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特表2024-538122DNAライブラリを作製するための方法およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】DNAライブラリを作製するための方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C40B 40/06 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
C40B40/06 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522467
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 US2021055174
(87)【国際公開番号】W WO2023063958
(87)【国際公開日】2023-04-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520450879
【氏名又は名称】キアゲン サイエンシーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ラダー エリック
(72)【発明者】
【氏名】ウー チョン
(72)【発明者】
【氏名】ワン イェシュン
(72)【発明者】
【氏名】ペン チュエン
(57)【要約】
本明細書において開示されるのは、dUTPをDNA断片に組み入れ、ウラシル-DNAグリコシラーゼで処理することにより、DNAライブラリを作製するための方法、およびDNAライブラリを調製するためのキットである。DNAライブラリは、次世代シーケンシングに有利である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ライゲーション産物を生成するためにアダプターを標的DNA分子にライゲートさせる工程であって、該アダプターが、1つまたは複数のデオキシウリジンと固有分子インデックス(UMI)とを含む、ライゲートさせる工程;
(b)該ライゲーション産物をウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)で処理する工程;および
(c)標的増幅産物を生成するために、(b)の該ライゲーション産物内の該アダプターに付着された該標的DNA分子を、標的特異的プライマーを用いた単一プライマー伸長によって増幅させる工程であって、該標的特異的プライマーが、1つまたは複数のデオキシウリジンと標的特異的配列とを含む、増幅させる工程
を含む、DNAライブラリを調製する方法。
【請求項2】
標的DNA分子が、末端修復されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
標的DNA分子が、アデニル化されている、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
標的特異的配列が、1つまたは複数のデオキシウリジンを含む、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
標的特異的プライマーが、5’から3’の方向に、少なくとも2つのデオキシウリジンを含むタグ配列と、0~4つのデオキシウリジンを含む標的特異的配列とを含む、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
標的増幅産物をUDGで処理する工程、および次いで第2の標的増幅産物を生成するために該標的増幅産物をユニバーサルプライマーを用いて増幅させる工程、をさらに含み、該ユニバーサルプライマーが、デオキシウリジンを含まない、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
ユニバーサルプライマーが、試料インデックスをさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ライゲートさせる工程が、pH8~9で実施される、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
ライゲートさせる工程が、4%PEG~10%PEG未満のPEG濃度で実施される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
増幅させる工程が、抗体ベースの熱安定性ポリメラーゼを用いて実施される、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
第2の標的増幅産物をビーズを用いて精製する工程をさらに含む、請求項6~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
ビーズが、固相可逆固定化(SPRI)ビーズである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
DNAライブラリが、次世代シーケンシング、DNAバリアントのプロファイリング、人物同定もしくは父子鑑定、疼痛もしくはADMEのファーマコゲノミクス、または遺伝性疾患の検出に使用され得る、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
標的増幅産物を生成するために単一の標的特異的プライマーを用いて標的DNA分子を増幅させる工程を含む、DNAライブラリを調製する方法であって、該標的特異的プライマーが、タグ配列と、1つまたは複数のデオキシウリジンと、標的特異的配列とを含む、方法。
【請求項15】
アダプターが、標的DNA分子にアニールされかつ伸長される単一アダプターであり、該アダプターが、UMIと、デオキシウリジンを含有しない標的特異的配列とを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
一対のアダプターが、標的DNA分子にアニールされかつ伸長され、該一対のアダプターの各アダプターが、UMIと、第1または第2の標的特異的配列と、1つまたは複数のデオキシウリジンとを含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
アダプターが、ライゲーション産物を生成するために標的DNA分子にライゲートされており、該アダプターが、1つまたは複数のデオキシウリジンと固有分子インデックス(UMI)とを含む、請求項14記載の方法。
【請求項18】
標的DNA分子が、末端修復されている、請求項17記載の方法。
【請求項19】
標的DNA分子が、アデニル化されている、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
ライゲートさせる工程が、pH8~9で実施される、請求項17~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
ライゲートさせる工程が、4%PEG~10%PEG未満のPEG濃度で実施される、請求項17~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
標的特異的プライマーが、5’から3’の方向に、少なくとも2つのデオキシウリジンを含むタグ配列と、0~4つのデオキシウリジンを含む標的特異的配列とを含む、請求項16~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
標的増幅産物をUDGで処理する工程、および次いで第2の標的増幅産物を生成するために該標的増幅産物をユニバーサルプライマーを用いて増幅させる工程、をさらに含み、該ユニバーサルプライマーが、デオキシウリジンを含まない、請求項14~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
ユニバーサルプライマーが、試料インデックスを含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
増幅させる工程が、抗体ベースの熱安定性ポリメラーゼを用いて実施される、請求項14~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
第2の標的増幅産物をビーズを用いて精製する工程をさらに含む、請求項21~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
ビーズが、固相可逆固定化(SPRI)ビーズである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
DNAライブラリが、次世代シーケンシング、DNAバリアントのプロファイリング、人物同定もしくは父子鑑定、疼痛もしくはADMEのファーマコゲノミクス、または遺伝性疾患の検出に使用され得る、請求項14~27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項記載の方法により作られる、DNAライブラリ。
【請求項30】
ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)と、1つまたは複数のデオキシウリジンおよび固有分子インデックス(UMI)を含むアダプターと、ユニバーサルプライマーと、抗体ベースの熱安定性ポリメラーゼと、を含む、キット。
【請求項31】
リガーゼと、ライゲーション反応に8~9のpHをもたらすことが可能なライゲーション緩衝液とをさらに含む、請求項30記載のキット。
【請求項32】
ライゲーション緩衝液が、ライゲーション反応に4%~10%未満のPEG濃度をもたらすことが可能である、請求項31記載のキット。
【請求項33】
固相可逆固定化(SPRI)ビーズをさらに含む、請求項30~32のいずれか一項記載のキット。
【請求項34】
1つまたは複数のデオキシウリジンと標的特異的配列とを含む標的特異的プライマーをさらに含む、請求項30~33のいずれか一項記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出された配列表の参照
本出願とともに提出された、ASCIIテキストファイルで電子的に提出された配列表(名称:2495-0017WO01_Sequence_Listing_ST25.txt;サイズ:2KB;および作成日:2021年10月14日)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
分野
本明細書において開示されるのは、dUTPをDNA断片に組み入れ、ウラシル-DNAグリコシラーゼで処理することにより、DNAライブラリを作製するための方法、およびDNAライブラリを調製するためのキットである。DNAライブラリは、次世代シーケンシングに有利である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
次世代シーケンシングには、効率的かつ高品質なDNAライブラリの構築が重要である。オリジナル分子の回収数が多く、プライマーのマルチプレックスレベルが高く、かつカバレッジの均一性が高い、DNAライブラリを生成するための改善された方法が求められている。
【発明の概要】
【0004】
発明の簡単な概要
本明細書において開示されるのは、(a)ライゲーション産物を生成するためにアダプターを標的DNA分子にライゲートさせる工程であって、アダプターが、1つまたは複数のデオキシウリジンと固有分子インデックス(UMI)とを含む、ライゲートさせる工程;(b)ライゲーション産物をウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)で処理する工程;および(c)標的増幅産物を生成するために、(b)のライゲーション産物内のアダプターに付着された標的DNA分子を、標的特異的プライマーを用いた単一プライマー伸長によって増幅させる工程であって、標的特異的プライマーが、1つまたは複数のデオキシウリジンと標的特異的配列とを含む、増幅させる工程、を含む、DNAライブラリを調製する方法である。
【0005】
