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特表2024-538165オルガノイドを培養する方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】オルガノイドを培養する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20241010BHJP
   C12N 5/0797 20100101ALI20241010BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241010BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20241010BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/0797
C12N5/10
C12M3/00 A
C12M1/00 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523119
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 US2022046728
(87)【国際公開番号】W WO2023064570
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/256,279
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/344,777
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524142921
【氏名又は名称】ナショナル ステムセル ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL STEM CELL FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】101 South 5th Street,Suite 1605, Louisville,Kentucky 40202,U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】514136314
【氏名又は名称】ニューヨーク ステム セル ファウンデーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】ノーグル,スコット エー.
(72)【発明者】
【氏名】フォサーティ,バレンティナ
(72)【発明者】
【氏名】マロッタ,ダヴィード
(72)【発明者】
【氏名】ロリング,ジャンヌ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC02
4B029DF10
4B029GA02
4B029GB02
4B065BB13
4B065BB19
4B065BB20
4B065BB40
4B065BC50
4B065CA44
(57)【要約】
オルガノイドを培養する方法は、神経前駆細胞を第1の容量の皮質培地又はドーパミン作動性培地と組み合わせてオルガノイドを形成することを含む。次いで、ミクログリアをオルガノイドに加え、組み合わせたオルガノイド及びミクログリアを、ある量のIL-34及びGM-CSF、並びにある量の緩衝液を含む第2の容量の皮質培地又はドーパミン作動性培地とともにクライオバイアルに加える。クライオバイアルをその後密閉し、オルガノイドを閉鎖条件下で所定期間培養する。オルガノイドを培養するシステムは、神経前駆細胞から形成されたオルガノイドと、ミクログリアと、有効量の皮質培地又はドーパミン作動性培地と、緩衝液と、前記成分を閉鎖条件下に収容するクライオバイアルとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経前駆細胞を第1の容量の皮質培地又はドーパミン作動性培地と組み合わせてオルガノイドを形成することと、
ミクログリアを前記オルガノイドに加えることと、
組み合わせたオルガノイド及びiPSC由来ミクログリアを、クライオバイアルに、第2の容量の皮質培地又はドーパミン作動性培地と共に加えること、ここで、前記第2の容量の皮質培地又はドーパミン作動性培地は、インターロイキン(IL)-34及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含み、さらに緩衝液を含む、
前記クライオバイアルを密封することと、
前記オルガノイドを閉鎖条件下で所定期間培養すること
とを含む、オルガノイドを培養する方法。
【請求項2】
