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特表2024-538077液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を自律的に測定するためのガスクロマトグラフィ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を自律的に測定するためのガスクロマトグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/04 20060101AFI20241010BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20241010BHJP
   G01N 30/24 20060101ALI20241010BHJP
   G01N 30/20 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
G01N30/04 A
G01N30/06 G
G01N30/24 Z
G01N30/06 Z
G01N30/20 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522133
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2022078774
(87)【国際公開番号】W WO2023072646
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】21204430.9
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】フェルシューレン アルウィン ロヒール マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ロンダ コルネリス レインデール
(57)【要約】
本発明は、液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を自律的に決定するためのガスクロマトグラフィ装置2に関する。装置2は、分析対象の液体を自律的にサンプリングするように構成されたサンプリング装置8と、ガスセンサ14と、サンプリング装置8およびガスセンサ14に接続された変換装置12とを有する。サンプリングされた液体をガスセンサ14によって分析されるガスに自律的に変換するように構成された変換装置12を利用することによって、液体サンプル中の関連するマーカの自動的な連続監視が達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を自律的に測定するためのガスクロマトグラフィ装置であって、
分析されるべき液体を自律的にサンプリングするように構成されたサンプリング装置と、
ガスセンサと、
前記サンプリング装置と前記ガスセンサとに接続された変換装置と、
を有し、前記変換装置は、サンプリングされた前記液体を前記ガスセンサにより分析されるべきガスへと自律的に変換するように構成される、ガスクロマトグラフィ装置。
【請求項2】
前記サンプリング装置が、流体サンプリング入口および流体サンプリング出口に接続され、分析されるべき流体が、前記流体サンプリング入口を経由して連続的または半連続的に提供される、請求項1に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項3】
前記ガスセンサが、検出器に接続されたクロマトグラフィカラムを有する、請求項1または2に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項4】
前記ガスセンサが検出器を有し、前記検出器が複数の同一でないセンサを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項5】
前記複数の同一でないセンサが、異なるセンサ材料および/または動作条件を有する、請求項4に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項6】
前記変換装置が、前記サンプリング装置に接続された液滴ディスペンサと、当該液滴ディスペンサにより提供される液滴をガスへと、特に加熱により、変換するように構成される熱分解ウェルとを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項7】
前記サンプリング装置が前記流体サンプリング入口に接続された液体フィルタを有し、前記液体フィルタが保持液流および透過液流を提供し、前記保持液流および前記透過液流のいずれかが前記変換装置に接続される、請求項1から6のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項8】
前記変換装置が、前記サンプリング装置によりサンプリングされた液体をガスに変換するように構成される液体ガス変換器と、バルブ装置とを有し、
前記バルブ装置が、以下の動作モード、
前記液体サンプルで前記液体ガス変換器を充填するために前記サンプリング装置が前記液体ガス変換器に流体接続される供給モード、
キャリアガスを使用して過剰な流体を洗浄するためにキャリアガスソースが前記液体ガス変換器に流体接続される洗浄モード、および
前記液体ガス変換器が前記ガスセンサに流体接続される分析モード、
