(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤のナノポリマーを使用したがん及び自己免疫疾患の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20241010BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20241010BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241010BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241010BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241010BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20241010BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241010BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241010BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20241010BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20241010BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20241010BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241010BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241010BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241010BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20241010BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20241010BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20241010BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20241010BHJP
A61K 31/4045 20060101ALI20241010BHJP
A61K 31/165 20060101ALI20241010BHJP
A61K 31/18 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K9/51
A61K47/34
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/02
A61P35/02
A61K45/06
A61P1/16
A61P15/00
A61P3/10
A61P11/06
A61P3/04
A61P25/16
A61P25/28
A61P17/00
A61P25/00
A61P9/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P21/00
A61P1/04
A61P21/04
A61P5/14
A61P7/06
A61K38/12
A61K31/4045
A61K31/165
A61K31/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522438
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 US2022046905
(87)【国際公開番号】W WO2023064634
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】322011885
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ バージニア パテント ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF VIRGINIA PATENT FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】722 Preston Avenue,Suite 107,Charlottesville,VA 22903(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ケスター, マーク
(72)【発明者】
【氏名】フェイス, デーヴィッド ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】イレンドゥラ, アヌラーダ
(72)【発明者】
【氏名】ローラン, トーマス ピー., ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】マナバラン, ジョン サニル
(72)【発明者】
【氏名】マーチ, エンリカ
(72)【発明者】
【氏名】オコナー, オーウェン
(72)【発明者】
【氏名】パル, イプシタ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC27
4C076EE24
4C084AA02
4C084AA03
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4C084BA26
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4C086AA01
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4C086ZA70
4C086ZA75
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4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC21
4C086ZC35
4C206AA01
4C206GA13
4C206GA28
4C206JA13
(57)【要約】
ナノ粒子内にカプセル化され、及び/又はさもなければナノ粒子と会合された、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)を含む組成物が提供される。幾つかの実施態様では、HDACiは、ロミデプシン、ボリノスタット、ベリノスタット、パノビノスタット、及び/又はキダミドである。幾つかの実施態様では、ナノ粒子はポリ(D,L-ラクチド)-PEG-メチルエーテル(mPEG-PDLLA)ナノポリマーである。また、ここに開示される組成物の有効量を投与することによって、限定されないが腫瘍及び/又はがんなどの、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤に対する感受性と関連する疾患、障害、及び/又は状態を治療するための方法;並びにヒストン脱アセチル化酵素阻害剤に対する感受性と関連する腫瘍及び/又はがんの成長、増殖、及び/又は転移を阻害するための方法であって、限定されないが、化学療法剤などの少なくとも一種の追加の治療活性剤を投与することを任意選択的に含みうる方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子内にカプセル化され、及び/又はさもなければナノ粒子と会合された、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)を含む組成物。
【請求項2】
HDACiが、ボリノスタット、ロミデプシン、ベリノスタット、及びパノビノスタット、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、任意選択的にHDACiがロミデプシンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
一又は複数種のポリマー及び/又は一又は複数種の界面活性剤を含む、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
一又は複数種のポリマーが、ポリエステル、任意選択的にPDLLA、PLGA、PLA、及び/又はPCL、それらのコポリマー、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ポリマーが、合成ポリマー;生分解性ポリマー;生体適合性ポリマー;両親媒性ポリマー;ジブロックコポリマー;及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含む、請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
ポリマーが、親水性のPEG鎖、任意選択的にエンドキャップとして、メトキシPEG、PEG-カルボン酸、PEG-ヒドロキシル、及び/又はPEGアミンを含み、かつ2K~10Kの鎖長範囲を有する、請求項3から5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ポリマーが、疎水性コア形成ポリマーであり、任意選択的にPDLLA、PLGA、PLA、及び/又はPCLからなる群から選択される疎水性コア形成ポリマーである、請求項3から5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ナノ粒子が、メチルエーテル-PEGポリラクチド-co-グリコリド(mPEG-PLGA,50:50)を含む、請求項1から7の何れか一項に記載の組成物。
【請求項9】
相添加モード、HDACi/ポリマー比、HDACi/界面活性剤比、溶媒/貧溶媒比、添加速度、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される一又は複数のパラメーターが最適化される、請求項1から8の何れか一項に記載の組成物。
【請求項10】
(a)HDACi/ポリマー比が、約1:10から約1:100W/W、任意選択的に1:10から約1:50W/Wの範囲であり;
(b)HDACi/界面活性剤比が、約1:0.05から約1:0.2W/Wの範囲であり;
(c)溶媒/貧溶媒比が、約1:10から約1:1の範囲であり、任意選択的に貧溶媒が、水、PBS、又は別のイオン性緩衝液からなる群から選択され;及び/又は
(d)添加速度が、約10から約500mL/時間、任意選択的に約10から約50mL/時間の範囲である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)に対する感受性と関連する疾患、障害、又は状態を治療するための方法であって、それを必要とする対象に有効量の請求項1から10の何れか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項12】
HDACiに対する感受性と関連する疾患、障害、又は状態が、腫瘍及び/又はがん、炎症性疾患、障害、又は状態;自己免疫疾患、障害、又は状態;或いはそれらの任意の組み合わせである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
腫瘍及び/又はがんが、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、多発性骨髄腫、大顆粒リンパ球性白血病(LGLL)、及び成人T細胞白血病/リンパ腫からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)に対する感受性と関連する腫瘍及び/又はがんの成長、増殖、及び/又は転移を阻害するための方法であって、それを必要とする対象に有効量の請求項1から10の何れか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項15】
腫瘍及び/又はがんが、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、多発性骨髄腫、大顆粒リンパ球性白血病(LGLL)、及び成人T細胞白血病/リンパ腫からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも一種の追加の治療活性剤を対象に投与することを更に含む、請求項14から15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも一種の追加の治療活性剤が化学療法剤である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
化学療法剤が、シクロホスファミド、ドキソルビシン;ビンクリスチン、プレドニゾン、アザシチジン、デシタビン、クラドリビン、メトトレキサート、プララトレキサート、及びシクロスポリンA、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)に対する感受性と関連する炎症性及び/又は自己免疫疾患、障害、又は状態を治療するための方法であって、それを必要とする対象に有効量の請求項1から10の何れか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項20】
炎症性及び/又は自己免疫疾患、障害、又は状態が、脂肪肝疾患、子宮内膜症、1型及び2型糖尿病、炎症性腸疾患、喘息、肥満、アルツハイマー及びパーキンソン病、強直性脊椎炎(AS)、抗リン脂質抗体症候群(APS)、痛風、炎症性関節炎センター、筋炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE、狼瘡)、血管炎、アジソン病、セリアックスプルー病(グルテン過敏性腸症)、皮膚筋炎、バセドウ病、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血、反応性関節炎、乾癬/乾癬性関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、1型糖尿病、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、自己免疫性血管炎、ギラン・バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄性多発神経炎からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも一種の追加の治療活性剤を対象に投与することを更に含む、請求項19又は請求項20に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも一種の追加の治療活性剤が、抗炎症及び/又は免疫抑制剤である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
薬物分子を含むナノ粒子を製造する方法であって、
(a)薬物分子と一又は複数種のポリマーを含む最初又はその後の反応混合物の二つ以上のパラメーターを一又は複数回の反復で変化させる工程;
(b)工程(a)の変化に基づいて、更なる反応混合物に対してパラメーターの所望の組み合わせを選択する工程;及び
(c)更なる反応混合物から薬物分子を含むナノ粒子を沈殿させる工程
を含む、方法。
【請求項24】
反応混合物が、溶媒、非溶媒、界面活性剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される反応混合物を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
溶媒が有機溶媒である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
非溶媒が、水性溶媒、水、又はPBS緩衝液である、請求項24及び25に記載の方法。
【請求項27】
相添加モード、薬物/ポリマー比、薬物/界面活性剤比、溶媒/貧溶媒比、添加速度、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される一又は複数のパラメーターを最適化することを含む、請求項23から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
薬物がHDACiであり、任意選択的にロミデプシンである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、
(a)HDACi/ポリマー比が、約1:10から約1:100W/W、任意選択的に1:10から約1:50W/Wの範囲であり;
(b)HDACi/界面活性剤比が、約1:0.05から約1:0.2W/Wの範囲であり;
(c)溶媒/貧溶媒比が、約1:10から約1:1の範囲であり、任意選択的に、貧溶媒が、水、PBS、又は別のイオン性緩衝液からなる群から選択され;及び/又は
(d)添加速度が、約10から約500mL/時間、任意選択的に約10から約50mL/時間の範囲である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
この出願は、2021年10月15日に出願された米国仮特許出願第63/256246号の優先権及び利益を主張し、その開示全体を出典明示によりここに援用する。
【0002】
[技術分野]
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、特にロミデプシンを用いて、疾患、障害、及び状態を治療するための方法に関する。幾つかの実施態様では、疾患、障害、又は状態は腫瘍及び/又はがんである。
【背景技術】
【0003】
ロミデプシン((1S,4S,7Z,10S,16E,21R)-7-エチリデン-4,21-ジイソプロピル-2-オキサ-12,13-ジチア-5,8,20,23-テトラアザビシクロ[8.7.6]トリコサ-16-エン-3,6,9,19,22-ペンタオン;イストダックス、デプシペプチド、FK228、FR901228、NSC630176としても知られる)は、元々はクロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)株968から単離された二環式デプシペプチドである(Ueda等,1994)。ロミデプシンは、所定の種類のリンパ腫の治療に承認されているヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤である。インビトロ系とインビボ系の双方において、ロミデプシンは、遺伝子発現の誘導又は抑制、細胞周期停止、分化、細胞増殖阻害、アポトーシスの誘導、トランスフォーム細胞の形態復帰、及び血管新生の阻害を含む多面発現活性を有することが示されている。ロミデプシン曝露は、腫瘍発生、炎症、自己免疫疾患、及び免疫調節効果に関連する多くの重要な調節遺伝子の誘導と抑制の双方を調節することが示されている。
【0004】
殆どのHDAC阻害剤は、クラスI(HDAC1、2、3、及び8)HDACとクラスII(HDAC4、5、6、7、9、及び10)HDACの双方を阻害することを意味する汎HDAC阻害剤である。加えて、それらは、HDAC11と呼ばれる唯一のクラスIV HDACを阻害する。臨床的に利用可能なHDAC阻害剤は、クラスIII HDAC(サーチュイン(Sirtuins又はSirts))を阻害しない。HDACはヒストンのアセチル化リジン残基からのアセチル基の除去を触媒し、クロマチン凝縮の変化と最終的には遺伝子発現の調節をもたらし、これらの酵素の阻害剤への曝露後に見られる細胞への影響の多くを誘発する。
【0005】
様々なクラスのHDAC酵素のうち、ロミデプシンは、HDAC1、2、3、及び8を含むクラスI HDAC酵素を最も強力に阻害する。HDAC阻害剤への曝露後に見られるクロマチン凝縮の変化は、ユークロマチンとして知られるオープンクロマチン構造を維持することによってDNAを「転写活性」にする。ヒストンの脱アセチル化によって促進されるその凝縮状態では、クロマチンは転写抑制状態に維持される。ロミデプシンは、多数の遺伝子の発現を誘導し抑制する。マイクロアレイ解析を使用して腫瘍細胞株で調べた7000を超える遺伝子のうち、ロミデプシンへの曝露後に約100が上方制御され、別の100が下方制御された。変化した遺伝子発現のパターンは様々で、(i)細胞状況;(ii)薬物の濃度;(iii)薬物への曝露期間;及び(iv)併用医薬を含む、多くの要因に依存しうる。一貫して上方制御された遺伝子には、p21WAF/Cip1、インターロイキン-8(IL-8)、及びカスパーゼ9が含まれる一方、一貫して下方制御された遺伝子には、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)及びサイクリンA2が含まれていた(Sasakawa等,2005;Hoshino等,2007)。これらの遺伝子の多くは、シグナル伝達、増殖阻害、及びアポトーシスにおける重要な調節機能と関連するタンパク質をコードしている。
【0006】
重要なことは、HDACの脱アセチル化の阻害に加えて、HDAC阻害剤は、非ヒストンタンパク質のアセチル化状態に影響を及ぼし、その翻訳後状態及び限定されないが免疫調節効果を含むその後の機能に影響を与える場合があることである(Ververis等,2013)。これらの効果の範囲はあまりよく理解されていないが、Bcl-6及びp53を含む、がん生物学に関与する重要なタンパク質が含まれている。
【0007】
多数の研究により、複数の腫瘍細胞株にわたるロミデプシンのインビトロ及びインビボ活性が評価されている。ロミデプシンは、ナノモル濃度で、リンパ腫、白血病、前立腺がん、腎臓がん、結腸がん、肺がん、胃がん、乳がん、膵臓がん、並びにメラノーマを含む血液腫瘍株と固形腫瘍株の両方に対して強力な抗がん活性を示した。ヒトB細胞慢性リンパ性白血病細胞(CLL)、B細胞前リンパ球性白血病細胞(PLL)、T細胞リンパ腫細胞、食道がん細胞及び膵臓がん細胞、並びに多発性骨髄腫(MM)細胞における抗増殖活性及びアポトーシス促進活性の誘導が、1から500nMの範囲の濃度で見られた。ロミデプシンはまた、ヒトの肺、胃、乳房、及び結腸癌細胞に対して強力な細胞傷害性効果を示したが、正常ヒト細胞に対しては弱い細胞傷害性効果を示した。
【0008】
インビボでのロミデプシンの有効性は、マウスでの多数のヒト異種移植片研究で調べられている。これらの研究では、ロミデプシンは、上皮組織、間葉系組織、及び血液系組織由来のものを含む複数のヒト腫瘍型に対して広範な抗腫瘍活性を示した(例えば、Ueda等,1994を参照)。前臨床活性は臨床活性の優れた予測因子ではなかったが(つまり、その薬物は臨床で実証されているよりも多くの前臨床がんモデルで活性である)、ロミデプシン、そして実際にはHDAC阻害剤とみなされるこのクラスの薬物が、T細胞悪性腫瘍にわたって特有の系譜選択活性を持つことが証明されており、その起源の細胞に関係なく、所定の免疫学的治療及び他のエピジェネティック薬物を補完しうることは明らかである。
【発明の概要】
【0009】
この概要は、本開示の主題の幾つかの実施態様を列挙し、多くの場合、これらの実施態様の変形及び置換を列挙する。この概要は、多数の多様な実施態様の単なる例示に過ぎない。所与の実施態様の一又は複数の代表的な特徴の言及も同様に例示的なものである。そのような実施態様は、典型的には、言及された特徴の有無にかかわらず存在しうる;同様に、その特徴は、この概要に列挙されているかどうかにかかわらず、本開示の主題の他の実施態様に適用することができる。過度の繰り返しを避けるため、この概要では、そのような特徴の全ての可能な組み合わせを列挙したり、示唆したりするものではない。
【0010】
