(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】二重偏波アンテナアレイ
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/24 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
H01Q21/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522480
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 IB2022059970
(87)【国際公開番号】W WO2023067482
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523209748
【氏名又は名称】スイストゥトゥウェルヴ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】メナルゲス・ゴメス・エステバン
(72)【発明者】
【氏名】カプデビラ・カスカンテ・サンティアゴ
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA06
5J021AB07
5J021CA02
5J021JA06
5J021JA07
(57)【要約】
【課題】既知のアンテナの制限から解放された2局アンテナを提供する。
【解決手段】本発明は、二重偏波(P1、P2)を持つアンテナ(1)を、少なくとも2つ備えるアンテナアレイであって、各アンテナが、
第1偏波(P1)を持つ第1信号用の少なくとも1つの第1ポート(17)と、
第2偏波(P2)を持つ第2信号用の少なくとも1つの第2ポート(18)と、
前記第1ポートの信号を前記第2ポートの信号に組み合わせるセプタム(2)を備える偏波部(5)と、
偏波保持エバネッセントフィルター(4)であって、前記偏波保持エバネッセントフィルター(4)の一端が前記偏波部に直接結合されていて、前記偏波保持エバネッセントフィルター(4)の他端がエーテルに直接結合されていて、前記エバネッセントフィルターが、前記アンテナ(1)のインピーダンスを前記エーテルのインピーダンスに整合させる突起(3)を備えて設けられた内面を少なくとも1面持つ内部のチャネル(11)を備えた、偏波保持エバネッセントフィルター(4)と
を備えるアンテナアレイである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重偏波(P1、P2)を持つアンテナ(1)を、少なくとも2つ備えるアンテナアレイであって、各アンテナが、
第1偏波(P1)を持つ第1信号用の少なくとも1つの第1ポート(17)と、
第2偏波(P2)を持つ第2信号用の少なくとも1つの第2ポート(18)と、
前記第1ポートの信号を前記第2ポートの信号に組み合わせるセプタム(2)を備える偏波部(5)と、
偏波保持エバネッセントフィルター(4)であって、前記偏波保持エバネッセントフィルター(4)の一端が前記偏波部に直接結合されていて、前記偏波保持エバネッセントフィルター(4)の他端がエーテルに直接結合されていて、前記エバネッセントフィルターが、前記アンテナ(1)のインピーダンスを前記エーテルのインピーダンスに整合させる突起(3)を備えて設けられた内面を少なくとも1面持つ内部のチャネル(11)を備えた、偏波保持エバネッセントフィルター(4)と
を備えた、アンテナアレイ。
【請求項2】
各アンテナの前記内部のチャンネル(11)の直径は、前記アンテナが設計された信号の公称波長よりも小さい、請求項1に記載のアンテナアレイ。
【請求項3】
前記セプタムは前記エーテルの側の前記アンテナの端まで延在していない、請求項1又は2に記載のアンテナアレイ。
【請求項4】
前記偏波部(5)は、前記セプタム(2)に加えて、長手方向の隆起部(19)を備えて設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項5】
前記長手方向の隆起部(19)は、前記エーテルの側の各アンテナの端まで延在していない、請求項4に記載のアンテナアレイ。
【請求項6】
前記エバネッセントフィルター(4)は、長手方向の線に沿って連続する複数の突起(3)を備えて設けられている、請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項7】
前記突起(3)は、前記エーテルの側の各アンテナの端まで延在していない、請求項6に記載のアンテナアレイ。
【請求項8】
前記突起は、3本又は4本の長手方向の線に沿って配置されている、請求項7に記載のアンテナのアレイ。
【請求項9】
前記長手方向の線は、前記長手方向の隆起部(19)の延長線上にある、請求項4、7、8のうちいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項10】
各アンテナ(4)の前記エバネッセントフィルターの第2端の直径(d)は、前記信号の公称半波長よりも小さい、請求項1から9のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項11】
一体として製造された、請求項1から10のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項12】
少なくとも2種類の金属又はポリマーコア(15)を3D印刷し、各アンテナの少なくとも前記内面に導電層(16)を堆積することにより製造された、請求項1から11のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項13】
複数の前記突起(3)の各突起(3)が、信号伝送方向において、第1表面及び第2表面を備え、前記第1表面(30)は、傾斜表面として、前記第2表面(31)に対して傾斜している、請求項12に記載のアンテナアレイ。
【請求項14】
各突起(3)の前記傾斜表面(30)は、前記アンテナ(1)の長手方向軸線に垂直な平面に対して斜めであることを特徴とする、請求項13に記載のアンテナアレイ。
【請求項15】
各突起(3)の前記傾斜表面(30)は、前記内面に対する角度(α)が20°から80°の間、好ましくは20°から40°の間であることを特徴とする、請求項13又は14に記載のアンテナアレイ。
【請求項16】
各アンテナ(1)の前記チャネル(11)が、前記チャネルの長手方向軸線において円形、正方形、長方形、六角形又は八角形の断面を持ち、複数の前記突起は前記チャネル(11)の3つの面に沿って配置されていることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項17】
各アンテナ(1)の前記チャネル(11)が、前記チャネルの長手方向軸線に直交する円形断面を持ち、
前記突起が、120°の間隔で配置された3本の線に沿って配置されていることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項18】
各アンテナ(1)の前記チャネル(11)が、前記チャネルの長手方向軸線に対して直交する断面が前記長手方向軸線を中心とする120°の回転に対して不変であり、
前記突起が、120°の間隔で配置されている
ことを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項19】
少なくとも2つのアンテナ(1)の周期性が、前記信号の公称波長の80%以下である、請求項1から18のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項20】
前記長手方向の隆起部が120°の間隔で配置されている、請求項4に記載のアンテナアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重偏波アンテナアレイに関し、特に、各二重偏波アンテナが、偏波部及びエバネッセントフィルターを一体化しているものに関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナは、電磁信号を自由空間に送信する、又はそのような信号を受信するのに使われる部品である。ダイポールのような単純なアンテナは、利得及び指向性の点で限られた性能しか持たない。パラボラアンテナは指向性が高いが、かさばり、重いため、重量及び体積を減らす必要がある人工衛星のような用途には適さない。
【0003】
また、利得及び指向性を改善するために、複数の放射素子(アンテナ素子)を位相をずらして組み合わせたアンテナアレイも知られている。様々な放射素子で受信された信号又は放射された信号は、増幅され、位相シフトされ、アレイの受信ローブ及び送信ローブの形状を制御する。
【0004】