前記神経前駆細胞、前記ミクログリア又はその両方が神経幹細胞に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記神経幹細胞がiPSCである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記神経前駆細胞が健常対象又は神経変性疾患を有する対象から得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が神経変性疾患を有し、前記神経変性疾患が多発性硬化症及びパーキンソン病から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記神経前駆細胞を前記第1の容量の皮質培地又はドーパミン作動性培地と組み合わせることが、前記神経前駆細胞を皮質培地と組み合わせることを含み、前記皮質培地が、有効量の環状アデノシン一リン酸(cAMP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)及びニューロトロフィン(NT)-3を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記cAMPが約100mMの濃度で含まれ、前記BDNFが約10 ng/mlの濃度で含まれ、前記GDNFが約10 ng/mlの濃度で含まれ、前記NT-3が約10 ng/mlの濃度で含まれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記IL-34が約100 ng/mlの濃度で含まれ、前記GM-CSFが約10 ng/mlの濃度で含まれる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記神経前駆細胞を前記第1の容量の皮質培地又はドーパミン作動性培地と組み合わせることが、前記神経前駆細胞をドーパミン作動性培地と組み合わせることを含み、前記ドーパミン作動性培地が有効量のBDNF、GDNF、トランスフォーミング成長因子(TGF)-β3、アスコルビン酸及びcAMPを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記BDNFが約20 ng/mlの濃度で含まれ、前記GDNFが約20 ng/mlの濃度で含まれ、前記TGF-β3が約1ng/mlの濃度で含まれ、前記アスコルビン酸が約200μMの濃度で含まれ、前記cAMPが約500μMの濃度で含まれる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記IL-34が約100 ng/mlの濃度で含まれ、前記GM-CSFが約10 ng/mlの濃度で含まれる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞を所定期間培養することが、前記細胞を微小重力条件下で前記所定期間培養することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記所定期間が少なくとも28日間である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記所定期間の後に前記クライオバイアルから前記オルガノイドを取り出すステップと、
組織培養容器で前記オルガノイドを培養するステップと
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
オルガノイドが単一オルガノイドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
神経前駆細胞から形成されたオルガノイドと、
ミクログリアと、
有効量の皮質培地又はドーパミン作動性培地と、
緩衝液と、
前記オルガノイド、前記ミクログリア、前記皮質培地又は前記ドーパミン作動性培地及び前記緩衝液を閉鎖条件下に収容するためのクライオバイアルと
を含む、オルガノイド培養システム。
【請求項17】
前記神経前駆細胞、前記ミクログリア又はその両方が神経幹細胞に由来する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記神経幹細胞がiPSCである、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記iPSCが健常対象又は神経変性疾患を有する対象から得られる、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記対象が神経変性疾患を有し、前記神経変性疾患が多発性硬化症及びパーキンソン病から選択される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記皮質培地が有効量のcAMP、BDNF、GDNF及びNT-3を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項22】
前記cAMPが約100mMの濃度で含まれ、前記BDNFが約10 ng/mlの濃度で含まれ、前記GDNFが約10 ng/mlの濃度で含まれ、前記NT-3が約10 ng/mlの濃度で含まれる、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記ドーパミン作動性培地が、有効量のBDNF、GDNF、TGF-β3、アスコルビン酸及びcAMPを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項24】
