IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロンザ セールス アーゲーの特許一覧

特表2024-538100細胞外小胞の産生のための改変産生細胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】細胞外小胞の産生のための改変産生細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20241010BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241010BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241010BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20241010BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241010BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241010BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20241010BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/09 100
C12M1/00 D
A61K38/20
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/12
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522295
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 US2022078150
(87)【国際公開番号】W WO2023064924
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/255,857
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522228126
【氏名又は名称】ロンザ セールス アーゲー
【氏名又は名称原語表記】LONZA SALES AG
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】マーティン, シェリー, エー.
(72)【発明者】
【氏名】マコーネル, ラッセル, イー.
(72)【発明者】
【氏名】フィン, ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】エステス, スコット, ディー.
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB11
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065BD21
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084DA12
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZB21
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087NA14
4C087ZB21
(57)【要約】
本開示は、コレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を示す産生細胞から、細胞外小胞を産生する方法、及び細胞外小胞の産生を増加させる方法を提供する。また、コレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を有する細胞組成物も提供される。コレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能は、産生細胞からの細胞外小胞の収率及び産生を増加させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産生細胞から産生される細胞外小胞(EV)の数を増加させる方法であって、前記産生細胞のコレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を示すように前記産生細胞を改変することを含む、方法。
【請求項2】
産生細胞から細胞外小胞(EV)を産生する方法であって、コレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を示す前記産生細胞を培養することを含む、方法。
【請求項3】
前記コレステロール生合成における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能が、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイムAレダクターゼ(HMGCR)、ステロール調節エレメント結合タンパク質2(SREBF2)、スクアレンエポキシダーゼ(SQLE)、若しくは7-デヒドロコレステロールレダクターゼ(DHCR7)から選択される1つ以上の遺伝子、又は前記遺伝子によってコードされるタンパク質を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記産生細胞によって産生される前記EVが、前記コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能が低下していない産生細胞によって産生されるEVと比較して、増加した収率を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記収率が、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約21倍、少なくとも約22倍、少なくとも約23倍、少なくとも約24倍、少なくとも約25倍、少なくとも約26倍、少なくとも約27倍、少なくとも約28倍、少なくとも約29倍、又は少なくとも約30倍増加する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記収率が、約2倍~約30倍、約2倍~約25倍、約2倍~約20倍、約2倍~約15倍、約2倍~約10倍、約2倍~約5倍、約5倍~約30倍、約5倍~約25倍、約5倍~約20倍、約5倍~約15倍、約5倍~約10倍、約10倍~約30倍、約10倍~約25倍、約10倍~約20倍、約10倍~約15倍、約15倍~約30倍、約15倍~約25倍、約15倍~約20倍、約20倍~約30倍、約20倍~約25倍、又は約25倍~約30倍増加する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記収率が、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、又は約10倍増加する、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コレステロール生合成における低下した遺伝子が、SREBF2である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記SREBF2遺伝子の発現が、約2倍~約20倍低下する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記SREBF2遺伝子の発現が、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、又は約20倍低下する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記コレステロール生合成における低下した遺伝子が、HMGCRである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記HMGCR遺伝子の発現が、約2倍~30倍低下する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記HMGCR遺伝子の発現が、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約21倍、約22倍、約23倍、約24倍、約25倍、約26倍、約27倍、約28倍、約29倍、又は約30倍低下する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コレステロール生合成経路における遺伝子及び/タンパク質機能が、少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、又は少なくとも約10%、少なくとも約5%、又は少なくとも約1%低下する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記コレステロール生合成経路における遺伝子及び/タンパク質機能が、少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、又は少なくとも約30%低下する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記改変が、前記産生細胞を、前記コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能を低下させることができる薬剤と接触させることを含む、請求項1及び3~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記産生細胞が、前記産生細胞を、前記コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能を低下させることができる薬剤と接触させることによって、前記培養前に改変される、請求項2~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記薬剤が、スタチン、カリプラジン、PROTAC、AY9944、又はBM15766を含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記スタチンが、アトルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記スタチンが、約1nM、約2nM、約3nM、約4nM、約5nM、約6nM、約7nM、約8nM、約9nM、約約10nM、約11nM、約12nM、約13nM、約14nM、約15nM、約16nM、約17nM、約18nM、又は約20nM、約30nM、約40nM、約50nM、約60nM、約70nM、約80nM、約90nM、約100nM、約110nM、約120nM、約130nM、約140nM、約150nM、約160nM、約170nM、約180nM、約190nM、約200nM、約210nM、約220nM、約230nM、約240nM、約250nM、約260nM、約270nM、約280nM、約290nM、約300nM、約310nM、約320nM、約330nM、約340nM、約350nM、約360nM、約370nM、約380nM、約390nM、約400nM、約410nM、約420nM、約430nM、約440nM、約450nM、約460nM、約470nM、約480nM、約490nM、約500nM、約510nM、約520nM、約530nM、約540nM、約550nM、約560nM、約570nM、約580nM、約590nM、約600nM、約610nM、約620nM、約630nM、約640nM、約650nM、約660nM、約670nM、約680nM、約690nM、約700nM、約710nM、約720nM、約730nM、約740nM、約750nM、約760nM、約770nM、約780nM、約790nM、約800nM、約810nM、約820nM、約830nM、約840nM、約850nM、約860nM、約870nM、約880nM、約890nM、約900nM、約910nM、約920nM、約930nM、約940nM、約950nM、約960nM、約970nM、約980nM、約990nM、又は約1,000nMの濃度で接触される、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記スタチンが、約0.1nM~約100nM、約0.1nM~約90nM、約0.1nM~約80nM、約0.1nM~約70nM、約0.1nM~約60nM、約0.1nM~約50nM、約0.1nM~約40nM、約0.1nM~約30nM、約0.1nM~約20nM、0.1nM~約10nM、又は約1nM~約20nM、約1nM~約10nM、約1nM~約5nM、約5nM~約20nM、約5nM~約15nM、約5nM~約10nM、約10nM~約50nM、約10nM~約40nM、約10nM~約30nM、約10nM~約20nM、約1nM~約10nM、又は約10nM~約20nMの濃度で接触される、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項22】
前記コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能を低下させることができる前記薬剤が、遺伝子編集技術を含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項23】
前記遺伝子編集技術が、shRNA、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、CRISPR、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、メガヌクレアーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記遺伝子編集技術が、siRNAを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記産生細胞によって産生される前記EVが、前記コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能が低下していない産生細胞によって産生されるEVと比較して、EV当たりのコレステロール含有量が低下している、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記EV当たりのコレステロール含有量が、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、又は約80%低下する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記EV当たりのコレステロール含有量が、約1%~約80%、約10%~約80%、約10%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約30%、約10%~約20%、約20%~約80%、約20%~約70%、約20%~約60%、約20%~約50%、約20%~約40%、約20%~約30%、約30%~約80%、約30%~約70%、約30%~約60%、約30%~約50%、約30%~約40%、約40%~約80%、約40%~約70%、約40%~約60%、又は約40%~約50%低下する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記産生細胞によって産生される前記EVが、前記コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能が低下していない産生細胞によって産生されるEVと比較して、平均サイズ分布に差異がない、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記産生細胞が、哺乳動物細胞である、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記産生細胞が、HEK293細胞、HEK293S細胞、HEK293SF細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、間葉系幹細胞(MSC)、BJヒト包皮線維芽細胞、fHDF線維芽細胞、AGE.HN(登録商標)神経前駆細胞、CAP(登録商標)羊膜細胞、脂肪間葉系幹細胞、RPTEC/TERT1細胞、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、肥満細胞、好中球、Kupffer-Browicz細胞、PER.C6細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、又はC2C12細胞である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記産生細胞が、幹細胞である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記EVが、足場部分を更に含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記足場部分が、足場Xを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
足場Xが、プロスタグランジンF2受容体負の調節因子(PTGFRNタンパク質)、ベイシジン(BSGタンパク質)、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー2(IGSF2タンパク質)、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー3(IGSF3タンパク質)、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー8(IGSF8タンパク質)、インテグリンβ-1(ITGB1タンパク質)、インテグリンα-4(ITGA4タンパク質)、4F2細胞表面抗原重鎖(SLC3A2タンパク質)、ATPトランスポータータンパク質のクラス(ATP1A1、ATP1A2、ATP1A3、ATP1A4、ATP1B3、ATP2B1、ATP2B2、ATP2B3、ATP2B4タンパク質)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記足場部分が、PTGFRNタンパク質である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記足場部分が、配列番号1と、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記足場部分が、足場Yを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記足場Yが、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(MARCKSタンパク質)、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質様1(MARCKSL1タンパク質)、脳酸可溶性タンパク質1(BASP1タンパク質)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記EVが、足場部分に連結された少なくとも1つの治療剤を更に含む、請求項32~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記EVが、少なくとも1つの治療剤を更に含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記治療剤が、サイトカイン、小分子、増殖因子、抗原、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA、dsDNA、lncRNA、PROTAC、アジュバント、免疫調節剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
前記治療剤が、IL-12である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記治療剤が、STINGアゴニストである、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記治療剤が、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、Kras、STAT3、Nras、STAT6、CEBP/b、NLRP3、又はそれらの任意の組み合わせを標的化する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項1~45のいずれか一項に記載の方法で使用するための、産生細胞。
【請求項47】
請求項1及び3~45のいずれか一項に記載の方法によって調製された、産生細胞。
【請求項48】
請求項1~45のいずれか一項に記載の方法又は請求項46若しくは47に記載の産生細胞によって産生される、細胞外小胞。
【請求項49】
請求項46若しくは47に記載の産生細胞、又は請求項48に記載の細胞外小胞を含む、バイオリアクター。
【請求項50】
疾患又は状態の治療又は予防を必要とする対象においてそれを行う方法であって、請求項48に記載の細胞外小胞を投与することを含む、方法。
【請求項51】
疾患又は状態の治療又は予防を必要とする対象においてそれを行うための、請求項48に記載の細胞外小胞の使用。
【請求項52】
疾患又は状態の治療又は予防を必要とする対象においてそれを行うための、請求項48に記載の細胞外小胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月14日に出願された米国仮出願第63/255,857号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
EFS-WEBを介して電子的に提出された配列表の参照
本出願とともに提出された電子的に提出されたASCIIテキストファイルにおける配列表の内容(名称4000_129PC01_Seqlisting_ST26、サイズ:24,490バイト、及び作成日:2022年10月14日)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、細胞外小胞(例えば、エクソソーム)を得るために使用することができる改変された産生細胞に関する。本開示はまた、そのような改変された産生細胞からEV(例えば、エクソソーム)を産生する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
細胞外小胞、特に、エクソソームは、生体内の全てのタイプの細胞への様々なペイロードの効率的な送達を可能にする新しいモダリティとして関心を集めている。エクソソーム生物学を新しい医薬品に応用するための取り組みが加速するにつれて、エクソソームを製造するための現在の最先端技術と、大規模な臨床及び商業的製造をサポートするために必要な能力との間に、技術的なギャップが生じている。その目的のために、かなりの試みがインビトロで産生細胞株の増殖及び生産性を維持することに焦点を当ててきたが、エクソソーム収率を最大化することは依然として課題である。したがって、細胞外小胞の効率的、低コスト、及び信頼性の高い高力価産生のための新規の方法が必要である。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの態様において、本開示は、産生細胞から産生される細胞外小胞(extracellular vesicle、EV)の数を増加させる方法を提供し、本方法は、産生細胞のコレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を示すように産生細胞を改変することを含む。いくつかの態様において、本開示はまた、産生細胞から細胞外小胞(EV)を産生する方法を提供し、本方法は、コレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を示す産生細胞を培養することを含む。いくつかの態様において、コレステロール生合成における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能は、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイムAレダクターゼ(HMGCR)、ステロール調節エレメント結合タンパク質2(SREBF2)、スクアレンエポキシダーゼ(SQLE)、若しくは7-デヒドロコレステロールレダクターゼ(DHCR7)から選択される1つ以上の遺伝子、又はその遺伝子によってコードされるタンパク質を含む。いくつかの態様において、産生細胞によって産生されるEVは、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能が低下していない産生細胞によって産生されるEVと比較して、増加した収率を有する。いくつかの態様において、収率は、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約21倍、少なくとも約22倍、少なくとも約23倍、少なくとも約24倍、少なくとも約25倍、少なくとも約26倍、少なくとも約27倍、少なくとも約28倍、少なくとも約29倍、又は少なくとも約30倍増加する。いくつかの態様において、収率は、約2倍~約30倍、約2倍~約25倍、約2倍~約20倍、約2倍~約15倍、約2倍~約10倍、約2倍~約5倍、約5倍~約30倍、約5倍~約25倍、約5倍~約20倍、約5倍~約15倍、約5倍~約10倍、約10倍~約30倍、約10倍~約25倍、約10倍~約20倍、約10倍~約15倍、約15倍~約30倍、約15倍~約25倍、約15倍~約20倍、約20倍~約30倍、約20倍~約25倍、又は約25倍~約30倍増加する。いくつかの態様において、収率は、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、又は約10倍増加する。いくつかの態様において、コレステロール生合成における低下した遺伝子は、SREBF2である。いくつかの態様において、SREBF2遺伝子の発現は、約2倍~約20倍低下する。いくつかの態様において、SREBF2遺伝子の発現は、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、又は約20倍低下する。いくつかの態様において、コレステロール生合成における低下した遺伝子は、HMGCRである。いくつかの態様において、HMGCR遺伝子発現は、約2倍~約30倍低下する。いくつかの態様において、HMGCR遺伝子発現は、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約21倍、約22倍、約23倍、約24倍、約25倍、約26倍、約27倍、約28倍、約29倍、又は約30倍低下する。いくつかの態様において、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能は、少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、又は少なくとも約10%、少なくとも約5%%、又は少なくとも約1%低下する。いくつかの態様において、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能は、少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、又は少なくとも約30%低下する。いくつかの態様において、改変は、産生細胞を、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能を低下させることができる薬剤と接触させることを含む。いくつかの態様において、産生細胞は、産生細胞を、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能を低下させることができる薬剤と接触させることによって、培養前に改変される。いくつかの態様において、薬剤は、スタチン、カリプラジン、PROTAC、AY9944、又はBM15766を含む。いくつかの態様において、スタチンは、アトルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様において、スタチンは、約1nM、約2nM、約3nM、約4nM、約5nM、約6nM、約7nM、約8nM、約9nM、約約10nM、約11nM、約12nM、約13nM、約14nM、約15nM、約16nM、約17nM、約18nM、又は約20nM、約30nM、約40nM、約50nM、約60nM、約70nM、約80nM、約90nM、約100nM、約110nM、約120nM、約130nM、約140nM、約150nM、約160nM、約170nM、約180nM、約190nM、約200nM、約210nM、約220nM、約230nM、約240nM、約250nM、約260nM、約270nM、約280nM、約290nM、約300nM、約310nM、約320nM、約330nM、約340nM、約350nM、約360nM、約370nM、約380nM、約390nM、約400nM、約410nM、約420nM、約430nM、約440nM、約450nM、約460nM、約470nM、約480nM、約490nM、約500nM、約510nM、約520nM、約530nM、約540nM、約550nM、約560nM、約570nM、約580nM、約590nM、約600nM、約610nM、約620nM、約630nM、約640nM、約650nM、約660nM、約670nM、約680nM、約690nM、約700nM、約710nM、約720nM、約730nM、約740nM、約750nM、約760nM、約770nM、約780nM、約790nM、約800nM、約810nM、約820nM、約830nM、約840nM、約850nM、約860nM、約870nM、約880nM、約890nM、約900nM、約910nM、約920nM、約930nM、約940nM、約950nM、約960nM、約970nM、約980nM、約990nM、又は約1,000nMの濃度で接触される。