2つの偏波を持つ信号を同時に送受信できる二重偏波アンテナも知られている。この場合、各アンテナ素子によって送信又は受信された信号は、偏波子によって、それぞれ偏波に従って結合され、分離される。偏波子はアンテナ素子内に一体にし得る。二重偏波アンテナは、2つの偏波のそれぞれを電子回路又は導波管に別々に接続するための2つのポートを持つ。
【0005】
さらに、衛星又は航空機で利用可能に縮小された容積に収容できるように、アンテナのサイズ、特に信号伝送方向に垂直な平面における幅及び高さを小さくすることがしばしば必要である。
【0006】
高周波、特にマイクロ波周波数を送信するこのようなアンテナは、設計が困難である。特に、全体の設置面積を小さくし、かつ優先されるべき送信方向又は受信方向以外の方向の二次的な送信ローブ又は受信ローブの振幅を減衰させるために、アレイの個々の素アンテナを可能な限り近接して配置することが望ましい場合が多い。しかし、このように素アンテナのサイズ及び間隔を小さくすると、送信信号の一部がアンテナ又は別のポートに反射するという問題が生じる。その結果、送信エネルギーの伝達効率が低下し、他のポートで送信される信号によって各ポートが妨害される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3147992号明細書
【特許文献2】米国特許第7746190号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなアンテナを設計する目的の1つは、特に宇宙及び航空用途において、その重量を低減することでもある。
【0009】
左旋円偏波(LHCP)及び右旋円偏波(RHCP)の衛星通信に適したアンテナを提供することも目的の一つである。
【0010】
最後に、アンテナ全体を再設計することなく、必要に応じて素子アンテナの数を変更できるモジュール設計を持つアンテナを製造することも望ましい。アンテナ又は導波管アレイ全体を再設計することなく、アンテナ設計段階で標準化されたアンテナ素子を追加又は削除することにより、異なるタイプのアンテナを容易に設計できる場合、設計はモジュール式であるという。
【0011】
当然ながら、アンテナは用途の仕様に適合した非常に高い効率、利得及び放射パターン特性を持たなければならない。
【0012】
最後に、既存の特許の保護範囲に入ることなく、アンテナを工業的に製造することが可能でなければならない。
【0013】
本発明の1つの目的は、既知のアンテナの制限から解放された二重偏波を持つアンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、これらの目的は、二重偏波を持つアンテナを複数備えるアンテナアレイによって特に達成される。このアンテナアレイの各アンテナは、
第1偏波を持つ第1信号用の少なくとも1つの第1ポートと、
第2偏波を持つ第2信号用の少なくとも1つの第2ポートと、
前記第1ポートの信号を前記第2ポートの信号に組み合わせるセプタムを備える偏波部と、
偏波保持エバネッセントフィルターであって、そのの一端は前記偏波部に直接結合され、他端はエーテルに直接結合されていて、前記エバネッセントフィルターが、前記アンテナのインピーダンスを前記エーテルのインピーダンスに整合させる突起を備えて設けられた内面を少なくとも1面持つ内部のチャネルを備えた、偏波保持エバネッセントフィルターと
を備えている。
【0015】
二重偏波信号をフィルタリングする偏波保持フィルターは、そのようなものとして知られている。このようなフィルターの一例が特許文献1(EP3147992A1)に記載されている。しかし、このフィルターはエバネッセントフィルターではなく、エーテルに結合することを意図していない。さらに、このフィルターはサブ波長でもない。
【0016】
エバネッセントモード導波路フィルター(「エバネッセントモードフィルター」)もそれ自体知られている。このようなフィルターの一例が特許文献2(US7746190B2)に記載されている。しかし、このフィルターは単一の入力を持ち、下流の偏波部と結合することは意図されていない。また、下流のエーテルに結合することも意図されていない。
【0017】
エバネッセントフィルターは、一般に、入力ポートと出力ポートとの間で電磁エネルギーを伝送する中空導波管で構成される。エバネッセントモードフィルターは、高い選択性を持ち、重量及び嵩が低減されるという有利点を持つ。エバネッセントフィルターは、通常、2つの部品間、例えば2つの導波管区間の間で使われるが、アンテナの放射素子の出力では使用されない。一般に、エバネッセントフィルターにおいてエーテルとの直接結合は意図されていない。
【0018】
(本発明の)アレイの各アンテナの出力にあるエバネッセントフィルターは、アンテナの出力インピーダンスをエーテルの出力インピーダンスに整合できるようにし、それにより、アンテナとエーテルとの間の界面における送信信号の反射を制限するこことで、アンテナからエーテルへのエネルギー伝達を最大にする。
【0019】
この内部のチャネルの直径(すなわち、その断面の最大寸法)は、各アンテナが設計される信号の公称波長よりも小さい。
【0020】
この内部のチャネルの直径(すなわち、その断面の最大の寸法)は、各アンテナが送信するように設計されている信号の最小波長(「公称最小波長」)よりも小さい。
【0021】
セプタムは、好ましくは、各アンテナのエーテル側の端部まで延在していない。
【0022】
各エバネッセントフィルターは、導波管チャネル内に対称的に配置された多数の連続する突起を備えてよい。これらの突起はインピーダンスを形成し、チャネルの容量と組み合わせて共振フィルターを形成する。
【0023】
各偏波部は、セプタムに加えて、2つの隆起部、3つの隆起部、もしくはより多数の長手方向の隆起部を持ってよい。
【0024】
これらの隆起部は、好ましくはアンテナのエーテル側の端部まで延在していない。
【0025】
エーテル側の各アンテナの最後の区間は、有利にはセプタム及び隆起部がなく、インピーダンス整合のため、偏波部とエーテルとの間にアイリス(絞り)を形成する。
【0026】
エーテル側の各アンテナの最後の区間は、有利には突起がなく、インピーダンス整合のため、偏波部とエーテルとの間にアイリスを形成する。
【0027】
各エバネッセントフィルターは、長手方向に沿って、例えばフィルターチャネル内の3本又は4本の長手方向線に沿って配置されたいくつかの連続した突起を持って設けられ得る。
【0028】
隆起部の延長上に、これら長手方向の線があってよい。
【0029】
したがって、これらの突起が、3個又は4個の不連続な隆起部を形成し得る。
【0030】
各アンテナは、好ましくはサブ波長である。
【0031】
各エバネッセントフィルターの第2端部の直径は、前記信号の公称半波長よりも小さくてよい。
【0032】
このタイプのアンテナは特にコンパクトであるが、送信信号が別のポートに向かって不要に反射する危険性が増大する。エバネッセントフィルターは、不要な反射のリスクを伴わずに直径を小さくできるようにする。
【0033】
エバネッセントフィルターの突起は、各々、信号伝送方向において第1表面及び第2表面を備えてよく、第1表面は第2表面に対して傾斜している。
【0034】
各突起の傾斜表面は、アンテナの長手方向軸線に垂直な平面に対して斜めにしてよい。
【0035】
各突起の傾斜面は、前記内部面に対して20°から80°の間、好ましくは20°から40°の間の角度(α)を形成し得る。
【0036】
各アンテナのフィルターチャネルは、その長手方向軸線に直交する円形、正方形、長方形、六角形又は八角形の断面を備え得る(隆起部又は突起を無視する)。
【0037】
突起は、チャネルの3辺に沿って配置し得る。
【0038】
突起は、チャネルの四辺に沿って配置し得る。
【0039】
各アンテナのエバネッセントフィルターは、好ましくはフレア状ではない。従って、その内部チャネルの断面は、これらの内部チャネル断面の表面積を減少させる突起を持つことを除いて、その長手方向軸線に沿って実質的に一定である。
【0040】
アンテナアレイは、好ましくは、アンテナアレイの周期性が、各アンテナによって送受信される信号の公称波長の80%以下であるという点で小型化されている。
【0041】
アレイ内の各アンテナのチャネルは、有利には、チャネルの長手方向軸線周りの120°の回転に対して不変な断面を備え、120°の間隔で設けられた突起部と、長手方向の隆起部との少なくとも一方を持つ。
【0042】
有利には、アンテナアレイは一体として(モノリシックに)製造される。
【0043】
アンテナアレイの各アンテナは、有利には、金属又はポリマーコアの3D印刷によって製造され、その後、少なくともアンテナの内部面に導電層が堆積されている。
【0044】
第1ポートは、第1導波路に接続する第1フランジを備えて取り付けられたものであり得る。第2ポートは、第2導波路に接続する第2フランジを備えて設けられたものであり得る。
【0045】
両方のフランジは、3D印刷されたものであり得る。
【0046】