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、ナノ粒子内にカプセル化され、及び/又はさもなければナノ粒子と会合された、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる組成物に関する。幾つかの実施態様では、HDACiは、ボリノスタット、ロミデプシン、ベリノスタット、パノビノスタット、及びキダミド、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、任意選択的に、HDACiはロミデプシンである。幾つかの実施態様では、ナノ粒子はポリ(D,L-ラクチド)-PEG-メチルエーテル(mPEG-PDLLA)ナノ粒子である。幾つかの実施態様では、本開示の主題の組成物は、一又は複数種のポリマー及び/又は一又は複数種の界面活性剤を含む。幾つかの実施態様では、一又は複数種のポリマーは、ポリエステル、任意選択的にPDLLA、PLGA、PLA、及び/又はPCL、それらのコポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施態様では、ポリマーは、合成ポリマー;生分解性ポリマー;生体適合性ポリマー;両親媒性ポリマー;ジブロックコポリマー;及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含む。幾つかの実施態様では、ポリマーは、親水性のPEG鎖、任意選択的にエンドキャップとして、メトキシPEG、PEG-カルボン酸、PEG-ヒドロキシル、及び/又はPEGアミンを含み、かつ2K~10Kの鎖長範囲を有する。幾つかの実施態様では、ポリマーは疎水性コア形成ポリマーであり、任意選択的にPDLLA、PLGA、PLA、及び/又はPCLからなる群から選択される疎水性コア形成ポリマーである。幾つかの実施態様では、ナノ粒子は、メチルエーテル-PEGポリラクチド-co-グリコリド(mPEG-PLGA,50:50)を含む。幾つかの実施態様では、相添加モード、HDACi/ポリマー比、HDACi/界面活性剤比、溶媒/貧溶媒比、添加速度、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される組成物の一又は複数のパラメーターが最適化される。幾つかの実施態様では、HDACi/ポリマー比は、約1:10から約1:100W/W、任意選択的に1:10から約1:50W/Wの範囲であり;HDACi/界面活性剤比は、約1:0.05から約1:0.2W/Wの範囲であり;溶媒/貧溶媒比は、約1:10から約1:1の範囲であり、任意選択的に、貧溶媒は、水、PBS、又は別のイオン性緩衝液からなる群から選択され;及び/又は添加速度は、約10から約500mL/時間、任意選択的に約10から約50mL/時間の範囲である。
【0011】
本開示の主題は、また、幾つかの実施態様では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤に対する感受性と関連する疾患、障害、及び/又は状態を治療するための方法にも関する。幾つかの実施態様では、本方法は、ナノ粒子内にカプセル化され、及び/又はさもなければナノ粒子と会合された、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる有効量の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤に対する感受性と関連する疾患、障害、及び/又は状態は、腫瘍及び/又はがんである。幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんは、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、多発性骨髄腫、大顆粒リンパ球性白血病(LGLL)、及び成人T細胞白血病/リンパ腫からなる群から選択される。
【0012】
本開示の主題は、また、幾つかの実施態様では、ここに開示された組成物の有効量をそれを必要とする対象に投与することによって、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤に対する感受性と関連する疾患、障害、及び/又は状態を治療するための方法にも関する。幾つかの実施態様では、HDACiに対する感受性と関連する疾患、障害、及び/又は状態は、腫瘍及び/又はがん、炎症性疾患、障害、及び/又は状態;自己免疫疾患、障害、及び/又は状態;或いはそれらの任意の組み合わせである。幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんは、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、多発性骨髄腫、大顆粒リンパ球性白血病(LGLL)、及び成人T細胞白血病/リンパ腫からなる群から選択される。
【0013】
本開示の主題は、また、幾つかの実施態様では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤に対する感受性と関連する腫瘍及び/又はがんの成長、増殖、及び/又は転移を阻害するための方法にも関する。幾つかの実施態様では、本方法は、ナノ粒子内にカプセル化され、及び/又はさもなければナノ粒子と会合された、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる有効量の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんは、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される。幾つかの実施態様では、本開示の主題は、少なくとも一種の追加の治療活性剤を対象に投与することを更に含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、少なくとも一種の追加の治療活性剤は化学療法剤である。幾つかの実施態様では、化学療法剤は、シクロホスファミド、ドキソルビシン;ビンクリスチン、プレドニゾン、アザシチジン、デシタビン、クラドリビン、メトトレキサート、プララトレキサート、及びシクロスポリンA、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0014】
本開示の主題は、また、幾つかの実施態様では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)に対する感受性と関連する腫瘍及び/又はがんの成長、増殖、及び/又は転移を阻害するための方法にも関する。幾つかの実施態様では、本方法は、ここに開示される組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんは、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、多発性骨髄腫、大顆粒リンパ球性白血病(LGLL)、及び成人T細胞白血病/リンパ腫からなる群から選択される。
【0015】
幾つかの実施態様では、本開示の方法は、少なくとも一種の追加の治療活性剤を対象に投与することを更に含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、少なくとも一種の追加の治療活性剤は化学療法剤である。幾つかの実施態様では、化学療法剤は、シクロホスファミド、ドキソルビシン;ビンクリスチン、プレドニゾン、アザシチジン、デシタビン、クラドリビン、メトトレキサート、プララトレキサート、及びシクロスポリンA、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0016】
本開示の主題は、また、幾つかの実施態様では、炎症性及び/又は自己免疫疾患、障害、又は状態を治療するための方法にも関する。幾つかの実施態様では、炎症性及び/又は自己免疫疾患、障害、又は状態は、脂肪肝疾患、子宮内膜症、1型及び2型糖尿病、炎症性腸疾患、喘息、肥満、アルツハイマー及びパーキンソン病、強直性脊椎炎(AS)、抗リン脂質抗体症候群(APS)、痛風、炎症性関節炎センター、筋炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE、狼瘡)、血管炎、アジソン病、セリアックスプルー病(グルテン過敏性腸症)、皮膚筋炎、バセドウ病、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血、反応性関節炎、関節リウマチ、乾癬/乾癬性関節炎、多発性硬化症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、1型糖尿病、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、自己免疫性血管炎、ギラン・バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄性多発神経炎からなる群から選択される。幾つかの実施態様では、本開示の方法は、本開示の主題の組成物を少なくとも一種の追加の治療活性剤と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。幾つかの実施態様では、少なくとも一種の追加の治療活性剤は、抗炎症及び/又は免疫抑制剤である。
【0017】
本開示の主題は、また、幾つかの実施態様では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)に対する感受性と関連する炎症性及び/又は自己免疫疾患、障害、及び/又は状態を治療するための方法にも関する。幾つかの実施態様では、方法は、ここに開示される組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、炎症性及び/又は自己免疫疾患、障害、又は状態は、脂肪肝疾患、子宮内膜症、1型及び2型糖尿病、炎症性腸疾患、喘息、肥満、アルツハイマー及びパーキンソン病、強直性脊椎炎(AS)、抗リン脂質抗体症候群(APS)、痛風、炎症性関節炎センター、筋炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE、狼瘡)、血管炎、アジソン病、セリアックスプルー病(グルテン過敏性腸症)、皮膚筋炎、バセドウ病、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血、反応性関節炎、乾癬/乾癬性関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、1型糖尿病、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、自己免疫性血管炎、ギラン・バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄性多発神経炎からなる群から選択される。
【0018】
幾つかの実施態様では、本開示の方法は、少なくとも一種の追加の治療活性剤を対象に投与することを更に含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、少なくとも一種の追加の治療活性剤は、抗炎症及び/又は免疫抑制剤である。
【0019】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、一又は複数種の薬物分子を含むナノ粒子を製造するための方法にも関する。幾つかの実施態様では、本方法は、(a)薬物分子と一又は複数種のポリマーを含む最初又はその後の反応混合物の二つ以上のパラメーターを一又は複数回の反復で変化させる工程;(b)工程(a)の変化に基づいて、更なる反応混合物に対してパラメーターの所望の組み合わせを選択する工程;及び(c)更なる反応混合物から薬物分子を含むナノ粒子を沈殿させる工程を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる。幾つかの実施態様では、反応混合物は、溶媒、非溶媒、界面活性剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される反応混合物を更に含む。幾つかの実施態様では、溶媒は有機溶媒である。幾つかの実施態様では、非溶媒は、水性溶媒、水、又はPBS緩衝液である。
【0020】
幾つかの実施態様では、本開示の方法は、相添加モード、薬物/ポリマー比、薬物/界面活性剤比、溶媒/貧溶媒比、添加速度、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される一又は複数のパラメーターの最適化を含む。幾つかの実施態様では、薬物はHDACiであり、任意選択的にロミデプシンである。幾つかの実施態様では、HDACi/ポリマー比は、約1:10から約1:100W/W、任意選択的に1:10から約1:50W/Wの範囲であり;HDACi/界面活性剤比は、約1:0.05から約1:0.2W/Wの範囲であり;溶媒/貧溶媒比は、約1:10から約1:1の範囲であり、任意選択的に、貧溶媒は、水、PBS、又は別のイオン性緩衝液からなる群から選択され;及び/又は添加速度は、約10から約500mL/時間、任意選択的に約10から約50mL/時間の範囲である。
【0021】
従って、本開示の主題の目的は、限定されないが、腫瘍、がん、炎症性疾患、障害、及び/又は状態、及び自己免疫疾患、障害、及び/又は状態を含む、ヒストン脱アセチル化酵素生物活性感受性と関連する疾患、障害、及び/又は状態を治療するための組成物及び方法を提供することである。
【0022】
この目的及び他の目的は、本開示の主題によって全部又は一部が達成される。更に、本開示の主題の目的を上述したが、本開示の主題の他の目的及び利点は、次の説明、図面、及び実施例(これらは出典明示により援用され、明細書の一部を形成する)を検討すれば当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】PDLLAポリマーの化学構造。メトキシポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(DL-ラクチド)mPEG-P(DL)LA;(Mw約5000:10000Da)。
【
図2A】光散乱データ。ロミデプシンを含む粒子の粒径分布を示す代表的なDLSグラフ。(
図2A)中性リポソーム。
【
図2B】5%コレステロールを含む中性リポソーム。
【
図3】50nmスケールバーでのm-PEGナノロミデプシン(NanoRomi)PDLLA(左パネル)及びゴーストmPEG-PDLLA(右パネル)のクライオ電子顕微鏡画像。
【
図4】ナノロミデプシン製剤の薬物濃度。レーン1は中性リポソーム;レーン2は5%コレステロールを含む中性リポソーム;レーン3は室温でのポリマーナノロミデプシン粒子、及びレーン4は4℃でのポリマーナノロミデプシン粒子。
【
図5A】がん細胞株におけるナノロミデプシンポリマーの用量及び時間依存性反応。(
図5A)5種の異なるヒトがん細胞株を、ある濃度範囲のロミデプシン及びナノロミデプシンポリマーで処置し、60時間でCELL TITER GLO(登録商標)アッセイを使用して細胞生存率を評価。IC
50値は、GraphPad Prismソフトウェアを使用して細胞株及び時間に基づいて定量した。
【
図5B】各時点での8細胞株に対するロミデプシン及びナノロミデプシンポリマーのIC
50(nM)(
図5Bの各パネルの4つのデータ点の各セットにおいて左から右へそれぞれ30、60、及び96時間のバー)。
【
図6A】ナノロミデプシンポリマーは、がん細胞株においてアポトーシスを誘導する。(
図6A)HH細胞株のロミデプシン及びナノロミデプシン処置後30時間におけるアポトーシスマーカーとしての切断型ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の解析を示す代表的なフローサイトメトリードットプロット。
【
図6B】ロミデプシン、ナノロミデプシンmPEG PDLLA PBS、ナノロミデプシンmPEG PDLLA H
2O、及びナノロミデプシンmPEG PLGAでの処置後30時間における、アポトーシスの指標である切断型PARPを発現するHH細胞のパーセンテージの増加を濃度依存的に示すグラフ。
【
図7】ナノロミデプシンmPEG PDLLAは、ナノロミデプシンポリマーの中で最も強力である。試験した全ての細胞株に対してIC
50活性に基づいて、ロミデプシンと全3種のナノロミデプシンポリマーの効力を比較するヒストグラムバー。各ドットはがん細胞株を表す。
【
図8】ナノロミデプシンPDLLAは、ヒストンタンパク質H3及びH4のアセチル化を誘導する。(
図8A)ロミデプシン、及びナノロミデプシンmPEG PDLLA H
2Oでの処置から30時間後のHH細胞におけるAcH3及びAcH4の発現(すなわち、ヒストン3[H3]及びヒストン4[H4]のアセチル化[Ac])のレベルの濃度依存的変化を示す代表的なフローサイトメトリーヒストグラム(上のパネル)。ロミデプシン及びナノロミデプシンmPEG PDLLA H
2Oでの処置から30時間後のHH細胞における、濃度依存的に平均蛍光強度(MFI)によって測定したAcH3及びAcH4の発現のレベルの変化を示す棒グラフ(下のパネル)(
図8B)漸増濃度のロミデプシン及びナノロミデプシンPDLLAでの処置後のAcH3及びAcH4に対するHH細胞のウェスタンブロット解析では、HH細胞株は30時間及び高用量(3nM及び30nM)の両処置でH3及びH4のアセチル化レベルの増加を示した。
【
図9】正常細胞におけるロミデプシン及びナノロミデプシンPDLLAポリマーの用量及び時間依存的反応。3体の健康なドナー由来のPBMCを、ある濃度範囲のロミデプシン及びナノロミデプシンPDLLAで処置し、24、48、及び72時間でCELL TITER GLO(登録商標)アッセイを使用して細胞生存率を評価した。
【
図10】ナノロミデプシンPDLLAを使用したインビボでの有効性、薬物動態及び薬力学研究。ナノロミデプシンPDLLAとロミデプシンの間で治療反応を比較するための例示的なインビボ異種移植マウスモデル。
【
図11A】ナノロミデプシンPDLLAを使用した単回投与毒性研究。BALB/cマウスに、示された用量のロミデプシン及びナノロミデプシンPDLLA(NanoRomi)の単回処置を施した。ロミデプシン(
図11A及び11C)及びNanoRomi(
図11B及び11D)を投与されたマウスの元の体重に対するパーセンテージとしての体重。SEMと共に開始体重のパーセンテージとして体重変化のパーセンテージを示す(n=5マウス/群)。
図11A及び11B:腹腔内投与。
図11C及び11D:静脈内投与。
【
図12A】ナノロミデプシンPDLLAを使用した単回投与毒性研究。BALB/cマウスに、示された用量のロミデプシンとNanoRomiの単回処置を施した。ロミデプシン(
図12A及び12C)及びNanoRomi(
図12B及び12D)での処置後の臨床スコア(n=5マウス/群)がSEMと共に示される。
図12A及び12B:腹腔内投与。
図12C及び12D:静脈内投与。
【
図13】ナノロミデプシンPDLLAを使用した薬物動態研究。遊離ロミデプシン(丸)又はナノロミデプシンPDLLA(四角)での単回処置の(
図13A)腹腔内又は(
図13B)静脈内投与後の血漿中のロミデプシン濃度の血漿濃度-時間依存プロット。
【
図14A】ナノロミデプシンPDLLAを使用した反復投与毒性研究。BALB/cマウスにおいて、矢印で示した日に腹腔内投与経路によりロミデプシン又はナノロミデプシンPDLLAの2mg/kg処置をマウスに施した。SEMと共に開始体重のパーセンテージとしての体重変化のパーセンテージ(
図14A;n=5マウス/群)と、SEMと共に臨床スコア(
図14B;n=5マウス/群)が示される。
【
図15】ナノロミデプシンPDLLAを使用した有効性研究。H9-dtomato-ルシフェラーゼ腫瘍担持マウスにおいて、矢印で示した日に腹腔内投与経路によりロミデプシン又はナノロミデプシンPDLLA又は等量ビヒクル(PBS)又はゴーストナノ粒子の2mg/kg処置をマウスに施した。インビボで、ロミデプシン及びナノロミデプシンPDLLA処置後の反応を判定するためにBLI画像を取得した。全てのコホートは、移植後7、10、14、及び17日目(矢印)に、薬物投与前にLagoX Spectrum Imaging Systemを使用して画像化した。画像の取得後、ヒトH9異種移植片の平均BLI曲線を作成した。ここで、y軸は全光束(光子/秒)を表し、x軸は時間(日数)関数を表す。
【
図16】本開示の主題の例示的なナノ沈殿法。
図16Aは、伝統的なナノ沈殿法の例証図である。これは、本開示の主題の多面的アプローチと比較するために含めている。
図16Bは、多チャネルシリンジポンプ及び多点スターラーを使用したパラレルアプローチにおける製剤及びナノ粒子特性の操作パラメーター最適化の概略図である。ナノロミデプシン製剤のスケールアップには、
図16Bの最適化されたパラメーターを利用した。
【
図17】光散乱及びLC/MSデータ。溶媒スクリーニング:本開示のナノ沈殿法によるナノロミデプシンNP調製における溶媒の役割。テトラヒドロフラン(THF)、アセトン+10%ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル(ACN)、及びエタノール(EtOH)中で調製されたナノロミデプシンNPの粒子の平均粒径(
図17A)、多分散性(PDI;
図17B)、及びロミデプシン濃度(
図17C)の棒グラフが示される。
【
図18】追加の光散乱及びLC/MSデータ。ポリマーの濃度効果を示す、本開示の主題の例示的なナノ沈殿法におけるNP特性に関するポリマーの鎖長、ブロックポリマーに対するm-PEGの比、及びブロックポリマーの分子量を含むジブロックコポリマーの最適化。平均粒径(
図18A)、粒子のPDI(
図18B)、ナノロミデプシンの薬物濃度(
図18C)、及び薬物濃度に対する薬物:ポリマー比の影響(
図18D)の棒グラフが示される。
【
図19A-19B】追加の光散乱及びLC/MSデータ。薬物濃度の膜カットオフに関する遠心フィルター最適化、及びローダミン色素を使用して可視化した製剤からの過剰な未カプセル化薬物の除去。平均粒径(
図19A)、ナノロミデプシンの薬物濃度(
図19B)、粒子のPDI(
図19C)の棒グラフ、及びローダミン色素を使用して可視化された製剤からの遊離薬物の除去(
図19D)が示される。
【
図20A-20B】追加の光散乱及びLC/MSデータ。薬物濃度に対する貧溶媒の効果の最適化。平均粒径(
図20A)、粒子のPDI(
図20B)、ナノロミデプシンの薬物濃度(
図20C)、及び薬物濃度に対する有機対水比の影響(
図20D)の棒グラフが示される。
【
図21A】追加の光散乱及びLC/MSデータ。スケールアップされたナノロミデプシン製剤の複数バッチにおける、ゼータ電位及びクライオEMデータ及び薬物のサイズと濃度のバッチ間の再現性。平均粒径(
図21A)、粒子のPDI(
図21B)、及びナノロミデプシンの薬物濃度(
図21C)の棒グラフが示される。
図21D-1から21D-3は、ゴースト粒子(すなわち、ロミデプシンを含まないNP;
図21D-1)、水中で形成されたナノロミデプシンNP(
図21D-2)、及び1×PBS中で形成されたナノロミデプシンNP(
図21D-3)に対する強度によるサイズ分布及びゼータ電位分布を示す。
図21Eは、それぞれ
図21D-1から21D-3におけるように形成されたナノロミデプシン粒子の低温電子顕微鏡写真である。
【0024】
I.一般的考慮事項
I.A.がんの治療のためのHDAC阻害剤の臨床承認
ロミデプシン(イストダックス)は、2009年11月に米国食品医薬品局(FDA)によって、以前に少なくとも一回全身療法を受けた再発性又は難治性皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)患者の治療用として承認された。2011年5月に、以前に少なくとも一回治療を受けた再発性又は難治性(末梢T細胞リンパ腫)PTCL患者の治療に対して適用が拡大された。PTCLにおける適用は迅速承認に基づいて認められる一方(表1)、CTCLでの承認は完全承認として付与された。PTCLにおける適用は、否定的なランダム化第4相試験を受けて、当該薬物の現在のスポンサーによって最近撤回された。
【0025】
R/R PTCL患者の市場からのロミデプシンの除去は、これらの疾患の患者を治療する多くの研究者が、PTCL患者に対する効果的な治療法の欠如を遺憾に思っているため、残念な出来事とみなされている。単剤として、ロミデプシンは患者の約25%において反応を示した。この薬物の重要な有利な特徴は、そのベネフィットの持続期間が長いことであり、反応が見られる患者ではおよそ1年をはるかに超える場合がある。このベネフィットの持続期間は、R/R PTCLに対して他の最近承認された薬物でも見られ、薬物の臨床的に意味のある効果であると考えられる(この疾患において承認された他の薬物については表1を参照)。この否定的なランダム化第4相コミットメント試験では、ロミデプシンは、CHOP(すなわち、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、ヒドロキシダウノルビシン(Hydroxydaunorubicin)塩酸塩(塩酸ドキソルビシン)、ONCOVIN(登録商標)(ビンクリスチン)、及びプレドニゾン(Prednisone))と呼ばれる標準治療化学療法剤と組み合わせて検討された。このレジメンは過度の毒性を引き起こすことが判明し、一人の患者が耐えられる治療量が制限され、否定的な試験結果につながった可能性が高い。これは、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤のアザシチジンやデシタビン、抗フォール剤プララトレキサートなどの他の標的薬物と合理的に組み合わせた場合のロミデプシンの利点とは明らかに異なる。これらの組み合わせでは、ロミデプシンは強力な相乗効果を示し、それが臨床に応用され、二種の薬物の組み合わせがこの疾患における任意の他の薬物の組み合わせを上回る活性を生み出した。よって、ロミデプシンの真の価値は、必ずしも化学療法との組み合わせにあるのではなく、他の合理的に標的とされた薬物と組み合わせることにある可能性がある。
