(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】エフルキシフェルミンの薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/18 20060101AFI20241010BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241010BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241010BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241010BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241010BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241010BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241010BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20241010BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241010BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241010BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241010BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241010BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20241010BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20241010BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20241010BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20241010BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20241010BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20241010BHJP
C07K 14/50 20060101ALN20241010BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20241010BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20241010BHJP
【FI】
A61K38/18
A61K47/68
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/14
A61K47/10
A61K47/38
A61P1/16
A61P3/10
A61P3/04
A61P3/06
A61P19/06
A61P25/30
A61P39/02
A61P43/00 105
A61P3/00
C07K14/50 ZNA
C07K16/00
C07K19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522698
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 US2022077968
(87)【国際公開番号】W WO2023064808
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524141968
【氏名又は名称】アケロ セラピューティクス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】マリアナ エヌ.ディミトローバ
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ピー.ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン アイゼル
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ボスティック
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA12
4C076AA29
4C076BB11
4C076BB16
4C076CC16
4C076CC41
4C076DD09
4C076DD26Z
4C076DD41Z
4C076DD42Z
4C076DD43Z
4C076DD50Z
4C076DD51
4C076DD60
4C076DD67
4C076EE23
4C076EE32
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF11
4C076FF36
4C076FF61
4C084AA02
4C084BA44
4C084DB54
4C084MA16
4C084MA27
4C084MA44
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA10
4C084ZA701
4C084ZA751
4C084ZB211
4C084ZC211
4C084ZC311
4C084ZC331
4C084ZC351
4C084ZC371
4C084ZC391
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、エフルキシフェルミンを含む薬学的組成物、凍結乾燥組成物を調製するためのプロセス、並びに非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFL)、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、アルコール性肝疾患(ALD)若しくはアルコール性脂肪性肝疾患(AFL)、2型糖尿病、肥満、高トリグリセリド血症、脂質異常、タンパク質ミスフォールディング病、アルコール関連及び他の渇望若しくは中毒を治療するために、肝硬変を逆転させるか、又はNASH、ASH、ALD、AFL、若しくはタンパク質ミスフォールディング病に関連する線維症を低減させるために、肝臓脂肪含有量を正常化するために、上昇した血糖を低下させるために、インスリン感受性を増加させるために、並びに/あるいは尿酸レベルを低下させるために使用する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的組成物であって、
(1)エフルキシフェルミン(EFX)と、
(2)糖と、
(3)約20~約200mMのアルギニン/アルギニン-HCl又はアルギニン/グルタミン酸と、
(4)界面活性剤と、を含み、
前記組成物が、約6.9~約8.1のpHを有する、組成物。
【請求項2】
EFX濃度が、約25~約150mg/mlである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記EFX濃度が、約28mg/mlである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記EFX濃度が、約50mg/mlである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記EFX濃度が、約70mg/mlである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記EFX濃度が、約100mg/mlである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
アルギニン/アルギニン-HClを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
約20mM~約200mMのアルギニン/アルギニン-HClを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
約120mMのアルギニン/アルギニン-HClを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
約1:30のアルギニン/アルギニン-HCl~約1:50のアルギニン/アルギニン-HClの比率でアルギニン/アルギニン-HClを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
アルギニン/グルタミン酸を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
約20mM~約200mMのアルギニン/グルタミン酸を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
Tris-HCl、リン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム/コハク酸、グルタミン酸ナトリウム/グルタミン酸、酢酸ナトリウム/酢酸、グリシルグリシン/グリシルグリシン-HCl、ヒスチジン、又はクエン酸緩衝液を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
約10mM~約50mMの濃度のTris-HClを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記糖が、スクロースである、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
スクロース濃度が、約50~約220mMである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記スクロース濃度が、約120mMである、請求項15又は16に記載の組成物。
【請求項18】
前記糖が、グルコース、フルクトース、又はマルトースである、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記界面活性剤が、ポリソルベート-20又はポリソルベート-80である、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
界面活性剤濃度が、約0.004%~約0.1%w/vである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、約7.3のpHを有する、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が、室温で≦5cPの粘度を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、約2~8℃の温度で少なくとも21ヶ月間、液体として安定である、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
(1)約25~150mg/mLのエフルキシフェルミン(EFX)と、
(2)約120mMのスクロースと、
(3)約120mMのアルギニン/アルギニン-HClと、
(4)約0.06%重量/体積(w/v)のポリソルベート-20と、
(5)約20mMのTris-HClと、を含み、
前記組成物が、約7.3のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
液体組成物である、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物がゲル製剤であり、前記糖がトレハロースである、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
トレハロース濃度が、約180~約220mMである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記トレハロース濃度が、約220mMである、請求項26又は27に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物が、-30℃~-20℃で最長24ヶ月間保管された場合、約40%以下のEFX荷電バリアント種を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物が、約2~8℃で最長9ヶ月間保管された場合、約40%以下のEFX酸性荷電バリアント種を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物が、約25℃で最長4週間保管された場合、約40%以下のEFX酸性荷電バリアント種を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物が、約25℃で最長4週間で、約20%以下のEFXサイズバリアント種を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記組成物が、約2~8℃で最長14ヶ月間保管された場合、約10%以下のEFXサイズバリアント種を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
再構成された凍結乾燥組成物である、請求項25に記載の組成物。
【請求項35】
凍結乾燥組成物である、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
約1%以下の残留水分含有量を含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物が、ポリエチレングリコール(PEG)を更に含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記PEGが、PEG-4000である、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記PEG-4000が、約0.05%~約5%、任意選択で約0.15%~約1.5%の濃度で存在する、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記PEG-4000が、約0.5%の濃度で存在する、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記組成物が、カルボキシメチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを更に含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
(i)前記カルボキシメチルセルロースが、カルボキシメチルセルロースナトリウムであるか、又は(ii)前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースナトリウムである、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記カルボキシメチルセルロースナトリウムが、約0.05%~約5%、任意選択で約0.15%~約1.5%の濃度で存在する、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記カルボキシメチルセルロースナトリウムが、約0.5%の濃度で存在する、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
約80mMのアルギニン/グルタミン酸と、約80mMのスクロースと、を含む、請求項25~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
(a)請求項35又は36に記載の組成物を約5分以内に再構成して、再構成された組成物を得ることと、(b)前記再構成された組成物を対象に投与することと、を含む、方法。
【請求項47】
工程(a)の前記再構成された組成物が、工程(b)の前に最長10分間室温で維持される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
工程(b)が、前記再構成された組成物を前記対象に皮下投与することを含む、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
請求項35又は36に記載の組成物と、希釈剤と、を含む、デュアルチャンバデバイス。
【請求項50】
薬学的組成物であって、
(1)エフルキシフェルミン(EFX)と、
(2)2.9%のL-リジンと、
(3)0.008%重量/体積(w/v)のポリソルベート-20と、
(4)10mMのTrisと、を含み、
前記組成物が、7.8±0.3のpHを有する、薬学的組成物。
【請求項51】
凍結乾燥組成物を調製するためのプロセスであって、
(a)請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物を凍結することと、
(b)約-5℃~約-20℃の温度で工程(a)の前記組成物をアニールすることと、
(c)工程(b)の生成物を一次乾燥することと、
(d)工程(c)の生成物を二次乾燥させることと、を含む、プロセス。
【請求項52】
工程(a)における凍結することが、約-40℃~約-50℃の温度で行われる、請求項51に記載のプロセス。
【請求項53】
工程(b)におけるアニールすることが、約5~約20時間行われる、請求項51又は52に記載のプロセス。
【請求項54】
工程(b)におけるアニールすることが、約-5℃~約-10℃の温度で行われる、請求項51~53のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項55】
工程(c)における一次乾燥することが、約0.08~0.2mbarのチャンバ圧力で行われる、請求項51~53のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項56】