また、本明細書において開示されるのは、標的増幅産物を生成するために単一の標的特異的プライマーを用いて標的DNA分子を増幅させる工程を含む、DNAライブラリを調製する方法であって、標的特異的プライマーが、タグ配列と、1つまたは複数のデオキシウリジンと、標的特異的配列とを含む、方法である。いくつかの態様では、アダプターは、標的DNA分子にアニールされ、かつ伸長される単一アダプターであり、アダプターは、UMIと、デオキシウリジンを含有しない標的特異的配列とを含む。いくつかの態様では、一対のアダプターが、標的DNA分子にアニールされ、かつ伸長され、一対のアダプターの各アダプターは、UMIと、第1または第2の標的特異的配列と、1つまたは複数のデオキシウリジンとを含む。いくつかの態様では、アダプターは、ライゲーション産物を生成するために標的DNA分子にライゲートされており、アダプターは、1つまたは複数のデオキシウリジンと固有分子インデックス(UMI)とを含む。また、本明細書において開示されるのは、(a)1つまたは複数のデオキシウリジンと固有分子インデックス(UMI)とを含むアダプターに付着された標的DNA分子を伸長させる工程;(b)(a)の伸長産物をウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)で処理する工程;および(c)標的増幅産物を生成するために、(b)の伸長産物を標的特異的プライマーを用いて増幅させる工程であって、標的特異的プライマーが、1つまたは複数のデオキシウリジンと標的特異的配列とを含む、増幅させる工程、を含む、DNAライブラリを調製する方法である。
【0006】
いくつかの態様では、標的特異的配列は、1つまたは複数のデオキシウリジンを含む。
【0007】
いくつかの態様では、標的DNA分子は、末端修復されている。いくつかの態様では、標的DNA分子は、アデニル化されている。
【0008】
いくつかの態様では、標的特異的プライマーは、5’から3’の方向に、少なくとも2つのデオキシウリジンを含むタグ配列と、0~4つのデオキシウリジンを含む標的特異的配列とを含む。
【0009】
いくつかの態様では、本方法は、標的増幅産物をUDGで処理する工程、および次いで第2の標的増幅産物を生成するために標的増幅産物をユニバーサルプライマーを用いて増幅させる工程、をさらに含み、ユニバーサルプライマーは、デオキシウリジンを含まない。いくつかの態様では、ユニバーサルプライマーは、試料インデックスを含む。
【0010】
いくつかの態様では、ライゲートさせる工程は、pH8~9で実施される。いくつかの態様では、ライゲートさせる工程は、4%PEG~10%PEG未満のPEG濃度で実施される。
【0011】
いくつかの態様では、増幅させる工程は、抗体ベースのホットスタート熱安定性ポリメラーゼを用いて実施される。
【0012】
いくつかの態様では、本方法は、第2の増幅産物をビーズを用いて精製する工程をさらに含む。いくつかの態様では、ビーズは、固相可逆固定化(SPRI)ビーズである。
【0013】
DNAライブラリは、次世代シーケンシング、DNAバリアントのプロファイリング、人物同定もしくは父子鑑定、疼痛もしくはADMEのファーマコゲノミクス、または遺伝性疾患の検出に使用され得る。
【0014】
本明細書において開示されるのは、本明細書において開示される方法によって作られたDNAライブラリである。
【0015】
本明細書において開示されるのは、本明細書において開示される方法で使用される成分のうちの1つまたは複数を含むキットである。したがって、本明細書において開示されるのは、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)と、1つまたは複数のデオキシウリジンと固有分子インデックス(UMI)とを含むアダプターと、ユニバーサルプライマーと、抗体ベースのホットスタートポリメラーゼと、を含むキットである。いくつかの態様では、キットは、リガーゼと、ライゲーション反応に8~9のpHをもたらすことが可能なライゲーション緩衝液とをさらに含み得る。いくつかの態様では、ライゲーション緩衝液は、ライゲーション反応に4%~10%未満のPEG濃度をもたらすことが可能である。いくつかの態様では、キットは、固相可逆固定化(SPRI)ビーズをさらに含む。いくつかの態様では、キットは、1つまたは複数のデオキシウリジンと標的特異的配列とを含む標的特異的プライマーをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】例示的なワークフロー:正確な縮尺ではない。「A」はA塩基を表す。
図2】別の例示的なワークフロー:正確な縮尺ではない。「A」はA塩基を表し;「U」はU塩基を表し;「X」はU塩基がUDGによって除去された場所(脱塩基部位)を表す。
図3】別の例示的なワークフロー:正確な縮尺ではない。「A」はA塩基を表し;「U」はU塩基を表し;「X」はU塩基がUDGによって除去された場所(脱塩基部位)を表す。
図4】ライゲーション反応中にPEGを6%含むpH8.5のライゲーション緩衝液は、PEGを13.2%含むpH7.6のライゲーション緩衝液と比較して、同様のまたはわずかに少ないUMIを有しており、このことから、反応中にPEGが少ない高pHライゲーション緩衝液が、反応中にPEGがより多い通常pHのライゲーション緩衝液と同様のライゲーション効率を達成し得ることが示唆される。
図5】高pHのライゲーション緩衝液は、低pHの緩衝液と比較してはるかに多くのUMIを有しており、このことから、高pHライゲーション緩衝液が標的化DNAパネルワークフローにおいて使用され得ることが示唆される。
図6】化学的hotstar Taqを用いた、各サイクルにおいて62℃で2分間のアニール/伸長、またはAbホットスタートTaqを用いた、62℃で1分もしくは30秒間のアニール/伸長、のいずれかで、ユニバーサルPCRを実行した。特異性および均一性に関する一般的なパネル性能は、これらの条件間で類似しているように見えた。
図7】Illumina機器用のQIAseq Targeted DNA Proライブラリの試料のBioanalyzer画像。ライブラリ断片の大部分のサイズは200~1000bpである。図7A:過剰増幅のないライブラリ。Illumina機器用のQIAseq Targeted DNA Proライブラリの試料のBioanalyzer画像。ライブラリ断片の大部分のサイズは200~1000bpである。図7B:「より大きな断片」のピークによって示される過剰増幅を有するライブラリ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
単一プライマー伸長(SPE)NGSライブラリの構築は、商業的に非常に成功した技術であるが、高スループットでターンアラウンドが速い実験室向けに改善することができる。単一プライマー伸長(SPE)は、他の大半の方法と同様に、アダプターおよびプライマーの除去に関して磁気SPRIビーズを用いたクリーンアップに依拠しているが、これはスループットが低く、ばらつきがあり、時間のかかる工程であり、標的増幅の前にSPRIビーズを使用することにより試料が失われる可能性がある。
【0018】
本明細書において開示されるのは、dU置換オリゴおよびUNG消化を使用して、最後の1回以外の全てのビーズクリーンアップを置き換える方法である。これにより、自動化がより容易になり、オリジナル分子がはるかに多く回収され(ビーズ工程での消失なし)、処理時間が節約される。
【0019】
ライゲーション反応も自動化に問題をもたらす。一般に、ライゲーションは高濃度のPEGを必要とし、これが粘度を高くさせ、ピペッティングおよび混合に問題を引き起こす。本明細書において開示されるのは、最終ライゲーション反応に10%未満のPEGが含有されるように、PEGの大半の除去を可能にする高pHライゲーション緩衝液に置換して、効率的な自動化および再現性の強化を支援する方法である。
【0020】
最後に、本明細書において開示されるのは、化学的ホットスタートtaqポリメラーゼを抗体ベースの高速サイクリング代替物に置き換えることにより、ライブラリ構築のスループットが大いに加速される方法である。多数のプライマー、高い均一性、およびプライマー内のdU置換に耐性のある酵素、というNGSの要求と適合する増幅ミックスおよびサイクリング条件を見出すには、相当量の作業および解析が必要とされた。
【0021】
したがって、本明細書において開示されるのは、(a)ライゲーション産物を生成するためにアダプターを標的DNA分子にライゲートさせる工程であって、アダプターが、1つまたは複数のデオキシウリジンと固有分子インデックス(UMI)とを含む、ライゲートさせる工程;(b)ライゲーション産物をウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)で処理する工程;および(c)標的増幅産物を生成するために、(b)のライゲーション産物内のアダプターに付着された標的DNA分子を、標的特異的プライマーを用いた単一プライマー伸長によって増幅させる工程であって、標的特異的プライマーが、1つまたは複数のデオキシウリジンと標的特異的配列とを含む、増幅させる工程、を含む、DNAライブラリを調製する方法である。いくつかの態様では、(a)のライゲートされたアダプターは、一本鎖であり、伸長によって二本鎖になることにより、標的DNA分子の両方の鎖にUMIがコピーされる。
【0022】
また、本明細書において開示されるのは、標的増幅産物を生成するために単一の標的特異的プライマーを用いて標的DNA分子を増幅させる工程を含む、DNAライブラリを調製する方法であって、標的特異的プライマーが、タグ配列と、1つまたは複数のデオキシウリジンと、標的特異的配列とを含む、方法である。いくつかの態様では、アダプターは、標的DNA分子にアニールされ、かつ伸長される単一アダプターであり、アダプターは、UMIと、デオキシウリジンを含有しない標的特異的配列とを含む。いくつかの態様では、一対のアダプターが、標的DNA分子にアニールされ、かつ伸長され、一対のアダプターの各アダプターは、UMIと、第1または第2の標的特異的配列と、1つまたは複数のデオキシウリジンとを含む。いくつかの態様では、アダプターは、ライゲーション産物を生成するために標的DNA分子にライゲートされており、アダプターは、1つまたは複数のデオキシウリジンと固有分子インデックス(UMI)とを含む。また、本明細書において開示されるのは、(a)1つまたは複数のデオキシウリジンと固有分子インデックス(UMI)とを含むアダプターに付着された標的DNA分子を伸長させる工程;(b)(a)の伸長産物をウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)で処理する工程;および(c)標的増幅産物を生成するために、(b)の伸長産物を標的特異的プライマーを用いて増幅させる工程であって、標的特異的プライマーが、1つまたは複数のデオキシウリジンと標的特異的配列とを含む、増幅させる工程、を含む、DNAライブラリを調製する方法である。いくつかの態様では、標的特異的配列は、1つまたは複数のデオキシウリジンを含む。
【0023】
いくつかの態様では、標的DNA分子は、末端修復されている。いくつかの態様では、標的DNA分子は、アデニル化されている。
【0024】
いくつかの態様では、標的特異的プライマーは、5’から3’の方向に、少なくとも2つのデオキシウリジンを含むタグ配列と、0~4つのデオキシウリジンを含む標的特異的配列とを含む。
【0025】
いくつかの態様では、本方法は、標的増幅産物をUDGで処理する工程、および次いで第2の標的増幅産物を生成するために標的増幅産物をユニバーサルプライマーを用いて増幅させる工程、をさらに含み、ユニバーサルプライマーは、デオキシウリジンを含まない。いくつかの態様では、ユニバーサルプライマーは、試料インデックスを含む。
【0026】
いくつかの態様では、ライゲートさせる工程は、pH8~9で実施される。いくつかの態様では、ライゲートさせる工程は、4%PEG~10%PEG未満のPEG濃度で実施される。
【0027】
いくつかの態様では、増幅させる工程は、抗体ベースのホットスタートポリメラーゼを用いて実施される。
【0028】
いくつかの態様では、本方法は、第2の増幅産物をビーズを用いて精製する工程をさらに含む。いくつかの態様では、ビーズは、固相可逆固定化(SPRI)ビーズである。
【0029】
DNAライブラリは、次世代シーケンシング、DNAバリアントのプロファイリング、人物同定もしくは父子鑑定、疼痛もしくはADMEのファーマコゲノミクス、または遺伝性疾患の検出に使用され得る。
【0030】
本明細書において開示されるのは、本明細書において開示される方法によって作られたDNAライブラリである。
【0031】
本明細書において開示されるのは、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)と、1つまたは複数のデオキシウリジンと固有分子インデックス(UMI)とを含むアダプターと、ユニバーサルプライマーと、抗体ベースの熱安定性ポリメラーゼと、を含むキットである。いくつかの態様では、キットは、リガーゼと、ライゲーション反応に8~9のpHをもたらすことが可能なライゲーション緩衝液とをさらに含み得る。いくつかの態様では、ライゲーション緩衝液は、ライゲーション反応に4%~10%未満のPEG濃度をもたらすことが可能である。いくつかの態様では、キットは、固相可逆固定化(SPRI)ビーズをさらに含む。いくつかの態様では、キットは、1つまたは複数のデオキシウリジンと標的特異的配列とを含む標的特異的プライマーをさらに含む。
【0032】
