(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】コンクリート用途のためのカーボンナノチューブハイブリッド材料
(51)【国際特許分類】
C04B 14/38 20060101AFI20241010BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20241010BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20241010BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20241010BHJP
C01B 32/164 20170101ALI20241010BHJP
B01J 23/85 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C04B14/38 A
C04B18/08 Z
C04B22/06 Z
C04B28/02
C01B32/164
B01J23/85 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522476
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 US2022046408
(87)【国際公開番号】W WO2023064360
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521282217
【氏名又は名称】キャズム アドバンスト マテリアルズ,インク.
【氏名又は名称原語表記】CHASM ADVANCED MATERIALS,INC.
【住所又は居所原語表記】480 Neponset Street,Suite 6,Canton,MA United States
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】プラダ シルヴィ,リカルド エー.
(72)【発明者】
【氏名】アーサー,デイヴィッド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ラゲシェッティ,サティシュ クマール
(72)【発明者】
【氏名】ハリクマール,ハリクマ ケイ.
【テーマコード(参考)】
4G112
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G112MA00
4G112PA20
4G112PA27
4G112PB03
4G112PC12
4G146AA11
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4G146BC42
4G146BC43
4G146BC44
4G146CB10
4G146DA03
4G146DA12
4G146DA26
4G146DA27
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4G146DA46
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA06B
4G169BA16B
4G169BA20B
4G169BB02B
4G169BC59B
4G169BC66B
4G169BC67B
4G169CB81
(57)【要約】
カーボンナノチューブ(CNT)ハイブリッド材料であって、金属担体、半金属担体、金属酸化物担体または炭素担体の少なくとも1つに担持された触媒と、セメント質材料、セメント質材料の生産に使用される材料、およびセメント質材料を強化するために使用される材料から成る材料の群から選択される少なくとも1種の材料とを含むブレンドと、ブレンド上のCNTとを含む、カーボンナノチューブ(CNT)ハイブリッド材料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ(CNT)ハイブリッド材料であって、
金属担体、半金属担体、金属酸化物担体または炭素担体の少なくとも1つに担持された触媒と、セメント質材料、セメント質材料の生産に使用される材料、およびセメント質材料を強化するために使用される材料から成る材料の群から選択される少なくとも1種の材料とを含むブレンドと、
ブレンド上のCNTとを含む、カーボンナノチューブ(CNT)ハイブリッド材料。
【請求項2】
セメント質材料は、水硬セメントを含む、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
水硬セメントは、ポートランドセメントを含む、請求項2に記載の材料。
【請求項4】
セメント質材料は、補助セメント質材料(SCM)を含む、請求項1に記載の材料。
【請求項5】
SCMは、フライアッシュを含む、請求項4に記載の材料。
【請求項6】
触媒は、ナノアルミナ粒子に担持される、請求項1に記載の材料。
【請求項7】
CNTは、ロータリキルン反応器内でブレンドの少なくとも一部上で成長する、請求項1に記載の材料。
【請求項8】
担持触媒とセメント質材料とがブレンドされ、その後、反応器内に供給され、そこでCNTがこのブレンド上で成長する、請求項7に記載の材料。
【請求項9】
担持触媒が反応器内に供給され、そこでCNTが担持触媒上で成長してハイブリッド材料を作成し、その後、ハイブリッド材料がセメント質材料にブレンドされる、請求項7に記載の材料。
【請求項10】
ハイブリッド材料は、セメント質材料と、粉末形態でのこれら2つの機械的混合によってブレンドされる、請求項9に記載の材料。
【請求項11】
ハイブリッド材料は、セメント質材料と、水溶液中でハイブリッド材料の分散液を調製し、その後分散液をセメント質材料と混合することによってブレンドされる、請求項9に記載の材料。
【請求項12】
カーボンナノチューブ(CNT)ハイブリッド材料であって、
酸化鉄と他の金属酸化物とを含むフライアッシュ材料と、
フライアッシュ上のCNTとを含む、カーボンナノチューブ(CNT)ハイブリッド材料。
【請求項13】
CNTは、ロータリキルン反応器内でフライアッシュ上で成長する、請求項12に記載の材料。
【請求項14】
カーボンナノチューブ(CNT)ハイブリッド材料であって、
アルミナに担持された触媒と、
アルミナ上の触媒部位で成長するCNTとを含み、CNTは1000超のアスペクト比を有する、カーボンナノチューブ(CNT)ハイブリッド材料。
【請求項15】
CNT成長の前に、アルミナは、粒径が約1ミクロン未満である基本アルミナ粒子の凝集体を含む、請求項14に記載の材料。
【請求項16】
CNTは、CNTハイブリッド材料内の基本アルミナ粒子の脱凝集を引き起こす、請求項15に記載の材料。
【請求項17】
ナノアルミナ粒子は、直径が70ミクロン未満である、請求項14に記載の材料。
【請求項18】
アルミナに担持される触媒活性金属は、1重量%未満である、請求項14に記載の材料。
【請求項19】
CNTは、ロータリキルン反応器内でアルミナ粒子上で成長する、請求項14に記載の材料。
【請求項20】
担持触媒が反応器内に供給され、そこでCNTが担持触媒上で成長してハイブリッド材料を作成し、その後ハイブリッド材料が、セメント質材料、セメント質材料の生産に使用される材料、およびセメント質材料を強化するために使用される材料から成る材料の群から選択される第2の材料とブレンドされる、請求項19に記載の材料。
【請求項21】
ハイブリッド材料は、第2の材料と、粉末形態でのそれら2つの機械的混合によってブレンドされる、請求項20に記載の材料。
【請求項22】
ハイブリッド材料は、第2の材料と、水溶液中でハイブリッド材料の分散液を調製し、その後分散液を第2の材料と混合することによってブレンドされる、請求項20に記載の材料。
【請求項23】
カーボンブラックをさらに含む、請求項14に記載の材料。