いくつかの態様において、スタチンは、約0.1nM~約100nM、約0.1nM~約90nM、約0.1nM~約80nM、約0.1nM~約70nM、約0.1nM~約60nM、約0.1nM~約50nM、約0.1nM~約40nM、約0.1nM~約30nM、約0.1nM~約20nM、0.1nM~約10nM、又は約1nM~約20nM、約1nM~約10nM、約1nM~約5nM、約5nM~約20nM、約5nM~約15nM、約5nM~約10nM、約10nM~約50nM、約10nM~約40nM、約10nM~約30nM、約10nM~約20nM、約1nM~約10nM、又は約10nM~約20nMの濃度で接触される。いくつかの態様において、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能を低下させることができる薬剤は、遺伝子編集技術を含む。いくつかの態様において、遺伝子編集技術は、shRNA、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、CRISPR、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、メガヌクレアーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様において、遺伝子編集技術は、siRNAを含む。いくつかの態様において、産生細胞によって産生されるEVは、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能が低下していない産生細胞によって産生されるEVと比較して、EV当たりのコレステロール含有量が低下している。いくつかの態様において、EV当たりのコレステロール含有量は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、又は約80%低下する。いくつかの態様において、EV当たりのコレステロール含有量は、約1%~約80%、約10%~約80%、約10%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約30%、約10%~約20%、約20%~約80%、約20%~約70%、約20%~約60%、約20%~約50%、約20%~約40%、約20%~約30%、約30%~約80%、約30%~約70%、約30%~約60%、約30%~約50%、約30%~約40%、約40%~約80%、約40%~約70%、約40%~約60%、又は約40%~約50%低下する。いくつかの態様において、産生細胞によって産生されるEVは、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能が低下していない産生細胞によって産生されるEVと比較して、平均サイズ分布に差異がない。いくつかの態様において、産生細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの態様において、産生細胞は、HEK293細胞、HEK293S細胞、HEK293SF細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、間葉系幹細胞(MSC)、BJヒト包皮線維芽細胞、fHDF線維芽細胞、AGE.HN(登録商標)神経前駆細胞、CAP(登録商標)羊膜細胞、脂肪間葉系幹細胞、RPTEC/TERT1細胞、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、肥満細胞、好中球、Kupffer-Browicz細胞、PER.C6細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、又はC2C12細胞である。いくつかの態様において、産生細胞は、幹細胞である。いくつかの態様において、EVは、足場部分を更に含む。いくつかの態様において、足場部分は、足場Xを含む。いくつかの態様において、足場Xは、プロスタグランジンF2受容体負の調節因子(PTGFRNタンパク質)、ベイシジン(BSGタンパク質)、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー2(IGSF2タンパク質)、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー3(IGSF3タンパク質)、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー8(IGSF8タンパク質)、インテグリンβ-1(ITGB1タンパク質)、インテグリンα-4(ITGA4タンパク質)、4F2細胞表面抗原重鎖(SLC3A2タンパク質)、ATPトランスポータータンパク質のクラス(ATP1A1、ATP1A2、ATP1A3、ATP1A4、ATP1B3、ATP2B1、ATP2B2、ATP2B3、ATP2B4タンパク質)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様において、足場部分は、PTGFRNタンパク質である。いくつかの実施形態において、足場部分は、配列番号1と、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、足場部分は、足場Yを含む。いくつかの態様において、足場Yは、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(MARCKSタンパク質)、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基
質様1(MARCKSL1タンパク質)、脳酸可溶性タンパク質1(BASP1タンパク質)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様において、EVは、足場部分に連結された少なくとも1つの治療剤を更に含む。いくつかの態様において、EVは、少なくとも1つの治療剤を更に含む。いくつかの態様において、治療剤は、サイトカイン、小分子、増殖因子、抗原、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA、dsDNA、lncRNA、PROTAC、アジュバント、免疫調節剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様において、治療剤は、IL-12である。いくつかの態様において、治療剤は、STINGアゴニストである。いくつかの態様において、治療剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。いくつかの態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、Kras、STAT3、Nras、STAT6、CEBP/b、NLRP3、又はそれらの任意の組み合わせを標的化する。
【0006】
本開示はまた、いくつかの態様において、本明細書に記載の方法で使用するための産生細胞を提供する。いくつかの態様において、本開示はまた、本明細書に記載の方法によって調製された産生細胞も提供する。
【0007】
いくつかの態様において、本開示はまた、本明細書に記載の方法によって生成されたEVも提供する。
【0008】
いくつかの態様において、本開示はまた、本明細書に記載の産生細胞又はEVを含むバイオリアクターも提供する。
【0009】
いくつかの態様において、本開示はまた、疾患若しくは障害の治療及び/又は予防を必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、本方法は、本明細書に開示される細胞外小胞を投与することを含む。
【0010】
いくつかの態様において、本開示は、本明細書に記載の細胞外小胞を使用して、それを必要とする対象における疾患又は状態を治療又は予防することを提供する。
【0011】
いくつかの態様において、本開示は、疾患又は状態の治療又は予防を必要とする対象においてそれを行うための、本明細書に記載の細胞外小胞を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】コレステロール合成経路における主要な調節因子である2つの遺伝子(例えば、HMGCR及びSREBF2)のsiRNAノックダウンが、細胞当たりのEV産生の増加に対応して、未処理対照に対して細胞当たり正規化された相対発光を有意に増加させることを示す。
図2A】細胞生存率(%)を示す。
図2B】未処理、非標的siRNA処理、PTGFRN siRNA処理、SREBF2 siRNA処理、及びHMGCR siRNA処理された産生細胞の総細胞密度を示す。
図2C図2A及び2Bの産生細胞から回収されたEVの密度勾配を示す。
図2D】対照、SREBF2ノックダウン、及びHMGCRノックダウンの産生細胞から回収されたEVのタンパク質含有量のSDS-PAGEゲルを示す。
図2E】未処理、非標的siRNA処理、PTGFRN siRNA処理、SREBF2 siRNA処理、及びHMGCR siRNA処理された産生細胞において細胞当たりの産生されるEVの総量を示す。
図2F】未処理、非標的siRNA処理、PTGFRN siRNA処理、SREBF2 siRNA処理、及びHMGCR siRNA処理された産生細胞からの精製EVの増加倍率を示す。
図2G】未処理、非標的siRNA処理、PTGFRN siRNA処理、SREBF2 siRNA処理、及びHMGCR siRNA処理された産生細胞からの精製EVにおける、Amplex(商標)Redによって測定された総コレステロール(μg/mL)を示す。
図2H】未処理、非標的siRNA処理、PTGFRN siRNA処理、SREBF2 siRNA処理、及びHMGCR siRNA処理された産生細胞における、ナノ粒子追跡分析(NTA)によって測定された精製EVの総量を示す。
図2I】未処理、非標的siRNA処理、PTGFRN siRNA処理、SREBF2 siRNA処理、及びHMGCR siRNA処理された産生細胞からの精製EVのコレステロール含有量の倍率変化を示す。
図2J】未処理、非標的siRNA処理、PTGFRN siRNA処理、SREBF2 siRNA処理、及びHMGCR siRNA処理された産生細胞からの精製EVの平均直径を示す。
図3A】EV力価に対するコレステロール生合成の薬理学的阻害の効果を示す。1日目から6日目までのシンバスタチン処理(対照、10nM、50nM、250nM、1μM、10μM、及び50μM)の細胞生存率を示す。
図3B】EV力価に対するコレステロール生合成の薬理学的阻害の効果を示す。1日目から6日目までのシンバスタチン処理(対照、10nM、50nM、250nM、1μM、10μM、及び50μM)の生細胞密度を示す。
図3C】EV力価に対するコレステロール生合成の薬理学的阻害の効果を示す。処理の1日目、2日目、及び3日目(対照、2μM、5μM、及び10μM)における、カリプラジン処理された産生細胞の生存率を示す。
図3D】EV力価に対するコレステロール生合成の薬理学的阻害の効果を示す。1日目から3日目までのカリプラジン処理(対照、2μM、5μM、及び10μM)の生細胞密度を示す。
図4A】シンバスタチン処理されたHiBitレポーター細胞株(図4C)についての生細胞密度(図4A)、生存率(図4B)、及びHiBitルシフェラーゼを示す。
図4B】シンバスタチン処理されたHiBitレポーター細胞株(図4C)についての生細胞密度(図4A)、生存率(図4B)、及びHiBitルシフェラーゼを示す。
図4C】シンバスタチン処理されたHiBitレポーター細胞株(図4C)についての生細胞密度(図4A)、生存率(図4B)、及びHiBitルシフェラーゼを示す。
図4D】HiBitルシフェラーゼレポーターアッセイからのEV力価に対するシンバスタチン(SIM)処理の効果を示す。未処理対照に対する倍率変化は、培養日数及びシンバスタチン濃度(2nM、5nM、及び10nM)の関数として示されている。
図4E】HiBitルシフェラーゼレポーターアッセイからのEV力価に対するカリプラジン(CAR)処理の効果を示す。未処理対照に対する倍率変化は、培養日数及びカリプラジン濃度(5μM及び10μM)の関数として示されている。
図5A】プロテインX(PrX)産生細胞(未処理及び5nMシンバスタチン)から産生されるEVの密度勾配、並びにexoIL-12産生細胞(未処理、5nMシンバスタチン、10nMシンバスタチン)から産生されるEVの密度勾配を示す。
図5B図5Aにおいて回収されたEVのタンパク質ゲルを示す。
図6A】シンバスタチン処理された産生細胞から産生されるEV(exoIL-12)についてのインビトロHEK IL-12レポーターアッセイの結果を示す。組換えIL-12、exoIL-12製剤、未処理、5nM、及び10nMシンバスタチン(SM)処理された産生細胞からのEV(exoIL-12)間のHEK IL-12レポーターアッセイにおけるインビトロ効力を示す。
図6B】シンバスタチン処理された産生細胞から産生されるEV(exoIL-12)についてのインビトロHEK IL-12レポーターアッセイの結果を示す。exo-IL-12製剤、並びに対照、5nMシンバスタチン(SM)、及び10nMシンバスタチン(SM)処理された産生細胞からのexoIL-12についてのHEK IL-12レポーターアッセイにおけるインビトロ力価を示す。
図7】産生細胞によるエクソソーム産生の誘導についてのインビトロアッセイ、及びHiBitレポーター細胞に対する10nM、25nM、50nM、75nM、及び100nMのコレステロール合成阻害剤ロスバスタチン(ROS)を含む培養の効果を示す棒グラフである。データは、発光/細胞として提示されている。
図8A】エクソソーム産生におけるプレニル化の関与の欠如を実証する。GGTase阻害剤GGTI2418に曝露したHiBitレポーター細胞からの結果のグラフ表示である。培養日数の関数としての生細胞密度(VCD;10として)を示す。
図8B】エクソソーム産生におけるプレニル化の関与の欠如を実証する。GGTase阻害剤GGTI2418に曝露したHiBitレポーター細胞からの結果のグラフ表示である。培養日数の関数としての発光(RLU)を示す。
図9A】生細胞密度(VCD)に対する、シンバスタチン中で培養された産生細胞に外因性コレステロールを添加することによる影響を示す折れ線グラフである。
図9B】エクソソーム産生に対する、シンバスタチン中で培養された産生細胞に外因性コレステロールを添加することによる影響を示す折れ線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、産生細胞から産生される細胞外小胞(EV)の数を増加させる方法を対象とし、本方法は、産生細胞のコレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を示すように産生細胞を改変することを含む。本開示はまた、産生細胞から細胞外小胞(EV)を産生する方法を対象とし、本方法は、コレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を示す産生細胞を培養することを含む。
【0014】
本開示をより詳細に説明する前に、本開示は、説明される特定の組成物又はプロセス工程に限定されず、そのため、当然ながら変化し得ることを理解されたい。本開示を読むと当業者には明らかであろうように、本明細書に記載及び例示される個々の態様の各々は、本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得る、又はそれらと組み合わされ得る個別の成分及び特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序、又は論理的に可能な任意の他の順序で実行され得る。
【0015】
本明細書で提供される表題は、本開示の様々な態様の限定ではなく、これらの態様は、本明細書全体を参照することによって理解され得る。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるので、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0016】
I.定義
本説明をより容易に理解できるようにするために、特定の用語が最初に定義される。追加の定義が、詳細な説明全体を通して示される。
【0017】
「a」又は「an」実体という用語は、1つ以上のその実体を指すことに留意されたい。例えば、「ヌクレオチド配列(a nucleotide sequence)」は、1つ以上のヌクレオチド配列を表すと理解される。したがって、「1つ(a)」(又は「1つ(an)」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では互換的に使用され得る。特許請求の範囲は、いずれかの任意選択的な要素を除外するように起草され得ることを、更に留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連して「単に」、「のみ」などのような排他的な用語の使用のため、又は否定的な限定の使用のための先行詞として機能するよう意図される。
【0018】
更に、本明細書で使用される「及び/又は」は、他の有無にかかわらず、2つの特定の特徴又は構成要素の各々の具体的な開示としてみなされるべきである。したがって、本明細書の「A及び/又はB」などの語句で使用される「及び/又は」という用語は、A及びB、A又はB、A(単独)、及びB(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/又はC」などの語句で使用される「及び/又は」という用語は、以下の態様の各々を包含することが意図される:A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)、の各々を包含することが意図される。
【0019】
態様が、「含む(comprising)」という用語を用いて本明細書に記載される場合はいつも、「からなる」及び/又は「から本質的になる」という用語で記載される別様の類似の態様もまた提供されることが理解される。
【0020】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が関連する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press、The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press、及びthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, Revised,2000,Oxford University Pressは、本開示で使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0021】
単位、接頭辞、記号は、国際単位系(SI)で認められている形式で表記する。数値範囲は、範囲を定義する数値を含む。値の範囲が記載される場合、その範囲の記載された上限値及び下限値との間の各介在整数値、及びその各端数も、そのような値間の各下位範囲とともに特に開示されていることを理解されるべきである。任意の範囲の上限値及び下限値は、独立して範囲内に含まれるか、又は範囲から除外され得、いずれかの限界値を含む、いずれの限界値も含まない、又は両方の限界値を含む各範囲も、本開示内に包含される。本明細書に列挙される範囲は、その範囲内の全ての値の略記であると理解される。例えば、1~10の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、又は部分範囲を含むと理解される。
【0022】
値が明示的に記載される場合、記載される値とほぼ同じ量(quantity)又は量(amount)である値も、本開示の範囲内であることを理解されたい。組み合わせが開示される場合、その組み合わせの要素の各下位組み合わせもまた特に開示され、本開示の範囲内である。逆に、異なる要素又は要素の群が個別に開示される場合、それらの組み合わせも開示される。開示の任意の要素が複数の代替物を有するものとして開示される場合、各代替物が単独で又は他の代替物と任意の組み合わせで除外されるその開示の例も、本明細書によって開示され、開示の2つ以上の要素は、そのような除外を有し得、そのような除外を有する要素の全ての組み合わせが、本明細書に開示される。
【0023】
ヌクレオチドは、同様に、それらの一般的に受け入れられている1文字コードによって言及される。別途示されない限り、ヌクレオチド配列は、5’から3’方向で左から右に書かれる。ヌクレオチドは、IUPAC-IUB生化学命名委員会によって推奨される、それらの一般的に知られている1文字記号によって本明細書で言及される。したがって、Aはアデニンを表し、Cはシトシンを表し、Gはグアニンを表し、Tはチミンを表し、Uはウラシルを表す。
【0024】
アミノ酸配列は、アミノからカルボキシ方向で左から右に書かれる。アミノ酸は、それらの一般的に知られている3文字の記号によって、又はIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される1文字の記号のいずれかによって、本明細書で言及される。
【0025】
本明細書で提供される表題は、本開示の様々な態様を限定するものではなく、これらの態様は、本明細書全体を参照することによって理解され得る。したがって、以下に定義される用語は、本明細書全体を参照することによってより完全に定義される。
【0026】
「約(about)」は、ほぼ(approximately)という用語は、本明細書において、概ね(roughly)、およそ(around)、又はその領域を意味するために使用される。「約」という用語が数値範囲と併せて使用される場合、記載された数値の上下の境界を広げることによって、その範囲を修正する。一般に、用語「約」は、上又は下に(より高い又はより低い)例えば、10%の相違によって、記載された値を上回る及び下回る数値を修正することができる。いくつかの態様において、本明細書で使用される用語は、参照量の5%以内であることを意味する。例えば、約50%は、47.5%~52.5%の値の範囲を包含すると理解される。
【0027】
本明細書で使用される場合、「細胞外小胞」又は「EV」という用語は、内部空間を封入する膜を含む細胞由来の小胞を指す。細胞外小胞は、それらが由来する細胞よりも小さい直径を有する全ての膜結合小胞(例えば、エクソソーム、ナノ小胞)を含む。一般的に、細胞外小胞は直径が20nm~1000nmの範囲であり、細胞外小胞の外部表面に表示される内部空間(例えば、内腔)内、及び/又は膜をまたぐいずれかで、様々な巨大分子ペイロードを含むことができる。様々な態様において、ペイロードは、核酸、タンパク質、炭水化物、脂質、小分子、及び/又はそれらの組み合わせを含む。ある特定の態様において、細胞外小胞は、足場部分を含む。例として、限定されないが、細胞外小胞は、アポトーシス小体、細胞の断片、直接又は間接操作(例えば、連続押出又はアルカリ溶液による処理による)によって細胞に由来する小胞、小胞化オルガネラ、及び生体細胞によって産生される小胞(例えば、原形質膜の直接発芽又は後期エンドソームと原形質膜との融合によって)が含まれる。細胞外小胞は、生きているか、若しくは死んだ生物、外植された組織若しくは器官、原核細胞若しくは真核細胞、及び/又は培養細胞に由来し得る。いくつかの態様において、細胞外小胞は、1つ以上の導入遺伝子産物を発現する細胞によって産生される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「エクソソーム」という用語は、内部空間(すなわち、内腔)をカプセル化する膜を含み、直接原形質膜出芽によるか、又は後期エンドソームの原形質膜との融合により当該細胞から生成される、細胞由来の小さい(直径20~300nm、より好ましくは直径40~200nm)小胞を指す。エクソソームは、細胞外小胞の一種である。エクソソームは、脂質又は脂肪酸及びポリペプチドを含み、任意選択で、ペイロード(例えば、治療剤)、レシーバー(例えば、標的部分)、ポリヌクレオチド(例えば、核酸、RNA、若しくはDNA)、糖(例えば、単純糖、多糖類、若しくはグリカン)、又は他の分子を含む。いくつかの態様において、エクソソームは、足場部分を含む。エクソソームは、プロデューサー細胞に由来することができ、そのサイズ、密度、生化学的パラメータ、又はそれらの組み合わせに基づいてプロデューサー細胞から単離され得る。いくつかの態様において、本開示のエクソソームは、1つ以上の導入遺伝子産物を発現する細胞によって産生される。
【0029】
本明細書で使用される場合、「ナノ小胞」という用語は、内部空間をカプセル化する膜を含む、細胞由来の小さい(直径20~250nm、より好ましくは直径30~150nm)小胞を指し、直接的又は間接的操作によって当該細胞(例えば、産生細胞)から生成され、当該ナノ小胞は当該操作なしでは当該産生細胞によって産生されない。当該産生細胞の適切な操作は、連続押出、アルカリ溶液での処理、超音波処理、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。ナノ小胞の産生は、いくつかの例では、当該産生細胞の破壊を生じ得る。好ましくは、ナノ小胞の集団は、原形質膜からの直接出芽又は後期エンドソームの原形質膜との融合により、プロデューサー細胞に由来する小胞を実質的に含まない。ナノベシクルは、脂質又は脂肪酸及びポリペプチドを含み、任意選択で、ペイロード(例えば、治療剤)、レシーバー(例えば、標的部分)、ポリヌクレオチド(例えば、核酸、RNA、若しくはDNA)、糖(例えば、単純糖、多糖類、若しくはグリカン)、又は他の分子を含む。いくつかの態様において、ナノ小胞は、足場部分を含む。ナノ小胞は、ナノ小胞が当該操作に従って産生細胞に由来するため、そのサイズ、密度、生化学的パラメータ、又はそれらの組み合わせに基づいて産生細胞から単離され得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、「表面操作されたEV(例えば、エクソソーム)」(例えば、足場X操作されたEV(例えば、エクソソーム))という用語は、操作されたEV(例えば、エクソソーム)の表面が、改変前のEV(例えば、エクソソーム)、又は天然に存在するEV(例えば、エクソソーム)の表面とは異なるように、その組成物において改変された膜又はEV(例えば、エクソソーム)の表面を有するEV(例えば、エクソソーム)を指す。操作は、EV(例えば、エクソソーム)の表面で、又はEV(例えば、エクソソーム)の膜内で行うことができ、それによって、EV(例えば、エクソソーム)の表面が変化される。例えば、膜は、タンパク質、脂質、小分子、炭水化物などのその組成物において改変される。組成物は、化学的、物理的、若しくは生物学的方法によって、又は化学的、物理的、若しくは生物学的方法によって以前に又は同時に改変された細胞から産生されることによって、変化され得る。具体的には、組成物は、遺伝子操作によって、又は遺伝子操作学によって既に改変されている細胞から産生されることによって変化され得る。いくつかの態様において、表面操作されたEV(例えば、エクソソーム)は、EV(例えば、エクソソーム)の表面に露出され得る、又はEV(例えば、エクソソーム)の表面で露出された部分のアンカーポイント(結合部)であり得る、外因性タンパク質(すなわち、EV(例えば、エクソソーム)が天然に発現しないタンパク質)又はその断片若しくはバリアントを含む。他の態様において、表面操作されたEV(例えば、エクソソーム)は、EV(例えば、エクソソーム)の表面に露出され得る、又はEV(例えば、エクソソーム)の表面で露出された部分のアンカーポイント(結合部)であり得る、天然のエクソソームタンパク質(例えば、足場X)又はその断片若しくはバリアントのより高い発現(例えば、より多い数)を含む。
【0031】
本明細書で使用される場合、「内腔操作されたエクソソーム)」(例えば、足場Y操作されたエクソソーム)という用語は、操作されたEV(例えば、エクソソーム)の内腔が、改変前のEV(例えば、エクソソーム)又は天然に存在するEV(例えば、エクソソーム)の内腔とは異なるように、その組成物において改変された膜又はEV(例えば、エクソソーム)の内腔を有するEV(例えば、エクソソーム)を指す。操作は、EV(例えば、エクソソーム)の内腔又は膜内で直接行うことができ、それによって、EV(例えば、エクソソーム)の内腔が変化される。例えば、膜は、タンパク質、脂質、小分子、炭水化物などのその組成物において改変され、それによって、EV(例えば、エクソソーム)の内腔が改変される。組成物は、化学的、物理的、若しくは生物学的方法によって、又は化学的、物理的、若しくは生物学的方法によって既に改変された細胞から産生されることによって、変化され得る。具体的には、組成物は、遺伝子操作によって、又は遺伝子操作学によって既に改変されている細胞から産生されることによって変化され得る。いくつかの態様において、内腔操作されたエクソソームは、EV(例えば、エクソソーム)の内腔で露出され得る、又はEV(例えば、エクソソーム)の内層で露出された部分のアンカーポイント(結合部)であり得る、外因性タンパク質(すなわち、EV(例えば、エクソソーム)が天然に発現しないタンパク質)又はその断片若しくはバリアントを含む。他の態様において、内腔操作されたEV(例えば、エクソソーム)は、エクソソームの内腔に露出され得る、又はエクソソームの内腔で露出された部分のアンカーポイント(結合部)であり得る、天然のエクソソームタンパク質(例えば、足場X若しくは足場Y)又はその断片若しくはバリアントのより高い発現を含む。
【0032】