工程(c)における一次乾燥することが、約-5℃~-30℃の温度で行われる、請求項51~54のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項57】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFL)を治療する方法であって、請求項1~36又は50のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項58】
硬変を伴うNASHを逆転させる方法であって、請求項1~36又は50のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項59】
アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、アルコール性肝疾患(ALD)又はアルコール性脂肪性肝疾患(AFL)を治療する方法であって、請求項1~36又は50のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項60】
肝臓脂肪含有量を正常化することを必要とする対象において肝臓脂肪含有量を正常化する方法であって、請求項1~36又は50のいずれか1項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項61】
肝臓脂肪含有量が、<5%の肝臓脂肪含有量に低減される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
肝硬変を逆転させるか、又はNASH、ASH、ALD、AFL、若しくはタンパク質ミスフォールディング病に関連する線維症を低減させる方法であって、請求項1~36又は50のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項63】
2型糖尿病を治療する方法であって、請求項1~36又は50のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項64】
肥満を治療する方法であって、請求項1~36又は50のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項65】
脂質異常症を治療する方法であって、請求項1~36又は50のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項66】
血糖を低下させる方法であって、請求項1~36又は50のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項67】
インスリン感受性を増加させる方法であって、請求項1~36又は50のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項68】
尿酸を低減させる方法であって、請求項1~36又は50のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項69】
渇望又は中毒を治療する方法であって、請求項1~36又は50のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項70】
タンパク質ミスフォールディング病を治療する方法であって、請求項1~36又は50のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項71】
前記タンパク質ミスフォールディング病が、嚢胞性線維症、α1アンチトリプシン欠損、又はトランスサイレチン型心アミロイドーシスである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
ミスフォールドしたタンパク質コレクター分子を投与することを更に含む、請求項70又は71に記載の方法。
【請求項73】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFL)を治療する方法であって、請求項37~45のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項74】
硬変を伴うNASHを逆転させる方法であって、請求項37~45のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項75】
アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、アルコール性肝疾患(ALD)又はアルコール性脂肪性肝疾患(AFL)を治療する方法であって、請求項37~45のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項76】
肝臓脂肪含有量を正常化することを必要とする対象において肝臓脂肪含有量を正常化する方法であって、請求項37~45のいずれか1項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項77】
肝硬変を逆転させるか、又はNASH、ASH、ALD、AFL、若しくはタンパク質ミスフォールディング病に関連する線維症を低減させる方法であって、請求項37~45のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項78】
2型糖尿病を治療する方法であって、請求項37~45のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項79】
肥満を治療する方法であって、請求項37~45のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項80】
脂質異常症を治療する方法であって、請求項37~45のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項81】
血糖を低下させる方法であって、請求項37~45のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項82】
インスリン感受性を増加させる方法であって、請求項37~45のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項83】
尿酸を低減させる方法であって、請求項37~45のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項84】
渇望又は中毒を治療する方法であって、請求項37~45のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項85】
タンパク質ミスフォールディング病を治療する方法であって、請求項37~45のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照及び電子的に提出された資料の参照による組み込み
本出願は、2021年10月13日に出願された米国仮特許出願第63/255,286号の優先権を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
参照によりその全体が組み込まれるのは、本明細書と同時に提出され、以下のように識別されるコンピュータ可読ヌクレオチド/アミノ酸配列表である:50011_Seqlisting.XML;サイズ:2,497バイト;作成日:2022年10月9日。
【0003】
本開示は、エフルキシフェルミン(EFX)を含む薬学的組成物、凍結乾燥組成物を調製するためのプロセス、及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
線維芽細胞増殖因子21(FGF21)は、脂質、炭水化物、及びタンパク質の代謝を調節するために肝臓、膵臓、筋肉、及び脂肪組織に作用する内分泌ホルモンである。パラクリンホルモンとして作用するヒトFGF21はまた、ストレスから細胞を保護する上で重要な役割を果たす。これらの属性は、FGF21アゴニズムを説得力のある治療メカニズムにするが、天然のFGF21は、血流中のその短い半減期によって制限される。Fc-FGF21融合タンパク質であるエフルキシフェルミン(EFX)は、ヒトFGF21の半減期を増加させるように遺伝子操作されている(Hecht et al,PLoS One 2012;7(11):e49345、Stanislaus et al.,Endocrinology.2017;158(5):1314-1327)。しかしながら、EFXの製剤は、電荷及びサイズバリアントの形成を含む翻訳後修飾を受けやすく、安定性の拘束をもたらす。当技術分野では、エフルキシフェルミン(EFX)などのFc-FGF21融合タンパク質の強化された安定化及び低減された翻訳後修飾を提供する医薬製剤が必要である。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、エフルキシフェルミン(EFX)、糖、約20~約200mMのアルギニン/アルギニン-HCl又はアルギニン/グルタミン酸、及び界面活性剤を含む薬学的組成物を提供する。様々な態様では、組成物は、約6.9~約8.1のpHを有する。様々な態様では、組成物の糖は、スクロース、グルコース、フルクトース、又はマルトースである。任意選択で、組成物の界面活性剤は、ポリソルベート-20又はポリソルベート-80である。様々な態様では、薬学的組成物は、約25~150mg/mLのEFX、約120mMのスクロース、約120mMのアルギニン/アルギニン-HCl、約0.06%の重量/体積(w/v)ポリソルベート-20、及び約20mMのTris-HClを含む。任意選択で、組成物pHは約7.3である。
【0006】
本開示の組成物は、様々な例において、凍結乾燥されるが、これは必須ではない。この点において、本開示は、本明細書に開示される凍結乾燥組成物を5分以内に再構成し、再構成された組成物を対象に投与するための方法を提供する。様々な実施形態では、再構成された組成物は、室温で最大10分間維持される。本開示はまた、本明細書に開示される組成物及び希釈剤のいずれかを含むデュアルチャンバデバイスも提供する。ある特定の態様では、希釈剤は、注射用水又は緩衝剤(例えば、本明細書に開示される製剤に基づく複合緩衝液)である。
【0007】
本開示はまた、EFX、2.9%のL-リジン、0.008%重量/体積(w/v)のポリソルベート-20、及び10mMのTrisを含む薬学的組成物を提供する。様々な態様では、組成物は7.8±0.3のpHを有する。
【0008】
本開示はまた、凍結乾燥組成物を調製するためのプロセスを提供する。様々な態様では、プロセスは以下の工程:(a)本明細書に開示される組成物を凍結する工程と、(b)工程(a)の組成物を約-5℃~約-15℃の温度でアニールする工程と、(c)工程(b)の生成物を一次乾燥する工程と、(d)工程(c)の生成物を二次乾燥する工程と、を含む。
【0009】
本開示は、(a)非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)又は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFL)、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、アルコール性肝疾患(ALD)又はアルコール性脂肪性肝疾患(AFL)、2型糖尿病、肥満、脂質異常、アルコール関連及び他の渇望若しくは中毒、又はタンパク質ミスフォールディング病を、必要とする対象において治療する方法、(b)対象において肝臓脂肪含有量を正常化する方法、(c)NASH、ASH、ALD、AFL、又はタンパク質ミスフォールディング病に関連する肝硬化若しくは線維症を逆転させる方法、(d)対象において血糖を低下させる及び/又はインスリン感受性を増加させる方法、並びに(e)対象において尿酸レベルを低下させる方法を更に提供する。本方法は、本明細書に開示される薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0010】
前述の要約は、本発明の全ての態様を定義することを意図するものではなく、追加の態様は、詳細な説明などの他のセクションで説明される。文書全体は、統一された開示として関連することが意図されており、本明細書に記載される特徴の全ての組み合わせは、たとえ特徴の組み合わせが本明細書の同じ文章、又は段落、又はセクションで一緒に見出されなくても、企図されることが理解されるべきである。更に、本発明は、追加の態様として、特に上記の変形例よりも範囲が狭い本発明の全ての態様を含む。
【0011】
本明細書で別段の定義がない限り、本出願に関連して使用される科学的及び技術的用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。更に、文脈によって別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、特に断りがない限り、オープンエンドの用語として解釈されるべきである。本発明の態様が特徴を「含む(comprising)」として記載される場合、態様はまた、特徴から「なる」又は「本質的になる」ことが企図される。本明細書に提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本開示をよりよく例示することを意図しており、別段の請求がない限り、本開示の範囲を限定するものではない。本明細書のいかなる文言も、請求されていない要素を本開示の実践に不可欠であると示すものと解釈されるべきではない。操作例では、又は別段の指示がある場合を除いて、量を表す全ての数は、その用語が関連技術分野の当業者によって解釈されるであろうように、「約」という用語によって全ての例で修正されたものとして理解されるべきである。「a」又は「an」で記載又は特許請求される本発明の態様に関して、これらの用語は、文脈がより限定された意味を明確に必要としない限り、「1つ以上」を意味することが理解されるべきである。セット内の1つ以上として説明される要素に関して、セット内の全ての組み合わせが企図されることが理解されるべきである。
【0012】
また、値の範囲を説明するとき、本開示は、その範囲内に見出される個々の値を企図することも理解されたい。例えば、「約pH6~約pH8のpH」は、pH6.1、6.6、7.2、7.5など、及びそのような値の間の任意の値であり得るが、これらに限定されない。本明細書に記載の範囲のいずれにおいても、範囲の端点は、範囲に含まれる。しかしながら、説明はまた、より低い端点及び/又はより高い端点が除外されるのと同じ範囲を企図する。「約」という用語を使用する場合、それは、その列挙された数のプラス又はマイナス5%、10%、又はそれ以上を意味する。意図された実際のバリエーションは、コンテキストから決定可能である。
【0013】
本発明の追加の特徴及び変形は、図面及び詳細な説明を含む本出願の全体から当業者に明白であり、そのような特徴は全て本発明の態様として意図される。同様に、本明細書に記載の本発明の特徴は、特徴の組み合わせが本発明の態様として指定されるかどうかにかかわらず、本発明の態様としても意図される追加の態様に再結合することができる。文書全体は、統一された開示として関連することが意図されており、本明細書に記載される特徴の全ての組み合わせは、たとえ特徴の組み合わせが本明細書の同じ文章、又は段落、又はセクションで一緒に見出されなくても、企図されること(別々のセクションで説明されていても)が理解されるべきである。また、本明細書において本発明にとって重要であると記載されるそのような限定のみがそのようにみなされるべきであり、本明細書において重要であると記載されていない限定を欠く本発明の変形は、本発明の態様として意図される。セクション見出しの使用は、単に読む便宜のためであり、本明細書に記載される特徴の全ての組み合わせが企図されることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ジスルフィド結合及びポリペプチド鎖を有するEFX概略構造を示す。
【
図2A】pH≦6.5での様々な製剤におけるEFXの視覚的に観察されたゲル形成及びシュリーレン相分離を示す。
【
図2B】pH≦6.5での様々な製剤におけるEFXの視覚的に観察されたゲル形成及びシュリーレン相分離を示す。
【
図3】400秒
-1の剪断速度及び時間ゼロでの製剤F1~F20(F11を除く)中のEFX100mg/mLの初期動的粘度を示す。
【
図4A】40℃/75%相対湿度(RH)で3日間、続いて2~8℃で10秒
-1の剪断速度にて21ヶ月間保管後の製剤F1~F20(F11を除く)中のEFXの動的粘度を示す(
図4Bは、0~50cPの拡大図である)。
【
図4B】40℃/75%相対湿度(RH)で3日間、続いて2~8℃で10秒
-1の剪断速度にて21ヶ月間保管後の製剤F1~F20(F11を除く)中のEFXの動的粘度を示す(
図4Bは、0~50cPの拡大図である)。
【
図5A】
図5Aは、ゲルの形成及び相分離に感受性のある製剤中のEFXを示し、非ニュートンずり減粘効果を例証した。
【
図5B】
図5B及び
図5Cは、対照的に、pH≧6.5で低粘度を特徴とする製剤がニュートン挙動を例証したことを示す。
【
図5C】
図5B及び
図5Cは、対照的に、pH≧6.5で低粘度を特徴とする製剤がニュートン挙動を例証したことを示す。
【
図6】Tris/Lys製剤F18中のEFXの実施例AEX HPLCクロマトグラムを示す。
【
図7】撮像されたキャピラリー等電点電気泳動(icIEF)によって分離されたEFX製剤F18における電荷バリアントの分布を示す。
【
図8A】
図8Aは、様々な製剤における25℃での時間の関数としてAEX-HPLCによって測定される、EFX電荷バリアントの形成を示す。F33中のEFXは、経時的な最低の純度損失の速度(メインピーク面積に対する%として)を示す。
【
図8B】
図8Bは、製剤F1~F20の25℃/60%RHでの時間0、1週間、及び1ヶ月時点でのAEX-HPLCによる塩基性電荷バリアント(プレピーク)の総面積のパーセントにおける相対存在量を示す。
【
図8C】
図8Cは、製剤F1~F20の25℃/60%RHでの時間0、1週間、及び1ヶ月時点でのAEX-HPLCによる酸性電荷バリアント(ポストピーク)の総面積のパーセントにおける相対存在量を示す。
