有タンパク質1(Lipoxygenase Homology Domain-containing Protein 1)(LOXHD1)、ADP-リボシルトランスフェラーゼ1(ART1)、ATPアーゼ細胞膜Ca2+輸送2(ATPase Plasma Membrane Ca2+ Transporting 2)(ATP2B2)、カルシウム及びインテグリン結合ファミリーメンバー2(CIB2)、電位依存性カルシウムチャネル補助サブユニットアルファ2デルタ4(CACNA2D4)、上皮成長因子受容体経路基質8(EPS8)、EPS8様2(EPS8L2)、エスピン(ESPN)、エスピン様(ESPNL)、ペリフェリン2(PRPH2)、溶質輸送体ファミリー8メンバーA2(SLC8A2)、ジンクフィンガーCCHCタイプ含有タンパク質12(Zinc Finger CCHC-Type Containing Protein 12)(ZCCHC12)、ロイシンリッチ膜貫通・O-メチルトランスフェラーゼドメイン含有(Leucine Rich Transmembrane and O-methyltransferase Domain Containing)(LRTOMT2、LRTOMT1)、USH1タンパク質ネットワーク成分ハーモニン(USH1C)、溶質輸送体ファミリー26メンバー5(SLC26A5)、Piezo型機械感受性イオンチャネル成分2(PIEZO2)、細胞外ロイシンリッチリピート及びフィブロネクチンIII型ドメイン含有1(Extracellular Leucine Rich Repeat and Fibronectin Type III Domain Containing 1)(ELFN1)、テトラトリコペプチドリピートタンパク質24(TTC24)、Dystrotelin(DYTN)、コイルドコイルグルタミン酸リッチタンパク質2(CCER2)、ロイシンリッチリピート及び膜貫通ドメイン含有タンパク質2(LRTM2)、電位依存性カリウムチャネルサブファミリーAメンバー10(KCNA10)、クラリン1(Clarin 1)(CLRN1)、クラリン2(Clarin 2)(CLRN2)、SKIファミリー転写コリプレッサー1(SKI Family Transcriptional Corepressor 1)(SKOR1)、Tctex1ドメイン含有タンパク質1(TCTEX1D1)、Fc受容体様B(FCRLB)、グルタレドキシンドメイン含有システインリッチタンパク質2(GRXCR2)、セルピンファミリーEメンバー3(SERPINE3)、Nescientヘリックス-ループヘリックス1(Nescient Helix-loop Helix 1)(NHLH1)、熱ショックタンパク質70(HSP70)、熱ショックタンパク質90(HSP90)、活性化転写因子6(ATF6)、真核生物翻訳開始因子2アルファキナーゼ3(PERK)、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ/エンドリボヌクレアーゼIRE1(IRE1)、ワーリン(Whirlin)(WHRN)、オンコモジュリン(OCM)、LIMホメオボックス1(Isl1)、膜貫通及びテトラトリコペプチドリピート含有4(TMTC4)、結合免疫グロブリンタンパク質(BIP)、または電位依存性カリウムチャネルサブファミリーQメンバー4(KCNQ4)である。
【0016】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、STRCプロモーターの3’末端と、タンパク質をコードするポリヌクレオチドの5’開始部位(ATG)とを連結するために連結ポリヌクレオチドが使用される。いくつかの実施形態では、連結ポリヌクレオチドには、コザック配列またはその一部が含まれる。いくつかの実施形態では、連結ポリヌクレオチドには、多重クローニング部位またはその一部が含まれる。
【0017】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、核酸ベクターは、ウイルスベクター、プラスミド、コスミド、または人工染色体である。いくつかの実施形態では、核酸ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、AAVベクターである。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eB、またはPHP.Sのカプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV1カプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV9カプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、7m8カプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、PHP.Sカプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、Anc80カプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、Anc80L65カプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV2カプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV2quad(Y-F)カプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、PHP.eBカプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV3カプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV4カプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV5カプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV6カプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV7カプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV8カプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、PHP.Bカプシドを有する。
【0018】
別の態様では、本発明は、(i)配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)、あるいは(ii)全長ステレオシリンタンパク質をコードしないでステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする第1のポリヌクレオチドに機能的に連結された、配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530が含まれるその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターが含まれる、核酸ベクターを提供する。いくつかの実施形態では、核酸ベクターは、2ベクター系における第1の核酸ベクターであって、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする第2のポリヌクレオチドを含有する第2の核酸ベクターがさらに含まれる、第1の核酸ベクターである。
【0019】
別の態様では、本発明は、全長ステレオシリンタンパク質をコードしないでステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする第1のポリヌクレオチドに機能的に連結された、配列番号48または配列番号48のヌクレオチド280~560が含まれるその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターが含まれる、核酸ベクターを提供する。いくつかの実施形態では、核酸ベクターは、2ベクター系における第1の核酸ベクターであって、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする第2のポリヌクレオチドを含有する第2の核酸ベクターがさらに含まれる、第1の核酸ベクターである。
【0020】
別の態様では、本発明は、(a)ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする第1のポリヌクレオチドに機能的に連結された、(i)配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)、あるいは(ii)配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530が含まれるその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターを含有する、第1の核酸ベクター、及び(b)ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする第2のポリヌクレオチドを含有する第2の核酸ベクター、が含まれる2ベクター系を提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は、(a)ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする第1のポリヌクレオチドに機能的に連結された、配列番号48または配列番号48のヌクレオチド280~560が含まれるその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターを含有する、第1の核酸ベクター、及び(b)ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする第2のポリヌクレオチドを含有する第2の核酸ベクター、が含まれる2ベクター系を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは第2のポリヌクレオチドと部分的に重複する。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチド及び第2のポリヌクレオチドは、長さが少なくとも200塩基(b)(例えば、少なくとも200b、300b、400b、500b、600b、700b、800b、900b、1.0キロベース(kb)、1.1kb、1.2kb、1.3kb、1.4kb、1.5kbまたはそれ以上)である重複領域を有する。いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターは、哺乳類細胞に導入された場合、相同組換えを受けて、全長ステレオシリンタンパク質をコードする組換えポリヌクレオチドを形成する。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクターには、第1のポリヌクレオチドの3’に位置するスプライスドナーシグナル配列が含まれ、第2の核酸ベクターには、第2のポリヌクレオチドの5’に位置するスプライスアクセプターシグナル配列が含まれる。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドは重複しない。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクターには、第1のポリヌクレオチドの3’に位置するスプライスドナーシグナル配列及びスプライスドナーシグナル配列の3’に位置する第1の組換え誘導領域が含まれ、第2の核酸ベクターには、第2の組換え誘導領域、組換え誘導領域の3’に位置するスプライスアクセプターシグナル配列、及びスプライスアクセプターシグナル配列の3’に位置する第2のポリヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドは重複しない。いくつかの実施形態では、第1の組換え誘導領域と第2の組換え誘導領域は同じである。いくつかの実施形態では、第1の組換え誘導領域及び第2の組換え誘導領域の各々はAP遺伝子断片である。いくつかの実施形態では、AP遺伝子断片には配列番号42~47のいずれか1つの配列が含まれるか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、AP遺伝子断片には配列番号45の配列が含まれるか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクターにはさらに、組換え誘導領域の3’に位置する分解シグナル配列が含まれ、第2の核酸ベクターにはさらに、組換え誘導領域とスプライスアクセプターシグナル配列との間に位置する分解シグナル配列が含まれる。
【0025】
いくつかの実施形態では、第2の核酸ベクターにはさらに、第2のポリヌクレオチドに機能的に連結された、(i)配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)、あるいは(ii)配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530が含まれるその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターが含まれ、かかるSTRCプロモーターは、第2のポリヌクレオチドの5’に位置している。
【0026】
いくつかの実施形態では、第2の核酸ベクターにはさらに、第2のポリヌクレオチドに機能的に連結された、配列番号48または配列番号48のヌクレオチド280~560が含まれるその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターが含まれ、かかるSTRCプロモーターは、第2のポリヌクレオチドの5’に位置している。
【0027】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第2の核酸ベクター内のSTRCプロモーターは、第1の核酸ベクター内のSTRCプロモーターと同じである(すなわち、同じヌクレオチド配列を有する)。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第2の核酸ベクター内のSTRCプロモーターは、第1の核酸ベクター内のSTRCプロモーターとは異なるヌクレオチド配列を有する。
【0028】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有する。
【0029】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、STRCプロモーターは配列番号1からなる。
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530が含まれるその機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有する。
【0030】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には配列番号2のヌクレオチド252~537が含まれるか、またはそれからなる。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には配列番号2のヌクレオチド120~537が含まれるか、またはそれからなる。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には配列番号2のヌクレオチド35~530が含まれるか、またはそれからなる。
【0031】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、STRCプロモーターは配列番号2からなる。
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号48に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有する。
【0032】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号48の配列を有する。
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には配列番号48のヌクレオチド280~560が含まれるか、またはそれからなる。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には配列番号48のヌクレオチド280~564が含まれるか、またはそれからなる。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には配列番号48のヌクレオチド124~560が含まれるか、またはそれからなる。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には配列番号48のヌクレオチド124~564が含まれるか、またはそれからなる。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には配列番号48のヌクレオチド1~560が含まれるか、またはそれからなる。
【0033】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第1の核酸ベクターにはさらに、第1のポリヌクレオチドの3’に位置し、かつ、それによるリーディングフレーム内にある、N末端インテイン(N-インテイン)をコードするポリヌクレオチドが含まれる。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第2の核酸ベクターにはさらに、STRCプロモーターと第2のポリヌクレオチドとの間に位置し、かつ、第2のポリヌクレオチドによるリーディングフレーム内にある、C末端インテイン(C-インテイン)をコードするポリヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、N-インテイン及びC-インテインは、分割インテイントランススプライシング系の成分である。
【0034】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第1及び/または第2のベクターにはインテイン分解シグナルが含まれる。いくつかの実施形態では、分解シグナルは、N-デグロン及び/またはC-デグロンである。いくつかの実施形態では、N-デグロン及び/またはC-デグロンは、独立して、CL1デグロン、PB29デグロン、SMNデグロン、CIITAデグロン、またはODCデグロンである。いくつかの実施形態では、分解シグナルは、E.coliジヒドロ葉酸レダクターゼ(ecDHFR)分解シグナルである。いくつかの実施形態では分解シグナルは、FKBP12分解ドメインである(Banaszynski et al.,Cell 126:995-1004,2006)。いくつかの実施形態では、分解シグナルは、PEST分解ドメインである(Rechsteiner and Rogers,Trends Biochem Sci.21:267-271,1996)。いくつかの実施形態では分解シグナルは、UbRタグユビキチン化シグナルである(Chassin et al.,Nat Commun.10:2013,2019)。いくつかの実施形態では分解シグナルは、ヒトELRBDの不安定化変異である(Miyazaki et al.,J.Am.Chem.Soc.,134:3942-3945,2012)。
【0035】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第1のベクター及び第2のベクターは、哺乳類(例えば、ヒト)の有毛細胞(例えば、内有毛細胞、外有毛細胞、I型前庭有毛細胞、またはII型前庭有毛細胞)に導入された場合、それぞれ、第1の融合タンパク質及び第2の融合タンパク質を生成し、第1の融合タンパク質には、ステレオシリンタンパク質のN末端部分とその3’に位置するN-インテインとが含まれ、第2の融合タンパク質には、C-インテインとその3’に位置するステレオシリンタンパク質のC末端部分とが含まれる。いくつかの実施形態では、第1の融合タンパク質のN-インテインのC末端と、第2の融合タンパク質のC-インテインのN末端とは、ペプチド結合を形成して、N末端からC末端に向かって、ステレオシリンタンパク質のN末端部分、N-インテイン、C-インテイン、及びステレオシリンタンパク質のC末端部分が含まれるポリペプチドを生成することができ、結合したN-インテインとC-インテインは、自己を切除して、ステレオシリンタンパク質のN末端部分のC末端と、ステレオシリンタンパク質のC末端部分のN末端とを連結し、それにより全長ステレオシリンタンパク質を生成することができる。
【0036】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、分割インテイントランススプライシング系は、1つ以上の細菌のDnaE遺伝子に由来する。いくつかの実施形態では、1つ以上の細菌は、Nostoc punctiforme(Npu)、Synechocystis sp.PCC6803(Ssp)、Fischerella sp.PCC9605(Fsp)、Scytonema tolypothrichoides(Sto)、Cyanobacteria bacterium SW_9_47_5、Nodularia spumigena(Nsp)、Nostoc flagelliforme(Nfl)、Crocosphaera watsonii(Cwa)WH8502、Chroococcidiopsis cubana(Ccu)CCALA043、Trichodesmium erythraeum(Ter)、Rhodothermus marinus(Rma)、Saccharomyces cerevisiae(Sce)、Saccharomyces castellii(Sca)、Saccharomyces unisporus(Sun)、Zygosaccharomyces bisporus(Zbi)、Torulaspora pretoriensis(Tpr)、Mycobacteria tuberculosis(Mtu)、Mycobacterium leprae(Mle)、Mycobacterium smegmatis(Msm)、Pyrococcus abyssi(Pab)、Pyrococcus horikoshii(Pho)、Coxiella burnetti(Cbu)、Coxiella neoformans(Cne)、Coxiella gattii(Cga)、Histoplasma capsulatum(Hca)、及びPorphyra purpurea chloroplast(Ppu)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、分割インテイントランススプライシング系は、望ましい安定性及び活性を有する分割インテインを操作するためのコンセンサス設計(例えば、Cfa)を特定するためのDnaEの多重配列アラインメント研究から誘導される。
【0037】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、N-インテインは、配列番号7、9、12、14、16~21、26、28、30、32、34、36、38、49、51、53、55、及び57のいずれか1つの配列を有し、C-インテインは、配列番号8、10、11、13、15、22~25、27、29、31、33、35、37、39、50、52、54、56、及び58のいずれか1つの配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号7の配列を有し、C-インテインは配列番号8の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号7の配列を有し、C-インテインは配列番号10の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号7の配列を有し、C-インテインは配列番号11の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号9の配列を有し、C-インテインは配列番号8の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号9の配列を有し、C-インテインは配列番号10の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号9の配列を有し、C-インテインは配列番号11の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号12の配列を有し、C-インテインは配列番号13の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号14の配列を有し、C-インテインは配列番号15の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号16の配列を有し、C-インテインは配列番号22の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号19の配列を有し、C-インテインは配列番号23の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号20の配列を有し、C-インテインは配列番号24の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号21の配列を有し、C-インテインは配列番号25の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号26の配列を有し、C-インテインは配列番号27の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号28の配列を有し、C-インテインは配列番号29の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号30の配列を有し、C-インテインは配列番号31の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号32の配列を有し、C-インテインは配列番号33の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号34の配列を有し、C-インテインは配列番号35の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号36の配列を有し、C-インテインは配列番号37の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号38の配列を有し、C-インテインは配列番号39の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは、配列番号16~21のいずれか1つの配列を有し、C-インテインは、配列番号22~25のいずれか1つの配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号49の配列を有し、C-インテインは配列番号50の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号51の配列を有し、C-インテインは配列番号52の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号53の配列を有し、C-インテインは配列番号54の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号55の配列を有し、C-インテインは配列番号56の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号57の配列を有し、C-インテインは配列番号58の配列を有する。いくつかの実施形態では、分割インテイントランススプライシング系には、リガンドとの接触時にのみタンパク質のトランススプライシングを実行する1つ以上のインテインが含まれる。いくつかの実施形態では、リガンドは、4-ヒドロキシタモキシフェン、ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、アミノ酸、及びヌクレオチドからなる群から選択される。
【0038】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、連結ポリヌクレオチドは、STRCプロモーターの3’末端と、第1のポリヌクレオチド及び/またはC-インテインをコードするポリヌクレオチドの5’開始部位(ATG)とを連結するために使用される。いくつかの実施形態では、連結ポリヌクレオチドには、コザック配列またはその一部が含まれる。いくつかの実施形態では、連結ポリヌクレオチドには、多重クローニング部位またはその一部が含まれる。
【0039】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第1の核酸ベクターにはさらに、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’及びフレーム内に配される。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第2の核酸ベクターにはさらに、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’及びフレーム内に配される。
【0040】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドも第2のポリヌクレオチドも全長ステレオシリンタンパク質をコードしない。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチド及び第2のポリヌクレオチドの各々が、ステレオシリンタンパク質配列の約半分をコードする。
【0041】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第2の核酸ベクターにはさらに、第2のポリヌクレオチドの3’にポリ(A)配列が含まれる。
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターには、本明細書に記載されるプロモーターの一部ではないSTRC非翻訳領域(UTR)は含まれない。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターには、STRC UTRが含まれる。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第1の核酸ベクターには、第1のポリヌクレオチドの5’に5’STRC UTRが含まれる。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第2の核酸ベクターには、第2のポリヌクレオチドの3’に3’STRC UTRが含まれる。
【0042】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質の部分をコードする第1及び第2のポリヌクレオチドにはイントロンが含まれない(例えば、第1及び第2のポリヌクレオチドが、STRC cDNAの部分である)。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質の部分をコードする第1及び第2のポリヌクレオチドには、イントロンが含まれる。
【0043】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、2ベクター系は、哺乳類の有毛細胞に全長ステレオシリンタンパク質の有毛細胞特異的発現を導くことができる。いくつかの実施形態では、哺乳類の有毛細胞はヒト有毛細胞である。いくつかの実施形態では、哺乳類の有毛細胞はマウス有毛細胞である。いくつかの実施形態では、有毛細胞は、蝸牛有毛細胞である。いくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は、外有毛細胞である。いくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は、内有毛細胞である。いくつかの実施形態では、有毛細胞は、前庭有毛細胞である。いくつかの実施形態では、前庭有毛細胞は、I型前庭有毛細胞である。いくつかの実施形態では、前庭有毛細胞は、II型前庭有毛細胞である。
【0044】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質は、配列番号3に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するヒトステレオシリンタンパク質である。いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質は、配列番号3の配列を有する。いくつかの実施形態では、ヒトステレオシリンタンパク質は、配列番号5に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態では、配列番号5に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するポリヌクレオチドは、配列番号3のステレオシリンタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、ヒトステレオシリンタンパク質は、配列番号5の配列を有するポリヌクレオチドによってコードされる。
【0045】
いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質は、配列番号4に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するマウスステレオシリンタンパク質である。いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質は、配列番号4の配列を有する。いくつかの実施形態では、マウスステレオシリンタンパク質は、配列番号6に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態では、配列番号6に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するポリヌクレオチドは、配列番号4のステレオシリンタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、マウスステレオシリンタンパク質は、配列番号6の配列を有するポリヌクレオチドによってコードされる。
【0046】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、第1のベクター及び第2のベクターは、ウイルスベクター、プラスミド、コスミド、または人工染色体である。いくつかの実施形態では、第1のベクター及び第2のベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、AAVベクター、アデノウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、第1のベクター及び第2のベクターは、AAVベクターである。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターの各々は、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eB、またはPHP.Sのカプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターの各々は、AAV1カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターの各々は、AAV9カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターの各々は、7m8カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターの各々は、PHP.Sカプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターの各々は、Anc80カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターの各々は、Anc80L65カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターの各々は、AAV2カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターの各々は、AAV2quad(Y-F)カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターの各々は、PHP.eBカプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターの各々は、AAV3カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターの各々は、AAV4カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターの各々は、AAV5カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターの各々は、AAV6カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターの各々は、AAV7カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターの各々は、AAV8カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターの各々は、PHP.Bカプシドを有する。
【0047】
別の態様では、本発明は、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の核酸ベクターまたは2ベクター系を含有する、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物にはさらに、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤が含まれる。
【0048】
別の態様では、本発明は、前述の態様または実施形態のいずれかに記載のポリヌクレオチド、核酸ベクター、または2ベクター系を含有する、細胞を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、有毛細胞である。いくつかの実施形態では、有毛細胞は、哺乳類の有毛細胞である。いくつかの実施形態では、哺乳類の有毛細胞はヒト有毛細胞である。いくつかの実施形態では、有毛細胞は、蝸牛有毛細胞である。いくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は、外有毛細胞である。いくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は、内有毛細胞である。いくつかの実施形態では、有毛細胞は、前庭有毛細胞である。いくつかの実施形態では、前庭有毛細胞は、II型前庭有毛細胞である。いくつかの実施形態では、前庭有毛細胞は、I型前庭有毛細胞である。
【0049】
別の態様では、本発明は、有毛細胞を、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の核酸ベクターまたは組成物と接触させることによって有毛細胞に異種発現産物を発現させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、接触は、インビボ(例えば、対象の内部)で行われる。いくつかの実施形態では、発現産物は、有毛細胞で特異的に発現される。
【0050】
別の態様では、本発明は、有毛細胞を、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の2ベクター系または組成物と接触させることによって有毛細胞にステレオシリンタンパク質を発現させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、接触は、インビボ(例えば、対象の内部)で行われる。いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質は、有毛細胞で特異的に発現される。
【0051】
別の態様では、本発明は、難聴(例えば、感音性難聴、非症候性難聴、オーディトリー・ニューロパチー、または聴覚消失)を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象を、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の核酸ベクター、2ベクター系、または組成物を有効量にて対象の内耳に投与することによって治療する方法を提供する。
【0052】
別の態様では、本発明は、耳鳴を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象を、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の核酸ベクターまたは組成物を有効量にて対象の内耳に投与することによって治療する方法を提供する。
【0053】
別の態様では、本発明は、前庭機能障害を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象を、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の核酸ベクター、2ベクター系、または組成物を有効量にて対象の内耳に投与することによって治療する方法を提供する。
【0054】
別の態様では、本発明は、両側前庭障害を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象を、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の核酸ベクター、2ベクター系、または組成物を有効量にて対象の内耳に投与することによって治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、両側前庭障害は、耳毒性薬物誘発性両側前庭障害である。
【0055】
別の態様では、本発明は、動揺視を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象を、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の核酸ベクター、2ベクター系、または組成物を有効量にて対象の内耳に投与することによって治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、動揺視は、耳毒性薬物誘発性の動揺視である。
【0056】
別の態様では、本発明は、平衡障害を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象を、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の核酸ベクター、2ベクター系、または組成物を有効量にて対象の内耳に投与することによって治療する方法を提供する。
【0057】
別の態様では、本発明は、有毛細胞の再生の誘導または増加を必要とする対象において、それを、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の核酸ベクターまたは組成物を有効量にて対象の内耳に投与することによって行う方法を提供する。
【0058】
別の態様では、本発明は、有毛細胞の維持の増加を必要とする対象において、それを、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の核酸ベクター、2ベクター系、または組成物を有効量にて対象の内耳に投与することによって行う方法を提供する。
【0059】
別の態様では、本発明は、有毛細胞の生存の増加を必要とする対象において、それを、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の核酸ベクター、2ベクター系、または組成物を有効量にて対象の内耳に投与することによって行う方法を提供する。
【0060】
別の態様では、本発明は、有毛細胞の成熟の誘導または増加を必要とする対象において、それを、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の核酸ベクターまたは組成物を有効量にて対象の内耳に投与することによって行う方法を提供する。
【0061】
別の態様では、本発明は、耳毒性薬物誘発性の有毛細胞の損傷または細胞死の阻止または減少を必要とする対象において、それを、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の核酸ベクター、2ベクター系、または組成物を有効量にて対象の内耳に投与することによって行う方法を提供する。
【0062】
別の態様では、本発明は、有毛細胞の損傷または細胞死の阻止または減少を必要とする対象において、それを、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の核酸ベクター、2ベクター系、または組成物を有効量にて対象の内耳に投与することによって行う方法を提供する。
【0063】
別の態様では、本発明は、有毛細胞機能の改善を必要とする対象において、それを、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の核酸ベクター、2ベクター系、または組成物を有効量にて対象の内耳に投与することによって行う方法を提供する。
【0064】
別の態様では、本発明は、蓋膜への毛束の接着(例えば、OHCの毛束の接着)の増大または改善を必要とする対象において、それを行う方法であって、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の核酸ベクター、2ベクター系、または組成物を有効量にて対象の内耳に投与することが含まれる方法を提供する。
【0065】
