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特表2024-538088ウイルス感染症およびその症状を治療するための装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ウイルス感染症およびその症状を治療するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/14 20150101AFI20241010BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20241010BHJP
   C12Q 1/70 20060101ALI20241010BHJP
   C12Q 1/6883 20180101ALI20241010BHJP
   C12N 11/02 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241010BHJP
   A61K 35/16 20150101ALI20241010BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241010BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20241010BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61K35/14
C12Q1/06 ZNA
C12Q1/70
C12Q1/6883 Z
C12N11/02
A61P31/14
A61K35/16
A61K38/16 100
A61P37/02
A61P35/00
A61P25/00
G01N33/68
G01N33/53 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522200
(86)(22)【出願日】2022-10-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 US2022077885
(87)【国際公開番号】W WO2023064753
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/262,487
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/321,983
(32)【優先日】2022-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522399714
【氏名又は名称】エスロン メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AETHLON MEDICAL,INC.
【住所又は居所原語表記】11555 Sorrento Valley Road, Suite 203, San Diego, California 92121 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ジェイアール.,チャールズ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】キャンピオン,ロザリア デ ネコチア
(72)【発明者】
【氏名】ラローザ,スティーブン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】マルロー,アネット
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブズ,マイケル
【テーマコード(参考)】
2G045
4B033
4B063
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA14
2G045DA36
2G045FB03
4B033NA45
4B033NB04
4B033ND03
4B033ND12
4B033NE10
4B033NG05
4B033NH10
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ10
4B063QR48
4B063QS17
4B063QS32
4B063QX01
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DA31
4C084NA14
4C084ZB07
4C084ZB26
4C084ZB33
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB34
4C087BB35
4C087NA14
4C087ZB33
(57)【要約】
本発明の装置および方法を用いることによって、COVID-19媒介ナノ粒子および/またはCOVID-19もしくは類似疾患に関連するエクソソームの除去を必要とする患者(COVID-19後症候群の患者またはCOVID-19もしくは類似疾患の疾患後の類似した後遺症の症状を示す患者を含む)の循環系から、COVID-19媒介ナノ粒子および/またはCOVID-19もしくは類似疾患に関連するエクソソームを捕捉して除去することができる。本発明は、レクチンを用いた体外循環方法であって、SARS-CoV-2ビリオンまたはその断片(例えば、SARS-CoV-2に由来する糖タンパク質)をレクチンに結合させて、このSARS-CoV-2ビリオンまたはその断片を循環系から物理的に除去することによって、SARS-CoV-2に感染した血液のウイルス量を減少させることを特徴とする方法を提供する。さらに、本発明は、レクチンを用いた体外循環方法であって、非ウイルス性のCOVID-19媒介ナノ粒子(例えば、SARS-CoV-2に由来する糖タンパク質を含むエクソソームおよび/またはその他の生体分子)をレクチンに結合させて、この非ウイルス性のCOVID-19媒介ナノ粒子を循環系から物理的に除去することによって、前記疾患の重症度を低下させることを特徴とする方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2ビリオンまたはその一部の減少を必要とするCOVID-19患者において、SARS-CoV-2ビリオンまたはその一部を減少させる方法であって、
a)SARS-CoV-2ビリオンまたはその一部に結合するレクチンを含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中のSARS-CoV-2ビリオンまたはその一部が前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してSARS-CoV-2ビリオンまたはその一部の量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその一部を検出もしくは同定する工程;および/または
SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片を減少させる治療を行うために、COVID-19を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【請求項2】
COVID-19媒介ナノ粒子の減少を必要とするCOVID-19患者において、COVID-19媒介ナノ粒子を減少させる方法であって、
a)COVID-19媒介ナノ粒子に結合するレクチンを含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記COVID-19媒介ナノ粒子が前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してCOVID-19媒介ナノ粒子の量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその一部もしくはCOVID-19媒介ナノ粒子を検出もしくは同定する工程;および/または
COVID-19媒介ナノ粒子を減少させる治療を行うために、COVID-19を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【請求項3】
COVID-19患者において、COVID-19抗原含有エクソソームを減少させる方法であって、
a)COVID-19抗原含有エクソソームに結合するレクチンを含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記COVID-19抗原含有エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してCOVID-19抗原含有エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその一部もしくはCOVID-19抗原含有エクソソームを検出もしくは同定する工程;および/または
COVID-19抗原含有エクソソームを減少させる治療を行うために、COVID-19を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【請求項4】
COVID-19患者において、インターロイキン6(IL-6)を減少させる方法であって、
a)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームに結合するレクチンを含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してSARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方で前記患者から得た試料(例えば、血液試料、血漿試料など)において、IL-6のレベルまたは量を測定する工程;および
IL-6のレベルを減少させる治療を行うために、COVID-19を有する患者を選択または特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【請求項5】
COVID-19患者において、循環Dダイマーの量を減少させる方法であって、
a)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームに結合するレクチンを含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してSARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方で前記患者から得た試料(例えば、血液試料、血漿試料など)において、Dダイマーのレベルまたは量を測定する工程;および
Dダイマーを減少させる治療を行うために、COVID-19を有する患者を選択または特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【請求項6】
COVID-19患者において、トロポニンTの量を減少させる方法であって、
a)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームに結合するレクチンを含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してSARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方で前記患者から得た試料(例えば、血液試料、血漿試料など)において、トロポニンTのレベルまたは量を測定する工程;および
トロポニンTを減少させる治療を行うために、COVID-19を有する患者を選択または特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【請求項7】
コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の治療または抑制を必要とする患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症を治療または抑制する方法であって、
a)コロナウイルスまたはその一部に結合するレクチンを含む体外循環装置に、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症を有する患者から取り出した、コロナウイルスまたはその一部を含む血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中のコロナウイルスまたはその一部が前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してコロナウイルスまたはその一部の量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、コロナウイルスもしくはその一部を検出もしくは同定する工程;および/または
コロナウイルスもしくはその一部を減少させる治療を行うために、コロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【請求項8】
コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の治療または抑制を必要とする患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症を治療または抑制する方法であって、
a)コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームに結合するレクチンを含む体外循環装置に、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症を有する患者から取り出した、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームを含む血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中の前記エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較して前記エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料、血液試料、血漿試料など)において、前記エクソソームを検出もしくは同定する工程;および/または
前記エクソソームを減少させる治療を行うために、コロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【請求項9】
コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の治療または抑制を必要とする患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症を治療または抑制する方法であって、前記症状または後遺症がCOVID-19関連凝固異常症(CAC)を含み、前記方法が、
a)CACに関連するエクソソームに結合するレクチンを含む体外循環装置に、CACを有する患者から取り出した、CACに関連するエクソソームを含む血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中の前記エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較して前記エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料、血液試料、血漿試料など)において、前記エクソソームを検出もしくは同定する工程;および/または
前記エクソソームを減少させる治療を行うために、CACを有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【請求項10】
前記症状または後遺症が、前記患者におけるエプスタイン・バーウイルス(EBV)の再活性化を含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
コロナウイルス感染症を有する患者において、エプスタイン・バーウイルス(EBV)の再活性化を治療する方法であって、
a)コロナウイルスまたはその一部およびEBVまたはその一部に結合するレクチンを含む体外循環装置に、コロナウイルス感染症を有する患者から取り出した、コロナウイルスまたはその一部およびEBVまたはその一部を含む血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中のコロナウイルスまたはその一部およびEBVまたはその一部が前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してコロナウイルスまたはその一部およびEBVまたはその一部の量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、コロナウイルスもしくはその一部および/もしくはEBVもしくはその一部を検出もしくは同定する工程;ならびに/または
コロナウイルスもしくはその一部および/もしくはEBVもしくはその一部を減少させる治療を行うために、コロナウイルス感染症および/もしくはEBV感染症を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【請求項12】
前記患者が、工程(a)の前にコロナウイルス感染症に罹患していないが、コロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記患者が、工程(a)の前にコロナウイルス感染症から回復しているが、依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程(a)を行う前の前記患者の血液または血漿にコロナウイルスが含まれていないが、前記患者が依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者が、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、93%以下の血液酸素飽和度、300未満の動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、50%を超える肺浸潤、24~48時間以内の呼吸不全、フェリチン値の上昇、乳酸値の上昇、乳酸脱水素酵素(LDH)値の上昇、リンパ球絶対数(ALC)の減少、血小板数の減少、プロトロンビン時間国際標準比(PT/INR)の延長、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせを有しているかどうかを判断する工程をさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者のIL-6のレベルまたは量が上昇しているかどうかを判断する工程をさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
上昇した血清IL-6レベルが2pg/mL以上である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者のDダイマーのレベルまたは量が上昇しているかどうかを判断する工程をさらに含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
上昇した血清D-Dダイマーレベルが500ng/mL以上である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者のトロポニンTのレベルまたは量が上昇しているかどうかを判断する工程をさらに含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
上昇した血清トロポニンTレベルが15ng/L以上である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記レクチンがスノードロップ凝集素(GNA)である、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記体外循環装置が、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記血液または血漿が、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記血液または血漿中の細胞成分と前記レクチンが接触しないように、前記中空糸カートリッジの中空糸が、前記血液または血漿中の細胞成分を通さない細孔径を持つ、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記細孔径が200nmまたは約200nmである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記レクチンが固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジが、前記固体担体上に固定または吸着された前記レクチンを含む、請求項20~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記固体担体が珪藻土を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合したコロナウイルスのビリオンまたはその一部を単離する工程をさらに含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合した、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームを単離する工程をさらに含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記単離されたエクソソームの内容物を調べる工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームが、miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pまたはその両方を含む、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料におけるコロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料と比較して観察もしくは測定する工程;または工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料中のIL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせの相対レベルもしくは相対量を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料に対して測定する工程をさらに含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
工程(b)もしくは工程(c)またはその両方を行った前記患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する工程をさらに含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程が、前記患者において、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸頻度、血液酸素飽和度、動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、肺浸潤、呼吸不全、フェリチン、乳酸、LDH、リンパ球絶対数(ALC)、血小板数、PT/INR比、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせの改善を判断する工程を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程が、前記患者において、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を、治療前と比較して観察する工程を含むか;または前記患者において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせの相対レベルもしくは相対量を、治療前に対して測定する工程を含む、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記コロナウイルス感染症が、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoV、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV NL63およびHCoV-HKU1から選択されるコロナウイルスによって引き起こされたものである、請求項7~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記SARS-CoV-2が、SARS-CoV-2変異株である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記SARS-CoV-2変異株が、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
工程(a)を行う前に、抗凝固剤(好ましくはヘパリン)を用いて前記体外循環装置のプライミングを行うことによって血液凝固を予防する、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記体外循環装置内を流れる前記血液の流量が、約50~約600mL/分であり、好ましくは約200~約400mL/分であり、好ましくは約200~約240ml/分である、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記血液を前記患者に戻す工程が、前記体外循環装置に生理食塩水をフラッシュする工程を含む、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記血液または血漿と前記体外循環装置との接触時間が、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間である、請求項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
工程(a)、工程(b)および工程(c)ならびに任意の工程(d)を、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたって毎日繰り返し行う、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
コロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症の治療を必要とする患者において、これらの治療に使用するための、レクチンを含む体外循環装置;またはIL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンTもしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量の減少を必要とする患者において、これらのレベルもしくは量の減少に使用するための、レクチンを含む体外循環装置。
【請求項45】
COVID-19関連凝固異常症の治療を必要とする患者においてCOVID-19関連凝固異常症の治療に使用するための、レクチンを含む体外循環装置。
【請求項46】
コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の治療を必要とする患者において、これらを治療する方法で使用するための、レクチンを含む体外循環装置であって、前記方法が、前記患者から取り出した血液を前記体外循環装置に流すことにより、該血液をレクチンに接触させて、処理された血液を得る工程;および前記処理された血液を前記患者に戻す工程を含む、体外循環装置。
【請求項47】
前記症状または後遺症が、前記患者におけるEBVの再活性化を含む、請求項44または45に記載の体外循環装置。
【請求項48】
コロナウイルス感染症を有する患者においてEBVの再活性化の治療に使用するための、レクチンを含む体外循環装置。
【請求項49】
前記レクチンがスノードロップ凝集素である、請求項44~48のいずれか1項に記載の体外循環装置。
【請求項50】
前記体外循環装置が、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記患者の血液が、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる、請求項44~49のいずれか1項に記載の体外循環装置。
【請求項51】
前記レクチンが固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジが、前記固体担体上に固定または吸着されたレクチンを含む、請求項50に記載の体外循環装置。
【請求項52】
前記固体担体が珪藻土を含む、請求項51に記載の体外循環装置。
【請求項53】
前記レクチンが、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部、コロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソーム、またはこれらの任意の組み合わせに選択的に結合する、請求項44~52のいずれか1項に記載の体外循環装置。
【請求項54】
前記コロナウイルス感染症が、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoV、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV NL63およびHCoV-HKU1から選択されるコロナウイルスによって引き起こされたものである、請求項44~53のいずれか1項に記載の体外循環装置。
【請求項55】
前記SARS-CoV-2が、SARS-CoV-2変異株である、請求項54に記載の体外循環装置。
【請求項56】
前記SARS-CoV-2変異株が、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される、請求項55に記載の体外循環装置。
【請求項57】
前記体外循環装置が、1回あたり、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間にわたって使用される、請求項44~56のいずれか1項に記載の体外循環装置。
【請求項58】
前記体外循環装置が、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたって毎日使用される、請求項44~57のいずれか1項に記載の体外循環装置。
【請求項59】
患者において、好ましくはコロナウイルス感染症(例えばCOVID-19)に罹患している患者またはコロナウイルス感染症(例えばCOVID-19)に罹患した経験のある患者において、miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pまたはその両方を含むエクソソームを減少させる方法であって、
a)前記エクソソームに結合するレクチン(例えば、GNA、NPAまたはシアノビリン)を含む体外循環装置に、患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較して前記エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pもしくはその両方を含むエクソソームを検出もしくは同定する工程;および/または
miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pもしくはその両方を含むエクソソームを減少させる治療を行うために、COVID-19を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【請求項60】
前記患者が、工程(a)の前にコロナウイルス感染症(例えばCOVID-19)に罹患していないが、コロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記患者が、工程(a)の前に、コロナウイルス感染症(例えばCOVID-19)から回復しているが、依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している、請求項59または60に記載の方法。
【請求項62】
工程(a)を行う前の前記患者の血液または血漿にコロナウイルス(例えばCOVID-19)が含まれていないが、前記患者が依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している、請求項59~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者が、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、93%以下の血液酸素飽和度、300未満の動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、50%を超える肺浸潤、24~48時間以内の呼吸不全、フェリチン値の上昇、乳酸値の上昇、乳酸脱水素酵素(LDH)値の上昇、リンパ球絶対数(ALC)の減少、血小板数の減少、プロトロンビン時間国際標準比(PT/INR)の延長、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせを有しているかどうかを判断する工程をさらに含む、請求項59~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者のIL-6のレベルまたは量が上昇しているかどうかを判断する工程をさらに含む、請求項59~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
上昇した血清IL-6レベルが2pg/mL以上である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者のDダイマーのレベルまたは量が上昇しているかどうかを判断する工程をさらに含む、請求項59~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
上昇した血清D-Dダイマーレベルが500ng/mL以上である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者のトロポニンTのレベルまたは量が上昇しているかどうかを判断する工程をさらに含む、請求項59~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
上昇した血清トロポニンTレベルが15ng/L以上である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記レクチンがスノードロップ凝集素(GNA)である、請求項59~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料におけるコロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料と比較して観察もしくは測定する工程;または工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料中のIL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせの相対レベルもしくは相対量を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料に対して測定する工程をさらに含む、請求項59~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記コロナウイルス感染症が、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoV、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV NL63およびHCoV-HKU1から選択されるコロナウイルスによって引き起こされたものである、請求項59~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記SARS-CoV-2が、SARS-CoV-2変異株である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記SARS-CoV-2変異株が、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
SARS-CoV-2もしくはSARS-CoV-2変異株のスパイクタンパク質もしくはその一部、またはSARS-CoV-2もしくはSARS-CoV-2変異株のスパイクタンパク質もしくはその一部を含むウイルス断片を固定化する方法であって、
SARS-CoV-2もしくはSARS-CoV-2変異株のスパイクタンパク質もしくはその一部、またはSARS-CoV-2もしくはSARS-CoV-2変異株のスパイクタンパク質もしくはその一部を含むウイルス断片を、ビーズ、樹脂、ディッシュ、チューブ、フィルターなどの担体に固定されたレクチンに接触させて、固定化されたSARS-CoV-2もしくはSARS-CoV-2変異株のスパイクタンパク質もしくはその一部、またはSARS-CoV-2もしくはSARS-CoV-2変異株のスパイクタンパク質もしくはその一部を含む固定化されたウイルス断片を提供する工程を含む、方法。
【請求項76】
前記SARS-CoV-2変異株のスパイクタンパク質が、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択されるウイルスに由来するスパイクタンパク質である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記レクチンが、GNA、NPAまたはシアノビリンである、請求項75または76に記載の方法。
【請求項78】
前記固定されたレクチンが、カラムまたはカートリッジに入れて提供され、該カラムまたはカートリッジが、患者の体外循環用に構成されている、請求項75~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
エプスタイン・バーウイルス(EBV)感染症の治療またはEBV感染症の軽減もしくは抑制を必要とする患者において、EBV感染症の治療またはEBV感染症の軽減もしくは抑制を行う方法であって、
a)EBVまたはその一部に結合するレクチンを含む体外循環装置に、患者から取り出した、EBVまたはその一部を含む血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中のEBVまたはその一部が前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してEBVまたはその一部の量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、EBVもしくはその一部を検出もしくは同定する工程;および/または
EBVもしくはその一部を減少させる治療を行うために、EBV感染症を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【請求項80】
前記患者が、再活性化して活動性EBV感染症を発症した潜伏EBV感染を有する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記患者が、工程(a)の前にEBV感染症の症状を呈している、請求項79または80に記載の方法。
【請求項82】
前記患者のEBV感染症が、細菌の重複感染またはウイルスの重複感染によって誘発されたものであり、コロナウイルスの重複感染によって誘発されたものであってもよい、請求項79~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記コロナウイルスの重複感染が、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoV、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV NL63およびHCoV-HKU1から選択されるコロナウイルスによって引き起こされたものである、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記SARS-CoV-2が、SARS-CoV-2変異株である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記SARS-CoV-2変異株が、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記EBV感染症が、前記患者の多発性硬化症、自己免疫疾患および/または悪性がんに関連している、請求項79~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記悪性がんが、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、T/NK細胞リンパ腫、胃がん、乳がん、鼻咽腔がん、多形膠芽腫または移植後リンパ球増殖性疾患を含む、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記レクチンがスノードロップ凝集素(GNA)である、請求項79~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記体外循環装置が、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記血液または血漿が、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる、請求項79~88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記血液または血漿中の細胞成分と前記レクチンが接触しないように、前記中空糸カートリッジの中空糸が、前記血液または血漿中の細胞成分を通さない細孔径を持つ、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記細孔径が200nmまたは約200nmである、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記レクチンが固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジが、前記固体担体上に固定または吸着された前記レクチンを含む、請求項79~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記固体担体が珪藻土を含む、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合したEBVビリオンまたはその一部を単離する工程をさらに含む、請求項79~93のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合した、EBV感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームを単離する工程をさらに含む、請求項79~94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記単離されたエクソソームの内容物を調べる工程をさらに含む、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
工程(b)もしくは工程(c)またはその両方を行った患者において、EBV感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する工程をさらに含む、請求項79~96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
工程(a)を行う前に、抗凝固剤(好ましくはヘパリン)を用いて前記体外循環装置のプライミングを行うことによって血液凝固を予防する、請求項79~97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
前記体外循環装置内を流れる前記血液の流量が、約50~約600mL/分であり、好ましくは約200~約400mL/分であり、好ましくは約200~約240ml/分である、請求項79~98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
前記血液を前記患者に戻す工程が、前記体外循環装置に生理食塩水をフラッシュする工程を含む、請求項79~99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記血液または血漿と前記体外循環装置との接触時間が、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間である、請求項79~100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
工程(a)、工程(b)および工程(c)ならびに任意の工程(d)を、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたって毎日繰り返し行う、請求項79~101のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
EBV感染症の治療を必要とする患者においてEBV感染症の治療に使用するための、レクチンを含む体外循環装置。
【請求項104】
前記患者が、再活性化して活動性EBV感染症を発症した潜伏EBV感染を有する、請求項103に記載の体外循環装置。
【請求項105】
前記患者におけるEBVの再活性化が、細菌の重複感染またはウイルスの重複感染によって誘発されたものであり、コロナウイルスの重複感染によって誘発されたものであってもよい、請求項104に記載の体外循環装置。
【請求項106】
前記EBV感染症が、前記患者の多発性硬化症、自己免疫疾患および/または悪性がんに関連している、請求項103に記載の体外循環装置。
【請求項107】
前記悪性がんが、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、T/NK細胞リンパ腫、胃がん、乳がん、鼻咽腔がん、多形膠芽腫または移植後リンパ球増殖性疾患を含む、請求項106に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本願は電子形式の配列表とともに出願されたものである。この配列表は、SeqListingAETH037PR2.TXTというファイル名で2022年3月21日に作成された687バイトのファイルとして提供されたものである。この電子形式の配列表に記載の情報は、引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される。
【0002】
本発明は、コロナウイルス感染症、ベータコロナウイルス感染症またはCOVID-19感染症(COVID-19変異株による感染症を含む)およびこれらの感染症に関連する後遺症を含むウイルス感染症を治療または抑制する治療方法および治療装置の分野に関する。さらに、本発明は、エプスタイン・バーウイルス感染症および/またはその再活性化の治療に関する。エプスタイン・バーウイルス感染症の再活性化は、細菌もしくはウイルス(例えばコロナウイルス)の重複感染またはその他の状態に起因することがある。
【背景技術】
【0003】
現在進行中のコロナウイルス疾患2019(COVID-19)パンデミックは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる。SARS-CoV-2ウイルスは、主に、他人との密接な接触や、感染患者の咳、くしゃみまたは会話による飛沫を介して広がる。また、汚染された表面に触れた後に、その手で顔を触ることによっても感染することがある。さらに、コロナウイルスは、表面上で最大72時間生存することができる。コロナウイルスは、症状を発症してから最初の3日間に最も感染力が高いが、症状が現われる前や疾患の後期段階でも、蔓延が起こる可能性がある。一般的な症状として、発熱、咳および息切れが挙げられる。合併症としては、肺炎、急性呼吸窮迫症候群、心臓合併症、神経合併症、敗血症性ショックおよび死亡を挙げることができる。ワクチンは最近になって承認されたばかりである。様々な種類のSARS-CoV-2変異株が発生していることから、現在のワクチンの有効性に関して懸念が生じている。
【0004】
COVID-19パンデミックは、人々の生活に大きな損失をもたらした。患者の約15~20%は、重症呼吸窮迫症候群や重度の敗血症性ショックを発症する。このような重篤な状態の患者の治療は特に困難であり、鎮静、酸素補給および生命維持装置としての人工呼吸器が必要とされる。さらに、患者の何人かは、コロナウイルスのクリアランス後でも症状が継続する。COVID-19の急性感染後後遺症(PASC)を発症した患者は、呼吸器系、心臓系および神経系に影響を及ぼす消耗性の後遺症を発症することが報告されている。高齢者や併存疾患を持つ人において、COVID-19の罹患率およびCOVID-19に関連した死亡率が最も高くなっている。
【0005】
したがって、特に、進行したCOVID-19疾患に罹患した重篤な状態の患者または進行したCOVID-19疾患に罹患するリスクが極めて高い患者に対する治療的介入が早急に必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載の本発明の態様は、対象の循環系から、コロナウイルス、ベータコロナウイルスもしくはCOVID-19ウイルス粒子(例えばCOVID-19変異株のウイルス粒子)、もしくはこれらに関連する細胞レベル以下のナノ粒子(例えばエクソソーム)、またはこのようなウイルス粒子とこれらに関連する細胞レベル以下のナノ粒子の両方を捕捉して除去するための装置および方法を含む。前記対象として、そのようなコロナウイルスに感染している対象、そのようなコロナウイルスに感染した経験のある対象、または初感染時または感染前と比較して循環ウイルスが減少した後でも、そのような感染症による後遺症を示す対象、またはそのようなウイルスに感染した経験があり、その後遺症を示す対象が挙げられる。細胞レベル以下のナノ粒子は、ウイルス粒子もしくはその構成要素、またはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症(例えば、凝固障害や低酸素症など)を引き起こすか、これらに関連するサイトカイン、ケモカイン、miRNAなどのその他の分子を含んでいてもよい。本明細書に記載のいくつかの実施形態は、レクチンを用いた体外循環方法を提供することによって、経過中の感染症を有するCOVID-19患者または感染症が排除されたCOVID-19患者に直接利益をもたらすことができる。この方法は、患者の血液中の細胞レベル以下のナノ粒子(例えば、エクソソーム)もしくはウイルス粒子またはその両方をレクチンに結合させて、患者の血液からこのナノ粒子を物理的に除去することによって、COVID-19感染症またはその症状もしくは後遺症を治療または抑制することができる。本明細書に記載のいくつかの実施形態は、レクチンを用いた体外循環方法であって、循環系の非ウイルス性COVID-19媒介ナノ粒子(例えばエクソソーム)をレクチンに結合させて、循環系からこのナノ粒子を物理的に除去することによって、エクソソームを介したCOVID-19感染症またはその後遺症を減少させ、かつ総リンパ球数レベルもしくは総リンパ球数を改善したり、リンパ球減少症の重症度もしくはその発症を減少させることができる方法を提供する。SARS-CoVの感染によって重症COVID-19疾患を起こして重篤な状態に陥った患者、またはSARS-CoVの感染によって重症COVID-19疾患に罹患するリスクが高い患者に、本明細書に記載の装置および方法を使用することによって、人工呼吸器の装着時間を短縮すること、心臓合併症または血液凝固が起こる可能性を低下させること、多臓器不全が発症する可能性を低下させること、ならびに急性腎疾患、敗血症および/またはその他の合併症の可能性を低下させることができる。より一般的な適用として、さらなる実施形態は、患者において、凝固異常症または低酸素症を治療、抑制、減少または改善するための、レクチンを用いた1つ以上の体外循環方法の使用に関する。この方法は、患者の血液中の細胞レベル以下のナノ粒子(例えばエクソソーム)もしくはウイルス粒子またはその両方をレクチンに結合させて、患者の血液からこれらを物理的に除去する方法であり、前記患者は、ウイルス(例えばCOVID-19)に感染している患者またはウイルス(例えばCOVID-19)に感染した経験のある患者であることが好ましいが、必ずしもこれに該当しなくてもよい。凝固異常症は、凝固系が活性化されて血管内でフィブリンが形成される状態である。凝固異常症によって、血流が悪化して、組織への酸素供給が低下することがある。
【0007】
本明細書で述べる方法の態様を使用することによって、COVID-19関連凝固異常症などの凝固異常症の発症を抑制することができ、あるいはDダイマー、C反応性タンパク質および/またはトロポニンTなどのマーカーの量またはレベルを抑制することができる。例えば、凝固異常症に寄与する化合物および/または全身炎症を有する重度のCOVID-19患者に対して、本明細書に記載の装置および方法を使用することによって、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、Dダイマー、トロポニンT、これらの任意の組み合わせなどの、循環ケモカインおよび/または循環サイトカインの産生またはその存在量を抑制したり減少させたりすることができる。レクチンを用いた体外循環方法を行う前、またはレクチンを用いた体外循環方法が完了した後に(例えば、治療の4日後またはそれ以上経過した後に)、患者の血漿試料または血液試料中のIL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNF-α、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンTもしくはこれらの任意の組み合わせのレベルまたは量を測定してもよい。
【0008】
さらに、本発明は、体外循環装置においてレクチン(例えば、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパズイセン凝集素(NPA)、またはNostoc ellipsosporum由来のシアノビリン(本明細書においてシアノビリンと呼ぶ))を使用することによって、コロナウイルスに感染した血液または血漿から、コロナウイルスもしくはこれに関連する細胞レベル以下のナノ粒子またはその両方を除去する方法であって、前記レクチンが、コロナウイルス、ベータコロナウイルスもしくはCOVID-19ウイルス粒子(COVID-19変異株のウイルス粒子を含む)もしくはこれらに関連する細胞レベル以下のナノ粒子(例えばエクソソーム)またはこれらのウイルス粒子とこれらに関連する細胞レベル以下のナノ粒子の両方(特に、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片)と、これらのコロナウイルスに関連する細胞レベル以下の非ウイルス性ナノ粒子(例えばエクソソーム)とに結合することを特徴とする方法に関する。
したがって、いくつかの実施形態は、個体において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症を治療または抑制する方法であって、
個体から血液または血漿を得る工程、
レクチン分子(例えば、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパズイセン凝集素(NPA)またはNostoc ellipsosporum由来シアノビリン)が外側部分(好ましくは多孔質部分)に固定された濾過膜(好ましくは多孔質中空糸膜)に前記血液または血漿を通して、前記濾過膜を通過した血液もしくは血漿またはその両方を回収する工程、および
前記濾過膜を通過した血液もしくは血漿またはその両方を前記個体に再注入する工程
を含む方法を提供する。
【0009】
レクチンが固定された中空糸に血液を通すことによって、例えば、SARS-CoV-2ビリオンおよびその断片と、糖タンパク質を含む細胞レベル以下の非ウイルス性ナノ粒子(例えばエクソソーム)とをレクチンに結合させて、流出液中のウイルスの量および細胞レベル以下の非ウイルス性ナノ粒子(例えばエクソソーム)の量を減少させることができる。いくつかの実施形態において、コロナウイルスの様々なサブタイプ、変異株または突然変異体のウイルスエンベロープタンパク質(例えばスパイクタンパク質)に結合するレクチンを本明細書に記載の装置に使用する。本明細書に記載の方法は、血液中のSARS-CoV-2ビリオンおよびその断片の数と細胞レベル以下の非ウイルス性ナノ粒子(例えばエクソソーム)の数を効果的に減少させることによって、SARS-CoV-2感染症またはその症状もしくは後遺症から患者を急速に回復させることができる。
【0010】
したがって、本発明は、COVID-19に感染した個体の血液中のCOVID-19ウイルス量を減少させる方法を提供することを目的とする。一実施形態において、COVID-19ウイルスに感染した個体の血液から、COVID-19ビリオンもしくはそのタンパク質断片またはその組み合わせが除去される。個体におけるウイルスへの暴露量または循環ウイルス量(例えば、血液または血漿中に検出されるウイルス量)を測定してもよく、例えば、各回のレクチンを用いた体外循環方法を行う前、この体外循環方法による治療を受けている最中の2時間ごと、および/またはこの治療が完了した後などに、患者から得た血漿試料および鼻咽頭試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻咽頭試料)においてSARS CoV-2 RNAのレベルを検出する。
【0011】
また、本発明は、COVID-19に感染した患者またはCOVID-19に感染した経験のある患者の血液または血漿中において、COVID-19ウイルス量もしくは細胞レベル以下のナノ粒子(例えばエクソソーム)の量またはその両方を減少させる方法であって、COVID-19ウイルスの糖タンパク質または細胞レベル以下のその他のナノ粒子(例えばエクソソーム)に対して親和性を有するレクチン(例えば、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパズイセン凝集素(NPA)またはNostoc ellipsosporum由来シアノビリン)が固定された中空糸を含むカートリッジを通して患者の血液を体外循環させることを含む方法を提供することを目的とする。前記患者は、この方法を実施する前に、COVID-19感染症を有している患者またはCOVID-19感染症に感染した経験のある患者として、特定、診断または選択された患者であることが好ましい。前記方法を実施する前もしくはその後またはその両方において、例えば、血液、鼻汁、唾液などの生体試料に含まれるCOVID-19のウイルス量またはCOVID-19感染症のマーカーを前記患者において測定してもよい。いくつかの実施形態において、前記方法を実施する患者は、初感染のときと比べて血液または血漿中を循環するCOVID-19ウイルス粒子の量が低下しているか、減少しているか、または存在しないが、COVID-19感染症に起因する後遺症を呈している患者として選択された患者であり、例えば、「長期コロナ後遺症」の患者であるか、またはCOVID-19感染症に起因する後遺症を有するが、血漿もしくは血液中にCOVID-19ウイルス粒子が存在しないか、血漿もしくは血液中のCOVID-19ウイルス粒子の量が無視できるほど微量である患者である。
【0012】