を提供するように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項9】
前記液体ガス変換器が、熱分解ウェル、または、固相マイクロ抽出装置(SPME)として構成される、請求項8に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項10】
前記変換装置が、前記サンプリング装置、前記キャリアガスソースおよび前記ガスセンサに接続される6ポートバルブを有する、請求項8または9に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項11】
前記液体ガス変換器と前記ガスセンサとの間に配置されたバルブをさらに有し、前記バルブが少なくとも3つのポートを有し、第1ポートが前記液体ガス変換器に接続され、第2ポートが前記ガスセンサに接続され、第3ポートが出口に接続される、請求項8から10のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項12】
前記変換装置が、前記サンプリング装置と前記ガスセンサとに接続される膜を有し、前記膜が、前記液体サンプルから揮発性化合物を放出するように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項13】
請求項14に記載の方法を実行するように構成されたプロセッサを有する、請求項1から12のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフィ装置。
【請求項14】
ガスクロマトグラフィを用いて液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を自律的に測定するための方法であって、
分析されるべきサンプル流体を自律的に提供するステップと、
前記サンプル流体の少なくとも一部をガスサンプルへと自律的に変換するステップと、
前記ガスサンプル中のマーカ濃度を自律的に測定するステップと、
を有する方法。
【請求項15】
サンプル中のマーカの濃度を自律的に測定するためのコンピュータプログラムであって、請求項1から13に記載のガスクロマトグラフィ装置を制御するコンピュータにより実行され、前記ガスクロマトグラフィ装置に請求項14に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を自律的に測定するためのガスクロマトグラフィ装置、方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフィ装置は、気体化合物の濃度を検出および測定するための既知の装置である。それは、気体の混合物を個々の成分に分離する能力を有するクロマトグラフィカラムと、それを通過する気体の濃度および/または種類に応じて信号を出力する検出器とからなる。
【0003】
先行技術から、いわゆるサンプルループを利用してガスサンプルの連続的又は半連続的な監視を可能にするクロマトグラフィ装置が知られている。しかしながら、サンプルループは、ガスサンプルの分析のみを可能にする。したがって、液体の連続的または半連続的な監視が必要とされる用途では、そのような装置を満足のいく態様で使用することができない。
【0004】
先行技術から知られている他のデバイスは液体サンプルの分析を可能にするが、自律的ではなく手動で単一の液体投与量を提供することを必要とする。このような装置は、US 9 435 772 B2およびEP 2 924 429 A1から知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を自律的に測定するためのガスクロマトグラフィ装置、方法およびコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様では、液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を自律的に測定するためのガスクロマトグラフィ装置が提示され、この装置は、分析されるべき液体を自律的にサンプリングするように構成されたサンプリング装置と、ガスセンサと、サンプリング装置およびガスセンサに接続された変換デバイスとを備え、当該変換デバイスは、サンプリングされた液体を、ガスセンサによって分析されるべきガスに自律的に変換するように構成される。
【0007】
分析されるべき液体を自動的かつ連続的にサンプリングし、そして、この液体をガスセンサによって分析することができるガスに変換することによって、液体サンプルを分析するための先行技術から知られている液体センサと比較して、再使用可能性、信頼性および手頃な価格の点で優れた性能を有する複数のタイプのガスセンサが利用可能であることが見出された。
【0008】
用語「自律的に」は、液体サンプリング入力段階とセンサ出力段階との間の段階において人間のオペレータからの手動の活動を必要とすることなく、連続的または半連続的な動作として本出願内で理解されるべきである。半連続的な動作は、例えば、少なくとも1時間ごとに行われることができる。
【0009】
提案されたガスクロマトグラフィ装置は、植物の基材もしくは土壌水、牛乳または畜舎の床に集められた尿中の関連物質をモニタリングするための農業環境で利用されることができる。別の適用分野は、病院のベッドサイドまたは自宅で患者の血液ラインまたは尿カテーテルからのクレアチニン、グルコースおよびコルチゾールレベルなどの関連バイオマーカをモニタすることができる人間のヘルスケアである。