【0026】
I.B.ロミデプシンの毒性
2020年11月4日の時点で、約11985人のがん患者がロミデプシンの単独療法又は併用療法を受けている(Celgene,2021)。ロミデプシンに関連する最も一般的な有害反応は、消化器系(吐き気、嘔吐、下痢、及び便秘)、血液系(血小板減少症、白血球減少症[好中球減少症及びリンパ球減少症]、及び貧血)、並びに無力状態(無力症、疲労、倦怠感、及び嗜眠)である。ロミデプシンを用いた臨床試験では、肺炎、敗血症、並びにエプスタイン・バーウイルス及びB型肝炎ウイルスを含むウイルスの再活性化などの重篤で、時には致死的な感染症が報告されている。肝不全を引き起こすエプスタイン・バーウイルス感染の再活性化が、ロミデプシンのレシピエントで発生した。実際、EBVの再活性化は、添付文書の枠で囲まれた警告欄に表示されている。合衆国(US)、オーストラリア及びヨーロッパでの臨床試験において、B型肝炎ウイルス(HBV)感染の再活性化がPTCL患者の1.1%で発生した。ロミデプシンで一般的に見られる他の種類のイベントには、電解質異常(低マグネシウム血症、低カリウム血症、低カルシウム血症)、発熱、及び味覚障害が含まれうる。ロミデプシンによる過敏症反応の報告がまた少しある(Kakar等,2020)。
【0027】
ロミデプシンに関連する最も重篤な有害事象は心毒性であった。補正QTの延長並びに心電図(ECG)の幾つかの変化(T波及びST部分変化を含む)が臨床試験で報告されている。ロミデプシンによる最初の臨床経験では、不整脈によるグレード5の死亡例が数例あり、これは薬物間相互作用、つまり特定の制吐薬を含む組み合わせが原因であった。これらの心電図の変化は一過性であり、心血管の機能的変化又は症状とは関連していなかったが、この薬物の使用に関連した致死的な不整脈があったことは十分に証明されている。
【0028】
現在、ロミデプシンでは再発性又は難治性CTCL患者に対する承認は継続して持ち越されている。上で述べたように、以前は未治療のPTCL成人患者において実施されたロミデプシン+CHOPベース化学療法の最近報告されたランダム化第3相(第4相コミットメントの一部)(Ro-CHOP試験と呼ばれる;ロミデプシン(Romidepsin)、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、ヒドロキシダウノルビシン(Hydroxydaunorubicin)塩酸塩(塩酸ドキソルビシン)、ONCOVIN(登録商標)(ビンクリスチン)、及びプレドニゾン(Prednisone);NCT01796002)からのデータは、無増悪生存期間の改善を示す主要評価項目を満たさなかったため、否定的として報告された(PFS;Bachy等,2020)。Ro-CHOPの毒性プロファイルは実質的であり、この特定の組み合わせに関する第Ib/II相データ試験と一致することが見出されており、予期せぬ所見はなかった。ロミデプシンの追加による治療下で発現した有害事象(TEAE)の発生率が高いため、6サイクルのCHOPを適切に投与する能力が妨げられた。従って、CHOP+ロミデプシンの併用は、以前は未治療のPTCL患者に対する標準治療に進歩をもたらすものではない(Bachy等,2020)。これらの総合的な要因、最近の市場からの撤退、化学療法との併用で見られる過剰な毒性が、ロミデプシンがPTCL患者の重要な満たされていない医療ニーズに対処するという事実と相まって、その有効性を高めながらその傾向を修正する薬物のバージョンを開発する前例のない機会を生み出している。
【0029】
I.C.ナノポリマーロミデプシンの利点
ナノ医薬は、薬物動態、バイオアベイラビリティ、及び毒物学的プロファイル、並びに標的化送達を改善する小分子治療薬のためのナノスケール「ソリューション」を提供する。加えて、我々のグループは、その治療指数を高め、IP保護を延長するために、抗がん薬、神経薬、及び代謝薬のナノ製剤の開発でも最先端にいる。ロミデプシンの物理化学的特性及び関連する薬物毒性を改善するために、薬物のナノテクノロジー由来バージョンの最適化は、ロミデプシンを送達するための非常に有望なアプローチであると考えられるが、これは、効率的、特異的、及び制御された形でのこの薬物の充填と放出を可能にするためである。その小さい粒径、大きな表面積対体積比、コンビナトリアルナノ治療薬の創製能力、その表面上の標的リガンドの多価性を達成する能力などのナノ粒子の独特の特性が、様々ながんのためのナノ粒子ベースの薬物送達に優れた利点をもたらす。加えて、ナノ治療薬は腫瘍微小環境に有利な傾向が実質的に大きく、オフターゲットの毒性を軽減又は完全に排除するという利点があることが広く観察されている。これらの原理に基づいて、ロミデプシンのナノポリマーはロミデプシンの課題の多くを解決することができ、おそらく優れた安全性プロファイル、顕著に改善されたスケジュール、そしておそらく優れた活性と有効性を生み出すことができると考えられる。安全性プロファイルの向上により、ロミデプシンと他の効果的な治療薬を組み合わせる機会が大幅に広がると我々は予想する。
【0030】
我々のグループは、新規なナノ治療用ポリマーを含むロミデプシンとの新規な治療的組み合わせを開拓した。前臨床及び臨床経験において、ロミデプシン+T細胞悪性腫瘍に活性な他の薬剤で見られる大きな相乗効果を実証する新たに得られたデータに基づいて、我々は、ロミデプシンに基づいている新規で独創的な比率算出ナノポリマー薬物を設計するプラットフォームを開発した。ここではPTCLで有効な一揃いの薬物にわたって適用されているこの戦略は、この疾患の新しい標準治療を創製し、この困難な疾患の自然経過を変化させる見込みをもたらす。
【0031】
II.定義
ここで使用される用語法は、特定の実施態様を説明することのみを目的としており、本開示の主題を限定することを意図したものではない。
【0032】
次の用語は当業者にはよく理解されていると考えられるが、次の定義は、本開示の主題の説明を容易にするために記載される。
【0033】
以下に別段の定義がない限り、ここで使用される全ての技術的及び科学的用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有することが意図される。ここで用いられる技術への言及は、当該技術分野で一般に理解されている技術を指すことを意図しており、当業者には明らかなそれらの技術の変形又は同等の技術の代替を含む。次の用語は当業者にはよく理解されていると考えられるが、次の定義は、本開示の主題の説明を容易にするために記載される。
【0034】
本開示の主題を説明する際に、多くの技術及び工程が開示されることが理解されるであろう。これらのそれぞれには個別の利点があり、それぞれを他の開示された技術の一又は複数、或いは場合によっては全てと組み合わせて、使用することもできる。
【0035】
従って、明確にするために、この明細書では、個々の工程のあらゆる可能な組み合わせを不必要な形で繰り返すことは控える。それにも関わらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが完全にここに開示され請求項に記載された主題の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
【0036】
長年の特許法の慣例に従って、「a」、「an」、及び「the」という用語は、特許請求の範囲を含むこの出願において使用される場合、「一つ又は複数」を指す。例えば、「抗体」という語句は、複数の同じ抗体を含む、一つ又は複数の抗体を指す。同様に、「少なくとも一つ」という語句は、あるエンティティを指すためにここで用いられる場合、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、又はそれ以上の(限定されないが、1と100の間と100を超える整数値を含む)エンティティを指す。
【0037】
特に明記されない限り、明細書及び特許請求の範囲において使用される成分、反応条件などの量を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。「約」という用語は、ここで使用されて、質量、重量、時間、体積、濃度、又はパーセンテージの量などの測定可能な値を指す場合、特定の量から幾つかの実施態様では±20%、幾つかの実施態様では±10%、幾つかの実施態様では±5%、幾つかの実施態様では±1%、幾つかの実施態様では±0.5%、及び幾つかの実施態様では±0.1%の変動を、かかる変動が、開示された方法を実施し、及び/又は開示された組成物を用いるのに適切であるため、包含していることを意味する。従って、別段の指示がない限り、この明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメーターは、本開示の主題によって得られることが求められる所望の特性に応じて変動しうる近似値である。
【0038】
ここで端点によって記載される数値範囲には、その範囲内に包含される全ての数値及び分数が含まれる(例えば、1から5には、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、4.24、及び5が含まれる)。同様に、ここで端点によって記載される数値範囲には、その範囲内に包含される部分範囲が含まれる(例えば、1から5には、1~1.5、1.5~2、2~2.75、2.75~3、3~3.90、3.90~4、4~4.24、4.24~5、2~5、3~5、1~4、及び2~4が含まれる)。
【0039】
疾患、状態、又は障害の症状の重症度、或いは対象がそのような症状を経験する頻度、或いはその両方が低減される場合、疾患又は障害は「軽減」される。
【0040】
ここで使用される場合、エンティティのリストの文脈で使用される「及び/又は」という用語は、単独で又は組み合わせて存在するエンティティを指す。従って、例えば、「A、B、C、及び/又はD」という語句には、A、B、C、及びDが個別に含まれるが、A、B、C、及びDの任意のあらゆる組み合わせ及びサブコンビネーションもまた含まれる。
【0041】
本開示の主題の文脈で使用される「追加の治療活性化合物」又は「追加の治療剤」という用語は、治療されている特定の傷害、疾患、又は障害に対する追加の治療用途のための化合物の使用又は投与を指す。そのような化合物には、例えば、無関係の疾患若しくは障害、又は治療されている傷害、疾患若しくは障害に対する一次治療に反応性ではない可能性のある疾患又は障害を治療するために使用されているものが含まれうる。
【0042】
ここで使用される場合、「アジュバント」という用語は、特定の抗原と組み合わせて使用した場合に免疫反応の増強を誘発する物質を指す。
【0043】
ここで使用される場合、化合物「の投与」及び/又は「を投与する」という用語は、治療を必要とする対象に本開示の主題の化合物を提供することを指すと理解されるべきである。
【0044】
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」「含む(containing)」又は「特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の未記載の要素及び/又は方法工程を排除するものではない。「含む(Comprising)」とは、指定された要素及び/又は工程が存在するが、他の要素及び/又は工程を追加することができ、依然として関連する主題の範囲内に含まれることを意味する専門用語である。
【0045】
ここで使用される場合、「から本質的になる」という語句は、関連する開示又は請求項の範囲を、特定された材料及び/又は工程と、それに加えて、開示された及び/又は請求項記載の主題の基本的及び新規な特徴に実質的に影響を与えないものに限定する。例えば、薬学的組成物は、一つの薬学的活性剤又は複数の薬学的活性剤「から本質的になる」ことができ、これは、記載された薬学的活性剤が、薬学的組成物中に存在する唯一の薬学的活性剤であることを意味する。しかしながら、担体、添加物、及び/又は他の不活性薬剤が、そのような薬学的組成物中に存在し得、かつ存在する可能性が高く、「から本質的になる」という語句の性質内に包含されることに留意されたい。
【0046】
ここで使用される場合、「からなる(consisting of)」という語句は、特に記載されていないあらゆる要素、工程、又は成分を除外する。「からなる」という語句が、前段部の直後ではなく、請求項の特徴部の文節に現れる場合、その文節に記載される要素のみを限定し;他の要素は全体として請求項から除外されるものではないことに留意されたい。
【0047】
「含む(comprising)」、「からなる(consisting of)」、及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語に関して、これら三種の用語のうちの一つがここで使用される場合、本開示の請求項記載の主題は、他の二種の用語の何れかの使用を含みうる。例えば、幾つかの実施態様では所与の活性薬剤を含む組成物は、幾つかの実施態様ではその同じ活性薬剤から本質的になり得、実際、幾つかの実施態様ではその同じ活性薬剤からなりうる。
【0048】
ここで使用される「両親媒性ポリマー」は、親水性単位鎖と疎水性単位鎖の両方を含むポリマー材料を表す。幾つかの実施態様では、様々なポリマーがNP特性を制御し、ポリマーには、限定されないが、「ステルス」性を付与しうる、疎水性コア及びPEGの様々な各鎖長のm-PEG-PLGA、m-PEG-PCL及びm-PEG-PDLLAが含まれる。
【0049】
ここで使用される「水溶液」という用語は、ここに記載の重炭酸ナトリウムなどの一般に使用される他の成分を含み得、ペプチドを可溶化しながら水溶液のpHを調整するために使用される任意の酸又は塩基溶液を更に含む。
【0050】
ここで使用される「バッチ間」とは、特に薬物充填のための物理化学的特性の観点で、バッチ間で最適な変動を伴う、製剤化が再現可能である方法を表す。
【0051】
「結合」という用語は、限定されないが、酵素と基質、リガンドと受容体、抗体と抗原、タンパク質のDNA結合ドメインとDNA、及びDNA又はRNA鎖と相補鎖など、分子の相互の接着を指す。
【0052】
ここで使用される「結合パートナー」とは、別の分子に結合できる分子を指す。
【0053】
ここで使用される「生体適合性」という用語は、宿主において実質的に有害な反応を誘発しない材料を指す。
【0054】
ここで使用される「生分解性」とは、体内で非毒性の天然産物に分解でき、容易に除去されうる物質を指す。一般に、生体適合性及び生分解性は、エステル結合を含むPLA及びPLGAポリマーと関連付けられることがよくある。幾つかの実施態様では、これらのポリマーの分解は、加水分解によるものではなく、細胞又はインビボの生物学的作用によるものである。生分解性の特性を持つポリマーは、薬物放出に所定の役割を果たす。幾つかの実施態様では、薬物放出は、ポリマー結合の切断、ポリマーマトリックスの浸食、及び粒子からのカプセル化薬物の拡散によって支配される。
【0055】
ここで使用される場合、ペプチドの「生物学的に活性な断片」又は「生物活性断片」という用語は、その天然リガンドに特異的に結合することができ、及び/又はタンパク質の所望の機能を実施することができるより長いペプチド又はタンパク質の天然及び合成部分、例えば目的のエピトープを依然として含み、免疫原性である、より大きなペプチドのタンパク質の断片を包含する。
【0056】
ここで使用される「生体試料」という用語は、限定されないが、皮膚、毛髪、組織、血液、血漿、細胞、汗及び尿を含む、対象から得られた試料を指す。
【0057】
ここで使用される「遠心フィルター」は、遠心分離法又は超遠心分離法によって過剰な未カプセル化薬物を除去するためにナノ粒子を処理するために使用される材料を表す。幾つかの実施態様では、本開示の主題の方法において用いられる遠心フィルターは、約3Kから約100Kのカットオフ範囲を有する。
【0058】
遺伝子の「コード領域」は、遺伝子の転写によって生成されるmRNA分子のコード領域とそれぞれ相同又は相補的である、遺伝子のコード鎖のヌクレオチド残基及び遺伝子の非コード鎖のヌクレオチドを含む。
【0059】
薬物及び薬物相互作用に関してここで使用される「相補的」とは、一又は複数の治療薬が対象に与えられなかった場合に生じたよりも大きなベネフィットが対象にもたらされる一又は複数の治療薬間の相互作用を指す。幾つかの実施態様では、相補的な薬物相互作用により、対象に相乗的なベネフィットがもたらされる。
【0060】
生体分子に関してここで使用される「相補的」とは、二つの核酸(例えば、二つのDNA分子)間のサブユニット配列相補性の広い概念を指す。両方の分子のヌクレオチド位置が、通常、所与の位置で互いに塩基対形成できるヌクレオチドによって占められている場合、核酸はこの位置で互いに相補的であると考えられる。従って、二つの核酸は、各分子中の相当数(幾つかの実施態様では少なくとも50%)の対応位置が、互いに塩基対形成できるヌクレオチド(例えば、A:T及びG:Cヌクレオチド対)によって占められている場合、互いに相補的である。従って、第一の核酸領域のアデニン残基は、その残基がチミン又はウラシルである場合、第一の領域と逆平行である第二の核酸領域の残基と特異的な水素結合を形成すること(「塩基対形成」)ができることが知られている。同様に、第一の核酸鎖のシトシン残基は、その残基がグアニンである場合、第一の鎖に対して逆平行である第二の核酸鎖の残基と塩基対形成することができることが知られている。核酸の第一の領域は、二つの領域が逆平行に配置されている場合に、第一の領域の少なくとも一つのヌクレオチド残基が第二の領域の残基と塩基対形成することができるならば、同じ又は異なる核酸の第二の領域に相補的である。限定ではなく例を挙げると、第一の領域は第一の部分を含み、第二の領域は第二の部分を含み、第一の部分と第二の部分が逆平行に配置されるとき、第一の部分の幾つかの実施態様では少なくとも約50%、幾つかの実施態様では少なくとも約75%、幾つかの実施態様では少なくとも約90%、幾つかの実施態様では少なくとも約95%が第二の部分のヌクレオチド残基と塩基対形成することができる。幾つかの実施態様では、第一の部分の全てのヌクレオチド残基が、第二の部分のヌクレオチド残基と塩基対形成することができる。
【0061】
ここで使用される「化合物」とは、本開示の主題の方法で使用されるポリペプチド、単離された核酸、又は他の薬剤を指す。
【0062】
「対照」細胞、組織、試料、又は対象は、試験細胞、組織、試料、又は対象と同じ種類の細胞、組織、試料、又は対象である。対照は、例えば、試験細胞、組織、試料、又は対象が検査されるのと正確に又はほぼ同時に検査されうる。対照は、また、例えば、試験細胞、組織、試料、又は対象が検査される時間とは隔たった時間に検査することもでき、対照の検査の結果を記録して、記録された結果を、試験細胞、組織、試料、又は対象の検査によって得られた結果と比較することができるようにすることができる。対照は、また、試験群又は試験対象以外の別の供給源又は類似の供給源から得ることもでき、その場合、試験試料は、試験が実施されている状態、疾患又は障害を有することが疑われる対象から得られる。
【0063】
「試験」細胞は検査されている細胞である。
【0064】
「病態を示す」細胞は、組織内に存在する場合、その組織が存在する(又は組織が得られた)動物が状態、疾患、又は障害に罹患していることを示す細胞である。
【0065】
「病原性」細胞は、組織内に存在する場合、その組織が存在する(又は組織が得られた)動物において状態、疾患、又は障害を引き起こすか、又はその一因となる細胞である。
【0066】
状態、疾患、又は障害に罹患していない動物の組織内に一つ又は複数の細胞が存在する場合、組織は細胞を「正常に含む」。
【0067】
ここで使用される「コンビナトリアル」及び「コンビナトリアル方式」は、ナノ粒子の物理化学的特性を比較するために単一の実験で複数のパラメーターを利用するプロセスを表す。
【0068】
ここで使用される「濃度」は、ナノ粒子中の薬物の量の測定値である。一般に、ナノ粒子中の薬物の濃度は、溶媒と貧溶媒の比、薬物対ポリマー比、混合速度、密度、D、誘電率、極性、粘度、溶離液強度などの溶媒特性を含む、機械的プロセスと製剤プロセスの両方の影響を受ける。幾つかの実施態様では、粒子は、限定されないが20μg/mLから1000μg/mLを含む濃度でロミデプシンを含みうる。
【0069】
ここで使用される場合、「状態」、「病状」、「疾患」、「病態」、及び「障害」という用語は、罹患細胞又は目的の細胞が、本開示の主題の組成物で標的とされうる生理学的状態を指す。幾つかの実施態様では、疾患は白血病であり、幾つかの実施態様では、急性骨髄性白血病(AML)である。
【0070】
ここで使用される「制御された添加」は、限定されないがサイズ、PDI、ゼータ電位、及び薬物充填量を含む再現可能な特性を有する粒子を生成するためにシリンジポンプを使用して固定の添加速度(幾つかの実施態様では、約10から約500mL/時間)で一方の相を別の相に添加することを表す。
【0071】
ここで使用される「抗凍結剤」とは、凍結乾燥プロセス中にNPの安定性を保護する添加物又は安定剤を表し、これには限定されないが、マンニトール、グルコースなどの添加物が含まれる。
【0072】
ここで使用される場合、「診断」という用語は、状態、疾患、又は障害に対するリスク又は傾向を検出することを指す。どのような診断方法にも偽陽性と偽陰性が存在する。どの診断方法でも100%の精度をもたらすわけではない。
【0073】
「疾患」とは、動物が恒常性を維持できない動物の健康の状態であり、疾患が改善されない場合、動物の健康は悪化し続ける。
【0074】
対照的に、動物の「障害」とは、動物が恒常性を維持することはできるが、動物の健康状態が、障害がない場合よりも好ましくない健康状態のことである。治療せずに放置しても、障害は必ずしも動物の健康状態の更なる低下を引き起こすとは限らない。
【0075】
ここで使用される場合、「有効量」又は「治療有効量」は、限定されないが、状態、疾患、又は障害の症状を軽減するなど、選択された効果を生み出すのに十分な化合物又は組成物の量を指す。複数の化合物などの組み合わせの形態で化合物を投与する状況では、一又は複数の他の化合物と組み合わせて投与される場合の各化合物の量は、その化合物が単独で投与される場合とは異なりうる。従って、化合物の組み合わせの有効量は、組み合わせを全体として集合的に指し、各化合物の実際の量は変動しうる。「より有効な」という用語は、選択された効果が、比較されている第二の治療と比較して、一つの治療によりより大きな程度で生じることを意味する。
【0076】
ここで使用される「カプセル化効率」は、使用される全薬物と比較した、粒子内にカプセル化された薬物の%を示す。
【0077】
「コード化」とは、ヌクレオチド(例えば、rRNA、tRNA、mRNA)の明らかにされた配列又はアミノ酸の明らかにされた配列と、そこから生じる生物学的特性を有する生物学的プロセスにおいて他のポリマー及び巨大分子の合成のための鋳型として機能する、遺伝子、cDNA、又はmRNAなどのポリヌクレオチドにおけるヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指す。従って、遺伝子に対応するか又は遺伝子に由来するmRNAの転写及び翻訳が細胞又は他の生物学的系及び/又はインビトロ又はエクスビボ系でタンパク質を産生する場合、遺伝子はタンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列(後者に示されているウラシル塩基を除く)と同一であり、通常は配列表に提供されるコード鎖と、遺伝子又はcDNAの転写の鋳型として使用される非コード鎖の両方が、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の産物をコードしていると言うことができる。
【0078】
ここで使用される場合、特定のタンパク質又はペプチドの「本質的に純粋な」製剤とは、製剤中のタンパク質又はペプチドの重量で、幾つかの実施態様では少なくとも約95%、幾つかの実施態様では少なくとも約99%が、特定のタンパク質又はペプチドである製剤である。
【0079】
ここで使用される「製剤変数」は、ナノ粒子の反応混合物における変更のために考慮される変数又はパラメーターを表し、これには、限定されないが、薬物対ポリマー比、界面活性剤の選択、溶媒又は非溶媒に対する界面活性剤の添加、水対有機比、カプセル化効率の向上に寄与するパラメーターが含まれる。
【0080】
「断片」、「セグメント」、又は「部分配列」は、少なくとも一つのアミノ酸を含むアミノ酸配列の一部、又は少なくとも一つのヌクレオチドを含む核酸配列の一部である。「断片」、「セグメント」、及び「部分配列」という用語は、ここでは互換的に使用される。
