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特表2024-538149ガス分離のための高選択性及び高CO2可塑化耐性ポリマー膜
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  • 特表-ガス分離のための高選択性及び高CO2可塑化耐性ポリマー膜 図1
  • 特表-ガス分離のための高選択性及び高CO2可塑化耐性ポリマー膜 図2
  • 特表-ガス分離のための高選択性及び高CO2可塑化耐性ポリマー膜 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ガス分離のための高選択性及び高CO2可塑化耐性ポリマー膜
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/00 20060101AFI20241010BHJP
   B01D 71/72 20060101ALI20241010BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C08G61/00
B01D71/72
B01D53/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522652
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 US2022078205
(87)【国際公開番号】W WO2023069894
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/262,906
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598055242
【氏名又は名称】ユーオーピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】リュー、チュンチン
(72)【発明者】
【氏名】バー、チャオイー
(72)【発明者】
【氏名】カーンズ、ニコル
【テーマコード(参考)】
4D006
4J032
【Fターム(参考)】
4D006GA25
4D006GA41
4D006HA01
4D006HA41
4D006HA61
4D006KA16
4D006KE07R
4D006KE16R
4D006MA06
4D006MA10
4D006MA25
4D006MB11
4D006MB12
4D006MB15
4D006MB16
4D006MC09
4D006MC11
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC40
4D006MC48
4D006MC49
4D006MC55
4D006MC88
4D006MC90
4D006PA01
4D006PB08
4D006PB18
4D006PB19
4D006PB64
4D006PB66
4D006PB68
4D006PB70
4D006PC51
4J032BA20
4J032BB05
4J032CA03
4J032CA12
4J032CA14
4J032CA43
4J032CB03
4J032CC01
4J032CE03
4J032CF06
4J032CG08
(57)【要約】
ガス分離用途のための、式(I)の複数の繰り返し単位を含む高選択性及び高CO2可塑化耐性ポリマー。ポリマーは、超酸触媒ポリ(ヒドロアルキル化)反応から合成されてもよい。
このポリマーから作製された膜及びこのポリマーから作製された膜を使用するガス分離プロセスも記載されている。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の複数の繰り返し単位を含むポリマーであって、
【化1】

式中、Arが、
【化2】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
Arが、
【化3】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
が、
【化4】

又は
【化5】

【化6】

のうちの1つ以上の混合物からなる群から選択され、
式中、R~R36が、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基であり、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、又は前記アリール基が、ハロゲンで置換されていてもよく、
37~R40が、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基であり、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、又は前記アリール基が、ハロゲンで置換されていてもよく、
41が、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基であり、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、又は前記アリール基が、ハロゲンで置換されていてもよく、
前記ハロゲンが、F、Cl、Br、又はIであり、
、A、及びAが、それぞれ独立して、O、S、又はNHであり、
mが、5~5000の整数であり、
nが、0~5000の整数であり、
n/mのモル比が、0:1~20:1であり、
pが、1、2、3、又は4であり、
qが、0、1、2、又は3であり、
r、s、t、及びoが、独立して、0、1、2、又は3である、ポリマー。
【請求項2】
Arが、
【化7】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
式中、R25、R26、R27、及びR28が、それぞれ独立して、-H又は-CHであり、
pが、1又は2であり、
qが、0又は1である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
Arが、
【化8】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
式中、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、及びR36が、それぞれ独立して、-CH又は-CFであり、
r、s、t、及びoが、それぞれ独立して、0又は1である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
が、
【化9】

であり、式中、R37、R38、及びR39が、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
が、
【化10】

の混合物であり、式中、R37、R38、及びR39が、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHであり、
41が、-CH、-CHCH、又は-Cである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項6】
が、
【化11】

の混合物であり、式中、R37、R38、R39、及びR40が、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項7】
が、
【化12】

の混合物であり、式中、R37、R38、R39、及びR40が、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHであり、
41が、-CH、-CHCH、又は-Cである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項8】
前記ポリマーが、超酸触媒ポリヒドロキシアルキル化反応においてモノマーAr’、Ar’、及びX’を反応させることによって合成され、
式中、Ar’が、
【化13】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
Ar’が、
【化14】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
’が、
【化15】

