(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板用表面処理組成物、それを用いて表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20241010BHJP
C09D 5/08 20060101ALI20241010BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20241010BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20241010BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20241010BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20241010BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20241010BHJP
C23C 2/06 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D5/08
C09D163/00
C09D7/63
C09D7/61
C09D7/20
C23C26/00 A
C23C2/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522325
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 KR2021014278
(87)【国際公開番号】W WO2023063450
(87)【国際公開日】2023-04-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】チョ、 ス-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 ウォン-ホ
【テーマコード(参考)】
4J038
4K027
4K044
【Fターム(参考)】
4J038DB001
4J038DG001
4J038GA15
4J038HA066
4J038HA246
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4K027AA05
4K027AA22
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4K027AB05
4K027AB44
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4K044AA06
4K044AB02
4K044BA10
4K044BA21
4K044BB03
4K044BC02
4K044BC09
4K044CA11
4K044CA53
(57)【要約】
本発明は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板において、優れた耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性及び固有の表面色特性を付与することができる表面処理組成物を提供するものである。本発明は、組成物の固形分100重量%に対して、高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂、及びエポキシ補助樹脂を含む樹脂混合物70~90重量%;変色防止剤0.5~10重量%;密着増進剤0.5~10重量%;防錆耐食剤0.5~10重量%;着色顔料0.1~2重量%;及び顔料安定化剤0.1~1重量%を含む表面処理組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の固形分100重量%に対して、
高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂及びエポキシ補助樹脂を含む樹脂混合物70~90重量%;
変色防止剤0.5~10重量%;
密着増進剤0.5~10重量%;
防錆耐食剤0.5~10重量%;
着色顔料0.1~2重量%;及び
顔料安定化剤0.1~1重量%を含む、表面処理組成物。
【請求項2】
高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂及びエポキシ補助樹脂は、1:4.5:4.5~9:0.5:0.5の重量比で混合される、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項3】
高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が-20℃~-10℃であり、重量平均分子量(Mw)が100,000~200,000である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項4】
低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が-30℃~-20℃であり、重量平均分子量(Mw)が30,000~70,000である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項5】
前記エポキシ補助樹脂は、エポキシド当量比が450~550g/eqであり、重量平均分子量(Mw)が450~4,000である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項6】
変色防止剤は、モリブデン酸アンモニウム及びモリブデン酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の表面処理溶液組成物。
【請求項7】
密着増進剤は、リン酸エステル、リン酸アンモニウム及びアンモニウムジルコニウムカーボネートからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項8】
防錆耐食剤は、リン酸系防錆剤、フッ素系防錆剤、バナジウム系防錆剤、セリウム塩系防錆剤及びセレン塩系防錆剤からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の表面処理溶液組成物。
【請求項9】
着色顔料は、チタン、鉛、鉄、銅及びクロムからなる群から選択される1種以上の無機顔料;及びアゾ系有機顔料;からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項10】
前記顔料安定化剤は、カルボキシル系高分子である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項11】
表面処理組成物は溶媒をさらに含み、
表面処理組成物の総重量を基準として、固形分含量が20~40重量%であり、残部溶媒である、請求項1から10のいずれか一項に記載の表面処理組成物。
【請求項12】
溶媒は、溶媒の総重量を基準として、N-エチル-2-ピロリドン(NEP、N-Ethyl-2-pyrrolidone)20~40重量%及び残部水を含む、請求項11に記載の表面処理組成物。
【請求項13】
鋼板;
前記鋼板の少なくとも一面に形成された三元系溶融亜鉛合金めっき層;及び
前記三元系溶融亜鉛合金めっき層上に形成された表面処理皮膜層を含み、