【0081】
ここで使用される場合、「機能的」生体分子は、それが特徴付けられうる特性を示す形態の生体分子である。例えば、機能的酵素とは、その酵素が特徴付けられうる特徴的な触媒活性を示す酵素である。
【0082】
ここで使用される「親水性」とは、水と容易に相互作用し、及び/又は水に可溶性である高極性基を含む物質を指す。
【0083】
ここで使用される「疎水性」とは、極性の低い基を含む物質を指し、典型的には水への溶解度が低いことを特徴とする。
【0084】
ここで使用される場合、「HDAC活性の阻害剤」、「HDAC阻害剤(HDACi)」という語句とその文法的変形語は、インビトロ、インビボ、又はエクスビボを問わず、少なくとも一種のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の少なくとも一つの生物活性の阻害剤を指す。例示的なHDAC阻害剤には、限定されないが、ロミデプシン、ボリノスタット、パノビノスタット、ベリノスタット、及びキダミド(すなわち、N-(2-アミノ-4-フルオロフェニル)-4-[[[(E)-3-ピリジン-3-イルプロパ-2-エノイル]アミノ]メチル]ベンズアミド)が含まれる。HDAC阻害剤として機能しうる他の化合物には、バルプロ酸、トリコスタチンA、酪酸、並びに限定されないが、4-フェニル酪酸、エンチノスタット、ギビノスタット、ドロキシノスタット、ツバスタチンA、プラシノスタットなどを含むその誘導体が含まれる。
【0085】
ここで使用される場合、「注射する」、「適用する」、及び「投与する」には、限定されないが、局所、経口、頬側、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、脳室内(心室内)、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸、局所、舌下、膣、眼、肺、膣、及び直腸アプローチを含む任意の数の経路及び方法による本開示の主題の化合物の投与が含まれる。
【0086】
ここで使用される場合、「リガンド」は、標的化合物又は分子に特異的に結合する化合物である。リガンドは、異種化合物の試料中の化合物の存在を決定する結合反応においてリガンドが機能する場合、化合物「に特異的に結合し」、又は化合物「と特異的に反応性である」。
【0087】
ここで使用される場合、「結合」という用語は、二つの基の間の連結を指す。連結は、限定されないが、イオン結合、水素結合、及び疎水性/親水性相互作用を含む、共有結合又は非共有結合の何れかでありうる。
【0088】
ここで使用される場合、「リンカー」という用語は、共有結合又は非共有結合の何れかで、例えば限定されないが、イオン結合若しくは水素結合若しくはファンデルワールス相互作用を通じて、二つの他の分子を一緒にする分子を指す。
【0089】
ここで使用される「凍結乾燥」は、保存期間、用量ロジスティックス、及び貯蔵ロジスティックスを改善するために、抗凍結剤の有無にかかわらず、粉末形態のNPを作製するために利用されるプロセスを表す。
【0090】
ここで使用される「平均粒径」は、一般に、幾つかの実施態様では、球状粒子の流体力学的直径を指す。一般に、NPサイズは、PEG表面化学などの表面化学を介してマクロファージの取り込みに役割を果たす。幾つかの実施態様では、NPを調製するために使用されるポリマーのより低い分子量は、より小さいサイズのNPに寄与し、その結果、薬物放出動態の変化、より高い循環、肝臓及び脾臓などの器官における蓄積の減少が生じ、より多くの薬物曝露が生物活性の増強に寄与する。
【0091】
ここで使用される「発現レベルを測定する」及び「発現レベルを決定する」という用語は、アッセイの結果を目的の遺伝子又はタンパク質の発現レベルと相関させるために使用できる任意の測定又はアッセイを指す。このようなアッセイには、mRNAレベル、タンパク質レベルなどの測定が含まれ、ノーザンブロット分析及びウェスタンブロット分析、結合アッセイ、イムノブロットなどのアッセイによって実施されうる。発現レベルには発現率が含まれ得、存在するmRNA又はタンパク質の実際の量によって測定されうる。このようなアッセイは、情報を保存し処理し、レベル、シグナル等を定量しるのに役立ち、レベルの比較に使用される情報をデジタル化するプロセス又はシステムと合わせられる。
【0092】
ここで使用される「分子量」という語句は、バルクポリマーの鎖長を指す。幾つかの実施態様では、溶解度、粘度、結晶化度、機械的強度、及び分解速度などの物理的特性が、ポリマーの分子量に依存しうる。
【0093】
「単分散」及び均一溶液は、同義語として又は互換的に使用され、ここでは、同じ又はほぼ同じ直径分布の粒子を単分散と呼ぶ。
【0094】
ここで使用される「多変量」とは、薬物の物理化学的特性を決定するNPの調製に含まれる変数の数を表す。
【0095】
ここで使用される「ナノ」、「ナノ材料」、「ナノ粒子」、及び「NP」という用語は、その間の全ての整数又は分数を含む約1000nm以下(限定されないが、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、1000nmなど)の寸法及び/又はサイズ(例えば、長さ、幅、直径など)を有する少なくとも一つの領域を有する構造を指す。幾つかの実施態様では、寸法はより小さい(例えば、約500nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約125nm未満、約100nm未満、約100nm未満、約80nm未満、約70nm未満、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、又は更に約20nm未満)。幾つかの実施態様では、寸法は、約20nmと約250nmの間(例えば、約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、又は250nm)である。一般に、粒子は、サイズ依存性の急速な腎クリアランスを誘導するサイズとサイズ依存性の肝臓蓄積を防ぐサイズの間のサイズ範囲を占める。本開示の組成物は、限定されないが、コア-シェル、円形、球形、楕円体、及びミセル形を含む様々な形状で存在するかもしれない。一般に、球形を有するナノ粒子はナノスフィアと呼ばれる。
【0096】
幾つかの実施態様では、「コア-シェル」ナノ粒子を含むナノ粒子は、両親媒性の生体適合性、生分解性のブロックコポリマーから形成される。幾つかの実施態様では、コア-シェルナノ粒子は、シェルが親水性であり、コアが疎水性であるジブロックポリマーから作製されたナノ粒子である。
【0097】
ここで使用される「ナノ沈殿」は、幾つかの実施態様では、ボトムアップアプローチによってポリマーNPを作製する方法を指す。この方法の幾つかの実施態様では、適度な磁気撹拌下で、一方の相が別の相に添加される。幾つかの実施態様では、疎水性薬物をカプセル化するためにナノ沈殿が用いられる。これが選ばれる理由は、その単純性、拡張性、及び制御された添加によるバッチ間の再現性である。この方法では、サイズ、ゼータ電位、薬物充填量などの望ましい特性を達成するために、コンビナトリアル方式での複数パラメーター最適化が容易になる。
【0098】
ここで使用される「操作変数」とは、限定されないが、機械的速度、混合溶媒、添加モード、添加速度、遠心分離速度、及びコロイド溶液の物理化学的特性を改善する時間を含む、変更のために考慮される機械的変数又はパラメーターを表す。
【0099】
ここで使用される「最適化」は、治療効果を発揮する粒子中の望ましく有効な薬物濃度を見出すプロセスを表す。幾つかの実施態様では、プロセス及び製剤化パラメーターをコンビナトリアル方式で含めることによって薬物濃度を最適化するために、多面的アプローチが使用される。ここで使用される「多面的」とは、ナノ粒子の物理化学的特性を最適化するためにナノ沈殿法を操作するアプローチのプロセスを表す。一般に、ナノ沈殿法はパラメーターの最適化を容易にする。他の実施態様では、マルチチャネルシリンジシステムを備えたシリンジポンプが、ナノ粒子を操作するために適用される。
【0100】
ここで使用される「その他の点では同一の試料」という用語は、第一の試料に類似した試料を指し、すなわち、同じ対象から同じ組織又は体液から同じ方法で得られるか、又は異なる対象から得られる同様の試料を指す。「罹患していない対象からのその他の点では同一の試料」という用語は、検査対象の疾患又は障害を有することが知られていない対象から得られた試料を指す。もちろん、試料は標準試料でありうる。類推により、「その他の点では同一」という用語は、対象又は罹患していない対象の領域又は組織に関してもまた使用することができる。
【0101】
ここで使用される「パラレル」とは、コンビナトリアル方式での複数パラメーターの最適化を伴うナノ粒子作製のアプローチを指し、コンビナトリアルアプローチの同義語としてしばしば使用される。
【0102】
ここで使用される「パラメーター」は、NPの物理化学的特性に関して変更のために考慮されるパラメーターを表す。一般に、サイズ、電荷、及び薬物のカプセル化効率に影響を与えるプロセス及び製剤関連のパラメーターがある。
【0103】
ここで使用される場合、薬学的組成物の「非経口投与」には、対象の組織の物理的破壊を特徴とする任意の投与経路及び組織の破壊を介した薬学的組成物の投与が含まれる。従って、非経口投与には、限定されないが、組成物の注射、外科的切開を通した組成物の適用、組織貫通非外科的創傷を通した組成物の適用などによる薬学的組成物の投与が含まれる。特に、非経口投与には、限定されないが、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内注射、腫瘍内、及び腎臓透析注入術が含まれると考えられる。
【0104】
幾つかの実施態様では、「粒子数」又は「集団」は、均一サイズ、電荷、形状、及び組成を有するナノ粒子を含む、均一サイズ、電荷、形状、及び組成を有する粒子を含む、ナノ粒子を含む粒子の群を指す。
【0105】
「薬学的組成物」という用語は、少なくとも一種の活性成分を含む組成物を意味し、それにより、組成物は、哺乳動物(例えば、限定されないが、ヒト)における特定の有効なアウトカムについての研究に適している。当業者であれば、当業者のニーズに基づいて活性成分が所望の有効な結果をもたらすかどうかを決定するのに適切な技術を理解し、評価するであろう。
【0106】
「薬学的に許容される」とは、ヒト又は獣医学への適用において生理学的に許容されることを意味する。同様に、「薬学的組成物」には、ヒト及び獣医学用の製剤が含まれる。
【0107】
ここで使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、適切な化合物又は誘導体と組み合わせることができ、組み合わせた後、対象に適切な化合物を投与するために使用できる化学組成物を意味する。
【0108】
ここで使用される場合、「生理学的に許容される」エステル又は塩という用語は、薬学的組成物の任意の他の成分と適合性があり、組成物が投与される対象に有害ではない、活性成分のエステル又は塩の形態を意味する。
【0109】
「複数」とは少なくとも二つを意味する。
【0110】
「ポリペプチド」とは、アミノ酸残基から構成されるポリマー、関連する天然に存在する構造変異体、及びペプチド結合を介して連結された合成の非天然の類似体、関連する天然に存在する構造変異体、及びその合成の非天然の類似体を指す。
【0111】
「合成ペプチド又はポリペプチド」とは、非天然のペプチド又はポリペプチドを意味する。合成ペプチド又はポリペプチドは、例えば自動ポリペプチド合成装置を使用して合成することができる。様々な固相ペプチド合成法が当業者に知られている。
【0112】
ここで使用される「防止する」という用語は、何かが起こらないようにすること、又は何かが起こる可能性があり又はおそらく起こることに対して事前の措置を講じることを意味する。医学の文脈では、「防止」とは一般に、疾患又は状態に罹患する可能性を減らすために取られる措置を指す。「防止」は絶対的なものである必要はなく、程度の問題として生じる場合があることに留意のこと。
【0113】
「予防性(preventive)」又は「予防的(prophylactic)」治療は、状態、疾患、又は障害の兆候を示さないか、又は初期の兆候のみを示す対象に施される治療である。予防的又は予防性治療は、状態、疾患、又は障害の発症に関連する病状の発症リスクを低下させる目的で施される。
【0114】
「タンパク質」という用語は、典型的には、大きなポリペプチドを指す。ここでは、ポリペプチド配列を描くために一般的な表記法が使用される:ポリペプチド配列の左端はアミノ末端であり;ポリペプチド配列の右端はカルボキシル末端である。
【0115】
ここで使用される場合、「精製された」という用語及び類似の用語は、天然環境において分子又は化合物に通常は付随する他の成分と比較しての、分子又は化合物の濃縮に関する。「精製された」という用語は、プロセス中に特定の分子の完全な純度が達成されていることを必ずしも示すわけではない。
【0116】
ここで使用される「高度に精製された」化合物は、幾つかの実施態様では90%を超える純度であり、幾つかの実施態様では95%を超える純度であり、幾つかの実施態様では98%を超える純度である化合物を指す。
【0117】
ここで使用される場合、「哺乳動物」という用語は、哺乳綱の任意のメンバーを指し、これには、限定されないが、ヒト及び非ヒト霊長類、例えばチンパンジー及び他の類人猿及びサル種;家畜、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマ;家畜哺乳類、例えばイヌ及びネコ;齧歯類を含む実験動物、例えばマウス、ラット及びモルモット等々が含まれる。この用語は特定の年齢又は性別を指すものではない。従って、雌か雄かを問わず、成体及び新生仔対象、並びに胎仔もこの用語の範囲内に含まれることが意図される。
【0118】
ここで使用される「拡張性」は、製剤のPK及びPD効果を試験するインビトロ及びインビボ実験を実施するために、ナノ製剤を少量から大量へもっていくプロセスを表す。
【0119】
ここで使用される場合、「ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤に対する感受性」という語句は、一つ又は複数の望ましくないヒストン脱アセチル化酵素生物活性が発生し、及び/又はヒストン脱アセチル化酵素阻害剤による治療によって改善されうる影響を有する細胞、組織、又は器官を指す。幾つかの実施態様では、望ましくないヒストン脱アセチル化酵素生物活性は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を単独で又は他の治療と組み合わせて用いる治療によってその少なくとも一つの症状が改善され及び/又は阻害される疾患、障害、又は状態に関連する。
【0120】
ここで使用される「溶媒」は、幾つかの実施態様では、使用される有機物質を指し、幾つかの実施態様では、成膜材料、ロミデプシン、及びポリマーのための溶媒として作用する。幾つかの実施態様では、水混和性溶媒、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、又は溶媒の組み合わせを含む極性溶媒が、ナノ粒子の調製のために薬物及びポリマーを溶解するために使用される。溶媒の物理的特性は、NPの物理化学的特性とNPを作製する全体的なナノ沈殿法を含み、薬物とポリマーの溶解度に影響する。アセトニトリルは、薬物、ポリマー、及び界面活性剤を溶解してナノ沈殿法でNPを調製するために使用される溶媒の特定の例である。幾つかの実施態様では、アセトニトリル(ACN)が最高の濃度、最低のPDI、及び平均サイズをもたらした。ACNに加えて、他の溶媒も本開示を検討すれば当業者には明らかであろう。
【0121】
ここで使用される「貧溶媒」とは、薬物及びポリマーを含む溶媒を分散させるために用いることができる、限定されないが水又はPBSなどの緩衝液を含む水性溶媒を指す。非溶媒と貧溶媒という用語は互換性がある。幾つかの実施態様では、親水性添加物を非溶媒に添加することもできる。
【0122】
ここで使用される「対象」という用語は、本開示の主題の組成物及び方法を使用した疾患又は障害の治療及び/又は予防が望ましいかもしれない種のメンバーを指す。従って、「対象」という用語は、幾つかの実施態様では、限定されないが、脊索動物門(例えば、硬骨魚綱(硬骨魚)、両生綱(両生類)、爬虫綱(爬虫類)、鳥綱(鳥類)、及び哺乳綱(哺乳類)及びそこに包含される全ての目と科を含む動物界のあらゆるメンバーを包含することが意図される。
【0123】
本開示の主題の組成物及び方法は、温血脊椎動物に特に有用である。従って、幾つかの実施態様では、本開示の主題は、哺乳動物及び鳥類に関する。より特定的に提供されるのは、ヒト及び他の霊長類などの哺乳動物、並びに絶滅の危機に瀕しているために重要な哺乳動物(シベリアトラなど)、経済的に重要な哺乳動物(ヒトによる消費のために飼育場で飼育されている動物)及び/又はヒトにとって社会的に重要な哺乳動物(ペットとして又は動物園で飼育されている動物)、例えばヒト以外の肉食動物(ネコ及びイヌなど)、イノシシ属動物(ブタ、雄ブタ、及びイノシシ)、反芻動物(ウシ、雄ウシ、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソン、及びラクダ)、齧歯類(マウス、ラット、及びウサギなど)、有袋類、及びウマに由来する、及び/又はそれらでの使用のための組成物及び方法である。また提供されるのは、絶滅の危機に瀕しており、動物園で飼育されている種類の鳥、並びに家禽、より特定的には家畜化された家禽、例えば、シチメンチョウ、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ホロホロチョウなどの飼っている鳥類を含む鳥類に対する開示の方法及び組成物の使用であり、それらがヒトにとって経済的にまた重要であるためである。従って、また提供されるのは、限定されないが家畜化されたイノシシ属動物(ブタ及び雄ブタ)、反芻動物、ウマ、家禽などを含む家畜に対する開示の方法及び組成物の使用である。
【0124】
ここで使用される「試料」とは、幾つかの実施態様では、限定されないが、正常組織試料、患部組織試料、生検、血液、唾液、糞便、精液、涙、及び尿を含む、対象からの生体試料を指す。試料は、目的の細胞、組織、又は体液を含む対象から得られる任意の他の材料源であってもよい。試料は細胞又は組織培養物から取得することもできる。
【0125】
ここで使用される「標準」という用語は、比較のために使用されるものを指す。例えば、標準は、試験化合物を投与する際に結果を比較するために投与され使用される既知の標準薬剤又は化合物であり得、或いは標準は、パラメーター又は機能に対する薬剤又は化合物の効果を測定する際に対照値を得るために測定される標準パラメーター又は機能でありうる。標準とは、既知の量で試料に添加され、目的のマーカーを測定する前に試料を処理し又は精製若しくは抽出手順に供する際の精製若しくは回収率などを決定するのに役立つ薬剤又は化合物などの「内部標準」を指す場合もある。内部標準は、多くの場合、内因性マーカーと区別できるように、放射性同位体などで標識された目的の精製マーカーである。
【0126】
分析、診断、又は治療の「対象」は動物である。そのような動物には哺乳動物が含まれ、幾つかの実施態様ではヒトが含まれる。
【0127】
ここで使用される場合、「それを必要とする対象」とは、本開示の主題の方法から恩恵を受けるであろう患者、動物、哺乳動物、又はヒトである。
【0128】
「実質的に純粋な」という用語は、天然に付随する成分から分離された化合物、例えばタンパク質又はポリペプチドを記述する。典型的には、化合物は、試料中の全材料の幾つかの実施態様では少なくとも10%、幾つかの実施態様では少なくとも20%、幾つかの実施態様では少なくとも50%、幾つかの実施態様では少なくとも60%、幾つかの実施態様では少なくとも75%、幾つかの実施態様では少なくとも90%、幾つかの実施態様では少なくとも99%(体積、湿重量又は乾燥重量、又はモルパーセント又はモル分率)が目的の化合物であるとき、実質的に純粋である。純度は、任意の適切な方法によって、例えば、ポリペプチドの場合には、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、又はHPLC分析によって測定することができる。化合物、例えばタンパク質は、天然に付随する成分が本質的に含まれていない場合、又は天然の状態でそれに付随する天然の汚染物質から分離されている場合にも、実質的に精製されている。
【0129】
「界面活性剤」は、ここではNPの安定性をサポートする材料として使用される。幾つかの実施態様では、界面活性剤は、二種の液体の間、気体と液体の間、又は液体と固体の間の表面張力を低下させる化合物である。幾つかの実施態様では、界面活性剤組成物には、限定されないが、ポラクサマー(例えば、ポラクサマー188、ポラクサマー237、ポラクサマー338、及びポラクサマー407)、トゥイーン20、トゥイーン80、ポリビニルアルコール(PVA)などが含まれる。一般に、これらの材料は乳化剤として使用され、凝集を避けることができる。
【0130】
ここで使用される「症状」という用語は、患者が経験し、疾患を示す、構造、機能、又は感覚における正常からの逸脱又は任意の病的な現象を指す。対照的に、「兆候」は疾患の客観的な証拠である。例えば、鼻血は兆候である。それは患者、医師、看護師、その他の観察者には明らかである。
【0131】
「治療的」処置とは、病理学的兆候を示す対象に、それらの兆候を軽減又は除去する目的で施される処置である。
【0132】
化合物の「治療有効量」とは、化合物が投与される対象に有益な効果をもたらすのに十分な化合物の量である。
【0133】
ここで使用される場合、「治療薬」という語句は、例えば、疾患又は障害を治療し、阻害し、予防し、その影響の軽減し、その重症度の軽減し、その発症の可能性の低減し、その進行を遅延させ、及び/又は治癒するために使用される薬剤を指す。
【0134】
ここで使用される「治療(処置)」及び「治療する」という用語は、治療的処置と予防的又は防止的手段の両方を指し、その目的は、標的とされる病的状態を予防又は遅らせ(軽減させ)、病的状態を防止し、有益な結果を追求又は獲得し、及び/又は、たとえ治療が最終的に成功しなかったとしても、個体が状態、疾患、又は障害を進行させる可能性を低くすることである。治療を必要とする者には、既にその状態にある者、並びに状態、疾患、又は障害に罹りやすいか、又はその素因がある者、或いはその状態を予防すべき者が含まれる。
【0135】
ここで使用される場合、「ベクター」、「クローニングベクター」、及び「発現ベクター」という用語は、導入された配列の発現(例えば、転写及び翻訳)を促進するために宿主細胞に形質導入及び/又は宿主細胞を形質転換するように、ポリヌクレオチド配列(例えば、外来遺伝子)を宿主細胞に導入することができるビヒクルを指す。ベクターには、プラスミド、ファージ、ウイルスなどが含まれる。
【0136】
ここで使用される場合、「ゼータ電位」という語句は、粒子の表面電位の測定値を指す。本開示の主題の幾つかの実施態様では、粒子は、-25から+25の範囲のゼータ電位を有する。
【0137】
ここに開示される全ての遺伝子、遺伝子名、及び遺伝子産物は、ここに開示される組成物及び方法が適用できる任意の種に由来するホモログ及び/又はオルソログに対応することが意図される。従って、この用語には、限定されないが、ヒト及びマウス由来の遺伝子及び遺伝子産物が含まれる。特定の種に由来する遺伝子又は遺伝子産物が開示される場合、この開示は例示のみを意図しており、それが現れる文脈が明確に示していない限り、限定として解釈されるべきではないことが理解される。
【0138】
III.例示的な実施態様
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、HDACiポリマーナノ粒子を含む組成物、ナノ粒子の作製に使用されるパラレルアプローチ、及びナノ粒子内の薬物濃度の最適化に含まれる多変数パラメーターに関する。ここでの方法は、限定されないが、薬物/ポリマー比、溶媒/水比、混合速度、制御された添加及びHDACi NPの製造に使用される処理方法を含む、変更されたパラメーター/操作条件を開示する。他の実施態様では、疎水性m-PEG PDLLA(5K:10K)ポリマーをHDACiのカプセル化に使用して、薬物のPKプロファイルを改善した。幾つかの実施態様では、より小さいHDACi NPの組成物は、薬物放出動態の改善をもたらす非晶質m-PEG PDLLAポリマーを含む。幾つかの実施態様では、HDACiは、ナノ粒子内にカプセル化され、及び/又はさもなければナノ粒子と会合される。幾つかの実施態様では、代表的なパラメーターの組み合わせは、薬物充填量に関して最適化され、製剤を「ロックダウン」するように選択された。幾つかの実施態様では、ロックダウン製剤化パラメーターは、インビボ研究のためのHDACi NPのスケールアップを容易にした。幾つかの実施態様では、最適化されたハイスループットパラレル合成又はコンビナトリアルアプローチにより、非常にコスト及びエネルギー効率の高い方法で、現在の濃度、約500μg/mLで300~400mLの体積のナノ製剤を達成することが可能になった。例示的なナノ粒子は、ポリ(D,L-ラクチド)-PEG-メチルエーテル(mPEG-PDLLA)ナノ粒子である。一部のナノ粒子は、他のポリマー、界面活性剤、脂質、又はポリマーと脂質の組み合わせを用い又は含みうる。また、他の方法を用いて、コア-シェル、円形、スフィア形、球状、ミセル、単層、及び二重層のポリマーソームを生成して、一又は複数のヒストンHDACiを構成することもできる。
