(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】有機廃棄材料を処理する方法
(51)【国際特許分類】
C05F 17/00 20200101AFI20241010BHJP
C05F 3/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C05F17/00
C05F3/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522626
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 US2022048542
(87)【国際公開番号】W WO2023081132
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390037914
【氏名又は名称】マース インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】フジエ,アレクサンドル
【テーマコード(参考)】
4H061
【Fターム(参考)】
4H061AA02
4H061CC37
4H061CC55
4H061EE51
4H061EE62
4H061EE66
4H061GG49
4H061KK09
4H061LL02
4H061LL22
(57)【要約】
本開示は、有機廃棄材料を有機堆肥へと加工する方法に関し、該方法は、a)少なくとも1つ以上の乳酸菌を有機廃棄材料に加えることを含む、有機廃棄材料を発酵させるステップであって、通性嫌気性条件下、酸性pHで行われ、それにより発酵有機材料が得られるステップ、b)ステップa)で得られた前記発酵有機材料を好気性条件で熟成させ、それにより熟成有機材料が得られるステップ、及びc)ステップb)で得られた前記熟成有機材料をミミズ堆肥化し、それにより有機堆肥が得られるステップ、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機廃棄材料を有機堆肥へと処理する方法であって、
a)少なくとも1つ以上の乳酸菌を前記有機廃棄材料に加えることを含む、前記有機廃棄材料を発酵させるステップであって、通性嫌気性条件下、酸性pHで行われ、それにより発酵有機材料が得られる、ステップ、
b)ステップa)で得られた前記発酵有機材料を好気性条件で熟成させ、それにより熟成有機材料が得られる、ステップ、及び
c)ステップb)で得られた前記熟成有機材料をミミズ堆肥化し、それにより有機堆肥が得られる、ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
ステップa)が、乳酸菌を含む微生物組成物を前記有機廃棄材料に加えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微生物組成物が、前記乳酸菌に加えて、ラクトバチルス(Lactobacillus)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、又はそれらの組合せから選択される1つ以上の微生物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)が、約3から約5のpHで行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップb)で処理される前記発酵有機材料の水分含量が、約45%から約75%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップb)が、約4から約7のpHで行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップc)が、1つ以上のミミズ種のミミズをステップb)で得られた前記熟成有機材料に加えることを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップc)が、ミミズに加えて、セルロース廃棄物及び/又は水を前記熟成有機材料に加えることをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップc)が、約15℃から約30℃のT℃で行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップc)が、前記処理された有機材料の水分含量が約60%から約70%で行われる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によって得られる、処理済み有機堆肥。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によって得られた処理済み有機堆肥、又は請求項11に記載の有機堆肥の土壌施肥のための使用。
【請求項13】
土壌施肥方法であって、
i)請求項1から10のいずれか一項に記載の方法に従って有機廃棄材料を処理し、それにより有機堆肥が得られるステップ、及び
ii)ステップi)で得られた前記有機堆肥を、前記施肥する土壌に加えるステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容全体がここに参照することによって本願に援用される、2021年11月5日出願の欧州特許出願第21206746.6号の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、有機廃棄材料を処理して、特に土壌植物の成長特性を改善するための加工有機製品を獲得する分野に関する。
【背景技術】
【0003】
有機廃棄材料を有用な製品に変換するため、とりわけ土壌植物の成長特性を改善する製品などの土壌改良製品を形成するための複数の方法が、当技術分野で知られている。
【0004】
これらの方法の中でもとりわけ、嫌気性消化はバイオマスを再生可能エネルギー源として活用することから、有機廃棄物の処理における持続可能な選択肢となる。嫌気性消化プロセスからは、主に2つの生成物、すなわち、燃料として使用することができるバイオガスと、土壌改良剤及び/又は作物のバイオ肥料として使用することができる「消化物」と呼ばれうる安定化された液体-固体残留物とが得られる。当技術分野では、消化物には高濃度の有機物及びさまざまな植物栄養素が含まれており、農業での肥料としての使用に理想的であると記載されている(非特許文献1)。
【0005】
しかしながら、さまざまな状況において、消化物は、アンモニア性窒素の放出により、水域の富栄養化、地下水汚染、及び大気汚染などの悪影響を引き起こす可能性がある。消化物の欠点としては、(a)完全に安定化されていない生分解性物質が存在すること、(b)大気汚染の原因となり、植物毒性効果をもたらす可能性のある高濃度のアンモニア、(c)とりわけ中温消化システムでは消化物中に最長1年間生存可能な病原微生物が存在すること、及び(d)消化物の水分含有量が高いために保管及び輸送が困難であることなどが挙げられる。
【0006】
消化物を、さらに処理するために、それぞれ液体部分と固形分の2相に分離するのが一般的である。固形分は、主に有機肥料として用いられる。それでも、消化物の固形分は伝統的に堆肥化などの生物学的プロセスを通じて精製されている。
【0007】
有機廃棄物の嫌気性消化物を精製するさまざまなプロセスの中でもとりわけ、消化物をミミズ堆肥化によって処理することが当技術分野で説明されている(非特許文献2)。ミミズ堆肥化の前に、嫌気性消化物を脱水に供し、鋸屑などの増量材を加えることによって安定化させることができる。非特許文献2によれば、70:30(消化物:鋸屑)の混合物を調製することが、ミミズの生育に基づくミミズ堆肥化に適した培地であることが判明している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Guilayn et al., 2019, Waste Management, Vol. 86 : 67-79
【非特許文献2】Krishnasamy et al., 2014, Int. Environment and Waste Management, Vol. 14 : 149-164
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
当技術分野では、植物の成長を改善するなど、土壌の改良に適した処理済み有機廃棄物を得るための改善された方法を含む、有機廃棄物を処理するための改善された方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、有機廃棄材料を有機堆肥へと加工する方法に関し、該方法は、
a)少なくとも1つ以上の乳酸菌を有機廃棄材料に加えることを含む、有機廃棄材料を発酵させるステップであって、通性嫌気性条件下、酸性pHで行われ、それにより発酵有機材料が得られるステップ、
b)ステップa)で得られた発酵有機材料を好気性条件で熟成させ、それにより熟成有機材料が得られるステップ、及び
c)ステップb)で得られた熟成有機材料をミミズ堆肥化し、それにより有機堆肥が得られるステップ
を含む。
【0011】
幾つかの実施形態では、ステップa)は、乳酸菌を含む微生物組成物を有機廃棄材料に加えることを含む。
【0012】
