(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】インプラントデバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 5/29 20210101AFI20241010BHJP
A61B 5/308 20210101ALI20241010BHJP
A61B 5/0245 20060101ALN20241010BHJP
A61B 5/08 20060101ALN20241010BHJP
【FI】
A61B5/29
A61B5/308
A61B5/0245 100D
A61B5/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522185
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 US2022048201
(87)【国際公開番号】W WO2023076582
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(71)【出願人】
【識別番号】524137927
【氏名又は名称】ノース・カロナイナ・ステイト・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】NORTH CAROLINA STATE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100230640
【氏名又は名称】高山 望
(72)【発明者】
【氏名】濱田 秀
(72)【発明者】
【氏名】アハメド,パルベズ
(72)【発明者】
【氏名】レイノルズ,ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ボズクルト,アルペル
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA19
4C017AC15
4C017FF18
4C038SS08
4C127AA02
4C127BB03
4C127GG18
4C127LL07
4C127LL13
(57)【要約】
本開示のインプラントデバイスは、少なくとも一方の端部が開放され、内部空間を画定する筒状の筐体と、一方の端部を閉じ、内部空間に面する内側面と、内側面と反対側の外側面と、を有する蓋と、内部空間に配置され、能動面と、能動面に配置された基板電極と、基板電極を通じて取得した生体情報を生体外に通信する無線通信回路と、を有する基板と、を備え、蓋の内側面には、基板が配置される凹部と、基板電極と電気的に接続された内部電極とが設けられ、蓋の外側面には、内部電極と電気的に接続された外部電極が設けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の端部が開放され、内部空間を画定する筒状の筐体と、
前記一方の端部を閉じ、前記内部空間に面する内側面と、前記内側面と反対側の外側面と、を有する蓋と、
前記内部空間に配置され、能動面と、前記能動面に配置された基板電極と、前記基板電極を通じて取得した生体情報を生体外に通信するように構成された無線通信回路と、を有する基板と、を備え、
前記蓋の前記内側面には、前記基板が配置される凹部と、前記基板電極と電気的に接続された内部電極とが設けられ、
前記蓋の前記外側面には、前記内部電極と電気的に接続された外部電極が設けられる、インプラントデバイス。
【請求項2】
前記凹部は、互いに対向する第1内壁面と第2内壁面とを有する内壁面によって画定される、請求項1に記載のインプラントデバイス。
【請求項3】
前記第1内壁面は、前記蓋の前記内側面における第1凸部を有し、
前記第2内壁面は、前記蓋の前記内側面における第2凸部を有し、
前記凹部は、前記第1凸部と前記第2凸部との間に位置する、請求項2に記載のインプラントデバイス。
【請求項4】
前記第1凸部と前記第2凸部との少なくとも一方は、前記基板の端部を覆う、請求項3に記載のインプラントデバイス。
【請求項5】
前記内部電極は、前記内壁面に位置し、
前記基板電極は、前記凹部に配置された前記基板の部分に位置する、請求項2に記載のインプラントデバイス。
【請求項6】
前記基板は、前記第1内壁面または前記第2内壁面の少なくとも一方と接触する、請求項2に記載のインプラントデバイス。
【請求項7】
前記基板は、前記第1内壁面及び前記第2内壁面と接触する、請求項6に記載のインプラントデバイス。
【請求項8】
前記外部電極は、前記内部電極よりも大きい面積を有する、請求項1に記載のインプラントデバイス。
【請求項9】
前記蓋の外径は、前記筐体の内径より小さい、請求項1に記載のインプラントデバイス。
【請求項10】
前記一方の端部は、第1開放端部であって、
前記蓋は、第1蓋であって、
前記筐体は、前記第1開放端部の反対側に第2開放端部を有し、
前記第2開放端部を閉じる、第2蓋をさらに備える、請求項1に記載のインプラントデバイス。
【請求項11】
前記第1蓋の外径及び前記第2蓋の外径は、前記筐体の内径より小さい、請求項10に記載のインプラントデバイス。
【請求項12】
前記蓋が、セラミック材料と金属材料とを有する、請求項1に記載のインプラントデバイス。
【請求項13】
前記蓋は、前記蓋を貫通し、前記外部電極と前記内部電極とを電気的に接続する貫通導体を有する、請求項1に記載のインプラントデバイス。
【請求項14】
前記貫通導体は、前記蓋の厚み方向に対して傾斜している、請求項13に記載のインプラントデバイス。
【請求項15】
少なくとも一方の端部が開放され、内部空間を画定する筒状の筐体と、
前記一方の端部を閉じ、前記内部空間に面する内側面と、前記内側面と反対側の外側面と、を有する蓋と、
前記内部空間に配置され、能動面と、前記能動面に配置された基板電極と、前記基板電極を通じて取得した生体情報を通信するように構成された無線通信回路と、を有する基板と、を備え、
前記蓋の前記内側面には、前記能動面と接触する凸部が設けられ、
前記凸部には、前記基板電極と電気的に接続された内部電極が設けられ、
前記蓋の前記外側面には、前記内部電極と電気的に接続された外部電極が設けられ、
前記内部電極と前記基板電極とを接続する接続部材をさらに備える、インプラントデバイス。
【請求項16】
前記内部電極は、前記凸部において、前記能動面と接触する面と反対側の面に配置され、
前記接続部材は導電性を有する、請求項15に記載のインプラントデバイス。
【請求項17】
前記蓋の外径は、前記筐体の内径より小さい、請求項15に記載のインプラントデバイス。
【請求項18】
前記一方の端部は、第1開放端部であって、
前記蓋は、第1蓋であって、
前記筐体は、前記第1開放端部の反対側に第2開放端部を有し、
前記第2開放端部を閉じる、第2蓋をさらに備え、
前記第1蓋の外径及び前記第2蓋の外径は、前記筐体の内径より小さい、請求項15に記載のインプラントデバイス。
【請求項19】
前記蓋は、前記蓋を貫通し、前記外部電極と前記内部電極とを電気的に接続する貫通導体を有し、
前記貫通導体は、前記蓋の厚み方向に対して傾斜している、請求項15に記載のインプラントデバイス。
【請求項20】
前記凸部は第1凸部であって、
前記蓋の前記内側面に配置された第2凸部をさらに備え、
前記基板は、前記第1凸部と前記第2凸部との間に配置される、請求項15に記載のインプラントデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2021年10月29日に出願した米国仮出願第63/273,369号に基づく優先権を主張し、その内容の全体は参照によって本明細書に含まれる。
【0002】
(政府ライセンス権利)
本開示は、全米科学財団から授与された助成金番号1554367による政府支援を受けて行われた。政府は、本開示において特定の権利を有する。
【0003】
本開示は、インプラントデバイスに関する。
【背景技術】
【0004】
特許文献1には、筐体と、筐体の内部に設けられた回路基板と、筐体の端部を閉じるエンドキャップとを備えるインプラントデバイスが開示されている。
【0005】