前記表面処理皮膜層は、請求項1から10のいずれか一項に記載の表面処理組成物から形成されたものである、表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項14】
三元系溶融亜鉛合金めっき層は、界面に形成されたAl濃化層を含み、
前記Al濃化層の占有面積率は70%~100%である、請求項13に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項15】
三元系溶融亜鉛合金めっき層は、Al:0.2~15重量%、Mg:0.5~3.5重量%、残部Zn及び不可避不純物を含む、請求項13に記載の三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項16】
表面処理皮膜層は、厚さが1μm~10μmである、請求項13に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項17】
三元系溶融亜鉛合金めっき層が形成された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板上に請求項1から10のいずれか一項に記載の表面処理組成物をコーティングする段階;及び
前記表面処理組成物を乾燥して表面処理皮膜層を形成する段階を含む、表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項18】
表面処理組成物を2.5μm~50μmの厚さでコーティングする、請求項17に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項19】
表面処理皮膜層を形成する段階で70~250℃に昇温して表面処理組成物を乾燥する、請求項17に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板用表面処理組成物、それを用いて表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、純粋な亜鉛めっき鋼板に比べて、赤錆に対する耐食性に優れた鋼材として、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)を含有した溶融亜鉛合金めっき層を有する鋼板は、露出面のほとんどが亜鉛(Zn)又は亜鉛合金(Zn alloy)で構成され、一般的な生活環境や、特に、湿潤雰囲気に曝された場合、表面に白錆の発錆現象が起こる。また、めっき層に含まれているマグネシウムとアルミニウムは亜鉛よりも酸素との親和力が高いため、亜鉛に結合する酸素が不足する場合、黒変現象が発生しやすい。
【0003】
従来は、防錆処理の一環として金属表面を5~100mg/m2のクロメートで前処理した後、有機皮膜を形成していた。しかし、前処理剤に含まれたクロム(Cr)などの重金属のため、追加の前処理設備及び工程が必要であっただけでなく、重金属廃水による作業者の安全性が問題となっていた。また、水洗水及び廃水などで発生する六価クロム含有溶液は、特殊な処理工程に従って処理しなければならないため、製造コストが上昇するという問題があり、クロメート処理されためっき鋼板も使用中または廃棄時にクロムイオンが溶出するという問題があり、環境汚染の問題が深刻であった。
【0004】
このような問題を解決しながら耐食性を確保するために、従来技術では、クロムが含有されていない耐食用金属コーティング剤のような表面処理剤を開発した。一例として、特許文献1及び特許文献2には、重リン酸アルミニウムを含有するか、タンニン酸に酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、イミダゾール等の芳香族カルボン酸と界面活性剤等の組み合わせることにより皮膜物質を形成する技術が開示されているが、これらは耐食性に劣るという問題点がある。特許文献3には、炭酸ジルコニウム、バナジルイオン、ジルコニウム化合物等で構成された表面処理剤が開示されているが、これは耐食性は良好であるものの、耐黒変性に対しては脆弱であるという問題点がある。
【0005】
一方、特許文献4には、チタン系、ジルコニウム系、リン酸系、モリブデン系化合物等で構成された表面処理剤が開示されているが、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)等が用いられた溶融亜鉛合金めっき鋼板では、黒変現象を抑えられないという問題がある。特許文献5には、モリブデン酸アンモニウム、水分散ウレタン樹脂、イソプロピルアミン、炭酸ジルコニウムアンモニウム、エポキシ系シランカップリング剤、シリカゾルで構成された表面処理剤が開示されているが、十分な耐食性を付与することができないという問題点がある。
【0006】
一方、鉄鋼素材を建築資材用に使用するためには、表面特性が美麗でなければならず、顧客がこれを使用する際に既存の溶融亜鉛めっき鋼材及び溶融亜鉛合金めっき鋼材との素材表面の区別が可能であるように固有の色を付与する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭53-28857号公報
【特許文献2】特開昭51-71233号公報
【特許文献3】特開2002-332574号公報
【特許文献4】特開平7-096699号公報
【特許文献5】特開2005-146340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような実情に鑑みて案出されたものであって、建築資材として使用される三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板において、優れた耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性及び固有の表面色特性を付与することができる表面処理組成物を提供しようとする。
【0009】
また、顔料の分散安定性に優れ、長時間保管後の使用時にも沈殿及び凝集が発生せず、特に、高温高湿の環境下での溶融亜鉛合金めっき鋼板において、優れた耐食性及び耐変色性を付与することができる表面処理組成物を提供しようとする。
【0010】
また、環境汚染物質であるクロムなどの重金属成分を全く含まないため、人体に無害で環境汚染による問題を発生させない表面処理組成物を提供しようとする。
【0011】
また、本発明は、優れた耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性及び固有の表面色特性を有する溶融亜鉛合金めっき鋼板及びその製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、組成物の固形分100重量%に対して、高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂及びエポキシ補助樹脂を含む樹脂混合物70~90重量%;変色防止剤0.5~10重量%;密着増進剤0.5~10重量%;防錆耐食剤0.5~10重量%;着色顔料0.1~2重量%;及び顔料安定化剤0.1~1重量%を含む表面処理組成物が提供される。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、鋼板;上記鋼板の少なくとも一面に形成された三元系溶融亜鉛合金めっき層;及び上記三元系溶融亜鉛合金めっき層上に形成された表面処理皮膜層を含み、上記表面処理皮膜層は上記表面処理組成物から形成されたものである表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板が提供される。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、三元系溶融亜鉛合金めっき層が形成された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板上に上記表面処理組成物をコーティングする段階;及び上記表面処理組成物を乾燥して表面処理皮膜層を形成する段階を含む表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る表面処理組成物を溶融亜鉛合金めっき鋼板上にコーティングして表面処理皮膜層を形成することにより、優れた耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性及び固有の表面色特性を有する溶融亜鉛合金めっき鋼板を提供することができる。