【0010】
好ましい実施形態では、サンプリング装置は、流体サンプリング入口および流体サンプリング出口に接続され、分析されるべき流体は、流体サンプリング入口を経由して連続的または半連続的に提供される。ガスセンサは、好ましくは、検出器に接続されたクロマトグラフィカラムを含む。このようにして、再使用性、信頼性および手頃な価格の点で優れた性能を有する従来のクロマトグラフィカラムおよび検出器を利用することができる。
【0011】
あるいは、ガスセンサは検出器を有し、検出器は複数の同一でないセンサを有する。この実施形態では、クロマトグラフィカラムを設ける必要はない。代わりに、クロマトグラフィカラムの機能は、複数の同一でないセンサを含む検出器によって提供される。特に、センサのアレイを利用することができる。センサは、化学抵抗性、電気化学的及び光学的吸収のような既知の技術に基づいてガスを検出することができる。本実施形態は、クロマトグラフィカラムおよび検出器を含むソリューションと比較して、より高い測定速度の利点を提供する。好ましくは、複数の同一でないセンサは、異なるセンサ材料および/または動作条件を含む。
【0012】
一実施形態によれば、変換デバイスは、サンプリング装置に接続された液滴ディスペンサと、液滴ディスペンサによって提供される液滴を、特に加熱によってガスに変換するように構成された熱分解ウェルとを有する。熱分解ウェルは、不揮発性代謝物質を、ガスクロマトグラフィで検出することができる複数の揮発性断片に有利に変換することができる。好ましくは、熱分解ウェルに供給されるキャリアガスは、CO2への完全な変換を回避するために、酸素を含有しない。熱分解ウェルにおける熱分解は、熱分解ウェルの壁を、抵抗的にまたはRFコイルを用いて、特にキュリー効果を利用して、急速に加熱することによって実行されることができる。液滴は、圧力、例えば、圧電、重力またはエレクトロウェッティングによって輸送されることができる。さらに、熱分解ウェルは、沸点を十分上回って加熱された液体のスプリット注入/スプリットレス注入を利用することができる。熱分解の場合、酸素の非存在下での急速な加熱は分子を揮発性断片に分解するので、温度は沸点よりも低くなり得る。好ましくは、断片化は温度に依存する場合があり、これは、異なる熱分解温度での逐次的な分析を実行することによって、マーカ検出の追加の選択性を達成するためのオプションの利点を可能にする。
【0013】
一実施形態によれば、サンプリング装置は、流体入口に接続された液体フィルタを有し、当該液体フィルタは、保持液流(retentate stream)および透過液流(permeate stream)を提供し、保持液流または透過液流のいずれかが、変換装置、特に液滴ディスペンサに接続される。追加の液体フィルタは、マーカの混合物を含有するサンプル液体の選択性を高める。代替の実施形態によれば、液体フィルタは、サンプル流体が注入される液体クロマトグラフィカラムとして構成されることができる。液体クロマトグラフィカラムの出力は、液滴ディスペンサまたは任意の代替の液体ガス変換器に供給される。この実施形態では、異なる時間に異なる化合物が液体クロマトグラフィカラムの出力に達するので、液体ガス変換を複数回繰り返すことが有益である。
【0014】
一実施形態によれば、変換装置は、サンプリング装置によってサンプリングされた液体をガスに変換するように構成された液体ガス変換器と、バルブ装置とを有し、バルブ装置は以下の動作モードを提供するように構成される:液体サンプルで液体ガス変換器を充填するためにサンプリング装置が液体ガス変換器に接続される供給モード、キャリアガスを使用して過剰な流体を洗浄するためにキャリアガスソースが液体ガス変換器に接続される洗浄モード、および液体ガス変換器がガスセンサに接続される分析モード。液体ガス変換器は、熱分解ウェルまたは固相マイクロ抽出装置(SPME)として構成されることができる。
【0015】
変換装置は、サンプリング装置、キャリアガスソースおよびガスセンサに接続された6ポートバルブを有することができる。
【0016】
ガスクロマトグラフィ装置は、液体ガス変換器とガスセンサとの間に配置されたバルブをさらに有することができ、当該バルブは少なくとも3つのポートを有し、第1のポートは液体ガス変換器に接続され、第2のポートはガスセンサに接続され、第3のポートは出口に接続される。一実施形態では、液体ガス変換器が6ポートバルブを有する。この実施形態では、高いロバスト性の利点が達成されるが、それは熱分解ウェルに残存する可能性のある不揮発性の灰が次のサンプリング段階で洗い流されるからである。好ましくは、熱分解ウェルの隣の表面領域は、洗浄ステップを容易にするために、疎水性コーティングで覆われる。固相マイクロ抽出装置(SPME)が利用される実施形態では、SPMEは、選択的検出を容易にするために、選択的な揮発性種の脱着を達成するように、好ましくは徐々にまたは段階的に加熱される。好ましくは、キャリアガスとして周囲空気が使用される。SPMEサンプリングのために、分析物は濃縮され、高い感度の検出をもたらす。
【0017】