又は
【化16】

【化17】

のうちの1つ以上の混合物からなる群から選択され、
式中、R~R34が、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基であり、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、又は前記アリール基が、ハロゲンで置換されていてもよく、
37~R40が、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基であり、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、又は前記アリール基が、ハロゲンで置換されていてもよく、
41が、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基であり、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、又は前記アリール基が、ハロゲンで置換されていてもよく、
、A、及びAが、それぞれ独立して、O、S、又はNHであり、
pが、1、2、3、又は4であり、
qが、0、1、2、又は3であり、
r、s、及びtが、独立して、0、1、2、又は3である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項9】
Ar’が、
【化18】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
式中、R25、R26、R27、及びR28が、それぞれ独立して、-H又は-CHであり、
pが、1又は2であり、
qが、0又は1である、請求項8に記載のポリマー。
【請求項10】
Ar’が、
【化19】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
式中、R29、R30、R31、R32、R33、及びR34が、それぞれ独立して、-CH又は-CFであり、
r、s、及びtが、独立して、0又は1である、請求項8に記載のポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の記載)
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2021年10月22日出願の米国仮特許出願第63/262,906号への優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
過去40~45年で、ポリマー膜ベースのガス分離プロセスの最新技術は、急速に発展してきた。膜ベースの技術は、従来の分離方法と比較して低い資本コスト及び高いエネルギー効率という利点を有する。膜ガス分離は、石油生産者及び精製業者、化学会社、ならびに工業ガス供給業者にとって特に興味深い。空気からのN2濃縮、天然ガス及び石油増進回収からの二酸化炭素除去、ならびにアンモニアパージガス流中の窒素、メタン、及びアルゴンからの水素除去を含む、膜ガス分離のいくつかの用途が商業的成功を収めている。例えば、UOPのSeparex(商標)スパイラル型ポリマー膜技術は、現在、天然ガスからの二酸化炭素除去の国際市場リーダーである。
【0003】
ポリマーは、低コスト、透過性、機械的安定性、及び加工容易性を含む、ガス分離に重要な一連の特性を提供する。ガラス状ポリマー(すなわち、それらのTg未満の温度でのポリマー)は、より剛性のポリマー骨格を有し、したがって、水素及びヘリウムなどのより小さい分子がより迅速に通過することを可能にし、一方、炭化水素などのより大きい分子は、より剛性の低い骨格を有するポリマーと比較してよりゆっくりと通過する。セルロースアセテート(CA)ガラス状ポリマー膜は、ガス分離において広く使用されている。現在、そのようなCA膜は、二酸化炭素の除去を含む天然ガスの品質向上に使用されている。CA膜は、多くの利点を有するが、選択性、透過性を含むいくつかの特性、ならびに化学的、熱的、及び機械的安定性に限界がある。ポリイミド(PI)などの高性能ポリマーは、膜選択性、透過性、及び熱安定性を改善するために開発されてきた。これらのポリマー膜材料は、CO/CH、O/N、H/CH、He/CH、及びプロピレン/プロパン(C/C)などのガス対の分離のための有望な固有特性を示している。
【0004】
商業的なガス及び液体分離用途において最も一般的に使用される膜は、非対称ポリマー膜であり、分離を実行する薄い非多孔質選択性スキン層を有する。分離は、溶液拡散機構に基づく。この機構は、透過ガスと膜ポリマーとの分子スケールの相互作用を伴う。この機構は、2つの対向する表面を有する膜において、各成分が一方の表面で膜によって吸着され、ガス濃度勾配によって輸送され、かつ対向する表面で脱着されると仮定している。この溶液-拡散モデルによれば、所与のガス対(例えば、CO/CH、O/N、H/CH)を分離する際の膜性能は、2つのパラメータ:透過係数(以下、透過率又はPと略す)及び選択性(αA/B)によって決定される。Pは、ガス流束と膜の選択性スキン層の厚さとの積を、膜全体の圧力差で割ったものである。αA/Bは、2つのガスの透過係数の比であり(αA/B=P/P)、Pは、より透過性の高いガスの透過性であり、Pは、より透過性の低いガスの透過性である。ガスは、高い溶解係数、高い拡散係数、又は両方の係数が高いために、高い透過係数を有することができる。一般に、ガスの分子サイズが大きくなると、拡散係数は小さくなり、溶解度係数は大きくなる。高性能ポリマー膜では、より高い透過性が所与の体積のガスを処理するのに必要な膜面積のサイズを減少させ、それによって膜ユニットの資本コストを減少させるので、及びより高い選択性がより高純度の生成物ガスをもたらすので、高い透過性及び選択性の両方が望ましい。
【0005】
膜によって分離される成分のうちの1つは、好ましい条件で十分に高いパーミアンスを有していなければならず、又は大量の材料の分離を可能にするために非常に大きな膜表面積が必要とされる。ガス透過単位(GPU、1GPU=10-6cm(STP)/cm s(cm Hg))で測定されるパーミアンスは、圧力正規化流束であり、膜のスキン層厚さで割った透過率に等しい。相反転法及び溶媒交換法によって形成されたCA膜及びポリスルホン膜などの市販のガス分離ポリマー膜は、非対称の一体化スキン層付き膜構造を有する。そのような膜は、薄く、緻密で、選択的に半透過性の表面「スキン」及び低密度の空隙含有(又は多孔質)非選択性支持領域によって特徴付けられ、細孔サイズは、支持領域における大きいものから「スキン」に近接する非常に小さいものまでの範囲である。しかしながら、欠陥のない高選択性非対称の一体化スキン層付きポリイミド膜の製作は、困難である。スキン層におけるナノ細孔又は欠陥の存在は、膜選択性を低下させる。膜流延及び乾燥プロセス中の布基材上のポリイミド膜の高い収縮は、転相技術を使用した非対称の一体化スキン層付きポリイミド膜の製作の失敗をもたらす場合がある。
【0006】
高選択性及び高透過性を高熱安定性と組み合わせるために、ポリイミド(PI)、ポリ(トリメチルシリルプロピン)(PTMSP)、及びポリトリアゾールなどの新しい高性能ポリマーが開発された。これらの新しいポリマー膜材料は、CO/CH、O/N、H/CH、及びC/Cのようなガス対の分離のための有望な特性を示した。しかしながら、ガラス状ポリマー膜に基づくガス分離プロセスは、CO又はCなどの吸着された浸透分子による剛性ポリマーマトリックスの可塑化に悩まされることが多い。ポリマーの可塑化は、膜構造の膨潤によって、ならびに供給ガス混合物が凝縮性ガスを含有する場合に可塑化圧力より上で生じる供給物中の全成分のパーミアンスの有意な増加及び選択性の減少によって示される。可塑化は、高いCO濃度及び重質炭化水素を含有するガス田にとって、ならびに2段階膜分離を必要とするシステムにとって特に問題である。
【0007】
米国特許出願公開第2005/0268783(A1)号、米国特許出願公開第2009/0182097(A1)号、及び米国特許出願公開第2009/0178561(A1)号は、2段階プロセスで調製された化学的に架橋されたポリイミド中空糸膜を開示した。工程1は、脱水条件の存在下、エステル化条件で、カルボン酸官能基を含有するポリイミドポリマーを小ジオール分子で処理することによる、溶液中でのモノエステル化ポリイミドポリマーの合成である。しかしながら、かなり余分な量のジオールを使用して、ビスエステル化ポリイミドポリマーの形成を防止した。工程2は、架橋ポリイミド膜を形成するための、高温でのモノエステル化ポリイミド膜の固相エステル交換である。
【0008】
ジアミン小分子を使用するポリイミドの化学的架橋も開示されている(Chemical cross-linking modification of polyimide membranes for gas separation,J.Membr.Sci.,2001,189,231-239)。しかしながら、CO透過性は、このタイプの架橋後に著しく減少した。加えて、ジアミン架橋ポリイミドの熱安定性及び加水分解安定性は、改善されなかった。
【0009】
Korosらは、脱炭酸誘導熱架橋ポリイミド膜を開示した。(Plasticization-resistant hollow fiber membranes for CO/CH separation based on a thermally crosslinkable polyimide,J.Membr.Sci.,2011,382,212-221)しかしながら、カルボン酸基含有ポリイミド膜上のカルボン酸基間の脱炭酸反応は、ポリイミドポリマーのガラス転移温度より高い温度で生じた。高温は、膜の下部構造の緻密化及び膜パーミアンスの低下をもたらした。
【0010】
米国特許第7,485,173号は、紫外線(UV)放射を使用して架橋された混合マトリックス膜を開示した。架橋混合マトリックス膜は、連続UV架橋ポリマーマトリックス中に分散された多孔質材料を含む。
【0011】
米国特許第4,931,182号及び米国特許第7,485,173号は、UV照射を使用して物理的に架橋されたポリイミド膜を開示した。架橋膜は、ガス分離に対して改善された選択性を示した。しかしながら、非対称ガス分離膜の薄い選択層の架橋度をUV放射を使用して制御することは困難であり、選択性は通常非常に高いが、非常に低いパーミアンスをもたらす。
【0012】
したがって、ガス分離膜技術の開発のための高性能及び高安定性のポリマー材料及び膜が依然として必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)ポリマーの合成の一実施形態の図である。
図2】ポリ(TP-DHB-1-3-イサチン-TFAP-4-1)ポリマーの合成の一実施形態の図である。
図3】50℃における異なる膜の相対的なCO透過性に対する印加されたCO圧力の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ガス及び液体の両方の分離のための膜の使用は、低エネルギー要件及びモジュール式膜設計のスケールアップの可能性に起因して潜在的に高い経済的報酬を有する成長しつつある技術分野である。高性能膜の製造のための新しい膜材料及び新しい方法の継続的な開発に伴う膜技術の進歩により、この技術は蒸留などの伝統的な高エネルギー集約的及び高価なプロセスとの競争力が更に高まるであろう。商業的なガス分離膜システムのための用途の中には、窒素濃縮、酸素濃縮、水素回収、天然ガスからの硫化水素及び二酸化炭素の除去、酸性ガスを除去するためのバイオガス精製、ならびに空気及び天然ガスの脱水がある。また、さまざまな炭化水素分離が、適切な膜システムの潜在的な用途である。これらの用途に使用される膜は、経済的に成功するために、高い選択性、耐久性、及び生産性を有していなければならない。空気からの窒素濃縮、天然ガス及びバイオガスからの二酸化炭素除去、ならびに石油回収の向上を含む膜ガス分離のいくつかの用途が商業的成功を達成している。米国は、毎年70,000,000トンを超える有機廃棄物を製造している。有機廃棄物は、分解すると大量のメタンを発生する。メタンは、強力な温室効果ガスであり、20年でCOよりも86倍多くの熱を吸収する。温室効果ガスの排出及び水路への汚染のリスクを低減するために、有機廃棄物を除去し、再生可能なエネルギー源であるバイオガスを製造するために使用することができる。米国は現在、2,200の操作バイオガスシステムを有しており、総潜在能力の20パーセント未満に相当する。バイオガス原料としては、食品廃棄物、埋立ガス、畜産廃棄物、廃水処理、及び作物残渣が挙げられ、通常、30~40%のCOを含有する。煙道ガスからのCO捕捉は、温室効果ガス排出を低減し、地球規模の気候変動を緩和するのに重要な役割を有すると予想される。膜技術は、前処理されたバイオガスからCO及びHSを除去して精製された再生可能な天然ガスを製造するため、ならびに煙道ガスからCOを捕捉するために、単独で又は他のガス処理技術と共に使用することができる。
【0015】
本発明は、ガス分離、例えばH回収、ヘリウム回収、バイオガス精製、天然ガスからのCO除去、及び空気分離のための新しいタイプの高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマー及び膜、ならびにこれらの膜を作製及び使用するための方法を開示する。加えて、フェノール性ヒドロキシル基を有するこのタイプのポリマーは、エネルギー貯蔵、電気分解、及び燃料電池用途などの他の用途のための機能性膜の開発に高い可能性を有する。
【0016】
高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマーは、ポリマーに高い化学的安定性を提供する疎水性ポリマー骨格、ポリマーの剛性及び自由体積を増加させるイサチン系部分、ならびにポリマー側鎖上にH結合を形成することができる親水性フェノール性ヒドロキシル基を有する。したがって、これらのポリマーから調製された膜は、ガス分離のための高い化学的及び熱的安定性、高い機械的安定性、高いガス透過性、高選択性、ならびに高CO可塑化耐性を有する。
【0017】
この高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマーは、ガス分離用途のために、ポリ(アリール-ビフェニル-イサチン)ポリマーなどの式(I)の複数の繰り返し単位を含む。式(I)の複数の繰り返し単位を含むポリマーは、超酸触媒ポリ(ヒドロアルキル化)反応から合成された。
【0018】
【化1】