【0016】
また、本発明に係る表面処理組成物は顔料の分散安定性に優れ、長時間保管後の使用時にも沈殿及び凝集が発生せず、溶融亜鉛合金めっき鋼板において優れた表面光沢を付与することができる。
【0017】
また、本発明に係る表面処理組成物は、環境汚染物質であるクロムなどの重金属成分を全く含まないため、人体に無害であり、環境汚染による問題を発生させない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本発明は、溶液安定性に優れ、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に適用する場合、優れた平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を有し、優れた表面特性を有する三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板用表面処理組成物に関する。また、本発明は、上記表面処理組成物を用いて表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板及びその製造方法に関する。
【0020】
本発明の一実施形態に係る表面処理組成物は、組成物の固形分100重量%に対して、高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂及びエポキシ補助樹脂を含む樹脂混合物70~90重量%;変色防止剤0.5~10重量%;密着増進剤0.5~10重量%;防錆耐食剤0.5~10重量%;着色顔料0.1~2重量%;及び顔料安定化剤0.1~1重量%を含むことができる。
【0021】
一実施形態において、高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板において、優れた耐食性、耐水性、及び耐溶剤性を付与することができる成分である。上記高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂は、これに限定されるものではないが、シリコンポリマーとポリカーボネートポリオールから合成することができ、合成時に三次元(Trimer)イソシアネート高分子を使用することにより、自己架橋結合(Self-Crosslinking)特性を有する。
【0022】
高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂の重量平均分子量(Mw)は、100,000~200,000であってもよい。重量平均分子量が100,000未満の場合、十分な耐食性の確保が難しい。一方、重量平均分子量が200,000を超える場合は、溶液安定性が低下して皮膜の硬度が大きくなり、加工性が低下するという問題が発生する可能性がある。
【0023】
高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-20℃~-10℃であってもよい。ガラス転移温度が-20℃未満の場合、十分な耐食性の確保が難しい。一方、ガラス転移温度が-10℃を超える場合は、溶液安定性が低下して皮膜の硬度が大きくなり、加工性が低下するという問題が発生する可能性がある。
【0024】
一実施形態において、低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に軟質特性を付与して加工性及び密着性を高めることができる成分である。上記低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂は、これに限定されるものではないが、シリコンポリマーとポリカーボネートポリオールから合成することができる。低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂は、高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂とは異なり、自己架橋結合特性を有さない。
【0025】
低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂の重量平均分子量は30,000~70,000であってもよい。重量平均分子量が30,000未満の場合、皮膜の密度低下により十分な耐食性の確保が難しい。一方、重量平均分子量が70,000を超える場合は、皮膜に軟質特性を付与する効果が不十分であるため、加工性及び密着性が低下するという問題が発生する可能性がある。
【0026】
低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30℃~-20℃であってもよい。ガラス転移温度が-30℃未満の場合、皮膜の密度低下により十分な耐食性の確保が難しい。一方、ガラス転移温度が-20℃を超える場合は、皮膜に軟質特性を付与する効果が不十分であるため、加工性及び密着性が低下するという問題が発生する可能性がある。
【0027】
一実施形態において、エポキシ補助樹脂は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に稠密な皮膜を形成し、平板耐食性を向上させるための成分である。
【0028】
エポキシ補助樹脂のエポキシド当量比は450~550g/eqであってもよい。エポキシド当量比が450g/eq未満の場合、皮膜の稠密度及び平板耐食性の向上効果が十分ではない。一方、エポキシド当量比が550g/eqを超えると、皮膜の硬質性が過度になり、加工性が低下するという問題が発生する可能性がある。
【0029】
エポキシ補助樹脂の重量平均分子量(Mw)は450~4,000であってもよい。重量平均分子量(Mw)が450未満の場合、皮膜の稠密度及び平板耐食性の向上効果が十分ではない。一方、重量平均分子量(Mw)が4,000を超えると、皮膜の硬質性が過度になり、加工性が低下するという問題が発生する可能性がある。
【0030】
樹脂混合物は、高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂:低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂:エポキシ補助樹脂が1:4.5:4.5~9:0.5:0.5、好ましくは1:0.5:0.5~9:0.5:0.5、より好ましくは2:0.5:0.5~9:0.5:0.5の重量比で混合されたものであってもよい。例えば、高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂:低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂:エポキシ補助樹脂を2:0.5:0.5の重量比で混合して使用することができ、より好ましくは1:0.5:0.5の重量比で混合して使用することができる。