幾つかの実施形態では、ステップa)で用いられる微生物組成物は、乳酸菌に加えて、ラクトバチルス(Lactobacillus)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、又はそれらの組合せから選択される1つ以上の微生物を含む。
【0013】
幾つかの実施形態では、ステップa)は、約3から約5のpHで行われる。
【0014】
幾つかの実施形態では、ステップb)で加工される発酵有機材料の水分含量は、約45%から約75%である。
【0015】
幾つかの実施形態では、ステップb)は、約4から約7のpHで行われる。
【0016】
幾つかの実施形態では、ステップc)は、1つ以上のミミズ種のミミズをステップb)で得られた熟成有機材料に加えることを含む。
【0017】
幾つかの実施形態では、ステップc)は、ミミズに加えて、セルロース廃棄物及び/又は水を熟成有機材料に添加することをさらに含む。
【0018】
幾つかの実施形態では、ステップc)は、約15℃から約30℃のT℃で行われる。
【0019】
幾つかの実施形態では、ステップc)は、処理された有機材料の水分含量が約60%から約70%で行われる。
【0020】
本開示はさらに、本明細書に開示される方法による方法によって得られる処理済み有機堆肥に関する。
【0021】
本開示はまた、本明細書に開示される方法によって得られる処理済み有機堆肥、又は本明細書に開示される有機堆肥を土壌施肥に使用することにも関する。
【0022】
本開示はさらに、
i)請求項1から10のいずれか一項に記載の方法に従って有機廃棄材料を処理し、それにより有機堆肥が得られるステップ、及び
ii)ステップi)で得られた前記有機堆肥を、施肥する土壌に加えるステップ
を含む、土壌施肥方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
特に、メタンの生成を回避することができる特定の通性嫌気性条件下での発酵ステップを含む方法を実施することによって、有機廃棄材料の処理を改善することができることが判明した。
【0024】
有機廃棄物の処理は、処理される出発有機廃棄材料を特定の通性嫌気性条件下で発酵させて、発酵有機廃棄材料を得るステップと、それを好気性条件で発酵させるステップでさらに処理してミミズ堆肥化による変換にすぐに適した成熟有機物を得ることとを組み合わせることによって、改善することができることがわかった。
【0025】
本開示は、少なくとも発酵ステップ、熟成ステップ、及びミミズ堆肥化ステップを含む、有機廃棄材料を有機堆肥へと処理する方法に関し、ここで、
a)発酵ステップは、少なくとも1つ以上の乳酸菌を有機廃棄材料に加えることを含み、該ステップは、通性嫌気性条件下、酸性pHで行われ、それにより発酵有機材料が得られ、
b)熟成ステップは、ステップa)で得られた発酵有機材料を好気性条件で発酵させることを含み、それにより熟成有機材料が得られ、かつ
c)ミミズ堆肥化ステップは、少なくともステップb)で得られた熟成有機材料をミミズ堆肥化ステップに供し、それにより有機堆肥が得られる。
【0026】
幾つかの実施形態では、本開示は、有機廃棄材料を有機堆肥へと処理する方法に関し、該方法は、
a)少なくとも1つ以上の乳酸菌を有機廃棄材料に加えることを含む、有機廃棄材料を発酵させるステップであって、通性嫌気性条件下、酸性pHで行われ、それにより発酵有機材料が得られる、ステップ、
b)ステップa)で得られた発酵有機材料を好気性条件で熟成させ、それにより熟成有機材料が得られる、ステップ、及び
c)ステップb)で得られた熟成有機材料をミミズ堆肥化し、それにより有機堆肥が得られる、ステップ
を含む。
【0027】
定義
以下の請求項及び本明細書の説明において、「含んでいる」、「含む」、「含有している」、「から構成される」、又は「備える」という用語のいずれか1つは、少なくとも以下の要素/特徴を含むが、他の要素/特徴を除外しないことを意味する、オープンな用語である。したがって、請求項で用いられる「含む」という用語は、その後に列挙される手段、要素、又はステップに限定されるものとして解釈されるべきではない。例えば、ステップA及びステップBを含む方法という表現の範囲は、方法A及びBのみからなる方法に限定されるべきではない。本明細書で用いられる「含んでいる」又は「備える」又は「含有する」という用語のうちのいずれか1つも、その用語に続く要素/特徴を少なくとも含むが、他の要素/特徴を除外しないことを意味するオープンな用語である。したがって、「含有する」は「含む」と同義であり、「含んでいる」ことを意味する。
【0028】
「~からなる」という用語には、クレームに指定されていない要素、ステップ、又は成分は含まれない。「本質的に~からなる」という移行句は、指定された物質又はステップに関するクレームの範囲、及び請求された開示の基本的かつ新規な(一又は複数の)特徴に対し、実質的に影響を及ぼさない。「本質的に~からなる」というクレーム用語は、「~からなる」形式で記述されたクローズドクレームと「含む」形式で書かれた完全にオープンなクレームとの間の中心的な領域を占める。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「廃棄材料」及び「有機廃棄材料」という用語は互換的に用いられ、人間、動物、又は産業領域に由来するあらゆる種類の廃棄有機材料を指す。有機廃棄物には、都市下水、家庭ゴミ、屠畜場廃棄物、人間の排泄物、限定はしないが園芸からの植物廃棄物、動物の排泄物、及び限定はしないが食品、飼料、及び製薬産業からの産業廃棄物から選択される廃棄物、例えば、発酵プロセス、醸造、又は組み換え酵素の産生物からの廃棄物が含まれうる。廃棄物は、廃棄物保管施設、すなわち、動物の排泄物が保管されるピット又はラグーンを含む、廃棄物の保管、貯蔵、又は処理のための施設から提供されうる。
【0030】
本明細書で用いられる場合、「エネルギー密度」という用語は、有機材料の重量あたりのエネルギー量を意味する。通常、エネルギー密度は乾物1キログラムあたりのキロジュールで表すことができる。
【0031】
本明細書で用いられる場合、酸性pHとは、7.0未満のpH、好ましくは5.0以下のpHを意味する。本明細書で用いられる場合、塩基性pHとは、7.0を超えるpH、好ましくは8.0以上のpHを意味する。
【0032】
有機廃棄材料の提供
本開示の方法を実施するために、あらゆる種類の有機廃棄材料を提供することができる。
【0033】
好ましくは、本開示の方法を実施するために提供される有機廃棄材料は、「新鮮な」有機廃棄材料、すなわち、分解が検出できるほど開始されていない有機廃棄材料でありうる。
【0034】
したがって、好ましくは、本明細書に開示される方法によって処理される出発材料として使用することができる有機廃棄材料は、以前に、外因性微生物の存在下でのいかなる発酵ステップにも供されていない可能性がある。これは、出発有機廃棄材料自体に天然に微生物が含まれていないことを意味するものではない。実例として、出発有機廃棄材料の組成に混入可能な動物の肥やしには、当然のことながら、限定はしないが、大腸菌(E.coli)及び/又は乳酸菌(Lactobacillus)などの腸内細菌が含まれる。
【0035】
しかしながら、好ましい実施形態ではないが、出発有機廃棄材料は、少なくとも部分的には、すでに分解が始まっている場合がある。
【0036】
さまざまな種類の有機廃棄材料を本明細書に開示される方法に従って処理することができるため、前記出発有機廃棄材料は、さまざまな量の炭素、水素、酸素、及び窒素を含むことができ、特に、さまざまなC:N比(炭素量の窒素量に対する比)を有することができる。
【0037】
実例として、当技術分野で知られているように、魚の残渣を主に含む有機廃棄材料と比較して、C:N比の値がかなり高い、新鮮な雑草を主に含む有機廃棄材料が賦存する。さらなる実例として、鋸屑又は木片、及び小枝と比較して、C:N比の値がかなり低い豚又は鶏の糞を主に含む有機廃棄材料が賦存する。
【0038】
幾つかの実施形態では、出発有機廃棄材料には、限定はしないが、家庭ゴミ、産業有機廃棄材料、農業有機廃棄材料など、複数の種類の有機廃棄材料が含まれうる。
【0039】
幾つかの実施形態では、出発有機廃棄材料は、複数の廃棄材料の混合物でありうる。
【0040】
出発有機廃棄材料が複数の廃棄材料の混合物である実施形態では、混合物の組成は、本開示の方法の発酵ステップ中に過度の温度上昇を回避するように適合されうることが好ましい。本開示の方法の発酵ステップ中の過度の温度上昇の回避は、適切な平均エネルギー密度、例えば出発有機廃棄材料の湿潤物質100gあたり約1000kJ未満のエネルギー密度を有する廃棄材料の混合物を調製することによって達成することができる。
【0041】
熟練した技術者は、ほぼすべての有機物質のおおよそのエネルギー密度を事前に知っており、したがって、本開示の方法を実施するために用いられる出発有機廃棄材料に含まれうるさまざまな材料のおおよそのエネルギー密度も知ることができる。具体的な例が以下の表1に提供されている。本開示の方法を実施するために用いられる出発有機廃棄材料の組成に含まれうる数百の有機材料のエネルギー密度値に関する詳細な情報は、熟練した技術者には容易に入手可能である。実例として、詳細な情報は、特に「Informations Nutritionnelles.fr」というタイトルのウェブサイトに開示されている(その内容がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、次のインターネットアドレス:“https:\\informationsnutritionnelles.fr/energie-kilojoules”)。