別の態様では、本発明は、STRCの発現(例えば、野生型ステレオシリンタンパク質を生成するための、例えば、野生型STRCの発現)の増加を必要とする対象(例えば、対象の有毛細胞)において、それを、前述の態様または実施形態のいずれかに記載の2ベクター系または組成物を治療的有効量にて対象の内耳に投与することによって行う方法を提供する。
【0066】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、有毛細胞は、哺乳類の有毛細胞である。いくつかの実施形態では、哺乳類の有毛細胞はヒト有毛細胞である。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、有毛細胞は、STRCを内因性発現する有毛細胞である。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、有毛細胞は、蝸牛有毛細胞である。いくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は、外有毛細胞である。いくつかの実施形態では、蝸牛有毛細胞は、内有毛細胞である。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、有毛細胞は、前庭有毛細胞である。いくつかの実施形態では、前庭有毛細胞は、II型前庭有毛細胞である。いくつかの実施形態では、前庭有毛細胞は、I型前庭有毛細胞である。
【0067】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、難聴(例えば、非症候性難聴、オーディトリー・ニューロパチー、または聴覚消失等の感音性難聴)を有するか、またはそれを発症するリスクがある。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、難聴は、遺伝性難聴である。いくつかの実施形態では、遺伝性難聴は、常染色体優性難聴、常染色体劣性難聴、またはX連鎖性難聴である。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、難聴は、後天性難聴である。いくつかの実施形態では、後天性難聴は、騒音性難聴、加齢性難聴、疾患もしくは感染症関連難聴、頭部外傷関連難聴、または耳毒性薬物誘発性難聴である。
【0068】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、前庭機能障害を有するか、またはそれを発症するリスクがある。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、前庭機能障害は、回転性めまい、浮動性めまい、平衡失調、両側前庭障害、動揺視、または平衡障害である。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、前庭機能障害は、加齢性前庭機能障害、頭部外傷関連前庭機能障害、疾患もしくは感染症関連前庭機能障害、または耳毒性薬物誘発性前庭機能障害である。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、前庭機能障害は、遺伝子変異と関連する。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、前庭機能障害は、特発性前庭機能障害である。
【0069】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、耳毒性薬物は、アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、カナマイシン、バンコマイシン、もしくはアミカシン)、抗腫瘍薬(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチン等の白金含有化学療法剤)、エタクリン酸、フロセミド、サリチル酸塩(例えば、アスピリン、特に高用量時)、またはキニーネである。
【0070】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、難聴、前庭機能障害、または耳鳴は、有毛細胞の消失、有毛細胞の損傷、または有毛細胞(例えば、蝸牛及び/または前庭の有毛細胞)の機能障害と関連する。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、難聴または前庭機能障害は、有毛細胞の不動毛束の異常な傾きまたは毛束(例えば、OHCの毛束)と蓋膜の間の結合性異常と関連する。
【0071】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、STRCの変異を有する。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、STRCの変異を有すると特定されている。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、方法にはさらに、2ベクター系または医薬組成物の投与前に、対象をSTRCの変異を有すると特定することが含まれる。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、聴覚消失、常染色体劣性16(DFNB16)を有する。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、DFNB16を有すると特定されている。
【0072】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、方法にはさらに、核酸ベクター、2ベクター系、または組成物の投与前に、対象の聴力を評価すること(例えば、聴力検査、聴性脳幹反応(ABR)、蝸電図(ECOG)、または耳音響放射等の標準的検査を使用して聴力を評価すること)が含まれる。
【0073】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、方法にはさらに、核酸ベクター、2ベクター系、または組成物の投与後に、対象の聴力を評価すること(例えば、聴力検査、ABR、ECOG、または耳音響放射等の標準的検査を使用して聴力を評価すること)が含まれる。
【0074】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、方法にはさらに、核酸ベクター、2ベクター系、または組成物の投与前に、対象の前庭機能を評価すること(例えば、電気眼振図(ENG)もしくはビデオ式眼振計(VNG)等の標準的検査、前庭動眼反射(VOR)の検査(例えば、ベッドサイドでも、またビデオヘッドインパルス検査(VHIT)を使用しても実施することができるヘッドインパルス検査(Halmagyi-Curthoys検査)、または温度反射検査(caloric reflex test))、重心動揺検査、回転椅子による検査(rotary-chair testing)、ECOG、前庭誘発筋電位検査(VEMP)、またはMancini and Horak,Eur J Phys Rehabil Med,46:239(2010)に記載があるもののような専門外来での平衡感覚検査を使用して前庭機能を評価すること)が含まれる。
【0075】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、方法にはさらに、核酸ベクター、2ベクター系、または組成物の投与後に、対象の前庭機能を評価すること(例えば、ENG、VNG、VORの検査、重心動揺検査、回転椅子による検査(rotary-chair testing)、ECOG、VEMP、または専門外来での平衡感覚検査等の標準的検査を使用して前庭機能を評価すること)が含まれる。
【0076】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、核酸ベクター、2ベクター系、または組成物は、局所投与される。いくつかの実施形態では、核酸ベクター、2ベクター系、または組成物は、内耳に投与される。いくつかの実施形態では、核酸ベクター、2ベクター系、または組成物は、中耳に投与される。いくつかの実施形態では、核酸ベクター、2ベクター系、または組成物は、半規管に投与される。いくつかの実施形態では、核酸ベクター、2ベクター系、または組成物は、経鼓室投与または鼓室内投与される。いくつかの実施形態では、核酸ベクター、2ベクター系、または組成物は、外リンパ中に投与される。いくつかの実施形態では、核酸ベクター、2ベクター系、または組成物は、内リンパ中に投与される。いくつかの実施形態では、核酸ベクター、2ベクター系、または組成物は、卵円窓に対して、またはそれを介して投与される。いくつかの実施形態では、核酸ベクター、2ベクター系、または組成物は、正円窓に対して、またはそれを介して投与される。
【0077】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、2ベクター系のベクターは、同時に投与される。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、2ベクター系のベクターは、順次に投与される。
【0078】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、核酸ベクター、2ベクター系、または組成物は、前庭機能障害を予防するかもしくは減少させる、前庭機能障害の発症を遅延させる、前庭機能障害の進行を減速させる、前庭機能を改善する、難聴を予防もしくは軽減する、耳鳴を予防もしくは軽減する、難聴の発症を遅延させる、難聴の進行を減速させる、聴力を改善する、語音弁別を改善する、有毛細胞機能を改善する、有毛細胞でのSTRCの発現を増加させる、蝸牛及び/または前庭の有毛細胞数を増加させる、蝸牛及び/または前庭の有毛細胞の成熟を高める、蝸牛及び/または前庭の有毛細胞の再生を増加させる、蝸牛及び/または前庭の有毛細胞の機能を改善する、蝸牛及び/または前庭の有毛細胞の損傷を阻止もしくは軽減する、蝸牛及び/または前庭の有毛細胞死を阻止するかもしくは減少させる、蓋膜への毛束の接着(例えば、OHCの毛束の接着)を改善する、あるいは蝸牛及び/または前庭の有毛細胞の生存を促進するかもしくは増加させるのに十分な量で投与される。
【0079】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、ヒト対象である。
別の態様では、本発明は、前述の態様または実施形態のいずれかに記載のポリヌクレオチド、核酸ベクター、2ベクター系、または組成物を含有する、キットを提供する。
【0080】
定義
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、記載されている値を10%以内で上回っているか下回っている値を指す。
【0081】
本明細書で使用される場合、「投与」とは、治療剤(例えば、導入遺伝子に機能的に連結されたSTRCプロモーターを含有する核酸ベクター)を任意の有効な経路によって対象に提供するかまたは与えることを指す。例示的な投与経路を本明細書において以下に記載する。
【0082】
本明細書で使用される場合、「内耳に投与すること」という表現は、内耳細胞への形質導入を可能にする任意の経路によって対象に対して本明細書に記載される治療剤を提供するかまたは与えることを指す。内耳への例示的な投与経路には、外リンパもしくは内リンパ中への投与、例えば、卵円窓、正円窓、もしくは半規管(例えば、水平半規管)への、もしくはそれを介した投与、または経鼓室注射もしくは鼓室内注射による投与、例えば、有毛細胞への投与が含まれる。
【0083】
本明細書で使用される場合、「細胞型」という用語は、遺伝子発現データに基づいて統計的に分けることができる表現型を共有している細胞の一群を指す。例えば、共通の細胞型の細胞は、同様の構造的及び/または機能的性質、例えば、同様の遺伝子活性化パターン及び抗原提示特性を共有し得る。共通の細胞型の細胞には、共通の組織(例えば、上皮組織、神経組織、結合組織、もしくは筋組織)から分離されるもの、及び/または生物における共通の器官、組織系、血管、もしくは他の構造及び/または領域から分離されるものが含まれ得る。
【0084】
本明細書で使用される場合、「蝸牛有毛細胞」という用語は、音の感知に関与する、内耳の特殊化した細胞群を指す。蝸牛有毛細胞には、内有毛細胞と外有毛細胞の2種類がある。蝸牛有毛細胞の損傷及び蝸牛有毛細胞機能を破壊する遺伝子変異は、難聴及び聴覚消失に関与している。
【0085】
本明細書で使用される場合、「保存的変異」、「保存的置換」、及び「保存的アミノ酸置換」という用語は、1つ以上のアミノ酸から、同様の物理化学的性質、例えば、極性、静電荷、及び立体体積を示す1つ以上の異なるアミノ酸への置換を指す。これらの性質を、天然に存在する20のアミノ酸各々について下表1にまとめる。
【0086】
【表1】
【0087】
この表から、保存的アミノ酸ファミリーには、(i)G、A、V、L、及びI、(ii)D及びE、(iii)C、S及びT、(iv)H、K及びR、(v)N及びQ、ならびに(vi)F、Y及びWが含まれることが認識される。したがって、保存的な変異または置換は、あるアミノ酸を同じアミノ酸ファミリーメンバーで置換するものである(例えば、ThrをSerに、またはArgをLysに置換)。
【0088】
本明細書で使用される場合、「分解シグナル配列」という用語は、配列(例えば、アミノ酸配列に翻訳することができるヌクレオチド配列)であって、それを含有しているポリペプチドの分解を媒介する配列を指す。本開示の核酸ベクターに分解シグナル配列を含めて、組換え及び/またはスプライシングを受けなかったステレオシリンタンパク質の部分の発現を減少させるかもしくは阻止することができる。
【0089】
本明細書で使用される場合の「由来」及び「誘導体」という用語は、対応する全長野生型の核酸、ペプチド、もしくはタンパク質と比較して、1つ以上の変異及び/または化学修飾を含む核酸、ペプチド、もしくはタンパク質、またはそのバリアントもしくは類似体を指す。核酸が関与する化学修飾の非限定的な例としては、例えば、塩基部分、糖部分、リン酸部分、リン酸-糖骨格、またはそれらの組み合わせに対する修飾が挙げられる。
【0090】
本明細書で使用される場合、本明細書に記載の組成物、ベクターコンストラクト、またはウイルスベクターの「有効量」、「治療的有効量」、及び「十分な量」という用語は、哺乳類、例えば、ヒトを含め、対象に投与した場合に、臨床結果を含め、有益な結果または所望の結果を生じさせるのに十分な量を指し、したがって、「有効量」またはその同義語は、それが適用される状況に応じて異なる。例えば、感音性難聴または前庭機能障害の治療との関連では、それは、組成物、ベクターコンストラクト、またはウイルスベクターの投与がない場合に得られる反応と比較して治療反応を達成するのに十分な、その組成物、ベクターコンストラクト、またはウイルスベクターの量である。そのような量に相当する本明細書に記載される所与の組成物の量は、様々な要因、例えば、所与の薬剤、医薬製剤、投与経路、疾患または障害の種類、治療される対象または宿主の特徴(例えば、年齢、性別、重量)等によって異なってくるが、それにもかかわらず、当業者が日常的に決定することができる。また、本明細書で使用される場合、本開示の組成物、ベクターコンストラクト、またはウイルスベクターの「治療的有効量」は、対照と比較して、対象に有益な結果または所望の結果をもたらす量である。本明細書で定義されるように、本開示の組成物、ベクターコンストラクト、またはウイルスベクターの治療的有効量は、当該技術分野で公知の日常的な方法によって当業者により容易に決定され得る。投与レジメンは、最適な治療効果が得られるよう調整され得る。
【0091】
本明細書で使用される場合、「内在性」という用語は、特定の生物(例えば、ヒト)において、または生物内部の特定の位置(例えば、器官、組織、またはヒト細胞、例えば、ヒト有毛細胞等の細胞)において、天然に見出される分子(例えば、ポリペプチド、核酸、または補因子)を指す。
【0092】
本明細書で使用される場合、「発現する」という用語は、(1)DNA配列からの(例えば、転写による)RNA鋳型の生成、(2)RNA転写産物の(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/または3’末端プロセシングによる)プロセシング、(3)ポリペプチドまたはタンパク質へのRNAの翻訳、及び(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾というイベントのうちの1つ以上を指す。「発現産物」という用語は、これらのイベントのいずれかによって生成されるタンパク質またはRNA分子を指す。
【0093】
本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、特定の生物(例えば、ヒト)において、または生物内部の特定の位置(例えば、器官、組織、またはヒト細胞、例えば、ヒト有毛細胞等の細胞)において、天然には見出されない分子(例えば、ポリペプチド、核酸、または補因子)を表す。外因性材料には、生物またはそこから抽出された培養物質に対して外部供給源から提供されるものが含まれる。
【0094】
本明細書で使用される場合、「エクソン」という用語は、遺伝子のコード領域内の領域を指し、そのヌクレオチド配列が、対応するタンパク質のアミノ酸配列を決定する。エクソンという用語はまた、遺伝子から転写されたRNAの対応する領域を指す。エクソンは、mRNA前駆体へと転写され、遺伝子の選択的スプライシングに応じて成熟mRNAに含まれる場合がある。プロセシングの後に成熟mRNAに含まれるエクソンは、タンパク質へと翻訳され、その場合、エクソンの配列がタンパク質のアミノ酸組成を決定する。
【0095】
本明細書で使用される場合、「機能的部分」という用語は、本明細書に記載されるプロモーター配列(例えば、STRCプロモーター配列)に言及している場合、表2に記載のプロモーター配列(例えば、配列番号2または配列番号48)よりも短く、かつ、RNAポリメラーゼを動員して、自身が機能的に連結されている遺伝子の転写を駆動することができるヌクレオチド配列を指す。例えば、本開示との関連において、配列番号2のマウスSTRCプロモーター(537塩基(b))の機能的部分は、配列番号2の配列を有する場合もあれば、そのヌクレオチド252~537を含む場合もある。配列番号2のSTRCプロモーターの他の機能的部分は、配列番号2の配列を有する場合もあれば、そのヌクレオチド120~537またはヌクレオチド35~530を含む場合もある。別の例では、配列番号48のヒトSTRCプロモーター(564塩基(b))の機能的部分は、配列番号48の配列を有する場合もあれば、そのヌクレオチド280~560を含む場合もある。配列番号48のSTRCプロモーターの他の機能的部分は、配列番号48の配列を有する場合もあれば、そのヌクレオチド280~564、ヌクレオチド124~560、ヌクレオチド124~564、ヌクレオチド61~560(配列番号1に記載)、またはヌクレオチド1~560を含む場合もある。
【0096】
本明細書で使用される場合、「異種」という用語は、天然には存在しない、要素の組み合わせを指す。例えば、異種導入遺伝子とは、導入遺伝子であって、それが機能的に連結されているプロモーターによって天然で発現されることのない導入遺伝子を指す。
【0097】
本明細書で使用される場合、「有毛細胞」という用語は、聴覚(すなわち、蝸牛有毛細胞)の情報または前庭(すなわち、前庭有毛細胞)の情報を伝達する内耳の特殊化した感覚細胞を指す。有毛細胞は、細胞の頂端面から出ている不動毛の束を特徴とする。聴覚(すなわち、蝸牛の)有毛細胞の例には、内有毛細胞(IHC)及び外有毛細胞(OHC)が含まれる。前庭有毛細胞の例には、I型前庭有毛細胞及びII型前庭有毛細胞が含まれる。
【0098】
本明細書で使用される場合、「有毛細胞特異的な発現」という用語は、内耳の他の細胞型(例えば、ラセン神経節ニューロン、グリア、または他の内耳細胞型)と比較して、主に有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞)内でのRNA転写産物もしくはポリペプチドの生成を指す。導入遺伝子の有毛細胞特異的な発現は、内耳の様々な細胞型間(例えば、有毛細胞対非有毛細胞)の導入遺伝子発現(例えば、RNAまたはタンパク質の発現)を、任意の標準的技術(例えば、定量的RT PCR、免疫組織化学染色、ウエスタンブロット分析、またはプロモーターに機能的に連結されたレポーター(例えば、GFP)の蛍光の測定)を使用して比較することによって確認することができる。有毛細胞特異的プロモーターは、それが機能的に連結されている導入遺伝子の発現(例えば、RNAまたはタンパク質の発現)を有毛細胞に誘導し、これが、以下の内耳細胞型のうち少なくとも3つ(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、またはそれ以上)と比較して少なくとも50%高い(例えば、50%、75%、100%、125%、150%、175%、200%またはそれ以上高い):境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列ダイテルス細胞、第2列ダイテルス細胞、第3列ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、内溝細胞、外溝細胞、ラセン隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の辺縁細胞、ラセン神経節ニューロン、シュワン細胞。有毛細胞特異的プロモーターは、必ずしもすべての有毛細胞に発現を誘導するわけではないが、内有毛細胞、外有毛細胞、I型前庭有毛細胞、またはII型前庭有毛細胞のうちの少なくとも1つの有毛細胞型に発現を誘導する。本明細書に記載されるSTRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、及び配列番号48、及びそれらの一部)は、有毛細胞特異的プロモーターである。
【0099】
本明細書で使用される場合、「増加させること」及び「減少させること」という用語は、それぞれ、参照に比べて指標の機能、発現、または活性の量がより大きくまたは小さくなるよう調節することを指す。例えば、本明細書に記載の方法での組成物の投与後、本明細書に記載される指標(例えば、導入遺伝子発現)のマーカーの量は、対象において、投与前のマーカーの量と比べて少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは98%またはそれ以上増加または減少され得る。一般に、指標は、投与後に、治療レジメンが開始されてから投与により記述の効果があった時点で、例えば、少なくとも1週間後、1か月後、3か月後、または6か月後に測定される。
【0100】
本明細書で使用される場合、「タンパク質イントロン」とも呼ばれる「インテイン」という用語は、典型的には100~900アミノ酸残基長であり、かつ、自己切除及び隣接タンパク質断片(「エクステイン」)のペプチド結合によるライゲーションをすることができる、タンパク質の部分を指す。インテインは、タンパク質スプライシング時に生成される。用語「インテイン」には、マキシインテイン、ミニインテイン、トランススプライシングインテイン、及びアラニンインテインが含まれる、4つの異なるクラスのインテインが包含される。マキシインテインとは、エンドヌクレアーゼドメインを含有するタンパク質のN末端スプライシング領域及びC末端スプライシング領域を指す。エンドヌクレアーゼドメインは、「ホーミングエンドヌクレアーゼ遺伝子」または「HEG」としても知られ、イントロン内部の独立型遺伝子として、他のタンパク質とのタンパク質融合体として、または自己スプライシングインテインとしてコードされるエンドヌクレアーゼのクラスを指す。HEGは一般に、非常に少ない、標的とされることが多いDNA領域を加水分解する。HEGがDNA断片を加水分解すると、HEGをコードする遺伝子は典型的には、自身を切断部位に組み込み、それによりそのアレル頻度を増加させる。ミニインテインとは、エンドヌクレアーゼドメインを欠く、N末端スプライシングドメイン及びC末端スプライシングドメインを指す。トランススプライシングインテインとは、2つ以上のドメインに分割され、それらがさらにN末端とC末端とに分割されるインテインを指す。アラニンインテインとは、システインまたはセリンではなくアラニンのスプライシング接合部を有するインテインを指す。前駆体タンパク質のインテインが2つの遺伝子から生じる場合があり、そのような場合、そのインテインは分割「インテイン」と命名される。
【0101】
本明細書で使用される場合、「イントロン」という用語は、遺伝子のコード領域内の領域であって、そのヌクレオチド配列が、対応するタンパク質のアミノ酸配列に翻訳されない領域を指す。イントロンという用語はまた、遺伝子から転写された、RNAの対応する領域も指す。イントロンは、mRNA前駆体へと転写されるが、プロセシング中に除去され、成熟mRNAには含まれない。
【0102】
本明細書で使用される場合、「局所に」または「局所投与」とは、全身的作用ではなく局所的作用が意図される体の特定の部位における投与を意味する。局所投与の例は、対象の皮表、吸入、関節内、髄腔内、腟内、硝子体内、子宮内、病巣内の投与、リンパ節投与、腫瘍内投与、内耳への投与、及び粘膜への投与であり、かかる投与は、全身的作用ではなく局所的作用を有することが意図される。
【0103】
本明細書で使用される場合、「機能的に連結された」という用語は、第1の分子が第2の分子の機能に影響を与えるよう分子が配置されている、第2の分子に連結された第1の分子を指す。2つの分子は、単一の連続する分子の一部である場合もあればそうでない場合もあり、また、隣接する場合もあればそうでない場合もある。例えば、プロモーターが、細胞内の目的の転写可能ポリヌクレオチド分子の転写を調節する場合、そのプロモーターは、転写可能なポリヌクレオチド分子に機能的に連結されている。さらに、転写調節エレメントの2つの部分が連結されていて、一方の部分の転写活性化機能が、他方の部分の存在による悪影響を受けないようにされている場合、それらは互いに機能的に連結されている。2つの転写調節エレメントは、リンカーポリヌクレオチド(例えば、介在非コードポリヌクレオチド)により互いに機能的に連結されている場合もあれば、介在ヌクレオチドの存在を伴わずに互いに機能的に連結されている場合もある。
【0104】
本明細書で使用される場合、「プラスミド」という用語は、中に追加のDNAセグメントが連結され得る染色体外環状二本鎖DNA分子を指す。プラスミドは、核酸分子であるベクターの一種であり、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子である。ある特定のプラスミドは、それらが導入されている宿主細胞内で自律複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌プラスミド及び哺乳類用エピソーム性プラスミド)。他のベクター(例えば、哺乳類用非エピソーム性ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノム内に組み込まれることが可能であり、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。ある特定のプラスミドは、それらが機能的に連結されている遺伝子の発現を導くことができる。
【0105】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオシドのポリマーを指す。典型的には、ポリヌクレオチドは、ホスホジエステル結合により連結された、DNAまたはRNAに天然に見出されるヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)で構成される。この用語には、天然に存在する核酸中に見出されるか否かを問わず、化学的または生物学的に修飾された塩基、修飾された骨格等を含有するヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体を含む分子が包含され、そのような分子が、ある特定の用途に好ましい場合がある。本出願でポリヌクレオチドに言及されている場合、DNA、RNAの両方、及びいずれの場合にも一本鎖と二本鎖の両方の形態(及び各一本鎖分子の相補鎖)が提供されることが理解される。本明細書で使用される場合の「ポリヌクレオチド配列」とは、ポリヌクレオチド材料それ自体、及び/または特定の核酸を生化学的に特徴付ける配列情報(すなわち、塩基の略語として使用される一連の文字)を指し得る。本明細書で提示されるポリヌクレオチド配列は、別段に示されていない限り、5’から3’の方向で提示される。
【0106】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼが結合するDNA上の認識部位を指す。ポリメラーゼは導入遺伝子の転写を駆動する。
参照ポリヌクレオチドまたは参照ポリペプチド配列に関しての「配列同一性パーセント(%)」は、配列をアラインメントし、最大の配列同一性パーセントが達成されるよう必要に応じてギャップを導入した後に、参照ポリヌクレオチドまたは参照ポリペプチド配列中の核酸またはアミノ酸と同一である、候補配列中の核酸またはアミノ酸のパーセンテージと定義される。核酸またはアミノ酸の配列同一性パーセントの決定を目的としたアラインメントは、当業者の能力の範囲内である様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、またはMegalignソフトウェア等の公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたり最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含め、配列をアラインメントするための適切なパラメータを決定することができる。例えば、配列同一性パーセント値は、配列比較コンピュータプログラムBLASTを使用して生成され得る。実例として、所与の核酸またはアミノ酸の配列Bに対する(to)、もしくはそれとの、もしくはそれに対する(against)、所与の核酸またはアミノ酸の配列Aの配列同一性パーセント(これは、代わりに、所与の核酸またはアミノ酸の配列Bに対して(to)、もしくはそれと、もしくはそれに対して(against)、ある特定の配列同一性パーセントを有する所与の核酸またはアミノ酸の配列A、と表現することができる)は、以下のとおり計算され:
100×(分数X/Y)
式中、Xは、AとBについて配列アラインメントプログラム(例えば、BLAST)のアラインメントにおいてそのプログラムにより完全な一致としてスコアリングされた、ヌクレオチドまたはアミノ酸の数であり、Yは、B中の核酸総数である。核酸またはアミノ酸の配列Aの長さが核酸またはアミノ酸の配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAの配列同一性パーセントは、Aに対するBの配列同一性パーセントと等しくはならないことは認識されよう。
【0107】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、対象を侵しているかもしくは侵し得る、特定の疾患または状態を予防、治療または管理するために哺乳類(例えば、ヒト)等の対象に投与される、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、及び/または担体と任意選択で組み合わせて治療剤を含有する、混合物を指す。
【0108】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、過渡の毒性、刺激、アレルギー反応、及び他の問題となる合併症を伴うことなく、妥当なベネフィット/リスク比に見合う、哺乳類(例えば、ヒト)等の対象の組織との接触に好適な化合物、材料、組成物及び/または剤形を指す。
【0109】
本明細書で使用される場合、「組換え誘導領域」という用語は、2つの異なる配列間の組換えを媒介する相同領域を指す。
本明細書で使用される場合、「調節配列」という用語には、プロモーター、エンハンサー、及び他の、ポリヌクレオチドの転写または翻訳を制御する発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)が含まれる。そのような調節配列は、例えば、Goeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185(Academic Press,San Diego,CA,1990)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0110】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、対象から分離された検体(例えば、血液、血液成分(例えば、血清または血漿)、尿、唾液、羊水、脳脊髄液、組織(例えば、胎盤または真皮の)、膵液、絨毛膜絨毛試料、及び細胞)を指す。
【0111】
本明細書で使用される場合、「ステレオシリン」及び「STRC」(DFNB16としても知られる)という用語はそれぞれ、STRC遺伝子によってコードされるタンパク質、及びこのタンパク質をコードする遺伝子を指す。ヒトでは、STRC遺伝子は縦列重複し、その場合、第2のコピーがエクソン20に未成熟終止コドンを含有し、それによりSTRC偽遺伝子を生じさせる。本開示との関連では、STRCは、STRC偽遺伝子を指さない。先行研究では、常染色体劣性非症候性感音性難聴のヒト患者においてSTRCの全長コピーにおける変異が同定されている(Verpy et al.,Nat.Genet.29:345-9(2001))。ステレオシリンタンパク質の発現は、有毛細胞の毛束の不動毛に限られている。ステレオシリンは、聴覚装置が正常に機能するために必要とされる先端部横方向のコネクター及び蓋膜接着クラウンを形成すると考えられている(Avan et al.,PNAS 116:25948-57(2019)、Verpy et al.,J.Comp.Neurol.519:194-210(2011))。ステレオシリン欠損マウスは、接着欠損を伴う異常な有毛細胞束及び聴覚障害を示すことが示されている(Verpy et al.,Nature 456:255-8(2008))。本開示は、全長ステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供し、これは、本明細書に記載されるベクター系に組み込んだ場合、難聴(例えば、感音性難聴)または前庭機能障害(例えば、回転性めまい、浮動性めまい、平衡失調、両側前庭障害、動揺視、もしくは平衡障害)の治療を必要とする対象においてそれを行うための治療剤として使用され得る。「ステレオシリン」及び「STRC」という用語はまた、野生型ステレオシリンタンパク質及びそれをコードする核酸それぞれのバリアント、例えば、野生型ステレオシリンタンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号3もしくは配列番号4)に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは99.9%の同一性、もしくはそれ以上の配列同一性)を有するバリアントタンパク質、または野生型STRC遺伝子の核酸配列(例えば、配列番号5もしくは配列番号6)に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは99.9%の同一性、もしくはそれ以上の配列同一性)を有するポリヌクレオチドも指すが、ただし、コードされたステレオシリン類似体が野生型(WT)ステレオシリンの治療的機能を保持していることを条件とする。
【0112】
本明細書で使用される場合、「STRCプロモーター」という用語は、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2の機能的部分、例えば、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する部分等、または配列番号48の機能的部分、例えば、配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する部分等に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは99.9%の同一性、もしくはそれ以上の配列同一性)を有するプロモーター配列を指す。
【0113】
本明細書で使用される場合、「転写調節エレメント」という用語は、少なくとも部分的に、目的遺伝子の転写を制御するポリヌクレオチドを指す。転写調節エレメントには、遺伝子転写を制御するかまたは制御を助ける、プロモーター、エンハンサー、及び他のポリヌクレオチド(例えば、ポリアデニル化シグナル)が含まれ得る。転写調節エレメントの例は、例えば、Lorence,Recombinant Gene Expression:Reviews and Protocols(Humana Press,New York,NY,2012)に記載されている。
【0114】
本明細書で使用される場合、「トランスフェクション」という用語は、原核生物または真核生物の宿主細胞への外因性DNAの導入に一般的に使用される多種多様な技術、例えば、電気穿孔、リポフェクション法、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクション、ヌクレオフェクション、スクイーズポレーション(squeeze-poration)、音響穿孔法、光学的トランスフェクション、マグネトフェクション、インペールフェクション等のいずれかを指す。
【0115】
本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、動物(例えば、ヒト等の哺乳類)を指す。本明細書に記載の方法に従って治療される対象は、難聴(例えば、感音性難聴)または前庭機能障害(例えば、回転性めまい、浮動性めまい、平衡失調、両側前庭障害、動揺視、もしくは平衡障害)と診断された者である場合もあれば、これらの状態のうちの1つまたは両方を発症するリスクのある者である場合もある。診断は、当該技術分野で公知の任意の方法または手法によって実施され得る。当業者は、本開示に従って治療される対象が、標準検査を受けている場合もあれば、検査をせずに、疾患または状態と関連する1つ以上の危険因子の存在によりリスクがある者として特定されている場合もあることを理解するであろう。
【0116】
本明細書で使用される場合、「形質導入」及び「形質導入する」という用語は、ベクターコンストラクトまたはその一部を細胞に導入する方法を指す。ベクターコンストラクトが、例えばAAVベクター等のウイルスベクター内に含有されている場合には、形質導入は、細胞のウイルス感染、ならびにその後のベクターコンストラクトまたはその一部の細胞ゲノムへの導入及び組み込みを指す。
【0117】
本明細書で使用される場合、疾患または状態に関して「治療」及び「治療すること」とは、有益な結果または所望の結果、例えば、臨床結果を得るための手法を指す。有益な結果または所望の結果としては、検出可能か検出不能かにかかわらず、1つ以上の症状または状態の軽減または改善;疾患または状態の程度の減弱;疾患、障害、または状態の安定化(すなわち、悪化していない)状態;疾患または状態の拡大の阻止;疾患または状態の進行の遅延または減速;疾患または状態の改善または緩和;及び寛解(部分的か完全かを問わない)を挙げることができるが、これらに限定されない。疾患または状態を「改善すること」または「緩和すること」とは、治療が行われない場合の程度または時間経過と比較して、疾患、障害、もしくは状態の程度及び/または望ましくない臨床症状が低減されること、及び/または進行の時間経過が減速もしくは延長されることを意味する。「治療」はまた、治療を受けない場合に予測される生存期間と比較して生存期間を延長させることも意味し得る。治療を必要とする者には、すでに状態もしくは障害を有する者、及び状態もしくは障害を有する傾向がある者または状態もしくは障害が予防されるべき者が含まれる。
【0118】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、核酸ベクター、例えば、プラスミド、コスミド、もしくは人工染色体等のDNAベクター、RNAベクター、ウイルス、または任意の他の好適なレプリコン(例えば、ウイルスベクター)等を指す。原核細胞または真核細胞に外因性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを送達するために多種多様なベクターが開発されている。そのような発現ベクターの例は、例えば、Gellissen,Production of Recombinant Proteins:Novel Microbial and Eukaryotic Expression Systems(John Wiley & Sons,Marblehead,MA,2006)に記載されている。本明細書に記載の組成物及び方法と併せた使用に好適な発現ベクターは、ポリヌクレオチド配列、ならびに、例えば、タンパク質の発現及び/またはこれらのポリヌクレオチド配列の哺乳類細胞ゲノムへの組み込みに使用される、追加の配列エレメントを含有する。本明細書に記載される導入遺伝子の発現に使用することができる特定のベクターには、遺伝子転写を導くプロモーター領域及びエンハンサー領域等の、調節配列を含有するベクターが含まれる。導入遺伝子の発現のために有用な他のベクターは、導入遺伝子の翻訳率を高めるか、または遺伝子転写から生じるmRNAの安定性もしくは核外輸送を改善する、ポリヌクレオチド配列を含有する。これらの配列エレメントには、発現ベクター上に担持された遺伝子の効率的転写を導くために、例えば、5’及び3’の非翻訳領域ならびにポリアデニル化シグナル部位が含まれる。本明細書に記載の組成物及び方法と併せた使用に好適な発現ベクターはまた、そのようなベクターを含有する細胞の選択のためのマーカーをコードするポリヌクレオチドを含有し得る。好適なマーカーの例には、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、またはノーセオスリシン等の抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子が含まれる。
【0119】
本明細書で使用される場合、「前庭有毛細胞」という用語は、運動の感知に関与し、平衡感覚及び空間識に寄与する、内耳の特殊化した細胞の一種を指す。前庭有毛細胞には、I型有毛細胞とII型有毛細胞の2種類がある。I型有毛細胞は、神経終末杯を有し、電位応答が速く、動的運動をコードする。II型有毛細胞は、神経終末ボタンを有し、電位応答が遅く、遅いかまたは静的な運動をコードする。前庭有毛細胞は、内耳の半規管の終末器官及び耳石器に位置する。前庭有毛細胞の損傷及び前庭有毛細胞機能を破壊する遺伝子変異は、回転性めまい、浮動性めまい、平衡失調、両側前庭機能低下、動揺視、及び平衡障害等の前庭機能障害に関与している。
【0120】
本明細書で使用される場合、「野生型」という用語は、所与の生物における特定の遺伝子について頻度が最も高い遺伝子型を指す。
【図面の簡単な説明】
【0121】
図1】プラスミドP1208のマップである。
図2】プラスミドP1209のマップである。
図3】配列番号2のヌクレオチド35~530のSTRCプロモーターの制御下でGFPを発現するプラスミドP1209由来AAVベクターを投与された、新生仔マウスのコルチ器からの一連の顕微鏡写真である。パネルA及びBは、左から右に向かって基底部から先端部の、コルチ器の異なる平面からの複合連続断面を示す。パネルA及びA’は、Myo7aの染色を示す。パネルA’は、パネルAの長方形で示された領域の強拡大像である。パネルB及びB’は、GFPの染色を示す。パネルB’は、パネルBの長方形で示された領域の強拡大像である。スケールバーは、パネルA及びBでは100μm、パネルA’及びB’では50μmを表す。
図4】配列番号1のSTRCプロモーターの制御下でGFPを発現するプラスミドP1208由来AAVベクターを投与された、新生仔マウスのコルチ器からの一連の顕微鏡写真である。パネルA及びBは、左から右に向かって基底部から先端部の、コルチ器の異なる平面からの複合連続断面を示す。パネルA、A’及びA’’は、Myo7aの染色を示す。パネルA’は、パネルAの実線長方形で示された領域の強拡大像である。パネルA’’は、パネルAの破線正方形で示された領域の強拡大像である。パネルB、B’及びB’’は、GFPの染色を示す。パネルB’は、パネルBの長方形で示された領域の強拡大像である。パネルB’’は、パネルBの破線正方形で示された領域の強拡大像である。スケールバーは、パネルA及びBでは100μm、パネルA’、A’’、B’及びB’’では50μmを表す。
図5】配列番号2のヌクレオチド35~530のSTRCプロモーターの制御下でGFPを発現する同じプラスミドP1209由来AAVベクターを投与された、新生仔マウスの前庭の複合断面の一連の顕微鏡写真である。パネルA、A’及びA’’は、Pou4f3の染色を示す。パネルB、B’、及びB’’は、GFPの染色を示す。パネルC、C’及びC’’は、Sox2の染色を示す。パネルA’、B’及びC’は、パネルA、B及びCの正方形の対応する領域の強拡大像を表す。パネルA’’、B’’及びC’’は、パネルA’、B’及びC’の破線内の対応する領域の強拡大像を表す。スケールバーは、パネルA、B及びCでは100μm、パネルA’、A’’、B’、B’’、C’及びC’’では25μmを表す。
図6】アクチン(左パネル)及び天然ステレオシリン(右パネル)について染色した未処置成体マウスの内有毛細胞及び外有毛細胞を示す、コルチ器の複合断面の一連の顕微鏡写真である。スケールバーは10μmを表す。
図7】配列番号2のヌクレオチド35~530のSTRCプロモーターの制御下でGFPを発現するプラスミドP1209由来AAVベクターを投与された、成体マウスのコルチ器からの一連の顕微鏡写真である。パネルA及びBは、左から右に向かって基底部から先端部の、コルチ器の異なる平面からの複合連続断面を示す。パネルA及びA’は、Myo7aの染色を示す。パネルA’は、パネルAの長方形で示された領域の強拡大像である。パネルB及びB’は、GFPの染色を示す。パネルB’は、パネルBの長方形で示された領域の強拡大像である。スケールバーは、パネルA及びBでは100μm、パネルA’及びB’では50μmを表す。