【請求項24】
カーボンブラックは、CNTが成長する前に、担持触媒と混合される、請求項23に記載の材料。
【請求項25】
カーボンブラックは、担持触媒の約10重量%~約50重量%のレベルで存在する、請求項24に記載の材料。
【請求項26】
ハイブリッド材料とカーボンブラックとの水性分散液を含む、請求項24に記載の材料。
【請求項27】
水性分散液は、セメント質材料と混合される、請求項26に記載の材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月13日付提出の米国特許仮出願第63/255,067号に対する優先権を主張するものであり、その開示全体があらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
背景
本開示はカーボンナノチューブハイブリッド材料に関する。
【背景技術】
【0003】
コンクリート業界は、建設業界の他の業界と同様に、現在、生産過程で発生するCO2排出量の大幅な削減を求める環境圧力と、より強く、より薄く、より軽い構造部材を低コストで製造するために建設資材の性能効率および耐久性を向上させる経済圧力とによって大きな技術的課題に直面している。これらの技術的、環境的および経済的要求は、その製造コストに、結果として市場におけるその価格に大きな影響を与える。2020年のコンクリートの世界生産は約41億トンであり、これは、セメント製造工程(15.6億メートルトン)、燃料および電力の消費(11.6億メートルトン)および輸送(0.17メートルトン)時に生成されるCO2排出量を考慮した世界のCO2排出量(合計約364億メートルトン)の約8.0%に相当する。世界のいくつかの地域(たとえば、アジアおよび中東)における加速的な経済および人口成長のために、将来の世界のコンクリート生産能力は、2030年までに50億メートルトン増加すると予測されており、現在、中国が主要な世界的なコンクリート生産国(世界的生産量の約53%)となっている。
【0004】
コンクリートの持続可能性を向上させ、さらには環境に優しいまたは環境保護コンクリートを開発するために、様々な戦略がとられてきている。これらの戦略は、コンクリートにリサイクルされた材料および廃棄物(工業、農業、家庭)を組み込むこと、その混合設計を最適化すること、ポートランドセメント含有量を減少させることによってCO2排出量を減少させること、ポートランドセメントを部分的にセメント系材料およびバインダ(たとえば、ナノアルミナ粒子、フライアッシュ、シリカヒューム、高炉スラグ)で置換すること、強化材料(たとえば、炭素繊維(CF)、カーボンナノチューブ(CNT)、鋼繊維)を用いてコンクリートの耐久性を向上させてその寿命を延ばすこと、長期間の資源消費を低減すること、および環境に配慮した施工法を選択することを含む。ナノAl2O3粒子がセメントモルタルの弾性率を増加させるのに有効であり得ることが観察されている。5wt.%のナノAl2O3(~150nmの粒径)によって、弾性率は28日の養生期間で143%増加した。セメント水和中、ナノアルミナ粒子が、砂-ペースト界面の細孔を埋めるのに利用でき、気孔率の少ない緻密な界面遷移領域(ITZ)を形成した。ITZの効果的な緻密化は、モルタルの弾性率の有意な増加に関与している。
【0005】
セメント質マトリックスを炭素ナノ材料で強化することは、上記目標を達成するための実行可能な代替手段を提供可能である。カーボンナノチューブ(CNT)は、その機械的特性(1TPaのヤング率、>60GPaの個々のチューブの引張強度、および12%を超える破壊変形)、低密度、独特の物理的および化学的特性、熱伝導率および電気伝導率、ならびに圧電応答のために、セメント質マトリックスのための強化材料として注目されている。これらの特性は、CNTをセメント系スマート材料における強化として適切な候補にしてきた。
【0006】
ナノ複合材料(すなわちCNT強化セメント系材料)へのCNTの強化能力は、多くの因子に依存し、とりわけ、CNT固有の構造および表面特性、単層CNT(SWCNT)、数層CNT(FWCNT)または多層CNT(MWCNT)か、その最終アスペクト比(たとえば、ナノチューブが分解処理の結果として短くされたかどうか)、マトリックスへのCNT分散の品質、CNT含有量レベル、マトリックスの組成および構造、ならびにCNTとマトリックスとの間の界面結合状態などに依存する。MWCNTの長さ(短いものと長いもの)の影響、MWCNTに対する界面活性剤の重量比が一定の場合のナノ複合材料の破壊特性、および0.08wt.%の長尺MWCNTで強化されたナノ複合材料の破壊特性に対する界面活性剤濃度の影響が研究されてきた。破壊力学試験結果は、セメントマトリックスの曲げ強度およびヤング率が、CNTのない同様の材料と比較して、少量のMWCNTの使用(0.048wt.%および0.08wt.%)を通して有意に増加し、ナノ複合材料が少なくとも15%、最大で約55%のヤング率の増加と、少なくとも8%、最大で約40%の曲げ強度の増加とを示すことを示している。28日曲げ強度の45%を超える増加は、未修飾の対照と比較して、0.08wt.%のMWCNT添加で実現される。特に、高濃度の短尺MWCNTは、効果的な強化を達成するために要求され、低量の長尺MWCNTは、同レベルの機械的性能を達成するために必要とされる。
【0007】
様々な濃度のMWCNTならびに様々な濃度および組み合わせの界面活性剤を有するナノ複合材料も研究されてきている。これらの研究によって、0.5wt.%のMWCNTを有するナノ複合材料の破壊靭性および臨界開口変位は、プレーンセメントペーストに対して、それぞれ175%および55%だけ強化可能であることが分かった。また、研究者はセメント-フライアッシュ(セメントの20重量%)系内にCNTを0.5および1重量%添加することによって、CNT強化フライアッシュセメントペーストを調製して、CNTの使用が、より高い圧縮強度のナノ複合材料をもたらすことが分かった。得られた最も高い強度は、1wt.%のCNTにおいて、28日圧縮強度が54.7MPa(ポートランドセメントペーストと比較して相対強度においてほぼ100%の増加である)であることが分かった。0.5%のカルボキシル官能化MWCNTの使用によって、プレーンセメントペーストと比較して、破壊靭性および臨界開口変位において、それぞれ149%および35%の強化が実現された。炭素繊維(CF)強化セメント系材料とCNT強化セメント系材料との機械的性能の比較によって、CNT強化セメント系材料の曲げ強度および圧縮強度は、CF強化セメント系材料よりも、それぞれ30%および100%大きいことが証明された(表1)。
【0008】
CNTは、ダイヤモンドの少なくとも2倍の熱伝導率を有することが示された。CNTの負の熱膨張係数は、より高い熱安定性をもたらす。したがって、CNTはセメント系材料の熱安定性を向上させることが期待される。CF強化セメント系材料とCNT強化セメント材料との熱性能の比較において、CNT強化セメント系材料の熱伝導率が、炭素繊維(CF)強化セメント系材料および非強化セメント系材料よりも、それぞれ少なくとも35%および85%大きい(典型的には0.5~0.8W/mK)ことが観察された(表1)。
【0009】
【0010】
セメント/CNTハイブリッドとフライアッシュ/CNTハイブリッドは、セメントまたはフライアッシュ内にCNT/CF触媒として自然に存在する鉄イオンを利用して調製された。これらのハイブリッドは、CNT/CF強化セメントペーストを製造するために使用されてきた。該材料は、プレーンセメントペーストと比較して、圧縮強度が2倍も増加していることを示している。34%の引張強度の増加は、0.3wt.%のCNTを含有するセメント/CNTハイブリッドを用いて実現された。
【0011】