各アンテナは、例えば、レーザー又は電子ビームが粉末状材料の複数の薄層を融合又は焼結させるSLMタイプの付加製造工程を含むプロセスによって製造し得る。
【0047】
積層造形は、このようにして製造されたアンテナについて、層に焼結された金属粒の構造の分析によって観察できる。
【0048】
金属積層造形は、少ない組立工程又は組立工程を持たない、複雑な形状の製造を可能にし、その結果、製造費を削減する。
【0049】
また、積層造形は、構成部品(サブコンポーネント)間の組立手段を持たない、又は数を減らしてアンテナを製造可能にし、これによりアンテナの重量の低減も可能にする。
【0050】
導波路装置は、付加印刷による製造が知られている。しかし、エバネッセントフィルターの複雑な形状は、多くの片持ち梁面、特に共振器の空隙の屋根を形成する面があるため、積層造形には適していない。
【0051】
ほとんどの付加印刷プロセス、及び特に選択的レーザー溶融(SLM)プロセスは、片持ち梁として堆積された新しい層のたるみのリスクを回避するために、例えば20°又は40°の最小角度が課されている。そのため、エバネッセントフィルターの特定の部分を印刷すること、又は少なくとも所望の精度で印刷することは不可能である。
【0052】
したがって、これらの欠点を回避するために、高精度の付加印刷を容易にする従来とは異なる形状を持つエバネッセントフィルターを備えたアンテナの製造に付加印刷の使用が提案される。
【0053】
第1信号はRHCP信号とし得る。第2信号はLHCP信号とし得る。
【0054】
本発明の実施例は、添付の図によって示される説明に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】
図1は、エバネッセントフィルターのない二重偏波アンテナの断面を示す。
【
図2】
図2は、二重偏波を持ち、エバネセントフィルターのあるアンテナの透視図である。
【
図4】
図4は、二重偏波を持つアンテナの別の変形例を示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、縦断面で見たアンテナアレイの二重偏波アンテナ1を概略的に示している。このアンテナは、3D印刷されたコア15を備え、その少なくとも内部面はメタライゼーション16を持つ。コアは金属製、もしくはポリマー又はセラミックといった絶縁材料製とし得る。メタライゼーション16はアンテナの外面にも施し得る。
【0057】
本発明のアレイのアンテナは本質的に同一であるので、用語「アンテナ」は、本明細書を通じて「アンテナアレイの各アンテナ」の意味で理解されたい。
【0058】
アンテナは、アンテナの一端の開口部10に開口する長手方向のチャネル11を備えて提供される。チャネル11の断面(隆起、突起及びセプタムを無視した断面)は、例えば、正方形、長方形、円形、楕円形、六角形、八角形、五角形などとしてよい。
【0059】
チャネル11は、セプタム2によって2つの室12及び室13に分割される。
第1室12は、第1偏波を持つ第1信号P1の受信用の第1ポート17に開口している。第2室13は、第2偏波を持つ第2信号P2の受信用の第2ポート18に開口している。偏波は円偏波であり得る。第2偏波は、第1偏波と直交するものとしてよい。第1信号は、左旋円偏波(LHCP)信号としてよい。第2信号は、右旋円偏波(RHCP)信号としてよい。2つの信号P1及び信号P2は、アンテナ出力において結合し、エーテルに送信される単一の二重偏波信号を形成する。
【0060】
「エーテル」という用語は、本願の文脈では、アンテナの外側の自由空間、そこではアンテナによって放射された信号が伝搬する、自由空間の意味で使われる。特に、これは、エーテル側のアンテナの端部に結合されることを意図した装置がないことを意味する。よって、エーテルとは、例えば、アンテナが軌道を周回する衛星に搭載されている場合には、宇宙空間そのものに相当するかもしれないが、より一般的には、エーテルとは、アンテナの外側のあらゆる自由空間を指す。エーテルは、アンテナを取り囲む空間の特性に依存する独自のインピーダンスを持っている。
【0061】
この配置に関連する1つの問題は、送信信号の一部の反射に関するものである。
図1に矢印と共に示すように、第1信号P1の一部P11のみがエーテルに向かって拡散され、別の一部P12はアンテナ出力で反射され、開口部12、又は開口部13にさえ戻る。その結果、実際に送信される信号P11のパワーが低下し、そしてチャネル11の信号が乱れる。
【0062】
アンテナがサブ波長である場合、すなわちアンテナ1の出力における開口部10の直径が送信される公称信号の波長の半分以下である場合、問題は増幅される。また、アンテナのインピーダンスがエーテルを介した伝送路のインピーダンスと一致しない場合にも問題が増幅される。
【0063】
図2から
図4に概略的に示すアンテナは、アンテナ出力における送信信号のこの反射の解決、又は少なくとも減衰を可能にする。これらのアンテナの特性は、
図1との関連で上述したアンテナの特性と同一であり、上記の説明は、
図2から
図4のアンテナにも適用される。
【0064】
図2から
図4に示す実施形態と
図1に示すアンテナとの主な違いは、偏波部5の出力に直接取り付けられたエバネッセントフィルター4の存在であり、その出力開口部10はエーテルに直接結合されている。エバネッセントフィルターは、偏波信号P1及び偏波信号P2を組み合わせた二重偏波信号P1+2を放射する放射素子として直接作用する。このように、アンテナは、エバネッセントフィルター4に直接結合された偏波部5から構成される。
【0065】
エバネッセントフィルター4は、好ましくは、アンテナを通る信号の偏波を修正しない。
【0066】
偏波は円偏波であってもよい。
【0067】
偏波部5は
図1に関して記載された偏波部であってよい。しかし、その出力は、エーテルに結合されるのに替えて、エバネッセントフィルター4の入力に結合される。
【0068】
図2から
図4に示すアンテナ1の偏波部は、2つの入力ポート17及び入力ポート18を持ち、
図3の断面ではポート17のみが見られる。各ポートは、第1偏波又は第2偏波を持つ信号P1又は信号P2を受信可能である。各ポートは、
図4に示すように、それぞれフランジ170、フランジ180によって導波管に接続可能であり、もしくは例えば同軸ケーブルによって能動電子回路に直接接続可能である。
【0069】
2つのポート17、ポート18は、それぞれアンテナの内部のチャネル11の室12、室13に結合されている。これら2室はセプタム2によって互いに分離されている。
図3に見られるように、このセプタムの高さは、ポート17、ポート18から出力開口部10に向かって漸減又は段階的に減ってよい。
【0070】
偏波部5は、1つ又は複数の長手方向の隆起部に取り付けられてもよい。隆起部を使うことにより、コンパクトな装置で好ましい透過モードの透過を有利にすることが可能になる。
【0071】
一実施形態では、偏波部5は、セプタム2に加えて、2つの長手方向の隆起部19を持つ。2つの隆起部は、互いにかつセプタムに対して120°であり得る。2つの隆起部は、180°離れてかつセプタムの両側に90°あるものとしてよい。
【0072】
セプタム2に加えて2つの隆起部19を使うことにより、アンテナのシングルモード帯域幅が大幅に増加する。
【0073】
セプタム2に加えて2つの隆起部を持つ実施形態では、セプタムの両側にある2つの隆起部の120°の間隔により、チャネルの長手方向軸線周りの120°の回転に対して不変なチャネル形状が得られる。この隆起部の構成により、基本モードに対する高次モードの識別が著しく向上する。
【0074】
一実施形態では、偏波部は、セプタム2に加えて、3つの長手方向の隆起部19を持つ。この3つの隆起部は、互い及びセプタムに対して90°であり得る。
【0075】
3つより多い数の隆起部を使ってもよい。
【0076】
隆起部は直線状又はねじれた形状としてよい。
【0077】
隆起部19の半径方向の平均高さは、セプタム2のそれよりも小さい。隆起部の高さは、ポート17、ポート18から出力開口部10に向かって減少してもよい。
【0078】
図2から
図3に示す例では、偏波部5は、例えば右プリズムのような形状の外面を持つ。他の外形形状と、他のチャネル11の断面とを考慮し得る。偏波部の断面の形状は、その表面と同様に、
図2から
図4に示すように、エバネッセントフィルター4の方向に偏波部の入力から徐々に変わっていくようになっていてよい。
【0079】
本発明の文脈では、エバネッセントフィルターは、偏波部とエーテルとの間のインピーダンスアダプタとして見てよい。
【0080】
アレイが小型化されると、各エバネッセントフィルターの内部チャネルの直径は、もはやそのような信号伝搬を許容しない、すなわち、フィルター導波路はカットオフ周波数以下となる。したがって、フィルター内部チャネルの突起は、アンテナ内の信号伝搬に必要である。
【0081】
