(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】DOT1L分解のための小分子およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07H 19/14 20060101AFI20241010BHJP
C07H 19/16 20060101ALI20241010BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20241010BHJP
A61K 31/7064 20060101ALI20241010BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C07H19/14 CSP
C07H19/16
A61K31/7076
A61K31/7064
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522510
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 US2022046858
(87)【国際公開番号】W WO2023069348
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507183952
【氏名又は名称】ダナ-ファーバー キャンサー インスティテュート,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】チー, ジュン
(72)【発明者】
【氏名】シグア, ローガン エイチ.
【テーマコード(参考)】
4C057
4C086
【Fターム(参考)】
4C057AA03
4C057BB02
4C057CC03
4C057DD03
4C057LL03
4C057LL26
4C057LL31
4C057LL41
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086EA18
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本発明は、テロメアサイレンシング1様(DOT1L)活性の異常な撹乱物質によって媒介される疾患または状態を処置するための二官能性化合物、組成物、および方法に関する。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中断されていないC
4~C
20アルキレン鎖、または2~8個のPEG単位を含むポリエチレングリコール(PEG)鎖を含むリンカーによって、互いに共有結合した、テロメアサイレンシング1様の撹乱物質(DOT1L)に結合する部分およびデグロンを含む二官能性化合物であり、前記化合物が式(I):
【化1】
[式中:
R
1はH、ハロゲン、CH
3、CH
2F、CF
2H、CF
3、CN、またはNH
2を表し;
R
2は
【化2】
を表し;
デグロンは、セレブロン(CRBN)に結合するリガンドを表す]で表される構造を有する、二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項2】
R
1がHまたはCNである、請求項1に記載の二官能性化合物。
【請求項3】
構造:
【化3】
【化4】
のうちいずれか1つを有する、請求項1または2に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項4】
前記アルキレン鎖が、11~15個の連続したアルキレン単位を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の二官能性化合物。
【請求項5】
前記リンカーが、3つのPEG単位を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の二官能性化合物。
【請求項6】
前記リンカーが、-O-、-S-、-N(R’)-、-C≡C-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-C(NOR’)-、-C(O)N(R’)-、-C(O)N(R’)C(O)-、-C(O)N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)O-、-OC(O)N(R’)-、-C(NR’)-、-N(R’)C(NR’)-、-C(NR’)N(R’)-、-N(R’)C(NR’)N(R’)-、-OB(Me)O-、-S(O)
2-、-OS(O)-、-S(O)O-、-S(O)-、-OS(O)
2-、-S(O)
2O-、-N(R’)S(O)
2-、-S(O)
2N(R’)-、-N(R’)S(O)-、-S(O)N(R’)-、-N(R’)S(O)
2N(R’)-、-N(R’)S(O)N(R’)-、C
3~C
12カルボシクレン、3~12員ヘテロシクレン、および5~12員ヘテロアリーレンから選択される少なくとも1つの基をさらに含み、ここで、R’はHまたはC
1~C
6アルキレンであり、
前記基は同じであっても異なっていてもよい、請求項1~5のいずれか一項に記載の二官能性化合物。
【請求項7】
前記リンカーが、
【化5】
または
【化6】
基をさらに含む、請求項1に記載の二官能性化合物。
【請求項8】
前記リンカーが、
【化7】
基を含む、請求項7に記載の二官能性化合物。
【請求項9】
前記リンカーが、構造:
【化8】
のいずれか1つである、請求項1に記載の二官能性化合物。
【請求項10】
構造(I-5)~(I-28):
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
のいずれか1つによって表される、請求項1に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項11】
前記デグロンが、構造(D1a)~(D1d):
【化15】
【化16】
[式中、X
1はCH
2またはC(O)であり、X
2はCH
2、NH、またはOである]のいずれか1つによって表される、請求項1~10のいずれか一項に記載の二官能性化合物。
【請求項12】
構造(I-29)~(I-44):
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
のいずれか1つによって表される、請求項1~11のいずれか一項に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項13】
構造(1)~(11):
【化21】
【化22】
【化23】
のいずれか1つである、二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体の治療有効量と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項15】
DOT1Lの異常な活性を特徴とするか、またはそれによって媒介される疾患または障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の請求項1~13のいずれか一項に記載の二官能性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を投与することを含む、方法。
【請求項16】
疾患または障害が癌である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記癌が血液癌である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記血液癌が、多発性骨髄腫、リンパ腫、または白血病である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記白血病が、急性骨髄球性白血病、混合系統白血病(MLL)再配列急性骨髄球性白血病、ヌクレオフォスミン1に変異を有する急性骨髄球性白血病NPM1)、DNAメチルトランスフェラーゼ3Aに変異を有する急性骨髄球性白血病DNMT3A、または急性骨髄性好酸球性白血病である、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)項に基づき、2021年10月18日に出願された米国仮特許出願第63/256,899号の優先権の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の使用許諾権
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された助成金番号R01 CA176745の下、政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
E3ユビキチンリガーゼは、E2ユビキチン結合酵素と組み合わせて、イソペプチド結合(例えば、タンパク質の主鎖に存在しないアミド結合)を介して標的タンパク質上のリジンへのユビキチンの結合を促進するタンパク質である。標的タンパク質のユビキチン化は、プロテアソームによる標的タンパク質の分解をもたらす。
【0004】
増殖性疾患および癌を含む、ある特定の病理学的状態と関連することが見出された標的タンパク質(例えば、テロメアサイレンシング1様の撹乱物質(disruptor of telomeric silencing 1-like)(DOT1L))の分解を効果的に促進する化合物を同定する必要性が依然として存在する。DOT1Lは、増殖性疾患や癌などのある特定の病理学的状態と関連することが見出されている。特に、ある種のタンパク質の分解を標的とするために、タンパク質ホメオスタシス(例えば、ユビキチン化およびプロテアソーム分解)に関与する細胞機構を利用することができる化合物は、治療剤としての使用を見出すことができる。標的タンパク質DOT1LおよびE3ユビキチンリガーゼの両方を標的とし、それによってDOT1Lのプロテアソーム分解を誘導する化合物も必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の態様は、中断されていない二価のC
4~C
20アルキレン鎖または2~8個のPEG単位を含むポリエチレングリコール(PEG)鎖を含むリンカーによって互いに共有結合した、テロメアサイレンシング1様の撹乱物質(DOT1L)およびデグロンに結合する部分を含む二官能性化合物であり、化合物が式(I):
【化1】
[式中:
R
1はH、ハロゲン、CH
3、CH
2F、CF
2H、CF
3、CN、またはNH
2を表し;
R
2は
【化2】
を表し、前記デグロンは、セレブロン(CRBN)に結合するリガンドを表す]によって表される構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体に関する。
【0006】
本発明の別の態様は、治療有効量の式(I)の二官能性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体、および薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物に関する。
【0007】
本発明の別の態様では、二官能性化合物を製造する方法に関する。
【0008】
本発明のさらなる態様は、異常なDOT1L活性を特徴とするかまたはそれによって媒介される疾患または障害を治療する方法であって、治療有効量の式(I)の二官能性化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは立体異性体を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を対象とする。
【0009】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は癌である。いくつかの実施形態では、癌は血液癌である。
【0010】
いくつかの実施形態では、血液癌は、多発性骨髄腫、リンパ腫、または白血病である。
【0011】
いくつかの実施形態では、白血病は、急性骨髄性白血病、混合系統白血病(MLL)再構成急性骨髄性白血病、ヌクレオフォスミン1(NPM1)に変異を有する急性骨髄性白血病、DNAメチルトランスフェラーゼ3A(DNMT3A)に変異を有する急性骨髄性白血病、または急性骨髄性白血病である。
【0012】
本発明の二官能性化合物は、PRMT5ノックダウンのための新しい化学的ツールのセットとして機能し得、癌(例えば、多発性骨髄腫、リンパ腫、および白血病)などのPRMT5媒介性疾患および障害の有効な治療を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の二官能性化合物2、3、および6、ならびにEPZ5676およびポマリドミド(Pom)を用いたテロメアサイレンシング1様の撹乱物質(DOT1L)の蛍光偏光(FP)置換アッセイのプロットである。
【0014】
【
図2】
図2は、本発明の二官能性化合物2、3、および6、ならびにEPZ5676およびポマリドミド(Pom)を用いた細胞のCRBN二量体化アッセイのプロットである。
【0015】
【0016】
【
図4】
図4A~
図4Bは、本発明の二官能性化合物2を用いたEOL1細胞におけるDOT1L分解を示すウエスタンブロット(
図4A)および細胞増殖アッセイのプロット(
図4B)である。
【0017】
【
図5】
図5A~
図5Bは、本発明の二官能性化合物2を用いたMV411細胞におけるDOT1L分解を示すウエスタンブロット(
図5A)および細胞増殖アッセイのプロット(
図5B)である。
【0018】
【
図6】
図6A~
図6Bは、本発明の二官能性化合物3を用いたEOL1細胞におけるDOT1L分解を示すウエスタンブロット(
図6A)および細胞増殖アッセイのプロット(
図6B)である。
【0019】
【
図7】
図7は二官能性化合物4を用いたEOL1細胞における細胞増殖アッセイのプロットである。
【0020】
【
図8】
図8A~
図8Bは、本発明の二官能性化合物5を用いたEOL1細胞におけるDOT1L分解を示すウエスタンブロット(
図8A)および細胞増殖アッセイのプロット(
図8B)である。
【0021】
【
図9】
図9A~
図9Bは、本発明の二官能性化合物6を用いたEOL1細胞におけるDOT1L分解を示すウエスタンブロット(
図9A)および細胞増殖アッセイのプロット(
図9B)である。
【0022】
【0023】
【
図11】
図11は、本発明の二官能性化合物6を用いたSEMK2細胞における細胞増殖アッセイのプロットである。
【0024】
【
図12】
図12は、本発明の二官能性化合物6を用いたTHP1細胞における細胞増殖アッセイのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本明細書の主題が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、反対に指定されない限り、以下の用語は、本発明の理解を容易にするために示された意味を有する。
【0026】
明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「組成物」への言及は、2つ以上のそのような組成物の混合物を含み、「阻害剤」への言及は、2つ以上のそのような阻害剤の混合物などを含む。
【0027】
特に明記しない限り、用語「約」は、用語「約」によって修飾された特定の値の10%以内(例えば、5%、2%または1%以内)を意味する。
【0028】
移行語「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」または「特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素または方法工程を排除しない。対照的に、「からなる(consisting of)」という移行句は、特許請求の範囲で指定されていない要素、工程、または成分を除外する。「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句は、特許請求の範囲を、特許請求される発明の、特定の材料または工程、「および基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないもの」に限定する。
