(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】細胞分離のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
C12N 1/02 20060101AFI20241010BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C12N1/02
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522714
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 US2022046213
(87)【国際公開番号】W WO2023064233
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521242749
【氏名又は名称】レヴィタスバイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LEVITASBIO, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】524142459
【氏名又は名称】キャシー ラザルク
【氏名又は名称原語表記】LAZARUK, Kathy
(71)【出願人】
【識別番号】524142460
【氏名又は名称】クリストファー スティーヴンズ
【氏名又は名称原語表記】STEVENS, Christopher
(71)【出願人】
【識別番号】524142471
【氏名又は名称】ケヴィン トラヴァーズ
【氏名又は名称原語表記】TRAVERS, Kevin
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】キャシー ラザルク
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー スティーヴンズ
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン トラヴァーズ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB11
4B029CC01
4B029DD06
4B029DE08
4B029DF10
4B029DG08
4B029FA15
4B029GA02
4B029GA08
4B029GB05
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4B029HA04
4B029HA09
4B029HA10
4B065AA90X
4B065AB10
4B065AC20
4B065BA30
4B065BD14
4B065CA44
4B065CA60
(57)【要約】
様々なタイプの粒子を含む粒子の混合物または集団の磁気浮遊ベースの分離のための方法、デバイス、システムおよびキットの様々な実施形態が記載される。このような方法、デバイス、システムおよびキットのいくらかの実施形態は、様々な細胞タイプを含む細胞の混合物または集団の磁気浮遊ベースの分離に有用である。記載された方法、デバイス、システムおよびキットの他のいくらかの実施形態は、細胞の混合物または集団、あるいは生物学的分子の混合物または集団の磁気浮遊ベースの分離に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞分離の方法であって、次の:
a)マルチプル細胞タイプを含む細胞の集団において第一のタイプの細胞に第一の密度調整剤を結合させることであり、第一の密度調整剤は第一の非磁性微粒子および第一のタイプの細胞に優先的に結合する第一の連結剤を含み、それによって第一の複合体が形成され、前記第一の複合体は第一のタイプの個々の細胞に結合される第一の密度調整剤を含むこと;
b)常磁性流体媒体において懸濁物を形成することであり、懸濁物は複数の第一の複合体およびマルチプル細胞タイプの複数の細胞を含むこと;
c)懸濁物をフローセルカートリッジの処理チャネル中に導入すること;および、
d)第一の複合体の少なくともいくらかが処理チャネルにおいて第一の密度調整剤によって結合されていないマルチプル細胞タイプの細胞から分離されるのに十分な第一の時間の期間、処理チャネルを磁場に曝露することであり、それによって懸濁物の第一の部分であり、第一の部分が懸濁物に関して第一の複合体により豊富化されたもの、および懸濁物の第二の部分であり、第二の部分が懸濁物に関して第一の複合体において消耗されたものが形成されること
を含む。
【請求項2】
請求項1の方法であり、第一の連結剤は、第一のタイプの細胞の表面上で第一のモイエティに特異的に結合する能力がある第一の抗体または第一の抗体のドメインを含む。
【請求項3】
請求項2の方法であり、第一の密度調整剤の結合は、次の:
第一のタイプの細胞の表面上で第一のモイエティに特異的に結合する能力がある第一の抗体または第一の抗体のドメインの結合;および、
第一の抗体または第一の抗体のドメインと第一の非磁性微粒子との結合
を含む。
【請求項4】
請求項1より3までのいずれか一項の方法であり、第一の連結剤は第一の1以上で共有結合または非共有結合性相互作用によって第一の非磁性微粒子に結合する。
【請求項5】
請求項1より4までのいずれか一項の方法であり、次の:
e)処理チャネルから第一の部分の少なくとも一部分を取り出すこと、または第二の部分の少なくとも一部分を取り出すこと
をさらに含む。
【請求項6】
請求項5の方法であり、次の:
f)フローセルカートリッジから第一の部分の少なくとも一部分を取り出すこと、または第二の部分の少なくとも一部分を取り出すこと
をさらに含む。
【請求項7】
請求項5の方法であり、ステップ(e)はフローセルカートリッジの第一の出口チャネルを通して実行する。
【請求項8】
請求項1より7までのいずれか一項の方法であり、次の:
ステップ(a)において、マルチプル細胞タイプを含む細胞の集団において第二の密度調整剤を第二のタイプの細胞に結合させることであり、そこで第二の密度調整剤は第二の非磁性微粒子と、マルチプル細胞タイプの第二のタイプの細胞に優先的に結合する第二の連結剤とを含み、
そこで第二の密度調整剤の結合は第二の密度調整剤が第二の複合体を形成するために第二のタイプの個々の細胞に結合する条件下であり、各第二の複合体は第二のタイプの細胞に結合される第二の密度調整剤を含み、
そこで第二の複合体の密度は第二のタイプの細胞の密度、第一の複合体の密度、およびマルチプル細胞タイプの他のタイプの細胞の密度のいずれとも同じではないこと;
ステップ(b)において、懸濁物は複数の第二の複合体をさらに含むこと;
ステップ(d)において、第二の複合体の少なくともいくらかが処理チャネルにおいて第二の密度調整剤によって結合されていないマルチプル細胞タイプの細胞から、第一の複合体から、およびマルチプル細胞タイプの他のタイプの細胞から分離されるのに十分な第二の時間の期間、フローセルカートリッジを磁場に曝露することであり、それによって懸濁物の第三の部分であり、部分が懸濁物に関して第二の複合体により豊富化されたもの、および懸濁物の第四の部分であり、第四の部分が懸濁物に関して第二の複合体によって消耗されたものが形成されること
をさらに含む。
【請求項9】
請求項8の方法であり、第一の部分および第三の部分は同じであり、および/または第二の部分および第四の部分は同じである。
【請求項10】
請求項8または9の方法であり、第二の連結剤は第二のタイプの細胞の表面上で第二のモイエティに特異的に結合する能力がある第二の抗体または第二の抗体のドメインを含む。
【請求項11】
請求項10の方法であり、第二の密度調整剤の結合は、次の:
第二のタイプの細胞の表面上で第二のモイエティに特異的に結合する能力がある第二の抗体または第二の抗体のドメインの、第二のタイプの細胞の表面上での第二のモイエティへの結合;および、
第二の抗体または第二の抗体のドメインの第二の微粒子への結合
を含む。
【請求項12】
請求項8より11までのいずれか一項の方法であり、第二の連結剤は1以上の非共有結合性相互作用によって第二の非磁性微粒子に結合する。
【請求項13】
請求項4より12までのいずれか一項の方法であり、第一の連結剤、または第二の連結剤の1以上の非共有結合性相互作用は、無関係に、ビオチンとアビジン様分子との相互作用、抗体-抗原相互作用、または抗体-結合タンパク質ともしくは抗体-結合タンパク質のドメインとその結合パートナーとの間の相互作用の1以上を含む。
【請求項14】
請求項8より13までのいずれか一項の方法であり、第一の時間の期間および第二の時間の期間は一致する。
【請求項15】
請求項8より10までのいずれか一項の方法であり、次の:
f)処理チャネルからおよび/またはフローセルカートリッジから第三の部分の少なくとも一部分を取り出すこと、または第四の部分の少なくとも一部分を取り出すこと
をさらに含む。
【請求項16】
請求項15の方法であり、ステップ(f)はフローセルカートリッジの第二の出口チャネルを通して実行される。
【請求項17】
請求項1より16までのいずれか一項の方法であり、ステップ(d)はフローセルカートリッジのストップ-フローモードにおいてまたは連続フローモードにおいて実行される。
【請求項18】
請求項5より17までのいずれか一項の方法であり、ステップ(e)および(f)は懸濁物を処理チャネルの長さに沿って流すことを含む。
【請求項19】
請求項5より18までのいずれか一項の方法であり、ステップ(e)および(f)は同時または逐次的である。
【請求項20】
請求項1より19までのいずれか一項の方法であり、磁場におけるフローセルカートリッジの鉛直位置は可変性である。
【請求項21】
請求項1より20までのいずれか一項の方法であり、第一の微粒子および/または第二の微粒子は重合体微粒子である。
【請求項22】
請求項21の方法であり、重合体微粒子は、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、ポリスチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンの1以上を含む。
【請求項23】
請求項21または22の方法であり、重合体微粒子は重合体マイクロビーズまたは重合体マイクロバブルである。
【請求項24】
請求項1より20までのいずれか一項の方法であり、第一の微粒子および/または第二の微粒子はガラス微粒子である。
【請求項25】
請求項24の方法であり、ガラス微粒子はガラスマイクロビーズまたはガラスマイクロバブルである。
【請求項26】
請求項1より19までのいずれか一項の方法であり、第一の微粒子および/または第二の微粒子は非磁性金属微粒子である。
【請求項27】
請求項26の方法であり、非磁性金属微粒子はマイクロビーズまたはマイクロバブルである。
【請求項28】
請求項26または27の方法であり、非磁性金属微粒子は、金、銀、または白金を含む。
【請求項29】
請求項1より20までのいずれか一項の方法であり、第一の微粒子および/または第二の微粒子はマイクロバブルである。
【請求項30】
請求項29の方法であり、マイクロバブルは脂質マイクロバブルである。
【請求項31】
請求項1より30までのいずれか一項の方法であり、第一のタイプの1以上の細胞および/または第二のタイプの1以上の細胞は生細胞である。
【請求項32】
請求項1より31までのいずれか一項の方法であり、第一の複合体における第一のタイプの1以上の細胞および/または第二の複合体における第二のタイプの1以上の細胞は生細胞である。
【請求項33】
常磁性流体媒体と、個々の細胞と複合体を形成する能力がある1以上の密度調整剤または1以上の密度調整剤の別個の成分とを含む磁気浮遊キットであって、各々の複合体の密度は個々の細胞の密度とは異なり、および各密度調整剤は非磁性微粒子と、標的細胞タイプに優先的に結合する連結剤とを含む。
【請求項34】
請求項33のキットであり、非磁性微粒子はマイクロビーズまたはマイクロバブルである。
【請求項35】
請求項34のキットであり、非磁性微粒子は金属微粒子または重合体微粒子である。
【請求項36】
請求項35のキットであり、金属微粒子は、金、銀、または白金を含む。
【請求項37】
請求項35のキットであり、重合体微粒子は、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、ポリスチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンの1以上を含む。
【請求項38】
請求項34のキットであり、非磁性微粒子は脂質マイクロバブルである。
【請求項39】
請求項34のキットであり、非磁性微粒子はガラス微粒子である。
【請求項40】
請求項33より39までのいずれか一項のキットであり、連結剤は、標的細胞タイプの表面上で第二のモイエティに特異的に結合する能力がある抗体または第二の抗体のドメインである。
【請求項41】
請求項33より40までのいずれか一項のキットであり、連結剤は非磁性微粒子に共有結合している。
【請求項42】
請求項33より41までのいずれか一項のキットであり、キットは1以上の密度調整剤の別個の成分として1以上のタイプの非磁性微粒子および1以上のタイプの連結剤を含み、1以上のタイプの非磁性微粒子は1以上のタイプの連結剤との非共有結合性相互作用を媒介する能力があるモイエティにより表面修飾されている。
【請求項43】
請求項42のキットであり、非共有結合性相互作用は、アプタマー結合タンパク質とそのアプタマーとの相互作用、ビオチンとアビジン様分子との相互作用、抗体-抗原相互作用、または抗体結合タンパク質ともしくは抗体結合タンパク質のドメインとその結合パートナーとの間の相互作用の一以上を含む。
【請求項44】
細胞分離のためのシステムであって、次の:
単独または第一の他の試薬との組合せで、マルチプル細胞タイプを含む細胞の集団において第一のタイプの細胞に優先的に結合し、および微粒子と第一のタイプの細胞との第一の複合体を形成する能力がある第一の非磁性微粒子であり、第一の複合体が、第一のタイプの細胞の密度とは、およびマルチプル細胞タイプの他のタイプの細胞とは異なる密度を有するもの;
第一の出口チャネルおよび処理チャネルを含むフローセルカートリッジ;
フローセルカートリッジのための保持ブロックおよび保持ブロックにおいて配置されたフローセルカートリッジの処理チャネルを磁場に曝露するように位置付けられた1以上の磁石を含むステーション
を含み、
マルチプル細胞タイプの細胞の懸濁物を含有するフローセルカートリッジの処理チャネルを常磁性流体媒体において磁場に曝露することにより、第一の複合体が処理チャネルにおいて、第一の非磁性微粒子によって結合されていないマルチプル細胞タイプの細胞から、およびマルチプル細胞タイプの他のタイプの細胞から分離されることを可能にされる。
【請求項45】
請求項44のシステムであり、次の:
単独または第二の試薬との組合せで、細胞の集団において第二のタイプの細胞に優先的に結合し、第二の微粒子と第二の微粒子の第二の複合体を形成する能力がある第二の非磁性微粒子であり、第二の複合体は第二のタイプの細胞の密度とは異なり、第一の複合体の密度とは異なり、マルチプル細胞タイプの他のタイプの細胞とは異なる密度を有するもの
をさらに含み、