図8】配列番号1のSTRCプロモーターの制御下でGFPを発現するプラスミドP1208由来AAVベクターを投与された、成体マウスのコルチ器からの一連の顕微鏡写真である。パネルA及びBは、左から右に向かって基底部から先端部の、コルチ器の異なる平面からの複合連続断面を示す。パネルA、A’及びA’’は、Myo7aの染色を示す。パネルA’は、パネルAの実線長方形で示された領域の強拡大像である。パネルA’’は、パネルAの破線正方形で示された領域の強拡大像である。パネルB、B’及びB’’は、GFPの染色を示す。パネルB’は、パネルBの長方形で示された領域の強拡大像である。パネルB’’は、パネルBの破線正方形で示された領域の強拡大像である。スケールバーは、パネルA及びBでは100μm、パネルA’、A’’、B’及びB’’では50μmを表す。
図9】配列番号1のSTRCプロモーターの制御下でH2B-GFPを発現するプラスミドP1016由来AAVベクターを投与された非ヒト霊長類(Macaca fascicularis)のコルチ器からの一連の顕微鏡写真である。パネルA及びBは、コルチ器中回転における異なる平面からの複合連続断面を示す。パネルAは、内有毛細胞及び外有毛細胞の染色を示す。パネルBは、GFPの抗体染色を示す。スケールバーは50μmを表す。位置確認のため内有毛細胞(IHC)及び外有毛細胞(OHC)が強調表示されている。
図10】配列番号1のSTRCプロモーターの制御下でH2B-GFPを発現するプラスミドP1016由来AAVベクターを投与された、非ヒト霊長類(Macaca fascicularis)の蝸牛中回転からの単一パラフィン切片の顕微鏡画像である。パネルAは、もともとは青にヘマトキシリン染色された核、及びもともとは赤に染色されたH2B-GFP抗体を有する、コルチ器周辺領域のグレースケール変換を示す。パネルBは、青のヘマトキシリンのシグナル除去後の残存シグナル;H2B-GFP陽性(赤)の核が、グレースケール変換後に引き続き濃い色として見えることを示す。スケールバーは100μmを表す。位置確認のため内有毛細胞(IHC)及び外有毛細胞(OHC)が強調表示されている。
図11】プラスミドP1016のプラスミドマップである。
図12】16kHzでの200μmのROIにおける、マウスコルチ器でのステレオシリン発現の一連の蛍光画像である。Aは、野生型CBA/CaJマウスの外有毛細胞(OHC)の不動毛の先端におけるステレオシリン抗体染色を示す。Bに示されるように、232bpのSTRCノックアウト(KO)動物では抗体のシグナルを欠いていた。Cは、二重Anc80ベクターであって、第1のベクターがCMVプロモーターとマウスSTRC cDNAのヌクレオチド1~3200とを担持し、第2のベクターがヌクレオチド2201~5430を担持し、2つのベクターの2つのcDNA間に1000bpの重複を生じさせたベクターを投与された、232bp STRC KOマウスにおけるステレオシリン抗体染色を示す。処置した232bp STRC KOマウスのコルチ器のOHC不動毛の先端及び内有毛細胞体内でステレオシリンタンパク質の新規発現を観察することができた。
図13A】Anc80-CMV-mStrcで処置した232bp STRC KOマウスにおける聴覚機能の改善、及びOHCのSTRCの発現との相関を示す一連のグラフである。未処置の対側耳では、OHCの機能の喪失を示す、DPOAEのほぼ不在及びABR閾値の高上昇が示されたが(図13A及び図13B、白丸)、処置された232bp STRC KO動物では、聴力閾値の回復を示した(図13A及び図13B、黒丸)。処置動物のうち最良レスポンダー(図13A及び図13B、黒い四角)は、野生型(図13A及び図13B、三角形)に近い聴力閾値を示した。
図13B】Anc80-CMV-mStrcで処置した232bp STRC KOマウスにおける聴覚機能の改善、及びOHCのSTRCの発現との相関を示す一連のグラフである。未処置の対側耳では、OHCの機能の喪失を示す、DPOAEのほぼ不在及びABR閾値の高上昇が示されたが(図13A及び図13B、白丸)、処置された232bp STRC KO動物では、聴力閾値の回復を示した(図13A及び図13B、黒丸)。処置動物のうち最良レスポンダー(図13A及び図13B、黒い四角)は、野生型(図13A及び図13B、三角形)に近い聴力閾値を示した。
図13C】Anc80-CMV-mStrcで処置した232bp STRC KOマウスにおける聴覚機能の改善、及びOHCのSTRCの発現との相関を示す一連のグラフである。AAV-Anc80-CMV-mStrcによる処置後にステレオシリンを発現する232bp STRC KOマウスのOHCの割合が高いことが、聴力回復を促進することが見出された。
図14】2ベクター分割インテイン系のHEK293T細胞へのトランスフェクションが、全長ステレオシリンの再構成をもたらしたことを示す画像及びグラフである。Aは、ステレオシリンタンパク質及びベータ-アクチンに対するウエスタンブロットの代表的画像である。Bは、アクチンと比べた全長ステレオシリンのバンド強度のデンシトメトリーによる定量化であり、陰性(GFP)対照、陽性全長対照、及びNpuインテインコンストラクトの全長ステレオシリンタンパク質の相対発現を示す。
図15】HEK293T細胞において単一プラスミドベクターまたはAAV二重ベクター系を使用して検出されたステレオシリンタンパク質の発現量を示すグラフである。全長対照は、全長マウスSTRCコード配列を含有するプラスミドDNAであった。GFPもまたプラスミドを使用して発現させた。試験したAAV二重ハイブリッドベクターは、第1のベクターと第2のベクターとの間の、マウスSTRC配列を分けるために使用した分割部位が異なった。x軸上の値は、5’ベクターにおけるマウスSTRCの最終ヌクレオチドを示す(例えば、二重ハイブリッド1800は、5’ベクターがマウスSTRCのヌクレオチド1~1800を含有し、ヌクレオチド1801で開始するSTRCコード配列の残りのヌクレオチドが3’ベクターに含有された二重ハイブリッドベクター系である)。重複は、5’ベクターと3’ベクターがSTRCコード配列からの共通の1,000ヌクレオチドを共有した重複二重AAVベクター系であった(5’ベクターがNM_080459のヌクレオチド79~3278(配列番号6のヌクレオチド1~3200に対応)を担持し、3’ベクターがヌクレオチド2279~5508(配列番号6のヌクレオチド2201~5430に対応)を担持した)。
図16A】様々なSTRCプロモーターの制御下で高感度GFPを発現するAAVベクターに感染させたマウス新生仔蝸牛外植片から撮像した一連の顕微鏡写真である。上段は、有毛細胞マーカーMyo7a及びGFPの染色を示す。中段は、Myo7aのみの染色を示す。下段は、GFPのみの染色を示す。対照の顕微鏡写真は、未処置(AAV未感染)外植片から取得された。
図16B】様々なSTRCプロモーターの制御下で高感度GFPを発現するAAVベクターに感染させたマウス新生仔蝸牛外植片から撮像した一連の顕微鏡写真である。上段は、有毛細胞マーカーMyo7a及びGFPの染色を示す。中段は、Myo7aのみの染色を示す。下段は、GFPのみの染色を示す。対照の顕微鏡写真は、未処置(AAV未感染)外植片から取得された。
図17】様々なSTRCプロモーターの制御下で高感度GFPを発現するAAVベクターに感染させたマウス新生仔蝸牛外植片においてGFP陽性であった有毛細胞のパーセントを定量化する棒グラフである。
図18】様々なSTRCプロモーターの制御下で高感度GFPを発現するAAVベクターに感染させたマウス新生仔蝸牛外植片においてGFP陽性であった内有毛細胞及び外有毛細胞のパーセントを別々に定量化する棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0122】
本明細書では、有毛細胞(例えば、蝸牛及び前庭の有毛細胞)に特異的に導入遺伝子発現を誘導するための、組成物及び方法を記載する。本発明は、STRCを内因性発現する有毛細胞(例えば、外有毛細胞及び内有毛細胞等の蝸牛有毛細胞、ならびにI型及びII型の前庭有毛細胞等の前庭有毛細胞)に、発現産物(例えば、導入遺伝子または抑制性RNA分子等のRNA分子によってコードされるタンパク質)の発現を誘導することができるSTRCプロモーターを特徴とする。本発明はまた、そのようなプロモーターを、発現産物をコードするポリヌクレオチド(例えば、タンパク質または抑制性RNAをコードするポリヌクレオチド)に機能的に連結させて含有する核酸ベクターを特徴とする。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、所望の発現産物(例えば、タンパク質、抑制性RNA、マイクロRNA、または遺伝子編集系の成分)を有毛細胞に特異的に発現させることができ、したがって、本明細書に記載の組成物を対象(哺乳類の対象、例えば、ヒト等)に投与して、難聴及び前庭機能障害等の蝸牛または前庭の有毛細胞の機能障害により引き起こされる障害を治療することができる。
【0123】
有毛細胞
有毛細胞は、内耳に存在する聴覚系及び前庭系の感覚細胞である。蝸牛有毛細胞は、聴覚系の感覚細胞であり、主に2種類の細胞型、すなわち、音の感知に関与する内有毛細胞、及び小さい音を増幅させると考えられている外有毛細胞で構成される。前庭有毛細胞は、内耳の半規管の終末器官及び耳石器に位置し、平衡感覚及び空間識に寄与する運動感覚に関与している。有毛細胞は、細胞の頂端面から突出して有毛細胞束を形成する不動毛にちなんでその名が付けられている。不動毛の傾き(例えば、蝸牛有毛細胞では音波によるもの、または前庭有毛細胞では回転もしくは直鎖加速によるもの)が機械刺激依存性イオンチャネルを開かせ、これにより、有毛細胞は、神経伝達物質を放出して神経を活性化し、それによって機械的な音または運動シグナルを、脳へ伝達可能な電気的なシグナルに変換することができる。蝸牛有毛細胞は正常な聴力に不可欠であり、蝸牛有毛細胞の損傷またはその消失及び蝸牛有毛細胞機能を破壊する遺伝子変異は、難聴及び聴覚消失に関与している。前庭有毛細胞の損傷またはその消失及び前庭有毛細胞機能を破壊する遺伝子変異は、浮動性めまい、回転性めまい、平衡感覚の喪失、両側前庭障害(両側前庭機能低下としても知られる)、動揺視、及び平衡障害等の前庭機能障害に関与している。遺伝子治療は、近年、難聴及び前庭機能障害を治療するための魅力的な治療アプローチとして浮上しているが、この分野には、遺伝子治療に使用される核酸ベクターを有毛細胞に特異的に指向させる方法が必要とされている。
【0124】
本発明は、部分的には、STRCを内因性発現する有毛細胞(例えば、蝸牛及び前庭の有毛細胞)に遺伝子発現を誘導するために使用可能なSTRCプロモーター配列の発見に基づく。これらのSTRCプロモーターは、有毛細胞特異的プロモーターである。したがって、本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、有毛細胞に所望の発現産物、例えば、有毛細胞の発生、有毛細胞の機能、有毛細胞の運命決定、有毛細胞の再生、有毛細胞の生存、もしくは有毛細胞の維持に関与する遺伝子、または難聴もしくは前庭機能障害を有する対象において破壊されている、例えば、変異していることが知られている遺伝子等を発現させ、難聴(例えば、感音性難聴)、耳鳴、または前庭機能障害(例えば、浮動性めまい、回転性めまい、平衡失調、両側前庭障害、動揺視、または平衡障害)を有するかまたはそれらを発症するリスクのある対象を治療することができる。
【0125】
ステレオシリン
ステレオシリン(DFNB16としても知られる)は、染色体15q15上のSTRC遺伝子によってコードされるタンパク質であり、ゲノムの約19kbに及ぶ29のエクソンを含有する。STRC遺伝子は縦列重複し、その場合、第2のコピーがエクソン20に未成熟終止コドンを含有し、それによりSTRC偽遺伝子を生じさせる。先行研究では、常染色体劣性非症候性感音性難聴の2家系において、STRCの全長コピー内で2つのフレームシフト変異及び多くの欠失が同定されている(Verpy et al.,Nat.Genet.29:345-9(2001))。ステレオシリンタンパク質の発現は有毛細胞の毛束の不動毛に限られており、ステレオシリンは、聴覚装置が正常に機能するために必要とされる先端部横方向のコネクター及び蓋膜接着クラウンを形成すると考えられている(Avan et al.,PNAS 116:25948-57(2019)、Verpy et al.,J.Comp.Neurol.519:194-210(2011))。ステレオシリン欠損マウスは、接着欠損を伴う異常な有毛細胞束及び聴覚障害を示すことが示されている(Verpy et al.,Nature 456:255-8(2008))。
【0126】
本発明は、部分的には、STRCを内因性発現する有毛細胞に遺伝子発現を誘導するために使用可能な、ヒトSTRC翻訳開始部位の上流に位置する500塩基対(bp)の領域、及びマウスSTRC翻訳開始部位の上流に位置する537bpの領域の発見に基づく。したがって、本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、有毛細胞(例えば、外有毛細胞もしくは内有毛細胞等の蝸牛有毛細胞、またはI型もしくはII型の有毛細胞等の前庭有毛細胞)に所望の発現産物、例えば、有毛細胞の発生、機能、細胞の運命決定、再生、生存、もしくは維持に関与する遺伝子、または難聴もしくは前庭機能障害を有する対象において破壊されている、例えば、変異していることが知られている遺伝子等を発現させ、難聴(例えば、感音性難聴)または前庭機能障害(例えば、浮動性めまい、回転性めまい、平衡失調、両側前庭障害、動揺視、または平衡障害)を有するかまたはそれらを発症するリスクのある対象を治療することができる。内因性プロモーター活性を保持する可能な限り最小のSTRCプロモーターの発見は、核酸ベクターにおける使用、特に、最大パッケージング容量が約4.7kbであると考えられているAAVベクター等の、パッケージング容量が限られているベクターにおける使用に有利である。
【0127】
本明細書に記載の組成物及び方法には、表2に記載のSTRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、または配列番号48)及びそれらの一部であって、STRCを内因性発現する有毛細胞(例えば、蝸牛及び前庭の有毛細胞)に特異的に所望の発現産物(例えば、導入遺伝子)を発現することができるもの、例えば、配列番号1、配列番号2、もしくは配列番号48に対して、または配列番号2もしくは配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するポリヌクレオチド配列が含まれる。いくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分は、配列番号2のヌクレオチド252~537が含まれる、より大きな配列番号2の部分、例えば、配列番号2のヌクレオチド120~537が含まれる部分である。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド280~560の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分は、配列番号48のヌクレオチド280~560が含まれる、より大きな配列番号48の部分、例えば、配列番号48のヌクレオチド280~564、配列番号48のヌクレオチド124~560、配列番号48のヌクレオチド124~564、または配列番号48のヌクレオチド1~560が含まれる部分である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法に使用するためのSTRCプロモーターには、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537、配列番号2のヌクレオチド120~537、配列番号2のヌクレオチド35~530、配列番号48のヌクレオチド280~560、配列番号48のヌクレオチド280~564、配列番号48のヌクレオチド124~560、配列番号48のヌクレオチド124~564、または配列番号48のヌクレオチド1~560に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有する部分が含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法に使用するためのSTRCプロモーターは、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537、配列番号2のヌクレオチド120~537、配列番号2のヌクレオチド35~530、配列番号48のヌクレオチド280~560、配列番号48のヌクレオチド280~564、配列番号48のヌクレオチド124~560、配列番号48のヌクレオチド124~564、または配列番号48のヌクレオチド1~560の配列を有する。
【0128】
例示的なSTRCプロモーター配列を表2に記載する。
【0129】
【表2-1】
【0130】
【表2-2】
【0131】
前述のプロモーター配列を核酸ベクターに含めて、所望の発現産物をコードするポリヌクレオチド(例えば、目的タンパク質または抑制性RNAをコードするポリヌクレオチド)に機能的に連結し、有毛細胞に(例えば、蝸牛有毛細胞(例えば、外有毛細胞及び内有毛細胞)ならびに前庭有毛細胞(例えば、I型及びII型の前庭有毛細胞)等の、STRCを内因性発現する有毛細胞に)特異的に発現産物を発現させることができる。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターに機能的に連結されるポリヌクレオチドは、有毛細胞の機能、有毛細胞の発生、有毛細胞の運命決定、有毛細胞の再生、有毛細胞の生存、もしくは有毛細胞の維持に関与するタンパク質をコードする導入遺伝子であるか、または難聴、聴覚消失、オーディトリー・ニューロパチー、耳鳴、もしくは前庭機能障害(例えば、浮動性めまい、回転性めまい、平衡失調、両側前庭障害、動揺視、もしくは平衡障害)を有する対象において変異していることがわかっている遺伝子の野生型バージョンに対応する導入遺伝子である。本明細書に記載の方法によれば、所望の発現産物をコードするポリヌクレオチド、例えば、目的タンパク質をコードする導入遺伝子に、機能的に連結された前述のポリヌクレオチド(例えば、STRCプロモーター、例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するポリヌクレオチド)のうちの1つ以上を含有する組成物を、対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、導入遺伝子によってコードされるタンパク質は、アクチン・ガンマ1(Actin Gamma 1)(ACTG1)、網膜Fascinアクチン束化タンパク質2(Fascin Actin-Bundling Protein 2、Retinal)(FSCN2)、ラディキシン(RDX)、POUクラス4ホメオボックス3(POU4F3)、TRIO及びF-アクチン結合タンパク質(TRIOBP)、Taperin(TPRN)、Xinアクチン結合リピート含有2(Xin Actin Binding Repeat Containing 2)(XIRP2)、アトーナル(Atonal)BHLH転写因子1(ATOH1)、転写抑制因子Growth Factor Independent 1(GFI1)、コリン作動性ニコチン性受容体アルファ9サブユニット(CHRNA9)、コリン作動性ニコチン性受容体アルファ10サブユニット(CHRNA10)、カルシウム及びインテグリン結合ファミリーメンバー3(CIB3)、カドヘリン23(CDH23)、プロトカドヘリン15(PCDH15)、キノシリン(Kinocilin)(KNCN)、Pejvakin(DFNB59)、MKRN2 Opposite Strand(MKRN2OS)、LIMホメオボックスタンパク質3(LHX3)、膜貫通チャネル様1(Transmembrane Channel Like 1)(TMC1)、ミオシン15(MYO15)、ミオシン7A(MYO7A)、ミオシン6(MYO6)、ミオシンIIIA(MYO3A)、ミオシンIIIB(MYO3B)、グルタレドキシンドメイン含有システインリッチタンパク質1(Glutaredoxin Domain Containing Cysteine-Rich Protein 1)(GRXCR1)、プロテインチロシンホスファターゼ、受容体型Q(PTPRQ)、後期角化膜(Late Cornified Envelope)6A(LCE6A)、リポキシゲナーゼ相同ドメイン含有タンパク質1(Lipoxygenase Homology Domain-containing Protein 1)(LOXHD1)、ADP-リボシルトランスフェラーゼ1(ART1)、ATPアーゼ細胞膜Ca2+輸送2(ATPase Plasma Membrane Ca2+ Transporting 2)(ATP2B2)、カルシウム及びインテグリン結合ファミリーメンバー2(CIB2)、電位依存性カルシウムチャネル補助サブユニットアルファ2デルタ4(CACNA2D4)、上皮成長因子受容体経路基質8(EPS8)、EPS8様2(EPS8L2)、エスピン(ESPN)、エスピン様(ESPNL)、ペリフェリン2(PRPH2)、溶質輸送体ファミリー8メンバーA2(SLC8A2)、ジンクフィンガーCCHCタイプ含有タンパク質12(Zinc Finger CCHC-Type Containing Protein 12)(ZCCHC12)、ロイシンリッチ膜貫通・O-メチルトランスフェラーゼドメイン含有(Leucine Rich Transmembrane and O-methyltransferase Domain Containing)(LRTOMT2、LRTOMT1)、USH1タンパク質ネットワーク成分ハーモニン(USH1C)、溶質輸送体ファミリー26メンバー5(SLC26A5)、Piezo型機械感受性イオンチャネル成分2(PIEZO2)、細胞外ロイシンリッチリピート及びフィブロネクチンIII型ドメイン含有1(Extracellular Leucine Rich Repeat and Fibronectin Type III Domain Containing 1)(ELFN1)、テトラトリコペプチドリピートタンパク質24(TTC24)、Dystrotelin(DYTN)、コイルドコイルグルタミン酸リッチタンパク質2(CCER2)、ロイシンリッチリピート及び膜貫通ドメイン含有タンパク質2(LRTM2)、電位依存性カリウムチャネルサブファミリーAメンバー10(KCNA10)、クラリン1(Clarin 1)(CLRN1)、クラリン2(Clarin 2)(CLRN2)、SKIファミリー転写コリプレッサー1(SKI Family Transcriptional Corepressor 1)(SKOR1)、Tctex1ドメイン含有タンパク質1(TCTEX1D1)、Fc受容体様B(FCRLB)、グルタレドキシンドメイン含有システインリッチタンパク質2(GRXCR2)、セルピンファミリーEメンバー3(SERPINE3)、Nescientヘリックス-ループヘリックス1(Nescient Helix-loop Helix 1)(NHLH1)、熱ショックタンパク質70(HSP70)、熱ショックタンパク質90(HSP90)、活性化転写因子6(ATF6)、真核生物翻訳開始因子2アルファキナーゼ3(PERK)、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ/エンドリボヌクレアーゼIRE1(IRE1)、ワーリン(Whirlin)(WHRN)、オンコモジュリン(OCM)、LIMホメオボックス1(Isl1)、膜貫通及びテトラトリコペプチドリピート含有4(TMTC4)、または結合免疫グロブリンタンパク質(BIP)、または電位依存性カリウムチャネルサブファミリーQメンバー4(KCNQ4)である。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のSTRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するポリヌクレオチド)は、ステレオシリンのN末端部分をコードするポリヌクレオチド(例えば、配列番号3または配列番号4のN末端部分をコードするポリヌクレオチド)に機能的に連結され、2ベクター系内の第1のベクター内に組み込まれる。全長ステレオシリンコード配列は、遺伝子治療に一般的に使用されるタイプのベクター(例えば、AAVベクター)に含めるには大きすぎるが、この問題は、ステレオシリンコード配列を2つの異なる核酸ベクターの間で分けて、細胞(例えば、有毛細胞)内で全長ステレオシリン配列が再構成可能なようにすることで解決できる。そのような2ベクター系を使用して、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドを含有する第1の核酸ベクター、及びステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドを含有する第2の核酸ベクターを対象の内耳に投与することによって、対象における感音性難聴または前庭機能障害を治療することができる。これらの2ベクター系を使用して、STRC遺伝子の1つ以上の変異、例えば、ステレオシリン発現を減少させるか、ステレオシリンの機能を低下させるか、または難聴もしくは前庭機能障害と関連している、STRCの変異を有する対象を治療することができる。第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターが組成物で投与される場合、ステレオシリンのN末端部分をコードするポリヌクレオチドとC末端部分をコードするポリヌクレオチドが細胞(例えば、ヒト細胞、例えば、蝸牛または前庭の有毛細胞)内で結合して、全長ステレオシリンコード配列を含有する単一ポリヌクレオチドを(例えば、相同組換え及び/またはスプライシングを介して)形成することができる。
【0133】
本明細書に記載の2ベクター系の核酸ベクターには、WTステレオシリンをコードするポリヌクレオチド配列、またはそのバリアント、例えば、結合時に、WT哺乳類(例えば、ヒトまたはマウス)のステレオシリンのアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列等が含まれる。本明細書に記載の2ベクター系に使用されるポリヌクレオチドは、下表3にあるステレオシリンのアミノ酸配列のN末端部分及びC末端部分(例えば、結合時に、表3に記載の全長ステレオシリンのアミノ酸配列、例えば、配列番号3または配列番号4をコードする2つの部分)をコードする。
【0134】
【表3-1】
【0135】
【表3-2】
【0136】
【表3-3】
【0137】
【表3-4】
【0138】
【表3-5】
【0139】
【表3-6】
【0140】
【表3-7】
【0141】
【表3-8】
【0142】
本明細書に記載の方法によれば、配列番号3もしくは配列番号4のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列か、または配列番号3もしくは配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列か、または配列番号3もしくは配列番号4に対する1つ以上の保存的アミノ酸置換(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはそれ以上の保存的アミノ酸置換)を含有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列のN末端部分及びC末端部分をそれぞれ含有する第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターを含有する組成物を、対象に投与することができるが、ただし、コードされたステレオシリン類似体がWTステレオシリンの治療的機能を保持していることを条件とする。いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質のN末端部分中のアミノ酸の10%以下、及びステレオシリンタンパク質のC末端部分中のアミノ酸の10%以下が、保存的アミノ酸置換により置き換えられ得る。ステレオシリンタンパク質は、配列番号5または配列番号6の配列を有するポリヌクレオチドによってコードされ得る。ステレオシリンタンパク質はまた、ヒト対象において非病原性であることがわかっている一塩基多型(SNP)を有するポリヌクレオチドによってもコードされ得る。ステレオシリンタンパク質は、ヒトステレオシリンタンパク質である場合もあれば、別の哺乳動物種(例えば、マウス、ラット、雌ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ネコ、イヌ、ウサギ、モルモット、または他の哺乳類)からのヒトステレオシリンタンパク質のホモログである場合もある。
【0143】
いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターは、二重ベクター発現系(例えば、重複二重ベクター、トランススプライシング二重ベクター、または二重ハイブリッドベクター)におけるの第1のベクター及び第2のベクターである。いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターは、インテイン発現系における第1のベクター及び第2のベクターである。いくつかの実施形態では、第1のベクター及び第2のベクターは、リボザイム発現系(例えば、第1の核酸ベクターが、ステレオシリンのN末端部分をコードするポリヌクレオチドと3’リボザイムとを含有し、第2のベクターが、ステレオシリンのC末端部分をコードするポリヌクレオチドと5’リボザイムとを含有する系)における第1のベクター及び第2のベクターである。リボザイム発現系では、3’リボザイム及び5’リボザイムは、転写時に生成される第1のRNA分子及び第2のRNA分子から自身を触媒して3’末端及び5’末端を生じさせることができ、これらの末端が連結されて、第1のRNA分子のコード領域と第2のRNA分子のコード領域とを含有するRNA分子が形成され得る。いくつかの実施形態では、3’リボザイムは、HDV(デルタ型肝炎ウイルス)ファミリーのリボザイムのメンバーであり、5’リボザイムは、HH(ハンマーヘッド)型ファミリーのリボザイムのメンバーである。例示的なリボザイム発現系は、国際出願公開第WO2021158964A1号に記載されており、それらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0144】
二重ベクター発現系
重複二重ベクター
哺乳類細胞(例えば、有毛細胞)で大型タンパク質を発現させるための手法の1つでは、重複二重ベクターの使用を伴う。この手法は、2つの核酸ベクターの使用に基づいており、その各々が、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの一部を含有し、かつポリヌクレオチドの他の部分との定義された配列重複領域を有する。相同組換えが重複領域で生じ、目的の全長タンパク質(例えば、配列番号3または配列番号4のステレオシリンタンパク質)をコードする単一ポリヌクレオチドの形成をもたらし得る。
【0145】
本明細書に記載の方法及び組成物に使用するための重複二重ベクターは、少なくとも200塩基(b)の重複する配列(例えば、少なくとも200b、300b、400b、500b、600b、700b、800b、900b、1.0キロベース(kb)、1.1kb、1.2kb、1.3kb、1.4kb、1.5kbまたはそれ以上の重複する配列)を含有する。核酸ベクターは、重複領域が、ステレオシリンをコードするポリヌクレオチドの長さの約半分に相当するステレオシリンをコードするポリヌクレオチド内の中心位置またはその近傍にあり、中心位置のどちらの側の重複量も等しくなるよう設計される。また、ステレオシリンをコードするポリヌクレオチドにおけるプロモーターのサイズ及び目的の配列エレメントの位置に基づいて重複領域の中心を選択することもできる。いくつかの実施形態では、ステレオシリンをコードするポリヌクレオチドは、ある程度の重複(例えば、200b、250b、300b、350b、400b、450b、500b、600b、700b、800b、900b、1kb、1.1kb、1.2kb、1.3kb、1.4kb、1.5kb、またはそれ以上)がある、ほぼ等しい長さに2分割され、ポリヌクレオチドの5’側半分がステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードし、ポリヌクレオチドの3’側半分がステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする。本明細書に記載の方法及び組成物に使用するための核酸ベクターはまた、ステレオシリンをコードするポリヌクレオチドの約半分が各ベクター内に含有される(例えば、各ベクターが、ステレオシリンタンパク質の約半分をコードするポリヌクレオチドを含有する)よう設計される。
【0146】
いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクターは、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする。いくつかの実施形態では、第2の核酸ベクターは、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする。いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質は、配列番号3の配列を有するか、またはそれに対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質は、配列番号4の配列を有するか、またはそれに対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、全長ヒトステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号5の配列を有するか、またはそれに対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。いくつかの実施形態では、配列番号5に対して少なくとも85%の配列同一性を有するポリヌクレオチドは、配列番号3のステレオシリンタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、全長マウスステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号6の配列を有するか、またはそれに対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。いくつかの実施形態では、配列番号6に対して少なくとも85%の配列同一性を有するポリヌクレオチドは、配列番号4のステレオシリンタンパク質をコードする。
【0147】
1つの例示的な重複二重ベクター系には、第1の核酸ベクターであって、中心位置として選択された位置の3’に隣接する500bpが含まれるステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号3または配列番号4のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された本明細書で先に記載のSTRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーター)を含有する、第1の核酸ベクター、ならびにステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドのC末端部分を含有する第2の核酸ベクターであって、中心位置として選択された位置の5’に隣接する500bp、及びポリ(A)配列(例えば、ウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)シグナル配列)が含まれる、第2の核酸ベクター、が含まれる。核酸ベクターは、任意選択で、本明細書に開示のSTRCプロモーターの一部ではないSTRC非翻訳領域(UTR)を含有することができる。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号1の配列を有するポリヌクレオチドであるか、または配列番号1に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するバリアントである。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号2もしくはその機能的部分の配列を有するポリヌクレオチドであるか、または配列番号2もしくはその機能的部分に少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するバリアントである。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、STRC遺伝子の発現を制御することができる、配列番号2の機能的部分である。いくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には、配列番号2のヌクレオチド252~537の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には、配列番号2のヌクレオチド120~537の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には、配列番号2のヌクレオチド35~530の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号48もしくはその機能的部分の配列を有するポリヌクレオチドであるか、または配列番号48もしくはその機能的部分に少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するバリアントである。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、STRC遺伝子の発現を制御することができる、配列番号48の機能的部分である。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド280~560の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド280~564の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド124~560の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド124~564の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド1~560の配列が含まれるか、またはそれを有する。
【0148】
トランススプライシング二重ベクター
哺乳類細胞で大型タンパク質を発現させるための第2の手法では、トランススプライシング二重ベクターの使用を伴う。この手法では、別個の核酸配列を含有する2つの核酸ベクターが使用され、目的タンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドと、目的タンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドとは重複しない。その代わり、第1の核酸ベクターには、目的タンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’にスプライスドナー配列が含まれ、第2の核酸ベクターには、目的タンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’にスプライスアクセプター配列が含まれる。第1の核酸と第2の核酸が同じ細胞内に存在する場合、それらのITRは連結可能であり、連結されたITRがスプライスドナーとスプライスアクセプターとの間に位置する単一の核酸構造が形成される。その後、転写中にトランススプライシングが起こり、目的タンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドとC末端部分をコードするポリヌクレオチドが連続した核酸分子が生成され、それにより全長コード配列が形成される。
【0149】
本明細書に記載の方法及び組成物に使用するためのトランススプライシング二重ベクターは、各ベクター内にステレオシリンコード配列の約半分が含有される(例えば、前述したように、各ベクターが、ステレオシリンタンパク質の約半分をコードするポリヌクレオチドを含有する)よう設計される。2つの核酸ベクター間でポリヌクレオチド配列を分割する方法の決定は、ステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドにおけるプロモーターのサイズ及び目的の配列エレメント(例えば、STRC遺伝子のエクソン)の位置に基づいて行われる。トランススプライシング二重ベクター系における第1のベクターは、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号3または配列番号4のステレオシリンタンパク質のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドの5’にプロモーター配列(例えば、STRCプロモーター配列、例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、または配列番号2もしくは配列番号48の機能的部分)を含有することができる。核酸ベクターは、任意選択で、本明細書に記載されるプロモーターの一部ではないSTRC UTR(例えば、5’及び3’のSTRC UTRの一方または両方、例えば、全長UTR)を含有することができる。本明細書に記載の組成物及び方法に使用するための1つの例示的なトランススプライシング二重ベクター系には、第1の核酸ベクターであって、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、ヒトステレオシリンタンパク質、例えば、配列番号3のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された本明細書で先に記載のSTRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーター)、及びポリヌクレオチド配列の3’のスプライスドナー配列を含有する、第1の核酸ベクター、ならびに、第2の核酸ベクターであって、ステレオシリンタンパク質のC末端部分(例えば、ヒトステレオシリンタンパク質、例えば、配列番号3のC末端部分)をコードするポリヌクレオチドの5’のスプライスアクセプター配列及びポリ(A)配列を含有する、第2の核酸ベクター、が含まれる。代替的トランススプライシング二重ベクター系には、第1の核酸ベクターであって、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、マウスステレオシリンタンパク質、例えば、配列番号4のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された本明細書で先に記載のSTRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーター)、及びポリヌクレオチド配列の3’のスプライスドナー配列を含有する、第1の核酸ベクター、ならびに第2の核酸ベクターであって、ステレオシリンタンパク質のC末端部分(例えば、マウスステレオシリンタンパク質、例えば、配列番号4のC末端部分)をコードするポリヌクレオチドの5’のスプライスアクセプター配列及びポリ(A)配列を含有する、第2の核酸ベクター、が含まれる。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号1の配列を有するポリヌクレオチドであるか、または配列番号1に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するバリアントである。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号2もしくはその機能的部分の配列を有するポリヌクレオチド、または配列番号2もしくはその機能的部分に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するバリアントである。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、STRC遺伝子の発現を制御することができる、配列番号2の機能的部分である。いくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には、配列番号2のヌクレオチド252~537の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には、配列番号2のヌクレオチド120~537の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には、配列番号2のヌクレオチド35~530の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号48もしくはその機能的部分の配列を有するポリヌクレオチドであるか、または配列番号48もしくはその機能的部分に少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するバリアントである。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、STRC遺伝子の発現を制御することができる、配列番号48の機能的部分である。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド280~560の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド280~564の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド124~560の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド124~564の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド1~560の配列が含まれるか、またはそれを有する。
【0150】