「改変された」という用語は、本明細書に記載のEV(例えば、エクソソーム)の文脈で使用される場合、EV(例えば、エクソソーム)及び/又はその産生細胞の変更又は操作を指し、それによって、改変されたEV(例えば、エクソソーム)は、天然に存在するEV(例えば、エクソソーム)とは異なる。いくつかの態様において、本明細書に記載の改変されたEV(例えば、エクソソーム)は、天然に存在するEV(例えば、エクソソーム)の膜と比較して、タンパク質、脂質、小分子、炭水化物などの組成が異なる膜を含む(例えば、膜は、より高い密度又は数の天然のエクソソームタンパク質を含み、かつ/又は膜は、エクソソームに天然に見出されないタンパク質(例えば、IL-12)を含む)。ある特定の態様において、膜に対するかかる改変は、EV、例えば、エクソソーム(例えば、表面操作されたEV、例えば、本明細書に記載のエクソソーム)の外部表面を変化させる。ある特定の態様において、膜に対するかかる改変は、EV(例えば、エクソソーム)(例えば、本明細書に記載の内腔操作されたEV(例えば、エクソソーム))の内腔を変化させる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「足場部分」という用語は、IL-12部分又は目的の任意の他の化合物を、EV(例えば、エクソソーム)に、EV(例えば、エクソソーム)の内腔表面又は外部表面のいずれかで固定するために使用することができる分子を指す。ある特定の態様において、足場部分は、合成分子を含む。いくつかの態様において、足場部分は、非ポリペプチド部分を含む。他の態様において、足場部分は、EV(例えば、エクソソーム)に天然に存在する脂質、炭水化物、又はタンパク質を含む。いくつかの態様において、足場部分は、EV、例えば、エクソソームに天然に存在しない脂質、炭水化物、又はタンパク質を含む。ある特定の態様において、足場部分は、足場Xである。いくつかの態様において、足場部分は、足場Yである。更なる態様において、足場部分は、足場X及び足場Yの両方を含む。ある特定の態様において、足場部分は、Lamp-1、Lamp-2、CD13、CD86、フロチリン、シンタキシン-3、CD2、CD36、CD40、CD40L、CD41a、CD44、CD45、ICAM-1、インテグリンα4、L1CAM、LFA-1、Mac-1α及びβ、Vti-1A及びB、CD3ε及びζ、CD9、CD18、CD37、CD53、CD63、CD81、CD82、CXCR4、FcR、GluR2/3、HLA-DM(MHC II)、免疫グロブリン、MHC-I若しくはMHC-II成分、TCRβ、テトラスパニン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0034】
本明細書で使用される場合、「足場X」という用語は、エクソソームの表面で最近特定されたエクソソームタンパク質を指す。例えば、米国特許第10,195,290号を参照されたい(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。足場Xタンパク質の非限定的な例には、プロスタグランジンF2受容体ネガティブ調節因子(「PTGFRNタンパク質」);ベイシジン(「BSGタンパク質」);免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー2(「IGSF2タンパク質」);免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー3(「IGSF3タンパク質」);免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー8(「IGSF8タンパク質」);インテグリンβ-1(「ITGB1タンパク質」);インテグリンα-4(「ITGA4タンパク質」);4F2細胞表面抗原重鎖(「SLC3A2タンパク質」);及びATPトランスポータータンパク質のクラス(「ATP1A1タンパク質」、「ATP1A2タンパク質」、「ATP1A3タンパク質」、「ATP1A4タンパク質」、「ATP1B3タンパク質」、「ATP2B1タンパク質」、「ATP2B2タンパク質」、「ATP2B3タンパク質」、「ATP2Bタンパク質」)が含まれる。いくつかの態様において、足場Xタンパク質は、全タンパク質又はその断片(例えば、機能的断片、例えば、EV(例えば、エクソソーム)の外部表面又は内腔表面に別の部分を固定することができる最小の断片)であり得る。いくつかの態様において、足場Xは、部分(例えば、治療用タンパク質、例えば、IL-12部分)をエクソソームの外部表面又は内腔表面に固定することができる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「足場Y」という用語は、エクソソームの内腔表面内で新たに特定されたエクソソームタンパク質を指す。例えば、国際公開第WO/2019/099942号を参照されたい(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。足場Yタンパク質の非限定的な例には、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(「MARCKSタンパク質」)、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質1(「MARCKSL1タンパク質」)、及び脳酸可溶性タンパク質1(「BASP1タンパク質」)が含まれる。いくつかの態様において、足場Yタンパク質は、全タンパク質又はその断片(例えば、機能的断片、例えば、EV(例えば、エクソソーム)の内腔表面に別の部分を固定することができる最小の断片)であり得る。いくつかの態様において、足場Yは、IL-2部分をEV(例えば、エクソソーム)の内腔に固定することができる。
【0036】
本明細書で使用される場合、タンパク質(治療用タンパク質、足場X、又は足場Y)の「断片」という用語は、天然に存在するタンパク質と比較して、天然に存在する配列よりも短いタンパク質、N末端及び/若しくはC末端が欠失したタンパク質、並びに/又はタンパク質の任意の他の部分が欠失したタンパク質のアミノ酸配列を指す。本明細書で使用される際、用語「機能的断片」は、タンパク質機能を保持するタンパク質断片を指す。したがって、いくつかの態様において、足場Xタンパク質の機能的断片は、EV(例えば、エクソソーム)の内腔表面又は外部表面に部分を固定する能力を保持する。同様に、ある特定の態様において、足場Yタンパク質の機能的断片は、EV(例えば、エクソソーム)の内腔表面に部分を固定する能力を保持する。断片が機能的断片であるかどうかは、ウエスタンブロット、FACS分析、及び自己蛍光タンパク質(例えば、GFPなど)との断片の融合物を含む、EV(例えば、エクソソーム)のタンパク質含有量を決定する技術分野で既知の任意の方法によって評価され得る。いくつかの態様において、足場Xタンパク質の機能的断片は、天然に存在する足場Xタンパク質の能力(例えば、部分を固定する能力)の、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は約100%を保持する。いくつかの態様において、足場Yタンパク質の機能的断片は、天然に存在する足場Yタンパク質の能力(例えば、別の分子を固定する能力)の、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は約100%を保持する。
【0037】
本明細書で使用される場合、分子(例えば、機能的分子、抗原、足場X及び/又は足場Y)の「バリアント」という用語は、当該技術分野で既知の方法による比較で、ある特定の構造的及び機能的同一性を別の分子と共有する分子を指す。例えば、タンパク質のバリアントは、別のタンパク質における置換、挿入、欠失、フレームシフト又は再配列を含み得る。
【0038】
いくつかの態様において、足場Xのバリアントは、全長の成熟PTGFRN、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、SLC3A2、若しくはATPトランスポータータンパク質、又はPTGFRN、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、SLC3A2、若しくはATPトランスポータータンパク質の断片(例えば、機能的断片)と、少なくとも約70%の同一性を有するバリアントを含む。いくつかの態様において、PTGFRNのバリアント又は断片のバリアントは、配列番号1によるPTGFRN又はその機能的断片と、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を共有する。
【0039】
いくつかの態様において、足場Yのバリアントは、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、又はMARCKS、MARCKSL1、若しくはBASP1の断片と少なくとも70%の同一性を有するバリアントを含む。いくつかの態様において、MARCKSのバリアント又は断片のバリアントは、配列番号47によるMARCKS又はその機能的断片と、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、MARCKSL1のバリアント又は断片のバリアントは、配列番号48によるMARCKSL1又はその機能的断片と、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、BASP1のバリアント又は断片のバリアントは、配列番号49によるBASP1又はその機能的断片と、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様において、足場Yタンパク質のバリアント又は断片のバリアントは、EV(例えば、エクソソーム)の内腔を特異的に標的化する能力を保持する。いくつかの態様において、足場Yは、1つ以上の変異、例えば、保存的アミノ酸置換を含む。
【0040】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられたものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、ポリペプチドのアミノ酸が同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸で置き換えられている場合、置換が保存的であると考えられる。別の態様において、アミノ酸の鎖は、側鎖ファミリーメンバーの順序及び/又は組成物が異なる構造的に同様の鎖で保存的に置き換えることができる。
【0041】
2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列間の「配列同一性パーセント」又は「同一性パーセント」という用語は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入されなければならない付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を考慮して、比較幅にわたって配列によって共有される同一のマッチング位置の数を指す。マッチング位置は、同一のヌクレオチド又はアミノ酸が標的配列及び参照配列の両方で提示される任意の位置である。標的配列に提示されるギャップは、ギャップがヌクレオチド又はアミノ酸ではないため、カウントされない。同様に、参照配列に提示されるギャップは、標的配列ヌクレオチド又はアミノ酸がカウントされ、参照配列からのヌクレオチド又はアミノ酸はカウントされないため、参照配列はカウントされない。
【0042】
配列同一性の割合は、同一のアミノ酸残基又は核酸塩基が両方の配列で生じる位置の数を判定して、一致した位置の数を得、一致した位置の数を、比較枠における位置の総数で割り、その結果に100を乗じて、配列同一性の割合を得ることによって計算される。配列の比較及び2つの配列間の配列同一性の割合の決定は、オンライン使用及びダウンロードの両方に容易に利用可能なソフトウェアを使用して達成され得る。好適なソフトウェアプログラムは、様々な供給源から入手可能であり、タンパク質配列及びヌクレオチド配列の両方のアラインメントのためのものである。配列同一性パーセントを決定するのに好適な1つのプログラムは、米国政府の国立バイオテクノロジー情報センターのBLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なBLASTプログラムスイートの一部であるbl2seqである。Bl2seqは、BLASTN又はBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して、2つの配列間の比較を行う。BLASTNは、核酸配列の比較に使用され、BLASTPは、アミノ酸配列の比較に使用される。他の好適なプログラムは、例えば、Needle、Stretcher、Water、又はMatcher、バイオインフォマティクスプログラムのEMBOSSsuiteの一部であり、www.ebi.ac.uk/Tools/psaでEuropean Bioinformatics Institute(EBI)からも入手可能である。
【0043】
ポリヌクレオチド又はポリペプチド参照配列とアライメントする単一のポリヌクレオチド又はポリペプチド標的配列内の異なる領域は、それぞれ独自の配列同一性の割合を有し得る。配列同一性パーセント値は、最も近い10分の1に四捨五入されることに留意されたい。例えば、80.11、80.12、80.13、及び80.14は、80.1に切り捨てられ、一方、80.15、80.16、80.17、80.18、及び80.19は、80.2に切り上げられる。また、長さの値は常に整数であることに留意されたい。
【0044】
当業者は、配列同一性の割合の計算のための配列アライメントの生成が、一次配列データによって排他的に駆動される二値配列比較に限定されないことを理解するであろう。配列アラインメントは、複数の配列アラインメントから導出され得る。複数の配列アラインメントを生成するための1つの好適なプログラムは、ClustalW2であり、www.clustal.orgから入手可能である。別の好適なプログラムは、MUSCLEであり、www.drive5.com/muscle/から入手可能である。ClustalW2及びMUSCLEは、代替的に、例えば、EBIから入手可能である。
【0045】
また、配列アライメントは、構造データ(例えば、結晶タンパク質構造)、機能データ(例えば、変異の位置)、又は系統発生データ等の異種情報源からのデータと配列データを統合することによって生成され得ることも理解されるであろう。多重配列アラインメントを生成するために不均一なデータを統合する好適なプログラムは、T-Coffeeであり、www.tcoffee.orgで入手可能であり、代替的に、例えば、EBIから入手可能である。また、配列同一性パーセントを計算するために使用される最終アライメントは、自動又は手動のいずれかで精選され得ることも理解されるであろう。
【0046】
ポリヌクレオチド変異体は、コード領域、非コード領域、又はその両方における変異を含有することができる。一態様において、ポリヌクレオチド変異体は、サイレント置換、付加、又は欠失を生じるが、コードされたポリペプチドの特性又は活性を変化させない変異を含有する。別の態様において、ヌクレオチド変異体は、遺伝コードの縮退性に起因するサイレント置換によって産生される。他の態様において、変異体では、5~10、1~5、又は1~2個のアミノ酸が任意の組み合わせで置換、欠失、又は付加される。ポリヌクレオチド変異体は、様々な理由、例えば、特定の宿主のコドン発現を最適化する(ヒトmRNA内のコドンを他のもの、例えばE.coliなどの細菌宿主に変更させる)ために、産生することができる。
【0047】
天然発生の変異体は、「対立遺伝子変異体」と呼ばれ、生物の染色体上の所与の遺伝子座を占有する遺伝子のいくつかの代替形態の1つを指す(Genes II,Lewin,B.,ed.,John Wiley & Sons,New York(1985))。これらの対立遺伝子変異体は、ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドレベルのいずれかで変化し得、本開示に含まれる。代替的に、非天然発生の変異体は、突然変異誘発技術によって、又は直接合成によって産生することができる。
【0048】
タンパク質工学及び組換えDNA技術の既知の方法を使用して、変異体を生成して、ポリペプチドの特徴を改善又は変更することができる。例えば、1つ以上のアミノ酸は、生物学的機能を実質的に失うことなく、分泌タンパク質のN末端又はC末端から欠失させることができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Ron et al.,J.Biol.Chem.268:2984-2988(1993)は、3、8、又は27個のアミノ酸残基を欠失した後でさえ、ヘパリン結合活性を有するバリアントKGFタンパク質を報告した。同様に、インターフェロンγは、このタンパク質のカルボキシ末端から8~10個のアミノ酸残基を欠失した後に、最大10倍高い活性を呈した。(Dobeli et al.,J.Biotechnology 7:199-216(1988)、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。)
【0049】
更に、十分な証拠によって、変異体がしばしば天然発生のタンパク質と同様の生物学的活性を保持することが実証される。例えば、Gayle及び同僚(J.Biol.Chem 268:22105-22111(1993)、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、ヒトサイトカインIL-1aの広範囲な変異解析を行った。彼らは、ランダムな突然変異誘発を使用して、分子の全長にわたり変異体当たり平均して2.5個のアミノ酸変化であった3,500を超える個々のIL-1a変異体を生成した。複数の変異を、全ての可能なアミノ酸位置で調べた。研究者らは、「分子のほとんどは、[結合又は生物学的活性]にほとんど影響を与えずにできた」ことを認めた。(要約を参照する)実際に、調べられた3,500ヌクレオチド配列超のうち、23個の固有のアミノ酸配列のみが、野生型と著しく活性が異なるタンパク質を産生した。
【0050】
上記のように、ポリペプチド変異体は、例えば、改変ポリペプチドを含む。改変には、例えば、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸塩の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化(Mei et al.、Blood 116:270-79(2010)、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アミノ酸のアルギニル化などのタンパク質への転移RNA媒介性付加、及びユビキチン化が含まれる。いくつかの態様において、足場X及び/又は足場Yは、任意の好都合な位置で改変される。
【0051】
本明細書で使用される場合、「に連結された」又は「にコンジュゲートされた」という用語は、互換的に使用され、それぞれ、第1の部分と第2の部分(例えば、足場XとIL-12部分)との間に形成される共有結合又は非共有結合を指す。例えば、細胞外小胞内又は細胞外小胞上で発現される足場部分及びIL-12部分、例えば、足場X(例えば、PTGFRNタンパク質)は、それぞれ、細胞外小胞の内腔表面内又は外部表面に発現される。
【0052】
「カプセル化された」という用語又はその用語の文法的に異なる形態(例えば、カプセル化又はカプセル化すること)は、2つの部分を化学的又は物理的に連結することなく、第2の部分(例えば、EV(例えば、エクソソーム))内に第1の部分(例えば、抗原)を有する状態又はプロセスを指す。いくつかの態様において、「カプセル化された」という用語は、「の内腔に」と互換的に使用することができる。第1の部分(例えば、抗原)を第2の部分(例えば、EV(例えば、エクソソーム))にカプセル化する非限定的な例は、本明細書の他箇所に開示されている。
【0053】
本明細書で使用される場合、「産生細胞」という用語は、EV(例えば、エクソソーム)を生成するために使用される細胞を指す。産生細胞は、インビトロで培養される細胞、又はインビボでの細胞であり得る。産生細胞には、EV(例えば、エクソソーム)の生成に有効であることが知られている細胞、例えば、HEK293細胞、C2C12細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、間葉系幹細胞(MSCs)、BJヒト包皮線維芽細胞、s9f細胞、fHDF線維芽細胞、AGE.HN(登録商標)神経前駆細胞、CAP(登録商標)羊膜細胞、脂肪間葉系幹細胞、RPTEC/TERT1細胞が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の態様において、産生細胞は、抗原提示細胞である。いくつかの態様において、産生細胞は、細菌細胞株である。いくつかの態様において、産生細胞は、樹状細胞、B細胞、マスト細胞、マクロファージ、好中球、Kupffer-Browicz細胞、若しくはこれらの細胞のうちのいずれかに由来する細胞、又はそれらの任意の組み合わせである。いくつかの態様において、産生細胞は、細菌細胞ではない。他の態様において、産生細胞は、抗原提示細胞ではない。
【0054】
本明細書で使用される場合、「と会合した」という用語は、それぞれ、第1の部分(例えば、タンパク質、例えば、IL-12部分)と第2の部分(例えば、細胞外小胞)との間に形成される共有結合若しくは非共有結合、又は第1の部分(例えば、タンパク質、例えば、IL-12部分)の第2の部分(例えば、細胞外小胞)へのカプセル化を指す。例えば、いくつかの態様において、足場部分、例えば、足場X(例えば、PTGFRNタンパク質)は、細胞外小胞内又は細胞外小胞上で発現され、タンパク質(例えば、IL-12部分)は、細胞外小胞の外部表面にロードされる。一態様において、「と会合した」という用語は、共有結合、非ペプチド結合、又は非共有結合を意味する。例えば、アミノ酸のシステインは、チオール基を含み、これは、ジスルフィド結合を形成するか、又は第2のシステイン残基上のチオール基と架橋することができる。共有結合の例としては、ペプチド結合、金属結合、水素結合、ジスルフィド結合、シグマ結合、π結合、δ結合、グリコシド結合、アグノスティック結合、曲がった結合、配位結合、π逆結合、二重結合、三重結合、四重結合、五重結合、六重結合、コンジュゲーション、超コンジュゲーション、芳香族性、多座性、又は反結合が挙げられるが、これらに限定されない。非共有結合の非限定的な例としては、イオン結合(例えば、カチオン-π結合又は塩結合)、金属結合、水素結合(例えば、二水素結合、二水素錯体、低障壁水素結合、又は対称性を持つ水素結合)、ファンデルワールス力、ロンドン分散力、機械的結合、ハロゲン結合、金親和性、インターカレーション、スタッキング、エントロピー力、又は化学極性が挙げられる。他の態様において、「と会合した」という用語は、第1の部分(例えば、細胞外小胞)が、第2の部分(例えば、タンパク質、例えば、IL-12部分)をカプセル化することを意味する。いくつかの態様において、第1の部分及び第2の部分は、互いに連結され得る。他の態様において、第1の部分及び第2の部分は、互いに物理的及び/又は化学的に連結されていない。
【0055】
本明細書で使用される「ロードされた」という用語、又はその用語の文法的に異なる形態(例えば、ロード又はロードされた)は、第2の部分(例えば、EV、例えば、及びエクソソーム)に会合した第1の部分(例えば、IL-12部分、STINGアゴニスト)を有する状態又はプロセスを指す。いくつかの態様において、第1の部分は、第2の部分に化学的又は物理的に連結される。いくつかの態様において、第1の部分は、第2の部分に化学的又は物理的に連結されていない。いくつかの態様において、第1の部分は、第2の部分、例えば、EV(例えば、エクソソーム)の内腔内に、例えば、「カプセル化され」て存在する。いくつかの態様において、第1の部分は、第2の部分の外部表面と会合し、例えば、EV(例えば、エクソソーム)の表面に連結又はコンジュゲートされる(例えば、第2の部分の「表面提示」)。
【0056】
本明細書で使用される場合、「単離する」、「単離された」、及び「単離すること」、又は「精製する」、「精製された」、及び「精製すること」、並びに「抽出された」及び「抽出すること」という用語は、互換的に使用され、精製、例えば、所望のEV調製物の選択又は濃縮のうちの1つ以上のプロセスを受けた、所望のEVの調製物(例えば、複数の既知又は未知の量及び/又は濃度)の状態を指す。いくつかの態様において、本明細書で使用される単離すること又は精製することとは、産生細胞を含む試料からEV(例えば、画分)を除去、部分的に除去するプロセスである。いくつかの態様において、単離されたEV組成物は検出可能な望ましくない活性を有しないか、又は、代替的には、望ましくない活性のレベル若しくは量は、許容されるレベル若しくは量未満である。他の態様において、単離されたEV組成物は、許容される量及び/又は濃度以上の所望のEVの量及び/又は濃度を有する。他の態様において、単離されたEV組成物は、組成物が得られる出発材料(例えば、産生細胞調製物)と比較して、濃縮されている。この濃縮は、出発物質と比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、99.99%、99.999%、99.9999%、又は99.9999%超であり得る。いくつかの態様において、単離されたEV調製物は、残留生物学的産物を実質的に含まない。いくつかの態様において、単離されたEV調製物は、任意の混入した生物学的物質を、100%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、又は90%含まない。残留生物学的産物は、非生物物質(化学物質を含む)又は不要な核酸、タンパク質、脂質、若しくは代謝産物を含むことができる。残留生物学的産物を実質的に含まないことはまた、EV組成物が検出可能な産生細胞を含まないこと、及びEVのみが検出可能であることを意味し得る。
【0057】
本明細書で使用される「遊離IL-12部分」という用語は、細胞外小胞と会合していないが、それ以外の場合、細胞外小胞と会合したIL-12部分と同一であるIL-12部分を意味する。特に、IL-12部分と会合した細胞外小胞と比較した場合、遊離IL-12部分は、細胞外小胞と会合した同じIL-12部分である。いくつかの態様において、遊離IL-12部分を、その有効性、毒性、及び/又は任意の他の特徴においてIL-12部分を含む細胞外小胞と比較した場合、細胞外小胞と会合したIL-12部分と比較した遊離IL-12部分の量は、EVと会合したIL-12部分の量と同じである。
【0058】
本明細書で使用される「exoIL-12」という用語は、IL-12部分、例えば、IL-12タンパク質又はその断片がロードされたエクソソームを指す。いくつかの態様において、IL-12部分は、エクソソームの外部表面と会合している(例えば、IL-12部分の表面提示)。いくつかの態様において、IL-12部分は、エクソソームの外部表面に連結されているか、又はエクソソームの外部表面にコンジュゲートされている。いくつかの態様において、IL-12部分は、表面に露出した足場タンパク質(例えば、足場Xタンパク質、例えば、PTGFRNタンパク質)に連結又はコンジュゲートされている。いくつかの態様において、IL-12部分は、エクソソームの脂質二重層に連結又はコンジュゲートされている。いくつかの態様において、エクソソームは、エクソソームの内腔にIL-12部分を含む。いくつかの態様において、IL-12部分は、エクソソームの内腔表面(例えば、足場タンパク質、例えば、足場X、例えば、PTGFRN)と会合している。いくつかの態様において、IL-12部分は、エクソソームの内腔内にカプセル化され、足場タンパク質とは会合していない。
【0059】
本明細書で使用する場合、「リガンド」という用語は、受容体に結合し、受容体を調節して生物学的応答を生成する分子を指す。調節は、受容体によって媒介される生物学的応答の活性化、非活性化、遮断、又は減衰であり得る。受容体は、内因性リガンド又は外因性リガンドのいずれかによって調節され得る。内因性リガンドの非限定的な例としては、抗体及びペプチドが挙げられる。外因性アゴニストの非限定的な例は、薬物、小分子、及び環状ジヌクレオチドを含む。リガンドは、完全リガンド、部分リガンド、又は逆リガンドであり得る。
【0060】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、例えば、薬学的に許容される担体及び賦形剤などの1つ以上の他の化学成分と混合若しくは混ぜ合わされ、又は懸濁された、本明細書に記載の化合物(例えば、EV)のうちの1つ以上を指す。薬学的組成物の1つの目的は、EVの調製物の対象への投与を容易にすることである。用語「賦形剤」又は「担体」は、化合物の投与を更に促進するために薬学的組成物に添加される不活性物質を指す。「薬学的に許容される担体」又は「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、ヒトを含む動物での使用について米国連邦政府の規制機関によって承認されているか又は米国薬局方に収載されている任意の薬剤、並びに、対象への組成物の投与を禁止する程度に望ましくない生理学的効果の生成を引き起こさず、投与された化合物の生物学的活性及び特性を無効にしない任意の担体又は希釈剤を包含する。薬学的組成物を調製するのに有用であり、一般に安全で、非毒性であり、望ましい賦形剤及び担体が、含まれる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「ペイロード」という用語は、EVと接触する標的(例えば、標的細胞)に作用する治療剤を指す。EV及び/又は産生細胞に導入され得るペイロードは、ヌクレオチド(例えば、検出可能な部分若しくは毒素を含むか、又は転写を中断させるヌクレオチド)、核酸(例えば、酵素のようなポリペプチドをコードするDNA若しくはmRNA分子、又はmiRNA、dsDNA、lncRNA、若しくはsiRNAのような調節機能を有するRNA分子)、アミノ酸(例えば、検出可能な部分を含むアミノ酸又は翻訳を中断させる毒素)、ポリペプチド(例えば、酵素)、脂質、炭水化物、並びに低分子(例えば、低分子薬物及び毒素)のような治療剤を含む。