【0031】
樹脂混合物中の高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂の含量が過度に少ない場合、鋼板の平板耐食性、加工部耐食性、耐アルカリ性が低下する可能性がある。一方、樹脂混合物中の高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂の含量が過度に多い場合は、鋼板の加工部耐食性、耐黒変性が低下する可能性がある。
【0032】
一実施形態において、樹脂混合物の含量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して70~90重量%であってもよい。樹脂混合物の含量が70重量%未満の場合、十分な耐食性及び耐アルカリ性の確保が難しく、樹脂混合物の含量が90重量%を超える場合には、表面処理組成物内の物性を向上するための添加剤の含量が相対的に少なくなるため、耐食性がむしろ低下し、溶液安定性が低下するという問題が発生する可能性がある。
【0033】
一実施形態において、変色防止剤は、高温多湿の環境下で三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板が変色することを防止するために含まれる成分である。変色防止剤は、モリブデン酸アンモニウム(Ammonium Molybdate)及びモリブデン酸ナトリウム(Sodium Molybdate)からなる群から選択される1種以上の化合物であってもよい。
【0034】
変色防止剤の含量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、0.5~10重量%であってもよい。変色防止剤の含量が0.5重量%未満の場合、十分な耐変色性の確保が期待できず、変色防止剤の含量が10重量%を超える場合は、耐変色性の向上効果は僅かであるものの、耐食性が低下するという問題が発生する可能性がある。
【0035】
一実施形態において、密着増進剤は、鋼板と樹脂との密着性を向上させて皮膜の剥離を防止し、高湿環境下で水分がめっき層まで浸透することを防止するための成分である。密着増進剤としては、リン酸エステル(Ester phosphate)、リン酸アンモニウム(Ammonium phosphate)及びアンモニウムジルコニウムカーボネート(AZC、Ammonium Zirconium Carbonate)からなる群から選択される1種以上を使用することができる。
【0036】
密着増進剤の含量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、0.5~10重量%であってもよい。密着増進剤の含量が0.5重量%未満の場合、密着性の向上及び水分浸透の防止効果が不十分であり、密着増進剤の含量が10重量%を超える場合には、表面処理組成物の溶液安定性が低下するという問題が生じる可能性がある。
【0037】
一実施形態において、防錆耐食剤は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の耐食性を向上するために含まれる成分であって、リン酸系防錆剤、フッ素系防錆剤、バナジウム系防錆剤、セリウム塩系防錆剤、及びセレン塩系防錆剤からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0038】
防錆耐食剤の含量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、0.5~10重量%であってもよい。防錆耐食剤の含量が0.5重量%未満の場合、耐黒変性及び耐アルカリ性の確保が難しい可能性があり、防錆耐食剤の含量が10重量%を超える場合には、耐食性の確保が難しい可能性がある。
【0039】
一実施形態において、着色顔料は、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板に色を付与して、美麗な表面特性を付与するための成分である。着色顔料としては、チタン、鉛、鉄、銅及びクロムからなる群から選択された1種以上の無機顔料;及びアゾ系有機顔料;からなる群から選択された1種以上を使用することができる。
【0040】
着色顔料の含量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、0.1~2重量%であってもよい。着色顔料の含量が0.1重量%未満の場合、十分な色発現が困難であり、着色顔料の含量が2重量%を超える場合は、溶液安定性及び耐食性が低下するという問題が発生する可能性がある。
【0041】
一実施形態において、顔料安定化剤は、着色顔料をキャッピング(Capping)させて皮膜内において着色顔料を均一に分散させ、それによって皮膜の光沢度を向上させるための成分である。上記顔料安定化剤はカルボキシル系高分子であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0042】
顔料安定化剤の含量は、表面処理組成物の固形分100重量%に対して、0.1~1重量%であってもよい。顔料安定化剤の含量が0.1重量%未満の場合、十分な溶液安定性の確保が難しく、顔料安定化剤の含量が1重量%を超える場合は、皮膜内の過度な残留成分により皮膜の光沢がむしろ低下するという問題点が発生する可能性がある。
【0043】
一実施形態において、表面処理組成物は、各成分を希釈させるために、溶媒としての水を含み、上記水は脱イオン水又は蒸留水であってもよい。上記溶媒は、本発明の各構成成分の他に残部として含まれるものであって、その含量は60~80重量%であってもよい。さらに、一実施形態に係る表面処理組成物は、溶液安定性を確保するために、補助溶媒としてN-エチル-2-ピロリドン(NEP、N-Ethyl-2-pyrrolidone)をさらに含むことができ、上記N-エチル-2-ピロリドンは、全溶媒中の20~40重量%で含まれることができる。
【0044】
本発明の一実施形態に係る水溶性有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理組成物で表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板は、耐食性、耐黒変性に優れるだけでなく、表面色及び光沢に優れる。また、本発明の一実施形態に係る表面処理組成物は、有害環境物質である六価クロムを含有せず、人体に無害な水溶性有機樹脂及び無機化合物を主成分として含むことにより、人体に対する被害及び環境汚染の問題を防止する効果がある。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、上述の表面処理組成物で表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板が提供される。
【0046】
具体的に、上記表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板は、鋼板、上記鋼板の少なくとも一面に形成された三元系溶融亜鉛合金めっき層、及び上記三元系溶融亜鉛合金めっき層上に形成された有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理皮膜層を含むことができる。