これらの核酸ベクターは、本明細書に記載のプロモーターの一部ではない全長5’STRC UTR及び/または全長3’STRC UTRを、それぞれ、第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターに含有することもできる(例えば、第1の核酸ベクターは、ヒトステレオシリンをコードする二重ベクター系では5’ヒトSTRC UTRを、またマウスステレオシリンをコードする二重ベクター系では5’マウスUTRを含有することができ、第2の核酸ベクターは、ヒトステレオシリンをコードする二重ベクター系では3’ヒトSTRC UTRを、またマウスステレオシリンをコードする二重ベクター系では3’マウスSTRC UTRを含有することができる)。STRC UTRを収容するために、STRC UTRを含まないトランススプライシング二重ベクター系においてステレオシリンコード配列を分けるために使用した位置とは異なる位置でステレオシリンコード配列を分けることができる(例えば、第1のベクターが、5’UTRの長さ、プロモーター配列の長さ、及びステレオシリンのN末端部分をコードする配列の長さを収容できるような位置、及び/または、第2のベクターが、ステレオシリンのC末端部分の長さ及び3’UTRの長さを収容できるような位置でステレオシリンコード配列を分けることができる)。
【0151】
いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質は、配列番号3の配列を有するか、またはそれに対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質は、配列番号4の配列を有するか、またはそれに対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、全長ヒトステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号5の配列を有するか、または配列番号5に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。いくつかの実施形態では、配列番号5に対して少なくとも85%の配列同一性を有するポリヌクレオチドは、配列番号3のステレオシリンタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、全長マウスステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号6の配列を有するか、または配列番号6に少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。いくつかの実施形態では、配列番号6に対して少なくとも85%の配列同一性を有するポリヌクレオチドは、配列番号4のステレオシリンタンパク質をコードする。
【0152】
二重ハイブリッドベクター
哺乳類細胞(例えば、有毛細胞)で大型タンパク質を発現させるための第3の手法では、二重ハイブリッドベクターの使用を伴う。この手法は、重複二重ベクター戦略の要素とトランススプライシング戦略の要素を組み合わせており、相同組換えを生じることができる重複領域、ならびにスプライスドナー配列及びスプライスアクセプター配列の両方を特徴とする。二重ハイブリッドベクター系では、重複領域は、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の一部ではなく、第1の核酸ベクターと第2の核酸ベクターの両方に含有される組換え誘導領域であり、この手法では、目的タンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドと、目的タンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドとは重複しない。組換え誘導領域は、第1の核酸ベクター内のスプライスドナー配列の3’、及び第2の核酸配列内のスプライスアクセプター配列の5’である。第1の核酸配列と第2の核酸配列はその後連結して、(1)重複領域での組換え、または(2)ITRのコンカテマー化、という2つの機構のうちの1つに基づいて単一の配列を形成することができる。残っている組換え誘導領域(複数可)及び/またはコンカテマー化ITRは、スプライシングによって除去され、目的の全長タンパク質をコードする連続したポリヌクレオチド配列の形成がもたらされ得る。本明細書に記載されている組成物及び方法に使用され得る組換え誘導領域、スプライスドナー配列及びスプライスアクセプター配列には当業者に周知のものが含まれる。例示的な組換え誘導領域には、米国特許第10,494,645号及び同第8,236,557号(これらは参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されているようなF1ファージAK遺伝子及びアルカリホスファターゼ(AP)遺伝子の断片が挙げられる。いくつかの実施形態では、AP遺伝子断片は、
CCCCGGGTGCGCGGCGTCGGTGGTGCCGGCGGGGGGCGCCAGGTCGCAGGCGGTGTAGGGCTCCAGGCAGGCGGCGAAGGCCATGACGTGCGCTATGAAGGTCTGCTCCTGCACGCCGTGAACCAGGTGCGCCTGCGGGCCGCGCGCGAACACCGCCACGTCCTCGCCTGCGTGGGTCTCTTCGTCCAGGGGCACTGCTGACTGCTGCCGATACTCGGGGCTCCCGCTCTCGCTCTCGGTAACATCCGGCCGGGCGCCGTCCTTGAGCACATAGCCTGGACCGTTTCCGTATAGGAGGACCGTGTAGGCCTTCCTGTCCCGGGCCTTGCCAGCGGCCAGCCCGATGAAGGAGCTCCCTCGCAGGGGGTAGCCTCCGAAGGAGAAGACGTGGGAGTGGTCGGCAGTGACGAGGCTCAGCGTGTCCTCCTCGCTGGTGAGCTGGCCCGCCCTCTCAATGGCGTCGTCGAACATGATCGTCTCAGTCAGTGCCCGGTAAGCCCTGCTTTCATGATGACCATGGTCGATGCGACCACCCTCCACGAAGAGGAAGAAGCCGCGGGGGTGTCTGCTCAGCAGGCGCAGGGCAGCCTCTGTCATCTCCATCAGGGAGGGGTCCAGTGTGGAGTCTCGGTGGATCTCGTATTTCATGTCTCCAGGCTCAAAGAGACCCATGAGATGGGTCACAGACGGGTCCAGGGAAGCCTGCATGAGCTCAGTGCGGTTCCACACGTACCGGGCACCCTGGCGTTCGCCGAGCCATTCCTGCACCAGATTCTTCCCGTCCAGCCTGGTCCCACCTTGGCTGTAGTCATCTGGGTACTCAGGGTCTGGGGTTCCCATGCGAAACATGTACTTTCGGCCTCCA(配列番号42)の配列を有する。
【0153】
いくつかの実施形態では、AP遺伝子断片は、
CCCCGGGTGCGCGGCGTCGGTGGTGCCGGCGGGGGGCGCCAGGTCGCAGGCGGTGTAGGGCTCCAGGCAGGCGGCGAAGGCCATGACGTGCGCTATGAAGGTCTGCTCCTGCACGCCGTGAACCAGGTGCGCCTGCGGGCCGCGCGCGAACACCGCCACGTCCTCGCCTGCGTGGGTCTCTTCGTCCAGGGGCACTGCTGACTGCTGCCGATACTCGGGGCTCCCGCTCTCGCTCTCGGTAACATCCGGCCGGGCGCCGTCCTTGAGCACATAGCCTGGACCGTTTCCGTATAGGAGGACCGTGTAGGCCTTCCTGTCCCGGGCCTTGCCAGCGGCCAGCCCGATGAAGGAGCTCCCTCGCAGGGGGTAGCCTCCGAAGGAGAAGACGTGGGAGTGGTCGGCAGTGACGAGGCTCAGCGTGTCCTCCTCGCTGGTGA(配列番号43)の配列を有する。
【0154】
いくつかの実施形態では、AP遺伝子断片は、
GCTGGCCCGCCCTCTCAATGGCGTCGTCGAACATGATCGTCTCAGTCAGTGCCCGGTAAGCCCTGCTTTCATGATGACCATGGTCGATGCGACCACCCTCCACGAAGAGGAAGAAGCCGCGGGGGTGTCTGCTCAGCAGGCGCAGGGCAGCCTCTGTCATCTCCATCAGGGAGGGGTCCAGTGTGGAGTCTCGGTGGATCTCGTATTTCATGTCTCCAGGCTCAAAGAGACCCATGAGATGGGTCACAGACGGGTCCAGGGAAGCCTGCATGAGCTCAGTGCGGTTCCACACGTACCGGGCACCCTGGCGTTCGCCGAGCCATTCCTGCACCAGATTCTTCCCGTCCAGCCTGGTCCCACCTTGGCTGTAGTCATCTGGGTACTCAGGGTCTGGGGTTCCCATGCGAAACATGTACTTTCGGCCTCCA(配列番号44)の配列を有する。
【0155】
いくつかの実施形態では、AP遺伝子断片は、
CCCCGGGTGCGCGGCGTCGGTGGTGCCGGCGGGGGGCGCCAGGTCGCAGGCGGTGTAGGGCTCCAGGCAGGCGGCGAAGGCCATGACGTGCGCTATGAAGGTCTGCTCCTGCACGCCGTGAACCAGGTGCGCCTGCGGGCCGCGCGCGAACACCGCCACGTCCTCGCCTGCGTGGGTCTCTTCGTCCAGGGGCACTGCTGACTGCTGCCGATACTCGGGGCTCCCGCTCTCGCTCTCGGTAACATCCGGCCGGGCGCCGTCCTTGAGCACATAGCCTGGACCGTTTC(配列番号45)の配列を有する。
【0156】
いくつかの実施形態では、AP遺伝子断片は、
CGTATAGGAGGACCGTGTAGGCCTTCCTGTCCCGGGCCTTGCCAGCGGCCAGCCCGATGAAGGAGCTCCCTCGCAGGGGGTAGCCTCCGAAGGAGAAGACGTGGGAGTGGTCGGCAGTGACGAGGCTCAGCGTGTCCTCCTCGCTGGTGAGCTGGCCCGCCCTCTCAATGGCGTCGTCGAACATGATCGTCTCAGTCAGTGCCCGGTAAGCCCTGCTTTCATGATGACCATGGTCGATGCGACCACCCTCCACGAAGAGGAAGAAGCCGCGGGGGTGTCTGCTCAGCAGG(配列番号46)の配列を有する。
【0157】
いくつかの実施形態では、AP遺伝子断片は、
CGCAGGGCAGCCTCTGTCATCTCCATCAGGGAGGGGTCCAGTGTGGAGTCTCGGTGGATCTCGTATTTCATGTCTCCAGGCTCAAAGAGACCCATGAGATGGGTCACAGACGGGTCCAGGGAAGCCTGCATGAGCTCAGTGCGGTTCCACACGTACCGGGCACCCTGGCGTTCGCCGAGCCATTCCTGCACCAGATTCTTCCCGTCCAGCCTGGTCCCACCTTGGCTGTAGTCATCTGGGTACTCAGGGTCTGGGGTTCCCATGCGAAACATGTACTTTCGGCCTCCA(配列番号47)の配列を有する。
【0158】
本明細書に記載の方法及び組成物に使用するための二重ハイブリッドベクターは、各ベクター内にステレオシリンコード配列の約半分が含有される(例えば、各ベクターが、ステレオシリンタンパク質の約半分をコードするポリヌクレオチドを含有する)よう設計される。2つの核酸ベクター間でポリヌクレオチド配列を分割する方法の決定は、ステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドにおけるプロモーターのサイズ及び目的の配列エレメント(例えば、STRC遺伝子のエクソン)の位置に基づいて行われる。二重ハイブリッドベクター系における第1のベクターは、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’にプロモーター配列を含有することができる。核酸ベクターは、任意選択で、本明細書に記載されるプロモーターの一部ではないSTRC UTR(例えば、全長5’UTR及び/または全長3’UTR)を含有することができる。1つの例示的な二重ハイブリッドベクター系には、第1の核酸ベクターであって、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、ヒトステレオシリン、例えば、配列番号3のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された本明細書で先に記載のSTRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーター)、ポリヌクレオチド配列の3’のスプライスドナー配列、及びスプライスドナー配列の3’の組換え誘導領域を含有する、第1の核酸ベクター、ならびに、第2の核酸ベクターであって、組換え誘導領域(例えば、第1のベクターに含まれる組換え誘導領域と同じもの)、組換え誘導領域の3’のスプライスアクセプター配列、スプライスアクセプター配列の3’のステレオシリンタンパク質のC末端部分(例えば、ヒトステレオシリン、例えば、配列番号3のC末端部分)をコードするポリヌクレオチド、及びポリ(A)配列を含有する、第2の核酸ベクター、が含まれる。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号1の配列を有するポリヌクレオチドであるか、または配列番号1に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するバリアントである。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号2もしくはその機能的部分の配列を有するポリヌクレオチド、または配列番号2もしくはその機能的部分に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するバリアントである。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、STRC遺伝子の発現を制御することができる、配列番号2の機能的部分である。いくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には、配列番号2のヌクレオチド252~537の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には、配列番号2のヌクレオチド120~537の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には、配列番号2のヌクレオチド35~530の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号48もしくはその機能的部分の配列を有するポリヌクレオチドであるか、または配列番号48もしくはその機能的部分に少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するバリアントである。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、STRC遺伝子の発現を制御することができる、配列番号48の機能的部分である。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド280~560の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド280~564の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド124~560の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド124~564の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド1~560の配列が含まれるか、またはそれを有する。第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターはそれぞれ、全長5’STRC UTR及び/または全長3’STRC UTRを含有することもできる(例えば、ヒトSTRC5’UTRを第1の核酸ベクターに含めることができ、ヒトSTRC3’UTRを第2の核酸ベクターに含めることができる)。
【0159】
STRCプロモーターが含まれる別の例示的な二重ハイブリッドベクター系には、第1の核酸ベクターであって、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、マウスステレオシリン、例えば、配列番号4のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された本明細書で先に記載のSTRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーター)、ポリヌクレオチド配列の3’のスプライスドナー配列、及びスプライスドナー配列の3’の組換え誘導領域を含有する、第1の核酸ベクター、ならびに、第2の核酸ベクターであって、組換え誘導領域(例えば、第1のベクターに含まれる組換え誘導領域と同じもの)、組換え誘導領域の3’のスプライスアクセプター配列、スプライスアクセプター配列の3’のステレオシリンタンパク質のC末端部分(例えば、マウスステレオシリン、例えば、配列番号4のC末端部分)をコードするポリヌクレオチド、及びポリ(A)配列を含有する、第2の核酸ベクター、が含まれる。第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターはそれぞれ、全長5’STRC UTR及び/または全長3’STRC UTRを含有することもできる(例えば、マウスSTRC5’UTRを第1の核酸ベクターに含めることができ、マウスSTRC3’UTRを第2の核酸ベクターに含めることができる)。STRC UTRを収容するために、STRC UTRを含まない二重ハイブリッドベクター系における場合とは異なる位置でステレオシリンコード配列を分けることができる。
【0160】
いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質は、配列番号3の配列を有するか、またはそれに対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質は、配列番号4の配列を有するか、またはそれに対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、全長ヒトステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号5の配列を有するか、または配列番号5に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。いくつかの実施形態では、配列番号5に対して少なくとも85%の配列同一性を有するポリヌクレオチドは、配列番号3のステレオシリンタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、全長マウスステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号6の配列を有するか、または配列番号6に少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。いくつかの実施形態では、配列番号6に対して少なくとも85%の配列同一性を有するポリヌクレオチドは、配列番号4のステレオシリンタンパク質をコードする。
【0161】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法に使用するための、二重ハイブリッドベクター系における第1のベクターは、マウスステレオシリンをコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド1~1800(例えば、配列番号6のヌクレオチド1~1800)を含有し、第2のベクターが、マウスステレオシリンをコードするポリヌクレオチドの残りのヌクレオチド(例えば、配列番号6のヌクレオチド1801~5430)を含有する。いくつかの実施形態では、マウスステレオシリンをコードするポリヌクレオチドを、STRCのエクソンの境界において第1のベクターと第2のベクターとに分ける。いくつかの実施形態では、エクソンの境界は、エクソン4/エクソン5の境界、エクソン5/エクソン6の境界、エクソン6/エクソン7の境界、またはエクソン7/エクソン8の境界である。マウスSTRCコード配列がエクソン4/エクソン5の境界において分けられる二重ハイブリッドベクター系では、第1のベクターが、ステレオシリンをコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド1~2247(例えば、配列番号6のヌクレオチド1~2247)を含有し、第2のベクターが、ステレオシリンをコードするポリヌクレオチドの残りのヌクレオチド(例えば、配列番号6のヌクレオチド2248~5430)を含有する。マウスSTRCコード配列がエクソン5/エクソン6の境界において分けられる二重ハイブリッドベクター系では、第1のベクターが、ステレオシリンをコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド1~2310(例えば、配列番号6のヌクレオチド1~2310)を含有し、第2のベクターが、ステレオシリンをコードするポリヌクレオチドの残りのヌクレオチド(例えば、配列番号6のヌクレオチド2311~5430)を含有する。マウスSTRCコード配列がエクソン6/エクソン7の境界において分けられる二重ハイブリッドベクター系では、第1のベクターが、ステレオシリンをコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド1~2421(例えば、配列番号6のヌクレオチド1~2421)を含有し、第2のベクターが、ステレオシリンをコードするポリヌクレオチドの残りのヌクレオチド(例えば、配列番号6のヌクレオチド2422~5430)を含有する。マウスSTRCコード配列がエクソン7/エクソン8の境界において分けられる二重ハイブリッドベクター系では、第1のベクターが、ステレオシリンをコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド1~2588(例えば、配列番号6のヌクレオチド1~2588)を含有し、第2のベクターが、ステレオシリンをコードするポリヌクレオチドの残りのヌクレオチド(例えば、配列番号6のヌクレオチド2589~5430)を含有する。
【0162】
本明細書に記載の方法及び組成物に使用される二重ハイブリッドベクターには、任意選択で、第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターの両方に分解シグナル配列を含めることができる。組み換えること及び/またはスプライシングを受けることができなかったポリヌクレオチドからのステレオシリンタンパク質の一部の発現を妨げるかまたは減少させるために分解シグナル配列を含めることができる。分解シグナル配列は、第1の核酸ベクターでは組換え誘導領域の3’に位置し、第2の核酸ベクターでは組換え誘導領域とスプライスアクセプターとの間に位置する。本明細書に記載の組成物及び方法に使用することができる好適な分解シグナル配列は当該技術分野で公知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際出願公開第WO2016/139321号に記載されている。
【0163】
いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第1のメンバーには、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530が含まれる配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分、あるいは配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530が含まれる配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分の核酸配列に対して、少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントのSTRCプロモーター(ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結される)が含まれる。ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチド配列は、発現について部分的または完全にコドン最適化が可能である。いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第1のメンバーには、スプライスドナー配列が含まれる。いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第1のメンバーには、本明細書に記載されるAP遺伝子断片(例えば、配列番号42~47のいずれか1つ、例えば、配列番号45)が含まれる。いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第1のメンバーには、5’及び3’のいずれの側にもITRが隣接している。いくつかの実施形態では、隣接しているITRは、AAV2 Rep遺伝子を持つプラスミドによってカプシドに包まれることが可能な、AAV2末端逆方向反復配列の任意のバリアントである。(典型的には、導入プラスミドを、ウイルスベクター形成のための必要なAAV遺伝子を持つ他のプラスミドと共に細胞にトランスフェクトすることによって)ウイルスベクターを作製するために使用される導入プラスミドにおける任意の所与の対のITR配列では、組換え時に、ITRが「フリップ」または「フロップ」の配向をとるためにウイルスベクター内の対応する配列が変化している可能性があることは、当業者には理解されるであろう。したがって、導入プラスミドにおけるITRの配列は、そこから調製されたウイルスベクターに見られる配列と必ずしも同じ配列ではない。
【0164】
いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第2のメンバーには、直後に終止コドンが続くステレオシリンタンパク質C末端部分をコードするポリヌクレオチドが含まれる。ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチド配列は、発現について部分的または完全にコドン最適化が可能である。いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第2のメンバーには、スプライスアクセプター配列が含まれる。いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第2のメンバーには、本明細書に記載されるAP遺伝子断片(例えば、配列番号42~47のいずれか1つ、例えば、配列番号45)が含まれる。いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第2のメンバーには、ポリ(A)配列が含まれる。特定の実施形態では、二重ベクター系の第2のメンバーには、5’及び3’のいずれの側にもITRが隣接している。いくつかの実施形態では、隣接しているITRは、AAV2 Rep遺伝子を持つプラスミドによってカプシドに包まれることが可能な、AAV2 ITRの任意のバリアントである。(典型的には、導入プラスミドを、ウイルスベクター形成のための必要なAAV遺伝子を持つ他のプラスミドと共に細胞にトランスフェクトすることによって)ウイルスベクターを作製するために使用される導入プラスミドにおける任意の所与の対の末端逆方向反復配列配列では、組換え時に、ITRが「フリップ」または「フロップ」の配向をとるためにウイルスベクター内の対応する配列が変化している可能性があることは、当業者には理解されるであろう。したがって、導入プラスミドにおけるITRの配列は、そこから調製されたウイルスベクターに見られる配列と必ずしも同じ配列ではない。
【0165】
投与用の核酸ベクター(例えば、AAVベクター)を生成するために、導入プラスミド(例えば、核酸ベクターによって送達されるDNA配列、例えば、AAVによって送達されるDNA配列を含有するプラスミド)が、ヘルパープラスミド(例えば、AAV製造に必要なタンパク質を提供するプラスミド)及びrep/capプラスミド(例えば、AAVカプシドタンパク質及び導入プラスミドDNA配列をカプシド殻内に挿入するタンパク質を提供するプラスミド)と共にプロデューサー細胞内に共送達され得る。核酸ベクター(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドを含有する核酸ベクター(例えば、AAVベクター)及びステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドを含有する核酸ベクター(例えば、AAVベクター))は、投与前に(例えば、単一製剤に)合わせることが可能である。
【0166】
重複、トランススプライシング、及び二重ハイブリッドのベクターの他の例示的な対を下表4に記載する。
【0167】
【表4-1】
【0168】
【表4-2】
【0169】
【表4-3】
【0170】
インテイン発現系
哺乳類細胞で大型タンパク質を発現させるための別の遺伝子治療法では、インテインの使用を伴う。「タンパク質イントロン」としても知られるインテインは、典型的には100~900アミノ酸残基長であり、かつ、自己切除及び隣接タンパク質断片(「エクステイン」)のN末端残基とC末端残基のライゲーションをすることができる、タンパク質の部分である。インテインは、マキシインテイン、ミニインテイン、及び分割インテインが含まれる3つの異なるクラスに分けることができる。マキシインテインとは、ホーミングエンドヌクレアーゼドメイン(HEG)によって中断されているタンパク質のN末端スプライシング領域及びC末端スプライシング領域を指す。HEGとは、イントロン内部の独立型遺伝子として、他のタンパク質とのタンパク質融合体として、または自己スプライシングインテインとしてコードされるエンドヌクレアーゼのクラスを指す。HEGは一般に、非常に少ない選択DNA領域を加水分解する。HEGがDNA断片を加水分解すると、HEGをコードする遺伝子は典型的には、自身を切断部位に組み込み、それによりそのアレル頻度を増加させる。「ミニインテイン」とは、HEGドメインを欠く、N末端スプライシングドメイン及びC末端スプライシングドメインを指す。「分割インテイン」とは、エクステインと連結される2つの別々のポリペプチドとして転写及び翻訳されるインテインを指す。アラニンインテインは、システインまたはセリンではなくアラニンのスプライシング接合部を有する別のクラスのインテインである。
【0171】
インテインのスプライシングドメインは、2つのサブドメイン、すなわち、N末端スプライシングドメイン及びC末端スプライシングドメインを含有し、それらは、スプライシング活性を媒介する保存された残基による保存されたモチーフを含有する。N末端のスプライシングドメインは、A、N2、B、及びN4の構造モチーフを含有し、C末端のスプライシングドメインは、F及びGのモチーフを含有する。Aモチーフは、保存された残基としてCys/SerまたはThrを含有し、Bモチーフには、His残基及びThr残基が含まれ、Fモチーフは、Asp残基及びHis残基を含有し、Gモチーフは、最後から2番目のHis及び末端のAsnが含まれる2つの保存された残基を持つ。C、D、E、及びHのモチーフは一般に、マキシインテイン内のHEGドメインに関連する。
【0172】
インテインのスプライシングは、以下の3つの異なる戦略内に入る:1)(a)N末端スプライス接合部のペプチド結合をチオ(エステル)結合に転換する(N-S/N-O)アシルシフト、(b)分岐した中間体を形成するエステル交換反応、(c)C末端スプライス接合部を切断することによって分岐した中間体を除去するAsn環化、及び(d)アミド結合の形成を介して隣接するエクステインセグメントを連結する第2の(S-N/O-N)アシルシフトを伴う、クラス1(または古典的/標準)インテインスプライシング、2)古典的スプライシング反応のステップ(a)を飛ばした、クラス2インテイン(アラニンインテインとしても知られる)、ならびに3)2つの分岐した中間体の形成を伴う、クラス3機構。
【0173】
上記の様々なインテイン系の中でも、分割インテインのトランススプライシング手法は、従来の遺伝子治療用ベクター(例えば、AAV:最大サイズ限度が約4.7kb)のサイズ制限の克服に成功したことが実証されている。例えば、Subramanyam et al.(PNAS 110:15461-6(2013))では、分割インテイン系を用いて、2つに分けられた部分から心筋細胞のL型カルシウムチャネルのα1C-サブユニットを再構成している。同様に、Truong et al.(Nucleic Acids Res.43:6450-8(2015))では、分割インテイン系を使用した、Cas9タンパク質の2つに分けた部分の再構成の成功が示されている。したがって、本開示は、STRCプロモーターに機能的に連結されたステレオシリンコード配列のパッケージング及び送達のための分割インテイントランススプライシング系を提供する。この方法により、STRC遺伝子の約2分の1を各々が含有し、それぞれにN-インテイン断片またはC-インテイン断片をコードするポリヌクレオチド配列が含まれている2つの別々のポリヌクレオチドが、2つの別々の発現ベクター(例えば、本明細書に開示の核酸ベクターのいずれか1つ)から発現されて翻訳後に再構成され、全長ステレオシリンタンパク質を生成することが可能になる。そのような系は、例えば、rAAVベクター等の本明細書に開示の核酸発現ベクター内に組み込まれ得る。
【0174】
一例では、本開示は、2ベクター分割インテイン系を提供し、これは、a)第1の核酸ベクターであって、ヒトステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号3または配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントのN末端部分)をコードする配列が含まれるポリヌクレオチドを含有し、ヒトステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする配列が、その3’末端に、N-インテインをコードするインフレームポリヌクレオチド配列を含む、第1の核酸ベクター、及びb)第2のベクターであって、ヒトステレオシリンタンパク質のC末端部分(例えば、配列番号3または配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントのC末端部分)をコードする配列が含まれるポリヌクレオチドを含有し、ヒトステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする配列が、その5’末端に、C-インテインをコードするインフレームポリヌクレオチド配列を含む、第2のベクター、を含有する。
【0175】
別の例では、本開示は、2ベクター分割インテイン系を提供し、これは、a)第1のベクターであって、マウスステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号4または配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントのN末端部分)をコードする配列が含まれるポリヌクレオチドを含有し、マウスステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする配列が、その3’末端に、N-インテインをコードするインフレームポリヌクレオチド配列を含む、第1のベクター、及びb)第2のベクターであって、マウスステレオシリンタンパク質のC末端部分(例えば、配列番号4または配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントのC末端部分)をコードする配列が含まれるポリヌクレオチドを含有し、マウスステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする配列が、その5’末端に、C-インテインをコードするインフレーム核酸配列を含む、第2のベクター、を含有する。
【0176】
いくつかの実施形態では、マウスステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする配列は、ステレオシリンタンパク質のアミノ酸1~730(例えば、配列番号4のアミノ酸1~730)をコードする配列であり、マウスステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする配列は、ステレオシリンタンパク質の残りのアミノ酸(例えば、配列番号4のアミノ酸731~1809)をコードする。この実施形態では、N末端部分の配列は、マウスステレオシリンをコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド1~2190(例えば、配列番号6のヌクレオチド1~2190)であり、C末端部分の配列は、ヌクレオチド2191から、マウスステレオシリンをコードするポリヌクレオチドのコード配列の3’末端まで(例えば、配列番号6の残りのヌクレオチド、例えば、ヌクレオチド2191~5430)である。いくつかの実施形態では、マウスステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする配列は、ステレオシリンタンパク質のアミノ酸1~746(例えば、配列番号4のアミノ酸1~746)をコードする配列であり、マウスステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする配列は、ステレオシリンタンパク質の残りのアミノ酸(例えば、配列番号4のアミノ酸747~1809)をコードする。この実施形態では、N末端部分の配列は、マウスステレオシリンをコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド1~2238(例えば、配列番号6のヌクレオチド1~2238)であり、C末端部分の配列は、ヌクレオチド2239から、マウスステレオシリンをコードするポリヌクレオチドのコード配列の3’末端まで(例えば、配列番号6の残りのヌクレオチド、例えば、ヌクレオチド2239~5430)である。いくつかの実施形態では、マウスステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする配列は、ステレオシリンタンパク質のアミノ酸1~969(例えば、配列番号4のアミノ酸1~969)をコードする配列であり、マウスステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする配列は、ステレオシリンタンパク質の残りのアミノ酸(例えば、配列番号4のアミノ酸970~1809)をコードする。この実施形態では、N末端部分の配列は、マウスステレオシリンをコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド1~2907(例えば、配列番号6のヌクレオチド1~2907)であり、C末端部分の配列は、ヌクレオチド2908から、マウスステレオシリンをコードするポリヌクレオチドのコード配列の3’末端まで(例えば、配列番号6の残りのヌクレオチド、例えば、ヌクレオチド2908~5430)である。いくつかの実施形態では、マウスステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする配列は、ステレオシリンタンパク質のアミノ酸1~1002(例えば、配列番号4のアミノ酸1~1002)をコードする配列であり、マウスステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする配列は、ステレオシリンタンパク質の残りのアミノ酸(例えば、配列番号4のアミノ酸1003~1809)をコードする。この実施形態では、N末端部分の配列は、マウスステレオシリンをコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド1~3006(例えば、配列番号6のヌクレオチド1~3006)であり、C末端部分の配列は、ヌクレオチド3007から、マウスステレオシリンをコードするポリヌクレオチドのコード配列の3’末端まで(例えば、配列番号6の残りのヌクレオチド、例えば、ヌクレオチド3007~5430)である。分割インテインは、全長タンパク質組換え時に標的タンパク質から切除されないエクステインのアミノ酸残基の存在を必要とすることから、ステレオシリンタンパク質のペプチド配列内の部分的エクステイン配列の同定に基づいて上記の分割部位を選択した。ある特定の分割部位(例えば、アミノ酸730及び1002での分割部位)の場合、短いペプチドをコードする配列を分割部位に組み込んで、短いペプチドを分割部位でSTRCタンパク質に融合させ、それにより触媒アミノ酸残基をもたらすことによって、全長エクステイン配列を生成させることができる。
【0177】
いくつかの実施形態では、第1のベクター及び第2のベクターの両方にはさらに、プロモーター配列であって、例えば、第1の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの5’末端(N-インテインに融合したステレオシリンタンパク質のN末端部分)及び/または第2の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの5’末端(C-インテインに融合したステレオシリンタンパク質のC末端部分)に機能的に連結されたSTRCプロモーター配列(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530が含まれる配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分、あるいは配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530が含まれる配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分の核酸配列に対して、少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアント、のうちのいずれか1つのSTRCプロモーター配列)等の、プロモーター配列が含まれる。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号1の配列を有するか、または配列番号1に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号2もしくはその一部の配列を有するか、または配列番号2もしくはその一部に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、STRC遺伝子の発現を制御することができる、配列番号2の機能的部分である。いくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には、配列番号2のヌクレオチド252~537の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には、配列番号2のヌクレオチド120~537の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号2の機能的部分には、配列番号2のヌクレオチド35~530の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、配列番号48もしくはその機能的部分の配列を有するポリヌクレオチドであるか、または配列番号48もしくはその機能的部分に少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するバリアントである。いくつかの実施形態では、STRCプロモーターは、STRC遺伝子の発現を制御することができる、配列番号48の機能的部分である。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド280~560の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド280~564の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド124~560の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド124~564の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、配列番号48の機能的部分には、配列番号48のヌクレオチド1~560の配列が含まれるか、またはそれを有する。いくつかの実施形態では、第2の核酸ベクター内のSTRCプロモーターは、第1の核酸ベクター内のSTRCプロモーターと同じである(すなわち、同じヌクレオチド配列を有する)。いくつかの実施形態では、第2の核酸ベクター内のSTRCプロモーターは、第1の核酸ベクター内のSTRCプロモーターとは異なるヌクレオチド配列を有する。
【0178】
いくつかの実施形態では、N-インテイン及びC-インテインは、同じインテインかまたは分割インテインの遺伝子に由来する。別法として、N-インテイン及びC-インテインの配列は、タンパク質トランススプライシングをして全長ステレオシリンタンパク質を再構成することができる2つの異なるインテイン遺伝子に由来する。いくつかの実施形態では、同じ遺伝子は、同じ生物または異なる生物からのものである。一般的に使用される分割インテインは、様々な生物からのDnaE遺伝子に由来する。いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドは2つの部分に分割され、各々が、全長遺伝子の全コード配列の約半分、すなわち、N末端部分及びC末端部分に対応する。ステレオシリンのN末端部分をコードするポリヌクレオチドはその3’末端で、N-インテインをコードするポリヌクレオチドとインフレームで融合し、ステレオシリンのC末端部分をコードするポリヌクレオチドはその5’末端で、C-インテインをコードするポリヌクレオチドとインフレームで融合する。
【0179】