【0062】
「投与」、「投与すること」という用語、並びにそれらの変異形は、組成物(例えば、EV)又は薬剤を対象に導入することを指し、組成物又は薬剤の同時及び順次導入を含む。組成物又は薬剤の対象への導入は、腫瘍内、経口、肺、鼻腔内、非経口(静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、若しくは皮下)、直腸、リンパ内、髄腔内、腫瘍内、眼周又は局所を含む任意の好適な経路による。投与は、自己投与及び他者による投与を含む。好適な投与経路は、組成物又は薬剤がその意図された機能を実行することを可能にする。例えば、好適な経路が静脈内である場合、組成物は、組成物又は薬剤を対象の静脈へと導入することによって投与される。
【0063】
「個体」、「対象」、「宿主」、及び「患者」という用語は、本明細書で互換的に使用され、診断、治療、又は療法が望まれる任意の哺乳動物対象、特にヒトを指す。本明細書に記載の組成物及び方法は、ヒト療法及び獣医学的用途の両方に適用可能である。いくつかの態様において、対象は哺乳動物であり、他の態様において、対象はヒトである。本明細書で使用される場合、「哺乳動物対象」は、全ての哺乳動物を含み、これには、ヒト、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコなど)、農場動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)、及び実験動物(例えば、サル、ラット、マウス、ウサギ、モルモットなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」という用語は、EV(例えば、エクソソーム)を含む試料が、質量/体積(m/v)パーセンテージ濃度で約10%未満の巨大分子を含むことを意味する。いくつかの画分は、0.001%未満、0.01%未満、0.05%未満、0.1%未満、0.2%未満、0.3%未満、0.4%未満、0.5%未満、0.6%未満、0.7%未満、0.8%未満、0.9%未満、1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、6%未満、7%未満、8%未満、9%未満、又は10%未満(m/v)の巨大分子を含み得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、「灌流培養」とは、培養容器中で細胞を維持しながら、細胞に新鮮な培地が連続的に供給され、使用済み培地が連続的に除去される細胞培養法又は細胞培養を指す。いくつかの態様において、灌流培養用の培養容器は、毛細管繊維又は膜などの細胞保持デバイスを含む。細胞保持デバイスを備えた灌流バイオリアクターの例としては、中空繊維フィルター又は音響セルセパレーターなどの細胞保持デバイスに接続された、撹拌槽バイオリアクターなどのN末端製造容器などのバイオリアクターが挙げられる。いくつかの態様において、灌流培養は、単一細胞灌流培養である。いくつかの態様において、灌流培養は、新鮮な培地の添加及び使用済み培地の除去のために個々の細胞が単離される、単一細胞懸濁液灌流バイオリアクターの使用を含み。いくつかの態様において、灌流培養は、遠心分離によって使用済み培地から細胞を分離することを含む。
【0066】
本明細書で使用される場合、「フェッドバッチ」とは、細胞を回収するまで細胞が培養容器内に留まり、最初の培養培地が最初の細胞培養物に添加され、追加の供給培地が添加されて栄養素の枯渇を防ぐ、細胞培養法又は細胞培養物を指す。いくつかの態様において、供給培地は、培養プロセス中に1回添加される。いくつかの態様において、供給培地は、培養プロセス中に複数回添加される。いくつかの態様において、流加培養物は、定流量流加培養及び対数的流加培養を含み得る。
【0067】
本明細書で使用される「治療する」、「治療」、又は「治療すること」は、例えば、疾患若しくは状態の重症度の低減、疾患経過の持続時間の低減、疾患若しくは状態に関連する1つ以上の症状の改善若しくは除去、疾患若しくは状態を有する対象に、疾患若しくは状態を必ずしも治癒することのない有益な効果の提供を指す。本用語はまた、疾患若しくは状態又はそれらのその症状の予防又は防止を含む。一態様において、「治療すること」又は「治療」という用語は、抗原に対する対象における免疫応答を誘導することを意味する。いくつかの態様において、疾患又は状態は、がんである。
【0068】
本明細書で使用される「防止する」又は「防止すること」は、特定の転帰の発生又は重症度を減少又は低下させることを指す。いくつかの態様において、転帰を防止することは、予防的治療を通じて達成される。いくつかの態様において、本明細書に記載されるサイトカイン(例えば、IL-12部分)を含むEV(例えば、エクソソーム)は、対象に予防的に投与される。
【0069】
本明細書で使用される場合、「免疫調節剤」という用語は、細胞外小胞と接触した標的(例えば、標的細胞)に作用し、免疫系を調節する薬剤(すなわち、治療剤)を指す。EV(例えば、エクソソーム)及び/又は産生細胞に導入することができる免疫調節物質の非限定的な例には、チェックポイント阻害物質の調節剤、チェックポイント阻害物質のリガンド、サイトカイン、それらの誘導体、又はそれらの任意の組み合わせなどの薬剤が含まれる。免疫調節剤にはまた、アゴニスト、アンタゴニスト、抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチドであるsiRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)、ペプチドコンジュゲート化ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PPMO)、miRNA、lncRNA、mRNA、DNAなど、又は小分子も含まれる。
【0070】
II.細胞外小胞を産生する方法
本開示は、産生細胞から産生される細胞外小胞(EV)の数を増加させる方法を提供し、本方法は、産生細胞のコレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を示すように産生細胞を改変することを含む。本開示はまた、産生細胞から細胞外小胞(EV)を産生する方法を提供し、本方法は、コレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を示す産生細胞を培養することを含む。
【0071】
理論に束縛されることを望むものではないが、本出願人は、驚くべきことに、産生細胞におけるコレステロール合成経路の遺伝的及び/又は薬理学的阻害が、コレステロール合成経路の遺伝的及び/又は薬理学的阻害を有しない産生細胞と比較して、回収されたEVの収率を増加させることを発見した。これらの結果は、コレステロールレベルがエクソソーム分泌にプラスの効果を有することを見出した以前の研究とはまったく対照的である。特に、Kulshreshtha et al.Scientific Reports,2019,9:16373は、シンバスタチンで処理した産生細胞がエクソソーム分泌を低下させることを見出した。同様に、Baek et al.Endocrinology 162(7):1-18(2021)は、コレステロール代謝産物27-ヒドロキシコレステロール(27HC)の存在下で初代マウス多形核好中球、RAW264.7単球細胞、及び4T1マウス乳がん細胞の培養がエクソソーム産生の増加をもたらし、コレステロールレベルの増加がエクソソーム産生の増加をもたらすことを示唆した。最後に、Life Science Alliance(vol.4,no.8,e202101055,June,2021)に報告されたGuixらの分析では、培養物中の老化したニューロンの多胞体におけるコレステロールの蓄積が、若いニューロンと比較して、小さな細胞外小胞の分泌の増加と相関していることが示された。これは、コレステロールの増加が細胞外小胞の産生の増加と関連していることを再度示唆している。したがって、本明細書に提示される結果は、異なるスタチンを使用する様々な産生細胞におけるコレステロール阻害が、一貫してエクソソーム産生の増加をもたらすことを示した。これは、本出願の時点での当該分野の状況を考慮すると、予想されなかったであろう。
【0072】
いくつかの態様において、コレステロール合成経路における1つ以上の遺伝子又はそれらのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。遺伝子の非限定的な例としては、HMG CoA(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルコエンザイムA)、SQLE(スクアレンモノオキシゲナーゼ)、ACAT1(アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ1)、ACAT2(アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ2)、HMGCS1(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAシンターゼ1)、HMGCS2(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAシンターゼ2)、HMGCR(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAレダクターゼ)、MVK(メバロン酸キナーゼ)、PMVK(ホスホメバロン酸キナーゼ)、MVD(メバロン酸デカルボキシラーゼ)、IDI1(イソペンテニル-二リン酸デルタイソメラーゼ1)、IDI2(イソペンテニル-二リン酸デルタイソメラーゼ2)、FDPS(ファルネシル二リン酸シンターゼ)、GGPS1(ゲラニルゲラニル二リン酸シンターゼ1)、FDFT1(ファルニル二リン酸ファルネシルトランスフェラーゼ1)、SQLE(スクアレンエポキシダーゼ)、LSS(ラノステロールシンターゼ)、DHCR24(24-デヒドロコレステロールレダクターゼ)、CYP51A1(シトクロムP450ファミリー51サブファミリーAポリペプチド1)、TM7SF2(膜貫通7スーパーファミリーメンバー2)、FAXDC2(C5orf4脂肪酸ヒドロキシラーゼドメイン含有2)、MSMO1(SC4MOLメチルステロールモノオキシゲナーゼ)、NSDHL(NAD(P)依存性ステロイドデヒドロゲナーゼ様)、HSD17B7(ヒドロキシステロイド(17-β)デヒドロゲナーゼ7)、EBP(エモパミル結合タンパク質(ステロールイソメラーゼ)、SC5D(SC5DLステロール-C5-デサチュラーゼ合成)、DHCR7(7-デヒドロコレステロールレダクターゼ)、CEL(カルボキシルエステルリパーゼ)、LIPA(リパーゼA、リソソーム酸)、SOAT1(ステロールO-アセチルトランスフェラーゼ1)、SOAT2(ステロールO-アセチルトランスフェラーゼ2)、ABCA1(ATP結合カセット、サブファミリーA)、ABCG1(ATP結合カセット、サブファミリーG)、SLCO2B1(溶質担体有機アニオン輸送体ファミリーメンバー2B1)、SLCO1B3(溶質担体有機アニオン輸送体ファミリーメンバー1B3)、LDLR(低密度リポタンパク質受容体)、APOE(アポリポタンパク質E)、SREBF1(ステロール結合エレメント転写因子1)、SREBF2(ステロール結合エレメント転写因子2)、SCAP(SREBFシャペロン)、MBTPS1(S1P膜結合転写因子ペプチダーゼ部位1)、MBTPS2(S2P、膜結合転写因子ペプチダーゼ部位2)、INSIG1(インスリン誘導遺伝子1)、INSIG2(インスリン誘導遺伝子2)、AMFR(GP78、自己分泌型運動因子受容体E3ユビキチンタンパク質リガーゼ)、NR1H3(LXRA、核内受容体サブファミリー1)グループHメンバー3)、NR1H2(LXRB、核内受容体サブファミリー1グループHメンバー2)、RXRA(レチノイドX受容体α)、RXRB(レチノイドX受容体β)、又はMYLIP(IDOL、ミオシン調節軽鎖相互作用タンパク質)が挙げられる。いくつかの態様において、遺伝子は、HMGCRである。他の態様において、遺伝子は、SREBF2である。
【0073】
いくつかの態様において、SM(スクアレンモノオキシゲナーゼ)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、ACAT1(アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ1)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、ACAT2(アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ2)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、HMGCS2(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA合成酵素2)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、MVK(メバロン酸キナーゼ)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、PMVK(ホスホメバロン酸キナーゼ)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、IDI1(イソペンテニル二リン酸デルタイソメラーゼ1)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、IDI2(イソペンテニル二リン酸デルタイソメラーゼ2)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、FDP(ファルネシル二リン酸シンターゼ)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、GGPS1(ゲラニルゲラニル二リン酸シンターゼ1)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、FDFT1(ファルネシル-二リン酸ファルネシルトランスフェラーゼ1)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、SQLE(スクアレンエポキシダーゼ)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、LSS(ラノステロールシンターゼ)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、DHCR24(24-デヒドロコレステロールレダクターゼ)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、CYP51A1(シトクロムP450ファミリー51サブファミリーAポリペプチド1)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、TM7SF2(膜貫通7スーパーファミリーメンバー2)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、FAXDC2(C5orf4脂肪酸ヒドロキシラーゼドメイン含有2)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、MSMO1(SC4MOLメチルステロールモノオキシゲナーゼ)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、NSDHL(NAD(P)依存性ステロイドデヒドロゲナーゼ様)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、EBP(エモパミル結合タンパク質(ステロールイソメラーゼ)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、HSD17B7(ヒドロキシステロイド(17β)デヒドロゲナーゼ7)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、DHCR7(7-デヒドロコレステロールレダクターゼ)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、CEL(カルボキシルエステルリパーゼ)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、リパ(リパーゼA、リソソーム酸)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、SOAT1(ステロールO-アセチルトランスフェラーゼ1)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、SOAT2(ステロールO-アセチルトランスフェラーゼ2)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、ABCA1(ATP結合カセット、サブファミリーA)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、SLCO2B1(溶質担体有機アニオン輸送体ファミリーメンバー2B1)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、SLCO1B3(溶質担体有機アニオン輸送体ファミリーメンバー1B3)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、APOE(アポリポタンパク質E)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、SREBF1(ステロール結合エレメント転写因子1)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、SREBF2(ステロール結合エレメント転写因子2)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、SCAP(SREBFシャペロン)の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、MBTPS1(S1P膜結合転写因子ペプチダーゼ部位1)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、MBTPS2(S2P、膜結合転写因子ペプチダーゼ部位2)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、INSIG1(インスリン誘導遺伝子1)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、INSIG2(インスリン誘導遺伝子2)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、AMFR(GP78、自己分泌型運動因子受容体E3ユビキチンタンパク質リガーゼ)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、NR1H3(LXRA、核内受容体サブファミリー1グループHメンバー3)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、NR1H2(LXRB、核内受容体サブファミリー1グループHメンバー2)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、RXRA(レチノイドX受容体α)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、RXRB(レチノイドX受容体β)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。いくつかの態様において、MYLIP(IDOL、ミオシン調節軽鎖相互作用タンパク質)又はそのタンパク質の発現が、阻害又は低減され得る。
【0074】
HMGCR
3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイムAレダクターゼ(一般に、HMG Co-Aレダクターゼ又はHMGCRと略され、LDLCQ3としても知られている)は、ヒトにおいてHMGCR遺伝子によってコードされるタンパク質である。HMGCR遺伝子は、5番染色体上に位置する(塩基75,336,334~75,362,116;NCBI参照配列:NC_000005.10)。HMGCRは、HMG-CoAのメバロン酸への変換を触媒し、コレステロール合成の律速酵素である。メバロン酸に由来するステロール及び非ステロール代謝産物によって媒介される負のフィードバック機構は、HMGCR酵素活性を調節する。通常、哺乳動物細胞において、HMGCRは、低密度リポタンパク質(LDL)受容体を介したLDLの内在化及び分解に由来するコレステロールによって抑制される。
【0075】
HMGCRタンパク質は、選択的スプライシングによって産生される3つのアイソフォームを有する。配列を以下の表1に示す。
【表1】
【0076】
いくつかの態様において、本開示の方法は、産生細胞のコレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を示すように産生細胞を改変することを含む。いくつかの態様において、本開示の方法は、コレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を示す産生細胞を培養することを含む。いくつかの態様において、コレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質は、HMGCR遺伝子及び/又はHMGCRタンパク質を含む。本明細書で使用される場合、「HMGCR遺伝子」という用語は、任意の転写物、ゲノムDNA、プレmRNA、又はmRNAを指す。本明細書で使用される場合、「HMGCRタンパク質」とは、上に開示されたHMGCRアイソフォーム1、HMGCRアイソフォーム2、又はHMGCRアイソフォーム3、並びにそのバリアント及び変異体を指す。本明細書で使用される場合、HMGCRタンパク質という用語はまた、野生型HMGCRタンパク質の少なくとも1つの機能を有する本明細書に開示されるアイソフォームのうちのいずれかの任意の断片又は変異体を包含する。
【0077】
本明細書で使用される場合、「低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能」という用語は、物理的レベルの低下(例えば、ゲノムからの編集による遺伝子配列の減少、又はタンパク質発現の低下によるタンパク質の減少)及び機能の低下の両方を指す。例えば、HMGCR遺伝子のレベルの低下は、例えば、ストップコドン又はフレームシフトを導入する変異の導入による遺伝子機能の低下、転写を変化させるであろうエピジェネティック修飾による遺伝子機能の低下、又はプロモーター遺伝子若しくはHMGCR発現を調節する別の遺伝子における変異若しくは他の変化による遺伝子機能の低下を指し得る。いくつかの態様において、改変細胞におけるHMGCR遺伝子のレベルの低下は、参照(例えば、未処理)細胞と比較して、機能的HMGCRタンパク質(例えば、野生型HMGCRタンパク質)をコードすることができるゲノムDNA、プレmRNA、及び/又はmRNAの量(例えば、濃度)の減少を指す。同様に、HMGCRタンパク質の減少は、(部分的若しくは完全な)機能喪失を引き起こす変化(例えば、変異若しくは翻訳後修飾)、又はHMGCRの機能部位に結合する分子の活性(例えば、その酵素活性)の変化を含むがこれらに限定されない、機能的なHMGCRタンパク質(例えば、野生型HMGCRタンパク質)の発現をもたらす変化を指し得る。
【0078】
HMGCR遺伝子レベル(例えば、遺伝子全体若しくはその一部の存在/不在、又は遺伝子機能)は、当該技術分野で既知の様々な方法によって測定することができる。HMGCRタンパク質レベル(例えば、HMGCRタンパク質又はその断片の存在/不在、又は定量若しくはタンパク質機能)は、当該技術分野で既知の様々な方法によって測定することができる。
【0079】
いくつかの態様において、産生細胞におけるHMGCR遺伝子の発現レベルの低下及び/又はHMGCRタンパク質の発現若しくは機能レベルの低下は、HMGCR遺伝子の発現レベルの低下及び/又はHMGCRタンパク質の発現レベルの低下を有しない産生細胞によって産生されるEVと比較して、産生細胞によって産生されるEVの収率を増加させることができる。いくつかの態様において、収率は、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約21倍、少なくとも約22倍、少なくとも約23倍、少なくとも約24倍、少なくとも約25倍、少なくとも約26倍、少なくとも約27倍、少なくとも約28倍、少なくとも約29倍、又は少なくとも約30倍増加する。いくつかの態様において、収率は、約2倍~約30倍、約2倍~約25倍、約2倍~約20倍、約2倍~約15倍、約12倍~約10倍、約2倍~約5倍、約5倍~約30倍、約5倍~約25倍、約5倍~約20倍、約5倍~約15倍、約5倍~約10倍、約10倍~約30倍、約10倍~約25倍、約10倍~約20倍、約10倍~約15倍、約15倍~約30倍、約15倍~約25倍、約15倍~約20倍、約20倍~約30倍、約20倍~約25倍、又は約25倍~約30倍増加する。いくつかの態様において、収率は、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、又は約10倍増加する。
【0080】
いくつかの態様において、HMGCR遺伝子の発現は、約2~約20倍低下する。いくつかの態様において、HMGCR遺伝子の発現は、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、又は約20倍低下する。
【0081】
いくつかの態様において、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/タンパク質機能は、少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、又は少なくとも約10%、少なくとも約5%、又は少なくとも約1%低下する。いくつかの態様において、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/タンパク質機能は、少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、又は少なくとも約30%低下する。
【0082】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法の改変は、産生細胞を、HMGCR遺伝子及び/又はHMGCRタンパク質機能を低下させることができる薬剤と接触させることを含む。いくつかの態様において、薬剤は、スタチンを含む。理論に束縛されることを望むものではないが、スタチンは、メバロン酸経路(例えば、コレステロール生合成経路)、HMG-CoAレダクターゼ(HMGCR)における第1及び主要な律速酵素の活性部位を競合的に遮断することによって作用する。この部位の阻害は、基質へのアクセスを妨げ、それによって、HMG-CoAのメバロン酸への変換を妨げる。スタチンの活性成分は、内因性基質、HMG-CoA、及びメバルジルCoA遷移状態中間体と構造的に類似している修飾3,5-ジヒドロキシグルタル酸部分である。この活性部位は、スタチンが3R,5R配置を有することを必要とする立体選択的プロセスにおいて、HMG-CoAレダクターゼ活性に結合し、阻害する。スタチンの分子的及び臨床的差異は、部分的に還元されたナフタレン(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン)、ピロール(アトルバスタチン)、インドール(フルバスタチン)、ピリミジン(ロスバスタチン)、ピリジン(セリバスタチン)、又はキノリン(ピタバスタチン)であり得る活性部分に結合する環から生じる。環上の置換基は、スタチンの溶解度及び薬理学的特性を定義する。親水性(プラバスタチン及びロスバスタチン)は、共通の活性部位に加えて他の極性置換基に由来するが、親油性(アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン、及びセリバスタチン)は、非極性置換基の付加により生じる。いくつかの態様において、スタチンは、アトルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、ロスバスタチン、メバスタチン、シンバスタチン、又はそれらの組み合わせから選択され得る。いくつかの態様において、スタチンは、シンバスタチンを含む。いくつかの態様において、スタチンは、ロバスタチン、シンバスタチン、及び/又はプラバスタチンを含む。いくつかの態様において、スタチンは、アトルバスタチンを含む。いくつかの態様において、スタチンは、フルバスタチンを含む。いくつかの態様において、スタチンは。ロスバスタチンを含む。いくつかの態様において、スタチンは、セリバスタチンを含む。いくつかの態様において、スタチンは、ピタバスタチンを含む。いくつかの態様において、スタチンは、プラバスタチン及び/又はロスバスタチンを含む。いくつかの態様において、スタチンは、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン、及び/又はセリバスタチンを含む。
【0083】