セメント系材料は、外部負荷が印加される前でさえ、材料内および界面の両方に欠陥およびミクロ亀裂を有する場合がある。これらの欠陥およびミクロ亀裂は、過剰な水、ブリーディング、プラスチック沈下、熱ひずみおよび収縮ひずみ、ならびに外部拘束によって課せられた応力集中から生じる。印加された荷重の下では、分布していたミクロ亀裂が伝播し、合体し、整列してマクロ亀裂を生じ、時にはコンクリート構造物の急に引き起こされる壊滅的破壊につながる。疲労荷重の下では、セメント系材料は容易にひび割れ、亀裂が有害物質の容易なアクセスルートをもたらす。
【0012】
亀裂構造を監視し、亀裂がさらに伝播するのを防ぎ、重要な構造物の適時の補修、安全性および長期的な耐久性を確保することが強く求められてきている。構造上または構造内への外部センサ(たとえば、抵抗ひずみゲージ、光学センサ、圧電セラミック、形状記憶合金および繊維強化ポリマーバー)の取り付けまたは埋め込みなどの非破壊評価が、その需要に応えるために多くの方法で使用されてきたが、これらのセンサは、低い耐久性、低感度、高コスト、低い残存率および/または構造との好ましくない適合性(すなわち構造の機械的特性の損失)を含む複数の欠点を有している。構造材料それ自体が検知能力を有する(すなわち、構造材料が多機能または高性能である)ことが求められる。
【0013】
自己検出(ピエゾ抵抗)セメント系材料は、導電性フィラーによって強化されて、良好な機械的特性を維持したまま、それ自体によって応力、ひずみまたは亀裂を検出する能力を増加させる。導電性フィラーは、繊維状フィラーおよび粒子状フィラーとして分類可能である。適切な繊維状フィラーとしては、短尺炭素繊維(CF)、表面改質CF、鋼繊維、炭素被覆ナイロン繊維などが挙げられ、有効な粒子状フィラーとしては、カーボンブラック、鋼繊維、ニッケル粉末などが挙げられる。ピエゾ抵抗セメント系材料は変形するまたは応力を受けるので、フィラーとマトリックスとの間の接触状態が変化し、セメント系材料の電気抵抗に影響を及ぼす。したがって、ひずみ、応力、亀裂および損傷が電気抵抗の測定によって検出可能である。自己検出するセメント系材料は、コンクリート構造物の状態の構造健全性監視および評価の分野で潜在力があるだけでなく、道路交通制御、国境警備、構造振動制御などのために使用することができる。加熱能力を備えた帯電コンクリートは、より効果的な輻射床暖房も可能にし、道路および歩道の凍結を防ぐ。
【0014】
商業的に実行可能で、実用的で、安全かつ経済的な、効果的な方法で建設資材にカーボンナノチューブを分散させることは、現在大きな技術的課題となっている。カーボンナノチューブは、その高い疎水性のために水溶液分散液および有機溶液分散液中で束またはロープを形成する傾向があり、これは、材料がセメント質マトリックス材料に効率的に分散して一体化することができないことを意味する。セメントは、広い粒径分布を有する粒径約1~30μmの粒子から成る。科学文献の一部の研究は、CNTの化学的分散技術および機械的分散技術の組み合わせを採用してきた。超音波処理法と組み合わせた界面活性剤は、CNTと減水添加物との分散を促進してCNT-セメント混合物の流動性を変更するために成功裏に採用されてきた。しかしながら、超音波処理技術および高剪断混合技術は、商業的に拡張可能ではなく、CNT構造に過剰な損傷を生じさせる可能性があり、機械的強度、電気伝導率特性および熱伝導率特性ならびに圧電応答を向上させる際にそれらの効率を減少させる。コンクリートマトリックス中の非常に低いCNT充填量で浸透限界に達するには、高いCNTアスペクト比が必要である。CNT粉末の取扱いには、潜在的な健康上のリスクおよび安全性リスクが生じる可能性もある。CNTの製造コストは非常に高く、したがって建設などのコスト重視の市場にCNTを適用することは現実的ではない。これは、建設資材のけるCNTの産業利用に対する重要な制限でもある。
【0015】
先行技術
CNTハイブリッド材料(CNT-炭素、CNT-金属、およびCNT-金属酸化物)は、今日では、第3世代のカーボンナノチューブに相当する。CNT/CF-セメントハイブリッド材料は、CNT/CFをセメント(4wt.%Fe2O3)に自然に生じる鉄触媒粒子から成長させることによって、ポートランドセメントから合成されてきた。CNT/CFは、反応器を通ってセメントを連続的に移動させるスクリュフィーダの追加を含む修正された化学気相成長(CVD)法を使用して成長した。これによってCNT-セメントハイブリッド材料の連続生産が可能になった。反応温度は500~700℃の範囲で反化し、アセチレン、COおよびCO2ガス混合物は炭素源として使用された。性能試験結果は、0.4wt.%のCNT/CF-セメントハイブリッド材料のセメントペーストへの添加によって、圧縮強度および電気伝導率がそれぞれ2~3倍および40倍増加することを示した。しかしながら、このハイブリッドCNT-CF-セメント材料合成の方法は、CNT/CFがマトリックス中に分散することを必要としないにもかかわらず、少なくとも以下の理由のために実用的ではない:
1)酸化鉄を含む粒子だけが反応してCNTおよびCFを生成する、
2)CNT/CFは低いアスペクト比値を有する(L/D<100)、
3)酸化鉄含有量およびその粒径はセメントのタイプによって異なるので、CNT/CFの炭素収率および形態学的特性に差異が生じる、
4)ハイブリッド材料合成中の高温還元雰囲気下でのセメント粒子同士の接触も、セメント粒子の成分に望ましくない構造変化を引き起こすとともに、他のタイプの非晶質炭素化合物の形成を引き起こす可能性がある、および
5)反応しないエチレンおよび一酸化炭素を燃焼させなければならず、これはCO2排出を発生する。
【発明の概要】
【0016】
各態様および実施例は、カーボンナノチューブ(CNT)ハイブリッド材料であって、金属担体、半金属担体、金属酸化物担体または炭素担体の少なくとも1つに担持された触媒と、セメント質材料、セメント質材料の生産に使用される材料、およびセメント質材料を強化するために使用される材料から成る材料の群から選択される少なくとも1種の材料とを含むブレンドと、ブレンド上のCNTとを含むカーボンナノチューブ(CNT)ハイブリッド材料に向けられる。
【0017】
均等な分布を保証するために大きな分散を示し、従来の混合装置を用いてセメント質マトリックスに容易に一体化可能な新世代の炭素ナノ材料を開発する必要がある。これらの新たな炭素ナノ材料は、好ましくは界面活性剤または減水剤の使用を必要としない。材料が、最適化された親水性/疎水性バランスを有している場合、これが達成可能である。いくつかの実施例では、材料の親水性部分がアルミナであり、疎水性部分がCNTである。これが、この材料がCNT単独よりもより良好に分散する理由である。これらの新たな炭素ナノ材料は、先進的な建設資材の、機械的特性、電気的、および熱的特性の1または複数を有意に向上させ、圧電応答を示すはずである。それらはまた安全な材料であり、より低い生産コストでなければならない。
【0018】
いくつかの実施例では、本開示は、高アスペクト比(たとえばL/D>1000)を示すカーボンナノチューブとナノアルミナ粒子(たとえば数百ナノメートルの粒径)とに基づく炭素ハイブリッドナノ材料を記載する。いくつかの実施例では、これらのハイブリッド材料は、セメント、発泡セメント、および他の互換性のある材料、ならびにフライアッシュなどのセメント質材料を含むがこれらに限定されない、先進的な建設資材で使用される。
【0019】
CNT-アルミナハイブリッド材料は、いくつかの実施例では、アルミナ粒子(たとえば粒径<70ミクロン)に担持された遷移金属を組み合わせる触媒を用いて合成される。このアルミナは、高い比表面積(>300m2/g)を有する。アルミナ担体に担持された活性金属は、1重量%未満であり、カーボンナノチューブの合成のための先行技術で使用される従来の触媒よりも約3~5倍少ない。これは、活性金属が担体の表面に高度に分散することをもたらし、長尺で真っ直ぐな、より小さな直径(たとえば≦15nm)のCNTチューブ(たとえば≧10ミクロン)の合成を可能にする。このハイブリッドCNT-ナノアルミナ材料は、5~70wt.%の間で変化する材料の炭素化合物に応じて、バランスした疎水性/親水性特性を示す。CNTのアスペクト比は、炭素収率の関数でもある。アルミナ粒子は、代替的にまたは追加的に、触媒とともに反応器に添加可能である。