また、本発明は、好ましくはウイルス(例えばCOVID-19)に感染した患者またはウイルス(例えばCOVID-19)に感染した経験のある患者の血液または血漿において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンTもしくはこれらの任意の組み合わせの量またはレベルを減少させる方法であって、COVID-19ウイルスの糖タンパク質または細胞レベル以下のその他のナノ粒子(例えばエクソソーム)に対して親和性を有するレクチン(例えば、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパズイセン凝集素(NPA)またはNostoc ellipsosporum由来シアノビリン)が固定された中空糸を含むカートリッジを通して患者の血液を体外循環させることによって、患者の血液または血漿中の前記成分を減少させることを含む方法を提供することを目的とする。前記患者は、この方法を実施する前に、COVID-19感染症に罹患している患者またはCOVID-19感染症に罹患した経験のある患者として、特定、診断または選択された患者であることが好ましい。前記方法を実施する前もしくはその後またはその両方で、例えば、前記患者の血液、鼻汁(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻汁)または唾液などの生体試料において、COVID-19のウイルス量もしくはCOVID-19感染症のマーカー、またはIL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンTもしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量を測定してもよい。いくつかの実施形態において、前記方法を実施する患者は、初感染のときと比べて血液または血漿中を循環するCOVID-19ウイルス粒子の量が低下しているか、減少しているか、存在しないが、COVID-19感染症に起因する後遺症を呈している患者として選択された患者であり、例えば、「長期コロナ後遺症」の患者であるか、またはCOVID-19感染症に起因する後遺症を有するが、血漿もしくは血液中にCOVID-19ウイルス粒子が存在しないか、血漿もしくは血液中のCOVID-19ウイルス粒子の量が無視できるほど微量である患者である。
【0013】
また、本発明は、好ましくはウイルス(例えばCOVID-19)に感染した患者またはCOVID-19に感染した経験のある患者(ただし、必ずしもこのような患者でなくてもよい)である患者の血液または血漿中において、バイオマーカーであるDダイマーを減少させる方法であって、COVID-19ウイルスの糖タンパク質または細胞レベル以下のその他のナノ粒子(例えばエクソソーム)に対して親和性を有するレクチン(例えば、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパズイセン凝集素(NPA)またはNostoc ellipsosporum由来シアノビリン)が固定された中空糸を含むカートリッジを通して患者の血液を体外循環させることを含む方法を提供することを目的とする。前記患者は、この方法を実施する前にCOVID-19感染症に罹患している患者、COVID-19感染症に罹患した経験がある患者、または治療を必要とし、Dダイマーのレベルが高い患者(例えば、凝固異常症を有する患者または凝固異常症のリスクがある患者)として特定、診断または選択された患者であることが好ましい。前記方法を実施する前もしくはその後またはその両方で、例えば、前記患者の血液、鼻汁(例えば、鼻腔スワブから分離したもの)または唾液などの生体試料において、COVID-19のウイルス量もしくはCOVID-19感染症のマーカー、またはIL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)もしくはトロポニンTもしくはこれらの任意の組み合わせのレベルを測定してもよい。いくつかの実施形態において、前記方法を実施する患者は、初感染のときと比べて血液中を循環するCOVID-19ウイルス粒子の量が低下しているか、減少しているか、存在しないが、COVID-19感染症に起因する後遺症を呈している患者として選択された患者であり、例えば、「長期コロナ後遺症」の患者であるか、またはCOVID-19感染症に起因する後遺症を有するが、血漿もしくは血液中にCOVID-19ウイルス粒子が存在しないか、血漿もしくは血液中のCOVID-19ウイルス粒子の量が無視できるほど微量である患者である。
【0014】
また、本発明は、好ましくはウイルス(例えばCOVID-19)に感染した患者またはCOVID-19に感染した経験のある患者(ただし、必ずしもこのような患者でなくてもよい)である患者の血漿または血液中において、バイオマーカーであるトロポニンTを減少させる方法であって、COVID-19ウイルスの糖タンパク質または細胞レベル以下のその他のナノ粒子(例えばエクソソーム)に対して親和性を有するレクチン(例えば、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパズイセン凝集素(NPA)またはNostoc ellipsosporum由来シアノビリン)が固定された中空糸を含むカートリッジを通して患者の血液を体外循環させることを含む方法を提供することを目的とする。前記患者は、この方法を実施する前に、COVID-19感染症に罹患している患者またはCOVID-19感染症に罹患した経験のある患者として、特定、診断または選択された患者であることが好ましい。前記方法を実施する前もしくはその後またはその両方で、例えば、前記患者の血液、鼻汁(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻汁)または唾液などの生体試料において、COVID-19のウイルス量もしくはCOVID-19感染症のマーカー、またはIL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)もしくはDダイマーもしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量を測定してもよい。いくつかの実施形態において、前記方法を実施する患者は、初感染のときと比べて血液または血漿中を循環するCOVID-19ウイルス粒子の量が低下しているか、減少しているか、存在しないが、COVID-19感染症に起因する後遺症を呈している患者として選択された患者であり、例えば、「長期コロナ後遺症」の患者であるか、またはCOVID-19感染症に起因する後遺症を有するが、血漿もしくは血液中にCOVID-19ウイルス粒子が存在しないか、血漿もしくは血液中のCOVID-19ウイルス粒子の量が無視できるほど微量である患者である。
【0015】
また、本発明は、好ましくはウイルス(例えばCOVID-19)に感染した患者またはウイルス(例えばCOVID-19)に感染した経験のある患者である患者の血漿または血液中において、miR-424-5p(miR-424)もしくはmiR-16-2-3p(miR-16)またはその両方を含む細胞レベル以下のナノ粒子(例えばエクソソーム)を減少させる方法であって、細胞レベル以下のナノ粒子(例えば、エクソソーム(特に、miR-424もしくはmiR-16またはその両方を含むエクソソーム))に対して親和性を有するレクチン(例えば、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパズイセン凝集素(NPA)またはNostoc ellipsosporum由来シアノビリン)が固定された中空糸を含むカートリッジを通して患者の血液を体外循環させることを含む方法を提供することを目的とする。前記患者は、この方法を実施する前に、COVID-19感染症に罹患している患者またはCOVID-19感染症に罹患した経験のある患者として特定、診断または選択された患者であることが好ましい。前記方法を実施する前もしくはその後またはその両方で、例えば、前記患者の血液、鼻汁(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻汁)または唾液などの生体試料において、COVID-19のウイルス量もしくはCOVID-19感染症のマーカー、またはIL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンTもしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量、またはmiR-424、miR-16もしくはその両方を含むエクソソームの量を測定してもよい。いくつかの実施形態において、前記方法を実施する患者は、初感染のときと比べて血液中を循環するCOVID-19ウイルス粒子の量が低下しているか、減少しているか、存在しないが、COVID-19感染症に起因する後遺症を呈している患者として選択された患者であり、例えば、「長期コロナ後遺症」の患者であるか、またはCOVID-19感染症に起因する後遺症を有するが、血漿もしくは血液中にCOVID-19ウイルス粒子が存在しないか、血漿もしくは血液中のCOVID-19ウイルス粒子の量が無視できるほど微量である患者である。
【0016】
さらに、本発明は、COVID-19および/または非ウイルス性の糖タンパク質またはその他の細胞レベル以下のナノ粒子の除去に使用するための、中空糸を含む装置であって、該中空糸の外表面に隣接するようにレクチン(例えば、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパズイセン凝集素(NPA)またはNostoc ellipsosporum由来シアノビリン)が固定されていることを特徴とする装置を提供することを目的とする。
【0017】
本発明の好ましい態様は、以下の付番された実施形態に関連する。
【0018】
1.SARS-CoV-2ビリオンまたはその一部の減少を必要とするCOVID-19患者において、SARS-CoV-2ビリオンまたはその一部を減少させる方法であって、
a)SARS-CoV-2ビリオンまたはその一部に結合するレクチンを含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中のSARS-CoV-2ビリオンまたはその一部が前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してSARS-CoV-2ビリオンまたはその一部の量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその一部を検出もしくは同定する工程;および/または
SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片を減少させる治療を行うために、COVID-19を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【0019】
2.COVID-19媒介ナノ粒子の減少を必要とするCOVID-19患者において、COVID-19媒介ナノ粒子を減少させる方法であって、
a)COVID-19媒介ナノ粒子に結合するレクチンを含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記COVID-19媒介ナノ粒子が前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してCOVID-19媒介ナノ粒子の量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその一部もしくはCOVID-19媒介ナノ粒子を検出もしくは同定する工程;および/または
COVID-19媒介ナノ粒子を減少させる治療を行うために、COVID-19を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【0020】
3.COVID-19患者において、COVID-19抗原含有エクソソームを減少させる方法であって、
a)COVID-19抗原含有エクソソームに結合するレクチンを含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記COVID-19抗原含有エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してCOVID-19抗原含有エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその一部もしくはCOVID-19抗原含有エクソソームを検出もしくは同定する工程;および/または
COVID-19抗原含有エクソソームを減少させる治療を行うために、COVID-19を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【0021】
4.COVID-19患者において、インターロイキン6(IL-6)を減少させる方法であって、
a)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームに結合するレクチンを含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してSARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方で前記患者から得た試料(例えば、血液試料、血漿試料など)において、IL-6のレベルまたは量を測定する工程;および
IL-6のレベルを減少させる治療を行うために、COVID-19を有する患者を選択または特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【0022】
5.COVID-19患者において、循環Dダイマーの量を減少させる方法であって、
a)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームに結合するレクチンを含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してSARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方で前記患者から得た試料(例えば、血液試料、血漿試料など)において、Dダイマーのレベルまたは量を測定する工程;および
Dダイマーを減少させる治療を行うために、COVID-19を有する患者を選択または特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【0023】
6.COVID-19患者において、トロポニンTの量を減少させる方法であって、
a)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームに結合するレクチンを含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してSARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方で前記患者から得た試料(例えば、血液試料、血漿試料など)において、トロポニンTのレベルまたは量を測定する工程;および
トロポニンTを減少させる治療を行うために、COVID-19を有する患者を選択または特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【0024】
7.コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の治療または抑制を必要とする患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症を治療または抑制する方法であって、
a)コロナウイルスまたはその一部に結合するレクチンを含む体外循環装置に、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症を有する患者から取り出した、コロナウイルスまたはその一部を含む血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中のコロナウイルスまたはその一部が前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してコロナウイルスまたはその一部の量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、コロナウイルスもしくはその一部を検出もしくは同定する工程;および/または
コロナウイルスもしくはその一部を減少させる治療を行うために、コロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【0025】
8.コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の治療または抑制を必要とする患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症を治療または抑制する方法であって、
a)コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームに結合するレクチンを含む体外循環装置に、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症を有する患者から取り出した、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームを含む血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中の前記エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較して前記エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料、血液試料、血漿試料など)において、前記エクソソームを検出もしくは同定する工程;および/または
前記エクソソームを減少させる治療を行うために、コロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【0026】
9.コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の治療または抑制を必要とする患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症を治療または抑制する方法であって、前記症状または後遺症がCOVID-19関連凝固異常症(CAC)を含み、前記方法が、
a)CACに関連するエクソソームに結合するレクチンを含む体外循環装置に、CACを有する患者から取り出した、CACに関連するエクソソームを含む血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中の前記エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較して前記エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料、血液試料、血漿試料など)において、前記エクソソームを検出もしくは同定する工程;および/または
前記エクソソームを減少させる治療を行うために、CACを有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【0027】
10.前記症状または後遺症が、前記患者におけるエプスタイン・バーウイルス(EBV)の再活性化を含む、実施形態7~9のいずれか1つに記載の方法。
【0028】
11.コロナウイルス感染症を有する患者において、エプスタイン・バーウイルス(EBV)の再活性化を治療する方法であって、
a)コロナウイルスまたはその一部およびEBVまたはその一部に結合するレクチンを含む体外循環装置に、コロナウイルス感染症を有する患者から取り出した、コロナウイルスまたはその一部およびEBVまたはその一部を含む血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中のコロナウイルスまたはその一部およびEBVまたはその一部が前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してコロナウイルスまたはその一部およびEBVまたはその一部の量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、コロナウイルスもしくはその一部および/もしくはEBVもしくはその一部を検出もしくは同定する工程;ならびに/または
コロナウイルスもしくはその一部および/もしくはEBVもしくはその一部を減少させる治療を行うために、コロナウイルス感染症および/もしくはEBV感染症を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【0029】
12.前記患者が、工程(a)の前にコロナウイルス感染症に罹患していないが、コロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0030】
13.前記患者が、工程(a)の前にコロナウイルス感染症から回復しているが、依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0031】
14.工程(a)を行う前の前記患者の血液または血漿にコロナウイルスが含まれていないが、前記患者が依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0032】
15.工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者が、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、93%以下の血液酸素飽和度、300未満の動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、50%を超える肺浸潤、24~48時間以内の呼吸不全、フェリチン値の上昇、乳酸値の上昇、乳酸脱水素酵素(LDH)値の上昇、リンパ球絶対数(ALC)の減少、血小板数の減少、プロトロンビン時間国際標準比(PT/INR)の延長、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせを有しているかどうかを判断する工程をさらに含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
16.工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者のIL-6のレベルまたは量が上昇しているかどうかを判断する工程をさらに含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
17.上昇した血清IL-6レベルが2pg/mL以上である、実施形態16に記載の方法。
【0035】
18.工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者のDダイマーのレベルまたは量が上昇しているかどうかを判断する工程をさらに含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
19.上昇した血清D-Dダイマーレベルが500ng/mL以上である、実施形態18に記載の方法。
【0037】
20.工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者のトロポニンTのレベルまたは量が上昇しているかどうかを判断する工程をさらに含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
21.上昇した血清トロポニンTレベルが15ng/L以上である、実施形態20に記載の方法。
【0039】
22.前記レクチンがスノードロップ凝集素(GNA)である、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
23.前記体外循環装置が、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記血液または血漿が、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
24.前記血液または血漿中の細胞成分と前記レクチンが接触しないように、前記中空糸カートリッジの中空糸が、前記血液または血漿中の細胞成分を通さない細孔径を持つ、実施形態23に記載の方法。
【0042】
25.前記細孔径が200nmまたは約200nmである、実施形態24に記載の方法。
【0043】
26.前記レクチンが固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジが、前記固体担体上に固定または吸着された前記レクチンを含む、実施形態20~25のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
27.前記固体担体が珪藻土を含む、実施形態26に記載の方法。
【0045】
28.前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合したコロナウイルスのビリオンまたはその一部を単離する工程をさらに含む、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
29.前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合した、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームを単離する工程をさらに含む、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
30.前記単離されたエクソソームの内容物を調べる工程をさらに含む、実施形態29に記載の方法。
【0048】
31.前記コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームが、miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pまたはその両方を含む、実施形態29または30に記載の方法。
【0049】
32.工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料におけるコロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料と比較して観察もしくは測定する工程;または工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料中のIL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせの相対レベルもしくは相対量を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料に対して測定する工程をさらに含む、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
【0050】
33.工程(b)もしくは工程(c)またはその両方を行った前記患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する工程をさらに含む、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
34.コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程が、前記患者において、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸頻度、血液酸素飽和度、動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、肺浸潤、呼吸不全、フェリチン、乳酸、LDH、リンパ球絶対数(ALC)、血小板数、PT/INR比、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせの改善を判断する工程を含む、実施形態33に記載の方法。
【0052】
35.コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程が、前記患者において、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を、治療前と比較して観察する工程を含むか;または前記患者において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせの相対レベルもしくは相対量を、治療前に対して測定する工程を含む、実施形態33または34に記載の方法。
【0053】
36.前記コロナウイルス感染症が、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoV、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV NL63およびHCoV-HKU1から選択されるコロナウイルスによって引き起こされたものである、実施形態7~35のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
37.前記SARS-CoV-2が、SARS-CoV-2変異株である、実施形態36に記載の方法。
【0055】
38.前記SARS-CoV-2変異株が、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される、実施形態37に記載の方法。
【0056】
39.工程(a)を行う前に、抗凝固剤(好ましくはヘパリン)を用いて前記体外循環装置のプライミングを行うことによって血液凝固を予防する、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
40.前記体外循環装置内を流れる前記血液の流量が、約50~約600mL/分であり、好ましくは約200~約400mL/分であり、好ましくは約200~約240ml/分である、実施形態1~39のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
41.前記血液を前記患者に戻す工程が、前記体外循環装置に生理食塩水をフラッシュする工程を含む、実施形態1~40のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
42.前記血液または血漿と前記体外循環装置との接触時間が、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間である、実施形態1~41のいずれか1つに記載の方法。
【0060】
43.工程(a)、工程(b)および工程(c)ならびに任意の工程(d)を、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたって毎日繰り返し行う、実施形態1~42のいずれか1つに記載の方法。
【0061】
44.コロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症の治療を必要とする患者において、これらの治療に使用するための、レクチンを含む体外循環装置;またはIL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンTもしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量の減少を必要とする患者において、これらのレベルもしくは量の減少に使用するための、レクチンを含む体外循環装置。
【0062】
45.COVID-19関連凝固異常症の治療を必要とする患者においてCOVID-19関連凝固異常症の治療に使用するための、レクチンを含む体外循環装置。
【0063】
46.コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の治療を必要とする患者において、これらを治療する方法で使用するための、レクチンを含む体外循環装置であって、前記方法が、前記患者から取り出した血液を前記体外循環装置に流すことにより、該血液をレクチンに接触させて、処理された血液を得る工程;および前記処理された血液を前記患者に戻す工程を含む、体外循環装置。
【0064】
47.前記症状または後遺症が、前記患者におけるEBVの再活性化を含む、実施形態44または45に記載の体外循環装置。
【0065】
48.コロナウイルス感染症を有する患者においてEBVの再活性化の治療に使用するための、レクチンを含む体外循環装置。
【0066】
49.前記レクチンがスノードロップ凝集素である、実施形態44~48のいずれか1つに記載の体外循環装置。
【0067】
50.前記体外循環装置が、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記患者の血液が、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる、実施形態44~49のいずれか1つに記載の体外循環装置。
【0068】
51.前記レクチンが固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジが、前記固体担体上に固定または吸着されたレクチンを含む、実施形態50に記載の体外循環装置。
【0069】
52.前記固体担体が珪藻土を含む、実施形態51に記載の体外循環装置。
【0070】
53.前記レクチンが、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部、コロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソーム、またはこれらの任意の組み合わせに選択的に結合する、実施形態44~52のいずれか1つに記載の体外循環装置。
【0071】
54.前記コロナウイルス感染症が、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoV、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV NL63およびHCoV-HKU1から選択されるコロナウイルスによって引き起こされたものである、実施形態44~53のいずれか1つに記載の体外循環装置。
【0072】
55.前記SARS-CoV-2が、SARS-CoV-2変異株である、実施形態54に記載の体外循環装置。
【0073】
56.前記SARS-CoV-2変異株が、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される、実施形態55に記載の体外循環装置。
【0074】
57.前記体外循環装置が、1回あたり、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間にわたって使用される、実施形態44~56のいずれか1つに記載の体外循環装置。
【0075】
58.前記体外循環装置が、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたって毎日使用される、実施形態44~57のいずれか1つに記載の体外循環装置。
【0076】
59.患者において、好ましくはコロナウイルス感染症(例えばCOVID-19)に罹患している患者またはコロナウイルス感染症(例えばCOVID-19)に罹患した経験のある患者において、miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pまたはその両方を含むエクソソームを減少させる方法であって、
a)前記エクソソームに結合するレクチン(例えば、GNA、NPAまたはシアノビリン)を含む体外循環装置に、患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較して前記エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pもしくはその両方を含むエクソソームを検出もしくは同定する工程;および/または
miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pもしくはその両方を含むエクソソームを減少させる治療を行うために、COVID-19を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【0077】
60.前記患者が、工程(a)の前にコロナウイルス感染症(例えばCOVID-19)に罹患していないが、コロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している、実施形態59に記載の方法。
【0078】
61.前記患者が、工程(a)の前に、コロナウイルス感染症(例えばCOVID-19)から回復しているが、依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している、実施形態59または60に記載の方法。
【0079】
62.工程(a)を行う前の前記患者の血液または血漿にコロナウイルス(例えばCOVID-19)が含まれていないが、前記患者が依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している、実施形態59~61のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
63.工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者が、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、93%以下の血液酸素飽和度、300未満の動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、50%を超える肺浸潤、24~48時間以内の呼吸不全、フェリチン値の上昇、乳酸値の上昇、乳酸脱水素酵素(LDH)値の上昇、リンパ球絶対数(ALC)の減少、血小板数の減少、プロトロンビン時間国際標準比(PT/INR)の延長、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせを有しているかどうかを判断する工程をさらに含む、実施形態59~62のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
64.工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者のIL-6のレベルまたは量が上昇しているかどうかを判断する工程をさらに含む、実施形態59~63のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
65.上昇した血清IL-6レベルが2pg/mL以上である、実施形態64に記載の方法。
【0083】
66.工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者のDダイマーのレベルまたは量が上昇しているかどうかを判断する工程をさらに含む、実施形態59~65のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
67.上昇した血清D-Dダイマーレベルが500ng/mL以上である、実施形態66に記載の方法。
【0085】
68.工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者のトロポニンTのレベルまたは量が上昇しているかどうかを判断する工程をさらに含む、実施形態59~67のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
69.上昇した血清トロポニンTレベルが15ng/L以上である、実施形態68に記載の方法。
【0087】
70.前記レクチンがスノードロップ凝集素(GNA)である、実施形態59~69のいずれか1つに記載の方法。
【0088】
71.工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料におけるコロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料と比較して観察もしくは測定する工程;または工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料中のIL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせの相対レベルもしくは相対量を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料に対して測定する工程をさらに含む、実施形態59~70のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
72.前記コロナウイルス感染症が、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoV、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV NL63およびHCoV-HKU1から選択されるコロナウイルスによって引き起こされたものである、実施形態59~71のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
73.前記SARS-CoV-2が、SARS-CoV-2変異株である、実施形態72に記載の方法。
【0091】
74.前記SARS-CoV-2変異株が、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される、実施形態73に記載の方法。
【0092】
75.SARS-CoV-2もしくはSARS-CoV-2変異株のスパイクタンパク質もしくはその一部、またはSARS-CoV-2もしくはSARS-CoV-2変異株のスパイクタンパク質もしくはその一部を含むウイルス断片を固定化する方法であって、
SARS-CoV-2もしくはSARS-CoV-2変異株のスパイクタンパク質もしくはその一部、またはSARS-CoV-2もしくはSARS-CoV-2変異株のスパイクタンパク質もしくはその一部を含むウイルス断片を、ビーズ、樹脂、ディッシュ、チューブ、フィルターなどの担体に固定されたレクチンに接触させて、固定化されたSARS-CoV-2もしくはSARS-CoV-2変異株のスパイクタンパク質もしくはその一部、またはSARS-CoV-2もしくはSARS-CoV-2変異株のスパイクタンパク質もしくはその一部を含む固定化されたウイルス断片を提供する工程を含む、方法。
【0093】
76.前記SARS-CoV-2変異株のスパイクタンパク質が、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択されるウイルスに由来するスパイクタンパク質である、実施形態75に記載の方法。
【0094】
77.前記レクチンが、GNA、NPAまたはシアノビリンである、実施形態75または76に記載の方法。
【0095】
78.前記固定されたレクチンが、カラムまたはカートリッジに入れて提供され、該カラムまたはカートリッジが、患者の体外循環用に構成されている、実施形態75~77のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
79.エプスタイン・バーウイルス(EBV)感染症の治療またはEBV感染症の軽減もしくは抑制を必要とする患者において、EBV感染症の治療またはEBV感染症の軽減もしくは抑制を行う方法であって、
a)EBVまたはその一部に結合するレクチンを含む体外循環装置に、患者から取り出した、EBVまたはその一部を含む血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中のEBVまたはその一部が前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してEBVまたはその一部の量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、EBVもしくはその一部を検出もしくは同定する工程;および/または
EBVもしくはその一部を減少させる治療を行うために、EBV感染症を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい、方法。
【0097】
80.前記患者が、再活性化して活動性EBV感染症を発症した潜伏EBV感染を有する、実施形態79に記載の方法。
【0098】
81.前記患者が、工程(a)の前にEBV感染症の症状を呈している、実施形態79または80に記載の方法。
【0099】
82.前記患者のEBV感染症が、細菌の重複感染またはウイルスの重複感染によって誘発されたものであり、コロナウイルスの重複感染によって誘発されたものであってもよい、実施形態79~81のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
83.前記コロナウイルスの重複感染が、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoV、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV NL63およびHCoV-HKU1から選択されるコロナウイルスによって引き起こされたものである、実施形態82に記載の方法。
【0101】
84.前記SARS-CoV-2が、SARS-CoV-2変異株である、実施形態83に記載の方法。
【0102】
85.前記SARS-CoV-2変異株が、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される、実施形態84に記載の方法。
【0103】
86.前記EBV感染症が、前記患者の多発性硬化症、自己免疫疾患および/または悪性がんに関連している、実施形態79~81のいずれか1つに記載の方法。
【0104】
87.前記悪性がんが、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、T/NK細胞リンパ腫、胃がん、乳がん、鼻咽腔がん、多形膠芽腫または移植後リンパ球増殖性疾患を含む、実施形態86に記載の方法。
【0105】
88.前記レクチンがスノードロップ凝集素(GNA)である、実施形態79~87のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
89.前記体外循環装置が、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記血液または血漿が、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる、実施形態79~88のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
90.前記血液または血漿中の細胞成分と前記レクチンが接触しないように、前記中空糸カートリッジの中空糸が、前記血液または血漿中の細胞成分を通さない細孔径を持つ、実施形態89に記載の方法。
【0108】
91.前記細孔径が200nmまたは約200nmである、実施形態90に記載の方法。
【0109】
92.前記レクチンが固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジが、前記固体担体上に固定または吸着された前記レクチンを含む、実施形態79~91のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
93.前記固体担体が珪藻土を含む、実施形態92に記載の方法。
【0111】
94.前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合したEBVビリオンまたはその一部を単離する工程をさらに含む、実施形態79~93のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
95.前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合した、EBV感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームを単離する工程をさらに含む、実施形態79~94のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
96.前記単離されたエクソソームの内容物を調べる工程をさらに含む、実施形態95に記載の方法。
【0114】
97.工程(b)もしくは工程(c)またはその両方を行った患者において、EBV感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する工程をさらに含む、実施形態79~96のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
98.工程(a)を行う前に、抗凝固剤(好ましくはヘパリン)を用いて前記体外循環装置のプライミングを行うことによって血液凝固を予防する、実施形態79~97のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
99.前記体外循環装置内を流れる前記血液の流量が、約50~約600mL/分であり、好ましくは約200~約400mL/分であり、好ましくは約200~約240ml/分である、実施形態79~98のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
100.前記血液を前記患者に戻す工程が、前記体外循環装置に生理食塩水をフラッシュする工程を含む、実施形態79~99のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
101.前記血液または血漿と前記体外循環装置との接触時間が、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間である、実施形態79~100のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
102.工程(a)、工程(b)および工程(c)ならびに任意の工程(d)を、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたって毎日繰り返し行う、実施形態79~101のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
103.EBV感染症の治療を必要とする患者においてEBV感染症の治療に使用するための、レクチンを含む体外循環装置。
【0121】
104.前記患者が、再活性化して活動性EBV感染症を発症した潜伏EBV感染を有する、実施形態103に記載の体外循環装置。
【0122】
105.前記患者におけるEBVの再活性化が、細菌の重複感染またはウイルスの重複感染によって誘発されたものであり、コロナウイルスの重複感染によって誘発されたものであってもよい、実施形態104に記載の体外循環装置。
【0123】
106.前記EBV感染症が、前記患者の多発性硬化症、自己免疫疾患および/または悪性がんに関連している、実施形態103に記載の体外循環装置。
【0124】
107.前記悪性がんが、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、T/NK細胞リンパ腫、胃がん、乳がん、鼻咽腔がん、多形膠芽腫または移植後リンパ球増殖性疾患を含む、実施形態106に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0125】
前述した特徴以外のさらなる特徴や変形例は、以下の図面の説明および例示的な実施形態から容易に理解できるであろう。以下の図面は代表的な実施形態を示しており、本発明の範囲を限定するものではない。
【0126】
図1】親和性カートリッジの長手方向の断面模式図である。
【0127】
図2図1の平面2における水平断面模式図である。
【0128】
図3図2に示す流路を示した図である。中空糸膜構造40は、比較的緻密な限外濾過膜42と比較的多孔質な外側部分44を備えた管状部を含み、外側部分44に親和性分子46(例えばレクチン)が固定されていてもよい。
【0129】
図4】レクチンを含む親和性カートリッジによるSARS-CoV-2スパイク1(S1)糖タンパク質の捕捉を示したグラフである。SARS-COV-2のS1糖タンパク質を添加した溶液を多孔質中空糸膜装置に連続的に循環させることによりインビトロ実験を行った。この多孔質中空糸膜装置では、スノードロップ凝集素(GNA)からなるレクチン分子を、中空糸膜の外側の多孔質部分に固定した。簡潔に述べると、GNAを含む親和性樹脂0.7gを充填した多孔質中空糸膜装置に、1μg/mLのSARS-COV-2 S1のリン酸緩衝食塩水溶液10mLを注入し、50mL/分の流量で循環させた。所定の時間間隔で流体試料を採取し、時間に対する溶液中の残存S1の割合として、ウイルスS1糖タンパク質の捕捉率を測定した。コントロールとして、実験台に静置したS1糖タンパク質(すなわち、カラム装置に流していないS1糖タンパク質)を使用した。実験の結果から、レクチンを含む親和性捕捉装置によって、この溶液からSARS-CoV-2の糖タンパク質がクリアランスされたことが示された。
【0130】
図5】検出可能なSARS-CoV-2 RNAが患者試料に含まれていなかったことを示す。SARS-CoV-2核酸鋳型を使用した陽性コントロールとしてのPCRでは、SARS-CoV-2のスパイク(S)タンパク質とヌクレオカプシド(N)タンパク質とORF1ab配列の増幅が示された。患者から得た血漿試料を用いて同じ反応を行ったところ、これら3種のSARS-CoV-2遺伝子はいずれも増幅されなかった。RNAse Pコントロール遺伝子を(コントロール鋳型の一部として、または血漿試料から単離されたRNAとして)同時に増幅したところ、反応前と反応中の試料において構成RNAの核酸が損傷を受けていないことが確認された。したがって、この患者は循環COVID-19ウイルス粒子を有していなかった。
【0131】
図6A】Hemopurifier(登録商標)を用いた治療を行った患者から得た未処理の血漿中のナノ粒子の濃度の減少を示す。「治療前」(t=0)は治療前に得た試料の測定結果を示し、「治療後」(t=6)は治療後に得た試料の測定結果を示す。
【0132】
図6B】未処理の患者血漿中の粒径集団を示す。Hemopurifierを用いた治療の前後で粒径集団に変化は認められなかった。「治療前」(t=0)は治療前に得た試料の測定結果を示し、「治療後」(t=6)は治療後に得た試料の測定結果を示す。
【0133】
図7A】Hemopurifierを用いた治療を行った患者の血漿から得た画分試料に含まれる循環エクソソームの濃度の減少を示す。「治療前」(t=0)は治療前に得た試料の測定結果を示し、「治療後」(t=6)は治療後に得た試料の測定結果を示す。
【0134】
図7B】患者の血漿から得た画分試料に含まれるエクソソーム集団の粒径を示す。Hemopurifierを用いた治療の前後でエクソソーム集団の粒径に変化は認められなかった。「治療前」(t=0)は治療前に得た試料の測定結果を示し、「治療後」(t=6)は治療後に得た試料の測定結果を示す。
【0135】
図8】線虫(Caenorhabditis elegans)由来のcel-miR-39-3p(cel-39)をスパイクインコントロールとしてエクソソーム画分に添加して実施したqRT-PCRの増幅プロットを示す。
【0136】
図9】患者の血漿試料から得たエクソソーム画分に含まれる試験したmiRNAのqRT-PCR増幅プロットの一例を示す。試験したmiRNAは、ヒトmiR-424-5p(miR-424)とヒトmiR-16-2-3p(miR-16)である。
【0137】
図10】Hemopurifierを用いた治療を行う間と行った後の患者の血漿試料から得たエクソソーム画分中のmiRNA存在量をコントロールと比べた差異を示す。
【0138】
図11】治療によるエクソソームの除去とmiRNAの減少の間の相関性を示す(2~4日目に試験した)。
【0139】
図12A】COVID-19患者由来の4日目の全血漿試料におけるコントロールに対するmiRNAの相対存在量を示す。
【0140】
図12B】miRNAの初期量の相対的な減少量が、COVID-19患者由来の未処理の血漿よりも処理したエクソソーム画分で大きかったことを示す。
【0141】
図13A】治療の1日目および4日目に得た患者試料におけるmiRNA(miR-424およびmiR-16)の存在量とエクソソームの存在量を示す。
【0142】
図13B】治療の5日目および8日目に得た患者試料におけるmiRNA(miR-424およびmiR-16)の存在量とエクソソームの存在量を示す。
【0143】
図14】Hemopurifier装置に結合した物質を溶出する方法の一例を示した模式図を示す。
【0144】
図15A】COVID-19患者に使用したHemopurifier装置の溶出液から得られた鋳型からのSARS-CoV-2に特異的な標的遺伝子の増幅を示す。
【0145】
図15B】Hemopurifierの溶出液に含まれる標的から、3つの異なる標的SARS-CoV-2遺伝子が様々な程度で増幅されたことを示す。
【0146】
図16】Hemopurifierを用いたヒト血清からの中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)のクリアランスを示す。血清中のMERS-CoVをHemopurifierカラムに再循環させ、図示した時点で分取した試料を用いて、フローサイトメトリーに基づく感染性アッセイ(FCIA)を行い、血清中に残存していたウイルス量の読み取り値(パーセンテージで示す)を時間に対してプロットした。対照として、GNAを含んでいないカラムを使用した。
【0147】
図17A】Hemopurifierのみを用いた接続図の一例を示す。
【0148】
図17B】ダイアライザーと直列に接続したHemopuriferを用いた接続図の一例を示す。
【0149】
図17C】ダイアライザーと直列に接続したHemopuriferをプライミングする際の接続図の一例を示す。
【0150】
図17D】Hemopurifierのみを用いた持続的腎代替療法(CRRT)型の透析セットアップの接続図の一例を示す。
【0151】
図17E】ダイアライザーと直列に接続したHemopurifierを用いたCRRT型の透析セットアップの接続図の一例を示す。
【0152】
図18A-C】1×PBS(図18A)またはエクソソーム非含有ウシ胎児血清と1×PBSの50%:50%混合溶液(図18C)に加えた野生型SARS-CoV-2、英国変異株または南アフリカ変異株のスパイクタンパク質のELISA標準曲線を示す。図18Bは、GNAレクチン親和性マトリックスによる0~4時間の時点の、1×PBSに加えた英国変異株または南アフリカ変異株のスパイクタンパク質の除去を示す。図18Dは、GNAレクチン親和性マトリックスによる0~4時間の時点の、エクソソーム非含有ウシ胎児血清と1×PBSの50%:50%混合溶液に加えた英国変異株、南アフリカ変異株またはインド変異株(デルタ株)のスパイクタンパク質の除去を示す。
【0153】
図19A-B】Hemopurifierを用いて患者を治療した後の患者の血漿試料中およびHemopurifierの溶出液中のエプスタイン・バーウイルス(EBV)DNAを検出したqPCR増幅の結果を示す。
【0154】
図20】試験をした患者のうちの1人(「患者2」)の血漿中の循環DNAの全体量(RNAse Pコントロールの増幅により測定)と循環EBV DNAの全体量が、Hemopurifierを用いた治療後に増加したことが示されたグラフを示す。
【0155】
図21】RNAse PコントロールDNAまたは循環DNAの全体量に対して正規化した循環EBV DNAの全体量を示したグラフを示し、このグラフから、Hemopurifierを用いた治療後にEBV DNAが相対的に減少したことが示された。
【発明を実施するための形態】
【0156】
本明細書では、コロナウイルス感染症(例えばベータコロナウイルス感染症(例えばCOVID-19))またはコロナウイルス感染症に関連する症状もしくは後遺症を治療または抑制するための体外循環装置およびその使用を開示する。広範なCOVID-19パンデミックによる深刻な影響から、病原体であるSARS-CoV-2に対する効果的かつ安全な治療法および予防法を早急に開発する必要性に迫られている。数種類のワクチンおよび治療法が現在承認されているが、毒性が強く、かつ/または現在の治療法を回避することができる突然変異体や変異株などの様々なSARS-CoV-2の突然変異体および変異株が発生していることから、パンデミックが長期間に及ぶ恐れがあることが明らかになってきている。さらに、COVID-19感染症から回復した患者の多くでは、恒久的な肺の瘢痕および肺線維症、心臓合併症および心不全、脳卒中、痙攣、免疫学的疾患(例えば、ギラン・バレー症候群)などの、消耗性の症状および後遺症の継続が認められている。本明細書に開示される装置は、SARS-CoV-2変異株に対して効果的な方法でその機能を発揮するとともに、現在罹患しているCOVID-19感染症に関連する後遺症だけでなく、循環ウイルス粒子を持っていないが、COVID-19感染症に関連する後遺症が継続して認められる患者の亜集団(例えば「長期COVID-19後遺症」患者)において認められる過去のCOVID-19感染症に関連する後遺症の根本的な原因を治療または抑制することができる。