【
図9】時間の関数としてAEX-HPLCによって測定される、EFX電荷バリアントの形成を示す。アッセイは、5℃の目標温度で実施し、2~8℃の温度範囲を表す結果を提供した。F33中のEFXは、経時的に最も緩慢な純度損失の速度(メインピーク面積の減少%として)を示す。
【
図10】製剤F18におけるEFXのサイズ排除HPLCプロファイルを示す。
【
図11】様々な製剤のSE-HPLCによって定量された、25℃で保管したときのEFXのサイズバリアント(HMWS、LMWS)の形成を示す。F33中のEFXは、試験した製剤の最低の1週間当たりの純度損失の速度を例証した。
【
図12】様々な製剤のSE-HPLCによって定量された、2~8℃で保管したときのEFXのサイズバリアント(HMWS、LMWS)の形成を示す。F33中のEFXは、試験した製剤において最低の純度損失の速度を例証した。
【
図13】EFX(F18)の非還元CE-SDSの例示的な電気泳動図である。
【
図14】25℃での保管中の様々な製剤における、CE-SDS(非還元)によるEFXのサイズバリアント(HMWS、LMWS)を示す。F33中のEFXは、試験した製剤中で最低の純度損失の速度を例証した。
【
図15】2~8℃での保管中の様々な製剤におけるCE-SDS(非還元)によるEFXのサイズバリアントを示す。
【
図17】RP-HPLCによって測定した、25℃で保管したEFXの様々な製剤におけるサイズバリアント(HMWS、LMWS)の形成を示す。F18及びF33中のEFXは、最も緩慢な純度損失の速度を例証した。
【
図18】RP-HPLCによって測定した、2~8℃でのEFXの様々な製剤におけるサイズバリアント(HMWS、LMWS)の形成を示す。F18及びF33中のEFXは、最も遅い純度損失率を例証した。
【
図19】二量体及びHMW種に対応するメインピーク及びピークを示す、F18中のEFXのSEC-MALLSクロマトグラムを示す。
【
図20】SV-AUCによって分析されたF18及びF33中のEFXの沈降係数分布プロファイルを示す。
【
図21】iLite FGF21細胞ベースの効力バイオアッセイによって測定した、F18中のEFXの濃度応答曲線を示す。表示されるデータは、単一プレート上に三連でプレートされたEFX希釈物の平均RLU(相対発光量)である。エラーバーは、三連RLU値の標準偏差を示す。
【
図22】時間の関数として、EFX標準と比較して、25℃で保管された様々な製剤における、細胞ベースのバイオアッセイによるEFXの効力を示す。F33中のEFXは、最低の効力損失率を例証した。
【
図23】時間の関数として、EFX標準と比較して、2~8℃で保管された様々な製剤における、細胞ベースのバイオアッセイによるEFXの効力を示す。F33中のEFXは、試験した製剤のうちで最も低い力価損失率を例証した。
【
図24】F18及びF33製剤におけるEFXの二次微分FTIRスペクトルを示す。
【
図25】製剤F18及びF33中のEFXの遠紫外CDスペクトルを示す。
【
図26】F18及びF33中のEFXの近紫外CDスペクトルを示す。
【
図28】50℃に2回加熱したEFX F18及びF33のμDSCサーモグラムを示す。
【
図29】アニーリング(バイアル)なしの凍結乾燥プロセス設計の例を示す。
【
図30A】-10℃で5時間行われたアニーリングプロセス工程(
図30A:バイアル)及び-15℃で10時間行われたアニーリングプロセス工程(
図30B:デュアルチャンバデバイス)を有する凍結乾燥プロセス設計の例を示す。
【
図30B】-10℃で5時間行われたアニーリングプロセス工程(
図30A:バイアル)及び-15℃で10時間行われたアニーリングプロセス工程(
図30B:デュアルチャンバデバイス)を有する凍結乾燥プロセス設計の例を示す。
【
図31】選択された製剤における凍結乾燥EFXの再構成時間を示す。
【
図32】凍結乾燥プロセスにアニーリング工程を組み込んだ後の(-5℃で10時間)、バイアル中の凍結乾燥F33の再構成時間を示す。
【
図33A】凍結乾燥プロセスにアニーリング工程を組み込んだ後(-15℃で10時間)の、デュアルチャンバデバイスにおける凍結乾燥F33の再構成時間を示す。
【
図33B】凍結乾燥プロセスにアニーリング工程を組み込んだ後(-15℃で10時間)の、デュアルチャンバデバイスにおける凍結乾燥F33の再構成時間を示す。
【
図34】BET(Brunauer、Emmett及びTeller法)によって測定した、アニーリング工程を伴うか、又は伴わずに凍結乾燥することによって、F33と同じ成分を含むが、異なる濃度のEFX(F1:50mg/ml EFX;F2:28mg/mlのEFX)を有する製剤から生成した凍結乾燥ケーキの比表面積を示す。凍結乾燥中にアニーリング工程なしで生成されたケーキ(NAプロセス設計)と比較して、凍結乾燥中に-5℃で10時間又は-10℃で5時間のアニーリング工程のいずれかを使用して凍結乾燥ケーキを生成した。
【
図35】SEM-EDX分析のための凍結乾燥ケーキの断片を示す。
【
図36】箱ひげ図(Box-and-Whisker plots)として提示されるSEM-EDXによる凍結乾燥ケーキ孔の分布及び中央断面積を示す。
【
図37】凍結乾燥サイクルにアニーリング工程を組み込むことによって、SEMによる凍結乾燥ケーキの構造が改善されることを示す。FR1及びFR2は、それぞれ、50mg/mL及び28mg/mLのタンパク質濃度での製剤F33を表す。
【
図38-1】製剤F15、F16、F17、及びF33中の25℃での凍結乾燥EFXの長期安定性の表を示す。
【
図38-2】製剤F15、F16、F17、及びF33中の25℃での凍結乾燥EFXの長期安定性の表を示す。
【
図39】実施例7に記載されるように、様々な製剤でラットに投与されるEFXの持続性を示す折れ線グラフである。濃度(ng/mL)はy軸に示され、時間(時間)はx軸に示される。
【
図40】実施例に記載の様々な製剤において投与されるEFXの全身曝露(AUC)及び全身循環における最高濃度(Cmax)を示す薬物動態パラメータを要約する図表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
EFXは、Fcドメインに融合したFGF21バリアントである。驚くべきことに、EFXは、タンパク質の製剤及び保管を複雑にする独自の特性を示す。親の注射可能な生物製剤は、脱アミドなどの翻訳後修飾を最小限に抑えるために、わずかに酸性~中性のpH(例えば、pH5.2~pH6.9)でしばしば製剤化される。予想外に、EFXは、6.5未満のpHで劇的に異なる粘弾性特性を採用し、ゲル様挙動、相分離、及び流動性の損失を示す。これらの特徴は、製品の皮下投与及び注射可能な生物製剤の開発を困難にする。更に、pH6.9以下では、EFX組成物は、タンパク質凝集及びクリッピング/断片化の傾向、並びに可視粒子及びサブビジブル粒子の形成を示した。これらの変化は、安全性(特に免疫原性)及び安定性の懸念に関連する可能性があるため、注射可能な生物製剤にとっても望ましくない。本明細書に記載の材料及び方法は、例えば、冷蔵条件下(2~8℃)で液体として、及び冷蔵及び周囲条件下(25℃)で凍結親和性として、注射に適し、保管時に安定したEFXの製剤を提供することによって、重要な技術的利点を提供する。本開示の様々な態様では、本明細書に記載の製剤は、(例えば、相分離、剛性ゲル形成、非ニュートン粘弾性挙動、及び凝集及び/又は粒子形成を防止又は最小化することによって)強化されたEFX立体配座安定性を提供し、翻訳後修飾(例えば、電荷及び/又はサイズバリアント)を低減し、EFX組成物に有益な溶液特性を付与する。
【0016】
定義
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではない。
【0017】
「AEX HPLC」は、アニオン交換高速液体クロマトグラフィーを指す。
【0018】
「ASH」は、アルコール性脂肪性肝炎を指す。
【0019】
「ALD」は、アルコール性肝疾患を指す。
【0020】
「AFL」は、アルコール性脂肪性肝疾患を指す。
【0021】
「BET」は、ブルナウアー・エメット・テラー法を指す。
【0022】
「CE-SDS」は、ドデシル硫酸ナトリウムを用いたキャピラリー電気泳動を指す。
【0023】
「EFX」は、エフルキシフェルミンを指す。
【0024】
「HMWS」は、高分子量種を指す。
【0025】
「icIEF」は、イメージングキャピラリー等電点電気泳動を指す。
【0026】
「LMWS」は、低分子量種を指す。
【0027】
「NAFL」は、非アルコール性脂肪性肝疾患を指す。
【0028】
「NASH」は、非アルコール性脂肪性肝炎を指す。
【0029】
「RH」は、相対湿度を指す。
【0030】
「RP-HPLC」は、逆相高速液体クロマトグラフィーを指す。
【0031】
「SE-HPLC」は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィーを指す。
【0032】
「SEM-EDX」は、走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法を指す。
【0033】
「SV-AUC」は、超遠心沈降速度法を指す。
【0034】
「pI」は、等電点を指す。
【0035】
本開示は、エフルキシフェルミンを含む薬学的組成物を提供する。様々な態様では、組成物は、EFX、糖、アルギニン/アルギニン-HCl又はアルギニン/グルタミン酸(例えば、約20~200mMの濃度)、及び界面活性剤を含む。組成物は、約6.9~約8.1のpHを有する。代替的な態様では、組成物は、EFX、L-リジン、界面活性剤(例えば、ポリソルベート-20)、及びTrisを約7.8±0.3のpHで含む。また、EFXを含む凍結乾燥組成物を調製するための方法も提供される。本開示は、本明細書に記載の薬学的組成物を、様々な障害、例えば(限定されないが)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFL)、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、アルコール性肝疾患(ALD)若しくはアルコール性脂肪性肝疾患(AFL)、2型糖尿病、肥満、高トリグリセリド血症、脂質異常、タンパク質ミスフォールディング病、渇望及び中毒を治療するために、並びにNASHに関連する線維症を低減させるために、肝硬変を逆転させるか、又はNASH、ASH、ALD、AFL、若しくはタンパク質ミスフォールディング病に関連する線維症を低減させるために、肝臓脂肪含有量を正常化するために、血糖を低下させるために、インスリン感受性を増加させるために、及び/あるいは尿酸レベルを低下させるために使用する方法を提供する。組成物及び方法の様々な態様は、以下により詳細に記載される。小見出しの使用は、単に読者の便宜のためであり、いかなる方法でも本開示を限定するものと解釈されるべきではない。文書全体は、統一された開示として読まれることが意図され、以下に説明される特徴の全ての組み合わせが企図される。
【0036】
EFXは、ポリグリシンセリンリンカーを介してヒトFGF21のバリアントにヒト免疫グロブリンIgG1 Fc断片を融合させることによって生成される92.1kDaの長時間作用型線維芽細胞増殖因子21(FGF21)類似体である。各分子は、1つの二量体Fcドメイン及び2つの修飾FGF21ポリペプチド鎖を含有する。EFXは、
図1に記載されているように、8つのジスルフィド結合、6つの鎖内結合、及び2つの鎖間結合を有している。2つの鎖内ジスルフィド結合は、Cys318とCys336との間のFGF21ポリペプチドにあり、各モノマーに対して1つである。3つの修飾を、L341R、P414G、及びA423EでFGF21配列に導入した(成熟したヒトFGF21に対して、L98R、P171G、及びA180Eに対応する)。これらの修飾は、1)インビボタンパク質分解性劣化に対する感受性を低下させ、2)β-Klothoに対する親和性を高め、3)凝集する傾向を減少させる(Hecht et al.,PLoS One 2012;7(11):e49345、Stanislaus et al.,Endocrinology.2017;158(5):1314-1327)。
【0037】
EFXは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含む。EFXは、米国特許第8,034,770号、同第8,410,051号、同第8,642,546号、同第8,361,963号、同第9,273,106号、同第10,011,642号、同第8,188,040号、同第8,835,385号、同第8,795,985号、同第8,618,053号、並びに同第11,072,640号、又は国際特許公開第WO2009149171号及び同第WO2010129503号に更に記載されており、これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
EFXは、任意の好適な量で薬学的組成物中に存在してもよい。様々な態様では、薬学的組成物中のEFXの濃度は、約25mg/ml~約150mg/mlである。例えば、薬学的組成物中のEFXの濃度は、少なくとも約25mg/ml、少なくとも約30mg/ml、少なくとも約35mg/ml、少なくとも約40mg/ml、少なくとも約45mg/ml、少なくとも約50mg/ml、又は少なくとも約70mg/ml、かつ約150mg/ml以下、約140mg/ml以下、約130mg/ml以下、約120mg/ml以下、約110mg/ml以下、又は約100mg/ml以下である。例示的な態様では、組成物は、約28mg/mlの濃度のEFXを含む。例示的な態様では、組成物は、約50mg/mlの濃度のEFXを含む。例示的な態様では、組成物は、約70mg/mlの濃度のEFXを含む。例示的な態様では、組成物は、約100mg/mlの濃度のEFXを含む。
【0039】
EFXを含む薬学的組成物は、液体、凍結乾燥、又はゲル製剤であってもよい。
【0040】
本明細書に記載の薬学的組成物は、糖を含む。好適な糖としては、スクロース、フルクトース、マルトース、グルコース、ガラクトース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。糖は、組成物中に、約10mM~約250mM、又は約20mM~約220mM、又は約50mM~約220mM、又は約80~約220mM、又は約120mMの濃度で存在してもよい。いくつかの態様では、薬学的組成物中の糖の濃度は、少なくとも約10mM、少なくとも約20mM、少なくとも約30mM、少なくとも約40mM、少なくとも約50mM、少なくとも約60mM、少なくとも約70mM、少なくとも約80mM、少なくとも約90mM、少なくとも約100mM、少なくとも約110mM、又は少なくとも約120mM、かつ約250mM以下、約240mM以下、約230mM以下、約220mM以下、約210mM以下、約200mM以下、約190mM以下、約180mM以下、約170mM以下、約160mM以下、約150mM以下、約140mM以下、又は約130mM以下である。
【0041】
任意選択で、本明細書に記載の薬学的組成物は、約50mM、約80mM、約100mM、約110mM、約115mM、約120mM、又は約125mM、約130mM、約135mM、約140mM、約145mM、約150mM、約155mM、約160mM、約165mM、約175mM、約180mM、約185mM、約190mM、約210mM、約215mM、約220mM、約225mM、約230mM、又は約235mMの濃度の糖を含む。
【0042】
様々な態様では、薬学的組成物は、液体又は凍結乾燥形態である。例示的な液体又は凍結乾燥薬学的組成物(例えば、本明細書に記載の液体製剤のいずれかを凍結乾燥することによって調製される凍結乾燥形態)は、約50mM~約220mM、例えば、約80mM又は約120mMの濃度のスクロースを含む。
【0043】
様々な態様では、糖はトレハロースである。例えば、いくつかの態様では、薬学的組成物はゲル製剤であり、糖はトレハロースである。例示的なゲル製剤は、約180mM~約250mM、例えば220mMの濃度のトレハロースを含む。
【0044】
様々な態様では、薬学的製剤は、アミノ酸、例えば、アルギニン、アルギニン/アルギニン-HCl、アルギニン/グルタミン酸、グリシン、グルタミン、アスパラギン、又はリジンを含む。様々な態様では、組成物は、アルギニン/アルギニン-HClを含む。様々な態様では、アルギニン/アルギニン-HClは、約1:10のアルギニン/アルギニン-HCl~約1:100のアルギニン/アルギニン-HClの比率で存在する。いくつかの態様では、アルギニン/アルギニン-HClは、約1:30のアルギニン/アルギニン-HCl~約1:50のアルギニン/アルギニン-HClの比率で存在する。様々な態様では、アルギニン/アルギニン-HClは、約1:10のアルギニン/アルギニン-HCl、約1:20のアルギニン/アルギニン-HCl、約1:30のアルギニン/アルギニン-HCl、約1:40のアルギニン/アルギニン-HCl、約1:50のアルギニン/アルギニン-HCl、約1:60のアルギニン/アルギニン-HCl、約1:70のアルギニン/アルギニン-HCl、約1:80のアルギニン/アルギニン-HCl、約1:90のアルギニン/アルギニン-HCl、又は約1:100のアルギニン/アルギニン-HClの比率で存在する。様々な態様では、組成物は、約20mM~約200mMのアルギニン/アルギニン-HClを含む。例えば、薬学的組成物中のアルギニン/アルギニン-HClの濃度は、様々な態様では、少なくとも約50mM、少なくとも約55mM、少なくとも約60mM、少なくとも約65mM、少なくとも約70mM、少なくとも約75mM、少なくとも約80mM、少なくとも約85mM、少なくとも約90mM、少なくとも約95mM、又は少なくとも約100mM、かつ約200mM以下、約180mM以下、約175mM以下、約160mM以下、約155mM以下、約150mM以下、約145mM以下、約140mM以下、約135mM以下、約130mM以下、約125mM以下、約120mM以下、約110mM以下、約100mM以下、約90mM以下、約80mM以下、約70mM以下、又は約60mM以下である。本開示の代表的な態様では、組成物は約120mMのアルギニン/アルギニン-HClを含む。本開示の別の代表的な態様では、組成物は約80mMのアルギニン/アルギニン-HClを含む。様々な態様では、薬学的組成物は、ゲル形態である。例示的なゲル薬学的組成物は、1つ以上のアミノ酸を含まない(すなわち、アルギニン、アルギニン/アルギニン-HCl、アルギニン/グルタミン酸、グリシン、グルタミン、アスパラギン、又はリジンなどのアミノ酸を含有しない)。