【0139】
従って、幾つかの実施態様では、本開示の主題は、幾つかの実施態様では、HDAC阻害剤に対する感受性と関連する疾患、障害、及び/又は状態の予防及び/又は治療に使用するための組成物に関する。幾つかの実施態様では、本開示の主題は、一又は複数種のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)を含み、本質的にそれからなり、又はそれからなる組成物に関する。例示的なHDACiには、ボリノスタット、ロミデプシン、ベリノスタット、パノビノスタット、及びキダミドが含まれる。
【0140】
幾つかの実施態様では、HDACiは、ナノ粒子内にカプセル化され、及び/又はさもなければナノ粒子と会合される。例示的なナノ粒子は、ポリ(D,L-ラクチド)-PEG-メチルエーテル(mPEG-PDLLA)ナノ粒子であるが、ナノ粒子は、他の脂質、有機分子、及び/又は無機分子を用いるか又は含みうる。
【0141】
従って、幾つかの実施態様では、本開示の主題は、ナノ粒子内にカプセル化された、及び/又はナノ粒子と会合したヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる組成物に関する。幾つかの実施態様では、HDACiは、ボリノスタット、ロミデプシン、ベリノスタット、パノビノスタット、及びキダミド、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、任意選択的に、HDACiはロミデプシンである。幾つかの実施態様では、ナノ粒子はポリ(D,L-ラクチド)-PEG-メチルエーテル(mPEG-PDLLA)ナノ粒子である。幾つかの実施態様では、本開示の主題の組成物は、一又は複数種のポリマー及び/又は一又は複数種の界面活性剤を含む。幾つかの実施態様では、一又は複数種のポリマーは、ポリエステル、任意選択的にPDLLA、PLGA、PLA、及び/又はPCL、それらのコポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施態様では、ポリマーは、合成ポリマー;生分解性ポリマー;生体適合性ポリマー;両親媒性ポリマー;ジブロックコポリマー;及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含む。幾つかの実施態様では、ポリマーは、親水性のPEG鎖、任意選択的にメトキシPEG、PEG-カルボン酸、PEG-ヒドロキシル、及び/又はPEGアミンをエンドキャップとして含み、鎖長の範囲は2K~10Kである。幾つかの実施態様では、ポリマーは疎水性コア形成ポリマーであり、任意選択的にPDLLA、PLGA、PLA、及び/又はPCLからなる群から選択される疎水性コア形成ポリマーである。幾つかの実施態様では、ナノ粒子は、メチルエーテル-PEGポリラクチド-co-グリコリド(mPEG-PLGA,50:50)を含む。幾つかの実施態様では、相添加モード、HDACi/ポリマー比、HDACi/界面活性剤比、溶媒/貧溶媒比、添加速度、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される組成物の一又は複数のパラメーターが最適化される。幾つかの実施態様では、HDACi/ポリマー比は、約1:10から約1:100W/W、任意選択的に1:10から約1:50W/Wの範囲であり;HDACi/界面活性剤比は約1:0.05から約1:0.2W/Wの範囲であり;溶媒/貧溶媒の比は、約1:10から約1:1の範囲であり、任意選択的に貧溶媒は、水、PBS、又は別のイオン性緩衝液からなる群から選択され;及び/又は添加速度は、約10から約500mL/時間、任意選択的に約10から約50mL/時間の範囲である。
【0142】
III.A.製剤
本開示の主題の組成物(例えば、HDAC NP)は、適切である可能性のある任意の標的部位に組成物を送達すると期待される任意の製剤又は経路で投与されうる。
【0143】
本開示の主題の組成物は、幾つかの実施態様では、担体、特に限定されないが、ヒトにおいて薬学的に許容される担体などの薬学的に許容される担体を含む組成物を含む。任意の適切な薬学的製剤を使用して、対象に投与するための組成物を調製することができる。
【0144】
例えば、適切な製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、殺菌性抗生物質、及び製剤を意図されたレシピエントの体液と等張にする溶質を含みうる水性及び非水性の無菌注射溶液が含まれうる。
【0145】
特に上で述べられた成分に加えて、本開示の主題の製剤は、問題の製剤のタイプを考慮して、当該技術分野で慣用の他の薬剤を含むことができることを理解すべきである。例えば、発熱物質を含まない滅菌水溶液及び非水溶液を使用することができる。
【0146】
本開示の主題の治療計画及び組成物は、限定されないが、サイトカイン及び他の免疫調節化合物を含む追加のアジュバント又は生物学的反応修飾剤と共に使用することができる。
【0147】
III.B.投与
本開示の主題の組成物の適切な投与方法には、限定されないが、静脈内投与及び標的組織又は器官(例えば、腫瘍、がん、又はそれらに関連する内皮組織)への直接送達が含まれる。例示的な投与経路には、非経口、経腸、静脈内、動脈内、心臓内、心膜内、骨内(intraosseal)、皮内、皮下、真皮内、真皮下、経皮、くも膜下腔内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、実質性、経口、舌下、頬側、吸入、及び鼻内が含まれる。特定の投与経路の選択は、製剤の性質及び本開示の主題の組成物が作用することが望まれる最終的な標的部位に少なくとも部分的に基づいてなされうる。幾つかの実施態様では、投与方法は、治療が必要とされる部位への組成物の局所化された送達又は蓄積のための特徴を包含する。幾つかの実施態様では、組成物は治療される部位に直接送達される。
【0148】
III.C.用量
本開示の主題の組成物の有効用量が、それを必要とする対象に投与される。「治療有効量」又は「治療量」は、測定可能な反応(例えば、治療される対象における生物学的又は臨床的に関連する反応、例えば、限定されないが、腫瘍及び/又はがんの成長及び/又は増殖の減少、及び/又は対象において疾患、障害、及び/又は状態が発症する程度及び/又はタイミングの減少)を生じさせるのに十分な治療組成物の量である。本開示の主題の組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、特定の対象に対して所望の治療反応を達成するのに有効な量の活性化合物を投与するように変えることができる。選択される投薬量レベルは、組成物の活性、投与経路、他の薬物又は治療との組み合わせ、治療される疾患、障害、及び/又は状態の重症度、及び治療される対象の状態及び以前の病歴に依存するであろう。しかし、所望の治療効果を達成するのに必要とされるよりも低いレベルで本開示主題の組成物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量を徐々に増加させることは、当業者の技量の範囲内である。組成物の効力は変化する可能性があるため、「治療有効量」も変化する可能性がある。しかし、ここに記載の方法を使用すると、当業者は、本開示の主題の組成物の効力及び有効性を容易に評価し、それに応じて治療計画を調整することができる。
【0149】
ここに提示される本開示の主題の開示を検討した後、当業者は、特定の製剤、組成物を用いて使用される投与方法、及び治療される特定の疾患、障害、及び/又は状態を考慮して、個々の対象に合わせて投薬量を調整することができる。用量の更なる計算では、対象の身長と体重、症状の重症度と段階、及び追加の有害な身体的状態の存在を考慮することができる。そのような調整又は変更、並びにそのような調整又は変更を行う時期及び方法の評価は、医療分野の当業者にはよく知られている。
【0150】
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤に対する感受性と関連する疾患、障害、又は状態を治療するための方法であって、ここに開示される組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法にも関する。幾つかの実施態様では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤に対する感受性と関連する疾患、障害、又は状態は、腫瘍及び/又はがんである。幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんは、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される。幾つかの実施態様では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤に対する感受性と関連する疾患、障害、又は状態は、自己免疫疾患、障害、又は状態であり、幾つかの実施態様では、大顆粒リンパ球性白血病でありうる。
【0151】
従って、本開示の主題は、幾つかの実施態様では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤に対する感受性と関連する疾患、障害、及び/又は状態を治療するための方法にも関する。幾つかの実施態様では、該方法は、ナノ粒子内にカプセル化された、及び/又はさもなければナノ粒子と会合されたヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる有効量の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤に対する感受性と関連する疾患、障害、及び/又は状態は、腫瘍及び/又はがんである。幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんは、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、多発性骨髄腫、大顆粒リンパ球性白血病(LGLL)、及び成人T細胞白血病/リンパ腫からなる群から選択される。
【0152】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、ここに開示される有効量の組成物を、それを必要とする対象に投与することによって、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)に対する感受性と関連する疾患、障害、及び/又は状態を治療するための方法にも関する。幾つかの実施態様では、HDACiに対する感受性と関連する疾患、障害、又は状態は、腫瘍及び/又はがん、炎症性疾患、障害、又は状態;自己免疫疾患、障害、又は状態;又はそれらの任意の組み合わせである。幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんは、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、多発性骨髄腫、大顆粒リンパ球性白血病(LGLL)、及び成人T細胞白血病/リンパ腫からなる群から選択される。
【0153】
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤に対する感受性と関連する腫瘍及び/又はがんの成長、増殖、及び/又は転移を阻害するための方法にも関する。幾つかの実施態様では、該方法は、ここに開示される組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんは、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される。
【0154】
従って、本開示の主題は、幾つかの実施態様では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤に対する感受性と関連する腫瘍及び/又はがんの成長、増殖、及び/又は転移を阻害するための方法にも関する。幾つかの実施態様では、該方法は、ナノ粒子内にカプセル化された、及び/又はさもなければナノ粒子と会合されたヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる有効量の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんは、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される。幾つかの実施態様では、本開示の方法は、対象に少なくとも一種の追加の治療活性剤を投与することを更に含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、少なくとも一種の追加の治療活性剤は化学療法剤である。幾つかの実施態様では、化学療法剤は、シクロホスファミド、ドキソルビシン;ビンクリスチン、プレドニゾン、アザシチジン、デシタビン、クラドリビン、メトトレキサート、プララトレキサート、及びシクロスポリンA、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0155】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)に対する感受性と関連する腫瘍及び/又はがんの成長、増殖、及び/又は転移を阻害するための方法にも関する。幾つかの実施態様では、該方法は、ここに開示される組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんは、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、多発性骨髄腫、大顆粒リンパ球性白血病(LGLL)、及び成人T細胞白血病/リンパ腫からなる群から選択される。
【0156】
幾つかの実施態様では、本開示の方法は、対象に少なくとも一種の追加の治療活性剤を投与することを更に含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、少なくとも一種の追加の治療活性剤は化学療法剤である。幾つかの実施態様では、化学療法剤は、シクロホスファミド、ドキソルビシン;ビンクリスチン、プレドニゾン、アザシチジン、デシタビン、クラドリビン、メトトレキサート、プララトレキサート、及びシクロスポリンA、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0157】
III.D.併用療法
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤に対する感受性と関連する所与の疾患、障害、又は状態が、HDAC阻害剤と、治療される疾患、障害、又は状態に適切な一又は複数種の追加の治療剤で治療される併用療法に関する。従って、幾つかの実施態様では、本開示の方法は、対象に少なくとも一種の追加の治療活性剤を投与することを更に含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなりうる。治療される疾患、障害、又は状態が腫瘍及び/又はがんである幾つかの実施態様では、少なくとも一種の追加の治療活性剤は化学療法剤でありうる。化学療法(細胞傷害性)剤には、限定されないが、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、シクロホスファミド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エストロゲン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、ファルネシルタンパク質転移酵素阻害剤、ゲムシタビン、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、マイトマイシン、ナベルビン、ニトロ尿素、プリコマイシン、プロカルバジン、ライオキシフェン、タモキシフェン、タキソール、テマゾロミド(DTICの水性形態)、トランスプラチナム、ビンブラスチン、メトトレキサート、ビンクリスチン、及び任意の類似体及び/又は前述の誘導体又は変異体が含まれる。殆どの化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、副腎皮質ステロイドホルモン、有糸分裂阻害剤、及びニトロソ尿素、ホルモン剤、その他の薬剤、及びそれらの類似体、誘導体、又は変異体のカテゴリーに入る。幾つかの実施態様では、化学療法剤は、シクロホスファミド、ドキソルビシン;ビンクリスチン、及びプレドニゾン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。幾つかの実施態様では、少なくとも一種の追加の治療活性剤は、シクロスポリンA(CSA)、低メチル化剤、クラドリビン、又はプララトレキサートである。幾つかの実施態様では、少なくとも一種の追加の治療活性剤は、PI3K、Bcl-2、BTK、HDAC、DNMT、BRAF、又はMEKを標的とする活性薬剤であり、及び/又はエピジェネティック現象を標的とするものとして分類される活性薬剤であり、及び/又は限定されないがモノクローナル抗体、抗体/薬物コンジュゲート、二重特異性抗体などの免疫学的治療剤、及び/又は限定されないがCAR-T細胞又はCAR-Tベース治療薬(限定されないが市販のT細胞治療薬を含む)などの養子細胞療法である。
【0158】
幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんは、限定されないが、白金系薬剤、タキサン、アルキル化剤、アントラサイクリン(例えば、限定されないがリポソームドキソルビシンを含むドキソルビシン)、代謝拮抗剤、及び/又はビンカアルカロイドなどの一又は複数種の化学療法剤に対して感受性であり、及び/又は難治性、再発性、及び/又は耐性である。幾つかの実施態様では、がんは卵巣がんであり、卵巣がんは、白金系薬剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン)、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、カバジタキセル)、及び/又はアントラサイクリン(例えば、限定されないがリポソームドキソルビシンを含むドキソルビシン)に対して難治性、再発性、又は耐性である。幾つかの実施態様では、がんは結腸直腸がんであり、がんは、代謝拮抗剤(例えば、葉酸拮抗剤(例えば、ペメトレキセド、フロクスウリジン、ラルチトレキセド)、ピリミジン類似体(例えば、カペシタビン、シトララビン、ゲムシタビン、5FU))、及び/又は白金系薬剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン)に対して難治性、再発性、又は耐性である。幾つかの実施態様では、がんは肺がんであり、がんは、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、カバジタキセル)、白金系薬剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、血管内皮増殖因子(VEGF)経路阻害剤、上皮増殖因子(EGF)経路阻害剤)及び/又は代謝拮抗剤(例えば、限定されないが、ペメトレキセド、フロクスウリジン、又はラルチトレキセドを含む葉酸拮抗剤)、及びピリミジン類似体(カペシタビン、シトララビン、ゲムシタビン、5FU)に対して難治性、再発性、又は耐性である。幾つかの実施態様では、がんは乳がんであり、がんは、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、カバジタキセル)、VEGF経路阻害剤、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、限定されないがリポソームドキソルビシンを含むドキソルビシン、エピルビシン、バルルビシン、イダルビシン)、白金系薬剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン)、及び/又は代謝拮抗剤(例えば、限定されないが、ペメトレキセド、フロクスウリジン、又はラルチトレキセドを含む葉酸拮抗剤)、及びピリミジン類似体(例えば、カペシタビン、シトララビン、ゲムシタビン、5FU)に対して難治性、再発性、又は耐性である。幾つかの実施態様では、がんは胃がんであり、がんは、代謝拮抗剤(例えば、限定されないが、ペメトレキセド、フロクスウリジン、ラルチトレキセドを含む葉酸拮抗剤)及びピリミジン類似体(例えば、カペシタビン、シトララビン、ゲムシタビン、5FU)及び/又は白金系薬剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン)に対して難治性、再発性、又は耐性である。幾つかの実施態様では、ナノ粒子の一部としてのHDACiの提供は、一又は複数種の化学療法剤に対して難治性、再発性、及び/又は耐性であるという腫瘍及び/又はがんの性質を克服する。或いは、又は加えて、本開示の主題の組成物及び方法は、例えば限定されないが、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミドダカルバジン、及びBCNU)、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、白金類似体、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、Ara-C、ゲムシタビン)、トポイソメラーゼ阻害剤、ステロイド、及びそれらの組み合わせを含む、例えばリンパ腫の治療にルーチン的に使用される活性薬剤を含みうる。
【0159】
幾つかの実施態様では、治療される疾患、障害、又は状態は炎症性疾患、障害、又は状態である。例示的で、非限定的な炎症性疾患、障害、又は状態には、脂肪肝疾患、子宮内膜症、1型及び2型糖尿病、炎症性腸疾患、喘息、肥満、アルツハイマー及びパーキンソン病、強直性脊椎炎(AS)、抗リン脂質抗体症候群(APS)、痛風、炎症性関節炎センター、筋炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE、ループス)、血管炎、腫瘍/がんが含まれる。従って、幾つかの実施態様では、少なくとも一種の追加の治療活性剤は、これらの疾患、障害、又は状態の何れかの治療/管理に典型的に用いられる任意の抗炎症剤でありうる。例示的な抗炎症剤には、限定されないが、アルクロフェナク;ジプロピオン酸アルクロメタゾン;アルゲストンアセトニド;アルファアミラーゼ;アムシナファル;アムシナフィド;アンフェナクナトリウム;アミプリロース塩酸塩;アナキンラ;アニロラック;アニトラザフェン;アパゾン;バルサラジド二ナトリウム;ベンダザック;ベノキサプロフェン;ベンジダミン塩酸塩;ブロメライン;ブロペラモール;ブデソニド;カルプロフェン;シクロプロフェン;シンタゾン;クリプロフェン;プロピオン酸クロベタゾール;酪酸クロベタゾン;クロピラック;プロピオン酸クロチカゾン;酢酸コルメタゾン;コルトドキソン;デフラザコート;デソニド;デソキシメタゾン;ジプロピオン酸デキサメタゾン;ジクロフェナクカリウム;ジクロフェナクナトリウム;ジフロラゾン二酢酸塩;ジフルミドンナトリウム;ジフルニサル;ジフルプレドナート;ジフタロン;ジメチルスルホキシド;ドロシノニド;エンドリソン;エンリモマブ;エノリカムナトリウム;エピリゾール;エトドラク;エトフェナマート;フェルビナク;フェナモール;フェンブフェン;フェンクロフェナク;フェンクロラック;フェンドサル;フェンピパロン;フェンチアザク;フラザロン;フルアザコート;フルフェナム酸;フルミゾール;酢酸フルニソリド;フルニキシン;フルニキシンメグルミン;フルオコルチンブチル;フルオロメトロン酢酸塩;フルクアゾン;フルルビプロフェン;フルレトフェン;プロピオン酸フルチカゾン;フラプロフェン;フロブフェン;ハルシノニド;プロピオン酸ハロベタゾール;ハロプレドン酢酸塩;イブフェナク;イブプロフェン;イブプロフェンアルミニウム;イブプロフェンピコノール;イロニダプ;インドメタシン;インドメタシンナトリウム;インドプロフェン;インドキソール;イントラゾール;酢酸イソフルプレドン;イソキセパック;イソキシカム;ケトプロフェン;ロフェミゾール塩酸塩;ロルノキシカム;エタボン酸ロテプレドノール;メクロフェナム酸ナトリウム;メクロフェナム酸;二酪酸メクロリゾン;メフェナム酸;メサラミン;メセクラゾン;スレプタン酸メチルプレドニゾロン;モミフルマート;ナブメトーン;ナプロキセン;ナプロキセンナトリウム;ナプロキソール;ニマゾン;オルサラジンナトリウム;オルゴテイン;オルパノキシン;オキサプロジン;オキシフェンブタゾン;パラニリン塩酸塩;ペントサンポリ硫酸ナトリウム;フェンブタゾングリセリン酸ナトリウム;ピルフェニドン;ピロキシカム;ピロキシカム桂皮酸塩;ピロキシカムオラミン;ピルプロフェン;プレドナゼート;プリフェロン;プロドリン酸;プロクアゾン;プロキサゾール;クエン酸プロキサゾール;リメクソロン;ロマザリット;サルコレックス;サルナセジン;サルサラート;塩化サンギナリウム;セクラゾン;セルメタシン;スドキシカム;スリンダク;スプロフェン;タルメタシン;タルニフルメート;タロサレート;テブフェロン;テニダップ;テニダップナトリウム;テノキシカム;テシカム;テシミド;テトリダミン;チオピナク;ピバル酸チキソコルトール;トルメチン;トルメチンナトリウム;トリクロニド;トリフルミデート;ジドメタシン;ゾメピラックナトリウム;メトトレキサート、デキサメタゾン、デキサメタゾンアルコール、リン酸デキサメタゾンナトリウム、酢酸フルオロメタロン、フルオロメタロンアルコール、エタボン酸ロトプレンドール、メドリゾン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、ジフルプレドナート、リメキソロン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ロドキサミドトロメタミン、グルココルチコイド、ジクロフェナク、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0160】