【0020】
いくつかの実施例では、ハイブリッド材料CNT-Al
2O
3の合成は、回転管触媒反応器または流動床反応器を用いて、典型的には600~700℃の間の温度かつ大気圧で、CCVD法によって行われる。このような反応器システムの例は、
図1に示され、以下に説明される。いくつかの実施例では、エチレンが炭素源として使用されるが、他のタイプの炭素源、たとえばメタン、エタン、アセチレン、および/またはCO、が使用可能である。反応ゾーンにおける材料の滞留時間は、特定の用途に必要な炭素収率に依存するが、典型的には5~20分の間で変化する。
【0021】
CNT-Al2O3ハイブリッドの水溶液への分散は、炭素ナノ材料をセメントマトリックス中に分布させるのに非常に役立ち、これは従来のセメント系材料のための既知の混合方法を用いて容易に行うことができる。ハイブリッド材料は、様々な技術を用いてセメント粒子と一体化可能である。たとえば、粉末の機械的混合によって、または以下の2つの連続した調製工程:1)水溶液中でCNT-Al2O3ハイブリッドの懸濁液を調製すること、および2)CNT-Al2O3ハイブリッドの懸濁液をセメントマトリックスに添加することによって、行われる。
【0022】
既知のハイブリッドCNT-セメント材料と本開示のものとの間にはいくつかの差異がある。先行技術では、セメントに含まれる鉄がCNT/CFの形成のための触媒として作用する。セメント内の鉄の含有量は可変であるので、一定の炭素収率は得られない。また、低いCNTアスペクト比(L/D<100)は、コンクリートの機械的特性、電気的特性、および熱伝導率の有意な増加の利益を提供しない。さらに、高い反応温度での高度な還元条件下でコンクリート粒子同士を接触させることは、セメント質材料の構成要素の構造的変化をもたらす可能性がある。さらに、既知の合成方法は、現実世界のコンクリート生産に必要な程度にまで拡張可能ではない。
【0023】
本CNT-Al2O3ハイブリッド材料は、先行技術に対して競争上の利点を提供する。これらの利点には以下のものがあるが、これらに限定されない:
1)この材料は、高いアスペクト比のカーボンナノチューブ(いくつかの実施例では少なくとも約1000)とアルミナナノ粒子(100~800nm粒径)とを有し、これらはコンクリートの機械的強化のために使用される添加剤である。
2)その分散は、工業的混合技術を用いる個々のカーボンナノチューブよりも容易である。
3)カーボンナノチューブは、約10±3nmの、狭く一様な直径分布を示し、これによって、材料の導電性が高くなる。
4)このハイブリッド材料は、商業的な回転管反応器を用いて連続的に合成される。
5)触媒における活性金属の含有量は、1wt.%未満であり、これによって、チューブ(真っ直ぐかつ長尺のチューブ)の成長速度をより良好に制御することが可能である。
6)この材料は安全であり、実際に使用することが容易であり、その生産コストが低い。
7)この材料は、コンクリートに組み込まれたとき、機械的強化、電気伝導率および圧電応答において、手付かずのCNTに対して、優れた性能を示す。
8)微量のCNT-Al2O3ハイブリッド材料は、環境に優しいスマートなコンクリートの生産を可能にし、コンクリート混合物への、フライアッシュなどのより多くの量の他の添加剤の組み込みを可能にすることによって、セメント消費を低減することができる。この結果として、より低いセメント消費は地球温暖化の原因となるCO2排出の低減に貢献する。
【0024】
本開示は、アルミナ粒子以外の触媒担体を考慮している。例として、他の金属酸化物、炭素材料、および可能性のある半金属が挙げられるがこれらに限定されない。金属酸化物担体の非限定例として、アルミナ、マグネシア、およびフライアッシュが挙げられる。炭素系触媒担体の例として、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、活性炭、炭素ナノ繊維、気相成長炭素ナノ繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブなどが挙げられる。米国特許出願公開第2022/0048772号明細書は、炭素-CNTハイブリッド材料を開示している。米国特許出願公開第2022/0250912号明細書は、金属および金属酸化物担持触媒を使用するCNTハイブリッド材料を開示している。これらの先行出願およびそれらの公報の双方の開示は、あらゆる目的のために、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0025】
本開示は、「セメント質」材料とみなされる他の粒子とブレンドされた担持触媒粒子を含む組成物に限定されない。本開示は、たとえセメント質材料が通常のポートランドセメントの生産に使用される基本成分の1つであり得るとしても、他の粒子が一部の人々からセメント質材料と分類されるものとみなされ得ない組成物をも含む。たとえば、いくつかの実施例では、アルミナは、「他の」粒子を含む。アルミナも、または追加的に、触媒担体として使用されてもよい。したがって、本開示は、セメント質材料とともに、セメント質材料の生産に使用される、またはアルミナを含むがこれに限定されない、セメント質材料を強化するために使用される他の成分を含む他の粒子を考慮している。また、「他の」粒子は、炭素ナノ繊維、炭素繊維、グラフェン、ナノ粘土などを含むがこれらに限定されない、セメント剤に使用される、または使用可能な他の強化材料を含むことが可能である。
【0026】
以下に記載される全ての実施例および特徴は、任意の技術的に可能な方法で組み合わせることが可能である。
【0027】
一態様において、カーボンナノチューブ(CNT)ハイブリッド材料は、金属、半金属、金属酸化物または炭素担体の少なくとも1つに担持された触媒と、セメント質材料、および/またはセメント/セメント質材料の生産または強化に使用されるまたは使用可能な材料の少なくとも1つとを含むブレンドと、ブレンド上のCNTとを含む。
【0028】
いくつかの実施例は、上記および/または下記の特徴の1つ、もしくはそれらの任意の組み合わせを含む。実施例では、セメント質材料は、水硬セメントを含む。実施例では、水硬セメントは、ポートランドセメントを含む。実施例では、セメント質材料は、補助セメント質材料(SCM)を含む。実施例では、SCMは、フライアッシュを含む。実施例では、触媒は、ナノアルミナ粒子に担持される。
【0029】
いくつかの実施例は、上記および/または下記の特徴の1つ、もしくはそれらの任意の組み合わせを含む。実施例では、CNTは、ロータリキルン反応器内でブレンドの少なくとも一部上で成長する。実施例では、担持触媒とセメント質材料または他の材料とがブレンドされ、その後反応器内に供給され、そこでCNTがこのブレンド上で成長する。実施例では、担持触媒が反応器内に供給され、そこでCNTが担持触媒上で成長してハイブリッド材料を生成し、その後ハイブリッド材料はセメント質材料または他の材料とブレンドされる。実施例では、ハイブリッド材料は、セメント質材料または他の材料と、粉末形態でのそれら2つの機械的混合によってブレンドされる。実施例では、ハイブリッド材料は、セメント質材料または他の材料と、水溶液中でハイブリッド材料の懸濁液を調製し、その後懸濁液をセメント質材料または他の材料と混合することによってブレンドされる。実施例では、材料は粉末を含む。
【0030】