マルチプル細胞タイプの細胞の懸濁物を含有するフローセルカートリッジの処理チャネルを常磁性流体媒体において磁場に曝露することにより、第二の複合体が処理チャネルにおいて第二の非磁性微粒子によって結合されていないマルチプル細胞タイプの細胞から、第一の複合体から、およびマルチプル細胞タイプの他のタイプの細胞から分離されることを可能にされる。
【請求項46】
請求項44または45のシステムであり、第一の微粒子および/または第二の微粒子は重合体微粒子である。
【請求項47】
請求項46のシステムであり、重合体微粒子は、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、ポリスチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンの1以上を含む。
【請求項48】
請求項46または47のシステムであり、重合体微粒子は重合体マイクロビーズまたは重合体マイクロバブルである。
【請求項49】
請求項44より48までのいずれか一項のシステムであり、第一の微粒子および/または第二の微粒子はガラス微粒子である。
【請求項50】
請求項49のシステムであり、ガラス微粒子はガラスマイクロビーズまたはガラスマイクロバブルである。
【請求項51】
請求項44より50までのいずれか一項のシステムであり、第一の微粒子および/または第二の微粒子は非磁性金属微粒子である。
【請求項52】
請求項51のシステムであり、非磁性金属微粒子はマイクロビーズまたはマイクロバブルである。
【請求項53】
請求項51または52のシステムであり、非磁性金属微粒子は、金、銀、または白金を含む。
【請求項54】
請求項44より53までのいずれか一項のシステムであり、第一の微粒子および/または第二の微粒子はマイクロバブルである。
【請求項55】
請求項54の方法であり、マイクロバブルは脂質マイクロバブルである。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
この出願は、2022年4月7日に出願された米国仮出願第63/362,630号、および2021年10月12日に出願された米国仮出願第63/254,944号の利益を主張する。これらの出願の全体の内容および開示は参照によりここに組み込まれる。
本発明の背景
【0002】
近年、細胞および生物学的分子を含め、粒子を分離するための有用な方法として磁気浮遊が出現した。磁気浮遊の間、常磁性流体媒体中に懸濁された粒子は、磁場勾配に曝露され、それは常磁性流体媒体中の磁気エネルギー密度と同等の不均一な圧力を生成する。磁場勾配において、磁気浮遊を受けた粒子(または「物体」)は高磁場の領域からはじかれるように見える。実際には、物体は等しい容量の常磁性流体媒体によって置き換えられる。常磁性流体媒体および高磁場の領域間の誘因性の相互作用は物体の磁気浮遊をもたらす。生細胞を浮遊させるための条件およびシステムが確立されており、および真核細胞と原核細胞の両方が固有の磁気浮遊プロファイルを有することが実証されている。Durmus(ドゥルムス)ら、2015、「Magnetic levitation of single cells(単一細胞の磁気浮遊)」、Proc Natl Acad Sci USA(プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ)112(28):E3661-8(「Durmus」)参照。異なる浮遊高さで細胞を収集し、および下流分析と他の用途のためにそれらを収集するためのシステムが開発されている。
本発明の簡潔な概要
【0003】
この文書において使用する「発明」、「その発明」、「この発明」、および「本件発明」という用語は、この特許出願および後述の請求の範囲の主題のすべてを広く参照することが意図される。これらの用語を含む提示は、本開示において記載する主題を制限するものではなく、または後述の請求の範囲の意味または範囲を制限するものではないと理解されるべきである。本発明の保護を与えられた実施形態は、この概要ではなく、請求の範囲によって規定される。この概要は、本発明の様々な態様のハイレベルの概説であり、および本文書と添付図面に記載されおよび例示されている概念のいくらかを導入する。この概要は請求する主題の主要なまたは本質的な特長を明らかにすることを意図するものではなく、請求する主題の範囲を定めるために分離して使用されることを意図するものでもない。主題は、全体的明細、任意のまたはすべての図、および各請求項の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。本発明の模範的実施形態のいくらかについて以下に説明する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態の中に含まれ、および本開示に記載されているのは、細胞分離の方法であって、以下のステップ:マルチプル細胞タイプを含む細胞の集団において第一のタイプの細胞に第一の密度調整剤(density modifying agent)を結合させることであり、第一の密度調整剤は第一の非磁性微粒子および第一のタイプの細胞に優先的に結合する第一の連結剤を含み、それによって第一の複合体が形成され、前記第一の複合体は第一のタイプの個々の細胞に結合される第一の密度調整剤を含むこと;常磁性流体媒体において懸濁物を形成することであり、懸濁物は複数の第一の複合体およびマルチプル細胞タイプの複数の細胞を含むこと;懸濁物をフローセルカートリッジの処理チャネルに導入すること;および第一の複合体の少なくともいくらかが処理チャネルにおいて第一の密度調整剤によって結合されていないマルチプル細胞タイプの細胞から分離されるのに十分な第一の時間の期間、処理チャネルを磁場に曝露することであり、それによって懸濁物の第一の部分であり、第一の部分が懸濁物に関して第一の複合体により豊富化されたもの、および懸濁物の第二の部分であり、第二の部分が懸濁物に関して第一の複合体において消耗されたものが形成されることを含む。また、本発明の実施形態の中に含まれ、および本開示に記載されているのは、常磁性流体媒体と、個々の細胞と複合体を形成する能力がある1以上の密度調整剤または1以上の密度調整剤の別個の成分とを含む磁気浮遊キットであって、各々の複合体の密度は個々の細胞の密度とは異なり、および各密度調整剤は非磁性微粒子と、標的細胞タイプに優先的に結合する連結剤とを含む。また、本発明の実施形態の中に含まれ、および本開示に記載されているのは、細胞分離のためのシステムであり、次の:単独または第一の他の試薬と組合せで、マルチプル細胞タイプを含む細胞の集団において第一のタイプの細胞に優先的に結合し、および微粒子と第一のタイプの細胞との第一の複合体を形成する能力がある第一の非磁性微粒子であり、第一の複合体が、第一のタイプの細胞の密度とは、およびマルチプル細胞タイプの他のタイプの細胞とは異なる密度を有するもの;第一の出口チャネルおよび処理チャネルを含むフローセルカートリッジ;フローセルカートリッジのための保持ブロックおよび保持ブロックにおいて配置されたフローセルカートリッジの処理チャネルを磁場に曝露するように位置付けられた1以上の磁石を含むステーションを含み、マルチプル細胞タイプの細胞の懸濁物を含有するフローセルカートリッジの処理チャネル常磁性流体媒体において磁場に曝露することにより、第一の複合体が処理チャネルにおいて、第一の非磁性微粒子によって結合されていないマルチプル細胞タイプの細胞から、およびマルチプル細胞タイプの他のタイプの細胞から分離されることを可能にされる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図2】磁気浮遊システムの模範的なフローセルカートリッジの2つの概観の略図である。
【
図3】本発明の模範的な実施形態による方法の略図である。
【
図4】本発明の模範的な実施形態による方法の略図である。
【
図5】本開示に記載されるいくつかの実施形態によるマイクロバブルと複合体化された細胞の略図である。
【
図6】本開示を説明するいくつかの実施形態によるマイクロバブルに複合体化された細胞の分離を例示する写真画像である。
【
図7】本開示を説明するいくつかの実施形態によるマイクロバブルに複合体化された細胞の分離を例示する箱型図である。
【
図8】本開示のいくつかの実施形態によるマイクロビーズと複合体化された細胞の略図である。
【
図9】本開示を説明するいくつかの実施形態による重合体マイクロビーズに複合体化された細胞の分離を例示する写真画像である。
【
図10】本開示を説明するいくつかの実施形態による金マイクロビーズに複合体化された細胞の分離を例示する写真画像である。
【
図11】金ナノ粒子に接合された抗体の不存在下、および金ナノ粒子に接合された抗体の存在下における細胞の浮遊高さを示すドットプロットである。
【
図12】細胞表面に複合体化された微粒子のモデルの略図である。
【
図13】微粒子-細胞複合体の密度計算を例示する表であり、微粒子は1.063g/cm
3の密度を有し、および細胞は11.5μmの直径を有する。
【0006】
本発明の詳細な記載
細胞は磁気浮遊を受けたときにそれらの挙動を決定する固有の特性を有する。Durmusらは、常磁性流体媒体において細胞が浮遊する高さ(「浮遊プロファイル」)が細胞密度に対応すること、およびそれらの特徴的な磁気浮遊プロファイルに基づいて異なる細胞タイプを区別することができることを示した。同時係属し、共通に所有され、参照によりここに組み込まれた2021年9月29日付け出願の米国特許出願第17/449,438号も参照し、それは生細胞からの死細胞の分離のための方法を含み、磁気浮遊による細胞の分離のための方法およびシステムを記載する。本開示では、磁気浮遊による、細胞を含めた粒子の分離のための改善されたプロセス(方法)、デバイス、システムおよびキットを説明する。
【0007】
本発明者らは、磁気浮遊プロセス中に、粒子、例えば、細胞などのようなものの分離を改善する方法を発見した。本発明者らは、非磁性微粒子に細胞を結合させることによって、細胞が磁気浮遊システムのフローセルカートリッジでの常磁性流体媒体において懸濁され、および磁場に曝されるときに、それらが細胞の浮遊高さを変えることが可能であることを見出した。浮遊高さは磁気浮遊システムのフローセルカートリッジにおける細胞の鉛直位置によって規定され得る。言い換えると、本発明者らは、細胞を密度調整性(density-modifying)非磁性微粒子と複合体化させることによって磁気浮遊プロセス中に細胞の浮遊高さを制御することが可能であった。一例では、細胞特異的表面マーカーを有する細胞は、抗表面マーカー抗体に接合された低密度非磁性微粒子に連結した。結果として生じる複合体は常磁性媒体において懸濁させ、および磁気浮遊システムのフローセルカートリッジの処理チャネルにおいて磁気浮遊させた。非磁性微粒子に結合する細胞(細胞-微粒子複合体)の密度は、結合していない(複合体化していない)ものよりも低かったという条件で、細胞と低密度非磁性微粒子との複合体は、処理チャネルにおいて低密度非磁性微粒子と複合体化していない同じ細胞よりも高く浮遊した。別の例では、細胞特異的表面マーカーを有する細胞は、抗表面マーカー抗体に接合した高密度非磁性微粒子と複合体化し、結果として生じる複合体は常磁性媒体において懸濁され、および磁気浮遊システムのフローセルカートリッジの処理チャネルにおいて浮遊する。非磁性微粒子に結合する細胞(細胞-微粒子複合体)の密度は、未結合の(複合体化されていない)細胞ものよりも高かったという条件で、細胞と高密度非磁性微粒子との複合体は、処理チャネルにおいて高密度微粒子と複合体化していない同じ細胞よりも低く浮遊した。密度調整非磁性微粒子が、マルチプル細胞タイプを含む細胞の集団において見出される興味ある細胞タイプの表面マーカー特性に特異的な抗体に接合することによって、本発明者らは興味ある細胞タイプに属する細胞の浮遊高さを選択的に変えることが可能であった。
【0008】
上記の例では、細胞と微粒子との複合体の浮遊高さは各複合体における微粒子の数によって影響を受ける。複合体における1細胞あたりの微粒子の数は、複合体形成中の粒子の細胞に対する比率(「PTC比」)を約1から約100,000までに変化させることによって変動させることができる。PTC比はまた、粒子対細胞比、微粒子対細胞比、ビード対細胞比として、または他の関連する用語および表現によっても称することができる。本発明者らは、PTC比を増加させることが複合体の浮遊高さを低下させることを見出した。いくらかの場合、複合体形成中により一層高い濃度を達成するために、より一層小さい微粒子を使用することが有益であり得、それは増加したPTC比をもたらし得る。本発明者らはまた、PTC比および適用磁場強度に加えて、様々な他のパラメータが細胞と微粒子との複合体の浮遊高さに影響を及ぼすことを見出した。これらのパラメータのいくつかは、微粒子、微粒子サイズ、および微粒子密度に含まれる材料の特性である。
【0009】
フローセルカートリッジにおける細胞または粒子の浮遊高さは、磁気浮遊システムの磁石に関するフローセルカートリッジの位置に依存する。その結果、フローセルカートリッジは、密度調整剤で細胞がタグ付けされた結果として様々な位置にて浮遊している細胞を捕捉するために磁石に関して移動させることができる。密度調整非磁性微粒子は本開示において詳しく議論するように、磁気浮遊によって、常磁性媒体において懸濁された細胞の混合集団から特定の細胞を分別する(segregate)ために使用されてよく、興味ある細胞タイプについて豊富化または消耗されたフラクションがもたらされる。次いで、これらのフラクションは磁気浮遊システムのフローセルから取り出され、興味ある細胞タイプの分離がなし遂げられる。また、本開示に記載されるように、様々なタイプの異種混合物からの興味ある様々な成分を磁気浮遊させることによって、分離、例えば、細胞小器官、核酸、または他の分子の分離などのようなもののために密度調整非磁性微粒子を使用してもよい。興味ある成分(例は、細胞、細胞小器官、核酸)は時には「被分析物」と呼ばれることもある。
【0010】
このように、本開示は、様々なタイプの粒子を含む粒子の混合物または集団の磁気浮遊ベースの分離のための方法、デバイス、システム、およびキットの様々な実施形態を説明する。本発明者らによって考えられるプロセス、デバイス、方法、およびキットは、様々な用途に有用である。本開示に記載される方法、デバイス、システム、キットのいくらかの実施形態は、種々の細胞タイプを含む細胞の異種混合物または集団からの細胞または細胞亜集団の磁気浮遊ベースの分離に有用である。本開示に記載される方法、デバイス、システム、およびキットのいくつかの他の実施形態は、細胞小器官または他の細胞成分(細胞内および細胞外成分、例えば、制限されないが、エンドソームまたはエキソソームを含む)の混合物または集団の磁気浮遊ベースの分離に有用である。本開示に記載のさらにいくつかの他の実施形態の方法、デバイス、システム、およびキットは、生物学的分子の混合物または集団、または分子の複合体の磁気浮遊ベースの分離、例えば、核酸の分離などのようなもの、例えば、次世代シークエンシング(NGS)中の核酸ライブラリーの分離、またはリポタンパク質の分離に有用である。
【0011】