前記BDNFが約20 ng/mlの濃度で含まれ、前記GDNFが約20 ng/mlの濃度で含まれ、前記TGF-β3が約1ng/mlの濃度で含まれ、前記アスコルビン酸が約200μMの濃度で含まれ、前記cAMPが約500μMの濃度で含まれる、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記皮質培地又は前記ドーパミン作動性培地がIL-34及びGM-CSFを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項26】
前記IL-34が約100 ng/mlの濃度で含まれ、前記GM-CSFが約10 ng/mlの濃度で含まれる、請求項25に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 関連出願
本出願は、2021年10月15日出願の米国仮出願第63/256,279号及び2022年5月23日出願の米国仮出願第63/344,777号の優先権を主張し、これらの出願の全開示は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
[0002] 技術分野
本開示の主題は、概して、オルガノイドを培養する方法及びシステムに関する。特に、本開示の主題のあるいくつかの実施形態は、閉鎖条件及び/又は微小重力条件下でオルガノイドを長期間培養する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 人類は、宇宙で、生物学的プロセスを変化させて新たな環境への適合を誘導する多くの難題に直面する。筋骨格退化に対する微小重力の影響に焦点を当てた複数の研究が存在するが、ヒト脳に対するその影響についての情報は、ほとんどない。宇宙飛行士に対する微小重力の影響は、年齢に関連する疾患と何らかの様式で類似している可能性が示唆されている。例えば、微小重力は、神経変性疾患の特質であるタンパク質のミスフォールディング及び蓄積を加速させる。さらに、NASAの双子研究のような宇宙飛行士の研究は、末梢炎症性サイトカイン及びケモカインが微小重力に関連して増加すること、及び宇宙飛行中の免疫関連経路のアップレギュレーションを明らかにした。神経炎症は、多くの神経変性障害の発症及び進行の一因となるので、微小重力における脳に対する炎症の影響の理解は、疾患機序を明らかにして宇宙探索を拡大させるための持続可能なストラテジを開発するために重要であると証明され得る。
【0004】
[0004] ヒトの平均寿命の増加に伴い、神経変性疾患の有病率は、世界中で上昇している。現在の医療は、いくらかの症状を管理し、改善することだけはできるが、疾患進行中に生じるニューロンの変性及び喪失を停止も、遅延も、逆転もさせない。このような神経変性疾患には、有効な処置が未だにないパーキンソン病(PD)及び進行性多発性硬化症(MS)が含まれる。
【0005】
[0005] MS及びPDにおいて神経変性に到る発病機序のうち、グリア細胞により誘因される神経炎症は、重要因子としてますます認識されつつある。アストロサイト、ミクログリア及びオリゴデンドロサイトは、中枢神経系(CNS)の恒常性を維持するために必須であるCNSの非ニューロン細胞である。アストロサイト及びミクログリアの機能の変化は、ニューロン変性と直接又は間接的に相関づけられている。例えば、ミクログリアは、防御機構に関与し、損傷部位に向かって移動し、サイトカインを放出し、デブリ又は死細胞をファゴサイトーシスにより除去する。しかし、炎症性サイトカインの過剰放出及びファゴサイトーシスの損傷を含む異常なミクログリア応答は、いくつかの神経変性障害におけるニューロン細胞死の一因である。微小重力は、ミクログリアによる炎症応答に影響し、移動(locomotion)又はファゴサイトーシスに必要な細胞骨格再構成に干渉することがある。よって、神経変性疾患及びLEOにおけるミクログリア機能(不全)の理解は、渇望されている新規な治療介入ターゲットを導き得る。PD、進行性MSその他の神経変性疾患の現在の処置はいずれも、グリア細胞及び神経炎症をターゲットとしていない。
【0006】
[0006] PDの症状は、CNSにおけるドーパミンニューロンの喪失により引き起こされ、標準治療は、ドーパミンの生化学的前駆体であるLドーパの投与であり、これは、残存ニューロンにより多くのドーパミンを放出させるが、ドーパミンニューロンの喪失を停止させない。MSにおける免疫調節療法は、MSの再発寛解期(RRMS)中の末梢免疫細胞浸潤のブロック又は防止にほぼ成功するが、一次進行型(PP)及び二次進行型(SP)MSは、処置がより困難である。MS、PDその他の神経変性疾患におけるグリア誘導性発病機序を研究することにより、より効果的な処置への新たな道が開ける。
【0007】
[0007] さらに、新たな処置の可能性に関して、人工多能性幹細胞(iPSC)技術は、CNS研究に革命をもたらし、ヒトCNS細胞タイプを培養で研究することを可能にした。末梢血単核細胞又は皮膚線維芽細胞のような体細胞は、iPSCを発生するように簡単に再プログラミングでき、これは、自己再生し、任意の成熟細胞タイプに分化するその能力において胚性幹細胞と同等である。iPSC由来CNS細胞は、ドナーの遺伝子情報を保有し、前例のない遺伝子型-表現型相関研究を可能にして、ヒトにおける神経変性疾患の根底にある遺伝的複雑性に対処する。