いくつかの実施形態では、第1のベクター及び第2のベクターは、細胞(例えば、感音性難聴、例えば、DFNB16の対象等の対象の細胞)に導入された場合に、第1の融合タンパク質及び第2の融合タンパク質を生成する。いくつかの実施形態では、第1の融合タンパク質は、ステレオシリンタンパク質のN末端部分がそのC末端でN-インテインと融合したものを含有する。いくつかの実施形態では、第2の融合タンパク質は、ステレオシリンタンパク質のC末端部分がそのN末端でC-インテインと融合したものを含有する。いくつかの実施形態では、第1の融合タンパク質のN-インテインと第2の融合タンパク質のC-インテインは選択的に結合して、第3の融合タンパク質を生成し、これは、N末端からC末端に向かって、ステレオシリンタンパク質のN末端部分、N-インテインがそのC末端でC-インテインに結合したもの、及びステレオシリンタンパク質のC末端部分を含有する。いくつかの実施形態では、C-インテインに結合したN-インテインは、N-インテイン及びC-インテインを切除し、ステレオシリンタンパク質のN末端部分のC末端とC末端部分のN末端とを連結するトランススプライシング反応をすることができる。
【0180】
本明細書に記載の分割インテイン系には、2つの別々のインテイン断片(例えば、分割インテイン)をコードするよう後で日常的な方法を使用して操作される、1つの遺伝子によってコードされる分割インテインが含まれ得る。いくつかの実施形態では、分割インテインは、2つの別々の遺伝子によってコードされる。
【0181】
本開示の組成物及び方法の分割インテインは、シアノバクテリア、中でも特に、例えば、Nostoc punctiforme(Npu)、Synechocystis sp. PCC6803(Ssp)、Fischerella sp. PCC9605(Fsp)、Scytonema tolypothrichoides(Sto)、Cyanobacteria bacterium SW_9_47_5、Nodularia spumigena(Nsp)、Nostoc flagelliforme(Nfl)、Crocosphaera watsonii(Cwa)WH8502、Chroococcidiopsis cubana(Ccu)CCALA043、Trichodesmium erythraeum(Ter)、Rhodothermus marinus(Rma)、Saccharomyces cerevisiae(Sce)、Saccharomyces castellii(Sca)、Saccharomyces unisporus(Sun)、Zygosaccharomyces bisporus(Zbi)、Torulaspora pretoriensis(Tpr)、Mycobacteria tuberculosis(Mtu)、Mycobacterium leprae(Mle)、Mycobacterium smegmatis(Msm)、Pyrococcus abyssi(Pab)、Pyrococcus horikoshii(Pho)、Coxiella burnetti(Cbu)、Coxiella neoformans(Cne)、Coxiella gattii(Cga)、Histoplasma capsulatum(Hca)、及びPorphyra purpurea chloroplast(Ppu)等からのDnaE遺伝子(例えば、DNAポリメラーゼIIIサブユニットアルファ)に由来し得る。いくつかの実施形態では、分割インテインは、望ましい安定性及び活性を有する分割インテインを操作するためのコンセンサス設計(例えば、Cfa)を特定するためのDnaEの多重配列アラインメント研究から誘導される(例えば、分割インテインはCfaインテインである)。本願に開示される組成物及び方法と併せた使用に好適な他の分割インテイン系には、国際特許出願公開第WO2020/249723号、同第WO2021/099607号、及び同第WO2021/047558号、米国特許出願公開第US20210371878A1号、同第US20220275027A1号、及び同第US20200277333A1号、ならびに米国特許第US10,066,027号、同第US10,526,401号、同第US11,142,550号、同第US11,306,324号、同第US10,100,080号、及び同第US8,394,604号に記載のものが含まれ、その各々は、分割インテイン系に関連して本明細書で参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0182】
いくつかの実施形態では、第1のベクター及び第2のベクターの各々にはさらに、その5’末端に5’ITR、及びその3’末端に3’ITRが含まれる。いくつかの実施形態では、5’ITR及び3’ITRは、AAVのITRである。いくつかの実施形態では、AAVのITRは、AAV2のITRである。
【0183】
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、以下が含まれる:a)第1のベクターであって、5’から3’に向かって、i)任意選択で、5’ITR(例えば、AAV2の5’ITR);ii)STRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530が含まれる配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分、あるいは配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530が含まれる配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド289~560を含有する配列番号48の機能的部分の核酸配列に対して、少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアント、のうちのいずれか1つのSTRCプロモーター)を含有するポリヌクレオチド;iii)ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号3または配列番号4のステレオシリンタンパク質のN末端部分)をコードするポリヌクレオチド;iv)N-インテインをコードするポリヌクレオチド;(v)任意選択で、ポリ(A)配列;及び(vi)任意選択で、3’ITR(例えば、AAV2の3’ITR)を含有する、第1のベクター、ならびにb)第2のベクターであって、5’から3’に向かって、i)任意選択で、5’ITR(例えば、AAV2の5’ITR);ii)STRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530が含まれる配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分、あるいは配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530が含まれる配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分の核酸配列に対して、少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアント、のうちのいずれか1つのSTRCプロモーター)を含有するポリヌクレオチド;iii)C-インテインをコードするポリヌクレオチド;iv)ステレオシリンタンパク質のC末端部分(例えば、配列番号3または配列番号4のステレオシリンタンパク質のC末端部分)をコードするポリヌクレオチド;(v)任意選択で、ポリ(A)配列;及び(vi)任意選択で、3’ITR(例えば、AAV2の3’ITR)を含有する、第2のベクター。
【0184】
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、以下に示す配列番号7のアミノ酸配列を有するか、または配列番号7に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するN-インテインペプチドをコードする、ポリヌクレオチドが含まれる。
CLSYDTEILTVEYGFLPIGKIVEERIECTVYTVDKNGFVYTQPIAQWHNRGEQEVFEYCLEDGSIIRATKDHKFMTTDGQMLPIDEIFERGL(配列番号7)
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、以下に示す配列番号8のアミノ酸配列を有するか、または配列番号8に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するC-インテインペプチドをコードする、ポリヌクレオチドが含まれる。
VKIISRKSLGTQNVYDIGVEKDHNFLLKNGLVASN(配列番号8)
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、以下に示す配列番号9のアミノ酸配列を有するか、または配列番号9に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するN-インテインペプチドをコードする、ポリヌクレオチドが含まれる。
CLSYDTEILTVEYGFLPIGKIVEERIECTVYTVDKNGFVYTQPIAQWHNRGEQEVFEYCLEDGSIIRATKDHKFMTTDGQMLPIDEIFERGLDLKQVDGLP(配列番号9)
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、以下に示す配列番号10のアミノ酸配列を有するか、または配列番号10に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するC-インテインペプチドをコードする、ポリヌクレオチドが含まれる。
MVKIISRKSLGTQNVYDIGVEKDHNFLLKNGLVASN(配列番号10)
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、以下に示す配列番号11のアミノ酸配列を有するか、または配列番号11に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するC-インテインペプチドをコードする、ポリヌクレオチドが含まれる。
VKIISRKSLGTQNVYDIGVGEPHNFLLKNGLVASN(配列番号11)
いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテイン系には、配列番号7または配列番号9のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に位置する)が含まれる第1のベクター、及び配列番号8、配列番号10、または配列番号11のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に位置する)が含まれる第2のベクター、が含まれる。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテイン系には、配列番号7のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる第1のベクター、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる第2のベクターが含まれる。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテイン系には、配列番号7のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる第1のベクター、及び配列番号10のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる第2のベクターが含まれる。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテイン系には、配列番号7のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる第1のベクター、及び配列番号11のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる第2のベクターが含まれる。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテイン系には、配列番号9のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる第1のベクター、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる第2のベクターが含まれる。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテイン系には、配列番号9のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる第1のベクター、及び配列番号10のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる第2のベクターが含まれる。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテイン系には、配列番号9のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる第1のベクター、及び配列番号11のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる第2のベクターが含まれる。
【0185】
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、以下に示す配列番号12のアミノ酸配列を有するか、または配列番号12に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するN-インテインペプチドをコードする、ポリヌクレオチドが含まれる。
CLSYETEILTVEYGLLPIGKIVEKRIECTVYSVDNNGNIYTQPVAQWHDRGEQEVFEYCLEDGSLIRATKDHKFMTVDGQMLPIDEIFERELDLMRVDNLPN(配列番号12)
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、以下に示す配列番号13のアミノ酸配列を有するか、または配列番号13に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するC-インテインペプチドをコードする、ポリヌクレオチドが含まれる。
MIKIATRKYLGKQNVYDIGVERDHNFALKNGFIASN(配列番号13)
いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテイン系には、配列番号12のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に位置する)が含まれる第1のベクター、及び配列番号13のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に位置する)が含まれる第2のベクター、が含まれる。
【0186】
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、以下に示す配列番号14のアミノ酸配列を有するか、または配列番号14に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するN-インテインペプチドをコードする、ポリヌクレオチドが含まれる。
CLSYDTEILTVEYGFLPIGKIVEERIECTVYTVDKNGFVYTQPIAQWHNRGEQEVFEYCLEDGSIIRATKDHKFMTTDGQMLPIDEIFERGLDLKQVDGLP(配列番号14)
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、以下に示す配列番号15のアミノ酸配列を有するか、または配列番号15に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するC-インテインペプチドをコードする、ポリヌクレオチドが含まれる。
MKRTADGSEFESPKKKRKVKIISRKSLGTQNVYDIGVEKDHNFLLKNGLVASN(配列番号15)
いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテイン系には、配列番号14のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に位置する)が含まれる第1のベクター、及び配列番号15のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に位置する)が含まれる第2のベクター、が含まれる。
【0187】
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、CFSGDTLVALTD(配列番号16)のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、CLAGDTLITLA(配列番号17)のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、CLQNGTRLLR(配列番号18)のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、CLTGDSQVLTR(配列番号19)のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、CLTYETEIMTV(配列番号20)のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、CLSGNTKVRFRY(配列番号21)のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、配列番号16~21のいずれか1つに対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。
【0188】
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、GVFVHN(配列番号22)のアミノ酸配列を有するC-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、GLLVHN(配列番号23)のアミノ酸配列を有するC-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、GLIASN(配列番号24)のアミノ酸配列を有するC-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、GLVVHN(配列番号25)のアミノ酸配列を有するC-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、配列番号22~25のいずれか1つに対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するC-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。
【0189】
いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテイン系には、配列番号16のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に位置する)が含まれる第1のベクター、及び配列番号22のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に位置する)が含まれる第2のベクター、が含まれる。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテイン系には、配列番号19のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に位置する)が含まれる第1のベクター、及び配列番号23のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に位置する)が含まれる第2のベクター、が含まれる。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテイン系には、配列番号20のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に位置する)が含まれる第1のベクター、及び配列番号24のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に位置する)が含まれる第2のベクター、が含まれる。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテイン系には、配列番号21のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に位置する)が含まれる第1のベクター、及び配列番号25のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に位置する)が含まれる第2のベクター、が含まれる。
【0190】
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテイン系には、以下の表5に記載のN-インテインとC-インテインの対をコードする1つ以上のポリヌクレオチド、または表5に記載のN-インテインとC-インテインの対に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するN-インテインとC-インテインの対をコードする1つ以上のポリヌクレオチドが、集合的に含まれる。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテイン系には、表5に記載のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に位置する)が含まれる第1のベクター、及び表5のN-インテインのアミノ酸配列と同じ行に記載のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に位置する)が含まれる第2のベクター、が含まれる。
【0191】
【表5-1】
【0192】
【表5-2】
【0193】
【表5-3】
【0194】
配列番号26のNpu N-インテインは、以下に示す配列番号40のDNA配列を有するポリヌクレオチドによってコードされ得る。
TGCCTGAGCTACGAGACCGAGATCCTGACCGTGGAGTACGGCCTGCTGCCCATCGGCAAGATCGTGGAGAAGAGAATCGAGTGCACCGTGTACAGCGTGGACAACAACGGCAACATCTACACCCAGCCCGTGGCCCAGTGGCACGACAGAGGCGAGCAGGAGGTGTTCGAGTACTGCCTGGAGGACGGCAGCCTGATCAGAGCCACCAAGGACCACAAGTTCATGACCGTGGACGGCCAGATGCTGCCCATCGACGAGATCTTCGAGAGAGAGCTGGACCTGATGAGAGTGGACAACCTGCCCAAC(配列番号40)
配列番号27のNpu C-インテインは、以下に示す配列番号41のDNA配列を有するポリヌクレオチドによってコードされ得る。
ATCAAGATCGCCACAAGAAAGTACCTGGGCAAGCAGAACGTGTACGACATCGGCGTGGAGAGAGACCACAACTTCGCCCTGAAGAACGGCTTCATCGCCAGCAAT(配列番号41)
本開示の分割インテイン(すなわち、N-インテイン及びC-インテイン)には、トランススプライシング反応をすることができるそのN末端もしくはC末端、またはその近傍に、求核性アミノ酸を含めることができる。いくつかの実施形態では、求核性アミノ酸は、セリン、トレオニン、システイン、またはアラニンから選択される。
【0195】
いくつかの実施形態では、第1のベクター及び/または第2のベクターにはさらに、1つ以上の追加の調節配列、中でも特に、例えば、WPRE配列、エンハンサー配列、ポリ(A)配列、終結因子配列、または分解シグナル等が含まれる。
【0196】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の分割インテイン系には、リガンド(例えば、4-ヒドロキシタモキシフェン、ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、アミノ酸、ヌクレオチド等のような小分子)との接触時にタンパク質スプライシングを行う、リガンド依存性インテインが含まれる。様々なリガンド依存性インテインがUS2014/0065711に記載されており、その開示は、リガンド依存性インテインに関連して参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0197】
本開示は、ユビキチン-プロテアソーム系及び/またはオートファジー-リソソーム経路によってタンパク質分解を媒介する1つ以上の分解シグナルをインテイン(例えば、N-インテインまたはC-インテイン)ポリペプチド(複数可)内に含有するベクターを提供する。そのような配列は、標的細胞内での切除されたインテインタンパク質の蓄積を回避または低減するために本開示のベクター系内に組み込まれ得る。例示的な分解シグナルには、N-デグロン及びC-デグロンが含まれ、これらは、ポリユビキチン化及びその後の分解標的指向をすることができる、リジン残基を含有するモチーフを含有するペプチド配列である。いくつかの実施形態では、デグロンは、インテインのN末端でもC末端でもないインテイン内に位置する分解シグナルである。いくつかの実施形態では、N-インテインタンパク質には、1つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上)のデグロンが含まれる。いくつかの実施形態では、C-インテインタンパク質には、1つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上)のデグロンが含まれる。いくつかの実施形態では、デグロンは、CL1デグロンであり、これは、誤って折り畳まれたタンパク質と構造類似性を共有するC末端不安定化ペプチドであり、ユビキチン化系によって認識される。いくつかの実施形態では、デグロンは、PB29デグロン、SMNデグロン、CIITAデグロン、またはODCデグロンである。そのような分解シグナルは、分解シグナルに関連して参照することにより本明細書に組み込まれるWO2016/13932に記載されている。分解シグナルの別の例には、WO2020/079034(参照により本明細書に組み込まれる)に記載のような、E.coliジヒドロ葉酸レダクターゼ(ecDHFR)由来のデグロンが含まれる。追加の分解シグナルには、FKBP12分解ドメイン(Banaszynski et al.,Cell 126:995-1004,2006)、PEST分解ドメイン(Rechsteiner and Rogers,Trends Biochem Sci.21:267-271,1996)、UbRタグユビキチン化シグナル(Chassin et al.,Nat Commun.10:2013,2019)、及びヒトELRBDの不安定化変異(Miyazaki et al.,J.Am.Chem.Soc.,134:3942-3945,2012)が含まれる。
【0198】
哺乳類細胞における外因性ポリヌクレオチドの発現
MYO7A、POU4F3、SLC17A8、及びTMC1等の多種多様な遺伝子における変異が感音性難聴と関連付けられており、これらの変異のいくつか、例えば、MYO7Aの変異等は前庭機能障害とも関連している。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に機能的に連結されたSTRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するポリヌクレオチド)を含有する核酸ベクターを投与することによって、有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞(例えば、外有毛細胞及び内有毛細胞)及び前庭有毛細胞(例えば、I型及びII型の前庭有毛細胞)等の、内因性STRCを発現する有毛細胞)に特異的に、目的遺伝子(例えば、難聴及び/または前庭機能障害に関与する遺伝子の野生型形態、あるいは有毛細胞の発生、機能、細胞の運命決定、再生、生存、または維持に関与する遺伝子)によってコードされるタンパク質の発現を誘導または増加させることができる。哺乳類細胞へのタンパク質の送達のため、及び哺乳類細胞においてタンパク質をコードする遺伝子の安定な発現のための多様な方法が確立されている。
【0199】
本明細書に記載の組成物との関連で発現させることができるタンパク質(例えば、タンパク質をコードする導入遺伝子が、STRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するポリヌクレオチド)に機能的に連結されている場合)は、健常有毛細胞で発現されるタンパク質(例えば、蝸牛及び/または前庭の有毛細胞、例えば、有毛細胞の発生、機能、再生、細胞の運命決定、生存、もしくは維持において役割を果たすタンパク質、または感音性難聴もしくは前庭機能障害の対象において欠損しているタンパク質)であるか、あるいは他の治療用目的タンパク質である。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して有毛細胞で発現させることができるタンパク質には、ACTG1、FSCN2、RDX、POU4F3、TRIOBP、TPRN、XIRP2、ATOH1、GFI1、CHRNA9、CHRNA10、CIB3、CDH23、PCDH15、KNCN、DFNB59、MKRN2OS、LHX3、TMC1、MYO15、MYO7A、MYO6、MYO3A、MYO3B、GRXCR1、PTPRQ、LCE6A、LOXHD1、ART1、ATP2B2、CIB2、CACNA2D4、EPS8、EPS8L2、ESPN、ESPNL、PRPH2、SLC8A2、ZCCHC12、LRTOMT2、LRTOMT1、USH1C、SLC26A5、PIEZO2、ELFN1、TTC24、DYTN、CCER2、LRTM2、KCNA10、CLRN1、CLRN2、SKOR1、TCTEX1D1、FCRLB、GRXCR2、SERPINE3、NHLH1、HSP70、HSP90、ATF6、PERK、IRE1、WHRN、OCM、ISL1、TMTC4、BIP、及びKCNQ4が含まれる。本明細書に記載されるSTRCプロモーターを使用して、有毛細胞(例えば、蝸牛または前庭の有毛細胞)に短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、遺伝子編集系の成分(例えば、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、もしくはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)等のヌクレアーゼ、またはガイドRNA(gRNA))、またはマイクロRNAを発現させることもできる。さらに、本明細書に記載されるSTRCプロモーターを、本明細書に記載の2ベクター系に使用するためのステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、野生型ステレオシリンタンパク質、例えば、配列番号3または配列番号4のタンパク質のN末端部分等)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結させることができる。
【0200】
目的タンパク質をコードするポリヌクレオチド
哺乳類細胞において目的タンパク質の治療的に有効な細胞内濃度を達成するために使用することができるプラットフォームの1つは、目的タンパク質をコードする遺伝子の(例えば、哺乳類細胞の核ゲノムもしくはミトコンドリアゲノムへ組み込むことによるか、または哺乳類細胞の核におけるエピソームのコンカテマー形成による)安定な発現を介したものである。遺伝子は、対応するタンパク質の一次アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。哺乳類細胞内に外来遺伝子を導入するために、遺伝子をベクター内に組み込むことができる。ベクターは、形質転換、トランスフェクション、形質導入、直接取り込み、プロジェクタイル・ボンバードメント法(projectile bombardment)等の多種多様な方法によって、及びベクターのリポソーム内封入によって、細胞内に導入可能である。細胞をトランスフェクトまたは形質転換する好適な方法の例としては、リン酸カルシウム沈殿、電気穿孔、マイクロインジェクション、感染、リポフェクション法及び直接取り込みが挙げられる。そのような方法は、例えば、Green,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Fourth Edition(Cold Spring Harbor University Press,New York 2014)、及びAusubel,et al.,Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons,New York 2015)にさらに詳述されており、その各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0201】
目的タンパク質はまた、目的タンパク質をコードする遺伝子を含有するベクターを細胞膜リン脂質へ指向させることによって哺乳類細胞内に導入することも可能である。例えば、すべての細胞膜リン脂質に対して親和性を有するウイルスタンパク質であるVSV-Gタンパク質にベクター分子を連結することによって、ベクターを細胞膜の細胞外表面上のリン脂質に指向させることができる。そのようなコンストラクトは、当業者に周知の方法を使用して生成可能である。
【0202】
哺乳類RNAポリメラーゼによる、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの認識及び結合は、遺伝子発現にとって重要である。したがって、RNAポリメラーゼを動員し、転写開始部位での転写複合体のアセンブリを促進する転写因子に対して高親和性を示すポリヌクレオチド内に配列エレメントを含める場合がある。そのような配列エレメントとしては、例えば、特定の転写開始因子、最終的にはRNAポリメラーゼが認識して結合することができる配列である、哺乳類のプロモーターが挙げられる。哺乳類のプロモーターの例は、Smith,et al.,Mol.Sys.Biol.,3:73(オンライン公開)に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の方法及び組成物に使用されるプロモーターは、STRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するポリヌクレオチド)である。
【0203】
目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドが哺乳類細胞内に取り込まれた後は、当該技術分野で公知の方法によってこのポリヌクレオチドの転写を誘導することができる。例えば、外部の化学試薬、例えば、哺乳類プロモーターへの転写因子及び/またはRNAポリメラーゼの結合を調節して、遺伝子発現を調節する薬剤等に、哺乳類細胞を曝露させることによって発現を誘導することができる。化学試薬は、例えば、プロモーターに結合したリプレッサータンパク質を除去することによって、哺乳類プロモーターへのRNAポリメラーゼ及び/または転写因子の結合を促進するよう機能することができる。別法として、化学試薬は、化学試薬の存在下でプロモーターの下流に位置する遺伝子の転写速度が高まるよう、RNAポリメラーゼ及び/または転写因子に対する哺乳類プロモーターの親和性を増強させるよう機能することができる。上記の機序によってポリヌクレオチドの転写を増強させる化学試薬の例としては、テトラサイクリン及びドキシサイクリンが挙げられる。これらの試薬は市販されており(Life Technologies,Carlsbad,CA)、確立されたプロトコルに従って、遺伝子発現を促進するために哺乳類細胞に投与することができる。
【0204】
本明細書に記載の組成物及び方法に使用するためのポリヌクレオチドに含まれ得る他のDNA配列エレメントには、エンハンサー配列が含まれる。エンハンサーは、DNAが、転写開始部位における転写因子及びRNAポリメラーゼの結合に好ましい三次元配向をとるよう、目的遺伝子を含有するポリヌクレオチドにコンホメーション変化を誘導する別のクラスの調節エレメントを表す。したがって、本明細書に記載の組成物及び方法に使用するためのポリヌクレオチドには、目的タンパク質をコードするものが含まれ、さらに、哺乳類のエンハンサー配列も含まれる。現在では多くのエンハンサー配列が哺乳類の遺伝子からわかっており、例としては、哺乳類のグロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、及びインスリンをコードする遺伝子からのエンハンサーが挙げられる。本明細書に記載の組成物及び方法に使用するためのエンハンサーには、真核細胞に感染することができるウイルスの遺伝物質に由来するものも含まれる。例としては、複製起点の後期側(塩基対100~270)にあるSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側にあるポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核生物の遺伝子転写の活性化を誘導する追加のエンハンサー配列には、CMVエンハンサー及びRSVエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するベクター内に、例えば、この遺伝子に対して5’位または3’位にスプライスされ得る。好ましい配向では、エンハンサーは、プロモーターの5’側に位置し、それにより、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドに対して5’に位置する。
【0205】
理論に拘束されることなく、本発明者らは、STRCプロモーターの3’末端と目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの5’開始部位(ATG)とを連結するヌクレオチド配列が、目的タンパク質の発現においての役割を果たしている可能性があると考えている。いくつかの実施形態では、その連結配列には、コザック配列またはその一部が含まれる。いくつかの実施形態では、その連結配列には、目的タンパク質のSTRCプロモーター及び/またはコード配列をベクター内に挿入するために利用された、多重クローニング部位またはその一部が含まれる。
【0206】
本明細書に記載のSTRCプロモーターを含有する核酸ベクターには、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)が含まれ得る。WPREは、転写産物の核外輸送を促進する、及び/または新生転写産物のポリアデニル化効率を高め、それにより細胞内のmRNAの総量を増加させることによって、mRNAレベルで作用する。ベクターにWPREを加えることにより、インビトロ及びインビボの両方で、いくつかの異なるプロモーターからの導入遺伝子発現量の実質的な改善をもたらすことができる。
【0207】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のSTRCプロモーターを含有する核酸ベクターには、レポーター配列が含まれ、これは、STRCプロモーターに機能的に連結された遺伝子の、例えば、細胞及び組織(例えば、外有毛細胞及び内有毛細胞等の蝸牛有毛細胞、ならびにI型及びII型の前庭有毛細胞等の前庭有毛細胞)における発現を確認するのに有用であり得る。導入遺伝子内に提供され得るレポーター配列には、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、及び他の当該技術分野において周知のものをコードするDNA配列が含まれる。それらの発現を誘導する、STRCプロモーター等の調節エレメントと結合すると、レポーター配列は、従来の手段、例えば、酵素アッセイ、放射線アッセイ、比色アッセイ、蛍光アッセイまたは他の分光アッセイ、蛍光活性化細胞分類アッセイ、ならびに酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び免疫組織化学染色等の免疫アッセイにより検出可能なシグナルをもたらす。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルを保持するベクターの存在は、β-ガラクトシダーゼ活性についてのアッセイにより検出される。導入遺伝子が、緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼである場合、シグナルを保持するベクターは、発光光度計での色または光の生成により視覚的に測定され得る。
【0208】
標的細胞への外因性ポリヌクレオチドの送達のための方法
導入遺伝子、例えば、本明細書に記載のSTRCプロモーターに機能的に連結された導入遺伝子を標的細胞(例えば、哺乳類細胞)に導入するために使用することができる技術は当該技術分野において周知である。例えば、電気穿孔を使用して、目的の細胞への静電ポテンシャルの印加により哺乳類細胞(例えば、ヒト標的細胞)を透過性にすることができる。この様態で外部電場に曝露されたヒト細胞等の哺乳類細胞は、その後、外因性ポリヌクレオチドを取り込みやすくなる。哺乳類細胞の電気穿孔は、例えば、Chu et al.,Nucleic Acids Research 15:1311(1987)に詳述されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。同様の技術であるNucleofection(商標)では、真核細胞核内への外因性ポリヌクレオチドの取り込みを刺激するために、印加電場を利用する。Nucleofection(商標)及びこの技術を実施するのに有用なプロトコルは、例えば、Distler et al.,Experimental Dermatology 14:315(2005)、及びUS2010/0317114に詳述されており、その各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0209】
標的細胞のトランスフェクションに有用なさらなる技術には、スクイーズポレーション(squeeze-poration)法が含まれる。この技術では、加えられたストレスに応答して形成される膜孔を介した外因性DNAの取り込みを刺激するために、細胞の急速な機械的変形を誘導する。この技術は、ヒト標的細胞等の細胞内へのポリヌクレオチドの送達のためにベクターが必要ないという点で都合がよい。スクイーズポレーションは、例えば、Sharei et al.,Journal of Visualized Experiments 81:e50980(2013)に詳述されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0210】
リポフェクション法は、標的細胞のトランスフェクションに有用な別の技術である。この方法には、多くの場合にリポソーム外面に向かって第四級アミンまたはプロトン化アミン等のカチオン性官能基を提示するリポソーム内へのポリヌクレオチドの搭載を伴う。これにより、細胞膜の陰イオン性の性質のためにリポソームと細胞との間の静電相互作用が促進され、最終的に、外因性ポリヌクレオチドの取り込みが、例えば、リポソームと細胞膜との直接融合によって、または複合体のエンドサイトーシスによってもたらされる。リポフェクション法は、例えば、米国特許第7,442,386号に詳述されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。外来性ポリヌクレオチドの取り込みを誘発するために細胞膜とのイオン相互作用を利用する同様の技術には、カチオン性ポリマー-ポリヌクレオチド複合体と細胞を接触させることが含まれる。細胞膜との相互作用に好ましい正電荷を付与するようポリヌクレオチドと結合する例示的なカチオン分子には、活性化デンドリマー(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるDennig,Topics in Current Chemistry 228:227(2003)に記載)ポリエチレンイミン、及びジエチルアミノエチル(DEAE)-デキストラン(トランスフェクション剤としてのその使用は、例えば、Gulick et al.,Current Protocols in Molecular Biology 40:I:9.2:9.2.1(1997)に詳述されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)が含まれる。磁気ビーズは、この方法が、ポリヌクレオチドの取り込みを導くために印加磁場を利用することから、穏やかかつ効率的な様態で標的細胞にトランスフェクトするために使用することができる別のツールである。この技術は、例えば、US2010/0227406に詳述されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0211】
標的細胞による外因性ポリヌクレオチドの取り込みを誘導するための別の有用なツールは、光学的トランスフェクションとも呼ばれるレーザーフェクションであり、細胞を穏やかに透過性にして、ポリヌクレオチドが細胞膜を貫通できるようにするために、特定の波長の電磁放射に細胞を曝露することを伴う技術である。この技術の生物活性は、電気穿孔と同様であり、場合によってはそれよりも優れていることがわかっている。
【0212】
インペールフェクションは、標的細胞に遺伝物質を送達するために使用することができる別の技術である。これは、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、及びハノワイヤー等のナノマテリアルの使用に依存する。針状ナノ構造体を基板の表面に対して垂直に合成する。細胞内送達が意図される遺伝子を含有するDNAをナノ構造体表面に結合させる。次いで、これらの針を配列させたチップを細胞または組織に対して押し付ける。ナノ構造体によって突き刺された細胞は送達された遺伝子(複数可)を発現することができる。この技術の一例は、Shalek et al.,PNAS 107:1870(2010)に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0213】