本開示で説明される方法、デバイス、システム、およびキットは、以前に既知の磁気浮遊ベースの分離方法に対して様々な利益を所有する。これらの利益のいくつかは、改善された分離精度および速度、改善された再現性、ならびに複雑な多成分混合物を分離する能力である。いくつかの他の利益は、さもなければ磁気浮遊中に特定の位置に浮遊させることが困難であろう分子、一例は、RNAであるもの(例えば、溶解細胞から放出されたRNAなどのようなもの)を浮遊させる能力、および非常に類似した密度を有する細胞タイプを磁気浮遊によって分離する能力である(および従って、本開示に記載の密度調整非磁性微粒子の支援なしに磁気浮遊を使用して分離することができない)。
用語および概念
【0012】
いくつかの用語および概念は以下で説明される。それらは本発明の様々な実施形態の理解を本文書の残りおよび添付の図面と併せて容易にすることを意図している。これらの用語および概念は、本発明の分野における受け入れられた慣例、ならびに本文書および/または添付の図面全体にわたって提供される説明に基づいて、さらに明確化および理解され得る。いくつかの他の用語は、この文書の他のセクションおよび添付の図面において明示的または黙示的に規定することができ、および本発明の分野における受け入れられた慣例、本文書および/または添付の図面全体にわたって提供される説明に基づいて使用および理解し得る。明示的に定義されていない用語はまた、本発明の分野における受け入れられた慣例に基づいて規定しおよび理解し、ならびに本文書および/または添付する図面の関連において解釈することができる。
【0013】
文脈によって別段の指示がない限り、単数形の用語は複数を含み、および複数の用語は単数を含むとすべきである。概して、細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学およびタンパク質ならびに核酸化学に関連して使用される命名法、およびその技術はよく知られ、および普通に使用される。既知の方法および技術は、別なふうに指定されない限り、よく知られ、ならびに様々な一般的およびより一層特定の参考文献に記載されているように慣習的な方法に従って通例実行される。本開示で説明される実験室手順および技術に関連して使用される名称は、よく知られており、および普通に使用されるものである。
雑則
【0014】
本開示で使用するように、用語「a(不定冠詞、ある)」、「an(母音の前の不定冠詞)」、および「the(定冠詞、その)」は、特に明記しない限り、1またはそれよりも多くに言及することができる。
【0015】
「または」という用語の使用は、代替だけを指すように明示的に示されない限り、または代替が相互に排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替および「および/または」だけに言及する規定をサポートする。本開示において使用するように、「別の」は、少なくとも第二の、またはそれよりも多くを意味することができる。
【0016】
本開示で使用するように、および別段の指示がない限り、用語「include(全体の一部・成分として含む)」、「including(含むこと)」、およびいくつかの事例では、同様の用語(例えば、「have(有する)」または「having(有すること)」などのようなもの)は、「comprising(構成要素として持つ・含むこと)」を意味する。
【0017】
本開示において数値範囲が設けられるとき、特に断らない限り、数値範囲は範囲の端点を含む。別段の指示がない限り、本開示における数値範囲は、明示的に記載されているかのように、すべての値および部分範囲を含む。
【0018】
本開示で使用される「約」および「およそ」という用語は、測定の性質または精度を考慮して、測定された量についての許容可能な誤差の程度を概して意味するべきである。誤差の模範的な程度は、与えられる値または値の範囲の20%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%以内である。例えば、「約X」または「およそX」への任意の言及は、具体的には、少なくとも値X、0.9X、0.91X、0.92X、0.93X、0.94X、0.95X、0.96X、0.97X、0.98X、0.99X、1.01X、1.02X、1.03X、1.04X、1.05X、0.06X、1.07X、1.08X、1.09X、および1.10Xを指し示す。別の例では、基準数値に関して「約」または「およそ」という用語は、その値からプラスまたはマイナス10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%の値の範囲を含むことができる。このように、「約X」または「およそX」という表現は、例えば、「0.98X」という請求項の制限を説明することを意図する。本開示において与えられる数量は、別段の規定がない限り、近似であり、明示的に述べられていないときに、「約」または「およそ」という用語を推測することができることが意味される。「約」または「およそ」という用語が数値範囲の始まりに適用されるとき、それらは範囲の両端に適用される。一連の値が「約」または「およそ」という用語で先行されている場合、これらの用語は連続して含まれる各値を修飾することを意図している。
【0019】
「複数の」または「集団」という用語は、粒子、制限されないが、例えば、細胞などのようなもの(例えば、「複数の細胞」または「細胞の集団」におけるようなもの)に関連して使用されるとき、様々な数の粒子を含め、粒子の群(すなわち、1よりも多くの粒子)を指す。例えば、粒子、例えば、細胞などのようなものの複数または集団は、2以上、10以上、100以上、500以上、103以上、104以上、105以上、106以上、107またはそれらよりも多くの粒子を含み得る。
【0020】
「ペプチド」、「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、自然アミド結合および/または非自然アミド結合によって連結されたアミノ酸のポリマーを指すために使用される。ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、アミノ酸以外のモイエティ(例えば、脂質または糖)を含んでもよい。ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、合成的にまたは組換え技術によって生産され得る。
【0021】
「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、DNAまたはRNA分子を包含し、合成的にまたは組換え技術によって生産された分子を含む。オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸は一本鎖または二本鎖であり得る。
【0022】
「小分子」という用語は、分子(有機、有機金属、または無機のいずれをも)、有機分子、および無機分子をそれぞれ含み、それらは約50Daを超え、および約2500Da未満の分子量を有する。小有機(例えば)分子は、約2000Da未満、約100Daより約1000Daまでの間、または約100Daより約600Daまでの間、または約200Daより約500Daまでの間であってもよい。
分離、単離、および濃度
【0023】
本開示において使用するように、「濃度」という用語は、第二の成分内に含まれる第一の成分の量を意味し、および単位容量あたりの粒子の数、単位容量あたりのモル量、単位容量あたりの重量に基づき、または組み合わされた成分の容量あたりの第一の成分の容量に基づき得る。
【0024】
本開示で使用されるように、用語「単離」、「分離」、「分別」、「精製」、およびそれらのそれぞれの関連する用語および表現は、互換的に使用され得る。これらの用語は、サンプルにおいて存在する1以上の他の成分に関して興味ある1以上の成分の量を豊富化する手順を指すために使用され得る。粒子または成分(それは細胞であり得る)に関して、そのような用語は、1以上の次の:そのような成分を他の成分から分離すること、溶液内の成分の濃度を増加させること、または、ある成分を溶液において他の成分から分離することを意味し得る。例えば、溶液内の粒子は、それが溶液における他の粒子から分別され、および/または溶液の規定された部分内に配置される場合、「単離された」と考えられてもよい。別の例では、溶液内の粒子または成分は、溶液を処理した後、そのような粒子または成分の濃度を少なくとも約100:1、90:1、80:1、70:1、60:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、5:1、3:1 2:1、1.5:1または1.1:1の比によって増加させる場合、「単離された」と考えられる。マルチプルタイプの粒子を含有する溶液内の興味ある粒子は、溶液を処理した後、他のタイプの粒子の濃度に対する興味ある粒子の濃度の比を増加させる場合、または他のタイプの粒子の濃度に対する興味ある粒子の濃度の比を少なくとも約10%、50%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、または1000%によって増加させる場合、または溶液の他の成分の濃度(制限されないが、興味ある粒子以外の粒子のタイプを含めて)を少なくとも約80%、70%、60%、50%、40%、30% 20%、15%、10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0.5%に減少させる場合、「分別された」と考えられてもよい。
密度調整剤
【0025】
密度調整剤(density modifying agent)は、(i)非磁性微粒子および(ii)特定された(例は、第一の)タイプの細胞に優先的に結合する連結剤を含む。密度調整剤は、連結剤によって、同様に、特定された(例は、第一の)タイプの細胞に優先的に結合する。密度調整剤は、時には「タグ」と呼ばれる。密度調整剤を細胞(または他の物体)に連結するプロセスは、時には「タグ付け」と呼ばれる。
非磁性微粒子
【0026】
用語「微粒子」、「微小球」、「マイクロビード」、および「マイクロバブル」(それらはそれぞれ、「ナノ球体」、「ナノスフェア」、「ナノ粒子」、「ナノビード」、および「ナノバブル」を包含する)は、約500μm以下の1以上の寸法(例えば、長さ、幅、直径、または周囲などのようなもの)を有する(後述するように)非磁性粒子を指す。微粒子は、以下に説明するように、特徴のある密度を有するものとして説明し得る。微粒子は、略球形状または非球形状を有していてもよい。「マイクロバブル」および「マイクロビーズ」は特定のサブタイプの微粒子である。
【0027】
用語「マイクロバブル」は通常、内部に空の空間または空洞(またはマルチプルな空の空間または空洞)を有する微粒子を指し、空の空間または空洞の合計容量は、微粒子の内部容量のかなり大きい割合(少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%)を占める。空の空間または空洞(またはマルチプルの空の空間または空洞)はガスで満たされ得る。マイクロバブルは「中空」と記載されてもよい。"
【0028】
本開示の関連における「マイクロビード」という用語は、通常、内部に相当に大きな空の空間または空洞(またはマルチプルな空の空間または空洞)を有さない微粒子を指し、空の空間または空洞の合計容量は、マイクロビードの内部容量の50%、40%、30%、20%、10%または5%以下しか占めない。マイクロビードは、「固体」または「実質固体」として(感知できるほど大きな内部空洞または空洞を有しないという意味で)説明し得る。本開示の関連において、マイクロビードはまた「アンカー」と呼ばれることもある。
【0029】
本発明の実施形態で使用される微粒子はある範囲のサイズおよび密度を有することができる。例えば、微粒子は断面寸法(例は、直径、長さ、幅)約500μm以下、約100μm以下、約50μm以下、約20μm以下、約10μm以下、約5μm以下、約1μm(1000nm)以下、約0.5μm(500nm)以下、約0.25μm(250nm)以下、約0.1μm(100nm)以下 約0.05μm(50nm)以下、または約0.025μm(25nm)以下、例えば、約500μmより約0.01μmまで(10nm)、約500μmより約0.025μm(25nm)、約500μmより約0.05μmまで(50nm)、約500μmより約0.1μmまで(100nm)、約500μmより約0.25μmまで(250nm)、約500μmより約0.5μmまで(500nm)、約500μmより約1μmまで(1000nm)、約500μmより約10μmまで、約500μmより約20μmまで、約500μmより約100μmまで、約100μmより約0.01μmまで(10nm)、約100μmより約0.025μmまで(25nm)、約100μmより約0.05μmまで(50nm)、約100μmより約0.1μmまで(100nm)、約100μmより約0.25μmまで(250nm)、約100μmより約0.5μmまで(100nm)、約100μmより約1μmまで(1000nm)、約100μmより約10μmまで、約100μmより約20μmまで、約20μmより約0.01μmまで(10nm)、約20μmより約0.025μmまで(25nm)、約20μmより約0.05μmまで(50nm)、約20μmより約0.1μmまで(100nm)、約20μmより約0.25μmまで(250nm)、約20μmより約0.5μmまで(20nm)、約20μmより約1μmまで(200nm)、または約20μmより約10μmまでの範囲での断面寸法などのようなものを有してもよい。
【0030】
本発明の実施形態で使用される微粒子は、制限されないが、ガラス、シリカ、セラミック、非磁性金属(例えば、金、銀、または白金などのようなもの)、または脂質を含めて、任意の数の物質またはそれらの組合せから構成されることができ、またはそれらを含むことができる。いくつかの実施形態では、微粒子は重合体微粒子である。重合体微粒子は、様々なタイプのポリマー、例えば、制限されないが、ポリメチルメチルアクリラート(PMMA)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリルアミド、アルギン酸およびその塩、またはアガロースなどのようなものを含むか、またはそれらから構成されることができる。材料の組合せを含む微粒子のいくつかの非制限的な例は、金被覆シリカ粒子およびシリカ被覆金粒子である。微粒子が2以上の材料の様々な他の組合せを含むことができることが理解される。
【0031】