【0157】
用語の定義
別段の記載がない限り、本明細書で使用されている技術用語および科学用語は、当技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。本明細書で引用されたすべての特許、出願、公開出願およびその他の刊行物は、別段の記載がない限り、いずれも引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される。本明細書に記載の用語に対して複数の定義がある場合、別段の記載がない限り、この節に記載の定義を優先するものとする。
【0158】
本明細書において、「a」および「an」という冠詞は、これらの冠詞の文法上の目的語となる1つまたは複数の(例えば少なくとも1つの)ものを指すために使用される。例えば、「an element」は、1つの構成要素または複数の構成要素を意味する。
【0159】
本明細書において、「約」または「程度」は、特定の数量、レベル、数値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重量または長さが、基準となる数量、レベル、数値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重量または長さと比較して、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%の範囲で変動することを意味する。
【0160】
本明細書を通して、別段の記載がない限り、「含む」および「含んでいる」という用語は、本明細書に記載の工程もしくは構成要素または工程群もしくは構成要素群を包含することを意味するが、その他の工程もしくは構成要素または工程群もしくは構成要素群を除外するものではない。
【0161】
「からなる」は、この用語の前に挙げられたもののみを含むことを意味する。したがって、「からなる」という用語は、この用語の前に挙げられた構成要素が必要または必須であることを示し、その他の構成要素は含まれていなくてもよいことを意味する。「実質的に~からなる」は、この用語の前に挙げられた構成要素を含み、これらの構成要素の開示に関連して記載された活性または作用に対して妨害も寄与もしないその他の構成要素も含むことを意味する。したがって、「実質的に~からなる」という用語は、この用語の前に挙げられた構成要素が必要または必須であることを示すが、その他の構成要素は任意であり、この用語の前に挙げられた構成要素の活性または作用に実質的な影響を与えるかどうかに応じて含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。
【0162】
別段の記載がない限り、本明細書で使用されているすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。本明細書に記載の用語に対して複数の定義がある場合、別段の記載がない限り、この節に記載の定義を優先するものとする。本開示の実施にあたって、別段の記載がない限り、当技術分野で公知の分子生物学的技術および組換えDNA技術が使用され、これらの方法の大半は、説明を目的として後述されている。
【0163】
本明細書において、「個体」、「対象」または「患者」は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、非ヒト霊長類もしくはトリ(例えばニワトリ)、またはその他の脊椎動物もしくは無脊椎動物を意味する。
【0164】
「哺乳動物」という用語は、この用語が通常示す生物学的な意味で使用される。したがって、「哺乳動物」として具体的には、サル類(チンパンジー、類人猿、サル)およびヒトなどの霊長類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、げっ歯類、ラット、マウス、モルモットなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
本明細書において、「機能」や「機能的」という用語は、生物学的機能、酵素的機能または治療的機能を指す。
【0166】
本明細書において、「単離された」は、天然状態において通常付随する成分が実質的または本質的に除去された材料を指す。例えば、本明細書に記載の「単離された細胞」は、天然状態での周囲環境または生物から精製された細胞、対象または培養物から回収された細胞、例えば、インビボまたはインビトロの物質とは有意に関連していない細胞を包含する。
【0167】
本明細書において同じ意味で使用される「製剤」、「医薬組成物」および「組成物」という用語は、対象に投与される物質の組成物を指す際に使用される用語と同じ意味で使用される。
【0168】
「薬学的に許容される」とは、対象(特にヒト)の治療に適合することを意味する。
【0169】
「薬剤」は、生物学的活性を有し、かつ治療に使用してもよい活性薬剤を指す。また、「薬剤」という用語は、「少なくとも1つの薬剤」、「化合物」または「少なくとも1つの化合物」と同じ意味で使用され、どのような形態の薬剤を指してもよく、例えば、薬剤の誘導体、類似体、塩またはプロドラッグを指してもよい。薬剤は、様々な形態であってもよく、分子複合体の構成要素であってもよく、薬学的に許容される塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸、硝酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩またはサリチル酸塩)であってもよい。また、「薬剤」は、医薬品分子もしくは医薬品化合物、治療分子もしくは治療化合物、マトリックス形成分子もしくはマトリックス形成化合物、ポリマー、合成分子もしくは合成化合物、天然分子もしくは天然化合物、またはこれらの任意の組み合わせを指してもよい。
【0170】
本明細書において、物質、化合物または材料の「純度」とは、その物質、化合物または材料の予想される存在量に対する実際の存在量を指す。例えば、物質、化合物または材料の純度は、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%であってもよく、これらの数値の間のあらゆる小数値を含んでいてもよい。純度は、望ましくない不純物により影響を受けることがあり、望ましくない不純物としては、副産物、異性体、エナンチオマー、分解産物、溶媒、担体、ビヒクルもしくは夾雑物、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。純度は、様々な技術で測定することができ、純度の測定法としては、クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、分光分析法、紫外可視分光分析法、赤外分光分析法、質量分析、核磁気共鳴、重量測定もしくは滴定、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
本明細書で開示された実施形態のいくつかは、本明細書に記載の体外循環方法のいずれか1つ以上を必要とする対象または患者を選択することに関する。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症(例えばベータコロナウイルス感染症(例えばSARS-CoV-2感染症))の治療または抑制を必要とする患者を選択して、本明細書に記載の体外循環方法のいずれか1つ以上を行う。いくつかの実施形態において、過去にコロナウイルス感染症(例えばSARS-CoV-2感染症)の治療を受けたことのある患者を選択して、本明細書に記載の体外循環方法のいずれか1つ以上を行う。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症のリスクがあったことから、過去にコロナウイルス感染症(例えばベータコロナウイルス感染症(例えばSARS-CoV-2感染症))の治療を受けたことのある患者を選択して、本明細書に記載の体外循環方法のいずれか1つ以上を行う。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症(例えばベータコロナウイルス感染症(例えばSARS-CoV-2感染症))の再発を起こした患者を選択して、本明細書に記載の体外循環方法のいずれか1つ以上を行う。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症(例えばベータコロナウイルス感染症(例えばSARS-CoV-2感染症))の治療に対して抵抗性を示す患者を選択して、本明細書に記載の体外循環方法のいずれか1つ以上を行う。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症(例えばベータコロナウイルス感染症(例えばSARS-CoV-2感染症))の症状または後遺症を示す患者を選択して、本明細書に記載の体外循環方法のいずれか1つ以上を行う。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症(例えばベータコロナウイルス感染症(例えばSARS-CoV-2感染症))が排除された患者、例えば、血漿または血液中に循環するウイルス粒子が存在しないか、その量が低下しているか、または減少しているが、コロナウイルス感染症(例えばベータコロナウイルス感染症(例えばSARS-CoV-2感染症))の症状または後遺症が継続して認められる患者を選択して、本明細書に記載の体外循環方法のいずれか1つ以上を行う。いくつかの実施形態において、凝固異常症(例えばCOVID-19関連凝固異常症)を発症した患者または凝固異常症の発症のリスクがある患者を選択して、本明細書に記載の体外循環方法のいずれか1つ以上を行う(例えば、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンTまたはこれらの任意の組み合わせのレベルまたは量が、健康な患者、凝固異常症を発症していない患者、または凝固異常症のリスクがない患者で認められるような対照レベルまたはベースラインレベルを超えている患者を選択する)。凝固異常症を発症した患者または凝固異常症の発症のリスクがある患者は、COVID-19などのウイルス感染症を有していてもよく、COVID-19などのウイルス感染症を有していなくてもよい。いくつかの実施形態において、低酸素症を発症した患者(例えば、健康な患者または低酸素症を発症していない患者と比べて酸素レベルが低下している患者)を選択して、本明細書に記載の体外循環方法のいずれか1つ以上を行う。低酸素症を発症した患者は、COVID-19などのウイルス感染症を有していてもよく、COVID-19などのウイルス感染症を有していなくてもよい。いくつかの実施形態において、前記選択基準の任意の組み合わせを有している可能性のある患者を選択して、本明細書に記載の体外循環方法のいずれか1つ以上を行う。当技術分野で日常的に行われているように、対象の臨床評価または診断評価によってこのような選択を行ってもよい。
【0172】
本明細書において、「治療する」、「治療すること」、「治療」、「治療用」または「治療法」は、本明細書に照らして理解される一般的な意味を有し、必ずしも疾患または状態の完全な治癒や排除を意味しない。また、本明細書において、「治療する」または「治療」は、(当技術分野でよく知られているように)対象の状態に有益な結果または所望の結果(臨床結果など)を得るためのアプローチを意味する。有益な臨床結果または所望の臨床結果としては、1つ以上の症状または状態の軽減または緩和、疾患の程度の減少、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、疾患の伝播または蔓延の予防、疾患の進行の遅延または疾患の進行速度の低下、病態の緩和または軽減、疾患の再発の減少、および寛解が挙げられるが、これらに限定されず、これらは、部分的なものまたは全体的なものであってもよく、検出可能または検出不能であってもよい。本明細書において、「治療する」および「治療」は、予防処置も含む。治療方法は、治療有効量の活性薬剤を対象に投与する工程、または治療装置を使用する工程を含む。この投与工程は、単回投与からなっていてもよく、一連の複数回の投与を含んでいてもよい。本発明の組成物は、患者を治療するのに十分な量、期間、回数または頻度で対象に投与または適用される。治療期間の長さは、状態の重症度や、患者の年齢および遺伝子プロファイルなどの様々な要因に左右される。さらに、治療または予防は、特定の治療計画または予防計画の実施中に調節してもよいことは十分に理解できるであろう。場合によっては、長期投与または長期適用が必要となることがある。「予防処置」は、疾患または状態の症状をまだ示していないが、特定の疾患や状態に対して感受性があるか、あるいは特定の疾患や状態のリスクがある対象を処置することを指し、この処置によって、患者がその疾患または状態を発症する可能性を低下させることができる。また、「治療処置」は、疾患もしくは状態に既に罹患している対象、または疾患もしくは状態を既に発症している対象に処置を行うことを指す。
【0173】
本明細書において、「抑制」は、本明細書に照らして理解される一般的な意味を有し、ウイルス感染症(例えばSARS-CoV-2など)またはその症状もしくは後遺症の減少または予防を指してもよい。この減少は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%の減少であってもよく、これらの数値のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合の減少であってもよい。本明細書において、「遅延」は、本明細書に照らして理解される一般的な意味を有し、ウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症などの事象が、予想されるより時期よりも遅い時期へと減速、延期または遅滞されることを指す。この遅延は、0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%の遅延であってもよく、これらの数値のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合の遅延であってもよい。「抑制」または「遅延」は、必ずしも100%の抑制または遅延を示す必要はない。部分的な抑制または遅延が達成されてもよい。
【0174】
本明細書において、「核酸」または「核酸分子」は、ポリヌクレオチドを指し、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により得られる断片、ならびにライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用およびエキソヌクレアーゼ作用のいずれかにより得られる断片が挙げられる。核酸分子は、天然のヌクレオチドモノマー(DNAやRNAなど)、もしくは天然のヌクレオチドの類似体(例えば、天然のヌクレオチドのエナンチオマー)、またはこれらの組み合わせから構成されていてもよい。修飾ヌクレオチドは、糖部分および/またはピリミジン塩基部分もしくはプリン塩基部分に修飾を有していてもよい。糖部分の修飾としては、例えば、ハロゲン、アルキル基、アミンまたはアジド基による1つ以上のヒドロキシル基の置換が挙げられ、糖部分はエーテル化またはエステル化されていてもよい。さらに、糖部分全体が、立体構造的に類似の構造や電子的に類似の構造と置換されていてもよく、このような構造として、例えば、アザ糖および炭素環式糖類似体が挙げられる。修飾塩基部分としては、アルキル化プリン、アルキル化ピリミジン、アシル化プリン、アシル化ピリミジン、およびその他の公知の複素環置換基が挙げられる。核酸モノマーは、ホスホジエステル結合またはこれと似た結合により連結することができる。ホスホジエステル結合と似た結合としては、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、ホスホロセレノエート結合、ホスホロジセレノエート結合、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)結合、ホスホロアニリデート(phosphoranilidate)結合およびホスホロアミデート結合が挙げられる。「核酸分子」は、いわゆる「ペプチド核酸」も包含し、これは、ポリアミド主鎖に付加された天然の核酸塩基または修飾核酸塩基を含む。核酸は、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。「オリゴヌクレオチド」という用語は核酸と同じ意味で使用可能であり、二本鎖DNAまたは二本鎖RNAを指してもよく、一本鎖DNAまたは一本鎖RNAを指してもよい。核酸は、様々な生物系で核酸を増幅および/または発現させることができる核酸ベクターまたは核酸コンストラクト(例えば、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、コスミド、フォスミド、ファージミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)またはヒト人工染色体(HAC))に含まれていてもよい。通常、核酸ベクターまたは核酸コンストラクトは、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、インデューサー、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、開始コドン、終止コドン、ポリアデニル化シグナル、複製開始点、クローニング部位、マルチクローニング部位、制限酵素部位、エピトープ、レポーター遺伝子、選択マーカー、抗生物質選択マーカー、標的配列、ペプチド精製タグもしくはアクセサリー遺伝子またはこれらの任意の組み合わせなどのエレメントも含むが、これらに限定されない。
【0175】
核酸または核酸分子は、複数の種類のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする1つ以上の配列を含んでいてもよい。これらの1つ以上の配列は、1つの核酸または1つの核酸分子内で隣接して連結されていてもよく、別の核酸を間に挟んで連結されていてもよい。この別の核酸としては、例えば、リンカー、反復配列、もしくは制限酵素部位、または1塩基長、2塩基長、3塩基長、4塩基長、5塩基長、6塩基長、7塩基長、8塩基長、9塩基長、10塩基長、11塩基長、12塩基長、13塩基長、14塩基長、15塩基長、16塩基長、17塩基長、18塩基長、19塩基長、20塩基長、25塩基長、30塩基長、35塩基長、40塩基長、45塩基長、50塩基長、55塩基長、60塩基長、65塩基長、70塩基長、75塩基長、80塩基長、85塩基長、90塩基長、95塩基長、100塩基長、150塩基長、200塩基長もしくは300塩基長の配列、もしくはこれらの長さのいずれか2つを上下限とする範囲内の長さの配列が挙げられる。本明細書において、核酸に関する「下流」という用語は、核酸が二本鎖である場合、コード配列を含む鎖(センス鎖)上で、ある配列の3’末端側に位置する配列を意味する。本明細書において、核酸に関する「上流」という用語は、核酸が二本鎖である場合、コード配列を含む鎖(センス鎖)上で、ある配列の5’末端側に位置する配列を意味する。本明細書において、核酸に関する「グループ化されている」という用語は、直接連結している近接した2つ以上の配列、または別の核酸を間に挟んで連結している近接した2つ以上の配列を意味する。この別の核酸としては、例えば、リンカー、反復配列、もしくは制限酵素部位、または1塩基長、2塩基長、3塩基長、4塩基長、5塩基長、6塩基長、7塩基長、8塩基長、9塩基長、10塩基長、11塩基長、12塩基長、13塩基長、14塩基長、15塩基長、16塩基長、17塩基長、18塩基長、19塩基長、20塩基長、25塩基長、30塩基長、35塩基長、40塩基長、45塩基長、50塩基長、55塩基長、60塩基長、65塩基長、70塩基長、75塩基長、80塩基長、85塩基長、90塩基長、95塩基長、100塩基長、150塩基長、200塩基長もしくは300塩基長の配列、もしくはこれらの長さのいずれか2つを上下限とする範囲内の長さの配列が挙げられる。なお、配列の間に挟まれている核酸配列は、通常、機能性または触媒性のポリペプチド、タンパク質、またはタンパク質ドメインをコードしていない。
【0176】
本明細書において、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、ペプチド結合により連結されたアミノ酸で構成される巨大分子を指す。ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質の機能として数多くのものが当技術分野で知られており、酵素、構造、輸送、防御、ホルモンまたはシグナル伝達といった機能があるが、これらに限定されない。ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質は、核酸鋳型を利用したリボソーム複合体により生物学的に生成されることが多いが、常にこの方法で生成される訳ではなく、化学合成により作製することもできる。核酸鋳型を遺伝子操作することによって、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の変異を起こすことができ、この変異には、置換、欠失、切断、付加、重複、または2個以上のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質の融合が含まれる。2個以上のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の融合は、1つの分子内で隣接して連結するように行うことができ、あるいは別のアミノ酸を間に挟んで連結することもでき、この別のアミノ酸としては、例えば、リンカー、反復配列、エピトープもしくはタグ、または1塩基長、2塩基長、3塩基長、4塩基長、5塩基長、6塩基長、7塩基長、8塩基長、9塩基長、10塩基長、11塩基長、12塩基長、13塩基長、14塩基長、15塩基長、16塩基長、17塩基長、18塩基長、19塩基長、20塩基長、25塩基長、30塩基長、35塩基長、40塩基長、45塩基長、50塩基長、55塩基長、60塩基長、65塩基長、70塩基長、75塩基長、80塩基長、85塩基長、90塩基長、95塩基長、100塩基長、150塩基長、200塩基長もしくは300塩基長の配列、もしくはこれらの長さのいずれか2つを上下限とする範囲内の長さの配列が挙げられる。本明細書において、ポリペプチド上での「下流」は、前の配列のC末端に続く配列を指す。本明細書において、ポリペプチド上での「上流」は、後ろの配列のN末端の前にある配列を指す。
【0177】
本明細書において、「レクチン」は、多糖類と糖タンパク質に選択的に結合するタンパク質である。レクチンの多くは、特異性が不十分なため有用性は低いが、特定のレクチンは、エンベロープウイルスに対する選択性が高い。このような特性を有するレクチンとして、スノードロップ(Galanthus nivalis)からスノードロップ凝集素(「GNA」)の形態で得られるもの、ラッパズイセン(Narcissus pseudonarcissus)からラッパズイセン凝集素の形態で得られるもの、および藍藻類であるNostoc ellipsosporumから得られる「シアノビリン」と呼ばれるレクチンが挙げられる。GNAは、無毒で十分な安全性を有することから、遺伝子組換えコメや遺伝子組換えジャガイモに組み込まれている(Bell et al. Transgenic Res 10(1): 35-42, 2001; Rao et al. Plant J 15(4): 469-477, 1998)。これらのレクチンは、HIV表面タンパク質に見られるような高マンノース型糖タンパク質に結合する(Chervenak et al. Biochemistry 34(16): 5685-5695, 1995)。
【0178】
本明細書において、「高マンノース型糖タンパク質」は、α(1→3)結合またはα(1→6)結合の形態のマンノース-マンノース結合を有する糖タンパク質を指す。
【0179】
本明細書において、「コロナウイルス」は、哺乳動物および鳥類に感染するコロナウイルス科に属するエンベロープ型のプラスセンス一本鎖RNAウイルスファミリーを指す。ヒトのコロナウイルス感染症は、風邪のような軽い症状または重篤な呼吸器疾患を起こし、例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、咳、うっ血、咽頭痛、息切れ、肺炎、気管支炎および低酸素症を引き起こすことがある。その他の症状として、発熱、倦怠感、筋肉痛および胃腸症状(例えば、嘔吐、下痢および腹痛)が挙げられるが、これらに限定されない。エンベロープ型ウイルスが宿主細胞に感染しようとする場合、宿主細胞の細胞膜と融合して、ゲノムを宿主細胞内に送達する必要がある。コロナウイルスのエンベロープは、スパイクタンパク質(「S」)、エンベロープタンパク質(「E」)、膜タンパク質(「M」)およびヘマグルチニンエステラーゼタンパク質(「HE」)という4種類の膜貫通型構造タンパク質を含む。コロナウイルスの平均直径は80~120nmであり、そのビリオンの表面は、N結合型グリコシル化配列で装飾された三量体スパイク(S)糖タンパク質の突起で緻密に覆われている。Sタンパク質は受容体結合ドメイン(「RBD」)を含み、この受容体結合ドメインは、宿主受容体に対するウイルス株の特異性を決定する高免疫原性領域である。コロナウイルスのヌクレオカプシドは、RNAゲノムを覆う複数のヌクレオカプシドタンパク質(「N」タンパク質または「NP」タンパク質)を含む。コロナウイルスが感染する際、Sタンパク質が宿主細胞の受容体に結合し、エンドサイトーシスまたはエンベロープ膜の融合を介して宿主細胞への侵入を開始する。宿主のリボソームによってRNAゲノムが翻訳されて、新たな構造タンパク質とRNA依存性RNAポリメラーゼが産生され、このRNAポリメラーゼによってウイルスゲノムが複製される。宿主細胞の小胞体においてウイルス粒子が組み立てられ、ゴルジ体を介したエキソサイトーシスによって細胞外に分泌される。コロナウイルスの構造および感染サイクルに関する詳しい情報は、Fehr AR & Perlman S. “Coronaviruses: An Overview of Their Replication and Pathogenesis” Methods Mol. Biol. (2015); 1282:1-23に記載されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)。
【0180】
本明細書において、「SARS-CoV-2」および「2019-nCoV」は、ヒトコロナウイルス疾患2019(COVID-19)パンデミックの原因となった1種以上のコロナウイルス株を指す。高い伝染性と長い潜伏期および現代社会のグローバル化によって、コロナウイルスは世界中に蔓延した。感染患者がSARSやその他の呼吸器疾患を発症したことから、医療インフラに大きな負荷がかかった。ヒトにおけるSARS-CoV-2やその他のコロナウイルスに対する治療法やワクチンの承認が進んでいるが、さらなる試験が必要とされている。本明細書に開示する実施形態は、その他のコロナウイルスにも適用可能であり、適用可能なその他のコロナウイルスとして、HCoV-229E、HCoV-OC43、SARS-CoV-1、HCoV NL63、HCoV-HKU1、MERS-CoVなどのコロナウイルスや、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03 (B.1.525)、VUI-202101/01 (P.2)、VUI-202102/01 (A.23.1)、VUI 202102/04 (B.1.1.318)、VUI 202103/01 (B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C (B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)、B.1.526などのSARS-CoV-2変異株が挙げられるが、これらに限定されない。使用する装置および方法は、現在までに同定されているSARS-CoV-2変異株または現在未確認のSARS-CoV-2変異株により引き起こされるコロナウイルス感染症に対して有効であることが想定されている。
【0181】
英国国立保健医療研究所(National Institute for Health and Care Excellence(NICE))によれば、COVID-19感染症は以下のように分類される。「急性COVID-19」は、罹患してから4週間以内のCOVID-19の徴候および症状を指す。「進行中の症候性COVID-19」は、罹患してから4~12週間のCOVID-19の徴候および症状を指す。「COVID-19後症候群」は、COVID-19と一致する感染症の罹患中または罹患後に発症し、罹患してから12週間以降も継続する徴候および症状を指し、別の診断では説明できないものを指す。
【0182】
本明細書において、「COVID-19関連凝固異常症(CAC)」は、COVID-19感染症に関連する血栓性合併症を指す。SARS-CoV-2は、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を利用して、血管内皮細胞に感染できることから、COVID-19感染症に罹患した患者は、その経過中に循環器系に顕著な炎症や損傷を起こすことがある。CACに関連する顕著な特徴として、血小板数の減少、循環Dダイマーの増加、プロトロンビン時間(PT)の延長、ならびにマクロ血栓症および/またはミクロ血栓症の存在が挙げられる。CACに関するさらなる情報は、Iba et al. J. Clin. Med. (2021) 10;191に記載されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。
【0183】
本明細書において、「SARS-CoV-2由来の糖タンパク質」は、SARS-CoV-2ウイルスに含まれる糖タンパク質またはSARS-CoV-2ウイルスによって発現される糖タンパク質を含む。例えば、本発明に包含されるSARS-CoV-2由来の糖タンパク質の1つとして、SARS-CoV-2 S(スパイク)タンパク質が挙げられ、このSARS-CoV-2 Sタンパク質は、ウイルスエンベロープの最も外側において糖タンパク質で装飾された部分またはそのサブユニット(S1サブユニット、S2サブユニットおよびRBDサブユニットを含む)を含む。
【0184】
本明細書において、「SARS-CoV-2 スパイク(S)タンパク質」または「COVID-19スパイクタンパク質」は、約1,300個のアミノ酸残基の単鎖からなるクラスIウイルス融合タンパク質であるSタンパク質であり、フォールディングしてホモ三量体を形成する。Sタンパク質は、受容体結合ドメインを有するN末端のS1サブユニットと、細胞膜との融合を担うC末端のS2サブユニットとを含む。コロナウイルスタンパク質は、コロナウイルスが組み立てられる際に様々な翻訳後修飾を受けるが、この翻訳後修飾には高度なグリコシル化が含まれ、これは、ウイルスがその病原性を発揮するのに極めて重要な役割を果たす。コロナウイルスの表面にあるS三量体は、コロナウイルスの機能に不可欠な部分であるN結合型グリカンで広範に修飾されている。コロナウイルスの表面のこのN結合型グリカン部分は、ウイルスの組み立てとその機能に極めて重要である。また、ツニカマイシンでN-グリコシル化を抑制すると、「スパイクを持たない」ビリオンが合成されることから、N結合型グリカンは、Sタンパク質の産生の安定化に必要である。また、ウイルスエンベロープがN-グリカンで覆われると、免疫原性のタンパク質エピトープがマスクされて、グリカンシールドが形成され、コロナウイルスが宿主免疫系や宿主のプロテアーゼを回避することが可能となる。以上のことから、コロナウイルスの糖タンパク質は、治療的介入やワクチンの主な標的となる主要抗原決定基である。したがって、SARS-CoV-2およびその他のコロナウイルス(例えばベータコロナウイルス、例えばCOVID-19やその変異株)において高度に保存されているこのような糖タンパク質は、本明細書で述べるレクチンを用いた親和性装置の標的として理想的であると考えられる。以上を踏まえると、本明細書で述べる装置および方法は、SARS-CoV-2およびその他のコロナウイルス(例えばベータコロナウイルス、例えばCOVID-19およびその変異株)ならびにこれらのウイルス由来の抗原を含むエクソソームの除去に有用であると考えられ、これらのコロナウイルスが経時的に突然変異を起こして、例えば新たな変異株が発生したとしても、有用だと考えられる。
【0185】
本明細書において、「エクソソーム」は、200nm以下の大きさのナノ粒子であり、近くの標的細胞や遠くの標的細胞にシグナルを伝えることによって、これらの細胞の機能を再プログラムするコミュニケーションシステムの一部である。エクソソームは、核酸、タンパク質、脂質などの様々な内容物を含むことができる。また、エクソソームは、宿主細胞からレシピエント細胞へと移送されて、細胞の機能に変化を起こすことができる。エクソソームは、細胞間のコミュニケーションと分子移動を担う手段として機能し、細胞間での特定のタンパク質や脂質、miRNA、mRNAおよびDNAの直接的な細胞外輸送を促すことができる。エクソソームは全身循環系に存在し、身体全体に分布している。正常な健康個体では、基礎レベルでのエクソソームの放出が、細胞間コミュニケーションを助け、細胞デブリの排除を促進する。一方で、エクソソーム量の増加は、生理学的状態の変化を反映すると考えられている。病的な状態では、活性化された細胞によりエクソソームが大量に産生されて多量に放出され、例えば、循環系を介して、エクソソームの膜構造物とその内部のカーゴが遠くの組織に運ばれる。エクソソームに関するさらなる情報と、その構成成分の精製に関する情報は、PCT公開公報WO2016/172598に記載されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)。
【0186】
本明細書において、「COVID-19媒介ナノ粒子」は、SARS-CoV-2に由来する糖タンパク質を含むか、これを発現するナノ粒子(すなわち、200nm以下の大きさの粒子)を指すか、または必ずしもSARS-CoV-2粒子に由来せず、COVID-19もしくはその症状もしくは後遺症に関連する細胞レベル以下のナノ粒子を指す。例えば、COVID-19媒介ナノ粒子は、SARS-CoV-2ビリオンまたはその断片(例えば、SARS-CoV-2由来の糖タンパク質)であってもよく、非ウイルス性のCOVID-19媒介ナノ粒子またはエクソソームであってもよい。
【0187】
本明細書において、「一部分」は、全体よりも少ない量の材料を指す。少ない部分は、例えば、50%未満の量を指し、多い部分は、例えば、50%を超える量を指す。したがって、対象から取り除かれたコロナウイルス粒子、COVID-19媒介ナノ粒子またはエクソソームの全体量よりも少ないコロナウイルス粒子単位、COVID-19媒介ナノ粒子単位またはエクソソーム単位は、除去されたコロナウイルス粒子、COVID-19媒介ナノ粒子またはエクソソームの一部である。本明細書の開示に関して、コロナウイルス粒子、COVID-19媒介ナノ粒子もしくはエクソソーム、またはコロナウイルス粒子単位、COVID-19媒介ナノ粒子単位もしくはエクソソーム単位は、対象から取り除かれたコロナウイルス粒子、COVID-19媒介ナノ粒子もしくはエクソソームの全体量を指してもよく、対象から取り除かれたコロナウイルス粒子、COVID-19媒介ナノ粒子もしくはエクソソームの全体量よりも少ない量を指してもよい。いくつかの実施形態において、前記対象は温血動物を含み、ヒトなどの哺乳動物であることが好ましい。好ましい一実施形態において、前記対象は霊長類である。より好ましい一実施形態において、前記対象はヒトである。
【0188】
本明細書において、「マイクロRNA」または「miRNA」は、約21~25塩基長の高度に保存された非コードRNA分子を指し、タンパク質をコードする遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)を標的とすることによって転写後の遺伝子発現を調節するという重要な役割を果たしている。成熟miRNAは、細胞質内で二本鎖RNAとして存在し、これに、argonaute(Ago2)タンパク質とグリシン-トリプトファン繰り返しタンパク質が結合して、miRNA誘導サイレンシング複合体(miRISC)と呼ばれる複数のサブユニットからなる複合体のコア構造が形成される。二本鎖miRNAは、「-5p」(pre-miRNAの5’末端から発現したもの)または「-3p」(pre-miRNAの3’末端から発現したもの)として区別される2本の鎖を含む。二本鎖miRNAに含まれる2本の鎖のうちの一方は、通常、除去され(パッセンジャー鎖)、もう一方の保持された鎖が、標的となるmRNAを選択するための案内役を担う(ガイド鎖)。しかし、1つのpre-miRNAステムループの5’末端と3’末端から切り離された両方の成熟miRNAが機能する場合もあり、これらが別々のmRNAを標的とすることが報告されている。mRNAの主に3’非翻訳領域(UTR)に存在する相補的なヌクレオチドとmiRNAの2~8個のヌクレオチドの間の塩基対相互作用によって、miRISC複合体が形成されると、miRNAは翻訳リプレッサーとして作用する。個々のmiRNAは多くの特異的な標的mRNAに結合するが、1つの分子経路の複数の標的mRNAには結合しないことが多い。miRNAは、血漿やその他の体液中で浮遊核酸として存在するとともに、エクソソームに内包された状態でも存在する。エクソソームに内包されずに細胞外において循環系に浮遊するmiRNAは、Ago2タンパク質に安定に結合した死細胞の副産物であると考えられている。病変細胞や活性化された細胞により大量に産生されるエクソソームには、親細胞に含まれるあらゆる内容物(miRNAを含む)が内包されている。
【0189】
一部のmiRNAは、様々な疾患と普遍的に関わることが同定されている。特定のmiRNAは、免疫応答の「ファインチューナー」であることが報告されており、Toll様受容体のシグナル伝達を調節することによって、炎症状態を促進したり、抗炎症作用を発揮する。miRNAは、抗原性を持たないことから、免疫監視を回避することができ、このような特性は、ウイルスにとって有益である場合がある。ウイルス感染症において、特定のmiRNAは、自然免疫系と獲得免疫系の両方を刺激する抗ウイルスツールとして機能し、別のmiRNAは、ウイルスの増殖に寄与する。宿主miRNAはウイルスによる調節を受けることがあり、ウイルスは細胞リソースを利用することによって、免疫回避と感染の維持に関与する自身のmiRNAを産生することができる。様々なウイルスmiRNAおよび宿主miRNAの有無をモニターすることによって、治療方法のアウトカムを評価してもよい。
【0190】
エクソソームは、ウイルス感染症の発症時に病原性物質や宿主細胞由来の分子を全身に伝播させるという極めて重要な役割を果たしており、これが、ウイルスの感染力および合併症に寄与していると考えられている。例えば、エクソソームを介してmiRNAが全身に伝播すると、ウイルスが免疫系を回避し、宿主細胞への感染を維持することが可能となる。このような感染の一例として、肝細胞へのB型肝炎ウイルス(HBV)の感染があり、ウイルス感染細胞からエクソソーム由来miRNAが放出されて、抗ウイルス免疫に関与するサイトカインの産生が減少する。コロナウイルスなどの様々なウイルスに応答して産生される細胞外小胞は、凝固異常症に寄与するだけでなく、病的状態の維持や感染の拡大の促進に寄与するという仮説が提唱されている。COVID-19では、ウイルスmiRNAおよび/または宿主miRNAがエクソソームに内包されて輸送されて全身に広がることから、血栓症、免疫機能障害および多臓器障害のメディエーターとして作用することがある。エクソソームを介して細胞間を輸送され、感染性ビリオンとは異なる病原性を有するmiRNAは、COVID-19の発症機序を理解する上で重要である。本明細書に開示された装置は、高マンノース型糖タンパク質部分に対する親和性を有することから、SARS-CoV2およびエクソソームに結合して循環系からこれらを除去することができる。
【0191】
数値範囲が示されている場合、その範囲の上下限値、およびその上下限値の間の数値も、前記実施形態に包含される。
【0192】
本明細書において、「%w/w」または「%wt/wt」は、本明細書に照らして理解される一般的な意味を有し、本発明の組成物の総重量に対する成分または薬剤の重量の割合に100を掛けたものを指す。本明細書において、「%v/v」または「%vol/vol」は、本明細書に照らして理解される一般的な意味を有し、本発明の組成物の総液体体積に対する化合物、物質、成分または薬剤の液体体積の割合に100を掛けたものを指す。
【0193】
COVID-19の症状および後遺症
SARS-CoV-2の発症機序に関する情報が明らかになるにつれて、このウイルスが呼吸器のみを標的とするのではなく、さらに重度の症例では、広範な全身炎症を起こし、脆弱になったその他の臓器を冒して、呼吸不全、急性心障害、急性腎障害、神経疾患、敗血症またはその他の合併症を起こすことがあることが分かってきた。COVID-19患者において「RNAemia」(すなわち、血中ウイルスRNAの存在)が発症するというエビデンスもあり、全身のウイルス量が炎症および組織損傷を促進することがあることが示された。これについて本明細書でさらに詳しく述べる。
【0194】
COVID-19疾患-サイトカインストーム
最近のデータから、SARS-CoV-2誘発性の免疫病理学的事象は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の原因となるだけでなく、COVID-19において認められるその他の全身性後遺症の原因となることが示唆されている。COVID-19に罹患した患者群、特に、重症COVID-19疾患に罹患した患者群では、血中で「サイトカインストーム」が発症しているというエビデンスが示されている。サイトカインストームは、無制御に調節異常を起こした炎症が発症することによって、組織損傷、肺浮腫および正常な免疫機能の破綻にまで及ぶ状態であると考えられている。COVID-19の中等度の症例と重症症例を比較した場合、重症症例では呼吸困難と低アルブミン血症が頻繁に認められ、さらに、アラニンアミノトランスフェラーゼ、乳酸脱水素酵素、C反応性タンパク質(CRP)、フェリチンおよびDダイマーも高値となり、サイトカインおよびその受容体の全身濃度(すなわち、IL-2R、IL-6、IL-10およびTNF-α)が著しく上昇する。COVID-19患者では、重度の炎症と不良なアウトカムに関連性が認められることから、COVID-19患者に対する治療的介入のアウトカムを評価するための別の手段として炎症マーカーを利用することができ、特に、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-10、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターフェロンγ誘導性タンパク質10(IP-10)、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、マクロファージ炎症タンパク質(MIP-1αおよびMIP-1β)などの特定のサイトカイン、ケモカインおよびこれらの組み合わせの変化を測定することによって、COVID-19患者に対する治療的介入のアウトカムを評価することができる。循環サイトカイン(例えばIL-6)は、COVID-19感染症の重症度のバイオマーカーであることが示されている(Zhang et al. J. Translational Medicine (2020) 18(1):406)。
【0195】
COVID-19疾患-免疫抑制
COVID-19の発症機序において、SARS-CoV-2感染症でのサイトカインレベルの上昇と、CD4+T細胞、CD8+T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞の消耗との間には相関関係が認められる。COVID-19の患者では、CD4+T細胞の総数とCD8+T細胞の総数が顕著に減少しており、60歳以上の患者やICU治療が必要な患者では特に顕著な減少が認められる。コロナウイルスは、直接的または間接的にリンパ球の消失および/または炎症プロセスを起こし、これは感染症の副産物によって増強され、さらにリンパ球のアポトーシスも引き起こす。血液中のリンパ球の絶対数および/または白血球中のリンパ球の割合は、COVID-19患者の疾患の進行とそのアウトカムの指標となるというエビデンスが得られており、回復期にある中等度から重症の症状を有する患者ではリンパ球数の改善が見られ、死亡に至る重篤な状態の患者ではリンパ球減少症の回復が認められない。したがって、当技術分野で公知の臨床検査値の基準範囲を利用して、リンパ球の絶対数からリンパ球減少症の有無を特定することができ、COVID-19患者の状態と予後を予測することができる。別の方法として、COVID-19に罹患した患者の末梢血中の特定のリンパ球の数(例えばT細胞やNK細胞)ならびに特定のリンパ球サブセットの数(CD4+T細胞およびCD8+T細胞)を調べることによって、免疫系の状態や、特に抗ウイルス反応に関与する細胞の状態を確認することができる。
【0196】
COVID-19疾患-RNAemia
COVID-19が陽性の入院患者において血漿中ウイルスRNA(「RNAemia」)が確認されている。RNAemiaは、重篤なCOVID-19患者で観察されており、炎症促進性サイトカインであるIL-6レベルの上昇との相関性が認められている。このことから、全身のSARS-CoV-2ウイルス量は、COVID-19の重症度と相関していることが示されている。したがって、本明細書に記載の方法を利用して、ウイルス量または循環ウイルスRNAを減少させることによって、重篤なCOVID-19患者の回復を向上させることができる。
【0197】
本明細書において、「ウイルス量」は、体液(例えば血液や血漿)中のウイルス粒子、ウイルスRNAまたはこれらの断片の量を指す。「ウイルス量」には、あらゆるウイルス粒子(感染性ウイルス粒子、複製されたウイルス粒子または非感染性のウイルス粒子)およびその断片が含まれる。したがって、ウイルス量は、体液中を循環するウイルス粒子および/またはその断片の総数を表す。したがって、ウイルス量は、ウイルスの存在を示す様々な指標で示される測定値であってもよく、例えば、血液単位あたりまたは血漿単位あたりのウイルスのコピー数であってもよく、血液単位あたりまたは血漿単位あたりのウイルスタンパク質またはその断片の単位であってもよい。血液循環中のSARS-CoV-2ウイルスRNAの存在は不良なアウトカムと相関する。循環ウイルス量の変化は、RT-PCRで評価することができる。ウイルスのクリアランスは、本明細書で開示したように、レクチンに結合したウイルス粒子を溶出することにより定量してもよい。
【0198】
COVID-19疾患-心臓合併症
心筋障害は、COVID-19による死亡と有意に関連しているが、基礎疾患として心臓血管疾患(CVD)を持つが心筋障害を発症していない患者の予後は比較的良好である。心筋障害は、心臓機能異常および不整脈と関連している。心筋障害の潜在的な機序として、炎症が関連している可能性がある。心筋障害のリスクが高い患者に、本明細書に記載の方法のいずれか1つ以上を使用することを考慮してもよく、本発明の方法は、治療期間中に複数回(例えば、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回または10回)実施することができる。
【0199】
本明細書において、「トロポニン」は、心筋中に存在するタンパク質の一種である。トロポニンとそのサブユニット(例えば、トロポニンC、トロポニンI、トロポニンT)は、通常、血液中には存在しない。心筋が損傷すると、トロポニンが血流中に放出される。心臓の損傷が増加するにつれて、放出されるトロポニンの量が増加する。
【0200】
トロポニンTレベルの上昇により心筋障害のリスクがあると評価されるCOVID-19患者は、高齢であり、高血圧、冠動脈疾患、心不全および糖尿病の罹患率が高い。心筋障害を有する患者では、さらに重症の全身炎症のエビデンスが認められ、具体的には、白血球数の増加、C反応性タンパク質レベルの上昇、プロカルシトニンレベルの上昇を示すとともに、心筋障害およびストレスを示すその他のバイオマーカーのレベルも高くなり、例えば、クレアチンキナーゼ、ミオグロビン、およびN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)が高くなる。これらの患者は、心筋障害のないCOVID-19患者と比べて、全身炎症の発生率が高く、補助呼吸が必要となることが多い。トロポニンは、心臓トロポニンI(cTnI)、心臓トロポニンT(cTnT)、心臓トロポニン(cTN)、心臓特異的トロポニンIおよびトロポニンTを含んでいてもよく、かつ/またはこれらのトロポニンを指してもよい。循環トロポニンTは、COVID-19感染症の重症度のバイオマーカーであることが示されている(Gaze. Ann. Clin. Biochem. (2020) 57(3):202-205)。
【0201】
COVID-19疾患-多臓器不全、敗血症、急性腎臓疾患、神経疾患、嗅覚障害、過剰炎症およびその他の合併症
重篤なCOVID-19患者において、全身炎症のマーカーおよび/または臓器障害のマーカーの改善を、臨床的に有効な治療的介入の指標として使用することができる。治療的介入に応答して減少することが予想されるこのようなマーカーとして、C反応性タンパク質(CRP)、フェリチン、乳酸脱水素酵素、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、インターロイキン6(IL-6)、IL-1β、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、マクロファージ炎症性タンパク質1α、顆粒球コロニー刺激因子、インターフェロンγ誘導性タンパク質10および/または単球化学誘引タンパク質1が挙げられる。COVID-19の治療的介入に関連する臨床アウトカムを評価するために、生存率、補助呼吸の継続期間およびその必要性、多臓器系不全、ならびに心臓合併症の評価をモニターしてもよい。
【0202】
COVID-19疾患-凝固系
Dダイマー検査は、血液中のDダイマーを調べるものである。Dダイマーは、血液凝固の主成分である架橋フィブリンの分解により生成されるタンパク質断片である。血液凝固の過程において、トロンビンによって第XIII因子が活性化され、活性化された第XIII因子によってフィブリンのD領域が架橋される。セリンプロテアーゼであるプラスミンの活性によって、架橋されたフィブリンが分解されて、循環Dダイマーが生成される。SARS-CoV-2感染症の患者では、血液凝固の調節異常が起こることによって、死に至る可能性のある血栓症、脳卒中および肺塞栓症が発症する。循環Dダイマーは、COVID-19感染症の重症度のバイオマーカーであることが示されている(Yao et al. J. Intensive Care. (2020) 8:49)。また、Dダイマーは、断片Dダイマーまたはフィブリン分解断片の名称でも知られている。
【0203】
レクチンを用いた血液濾過装置の一例
本明細書では、コロナウイルス感染症またはそれに関連する症状もしくは後遺症(例えば、COVID-19の回復期にある患者に認められるような、コロナウイルス感染症を排除した後でも発症することがある長期的な後遺症)などの、ウイルス疾患の治療用の体外循環装置、およびこのようなウイルス疾患を治療するための該装置の使用方法を開示する。本発明の体外循環装置は、糖タンパク質を含む様々な生物学的成分(例えばエクソソーム)に結合するレクチンを含む。レクチンを含む本発明の体外循環装置は、血液濾過に使用する場合、例えば、糖タンパク質を有するウイルス粒子(SARS-CoV-2およびこれを構成するサブコンポーネントを含む)、非ウイルス性のCOVID-19媒介ナノ粒子、ならびに糖タンパク質を含む循環エクソソームを濾過することができる。
【0204】
いくつかの実施形態において、本発明の装置、システムおよび方法は、親和性薬剤を含む1つ以上の中空糸カートリッジを含み、この親和性薬剤はレクチンであり、スノードロップ凝集素(GNA)であることが好ましい。別のレクチンとして、ラッパズイセン凝集素(NPA)、コンカナバリンAおよびシアノビリンが挙げられる。本明細書に開示された方法に使用することができるレクチンを含む体外循環装置の例は、WO2007/103572、WO2009/023332およびWO2010/065765に記載されている(これらの文献は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)。
【0205】
本明細書に開示された体外循環装置は、糖タンパク質を含む循環ウイルス粒子の捕捉に有用であり、例えば、糖タンパク質やその他の分子からなる豊富な材料を含んだ宿主細胞の細胞膜を複製の際に組み込むエンベロープウイルス粒子などの捕捉に有用である。SARS-CoV-2やその他のコロナウイルスの場合、スパイク(S)糖タンパク質も発現され、ウイルスエンベロープを飾るようにエンベロープに配置される。
【0206】
COVID-19パンデミックの全体を見れば、SARS-CoV-2感染症の長期副作用や、COVID-19後症候群を経験する患者が多いことが判明している。身体がコロナウイルスに対抗するために炎症反応を起こすと、この炎症反応に付随して、広範囲な全身の臓器に影響を及ぼす重篤な合併症が起こることがある。炎症による損傷が起こり、感染症自体よりも重症化する症例もある。本明細書で述べるように、本明細書に開示された体外循環装置は、コロナウイルス感染症の長期的な後遺症の治療または抑制に有用であり、コロナウイルス感染症による慢性的な後遺症の予後を改善することができる。本発明の体外循環装置による治療は、患者の体内からエクソソームを除去することを含んでいてもよく、このエクソソームには、患者が既に活発なウイルス感染症を有していない場合でも患者に負の影響を与えうる1種以上のmiRNAが含まれていてもよい。
【0207】
したがって、本発明は、いくつかの実施形態において、患者の血液または血漿から病原性生物、その断片またはその他の生物学的成分を除去するための、レクチンを含む体外循環装置に関する。いくつかの実施形態において、この体外循環装置は、レクチンを含む1つ以上の中空糸カートリッジを含む。本明細書において提供される中空糸膜技術または当技術分野で公知の中空糸膜技術によれば、本発明の実施形態は、細胞レベル以下のナノ粒子(ウイルス粒子、COVID-19媒介ナノ粒子、エクソソームなどが挙げられるが、これらに限定されない)を親和性マトリックスに接触させるサイズ排除機構を含み、このサイズ排除機構では、ナノ粒子よりも大きな血液成分(細胞を含む)が中空糸の細孔を通過して、親和性薬剤が存在する中空糸外部空間に侵入することを制限している。いくつかの実施形態において、細孔径は、20~500nmである。いくつかの実施形態において、細孔径は200nmまたは約200nmである。
【0208】
一例として、血液または血漿は、中空糸カートリッジを使用した体外循環回路に流され、この中空糸膜は、血液中または血漿中の細胞レベル以下のナノ粒子を通過させて中空糸外側の区画へと排除するのに十分な透過性を有し、この中空糸外側の区画は、1種以上の薬剤(例えばレクチン)を結合させた基材を含み、この1種以上の薬剤は、中空糸の内部から排除された細胞レベル以下のナノ粒子に接着して、中空糸の内部に戻ること実質的に防ぐことができる。様々な種類の中空糸系が販売されていることは、当業者によく知られている。中空糸系は、所望の血液体積または血漿体積、および中空糸系の内部を流れる所望の血液体積または血漿体積の流量に応じて選択される。より具体的には、250mmの長さの中空糸カートリッジを使用して、その内部に、Amicon社より販売されている535中空糸を装着してもよく、中空糸の寸法は、内径180ミクロンおよび外径360ミクロンであってもよく、カートリッジ内の総接触表面積は750cm2であってもよい。別の方法として、(フレゼニウス社より販売されている)「Plasmaflux P2」中空糸フィルターカートリッジ、または(Medical srl社より販売されている)Plasmart PS60カートリッジを使用してもよい。
【0209】
使用する中空糸系の種類に関係なく、本発明の適用に必要とされる概念として、血球が中空糸の内部を流れることができ、かつ細胞レベル以下のナノ粒子が中空糸の外側に拡散できるという要件が中空糸フィルターに求められる。細胞レベル以下のナノ粒子が中空糸の外側に拡散できるようにするには、目的とする粒子に応じて中空糸膜の細孔の大きさを、直径20nm~500nmの大きさの粒子が通過するのに十分な直径に設定する必要がある。いくつかの実施形態では、中空糸膜の細孔の大きさを、直径50nm~300nmの大きさの粒子が通過するのに十分な直径に設定する必要がある。いくつかの実施形態では、中空糸膜の細孔の大きさを、直径80nm~200nmの大きさの粒子が通過するのに十分な直径に設定する必要がある。当業者であれば、様々な種類の中空糸を用いた実験を行う際に、様々な中空糸フィルターの細孔径を測定し、その能力を定量するためには、細胞レベル以下のナノ粒子と同程度の大きさの粒子を利用することが有用であることに気付くであろう。このような測定や定量を行う方法の1つとして、直径60nmの市販のMACSTMビーズ(ミルテニーバイオテク)を利用することができる。また、直径25~1000nmの蛍光標識された市販の球状ラテックスビーズを使用することもできる(例えば、Duke Scientific社(カリフォルニア州パロアルト)から販売されている球状ラテックスビーズが挙げられる)。
【0210】
中空糸の外側の空間に侵入した血球以外の血液成分が、基材またはマトリックス材料の全体に分散し、かつ中空糸フィルターを透過した細胞レベル以下のナノ粒子と、基材またはマトリックスに付着させた結合性薬剤とが十分に接触するように、本発明を実施するために使用される基材またはマトリックスは、十分な流量を透過できるものである必要がある。好適な基材またはマトリックスは当業者に知られている。好適な基材またはマトリックスとして、シリカゲル、デキストラン、アガロース、ナイロンポリマー、アクリル酸ポリマー、エチレンと無水マレイン酸のコポリマー、アミノプロピルシリカ、アミノセライト、ガラスビーズ、珪藻土、珪藻土を含むケイ酸塩、または当技術分野で公知のその他の基材もしくはマトリックスが挙げられる。このような基材またはマトリックスの例は、Lentzによる米国特許第4,708,713号、Motomuraによる米国特許第5,667,684号、Takashimaらによる米国特許第5,041,079号、ならびにPorathおよびJansonによる米国特許第3,925,152号に記載されている(これらの文献は引用によりその全体が本明細書に援用される)。基材に付着させる結合性薬剤は、細胞レベル以下のナノ粒子に対して親和性を有することが知られていることに基づいて選択してもよい。
【0211】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、図1に示す装置を用いた親和性カートリッジを使用して実施される。この装置では、中空糸限外濾過膜の内腔を通って血液または血漿が流され、この中空糸限外濾過膜は、血液が湿潤しない外側において、固定されたレクチンと緊密に接触しており、この固定されたレクチンが、ウイルスおよびその他の細胞レベル以下のナノ粒子に結合してこれらを固定する手段となる。したがって、この装置は、レクチンに結合した糖タンパク質をそのままの状態で保持しつつ(この糖タンパク質は、さらに大きい構造の一部であってもよい)、その他の成分は内腔を通過させることが可能である。
【0212】