特許文献1のインプラントデバイスの回路基板は、可撓性の遠位部分を有する。エンドキャップを筐体に装着する前において、可撓性の遠位部分は、筐体の端部を越えて延びている。エンドキャップを装着すると、可撓性の遠位部分によって、回路基板とエンドキャップとを電気的に接続できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のインプラントデバイスでは、組立の観点で、未だ改善の余地がある。
【0008】
したがって、本開示は、組立が容易であるインプラントデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の例示的な態様のインプラントデバイスは、少なくとも一方の端部が開放され、内部空間を画定する筒状の筐体と、一方の端部を閉じ、内部空間に面する内側面と、内側面と反対側の外側面と、を有する蓋と、内部空間に配置され、能動面と、能動面に配置された基板電極と、基板電極を通じて取得した生体情報を生体外に通信する無線通信回路と、を有する基板と、を備え、蓋の内側面には、基板が配置される凹部と、基板電極と電気的に接続された内部電極とが設けられ、蓋の外側面には、内部電極と電気的に接続された外部電極が設けられる。
【0010】
本開示の他の例示的な態様のインプラントデバイスは、少なくとも一方の端部が開放され、内部空間を画定する筒状の筐体と、一方の端部を閉じ、内部空間に面する内側面と、内側面と反対側の外側面と、を有する蓋と、内部空間に配置され、能動面と、能動面に配置された基板電極と、基板電極を通じて取得した生体情報を生体外に通信する無線通信回路と、を有する基板と、を備え、蓋の内側面には、能動面と接触する凸部が設けられ、凸部には、基板電極と電気的に接続された内部電極が設けられ、蓋の外側面には、内部電極と電気的に接続された外部電極が設けられ、内部電極と基板電極とを接続する接続部材をさらに備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、組立が容易であるインプラントデバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の例示的な実施の形態に係るインプラントデバイスの模式図
【
図7】変形例1に係るインプラントデバイスの断面図
【
図8】変形例2に係るインプラントデバイスの断面図
【
図10】変形例3に係るインプラントデバイスの断面図
【
図11】変形例4に係るインプラントデバイスの断面図
【
図12】インプラントデバイスの実施例を示す模式図
【
図13A】インプラントデバイスによって記録された呼吸アーチファクトを含む処理前のECG信号を示す図
【
図13B】従来のECG電極によって記録された呼吸アーチファクトを含む処理前のECG信号を示す図
【
図14】呼吸アーチファクトを差し引いた後のフィルタされたECG信号を示す図
【
図15A】クリーンなECG信号を用いて抽出したR-R間隔を示す図
【
図15B】ECGベースラインにおける連続するピークの間隔から算出される呼吸間隔を示す図
【
図16A】インプラントデバイスからのR-R間隔値に適用したDFTの大きさを示す図
【
図16B】インプラントデバイスからの呼吸ベースラインに適用したDFTの大きさを示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本開示に至った経緯)
連続的かつ無線通信による生理学的モニタリングによって、獣医師、動物科学者、及び生物医学研究者は、動物の健康及び福祉をよりよく理解し、監視することができるようになる。従来の動物健康監視装置は、特に小動物の場合、動物にワイヤで接続された卓上型器具を必要とし、臨床実験にのみ適している。また、生体電位電極の外付けは、毛を剃る、または接着剤を使う必要があり、長期間の使用では、動物が装置に違和感を覚える。一方、皮下インプラント型のセンサでは、動物の自由な動きが可能であるため、自然または半自然な環境における動物の生理学的状態について、より深い洞察を得ることができる。
【0014】
心電図検査(ECG)は、心拍数(HR)、心拍変動(HRV)、そして可能性として呼吸数(BR)等の、動物の健康及び福祉状態を評価するために使用できる最も重要な生理学的指標を提供できる。インプラントできる形態でECG記録回路を装置に統合するためには、小型化された電極が必要であるが、小型化された電極を製造することは困難である。電極は、生体組織から回路への安定した低インピーダンス接続を要し、インプラント内部における電子部品は、外部の環境から完全に絶縁されている必要がある。この低インピーダンス接続は、インプラントパッケージから外側に突出する導電体と、電極と生体組織とのより大きい接触面積を要する。商業的な用途においては、拡張性と、電極生産プロセスの低コスト化も必要となる。
【0015】
先行技術において存在する電極設計は、導電体として、螺旋状のワイヤまたは微細加工された金属を使用する。このような方法は、手動の生産、難しい生産工程、増加したコスト、最終製品における均一性の欠如等の主な欠点を有する。
【0016】
既存デバイスとして、心拍数を監視するために、ステンレス鋼のワイヤを電極として使用した皮下電気生理インプラントデバイスがある。このインプラントデバイスにおいて、組織と電極との接触が限定的であって、電極の間隔が過度に小さいため、測定結果は最適でなかった。他の既存デバイスでは、導電性エポキシによって形成された電極が、他の金属製の代替案と同等の性能を示している。エポキシによって形成された電極は、インプラントデバイスのパッケージ化と封入においてより高い自由度を提供する一方で、電極の大きさ、均一性、製造難易度等の観点において未だ改善の余地がある。
【0017】
低コストの生体電位電極の大量生産を推進するように、付加的加工(即ち、3Dプリンティング)技術が重要な役割を果たし得る。本開示において、発明者らは、同時焼成セラミック基材に金属電極を印刷する新しい技術の採用を検討した。この新しい技術を用いて、筒状の筐体(例えば、ガラスチューブ)の蓋であって、金属電極が印刷された蓋を生産することができる。金属電極は、外部の組織表面とインプラントデバイスの内部における電気生理フロントエンド回路とを容易に接続できる。
【0018】
印刷された金属電極を有する蓋に、凹部または凸部を設けることで、金属電極と電気生理フロントエンド回路との位置合わせが容易になる。したがって、組立が容易であるインプラントデバイスを提供することができる。
【0019】
本開示の第1の態様のインプラントデバイスは、少なくとも一方の端部が開放され、内部空間を画定する筒状の筐体と、一方の端部を閉じ、内部空間に面する内側面と、内側面と反対側の外側面と、を有する蓋と、内部空間に配置され、能動面と、能動面に配置された基板電極と、基板電極を通じて取得した生体情報を生体外に通信する無線通信回路と、を有する基板と、を備え、蓋の内側面には、基板が配置される凹部と、基板電極と電気的に接続された内部電極とが設けられ、蓋の外側面には、内部電極と電気的に接続された外部電極が設けられる。
【0020】
このような構成により、蓋に対する基板の位置合わせが容易になる。そのため、インプラントデバイスの組み立てを容易にすることができる。
【0021】
第2の態様のインプラントデバイスとして、第1の態様におけるインプラントデバイスにおいて、凹部は、互いに対向する第1内壁面と第2内壁面とを有する内壁面によって画定される。
【0022】
このような構成により、第1内壁面と第2内壁面とが基板と対向する場合において、第1内壁面と第2内壁面とによって挟み、位置合わせした状態で基板を維持できる。
【0023】
第3の態様のインプラントデバイスとして、第2の態様におけるインプラントデバイスにおいて、第1内壁面は、蓋の内側面における第1凸部の一部であって、第2内壁面は、蓋の内側面における第2凸部の一部であって、凹部は、第1凸部と第2凸部との間に位置する。
【0024】
このような構成により、蓋の厚み、即ち凹部の深さにかかわらず、第1凸部及び第2凸部によって基板を強固に保持することができる。
【0025】
第4の態様のインプラントデバイスとして、第3の態様におけるインプラントデバイスにおいて、第1凸部と第2凸部との少なくとも一方は、基板の端部を覆う。
【0026】