幾つかの実施態様では、治療される疾患、障害、又は状態は、自己免疫疾患、障害、又は状態である。例示的な自己免疫疾患、障害、又は状態には、アジソン病、セリアックスプルー病(グルテン過敏性腸症)、皮膚筋炎、バセドウ病、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血、反応性関節炎、関節リウマチ、乾癬/乾癬性関節炎、多発性硬化症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、1型糖尿病、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、自己免疫性血管炎、ギラン・バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄性多発神経炎が含まれる。従って、幾つかの実施態様では、少なくとも一種の追加の治療活性剤は、これらの疾患、障害、又は状態の何れかの治療/管理に典型的に用いられる任意の治療薬であり得、これには、限定されないが、上に列挙した抗炎症薬及び/又はステロイド(限定されないが、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、及びデキサメタゾンを含む)、コルヒチン、ヒドロキシクロロキン(プラケニル)、スルファサラジン、ダプソン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト、マイフォーティック)、アザチオプリン(イムラン)、抗IL-1生物製剤(限定されないがアナキンラ/キネレット、カナキヌマブ/イラリス、及びリロナセプト/アルカリストを含む)、抗TNF生物製剤(限定されないがインフリキシマブ/レミケード、アダリムマブ/ヒュミラ、ゴリムマブ/シンポニ、エタネルセプト/エンブレル、及びセルトリズマブ/シムジアを含む)、抗IL-6生物製剤(限定されないが、トシリズマブ/アクテムラ及びサリルマブ/ケブザラを含む)、補体阻害剤(限定されないが、エクリズマブを含む)、抗CD20生物製剤(限定されないが、リツキシマブ/リツキサンを含む)、B細胞増殖因子ターゲティング生物製剤(限定されないが、ベリムマブ/ベンリスタを含む)、適応免疫-T細胞を標的とした治療薬(限定されないが、シクロスポリンを含む)、T細胞の共刺激及び/又は活性化を標的とした治療薬(限定されないが、アバタセプト/オレンシアを含む)、抗IL-17生物製剤(限定されないが、セクキヌマブ/コセンティクスを含む)、イクセキズマブ/タルツ、ブロダルマブ/シリクを含む)、抗IL-23生物製剤(限定されないが、グセルクマブ/トレムフィアを含む)、抗IL-12/23生物製剤(限定されないが、ウステキヌマブ/ステラーラを含む)、抗IL-5生物製剤(限定されないが、メポリズマブ/ヌーカラ、レスリズマブ/シンケア、ベンラリズマブ/ファセンラを含む)、抗IL-4/IL-23生物製剤(限定されないが、デュピルマブ/デュピクセントを含む)、IgEを標的とする生物製剤(限定されないが、オマリズマブ/ゾレアを含む)、リンパ球の移動/輸送を標的とする薬剤(限定されないが、ベドリズマブ/エンタイビオを含む)、限定されないがJAK阻害剤(限定されないが、トファシチニブ/ゼルヤンツ、ウパダシチニブ/リンヴォック、及びバリシチニブ/オルミエントなど)を含む、任意の自己免疫疾患、障害、又は状態に関連している任意の生物学的活性の小分子阻害剤、又はこれらの薬剤の何れかの任意の組み合わせ、又はこれらの任意の薬学的に許容可能な塩又は誘導体が含まれる。その全開示が出典明示によりここに援用される米国特許第10092584号を参照のこと。
【0161】
従って、本開示の主題は、幾つかの実施態様では、炎症性及び/又は自己免疫性の疾患、障害、又は状態を治療する方法にも関する。幾つかの実施態様では、炎症性及び/又は自己免疫疾患、障害、又は状態は、脂肪肝疾患、子宮内膜症、1型及び2型糖尿病、炎症性腸疾患、喘息、肥満、アルツハイマー及びパーキンソン病、強直性脊椎炎(AS)、抗リン脂質抗体症候群(APS)、痛風、炎症性関節炎センター、筋炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE、狼瘡)、血管炎、アジソン病、セリアックスプルー病(グルテン過敏性腸症)、皮膚筋炎、バセドウ病、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血、反応性関節炎、関節リウマチ、乾癬/乾癬性関節炎、多発性硬化症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、1型糖尿病、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、自己免疫性血管炎、ギラン・バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄性多発神経炎からなる群から選択される。幾つかの実施態様では、本開示の方法は、本開示の主題の組成物を、少なくとも一種の追加の治療活性剤と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む。幾つかの実施態様では、少なくとも一種の追加の治療活性剤は、抗炎症及び/又は免疫抑制剤である。
【0162】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)に対する感受性と関連する炎症性及び/又は自己免疫疾患、障害、及び/又は状態を治療するための方法にも関する。幾つかの実施態様では、該方法は、ここに開示される組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含み、本質的にそれからなり、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、炎症性及び/又は自己免疫疾患、障害、又は状態は、脂肪肝疾患、子宮内膜症、1型及び2型糖尿病、炎症性腸疾患、喘息、肥満、アルツハイマー及びパーキンソン病、強直性脊椎炎(AS)、抗リン脂質抗体症候群(APS)、痛風、炎症性関節炎センター、筋炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE、狼瘡)、血管炎、アジソン病、セリアックスプルー病(グルテン過敏腸疾患)、皮膚筋炎、バセドウ病、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血、反応性関節炎、乾癬/乾癬性関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、1型糖尿病、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、自己免疫性血管炎、ギラン・バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄性多発神経炎からなる群から選択される。
【0163】
幾つかの実施態様では、本開示の方法は、対象に少なくとも一種の追加の治療活性剤を投与することを更に含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、少なくとも一種の追加の治療活性剤は、抗炎症及び/又は免疫抑制剤である。
【0164】
III.E.ナノ粒子の合成
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、ナノ粒子を合成するための方法、その方法における有用なアプローチ、及びその方法及び組成物によって作製されるナノ粒子(NP)を提供する。幾つかの実施態様では、本開示の主題は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、幾つかの実施態様ではロミデプシンを含むナノ粒子の合成に関する。幾つかの実施態様では、ここに記載の方法は、多点撹拌機でNP特性を最適化するために、「高スループットパラレル方式」で相から相へのマルチチャネル由来の制御された添加を利用することを含む。粒子は二種の溶液の界面に形成される。幾つかの実施態様では、この方法は半自動であり、明確に定まった形態を有する単分散NPを生成する。ここでの方法は、ナノ粒子を形成する一又は複数種の材料を第二の溶液又は貧溶媒と混合することを含む。この方法を使用して生成された粒子の集団は、所定範囲の均一なサイズと形状を有している。本開示の方法の幾つかの実施態様に従って生成される粒子は、ロミデプシンの比較的正確な所望の濃度を達成することができる。幾つかの実施態様では、生成された粒子は負のゼータ電位を有する。幾つかの実施態様では、ここで生み出された方法は、安定かつ拡張可能な製剤を生成するための、反復的で迅速に最適化する低コストの製造技術である。幾つかの実施態様では、この方法は、非常に効果的で再現可能なスケールアップ合成を記述する。
【0165】
従って、本開示の主題は、幾つかの実施態様では、一又は複数種の薬物分子を含むナノ粒子を製造するための方法にも関する。幾つかの実施態様では、本方法は、(a)薬物分子と一又は複数種のポリマーを含む最初又はその後の反応混合物の二つ以上のパラメーターを一又は複数回の反復で変化させる工程;(b)工程(a)の変化に基づいて、更なる反応混合物のためにパラメーターの所望の組み合わせを選択する工程;及び(c)更なる反応混合物から薬物分子を含むナノ粒子を沈殿させる工程を含み、それらから本質的になり、又はそれらからなる。幾つかの実施態様では、反応混合物は、溶媒、非溶媒、界面活性剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される反応混合物を更に含む。幾つかの実施態様では、溶媒は有機溶媒である。幾つかの実施態様では、非溶媒は、水性溶媒、水、又はPBS緩衝液である。
【0166】
幾つかの実施態様では、粒子はポリマーから調製される。ポリマー材料は、生体適合性及び生分解性でありうる。幾つかの実施態様では、組成物は、メトキシポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(D,L-ラクチド)、メトキシポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(乳酸-co-グリコール酸)ジブロックコポリマーを含む。幾つかの実施態様では、生成された粒子の集団は、モノメチルポリエチレングリコール(メトキシPEG、又はmPEG)を有する。幾つかの実施態様では、コアを形成する疎水性ポリマーの鎖長及び分子量は可変である。幾つかの実施態様では、シェルを形成する親水性ポリエチレングリコールの比は可変であり、制御される。ポリエチレングリコールを含む製剤は、粒子の凝集及び「オプソニン化」から粒子を保護するとしばしば考えられる。多くの場合、「ステルス」性を有する生体適合性粒子を作製することが望ましい。幾つかの実施態様では、ステルス性には、免疫系、クリアランスの代謝経路などを回避することが含まれる。幾つかの実施態様では、この(これらの)方法を使用して生成されるナノ粒子組成物は安定であり、ポロキサマー188などの非イオン性界面活性剤を含む。組成物は、薬理学的性質及び薬物動態学的特徴、毒性及び有効性の改善を促進する特性を有しうる。幾つかの実施態様では、本開示の主題は、治療用途のためのロミデプシンポリマーナノ粒子製剤の合成及び最適化のための詳細な方法を提供する。
【0167】
ロミデプシンに関連する確立された物理化学的特性及び毒性に関連する課題に対処するために、本開示の主題は、幾つかの実施態様において、薬理学的挙動が改善された薬物のバージョンを合成するための最適化されたナノテクノロジーアプローチを提供する。これらのアプローチにより、効率的な処方方法での薬物の高度な充填と放出を可能としうる。ナノ粒子の小さいサイズ、大きな表面積対体積比、合理的なコンビナトリアルナノ治療薬の創製能力、その表面上のホーニングモチーフを生体共役反応させる能力などのナノ粒子の独特の特性が、伝統的な小分子創薬設計及び発見と比較して多くの利点をもたらす。
【0168】
ナノ粒子の特性及びここに記載の方法論に基づいて、ロミデプシンを含むナノ粒子(その実施態様をここでは「ナノロミデプシン」及び「NanoRomi」と呼ぶ)は、実質的に改善された薬物特性を持つナノ治療薬を生成し、それを疾患治療のためのより有利な薬物にする。本開示の主題は、幾つかの実施態様では、ロミデプシンで製剤化した新規ポリマーナノ粒子に関する。ナノ粒子の製剤化は、期待される望ましいサイズ、カプセル化効率、及び薬物動態パラメーターを容易にするように操作された。列挙されたパラメーターの一部又は全てを含む、列挙されたパラメーターの一又は複数は、ナノ粒子の安定性、サイズ、多分散性指数(PDI)、ゼータ電位、及び薬物のカプセル化に影響を与える役割を果たしうる。例示的なパラメーターには、次のうちの一又は複数が含まれうる:0から約0.3の範囲のPDI、約30~150ナノメートルの範囲のサイズ、球状、棒状、及び円筒状、任意選択的に球状からなる群から選択される形態;約-30から約+30の範囲のゼータ電位、約50~60%のカプセル化効率;約500から約600μg/mLの濃度;約2Kから約10Kの範囲のPEGの使用;及び約4Kから約25Kのポリマーサイズ。限定されないが、コア形成ブロックポリマーの化学的性質、親水性ブロックポリマーの分子量、ポリマーの濃度、溶媒の制御された添加、溶媒と貧溶媒の比、貧溶媒のpH、界面活性剤の選択とパーセント濃度、及び粒子のコアシェル性を含む要因が、ナノ粒子の物理化学的特性に影響を及ぼす。本開示のナノ粒子は、薬物の薬物動態学的特徴を改善することが示されている。
【0169】
幾つかの実施態様では、本開示の方法は、相添加モード、薬物/ポリマー比、薬物/界面活性剤比、溶媒/貧溶媒比、添加速度、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される一又は複数のパラメーターの最適化を含む。幾つかの実施態様では、薬物はHDACiであり、任意選択的にロミデプシンである。幾つかの実施態様では、HDACi/ポリマー比は、約1:10から約1:100W/W、任意選択的に1:10から約1:50W/Wの範囲であり;HDACi/界面活性剤比は、約1:0.05から約1:0.2W/Wの範囲であり;溶媒/貧溶媒比は、約1:10から約1:1の範囲であり、任意選択的に、貧溶媒は、水、PBS、又は別のイオン性緩衝液からなる群から選択され;及び/又は添加速度は、約10から約500mL/時間、任意選択的に約10から約50mL/時間の範囲である。
【実施例】
【0170】
次の実施例は例証的な実施態様を提供する。本開示及び当業者の一般的な水準に鑑みると、当業者であれば、次の実施例が例示のみを目的としており、本開示の主題の範囲から逸脱することなく数多くの変更、修正、及び変形を採用できることが理解されるであろう。
【0171】
更なる説明がなくとも、当業者であれば、前述の説明と次の例証的な実施例を使用して、本開示の主題の化合物を製造しかつ利用し、本開示の主題の方法を実施することができると考えられる。従って、次の実施例は、本開示の主題の実施態様を特に指摘するものであり、本開示の残りの部分を如何なる形でも限定するものとして解釈されるべきではない。
【0172】
[実施例のための材料と方法]
[細胞株]T細胞リンパ腫細胞株HH及びH9(両方とも皮膚T細胞リンパ腫;CTCL)、SUP-T1(T細胞リンパ芽球性リンパ腫)、並びにFEPD及びSUP-M2(ALK陰性未分化大細胞リンパ腫;ALCL)をATCCから入手した。NKL(ナチュラルキラー細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫)細胞株(Robertson等,1996)をまた用いた。皮膚メラノーマ細胞株FM3-29をDSMZから入手した。大型顆粒リンパ球(LGL)白血病細胞株TL-1は、Loughran研究室で作製した。全ての細胞は、加湿インキュベーター内で37℃、5%CO2で増殖させた。細胞株はショートタンデムリピートDNAプロファイリング(Genetica DNA Laboratories)によって確認し、MycoAlert PLUS検出キット(Lonza #LT07-710)を使用してルーチン的にマイコプラズマ汚染について検査した。実験は解凍後6週間以内に実施した。HH、H9、SUP-T1、FEPD及びFM3-29細胞は、10%FBS(Thermofisher Scientific,Waltham,MA)を含むRPMI-1640(Corning,Glendale,AZ)中で培養した。SUP-M2細胞は、20%FBSを含むRPMI-1640中で培養した。TL-1細胞は、10%FBSを含み、200U/mlのIL-2(Miltenyi Biotec カタログ#130-097-743)を補充したRPMI-1640中で培養した。NKL細胞は、10%FBSを含み、100U/mlのIL-2を補充したRPMI-1640中で培養した。
【0173】
[化合物]ロミデプシン(デプシペプチド,FK228,FR901228,NSC630176)は、eNovation Chemicals(カタログ#05342;New Jersey)から購入した。脂質1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、及び1,2-ジオレオイルsn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩;PEG2000 PE)は、Avanti Polar lipidsで注文した。コレステロールとPolaxemer 188はSigmaで注文し、全ての有機溶媒Amiconフィルター、Sartorius Minisartシリンジフィルター及び一般補給品はFisher Scientificで注文し、20%エタノール中のSepharose CL-4BはGE Health Care社から購入した。全てのポリマーは、Akina社の一部門であるPolyscitechで注文した。
【0174】
[ナノロミデプシンリポソームの調製と特性評価]脂質薄膜は、25mg/mL濃度の脂質と1mg/mL濃度のロミデプシンのクロロホルム溶液を蒸発させることによって調製した。中性リポソームは、脂質DSPC:DOPE:PEG2000PE及びロミデプシンをこの順序及びモル比5.67:2.83:1.0:0.5で混合することによって調製した。次に、中性+5%コレステロール製剤を、全容量1mLの脂質に対してそれぞれモル比5.3:2.67:1.0:0.5:0.5で混合した。ロミデプシンを1mg/mLの濃度でクロロホルムに溶解し、0.5M比の溶液を脂質試料に添加した。脂質混合物をガラス試験管内で完全に混合し、ついでクロロホルムを窒素下35~40℃において2~3時間蒸発させて完全に乾固させた(試験管の周りに薄膜を形成した)。微量のクロロホルムをロータリーエバポレーターにより減圧下で30分かけて除去した。次に、リポソームをヒートシェーカー(60℃;600rpm)内で1×PBSで2時間再水和させ、15分ごとにボルテックスしてミセルに転換し、リポソームに合成し、これをその後、超音波浴に20分間入れ、細分化してリポソーム試料を均質化した。
【0175】
ついで、0.1μmのポリカーボネート膜を取り付けたAvanti Mini押出機(Avanti Polar Lipids)を使用し、シリンジ間でリポソーム溶液を11回往復させることにより、リポソームをサイズ調整した。最終試料を収集し、その後、1×PBSを溶離液として使用してセファロースビーズ上のサイズ排除カラムによって精製し、遊離薬物を除去した。
【0176】
[ナノロミデプシンポリマー粒子の調製と特性評価]ナノロミデプシンポリマー粒子は、バルクナノ沈殿によって調製した。mPEG-PDLLAポリマー(
図1)、ロミデプシン、及びpolaxamer 188のアセトニトリル溶液を、10mg/mL、2mg/mL、及び1mg/ML濃度で調製した。それぞれ0.5mLのポリマー及び薬物溶液(薬物/ポリマー比;1/5)と0.1mLの界面活性剤(薬物に対して10%w/w)を混合し、500rpmで連続的に撹拌した。Milli Qナノ純水(有機/水性比;1:9)を10ml/時間の速度で添加した。その期間にわたって溶媒分散を記録し、有機溶媒を完全に除去するために更に3時間撹拌を続けた。最後に、24℃において2000rpm、20分間の遠心分離によってナノ粒子を取り出した。粒子は、ナノ純水又は1×PBS中に再構成することによって収集した。ナノロミデプシン粒子は4℃において保存した。これらの製剤の粒径と形態は、DLSとクライオEMを使用して評価した。薬物濃度は、以下に記載される分析的質量分析法、LC-MSで定量した。
【0177】
[動的光散乱(DLS)]DLS測定をポリマーナノ粒子について実施した。粒子の粒径分布を、Zetasizer(Malvern InstrumentsモデルZEN3690,Malvern,Worcestershire,WR141XZ,United Kingdom)を使用した動的光散乱によって分析した。粒径に対する特定のサイズの粒子のパーセンテージを25℃において3回測定した(
図2A~2Cを参照)。
【0178】
[電子顕微鏡法]ポリマー粒子のサイズと形態は、120kV クライオ電子顕微鏡(クライオEM)で動作するFEI Tecnai F20(FEI,Hillsboro,OR)透過型電子顕微鏡を使用して測定した。クライオEM試料は、標準的な検証方法によって調製した。約3μlの試料溶液のアリコートをグロー放電有孔カーボンコートグリッド(2/1-3C C-Flat;Protochips,Raleigh,NC,USA)上に塗布し、過剰な溶液を濾紙で吸い取った。次に、試料を-180℃の液体エタンのリザーバ中に素早く浸漬した。ガラス化した試料を液体窒素中に保存し、Gatan 626低温貯蔵サンプルホルダー(Gatan,Pleasontville,CA)に移し、ついで-180℃において顕微鏡内に維持した。全ての画像は、低温条件下でGatan 4K×4KピクセルCCDカメラを用いて、標本レベル及び-1から-3μmの範囲の公称デフォーカスで、それぞれ9600倍又は29000倍の倍率、1.12nm又は0.37nmのピクセルサイズで記録した。粒子は29000倍で記録し、画像は50nmスケールバーで記録した。例示的な画像を
図3に示す。
【0179】
[ナノ粒子中のロミデプシンのLC-MS定量]LC-MSは、TQ-S分光計(Waters Corporation,Milford,MA)で実施した。試料は、粒子サイズ1.7μm、ID2.1mm×50mm長のカラムのAcquity C18カラムBEHハイブリッドテクノロジーを通過させることによって分析した。カラム温度50℃、注入量1μLに設定し、流量0.5mL/分で2分間、移動相A:水+0.1%ギ酸、移動相B:MeOH+0.1%ギ酸の勾配で溶出させた。例示的な結果を
図4に示す。
【0180】