式中、Arは、
【0019】
【化2】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
Arは、
【0020】
【化3】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
は、
【0021】
【化4】

又は
【0022】
【化5】
【0023】
【化6】

のうちの1つ以上の混合物からなる群から選択される。
【0024】
~R36は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基である。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、ハロゲンで置換されていてもよい。
【0025】
37~R40は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基である。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、ハロゲンで置換されていてもよい。
【0026】
41は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基である。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、ハロゲンで置換されていてもよい。
【0027】
ハロゲンは、F、Cl、Br、又はIであり、A、A、及びAは、それぞれ独立して、O、S、又はNHであり、mは、5~5000の整数であり、nは、0~5000の整数であり、n/mのモル比は、0:1~20:1の範囲であり、pは、1、2、3、又は4であり、qは、0、1、2、又は3であり、r、s、t、及びoは、独立して、0、1、2、又は3である。
【0028】
いくつかの実施形態では、Arは、
【0029】
【化7】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
式中、R25、R26、R27、及びR28は、それぞれ独立して、-H又は-CHであり、
pは、1又は2であり、
qは、0又は1である。
【0030】
いくつかの実施形態では、Arは、
【0031】
【化8】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
式中、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、及びR36は、それぞれ独立して、-CH又は-CFであり、
r、s、t、及びoは、それぞれ独立して、0又は1である。
【0032】
いくつかの実施形態では、Xは、
【0033】
【化9】

であり、式中、R37、R38、及びR39は、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHである。
【0034】
いくつかの実施形態では、Xは、
【0035】
【化10】

の混合物であり、式中、R37、R38、及びR39は、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHであり、
41は、-CH、-CHCH、又は-Cである。
【0036】
いくつかの実施形態では、Xは、
【0037】
【化11】

の混合物であり、式中、R37、R38、R39、及びR40は、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHである。
【0038】
いくつかの実施形態では、Xは、
【0039】
【化12】

の混合物であり、式中、R37、R38、R39、及びR40は、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHであり、
41は、-CH、-CHCH、又は-Cである。
【0040】
いくつかの実施形態では、式(I)の複数の繰り返し単位を含むポリマーは、モノマーAr’、Ar’、及びX’の超酸触媒ポリヒドロキシアルキル化反応から形成される。
【0041】
Ar’は、
【0042】
【化13】

及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0043】
Ar’は、
【0044】
【化14】

及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0045】
’は、
【0046】
【化15】

又は
【0047】
【化16】
【0048】
【化17】

のうちの1つ以上の混合物からなる群から選択される。
【0049】
~R34は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基である。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、ハロゲンで置換されていてもよい。
【0050】
37~R40は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基である。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、ハロゲンで置換されていてもよい。
【0051】
41は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基であり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、ハロゲンで置換されていてもよい。
【0052】
、A、及びAは、それぞれ独立して、O、S、又はNHであり、pは、1、2、3、又は4であり、qは、0、1、2、又は3であり、r、s、及びtは、独立して、0、1、2、又は3である。
【0053】
いくつかの実施形態では、Ar’は、
【0054】
【化18】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
式中、R25、R26、R27、及びR28は、それぞれ独立して、-H又は-CHであり、
pは、1又は2であり、
qは、0又は1である。
【0055】
いくつかの実施形態では、Ar’は、
【0056】
【化19】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
式中、R29、R30、R31、R32、R33、及びR34は、それぞれ独立して、-CH又は-CFであり、
r、s、及びtは、独立して、0又は1である。
【0057】
いくつかの実施形態では、X’は、
【0058】
【化20】

であり、式中、R37、R38、及びR39は、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHである。
【0059】
いくつかの実施形態では、X’は、
【0060】
【化21】

の混合物であり、式中、R37、R38、及びR39は、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHであり、
41は、-CH、-CHCH、又は-Cである。
【0061】
いくつかの実施形態では、X’は、
【0062】
【化22】

の混合物であり、式中、R37、R38、R39、及びR40は、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHである。
【0063】
いくつかの実施形態では、X’は、
【0064】
【化23】