微粒子はある範囲の密度を有し得る。より一層具体的には、密度調整剤はある範囲の密度を有し得るが、リンカー部分は、微粒子密度が密度調整剤の密度の妥当な近似として働くように、密度調整剤の密度に対して比較的小さい影響を有する。微粒子の密度に対するすべての言及は、密度調整剤の密度に等しく言及すると認められるであろう。以下の範囲での密度を有する微粒子はここに記載の分離方法で使用し得る:約0g/cm3から約21.5g/cm3まで、約0g/cm3から約19.5g/cm3まで、約0.001g/cm3から約21.5g/cm3まで、約0.001g/cm3から約19.5g/cm3まで、約0.01g/cm3から約21.5g/cm3まで、約0.01g/cm3から約19.5g/cm3まで、約0.1g/cm3から約21.5g/cm3まで、約0.1g/cm3から約19.5g/cm3まで、約0.1g/cm3から約21.5g/cm3まで、約0.1g/cm3から約19.5g/cm3まで、約0.5g/cm3から約21.5g/cm3まで、約0.5g/cm3から約19.5g/cm3まで、約0.7g/cm3から約19.5g/cm3まで、約0.7g/cm3から約21.5g/cm3まで、約0.9g/cm3から約21.5g/cm3まで、約0.9g/cm3から約19.5g/cm3まで、約0g/cm3から約0.9g/cm3まで、約0.001g/cm3から約0.9g/cm3まで、約0.01g/cm3から約0.9g/cm3まで、約0.1g/cm3から約0.9g/cm3まで、約0.5g/cm3から約0.9g/cm3まで、約0.7g/cm3から約0.9g/cm3まで、1.2g/cm3から約21.5g/cm3まで、約2g/cm3から約21.5g/cm3まで、約3g/cm3から約21.5g/cm3まで、約4g/cm3から約21.5g/cm3まで、約5g/cm3から約21.5g/cm3まで、約6g/cm3から約21.5g/cm3まで、約7g/cm3から約21.5g/cm3まで、約8g/cm3から約21.5g/cm3まで、約9g/cm3から約21.5g/cm3まで、約10g/cm3から約21.5g/cm3まで、約11g/cm3から約21.5g/cm3まで、約12g/cm3から約21.5g/cm3まで、約13g/cm3から約21.5g/cm3まで、約14g/cm3から約21.5g/cm3まで、約15g/cm3から約21.5g/cm3まで、約16g/cm3から約21.5g/cm3まで、約17g/cm3から約21.5g/cm3まで、約18g/cm3から約21.5g/cm3まで、約19g/cm3から約21.5g/cm3まで、または約20g/cm3から約21.5g/cm3までの範囲である。
【0032】
単一の分離プロセスにおいて使用される微粒子は、異なる密度を有するマルチプル(2以上)の微粒子を含み得ることが認識されるであろう。例えば、1つの密度の微粒子は、第一の細胞タイプ(例は、CD8+T細胞)に接合されてもよく、および異なる密度の微粒子は、第二の細胞タイプ(例は、CD4+T細胞)に接合されてもよい。概して、単一細胞分離プロセスでは、同じ連結剤を含む(または同じ特異性を有する連結剤を含む)密度調整剤は、同じ密度を有する微粒子に関連付けられる。
微粒子選定に影響を及ぼす因子
【0033】
磁気浮遊中での細胞または他の物体への密度調整剤の結合および結果として生じる複合体の挙動は、以下に制限されないが、密度調整剤に含まれる微粒子の密度、複合体形成中での微粒子の細胞に対する比(PTC比は本開示の他の箇所で論じられる)、微粒子サイズ、タグ付けされている細胞または他の物体のサイズ、上記サイズの比、微粒子表面上の連結剤の密度、および微粒子材料を含むいくつかの相互連結変数に依存する。上記および他の要因は、特定の分離プロセスのための微粒子選定に影響を及ぼし、および理論計算を使用して見積もってよく、そのいくつかを以下に論じる。
【0034】
一例では、細胞の複合体の密度は細胞の質量(m
細胞)およびすべての結合微粒子(n*m
MS)の和を細胞の容量(V
細胞)およびすべての結合ビーズ(n*V
MS)の和で除算したものとして推定される。
【数1】
図12に例示するように、細胞に結合することができる微粒子の理論的最大数を推定するために、微粒子および細胞は細胞の表面の周りにビーズの単一層を形成する硬質球体としてモデル化される。微粒子が細胞表面上で占有するのに利用可能な容量は、微粒子(d
MP)の直径に細胞の直径(d
細胞)を加えた直径の2倍に等しい直径を有する球の容量から細胞の容量を減算することによって決定される。複合体の直径は、
図12においてd
複合体と表記される。
【数2】
上記の計算では、細胞の周りのシェルの容量は、0.64の球状充填率(等しい球のランダム充填)が掛けられ、および細胞に結合することが可能な微小球の数を定めるために単一の微小球の容量で除算される。充填率は球体のランダム充填を見積もる。これはより一層大きな中心球体の周りにどれだけ多くの球体を詰め込み得るかの内輪の見積もりとすることができる。
【0035】
上限として確立された細胞の周りにフィットすることができる微粒子の最大数を用いて、様々なサイズのビーズに対して、微粒子-細胞複合体密度の見積りを定めることができる。例えば、
図13に示される表は、微粒子直径の範囲にわたって様々なサイズの微粒子を有する微粒子-細胞複合体の理論密度(g/cm
3)および細胞あたりに結合した微粒子の数を示す。計算に使用した微粒子に1.18g/cm
3の密度を割り当てた。計算に使用した細胞には、1.063g/cm
3の密度および11.5μmの直径が割り当てられた。
図13に示される表では、より一層濃い灰色で強調された表セルは細胞表面の約40-60%の微粒子被覆率(カバレージ)を有する複合体を指し示す。より一層明るい灰色で強調された表セルは細胞表面の約80-100%の微粒子被覆率を有する複合体を指し示す。これらの複合体は、1.13g/cm
3よりも小さいかまたはそれもより大きい密度を有する複合体は、それぞれ一重または二重のアスタリスクで標識される。1.13g/cm
3の値は、
図13に例示する特定の計算のために選定し、それは模範的な磁気浮遊実験の特定の条件に対するカットオフ密度を表しているためである。カットオフ未満の密度しか有さない複合体は、そのフローセルカートリッジの処理チャネルの底部に収集され、および従ってカットオフより高い密度を有する複合体から分離され、それはフローセルカートリッジの処理チャネルの上部でより一層高く浮遊するであろう。特定の実験条件および望ましい成果に応じて、他のカットオフ値を使用してよい。
図13に例示する計算は、より一層大きな微粒子について、選定されたカットオフより高い複合体の密度を増加させるために、細胞あたりの微粒子がより一層少ないことが必要であると見積るが、またより一層大きな微粒子を細胞表面上にフィットさせるために、より一層少ない利用可能な空間も存在する。
図13に例示する計算によって決定されるように、3μm未満の直径を有する微粒子は選定されたカットオフ値を超える密度を有する複合体を形成しないであろうが、それは微粒子によって細胞表面の>100%の被覆率を必要とするためである。例示された計算に基づいて、約4-5μmの直径を有する微粒子は選定されたカットオフ値より高い密度を細胞表面の約50%の被覆率と共に達成することができる。
【0036】
図13に例示する計算は、特定の密度を達成するために、複合体における細胞あたりの微粒子の数を見積もる。密度調整剤の結合動力学がリガンド-受容体結合相互作用によって大きく駆動されると仮定すれば、複合体形成中での微粒子の細胞に対するより一層高い比(本開示において他の場所で論じられるPTC比)が複合体における1細胞あたりの微粒子のターゲット目標比を達成するために必要とされた。平衡結合力学、立体障害、および溶液を通した微粒子の拡散を満たして、細胞と相互作用するために、密度調整剤に含まれる連結剤の有効濃度(それは微粒子および連結剤を含む)は、例えば、より一層小さい直径の微粒子を選定することによって、複合体形成中に微粒子の数を増加させることが可能であるように、複合体形成中に最大にする必要がある。考慮する必要がある別の因子は、各微粒子の表面に結合した連結剤分子の数と懸濁物における合計微粒子との積である。例えば、平均直径が150nmであり、各粒子のストレプトアビジン被覆率が50%であり、およびストレプトアビジン分子あたり4つの結合部位を有する微粒子は、ストレプトアビジンに結合したビオチン化抗体の1×10
-14μmol濃度を提供するであろう。100μlにおける2×10
5細胞のサンプルについて、50,000:1の微粒子対細胞比は抗体の約1μm濃度を産生し、それは典型的な抗体相互作用(10-100nm)の10-100×の解離定数(K
D)である。比較すると、微粒子対細胞比が40:1で5μmの平均直径を有する微粒子は、すべての他の条件が同じに保持され、依然として約900nmの濃度の抗体が得られるであろう。しかしながら、このシナリオにおいて、各微粒子に付着する抗体の量は高さとして約1000×である。これは、すべての利用可能な抗体が微粒子のより一層少ない合計数にまで局在化されるので、複合体形成中の抗体の細胞へのアクセスを制限する。より一層高い親和性の連結剤については、連結剤と細胞との間の相互作用が持続する可能性がより一層高いため、効果的な複合体形成にとってより一層低いPTC比が必要とされることが想定される。より一層低い親和性の連結剤は複合体における標的微粒子ごとの細胞数を達成および維持するために、効果的な複合体形成にとってより一層高いPTC比を必要とする可能性が高い。
微粒子の製造および調達
【0037】
微粒子を生産するいくつかの方法は、例えば、Lu(ルー)ら「Modular and Integrated Systems for Nanoparticle and Microparticle Synthesis-A Review(ナノ粒子およびマイクロ粒子合成のためのモジュラーシステムと統合システム-総説)」Biosensors(バイオセンサーズ)(2020)10(11):165.https://doi.org/10.3390/bios10110165に記載されている。また商業上入手可能な微粒子を使用することもできる。いくつかの模範的な微粒子供給源は、Nanopartz(ナノパーツ)(Loveland(ラブランド)、Colorado(コロラド州)、USA(アメリカ合衆国))、Cosphere(コスフィア)(Santa Barbara(サンタバーバラ)、California(カリフォルニア州)、USA)、Creative Diagnostics(クリエイティブ・ダイアグノスティックス)(New York(ニューヨーク)、New York(ニューヨーク州)、USA)、Spherotech(スフェロテク)(Lake Forest(レイクフォレスト)、Illinois(イリノイ州)、USA)、Bangs Laboratories(バングス・ラボラトリーズ)(Fishers(フィッシャーズ)、Indiana(インディアナ州)、USA)、PolyAn(ポリアン)(Berlin(ベルリン)、Germany(ドイツ国))、Polysciences(ポリサイエンシズ)(Warrington(ウォリントン)、Pennsylvania(ペンシルベニア州)、USA)、およびLab261(ラボ261)(Palo Alto(パロアルト)、California、USA)である。
連結剤
【0038】
「連結剤」は非磁性微粒子を興味ある成分(例は、興味ある細胞、細胞小器官、核酸)に接合するために使用される。連結剤は細胞または他の被分析物に特異的に結合する。連結剤の一例は興味ある細胞上に表示される細胞表面タンパク質に特異的に結合する抗体である。他のタイプの連結剤には、アプタマー、リガンド(それは細胞表面受容体によって結合される)が含まれ、制限されないが、小分子リガンドおよびポリペプチドまたはタンパク質リガンド、親油性タグ、および核酸(その少なくとも一部分は標的核酸と相補的である)が含まれる。例えば、サンプルからのmRNAの除去は、オリゴ-dTを微粒子に接合することによって実行することができ、それは次いで、mRNAの端部でポリ-A尾部に結合する。別の例では、全RNAはランダム六量体オリゴヌクレオチドを微粒子にカップリングすることによってサンプルから除去することができ、それは次いでランダムRNAヘキサヌクレオチドに結合する。
抗体
【0039】
「抗体」という用語および関連する用語は、最も広い意味での少なくとも1つのエピトープ結合部位を含む任意の生成物、組成物または分子を示すために本開示において使用され、抗原内で「エピトープ」-領域または構造に特異的に結合する能力がある分子を意味する。「抗体」という用語は、任意のクラスの免疫グロブリン全体(即ち、インタクトな抗体)を包含し、自然の、自然に基づく、修飾された、および非自然の(操作された)抗体、ならびにそれらのフラグメントが含まれる。「抗体」という用語は、「ポリクローナル抗体」、それは同じ抗原に対して反応するが、抗原内で異なるエピトープに結合し得るもの、ならびに「モノクローナル抗体」(「mAbs」)、実質均質な抗体集団、または実質均質な抗体集団から得られる抗体を意味するものが包含される。mAbsの集団を含む個々の抗体の抗原結合部位は、配列において同様(必ずしも同一ではないが)のポリペプチド領域から構成される。「抗体」という用語はまた、フラグメント、変種、修飾された、および操作された抗体、例えば、組換え技術によって人工的に生成された("操作された)ものなどのようなものを包含する。例として、「抗体」という用語は、制限されないが、キメラ抗体およびハイブリッド抗体、デュアルもしくはマルチプルの抗原またはエピトープ特異性を有する抗体、およびフラグメント、例えば、F(ab')2、Fab'、Fab、ハイブリッドフラグメント、単鎖可変フラグメント(scFv)、「第三世代」(3G)フラグメント、融合タンパク質、シングルドメインおよび「小型化」抗体分子、および「ナノボディ」などのようなものを包含する。
アプタマー
【0040】
核酸アプタマーはRNAまたは一本鎖DNA分子であり、それは様々なアーキテクチャーに折り畳まれ、および他のヌクレオチドまたはタンパク質を含む広範な標的に結合することができる。例えば、HER-2、乳ガン細胞表面マーカーを含む腫瘍細胞表面マーカーに対するアプタマーは、組織サンプルから腫瘍細胞を単離または除去するために使用され得る。腫瘍細胞-表面タンパク質バイオマーカーを標的とするアプタマー(Aptamers Targeting Tumor Cell-Surface Protein Biomarkers)、ならびにそのようなアプタマーの選定は、例えば、Mercier(メルシエ)ら、Cancers (Basel)(キャンサーズ(バーゼル))9(6):69(2017)doi:10.3390/cancers9060069において議論されている。
親油性タグ
【0041】
連結剤は親油性タグであってもよい。親油性タグは脂質膜、例えば、細胞膜および細胞小器官膜などのようなものに会合および/またはその中に挿入することができる親油性分子である。親油性分子の例には、ステロール脂質(例は、コレステロールまたはトコフェロール)、ステリル脂質、リグノセリン酸、およびパルミチン酸が含まれる。それら自体によっては、親油性タグは特異的な結合を成し遂げない。しかしながら、それらは細胞と他の粒子との混合物において細胞膜を特異的に標的化するために使用され得る。加えて、異なるサンプルは示差的に標識された親油性タグでタグ付けすることができる。
他の特異的結合パートナー
【0042】