第5の態様のインプラントデバイスとして、第2から第4の態様のいずれかにおけるインプラントデバイスにおいて、内部電極は、内壁面に位置し、基板電極は、凹部に配置された基板の部分に位置する。
【0027】
このような構成により、内部電極と基板電極との間で電気的接続を実現できる。
【0028】
第6の態様のインプラントデバイスとして、第2から第5の態様のいずれかにおけるインプラントデバイスにおいて、基板は、第1内壁面または第2内壁面の少なくとも一方と接触する。
【0029】
このような構成により、凹部と基板との接触面積を増加させることで、基板をより強固に保持することができる。
【0030】
第7の態様のインプラントデバイスとして、第6の態様におけるインプラントデバイスにおいて、基板は、第1内壁面及び第2内壁面と接触する。
【0031】
このような構成により、凹部と基板との接触面積を増加させることで、基板をより強固に保持することができる。
【0032】
第8の態様のインプラントデバイスとして、第1から第7の態様のいずれかにおけるインプラントデバイスにおいて、外部電極は、内部電極よりも大きい面積を有する。
【0033】
第9の態様のインプラントデバイスとして、第1から第8の態様のいずれかにおけるインプラントデバイスにおいて、蓋の外径は、筐体の内径より小さい。
【0034】
このような構成により、基板と蓋とを位置合わせした状態で組み立てた後に、基板と蓋とを筐体に挿入できる。
【0035】
第10の態様のインプラントデバイスとして、第1から第9の態様のいずれかにおけるインプラントデバイスにおいて、一方の端部は、第1開放端部であって、蓋は、第1蓋であって、筐体は、第1開放端部の反対側に第2開放端部を有し、第2開放端部を閉じる、第2蓋をさらに備える。
【0036】
このような構成により、筐体内に配置された基板に、筐体の両端から容易にアクセスできる。
【0037】
第11の態様のインプラントデバイスとして、第10の態様におけるインプラントデバイスにおいて、第1蓋の外径及び第2蓋の外径は、筐体の内径より小さい。
【0038】
このような構成により、基板に両方の蓋を取り付けてから筐体に挿入することができる。
【0039】
第12の態様のインプラントデバイスとして、第1から第11の態様のいずれかにおけるインプラントデバイスにおいて、蓋が、セラミック材料と金属材料とを有する。
【0040】
このような構成により、内部電極と外部電極とを蓋と一体的に形成することができる。
【0041】
第13の態様のインプラントデバイスとして、第1から第12の態様のいずれかにおけるインプラントデバイスにおいて、蓋は、蓋を貫通し、外部電極と内部電極とを電気的に接続する貫通導体を有する。
【0042】
このような構成により、内部電極と外部電極との間で電気的接続を実現できる。
【0043】
第14の態様のインプラントデバイスとして、第13の態様におけるインプラントデバイスにおいて、貫通導体は、蓋の厚み方向に対して傾斜している。
【0044】
このような構成により、蓋を焼成によって容易に生産できる。
【0045】
本開示の第15の態様のインプラントデバイスは、少なくとも一方の端部が開放され、内部空間を画定する筒状の筐体と、一方の端部を閉じ、内部空間に面する内側面と、内側面と反対側の外側面と、を有する蓋と、内部空間に配置され、能動面と、能動面に配置された基板電極と、基板電極を通じて取得した生体情報を生体外に通信する無線通信回路と、を有する基板と、を備え、蓋の内側面には、能動面と接触する凸部が設けられ、凸部には、基板電極と電気的に接続された内部電極が設けられ、蓋の外側面には、内部電極と電気的に接続された外部電極が設けられ、内部電極と基板電極とを接続する接続部材をさらに備える。
【0046】
このような構成により、蓋に対する基板の位置合わせが容易になる。そのため、インプラントデバイスの組み立てを容易にすることができる。
【0047】
第16の態様のインプラントデバイスとして、第15の態様におけるインプラントデバイスにおいて、内部電極は、凸部において、能動面と接触する面と反対側の面に形成され、接続部材は導電性を有する。
【0048】
このような構成により、内部電極が能動面と接触する面に形成される場合と比較して、接続部材を容易に設けることができる。
【0049】
第17の態様のインプラントデバイスとして、第15または第16の態様におけるインプラントデバイスにおいて、蓋の外径は、筐体の内径より小さい。
【0050】
第18の態様のインプラントデバイスとして、第15から第17の態様のいずれかにおけるインプラントデバイスにおいて、一方の端部は、第1開放端部であって、蓋は、第1蓋であって、筐体は、第1開放端部の反対側に第2開放端部を有し、第2開放端部を閉じる、第2蓋をさらに備え、第1蓋の外径及び第2蓋の外径は、筐体の内径より小さい。
【0051】
第19の態様のインプラントデバイスとして、第15から第18の態様のいずれかにおけるインプラントデバイスにおいて、蓋は、蓋を貫通し、外部電極と内部電極とを電気的に接続する貫通導体を有し、貫通導体は、蓋の厚み方向に対して傾斜している。
【0052】
第20の態様のインプラントデバイスとして、第15から第19の態様のいずれかにおけるインプラントデバイスにおいて、凸部は第1凸部であって、蓋の内側面に配置された第2凸部をさらに備え、基板は、第1凸部と第2凸部との間に配置される。
【0053】
以下、例示的な実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。また、各図においては、説明を明確なものとするため、各要素を誇張して示している。
【0054】
(例示的な実施の形態)
図1は、例示的な実施の形態に係るインプラントデバイス1の模式図である。
図2は、インプラントデバイス1の内部を示す模式図である。
図3は、インプラントデバイス1の断面図である。
図4は、基板5の回路の構成要素の模式図である。
【0055】
例えば、インプラントデバイス1は、生体情報を取得するために動物に埋め込まれるデバイスである。例えば、インプラントデバイス1は、鶏に埋め込まれてもよい。生体情報としては、例えば、心電図が挙げられる。
【0056】
図1から
図3に示すように、インプラントデバイス1は、筐体2と、2つの蓋3,4と、基板5とを有する。筐体2には基板5が収容されて、筐体2の両端は蓋3、4によって閉じられる。
【0057】
図1は、インプラントデバイス1が電源として電池6をさらに有する例を示す。この場合、電池6は、基板5と並んで、基板5の端部と蓋4との間に配置される。一方で、本開示はこのような構成に限定されず、他の形式の電源を有してもよい。他の図面において、簡単のために電池6を省略して説明する。
【0058】
筐体2は、基板5を収容するための筒状部材である。筐体2はその内部に内部空間R1を画定し、基板5の全体は内部空間R1に収容される。内部空間R1は、筐体2の内側の空間を意味し、対照的に、外部空間R2は、筐体2の外側の空間、即ち生体組織に接する空間を意味する。例示的な実施の形態では、筐体2は、両端が開放された円筒状の部材であって、筐体2の端部の外径は、筐体2の長さより小さい。筐体2の内径は、例えば、4mmである。
【0059】
ここで、筐体2の両端の中心を通過する方向を軸方向Lとする。筐体2の軸方向Lは、蓋3の厚み方向と平行であり、基板5の長手方向と平行である。
【0060】
筐体2は、ガラスによって形成されてもよい。筐体2は、例えば、ホウケイ酸ガラスによって形成される。
【0061】
図3に示すように、蓋3,4は、それぞれ筐体2の開放端部2A、2Bを閉じる円板状の部材である。蓋3,4が筐体2を閉じることによって、内部空間R1が密閉され、内部空間R1と外部空間R2とが隔たれている。
【0062】
蓋3は、基板5の一方の端部2Aと電気的に接続する。蓋4は、基板5の他方の端部2Bから離れていてもよい。
【0063】
基板5との電気的接続を実現するように、蓋3は電極を有する。まず、蓋3は、内部空間R1に面する内側面3Aと、内側面3Aの反対側であって外部空間R2に面する外側面3Bとを有する。そこで、内側面3Aには内部電極13が配置され、外側面3Bには外部電極23が配置される。内部電極13は、基板5と電気的に接続し、外部電極23は、外部空間R2における生体組織と電気的に接続する。また、外部電極23と内部電極13とは、蓋3を貫通する貫通導体18によって互いに電気的に接続されている。そのため、外部空間R2における生体電位は、外部電極23と内部電極13とを通じて、基板5に伝導する。