の混合物であり、式中、R37、R38、R39、及びR40は、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHであり、
41は、-CH、-CHCH、又は-Cである。
【0065】
ポリ(アリール-ビフェノール-イサチン)ポリマーなどの、式(I)の複数の繰り返し単位を含む高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマーは、モノマーAr’及びAr’と、X’との超酸触媒ポリヒドロキシアルキル化反応、例えば、Ar’としてp-テルフェニル及びAr’として2,2’-ジヒドロキシビフェニルと、X’としてイサチンとの超酸触媒ポリヒドロキシアルキル化反応によって合成されてもよい。
【0066】
モノマーAr’及びAr’とモノマーX’とのポリヒドロキシアルキル化反応は、エーテル結合を含まないポリマー骨格を有するポリマーを提供し、これはポリマーの高い化学的安定性をもたらす。電子リッチモノマーAr’のポリマーへの組み込みは、疎水性ポリマー骨格を提供し、フェノール性ヒドロキシル官能基を有するモノマーAr’のポリマーへの組み込みは、ポリマー側鎖上にH結合を形成する。モノマーX’のポリマーへの組み込みは、ポリマーの剛性及び自由体積を増加させるイサチン系部分を有するポリマーを提供し、これは、高いガス透過性を達成するのに役立つ。したがって、このタイプのポリマーから調製されたポリマー膜は、ガス分離のための高い化学的及び熱的安定性、高い機械的安定性、高いガス透過性、高選択性、ならびに高CO可塑化耐性を有する。
【0067】
ある場合には、モノマーX’は、高分子量ポリマーの形成を可能にするために、イサチン系モノマーと非イサチン系モノマーとの混合物である。式(I)の複数の繰り返し単位を含むポリマーの合成のためのAr’モノマーと-Ar’モノマーとのモル比は、0:1~20:1の範囲、又は10:1~1:10の範囲、又は5:1~1:5の範囲であることができる。式(I)の複数の繰り返し単位を含むポリマーの合成のためのX1’モノマーとAr’及びAr’モノマーとのモル比は、1.2:1~1:1.2の範囲、又は1.1:1~1:1.1の範囲、又は1.05:1~1:1.05の範囲であることができる。
【0068】
超酸触媒ポリヒドロキシアルキル化反応は、0℃~50℃、又は10℃~30℃、又は20℃~30℃で、2時間~72時間、又は10時間~48時間、又は12~24時間実施することができる。好適な超酸触媒としては、トリフルオロメタンスルホン酸(CFSOH(TFSA))、メタンスルホン酸(MSA)、フルオロ硫酸(FSOH)、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリヒドロキシアルキル化反応のための溶媒は、モノマーのうちの1つ以上を溶解することができるものである。好適な溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、トリフルオロ酢酸(TFA)、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマーは、10,000~1,000,000ダルトンの範囲、又は50,000~500,000ダルトンの範囲の重量平均分子重量を有する。
【0070】
本発明の別の態様は、上述のポリマーを含む高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマー膜である。いくつかの実施形態では、高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマー膜は、一体化スキン層付き非対称膜又は薄膜複合(TFC)膜である。
【0071】
いくつかの実施形態では、薄膜複合膜は、式(I)の複数の繰り返し単位を含む高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマーでコーティングされた多孔質基材膜を備える。多孔質基材膜は、式(I)の複数の繰り返し単位を含む高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマーと同じであっても異なっていてもよいポリマーから調製される。
【0072】
いくつかの実施形態では、一体化スキン層付き非対称膜又はTFC膜は、フラットシート膜又は中空繊維膜であってもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、式(I)の複数の繰り返し単位を含む高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマーは、スパイラル型、中空繊維、又はプレートアンドフレーム膜モジュールに作製される。
【0074】
式(I)の複数の繰り返し単位を含む高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマーを含む一体化スキン層付き非対称膜は、同じ膜材料から1段階相反転プロセスによって同時に形成された多孔質支持層の上に薄い選択性スキン層を備える非対称の一体化スキン層付き膜構造を有する。
【0075】
いくつかの実施形態では、高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマーを含む一体化スキン層付き非対称フラットシート膜は、1)式(I)を有するポリマー、水と混和性であり、式(I)を有するポリマーを溶解することができる溶媒、及び式(I)を有するポリマーを溶解することができない非溶媒、を含む膜流延溶液を作製することと、2)膜流延溶液の層を、膜流延機を使用して支持基材上に流延することと、3)支持基材上のコーティングされた層の表面から溶媒及び非溶媒を蒸発させて、表面上に薄い緻密選択性スキン層を有する新生フラットシート膜を形成することと、4)コーティングされたポリマー層を凝固浴中で凝固させて、支持基材上にコーティングされた多孔質支持層の上に薄い非多孔質緻密層を備える一体化スキン層付き非対称膜構造を形成することと、5)50℃~150℃、又は50℃~120℃、又は80℃~120℃で膜を乾燥させることと、を含む乾湿相反転技術を使用して調製され、任意選択で、6)工程5)の後に膜後処理工程を追加して、選択性を更に改善するが、膜を変化もしくは損傷させないように、又は膜の性能を経時的に失わせないようにすることができる。膜後処理工程は、膜の選択層表面を、ポリシロキサン、フルオロポリマー、熱硬化性シリコーンゴム、又はUV線硬化性シリコーンゴムなどの材料の薄層でコーティングすることを伴うことができる。支持基材は、より高い多孔質であり、ポリプロピレン及びポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン6及びナイロン6,6などのポリアミド、セルロース、ポリベンズイミダゾール、ポリカーボネート、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフルオロカーボン系ポリマーを含んでもよい。これらのポリマーは、低コスト、高い透気度、ならびに良好な化学的、熱的、及び機械的安定性などのさまざまな特性を提供する。支持基材は、不織布マトリックス又は織布マトリックスのいずれかであり得、対称多孔質構造又は非対称多孔質構造のいずれかを有することができる。
【0076】
膜流延溶液の調製のための溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、1,3-ジオキソラン、及びそれらの混合物が挙げられてもよいが、これらに限定されない。膜流延溶液の調製のための非溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、n-オクタン、n-デカン、乳酸、クエン酸、イソプロパノール、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。一体化スキン層付き非対称フラットシート膜は、多孔質支持層上に100nm未満の薄い非多孔質緻密層を有してもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、式(I)の複数の繰り返し単位を含む高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマーを含む一体化スキン層付き非対称中空糸膜は、1)式(I)を有するポリマー、水と混和性であり、式(I)を有するポリマーを溶解することができる溶媒、及び式(I)を有するポリマーを溶解することができない非溶媒、を含む膜紡糸溶液を作製することと、2)紡糸溶液を、中空糸紡糸機を使用して環状紡糸口金からボア流体と同時に紡糸することであって、ボア流体が、環の中心に送り込まれ、紡糸溶液が、環の外側層に送り込まれる、紡糸することと、3)紡糸口金の表面と非溶媒凝固浴の表面との間の空隙に新生中空糸膜を通過させて、溶媒及び非溶媒を一定時間蒸発させて、表面上に薄い緻密選択性スキン層を有する新生中空糸膜を形成することと、4)新生中空糸膜を、0°~50℃の範囲の制御された温度で非溶媒(例えば、水)凝固浴に浸漬して、相反転によって薄い緻密選択性スキン層の下に多孔質非選択性支持層を生成し、続いて中空糸をドラム、ロール、又は他の好適な装置に巻き取ることと、5)室温で一定時間、アルコールもしくはヘキサンなどの炭化水素溶媒、又はその両方で溶媒交換することと、6)50°~100℃の範囲内にある一定温度で、10分~12時間の範囲内にある一定時間、湯浴中で湿潤中空糸をアニールすることと、7)50°~150℃の範囲内又は70°~100℃の範囲内にある一定温度で、中空糸膜を乾燥させることと、を含む乾式-湿式転相技術を使用して調製される。溶媒交換工程5)及びアニーリング工程6)の順序が、高い膜性能を達成し、最終膜乾燥工程中に可燃性メタノール溶媒によって引き起こされる火災を防止するのに役立つことは注目に値する。任意選択で、工程7)の後に膜後処理工程を追加して、選択性を更に改善するが、膜を変化もしくは損傷させないように、又は膜の性能を経時的に失わせないようにすることができる。膜後処理工程は、中空糸膜の選択層表面を、ポリシロキサン、フルオロポリマー、熱硬化性シリコーンゴム、又はUV線硬化性シリコーンゴムなどの材料の薄層でコーティングすることを伴うことができる。このアプローチを使用して作製された中空繊維膜は、多孔質非選択性層上に100nm未満の極薄の欠陥のない緻密選択性スキン層を含有し、両方の層は、式(I)の複数の繰り返し単位を含む同じ膜材料から作製される。
【0078】