いくつかの態様において、スタチン(例えば、シンバスタチン)は、約1nM、約2nM、約3nM、約4nM、約5nM、約6nM、約7nM、約8nM、約9nM、約約10nM、約11nM、約12nM、約13nM、約14nM、約15nM、約16nM、約17nM、約18nM、又は約20nM、約30nM、約40nM、約50nM、約60nM、約70nM、約80nM、約90nM、約100nM、約110nM、約120nM、約130nM、約140nM、約150nM、約160nM、約170nM、約180nM、約190nM、約200nM、約210nM、約220nM、約230nM、約240nM、約250nM、約260nM、約270nM、約280nM、約290nM、約300nM、約310nM、約320nM、約330nM、約340nM、約350nM、約360nM、約370nM、約380nM、約390nM、約400nM、約410nM、約420nM、約430nM、約440nM、約450nM、約460nM、約470nM、約480nM、約490nM、約500nM、約510nM、約520nM、約530nM、約540nM、約550nM、約560nM、約570nM、約580nM、約590nM、約600nM、約610nM、約620nM、約630nM、約640nM、約650nM、約660nM、約670nM、約680nM、約690nM、約700nM、約710nM、約720nM、約730nM、約740nM、約750nM、約760nM、約770nM、約780nM、約790nM、約800nM、約810nM、約820nM、約830nM、約840nM、約850nM、約860nM、約870nM、約880nM、約890nM、約900nM、約910nM、約920nM、約930nM、約940nM、約950nM、約960nM、約970nM、約980nM、約990nM、又は約1,000nMの濃度で産生細胞と接触される。いくつかの態様において、スタチンは、約0.1nM~約100nM、約0.1nM~約90nM、約0.1nM~約80nM、約0.1nM~約70nM、約0.1nM~約60nM、約0.1nM~約50nM、約0.1nM~約40nM、約0.1nM~約30nM、約0.1nM~約20nM、0.1nM~約10nM、又は約1nM~約20nM、約1nM~約10nM、約1nM~約5nM、約5nM~約20nM、約5nM~約15nM、約5nM~約10nM、約10nM~約50nM、約10nM~約40nM、約10nM~約30nM、約10nM~約20nM、約1nM~約10nM、又は約10nM~約20nMの濃度で接触される。
【0084】
いくつかの態様において、スタチン(例えば、シンバスタチン)は、約1nM~約10nMの濃度で産生細胞と接触される。
【0085】
いくつかの態様において、スタチンは、EVを回収する前に、産生細胞と接触される。いくつかの態様において、スタチンは、EVを回収する前に、産生細胞と、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、又は約24時間接触される。一部の態様において、スタチンは、産生細胞と、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間、約72時間、約84時間、約96時間、約108時間、約120時間、約132時間、約144時間、約156時間、約168時間、約180時間、約192時間、約204時間、約216時間、約228時間、又は約240時間接触される。いくつかの態様において、スタチンは、EVを回収する前に、生産細胞と、約10日間~約15日間、約10日間~約20日間、約10日間~約25日間、約10日間~約30日間、約10日間~約35日間、又は約10日間~約40日間接触される。いくつかの態様において、EVが回収される間、スタチンは、産生細胞と接触される。いくつかの態様において、スタチンは、約30日間、約35日間、又は約40日間にわたる連続(例えば、灌流)細胞培養プロセスの期間にわたって、産生細胞と接触される。
【0086】
いくつかの態様において、薬剤は、メグルトール、クリノフィブラート、ヘスペレチン7-O-グルコシド、化合物81(HMG499とも呼ばれ、Jiang et al.,Nature Communications 9,5138(2018)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている関連構造を含む)、PROTAC、又はMonacolin Jを含む。
【0087】
いくつかの態様において、産生細胞は、産生細胞を、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能を低下させることができる薬剤と接触させることによって、培養前に改変される。
【0088】
いくつかの態様において、薬剤は、約1nM、約2nM、約3nM、約4nM、約5nM、約6nM、約7nM、約8nM、約9nM、約約10nM、約11nM、約12nM、約13nM、約14nM、約15nM、約16nM、約17nM、約18nM、又は約20nM、約30nM、約40nM、約50nM、約60nM、約70nM、約80nM、約90nM、約100nM、約110nM、約120nM、約130nM、約140nM、約150nM、約160nM、約170nM、約180nM、約190nM、約200nM、約210nM、約220nM、約230nM、約240nM、約250nM、約260nM、約270nM、約280nM、約290nM、約300nM、約310nM、約320nM、約330nM、約340nM、約350nM、約360nM、約370nM、約380nM、約390nM、約400nM、約410nM、約420nM、約430nM、約440nM、約450nM、約460nM、約470nM、約480nM、約490nM、約500nM、約510nM、約520nM、約530nM、約540nM、約550nM、約560nM、約570nM、約580nM、約590nM、約600nM、約610nM、約620nM、約630nM、約640nM、約650nM、約660nM、約670nM、約680nM、約690nM、約700nM、約710nM、約720nM、約730nM、約740nM、約750nM、約760nM、約770nM、約780nM、約790nM、約800nM、約810nM、約820nM、約830nM、約840nM、約850nM、約860nM、約870nM、約880nM、約890nM、約900nM、約910nM、約920nM、約930nM、約940nM、約950nM、約960nM、約970nM、約980nM、約990nM、又は約1,000nMの濃度で産生細胞と接触される。いくつかの態様において、スタチンは、約0.1nM~約100nM、約0.1nM~約90nM、約0.1nM~約80nM、約0.1nM~約70nM、約0.1nM~約60nM、約0.1nM~約50nM、約0.1nM~約40nM、約0.1nM~約30nM、約0.1nM~約20nM、0.1nM~約10nM、又は約1nM~約20nM、約1nM~約10nM、約1nM~約5nM、約5nM~約20nM、約5nM~約15nM、約5nM~約10nM、約10nM~約50nM、約10nM~約40nM、約10nM~約30nM、約10nM~約20nM、約1nM~約10nM、又は約10nM~約20nMの濃度で接触される。
【0089】
いくつかの態様において、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能を低下させることができる薬剤は、遺伝子編集技術を含む。いくつかの態様において、遺伝子編集技術は、shRNA、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、CRISPR、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、メガヌクレアーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様において、遺伝子編集技術は、siRNAを含む。
【0090】
SREBF2
ステロール調節エレメント結合因子2(一般にSREBF2と略され、lo、nu、SRE、nuc、SREB、SREBP、bHLHd、lop13、SREBP2、bHLHd2、SREBP-2、AI608257、及びSREBP2gcとしても知られている)は、ヒトにおいてSREBF2遺伝子によってコードされるタンパク質である。SREBF2遺伝子は、15番染色体上に位置する(塩基82,031,470~82,089,580;NCBI参照配列:NC_000081.7)。SREBF2は、コレステロール合成の主要な調節因子であり、HMG-CoAレダクターゼ(HMGCR)、HMG-CoAシンターゼ(HMGCS)、及びメバロン酸キナーゼ(MVK)などの遺伝子の発現を活性化する転写因子である。
【0091】
SREBF2タンパク質は、選択的スプライシングによって生成される2つのアイソフォームを有する。配列を以下の表2に示す。
【表2】
【0092】
いくつかの態様において、本開示の方法は、産生細胞のコレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を示すように産生細胞を改変することを含む。いくつかの態様において、本開示の方法は、コレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を示す産生細胞を培養することを含む。いくつかの態様において、コレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質は、SREBF2遺伝子及び/又はSREBF2タンパク質を含む。本明細書で使用される場合、「SREBF2遺伝子」という用語は、任意の転写物、ゲノムDNA、プレmRNA、又はmRNAを指す。本明細書で使用される場合、「SREBF2タンパク質」とは、上に開示されたSREBF2アイソフォーム1又はSREBF2アイソフォーム2、並びにそのバリアント及び変異体を指す。本明細書で使用される場合、SREBF2タンパク質という用語はまた、野生型SREBF2タンパク質の少なくとも1つの機能を有する本明細書に開示されるアイソフォームのうちのいずれかの任意の断片又はバリアントを包含する。
【0093】
本明細書で使用される場合、「低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能」という用語は、物理的レベルの低下(例えば、ゲノムからの編集による遺伝子配列の減少、又はタンパク質発現の低下によるタンパク質の減少)及び機能の低下の両方を指す。例えば、SREBF2遺伝子のレベルの低下は、例えば、ストップコドン又はフレームシフトを導入する変異の導入による遺伝子機能の低下、転写を変化させるであろうエピジェネティック修飾による遺伝子機能の低下、又はプロモーター遺伝子若しくはSREBF2発現を調節する別の遺伝子における変異若しくは他の変化による遺伝子機能の低下を指し得る。いくつかの態様において、改変細胞におけるSREBF2遺伝子のレベルの低下は、参照(例えば、未処理)細胞と比較して、機能的SREBF2タンパク質(例えば、野生型SREBF2タンパク質)をコードすることができるゲノムDNA、プレmRNA、及び/又はmRNAの量(例えば、濃度)の減少を指す。同様に、SREBF2タンパク質の減少は、(部分的若しくは完全な)機能喪失を引き起こす変化(例えば、変異若しくは翻訳後修飾)、又はSREBF2の機能部位に結合する分子の活性(例えば、その転写活性化活性)の変化を含むがこれらに限定されない、機能的なSREBF2タンパク質(例えば、野生型SREBF2タンパク質)の発現をもたらす変化を指し得る。
【0094】
SREBF2の遺伝子レベル(例えば、遺伝子全体若しくはその一部の存在/不在、又は遺伝子機能)は、当該技術分野で既知の様々な方法によって測定することができる。SREBF2タンパク質レベル(例えば、SREBF2タンパク質又はその断片の存在/不在、又は定量若しくはタンパク質機能)は、当該技術分野で既知の様々な方法によって測定することができる。
【0095】
いくつかの態様において、産生細胞におけるSREBF2遺伝子の低下した発現レベル及び/又はSREBF2タンパク質の発現又は機能レベルは、SREBF2遺伝子の低下した発現レベル及び/又はSREBF2タンパク質の発現レベルを有しない産生細胞によって産生されるEVと比較して、産生細胞によって産生されるEVの収率を増加させることができる。いくつかの態様において、収率は、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約21倍、少なくとも約22倍、少なくとも約23倍、少なくとも約24倍、少なくとも約25倍、少なくとも約26倍、少なくとも約27倍、少なくとも約28倍、少なくとも約29倍、又は少なくとも約30倍増加する。いくつかの態様において、収率は、約2倍~約30倍、約2倍~約25倍、約2倍~約20倍、約2倍~約15倍、約2倍~約10倍、約2倍~約5倍、約5倍~約30倍、約5倍~約25倍、約5倍~約20倍、約5倍~約15倍、約5倍~約10倍、約10倍~約30倍、約10倍~約25倍、約10倍~約20倍、約10倍~約15倍、約15倍~約30倍、約15倍~約25倍、約15倍~約20倍、約20倍~約30倍、約20倍~約25倍、又は約25倍~約30倍増加する。いくつかの態様において、収率は、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、又は約10倍増加する。
【0096】
いくつかの態様において、SREBF2遺伝子の発現は、約2倍~約30倍低下する。いくつかの態様において、SREBF2遺伝子の発現は、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約21倍、約22倍、約23倍、約24倍、約25倍、約26倍、約27倍、約28倍、約29倍、又は約30倍低下する。
【0097】
いくつかの態様において、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能は、少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、又は少なくとも約10%、少なくとも約5%%、又は少なくとも約1%低下する。いくつかの態様において、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能は、少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、又は少なくとも約30%低下する。
【0098】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法の改変は、産生細胞を、SREBF2遺伝子及び/又はSREBF2タンパク質機能を低下させることができる薬剤と接触させることを含む。いくつかの態様において、薬剤は、ベツリンを含む(Tang et al.,Cell Metab.2011 Jan 5;13(1):44-56(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。いくつかの態様において、薬剤は、ファトスタチンを含む。いくつかの態様において、薬剤は、シュードプロトジオシンを含む。いくつかの態様において、薬剤は、オリゴマーアミロイドβ42を含む。いくつかの態様において、薬剤は、ルテオリンを含む。いくつかの態様において、薬剤は、クロフィブラートを含む。
【0099】
いくつかの態様において、改変は、産生細胞を、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能を低下させることができる薬剤と接触させることを含む。いくつかの態様において、産生細胞は、産生細胞を、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能を低下させることができる薬剤と接触させることによって、培養前に改変される。
【0100】
いくつかの態様において、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能を低下させることができる薬剤は、遺伝子編集技術を含む。いくつかの態様において、遺伝子編集技術は、shRNA、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、CRISPR、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、メガヌクレアーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様において、遺伝子編集技術は、siRNAを含む。
【0101】
IIA.遺伝子編集ツール
1つ以上の遺伝子編集ツールを、本開示の産生細胞からの細胞外小胞の数を増加させる方法、並びに細胞外小胞の産生及び産生方法で使用することができる。
【0102】
II.A.1.CRISPR/Casシステム
いくつかの態様において、本開示において使用することができる遺伝子編集ツールは、CRISPR/Casシステムを含む。そのようなシステムは、例えば、Cas9ヌクレアーゼを用いることができ、これは、いくつかの事例では、それが発現される所望の細胞型(例えば、CHO細胞、例えば、MSC細胞)に対してコドン最適化される。CRISPR/Casシステムは、Casヌクレアーゼ(例えば、Cas9)によって認識されるNGGモチーフの直前の標的DNA配列にハイブリダイズする合成ガイドRNA(gRNA)と複合体を形成することによって、ゲノム部位を標的化するCasヌクレアーゼ(例えば、Cas9)ヌクレアーゼを使用する。これにより、NGGモチーフの上流の3つのヌクレオチドの二本鎖切断が生じる。いくつかの態様において、二本鎖切断とは対照的に、一本鎖ニックをもたらすであろう改変バージョンのCasヌクレアーゼ(例えば、Cas9)を使用することができる。他の酵素との更なる融合は、二本鎖切断の不在下で部位特異的塩基編集をもたらし得る。CRISPR/Cas9システムの固有の能力は、2つ以上のgRNA(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のgRNA)を有する単一のCas9タンパク質を共発現させることによって、複数の異なるゲノム遺伝子座を同時に標的化する能力である。そのようなシステムはまた、2つの別個の分子を含むガイドRNA(gRNA)を用いることができる。ある特定の態様において、2分子gRNAは、crRNA様(「CRISPR RNA」又は「ターゲッターRNA」又は「crRNA」又は「crRNAリピート」)分子及び対応するtracrRNA様(「トランス作用CRISPR RNA」又は「アクチベーターRNA」又は「tracrRNA」又は「足場」)分子を含む。
【0103】
crRNAは、gRNAのDNA標的化セグメント(一本鎖)と、gRNAのタンパク質結合セグメントの二本鎖RNA(dsRNA)二重鎖の半分を形成する一連のヌクレオチドとの両方を含む。対応するtracrRNA(アクチベーターRNA)は、gRNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖の残りの半分を形成する一連のヌクレオチドを含む。したがって、crRNAの一連のヌクレオチドは、tracrRNAの一連のヌクレオチドと相補的であり、ハイブリダイズして、gRNAのタンパク質結合ドメインのdsRNA二重鎖を形成する。したがって、各crRNAは、対応するtracrRNAを有すると言える。crRNAは、一本鎖DNA標的化セグメントを更に提供する。したがって、gRNAは、標的配列及びtracrRNAにハイブリダイズする配列を含む。したがって、crRNA及びtracrRNA(対応する対として)は、ハイブリダイズして、gRNAを形成する。細胞内での改変に使用する場合、特定のcrRNA又はtracrRNA分子の正確な配列及び/又は長さは、RNA分子が使用されるであろう種(例えば、ヒト)に特異的であるように設計され得る。
【0104】
3つのエレメント(Cas9、tracrRNA、及びcrRNA)をコードする天然に存在する遺伝子は、典型的には、オペロン(複数可)に組織化される。天然に存在するCRISPR RNAは、Cas9システム及び生物によって異なるが、21~46ヌクレオチド長の2つのダイレクトリピート(DR)が隣接する、21~72ヌクレオチド長の標的化セグメントを含むことが多い(例えば、WO2014/131833を参照されたい)。S.pyogenesの場合、DRは、36ヌクレオチド長であり、標的化セグメントは、30ヌクレオチド長である。3’に位置するDRは、対応するtracrRNAに相補的であり、かつそれとハイブリダイズし、これは、次いで、Cas9タンパク質に結合する。
【0105】
あるいは、本明細書で使用されるCRISPRシステムは、コドン最適化されたCas9とともに機能する融合crRNA-tracrRNA構築物(すなわち、単一の転写物)を更に用いることができる。この単一のRNAは、しばしば、ガイドRNA又はgRNA又はシングルガイドRNA又はsgRNAと称される。gRNA内では、crRNA部分は、所与の認識部位の「標的配列」として特定され、tracrRNAは、しばしば、「足場」と称される。簡潔に述べると、標的配列を含む短いDNA断片は、ガイドRNA発現プラスミドに挿入される。gRNA発現プラスミドは、標的配列(いくつかの態様において、約20ヌクレオチド)、tracrRNA配列の形態(足場)、並びに細胞において活性である好適なプロモーター、及び真核細胞において適切にプロセシングされるために必要なエレメントを含む。システムの多くは、アニーリングされて二本鎖DNAを形成し、次いで、gRNA発現プラスミドにクローニングされるカスタムの相補オリゴに依存する。
【0106】
次いで、gRNA発現カセット及びCas9発現カセットが、細胞に導入される。例えば、Mali P et al.,(2013)Science 2013 Feb.15;339(6121):823-6、Jinek M et al.,Science 2012 Aug.17;337(6096):816-21、Hwang W Y et al.,Nat Biotechnol 2013 March;31(3):227-9、Jiang W et al.,Nat Biotechnol 2013 March;31(3):233-9、Cronican et al.,ACS Chem.Biol.5(8):747-52(2010)、及びCong L et al.,Science 2013 Feb.15;339(6121):819-23を参照されたい(それらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。例えば、WO/2013/176772A1、WO/2014/065596A1、WO/2014/089290A1、WO/2014/093622A2、WO/2014/099750A2、及びWO/2013142578A1も参照されたい(それらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0107】
いくつかの態様において、Cas9ヌクレアーゼは、タンパク質の形態で提供され得る。いくつかの態様において、Cas9タンパク質は、gRNAとの複合体の形態で提供され得る。他の態様において、Cas9ヌクレアーゼは、タンパク質をコードする核酸の形態で提供され得る。Cas9ヌクレアーゼをコードする核酸は、RNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))又はDNAであり得る。いくつかの態様において、gRNAは、RNAの形態で提供され得る。他の態様において、gRNAは、RNAをコードするDNAの形態で提供され得る。いくつかの態様において、gRNAは、別個のcrRNA及びtracrRNA分子、又はcrRNA及びtracrRNAをそれぞれコードする別個のDNA分子の形態で提供され得る。
【0108】
ある特定の態様において、dsDNAの各鎖上の標的部位に特異的な2つの別個のCasタンパク質(例えば、ニッカーゼ)は、別の核酸上のオーバーハング配列に相補的なオーバーハング配列、又は同じ核酸上の別個の領域を生成することができる。核酸をdsDNAの両方の鎖上の標的部位に特異的な2つのニッカーゼと接触させることによって生成されるオーバーハング末端は、5’又は3’オーバーハング末端のいずれかであり得る。例えば、オーバーハング配列が生成されるように、第1のニッカーゼは、dsDNAの第1の鎖に一本鎖切断を生成することができ、一方、第2のニッカーゼは、dsDNAの第2の鎖に一本鎖切断を生成することができる。生成されるオーバーハング末端配列が、異なる核酸分子上のオーバーハング末端配列に相補的であるように、一本鎖切断を生成する各ニッカーゼの標的部位を選択することができる。2つの異なる核酸分子の相補的なオーバーハング末端は、本明細書に開示される方法によってアニールされ得る。いくつかの態様において、第1の鎖上のニッカーゼの標的部位は、第2の鎖上のニッカーゼの標的部位とは異なる。
【0109】
いくつかの態様において、HMGCR及び/又はSREBF2遺伝子、並びにそのコードされるHMGCR及び/又はSREBF2タンパク質の発現は、細胞を、例えば、HMGCR及び/又はSREBF2遺伝子に特異的であるCRISPR(例えば、CRISPR-Cas9システム)と接触させることによって減少する。
【0110】
いくつかの態様において、CRISPRを使用した遺伝子編集は、参照細胞(例えば、CRISPRを使用した遺伝子編集を受けていない対応する細胞)において観察されるHMGCR及び/又はSREBF2の遺伝子レベルと比較して、遺伝子レベルを少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は約100%低下させる。いくつかの態様において、HMGCR及び/又はSREBF2の遺伝子レベルは、当該技術分野で既知の任意の技術を使用して、例えば、デジタルドロップレットPCRによって測定することができる。
【0111】
いくつかの態様において、本明細書に開示されるgRNA又はCas9をコードする核酸は、RNA又はDNAである。他の態様において、本明細書に開示されるgRNA又はCas9をコードするRNA又はDNAは、それぞれ、合成RNA又は合成DNAである。いくつかの態様において、合成RNA又は合成DNAは、少なくとも1つの非天然核酸塩基を含む。いくつかの態様において、ある特定のクラスの全ての核酸塩基は、非天然核酸塩基で置き換えられている(例えば、本明細書に開示されるポリヌクレオチドにおける全てのウリジンは、非天然核酸塩基、例えば、5-メトキシウリジン又はシュードウリジンで置き換えられ得る)。いくつかの態様において、ポリヌクレオチド(例えば、合成RNA又は合成DNA)は、天然核酸塩基のみを含む。すなわち、合成DNAの場合は、A、C、T、及びUのみを含み、合成RNA又は合成DNAの場合は、A、C、T及びUのみを含む。
【0112】
II.A.2.メガヌクレアーゼ
いくつかの態様において、細胞におけるVHLの発現を調節するために使用される遺伝子編集ツールは、メガヌクレアーゼシステムなどのヌクレアーゼ剤を含む。メガヌクレアーゼは、保存配列モチーフに基づいて、4つのファミリーに分類されており、これらのファミリーは、「LAGLIDADG」、「GIY-YIG」、「H-N-H」、及び「His-Cysボックス」ファミリーである。これらのモチーフは、金属イオンの配位及びホスホジエステル結合の加水分解に関与する。
【0113】
HEaseは、それらの長い認識部位、及びそれらのDNA基質におけるいくつかの配列多型の許容性が注目に値する。メガヌクレアーゼのドメイン、構造、及び機能は既知である。例えば、Guhan and Muniyappa(2003)Crit Rev Biochem Mol Biol 38:199-248、Lucas et al.,(2001)Nucleic Acids Res 29:960-9、Jurica and Stoddard,(1999)Cell Mol Life Sci 55:1304-26、Stoddard,(2006)Q Rev Biophys 38:49-95、及びMoure et al.,(2002)Nat Struct Biol 9:764を参照されたい。
【0114】
いくつかの例では、天然に存在するバリアント、及び/又は操作された誘導体メガヌクレアーゼが使用される。動態、補因子相互作用、発現、至適条件、及び/又は認識部位の特異性、並びに活性のスクリーニングを改変するための方法は既知である。例えば、Epinat et al.,(2003)Nucleic Acids Res 31:2952-62、Chevalier et al.,(2002)Mol Cell 10:895-905、Gimble et al.,(2003)Mol Biol 334:993-1008、Seligman et al.,(2002)Nucleic Acids Res 30:3870-9、Sussman et al.,(2004)J Mol Biol 342:31-41、Rosen et al.,(2006)Nucleic Acids Res 34:4791-800、Chames et al.,(2005)Nucleic Acids Res 33:e178、Smith et al.,(2006)Nucleic Acids Res 34:e149、Gruen et al.,(2002)Nucleic Acids Res 30:e29、Chen and Zhao,(2005)Nucleic Acids Res 33:e154、WO2005/105989、WO2003/078619、WO2006/097854、WO2006/097853、WO2006/097784、及びWO2004/031346を参照されたい(それらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0115】