偏波部5の出力に結合されたエバネッセントフィルター4は、突起3(又は歯)を持つ。この目的のために、アンテナ1のチャネル11は、チャネル11の部分によって互いに離されている複数の突起3を備える。
【0082】
隣り合う突起3は、規則的又は変更可能なピッチpで対をなして長手方向に間隔をあけている。
【0083】
突起3は、エバネッセントフィルターの長手方向軸線の周りに対称的に配置され得る。
【0084】
突起3は、例えば偏波部の隆起部19にそろえて複数の列に配置され得る。
【0085】
突起3は、エーテル側のアンテナの端部まで延びていない。隆起部19は、エーテル側のアンテナの端まで延びていない。したがって、アンテナの内部のチャネルは、隆起部、突起部及びセプタムのない部分でエーテル側にて終端となっている。このアンテナの内部チャネルはエーテル側で空の部分を持って終わっていて、インピーダンス整合のために偏波部とエーテルとの間にアイリス(絞り)を形成する。
【0086】
図2から
図4に示す例では、エバネッセントフィルター4は、例えば円柱のような形状の外面を持ち、フィルター内のチャネル11は、フィルター部を形成する複数の突起を備える。他の外形形状及びチャネル11の他の部分も考えられる。
【0087】
正方形、長方形、六角形又は八角形の外形断面を持つアンテナ1を使い得る。同様に、突起の線の数は3本とは異ってよいが、上述の有利点の観点から3本が好ましい実施態様である。
【0088】
エバネッセントフィルターの断面形状は、関連する偏波部5の断面形状とは異ってよい。例えば、
図2及び
図3において、偏波部5は、長方形又は正方形の入力断面を持ち、これは、円形断面のエバネッセントフィルター4に直接結合するため、徐々に円形に変わっていく。
【0089】
突起3の幾何学的形状及びそれらの配置は、例えば、所望の帯域幅の関数としてコンピューティングソフトウェアによって決定し得る。計算された幾何学的形状は、コンピュータデータ媒体に格納され得る。
【0090】
エバネッセントフィルターは、両方のモードに対して同一の位相性能を持つことに注意することが重要である。これは、エバネッセントフィルターが偏波部として機能しないこと、すなわち、2つの偏光の位相がフィルター内で変化しないことを意味する。
【0091】
アンテナ1のコア15は、好ましくは、付加製造プロセスを用いて製造される。偏波部5及びエバネッセントフィルター4は、好ましくはモノリシックに(一体として)実現され、それらのコア15は単一の付加印刷ステップで製造される。本願において、「付加製造」という表現は、コンピュータ媒体に格納されていて、コアの幾何学的形状を定義するコンピュータデータに従い、材料を付加することによってコアを製造するあらゆるプロセスを指す。
【0092】
コア15は、例えば、SLM(選択的レーザー溶融)タイプの付加製造プロセスによって製造できる。コア15はまた、液体又は粉末硬化又は凝固のような他の付加製造法(ステレオリソグラフィ、結合剤噴射、DED(直接エネルギー堆積)、EBFF(電子ビーム自由造形)、FDM(溶融堆積モデリング)、PFF(プラスチックフリー造形)、エアロゾル、BPM(粒子製造)、SLS(選択的レーザー焼結)、ALM(付加積層造形)、ポリジェット、EBM(電子ビーム溶融)、光重合などに基づいた方法が含まれるが、限定はされない付加製造法)によって製造可能である。
【0093】
コアは、例えば、付加製造プロセスにおいて、紫外線照射によって硬化した液体ポリマーの複数の表面層によって作られたフォトポリマーであってもよい。
【0094】
コアは、レーザー又は電子ビームが粉末状材料の複数の薄層を溶融又は焼結するSLMタイプの付加製造プロセスによって、金属材料等の導電性材料から形成もし得る。
【0095】
一実施形態では、金属層16は、コア15の内壁面上に電気めっき又はガルバノプラスティ(金属物体を別の金属薄膜でコーティングする方法)によって膜として堆積される。金属化は、コアの内部面を導電層で覆う。
【0096】
金属層の塗布は、金属層の接着を促進するために、コアの内壁面に表面処理ステップを先行させてよい。表面処理には、表面粗さの増大と、中間接合層の堆積との少なくとも一方が含まれてよい。
【0097】
しかしながら、従来の付加製造プロセスは、従来のエバネッセントフィルター、特に、多数の突起3又は空洞を特徴とするフィルターには特に適していない。なぜなら、これらの突起の配置は、チャネル内に片持ち梁部分を生じさせ、これは、様々な層を印刷する際に維持するのが困難であるからである。そのため、これらの片持ち梁部分の補強材を積層造形プロセス中に配置して、これらの部品が重力の影響で崩壊するのを防ぐ必要がある。
【0098】
一態様では、そしてこの欠点の改善のため、アンテナ1は、チャネル11の長手方向軸線zを垂直位置、又は少なくとも実質的に垂直位置に備えて印刷し得る。
【0099】
別の態様では、チャネル11の突起3は、垂直位置での付加印刷を容易にするように設計され得る。従って、各突起3は、フィルターが垂直位置で製造されるときに片持ち梁となる面を備え得る。
図2及び
図3に示す例では、突起3の面30は、付加製造時に片持ち梁になっている。突起3の天面31は、チャネル11の長手方向軸線に実質的に垂直な平面、すなわち製造時の水平面内に延在し得る。代替的に、天面31はこの平面に対して傾斜していてもよい。
【0100】
付加印刷を可能にするために、印刷中の片持ち下面30は、垂直製造位置において水平に対して傾斜され得る。好ましい実施形態では、下面30は、水平に対して20°と80°との間、及び好ましくは20°と40°との間である角度αを形成する。
【0101】
この実施例によるアンテナ1の幾何学的構成は、コアの製造工程中に、重力の影響によるコアの一部のたるみの回避用の補強材に頼ることなく、重力とは反対の垂直方向でコアを付加製造プロセスによる製造を可能にするという有利点を持つ。実際、好ましくは、片持ち梁面30の水平に対する角度αは、印刷中に硬化する前に重ね合わされた層が接着するのに十分である。
【0102】
実施例に示した突起3は、例えば三角形又は台形の形状の多角形の縦断面を持つ。しかしながら、例えば、断面において丸みを帯びた部分(起伏)を持つ突起を含む、他の突起又は歯の形状も想像できる。
【0103】
実施例に示した突起3は、一定の寸法、特に一定の深さ及び高さを持つ。しかし、値を変更できる深さと高さとの少なくとも一方を持つクレネレーション(所々隙間が設けられた壁のようなところ)と、歯との少なくとも一方を作ってもよい。加えて、連続するクレネレーション又は歯の間のピッチpは決まった値にしなくてよい。
【0104】
一実施形態では、アンテナアレイの各アンテナ1のチャネル11は、長手方向軸線に対して120°の回転に対して不変であるチャネルの長手方向軸線に直交する断面を持っている。これは、特に、突起が120°離れている場合と、偏波部が120°離れている3つの長手方向の隆起部との少なくとも一方を持つ場合である。
【0105】
チャネル断面の120°回転不変性はまた、チャネル形状に制限を課す。したがって、チャネル断面の外部輪郭は、例えば、円形、三角形、六角形などである。
【0106】
本発明のアンテナアレイは、少なくとも2つのアンテナ1を備えるが、一般的には、平行かつ連続して配置された数十のアンテナ1を備えることを意図している。このようなアンテナ配列において、アレイの周期性は、アレイ内の連続する2つのアンテナの中心を隔てる距離を意味し、この距離は、通常、エーテル側のアンテナの開口部を備える平面において測定される。
【0107】
特定の実施形態では、アンテナアレイの周期性は、各アンテナによる放射又は送信が意図される信号の公称波長の80%以下である。この値は、一般に、隣りのアンテナに向かう信号の反射が問題となるしきい値を構成する。
【符号の説明】
【0108】
1 二重偏波を持つアンテナ
2 セプタム
3 隆起
4 エバネセントフィルター
5 セプタム偏波部
10 開口部
11 内部のチャネル
12 室
13 室
15 コア
16 メタライゼーション
17 第1ポート
18 第2ポート
30 突起の下面
31 突起の天面
170 第1フランジ
180 第2フランジ
P1 第1信号
P2 第2信号
P1+2 二重偏波信号
【手続補正書】
【提出日】2024-04-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重偏
波を持つアンテ
ナを、少なくとも2つ備え
て一体として製造されたアンテナアレイであって、各アンテナが、
第1偏
波を持つ第1信号用の少なくとも1つの第1ポー
トと、
第2偏
波を持つ第2信号用の少なくとも1つの第2ポー
トと、
少なくとも1つの前記第1ポートの信号を
少なくとも1つの前記第2ポートの信号に組み合わせるセプタ
ムを備える偏波
部と、
偏波保持エバネッセントフィルタ
ーであって、前記偏波保持エバネッセントフィルタ
ーの一端が前記偏波部に直接結合されていて、前記偏波保持エバネッセントフィルタ