【0029】
本発明の化合物に関して、およびそれらをさらに説明するために以下の用語が本明細書で使用される範囲で、以下の定義が適用される。
【0030】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、飽和直鎖または分岐鎖の一価炭化水素ラジカルを指す。一実施形態では、アルキルラジカルはC1~C18基である。他の実施形態では、アルキルラジカルは、C0~C6、C0~C5、C0~C3、C1~C12、C1~C8、C1~C6、C1~C5、C1~C4またはC1~C3基である(C0アルキルは結合を指す)。アルキル基の例としては、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、i-プロピル、1-ブチル、2-メチル-1-プロピル、2-ブチル、2-メチル-2-プロピル、1-ペンチル、n-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-メチル-2-ブチル、3-メチル-2-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-1-ブチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、3,3-ジメチル-2-ブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルおよびドデシルが挙げられる。いくつかの実施形態では、アルキル基はC1~C3アルキル基である。
【0031】
本明細書で使用される場合、「アルキレン」という用語は、分子の残りをラジカル基に連結する直鎖または分岐鎖二価炭化水素鎖であって、炭素および水素のみからなり、不飽和を含まず、1~12個の炭素原子を有する、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレンなどを指す。アルキレン鎖は、単結合を介して分子の残りの部分に結合しても、単結合を介してラジカル基に結合してもよい。いくつかの実施形態では、アルキレン基は、1~8個の炭素原子を含む(C1~C8アルキレン)。他の実施形態では、アルキレン基は、1~5個の炭素原子を含む(C1~C5アルキレン)。他の実施形態では、アルキレン基は、1~4個の炭素原子を含む(C1~C4アルキレン)。他の実施形態では、アルキレンは、1~3個の炭素原子を含む(C1~C3アルキレン)。他の実施形態では、アルキレン基は、1~2個の炭素原子を含む(C1~C2アルキレン)。他の実施形態では、アルキレン基は、1個の炭素原子を含む(C1アルキレン)。
【0032】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖の一価炭化水素ラジカルを指す。アルケニルは、「シス」および「トランス」配向、または代替的に「E」および「Z」配向を有するラジカルを含む。一例では、アルケニルラジカルは、C2~C18基である。他の実施形態では、アルケニルラジカルは、C2~C12、C2~C10、C2~C8、C2~C6またはC2~C3基である。例としては、エテニルまたはビニル、プロプ-1-エニル、プロプ-2-エニル、2-メチルプロプ-1-エニル、ブト-1-エニル、ブト-2-エニル、ブト-3-エニル、ブタ-1,3-ジエニル、2-メチルブタ-1,3-ジエン、ヘキサ-1-エニル、ヘキサ-2-エニル、ヘキサ-3-エニル、ヘキサ-4-エニルおよびヘキサ-1,3-ジエニルが挙げられる。
【0033】
本明細書で使用される「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は、それに結合した酸素ラジカルを有する、上で定義したアルキル基を指す。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert-ブトキシなどが挙げられる。「エーテル」は、酸素によって共有結合した2つのヒドロカルビル基である。したがって、アルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、アルコキシルであるか、またはアルコキシルに類似しており、例えば、-O-アルキル、-O-アルケニル、および-O-アルキニルのうちの1つによって表すことができる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「アルコキシレン」という用語は、nが整数(例えば、1、2、3、4、5、6、または7)を表す一般式(-O-CnH2n-)の飽和一価脂肪族ラジカルを指し、直鎖および分岐鎖ラジカルの両方を含む。アルコキシレン鎖は、単結合を介して分子の残りの部分に結合しても、単結合を介してラジカル基に結合してもよい。いくつかの実施形態では、アルコキシレン基は、1~3個の炭素原子を含む(-O-C1~C3アルコキシレン)。他の実施形態では、アルコキシレン基は、1~5個の炭素原子を含む(-O-C1~C5アルコキシレン)。
【0035】
本明細書で使用される場合、「環式基」という用語は、単独でまたはより大きな部分の一部として使用され、飽和、部分飽和または芳香環系の、例えば炭素環基(シクロアルキル、シクロアルケニル)、複素環基(ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル)、アリール基およびヘテロアリール基を含む任意の基を広く指す。環式基は、1または複数の(例えば、縮合)環系を有し得る。したがって、例えば、環式基は、1または複数の炭素環基、複素環基、アリール基またはヘテロアリール基を含むことができる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「炭素環」(「カルボシクリル」も同じく)という用語は、単独でまたはより大きな部分の一部として使用され、3~20個の炭素原子を有する飽和、部分不飽和、または芳香環系を含む、単独またはより大きな部分(例えば、アルキル炭素環基)の一部である基を指す。カルボシクリルという用語は、単環系、二環系、三環系、縮合環系、架橋環系、およびスピロ環系、およびそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、カルボシクリルは、3~15個の炭素原子を含む(C3~C15)。一実施形態では、カルボシクリルは、3~12個の炭素原子を含む(C3~C12)。別の実施形態では、カルボシクリルは、C3~C8、C3~C10またはC5~C10を含む。別の実施形態では、カルボシクリルは、単環として、C3~C8、C3~C6またはC5~C6を含む。いくつかの実施形態では、カルボシクリルは、二環として、C7~C12を含む。別の実施形態では、カルボシクリルは、スピロ系として、C5-C12を含む。単環式カルボシクリルの代表例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1-シクロペント-1-エニル、1-シクロペント-2-エニル、1-シクロペント-3-エニル、シクロへキシル、ペルジュウテリオシクロヘキシル、1-シクロへキス-1-エニル、1-シクロへキス-2-エニル、1-シクロへキス-3-エニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、フェニル、およびシクロドデシルが挙げられる。7~12個の環原子を有する二環式カルボシクリルとしては、[4,3]、[4,4]、[4,5]、[5,5]、[5,6]または[6,6]環系、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ナフタレン、およびビシクロ[3.2.2]ノナンが挙げられる。スピロカルボシクリルの代表的な例としては、スピロ[2.2]ペンタン、スピロ[2.3]ヘキサン、スピロ[2.4]ヘプタン、スピロ[2.5]オクタンおよびスピロ[4.5]デカンが挙げられる。カルボシクリルという用語は、本明細書で定義されるアリール環系を含む。カルボシクリルという用語には、シクロアルキル環(例えば、飽和または部分的に不飽和の単環式、二環式、またはスピロ炭素環)も含まれる。炭素環基という用語はまた、1または複数(例えば、1、2または3つ)の異なる環式基(例えば、アリールまたは複素環)に縮合した炭素環式環を含み、ここでラジカルまたは結合点は、炭素環式環上にある。
【0037】
したがって、炭素環という用語は、本明細書で使用される場合、Rcがアルキレン鎖である式--Rc-カルボシクリルの基を指す、カルボシクリルアルキル基も包含する。炭素環という用語は、本明細書で使用される場合、Rcがアルキレン鎖である式--O--Rc-カルボシクリルの酸素原子を介して結合した基を指す、カルボシクリルアルコキシ基も包含する。
【0038】
本明細書で使用される場合、単独でまたはより大きな部分の一部として使用される「アリール」(例えば、「アラルキル」、ここでアルキル基上の末端炭素原子は、結合点、例えば、ベンジル基である)、酸素原子が結合点である「アラルコキシ」、または結合点がアリール基上にある「アロキシアルキル」という用語は、単環式、二環式または三環式の、縮合環を含む炭素環系を含む基を指し、系における少なくとも1つの環は芳香族である。いくつかの実施形態では、アラルコキシ基は、ベンゾキシ基である。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と互換的に使用され得る。一実施形態では、アリールは、6~18個の炭素原子を有する基を含む。別の実施形態では、アリールは、6~10個の炭素原子を有する基を含む。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントラシル、ビフェニル、フェナントレニル、ナフタセニル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレニル、1H-インデニル、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル、ナフチリジニルなどが挙げられ、これらは本明細書に記載の1または複数の置換基で置換または独立して置換されてもよい。特定のアリールはフェニルである。いくつかの実施形態では、アリール基は、1または複数(例えば、1、2または3つ)の異なる環式基(例えば、炭素環または複素環)に縮合したアリール環を含み、ここでラジカルまたは結合点は、アリール環上にある。異なって位置する二重結合を有することができる任意のアリール基の構造は、任意のおよび全てのそのような共鳴構造を包含すると考えられる。
【0039】
したがって、アリールという用語は、上記に開示されるように、Rcがメチレンまたはエチレンなどのアルキレン鎖である式--Rc-アリールの基を指す、アラルキル基(例えば、ベンジル)を包含する。いくつかの実施形態では、アラルキル基は、任意選択で置換されたベンジル基である。アリールという用語は、本明細書で使用される場合、Rcがメチレンまたはエチレンなどのアルキレンである式--O-Rc--アリールの酸素原子を介して結合した基を指す、アラルコキシ基も包含する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」という用語は、単独でまたはより大きな部分の一部として使用される「カルボシクリル」を指し、飽和、部分不飽和または芳香族環系を含み、1つまたは複数(例えば、1、2、3または4)の炭素原子がヘテロ原子(例えば、O、N、N(O)、S、S(O)またはS(O)2)で置き換えられている。ヘテロシクリルという用語は、単環系、二環系、三環系、縮合環系、架橋環系、およびスピロ環系、およびそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、3~15員のヘテロシクリル環系を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、3~12員のヘテロシクリル環系を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、3~12員飽和ヘテロシクリル環系などの飽和環系を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、5~14員ヘテロアリール環系などのヘテロアリール環系を指す。ヘテロシクリルという用語はまた、3~8個の炭素および1または複数(1、2、3または4)のヘテロ原子を含む飽和または部分不飽和の単環系、二環系またはスピロ環系であるC3~C8ヘテロシクロアルキルを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は、3~12個の環原子を含み、単環系、二環系、三環系およびスピロ環系を含み、ここで環原子は炭素であり、1~5個の環原子は、窒素、硫黄または酸素などのヘテロ原子である。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、窒素、硫黄および酸素から選択される1または複数のヘテロ原子を有する3~7員単環を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、窒素、硫黄および酸素から選択される1または複数のヘテロ原子を有する4~6員単環を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、3員単環を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、4員単環を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、5~6員単環を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は、0~3個の二重結合を含む。前述の実施形態のいずれかにおいて、ヘテロシクリルは、1、2、3または4個のヘテロ原子を含む。任意の窒素または硫黄ヘテロ原子は、任意選択で酸化されていてもよく(例えば、NO、SO、SO2)、任意の窒素ヘテロ原子は、任意選択で四級化されていてもよい(例えば、[NR4]+Cl-、[NR4]+OH-)。ヘテロシクリルの代表的な例には、オキシラニル、アジリジニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、1,2-ジチエタニル、1,3-ジチエタニル、ピロリジニル、ジヒドロ-1H-ピロリル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、テトラヒドロチエニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、1,1-ジオキソ-チオモルホリニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、ヘキサヒドロチオピラニル、ヘキサヒドロピリミジニル、オキサジナニル、チアジナニル、チオキサニル、ホモピペラジニル、ホモピペリジニル、アゼパニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル(oxazepinyl)、オキサゼパニル(oxazepanyl)、ジアゼパニル(diazepanyl)、1,4-ジアゼパニル(diazepanyl)、ジアゼピニル(diazepinyl)、チアゼピニル(thiazepinyl)、チアゼパニル(thiazepanyl)、テトラヒドロチオピラニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、1,1-ジオキソイソチアゾリジノニル、オキサゾリジノニル、イミダゾリジノニル、4,5,6,7-テトラヒドロ[2H]インダゾリル、テトラヒドロベンゾイミダゾリル、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[d]イミダゾリル、1,6-ジヒドロイミダゾール[4,5-d]ピロロ[2,3-b]ピリジニル、チアジニル、チオフェニル、オキサジニル、チアジアジニル、オキサジアジニル、ジチアジニル、ジオキサジニル、オキサチアジニル、チアトリアジニル、オキサトリアジニル、ジチアジアジニル、イミダゾリニル、ジヒドロピリミジル、テトラヒドロピリミジル、1-ピロリニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、インドリニル、チアピラニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ジチアニル、ジチオラニル、ピリミジノニル、ピリミジンジオニル、ピリミジン-2,4-ジオニル、ピペラジノニル、ピペラジンジオニル、ピラゾリジニルイミダゾリニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、6-アザビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、3-アザビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、2-アザビシクロ[3.2.1]オクタニル、8-アザビシクロ[3.2.1]オクタニル、2-アザビシクロ[2.2.2]オクタニル、8-アザビシクロ[2.2.2]オクタニル、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザスピロ[3.5]ノナニル、アザスピロ[2.5]オクタニル、アザスピロ[4.5]デカニル、1-アザスピロ[4.5]デカン-2-オンリー(only)、アザスピロ[5.5]ウンデカニル、テトラヒドロインドリル、オクタヒドロインドリル、テトラヒドロイソインドリル、テトラヒドロインダゾリル、1,1-ジオキソヘキサヒドロチオピラニルが含まれる。