【0045】
様々な態様では、組成物は、アルギニン/グルタミン酸又はアルギニン/グルタミン酸塩を含む。本明細書で使用される場合、「グルタミン酸」及び「グルタミン酸塩」は、互換的に使用され得る。様々な態様では、アルギニン/グルタミン酸は、約1:10のアルギニン/グルタミン酸~約1:100のアルギニン/グルタミン酸の比率で存在する。様々な態様では、アルギニン/グルタミン酸は、約1:10のアルギニン/グルタミン酸、約1:20のアルギニン/グルタミン酸、約1:30のアルギニン/グルタミン酸、約1:40のアルギニン/グルタミン酸、約1:50のアルギニン/グルタミン酸、約1:60のアルギニン/グルタミン酸、約1:70のアルギニン/グルタミン酸、約1:80のアルギニン/グルタミン酸、約1:90のアルギニン/グルタミン酸、又は約1:100のアルギニン/グルタミン酸の比率で存在する。いくつかの態様では、アルギニン/グルタミン酸は、約1:30のアルギニン/グルタミン酸~約1:50のアルギニン/グルタミン酸の比率で存在する。
【0046】
様々な態様では、組成物は、約20mM~約200mMのアルギニン/グルタミン酸を含む。例えば、薬学的組成物中のアルギニン/グルタミン酸の総濃度は、任意選択で、少なくとも約20mM、少なくとも約30mM、少なくとも約35mM、少なくとも約40mM、少なくとも約45mM、又は少なくとも約50mM、少なくとも約55mM、少なくとも約60mM、少なくとも約65mM、少なくとも約70mM、少なくとも約75mM、少なくとも約80mM、少なくとも約85mM、少なくとも約90mM、少なくとも約95mM、又は少なくとも約100mM、かつ約200mM以下、約180mM以下、約175mM以下、約170mM以下、約165mM以下、約160mM以下、約155mM以下、約150mM以下、約145mM以下、約140mM以下、約135mM以下、約130mM以下、約125mMを超え、約120mM以下、約115mM以下、約110mM以下、約105mM以下、約100mM以下、約90mM以下、約80mM以下、約70mM以下、又は約60mM以下である。例示的な態様では、組成物は、80~150mM又は90~150mMの範囲内、例えば、約80mM又は約120mMの総濃度でアルギニン/グルタミン酸を含む。
【0047】
様々な態様では、アミノ酸は、リジン(例えば、L-リジン又はL-リジン-HCl)である。L-リジンに関する本明細書の任意の開示はまた、リジン-HClにも適用される。様々な態様では、組成物は約0.1%~10%のリジンを含む。例えば、薬学的組成物中のリジンの濃度は、任意選択で、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%、又は少なくとも約2%、かつ約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約4%以下、又は約3%以下である。例示的な態様では、組成物は、約2.9%の濃度のリジンを含む。様々な態様では、組成物は約6.8mM~684.0mMのL-リジンを含む。例えば、薬学的組成物中のL-リジンの濃度は、任意選択で、少なくとも約6.8mM、少なくとも約34.2mM、少なくとも約68.4mM、少なくとも約102.6mM、又は少なくとも約136.8mM、かつ約684.0mM以下、約615.6mM以下、約547.2mM以下、約478.8mM以下、約410.4mM以下、約273.6mM以下、又は約205.2mM以下である。例示的な態様では、組成物は、約198.3mMの濃度のL-リジンを含む。様々な態様では、組成物は、約5.5mM~547.5mMのリジン-HClを含む。例えば、薬学的組成物中のリジン-HClの濃度は、任意選択で、少なくとも約5.5mM、少なくとも約27.4mM、少なくとも約54.8mM、少なくとも約82.1mM、又は少なくとも約109.5mM、かつ約547.5mM以下、約492.7mM以下、約438.0mM以下、約383.2mM以下、約328.5mM以下、約218.0mM以下、又は約164.2mM以下である。例示的な態様では、組成物は、約158.8mMの濃度のリジン-HClを含む。
【0048】
様々な態様では、組成物は、Tris(トロメタミン)及び/又はTris-HClなどのアルカリ化緩衝剤を含む。本明細書で使用される場合、「Tris」及び「トロメタミン」は、互換的に使用され得る。様々な態様では、組成物は約1~50mMのTrisを含む。例えば、薬学的組成物中のTrisの濃度は、任意選択で、少なくとも約1mM、少なくとも約5mM、少なくとも約10mM、かつ約15mM以下、約20mM以下、約25mM以下、約30mM以下、約35mM以下、約40mM以下、約45mM以下、又は約50mM以下である。例示的な態様では、組成物は、約10mMの濃度のTrisを含む。様々な態様では、組成物は約1~50mMのTris-HClを含む。例えば、薬学的組成物中のTris-HClの濃度は、任意選択で、少なくとも約1mM、少なくとも約5mM、少なくとも約10mM、かつ約15mM以下、約20mM以下、約25mM以下、約30mM以下、約35mM以下、約40mM以下、約45mM以下、又は約50mM以下である。例示的な態様では、組成物は、約10mMの濃度のTris-HClを含む。様々な態様では、組成物は、約1~50mMのTris及び1~50mMのTris-HClの両方を含む。
【0049】
本明細書に記載の薬学的組成物は、様々な態様では、界面活性剤を含む。任意選択で、界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。例示的な界面活性剤としては、ポリソルベート20(PS20)、ポリソルベート40(PS40)、ポリソルベート60(PS60)、ポリソルベート80(PS80)、ポロキサマー188、ポロキサマー407、ポリオキシエチレン、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。様々な態様では、界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、又はポリソルベート80である。例示的な態様では、界面活性剤は、ポリソルベート80である。別の例示的な態様では、界面活性剤は、ポリソルベート20である。
【0050】
様々な実施形態では、製剤は、任意の分子量のポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEG3350、PEG4000、PEG6000、又はPEG1000(例えば、PEG3350又はPEG4000)を更に含む。例えば、様々な態様では、製剤は、約0.05%~約5%のPEG(例えば、PEG4000)、任意選択で約0.15%~約1.5%のPEG(例えば、PEG4000)、例えば、約0.1%~約1%のPEG(例えば、PEG4000)又は約0.5%のPEG(例えば、PEG4000)を含む。あるいは、様々な実施形態では、製剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)若しくはカルボキシメチルセルロース(CMC)、又はその塩、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースナトリウム(Na-HPMC)若しくはカルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)を含む。この点において、製剤は、任意選択で、約0.05%~約5%のCMC若しくはHPMC(又はその塩)、任意選択で、約0.15%~約1.5%のHPMC(例えば、Na-HPMC)若しくはCMC(例えば、Na-CMC)、例えば、約0.1%~約1%のHPMC(例えば、Na-HPMC)若しくはCMC(例えば、Na-CMC)、又は約0.5%のHPMC(例えば、Na-HPMC)若しくはCMC(例えば、Na-CMC)を含む。様々な態様では、製剤は、PEGとCMC(又はその塩)又はHPMC(又はその塩)との混合物、例えば、本明細書に記載される量のうちのいずれかのこれらの成分を含む。任意選択で、製剤は、PEG、HPMC(又はその塩)、及びCMC(又はその塩)を含む。
【0051】
本明細書に記載の薬学的組成物は、異なる比率で1つの界面活性剤又は複数の界面活性剤を含んでもよい。いくつかの態様では、界面活性剤は、約0.001%~約1%w/v(又は約0.002%~約0.5%)の濃度で含まれる。いくつかの態様では、薬学的組成物は、少なくとも約0.001%、少なくとも約0.002%、少なくとも約0.003%、少なくとも約0.004%、少なくとも約0.005%、少なくとも約0.007%、少なくとも約0.01%、又は少なくとも約0.05%、かつ約0.1%以下、約0.2%以下、約0.3%以下、約0.4%以下、約0.5%以下、約0.6%以下、約0.7%以下、約0.8%以下、約0.9%以下、又は約1.0%以下の濃度の界面活性剤を含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、又は約1%w/vの濃度の界面活性剤を含む。例示的な態様では、組成物は、約0.004%~約0.1%w/vの濃度の界面活性剤を含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、任意選択で0.004%~約0.1%w/vの濃度のポリソルベート20又はポリソルベート80を含む。いくつかの態様では、界面活性剤は、ポリソルベート20であり、ポリソルベート20は、約0.06%w/vの濃度で存在する。あるいは、ポリソルベート20は、約0.008%(w/v)の濃度で存在する。
【0052】
様々な態様では、組成物はまた、緩衝剤を含んでもよい。好適な緩衝液としては、Tris-HCl緩衝液、グルタミン酸ナトリウム/グルタミン酸緩衝液、グリシルグリシン/グリシルグリシン-HCl緩衝液、ヒスチジン緩衝液、又はクエン酸緩衝液(又はそれらの組み合わせ)が挙げられるが、これらに限定されない。様々な態様では、組成物は、約5mM~約200mMの緩衝液を含む。例えば、薬学的組成物中のTris-HCl緩衝液の濃度は、任意選択で、少なくとも約5mM、少なくとも約10mM、少なくとも約15mM、少なくとも約20mM、少なくとも約25mM、又は少なくとも約30mM、かつ約200mM以下、約180mM以下、約160mM以下、約140mM以下、約120mM以下、約100mM以下、約80mM以下、約60mM以下、又は約50mM以下である。様々な態様では、緩衝液は、任意選択で約10mM~約50mMの濃度で含まれるTris-HCl緩衝液である。本開示の代表的な態様では、組成物は約20mMのTris-HCl緩衝液を含む。ゲル製剤である薬学的組成物について、様々な実施形態では、薬学的組成物は、リン酸ナトリウム緩衝液、コハク酸ナトリウム/コハク酸緩衝液、又は酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液を含んでもよい。
【0053】
任意選択で、薬学的組成物のpHは、約6~約8.1である。様々な態様では、薬学的組成物のpHは、約6.9~約8.1である。様々な態様では、薬学的組成物のpHは、約7~約8であり、例えば、約7.0~約7.8、又は約7.2~約7.4、又は約7.5~約8である。いくつかの態様では、薬学的組成物のpHは、約7.3(例えば、7.3±0.3)である。いくつかの態様では、薬学的組成物のpHは、約7.8(例えば、7.8±0.3)である。
【0054】
タンパク質組成物の安定性は、薬学的組成物の1つ以上の特性を調べることによって特性化され、組成物が様々な温度又は条件のいずれかの下で保管された後の時点を含む、製剤の後の任意の所望の時点で調べることができる。本開示の文脈における安定な組成物は、一般に、例えば、最小又は低減された相分離、剛性一貫性を有するゲルの最小又は低減された形成、ニュートン粘弾性挙動、最小又は低減されたEFX分解生成物、及び/又はEFXへの最小又は低減された翻訳後修飾(例えば、最小又は低減された電荷及び/又はサイズ変異バリアント)を示す。任意選択で、薬学的組成物は、冷蔵下(2~8℃)(任意選択で21ヶ月間保管)で液体として、及びよりストレスの多い周囲条件(25℃)で凍結乾燥体として保管されるとき、これらの特性のうちの1つ以上を示す。
【0055】
本明細書に記載の薬学的組成物は、EFXの望ましくない荷電バリアント種及びサイズバリアント種を最小限に抑え、これは、自宅での患者による製品の製造、保管、分配及び自己投与に重要な技術的利点を提供する。電荷バリアントは、翻訳後修飾の結果として形成され得る、異なる電荷分布(すなわち、EFXのより酸性又は塩基性のバリアント)を有するEFXの形態である。様々な態様では、組成物は、-30℃~-20℃で最長24ヶ月間保管される場合、約40%以下の荷電バリアント種を含む。EFXの電荷バリアントは、AEX-HPLC及びicIEFなどのいくつかの技術のうちのいずれかを使用して測定することができる。AEX-HPLCを使用して、EFX電荷バリアントは、クロマトグラフ上のプレピーク(塩基性バリアント、又はそれらの表面上の負電荷が少ないEFX電荷バリアント)、メインピーク、及びポストピーク(それらの表面上の負電荷が多い酸性バリアント、又はEFX電荷バリアント)上のパーセンテージ存在量によって特性化される。AEX-HPLCは、実施例3に更に記載されている。あるいは、EFXの電荷バリアントは、EFX又は電荷バリアントの等電点(pI)に基づいてicIEFを使用して解決することができ、icIEF電位図上のプレピーク(酸性バリアント)、メインピーク、及びポストピーク(塩基性ピーク)のパーセンテージ存在量として測定することができる。icIEFに関する材料及び方法は、実施例3に更に記載されている。様々な態様では、組成物は液体組成物であり、所望により、-30℃~-20℃で最長24ヶ月間保管した場合に、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約10%以下、約5%以下、約1%以下、約0.1%以下、又は約0.01%以下の荷電バリアントを含む(すなわち、液体組成物は、-30℃~-20℃の温度を含む保管条件下で0~24ヶ月間試験した場合に、このレベル以下の荷電バリアントを含む)。例示的な態様では、液体組成物は、-30℃~-20℃で最長24ヶ月間保管された場合、約40%以下の酸性荷電バリアント種を含む。
【0056】
様々な態様では、薬学的組成物は液体組成物又は凍結乾燥組成物であり、好ましくは、2℃~8℃で最長9ヶ月間保管した場合に、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約10%以下、約5%以下、約1%以下、約0.1%以下、又は約0.01%以下の荷電バリアントを含む(すなわち、液体組成物又は凍結乾燥組成物は、2℃~8℃の温度を含む保管条件下で0~9ヶ月間試験した場合に、このレベル以下の荷電バリアントを含む)。例示的な態様では、液体又は凍結乾燥組成物は、約2~8℃で最長9ヶ月間保管された場合、約40%以下の酸性荷電バリアント種を含む。
【0057】
様々な態様では、薬学的組成物は液体組成物又は凍結乾燥組成物であり、約20℃~30℃で最長4週間保管した場合に、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約10%以下、約5%以下、約1%以下、約0.1%以下、又は約0.01%以下の荷電バリアントを含む(すなわち、液体組成物又は凍結乾燥組成物は、20℃~30℃の温度/60%の相対湿度を含む保管条件下で0~4週間試験した場合に、このレベル以下の荷電バリアントを含む)。例示的な態様では、液体組成物又は凍結乾燥組成物は、約25℃で最長4週間保管した場合、約40%以下の酸性荷電バリアント種を含む。
【0058】
様々な態様では、薬学的組成物は凍結乾燥組成物であり、約20℃~30℃で最長14ヶ月間保管した場合に、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約10%以下、約5%以下、約1%以下、約0.1%以下、又は約0.01%以下の荷電バリアントを含む(すなわち、凍結乾燥組成物は、20℃~30℃の温度/60%の相対湿度を含む保管条件下で0~14ヶ月間試験した場合に、このレベル以下の荷電バリアントを含む)。例示的な態様では、凍結乾燥組成物は、約25℃で最長14ヶ月間保管された場合、約40%以下の酸性荷電バリアント種を含む。
【0059】
本開示の文脈におけるサイズバリアントは、高分子量種(HMWS)の凝集又は形成、及びEFXの低分子量種(LMWS)の断片化又は形成を指す。EFXのサイズバリアントは、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)、ドデシル硫酸ナトリウムによる毛細管電気泳動(CE-SDS、還元及び非還元)、又は逆相HPLC(RP-HPLC)、沈降速度分析超遠心分離(SV-AUC)及びドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)等のいくつかの技法のいずれかを使用して測定することができる。
【0060】
SE-HPLCを使用して、EFXサイズバリアントは、主要な種としてのEFXホモ二量体、優勢なクロマトグラフィーピーク、及びHPLCプロファイル上の低レベルの二量体(2つのEFXホモ二量体を含む)及び高分子量(HMW)EFXサイズバリアントを検出することによって特性化される。SE-HPLCに関する材料及び方法は、実施例3に更に記載されている。
【0061】