ーの他端が
、前記アンテナの外部の自由空間であり前記アンテナの放射要素として機能するエーテルに直接結合されていて、前記エバネッセントフィルターが、前記アンテ
ナのインピーダンスを前記エーテルのインピーダンスに整合させる突
起を備えて設けられた内面を少なくとも1面持つ内部のチャネ
ルを備えた、偏波保持エバネッセントフィルタ
ーと
を備えた、アンテナアレイ。
【請求項2】
各アンテナの前記内部のチャンネ
ルの直径は、前記アンテナが設計された信号の公称波長よりも小さい、請求項1に記載のアンテナアレイ。
【請求項3】
前記セプタムは前記エーテルの側の前記アンテナの端まで延在していない、請求項
1に記載のアンテナアレイ。
【請求項4】
前記偏波
部は、前記セプタ
ムに加えて、長手方向の隆起
部を備えて設けられている、請求項
1に記載のアンテナアレイ。
【請求項5】
前記長手方向の隆起
部は、前記エーテルの側の各アンテナの端まで延在していない、請求項4に記載のアンテナアレイ。
【請求項6】
前記エバネッセントフィルタ
ーは、長手方向の線に沿って連続する複数の突
起を備えて設けられている、請求項
1に記載のアンテナアレイ。
【請求項7】
前記突
起は、前記エーテルの側の各アンテナの端まで延在していない、請求項6に記載のアンテナアレイ。
【請求項8】
前記突起は、3本又は4本の長手方向の線に沿って配置されている、請求項7に記載のアンテナのアレイ。
【請求項9】
各アンテ
ナの前記エバネッセントフィルターの第2端の直
径は、前記信号の公称半波長よりも小さい、請求項
1に記載のアンテナアレイ。
【請求項10】
少なくとも2種類の金属又はポリマーコ
アを3D印刷し、各アンテナの少なくとも前記内面に導電
層を堆積することにより製造された、請求項
1に記載のアンテナアレイ。
【請求項11】
複数の前記突
起の各突
起が、信号伝送方向において、第1表面及び第2表面を備え、前記第1表
面は、傾斜表面として、前記第2表
面に対して傾斜している、請求項1
0に記載のアンテナアレイ。
【請求項12】
各突
起の前記傾斜表
面は、前記アンテ
ナの長手方向軸線に垂直な平面に対して斜めであ
る、請求項1
1に記載のアンテナアレイ。
【請求項13】
各突
起の前記傾斜表
面は、前記内面に対する角
度が20°から80°の間、好ましくは20°から40°の間であ
る、請求項
11に記載のアンテナアレイ。
【請求項14】
各アンテ
ナの前記チャネ
ルが、前記チャネルの長手方向軸線に対して直交する断面が前記長手方向軸線を中心とする120°の回転に対して不変であり、
前記突起が、120°の間隔で配置されてい
る、請求項
1に記載のアンテナアレイ。
【請求項15】
少なくとも2つのアンテ
ナの周期性が、前記信号の公称波長の80%以下である、請求項
1に記載のアンテナアレイ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重偏波アンテナアレイに関し、特に、各二重偏波アンテナが、偏波部及びエバネッセントフィルターを一体化しているものに関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナは、電磁信号を自由空間に送信する、又はそのような信号を受信するのに使われる部品である。ダイポールのような単純なアンテナは、利得及び指向性の点で限られた性能しか持たない。パラボラアンテナは指向性が高いが、かさばり、重いため、重量及び体積を減らす必要がある人工衛星のような用途には適さない。
【0003】
また、利得及び指向性を改善するために、複数の放射素子(アンテナ素子)を位相をずらして組み合わせたアンテナアレイも知られている。様々な放射素子で受信された信号又は放射された信号は、増幅され、位相シフトされ、アレイの受信ローブ及び送信ローブの形状を制御する。
【0004】
2つの偏波を持つ信号を同時に送受信できる二重偏波アンテナも知られている。この場合、各アンテナ素子によって送信又は受信された信号は、偏波子によって、それぞれ偏波に従って結合され、分離される。偏波子はアンテナ素子内に一体にし得る。二重偏波アンテナは、2つの偏波のそれぞれを電子回路又は導波管に別々に接続するための2つのポートを持つ。
【0005】
さらに、衛星又は航空機で利用可能に縮小された容積に収容できるように、アンテナのサイズ、特に信号伝送方向に垂直な平面における幅及び高さを小さくすることがしばしば必要である。
【0006】
高周波、特にマイクロ波周波数を送信するこのようなアンテナは、設計が困難である。特に、全体の設置面積を小さくし、かつ優先されるべき送信方向又は受信方向以外の方向の二次的な送信ローブ又は受信ローブの振幅を減衰させるために、アレイの個々の素アンテナを可能な限り近接して配置することが望ましい場合が多い。しかし、このように素アンテナのサイズ及び間隔を小さくすると、送信信号の一部がアンテナ又は別のポートに反射するという問題が生じる。その結果、送信エネルギーの伝達効率が低下し、他のポートで送信される信号によって各ポートが妨害される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3147992号明細書
【特許文献2】米国特許第7746190号明細書
【特許文献3】米国特許第9478838号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第3618172号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2020/381794号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなアンテナを設計する目的の1つは、特に宇宙及び航空用途において、その重量を低減することでもある。
【0009】
左旋円偏波(LHCP)及び右旋円偏波(RHCP)の衛星通信に適したアンテナを提供することも目的の一つである。
【0010】
最後に、アンテナ全体を再設計することなく、必要に応じて素子アンテナの数を変更できるモジュール設計を持つアンテナを製造することも望ましい。アンテナ又は導波管アレイ全体を再設計することなく、アンテナ設計段階で標準化されたアンテナ素子を追加又は削除することにより、異なるタイプのアンテナを容易に設計できる場合、設計はモジュール式であるという。
【0011】
当然ながら、アンテナは用途の仕様に適合した非常に高い効率、利得及び放射パターン特性を持たなければならない。
【0012】
最後に、既存の特許の保護範囲に入ることなく、アンテナを工業的に製造することが可能でなければならない。
【0013】
特許文献3は、第1のセプタム偏波部と、第1の偏波部と同軸に結合された円形断面を持つ第2の偏波部とを備え、第1の偏波部によって生成された信号の位相を調整できるように、2つの偏波部を同軸方向に相対的に回転させることができるオルソモードカプラを開示している。
【0014】
特許文献4は、アンテナ装置及びアンテナアレイ装置を開示し、セプタム偏波部を備え、その一方の内側面は、装置の軸比の改善を意図した突起を持つ。
【0015】
特許文献5は、4つの長手方向の隆起部及び偏波部チャネルから内側に突出する部分を持つセプタム偏波部を開示し、この突出部分は、セプタムの最も広い部分のすぐそばの偏波部の内壁に配置されている。
【0016】
本発明の1つの目的は、既知のアンテナの制限から解放された二重偏波を持つアンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明では、これらの目的は、二重偏波を持つアンテナを複数備えるアンテナアレイによって特に達成される。このアンテナアレイの各アンテナは、
第1偏波を持つ第1信号用の少なくとも1つの第1ポートと、
第2偏波を持つ第2信号用の少なくとも1つの第2ポートと、
前記第1ポートの信号を前記第2ポートの信号に組み合わせるセプタムを備える偏波部と、
偏波保持エバネッセントフィルターであって、そのの一端は前記偏波部に直接結合され、他端はエーテルに直接結合されていて、前記エバネッセントフィルターが、前記アンテナのインピーダンスを前記エーテルのインピーダンスに整合させる突起を備えて設けられた内面を少なくとも1面持つ内部のチャネルを備えた、偏波保持エバネッセントフィルターと
を備えている。
【0018】
二重偏波信号をフィルタリングする偏波保持フィルターは、そのようなものとして知られている。このようなフィルターの一例が特許文献1(EP3147992A1)に記載されている。しかし、このフィルターはエバネッセントフィルターではなく、エーテルに結合することを意図していない。さらに、このフィルターはサブ波長でもない。
【0019】
エバネッセントモード導波路フィルター(「エバネッセントモードフィルター」)もそれ自体知られている。このようなフィルターの一例が特許文献2(US7746190B2)に記載されている。しかし、このフィルターは単一の入力を持ち、下流の偏波部と結合することは意図されていない。また、下流のエーテルに結合することも意図されていない。