「特異的結合分子」という表現は、別の分子または別の分子内での領域もしくは構造を特異的または選択的に結合する能力がある分子を意味し、それは「標的」、「リガンド」または「結合パートナー」と称され得る。「特異的結合」、「選択的結合」という用語または関連する用語は結合反応に言及し、そこで指定された条件下、特異的結合分子またはそれを含有する組成物は、その結合パートナーまたはパートナー群に結合し、および他のいかなるものにも有意な量で結合しない。結合パートナー以外の他のいかなるものへの結合は、典型的には、「非特異的結合」または「バックグラウンド」と呼ばれる。有意な量での結合の不存在は、例えば、バックグラウンドの1.5倍未満の結合であると考えられる(即ち、非特異的結合のレベルまたはわずかに上の非特異的結合レベル)。特異的結合のいくつかの非制限的な例は、抗体-抗原または抗体-エピトープ結合、オリゴまたはポリヌクレオチドの他のオリゴまたはポリヌクレオチドへの結合、オリゴまたはポリヌクレオチドのタンパク質またはポリペプチドへの結合(およびその逆)、ポリペプチド他のタンパク質またはポリペプチドへの結合またはタンパク質(binding or proteins to)、受容体-リガンド結合、および炭水化物-レクチン結合である。したがって、特異的結合分子は、タンパク質、ポリペプチド、抗体、オリゴ-もしくはポリヌクレオチド、受容体、またはリガンドであることができ、またはそれらを含むことができる。特異的結合分子は、自然か、または操作されることができる。例えば、操作されたもの、および自然に発生する核酸またはペプチドアプタマーの両方は、本発明の実施形態において特異的結合分子として役立つことができる。このリストは、制限することを意図するものではなく、および他のタイプの特異的結合分子が採用されてもよい。「標的分子」という用語は、分子またはその一部分を示すために使用され、生物学的分子(例えば、制限されないが、タンパク質、ペプチド、脂質、核酸、脂肪酸、または炭水化物分子、例えば、オリゴ糖などのようなものが含まれる)、または非生物学的分子(小分子、例えば、小分子薬物または小分子リガンドなどのようなものが含まれる)が含まれる。特異的結合分子、例えば、抗体などのようなものは、標的分子に特異的に結合する。
間接結合
【0043】
特異的結合分子、例えば、制限されないが、抗体などのようなものは、密度調整微粒子に直接付着することができ、例えば、表面共役、コーティング、または吸着による。しかしながら、特異的結合分子は、密度調整微粒子に直接付着する必要はなく、および中間非共有結合性相互作用を介して密度調整分子を標的細胞と複合体化するために使用することができる。例えば、特異的結合分子は、標的細胞に特異的に結合する能力があるビオチン化抗体であり、および密度調整微粒子は、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、または任意の形態の修飾アビジンでコーティングされ、それは「アビジン様化合物」と呼ぶことができる。密度調整微粒子上のアビジン様化合物と抗体のビオチンモイエティとの間の中間結合相互作用は、標的細胞および密度調整微粒子間の複合体の形成を可能にする。別の例では、特異的結合分子は、標的細胞(「一次抗体」)に特異的に結合する能力がある抗体であり、および密度調整微粒子は、プロテインA、プロテインS、または抗抗体(すなわち、一次抗体に対する抗体)によりコーティングされる。プロテインA、プロテインS、または密度調整微粒子および一次抗体上の抗抗体間の中間結合相互作用は、標的細胞と密度調整微粒子との間に複合体を形成することを可能にする。
フルイディクス
【0044】
本開示で使用するように、「フルイディック」という用語は、流体サンプルを取り扱い、処理、吐出、および/または分析するためのシステム、デバイス、または要素に言及し、本開示の他の場所で規定するように、少なくとも1つの「チャネル」が含まれる。「流体」という用語には、制限されないが、マイクロ流体およびナノ流体が含まれる。
【0045】
本開示で使用するように、「チャネル」、「フローチャネル」、「流体チャネル」、および「流体チャネル」という用語は、交換可能に使用され、および流体を流すことができる流体デバイス上の経路を指す。チャネルには、約100mM、約50mM、約30mM、約25mM、約20mM、約15mM、約10mM、約5mM、約3mM、約2mM、約1mM、または約0.5mMの最大高さ寸法を有する経路が含まれる。例えば、磁石間のチャネルは、約10mM×10mM、約10mM×5mM、約10mM×3mM、約10mM×2mM、約10mM×1mM、または約、約10mM×0.5mM、約5mM×10mM、約5mM×5mM、約5mM×3mM、約5mM×2mM、約5mM×1mM、約5mM×0.5mM、約3mM×10mM、約3mM×5mM、約3mM×3mM、約3mM×2mM、約3mM×1mM、約3mM×0.5mM、約2mM×10mM、約2mM×5mM、約2mM×3mM、約2mM×2mM、約2mM×1mM、約2mM×0.5mM、約1mM×10mM、約1mM×5mM、約1mM×3mM、約1mM×2mM、約1mM×1mM、約1mM×0.5mM、約0.5mM×10mM、約0.5mM×5mM、約0.5mM×3mM、約0.5×2mM、約0.5mM×1mM、または約0.5mM×0.5mMの断面寸法(高さと幅)を有することができる。チャネルの内部高さは、その断面にわたって均一でなくてもよく、および断面は幾何学的に、円形、正方形、楕円形、矩形、または六角形を含む任意の形状であり得る。断面は、チャネルの長さに沿って変動し得る。「チャネル」という用語は、制限されないが、マイクロチャネルおよびナノチャネルを含み、および本開示におけるチャネルへの任意の参照に関して、そのようなチャネルはマイクロチャネルまたはナノチャネルを含み得る。
【0046】
本開示で使用されるように、「流体的に接合される」または「流体連通」という用語は、流体がそのように接合または連続している2つの構成要素の間を流れることができることを意味する。
磁気浮遊
【0047】
本開示の関連における「磁気浮遊」という表現は、例えば、米国特許出願第US 14/407,736号に記載されているように、概して、常磁性流体媒体中に懸濁された反磁性、常磁性、強磁性、フェリ磁性または反強磁性材料または「物体」を磁場、例えば、2つの磁石の間に形成される磁場勾配などのようなものにさらすことに関連する。磁場は常磁性流体媒体において磁気エネルギー密度と等しい不均一な圧力を生成する。磁場勾配において、物体は高磁場の領域からはじかれると思われる。実際には、物体は等しい容量の常磁性流体媒体によって置き換えられる。常磁性流体媒体と高磁場の領域との間の引力相互作用は、物体の「浮遊」をもたらし得る。2磁石セットアップにおいて、物体の「浮遊高さ」は必要に応じて規定することができる。例えば、一定の実施形態において、「浮遊高さ」は、浮遊物体の中心と底部磁石の上面との間の距離として規定することができるが、任意の望ましい基準点を利用することができる。物体上の力が別の均一な力(例は、重力の力)によって対向されるように磁場を適用することによって、その密度に直接関係する物体についてバランスが達成される。
常磁性流体媒体
【0048】
本開示の関連において、「常磁性流体媒体」は常磁性材料および溶媒であってもよい。本開示に記載の方法のいくつかの実施形態では、常磁性流体媒体は生体適合性であり、即ち、生細胞との混合に耐えられ、および細胞の生存率に影響を与えることも、または細胞挙動に影響を与えることもない。常磁性材料には、1以上の次の:ガドリニウム、チタン、バナジウム、ジスプロシウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、ガリウムが、それらのイオンを含め、含まれ得る。例えば、常磁性材料は、1以上の以下のイオン:チタン(III)イオン、ガドリニウム(III)イオン、バナジウム(I)イオン、ニッケル(II)イオン、クロム(III)イオン、バナジウム(III)イオン、ジスプロシウム(III)イオン、コバルト(II)イオン、およびガリウム(III)イオンが含まれ得る。いくつかの実施形態では、常磁性材料は、キレート化合物、例えば、制限されないが、ガドリニウムキレート、ジスプロシウムキレート、またはマンガンキレートなどのようなものが含まれる。いくつかの例では、常磁性材料には、1以上の[Aliq]2[MnCl4]、[Aliq]3[GdCl6]、[Aliq]3[HoCl6]、[Aliq]3[HoBr6]、[BMIM]3[HoCl6]、[BMIM] [FeCl4]、[BMIM]2 [MnCl4]、[BMIM]3 [DyCl6]、BDMIM]3 [DyCl6]、[AlaC1] [FeCl4]、[AlaCl]2 [MnCl4]、[AlaCl]3 [GdCl6]、[AlaCl]3 [HoCl6]、[AlaCl]3 [DyCl6]、[GlyC2] [FeCl4]. ]が含まれ得る。模範的な一実施形態では、常磁性材料はガドブトロールである。常磁性材料は常磁性流体媒体では、少なくとも約10mM、20mM、30mM、40mM、50nm、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、120mM、150mM、200mM、250mM、300mM、500mM、1M、約10mMより約50mMまで、約25mMより約75mMまで、約50mMより約100mMまで、約100mMより約150mMまで、約150mMより約200mMまで、約200mMより約250mMまで、約250mMより約300mMまで、約300mMより約500mMまで、または約500mMより約1Mまでの濃度にて存在し得る。模範的な実施形態において、常磁性材料には、ガドリニウムが含まれ、および常磁性材料は常磁性流体媒体において、少なくとも約10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、200mM、300mM、400mM、500mM、600mM、700mM、800mM、900mM、約10mMより約50mMまで、約25mMより約75mMまで、約50mMより約100mMまで、約50mMより約200mMまで、約50mMより約300mMまで、約50mMより約400mMまで、約50mMより約500mMまで、約50mMより約600mMまで、約50mMより約700mMまで、約50mMより約800mMまで、約50mMより約900mMまで、または約50mMより約1Mまでの濃度にて存在する。常磁性材料および溶媒に加え、常磁性流体媒体は、他の成分、例えば、塩または添加剤、例えば、制限されないが、細胞の完全性を維持するように機能する添加剤などのようなものを含んでもよいと理解される。
磁気浮遊システムおよび構成要素
【0049】
模範的なその磁気浮遊システム、およびそれらの構成要素は、例えば、Durmusら、および、2021年9月29日付け出願の米国特許出願第17/449,438号に記載されている。本開示で提供される本発明の様々な実施形態は、何らの特定の磁気浮遊システムによっても制限されないが、本発明の実施形態による方法、キットおよびシステムの理解を容易にするために簡単な説明を含む。模範的な磁気浮遊システムを
図1において概略的に例示する。
フローセルカートリッジ
【0050】
本発明の実施形態による少なくともいくつかの方法およびキットは、磁気浮遊システムにおいて使用するためのフローセルカートリッジを伴う。模範的なフローセルカートリッジを
図2に概略的に例示する。模範的なフローセルカートリッジは、上面および下面を含む平坦基材、イメージング表面を形成する第一の長手方向側面、イルミネーション表面を形成する第二の長手方向側面、および第一と第二の横断面、上面上の入口ウェル、入口チャネル、入口チャネルと流体連通して長手方向側面に実質的に平行に配置されたサンプル処理チャネル、処理チャネル内でのサンプルスプリッター、処理チャネルと流体連通する複数の出口チャネル、および各々の複数の出口チャネルと流体連通する複数の収集ウェルを含み得る。平坦な構成は、すべての必要なフローセルカートリッジ機能がフローセルカートリッジ中に統合されることを可能にし、および実験室または臨床設定における性能および再現性を増加させる。動作時には、処理チャネルと出口チャネルへの流れに可能な限り乱流がないことが、性能向上のために重要である。処理チャネルは、イメージング表面に対して空間的に偏るように、平坦基材のその面内でオフセットされ得る。
【0051】
フローセルカートリッジは、射出成形、エッチング、レーザーアブレーション、機械加工、または3D印刷によって形成することができる。フローセルカートリッジ内でのイメージングが望ましいとき、平坦基材には、光学的に透明な材料が含まれる。ガラス、プラスチック、またはポリマー材料は、環状オレフィンポリマー(COP)または環状オレフィンコポリマー(COC)を含め、好適な光学的に透明な材料のいくつかの例である。平坦基材の寸法は、少なくとも50mMの長さ、20mMの幅、および少なくとも1.5mMの厚さとすることができる。随意の範囲は、少なくとも100mMの長さ、35mMの幅、および約2より約6mMまでの厚さである。カートリッジの長手方向側面は、イルミネーションおよびイメージングのための導波路として作用することができる。そのため、処理チャネルは、基材の平面内でオフセットされ、および平行であり、および基材のイメージング長手方向側面に隣接する。イメージング側壁からの距離は、約0.5mMから約10mMまで、好ましくは約0.5mMから約5mMまで、随意に約1mMから約3.5mMまでであることができる。一実施形態では、イメージング壁からの処理チャネル間隔は約2mMである。処理チャネルの容量は、約10μLから約800μLまで、約50μLから約600μLまで、100μLより約400μLまで、約150μLより約300μLまで、少なくとも約150μL、少なくとも約200μL、少なくとも約250μL、または少なくとも約300μLであることができる。出口チャネルの組み合わされた容量は処理チャネルの容量のそれよりも大きいことができる。2つの出口チャネル間で分割されるフロー容量は、均等分割であることができ、または約4:1から約1:4まで、約3:1より約1:3まで、または約2:1より約1:2までに及ぶことができ、またはシステム実施形態における動作でのとき1:1から約50%以下、または約40%以下、または約30%以下、または約15%以下によって変動することができる。
【0052】
フローセルカートリッジは平坦基材上に収集ウェルを随意に含む。収集ウェルは出口チャネルと流体連通する入口を特長とする。入口は、第一のウェル高さにあり、および入口ポート開口部からウェルの床部に移行するステップを伴って設定することができる。このことはウェル内へのサンプルフラクションの流れのための移行表面を提供し、およびサンプルフラクションの出口チャネルへの後方サイフォン化ならびに収集ウェル内での気泡形成を抑制することができる。収集ウェル内の出口チャネルは、入口チャネルの開口部よりも高い収集ウェルの床部からの高さにある開口部を備えることができる。内部出口はフローモジュレーターと連通させて置くことができる。いくつかの例では、フローモジュレーターはフローセルカートリッジを通る流れを提供するための個々のポンプである。動作中、フローセルカートリッジを通したサンプルフラクションおよびサンプルフラクションの流れまたはポンピングを可能にする閉鎖システムを提供するために、収集ウェルは材料またはフィルムの層で封止される。フローセルカートリッジ層の組立てにおいて、および接着剤が使用されるとき、生体適合性接着剤を生物学的用途のために使用することができる。溶液中への接着成分の浸出、溶液から細胞または結合分子への付着、自己蛍光性であること、表面領域を増加させるテクスチャを有することおよび従って細胞への影響、および過度な親水性または疎水性を最小化または防止するために正確な接着剤選定が必要である。適切な接着剤の例はシリコーンまたはシリコーンベースの接着剤である。
分離システム
【0053】
模範的な磁気浮遊ベースの分離システム(