変性条件下でCE-SDSを使用して、EFXサイズバリアントは、220nmでのUV吸光度によって検出されるように、電気泳動図上のピークの移動によって特性化される。この分析を使用して、非還元、変性EFXは、メインピークとしてインタクトタンパク質を示し、一方、単鎖及び低分子量種は、プレピークとしてメインピークの前に移動し、凝集体/HMWサイズバリアントは、ポストピークとしてメインピークの後に現れる。CE-SDSに関する材料及び方法は、実施例3に更に記載されている。
【0062】
RP-HPLCを使用して、EFXサイズバリアントを、280nmのUV吸光度検出器を用いて溶出EFXタンパク質ピークを検出することによって特性化する。この分析を使用して、サイズバリアントは、クロマトグラム上のメインピークから解決されたプレピーク又はポストピークとして可視化される。RP-HPLCに関する材料及び方法は、実施例3に更に記載されている。
【0063】
様々な態様では、薬学的組成物は、液体又は凍結乾燥組成物であり、好ましくは、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、約0.1%以下、又は約0.01%以下のEFXサイズバリアントを、約25℃などの約20~30℃の温度で最長20週間保管した場合に含む(すなわち、液体組成物は、この温度での保管条件で0~20週間試験した場合、このレベル以下のサイズバリアント種を含む)。例示的な態様では、液体組成物は、約25℃で最長20週間保管した場合、約10%以下のEFXサイズバリアント種を含む。例示的な態様では、凍結乾燥組成物は、約25℃で最長20週間保管した場合、約0%のEFXサイズバリアント種を含む(すなわち、EFXサイズバリアント種は検出されない)。
【0064】
様々な態様では、薬学的組成物は、液体組成物又は凍結乾燥組成物であり、好ましくは、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、約0.1%以下、又は約0.01%以下のEFXサイズバリアントを、約2~8℃の温度で最長14ヶ月間保管した場合に含む(すなわち、液体組成物は、約2~8℃の温度を含む保管条件下で0~14ヶ月間試験した場合、このレベル以下のサイズバリアント種を含む)。例示的な態様では、液体組成物は、約2~8℃で最長14ヶ月間保管した場合、約10%以下のEFXサイズバリアント種を含む。例示的な態様では、凍結乾燥組成物は、約2~8℃で最長14週間保管した場合、約0%のEFXサイズバリアント種を含む(すなわち、EFXサイズバリアント種は検出されない)。
【0065】
様々な態様では、薬学的組成物は、液体又は凍結乾燥組成物であり、好ましくは、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、約0.1%以下、又は約0.01%以下のEFXサイズバリアントを、約20~30℃(例えば、約25℃)の温度で最長4週間保管した場合に含む(すなわち、液体組成物は、約25℃の温度を含む保管条件で0~4週間試験した場合、このレベル以下のサイズバリアント種を含む)。例示的な態様では、液体組成物は、約25℃で最長4週間保管した場合、約20%以下のEFXサイズバリアント種を含む。例示的な態様では、凍結乾燥組成物は、約25℃で最長14週間保管した場合、約0%のEFXサイズバリアント種を含む(すなわち、EFXサイズバリアント種は検出されない)。
【0066】
本開示の様々な態様では、薬学的組成物は、凍結乾燥組成物である。凍結乾燥した場合、凍結乾燥生成物の残留水分含有量は、任意選択で約1%以下(例えば、約0.5%以下)である。様々な態様では、凍結乾燥製剤を適切な希釈剤で再構成して、本開示によって企図される凍結乾燥EFXの再構成された組成物を形成する。この点において、本開示はまた、本明細書に開示される薬学的組成物を再構成する方法を提供する。本方法は、(a)約5分以内に本明細書に開示される凍結乾燥された薬学的組成物を再構成することと、(b)再構成された組成物を対象に投与することとを含む。任意選択で、工程(b)は、再構成された組成物を対象に皮下投与することを含む。本開示は更に、希釈剤と混合した本開示の凍結乾燥製剤から生じる再構成組成物である薬学的組成物を提供する。
【0067】
本開示は、凍結乾燥組成物を調製するためのプロセスも提供する。このプロセスは、次の工程を含む:(a)本明細書に開示される組成物を凍結する工程と、(b)工程(a)の薬学的組成物を約-5℃~約-15℃の温度でアニールする工程と、(c)工程(b)の生成物を一次乾燥する工程と、(d)工程(c)の生成物を二次乾燥する工程と、を含む。注目すべきことに、本明細書に開示されるプロセスは、強化された特性を有する凍結乾燥EFX医薬品を生成する。例えば、得られた凍結乾燥プロセスの生成物は、他の凍結乾燥条件の生成物と比較して、非常に短時間(1分未満~最長10分の範囲)で再構成することができる。多くの場合、再構成時間は、他の薬学的組成物及び凍結乾燥プロセスと比較して約50%以上改善される。更に、本明細書に開示される凍結乾燥組成物を調製するためのプロセスは、得られるケーキの比表面積(より密度の低いケーキ)を大幅に減少させ、これは、大幅に短い再構成時間に関連する。これは、投与の直前に再構成を実施することができるため、臨床医及び患者に大きな利点を提供し、治療時点又は自己投与の前に用量を調製するための時間を最小限に抑える。
【0068】
様々な態様では、凍結乾燥プロセスの工程(a)における凍結は、約-40℃~約-50℃の温度で行われる。様々な態様では、工程(a)における凍結は、約-40℃、約-41℃、約-42℃、約-43℃、約-44℃、約-45℃、約-46℃、約-47℃、約-48℃、約-49℃、又は約-50℃の温度で行われる。
【0069】
様々な態様では、工程(b)におけるアニーリングは、約5時間~約20時間行われる。様々な態様では、工程(b)におけるアニーリングは、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、又は約10時間行われる。
【0070】
様々な態様では、工程(b)におけるアニーリングは、約-5℃~約-20℃の温度で行われる。様々な態様では、工程(b)におけるアニーリングは、約-5℃、約-6℃、約-7℃、約-8℃、約-9℃、約-10℃、約-11℃、約-12℃、約-13℃、約-14℃、約-15℃、約-16℃、約-17℃、約-18℃、約-19℃、又は約-20℃の温度で行われる。
【0071】
様々な態様では、工程(c)における一次乾燥は、約0.08~0.2mbarのチャンバ圧力で行われる。様々な態様では、工程(c)における一次乾燥は、約0.08、約0.09、約0.10、約0.11、約0.12、約0.13、約0.14、約0.15、約0.16、約0.17、約0.18、約0.19、又は約0.20mbarのチャンバ圧力で行われる。
【0072】
様々な態様では、工程(c)における一次乾燥は、約-5℃~-30℃の温度で行われる。様々な態様において、工程(c)における一次乾燥は、約-10℃、約-11℃、約-12℃、約-13℃、約-14℃、約-15℃、約-16℃、約-17℃、約-18℃、約-19℃、約-20℃、約-21℃、約-22℃、約-23℃、約-24℃、約-25℃、約-26℃、約-27℃、約-28℃、約-29℃、又は約-30℃の温度で行われる。
【0073】
様々な態様では、工程(d)における二次乾燥は、約35~55℃の温度で行われる。様々な態様において、工程(d)における二次乾燥は、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、又は約55℃の温度で行われる。
【0074】
本明細書に開示されるEFX薬学的組成物は、代謝障害を含むがこれらに限定されない、いくつかの疾患、障害、又は状態を治療、改善、予防、又は逆転させるために使用することができる。様々な態様では、本開示は、疾患又は障害を治療する方法を提供し、本方法は、EFXを含む薬学的組成物を、それを必要とする対象(例えば、ヒト)に投与することを含む。疾患又は障害は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFL)、肝脂肪症、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、アルコール性肝疾患(ALD)又はアルコール性脂肪性肝疾患(AFL)、糖尿病(例えば、2型糖尿病)、肥満、渇望若しくは中毒(アルコール関連又は食物などの他のもの)、高トリグリセリド血症、脂質異常血症、心血管疾患(アテローム性動脈硬化症など)、又は老化のいずれかであり得る。様々な態様では、本開示は、肝硬変を逆転させるか、又はNASH、ASH、ALD、AFL、又はタンパク質ミスフォールディング病に関連する線維症を減少させる方法を提供する。この点において、治療後、NASH Clinical Research Network(CRN)組織学的スコアリングシステム(Kleiner D et al,2005 Hepatology41,1313)に基づいて、対象の線維症スコアは、好ましくは、F4(硬変)からF3(進行性線維症)以下に後退する。例示的な実施形態では、中毒は、アルコール、薬物、又はニコチンなどの行動又は物質に対する持続的な強迫的依存を包含する。例示的な実施形態では、渇望は、糖などの特定の物質又は活動に対する強い、緊急の、又は異常な欲求を包含する。本開示はまた、本明細書に開示される薬学的EFX組成物をそれを必要とする対象に投与することによって、肝臓脂肪含有量を正常化する方法、血糖値を低下させる方法、インスリン感受性を増加させる方法、及び/又は尿酸レベルを低下させる方法を提供する。例示的な実施形態では、肝臓脂肪含有量を正規化することは、肝臓脂肪含有量(例えば、肝臓脂肪絶対含有量)を低減することを指し、好ましくは、肝臓脂肪含有量を典型的な、健康な、疾患のない対象(すなわち、本明細書に記載の疾患/障害のうちの1つ以上に罹患していない対象)のものに低減する。様々な実施形態では、肝臓脂肪含有量は、<5%の絶対肝臓脂肪に低減される。≧5%の絶対肝臓脂肪含有量は、肝脂肪症(脂肪性肝疾患)に関連し、5%未満の絶対肝臓脂肪含有量は、疾患のない対象について臨床的に正常な範囲内で考慮される(例えば、Chalasani et al.,2018 Hepatology;67(1):328-357を参照されたい)。
【0075】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療としての第2相臨床試験において、エフルキシフェルミンは、投与16週間後の患者の約半数において、肝臓脂肪の正常化及び線維症の退縮を含む、前例のないレベルの有効性を示した。EFXの臨床プロファイルの独自性は、健康なリポタンパク質プロファイルを回復させ、血糖制御を改善し(2型糖尿病性NASH患者ではヘモグロビンA1cが0.6~0.9%減少)、尿酸レベルを低下させることによっても強調される(Harrison et al.,2021,Nat Medicine27:1262-1271)。
【0076】
「それを必要とする対象」は、薬学的組成物の投与から利益を得るであろうヒトなどの対象であり、本明細書に記載の障害のうちのいずれかの症状と診断され得るか、又はそれに罹患し得る。例えば、尿酸レベルの低下を必要とする対象は、痛風に罹患している対象であり得る。肝硬変を後退させるか、又はNASH、ASH、ALD、ALF、若しくはタンパク質ミスフォールディング病に関連する線維症を軽減する方法を必要とする対象は、NASH、ASH、ALD、ALF、若しくはタンパク質ミスフォールディング疾患に罹患しているか、又はNASH、ASH、ALD、ALF、若しくはタンパク質ミスフォールディング病から回復している可能性がある。
【0077】
様々な態様では、障害は、タンパク質ミスフォールディング病である。ミスフォールドしたタンパク質は、様々な病原性応答を引き起こす可能性があり、いくつかのヒト疾患に関与しているか、又は少なくともいくつかのヒト疾患に関連していると考えられている。例示的なタンパク質ミスフォールディング病としては、嚢胞性線維症、α-1アンチトリプシン欠乏症、及びトランスサイレチン型心アミロイドーシスが挙げられるが、これらに限定されない。この方法は、所望の生物学的応答を達成するのに有効な量で、本開示の薬学的組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む。関連する態様では、方法は、治療レジメンの一部として薬学的EFX組成物を投与することを含み、治療レジメンはまた、タンパク質ミスフォールディング病(α-1アンチトリプシン欠乏症など)に対するミスフォールドしたタンパク質コレクター分子又はオリゴヌクレオチドベースの治療薬の投与を含む。
【0078】
「治療する」という用語、並びにそれに関連する用語は、必ずしも100%又は完全な治療又は寛解を意味するものではない。むしろ、当業者であれば、潜在的な利益又は治療効果を有すると認識する治療の程度には様々なものがある。この点において、疾患又は障害を治療する方法は、任意の量又は任意のレベルの治療を提供することができる。更に、本方法によって提供される治療は、治療されている疾患の1つ以上の状態又は症状又は徴候の治療、及び/若しくは状態又は疾患を有する対象の生活の質の改善を含み得る。本開示の治療方法は、疾患の1つ以上の症状を阻害し得る。また、本開示の方法によって提供される治療は、疾患の進行を遅らせる、又は逆転させることを包含し得る。
【0079】
対象の生活の質の改善は、例えば、欧州生活の質5質問ツール(European Quality of Life 5 questions tool)(EQ-5D)を使用して1つ以上の生活の質パラメータを決定することによって測定することができ、患者によって報告されるように、患者の生活の質に対する移動性、気分、全体的な影響を決定する。EQ-5Dアンケートには、回答者が認識した健康状態を報告できるビジュアルアナログスケール(VAS)も含まれている。例えば、その全体が参照により組み込まれる、Balestroni et al.,Monaldi Arch Chest Dis.2012 Sep;78(3):155-9を参照されたい。治療は、肝疾患質問票を使用してモニタリングしてもよい。例えば、その全体が参照により組み込まれる、Younossi et al.,Clin Gastroenterol Hepatol.2019 Sep;17(10):2093-2100.e3を参照されたい。肝臓治療はまた、組織学的データ(例えば、線維症の退行、NASHの分解など)及び肝臓傷害のバイオマーカー(例えば、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、及び/又はアルカリホスファターゼ(ALP))などの客観的パラメータを測定することによってモニタリングされ得る。NASH患者における肝臓の組織病理学スコアリングの例示的な方法は、例えば、その全体が参照により組み込まれるKleiner et al.,2005 Heptology 41,1313に開示されている。
【0080】
前述の方法に関して、組成物は、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内、髄内、髄腔内、脳室内、皮内、経皮、皮下、鼻腔内、吸入(例えば、上気道及び/又は下気道)、経腸、硬膜外、尿道、膣、又は直腸の投与経路を含む任意の好適な投与経路によって投与され得る。様々な事例において、組成物は、対象に静脈内に、筋肉内に、又は皮下に投与される。例えば、いくつかの態様では、組成物は皮下投与される。投与される組成物中のEFXの量又は用量(すなわち、「有効量」)は、臨床的に合理的な時間枠にわたって対象において所望の生物学的効果を達成するのに十分であるべきである。
【0081】
人体で実践される方法の特許を禁止する管轄区域では、組成物をヒト対象に「投与する」という意味は、ヒト対象が任意の技術(例えば、注射、挿入等)によって自己投与することができる制御物質を処方することに限定され得る。本開示は、本明細書に記載の疾患又は障害のいずれかを治療するための薬学的組成物の使用を企図する。本開示は、本明細書に記載の疾患又は障害のいずれかを治療するための薬物の調製における組成物の使用を更に企図する。本開示は更に、本明細書で言及される疾患又は障害のうちのいずれかの治療に使用するための、本明細書に記載の組成物を提供する。人体で実践される方法の特許を禁止しない管轄区域では、組成物の「投与」は、人体で実践される方法と前述の活動との両方を含む。
【0082】
更なる態様として、対象への投与を容易にする方法でパッケージ化された本明細書に記載の薬学的組成物を含むキットが提供される。一態様において、キットは、密封されたボトル、容器、使い捨て又は多用途バイアル、プレフィルドデバイス(例えば、注射器)、又はプレフィルド注射デバイスなどの容器にパッケージ化された本明細書に記載の薬学的組成物/製剤を含み、任意選択で、容器に貼付されるか、又は本方法を実践する際の薬学的組成物の使用を説明するパッケージに含まれるラベルを有する。一態様では、薬学的組成物は、単位剤形でパッケージ化される。このキットは、特定の投与経路に従って薬学的組成物を投与するのに適したデバイスを含み得るが、これは必須ではない。例えば、本開示は、本明細書に開示される薬学的組成物を、それを必要とする対象に送達するためのデュアルチャンバデバイスを提供する。デュアルチャンバデバイスは、本明細書に開示される凍結乾燥された薬学的組成物と、デバイスの2つの別個のチャンバ内の希釈剤とを含む組み合わせ製品である。プレフィルドデュアルチャンバデバイス(DCD)は、デバイスの2つの別々のチャンバ内に凍結乾燥薬物及び希釈剤を含有する組み合わせ製品である。DCDは、患者と医師に高い安定性と利便性を提供し、製品の品質、患者のコンプライアンス、及び市場競争力を大幅に向上させる。DCDはまた、シールの完全性、無菌性、及びバイオ医薬品との適合性を提供し、浸出性及び針刺し損傷を回避する。本開示とともに使用するための適切なデュアルチャンバデバイスは、当該技術分野に記載されている。例えば、Ingle R.,Fang W.(2021).Int.Journal of Pharmaceutics 597,12031を参照されたい。
【0083】