硫黄原子または酸素原子および1~3個の窒素原子を含む5員ヘテロシクリルの例は、チアゾール-2-イルおよびチアゾール-2-イルN-オキシドを含むチアゾリル、1,3,4-チアジアゾール-5-イルおよび1,2,4-チアジアゾール-5-イルを含むチアジアゾリル、オキサゾリル、例えばオキサゾール-2-イル、ならびにオキサジアゾリル、例えば1,3,4-オキサジアゾール-5-イルおよび1,2,4-オキサジアゾール-5-イルである。2~4個の窒素原子を含む5員環ヘテロシクリルの例としては、イミダゾール-2-イルなどのイミダゾリル;1,3,4-トリアゾール-5-イルなどのトリアゾリル;1,2,3-トリアゾール-5-イル、1,2,4-トリアゾール-5-イル、およびテトラゾリル、例えば1H-テトラゾール-5-イルが挙げられる。ベンゾ縮合5員ヘテロシクリルの代表的な例は、ベンゾオキサゾール-2-イル、ベンズチアゾール-2-イルおよびベンズイミダゾール-2-イルである。6員ヘテロシクリルの例は、1~3個の窒素原子および任意選択で硫黄または酸素原子を含有し、例えばピリド-2-イル、ピリド-3-イルおよびピリド-4-イルなどのピリジル;ピリミド-2-イルおよびピリミド-4-イルなどのピリミジル;1,3,4-トリアジン-2-イルおよび1,3,5-トリアジン-4-イルなどのトリアジニル;特にピリダジン-3-イルなどのピリダジニル、およびピラジニルである。ピリジンN-オキシドおよびピリダジンN-オキシドおよびピリジル、ピリミド-2-イル、ピリミド-4-イル、ピリダジニルおよび1,3,4-トリアジン-2-イル基は、ヘテロシクリル基のさらなる他の例である。いくつかの実施形態では、複素環基は、1または複数の(例えば、1、2または3)異なる環式基(例えば、炭素環または複素環)に縮合した複素環を含み、ここで、ラジカルまたは結合点は複素環上にあり、いくつかの実施形態では、結合点は複素環に含まれるヘテロ原子である。
【0042】
したがって、複素環という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの窒素を含有するヘテロシクリル基を指すN-ヘテロシクリル基を包含し、ここで、ヘテロシクリル基と分子の残りの部分との結合点は、ヘテロシクリル基中の窒素原子を介する。N-ヘテロシクリル基の代表的な例としては、1-モルホリニル、1-ピペリジニル、1-ピペラジニル、1-ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニルおよびイミダゾリジニルが挙げられる。複素環という用語はまた、本明細書で使用される場合、少なくとも1つのヘテロ原子を含有するヘテロシクリル基を指すC-ヘテロシクリル基を包含し、ここで、ヘテロシクリル基と分子の残りの部分との結合点は、ヘテロシクリル基中の炭素原子を介する。C-ヘテロシクリルラジカルの代表的な例としては、2-モルホリニル、2-または3-または4-ピペリジニル、2-ピペラジニル、および2-または3-ピロリジニルが挙げられる。複素環という用語は、上で開示されるように、Rcがアルキレン鎖である式--Rc-ヘテロシクリルの基を指す、ヘテロシクリルアルキル基も包含する。複素環という用語は、本明細書で使用される場合、Rcがアルキレン鎖である式--O--Rc-ヘテロシクリルの酸素原子を介して結合したラジカルを指す、ヘテロシクリルアルコキシ基も包含する。
【0043】
本明細書で使用される場合、単独でまたはより大きな部分(例えば、「ヘテロアリールアルキル」(同じく「ヘテロアラルキル」)または「ヘテロアリールアルコキシ」(同じく「ヘテロアラルコキシ」)の一部として使用される「ヘテロアリール」という用語は、5~14個の環原子を有する単環式、二環式または三環式の環系を指し、ここで少なくとも1つの環は、芳香族であり、少なくとも1つのヘテロ原子を含む。一実施形態では、ヘテロアリールは、1または複数の環原子が窒素、硫黄または酸素である5~6員単環式芳香族基を含む。ヘテロアリール基の代表的な例としては、チエニル、フリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、チアトリアゾリル、オキサトリアゾリル、ピリジル、ピリミジル、イミダゾピリジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、テトラジニル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジニル、プリニル、デアザプリニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、1,3-チアゾール-2-イル、1,3,4-トリアゾール-5-イル、1,3-オキサゾール-2-イル、1,3,4-オキサジアゾール-5-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル、1,3,4-チアジアゾール-5-イル、1H-テトラゾール-5-イル、1,2,3-トリアゾール-5-イル、およびピリド-2-イルN-オキシドが挙げられる。「ヘテロアリール」という用語はまた、ヘテロアリールが1または複数の環式(例えば、カルボシクリルまたはヘテロシクリル)環に縮合しており、ラジカルまたは結合点がヘテロアリール環上にある基を含む。非限定的な例としては、インドリル、インドリジニル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾチオフェニル、メチレンジオキシフェニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾジオキサゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H-キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルおよびピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オンが挙げられる。ヘテロアリール基は、単環式、二環式または三環式であり得る。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、1または複数の(例えば、1、2または3)異なる環式基(例えば、炭素環式環(carbocyclic ring)または複素環式環(heterocyclic ring))に縮合したヘテロアリール環を含み、ここで、ラジカルまたは結合点はヘテロアリール環上にあり、いくつかの実施形態では、結合点は複素環式環に含まれるヘテロ原子である。異なって位置する二重結合を有することができる任意のヘテロアリール基の構造は、あらゆるそのような共鳴構造を包含すると考えられる。
【0044】
したがって、ヘテロアリールという用語は、本明細書で使用される場合、上記で定義された、少なくとも1個の窒素を含有するヘテロアリール基を指すN-ヘテロアリール基を包含し、分子の残りの部分とヘテロアリール基の結合点は、ヘテロアリール基中の窒素原子を介する。ヘテロアリールという用語はまた、本明細書で使用される場合、上記で定義されたヘテロアリール基を指すC-ヘテロアリール基も包含し、ヘテロアリール基の分子の残りの部分との結合点は、ヘテロアリール基中の炭素原子を介する。ヘテロアリールという用語はまた、上で開示されるように、Rcが上記で定義されるアルキレン鎖である式--Rc-ヘテロアリールの基を指す、ヘテロアリールアルキル基をさらに包含する。ヘテロアリールという用語はまた、本明細書で使用される場合、Rcが上記で定義されたアルキレン基である式--O--Rc-ヘテロアリールの酸素原子を介して結合した基を指す、ヘテロアラルコキシ(またはヘテロアリールアルコキシ)基をさらに包含する。
【0045】
特に明記しない限り、また、特定の基についてさらに定義されない限り、本明細書に記載される基のいずれも、置換または非置換であり得る。本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、すべての許容される置換基を広く指すが、ただしそのような置換が、置換された原子および置換基の許容される原子価に合致すること、および置換によって安定した化合物、すなわち、転位、環化、脱離などによる変換を自発的に受けない化合物が生じることを暗黙の条件とする。代表的な置換基には、ハロゲン、ヒドロキシル基、および任意の炭素原子数、例えば1~14個の炭素原子を含有するその他の任意の有機基が含まれ、これらは、直鎖、分岐鎖、または環式構造の形式で群化した、酸素、硫黄、および窒素などの1または複数(例えば、1、2、3、または4)のヘテロ原子が含まれ得る。
【0046】
したがって、任意の特定の基について他に開示されていない限り、置換基の代表的な例としては、アルキル、置換アルキル(例えば、C1~C6、C1~C5、C1~C4、C1~C3、C1~C2、C1)、アルコキシ(例えば、C1~C6、C1~C5、C1~C4、C1~C3、C1~C2、C1)、置換アルコキシ(例えば、C1~C6、C1~C5、C1~C4、C1~C3、C1~C2、C1)、ハロアルキル(例えば、CF3)、アルケニル(例えば、C2~C6、C2~C5、C2~C4、C2~C3、C2)、置換アルケニル(例えば、C2~C6、C2~C5、C2~C4、C2~C3、C2)、アルキニル(例えば、C2~C6、C2~C5、C2~C4、C2~C3、C2)、置換アルキニル(例えば、C2~C6、C2~C5、C2~C4、C2~C3、C2)、環式(例えば、C3~C12、C5~C6)、置換環式(例えば、C3~C12、C5~C6)、炭素環(例えば、C3~C12、C5~C6)、置換炭素環(例えば、C3~C12、C5~C6)、複素環(例えば、C3~C12、C5~C6)、置換複素環(例えば、C3~C12、C5~C6)、アリール(例えば、ベンジルおよびフェニル)、置換アリール(例えば、置換ベンジルまたはフェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジルまたはピリミジル)、置換ヘテロアリール(例えば、置換ピリジルまたはピリミジル)、アラルキル(例えば、ベンジル)、置換アラルキル(例えば、置換ベンジル)、ハロ、ヒドロキシル、アリールオキシ(例えば、C6~C12、C6)、置換アリールオキシ(例えば、C6~C12、C6)、アルキルチオ(例えば、C1~C6)、置換アルキルチオ(例えば、C1~C6)、アリールチオ(例えば、C6~C12、C6)、置換アリールチオ(例えば、C6~C12、C6)、シアノ、カルボニル、置換カルボニル、カルボキシル、置換カルボキシル、アミノ、置換アミノ、アミド、置換アミド、チオ、置換チオ、スルフィニル、置換スルフィニル、スルホニル、置換スルホニル、スルフィンアミド、置換スルフィンアミド、スルホンアミド、置換スルホンアミド、尿素、置換尿素、カルバメート、置換カルバメート、アミノ酸、およびペプチド基が含まれ得る。
【0047】
「結合」という用語は、標的化するリガンドと標的化されるタンパク質(本発明ではテロメアサイレンシング1様の撹乱物質(DOT1L)である)との間の相互作用に関する場合、典型的には、細胞中に存在する他のタンパク質との標的化リガンドの結合が実質的に少なく、機能的に重要でない可能性があるという点で優先的である(本明細書では「選択的」とも呼ばれる)分子間相互作用を指す。「選択的」および「選択性」という用語は、分子標的間および中を識別する二官能性化合物の能力を指す。
【0048】
デグロンとE3ユビキチンリガーゼとの間の相互作用に関する「結合」という用語は、典型的には、標的化するリガンドと標的タンパク質との間の親和性に等しいか、またはそれを超える親和性レベルを示しても示さなくてもよい分子間相互作用を指すが、それでもなお、選択的分解のために、本開示ではDOT1Lである標的タンパク質へのリガーゼの動員を達成するのに十分である。
【0049】
概して、二官能性化合物は、中断されていない二価のC
4~C
20アルキレン鎖または2~8個のPEG単位を含むポリエチレングリコール(PEG)鎖を含むリンカーによって互いに共有結合した、DOT1Lに結合する部分およびデグロンを含み、ここで化合物は式(I):
【化3】
[式中:
R
1はH、ハロゲン、CH
3、CH
2F、CF
2H、CF
3、CN、またはNH
2を表し;
R
2は
【化4】
を表し;
およびデグロンは、セレブロン(CRBN)と結合するリガンドを表す]で表される構造、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、R1はHまたはCNである。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明の二官能性化合物は、構造:
【化5】
のいずれか1つ、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体によって表され得る。
【0052】
リンカー
リンカー(「L」)は、DOT1L結合部分とデグロンとの間の共有結合を提供する。リンカーの構造は、DOT1L結合部分またはデグロンの活性を実質的に妨害しない限り、重要ではない場合がある。いくつかの実施形態では、リンカーは、アルキレン鎖(例えば、2~20個のアルキレン単位を有する)を含む。他の実施形態では、リンカーは、-O-、-S-、-N(R’)-、-C≡C-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-C(NOR’)-、-C(O)N(R’)-、-C(O)N(R’)C(O)-、-C(O)N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)O-、-OC(O)N(R’)-、-C(NR’)-、-N(R’)C(NR’)-、-C(NR’)N(R’)-、-N(R’)C(NR’)N(R’)-、-OB(Me)O-、-S(O)2-、-OS(O)-、-S(O)O-、-S(O)-、-OS(O)2-、-S(O)2O-、-N(R’)S(O)2-、-S(O)2N(R’)-、-N(R’)S(O)-、-S(O)N(R’)-、-N(R’)S(O)2N(R’)-、-N(R’)S(O)N(R’)-、C3~C12カルボシクレン、3~12員ヘテロシクレン、5~12員ヘテロアリーレンまたはそれらの任意の組合せの少なくとも1つによって中断されていてもよく、および/またはそれら(いずれかもしくは両方の末端)で終結していてもよいアルキレン鎖を含み、R’は、HまたはC1~C6アルキルであり、中断基および一方または両方の終結基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、リンカーは、C4~C20アルキレン鎖を含み得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、リンカーは、NH基で終端するC1~C12アルキレン鎖を含んでもよく、窒素もデグロンに結合される。