標的細胞にポリヌクレオチドを送達するためにマグネトフェクションを使用することもできる。マグネトフェクションの原理は、ポリヌクレオチドを陽イオン性磁性ナノ粒子と結合させることである。磁性ナノ粒子は酸化鉄でできており、完全に生物分解性であり、用途に応じて異なる特定の陽イオン性の独自の分子でコートされている。それらの粒子と、遺伝子ベクター(DNA、siRNA、ウイルスベクター等)との結合は、塩誘導性コロイド凝集及び静電相互作用により達成される。その後、磁石により発生した外部磁場の影響により、磁性粒子が標的細胞上に濃縮される。この技術は、Scherer et al.,Gene Therapy 9:102(2002)に詳述されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0214】
標的細胞による外因性ポリヌクレオチドの取り込みを誘導するための別の有用なツールは音響穿孔法であり、細胞を透過性にして、ポリヌクレオチドが細胞膜を貫通できるようにするために、細胞形質膜の透過性改変に音波(典型的には超音波周波数)を使用することを伴う技術である。この技術は、例えば、Rhodes et al.,Methods in Cell Biology 82:309(2007)に詳述されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0215】
微小胞は、本明細書に記載の方法に従って標的細胞のゲノムを修飾するために使用することができる、別の潜在的なビヒクルを表す。例えば、糖タンパク質VSV-Gと、例えば、ヌクレアーゼ等のゲノム修飾タンパク質との共過剰発現によって誘導された微小胞を使用してタンパク質を細胞内に効率的に送達することができ、その後、内因性ポリヌクレオチド配列の部位特異的切断が触媒され、細胞のゲノムが、目的のポリヌクレオチド、例えば、遺伝子または調節配列等の、共有結合による組み込みのために準備される。真核細胞の遺伝子改変のための、Gesicleとも呼ばれるそのような小胞の使用は、例えば、Quinn et al.,Genetic Modification of Target Cells by Direct Delivery of Active Protein [abstract].In: Methylation changes in early embryonic genes in cancer [abstract],in:Proceedings of the 18th Annual Meeting of the American Society of Gene and Cell Therapy;2015 May 13,Abstract No.122に詳述されている。
【0216】
標的細胞に外因性ポリヌクレオチドを送達するためのベクター
高速の転写及び翻訳を達成することに加え、哺乳類細胞における外来遺伝子の安定な発現を、その遺伝子を含有するポリヌクレオチドを哺乳類細胞の核ゲノム内へ組み込むことによって達成することができる。哺乳類細胞の核DNAへの、外因性タンパク質をコードするポリヌクレオチドの送達及び組み込みのための多種多様なベクターが開発されている。発現ベクターの例は、例えば、Gellissen,Production of Recombinant Proteins:Novel Microbial and Eukaryotic Expression Systems(John Wiley & Sons,Marblehead,MA,2006)に記載されている。本明細書に記載の組成物及び方法に使用するための発現ベクターは、所望の発現産物(例えば、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチド、または抑制性RNAを生成するよう転写され得るポリヌクレオチド)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された、STRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するポリヌクレオチド)、ならびに、例えば、これらの物質の発現に使用される追加の配列エレメント及び/またはこれらのポリヌクレオチド配列の哺乳類細胞ゲノムへの組み込みに使用される追加の配列エレメントを含有する。所望の発現産物(例えば、目的タンパク質をコードする導入遺伝子)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたSTRCプロモーターを含有することができるベクターには、プラスミド(例えば、細胞内部で自律複製することができる環状DNA分子)、コスミド(例えば、pWEベクターまたはsCosベクター)、人工染色体(例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC))、及びウイルスベクターが含まれる。所望の発現産物(例えば、目的タンパク質)の発現に使用することができる特定のベクターには、遺伝子転写を導く調節配列、例えば、エンハンサー領域を含有するプラスミドが含まれる。所望の発現産物(例えば、目的タンパク質)の発現に有用な他のベクターは、これらの遺伝子の翻訳率を高めるポリヌクレオチド配列、または遺伝子転写から生じるmRNAの安定性もしくは核外輸送を改善するポリヌクレオチド配列を含有する。これらの配列エレメントには、発現ベクター上に担持された遺伝子の効率的転写を導くために、例えば、5’及び3’の非翻訳領域、内部リボソーム進入部位(IRES)、及びポリアデニル化シグナル部位が含まれる。本明細書に記載の組成物及び方法と併せた使用に好適な発現ベクターはまた、そのようなベクターを含有する細胞の選択のためのマーカーをコードするポリヌクレオチドを含有し得る。好適なマーカーの例には、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、またはノーセオスリシン等の抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子が含まれる。
【0217】
ポリヌクレオチド送達のためのウイルスベクター
ウイルスゲノムは、標的細胞(例えば、ヒト細胞等の哺乳類細胞)のゲノムへの目的遺伝子の効率的送達に使用することができるベクターの豊富な供給源となる。ウイルスゲノムは、そのようなゲノム内に含有されるポリヌクレオチドが、典型的には、一般化または特殊化した形質導入によって哺乳類細胞の核ゲノム内に組み込まれるため、遺伝子送達に特に有用なベクターである。これらの過程は、天然のウイルス複製サイクルの一部として起こり、遺伝子組み込みを誘導するために加えられるタンパク質または試薬を必要としない。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルス(例えば、Retroviridae科のウイルスベクター)、アデノウイルス(例えば、Ad5、Ad26、Ad34、Ad35、及びAd48)、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えば、オルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹及びセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えば、ピコルナウイルス及びアルファウイルス、ならびに二本鎖DNAウイルス、例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型及び2型、エプスタイン-バーウイスル、サイトメガロウイルス)、及びポックスウイルス(例えば、ワクシニア、改変ワクシニアアンカラ(MVA)、鶏痘及びカナリア痘)が挙げられる。他のウイルスには、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポーバウイルス、ヘパドナウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒト泡沫状ウイルス、及び肝炎ウイルスが含まれる。レトロウイルスの例としては、トリ白血病・肉腫、トリC型ウイルス、哺乳類C型ウイルス、哺乳類B型ウイルス、哺乳類D型ウイルス、オンコレトロウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、アルファレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、スプーマウイルスが挙げられる(Coffin,J.M.,Retroviridae:The viruses and their replication,Virology,Third Edition(Lippincott-Raven,Philadelphia,1996))。他の例としては、マウス白血病ウイルス、マウス肉腫ウイルス、マウス乳房腫瘍ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒヒ内在性ウイルス、テナガザル白血病ウイルス、マソン・ファイザー・サルウイルス、サル免疫不全ウイルス、サル肉腫ウイルス、ラウス肉腫ウイルス及びレンチウイルスが挙げられる。ベクターの他の例は、例えば、米国特許第5,801,030号に記載されており、その開示は、遺伝子治療に使用するためのウイルスベクターに関連して参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0218】
ポリヌクレオチド送達のためのAAVベクター
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法のポリヌクレオチドは、細胞内へのそれらの導入を促進するために、rAAVベクター及び/またはビリオン内に組み込まれる。本明細書に記載の組成物及び方法に有用なrAAVベクターは、組換えポリヌクレオチドコンストラクトであって、(1)本明細書に記載のSTRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するポリヌクレオチド)、(2)発現させる配列(例えば、異種発現産物またはステレオシリンタンパク質の一部をコードするポリヌクレオチド)、ならびに(3)発現させる配列の組み込み及び発現を促進するウイルス配列が含まれる、組換えポリヌクレオチドコンストラクトである。ウイルス配列には、DNAの複製及びビリオンへのパッケージング(例えば、機能的ITR)のためにシスで必要とされるAAVの配列が含まれ得る。典型的な適用では、発現させる配列は、有毛細胞の発生、有毛細胞の機能、有毛細胞の再生、有毛細胞の運命決定、有毛細胞の生存、もしくは有毛細胞の維持を促進することができるタンパク質、または遺伝性難聴もしくは前庭機能障害の形態を有する対象において変異している有毛細胞タンパク質の野生型形態をコードし、これらは、難聴、聴覚消失、もしくは前庭機能障害(例えば、浮動性めまい、回転性めまい、平衡失調、両側前庭障害、動揺視、または平衡障害)と関連した変異を有する対象の聴力または前庭機能を改善するのに有用であり得る。そのようなrAAVベクターは、マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子も含有し得る。有用なrAAVベクターは、AAV WT遺伝子のうちの1つ以上が全部または一部、欠失しているが、機能的隣接ITR配列は保持している。AAVのITRは、特定の適用に好適な任意の血清型であり得る。本明細書に記載の方法及び組成物における使用の場合、ITRは、AAV2のITRであり得る。rAAVベクターを使用するための方法は、例えば、Tal et al.,J.Biomed.Sci.7:279(2000)、及びMonahan and Samulski,Gene Delivery 7:24(2000)に記載されており、その各々の開示は、遺伝子送達のためのAAVベクターに関連して参照により本明細書に組み込まれる。
【0219】
本明細書に記載のポリヌクレオチド及びベクター(例えば、目的タンパク質をコードする導入遺伝子に、またはWTステレオシリンタンパク質の一部をコードするポリヌクレオチドに、機能的に連結されたSTRCプロモーター)は、細胞へのポリヌクレオチドまたはベクターの導入を促進するためにrAAVビリオンに組み込み可能である。AAVのカプシドタンパク質は、ビリオンの外面の非核酸部分を構成し、AAV cap遺伝子によってコードされる。キャップ遺伝子は、ビリオンアセンブリに必要な3種のウイルスコートタンパク質のVP1、VP2及びVP3をコードする。rAAVビリオンの構築は、例えば、US5,173,414、US5,139,941、US5,863,541、US5,869,305、US6,057,152、及びUS6,376,237、ならびにRabinowitz et al.,J.Virol.76:791(2002)及びBowles et al.,J.Virol.77:423(2003)に記載されており、その各々の開示は、遺伝子送達のためのAAVベクターに関連して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0220】
本明細書に記載の組成物及び方法と併用して有用なrAAVビリオンには、AAVの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eb、及びPHP.Sを含め、多種多様なAAV血清型に由来するものが含まれる。有毛細胞に指向させる場合、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV6、AAV8、AAV9、Anc80、Anc80L65、DJ/9、7m8、及びPHP.Bが特に有用であり得る。網膜の形質導入について進化した血清型も、本明細書に記載の方法及び組成物に使用され得る。異なる血清型のAAVベクター及びAAVタンパク質の構築及び使用は、例えば、Chao et al.,Mol.Ther.2:619(2000)、Davidson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:3428(2000)、Xiao et al.,J.Virol.72:2224(1998)、Halbert et al.,J.Virol.74:1524(2000)、Halbert et al.,J.Virol.75:6615(2001)、及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075(2001)に記載されており、その各々の開示は、遺伝子送達のためのAAVベクターに関連して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0221】
偽型rAAVベクターもまた、本明細書に記載の組成物及び方法と併用して有用である。偽型ベクターには、所与の血清型(例えば、AAV9)のAAVベクターが、所与の血清型以外の血清型(例えば、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8等)に由来するカプシド遺伝子を持つ偽型が含まれる。偽型rAAVビリオンの構築及び使用を伴う技術は当該技術分野で公知であり、例えば、Duan et al.,J.Virol.75:7662(2001)、Halbert et al.,J.Virol.74:1524(2000)、Zolotukhin et al.,Methods,28:158(2002)、及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075(2001)に記載されている。
【0222】
ビリオンカプシド内に変異を有するAAVビリオンは、特定の細胞型に非変異カプシドビリオンよりも効果的に感染させるために使用され得る。例えば、好適なAAV変異体は、特定の細胞型へのAAVの指向促進のためのリガンド挿入変異を有し得る。挿入変異体、アラニンスクリーニング変異体、及びエピトープタグ変異体等のAAVカプシド変異体の構築及び特徴付けは、Wu et al.,J.Virol.74:8635(2000)に記載されている。本明細書に記載の方法に使用することができる他のrAAVビリオンには、ウイルスの分子育種によって、及びエクソンシャッフリングによって作製されるカプシドハイブリッドが含まれる。例えば、Soong et al.,Nat.Genet.,25:436(2000)及びKolman and Stemmer,Nat.Biotechnol.19:423(2001)を参照のこと。
【0223】
医薬組成物
本明細書に記載されるSTRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するポリヌクレオチド)は、所望の発現産物をコードするポリヌクレオチド(例えば、目的タンパク質をコードする導入遺伝子)に、またはステレオシリンタンパク質の一部をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されて、感音性難聴及び/または前庭機能障害を患うヒト患者等の患者への投与のためのビヒクル内に組み込まれ得る。所望の発現産物をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された本明細書に記載のSTRCプロモーターを含有するウイルスベクター等のベクターを含有する医薬組成物は、当該技術分野で公知の方法を使用して調製可能である。例えば、そのような組成物は、例えば、生理学的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤(参照により本明細書に組み込まれるRemington:The Science and Practice of Pharmacology 22nd edition,Allen,L.Ed.(2013))を使用して、所望の形態、例えば、凍結乾燥製剤または水溶液の形態に調製可能である。
【0224】
所望の発現産物をコードするポリヌクレオチドに、またはステレオシリンタンパク質の一部をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された本明細書に記載のSTRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するポリヌクレオチド)を含有する、核酸ベクター(例えば、ウイルスベクター)の混合物は、1つ以上の賦形剤、担体、または希釈剤と好適に混合された水で調製され得る。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物で、及び油で調製され得る。通常の保存及び使用条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐために保存剤を含有し得る。注射用途に好適な剤形には、無菌の水溶液または分散液、及び無菌の注射液または分散液の用時調製用の無菌粉末(その開示が参照により本明細書に組み込まれるUS第5,466,468号に記載されている)が含まれる。いずれの場合も、製剤は無菌であり得、また注射針を容易に通過できる程度に流動性があり得る。製剤は、製造及び保管条件下で安定であり得、また、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対して保存され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、それらの好適な混合物、及び/または植物性油を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用、分散液の場合は必要粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらされ得る。多くの場合、等張化剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、組成物における、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらされ得る。
【0225】
例えば、本明細書に記載の医薬組成物を含有する溶液は、必要に応じて好適に緩衝され得、液体希釈剤は最初に十分な生理食塩水またはグルコースで等張性にされる。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内の投与に特に好適である。これに関連して、用いられ得る無菌水性媒体は、本開示に鑑みて当業者に知られるであろう。例えば、1回投与量を1mlの等張NaCl溶液に溶解させ、1000mlの皮下注入液に加えても、または予定の注入部位に注射してもよい。治療される対象の状態に応じて、いくらかの投与量の変動が必然的に生じる。内耳への局所投与の場合、組成物は、合成外リンパ溶液を含有するよう製剤化され得る。例示的な合成外リンパ溶液には、20~200mM NaCl、1~5mM KCl、0.1~10mM CaCl、1~10mMのグルコース、及び2~50mM HEPEが、pH約6~9、約300mOsm/kgの浸透圧で含まれる。いずれにしても、投与担当者が、個々の対象の適切な用量を決定する。さらに、ヒトへの投与の場合、調製物は、FDA Office of Biologicsの基準で要求される、無菌性、発熱性、一般安全性、及び純度標準を満たし得る。
【0226】
治療方法
本明細書に記載の組成物は、感音性難聴及び/または前庭機能障害を有するかもしくはそれらを発症するリスクのある対象に対し、多種多様な経路によって、例えば、中耳もしくは内耳への局所投与(例えば、外リンパもしくは内リンパ中への投与、例えば、卵円窓、正円窓、もしくは半規管(例えば、水平半規管)への、もしくはそれを介した投与、または経鼓室注射もしくは鼓室内注射による投与、例えば、有毛細胞への投与)、静脈内、非経口、皮内、経皮、筋肉内、鼻腔内、皮下、経皮、気管内、腹腔内、動脈内、血管内、吸入、灌流、洗浄、及び経口投与によって投与され得る。任意の所与の場合における最も好適な投与経路は、投与される特定の組成物、患者、医薬製剤方法、投与方法(例えば、投与時間及び投与経路)、患者の年齢、体重、性別、治療される疾患の重症度、患者の食事、及び患者の排泄率に応じて異なる。組成物は、1回、または複数回(例えば、年1回、年2回、年3回、隔月、月1回、または隔週)投与され得る。2ベクター系に関連した実施形態では、第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターを、同時に(例えば、1つの組成物にして)投与することも、また順次に投与することもできる(例えば、1つの核酸ベクターがもう一方の核酸ベクターの直後か、または最初の核酸ベクターの5分後、10分後、15分後、20分後、25分後、30分後、45分後、1時間後、2時間後、もしくはそれ以上経過後に投与される)。第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターは、同じカプシドを有することも、異なるカプシド(例えば、AAVカプシド)を有することもできる。
【0227】
本明細書に記載のように治療され得る対象は、感音性難聴及び/または前庭機能障害を有するかまたはそれらを発症するリスクのある対象(例えば、難聴、前庭機能障害、または両方を有するかまたはそれらを発症するリスクのある対象)である。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、蝸牛有毛細胞の損傷(例えば、音響性外傷、疾患もしくは感染症、頭部外傷、耳毒性薬物、または加齢に関連した損傷)を有するかまたはそれらを発症するリスクのある対象、前庭有毛細胞の損傷(例えば、疾患もしくは感染症、頭部外傷、耳毒性薬物、または加齢に関連した損傷)を有するかまたはそれらを発症するリスクのある対象、感音性難聴、聴覚消失、もしくはオーディトリー・ニューロパチーを有するかまたはそれらを発症するリスクのある対象、前庭機能障害(例えば、浮動性めまい、回転性めまい、平衡失調、両側前庭障害、動揺視、または平衡障害)を有するかまたはそれらを発症するリスクのある対象、耳鳴(例えば、耳鳴単独、または感音性難聴もしくは前庭機能障害と関連する耳鳴)を有する対象、難聴及び/または前庭機能障害と関連する遺伝子変異を有する対象、あるいは遺伝性難聴、聴覚消失、オーディトリー・ニューロパチー、耳鳴、または前庭機能障害の家族歴を有する対象、を治療することができる。いくつかの実施形態では、有毛細胞(例えば、蝸牛及び/または前庭の有毛細胞)の損傷または消失と関連する疾患は、自己免疫応答が有毛細胞の損傷または細胞死に寄与する自己免疫性の疾患または状態である。感音性難聴及び前庭機能障害と関連付けられる自己免疫疾患には、内耳自己免疫病(AIED)、結節性多発動脈炎(PAN)、コーガン症候群、再発性多発軟骨炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、ウェゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、及びベーチェット病が含まれる。一部の感染性状態、例えば、ライム病及び梅毒も、(例えば、自己抗体産生を誘発することによって)難聴及び前庭機能障害を引き起こす可能性がある。ウイルス感染症、例えば、風疹、サイトメガロウイルス(CMV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、HSVの1型及び2型、ウエストナイルウイルス(WNV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、麻疹、及び流行性耳下腺炎もまた、難聴及び前庭機能障害を引き起こす可能性がある。いくつかの実施形態では、対象は、有毛細胞(例えば、蝸牛または前庭の有毛細胞)の消失と関連する、もしくはそれに起因する、難聴及び/または前庭機能障害を有するかまたはそれを発症するリスクがある。本明細書に記載のSTRC2ベクター系を使用して、STRCの変異(例えば、ステレオシリンの機能もしくは発現を低下させる変異、または感音性難聴もしくは前庭機能障害と関連するSTRCの変異、例えば、非症候性難聴、例えば、DFNB16を引き起こす変異)を有する対象、例えば、難聴もしくは前庭機能障害の症状を示すSTRCの変異を有する対象、及びまだ症状を呈していない対象(例えば、STRC変異を有する対象の予防的治療)、あるいはSTRCの変異の状態及び/またはSTRCの活性レベルが不明な対象を治療することができる。本明細書に記載の方法には、本明細書に記載の組成物を用いた治療または投与の前に、難聴及び/または前庭機能障害と関連することが知られている1つ以上の遺伝子変異について対象のスクリーニングを行うステップが含まれ得る。当業者に公知の標準的な方法(例えば、遺伝子検査)を使用して遺伝子変異について対象のスクリーニングを行うことができる。本明細書に記載の方法には、本明細書に記載の組成物を用いた治療または投与の前に、対象における聴力及び/または前庭機能を評価するステップも含まれ得る。標準的検査、例えば、聴力検査、聴性脳幹反応(ABR)、蝸電図(ECOG)、及び耳音響放射を使用して聴力を評価することができる。前庭機能は、標準的検査、例えば、眼球運動検査(例えば、電気眼振図(ENG)またはビデオ式眼振計(VNG))、前庭動眼反射(VOR)の検査(例えば、ベッドサイドでも、またビデオヘッドインパルス検査(VHIT)を使用しても実施することができるヘッドインパルス検査(Halmagyi-Curthoys検査)、または温度反射検査(caloric reflex test))、重心動揺検査、回転椅子による検査(rotary-chair testing)、ECOG、前庭誘発筋電位検査(VEMP)、及びMancini and Horak,Eur J Phys Rehabil Med,46:239(2010)に記載があるもののような専門外来での平衡感覚検査を使用して評価され得る。また、これらの試験を、本明細書に記載の組成物を用いた治療または投与後の、対象における聴力及び/または前庭機能を評価するために使用することもできる。本明細書に記載の組成物及び方法はまた、難聴及び/または前庭機能障害を発症するリスクのある患者、例えば、難聴もしくは前庭機能障害(例えば、遺伝性難聴もしくは前庭機能障害)の家族歴を有する患者、聴覚障害もしくは前庭機能障害をまだ示していない難聴もしくは前庭機能障害と関連する遺伝子変異を有する患者、あるいは後天性難聴(例えば、音響性外傷、疾患もしくは感染症、頭部外傷、耳毒性薬物、または加齢)または前庭機能障害(例えば、疾患もしくは感染症、頭部外傷、耳毒性薬物、または加齢)の危険因子に曝露されている患者に対して、予防的治療としても投与され得る。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、特発性前庭機能障害の対象を治療することもできる。
【0228】
本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、対象の有毛細胞(例えば、蝸牛及び/または前庭の有毛細胞の再生)の再生を誘導するかまたは増加させることができる。有毛細胞の再生を誘導するかまたは増加させる組成物による利益が得られる可能性のある対象には、有毛細胞の消失(例えば、外傷(例えば、音響性外傷もしくは頭部外傷)、疾患もしくは感染症、耳毒性薬物、または加齢に関連した有毛細胞の消失)の結果としての難聴もしくは前庭機能障害を患う対象、及び異常な有毛細胞(例えば、正常有毛細胞と比較した場合に適切に機能しない有毛細胞)、損傷有毛細胞(例えば、外傷(例えば、音響性外傷もしくは頭部外傷)、疾患もしくは感染症、耳毒性薬物、または加齢に関連した有毛細胞の損傷)を有するかまたは遺伝子変異もしくは先天異常により有毛細胞数が減少している対象が含まれる。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、有毛細胞の生存を促進するかまたは増加させる(例えば、有毛細胞の消失(例えば、年齢、大きな音への曝露、疾患もしくは感染症、頭部外傷、または耳毒性薬物による有毛細胞の消失)のリスクのある対象において、損傷有毛細胞の生存を増加させる、損傷有毛細胞の修復を促進する、または有毛細胞を保存する)こともできる。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、有毛細胞の成熟を促進するかもしくは増加させること、有毛細胞の構造を改善すること(例えば、不動毛束の形態を改善すること)、または有毛細胞の機能を改善すること(例えば、不動毛束の傾きを改善すること)もでき、これにより、聴覚及び/または前庭機能の改善をもたらすことができる。
【0229】
本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、耳毒性薬物による治療を受けたことがあるか、または治療を現在受けている、もしくはまもなく開始する対象において、耳毒性薬物誘発性の有毛細胞の損傷もしくは細胞死(例えば、蝸牛有毛細胞及び/または前庭有毛細胞の損傷もしくは細胞死)により引き起こされる難聴及び/または前庭機能障害を予防もしくは軽減することもできる。耳毒性薬物は、内耳の細胞に毒性を示し、感音性難聴、前庭機能障害(例えば、回転性めまい、浮動性めまい、平衡失調、両側前庭障害(両側前庭機能低下)、もしくは動揺視)、耳鳴、またはこれらの症状の組み合わせを引き起こし得る。耳毒性であることがわかっている薬物としては、アミノグリコシド系抗生物質(例えば、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、カナマイシン、バンコマイシン、及びアミカシン)、バイオマイシン、抗腫瘍薬(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチン等の白金含有化学療法剤)、ループ利尿薬(例えば、エタクリン酸及びフロセミド)、サリチル酸塩(例えば、アスピリン、特に高用量時)、及びキニーネが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法及び組成物を使用して、両側前庭障害(両側前庭機能低下)または動揺視を治療することができる。両側前庭障害(両側前庭機能低下)及び動揺視は、アミノグリコシドによって誘発される可能性がある(例えば、本明細書に記載の方法及び組成物を使用して、アミノグリコシド誘発性の両側前庭障害(両側前庭機能低下)もしくは動揺視を有するかまたはそれらを発症するリスクのある対象における有毛細胞の再生を促進するかまたは増加させることができる)。
【0230】
本明細書に記載のような対象の治療のための、STRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するポリヌクレオチド)に機能的に連結されている、所望の発現産物をコードするポリヌクレオチドは、健常有毛細胞で発現されるタンパク質(例えば、有毛細胞の発生、有毛細胞の機能、有毛細胞の運命決定、有毛細胞の再生、有毛細胞の生存、もしくは有毛細胞の維持において役割を果たすタンパク質、または感音性難聴もしくは前庭機能障害の対象において欠損しているタンパク質)をコードする導入遺伝子、別の目的タンパク質(例えば、蛍光タンパク質、lacZ、もしくはルシフェラーゼ等のレポータータンパク質)をコードする導入遺伝子、あるいは転写されて、shRNA、ASO、遺伝子編集系の成分(例えば、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、もしくはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)等のヌクレアーゼ、またはガイドRNA(gRNA))、またはマイクロRNAを生成することができるポリヌクレオチドであり得る。導入遺伝子は、対象の難聴もしくは前庭機能障害の原因(例えば、対象の難聴もしくは前庭機能障害が特定の遺伝子変異と関連する場合、導入遺伝子は、対象において変異している遺伝子の野生型形態であり得、また対象が、有毛細胞の消失と関連する難聴及び/または前庭機能障害を有する場合、導入遺伝子は、有毛細胞の再生を促進するタンパク質をコードすることができる)、対象の難聴もしくは前庭機能障害の重症度、対象の有毛細胞の健康状態、対象の年齢、難聴もしくは前庭機能障害についての対象の家族歴、あるいは他の要因に基づいて選択され得る。本明細書に記載のような対象の治療のためのSTRCプロモーターに機能的に連結された導入遺伝子によって発現され得るタンパク質としては、ACTG1、FSCN2、RDX、POU4F3、TRIOBP、TPRN、XIRP2、ATOH1、GFI1、CHRNA9、CHRNA10、CIB3、CDH23、PCDH15、KNCN、DFNB59、MKRN2OS、LHX3、TMC1、MYO15、MYO7A、MYO6、MYO3A、MYO3B、GRXCR1、PTPRQ、LCE6A、LOXHD1、ART1、ATP2B2、CIB2、CACNA2D4、EPS8、EPS8L2、ESPN、ESPNL、PRPH2、SLC8A2、ZCCHC12、LRTOMT2、LRTOMT1、USH1C、SLC26A5、PIEZO2、ELFN1、TTC24、DYTN、CCER2、LRTM2、KCNA10、CLRN1、CLRN2、SKOR1、TCTEX1D1、FCRLB、GRXCR2、SERPINE3、NHLH1、HSP70、HSP90、ATF6、PERK、IRE1、WHRN、OCM、ISL1、TMTC4、BIP、及びKCNQ4が挙げられる。ステレオシリンのN末端部分をコードするポリヌクレオチドを、本明細書に記載のSTRCプロモーターに機能的に連結させることもできる(例えば、2ベクター系内の第1のベクターの場合)。いくつかの実施形態では、C-インテインとステレオシリンのC末端部分とを含有する融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、本明細書に記載のSTRCプロモーターに機能的に連結させることができる(例えば、インテイン発現系の第2のベクターの場合)。
【0231】
治療には、本明細書に記載のSTRCプロモーターを含有する核酸ベクター(例えば、AAVベクター)を含有する組成物の様々な単位用量での投与が含まれ得る。各単位用量は通常は、所定量の治療用組成物を含有する。投与される量、ならびに特定の投与経路及び製剤は、臨床分野の当業者の技能の範囲内である。単位用量を単回注射で投与する必要はないが、設定された期間にわたる持続注入を含み得る。投与は、内耳(例えば、蝸牛及び/または前庭系)への損傷を最小限に抑えるために、注入速度を制御するためのシリンジポンプを使用して実施され得る。核酸ベクターが、AAVベクター(例えば、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eb、またはPHP.Sのベクター)である場合には、ウイルスベクターは、例えば、1μL~200μL(例えば、1μL、2μL、3μL、5μL、6μL、7μL、8μL、9μL、10μL、15μL、20μL、25μL、30μL、35μL、40μL、45μL、50μL、55μL、60μL、65μL、70μL、75μL、80μL、85μL、90μL、95μL、100μL、110μL、120μL、130μL、140μL、150μL、160μL、170μL、180μL、190μL、または200μL)の体積中に約1×10ベクターゲノム(VG)/mL~約1×1016VG/mL(例えば、1×10VG/mL、2×10VG/mL、3×10VG/mL、4×10VG/mL、5×10VG/mL、6×10VG/mL、7×10VG/mL、8×10VG/mL、9×10VG/mL、1×1010VG/mL、2×1010VG/mL、3×1010VG/mL、4×1010VG/mL、5×1010VG/mL、6×1010VG/mL、7×1010VG/mL、8×1010VG/mL、9×1010VG/mL、1×1011VG/mL、2×1011VG/mL、3×1011VG/mL、4×1011VG/mL、5×1011VG/mL、6×1011VG/mL、7×1011VG/mL、8×1011VG/mL、9×1011VG/mL、1×1012VG/mL、2×1012VG/mL、3×1012VG/mL、4×1012VG/mL、5×1012VG/mL、6×1012VG/mL、7×1012VG/mL、8×1012VG/mL、9×1012VG/mL、1×1013VG/mL、2×1013VG/mL、3×1013VG/mL、4×1013VG/mL、5×1013VG/mL、6×1013VG/mL、7×1013VG/mL、8×1013VG/mL、9×1013VG/mL、1×1014VG/mL、2×1014VG/mL、3×1014VG/mL、4×1014VG/mL、5×1014VG/mL、6×1014VG/mL、7×1014VG/mL、8×1014VG/mL、9×1014VG/mL、1×1015VG/mL、2×1015VG/mL、3×1015VG/mL、4×1015VG/mL、5×1015VG/mL、6×1015VG/mL、7×1015VG/mL、8×1015VG/mL、9×1015VG/mL、または1×1016VG/mL)の用量で患者に投与され得る。AAVベクターは、約1×10VG/耳~約2×1015VG/耳(例えば、1×10VG/耳、2×10VG/耳、3×10VG/耳、4×10VG/耳、5×10VG/耳、6×10VG/耳、7×10VG/耳、8×10VG/耳、9×10VG/耳、1×10VG/耳、2×10VG/耳、3×10VG/耳、4×10VG/耳、5×10VG/耳、6×10VG/耳、7×10VG/耳、8×10VG/耳、9×10VG/耳、1×10VG/耳、2×10VG/耳、3×10VG/耳、4×10VG/耳、5×10VG/耳、6×10VG/耳、7×10VG/耳、8×10VG/耳、9×10VG/耳、1×1010VG/耳、2×1010VG/耳、3×1010VG/耳、4×1010VG/耳、5×1010VG/耳、6×1010VG/耳、7×1010VG/耳、8×1010VG/耳、9×1010VG/耳、1×1011VG/耳、2×1011VG/耳、3×1011VG/耳、4×1011VG/耳、5×1011VG/耳、6×1011VG/耳、7×1011VG/耳、8×1011VG/耳、9×1011VG/耳、1×1012VG/耳、2×1012VG/耳、3×1012VG/耳、4×1012VG/耳、5×1012VG/耳、6×1012VG/耳、7×1012VG/耳、8×1012VG/耳、9×1012VG/耳、1×1013VG/耳、2×1013VG/耳、3×1013VG/耳、4×1013VG/耳、5×1013VG/耳、6×1013VG/耳、7×1013VG/耳、8×1013VG/耳、9×1013VG/耳、1×1014VG/耳、2×1014VG/耳、3×1014VG/耳、4×1014VG/耳、5×1014VG/耳、6×1014VG/耳、7×1014VG/耳、8×1014VG/耳、9×1014VG/耳、1×1015VG/耳、または2×1015VG/耳)の用量で対象に投与され得る。
【0232】
本明細書に記載の組成物は、聴力を改善する、前庭機能を改善する(例えば、平衡感覚を改善する、または浮動性めまいもしくは回転性めまいを軽減する)、耳鳴を軽減する、両側前庭障害を治療する、動揺視を治療する、平衡障害を治療する、STRCプロモーターに機能的に連結された導入遺伝子によってコードされるタンパク質の有毛細胞における発現を増加させるかもしくは誘導する、STRCプロモーターに機能的に連結された導入遺伝子によってコードされるタンパク質の有毛細胞における機能を増大させる、有毛細胞の損傷(例えば、音響性外傷、頭部外傷、耳毒性薬物、疾患もしくは感染症、または加齢に関連した有毛細胞の損傷)を阻止するかもしくは減少させる、有毛細胞死(例えば、耳毒性薬物誘発性の有毛細胞死、騒音に関連した有毛細胞死、加齢に関連した有毛細胞死、疾患もしくは感染症に関連した有毛細胞死、または頭部外傷に関連した有毛細胞死)を阻止するかもしくは減少させる、有毛細胞の発生を促進するかもしくは増加させる、有毛細胞数を増加させる、有毛細胞の再生(例えば、蝸牛及び/または前庭の有毛細胞の再生)を誘導するかもしくは増加させる、有毛細胞の生存を促進するかもしくは増加させる、有毛細胞の成熟を促進するかもしくは増加させる、蓋膜への毛束の接着(例えば、OHCの毛束の接着)を改善する、有毛細胞の構造を改善する、あるいは有毛細胞機能を改善するのに、十分な量で投与される。聴力は、標準的な聴力検査(例えば、聴力検査、ABR、蝸電図(ECOG)、及び耳音響放射)を使用して評価することができ、治療前に取得された聴力測定値と比較して5%またはそれ以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%またはそれ以上)改善され得る。前庭機能は、平衡感覚及び回転性めまいについての標準検査(例えば、眼球運動検査(例えば、ENGもしくはVNG)、重心動揺検査、VOR試験(例えば、ヘッドインパルス検査(Halmagyi-Curthoys検査、例えば、VHIT)、または温度反射検査(caloric reflex testing)、回転椅子による検査(rotary-chair testing)、ECOG、VEMP、及び専門外来での平衡感覚検査)を使用して評価され得、治療前に取得された測定値と比較して5%またはそれ以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%またはそれ以上)改善され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、対象が語音を理解する能力を改善するのに十分な量で投与される。本明細書に記載の組成物はまた、(例えば、難聴または前庭機能障害と関連する遺伝子変異を有する対象であって、難聴もしくは前庭機能障害(例えば、遺伝性難聴もしくは前庭機能障害)の家族歴を有する対象、または難聴もしくは前庭機能障害と関連する危険因子(例えば、耳毒性薬物、頭部外傷、疾患もしくは感染症、または音響性外傷)に曝露されたことがあるが、聴覚障害もしくは前庭機能障害(例えば、回転性めまい、浮動性めまい、もしくは平衡失調)を示していない対象において、あるいは軽度から中等度の難聴もしくは前庭機能障害を示す対象において)感音性難聴及び/または前庭機能障害の発生もしくは進行を、減速させるかもしくは阻止するのに十分な量で投与され得る。対象に投与される核酸ベクターにおいてSTRCプロモーターに機能的に連結された導入遺伝子によってコードされるタンパク質の発現は、免疫組織化学染色、ウエスタンブロット分析、定量的リアルタイムPCR、または検出用タンパク質もしくはmRNAについて当該技術分野で公知の他の方法を使用して評価され得、本明細書に記載の組成物の投与前の発現と比較して5%またはそれ以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%またはそれ以上)増加し得る。有毛細胞数、有毛細胞の機能、有毛細胞の再生、または対象に投与される核酸ベクターにおいてSTRCプロモーターに機能的に連結された導入遺伝子によってコードされるタンパク質の機能は、聴力検査または前庭機能の検査に基づいて間接的に評価され得、本明細書に記載の組成物の投与前の有毛細胞数、有毛細胞の機能、有毛細胞の再生、またはタンパク質の機能と比較して5%またはそれ以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%またはそれ以上)増加し得る。有毛細胞の損傷または細胞死は、未治療対象において典型的に観察される有毛細胞の損傷及び細胞死と比較して5%またはそれ以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%またはそれ以上)減少し得る。これらの効果は、本明細書に記載の組成物の投与後、例えば、1週間以内、2週間以内、3週間以内、4週間以内、5週間以内、6週間以内、7週間以内、8週間以内、9週間以内、10週間以内、15週間以内、20週間以内、25週間以内、またはそれ以上の期間内に生じ得る。患者は、治療に使用した用量及び投与経路に応じて、組成物の投与から1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、またはそれ以上の期間後に評価され得る。評価の結果に応じて、患者は追加の治療を受ける場合がある。
【0233】
キット
本明細書に記載の組成物は、感音性難聴及び/または前庭機能障害の治療に使用するためのキットにして提供可能である。組成物には、本明細書に記載のSTRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するポリヌクレオチド)、そのようなポリヌクレオチドを含有する核酸ベクター、所望の発現産物をコードするポリヌクレオチド(例えば、目的タンパク質、例えば、難聴及び/または前庭機能障害を治療するための有毛細胞で発現可能なタンパク質をコードする導入遺伝子)に機能的に連結された本明細書に記載のSTRCプロモーターを含有する核酸ベクター、ならびに本明細書に記載のSTRCプロモーターが含まれる核酸ベクター系(例えば、本明細書に記載の2ベクター系)が含まれ得る。核酸ベクターは、AAVウイルスカプシド(例えば、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV6、AAV8、AAV9、Anc80、Anc80L65、DJ/9、7m8、またはPHP.B)にパッケージングされ得る。キットにはさらに、医師等のキットの使用者に本明細書に記載の方法の実施を指示する添付文書を含めることができる。キットには任意選択で、組成物を投与するためのシリンジまたは他のデバイスが含まれる。