【0047】
上記素地鋼板及び上記三元系溶融亜鉛合金めっき層は、界面に形成されたAl濃化層を含み、上記Al濃化層の占有面積率は70%~100%であってもよい。また、上記三元系溶融亜鉛合金めっき層は、Al:0.2~15重量%、Mg:0.5~3.5重量%、残部Zn及び不可避不純物を含むことができる。
【0048】
一実施形態において、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板は、素地鉄及びZn-Al-Mg系合金めっき層の界面に形成されたAl濃化層を含み、Al濃化層の占有面積率は70%~100%、より好ましくは、73%~100%であってもよい。ここで、占有面積率とは、めっき鋼板の表面から素地鉄の厚さ方向に投影して見たとき、三次元的な屈曲等を考慮せずに平面を仮定する場合の素地鉄の面積に対するAl濃化層の面積の比を意味する。Al濃化層の占有面積率を70%以上確保する場合、Al濃化層は微細な粒子が連続的に形成された形態を有することになり、めっき性及びめっき密着性を著しく向上させることができる。
【0049】
本発明の一実施形態に係る三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板において、Mgは三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の耐食性を向上するための極めて重要な役割を果たし、腐食環境下でめっき層の表面に緻密な亜鉛水酸化物系腐食生成物を形成することにより、三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の腐食を効果的に防止する。本発明において、目的とする耐食効果を確保するためには、めっき層にMgが0.5重量%以上含まれる必要があり、より好ましくは0.9重量%以上含まれるべきである。但し、その含量が過剰な場合、めっき浴の表面にMg酸化性ドロスが急増し、微量元素の添加による酸化防止効果が相殺される。これを防止する観点から、Mgはめっき層に3.5重量%以下含まれるべきであり、より好ましくは、3.2重量%以下含まれるべきである。
【0050】
本発明の一実施形態に係る三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板において、Alはめっき浴内のMg酸化物ドロスの形成を抑制し、めっき浴内のZn及びMgと反応してZn-Al-Mg系金属間化合物を形成することにより、めっき鋼板の耐食性を向上させる。上記効果を得るためには、めっき層にAlが0.2重量%以上含まれる必要があり、より好ましくは、0.9重量%以上含まれるべきである。但し、その含量が過剰な場合、めっき鋼材の溶接性及びリン酸塩処理性が劣化する可能性がある。これを防止する観点から、Alはめっき層に15重量%以下含まれるべきであり、より好ましくは、12重量%以下含まれるべきである。
【0051】
上記有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理皮膜層は、組成物の固形分100重量%に対して、高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂及びエポキシ補助樹脂を含む樹脂混合物70~90重量%;変色防止剤0.5~10重量%;密着増進剤0.5~10重量%;防錆耐食剤0.5~10重量%;着色顔料0.1~2重量%;及び顔料安定化剤0.1~1重量%を含む表面処理組成物から形成されることができる。上記表面処理組成物は、上述と同様の技術的特徴を有するため、重複して説明しない。
【0052】
一実施形態において、表面処理皮膜層は、上述した表面処理組成物が乾燥して形成されたコーティング層であって、有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理皮膜層に含まれた揮発性物質が全て揮発した後に残った成分に該当する。このため、上記有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理皮膜層には、溶媒である水又はN-エチル-2-ピロリドンが含まれておらず、また、有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理成分に含まれていた溶媒も含まれていない。したがって、有機樹脂及び無機化合物を含有した表面処理皮膜層に含まれた成分は、全固形分100重量%を基準とした含量に該当する。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、三元系溶融亜鉛合金めっき層が形成された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板上に上述の表面処理組成物をコーティングする段階;及び上記表面処理組成物を乾燥して表面処理皮膜層を形成する段階を含む表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法が提供される。
【0054】
一実施形態において、表面処理組成物は2.5~50μmの厚さでコーティングされることができる。また、コーティングされた表面処理組成物は、乾燥工程を経て乾燥皮膜層を形成し、上記乾燥皮膜層の厚さは1~10μmであってもよい。表面処理組成物のコーティング厚さが2.5μm未満の場合、鋼板粗度の凸部位に表面処理組成物が過度に薄く塗布され、耐食性が低下するという問題が発生する可能性があり、厚さが50μmを超える場合には、皮膜層が過度に厚く形成されて加工性が劣化し、溶液処理コストの上昇により経済性に問題が生じる可能性がある。
【0055】
表面処理組成物をコーティングする方法は、通常行われるコーティング方法であれば、特に限定されないが、例えば、ロールコーティング、スプレー、沈積、スプレースキージング、及び沈積スキージングから選択されたいずれか一つのコーティング方法で行われることが好ましい。
【0056】
三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板上にコーティングされた表面処理組成物を乾燥する工程は、素材鋼板の最終到達温度(PMT)を基準として70~250℃の温度で行われることが好ましい。乾燥温度が素材鋼板の最終到達温度(PMT)を基準として70℃未満であると、有機樹脂の硬化反応が完璧に行われないため強固な皮膜構造が形成されず、耐食性及び耐アルカリ性に劣る可能性がある。一方、乾燥温度が素材鋼板の最終到達温度(PMT)を基準として250℃を超えると、水冷過程中に水蒸気及びヒュームの発生により作業生産性が悪くなり、蒸発した水蒸気が乾燥設備の上部に凝縮される結露現象により製品の表面品質が低下する可能性がある。
【0057】
一方、上記乾燥工程は、熱風乾燥炉又は誘導加熱炉で行うことが好ましい。熱風乾燥炉を用いて表面処理組成物を乾燥する場合、熱風乾燥炉の内部温度は100~300℃であることが好ましい。誘導加熱炉を用いて表面処理組成物を乾燥する場合、誘導加熱炉に印加される電流は1000~5000Aであることが好ましく、1500~3500Aであることがさらに好ましい。上記熱風乾燥炉の内部温度が100℃未満、又は誘導加熱炉に印加される電流が1000A未満である場合、表面処理組成物の硬化反応が完璧に行われず、耐食性及び耐アルカリ性に劣る可能性がある。また、上記熱風乾燥炉の内部温度が300℃を超えるか、又は誘導加熱炉に印加される電流が5000Aを超える場合は、水冷過程中に水蒸気及びヒュームの発生により作業生産性が悪くなり、蒸発した水蒸気が乾燥設備の上部に凝縮される結露現象により製品の表面品質が低下する可能性がある。