【0055】
いくつかの実施形態では、リンカーは、
【化6】
によって中断され、および/または
【化7】
で終結する1~10個のアルキレン単位を有するアルキレン鎖を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、アルキレンリンカーは、11~15個の中断されていない(uninterrupted)アルキレン単位を含む。
【0057】
「カルボシクレン」は、任意選択で置換される二価の炭素環ラジカルを指す。
【0058】
「ヘテロシクレン」は、任意選択で置換され得る二価のヘテロシクリルラジカルを指す。
【0059】
「ヘテロアリーレン」は、任意選択で置換され得る二価のヘテロアリールラジカルを指す。
【0060】
本発明での使用に好適であり得るアルキレンリンカーの代表的な例には、以下が含まれる:
【化8】
[式中、nは1~12の整数(「の(of)」は包括を意味する)、例えば、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、2~3、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、4~5、5~10、5~9、5~8、5~7、5~6、6~10、6~9、6~8、6~7、7~10、7~9、7~8、8~10、8~9、9~10ならびに1、2、3、4、5、6、7、8、9および10である]、例として以下が含まれる:
【化9】
(上記のように)様々な官能基で終結するアルキレン鎖、その例は以下のとおり:
【化10】
(上記のように)様々な官能基で中断されるアルキレン鎖、その例は以下のとおり:
【化11】
ヘテロシクレン基で中断されるまたは終結するアルキレン鎖、例えば、
【化12】
[式中、mおよびnは、独立して0~10の整数である]、その例には以下が含まれる:
【化13】
アミド、ヘテロシクレンおよび/またはアリール基によって中断されるアルキレン鎖、その例には以下が含まれる:
【化14】
ヘテロシクレン、アリール基、およびヘテロ原子によって中断されるアルキレン鎖、その例には以下が含まれる:
【化15】
および
N、OまたはBなどのヘテロ原子によって中断されるアルキレン鎖、例えば、
【化16】
[式中、各nは独立して1~10の整数、例えば、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、2~3、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、4~5、5~10、5~9、5~8、5~7、5~6、6~10、6~9、6~8、6~7、7~10、7~9、7~8、8~10、8~9、9~10、ならびに1、2、3、4、5、6、7、8、9および10であり、Rは、HまたはC1~C4アルキルである]、その例は、
【化17】
である。
【0061】
いくつかの実施形態では、リンカーは、-S-、-N(R’)-、-C≡C-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-C(NOR’)-、-C(O)N(R’)-、-C(O)N(R’)C(O)-、-C(O)N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)O-、-OC(O)N(R’)-、-C(NR’)-、-N(R’)C(NR’)-、-C(NR’)N(R’)-、-N(R’)C(NR’)N(R’)-、-OB(Me)O-、-S(O)2-、-OS(O)-、-S(O)O-、-S(O)-、-OS(O)2-、-S(O)2O-、-N(R’)S(O)2-、-S(O)2N(R’)-、-N(R’)S(O)-、-S(O)N(R’)-、-N(R’)S(O)2N(R’)-、-N(R’)S(O)N(R’)-、C3-12カルボシクレン、3~12員ヘテロシクレン、5~12員ヘテロアリーレンのうち少なくとも1つまたはそれらの任意の組み合わせで終結し得る(一方または両方の末端で)ポリエチレングリコール鎖を含み得、ここで、R’はHまたはC1~C6アルキルであり、一方または両方の末端基は同じであっても異なっていてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、リンカーは、2~8個のPEG単位を有するポリエチレングリコール鎖を含み、
【化18】
で一方または両方の末端が終結する。
【0063】
いくつかの実施形態では、リンカーは、3つの中断されていないPEG単位を含む。
【0064】
ポリエチレングリコール鎖を含むリンカーの代表的な例としては、以下を含み:
【化19】
[式中、nは2~10の整数である]、その例は以下を含む:
【化20】
【0065】
いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールリンカーは、官能基で終結してもよく、その例は以下のとおりである:
【化21】
。
【0066】
いくつかの実施形態では、リンカーはさらに、
【化22】
【化23】
または
【化24】
基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは
【化25】
基を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、リンカーは、以下の構造:
【化26】
のいずれか1つによって表される。
【0068】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の二官能性化合物は、構造(I-5)~(I-28):
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
のいずれか1つによって表され得るか、またはその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体であり得る。
【0069】
デグロン
ユビキチン-プロテアソーム経路(UPP)は、重要な調節因子タンパク質を制御し、ミスフォールディングまたは異常タンパク質を分解する極めて重要な細胞経路である。UPPは、複数の細胞プロセスの中心である。ユビキチンの特定のタンパク質基質への共有結合は、E3ユビキチンリガーゼの作用によって達成される。これらのリガーゼは、500を超える種々のタンパク質を含み、それらのE3機能活性の構造要素によって定義される複数のクラスに分類される。
【0070】
デグロンは、セレブロン(CRBN)であるE3リガーゼに結合する。
【0071】
このようなデグロンの代表的な例は、構造(D1a)~(D1d):
【化33】
【化34】
[式中、X
1はCH
2またはC(O)であり、X
2は結合、CH
2、NH、またはOである]のいずれか1つによって表される。
【0072】
セレブロンを結合する、本発明での使用に適し得るさらに他のデグロンは、米国特許第9,770,512号、ならびに米国特許出願公開第2018/0015087号、同第2018/0009779号、同第2016/0243247号、同第2016/0235731号、同第2016/0235730号、および同第2016/0176916号、ならびに国際特許公開WO2017/197055号、WO2017/197051号、WO2017/197036号、WO2017/197056号、およびWO2017/197046号に開示されている。
【0073】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の二官能性化合物は、構造(I-29)~(I-44):
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
のいずれか、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体によって表され得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明の二官能性化合物は、以下の構造:
【化40】
【化41】
【化42】
のいずれか1つ、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体によって表され得る。
【0075】
式(I)の二官能性化合物は、遊離酸もしくは遊離塩基、または薬学的に許容される塩の形態であってもよい。本明細書で使用される場合、塩の文脈における「薬学的に許容される」という用語は、化合物の生物学的活性または特性を無効にしない、比較的非毒性である化合物の塩を指す。すなわち、塩形態の化合物は、望ましくない生物学的効果(めまいまたは胃の不調など)を引き起こすことなく、またはそれが含まれる組成物の他の成分のいずれとも有害な様式で相互作用することなく対象に投与され得る。「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物と適切な酸または塩基との反応によって得られる生成物を指す。本発明の化合物の薬学的に許容される塩の例としては、Li、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Al、ZnおよびMn塩など、適切な無機塩基から誘導されるものが挙げられる。薬学的に許容される非毒性の酸付加塩の例は、無機酸で形成されたアミノ基の塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、4-メチルベンゼンスルホン酸塩またはp-トルエンスルホン酸塩などである。本発明の特定の化合物は、リジン、アルギニン、グアニジン、ジエタノールアミンまたはメトホルミンなどの様々な有機塩基と薬学的に許容される塩を形成することができる。
【0076】
式(I)の二官能性化合物は、少なくとも1つのキラル中心を有し得、したがって、本明細書で使用される場合、空間におけるそれらの原子の配向のみが異なる個々の化合物のすべての異性体を包含する、立体異性体の形態であり得る。立体異性体という用語は、鏡像異性体(化合物の(R-)または(S-)配置を含むエナンチオマー)、化合物の鏡像異性体の混合物(エナンチオマーの物理的混合物、およびラセミ化合物またはラセミ体混合物)、化合物の幾何(シス/トランスまたはE/Z、R/S)異性体、および互いに鏡像ではない複数のキラル中心を有する化合物の異性体(ジアステレオ異性体)を含む。化合物のキラル中心は、インビボでエピマー化を受ける可能性がある。したがって、これらの化合物においては、化合物の(R-)形態での投与は、化合物の(S-)形態での投与と同等であると見なされる。したがって、本発明の化合物は、単一の異性体の、他の異性体を実質的に含まない形態で、または様々な異性体の混合物、例えば立体異性体のラセミ体混合物の形態で作製および使用され得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、式(I)の二官能性化合物は、同位体の天然存在比を超える、すなわち濃縮された量で、原子の少なくとも1つの所望の同位体置換を有する点で、同位体誘導体である。一実施形態では、化合物は、重水素または複数の重水素原子を含む。重水素、すなわち2Hなどのより重い同位体による置換は、より高い代謝安定性から生じる特定の治療上の利点、例えば、インビボ半減期の延長または必要な投与量の減少をもたらし得、したがって、状況によって有利である場合がある。
【0078】
さらに、式(I)の二官能性化合物は、化合物のN-オキシド、結晶形態(多形体としても知られる)、同じタイプの活性を有する化合物の活性代謝物、互変異性体、ならびに水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒との非溶媒和形態および溶媒和形態を包含する。二官能性化合物の溶媒和形態は、この用語に包含される。
【0079】
合成方法
いくつかの実施形態では、本発明は、式(I)の二官能性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を製造する方法に関する。概して、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体は、化学的に関連する化合物の調製に適用できることが知られている任意のプロセスによって調製され得る。本発明の化合物は、様々な実施例に記載され、本発明の化合物を調製することができる非限定的な方法を示す合成スキームに関連してよりよく理解されるであろう。
【0080】
医薬組成物
本発明の別の態様は、治療有効量の式Iの二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。当技術分野で知られている「薬学的に許容される担体」という用語は、本発明の化合物を哺乳動物に投与するのに適した薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを指す。適切な担体には、例えば、液体(水性および非水性の両方、ならびにそれらの組み合わせ)、固体、カプセル化材料、ガス、およびそれらの組み合わせ(例えば、半固体)、およびガスが含まれ得、それらは、身体の1つの器官または部分から身体の別の器官または部分に化合物を運搬または輸送するように機能する。担体は、製剤の他の成分に対して生理学的に不活性であり、適合性があり、対象または患者に有害ではないという意味で「許容される」。製剤の種類に応じて、組成物は、1または複数の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。
【0081】
概して、式(I)の二官能性化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩および立体異性体は、従来の製薬慣行、例えば従来の混合、溶解、粒状化、糖衣錠製造、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封入および圧縮プロセスに従って組成物の所与のタイプへと製剤化することができる(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.),ed.A.R.Gennaro,Lippincott Williams&Wilkins,2000、およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988-1999,Marcel Dekker,New Yorkを参照されたい)。製剤のタイプは、経腸(例えば、経口、頬側、舌下および直腸)、非経口(例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.))、および胸骨内注射、または注入技術、眼内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮、皮内、膣内、腹腔内、粘膜、鼻、気管内注入、気管支注入、および吸入)、および局所(例えば、経皮)を含み得る投与様式に依存する。一般に、最も適切な投与経路は、例えば、薬剤の性質(例えば、胃腸管の環境におけるその安定性)、および/または対象の状態(例えば、対象が経口投与に耐えられるかどうか)を含む様々な要因に依存する。例えば、非経口(例えば、静脈内)投与はまた、単回投与治療および/または急性状態の場合などに、化合物が比較的迅速に投与され得るという点で有利であり得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、二官能性化合物は、経口または静脈内投与(例えば、全身静脈内注射)用に製剤化される。
【0083】