図1に例示する)は、フローセルカートリッジを保持するための受容ブロック、光学センサと、レンズと、イルミネーション源とが含まれる光学システム、および複数のフローモジュレーション構成要素を含む。受容ブロックは、フローセルカートリッジを光学システムと光学的に整列させて取り外し可能に置き、フローセルカートリッジの処理チャネルに隣接する磁気構成要素に取り外し可能に係合させ、およびフローセルカートリッジの複数の出口チャネルを複数のフローモジュレーション構成要素と流体連通するように取り外し可能に置く。光学システムはフローセルカートリッジの処理チャネルの顕微鏡イメージングを提供するように構成され得る。随意に、光学システムは、随意の紫外線励起モジュールを用いて蛍光発光のためのイメージングを提供するように構成され、および配列されてもよい。光学システムは、平坦基材内での処理チャネルを通して光伝送を提供するように構成および配列された可視光イルミネーションの供給源を含み得る。受容ブロックは、イメージング光学系が平坦カートリッジのイメージング側面と整列され、および可視光エミッタが平坦フローセルカートリッジのイルミネーション側を照明するための配向内にあるように、光学システムに対する配向で平坦フローセルカートリッジを保持するように構築および配置される。随意に、光学システムは、紫外線イルミネーションを角度配向でカートリッジのための処理チャネル内でのフルオロフォアを励起するための平坦カートリッジのイメージング側面に置くように構築および配置された紫外線または可視イルミネーションの1以上の供給源をさらに含むことができる。処理チャネルの内部の蛍光実体物のイメージングのために、光学系は、約524nmおよび628nmの波長を中心とする帯域において放出された放射を好適に通過させるデュアルバンドパスフィルタを随意に含む。
【0054】
受容ブロックの随意の特長は、フローセルカートリッジの上部または底部の出口とインターフェースする一連のフローモジュレーターアダプタである。アダプタは、フローモジュレーター、例えば、システムにおけるポンプなどのようなものとの流体連通を容易にし、フローセルの出口チャネル、例えば、収集ウェル出口チャネルなどのようなものを有する。フローセルカートリッジが受容ブロックに挿入されると、受容ブロックは、カートリッジを支持するように機械的に作動され、平坦カートリッジのイルミネーション側とイメージング側とが光学イメージングシステムと整列され、磁気構成要素がそれらをフローセル処理チャネルの上および下の位置に整列させ、およびそこではフローモジュレーターアダプタをフローセルカートリッジの対応する出口チャネルと流体連通するように置く。システムのフローモジュレーターはフローセルカートリッジ内のサンプルおよびサンプルフラクションにフローを提供する。フローモジュレーターによって提供される流量は、分離の間、低くて毎分1μLから高くて毎分1mLまでに及ぶことができる。流量は、毎分約25μLで、または少なくともそれで、毎分約50μLで、または少なくともそれで、毎分約100μLで、または少なくともそれで、毎分約200μLで、または少なくともそれで、毎分約250μLで、または少なくともそれで、毎分約300μL、または少なくともそれで、または毎分約300μLから毎分約1mL/分までであることができる。合計サンプル容量流量は、約50μL/分、約75μL/分、約100μL/分、約150μL/分、約200μL/分または約300μL/分であることができる。2つの出口チャネル間で分割されるフロー容量は、均等分割であることができ、または約4:1から約1:4まで、約3:1より約1:3まで、または約2:1より約1:2までに及ぶことができ、またはシステム実施形態における動作でのとき1:1から約50%以下、または約40%以下、または約30%以下、または約15%以下によって変動することができる。
【0055】
磁気浮遊システムは、フローセルカートリッジの処理チャネルまたは入口チャネル内での常磁性流体媒体において懸濁された粒子を磁気浮遊させる能力がある。磁場と常磁性流体媒体内での粒子の常磁性特性との相互作用は、それらの分離または濃度を促進するために粒子に斥力または引力効果のいずれかをも提供することができる。磁性流体媒体における磁場は磁石によって生成され、それは永久磁石または電磁石であることができる。磁石の最大エネルギー積は、約1メガガウスエルステッド(Mega-Gauss Oersted)から約1000メガガウスエルステッドまで、または約10メガガウスエルステッドから約100メガガウスエルステッドまでに及ぶことができる。磁石の表面電界強度は、約0.01テスラ(Tesla)から約100テスラまで、または約1テスラから約10テスラまでに及ぶことができる。磁石の残留磁気は約0.5テスラから約5テスラまで、または約1テスラから約3テスラまでに及ぶことができる。磁石は、鉄およびホウ素とのネオジム合金、ネオジム、ニッケルとのアルミニウムの合金、鉄とのネオジム合金、鉄と合金化されたアルミニウムおよびコバルト、サマリウム-コバルト、鉄との希土類元素の他の合金、ニッケル、フェライト、またはそれらの組合せとの希土類合金の合金が含まれる材料から作成することができる。磁気浮遊システムが複数の磁石を含むとき、磁石は同じ材料から作成し、または異なる材料から作成することができる。
【0056】
非対称磁場は、フローセルカートリッジの流体チャネルの一方の側でのより一層強い磁性材料およびフローセルカートリッジの流体チャネルの反対側でのより一層弱い磁性材料を使用することによって達成することができる。非対称磁場は、磁石をチャネルの一方の側で他方の側での磁石よりも近くに配置することによって達成することができる。非対称磁場は、磁性材料をフローセルカートリッジの流体チャネルの一方の側に、および実質同様の磁性材料をフローセルカートリッジの流体チャネルの反対側に使用することによって達成することができる。上側磁石および下側磁石は実質同じサイズであってもよい。一例では、上側磁石はネオジムを含んでもよく、および下側磁石はサマリウムを含んでもよい。あるいはまた、上側磁石はサマリウムコバルトを含んでもよく、および下側磁石はネオジムを含んでもよい。代替的な磁石構成が使用されてもよい。磁気浮遊システムは、フローセルカートリッジの流体チャネルの周りに配置されたマルチプルな上側磁石およびマルチプルな下側磁石を含み得る。一例では、上側磁石は、前方上側磁石、中央上側磁石、および後方上側磁石を含み得る。下側磁石は、前方下側磁石、中央下側磁石、および後方下側磁石を含み得る。別の例では、磁気浮遊システムは、前方上側磁石、後方上側磁石、前方下側磁石、および後方下側磁石を含んでもよく、磁石はフローセルカートリッジの流体チャネルの周りに配置され、ならびに前方上側磁石および後方下側磁石は磁気反発配向において配置される。模範的なNdFeB磁気構成要素の寸法は、下部磁石構成要素について約50×15×2mM(15mM軸を通して磁化されたもの)、上部磁石構成要素について50×5×2mM(5mM軸を通して磁化されたもの)を含む。他の模範的な磁石寸法は、60×15×2mM、60×5×2mM、75×10×3mM、75×20×3mM、および25×15×2mMを含む。磁気浮遊システムの模範的な磁石構成は、上側および下側磁石を含み、約75×20×3.2mMの寸法、および上側および下側磁石間の約2.5mM、約3.0mM、約3.5mM、約2.9mM、約3.0mM、約3.1mM、約3.2mM、約3.3mM、または約2.72mM、約2.88mM、約2.98mM、約3.18mM、約3.20mM、または約3.37mMの間隔を有する。磁気浮遊システムのもう1つの模範的な磁石構成は上側磁石および下側磁石を有し、下側磁石はフローセルカートリッジの入口チャネル中に延在する。底部磁石寸法は、約50mMより約100mMまで×約10mMより約30mMまで×約2mMより約4mMまでであることができる。
サンプル
【0057】
本開示で使用される「サンプル」または「サンプル群」という用語および関連する用語ならびに表現は、別なふうにみなされない限り、制限を意図するものではない。これらの用語は、任意の生産物、組成物、細胞、組織または有機体を指す。概して、「サンプル」または「サンプル群」という用語は、それらの供給源、起源、調達の仕方、処理、加工、貯蔵もしくは分析、またはいかなる修飾によっても制限されることを意図するものではない。サンプルのいくつかの例は、溶液、懸濁物、上清、沈殿物、またはペレットである。サンプルは細胞または組織を含むか、またはそれから主に構成され、または細胞もしくは組織から調製することができる。しかしながら、サンプルは細胞を含有する必要はない。サンプルは、生物学的分子、例えば、核酸、ポリペプチド、タンパク質(抗体を含む)、脂質、炭水化物等などのようなものの混合物であるか、またはそれらを含有してもよい。サンプルは生物学的分子であり得る。例えば、「サンプル」は、細胞、組織または対象由来の任意の細胞または組織のサンプルまたは抽出物であってもよく、および動物細胞または組織、ならびに植物および細菌のサンプルを含め、非動物起源の細胞のサンプルを含む。サンプルは、有機体から直接得ることができ、または増殖させ、または培養することができる。いくつかの模範的なサンプルは、細胞抽出物(例えば、細胞溶解物)、細胞核の懸濁物、液状細胞培養物、細胞懸濁物、生物学的流体(制限されないが、血液、血清、血しょう、唾液、尿、脳脊髄液、羊水、涙、肺からの洗浄液、または間質液を含む)、組織切片で、針生検、顕微鏡スライド、凍結組織切片または固定された細胞および組織サンプルを含むものである。
模範的な細胞タイプ
【0058】
密度調整剤によりタグ付けされた細胞は、例示のため、および制限ではなく、ヒト細胞、非ヒト動物細胞、植物細胞、真核細胞、等であり得る。例えば、タグ付けされた細胞は、制限されないが、ヒトまたは非ヒトの免疫細胞、内皮細胞、およびT細胞であり得る。タグ付けされた細胞は、非タグ化細胞の異種集団中に存在し得、それは、例示のため、および制限ではなく、ヒト細胞、非ヒト動物細胞、植物細胞、真核細胞、原核細胞、等であり得る。タグ付けされた細胞は、異なる系統からであってもよく、または同じ系統であることもできたが、活性化状態、分化状態、または何らかの他の特性において異なるものであってもよい。
タグ付け細胞
【0059】
1または1よりも多くの(2、3、4、または4よりも多くの)細胞タイプは単一の分離ステップにおいて加工されてもよい。2以上の細胞タイプがタグ付けされるとき、各細胞タイプは異なる密度調整剤によりタグ付けされ得る。あるいはまた、2以上の異なる細胞タイプは同じ密度調整剤によりタグ付けされてもよい。例えば、2以上の異なる細胞タイプは同じ表面マーカーを有してもよく、および従って同じ連結剤を含む密度調整剤は、両方の細胞タイプに結合し得る。別の例では、密度調整剤はそれぞれの2以上の表面マーカーに結合することができる2以上の異なる連結剤を含む。この状況では、密度調整剤は2以上の異なる連結剤に対応する異なる表面マーカーを有する2以上の異なる細胞タイプに結合することができる。いくつかの実施形態では、2以上の異なる細胞タイプは同じ密度を有する異なる密度調整剤によりタグ付けされ得る。
タグ付けプロセス
【0060】
タグ付けプロセスの一部分として、標的細胞タイプに特異的な連結剤を含む微粒子は、標的細胞タイプについて最適化された比にて細胞と混合され得る。混合物における微粒子の細胞に対する比(本開示において他の箇所で論じられるPTC比)は、様々なパラメータに基づいて最適化される。これらのパラメータの1つは、標的細胞タイプであり得、それはその浮遊プロファイルを決定するが、また各細胞が複合体化し得る連結剤を含む微粒子の数にも影響を及ぼし得る。例えば、連結剤が細胞表面マーカーに特異的である場合、特定の標的細胞タイプ上のマーカーの数は、連結剤を含む微粒子の多くの単位がこの細胞にどのように結合することができるかを決定するであろう。別のパラメータは、特定の細胞タイプのための、連結剤、例えば、抗体などのようなものの親和性であり得る。もう1つのパラメータは磁気浮遊中に印加される磁場強度である。PTC比を決定するときに考慮され得る他のパラメータは、微粒子サイズ、および/または微粒子密度であり得る。ここに列挙されていない他のパラメータも考慮され得、およびまた、PTC比が特定のタグ付けおよび/または分離用途のために実験的に決定および/または最適化され得ることが理解される。本開示に記載の方法の実施形態で使用される非制限的なPTC比は(制限されないが)、約1から約100,000まで、約1から約50,000まで、約1から約10,000まで、約1から約1,000まで、約1から約100まで、約10,000から約100,000まで、約10,000から約50,000まで、または約50,000から約100,000までであり、マルチプル細胞タイプが存在するとき、各細胞タイプについて特異的な異なる連結剤を有する微粒子は、細胞混合物に添加する前に一緒に混合されてもよく、または異なる連結剤および細胞を有する微粒子は、1つのステップにおいて一緒に混合されるであろう。いくらかの場合、タグ付けプロセスは細胞混合物上で連続的に実行されてもよく、各細胞タイプに特異的な異なる連結剤を有する微粒子が各タグ付けおよび分離ステップの後に適用されてもよいことが意味される。
密度調整剤の設計および選定
【0061】
本発明の実施形態で使用される、密度調整剤または薬剤群の設計および選定、ならびにそれらの量は様々なシナリオが考慮に入れられる。例えば、同じタイプのいくつかの細胞は、異なる数の同じ密度調整剤でタグ付けされてもよい。その結果、同じ密度調整剤によりタグ付けされた同じタイプの細胞は、異なる密度および浮遊高さを有し得る。一定の状況では、この問題は、少なくとも部分的に、サンプルにおける密度調整剤および標的細胞の投影数の比を調節することによって対処されてもよく、それは標的細胞のタイプをタグ付けする密度調整剤の数の差が、他よりも多くのいくらかの比率にてより一層顕著であり得るからである。別の例では、表面積あたり同じ数の表面マーカーを有する標的細胞は、異なる数の密度調整剤ユニットによりタグ付けされ得る。一定の状況では、この問題は、例えば、すべての利用可能な表面マーカーを飽和させようとする試みにおいて、密度調整剤およびサンプルにおける標的細胞の投影数の比を増加させることによって、少なくとも部分的に対処され得る。他の例では、この問題は、飽和に到達するために標的細胞との密度調整剤のインキュベーション時間を増加させること、局所濃度を増加させるために密度調整剤に結合する抗体の量を増加させること、または細胞表面ターゲットに対する親和性を高めた結合分子を使用することによって少なくとも部分的に対処され得る。さらに別の例では、いくつかの細胞は、マルチプル細胞表面マーカーを表示することができ、およびより一層低い密度調整剤およびより一層高い密度調整剤により(意図的にまたはそうではなく)タグ付けし得る。これは異なる比率で異なる細胞およびビーズを含む複合体のマルチプル集団をもたらすことができる。いくらかの場合、これは異なる細胞集団間の分離を困難にすることがある。この問題は、それが発生する場合、例えば、飽和に到達するために標的細胞との密度調整剤のインキュベーション時間を増加させること、局所濃度を増加させるために密度調整剤に結合する抗体の量を増加させことによって、または細胞表面ターゲットに対して増大した親和性を有する結合分子を使用することによって、少なくとも部分的に対処することができる。別の模範的なアプローチでは、マルチプル表面マーカーを有する細胞のサブセットは、密度変化がタグなしおよび1つのタグのすべて(no tag and all-of-one tag)間でモジュレートされるように、2つの異なる密度調整剤によりタグ付けされてもよい。上述のアプローチは、2以上のアプローチの様々な組合せにおいて使用され得ることが理解される。
細胞分離の方法
【0062】