中空糸膜の調製のための紡糸溶液を調製するための溶媒としては、NMP、DMAc、DMF、DMSO、ジオキサン、1,3-ジオキソラン、及びそれらの混合物が挙げられてもよいが、これらに限定されない。膜流延溶液の調製のための非溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール、THF、トルエン、n-オクタン、n-デカン、乳酸、クエン酸、イソプロパノール、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。一体化スキン層付き非対称中空糸膜は、多孔質支持層上に100nm未満の薄い非多孔質緻密層を有してもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、式(I)の複数の繰り返し単位を含む高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマーを含む薄膜複合膜は、1)式(I)の複数の繰り返し単位を含むポリマーを溶媒に溶解してポリマーコーティング溶液を形成することと、2)ポリマーコーティング溶液の層を、ディップコーティング、メニスカスコーティング、スピンコーティング、流延、ソーキング、噴霧、ペインティング、又は他の既知の従来の溶液コーティング技術を介して多孔質支持膜の一方の表面上にコーティングすることと、3)コーティングされた膜を50℃~150℃、又は50℃~120℃、又は80℃~120℃で乾燥させることと、を含む方法を使用して調製され、任意選択で、4)工程3)の後に膜後処理工程を追加して、選択性を更に改善するが、膜を変化もしくは損傷させないように、又は膜の性能を経時的に失わせないようにすることができる。膜後処理工程は、膜の選択層表面を、ポリシロキサン、フルオロポリマー、熱硬化性シリコーンゴム、又はUV線硬化性シリコーンゴムなどの材料の薄層でコーティングすることを伴うことができる。薄膜複合膜の調製のための溶媒としては、NMP、DMAc、DMF、DMSO、ジオキサン、1,3-ジオキソラン、クロロホルム、ジクロロメタン、及びそれらの混合物が挙げられてもよいが、これらに限定されない。多孔質支持膜は、良好な熱安定性(少なくとも120℃まで安定)、有機溶媒中での高い化学的安定性、高い機械的強度(システム操作条件下で寸法変化がない)、及びガス又は液体分離の操作条件によって決定される他の因子を有するべきである。多孔質支持膜は、ポリマーコーティング溶液の化学的性質と適合性でなければならず、膜組み立て操作の機械的要求を満たさなければならない。
【0080】
多孔質支持膜の調製に好適なポリマーは、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロン6及びナイロン6,6などのポリアミド、ポリエステル、セルロースアセテート、ポリベンズイミダゾール、PTFE及びPVDFなどのフルオロカーボン系ポリマー、ポリカーボネート、セルロース、又はそれらの組み合わせから選択することができるが、これらに限定されない。これらのポリマーは、低コスト、高い化学的及び熱的安定性、良好な機械的安定性、ならびに膜製作のための加工容易性などのさまざまな特性を提供する。
【0081】
本発明の別の態様は、天然ガス又はバイオガスからの酸性ガス除去、H回収、He回収、及び空気分離などの広範囲のガス分離のための式(I)の複数の繰り返し単位を含む高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマーを含む高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマー膜の使用である。
【0082】
本発明は、本発明に記載された新規な高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマー膜を使用してガスの混合物から少なくとも1つのガスを分離するためのプロセスであって、(a)少なくとも1つのガスに対して透過性である高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマー膜を提供することと、(b)膜の片側で混合物を接触させて、少なくとも1つのガスを膜に透過させることと、(c)膜の反対側から、膜を透過した少なくとも1つのガスの一部を含む透過ガス組成物を除去することと、を含む、プロセスを提供する。
【0083】
高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマー膜は、気相中の特定の種の精製、分離、又は吸着において特に有用である。高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマー膜は、空気精製、再生可能エネルギー、石油化学、精製所、及び天然ガス産業におけるガス分離プロセスにおいて特に有用である。そのような分離の例としては、窒素又は酸素などの大気ガスからの揮発性有機化合物(トルエン、キシレン、及びアセトンなど)の分離、及び空気からの窒素回収が挙げられる。そのような分離の更なる例は、天然ガス又はバイオガスからのCO及び/又はHSの分離、アンモニアパージガス流中のN、CH、及びArからのHの分離、精油所におけるH回収、天然ガスからのHe回収、プロピレン/プロパン分離などのオレフィン/パラフィン分離、ならびにイソ/ノルマルパラフィン分離のためのものである。分子サイズが異なるガスの任意の所与の対又は群、例えば、窒素及び酸素、二酸化炭素及びメタン、水素及びメタン又は一酸化炭素、ヘリウム及びメタンは、高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマー膜を使用して分離することができる。第3のガスから3つ以上のガスを除去することができる。例えば、本明細書に記載の膜を使用して原料天然ガスから選択的に除去することができるガス成分の一部としては、二酸化炭素、酸素、窒素、水蒸気、硫化水素、ヘリウム、及び他の微量ガスが挙げられる。選択的に保持することができるガス成分のいくつかは、炭化水素ガスを含む。透過性成分が、二酸化炭素、硫化水素、及びそれらの混合物からなる群から選択される酸成分であり、天然ガスなどの炭化水素混合物から除去される場合、1つのモジュール、又は少なくとも2つの並列サービス、又は一連のモジュールを利用して、酸成分を除去してもよい。例えば、1つのモジュールが利用される場合、供給ガスの圧力は、275kPa~2.6MPa(25~4000psi)で変動してもよい。膜全体の差圧は、使用される特定の膜、入口流の流量、及びそのような圧縮が所望される場合透過流を圧縮する圧縮機の利用可能性などの多くの要因に応じて、70kPaほどの低さ又は14.5MPaほどの高さ(10psi又は2100psiほどの高さ)であることができる。14.5MPa(2100psi)を超える差圧は、膜を破裂させる場合がある。プロセスの操作温度は、供給流の温度及び周囲温度条件に依存して変動してもよい。好ましくは、本発明の膜の有効操作温度は、-50°~-150℃の範囲である。より好ましくは、高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマー膜の有効操作温度は、-50°~100℃の範囲である。
【0084】
高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマー膜は、例えば、クリーンエア規制を満たすための揮発性有機化合物の回収のためのオフガス処理において、又は貴重な化合物(例えば、塩化ビニルモノマー又はプロピレン)が回収され得るように製造プラントにおけるプロセス流内で、ガス流から有機蒸気を除去するための化学、石油化学、製薬、及び同類産業におけるガス/蒸気分離プロセスにおいても特に有用である。高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマー膜が使用されてもよいガス/蒸気分離プロセスの更なる例は、天然ガスの炭化水素露点指示のための(すなわち、液体炭化水素がパイプライン中で分離しないように、炭化水素露点を最低可能輸出パイプライン温度未満に低下させるための)、ガスエンジン及びガスタービン用の燃料ガス中のメタン価の制御のための、ならびにガソリン回収のための、石油及びガス精製所における水素からの炭化水素蒸気分離である。高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマー膜は、特定のガスに強く吸着する種(例えば、Oについてはコバルトポルフィリンもしくはフタロシアニン、又はエタンについては銀(I))を組み込んで、膜を横切るそれらの輸送を容易にしてもよい。
【0085】
本発明に記載されるは高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマー膜はまた、浸透気化による液体混合物の分離において、例えば、水性流出物又はプロセス流体などの水からの有機化合物(例えば、アルコール、フェノール、塩素化炭化水素、ピリジン、ケトン)の除去において使用されてもよい。エタノール選択性である膜は、発酵プロセスによって得られた比較的希薄なエタノール溶液(例えば、5~10%エタノール)中のエタノール濃度を増加させるために使用される。高選択性及び高CO耐可塑化性ポリマー膜を使用する別の液相分離例は、浸透気化膜プロセスによるガソリン及びディーゼル燃料の深脱硫である。硫黄含有分子に対して選択的である高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマー膜は、流動接触分解(FCC)及び他のナフサ炭化水素流から硫黄含有分子を選択的に除去するために使用される。更なる液相例としては、別の有機成分から1つの有機成分の分離、例えば、有機化合物の異性体を分離することが挙げられる。高選択性及び高CO可塑化耐性ポリマー膜を使用して分離されてもよい有機化合物の混合物としては、酢酸エチル-エタノール、ジエチルエーテル-エタノール、酢酸-エタノール、ベンゼン-エタノール、クロロホルム-エタノール、クロロホルム-メタノール、アセトン-イソプロピルエーテル、アリルアルコール-アリルエーテル、アリルアルコール-シクロヘキサン、ブタノール-酢酸ブチル、ブタノール-1-ブチルエーテル、エタノール-エチルブチルエーテル、酢酸プロピル-プロパノール、イソプロピルエーテル-イソプロパノール、メタノール-エタノール-イソプロパノール、及び酢酸エチル-エタノール-酢酸が挙げられる。
【0086】