【0008】
[0008] これらに沿って、脳オルガノイドとしばしば呼ばれる三次元ヒトCNSモデルは、ニューロン及びグリアの全てを含んでおり、発生中の脳の特徴を模倣し、細胞間相互作用を捉えている。脳オルガノイドは、特定の疾患関連変異を有するように操作され、精神障害、例えば統合失調症、神経発達及び神経変性疾患のモデルとして用いられている。
【0009】
[0009] したがって、iPSCオルガノイドと、組み込まれたiPSC由来ミクログリアとを用いて神経変性及び神経炎症のモデルをつくり、微小重力条件下を含む長期生存が可能である培養システムの確立を可能にするシステム及び方法は、非常に望まれており、有益でもある。
【発明の概要】
【0010】
[0010] 概要
本開示の主題は、本願で提供する情報を知得後に当業者に明らかになるように、上で同定した必要性のいくつか又は全てに対処するものである。
【0011】
[0011] 本概要は、本開示の主題のいくつかの実施形態について記載し、多くの場合、これらの実施形態の変形及び入れ替えを列挙する。本概要は、多くのそして様々な実施形態の単なる例示である。ある実施形態の1つ以上の代表的な特徴についての言及も、同様に例示である。このような実施形態は、典型的に、言及する特徴を有するか又は有さずに存在し得、同様に、それらの特徴は、本概要で列挙されていてもいなくても、本開示の主題の他の実施形態に適用され得る。過剰な反復を回避するために、本概要は、このような特徴の全ての可能な組合せを列挙又は示唆しない。
【0012】
[0012] 本開示の主題は、オルガノイドを培養する方法及びシステムを含む。特に、本開示の主題のあるいくつかの実施形態は、オルガノイドを閉鎖条件及び/又は微小重力条件下で長期間培養することが可能になるオルガノイド培養方法及びシステムを含む。
【0013】
[0013] 本開示の主題のいくつかの実施形態において、オルガノイドを培養する方法が提供される。いくつかの実施形態において、オルガノイドを培養する例示的方法は、神経前駆細胞(neural precursor cell)を第1の容量の皮質培地又はドーパミン作動性培地と組み合わせてオルガノイドを形成する第1の工程を含む。次いでミクログリアをオルガノイドに加え、その後、組み合わせたオルガノイド及びミクログリアをクライオバイアルに、第2の容量の皮質培地又はドーパミン作動性培地と共に加える。ここで、第2の容量の皮質培地又はドーパミン作動性培地は、ある量のインターロイキン(IL)-34及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)と、ある量の緩衝液とを含む。次いで、クライオバイアルを密閉し、オルガノイドを閉鎖条件下で所定期間培養する。
【0014】
[0014] ここに記載する方法のいくつかの実施形態において、神経前駆細胞(neural precursor cell)及び/又はミクログリアは、神経幹細胞に由来し、例えば、あるいくつかの実施形態では、iPSCに由来する。いくつかの実施形態において、iPSCは健常対象又は神経変性疾患を有する対象から得る。このような神経変性疾患は、あるいくつかの実施形態において、多発性硬化症及びパーキンソン病から選択され得る。
【0015】
[0015] さらに、神経前駆細胞(neural precursor cell)を第1の容量の皮質培地又はドーパミン作動性培地と組み合わせることに関して、いくつかの実施形態において、皮質培地を用い、皮質培地は、有効量の環状アデノシン一リン酸(cAMP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)及びニューロトロフィン(NT)-3を含む。いくつかの実施形態において、cAMPは約100mMの濃度で含まれ、BDNFは約10 ng/mlの濃度で含まれ、GDNFは約10 ng/mlの濃度で含まれ、NT-3は約10 ng/mlの濃度で含まれる。皮質培地を用いるいくつかの実施形態において、IL-34は約100 ng/mlの濃度で含まれ、GM-CSFは約10 ng/mlの濃度で含まれる。
【0016】
[0016] ここに開示する方法の他の実施形態において、ドーパミン作動性培地を用い、ドーパミン作動性培地は、神経前駆細胞(neural precursor cell)と組み合わされる。ここで、ドーパミン作動性培地は、有効量のBDNF、GDNF、TGF-β3、アスコルビン酸及びcAMPを含む。ドーパミン作動性培地を用いるいくつかの実施形態において、BDNFは約20 ng/mlの濃度で含まれ、GDNFは約20 ng/mlの濃度で含まれ、TGF-β3は約1ng/mlの濃度で含まれ、アスコルビン酸は約200μMの濃度で含まれ、cAMPは約500μMの濃度で含まれる。いくつかの実施形態において、ドーパミン作動性培地中に、IL-34は約100 ng/mlの濃度で含まれ、GM-CSFは約10 ng/mlの濃度で含まれる。
【0017】