したがって、本発明の二官能性化合物は、固体組成物(例えば、粉末、錠剤、分散性顆粒、カプセル、カシェおよび坐剤)、液体組成物(例えば、化合物が溶解された溶液、化合物の固体粒子を分散させた懸濁液、エマルジョン、およびリポソーム、ミセル、またはナノ粒子を含む溶液、シロップおよびエリキシル)、半固体組成物(例えば、ゲル、懸濁液およびクリーム)、およびガス(例えば、エアロゾル組成物用の噴射剤)に製剤化され得る。化合物はまた、急速、中程度または持続放出用に製剤化され得る。
【0084】
経口投与用の固体剤形としては、カプセル、錠剤、丸剤、粉末および顆粒が挙げられる。そのような固体剤形では、活性化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの担体、および追加の担体または賦形剤、例えばa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤または増量剤、b)例えばメチルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシアなどの結合剤、c)グリセロールなどの湿潤剤、d)架橋ポリマー(例えば、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロースナトリウム)、デンプングリコール酸ナトリウム、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶液遅延剤、f)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールはどの湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイトなどの吸収剤、およびi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなどの潤滑剤、ならびにこれらの混合物と混合される。カプセル、錠剤および丸剤の場合、剤形は緩衝剤も含み得る。同様のタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として使用することもできる。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒の固体剤形は、腸溶コーティングおよび他のコーティングなどのコーティングおよびシェルで調製することができる。それらは、乳白剤をさらに含んでもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明の二官能性化合物は、硬質または軟質ゼラチンカプセルに製剤化され得る。使用され得る代表的な賦形剤としては、アルファ化デンプン、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、フマル酸ステアリルナトリウム、無水ラクトース、微結晶性セルロースおよびクロスカルメロースナトリウムが挙げられる。ゼラチンシェルは、ゼラチン、二酸化チタン、酸化鉄および着色剤を含み得る。
【0086】
経口投与のための液体剤形には、溶液、懸濁液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、シロップおよびエリキシルが含まれる。液体剤形は、化合物に加えて、当技術分野で一般的に使用される(化合物の溶解度に応じて)水性または非水性担体、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含有し得る。経口組成物はまた、賦形剤、例えば湿潤剤、懸濁剤、着色剤、甘味剤、香味剤および芳香剤を含み得る。
【0087】
注射用調製物は、滅菌水溶液または油性懸濁液を含み得る。それらは、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、標準的な技術に従って製剤化することができる。滅菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液、懸濁液またはエマルジョン、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液であってもよい。使用され得る許容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液、U.S.P.および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油は、溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の低刺激性固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が注射剤の調製に使用される。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターによる濾過によって、または使用前に滅菌水または他の滅菌注射用媒体に溶解または分散させることができる滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。化合物の効果は、その吸収を遅らせることによって延長され得、これは、水溶性が低い液体懸濁液または結晶性もしくは非晶質材料の使用によって達成され得る。非経口的に投与された製剤からの化合物の持続性吸収はまた、化合物を油性ビヒクルに懸濁することによって達成され得る。
【0088】
特定の実施形態では、式(I)の二官能性化合物は、全身的ではなく局所的に、例えば、コンジュゲートを器官に直接注射することによって、多くはデポー調製物または持続放出製剤で投与され得る。特定の実施形態では、長時間作用型製剤は、注入(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって投与される。注射用デポー形態は、生分解性ポリマー、例えばポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)中に化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。化合物の放出速度は、ポリマーに対する化合物の比率、および使用される特定のポリマーの性質を変えることによって制御することができる。デポー注射用製剤はまた、体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルジョンに化合物を封入することによって調製される。さらに、他の実施形態では、化合物は、標的薬物送達システム、例えば、器官特異的抗体でコーティングされたリポソームで送達される。そのような実施形態では、リポソームは、器官を標的とし、器官によって選択的に取り込まれる。
【0089】
二官能性化合物は、頬側または舌下投与用に製剤化することができ、その例としては、錠剤、舐剤およびゲルが挙げられる。
【0090】
二官能性化合物は、吸入による投与用に製剤化され得る。吸入による投与に適した様々な形態には、エアロゾル、ミストまたは粉末が含まれる。医薬組成物は、適切な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガス)を使用して、加圧パックまたはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達され得る。いくつかの実施形態では、加圧エアロゾルの投与単位は、計量された量を送達するための弁を提供することによって決定され得る。いくつかの実施形態では、例えば吸入器または注入器で使用するためのゼラチンを含むカプセルおよびカートリッジは、化合物と適切な粉末基剤、例えばラクトースまたはデンプンとの粉末混合物を含有して製剤化され得る。
【0091】
式(I)の二官能性化合物は、本明細書で使用される場合、表皮への製剤の塗布による皮内投与を指す局所投与用に製剤化され得る。これらのタイプの組成物は、典型的に、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液およびスプレーの形態である。
【0092】
局所適用のための組成物の製剤化に有用な担体の代表的な例としては、溶媒(例えば、アルコール、ポリアルコール、水)、クリーム、ローション、軟膏、油、プラスター、リポソーム、粉末、エマルジョン、マイクロエマルジョン、および緩衝溶液(例えば、低張性または緩衝生理食塩水)が挙げられる。例えば、クリームは、飽和または不飽和脂肪酸、例えばステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、パルミトオレイン酸、セチルまたはオレイルアルコールを使用して製剤化され得る。クリームはまた、ポリオキシ-40-ステアレートなどの非イオン性界面活性剤を含有してもよい。
【0093】
いくつかの実施形態では、局所製剤はまた、賦形剤を含み得、その例は、浸透促進剤である。これらの薬剤は、薬理学的に活性な化合物を角質層を通して、好ましくは、ほとんどまたは全く全身吸収されずに表皮または真皮に輸送することができる。多種多様な化合物が、薬物の皮膚を通る浸透速度の向上におけるそれらの有効性に関して評価されている。例えば、様々な皮膚浸透促進剤の使用および試験を概説しているPercutaneous Penetration Enhancers,Maibach H.I.and Smith H.E.(eds.),CRC Press,Inc.,Boca Raton,Fla.(1995)、およびBuyuktimkin et al.,Chemical Means of Transdermal Drug Permeation Enhancement in Transdermal and Topical Drug Delivery Systems,Gosh T.K.,Pfister W.R.,Yum S.I.(Eds.),Interpharm Press Inc.,Buffalo Grove,Ill.(1997)を参照されたい。浸透促進剤の代表的な例としては、トリグリセリド(例えば、大豆油)、アロエ組成物(例えば、アロエベラゲル)、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、オクトリフェニルポリエチレングリコール、オレイン酸、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、N-デシルメチルスルホキシド、脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、モノオレイン酸グリセロールおよびモノオレイン酸プロピレングリコール)、およびN-メチルピロリドンが挙げられる。
【0094】
局所用および他のタイプの製剤に含まれ得るさらに他の賦形剤の代表的な例として(それらが適合する範囲で)、防腐剤、抗酸化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、緩衝剤、可溶化剤、皮膚保護剤および界面活性剤が挙げられる。適切な防腐剤としては、アルコール、第四級アミン、有機酸、パラベンおよびフェノールが挙げられる。適切な抗酸化剤としては、アスコルビン酸およびそのエステル、亜硫酸水素ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフェロール、ならびにEDTAおよびクエン酸などのキレート剤が挙げられる。適切な保湿剤としては、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、尿素、およびプロピレングリコールが挙げられる。適切な緩衝剤としては、クエン酸緩衝液、塩酸緩衝液および乳酸緩衝液が挙げられる。適切な可溶化剤としては、塩化第四級アンモニウム、シクロデキストリン、安息香酸ベンジル、レシチンおよびポリソルベートが挙げられる。適切な皮膚保護剤としては、ビタミンE油、アラトイン、ジメチコン、グリセリン、ワセリン、および酸化亜鉛が挙げられる。
【0095】
経皮製剤は、典型的には、経皮送達デバイスおよび経皮送達パッチを使用し、化合物は、親油性エマルションまたは緩衝水溶液中に製剤化され、ポリマーまたは接着剤中に溶解および/または分散される。パッチは、医薬品の連続的、拍動性、またはオンデマンド送達のために構築することができる。化合物の経皮送達は、イオン導入パッチによって達成され得る。経皮パッチは、化合物の制御された送達を提供することができ、吸収速度は、速度制御メンブレンを使用することによって、またはポリマーマトリックスもしくはゲル内に化合物を捕捉することによって遅くなる。吸収促進剤を使用して吸収を増加させることができ、その例には、皮膚の通過を助ける、薬学的に許容される吸収性の溶媒が含まれる。
【0096】
眼科用製剤には点眼薬が含まれる。
【0097】
直腸投与用の製剤には、浣腸、直腸ゲル、直腸フォーム、直腸エアロゾル、および保留浣腸が含まれ、これらは、カカオバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤、ならびにポリビニルピロリドン、PEGなどの合成ポリマーを含有し得る。直腸または膣投与用の組成物はまた、化合物を適切な非刺激性担体および賦形剤、例えばカカオバター、脂肪酸グリセリドの混合物、ポリエチレングリコール、坐剤ワックス、およびそれらの組み合わせと混合することによって調製することができる坐剤として製剤化することもでき、これらのすべては、周囲温度では固体であるが体温では液体であるので、直腸または膣腔で融解し、化合物を放出する。
【0098】
投与量
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、異常なDOT1L活性を特徴とするか、またはそれによって媒介される疾患または障害に罹患している特定の患者において所望の治療反応をもたらすのに有効な、式(I)の二官能性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体;または式(I)の二官能性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を含む組成物の量を指す。したがって、「治療有効量」という用語は、投与されると、治療される疾患もしくは障害の肯定的な変性を誘発する、または疾患もしくは障害の発症もしくは進行を阻害もしくはさらに予防するか、または被験体において処置される疾患もしくは障害の症状の1つもしくは複数をある程度軽減するのに十分であるか、または罹患(例えば、癌(例えば、血液癌))細胞を単に死滅させるかもしくはその成長を阻害するか、または罹患細胞におけるDOT1Lの量を低減する、本発明の二官能性化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは立体異性体の量を含む。
【0099】
二官能性化合物の1日の総投与量およびその使用法は、標準的な医療行為に従って、例えば主治医が適切な医学的判断を使用して決定することができる。
任意の特定の対象に対する特定の治療有効用量は、治療される疾患または障害およびその重症度(例えば、その現在の状態);対象の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食事;使用される特定の化合物の投与時間、投与経路、および排泄速度;治療期間;二官能性化合物と併用して、または同時に使用される薬物;および医学分野で知られている類似の要因を含む様々な要因に依存し得る(例えば、Goodman and Gilman’s, The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10th Edition,A.Gilman,J.Hardman and L. Limbird, eds., McGraw-Hill Press,155-173,2001を参照されたい)。
【0100】