【0020】
エバネッセントフィルターは、一般に、入力ポートと出力ポートとの間で電磁エネルギーを伝送する中空導波管で構成される。エバネッセントモードフィルターは、高い選択性を持ち、重量及び嵩が低減されるという有利点を持つ。エバネッセントフィルターは、通常、2つの部品間、例えば2つの導波管区間の間で使われるが、アンテナの放射素子の出力では使用されない。一般に、エバネッセントフィルターにおいてエーテルとの直接結合は意図されていない。
【0021】
(本発明の)アレイの各アンテナの出力にあるエバネッセントフィルターは、アンテナの出力インピーダンスをエーテルの出力インピーダンスに整合できるようにし、それにより、アンテナとエーテルとの間の界面における送信信号の反射を制限するこことで、アンテナからエーテルへのエネルギー伝達を最大にする。
【0022】
この内部のチャネルの直径(すなわち、その断面の最大寸法)は、各アンテナが設計される信号の公称波長よりも小さい。
【0023】
この内部のチャネルの直径(すなわち、その断面の最大の寸法)は、各アンテナが送信するように設計されている信号の最小波長(「公称最小波長」)よりも小さい。
【0024】
セプタムは、好ましくは、各アンテナのエーテル側の端部まで延在していない。
【0025】
各エバネッセントフィルターは、導波管チャネル内に対称的に配置された多数の連続する突起を備えてよい。これらの突起はインピーダンスを形成し、チャネルの容量と組み合わせて共振フィルターを形成する。
【0026】
各偏波部は、セプタムに加えて、2つの隆起部、3つの隆起部、もしくはより多数の長手方向の隆起部を持ってよい。
【0027】
これらの隆起部は、好ましくはアンテナのエーテル側の端部まで延在していない。
【0028】
エーテル側の各アンテナの最後の区間は、有利にはセプタム及び隆起部がなく、インピーダンス整合のため、偏波部とエーテルとの間にアイリス(絞り)を形成する。
【0029】
エーテル側の各アンテナの最後の区間は、有利には突起がなく、インピーダンス整合のため、偏波部とエーテルとの間にアイリスを形成する。
【0030】
各エバネッセントフィルターは、長手方向に沿って、例えばフィルターチャネル内の3本又は4本の長手方向線に沿って配置されたいくつかの連続した突起を持って設けられ得る。
【0031】
隆起部の延長上に、これら長手方向の線があってよい。
【0032】
したがって、これらの突起が、3個又は4個の不連続な隆起部を形成し得る。
【0033】
各アンテナは、好ましくはサブ波長である。
【0034】
各エバネッセントフィルターの第2端部の直径は、前記信号の公称半波長よりも小さくてよい。
【0035】
このタイプのアンテナは特にコンパクトであるが、送信信号が別のポートに向かって不要に反射する危険性が増大する。エバネッセントフィルターは、不要な反射のリスクを伴わずに直径を小さくできるようにする。
【0036】
エバネッセントフィルターの突起は、各々、信号伝送方向において第1表面及び第2表面を備えてよく、第1表面は第2表面に対して傾斜している。
【0037】
各突起の傾斜表面は、アンテナの長手方向軸線に垂直な平面に対して斜めにしてよい。
【0038】
各突起の傾斜面は、前記内部面に対して20°から80°の間、好ましくは20°から40°の間の角度(α)を形成し得る。
【0039】
各アンテナのフィルターチャネルは、その長手方向軸線に直交する円形、正方形、長方形、六角形又は八角形の断面を備え得る(隆起部又は突起を無視する)。
【0040】
突起は、チャネルの3辺に沿って配置し得る。
【0041】
突起は、チャネルの四辺に沿って配置し得る。
【0042】
各アンテナのエバネッセントフィルターは、好ましくはフレア状ではない。従って、その内部チャネルの断面は、これらの内部チャネル断面の表面積を減少させる突起を持つことを除いて、その長手方向軸線に沿って実質的に一定である。
【0043】
アンテナアレイは、好ましくは、アンテナアレイの周期性が、各アンテナによって送受信される信号の公称波長の80%以下であるという点で小型化されている。
【0044】
アレイ内の各アンテナのチャネルは、有利には、チャネルの長手方向軸線周りの120°の回転に対して不変な断面を備え、120°の間隔で設けられた突起部と、長手方向の隆起部との少なくとも一方を持つ。
【0045】
有利には、アンテナアレイは一体として(モノリシックに)製造される。
【0046】
アンテナアレイの各アンテナは、有利には、金属又はポリマーコアの3D印刷によって製造され、その後、少なくともアンテナの内部面に導電層が堆積されている。
【0047】
第1ポートは、第1導波路に接続する第1フランジを備えて取り付けられたものであり得る。第2ポートは、第2導波路に接続する第2フランジを備えて設けられたものであり得る。
【0048】
両方のフランジは、3D印刷されたものであり得る。
【0049】
各アンテナは、例えば、レーザー又は電子ビームが粉末状材料の複数の薄層を融合又は焼結させるSLMタイプの付加製造工程を含むプロセスによって製造し得る。
【0050】
積層造形は、このようにして製造されたアンテナについて、層に焼結された金属粒の構造の分析によって観察できる。
【0051】
金属積層造形は、少ない組立工程又は組立工程を持たない、複雑な形状の製造を可能にし、その結果、製造費を削減する。
【0052】
また、積層造形は、構成部品(サブコンポーネント)間の組立手段を持たない、又は数を減らしてアンテナを製造可能にし、これによりアンテナの重量の低減も可能にする。
【0053】
導波路装置は、付加印刷による製造が知られている。しかし、エバネッセントフィルターの複雑な形状は、多くの片持ち梁面、特に共振器の空隙の屋根を形成する面があるため、積層造形には適していない。
【0054】
ほとんどの付加印刷プロセス、及び特に選択的レーザー溶融(SLM)プロセスは、片持ち梁として堆積された新しい層のたるみのリスクを回避するために、例えば20°又は40°の最小角度が課されている。そのため、エバネッセントフィルターの特定の部分を印刷すること、又は少なくとも所望の精度で印刷することは不可能である。
【0055】
したがって、これらの欠点を回避するために、高精度の付加印刷を容易にする従来とは異なる形状を持つエバネッセントフィルターを備えたアンテナの製造に付加印刷の使用が提案される。
【0056】
第1信号はRHCP信号とし得る。第2信号はLHCP信号とし得る。
【0057】
本発明の実施例は、添付の図によって示される説明に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、エバネッセントフィルターのない二重偏波アンテナの断面を示す。
【
図2】
図2は、二重偏波を持ち、エバネセントフィルターのあるアンテナの透視図である。
【
図4】
図4は、二重偏波を持つアンテナの別の変形例を示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、縦断面で見たアンテナアレイの二重偏波アンテナ1を概略的に示している。このアンテナは、3D印刷されたコア15を備え、その少なくとも内部面はメタライゼーション16を持つ。コアは金属製、もしくはポリマー又はセラミックといった絶縁材料製とし得る。メタライゼーション16はアンテナの外面にも施し得る。
【0060】
本発明のアレイのアンテナは本質的に同一であるので、用語「アンテナ」は、本明細書を通じて「アンテナアレイの各アンテナ」の意味で理解されたい。
【0061】
アンテナは、アンテナの一端の開口部10に開口する長手方向のチャネル11を備えて提供される。チャネル11の断面(隆起、突起及びセプタムを無視した断面)は、例えば、正方形、長方形、円形、楕円形、六角形、八角形、五角形などとしてよい。
【0062】
チャネル11は、セプタム2によって2つの室12及び室13に分割される。
第1室12は、第1偏波を持つ第1信号P1の受信用の第1ポート17に開口している。第2室13は、第2偏波を持つ第2信号P2の受信用の第2ポート18に開口している。偏波は円偏波であり得る。第2偏波は、第1偏波と直交するものとしてよい。第1信号は、左旋円偏波(LHCP)信号としてよい。第2信号は、右旋円偏波(RHCP)信号としてよい。2つの信号P1及び信号P2は、アンテナ出力において結合し、エーテルに送信される単一の二重偏波信号を形成する。
【0063】
「エーテル」という用語は、本願の文脈では、アンテナの外側の自由空間、そこではアンテナによって放射された信号が伝搬する、自由空間の意味で使われる。特に、これは、エーテル側のアンテナの端部に結合されることを意図した装置がないことを意味する。よって、エーテルとは、例えば、アンテナが軌道を周回する衛星に搭載されている場合には、宇宙空間そのものに相当するかもしれないが、より一般的には、エーテルとは、アンテナの外側のあらゆる自由空間を指す。エーテルは、アンテナを取り囲む空間の特性に依存する独自のインピーダンスを持っている。