SARS-CoV-2は、本発明を説明するにあたり基準となるウイルスであるが、本発明は、どのような種類のコロナウイルスやその他のウイルスの除去にも適合させることができる。図1~3に詳細に示す一例としての装置は、濾過チャンバーを構成する中空糸限外濾過膜の複数の流路を備えている。入口ポートと流出ポートは、濾過チャンバーと連通している。この限外濾過膜は、血流に面する側が緻密層側または保持側となる異方性膜であることが好ましい。限外濾過膜は、当技術分野で公知のポリマーを使用して簡便に作製され、何種類のポリマーを使用してもよく、ポリマーとしては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、酢酸セルロースおよびポリアクリルアミドが挙げられる。限外濾過膜は、直径200~700nmの細孔を有することが好ましく、このような大きさの細孔であれば、細胞レベル以下のナノ粒子(例えば、SARS-CoV-2ビリオンまたはその断片、例えば、SARS-CoV-2由来の糖タンパク質(例えば、直径110nmのSARS-CoV-2ビリオン))や、非ウイルス性のCOVID-19媒介ナノ粒子(例えば、エクソソーム)は通過することができるが、大部分の血球(赤血球:直径2,000nm;リンパ球:直径7,000~12,000nm;マクロファージ:直径10,000~18,000nm)は通過することができない。一例としての装置を図1に示す。この装置は、適切な材料(例えばポリカーボネート14)で形成された血液処理チャンバー12を備えたカートリッジ10を含む。血液処理チャンバー12の周囲は、任意で設けられる外部チャンバー16で囲まれている。ポート18から温度制御流体を導入し、外部チャンバー16の内部を循環させて、ポート20から排出させることができる。この装置は、血液を導入するための入口ポート32と、血液を流出させるための出口ポート34とを備える。この装置は、カートリッジの流路外側の空間にアクセスするための1つ以上のポート48,50をさらに備える。図1および図2に示すように、血液処理チャンバー12は複数の限外濾過膜22を備える。これらの限外濾過膜の内側の孔径は0.3mmであり、外側の孔径は0.5mmであることが好ましい。図3は、流路22の断面図であり、限外濾過膜の異方性を示している。図3に示すように、中空糸膜構造40は、比較的緻密な限外濾過膜42と比較的多孔質な外側部分44を含む管状部として形成された単一のポリマー材料で構成されており、外側部分44にはレクチン46が固定されていてもよい。この装置を作動させる際には、レクチンを含む溶液がポート48を通じて該装置に充填される。充填されたレクチンは、図2に示す限外濾過膜の外面22に固定される。限外濾過膜の外面22に付着しなかったレクチンは、生理食塩水またはその他の溶液で洗浄して、ポート50から回収することができる。カートリッジのハウジングはポリカーボネートで形成されており、中空糸は、ポリウレタン系ポッティング材で適所に固定されている。レクチンは、直径150~300ミクロン(またはこれよりも大きな直径)の固体樹脂材料に共有結合されて、内腔の外側(または中空糸の外側もしくは流路の外側)に存在する。この固体樹脂材料は、多孔質の二酸化ケイ素材料(SiO2)で構成されており、珪藻土で構成されていることが好ましい。レクチンを結合させた樹脂材料(約35~45g)は、カートリッジのポリカーボネート製の側面ポートを通して中空糸外側の空間に充填され、中空糸の周囲を取り囲むように配置される。この装置の作動中、血液は中空糸の長さ方向に沿って流れ、血漿が細孔から流出して、固体樹脂基材に付着したレクチンに接触する。
【0213】
限外濾過膜にレクチンを結合させるため、まず、当技術分野で公知の方法を使用して、限外濾過膜のポリマーを活性化させて、例えば、タンパク質との化学的結合を起こりやすくする。何種類のポリマーを使用してもよい。反応性のポリアクリル酸ポリマーを得るには、例えば、カルボジイミドを使用することができる(Valuev et al., 1998, Biomaterials, 19:41-3)。ポリマーが活性化されたら、レクチンを直接結合させるか、リンカーを介して結合させることによって、親和性マトリックスを形成することができる。好適なリンカーとして、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、プロテインAまたはプロテインGが挙げられるが、これらに限定されない。別の方法として、レクチンは、カップリング剤(例えば二価性試薬)を使用して限外濾過膜のポリマーに直接結合してもよく、間接的に結合してもよい。いくつかの実施形態では、アガロースに共有結合させたGNAを使用して、親和性マトリックスを形成することができる。
【0214】
したがって、本発明の一態様は、レクチンを含む親和性血液透析カートリッジであって、
血液または血漿を収容するように構成された濾過チャンバーと;
前記濾過チャンバー内に配置されたレクチンと;
直径200~500nmの細孔を有する多孔質中空糸膜と
を含み、
前記レクチンが、アガロース、珪藻土またはアミノセライトに結合されていてもよいこと;
前記レクチンが、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパズイセン凝集素(NPA)、シアノビリンおよびコンカナバリンAならびにこれらの混合物からなる群から選択されること;ならびに
前記血液透析カートリッジが、血液または血漿から細胞レベル以下のナノ粒子を除去するように構成されていること
を特徴とする血液透析カートリッジを提供する。
【0215】
レクチン(例えばGNA)の単離に使用することができる方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、Van Dammeらは、マンノースまたはその他の糖類を用いた親和性精製によってGalanthus nivalis(スノードロップ)の球茎からレクチンを単離できることを示している(Van Damme et al. FEBS Letters (1987) 215(1):140-144)。親和性精製を目的とした精製GNAの使用は過去に報告されており、例えば、免疫グロブリン様の糖タンパク質の単離などに使用できることが報告されている(Shibuya et al. Archives Biochem. Biophys. (1988) 267(2):676-680)。前記文献はいずれも引用によってその全体が本明細書に明示的に援用される。
【0216】
さらに、本発明は、入口ポートと出口ポートをさらに備えた濾過チャンバーを有する前記装置であって、
前記多孔質中空糸膜の流路が、前記入口ポートおよび前記出口ポートと流体連通していること;
前記血液透析カートリッジが、前記濾過チャンバー内に流路外側の空間を備え、この流路外側の空間が、前記多孔質中空糸膜の周囲を取り囲んでいること;ならびに
前記レクチンが、前記多孔質中空糸膜の外表面に隣接した前記流路外側の空間内に配置されたアガロース、珪藻土またはアミノセライトに共有結合されていてもよいこと
を特徴とする装置を提供する。
【0217】
本発明の方法のいくつかでは、細胞レベル以下のナノ粒子(このナノ粒子は、SARS-CoV-2ウイルス粒子を含んでいてもよく、SARS-CoV-2ウイルス粒子を含んでいなくてもよい)を含む血液または血漿を患者から採取し、限外濾過膜に接触させる。いくつかの実施形態において、まず、血液を血漿と細胞成分に分離する。次に、血液または血漿をレクチンに接触させて、糖タンパク質とレクチンを結合させることによって、細胞レベル以下のナノ粒子を除去する。次に、血漿と細胞成分を再度混合して、患者に戻すことができる。別の方法として、細胞成分は血漿とは別に患者に戻してもよい。所望の応答が得られるまで、治療を定期的に繰り返すことができる。いくつかの実施形態において、治療は、24時間の枠内で、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間もしくは24時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間にわたって実施することができる。いくつかの実施形態において、治療は、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたり毎日繰り返し行うことができる。
【0218】
いくつかの実施形態において、本発明の方法および装置は、SARS-CoV-19由来の糖タンパク質(例えば、本明細書で述べるS1スパイクタンパク質)に結合するモノクローナル抗体を親和性薬剤として体外循環回路内にさらに含む。本発明の特定の実施形態において、本発明の方法および装置は、GNAからなる親和性薬剤とモノクローナル抗体からなる親和性薬剤を含む。
【0219】
当業者であれば、様々な種類の体液、例えば、末梢血、血漿、血清、腹水、脳脊髄液(CSF)、喀痰、唾液、骨髄、滑液、房水、羊水、耳垢、母乳、肺胞洗浄液、精液(前立腺液を含む)、カウパー液もしくは射精前液、女性射出液、汗、糞便、毛髪、涙液、嚢胞液、胸水、腹水、心膜液、リンパ液、び汁、乳び、胆汁、間質液、月経分泌物、膿汁、皮脂、嘔吐物、膣分泌物、粘膜分泌物、鼻汁(例えば、鼻腔スワブから分離したもの)、水様便、尿、膵液、副鼻腔洗浄液、気管支肺吸引液またはその他の洗浄液など(ただしこれらに限定されない)から生物学的試料を採取することができることを理解できるであろう。また、生物学的試料として、胎児または母体に由来する試料である胚盤胞腔、臍帯血または母体循環系が挙げられる。生物学的試料は、組織試料または生検試料であってもよい。
【0220】
COVID-19を治療するための治療方法または使用
本発明は、体外循環装置においてレクチンを用いて血液または血漿の血液濾過を行う方法に関する。したがって、本発明は、個体の循環系から細胞レベル以下のナノ粒子(例えば、COVID-19またはその症状もしくは後遺症に関連する細胞レベル以下のナノ粒子)を減少させる方法であって、
個体から血液または血漿を得る工程、
多孔質の外側部分にレクチン分子が固定された多孔質中空糸膜に前記血液または血漿を通す工程、
前記多孔質中空糸膜に通した前記血液または血漿を回収する工程、および
前記多孔質中空糸膜に通した血液または血漿を前記個体に再注入する工程
を含む方法を提供する。
【0221】
いくつかの実施形態において、本発明の装置および方法は、SARS-CoV-2のS1(スパイク)タンパク質を高効率に捕捉して、これを物理的に除去することができるが、このような態様に限定されない。したがって、本発明は、個体の循環系からCOVID-19媒介ナノ粒子を捕捉して該COVID-19媒介ナノ粒子を物理的に除去する方法であって、
個体から血液または血漿を得る工程、
多孔質の外側部分にレクチン分子が固定された多孔質中空糸膜に前記血液または血漿を通す工程、
前記多孔質中空糸膜に通した前記血液または血漿を回収する工程、および
前記多孔質中空糸膜に通した血液または血漿を前記個体に再注入する工程
を含む方法を提供する。
しかし、いくつかの実施形態では、本明細書に開示された装置および方法は、活発なウイルス感染症を既に有していないが、その症状または後遺症を依然として呈する患者に使用することができる。
【0222】
本明細書に記載の方法を必要とする対象、例えば、重症COVID-19疾患を有する対象、重症COVID-19疾患のリスクがある対象(例えば、酸素療法を必要とする対象)、またはCOVID-19を克服したが、1つ以上の症状もしくは後遺症を依然として有する対象が特定された場合、COVID-19に関連する可能性のある細胞レベル以下のナノ粒子を除去する方法は、
a)COVID-19に関連する可能性のある細胞レベル以下のナノ粒子の外表面に選択的に結合するレクチンまたはその他の親和性結合剤を含む中空糸カートリッジを提供する工程;
b)体外循環装置を使用して、前記細胞レベル以下のナノ粒子をある程度の濃度で含む生体試料(例えば血液や血漿)を対象から取り出す工程;
c)前記中空糸カートリッジを使用して前記生体試料を処理することによって、前記親和性結合剤を前記生体試料に接触させる工程;
d)前記生体試料中の前記細胞レベル以下のナノ粒子の少なくとも一部を捕捉して、前記中空糸カートリッジ内に保持する工程;および
e)前記生体試料を前記対象に再導入する前に、前記体外循環装置から前記生体試料を除去することなく、前記捕捉された細胞レベル以下のナノ粒子の一部が取り除かれた生体試料を前記対象に再導入する工程
を含んでいてもよい。
前記対象の生体試料、例えば、前記対象の鼻汁(例えば、鼻腔スワブから分離したもの)、血液または血漿は、治療を行う前もしくは治療を行った後またはその両方で採取してもよく、この生体試料を使用して、細胞レベル以下のナノ粒子のレベルまたは量を分析する。
【0223】
重篤な状態のCOVID-19患者の循環系からSARS-CoV-2ビリオンを捕捉することによって、以下のようないくつかの肯定的な利点が得られてもよい。
(1)全身のSARS-CoV-2量の減少。
(2)COVID-19感染症に伴う全身炎症反応(例えばサイトカインストーム)の重症度の低下。
(3)抗ウイルス機能を有する細胞を含む免疫細胞の機能の向上。
(4)持続的な細胞感染の減少、患部臓器への進行性の損傷の減少、および/またはウイルス自体および/またはその炎症反応による疾患関連症状の減少。
【0224】
本明細書で述べるように、体外循環装置を使用して、患者の血液または血漿からエクソソームを捕捉することができることが実証された。いくつかの実施形態において、前記患者は、経過中のコロナウイルス感染症(例えばCOVID-19)を有する患者であってもよい。別の実施形態において、前記患者は、活発なコロナウイルス感染症を既に有していないが(例えば、従来の方法で検出される循環ウイルス量が減少しているか、従来の方法により循環ウイルスが検出されない)、コロナウイルス感染症の症状または後遺症を依然として呈している患者であってもよい。いくつかの実施形態において、体外循環装置によって除去されたエクソソームは、miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pまたはその両方を含んでいてもよい。これらのmiRNAは、患者が活発なコロナウイルス感染症を既に有していなくても、患者のコロナウイルス症状または後遺症に負の影響を与える可能性がある。
【0225】
いくつかの実施形態において、SARS-CoV-2ビリオンまたはその一部の減少を必要とするCOVID-19患者において、SARS-CoV-2ビリオンまたはその一部を減少させる方法を開示する。いくつかの実施形態において、この方法は、
(a)SARS-CoV-2ビリオンまたはその一部に結合するレクチン(例えば、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパズイセン凝集素(NPA)またはNostoc ellipsosporum由来シアノビリン)を含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
(b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中のSARS-CoV-2ビリオンまたはその一部が前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
(c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してSARS-CoV-2ビリオンまたはその一部の量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
(d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料、血液試料、血漿試料など)において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその一部を検出もしくは同定する工程;および/または
SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片を減少させる治療を行うために、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた試料中でのレベルまたは量)と比較することによって、COVID-19を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症に罹患していないが、コロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症から回復しているが、依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前の前記患者の血液または血漿にコロナウイルスが含まれていないが、前記患者は依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者が、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、93%以下の血液酸素飽和度、300未満の動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、50%を超える肺浸潤、24~48時間以内の呼吸不全、フェリチン値の上昇、乳酸値の上昇、乳酸脱水素酵素(LDH)値の上昇、リンパ球絶対数(ALC)の減少、血小板数の減少、プロトロンビン時間国際標準比(PT/INR)の延長、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせを有しているかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のIL-6のレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清IL-6レベルは2pg/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のDダイマーのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清D-Dダイマーレベルは500ng/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のトロポニンTのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清トロポニンTレベルは15ng/L以上である。好ましい実施形態のいくつかにおいて、前記レクチンはスノードロップ凝集素(GNA)である。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置は、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記血液または血漿は、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿中の細胞成分と前記レクチンが接触しないように、前記中空糸カートリッジの中空糸は、前記血液または血漿中の細胞成分を通さない細孔径を持つ。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、20~500nmまたは約20~500nmである。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、200nmまたは約200nmである。いくつかの実施形態において、前記レクチンは固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジは、前記固体担体上に固定または吸着された前記レクチンを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は、アガロース、珪藻土またはアミノセライトを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は珪藻土を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合したコロナウイルスのビリオンまたはその一部を単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合した、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームを単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記単離されたエクソソームの内容物を調べる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームは、miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pまたはその両方を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料もしくは血漿試料におけるコロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料もしくは血漿試料と比較して観察もしくは測定する工程;または工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料もしくは血漿試料中のIL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせの相対レベルもしくは相対量を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料もしくは血漿試料に対して測定する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(b)もしくは工程(c)またはその両方を行った患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記患者において、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸頻度、血液酸素飽和度、動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、肺浸潤、呼吸不全、フェリチン、乳酸、LDH、リンパ球絶対数(ALC)、血小板数、PT/INR比、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせの改善を判断する工程を含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記治療の前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液など)において、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を観察する工程;または前記治療の前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液など)において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量を測定する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記COVID-19は、SARS-CoV-2変異株によって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2変異株は、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前に、抗凝固剤(好ましくはヘパリン)を用いて前記体外循環装置のプライミングを行うことによって血液凝固を予防する。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置内を流れる前記血液の流量は、約50~約600mL/分であり、好ましくは約200~約400mL/分であり、好ましくは約200~約240 mL/分または200~240 mL/分であり、最も好ましくは240mL/分である。いくつかの実施形態において、前記血液を流す際、100ml/分の初期流量で開始され、200ml/分まで徐々に増加させる(例えば、5分間で段階的に増加させる)。いくつかの実施形態において、前記血液を前記患者に戻す工程は、前記体外循環装置に生理食塩水をフラッシュする工程を含む。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿と前記体外循環装置との接触時間は、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間である。いくつかの実施形態において、工程(a)、工程(b)および工程(c)ならびに任意の工程(d)を、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたって毎日繰り返し行う。いくつかの実施形態において、前記方法は、追加の抗ウイルス治療を前記患者に行う工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記追加の抗ウイルス治療は、ファビピラビル、ファビラビル、レムデシビル、トシリズマブ、ガリデシビル、サリルマブ、ロピナビル、リトナビル、ダルナビル、リバビリン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンα-2b、回復期血清またはこれらの任意の組み合わせを投与することを含む。
【0226】
さらに、いくつかの実施形態において、COVID-19媒介ナノ粒子の減少を必要とするCOVID-19患者において、COVID-19媒介ナノ粒子を減少させる方法を開示する。いくつかの実施形態において、この方法は、
(a)COVID-19媒介ナノ粒子に結合するレクチン(例えば、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパズイセン凝集素(NPA)またはNostoc ellipsosporum由来シアノビリン)を含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
(b)前記体外循環装置において、前記COVID-19媒介ナノ粒子が前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
(c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してCOVID-19媒介ナノ粒子の量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
(d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから得られた鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその一部もしくはCOVID-19媒介ナノ粒子を検出もしくは同定する工程;および/または
対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた試料中でのレベルまたは量)と比較することによって、COVID-19媒介ナノ粒子を減少させる治療を行うために、COVID-19を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症に罹患していないが、コロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症から回復しているが、依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前の前記患者の血液または血漿にコロナウイルスが含まれていないが、前記患者は依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者が、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、93%以下の血液酸素飽和度、300未満の動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、50%を超える肺浸潤、24~48時間以内の呼吸不全、フェリチン値の上昇、乳酸値の上昇、乳酸脱水素酵素(LDH)値の上昇、リンパ球絶対数(ALC)の減少、血小板数の減少、プロトロンビン時間国際標準比(PT/INR)の延長、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせを有しているかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のIL-6のレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清IL-6レベルは2pg/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のDダイマーのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清D-Dダイマーレベルは500ng/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のトロポニンTのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清トロポニンTレベルは15ng/L以上である。好ましい実施形態のいくつかにおいて、前記レクチンはスノードロップ凝集素(GNA)である。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置は、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記血液または血漿は、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿中の細胞成分と前記レクチンが接触しないように、前記中空糸カートリッジの中空糸は、前記血液または血漿中の細胞成分を通さない細孔径を持つ。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、20~500nmまたは約20~500nmである。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、200nmまたは約200nmである。いくつかの実施形態において、前記レクチンは固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジは、前記固体担体上に固定または吸着された前記レクチンを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は、アガロース、珪藻土またはアミノセライトを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は珪藻土を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合したコロナウイルスのビリオンまたはその一部を単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合した、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームを単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記単離されたエクソソームの内容物を調べる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームは、miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pまたはその両方を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記治療の前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を観察もしくは測定する工程;または前記治療の前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量を測定する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(b)もしくは工程(c)またはその両方を行った患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記患者において、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸頻度、血液酸素飽和度、動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、肺浸潤、呼吸不全、フェリチン、乳酸、LDH、リンパ球絶対数(ALC)、血小板数、PT/INR比、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせの改善を判断する工程を含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記治療前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を観察する工程;または前記治療前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量を測定する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記COVID-19は、SARS-CoV-2変異株によって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2変異株は、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前に、抗凝固剤(好ましくはヘパリン)を用いて前記体外循環装置のプライミングを行うことによって血液凝固を予防する。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置内を流れる前記血液の流量は、約50~約600mL/分であり、好ましくは約200~約400mL/分であり、好ましくは約200~約240mL/分である。いくつかの実施形態において、前記血液を流す際、100ml/分の初期流量で開始され、200ml/分まで徐々に増加させる(例えば、5分間で段階的に増加させる)。いくつかの実施形態において、前記血液を前記患者に戻す工程は、前記体外循環装置に生理食塩水をフラッシュする工程を含む。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿と前記体外循環装置との接触時間は、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間である。いくつかの実施形態において、工程(a)、工程(b)および工程(c)ならびに任意の工程(d)を、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたって毎日繰り返し行う。いくつかの実施形態において、前記方法は、追加の抗ウイルス治療を前記患者に行う工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記追加の抗ウイルス治療は、ファビピラビル、ファビラビル、レムデシビル、トシリズマブ、ガリデシビル、サリルマブ、ロピナビル、リトナビル、ダルナビル、リバビリン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンα-2b、回復期血清またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0227】
さらに、いくつかの実施形態において、COVID-19患者において、COVID-19抗原含有エクソソームを減少させる方法を開示する。いくつかの実施形態において、この方法は、
(a)COVID-19抗原含有エクソソームに結合するレクチン(例えば、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパズイセン凝集素(NPA)またはNostoc ellipsosporum由来シアノビリン)を含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
(b)前記体外循環装置において、前記COVID-19抗原含有エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
(c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してCOVID-19抗原含有エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
(d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料、血液試料、血漿試料など)において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその一部もしくはCOVID-19抗原含有エクソソームを検出もしくは同定する工程;および/または
COVID-19抗原含有エクソソームを減少させる治療を行うために、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して、COVID-19を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症に罹患していないが、コロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症から回復しているが、依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前の前記患者の血液または血漿にコロナウイルスが含まれていないが、前記患者は依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた試料中でのレベルまたは量)と比較して、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、93%以下の血液酸素飽和度、300未満の動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、50%を超える肺浸潤、24~48時間以内の呼吸不全、フェリチン値の上昇、乳酸値の上昇、乳酸脱水素酵素(LDH)値の上昇、リンパ球絶対数(ALC)の減少、血小板数の減少、プロトロンビン時間国際標準比(PT/INR)の延長、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせを有しているかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のIL-6のレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清IL-6レベルは2pg/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のDダイマーのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清D-Dダイマーレベルは500ng/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のトロポニンTのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清トロポニンTレベルは15ng/L以上である。好ましい実施形態のいくつかにおいて、前記レクチンはスノードロップ凝集素(GNA)である。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置は、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記血液または血漿は、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿中の細胞成分と前記レクチンが接触しないように、前記中空糸カートリッジの中空糸は、前記血液または血漿中の細胞成分を通さない細孔径を持つ。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、20~500nmまたは約20~500nmである。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、200nmまたは約200nmである。いくつかの実施形態において、前記レクチンは固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジは、前記固体担体上に固定または吸着された前記レクチンを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は、アガロース、珪藻土またはアミノセライトを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は珪藻土を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合したコロナウイルスのビリオンまたはその一部を単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合した、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームを単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記単離されたエクソソームの内容物を調べる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームは、miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pまたはその両方を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記治療の前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を観察もしくは測定する工程;または前記治療の前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量を測定する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(b)もしくは工程(c)またはその両方を行った患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記患者において、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸頻度、血液酸素飽和度、動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、肺浸潤、呼吸不全、フェリチン、乳酸、LDH、リンパ球絶対数(ALC)、血小板数、PT/INR比、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせの改善を判断する工程を含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記治療前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を観察する工程;または前記治療前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量を測定する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記COVID-19は、SARS-CoV-2変異株によって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2変異株は、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前に、抗凝固剤(好ましくはヘパリン)を用いて前記体外循環装置のプライミングを行うことによって血液凝固を予防する。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置内を流れる前記血液の流量は、約50~約600mL/分であり、好ましくは約200~約400mL/分であり、より好ましくは約200~約240mL/分、200~240mL/分、または240mL/分である。いくつかの実施形態において、前記血液を流す際、100ml/分の初期流量で開始され、200ml/分まで徐々に増加させる(例えば、5分間で段階的に増加させる)。いくつかの実施形態において、前記血液を前記患者に戻す工程は、前記体外循環装置に生理食塩水をフラッシュする工程を含む。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿と前記体外循環装置との接触時間は、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間である。いくつかの実施形態において、工程(a)、工程(b)および工程(c)ならびに任意の工程(d)を、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたって毎日繰り返し行う。いくつかの実施形態において、前記方法は、追加の抗ウイルス治療を前記患者に行う工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記追加の抗ウイルス治療は、ファビピラビル、ファビラビル、レムデシビル、トシリズマブ、ガリデシビル、サリルマブ、ロピナビル、リトナビル、ダルナビル、リバビリン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンα-2b、回復期血清またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0228】
さらに、いくつかの実施形態において、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者と比較して、対象(例えばCOVID-19患者)において循環インターロイキン6(IL-6)のレベルまたは量を減少させる方法を開示する。いくつかの実施形態において、この方法は、
(a)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームに結合するレクチン(例えば、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパズイセン凝集素(NPA)またはNostoc ellipsosporum由来シアノビリン)を含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
(b)前記体外循環装置において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
(c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してSARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
(d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方で前記患者から得た試料(例えば、血液試料、血漿試料など)において、IL-6のレベルまたは量を測定する工程;および
血漿試料または血液試料中のIL-6のレベルまたは量を減少させる治療を行うために、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して、COVID-19を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症に罹患していないが、コロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症から回復しているが、依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前の前記患者の血液または血漿にコロナウイルスが含まれていないが、前記患者は依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者が、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、93%以下の血液酸素飽和度、300未満の動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、50%を超える肺浸潤、24~48時間以内の呼吸不全、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせを有しているかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のIL-6のレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清IL-6レベルは2pg/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のDダイマーのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清D-Dダイマーレベルは500mg/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のトロポニンTのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清トロポニンTレベルは15ng/L以上である。好ましい実施形態のいくつかにおいて、前記レクチンはスノードロップ凝集素(GNA)である。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置は、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記血液または血漿は、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿中の細胞成分と前記レクチンが接触しないように、前記中空糸カートリッジの中空糸は、前記血液または血漿中の細胞成分を通さない細孔径を持つ。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、20~500nmまたは約20~500nmである。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、200nmまたは約200nmである。いくつかの実施形態において、前記レクチンは固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジは、前記固体担体上に固定または吸着された前記レクチンを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は、アガロース、珪藻土またはアミノセライトを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は珪藻土を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合したコロナウイルスのビリオンまたはその一部を単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合した、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームを単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記単離されたエクソソームの内容物を調べる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームは、miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pまたはその両方を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記治療の前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液)において、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を観察もしくは測定する工程;または前記治療の前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液)において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量を測定する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(b)もしくは工程(c)またはその両方を行った患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記患者において、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸頻度、血液酸素飽和度、動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、肺浸潤、呼吸不全、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせの改善を判断する工程を含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記治療前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を観察する工程;または前記治療前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量を測定する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記COVID-19は、SARS-CoV-2変異株によって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2変異株は、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前に、抗凝固剤(好ましくはヘパリン)を用いて前記体外循環装置のプライミングを行うことによって血液凝固を予防する。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置内を流れる前記血液の流量は、約50~約600mL/分であり、好ましくは約200~約400mL/分または200~240mL/分であり、最も好ましくは240mL/分である。いくつかの実施形態において、前記血液を流す際、100ml/分の初期流量で開始され、200ml/分まで徐々に増加させる(例えば、5分間で段階的に増加させる)。いくつかの実施形態において、前記血液を前記患者に戻す工程は、前記体外循環装置に生理食塩水をフラッシュする工程を含む。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿と前記体外循環装置との接触時間は、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間である。いくつかの実施形態において、工程(a)、工程(b)および工程(c)ならびに任意の工程(d)を、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたって毎日繰り返し行う。いくつかの実施形態において、前記方法は、追加の抗ウイルス治療を前記患者に行う工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記追加の抗ウイルス治療は、ファビピラビル、ファビラビル、レムデシビル、トシリズマブ、ガリデシビル、サリルマブ、ロピナビル、リトナビル、ダルナビル、リバビリン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンα-2b、回復期血清またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0229】
さらに、いくつかの実施形態において、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者と比較して、対象(例えばCOVID-19患者)において循環Dダイマーのレベルまたは量を減少させる方法を開示する。いくつかの実施形態において、この方法は、
(a)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームに結合するレクチン(例えば、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパズイセン凝集素(NPA)またはNostoc ellipsosporum由来シアノビリン)を含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
(b)前記体外循環装置において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
(c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してSARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
(d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方で前記患者から得た試料(例えば、血液試料、血漿試料など)において、Dダイマーのレベルまたは量を測定する工程;および