【0042】
【0043】
【0044】
幾つかの実施形態では、出発有機廃棄材料は、本開示の方法で用いられる有機廃棄材料を得るために、異なるエネルギー密度値を有するさまざまな廃棄材料の混合物を含むように調製することができ、前記有機廃棄材料は適切な平均エネルギー密度を有する。
【0045】
典型的には、出発有機廃棄材料には、高いエネルギー密度値を有する廃棄材料(例えば植物油、チョコレートなど)及び低いエネルギー密度値を有する廃棄材料(例えば、野菜、飼料、鋸屑、段ボール)が含まれうる。
【0046】
幾つかの実施形態では、出発有機廃棄材料は、そこに含まれるさまざまな種類の廃棄材料を混合することによって調製することができ、その結果、その全体の質量又は体積内で適切な平均エネルギー密度を有する前記材料が得られる。
【0047】
幾つかの実施形態では、出発有機廃棄材料の適切な平均エネルギー密度は、多層構造を通じて得ることができる。例示的な多層構造では、出発有機廃棄材料は、(i)第1の平均エネルギー密度値(例えば、高いエネルギー密度値)を有する有機廃棄材料の第1の層を形成すること、(ii)第2のエネルギー密度値(例えば、低い密度値)などを有する廃棄材料の第2の層を形成すること、及び本開示の方法によって処理される出発有機廃棄材料の提供が完了するまで、高エネルギー密度層と低エネルギー密度層とを交互に形成することを繰り返すことによって調製することができる。
【0048】
実例として、本開示の方法に従って処理されることが意図される出発有機廃棄材料は、(i)例えばカカオパルプのような糖含有材料などの高エネルギー密度値の廃棄材料と、(ii)例えばネコ用敷料のような繊維含有材料などの低エネルギー密度値の廃棄材料との混合物を含むことができる。実例として、このような出発有機廃棄材料のバランスのとれた組成は、例えば、約40kgのカカオパルプと30kgのネコ用敷料とを含むことができる。
【0049】
通常、出発有機廃棄材料中に植物廃棄物などの繊維材料が存在すると、本開示の方法のステップにおいて真菌の成長が促進される。
【0050】
幾つかの実施形態では、出発有機廃棄材料は、(一又は複数の)固体廃棄材料と、(一又は複数の)液体廃棄材料との混合物を含むことができる。
【0051】
幾つかの実施形態では、有機廃棄材料は、本開示の方法を実施するために、長さ約1から10cmの断片に切断された後に提供することができ、それにより、例えば、(i)本方法のインキュベーション、発酵、熟成、及びミミズ堆肥化のうちの1つ以上のステップの継続時間を短縮すること、及び/又は(ii)本方法の前記ステップの1つ以上の終了時に材料のより完全な処理を得ることなど、本開示の方法の条件を最適化することができる。
【0052】
本方法のステップa)
ステップa)では、処理される有機廃棄材料は、通性嫌気性条件及び酸性pHでの発酵ステップに供される。
【0053】
ステップa)で発酵を開始するために、出発有機廃棄材料に乳酸菌を含む微生物組成物を播種することができる。
【0054】
幾つかの実施形態では、本開示の方法によって処理される有機廃棄材料中に含まれるさまざまな廃棄材料の特性は、実質的に異なる可能性がある。これらの実施形態では、前記方法のステップa)で処理される有機廃棄材料に組み込まれることが意図された、別個の構成廃棄有機材料の1つ以上を別々に播種することが好ましい場合がある。
【0055】
本明細書で用いられる場合、本開示の方法を実施するために、出発有機廃棄材料の構成に使用することができる個別の廃棄材料は、乳酸菌を含む微生物組成物を用いて別々に播種することができ、その後、個別の微生物が播種された廃棄材料が集められ、微生物が播種された有機廃棄材料が得られ、これが本開示の方法のステップa)の開始時に用いられる。言い換えれば、出発有機廃棄材料の組成物に入る個別の有機廃棄材料が前記微生物組成物を用いて別々に播種される実施形態では、これらの個別の材料に前記微生物組成物を播種した後に、前記出発有機廃棄材料の多層構造が形成される。
【0056】
実例として、前述の多層状構造を有する出発有機廃棄材料では、一の層を形成する廃棄材料の各々に乳酸菌を含む微生物組成物を播種することにより、前記出発有機廃棄材料の全体積内に乳酸菌が分散した微生物組成物を含む出発有機廃棄材料を得ることができる。
【0057】
さらなる実例として、乳酸菌を含む微生物組成物をペットフードキブル(有機廃棄材料として)に播種するには、通常、微生物がペットフードキブルの全体積に定着するのに十分な時間、乳酸菌を含む前記微生物組成物に前記キブルを浸漬する必要がある。
【0058】
出発有機廃棄材料を播種するための微生物組成物
ステップa)では、有機廃棄材料に添加される乳酸菌は、ラクトバチルス(Lactobacillus)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、又はそれらの組合せから選択することができる。
【0059】
幾つかの実施形態では、ラクトバチルス細菌は、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)及びラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)から選択することができる。
【0060】
幾つかの実施形態では、プロピオニバクテリウム細菌は、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichi)から構成されうる。
【0061】
幾つかの実施形態では、ペディオコッカス細菌は、ペディオコッカス・ハロフィルス(Pediococcus halophilus)から構成されうる。
【0062】
幾つかの実施形態では、ストレプトコッカス細菌は、ストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcus lactis)又は糞便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)から構成されうる。
【0063】
幾つかの実施形態では、乳酸菌に加えて、放線菌、光合成細菌(「光合成バクテリア」と呼ばれることもある)、カビ、真菌、及び/又は酵母から選択される1つ以上のさらなる微生物を、ステップa)の開始時に有機廃棄材料に添加することができる。
【0064】
幾つかの実施形態では、1つ以上の放線菌は、ストレプトマイセス(Streptomyces)、ストレプトベルティシリウム(Streptoverticilium)、ノカルジア(Nocardia)、ミクロモノスポラ(Micromonospora)、及びロドコッカス(Rhodococcus)から選択することができる。
【0065】
幾つかの実施形態では、ストレプトマイセス・アクチノミセテス(Streptomyces actinomycetes)は、ストレプトマイセス・アルブス(Streptomyces albus)及びストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)から選択することができる。
【0066】
幾つかの実施形態では、ストレプトベルティシリウム放線菌(Streptoverticilium actinomycetes)は、ストレプトバーチシリウム・バルダシー(Streptoverticilium baldacii)から構成されうる。
【0067】
幾つかの実施形態では、ノカルジア放線菌は、ノカルジア・アステロイデス(Nocardia asteroids)から構成されうる。
【0068】
幾つかの実施形態では、ミクロモノスポラ放線菌は、ミクロモノスポラ・カルセア(Micromonospora chalcea)から構成されうる。
【0069】
幾つかの実施形態では、ロドコッカス放線菌は、ロドスピリルム・ルブルム(Rhodospirilum rubrum)から構成されうる。
【0070】
幾つかの実施形態では、1つ以上の糸状菌は、アスペルギルス(Aspergillus)及びムコール(Mucor)から選択することができる。
【0071】
幾つかの実施形態では、アスペルギルス糸状菌は、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)又はニホンコウジカビ(aspergillus oryzae)、及びムコール・ヒエマリス(Mucor hiemalis)から構成されうる。
【0072】
幾つかの実施形態では、ケカビ(Mucor fungi)は、ムコール・ヒエマリス(Mucor hiemalis)から構成されうる。
【0073】
幾つかの実施形態では、1つ以上の酵母は、サッカロミセス(Saccharomyces)及びカンジダ(Candida)から選択することができる。
【0074】
幾つかの実施形態では、サッカロミセス酵母は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)又はサッカロミセス・ラクティス(Saccharomyces lactis)から構成されうる。
【0075】
幾つかの実施形態では、カンジダ酵母は、トルラ酵母(Candida utilis)から構成されうる。
【0076】