【0064】
例示的な実施の形態では、蓋3は、1つの内部電極13と1つの外部電極23とを有する。外部電極23は内部電極13より大きい。そのため、外部電極23は生体組織との接触面積を大きく確保できる。
【0065】
蓋3の内側面3Aには、2つの凸部31が設けられている。凸部31は、内側面3Aから軸方向Lに基板5に沿って突出する。蓋3の内側面3Aにおいて、2つの凸部31の間には、基板5が配置される凹部32設けられている。凹部32は、凸部31の先端に対して凹んでおり、凸部31の間に間隙が形成されている。凹部32に基板5が挿入されると、2つの凸部31は基板5を厚み方向Kに挟むように構成される。このような構造によって、基板5を凸部31によって案内して凹部32に挿入することで、蓋3に対する基板5の位置合わせを容易に行うことができる。
【0066】
ここで、凸部とは、周囲より突出している構造を意味し、反対に、凹部とは、周囲より凹んでいる構造を意味する。
【0067】
凸部31には、一方の内部電極13が形成される。凸部31は、基板5に沿って延びる。内部電極13を凸部31に設けることによって、基板5上の電極(後述の基板電極15)が基板5の端部に対して内側に位置する場合であっても、内部電極13を基板5上の電極(後述の基板電極15)に近づけることができる。
【0068】
基板5は、外部空間R2に関する生体情報を取得して、生体情報を生体外の装置またはシステムに通信する電子回路が搭載された部材である。電子回路は、基板5に形成された回路パターンと、回路パターンに電気的に接続された電子部品とによって構成される。基板5は、例えば、プリント基板である。
図2に示すように、基板5は板状の部材であって、基板5の少なくとも一方の面は電子部品が搭載される能動面5Aである。
【0069】
図3に示すように、基板5の能動面5Aには、回路パターンと基板電極15とが配置され、複数の電子部品が搭載されている。
【0070】
基板電極15は、基板5の端部の近傍に形成されている。例示的な実施の形態では、基板電極15は、基板5の端部に対して内側に配置され、軸方向Lに沿って内部電極13と間隔を有する。基板電極15を基板5の端部から離すことで、基板5の端部を加工する際に、導線を加工することを回避し、バリの発生を抑制することができる。
【0071】
基板電極15は、接続部材17を介して内部電極13と接続する。接続部材17は、導電性を有し、内部電極13と基板5とを電気的に接続するための部材である。接続部材17は、導電性材料で形成される。接続部材17は、例えば、はんだまたは導電性接着剤である。また、接続部材17によって、基板5は内部電極13に固定される。即ち、接続部材17は、内部電極13と基板5とを電気的に及び機械的に接続する部材である。
【0072】
基板5は、搭載された電子部品を有し、搭載された電子部品は、基板電極15及び接続部材17を通じて、蓋3の内部電極13と電気的に接続される。搭載された電子部品は、少なくとも制御回路と、無線通信回路と、電源回路と、アナログ-デジタル(AD)変換回路とを含む。制御回路は、インプラントデバイス1全体の制御を司るコントローラである。制御回路は、プログラムを実行することにより所定の機能を実現するCPU、MPU、FPGA、DSP、ASICのような汎用プロセッサを含む。制御回路は、メモリ(図示せず)に格納された制御プログラムを呼び出して実行することにより、インプラントデバイス1における各種の制御を実現することができる。制御回路は、ハードウェアとソフトウェアの協働により所定の機能を実現するものに限定されず、所定の機能を実現する専用に設計されたハードウェア回路でもよい。無線通信回路は、生体情報を生体外に通信する。AD変換回路は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0073】
図4に示すように、例示的な実施の形態では、搭載された電子部品は、AD変換回路を有するアナログフロントエンド51と、制御回路を有するマイクロコントローラ52と、無線通信回路を有するアンテナ53と、電源回路54と、を含む。このような構成によって、基板5は、マイクロコントローラ52の制御下で、アナログフロントエンド51で測定した生体情報を生体の外部における装置またはシステムに通信する。
【0074】
アナログフロントエンド51(例えば、MAX30003,2.9×2.7×0.6mm3,Maxim Integrated,San Jose,CA,USA)は、外部空間R2における生体情報を測定する。例示的な実施の形態では、アナログフロントエンド51は、心電図(ECG)に基づく心拍数を測定する。アナログフロントエンド51は、測定したアナログ信号をデジタル信号に変換するためのアナログ/デジタル変換器を有する。アナログフロントエンド51は、信号フィルタとして機能する部品のネットワークによって基板電極15に接続されてもよい。
【0075】
マイクロコントローラ52は、インプラントデバイス1を制御する。マイクロコントローラ52は、システム・オン・チップを形成するようにラジオトランシーバ55(例えば、CC2640,2.7×2.7×0.5mm3,Texas Instruments,Dallas,TX,USA)と組み合わせられている。ラジオトランシーバ55は、無線通信回路として機能し、無線通信のためにBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)ラジオを有する。ラジオトランシーバ55は、他の規格にしたがい無線通信を行い、データの送受信を行ってもよい。
【0076】
ラジオトランシーバ55は、アンテナ53を介して通信する。アンテナ53は(例えば、2450AT,5.0×2.0×1.5mm3,Johanson Technology,Inc.,Camarillo,CA,USA)、統合されたRFアンテナであって、例えば、2.4GHzのラジオ波を通じて通信する。
【0077】
電源回路54は、基板5に電力を供給するために、電源(図示せず)に接続するための回路である。例示的な実施の形態では、電源は、直径3.6mmを有するピン型のLiイオン電池(
図1)であって、基板5の一方の端部にワイヤを介してはんだ付けされる。
【0078】
基板5には、他の電子部品が搭載されてもよい。例えば、基板5には、生体情報を記憶するための記憶部が搭載されてもよい。記憶部は、種々の情報や制御プログラムを記録する記録媒体であり、マイクロコントローラ52の作業領域として機能するメモリであってもよい。記憶部は、例えば、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Device)、ハードディスク、RAM、その他の記憶デバイス又はそれらを適宜組み合わせて実現される。
【0079】
また、基板5には、心電図以外の生体情報を取得するための電子部品が搭載されてもよい。例えば、基板5には、体温測定のためのサーミスタ、または移動の測定のための加速度センサが搭載されてもよい。
【0080】
それぞれの電子部品は、例えば、基板5にはんだ付けされる。それぞれの電子部品が基板5にはんだ付けされた後に、基板5及び電子部品には医用エポキシが塗布されて、基板5及び電子部品が封止されてもよい。
【0081】
基板5の幅は、内部空間R1に収容可能であるように筐体2の内径より小さく、例えば、3.6mmである。基板5は、筐体2に接触して配置されてもよい。
【0082】
以下、蓋3について詳細に説明する。
【0083】
図5は、内側面3Aを示す蓋3の平面図である。
図5において、わかりやすさのために、内部電極13にハッチングを付している。
図6は、蓋3と基板5との拡大断面図である。
図6の断面は、
図5におけるAA線に沿った断面である。
【0084】
図5に示すように、それぞれの凸部31は、接触面33と、接触面33と反対側の開放面34とを有する。凸部31の先端の一方の面が接触面33であって、他方の面が開放面34である。2つの凸部31の接触面33は、凹部32を挟んで互いに対向する。ここで、対向する面とは、面が互いに向き合って、実質的に略平行であることを意味してもよい。接触面33の間隔、即ち凹部32の厚み方向Kの寸法は、約1mmであってもよい。