血液試料または血漿試料中のDダイマーのレベルまたは量を減少させる治療を行うために、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して、COVID-19を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症に罹患していないが、コロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症から回復しているが、依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前の前記患者の血液または血漿にコロナウイルスが含まれていないが、前記患者は依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者が、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、93%以下の血液酸素飽和度、300未満の動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、50%を超える肺浸潤、24~48時間以内の呼吸不全、フェリチン値の上昇、乳酸値の上昇、乳酸脱水素酵素(LDH)値の上昇、リンパ球絶対数(ALC)の減少、血小板数の減少、プロトロンビン時間国際標準比(PT/INR)の延長、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせを有しているかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のIL-6のレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清IL-6レベルは2pg/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のDダイマーのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清D-Dダイマーレベルは500ng/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のトロポニンTのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清トロポニンTレベルは15ng/L以上である。好ましい実施形態のいくつかにおいて、前記レクチンはスノードロップ凝集素(GNA)である。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置は、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記血液または血漿は、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿中の細胞成分と前記レクチンが接触しないように、前記中空糸カートリッジの中空糸は、前記血液または血漿中の細胞成分を通さない細孔径を持つ。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、20~500nmまたは約20~500nmである。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、200nmまたは約200nmである。いくつかの実施形態において、前記レクチンは固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジは、前記固体担体上に固定または吸着された前記レクチンを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は、アガロース、珪藻土またはアミノセライトを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は珪藻土を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合したコロナウイルスのビリオンまたはその一部を単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合した、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームを単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記単離されたエクソソームの内容物を調べる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームは、miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pまたはその両方を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記治療の前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液)において、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を観察もしくは測定する工程;または前記治療の前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液)において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量を測定する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(b)もしくは工程(c)またはその両方を行った患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記患者において、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸頻度、血液酸素飽和度、動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、肺浸潤、呼吸不全、フェリチン、乳酸、LDH、リンパ球絶対数(ALC)、血小板数、PT/INR比、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせの改善を判断する工程を含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記治療の前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液など)において、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を観察する工程;または前記治療の前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液など)において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量を測定する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記COVID-19は、SARS-CoV-2変異株によって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2変異株は、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前に、抗凝固剤(好ましくはヘパリン)を用いて前記体外循環装置のプライミングを行うことによって血液凝固を予防する。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置内を流れる前記血液の流量は、約50~約600mL/分であり、好ましくは約200~約400mL/分であり、好ましくは約200~約240mL/分または200~240mL/分、最も好ましくは240mL/分である。いくつかの実施形態において、前記血液を流す際、100ml/分の初期流量で開始され、200ml/分まで徐々に増加させる(例えば、5分間で段階的に増加させる)。いくつかの実施形態において、前記血液を前記患者に戻す工程は、前記体外循環装置に生理食塩水をフラッシュする工程を含む。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿と前記体外循環装置との接触時間は、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間である。いくつかの実施形態において、工程(a)、工程(b)および工程(c)ならびに任意の工程(d)を、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたって毎日繰り返し行う。いくつかの実施形態において、前記方法は、追加の抗ウイルス治療を前記患者に行う工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記追加の抗ウイルス治療は、ファビピラビル、ファビラビル、レムデシビル、トシリズマブ、ガリデシビル、サリルマブ、ロピナビル、リトナビル、ダルナビル、リバビリン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンα-2b、回復期血清またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0230】
さらに、いくつかの実施形態において、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者と比較して、COVID-19患者において循環トロポニンTのレベルまたは量を減少させる方法を開示する。いくつかの実施形態において、この方法は、
(a)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームに結合するレクチン(例えば、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパズイセン凝集素(NPA)またはNostoc ellipsosporum由来シアノビリン)を含む体外循環装置に、COVID-19感染患者から取り出した血液または血漿を導入する工程;
(b)前記体外循環装置において、SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
(c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してSARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19抗原含有エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
(d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方で前記患者から得た試料(例えば、血液試料、血漿試料など)において、トロポニンTのレベルまたは量を測定する工程;および
血液試料または血漿試料中のトロポニンTのレベルまたは量を減少させる治療を行うために、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して、COVID-19を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症に罹患していないが、コロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症から回復しているが、依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前の前記患者の血液または血漿にコロナウイルスが含まれていないが、前記患者は依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者が、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、93%以下の血液酸素飽和度、300未満の動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、50%を超える肺浸潤、24~48時間以内の呼吸不全、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせを有しているかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のIL-6のレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清IL-6レベルは2pg/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のDダイマーのレベルまたは量が上昇しているかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清D-Dダイマーレベルは500ng/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のトロポニンTのレベルまたは量が上昇しているかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清トロポニンTレベルは15ng/L以上である。好ましい実施形態のいくつかにおいて、前記レクチンはスノードロップ凝集素(GNA)である。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置は、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記血液または血漿は、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿中の細胞成分と前記レクチンが接触しないように、前記中空糸カートリッジの中空糸は、前記血液または血漿中の細胞成分を通さない細孔径を持つ。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、20~500nmまたは約20~500nmである。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、200nmまたは約200nmである。いくつかの実施形態において、前記レクチンは固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジは、前記固体担体上に固定または吸着された前記レクチンを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は、アガロース、珪藻土またはアミノセライトを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は珪藻土を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合したコロナウイルスのビリオンまたはその一部を単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合した、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームを単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記単離されたエクソソームの内容物を調べる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームは、miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pまたはその両方を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記治療の前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を観察もしくは測定する工程;または前記治療の前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量を測定する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(b)もしくは工程(c)またはその両方を行った患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記患者において、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸頻度、血液酸素飽和度、動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、肺浸潤、呼吸不全、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせの改善を判断する工程を含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記治療前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を観察する工程;または前記治療前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量を測定する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記COVID-19は、SARS-CoV-2変異株によって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2変異株は、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前に、抗凝固剤(好ましくはヘパリン)を用いて前記体外循環装置のプライミングを行うことによって血液凝固を予防する。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置内を流れる前記血液の流量は、約50~約600mL/分であり、好ましくは約200~約400mL/分または200~240mL/分であり、最も好ましくは240mL/分である。いくつかの実施形態において、前記血液を流す際、100ml/分の初期流量で開始され、200ml/分まで徐々に増加させる(例えば、5分間で段階的に増加させる)。いくつかの実施形態において、前記血液を前記患者に戻す工程は、前記体外循環装置に生理食塩水をフラッシュする工程を含む。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿と前記体外循環装置との接触時間は、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間である。いくつかの実施形態において、工程(a)、工程(b)および工程(c)ならびに任意の工程(d)を、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたって毎日繰り返し行う。いくつかの実施形態において、前記方法は、追加の抗ウイルス治療を前記患者に行う工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記追加の抗ウイルス治療は、ファビピラビル、ファビラビル、レムデシビル、トシリズマブ、ガリデシビル、サリルマブ、ロピナビル、リトナビル、ダルナビル、リバビリン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンα-2b、回復期血清またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0231】
さらに、いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の治療または抑制を必要とする患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症を治療または抑制する方法を開示する。いくつかの実施形態において、この方法は、
(a)コロナウイルスまたはその一部に結合するレクチン(例えば、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパズイセン凝集素(NPA)またはNostoc ellipsosporum由来シアノビリン)を含む体外循環装置に、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症を有する患者から取り出した、コロナウイルスまたはその一部を含む血液または血漿を導入する工程;
(b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中のコロナウイルスまたはその一部が前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
(c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してコロナウイルスまたはその一部の量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
(d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離したもの)、血液試料、血漿試料など)において、コロナウイルスもしくはその一部を検出もしくは同定する工程;および/または
コロナウイルスもしくはその一部を減少させる治療を行うために、コロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症に罹患していないが、コロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症から回復しているが、依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前の前記患者の血液または血漿にコロナウイルスが含まれていないが、前記患者は依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者が、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、93%以下の血液酸素飽和度、300未満の動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、50%を超える肺浸潤、24~48時間以内の呼吸不全、フェリチン値の上昇、乳酸値の上昇、乳酸脱水素酵素(LDH)値の上昇、リンパ球絶対数(ALC)の減少、血小板数の減少、プロトロンビン時間国際標準比(PT/INR)の延長、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせを有しているかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のIL-6のレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清IL-6レベルは2pg/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中の血清Dダイマーのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清D-Dダイマーレベルは500ng/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のトロポニンTのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清トロポニンTレベルは15ng/L以上である。好ましい実施形態のいくつかにおいて、前記レクチンはスノードロップ凝集素(GNA)である。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置は、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記血液または血漿は、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿中の細胞成分と前記レクチンが接触しないように、前記中空糸カートリッジの中空糸は、前記血液または血漿中の細胞成分を通さない細孔径を持つ。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、20~500nmまたは約20~500nmである。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、200nmまたは約200nmである。いくつかの実施形態において、前記レクチンは固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジは、前記固体担体上に固定または吸着された前記レクチンを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は、アガロース、珪藻土またはアミノセライトを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は珪藻土を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合したコロナウイルスのビリオンまたはその一部を単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合した、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームを単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記単離されたエクソソームの内容物を調べる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームは、miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pまたはその両方を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料もしくは血漿試料におけるコロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料もしくは血漿試料と比較して観察もしくは測定する工程;または工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料もしくは血漿試料中のIL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせの相対レベルもしくは相対量を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料もしくは血漿試料に対して測定する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(b)もしくは工程(c)またはその両方を行った患者において、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記患者において、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸頻度、血液酸素飽和度、動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、肺浸潤、呼吸不全、フェリチン、乳酸、LDH、リンパ球絶対数(ALC)、血小板数、PT/INR比、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせの改善を判断する工程を含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記治療前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を観察する工程;または前記治療前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量を測定する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoV、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV NL63およびHCoV-HKU1から選択されるコロナウイルスによって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2はSARS-CoV-2変異株である。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2変異株は、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される。いくつかの実施形態において、前記症状または後遺症は、前記患者におけるEBVの再活性化を含む。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前に、抗凝固剤(好ましくはヘパリン)を用いて前記体外循環装置のプライミングを行うことによって血液凝固を予防する。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置内を流れる前記血液の流量は、約50~約600mL/分であり、好ましくは約200~約400mL/分であり、好ましくは約200~約240mL/分または200~240mL/分、最も好ましくは240mL/分である。いくつかの実施形態において、前記血液を前記患者に戻す工程は、前記体外循環装置に生理食塩水をフラッシュする工程を含む。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿と前記体外循環装置との接触時間は、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間である。いくつかの実施形態において、工程(a)、工程(b)および工程(c)ならびに任意の工程(d)を、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたって毎日繰り返し行う。いくつかの実施形態において、前記方法は、追加の抗ウイルス治療を前記患者に行う工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記追加の抗ウイルス治療は、ファビピラビル、ファビラビル、レムデシビル、トシリズマブ、ガリデシビル、サリルマブ、ロピナビル、リトナビル、ダルナビル、リバビリン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンα-2b、回復期血清またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0232】
さらに、いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の治療または抑制を必要とする患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症を治療または抑制する方法を開示する。いくつかの実施形態において、この方法は、
(a)コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームに結合するレクチンを含む体外循環装置に、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症を有する患者から取り出した、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームを含む血液または血漿を導入する工程;
(b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中の前記エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
(c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較して前記エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
(d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、前記エクソソームを検出もしくは同定する工程;および/または
前記エクソソームを減少させる治療を行うために、コロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症に罹患していないが、コロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症から回復しているが、依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前の前記患者の血液または血漿にコロナウイルスが含まれていないが、前記患者は依然としてコロナウイルス感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者が、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、93%以下の血液酸素飽和度、300未満の動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、50%を超える肺浸潤、呼吸不全、フェリチン値の上昇、乳酸値の上昇、乳酸脱水素酵素(LDH)値の上昇、リンパ球絶対数(ALC)の減少、血小板数の減少、プロトロンビン時間国際標準比(PT/INR)の延長、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせを有しているかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のIL-6のレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清IL-6レベルは2pg/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のDダイマーのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清D-Dダイマーレベルは500ng/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のトロポニンTのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清トロポニンTレベルは15ng/L以上である。好ましい実施形態のいくつかにおいて、前記レクチンはスノードロップ凝集素(GNA)である。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置は、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記血液または血漿は、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿中の細胞成分と前記レクチンが接触しないように、前記中空糸カートリッジの中空糸は、前記血液または血漿中の細胞成分を通さない細孔径を持つ。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、20~500nmまたは約20~500nmである。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、200nmまたは約200nmである。いくつかの実施形態において、前記レクチンは固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジは、前記固体担体上に固定または吸着された前記レクチンを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は、アガロース、珪藻土またはアミノセライトを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は珪藻土を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合したコロナウイルスのビリオンまたはその一部を単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合した、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームを単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記単離されたエクソソームの内容物を調べる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームは、miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pまたはその両方を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料もしくは血漿試料におけるコロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料もしくは血漿試料と比較して観察もしくは測定する工程;または工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料もしくは血漿試料中のIL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせの相対レベルもしくは相対量を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料もしくは血漿試料に対して測定する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(b)もしくは工程(c)またはその両方を行った患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記患者において、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸頻度、血液酸素飽和度、動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、肺浸潤、呼吸不全、フェリチン、乳酸、LDH、リンパ球絶対数(ALC)、血小板数、PT/INR比、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせの改善を判断する工程を含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記患者において、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を、治療前と比較して観察する工程;または前記患者において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせの相対レベルもしくは相対量を、治療前に対して測定する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoV、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV NL63およびHCoV-HKU1から選択されるコロナウイルスによって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2はSARS-CoV-2変異株である。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2変異株は、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される。いくつかの実施形態において、前記症状または後遺症は、前記患者におけるEBVの再活性化を含む。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前に、抗凝固剤(好ましくはヘパリン)を用いて前記体外循環装置のプライミングを行うことによって血液凝固を予防する。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置内を流れる前記血液の流量は、約50~約600mL/分であり、好ましくは約200~約400mL/分であり、好ましくは約200~約240mL/分または20~240mL/分であり、最も好ましくは240mL/分である。いくつかの実施形態において、前記血液を前記患者に戻す工程は、前記体外循環装置に生理食塩水をフラッシュする工程を含む。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿と前記体外循環装置との接触時間は、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間である。いくつかの実施形態において、工程(a)、工程(b)および工程(c)ならびに任意の工程(d)を、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたって毎日繰り返し行う。いくつかの実施形態において、前記方法は、追加の抗ウイルス治療を前記患者に行う工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記追加の抗ウイルス治療は、ファビピラビル、ファビラビル、レムデシビル、トシリズマブ、ガリデシビル、サリルマブ、ロピナビル、リトナビル、ダルナビル、リバビリン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンα-2b、回復期血清またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0233】
さらに、いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の治療または抑制を必要とする患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症を治療または抑制する方法であって、前記症状もしくは後遺症がCOVID-19関連凝固異常症(CAC)を含むことを特徴とする方法を開示する。いくつかの実施形態において、前記方法は、より広い意味では、凝固異常症(CAC)の治療または抑制を必要とする患者において、凝固異常症(CAC)を治療または抑制する方法である。いくつかの実施形態において、この方法は、
(a)ウイルス感染症(例えばCOVID-19)もしくは細菌感染症またはその症状もしくは後遺症(例えばCAC)に関連するエクソソームに結合するレクチン(例えば、GNA、NPAまたはシアノビリン)を含む体外循環装置に、ウイルス感染症(例えばCOVID-19)もしくは細菌感染症またはその症状もしくは後遺症(例えばCAC)を有する患者から取り出した、ウイルス感染症(例えばCOVID-19)もしくは細菌感染症またはその症状もしくは後遺症(例えばCAC)に関連するエクソソームを含む血液または血漿を導入する工程;
(b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中の前記エクソソームが前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
(c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較して前記エクソソームの量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
(d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、前記エクソソームを検出もしくは同定する工程;および/または
前記エクソソームを減少させる治療を行うために、ウイルス感染症(例えばCOVID-19)もしくは細菌感染症またはその症状もしくは後遺症(例えばCAC)を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にウイルス感染症(例えばCOVID-19)または細菌感染症に罹患していないが、ウイルス感染症(例えばCOVID-19)または細菌感染症の症状または後遺症(例えばCAC)を呈している。いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前に前記感染症から回復しているが、依然として前記感染症の症状または後遺症(例えばCAC)を呈している。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前の前記患者の血液または血漿にウイルス(例えばCOVID-19)または細菌が含まれていないが、前記患者は依然として前記感染症の症状または後遺症(例えばCAC)を呈している。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者が、CAC、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、93%以下の血液酸素飽和度、300未満の動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、50%を超える肺浸潤、24~48時間以内の呼吸不全、フェリチン値の上昇、乳酸値の上昇、乳酸脱水素酵素(LDH)値の上昇、リンパ球絶対数(ALC)の減少、血小板数の減少、プロトロンビン時間国際標準比(PT/INR)の延長、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせを有しているかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者がCACを有しているかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のIL-6のレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清IL-6レベルは2pg/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のDダイマーのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清D-Dダイマーレベルは500ng/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のトロポニンTのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清トロポニンTレベルは15ng/L以上である。好ましい実施形態のいくつかにおいて、前記レクチンはスノードロップ凝集素(GNA)である。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置は、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記血液または血漿は、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿中の細胞成分と前記レクチンが接触しないように、前記中空糸カートリッジの中空糸は、前記血液または血漿中の細胞成分を通さない細孔径を持つ。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、20~500nmまたは約20~500nmである。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、200nmまたは約200nmである。いくつかの実施形態において、前記レクチンは固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジは、前記固体担体上に固定または吸着された前記レクチンを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は、アガロース、珪藻土またはアミノセライトを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は珪藻土を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合したコロナウイルスのビリオンまたはその一部を単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合した、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症(例えばCAC)に関連するエクソソームを単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記単離されたエクソソームの内容物を調べる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症(例えばCAC)に関連するエクソソームは、miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pまたはその両方を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料もしくは血漿試料におけるコロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料もしくは血漿試料と比較して観察もしくは測定する工程;または工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料もしくは血漿試料中のIL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせの相対レベルもしくは相対量を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料に対して測定する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(b)もしくは工程(c)またはその両方を行った患者において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症(例えばCAC)の改善を観察する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症(例えばCAC)の改善を観察する前記工程は、前記患者において、CAC、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸頻度、血液酸素飽和度、動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、肺浸潤、呼吸不全、フェリチン、乳酸、LDH、リンパ球絶対数(ALC)、血小板数、PT/INR比、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせの改善を判断する工程を含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症(例えばCAC)の改善を観察する前記工程は、前記患者において、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を、治療前と比較して観察する工程;または前記患者において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせの相対レベルもしくは相対量を、治療前に対して測定する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoV、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV NL63およびHCoV-HKU1から選択されるコロナウイルスによって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2はSARS-CoV-2変異株である。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2変異株は、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される。いくつかの実施形態において、前記症状または後遺症は、前記患者におけるEBVの再活性化を含む。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前に、抗凝固剤(好ましくはヘパリン)を用いて前記体外循環装置のプライミングを行うことによって血液凝固を予防する。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置内を流れる前記血液の流量は、約50~約600mL/分であり、好ましくは約200~約400mL/分であり、好ましくは約200~約240mL/分または200~240mL/分、最も好ましくは240mL/分である。いくつかの実施形態において、前記血液を前記患者に戻す工程は、前記体外循環装置に生理食塩水をフラッシュする工程を含む。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿と前記体外循環装置との接触時間は、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間である。いくつかの実施形態において、工程(a)、工程(b)および工程(c)ならびに任意の工程(d)を、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたって毎日繰り返し行う。いくつかの実施形態において、前記方法は、追加の抗ウイルス治療を前記患者に行う工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記追加の抗ウイルス治療は、ファビピラビル、ファビラビル、レムデシビル、トシリズマブ、ガリデシビル、サリルマブ、ロピナビル、リトナビル、ダルナビル、リバビリン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンα-2b、回復期血清またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0234】
さらに、本明細書において、COVID-19患者においてSARS-CoV-2ビリオンまたはその断片の量を減少させる方法を開示する。いくつかの実施形態において、この方法は、
(a)SARS-CoV-2ビリオンまたはその断片の外表面に選択的に結合するレクチンを含む中空糸カートリッジを含む体外循環装置を提供する工程;
(b)COVID-19患者から血液を取り出す工程;
(c)前記血液を前記レクチンに接触させることによって、前記中空糸カートリッジにおいて前記血液を処理する工程;
(d)SARS-CoV-2ビリオンまたはその断片の少なくとも一部を前記中空糸カートリッジに保持することによって、前記血液中のSARS-CoV-2ビリオンまたはその断片の少なくとも一部を減少させる工程;および
(e)SARS-CoV-2ビリオンまたはその断片の少なくとも一部が除去された血液を前記患者に再導入する工程
を含む。
いくつかの実施形態において、前記レクチンはGNAである。
【0235】
さらに、本明細書において、COVID-19患者において、COVID-19媒介ナノ粒子の量を減少させる方法を開示する。いくつかの実施形態において、この方法は、
(a)COVID-19媒介ナノ粒子の外表面に選択的に結合するレクチンを含む中空糸カートリッジを含む体外循環装置を提供する工程;
(b)COVID-19患者から血液を取り出す工程;
(c)前記血液を前記レクチンに接触させることによって、前記中空糸カートリッジにおいて前記血液を処理する工程;
(d)COVID-19媒介ナノ粒子の少なくとも一部を前記中空糸カートリッジに保持することによって、前記血液中のCOVID-19媒介ナノ粒子の少なくとも一部を減少させる工程;および
(e)COVID-19媒介ナノ粒子の少なくとも一部が除去された血液を前記患者に再導入する工程
を含む。
いくつかの実施形態において、前記レクチンはGNAである。
【0236】
さらに、本明細書において、COVID-19患者において、COVID-19媒介エクソソームの量を減少させる方法を開示する。いくつかの実施形態において、この方法は、
(a)COVID-19媒介エクソソームの外表面に選択的に結合するレクチンを含む中空糸カートリッジを含む体外循環装置を提供する工程;
(b)COVID-19患者から血液を取り出す工程;
(c)前記血液を前記レクチンに接触させることによって、前記中空糸カートリッジにおいて前記血液を処理する工程;
(d)COVID-19媒介エクソソームの少なくとも一部を前記中空糸カートリッジに保持することによって、前記血液中のCOVID-19媒介エクソソームの少なくとも一部を減少させる工程;および
(e)COVID-19媒介エクソソームの少なくとも一部が除去された血液を前記患者に再導入する工程
を含む。
いくつかの実施形態において、前記レクチンはGNAである。
【0237】
さらに、本明細書において、COVID-19患者におけるIL-6の量を減少させる方法を開示する。いくつかの実施形態において、この方法は、
(a)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19媒介エクソソームの外表面に選択的に結合するレクチンを含む中空糸カートリッジを含む体外循環装置を提供する工程;
(b)COVID-19患者から血液を取り出す工程;
(c)前記血液中のIL-6のレベルを測定する工程;
(d)前記血液を前記レクチンに接触させることによって、前記中空糸カートリッジにおいて前記血液を処理する工程;
(e)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19媒介エクソソームの少なくとも一部を前記中空糸カートリッジに保持することによって、前記血液中のCOVID-19媒介エクソソームの少なくとも一部を減少させる工程;
(f)前記血液中のIL-6のレベルを測定する工程;および
(g)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19媒介エクソソームの少なくとも一部が除去された血液を前記患者に再導入する工程
を含む。
いくつかの実施形態において、前記レクチンはGNAである。
【0238】
さらに、本明細書において、COVID-19患者において、Dダイマーの量を減少させる方法を開示する。いくつかの実施形態において、この方法は、
(a)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19媒介エクソソームの外表面に選択的に結合するレクチンを含む中空糸カートリッジを含む体外循環装置を提供する工程;
(b)COVID-19患者から血液を取り出す工程;
(c)前記血液中のDダイマーのレベルを測定する工程;
(d)前記血液を前記レクチンに接触させることによって、前記中空糸カートリッジにおいて前記血液を処理する工程;
(e)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19媒介エクソソームの少なくとも一部を前記中空糸カートリッジに保持することによって、前記血液中のCOVID-19媒介エクソソームの少なくとも一部を減少させる工程;
(f)前記血液中のDダイマーのレベルを測定する工程;および
(g)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19媒介エクソソームの少なくとも一部が除去された血液を前記患者に再導入する工程
を含む。
いくつかの実施形態において、前記レクチンはGNAである。
【0239】
さらに、本明細書において、COVID-19患者におけるトロポニンTの量を減少させる方法を開示する。いくつかの実施形態において、この方法は、
(a)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19媒介エクソソームの外表面に選択的に結合するレクチンを含む中空糸カートリッジを含む体外循環装置を提供する工程;
(b)COVID-19患者から血液を取り出す工程;
(c)前記血液中のトロポニンTのレベルを測定する工程;
(d)前記血液を前記レクチンに接触させることによって、前記中空糸カートリッジにおいて前記血液を処理する工程;
(e)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19媒介エクソソームの少なくとも一部を前記中空糸カートリッジに保持することによって、前記血液中のCOVID-19媒介エクソソームの少なくとも一部を減少させる工程;
(f)前記血液中のトロポニンTのレベルを測定する工程;および
(g)SARS-CoV-2ビリオンもしくはその断片またはCOVID-19媒介エクソソームの少なくとも一部が除去された血液を前記患者に再導入する工程
を含む。
いくつかの実施形態において、前記レクチンはGNAである。
【0240】