【0058】
また、上記表面処理組成物を乾燥して表面処理皮膜層を形成した後、上記表面処理皮膜層を水冷させて最終的に表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板を提供することができる。
【0059】
本発明の一実施形態に係る三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法は、連続工程で行われることができ、上記連続工程の速度は80~120mpmであることが好ましい。連続工程の速度が80mpm未満であると、生産性が低下するという問題点が発生する可能性があり、120mpmを超えると、表面処理組成物が乾燥する工程で溶液が飛散し、表面欠陥を発生させる可能性がある。
【実施例】
【0060】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。下記の実施例は、本発明を理解するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0061】
試験用試験片の作製
三元系溶融亜鉛合金めっき層が重量%で、Mg:1.5%、Al:1.5%、残部Znからなる三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板(めっき量の片面0.5~2.0g/m2)を7cm×15cm(横×縦)のサイズに切断して油分を除去した後、製造された各組成物を溶融亜鉛合金めっき鋼板にバーコータ(Bar Coater)を用いて塗布した。次いで、PMT(Peak Metal Temperature(素地表面の温度))180±20℃の条件で硬化させて試験用試験片を作製した。
【0062】
試験及び評価方法
本実施例において表面処理された鋼板の物性評価方法及び評価基準は、以下の通りである。
【0063】
<平板耐食性>
ASTM B117に規定した方法に基づいて、試験片を処理した後、経時的な鋼板の白錆発生率を測定した。このとき、評価基準は次の通りである。
【0064】
◎:白錆発生までにかかった時間が144時間以上
○:白錆発生までにかかった時間が96時間以上144時間未満
△:白錆発生までにかかった時間が55時間以上96時間未満
X:白錆発生までにかかった時間が55時間未満
【0065】
<加工部耐食性>
試験片をエリクソン試験機(Erichsen tester)を用いて6mmの高さに押し上げた後、24時間が経過したときに白錆発生の程度を測定した。このとき、評価基準は次の通りである。
【0066】
◎:48時間経過後の白錆発生面積5%未満
○:48時間経過後の白錆発生面積5%以上7%未満
X:48時間経過後の白錆発生面積7%以上
【0067】
<耐黒変性>
試験片を50℃、相対湿度95%に維持する恒温恒湿器に120時間放置することにより、試験前/後の試験片の色変化(色差:ΔE)を観察した。このとき、評価基準は次の通りである。
【0068】
◎:ΔE≦2
○:2<ΔE≦3
△:3<ΔE≦4
X:ΔE>4
【0069】
<耐アルカリ性>
試験片をアルカリ脱脂溶液に60℃、2分間沈積してから水洗、エアブローイング(Air blowing)後、前/後色差(ΔE)を測定した。アルカリ脱脂溶液は、大韓パーカライジング社のFinecleaner L 4460 A:20g/2.4L+L 4460 B 12g/2.4L(pH=12)を使用した。このとき、評価基準は次の通りである。
【0070】
◎:ΔE≦2
○:2<ΔE≦3
△:3<ΔE≦4
X:ΔE>4
【0071】
<溶液安定性>
表面処理組成物を容器に入れて50℃温度の恒温オーブンの中に入れ、7日間保管した後、沈殿物の発生の有無を目視観察し、粘度の変化を測定した。このとき、評価基準は次の通りである。
【0072】
○:沈殿発生なし、粘度の変化1cP未満
△:沈殿発生なし、粘度の変化1cP以上5cP未満
X:沈殿が発生、又は粘度の変化5cP以上
【0073】
<光沢度>
光沢度測定器を用いて60°の入射角で試験片の光沢度を測定した。このとき、評価基準は次の通りである。
【0074】
○:良好、光沢度値80以上
X:不良、光沢度値80未満
【0075】
表面処理組成物の成分
実施例で使用された表面処理組成物の成分は以下の通りである。
【0076】
- 高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂:重量平均分子量が150,000であるポリウレタン樹脂
- 低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂(補助樹脂1):重量平均分子量が50,000であるポリウレタン樹脂
- エポキシ補助樹脂(補助樹脂2):当量比が500g/eqであり、重量平均分子量が2,000であるエポキシ樹脂
- 変色防止剤:モリブデン酸アンモニウム
- 密着増進剤:アンモニウムジルコニウムカーボネート
- 防錆耐食剤:フッ素系防錆剤
- 着色顔料:アゾ系有機顔料
- 顔料安定化剤:カルボキシル系高分子
- 溶媒:水及びN-エチル-2-ピロリドン(NEP、N-Ethyl-2-pyrrolidone)の混合溶媒
【0077】
実施例1:樹脂混合物の含量による物性の変化
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、変色防止剤、密着増進剤、防錆耐食剤、着色顔料、顔料安定化剤を表1に記載の含量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、水49重量%及びN-エチル-2-ピロリドン21重量%の混合溶媒(組成物の総重量に対して70重量%)を含む。
【0078】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述の試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価した。評価結果を下記表1に記載した。
【0079】
【0080】
上記表1を参照すると、樹脂混合物の含量が、本発明が提案する含量を満たす発明例1~3は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。しかし、過度に少ない樹脂混合物を含む比較例1は、平板耐食性、加工部耐食性、耐アルカリ性が不良な結果を示し、過度に多い樹脂混合物を含む比較例2は、平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、溶液安定性が不良な結果を示した。
【0081】
実施例2:主剤樹脂と補助樹脂の含量比率による物性の変化
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を含む樹脂混合物80重量%、変色防止剤5重量%、密着増進剤5.5重量%、防錆耐食剤8重量%、着色顔料1重量%、顔料安定化剤0.5重量%を含む表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、水49重量%及びN-エチル-2-ピロリドン21重量%の混合溶媒(組成物の総重量に対して70重量%)を含む。