「試料」という用語は、対象(例えば、哺乳動物対象、動物対象、ヒト対象、または非ヒト動物対象)から採取された、RNA、DNA、単一細胞、複数細胞、細胞の断片、または体液のアリコートを含み得る。試料は、遠心分離、静脈穿刺、採血、排泄、スワブ採取、生検、針吸引、洗浄試料、擦過、外科的切開、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション、勾配分離、もしくは介入、または当技術分野において公知の他の手段を含むがそれらに限定されない、公知である任意の公知の手段を使用して、当業者によって選択され得る。本明細書において使用される「哺乳類」または「哺乳動物」という用語は、ヒトおよび非ヒトの両方を含み、限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ネズミ、ウシ、ウマ、およびブタを含む。
【0033】
本明細書において使用される場合、「生体試料」という用語は、対象から単離された組織、細胞、生体液、およびそれらの単離物、ならびに対象内に存在する組織、細胞、および液体を含むことが意図されるが、それらに限定されない。
【0034】
本明細書において使用される場合、「単一細胞」は、1つの細胞を指す。本明細書において記載される方法において有用な単一細胞は、対象となる組織から、または生検、血液試料、もしくは細胞培養物から得られ得る。さらに、個別の器官、組織、腫瘍、新生物などからの細胞は、本明細書において記載される方法において得られ、かつ使用され得る。一般に、細菌または酵母を含む原核生物または真核生物の集団など、任意の集団からの細胞が、本方法において使用され得る。
【0035】
単一細胞懸濁液は、例えば、酵素的に、トリプシンもしくはパパインを使用して組織試料中の細胞を接続しているタンパク質を消化すること、もしくは培養中の接着細胞を遊離させること、または試料中の細胞を機械的に分離すること、を含む当技術分野において公知の標準的方法を使用して得られ得る。試料はまた、対象となる試料と関連することが公知である1つまたは複数のマーカーを使用して、当業者によって選択され得る。
【0036】
単一細胞を操作するための方法は当技術分野において公知であり、これには、蛍光活性化細胞選別(FACS)、顕微操作、および半自動細胞ピッキング装置(例えば、Stoelting Co.製Quixell(商標)細胞移送システム)の使用が含まれる。例えば、個々の細胞は、位置、構造形態、またはレポーター遺伝子発現などの顕微鏡観察によって検出可能な特徴に基づいて個々に選択され得る。
【0037】
所望の試料が同定されると、当業者に公知の方法を使用して、試料が調製され、細胞が溶解されて、gDNAおよびmRNAなどのDNAおよびRNAを含む細胞内容物が放出される。溶解は、例えば、細胞を加熱することによって、もしくは界面活性剤もしくは他の化学的方法の使用によって、またはこれらの組み合わせによって達成され得る。当技術分野において公知である任意の好適な溶解方法が使用され得る。DNAまたはRNAなどの細胞からの核酸は、当業者に公知の方法を使用して単離され得る。
【0038】
「標的DNA分子」または「標的核酸分子」という用語は、解析されるべき、対象となるDNAまたは核酸分子、例えばDNA断片を指す。いくつかの態様では、標的DNA分子は、標的配列(例えば、公知または所定の配列)および決定されるべき近接配列を含む。標的DNA分子は、試料または単一細胞から得られ得る。
【0039】
「DNA」という用語は、染色体DNA、プラスミドDNA、ファージDNA、一本鎖(ssDNA)もしくは二本鎖(dsDNA)であるウイルスDNA、またはcDNAを指す。DNAは、原核生物または真核生物から得られ得る。
【0040】
「ゲノムDNA」または「gDNA」という用語は、染色体DNAを指す。
【0041】
「DNA断片」という用語は、天然に、または限定されるものではないが酵素もしくは超音波処理によって、断片化されたDNAを指す。
【0042】
「メッセンジャーRNA」または「mRNA」という用語は、イントロンを有さず、かつポリペプチドへと翻訳され得るRNAを指す。
【0043】
「cDNA」という用語は、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態でmRNAと相補的または同一であるDNAを指す。cDNAを得るための方法は、当技術分野において周知である。
【0044】
「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」という用語は、DNA分子およびRNA分子などの核酸、ならびにそれらの類似体(例えば、ヌクレオチド類似体を使用して、または核酸化学を使用して生成されたDNAまたはRNA)を指す。所望により、ポリヌクレオチドは、例えば当技術分野において認められている核酸化学を使用して合成的に、または、例えばポリメラーゼを使用して酵素的に作ることができ、所望であれば修飾することができる。典型的な修飾には、メチル化、ビオチン化、および当技術分野において公知の他の修飾が含まれる。加えて、ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であり得、所望の場合には検出可能なモイエティに連結される。いくつかの局面では、ポリヌクレオチドは、例えばDNAおよびRNAを含む、ハイブリッド分子を含み得る。
【0045】
「G」、「C」、「A」、「T」、および「U」は、各々一般に、塩基としてそれぞれグアニン、シトシン、アデニン、チミジン、およびウラシルを含有するヌクレオチドを表す。しかしながら、「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」という用語が修飾ヌクレオチドまたは代用の置き換えモイエティも指し得ることが理解されるであろう。当業者は、グアニン、シトシン、アデニン、およびウラシルが、かかる置き換えモイエティを保有するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対形成特性を実質的に変更することなく、他のモイエティによって置き換えられ得ることを十分に認識している。例えば、非限定的に、塩基としてイノシンを含むヌクレオチドは、アデニン、シトシン、またはウラシルを含有するヌクレオチドと塩基対を形成し得る。故に、ウラシル、グアニン、またはアデニンを含有するヌクレオチドは、ヌクレオチド配列内で、例えばイノシンを含有するヌクレオチドによって置き換えられ得る。別の例では、オリゴヌクレオチド内の任意箇所のアデニンおよびシトシンは、それぞれグアニンおよびウラシルに置き換えられて、標的mRNAとG-Uゆらぎ塩基対を形成し得る。かかる置き換えモイエティを含有する配列は、本明細書において記載される組成物および方法に好適である。いくつかの態様では、本明細書において開示されるように、dUTPヌクレオチドは、dUまたはUとも称されるdUMPとしてDNAに組み入れられ得る。
【0046】
本明細書において使用される場合、「ライゲートさせる」、「ライゲーション」という用語、およびそれらの派生語は、一般に、2つ以上の分子を一緒に共有結合的に連結させ、例えば2つ以上の核酸分子を互いに共有結合的に連結させ、ライゲーション産物を生成するための行為またはプロセスを指す。いくつかの態様では、ライゲーションは、核酸の近接ヌクレオチド間のニックを接合させることを含む。いくつかの態様では、ライゲーションは、第1の核酸分子の末端と第2の核酸分子の末端との間に共有結合を形成させることを含む。いくつかの態様では、例えば、ライゲートされる核酸分子が従来のヌクレオチド残基を含む態様では、ライゲーションは、ある核酸の5’リン酸基と第2の核酸の3’ヒドロキシル基との間に共有結合を形成させ、それによりライゲートされた核酸分子を形成させることを含み得る。いくつかの態様では、近接ヌクレオチド間のニックを接合させるための、または5’リン酸を3’ヒドロキシルに結合させるための任意の手段が採用され得る。例示的な態様では、リガーゼなどの酵素が使用され得る。いくつかの態様では、標的DNA分子は、標的DNA分子にライゲートされたアダプターを含むライゲーション産物を生成するために、アダプターにライゲートされ得る。
【0047】
本明細書において使用される場合、「リガーゼ」およびその派生語は、一般に、2つの基質分子のライゲーションを触媒することが可能な任意の作用物質を指す。いくつかの態様では、リガーゼには、核酸の近接ヌクレオチド間のニックの接合を触媒することが可能な酵素が含まれる。いくつかの態様では、リガーゼには、ある核酸分子の5’リン酸と別の核酸分子の3’ヒドロキシルとの間の共有結合の形成を触媒し、それによりライゲートされた核酸分子を形成することが可能である、酵素が含まれる。好適なリガーゼには、T4 DNAリガーゼ、T4 RNAリガーゼ、および大腸菌(E.coli)DNAリガーゼが含まれ得るが、それらに限定されない。
【0048】
本明細書において使用される場合、「平滑末端ライゲーション」およびその派生語は、一般に、2つの平滑末端二本鎖核酸分子の互いへのライゲーションを指す。「平滑末端」は、核酸分子の一方の鎖の末端内の実質的に全てのヌクレオチドが、同じ核酸分子の他方の鎖内の対向するヌクレオチドと塩基対形成している、二本鎖核酸分子の末端を指す。核酸分子が、本明細書において「オーバーハング」と称される2ヌクレオチド長を超える一本鎖部分を含む末端を有している場合、該核酸分子は平滑末端ではない。いくつかの態様では、核酸分子の末端はいかなる一本鎖部分も含まず、そのため、末端の一方の鎖内のあらゆるヌクレオチドは、同じ核酸分子の他方の鎖内の対向するヌクレオチドと塩基対形成している。いくつかの態様では、互いにライゲートされることになる2つの平滑末端核酸分子の末端は、いかなる重複配列、共有配列、または相補的配列も含まない。いくつかの態様では、平滑末端ライゲーションは、ライゲーションプロセス中に作り出されたニックを塞ぐためのニックトランスレーション反応を含む。
【0049】
本明細書において使用される場合、「ライゲーション条件」およびその派生語は、一般に、2つの分子を互いにライゲートさせるのに好適な条件を指す。いくつかの態様では、ライゲーション条件は、核酸間のニックまたはギャップを塞ぐのに好適である。本明細書において定義される場合、「ニック」または「ギャップ」は、核酸配列の内部ヌクレオチド内で、隣り合うモノヌクレオチドペントース環の3’ヒドロキシルに直接結合したモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸を欠いている、核酸分子を指す。本明細書において使用される場合、ニックまたはギャップという用語は、当技術分野における用語の使用と一致している。典型的には、ニックまたはギャップは、適切な温度およびpHで、リガーゼなどの酵素の存在下でライゲートされ得る。いくつかの態様では、T4 DNAリガーゼは、約70℃~72℃の温度で核酸間のニックを接合し得る。いくつかの態様では、ライゲーション反応は、最終pH8~9、pH8~8.7、pH8~8.5で、またはそれらの中の任意の最終pHもしくは範囲で実施される。いくつかの態様では、ライゲーション反応は、4%~10%未満、4%~8%、4%~6%の最終PEG濃度、またはそれらの中の任意の最終PEG濃度もしくは範囲で実施される。当業者は、本明細書において開示されるライゲーション反応中のpHおよびPEG%を達成するために必要な、ライゲーション緩衝液中のpHおよびPEG%を決定することができる。いくつかの態様では、本明細書において開示されているようにpHを上昇させることにより、効率的な自動化および再現性の増加のために、ライゲーションミックス中で、本明細書において開示されているようにPEG%を低下させることができる。
【0050】
本明細書において使用される場合、「ポリメラーゼ」およびその派生語は、一般に、ヌクレオチド(その類似体を含む)の核酸鎖への重合を触媒することができる任意の酵素を指す。かかるヌクレオチドの重合は、必ずしもではないが典型的には、鋳型依存的な形で起こり得る。かかるポリメラーゼには、非限定的に、天然に存在するポリメラーゼならびにそれらの任意のサブユニットおよびトランケーション、変異ポリメラーゼ、バリアントポリメラーゼ、組換え、融合、または他の方法で操作されたポリメラーゼ、化学修飾ポリメラーゼ、合成分子またはアセンブリ、ならびにかかる重合を触媒する能力を保持するそれらの任意の類似体、誘導体、または断片が含まれ得る。任意で、ポリメラーゼは、他のアミノ酸による1つもしくは複数のアミノ酸の置き換え、ポリメラーゼからの1つもしくは複数のアミノ酸の挿入もしくは欠失、または2種以上のポリメラーゼの部分の連結を伴う、1つまたは複数の変異を含む変異ポリメラーゼであり得る。典型的には、ポリメラーゼは、ヌクレオチド結合および/またはヌクレオチド重合の触媒作用が起こり得る、1つまたは複数の活性部位を含む。いくつかの例示的なポリメラーゼには、非限定的に、DNAポリメラーゼおよびRNAポリメラーゼが含まれる。本明細書において使用される場合、「ポリメラーゼ」という用語およびその変形は、互いに連結された少なくとも2つの部分を含む融合タンパク質も指し、第1の部分は、核酸鎖へのヌクレオチドの重合を触媒することができるペプチドを含み、第2のポリペプチドを含む第2の部分に連結されている。いくつかの態様では、第2のポリペプチドは、レポーター酵素またはプロセシング能強化ドメイン(processivity-enhancing domain)を含み得る。任意で、ポリメラーゼは、5’エキソヌクレアーゼ活性またはターミナルトランスフェラーゼ活性を有し得る。いくつかの態様では、ポリメラーゼは、例えば熱、化学物質の使用、または反応混合物への新たな量のポリメラーゼの再添加を通じて、任意で再活性化され得る。いくつかの態様では、ポリメラーゼには、任意で再活性化され得る、ホットスタートポリメラーゼまたはアプタマーベースのポリメラーゼが含まれ得る。いくつかの態様では、ポリメラーゼは、抗体ベースのホットスタートポリメラーゼなどの抗体ベースの熱安定性ポリメラーゼである。かかるポリメラーゼは、商業的に容易に入手可能である。