さらに、本明細書において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の治療または抑制を必要とする患者において、これらの治療または抑制に使用するための、レクチンを含む体外循環装置;またはIL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンTまたはこれらの任意の組み合わせのレベルまたは量の減少を必要とする患者において、これらのレベルまたは量の減少に使用するための、レクチンを含む体外循環装置を開示する。さらに、本明細書において、COVID-19関連凝固異常症の治療または抑制を必要とする患者においてCOVID-19関連凝固異常症の治療または抑制に使用するための、レクチンを含む体外循環装置を開示する。さらに、本明細書において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の治療または抑制を必要とする患者において、これらを治療または抑制する方法で使用するための、レクチンを含む体外循環装置であって、前記方法が、前記患者から取り出した血液を前記体外循環装置に流すことにより、該血液をレクチンに接触させて、処理された血液を得る工程;および前記処理された血液を前記患者に戻す工程を含むことを特徴とする体外循環装置を開示する。好ましい実施形態のいくつかにおいて、前記レクチンはスノードロップ凝集素(GNA)である。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置は、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記患者の血液は、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる。いくつかの実施形態において、前記レクチンは固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジは、前記固体担体上に固定または吸着された前記レクチンを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は、アガロース、珪藻土またはアミノセライトである。いくつかの実施形態において、前記固体担体は珪藻土である。いくつかの実施形態において、前記レクチンは、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部、コロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソーム、またはこれらの任意の組み合わせに選択的に結合する。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoV、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV NL63およびHCoV-HKU1から選択されるコロナウイルスによって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2はSARS-CoV-2変異株である。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2変異株は、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される。いくつかの実施形態において、前記症状または後遺症は、前記患者におけるEBVの再活性化を含む。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置の使用時間は、1回あたり、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間である。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置は、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたって毎日使用される。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置は、追加の抗ウイルス治療を併用して使用される。いくつかの実施形態において、前記追加の抗ウイルス治療は、ファビピラビル、ファビラビル、レムデシビル、トシリズマブ、ガリデシビル、サリルマブ、ロピナビル、リトナビル、ダルナビル、リバビリン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンα-2b、回復期血清またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0241】
EBVの再活性化を治療するための治療方法または使用
COVID-19患者全体の半数以上は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)の再活性化が陽性であることが判明しており、EBVの再活性化は、COVID-19の急性後遺症と急性感染後後遺症の両方において、幅広い有害な臨床徴候に関連している。急性COVID-19感染症におけるEBVウイルス血症は、COVID-19の急性感染後後遺症の発症に関連する4つの因子のうちの1つであった。EBVの再活性化は、COVID疾患の重症度を決定する主要な因子のうちの1つであるという仮説が立てられており、EBVとCOVID-19の重複感染を有する患者は、感染症と発熱の重症度が有意に増悪することが判明している。入院患者では、ICUに入院後のCOVID患者の80%以上において、EBVの再活性化が検出されており、EBVの再活性化は、ICU滞在日数の延長に関連していた。COVID-19患者の血清中では、循環EBVビリオンDNAが検出される可能性があり、循環EBVビリオンDNAは、再活性化を示すマーカーとしてEBV IgM抗体の検出よりも信頼性が高い。
【0242】
本明細書では、いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症を有する患者において、エプスタイン・バーウイルス(EBV)の再活性化の治療またはEBV感染症の軽減もしくは抑制を行う方法を開示する。いくつかの実施形態において、この方法は、
(a)コロナウイルスまたはその一部とEBVまたはその一部に結合するレクチン(例えば、スノードロップ凝集素(GNA)、ラッパズイセン凝集素(NPA)またはNostoc ellipsosporum由来シアノビリン)を含む体外循環装置に、コロナウイルス感染症を有する患者から取り出した、コロナウイルスまたはその一部とEBVまたはその一部を含む血液または血漿を導入する工程;
(b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中のコロナウイルスまたはその一部とEBVまたはその一部が前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
(c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してコロナウイルスまたはその一部とEBVまたはその一部の量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
(d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、コロナウイルスもしくはその一部および/もしくはEBVもしくはその一部を検出もしくは同定する工程;ならびに/または
コロナウイルスもしくはその一部および/もしくはEBVもしくはその一部を減少させる治療を行うために、コロナウイルス感染症および/もしくはEBV感染症を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症および/またはEBV感染症に罹患していないが、コロナウイルス感染症および/またはEBV感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にコロナウイルス感染症および/またはEBV感染症から回復しているが、依然としてコロナウイルス感染症および/またはEBV感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前の前記患者の血液または血漿にコロナウイルスおよび/またはEBVが含まれていないが、前記患者は依然としてコロナウイルス感染症および/またはEBV感染症の症状または後遺症を呈している。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者が、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、93%以下の血液酸素飽和度、300未満の動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、50%を超える肺浸潤、24~48時間以内の呼吸不全、フェリチン値の上昇、乳酸値の上昇、乳酸脱水素酵素(LDH)値の上昇、リンパ球絶対数(ALC)の減少、血小板数の減少、プロトロンビン時間国際標準比(PT/INR)の延長、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせを有しているかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のIL-6のレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清IL-6レベルは2pg/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中の血清Dダイマーのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清D-Dダイマーレベルは500ng/mL以上である。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(a)の前もしくは工程(b)の後またはその両方において、前記患者の血液試料または血漿試料中のトロポニンTのレベルまたは量が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症もしくはそれに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して上昇しているのかどうかを判断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上昇した血清トロポニンTレベルは15ng/L以上である。好ましい実施形態のいくつかにおいて、前記レクチンはスノードロップ凝集素(GNA)である。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置は、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記血液または血漿は、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿中の細胞成分と前記レクチンが接触しないように、前記中空糸カートリッジの中空糸は、前記血液または血漿中の細胞成分を通さない細孔径を持つ。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、20~500nmまたは約20~500nmである。いくつかの実施形態において、前記細孔径は、200nmまたは約200nmである。いくつかの実施形態において、前記レクチンは固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジは、前記固体担体上に固定または吸着された前記レクチンを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は、アガロース、珪藻土またはアミノセライトを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は珪藻土を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合したコロナウイルスのビリオンもしくはその一部および/またはEBVもしくはその一部を単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合した、コロナウイルス感染症および/またはEBV感染症に関連するエクソソームを単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記単離されたエクソソームの内容物を調べる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルス感染症および/またはEBV感染症に関連するエクソソームは、miR-424-5pもしくはmiR-16-2-3pまたはその両方を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料もしくは血漿試料におけるコロナウイルスのビリオンもしくはその一部および/もしくはEBVもしくはその一部の数の減少、またはコロナウイルス感染症および/もしくはEBV感染症に関連するエクソソームの数の減少を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料もしくは血漿試料と比較して観察もしくは測定する工程;または工程(b)の後に得られた前記患者の血液試料もしくは血漿試料中のIL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせの相対レベルもしくは相対量を、工程(b)の前に得られた該患者の血液試料もしくは血漿試料に対して測定する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、工程(b)もしくは工程(c)またはその両方において、前記患者のコロナウイルス感染症および/またはEBV感染症が、対照のレベルまたは量(例えば、炎症もしくはCOVID-19感染症および/もしくはEBV感染症もしくはこれらに関連する後遺症を経験していない患者または健常な患者から得られた血液試料または血漿試料中でのレベルまたは量)と比較して改善しているのかどうかを観察する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記患者において、早期の急性肺障害(ALI)、早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸頻度、血液酸素飽和度、動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、肺浸潤、呼吸不全、フェリチン、乳酸、LDH、リンパ球絶対数(ALC)、血小板数、PT/INR比、敗血症性ショック、もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全、またはこれらの任意の組み合わせの改善を判断する工程を含む。いくつかの実施形態において、コロナウイルス感染症またはその症状もしくは後遺症の改善を観察する前記工程は、前記治療前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部の数の減少、もしくはコロナウイルス感染症もしくはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームの数の減少を観察する工程;または前記治療前もしくはその後もしくはその両方で前記患者から得られた生体試料(例えば血液や血漿)において、IL-1、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2、ミエロペルオキシダーゼ、VCAM-1、TNFα、C反応性タンパク質(CRP)、DダイマーもしくはトロポニンT、もしくはこれらの任意の組み合わせのレベルもしくは量を測定する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoV、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV NL63およびHCoV-HKU1から選択されるコロナウイルスによって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2はSARS-CoV-2変異株である。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2変異株は、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される。いくつかの実施形態において、前記症状または後遺症は、前記患者におけるEBVの再活性化を含む。いくつかの実施形態において、工程(a)を行う前に、抗凝固剤(好ましくはヘパリン)を用いて前記体外循環装置のプライミングを行うことによって血液凝固を予防する。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置内を流れる前記血液の流量は、約50~約600mL/分であり、好ましくは約200~約400mL/分であり、好ましくは約200~約240mL/分または200~240mL/分、最も好ましくは240mL/分である。いくつかの実施形態において、前記血液を前記患者に戻す工程は、前記体外循環装置に生理食塩水をフラッシュする工程を含む。いくつかの実施形態において、前記血液または血漿と前記体外循環装置との接触時間は、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間である。いくつかの実施形態において、工程(a)、工程(b)および工程(c)ならびに任意の工程(d)を、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたって毎日繰り返し行う。いくつかの実施形態において、前記方法は、追加の抗ウイルス治療を前記患者に行う工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記追加の抗ウイルス治療は、ファビピラビル、ファビラビル、レムデシビル、トシリズマブ、ガリデシビル、サリルマブ、ロピナビル、リトナビル、ダルナビル、リバビリン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンα-2b、回復期血清またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0243】
さらに、本明細書において、コロナウイルス感染症を有する患者においてEBVの再活性化の治療または抑制に使用するための、レクチンを含む体外循環装置を開示する。好ましい実施形態のいくつかにおいて、前記レクチンはスノードロップ凝集素(GNA)である。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置は、前記レクチンを含む中空糸カートリッジを含み、前記患者の血液は、前記中空糸カートリッジの中空糸を通って流れる。いくつかの実施形態において、前記レクチンは固体担体上に固定または吸着されており、前記中空糸カートリッジは、前記固体担体上に固定または吸着された前記レクチンを含む。いくつかの実施形態において、前記固体担体は、アガロース、珪藻土またはアミノセライトである。いくつかの実施形態において、前記固体担体は珪藻土である。いくつかの実施形態において、前記レクチンは、コロナウイルスのビリオンもしくはその一部および/もしくはEBVもしくはその一部、コロナウイルス感染症および/もしくはEBV感染症に関連するエクソソーム、またはこれらの任意の組み合わせに選択的に結合する。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoV、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV NL63およびHCoV-HKU1から選択されるコロナウイルスによって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2はSARS-CoV-2変異株である。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2変異株は、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される。いくつかの実施形態において、前記症状または後遺症は、前記患者におけるEBVの再活性化を含む。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置の使用時間は、1回あたり、0.1時間、0.2時間、0.3時間、0.4時間、0.5時間、0.6時間、0.7時間、0.8時間、0.9時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間もしくは10時間、またはこれらの時間のいずれか2つを上下限とする範囲内の時間である。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置は、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間または15日間にわたり毎日使用される。いくつかの実施形態において、前記体外循環装置は、追加の抗ウイルス治療とともに使用される。いくつかの実施形態において、前記追加の抗ウイルス治療は、ファビピラビル、ファビラビル、レムデシビル、トシリズマブ、ガリデシビル、サリルマブ、ロピナビル、リトナビル、ダルナビル、リバビリン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンα-2b、回復期血清またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0244】
本明細書においてさらに開示されているように、本明細書に開示の体外循環装置は、コロナウイルス感染症によって引き起こされたEBVだけでなく、その他の理由によって引き起こされたEBVの治療に使用してもよい。
【0245】
本明細書において、EBV感染症の治療または軽減もしくは抑制を必要とする患者において、EBV感染症の治療またはEBV感染症の軽減もしくは抑制を行う方法が提供される。いくつかの実施形態において、この方法は、
a)EBVまたはその一部に結合するレクチンを含む体外循環装置に、患者から取り出した、EBVまたはその一部を含む血液または血漿を導入する工程;
b)前記体外循環装置において、前記血液または血漿中のEBVまたはその一部が前記レクチンに結合するのに十分な時間をかけて、前記患者の血液または血漿を前記レクチンに接触させる工程;および
c)工程(b)を行ったことから、工程(b)を行う前の前記患者の血液または血漿と比較してEBVまたはその一部の量が減少した血液または血漿を前記患者に戻す工程
を含み、
d)工程(a)の前もしくは工程(b)の後もしくはその両方で前記患者から得た試料(例えば、鼻腔試料(例えば、鼻腔スワブから分離した鼻腔試料)、血液試料、血漿試料など)において、EBVもしくはその一部を検出もしくは同定する工程;および/または
EBVもしくはその一部を減少させる治療を行うために、EBV感染症を有する患者を選択もしくは特定する工程
を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、前記患者は、再活性化して活動性EBV感染症を発症した潜伏EBV感染を有する。いくつかの実施形態において、前記患者は、工程(a)の前にEBV感染症の症状を示している。いくつかの実施形態において、前記患者のEBV感染症は、細菌の重複感染またはウイルスの重複感染によって誘発されたものであり、コロナウイルスの重複感染によって誘発されたものであってもよい。いくつかの実施形態において、前記コロナウイルスの重複感染は、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1、MERS-CoV、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV NL63およびHCoV-HKU1から選択されるコロナウイルスによって引き起こされたものである。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2はSARS-CoV-2変異株である。いくつかの実施形態において、前記SARS-CoV-2変異株は、20I/501Y.V1(アルファ株、B.1.1.7)、20H/501Y.V2(ベータ株、B.1.351)、20J/501Y.V3(ガンマ株、P.1)、B.1.617.2(デルタ株)、AY.1、AY.2、C.37(ラムダ株)、B.1.621(ミュー株)、B.1.1.207、VUI-202102/03(B.1.525)、VUI-202101/01(P.2)、VUI-202102/01(A.23.1)、VUI 202102/04(B.1.1.318)、VUI 202103/01(B.1.324.1)、B.1.427、CAL.20C(B.1.429)、R.1、B.1.466.2、B.1.1.519、C.36.3、B.1.214.2、B.1.1.523、B.1.619、B.1.620、C.1.2、B.1.617.1、B.1.1.529(オミクロン株)およびB.1.526から選択される。いくつかの実施形態において、前記EBV感染症は、前記患者の多発性硬化症、自己免疫疾患または悪性がんに関連している。いくつかの実施形態において、前記悪性がんは、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、T/NK細胞リンパ腫、胃がん、乳がん、鼻咽腔がん、多形膠芽腫または移植後リンパ球増殖性疾患を含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合したEBVビリオンまたはその一部を単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記体外循環装置に含まれるレクチンに結合した、EBV感染症またはその症状もしくは後遺症に関連するエクソソームを単離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記単離されたエクソソームの内容物を調べる工程をさらに含む。本明細書に開示された体外循環装置および該体外循環装置の使用方法の実施形態を、この方法に使用してもよい。
【0246】
さらに、本明細書において、EBV感染症の治療を必要とする患者においてEBV感染症の治療に使用するための、レクチンを含む体外循環装置を開示する。いくつかの実施形態において、前記患者は、再活性化して活動性EBV感染症を発症した潜伏EBV感染を有する(すなわち、この活動性EBV感染症は、EBVの再活性化によって引き起こされたものである)。いくつかの実施形態において、前記患者におけるEBVの再活性化は、細菌の重複感染またはウイルスの重複感染によって誘発されたものであり、コロナウイルスの重複感染によって誘発されたものであってもよい。いくつかの実施形態において、前記EBV感染症は、前記患者の多発性硬化症、自己免疫疾患および/または悪性がんに関連している。いくつかの実施形態において、前記悪性がんは、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、T/NK細胞リンパ腫、胃がん、乳がん、鼻咽腔がん、多形膠芽腫または移植後リンパ球増殖性疾患を含む。本明細書に開示された体外循環装置および該体外循環装置の使用方法の実施形態を、この治療のための使用に使用してもよい。
【実施例
【0247】
以下の実施例において、前述した本発明の実施形態の態様のいくつかをさらに詳細に開示するが、以下の実施例は本発明の開示の範囲をなんら限定するものではない。本明細書および請求項で述べるように、その他の多くの実施形態も本発明の範囲内に含まれることを当業者であれば十分に理解できるであろう。
【0248】
実施例1:レクチンとアガロースからなる親和性マトリックスの調製の一例
本実施例は、臭化シアンを用いてアガロースに共有結合させたスノードロップ凝集素(GNA)を使用した親和性マトリックスの調製を示す。Cuatrecasasら(Cuatracasas et al. Proc Natl Acad Sci USA 61(2): 636-643, 1968)による方法に基本的に従って、臭化シアン(CNBr)で活性化したアガロースを直接カップリングに使用した。簡潔に述べると、CNBrで活性化したアガロース1ml(シグマ、ミズーリ州セントルイス)に10mg/ml GNAのNaHCO3(0.1M、pH9.5)溶液1mlを加え、冷却しながら一晩反応させる。反応終了後、未反応物を吸引除去し、レクチンとしてGNAを結合させたアガロースを、冷却した滅菌PBSでしっかり洗浄する。得られたレクチンとアガロースからなる親和性マトリックスを使用まで冷所に保存する。別の方法として、GNAアガロースはVector Laboratories社(カリフォルニア州バーリンゲーム)から販売されている市販品を使用することもできる。
【0249】
実施例2:レクチンとシリカからなる親和性マトリックスの調製の一例
本実施例は、シアノ水素化ホウ素による還元とシッフ塩基とを利用してガラスビーズに共有結合させたGNAを使用したレクチン含有親和性マトリックスの調製を示す。Hermanson(Hermanson. Bioconjugate Techniques: 785, 1996)による方法を一部変更して、レクチンとシリカからなる親和性マトリックスを調製した。GNA(レクチン)を0.1Mのホウ酸ナトリウム(pH9.5)に溶解して、最終濃度を10mg/mlとし、アルデヒドで誘導体化したシリカガラスビーズ(BioConnexant、テキサス州オースティン)に加えた。この反応はアルカリpHで行うと最も効率的であるが、本実施例ではpH7~9で行い、通常、カップリング部位に対して2~4倍の過剰量のGNAを使用して行う。得られた混合物に、カップリング反応液1mlあたり5M NaCNBH3のNaOH(1N)溶液10μl(アルドリッチ、ミズーリ州セントルイス)を加え、室温で2時間反応させた。反応が終了したら、反応液1mlあたり3Mエタノールアミン(pH9.5)20μlを使用して、シリカガラスの表面上の未反応のアルデヒドをキャッピングする。室温で15分間反応させた後、反応液をデカントして除去し、結合しなかったタンパク質と試薬をPBSでしっかり洗浄して除去した。得られたマトリックスを使用まで冷蔵庫で保存した。
【0250】
実施例3:レクチンとアミノセライトからなる親和性マトリックスの調製の一例
本実施例は、グルタルアルデヒドを使用して、アミノセライトに共有結合させたGNAの調製を示す。アミノセライトは、5%アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液中でセライト(珪藻土を含むケイ酸塩)を一晩反応させることによって調製した。アミノ化したセライトを水とエタノールで洗浄して過剰な試薬を除去し、一晩乾燥させて灰白色粉末を得た。得られた灰白色粉末1gを5mlの5%グルタルアルデヒド(シグマ)に懸濁し、30分間反応させた。懸濁液を濾過し、残存しているアルデヒドがシッフ試薬で検出されなくなるまで水で洗浄して、過剰なグルタルアルデヒドを除去した。次に、2~3mg/mlのGNAを含む5mlの水素化ホウ素カップリングバッファー(シグマ)に濾過ケーキを再懸濁し、室温で一晩放置して反応を進行させた。反応終了後、反応しなかったGNAを洗い流し、未反応のアルデヒドを前述のようにエタノールアミンでアミノ化した。最後に、滅菌PBSで洗浄を行った後、使用するまで冷所に保存した。
【0251】
実施例4:レクチンと珪藻土からなる親和性マトリックスの調製の一例
中空糸血漿交換カラム(PLASMART 60;Medica,srl、イタリア、メドッラ)の出口ポートに装着した漏斗から、GNAが固定された珪藻土(CHROMOSORB GAW 60/80;Celite Corporation、カリフォルニア州ロンポク)の乾燥粉末を中空糸血漿交換カラムの外側の区画に投入して、レクチンを含む親和性ウイルス血液透析装置を作製した。この乾燥粉末(40g)は、重力流下で導入し、振盪することによって、中空糸の外側の充填可能な空間に充填する。治療用途に使用する場合は、親和性樹脂を含むカートリッジをTYVEK輸送パウチに入れてヒートシールし、25~40kGyのγ線照射により滅菌する。次に、この製品サンプルの無菌性とエンドトキシンを試験し、FDAの標準に準拠していることを確認する。最終製品は、使用するまで、乾燥した冷所において室温で少なくとも6ヶ月間保存することができる。
【0252】
実施例5:レクチンを含む親和性マトリックスカートリッジの調製の一例
本実施例は、GNAをレクチンとして含む親和性血液透析装置の作製を示す。アガロースビーズまたはセライトに固定した粒子状のGNAを滅菌PBSバッファーに懸濁させたスラリーを、中空糸透析カラムの外側の区画にシリンジで注入することによって、ウイルス血液透析装置を作製した。15mlまでの血液試料では、Spectrum Labs社(カリフォルニア州ランチョ・ドミンゲス)から購入したルアーフィッティング(内径:200μm、外径:240μm、穴径:200~500nm、内部容積:約0.5ml)を装着したMicrokrosポリエーテルスルホン中空糸透析カートリッジを使用した。この親和性樹脂を含むカートリッジにカラム容量の5~10倍の滅菌PBSを送液して、カートリッジを平衡化した。
【0253】
実施例6:SARS-CoV-2のスパイクタンパク質へのレクチン(GNA)の結合
本発明の装置および方法によって、SARS-CoV-2のスパイク1(S1)糖タンパク質を捕捉して、試料から除去することができる。インビトロにおいて、SARS-COV-2のS1糖タンパク質を添加した溶液を小型カラム装置に充填し、連続的に循環させることにより実験を行った。簡潔に述べると、親和性樹脂0.7g(GNAとCHROMOSORB GAW 60/80を含む)を充填したHemopurifierに、1μg/mLのSARS-COV-2 S1(すなわち、SARS-CoV-2(2019-nCoV)Spike S1-His組換えタンパク質(HPLCで検証済み)、Sino Biological社、カタログNo.:40591-V08H)のリン酸緩衝食塩水溶液10mLを注入し、50mL/分の流量で循環させた。所定の時間間隔で流体試料を採取し、時間に対する溶液中の残存S1の割合として、ウイルスS1糖タンパク質の捕捉率を測定した。コントロールとして、実験台に静置したS1糖タンパク質(すなわち、カラム装置に流していないS1糖タンパク質)を使用した。図4に示すように、最初の15分間で除去された試験試料中のS1タンパク質の割合は90%を超え、カラム内を60分間流すことによってS1タンパク質が検出されなくなった。
【0254】
実施例7:GNAレクチンを含む親和性血液濾過装置を用いたCOVID-19の治療
本実施例は、COVID-19を治療するための臨床用血液濾過装置の使用方法に関する。SARS-CoV-2ウイルス疾患(COVID-19)の治療を目的として、COVID-19媒介ナノ粒子を捕捉して除去するためのレクチン含有親和性体外循環血液濾過装置の使用を評価するために臨床試験を行う。
【0255】
本発明の装置は、血漿交換カートリッジの長さ方向に沿って配置された中空糸同士の間の間隙にレクチンとしてスノードロップ凝集素(GNA)を導入した親和性マトリックスを含むように改良された単回使用中空糸血漿交換カートリッジである。この装置に血液を導入すると、対流と拡散によって血液中のエンベロープウイルスが公称細孔径200nmの中空糸の細孔を通して輸送され、親和性マトリックスに接触する。GNAによりウイルスが捕捉されて、循環系に戻ることを防ぐことができる。これと同時に、血液中の細胞成分は中空糸の内腔内に留まり、親和性マトリックスとは接触しない。この装置は、ダブルルーメン中心静脈カテーテルを用いて対象の循環系に接続され、標準的な透析設備を利用して作動させて、血液濾過を行う。
【0256】
この臨床試験の目的は、血液濾過装置の安全性を評価すること、RT-PCRにより血液中の循環ウイルス量の変化を評価すること、および使用した血液濾過カートリッジからウイルス粒子を溶出し、ウイルス量を測定することである。臨床アウトカムの評価には、生存率の評価、人工呼吸器の装着時間の評価、多臓器系不全の発生率の評価、ならびに炎症マーカー、凝固マーカーおよび組織損傷マーカーの測定が含まれる。
【0257】
以下の特徴を有する対象を臨床試験に登録する。早期の急性肺障害(ALI)または早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を特徴的な疾患として有し;かつ/または24~48時間以内に、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、93%以下の血液酸素飽和度、300未満の動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、および/もしくは50%を超える肺浸潤として定義される重症COVID-19疾患もしくはそのリスクを有し;かつ/または呼吸不全、敗血症性ショックおよび/もしくは多臓器機能障害もしくは多臓器不全として定義される生死にかかわる疾患を有し、COVID-19に罹患していると診断された対象を臨床試験に登録する。
【0258】
血液濾過装置により治療を行う前の患者の処置:血液試料を採取して、サイトカイン、炎症マーカー、凝固マーカー、および臓器損傷を示すその他の血液バイオマーカーを測定し、血球計数を行って、治療前の評価を実施する。また、治療前に得た血液試料を用いて、ウイルス成分の検出を行う。例えば、RT-PCRによりSARS-CoV-2 RNAを評価してもよい。さらに、治療を行う前に、別の血液試料を用いて患者の循環系に存在するエクソソームを評価し、治療後のエクソソームと比較してもよい。血液透析カテーテルを患者に挿入して治療の準備を行う。
【0259】
血液濾過装置の準備:
【0260】
体外循環回路を接続する。
【0261】
少なくとも2Lのプライミング溶液を使用して、体外循環回路のプライミングとリンスを行う。
【0262】
血液回路内での血液凝固を予防するため、必要に応じて、プライミング溶液1Lにヘパリンなどの抗凝固剤を加える。
【0263】
プライミングの初期流量は200~250mL/分とし、最大400~500ml/分で数分間プライミングを行うことによって、中空糸の内腔のせん断力を上昇させて微小気泡の除去を促す。この手順を実施することによって、穏やかに軽く叩くだけでチューブとカートリッジから気泡を取り除くことができる。
【0264】
治療:
【0265】
バスキュラーアクセスが確立された患者において血液濾過装置を使用するには、患者を透析装置に接続する。この透析装置のポンプによって送られた患者の血液がカートリッジの内部を流れ、精製された血液が患者に戻される。血流量は、通常、担当医師の判断に応じて200~400ml/分で維持される。血液凝固を予防するため、ヘパリンの注入が最もよく行われる。通常の処置時間は、透析患者では最長4時間である。治療の有効性を高めるために、処置時間を延長してもよい。処置の終了後、チューブとカートリッジ内の血液を滅菌生理食塩水で洗浄して患者に戻す。患者と透析装置の接続を解除し、汚染されたカートリッジと血液チューブを適切に処分する。
【0266】
透析装置による処置中に、活性化凝固時間(ACT)を測定して、凝固阻止をモニターする。
【0267】
治療後の処置:
【0268】
使用後の血液濾過装置を血液回路から取り外し、血液回路を生理食塩水でフラッシュして、カートリッジから流入した流体をできるだけ取り除く。
【0269】
使用済みの血液濾過装置は、透明なプラスチックパウチに入れて密封し、分析を行うために適切な検査施設に送付するまで冷凍庫で保管する。
【0270】
血液試料を患者から採取して、治療後のサイトカイン、炎症マーカー、臓器損傷を示すその他の血液バイオマーカーおよび血球計数を評価する。
【0271】
結果:
【0272】
前述の治療を受けたCOVID-19患者から採取した治療前の血液試料と治療後の血液試料を比べると、治療後の血液試料中のウイルスRNA量が有意に減少している。RT-PCRで測定したウイルスRNAに基づいてSARS-CoV-2を検出してもよい。また、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて、ウイルスタンパク質(例えば、スパイク(「S」)糖タンパク質またはヌクレオカプシドタンパク質)を検出および/または定量してもよい。SARS-CoV-2の1つ以上の保存されたエピトープに対して特異性を示す抗体を用いた血清学的アッセイを行って、ウイルスタンパク質を検出してもよい。
【0273】
血液濾過装置により捕捉されたウイルス成分を分析するために、ウイルス成分を測定するための前述の技術のいずれかを実施して(例えば、RT-PCRによりRNAを測定して)、患者の循環系から除去されたSARS-CoV-2を検出する。
【0274】
使用済みの血液濾過装置の分析結果から、血液濾過装置によって循環系からSARS-CoV-2が捕捉されたことが示される。
【0275】
血液濾過装置を用いた治療後に様々な時間間隔でCOVID-19患者から採取された血液試料から、Dダイマーとフィブリン分解産物のレベルが減少したことが示される。
【0276】
血液濾過装置を用いた治療後に様々な時間間隔でCOVID-19患者から採取された血液試料から、血液濾過装置を用いた治療の前と比べて、治療後のトロポニンTのレベルが減少したことが示される。
【0277】
治療前の血液試料を検査室で分析することによって、リンパ球減少症のエビデンスが示されることがあり、具体的には、末梢血中のT細胞とNK細胞の濃度が異常に低いことが示されてもよい。治療後の血液試料から、血液濾過装置による治療を行ってから数日後または数週間後に、総リンパ球、T細胞およびNK細胞の濃度が部分的または完全に回復したことが示される。
【0278】
検査室でELISAを用いて血清試料を分析することによって、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL-10および/またはCCL-2などのマーカーの濃度を定量する。検査室での評価には、全血球算定および白血球分画;LDH、フェリチンおよびC反応性タンパク質(CRP)を含む包括的代謝パネル;炎症性サイトカインおよびケモカイン(IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2)の濃度;ミエロペルオキシダーゼ;VCAM-1;LDH;DダイマーおよびPT-INR;鼻咽頭試料からのSARS-CoV-2の検出;血漿中のウイルス(SARS-CoV-2)RNAの定量;治療に使用したHemopurifierカートリッジ中のウイルス(SARS-CoV-2)RNAの定量が含まれる。血液濾過装置で治療を行ったCOVID-19患者は、血清中のIL-6、IL-10、IL-15、CXCL-10および/またはCCL-2の濃度が減少している。
【0279】
検査室でELISAを用いて血清試料を分析することによって、C反応性タンパク質(CRP)の濃度を定量する。血液濾過装置で治療を行ったCOVID-19患者は、血清中のCRPの濃度が減少している。
【0280】
血液濾過装置で前述の治療を行ったCOVID-19患者の臨床アウトカムは、臨床的指標の改善を示す。臨床的指標の改善には、胸部CTスキャンに基づく肺病変の減少または消散、人工呼吸器の装着時間の短縮、および多臓器不全の改善が含まれていてもよい。
【0281】
本発明の血液濾過装置およびその使用方法を利用することによって、人工呼吸器の装着時間を短縮することができ、急性呼吸窮迫症候群を発症する可能性を低下させることができ、不整脈や心不全などの心臓合併症を発症する可能性を低下させることができ、多臓器不全を発症する可能性を低下させることができ、急性腎疾患、敗血症および/またはその他の合併症の可能性を低下させることができる。例えば、全身炎症を伴う重症COVID-19の患者では、本発明の血液濾過装置およびその使用方法によって、サイトカイン(例えばIL-6)の産生またはその存在量を抑制または減少させることができる。
【0282】
本発明の血液濾過装置およびその使用方法を利用することによって、血中Dダイマー量の減少、プロトロンビン時間国際標準比(PT/INR)の短縮、および血小板数の増加が示されることから、COVID-19患者の凝固異常症を改善することができる。
【0283】
実施例8:レクチンを含む親和性マトリックスを用いた感染後患者の血液濾過による臨床状態の有意な改善
COVID-19に感染した患者は、重篤な持続性呼吸困難と40%~50%の酸素飽和度を示していた。患者は一向にして状態の改善を示さず、人工呼吸器で100%酸素投与を継続した。本明細書に開示されたレクチン(GNA)含有親和性マトリックスカートリッジ(担体としてCHROMOSORB GAW 60/80を使用)の患者への緊急使用が許可された。このレクチンカートリッジを用いて、200mL/分の流量で患者の全血液透析を1日6時間、計8日間行った。新しいカートリッジを毎日使用した。治療前と治療後に血液試料を採取した。1日目の治療前に採取した血液試料では、患者血漿をqPCRで検査したところ、循環COVID-19ウイルスによるウイルス血症は検出されなかった(図5)。1日目の治療では、血液凝固が生じたため治療を一旦中断したが、その後の治療では問題は認められなかった。血液濾過治療を行った後、酸素分圧(PaO2)が105mmHgとなって純酸素は不要となり、患者は顕著な回復を示した。
【0284】
患者から採取した血液試料とHemopurifierカートリッジの内容物を分析して、血液透析により患者から単離された成分を調べた。治療前に得た8つの血漿試料と治療後に得た8つの血漿試料(EDTA抗凝固剤を含む)を700μLずつbuffer AVL(キアゲン)に加えて核酸を単離し、ウイルスゲノムとmiRNAの検出に使用した。治療前の8つの血漿試料と治療後の8つの血漿試料(EDTA抗凝固剤を含む)から1mLずつ取り分けて、何も処理を加えずに保存し、無傷なエクソソームとエクソソームのカーゴ(タンパク質およびmiRNAを含む)の検出に使用した。使用済みのHemopurifierは、1)1M α-メチルマンノシド(a-MM;レクチンへの結合の競合物)で処理した後、2)TRIzol試薬(登録商標)(サーモフィッシャー)(残存核酸の遊離用)で処理して、レクチンであるGNAに結合した血液成分を溶出させた。各工程と4つのHemopurifierのそれぞれから約200mLの溶出液が得られた。
【0285】
患者のアウトカムの全体像と患者試料から得たエクソソームの分析結果を本実施例で示す。エクソソームの分析に関する追加の情報は、実施例9~10に示す。表1に患者のアウトカムの全体像をまとめた。
【0286】
1)治療の8日前(2020年7月30日)に、LDH値が2370U/Lであったことから患者が組織損傷を起こしているエビデンスが得られ、フェリチン値が3599.5ng/mlであったことから全身炎症のエビデンスが得られた。
【0287】
2)2020年8月1日(治療の6日前)に、Dダイマー値が7650ng/mlを超える値であったことから、患者が内皮損傷/凝固異常症を起こしているエビデンスが得られた。
【0288】
3)2020年8月3日(治療の4日前)に、乳酸値が3.6mmol/Lであったことから患者が組織低酸素症を起こしているエビデンスが得られた。
【0289】
4)総エクソソーム濃度は、治療前から治療後(治療の2~4日後)にかけて減少した。
【0290】
5)エクソソーム由来miRNAであるmiR-424とmiR-16は、治療終了後の最初の4日間で減少した。
【0291】
6)2020年8月7日(1日目、Hemopurifierによる治療の1日目)に、血小板数が115,000/μlという低い値を示し、PT-INRが1.2(13.6秒)に延長したことから、患者の内皮損傷/凝固異常症が持続しているエビデンスが得られた。また、PaO2/FIO2比が93であったことから(FIO2=0.70に対してPaO2=65mmHg)、患者が急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を起こしているエビデンスが得られた。さらに、IL-6値が641.7pg/mlであり、総白血球数が15,500/μlであったことから、患者が全身炎症を起こしているエビデンスが得られ、リンパ球絶対数が780/μlであったことから、患者がリンパ球減少症を起こしているエビデンスが得られた。
【0292】
7)2020年8月8日(2日目、Hemopurifierによる治療の2日目)に、PaO2/FIO2比は98になった(FIO2=1.0に対してPaO2=98mmHg)。患者の乳酸値は2.3mmol/lに低下した。
【0293】
8)2020年8月9日(3日目、Hemopurifierによる治療の3日目)に、PaO2/FIO2比は75.5になった(FIO2=0.90に対してPaO2=68mmHg)。
【0294】
9)2020年8月10日(4日目、Hemopurifierによる治療の4日目)に、PaO2/FIO2比は88.57になった(FIO2=0.70に対してPaO2=62mmHg)。
【0295】
10)2020年8月12日に、5日目の治療を行う前に、Dダイマー値が3703ng/mlに低下し、PT値が11.3秒(PT-INR 値1.0)に短縮し、血小板数が162,000/μlに改善したことから、患者においてCOVID-19誘発性凝固異常症が改善したというエビデンスが得られた。COVID-19関連血栓症では、miR-424レベルの増加が報告されていることから、Hemopurifierでエクソソーム由来miR-424が除去されたことが、COVID-19誘発性凝固異常症の改善に一定の役割を果たしたと考えられる。また、PaO2/FIO2比が136.25に上昇した(必要であったFIO2=0.80に対してPaO2=109mmHg)ことから、患者の肺機能が改善したことが示された。miR-16の増加はLPS誘発性急性肺障害との関連性が指摘されており、miR-424の増加はARDSとの関連性が指摘されている。これら2種のエクソソーム由来miRNAがHemopurifierによる治療により減少したことが、患者の循環系への酸素供給の改善に一定の役割を果たしたと考えられる。フェリチン値が622.4ng/mlに低下したことから、全身炎症の改善が認められ、リンパ球絶対数(ALC)が1180/μlに回復したことから、リンパ球減少症が消散したことが認められた。また、LDH値が978U/Lに低下したことから、組織損傷の改善が示された。さらに、乳酸値が0.8mmol/Lとなり、正常値まで回復したことから、組織低酸素症の改善が認められた。
【0296】
11)2020年8月12日に、エクソソーム由来のmiR-424とmiR-16のレベルの減少が認められた。
【0297】
12)総エクソソーム濃度は治療前から治療後にかけて増加した。
【0298】
13)治療後6~8日目(2020年8月13日~8月15日)にかけて、PaO2/FIO2比は、治療後6日目に117.14となり、治療後7日目に126.6となり、治療後8日目に120であったことから、PaO2/FIO2比の変化は認められず、2020年8月15日にFIO2を0.70で維持した。
【0299】
14)エクソソーム由来miRNAのレベルは、治療後8日目(治療の8日後)に減少した。
【0300】
15)2020年8月19日に、PaO2/FIO2比は149.23に上昇した(FIO2=0.65に対してPaO2=92mmHg)。
【0301】
16)2020年8月20日に、PaO2/FIO2比は175まで上昇した(FIO2=0.60に対してPaO2=105mmHg)。
【0302】
17)2020年8月24日に、検査室での分析を行ったところ、フェリチン値が1583.8ng/mlに再度上昇し、CRP値も270mg/Lを超える値となったことから、顕著な炎症の存在が示された。さらに、Dダイマー値が5595ng/mlとなり、PT-INR値が1.3となったことから、凝固異常症が再度悪化したことが認められた。なお、患者のプロカルシトニン値が、2020年8月12日に正常値範囲内の0.19ng/mlとなった後に、2020年8月24日に2.11ng/mlまで上昇したことには留意されたい。この結果は、細菌重複感染が存在する可能性を示唆しており、これを原因として患者の臨床状態が悪化したと考えられる。
【表1】
【0303】
実施例9:血液濾過による患者からのエクソソームの除去
実施例8において8日間治療した(1回あたり6時間の治療)COVID-19患者の循環エクソソームの量およびエクソソームのカーゴについて、Hemopurifierによる治療効果を評価した。治療の1~4日目に患者から血漿を採取し、分析を行った。治療前の血漿試料は、Hemopurifierによる治療を行う前に採取した。治療後の血漿試料は、Hemopurifierで6時間治療した後に採取した。1日目のHemopurifierを用いた治療では、血液凝固により治療を一旦中断したため、治療前に血液を採取してから治療後の血液を採取するまで13時間以上の時間を空けた。簡潔に述べると、この分析方法では、未処理の血漿を用いて最初に粒子計測分析を行った後、小型のサイズ排除カラム(mini-SEC)を用いて、残りの血漿成分から、エクソソームと同程度の大きさのその他の粒子や大量に存在するタンパク質夾雑物を取り除くことによって、単離されたエクソソームを精製する。mini-SECを用いたこの方法によって、精製されたエクソソーム試料が溶出画分No.4に回収され、この画分を使用して比較分析を行った。COVID-19患者から得た血漿1mLからの収率の結果を示す。表2は、回収されたCOVID-19臨床試料を示す。
【表2】
【0304】
患者の血漿からのエクソソームの単離:当技術分野で確立されている方法論(Ludwig et al. Curr. Protoc. Immunol. (2019) 127:e91;この文献は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)を利用して、患者の血漿からエクソソームを精製した。患者の血漿1mLを2段階の遠心分離によりあらかじめ清澄化して、エクソソームよりも大きい血漿中粒子を取り除き、0.22μmのPESメンブレンフィルターで濾過し、10mLのセファロース(登録商標)カラムにロードした。セファロースカラムにPBSを1mLずつ加えてサイズ排除クロマトグラフィーを実施し、血漿エクソソームを含む溶出画分No.4を回収することによって、残りの血漿成分からエクソソームを単離した。
【0305】
信頼性の高い定量測定を行うには、0.22μmのフィルターで濾過したPBSで血漿エクソソーム試料を希釈して、約108~109個/mLのエクソソーム濃度に調整する必要があった。エクソソーム試料を適切な濃度範囲に希釈し、Nanosightシステムでエクソソーム試料を解析したところ、1視野あたり約20~100個のエクソソーム粒子を観察することができた。血漿試料中に存在している可能性のある小さいエクソソーム集団の検出を向上させるため、カメラレベル12および検出閾値3でナノ粒子トラッキング測定データを収集した。均質なエクソソーム試料を異なる視野で撮影した30秒間の3つの動画をNTA3.3ソフトウェアで評価して、粒子の個数と粒子径を測定した。
【0306】
未処理の患者血漿中のナノ粒子数を、治療前の試料と治療後の試料で評価した。概して、ナノ粒子の総数は治療後に減少した(図6A)。1日目は、治療を中断したことから、外れ値であると見なした。一方、未処理の血漿試料中の相対粒子径は、治療を行っても変化しなかった(図6B)。
【0307】
次に、血漿試料をmini-SECで処理して、8つの画分を溶出した。表3は、BCAアッセイで測定した各画分に含まれるタンパク質の相対濃度(mg/mL)を示す。画分4に、精製されたエクソソームが含まれていると考えられた。1日目の治療後の血漿は、当技術分野で報告されている60~80mg/mLという通常のタンパク質含有量(Leeman et al. Anal. Bioanal. Chem. (2018); 410:4867-73)よりも多い量のタンパク質を含んでいた。画分4で単離されたエクソソームは、血漿中総タンパク質の約0.1%に相当し、これは当技術分野で報告されているエクソソームのタンパク質量と一致していた(Shtam et al. J. Hematol. (2018); 7:149-53)。これらのデータから、Hemopurifierを用いた治療は、血漿中の総タンパク質量に対してほとんど影響を与えないことが示唆された。
【表3】
【0308】
各血漿試料から得られた画分4に含まれるエクソソームの個数を定量した。図7Aは、概して、血漿中のエクソソーム量が治療後に減少したことを示す。1日目は、恐らくは治療を中断したことから、外れ値であると見なした。これらの結果から、Hemopurifierを用いた治療は、血漿中の総タンパク質量を実質的に減少させないが、エクソソームを有意に除去できることが示唆された。
【0309】
各血漿試料から得られた画分4に含まれるエクソソームの相対粒径を評価した。図7Bは、循環エクソソーム集団の相対粒径が、Hemopurifierを用いた治療によって変化しないことを示す。
【0310】
実施例10:精製したエクソソームに含まれ、疾患表現型と関連している可能性のあるmiRNA
miRNAは、炎症や疾患と関連していることが知られていることを踏まえ、mini-SECを用いて患者の血漿試料から精製したエクソソーム(実施例9で使用したもの)に含まれるmiRNAの含有量を、治療前の試料と治療後の試料とで比較し、さらに正常ヒト血漿とも比較することにより評価した。患者試料の処理と同じ方法で正常ヒト血漿をmini-SECで処理し、エクソソームを含む画分4を分析した。表4は、試験したmiRNAを示す。キアゲン社のmiRNA easy isolation kitを使用して、血漿エクソソームからmiRNAを単離し、外因性miRNAスパイクインコントロールを添加した。TaqMan Advanced miRNA cDNA synthesis kitを使用して、miRNAをcDNA鋳型に逆転写した。Quant 3 qPCR装置において、特異的なTaqMan Advanced miRNAプライマー/プローブセット(サーモフィッシャー、No.A25576)を使用して特異的な標的miRNAを増幅させた。外因性スパイクインコントロ-ルとして添加したcel-miR-39-3p miRNAに対して正規化して、miRNA配列の定量を行った。
【表4】
【0311】
外因性スパイクインコントロールとしてcel-miR-39-3p miRNA(cel-39)をすべての試料に加えて、miRNAの単離プロセスおよびその後のcDNA鋳型の合成により生じたばらつきを制御した。cel-39コントロールは、1試料あたり5.6×108コピー使用した。図8は、cel-39スパイクインコントロールのqRT-PCRによる増幅プロットと、制御の必要がある試料間のばらつきの範囲を示す。すべてのcel-39アンプリコンの平均Ct値を用いて、各試料中の標的miRNAのシグナルを正規化した。2-ΔΔCt法(Livak & Schmittgen, Methods (2001) 25(4):402-8)を用いて、スパイクインコントロールであるcel-39に対する各miRNAの相対量を算出した。エクソソームにおいて測定されたmiRNAの量をさらに正規化して、出発試料の体積である血漿1mLに反映させた。
【0312】
COVID-19患者の血漿試料とヒトコントロール血漿試料から得た画分4中の試験した各miRNAをqRT-PCRにより定量した。図9は、miRNAのqRT-PCR増幅プロットの一例を示し、miRNAの存在量を反映するシグナル強度が、治療の個々の時点で採取された試料間でどのように変動するのかを示す。1~4日目の試料中に含まれるmiRNAの相対的な存在量を図10に示す。概して、試験したmiRNAの存在量は、治療前のエクソソーム試料と比べて、治療後のエクソソーム試料で減少していることが観察されたことから、Hemopurifierを用いた治療によって、これらのmiRNAを含むエクソソームが除去されたことが示唆された。図11は、治療の初期の数日間において、miRNAの存在量の減少が、試料からのエクソソームの除去量に直接正比例していたことを示す。
【0313】
エクソソーム画分と未処理の血漿において、試験したmiRNAの相対的な存在量と相対的な除去量を比較するため、COVID-19患者から4日目に得た全血漿試料中のmiRNAを定量した(図12A)。全血漿試料においても治療後にmiRNAの除去が観察され、エクソソーム画分では、全血漿と比べてmiR-424-5pとmiR-16-2-3pの減少量が大きかった(図12B)。全体的な結果として、血漿中のmiRNAは様々な形態で存在するが(例えば、別の生物学的構造に関連するエクソソームカーゴとして存在していたり、血中浮遊核酸として存在していたりするが)、レクチンとしてGNAを用いたHemopurifierカートリッジを使用することによって、あらゆる種類のmiRNAをある程度除去できることが示された。一方、エクソソーム画分で観察された除去量の方が大きかったことから、これらのmiRNAは、病原性のエクソソームを捕捉することができるGNAレクチンによって、より選択的に排除されることが示された。
【0314】
1~4日目の試料を分析した後、5日目と8日目の血漿試料についてもエクソソームを単離して分析した。2回目の緊急使用許可を得る必要があったため、治療の4日目と5日目の間には2日間の開きがあった。図13Aは、1)血漿から単離されたエクソソーム中のmiR-424およびmiR-16の存在量と、2)1日目(2020年8月7日)と4日目(2020年8月10日)に得た血漿試料中のエクソソームの存在量を示す。図13Bは、5日目(2020年8月12日)と8日目(2020年8月15日)の血漿試料におけるエクソソーム中のmiR-424およびmiR-16の存在量と、エクソソームの存在量を示す。それぞれの日で得られた治療前の試料と治療後の試料の結果から明らかなように、Hemopurifierを用いた治療の後にmiR-424とmiR-16の存在量の一貫した減少が観察された。
【0315】
以上の結果をまとめると、Hemopurifier装置は、治療前や治療後のエクソソームの総数に関係なく、疾患促進性エクソソームを捕捉することによって病原性miRNAを除去することができる。COVID-19関連凝固異常症および急性肺障害と関連付けられているmiRNAであるmiR-424とmiR-16を、急性COVID-19を有する患者の循環血液から除去することができた。
【0316】