以下の実施例は、本開示の代表的な特徴を示す。これらの態様の説明から、本発明の他の態様は、以下に提供される説明に基づいて行う及び/又は実践することができる。本方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1-3,Sambrook et al.,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2001、及びCurrent Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,ed.,Greene Publishing and Wiley-Interscience,New Yorkなどの論文に記載されている分子生物学的手法の使用を含む。
【実施例】
【0084】
実施例1:エフルキシフェルミン製剤
この実施例は、以下に記載される研究において評価されるEFX製剤を記載する。
【0085】
親注射可能なタンパク質ベースの生物製剤は、タンパク質中のアスパラギン残基を中間コハク酸イミドとしてアスパラギン酸又はイソアスパラギン酸に変換し、グルタミンをグルタミン酸又はピログルタミン酸に変換する脱アミド又は酸化などの翻訳後修飾を最小限に抑えるために、pH5.2~約pH6.9の範囲のわずかに酸性から中性のpHでしばしば製剤化される。pH7.6を超えると、脱アミド(酸性電荷バリアントの形成)が頻繁に観察され、安定性、官能性、及び/又はタンパク質効力の喪失をもたらす。pH7.0未満では、塩基性荷電バリアントの形成も観察される。
【0086】
脱アミド、酸化、及び電荷バリアントの形成を最小限に抑えるために、pH範囲4.5~7.0の様々な賦形剤を用いて、EFX製剤を開発した。驚くべきことに、EFXの粘弾性特性は、pH6.5未満で劇的に変化し、ゲル様挙動、相分離、及び流動性の損失を示した。これらの特徴は、生物製剤の注射可能な製剤には困難である。これらのゲルの高い動的粘度(いくつかの例では最大23,950cP(センチポイズ))、並びにゲルの長時間の安定性(いくつかの例では、2~8℃で保管されて21ヶ月もの長い間)は、パターン形成格子に配列された、おそらくは架橋水素結合の結果、秩序があり、安定した3次元構造の形成を示している。
【0087】
加えて、pH6.9以下で試験された製剤の大部分は、タンパク質凝集、クリッピング/断片化、及び/又は可視粒子並びにサブビジブル粒子の形成の傾向を示した。そのような変化は、安全性(特に免疫原性)、不安定性、及び効力の懸念の喪失に関連する可能性があるため、注射可能な生物製剤にとっては望ましくない。
【0088】
したがって、一連の研究は、分解経路及び翻訳後修飾(電荷バリアントの形成の増加など)を最小限に抑えることに焦点を当てながら、水素結合の架橋格子を形成するEFXの独自の傾向を克服し、ゲル形成及び顕著な相分離をもたらすEFX製剤を開発するように設計された。
【0089】
実施例1及びその後の実施例で評価したEFX製剤を表1に列挙し、使用した賦形剤及び化学物質を表2に列挙した。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
実施例2:製剤を特性化する:ゲル形成及び相分離(シュリーレン相分離)
この実施例は、本明細書に記載の様々な製剤の物理的特性を説明する。驚くべきことに、EFXは、他のほとんどの生物製剤に適した条件下で製剤化及び保管された場合、ゲルを形成し、相分離する傾向を有する。
【0094】
視覚的な外観
EFX製剤を、2,000~3,750ルクスでの欧州薬局方(第9版、モノグラフ2.9.20)に従って、白色背景の前で5秒間、黒色背景の前で5秒間、穏やかな、手動の、放射状の攪拌の下で、ゲル形成、相分離、乳白色、及び可視粒子の有無について検査した。観察された可視粒子を分類するために、表3に列挙されるように、「Deutscher Arzneimittel-Codex」(DAC2006)に基づく数値スコアを適用した。繊維様構造、おそらく非固有の粒子、及び追加の試料属性を表4に記載されるように文書化した。
【0095】
【0096】
【0097】
タンパク質濃度(相分離、シュリーレン相分離)
EFX濃度を、280nmの吸光度を測定するSoloVPE機器を用いたスロープ分光法を使用してUV/可視分光法によって決定した。
【0098】
粘度(ゲル形成)
動的粘度を、Kinexusウルトラプラスレオメーター(Malvern Instruments)を使用して測定した。レオメーターには、コーンプレートのセットアップ(コーン直径40mm、1°の角度)が装備されていた。測定CP1/40コーンの寸法は、測定ギャップを0.024mmに固定し、これには、約310μlの試料容量が必要であった。試料表面の乾燥を避けるために、蒸発ブロッカーを適用した。測定は、25℃で3分間、400秒-1の一定の剪断速度で行った。更に、25℃で10秒-1から1000秒-1までの剪断速度で11個のデータポイントテーブルを生成した。
【0099】
水素-重水素(H-D)交換グアニジニウム/尿素質量分析法
製剤F1、F2、F4、F7、F8、F9、及びF11中のEFXのゲル形成及び相分離は、パターン形成格子を採用した架橋水素結合の結果である。H-D交換による研究は、格子形成及びシュリーレン相分離の機序を解明する。
【0100】
データ概要:ゲル形成及び相分離(シュリーレン相分離)
理論上及びicIEFによって測定されたEFXの等電点(pI)は、約pH6.6である。製剤F1~F12は、pIを下回るpHで製剤化したが、製剤F13~F20のpH値は、pIを上回っていた(表1を参照)。PH6.5未満で製剤化した製剤(低~中性pH製剤)中のEFXは、ゲル化又は相分離を受ける傾向を示した。ゲル形成EFX製剤の画像を
図2に示す。製剤F11は、配合直後に高密度の3D構造化ゲルを形成した。40℃/75%RHで3日間保管した後、製剤F1、F2、F4、F7、F8、及びF9もまた、ゲル形成、相分離、及び/又は沈殿を示した。半透明のゲルは、製剤F1、F2、F4、及びF7において形成し、ゲル内に高い濁度を示した(
図7)。
【0101】
製剤F8、F9、及びF12は、3日後に40℃/75%RHで観察された、底部に白色ゲル状相、上部に濁った液体上清を有する相分離(シュリーレン相分離)を示した。例として、SoloVPEによって評価されるF12の下相で測定されたタンパク質濃度は163.1mg/mLであり、上清相では59.9mg/mLであった。更に、40℃/75%RHで2週間保管した後、製剤F5及びF6は、それらの外観及び粘弾性特性の同様の劇的な変化を示した。
【0102】
25℃/60%の相対湿度で、製剤F2及びF8は、それぞれ、1週間及び1ヶ月の保管後に高密度ゲルを形成した。加えて、25℃/60%RHで1ヶ月保管した後のF14については、相分離及び可視粒子形成が観察されたが、他の温度条件(2~8℃及び40℃/75%RH)については観察されなかった。
【0103】
400秒
-1及び時間ゼロでの製剤F1~F20(F11を除く)における100mg/mLのEFXの動的粘度を
図3に提示する。測定された動的粘度は、pHに依存し、より低いpHで増加するように見えた。例えば、100mg/mL及び室温でのEFX製剤F14~F20の粘度は、全て、pH7.0以上で、5cP以下であった。比較すると、測定された動的粘度は、pH6.5以下での製剤F1~F10の配合直後には10~16cPの範囲であった(
図3)。製剤11(F11)において、EFXは、即座に、配合時に高密度/剛性ゲル格子を形成し、動的粘度の更なる実験的評価を不可能にした。
【0104】
様々な条件下でのEFXの保管中に、pH6.5以下の他の製剤が相分離を受け、高粘度ゲルを形成した。(F1、F2、F4、F7、F8、F9、F10、及びF11)。ゲル形成は、架橋された水素結合の結果であるように見え、パターン形成格子を形成し、非常に剛性の高い三次元構造をもたらした。ゲルEFX形成の速度は、保管温度に依存し、40℃で約3日以内に生じるが、それぞれ25℃及び2~8℃で数週間又は数ヶ月後に生じる。一度形成されると、3次元ゲル格子は、様々な保管条件下で21ヶ月後にゲル状の外観を保持する製剤F1、F2、F4、F7、F8、F9、及びF11によって証明されるように、安定又は不可逆的に見えた。
【0105】
図4は、40℃で3日後の10秒
-1の剪断速度でのF1~F20(F11を除く)についての100mg/mLでのEFXの動的粘度を示す。ゲルを形成したこれらの製剤は、数万cPで動的粘度を有するように見える。EFXの動的粘度は、2~8℃で21ヶ月間保管した後も変化しなかった(
図4及び表5)。例えば、低剪断速度でのF2及びF10の測定された動的粘度は、それぞれ、注ぎやすいシリコーンゴム及びチョコレートシロップに匹敵する、23,950cP及び10,560cPと高かった。
【0106】
製剤F1、F2、F4、F7、F8、F9、及びF11は、不可逆的なゲルを形成し、相分離を受け、F13~F42などの均質な液体製剤と比較して、剪断速度の関数として明らかに異なる粘弾性特性を示した。
図5に示すように、製剤F13~F20、並びにF21~F42(図示せず)におけるEFXの動的粘度は、増加する剪断速度の関数として一定のままであり、したがってニュートン挙動を示す。対照的に、F1、F2、F4、F7、F8、F9、及びF11の粘度は、増加する剪断速度の関数として減少するように見え、したがって、非ニュートンずり減粘効果を示す。これにもかかわらず、それらはゲル状のままであり、水素結合連結格子が高い剪断速度(1000秒
-1など)に耐えるのに十分に安定であることを示している。pH依存性に加えて、ゲル形成及び相分離もまた、各製剤を構成する賦形剤に依存するように見えた。この点を説明すると、賦形剤の組成が異なるが、同様なpHのF1、F2、F4、F7、F8、F9、及びF11が、幅広い動的粘度と関連付けられた。そのような差は、低剪断速度及び高剪断速度の両方で観察され、したがって、粘弾性特性が特定の賦形剤の性質に強い依存性を示すことを例証した。低剪断速度での動的粘度を表5Aに要約し、1000秒
-1の剪断速度での動的粘度を表5Bに要約する。
【0107】
【0108】
【0109】
剪断速度、非常に低い粘度、及びゲル形成の非存在、又は有意なシュリーレン相分離の関数としてのそれらのニュートン挙動に基づいて、製剤F15、F16、F17、F18、F20、及びF33~F42(pH≧6.5)を更なる開発のために選択した。
【0110】
実施例3:電荷バリアントの形成、タンパク質凝集、クリッピング/断片化、細胞ベースの効力の評価
ニュートン挙動及び低溶液粘度を維持することに加えて、本明細書に記載のEFX製剤を、高分子量種(HMWS)への凝集、低分子量種(LMWS)へのクリッピング又は断片化、サブビジブル粒子(SVP)及び可視粒子の形成、並びにより酸性又は塩基性電荷バリアントの形成をもたらす翻訳後修飾について評価した。荷電種の形成速度は、冷蔵温度では一般的に他のタンパク質と比較してEFXの方が高く、室温では形成速度が増加する。本実施例は、例えば、荷電種形成、HMWSなどを最小限に抑えることを求めるために実施される研究を記載する。
【0111】
翻訳後修飾:EFX電荷バリアントの決定
EFXの電荷不均一性を、アニオン交換クロマトグラフィー(AEX-HPLC)及びイメージングキャピラリー等電点電気泳動(icIEF)によって評価した。これらの2つの方法は、異なる機序を使用してタンパク質の電荷バリアントを分離する。AEX-HPLC分離は、帯電した固定クロマトグラフィーマトリックスと相互作用するタンパク質の表面上の露出した電荷に基づいている。icIEFによる分離は、分離キャピラリーに確立されたpH勾配を介してその等電点に電気泳動的に移動するタンパク質の各電荷バリアントに基づく。分離のそれらの異なるメカニズムの結果として、AEX及びicIEFは、タンパク質の電荷不均一性を評価するための補完的かつ直交的な方法とみなされる。
【0112】
アニオン交換クロマトグラフィー(AEX-HPLC)による電荷バリアントの評価
EFX製剤中の電荷不均一性の分布を、アニオン交換樹脂カラムTSK-Gel Q-STAT(4.6mm×100mm、7μm粒径)を使用して、230nmでのUV吸光度検出を用いて評価した。負に帯電したEFXは、20mMのTris中で平衡化され、20%(v/v)のアセトニトリルを含有するpH8に緩衝された正に帯電したカラムマトリックスに結合する。EFXの弱荷電バリアントは、低塩濃度によってクロマトグラフィーカラムから容易に置き換えられるが、より負に帯電したEFXバリアントは、それらを置き換えるためにより高い塩濃度を必要とする。塩勾配は、0.5mL/分の流速で0.7Mの塩化ナトリウム(pH8.0)の線形勾配であった。クロマトグラフィーカラム温度を分析全体を通して30℃に維持した。
【0113】
F18で製剤化されたEFXの代表的なAEX-HPLCクロマトグラムを
図6に示し、プレピーク、ポストピーク、及びメインピークの面積を定量化し、表6に要約する。クロマトグラフィー分析の目的のために、EFXにおける電荷バリアントは、プレピーク(より塩基性のバリアント、又はそれらの表面上の負電荷がより少ないEFX電荷バリアント)、メインピーク、及びポストピーク(より産生のバリアント又はそれらの表面上の負電荷が多いよりEFX電荷バリアント)としてグループ化される。
【0114】
【0115】
イメージングキャピラリー等電点電気泳動(icIEF)による電荷バリアントの評価
EFXの等電点(pI)を実験的に確認するために、ProteinSimple iCE3を使用してイメージングキャピラリー等電点電気泳動(icIEF)法を開発した。様々な製剤中のEFXを、両性溶液、3M尿素、及びpI5.85及びpI8.18に対応するマーカーを含有する混合物中で調製した。電荷バリアントの分離を、周囲温度で100μmの内径及び50mmの長さのコーティングされたキャピラリー内で実施し、タンパク質ピークを280nmでの吸光度によって監視した。電荷バリアントを2つの異なるフォーカシング工程を使用して分離し、最初は1,000Vで1分間、続いて3,000Vで10分の移動を行った。
【0116】
製剤F18におけるEFXのメインピークは、見かけのpIが6.67で移動し、これは、約6.5の理論的pIとよく一致する(
図7)。追加の電荷バリアントのピークは、電気泳動図において低レベルで検出され、メインピークの前(酸性バリアント)又は後(塩基性バリアント)のいずれかに移動した。ピーク面積に基づく存在量のパーセンテージとして表される酸性ピーク、メインピーク、及び塩基性ピークの分布が、表7に示される。icIEF電気泳動図からのプレピーク、メインピーク、及びポストピークの分布は、AEX-HPLCによって報告されたプレピーク、メインピーク、及びポストピークの分布を反映している。
【0117】
【0118】
F1~F20についてF33と比較して経時的なEFXのメインピークの減少として示される、25℃/60%RHで保管されたときの電荷バリアントの形成を、
図8Aに示す。特に4週間の保管中、pH7.0~7.6の範囲で緩衝されたArg/Arg-HCl、スクロース、PS20又はPS80を含有するTris-HCl中に製剤化された(F33~F38)EFXは、F18におけるEFXよりもメインピーク損失の速度が約60%遅く、F20におけるEFXよりもより多くの酸性電荷バリアントの形成速度が2倍以上遅いことを示した。
【0119】
更に、
図8Bは、AEX-HPLCによって測定されたより塩基性電荷バリアント(プレピーク)についてのクロマトグラムの総ピーク面積のパーセントとしての相対存在量を示し、
図8Cは、製剤F1~F20について、25℃/60%RHでの時間0、1週間、及び1ヶ月でのより酸性のバリアントに対応する、ポストピークのパーセントを示す。
図8Bから明らかなように、塩基性電荷バリアント又はプレピークは、総クロマトグラム面積の10%未満で比較的一定のままである製剤F15~F20及びF33と比較して、製剤F1~F12において著しく存在量が多く、F1は53%の塩基性バリアントを示している。対照的に、製剤F15~F20は、25℃/60%RHで1ヶ月保管した後、より多くの酸性バリアントの形成を示した(表8)。
【0120】
F33の改善された安定性は、2~8℃で保管した場合にも明らかであり、EFXの電荷バリアントの形成速度はF18よりも約50%低く、F20よりも3.2倍低かった(表9)。
【0121】
要約すると、賦形剤(すなわち、糖、界面活性剤、及びArg/Arg-HCl)の独自の組み合わせを有するF33は、(試験された製剤と比較して)液体製剤として最も安定した薬学的組成物であり、タンパク質ベースのバイオ医薬品で一般的に使用される他の賦形剤を含有する製剤と比較して、2~8℃で保管した場合、25℃/60%RHでの電荷バリアントの形成の最も緩慢な速度によって確認されるように、EFXのメインピークは経時的に比較的変化しないままであった(
図9)。
【0122】
【0123】
【0124】
SE-HPLCによるサイズバリアント(凝集及び断片化)の評価
凝集(高分子量種(HMWS)形成)又は断片化(低分子量種(LMWS)形成)から生じるEFX分子サイズバリアントを、280nmでのUV吸光度検出を伴うシリカゲル濾過カラム(Tosho G3000 SWXL)を使用したサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって特性化した。移動相は、100mMのリン酸ナトリウム、500mMの塩化ナトリウム(pH6.9)から構成された。EFXのサイズバリアントは、室温で、0.5mL/分でカラムから均一濃度で溶出され、UV吸光度検出器を使用してピークを定量化した。EFXのサイズバリアントは、
図10に示すように、主な種、優勢なクロマトグラフィーピーク、及び低レベルの二量体(2つのEFXホモ二量体を含む)並びに高分子量(HMW)EFXサイズバリアントに分離される。
【0125】
SE-HPLCによるEFXのメインピークの減少として示される、25℃での選択された製剤、F1~F20及びF33の保管中のサイズバリアントの形成を、