【0085】
図6に示すように、両方の接触面33は基板5と接触し、一方の接触面33は、能動面5Aと接触する。開放面34は基板5から離れる方向に向いている。内部電極13は、能動面5Aと接触する凸部31の開放面34に形成される。例示的な実施の形態では、内部電極13は、開放面34において、凸部31の先端付近に設けられている。
【0086】
蓋3が樹脂等の弾性材料で形成される場合においては、内部電極13が接触面33に形成されてもよい。蓋3が弾性材料で形成される場合、基板5を凹部32に挿入するだけで安定した電気的接続を得ることができる。即ち、この場合、接続部材17が、インプラントデバイス1の構造から省略されてもよい。
【0087】
図5に示すように、凸部31は、内側面3Aから離れるほど幅が狭くなる。このような構造によって、基板5上で電子部品のためのスペースをより広く確保することができる。
【0088】
図6に示すように、接触面33は、軸方向Lに沿って延びる。例示的な実施の形態では、接触面33は、基板5の能動面5Aと平行である。このような構造によって、接触面33で基板5を安定的に保持しつつ、内部電極13を基板電極15に近づけることができる。一方で、開放面34は能動面5Aに対して傾斜しており、基板5の内側に延びるほど接触面33に近づく。
【0089】
内側面3Aを、内部空間R1に配置される第1領域X1と、第1領域X1を囲む第2領域X2とに分けることができる。第2領域X2は、筐体2(
図3)の端部2Aに面する。第1領域X1の外径は、筐体2の内径と略同じである。第1領域X1の外径は、例えば、内部空間R1に挿入されるように充分に小さく、内部空間R1に固定されるように充分に大きい。第2領域X2の外径(即ち、蓋3の外径)は、筐体2の内径より大きく、例えば、5mmである。第2領域X2における蓋3の厚みは、第1領域X1における蓋3の厚みより小さく、第2領域X2と第1領域X1との間には、軸方向Lに沿った壁面35が形成される。壁面35を筐体2の内周面に接触させることによって、外部空間R2から内部空間R1への液体の進入を抑制することができる。さらに、蓋3と筐体2との中心を揃えることが容易になる。
【0090】
ここで、ある部材の外径とは、部材の断面の外周上における2つの点の間の距離が最大となったときの距離を意味する。ある部材の内径とは、部材の断面の内周上における2つの点の間の距離が最大となったときの距離を意味する。
【0091】
内部電極13と外部電極23とを電気的に接続する貫通導体18は、例えば、内部電極13及び/または外部電極23と同じ材料で形成される。貫通導体18は、軸方向Lに対して傾斜している。具体的には、貫通導体18は、外側面3Bから内側面3Aに向かって蓋3の中心に近づくように傾斜している。このような構造によって、貫通導体18における割れの発生を抑制しつつ、蓋3を焼成によって容易に製造することができる。
【0092】
例示的な実施の形態では、蓋3の基材はセラミックで形成され、内部電極13と外部電極23と貫通導体18とは銅または他のいずれかの適切な金属材料で形成される。蓋3は、それぞれ、セラミック、銅、及び支持材料のための複数の専用インクと、複数の材料を用いた3Dプリンティング工程とを組み合わせた方法によって製造される。それぞれの材料のために異なる専用インクが使用されてもよい。
【0093】
まず、蓋3は、商業的なCADツール(3D-CAD,Autodesk,Inc.,San Rafael,CA,USA)によって設計される。蓋3の設計が含まれる設計ファイルを、インクジェットプリンタで使用できるように変換する。インクジェットプリンタのヘッドは、加熱されたプラットホームの上に、低温同時焼成セラミック(例えば、LTCC)を含むインク、銅を含むインク、及び支持材料を含むインクを同時に層状に重ねて成膜する。溶剤が蒸発すると、これらの層が固化する。また、セラミックと銅との溶融温度及び焼結速度が異なるため、貫通導体18は、軸方向Lに対して傾斜している。材料の成膜が終わると、形成された多層構造は、N2/H2の雰囲気を含む酸素欠乏環境に配置され、800℃以上に加熱される。この同時焼成工程によって、支持材料は除去され、蓋3が形成される。最後に、電極13、23の表面には、無電解ニッケル浸漬金(ENIG)のめっき加工が施されている。
【0094】
上記方法によって、
図6に示すように、連通した電極13、23を有する蓋3を形成することができる。
【0095】
以下、蓋3と基板5との位置関係について詳細に説明する。
【0096】
図6に示すように、蓋3の凸部31は基板5の端部5B付近における基板5を覆う。内部電極13は、基板5の能動面5Aを覆っている凸部31の先端付近に形成される。そのため、基板5の端部5Bは、内部電極13より外側L1に、即ち、外側面3Bの近くに配置される。これによって、内部電極13を、基板電極15のより近くに配置することができる。
【0097】
また、例示的な実施の形態では、凹部32の底32Aが内部電極13より外側L1に位置するように、凹部32の深さは設計される。基板5の端部5Bは、凹部32の底32Aの近傍に配置される。
【0098】
このような位置関係によって、内部電極13と、基板5の端部5Bより内側に配置された基板電極15との間における軸方向Lの距離D1を小さくすることができる。そのため、インプラントデバイス1を小さくするとともに、内部電極13と基板電極15とを繋ぐ接続部材17を短くすることによって、基板5による測定結果のノイズを低減することができる。
【0099】
ここで、インプラントデバイス1の組立方法について説明する。まず、基板5の一部を蓋3の凹部32に挿入する。基板5を凹部32に挿入することで、蓋3に対する基板5の位置合わせを容易に行える。続いて、位置合わせした状態で、基板5と蓋3とを接続部材17によって互いに固定する。具体的には、基板5と蓋3とをはんだ付けする。はんだ付けによって、基板5と蓋3とを、正しい位置関係を維持した状態で、電気的及び機械的に接続できる。その結果、基板5と蓋3とは、導通し、互いに固定される。正しい位置関係とは、内部電極13と基板電極15との電気的接続のための位置関係であるとともに、基板5の電子部品と筐体2の内周面との干渉を抑制するための位置関係である。続いて、蓋3に接続した状態で基板5を筐体2に挿入して、筐体2の一方の端部2Aを蓋3で閉じる。続いて、筐体2の他方の端部2Bを蓋4で閉じる。2つの蓋3、4は、2つの部材を互いに取り付けるいずれかの手段によって筐体2に取り付けられる。
【0100】
[使用例]
以下、インプラントデバイス1の使用例について説明する。
【0101】
インプラントデバイス1を、局部麻酔を用いて鶏の生体内に埋め込み、鶏の生体外(即ち、インプラントデバイス1が埋め込まれた生体の外部)のコンピュータで生体情報を収集してもよい。
【0102】
具体的には、アナログフロントエンド51は、基板電極15、外部電極23と内部電極13とを通じて、外部空間R2に関する心電図を測定する。アナログフロントエンド51は、生体電位信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号をマイクロコントローラ52に送信する。アナログフロントエンド51は、例えば、SPIバスを通じてデジタル信号をマイクロコントローラ52に送信する。外部コンピュータとインプラントデバイス1との通信が確立すると、マイクロコントローラ52は、ラジオトランシーバ55を用いて、デジタル信号をリアルタイムで生体外のコンピュータに送信する。このような構成によって、生体情報をリアルタイムで取得することができる。
【0103】
例示的な実施の形態に係るインプラントデバイス1によれば、以下の効果を奏することができる。
【0104】
例示的な実施の形態に係るインプラントデバイス1は、の少なくとも一方の端部2Aが開放され、内部空間R1を画定する筒状の筐体2を含む。インプラントデバイス1はさらに、一方の端部2Aを閉じ、内部空間R1に面する内側面3Aと、内側面3Aと反対側の外側面3Bとを有する蓋3を含む。インプラントデバイス1はさらに、内部空間R1に配置され、能動面5Aと、能動面5Aに配置された基板電極15と、基板電極15を通じて取得した生体情報を生体外に通信するアンテナ53(例えば、無線通信回路)と、を有する基板5を含む。蓋3の内側面3Aには、基板5が挿入される凹部32が形成され、基板電極15と電気的に接続された内部電極13が配置され、蓋3の外側面3Bには、内部電極13と電気的に接続された外部電極23が形成される。