本発明の更に別の態様は、燃料電池、電解槽、フロー電池、電気透析装置、廃棄金属回収システム、電気触媒水素製造システム、脱塩装置、浄水器、廃水処理システム、イオン交換器、又はCO分離装置が挙げられるが、これらに限定されない多種多様な用途で使用されてもよい誘導体官能性ポリマーの調製のための、式(I)の複数の繰り返し単位を含む高選択性及び高CO可塑化抵抗性ポリマー膜材料の使用である。
【実施例
【0087】
以下の実施例は、本発明の1つ以上の好ましい実施形態を説明するために提供されるが、その実施形態を限定するものではない。本発明の範囲内にある以下の実施例に対して多数の変形を行うことができる。
【0088】
実施例1:ポリ(p-テルフェニル-2,2’-ビフェノール-1-1-イサチン)ポリマー(ポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)と略す)の合成。
ポリ(p-テルフェニル-2,2’-ビフェノール-1-1-イサチン)ポリマー(ポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)と略す)を、図1に示すように、モノマー2,2-ジヒドロキシビフェニル及びp-テルフェニルとイサチンとの超酸触媒ポリヒドロキシアルキル化反応によって合成した。2,2-ジヒドロキシビフェニル:p-ターフェニル:イサチンのモル比は、1:1:2である。p-テルフェニル(5.76g、25mmol)及び2,2’-ビフェノール(4.67g、25mmol)を、オーバーヘッドメカニカルスターラを備えた500mLの三つ口フラスコに入れた。無水塩化メチレン(50mL)をフラッシュに添加し、5分間撹拌して懸濁液を形成した。次いで、フラスコを氷浴に浸漬して、懸濁液を低温に保った。トリフルオロメタンスルホン酸(50mL)、トリフルオロ酢酸(25mL)、及びイサチン(7.36g、50mmol)の混合物をフラスコに滴下した。その後、反応を16時間継続した。得られた粘性溶液を、撹拌しながら水とメタノールとの混合物にゆっくりと注いだ。固体をブレンダーによって粉末に細断し、濾過し、水で洗浄し、0.5M KCO中に一晩浸漬して酸を完全に除去した。ポリマーを濾過し、メタノールで十分に洗浄し、続いて真空下80℃で乾燥させた。ポリマーポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)の収率は、97%であった。
【0089】
実施例2:ポリ(p-テルフェニル-2,2’-ビフェノール-1-3-イサチン)ポリマー(ポリ(TP-DHB-1-3-イサチン)と略す)の合成
2,2-ジヒドロキシビフェニルとp-ターフェニルとのモル比を1:1の代わりに1:3とした以外は、実施例1のポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)の合成手順と同じ合成手順を使用して、ポリ(p-ターフェニル-2,2’-ビフェノール-1-3-イサチン)ポリマー(ポリ(TP-DHB-1-3-イサチン)と略す)を合成した。ポリ(TP-DHB-1-3-イサチン)の収率は、96%であった。
【0090】
実施例3:ポリ(p-テルフェニル-2,2’-ビフェニル-1-3-イサチン-2,2,2-トリフルオロアセトフェノン-4-1)ポリマー(ポリ(TP-DHB-1-3-イサチン-TFAP-4-1)と略す)の合成
ポリ(p-テルフェニル-2,2’-ビフェノール-1-3-イサチン-2,2,2-トリフルオロアセトフェノン-4-1)ポリマー(ポリ(TP-DHB-1-3-イサチン-TFAP-4-1)と略す)を、図2に示すように、モノマー2,2-ジヒドロキシビフェニル及びp-テルフェニルとイサチン及び2,2,2-トリフルオロアセトフェノンとの超酸触媒ポリヒドロキシアルキル化反応によって合成した。2,2-ジヒドロキシビフェニル:p-ターフェニル:イサチン:2,2,2-トリフルオロアセトフェノンのモル比は、1:1:1.6:0.4である。p-ターフェニル(5.76g、25mmol)及び2,2’-ビフェノール(4.67g、25mmol)を、オーバーヘッドメカニカルスターラを備えた500mLの三つ口フラスコに入れた。無水塩化メチレン(50mL)をフラッシュに添加し、5分間撹拌して懸濁液を形成した。次いで、フラスコを氷浴に浸漬して、懸濁液を低温に保った。トリフルオロメタンスルホン酸(50mL)、トリフルオロ酢酸(25mL)、イサチン(5.89g、40mmol)及び2,2,2-トリフルオロアセトフェノン(1.74g、10mmol)の混合物をフラスコに滴下した。その後、反応を14時間継続した。得られた粘性溶液を、撹拌しながら水とメタノールとの混合物にゆっくりと注いだ。固体をブレンダーによって粉末に細断し、濾過し、水で洗浄し、0.5M KCO中に一晩浸漬して酸を完全に除去した。ポリマーを濾過し、メタノールで十分に洗浄し、続いて真空下80℃で乾燥させた。ポリマーpoly(TP-DHB-1-3-イサチン-TFAP-4-1)の収率は、96%であった。
【0091】
実施例4:ポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)緻密フィルム膜の調製
ポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)緻密フィルム膜は、実施例1で合成した5.0gのポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)ポリマーを20.0gのDMSO溶媒に溶解することと、溶液を清浄なガラス板上に流延することと、60℃で12時間乾燥させることと、によって調製した。膜をガラス板から剥がし、真空オーブン中120℃で48時間更に乾燥させた。
【0092】
実施例5:ポリ(TP-DHB-1-3-イサチン)緻密フィルム膜の調製
ポリ(TP-DHB-1-3-イサチン)緻密フィルム膜を、実施例4に記載されるポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)緻密フィルム膜に使用した手順と同じ手順を使用して調製した。
【0093】
比較例1:セルロースアセテート(CA)/セルローストリアセテート(CTA)ブレンド緻密フィルム膜(CA/CTAと略す)の調製
0.5gのセルロースアセテート(CA)ポリマー及び0.5gのセルローストリアセテート(CTA)ポリマーを20.0gのNMP溶媒に溶解した。混合物を室温で6時間撹拌して、均一な溶液を形成した。溶液を清浄なガラス板の表面上に流延し、60℃で12時間乾燥させた。膜をガラス板から剥がし、真空オーブン中120℃で48時間更に乾燥させた。
【0094】
比較例2:ポリイミド緻密フィルム膜(PIと略す)の調製
5.0gのポリイミドポリマー(Huntsman Corporationから入手可能なMatrimid(登録商標))を20.0gのNMP溶媒に溶解させた。混合物を室温で3時間撹拌して、均一な溶液を形成した。溶液を清浄なガラス板の表面上に流延し、60℃で12時間乾燥させた。膜をガラス板から剥がし、真空オーブン中120℃で48時間更に乾燥させた。
【0095】
実施例6:ポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)及びポリ(TP-DHB-1-3-イサチン)緻密フィルム膜のガス透過特性の評価
CO/CH及びH/CH分離のためのポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)(実施例4)、ポリ(TP-DHB-1-3-イサチン)(実施例5)、CA/CTA(比較例1)、及びPI(比較例2)緻密フィルム膜のガス透過特性を、791kPa(100psig)純粋単一供給ガス圧下、50℃で固定容積ガス透過試験ユニットを使用して評価した。結果を表1に示した。
【0096】
ポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)及びポリ(TP-DHB-1-3-イサチン)膜は、CO/CH及びH/CH分離について、CA/CTA膜と同様のCO透過性、より高いH透過性、より高いCO/CH選択性、及びより高いH/CH選択性を有することが表1から分かる。ポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)及びポリ(TP-DHB-1-3-イサチン)膜はまた、CO/CH及びH/CH分離について、PI膜よりも高いCO/CH選択性及び高いH/CH選択性を有する。更に、ポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)及びポリ(TP-DHB-1-3-イサチン)緻密フィルム膜は、天然ガスの品質向上及びバイオガス精製用途のために、PI及びCA/CTA膜よりも有意に高いCO可塑化耐性を示した。
【0097】
ポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)、CA/CTA、及びPI緻密フィルム膜のCO可塑化耐性を研究するために、膜を異なる圧力のCOでコンディショニングした。図3は、全ての膜について、50℃で印加されたCO圧力の増加に伴うCO相対透過率の変化を示す。CA/CTA膜は、100psigの印加されたCO圧力での透過性と比較して、500psigの印加されたCO圧力下でのCO透過性において44%の増加を示した。印加されたCO圧力が800psigに増加した場合、CA/CTA膜は、CO透過性において149%の増加を示した。同様に、PI膜は、100psigの印加されたCO圧力での透過性と比較して、500psigの印加されたCO圧力下でのCO透過性において71%の増加を示した。印加されたCO圧力が800psigに増加した場合、PI膜は、CO透過性において209%の増加を示した。印加されたCO圧力が300psigを超える場合の有意なCO透過性の増加は、それぞれ、CA/CTAブレンドポリマー及びPIポリマーのCO可塑化(膨潤)によるものである。しかしながら、CO可塑化は、ポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)膜に関して、675psigの印加されたCO圧力まで観察されなかった。CA/CTA及びPI膜と比較して、ポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)膜についてのCO可塑化耐性の有意な増強は、主に、剛性ポリマー鎖構造及びポリマー鎖間のH結合の形成に起因する。これらの結果は、ポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)膜が、天然ガスの品質向上及びバイオガス精製用途のための良好な候補膜であることを示す。
【0098】
【表1】