【0064】
この配置に関連する1つの問題は、送信信号の一部の反射に関するものである。
図1に矢印と共に示すように、第1信号P1の一部P11のみがエーテルに向かって拡散され、別の一部P12はアンテナ出力で反射され、開口部12、又は開口部13にさえ戻る。その結果、実際に送信される信号P11のパワーが低下し、及びチャネル11の信号が乱れる。
【0065】
アンテナがサブ波長である場合、すなわちアンテナ1の出力における開口部10の直径が送信される公称信号の波長の半分以下である場合、問題は増幅される。また、アンテナのインピーダンスがエーテルを介した伝送路のインピーダンスと一致しない場合にも問題が増幅される。
【0066】
図2から
図4に概略的に示すアンテナは、アンテナ出力における送信信号のこの反射の解決、又は少なくとも減衰を可能にする。これらのアンテナの特性は、
図1との関連で上述したアンテナの特性と同一であり、上記の説明は、
図2から
図4のアンテナにも適用される。
【0067】
図2から
図4に示す実施形態と
図1に示すアンテナとの主な違いは、偏波部5の出力に直接取り付けられたエバネッセントフィルター4の存在であり、その出力開口部10はエーテルに直接結合されている。エバネッセントフィルターは、偏波信号P1及び偏波信号P2を組み合わせた二重偏波信号P1+2を放射する放射素子として直接作用する。このように、アンテナは、エバネッセントフィルター4に直接結合された偏波部5から構成される。
【0068】
エバネッセントフィルター4は、好ましくは、アンテナを通る信号の偏波を修正しない。
【0069】
偏波は円偏波であってもよい。
【0070】
偏波部5は
図1に関して記載された偏波部であってよい。しかし、その出力は、エーテルに結合されるのに替えて、エバネッセントフィルター4の入力に結合される。
【0071】
図2から
図4に示すアンテナ1の偏波部は、2つの入力ポート17及び入力ポート18を持ち、
図3の断面ではポート17のみが見られる。各ポートは、第1偏波又は第2偏波を持つ信号P1又は信号P2を受信可能である。各ポートは、
図4に示すように、それぞれフランジ170、フランジ180によって導波管に接続可能であり、もしくは例えば同軸ケーブルによって能動電子回路に直接接続可能である。
【0072】
2つのポート17、ポート18は、それぞれアンテナの内部のチャネル11の室12、室13に結合されている。これら2室はセプタム2によって互いに分離されている。
図3に見られるように、このセプタムの高さは、ポート17、ポート18から出力開口部10に向かって漸減又は段階的に減ってよい。
【0073】
偏波部5は、1つ又は複数の長手方向の隆起部に取り付けられてもよい。隆起部を使うことにより、コンパクトな装置で好ましい透過モードの透過を有利にすることが可能になる。
【0074】
一実施形態では、偏波部5は、セプタム2に加えて、2つの長手方向の隆起部19を持つ。2つの隆起部は、互いにかつセプタムに対して120°であり得る。2つの隆起部は、180°離れてかつセプタムの両側に90°あるものとしてよい。
【0075】
セプタム2に加えて2つの隆起部19を使うことにより、アンテナのシングルモード帯域幅が大幅に増加する。
【0076】
セプタム2に加えて2つの隆起部を持つ実施形態では、セプタムの両側にある2つの隆起部の120°の間隔により、チャネルの長手方向軸線周りの120°の回転に対して不変なチャネル形状が得られる。この隆起部の構成により、基本モードに対する高次モードの識別が著しく向上する。
【0077】
一実施形態では、偏波部は、セプタム2に加えて、3つの長手方向の隆起部19を持つ。この3つの隆起部は、互い及びセプタムに対して90°であり得る。
【0078】
3つより多い数の隆起部を使ってもよい。
【0079】
隆起部は直線状又はねじれた形状としてよい。
【0080】
隆起部19の半径方向の平均高さは、セプタム2のそれよりも小さい。隆起部の高さは、ポート17、ポート18から出力開口部10に向かって減少してもよい。
【0081】
図2から
図3に示す例では、偏波部5は、例えば右プリズムのような形状の外面を持つ。他の外形形状と、他のチャネル11の断面とを考慮し得る。偏波部の断面の形状は、その表面と同様に、
図2から
図4に示すように、エバネッセントフィルター4の方向に偏波部の入力から徐々に変わっていくようになっていてよい。
【0082】
本発明の文脈では、エバネッセントフィルターは、偏波部とエーテルとの間のインピーダンスアダプタとして見てよい。
【0083】
アレイが小型化されると、各エバネッセントフィルターの内部チャネルの直径は、もはやそのような信号伝搬を許容しない、すなわち、フィルター導波路はカットオフ周波数以下となる。したがって、フィルター内部チャネルの突起は、アンテナ内の信号伝搬に必要である。
【0084】
偏波部5の出力に結合されたエバネッセントフィルター4は、突起3(又は歯)を持つ。この目的のために、アンテナ1のチャネル11は、チャネル11の部分によって互いに離されている複数の突起3を備える。
【0085】
隣り合う突起3は、規則的又は変更可能なピッチpで対をなして長手方向に間隔をあけている。
【0086】
突起3は、エバネッセントフィルターの長手方向軸線の周りに対称的に配置され得る。
【0087】
突起3は、例えば偏波部の隆起部19にそろえて複数の列に配置され得る。
【0088】
突起3は、エーテル側のアンテナの端部まで延びていない。隆起部19は、エーテル側のアンテナの端まで延びていない。したがって、アンテナの内部のチャネルは、隆起部、突起部及びセプタムのない部分でエーテル側にて終端となっている。このアンテナの内部チャネルはエーテル側で空の部分を持って終わっていて、インピーダンス整合のために偏波部とエーテルとの間にアイリス(絞り)を形成する。
【0089】
図2から
図4に示す例では、エバネッセントフィルター4は、例えば円柱のような形状の外面を持ち、フィルター内のチャネル11は、フィルター部を形成する複数の突起を備える。他の外形形状及びチャネル11の他の部分も考えられる。
【0090】
正方形、長方形、六角形又は八角形の外形断面を持つアンテナ1を使い得る。同様に、突起の線の数は3本とは異ってよいが、上述の有利点の観点から3本が好ましい実施態様である。
【0091】
エバネッセントフィルターの断面形状は、関連する偏波部5の断面形状とは異ってよい。例えば、
図2及び
図3において、偏波部5は、長方形又は正方形の入力断面を持ち、これは、円形断面のエバネッセントフィルター4に直接結合するため、徐々に円形に変わっていく。
【0092】
突起3の幾何学的形状及びそれらの配置は、例えば、所望の帯域幅の関数としてコンピューティングソフトウェアによって決定し得る。計算された幾何学的形状は、コンピュータデータ媒体に格納され得る。
【0093】
エバネッセントフィルターは、両方のモードに対して同一の位相性能を持つことに注意することが重要である。これは、エバネッセントフィルターが偏波部として機能しないこと、すなわち、2つの偏光の位相がフィルター内で変化しないことを意味する。
【0094】
アンテナ1のコア15は、好ましくは、付加製造プロセスを用いて製造される。偏波部5及びエバネッセントフィルター4は、好ましくはモノリシックに(一体として)実現され、それらのコア15は単一の付加印刷ステップで製造される。本願において、「付加製造」という表現は、コンピュータ媒体に格納されていて、コアの幾何学的形状を定義するコンピュータデータに従い、材料を付加することによってコアを製造するあらゆるプロセスを指す。
【0095】
コア15は、例えば、SLM(選択的レーザー溶融)タイプの付加製造プロセスによって製造できる。コア15はまた、液体又は粉末硬化又は凝固のような他の付加製造法(ステレオリソグラフィ、結合剤噴射、DED(直接エネルギー堆積)、EBFF(電子ビーム自由造形)、FDM(溶融堆積モデリング)、PFF(プラスチックフリー造形)、エアロゾル、BPM(粒子製造)、SLS(選択的レーザー焼結)、ALM(付加積層造形)、ポリジェット、EBM(電子ビーム溶融)、光重合などに基づいた方法が含まれるが、限定はされない付加製造法)によって製造可能である。
【0096】
コアは、例えば、付加製造プロセスにおいて、紫外線照射によって硬化した液体ポリマーの複数の表面層によって作られたフォトポリマーであってもよい。
【0097】
コアは、レーザー又は電子ビームが粉末状材料の複数の薄層を溶融又は焼結するSLMタイプの付加製造プロセスによって、金属材料等の導電性材料から形成もし得る。
【0098】
一実施形態では、金属層16は、コア15の内壁面上に電気めっき又はガルバノプラスティ(金属物体を別の金属薄膜でコーティングする方法)によって膜として堆積される。金属化は、コアの内部面を導電層で覆う。