【0051】
本明細書において使用される場合、「伸長」、「伸長させる」という用語およびそれらの変形は、所与のプライマーに関して使用される場合、伸長産物を生成するために既存の核酸分子の末端に1つまたは複数のヌクレオチドを重合させることに関する、所与のポリメラーゼに特徴的な任意のインビボまたはインビトロ酵素活性を含む。かかるプライマー伸長は、必ずしもではないが典型的には鋳型依存的な形で起こり;鋳型依存的伸長の間、塩基の順序および選択は、ワトソン・クリック型塩基対形成規則を含み得る確立された塩基対形成規則によって、またはあるいは、(とりわけヌクレオチド類似体が関与する伸長反応の場合)何らかの他のタイプの塩基対形成パラダイムによって導かれる。非限定的な一例では、伸長は、ポリメラーゼによる核酸分子の3’OH末端でのヌクレオチドの重合を介して起こる。
【0052】
「ハイブリダイズする」という用語は、相補的核酸との配列特異的な非共有結合相互作用を指す。ハイブリダイゼーションは、核酸配列の全体または一部分に対して起こり得る。当業者は、核酸二重鎖またはハイブリッドの安定性がTmによって決定され得ることを認識するであろう。ハイブリダイゼーション条件に関するさらなる指針は、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y., 1989, 6.3.1-6.3.6およびSambrook et al., Molecular Cloning, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Vol. 3, 1989に見出され得る。
【0053】
本明細書において使用される場合、配列をポリヌクレオチドに「組み入れる」とは、一続きのヌクレオチドを、例えばポリヌクレオチドの3’末端または5’末端で、ホスホジエステル結合によってポリヌクレオチドの残部と共有結合的に連結させることを指し、ヌクレオチドは、配列によって規定された順序で連結される。ポリヌクレオチドが配列またはその相補的配列を含有している場合、配列はポリヌクレオチドに「組み入れられている」、または同等に、ポリヌクレオチドは配列を「組み入れている」。ポリヌクレオチドへの配列の組み入れは、(例えば、ライゲーションもしくは重合により)酵素的に、または(例えば、ホスホラミダイト化学による)化学合成を使用して、行うことができる。
【0054】
本明細書において、「関連する」という用語は、試料と、その試料を起源とするまたはその試料に由来する、DNA分子、RNA分子、または他のポリヌクレオチドとの間の関係を指すために使用される。ポリヌクレオチドは、それが内因性ポリヌクレオチドである場合に、すなわち、試料が選択された時点でそれが試料中に存在するか、またはそれが内因性ポリヌクレオチドに由来する場合に、試料に関連する。例えば、細胞に対して内因性のDNAは、その細胞に関連する。mRNAの逆転写から生じるcDNA、およびcDNAのPCR増幅から生じるDNAアンプリコンは、mRNAの配列を含有しており、これらもまた細胞に関連している。試料に関連するポリヌクレオチドは、試料中に位置するまたは試料中で合成される必要はなく、試料が破壊された後(例えば、細胞が溶解された後)でさえも試料に関連するとみなされる。分子バーコーディングまたは他の技法は、混合物内のどのポリヌクレオチドが特定の試料に関連しているかを決定するために使用され得る。
【0055】
2つの一本鎖ポリヌクレオチド間において逆平行配置でハイブリダイゼーションが起こる場合、反応は「アニーリング」と呼ばれ、それらのポリヌクレオチドは「相補的」であると記載される。本明細書において使用され、かつ別途示されない限り、「相補的」という用語は、第1のヌクレオチド配列を第2のヌクレオチド配列との関係で説明するために使用される場合、当業者には理解されるように、第1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが、ある特定の条件下で、第2のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとハイブリダイズして二重鎖構造を形成する能力を指す。かかる条件は、例えば、ストリンジェントな条件であり得、ストリンジェントな条件には、400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50℃または70℃で12~16時間の後に洗浄することが含まれ得る。生物内部で遭遇し得る生理学的に関連性のある条件などの他の条件も、適用され得る。当業者であれば、ハイブリダイズされたヌクレオチドの最終用途に従って、2つの配列の相補性の試験に最も適した条件のセットを決定することができるであろう。
【0056】
相補的配列は、第1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの領域と、第2のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの領域との、一方または両方のヌクレオチド配列の全長または部分長にわたる塩基対形成を含む。かかる配列は、本明細書において互いに対して「相補的」と称される場合がある。しかしながら、本明細書において第1の配列が第2の配列に対して「実質的に相補的」であると称される場合、2つの配列は、相補的であり得るか、または塩基対形成された領域内に1つもしくは複数の、但し一般に約5つ以下、4つ以下、3つ以下、もしくは2つ以下の、ミスマッチ塩基対を含み得る。ミスマッチ塩基対を有する2つの配列について、2つのヌクレオチド配列が塩基対形成を介して互いに結合している限り、配列は「実質的に相補的」であるとみなされる。
【0057】
本明細書において、ヌクレオチド配列を記載するために従来の表記法が使用される:一本鎖ヌクレオチド配列の左側末端は5’末端であり;二本鎖ヌクレオチド配列の左側方向は5’方向と称される。新生RNA転写産物への5’から3’のヌクレオチド付加の方向は、転写方向と称される。mRNAと同じ配列を有するDNA鎖は、「コーディング鎖」と称され;そのDNAから転写されたmRNAと同じ配列を有するDNA鎖上の配列であって、RNA転写産物の5’末端に対して5’側に位置する配列は、「上流配列」と称され;RNAと同じ配列を有するDNA鎖上の配列であって、コーディングRNA転写産物の3’末端に対して3’側である配列は、「下流配列」と称される。
【0058】
いくつかの態様では、二本鎖標的DNA分子は、ライゲーションに適するように末端修復され得る。例えば、標的DNA分子の末端は、平滑末端を有するようにポリッシングされ得る。当技術分野において公知のように、これは、突出鎖の充填または除去のいずれかを行うことのできる酵素を用いて達成され得る。標的DNA分子の末端はまた、例えばT4ポリメラーゼによって3’末端で、アデニル化され得る。
【0059】
本明細書において開示される方法では、「アダプター」と呼ばれる合成オリゴヌクレオチドが、標的DNA分子の一方または両方の末端(5’および3’)とライゲートされ得る。いくつかの態様では、アダプターは、シーケンシングプラットフォームにおいて有用である。アダプターは、1、2、3、4、6つまたはそれ以上など、1つまたは複数のデオキシウリジン(U、dU、またはdUMP)と、固有分子インデックス(UMI)とを含み得る。アダプターは、二本鎖であり得るか、または一本鎖であり後に伸長によって二本鎖に伸長され得る。いくつかの態様では、アダプターは、試料インデックスを含まない。いくつかの態様では、アダプターは、1つまたは複数のdUとUMIとを含み得る。
【0060】
いくつかの態様では、アダプターは、標的DNA分子にアニールされ、かつ伸長される単一アダプターであり、アダプターは、UMIと、デオキシウリジンを含有しない標的特異的配列とを含む。本明細書において使用される場合、「単一」アダプターとは、1つのアダプターが標的DNA分子にアニールされることを意味するが、当然ながら、複数の標的DNA分子が同時に単一アダプターとアニールされることができる。他の態様では、一対のアダプターが、(二本鎖である)標的DNA分子にアニールされ、かつ伸長され、一対のアダプターの各アダプターは、UMIと、第1または第2の標的特異的配列と、1つまたは複数のデオキシウリジンとを含む。
【0061】
標的特異的配列とは、標的DNA分子上の近接配列が決定され得るように、標的DNA分子上の標的配列(例えば、公知または所定の配列)にハイブリダイズすることができる、指定されたアダプターまたはプライマー内の配列である。
【0062】
固有分子インデックスまたは識別子(UMI;ランダム分子タグ(RMT)とも呼ばれる)は、ライブラリ増幅前に各DNA分子(断片)にタグ付けするために使用される塩基の短い配列または「バーコード」であり、それにより各個々の核酸分子またはPCR複製物の同定が支援される。Kivioja, T. et al., Nat. Methods 9:72-74 (2012), and Suppl。2つのリードが同じ位置にアラインし、同じUMIを有する場合、それらは増幅前の同じ断片を起源とするPCR複製物である可能性が高い。
【0063】
UMIの概念は、任意の増幅前に、オリジナル標的分子の各々が固有のバーコード配列によって「タグ付け」されるというものである。このDNA配列は、各ファウンダー分子(founder molecule)に固有のバーコードを割り当てるのに十分な順列を提供するに足るほど長くなければならない。いくつかの態様では、UMI配列は、ランダム化されたヌクレオチドを含有しており、アダプターに組み入れられる。例えば、12塩基のランダム配列は、試料中の各標的分子またはDNA断片につき、412すなわち16,777,216個のUMIを提供する。
【0064】
アダプターが標的DNA分子にライゲートまたはアニールされた後、未使用のアダプターは、UDG(ウラシルDNAグリコシラーゼ)による処理により除去され得る。UDG処理はまた、U塩基を含有する未使用の標的特異的プライマーを除去するためにも実施され得る。UDGは、DNAからウラシル塩基を切断する。したがって、UDG処理はまた、UまたはdU塩基を含有するアダプターを有するDNA鎖内のU塩基を切断し、AまたはdA塩基を含有するコピーされた鎖をインタクトのままにすることもできる。UDGは、限定されるものではないが、例えば、UNG、SMUG1、TDG、およびMBD4などの、原核生物または真核生物からのものであり得る。
【0065】
本明細書において開示される方法は、濃縮のために標的DNA分子を増幅させる工程をさらに含み得る。標的濃縮は、例えばSPEプライマーまたはSPEプライマープールを用いて、達成され得る。アンプリコンベースの次世代シーケンシング(NGS)アッセイは、標的化濃縮に多くの利点を与える。例えば、QIAseq NGSパネルは、PCR増幅バイアスを補正するために固有分子インデックス(UMI)を採用しており、設計柔軟性および高度に特異的な標的濃縮を提供する単一プライマー伸長(SPE)技術を使用する。
【0066】