CO2、PH2、及びPCH4を50℃及び690kPa(100psig)で試験した。
1バーラー=10-10cm(STP).cm/cm.sec.cmHg。
【0099】
実施例7:ポリ(TP-DHB-1-3-イサチン-TFAP-4-1)中空糸膜の調製
実施例3において合成された26.0重量%のポリ(TP-DHB-1-3-イサチン-TFAP-4-1)ポリマーを含有する中空繊維紡糸ドープを調製した。紡糸ドープを、50℃の紡糸温度で紡糸口金を通して3.5mL/分の流量で押し出した。NMP中に10重量%の水を含有するボア流体を、紡糸ドープの押出と同時に、0.7mL/分の流量で繊維のボアに注入した。湿度40%未満の室温で5cmのエアギャップ長を通過した新生繊維を、10℃の水凝固剤浴に浸漬し、37.7m/分の速度で巻き取った。水湿潤繊維を特定の長さに切断し、束として一緒に組み立てた。水湿潤中空糸束をメタノールで30分間ずつ3回溶媒交換した後、85℃の湯浴で30分間アニーリングした。アニールした水湿潤中空糸束をオーブン中85℃で1.5時間乾燥させて、ポリTP-DHB-1-3-イサチン-TFAP-4-1)ポリマー中空糸膜を形成した。
【0100】
実施例8:ポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)非対称フラットシート膜の調製
実施例1で合成した19.0重量%のポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)ポリマーを含有する非対称フラットシート膜流延ドープを調製した。流延ドープを、室温で6fpmの流延速度で、より高い多孔質の非選択性対称織布ナイロン6,6布バッキング上に流延した。流延膜を13秒間蒸発させて、表面上に薄い緻密選択性スキン層を有する新生非対称の一体化スキン層付きフラットシート膜を形成した。膜を冷水凝固タンク中に浸漬して、転相によって薄い緻密選択性スキン層の下に多孔質非選択性非対称層を生成した。次いで、湿潤膜を温水タンクに浸漬して、膜中の微量の有機溶媒を除去した。最後に、湿潤膜をコアロールに巻き取って更に乾燥させた。湿潤膜を75℃で乾燥させた。次いで、乾燥した膜の薄い緻密選択性スキン層表面を、エポキシシリコーンゴムの薄い非多孔質層でコーティングした。エポキシシリコーンゴムコーティング層を、UVランプを使用して1.75分間のUV照射によって架橋して、ポリ(TP-DHB-1-1-イサチン)非対称の一体化スキン層付きフラットシート膜を製造した。
【0101】
特定の実施形態
以下を特定の実施形態と併せて説明するが、この説明は、前述の説明及び添付の特許請求の範囲の範囲を例解するものであり、限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【0102】
本発明の第1の実施形態は、式(I)
【0103】
【化24】