幾つかの実施形態では、ステップa)で添加される微生物組成物には、乳酸菌のみが含まれる。
【0077】
他の幾つかの実施形態では、乳酸菌は、放線菌、光合成細菌、糸状菌、及び酵母のうちの1つ以上と組み合わせられる。
【0078】
本開示の方法のステップa)で添加される微生物組成物において、乳酸菌と組み合わせることができる微生物の例示的なさまざまな実施形態が、以下の表2に記載されている。
【0079】
【0080】
表2において、(i)Refa:組合せ参照番号;(ii)Actinob:放線菌;(iii)Photo Bactc:光合成細菌である。
【0081】
有機廃棄材料に添加するために乳酸菌と組み合わせることができる各微生物は、ATCC(American Type Culture Collection)などの微生物培養コレクションを通じて入手可能なものを含め、公的に入手可能である。
【0082】
さまざまな微生物混合カクテルも市販されており、本方法のステップa)において使用することができる。
【0083】
幾つかの実施形態では、ステップa)で添加される微生物は、例えば、Yamadaら(2001, Journal of crop production, Vol. 3 : 255-268)、又はSzymenskiら(2003, Lanfax Laboratories, Armidale, NSW, Australia, R.A. and Jones, M.J. (Eds)(その内容がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、ISBN 0-9579438-1-4)によって開示されているような、「有効微生物」と呼ばれる(「EM」とも呼ばれる)、微生物の組合せで構成されうる。
【0084】
幾つかの実施形態では、ステップa)で添加される微生物の組合せは培養混合製品中に存在し、微生物は任意選択的に担体上に存在し、前記培養混合製品には小麦ふすま及び任意選択的に糖蜜が含まれる。
【0085】
ステップa)の開始時に有機廃棄材料に添加される乳酸菌含有微生物組成物の例示的な実施形態は、前記組成物1ミリリットルあたり、(i)104CFU(「コロニー形成単位」)の乳酸菌、(ii)103CFUの光合成細菌、及び(iii)103CFUの酵母を含むことができる。
【0086】
ステップa)を実施するために廃棄有機材料に添加することができる乳酸菌含有微生物組成物の一実施形態は、TeraGanix Company社により「EM-1(商標)」という名称で商品化されている組成物である。
【0087】
乳酸菌を含む微生物組成物の調製
本明細書において前述したように、ステップa)の幾つかの実施形態には、市販されうる乳酸菌を含む微生物組成物を添加することが含まれる。
【0088】
ステップa)の幾つかの実施形態では、乳酸菌を含む微生物組成物は、有機廃棄材料に添加する前に特別に調製することができる。
【0089】
乳酸菌を含む微生物組成物は、本開示の方法のステップa)において、乳酸菌、及び任意選択的に放線菌、光合成細菌、カビ、真菌、及び/又は酵母から選択される1つ以上のさらなる微生物を適切な培養培地中で前培養して、乳酸菌を含む出発微生物組成物として繰り返し使用することができるストック微生物組成物を提供することによって調製することができる。
【0090】
乳酸菌を含むストック微生物組成物は、適切な培養培地に、乳酸菌、乳酸菌を含む微生物組成物を適量添加することにより調製することができる。
【0091】
次に、ステップa)を実施するために、前記ストック溶液の適切な部分(例えば、体積)を収集して、処理される有機廃棄材料に添加される乳酸菌を含む微生物組成物を提供する。
【0092】
幾つかの実施形態では、前記ストック溶液、ひいてはそこから収集される乳酸菌を含む微生物組成物は、前記組成物1ミリリットルあたり、約104CFU(「コロニー形成単位」について)の乳酸菌を含むことができる。
【0093】
前記ストック溶液が光合成細菌をさらに含む幾つかの実施形態では、前記ストック溶液は、約103CFUの光合成細菌を含むことができる。
【0094】
前記ストック溶液が酵母をさらに含む幾つかの実施形態では、前記ストック溶液は、約103CFUの酵母を含むことができる。
【0095】
幾つかの実施形態では、乳酸菌、並びに任意選択的に放線菌、光合成細菌、カビ、真菌、及び/又は酵母から選択される1つ以上のさらなる微生物を前培養するための適切な培養培地には、主に水が含まれ、これに有機糖蜜及び繊維、例えば小麦ふすまが添加される。実例として、このような実施形態では、培養培地には、約20Lの水(例えば室温で)、約250mLの有機糖蜜、及び約20kgの小麦ふすまの混合物が含まれうる。
【0096】
乳酸菌、及び任意選択的に放線菌、光合成細菌、カビ、真菌、及び/又は酵母から選択される1つ以上のさらなる微生物は、前培養培地に添加される。
【0097】
幾つかの実施形態では、乳酸菌、及び任意選択的に放線菌、光合成細菌、カビ、真菌、及び/又は酵母から選択されるさらに1つ以上のさらなる微生物が播種されている前培養培地は、乳酸菌、及び任意選択的に放線菌、光合成細菌、カビ、真菌、及び/又は酵母から選択されるさらに1つ以上のさらなる微生物が増殖できるように、約25℃、好ましくは通性嫌気性条件で、例えば2週間の期間にわたってインキュベートされる。
【0098】
前培養培地のインキュベーション期間の終了時に、乳酸菌を含むストック微生物組成物が提供され、その一部を本開示の方法のステップa)において、有機廃棄材料に添加される乳酸菌を含む微生物組成物として使用することができる。
【0099】
これらの実施形態によれば、本開示の方法のステップa)で使用することができる乳酸菌を含む微生物組成物が継続的に利用可能となる。
【0100】
ステップa)の実施形態
ステップa)では、処理される有機廃棄材料の材料中の平均の質的及び量的構成に特に応じて、乳酸菌含有微生物組成物は、処理される有機廃棄材料1kgあたり、平均量で約102から約106、好ましくは約103から約105CFUの乳酸菌を添加することができる。
【0101】
ステップa)では、当業者によく知られている任意の方法に従って微生物組成物を添加することができる。通常、微生物(任意選択的に特定の担体上に担持される)は、処理される発酵性有機廃棄材料の上部に単に分散させることができ、又は代替的に、処理される出発有機廃棄材料に含まれる各廃棄物の上部に別々に分散させることもでき、又はさらに代替的に、とりわけ微生物組成物が液体の形態である場合は、有機廃棄材料を前記組成物内に浸漬させることもできる。
【0102】
幾つかの実施形態では、ステップa)で用いられる乳酸菌含有微生物組成物は、液体組成物でありうる。
【0103】
ステップa)で適用される通性嫌気性条件は、酸素が完全に存在しない状態が回避されることを意味する。言い換えれば、ステップa)は厳密な嫌気条件下では行われない。
【0104】
通常、厳密な嫌気性条件下では、微生物は、酸素含有量が約1%から約2%の有機材料中で増殖する。厳密な嫌気性条件を適用すると、主に嫌気性微生物が増殖する結果となり、この嫌気性微生物には、有機廃棄材料が動物の肥やしを含む実施形態では、乳酸菌含有微生物組成物を播種する前に有機廃棄材料中に最初から存在していた可能性のある微生物、例えば腸内細菌などの常在細菌が含まれる。通常、前記有機廃棄材料を厳密な嫌気性条件下で処理し、嫌気性微生物の増殖を促進すると、アルコール(特に糖含有物質の発酵の結果として)及びアンモニア(特にタンパク質含有物質の発酵の結果として)が生成されるであろう。通常、厳密な嫌気性条件を適用すると、特に大量のアンモニアが生成されるため、処理される廃棄有機材料に、概して8から9の範囲の塩基性pHなど、非常に塩基性のpHが誘発される。塩基性pHにより、存在する場合、本開示の方法、とりわけ本開示の方法の次のステップb)によって非常に有用な真菌及び酵母を含むほとんどの微生物が死滅する。さらには、当技術分野で知られているように、厳密な嫌気性条件を適用すると、病原細菌(幾つかの実施形態では、動物の肥やしに含まれうる病原細菌を含む)の増殖が可能となるであろう。さらにまた、出発有機廃棄材料を厳密な嫌気性条件下で発酵させると、通常70℃まで温度が上昇し、真菌及び酵母を含めたさまざまな有用な微生物が死滅することになるであろう。
【0105】
当技術分野で知られているように、有機廃棄材料の厳密な嫌気性消化では、天然の細菌のコンソーシアムを使用して有機基質を分解し、その後メタンと二酸化炭素との混合物へと変換する。通常、当技術分野で知られている有機廃棄材料の厳密な嫌気性消化のステップは、(i)制御されていないpH条件、又は(ii)メタンの生成を促進するpH条件である塩基性pH条件のいずれかで行われる。
【0106】
しかしながら、本開示によれば、メタン生成は有用なエネルギー源を提供することができるが、大気汚染源になると考えられる。さらには、得られた発酵有機材料は、特に、微生物による変換のさらなるステップを経て得られた発酵物質のさらなる即時処理にとって有害なアンモニアを含んでいるため、その後に肥料として使用するには不適である。
【0107】
対照的に、ステップa)の酸性pH条件は、メタンの生成を回避することができる。
【0108】
対照的に、本開示の方法のステップa)では、通性嫌気性の発酵条件により、(i)アルコール及びアンモニアの過剰生成を回避し、(ii)特に乳酸の生成(特に糖含有物質の発酵の結果として)を促進することができる。