本明細書において使用される場合、「プライマー」という用語は、ポリヌクレオチド鋳型と二重鎖を形成する際に核酸合成の開始点として働き、かつ伸長二重鎖が形成されるようにその3’末端から鋳型に沿って伸長されることが可能である、天然または合成のいずれかのオリゴヌクレオチドを含む。伸長プロセス中に付加されるヌクレオチドの配列は、鋳型ポリヌクレオチドの配列によって決定される。通常、プライマーは、DNAポリメラーゼによって伸長される。プライマーは、通常、3~36ヌクレオチド、また5~24ヌクレオチド、また14~36ヌクレオチドの範囲の長さを有する。本明細書において開示されるプライマーには、標的特異的プライマー、ユニバーサルプライマー、増幅プライマーなどが含まれる。プライマーおよびプローブは、配列が縮重している場合がある。本明細書において開示されるプライマーは、決定されるべき配列に近接して結合し得る。「プライマー」は、一般に遊離3’-OH基を有し、標的配列にハイブリダイズすることにより、対象となる試料中に存在する可能性のある標的核酸分子または鋳型に結合し、その後標的核酸分子に相補的なポリヌクレオチドの重合を促進する、短いポリヌクレオチドと考えられ得る。本明細書において開示される方法で使用されるプライマーは、17~30ヌクレオチドの範囲のヌクレオチドから構成され得る。いくつかの態様では、プライマーは、少なくとも17ヌクレオチド、またはあるいは少なくとも18ヌクレオチド、またはあるいは少なくとも19ヌクレオチド、またはあるいは少なくとも20ヌクレオチド、またはあるいは少なくとも21ヌクレオチド、またはあるいは少なくとも22ヌクレオチド、またはあるいは少なくとも23ヌクレオチド、またはあるいは少なくとも24ヌクレオチド、またはあるいは少なくとも25ヌクレオチド、またはあるいは少なくとも26ヌクレオチド、またはあるいは少なくとも27ヌクレオチド、またはあるいは少なくとも28ヌクレオチド、またはあるいは少なくとも29ヌクレオチド、またはあるいは少なくとも30ヌクレオチド、またはあるいは少なくとも50ヌクレオチド、またはあるいは少なくとも75ヌクレオチド、またはあるいは少なくとも100ヌクレオチドである。いくつかの態様では、一本鎖アダプターは、伸長のためのプライマーとして働き得る。
【0067】
本明細書において使用される場合、「標的特異的プライマー」およびその派生語は、標的DNA分子を標的とするプライマーを指す。標的特異的プライマーは、一般に、標的配列と決定されるべき近接配列とを含む標的核酸分子の少なくとも一部分に対して少なくとも50%相補的、典型的には少なくとも75%相補的もしくは少なくとも85%相補的、より典型的には少なくとも90%相補的、より典型的には少なくとも95%相補的、より典型的には少なくとも98%もしくは少なくとも99%相補的、または100%相補的である少なくとも1つの配列を含む一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチド、典型的にはオリゴヌクレオチドに結合またはハイブリダイズする。標的特異的プライマーは、標的配列の全体または一部分を含有する標的分子の領域に相補的な配列を含有し得る。標的特異的プライマーが標的配列に相補的である配列を含有している場合、標的特異的プライマーおよび標的配列は互いに「対応する」と記載される。いくつかの態様では、標的特異的プライマーは、その対応する標的配列の少なくとも一部分と(または標的配列の相補体と)ハイブリダイズすることが可能であり;かかるハイブリダイゼーションは、任意で、標準的なハイブリダイゼーション条件下またはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で実施され得る。
【0068】
いくつかの態様では、標的特異的プライマーは、標的DNA分子中または試料中に存在する他の標的配列と実質的に非相補的であり;任意で、標的特異的プライマーは、試料中に存在する他の核酸分子と実質的に非相補的である。いくつかの態様では、標的配列(または標的配列の相補体)を含まないまたはそれに対応しない、試料中に存在する核酸分子は、「非特異的」配列または「非特異的核酸」と称される。いくつかの態様では、標的特異的プライマーは、その対応する標的配列の少なくとも一部分と実質的に相補的であるヌクレオチド配列を含むように設計される。いくつかの態様では、標的特異的プライマーは、その全長にわたって、その対応する標的配列を含む標的核酸分子の少なくとも一部分に対して、少なくとも95%相補的であるか、または少なくとも99%相補的であるか、または100%同一である。いくつかの態様では、相補的である標的特異的プライマーは、その全長にわたって、標的核酸分子内のその対応する標的配列の少なくとも一部分に対して、少なくとも90%、少なくとも95%の相補性、少なくとも98%の相補性、または少なくとも99%の相補性、または100%の相補性を含む。いくつかの態様では、標的特異的プライマーは、その3’末端または5’末端で、増幅反応中に存在する任意の他の標的特異的プライマーと実質的に非相補的であり得る。いくつかの態様では、標的特異的プライマーは、増幅反応中に他の標的特異的プライマーとの最小限のクロスハイブリダイゼーションを含み得る。いくつかの態様では、標的特異的プライマーは、増幅反応混合物中の非特異的配列との最小限のクロスハイブリダイゼーションを含む。いくつかの態様では、標的特異的プライマーは、最小限の自己相補性を含む。いくつかの態様では、標的特異的プライマーは、3’末端に位置する1つまたは複数の切断可能基を含み得る。
【0069】
いくつかの態様では、標的特異的プライマーは、標的特異的プライマーの中心ヌクレオチドの近傍またはその周囲に位置する1つまたは複数の切断可能基を含み得る。いくつかの態様では、1つまたは複数の標的特異的プライマーは、標的特異的プライマーの5’末端に切断不能ヌクレオチドのみを含む。いくつかの態様では、標的特異的プライマーは、任意で同じ増幅反応における、1つまたは複数の異なる標的特異的プライマーと比較して、プライマーの3’末端または5’末端で重複する最小限のヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、単一の反応混合物における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上の標的特異的プライマーは、上記態様のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの態様では、単一の反応混合物における複数の標的特異的プライマーの実質的に全てが、上記態様のうちの1つまたは複数を含む。
【0070】
いくつかの態様では、標的特異的プライマーは、タグ配列をさらに含み得る。例えば、標的特異的プライマーは、5’から3’の方向に、少なくとも2つのdUを含むタグ配列と、1、2、3、または4つのdUを含む標的特異的配列とを含み得る。
【0071】
「タグ配列」は、標的特異的プライマーの5’に付着されたユニバーサル配列を指す。この5’タグ配列は、ユニバーサルプライマーの結合部位である。
【0072】
本明細書において開示される方法により、少量の核酸の使用が可能になる。例えば、0.5ng~100ng、1ng~75ng、5ng~50ng、10ng~20ng、またはそれらから導出される任意の量もしくは範囲の単離されたDNA量は、断片化され、本明細書において開示されるライブラリ構築に使用され得る。
【0073】
いくつかの態様では、単一プライマー伸長に使用される標的特異的プライマーは、65℃~70℃、66℃~69℃、もしくは67℃~68℃、またはそれらから導出される任意の具体的な温度もしくは範囲、例えば67.6℃の、融解温度(Tm)平均値または融解温度(Tm)中央値で設計され得る。Tmプライマー設計は、単一の標的特異的プライマーのみを用いたSPE濃縮PCR中に高特異性を付与し得る。
【0074】
本明細書において開示される場合、標的特異的プライマー設計は、各ゲノム標的が1つの標的特異的プライマーおよび1つのユニバーサルプライマーによって濃縮される単一プライマー伸長に基づくものであり得、これは、従来の2つの標的特異的プライマー設計の制限を除去し、必要とされるプライマーの量を低減させる戦略である。パネルに必要とされる全てのプライマーは、パネルの取扱い、ならびに濃縮およびライブラリ構築に必要とされるプールの数を低減させるために、個々のプライマープールにプールされる。
【0075】
増強パネルは、任意のパネル(分類、拡張、またはカスタムされたもの)内のある特定のプライマーの性能を増強させるために、または既存のカスタムパネルの内容を拡張するために使用され得る、最大100個のプライマーのプールである。プライマーは、既存のパネルにスパイクされ得る単一のプールとして送達される。
【0076】
UDGによる処理により、dUを含む未使用のアダプターまたは未使用の標的特異的プライマーを除去した後、対象となる遺伝子または遺伝子座に相補的な標的特異的配列と5’ユニバーサル配列とを各々が保有する単一の標的特異的プライマーのプールを使用して、限られた数のPCRサイクルが実行され得る。このプロセス中、単一の標的特異的プライマーの各々は、異なるDNA鋳型または標的核酸分子から同じ標的遺伝子座を繰り返しサンプリングする。その後、ライブラリを所望の量まで増幅させるために、ユニバーサルプライマーを使用してさらなるPCRサイクルが実行され得る。
【0077】
既存の標的化濃縮アプローチと比較して、SPE法は、一端でのアダプターライゲーションに基づくものであり得、これは、dsDNA断片の両端にアダプターをライゲートすることが必要とされるものよりも高い効率を有する。より多くのDNA分子が、下流のPCR濃縮工程で利用可能となる。1つの標的特異的プライマーを使用したPCR濃縮効率もまた、第2のプライマーによる効率の制約がないことに起因して、従来の2つの標的特異的プライマーアプローチよりも良好である。初期PCRサイクル中、プライマーは、オリジナルDNA分子の最大量をアンプリコンに変換する(すなわち捕捉する)機会を繰り返し有する。
【0078】
これら全ての特徴が、試料中の稀な変異を捕捉する効率を上昇させる助けとなる。加えて、アンプリコン内に組み入れられたUMIは、捕捉されたDNA分子の数を推定するための、また下流の解析におけるシーケンシングエラーを大幅に低減させるための鍵となる。単一プライマー伸長により、遺伝子融合体などの未知の構造バリアントの発見も可能になる。
【0079】
本明細書において開示される方法は、第2の標的増幅産物を生成するために標的増幅産物をユニバーサルプライマーを用いて増幅させる工程をさらに含み得る。「ユニバーサルプライマー」は、タグ配列に相補的な、またはDNA分子とクローニングベクターとの特定のセットにおいて非常に一般的であるヌクレオチド配列に相補的な配列を含む。したがって、ユニバーサルプライマーは、多種多様なDNA鋳型に結合することができる。本明細書において開示される方法では、ユニバーサルプライマーは、試料インデックスも含むが、いかなるデオキシウリジンも含まない。「試料インデックス」は、複数の試料が混合され同時にシーケンスされ得るように、1つの試料を同定する固有の配列を含む。
【0080】
本明細書において使用される場合、「増幅させる」および「増幅」という用語は、ポリヌクレオチドの配列の全体または一部を酵素的にコピーして、該配列またはその相補体を同様に含有する、より多くのポリヌクレオチドが生成されるようにすることを指す。コピーされる配列は、鋳型配列と称される。増幅の例には、RNAポリメラーゼによるDNA鋳型RNA合成、逆転写酵素によるRNA鋳型第一鎖cDNA合成、および熱安定性DNAポリメラーゼを使用したDNA鋳型PCR増幅が含まれる。増幅には、PCR、ライゲーション増幅(またはリガーゼ連鎖反応、LCR)、および増幅法などの方法が含まれる。これらの方法は公知であり、当技術分野において広く実践されている。例えば、米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号、ならびにInnis et al., “PCR protocols: a guide to method and applications” Academic Press, Incorporated (1990) (PCRに関して);およびWu et al. (1989) Genomics 4:560-569 (LCRに関して)を参照のこと。一般に、PCR手順は、(i)DNA試料(またはライブラリ)内の特異的遺伝子に対するプライマーの配列特異的ハイブリダイゼーション、(ii)DNAポリメラーゼを使用した、複数ラウンドのアニーリング、エロンゲーション、および変性を伴う、後続の増幅、ならびに(iii)正しいサイズのバンドについてのPCR産物のスクリーニング、で構成される遺伝子増幅の方法を説明する。使用されるプライマーは、重合の開始をもたらすのに十分な長さおよび適切な配列のオリゴヌクレオチドである。すなわち、各プライマーは、増幅されるべきゲノム遺伝子座の各鎖に相補的になるように特異的に設計されている。
【0081】
「PCR産物」、「PCR断片」、「増幅産物」、および「アンプリコン」という用語は、変性、アニーリング、および伸長というPCR工程の2回以上のサイクルが完了した後に結果として生じる化合物の混合物を指す。これらの用語には、標的核酸分子の1つまたは複数のセグメントが増幅されている事例、すなわち標的増幅産物が包含される。
【0082】