[0017] 細胞の培養では、いくつかの実施形態において、細胞を所定期間培養することは、細胞を微小重力条件下で所定期間培養することを含む。いくつかの実施形態において、細胞を培養する所定期間は少なくとも28日間である。所定期間後、所望であれば、オルガノイドをクライオバイアルから取り出し、組織培養容器で培養する。いくつかの実施形態において、オルガノイドは単一オルガノイドを含む。
【0018】
[0018] さらに、本開示の主題のいくつかの実施形態において、オルガノイドを培養するシステムが提供される。いくつかの実施形態において、提供されるオルガノイド培養システムは、神経前駆細胞(neural precursor cell)から形成されたオルガノイドと、ミクログリアと、有効量の皮質培地又はドーパミン作動性培地と、緩衝液と、オルガノイド、ミクログリア、皮質培地又はドーパミン作動性培地及び緩衝液とを閉鎖条件下に収容するためのクライオバイアルとを含む。
【0019】
[0019] 上記の方法と同様に、ここに記載するシステムのいくつかの実施形態において、神経前駆細胞(neural precursor cell)及び/又はミクログリアは、神経幹細胞、例えば、健常対象又は神経変性疾患を有する対象から得ることができるiPSCに由来する。システムのいくつかの実施形態において、神経変性疾患は、多発性硬化症及びパーキンソン病から選択される。
【0020】
[0020] 例示的なシステムに含まれる皮質培地は、あるいくつかの実施形態において、有効量のcAMP、BDNF、GDNF及びNT-3も含む。いくつかの実施形態において、皮質培地中に、cAMPは約100mMの濃度で含まれ、BDNFは約10 ng/mlの濃度で含まれ、GDNFは約10 ng/mlの濃度で含まれ、NT-3は約10 ng/mlの濃度で含まれる。
【0021】
[0021] 例示的なシステムに含まれるドーパミン作動性培地は、同様に、あるいくつかの実施形態において、有効量のBDNF、GDNF、TGF-β3、アスコルビン酸及びcAMPを含む。ドーパミン作動性培地のいくつかの実施形態において、BDNFは約20 ng/mlの濃度で含まれ、GDNFは約20 ng/mlの濃度で含まれ、TGF-β3は約1ng/mlの濃度で含まれ、アスコルビン酸は約200μMの濃度で含まれ、cAMPは約500μMの濃度で含まれる。
【0022】
[0022] システムのいくつかの実施形態において、皮質培地又はドーパミン作動性培地は、ある量のIL-34及びGM-CSFを含む。いくつかの実施形態において、IL-34は約100 ng/mlの濃度で含まれ、GM-CSFは約10 ng/mlの濃度で含まれる。
【0023】
[0023] 本発明のさらなる特徴及び利点は、本願の明細書、図面及び非限定的な実施例の知得後に当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本開示の主題となっている発明の経過及び開発の間に利用した実験ストラテジを示し、hiPSC系統及び分化プロトコルを表す模式図である。
図2図2は、本開示の主題に従って用いられるCubeLabの画像であり、パーキンソン病(PD)及び一次進行性多発性硬化症(PPMS)の患者に由来するヒト三次元(3D)脳オルガノイドを含み、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されて浮遊しているCubeLabを示す。
図3図3は、CubeLabが、ISSに搭載された30日間のミッションで、静的培養システムを定温に保持したことを示す画像(上)と、ISSでのインキュベーション中にCubeLabから得た、異なる日のオルガノイドを含むバイアルの画像(下)を示す。
図4図4は、本開示の主題に従って用いられ、発射の間及びISS上の間に電力及び実験モニタリング用データインターフェースを提供するパワーアセントユーティリティロッカー(Power Ascent Utility Locker; PAUL)を示す画像である。
図5図5A~5Fは、培地交換なしで静的システムにおいて培養した脳オルガノイドが30日後に生存可能であることを示す画像を含む。(図5A)飛行前段階から地球低軌道(LEO)及び地上での飛行後段階まで、閉鎖静的システムで培養したオルガノイドのサイズ増加を示す画像。(図5B)地球低軌道(LEO)及び地上で30日間培養後の、神経突起及び放射状グリア(矢印)が伸長したプレーティングされたオルガノイドを示す画像。ここで、オルガノイドは、皮質の健常コントロールオルガノイドに示されるような、神経ロゼットが視認され、オルガノイド全体に拡散した典型的細胞構造を維持していた。(図5C~5F)静的システムで30日間培養後の神経ロゼット(矢印)の健常な構造を示す、MAP2及びヘキスト染色並びに三次元(3D)レンダリングを示す画像。(HC=健常コントロール、PPMS=一次進行性多発性硬化症、PD=パーキンソン病、LEO=地球低軌道)。