【0109】
発酵液が生成されるステップa)の幾つかの実施形態では、前記発酵液は、厳密な嫌気性条件をもたらすであろう酸素欠乏を回避するために、一定期間ごとに又は連続的に取り除くことができることが好ましい。
【0110】
ステップa)では酢酸の生成により、酸性条件下でステップa)を行うことができる。
【0111】
幾つかの実施形態では、ステップa)は、約3.5から約4.0の範囲のpHなど、約3.0から約5.0の範囲のpHで行うことができる。
【0112】
pHは、それ自体知られているpHプローブなど、当技術分野で知られている任意の方法に従って測定することができる。
【0113】
ステップa)では、通性嫌気性条件は、限定はしないが、最初に「通気された」有機廃棄材料を提供することなど、当技術分野でよく知られている技術によって容易に得ることができる。処理される有機廃棄材料をステップa)の開始時に単純に撹拌すること、及び任意選択的にステップa)中に発酵中の有機廃棄材料を1回以上撹拌することによって、通気された有機廃棄材料を得ることができる。
【0114】
通常、ステップa)を通性嫌気性条件下で実施することにより、微生物は、酸素含有量が約5%から約20%の範囲にある、発酵中の有機廃棄材料中で増殖することができる。
【0115】
本明細書全体にわたって用いられる場合、有機材料の酸素含有量、とりわけステップa)で処理される有機廃棄材料の酸素含有量は、必要に応じて、酸素プローブを使用することによってなど、当技術分野で知られている任意の方法に従って測定することができる。
【0116】
酸性pHは、ステップa)中に酢酸を生成することによって得られることから、有機廃棄材料の酸性化は、概して必要とされない。
【0117】
幾つかの実施形態では、少なくとも部分的に、1つ以上の有機酸を前記廃棄物に添加することによって、酸性pHを得ることができる。
【0118】
幾つかの実施形態では、前記1つ以上の有機酸は、2から6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和カルボン酸とすることができる。幾つかの実施形態では、前記1つ以上の有機酸は、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、及びグルコン酸から選択することができる。最も好ましい有機酸は乳酸である。
【0119】
ステップa)は通性嫌気性条件下で行われることから、高温上昇を引き起こさない。
【0120】
通常、ステップa)は、処理中の廃棄有機材料に添加され定着した微生物の生存能力に実質的に影響を与えない温度で実施することができる。
【0121】
ステップa)は、好ましくは約50℃未満の温度で実施することができ、好ましくは約10℃から約45℃の範囲の温度で実施することができる。
【0122】
実際には、嫌気性発酵プロセスは広範囲の温度にわたって進行し、ほとんどの実施形態では、毎日の温度を監視及び/又は制御する必要はない。
【0123】
ステップa)は、通性嫌気性条件が適用されるため、ステップa)を中程度の温度で実施することができるという事実は、望ましい中温細菌の増殖を促進し、望ましくない好熱細菌の増殖にとっては有害である。
【0124】
さらに、ステップa)は、通性嫌気性条件及び酸性条件下で実施することができ、これらの条件では、塩基性pH条件又は厳密な嫌気性条件下では死滅するか又は発育しないであろう真菌及び酵母の成長が可能となる。
【0125】
発酵中に高温上昇が起こらず、したがって蒸発による水の損失がないか、又は損失が低減されるだけであることから、ステップa)を実施する際には、概して、水をさらに追加する必要はない。
【0126】
幾つかの実施形態では、ステップa)の期間は、ステップa)で提供される有機廃棄材料の種類、ステップa)での培養の完了度、ステップb)で追加される微生物の種類、及びステップa)で処理された廃棄材料の温度に応じて、約15日間から約45日間の範囲でありうる。
【0127】
ステップa)の開始時に提供される有機廃棄材料の種類に応じて、特にその量に応じて、ステップa)の通性嫌気性条件は、当技術分野でよく知られている方法によって実施することができる。
【0128】
幾つかの実施形態では、ステップa)は、適切なサイズを有する既知のモデルの嫌気性消化装置内で実施することができる。本明細書では、消化装置は発酵装置と呼ぶこともできる。
【0129】
ステップa)が嫌気性消化装置内で行われる場合、ステップa)の通性嫌気性条件は、消化槽の内部区画、ひいては発酵中の有機廃棄材料を大気環境と接触させることによって得られるものと理解されたい。
【0130】
さらには、例えば、消化槽内の有機廃棄材料の高さを約80センチメートル未満に制限するなど、有機廃棄材料の高さを制限することにより、発酵中の有機廃棄材料の内容積の酸素欠乏を回避することによって、厳密な嫌気性条件の回避を達成することができる。
【0131】
ステップa)の終了時に、得られる発酵有機生成物は主に、水分を含有する固形分を含む。
【0132】
ステップa)の終了時に、得られる発酵有機生成物は、さらに処理されるまで保存することができる。ステップa)で使用した消化槽内で保存してもよく、又は代替的に別の容器に保存することもできる。
【0133】
注目すべきことに、出発有機廃棄材料の調製に用いた各複合廃棄材料の初期の色は、実質的に変化していなかった。特定の理論に縛られるつもりはないが、ステップa)で生成される乳酸に伴う酸素の枯渇により、前記有機廃棄材料が少なくとも部分的に保存され、したがって部分的にしか分解されなかったと考えられる。例えば、出発有機廃棄材料に含まれる糖質は、乳酸及び/又は酢酸へと分解・生成されるものと考えられる。
【0134】
本方法のステップb)
ステップa)で得られた発酵有機材料の処理は、前記材料を好気性条件下でさらにステップb)に供することによって継続することができる。ステップb)は、本開示の方法の「成熟段階」と呼ぶこともできる。
【0135】
ステップa)の終了時に、得られる発酵有機材料には、概して、固体のみが含まれており、高水分含有量を有する可能性がある。これは、発酵ステップa)中に生成されうる液体が、通性嫌気性条件を維持し、したがって厳密な嫌気性条件を回避するように、定期的又は継続的に取り除かれるためである。
【0136】
処理される出発有機廃棄材料に1つ以上の微生物が具体的に添加されるステップa)とは対照的に、本方法のステップb)では、さらなる微生物は具体的に添加されない。
【0137】
ステップa)で適用される通性嫌気性条件により、好気性細菌、真菌、及び酵母などを含む、好気性条件で増殖する微生物を保存することが可能となる。これらの微生物は、本開示の方法のステップb)において、その成長に適した条件にある。
【0138】
好ましくは、ステップb)では、ステップa)で得られた発酵有機材料を大気と接触させて、さらなる変換のための好気性条件を実施することができる。
【0139】
大気は好気性微生物を含むさまざまな微生物を運ぶことから、好気性条件に置かれた発酵有機材料は、時間の経過とともに空中微生物でコロニー化され、発酵有機廃棄材料の変換及び分解にも寄与し、より正確には、方法のステップa)で得られた発酵有機材料の変換及び分解に寄与する。
【0140】
その結果、ステップb)では、ステップa)で得られた発酵有機材料中に、細菌を含む好気性微生物叢が自発的に発生する。
【0141】
ステップb)は好気性条件下で行われるため、発酵有機材料の全質量は、可能な限り酸素、例えば大気と接触するものとする。
【0142】
ステップb)では、処理された発酵有機生成物の温度の過度な上昇を回避するように注意するとともに、望ましくないガスの放出、とりわけメタンの放出が発生しないように注意する必要がある。
【0143】
処理される発酵有機生成物の質量、並びにリアクタのサイズ及び形状に応じて、処理された発酵有機生成物を、ステップb)が好気性条件で行われるように、ステップb)で穏やかに撹拌することができる。
【0144】
幾つかの実施形態では、ステップb)を好気性条件で実施することには、処理された発酵有機材料に植物材料を添加してその密度を下げ、発酵塊内の大気の循環を確保することが含まれうる。実例として、ステップb)では、繊維含有材料、とりわけリグニン含有材料(限定はしないが、断片化された枝木、鋸屑、飼料、又は動物用の敷料など)を、ステップa)で得られた発酵有機材料に添加して、ステップb)で処理される廃棄材料の密度を低下させ、また真菌及び酵母の増殖を促進することができる。
【0145】
好ましくは、本開示の方法のステップb)で処理される廃棄材料の含水量(すなわち、水分含量)は、概して、約45%から約75%の範囲でありうる。
【0146】
本開示の方法を実施するために提供される有機廃棄材料が、例えば、炭水化物、脂肪、タンパク質のうちの1つ以上を高い含有量で含む有機廃棄材料など、高エネルギー密度のものである実施形態では、低いエネルギー密度の材料もまた、ステップb)の開始時に発酵有機生成物に添加することができる。
【0147】
好ましくは、本開示の方法のステップb)で処理される廃棄材料のpHは、約4から約6の範囲でありうる。
【0148】
ステップb)では、廃棄材料の温度は、好ましくは約25℃から約50℃の範囲であり、最も好ましくは約25℃から約45℃の範囲でありうる。
【0149】