【実施例
【0234】
以下の実施例は、本明細書に記載の組成物及び方法をどのように使用、作製、及び評価することができるかについての説明を当業者に提供するために提示されており、本発明の単なる例示であることを意図し、発明者らが自身の発明であると見なすものの範囲を限定することは意図していない。
【0235】
実施例1.STRCプロモーターで誘導されたGFP発現は、マウスにおいてコルチ器の外有毛細胞に豊富であり、卵形嚢の有毛細胞に限定されている
インビボにおける本明細書に開示のSTRCプロモーターの特異性を試験するため、いくつかの本開示のSTRCプロモーターに機能的に連結されたeGFPが含まれるAAVベクターを野生型C57BL/6Jマウスに注射した。AAVベクター調製のための周知の方法を使用して、配列番号1のSTRCプロモーターの制御下でeGFPを発現するAAVベクターを導入遺伝子プラスミドP1208(図1)から調製した。AAVベクター調製のための周知の方法を使用して、配列番号2のヌクレオチド35~530のSTRCプロモーターの制御下でeGFPを発現するAAVベクターを導入遺伝子プラスミドP1209(図2)から調製した。
【0236】
生後早期(生後2~3日)のマウスに、後半規管の開窓を介して2つのAAVベクターのうちの1つを1μlにて注射した(配列番号2のヌクレオチド35~530のSTRCプロモーターの制御下でeGFPを発現するAAVベクターでは1.6×1010vg/耳;配列番号1のSTRCプロモーターの制御下でeGFPを発現するAAVベクターでは1.1×1010vg/耳)。
【0237】
6週齢の成体マウスに、後半規管の開窓を介して2つのAAVベクターのうちの1つを2μlにて注射した(配列番号2のヌクレオチド35~530のSTRCプロモーターの制御下でeGFPを発現するAAVベクターでは3.2×1010vg/耳;配列番号1のSTRCプロモーターの制御下でeGFPを発現するAAVベクターでは2.2×1010vg/耳)。
【0238】
生後4週間の後、新生仔期に注射された動物を屠殺し、心灌流を介して10%NBFに固定し、それらの側頭骨を採取してさらに16時間、10%NBFに保持した。成体マウスの場合、注射後2週間で動物を屠殺し、同じ手順を使用して側頭骨を採取した。8%EDTAでの2日間の脱灰後、耳を顕微解剖し、卵形嚢及びコルチ器を免疫組織化学染色のために準備した。コルチ器の全載組織標本をMyosin7a抗体で対比染色して全有毛細胞を視覚化し(図3、パネルA及びA’;図4のパネルA、A’及びA’’;図7、パネルA及びA’;図8のパネルA、A’及びA’’)、共焦点顕微鏡下(Leica SP8、20×/0.75 NA、2AUで2μmのステップサイズ)でウイルス介在性野生型GFP発現(図3、パネルB及びB’;図4のパネルB、B’及びB’’;図7、パネルB及びB’;図8のパネルB、B’及びB’’)と共に画像化した。
【0239】
新生仔の卵形嚢の全載標本をPou4f3抗体で対比染色して全有毛細胞核を標識し(図5、パネルA、A’及びA’’)、Sox2抗体を使用して全支持細胞及びII型有毛細胞核を標識し(図5、パネルC、C’及びC’’)、共焦点顕微鏡下(Leica SP8 20×/0.75 NA、2AUで1.5μmのステップサイズ)でウイルス介在性野生型GFP発現(図5、パネル、B、B’及びB’’)と共に画像化した。STRCプロモーターで誘導されたGFP発現がコルチ器の外有毛細胞で著しく豊富であり、卵形嚢の有毛細胞に限定されていた。コルチ器の一部の内有毛細胞でもわずかなGFP発現が検出された。
【0240】
マウスにおけるステレオシリン野生型発現を視覚化するため、成体CBA/CaJマウスを屠殺し、心灌流を介して10%NBFに固定し、それらの側頭骨を採取してさらに16時間、10%NBFに保持した。8%EDTAでの2日間の脱灰後、コルチ器を顕微解剖してステレオシリンに対する抗体で染色し、不動毛の線維状アクチンを標識するファロイジンで対比染色した。共焦点顕微鏡(Zeiss LSM800、63x/1.4 NA、1AUで0.38μmのステップサイズ)を使用して画像を取得した(図6)。
【0241】
実施例2.STRCプロモーターで誘導されたGFP発現は、コルチ器の外有毛細胞に豊富であり、非ヒト霊長類の有毛細胞に限定されている
インビボにおける本明細書に開示のSTRCプロモーターの特異性を試験するため、いくつかの本開示のSTRCプロモーターに機能的に連結された核指向性H2B-eGFPが含まれるAAVベクターを非ヒト霊長類(Macaca fascicularis)の耳に注射した。AAVベクター調製のための周知の方法を使用して、配列番号1のSTRCプロモーターの制御下で核のH2B-eGFPを発現するAAVベクターを導入遺伝子プラスミドP1016(図11)から調製した。成体の非ヒト霊長類に40μlのベクターを注射した(配列番号1のSTRCプロモーターの制御下でH2B-eGFPを発現するAAVベクターでは3.41×1013vg/mlを正円窓膜を介して行い、外側半規管の開窓により、手技中の外リンパの流出を可能にした)。
【0242】
生後4週間の後、動物を屠殺し、心灌流を介して10%NBFに固定し、それらの側頭骨を採取して追加の4~10日、10%NBFに保持した。14%EDTAでの6週間の脱灰後、耳を顕微解剖して形嚢及びコルチ器を免疫組織化学染色のために準備するか、または耳をギ酸で6日間脱灰し、パラフィン包埋して5μm切片の薄片にした。
【0243】
コルチ器の全載組織標本をPou4f3抗体で対比染色して全有毛細胞を視覚化し(図9、パネルA)、共焦点顕微鏡下(Zeiss LSM880、40×/NA 0.95、2AUで1μmのステップサイズ)で、GFPに対する抗体で対比染色したウイルス介在性GFP発現と共に画像化した(図9、パネルB)。
【0244】
切片をGFPに対する抗体で標識し、アルカリホスファターゼを結合させた二次抗体で染色したところ、二次抗体のアルカリホスファターゼとのファストレッド色素の反応によって赤色染色が発生した。切片をヘマトキシリンで青色に対比染色してすべての核を視覚化し、カラーカメラで20×の拡大率にて画像化し、グレースケールに変換した(図10、パネルA)。色の付いた抗GFP染色の赤色シグナルを視覚化するため、画像処理ソフトウェアGIMPを使用して、色選択ツールを用いてすべての青(ヘマトキシリン)色をカラー画像から抽出し、それからグレースケールに変換した。赤色シグナルの核H2B-GFPのある核のみが可視状態で残った(図10、パネルB)。
【0245】
実施例3.Anc80-CMV-mStrc重複二重ベクター系はステレオシリン欠損マウスの聴力を回復させた
CRISPR-Cas9技術を使用して、STRCの塩基対232位にフレームシフトを形成することによってCBA/CaJバックグラウンド系統のステレオシリン欠損マウスを作製した。CBA/CaJバックグラウンド系統の野生型動物は、外有毛細胞(OHC)の不動毛の先端において明確なステレオシリン抗体染色を示したが(図12A、下パネル)、232bp Strc-KO動物では抗体のシグナルを欠いた(図12B、下パネル)。マウスSTRCを二重Anc80ベクターに封入し、その場合、第1のベクターがCMVプロモーター及びマウスSTRC cDNAのヌクレオチド1~3200を担持し、第2のベクターがアミノ酸2201~5430を担持し、2分された全長cDNAの間に1000bpの重複を生成した。両ベクターを、生後早期の232bp Strc-KOマウスの蝸牛に後半規管を介して1E10vg/耳の濃度で送達した後、処置された232bp Strc-KOマウスのコルチ器のOHCの先端及び内有毛細胞体内でステレオシリンタンパク質の新規発現を観察することができた(図12C、下パネル)。Anc80-CMV-mStrc(重複)による治療の4週間後に、OHCの機能の直接的なリードアウトとして歪成分耳音響放射(DPOAE)を評価し、完全な聴覚上行路の尺度として聴性脳幹反応(ABR)を測定した。232bp Strc-KO動物の未処置の対側耳(「未処置耳」)は、OHCの機能の喪失を示す、DPOAEのほぼ不在及びABR閾値の高上昇が示されたが(図13A及び図13B、白丸)、処置された232bp Strc-KO動物(「処置hom」)は、聴力閾値の回復を示した(図13A及び図13B、黒丸)。処置された232bp Strc-KO動物の最良レスポンダー(図13A及び図13B、黒い四角)は、野生型(「CBA/CaJ」)(図13A及び図13B、三角形)に近い聴力閾値を示した。AAV-Anc80-CMV-mStrcによる処置後にステレオシリンを発現する232bp Strc-KOマウスのOHCの割合が高いことが、聴力回復を促進することが見出された(図13C)。
【0246】
実施例4.2ベクター分割インテイン系はインビトロで全長ステレオシリンを再構成した
実験的プラスミドを作製するため、ステレオシリンのアミノ酸1~746(「N-Strc」)をコードするDNAを、Npu N-インテイン断片をコードするDNA(配列番号26のNpu N-インテインをコードする、配列番号40)と遺伝子操作により融合させ、恒常的に活性なCMVプロモーターを含有するプラスミド内にクローニングして、CMV.N-Strc-N-Npuを作製した。ステレオシリンのアミノ酸747~1809(「C-Strc」)をコードするDNAを、Npu C-インテイン断片をコードするDNA(配列番号27のNpu C-インテインをコードする、配列番号41)の下流に遺伝子操作により融合させ、CMVプロモーターを含有するプラスミド内にクローニングして、CMV.C-Npu-C-Strcを生成した。対照として、全長ステレオシリンコード配列(「FL-Strc」)もCMVプラスミド内にクローニングしてCMV.FL-Strcを作製した。CMV.GFPを陰性対照として使用した。
【0247】
Lipofectamine 3000キット(Life Technologies)を使用して、対照プラスミドまたはN-StrcプラスミドとC-Strcプラスミドの組み合わせのいずれかをHEK293T細胞にトランスフェクトし、標準的細胞培養条件下で3日間インキュベートした。細胞培養物をPBSですすぎ、細胞を溶解させ、タンパク質を抽出した。BCAアッセイを使用してタンパク質ライセート濃度を測定し、ベータアクチン及びステレオシリンに対する抗体を使用したウエスタンブロッティングに一定質量のタンパク質をロードした。タンパク質バンド強度のデンシトメトリー測定を使用して、試料からの全長ステレオシリンの相対量を決定した。
【0248】
図14のA及びBに示すように、試験したインテイン設計では全長ステレオシリンバンドが生成された。
実施例5.異なる二重ベクター系を使用したステレオシリンタンパク質発現の評価
STRC分割部位の異なるAAV-DJ-CMV-mSTRC二重ハイブリッドベクターを作製した。ヌクレオチド位置の1800、2247、2310、2421、または2588にて5’ベクターと3’ベクターとに分離した(5’ベクターは、マウスSTRCのヌクレオチド1~1800、1~2247、1~2310、1~2421、または1~2588を含有し、3’ベクターは、マウスSTRCコード配列の残りのヌクレオチド、例えば、ヌクレオチド1801~5430、2248~5430、2311~5430、2422~5430、または2589~5430を含有した)。二重ハイブリッドベクターに用いた組換え誘導領域はAP遺伝子断片であった。5’ベクターと3’ベクターがマウスステレオシリンの1000の共通ヌクレオチドを含有した重複二重ベクター系(5’ベクターがNM_080459のヌクレオチド79~3278(配列番号6のヌクレオチド1~3200に対応)を担持し、3’ベクターがヌクレオチド2279~5508(配列番号6のヌクレオチド2201~5430に対応)を担持した)もまた試験した。
【0249】
組織培養プレートにHEK293T細胞を播種した。細胞が接着した後、AAVを、細胞あたり1x10^7ベクターゲノムの感染多重度(MOI)で培養物に加えた(5’ベクターと3’ベクターを1:1の比で加えた)。GFP対照及び全長STRC対照を、AAVで処理する代わりに、導入遺伝子をコードするDNAプラスミドを含有するLipofectamine 3000で処理した。処理した細胞を標準的細胞培養条件下で3日間インキュベートし、その後、細胞を溶解させ、総タンパク質を採取した。各試料について15μgのライセートを3~8%トリス酢酸/SDSゲルにロードし、標準的ウエスタンブロットを実施した。ステレオシリンタンパク質またはアクチンを特異的に検出するため、ブロットしたメンブレンを抗体で処理した。発現量の半定量的指標を得るため、検出されたバンドのデンシトメトリーを実施し、ステレオシリン検出とアクチン検出間の信号強度比を使用してステレオシリンタンパク質の発現量を概算した(図15)。
【0250】
実施例6.マウス新生仔蝸牛外植片における、STRCプロモーターで誘導されたGFP発現
新生仔蝸牛有毛細胞における本明細書に開示のSTRCプロモーターの特異性を試験するため、P0-P2マウスから感覚上皮を切除し、マトリゲル処理済み#0 10mmカバースリップ付きMatTek 35mmディッシュのディッシュ上に1~2つ播種した。DMEM+10%FBS+10μg/mLのシプロフロキサシンを150~200μLにて各ディッシュに加えた。37℃/5%COでの1時間のインキュベーション後、本明細書に開示の様々なSTRCプロモーターの制御下で核指向性eGFP-H2B融合体を発現しているAAVベクター(詳細は下表6を参照のこと)を各ディッシュに1×1011vgの用量で加えた。その後、外植片を37℃/5%COで2日間インキュベートした。2日後、ウイルスを含む培地を除去し、ウイルス不含の新鮮培地と交換した。その後、外植片をさらに3日間インキュベートし、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で室温にて20分間固定した。
【0251】
PFAとのインキュベーション後、外植片をPBSで3回洗浄し、その後、10%正常ロバ血清(NDS)含有PBS中で20分間インキュベートした。NDSを除去し、外植片を、Myo7a(蝸牛有毛細胞マーカー)に対する一次抗体(PBSで1:1000に希釈)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、外植片をPBSで3回洗浄し、その後、蛍光標識した二次抗体(PBSで1:1000に希釈)と共に室温で2~3時間インキュベートした。二次抗体中でインキュベートした後、外植片をPBSで5回洗浄し、Fluoromount封入剤を使用して顕微鏡スライドに封入した。その後、スライドを、20×画像にはZeiss Upright Apotome光学顕微鏡を、また40×画像にはZeiss LSM 880共焦点顕微鏡を使用して画像化した。40×画像の代表例を図16A及び図16Bに示す。
【0252】
【表6】
【0253】
Upright Apotomeで取得した蝸牛全体の20×画像を分析するためにImarisソフトウェアを使用して、感染後にGFPを発現している細胞の定量化を行った。総有毛細胞数を定量化するため、Imarisソフトウェアのスポット機能を使用してMyo7aの細胞を定量化した。その後、これらの細胞をGFPチャネルの強度によりフィルター処理した。Myo7a及びGFPを有するスポットのみが選択されるようフィルター閾値を手動で設定した。これにより、各試料中のGFP+の有毛細胞の総数が得られた。結果を図17に示す。
【0254】
内有毛細胞及び外有毛細胞の数を定量化するため、内有毛細胞及び外有毛細胞を表すMyo7a+のスポットを手動で分離した。その後、これらのスポットをGFPシグナルの強度によりフィルター処理し、GFP+の内有毛細胞及び外有毛細胞を別々に定量化した。結果を図18に示す。
【0255】
実施例7.感音性難聴の対象に対する、STRCプロモーター含有核酸ベクターを含有する組成物の投与
本明細書に開示の方法によれば、当該技術分野の医師は、難聴(例えば、感音性難聴)の患者、例えば、ヒト患者を、聴力が改善または回復するように治療することができる。この目的に向け、当該技術分野の医師はヒト患者に対し、組成物であって、所望の発現産物(例えば、有毛細胞の発生、再生、細胞の運命決定、維持、機能、もしくは生存において役割を果たすタンパク質をコードする導入遺伝子、または対象において変異している難聴と関連する遺伝子の野生型バージョン)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された本明細書に記載のSTRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、例えば、配列番号2のヌクレオチド35~530、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するポリヌクレオチド)を含有するAAVベクター(例えば、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eB、またはPHP.Sのベクター)を含有する、組成物を投与することができる。AAVベクターを含有する組成物は、感音性難聴を治療するために、例えば、内耳への局所投与(例えば、外リンパ中への注射または正円窓膜を介した注射)によって、患者に投与され得る。
【0256】
患者への組成物の投与後、当該技術分野の医師は、治療に反応した、患者の改善を多種多様な方法によってモニタリングすることができる。例えば、医師は、組成物の投与後に、聴力検査、ABR、蝸電図(ECOG)、及び耳音響放射等の標準検査を実施することによって、患者の聴力をモニタリングすることができる。患者が、組成物の投与前の聴力検査結果と比較して、組成物の投与後の試験の1つ以上で聴力改善を示すという所見は、患者が治療に対して良好に反応していることを示す。必要に応じて後続用量を決定し、投与することができる。
【0257】
実施例8.前庭機能障害の対象に対する、STRCプロモーターを含有する核酸ベクターを含有する組成物の投与
本明細書に開示の方法によれば、当該技術分野の医師は、前庭機能障害(例えば、両側前庭障害)の患者、例えば、ヒト患者を、前庭機能が改善または回復する(例えば、平衡感覚が改善する、または転倒が減少する)ように治療することができる。この目的に向け、当該技術分野の医師はヒト患者に対し、組成物であって、所望の発現産物(例えば、有毛細胞の発生、再生、細胞の運命決定、維持、機能、もしくは生存において役割を果たすタンパク質をコードする導入遺伝子、または対象において変異している前庭機能障害と関連する遺伝子の野生型バージョン)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された本明細書に記載のSTRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、例えば、配列番号2のヌクレオチド35~530、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するポリヌクレオチド)を含有するAAVベクター(例えば、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eB、またはPHP.Sのベクター)を含有する、組成物を投与することができる。AAVベクターを含有する組成物は、前庭機能障害を治療するために、例えば、内耳への局所投与(例えば、水平半規管等の半規管内への注射)によって、患者に投与され得る。
【0258】
患者への組成物の投与後、当該技術分野の医師は、治療に反応した、患者の改善を多種多様な方法によってモニタリングすることができる。例えば、医師は、標準検査、例えば、電気眼振検査、ビデオ式眼振検査、回転検査、VORの検査、前庭誘発筋電位検査、またはコンピュータ化された動的重心動揺検査等を実施することによって、患者の前庭機能をモニタリングすることができる。患者が、組成物の投与前に得られた検査結果と比較して、組成物の投与後の試験の1つ以上で前庭機能の改善を示すという所見は、患者が治療に対して良好に反応していることを示す。必要に応じて後続用量を決定し、投与することができる。
【0259】
実施例9.感音性難聴の対象に対する、ステレオシリンコード配列に機能的に連結されたSTRCプロモーターを含有する2ベクター系を含有する組成物の投与
本明細書に開示の方法によれば、当該技術分野の医師は、感音性難聴(例えば、DFNB16等の、STRCの変異と関連する感音性難聴)の患者、例えば、ヒト患者を、聴力が改善または回復するように治療することができる。この目的に向け、当該技術分野の医師はヒト患者に対し、組成物であって、STRC導入遺伝子に機能的に連結されたSTRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、例えば、配列番号2のヌクレオチド35~530、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するポリヌクレオチド)が集合的に含まれる2つのAAVベクター(例えば、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV6、AAV8、AAV9、Anc80、Anc80L65、DJ/9、7m8、またはPHP.Bのベクター)を利用する系のような2ベクター核酸発現系を含有する、組成物を投与することができる。
【0260】
2ベクター系は、第1のAAVベクターと第2のAAVベクターとを含有する重複二重ベクター系であり得る。重複二重ベクター系には、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号3または配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントのN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたSTRCプロモーターが含まれる第1のAAVベクター、及びステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドが含まれる第2のAAVベクターが含まれ得、ここで、第1のベクターのステレオシリンコード配列の3’末端は、第2のベクターのステレオシリンコード配列の5’末端と重複している。別の例では、2ベクター系は、第1のAAVベクターと第2のAAVベクターとを含有するトランススプライシング二重ベクター系であり得る。トランススプライシング二重ベクター系には、第1のAAVベクターであって、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号3または配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントのN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたSTRCプロモーター及びポリヌクレオチドの3’のスプライスドナーシグナル配列が含まれる、第1のAAVベクター、ならびにステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’のスプライスアクセプターシグナル配列が含まれる第2のAAVベクターが含まれ得る。別の例では、2ベクター系は、第1のAAVベクターと第2のAAVベクターとを含有する二重ハイブリッドベクター系であり得る。二重ハイブリッドベクター系には、第1のAAVベクターであって、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号3または配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントのN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたSTRCプロモーター、ポリヌクレオチドの3’のスプライスドナーシグナル配列、及びスプライスドナーシグナル配列の3’の第1の組換え誘導領域が含まれる、第1のAAVベクター、ならびに第2のAAVベクターであって、第2の組換え誘導領域、組換え誘導領域の3’のスプライスアクセプターシグナル配列、及びスプライスアクセプターシグナル配列の3’のステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドが含まれる、第2のAAVベクター、が含まれ得る。さらに別の例では、2ベクター系は、第1のAAVベクターと第2のAAVベクターとが含まれる、分割インテイントランススプライシング系であり得る。分割インテインのトランススプライシング2ベクター系には、第1のAAVベクターであって、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号3または配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントのN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたSTRCプロモーター及びかかるポリヌクレオチドに対して3’のN末端インテイン(N-インテイン)をコードするポリヌクレオチドが含まれる、第1のAAVベクター、ならびに第2のAAVベクターであって、C末端インテイン(C-インテイン)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたSTRCプロモーター及びかかるポリヌクレオチドに対して3’のステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドが含まれる、第2のAAVベクター、が含まれ得る。前述の2ベクター系には、調節配列、例えば、エンハンサー、ポリ(A)配列、ならびに本明細書に記載のプロモーターの一部ではないSTRC非翻訳領域(UTR、例えば、5’UTR及び/または3’UTR)等が追加で含まれ得る。
【0261】
AAVベクターを含有する組成物は、感音性難聴を治療するために、例えば、内耳への局所投与(例えば、外リンパ中への注射または正円窓膜を介した注射)によって、患者に投与され得る。
【0262】
患者への組成物の投与後、当該技術分野の医師は、導入遺伝子によってコードされた治療用タンパク質の発現、及び治療に反応した患者の改善を多種多様な方法によってモニタリングすることができる。例えば、医師は、組成物の投与後に、聴力検査、ABR、蝸電図(ECOG)、及び耳音響放射等の標準検査を実施することによって、患者の聴力をモニタリングすることができる。患者が、組成物の投与前の聴力検査結果と比較して、組成物の投与後の試験の1つ以上で聴力改善を示すという所見は、患者が治療に対して良好に反応していることを示す。必要に応じて後続用量を決定し、投与することができる。
【0263】
実施例10.前庭機能障害の対象に対する、ステレオシリンコード配列に機能的に連結されたSTRCプロモーターを含有する2ベクター系を含有する組成物の投与
本明細書に開示の方法によれば、当該技術分野の医師は、前庭機能障害(例えば、STRCの変異と関連する前庭機能障害、例えば、回転性めまい、浮動性めまい、平衡失調、両側前庭障害、動揺視、または平衡障害等)の患者、例えば、ヒト患者を、前庭機能が改善するように治療することができる。この目的に向け、当該技術分野の医師はヒト患者に対し、組成物であって、STRC導入遺伝子に機能的に連結されたSTRCプロモーター(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号48、配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含有する配列番号2の機能的部分、または配列番号48のヌクレオチド280~560を含有する配列番号48の機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するポリヌクレオチド)が集合的に含まれる2つのAAVベクター(例えば、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV6、AAV8、AAV9、Anc80、Anc80L65、DJ/9、7m8、またはPHP.Bのベクター)を利用する系のような2ベクター核酸発現系を含有する、組成物を投与することができる。
【0264】
2ベクター系は、第1のAAVベクターと第2のAAVベクターとを含有する重複二重ベクター系であり得る。重複二重ベクター系には、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号3または配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントのN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたSTRCプロモーターが含まれる第1のAAVベクター、及びステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドが含まれる第2のAAVベクターが含まれ得、ここで、第1のベクターのステレオシリンコード配列の3’末端は、第2のベクターのステレオシリンコード配列の5’末端と重複している。別の例では、2ベクター系は、第1のAAVベクターと第2のAAVベクターとを含有するトランススプライシング二重ベクター系であり得る。トランススプライシング二重ベクター系には、第1のAAVベクターであって、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号3または配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントのN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたSTRCプロモーター及びポリヌクレオチドの3’のスプライスドナーシグナル配列が含まれる、第1のAAVベクター、ならびにステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’のスプライスアクセプターシグナル配列が含まれる第2のAAVベクター、が含まれ得る。別の例では、2ベクター系は、第1のAAVベクターと第2のAAVベクターとを含有する二重ハイブリッドベクター系であり得る。二重ハイブリッドベクター系には、第1のAAVベクターであって、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号3または配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントのN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたSTRCプロモーター、ポリヌクレオチドの3’のスプライスドナーシグナル配列、及びスプライスドナーシグナル配列の3’の第1の組換え誘導領域が含まれる、第1のAAVベクター、ならびに第2のAAVベクターであって、第2の組換え誘導領域、組換え誘導領域の3’のスプライスアクセプターシグナル配列、及びスプライスアクセプターシグナル配列の3’のステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドが含まれる、第2のAAVベクター、が含まれ得る。さらに別の例では、2ベクター系は、第1のAAVベクターと第2のAAVベクターとが含まれる、分割インテイントランススプライシング系であり得る。分割インテインのトランススプライシング2ベクター系には、第1のAAVベクターであって、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号3または配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントのN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたSTRCプロモーター及びかかるポリヌクレオチドに対して3’のN末端インテイン(N-インテイン)をコードするポリヌクレオチドが含まれる、第1のAAVベクター、ならびに第2のAAVベクターであって、C末端インテイン(C-インテイン)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたSTRCプロモーター及びかかるポリヌクレオチドに対して3’のステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドが含まれる、第2のAAVベクター、が含まれ得る。前述の2ベクター系には、調節配列、例えば、エンハンサー、ポリ(A)配列、ならびに本明細書に記載のプロモーターの一部ではないSTRC非翻訳領域(UTR、例えば、5’UTR及び/または3’UTR)等が追加で含まれ得る。
【0265】
AAVベクターを含有する組成物は、前庭機能障害を治療するために、例えば、内耳への局所投与(例えば、半規管、例えば、水平半規管への注射)によって、患者に投与され得る。
【0266】
患者への組成物の投与後、当該技術分野の医師は、導入遺伝子によってコードされた治療用タンパク質の発現、及び治療に反応した患者の改善を多種多様な方法によってモニタリングすることができる。例えば、医師は、組成物の投与後に、例えば、眼球運動検査(例えば、電気眼振図(ENG)またはビデオ式眼振計(VNG))等の標準検査、前庭動眼反射(VOR)の検査(例えば、ベッドサイドでも、またビデオヘッドインパルス検査(VHIT)を使用しても実施することができるヘッドインパルス検査(Halmagyi-Curthoys検査)、または温度反射検査(caloric reflex test))、重心動揺検査、回転椅子による検査(rotary-chair testing)、ECOG、前庭誘発筋電位検査(VEMP)、及びMancini et al.,Eur J Phys Rehabil Med 46:239(2010)に記載があるもののような専門外来での平衡感覚検査を実施することによって、患者の前庭機能をモニタリングすることができる。患者が、組成物の投与前の前庭機能検査結果と比較して、組成物の投与後の試験の1つ以上で前庭機能の改善を示すという所見は、患者が治療に対して良好に反応していることを示す。必要に応じて後続用量を決定し、投与することができる。
【0267】
本発明の例示的な実施形態を、以下に列挙する段落に記載する。
E1.ポリヌクレオチドであって、異種発現産物をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された、配列番号48または配列番号48のヌクレオチド280~560を含むその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターを含む、前記ポリヌクレオチド。
【0268】
E2.ポリヌクレオチドであって、異種発現産物をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された、(i)配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)、あるいは(ii)配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含むその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターを含む、前記ポリヌクレオチド。
【0269】
E3.前記STRCプロモーターが、配列番号48に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有する、E1に記載のポリヌクレオチド。
【0270】
E4.前記STRCプロモーターが配列番号48の配列を有する、E1またはE3に記載のポリヌクレオチド。
E5.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド280~560を含むかまたはそれからなる、E1に記載のポリヌクレオチド。
【0271】
E6.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド280~564を含むかまたはそれからなる、E1に記載のポリヌクレオチド。
E7.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド124~560を含むかまたはそれからなる、E1に記載のポリヌクレオチド。
【0272】
E8.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド124~564を含むかまたはそれからなる、E1に記載のポリヌクレオチド。
E9.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド1~560を含むかまたはそれからなる、E1に記載のポリヌクレオチド。
【0273】
E10.前記STRCプロモーターが、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有する、E2に記載のポリヌクレオチド。
【0274】
E11.前記STRCプロモーターが配列番号1からなる、E2またはE10に記載のポリヌクレオチド。
E12.前記STRCプロモーターが、配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含むその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有する、E2に記載のポリヌクレオチド。
【0275】
E13.前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド252~537を含むかまたはそれからなる、E2またはE12に記載のポリヌクレオチド。
E14.前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド120~537を含むかまたはそれからなる、E2またはE12に記載のポリヌクレオチド。
【0276】
E15.前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド35~530を含むかまたはそれからなる、E2またはE12に記載のポリヌクレオチド。
E16.前記STRCプロモーターが配列番号2からなる、E2またはE12に記載のポリヌクレオチド。
【0277】
E17.前記異種発現産物が、タンパク質、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、遺伝子編集系の成分(例えば、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、もしくはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)等のヌクレアーゼ、またはガイドRNA(gRNA))、またはマイクロRNAである、E1~E16のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
【0278】
E18.前記タンパク質が、アクチン・ガンマ1(Actin Gamma 1)(ACTG1)、網膜Fascinアクチン束化タンパク質2(Fascin Actin-Bundling Protein 2、Retinal)(FSCN2)、ラディキシン(RDX)、POUクラス4ホメオボックス3(POU4F3)、TRIO及びF-アクチン結合タンパク質(TRIOBP)、Taperin(TPRN)、Xinアクチン結合リピート含有2(Xin Actin Binding Repeat Containing 2)(XIRP2)、アトーナル(Atonal)BHLH転写因子1(ATOH1)、転写抑制因子Growth Factor Independent 1(GFI1)、コリン作動性ニコチン性受容体アルファ9サブユニット(CHRNA9)、コリン作動性ニコチン性受容体アルファ10サブユニット(CHRNA10)、カルシウム及びインテグリン結合ファミリーメンバー3(CIB3)、カドヘリン23(CDH23)、プロトカドヘリン15(PCDH15)、キノシリン(Kinocilin)(KNCN)、Pejvakin(DFNB59)、MKRN2 Opposite Strand(MKRN2OS)、LIMホメオボックスタンパク質3(LHX3)、膜貫通チャネル様1(Transmembrane Channel Like 1)(TMC1)、ミオシン15(MYO15)、ミオシン7A(MYO7A)、ミオシン6(MYO6)、ミオシンIIIA(MYO3A)、ミオシンIIIB(MYO3B)、グルタレドキシンドメイン含有システインリッチタンパク質1(Glutaredoxin Domain Containing Cysteine-Rich Protein 1)(GRXCR1)、プロテインチロシンホスファターゼ、受容体型Q(PTPRQ)、後期角化膜(Late Cornified Envelope)6A(LCE6A)、リポキシゲナーゼ相同ドメイン含有タンパク質1(Lipoxygenase Homology Domain-containing Protein 1)(LOXHD1)、ADP-リボシルトランスフェラーゼ1(ART1)、ATPアーゼ細胞膜Ca2+輸送2(ATPase Plasma Membrane Ca2+ Transporting 2)(ATP2B2)、カルシウム及びインテグリン結合ファミリーメンバー2(CIB2)、電位依存性カルシウムチャネル補助サブユニットアルファ2デルタ4(CACNA2D4)、上皮成長因子受容体経路基質8(EPS8)、EPS8様2(EPS8L2)、エスピン(ESPN)、エスピン様(ESPNL)、ペリフェリン2(PRPH2)、溶質輸送体ファミリー8メンバーA2(SLC8A2)、ジンクフィンガーCCHCタイプ含有タンパク質12(Zinc Finger CCHC-Type Containing Protein 12)(ZCCHC12)、ロイシンリッチ膜貫通・O-メチルトランスフェラーゼドメイン含有(Leucine Rich Transmembrane and O-methyltransferase Domain Containing)(LRTOMT2、LRTOMT1)、USH1タンパク質ネットワーク成分ハーモニン(USH1C)、溶質輸送体ファミリー26メンバー5(SLC26A5)、Piezo型機械感受性イオンチャネル成分2(PIEZO2)、細胞外ロイシンリッチリピート及びフィブロネクチンIII型ドメイン含有1(Extracellular Leucine Rich Repeat and Fibronectin Type III Domain Containing 1)(ELFN1)、テトラトリコペプチドリピートタンパク質24(TTC24)、Dystrotelin(DYTN)、コイルドコイルグルタミン酸リッチタンパク質2(CCER2)、ロイシンリッチリピート及び膜貫通ドメイン含有タンパク質2(LRTM2)、電位依存性カリウムチャネルサブファミリーAメンバー10(KCNA10)、クラリン1(Clarin 1)(CLRN1)、クラリン2(Clarin 2)(CLRN2)、SKIファミリー転写コリプレッサー1(SKI Family Transcriptional Corepressor 1)(SKOR1)、Tctex1ドメイン含有タンパク質1(TCTEX1D1)、Fc受容体様B(FCRLB)、グルタレドキシンドメイン含有システインリッチタンパク質2(GRXCR2)、セルピンファミリーEメンバー3(SERPINE3)、Nescientヘリックス-ループヘリックス1(Nescient Helix-loop Helix 1)(NHLH1)、熱ショックタンパク質70(HSP70)、熱ショックタンパク質90(HSP90)、活性化転写因子6(ATF6)、真核生物翻訳開始因子2アルファキナーゼ3(PERK)、セリン/トレオニンプロテインキナーゼ/エンドリボヌクレアーゼIRE1(IRE1)、ワーリン(Whirlin)(WHRN)、オンコモジュリン(OCM)、LIMホメオボックス1(Isl1)、膜貫通及びテトラトリコペプチドリピート含有4(TMTC4)、結合免疫グロブリンタンパク質(BIP)、または電位依存性カリウムチャネルサブファミリーQメンバー4(KCNQ4)である、E17に記載のポリヌクレオチド。
【0279】
E19.E1~E18のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含む、核酸ベクター。
E20.配列番号48または配列番号48のヌクレオチド280~560を含むその機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターを含む、核酸ベクター。
【0280】
E21.(i)配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)、あるいは(ii)配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含むその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターを含む、核酸ベクター。
【0281】
E22.前記STRCプロモーターが、配列番号48に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有する、E20に記載の核酸ベクター。
【0282】
E23.前記STRCプロモーターが配列番号48の配列を有する、E20またはE22に記載の核酸ベクター。
E24.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド280~560を含むかまたはそれからなる、E20に記載の核酸ベクター。
【0283】
E25.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド280~564を含むかまたはそれからなる、E20に記載の核酸ベクター。
E26.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド124~560を含むかまたはそれからなる、E20に記載の核酸ベクター。
【0284】
E27.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド124~564を含むかまたはそれからなる、E20に記載の核酸ベクター。