一実施形態では、変換装置は、サンプリング装置およびガスセンサに接続された膜を有し、当該膜は、液体サンプルから揮発性化合物を放出するように構成される。このガス放出は、浸透気化(パーベーパレーション)とも呼ばれる。好ましくは、変換装置は、膜の下のガスチャンバを閉じて揮発性化合物を濃縮し、それらをガスセンサにまとめて注入することを可能にする三方バルブを有する。膜の上の液体はガス放出速度を高めるために加熱されることができ、揮発性の低い化合物の検出を可能にする。この実施形態は、単純な構造を利用する。好ましくは、膜はキャリアガスソースに接続され、周囲空気がキャリアガスとして供給される。変換装置に供給する前に周囲空気をフィルタリングするために、揮発性有機化合物(VOC)フィルタを使用することが好ましい。VOCフィルタは、サンプリングされる周囲空気中に存在するVOCをクリーン基準として除去する。このアプローチは、加圧シリンダからのキャリアガスと比較して有益であり、なぜなら、この実施形態は、膜の下のガスチャンバ内に追加の負圧を有することを可能にするからである。一実施形態では、クロマトグラフィ装置はプロセッサを有し、当該プロセッサは請求項15に記載される方法のステップを実行するように構成される。
【0018】
本発明の別の態様では、ガスクロマトグラフィを使用して液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を自律的に測定するための方法が提示される。本方法は、分析されるべきサンプル流体を自律的に提供することと、サンプル流体の少なくとも一部をガスサンプルに自律的に変換することと、ガスサンプル中のマーカ濃度を自律的に測定することとを含む。
【0019】
本発明のさらなる態様では、サンプル中のマーカの濃度を自律的に決定するためのコンピュータプログラムが提示され、当該コンピュータプログラムは、当該コンピュータプログラムが装置を制御するコンピュータ上で実行されるとき、請求項1~13のいずれかに記載される装置に、請求項14に記載される方法のステップを実行させるためのプログラムコード手段を含む。
【0020】
請求項1のガスクロマトグラフィ装置、請求項14の方法、および請求項15のコンピュータプログラムは、特に従属請求項に記載されるように、類似のおよび/または同一の好ましい実施形態を有することを理解されたい。
【0021】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項又は上記の実施形態とそれぞれの独立請求項との任意の組み合わせであることができることを理解されたい。
【0022】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、それらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を測定するためのガスクロマトグラフィ装置の実施形態を概略的かつ例示的に示す図。
図2】液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を測定するためのガスクロマトグラフィ装置の代替的な実施形態を概略的かつ例示的に示す図。
図3】液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を測定するためのガスクロマトグラフィ装置の代替的な実施形態を概略的かつ例示的に示す図。
図4】液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を測定するためのガスクロマトグラフィ装置のさらに別の代替的な実施形態を概略的かつ例示的に示す図。
図5】液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を測定するためのガスクロマトグラフィ装置のさらなる代替的な実施形態を概略的かつ例示的に示す図。
図6】液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を測定するためのガスクロマトグラフィ装置の代替的な実施形態を概略的かつ例示的に示す図。
図7】液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を測定するためのガスクロマトグラフィ装置の別の代替的な実施形態を概略的かつ例示的に示す図。
図8】液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を測定するためのガスクロマトグラフィ装置のさらなる代替的な実施形態を概略的かつ例示的に示す図。
図9】ガスクロマトグラフィ装置を使用して液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を自律的に測定するための方法の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を測定するためのガスクロマトグラフィ装置2の第1の実施形態を示す。ガスクロマトグラフィ装置2は、サンプリング装置8を有する。サンプリング装置8は、流体サンプリング入口4を経由して提供される液体を自動的にサンプリングするように構成される。サンプリング装置8はさらに、流体サンプリング出口6に接続されている。サンプリング装置8は、変換装置12に流体的に接続される。変換装置12は、サンプリング装置8から供給された液体をガスに変換するように構成される。キャリアガスソース10によって提供されるキャリアガスの助けを借りて、変換装置内で生成されたガスは、ガスセンサ14に供給される。ガスセンサ14は、供給されたガスサンプル中の揮発性マーカの濃度を分析するように構成されている。ガスセンサ14は、ガス出口16に接続される。本発明によるガスクロマトグラフィ装置2は、液体サンプル中の関連マーカの自動化された、特に半連続的な監視を可能にする。ガスセンサ14は、従来の検知手段を有することができる。これらの従来の検知手段は、典型的には従来技術で使用される液体センサと比較して、再使用可能性、信頼性および手頃な価格の点で優れた性能を有する。