他の態様において、カーボンナノチューブ(CNT)ハイブリッド材料は、酸化鉄と他の金属酸化物とを含むフライアッシュ材料と、フライアッシュ上のCNTとを含む。実施例では、CNTは、ロータリキルン反応器内でフライアッシュ上で成長する。実施例では、材料は粉末を含む。
【0031】
他の態様において、カーボンナノチューブ(CNT)ハイブリッド材料は、アルミナに担持された触媒と、アルミナ上の触媒部位で成長するCNTとを含み、CNTは、約1000超、または約400超、もしくは約700超のL/Dアスペクト比を有する。
【0032】
いくつかの実施例は、上記および/または下記の特徴の1つ、もしくはそれらの任意の組み合わせを含む。実施例では、CNT成長の前に、アルミナは、粒径約1ミクロン未満である基本アルミナ粒子の凝集体を含む。実施例では、CNTはCNTハイブリッド材料内の基本アルミナ粒子の脱凝集を引き起こす。実施例では、触媒は、遷移金属を含む。実施例では、ナノアルミナ粒子は、直径が70ミクロン未満である。実施例では、アルミナに担持される触媒活性金属は、1重量%未満である。実施例では、CNTは、ロータリキルン反応器内でアルミナ粒子上で成長する。
【0033】
いくつかの実施例は、上記および/または下記の特徴の1つ、もしくはそれらの任意の組み合わせを含む。実施例では、担持触媒は、反応器内に供給され、そこでCNTは担持触媒上で成長してハイブリッド材料を生成し、その後ハイブリッド材料はセメント質材料または他の材料とブレンドされる。実施例では、ハイブリッド材料は、セメント質材料または他の材料と、粉末形態でのこれら2つの機械的混合によってブレンドされる。実施例では、ハイブリッド材料は、セメント質材料または他の材料と、水溶液中でハイブリッド材料の分散液を調製し、その後分散液をセメント質材料または他の材料と混合することによってブレンドされる。実施例では、材料は粉末を含む。
【0034】
いくつかの実施例は、上記および/または下記の特徴の1つ、もしくはそれらの任意の組み合わせを含む。実施例では、材料は、カーボンブラックをさらに含む。実施例では、カーボンブラックは、CNTが成長する前に、担持触媒と混合される。実施例では、カーボンブラックは、担持触媒の約10重量%~約50重量%のレベルで存在する。実施例では、材料はハイブリッド材料とカーボンブラックとの水性分散液を含む。実施例では、水性分散液は、セメント質材料または他の材料と混合される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
少なくとも1つの実施例の様々な態様が、添付図面を参照して以下に説明されるが、図面は縮尺通りに描かれることを意図していない。図面は、様々な態様および実施例の説明およびさらなる理解を提供することを含み、本明細書に組み込まれ、本発明の一部を構成するが、本発明の限界を定義するものではない。図面において、様々な図面で図示された同一または略同一の構成要素は、同様の参照符号で表される場合がある。明確化のために、全ての図面に全ての構成要素が表示されているわけではない。
【0036】
【
図1】CNT-Al
2O
3ハイブリッド材料の連続生産のためのロータリキルン触媒反応器を示す。
【
図2】試料2について、機械的特性の変化を養生期間の関数として示す。
【
図3】
図3A~
図3Cは、それぞれ、反応前後のポートランドセメントおよび試料1のTGA分析を含む。
【
図4】試料1および2に対応する低倍率(25KX)および高倍率(100KX)で撮影したSEM画像を含む。
【
図5】CNT-Al
2O
3ナノハイブリッド材料およびCNT-Al
2O
3ナノハイブリッドを有するポートランドセメントの漫画表示である。
【
図6】
図6A~
図6Cは、フライアッシュ粒子上で成長したCNT/CFのSEM画像を含む。
【
図7】フライアッシュ粒子上で成長したCNT/CFのTGA分析を含む。
【
図8】試料4について、機械的特性の変化を養生期間の関数として示す。
【
図9】様々なCNT-Al
2O
3-セメント試料の導電性特性を示す。
【
図11】
図11Aおよび
図11Bは、それぞれ、高アスペクト比を有するMWCNTを示す、10KX倍および50KX倍で撮影したSEM画像を含む。
【
図12】様々な混合方法を用いて調製されたCNT-Al
2O
3-セメント試料およびCNT組成物の導電性特性を示す。
【
図13】
図13Aおよび
図13Bは、様々な混合方法を用いて調製されたCNT-Al
2O
3-セメント試料およびCNT組成物のピエゾ抵抗応答を示す。
【
図14】CNT-Al
2O
3-カーボンブラックセメント試料のピエゾ抵抗応答を示す。
【
図15】60wt.%CNT-Al
2O
3-セメントハイブリッド材料のピエゾ抵抗応答を示す。
【
図16】
図16A~
図16Cは、それぞれ、いくつかの異なるCNT-Al
2O
3ハイブリッド材料の5KX倍、10KX倍および25KX倍で撮影したSEM画像を含む。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書で議論されるシステム、方法および装置の実施例は、適用において、以下の説明に記載されるかまたは添付図面に図示される構成要素の構成および配置の詳細に限定されない。システム、方法および装置は、他の実施例において実施することが可能であり、様々な方法で実施または実行することが可能である。具体的な実施例は、本明細書において例示のみを目的として提供され、限定を意図するものではない。特に、任意の1つまたは複数の実施例に関連して論じられる機能、構成要素、要素、および特徴は、他の実施例における同様の役割を排除することを意図するものではない。
【0038】
本明細書に開示される実施例は、本明細書に開示される原理の少なくとも1つと一致する任意の方法で他の実施例と組み合わせることができ、「実施例」、「いくつかの実施例」、「代替実施例」、「様々な実施例」、「1つの実施例」等への言及は、必ずしも相互に排他的ではなく、記載される特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを示すことが意図される。本明細書におけるこのような用語の出現は、必ずしも全てが同一の実施例を指すものではない。
【0039】
また、本明細書で使用される言い回しおよび用語は、説明のためのものであり、限定的なものとみなされるべきではない。本明細書において単数形で言及されるコンピュータプログラム製品、システム、および方法の実施例、構成要素、要素、行為、または機能に対するあらゆる言及は、複数を含む実施形態を包含することもあり、本明細書においてあらゆる実施例、構成要素、要素、行為、または機能に対する複数形の言及は、単数のみを含む例を包含することもある。したがって、単数形または複数形での言及は、現在開示されているシステムまたは方法、それらの構成要素、行為、または要素を限定することを意図するものではない。本明細書における「含む」、「含んでなる」、「有する」、「含有する」、「関与する」、およびそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目およびその等価物ならびに追加の項目を包含することを意味する。「または」への言及は、「または」を用いて記載される用語が、単一の用語、複数の用語、および記載される用語のすべてを示すことができるように、包括的なものとして解釈される場合がある。
【0040】
図1は、本開示のハイブリッド材料生産プロセスを達成するために使用されるように構成される、例示の回転管反応器システム10の概略図である。以下の説明は本開示のある態様を示すが、本開示の範囲の限定ではない。
【0041】