【0105】
このような構造によって、蓋3に凹部32を設けることによって、蓋3に対する基板5の位置合わせが容易になるとともに、基板5の保持が容易になる。そのため、インプラントデバイス1の組み立てを容易にすることができる。
【0106】
例示的な実施の形態に係るインプラントデバイス1において、凹部32は、互いに対向する接触面33(例えば、第1内壁面)と接触面33(例えば、第2内壁面)とを有する内壁面によって画定される。
【0107】
このような構造によって、基板5を対向する接触面33によって挟むことができるため、基板5をより強固に保持することができる。
【0108】
例示的な実施の形態に係るインプラントデバイス1において、一方の接触面33は、蓋3の内側面3Aにおける第1凸部31の一部であって、他方の接触面33は、蓋3の内側面3Aにおける第2凸部31の一部であって、凹部32は、第1凸部31と第2凸部31との間に位置する。
【0109】
このような構造によって、蓋3の厚み、したがって凹部32の深さにかかわらず、基板5を保持するために必要な突出量の凸部31を形成できるため、基板5をより強固に保持することができる。
【0110】
例示的な実施の形態に係るインプラントデバイス1において、基板5は、接触面33の少なくとも一方と接触する。
【0111】
このような構造によって、凹部32と基板5との接触面積を増加させることで、基板5をより強固に保持することができる。
【0112】
例示的な実施の形態に係るインプラントデバイス1において、基板5は、両方の接触面33と接触する。
【0113】
このような構造によって、凹部32と基板5との接触面積をさらに増加させることで、基板5をより強固に保持することができる。
【0114】
例示的な実施の形態に係るインプラントデバイス1は、少なくとも一方の端部2Aが開放され、内部空間R1を画定する筒状の筐体2を含む。インプラントデバイス1はさらに、一方の端部2Aを閉じ、内部空間R1に面する内側面3Aと、内側面3Aと反対側の外側面3Bとを有する蓋3を含む。インプラントデバイス1はさらに、内部空間R1に配置され、能動面5Aと、能動面5Aに配置された基板電極15と、基板電極15を通じて取得した生体情報を生体外に通信するアンテナ53と、を有する基板5を含む。蓋3の内側面3Aには、能動面5Aと接触する凸部31が設けられる。凸部31には、基板電極15に電気的に接続された内部電極13が設けられている。蓋3の外側面3Bには、内部電極13と電気的に接続された外部電極23が設けられている。インプラントデバイス1は、内部電極13と基板電極15とを接続する接続部材17をさらに備える。
【0115】
このような構成によって、蓋3に対する基板5の位置合わせが容易になり、インプラントデバイス1の組立が容易になる。また、凸部31を設けることによって、内部電極13と基板電極15とを近づけて配置しやすくなる。そのため、インプラントデバイス1の小型化を実現するとともに、電極間の距離を短くすることで、ノイズを低減できる。
【0116】
例示的な実施の形態に係るインプラントデバイス1において、内部電極13は、凸部31において、能動面5Aと接触する面(接触面33)と反対側の面(開放面34)に形成され、接続部材17は導電性を有する。
【0117】
このような構成によって、接続部材17を通じて内部電極13と基板電極15との電気的接続を安定的に維持しつつ、内部電極13が接触面33に形成される場合と比較して、接続部材17を容易に設けることができる。
【0118】
例示的な実施の形態に係るインプラントデバイス1において、筐体2の一方の端部2Aは、第1開放端部であって、蓋3は、第1蓋である。筐体2は、端部2Aの反対側に第2開放端部(端部2B)を有する。インプラントデバイス1は、端部2Bを閉じる第2蓋(蓋4)をさらに備える。
【0119】
このような構成によって、インプラントデバイス1の製造プロセスの開始において、筐体2の両端が開放している状態から、製造プロセスの終了までに両端を閉じることができる。これは、製造プロセスにおいて、筐体2の両端から基板5へのアクセスを可能にして、インプラントデバイス1の製造を容易にすることができる。
【0120】
例示的な実施の形態に係るインプラントデバイス1において、蓋3が、セラミック材料と金属材料とを有する。
【0121】
このような構成によって、内部電極13と外部電極23とを蓋3と統合して形成することができる。そのため、インプラントデバイス1の構造が簡単になり、組立も容易になる。
【0122】
例示的な実施の形態に係るインプラントデバイス1において、蓋3は、蓋3を貫通し、外部電極23と内部電極13とを電気的に接続する貫通導体18を有する。
【0123】
このような構成によって、内部電極13と外部電極23との間で電気的接続を実現できる。
【0124】
例示的な実施の形態に係るインプラントデバイス1において、貫通導体18は、軸方向L(例えば、蓋3の厚み方向)に対して傾斜している。
【0125】
このような構成によって、蓋3を焼成によって容易に生産できる。また、貫通導体18にひびが生じることを抑制できる。
【0126】
なお、例示的な実施の形態では、筐体2の両端部2A、2Bが開放されている例について説明したが、これに限定されない。筐体2は、少なくとも一方の端部が開放された筒状の筐体である。例えば、筐体2の一方の端部は閉じられてもよく、蓋4が省略されてもよい。
【0127】
なお、例示的な実施の形態では、筐体2が円筒状である例について説明したが、これに限定されない。例えば、筐体2は、多角形状の断面を有する筒状の部材であってもよい。この場合、蓋3,4の形状は、筐体2の断面にあわせて設計すればよい。
【0128】
なお、例示的な実施の形態では、凸部31が基板5を厚み方向Kに挟む例について説明したが、これに限定されない。例えば、凸部31は、基板5を幅方向に挟むように形成されてもよい。また、凸部31は、基板5を厚み方向K及び幅方向に挟むように形成されてもよく、この場合、凸部31は基板5を囲み、1つの連続的な凸部として形成されてもよい。
【0129】
なお、例示的な実施の形態では、接触面33が基板5と接触し、基板5の能動面5Aと平行である例について説明したが、これに限定されない。例えば、接触面33は基板5に対して湾曲した形状を有してもよく、接触面33と基板5との間には接着剤やフィラー等の他の部材が配置されてもよい。
【0130】
なお、例示的な実施の形態では、凸部31の開放面34が傾斜して、凸部31が三角形状の断面を有する例について説明したが、これに限定されない。凸部31は、軸方向Lに沿って、矩形状の断面等、他の形状の断面を有してもよい。一方で、凸部31が、接触面33が基板5に沿う形状を有すると、蓋3に対する基板5の位置合わせがより容易になる。
【0131】
なお、例示的な実施の形態では、マイクロコントローラ52がデジタル信号を生体外のコンピュータに送信する例について説明したが、これに限定されない。コンピュータの代わりに、BLEを通じて、インプラントデバイス1との通信を確立する他の外部データアグリゲータが設けられてもよい。
【0132】
なお、例示的な実施の形態では、蓋3が2つの凸部31を有する例について説明したが、これに限定されない。例えば、後述の変形例1に示すように、蓋3において、基板5の能動面5Aに面する一方の凸部31のみが形成されてもよい。
【0133】
さらに、例えば、後述の変形例2に示すように、蓋3には、凸部31が設けられなくてもよい。
【0134】
なお、例示的な実施の形態では、インプラントデバイス1が蓋3,4を有する例について説明したが、これに限定されない。例えば、インプラントデバイス1は、2つの蓋3を有してもよい。この場合において、例えば、後述の変形例3に示すように、蓋3の外径が筐体2の内径より小さくてもよく、インプラントデバイスの組立を容易に実現できる。
【0135】