E28.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド1~560を含むかまたはそれからなる、E20に記載の核酸ベクター。
【0285】
E29.前記STRCプロモーターが、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有する、E21に記載の核酸ベクター。
【0286】
E30.前記STRCプロモーターが配列番号1からなる、E21またはE29に記載の核酸ベクター。
E31.前記STRCプロモーターが、配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含むその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有する、E21に記載の核酸ベクター。
【0287】
E32.前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド252~537を含むかまたはそれからなる、E21またはE31に記載の核酸ベクター。
E33.前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド120~537を含むかまたはそれからなる、E21またはE31に記載の核酸ベクター。
【0288】
E34.前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド35~530を含むかまたはそれからなる、E21またはE31に記載の核酸ベクター。
E35.前記STRCプロモーターが配列番号2からなる、E20またはE31に記載の核酸ベクター。
【0289】
E36.前記STRCプロモーターが、異種発現産物をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されている、E20~E35のいずれか1つに記載の核酸ベクター。
E37.前記異種発現産物が、タンパク質、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、遺伝子編集系の成分(例えば、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、もしくはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)等のヌクレアーゼ、またはガイドRNA(gRNA))、またはマイクロRNAである、E36に記載の核酸ベクター。
【0290】
E38.前記タンパク質が、ACTG1、FSCN2、RDX、POU4F3、TRIOBP、TPRN、XIRP2、ATOH1、GFI1、CHRNA9、CHRNA10、CIB3、CDH23、PCDH15、KNCN、DFNB59、MKRN2OS、LHX3、TMC1、MYO15、MYO7A、MYO6、MYO3A、MYO3B、GRXCR1、PTPRQ、LCE6A、LOXHD1、ART1、ATP2B2、CIB2、CACNA2D4、EPS8、EPS8L2、ESPN、ESPNL、PRPH2、SLC8A2、ZCCHC12、LRTOMT2、LRTOMT1、USH1C、SLC26A5、PIEZO2、ELFN1、TTC24、DYTN、CCER2、LRTM2、KCNA10、CLRN1、CLRN2、SKOR1、TCTEX1D1、FCRLB、GRXCR2、SERPINE3、NHLH1、HSP70、HSP90、ATF6、PERK、IRE1、WHRN、OCM、Isl1、TMTC4、BIP、またはKCNQ4である、E37に記載の核酸ベクター。
【0291】
E39.前記STRCプロモーターが、全長ステレオシリンタンパク質をコードしないでステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されている、E20~E35のいずれか1つに記載の核酸ベクター。
【0292】
E40.前記核酸ベクターが、2ベクター系における第1の核酸ベクターであり、全長ステレオシリンタンパク質をコードしないでステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドを含む第2の核酸ベクターをさらに含む、E39に記載の核酸ベクター。
【0293】
E41.前記核酸ベクターが、ウイルスベクター、プラスミド、コスミド、または人工染色体である、E19~E40のいずれか1つに記載の核酸ベクター。
E42.前記核酸ベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、及びレンチウイルスからなる群から選択されるウイルスベクターである、E41に記載の核酸ベクター。
【0294】
E43.前記ウイルスベクターがAAVベクターである、E42に記載の核酸ベクター。
E44.前記AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eB、またはPHP.Sのカプシドを有する、E43に記載の核酸ベクター。
【0295】
E45.E19~E44のいずれか1つに記載の核酸ベクターを含む、組成物。
E46.薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤をさらに含む、E45に記載の組成物。
【0296】
E47.E1~E18のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドまたはE19~E44のいずれか1つに記載の核酸ベクターを含む、細胞。
E48.前記細胞が、有毛細胞である、E47に記載の細胞。
【0297】
E49.前記有毛細胞が、哺乳類の有毛細胞である、E48に記載の細胞。
E50.前記哺乳類の有毛細胞が、ヒト有毛細胞である、E49に記載の細胞。
E51.前記有毛細胞が、蝸牛有毛細胞である、E48~E50のいずれか1つに記載の細胞。
【0298】
E52.前記蝸牛有毛細胞が、外有毛細胞である、E51に記載の細胞。
E53.前記蝸牛有毛細胞が、内有毛細胞である、E51に記載の細胞。
E54.前記有毛細胞が、前庭有毛細胞である、E48~E50のいずれか1つに記載の細胞。
【0299】
E55.前記前庭有毛細胞が、II型前庭有毛細胞である、E54に記載の細胞。
E56.前記前庭有毛細胞が、I型前庭有毛細胞である、E54に記載の細胞。
E57.有毛細胞に異種発現産物を発現させる方法であって、前記有毛細胞を、E19~E44のいずれか1つに記載の核酸ベクターまたはE45もしくはE46に記載の組成物と接触させることを含む、前記方法。
【0300】
E58.前記発現産物が、有毛細胞で特異的に発現される、E57に記載の方法。
E59.難聴(例えば、感音性難聴、オーディトリー・ニューロパチー、または聴覚消失)を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象を治療する方法であって、E19~E44のいずれか1つに記載の核酸ベクターまたはE45もしくはE46に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0301】
E60.耳鳴を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象を治療する方法であって、E19~E44のいずれか1つに記載の核酸ベクターまたはE45もしくはE46に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0302】
E61.前庭機能障害を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象を治療する方法であって、E19~E44のいずれか1つに記載の核酸ベクターまたはE45もしくはE46に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0303】
E62.両側前庭障害を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象を治療する方法であって、E19~E44のいずれか1つに記載の核酸ベクターまたはE45もしくはE46に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0304】
E63.前記両側前庭障害が、耳毒性薬物誘発性の両側前庭障害である、E62に記載の方法。
E64.動揺視を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象を治療する方法であって、E19~E44のいずれか1つに記載の核酸ベクターまたはE45もしくはE46に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0305】
E65.前記動揺視が、耳毒性薬物誘発性の動揺視である、E64に記載の方法。
E66.平衡障害を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象を治療する方法であって、E19~E44のいずれか1つに記載の核酸ベクターまたはE45もしくはE46に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0306】
E67.有毛細胞再生の誘導または増加を必要とする対象においてそれを行う方法であって、E19~E44のいずれか1つに記載の核酸ベクターまたはE45もしくはE46に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0307】
E68.有毛細胞の維持の増加を必要とする対象においてそれを行う方法であって、E19~E44のいずれか1つに記載の核酸ベクターまたはE45もしくはE46に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0308】
E69.有毛細胞の生存の増加を必要とする対象においてそれを行う方法であって、E19~E44のいずれか1つに記載の核酸ベクターまたはE45もしくはE46に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0309】
E70.有毛細胞の成熟の誘導または増加を必要とする対象においてそれを行う方法であって、E19~E44のいずれか1つに記載の核酸ベクターまたはE45もしくはE46に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0310】
E71.耳毒性薬物誘発性の有毛細胞の損傷または細胞死の阻止または減少を必要とする対象においてそれを行う方法であって、E19~E44のいずれか1つに記載の核酸ベクターまたはE45もしくはE46に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0311】
E72.有毛細胞の損傷または細胞死の阻止または減少を必要とする対象においてそれを行う方法であって、E19~E44のいずれか1つに記載の核酸ベクターまたはE45もしくはE46に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0312】
E73.前記有毛細胞が、哺乳類の有毛細胞である、E57、E58、及びE67~E72のいずれか1つに記載の方法。
E74.前記哺乳類の有毛細胞が、ヒト有毛細胞である、E73に記載の方法。
【0313】
E75.前記有毛細胞が、蝸牛有毛細胞である、E57、E58、及びE67~E74のいずれか1つに記載の方法。
E76.前記蝸牛有毛細胞が、外有毛細胞である、E75に記載の方法。
【0314】
E77.前記蝸牛有毛細胞が、内有毛細胞である、E75に記載の方法。
E78.前記有毛細胞が、前庭有毛細胞である、E57、E58、及びE67~E74のいずれか1つに記載の方法。
【0315】
E79.前記前庭有毛細胞が、II型前庭有毛細胞である、E78に記載の方法。
E80.前記前庭有毛細胞が、I型前庭有毛細胞である、E78に記載の方法。
E81.前記対象が、難聴(例えば、感音性難聴)を有するかまたはそれを発症するリスクがある、E67~E77のいずれか1つに記載の方法。
【0316】
E82.前記難聴が、遺伝性難聴である、E59またはE81に記載の方法。
E83.前記遺伝性難聴が、常染色体優性難聴、常染色体劣性難聴、またはX連鎖性難聴である、E82に記載の方法。
【0317】
E84.前記難聴が、後天性難聴である、E59またはE81に記載の方法。
E85.前記後天性難聴が、騒音性難聴、加齢性難聴、疾患もしくは感染症関連難聴、頭部外傷関連難聴、または耳毒性薬物誘発性難聴である、E84に記載の方法。
【0318】
E86.前記対象が、前庭機能障害を有するかまたはそれを発症するリスクがある、E67~E72のいずれか1つに記載の方法。
E87.前記前庭機能障害が、回転性めまい、浮動性めまい、平衡失調、両側前庭障害、動揺視、または平衡障害を含む、E61またはE86に記載の方法。
【0319】
E88.前記前庭機能障害が、加齢性前庭機能障害、頭部外傷関連前庭機能障害、疾患もしくは感染症関連前庭機能障害、または耳毒性薬物誘発性前庭機能障害である、E61、E86、及びE87のいずれか1つに記載の方法。
【0320】
E89.前記前庭機能障害が遺伝子変異と関連する、E61及びE86~E88のいずれか1つに記載の方法。
E90.前記前庭機能障害が、特発性前庭機能障害である、E61、E86、及びE87のいずれか1つに記載の方法。
【0321】
E91.前記耳毒性薬物が、アミノグリコシド、抗腫瘍薬、エタクリン酸、フロセミド、サリチル酸塩、またはキニーネである、E63、E65、E71、E85、及びE88のいずれか1つに記載の方法。
【0322】
E92.前記方法が、前記核酸ベクターまたは前記組成物の投与前に、前記対象の聴力を評価することをさらに含む、E59、E60、E67~E77、及びE81~E85のいずれか1つに記載の方法。
【0323】
E93.前記方法が、前記核酸ベクターまたは前記組成物の投与後に、前記対象の聴力を評価することをさらに含む、E59、E60、E67~E77、E81~E85、及びE92のいずれか1つに記載の方法。
【0324】
E94.前記方法が、前記核酸ベクターまたは前記組成物の投与前に、前記対象の前記前庭機能を評価することをさらに含む、E61~E74、E78~E80、及びE86~E93のいずれか1つに記載の方法。
【0325】
E95.前記方法が、前記核酸ベクターまたは前記組成物の投与後に、前記対象の前記前庭機能を評価することをさらに含む、E61~E74、E78~E80、及びE86~E94のいずれか1つに記載の方法。
【0326】
E96.前記核酸ベクターまたは前記組成物が、局所投与される、E59~E95のいずれか1つに記載の方法。
E97.前記核酸ベクターまたは前記組成物が、内耳に投与される、E96に記載の方法。
【0327】
E98.前記核酸ベクターまたは前記組成物が、中耳に投与される、E96に記載の方法。
E99.前記核酸ベクターまたは前記組成物が、半規管に投与される、E96に記載の方法。
【0328】
E100.前記核酸ベクターまたは前記組成物が、経鼓室投与または鼓室内投与される、E96に記載の方法。
E101.前記核酸ベクターまたは前記組成物が、外リンパ中に投与される、E96に記載の方法。
【0329】
E102.前記核酸ベクターまたは前記組成物が、内リンパ中に投与される、E96に記載の方法。
E103.前記核酸ベクターまたは前記組成物が、卵円窓に対して、またはそれを介して投与される、E96に記載の方法。
【0330】
E104.前記核酸ベクターまたは前記組成物が、正円窓に対して、またはそれを介して投与される、E96に記載の方法。
E105.前記核酸ベクターまたは前記組成物が、前庭機能障害を予防するかもしくは減少させる、前庭機能障害の発症を遅延させる、前庭機能障害の進行を減速させる、前庭機能を改善する、難聴を予防もしくは軽減する、耳鳴を予防もしくは軽減する、難聴の発症を遅延させる、難聴の進行を減速させる、聴力を改善する、有毛細胞数を増加させる、有毛細胞の成熟を増加させる、有毛細胞の再生を増加させる、有毛細胞機能を改善する、有毛細胞の損傷を阻止するかもしくは減少させる、有毛細胞死を阻止するかもしくは減少させる、または有毛細胞の生存を促進するかもしくは増加させるのに、十分な量で投与される、E59~E104のいずれか1つに記載の方法。
【0331】
E106.前記接触が、インビボ(対象の内部)で行われる、E57またはE58に記載の方法。
E107.前記対象が、ヒト対象である、E59~E106のいずれか1つに記載の方法。
【0332】
E108.a)第1の核酸ベクターであって、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする第1のポリヌクレオチドに機能的に連結された、配列番号48または配列番号48のヌクレオチド280~560を含むその機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターを含む、前記第1の核酸ベクターと、
b)ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする第2のポリヌクレオチドを含む、第2の核酸ベクターと、を含む、2ベクター系。
【0333】
E109.a)第1の核酸ベクターであって、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする第1のポリヌクレオチドに機能的に連結された、(i)配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)、あるいは(ii)配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含むその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターを含む、前記第1の核酸ベクターと、
b)ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする第2のポリヌクレオチドを含む、第2の核酸ベクターと、を含む、2ベクター系。
【0334】
E110.前記STRCプロモーターが、配列番号48に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有する、E108に記載の2ベクター系。
【0335】
E111.前記STRCプロモーターが、配列番号48の配列を有する、E108またはE110に記載の2ベクター系。
E112.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド280~560を含むかまたはそれからなる、E108に記載の2ベクター系。
【0336】
E113.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド280~564を含むかまたはそれからなる、E108に記載の2ベクター系。
E114.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド124~560を含むかまたはそれからなる、E108に記載の2ベクター系。
【0337】
E115.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド124~564を含むかまたはそれからなる、E108に記載の2ベクター系。
E116.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド1~560を含むかまたはそれからなる、E108に記載の2ベクター系。
【0338】
E117.前記STRCプロモーターが、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有する、E109に記載の2ベクター系。
【0339】
E118.前記STRCプロモーターが配列番号1からなる、E109またはE117に記載の2ベクター系。
E119.前記STRCプロモーターが、配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含むその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有する、E109に記載の2ベクター系。
【0340】
E120.前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド252~537を含むかまたはそれからなる、E109またはE119に記載の2ベクター系。
E121.前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド120~537を含むかまたはそれからなる、E109またはE119に記載の2ベクター系。
【0341】
E122.前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド35~530を含むかまたはそれからなる、E109またはE119に記載の2ベクター系。
E123.前記STRCプロモーターが配列番号2からなる、E109またはE119に記載の2ベクター系。
【0342】
E124.前記第1のポリヌクレオチドが前記第2のポリヌクレオチドと部分的に重複する、E108~E123のいずれか1つに記載の2ベクター系。
E125.前記第1のポリヌクレオチド及び前記第2のポリヌクレオチドが、少なくとも200塩基(b)の長さの重複領域を有する、E108~E124のいずれか1つに記載の2ベクター系。
【0343】
E126.前記第1の核酸ベクター及び前記第2の核酸ベクターが、哺乳類細胞に導入された場合、相同組換えを受けて、全長ステレオシリンタンパク質をコードする組換えポリヌクレオチドを形成する、E108~E125のいずれか1つに記載の2ベクター系。
【0344】
E127.前記第1の核酸ベクターが、前記第1のポリヌクレオチドの3’に位置するスプライスドナーシグナル配列を含み、前記第2の核酸ベクターが、前記第2のポリヌクレオチドの5’に位置するスプライスアクセプターシグナル配列を含む、E108~E123のいずれか1つに記載の2ベクター系。
【0345】
E128.前記第1の核酸ベクターが、前記第1のポリヌクレオチドの3’に位置するスプライスドナーシグナル配列及び前記スプライスドナーシグナル配列の3’に位置する第1の組換え誘導領域を含み、前記第2の核酸ベクターが、第2の組換え誘導領域、前記組換え誘導領域の3’に位置するスプライスアクセプターシグナル配列、及び前記スプライスアクセプターシグナル配列の3’に位置する前記第2のポリヌクレオチドを含む、E108~E123のいずれか1つに記載の2ベクター系。
【0346】
E129.前記第1のポリヌクレオチドと前記第2のポリヌクレオチドが重複しない、E108~E123、E127、及びE128のいずれか1つに記載の2ベクター系。
E130.前記第1の核酸ベクターが、前記組換え誘導領域の3’に位置する分解シグナル配列をさらに含み、前記第2の核酸ベクターが、前記組換え誘導領域と前記スプライスアクセプターシグナル配列との間に位置する分解シグナル配列をさらに含む、E128またはE129に記載の2ベクター系。
【0347】
E131.前記第2の核酸ベクターが、前記第2のポリヌクレオチドに機能的に連結された、配列番号48または配列番号48のヌクレオチド280~560を含むその機能的部分に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターをさらに含み、前記STRCプロモーターが、前記第2のポリヌクレオチドの5’に位置する、E108~E123のいずれか1つに記載の2ベクター系。
【0348】
E132.前記第2の核酸ベクターが、前記第2のポリヌクレオチドに機能的に連結された、(i)配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)、あるいは(ii)配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含むその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有するSTRCプロモーターをさらに含み、前記STRCプロモーターが、前記第2のポリヌクレオチドの5’に位置する、E108~E123のいずれか1つに記載の2ベクター系。
【0349】
E133.前記STRCプロモーターが、配列番号48に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有する、E131に記載の2ベクター系。
【0350】
E134.前記STRCプロモーターが、配列番号48の配列を有する、E131またはE133に記載の2ベクター系。
E135.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド280~560を含むかまたはそれからなる、E131に記載の2ベクター系。
【0351】
E136.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド280~564を含むかまたはそれからなる、E131に記載の2ベクター系。
E137.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド124~560を含むかまたはそれからなる、E131に記載の2ベクター系。
【0352】
E138.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド124~564を含むかまたはそれからなる、E131に記載の2ベクター系。
E139.前記配列番号48の機能的部分が、配列番号48のヌクレオチド1~560を含むかまたはそれからなる、E131に記載の2ベクター系。
【0353】
E140.前記STRCプロモーターが、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有する、E132に記載の2ベクター系。
【0354】
E141.前記STRCプロモーターが配列番号1からなる、E132またはE140に記載の2ベクター系。
E142.前記STRCプロモーターが、配列番号2または配列番号2のヌクレオチド252~537もしくは35~530を含むその機能的部分に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の、配列同一性)を有する、E132に記載の2ベクター系。
【0355】
E143.前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド252~537を含むかまたはそれからなる、E132またはE142に記載の2ベクター系。
E144.前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド120~537を含むかまたはそれからなる、E132またはE142に記載の2ベクター系。
【0356】
E145.前記配列番号2の機能的部分が、配列番号2のヌクレオチド35~530を含むかまたはそれからなる、E132またはE142に記載の2ベクター系。
E146.前記STRCプロモーターが配列番号2からなる、E132またはE142に記載の2ベクター系。
【0357】
E147.前記第1の核酸ベクターが、前記第1のポリヌクレオチドの3’に位置する、N末端インテイン(N-インテイン)をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、E108~E123及びE131~E146のいずれか1つに記載の2ベクター系。
【0358】
E148.前記第2の核酸ベクターが、前記STRCプロモーターと前記第2のポリヌクレオチドとの間に位置する、C末端インテイン(C-インテイン)をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、E131~E147のいずれか1つに記載の2ベクター系。
【0359】
E149.前記N-インテイン及び前記C-インテインが、分割インテイントランススプライシング系の成分である、E148に記載の2ベクター系。
E150.前記分割インテイントランススプライシング系が、1つ以上の細菌のDnaE遺伝子に由来する、E149に記載の2ベクター系。
【0360】
E151.前記N-インテインが、配列番号7、9、12、14、16~21、26、28、30、32、34、36、38、49、51、53、55、及び57のいずれか1つの配列を有し、前記C-インテインが、配列番号8、10、11、13、15、22~25、27、29、31、33、35、37、39、50、52、54、56、及び58のいずれか1つの配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
【0361】
E152.前記N-インテインが配列番号7の配列を有し、前記C-インテインが配列番号8の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
E153.前記N-インテインが配列番号7の配列を有し、前記C-インテインが配列番号10の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
【0362】
E154.前記N-インテインが配列番号7の配列を有し、前記C-インテインが配列番号11の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
E155.前記N-インテインが配列番号9の配列を有し、前記C-インテインが配列番号8の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
【0363】
E156.前記N-インテインが配列番号9の配列を有し、前記C-インテインが配列番号10の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
E157.前記N-インテインが配列番号9の配列を有し、前記C-インテインが配列番号11の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
【0364】
E158.前記N-インテインが配列番号12の配列を有し、前記C-インテインが配列番号13の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
E159.前記N-インテインが配列番号14の配列を有し、前記C-インテインが配列番号15の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
【0365】
E160.前記N-インテインが配列番号16の配列を有し、前記C-インテインが配列番号22の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
E161.前記N-インテインが配列番号19の配列を有し、前記C-インテインが配列番号23の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
【0366】
E162.前記N-インテインが配列番号20の配列を有し、前記C-インテインが配列番号24の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
E163.前記N-インテインが配列番号21の配列を有し、前記C-インテインが配列番号25の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
【0367】
E164.前記N-インテインが配列番号26の配列を有し、前記C-インテインが配列番号27の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
E165.前記N-インテインが配列番号28の配列を有し、前記C-インテインが配列番号29の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
【0368】
E166.前記N-インテインが配列番号30の配列を有し、前記C-インテインが配列番号31の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
E167.前記N-インテインが配列番号32の配列を有し、前記C-インテインが配列番号33の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
【0369】
E168.前記N-インテインが配列番号34の配列を有し、前記C-インテインが配列番号35の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
E169.前記N-インテインが配列番号36の配列を有し、前記C-インテインが配列番号37の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
【0370】
E170.前記N-インテインが配列番号38の配列を有し、前記C-インテインが配列番号39の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
E171.前記N-インテインが、配列番号16~21のいずれか1つの配列を有し、前記C-インテインが、配列番号22~25のいずれか1つの配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
【0371】
E172.前記N-インテインが配列番号49の配列を有し、前記C-インテインが配列番号50の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
E173.前記N-インテインが配列番号51の配列を有し、前記C-インテインが配列番号52の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
【0372】
E174.前記N-インテインが配列番号53の配列を有し、前記C-インテインが配列番号54の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
E175.前記N-インテインが配列番号55の配列を有し、前記C-インテインが配列番号56の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
【0373】
E176.前記N-インテインが配列番号57の配列を有し、前記C-インテインが配列番号58の配列を有する、E149に記載の2ベクター系。
E177.前記2ベクター系が、哺乳類の有毛細胞に全長ステレオシリンタンパク質の有毛細胞特異的発現を誘導する、E108~E176のいずれか1つに記載の2ベクター系。
【0374】
E178.前記有毛細胞が、蝸牛有毛細胞である、E177に記載の2ベクター系。
E179.前記蝸牛有毛細胞が、外有毛細胞である、E178に記載の2ベクター系。
E180.前記蝸牛有毛細胞が、内有毛細胞である、E178に記載の2ベクター系。
【0375】
E181.前記有毛細胞が、前庭有毛細胞である、E177に記載の2ベクター系。
E182.前記前庭有毛細胞が、I型前庭有毛細胞である、E181に記載の2ベクター系。
【0376】
E183.前記前庭有毛細胞が、II型前庭有毛細胞である、E181に記載の2ベクター系。
E184.前記哺乳類の有毛細胞が、ヒト有毛細胞である、E177~E183のいずれか1つに記載の2ベクター系。
【0377】
E185.前記ステレオシリンタンパク質が、配列番号3に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の、配列同一性)を有するヒトステレオシリンタンパク質である、E108~E184のいずれか1つに記載の2ベクター系。
【0378】
E186.前記第1のベクター及び前記第2のベクターが、ウイルスベクター、プラスミド、コスミド、または人工染色体である、E108~E185のいずれか1つに記載の2ベクター系。
【0379】
E187.前記第1のベクター及び前記第2のベクターが、AAVベクター、アデノウイルスベクター、及びレンチウイルスベクターからなる群から選択されるウイルスベクターである、E186に記載の2ベクター系。
【0380】
E188.前記第1のベクター及び前記第2のベクターが、AAVベクターである、E187に記載の2ベクター系。
E189.前記AAVベクターの各々が、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eB、またはPHP.Sのカプシドを有する、E188に記載の2ベクター系。
【0381】
E190.E108~E189のいずれか1つに記載の2ベクター系を含む、組成物。
E191.薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤をさらに含む、E190に記載の組成物。
【0382】
E192.E108~E189のいずれか1つに記載の2ベクター系を含む、細胞。
E193.前記細胞が、有毛細胞である、E192に記載の細胞。
E194.前記有毛細胞が、哺乳類の有毛細胞である、E193に記載の細胞。
【0383】
E195.前記哺乳類の有毛細胞が、ヒト有毛細胞である、E194に記載の細胞。
E196.前記有毛細胞が、蝸牛有毛細胞である、E192~E195のいずれか1つに記載の細胞。
【0384】
E197.前記蝸牛有毛細胞が、外有毛細胞である、E196に記載の細胞。
E198.前記蝸牛有毛細胞が、内有毛細胞である、E196に記載の細胞。
E199.前記有毛細胞が、前庭有毛細胞である、E192~E195のいずれか1つに記載の細胞。
【0385】
E200.前記前庭有毛細胞が、II型前庭有毛細胞である、E199に記載の細胞。
E201.前記前庭有毛細胞が、I型前庭有毛細胞である、E199に記載の細胞。
E202.有毛細胞にステレオシリンタンパク質を発現させる方法であって、前記有毛細胞を、E108~E189のいずれか1つに記載の2ベクター系またはE190もしくはE191に記載の組成物と接触させることを含む、前記方法。
【0386】
E203.前記接触が、インビボ(例えば、対象の内部)で行われる、E202に記載の方法。
E204.前記ステレオシリンタンパク質が、有毛細胞で特異的に発現される、E202に記載の方法。
【0387】
E205.感音性難聴(例えば、非症候性難聴)を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象を治療する方法であって、E108~E189のいずれか1つに記載の2ベクター系またはE190もしくはE191に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0388】
E206.前庭機能障害を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象を治療する方法であって、E108~E189のいずれか1つに記載の2ベクター系またはE190もしくはE191に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0389】
E207.有毛細胞の生存の増加を必要とする対象においてそれを行う方法であって、E108~E189のいずれか1つに記載の2ベクター系またはE190もしくはE191に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0390】
E208.有毛細胞の損傷または細胞死の阻止または減少を必要とする対象においてそれを行う方法であって、E108~E189のいずれか1つに記載の2ベクター系またはE190もしくはE191に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0391】
E209.有毛細胞機能の改善を必要とする対象においてそれを行う方法であって、E19~E44のいずれか1つに記載の核酸ベクター、E108~E189のいずれか1つに記載の2ベクター系、またはE45、E46、E190、もしくはE191に記載の組成物を有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0392】
E210.前記有毛細胞が、哺乳類の有毛細胞である、E202~E204及びE207~E209のいずれか1つに記載の方法。
E211.前記哺乳類の有毛細胞が、ヒト有毛細胞である、E210に記載の方法。
【0393】
E212.前記有毛細胞が、蝸牛有毛細胞である、E202~E204及びE207~E211のいずれか1つに記載の方法。
E213.前記蝸牛有毛細胞が、外有毛細胞である、E212に記載の方法。
【0394】
E214.前記蝸牛有毛細胞が、内有毛細胞である、E212に記載の方法。
E215.前記有毛細胞が、前庭有毛細胞である、E202~E204及びE207~E211のいずれか1つに記載の方法。
【0395】
E216.前記前庭有毛細胞が、II型前庭有毛細胞である、E215に記載の方法。
E217.前記前庭有毛細胞が、I型前庭有毛細胞である、E215に記載の方法。
E218.STRCの発現の増加(STRCの発現)を必要とする対象においてそれを行う方法であって、E108~E189のいずれか1つに記載の2ベクター系またはE190もしくはE191に記載の組成物を治療的有効量にて前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【0396】
E219.前記対象が、難聴(例えば、感音性難聴)を有するかまたはそれを発症するリスクがある、E207~E214及びE218のいずれか1つに記載の方法。
E220.前記難聴が、遺伝性難聴である、E205またはE219に記載の方法。
【0397】
E221.前記遺伝性難聴が、常染色体劣性難聴である、E220に記載の方法。
E222.前記対象が、前庭機能障害を有するかまたはそれを発症するリスクがある、E207~E211及びE215~E218のいずれか1つに記載の方法。
【0398】
E223.前記前庭機能障害が、回転性めまい、浮動性めまい、平衡失調、両側前庭障害、動揺視、または平衡障害を含む、E206またはE222に記載の方法。
E224.前記前庭機能障害が遺伝子変異と関連する、E206、E222、及びE223のいずれか1つに記載の方法。
【0399】
E225.前記対象が、STRCの変異を有する、E205~E224のいずれか1つに記載の方法。
E226.前記対象が、STRCの変異を有すると特定されている、E205~E225のいずれか1つに記載の方法。
【0400】
E227.前記方法が、前記2ベクター系または前記組成物の投与前に、前記対象をSTRCの変異を有すると特定することをさらに含む、E205~E225のいずれか1つに記載の方法。
【0401】
E228.前記対象が、DFNB16を有する、E205~E227のいずれか1つに記載の方法。
E229.前記対象が、DFNB16を有すると特定されている、E205~E226のいずれか1つに記載の方法。
【0402】
E230.前記方法が、前記核酸ベクターまたは前記組成物の投与前に、前記対象の聴力を評価することをさらに含む、E205~E229のいずれか1つに記載の方法。
E231.前記方法が、前記核酸ベクターまたは前記組成物の投与後に、前記対象の聴力を評価することをさらに含む、E205~E230のいずれか1つに記載の方法。
【0403】
E232.前記方法が、前記核酸ベクターまたは前記組成物の投与前に、前記対象の前記前庭機能を評価することをさらに含む、E205~E231のいずれか1つに記載の方法。
【0404】
E233.前記方法が、前記核酸ベクターまたは前記組成物の投与後に、前記対象の前記前庭機能を評価することをさらに含む、E205~E232のいずれか1つに記載の方法。
【0405】
E234.前記核酸ベクターまたは前記組成物が、内耳に局所投与される、E205~E233のいずれか1つに記載の方法。
E235.前記核酸ベクターまたは前記組成物が、半規管に投与される、E234に記載の方法。
【0406】
E236.前記核酸ベクターまたは前記組成物が、経鼓室投与または鼓室内投与される、E234に記載の方法。
E237.前記核酸ベクターまたは前記組成物が、外リンパ中に投与される、E234に記載の方法。
【0407】
E238.前記核酸ベクターまたは前記組成物が、内リンパ中に投与される、E234に記載の方法。
E239.前記核酸ベクターまたは前記組成物が、卵円窓に対して、またはそれを介して投与される、E234に記載の方法。
【0408】
E240.前記核酸ベクターまたは前記組成物が、正円窓に対して、またはそれを介して投与される、E234に記載の方法。
E241.前記2ベクター系における前記ベクターが、同時に投与される、E205~E240のいずれか1つに記載の方法。
【0409】
E242.前記2ベクター系における前記ベクターが、順次に投与される、E205~E240のいずれか1つに記載の方法。
E243.前記2ベクター系または医薬組成物が、難聴を予防もしくは軽減する、難聴の発症を遅延させる、難聴の進行を減速させる、聴力を改善する、語音弁別を改善する、前庭機能障害を阻止するかもしくは減少させる、前庭機能障害の発症を遅延させる、前庭機能障害の進行を減速させる、前庭機能を改善する、有毛細胞機能を改善する、有毛細胞の損傷を阻止するかもしくは減少させる、有毛細胞死を阻止するかもしくは減少させる、有毛細胞の生存を促進するかもしくは増加させる、または有毛細胞でのSTRCの発現を増加させるのに、十分な量で投与される、E205~E242のいずれか1つに記載の方法。
【0410】
E244.前記対象が、ヒト対象である、E205~E243のいずれか1つに記載の方法。
E245.E1~E18のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、E19~E44のいずれか1つに記載の核酸ベクター、E108~E189のいずれか1つに記載の2ベクター系、またはE45、E46、E190、もしくはE191に記載の組成物を含む、キット。
【0411】
他の実施形態
記載の発明の様々な変更及び変形は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者には明らかであろう。本発明は、具体的な実施形態との関連で記載されているが、特許請求の範囲に記載される本発明がそのような具体的な実施形態に不当に限定されるべきではないことを理解されるべきである。実際、当業者には明らかな、本発明を実施するための記載された様式の様々な変更は、本発明の範囲内であることが意図される。他の実施形態を、特許請求の範囲に記す。
図1
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図10B
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【国際調査報告】