本開示において記載し、および本発明の実施形態に含まれるのは、磁気浮遊によっての細胞分離の改善された方法(プロセス)である。かかる方法はまた、「細胞分離方法」、「細胞を分離する方法」、「細胞単離の方法」、「細胞単離方法」、「細胞を単離する方法」、「細胞濃縮方法」、「細胞を濃縮する方法」、「細胞分別方法」、「細胞を分別する方法」として、および他の関連する用語および表現によっても言及し得、それらは制限されることを意図するものではない。
【0063】
本開示に記載の方法は、マルチプル細胞タイプを含む細胞の集団から1以上のタイプの細胞を分離するのに有用である。かかるマルチプル細胞タイプは、動物細胞を含み得、ヒト細胞および非ヒト動物細胞、ヒトおよび非ヒト細胞の混合物、植物細胞、ならびに他の起源の細胞が含まれ、制限されないが、細菌細胞、原生動物細胞、藻類細胞、などを含むものが含まれる。マルチプル細胞タイプは、死細胞、生細胞、健常細胞、病理学的細胞、感染細胞、トランスフェクト細胞、または遺伝子改変細胞を含み得る。本開示の方法に従って分離された細胞は、様々な状態における細胞(例えば、幹細胞、分化細胞、など)を含み得る。本開示の方法に従って分離された細胞は、有機体から直接得る(または有機体自体である)ことができ、または増殖もしくは培養することができる。細胞は、本開示で説明される方法に従って分離される前に、様々な処理、貯蔵または加工手順を受けることができる。概して、用語「細胞」、「細胞群」、「細胞タイプ」(または関連する用語および表現)は、それらの供給源、起源、調達の仕方、処理、加工、貯蔵または分析、または任意の修飾によって制限されることを意図するものではない。本開示に記載の方法によって分離するのに適切であり得る細胞タイプのいくつかの非制限的な例は、マクロファージ、肺胞型II(ATII)細胞、幹細胞、脂肪細胞、心筋細胞、胚細胞、腫瘍細胞、リンパ球、赤色血液細胞(red blood cells)(赤血球(erythrocytes))、上皮細胞、卵子(卵細胞)、精子細胞、T細胞、B細胞、骨髄細胞、免疫細胞、肝細胞、内皮細胞、間質細胞、および細菌細胞である。マルチプル細胞タイプを含む細胞の集団は様々なタイプのサンプルから導き出してよく、それらは本開示の他の箇所で論じられる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態による細胞分離方法は、マルチプル細胞タイプを含む細胞の集団において見出される特定のタイプまたはタイプ群の細胞(「標的細胞」または「標的細胞タイプ」と称することがある)に密度調整微粒子の結合を実行することを含む。そのような結合はまた、「複合体を形成すること」、「複合体形成」または「複合体化すること」と記述することもできる。標的細胞への密度調整微粒子の優先的結合は、標的細胞を特異的または選択的に結合する能力がある結合分子を使用することによって成し遂げられる。そのような分子は「特異的結合分子」と呼ぶことができる。特異的結合分子の一例は細胞表面マーカーに対して特異的な抗体または標的細胞タイプについて特異的な分子である。表面マーカーのいくつかの例は、CD45、CD3、CD4、CD8、CD19、CD40、CD56、CD11b、CD14、CD15、EpCAM、ICAM、CD235、HER-2、HER-3、CD66e、インテグリン、E-P-L-セレクチン、EGFR、EGFVIII、PDGFR β、c-MET、MUC-1、OX-40、CD28、CD133、CD30TNFR8、CTLA4、CD71、CD16α VCAM-1、ヌクレオリン(Nucleolin)、およびミエリン塩基性タンパク質(Myelin Basic Protein)である。異なる細胞が異なる表面マーカーを有し得ることが理解される。例えば、ヒトおよび非ヒト動物細胞、例えば、マウス細胞などのようなものは、異なる表面マーカーを有し得る。本発明の細胞分離方法の実施形態は、一よりも多く(1種以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、等)の特異的結合分子を利用し得る。言い換えると、本発明の細胞分離方法の実施形態は、マルチプル細胞タイプを含有する細胞の集団において異なる標的細胞タイプを有する複合体を形成する能力があるマルチプルな特異的結合分子を利用することができる。
【0065】
密度調整微粒子を特定のタイプまたはタイプ群の細胞に結合させることを伴う細胞分離方法の実施形態では、結合は様々なステップによって成し遂げることができる。例えば、結合は、特異的結合分子を含む密度調整微粒子とマルチプル細胞タイプを含む細胞の集団との、潜在的には、標的細胞タイプを含め、密度調整微粒子が標的細胞タイプの個々の細胞に結合して複合体を形成し、各複合体では1以上の微粒子が標的細胞タイプの細胞に結合する条件下での、接触、組合せ、またはインキュベーションによって成し遂げることができる。別の例においては、結合は、特異的結合分子とマルチプル細胞タイプを含む細胞の集団との、潜在的には、標的細胞タイプを含めて、接触すること、組み合わせること、またはインキュベーションするによって達成することができるが、本発明による細胞分離方法の実施形態は、密度調整微粒子の細胞への結合に関連する任意のステップを含む必要はない。密度調整微粒子および標的細胞の複合体は、本発明の実施形態による方法の開始前に形成し、および細胞分離方法の最初に提供することができる。言い換えれば、本方法は、マルチプル細胞タイプを含む細胞の集団において随意に含まれる、1以上の密度調整微粒子と標的細胞タイプの細胞(または標的細胞)との複合体を提供するステップにより開始することができる。
【0066】
本発明による細胞分離方法のいくつかの実施形態は、常磁性流体媒体において1以上の密度調整微粒子および標的細胞タイプの細胞との複合体、およびマルチプル細胞タイプの複数の細胞の懸濁物を形成することに関連するステップまたはステップ群を含む。いくつかの実施形態では、そのような懸濁物は方法の開始時に提供されてもよい。本発明の実施形態による細胞分離方法には、磁気浮遊システムのフローセルカートリッジの処理チャネル中に懸濁物を導入することが含まれる。フローセルカートリッジは、少なくとも1つの出口チャネル、ならびに長さおよび鉛直高さを有する処理チャネルを含む。本発明の実施形態による細胞分離方法は、1以上の密度調整微粒子と標的細胞型の細胞との複合体の少なくともいくつか(または少なくとも1つの複合体)が、密度調整微粒子に結合していないマルチプル細胞タイプの細胞から分離されるのに十分な時間の期間、処理チャネルを磁場に曝すことを含み、それによって、懸濁物に関して複合体が豊富化された懸濁物の第一の部分、および懸濁物に関して複合体により消耗された懸濁物の第二の部分が形成される。磁場への曝露はフローセルカートリッジのストップ-フローモードまたは連続フローモードにおいて実行することができる。
【0067】
細胞分離方法のいくつかの実施形態では、磁場におけるフローセルカートリッジの鉛直位置は可変性であり、それは磁気浮遊システムの磁石に関して1以上の密度調整微粒子および標的細胞タイプの細胞の複合体(または少なくとも1つの複合体)の浮遊高さに影響を及ぼし得る。フローセルカートリッジの鉛直位置を変えることは、懸濁物の異なる部分にアクセスするために有利に使用され得る。細胞分離方法のいくつかの実施形態においては、細胞分離を改善するために常磁性流体の組成を調節することができる。例えば、常磁性化合物の濃度は、ある範囲の密度によって占められる物理的空間を変化させ、それで常磁性化合物の濃度を調節することによって分離チャネル内での特定の範囲の密度をターゲットにすることが可能になる。常磁性流体における常磁性化合物の濃度が増加すると、磁石間で浮遊することができる粒子密度の範囲がより一層広くなる。しかしながら、このシナリオにおいて磁石間隔が調節されない場合、異なる密度の粒子間の物理的分離距離はより一層小さくなる。逆に、常磁性流体における常磁性化合物の濃度が低下すると、磁石間で浮遊することができる粒子密度の範囲は狭くなるが、異なる密度の粒子間の物理的分離距離は増加する。したがって、本発明の実施形態による細胞分離の方法では、常磁性流体における常磁性化合物の濃度および/または磁気浮遊システムにおける磁石間隔は、分離生成物(興味ある粒子)の純度および/または収率を最適化するように調節され得る。
【0068】
マルチプル細胞タイプを含有する集団において異なる標的細胞タイプと複合体を形成する能力があるマルチプルな特異的結合分子を利用する細胞分離方法の実施形態では、懸濁物の2よりも多くの部分は、磁場に曝露された後に形成されてもよい。例えば、ある方法がマルチプル細胞タイプを含む細胞の集団において2つの異なる標的細胞タイプに結合する能力がある2つの異なる特異的結合分子を利用する場合、2つの異なるタイプの複合体が、磁場への曝露の際に懸濁物において形成され得る:第一のタイプの微粒子と第一の標的タイプの個々の細胞との第一の複合体、第二のタイプの微粒子と第二の標的タイプの個々の細胞との第二の複合体である。そのような状況では、第一のタイプの微粒子および第二のタイプの微粒子は、第一の複合体の密度が第二の複合体の密度とは異なり、およびまた集団における他のタイプの細胞の密度とも異なるように選定される。一例では、次いで、懸濁物の少なくとも3つの異なる部分が、磁場へのその露出の際にフローセルカートリッジの処理チャネルにおいて形成される:第一の複合体によって豊富化された部分、第二の複合体によって豊富化された部分、および第一の複合体と第二の複合体とが消耗された部分(または部分群)である。この状況では、懸濁物の異なる部分(それらは「フラクション」と呼ぶことができる)は、形成するために磁場に対する同じまたは異なる露光の期間を必要とし得る。
【0069】
本発明の実施形態による細胞分離方法は、フローセルカートリッジの処理チャネルから、またはフローセルカートリッジ全体から、懸濁物の異なる部分を取り出すことをさらに含んでもよい。異なる部分またはフラクションを取り出すことは、フローセルカートリッジの1以上の出口チャネルを通して実行することができ、および処理チャネルの長さに沿って懸濁物を流動させることを含み得る。
【0070】
細胞分離方法の模範的な実施形態は
図3において概略的に例示する。
図3に例示する実施形態は細胞分離の方法の一例であり、それは少なくとも2つの細胞タイプで、第一のタイプおよび第二のタイプを含有し、およびまたいくつかの死細胞を含む、細胞の集団における標的細胞タイプ(第一のタイプ)の浮遊性密度よりも低いものを有する微粒子を使用する。2つの異なる細胞タイプの生細胞((1)-第一のタイプの生細胞;((2)-第二のタイプの生細胞)は、異なる表面マーカー(例えば、タンパク質、炭水化物または他の生物学的分子などのようなもの)を有する。細胞の集団は、2つの細胞タイプの第一のタイプの表面マーカーに特異的に結合する能力がある抗体に接合された非磁性微粒子と接触される。非磁性微粒子は、第一の細胞タイプの表面マーカーに結合し、第一のタイプの細胞と複合体が形成される。複合体の密度は、第一のタイプまたは第二のタイプの非複合体化された細胞の密度よりも低い。磁気浮遊を受けるとき、複合体は、フローセルカートリッジの処理チャネルにおいて、微粒子と複合体を形成しなかった第二のタイプの細胞よりも高く浮遊する。第一のタイプ(3)の死細胞もまた、複合体よりも低く浮遊する。第二のタイプの死細胞は露出された表面マーカーを同じほど有さなくてよく、または第一のタイプの生細胞よりも低い密度を有してもよい。第一のタイプの生細胞によって形成された複合体において豊富化されたフラクションは、フローセルカートリッジから取り出され、第一のタイプの生細胞の分離がもたらされる。
【0071】
細胞分離方法の別の模範的な実施形態を
図4に概略的に例示する。
図4に例示する実施形態は細胞分離の方法の一例であり、少なくとも2つの細胞タイプ、第一のタイプ(1)および第二のタイプ(2)を含有し、およびまた第一のタイプ(3)のいくつかの死細胞も含む細胞の集団から標的細胞タイプを分離するために標的細胞タイプ(第二のタイプ)よりも高い浮遊性密度を有する微粒子を使用する。2つの異なる細胞タイプの生細胞は、異なる表面マーカー(例えば、タンパク質、炭水化物、または他の生物学的分子などのようなもの)を有する。細胞の集団は、2つの細胞タイプの第二のタイプの表面マーカーに特異的に結合する能力がある抗体に接合された微粒子と接触される。微粒子は、第二の細胞タイプの表面マーカーに結合し、第二のタイプの細胞と複合体が形成される。複合体の密度は、第一のタイプまたは第二のタイプの非複合体化された細胞の密度よりも高い。磁気浮遊を受けるとき、複合体は微粒子と複合体を形成しなかった第一のタイプの細胞よりもフローセルカートリッジの処理チャネルにおいて低くしか浮遊しない。死細胞はまた非複合体化細胞よりも低くしか浮遊しない。複合体において消耗したフラクションは、フローセルカートリッジから取り出され、第一のタイプの生細胞の単離がもたらされる。
粒子分離のためのシステムおよびキット
【0072】
本開示に記載され、および本発明の実施形態中に含まれるものは、磁気浮遊によって、粒子、例えば、細胞などのようなものの分離に有用なキットおよびシステムである。模範的なキットは、個々の細胞と複合体を形成する能力がある密度調整性非磁性微粒子の1以上のタイプを含む。そのような非磁性微粒子は、本開示の他の箇所に記載されている。1以上のタイプの密度調整性非磁性微粒子に加えて、キットは常磁性流体媒体を含むことができる。1以上のタイプの密度調整性非磁性微粒子に加えて、キットは1以上の連結剤を含んでもよい。キットはまた、1以上の他の成分、例えば、制限されないが、抗体、共役剤、緩衝剤(制限されないが、非標的細胞への粒子の非特異的結合を減少させるように配合された緩衝剤を含む)、フローセルカートリッジ、または混合細胞集団からの標的細胞の消耗または回収を最適化するように設計された材料のようなものを含み得る。
【0073】
粒子の分離のための模範的なシステムは細胞分離のシステムであり、それは単独で、または他の試薬と組み合わせて、マルチプル細胞タイプを含む細胞の集団において標的細胞タイプの細胞に優先的に結合すること、微粒子と標的細胞タイプの細胞との複合体を形成することが可能な1以上のタイプの密度調整微粒子を含む。本システムは、本開示の他の箇所で説明されるフローセルカートリッジと、フローセルカートリッジのための保持ブロックを備えるステーションと、保持ブロックにおいて位置付けられたフローセルカートリッジの処理チャネルを磁場に露出させるように配置された1以上の磁石とを含む。
【実施例】
【0074】
以下の例は例示のために提供するが、請求する発明を制限するものではない。
例1:マイクロバブルを用いるJurkat(ジャーカット)細胞の分離
【0075】
マイクロバブルを使用したジャーカット細胞(「ジャーカット」)の分離を達成し、および
図5-