実施例11:Hemopurifierカートリッジに結合した物質の単離
本実施例では、ヒト対象を治療した後にHemopurifierカートリッジに結合したウイルスとエクソソームを溶出させて、タンパク質や核酸などの物質を抽出する方法をさらに詳しく説明する。抽出される物質がウイルスゲノムの場合、得られた試料をqPCRで測定してウイルスの濃度を評価する。
【0317】
使用済みのHemopurifier装置は、次の処理まで氷上または-20℃で保存してもよいが、すぐに輸送し、処理することが好ましい。Hemopurifier装置は、バイオハザード表示した袋に入れ、これをさらに大きい2次袋に入れて、輸送および取扱いを行う。受領したら、密封されたHemopurifier装置を直ちに2℃~8℃の冷蔵庫に入れる。
【0318】
Hemopurifier装置を処理する準備ができたら、リンス液として、250~300mLの滅菌生理食塩水または濾過したPBSを調製する。Hemopurifier装置を、支持環付き実験スタンドまたはその他の支持器具のクランプに垂直に固定する。Hemopurifier装置の上部の血液ポートからツイストロック式の上部キャップを外す。MPC-850-16チューブとMPC-865チューブを装着する。シリンジにリンス液を充填し、MPC-865チューブの開口端に接続する。次に、Hemopurifier装置を上下に回転してもう一方の端部を上方に向け、この端部にある血液ポートからツイストロック式キャップを外す。ここにMPC-875チューブを装着する。このMPC-875チューブの開口端を、適切なバイオハザード廃棄物容器に入れ、Hemopurifier装置を再度上下に回転させて、Hemopurifier装置のリンス中にこの開口端が廃棄物容器内に保持されるように位置を調整する。Hemopurifier装置にリンス液をゆっくりと注入して、Hemopurifier装置内にリンス液を通過させて廃棄物容器で受ける。これを2~3回繰り返す。Hemopurifier装置から排出される流体は、赤色であると問題があるが、僅かなピンク色であってもよい。次に、シリンジに空気を充填し、Hemopurifier装置に空気を注入してHemopurifier装置内を通過させ、残留流体をHemopurifier装置から排出させて廃棄物容器で受ける。これを2~3回繰り返して、できるだけ多くの流体を排出させてから、Hemopurifier装置の保存を行う。排出が完了したら、すべてのチューブを外して適切なバイオハザード容器に廃棄する。血液ポートキャップを再び装着して、Hemopurifier装置を-20℃で保存してもよい。
【0319】
溶出回路のセットアップ:Hemopurifier装置をバイオハザードバッグから取り出し、吸収性タオルまたは吸収性パッドの上に置く。Hemopurifier装置を室温に戻す(15~20分間)。両端のツイストロック式キャップを回して血液エンドポートから取り外し、側面の透析物ポートの一方のルアーロック式キャップも回して取り外す。取り外したキャップは、溶出操作後に再装着するために取っておく。一方のエンドポートに、ツイストロックを備えたチューブを装着する。このチューブのもう一方の端部をガラス製フラスコまたはガラス製ボトルに入れて、チューブを底付近まで挿入する。ツイストロックを備えた別のチューブを、もう一方のエンドポートに装着し、このチューブの端部を前記ガラス容器に挿入する。オスルアーフィッティングを備えたドレーンチューブを、キャップを外した側面ポートに装着し、このドレーンチューブの端部を前記ガラス容器に入れる。すべてのチューブを所定の箇所にしっかりと装着したら、チューブ用クランプまたは止血鉗子をすべてのチューブに装着する。次に、Hemopurifier装置を支持環付き実験スタンド/ホルダーに垂直に取り付け、キャップを外した側面ポートが上側になるように固定する。このセットアップの一例を示した図14の模式図を参照されたい。
【0320】
α-メチルマンノシド(a-MM)の溶出:1Mのα-メチルマンノシド(a-MM)の1×PBS溶液200mLを調製する。前記チューブを挿入したガラス容器にa-MM溶液を加える。ポンプによる送液を開始して、a-MM溶液を50mL/分の流量でHemopurifierカートリッジ内に流す。上部のドレーンポートの一方または両方からa-MM溶液を排液する。Hemopurifierカートリッジにa-MM溶液が充填されたら、血液出口ポートに装着されたチューブをクランプし(「Aクランプ部位」)、Hemopurifierカートリッジの中空糸内部と中空糸外側の空間にa-MM溶液を20分間流す。次に、Aクランプを外し、側面ポートのチューブをクランプして(「Bクランプ部位」)、カートリッジの中空糸の内腔にa-MM溶液を20分間流す。循環が完了したら、残存するa-MM溶液をHemopurifierカートリッジの中空糸内部と中空糸外側の空間から排出させる。得られた溶出液の定量を行うことができ、あるいは後で使用するために-20℃で凍結保存することができる。
【0321】
TRI試薬/TRIzolによる抽出:a-MM溶液による溶出が完了したらすぐに、200mLのTRI試薬(登録商標)またはTRIzolを入れたガラス容器にすべてのチューブの端部を挿入する。この操作は、換気フードまたは適切なバイオセーフティーキャビネット内で行う。すべてのチューブを所定の箇所に固定したら、ポンプによる送液を開始して、TRI試薬を50mL/分の流量でHemopurifierカートリッジ内に流す。上方のドレーンポートの一方または両方からTRI試薬溶液を排出させる。HemopurifierカートリッジにTRI試薬溶液が充填されたら、中空糸内腔の出口のドレーンチューブをクランプし(「Aクランプ部位」)、中空糸内部と中空糸外側の空間にTRI試薬溶液を20分間流す。TRI試薬溶液によって、Hemopurifierカートリッジ内の中空糸と、チューブ接続部の一部に含まれる中空糸が溶解し始める。この系の漏れについては、頻繁に確認する必要がある。溶解した樹脂材料によってチューブが閉塞する可能性がある。この系を通した流れが一定になるように、循環を頻繁に確認する必要がある。チューブの経路を調節して、入口チューブの閉塞を防ぐ必要がある。チューブの閉塞が起こった場合、ポンプを停止して閉塞を解消する必要があり、必要に応じてチューブを交換する。次に、Aクランプ部位を外し、Bクランプ部位をクランプして、Hemopurifierカートリッジの内腔にTRI試薬溶液を20分間流すことができる。循環が完了したら、残存試薬をHemopurifierカートリッジの中空糸内部と中空糸外側の空間から排出させる。得られた溶出液の定量を行うことができ、あるいは後で使用するために-20℃で保存することができる。
【0322】
最終リンス:TRI試薬工程が完了したらすぐに、200mLの新鮮な1×PBSを入れたガラス容器にすべてのチューブの端部を挿入する。HemopurifierカートリッジにPBSを50mL/分の流量で5分間流してリンスを行う。循環が完了したら、残存するPBS溶液をHemopurifierカートリッジの中空糸内部と中空糸外側の空間から排出させる。リンスしたPBS溶液試料を-20℃で保存する。すべてのチューブを取り外し、Hemopurifierカートリッジのすべてのポートにキャップをする。すべての器具を適切なバイオハザード廃棄物容器に廃棄する。
【0323】
実施例12:2人目の急性COVID-19患者におけるHemopurifierの使用の概要
2021年1月14日に、別の1人の患者にHemopurifier装置を緊急使用することが承認された。この患者は、ファロー四徴症の修復手術、冠動脈疾患および新たに診断された糖尿病の病歴のある67歳の男性患者であった。この患者は、咳と息切れの症状が1週間続いたため、診察を受けるために来院した。PCRを実施したところ、COVID-19陽性であることが認められたため、入院した。この患者は急性腎障害を発症していることも認められた。レムデシビル、デキサメタゾン、バリシチニブ、回復期血漿および標準用量の抗凝固剤投与による治療を患者に行ったにもかかわらず、多臓器不全を発症し、その悪化が見られた。この患者に、吸入気酸素分画(FIO2)100%および呼気終末陽圧(PEEP)12cmH2Oの機械的人工呼吸を行い、低血圧の処置として昇圧剤の単剤投与を行い、急性腎不全の処置のためにCRRTを行った。患者の容態が悪化したため、「ウイルス成分の濾過と血流中のエクソソームの濾過」のためのHemopurifier装置の緊急使用が承認された。
【0324】
この対象に、Hemopurifierによる6時間15分の治療を1回行った。当初、計4つの研究用装置が病院に提供されていた。提供された4つの装置のうちの1つを使用し、次の処理を行った。
【0325】
図15Aに示すように、Hemopurifier装置の内容物をTRIzol試薬で溶出して分析したところ、3つの異なるSARS-CoV-2ウイルスゲノム領域の増幅が陽性であった。表5は、定量に使用したサイクル閾値(Ct)を示す。Ct値<37を、SARS-CoV-2ウイルスの存在が陽性と見なした。
【表5】
【0326】
2-ΔΔCt法(Livak & Schmittgen, Methods (2001) 25(4):402-8)を用いて、既知のコピー数を含む陽性コントロールと比較することにより各標的ウイルス遺伝子の量を算出した。図15Bに示すように、3つの標的SARS-CoV-2遺伝子はそれぞれコントロールとは異なる比率でHemopurifier溶出液から増幅された。標的であるNタンパク質とSタンパク質は、コントロールよりも増幅量が多かったことから、単離された試料中のこれらの標的SARS-CoV-2ウイルス遺伝子の存在量が多かったことが示唆されたが、標的ORF1ab遺伝子は同程度に増幅されなかった。
【0327】
以上の結果をまとめると、本実施例で述べた2人目のCOVID-19患者は、この患者の治療に使用したHemopurifier装置から溶出した試料においてSARS-CoV-2遺伝子の増幅が陽性であったことから、この患者は、血流を循環する完全なSARS-CoV-2ビリオンを有していた可能性がある。実験の結果から、SARS-CoV-2ウイルス粒子またはRNA遺伝物質を含む断片が、GNAレクチンを含む親和性樹脂に吸着され、この親和性樹脂に捕捉されたHemopurifier装置の内容物が、TRIzolを用いたフラッシュによって溶出されたことが示された。1mLの溶出液から精製されたRNAにおいて、SARS-CoV-2ゲノムの存在を検出することができた。3つの標的ウイルスゲノムが様々な量で増幅により検出された理由として、ウイルスまたはゲノムの断片化、ウイルスゲノムを含むその他の循環ナノ粒子の捕捉、GNAレクチンによる吸着もしくは溶出に関する様々なプロファイル、または精製されたRNA試料中のPCR抑制因子の存在が考えられる。
【0328】
実施例13:Hemopurifier装置を用いたヒトにおけるSARS-CoV-2ウイルス疾患(COVID-19)の治療のための研究プロトコール
主目的:本研究は、SARS-CoV-2ウイルス疾患(COVID-19)の治療におけるHemopurifier(装置)の使用の評価を目標とする。本研究の主目的は、手技に関連する有害作用、装置に関連する有害作用および重篤な有害作用の評価に基づいて、COVID-19患者におけるHemopurifier装置の安全性を評価することである。
【0329】
第2の目的:第2の目的は、院内罹患率と院内死亡率に基づいて、COVID-19患者におけるHemopurifier装置の有効性を評価することである。
【0330】
安全性プライマリーエンドポイント:十分なインフォームド・コンセントが行われた日から28日目もしくは退院までの手技もしくは装置に関連する可能性があると見なされたグレード2以上の有害事象を起こした患者の割合、および/または治療期間中に急性反応を起こした患者の割合。
【0331】
第2の有効性エンドポイント:以下の評価項目を評価する。
【0332】
1)あらゆる原因による28日目までの死亡。
【0333】
2)ICU、昇圧剤、人工呼吸器および透析を利用しなかった日数(0~28日目)。
【0334】
3)0時間、48時間後、96時間後および7日後の疾患重症度(SOFA)
【0335】
4)WHOによる6段階の順序尺度により評価した15日目の臨床状態。
【0336】
5)全血球算定および白血球分画;LDH、フェリチンおよびC反応性タンパク質(CRP)を含む包括的代謝パネル;炎症性サイトカインおよびケモカイン(例えば、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL10、CCL2)の濃度;DダイマーおよびPT-INR;鼻咽頭試料からのSARS-CoV-2の検出;血漿中のウイルス(SARS-CoV-2)RNAの定量;治療に使用したHemopurifierカートリッジ中のウイルス(SARS-CoV-2)RNAの定量を含む臨床検査評価。
【0337】
調査した装置:Hemopurifierは、血漿交換カートリッジの長さ方向に沿って配置された中空糸同士の間の間隙にレクチンとしてスノードロップ凝集素(GNA)を導入した親和性マトリックスを備えるように改良された単回使用中空糸血漿交換カートリッジである。GNAは、ウイルス表面上に発現される高マンノース型糖タンパク質に選択的に結合することから、エンベロープウイルスに対して広域スペクトルなアビディティを有する。Hemopurifierに血液を導入すると、対流と拡散によって血液中のエンベロープウイルスが公称細孔径200nmの中空糸の細孔を通して輸送され、親和性マトリックスに接触する。GNAによりウイルスが捕捉されて、循環系に戻ることを防ぐことができる。これと同時に、血液中の細胞成分は中空糸の内腔内に留まり、親和性マトリックスとは接触しない。Hemopurifierは、確立された中心静脈アクセスを介して患者の循環系に接続され、標準的な透析設備を利用して作動させて、血液濾過を行うことができる。
【0338】
治療介入:患者が特定され、同意が得られた後に、治療を行うには、ダブルルーメン血液透析カテーテル、動静脈瘻または動静脈グラフトの利用が必要とされる。Hemopurifierを用いた1日4時間の体外循環治療を患者に実施し、最大で4回まで治療を行うか、または臨床的改善もしくは臨床的悪化を理由として中止するまで、もしくは治験責任医師による決定に従って中止するまで継続する。
【0339】
治療:体外循環回路内にHemopurifierを設置し、すべての接続箇所をしっかりと接続し、血液ポンプを利用して100mL/分の初期流量で治療を行う。血流量は、最初の数分間で、最大血流量200mL/分に達するまで段階的に徐々に増加させる。体外循環回路は、血液漏出と装置内の血液凝固を検出するために継続的にモニターしなければならない。
【0340】
血液漏出、血液凝固、または血液濾過装置に関連するその他の理由によって、4時間が経過する前に治療が中止された場合、最初の血液濾過装置を別のものに交換することができる。血液濾過装置は、治療日に1回だけ交換することができる。血液濾過装置において血液凝固または血液漏出の徴候が継続的に見られた場合、治療を一時中止して、血液を患者に戻し、新たな血液濾過装置を体外循環回路に設置する。次に、血液凝固阻止レベルを変更することを考慮に入れて治療を再開することができる。治療の再開は、少なくとも4時間の治療を完了することを目標として行ってもよいが、6時間を超えて治療を行ってはならない。
【0341】
試験対象集団:試験対象集団には、重症COVID-19患者または重症化のリスクが高いCOVID-19患者が含まれる。COVID-19感染症が陽性であることは、SARS-CoV-2 RT-PCRにより確認する。
【0342】
参加基準
【0343】
選択基準
【0344】
1)以下の疾患特性のいずれかを有するCOVID-19感染症の診断が検査により確認されている。
【0345】
i)早期の急性肺障害(ALI)/早期の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)。
【0346】
ii)呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、93%以下の血液酸素飽和度、300未満の動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比、および/または24~48時間以内の50%を超える肺浸潤のうちの1つとして定義される重症疾患。
【0347】
iii)呼吸不全、敗血症性ショック、および/または多臓器機能障害もしくは多臓器不全のうちの1つとして定義される致死性疾患。
【0348】
2)ICUへの入院、または収容能力の急増に対処するためICUとしての使用を目的に転用された院内区画への入院。
【0349】
3)中心静脈アクセスが確立されており、最近行った血液透析に耐えることができている。
【0350】
4)患者本人または法定代理人からインフォームド・コンセントが得られている。
【0351】
5)年齢が18歳以上である。
【0352】
除外基準
【0353】
1)過去3ヶ月以内に脳卒中を発症している(脳卒中を発症していることが判明しているか、脳卒中を発症した疑いがある)。
【0354】
2)重症うっ血性心不全(NYHA心機能分類III度およびIV度)。
【0355】
3)生検により寛解であると証明されなかったがん。
【0356】
4)急性肝疾患(肝硬変の既往がなく、疾患の持続期間が26週未満の患者において、国際標準比(INR)が1.5を超えており、一定の精神状態の変化(例えば脳症)が見られる)、または慢性肝疾患(例えばChild Pugh分類C)。
【0357】
5)COVID-19に関連しない凝固亢進またはその他の凝固異常症の既往が判明している。
【0358】
6)昇圧剤および輸液蘇生にもかかわらず、65mmHgの最低平均動脈圧を維持することができない。
【0359】
7)余命が28日未満の末期疾患、治療の中止の決定が妥当な末期疾患、または治療の中止の決定が差し迫っていると予想される末期疾患。
【0360】
8)Hemopurifierの構成成分のいずれかに対する過敏症を有することが判明している患者。
【0361】
9)(心肺蘇生術以外の)延命治療を行わないように意思表示されたアドバンス・ディレクティブが存在する。
【0362】
10)体外循環血液浄化治療の禁忌がある。このような禁忌として、例えば、i)臨床的意義のある出血性疾患;ii)血液凝固阻止薬の禁忌;iii)妊娠;iv)機能的なバスキュラーアクセスの確立が不可能;v)別の競合する治験薬、装置またはワクチンの治験への参加;vi)過去14日間のアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の投与;vii)血小板数が50,000個/μl未満が挙げられる。
【0363】
11)不安定な透析低血圧または未治療の透析低血圧の最近の既往。
【0364】
試験手順、試験頻度および試験タイミングを表6に示す。Hemopurifierを用いた各治療セッションごとに評価を行う。各対象者は、別々の日に最大で4回まで、Hemopurifierを用いた治療を受けることができる。
【0365】
Hemopurifierを用いた治療期間中に評価を行う治療ウィンドウは以下のとおりである。Hemopurifierを用いた治療の前後の評価は、治療開始前の60分以内または治療終了後の60分以内に評価を行う。その他の評価は、いずれも表6に示した時点から前後数分以内に行う。
【0366】
Hemopurifierを用いた治療後の評価は、可能な場合に限り、Hemopurifierを用いた最後の治療セッションを行った28日後に行う。
【0367】
簡単な身体検査には、心臓、肺、腹部および四肢の検査と、静脈アクセス部位の検査と、治療提供者が必要である見なしたその他の検査が含まれる。4日間の治療中に、ルーチンとしての身体検査で見られた状態の変化は、有害事象として文書に記録する。
【0368】
SOFAスコアによる疾患重症度の評価は、0時間、48時間後、96時間後および7日後に行う。SOFAスコアの算出に必要とされるデータは、酸素分圧(PaO2)/吸入気酸素分画(FiO2)比(PaO2が利用できない場合にはSpO2/FiO2を利用可能);人工呼吸器の装着の有無;血小板数(×103/μL);ビリルビン(mg/dL);平均動脈圧;ドーパミン、エピネフリンまたはノルエピネフリンの必要性の有無;グラスゴー昏睡尺度;クレアチニン(mg/dL)または尿量である。
【0369】
Hemopurifierを用いた各回の治療は、4~6時間であってもよい。Hemopurifierを用いた治療セッション中に1時間ごとに検体を採取する。
【0370】
有害事象のモニタリングには、治療セッション中のどこかの時点で発生したHemopurifier装置内での溶血、血液漏出または血液凝固の文書化が含まれていなければならない。これらの事象が生じた場合、治療担当医師の臨床判断に基づいて、抗凝固療法または血流を調整してもよく、さらには治療への介入を行ってもよい。
【0371】
Hemopurifierを用いた治療の構成成分であるヘパリンおよび患者に投与されるその他の抗凝固剤の投与は、患者を体外循環回路に接続する前、治療中および治療後に記録する必要がある。
【0372】
治療に使用したHemopurifierは、バイオハザードバッグに入れて、冷蔵庫で保管される。2時間を超えてHemopurifierを保管する場合、分析施設に発送するまで-20℃の冷凍庫で保管する必要がある。
【0373】
Hemopurifierのモニタリングには、動脈圧陰圧、動脈圧陽圧、静脈返血圧、血流量、溶血評価のエビデンス、溶血の発生理由、およびHemopurifierの漏出の発生の記録が含まれる。
【表6】
【0374】
本明細書で開示されるHemopurifier装置の実施形態は、血漿交換カートリッジの長さ方向に沿って配置された中空糸同士の間の間隙にレクチンとしてスノードロップ凝集素(GNA)を導入した親和性マトリックスを備えるように改良された単回使用中空糸血漿交換カートリッジである。GNAは、ウイルス表面上に発現される高マンノース型糖タンパク質に選択的に結合することから、エンベロープウイルスに対して広域スペクトルなアビディティを有する。Hemopurifierに血液を導入すると、対流と拡散によって血液中のエンベロープウイルスが公称細孔径200nmの中空糸の細孔を通して輸送され、親和性マトリックスに接触する。GNAによりウイルスが捕捉されて、循環系に戻ることを防ぐことができる。これと同時に、血液中の細胞成分は中空糸の内腔内に留まり、親和性マトリックスとは接触しない。Hemopurifierは、中心カテーテル、動静脈瘻または動静脈グラフトを用いて確立された中心静脈アクセスを介して患者の循環系に接続され、標準的な透析設備を利用して作動させて、血液濾過を行うことができる。Hemopurifierは、FDAにより承認されている抗ウイルス薬では対処不可能な広範囲な致命的なウイルスを処置することができる先進的なアプローチを提供する。Hemopurifierは、米国外でのいくつかの小規模臨床試験、米国での早期実現可能性試験(EFS)および個々の治療事例の試験対象となっており、これらの試験において、Hemopurifierの安全性と性能が実証されている。
【0375】
Hemopurifierを使用することによって、COVID-19患者の循環系からSARS-CoV-2を捕捉して除去することができる。SARS-CoV-2の発症機序に関する情報が明らかになるにつれて、このウイルスが呼吸器のみを標的とするのではなく、さらに重度の症例では、広範な全身炎症を起こし、脆弱になったその他の臓器を冒して、急性心障害、急性腎障害、敗血症またはその他の合併症を起こすことがあることが分かってきた。コロナウイルスの平均直径は80~120nmであり、そのビリオンの表面は、N結合型グリコシル化配列で装飾された三量体スパイク(S)糖タンパク質の突起で緻密に覆われている。COVID-19患者において「RNAemia」(すなわち、血中ウイルスRNAの存在)が発症するというエビデンスもあり、全身のウイルス量に応じて炎症および組織損傷が引き起こされている可能性が示唆されている。
【0376】
これらのデータをすべて考慮に入れると、Hemopurifierを用いた物理的な除去の最も重要な標的は、SARS-CoV-2である。この主張をより直接的に支持するものとして、ベンチトップ型のHemopurifier(すなわちmini-Hemopurifier(登録商標))は、インビトロにおいて、ベータコロナウイルス科に属する別のメンバーであるMERS-CoVを含む数多くの多様なウイルス科からエンベロープウイルスとウイルス由来の糖タンパク質を捕捉できることが示されている。最も重要な点として、ウイルスエンベロープの最も外側において糖タンパク質で装飾された部分を含むSARS-CoV-2 S1(スパイク)タンパク質は、mini-Hemopurifierをインビトロで使用することにより、バッファーから高効率に除去できることが示されている。
【0377】
したがって、Hemopurifierは、重篤な状態のCOVID-19患者に使用することができる。患者の循環系からSARS-CoV-2を捕捉することによって、いくつかの利点が得られてもよく、例えば、全身のSARS-CoV-2量の減少;感染症に伴う全身炎症反応(例えばサイトカインストーム)の重症度の低下;免疫細胞の機能の向上;ならびに/または持続的な細胞感染の遅延もしくは減少、患部臓器への進行性の損傷の遅延もしくは減少、ならびに/もしくはウイルス自体および/もしくは炎症による疾患関連症状の遅延もしくは減少が達成されてもよい。
【0378】
レクチンは、高等植物、真菌、細菌および動物から単離されるタンパク質の1種であり、糖類に結合することによって細胞を凝集させ、多糖類や糖タンパク質を沈殿させる。このような特性は、レクチンが多価であることを主な理由としており、すなわち、1つのレクチン分子が少なくとも2つの糖結合部位を有することから、(各細胞の表面にある糖鎖同士を連結することによって)細胞間の架橋が可能であったり、糖を含む巨大分子間の架橋が可能である。また、GNA(一般に「スノードロップレクチン」として知られている)は、スノードロップの球茎から最初に発見されたものであり、固定化したマンノースを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより単離されたものである。GNAは、マンノースに特異的に結合することから、「単子葉植物マンノース結合」レクチンファミリーに属している。GNAは5量体であり、12個のマンノース結合部位を有し、1本のポリペプチド鎖に3個のマンノース結合部位がある。
【0379】
Hemopurifierは、中空糸の外側の管腔外空間に導入されたGNA親和性マトリックスを備えるように改良された単回使用中空糸血漿交換カートリッジである。この装置は、中心静脈カテーテル、動静脈瘻または動静脈グラフトを用いて確立された中心静脈アクセスを介して患者の循環系に接続され、標準的な透析設備を利用して作動させて、血液濾過を行うことができる。エンベロープウイルスは、高度に保存され表面に発現された高マンノース型糖タンパク質構造を持つことから、この装置を通して患者の血液を再循環させると、中空糸のナノサイズの細孔を通って移動して、親和性マトリックスに接触させることができる。レクチンによりウイルスが捕捉されて、循環系に戻ることを防ぐことができる。これと同時に、血液中の細胞成分は中空糸の内腔内に留まり、親和性マトリックスとは接触せず、循環系に戻される。
【0380】
コロナウイルスは、プラスセンス一本鎖RNAを持つエンベロープウイルスであり、ニドウイルス目コロナウイルス科に属する。エンベロープ型ウイルスが宿主細胞に感染しようとする場合、宿主細胞の細胞膜と融合して、ゲノムを宿主細胞内に送達する必要がある。ベータコロナウイルス科に属する3種の高病原性人畜共通感染症ウイルス、すなわち、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2は、宿主細胞への感染を媒介する構成要素が共通している。コロナウイルスは、ウイルスの表面上にホモ三量体として存在する膜貫通型のS糖タンパク質を利用して、宿主細胞への結合と宿主の細胞膜との融合を行う。Sタンパク質は、約1,300個のアミノ酸残基の単鎖からなるクラスIウイルス融合タンパク質であり、フォールディングしてホモ三量体を形成する。Sタンパク質は、受容体結合ドメインを有するN末端のS1サブユニットと、細胞膜との融合を担うC末端のS2サブユニットとを含む。コロナウイルスタンパク質は、コロナウイルスが組み立てられる際に様々な翻訳後修飾を受けるが、この翻訳後修飾には高度なグリコシル化が含まれ、これは、ウイルスがその病原性を発揮するのに極めて重要な役割を果たす。コロナウイルスの表面にあるS三量体は、コロナウイルスの機能に不可欠な部分であるN結合型グリカンで広範に修飾されている。コロナウイルスの表面のこのN結合型グリカン部分は、ウイルスの組み立てとその機能に極めて重要である。また、ツニカマイシンでN-グリコシル化を抑制すると、「スパイクを持たない」ビリオンが合成されることから、N結合型グリカンは、Sタンパク質の産生の安定化に必要である。また、ウイルスエンベロープがN-グリカンで覆われると、免疫原性のタンパク質エピトープがマスクされて、グリカンシールドが形成され、コロナウイルスが宿主免疫系や宿主のプロテアーゼを回避することが可能となる。以上のことから、コロナウイルスの糖タンパク質は、治療的介入やワクチンの主な標的となる主要抗原決定基である。したがって、SARS-CoV-2の表面上の高度に保存されたこの糖タンパク質は、HemopurifierのGNA親和性機構においても理想的な標的である。
【0381】
SARS-CoV-2誘発性の免疫病理学的事象は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の原因となるだけでなく、COVID-19において認められるその他の全身性後遺症の原因となることがデータから示唆されている。COVID-19に罹患した患者群、特に、重症COVID-19疾患に罹患した患者群では、血中で「サイトカインストーム」が発症しているというエビデンスが示されている。サイトカインストームは、無制御に調節異常を起こした炎症が発症することによって、組織損傷、肺浮腫および正常な免疫機能の破綻にまで及ぶ状態であると考えられている。COVID-19の中等度の症例と重症症例の臨床症状を比較した研究では、重症症例では呼吸困難と低アルブミン血症が頻繁に認められ、さらに、アラニンアミノトランスフェラーゼ、乳酸脱水素酵素、C反応性タンパク質、フェリチンおよびDダイマーも高値となり、サイトカインおよびその受容体の全身濃度(すなわち、IL-2R、IL-6、IL-10およびTNF-α)が著しく上昇する。SARS-CoV2感染症の高レベルのサイトカインは、CD4+T細胞とCD8+T細胞の消耗とも相関している。別の研究では、COVID-19患者のCD4+T細胞の総数とCD8+T細胞の総数が顕著に減少しており、60歳以上の患者やICU治療が必要な患者では特に顕著な減少が認められたことが裏付けられた。統計分析により、T細胞数は、血清中のIL-6、IL-10およびTNF-αの濃度と負の相関性を示すことが明らかになった。この結果に基づくと、SARS-CoV-2は、別の高病原性コロナウイルスであるSARS-CoVおよびMERS-CoVの戦略に追従していると考えられ、患者体内の(ウイルスRNAにより測定される)ウイルス量が高いと、広範な炎症が起こり、罹患率と死亡率が高くなる。重要な点として、COVID-19陽性の入院患者の15%(n=41)において、感染性ウイルスは測定されなかったにもかかわらず、血漿中ウイルスRNA(「RNAaemia」)が確認された。RNAemiaが重篤なCOVID-19患者のみで確認されること、および炎症促進性サイトカインであるIL-6レベルの上昇とRNAemiaの間に相関性があることを実証することによって、上記の結果をさらに発展させた。SARS-CoV-2のウイルス血症プロファイルを説明するには、さらに多くのデータが必要であるが、以上をまとめると、これまでの情報から、全身のSARS-CoV-2ウイルス量は、COVID-19の重症度と相関していることが示唆されている。したがって、 Hemopurifierを利用して、ウイルス量を減少させることができれば、重篤なCOVID-19患者の回復を向上できる可能性があるという仮説を立てている。
【0382】
MERS-CoVシュードウイルスとSARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質を用いて、mini-Hemopurifierのインビトロ実験を行った。この実験は、mini-Hemopurifierカラムを使用して実施し、蠕動ポンプを用いて、血液、血漿/血清および/または細胞培養液がmini-Hemopurifierを通して再循環するようにインビトロで作動させた。これらの流体の再循環中の所定の時点において、流体から試料を分取し、流体中に残存していた捕捉されなかったウイルスを定量する。
【0383】
血清からのMERS-CoVシュードウイルスの捕捉と除去に関するデータを図16に示す。このデータは、HemopurifierによるMERS-CoVシュードウイルスの時間経過に伴う減少を示しており、この装置によるシュードウイルスのクリアランスの大半が、最初の1時間に起こっていることが示されている。
【0384】
HemopurifierによるSARS-CoV-2のS1糖タンパク質の捕捉を評価した実験を図4に示す。mini-Hemopurifierに通して循環させた溶液には、1μg/mLの濃度のS1糖タンパク質10mLが含まれていた。SARS-COV-1に関する過去の学術文献によれば、1個のビリオンは平均で65個のスパイクを有し、1個のスパイクには、3個のS1糖タンパク質が含まれている。この組換えS1糖タンパク質の製造業者によって提供されているS1糖タンパク質の分子量に基づくと、1μgのS1糖タンパク質は約4×1010個のビリオンに相当する。したがって、実験データから、HemopurifierによるSARS-CoV-2のS1糖タンパク質(4×1011個のビリオンに相当)のほぼ完全なクリアランスは、この装置を作動させてから30分以内に達成されることが示された。要約すると、Hemopurifierにより溶液からコロナウイルスを迅速に捕捉して除去できることが実験データから裏付けられた。
【0385】
Hemopurifierの過去の非臨床研究では、その他の様々な種類のウイルスの徴候についても評価が行われている。ウイルスの捕捉に関する実験は、政府研究施設および民間研究施設の協力を得て、研究室用のmini-Hemopurifierを用いて行った。実験データから、Hemopurifierは、承認を受けた抗ウイルス治療や抗ウイルスワクチンが存在しない広範囲なエンベロープウイルスを迅速に捕捉できることが判明した。血液、血漿および/または細胞培養液から様々な種類のウイルスとシェディングされたウイルス糖タンパク質を迅速に低減できることが示された結果を、表7と表8にそれぞれまとめている。表に示した各流体(全血、血漿、血清または培養培地)中に含まれるウイルスを、単回使用mini-Hemopurifierカラムに通して少なくとも6時間再循環させた。これらの実験の実施中に、再循環中の流体から試料を分取し、流体中に残存していたウイルス粒子(すなわち、捕捉されなかったウイルス)を分析した。各実験では、検出手段として、1)試料中のプラーク形成単位数(PFU)を測定するプラークアッセイ;2)ウイルスを接種した組織培養細胞の50%において細胞変性効果が観察されるウイルスの量を測定する50%組織培養感染量(TCID50);3)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるRNAもしくはDNAの定量;または4)ウイルスを定量するフローサイトメトリー免疫ビーズアッセイ(FCIA)のうちの1つを使用して、流体中に残存していたウイルスの力価を定量した。Hemopurifierを6時間未満で作動させた実験の継続時間は、括弧内に別途示している。
【0386】
表に示した各流体(全血、血漿、血清またはバッファー)中に存在していたウイルス糖タンパク質を、単回使用mini-Hemopurifierカートリッジに通して少なくとも6時間再循環させた。Hemopurifierを6時間未満で作動させた実験の継続時間は、括弧内に別途示している。再循環中の流体から試料を分取し、ウイルス糖タンパク質をELISAで分析した。HIV-GP120:HIVの外被糖タンパク質であるgp120。エボラ-ザイール-sGP:感染細胞から放出された可溶性糖タンパク質(sGP)。エボラ-ザイール-GP/GPΔ1,2:可溶性糖タンパク質であり、メタロプロテアーゼによりエボラウイルスから切断されたウイルススパイクタンパク質。
【0387】
HIV=ヒト免疫不全ウイルス;HCV=C型肝炎ウイルス;H1N1=「豚インフルエンザ」として知られているA型インフルエンザウイルス;H5N1=一般に「鳥インフルエンザ」として知られているA型インフルエンザウイルス;野生型EboVZ=エボラウイルスの1種であるザイールエボラウイルス;変異型EboVZ=強い細胞変性効果を有するザイールエボラウイルスの突然変異株;HSV-1=1型単純ヘルペスウイルス;CMV=サイトメガロウイルス;MERSCoV=中東呼吸器症候群コロナウイルス。
【表7】
【表8】
【0388】
Hemopurifierを用いた治療の忍容性は高く、安全性の主要評価項目および副作用の観察では、軽度から中程度の全身症状が示され、この全身症状は、Hemopurifierを用いた治療ではなく、概して透析処置そのものに起因するものであった。溶血事象は、高い血流量でHemopurifierを作動させたことに関連しており、この問題の再発を緩和するため、血流量を200ml/分に低下させて装置を作動させた。
【0389】
健康が損なわれた人でのHemopurifierの使用に関する病歴と数種類のウイルスの徴候に基づくと、Hemopurifierが安全であり、COVID-19におけるSARS-CoV-2のウイルス量の低減に効果的であるという強力な論理的根拠がある。
【0390】
予期される有害事象:血液透析歴が長い患者と、Hemopurifierを用いた安全性試験から、Hemopurifierの使用に付随して予期される有害事象がいくつか同定された。予期される有害事象として、低血圧、頭痛、悪心、筋痙攣、そう痒、出血、空気塞栓症、失血、酸塩基平衡異常、凝固亢進、高血圧、体液平衡異常、補体活性化および炎症反応(例えば、胸痛、背部痛、息切れ、低血圧)が挙げられる。Hemopurifierの使用に付随して発生しうる別の有害事象として、溶血、Hemopurifier内での血栓の形成、フィルターへの血栓の付着により血液を戻せないことによる失血、カートリッジ内での血液漏出、親和性マトリックスからの成分の漏出、白血球および血小板の減少、ならびにアナフィラキシーが挙げられる。
【0391】
COVID-19ウイルス感染症は症例死亡率が高い。現在、緊急使用許可制度(EUA)の下でレムデシビルを使用することができるものの、COVID-19用に承認された治療法は存在しない。さらに、緊急使用許可制度(EUA)の下で正当化されたレムデシビルの治験では、最も重症度の低い2つの患者群のみでしか効果は見られず、この治験の標的患者集団ではベネフィットは認められなかった。COVID-19用の承認された別の治療方法は存在しないため、COVID-19は死亡リスクが高い。一方で、Hemopurifierを用いた治療は、忍容性が高いことがこれまでに示されており、高リスク患者および重篤な状態の患者では、Hemopurifierを用いた体外循環治療に付随しうるリスクは、COVID-19による死亡リスクを下回ることが予想される。
【0392】
Hemopurifierを用いた治療セッションを各患者に1日1回、4~6時間実施し、治療回数は最大で4回までとする。患者の治験への参加期間は、約28日間またはICUでの在室期間中とする。
【0393】
Hemopurifierを用いた治療の際には、使用中のモニタリングを行って、治療セッション全体を完遂すべきか、またはHemopurifierを用いた治療を早期に中止すべきかを決定する。このモニタリングには、バイタルサインの臨床的に有意な継続的な変化;パルスオキシメトリーまたはEKGモニタリングにおける臨床的に有意な継続的な変化;およびポンプ後のHemopurifier前の圧力が300mmHGを上回るかどうかという項目が含まれている。血漿の色が明るい赤色になった場合、患者の赤血球数とカリウム濃度を測定すべきである。検査結果から有意な異常所見が示唆され、かつ/またはフィルター内の変色が継続した場合、治療を中断すべきである。
【0394】
このプロトコールでは、処方薬は、適切な権限を与えられた臨床医または適切に免許を取得した臨床医のみによって処方することができる医薬品として定義される。症例報告書(CRF)において報告される医薬品は、処方箋の必要な併用薬である。患者は、除外基準において禁止されていない限り、治験責任医師の裁量に基づいて、患者の福祉に必要であると治験責任医師が判断したあらゆる治療を受けることができる。しかし、Hemopurifierによる14日間の治療期間内またはその治療期間内の任意の時点で、患者がアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬による治療を受ける場合は、その患者を除外する。
【0395】
本治験への登録は、中心静脈アクセスが既に確立されており、血液透析を必要とする対象者に限定される。対象者は、Hemopurifierを用いた治療を行う前に血液透析セッションが問題なく完了している限り、Hemopurifierと血液透析を併用して治療してもよく、Hemopurifierのみで治療してもよい。
【0396】
透析装置のみを用いた血液浄化の準備
【0397】
可能であれば、フレゼニウス社製CombiSet True Flow Bloodlineセットまたは510k認可を取得した同等のチューブを使用する。図17Aに示すように、滅菌技術を用いて脱血ラインをHemopurifierに接続する。次に、滅菌技術を用いて、Hemopurifierを返血ラインに接続する。Hemopurifierを垂直に立て、プライミング溶液をHemopurifierに通して底部側から頂部側へと灌流させることによって空気を抜くことができる。安全上の理由から、血液ポンプとHemopurifierカートリッジの間で圧力を連続的にモニターするため、補助圧力モニターを設けて、Hemopurifier内で形成される可能性がある血液凝固を早期に発見する。この圧力の連続的なモニタリングのため、事前に装着したヘパリン注入ラインを使用する。ヘパリン注入ライン上のメスルアーコネクターを使用して、三方活栓を装着する。この三方活栓は、滅菌された方法で、ヘパリン注入ラインとヘパリン注射器の間に挿入する。標準的な滅菌チューブを介して、三方活栓の3つ目のポートを(動脈内血圧のモニタリングに通常使用されている)標準的な動脈圧トランスデューサーに接続する。動脈圧トランスデューサーからの出力は、ベッドサイドモニター上に連続的に表示される。動脈圧トランスデューサーを設置しても、血液透析装置の標準作業に影響はない。従来の血液透析用人工腎臓の透析液ポートに接続された透析液チューブラインは、血液透析装置にそのまま使用し、血液透析装置を「限外濾過」モードにセットする。
【0398】
透析装置のみを用いた血液浄化のプライミング手順
【0399】
少なくとも2Lのプライミング溶液を使用して、体外循環回路のプライミングとリンスを行う。Normosol-Rを用いてプライミングを行うことが推奨されるが、生理食塩水も使用可能である。血液回路内での血液凝固を防止するため、必要に応じて、プライミング溶液1Lあたり300IUのヘパリンを添加してもよい。プライミングの初期流量は、200~250mL/分にすべきである。治療を開始する前に、すべての空気がHemopurifierから完全に取り除かれていることを十分に注意する必要がある。すべての空気をHemopurifierから完全に取り除くためには、Hemopurifierへのプライミング溶液の導入を開始したら、400~500ml/分といった高い流量で数分間送液できるように血液ポンプを設定することが推奨される。このような高い流量によって、中空糸の内部のせん断力が上昇することから、微小気泡の除去を促すことができる。このような高い流量でのプライミング溶液の送液中に、膝蓋腱反射検査用のゴム製ハンマーなどの器具や手のひらの付け根などを用いて、Hemopurifierの側面を1~2分間軽く叩くことによって、中空糸またはプラスチック製ハウジングの表面に表面張力により付着した微小気泡を移動させて、微小気泡の除去をさらに促す。
【0400】
透析装置を用いた、ダイアライザーと直列に接続した血液浄化の準備
【0401】
使用後にHemopurifierを密封するため、ツイストロック式の血液ポートキャップを保管しておく。Hemopurifierをパウチから取り出し、透析装置のポールに装着されたダイアライザークランプ/ホルダーに、垂直方向に向けてHemopurifierを挿入する。別のクランプ/ホルダーにダイアライザーを垂直に設置する。体外循環回路において、Hemopurifierはダイアライザーの上流にある。Hemopurifierとダイアライザーの両方が垂直に設置されていることから、プライミング溶液をHemopurifierに通して底部側から頂部側へと灌流させることによって空気を抜くことができる。Hemopurifierの底部側の血液ポートからツイストロック式のキャップを取り外し、図17Bに示すように、滅菌技術を用いて動脈血ラインをHemopurifierに接続する。Hemopurifierの頂部側の血液ポートからツイストロック式のキャップを取り外し、DINコネクターチューブ(MPC-850-16)の一方の末端に接続する。次に、DINコネクターチューブのもう一方の末端を、特製のプライミングチューブ(MPC-865、必要に応じてMPC-870)とドレインバッグに接続して、Hemopurifierを最初にフラッシュ/プライミングしてから、ダイアライザーとの接続を行う。次に、滅菌技術を用いて、ダイアライザーの頂部側の血液ポートに静脈血ラインを接続する。Hemopurifierが完全にプライミングされるまで、ダイアライザーの底部側の血液ポートキャップは装着したままにしておく。安全上の理由から、血液ポンプとHemopurifierカートリッジの間で圧力を連続的にモニターするため、補助圧力モニターを設ける。補助圧力モニターを設けることによって、Hemopurifier内で形成される可能性がある血液凝固を早期に発見することができる。この圧力の連続的なモニタリングのため、事前に装着したヘパリン注入ラインを使用する。ヘパリン注入ライン上のメスルアーコネクターを使用して、三方活栓を装着する。この三方活栓は、滅菌された方法で、ヘパリン注入ラインとヘパリン注射器の間に挿入する。標準的な滅菌チューブを介して、三方活栓の3つ目のポートを(動脈内血圧のモニタリングに通常使用されている)標準的な動脈圧トランスデューサーに接続する。動脈圧トランスデューサーからの出力は、ベッドサイドモニター上に連続的に表示される。動脈圧トランスデューサーを設置しても、血液透析装置の標準作業に影響はない。適切な国内治験計画に応じて、併用する人工透析用ダイアライザーをセットアップする。
【0402】
透析装置を用いた、ダイアライザーと直列に接続した血液浄化のプライミング手順
【0403】
少なくとも2Lのプライミング溶液を使用して、体外循環回路のプライミングとリンスを行う。プライミング溶液の最初の1Lは、Hemopurifierからドレインバッグに流し(図17C参照)、次の1Lは、特製のプライミングラインの接続を外して、ダイアライザーと静脈血ラインを含む回路全体に流す。Normosol-Rを用いてプライミングを行うことが推奨されるが、生理食塩水も使用可能である。血液回路内での血液凝固を防止するため、必要に応じて、プライミング溶液1Lあたり300IUのヘパリンを添加してもよい。この際、動脈血ラインと静脈血ラインの患者端が、Hemopurifierと体外循環回路のプライミングに用いた溶液の回収用の廃液容器に向けて固定されていることを確認する。(動脈血ラインに接続された)プライミング用注入ラインの末端にスパイク針を無菌的に挿入して、プライミング溶液を含むバッグと接続する。プライミングの準備ができるまで、プライミング用注入ラインをクランプしておく。すべてのモニターラインと点滴筒の側枝チューブのクランプを閉じる。動脈血ライン上のメインラインクランプは開いてなければならない。プライミングラインのクランプを開き、動脈血ラインの患者端までの回路全体にプライミング溶液を重力によりプライミングする。重力によりプライミングした後、動脈ライン上のメインラインを患者端付近でクランプする。DINコネクターチューブ、特製のプライミングチューブおよびドレインバッグのすべてが、しっかりと接続されて開いていることを確認する。血液ポンプ速度を200~250mL/分に設定し、透析装置の開始ボタンを押してポンプを始動させる。動脈血ラインとHemopurifierをプライミングする。血液ラインとHemopurifierの間の接続部分からの漏出がないことを確認する。治療を開始する前に、すべての空気がHemopurifierから完全に取り除かれていることを十分に注意する必要がある。すべての空気をHemopurifierから完全に取り除くためには、Hemopurifierへのプライミング溶液の導入を開始したら、400~500ml/分といった高い流量で送液できるように血液ポンプを設定することが推奨される。このような高い流量によって、中空糸の内部のせん断力が上昇することから、微小気泡の除去を促すことができる。このような高い流量でのプライミング溶液の送液中に、膝蓋腱反射検査用のゴム製ハンマーなどの器具や手のひらの付け根などを用いて、Hemopurifierの側面を軽く叩くことによって、中空糸またはプラスチック製ハウジングの表面に表面張力により付着した微小気泡を移動させて、微小気泡の除去をさらに促す。プライミング溶液の最初の1Lが、Hemopurifierからドレインバッグへと通過したら、透析装置の停止ボタンを押す。滅菌技術を用いて、特製のプライミングチューブからDINコネクターラインを外し、ダイアライザーの底部側の血液ポートに再装着し、Hemopurifierとダイアライザーを接続する。血液ポンプを低速度で再始動させて、再度、400~500mL/分の速度まで上げる。少なくとも1Lの追加のプライミング溶液を、ダイアライザーと静脈血ラインに通過させる。適切な廃棄物容器に、特製のプライミングチューブとドレインバッグを廃棄する。プライミング手順中、血液チューブ、Hemopurifierおよびダイアライザーに気泡がないかどうかを継続的に確認する。血液ラインやHemopurifierに依然として気泡が検出された場合、プライミング溶液を追加して、空気や気泡が見えなくなるまで体外循環回路のプライミングを継続する。血液ポンプとHemopurifierの間の動脈血ラインを「つまんで離す」方法でも、体外循環装置/回路からの空気の除去を促すことができる。プライミングが完了したら、透析装置の停止ボタンを押して血液ポンプを停止させ、プライミング用注入ラインと患者端付近のメイン静脈血ラインの両方をクランプする。
【0404】
体外循環圧モニタリング操作
【0405】
体外循環回路をプライミングした後、ヘパリン注入ラインと圧力モニタリングセットをフラッシュし、圧力トランスデューサーのゼロ点校正を行う。治療を開始後、ベースライン圧力の測定を行い、以降は15分ごとに連続的に測定を行う。圧力が50mmHgを上回って増加した場合、Hemopurifierの中空糸の閉塞の最初の徴候として解釈し、腎臓専門医の臨床判断に基づいて、抗凝固療法または血流を調整してもよく、さらには治療への介入を行ってもよい。Hemopurifierの圧力測定値と抗凝固療法と血栓症および溶血検査用血液試料の相関性の事後分析を行う。
【0406】
血液浄化
【0407】
無菌技術を用いて、体外循環回路の血液ラインにカテーテルの枝管を接続する。次に、カテーテルの枝管と血液ラインのクランプを外す。すべての接続がしっかりと接続されていることを確認し、血液ライン固定装置を使用する。空気漏れ検出器が作動可能であることを確認し、血液ラインを開く。治療を開始するため、100mL/分の初期血流量で血液ポンプを作動させる。血流量は、治療の最初の20分間で、200mL/分の最大推奨血流量に達するまで段階的に徐々に増加させる。血流量が240mL/分を超えないようにする。体外循環系の血流量、圧力および抗凝固剤流量を連続的にモニタリングする必要がある。回路内での発生を注意すべき発生しうる問題として、Hemopurifierの血漿区画の空気、閉塞および溶血が挙げられる。これらの問題が見られた場合、透析装置のポンプを直ちに止めて、血液ラインをクランプする。Hemopurifierを用いた治療は少なくとも4時間継続すべきであるが、6時間を超えてはならない。Hemopurifierを用いた治療は、1日1回行った後に、連続して最大4日間行ってもよい。内蔵プロトコールに従って治療中に静脈内投薬を行うべきである。
【0408】
NxStage System Oneのみを用いた血液浄化の準備
【0409】
使用後にHemopurifierを密封するため、ツイストロック式の血液ポートキャップを保管しておく。NxStage装置のドアを開けて、開口部にチューブカートリッジを挿入する。カートリッジが適切な方向である場合、カートリッジの左上の隅にスマイルマークが見える。3つの挿入スロットにチューブをしっかりとはめ込む。いずれのサイドチューブもドアやラッチに触れないように注意しながら、NxStage装置のドアを閉じてラッチをかける。NxStage System Oneの右下側のポートにAccess Pressure Podモニタリングラインを接続する。赤色のクランプ、白色のクランプおよび青色のクランプが付属したプライミング用スパイク針がNxStage System Oneに装着されていることを確認する。これら3つのクランプをすべて閉じ、プライミング用スパイク針を生理食塩水バッグに挿入する。別の2本のスパイク針に繋がった白色のクランプを閉じる。赤色のクランプから加温バッグの入口の緑色のクランプに接続されていることを確認する。赤色のクランプのコネクターを外して、プライミング用スパイク針の赤色の接続部にチューブを移動させる(赤色のクランプのチューブ同士が接続される)。次に、廃棄ラインのTチューブ型連結部が、青色のクランプのチューブに接続されていることを確認する。これらの2本のチューブの接続を外し、青色のクランプが付属したプライミング用スパイク針のチューブに、青色のルアーコネクターを再接続する(青色のクランプのチューブ同士が接続される)。生理食塩水のTチューブ型連結部にプライミングラインが接続されていることを確認する。白色のクランプと赤色のクランプを閉め、ルアー接続部を外す。加温バッグの出口を見つけ、ルアー接続部からチューブを外す。プライミングラインの接続可能な末端を、治療液の入口ラインに接続する。この構成では加温バッグは不要のため、廃棄することができる。NxStage装置の左側のダイアライザーホルダーに、ラベルが左側から右側に読めるようにHemopurifierを設置する。動脈血ラインの赤色のDINコネクターをHemopurifierの入口(左下側)に装着し、静脈血ラインの青色のDINコネクターをHemopurifierの出口(右上側)に装着する。排出ラインとそのクランプ(黄色のクランプ)から、赤色のハンセンコネクターと青色のハンセンコネクターを取り外す。Hemopurifierのすぐ下流の、Hemopurifier後の2本のTラインのうちの一方に排出ラインを装着する。ハンセンコネクターを廃棄する。接続図の一例を図17Dに示す。
【0410】
NxStage System Oneのみを用いた血液浄化のプライミング手順
【0411】
少なくとも2Lのプライミング溶液を使用して、体外循環回路のプライミングとリンスを行う。Normosol-Rを用いてプライミングを行うことが推奨されるが、生理食塩水も使用可能である。外部環境にポートが露出されていないクランプをすべて開く。外部環境に露出されているすべてのポート(Tチューブ型連結部)が、キャップおよびクランプされていることを確認する。NxStage装置のコントロールパネルのAdd Fluidボタンを押す。流体が、チューブとHemopurifierを通って循環を開始する。プライミングシーケンス中に、Hemopurifierをホルダーから手に取り、外側から強く叩いて、親和性樹脂のエアポケットと中空糸に入り込んだ気泡を抜く。Hemopurifierをホルダーに戻す。Hemopurifierの上部側面ポートのルアーキャップをゆっくりと緩める。このキャップを緩めることによって、中空糸の外側の中空糸外部空間に入り込んだ空気のパージを促すことができる。空気が除去されたら、このポートのキャップを閉める。治療液バッグをポールに吊るし、加温バッグのプライミングを行う。回路のプライミングが終了したら、コントロールパネルの8個のランプがすべて点灯する。Muteボタンを押して操作を続ける。次に、コントロールパネルに、「1234ABCDEFGH」と「987654321」が表示される。Muteボタンを押して操作を続ける。コントロールパネルに「23」という番号が表示され、Stopボタンが押されるまで、ポンプにより生理食塩水の循環が継続される。引き続き、Hemopurifierとチューブラインから気泡を抜く。場所を移動してプライミングを行う場合、NxStage Systemのプラグを抜いて、NxStage Systemのプライミングプロセスの進捗を失うことなくNxStage Systemを移動させることができる。患者のベッドサイドにNxStage Systemを移動させた後、NxStage Systemのプラグを再度挿す。このとき、コントロールパネルには、「40」という番号が表示される。廃棄ラインの延長チューブを、排出ラインの開口端に接続する。廃棄ラインの延長チューブの末端を、流し台またはトイレに設置する。この時点で、ヘパリン注射器および補助圧力モニターを、Hemopurifier前のTラインに接続することができる。Hemopurifier前のTライン上のメスルアーコネクターを使用して、三方活栓を装着する。この三方活栓は、滅菌された方法で、Hemopurifier前のTチューブとヘパリン注射器の間に挿入する。標準的な滅菌チューブを介して、三方活栓の3つ目のポートを(動脈内血圧のモニタリングに通常使用されている)標準的な動脈圧トランスデューサーに接続する。動脈圧トランスデューサーからの出力は、ベッドサイドモニター上に連続的に表示される。NxStageポンプ上の緑色の腎臓の形をしたボタンを押し、ステージ23を再開する。Hemopurifierと血液ラインの気泡の有無を再度確認する。回路のプライミングが有効に行われたら、コントロールパネルのStopボタンを押す。白色のプライミングラインと治療液の入口ラインをクランプする。加温バッグの出口チューブを、治療液の入口チューブに接続する。治療液バッグが、加温バッグの入口チューブに接続されており、すべての治療液ラインのクランプが開放されていることを確認する。必要に応じて、ポンプ前のTポートおよび生理食塩水のTポートのプライミングを行う。開放したすべてのラインのキャップが交換されていることを確認する。主要な動脈血ラインと静脈血ラインのクランプを閉じる(主要な血液ラインの2つの赤色のクランプと2つの青色のクランプを閉じる)。動脈血ラインの接続を注意深く外し、動脈血ラインのチューブを患者の適切なカテーテルポートに無菌的に接続する。静脈血ラインとその他のカテーテルポートでも同じ操作を行う。動脈血ラインと静脈血ラインのクランプを開く。この時点で患者の治療を行う準備ができている。排出ラインを、余っているプライミング用スパイク針に接続し、このスパイク針を新たな1Lの生理食塩水バッグに挿入する。Hemopurifier後の「T」ポートにキャップをする。排出ラインのクランプを開き、生理食塩水を流す。主要な動脈血ラインと静脈血ラインのクランプを閉じる(主要な血液ラインの2つの赤色のクランプと2つの青色のクランプを閉じる)。動脈血ラインの接続を注意深く外し、動脈血ラインのチューブを患者の適切なカテーテルポートに無菌的に接続する。静脈血ラインとその他のカテーテルポートでも同じ操作を行う。動脈血ラインと静脈血ラインのクランプを開く。この時点で患者の治療を行う準備ができている。NxStageポンプのコントロールパネル上でプログラムすべき流量は、治療液流量(緑色):0L/時、排出流量(黄色):25ml/時、および初期血流量(赤色):120ml/分である。ホーム画面で圧力のモニタリングを行う。排出圧力が少なくとも100mmHgに達するまで、点滴静注(IV)バッグに装着したバルブで点滴静注(IV)バッグを加圧する。三方活栓を用いて圧力をロックする。緑色の腎臓の形をしたボタンを押し、ポンプを始動させ、血液循環を開始して治療を行う。Hemopurifier内に血液が途切れることなく存在するのを確認できたら、血流量を10mL/分ずつ徐々に増加させて、治療の開始から20分以内で200ml/分の最終血流量まで血流量を増加させる。Hemopurifierを用いた治療は少なくとも4時間継続すべきであるが、6時間を超えてはならない。