【0082】
上記樹脂混合物において、主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2は、下記表2に記載の重量比で混合された。
【0083】
上記表面処理組成物を上述の試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価し、評価結果を下記表2に記載した。
【0084】
【0085】
表2を参照すると、主剤樹脂と補助樹脂の重量比が、本発明が提案する含量比率を満たす発明例4~7は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。一方、過度に少ない水溶性主剤樹脂を含む比較例3は、平板耐食性、加工部耐食性、耐アルカリ性が不良な結果を示し、過度に少ない補助樹脂1及び補助樹脂2を含む比較例4は、加工部耐食性、耐黒変性が不良な結果を示した。
【0086】
実施例3:変色防止剤の含量による物性の変化
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、変色防止剤、密着増進剤、防錆耐食剤、着色顔料、顔料安定化剤を表3に記載の含量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、水49重量%及びN-エチル-2-ピロリドン21重量%の混合溶媒(組成物の総重量に対して70重量%)を含む。
【0087】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述の試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価した。評価結果を下記表3に記載した。
【0088】
【0089】
上記表3を参照すると、変色防止剤の含量が、本発明が提案する含量を満たす発明例8~10は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。一方、過度に少ない変色防止剤を含む比較例5は、耐黒変性、耐アルカリ性が不良な結果を示し、過度に多い変色防止剤を含む比較例6は、平板耐食性、加工部耐食性、溶液安定性が不良な結果を示した。
【0090】
実施例4:密着増進剤の含量による物性の変化
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、変色防止剤、密着増進剤、防錆耐食剤、着色顔料、顔料安定化剤を表4に記載の含量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、水49重量%及びN-エチル-2-ピロリドン21重量%の混合溶媒(組成物の総重量に対して70重量%)を含む。
【0091】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述の試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価した。評価結果を下記表4に記載した。
【0092】
【0093】
上記表4を参照すると、密着増進剤の含量が、本発明が提案する含量を満たす発明例11~13は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。しかし、過度に少ない密着増進剤を含む比較例7は、平板耐食性、加工部耐食性、耐アルカリ性が不良な結果を示し、過度に多い密着増進剤を含む比較例8は溶液安定性が不良な結果を示した。
【0094】
実施例5:防錆耐食剤の含量による物性の変化
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、変色防止剤、密着増進剤、防錆耐食剤、着色顔料、顔料安定化剤を表5に記載の含量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、水49重量%及びN-エチル-2-ピロリドン21重量%の混合溶媒(組成物の総重量に対して70重量%)を含む。
【0095】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述の試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価した。評価結果を下記表5に記載した。
【0096】
【0097】
上記表5を参照すると、防錆耐食剤の含量が、本発明が提案する含量を満たす発明例14~16は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。しかし、過度に少ない防錆耐食剤を含む比較例9は、平板耐食性、加工部耐食性が不良な結果を示し、過度に多い防錆耐食剤を含む比較例10は、耐黒変性、耐アルカリ性が不良な結果を示した。
【0098】
実施例6:着色顔料の含量による物性の変化
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、変色防止剤、密着増進剤、防錆耐食剤、着色顔料、顔料安定化剤を表6に記載の含量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、水49重量%及びN-エチル-2-ピロリドン21重量%の混合溶媒(組成物の総重量に対して70重量%)を含む。
【0099】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述の試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性、表面色の発現の程度を評価した。表面色の発現の程度は、表面処理組成物を処理した試験用試験片を目視で観察し、色発現の程度を良好(○)と不良(X)に区分した。評価結果を下記表6に記載した。
【0100】
【0101】
上記表6を参照すると、着色顔料の含量が、本発明が提案する含量を満たす発明例17~19は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。しかし、過度に少ない着色顔料を含む比較例11は、表面色の発現が不良な結果を示し、過度に多い着色顔料を含む比較例12は、平板耐食性、加工部耐食性、溶液安定性が不良な結果を示した。
【0102】
実施例7:顔料安定化剤の含量による物性の変化
上述した主剤樹脂、補助樹脂1、補助樹脂2を1:0.5:0.5の重量比で混合した樹脂混合物、変色防止剤、密着増進剤、防錆耐食剤、着色顔料、顔料安定化剤を表7に記載の含量で混合して表面処理組成物を製造した。上記表面処理組成物は、水49重量%及びN-エチル-2-ピロリドン21重量%の混合溶媒(組成物の総重量に対して70重量%)を含む。
【0103】
上記製造された表面処理組成物の溶液安定性を評価した。また、上記表面処理組成物を上述の試験用試験片に塗布した後、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性、光沢度を評価した。評価結果を下記表7に記載した。
【0104】
【0105】
上記表7を参照すると、顔料安定化剤の含量が、本発明が提案する含量を満たす発明例20~22は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。しかし、過度に少ない顔料安定化剤を含む比較例13は溶液安定性が不良な果を示し、過度に多い顔料安定化剤を含む比較例14は光沢度が不良な結果を示した。