概して、ステップb)で温度上昇が観察されるが、これは処理される発酵有機廃棄材料内で発熱変換反応が発生することに起因するものである。ほとんどの実施形態では、ステップb)で処理される発酵有機廃棄材料の温度は、周囲の環境の温度より最大15℃上昇し、例えば周囲温度より最大15℃上昇するか、又は周囲温度より最大20℃上昇する。
【0150】
ステップb)の期間は、約2週間から約6週間の範囲とすることができ、概して約30日間とすることができる。
【0151】
幾つかの実施形態では、ステップb)の完了は、上記の温度上昇後、処理された発酵有機廃棄材料の温度が周囲の環境の温度より最大2℃高い温度に達するまで低下したとき、例えば、周囲温度より最大2℃高い温度に達するまで低下したときに判定することができる。
【0152】
幾つかの実施形態では、ステップb)の完了は、得られた熟成有機材料の色によっても判定することができ、前記熟成有機材料は茶色がかった色をしている。
【0153】
幾つかの実施形態では、ステップb)の完了は、酵母及び真菌の増殖が達成されたとき、例えば、真菌の存在を特徴づける臭いが操作者によって感知されたときにも判定することができる。
【0154】
好気性発酵のステップb)の終了時に、熟成有機生成物が得られる。
【0155】
本方法のステップc)
本開示の方法のステップc)では、ステップb)の終了時に得られる熟成有機材料は、ミミズ堆肥化のステップに供することができ、それにより、処理済み有機堆肥が得られる。
【0156】
ミミズ堆肥化自体は、当技術分野で知られている廃棄物変換方法である。廃棄物を有機肥料へと変換する技術としてのミミズ堆肥化に関する一般的な教示は、例えば、Guttierrez-Miceliら(2011, Journal of Plant Nutrition, Vol. 34 : 1642-1653)、及びYadavら(その内容がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、2011, Waste Management, Vol. 30 : 50-56)に見ることができる。
【0157】
ミミズ堆肥化の結果として得られる生成物は、ミミズと微生物との相互作用を包含する非好熱性プロセスによって生成され(Edwards et al., 1988, In Neuhauser, C.A. (Ed.), Earthworms in Environmental and Waste Management, SPB Academic Publishing, The Hague, The Netherlands. 211-220)、有機材料の二酸化及び安定化をもたらす(その内容がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、Aira et al., 2000, Eur J Soil Biol, Vol. 38 : 7-10)、細かく分割された成熟したヒ゜ート状の物質として知られている。
【0158】
本明細書で「ミミズ堆肥化」とは、ミミズによる有機物の摂取及び消化による分解を意味するものとする。ミミズ堆肥化には、このようなシステムに固有の細菌の作用など、微生物学的作用による有機物の付随的な生体内変換も含まれる。したがって、ミミズ堆肥化とは、ミミズが原料を変換して、ミミズの排泄物(ミミズの糞)と、ミミズ堆肥(ミミズとの接触によって変化した物質であり、排泄物ではない)とを生成するプロセスである。
【0159】
当技術分野で知られているように、ミミズ堆肥化により、アンモニウム(すなわち、アンモニア又はアンモニア性形態)の硝酸塩への変換が増加する。
【0160】
ステップb)の終了時に得られた熟成有機生成物をミミズ堆肥化するステップc)は、特に、前記熟成有機生成物が低いアンモニア含有量を有していることから、実施可能となる。
【0161】
本開示によれば、ミミズは、本開示の方法のステップb)で得られた熟成有機材料に直ちに定着することができることが観察されている。これは、既知の廃棄物処理方法で一般的に見られる現象とは対照的、とりわけ嫌気性条件で発酵ステップに供された物質をミミズ堆肥化する場合に見られる現象とは対照的であり、ミミズのコロニー形成は即時に起こるのではなく、発酵材料を処理して、例えばアンモニアなどのミミズにとって有毒な物質を排除するために必要な潜伏期間の後に始まる。
【0162】
幾つかの実施形態では、ステップc)は、ステップb)で得られた熟成有機生成物にミミズ含有基質を添加すること、及び適切なミミズの成長条件でミミズ堆肥化を開始することを含みうる。
【0163】
幾つかの実施形態では、ミミズ堆肥化のステップc)は、1つ以上のミミズ種のミミズをステップb)で得られた熟成有機材料に加えることを含みうる。
【0164】
ミミズには数多くの種類があり、特にミミズ堆肥化を実施可能な「赤」ミミズとしてよく知られているミミズが存在する。1つの非限定的な例はルンブルクス・ルベルス(Lumbricus rubellus)であり、別の非限定的な例はシマミミズ(Eisenia fetida)である(2004年にfoetidaからfetidaに変更された)。ステップe)で使用することができる他のミミズ種は、アイセニア・アンドレイ(Eisenia Andrei)、ハラメノウミミズ(Perionyx excavatus)、及びアフリカンナイトクローラー(Eudrilus eugeniae)である(その内容がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、Dominguez et al., 2010, In C.A. Edwards, N.Q. Arancon, and R.L. Sherman (Eds), Vermiculture technology: Earthworms, organic waste and environmental, Boca Raton, FL:CRC Press, pp. 11-25参照)。本システムで用いられる赤ミミズは、シマミミズ(Eisenia fetida)とすることができる。しかしながら、このシステムは特定の種類の赤ミミズに限定されるものではなく、一部には有機物の種類及び利用可能な持続可能な環境に応じて、他の種類のミミズでも機能する。すなわち、シマミミズ(Eisenia fetida)などの「赤」ミミズに加えて、又は代わりに、他の種類のミミズを使用することができる。本明細書で用いられている「ミミズ」という用語は、有機材料のミミズ堆肥化に利用することができる、すべての種類及び属のミミズを含むことが意図されている。
【0165】
有利なことに、有機物を好む、「アイセニア・アンドレイ(Eisenia Andrei)」タイプのミミズ(「カリフォルニアワーム」とも呼ばれる)は、この機能によく適応しており、これを使用することができる。当然のことながら、ミミズは消化管から浸透液と呼ばれる無臭の暗褐色の液滴を放出し、この浸透液にはミネラル及び有機元素が非常に豊富に含まれているが、嫌気性細菌も非常に豊富に含まれている。したがって、浸透液は液体肥料として使用することができる、優れた「肥料」である。
【0166】
線虫接種物は、市販されているが、これらの製品は、水ですすぐように設計された湿ったスポンジで包装され、処理を必要とする生成物、本明細書では本開示の方法のステップc)で得られた熟成有機生成物に水とともに直接適用することができる。
【0167】
ミミズ含有基質がミミズを含む湿ったスポンジからなる実施形態では、スポンジを抽出水又は液肥に浸して絞ることによって、これらのスポンジで送達可能な種を堆肥及びミミズ液肥抽出タンクに放出することもできる。従来のミミズ液肥は抽出時間が24時間以下であるため、これらの液肥は添加した線虫の個体数を増殖させるのではなく、添加された線虫の担体としてのみ機能する。
【0168】
幾つかの実施形態では、本開示の方法のステップc)の開始時に、ステップb)で得られた熟成有機材料に、処理される熟成有機生成物1キログラムあたり少なくとも約10匹のミミズ量で、ミミズを添加することができる。
【0169】
幾つかの実施形態では、ステップc)の終了時に、ミミズが定着した処理済み有機廃棄材料の所望量を収集し、その後、本明細書に開示される方法の別のサイクルを実施するステップb)で得られた熟成有機材料とともにステップd)を繰り返すためのミミズ含有基質として使用することができる。
【0170】
ミミズの個体数は、繁殖及び自然選択によって無期限に維持することができる。特別な事情がない限り、床の初期形成後に、ミミズ個体群の成員を追加又は除去する必要はない。したがって、本開示は、ミミズを調整された原料に曝露することによってミミズを生産するための装置及びプロセスでもある。しかしながら、ミミズにとって適切な環境条件を維持するために、バイオマスは湿潤状態に保たれなければならず、幾つかの実施形態では、塩分濃度、pH、及び窒素などのパラメータを監視してもよい。
【0171】
好ましくは、必要に応じて、ステップc)は、ステップb)で得られた熟成有機材料にセルロース廃棄物及び/又は水を添加することをさらに含むことができる。
【0172】