【0412】
直列に接続したダイアライザーとNxStage System Oneを用いた血液浄化の準備
【0413】
使用後にHemopurifierを密封するため、ツイストロック式の血液ポートキャップを保管しておく。NxStage装置のドアを開けて、開口部にチューブカートリッジを挿入する。カートリッジが適切な方向である場合、カートリッジの左上の隅にスマイルマークが見える。3つの挿入スロットにチューブをしっかりとはめ込む。いずれのチューブもドアやラッチに触れないように注意しながら、NxStage装置のドアを閉じてラッチをかける。NxStage System Oneの右下側のポートにAccess Pressure Podモニタリングラインを接続する。赤色のクランプ、白色のクランプおよび青色のクランプが付属したプライミング用スパイク針が、NxStage System Oneに装着されていることを確認する。これら3つのクランプをすべて閉じ、プライミング用スパイク針を生理食塩水バッグに挿入する。別の2本のスパイク針に繋がった白色のクランプを閉じる。赤色のクランプから加温バッグの入口の緑色のクランプに接続されていることを確認する。赤色のクランプのコネクターを外して、プライミング用スパイク針の赤色の接続部にチューブを移動させる(赤色のクランプのチューブ同士が接続される)。次に、廃棄ラインのTチューブ型連結部が、青色のクランプのチューブに接続されていることを確認する。これらの2本のチューブの接続を外し、青色のクランプが付属したプライミング用スパイク針のチューブに、青色のルアーコネクターを再接続する(青色のクランプのチューブ同士が接続される)。生理食塩水のTチューブ型連結部にプライミングラインが接続されていることを確認する。白色のクランプと赤色のクランプを閉め、ルアー接続部を外す。加温バッグの出口を見つけ、ルアー接続部からチューブを外す。プライミングラインの接続可能な末端を、治療液の入口ラインに接続する。NxStage装置の後ろのポールのダイアライザーホルダーに、底部側から頂部側にラベルが読めるようにHemopurifierを垂直に設置する。Hemopurifierの入口(底部側)に、動脈血ラインの赤色のDINコネクターを装着する。NxStage装置の左側のスタンドにダイアライザーを設置し、その際にダイアライザーの動脈側の入口が下を向き、静脈側の出口が上に向くように配置する。Hemopurifier(頂部側)の出口に接続されたDIN-DINコネクターチューブを、ダイアライザーの動脈側の末端に装着する。次に、ダイアライザーの静脈側の末端を、静脈血ラインの青色のDINコネクターに接続する。ダイアライザーの適切なポート(赤色および青色)に、ハンセンコネクターをそれぞれ装着する。廃液ラインが赤色のハンセンコネクターに装着されていることを確認する。廃液ラインのクランプが開いていることを確認する。Hemopurifier前のTラインとチェックバルブの間でチューブを接続する。ルアー接続部を外して、Hemopurifier前のTラインをクランプし、治療液の出口ラインをダイアライザーの青色のハンセンコネクターに接続する。ハンセンコネクターの接続部の近くのクランプが両方とも開いていることを確認する。接続図の一例を図17Eに示す。
【0414】
直列に接続したダイアライザーとNxStage System Oneを用いた血液浄化のプライミング手順
【0415】
少なくとも2Lのプライミング溶液を使用して、体外循環回路のプライミングとリンスを行う。Normosol-Rを用いてプライミングを行うことが推奨されるが、生理食塩水も使用可能である。外部環境にポートが露出されていないクランプをすべて開く。外部環境に露出されているすべてのポート(Tチューブ型連結部)が、キャップおよびクランプされていることを確認する。NxStage装置のコントロールパネルのAdd Fluidボタンを押す。流体が、チューブとHemopurifierを通って循環を開始する。プライミングシーケンス中に、Hemopurifierをホルダーから手に取り、外側から強く叩いて、親和性樹脂のエアポケットと中空糸に入り込んだ気泡を抜く。Hemopurifierをホルダーに戻す。Hemopurifierの上部側面ポートのルアーキャップをゆっくりと緩める。このキャップを緩めることによって、中空糸の外側の中空糸外部空間に入り込んだ空気のパージを促すことができる。空気が除去されたら、このポートのキャップを閉める。治療液バッグをポールに吊るし、加温バッグのプライミングを行う。回路のプライミングが終了したら、コントロールパネルの8個のランプがすべて点灯する。Muteボタンを押して操作を続ける。次に、コントロールパネルに、「1234ABCDEFGH」と「987654321」が表示される。Muteボタンを押して操作を続ける。コントロールパネルに「23」という番号が表示され、Stopボタンが押されるまで、ポンプにより生理食塩水の循環が継続される。引き続き、Hemopurifierとチューブラインから気泡を抜く。場所を移動してプライミングを行う場合、NxStage Systemのプラグを抜いて、NxStage Systemのプライミングプロセスの進捗を失うことなくNxStage Systemを移動させることができる。患者のベッドサイドにNxStage Systemを移動させた後、NxStage Systemのプラグを再度挿す。このとき、コントロールパネルには、「40」という番号が表示される。廃棄ラインの延長チューブを、排出ラインの開口端に接続する。廃棄ラインの延長チューブの末端を、流し台またはトイレに設置する。この時点で、ヘパリン注射器および補助圧力モニターを、Hemopurifier前のTラインに接続することができる。Hemopurifier前のTライン上のメスルアーコネクターを使用して、三方活栓を装着する。この三方活栓は、滅菌された方法で、Hemopurifier前のTチューブとヘパリン注射器の間に挿入する。標準的な滅菌チューブを介して、三方活栓の3つ目のポートを(動脈内血圧のモニタリングに通常使用されている)標準的な動脈圧トランスデューサーに接続する。動脈圧トランスデューサーからの出力は、ベッドサイドモニター上に連続的に表示される。NxStageポンプ上の緑色の腎臓の形をしたボタンを押し、ステージ23を再開する。Hemopurifierと血液ラインの気泡の有無を再度確認する。回路のプライミングが有効に行われたら、コントロールパネルのStopボタンを押す。白色のプライミングラインと治療液の入口ラインをクランプする。加温バッグの出口チューブを、治療液の入口チューブに接続する。治療液バッグが、加温バッグの入口チューブに接続されており、すべての治療液ラインのクランプが開放されていることを確認する。必要に応じて、ポンプ前のTポートおよび生理食塩水のTポートのプライミングを行う。開放したすべてのラインのキャップが交換されていることを確認する。主要な動脈血ラインと静脈血ラインのクランプを閉じる(主要な血液ラインの2つの赤色のクランプと2つの青色のクランプを閉じる)。動脈血ラインの接続を注意深く外し、動脈血ラインのチューブを患者の適切なカテーテルポートに無菌的に接続する。静脈血ラインとその他のカテーテルポートでも同じ操作を行う。動脈血ラインと静脈血ラインのクランプを開く。この時点で患者の治療を行う準備ができている。NxStageコントロールパネル上での治療液流量(緑色)と排出流量(黄色)のプログラム設定は、患者に対して担当医師により処方されたものに従う。初期血流量(赤色)は、120ml/分に設定する。緑色の腎臓の形をしたボタンを押し、ポンプを始動させ、血液循環を開始して治療を行う。Hemopurifier内に血液が途切れることなく存在するのを確認できたら、血流量を10mL/分ずつ徐々に増加させて、治療の開始から20分以内で200ml/分の最終血流量まで血流量を増加させる。Hemopurifierを用いた治療は少なくとも4時間継続すべきであるが、6時間を超えてはならない。
【0416】
血液の漏出
【0417】
Hemopurifierカラムに血液の漏出が検出された場合、治療を中止する。新たなHemopurifierで治療を開始してもよい。本明細書で述べた設置方法とプライミング方法に従って、漏出を起こしたHemopurifierを新たなHemopurifierと交換する。
【0418】
使用時のモニタリング
【0419】
体外循環を用いたあらゆる形態の血液浄化療法と同様に、血液浄化では、治療中に特定のパラメータをモニターする必要がある。使用する計測システムは、静脈血チューブセグメントにおいて空気の有無を検出できるものでなければならず、静脈血チューブセグメントに応じたクランプ安全機構を併用して、患者の血管腔に空気が入ることを防ぐ必要がある。
【0420】
静脈血チューブセグメントにおける圧力のモニタリングは必須である。脱血チューブセグメントの圧力は、血栓の形成をより敏感に示すことから、ポンプ後とHemopurifier前で脱血チューブセグメントの圧力もモニターすることが推奨される。Hemopurifierカートリッジの血漿ポートは治療中に塞がれ、膜の内外の圧力が平均して平衡状態になるため、膜間差圧のモニタリングは不可能である。Hemopurifierから出る血漿の外部流れは存在しないため、中空糸の破損により発生した血液の漏出を自動的にモニタリングする機構は存在しない。したがって、担当医療従事者は、血液がHemopurifierの血漿ケースに混入していないかどうかを定期的に目視で検査しなければならない。また、溶血や血液凝固を調べるため、すべてのラインとHemopurifierカートリッジの外周全体を目視で検査しなければならない。血漿の色は通常、麦わら色である。血漿の色が明るい赤色になった場合、患者の赤血球数とカリウム濃度を測定すべきである。検査結果から有意な異常所見が示唆され、かつ/またはフィルター内の変色が継続した場合、治療を中断すべきである。Hemopurifierカラムに血液の漏出が検出された場合、治療を中止する。新たなHemopurifierで治療を開始してもよい。バイタルサイン(体温、脈拍、呼吸数、血圧)は、治療前、治療中15分ごと、および治療後にモニターする。パルスオキシメトリー、EKGリズムおよびHemopurifier前の圧力を連続的にモニタリングする。血液凝固阻止は、治療前にモニターした後、治療中1時間ごとおよび治療後にモニターする。血液(5mL)は、Hemopurifierを用いた治療を行う前、治療開始から2時間経過した時点、および治療後に採取する。
【0421】
治療後
【0422】
Hemopurifierによる治療の終了後、血流量を段階的に減らして100mL/分まで戻す。新たな滅菌生理食塩水バッグにスパイク針を差し込み、プライミングラインのクランプを開く。300~1000mlの滅菌生理食塩水を用いて、血液を患者にリンスバックする。リンスバックが終了したら、患者の血液アクセス装置から血液チューブセットの患者側の動脈コネクターおよび静脈コネクターの接続を外す。患者から装置の接続を外したら、Hemopurifierの前後の血液ラインとダイアライザー(使用する場合)を取り外し、ラベルが貼付された適切なバイオハザード廃棄容器に廃棄する。可能であれば、血液ポートにパラフィルムを巻き、パラフィルムの上からツイストロック式の血液ポートキャップをはめる。パラフィルムが利用可能でない場合、ツイストロック式の血液ポートキャップのみで蓋をする。Hemopurifierによる治療が終了したら、担当医師により治療後評価を行う必要がある。Hemopurifierは、透明なプラスチックパウチに入れて密封し(詳細な梱包の仕方は別記する)、高度安全実験施設(BSL-4施設)に発送するまで冷凍庫で保管する。Hemopurifierは、各患者ごとに可能な限り迅速に発送する。2時間以内にHemopurifierの梱包や発送ができない場合は、梱包したHemopurifierを発送するまで-20℃で保管する。国際航空運送協会(IATA)の危険物規則書の現行版に従って、国連番号3373の生体物質カテゴリーBとして、Hemopurifierを梱包して発送する。担当者は、規則に沿ってHemopurifierを発送できるように訓練されていなければならない。Hemopurifierは、各Hemopurifierに捕捉されたウイルス粒子の数を定量するため、溶出操作が行われる。
【0423】
バイタルサイン
【0424】
バイタルサイン(体温、脈拍、呼吸数、血圧)を、治療の60分前、治療中15分ごと、および治療の60分後に文書に記録する。このデータを記録する。バイタルサインに臨床的に有意で持続的な変化が認められた場合、このようなバイタルサインの変化を記録し、有害事象(本明細書に記載の有害事象)として文書に記録する。
【0425】
体温は、各治療日の血液浄化治療を開始する60分前に記録する。このデータは、SOFAスコアを採点する項目の1つとして必要である。
【0426】
本治験において、臨床的に有意な異常が認められた場合や、スクリーニング期間と比べて臨床的に有意な変化があったと治験責任医師が気付いた場合、このような異常や変化は、有害事象として記録する必要があり、バイタルサインが正常に戻るか、安定するまで患者の追跡を行う。
【0427】
平均動脈圧:このデータは、SOFAスコアの項目の1つおよび採点項目の1つとして必要であり、血圧の評価から得られる値である。
【0428】
体重:体重は、Hemopurifierによる治療の1日目に、治療を開始する約60分前に測定する。
【0429】
パルスオキシメトリーおよび心臓モニタリング:定期的なパルスオキシメトリー測定(人工呼吸器を装着しておらず、動脈血ガス(ABG)を測定していない場合)を、治療の約60分前、治療中30分ごと、および治療終了から約60分後に記録する必要がある。パルスオキシメトリー測定は、各治療日に記録する。このデータも、SOFAスコアの計算に必要である。連続的な心臓(ECG)モニタリングは、前述したように、治療のすべての態様において必要とされる。
【0430】
昇圧薬の補助:昇圧薬の補助はすべて記録する。
【0431】
血液凝固阻止(特に活性凝固時間(ACT)):治療中に血液凝固阻止を定期的にモニタリングして、Hemopurifier内での凝固が阻止されていることを確認する。臨床状態から試料の採取が必要となった場合、活性凝固時間(ACT)値を記録する。Hemopurifierの使用中の具体的な血液凝固阻止方法および血液凝固阻止のモニタリング方法は、治療担当医師の裁量に任せてもよい。治療中のあらゆる時点において、ポンプ後のHemopurifier前の圧力が200mmHgを超えているとみられた場合、血液凝固阻止ステータスを調査する必要がある。ヘパリンを用いて血漿濾過器の血液凝固阻止を行うことに関する学術文献では、ヘパリンを用いる場合、75IU/kg体重の負荷用量を患者に投与し、体外循環回路に患者を接続する前に、5分以上かけて、この用量のヘパリンを全身循環させることが提唱されている。ヘパリンを用いる場合、ACTの測定に基づいて、持続注入または反復ボーラス注射が必要となる。ACTは、治療前、最初の1時間の15分ごと、残りの治療時間の30分ごと、および治療終了後に記録する。
【0432】
動脈血ガス(ABG)(SOFAに必要とされる):血液ガス分析は、治療の開始から2時間以内または治療の中止後2時間以内に試料を採取していない場合に限り、治療の約60分前と治療の終了の約60分後の動脈血の酸素化の変化を測定するために行う。このデータは、各治療日に記録する。このデータも、SOFAスコアの計算に必要である。動脈血ガスの結果が利用できない場合、パルスオキシメトリーで測定したSpO2/FIO2から呼吸器SOFAスコアを求める。
【0433】
人工呼吸器の設定:人工呼吸器の設定は、治療の約60分前、治療中30分ごと、および治療終了から約60分後に記録する。人工呼吸器の設定は、各治療日に記録する。患者が機械的人工呼吸を装着している場合に記録する必要がある情報として、治療の開始日に最も近い挿管と人工呼吸器の装着を行った日付(1日目のみ);現在のFiO2;現在の処方された換気量の設定;呼気終末陽圧(PEEP)を実施している場合は、PEEPレベルの記録;補助換気/調節換気または同期的間欠的強制換気(SIMV)を実施している場合、その換気量;評価時に患者が腹臥位であったかどうか;抜管および/または人工呼吸器の離脱の日付がある。
【0434】
SOFA:SOFAスコアの算出に必要とされるデータは、酸素分圧(PaO2)/吸入気酸素分画(FiO2)またはパルスオキシメトリーで測定されたSpO2/FiO2;人工呼吸器の装着の有無;血小板数(×103/μL);ビリルビン(mg/dL);平均動脈圧;ドーパミン、エピネフリンまたはノルエピネフリンの必要性の有無;グラスゴー昏睡尺度;クレアチニン(mg/dL)または尿量である。酸素分圧(PaO2)/吸入気酸素分画(FiO2)は、動脈血ガス分析および/または人工呼吸器の設定から求める。
【0435】
臨床検査評価:臨床的意義のある臨床検査値は、原資料を適宜添付してそのすべてを症例報告書に記録する必要がある。治験実施施設の治験責任医師または委任された者の注意を促すため、正常範囲外の数値にはフラグを付ける。治験責任医師または委任された者は、その数値が臨床的に重要であるのかどうかを判断する。臨床的重要性が示された場合、本治験において追加の検査を行ってもよい。得られた試料において臨床的に有意な異常が認められた場合、このような異常は、有害事象として記録する必要があり、検査結果が正常に戻るか、安定するまで被験患者の追跡を行う。本治験中に得られた試料において、早急な治療を要する臨床的に有意な異常検査値が認められた場合、このような異常は、有害事象または機器による有害作用として記録する。
【0436】
以下の治験専用検査を行う必要がある。臨床的徴候が示された場合、その他の項目も記録する。治験専用検査には、全血球算定および白血球分画;ミエロペルオキシダーゼ;包括的代謝パネル;LDH;フェリチン;炎症マーカーとしての、C反応性タンパク質(CRP)、IL-6、IL-10、IL-15、CXCL-10、CCL-2;DダイマーおよびPT-INR;VCAM-1;鼻咽頭試料からのSARS-CoV-2の検出;血漿中のウイルス(SARS-CoV-2)RNA;治療に使用したHemopurifierカートリッジ中のウイルス(SARS-CoV-2)RNAの定量が含まれる。
【0437】
簡単な身体検査:簡単な身体検査は、スクリーニング期間中に行う。身体検査には、全体的な外観、EENT(耳、眼、鼻咽頭、口腔)、頭部/頸部、心血管系、呼吸器系、消化管系、神経系および筋骨格系の評価が含まれる。本治験において、身体検査のいずれかの項目において臨床的に有意な異常が認められた場合や、スクリーニング期間と比べて臨床的に有意な変化があったと治験責任医師が気付いた場合、このような異常や変化を有害事象として記録する必要があり、認められた異常や変化が正常に戻るか、安定するまで被験患者の追跡を行う。
【0438】
治療中に必要とされるモニタリング:体外循環を用いたあらゆる形態の血液浄化療法と同様に、血液浄化では、治療中に特定のパラメータをモニターする必要がある。使用する計測システムは、静脈血チューブセグメントにおいて空気の有無を検出できるものでなければならず、この静脈血チューブセグメントに応じたクランプ安全機構を併用して、患者の血管腔に空気が入ることを防ぐ必要がある。治療の開始後、圧力の測定値が得られ、最初の1時間の15分ごとと、残りの治療時間の30分ごとに、連続した測定値が得られる。様々な時点で記録する必要がある測定値は、ヘパリンの用量;血流量;動脈陰圧;ポンプ後のHemopurifier前の圧力;静脈返血圧;目視可能な血液凝固/血液凝固のエビデンス(有害事象症例報告書に記録);溶血事象(有害事象症例報告書に記録);フィルターからの漏出の評価(有害事象症例報告書に記録);有害事象(有害事象症例報告書に記録);昇圧薬の補助を含む処方された追加の医薬品(併用薬症例報告書に記録)である。
【0439】
その他のモニタリング情報:脱血チューブセグメントの圧力は、血栓の形成をより敏感に示すことから、脱血チューブセグメントの圧力もモニターすることが推奨される。Hemopurifierカートリッジの血漿ポートは治療中に塞がれ、膜の内外の圧力が平均して平衡状態になるため、膜間差圧のモニタリングは不可能である。Hemopurifierから出る血漿の外部流れは存在しないため、中空糸の破損により発生した血液の漏出を自動的にモニタリングする機構は存在しない。したがって、担当医療従事者は、血液がHemopurifierの血漿ケースに混入していないかどうかを定期的に目視で検査しなければならない。また、溶血や血液凝固を調べるため、すべてのラインとHemopurifierカートリッジの外周全体を目視で検査しなければならない。血漿の色は通常、麦わら色である。回路内での発生を注意すべき発生しうる問題として、Hemopurifierの血漿区画の空気、閉塞および溶血が挙げられる。これらの問題が見られた場合、透析装置のポンプを直ちに止めて、血液ラインをクランプする。
【0440】
安全性評価
【0441】
溶血事象:治療中のあらゆる溶血事象を評価し、有害事象として記録する。溶血事象は、通常、長時間の人工透析において発生する。血液透析に伴う溶血の原因として最も頻度が高いものとして、透析用水中のクロラミン濃度の増加;透析液の硝酸塩汚染;ダイアライザーの再処理もしくは水処理システムの消毒の後に残ったホルムアルデヒド残留物;低張透析液もしくは108°F(42℃)を上回る透析液の使用;または閉塞した血液透析用血液ラインまたは折れ曲がった血液透析用血液ラインによる赤血球の機械的損傷が挙げられる。
【0442】
血液漏出―フィルター:Hemopurifierカラムに血液の漏出が検出された場合、治療を中止する。臨床判断に基づいて、新たなHemopurifierフィルターに交換してから一度だけ治療を再開してもよい。
【0443】
血液凝固-フィルター:ポンプ後のHemopurifier前の圧力が50mmHgを上回って増加した場合、またはポンプ後のHemopurifier前の圧力が200mmHgを上回って増加した場合、Hemopurifierの中空糸の閉塞の最初の徴候として解釈し、臨床判断に基づいて、抗凝固療法または血流を調整してもよく、さらには治療への介入を行ってもよい。臨床判断に基づいて、新たなHemopurifierフィルターに交換してから一度だけ治療を再開してもよい。
【0444】
妊娠:妊娠検査:血清試料を用いて、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-HCG)の検査を実施して、妊娠可能な女性(WOCBP)をスクリーニングする。血液濾過の終了後から2週間は、患者は有効な避妊を行う。同意の署名から退院の2週間後までは、患者に妊娠の報告を要求する。この期間中に、妊娠可能な女性と子供の父親となる男性は、臨床スタッフに連絡を取り、妊娠事象を文書に記録する。
【0445】
スクリーニング期間:スクリーニング期間中に以下の評価を行う。患者がすべての選択基準に合致し、除外基準には該当していないことを確認する。十分なインフォームド・コンセントを実施する。有害事象/併用薬のモニタリングを開始する。患者背景として、人種、民族性、性別および生年月日を調べる。病歴を調べる。簡単な身体検査として、あらゆる異常な知見を調査する。
【0446】
治療後(分析のためのHemopurifierの発送):Hemopurifierによる治療が終了したら、担当医師により治療後評価を行う必要がある。Hemopurifierは、透明なプラスチックパウチに入れて密封する必要がある。2時間以内にHemopurifierの梱包や発送ができない場合は、梱包したHemopurifierを高度安全実験施設(BSL-4施設)に発送するまで-20℃で保管する。Hemopurifierは、各患者ごとに可能な限り迅速に発送する必要がある。Hemopurifierは、各Hemopurifierに捕捉されたウイルス粒子の数を定量するため、溶出操作が行われる。
【0447】
有害事象および重篤な有害事象
【0448】
以下の基準に合致する治験治療関連有害事象を、重篤な有害事象(SAE)と見なす。死亡に至った有害事象;致命的な有害事象(これは、その有害事象の発生時に患者に死亡のリスクがあったことを意味し、さらに重症化していた場合に死亡を引き起こした可能性がある事象は意味しない);患者の入院が必要となった有害事象または入院期間が延長した有害事象;永続的な身体障害/機能不全;先天性奇形または先天性異常;治験責任医師により重要な医療事象と見なされる有害事象(例えば、外科手術、ICUへの再入室、応急処置など)。
【0449】
有害作用(AE)重症度は、ctep.cancer.gov/protocoldevelopment/electronic_applications/docs/CTCAE_v5_Quick_Reference_8.5x11.pdfのアドレスからワールド・ワイド・ウェブ経由で利用可能な米国国立がん研究所(NCI)のCommon Terminology Criteria for Adverse Events(NCI CTCAE v5.0)に従ってグレード分類した。
【0450】
以下の条件のいずれかが発生した場合、患者の治験治療を中止する。恐らくは治療に関連すると考えられるグレード3以上の有害事象が発生した場合、または治療中の急性反応が発生した場合に、患者の治療を中止する。治療に関連すると考えられるグレード4の副作用が発生した場合、または少なくとも2人の患者においてグレード3以上の副作用が発生した場合に、治験を中止する。
【0451】
実施例14:Hemopurifier装置はSARS-CoV-2変異株およびそれらの糖タンパク質を結合する
注目すべき変異株(VOI)や懸念される変異株(VOC)などの様々なSARS-CoV-2変異株が発生したことから、SARS-CoV-2ウイルスのオリジナル株に対して当初想定していたよりも医療負担が大幅に増加した。これらの変異株は、患者体内でのウイルス量が増加したり、ウイルスの伝播が増強したり、利用可能な治療法および/または予防法(例えば、ワクチン、抗SARS-CoV-2抗体、その他の治療法)の有効性が低下する場合がある。このような表現型は、ウイルスゲノムの変異に起因するものである。一般に、これらの変異は、細胞表面マーカーとの結合と宿主細胞への進入に利用されるスパイク糖タンパク質に見られるが、ウイルスのRNA依存RNAポリメラーゼなどのその他の遺伝子の変異もよく見られる。
【0452】
レクチンが担持された本明細書に開示のHemopurifier装置の実施形態は、SARS-CoV-2変異株感染症の患者の血液や血漿などの試料からSARS-CoV-2変異株を除去することができる。本明細書で提供するデータから、Hemopurifier装置のカラム内のレクチンが、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質とSARS-CoV-2変異株のスパイク糖タンパク質に結合できることが示されたことから、本明細書に開示のHemopurifier装置は、SARS-COV-2粒子およびその変異株、SARS-CoV-2の遊離したスパイク糖タンパク質およびSARS-CoV-2変異株の遊離したスパイク糖タンパク質(例えば、完全なウイルス粒子やウイルス粒子の一部として組み立てられていないもの)、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質もしくはSARS-CoV-2変異株のスパイク糖タンパク質を含むウイルス断片、ならびにSARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質の断片自体もしくはSARS-CoV-2変異株のスパイク糖タンパク質の断片自体を除去することができるか、またはこれらのウイルス粒子、スパイク糖タンパク質および断片を除去するように構成されている。したがって、本明細書に開示のHemopurifier装置は、SARS-CoV-2ウイルスのオリジナル株によって引き起こされた感染症に対する有効性と同等の有効性または同程度の有効性で、SARS-CoV-2またはSARS-CoV-2変異株によって引き起こされたCOVID-19の治療または緩和に有用である。さらに、本明細書に開示のHemopurifier装置は、対象の体内を循環するウイルスが存在しない場合であっても、例えば、スパイクタンパク質を含むSARS-CoV-2の断片もしくはSARS-CoV-2変異株の断片、またはSARS-CoV-2のスパイクタンパク質自体もしくはSARS-CoV-2変異株のスパイクタンパク質自体もしくはこれらの一部を除去することによって、SARS-CoV-2感染症またはSARS-CoV-2変異株感染症から生じる症状または後遺症の治療または緩和に有用である。
【0453】
本明細書で提供される装置の実施形態で治療することができるSARS-CoV-2変異株により引き起こされる感染症として、アルファ変異株(B.1.1.7)、ベータ変異株(B.1.351)、ガンマ変異株(P.1)、デルタ変異株(B.1.617.2)、AY.1変異株、AY.2変異株、ラムダ変異株(C.37)、ミュー変異株(B.1.621)、B.1.427変異株、B.1.429変異株、R.1変異株、B.1.446.2変異株、B.1.1.318変異株、B.1.1.519変異株、C.36.3変異株、B.1.214.2変異株、B.1.1.523変異株、B.1.619変異株、B.1.620変異株、C.1.2.変異株、B.1.617.1変異株、B.1.1.529変異株(オミクロン)、B.1.526変異株、B.1.525変異株、B.1.1.207変異株、VUI-202101/01変異株(P.2)、VUI-202102/01変異株(A.23.1)、VUI 202103/01変異株(B.1.324.1)および/もしくはCAL.20C変異株(B.1.429)、または当技術分野で公知のSARS-CoV-2のその他の注目すべき変異株(VOI)もしくは懸念される変異株(VOC)が挙げられるが、これらに限定されない。現在のSARS-CoV-2のVOIおよびVOCの一覧は、例えば、ワールド・ワイド・ウェブにおいて、www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/のアドレスから利用可能な一覧などの、WHOにより提供されているような公的に利用可能な情報源から入手してもよい。
【0454】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるHemopurifier装置の実施形態は、SARS-CoV-2感染症を有する患者の血液や血漿などの(ただしこれらに限定されない)試料中のSARS-CoV-2変異株の量またはその糖タンパク質量(この糖タンパク質は、ウイルス粒子の一部であってもよく、ウイルス粒子の一部であってもよい)を、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%、またはこれらの割合のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合だけ減少させることができる。
【0455】
実施例15:GNAレクチン親和性マトリックスによるSARS-CoV-2変異株ウイルス粒子の除去
本明細書で提供されるGNAレクチンカラムは、SARS-CoV-2変異株のウイルス粒子を除去できることが実証された。
【0456】
GNAレクチン親和性樹脂を充填したカラムを調製した。陰性コントロールとして、GNAレクチン親和性樹脂を詰めていないカラムを別個に調製した。支持環付き実験スタンドに各カラムを垂直に設置し、脱イオン水または滅菌生理食塩水を流して、静的に詰めた樹脂を洗い流すとともに、樹脂床を充填した。カラム底部の出口の下に回収容器を置いた。カラム内のエアポケットの有無を調べ、エアポケットがあった場合、流体を滴下して樹脂床に通過させながらカラムを軽く叩いて、エアポケットを除去した。
【0457】
1本のカラムにつき10mLのウイルス溶液を流して測定を行った。空のコントロールカラムにも、このウイルス溶液を流して測定を行った。0時間の試料を用いてベースライン濃度を測定した。ウイルス溶液の試験準備ができたら、清潔な回収用滅菌チューブをカラムの出口の下に置いた。ウイルス溶液10mLを樹脂床に滴下した。ウイルス溶液の全量を樹脂床に通過させ、回収用チューブに回収した。回収用チューブの内容物をカラムにさらに2回通過させた。最終的に回収された溶液を用いて、ウイルスの濃度を分析した。
【0458】
SARS-CoV-2アルファ変異株(英国;B.1.1.7)、ベータ変異株(南アフリカ;B.1.351)またはガンマ変異株(ブラジル;P.1)を含むウイルス溶液を試験した。各変異株に対して、GNAレクチン親和性カラムによりウイルスを除去した結果を表9~12に示す。用量コントロールは、最初の未処理試料を示す。カラムコントロールは、空のカラムを通過したウイルス溶液の流出量を示す。ベータ変異株(実験1)の2回目の通液では、他の試料よりも溶液の通過が遅かった。ベータ変異株(実験2)の2回目の通液では、コントロールと比べてウイルス量の減少は見られなかった。
【0459】
これらのデータから、Hemopurifierの実施形態において用いられるGNAレクチン親和性樹脂は、SARS-CoV-2変異株のウイルス粒子に結合して、これを除去できることが示された。
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0460】
実施例16:GNAレクチン親和性マトリックスによるSARS-CoV-2変異株のスパイクタンパク質の除去
COVID-19変異株のスパイクタンパク質、またはCOVID-19変異株のスパイクタンパク質を有するウイルス粒子の断片がヒトの体内に存在すると、病原性を発揮したり、COVID-19感染症に関連する後遺症の原因になると考えられたことから、HemopurifierによってCOVID-19変異株のスパイクタンパク質を除去できるかどうかを調べるため、小型のHemopurifierを使用した。実験のセットアップ、試料の回収および結合の測定は、以下の方法により行った。空のRepligen社製MicroKros中空糸モジュールに約0.75gの親和性樹脂を詰めた(0.65μmの細孔径のMini Hemopurifier)。このMini Hemopurifierを、KrosFloポンプシステムに設置したチューブに接続した。このポンプ送液システムを用いて、COVID-19変異株のスパイクタンパク質溶液をMini Hemopurifierに20mL/分の流量で送液した。英国変異株(アルファ変異株)または南アフリカ変異株(「SA変異株」、ベータ変異株)を0.5μg/mLの濃度で含む1×PBS溶液10mLを調製した。さらに、英国変異株、南アフリカ変異株またはインド変異株(デルタ変異株)を0.4μg/mLの濃度で含む、5mLのエクソソーム非含有ウシ胎児血清と5mLの1×PBSの混合溶液10mLを調製した。調製した各溶液をMini Hemopurifierに4時間循環させ、Tc(コントロール)、0時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、3時間および4時間に200μLを試料として回収した。Sino Biological社のCOVID-19スパイクタンパク質ELISAアッセイを用いて、各試料中のCOVID-19変異株のスパイクタンパク質の濃度を測定した。
【0461】
ELISAアッセイにより、COVID-19スパイクタンパク質データ用の標準曲線を作成した。次に、英国変異株のスパイクタンパク質の1×PBS溶液と南アフリカ変異株のスパイクタンパク質の1×PBS溶液の標準曲線を作成した(図18A)。さらに、英国変異株のスパイクタンパク質のエクソソーム非含有ウシ胎児血清/1×PBS溶液の標準曲線と、南アフリカ変異株のスパイクタンパク質のエクソソーム非含有ウシ胎児血清/1×PBS溶液の標準曲線を作成した(図18C)。これらの標準曲線を用いて、実験用の各スパイクタンパク質の濃度を測定した(インド変異株のスパイクタンパク質の濃度は、南アフリカ変異株のエクソソーム非含有ウシ胎児血清/1×PBS溶液の標準曲線を用いて測定した)。
【0462】
ELISAアッセイで作成した各標準曲線を用いて、様々な実験におけるスパイクタンパク質の濃度を測定した。1×PBS溶液として調製した場合、4時間の実験でHemopurifierに結合した英国変異株のスパイクタンパク質と南アフリカ変異株のスパイクタンパク質は99%を上回ったことが分かった(図18B)。5mLの1×PBSと5mLのエクソソーム非含有ウシ胎児血清の混合溶液に各スパイクタンパク質を加えた場合、各スパイクタンパク質の結合は様々な結果となった(図18D)。4時間の実験でHemopurifierに結合した南アフリカ変異株のスパイクタンパク質は約31%であった。また、4時間の実験でHemopurifierに結合した英国変異株のスパイクタンパク質は約54%であった。4時間の実験でHemopurifierに結合したインド変異株のスパイクタンパク質は約42%であった。これらのデータから、Hemopurifier装置は、COVID-19変異株のスパイクタンパク質、COVID-19変異株のスパイクタンパク質を有するウイルス粒子の断片、およびCOVID-19変異株のウイルス粒子自体に効果的に結合できることが証明された。また、これらのデータから、Hemopurifier装置は、COVID-19に感染した患者から、COVID-19変異株のスパイクタンパク質、COVID-19変異株のスパイクタンパク質を有するウイルス粒子の断片、およびCOVID-19変異株のウイルス粒子自体を効果的に除去する目的で使用できることが証明された。
【0463】
実施例17:GNAレクチン親和性マトリックスによる別のSARS-CoV-2変異株の除去
Hemopurifier(スノードロップ凝集素[GNA]レクチンを含む)が、流体マトリックスから別の種類のSARS-CoV-2ウイルス変異株を除去できるかどうかを調べた。7種のSARS-CoV-2変異株を用いた実験により、樹脂カラムの捕捉効率を試験した。この試験は、CDCの認可を得たバイオセーフティーレベル3の施設内で実施し、すべての操作は、外部機関の規制要件と、施設内で承認された安全性プロトコールおよび技術プロトコールに従って行った。
【0464】
標的ウイルス濃度を約1×104PFU/mLとして、2%エクソソーム非含有FBSを添加したイーグル最小必須培地(EMEM)中で7種のSARS-CoV-2変異株を調製した。各チャレンジ懸濁液のウイルス力価(すなわち濃度)をプラークアッセイにより確認した。各試験において、樹脂を含む3本のカラム(すなわち反復試験試料)と、樹脂を含んでいない1本の陽性コントロールカラム(「カラムコントロール」)の計4本のカラムを使用した。ウイルスチャレンジ懸濁液を自然流下により各カラムに通過させ、別個のコニカルチューブに回収した。カラムから溶出した懸濁液を各コニカルチューブに回収し、カラムに再度移して、さらに2回カラムに通過させた。3回の通液後、プラークアッセイを用いて、回収した試料中の生きたウイルスの有無を分析した。回収された生きたウイルスの量を、カラムコントロール中の生きたウイルスの量と比較して、捕捉効率を計算した。
【0465】
以下に示す7種のSARS-CoV-2変異株を入手した(本実施例で提供するデータでは、以下の変異株命名法に準拠する)。
【0466】
変異株1:SARS-CoV-2 hCoV-19南アフリカ分離株
【0467】
変異株2:SARS-CoV-2ブラジル分離株(P.1系統)
【0468】
変異株3:SARS-CoV-2 hCov-19英国分離株(UK)(B.1.1.7)
【0469】
変異株4:SARS-CoV-2 hCoV-19USAPHC6582021分離株(B.1.617.2系統、デルタ変異株)
【0470】
変異株5:SARS-CoV-2 hCoV-19/USA/CA-VRLC086/2021分離株(デルタ変異株)AY.1
【0471】
変異株6:SARS-CoV-2 hCoV-19/Peru/un-CDC-2-4069945/2021分離株(ラムダ変異株)C.37
【0472】
変異株7:SARS-CoV-2 hCoV-19/USA/MD-HP20874/2021分離株(B.1.1.529系統;オミクロン変異株)
【0473】
各SARS-CoV-2変異株につき、3回分の反復試験試料を含む試行試験を1回ずつ行った。計7個の試験を行った。各試行試験では、以下の3種の試料を作製した。
【0474】
1)用量コントロール試料:出発試料としてのチャレンジ懸濁液中のウイルス量(すなわちPFU/mLで表したウイルス濃度)。
【0475】
2)カラムコントロール試料:樹脂を入れていない空のカラムにウイルス試料を通過させて作製した試料。
【0476】
3)試験試料:活性樹脂カラムを通過させた後に回収した溶出懸濁液。
【0477】
試験手順
【0478】
ウイルス増殖方法の開発:各変異株の増殖は以下のようにして行った。変異株1~3は、Vero E6細胞を3代継代して増殖させた。変異株4~7は、Calu-3細胞を2代継代して増殖させた。いずれの変異株も、2%FBSを添加したEMEM培地中で増殖させた。15分間ごとに緩やかに振盪しながら、各変異株をMOI=0.001で細胞に1時間感染させ、培地を追加して、5%CO2、37℃で2日間さらにインキュベートした。ウイルス粒子を含む上清を回収するとともに、感染した接着細胞を掻き取って回収し、1500×g、4℃で10分間遠心分離して清澄化し、小分けして-80℃で凍結保存した。必要に応じて、清澄化した上清を、遠心式フィルターユニットを用いて濃縮し、濃度を増加させた。ウイルスストックの力価測定は、すべての変異株の各継代ごとに、Vero E6細胞を用いたプラークアッセイにより行った。インキュベーション期間は4~6日間とし、各変異株(0.4%~0.75%)を希釈して結晶セルロースを重層することによって、プラークの形成と可視化を最適化した。最後の継代では、2%エクソソーム非含有FBSを添加したEMEM培地中でウイルスを細胞に感染させた。
【0479】
プラークアッセイの準備:試行試験の前日に、各試験試料につき1枚の12ウェルプレートを準備し、Vero E6細胞を各ウェルに播種し、一晩インキュベートすることによって、約90%コンフルエントの単層の宿主細胞を各ウェルに作製した。各プレートにおいて、3つのウェルをコントロールに使用し、残りの9つのウェルを使用して、10倍希釈した試験試料、100倍希釈した試験試料および1,000倍希釈した試験試料をそれぞれ三連で分析した。各試験において、試験試料の3回の反復実験、ならびにカラムコントロール試料および用量コントロール試料の測定を行うため、計5枚の12ウェルプレートを準備した。
【0480】
カラムの調製:各試験を行う前に、実験用の試験用カラム(親和性樹脂を含む3本のカラムと樹脂を含んでいない1本のコントロールカラム)を調製した。樹脂を含むカラムを垂直に保持し、カラムの側面を軽く叩いて、樹脂を底部に沈めた。上記4本のカラムを、支持環付き実験スタンドに付属のクランプに垂直に設置した。カラムの蓋を外し、PBS10mLを内壁に沿わせながらゆっくりと注ぎ、静的に詰めた樹脂を洗浄するとともに、樹脂を充填して樹脂床とした。PBSの添加後、各カラムの下に50mLのコニカルチューブを置いて溶出液を回収した。カラムの底部のタブを折り取り、カラムを通って流出したPBSをコニカルチューブに回収した。トランスファーピペットを用いて、カラムの内壁に沿わせてPBS5mLをさらに滴下した。カラムを通って流出したPBSを回収用コニカルチューブに回収した。この時点で、樹脂床の側面からエアポケットの有無を調べた。側面からエアポケットが目視できた場合、PBSを滴下して樹脂床に通過させながら、カラムの側面を軽く叩いた。この手技によって、樹脂を充填してエアポケットを埋めた。PBSの全量がカラムを通過したら、各カラムの両端に蓋をした。回収用コニカルチューブと溶出したPBSを廃棄した。
【0481】
親和性樹脂カラムのチャレンジ:2%エクソソーム非含有FBSを含むEMEM培地を用いて、1.0×104PFUの濃度でウイルスチャレンジ溶液を調製して、分取試料5mL中の総チャレンジ量をカラム1本あたり5.0×104PFUとした。このチャレンジ懸濁液から500μLを別に小分けし、用量コントロール試料として使用した。清潔な回収用滅菌チューブを各カラムの下に置き、各カラムからキャップを外した。血清ピペットを用いて、親和性樹脂床を含むカラムの頂部から内壁に沿わせてウイルス懸濁液5mLを滴下した。チャレンジ懸濁液がカラムを通過して回収容器に回収された後、ピペットで溶出液を回収し、同様にして各カラムにさらに2回通過させた。各分割試料5mLをカラムに通過させるのに約60秒かかった。これと同時に、同じ手順で、チャレンジ懸濁液5mLをコントロールカラムに3回連続して通過させた。回収用コニカルチューブの蓋を閉め、直ちに処理して分析を行った。
【0482】
プラークアッセイによる試料の分析:回収用コニカルチューブに回収した懸濁液試料を段階希釈し(10倍、100倍および1000倍)、前述のコンフルエントな単層の宿主細胞を含む適切な12ウェルプレートに、各希釈試料から分取した試料を三連で移した。プレートをCO2下、37℃で1時間インキュベートし、15分間ごとに緩やかに振盪してウイルスの吸着を促した。最初の1時間のインキュベーション後、希釈液からの分取試料を各ウェルから除去し、結晶セルロースの重層を各ウェルに加えた。試験した変異株の種類に応じて、プレートを37℃で96~144時間インキュベートした。
【0483】
インキュベーション後、結晶セルロースの重層を取り除き、各ウェルにホルマリンを加えた。プレートを1時間インキュベートして、細胞の固定とウイルスの不活化を行った。ホルマリンを除去し、各ウェルを水で洗浄し、クリスタルバイオレットで染色して、15分間インキュベートした。インキュベーション後、クリスタルバイオレットを除去し、各ウェルを水で洗浄し、プレートを乾燥させた。プレートが乾燥したら、各ウェルのプラークの数(生きたウイルスの存在を示す)を数えた。
【0484】
結果
【0485】
親和性樹脂の有効性の計算:樹脂床を通過した後の懸濁液中の生きたウイルスの数から、樹脂の有効性を計算した。減少率は以下の式により計算した。
【0486】
減少率(%)=(1-(B/A))×100%
【0487】
上記式中、Aは、カラムコントロール試料から回収された1mLあたりの生きたウイルスの数であり、Bは、試験試料から回収された1mLあたりの生きたウイルスの数である。
【0488】
試験結果のまとめ:本明細書に開示した樹脂カラム技術(スノードロップ凝集素レクチンで処理した樹脂カラム)は、試験した7種のSARS-CoV-2変異株に対して53.2%~89.9%の捕捉効率を示すことが実証された。本発明の樹脂カラムは、7種の変異株のうち5種において、1回の通液で70%を超えるウイルス量を除去することができた。変異株1は69.3%が除去され、変異株5は53.2%が除去された。これらの結果を表13にまとめる。
【表13】
【0489】
変異株を用いた試験結果の詳細:各変異株の詳細なデータセットを以下の要約表に示す。以下の表では、カラムコントロール(樹脂を含まないカラム)と実験中に回収された3つの各試験試料のPFU/mLで示した濃度と捕捉効率(%)の計算値を示している。
【0490】
変異株1の試験において、試料2の5mLのチャレンジ分取試料は、試料1および試料3のほぼ半分の時間でカラムを通過した。樹脂床にエアポケットは目視できなかったが、チャレンジ懸濁液のチャネリングがある程度発生した可能性がある。このチャネリングによって、試料2において低い捕捉効率が観察されたと考えられる。
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【0491】
実施例18:HemopurifierによるCOVID患者におけるEBVウイルスの捕捉
緊急使用プロトコール下で治療したCOVID患者において、Hemopurifierにより、循環エプスタイン・バーウイルス(EBV)DNAを捕捉できるかどうかを評価した。
【0492】
HemopurifierによるウイルスDNAの単離:COVIDの治療に緊急使用した後の使用済みHemopurifierをTrizol溶液でフラッシュした。これにより得られた試料からEBVウイルスのDNAを単離するため、以下のプロトコールを開発した。まず、凍結保存していたTrizol溶出液1mLを室温(RT)で解凍し、クロロホルム200μLと混合し、15秒間ボルテックスして、室温で2~3分間インキュベートした。次に、この混合物を12,000×g、4℃で15分間遠心分離して、明瞭に3相に分離した液状内容物を得た。(RNAを含む)上相の水相850μLを注意深く取り除き廃棄した。タンパク質が濃縮された中間相とフェノールの下相からなる残りの350μLを、100%エタノール450μLと十分に混合してDNAを沈殿させた。次に、この混合物を2000×g、4℃で6分間遠心分離して、沈殿したDNAをペレット化した。DNAペレットを乱すことなく、フェノールとエタノールからなる上清を注意深く除去し、QiaAMP DNA Blood miniキット(キアゲン社)を用いて、DNAペレットをさらに処理した。得られた試料を-80℃で保存した後、qPCR分析を実施してEBV DNA量を測定した。
【0493】
血漿からのウイルスDNAの単離:Hemopurifierの溶出液試料からDNAを単離するのに加え、QiaAMP DNA Blood miniキット(キアゲン社)を用いて、患者の血漿200μLから(EBV DNAを含んでいる可能性のある)循環DNAも単離した。単離したDNAの濃度を測定し、試料を-80℃で保存した後、qPCR分析を実施してEBV DNA量を測定した。
【0494】
qPCRによるEBV DNAの定量:精製したDNA試料(血漿から得たDNAとHemopurifierから溶出したDNA)においてEBV DNAの存在を検出することができるかどうかを調べるため、QuantStudio3装置とTaqman試薬を用いてqPCR分析を行った。Taqman Fast Advancedマスターミックス(アプライドバイオシステムズ社)を用いて、単離した全DNAの約10~20%を鋳型として全量20μLのPCR反応液を二連で調製した。EBVを検出するため、RNAse Pコントロールプライマーを全DNAのPCR反応の指標として、Taqman EBV特異的プライマーを用いて多重増幅を行った。EBVリファレンススタンダード(ZeptoMatrix社)を陽性コントロールとして各PCRプレートに含めて、血漿中のEBV含有量とHemopurifier溶出液中のEBV含有量を2-ΔΔCT法により計算した(Rao et al. An improvement of the 2^(-delta delta CT) method for quantitative real-time polymerase chain reaction data analysis. Biostat Bioinforma Biomath (2013) 3:71-85)。
【0495】
試料は2人の患者(「患者1」と「患者2」)から単離した。
【0496】
図19A~Bは、患者1(治療の1日目と2日目)と患者2(治療の1日目)から得たHemopurifier溶出液から単離したDNA試料のqPCR増幅プロットとCt値を示す。患者1から得た試料では、EBV DNAの増幅は起こらなかったことから、EBVが再活性化されていなかったことが示された。一方で、患者2から得た溶出液ではEBV DNAが検出されたことから、COVID感染症の経過中にEBVが再活性化されていたことが示唆された。
【0497】
注目すべきことに、患者2では、Hemopurifierを用いた治療の後に、血漿中の循環DNAの全体量の増加が観察された。qPCRでの検出によって、循環ゲノムRNAse Pコントロールの全体量が約6.5倍に増加し、循環EBVゲノムの全体量が2倍に増加したことが観察された(図20)。この患者では、大量の細胞内容物が血漿中に放出される細胞分解を伴うような何らかの種類の全身性壊死事象が起こっていた可能性がある。
【0498】
一方、Hemopurifierを用いた治療後の患者2の血漿試料中のRNAse Pコントロールまたは全DNAに対してEBV DNAの濃度を正規化すると、EBVの相対コピー数の減少が観察されたことから、Hemopurifierを用いた治療によって、患者の血液からのEBVゲノムの除去に成功を収めたことが示された(図21)。血漿中のEBV量が約50%減少したことが観察された。
【0499】
本発明は、特定の製剤やプロセスパラメーターに限定されず、当然のことながら、製剤やプロセスパラメーターは様々に変更することができる。さらに、本明細書中で使用される用語は、本発明の特定の実施形態を説明する目的で使用されるに留まり、これらの用語は、本発明をなんら限定するものではない。さらに、本明細書に記載の方法および材料の様々な類似物や等価物を使用することもできる。本願の文脈、本明細書および当業者の知見から明らかなように、本明細書に記載の特徴またはその組み合わせは、そのような組み合わせに含まれる特徴が互いに一貫性を有する限り、本発明の範囲内に含まれる。前述の実施形態は一例として提供されており、本発明はこれらの実施例に限定されない。当業者であれば、前述の説明を考慮に入れて、本開示の実施形態の様々な変形例や改良例を実施することができ、これらの変形例や改良例は、互いに排他的でない程度で実施可能である。さらに、当業者であれば、本明細書の開示を考慮に入れて、その他の組み合わせ、省略、置換および改良を行うことができる。したがって、本発明は、開示された実施形態に限定されず、添付の請求項によって定義される。
【0500】
本明細書で使用されている実質的に複数形および/または単数形の用語は、当業者であれば、本明細書の記載および/または用途に適するように、複数形の用語を単数のものとして、かつ/または単数形の用語を複数のものとして解釈することができる。本発明を明確なものとするために、様々な単数形/複数形の用語が意図的に使い分けられている。
【0501】
当業者であれば、本明細書に記載の用語、特に添付の請求項(例えば、添付の請求項の本体部)に記載の用語は、通常、「オープンエンドな」用語であることを理解できるであろう(例えば、「含んでいる(including)」という用語は、「含んでいるが、これらに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(include)」という用語は「含むが、これらに限定されない」と解釈されるべきである)。さらに、特定の数が請求項に記載されている場合、前述のような意図も請求項に明確に記載されており、特定の数が記載されていない場合はそのような意図も存在しないことも、当業者であれば理解できるであろう。理解を助けるために説明すれば、例えば、後述の特許請求の範囲では、請求項を定義するために、「少なくとも1つ」や「1つ以上」といった前置きが記載されている場合がある。しかしながら、このような前置きが記載されているからといって、不定冠詞「a」または「an」を使用して構成要素が記載された請求項を、1つのみの構成要素を含む実施形態に限定すべきではなく、たとえ同じ請求項内に「1つ以上」または「少なくとも1つ」といった前置きと「a」または「an」といった不定冠詞とが含まれていたとしても、1つのみの構成要素を含む実施形態に限定すべきではない(例えば、「a」および/または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味すると解釈すべきである)。これは、定冠詞を使用して記載された請求項でも同じである。また、請求項に特定の数が明確に記載されていたとしても、「少なくとも」記載されたその数であるということを当業者であれば理解できるであろう(例えば、修飾語を伴わない「2つ」という記載は、「少なくとも2つ」または「2つ以上」を意味する)。さらに、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ」といった慣用語句が使用されている場合、通常、そのような語句は、当業者がその語句を通常理解する意味で記載されている(例えば、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみを有するシステム、Bのみを有するシステム、Cのみを有するシステム、AとBを有するシステム、AとCを有するシステム、BとCを有するシステム、ならびに/またはA、BおよびCを有するシステムなどを包含するが、これらに限定されない)。また、「A、BまたはCのうちの少なくとも1つ」といった慣用語句が使用されている場合、通常、そのような語句は、当業者がその語句を通常理解する意味で記載されている(例えば、「A、BまたはCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみを有するシステム、Bのみを有するシステム、Cのみを有するシステム、AとBを有するシステム、AとCを有するシステム、BとCを有するシステム、ならびに/またはA、BおよびCを有するシステムなどを包含するが、これらに限定されない)。さらに、2つ以上の選択肢を表すための選言的用語および/または選言的語句は、明細書または特許請求の範囲においても、記載された用語のうちの1つ、記載された用語のいずれか、または記載された用語の両方を含む場合があると当業者であれば理解できるであろう。例えば、「AまたはB」という表現は、「A」または「B」または「AおよびB」である可能性があることは理解できるであろう。
【0502】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュ形式で記載されている場合、当業者であれば、マーカッシュ形式で記載された各メンバーまたはそれらからなるサブグループについても記載されていると理解できるであろう。
【0503】
詳細な説明の提供などの何らかの目的で本明細書に開示された範囲はいずれも、あらゆる可能な部分範囲およびその組み合わせも包含することを、当業者であれば理解できるであろう。本明細書に記載の範囲はいずれも、この範囲を少なくとも等分、3等分、4等分、5等分、10等分などに分割したものも十分に記載されており、このような分割された範囲で本発明を実施可能であることを容易に理解できるであろう。例えば、本明細書に記載の範囲はいずれも、容易に、低域、中域、高域といった3等分などにすることができるが、これに限定されない。また、「以下」、「少なくとも」、「よりも大きい」、「未満」といった用語はいずれも、記載された数値を含むとともに、前述したように、部分範囲に分割可能な範囲も指すことを当業者であれば理解できるであろう。さらに、当業者であれば、本明細書に記載の範囲は各メンバーを含むことを理解できるであろう。したがって、例えば、1~3つのメンバーからなる群は、1つのメンバーからなる群、2つのメンバーからなる群または3つのメンバーからなる群を指す。同様に、1~5つのメンバーからなる群は、1つのメンバーからなる群、2つのメンバーからなる群、3つのメンバーからなる群、4つのメンバーからなる群、または5つのメンバーからなる群などを指す。
【0504】
本願で引用された学術文献、発行済みの特許、公開された特許出願および同時係属中の特許出願を含むあらゆる引用文献の内容は、本明細書の一部を構成するものとしてその全体が明示的に援用される。当業者であれば、日常的な実験を行うだけで、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の等価物が多数存在することを容易に理解し、確認することができるであろう。このような等価物も、添付の請求項の範囲に含まれる。
【0505】
本明細書において様々な態様および実施形態を述べてきたが、当業者であればその他の態様および実施形態も容易に理解できるであろう。本明細書において開示された様々な態様および実施形態は本発明を説明することを目的としたものであり、本発明をなんら限定するものではなく、本発明の範囲および要旨は以下の請求項によって示される。

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図1
図2
図3
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図5
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図20
図21
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【国際調査報告】