【0106】
実施例8:皮膜層の厚さ及び乾燥温度による物性の変化
試験用試験片に、発明例2による表面処理組成物をバー(BAR)コーティングし、熱風乾燥炉で乾燥させた。皮膜層の厚さとPMT温度を下記表8に記載のように制御しながら、試験片の平板耐食性、加工部耐食性、耐黒変性、耐アルカリ性を評価した。
【0107】
【0108】
上記表8に示すように、1~10μmの厚さの皮膜層が形成された発明例23~26は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。一方、形成された皮膜が過度に薄い比較例15は、平板耐食性、耐黒変性及び耐アルカリ性において普通(△)の結果を示し、加工部耐食性は不良な結果を示した。一方、過度に厚い皮膜が形成された比較例16は、加工部耐食性が不良な結果を示し、発明例26と比較して向上する物性がないため、経済的な観点から10μmを超える皮膜厚さは要求されない。一方、上記表8に示すように、70~250℃で皮膜を乾燥させて皮膜層を形成した発明例27~29は、全ての物性において良好(○)以上の結果を示した。一方、乾燥温度が過度に低い比較例17は、皮膜が十分に乾燥しなかったため、全ての物性において不良な結果を示した。一方、乾燥温度が過度に高い比較例18は、空気冷却過程(水冷)中に鋼板で発生した水蒸気の結露現象による鋼板上のヒュームドロップにより耐黒変性が不良な結果を示した。以上のように、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは、当技術分野における通常の知識を有する者には自明である。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の固形分100重量%に対して、
高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂及びエポキシ補助樹脂を含む樹脂混合物70~90重量%;
変色防止剤0.5~10重量%;
密着増進剤0.5~10重量%;
防錆耐食剤0.5~10重量%;
着色顔料0.1~2重量%;及び
顔料安定化剤0.1~1重量%を含む、表面処理組成物。
【請求項2】
高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂、低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂及びエポキシ補助樹脂は、1:4.5:4.5~9:0.5:0.5の重量比で混合される、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項3】
高分子量のポリシリコン変性ポリウレタン主剤樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が-20℃~-10℃であり、重量平均分子量(Mw)が100,000~200,000である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項4】
低分子量のポリシリコン変性ポリウレタン補助樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が-30℃~-20℃であり、重量平均分子量(Mw)が30,000~70,000である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項5】
前記エポキシ補助樹脂は、エポキシド当量比が450~550g/eqであり、重量平均分子量(Mw)が450~4,000である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項6】
変色防止剤は、モリブデン酸アンモニウム及びモリブデン酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の表面処
理組成物。
【請求項7】
密着増進剤は、リン酸エステル、リン酸アンモニウム及びアンモニウムジルコニウムカーボネートからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項8】
防錆耐食剤は、リン酸系防錆剤、フッ素系防錆剤、バナジウム系防錆剤、セリウム塩系防錆剤及びセレン塩系防錆剤からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の表面処
理組成物。
【請求項9】
着色顔料は、チタン、鉛、鉄、銅及びクロムからなる群から選択される1種以上の無機顔料;及びアゾ系有機顔料;からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項10】
前記顔料安定化剤は、カルボキシル系高分子である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項11】
表面処理組成物は溶媒をさらに含み、
表面処理組成物の総重量を基準として、固形分含量が20~40重量%であり、残部溶媒である、請求項1から10のいずれか一項に記載の表面処理組成物。
【請求項12】
溶媒は、溶媒の総重量を基準として、N-エチル-2-ピロリドン(NEP、N-Ethyl-2-pyrrolidone)20~40重量%及び残部水を含む、請求項11に記載の表面処理組成物。
【請求項13】
鋼板;
前記鋼板の少なくとも一面に形成された三元系溶融亜鉛合金めっき層;及び
前記三元系溶融亜鉛合金めっき層上に形成された表面処理皮膜層を含み、
前記表面処理皮膜層は、請求項1から10のいずれか一項に記載の表面処理組成物から形成されたものである、表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項14】
三元系溶融亜鉛合金めっき層は、界面に形成されたAl濃化層を含み、
前記Al濃化層の占有面積率は70%~100%である、請求項13に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項15】
三元系溶融亜鉛合金めっき層は、Al:0.2~15重量%、Mg:0.5~3.5重量%、残部Zn及び不可避不純物を含む、請求項13に記載の三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項16】
表面処理皮膜層は、厚さが1μm~10μmである、請求項13に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板。
【請求項17】
三元系溶融亜鉛合金めっき層が形成された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板上に請求項1から10のいずれか一項に記載の表面処理組成物をコーティングする段階;及び
前記表面処理組成物を乾燥して表面処理皮膜層を形成する段階を含む、表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項18】
表面処理組成物を2.5μm~50μmの厚さでコーティングする、請求項17に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項19】
表面処理皮膜層を形成する段階で70~250℃に昇温して表面処理組成物を乾燥する、請求項17に記載の表面処理された三元系溶融亜鉛合金めっき鋼板の製造方法。
【国際調査報告】