スプリンクラーシステムを備えた発酵リアクタでは、ミミズ床の水分含量を調節することができる。施用する水の量は、ミミズが浮き上がって表面に露出する原因となりうる飽和状態を回避するように調整され、さらにミミズ床の高さ全体にわたって水分勾配を維持するのに十分な水分を供給する。適用される水の温度も監視することができ、そのため、ミミズ床から過剰な熱が奪われること、又はミミズ床に過剰な熱が加えられることがなくなる。すなわち、水が冷たすぎると、水の量が水分含量に適切であっても、熱が奪われすぎることにより、ミミズが最後に施用された飼料から離れて下方へと移動する可能性がある。
【0173】
スプリンクラーシステムは、消化槽床の上に細かい霧を生成するように調整することができ、したがって、蒸発冷却を優先させることができ、消化槽床、ひいてはミミズ床の水分含量を大幅に増加させることなく、対応する温度低下が達成される。すなわち、押し出された水の大部分はミミズ床の表面へと降りる前に蒸発し、それによってその領域を局所的に冷却し、ミミズ床を冷却する。
【0174】
本開示の方法のステップc)では、処理される廃棄有機材料の温度は、少なくとも約15℃、好ましくは少なくとも約20℃でありうる。本開示の方法のステップc)では、処理される廃棄有機材料の温度は、最大で約40℃、最も好ましくは最大で約30℃でありうる。
【0175】
本開示の方法のステップc)では、処理される廃棄有機材料の水分含量は、少なくとも約50%、例えば少なくとも約60%などであってよく、処理される廃棄有機材料の水分含量は、最大で約75%でありうる。処理される廃棄有機材料の水分含量は、約65%から約80%の範囲になりうる。
【0176】
本開示の方法のステップc)では、処理される廃棄有機材料のpHは、約5から約7の範囲になりうる。
【0177】
通常、ミミズ堆肥化プロセスには、ミミズの活動に関連して、(i)ミミズが処理対象の有機生成物を処理する活性段階、及び(ii)微生物がミミズによって処理された基質を分解するときに、ミミズがより新しい未消化の有機基質の層に移動することを特徴とする成熟段階の2つの異なる段階が含まれうる。したがって、ミミズは、ミミズ床を通って効率的に上方へと移動し、常にミミズ床のより高い部分、つまり餌の濃度が高い場所(及び底部の照明から離れた場所)を探す。ミミズ床の露出した上部に適用される水の量及び温度が調節されると、ミミズはミミズ床内で継続的に上方へと移動する。すなわち、水の適用速度と水温は、消化槽床内のミミズ床の表面からミミズを追い出すことを防止するように選択することができる。
【0178】
ステップb)で得られた施用熟成有機材料は、約12週間から約18週間の範囲の期間にわたって、消化槽床内のミミズ床を通じて処理することができる。
【0179】
幾つかの実施形態では、通常の処理の一環として、スクレーパーバーを消化槽床の底部にあるスクリーンの上部に沿って定期的に通過させることができる。消化槽床内で材料を所定の位置に保持するミミズの糞及びミミズ堆肥のブリッジング特性が乱され、新しいブリッジング作用によって上にある床が所定の位置に保持されるまで、材料はスクリーンを通り抜ける。落下ゾーンに落ちた材料はふるい機に移され、梱包され、販売される。
【0180】
ミミズ堆肥化ステップc)の終了時に得られる処理済み有機廃棄材料は、病原体の含有量が減少しており、病原菌がまったく存在しない場合もある。ミミズ堆肥化がヒト病原体の存在を低減する効果があることは、当技術分野で知られている(その内容がここに参照することにより本明細書に組み込まれる、Eastman et al., 2001, Compost Science & Utilization, Vol. 9: 38-49参照)。
【0181】
ステップc)は、当技術分野で知られているあらゆる種類のミミズ堆肥化デバイスで行うことができる。熟練した技術者は、例えば、その内容がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、Tauseefら(2021, Biomass Conversion and Biorefinery)に開示されるデバイスを参照することができる。
【0182】
本明細書に開示される方法のステップc)で用いられるミミズ堆肥化デバイス(「ミミズビン」と呼ばれることもある)は、実質的に大気に開放されていなければならない。ミミズ堆肥化デバイスは、好ましくは上部が開放されており、固い底部を有さず、幾つかの実施形態では側面に追加の通気口を有することができる。本開示の方法のステップc)の実施に適したミミズ堆肥化デバイスの実施形態では、前記ミミズ堆肥化デバイスの底部には、ミミズの糞及び他の成分を回収するために回転させることができるオーガーを含めることができる。
【0183】
本開示の方法のステップc)の終了時に、有機堆肥が得られる。
【0184】
本開示はまた、本明細書に開示される方法によって得られる有機廃棄堆肥にも関する。
【0185】
使用
本開示の方法のステップc)の終了時に得られる処理済み有機堆肥材料は、土壌リンの利用可能性を高めると考えられる。
【0186】
さらに、ミミズ堆肥には腐植物質が存在することが知られており、本開示の方法のステップc)で得られる処理済み有機堆肥は、農業的に効率的かつ環境に優しいものとなる(Senesi et al., 2007, Soil Biol Biochem, Vol. 39: 1244-1262)。
【0187】
さらには、さまざまな種類のミミズが作り出したミミズ堆肥には、さまざまな種類の細菌が含まれていることが報告されている。
【0188】
さらに、ミミズ堆肥は、苗木を含めた、植物の複数のパラメータを強化することが知られている(Joshi et al., 2014, Rev Environ Sci Biotechnol, DOI 10.1007/s11157-014-9347-1、とりわけ表3参照)。
【0189】
本開示はまた、本明細書に開示される方法によって得られる有機堆肥を土壌施肥に使用することにも関する。
【0190】
本開示は、本明細書に開示される方法によって得られる処理済み有機堆肥、又は本明細書に開示される有機堆肥を土壌施肥に使用することに関する。
【0191】
本開示は、
a)本明細書に開示される方法による有機廃棄材料を処理し、それにより有機堆肥が得られる、ステップ、及び
b)ステップa)で得られた有機堆肥を施肥する土壌に加えるステップ
を含む土壌施肥方法にも関する。
【0192】
本開示の実施形態の上記説明は、当業者が本発明を製造又は使用することができるようにするために提供される。これらの実施形態に対するさまざまな変更は、当業者には容易に明らかになり、本明細書に記載された一般的な原理は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態に適用することができる。したがって、本明細書で提示される説明及び図面は、本発明の現時点で好ましい実施形態を表しており、したがって、本発明によって広く想定される主題を代表するものであることが理解される。さらに、本発明の範囲には、当業者にとって明白となる可能性のある他の実施形態も完全に包含されることが理解される。
【実施例】
【0193】
A-ステップa:通性嫌気性発酵
密封された乾燥キブル、使用頻度の低いネコ用敷料(98%がトウヒの枝の鋸屑)、プラスチック及び金属を含まない段ボールなど、数種類の廃棄物を収集する。
【0194】
2×10リットルのストック溶液(EM-1(登録商標)、Agriton社)を、2×180リットルの水で希釈した2×10リットルのサトウキビ糖蜜とともに30℃で1週間インキュベートして、400リットルの特定微生物溶液を生成する。
【0195】
この実験の「ステップa」で用いられた廃棄物の全体的なプロファイルが表3に示されている。
【0196】
【0197】
廃棄物は、適切な播種水の配合率で別々に播種される(表4)。
【0198】
【0199】
廃棄物の完全な浸透が観察されるまで、過剰の液体が再導入される。
【0200】
次に、炭素、窒素、及びエネルギー含有量のバイオアベイラビリティの大まかな推定に従って、補完的な有機物を対で関連付ける。その部位での廃棄物産生量に関連した可用性も考慮する。この方法において、イヌ/ネコ用のキブルと使用済みのネコ用敷料との混合は、600リットルの専用容器に、それぞれ複数のスライド(厚さ10cm)を交互に重ね合わせることによって行う。ボール紙及び使用済みのコーヒー粉を使用して同じことを行う。
【0201】
具体的には、キブルと使用済みのネコ用敷料との混合は、20%から40%程度の配合率が考えられる。
【0202】
発酵はその後4週間にわたって行われる。
【0203】
本実験では、このステップ中の動物(brute)物質の平均重量損失は約6%である。
【0204】
B-ステップb:熟成、好気性発酵
まず、水分含量に応じて、「ステップa」からの発酵材料の重量の20%から40%の水を加える。その後、発酵物の組成に応じて、2から6週間にわたって週3回、発酵材料を撹拌する。
【0205】
最初の3週間、特にキブル/ネコ用敷料のミックスの場合、温度はキブルの配合率に比例して上昇する。発酵材料は、周囲温度より20℃高い温度に正確に達することができる(実験では表面温度が45℃未満)。温度が上昇すると、CO2の放出が増加し、材料の臭いにもアンモニアと脂肪酸の放出が現れる。
【0206】
発酵材料自体の重量によって反応が強化される。この段階では、積層物の寸法及び形状が重要である。高さ80cm未満の容器内に帯状帯を構築して空気との交換面積を増加させることは、必要に応じて熱を制御するための適切な調整である。
【0207】
この最初の3週間における材料の動物重量損失は、キブルの配合率と熱管理に応じて15%から34%になる。