【0025】
図2の実施形態では、サンプリング装置8、変換装置12及びガスセンサ14の構成が詳細に示されている。サンプリング装置8は、サンプリング流体を流体サンプリング入口4から流体サンプリング出口6に、かつ変換装置12に向けてポンピングするための流体ポンプ18を有する。変換装置12は、サンプリング装置8に流体的に接続された液滴ディスペンサを有する。液滴ディスペンサ26は、熱分解ウェル28に分配されるサンプル液体の液滴を生成する。熱分解ウェル28は、サンプル液滴をガスセンサ14へと運ばれる揮発性マーカに変換するために加熱される。ガスセンサ14は、クロマトグラフィカラム22と、クロマトグラフィカラム22に接続された検出器24とを有する。
【0026】
熱分解ウェル28内で生成される揮発性マーカを含むガスは、キャリアガスソース10によって供給されるキャリアガスと共にクロマトグラフィカラムに供給される。検出器24は、クロマトグラムを確立するために、クロマトグラフィカラム22の出力を時間の関数として記録する。選択性を改善するために、異なる温度を熱分解ウェル28で使用することができ、測定プロセスを異なる温度に対して繰り返し実施することができる。キャリアガスソース10は、CO2への完全な変換を回避するために、酸素を含まないことが好ましい。熱分解ウェル28は急速に加熱されることができる壁を含むことができ、加熱は、RFコイルを用いて、または抵抗的に実行されることができる。液滴ディスペンサ26内で、液滴は、例えば、圧電効果、重力またはエレクトロウェッティングを使用して、圧力によって輸送されることができる。提示された実施形態では、熱分解ウェル28は、広く使用されている、沸点を上回ってウェル中で加熱された液体のスプリット注入/スプリットレス注入を含む。熱分解の場合、酸素の非存在下での急速加熱は分子を揮発性断片に分解するので、温度は沸点よりも低くなり得る。
【0027】
図3は、ガスクロマトグラフィ装置2の代替的な実施形態を示す。図2の実施形態と比較して、図3は、ガスセンサ14の代替的なデザインを提案する。図3のガスセンサ14は、検出器24のみを有する。検出器24は、好ましくは、複数の同一でないセンサ、例えば、異なるセンサ材料および/または動作条件から構成されるセンサのアレイから構成される。これにより、装置2の選択性が向上する。個々のセンサは、化学抵抗性、電気化学的及び光学的吸収のような既知の技術に基づいてガスを検出することができる。全体として、図2の実施形態と比較して、測定速度は、図3の構成によって改善されることができる。
【0028】
図4は、ガスクロマトグラフィ装置2のさらに別の代替実施形態を示す。この実施形態では、変換装置12は、サンプリング装置8によってサンプリングされた液体をガスに変換するように構成された液体ガス変換器30を有する。液体ガス変換器30は、6ポートバルブ32として構成されたバルブ装置31に接続された熱分解ウェル28として構成される。バルブ装置31は、液体サンプルで液体ガス変換器30を充填するためにサンプリング装置8が液体ガス変換器30に流体接続される供給モードと、キャリアガスを用いて過剰な流体を洗浄するためにキャリアガスソース10が液体ガス変換器30に流体接続される洗浄モードと、液体ガス変換器30がガスセンサ14に流体接続される分析モードとに切り替えられることができる。上述のモード間の切り替えは、6ポートバルブ32によって実行される。変換装置12はさらに、6ポートバルブ32とガスセンサ14との間に配置されたバルブ34を有する。バルブ34は、3つのポート36、38、40を有する。第1のポート36は、6ポートバルブ32に接続されている。第2のポート38はガスセンサ14に接続され、第3のポート40は出口42に接続される。図2の実施形態と同様に、ガスセンサ14は、クロマトグラフィカラム22および検出器24を有する。
【0029】
供給モード動作中、熱分解ウェル28は、6ポートバルブ32が点線位置にあるとき、サンプル液体で満たされる。その後、洗浄モードにおいて、過剰な流体は、キャリアガスソース10によって提供されるキャリアガスを使用して洗浄乾燥され、出口42を介して排出される。したがって、6ポートバルブ32は、黒い破線で示された位置に切り替えられる。その後、分析モードにおいて、熱分解ウェル28が加熱される。得られる揮発性熱分解生成物は、キャリアガスの助けを借りてガスセンサ14に輸送される。オプションとして、熱分解ウェル28の隣の表面領域は、洗浄ステップを容易にするために疎水性コーティングで覆われる。この実施形態は、熱分解ウェル28内に残っている可能性のある不揮発性の灰が次のサンプリング段階で洗い流されるので、ロバストであることが見出された。
【0030】
図5の実施形態では、変換装置12およびガスセンサ14は図2の実施形態に等しい。しかしながら、サンプリング装置8の構成は異なる。図5の実施形態では、サンプリング装置8は、サンプリング流体を流体サンプリング入口4から液体フィルタ44にポンピングする流体ポンプ18を有する。液体フィルタ44は、保持液流46および透過液流48を提供する。透過液流48は変換装置12に、特に液滴ディスペンサ26に接続される。この実施形態では、特にマーカの混合物を含有するサンプル液体に対するより高い選択性の利点が液体フィルタ44によって達成される。
【0031】