【0099】
金属層の塗布は、金属層の接着を促進するために、コアの内壁面に表面処理ステップを先行させてよい。表面処理には、表面粗さの増大と、中間接合層の堆積との少なくとも一方が含まれてよい。
【0100】
しかしながら、従来の付加製造プロセスは、従来のエバネッセントフィルター、特に、多数の突起3又は空洞を特徴とするフィルターには特に適していない。なぜなら、これらの突起の配置は、チャネル内に片持ち梁部分を生じさせ、これは、様々な層を印刷する際に維持するのが困難であるからである。そのため、これらの片持ち梁部分の補強材を積層造形プロセス中に配置して、これらの部品が重力の影響で崩壊するのを防ぐ必要がある。
【0101】
一態様では、そしてこの欠点の改善のため、アンテナ1は、チャネル11の長手方向軸線zを垂直位置、又は少なくとも実質的に垂直位置に備えて印刷し得る。
【0102】
別の態様では、チャネル11の突起3は、垂直位置での付加印刷を容易にするように設計され得る。従って、各突起3は、フィルターが垂直位置で製造されるときに片持ち梁となる面を備え得る。
図2及び
図3に示す例では、突起3の面30は、付加製造時に片持ち梁になっている。突起3の天面31は、チャネル11の長手方向軸線に実質的に垂直な平面、すなわち製造時の水平面内に延在し得る。代替的に、天面31はこの平面に対して傾斜していてもよい。
【0103】
付加印刷を可能にするために、印刷中の片持ち下面30は、垂直製造位置において水平に対して傾斜され得る。好ましい実施形態では、下面30は、水平に対して20°と80°との間、及び好ましくは20°と40°との間である角度αを形成する。
【0104】
この実施例によるアンテナ1の幾何学的構成は、コアの製造工程中に、重力の影響によるコアの一部のたるみの回避用の補強材に頼ることなく、重力とは反対の垂直方向でコアを付加製造プロセスによる製造を可能にするという有利点を持つ。実際、好ましくは、片持ち梁面30の水平に対する角度αは、印刷中に硬化する前に重ね合わされた層が接着するのに十分である。
【0105】
実施例に示した突起3は、例えば三角形又は台形の形状の多角形の縦断面を持つ。しかしながら、例えば、断面において丸みを帯びた部分(起伏)を持つ突起を含む、他の突起又は歯の形状も想像できる。
【0106】
実施例に示した突起3は、一定の寸法、特に一定の深さ及び高さを持つ。しかし、値を変更できる深さと高さとの少なくとも一方を持つクレネレーション(所々隙間が設けられた壁のようなところ)と、歯との少なくとも一方を作ってもよい。加えて、連続するクレネレーション又は歯の間のピッチpは決まった値にしなくてよい。
【0107】
一実施形態では、アンテナアレイの各アンテナ1のチャネル11は、長手方向軸線に対して120°の回転に対して不変であるチャネルの長手方向軸線に直交する断面を持っている。これは、特に、突起が120°離れている場合と、偏波部が120°離れている3つの長手方向の隆起部との少なくとも一方を持つ場合である。
【0108】
チャネル断面の120°回転不変性はまた、チャネル形状に制限を課す。したがって、チャネル断面の外部輪郭は、例えば、円形、三角形、六角形などである。
【0109】
本発明のアンテナアレイは、少なくとも2つのアンテナ1を備えるが、一般的には、平行かつ連続して配置された数十のアンテナ1を備えることを意図している。このようなアンテナ配列において、アレイの周期性は、アレイ内の連続する2つのアンテナの中心を隔てる距離を意味し、この距離は、通常、エーテル側のアンテナの開口部を備える平面において測定される。
【0110】
特定の実施形態では、アンテナアレイの周期性は、各アンテナによる放射又は送信が意図される信号の公称波長の80%以下である。この値は、一般に、隣りのアンテナに向かう信号の反射が問題となるしきい値を構成する。
本願は例えば次の観点を提供する。
[観点1]
二重偏波(P1、P2)を持つアンテナ(1)を、少なくとも2つ備えるアンテナアレイであって、各アンテナが、
第1偏波(P1)を持つ第1信号用の少なくとも1つの第1ポート(17)と、
第2偏波(P2)を持つ第2信号用の少なくとも1つの第2ポート(18)と、
前記第1ポートの信号を前記第2ポートの信号に組み合わせるセプタム(2)を備える偏波部(5)と、
偏波保持エバネッセントフィルター(4)であって、前記偏波保持エバネッセントフィルター(4)の一端が前記偏波部に直接結合されていて、前記偏波保持エバネッセントフィルター(4)の他端がエーテルに直接結合されていて、前記エバネッセントフィルターが、前記アンテナ(1)のインピーダンスを前記エーテルのインピーダンスに整合させる突起(3)を備えて設けられた内面を少なくとも1面持つ内部のチャネル(11)を備えた、偏波保持エバネッセントフィルター(4)と
を備えた、アンテナアレイ。
[観点2]
各アンテナの前記内部のチャンネル(11)の直径は、前記アンテナが設計された信号の公称波長よりも小さい、観点1に記載のアンテナアレイ。
[観点3]
前記セプタムは前記エーテルの側の前記アンテナの端まで延在していない、観点1又は2に記載のアンテナアレイ。
[観点4]
前記偏波部(5)は、前記セプタム(2)に加えて、長手方向の隆起部(19)を備えて設けられている、観点1から3のいずれか一つに記載のアンテナアレイ。
[観点5]
前記長手方向の隆起部(19)は、前記エーテルの側の各アンテナの端まで延在していない、観点4に記載のアンテナアレイ。
[観点6]
前記エバネッセントフィルター(4)は、長手方向の線に沿って連続する複数の突起(3)を備えて設けられている、観点1から5のいずれか一つに記載のアンテナアレイ。
[観点7]
前記突起(3)は、前記エーテルの側の各アンテナの端まで延在していない、観点6に記載のアンテナアレイ。
[観点8]
前記突起は、3本又は4本の長手方向の線に沿って配置されている、観点7に記載のアンテナのアレイ。
[観点9]
前記長手方向の線は、前記長手方向の前記隆起部(19)の延長線上にある、観点4、7、8のうちいずれか一つに記載のアンテナアレイ。
[観点10]
各アンテナ(4)の前記エバネッセントフィルターの第2端の直径(d)は、前記信号の公称半波長よりも小さい、観点1から9のいずれか一つに記載のアンテナアレイ。
[観点11]
一体として製造された、観点1から10のいずれか一つに記載のアンテナアレイ。
[観点12]
少なくとも2種類の金属又はポリマーコア(15)を3D印刷し、各アンテナの少なくとも前記内面に導電層(16)を堆積することにより製造された、観点1から11のいずれか一つに記載のアンテナアレイ。
[観点13]
複数の前記突起(3)の各突起(3)が、信号伝送方向において、第1表面及び第2表面を備え、前記第1表面(30)は、傾斜表面として、前記第2表面(31)に対して傾斜している、観点12に記載のアンテナアレイ。
[観点14]
各突起(3)の前記傾斜表面(30)は、前記アンテナ(1)の長手方向軸線に垂直な平面に対して斜めであることを特徴とする、観点13に記載のアンテナアレイ。
[観点15]
各突起(3)の前記傾斜表面(30)は、前記内面に対する角度(α)が20°から80°の間、好ましくは20°から40°の間であることを特徴とする、観点13又は14に記載のアンテナアレイ。
[観点16]
各アンテナ(1)の前記チャネル(11)が、前記チャネルの長手方向軸線において円形、正方形、長方形、六角形又は八角形の断面を持ち、複数の前記突起は前記チャネル(11)の3つの面に沿って配置されていることを特徴とする、観点1から15のいずれか一つに記載のアンテナアレイ。
[観点17]
各アンテナ(1)の前記チャネル(11)が、前記チャネルの長手方向軸線に直交する円形断面を持ち、
前記突起が、120°の間隔で配置された3本の線に沿って配置されていることを特徴とする、観点1から16のいずれか一つに記載のアンテナアレイ。
[観点18]
各アンテナ(1)の前記チャネル(11)が、前記チャネルの長手方向軸線に対して直交する断面が前記長手方向軸線を中心とする120°の回転に対して不変であり、
前記突起が、120°の間隔で配置されている
ことを特徴とする、観点1から17のいずれか一つに記載のアンテナアレイ。
[観点19]
少なくとも2つのアンテナ(1)の周期性が、前記信号の公称波長の80%以下である、観点1から18のいずれか一つに記載のアンテナアレイ。
[観点20]
前記長手方向の隆起部が120°の間隔で配置されている、観点4に記載のアンテナアレイ。
【符号の説明】
【0111】
1 二重偏波を持つアンテナ
2 セプタム
3 隆起
4 エバネセントフィルター
5 セプタム偏波部
10 開口部
11 内部のチャネル
12 室
13 室
15 コア
16 メタライゼーション
17 第1ポート
18 第2ポート
30 突起の下面
31 突起の天面
170 第1フランジ
180 第2フランジ
P1 第1信号
P2 第2信号
P1+2 二重偏波信号
【国際調査報告】