本明細書において使用される場合、「標的増幅産物」または「増幅された標的配列」およびその派生語は、一般に、標的特異的プライマー(標的配列にハイブリダイズする標的特異的配列を含むプライマー)および本明細書において提供される方法を使用した標的核酸分子の増幅/増幅を行うこと、によって作製される核酸配列を指す。増幅された標的配列は、標的配列に対して同じセンス(増幅の2回目のラウンドおよび後続の偶数回目のラウンドで作製されるプラス鎖)またはアンチセンス(すなわち、増幅の1回目および後続の奇数回目のラウンド中に作製されるマイナス鎖)のいずれかであり得る。本開示の目的のために、増幅された標的配列は、典型的には、反応中の増幅された別の標的配列のいかなる部分に対しても、50%未満の相補性である。
【0083】
Mullis(米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、および同第4,965,188号)の「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)という用語は、クローニングまたは精製を伴わずに核酸分子の混合物中の標的核酸分子のセグメントの濃度を増加させるための方法を指す。標的核酸分子を増幅させるためのこのプロセスは、所望の標的核酸分子を含有する核酸混合物に大過剰の2つのオリゴヌクレオチドプライマーを組み入れて、続いてポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)の存在下で正確な一連の熱サイクリングを行うことを含む。2つのプライマーは、それらのそれぞれの二本鎖標的核酸分子の鎖に相補的である。増幅を行うために、混合物が変性され、次いでプライマーが標的核酸分子内のそれらの相補的配列にアニールされる。アニーリング後、プライマーがポリメラーゼで伸長されることで、新たな相補鎖の対が形成される。変性、プライマーアニーリング、およびポリメラーゼ伸長の工程は、所望の標的核酸分子の高濃度の増幅セグメントを得るために、何度も繰り返され得る(すなわち、変性、アニーリング、および伸長が1回の「サイクル」を構成し;多数の「サイクル」が存在し得る)。所望の標的核酸分子の増幅セグメントの長さは、プライマーの互いに対する相対位置によって決定されるため、この長さは制御可能なパラメータである。プロセスの繰り返しの局面から、該方法は、「ポリメラーゼ連鎖反応」(以下「PCR」)と称される。標的核酸分子の所望の増幅セグメントは、混合物中で優勢な核酸分子(濃度の面で)となることから、それらは「PCR増幅された」と言われる。
【0084】
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムPCR)は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)としても公知であり、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく分子生物学の実験技法である。これは、標的化DNA分子の増幅を、従来のPCRのようにPCRの最後にではなく、PCR中に、すなわちリアルタイムでモニタリングする。リアルタイムPCRは、定量的に(定量的リアルタイムPCR)、また半定量的に、すなわちDNA分子のある特定の量を上回って/下回って(半定量的リアルタイムPCR)、使用され得る。他のタイプのPCRには、ネステッドPCR(同じ種の異なる生物からのものであるが、単一ヌクレオチドが異なり得るDNA配列(SNIPS)を解析するために、かつ解析される各生物中の対象となる配列を確実に増幅させるために使用される)および逆PCR(通常、挿入因子または転移因子に隣接する領域をクローニングするために使用される)が含まれるが、それらに限定されない。
【0085】
リアルタイムPCRでPCR産物を検出するための2つの一般的な方法は、(1)任意の二本鎖DNAにインターカレートする非特異的蛍光色素、および(2)蛍光レポーターで標識されたオリゴヌクレオチドからなる配列特異的DNAプローブであって、その相補的配列とハイブリダイゼーションした後にのみ検出が可能となるプローブである。
【0086】
「マルチプレックス増幅」は、1つの反応容器における2種以上の標的核酸分子の同時増幅を指す。いくつかの態様では、方法は、プライマーの1つまたは複数のセットを使用してマルチプレックス増幅産物の配列を後に決定することを伴う。マルチプレックスは、約2~1,000個の対象となる異なる配列を単一の反応で検出することを指し得る。本明細書において使用される場合、マルチプレックスは、単一の反応で2~1,000個の任意の範囲、例えば5~500、25~1000、または10~100個の対象となる異なる配列を検出することなどを指す。PCRに適用される「マルチプレックス」という用語は、同じPCR反応において、少なくとも2つの対象となる異なる配列に特異的なプライマー、または対象となる同じ配列の2つ以上の異なる領域に特異的なプライマーが存在することを含意する。本明細書において記載される方法の態様では、マルチプレックス用途には、1回のシーケンシング反応またはシーケンシングランで、複数の試料中の1つまたは複数の公知の標的ヌクレオチド配列に接するヌクレオチド配列を決定することが含まれ得る。いくつかの態様では、複数の試料は、異なる起源のもの、例えば、異なる組織および/または異なる対象からのものであり得る。いくつかの態様では、固有のバーコードを有するプライマー(例えば、アダプター)が、各分子に付加され、その中の核酸にライゲートされ得る;続いて、試料がプールされ得る。かかる態様では、結果として生じる増幅産物の各シーケンシングリードは、該増幅産物が由来するオリジナル核酸分子または鋳型核酸を同定するバーコードを含む。
【0087】
「増幅試薬」という用語は、プライマー、核酸鋳型、および増幅酵素以外の、増幅に必要な試薬(デオキシリボヌクレオチド三リン酸、緩衝液など)を指す。典型的には、増幅試薬は、他の反応成分とともに反応容器(試験管、マイクロウェルなど)内に配置され、収容される。増幅法には、当業者に公知のPCR法が含まれ、また、ローリングサークル増幅(Blanco et al., J. Biol. Chem., 264, 8935-8940, 1989)、超分岐ローリングサークル増幅(Lizard et al., Nat. Genetics, 19, 225-232, 1998)、およびループ介在等温増幅(Notomi et al., Nucl. Acids Res., 28, e63, 2000)も含まれ、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0088】
増幅反応を行うための試薬およびハードウェアは市販されている。特定の遺伝子領域からの配列を増幅させるのに有用なプライマーは、好ましくは、標的領域内またはその隣接領域内の配列に相補的であり、かつそれに特異的にハイブリダイズし、該プライマーは、本明細書において提供されるポリヌクレオチド配列を使用して調製され得る。増幅によって生成された核酸配列は、直接シーケンスされ得る。
【0089】
PCRを実施するための方法およびキットは、当技術分野において周知である。PCRは、上流プライマーと下流プライマーからなる一対のプライマーまたは1セットのプライマー、およびDNAポリメラーゼなどの重合の触媒、典型的には熱的に安定なポリメラーゼ酵素を使用して、標的ポリヌクレオチドから複製コピーが作られる反応である。PCRのための方法は当技術分野において周知であり、例えば、MacPherson et al. (1991) PCR 1: A Practical Approach (IRL Press at Oxford University Press)において教示されている。
【0090】
本明細書において開示される方法では、1つまたは複数のデオキシウリジンを含む、アダプターおよび標的特異的プライマーを使用することにより、複数回のビーズ精製を使用することなく、アダプターライゲーション産物および/または伸長産物ならびに標的増幅産物がUDGでクリーンアップされ得る。解析用のDNAライブラリを調製するために、最終ビーズ精製が使用され得る。
【0091】
本明細書において開示される方法によって調製されたDNAライブラリは、当業者に公知の方法を使用して、例えば次世代シーケンシング(NGS)によって、シーケンスおよび解析され得る。ある特定の例示的な態様では、RNA発現プロファイルは、当技術分野において公知である任意のシーケンシング方法を使用して決定される。対象となる核酸配列の配列の決定は、合成によるシーケンシング(SBS)、ハイブリダイゼーションによるシーケンシング(SBH)、ライゲーションによるシーケンシング(SBL)(Shendure et al. (2005) Science 309:1728)、定量的増分蛍光ヌクレオチド付加シーケンシング(quantitative incremental fluorescent nucleotide addition sequencing)(QIFNAS)、段階的ライゲーションおよび切断、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、分子ビーコン、TaqManレポータープローブ消化、パイロシーケンシング、蛍光インサイチューシーケンシング(FISSEQ)、FISSEQビーズ(米国特許第7,425,431号)、ゆらぎシーケンシング(wobble sequencing)(PCT/US05/27695)、マルチプレックスシーケンシング(米国特許出願第12/027,039号、2008年2月6日出願;Porreca et al (2007) Nat. Methods 4:931)、重合コロニー(POLONY)シーケンシング(米国特許第6,432,360号、同第6,485,944号、および同第6,511,803号、ならびにPCT/US05/06425);ナノグリッドローリングサークルシーケンシング(ROLONY)(US2009/0018024)、アレル特異的オリゴライゲーションアッセイ(例えば、オリゴライゲーションアッセイ(OLA)、ライゲートされた線状プローブとローリングサークル増幅(RCA)リードアウトとを使用した単一鋳型分子OLA、ライゲートされたパドロックプローブ、ならびに/またはライゲートされた円形パドロックプローブとローリングサークル増幅(RCA)リードアウトとを使用した単一鋳型分子OLA)などを含むがそれらに限定されない、当技術分野において公知の多様なシーケンシング方法を使用して実施され得る。例えば、プラットフォーム、例えばRoche 454、Illumina Solexa、AB-SOLiD、Helicos、Complete Genomics、Polonatorプラットフォームなどを使用した、高スループットシーケンシング方法も利用され得る。多様な光ベースのシーケンシング技術が、当技術分野において公知である(Landegren et al. (1998) Genome Res. 8:769-76;Kwok (2000) Pharmacogenomics 1:95-100;およびShi (2001) Clin. Chem. 47:164-172)。
【0092】
本明細書において開示されるのは、複数の単一細胞における遺伝子発現を解析するための方法であって、本明細書において記載される方法を使用してcDNAライブラリを調製する工程、およびcDNAライブラリをシーケンシングする工程を含む、方法である。「遺伝子」は、転写および翻訳された後に特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードすることが可能な少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含有するポリヌクレオチドを指す。本明細書において記載される任意のポリヌクレオチド配列は、それらが関連する遺伝子のより大きな断片または完全長コーディング配列を同定するために使用され得る。より大きな断片の配列を単離する方法は、当業者に公知である。
【0093】
DNAライブラリは、任意の好適なスクリーニング方法によってシーケンスされ得る。特に、DNAライブラリは、Applied BiosystemsのSOLiDシーケンシング技術またはIlluminaのGenome Analyzerなどの高スループットスクリーニング方法を使用してシーケンスされ得る。本発明の一局面では、DNAライブラリは、ショットガンシーケンスされ得る。リード数は、少なくとも10,000、少なくとも100万、少なくとも1,000万、少なくとも1億、または少なくとも10億であり得る。別の局面では、リード数は、10,000~100,000、またはあるいは100,000~100万、またはあるいは100万~1000万、またはあるいは1000万~1億、またはあるいは1億~10億であり得る。「リード」とは、シーケンシング反応によって得られる連続した核酸配列の長さである。
【0094】
本明細書において開示される方法によって生成されるDNAライブラリは、限定されるものではないが、DNAバリアントの検出、コピー数の解析、融合遺伝子の検出、および構造バリアントの検出に有用であり得る。いくつかの態様では、DNAライブラリは、次世代シーケンシング、DNAバリアントのプロファイリング、人物同定もしくは父子鑑定、疼痛もしくはADMEのファーマコゲノミクス、または遺伝性疾患の検出に使用され得る。