触媒供給システム16は、以下のように動作可能である。粉末形態の触媒粒子は、触媒供給蓄積容器1に供給される。続いて、空気が、不活性ガスの流れを用いて触媒供給蓄積容器1から除去される。不活性ガスは、60~150℃の間の温度に予め加熱されて、パージングプロセス中に触媒から水分を除去することが可能である。その後触媒粒子は、スクリュフィーダを介して第2の触媒供給蓄積容器2に移送される。この装置は反応器12に供給される触媒の量を制御する。触媒および反応ガス供給システム14は、以下のように動作可能である。第2の触媒供給蓄積容器内に収容される触媒粒子は、振動触媒粒子供給システムに結合された金属管を介して回転管反応器に供給される。供給システムは、不活性ガス雰囲気中に維持され、不要な反応を抑制する。CNTハイブリッド材料を製造するために、他の材料が触媒とともに添加されると、これらの他の材料は、触媒とともに供給可能であるか、他の材料のための、別個の平行供給システムが存在し得る。第2の供給システム(図示せず)は、触媒供給システムと同じであってもよいか、さもなければ、これらの材料を反応温度にした後反応器に供給されるように構成されてもよい。いくつかの実施例では、触媒および他の材料は、ともに触媒供給のための上述の方法で反応器に供給される前に予めブレンドされる。
【0042】
触媒/他の材料を反応器に供給する管は、その端部が炉の予加熱ゾーンにおける回転管の内部に位置するように十分に長い。いくつかの実施例では、内管の長さは、炉の高温(反応)ゾーンにおける回転管の長さの約1/3~1/6である。いくつかの実施例では、内管の直径は、回転管の直径の1/3~1/2である。いくつかの実施例では、反応器の複数の加熱ゾーンが存在する。いくつかの実施例では、反応器はガスまたは電気で加熱される。
【0043】
この構成は、反応ガスと接触する前に所望の反応温度に達する触媒粒子を結果として生じる。内管は、インコネル、チタンなどの特殊耐食鋼から成る。回転管に対する内管の長さおよび直径は、触媒プロセス中の効率のよい熱伝達を確保するように選択される。
【0044】
プロセスガスおよび触媒粒子が密接に接触する場所の温度は、反応器の入口ブロックに黒実線で示したサーモウェルに導入した熱電対で測定される。合成する材料の種類によっては、固体粒子と反応ガスとの間で質量および熱の移動を改善するために、フライヤまたはその他の質量分布構造(
図1に模式的に示す)を回転管内に配置することが可能である。フライヤはまた、回転管内の物質の流れを改善することも可能である。反応器内の触媒の滞留時間は、管の回転速度とその傾斜角度とによって制御される。
【0045】
得られた生成物は、たとえばガス/固体セパレータ22を用いて、反応器の出口においてガスから分離される。弁のシステムは、生成物を、不活性ガス注入を有してエチレンおよび水素を除去し包装前(たとえば、貯蔵ドラム30内)に材料を冷却するコンテナ(たとえばパージ容器28)内に排出する。
【0046】
液体凝縮器24は、水素分離と反応ガスのリサイクルとの前に望ましくない反応副生成物を除去するために使用される。
【0047】
有機ポリマー、ナノ多孔質無機材料(セラミック、酸化物、多孔質バイコアガラスなど)、濃厚金属(Pd、および金属合金)、炭素およびカーボンナノチューブをベースとする膜などを含み得るH2膜セパレータ26を使用して、未反応のエチレン(または他の炭素源反応ガス)および水素が続いて分離される。
【0048】
未反応の炭素源は、次いで、リサイクルシステム20によってリサイクルされ、水素は、他の触媒工業プロセスのために、または電力もしくは発熱のために、あるいは輸送のために使用可能である。リサイクルされたガスは、エチレンと、向上された熱伝達および触媒活性化によるカーボンナノチューブおよびハイブリッド材料の生産反応を容易にする水素とを含むことが可能である。反応器に供給されるべき未使用のエチレンの量は、カーボンナノチューブ/ハイブリッド材料の生産におけるエチレン転化のレベルに依存する。
【0049】
ガス組成は、質量分析計または他の計器を用いて、
図1に示されるいくつかの点で検出することが可能である。組成データは、プロセス制御のために、かつ他の目的、たとえばガス成分および品質を記録するために使用可能である。ガス組成データ(および他の変数)がコントローラ(
図1に図示せず)に入力され、コントローラは弁、ヒータ、粒子フィーダ、および所望のプロセス条件を維持するために使用される他のプロセス装置(すべて
図1には示されていない)を制御する。
【0050】
反応器およびその使用の他の詳細は、2022年9月28日提出の米国特許出願第17/954,899号に開示されており、その開示内容全体はあらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0051】
実施例の以下の詳細な説明は、本開示の範囲を示すが、これに限定されない。
【0052】
実施例1:CNT-セメントハイブリッド材料の調製
【0053】
本実施例では、2つのCNT-Al2O3ハイブリッド材料が以下のように調製された。
【0054】
第1の材料(試料1)について、CoMoFe/MgO-Al2O3をベースとするMWCNT触媒(この触媒は米国特許第9855551号明細書に記載されている)の微粉末を、ポートランドセメントと、それぞれ20/80wt.%の組成比で機械的にブレンドし、次いで、このブレンド上で、回転管反応器において600℃で、水素中80%Vのエチレン流の存在下、10分間の反応時間でCNT合成を行った。第2の材料(試料2)を、ポートランドセメント粉末を、予め合成されたハイブリッドMWCNT-Al2O3材料と、それぞれ20/80wt.%の組成比で機械的にブレンドすることによって調製した。両方のCNT-Al2O3-セメント材料の組成が表2に示される。両方の場合において、アルミナ含有量は実際には同じであり、MWCNT含有量は試料1および3について5wt.%、試料2について3wt.%であった。機械的性能試験結果が表3に記載される。
【0055】
【0056】
【0057】
図2は、試料2について、機械的特性の変化を養生期間の関数として示す。曲げ強度および弾性率の両方とも、養生期間とともに徐々に増加するが、圧縮強度は最初の7日間減少するが、その後は一定のままである。試料2は、28日養生期間後、セメントモルタルの基準よりも、曲げ強度が+65%、弾性率が45%、圧縮強度が20%高い。試料1について観察された値は、それぞれ53%、24%および15%であった。
【0058】
図3Aおよび
図3Bは、エチレン+H
2ガス混合物の存在下、675℃で10分間の滞留時間という反応条件の下で処理される前後のポートランドセメントの熱重量分析(TGA)の結果を示す。図に示すように、反応後、セメントの重要な構造的変化および組成変化が生じている。これらの構造的変化は、コンクリートの機械的特性、電気伝導率特性および熱伝導率特性に有意な影響を与える可能性がある。これは、試料1で得られた結果を説明するものであり、MWCNT含有量は試料2よりも高いものの、セメント質材料の機械的特性の向上は劣っていた。
図3Cは、試料1のTGA分析を示し、565℃における信号がMWCNTに起因する可能性がある。
【0059】
図4は、試料1および2に対応する低倍率(25KX)および高倍率(100KX)で撮影した4つのSEM画像を含み、上段が試料1の画像であり、下段が試料2の画像である。試料1では、直径約25~45nmの短尺MWCNT(<200nm)の形成が明確に確認できる。一部のセメント粒子がナノチューブと接触していないことが観察される。これに対し、試料2では、直径10~15nmを有する長尺MWCNTのメッシュが、セメント粒子間の空間を取り囲み、充填しているのが確認できる。
【0060】
図5は、CNT-Al
2O
3ハイブリッド材料と、CNT-Al
2O
3ナノ粒子ハイブリッド材料を用いたポートランドセメント添加剤との作成を簡略化した図である。触媒は、1ミクロンよりも小さい一次または基本ナノアルミナ粒子を含み、これらは典型的には凝集して粒径<100ミクロンの粒子を形成する。触媒調製中、活性金属は、空孔内だけでなく基本粒子の外表面上にも堆積する。合成中、活性金属は、炭素源のCNT+H