任意のメガヌクレアーゼを本明細書で使用することができ、I-SceI、I-SceII、I-SceIII、I-SceIV、I-SceV、I-SecVI、I-SceVII、I-CeuI、I-CeuAIIP、I-CreI、I-CrepsbIP、I-CrepsbIIP、I-CrepsbIIIP、I-CrepsbIVP、I-TliI、I-PpoI、PI-PspI、F-SceI、F-SceII、F-SuvI、F-TevI、F-TevII、I-AmaI、I-AniI、I-ChuI、I-CmoeI、I-CpaI、I-CpaII、I-CsmI、I-CvuI、I-CvuAIP、I-DdiI、I-DdiII、I-DirI、I-DmoI、I-HmuI、I-HmuII、I-HsNIP、I-LlaI、I-MsoI、I-NaaI、I-NanI、I-NcIIP、I-NgrIP、I-NitI、I-NjaI、I-Nsp236IP、I-PakI、I-PboIP、I-PcuIP、I-PcuAI、I-PcuVI、I-PgrIP、I-PobIP、I-PorIIP、I-PbpIP、I-SpBetaIP、I-ScaI、I-SexIP、I-SneIP、I-SpomI、I-SpomCP、I-SpomIP、I-SpomIIP、I-SquIP、I-Ssp6803I、I-SthPhiJP、I-SthPhiST3P、I-SthPhiSTe3bP、I-TdeIP、I-TevI、I-TevII、I-TevIII、I-UarAP、I-UarHGPAIP、I-UarHGPA13P、I-VinIP、I-ZbiIP、PI-MtuI、PI-MtuHIP、PI-MtuHIIP、PI-PfuI、PI-PfuII、PI-PkoI、PI-PkoII、PI-Rma43812IP、PI-SpBetaIP、PI-SceI、PI-TfuI、PI-TfuII、PI-ThyI、PI-TliI、PI-TliII、又はその任意の活性バリアント若しくは断片が含まれるが、これらに限定されない。
【0116】
いくつかの態様において、メガヌクレアーゼは、12~40塩基対の二本鎖DNA配列を認識する。いくつかの態様において、メガヌクレアーゼは、ゲノムにおける1つの完全に一致する標的配列を認識する。いくつかの態様において、メガヌクレアーゼは、ホーミングヌクレアーゼである。いくつかの態様において、ホーミングヌクレアーゼは、「LAGLIDADG」ファミリーのホーミングヌクレアーゼである。いくつかの態様において、「LAGLIDADG」ファミリーのホーミングヌクレアーゼは、I-SceI、I-CreI、I-Dmol、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0117】
II.A.3 TALEN
いくつかの態様において、本開示で使用することができる遺伝子編集ツールは、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)などのヌクレアーゼ剤を含む。TALエフェクターヌクレアーゼは、原核生物又は真核生物のゲノムにおける特定の標的配列で二本鎖切断を行うために使用できる配列特異的ヌクレアーゼのクラスである。TALエフェクターヌクレアーゼは、天然の若しくは操作された転写活性化因子様(TAL)エフェクター又はその機能的部分を、例えば、FokIなどのエンドヌクレアーゼの触媒ドメインに融合することによって生成される。
【0118】
固有のモジュラーTALエフェクターDNA結合ドメインにより、任意の所与のDNA認識特異性を有するタンパク質の設計が可能になる。したがって、TALエフェクターヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、特異的なDNA標的部位を認識するように操作することができ、したがって、所望の標的配列で二本鎖切断を行うために使用することができる。WO2010/079430、Morbitzer et al.,(2010)PNAS 10.1073/pnas.1013133107、Scholze & Boch(2010)Virulence 1:428-432、Christian et al.,Genetics(2010)186:757-761、Li et al.,(2010)Nuc.Acids Res.(2010)doi:10.1093/nar/gkq704、及びMiller et al.,(2011)Nature Biotechnology 29:143-148を参照されたい(それらは全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0119】
好適なTALヌクレアーゼの非限定的な例、及び好適なTALヌクレアーゼを調製するための方法は、例えば、米国特許出願第2011/0239315A1号、同第2011/0269234A1号、同第2011/0145940A1号、同第2003/0232410A1号、同第2005/0208489A1号、同第2005/0026157A1号、同第2005/0064474A1号、同第2006/0188987A1号、及び同第2006/0063231A1号に開示されている(それらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0120】
様々な態様において、例えば、目的のゲノム遺伝子座における標的核酸配列内又はその近くで切断するTALエフェクターヌクレアーゼが操作され、標的核酸配列が、標的化ベクターによって改変される配列又はその近くにある。本明細書に提供される様々な方法及び組成物とともに使用するのに好適なTALヌクレアーゼには、本明細書に記載される標的化ベクターによって改変される標的核酸配列内又はその近くで結合するように特異的に設計されるTALヌクレアーゼが含まれる。
【0121】
II.A.4 ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)
いくつかの態様において、本開示で使用することができる遺伝子編集ツールは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)システムなどのヌクレアーゼ剤を含む。ジンクフィンガーベースのシステムは、ジンクフィンガーDNA結合ドメイン及び酵素ドメインの2つのタンパク質ドメインを含む融合タンパク質を含む。「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」、「ジンクフィンガータンパク質」、又は「ZFP」とは、1つ以上のジンクフィンガーを介して配列特異的な様式でDNAに結合する、タンパク質又はより大きなタンパク質内のドメインであり、これは、亜鉛イオンの配位によって構造が安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である。ジンクフィンガードメインは、標的DNA配列に結合することによって、酵素ドメインの活性を配列の近傍に向け、したがって、標的配列の近傍の内因性標的遺伝子の改変を誘導する。ジンクフィンガードメインは、実質的に任意の所望の配列に結合するように操作されることができる。したがって、切断又は組換えが所望される標的DNA配列を含む標的遺伝子座を特定した後、1つ以上のジンクフィンガー結合ドメインを、標的遺伝子座内の1つ以上の標的DNA配列に結合するように操作することができる。細胞におけるジンクフィンガー結合ドメイン及び酵素ドメインを含む融合タンパク質の発現は、標的遺伝子座における改変に影響を及ぼす。
【0122】
いくつかの態様において、ジンクフィンガー結合ドメインは、1つ以上のジンクフィンガーを含む。例えば、Miller et al.,(1985)EMBO J.4:1609-1614、Rhodes(1993)Scientific American February:56-65、米国特許第6,453,242号を参照されたい(それらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。典型的には、単一のジンクフィンガードメインは、約30アミノ酸長である。個々のジンクフィンガーは、3ヌクレオチド(すなわち、トリプレット)配列(又は、隣接するジンクフィンガーの4ヌクレオチド結合部位と1ヌクレオチド重複し得る4ヌクレオチド配列)に結合する。したがって、ジンクフィンガー結合ドメインが(例えば、標的配列に)結合するように操作される配列の長さは、操作されたジンクフィンガー結合ドメインにおけるジンクフィンガーの数を決定するであろう。例えば、フィンガーモチーフが重複するサブ部位に結合しないZFPの場合、6ヌクレオチド標的配列は、2つのフィンガー結合ドメインによって結合され、9ヌクレオチド標的配列は、3つのフィンガー結合ドメインによって結合されるなどである。標的部位における個々のジンクフィンガー(すなわち、サブ部位)の結合部位は、連続している必要はないが、マルチフィンガー結合ドメインにおけるジンクフィンガー(すなわち、フィンガー間リンカー)間のアミノ酸配列の長さ及び性質に応じて、1つ又はいくつかのヌクレオチドによって分離され得る。いくつかの態様において、個々のZFNのDNA結合ドメインは、3~6個の個々のジンクフィンガーリピートを含み、各々9~18塩基対を認識することができる。
【0123】
ジンクフィンガー結合ドメインは、選択される配列に結合するように操作され得る。例えば、Beerli et al.,(2002)Nature Biotechnol.20:135-141、Pabo et al.,(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313-340、Isalan et al.,(2001)Nature Biotechnol.19:656-660、Segal et al.,(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632-637、Choo et al.,(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411-416;2002-2003 Catalogue, New England Biolabs, Beverly, Mass.、and Belfort et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3379-3388を参照されたい(それらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比較して、新規の結合特異性を有することができる。操作方法としては、限定されないが、合理的な設計及び様々なタイプの選択が挙げられる。
【0124】
ジンクフィンガードメインによる結合のための標的DNA配列の選択は、例えば、米国特許第6,453,242号に開示されている方法に従って達成することができる。ヌクレオチド配列の簡単な目視検査が、標的DNA配列の選択にも使用され得ることは、当業者には明らかであろう。したがって、標的DNA配列選択のための任意の手段は、本明細書に記載される方法において使用され得る。標的部位は、一般に、少なくとも9ヌクレオチド長を有し、したがって、少なくとも3つのジンクフィンガーを含むジンクフィンガー結合ドメインによって結合される。しかしながら、例えば、4つのフィンガー結合ドメインの12ヌクレオチド標的部位への結合、5つのフィンガー結合ドメインの15ヌクレオチド標的部位への結合、又は6つのフィンガー結合ドメインの18ヌクレオチド標的部位への結合もまた可能である。明らかなように、より長い標的部位へのより大きな結合ドメイン(例えば、7フィンガー、8フィンガー、9フィンガーなど)の結合も可能である。
【0125】
ジンクフィンガー融合タンパク質の酵素ドメイン部分は、任意のエンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼから得ることができる。酵素ドメインを誘導することができる例示的なエンドヌクレアーゼとしては、制限エンドヌクレアーゼ及びホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、2002-2003 Catalogue,New England Biolabs,Beverly,Mass.、及びBelfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3379-3388を参照されたい。DNAを切断する追加の酵素が既知である(例えば、51ヌクレアーゼ、マングビーンヌクレアーゼ、膵臓DNAaseI、小球菌ヌクレアーゼ、酵母HOエンドヌクレアーゼ、Linn et al.(eds.)Nucleases,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1993を参照)。これらの酵素(又はそれらの機能的断片)のうちの1つ以上を、切断ドメイン及び切断ハーフドメインの供給源として使用することができる。
【0126】
本明細書に記載のZFPの酵素ドメインとして使用するのに好適な例示的な制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種に存在し、(認識部位で)DNAに配列特異的に結合し、結合部位又はその近くでDNAを切断することができる。ある特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から除去された部位でDNAを切断し、分離可能な結合及び切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素FokIは、一方の鎖上のその認識部位から9ヌクレオチド、他方の鎖上のその認識部位から13ヌクレオチドで、DNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号、同第5,436,150号、及び同第5,487,994号、並びにLi et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4275-4279、Li et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2764-2768、Kim et al.,(1994a)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:883-887、Kim et al.,(1994b)J.Biol.Chem.269:31,978-31,982を参照されたい(それらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0127】
II.A.5 干渉RNA(RNAi)
いくつかの態様において、細胞におけるVHLの発現を減少させるために使用され得る遺伝子編集ツールは、RNA干渉分子(「RNAi」)を含む。本明細書で使用される場合、RNAiは、内因性遺伝子サイレンシング経路(例えば、Dicer及びRNA誘導サイレンシング複合体(RISC))を介した標的mRNAの分解による内因性標的遺伝子産物の発現の減少を媒介するRNAポリヌクレオチドである。RNAi剤の非限定的な例としては、マイクロRNA(本明細書では「miRNA」とも称される)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、RNAアプタマー、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0128】
いくつかの態様において、本開示に有用な遺伝子編集ツールは、1つ以上のmiRNAを含む。「miRNA」は、約21~25ヌクレオチド長の天然に存在する小さな非コードRNA分子を指す。いくつかの態様において、本開示に有用なmiRNAは、コレステロール合成経路における遺伝子に少なくとも部分的に相補的である(例えば、HMGCR及び/又はSREBF2 mRNA分子)。miRNAは、翻訳抑制、mRNAの切断、及び/又は脱アデニル化を介して、内因性標的遺伝子産物(すなわち、HMGCR及び/又はSREBF2タンパク質)の発現を下方制御(例えば、低下)することができる。
【0129】
いくつかの態様において、本開示で使用することができる遺伝子編集ツールは、1つ以上のshRNAを含む。「shRNA」(又は「ショートアピンRNA」分子)は、ヘアピンループを形成する一端に二本鎖領域及びループ領域を含むRNA配列を指し、これを使用して、遺伝子発現を低減及び/又はサイレンシングすることができる。二本鎖領域は、典型的には、ステムの両側の約19ヌクレオチド~約29ヌクレオチド長であり、ループ領域は、典型的には、約3~約10ヌクレオチド長である(3’末端又は5’末端一本鎖オーバーハングヌクレオチドは任意選択的である)。shRNAは、細胞内に導入されるプラスミド又は非複製組換えウイルスベクターにクローニングされ、shRNAコード配列のゲノムへの組み込みをもたらすことができる。したがって、shRNAは、内因性標的遺伝子の翻訳及び発現の安定かつ一貫した抑制を提供することができる。
【0130】
いくつかの態様において、本開示に有用な遺伝子編集ツールは、1つ以上のsiRNAを含む。「siRNA」は、典型的には、約21~23ヌクレオチド長の二本鎖RNA分子を指す。siRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれるマルチタンパク質複合体と結合し、その間に「パッセンジャー」センス鎖が酵素的に切断される。次いで、配列相同性のために、活性化されたRISCに含まれるアンチセンス「ガイド」鎖が、対応するmRNAにRISCをガイドし、同じヌクレアーゼが標的mRNAを切断し、特異的な遺伝子サイレンシングをもたらす。特定の態様において、siRNAは、約18、約19、約20、約21、約22、約23、又は約24ヌクレオチド長であり、その3’末端に2塩基のオーバーハングを有する。siRNA及びshRNAは、Fire et al.,Nature 391:19,1998、並びに米国特許第7,732,417号、同第8,202,846号、及び同第8,383,599号に更に記載されている(それらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0131】
II.A.6 アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)
いくつかの態様において、細胞におけるHMGCR及び/若しくはSREBF2遺伝子、並びに/又はHMGCR及び/若しくはSREBF2タンパク質の発現を減少させるために使用することができる遺伝子編集ツールは、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。本明細書で使用される場合、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」又は「ASO」とは、標的核酸(特に、標的核酸上の連続した配列)にハイブリダイズすることによって、標的遺伝子(すなわち、HMGCR及び/又はSREBF2)の発現を調節することができるオリゴヌクレオチドを指す。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、本質的に二本鎖ではなく、したがって、siRNA又はshRNAではない。
【0132】
いくつかの態様において、本開示に有用なASOは、一本鎖である。本開示の一本鎖オリゴヌクレオチドは、イントラ又はインター自己相補性の程度がオリゴヌクレオチドの全長にわたって約50%未満である限り、ヘアピン又は分子間二重鎖構造(同じオリゴヌクレオチドの2つの分子間の二重鎖)を形成することができることが理解される。いくつかの態様において、本開示に有用なASOは、2’糖修飾ヌクレオシドなどの1つ以上の修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドを含むことができる。ASOに対して行われ得る追加の改変(例えば、HMGCR及び/又はSREBF2の遺伝子発現を阻害又は低減するために使用され得るものなど)は、例えば、米国公開第2019/0275148A1号に提供されている。
【0133】
いくつかの態様において、ASOは、HMGCR及び/又はSREBF2転写物(例えば、mRNA)のヌクレアーゼ媒介分解を介して、HMGCR及び/又はSREBF2タンパク質の発現を減少させることができ、ASOは、ヌクレアーゼ(例えば、RNase H1などのRNase H)を動員することができる。RNase Hは、RNA/DNA二重鎖のRNA鎖を加水分解する遍在的な酵素である。したがって、ある特定の態様において、一旦標的配列(例えば、HMGCR及び/又はSREBF2 mRNA)に結合すると、ASOは、HMGCR及び/又はSREBF2 mRNAの分解を誘導し、それによって、HMGCR及び/又はSREBF2タンパク質の発現を減少させることができる。
【0134】
本明細書に開示されるように、遺伝子編集ツールの上記の例は、限定することを意図するものではなく、当該技術分野で利用可能な任意の遺伝子編集ツールを使用して、HMGCR及び/若しくはSREBF2遺伝子、並びに/又はHMGCR及び/若しくはSREBF2タンパク質の発現を低減又は阻害することができる。
【0135】
IIB.タンパク質阻害剤
1つ以上のタンパク質阻害剤(例えば、小分子HMGCR及び/又はSREBF2阻害剤)は、本開示の産生細胞から産生される細胞外小胞の数を増加させる方法及び細胞外小胞を産生する方法において使用され得る。
【0136】
いくつかの態様において、本開示で使用され得るタンパク質阻害剤ツールは、タンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)を含む。PROTACは、標的タンパク質に結合するリガンド、E3ユビキチンリガーゼに結合するリガンド、及びこれらの2つのリガンドをコンジュゲートするためのリンカーの3つの化学要素を有するヘテロ二官能性小分子である。PROTACは、ユビキチン-プロテアソームシステムを介して標的タンパク質を分解する化学的ノックダウン戦略である。従来の阻害剤の競合及び占有駆動型プロセスとは異なり、PROTACは、その作用様式において触媒作用を有し、低曝露で標的タンパク質分解を促進することができる。更に、従来の低分子阻害剤は、通常、標的の酵素活性を阻害するが、PROTACは、タンパク質の酵素活性だけでなく、タンパク質全体を分解することによって非酵素活性にも影響する。
【0137】
いくつかの態様において、PROTACは、Luo et al.,Acta Pharmaceutica Sinica B,2021;11(5):1300-1314(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、E3ユビキチンリガーゼリガンド(例えば、VHL、CRBN、cIAP、及びMDM2)に連結されたスタチン(例えば、HMGCRリガンド)を含む。いくつかの態様において、PROTACは、Li et al.,J.Med.Chem.2020,63,9,4908-4928(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、HMCGRを分解する。
【0138】
いくつかの態様において、タンパク質阻害剤は、カリプラジンを含む。
【0139】
III.細胞外小胞(例えば、エクソソーム)
本明細書において、EV(例えば、エクソソーム)を産生する方法が開示される。本方法は、EV(例えば、エクソソーム)の産生収率を改善する。
【0140】
いくつかの態様において、産生細胞によって産生されるEV(例えば、本明細書に記載のEV産生を増加させる方法及びEVを産生する方法)は、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能が低下していない産生細胞によって産生されるEVと比較して、EV当たりのコレステロール含有量が低下している。いくつかの態様において、EV当たりのコレステロール含有量は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、又は約80%低下する。いくつかの態様において、EV当たりのコレステロール含有量は、約1%~約80%、約10%~約80%、約10%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約30%、約10%~約20%、約20%~約80%、約20%~約70%、約20%~約60%、約20%~約50%、約20%~約40%、約20%~約30%、約30%~約80%、約30%~約70%、約30%~約60%、約30%~約50%、約30%~約40%、約40%~約80%、約40%~約70%、約40%~約60%、又は約40%~約50%低下する。
【0141】
本明細書に記載されるEV(例えば、エクソソーム)は、約20~300nmの間の直径を有する細胞外小胞である。いくつかの態様において、本明細書に記載の産生細胞から得られるEVのサイズ(例えば、コレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を有する)は、コレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を有しない産生細胞から産生されるEVと比較して、平均サイズに差がない。ある特定の態様において、本開示のエクソソームは、約20~290nm、20~280nm、20~270nm、20~260nm、20~250nm、20~240nm、20~230nm、20~220nm、20~210nm、20~200nm、20~190nm、20~180nm、20~170nm、20~160nm、20~150nm、20~140nm、20~130nm、20~120nm、20~110nm、20~100nm、20~90nm、20~80nm、20~70nm、20~60nm、20~50nm、20~40nm、20~30nm、30~300nm、30~290nm、30~280nm、30~270nm、30~260nm、30~250nm、30~240nm、30~230nm、30~220nm、30~210nm、30~200nm、30~190nm、30~180nm、30~170nm、30~160nm、30~150nm、30~140nm、30~130nm、30~120nm、30~110nm、30~100nm、30~90nm、30~80nm、30~70nm、30~60nm、30~50nm、30~40nm、40~300nm、40~290nm、40~280nm、40~270nm、40~260nm、40~250nm、40~240nm、40~230nm、40~220nm、40~210nm、40~200nm、40~190nm、40~180nm、40~170nm、40~160nm、40~150nm、40~140nm、40~130nm、40~120nm、40~110nm、40~100nm、40~90nm、40~80nm、40~70nm、40~60nm、40~50nm、50~300nm、50~290nm、50~280nm、50~270nm、50~260nm、50~250nm、50~240nm、50~230nm、50~220nm、50~210nm、50~200nm、50~190nm、50~180nm、50~170nm、50~160nm、50~150nm、50~140nm、50~130nm、50~120nm、50~110nm、50~100nm、50~90nm、50~80nm、50~70nm、50~60nm、60~300nm、60~290nm、60~280nm、60~270nm、60~260nm、60~250nm、60~240nm、60~230nm、60~220nm、60~210nm、60~200nm、60~190nm、60~180nm、60~170nm、60~160nm、60~150nm、60~140nm、60~130nm、60~120nm、60~110nm、60~100nm、60~90nm、60~80nm、60~70nm、70~300nm、70~290nm、70~280nm、70~270nm、70~260nm、70~250nm、70~240nm、70~230nm、70~220nm、70~210nm、70~200nm、70~190nm、70~180nm、70~170nm、70~160nm、70~150nm、70~140nm、70~130nm、70~120nm、70~110nm、70~100nm、70~90nm、70~80nm、80~300nm、80~290nm、80~280nm、80~270nm、80~260nm、80~250nm、80~240nm、80~230nm、80~220nm、80~210nm、80~200nm、80~190nm、80~180nm、80~170nm、80~160nm、80~150nm、80~140nm、80~130nm、80~120nm、80~110nm、80~100nm、80~90nm、90~300nm、90~290nm、90~280nm、90~270nm、90~260nm、90~250nm、90~240nm、90~230nm、90~220nm、90~210nm、90~200nm、90~190nm、90~180nm、90~170nm、90~160nm、90~150nm、90~140nm、90~130nm、90~120nm、90~110nm、90~100nm、100~300nm、110~290nm、120~280nm、130~270nm、140~260nm、150~250nm、160~240nm、170~230nm、180~220nm、又は190~210nmの直径を有する。本明細書に記載のEV(例えば、エクソソーム)のサイズは、当該技術分野で既知の方法に従って測定され得る。
【0142】
いくつかの態様において、本開示のEV(例えば、エクソソーム)は、内部(内腔)表面及び外部表面を含む二重脂質膜(「EV(例えば、エクソソーム)、膜」)を含む。ある特定の態様において、内部(内腔)表面は、EV(例えば、エクソソーム)の内部コア(すなわち、内腔)に面する。ある特定の態様において、外部表面は、産生細胞又は標的細胞のエンドソーム、多小胞体、又は膜/細胞質と接触し得る。
【0143】
いくつかの態様において、EV、例えば、エクソソームは、脂質及び脂肪酸を含む。いくつかの態様において、EV、例えば、エクソソーム、膜は、リン脂質、糖脂質、脂肪酸、スフィンゴ脂質、ホスホグリセリド、ステロール、コレステロール、及びホスファチジルセリンを含む。
【0144】