【実施例
【0095】
実施例1.ワークフロー
図1、2、または3に例証されている、抽出したDNAからシーケンシング可能状態のライブラリまでのワークフロー全体は、9時間で完了することができる。抽出したDNAを断片化し、ゲノム標的を分子的にバーコーディングし、濃縮して、ライブラリを構築する。クラウドベースのデータ解析パイプラインであるQIAseqパイプラインにシーケンシングファイルを取り込ませることができ、該パイプラインは、リードのフィルタリング、マッピング、およびアラインメントを行うのみならず、標的化ゲノム領域に関連する固有分子バーコードをカウントし、バーコード認識アルゴリズムを用いてバリアントをコールする。次いで、解釈のためにIVAまたはQCIにこのデータを取り込ませることができる。
【0096】
実施例2.アダプターおよびプライマー
わずか0.5ngほど、例えば0.5ng~100ngの単離DNAを酵素的に断片化し、dsDNAの小片を生成する。これに続いてライブラリを構築し、アダプター、分子バーコード、および試料インデックスをDNA断片に組み入れる。ライブラリ断片は、これより単一プライマー伸長を使用した標的濃縮用の鋳型としての機能を果たす。ユニバーサルフォワードプライマー(例えば、I5-Fフォワードプライマー)および単一の標的特異的プライマーを使用して、標的を濃縮する。最後に、ライブラリ増幅および試料インデックス付与(デュアルインデックス付与用)に、I5IPおよび17IP試料インデックスプライマーを使用する。アダプターおよびプライマーの配列の例を以下に提供する。
【0097】
アダプター(SEQ ID NO:1):
【0098】
I5-Fフォワードプライマー(SEQ ID NO:2):
【0099】
標的特異的プライマー(SEQ ID NO:3):
【0100】
I5IPインデックスプライマー(例として1つの試料インデックスを有する)(SEQ ID NO:4):
【0101】
I7IPインデックスプライマー(例として1つの試料インデックスを有する)(SEQ ID NO:5):
【0102】
「iデオキシU」は、内部デオキシウリジンを表す。
「*」は、ホスホロチオエート結合を表す。最後の塩基と最後から2番目の塩基との間に配置した場合、オリゴは潜在的なエキソヌクレアーゼ活性の影響を受けにくくなる。
「+」は、ロックド核酸(LNA)を表す。LNAは、リボースモイエティが2’酸素と4’炭素とを接続する追加のブリッジで修飾されており、オリゴ結合のTmを上昇させるために使用される、修飾RNAヌクレオチドである。
「I5」および「I7」は、Illuminaアダプターを表す。
【0103】
実施例3.ライゲーション
ライブラリ構築の自動化は、高スループットの実験にとって不可欠である。事実上全てのライブラリプロトコルにはアダプターのライゲーションが必要とされ、高効率のアダプターライゲーションには高レベルのPEG(極めて高粘性)が必要とされる。微量のPEGの使用が可能になる新たな反応緩衝液により、より簡素な自動化が推進される。
【0104】
NGSライブラリの構築中、高効率のアダプターライゲーションが不可欠であり、これは通常、ライゲーション反応中に大量のPEG(10%以上)を使用することにより達成される。これにより、ライゲーション反応は極めて高粘性となり、手動と自動の両方での取扱いが困難になる。緩衝液pHを通常の7.6から8以上に上昇させることによって、新規ライゲーション緩衝液を開発する。この高pHライゲーション緩衝液は、より多いPEG量でのライゲーションと比較して、比較的少ないPEG(6%)でも同様のライゲーション効率を達成することができた。加えて、高pH緩衝液は、5倍のpH7.6緩衝液と比較して2.5倍で作られた。これによりライゲーション緩衝液自体の粘度が減少する。
【0105】
高pHライゲーション緩衝液の初期試験を、現行のQIAseq Targeted DNAパネルワークフロー(V3)で行った。ライゲーション中に最終的にPEGを6%含むpH8.5のライゲーション緩衝液を、最終的にPEGを13.2%含むpH7.6の緩衝液と比較し、pH7.6緩衝液を用いたライゲーション反応に、反応中のPEGが最終的に13.2%に達するように追加のPEGを加えた。QIAseq Targeted DNAパネルワークフローのハンドブックに従って、反応中のpHおよび最終PEG濃度が異なる2つのライゲーション緩衝液を用いて、40ngのNA12878 DNAをライブラリの構築に使用した。アダプターライゲーション後、小型および中型サイズのDNAパネルを使用して標的濃縮を行った。小型パネルは、348個のプライマーを備えたQIAseq Targeted DNA BRCA Plusパネルであり、一方、中型パネルは5887個のプライマーの骨髄性白血病パネルであった。最終ライブラリを、小型パネルについてはMiseqで、中型パネルについてはNextSeqでシーケンスし、回収したUMI数を使用して2つの緩衝液間のライゲーション効率にアクセスした。結果から、反応中にPEGを6%含むpH8.5のライゲーション緩衝液は、PEGを13.2%含むpH7.6のライゲーション緩衝液と比較して、同様のまたはわずかに少ないUMIを有しており(図4)、反応中にPEGが少ない高pHライゲーション緩衝液が、反応中にPEGがより多い通常pHのライゲーション緩衝液と同様のライゲーション効率を達成し得ることが示唆された。
【0106】
この高pHライゲーション緩衝液を、V4 DNAパネルワークフローにおいて、両方とも最終ライゲーション反応中に6%のPEGを有する、pH8.0ライゲーション緩衝液とpH7.6ライゲーション緩衝液とを比較することによりさらに評価した。10ngのNA12878 DNAを入力DNAとして使用し、480個のプライマーを備えたカスタムV4パネルを標的濃縮PCRに使用した。シーケンシング後、UMI数によってライゲーション効率を確認した。高pHのライゲーション緩衝液は、低pHの緩衝液と比較してはるかに多くのUMIを有しており、高pHライゲーション緩衝液がV4 DNAパネルワークフローにおいても使用され得ることが示唆される(図5)。
【0107】
ライゲーション緩衝液の配合を、以下の表AおよびBに提供する。
【0108】
(表A)通常のpH7.6の5倍ライゲーション緩衝液
【0109】
(表B)pH8.0または8.5の2.5倍ライゲーション緩衝液
【0110】
実施例4.高速サイクリング
さらなる時間の節約を可能にするために(大半のライブラリプロトコルの欠点は構築時間が長いことである)、はるかに高速なサイクリングのAbホットスタートtaqを使用する。課題は、複雑性の高いライブラリの構築が、ライブラリ増幅に使用する酵素および条件に極端に依存することである。V3化学の初期最適化には数ヶ月を要した。ここでは、この不可欠な工程を、同等の性能を提供し、サイクルを高速にすることができ、プライマーおよびアダプターに必要とされるdU修飾を許容することができる工程に置き換えた。この改善の成功により、ライブラリ調製の時間が何時間も節約された。
【0111】
標的濃縮PCRとユニバーサルPCRの両方において、より高速なサイクリングのAbホットスタートtaqを使用して、現行のV3 PCR反応と比較してはるかに迅速なサイクリングを可能にした。
【0112】
ワークフロー時間をさらに減少させるために、AbホットスタートTaqを最終ユニバーサルPCRにおいても試験した。化学的hotstar Taqを用いた、各サイクルにおいて62Cで2分間のアニール/伸長、またはAbホットスタートTaqを用いた、62℃で1分もしくは30秒間のアニール/伸長のいずれかで、ユニバーサルPCRを実行した。特異性および均一性に関する一般的なパネル性能は、これらの条件間で類似しているように見えた(図6)。よって、AbホットスタートTaqを30秒のアニール/伸長によるユニバーサルPCRに使用することができ、これにより、ユニバーサルPCR時間が以前の約1.5時間から45分に減少した。
【0113】
実施例5.ビーズクリーンアップ
NGSライブラリ構築の工程間におけるSPRIビーズを使用したビーズクリーンアップは、2つの機能:下流の工程にも干渉し、かつ(UMI含有アダプターの場合は)ライブラリクローンの再バーコーディングを引き起こしUMIを本質的に無用にもする、組み入れられていないプライマーおよびアダプターの除去;ならびにライブラリのサイズ選択、を果たす。
【0114】
ライブラリをビーズに結合させるときにPEG濃度を操作することにより、所望のものよりも短いDNA(例えば、プライマー二量体もしくは非常に小さいライブラリ断片)または長いDNA(機能的ライブラリ分子に効果的に寄与しない可能性がある)のいずれかを選択的に消失させることが可能になる。
【0115】
ビーズクリーンアップは問題をはらんでいる。第1に、ライゲーション後の一次試料のビーズクリーンアップは、固有のオリジナル分子の不可避な消失を引き起こし、ライブラリの複雑性を低減させる。第2に、ビーズクリーンアップは、たとえ自動化されていても、ユーザの手による試料間の変動に起因して、収量の変動性、プライマー二量体の存在、および他の望ましくない配列によるコンタミネーションの主要因である。多くの場合、最終的なシーケンシング指標を調査し、ビーズ取扱い技法の相違に基づいて、どの技術者がライブラリを作ったかを把握することが可能である。本発明により、最終の形式的なビーズクリーンアップ以外の置き換えるべき全てのビーズクリーンアップを、簡素で信頼性の高い酵素反応に置き換えることが可能になる。その結果、収量が増加し、ライブラリの再現性が高くなり、自動化が容易になり、かつ相当な時間が節約される。
【0116】
実施例6.プロトコル
開始前の重要な点。このプロトコルは、「標準DNA」(すなわち、細胞または組織)、FFPE DNA、およびcfDNAからIlluminaシーケンサー用のライブラリを調製するために必要とされる、全ての手順を網羅している。反応を設定する前に、入力DNAの量を正確に決定することが不可欠である(標準DNAまたはcfDNAの場合は10~80ng;QIAseq QuantiMIZEキットを使用した場合は、最大250ngのFFPE DNAを使用することができる。FFPE DNAの濃度を決定するために代替方法を使用した場合は、最大100ngのDNAを使用することができる)。入力量を低下させることも可能ではある;しかしながら、これによりシーケンスされるUMIが少なくなり、バリアント検出感度が低減する。ある特定のバリアント検出レベルに達するには、DNA入力量とシーケンス深度の両方が必要とされる(表1)。QIAseq Beadsを最終の反応クリーンアップに使用する。重要:新鮮な80%エタノールを毎日調製すること。反応およびクリーンアップ手順は、PCRチューブまたは96ウェルプレートのいずれかで実施することができる。ライブラリ調製が完了したら、QIAseq Library Quant Systemをライブラリ定量に使用することができる。
【0117】
(表1)バリアント検出用の推奨される新鮮DNA入力量およびシーケンス深度*
*バリアント検出は、QIAseq Targeted DNA Pro Panelの領域全体に対する90%の感度に基づく。
【0118】
FFPE DNAの修復。
FFPE DNAの場合、「断片化、末端修復、およびA付加」を行う前に、まず修復反応を設定する。標準DNAおよびcfDNAの場合、「断片化、末端修復、およびA付加」工程に直接進む。
【0119】
氷上で、表2に従ってFFPE DNA修復反応ミックスを調製する。短時間遠心分離し、7~8回上下にピペッティングすることにより混合して、再度短時間遠心分離する。注:一般に、FFPE DNAの入力量を増加させると、バリアント検出感度が改善する。重要:反応設定の全体を通して、反応チューブ/プレートを氷上で維持すること。
【0120】
(表2)FFPE DNA修復用反応ミックス
*QIAseq QuantiMIZEキットを使用した場合は、最大250ngのFFPE DNAを使用し、または代替方法を使用した場合は、最大100ngのFFPE DNAを使用する。
【0121】
表3に従ってサーマルサイクラーをプログラムする。機器の加熱蓋を使用する。チューブ/プレートをサーマルサイクラーに加える前に、プログラムを開始する。サーマルサイクラーが4℃に達したら、プログラムを一時停止する。予冷したサーマルサイクラーに工程2で調製したチューブ/プレートを移し、サイクリングプログラムを再開する。
【0122】
(表3)FFPE DNA修復反応のサイクリング条件
【0123】
反応終了後、試料を氷上に配置し、以下の「断片化、末端修復、およびA付加」を直ちに進める。
【0124】
断片化、末端修復、およびA付加。