図6図6A~6Iは、微小重力が皮質及びドーパミン作動性の脳オルガノイドで遺伝子発現を変化させることを示すグラフ及びプロットを含む。(図6A)サンプルのクラスタリングを示すRNA-seqデータの主成分分析(PCA)。ここで、PC1は、ドーパミン作動性 対 皮質を分け、PC2は、コントロール 対 患者を分ける。(図6B~6E)DESeq2を用いて分析した発現変動遺伝子(DEG)を示すプロット。ここで、ボルケーノプロットは、パッケージggplot2及びggrepelを用いて作出した。log2倍率変化は、各遺伝子の平均発現を示し、有意(padj<0.05)に増量した遺伝子は、レプリケートにわたって赤色又は青色(それぞれlog2倍率変化>1又は<-1)で示し、図6B及び6Cに示すプロットは、健常コントロールからのiPSC由来皮質オルガノイド及び多発性硬化症患者からのiPSC由来オルガノイドの発現変動遺伝子(DEG)-地球低軌道(LEO) 対 地上-を示し、図6D及び6Eのボルケーノプロットは、健常コントロールからのiPSC由来ドーパミン作動性オルガノイド及びパーキンソン病患者からのiPSC由来オルガノイドのDEGを示す(DEGは、皮質コントロール地上n=6、皮質コントロールLEO n=5、MS患者地上n=4、MS患者LEO n=4、ドーパミン作動性コントロール地上n=5、ドーパミン作動性コントロールLEO n=5、パーキンソン病患者地上n=7、パーキンソン病患者LEO n=6から定量したRNA-seq読取値を用いて特定した)。(図6F~6I)org.Hs.eg.dbアノテーションデータ(p値カットオフ=0.05、nPermSimple=10000、padj法=ボンフェローニ、キータイプ=ENSEMBL)を用いた皮質コントロール、MS患者(図6F~6G)、ドーパミン作動性コントロール及びPD患者のDEG(図6H~6I)の遺伝子エンリッチメント解析(GSEA)。
図7図7A~7Bは、微小重力がドーパミン作動性及び皮質のオルガノイドにおける遺伝子発現変動の原因であることを示すグラフ及びプロットを含む。ここで、発現変動遺伝子(DEG)はDESeq2を用いて分析し、ボルケーノプロットはパッケージggplot2及びggrepelを用いて作出した。図7Aは、2名の健常コントロールからのiPSC由来3Dオルガノイド(皮質及びドーパミン作動性のオルガノイド)、並びに多発性硬化症及びパーキンソン病患者からのiPSC由来オルガノイドの発現変動遺伝子(DEG)-地球低軌道(LEO) 対 地上-のプロットを示す(有意(padj<0.05)に増量した遺伝子は、レプリケート(LEOサンプルn=20、地上サンプルn=22)にわたって赤色又は青色(それぞれlog2倍率変化>1又は<-1)で示す)。図7Bは、org.Hs.eg.dbアノテーションデータ(p値カットオフ=0.05、nPermSimple=10000、padj法=ボンフェローニ、キータイプ=ENSEMBL)を用いた全ニューロンの遺伝子エンリッチメント解析(GSEA)を示す。
図8図8A~8Gは、微小重力が、微小重力で培養した皮質及び中脳オルガノイドのセクレトームに影響することを示すグラフ及びプロットを含む。ここで、皮質及び中脳オルガノイドは、良好なクラスタリングを示し(図8A~8C)、皮質オルガノイドについての図8B及び中脳についての図8Dのボルケーノプロットは、分泌変動タンパク質(DSP)を示す(NPXの有意値を赤色で、非有意値を青緑色で示し(padj<0.05)(皮質地上=4、皮質LEO=12、ドーパミン作動性地上=4、ドーパミン作動性LEO=11))。Venn図(図8G)は、分析した全タンパク質を示し、皮質及びドーパミン作動性サンプルそれぞれに単独のDSPと、共通して分泌されるDSPとを強調し、(図8E~8F)GOターム(BP、CP、MP)は、それぞれ皮質及びドーパミン作動性について示し、shinyGOを用いて行った。
図9図9A~9Hは、発現変動遺伝子(DEG)を示すグラフ及びプロットである。図9A及び9Bのボルケーノプロットは、iPSC由来皮質コントロールオルガノイド(-MG)及び(+MG)のDEG -LEO 対 地上-を示す。図9C及び9Dに示すプロットは、iPSC由来MS患者オルガノイド(-MG)及び(+MG)を示す。図9E及び9Fに示すボルケーノプロットは、iPSC由来DAコントロールオルガノイド(-MG)及び(+MG)のDEGを示し、iPSC由来PD患者オルガノイドのDEGは図9G及び9Hのプロットに示す。ここで、DEGは、DESeq2を用いて定量したRNA-seq読取値を用いて特定する。-log(p値)及びlog2倍率変化を示すボルケーノプロットは、パッケージggplot2及びggrepelを用いて作出した。有意(padj<0.05)に増量した遺伝子は、レプリケートにわたって赤色又は青色で示す(それぞれlog2倍率変化>1又は<-1)(皮質コントロール(-MG)地上n=3、皮質コントロール(+MG)地上n=3、皮質コントロール(-MG) LEO n=2、皮質コントロール(+MG) LEO n=3、MS (-MG)地上n=2、MS (-MG)地上n=2、MS (-MG) LEO n=2、MS (-MG) LEO n=2、DAコントロール(-MG)地上n=2、DAコントロール(+MG)地上n=2、DAコントロール(-MG) LEO n=3、DAコントロール(+MG) LEO n=2、PD (-MG)地上n=4、PD (+MG)地上n=3、PD (-MG) LEO n=4、PD (+MG) LEO n=2)。