図7に例示する。SIMB3-4マイクロバブルは、Advanced Microbubbles Inc.(アドバンスト・マイクロバブル社)(Newark(ニューアーク)、California)から購入した。緑色蛍光を提供するために、ヒトT細胞株のジャーカット細胞(ATCC TIB-152、ジャーカットクローンE6.1)をカルセイン(Calcein)AM(Thermo Fisher Scientific Inc.(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社))により10μMの最終濃度にて染色し、および過剰な染色を除去するために3回洗浄した。染色されたジャーカット細胞をH358細胞(Berkeley Cell Culture Facility(バークリー・セル・カルチャー・ファシリティ)、Berkeley(バークリー)、Californiaから取得したNCI-H358)で、CD45を発現しないヒト肺細胞カルシノーマ細胞株と混合し、約50%のH358細胞および約50%のジャーカット細胞(「H358/ジャーカット混合物」)を含有するサンプルがもたらされた。H358/ジャーカット混合物をビオチン化抗CD45抗体と共に1.25μg/ml(クローンHI30、Biolegend(バイオレジェンド)、San Diego(サンディエゴ)、California)にて氷上で1時間インキュベーションし、および次いで未結合抗体を除去するために4回洗浄した。染色した細胞を約20:1のマイクロバブル:細胞比でストレプトアビジン-共役したマイクロバブルとThermomixer
(R)(サーモミキサー、
(R)は米国等での登録商標表示)(Eppendorf(エッペンドルフ)、Enfield(エンフィールド)、Connecticut(コネティカット州)、USA)において500rpmで混合しながら室温にて15分間混合した。次に、1M Gadobutrol(ガドブトロール)を含有する浮遊剤を細胞/マイクロバブル混合物に75mMの最終濃度まで添加し、および結果として生じる浮遊懸濁物をLeviCell
TM(レビセル、
TMは米国等でのトレードマーク表示)磁気浮遊プラットフォーム(Levitas Bio(レヴィタス・バイオ)、Menlo Park(メンロー・パーク)、California、USA)のフローセルカートリッジに負荷した。
図5はストレプトアビジン共役したバブルに結合したビオチン化抗体染色ジャーカット細胞の複合体を概略的に例示する。浮遊懸濁物をLeviCell機器内部で20分間磁場に曝(「平衡化」)し、および次いでフローセルを通して流した。一連の浮遊実験では、カートリッジは底部磁石から持ち上げなかったか(標準的な構成)、またはブラスの0.012″もしくは0.015″のシムにより磁石の底部から持ち上げたかのいずれかであった。このシムの存在は2つの磁石間のフローセルカートリッジの位置を上昇させ、
図6に例示するように、カートリッジが磁場においてより一層高く位置することを可能にする。上記の実験は以下の本発明の実施形態を例示した。細胞はフローセルカートリッジの処理チャネルにおいて磁場における固定位置(すなわち、2つの磁石の間)にて浮遊する。細胞密度および磁化率によって影響を受ける磁場における細胞の固有位置は「浮遊プロファイル」と呼ぶことができる。フローセルを上または下に移動させることによって、細胞は、それらの浮遊プロファイルに留まっている間、フローセルにおいてそれぞれより低くまたはより高く位置することができる。フローセルカートリッジの処理チャネルにおける浮遊した細胞の位置を調整する能力(「浮遊高さ」)は、分離されたフラクションの収集を改善するために使用することができる。
【0076】
図6は、画像に示されるように、異なるシムを使用したフローセルにおける平衡化相の終わりでの細胞混合物の写真画像を示す。フローセルの中央付近の細胞のより一層暗いバンドはH358細胞に対応し、それらの表面にCD45抗体が結合していないため、それらは結合したマイクロバブルを有していない。マイクロバブルに結合したジャーカット細胞は、細胞のバンドの上に浮遊しているが、この場合、単一のバンドを形成しなかった。細胞サイズおよび各細胞に結合したマイクロバブルの数に応じて、ジャーカット-マイクロバブル複合体は、いくつかのジャーカット細胞がフローセルの上部まで浮遊した状態で、それらの元の位置より上の距離の範囲で浮遊した。0.015″シムを用いてフローセルを上昇させるとき、フローセルの上昇前には見えなかった高さにあった複合体(即ち、チャネルの上部に固定化されていた)が見えるようになる。これは、ジャーカット/バブル複合体がジャーカット細胞の浮遊高さをバブルと結合していない細胞に対しより一層高くする能力があることを実証し、いくつかの複合体はフローセルの上部まで上昇している。
図7は、フローセルカートリッジの入力、上部、および底部フラクションでのサンプルにおいて(示されるように)存在するジャーカット細胞の百分率を要約する棒グラフを示す。細胞はエコー蛍光顕微鏡を用いて単回使用血球計チップ上で計数した。次に、細胞/mlを得るために、4隅のグリッドからの合計細胞数を4によって、次いで10,000(血球計チップについての換算係数)によって除算した。緑色蛍光ジャーカット細胞を計数し(カルセイン蛍光染色による)、および%ジャーカット値を得るために合計細胞数と比較した。上部フラクションをフローセルから取り出し、未結合細胞をペレット化するために遠心分離し、および上清をペレットとは別に計数して、どれだけ多くのジャーカット細胞がマイクロバブルと複合体化され、および従ってその上清において浮遊したかを確認した。結果は、入力浮遊サンプルと比較して、上部フラクションの上清がジャーカット細胞によって豊富化され、およびシムがフローセルを上昇させるために使用されたときにジャーカット細胞の純度が増加したことを示した。上部フラクションからのペレット化された細胞において存在するジャーカット細胞の純度もまた、フローセルがシムと共に上昇したので増加した。底部フラクションは入力浮遊サンプルと比較してジャーカット細胞において消耗した。
例2:重合体マイクロビーズを用いるジャーカット細胞の分離
【0077】
重合体マイクロビーズを使用するジャーカット細胞の分離を達成し、および
図8と
図9とにおいて例示する。12μmのDiagPoly
TM(ダイアグポリ)Streptavidin(ストレプトアビジン)PMMAビーズ(「マイクロビーズ」)をCreative Diagnostics(Alpharetta(アルファレッタ)、Georgia(ジョージア州))から入手した。ジャーカット細胞(ヒトT細胞株ATCC TIB-152、ジャーカットクローンE6.1)は緑色蛍光を提供するために、例1に記載のようにカルセインAMにより染色した。H358細胞(Berkeley Cell Culture Facility、Berkeley、Californiaから取得したNCI-H358)は、赤色蛍光を提供するためにCellTracker Red(セルトラッカー・レッド)CMPTX(Thermo Fisher Scientific Inc.)により、10μMの最終濃度にて染色した。過剰な蛍光染色を除去するために、両方のタイプの染色細胞を3回洗浄した。染色されたジャーカットおよびH358細胞を~15%H358細胞/~85%ジャーカット細胞(「H358/ジャーカット混合物」)に混合した。H358/ジャーカット混合物を例1に記載するように氷上で1時間ビオチン化抗CD45抗体と共にインキュベーションし、および続いて未結合抗体を除去するために、4回洗浄した。次いで、抗体染色された細胞を1:1のビーズ対細胞比にて室温で5分間、Thermomixer
(R)(Eppendorf、Enfield、Connecticut、USA)において500rpmで混合した。次いで、1Mガドブトロールを含有する浮遊剤を細胞/マイクロバブル混合物に75mMの最終濃度まで添加した。結果として生じる浮遊懸濁物をLeviCell
TM磁気浮遊プラットフォーム(Levitas Bio、Menlo Park、California、USA)のフローセルカートリッジ中に負荷し、および次いでフローセルを通して流した。
図8はビオチン化抗体リンカーを使用してストレプトアビジン共役したマイクロビーズに結合したジャーカット細胞(「ジャーカット」)の複合体を概略的に例示する。
【0078】
図9は20分の平衡化ステップの終わりにフレームからの明視野、赤色および緑色蛍光の合成写真画像である(グレースケールにおいて再現した)。未結合のH358細胞は、少数のタグ付けされていないジャーカット細胞(生きたタグ付けされていない細胞は混合物における最も低い密度および最低の浮遊プロファイルを有する)とともに、フローセルにおける上部バンドにおいて残る。それらの下には、PMMAマイクロビーズにより複合体化されたジャーカット細胞がある。それらの浮遊プロファイル(LP)は、多くのビーズが各細胞にどのように付着されるかに依存し、より一層多くのビーズが細胞をフローセルでより一層下方に浮遊させる。底部には未結合PMMAマイクロビーズがあり、それらは最高密度および最高浮遊プロファイルを有する。
図9に例示する磁気浮遊実験では、フローセルから取り出したH358細胞を含有するフラクションは47%に豊富化され、ジャーカット細胞の92%消耗に対応した。
例3:金マイクロビーズを用いたジャーカット細胞の分離
【0079】
金マイクロビーズを用いたジャーカット細胞の分離を達成し、および
図10と11とに例示する。ジャーカット細胞(例1に記載)を50μg/mlにてビオチン化抗CD45抗体(クローンHI30、Biolegend、San Diego、California)により氷上で1時間標識し、および次いで未結合抗体を除去するために4回洗浄した。このように、標識されたジャーカット細胞を金ナノ粒子と共に150分間インキュベーションした(
図10における「ジャーカット+Gdの150分インキュベーション」および
図11における「Au NPの150分」))。金ナノ粒子と共にインキュベーションされていないラベルなしジャーカット細胞(
図10における「ジャーカット単独」および
図11における「Au NPなし」)をコントロールとして使用した。磁気浮遊は実質的に前の例で説明したように実行した。浮遊プロファイル(
図11でのLP)は細胞のバンドの中央が浮遊したフローセルにおける位置から計算した。平均浮遊値の計算は
図10に例示する実験中に撮影した画像から実行した。
図11におけるバーは細胞のバンドの厚さを表す。浮遊懸濁物が平衡に達したとき、およそ~10分浮遊した後、金ナノ粒子と共に150分間インキュベーションした細胞は、金ナノ粒子を含まない細胞と比較してより高いLP、フローセルにおけるより低い浮遊への変換、および従ってより高い密度を有して浮遊した。
例4:細胞分離への微粒子サイズの影響
【0080】
細胞分離のために、より一層少ない量の密度調整剤を使用することが有利であり得る。しかしながら、各細胞が少なくとも1つの微粒子結合を有することを確実にする必要があり、それは飽和平衡結合濃度に到達するために、より一層高い細胞に対する微粒子の比を必要とする。より一層大きな微粒子はより一層小さな微粒子と同じ重量/容量濃度(質量濃度)にて供給され、それで懸濁物における12μmビーズの与えられる容量は5μm微粒子の同じ容量よりも約8倍少ない微粒子を含有する。加えて、微粒子サイズの増加に伴って、その表面積も増加し、このように微粒子あたりより一層多くの連結剤が必要とされる。連結剤はビーズの表面に固定化されているので、微粒子サイズの増加に伴う微粒子あたりの連結剤の増加量は「溶液相」連結剤濃度の増加に直接変換されない。ある密度の任意の微粒子タイプがサイズにおいて異なるが、および同じ質量濃度であるとすれば、および連結剤が微粒子表面積の固定した割合をカバーすると仮定すると、微粒子サイズとは無関係に、連結剤分子はより一層多くの数のより一層小さな微粒子にわたって(微粒子あたりより一層少ない連結剤分子にて)より一層少ないより一層大きな微粒子にわたってのものよりも良好に分散される。より一層大きな微粒子はまた、フローセルカートリッジの処理チャネルにおける大量の空間を占め、どれだけ多くの微粒子を使用することができるかについての上限が効果的に設定される。以下の実験は、細胞分離での微粒子サイズをテストするために行った。
【0081】
重合体マイクロビーズを使用したジャーカット細胞の分離は、実質的に例2に記載されているようになし遂げたが、以下の修飾を伴った。12μmおよび5μmのストレプトアビジン共役したPMMAビーズ(「マイクロビーズ」)を用いて別々の実験を行った。すべての利用可能なビオチン結合部位を結合するために、マイクロビーズをビオチン-抗CD45抗体により被覆した。5μmのマイクロビーズについてのビオチン結合能力は、12μmのマイクロビーズのビオチン結合能力をスケールダウンすることによって見積もった。抗体カップリングマイクロビーズをそれぞれ12μmおよび5μmマイクロビーズについての1:1および60:1のビーズ対細胞の比での15%CD45neg/85%CD45pos細胞混合物とインキュベーションした。1:1のビーズ対細胞比での12μmのビーズは、約55%のCD45pos細胞を消耗させた。CD45pos細胞に結合した12μmのマイクロビーズは、結果として生じる複合体の浮遊高さを十分に低減したが、そのフラクションは処理チャネルにおいて拡散しており、および多くのマイクロビーズは細胞に結合していなかった。5μmマイクロビーズは、約85-87%のCD45pos細胞を消耗させたが、60:1のビーズ対細胞比を必要とした。より一層高いビーズ対細胞比は、12μmビーズの性能を改善する可能性が高いが、ビーズを被覆するための同じ濃度の抗体による60:1の比は、ほぼ12倍の5μmビーズほど多くの抗体を必要とするであろう。追加的に、その高い多数の大きなビーズはフローセル処理チャネルの能力をはるかに超えたであろう。
【0082】
浮遊高さ改変剤または磁性剤の細胞への結合が最も効果的に行われるのは、微粒子あたりの連結剤分子数と単位溶液体積あたりの微粒子数の積が溶液中の特定の連結剤の飽和濃度にできるだけ近くなるように、可能な限り小さなサイズの微粒子を使用したときであることが理論的に予測され、および実験的にも確認された。例えば、同じ材料から作成され、および同じ密度を有する2つの異なるタイプの微粒子は、異なるサイズ、第一の微粒子の5μmの直径、および第二の微粒子の1μmの直径を有することができる。5μmの微粒子は、1μmの微粒子と比較して、125×の粒子容量および25×の表面積を有する。あらゆる抗体結合事象に必要な固定表面積を仮定すると、5μm微粒子は1μm微粒子よりも25×連結剤分子に結合することができる。しかしながら、溶液において、微粒子の容量あたり同じ重量の濃度では、1μmの微粒子は125×高く濃縮されることになる。このように、微粒子結合した連結剤の有効な溶液濃度は、1μmの微粒子について5μmの微粒子についてのものよりも5×高くなり、容量あたりの同じ重量濃度を伴う。このように、より一層小さな微粒子を使用し、および単位容量あたりより一層多くの数の微粒子を使用することによって、溶液における微粒子結合連結剤の濃度を飽和させることがより一層容易である。LeviCell
TM磁気浮遊プラットフォーム上で効果的な細胞分離を達成するために、微粒子のサイズは溶液における飽和濃度に達するのに足りる小ささ、および密度調整剤を用いて細胞の複合体の密度を効果的に変動させるのに足りる大きさでなければならないことが実験的に決定された。細胞と密度調整剤との複合体の密度に対する微粒子サイズの影響は
図13に例示し、それは本開示の他の箇所で論じられる。
【0083】
本開示に記載された例および実施形態は例示目的のためだけであり、およびそれらに照らして様々な修飾または変化が当技術において熟練した人びとに示唆されており、ならびにこの出願および添付の請求の範囲の精神および視野内に含まれていることが理解される。本開示において引用されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、すべての目的のためにそれらの全体が参照によりここに組み込まれる。
【国際調査報告】