の複数の繰り返し単位を含むポリマーであり、
式中、Arは、
【0104】
【化25】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、Arは、
【0105】
【化26】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、Xは、
【0106】
【化27】

又は
【0107】
【化28】
【0108】
【化29】

のうちの1つ以上の混合物からなる群から選択され、
式中、R~R36は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基であり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、ハロゲンで置換されていてもよく、R37~R40は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基であり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、ハロゲンで置換されていてもよく、R41は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基であり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、ハロゲンで置換されていてもよく、ハロゲンは、F、Cl、Br、又はIであり、A、A、及びAは、それぞれ独立して、O、S、又はNHであり、mは、5~5000の整数であり、nは、0~5000の整数であり、n/mのモル比は、0:1~20:1であり、pは、1、2、3、又は4であり、qは、0、1、2、又は3であり、r、s、t、及びoは、独立して、0、1、2、又は3である。本発明の実施形態は、この段落の先行する実施形態からこの段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、式中、Arは、
【0109】
【化30】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、式中、R25、R26、R27、及びR28は、それぞれ独立して、-H又は-CHであり、pは、1又は2であり、qは、0又は1である。本発明の実施形態は、この段落の先行する実施形態からこの段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、式中、Arは、
【0110】
【化31】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、式中、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、及びR36は、それぞれ独立して、-CH又は-CFであり、r、s、t、及びoは、それぞれ独立して、0又は1である。本発明の実施形態は、この段落の先行する実施形態からこの段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、式中、Xは、
【0111】
【化32】

であり、式中、R37、R38、及びR39は、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHである。本発明の実施形態は、この段落の先行する実施形態からこの段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、式中、Xは、
【0112】
【化33】

の混合物であり、式中、R37、R38、及びR39は、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHであり、R41は、-CH、-CHCH、又は-Cである。本発明の実施形態は、この段落の先行する実施形態からこの段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、式中、Xは、
【0113】
【化34】

の混合物であり、式中、R37、R38、R39、及びR40は、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHである。本発明の実施形態は、この段落の先行する実施形態からこの段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、式中、Xは、
【0114】
【化35】

の混合物であり、式中、R37、R38、R39、及びR40は、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHであり、R41は、-CH、-CHCH、又は-Cである。本発明の実施形態は、この段落の先行する実施形態からこの段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、ポリマーは、超酸触媒ポリヒドロキシアルキル化反応においてモノマーAr’、Ar’、及びX’を反応させることによって合成され、式中、Ar’は、
【0115】
【化36】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、Ar’は、
【0116】
【化37】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、X’は、
【0117】
【化38】

又は
【0118】
【化39】
【0119】
【化40】

のうちの1つ以上の混合物からなる群から選択され、
式中、R~R34は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基であり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、ハロゲンで置換されていてもよく、R37~R40は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基であり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、ハロゲンで置換されていてもよく、R41は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基であり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基は、ハロゲンで置換されていてもよく、A、A、及びAは、それぞれ独立して、O、S、又はNHであり、pは、1、2、3、又は4であり、qは、0、1、2、又は3であり、r、s、及びtは、独立して、0、1、2、又は3である。本発明の実施形態は、この段落の先行する実施形態からこの段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、式中、Ar’は、
【0120】
【化41】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、式中、R25、R26、R27、及びR28は、それぞれ独立して、-H又は-CHであり、pは、1又は2であり、qは、0又は1である。本発明の実施形態は、この段落の先行する実施形態からこの段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、式中、Ar’は、
【0121】
【化42】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、式中、R29、R30、R31、R32、R33、及びR34は、それぞれ独立して、-CH又は-CFであり、r、s、及びtは、独立して、0又は1である。本発明の実施形態は、この段落の先行する実施形態からこの段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、式中、X’は、
【0122】
【化43】

であり、式中、R37、R38、及びR39は、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHである。本発明の実施形態は、この段落の先行する実施形態からこの段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、式中、X’は、
【0123】
【化44】

の混合物であり、式中、R37、R38、及びR39は、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHであり、R41は、-CH、-CHCH、又は-Cである。本発明の実施形態は、この段落の先行する実施形態からこの段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、式中、X’は、
【0124】
【化45】

の混合物であり、式中、R37、R38、R39、及びR40は、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHである。本発明の実施形態は、この段落の先行する実施形態からこの段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てであり、式中、X’は、
【0125】
【化46】

の混合物であり、式中、R37、R38、R39、及びR40は、それぞれ独立して、-H、-CH、-CHCH、-CH(CH、-C(CH、-CH-C、又は-CH-CH(CHであり、R41は、-CH、-CHCH、又は-Cである。
【0126】
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態のポリマーから作製された膜である。
【0127】
本発明の第3の実施形態は、ガスの混合物から少なくとも1つのガスを分離するためのプロセスであって、(a)第1の実施形態のポリマーから作製された膜を提供することと、(b)ガスの混合物を膜の片側に接触させて、少なくとも1つのガスを膜に透過させることと、(c)膜の反対側から、膜を透過した少なくとも1つのガスの一部を含む透過ガス組成物を除去することと、を含む、プロセスである。本発明の実施形態は、ガスの混合物が天然ガス中に硫化水素及び二酸化炭素を含む、この段落の先行する実施形態からこの段落の第3の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、ガスの混合物がバイオガス中に硫化水素及び二酸化炭素を含む、この段落の先行する実施形態からこの段落の第3の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、ガスの混合物が窒素、メタンの混合物中に水素を含む、この段落の先行する実施形態からこの段落の第3の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、ガスの混合物が煙道ガス中に二酸化炭素を含む、この段落の先行する実施形態からこの段落の第3の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。
【0128】
更に詳述することなく、前述の説明を使用して、当業者が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明を最大限まで利用し、かつ本発明の本質的な特性を容易に確認することができ、本発明のさまざまな変更及び修正を行い、さまざまな使用及び条件に適合させることができると考えられる。したがって、先行する好ましい特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなるようにも本開示の残りを限定するものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるさまざまな修正及び同等の構成を網羅することを意図するものである。
【0129】
上記では、全ての温度は摂氏度で記載され、全ての部及び百分率は、別途記載のない限り、重量基準である。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-04-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の複数の繰り返し単位を含むポリマーであって、
【化1】

式中、Arが、
【化2】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
Arが、
【化3】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
が、
【化4】

又は
【化5】

のうちの1つ以上の混合物からなる群から選択され、
【化6】

式中、R~R36が、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基であり、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、又は前記アリール基が、ハロゲンで置換されていてもよく、
37~R40が、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基であり、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、又は前記アリール基が、ハロゲンで置換されていてもよく、
41が、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基であり、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、又は前記アリール基が、ハロゲンで置換されていてもよく、
前記ハロゲンが、F、Cl、Br、又はIであり、
、A、及びAが、それぞれ独立して、O、S、又はNHであり、
mが、5~5000の整数であり、
nが、0~5000の整数であり、
n/mのモル比が、0:1~20:1であり、
pが、1、2、3、又は4であり、
qが、0、1、2、又は3であり、
r、s、t、及びoが、独立して、0、1、2、又は3である、ポリマー。
【請求項2】
Arが、
【化7】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
式中、R25、R26、R27、及びR28が、それぞれ独立して、-H又は-CHであり、
pが、1又は2であり、
qが、0又は1である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
Arが、
【化8】

及びそれらの混合物からなる群から選択され、
式中、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、及びR36が、それぞれ独立して、-CH又は-CFであり、
r、s、t、及びoが、それぞれ独立して、0又は1である、請求項1に記載のポリマー。
【国際調査報告】