なお、例示的な実施の形態では、2つの凸部31の一方が内部電極13を有する例について説明したが、これに限定されない。例えば、後述の変形例4に示すように、蓋3において、基板5に面する両方の凸部31に内部電極13を形成してもよい。基板5の両面が能動面である場合、蓋3が2つの凸部31のそれぞれに内部電極13を有すると、基板5の設計自由度が向上する。
【0136】
[変形例1]
図7は、例示的な実施の形態の変形例1のインプラントデバイス101の断面図である。
図7に示すように、変形例1におけるインプラントデバイス101は、蓋103を備える点において、前述の実施の形態に係るインプラントデバイス1と異なる。変形例1において、説明しない限り、インプラントデバイス101の他の構成は、例示的な実施の形態のインプラントデバイス1と同じであり、例示的な実施の形態と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。後述の他の変形例においても同様である。
【0137】
蓋103の内側面103Aには、1つの凸部131が形成される。凸部131は、筐体2の軸方向Lに沿って突出し、基板5の能動面5Aに接触する。言い換えれば、凸部131は、筐体2内で厚み方向Kにおいて基板5の位置決めを行うための構造である。基板5が凸部131から離れないように、基板5は接続部材17によって凸部131に機械的に接続される。凸部131を設けることによって、簡単な構造で、基板5が筐体2の内周面に接近することを抑制し、基板5上の電子部品が筐体2の内周面と干渉することを抑制できる。そのため、基板5の故障を抑制することができる。なお、蓋103の内側面103Aに凹部32をさらに形成してもよい。
【0138】
内部電極13は、凸部131において基板5に接触する面と反対側の面に形成される。
【0139】
[変形例2]
図8は、例示的な実施の形態の変形例2のインプラントデバイス201の断面図である。
図9Aは、蓋203の平面図である。
図9Bは、蓋203と基板5との拡大断面図である。
【0140】
図8に示すように、変形例2におけるインプラントデバイス201は、蓋203を備える点において、前述の例示的な実施の形態に係るインプラントデバイス1と異なる。
【0141】
図8及び
図9Aに示すように、蓋203の内側面203Aには、1つの凹部232が形成される。凹部232には基板5が挿入される。凹部232によって、蓋203に対して基板5の位置合わせができる。基板5の端部は、凹部232の底232Aに接してもよい。
【0142】
凹部232は、矩形状に開口している。具体的には、凹部232は、内壁面233,234と内壁面235,236とによって画定される。内壁面233,234は互いに対向し、内壁面235,236は互いに対向する。内壁面233,234の間の間隔は、基板5の厚みに対応し、内壁面233は基板5の能動面5Aに接触し、内壁面234は基板5の裏面に接触する。一方で、内壁面235,236の間隔は、基板5の幅に対応し、内壁面235,236はそれぞれ対向する基板5の側面に接触する。このような構造によって、基板5を内壁面234,234,235,236によって挟んで、蓋203に対して位置合わせした状態で固定的に保持することができる。蓋203が弾性を有する材料で形成される場合、凹部232内で基板5をさらに安定的に保持できる。
【0143】
図9Bに示すように、凹部232の開口から底232Aまでの深さは、基板5の端部と基板電極15との距離D3より大きい。そのため、基板電極15の少なくとも一部は、凹部232の内部に配置され、内壁面233に接触する。
【0144】
内部電極213は、内壁面233に位置し、基板電極15は、基板5における凹部232に挿入される部分に位置する。凹部232の底232Aと底232Aから離れた内部電極213の先端213Aとの距離D2は、基板5の端部と基板電極15との距離D3より大きい。そのため、内部電極213は基板電極15と接触する。接続部材17を設けない場合においても、内部電極213と基板電極15との電気的接続を実現できる。
【0145】
このような構造によって、基板5を凹部232に配置することによって、蓋203と基板5との電気的接続を実現できる。したがって、電気的接続のための他の構成要素を省略することができる。インプラントデバイス201の小型化及び構造の簡単化が可能になる。
【0146】
一方で、凹部232において接着剤等の接続部材17を設けてもよい。
【0147】
なお、変形例2において、凹部232の周囲に凸部が形成されてもよい。例えば、内側面203Aには、凹部232の一方側に第1凸部と、凹部232の反対側に第2凸部とが形成されてもよい。内壁面233が第1凸部の一部であって、内壁面234が第12凸部の一部である。凹部232は第1凸部と第2凸部との間に位置する。
【0148】
なお、変形例2において、内部電極213が内壁面233に位置する例について説明しているが、これに限定されない。例えば、内部電極213は凹部232の周囲における内側面203Aに形成されてもよい。
【0149】
[変形例3]
図10は、例示的な実施の形態の変形例3のインプラントデバイス301の断面図である。
図10に示すように、変形例3におけるインプラントデバイス301は、蓋303を備える点において、前述の例示的な実施の形態に係るインプラントデバイス1と異なる。
【0150】
インプラントデバイス301は、筐体2と、2つの蓋303とを備える。筐体2は両方の端部2A、2Bが開放されており、2つの蓋303は筐体2の両方の端部2A、2Bをそれぞれ閉じる。蓋303の外周面が筐体2の内周面に接触することで、筐体2が密閉される。筐体2の端部2A、2Bを蓋303にかしめてもよい。
【0151】
蓋303の外径は、筐体2の内径より小さい。そのため、蓋303は、筐体2の一方の端部から他方の端部まで筐体2を通過できる。このような構造によって、インプラントデバイス301の組立において、基板5に両方の蓋303を取り付けて、接続部材17によって接続した上で、基板5と蓋303とが一体となった構造を筐体2に挿入することができる。したがって、インプラントデバイス301が2つの蓋303を有する場合においても、インプラントデバイス301を容易に組み立てることができる。
【0152】
なお、1つの蓋303と他の蓋とを組み合わせてもよい。この場合においても、蓋303が接続された基板5の端部を、筐体2を通過させることで、基板5と両方の蓋とを予め組立てた上で筐体2に挿入することができる。
【0153】
[変形例4]
図11は、例示的な実施の形態の変形例4のインプラントデバイス401の断面図である。
図11に示すように、変形例4におけるインプラントデバイス401は、蓋403を備える点において、前述の例示的な実施の形態に係るインプラントデバイス1と異なる。
【0154】
蓋403の内側面403Aにおいて、2つの凸部31のそれぞれは内部電極413を有する。2つの内部電極413は、基板5を挟むように配置され、基板5に対して厚み方向Kに対称的な配置を有する。
【0155】
[実施例]
実施の形態に係るインプラントデバイス1による心拍数(HR)と呼吸数(BR)との予測の正確さを確認するため、インプラントデバイス1と、従来のECG電極とを比較する試験を行った。全ての動物実験は、NC State UniversityのInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって承認された。
【0156】
図12は、インプラントデバイス1の実施例を示す模式図である。
【0157】
図12に示すように、対象として、22週齢の白レグホーン・チキン(Gallus gallus domesticus)を用いて、コンセプト実証(proof-of-concept)のための生体内実験を実施した。また、従来のECG電極として、商業的な装置(例えば、Go Direct(登録商標) EKG Sensor,Vernier Software & Technology,Beaverton,OR,USA)に接続された針電極を用いた。
【0158】