式(I)の二官能性化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩および立体異性体は、広い投与量範囲にわたって有効であり得る。いくつかの実施形態では、1日の総投与量(例えば成人の場合)は、約0.001~約1600mg、0.01~約1600mg、0.01~約500mg、約0.01~約100mg、約0.5~約100mg、1日あたり1~約100~400mg、1日あたり約1~約50mg、および1日あたり約5~約40mgの範囲であってもよく、さらに他の実施形態では、1日あたり約10~約30mgの範囲であってもよい。個々の用量は、1日当たりの化合物の投与回数に応じて所望の投与量を含むように製剤化され得る。例として、カプセルは、約1~約200mgの二官能性化合物(例えば、1、2、2.5、3、4、5、10、15、20、25、50、100、150、および200mg)で製剤化され得る。いくつかの実施形態では、個々の用量は、1日当たりの化合物の投与回数に応じて所望の投与量を含むように製剤化され得る。
【0101】
使用方法
いくつかの態様では、本発明は、異常な(例えば機能不全または調節不全の)DOT1L活性が関係する疾患または障害を治療する方法に関し、方法は、治療有効量の式(I)の二官能性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を、それを必要とする対象へ投与することを伴う。
【0102】
疾患または障害は、異常なDOT1L活性(例えば、非病的状態と比較してレベルが上昇したか、そうでなければ機能的に異常なDOT1L)を特徴とするか、またはそれによって媒介される。「疾患」は、一般に、対象が恒常性を維持することができず、疾患が改善されなければ対象の健康が悪化し続ける、対象の健康状態と考えられる。対照的に、対象における「障害」は、対象が恒常性を維持することはできるが、対象の健康状態は障害が存在しない場合よりも好ましくない健康状態である。治療しないままでも、障害は必ずしも動物の健康状態のさらなる低下を引き起こさない。
【0103】
本明細書で使用される「対象」(または「患者」)という用語は、示された疾患または障害に罹患しやすい、または罹患している動物界のすべてのメンバーを含む。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物、例えばヒトまたは非ヒト哺乳動物である。本方法はまた、イヌおよびネコなどのコンパニオンアニマル、ならびにウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、および他の飼育動物などの家畜、ならびに野生動物にも適用可能である。本発明による治療を「必要としている」対象は、特定の疾患または障害に「罹患しているかまたは罹患している疑いがある」可能性があり、肯定的に診断された可能性があり、そうでなければ、医療専門家が対象が疾患または障害に罹患していると診断または疑うことができるような、十分な数の危険因子、または兆候もしくは症状の十分な数または組み合わせを呈している。したがって、特定の疾患または障害に罹患している対象、および罹患が疑がわれる対象は、必ずしも2つの異なる集団ではない。
【0104】
いくつかの実施形態では、式(I)の二官能性化合物は、細胞増殖性疾患および障害(例えば、癌または良性新生物)の治療に有用であり得る。本明細書で使用される場合、「細胞増殖性疾患または障害」という用語は、新生物などの非癌性状態、前癌性状態、良性腫瘍、および癌を含む、無秩序な細胞増殖または異常な細胞増殖またはその両方を特徴とする状態を指す。
【0105】
他の実施形態では、方法は、癌を有する対象を治療することに関する。概して、本発明の二官能性化合物は、癌腫(原発性腫瘍および転移性腫瘍の両方を含む固形腫瘍)、肉腫、黒色腫、ならびに白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫などの血液癌(リンパ球、骨髄および/またはリンパ節を含む血液に影響を及ぼす癌)の治療に有効であり得る。成人腫瘍/癌および小児腫瘍/癌が含まれる。癌は、血管新生した、またはまだ実質的に血管新生していない、または血管新生していない腫瘍であり得る。
【0106】
癌の代表的な例には、副腎皮質癌、AIDS関連癌(例えば、カポジおよびAIDS関連リンパ腫)、虫垂癌、小児癌(例えば、小児小脳星細胞腫、小児大脳星細胞腫)、基底細胞癌、皮膚癌(非黒色腫)、胆管癌、肝外胆管癌、肝内胆管癌、膀胱癌(bladder cancer)、膀胱癌(urinary bladder cancer)、脳癌(例えば、グリオーマおよびグリオブラストーマ、例えば脳幹グリオーマ、妊娠性絨毛性腫瘍グリオーマ、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性腫瘍グリオーマ、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視覚経路および視床下部グリオーマ)、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍、神経系癌(例えば、中枢神経系癌、中枢神経系リンパ腫)、子宮頸癌、慢性骨髄増殖性疾患、結腸直腸癌(例えば、結腸癌、直腸癌)、リンパ系新生物、菌状息肉症、セザリー症候群、子宮内膜癌、食道癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、消化管癌(例えば、胃癌、小腸癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST))、胆管癌、胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、頭頚部癌、神経内分泌腫瘍、ホジキンリンパ腫、Ann Arbor分類IIIおよび分類IV小児非ホジキンリンパ腫、ROS1陽性難治性非ホジキンリンパ腫、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、眼球癌、膵島細胞腫瘍(内分泌膵臓)、腎臓癌(例えば、ウィルムス腫瘍、腎細胞癌腫)、肝臓癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌および大細胞肺癌)、ALK陽性未分化大細胞リンパ腫、ALK陽性進行悪性固形新生物、ワルデンストレームマクログロブリン血症、黒色腫、眼内(目)黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明の転移性頸部扁平上皮癌、多発性内分泌腺腫症(MEN)、脊髄形成異常症候群、脊髄形成異常/骨髄増殖性疾患、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌(例えば、口癌、口唇癌、口腔癌、舌癌、口咽頭癌、咽喉癌、咽頭癌)、卵巣癌(例えば、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍)、膵臓癌、膵島細胞膵臓癌、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体芽細胞腫、転移性未分化甲状腺癌、未分化甲状腺癌、乳頭状甲状腺癌、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜胚芽腫、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、子宮癌(例えば、子宮内膜癌、子宮肉腫、子宮体癌)、扁平上皮癌、精巣癌、胸腺腫、胸腺癌、甲状腺癌、若年性黄色肉芽腫、腎盂および尿管およびその他の泌尿器官の移行細胞癌、尿道癌、妊娠性絨毛性腫瘍、膣癌、外陰部癌、肝芽腫、棒状体腫瘍、およびウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0107】
本発明の二官能性化合物で治療可能であり得る肉腫には、軟組織癌および骨癌の両方が同様に含まれ、その代表例には、骨肉腫または骨原性肉腫(骨)(例えば、ユーイング肉腫)、軟骨肉腫(軟骨)、平滑筋肉腫(平滑筋)、横紋筋肉腫(骨格筋)、中皮肉腫または中皮腫(体腔の膜状内張)、線維肉腫(線維組織)、血管肉腫または血管内皮腫(血管)、脂肪肉腫(脂肪組織)、神経膠腫または星細胞腫(脳に見られる神経原性結合組織)、粘液肉腫(原始胚結合組織)、間葉または混合中胚葉腫瘍(混合結合組織型)、および組織球性肉腫(免疫癌)が含まれる。
【0108】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、血液系、肝臓、脳、肺、結腸、膵臓、前立腺、卵巣、乳房、皮膚、および子宮内膜の細胞増殖性疾患または障害を有する対象の治療を伴う。
【0109】
本明細書で使用される場合、「血液系の細胞増殖性疾患または障害」には、リンパ腫、白血病、骨髄新生物、肥満細胞新生物、骨髄異形成、良性単クローン性ガンマグロブリン血症、リンパ腫様丘疹症、真性多血症、原発性骨髄線維症、および本態性血小板血症が含まれる。したがって、血液癌の代表的な例には、多発性骨髄腫、リンパ腫(T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)およびALK+未分化大細胞リンパ腫(例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫から選択されたB細胞非ホジキンリンパ腫(例えば、胚中心B細胞様びまん性大細胞型B細胞リンパ腫または活性化B細胞様びまん性大細胞型B-細胞リンパ腫)、バーキットリンパ腫/白血病、マントル細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンストレームマクログロブリン血症、転移性膵臓腺癌、難治性B細胞非ホジキンリンパ腫、および再発性B細胞非ホジキンリンパ腫、小児リンパ腫、およびリンパ球性および皮膚起源のリンパ腫、例えば、小リンパ球性リンパ腫、小児白血病、有毛細胞白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病(例えば、急性単球性白血病)、慢性リンパ性白血病、小リンパ球性白血病、慢性骨髄球性白血病、慢性骨髄性白血病、および肥満細胞白血病を含む白血病、骨髄性新生物および肥満細胞新生物が含まれる。
【0110】
いくつかの実施形態では、血液癌は、多発性骨髄腫、リンパ腫、または白血病である。いくつかの実施形態では、白血病は、急性骨髄球性白血病、混合系統白血病(MLL)再配列急性骨髄球性白血病、ヌクレオフォスミン1(NPM1)に変異を有する急性骨髄球性白血病、DNAメチルトランスフェラーゼ3A(DNMT3A)に変異を有する急性骨髄球性白血病、または急性骨髄性好酸球性白血病である。
【0111】
本明細書で使用される場合、「肝臓の細胞増殖性疾患または障害」は、肝臓に影響を及ぼすすべての形態の細胞増殖性障害を含む。肝臓の細胞増殖性障害には、肝臓癌(例えば、肝細胞癌、肝内胆管癌および肝芽腫)、肝臓の前癌状態または前癌性状態、肝臓の良性増殖または病変、ならびに肝臓の悪性増殖または病変、ならびに肝臓以外の体内の組織および器官における転移性病変が含まれ得る。肝臓の細胞増殖性障害には、肝臓の過形成、化生、および異形成が含まれ得る。
【0112】
本明細書で使用される場合、「脳の細胞増殖性疾患または障害」は、脳に影響を及ぼすすべての形態の細胞増殖性障害を含む。脳の細胞増殖性障害には、脳癌(例えば、神経膠腫、グリア芽細胞腫、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、および未分化神経外胚葉性腫瘍(髄芽腫))、脳の前癌状態または前癌性状態、脳の良性増殖または病変、ならびに脳の悪性増殖または病変、ならびに脳以外の体内の組織および器官における転移性病変が含まれ得る。脳の細胞増殖性障害には、脳の過形成、化生、および異形成が含まれ得る。
【0113】
本明細書で使用される場合、「肺の細胞増殖性疾患または障害」は、胚細胞に影響を及ぼすすべての形態の細胞増殖性障害を含む。肺の細胞増殖性障害には、肺癌、肺の前癌および前癌性状態、肺の良性増殖または病変、肺の過形成、化生、および異形成、ならびに肺以外の体内の組織および器官における転移性病変が含まれる。肺癌には、肺のあらゆる形態の癌、例えば悪性肺新生物、上皮内癌、典型的なカルチノイド腫瘍、および非定型カルチノイド腫瘍が含まれる。肺癌には、小細胞肺癌(「SLCL」)、非小細胞肺癌(「NSCLC」)、腺癌、小細胞癌、大細胞癌、扁平上皮癌、および中皮腫が含まれる。肺癌には、「瘢痕癌」、細気管支肺胞上皮(bronchioveolar)癌、巨細胞癌、紡錘細胞癌、および大細胞神経内分泌癌が含まれ得る。肺癌には、組織学的および超微細構造的不均一性(例えば、混合細胞型)を有する肺新生物も含まれる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、非転移性または転移性肺癌(例えば、NSCLC、ALK陽性NSCLC、ROS1融合遺伝子を含むNSCLC、肺腺癌、および扁平上皮細胞肺癌)を治療するために使用され得る。
【0114】
本明細書で使用される場合、「結腸の細胞増殖性疾患または障害」は、結腸癌、結腸の前癌または前癌性状態、結腸の腺腫性ポリープ、および結腸の異時性病変を含む、結腸細胞に影響を及ぼす細胞増殖性障害のすべての形態を含む。結腸癌には、散発性および遺伝性結腸癌、悪性結腸新生物、上皮内癌、典型的なカルチノイド腫瘍、および非定型カルチノイド腫瘍、腺癌、扁平上皮癌、および扁平上皮癌が含まれる。結腸癌は、遺伝性症候群、例えば遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌、家族性腺腫性ポリポーシス、MYH関連ポリポーシス、ガードナー症候群、ポイツ・ジェガース症候群、ターコット症候群および若年性ポリポーシスに関連し得る。結腸の細胞増殖性障害はまた、結腸の過形成、化生、または異形成によって特徴付けられ得る。
【0115】
本明細書で使用される場合、「膵臓の細胞増殖性疾患または障害」は、膵臓細胞に影響を及ぼすすべての形態の細胞増殖性障害を含む。膵臓の細胞増殖性障害には、膵臓癌、膵臓の前癌状態または前癌性状態、膵臓の過形成、膵臓の異形成、膵臓の良性増殖または病変、ならびに膵臓の悪性増殖または病変、ならびに膵臓以外の体内の組織および器官における転移性病変が含まれ得る。膵臓癌には、管腺癌、腺扁平上皮癌、多形性巨細胞癌、粘液性腺癌、破骨細胞様巨細胞癌、粘液性嚢胞腺癌、腺房癌、未分類大細胞癌、小細胞癌、膵臓芽腫、乳頭状新生物、粘液性嚢胞腺腫、乳頭状嚢胞新生物、および漿液性嚢胞腺腫、ならびに組織学的および超微細構造的不均一性を有する膵臓新生物(例えば、混合細胞)を含む、膵臓のすべての形態の癌が含まれる。
【0116】
本明細書で使用される場合、「前立腺の細胞増殖性疾患または障害」は、前立腺に影響を及ぼすすべての形態の細胞増殖性障害を含む。前立腺の細胞増殖性障害には、前立腺癌、前立腺の前癌状態または前癌性状態、前立腺の良性増殖または病変、ならびに前立腺の悪性増殖または病変、ならびに前立腺以外の体内の組織および器官における転移性病変が含まれ得る。前立腺の細胞増殖性障害には、前立腺の過形成、化生、および異形成が含まれ得る。
【0117】
本明細書で使用される場合、「卵巣の細胞増殖性疾患または障害」は、卵巣の細胞に影響を及ぼす細胞増殖性障害のすべての形態を含む。卵巣の細胞増殖性障害には、卵巣の前癌状態または前癌性状態、卵巣の良性増殖または病変、卵巣癌、ならびに卵巣以外の体内の組織および器官における転移性病変が含まれ得る。卵巣の細胞増殖性障害には、卵巣の過形成、化生、および異形成が含まれ得る。
【0118】
本明細書で使用される場合、「乳房の細胞増殖性疾患または障害」は、乳房細胞に影響を及ぼすすべての形態の細胞増殖性障害を含む。乳房の細胞増殖性障害には、乳癌、乳房の前癌状態または前癌性状態、乳房の良性増殖または病変、ならびに乳房以外の体内の組織および器官における転移性病変が含まれ得る。乳房の細胞増殖性障害には、乳房の過形成、化生、および異形成が含まれ得る。
【0119】
本明細書で使用される場合、「皮膚の細胞増殖性疾患または障害」は、皮膚細胞に影響を及ぼす細胞増殖性障害のすべての形態を含む。皮膚の細胞増殖性障害には、皮膚の前癌状態または前癌性状態、皮膚の良性増殖または病変、黒色腫、悪性黒色腫またはその他の皮膚の悪性増殖または病変、ならびに皮膚以外の体内の組織および器官における転移性病変が含まれ得る。皮膚の細胞増殖性障害には、皮膚の過形成、化生、および異形成が含まれ得る。