いくつかの態様において、EV、例えば、エクソソーム、膜は、内側リーフレット及び外側リーフレットを含む。内側及び外側リーフレットの組成物は、当技術分野で既知の経二重層分布アッセイ(transbilayer distribution assay)によって決定することができ、例えば、Kuypers et al.Biohim Biophys Acta 1985 819:170を参照されたい。いくつかの態様において、外側リーフレットの組成物は、およそ70~90%のコリンリン脂質、およそ0~15%の酸性リン脂質、及びおよそ5~30%のホスファチジルエタノールアミンである。いくつかの態様において、内側リーフレットの組成物は、およそ15~40%のコリンリン脂質、およそ10~50%の酸性リン脂質、及びおよそ30~60%のホスファチジルエタノールアミンである。いくつかの態様において、EV(例えば、エクソソーム)は、約40%~約60%のコレステロールを含む。いくつかの態様において、産生細胞によって産生されるEVは、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能が低下していない産生細胞によって産生されるEVと比較して、EV当たりのコレステロール含有量が低下している。
【0145】
いくつかの態様において、EV(例えば、エクソソーム)膜は、グリカンのような1つ以上の多糖類を更に含む。
【0146】
いくつかの態様において、本開示のEV(例えば、エクソソーム)は、IL-12部分を含み、IL-12部分が、EVの外部表面上又はEVの内腔表面上のいずれかで、足場部分を介してEVに連結される。
【0147】
いくつかの態様において、本開示のEV(例えば、エクソソーム)は、EVの内腔にIL-12部分を含む。他の態様において、EVは、EVの外部表面にIL-12部分を含み、任意選択的に、第1の足場部分(例えば、足場X)を介して連結される。他の態様において、EVは、任意選択的に、足場部分(例えば、足場X又は足場Y)を介して連結される、EVの内腔表面上のIL-12部分を含む。
【0148】
III.A.足場部分
1つ以上の足場部分を使用して、IL-12部分を本開示のEVに固定することができる。いくつかの態様において、IL-12部分は、足場部分に連結される。いくつかの態様において、EVは、2つ以上の足場部分を含む。いくつかの態様において、IL-12は、第1の足場部分に連結され、第2の部分(例えば、第2のポリペプチド又はポリヌクレオチド)は、第2の足場部分に連結される。いくつかの態様において、第1の足場部分及び第2の足場部分は、同じタイプの足場部分であり、例えば、第1及び第2の足場部分は、両方とも足場Xタンパク質である。いくつかの態様において、第1の足場部分及び第2の足場部分は、異なる種類の足場部分であり、例えば、第1の足場部分は、足場Yタンパク質であり、第2の足場部分は、足場Xタンパク質である。いくつかの態様において、第1の足場部分は、本明細書に開示される足場Yである。いくつかの態様において、第1の足場部分は、本明細書に開示される足場Xである。いくつかの態様において、第2の足場部分は、本明細書に開示される足場Yである。いくつかの態様において、第2の足場部分は、本明細書に開示される足場Xである。
【0149】
いくつかの態様において、EVは、例えば、nIL-12部分をEV(例えば、エクソソーム)に(例えば、内腔表面上又は外部表面上のいずれかで)固定することができる1つ以上の足場部分を含む。ある特定の態様において、足場部分は、ポリペプチド(「足場タンパク質」)である。ある特定の態様において、足場タンパク質は、エクソソームタンパク質又はその断片を含む。他の態様において、足場部分は、非ポリペプチド部分である。いくつかの態様において、足場タンパク質には、エクソソーム膜上に濃縮されている、膜貫通タンパク質、内在性タンパク質、及び表在性タンパク質などの様々な膜タンパク質が含まれる。それらは、様々なCDタンパク質、トランスポーター、インテグリン、レクチン、及びカドヘリンを含み得る。ある特定の態様において、足場部分(例えば、足場タンパク質)は、足場Xを含む。他の態様において、足場部分(例えば、エクソソームタンパク質)は、足場Yを含む。更なる態様において、足場部分(例えば、エクソソームタンパク質)は、足場X及び足場Yの両方を含む。
【0150】
いくつかの態様において、IL-12部分は、EVの外部表面上の足場部分(例えば、足場X)に連結される。いくつかの態様において、IL-12部分は、EVの内腔表面上の足場部分(例えば、足場X)に連結される。いくつかの態様において、IL-12部分は、EVの内腔表面上の足場部分(例えば、足場Y)に連結される。
【0151】
III.A.1.足場X操作されたEV(例えば、エクソソーム)
いくつかの態様において、本開示のEV(例えば、エクソソーム)は、その組成物に改変された膜を含む。例えば、それらの膜組成物は、タンパク質、脂質、又は膜のグリカン含有量を変化させることによって改変することができる。
【0152】
いくつかの態様において、表面操作されたEV(例えば、エクソソーム)は、PEG誘導融合及び/又は超音波融合のような化学的及び/又は物理的方法により生成される。他の態様において、表面操作されたEV(例えば、エクソソーム)は、遺伝子操作によって生成される。遺伝子改変産生細胞又は遺伝子改変細胞の子孫から産生されるEV(例えば、エクソソーム)は、改変された膜組成物を含み得る。いくつかの態様において、表面操作されたEV(例えば、エクソソーム)は、足場部分(例えば、エクソソームタンパク質、例えば、足場X)をより高密度若しくはより低密度(例えば、より高い数)で有するか、又は足場部分のバリアント若しくは断片を含む。
【0153】
例えば、表面(例えば、足場X)操作されたEVは、足場部分(例えば、エクソソームタンパク質、例えば、足場X)をコードする外因性配列、又はそのバリアント若しくは断片で形質転換された細胞(例えば、HEK293細胞)から産生され得る。外因性配列から発現された足場部分を含むEVは、改変された膜組成物を含み得る。
【0154】
足場部分の様々な修飾又は断片を、本開示の態様に使用することができる。例えば、結合剤に対する増強された親和性を有するように改変された足場部分は、結合剤を使用して精製され得る表面操作されたEVを生成するために使用することができる。EV及び/又は膜をより効果的に標的化するように改変された足場部分を使用することができる。エクソソーム膜への特異的かつ効果的な標的化に必要とされる最小限の断片を含むように改変された足場部分も使用することができる。
【0155】
足場部分は、融合分子、例えば、足場XのIL-12部分への融合分子として発現されるように操作することができる。例えば、融合分子は、IL-12部分に連結された本明細書に開示される足場部分(例えば、足場X、例えば、PTGFRN、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、SLC3A2、ATPトランスポーター、又はその断片若しくはバリアント)を含み得る。
【0156】
いくつかの態様において、本明細書に記載の表面(例えば、足場X)操作されたEVは、当該技術分野で既知のEVと比較して、優れた特徴を示す。例えば、表面(例えば、足場X)操作は、天然に存在するEV又は従来のエクソソームタンパク質を使用して産生されるEVよりも、それらの表面により高度に濃縮された改変タンパク質を含む。更に、本開示の表面(例えば、足場X)操作されたEVは、天然に存在するEV又は従来のエクソソームタンパク質を使用して産生されるEVと比較して、より大きな、より特異的な、又はより制御された生物学的活性を有することができる。
【0157】
いくつかの態様において、足場Xは、プロスタグランジンF2受容体負の調節因子(PTGFRNポリペプチド)を含む。PTGFRNタンパク質は、CD9パートナー1(CD9P-1)、Glu-Trp-Ile EWIモチーフ含有タンパク質F(EWI-F)、プロスタグランジンF2-α受容体調節タンパク質、プロスタグランジンF2-α受容体関連タンパク質、又はCD315とも称され得る。ヒトPTGFRNタンパク質の全長アミノ酸配列(Uniprot受託番号Q9P2B2)は、配列番号1として表3に示されている。PTGFRNポリペプチドは、シグナルペプチド(配列番号1のアミノ酸1~25)、細胞外ドメイン(配列番号1のアミノ酸26~832)、膜貫通ドメイン(配列番号1のアミノ酸833~853)、及び細胞質ドメイン(配列番号1のアミノ酸854~879)を含む。成熟PTGFRNポリペプチドは、シグナルペプチドを伴わない配列番号1(すなわち、配列番号1のアミノ酸26~879)からなる。いくつかの態様において、本開示に有用なPTGFRNポリペプチド断片は、PTGFRNポリペプチドの膜貫通ドメインを含む。他の態様において、本開示に有用なPTGFRNポリペプチド断片は、PTGFRNポリペプチドの膜貫通ドメインと、(i)膜貫通ドメインのN末端に、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも110個、少なくとも120個、少なくとも130個、少なくとも140個、少なくとも150個のアミノ酸、(ii)膜貫通ドメインのC末端に、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、若しくは少なくとも25個のアミノ酸、又は(i)及び(ii)の両方と、を含む。
【0158】
いくつかの態様において、PTGFRNポリペプチドの断片は、IgVなどの1つ以上の機能ドメイン又は構造ドメインを欠く。
【0159】
いくつかの実施形態において、足場タンパク質は、配列番号26(MARKS)、配列番号879(MARCKSL1)、又は配列番号1(BASP1)と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。他の態様において、足場Xは、配列番号1と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一であるアミノ酸配列を含む。他の態様において、足場Xは、配列番号33と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一であるアミノ酸配列を含む。他の態様において、足場Xは、1個のアミノ酸変異、2個のアミノ酸変異、3個のアミノ酸変異、4個のアミノ酸変異、5個のアミノ酸変異、6個のアミノ酸変異、又は7個のアミノ酸変異を除いて、配列番号33のアミノ酸配列を含む。変異は、置換、挿入、欠失、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。いくつかの態様において、足場Xは、配列番号33のアミノ酸配列と、配列番号33のN末端及び/又はC末端に1個のアミノ酸、2個のアミノ酸、3個のアミノ酸、4個のアミノ酸、5個のアミノ酸、6個のアミノ酸、7個のアミノ酸、8個のアミノ酸、9個のアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、12個のアミノ酸、13個のアミノ酸、14個のアミノ酸、15個のアミノ酸、16個のアミノ酸、17個のアミノ酸、18個のアミノ酸、19個のアミノ酸、又は20個のアミノ酸、又はそれ以上長いアミノ酸と、を含む。
【表3】
【0160】
他の足場Xタンパク質の非限定的な例は、2019年2月5日に発行された米国特許第US10195290B1号(参照によりその全体が組み込まれる)に見出すことができる。
【0161】
いくつかの態様において、配列は、天然タンパク質のN末端から、少なくとも5、10、50、100、200、300、400、500、600、700、又は800個のアミノ酸を欠く足場部分の断片をコードする。いくつかの態様において、配列は、天然タンパク質のC末端から、少なくとも5、10、50、100、200、300、400、500、600、700、又は800個のアミノ酸を欠く足場部分の断片をコードする。いくつかの態様において、配列は、天然タンパク質のN末端及びC末端の両方から、少なくとも5、10、50、100、200、300、400、500、600、700、又は800個のアミノ酸を欠く足場部分の断片をコードする。いくつかの態様において、配列は、天然タンパク質の1つ以上の機能ドメイン又は構造ドメインを欠く足場部分の断片をコードする。
【0162】
いくつかの態様において、足場部分(例えば、足場X、例えば、PTGFRNタンパク質)は、1つ以上の異種タンパク質に連結される。1つ以上の異種タンパク質は、足場部分のN末端に連結され得る。1つ以上の異種タンパク質は、足場部分のC末端に連結され得る。いくつかの態様において、1つ以上の異種タンパク質は、1つ以上の異種タンパク質は、足場部分のN末端及びC末端の両方に連結され得る。いくつかの態様において、異種タンパク質は、哺乳動物タンパク質である。いくつかの態様において、異種タンパク質は、ヒトタンパク質である。
【0163】
いくつかの態様において、足場Xを使用して、任意の部分(例えば、IL-12部分)を、EV(例えば、エクソソーム)の内腔表面及び外部表面に同時に連結することができる。例えば、PTGFRNポリペプチドを使用して、EV(例えば、エクソソーム)の外部表面に加えて、内腔内(例えば、内腔表面上)のIL-12部分を連結することができる。いくつかの態様において、足場Xは、EVの内腔表面上及び/又はEVの外部表面上にIL-12を固定することができる足場タンパク質である。
【0164】
III.A.2.足場Y操作されたEV(例えば、エクソソーム)
いくつかの態様において、本開示のEV(例えば、エクソソーム)は、天然に存在するEVのものとは異なる内部空間(すなわち、内腔)を含む。例えば、EV(例えば、エクソソーム)の内腔表面における組成が、天然に存在するエクソソームのタンパク質、脂質、又はグリカン含有量とは異なるように、EVを変化させることができる。
【0165】
いくつかの態様において、操作されたEV(例えば、エクソソーム)は、足場部分(例えば、エクソソームタンパク質、例えば、足場Y)又はEV(例えば、エクソソーム)の内腔表面の組成若しくは含有量を変化させる足場部分の改変若しくは断片をコードする外因性配列で形質転換された細胞から産生され得る。EV(例えば、エクソソーム)の内腔表面に発現され得るエクソソームタンパク質の様々な改変又は断片は、本開示の態様に使用することができる。
【0166】
いくつかの態様において、EV(例えば、エクソソーム)の内腔表面を変化させることができるエクソソームタンパク質には、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(MARCKS)タンパク質、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質様1(MARCKSL1)タンパク質、脳酸可溶性タンパク質1(BASP1)タンパク質、又はそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0167】
いくつかの態様において、足場Yは、MARCKSタンパク質(Uniprot受託番号P29966)を含む。MARCKSタンパク質は、プロテインキナーゼC基質、80kDaタンパク質、軽鎖としても知られている。全長ヒトMARCKSタンパク質は、332アミノ酸長であり、アミノ酸残基152~176にカルモジュリン結合ドメインを含む。いくつかの態様において、足場Yは、MARCKSL1タンパク質(Uniprot受託番号P49006)を含む。MARCKSL1タンパク質は、MARCKS様タンパク質1、及びマクロファージミリストイル化アラニンリッチCキナーゼ基質としても知られている。全長ヒトMARCKSL1タンパク質は、195アミノ酸長である。MARCKSL1タンパク質は、アミノ酸残基87~110における脂質結合及びカルモジュリン結合に関与するエフェクタードメインを有する。いくつかの態様において、足場Yは、BASP1タンパク質(Uniprot受託番号P80723)を含む。BASP1タンパク質は、22kDa神経組織リッチ酸性タンパク質又は神経軸索膜タンパク質NAP-22としても知られている。全長ヒトBASP1タンパク質配列(異性体1)は、227アミノ酸長である。選択的スプライシングによって産生される異性体は、配列番号49(異性体1)からアミノ酸88~141を欠いている。表4は、本明細書に開示される例示的な足場Y(すなわち、MARCKS、MARCKSL1、及びBASP1タンパク質)の全長配列を提供する。
【表4】
【0168】
成熟BASP1タンパク質配列は、配列番号49からの最初のMetを欠いており、したがって、配列番号49のアミノ酸2~227を含む。
【0169】
他の態様において、本開示に有用な足場Yは、配列番号49のアミノ酸2~227と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一のアミノ酸配列を含む。他の態様において、本開示に有用な足場Yは、1個のアミノ酸変異、2個のアミノ酸変異、3個のアミノ酸変異、4個のアミノ酸変異、5個のアミノ酸変異、6個のアミノ酸変異、又は7個のアミノ酸変異を除いて、配列番号49のアミノ酸配列を含む。変異は、置換、挿入、欠失、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0170】
いくつかの態様において、配列番号49のアミノ酸残基1にMetがない配列番号49のタンパク質配列は、本開示の足場Y(例えば、IL-12部分に連結された足場部分)であるのに十分である。いくつかの態様において、足場Yは、配列番号49のアミノ酸残基1のMetがない配列番号49と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0171】
本明細書に記載の足場Y操作されたEV(例えば、エクソソーム)は、配列番号49のアミノ酸残基1のMetがない配列番号49に示される配列で形質転換された細胞から産生され得る。
【0172】
いくつかの態様において、本開示に有用な足場Yタンパク質は、「N末端ドメイン」(ND)及び「エフェクタードメイン」(ED)を含み、ND及び/又はEDは、EV(例えば、エクソソーム)の内腔表面と会合している。いくつかの態様において、本開示に有用な足場Yタンパク質は、細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞外ドメインを含み、細胞内ドメインは、「N末端ドメイン」(ND)及び「エフェクタードメイン」(ED)を含み、ND及び/又はEDは、EV(例えば、エクソソーム)の内腔表面と会合している。本明細書で使用される場合、「と会合している」という用語は、膜成分への共有結合を伴わない、足場タンパク質とEV(例えば、エクソソーム)の内腔表面との間の相互作用を指す。例えば、本開示に有用な足場は、例えば、脂質アンカー(例えば、ミリスチン酸)、及び/又は膜リン脂質の負に帯電した頭部と静電気的に相互作用する多塩基性ドメインを介して、EVの内腔表面と会合し得る。他の態様において、足場タンパク質Yは、N末端ドメイン(ND)及びエフェクタードメイン(ED)を含み、NDは、EVの内腔表面と会合し、EDは、イオン相互作用によってEVの内腔表面と会合し、EDは、配列において少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、又は少なくとも7個の連続したリジン(Lys)を含む。
【0173】
他の態様において、足場タンパク質は、N末端ドメイン(ND)及びエフェクタードメイン(ED)を含み、NDは、EV(例えば、エクソソーム)の内腔表面と会合し、EDは、イオン相互作用によってEVの内腔表面と会合し、EDは、配列において少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、又は少なくとも7個の連続した塩基性アミノ酸(例えば、リジン(Lys))を含む。
【0174】
いくつかの態様において、NDは、EV、例えば、エクソソームの内腔表面と、脂質化を介して、例えば、ミリストイル化を介して会合する。いくつかの態様において、NDは、N末端にGlyを有する。いくつかの態様において、N末端Glyは、ミリストイル化されている。
【0175】
いくつかの態様において、EDは、イオン相互作用によってEV、例えば、エクソソームの内腔表面と会合する。いくつかの態様において、EDは、静電相互作用、特に、誘引性の静電相互作用によって、EV(例えば、エクソソーム)の内腔表面に会合している。
【0176】
いくつかの態様において、EDは、(i)塩基性アミノ酸(例えば、リジン)、又は(ii)ポリペプチド配列において互いに隣接する2つ以上の塩基性アミノ酸(例えば、リジン)を含む。いくつかの態様において、塩基性アミノ酸は、リジン(Lys、K)、アルギニン(Arg、R)、又はヒスチジン(His、H)である。いくつかの態様において、塩基性アミノ酸は、(Lys)nであり、式中、nは、1~10の整数である。
【0177】
他の態様において、EDは、少なくとも1つのリジンを含み、EDのN末端がNDのC末端でリジンに直接連結されている場合、NDはC末端でリジンを含み、すなわち、リジンはEDのN末端にあり、NDのC末端でリジンに融合されている。他の態様において、EDのN末端がリンカー(例えば、1つ以上のアミノ酸)によってNDのC末端に連結されている場合、EDは、少なくとも2個のリジン、少なくとも3個のリジン、少なくとも4個のリジン、少なくとも5個のリジン、少なくとも6個のリジン、又は少なくとも7個のリジンを含む。
【0178】
本開示に有用な足場Yタンパク質の非限定的な例は、国際公開第WO/2019/099942号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0179】
いくつかの態様において、本開示に有用な足場Yタンパク質は、N末端Metを含まない。いくつかの態様において、足場Yタンパク質は、足場タンパク質のN末端に脂質アンカーとして機能する脂質化アミノ酸(例えば、ミリストイル化アミノ酸)を含む。いくつかの態様において、足場タンパク質のN末端のアミノ酸残基は、Glyである。N末端Glyの存在は、N-ミリストイル化の絶対要件である。いくつかの態様において、足場タンパク質のN末端におけるアミノ酸残基は、合成である。いくつかの態様において、足場タンパク質のN末端におけるアミノ酸残基は、グリシン類似体、例えば、アリルグリシン、ブチルグリシン、又はプロパルギルグリシンである。
【0180】
他の態様において、脂質アンカーは、当該技術分野で既知の任意の脂質アンカー、例えば、パルミチン酸又はグリコシルホスファチジルイノシトールであり得る。まれな状況下では、例えば、ミリスチン酸が制限されている培養培地を使用することによって、短鎖及び不飽和を含むいくつかの他の脂肪酸が、N末端グリシンに取り付けられ得る。例えば、BKチャネルにおいて、ミリスチン酸塩は、ヒドロキシエステル結合を介して内部セリン/トレオニン又はチロシン残基に翻訳後に取り付けられることが報告されている。以下の表に、当該技術分野で既知の膜アンカーを提示する:
【表5】
【0181】
III.B.リンカー
上に記載したように、本開示の細胞外小胞(EV)(例えば、エクソソーム)は、目的の分子(例えば、ペイロード、例えば、IL-12部分)をEV(例えば、外部表面又は内腔表面上)に連結する1つ以上のリンカーを含むことができる。いくつかの態様において、ペイロード(例えば、生物学的に活性な分子)は、EVに直接的に、又は足場部分(例えば、足場X又は足場Y)を介して連結される。ある特定の態様において、ペイロード(例えば、生物学的に活性な分子)は、リンカーによって足場部分に連結される。ある特定の態様において、ペイロード(例えば、生物学的に活性な分子)は、リンカーによって第2の足場部分に連結される。
【0182】
ある特定の態様において、ペイロード(例えば、生物学的に活性な分子)は、足場Xを介してエクソソームの外部表面に連結される。更なる態様において、ペイロード(例えば、生物学的に活性な分子)は、足場X又は足場Yを介してエクソソームの内腔表面に連結される。リンカーは、当該技術分野で既知の任意の化学的部分であり得る。
【0183】
いくつかの態様において、2つ以上のリンカーは、直列に連結し得る。複数のリンカーが存在する場合、各リンカーは、同じであっても、異なっていてもよい。概して、リンカーは、柔軟さを提供する、又は立体障害を予防/改善する。リンカーは、典型的には切断されないが、ある特定の態様において、そのような切断が望ましい場合がある。したがって、いくつかの態様において、リンカーは、1つ以上のプロテアーゼ切断可能部位を含み得、それはリンカーの配列内に位置し得るか、リンカー配列のいずれかの末端でリンカーに隣接し得る。
【0184】
いくつかの態様において、リンカーはペプチドリンカーである。いくつかの態様において、ペプチドリンカーは、少なくとも約2個、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約10個、少なくとも約15個、少なくとも約20個、少なくとも約25個、少なくとも約30個、少なくとも約35個、少なくとも約40個、少なくとも約45個、少なくとも約50個、少なくとも約55個、少なくとも約60個、少なくとも約65個、少なくとも約70個、少なくとも約75個、少なくとも約80個、少なくとも約85個、少なくとも約90個、少なくとも約95個、又は少なくとも約100個のアミノ酸を含むことができる。
【0185】
いくつかの態様において、ペプチドリンカーは合成、すなわち非天然発生である。一態様において、ペプチドリンカーは、アミノ酸の第1の直鎖配列を、天然に連結されていないか又は天然では遺伝的に融合されていないアミノ酸の第2の直鎖配列に、連結又は遺伝子的に融合するアミノ酸配列を含む、ペプチド(又はポリペプチド)(例えば、天然に存在する又は非天然に存在するペプチド)を含む。例えば、一態様において、ペプチドリンカーは、天然に存在するポリペプチドの改変形態である(例えば、付加、置換、又は欠失などの変異を含む)天然に存在しないポリペプチドを含み得る。
【0186】
いくつかの態様において、リンカーは、非ポリペプチド部分である。
【0187】
リンカーは、切断を受けやすく(「切断可能なリンカー」)、それによって、生物学的に活性分子(例えば、IL-12部分)の放出を促進することができる。
【0188】
いくつかの態様において、リンカーは、「還元感受性リンカー」である。いくつかの態様において、還元感受性リンカーは、ジスルフィド結合を含有する。いくつかの態様において、リンカーは「酸に不安定なリンカー」である。いくつかの態様において、酸に不安定なリンカーは、ヒドラゾンを含有する。好適な酸に不安定なリンカーにはまた、例えば、シスアコニットリンカー、ヒドラジドリンカー、チオカルバモイルリンカー、又はこれらの任意の組み合わせも含まれる。
【0189】
いくつかの態様において、リンカーは、切断不能なリンカーを含む。
【0190】
III.C.治療剤
いくつかの態様において、本明細書に記載されるEVは、少なくとも1つの治療剤又は生物学的活性分子を更に含むことができる。いくつかの態様において、治療剤は、サイトカイン(例えば、IL-12)、小分子、増殖因子、抗原、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA、dsDNA、lncRNA、PROTAC、アジュバント、免疫調節剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0191】
いくつかの態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的遺伝子の機能を調節する。いくつかの態様において、ASOは、STAT6核酸(例えば、STAT6プレmRNA及びSTAT6 mRNAを含むSTAT6転写物)などの哺乳動物STAT6をコードする核酸分子(例えば、WO2021/030776(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている)の機能、又は哺乳動物STAT6をコードするかかる核酸分子の天然に存在するバリアントの機能を調節する。いくつかの態様において、ASOは、STAT3核酸(例えば、STAT3プレmRNA及びSTAT3 mRNAを含むSTAT3転写物)などの哺乳動物STAT3をコードする核酸分子(例えば、WO2021/030768(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている)の機能、又は哺乳動物STAT3をコードするかかる核酸分子の天然に存在するバリアントの機能を調節する。いくつかの態様において、ASOは、CEBP/b核酸(例えば、CEBP/bプレmRNA及びCEBP/b mRNAを含むCEBP/b転写物)などの哺乳動物CEBP/bをコードする核酸分子(例えば、WO2021/030780(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている)の機能、又は哺乳動物CEBP/bをコードするかかる核酸分子の天然に存在するバリアントの機能を調節する。いくつかの態様において、ASOは、NRAS核酸(例えば、NRASプレmRNA及びNRAS mRNAを含むNRAS転写物)などの哺乳動物NRASをコードする核酸分子(例えば、WO2021/030769(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている)の機能、又は哺乳動物NRASをコードするかかる核酸分子の天然に存在するバリアントの機能を調節する。いくつかの態様において、ASOは、KRAS核酸(例えば、KRASプレmRNA及びKRAS mRNAを含むKRAS転写物)などの哺乳動物KRASをコードする核酸分子(例えば、WO2021/030781(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている)の機能、又は哺乳動物KRASをコードする、かかる核酸分子の天然に存在するバリアントの機能を調節する。本開示の文脈における「ASO」という用語は、2つ以上のヌクレオチドの共有結合によって形成される分子(すなわち、オリゴヌクレオチド)を指す。
【0192】
いくつかの態様において、治療剤は、WO2019/183578に記載されているように、STINGアゴニストを含む。
【0193】
いくつかの態様において、本開示は、疾患若しくは障害を治療又は予防する方法を提供し、本方法は、それを必要とする対象に、本明細書に開示される細胞外小胞を投与することを含む。本開示はまた、本明細書に記載の細胞外小胞を使用して、それを必要とする対象における疾患又は状態を治療又は予防することを提供する。いくつかの態様において、本開示は、疾患又は状態の治療又は予防を必要とする対象においてそれを行うための、本明細書に記載の細胞外小胞を提供する。