図11に示す。pH範囲7.0~7.6で緩衝されたTris-HCl緩衝液、Arg/Arg-HCl、スクロース、PS20又はPS80を含有する製剤(F33~F38)は、25℃で他の製剤よりもメインピーク損失の速度が緩慢であり、対照的に、F18よりも顕著に70%緩慢であり、F14よりも19.5倍以上緩慢であった(表10)。2~8℃で保管した場合、F33中のEFXのサイズバリアント(HMWS及びLMWS)の形成速度は、F18よりも約50%低く、例としてF14よりも20倍低かった(表11)。EFXとF33に含まれる(及び列挙された濃度での)賦形剤との独自の組み合わせは、2~8℃で保管した場合、EFXのサイズバリアントプロファイルが時間の経過とともに比較的変化しないことを確実にした(
図12)。同様に、25℃でよりストレスの多い条件下で保管した場合、F33は、タンパク質ベースのバイオ医薬品に一般的に使用される他の賦形剤に基づく製剤と比較して、サイズバリアントの形成速度が最も緩慢なことを示した(
図11)。
【0126】
【0127】
【0128】
CE-SDS(非還元)によるサイズバリアント(HMWS及びLMWS)の評価
EFXの純度を評価するために、ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS)によるキャピラリー電気泳動を使用した。方法は、還元された変性EFX、並びに非還元の変性EFXを使用した。
【0129】
EFXのサイズバリアントを、変性、非還元条件下でCE-SDSによって定量的に決定した。EFXを、pH6.5及び10%(v/v)のSDS溶液で100mMのリン酸ナトリウム緩衝液と混合し、その後、室温で140mMのN-エチルマレイミド(NEM)を添加した。次に、220nmの吸光度を監視するPDA検出器を取り付けたBeckman PA800 Plus薬学的分析システムを用いて、20cmのコーティングされていないシリカキャピラリー(内径50μm)中で試料を分析した。各電気泳動分析からのデータは、32カラットデータ収集ソフトウェアを使用して取得した。
【0130】
非還元、変性EFXの分析は、メインピークとしてインタクトなタンパク質を示した。単鎖及び低分子量種は、プレピークとしてメインピークの前に移動する。EFXの代表的な電気泳動図に示すように、EFXの凝集体をポストピークとしてメインピークの後に統合した(
図13)。
【0131】
図14に示すように、選択された製剤中のEFXのサイズバリアントの形成は25℃で保管されており、CE-SDS(非還元)によって経時的にメインピークが減少することが明らかであり、そして、
図15において2~8℃で保管された。EFX製剤を2~8℃で保管した場合、全ての製剤のサイズバリアントは、経時的に比較的変化しなかった(
図15)。25℃では、純度損失がより大きく、例えばF1(-7.04%/週)であった。比較すると、F33はこれらの条件下で改善された安定性を示し、サイズバリアントが約10倍遅い速度(-0.70%/週)で形成された。
【0132】
RP-HPLCによるサイズバリアント(HMWS及びLMWS)の形成の評価
RP-HPLC法は、Zorbax 300SB C18(4.6mm×150mm、3.5μm粒径)カラム上で、45℃にて70%N-プロパノール及び30%アセトニトリルの二相勾配に対して水中の0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸の移動相を使用して、並びに0.5mL/分の流量でEFXを分離する。溶出したタンパク質ピークを、280nmのUV吸光度検出器で検出する。
【0133】
EFXのRP-HPLCクロマトグラムを
図16に示す。分離されたピーク(1~7番)の含有量を、オンライン高分解能質量分析によって特性化し、表12に要約した。
【0134】
25℃で保管された選択された製剤F1~F20及びF33におけるサイズバリアントの形成は、RP-HPLCによって測定された経時的なメインピークの減少として明らかであり、
図17に示される。pH範囲7.0~7.6で緩衝されたTris-HCl緩衝液、Arg/Arg-HCl、スクロース、PS20又はPS80を含有するEFXの製剤(F33~F38)は、25℃で製剤F18よりも約10%遅いメインピーク損失速度を有し、製剤F14よりも約6倍遅い速度を有する(表10)。2~8℃で保管した場合、F33中のサイズバリアント(HMWS及びLMWS)の形成速度もF18の約半分であり、F20の約30倍低かった(表13)。
【0135】
試験した様々な製剤は、EFXの安定性に有益な効果をもたらしたが、F33に含まれる賦形剤(すなわち、糖、界面活性剤、及びArg/Arg-HCl)とのEFXの組み合わせは優れており、2~8℃で保管した場合、EFXのサイズバリアントプロファイルが時間の経過とともに比較的変化しないことを確実にした(
図18)。同様に、25℃でよりストレスの多い条件下で保管した場合、F33は、タンパク質ベースのバイオ医薬品に一般的に使用される他の賦形剤の組み合わせに基づく製剤と比較して、サイズバリアントの形成速度が最も緩慢なことを示した(
図17)。
【0136】
【0137】
【0138】
質量分析による最も安定した製剤におけるEFXの質量及び電荷バリアントの評価
変更された電荷バリアントの変化に関連する質量バリアント及び翻訳後修飾を解明するために、EFXの様々な製剤を、インタクト質量及びトリプシンで消化した後のペプチドマッピングによって特性化した。トリプシンペプチドの調製中に生じる脱アミド化又は酸化などの化学修飾を最小限に抑えるために、還元条件下で消化を実施した。得られたトリプシンペプチドを、紫外線吸収(280nm)による検出を備えたC18逆相超高性能液体クロマトグラフィー(RP-UPLC)を使用して分離し、次いで、高分解能質量分析によって特性化した。非ストレス製剤(凍結保管)中のEFXの質量バリアントの種類を、2~8℃で1ヶ月間、25℃で1ヶ月間、及び40℃で1ヶ月間(25℃で1ヶ月間との類似性のためにデータは示されていない)保管した製剤中のものと比較した。最も安定な製剤、F18及びF33におけるEFXの未修飾のインタクトなホモ二量体、及び他の質量バリアント(断片及び修飾種)の相対存在量を表14に要約する。
【0139】
【0140】
各トリプシンペプチドについて、翻訳後修飾の種類を特定した。EFXの最も安定な製剤(F18及びF33)からの修飾されたアミノ酸残基を含有する各ペプチドの相対存在量を、非ストレスの同じ製剤を参照して、25℃で1ヶ月間ストレスを与えた後に比較した(表15を参照)。
【0141】
【0142】
F18及びF33で製剤化されたEFXの翻訳後修飾の主な形態は、アスパラギン(Asn)の低レベルのAsnのスクシンイミド中間体を含む酸性アスパラギン酸残基への脱アミドであり、より多くの酸性電荷バリアントをもたらす。EFXの各モノマー鎖中の9つのAsn残基のうちの8つは、ある程度の脱アミドを示した。更に、4つのグルタミン(Gln)残基のうちの2つも、各モノマー鎖において、酸性グルタミン酸に脱アミドされた。メチオニン(Met)の酸化は、3つの位置で低レベルで存在した。予想されるように、翻訳後修飾及び電荷バリアント形成の著しく低いレベルは、EFXの最も安定した製剤、F18及びF33ではストレス下で明らかであり、F33はF18よりも感受性が低く、特に脱アミドに最も感受性の高い2つのAsn残基及び酸化に最も感受性の高いMetが出現する(表15を参照)。
【0143】
サイズ排除クロマトグラフィー-多角度レーザー光散乱(SEC-MALLS)による最も安定した製剤におけるEFXのサイズバリアントの評価
EFXの未希釈試料中の分子量による種の分布を、SEC-MALLSによって評価した。SEC-MALLS法は、2つのインライン検出器:1)280nm及び360nmで記録するUV検出器、(1260 Infinity LC、Agilent Technologies)、及び2)光散乱検出器(DAWN HELEOS II、Wyatt Technology)を使用して、異なるサイズのEFXの種の溶出を監視する。データ分析及び分子量(MW)計算を、ASTRA6ソフトウェア(Wyatt Technology)を使用して、MALLSデータ上で実施した。EFXについて、0.97mL mg-1cm-1の理論消光係数を使用して、分子量値を計算した。
【0144】
EFXの製剤の反復注入の分析は、92kDaの計算されたMWと良好に一致して、88.0~88.4kDaの見かけのMWを割り当てた、タンパク質の94.5%を占めるメインピークを明らかにした。二量体及びHMW、並びに低MWバリアント(LMW)の2つの高MWバリアントを含む、比較的少ない量の3つの追加の種も見出された。
図19は、F18におけるEFXの代表的なSEC-MALLSクロマトグラム(非ストレス)を示す。低存在量バリアントの分子量の正確な決定は、SEC-MALLSに必要な高タンパク質濃度の結果として、様々なピークの比較的不完全な分離のために困難であった。それにもかかわらず、二量体種は136kDaの見かけのMWを有し、HMW種は292kDaの見かけのMWを有し、HMW種はより大きなオリゴマー、おそらくは四量体を表し得ることを意味する。LMW種は、MWを割り当てるのに十分に豊富ではなかった。
【0145】
最も安定した製剤における超遠心チン光速度法(SV-AUC)によるサイズ分布
異なる製剤中のEFXの流体力学的立体配座特性を、Optima分析用超遠心分離器(Beckman-Coulter)を使用してSV-AUCによって分析した。試料は、1.0mgタンパク質/mLで分析した。SV-AUCの実行は、8穴An50チタンローター中の12-mm Epon-炭二重セクター中心試料セルを用いて、20℃で45,000rpmで実施した。半径方向走査測定のサブセットから選択された生の沈降境界データのグローバルフィッティングを、ソフトウェアプログラムSEDFIT V.11.71を使用した連続分布c(s)分析法によって各試料について実施した。沈降係数分布c(s)プロファイルの作成に加え、標準条件(S20,w)、摩擦係数比(f/f0)、分子量(MW)下での沈降係数を推定した。
【0146】
F18及びF33中のEFXの代表的な沈降係数分布プロファイルを
図20に示す。グラフの縦軸は濃度分布を示し、横軸は沈降係数に基づいた種の分離を示す。全種の約100%を占める製剤F33の主な種は、4.06Sの見かけの沈降係数、1.8のf/f
0、及び計算された見かけのMW89.7kDaを有する(表16)。全種の98.7%を占める製剤F18の主な種は、4.47Sの見かけの沈降係数、1.6のf/f
0、及び計算された見かけのMW88.9kDaを有する(表16)。HMW種は、全種の0.2%~1.3%を占める。F18ではLMW種は観察されない(スケール拡張インサートを有する
図23)。HMW種の沈降係数値は、二量体(約6.5S)及びより大きなオリゴマー種、潜在的に四量体(約9S)と一致する。
【0147】
【0148】
細胞ベースの効力バイオアッセイ
EFX細胞ベースの効力バイオアッセイは、ヒト胚性腎細胞株HEK293に由来する「iLite FGF21 Assay Ready Cells」(Svar Life Sciences、カタログ番号BM3071)を使用する。これらのFGF21 Assay Ready Cellsは、下記を過剰発現するように組換え操作されている:(1)ヒトFGF21の2つの専用共受容体:ヒト線維芽細胞成長因子受容体-1c(FGFR1c)及びヒトβKlotho(KLB)、並びに(2)活性化FGFR1cからの下流細胞内シグナル伝達に応答してホタルルシフェラーゼを発現するように設計されたレポーター系(Ogawa et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.104,7432-7437、Agrawal et al.,Mol Metab.2018;13:45-55、Yie et al.,FEBS Lett.583,19-24)。KLBとの共受容体複合体として結合すると、FGF21はFGFR1cのチロシンキナーゼを活性化し、FGFR1cは下流アダプタータンパク質をリン酸化し、ERK1/2(細胞外シグナル調節タンパク質キナーゼ)のリン酸化を含むラット肉腫-マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(RAS-MAPK)カスケードの活性化をもたらす。リン酸化ERK1/2は、転写因子であるETSドメイン含有タンパク質Elk1を活性化する核に転座する(Ornitz and Itoh,Wiley Interdiscip Rev Dev Biol.2015;4(3):215-66、Zou et al,Mol Med Rep.2019 Feb;19(2):759-770)。したがって、iLite FGF21 Assay Ready Cellsは、FGFR1c-KLBのFGF21の共受容体複合体のアゴニストとしてのEFXのインビトロ効力を、細胞ベースのアッセイによって測定することを可能にする。共受容体に同時に結合するEFXの三量体複合体は、EFXがFGFR1c媒介シグナル伝達を活性化する程度に比例してルシフェラーゼ酵素の発現を刺激する。
【0149】
iLite FGF21 Assay Ready細胞をプレートした後、EFX試験試料の段階希釈液とともにインキュベートし、適切な陽性対照及び陰性対照を並行して実行する。発現されるルシフェラーゼの量を測定するために、細胞を、洗剤及びルシフェラーゼ基質であるルシフェリンを含有する試薬で溶解する。ルシフェラーゼによるルシフェリンの切断は、発光計を使用して測定された発光を生じる。発光シグナルを被験試料タンパク質濃度の関数としてプロットし、非線形最小二乗回帰分析によって4パラメータのロジスティック方程式に適合する濃度応答曲線を生成する。試験試料の相対効力は、同時に生成された参照標準濃度応答プロットに適合する曲線の値に下限/上限漸近線及び丘勾配を制限し、次いで、参照標準のEC50と試料のEC50パラメータとの比率をとることによって決定される。F18中のEFXの代表的な濃度応答曲線を
図21に示す。
【0150】
i-Lite細胞ベースのバイオアッセイによって測定された、25℃で保管された、選択された製剤F1~F20及びF33中のEFXの相対効力を
図22に示す。2~8℃で保管された、選択された製剤中のEFXの相対効力を
図23に示す。両方の保管条件下で、pH範囲7.0~7.6で緩衝されたTris-HCl緩衝液、Arg/Arg-HCl、スクロース、PS20又はPS80を含有するEFX製剤(F33~F38)は、25℃/60%RHでの12週間の保管にわたって約80%の効力の損失を示したF3などの他の製剤の多くとは対照的に、相対効力の経時的な明らかな損失を示さない。
【0151】
EFXとF33に含まれる賦形剤との独自の組み合わせにより、タンパク質ベースのバイオ医薬品に一般的に使用される他の賦形剤に基づく製剤とは対照的に、25℃で保管した場合、EFXの細胞ベースの効力が時間の経過とともに比較的変化しないことが確実となった(
図22)。
【0152】
実施例4:EFX製剤の立体配座安定性及び熱安定性
EFXタンパク質を含有する溶液のフーリエ変換赤外線(FTIR)スペクトルを、25℃の制御された温度でTensor27 FTIR分光計(Bruker Optics)及びAquaSpec透過オプティカルベンチ上で得た。希釈せずに測定したタンパク質試料のスペクトルを、4,000~850cm-1の波数で4cm-1の分解能で記録した。各単一ビーム測定は、60回のスキャンの平均であり、大気補償を使用した(スペクトル中の干渉H2O及び/又はCO2バンドの排除)。EFXを含有する各試料の背景補正された吸光度スペクトルを、1,700~1,600cm-1の波数領域におけるベクトル正規化の後、9つの平滑化点を有する二次微分スペクトルに変換した。
【0153】
F18及びF33中のEFXの二次微分FTIRスペクトルを
図24に示す。吸収スペクトルは、βシートに対応する約1641cm
-1及び1689cm
-1で強力なバンドを示し、Fcドメインを含むタンパク質に典型的な、タンパク質における逆平行βシート構造の優位性を示している。
【0154】
遠紫外円偏光二色性分光法(CD)による立体配座安定性
EFXの二次構造を、遠紫外円偏光二色性分光法(CD)によって分析した。遠紫外CD分光法(190~260nm)の主要な発色団は、タンパク質のペプチド結合である。CDシグナルは、波長の関数として、タンパク質の配列によって決定される、二次構造の下にあるペプチド結合の向きから生じる。したがって、遠紫外CDスペクトルは、タンパク質の二次構造の感度測定を提供する。
【0155】
Chirascan Auto Q100 CD分光計(Applied Photophysics Ltd.)を自動遠紫外CD分光測定に使用した(波長範囲:190~260nm)。スペクトルを、2.0mg/mLのタンパク質濃度及び0.1mmの経路長を有する20℃で収集した。スペクトル帯域幅を1.0nmに設定し、1点当たりのサンプリング時間を1.0秒とし、ステップサイズを1.0nmとした。タンパク質試料の測定ごとに10回の連続スキャンを平均化した。各タンパク質試料を測定する前に、製剤緩衝液の参照スペクトルを記録し、次いでタンパク質のスペクトルから差し引いた。減算後、CD値を平均残基楕円率([θ]mr)値に変換した。
【0156】
製剤F18及びF33中のEFXの遠紫外CDスペクトル(195~260nm)(
図25)は、Fcドメインを組み込んだ他のタンパク質のスペクトルと一致している(Li et al,2012)。このスペクトルは、適切に折り畳まれたFcドメインを示す230nmの小さな肩部の特徴を有する。CDスペクトルの一次負の楕円率は、FGF21を含む線維芽細胞増殖因子スーパーファミリーにおけるタンパク質の典型であり、EFXのFGF21ポリペプチド鎖が適切に折り畳まれていることを示す(Xu et al,2012)。しかしながら、EFXを含有するいくつかの製剤中のL-リジン及びポリソルベート20などのいくつかの賦形剤の存在は、特に195nm未満の波長で、スペクトルの遠紫外波長領域におけるバックグラウンド吸光度を実質的に増加させることに留意されたい。この高いバックグラウンド吸光度を各タンパク質試料のスペクトルから差し引かなければならないため、得られる差は、この波長領域(λ<195nm)で不良なシグナル/ノイズ及びより大きな変動性を有する。
【0157】
近紫外円偏光二色性分光法(CD)による立体配座安定性