【0120】
本明細書で使用される場合、「子宮内膜の細胞増殖性疾患または障害」は、子宮内膜の細胞に影響を及ぼす細胞増殖性障害のすべての形態を含む。子宮内膜の細胞増殖性障害には、子宮内膜の前癌状態または前癌性状態、子宮内膜の良性増殖または病変、子宮内膜癌、ならびに子宮内膜以外の体内の組織および器官における転移性病変が含まれ得る。子宮内膜の細胞増殖性障害には、子宮内膜の過形成、化生、および異形成が含まれ得る。
【0121】
式(I)の二官能性化合物は、単独療法として、または併用療法によって患者、例えば癌患者に投与され得る。療法は、単独または他の治療との組み合わせで、抗癌治療レジメンを過去に受けたことがない患者の初期治療としての「フロント/ファーストライン」;または、単独もしくは他の治療との組み合わせのいずれかで、過去に抗癌治療レジメンを受けたことがある患者の治療としての「セカンドライン」;または単独もしくは他の治療と組み合わせた、「サードライン」、「フォースライン」などの治療であり得る。療法は、以前に不成功、または部分的に成功した治療を受けた患者にも、特定の治療に不耐性になった患者を除いて行われ得る。療法はまた、アジュバント治療として、すなわち、現在検出可能な疾患を有さない、または腫瘍の外科的切除後の患者における癌の再発を予防するために行われ得る。したがって、いくつかの実施形態では、二官能性化合物は、別の療法、例えば化学療法、放射免疫療法、外科的療法、免疫療法、放射線療法、標的療法またはそれらの任意の組み合わせを受けた患者に投与され得る。
【0122】
本発明の方法は、単回投与または複数回投与(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、10、15、20回またはそれ以上の投与)での、式Iの二官能性化合物またはその医薬組成物の患者への投与を伴うことができる。例えば、投与頻度は、1日1回からおよそ8週間に1回までの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、投与頻度は、1、2、3、4、5、または6週間で1日に約1回から変動し、他の実施形態では、3週間(21日間)の毎日投与とそれに続く7日間の「オフ」期間とを含む28日サイクルを伴う。他の実施形態では、二官能性化合物は、2日半の期間にわたって1日2回(BID)(合計5回の投与)、または2日の期間にわたって1日1回(QD)(合計2回の投与)投与され得る。他の実施形態では、二官能性化合物は、5日間にわたって1日1回(QD)投与され得る。
【0123】
併用療法
式(I)の二官能性化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩および立体異性体は、疾患および障害の治療において、少なくとも1つの他の活性薬剤、例えば抗癌剤またはレジメンと組み合わせて、または同時に使用することができる。この文脈において「組み合わせて」および「同時に」という用語は、薬剤が、同じまたは別々の剤形によって、同じまたは別々の投与様式によって、または順次に、例えば同じ治療レジメンの一部として、または連続的な治療レジメンによって、実質的に同時の投与を含む、同時投与されることを意味する。したがって、連続的に与えられる場合、第2の化合物の投与開始時に、2つの化合物のうちの第1の化合物は、場合によっては、治療部位において依然として有効濃度で検出可能である。順序および時間間隔は、それらが一緒に(例えば相乗的に)作用して、他の方法で投与された場合よりも高い利益を提供することができるように決定することができる。例えば、治療薬は、同時に、または異なる時点で任意の順序で連続的に投与され得る。しかしながら、同時に投与されない場合、それらは、相乗作用的な形態であり得る所望の治療効果を提供するように、十分時間を接近させて投与することができる。したがって、これらの用語は、活性薬剤を正確に同時に投与することに限定されない。
【0124】
いくつかの実施形態では、治療レジメンは、疾患または状態(例えば、癌)の治療に使用することが知られている1または複数の追加の治療薬と組み合わせた、式(I)の二官能性化合物の投与を含み得る。追加の抗癌治療薬の投与量は、既知の用量または推奨される用量と同じか、またはそれより低くてもよい。Hardman et al., eds., Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis Of Basis Of Therapeutics, 10th ed., McGraw-Hill, New York, 2001; Physician’s Desk Reference 60th ed., 2006を参照されたい。例えば、本発明の二官能性化合物と組み合わせて使用するのに好適であり得る抗癌剤は、当該技術分野において公知である。例えば、米国特許第9,101,622号(そのセクション5.2)および米国特許第9,345,705 B2号(そのコラム12~18)を参照されたい。追加の活性薬剤および治療レジメンの代表的な例には、放射線療法、化学療法剤(例えば、有糸分裂阻害剤、血管新生阻害剤、抗ホルモン剤、オートファジー阻害剤、アルキル化剤、挿入抗生物質、成長因子阻害剤、抗アンドロゲン物質、シグナル伝達経路阻害剤、微小管阻害剤、白金配位錯体、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、およびトポイソメラーゼ阻害剤)、免疫調節剤、治療用抗体(例えば、単一特異性抗体および二官能性抗体)およびCAR-T療法が含まれる。
【0125】
いくつかの実施形態では、式(I)の二官能性化合物および追加の(例えば、抗癌)治療薬は、5分未満の間隔で、30分未満の間隔で、1時間未満の間隔で、約1時間の間隔で、約1~約2時間の間隔で、約2時間~約3時間の間隔で、約3時間~約4時間の間隔で、約4時間~約5時間の間隔で、約5時間~約6時間の間隔で、約6時間~約7時間の間隔で、約7時間~約8時間の間隔で、約8時間~約9時間の間隔で、約9時間~約10時間の間隔で、約10時間~約11時間の間隔で、約11時間~約12時間の間隔で、約12時間~18時間の間隔で、18時間~24時間の間隔で、24時間~36時間の間隔で、36時間~48時間の間隔で、48時間~52時間の間隔で、52時間~60時間の間隔で、60時間~72時間の間隔で、72時間~84時間の間隔で、84時間~96時間の間隔で、96時間~120時間の間隔で投与されてもよい。2つ以上の(例えば、抗癌)治療薬は、患者の一回の診察中に投与されてもよい。
【0126】
癌治療を含むいくつかの実施形態では、式(I)の二官能性化合物およびさらなる抗癌剤または治療薬は、周期的に投与される。周期的療法は、抗癌治療薬の一方または両方に対する耐性の発生を減少させるため、抗癌治療薬の一方または両方の副作用を回避または減少させるため、および/または療法の有効性を改善するために、1つの抗癌治療薬を一定期間投与すること、続いて第2の抗癌治療薬を一定期間投与すること、およびこの連続投与、すなわちサイクルを繰り返すことを含む。一例では、周期的療法は、1つの抗癌治療薬に対する耐性の発生を減少させるため、1つの抗癌治療薬の副作用を回避または減少させるため、および/または抗癌治療薬の有効性を改善するために、第1の抗癌治療薬を一定期間投与すること、続いて第2の抗癌治療薬を一定期間投与すること、場合により続いて第3の抗癌治療薬を一定期間投与することなど、およびこの連続投与、すなわちサイクルを繰り返すことを含む。
【0127】
医薬品キット
本発明の二官能性化合物および/またはそれらを含む組成物は、キットまたは医薬システムに組み立てることができる。本発明のこの態様によるキットまたは医薬システムは、箱、カートン、チューブなどのキャリアまたはパッケージを含み、その中に式(I)の二官能性化合物またはその医薬組成物を含有するバイアル、チューブ、アンプルまたはボトルなどの1または複数の容器が厳密に封入されている。本発明のキットまたは医薬システムはまた、化合物および組成物を使用するための印刷された説明書を含み得る。
【0128】
本発明のこれらおよび他の態様は、本発明の特定の実施形態を説明することを意図しているが、特許請求の範囲によって定義されるその範囲を限定することを意図していない以下の実施例を考慮するとさらに理解されるであろう。
【実施例】
【0129】
本発明のこれらおよび他の態様は、本発明の特定の実施形態を説明することを意図しているが、特許請求の範囲によって定義されるその範囲を限定することを意図していない以下の実施例を考慮するとさらに理解されるであろう。
【0130】
実施例1:中間体int-1からint-5の合成
【化43】
(2R,3R,4S,5R)-2-(6-((4-アミノブチル)アミノ)-9H-プリン-9-イル)-5-(((3-(2-(5-(tert-ブチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)エチル)シクロブチル)(イソプロピル)アミノ)メチル)テトラヒドロフラン-3,4-ジオール(int-1)
【0131】
化合物A(20.0mg、25.8μmol、1.00当量)のTHF(1mL)溶液に、ジオキサン(1.00mL)中の4.0M HClを滴下した。この混合物を室温で30分間撹拌した後、メタノール(300μL)を添加した。得られた反応混合物を、出発物質がMSにより枯渇するまで3時間撹拌した。粗混合物を減圧下で濃縮し、int-1(16.4mg、25.8μmol、定量的)を得た。
【0132】
MS(ESI):C34H51N9O3の計算値:633.84、実測値:634.84。
【0133】
UPLC-MS RT:1.32分(方法A)、質量m/z:389.87[M-tBu+H]
+。
【化44】
5-((4-((9-((2R,3R,4S,5R)-5-(((3-(2-(5-(tert-ブチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)エチル)シクロブチル)(イソプロピル)アミノ)メチル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル)アミノ)ブチル)アミノ)-5-オキソペンタン酸(int-2)
【0134】
int-1(16.4mg、25.8μmol、1.00当量)およびグルタル酸無水物(2.94mg、25.8μmol、1.00当量)のMeCN中0.3μM溶液に、トリエチルアミン(7.18μL、51.6μmol、2当量)を滴下添加した。この反応物を、出発物質がMSによって枯渇するまで、室温で30分間撹拌した。得られた粗混合物を減圧下で濃縮して、int-2(16.4mg、25.8μmol、定量的)を得た。
【0135】
MS(ESI):C
39H
57N
9O
6の計算値:747.44、実測値:748.47。
【化45】
1-(3-((((2R,3S,4R,5R)-5-(6-((4-アミノブチル)アミノ)-9H-プリン-9-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メチル)(イソプロピル)アミノ)プロピル)-3-(4-tertブチル)フェニル)尿素(int-3)
【0136】
化合物B(20.0mg、26.6μmol、1.00当量)のTHF(1mL)溶液に、ジオキサン中4.0M HCl(1.00mL)を滴下した。この混合物を室温で30分間撹拌した後、メタノール(300μL)を添加した。得られた反応混合物を、出発物質がMSによって枯渇するまで3時間撹拌した。得られた粗混合物を減圧下で濃縮して、int-3(16.4mg、25.8μmol、定量的)を得た。
【0137】
MS(ESI):C
34H
51N
9O
3の計算値:611.39、実測値:612.40。
【化46】
1-(3-((((2R,3R,4S,5R)-5-(4-((4-アミノブチル)アミノ)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メチル)(イソプロピル)アミノ)プロピル)-3-(4-(tert-ブチル)フェニル)尿素(int-4)
【0138】
Int-4を、上記Int-3と類似の様式で調製した。
【化47】
4-((4-アミノブチル)アミノ)-7-((2R,3S,4R,5R)-5-(((3-(2-(5-(tert-ブチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)エチル)シクロブチル)(イソプロピル)アミノ)メチル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボニトリル(int-5)
【0139】
Int-5を、上記Int-1と類似の様式で調製した。
【0140】
実施例2:N-(4-((9-((2R,3R,4S,5R)-5-(((3-(2-(5-(tert-ブチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)エチル)シクロブチル)(イソプロピル)アミノ)メチル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル)アミノ)ブチル)-12-(2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)アセトアミド)ドデカンアミド(1)の合成。
【化48】
【0141】
無水ジメチルホルミド(DMF)中のint-1(16.4mg、25.8μmol)およびIMiD酸1(13.6mg、25.8μmol)の0.3M溶液に、トリエチルアミンを添加した(77.4μmol、3.0当量)。5分間撹拌した後、ヘキサフルオロホスフェートアザベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム(HATU)(25.8μmol、1.0当量)を加えた。得られた反応混合物を23℃で1時間撹拌した。反応が完了したら、得られた粗生成物を分取高速液体クロマトグラフィー(prep-HPLC)によって精製して、化合物1を白色粉末(5.05mg、収率17.%)として得た。
【0142】
MS(ESI):C61H84N12O10の計算値:1144.64、実測値:1145.66。
【0143】
実施例3:N-(4-((9-((2R,3R,4S,5R)-5-(((3-(2-(5-(tert-ブチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)エチル)シクロブチル)(イソプロピル)アミノ)メチル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル)アミノ)ブチル)-16-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)ヘキサデカンアミド(2)。
【化49】
【0144】
化合物2を、int-1(32.8mg、51.6μmol)および適切なIMiD酸(27.2mg、51.6μmol)から実施例2の化合物1と類似の方法で合成し、明黄色粉末(25mg、42.3%)として単離した。
【0145】
MS(ESI):C63H90N12O8の計算値:1142.70、実測値:1143.70。
【0146】
実施例4:N-(4-((9-((2R,3R,4S,5R)-5-(((3-(2-(5-(tert-ブチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)エチル)シクロブチル)(イソプロピル)アミノ)メチル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル)アミノ)ブチル)-16-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)ヘキサデカンアミド(3)の合成。
【化50】
【0147】