【0208】
4週目の温度は、キブルの配合率に応じて、まだ周囲温度より高い可能性がある。この酸化段階では、明るい色の有機物が暗褐色へと変わる。
【0209】
ミミズの口に合うためには、アンモニアなどの不快な臭いが消えていなければならない。この問題は、熟成物に湿った繊維を加えることにより解決される。
【0210】
実際、4週目から6週目にかけて、重量で発酵材料の10から20%の配合率で水を含浸させた繊維(ボール紙)を追加すると、菌類の発育が目に見えて促進され、1週間以内にミミズにとって不快なガスが抑制される。その結果、有機物の要素がより良好に隔離されるようになると推測される。
【0211】
この繊維の追加により、密度を約0.5から0.75の最適な範囲に調整することも可能となる。
【0212】
ボール紙及び使用済みのコーヒー粉を含めて、特定の発酵材料では、熟成段階はわずか2週間しか続かないが、不快な臭いは検出されない。
【0213】
このステップを適切に管理することで、熟成させた餌に興味を示すミミズを短時間で観察することが可能となる。
【0214】
この実験の規模では、「ステップb」の1190kgの発酵材料に476kgの水と36kgのボール紙を加えて熟成させる。
【0215】
このステップ中の動物物質の平均重量損失は、全体的に測定して、今回の実験では27%である。
【0216】
C-ステップc:ミミズ堆肥化
600リットルの8つの容器を、ミミズ堆肥化用に特別に設計する。主な特徴は、ミミズ液肥を集める蛇口、酸素供給用の底部のすのこ(高さ10cm)、及び空気の流れを最適化し、結露を防ぎ、ミミズが外に出るのを防ぐための蓋の表面の適切な穴である。
【0217】
各容器に5kgのアイセニア・アンドレイ(Eisenia Andrei)ミミズを加え、合計40kgにした。
【0218】
各食物(熟成物)の分配については、各容器に均等に分配する。
【0219】
水を分級し、ボール紙及び使用済みのコーヒー粉をミミズの挙動に合わせて各ミミズ堆肥化容器に直接均等に加える。
【0220】
表5は、ミミズ堆肥化容器への投入物のプロファイルを示している。
【0221】
【0222】
8つのミミズ堆肥化容器に投入される総重量は1907.5kgである。
【0223】
このステップについての動物物質の重量損失を計算するために、「ステップc」の3つの生産高が考慮される(表6)。
【0224】
【0225】
認定された研究所による分析の結果、ミミズ堆肥はNF 44-051に適合していることが証明された。
【0226】
本実験では、このステップ中の動物物質の平均重量損失は15%である。
【0227】
ステップcは、本実験での6~7か月のミミズ堆肥化後、すべての与えられた食物が摂食されたと判断した時点で停止される。1トンのミミズ堆肥を目標とした場合、最適な継続期間は約4か月であった。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0227
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0227】
ステップcは、本実験での6~7か月のミミズ堆肥化後、すべての与えられた食物が摂食されたと判断した時点で停止される。1トンのミミズ堆肥を目標とした場合、最適な継続期間は約4か月であった。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
有機廃棄材料を有機堆肥へと処理する方法であって、
a)少なくとも1つ以上の乳酸菌を前記有機廃棄材料に加えることを含む、前記有機廃棄材料を発酵させるステップであって、通性嫌気性条件下、酸性pHで行われ、それにより発酵有機材料が得られる、ステップ、
b)ステップa)で得られた前記発酵有機材料を好気性条件で熟成させ、それにより熟成有機材料が得られる、ステップ、及び
c)ステップb)で得られた前記熟成有機材料をミミズ堆肥化し、それにより有機堆肥が得られる、ステップ
を含む、方法。
実施形態2
ステップa)が、乳酸菌を含む微生物組成物を前記有機廃棄材料に加えることを含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
前記微生物組成物が、前記乳酸菌に加えて、ラクトバチルス(Lactobacillus)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、又はそれらの組合せから選択される1つ以上の微生物を含む、実施形態2に記載の方法。
実施形態4
ステップa)が、約3から約5のpHで行われる、実施形態1から3のいずれか一つに記載の方法。
実施形態5
ステップb)で処理される前記発酵有機材料の水分含量が、約45%から約75%である、実施形態1から4のいずれか一つに記載の方法。
実施形態6
ステップb)が、約4から約7のpHで行われる、実施形態1から5のいずれか一つに記載の方法。
実施形態7
ステップc)が、1つ以上のミミズ種のミミズをステップb)で得られた前記熟成有機材料に加えることを含む、実施形態1から6のいずれか一つに記載の方法。
実施形態8
ステップc)が、ミミズに加えて、セルロース廃棄物及び/又は水を前記熟成有機材料に加えることをさらに含む、実施形態1から7のいずれか一つに記載の方法。
実施形態9
ステップc)が、約15℃から約30℃のT℃で行われる、実施形態1から8のいずれか一つに記載の方法。
実施形態10
ステップc)が、前記処理された有機材料の水分含量が約60%から約70%で行われる、実施形態1から9のいずれか一つに記載の方法。
実施形態11
実施形態1から10のいずれか一つに記載の方法によって得られる、処理済み有機堆肥。
実施形態12
実施形態1から10のいずれか一つに記載の方法によって得られた処理済み有機堆肥、又は実施形態11に記載の有機堆肥の土壌施肥のための使用。
実施形態13
土壌施肥方法であって、
i)実施形態1から10のいずれか一つに記載の方法に従って有機廃棄材料を処理し、それにより有機堆肥が得られるステップ、及び
ii)ステップi)で得られた前記有機堆肥を、前記施肥する土壌に加えるステップ
を含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機廃棄材料を有機堆肥へと処理する方法であって、
a)少なくとも1つ以上の乳酸菌を前記有機廃棄材料に加えることを含む、前記有機廃棄材料を発酵させるステップであって、通性嫌気性条件下、酸性pHで行われ、それにより発酵有機材料が得られる、ステップ、
b)ステップa)で得られた前記発酵有機材料を好気性条件で熟成させ、それにより熟成有機材料が得られる、ステップ、及び
c)ステップb)で得られた前記熟成有機材料をミミズ堆肥化し、それにより有機堆肥が得られる、ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
ステップa)が、乳酸菌を含む微生物組成物を前記有機廃棄材料に加えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微生物組成物が、前記乳酸菌に加えて、ラクトバチルス(Lactobacillus)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、又はそれらの組合せから選択される1つ以上の微生物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)が、約3から約5のpHで行われる、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップb)で処理される前記発酵有機材料の水分含量が、約45%から約75%である、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップb)が、約4から約7のpHで行われる、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップc)が、1つ以上のミミズ種のミミズをステップb)で得られた前記熟成有機材料に加えることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップc)が、ミミズに加えて、セルロース廃棄物及び/又は水を前記熟成有機材料に加えることをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップc)が、約15℃から約30℃のT℃で行われる、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ステップc)が、前記処理された有機材料の水分含量が約60%から約70%で行われる、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によって得られる、処理済み有機堆肥。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によって得られた処理済み有機堆肥、又は請求項11に記載の有機堆肥の土壌施肥のための使用。
【請求項13】
土壌施肥方法であって、
i)請求項1から10のいずれか一項に記載の方法に従って有機廃棄材料を処理し、それにより有機堆肥が得られるステップ、及び
ii)ステップi)で得られた前記有機堆肥を、前記施肥する土壌に加えるステップ
を含む、方法。
【国際調査報告】