図10図10A~10Dは、以下のグラフ及びプロットを含む。(図10A)全て(皮質及びドーパミン作動性)のiPSC由来コントロールオルガノイドのDEG -LEO 対 地上-を示すボルケーノプロット。(図10B)全て(MS及びPD)のiPSC由来オルガノイドのDEGを示すプロット。図10C及び10Dは、それぞれ図10A及び10Bに示すDEGの遺伝子エンリッチメント解析を示すプロットであり、DEGは、DESeq2を用いて定量したRNA-seq読取値を用いて特定する。-log(p値)及びlog2倍率変化を示すボルケーノプロットは、パッケージggplot2及びggrepelを用いて作出した。有意(padj<0.05)に増量した遺伝子は、レプリケートにわたって赤色又は青色(それぞれlog2倍率変化>1又は<-1)で示す(コントロール地上n=11、コントロールLEO n=10、患者地上n=11、患者LEO n=10)。図10C及び10Dにおいて、それぞれ「全てのコントロール」及び「全ての患者」の遺伝子エンリッチメント解析(GSEA)を報告した。GSEAは、p値カットオフ=0.05、nPermSimple=10000、padj法=ボンフェローニ、キータイプ=ENSEMBLのorg.Hs.eg.dbアノテーションデータを用いた。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[0034] 本開示の主題の1つ以上の実施形態の詳細を、本願に記載する。本願に記載する実施形態に対する変更、及びその他の実施形態は、本願に示す情報を研究した後に当業者に明らかである。本願に示す情報、特に、記載する例示的な実施形態の具体的な詳細は、第一に明確な理解のために示し、不要な限定はそこから理解されない。矛盾がある場合、定義を含む本願の記載が支配する。
【0026】
[0035] 本明細書で用いる用語は当業者に十分に理解されると考えるが、いくつかの定義を、本開示の主題の説明を容易にするために述べる。
【0027】
[0036] そうでないと定義しない限り、本明細書で用いる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味である。
【0028】
[0037] 本明細書の全開示を通じて言及する全ての特許、特許出願、公開された出願及び公報、GenBank配列、データベース、ウェブサイト及びその他の公開されたものは、そうでないと記載しない限り、その全体が参照により組み込まれる。
【0029】
[0038] URL又はその他のそのような識別子若しくはアドレスに言及する場合、そのような識別子は変更することがあり、インターネットの具体的な情報は現れては消えるが、等価な情報は、インターネットを検索することにより見つけることができることが理解される。そのような言及は、そのような情報の利用可能性及び一般普及の証拠である。
【0030】
[0039] 本明細書で用いる場合、いずれの保護基、アミノ酸及びその他の化合物についての略語は、そうでないと示さない限り、その一般的な用法、認識された略語、又はIUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature(Biochem. (1972) 11(9):1726-1732を参照)に従う。
【0031】
[0040] 本明細書で記載するものに類似又は等価な任意の方法、装置及び材料は、本開示の主題の実施又は試験に用いることができるが、代表的な方法、装置及び材料を本明細書で記載する。
【0032】
[0041] あるいくつかの場合、本明細書で開示するヌクレオチド及びポリペプチドは、公衆に利用可能なデータベース、例えばGENBANK(登録商標)及びSWISSPROTに含まれる。配列を含む情報、並びにそのような公衆に利用可能なデータベースに含まれるそのようなヌクレオチド及びポリペプチドに関するその他の情報は、参照により明示的に組み込まれる。そうでないと記載しないか又は明らかでない限り、そのような公衆に利用可能なデータベースへの言及は、本願出願時の最新バージョンのデータベースへの言及である。
【0033】
[0042] 本出願は、本発明の成分、及び本明細書で記載する他の成分又は要素を「~を含む」(オープンエンド)、「~からなる」(クローズドエンド)又は「~から本質的になる」ことができる。本明細書で用いる場合、「~を含む」は、オープンエンドであり、列挙する要素又はそれらの構造的若しくは機能的等価物及び列挙していない任意の他の要素を意味する。用語「~を有する」及び「~を含有する」は、文脈がそうでないと示していない限り、オープンエンドであると解釈される。
【0034】
[0043] 長年の特許法の慣例に従い、単数表記は、特許請求の範囲を含めて本出願で用いる場合、「1つ以上(単数及び複数)」のことをいう。よって、例えば「細胞」への言及は、複数の細胞を含むという具合である。
【0035】
[0044] そうでないと示さない限り、本明細書及び特許請求の範囲で用いる成分、特性、例えば反応条件などの量を表す全ての数は、全ての場合で用語「約」が付されていると理解される。したがって、そうでないと示さない限り、本明細書及び特許請求の範囲で記載する数値パラメータは、本開示の主題により得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。