【0194】
IV.産生細胞
本開示のEV(例えば、エクソソーム)は、インビトロで増殖した細胞又は対象の体液から産生することができる。エクソソームがインビトロ細胞培養から産生される場合、様々な産生細胞、例えば、HEK293細胞、CHO細胞、C2C12、及びMSCを使用することができる。いくつかの態様において、産生細胞は、HEK293細胞、HEK293S細胞、HEK293SF細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、間葉系幹細胞(MSC)、BJヒト包皮線維芽細胞、fHDF線維芽細胞、AGE.HN(登録商標)神経前駆細胞、CAP(登録商標)羊膜細胞、脂肪間葉系幹細胞、RPTEC/TERT1細胞、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、肥満細胞、好中球、Kupffer-Browicz細胞、PER.C6細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、又はC2C12細胞から選択することができる。いくつかの態様において、産生細胞は、幹細胞である。
【0195】
産生細胞は、本明細書に記載されるように、コレステロール生合成経路における遺伝子及び/又はタンパク質機能を低下させるように遺伝的及び/又は薬理学的に改変され得る。いくつかの態様において、改変された産生細胞は、本明細書に記載されるEVを産生するタンパク質をコードする外因性配列を含むように(例えば、遺伝的に)更に改変され得る。遺伝子改変産生細胞は、一過性又は安定な形質転換によって外因性配列を含み得る。外因性配列は、プラスミドとして形質転換され得る。いくつかの態様において、外因性配列は、ベクターである。外因性配列は、産生細胞のゲノム配列に、標的化部位で、又はランダムな部位に、安定して組み込むことができる。いくつかの態様において、安定細胞株は、内腔操作されたエクソソームを産生するために生成される。
【0196】
外因性配列は、エクソソームタンパク質をコードする内因性配列の内部、上流(5’末端)、又は下流(3’末端)に位置する、産生細胞のゲノム配列に挿入され得る。当技術分野で既知の様々な方法を、産生細胞への外因性配列の導入のために使用することができる。例えば、様々な遺伝子編集法(例えば、相同組換え、トランスポゾン媒介システム、loxP-Creシステム、CRISPR/Cas9又はTALENを使用する方法)を使用して改変された細胞は、本開示の範囲内である。
【0197】
外因性配列は、本明細書に開示される足場部分又はその断片若しくはバリアントをコードする配列を含むことができる。足場部分をコードする配列の追加のコピーを導入して、本明細書に記載のエクソソームを産生することができる(例えば、EV(例えば、エクソソーム)の表面又は内腔表面上により高密度の足場部分を有する)。足場部分の改変又は断片をコードする外因性配列を導入して、足場部分の改変又は断片を含む内腔操作及び/又は表面操作されたエクソソームを生成することができる。
【0198】
いくつかの態様において、産生細胞は、タンパク質に連結された足場部分をコードする1つ以上のベクターで改変(例えば、トランスフェクト)され得る。
【0199】
いくつかの態様において、本明細書に開示される産生細胞は、追加の外因性配列を含むように更に改変される。例えば、追加の外因性配列は、内因性遺伝子の発現を調節するか、又はペイロード(例えば、IL-12部分)としてのある特定のポリペプチドを含むエクソソームを産生するために導入され得る。いくつかの態様において、産生細胞は、2つの外因性配列を含むように改変され、一方は、足場部分(例えば、足場X及び/又は足場Y)又はそのバリアント若しくは断片をコードし、他方は、ペイロードをコードする。いくつかの態様において、産生細胞は、2つの外因性配列を含むように改変され、一方は、本明細書に開示される足場部分又はそのバリアント若しくは断片をコードし、他方は、追加の機能性をエクソソームに付与するタンパク質をコードする。いくつかの態様において、産生細胞は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個、又はそれ以上の追加の外因性配列を含むように更に改変される。
【0200】
いくつかの態様において、本開示のEV(例えば、エクソソーム)(例えば、表面操作された及び/又は内腔操作されたエクソソーム)は、本明細書に開示される完全長の成熟した足場部分又はタンパク質(例えば、治療用タンパク質)に連結された足場部分をコードする配列で形質転換された細胞から産生され得る。本明細書に記載の足場部分のうちのいずれかは、プラスミド、ゲノムに挿入された外因性配列、又は合成メッセンジャーRNA(mRNA)などの他の外因性核酸から発現され得る。
【0201】
いくつかの態様において、本開示は、コレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を示す、細胞外小胞(EV)産生細胞を含むバイオリアクターを提供する。いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、灌流バイオリアクターを使用して行われる。いくつかの態様において、バイオリアクターは、細胞保持デバイスに接続される。
【0202】
いくつかの態様において、産生細胞は、バイオリアクター(例えば、Waveバイオリアクター、撹拌槽バイオリアクター、振盪バイオリアクター)で培養することができる。バイオリアクターの様々な構成は、当該技術分野で既知であり、必要に応じて、好適な構成を選択することができる。いくつかの態様において、培養は、例えば、N-1若しくはN末端容器又はバイオリアクターで行われる。いくつかの態様において、培養容器は、フェッドバッチ又は灌流バイオリアクターである。いくつかの態様において、バイオリアクターは、セルセパレーターに接続される。例えば、中空繊維性膜(例えば、交互接線流濾過(ATF)、接線流濾過(TFF))、又は音響セルセパレーターなどの細胞保持デバイスに接続されたN末端生成容器(特に、撹拌槽バイオリアクター)を使用することができる。
【0203】
IV.細胞組成物
いくつかの態様において、本開示は、細胞外小胞(EV)を産生する改変された細胞を含む細胞組成物を提供し、改変された細胞は、コレステロール生合成経路における低下した遺伝子及び/又はタンパク質機能を有する。いくつかの態様において、低下した遺伝子及び/又はタンパク質(コレステロール生合成におけるタンパク質を含む)は、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイムAレダクターゼ(HMGCR)、ステロール調節エレメント結合タンパク質2(SREBF2)、スクアレンエポキシダーゼ(SQLE)、若しくは7-デヒドロコレステロールレダクターゼ(DHCR7)から選択される1つ以上の遺伝子、又はその遺伝子によってコードされるタンパク質を含む。
【0204】
いくつかの態様において、本開示は、本明細書に記載の方法で使用するための産生細胞を提供する。いくつかの態様において、産生細胞は、本明細書に記載の方法に従って調製される。
【0205】
V.薬学的組成物及び治療方法
明細書で提供されるのは、対象への投与に好適な形態で、所望の純度を有する本開示のEV、例えば、エクソソーム、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む、薬学的組成物である。薬学的に許容される賦形剤又は担体は、部分的には、投与される特定の組成物によって、並びに組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定される。したがって、複数の細胞外小胞を含む薬学的組成物の多種多様な好適な製剤が存在する。(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.21st ed.(2005)を参照されたい)薬学的組成物は、一般に滅菌されて製剤化され、かつ米国食品医薬品局の全ての適正製造基準(GMP)規制に完全に準拠する。
【0206】
いくつかの態様において、薬学的組成物は、本明細書に記載の1つ以上の治療剤及びエクソソームを含む。ある特定の態様において、EV(例えば、エクソソーム)は、薬学的に許容される担体中の1つ以上の追加の治療剤と、同時投与される。いくつかの態様において、EV(例えば、エクソソーム)を含む薬学的組成物は、追加の治療剤の投与前に投与される。他の態様において、EV(例えば、エクソソーム)を含む薬学的組成物は、追加の治療剤の投与後に投与される。更なる態様において、EV(例えば、エクソソーム)を含む薬学的組成物は、追加の治療剤と同時に投与される。
【0207】
許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエント(例えば、動物又はヒト)に非毒性であり、これらには、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝液、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤、防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、若しくはベンジルアルコール、メチル若しくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール)、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、血清、アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジンなどのアミノ酸、グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む単糖、二糖、及び他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトールなどの糖、ナトリウムなどの塩形成対イオン金属錯体(例えば、亜鉛-タンパク質錯体)、及び/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0208】
担体又は希釈剤の例は、これらに限定されないが、水、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンを含む。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。任意の従来の媒体又は化合物が本明細書に記載の細胞外小胞と互換性がない場合を除き、その組成物中における使用が企図される。補充治療薬は、組成物中へと組み込まれることもできる。典型的には、薬学的組成物は、その意図された投与経路と適合性があるように製剤化される。EV(例えば、エクソソーム)は、非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、皮内、経皮、直腸、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、腫瘍内、筋肉内経路、又は吸入剤として投与され得る。ある特定の実施形態において、エクソソームを含む薬学的組成物は、例えば、注射によって静脈内投与される。EV(例えば、エクソソーム)は、任意選択的に、EV(例えば、エクソソーム)が意図された疾患、障害、又は状態を治療することに少なくとも部分的に有効である他の治療剤と組み合わせて投与され得る。
【0209】
非経口、皮内、皮下、又は局所用途に使用される溶液又は懸濁液は、以下の成分:注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩などの緩衝液、並びに塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張度調整のための薬剤を含むことができる。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのような酸又は塩基で調整され得る。調製物は、アンプル、ディスポーザブルシリンジ、又はガラス製若しくはプラスチック製の複数回用量のバイアルに封入され得る。
【0210】
注射可能な使用に好適な薬学的組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液及び滅菌粉末を含む。静脈内投与については、好適な担体は、生理学的生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。組成物は、概して滅菌され、容易に注射可能である程度の流体である。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、並びにそれらの好適な混合物を含む、溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用、分散液の場合における必要な粒子サイズの維持、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の予防は、様々な抗菌及び抗真菌化合物、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成され得る。所望の場合、等張化合物、例えば、糖、マニトール(manitol)、ソルビトールのようなポリアルコール、及び塩化ナトリウムは、組成物に添加されることができる。注射用組成物の長期間の吸収は、吸収を遅らせる化合物、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含むことによってもたらされ得る。
【0211】
滅菌注射用溶液は、必要に応じて、本明細書に列挙される又は当該技術分野で既知の1つ以上の成分とともに、EV(例えば、エクソソーム)を、有効量で、かつ適切な溶媒で組み込むことによって調製することができる。概して、分散液は、EV(例えば、エクソソーム)を、基本的な分散媒及び任意の所望の他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌注射用溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性薬剤及びその予め滅菌濾過された溶液から任意の追加の所望の成分の粉末を得る、高減圧乾燥及び冷凍乾燥(凍結乾燥)である。EV(例えば、エクソソーム)は、EV(例えば、エクソソーム)の持続放出又はパルス放出を可能にするような様式で製剤化され得る、デポー注射又はインプラント調製物の形態で投与され得る。
【0212】
エクソソームを含む組成物の全身投与は、経粘膜手段によることもできる。経粘膜投与のために、バリアに浸透するのに適した浸透剤が、製剤に使用される。そのような浸透剤は、当該技術分野で一般に知られており、例えば、経粘膜投与用の、洗浄剤、胆汁塩、及びフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、例えば、鼻腔スプレーの使用を通じて達成されることができる。
【0213】
ある特定の態様において、EV(例えば、エクソソーム)を含む薬学的組成物は、薬学的組成物の恩恵を受けるであろう対象に静脈内投与される。特定の他の態様において、組成物は、例えば、リンパ内注射若しくはリンパ節内注射(例えば、Senti et al.,PNAS 105(46):17908(2008)を参照されたい)、又は筋肉内注射、皮下注射、腫瘍内注射、胸腺若しくは肝臓への直接注射によってリンパ系に投与される。
【0214】
ある特定の態様において、エクソソームを含む薬学的組成物は、液体懸濁液として投与される。ある特定の態様において、薬学的組成物は、投与後にデポーを形成し得る製剤として投与される。ある特定の好ましい態様において、デポーは、EV(例えば、エクソソーム)を血液循環にゆっくり放出するか、又はデポー形態のままである。
【0215】
典型的には、薬学的に許容される組成物は、汚染物質を含まないように高度に精製され、生体適合性があり、毒性がなく、対象への投与に適している。水が担体の構成要素である場合、水は、汚染物質、例えば、エンドトキシンを含まないように高度に精製及び加工される。
【0216】
薬学的に許容される担体は、乳糖、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシ安息香酸塩、プロピルヒドロキシ安息香酸塩、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び/又は鉱物油であり得るが、これらに限定されない。薬学的組成物は、潤滑剤、湿潤剤、甘味料、風味増強剤、乳化剤、懸濁剤及び/又は保存料を更に含み得る。
【0217】
本明細書に記載の薬学的組成物は、本明細書に記載のEV(例えば、エクソソーム)と、任意選択的に、薬学的に活性な薬剤又は治療剤と、を含む。治療薬は、生物学的薬、小分子薬、又は核酸約であり得る。
【0218】
本明細書に記載されるEV(例えば、エクソソーム)を含む薬学的組成物が、提供される。いくつかの態様において、剤形は、静脈内注射用の液体懸濁液として製剤化される。いくつかの態様において、剤形は、腫瘍内注射用の液体懸濁液として製剤化される。
【0219】
ある特定の態様において、エクソソームの調製は、残留複製能力のある核酸を破壊するにために、例えば、X線、ガンマ線、ベータ粒子、アルファ粒子、中性子、陽子、元素核、UV線のような放射線を受ける。
【0220】
ある特定の態様において、エクソソームの調製物は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100超、又は100kGy超の照射線量を使用するガンマ照射に曝される。
【0221】
ある特定の態様において、エクソソームの調製物は、0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000超、又は10000mSv超の照射線量を使用するX線照射に曝される。
【0222】
本開示はまた、疾患又は障害の治療を必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、本方法は、対象に、本明細書に開示される細胞外小胞を投与することを含む。
【実施例
【0223】
実施例1
産生細胞からのEV産生を改善することができるかどうかを決定するために、高スループットEVレポーターアセイを開発した。レポーターアッセイは、最小限に処理された試料中のEV関連発光を測定することができる広いダイナミックレンジ(例えば、10~1011)を有する。EV産生細胞は、PTGRN-FLAG-HiBiTルシフェラーゼタンパク質を発現し、産生されたEVに関連する蛍光シグナルを提供する。siRNA試薬は、HEK HiBitレポーター細胞での使用のために最適化された。約200個の遺伝子のsiRNAノックダウンスクリーニングを行い、HiBitルシフェラーゼをEV産生の尺度として評価した。HMGCR及びSREBF2のノックダウンは、未処理の対照細胞と比較して、EV産生を有意に増加させるものとして特定された(図1)。
【0224】
実施例2
産生細胞におけるHMGCR及びSREBF2のノックダウンがEV産生を増加させることを検証するために、未処理産生細胞、非標的siRNA処理産生細胞、PTGFRNノックダウン産生細胞、SREBF2ノックダウン産生細胞、及びHMGCRノックダウン産生細胞から採取された試料からナノ粒子追跡分析(NTA)を行った。未処理産生細胞、非標的siRNA処理産生細胞、PTGFRNノックダウン産生細胞、SREBF2ノックダウン産生細胞、及びHMGCRノックダウン産生細胞の生細胞密度及び生存率(%)を決定し(図2A及び2B)、EVを精製し、特徴付けた(図2C及び2D)。細胞当たりに産生された総EVは、SREBF2ノックダウン産生細胞及びHMGCRノックダウン産生細胞において有意に増加した(図2E)。SREBF2ノックダウンは、未処理産生細胞と比較して、EV産生の約15倍の増加をもたらし、HMGCRノックダウンは、未処理産生細胞と比較して、約25倍の増加をもたらした(図2F)。総コレステロール及び総精製EVを、各処理群について定量した(それぞれ、図2G及び2H)。総EVに対して正規化したコレステロールの倍率変化を計算した。これは、処理群のEVのコレステロール含有量の差を示した(図2I)。未処理産生細胞、非標的siRNA処理産生細胞、PTGFRNノックダウン産生細胞、SREBF2ノックダウン産生細胞、及びHMGCRノックダウン産生細胞から精製されたEVからのサイズ分布に大きな差異は観察されなかった(図2J)。
【0225】
実施例3
これらの結果を、産生細胞を培養するために使用される培地にシンバスタチン及びカリプラジンを補充することによって、更に検証し、確認した。生存率及び生細胞密度に対する産生細胞のシンバスタチン及びカリプラジン処理の効果を、HiBitレポーター細胞株で評価した(それぞれ、図3A、3B、3C、3D)。対照と比較した、HiBitルシフェラーゼに対するシンバスタチン及びカリプラジン処理の効果を、それぞれ表5及び表6に示す。
【表6】

1919 HiBitレポーター細胞株をシェイクフラスコにバッチ再供給した。2日目及び3日目に、細胞を再供給した。10nM用量は、研究の期間にわたって十分に許容された。図4A、4B、及び4Cは、生細胞密度、生存率、及びHiBitルシフェラーゼレポーターに対するシンバスタチン投薬の効果を示す(それぞれ、図4A、4B、4C)。

【表7】

1919 HiBitレポーター細胞株を使用して、2日目に1回の培地交換を行った。全ての状態は、十分に許容された。
【0226】
これらの結果を更に検証するために、培地に補充された2nM、5nM、10nMのシンバスタチンの存在下で、EV産生を評価し、未処理の対照と比較した(図4D)。その結果が、以下の表7に定量化されている。IC50は、約10~約20ナノモル濃度のシンバスタチンと決定され、同様のEV収率の増加が得られた。
【表8】
【0227】
また、EVの産生を、未処理対照と比較して、培地に補充された5μM及び10μMのカリプラジンの存在下で評価した(図4E)。その結果が、以下の表8に定量化されている。
【表9】
【0228】
これらのデータは、コレステロール生合成経路を薬理学的に調節することがEV収率を増加させ得ることを示している。
【0229】
これらの結果を更に検証するために、EV収率に対するシンバスタチンの効果を、2つの異なるHEK産生細胞株(一方がプロテインX EV(PrX)を産生する細胞株、及び他方がIL-12 EV(exoIL-12)を産生する細胞株)で評価した。EVを精製する前に、細胞株を、シンバスタチン(5nM及び10nM)で10日間処理した。図5Aは、EV精製のそれぞれの密度勾配を示す。図5Bは、タンパク質ゲルを示す。その結果が、以下の表9に定量化されている。これらのデータは、シンバスタチン処理がEVのタンパク質含有量を明らかに変化させることなく、EV収率を増加させることを示している。
【表10】
【0230】
これらの結果が異なる細胞株で再現され得るかどうかを評価するために、CHO-S細胞を10nMのシンバスタチンで処理し、EV収率を未処理対照と比較した。表10は、その結果を定量化したものである。
【表11】
【0231】
6nMのシンバスタチンで処理して6日後のCHO-S細胞でも、未処理対照に対して同様の5.6倍の増加が観察された。
【0232】
これらの結果を別の細胞株でも再現できるかどうかを更に試験するために、ヒト脂肪MSC細胞(ATCC)を、Sartorius MSC NUTRISTEM(登録商標)XF無血清培地で、Cellbind T125フラスコに接着させて増殖させた。培養物が約50%コンフルエンスに達したとき、培地を除去し、同一の増殖培地(対照)又は6nMのシンバスタチン(sim処理)を補充した増殖培地と交換した。培養物を更に4日間インキュベートし、その時点で、条件培地を回収し、細胞デブリを遠心分離によって除去した。次いで、清澄化した条件培地を陰イオン交換(AEX)超高性能液体クロマトグラフィー(UHPLC)によって分析し、ピーク面積を比較することによって各試料中の細胞外小胞の相対量を推定した。表11は、その結果を定量化したものであり、6nMシンバスタチンで処理された脂肪MSC細胞による2.6倍のEV産生の増加を示す。これらのデータは、MSCは治療用EV空間で使用される好ましい細胞型であるため、重要である。これらの結果は、スタチン処理によるEV産生の増強が、HEK細胞に特有なものではないことを示す。
【表12】
【0233】
実施例4
スタチン(例えば、シンバスタチン)で処理された産生細胞からのEV収率の増加が、結果として得られるEVに対して機能的な影響があるかどうかを決定するために、シンバスタチンで処理されたexoIL-12 EVを、5nM及び10nMのシンバスタチンで処理された産生細胞から回収し、それらの効力を。機能的HEK IL-12レポーターアッセイで評価し、未処理対照と比較した。図6A及び図6Bは、未処理対照、組換えヒトIL-12、及びexoIL-12製剤と比較して、シンバスタチン処理で産生されたEVについて同様のインビトロ効力を示す。これらの結果は、シンバスタチンで処理された産生細胞から精製されたexoIL-12 EVが、未処理の産生細胞から精製されたEVと同様のインビトロ効力を示したことを示す。
【0234】
これらの結果を、シンバスタチン処理された培養物から精製したPrX EVを使用して確認し、その後、STINGアゴニスト又はSTAT6アンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれかをロードした。exoIL-12 EVと同様に、exoSTING EV及びexoASO-STAT6 EVのシンバスタチン処理は、対照と比較してインビボ効力に影響がなかった(データは示さず)。
【0235】
実施例5
スタチンで処理された産生細胞からのEV収率の増加が他のスタチンに一般化可能であるかどうかを調べるために実験を行い、HiBit産生細胞を、様々な濃度のロスバスタチン(「ROS」;10nM、25nM、50nM、75nM、及び100nM)に曝露した。特に、ロスバスタチンは、フルオロフェニル及びスルホン基を介して追加のHMGCR結合能力を有する完全合成の疎水性分子である。反対に、シンバスタチンは、真菌代謝産物に由来する親油性分子である。しかし、これらの差異にもかかわらず、ロスバスタチンは、誘導後4日目に、処理されたHiBitレポーター細胞におけるEV発現の用量依存的な増加を示した(図7)。これらの結果は、コレステロールを低下させることによって観察されるEV発現の増加がシンバスタチンに特有のものではなく、むしろスタチンの一般的な現象であると思われることを示す。
【0236】
実施例6
EVの発現の増加が、一般にプレニル化ではなくコレステロール自体に関連しているかどうかを判定するために、産生細胞をGGTaseの合成阻害剤に曝露した後のエクソソーム産生を調査した。プレニル化は、EV生合成に関与することが示されているRabタンパク質の活性を制御する。プレニル化の前駆体は、コレステロール経路の中間体に由来し、これは、スタチン及びsiRNAの両方の処理によって枯渇する可能性が高いが、カラプラジン処理によって枯渇する可能性は低い。ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ(GGTase)は、タンパク質のカルボキシル末端へのプレニル残基の結合によるタンパク質の翻訳後修飾に関与している。プレニル化タンパク質は、プレニル基の疎水性の性質により、膜結合性である。培養物を、GGTI-2418(GGTase Iのペプチド模倣阻害剤)で処理し、生細胞密度(VCD)及びエクソソーム産生(RLUによって表現される)を2日目、4日目、6日目、及び8日目に評価した。GGTI-2418への培養物の曝露は、細胞密度(図8A)又はエクソソーム産生(図8B)のいずれにも効果がなかった。これは、プレニル化が、本明細書で試験される培養条件下でエクソソーム産生に影響を及ぼさないことを示唆し、コレステロールの役割を支持する。
【0237】
実施例7
増強されたエクソソーム産生に対するコレステロール枯渇の重要性を確認するために、細胞培養培地にシンバスタチンを添加すると同時に、様々な濃度の合成コレステロールを培地に補充することによって、HiBitレポーター細胞株の内因性コレステロール生合成経路を阻害した。内因性コレステロールを合成コレステロールに置き換えることで、シンバスタチンの効果が逆転すると予想された。シンバスタチンによる細胞コレステロールの枯渇は、HiBit培養物における生細胞密度の特徴的な低下(VCD;図9A)とエクソソーム産生の増加(図9B)とを引き起こした。外因性合成コレステロール及び6mMシンバスタチンで増殖させた細胞培養物は、VCDの低下を示さなかった(図9A)。EV産生のシンビスタチンによる誘導は、コレステロールの補充を行うことによって大幅に減弱されたが、EV産生は、スタチンを欠く対照培養物よりも高いことが依然として観察された(図9B)。高コレステロール単独での増殖培養物は細胞培養VCD又はエクソソーム産生に影響を及ぼさなかったため、この逆転はシンバスタチン効果に特異的であった(図9A及び9B)。
【0238】
参照による組み込み
本出願で引用された全ての刊行物、特許、特許出願及び他の文書は、各個々の刊行物、特許、特許出願又は他の文書が、全ての目的のために参照により組み込まれることが個々に示されているのと同じ範囲まで、全ての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0239】
均等物
様々な具体的な態様が例示され、説明されているが、上記の明細書は限定されるものではない。本発明(複数可)の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることが理解されるであろう。本明細書を検討すれば、当業者には、多くの変形形態が明らかになるであろう。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
【配列表】
2024538100000001.xml
【国際調査報告】