[細胞生存率アッセイ]細胞生存率については、細胞株を48ウェルプレートに適切な細胞密度(SUP-T1、HH、NKL、TL-1は100000細胞/ml/ウェル、H9、FEPD SUP-M2及びFM3-29は50000細胞/ml/ウェル)で播種した。ナノロミデプシンmPEG PDLLA PBS、ナノロミデプシンmPEG PDLLA H2O、ナノロミデプシンmPEG PLGA H2O、又は未カプセル化ロミデプシンを、0.03nMから30nmの範囲の濃度で細胞に添加した。同じ濃度のポリマーカプセル化ロミデプシンを得るために、空のゴーストナノmPEG PDLLA及びナノmPEG PLGAを標準対照として様々な希釈度で様々な細胞株に添加した。37℃、5%CO2で24、60、及び96時間インキュベートした後に細胞を収集し、CELLTITER-GLO(登録商標)(Promega)発光試薬を使用して、ATPの存在量を定量することによって細胞生存率をアッセイした。CELLTITER-GLO(登録商標)試薬を1:1の比で添加して15分後、GLOMAX(登録商標)Discover Microplate Reader(Promega)でルミネセンスを読み取った。ルミネセンスは、生存率100%と定義した未治療対照に対して正規化した。
【0181】
[フローサイトメトリー]細胞を30時間の処理後に回収し、PBSで二回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド溶液で固定し、70%メタノールで透過処理した後、関連抗体:HDAC1ポリクローナル抗体(Proteintech)、ウサギ抗アセチルヒストンH3 K9/K14、及びウサギ抗アセチルヒストンH4(Millipore)と共にインキュベートした。室温における30分のインキュベーション後、細胞をPBSで二回洗浄し、FITC結合二次ヤギ抗ウサギ抗体(Thermofisher)を添加した。細胞を氷上で30分間インキュベートし、その後PBSで洗浄した。二回目の洗浄後、細胞を、4%FBSを含むPBSに再懸濁し、フローサイトメーターでのシグナル取得の準備を整えた。細胞株におけるアポトーシスは、蛍光色素結合抗切断型PARP抗体(BD Biosciences)を使用して、切断型ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ-1(PARP)の存在によって評価した。染色後、Attune Flow Cytometerを使用して細胞を取得し、FloJo解析ソフトウェアを使用してデータを解析した。平均蛍光強度(MFI)は、各マーカーの発現レベルを示した。
【0182】
[ウェスタンブロット]細胞は、通常の増殖条件下で24時間、各薬物及びナノポリマーについて指定された濃度でインキュベートした。全細胞可溶化物からのタンパク質を12%から20%のSDS-PAGEで分離し、ニトロセルロース膜に転写した。膜をリン酸緩衝生理食塩水及び5%脱脂粉乳を含む0.05%Triton X-100でブロックし、その後、特異的一次抗体で一晩プローブした。抗体は、対応する西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体を用いて検出した。ブロットはBio-Rad CLARITYTM及びCLARITY MAXTMECL化学発光基質検出試薬を使用して展開した。シグナル検出とイメージングは、シグナル定量化を伴うCHEMIDOCTMシステム(Bio-Rad)を使用してキャプチャし解析した。使用したモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体は次の通りであった:アセチル化ヒストンH3、アセチル化ヒストンH4、ビンキュリン、及びβ-アクチン(全てCell Signaling Technology製)。
【0183】
[インビボ研究]単回投与毒性研究では、MTD研究のために5から7週齢の雌BALB/cマウスを選択した。動物は、体重に基づいて用量群にランダムに割り当てた。群に割り当てる前に、動物の体重変動は平均体重の20%を超えなかった。マウスは、ナノロミデプシン(NanoRomi)と遊離ロミデプシンの二つのコホートに分けた。各コホートはサブコホートに分けた。各サブコホート(n=5)は、腹腔内(IP)及び静脈内(IV)投与経路により、1、2、3、5及び8mg/kg体重の用量で単回治療を受けた。NanoRomiは、無菌条件下でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈した。ロミデプシンはDMSO中で調製し、その後無菌条件下でPBSで希釈した。反復投与MTDでは、マウスを2及び3mg/kgのナノロミデプシンPDLLA及び遊離ロミデプシンで1、4、8及び11日に、腹腔内治療した。マウスは最後の治療後7日間モニタリングした。単回投与及び反復投与の毒性研究では、体重減少と臨床スコアの二つのエンドポイントを使用した。臨床徴候は、活動、外観(被毛状態と目/鼻)、姿勢、及び身体状態を観察することによってスコア化し、それぞれ最大3点とした(0、正常;1、正常から僅かな逸脱;2、正常から中程度の逸脱、3、正常から重大な逸脱)。安楽死の基準には、20%を超える体重減少か、6を超える臨床スコアに達したかを含めた。
【0184】
薬物動態研究では、マウスを二つの治療コホートに分け、一方はナノロミデプシンPDLLA、他方は遊離ロミデプシンとした。各治療コホートは、投与経路(IP又はIV)に応じて二つのサブコホートに更に分けた。各サブコホート(n=21)は、NanoRomi又は遊離ロミデプシンの我々の単回投与毒性研究から定義された1/2MTDの単回治療(2.5mg/kg体重)を受けた。治療後1、3、6、18、24、48及び72時間でマウスを屠殺した(各時点当たりn=3)。血液(約1mL)をCO2麻酔下で終末心臓穿刺により採取し、EDTAコートK3EDTAチューブに採取し、続いて遠心分離(2000×gで15分間)して血漿を単離した。血漿を凍結保存バイアルに入れ、液体窒素を使用して瞬間凍結させることによって保存した。3匹の未治療マウスからの血液を治療開始時(T=0)に採取し、対照として使用した。ロミデプシンのレベルは、ストックロミデプシンで得られた標準曲線を用いたタンデム質量分析検出と組み合わせた逆相液体クロマトグラフィーに基づく検証方法によって定量した。
【0185】
[データ解析]血漿中の遊離ロミデプシン/ナノロミデプシンPDLLAの薬物動態プロファイルを、PKSolverソフトウェアを使用するノンコンパートメント解析によって解析し、最大濃度(Cmax)、Cmaxの時間(Tmax)、曲線下面積(AUC)及び半減期などの薬物動態パラメーターを決定した。有効性研究では、5から7週齢の雌NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJマウス(The Jackson Laboratory)に、蛍光タンパク質Chili(それぞれ554nmと581nmにdTomato吸収極大と発光極大)と、バイオルミネセンス生成タンパク質であるホタルルシフェラーゼ(Luc)を発現するH9細胞を側腹部の皮下に300万個注射した。インビボBLI解析は、低温冷却されたLago X(Spectral Instruments Imaging system)で行った。細胞接種の4日後から週に二回マウスを画像化した。異種移植腫瘍が107超の生物発光強度(光子/秒)に達したところで、マウスをそれぞれ10匹ずつの次の4治療群に無作為化した:(i)通常のPBSのみで対照群を治療;(ii)ゴーストナノ粒子(iii)ロミデプシン(2mg/kg)(iv)ナノロミデプシン(2mg/kg)は1、4、8、及び11日目に腹腔内注射により投与した。ベースライン画像データは、全マウスについて1日目(薬物投与の開始)と治療前の薬物投与の毎日、記録した。動物の数、研究デザイン、及び動物の治療は、米国バージニア州シャーロッツビルにあるバージニア大学の施設内動物管理使用委員会(IACUC)によって審査され、承認された。
【0186】
実施例1
ポリマーナノ粒子へのロミデプシンのカプセル化
我々は最初に、ロミデプシンをカプセル化するためにリポソームナノ製剤を選択した。リポソームは、インビボでの細胞及び組織の取り込み及び化合物の体内分布の改善に大きく貢献するため、広く受け入れられているナノ担体である。我々は、幾つかの実施態様ではDSPC、DOPE、及び/又はPEGを含む、標準的な脂質組み合わせを使用することによって、ロミデプシンの中性リポソーム製剤を調製した。この方法により、中性リポソーム及びコレステロールリポソームにそれぞれ131nM及び148nMの許容可能なサイズ、0.14及び0.08の多分散性指数(PDI)のナノ粒子が得られた。しかし、リポソームの調製中に脂質にコレステロールを添加した後でも、粒子中の薬物の濃度は非常に低い(1%未満)か、無視できるほどであった。これらの最適ではない結果を考慮して、我々はナノ粒子の再設計を続けた。
【0187】
ポリマーナノ粒子は、ここ数年にわたり、がん研究並びにターゲティング薬物送達においてますます注目を集めている。FDA承認の生分解性両親媒性ブロックコポリマーであるポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)からポリdl-乳酸(PDLLA)ポリマーが、生体適合性NPの創製において重要な役割を果たしている。従って、我々は努力を継続し、分子量(Mw 約5000:10000Da)のm-PEG PDLLAを選択し、ボトムアップ「バルクナノ沈殿又は溶媒置換」法によってロミデプシンポリマーナノ粒子を調製した。このジブロックコポリマーの疎水性により、疎水性薬物の捕捉が促進される可能性がある。我々は、特定の薬物/ポリマー/界面活性剤比を使用したバルクナノ沈殿法を開発した。薬物/ポリマー(D/P)比、有機対水(O/W)比、薬物/界面活性剤(D/S)比、温度、及び溶媒の選択を変えて、最適なサイズとPDIを得て、粒子内の薬物濃度を改善することにより、体系的な実験操作条件を実験の設計に含めた。D/P;1:5、O/W;1:9;D/ポラキサマー188 1:0.1(w/w)4℃で、より高い薬物充填量が達成された。この方法により、0.24から0.26の妥当な多分散性指数(PDI)と60~70nMのz平均を有するナノ粒子が得られた。インビボ実験に対する薬物濃度を改善するために、5KのPEG、(5K:20K)のPEG対ポリマーを維持するより高分子量のPDLLA、(LA:GA比を50:50に維持する2K:10K、5K:20K、5K:45K、5K:75K)を含む様々な比のm-PEG及びPLGA、並びに様々な界面活性剤と室温及び4℃におけるD/P比を有するm-PEG-PCLを含む他のタイプのポリマーを調査する。上記の製剤/ナノ粒子は、4℃において1年を超えて安定であった。持続放出速度をもたらすロミデプシンの最適なカプセル化を伴うモデルナノポリマースカフォールド、ナノロミデプシンが達成された。
【0188】
実施例2
ナノロミデプシンポリマーは細胞生存率を低下させ、がん細胞にアポトーシスを誘導する
がん細胞株HH及びH9(CTCL)、SUP-T1(T細胞リンパ芽球性リンパ腫)、FEPD(ALCL)、SUP-M2(ALK-ALCL)、NKL(ナチュラルキラー細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫)、TL-1(LGL白血病)及びFM3-29(皮膚メラノーマ)においてロミデプシンとロミデプシンを含む三種のナノポリマーで処置した後の細胞生存率に対する反応のパターンを特定するために比較濃度-反応評価を実施した。IC
50(増殖能力の50%を阻害)を、30、60、及び96時間における、0.3~30nMのロミデプシン及びナノロミデプシンポリマーの増加用量範囲の分析後に決定した。(
図5A及び5B)。空のゴーストポリマーはそれに応じて希釈した。ナノロミデプシンの3種の製剤は全て、濃度及び時間依存的に全てのがん細胞株の細胞増殖を阻害した。(
図5B)。50%生存率の阻害能力(IC
50)は、試験した様々な細胞株に対して三種のナノ製剤で様々であった。60時間の時点で、がん細胞株は一貫してナノロミデプシンmPEG PDLLA H
2O(0.7~1.9nM範囲のIC
50;平均1.2;)に対して最も感受性が高く、これはロミデプシン(0.6~1.9nM範囲のIC
50;平均1.225;表2)と非常に類似していた。ナノロミデプシンmPEG PDLLA PBS(nM範囲1.3~7.5のIC
50;平均2.812;表2)及びナノmPEG PLGA(nM範囲1.1~5.5のIC
50;平均2.875;表2)は両方とも、ロミデプシン及びナノロミデプシンmPEG PDLLA H
2Oと比較して効力が低かった。対応する空のゴーストナノ粒子を調査したところ、試験したどのがん細胞株でも増殖の阻害はなかった(
図5A)。ラットNK細胞の構造的及び機能的特徴を持つF344ラットの自然発生白血病細胞株NKL-16におけるロミデプシンに対する三種のナノロミデプシン薬物の細胞傷害活性の比較では、ヒトがん細胞株と類似していることが示され、ナノロミデプシンmPEG PDLLA H
2Oが、三種の製剤の中で最も強力で、試験した3つ全ての時点(24、48、及び72時間)でIC
50がロミデプシンと非常に類似していた(
図5B)。
【0189】
フローサイトメトリーにより、切断型PARPの発現の増加によって示されるように、三種のナノポリマー全てでの処置がロミデプシンと同様のアポトーシスを誘導したことが実証された(
図6A及び6B)。しかし、ナノロミデプシンmPEG-PDLLA PBS及びナノロミデプシンm-PEG PDLLA H
2Oは、ロミデプシン及びナノロミデプシンm-PEG-PLGAと比較して、増加したPARP切断を示した。
【0190】
実施例3
ナノロミデプシンPDLLAは全ての細胞株にわたり最も強力なロミデプシンナノポリマーであった
アポトーシスのフローサイトメトリー解析及び細胞生存率アッセイから、三種のナノポリマー全てが、疾患及び組織学に依存しない形で、がん細胞株において有意な細胞死及びアポトーシスの誘導を示したことが明らかであった。全てのがん細胞株にわたって、60時間の時点で、Nano-Romi mPEG PDLLA H
2Oが三種のナノロミデプシンポリマー全ての中で最も低いIC
50値を示し、IC
50値(1.26+/-0.40nM)はロミデプシン(1.23+/-0.49nM)に匹敵し、Nano-Romi mPEG PLGA H
2OのIC
50値(2.88+/-1.51nM;
図7)よりも有意に小さかった(p<0.002)。これに基づいて、我々は、その後の研究のための候補ナノポリマーとしてmPEG PDLLAを選択した。
【0191】
実施例4
ナノロミデプシンPDLLAはがん細胞においてヒストンタンパク質のアセチル化を誘導する
リジンアセチル化はタンパク質の可逆的な翻訳後修飾であり、遺伝子発現の制御において重要な役割を果たす(Choudhary等,2009)。ロミデプシンは、ヒストン3(H3)及びヒストン4(H4;Furumai等,2002;Luchenko等,2014)のリジン残基のアセチル化を増加させる、クラスIヒストン脱アセチル化酵素、HDAC1及びHDAC2に対して比較的選択的である。ロミデプシン及びナノロミデプシンPDLLAの用量を増加させて処置した後、H3及びH4のアセチル化のレベルを測定した。がん細胞をロミデプシン又はナノロミデプシンPDLLAの何れかで30時間処置すると、フローサイトメトリーを使用してH3とH4の両方のアセチル化が濃度依存的に増加することが観察された(
図8A)。H3リジン27及びH4リジン16のアセチル化レベルを、ロミデプシン及びナノロミデプシンPDLLAの用量を増加させて処置した後に測定した。ウエスタンブロット解析は、0.3から30nMのロミデプシン又はナノロミデプシンPDLLAによる処置後30時間の時点でH3及びH4のアセチル化の増加を示す(
図8B)。H3タンパク質とH4タンパク質の両方のアセチル化の増加は、30nMのロミデプシンで処置した細胞と比較して、30nmのナノロミデプシンPDLLAで処置した細胞では2から3倍多かった。
【0192】
実施例5
健康なドナーの正常細胞及びがん細胞のナノロミデプシンPDLLA及び遊離ロミデプシンに対する感受性
三人の健康なドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)を培養し、増加濃度のロミデプシン、ナノロミデプシンPDLLA、又はゴーストPDLLAポリマー(つまり、ロミデプシンを含まないPDLLAポリマー)で24、48、及び72時間処理した。3人のドナー全員からの細胞は、時間及び用量依存的に、ロミデプシン及びナノロミデプシンPDLLAの両方に対して感受性を示したが、ゴーストPDLLAポリマーには感受性を示さなかった(
図9)。しかしながら、48時間及び72時間では、ドナー1及び2からのPBMCは、ナノロミデプシンPDLLAに対する感受性が、ロミデプシンに対する感受性よりも4倍から150倍低い範囲にあった(表3)。72時間では、ドナー3からのPBMCは、ロミデプシン(IC
50 2.48)及びナノロミデプシンPDLLA(IC
50 2.48;表3)の両方に対して同等の感受性を示した。60時間では、ナノロミデプシンPDLLAは、健康なドナーからのPBMC(0.4~6.3nM範囲のIC
50;平均3.0)よりも、ある範囲のがん細胞で2.4倍強力であった(0.7~1.9nM範囲のIC
50;平均1.2;表3)。一方、72時間では、健康なドナーからのPBMCは、がん細胞(0.6~1.9nM範囲のIC
50;平均1.225;表2)よりもロミドプシンに対する感受性が1.5倍高かった(0.04~2.5nM範囲のIC
50;平均0.8)。
【0193】
実施例6
インビボ研究
がん、最初はリンパ腫のインビボマウスモデルにおけるナノロミデプシンPDLLAの効果を調査した。将来の有効性研究のための最大耐用量(MTD)と服薬スケジュールを特定するために、単回投与及び複数回投与の毒性研究を実施した。ナノロミデプシンポリマーの半減期、体内分布、及び放出動態プロファイルを調査するために、薬物動態研究を実施した。
【0194】
単回投与毒性アッセイ:遊離ロミデプシン及びナノロミデプシンPDLLA治療群の両方において、用量と体重減少及び/又は臨床スコアとの間に明らかな相関関係が観察された。ロミデプシンとナノロミデプシンPDLLAは両方とも急性の体重減少を引き起こし、14日以内にベースラインに戻った(
図11A~11D)。マウスは、両薬物の腹腔内(IP)投与経路について8mg/kg(上のパネル)で人道的エンドポイントに達した。腹腔内(IP)投与経路では、ロミデプシン及びナノロミデプシンPDLLAについてMTDを5mg/kgと決定した。静脈内(IV)投与経路では、マウスはロミデプシン及びナノロミデプシンPDLLAで8mg/kgまででのみ治療した(下のパネル)。しかし、8mg/kg用量のロミドペシンによるIV治療ではMTDに達しなかった。単回投与毒性研究では、ナノロミデプシンPDLLAは遊離ロミデプシンと比較してほぼ同等の毒性を示すことが示唆された。加えて、ロミデプシンとNanoRomiは両方とも、最初の7日間の治療後に同等の臨床スコアを示した(
図12A~12D)。
【0195】
薬物動態解析:反復投与毒性研究及び有効性研究のための好ましい投与経路及び用量を調査するために、薬物動態(PK)解析を実施した。PK研究では、IP経路による遊離ロミデピン/ナノロミデプシンPDLLA治療後の血漿中のロミデプシン濃度(
図13A)は、IV経路により与えられた同じ用量と比較して高かった(
図13B;遊離ロミデプシンIP>遊離ロミデプシンIV;NanoRomi IP>NanoRomi IV)。PK解析は、IV経路による血漿からのロミデプシンのクリアランスがIP投与経路と比較して速かったことを示していた。IP経路により送達されたナノロミデプシンPDLLAは、遊離製剤と比較して、より高い血漿ロミデプシン濃度(Cmax)及びTmaxを示した(表4)。ナノロミデプシンPDLLAのCmax及び曲線下面積(AUC)は、IP経路の遊離ロミデプシンと比較して3.5倍高かった。IV経路では、ナノロミデプシンPDLLAのCmax及びAUCは、遊離ロミデプシンと比較して10倍及び25倍高い(表3)。しかしながら、NanoRomiのAUCは、IV経路と比較してIP経路の方が3倍高い。このデータに基づいて、将来の研究のための好ましい投与経路としてIP経路を選択した。ナノロミデプシンPDLLA及び遊離ロミデプシンのIP投与後のロミデプシンのピーク濃度はそれぞれ804nM及び218nMであった。IV経路では、ナノロミデプシンPDLLA及び遊離ロミデプシンのピーク濃度はそれぞれ425nM及び38nMであった。T細胞リンパ腫細胞株における我々のインビトロデータによると、ナノロミデプシンPDLLAのEC
50は約2~8nMである。PK解析から、我々はMTD用量の半分の投与で血漿中のEC
50濃度の80~400倍を達成したことが示唆される。
【0196】
反復投与毒性アッセイ:次に、有効性研究のためのナノロミデプシンPDLLAの適切な用量を特定するために、反復投与毒性アッセイを実施した。マウスに2及び3mg/kgの遊離ロミデプシン/NanoRomiを1、4、8、及び11日に投与し、マウスが完全に回復するまでモニタリングした。薬物動態解析より、投与経路として腹腔内経路を選択した。実験期間中、2及び3mg/kgの遊離ロミデプシン/ナノロミデプシンPDLLA治療群の両方で死亡は観察されなかった(遊離ロミデプシン治療群の1匹のマウスを除く)。2mg/kgの遊離ロミデピン/NanoRomi治療群では、ロミデプシン及びNanoRomi治療群の両方で、10%未満の体重減少(上のパネル)と被毛状態と活動性の僅かな変化(下のパネル)が観察された。しかしながら、全てのマウスは、2mg/kg用量の遊離ロミデプシン/ナノロミデプシンPDLLAに対して11日間の治療にわたって良好な耐容性があり、治療後2~5日後に正常な体重を回復した(
図14A及び14B)。しかしながら、3mg/kgロミデプシン/ナノロミデプシンPDLLA治療群は重度の体重減少と臨床スコア>4を示し、反復投与毒性研究では推奨されなかった。加えて、アロメトリー計算により、2mg/kgのナノロミデプシンPDLLA/遊離ロミデプシンのヒト等価用量は0.16mg/kgであり、反復投与毒性試験で投与された遊離ロミデピン/NanoRomiの全量は0.64mg/kgであることが示され、これは、ヒト成人リンパ腫患者における、28日サイクルの1日、8日、15日にわたるロミデプシン治療(1.1mg/kg)に匹敵する。
【0197】
有効性研究分析:dtomatoルシフェラーゼ発現H9細胞を接種したマウスを、4治療群のうちの一つに無作為に割り当てた(各コホートでn=10)::(i)通常のPBSのみで治療した対照群;(ii)ゴーストナノ粒子(iii)ロミデプシン(2mg/kg)(iv)ナノロミデプシン(2mg/kg)を1、4、8、及び11日目に腹腔内注射により投与した。H9細胞株の移植後7日目、11日目、14日目、及び17日目にマウスを画像化した。マウスはその後数週間にわたってモニターされ、対照群対治療群での腫瘍増殖がモニターされる。移植の17日後、対照及びゴーストナノ粒子群と比較して、ロミデプシン及びナノロミデプシンPDLLA群において細胞増殖抑制効果が観察された(
図15)。接種後17日目の時点で、ロミデプシン治療群とナノロミデプシン治療群の間で治療反応に有意差は観察されなかったが、以前の文献では、ロミデピンに対する最適な治療反応は通常、治療の約21日後に起こることが示唆されていた。我々は、ロミデプシン治療群とナノロミデプシン治療群の間の用量反応は、その後の数週間の追跡調査でより決定的なものになると予想する。この有効性研究は、血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫マウスモデル及び患者由来末梢T細胞リンパ腫異種移植片(PDX)マウスモデルを含む他のT細胞リンパ腫モデルを含むように拡張される。
【0198】
実施例7
HDAC阻害剤と補完的な薬物パートナーの併用ナノ治療薬の開発
ロミデプシン及び他のHDAC阻害剤は、低メチル化剤、プララトレキサート、及び生物製剤を含む多くの他の標的薬物と相乗作用を示すことが示されている(例えば、Kalac等,2011;Amengual等,2013;Jain等,2015;Marchi等,2015;Lue等,2016;O’Connor等,2019;Falchi等,2021;Scotto等,2021を参照)。前臨床PTCLモデルにおけるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と低メチル化剤の間の相乗効果が示されており(Marchi等,2015;Scotto等,2021)、進行性リンパ系悪性腫瘍の患者における経口5-アザシチジン(AZA)とロミデプシン(ROMI)の第1相及び第2相試験が実施され、ヒト患者におけるこの主張が裏付けられた。この併用は、非T細胞リンパ腫患者よりもPTCL患者において実質的により活性が高かった。これらの研究から、併用されたエピジェネティック修飾因子がPTCL患者において強力に活性であることが確立された(O’Connor等,2019;Falchi等,2021)。