2への分解反応に触媒作用を及ぼす。全ての方向におけるCNTの成長は、基本アルミナ粒子の脱凝集を引き起こす。ハイブリッドCNT-Al
2O
3材料が形成される。CNT-Al
2O
3ナノハイブリッドのポートランドセメントへの一体化は、水性分散液調製中にナノハイブリッド粒子の脱凝集によって達成される。
【0061】
他のタイプの触媒にも同じ概念が当てはまる。たとえば、シリカフュームは、ナノメートルサイズの元素状SiO2粒子から成る。分散剤とともに10%のナノSiO2を添加した場合、28日養生後の圧縮強度が26%増加することが観察された。ナノSiO2、大量のフライアッシュおよびシリカフュームの複合添加は、良好な機械的性能を達成する非常に効率的な方法であり、両方の添加剤を使用する経済的な方法であることが判明した。
【0062】
実施例2:フライアッシュ粒子上でのCNTの成長
図6A~
図6Cは、フライアッシュ粒子上でのCNTおよびCFの合成に対応するSEM画像である。フライアッシュは、石炭焚きボイラから排ガスとともに排出される、主に金属酸化物の微粒子から成る石炭燃焼生成物である。SiO
2(非晶質形態および結晶形態の両方)、Al
2O
3、Fe
2O
3およびCaOはフライアッシュに存在する主な化学成分である。フライアッシュは、コンクリート生産においてポートランドセメントの一部または大部分を置き換えることができ、初期段階では空隙率が高くなり、機械的強度、耐薬品性および耐久性が向上する。
【0063】
回転管反応器において650℃で、水素中80%Vのエチレン流の存在下、10分間の反応時間でCNT合成を行った。フライアッシュに含まれる酸化鉄粒子が触媒として作用する。
【0064】
図6Aに示すように、全ての粒子がCNT/CFの成長を示すとは限らない。CNT/CFを有するフライアッシュ粒子が
図6Bに明確に示されている。最も高い倍率(
図6C、25KX)で撮影した画像は、フライアッシュ粒子の表面上に約1~1.5ミクロンの長さおよび直径数百nmのCNTおよびCFの組みひもの形成を示している。フライアッシュ粒子上のCNT/CF含有量は、TGA分析によって決定されるように、約9wt.%である(
図7)。
【0065】
実施例3:CNTアスペクト比の機械的特性、電気的特性および圧電応答に及ぼす影響
【0066】
本実施例では、実施例1に記載された手順に従って、CNT含有量(以下の表4に記載されているようなアルミナの重量に対して15、20および25wt.%)の違いを有する3つのCNT-Al2O3ハイブリッド材料(試料3、4および5)を合成した。Al2O3ナノ粒子上に堆積した炭素の量は、反応時間に依存し、3~10分の間で変化した。
【0067】
CNT-Al2O3ハイブリッド材料粉末を、試料中のMWCNT含有量が同じ(0.15wt.%)であるような割合でポートランドセメントと機械的にブレンドした。表4は各試料の重量組成およびアスペクト比特性を示す。炭素収率が増加するにつれて、チューブの長さが徐々に増加するがその直径は変化しない(10±3nm)。その結果、CNT-Al2O3ハイブリッド材料の合成中の炭素収率の増加の関数として、CNTアスペクト比は増加する。
【0068】
【0069】
機械的性能試験(曲げ強度、弾性率および圧縮強度)が試料3、4および5について行われた。結果が表5に示される。アスペクト比(L/D)が増加するにつれて、セメントの機械的特性が有意に向上している。
【0070】
図8は、試料4について、機械的特性の変化を養生期間の関数として示す。
【0071】
養生期間が増加するにつれて、曲げ強度および弾性率の増加率はモルタル基準に対して大きくなる。圧縮強度の場合、割合は最初の7日間で36%から19%に減少する傾向があり、その後安定する傾向がある。28日養生期間後、曲げ強度、弾性率および圧縮強度値は、それぞれ81%、50%および22%であった。これらの結果は、実施例1で調製された試料に対して、曲げ強度および弾性率の向上を示し、実施例1のセメント中のMWCNT含有量が試料1および2について、それぞれ5wt.%および3wt.%であったのに対し、試料3および4について、それぞれ0.15wt.%であった。
【0072】
【0073】
試料3、4および5に対応する様々な養生期間における電気伝導率特性が
図9に示される。最も導電性の高い材料は、最も高いCNTアスペクト比(730)を有する試料5であった。
【0074】
試料4および5に対応するピエゾ抵抗応答試験結果が、それぞれ
図10Aおよび
図10Bに示される。試料5は、試料を様々な応力レベルに供したときの抵抗率の変化(Δρ/ρ
o)が最も大きいことを示している。
【0075】
実施例4:CNT-Al2O3-セメント調製方法の影響
【0076】
本実施例では、35wt.%のMWCNTおよびL/D>1000を有するMWCNT-Al
2O
3ハイブリッド材料を採用した。
図11Aおよび
図11Bは、MWCNT-Al
2O
3ハイブリッド材料の様々な倍率(それぞれ10KXおよび50KX)で撮影したEM画像である。長さ10ミクロン超の長尺MWCNTおよび直径約500nmのアルミナナノ粒子が観察できた。
【0077】
水性懸濁液を、350mlのH2Oを用いて、セメント中の0.10または0.15wt.%のMWCNT-Al2O3ハイブリッド材料と0,4%のセメントの超可塑剤とを混合することによって調製した。分散液を、超音波処理またはインテンシブミキサ装置を用いて調製した。インテンシブミキサでは、乾燥形態のMWCNT-Al2O3ハイブリッド材料と混合水とをボウルに入れ、285rpmの速度で10分間混合した。乾燥材料(セメントおよび砂)が、モルタル試験片の調製のために混合物に添加された。
【0078】
図12は、様々な混合技術およびセメント中のCNT含有量に従って調製された試料の電気伝導率の変化を養生期間の関数として示す。セメント中のCNT含有量を0.10wt.%から0.15wt.%に増加させることによって、材料の抵抗率は約39%減少する。セメント中に0.15%のCNTを含有する試料について、超音波処理またはインテンシブミキサ装置を用いたとき、電気導電率に有意な差は観察されない。様々な混合装置を用いて調製された試料の間で、圧電応答に有意な差は観察されない。
図13Aおよび
図13Bを参照されたい(それぞれ超音波処理またはインテンシブ混合)。これらの結果は、CNT-Al
2O
3材料が従来の混合装置を用いて容易に分散可能であることを明確に示している。
【0079】
実施例5:スマートコンクリート用CNT-Al2O3-カーボンブラックハイブリッド材料
【0080】
上述のように、カーボンブラック(CB)は、スマートコンクリートの製造において電気伝導性特性および圧電応答を強化するための添加剤として使用されてきた。本実施例(試料6)では、触媒粉末をカーボンブラックと一定の割合(触媒の40重量%)で混合し、実施例1に記載された反応条件の下、回転管反応器でCNT合成を行った。続いて、ハイブリッド材料CNT-Al2O3-CBを用いて水性分散液を調製し、その後、実施例4で使用したのと同じ手順に従ってセメント粉末と混合した。
【0081】
表6は、ハイブリッド材料CNT-Al2O3-CBおよびセメント混合物中の重量組成を示す。全導電性炭素組成は、0.13wt.%(MWCNT=0.08wt.%およびCB:0.05wt.%)であり、試料3~5(セメント)のMWCNT含有量に適合する。なお、MWCNTの組成は、試料3~5よりも低い。
【0082】
【0083】
【0084】
表7は、セメント中の試料6のハイブリッド材料(CNT-Al
2O
3-カーボンブラック)電気的および機械的伝導率特性を養生期間の関数として示す。試料5について得られた結果と比較したとき、セメントの伝導率特性の向上が観察される。試料6の圧電応答(
図14)も有意に増加した(3.9%から7.82%)。
【0085】