EFXの三次構造を、近紫外CDによって評価した。タンパク質の近紫外CDスペクトルにおけるシグナルは、芳香族アミノ酸と関連付けられ、非対称立体配座環境に位置するジスルフィド結合と関連付けられ、タンパク質がその独特な3次元構造に折り畳まれたときにのみ存在する。
【0158】
Chirascan Auto Q100 CD分光計(Applied Photophysics Ltd.)上で、近紫外CDスペクトル測定(250~350nm)を得た。スペクトルを、2.0mg/mLのタンパク質濃度及び5.0mmの経路長を有する20℃で収集した。スペクトル帯域幅を1.0nmに設定し、1点当たりのサンプリング時間を1.0秒とし、ステップサイズを1.0nmとした。タンパク質試料の測定ごとに10回の連続スキャンを平均化した。タンパク質試料を測定する前に、製剤緩衝液の参照スペクトルを記録し、試料のスペクトルから差し引いた。減算後、CD値を平均残基楕円率([θ]mr)値に変換した。
【0159】
製剤F18及びF33中のEFXの近紫外CDスペクトルを
図26に示す。スペクトルは、トリプトファン残基に起因する289~292nmでの顕著なシグナル、チロシン残基に対応する270~285nmでの顕著なシグナル、及び250~270nmでの広範なジスルフィドシグナルに重ねられたフェニルアラニン及びチロシン残基に起因する250~270nmでの顕著なシグナルを含有する。これらの特徴の強度は、EFXの折り畳み構造内のジスルフィド結合及び芳香族アミノ酸の独自の構造配置を反映している。例えば、EFXの試料が完全に展開された場合、スペクトルはゼロ周りの直線であり、一方、部分的に展開されたタンパク質は、特にジスルフィド結合の空間配置に関連する250~270nmの領域において、様々なスペクトルシグナルの強度の低下を示すであろう。近紫外CDスペクトルの形状及び強度は、EFXが明確に定義された三次構造で折り畳まれていることを示す。
【0160】
示差走査微小熱量測定(μDSC)による熱安定性
EFXの熱安定性を、MicleCal Auto VP-Capillary DSCシステム(Malvern)を使用して示差走査微小熱量測定(μDSC)によって評価した。2.0mg/mLのタンパク質濃度を使用してサーモグラムを収集した。EFXの展開に関連する吸熱を特性化するために、EFXを含有するか、又はEFXを含まずに賦形剤及び緩衝剤を含む製剤の試料を、10~110℃で60℃/時の速度で加熱した。高温加熱中の試料の沸騰を防ぐために、μDSCセルを加圧した。ベースラインランを、基準細胞及び試料細胞の両方に製剤緩衝液を充填することによって実施した。ベースラインサーモグラムを、EFXを含有する製剤の各測定値から差し引いた。次に、試料の過剰熱容量値をタンパク質濃度に対して正規化した。熱遷移中点温度(Tm)値を、加熱スキャンの微分分析を使用して、ピーク又は肩部の中心で決定した。熱安定性パラメータの値を決定するために、Origin 7.0 DSCソフトウェアを用いて、データ分析及びピークデコンボリューションを実施した。
【0161】
F18及びF33中のEFXの代表的なサーモグラムを
図27に示す。それらは、約33.8~38.8、62.7~65.1、及び81.1~81.7℃のそれぞれのTm値を有する3つの独特の吸熱ピークを明らかにする(表17)。65℃でのピークは、2つの熱展開事象の存在を示す、顕著な左肩部を含むが、2つのピークは、デコンボリューションアプローチによって解明することができなかった。FGF21ドメインの展開に対応する38.8℃での第1の吸熱は、完全に可逆的である。
図28は、50℃に加熱し、10℃に冷却した後に得られた第2のサーモグラムと重ね合わせ、次いで50℃に再加熱したときのEFXの初期サーモグラムを示す。これらの2つの連続した熱溶融からの重ね合わせ可能なサーモグラムは、最初の展開(Tm1=38.8℃)が完全に可逆であることを確認する。
【0162】
【0163】
μDSC法は、約28℃での展開開始を例証し、EFXが立体配座的に不安定であることを示唆している。タンパク質が展開するにつれて、アミノ酸残基が外面でより露出し、潜在的にAsp及びGlnの脱アミド及びMetの酸化をもたらし得る一方で、より多くの疎水性アミノ酸の露出はタンパク質凝集を引き起こし得る。Arg/Arg-HCl、Glu、及びLysを含有する製剤は、EFXの立体配座安定性を改善し、それによって、物理的分解、凝集、及び電荷バリアントの形成を低減するようである。スクロースを含有する製剤はまた、トレハロースを含有するものよりも優れた粘弾性特性、立体配座及び熱安定性を有するようである。
【0164】
実施例5:凍結乾燥プロセス
この実施例は、室温で安定し、患者がEFXを自己投与することを可能にする製剤の開発を説明する。F2、F3、F7、F9、F12、F14、F15、F16、F17、F18、及びF33を含む11個のEFX製剤を、バイアル及びデュアルチャンバデバイス中で凍結乾燥した。様々な凍結乾燥プロセス設計/サイクル(パラメータ)を評価して、プロセスの堅牢性、重要な品質属性(CQA)の一貫性、及び室温での長期的な安定性を改善/最適化した。患者による自己投与の容易さを確実にするために、様々な製剤及び凍結乾燥プロセスセットパラメータについて、凍結乾燥物を再構成する時間を測定した。
【0165】
凍結乾燥プロセスの説明
凍結乾燥させる凍結乾燥プロセス/サイクルを変化させて、再構成時間、凍結乾燥ケーキの外観、再構成後のサブビジブル粒子数、及び長期保管中の安定性を含む、プロセス工程及びプロセス性能パラメータのCQAへの影響を評価した。
【0166】
初期凍結乾燥プロセス/サイクル
アニーリング工程のないバイアルの凍結乾燥プロセスの例を
図29に示す。凍結乾燥機の棚は、5℃で予め冷却され、最初の凍結サイクルは-45℃で続く。その後、一次乾燥を-25℃の棚温度及び0.08mBarのチャンバ圧力で行う。一次乾燥中に、生成物に熱を加えて、相分離された氷を昇華によって水蒸気に直接変換する。一次乾燥の終了(
図29の矢印で示される)は、キャパシタンスゲージ及びピラニ真空センサが棚温度を超えて安定した製品温度と一直線になる時点として定義される。一次乾燥は昇華によって氷結晶を除去するが、二次乾燥は拡散によってEFX水に結合したものを除去するために必要である。二次乾燥は昇華中にある程度起こるが、低い棚温度(一次乾燥に典型的)での水の脱着速度は低い。その後の二次乾燥サイクル中に棚温度を40℃に上げることによって、吸着された水は10時間後に完全に除去される。
【0167】
凍結乾燥プロセスの開発
凍結乾燥プロセスのバリエーションを調査した。特に、最初の凍結サイクルは、棚温度が凍結サイクル中に上下に循環するアニーリング工程を含むように適合された。アニーリングは、製剤の設計に応じて、2つの異なる目的を果たす:a)それは、相分離された結晶化賦形剤のための結晶の成長を可能にし、b)それは、オストヴァルト熟成を介して氷結晶のサイズを増加させ、これは、より大きな孔径をもたらし、それによって一次乾燥中の昇華速度を増加させる。この研究におけるアニーリング工程では、-10℃で5時間アニーリング(
図33)、-7℃又は-5℃で10時間アニーリング(図示せず)を検討した。アニーリング工程の完了時に、棚を-45℃に冷却し、凍結乾燥プロセスを-25℃で一次乾燥工程とともに継続した(
図30)。
【0168】
凍結乾燥プロセスにアニーリングサイクルを組み込むことが凍結乾燥EFXの再構成時間に及ぼす影響
EFXを含有する製剤の凍結乾燥された乾燥粉末ケーキを、製剤F33に基づいて、注射用水及び配合希釈剤で再構成した。患者による使用を容易にするために、再構成時間は、理想的には5分以下であるべきである(ただし、これは、本開示の文脈において必要とされない)。
【0169】
製剤の異なる乾燥固形分を考慮に入れるために、凍結乾燥中の水損失の重量測定を実施した。そのために、凍結乾燥の前後に各製剤の10バイアルを計量し、水損失を算出した。続いて、決定された注射用水量を使用して、乾燥粉末ケーキを再構成した。ピペットを使用して、容器クロージャ(バイアル又はデュアルチャンバデバイス、DCD)の中心部に水を添加した。容器クロージャを注意深く旋回させた(振動は避けた)。凍結乾燥ケーキを完全に再構成するのにかかった時間を記録した(時間:分:秒又は分:秒)。
【0170】
アニーリング工程なしの凍結乾燥プロセスの完了時に(
図29)、F2、F3、F7、F9、F12、F14、F15、F16、F17、及びF18を含む、100mg/mLのEFXに対応する10の凍結乾燥製剤の再構成時間を記録した(
図31を参照)。
【0171】
選択された10個の製剤の測定された再構成時間は、F2の1時間:20分:58秒から、F16の7分:55秒まで幅広く多岐にわたり、製剤の組成及びpHへの依存性を示している。特に、EFXが経時的に構造化ゲル格子を形成しやすいF2などの製剤では、再構成時間が著しく長かった。このような製剤は、高い粘度(
図4)及び非ニュートン挙動(
図5)で特性化される。より長い再構成時間は、EFXの等電点を下回るpHで配合された製剤でも明らかであった。
【0172】
凍結乾燥プロセスにアニーリング工程を組み込むこと(
図30)は、比表面積(密度の低いケーキ)を減少させ、細孔サイズ面積を最大化すること(
図37)によって凍結乾燥ケーキの構造を大幅に改善し、バイアル(
図32)及びデュアルチャンバデバイス(
図33)中の所与の製剤(例えば、F33)について再構成を約50%だけ加速した。
【0173】
比表面積(BET)
凍結乾燥ケーキの構造に対するアニーリング工程の効果を、比表面積BET分析によって評価した。選択された凍結乾燥製剤の比表面積を、Autosorb-1(Quantachrome Instruments)を使用したBET(ブルナウアー・エメット・テラー理論)法によって分析した。BET法は、固体材料の表面積の決定のために最も広く使用される手順であり、以下の式を使用する。
【数1】
W:相対圧力で吸着されたガスの重量(p/p0)[g];
p:77.3ケルビンの表面と平衡している吸着ガスの部分蒸気圧[Pa]、
p0:吸着ガスの飽和圧力[Pa]
Wm:表面被覆の単層を構成する吸着物の重量[g]
C:BET定数は、第1の吸着層の吸着エネルギーに関連しているす
【0174】
BET方程式は、1/[W(p0/p)-1]対p/p0の線形プロットを必要とし、これはほとんどの固体について、通常0.05~0.35のp/p0範囲の吸着等温線の限られた領域に限定されている。標準的な多点BET手法では、適切な相対圧力範囲内の最低3点が必要である。
【0175】
単層の重量(Wm)は、BETプロットの勾配(s)及び切片(i)から得ることができる。
【数2】
【0176】
BET法の適用における第2段階は、表面積の計算である。これには、吸着物分子の分子断面積(Acs)の知識が必要である。試料の全表面積(St)は、以下のように表すことができる:
【数3】
N:アボガドロ数(6.0221415×10
23個の分子/mol)
M:吸着物の分子量[g/mol]
【0177】
固体の比表面積(S)[m2/g]は、総表面積(St[m2])及び試料重量(w[g])から計算することができる。
S=St/w
【0178】
試料の調製及び分析
約100mgの凍結乾燥製品をスパチュラで慎重に小片に粉砕し、測定容器に移した。クリプトンの吸着によって面積を測定する前に、環境から吸着された全てのガスを試料の表面から除去する必要がある。測定容器を脱気ステーションに取り付け、真空をオンにした。室温で16時間脱気した後、真空を中止した。
【0179】
続いて、測定容器(セル)をヘリウム(0.7~1.0バール)で約5秒間充填した。クリプトンの吸着を-195.8℃(77.3K)の浴温度にて測定した。0.05~0.35のp/p0領域をカバーする7つのデータポイントを収集した。1/[W*(p0/p)-1]をp/p0に対してプロットした。
【0180】
凍結乾燥プロセスに組み込まれたアニーリング工程ありで又はなしで、製剤F33から製造された凍結乾燥ケーキの比表面積(BET)を
図34に提示する。比表面積の数値は、凍結乾燥中にアニーリング工程なしで製造されたケーキ(NAプロセス設計)と比較して、-5℃のアニーリング工程を10時間使用して製造されたケーキ(A1プロセス設計)又は-10℃のケーキを5時間使用して製造されたケーキ(A2プロセス設計)の数値がそれぞれ50%及び75%低かった(
図34を参照)。データは、凍結乾燥プロセスにおけるアニーリング工程の組み込みが、得られたケーキ(密度の低いケーキ)の比表面積を大幅に減少させることを例証しており、これはF33(
図33A及び33B)のような著しく短い再構成時間に関連している。
【0181】
走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)による凍結乾燥ケーキの形態及び構造の評価
EFXを含有する凍結乾燥製剤の形態を、SEM-EDX法によって、JSM-IT200(Jeol)システムを使用して分析した。試料調製を、制御された湿度(≦10%r.h)下でグローブボックス内で実施した。凍結乾燥ケーキ中の細孔の数、並びに二次電子検出器(SED)からのシグナルを使用して細孔の面積をカウントした。入射電圧及びプローブ電流を、それぞれ5kV及び20%に設定した。全ての測定は、20分間の平衡化後、制御されていない高真空下で行った。明るさとコントラストを調整して、得られる画像のコントラストを高くした。細孔の計数及びポア面積の定量化は、Jeol粒子解析ソフトウェアV3を使用して行った。(各試料について微調整された)取得された画像の明るさ値に基づいて、2レベルの二値化(マルチトーン画像の白黒への変換)を適用して、細孔を識別した。20μm2未満の面積を有する細孔を解析から除外した。
【0182】
SEM分析も、ベンチトップ走査電子顕微鏡(SEM)Phenom(Phenom-World B.V.)を使用して完了した。装置にはCCDカメラ及びダイヤフラム真空ポンプが装備されていた。試料の照射、並びに参照試料の球状粒子の分解能を確認した。
【0183】
凍結乾燥ケーキを回収するために、ケーキを含むガラスバイアルを、ダイヤモンド砥石、Proxxonを装備したMicromot 50/Eを使用して中央で水平に切断した。
図35に示すように、かみそりの刃を使用して凍結乾燥ケーキの水平及び垂直スライスを調製した。
【0184】
スライスを試料ホルダー上の炭素導電性セメント上に置き、断面の切断を表18に列挙したように上面として提示した。
【0185】
【0186】
EFX乾燥粉末ケーキを、20倍の光学倍率及び5kVの加速電圧を用いて真空下で分析した。電子光学倍率を、各試料の代表的な切片から収集された画像を用いて、340倍~10,000倍に調整した。最低倍率は、試料の高さ及びSEM内の位置に依存した。
【0187】
凍結乾燥プロセスにおけるアニーリング工程あり又はなしで、製剤F33から製造され、SEM-EDXによって分析された凍結乾燥ケーキの断面の細孔面積の分布の箱ひげ図を
図36に示す。アニーリング工程のないプロセスと比較して、アニーリング工程を伴う凍結乾燥によって製造されたケーキでは、より広い細孔面積の分布が明らかである。
【0188】
これと一致して、
図37のSEM画像は、凍結乾燥プロセスにおけるアニーリング工程の組み込みが、比表面積の減少(より密度の低いケーキ)及び孔径面積の最大化によって乾燥粉末ケーキ構造及び形態を大幅に改善し、一次及び二次乾燥プロセスステップを容易にし、再構成時間を改善することを例証している。
【0189】
実施例6:ストレス条件下で保管されたEFXの凍結乾燥製剤の長期安定性
pH範囲7.3~7.8の凍結乾燥製剤(F15、F16、F17、及びF33)を選択し、室温条件下(25℃/60%相対湿度)で保管した。最長12ヶ月間の保管後の安定性を評価するために、製剤を、EFX製剤のQC放出に使用される一連の試験に対して評価した。
図38は、製剤F15、F16、F17、及びF33における25℃での凍結乾燥EFXの長期安定性を示す試験のためのデータをまとめたものである。
【0190】
電荷バリアント、サイズバリアント(凝集、クリッピング/断片化)、MFIによるサブビジブル粒子形成、及び時間0、3ヶ月、6ヶ月(図示せず)、9ヶ月、及び14ヶ月における4つ全ての製剤におけるEFXの細胞ベースの効力を比較すると、データは、このpH範囲内のF33を含む凍結乾燥製剤についての重要な生成物属性の経時的な数値において、本質的に変化又は最小限の変化を示し、方法の可変性を可能にした。
【0191】
凍結サイクルにアニーリングステップを組み込んだ凍結乾燥プロセスは、プロセスの堅牢性を改善しただけでなく、一貫した製品属性、室温を含む様々な条件下での長期的な安定性、並びに患者による自己投与の容易さを可能にする迅速な再構成をもたらした。
【0192】
これらの観察は、最も安定した製剤F33で凍結乾燥されたEFXだけでなく、冷蔵及び室温条件下で液体として保管されたときに、電荷バリアント、サイズバリアント(HMWS及びLMWS)、及びサブビジブル粒子の形成の有意な速度を以前に例証した他の製剤にも適用可能であった。
【0193】
実施例7:EFXの血清濃度
インビボで様々な製剤の薬物動態パラメータを調べた。群1~7の各動物に、EFXを含む適切な試験物質製剤の単回皮下(SC)用量(体積5mL/kg)を投与した。各群に投与されるEFX製剤の詳細を、表19に提供する。各群は9匹の雌で構成され、各対象に投与された用量は100mg/kgであった。
【0194】
【0195】
投与後の様々な時点におけるEFXの濃度を
図39に図示する。
図40は、全身曝露(AUC)を示す薬物動態パラメータの要約を提供し、バイオアベイラビリティ、並びに全身循環における最高濃度(Cmax)の指標を提供する。驚くべきことに、PEG(すなわち、PEG4000)は、EFXに共有結合していないにもかかわらず、皮下注射後に全身曝露/バイオアベイラビリティを増加させた。
【0196】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。前述の発明は、理解を明確にするために例示及び実施例としてある程度詳細に説明されているが、本開示の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨又は範囲から逸脱することなく、特定の変更及び修正が行われ得ることは、当業者には容易に明らかであろう。
【配列表】
【国際調査報告】