【0199】
HDAC阻害剤パートナーを前提としたコンビナトリアルナノ治療薬が企図される。これらの組み合わせは、単独療法の活性を増強し、かつ限定されないがチェックポイント阻害剤(例えば、CTLA4、PD-1、及び/又はPDL-1阻害剤)を含む他の免疫薬に対して腫瘍細胞及び腫瘍微小環境を予備刺激するために使用される。HDAC阻害剤を補完することが知られている一連の資産にわたるレシオメトリックな組み合わせの開発に焦点を当てた詳細な薬理学に基づいて、がん及び自己免疫疾患の治療に使用される併用ナノ治療薬のライブラリーが開発される。
【0200】
実施例8の材料と方法
[材料]m-PEG-PDLLA 5000:10000Da、m-PEG-PDLLA 5000:4000Da、m-PEG-PDLLA 5000:14000Da、m-PEG-PDLLA 5000:20000Da、PLGA-PEG 5000:20000Daを、PolySciTech(登録商標)から購入した。ロミデプシンは、eNovation Chemicals(カタログ# 05342;New Jersey)から購入した。ポロキサマーは、Sigma Aldrichから入手した。溶媒:アセトニトリル(ACN)、アセトン+10%ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、エタノール(EtOH)、クロロホルム+メタノール(Me-OH)(1:1)は、Fisher Scientificから購入し、遠心分離フィルターはAmiconから購入した(10K、50K、100K)。Chemyx Fusion 200シリンジポンプを、デュアルチャネル又はマルチチャネルシリンジと共に使用した。
【0201】
ナノロミデプシンポリマー粒子の調製、最適化、スケールアップ及び特性評価
[調製]ナノロミデプシンポリマー粒子は、バルクナノ沈殿によって調製した。mPEG-PDLLAポリマー(
図16Aを参照)、ロミデプシン、及びポラキサマー188のアセトニトリル溶液を、それぞれ10mg/mL、2mg/mL、及び1mg/MLの濃度で調製した。それぞれ0.5mLのポリマー及び薬物溶液(薬物/ポリマー比;1/5)と0.1mLの界面活性剤(薬物に対して10%w/w)を混合し、500rpmで連続的に撹拌した。Milli Qナノ純水(有機/水性比;1:9)を10ml/時の速度で添加した。この期間にわたって溶媒分散を記録し、有機溶媒を完全に除去するために更に3時間撹拌を続けた。最後に、24℃において2000rpm、20分間の遠心分離によってナノ粒子を取り出した。粒子は、ナノ純水又は1×PBS中で再構成することによって収集した。ナノロミデプシン粒子は4℃で保存した。これらの製剤の粒径と形態を、DLSとクライオEMを使用して評価した。薬物濃度は、以下に記載される分析的質量分析法、LC-MSで定量した。
【0202】
[ナノロミデプシン製剤の薬物濃度の最適化]ナノロミデプシン製剤の最適化を、制御された添加及びナノ沈殿法によって相を送達するように設計された半自動シリンジポンプを使用する反復実験アプローチによって達成した。而して、製剤化パラメーター及び操作パラメーター(
図16B)は、薬物濃度が改善されたNPを製造するように逐次的に変更した。逐次的に変更したパラメーターには、限定されないが、薬物/ポリマー比、薬物対界面活性剤比、ポリマー長、親水性PEG対コア形成疎水性ポリマー比、ポリマー選択、溶媒スクリーニング、溶媒/貧溶媒比、混合速度、割合、相間添加の変更、処理速度、及び所望の粒径を達成するフィルター、PDI、及びNP内の薬物濃度が含められた。各パラメーターの最適化中に、2~10個の変数の群が含められ、実験のデザインがパラレルに行われる。これらの変数から最良のものを選択し、更に反復操作が行われる次のパラメーター最適化に取り込んだ。
【0203】
[溶媒スクリーニング:ナノ沈殿法によるナノロミデプシンNPに対する溶媒の役割]m-PEG PDLLA 5:10kDaストック溶液をACNで作製した。NP製剤に対する溶媒の影響を探索するために、5種の水混和性溶媒群(ACN、アセトン+10%DMSO、THF、EtOH、クロロホルム+Me-OH(1:1))をロミデプシンNPの調製に考慮し、これらの溶媒でそれぞれ薬物溶液を作製し、ボルテックスして溶解させた。薬物溶液とポリマー溶液を組み合わせて、1:25の薬物対ポリマー比を達成した。ポロキサマー溶液は、薬物質量に対して10%でACNにそれを溶解させることによって調製した。シリンジポンプを使用し、界面活性剤、濃度、及び溶媒/貧溶媒比を一定にして、50mL/時間の予め決められた速度で相分配を行った。溶液をドラフト内で3時間撹拌して、有機相を蒸発させた。遠心分離を、100K膜カットオフの遠心フィルターユニットを用いて実施して試料を精製した。ナノ粒子を収集し、水で再構成し、4℃において保存し、上述の方法、DLS/クライオEMを使用した形態学的特性、及びLC/MSによる薬物濃度によって特徴付けした。
【0204】
[ポリマー最適化:ナノ沈殿法によるナノロミデプシンNPに対するコポリマーの役割]ポリマーナノ粒子を、m-PEG-PDLLAとm-PEG-PLGAの二種類のブロックコポリマーを用いて調製し;異なるポリマージブロック長のPDLLAポリマーを含めた;m-PEG-PDLLA 5:10kDa、m-PEG-PDLLA 5:4kDa、m-PEG-PDLLA 5:14kDa、m-PEG-PDLLA 5:20kDa、m-PEG-PLGA(50:50)5:20kDa、m-PEG-PDLLA 5:10kDa粒子を二つの異なる比;D/P 1:10とD/P 1:25で薬物を用いて作製する。ポリマーをACNに溶解し、ボルテックスして完全に溶解させた。薬物ストック溶液をACN中で調製した。ポロキサマー溶液は、薬物質量に対して10%の溶液を使用してそれをACNに溶解することによって調製した。1:10又は1:25の比で、薬物溶液とポリマー溶液を最適化に含めた。50mL/時間の予め決めた速度での相分配にシリンジポンプを使用した。固定した薬物対界面活性剤比及び溶媒/貧溶媒比を維持した。溶液をドラフト内で3時間撹拌して、有機相を蒸発させた。遠心分離を、100K膜カットオフの遠心フィルターユニットで実施して、試料を精製した。ナノ粒子を収集し、水で再構成し、4℃で保存し、上記の方法、DLS/クライオEMを使用した形態学的特性、及びLC/MSによる薬物濃度によって特徴付けた。
【0205】
[遠心フィルター最適化:ナノロミデプシンNPの処理に対するフィルターユニットの役割]薬物溶液及びポリマー溶液をACNで作製し、ボルテックスして溶質溶解を達成した。溶液を、1:25の薬物対ポリマー比で混合し、シリンジ中に充填した。シンチレーションバイアル中で、ポロキサマーを薬物質量に対して10%まで水で希釈し、10:1の薬物対ポロキサマー比を達成した。溶媒/貧溶媒比を固定し、50mL/時間の予め決めた速度での相分配にシリンジポンプを使用した。溶液をドラフト内で3時間撹拌して、有機相を蒸発させた。遠心分離を、Amicon超遠心分離フィルター10K、50K、及び100K膜カットオフを伴う遠心フィルターユニットを用いて実施し、試料から未カプセル化薬物を分離した。別のセットでは、ローダミン色素を二通りの異なる比で使用し、10Kと100Kのフィルターを使用した。ナノ粒子を収集し、水で再構成し、4℃で保存し、上記の方法、DLS/クライオEMを使用する形態学的特性、及びLC/MSによる薬物濃度によって特徴付けた。
【0206】
[溶媒対貧溶媒比の最適化:ナノロミデプシンNPの調製における有機対水比]薬物溶液及びm-PEG PDLLA(5K:10K)ポリマー溶液をACNで作成し、ボルテックスして透明な溶液を得た。溶液を1:25の薬物対ポリマー比で混合し、シリンジに充填した。シンチレーションバイアルで、ポロキサマー溶液を水で薬物質量に対して10%まで希釈し、10:1の薬物とポロキサマーの比を達成した。事前に計算した溶媒/貧溶媒比に分配するために、50mL/時間の予め決めた速度での相分配にシリンジポンプを使用する。有機対水の様々な比での複数の実験が考慮される;1:9、1:5、1:3、1:2、及び1:1。最近、1:1の比の有機対非溶媒1×PBSも検討した。溶液をドラフト内で3時間撹拌して、有機相を蒸発させた。遠心分離を100K膜カットオフの遠心フィルターユニットで実施して、試料を精製した。ナノ粒子を収集し、水で再構成し、4℃で保存し、上記の方法、DLS/クライオEMを使用する形態学的特性、及びLC/MSによる薬物濃度によって特徴付けた。
【0207】
[ナノロミデプシン製剤のスケールアップ]ナノロミデプシン製剤を、パラメーターの反復最適化法を利用して1~20mLにスケールアップした。薬物濃度に関して設定された各パラメーター最適化からの最良の条件がスケールアップに含められる。ロミデプシン、m-PEG-PDLLA 5:10kDa、及びポロキサマー188をACNに溶解させ、ボルテックスして、薬物とポリマーをACNに完全に溶解させ、予め決められた比(D/P 1:25、D/界面活性剤 1:0.1W/W)を達成した。シリンジポンプを使用して、50mL/時の予め決められた速度で相分配した。固定された薬物対界面活性剤比及び溶媒/貧溶媒比を維持した。溶液をドラフト内で3時間撹拌して、有機相を蒸発させた。遠心分離は、100K膜カットオフの遠心フィルターユニットで実施して、試料を精製した。ナノ粒子を収集し、水で再構成し、4℃で保存し、上記の方法、DLS/クライオEMを使用した形態学的特性、及びLC/MSによる薬物濃度によって特徴付けた。
【0208】
[ナノロミデプシン製剤の特性評価]これらの製剤の粒径において、単分散性、ゼータ電位及び形態を、DLS及びクライオEMを使用して評価した。薬物濃度は、本明細書の他の箇所に記載されているように、分析的質量分析法、LC-MSで定量した。
【0209】
実施例8
ナノロミデプシン製剤の薬物濃度の最適化
ナノロミデプシンスカフォールドを、ボトムアップナノ沈殿法を使用して開発し、継続してナノ粒子を再設計した。m-PEG PDLLA(5K:10K)ポリマーの疎水性は、疎水性薬物の捕捉に有利である。伝統的なナノ沈殿法は、疎水性薬物のカプセル化に適用される、単純で拡張性があり、再現可能な単一工程プロセスである(
図16Aを参照)。ナノロミデプシンは、複数の細胞株でのインビトロアッセイにおいて、同等濃度の遊離ロミデプシンと比較して等しく強力であることが示された。インビボ実験をサポートするために、生成物のスケールアップを追求した。一実施態様では、ナノ製剤中のロミデプシンの最高濃度は31μg/mLであり、これは1.5%という非常に低いカプセル化効率(EE)に相当した。インビボ実験で治療効果をもたらすインビボ血漿濃度の達成では、EEを改善するために反復実験アプローチを採用した。特に、ナノ沈殿法のコンビナトリアルアプローチを開発し、薬物濃度を改善するために「パラレル合成の原理」(
図16B)に基づいてパラメーター/操作条件を逐次的に変更した。而して、NP製剤をこの工学的な方法を使用して調製し、提案されたインビボ実験を短時間で容易に行うことを可能にした。
【0210】
薬物濃度を改善する代表的なアプローチとして、次のタンデムアプローチを実証した。幾つかの実施態様では、ナノ沈殿法は単一工程であり、コンビナトリアル方式でのNP特性の最適化に適している。この実施例には、疎水性薬物であるロミデプシンの含有に関して考慮されたパラメーターの最適化が含まれる。期待される結果は、最適サイズ及びPDIと共に薬物充填量に関係する。この方法によるポリマーNP形成のメカニズムには、複数の操作パラメーターと、ポリマー、薬物、及び溶媒の固有の特性が関係する。特定の撹拌速度でのポリマー含有有機相の水性相中への制御添加と、相の速度制御/速度依存的混合とにより、水溶液中への有機溶媒の拡散が引き起こされる。有機溶媒が蒸発すると、ポリマーの溶解度が低下し、過飽和に達し、核形成、成長、沈殿が生じてNPが形成される。最もエネルギー的に好ましい構造に適合させるために、両親媒性のジブロックコポリマー(幾つかの実施態様では、mPEG-PDLLAであるが、但し、他のPDLLA、PLGA、PLA、及びPCLを含む他の両親媒性のPEG化ポリマーを使用することもできる)がコア-シェル球状構造に押し込められて、粒子コアを構成し、薬物と疎水性ブロック間の疎水性及び他の潜在的な相互作用によって薬物を一緒に保持して捕捉する。水溶性PEGアームはシェルを形成する水性相中に延びる。溶媒の特性が、方向付ける効果によってNPの形成を決定づける。効率的な溶媒と水の交換が、NP形成を促進する。水中における溶媒の拡散速度は、NPの物理化学的特性と形成に影響を与えるもう一つの要因であり、溶媒の混和性、イオン強度、密度、粘度、及び撹拌速度に依存する。アセトニトリルとアセトンは拡散係数が高く、NPの形成を促進することが知られている。ロミデプシンとポリマーの溶解度は、ナノ沈殿法に適した有機溶媒中で試験した。ロミデプシンの溶解度と、揮発性が高くインビボ毒性が少ない有機溶媒の水混和性が溶媒スクリーニングの基準であった。この方法に含められるパラメーター並びにポリマーの特性が、ポリマーNPのサイズ、形状、及び物理化学的特性を決める。生分解性PEGブロックコポリマーは自己集合して、PEG化ポリマーミセル、ナノスフェア、又は二重層粒子、及び約20から約1000nMの範囲の様々なサイズのポリマーソームになる。ジブロックポリマーの生分解性、疎水性、及び他の物理化学的特性は、コアの表面浸食と拡散による薬物の安定した放出に有利であるため、両親媒性ジブロックポリマーが放出制御薬物送達用途に影響を与える。異なる分子量と様々な組成のポリマーが市販されているため、ロミデプシンの薬物送達用のナノ粒子の選択を許容するパラレルアプローチを使用してNPを調製できるようになった。スケールアップのための基礎を作りだし、EEに対する各変数の役割を理解するために、複数の合成パラメーターが探究される。我々は、我々の提案した「パラメーター最適化のパラレルアプローチ」法を試験した。我々は5つのパラメーターを考慮し、各パラメーターにおいて2~3の変数を研究に含めた。我々は、薬物充填量という「重要な」NP特性に対するこれらのパラメーターの影響を測定した。パラメーターと変数のリストには次のものを含めた、1.相添加モード(有機を水へ/水を有機へ)、2.薬物/ポリマー;3つの変数;1/10;1/25;及び1/50W/W、3.有機溶媒/水;3つの変数:1:9、1:3、及び1:2、4.薬物/界面活性剤比;3つの変数:1/0.1、1/0.2、及び1/0.05及び5.添加速度;3つの変数:20、30、及び50mL/時間。我々は、薬物充填量に実質的な影響を与える重要なパラメーターとして、相添加モード、薬物/ポリマー比、及び有機溶媒対水比を特定した。速度と界面活性剤の比もまた薬物充填量に影響するが、それほど重要ではない。我々のパラレル多面的反復アプローチを使用して、1回の実験で5つのパラメーターを最適化することができた。この研究の結果により、プロジェクトの「ゴー/ノーゴー」決定の範囲が直ぐに決まった。我々は、各パラメーターから最良の変数を選択し、それを一つの実験に組み込み、次のパラメーターの累積効果を確立できるようにした;有機の水への添加、D/P 1:25、有機/水 1:2、及び薬物充填速度50mL/時間。我々は、パラレルアプローチが、ナノロミデプシンの生産を大幅に改善し、薬物充填最適化研究に大きな影響を与えることを見出した。その結果、この戦略により、薬物濃度が1.4%のEEの最初のアプローチから次の実験では76.26%に改善され、代表的な最適化されたパラメーターが明らかになった;全ての結果を(表5A)に列挙する。これは、NP EEに対する各変数の役割と影響を独立してかつ集合的に解明するのに役立った。我々は、次のパラメーターを、ナノ粒子における潜在的に「薬物充填量を最大化」できる重要なパラメーターとして特定した:相添加、薬物/ポリマー、薬物/界面活性剤、添加速度、及び溶媒/貧溶媒。
【0211】
加えて、本方法では、正確に同じ合成中に全てのパラメーターが探究されるため、人的エラーと実験間の時間が削減される。我々は、列挙された各パラメーターの変数の効果と、作製されたNPの物理化学的特性に対するそれらの影響を解明した。溶媒スクリーニングを実施して、アセトニトリル、アセトン+10%DMSO、EtOH、及びMeOH+クロロホルムを含む水混和性溶媒中におけるロミデプシンの溶解度を試験し、NPの特性と薬物充填量を試験した。界面活性剤のポロキサマー188を水性相に添加して、NPの安定性を維持し、凝集を回避した。我々は、アセトニトリルが、ロミデプシン及びm-PEG PDLLAを溶解し、並びに単分散製剤及びより高いカプセル化効率で均一サイズの粒子を創製するのに望ましい溶媒であることを見出した(
図17A~17C)。特定の操作方法に拘束されることは望まないが、アセトニトリルの拡散速度と粘度に関連している可能性がある。これは、溶媒特性を調節することにより、ナノ沈殿中のNPの物理的特性に「調節可能性」を付与する。NP特性に対するパラメーターの影響を決定するために、ポリマーの種類(mPEG-PDLLA対m-PEG PLGA)、ポリマー長、親水性PEGブロック対疎水性PDLLAブロックの比、及び薬物対ポリマー比をこの研究に含めた。この研究はまた薬物放出を促進するポリマーの最適化にも役立つ可能性がある。ポリマーと薬物を、溶媒スクリーニングからの所望の溶媒であるアセトニトリルに溶解させた(反復プロセス)。この研究のデータは、最適なポリマーがm-PEG PDLLA,5K:10K、及び1/25(W/W)のD/P比であることを明確に示したが、これは、これらが薬物充填量とNPのサイズに最も大きな影響を与えるためである(
図18A~18D)。遠心フィルターを使用して、調製されたナノ粒子製剤を処理し、未カプセル化薬物と残留溶媒を除去した。我々は、Amicon 100Kフィルターが、30~100nMの範囲の特定のNPサイズを持つ所与の製剤により適していることを見出した。また、我々は、可視化剤であるローダミンBと二通りの異なる濃度のロミデプシンの共カプセル化を示し、二つの異なるサイズのフィルターを使用してフィルターの粒子通過を試験した。この研究は、過剰な薬物がフィルター(濃い色のチューブ)を通って流れ、NPが共薬物を収容することを実証した(
図19A~19D)。最後に、我々は、粒子中への薬物の充填と粒子のサイズに有意に影響を与えうるパラメーター、水への有機溶媒添加と溶媒対貧溶媒の比、並びに溶媒と貧溶媒としての1×PBSの1:1の比を1:1の水と比較して試験した。結果を
図20A~20Dに示す。この研究から特定されたEEに最も影響を与える変数は、水への有機添加と1:1の溶媒対貧溶媒比である。我々は1×PBSを用いると、カプセル化が有意に向上することも見出した。
【0212】
要約すると、我々は、NP製造における各パラメーターの役割の重要性と、パラメーター間の相互作用を解明する特性を見出した(表5B)。我々は、スケールアッププロセスに対して、水への有機添加、D/P比、O/W比、添加速度を含む、複数の最適化からの全てのパラメーターの望ましい変数を含め、500μg/mLのロミデプシン濃度で7~10mLスケールのナノロミデプシンの複数のバッチを製造した。結果は、サイズ、PDI、粒子中の薬物充填量に関してバッチ間の再現性を明確に実証した。製剤容量スケールアップは、設計されたインビボ実験の要件を満たした。サイズ、PDI(DLSデータ)、NPの形態(クライオEM)、及び薬物濃度(LC/MS/MS)を
図21A~21Eに示した。表5C、5D、及び5Eをまた参照のこと。従って、NPの物理化学的特性の最適化のパラレルアプローチは有利であり、スケールアップの能力を改善する。このアプローチは、抗がん薬のカプセル化のための効果的で制御された戦略であり、スケールアップの可能性を有している。理論的には、この合成アプローチでは、現在の実験室での設定を更に変更することなく、約50%のEEで300~400mLのナノロミデプシンを生成できる。ナノサイズの薬物製剤のスケールアップに関連する問題に対処する方法論は、商業化の範囲を促進する可能性がある。
【0213】
[実施例の考察]
ロミデプシンは、クラスI HDACに対してより大きな阻害効果を持つ最も強力なHDAC阻害剤であり、最も選択的なHDAC阻害剤でもある。ロミデプシンは、米国において次を含む二つの異なる規制当局の承認を取得した:(1)2009年における一種類の前治療を受けた再発性又は難治性CTCL患者に対する完全承認、及び(2)2011年における一種類の前治療を受けた再発又は難治性PTCL患者に対する早期承認。一般にこの薬剤の忍容性は良好であるが、(i)潜在的に致死的な心毒性;(ii)グレード5の毒性と枠内警告に関連しているEBV及びB型肝炎ウイルスの再活性化;(iii)不便なスケジュール(4週間のうち3週間の間、毎週4時間以上投与される);並びに僅か25%の患者にのみ反応が得られるという限界的な効果を含む、多くの制限が伴っている。
【0214】
これらの欠点にもかかわらず、この薬物には、次を含む多くの臨床的に意味のある特性が伴う:(i)1年を超える持続性のある反応期間;(ii)DNMT阻害剤などの他のエピジェネティック標的化薬物との強力な相乗効果、及び(iii)PTCL患者の治療を行う医師によって好まれるHDAC阻害剤であること。まとめると、ロミデプシン媒介毒性を軽減し、そのスケジュールの不具合を軽減する戦略は、腫瘍細胞標的化を改善する取り組みと併用で改善される有効性と相まって、PTCLだけでなく他のがん及び可能な自己免疫疾患に対してこのクラスの薬物を最適化するための有効なアプローチとなる。
【0215】
ナノ粒子の独特の特性、例えばその小さいサイズ、大きな表面積対体積比、及びその表面上の標的リガンドの多価性を達成する能力は、様々ながんへのナノ粒子ベースの薬物送達に優れた利点をもたらす。がんにおけるナノ治療薬は、ナノ粒子の担体効果と吸収後の標的化物質の位置決め効果を通じて腫瘍細胞を標的とする。
【0216】
ナノポリマーであるポリ(D,L-乳酸)(PDLLA)は、より優れた物理化学的特性を示す多孔質構造を有しており、癒着防止剤の添加に好都合である。従って、我々は、毒性を軽減し、PTCL及び自己免疫疾患においてより良好な治療反応をもたらすmPEG-PDLLAカプセル化ロミデプシンを開発した。これまでの我々のデータは、次の通りにナノポリマー誘導体がロミデプシンよりも優れていることを実証している:
1. ナノロミデプシンPDLLAは、CTCL、ALK-ALCL、LGL-白血病、及び皮膚メラノーマ細胞株において、未カプセル化ロミデプシンと同様のIC50値で細胞傷害性を示した;
2. 健康な個体からのPBMCのナノロミデプシンPDLLAによる処置は、ロミデプシンによるPBMC処置と比較して細胞傷害性が少なく、がん株と比較して細胞傷害性が少ないため、治療範囲が拡大した;
3. ナノロミデプシンPDLLAはアポトーシスを誘導し、ヒストンH3タンパク質とH4タンパク質の両方のアセチル化を増加させた。ナノロミデプシンPDLLAで処置した細胞では、ロミデプシンと比較して、ヒストンタンパク質のアセチル化の変化が2から3倍大きくなった。
4. ナノロミデプシンPDLLAは、単回及び反復投与毒性アッセイにおいて遊離ロミデプシンと等価又は同等の毒性を示した。薬物動態解析から得られた最大血漿濃度(Cmax)、血漿濃度-時間曲線下の積分面積(AUC)、及び最大血漿濃度の時間(Tmax)は、ナノロミデプシンの単回投与が、腹腔内経路による遊離ロミデプシンの単回投与と比較して血漿中のロミデプシンの3~4倍高い曝露をもたらすことを示唆した。Cmax、AUC、及びTmaxは、ロミデプシンのナノカプセル化により血漿中のロミデプシンが長期間利用可能となり、ヒトにおける臨床的に関連する曝露を特定するのに有効であることを示した。
【0217】
ここに開示されるように、ナノロミデプシンPDLLAポリマーは、腫瘍細胞を標的とするのに効果的であり、正常細胞においてより低い細胞傷害性を有し、ロミデプシンと同等/等価な毒性を有し、従って、ロミデプシンとは区別される独自の特性を有する資産となる。
【0218】
[参考文献]
限定されないが、全ての特許、特許出願及びその公報、科学雑誌記事、及びデータベースエントリ(限定されないが、GENBANK(登録商標)生物配列データベースエントリ及びそのなかの利用可能な全ての注釈を含む)を含む、本開示に列挙される全ての参考文献は、それらがここで用いられる方法論、技術、及び/又は組成物を補足し、説明し、その背景を提供し、及び/又は教示する範囲で、その全体が出典明示によりここに援用される。参考文献の検討は、単にその著者によってなされた主張を要約することを意図している。如何なる参考文献(又は如何なる参考文献の一部)も関連した先行技術であるということは自認しない。本出願人は、引用した参考文献の正確性及び適切性について異議を唱える権利を留保する。
【0219】
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【国際調査報告】