氷上で、表4に従って断片化、末端修復、およびA付加ミックスを調製する。短時間遠心分離し、少なくとも10~12回上下にピペッティングすることにより混合して、再度短時間遠心分離する。注:一般に、DNAの入力量を増加させると、バリアント検出感度が改善する。重要:反応設定の全体を通して、反応チューブ/プレートを氷上で維持すること。
【0125】
(表4)断片化、末端修復、およびA付加用反応ミックス
*標準DNAまたはcfDNAの場合は10~80ng。QIAseq QuantiMIZEキットを使用した場合は、最大250ngのFFPE DNAを使用し、または代替方法を使用した場合は、最大100ngのFFPE DNAを使用する。
【0126】
表5に従ってサーマルサイクラーをプログラムする。機器の加熱蓋を使用する。チューブ/プレートをサーマルサイクラーに加える前に、プログラムを開始する。サーマルサイクラーが4℃に達したら、プログラムを一時停止する。重要:サーマルサイクラーは予冷し、4℃で一時停止しなければならない。予冷したサーマルサイクラーに工程7で調製したチューブ/プレートを移し、サイクリングプログラムを再開する。
【0127】
(表5)断片化、末端修復、およびA付加のサイクリング条件
【0128】
完了したら、サーマルサイクラーを4℃に戻す。試料を氷上に配置し、以下の「アダプターライゲーション」を直ちに進める。
【0129】
アダプターライゲーション。
表6に従ってアダプターライゲーションミックスを調製する。短時間遠心分離し、10~12回上下にピペッティングすることにより混合して、再度短時間遠心分離する。重要:アダプターは試料インデックスを含有しておらず、全ての試料に1つの単一アダプターを使用すること。
【0130】
(表6)アダプターライゲーション用反応ミックス
【0131】
表7に従ってサーマルサイクラーをプログラムする。重要:20℃の段階の間、加熱蓋を使用しないこと。チューブ/プレートをサーマルサイクラーに加える前に、プログラムを開始する。サーマルサイクラーが4℃に達したら、プログラムを一時停止する。予冷したサーマルサイクラーに工程13で調製したチューブ/プレートを移し、サイクリングプログラムを再開する。
【0132】
(表7)ライゲーションのサイクリング条件
【0133】
完了したら、反応物を氷上に配置し、「ライゲーションクリーンアップ反応」を進める。あるいは、試料を恒温冷凍庫内にて-20℃で最大3日間保存してもよい。
【0134】
ライゲーションクリーンアップ反応。
ライゲーション後、試料を氷に移し、各試料に2μlのライゲーションクリーンアップ試薬を加える。短時間遠心分離し、7~8回上下にピペッティングすることにより混合して、再度短時間遠心分離する。表8に従ってサーマルサイクラーをプログラムする。機器の加熱蓋を使用する。チューブ/プレートをサーマルサイクラーに加える前に、プログラムを開始する。サーマルサイクラーが4℃に達したら、プログラムを一時停止する。重要:サーマルサイクラーは予冷し、4℃で一時停止しなければならない。予冷したサーマルサイクラーに工程18で調製したチューブ/プレートを移し、サイクリングプログラムを再開する。
【0135】
(表8)ライゲーションクリーンアップ反応のサイクリング条件
【0136】
完了したら、サーマルサイクラーを4℃に戻す。試料を氷上に配置し、以下の「標的濃縮」を直ちに進める。
【0137】
標的濃縮TEPCR反応。
表9に従って標的濃縮ミックスを調製する。短時間遠心分離し、7~8回上下にピペッティングすることにより混合して、再度短時間遠心分離する。
【0138】
(表9)標的濃縮用反応ミックス
【0139】
表10(チューブあたりのプライマーが<12,000個のパネル)または表11(チューブあたりのプライマーが≧12,000個のパネル)のサイクリング条件を使用して、サーマルサイクラーをプログラムする。
【0140】
(表10)プライマー数が<12,000個/チューブの場合の標的濃縮のサイクリング条件
【0141】
(表11)プライマー数が≧12,000個/チューブの場合の標的濃縮のサイクリング条件
【0142】
標的濃縮反応物をサーマルサイクラー内に配置し、ランを開始する。反応完了後、反応物を氷上に配置し、以下の「TEPCRクリーンアップ反応」を進める。あるいは、試料を恒温冷凍庫内にて-20℃で最大3日間保存してもよい。
【0143】
TEPCRクリーンアップ反応。
TEPCR後、試料を氷に移し、各TEPCR反応物をピペッティングにより混合し、各試料から20μlを新たなPCRチューブに移す。注:残りのTEPCR反応物は必要に応じて-20℃で保存してもよい。表12に従ってTEPCRクリーンアップミックスを調製する。短時間遠心分離し、7~8回上下にピペッティングすることにより混合して、再度短時間遠心分離する。
【0144】
(表12)TEPCRクリーンアップ用反応ミックス
【0145】
表13に従ってサーマルサイクラーをプログラムする。機器の加熱蓋を使用する。チューブ/プレートをサーマルサイクラーに加える前に、プログラムを開始する。サーマルサイクラーが4℃に達したら、プログラムを一時停止する。重要:サーマルサイクラーは予冷し、4℃で一時停止しなければならない。予冷したサーマルサイクラーに工程29で調製したチューブ/プレートを移し、サイクリングプログラムを再開する。
【0146】
(表13)TEPCRクリーンアップ反応のサイクリング条件
【0147】
完了したら、サーマルサイクラーを4℃に戻す。試料を氷上に配置し、以下の「ユニバーサルPCR」を直ちに進める。
【0148】
ユニバーサルPCR。
表14に従って、TEPCRクリーンアップ反応からのクリーンにした標的濃縮DNA中でユニバーサルPCRを調製する。短時間遠心分離し、7~8回上下にピペッティングすることにより混合して、再度短時間遠心分離する。QIAseq Targeted DNA Pro UDIプレートの場合、使用する各ウェルに付随するホイルシールに穴を開け、表14に従って、「TEPCRクリーンアップ反応」試料チューブ/プレートからのクリーンにした標的濃縮DNAに5μlを移す(各ウェルは、各々が固有のインデックスを備えたフォワードプライマーおよびリバースプライマーを含有する)。重要:ユニバーサルPCR反応ごとに1つのUDI対のみを使用すべきである。重要:QIAseq Targeted DNA Pro UDIインデックスプレートは、最大10回の凍結融解サイクルで安定である。一度に96ウェル全てを使用しなかった場合、使用済みのウェルをホイルで覆い、冷凍庫に戻す。QIAseq Targeted DNA Pro UDIインデックスプレートのウェルは、ホイルシールに穴を開けたら再使用しないこと。このことは、重大なクロスコンタミネーションのリスクをもたらす。
【0149】
(表14)QIAseq Targeted DNA Pro UDI(12)またはQIAseq Targeted DNA Pro UDI Set A、B、C、およびD(96)を使用する場合のユニバーサルPCRの反応成分。
*QIAseq Targeted DNA Pro UDI(12)またはQIAseq Targeted DNA Pro UDI Set A、B、C、およびD(96)に適用する。
【0150】
QIAseq Targeted DNA Pro UDI(12)ならびにQIAseq Targeted DNA Pro UDI Set A、B、C、およびD(96)におけるInP-IL5-QUDI-##およびInP-IL7-QUDI-##インデックスプライマープレートのレイアウトでは、各ウェルは、ユニバーサルPCR工程において、予め分注した一対の試料インデックスプライマーに加えて、単一の反応用のユニバーサルプライマーを含有している。
【0151】
表15(サイクリングプログラム)および表16(サイクル数)のサイクリング条件を使用して、サーマルサイクラーをプログラムする。
【0152】
(表15)ユニバーサルPCRのサイクリング条件
【0153】
(表16)ユニバーサルPCRの増幅サイクル
【0154】
反応完了後、反応物を氷上に配置し、次の工程「ユニバーサルPCRのクリーンアップ」に進む。あるいは、試料を恒温冷凍庫内にて-20℃で最大3日間保存してもよい。
【0155】
ユニバーサルPCRのクリーンアップ。
完成したユニバーサルPCR反応物に80μlのQIAseq Beadsを加え、数回上下にピペッティングすることにより十分に混合する。室温で5分間インキュベートする。チューブ/プレートを磁気ラックに5分間配置し、ビーズを上清から分離させる。溶液が透明になったら、チューブ/プレートを磁気スタンドに置いたまま、上清を慎重に除去して廃棄する。重要:ビーズは対象となるDNAを含有しているため、廃棄しないこと。チューブ/プレートを磁気スタンドに置いたまま、ビーズに100μlのH2Oを加え、次いで80μlのQIAseqビーズ結合緩衝液を加える。チューブ/プレートを磁気スタンドから取り外し、数回上下にピペッティングすることにより十分に混合する。チューブ/プレートを磁気ラックに5分間戻す。溶液が透明になったら、チューブ/プレートを磁気スタンドに置いたまま、上清を慎重に除去して廃棄する。重要:ビーズは対象となるDNAを含有しているため、廃棄しないこと。チューブ/プレートを磁気スタンドに置いたまま、200μlの80%エタノールを加えてビーズを洗浄する。洗浄液を慎重に除去して廃棄する。エタノール洗浄を繰り返す。重要:この2回目の洗浄後、エタノール洗浄の痕跡を全て完全に除去すること。まず200μlピペットでエタノールを除去し、次いで10μlピペットを使用していかなる残留エタノールも除去する。チューブ/プレートを磁気スタンドに置いたまま、室温で10分間風乾させる。注:ペレットが完全に乾燥していることを目視検査すること。チューブ/プレートを磁気スタンドから取り出し、30μlのヌクレアーゼフリー水を加えることによりビーズからDNAを溶出させる。ピペッティングにより十分に混合する。溶液が透明になるまでチューブ/プレートを磁気ラックに戻す。28μlの上清を清潔なチューブまたはプレートに移す。ライブラリは、QIAseq Library Quant Systemを使用して定量する前に、-20℃の冷凍庫内で保存してもよい。増幅させたライブラリは、-20℃で数ヶ月間安定である。定量を実施したらシーケンシングに進む。
【0156】
Agilent 2100 Bioanalyzerを使用してライブラリを解析する
ライブラリを構築し、精製した後、Bioanalyzerを使用して、High Sensitivity DNA Kitを用いて断片のサイズおよび濃度を確認することができる。Illumina機器用に調製したライブラリは、200~1000bpのサイズ分布を示す(図7A)。ライブラリの過剰増幅は平均的であり(図7B)、これはシーケンシング結果に影響を及ぼさないはずである。過剰増幅されたライブラリは通常、正しいサイズの一本鎖ライブラリであるが、二次構造に起因して「より大きな断片」として現れる。適切なピーク下にあるDNAの量を使用して、ライブラリを定量することができる。しかしながら、qPCRの優れた感度および幅広い範囲に起因して、本発明者らは、とりわけ過剰増幅されたライブラリがある場合、QIAseq Library Quant Systemを使用してライブラリを定量することを推奨する。図7Aは、Illumina機器用に調製したライブラリ(過剰増幅なし)を示す。図7Bは、Illumina機器用に調製したライブラリ(過剰増幅あり)を示す。
【0157】
具体的な態様に関する前述の説明は、本発明の一般的な性質を十分に明らかにするものであるので、他者は、本発明の一般的概念から逸脱することなく、当技術分野の技能範囲内の知識を適用することにより、種々の用途に向けて容易に修正する、かつ/または適応させることができる。よって、かかる適応および修正は、本明細書において提示された教示および指針に基づいて、開示された態様の等価物の意味および範囲内にあることが意図されている。本明細書において、術語または専門用語は、説明の目的のためのものであり、限定の目的のためのものではなく、そのため本明細書の専門用語または術語は、教示および指針に照らして当業者によって解釈されるべきであることを理解されたい。
【0158】
本発明の広さおよび範囲は、上述の例示的な態様のいずれかによって限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物に従ってのみ定義されるべきである。
【0159】
本明細書において記載される全ての種々の局面、態様、および選択肢は、ありとあらゆるバリエーションで組み合わせられ得る。
【0160】
本明細書において言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照により本明細書に組み入れられることが具体的かつ個々に示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2024538122000001.app
【国際調査報告】