図6の実施形態では、膜54がサンプリング装置8によって提供される液体サンプルから揮発性化合物を放出するために利用される。これは浸透気化(パーベーパレーション)とも呼ばれる。バルブ50, 52は、(破線の黒い位置において)揮発性化合物を濃縮するために膜54の下部によって画定されるガス容積を閉じ、それらをガスセンサ14のクロマトグラフィカラム22にまとめて注入することを可能にする。キャリアガスとして、周囲空気が周囲空気入口56を経由して供給される。周囲空気は、膜54に到達する前にVOCフィルタ58によってフィルタリングされる。圧力制御器20がガスセンサ14の下流に配置されている。ポンプ60の助けを借りて、揮発性マーカを含むキャリアガスが、ガス出口16に向かって案内される。VOCフィルタ58によってフィルタリングされた周囲空気の使用は、加圧シリンダからのキャリアガスの使用と比較して有益であり、これは、この実施形態が膜54の下において特に追加の負圧を有することを可能にするからである。オプションとして、膜54の上にサンプリング装置8によって提供される液体は、ガス放出速度を高めるために加熱され、揮発性の低い化合物の検出を可能にする。全てにおいて、図6に示される実施形態はより単純であり、周囲空気がキャリアガスとして使用されることができる。
【0032】
図7は、膜54も利用する代替の実施形態を示す。図6の実施形態と比較して、ガスセンサ14は検出器24のみを有する。ガスセンサ14からクロマトグラフィカラム22(図6参照)を除去することによって、バルブ50, 52を除去し、膜54を透過するガスの連続的な検出を可能にすることができる。同一でない検出器24のアレイ、例えば、異なるセンサ材料および/または動作条件から構成される化学抵抗センサまたは電気化学センサのアレイを使用することが、選択性を高めるために好ましい。これは、図6の実施形態と比較して、更なる選択性を可能にし、クロマトグラフィカラム22の除去を補償する。
【0033】
図8は、図4の実施形態に類似するガスクロマトグラフィ装置2のさらに別の代替の実施形態を示す。しかしながら、相違点として、熱分解ウェル28は、固相マイクロ抽出装置(SPME)62によって置き換えられる。図8の実施形態による装置2は、以下のように動作する:
【0034】
固相マイクロ抽出(SPME)の吸着剤は、6ポートバルブ32が点線位置に切り替えられたときに、サンプリングされた液体から分析物を抽出するために使用される。その後、SPME62の収着剤は、6ポートバルブ32の破線位置においてキャリアガスを使用して洗浄乾燥される。過剰な流体は、出口42を介して排出される。SPME 62は、洗浄乾燥された後、加熱され、その結果脱着されたVOCはガスセンサ14に輸送され、分析される。SPME 62は、選択的な検出を容易にするように選択的な揮発種の脱着を達成するために、徐々にまたは段階的に加熱されることができる。図8の実施形態は、周囲空気がキャリアガスとして使用され、SPMEサンプリング中に分析されるか、または濃縮され、結果として検出感度が高くなるので、有益である。
【0035】
図9は、ガスクロマトグラフィを使用して液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を自律的に決定するための方法100の実施形態を示す。方法100は、分析されるサンプル流体を自律的に提供するステップ102と、サンプル流体の少なくとも一部を気体サンプルに自律的に変換するステップ104と、気体サンプル中のマーカ濃度を自律的に決定するステップ106とを含む。
【0036】
開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示、および添付の請求項の検討から、請求項に記載された発明を実施する際に当業者によって理解され、及び実施されることができる。
【0037】
請求項において、単語「有する」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数性を排除するものではない。
【0038】
単一のユニット又は装置が、請求項に列挙されるいくつかの項目の機能を満たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。
【0039】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に、又はその一部として供給される、光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体上に記憶され/配布されてもよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システム等を介して、他の形態で配信されてもよい。
【0040】
請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0041】
本発明は、液体サンプル中の揮発性マーカの濃度を自律的に決定するためのガスクロマトグラフィ装置に関する。この装置は、分析される液体を自律的にサンプリングするように構成されたサンプリング装置と、ガスセンサと、サンプリング装置およびガスセンサに接続された変換デバイスとを有する。サンプリングされた液体をガスセンサによって分析されるガスに自律的に変換するように構成された変換装置を利用することによって、液体サンプル中の関連マーカの自動的な連続監視が達成される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】