表7はまた、モルタル基準と比較した機械的特性の(%での)向上も示している。曲げ強度特性および弾性率特性はまた、28日養生期間後のモルタル基準に対して、それぞれ約74%および55%有意に向上した。圧縮強度は4%増加した。
【0086】
実施例6
【0087】
本実施例では、60wt.%のMWCNTを有するMWCNT-Al
2O
3ハイブリッド材料を調製し、ポートランドセメントとCNTハイブリッド材料および30wt.%のフライアッシュと組み合わせて一連の実験を行った。表8は、28日養生期間後に得られた様々な調製試料の機械的特性の変化(ポートランドセメント基準との比較)を示す。表8はまた、モルタル基準と比較した機械的特性の(%での)向上も示している。機械的強度特性は、モルタルに30%のフライアッシュを添加した後、わずかに上昇した。0.1wt.%のCNT-Al
2O
3ハイブリッド材料をモルタルに添加すると、曲げ強度、弾性率および圧縮強度は、それぞれ約88%、82%および11%増加した。この材料は、最も高い圧電応答値も示した(
図15)。30wt.%のフライアッシュおよびCNT-Al
2O
3ハイブリッド材料のモルタルへの添加は、圧縮強度特性の約11%の向上を引き起こし、曲げ強度および弾性率値がそれぞれ約28%および25%増加した。
【0088】
【0089】
MWCNT-Al2O3-CB(実施例5)とCNT-Al2O3(実施例6)とを用いたときに得られた結果を比較すると、セメント中の総炭素含有量(MWCNT-Al2O3-CBでは0.13%、CNT-Al2O3ハイブリッド材料では0.08wt.%)の差にもかかわらず、機械的強化、電気伝導率および圧電特性において優れた性能利益をもたらすことが明確に分かる。
【0090】
実施例7
【0091】
本実施例では、様々なCNT組成を有するCNT-Al2O3ハイブリッド材料を、アルミナ微粉末を実施例1で採用したCoMoFe/MgO-Al2O3触媒微粉末と機械的にブレンドすることによって合成した。ブレンド内のアルミナ粉末の組成は、0から95wt.%まで変化した。両方の材料の粒径は、レーザ散乱技術によって決定した場合、直径1~10ミクロン(平均=3~4μ)の間で変化した。回転管反応器において650℃の温度で、80%Vのエチレンおよび20%Vの水素を含むガス流の存在下、10分間の反応時間でCNT合成を行った。
【0092】
表9は、様々な触媒-アルミナブレンドから得られたCNT-Al2O3ハイブリッド材料の合成の結果を示す。その結果は、触媒粒子をアルミナ粉末で20%希釈することによって、CNT収率が80wt.%以上を維持することを明確に示している。ブレンド中のアルミナ組成を増加させると、CNT収率は、95%のAl2O3および5wt.%の触媒ブレンドについて、ハイブリッド材料中のCNT組成が27%に達するまで、徐々に減少する傾向にある。
【0093】
【0094】
表9のCNT-Al
2O
3ハイブリッド材料の様々な倍率(5K、10Kおよび25K)で撮影したSEM画像が、ブレンド中のアルミナ組成が0%~90wt.%(0%、20%、40%、60%、80%、および90%)の場合について、それぞれ
図16A~
図16Cに示される。触媒粒子にアルミナがブレンドされない場合、CNTが高度に絡み合ったコンパクトなメッシュの形成が観察される。アルミナ粉末が触媒粒子と徐々にブレンドされる場合、棒状のCNT構造の形成が観察される。これらのCNTロッドは、ブレンド中のアルミナ含有量が増加すると、互いに分離する。CNTは、その直径は分析された全ての試料について変化しない(8~13nm)が、より長くなる。約0.5~2ミクロンの粒径を有するアルミナおよび触媒粒子は、80wt.%超のアルミナを含有する試料についてより高い割合で観察された。
図16Cは、ブレンド中のアルミナ含有量が20wt.%を超える場合のCNTのオープンメッシュの形成の明確な証拠を示す。これらのチューブはほどけやすく、分散に必要なエネルギが少なくて済む。先行技術と比較して、この材料は、懸濁液、粉末、または顆粒状のセメント粒子に容易に一体化させることが可能である。
【0095】
以上、少なくとも1つの実施例のいくつかの態様を説明したが、様々な変更、修正、および改良が当業者には容易に生じることを理解されたい。このような変更、修正、および改良は、本開示の一部であり、本発明の範囲内であることが意図される。したがって、前述の説明および図面は例示に過ぎず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の適切な解釈から決定されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ(CNT)ハイブリッド材料であって、
金
属、半金
属、金属酸化
物または炭
素の少なくとも1つ
を含む触媒担体に担持された触媒と、セメント質材料、セメント質材料の生産に使用される材料、およびセメント質材料を強化するために使用される材料から成る材料の群から選択される少なくとも1種の材料とを含むブレンドと、
ブレンド上のCNTとを含む、カーボンナノチューブ(CNT)ハイブリッド材料。
【請求項2】
セメント質材料は、水硬セメントを含む、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
セメント質材料は、
フライアッシュなどの補助セメント質材料(SCM)を含む、請求項1に記載の材料。
【請求項4】
担持触媒とセメント質材料とがブレンドされ、その後、
ロータリキルン反応器内に供給され、そこでCNTがこのブレンド上で成長する、請求項
1に記載の材料。
【請求項5】
担持触媒が
ロータリキルン反応器内に供給され、そこでCNTが担持触媒上で成長してハイブリッド材料を作成し、その後、ハイブリッド材料がセメント質材料にブレンドされる、請求項
1に記載の材料。
【請求項6】
ハイブリッド材料は、セメント質材料と、粉末形態でのこれら2つの機械的混合によって
、または水溶液中でハイブリッド材料の分散液を調製し、その後分散液をセメント質材料と混合することによって、ブレンドされる、請求項
5に記載の材料。
【請求項7】
触媒担体は、フライアッシュを含む、請求項1に記載の材料。
【請求項8】
触媒担体は、アルミナ粒子を含む、請求項1に記載の材料。
【請求項9】
CNTは1000超のアスペクト比を有する
、請求項8に記載の材料。
【請求項10】
CNT成長の前に、アルミナは、粒径
が1ミクロン未満である基本アルミナ粒子の凝集体を含む、請求項8に記載の材料。
【請求項11】
CNTは、CNTハイブリッド材料内の基本アルミナ粒子の脱凝集を引き起こす、請求項10に記載の材料。
【請求項12】
ナノアルミナ粒子は、直径が70ミクロン未満である、請求項
8に記載の材料。
【請求項13】
アルミナ
粒子に担持される触媒活性金属は、1重量%未満である、請求項
8に記載の材料。
【請求項14】
担持触媒が
ロータリキルン反応器内に供給され、そこでCNTが担持触媒上で成長してハイブリッド材料を作成し、その後ハイブリッド材料が、セメント質材料、セメント質材料の生産に使用される材料、およびセメント質材料を強化するために使用される材料から成る材料の群から選択される第2の材料とブレンドされる、請求項
8に記載の材料。
【請求項15】
ハイブリッド材料は、第2の材料と、粉末形態でのそれら2つの機械的混合によって
、または水溶液中でハイブリッド材料の分散液を調製し、その後分散液を第2の材料と混合することによって、ブレンドされる、請求項
14に記載の材料。
【請求項16】
カーボンブラックをさらに含む、請求項
1に記載の材料。
【請求項17】
カーボンブラックは、CNTが成長する前に、担持触媒と混合され
、カーボンブラックは、担持触媒の10重量%~50重量%のレベルで存在する、請求項
16に記載の材料。
【請求項18】
ハイブリッド材料とカーボンブラックとの水性分散液を含
み、水性分散液は、セメント質材料と混合される、請求項
17に記載の材料。
【国際調査報告】