化合物3を、実施例2の化合物1と類似の様式で、int-1(8.15mg、12.9μmol)および適切なIMiD酸(6.45mg、12.9μmol)から合成し、明黄色粉末(3.80mg、22.2%)として単離した。
【0148】
MS(ESI):C61H86N12O8の計算値:1114.67、実測値:1115.67。
【0149】
実施例5:N1-(4-((9-((2R,3R,4S,5R)-5-(((3-(2-(5-(tert-ブチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)エチル)シクロブチル)(イソプロピル)アミノ)メチル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル)アミノ)ブチル)-N5-(8-(((R)-1-((2R,4S)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-8-オキソオクチル)グルタルアミド(4)の合成。
【化51】
【0150】
化合物4を、実施例2の化合物1と類似の様式で、int-2(9.6mg,12.9μmol)および化合物VHL-C7-NH2(6.45mg,12.9μmol)から合成し、白色粉末(2.95mg,17.6%)として単離した。
【0151】
MS(ESI):C69H100N14O9Sの計算値:1300.75、実測値:1301.74。
【0152】
実施例6:N-(4-((7-((2R,3R,4S,5R)-5-(((3-(2-(5-(tert-ブチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)エチル)シクロブチル)(イソプロピル)アミノ)メチル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ブチル)-16-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)ヘキサデカンアミド(5)の合成。
【化52】
【0153】
化合物5を、実施例2の化合物1と類似の様式で、int-4(5.00mg、8.08μmol)および適切なIMiD酸(4.2mg、8.08μmol)から合成し、明黄色粉末(1.52mg、16.7%)として単離した。
【0154】
MS(ESI):C63H89N11O8の計算値:1127.69、実測値:1128.70。
【0155】
実施例7:N-(4-((9-((2S,3R,4S,5R)-5-(((3-(3-(4-(tert-ブチル)フェニル)ウレイド)プロピル)(イソプロピル)アミノ)メチル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル)アミノ)ブチル)-16-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)ヘキサデカンアミド(6)の合成。
【化53】
【0156】
化合物6を、実施例2の化合物1と類似の様式で、int-3(5.00mg、8.08μmol)および適切なIMiD酸(4.2mg、8.08μmol)から合成し、明黄色粉末(1.52mg、16.7%)として単離した。
【0157】
MS(ESI):C60H88N12O9の計算値:1120.68、実測値:1121.69。
【0158】
実施例8:N-(4-((9-((2R,3S,4R,5R)-5-(((3-(2-(5-(tert-ブチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)エチル)シクロブチル)(イソプロピル)アミノ)メチル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル)アミノ)ブチル)-16-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)ヘキサデカンアミド(7)の合成。
【化54】
【0159】
化合物7を、実施例2の化合物1と類似の様式で、int-1および適切なIMiD酸から合成し、白色粉末として単離した。
【0160】
MS(ESI):C63H89N11O9の計算値:1144.47、実測値:1145.47。
【0161】
実施例9:N-(4-((9-((2R,3S,4R,5R)-5-(((3-(3-(4-(tert-ブチル)フェニル)ウレイド)プロピル)(イソプロピル)アミノ)メチル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル)アミノ)ブチル)-16-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)ヘキサデカンアミド(8)の合成。
【化55】
【0162】
化合物8を、実施例2の化合物1と類似の様式で、int-3および適切なIMiD酸から合成し、白色粉末として単離した。
【0163】
MS(ESI):C60H87N11O10の計算値:1122.42、実測値:1123.42。
【0164】
実施例10:N-(4-((7-((2R,3S,4R,5R)-5-(((3-(2-(5-(tert-ブチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)エチル)シクロブチル)(イソプロピル)アミノ)メチル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-5-シアノ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ブチル)-16-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アミノ)ヘキサデカンアミド(9)の合成。
【化56】
【0165】
化合物9を、実施例2の化合物1と類似の様式で、int-5および適切なIMiD酸から合成し、明黄色粉末として単離した。
【0166】
MS(ESI):C65H89N11O9の計算値:1167.51、実測値:1168.52。
【0167】
実施例11:N-(4-((7-((2R,3S,4R,5R)-5-(((3-(2-(5-(tert-ブチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)エチル)シクロブチル)(イソプロピル)アミノ)メチル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-5-シアノ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ブチル)-16-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)ヘキサデカンアミド(10)の合成。
【化57】
【0168】
化合物10を、実施例2の化合物1と類似の様式で、int-5および適切なIMiD酸から合成し、白色粉末として単離した。
【0169】
MS(ESI):C65H89N11O9の計算値:1168.50、実測値:1169.51。
【0170】
実施例12:N-(4-((7-((2R,3S,4R,5R)-5-(((3-(2-(5-(tert-ブチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)エチル)シクロブチル)(イソプロピル)アミノ)メチル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-5-シアノ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ブチル)-16-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)ヘキサデカンアミド(11)の合成。
【化58】
【0171】
化合物11を、実施例2の化合物1と類似の様式で、int-1および適切なIMiD酸から合成し、明黄色粉末として単離した。
【0172】
MS(ESI):C63H90N14O8の計算値:1171.50、実測値:1172.51。
【0173】
実施例13:細胞のテロメアサイレンシング1様の撹乱物質(DOT1L)の蛍光偏光(FP)置換アッセイ。
【0174】
DOT1L FP置換アッセイを、本発明の二官能性化合物2、3、および6、ならびにポマリドミドおよび陽性対照EPZ5676を用いて、異なる濃度[M]で実施し、1mPあたりの[M]で測定した。
【0175】
その結果を
図1に示す。これらは、本発明の二官能性化合物2、3、および6が、FPアッセイにおいてフルオレセインイソチオシアネート(FITC)-プローブの置換を介してDOT1Lに結合したことを示す。
【0176】
実施例14:DOT1L:セレブロン(CRBN)-DNA損傷結合タンパク質1(DNA damage-binding protein 1)(DDB1)/DOT1L二量体化アッセイ。
【0177】
GST-CRBN-DDB1及びDOT1L(6×HISタグ付き)を両方ともアッセイ緩衝液(50mM 2-[4-(2-ヒドロキシルエチル)ピペラジン-1-イル]エタン-1-スルホン酸(HEPES)pH7.4、150mM NaCl、及び0.01%Tween(登録商標)2、0.1%牛血清アルブミン(BSA))中で125nMに希釈し、20μLのタンパク質混合物を384ウェルAlphaPlate(商標)(PerkinElmer(登録商標))の各ウェルに添加した。次いで、化合物を、Janus(登録商標)Workstation(PerkinElmer(登録商標))を使用してDMSOストックプレートからウェル当たり100nLで添加した。室温で1時間インキュベートした後、アッセイ緩衝液中で20ng/μlに希釈した20μLのNickel Chelate AlphaLISA(登録商標)AcceptorおよびGlutathione AlphaLISA(登録商標)Donorビーズ(PerkinElmer(登録商標))を各ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、Envision(登録商標)2104プレートリーダー(PerkinElmer(登録商標))で発光を測定した。GraphPad PRISM v6を使用してデータを分析し、プロットし、「Gaussian」分析モジュールを使用して二量体化の振幅、平均、およびs.d.値を決定した。
【0178】
本発明の二官能性化合物2、3、および6、ならびにポマリドミドおよびEPZ5676によるDOT1L:CRBNの二量体化を、AlphaScreen(登録商標)アッセイによって評価した。
【0179】
その結果を
図2に示す。これらは、本発明の二官能性化合物2、3、および6がDOT1LおよびCRBNの間の三元複合体の形成を誘導したことを示す。
【0180】
実施例15:本発明の二官能性化合物を用いたEOL1(ヒト好酸球白血病)細胞における細胞増殖アッセイ。
【0181】
EOL1細胞を、0.25×10
6細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートに播種し、次いで、示された濃度で化合物を処理し、示された時間インキュベートした。トリパンブルーで染色した後、Countess(登録商標)II FL自動細胞計数器(ThermoFisher Scientific)を使用して細胞計数を実施した。
【化59】
【0182】
結果を
図3A~
図3Eに示す。これらは、本発明の二官能性化合物2~6が、用量依存的に、かつ初期の時点で、EOL1細胞生存率を減少させたことを示す。
【0183】
結果を
図4A~
図4Bに示す。
図4Aは、本発明の二官能性化合物2が、EOL1細胞において、用量依存的に2.5μMまでDOT1Lを分解したことを示す。
図4Bは、本発明の二官能性化合物2が、用量依存的に、かつ初期の時点で、EOL1細胞生存率を減少させたことを示す。
【0184】
結果を
図6A~
図6Bに示す。
図6Aは、本発明の二官能性化合物3が、EOL1細胞において、用量依存的に5.0μMまでDOT1Lを分解したことを示す。
図6Bは、本発明の二官能性化合物3が、用量依存的に、かつ初期の時点で、EOL1細胞生存率を減少させたことを示す。
【0185】
結果を
図7に示す。これらは、本発明の二官能性化合物4が、用量依存的にEOL1細胞生存率を減少させなかったことを示す。
【0186】
結果を
図8A~
図8Bに示す。これらは、本発明の二官能性化合物5が、用量依存的に、かつ初期の時点でEOL1細胞生存率を減少させなかったことを示す。
【0187】
結果を
図9A~
図9Bに示す。
図9Aは、本発明の二官能性化合物6が、EOL1細胞において、用量依存的に5.0μMまでDOT1Lを分解したことを示す。
図9Bは、本発明の二官能性化合物6が、用量依存的に、かつ初期の時点でEOL1細胞生存率を減少させたことを示す。
【0188】
実施例16:本発明の二官能性化合物を用いたMV411(ヒト骨髄単球性白血病)細胞における細胞増殖アッセイ。
【0189】
MV411細胞を、6ウェルプレートに0.25×106細胞/ウェルの密度で播種し、次いで、示された濃度で化合物を処理し、示された時間インキュベートした。トリパンブルーで染色した後、Countess(登録商標)II FL自動細胞カウンター(ThermoFisher Scientific)を用いて細胞計数を行った。
【0190】
結果を
図5A~
図5Bに示す。
図5Aは、本発明の二官能性化合物2が、MV411細胞において、用量依存的に10.0μMまでDOT1Lを分解したことを示す。
図5Bは、本発明の二官能性化合物2が、用量依存的に、かつ初期の時点で、MV411細胞生存率を減少させたことを示す。
【0191】
結果を
図10A~
図10Bに示す。
図10Aは、本発明の二官能性化合物6が、MV411細胞において、用量依存的に5.0μMまでDOT1Lを分解したことを示す。
図10Bは、本発明の二官能性化合物6が、用量依存的に、かつ初期の時点で、MV411細胞生存率を減少させたことを示す。
【0192】
実施例17:本発明の二官能性化合物を用いたSEMK2(B急性リンパ芽球性白血病)細胞における細胞増殖アッセイ。
【0193】
SEMK2細胞を、6ウェルプレートに0.25×106細胞/ウェルの密度で播種し、次いで、示された濃度で化合物を処理し、示された時間インキュベートした。トリパンブルーで染色した後、Countess((登録商標))II FL自動細胞カウンター(ThermoFisher Scientific)を用いて細胞計数を行った。
【0194】
結果を
図11に示す。これらは、本発明の二官能性化合物6が、用量依存的に、かつ初期の時点でSEMK2細胞生存率を減少させたことを示す。
【0195】
実施例18:本発明の二官能性化合物を用いたTHP1(急性単球性白血病)細胞における細胞増殖アッセイ。
【0196】
THP1細胞を、6ウェルプレートに0.25×106細胞/ウェルの密度で播種し、次いで、示された濃度で化合物を処理し、示された時間インキュベートした。トリパンブルーで染色した後、Countess((登録商標))II FL自動細胞カウンター(ThermoFisher Scientific)を用いて細胞計数を行った。
【0197】
結果を
図12に示す。これらは、本発明の二官能性化合物6が、用量依存的に、かつ初期の時点でTHP1細胞生存率を減少させたことを示す。
【0198】
全ての特許公報および非特許公報は、本発明が属する技術分野における当業者の技術レベルを示す。これらのすべての刊行物(参照される特定の部分を含む)は、個々の刊行物が参照により組み込まれるものとして具体的かつ個別に示されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0199】
本明細書の発明は、特定の実施形態を参照して説明したが、これらの実施形態は、本発明の原理および用途の単なる例示であることを理解されたい。したがって、例示的な実施形態に多くの修正を加えることができ、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく他の構成を考案することができることを理解されたい。
【国際調査報告】