この実験において、チキンの背中側に局部麻酔を適用して、インプラントデバイス1の挿入位置を準備するために数枚の羽根を抜いた。その後、肩甲骨の間の頸部にインプラントデバイス1を皮下的に挿入し、インプラントデバイス1と離れたラップトップコンピュータとの間で無線データ通信を確立させた。インプラントデバイス1と同時に従来のECG電極からECG信号を記録できるように、チキンにGo Direct装置のための3つの針電極を皮下的に取り付けた。2つの針電極はインプラントデバイス1に隣接して挿入され、もう1つの針電極は右足に挿入された。Go Direct装置は、USBケーブルを通じてコンピュータに接続された。
【0159】
図13Aは、128Hzのサンプリング周波数を用いてインプラントデバイス1によって記録された呼吸アーチファクトによって変調された処理前のECG信号(点線)を示す図である。
図13Bは、128Hzのサンプリング周波数を用いて従来のECG電極によって記録された呼吸アーチファクトによって変調された処理前のECG信号(点線)を示す図である。
図13A及び
図13Bにおいて、細い実線が呼吸変調のベースラインを示す。
図14は、インプラントデバイス1及び従来のECG電極による、呼吸アーチファクトを差し引いた後のフィルタされたECG信号を示す図である。
図14において、インプラントデバイス1に記録された心臓周期のRピークには四角が付されて、従来のECG電極に記録された心臓周期のRピークには丸が付されている。
【0160】
15点移動平均のフィルタを用いて、呼吸ベースラインを抽出した。
図14に示すように、ベースラインを処理前のECG信号から差し引くと、クリーンなECG信号を取得し、両方の装置において、クリーンなECG信号は互いに一致した。
【0161】
R-R及び呼吸間隔をそれぞれ取得するため、フィルタされたECG信号及びECGベースラインに対して、MATLAB(登録商標)(Mathworks,Natick,MA,USA)におけるライブラリ関数「findpeaks」を用いてピーク検出を実行した。フィルタされたECG信号及びECGベースラインは、3分の長さを有する。
【0162】
図15Aは、両方の装置によるクリーンなECG信号を用いて抽出したR-R間隔を示し、
図15Bは、ECGベースラインの連続するピークの間隔から算出される呼吸間隔を示す図である。
図15Aにおいて、呼吸洞性不整脈の効果を示すように、呼吸ベースラインが一点鎖線で示されている。
【0163】
図15A及び
図15Bに示すピーク間隔から、ビート毎分(BPM)を単位とする心拍数と、呼吸毎分(BrPM)を単位とする呼吸数とを算出した。
【0164】
【0165】
表1に示すように、2つの装置のそれぞれの心拍数の値の間の平均絶対パーセント誤差と、ピアソン相関係数とは、1.72%と、0.77であって、2つの装置のそれぞれの呼吸数の値の間の平均絶対パーセント誤差と、ピアソン相関係数とは、4.38%と、0.79であった。これら及びこれらから算出された他の統計によって、正確な生理的情報を提供するインプラントデバイス1の性能を確認できた。
【0166】
図15Aにおいて、心拍間隔(または心拍数)において、呼吸アーチファクトに関連している周期的な変調が観察された。この変調は、呼吸洞性不整脈(RSA)として知られている。この生理的現象は、R-R間隔が息の吸込みにおいて短くなり、吐き出しにおいて長くなることをもたらし、人間(特に新生児)及び他の脊椎動物において通常見られる。
図15Aでは、RSAの効果を示すために、呼吸ベースラインがプロットに示されている。R-R間隔においてRSAの効果を検証するため、インプラントデバイス1から収集されたR-R間隔値の瞬間的な信号とECG波形の呼吸ベースラインに対して、離散的フーリエ変換(DFT)を適用した。
【0167】
図16Aは、インプラントデバイス1からのR-R間隔値に適用したDFTの大きさを示す図である。
図16Bは、呼吸ベースラインに適用したDFTの大きさを示す図である。
【0168】
両方の信号は、BRに対応する同じ周波数においてピークを示した。約0.47Hz(28.2BrPM)におけるこの共通のピークによって、RSAの効果を確認できた。この結果によって、有益的な生理情報を把握できる本インプラントデバイス1の機能性をさらに確認できた。
【0169】
皮下的にインプラント可能な生体電位センサシステムとして、動物における心拍数及び呼吸数を取得するために連続的にECGを記録できるインプラントデバイス1を開発した。従来、生体電位電極の接続及び電極と小型パッケージとの統合に関する難しさが、このようなインプラントデバイスの設計及び製造を妨げていた。このようなインプラントのための生体電位電極の大量生産を容易にするため、複数の材料を用いた3Dプリンティング技術が用いられた。また、実施例1では、インプラントデバイス1は、商業的な卓上ECGシステムと同等な正確さを示した。
【0170】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、当業者にとっては種々の変形や修正は明白である。上述の実施の形態と変形例との構成を組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本開示のインプラントデバイスは、組立が容易であるため、動物科学者、獣医師、生物医学研究者にとって、リアルタイム及び高分解能で、連続的に生体情報を監視するためのインプラントデバイスに有用である。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の端部が開放され、内部空間を画定する筒状の筐体と、
前記一方の端部を閉じ、前記内部空間に面する内側面と、前記内側面と反対側の外側面と、を有する蓋と、
前記一方の端部から他方の端部を通過する軸方向に沿って前記内部空間に配置され、
前記軸方向に沿った能動面と、前記能動面に配置された基板電極と、前記基板電極を通じて取得した生体情報を通信するように構成された無線通信回路と、を有する基板と、を備え、
前記蓋の前記内側面には、前記能動面と接触する凸部が設けられ、
前記凸部には、前記基板電極と電気的に接続された内部電極が設けられ、
前記蓋の前記外側面には、前記内部電極と電気的に接続された外部電極が設けられ、
前記内部電極と前記基板電極とを接続する接続部材をさらに備え、
前記凸部は、前記能動面と接触する第1面を一方側に有し、前記軸方向と交差する方向に面する第2面を他方側に有し、
前記内部電極は、前記凸部の前記第2面に配置され、
前記接続部材は導電性を有する、インプラントデバイス。
【請求項2】
前記蓋の外径は、前記筐体の内径より小さい、請求項
1に記載のインプラントデバイス。
【請求項3】
前記一方の端部は、第1端部であって、
前記蓋は、第1蓋であって、
前記筐体は、前記第1端部の反対側に第2端部を有し、
前記第2端部を閉じる、第2蓋をさらに備え、
前記第1蓋の外径及び前記第2蓋の外径は、前記筐体の内径より小さい、請求項
1に記載のインプラントデバイス。
【請求項4】
前記蓋は、前記蓋を貫通し、前記外部電極と前記内部電極とを導通させる貫通導体を有し、
前記貫通導体は、前記蓋の厚み方向に対して傾斜している、請求項
1に記載のインプラントデバイス。
【請求項5】
前記凸部は第1凸部であって、
前記蓋の
前記内側面に配置された第2凸部をさらに備え、
前記基板は、前記第1凸部と前記第2凸部との間に配置される、請求項
1に記載のインプラントデバイス。
【請求項6】
前記第1凸部と前記第2凸部との間に凹部が形成され、
前記基板は、前記凹部に配置される、請求項5に記載のインプラントデバイス。
【請求項7】
前記凹部は、互いに対向する第1内壁面と第2内壁面とを有する内壁面によって画定される、請求項6に記載のインプラントデバイス。
【請求項8】
前記基板は、前記第1内壁面または前記第2内壁面の少なくとも一方と接触する、請求項7に記載のインプラントデバイス。
【請求項9】
前記基板は、前記第1内壁面及び前記第2内壁面と接触する、請求項8に記載のインプラントデバイス。
【請求項10】
前記外部電極は、前記内部電極よりも大きい面積を有する、請求項1に記載のインプラントデバイス。
【請求項11】
前記蓋が、セラミック材料と金属材料とを有する、請求項1に記載のインプラントデバイス。
【請求項12】
前記第2面は、前記能動面に近づくように傾斜している、請求項1に記載のインプラントデバイス。
【国際調査報告】