【0036】
[0045] 本明細書で用いる場合、用語「約」は、値又は質量、重量、時間、容量、濃度若しくはパーセンテージの量に言及する場合、特定された量からいくつかの実施形態において±20%、いくつかの実施形態において±10%、いくつかの実施形態において±5%、いくつかの実施形態において±1%、いくつかの実施形態において±0.5%、並びにいくつかの実施形態において±0.1%の変動を含むことを、このような変動が開示する方法を行うのに適当であるならば、意味する。
【0037】
[0046] 本明細書で用いる場合、範囲は、「約」が付された或る特定の値から、及び/又は「約」が付された別の特定の値までと表現できる。本明細書で開示するいくつかの値があり、各値がその値自体に加えて「約」が付された当該特定の値としても本明細書で開示されると理解される。例えば、値「10」が開示されていれば、「約10」も開示されている。2つの特定の単位値の間の各単位値もまた開示されていると理解される。例えば、10及び15が開示されていれば、11、12、13及び14も開示されている。
【0038】
[0047] 本明細書で用いる場合、「任意選択的の」又は「任意選択的に」は、その後に記載する事象又は状況が起こるか又は起こらず、記載がその事象又は状況が起こる場合と、起こらない場合とを含むことを意味する。例えば、任意選択的バリアント部分は、その部分がバリアント又は非バリアントであることを意味する。
【0039】
[0048] 本開示の主題は、少なくとも部分的に、閉鎖系においてミクログリアを用いてヒトiPSC由来脳オルガノイド(皮質及びドーパミン作動性神経前駆細胞(neural precursor cell))の長期間培養を可能にするシステム及び方法を発見したことに基づく。特に、本開示の主題のあるいくつかの実施形態において、脳オルガノイドは、閉鎖クライオバイアル中で1mLの培地に懸濁されて維持され、これにより、微小重力中及び地上での長期間培養の間に、培地交換なしで脳オルガノイドの成長及び生存が確実になる。このシステム及び方法により、閉鎖条件下で、言い換えると、新たに再構成した培地を添加することも、CO2濃度の平衡化を繰り返すこともなく、密閉チューブ内で少なくとも28日間、生存かつ代謝活性なオルガノイドを培養状態で維持することが可能になる。
【0040】
[0049] 本開示の主題に従ってオルガノイドを培養する1つの例示的な実行において、神経前駆細胞(neural precursor or progenitor cell)がまず形成される。「神経前駆細胞(neural precursor cell)」の句及びその文法的変形は、本明細書において、対象の中枢神経系(CNS)の前駆細胞(progenitor cell)であって、CNSに存在するグリア細胞タイプ及びニューロン細胞タイプを典型的に生じさせるが、CNSに存在する非神経細胞、例えば免疫系細胞を該して生じないものをいうために用いる。いくつかの実施形態において、オルガノイドを形成するために用いる神経前駆細胞(neural precursor cell)は、神経幹細胞、例えば、いくつかの実施形態において、当業者に認識されるように、成体細胞に由来するが多能性状態に戻るように再プログラミングされたiPSC(例えば、PaullらNat Methods 12:885-892 (2015)(これは、その全体が本明細書に参照により組み込まれる)を参照)に由来する。
【0041】
[0050] iPSC又は他の幹細胞を用いて神経前駆細胞(neural precursor cell)を形成するあるいくつかの実施形態において、ipSC又はその他の幹細胞は、通常の健常対象の細胞に由来するか、又はその細胞から得られる。本明細書で用いる場合、用語「対象」は、ヒト及び動物の対象の両方を含み、獣医学的な使用及び応用は、本開示の主題の範囲内である。よって、本開示の主題は、哺乳動物、例えばヒト、絶滅の危機のために重要な哺乳動物、例えばシベリアトラ、経済的に重要な哺乳動物、例えばヒトによる消費のために農場で飼育される動物、及び/又はヒトにとって社会的重要性を有する哺乳動物、例えばペットとして若しくは動物園で飼われている動物から生成されたか又はそれに由来するオルガノイドの培養を提供する。そのような動物の例は、それらに限定されないが、肉食動物、例えばネコ及びイヌ、ブタ(pig)、ブタ(hog)及びイノシシを含むブタ(swine)、反芻動物及び/又は有蹄動物、例えばウシ(cattle)、ウシ(oxen)、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソン及びラクダ、並びにウマを含む。絶滅の危機に瀕している、かつ/又は動物園で飼われている種類のトリ、並びにヒトにとって経済的に重要であるので、家禽、より具体的には家畜化された家禽、すなわち飼鳥、例えば七面鳥、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ホロホロチョウなどを含むトリからの細胞の培養も提供される。よって、それらに限定されないが、飼いならされたブタ、反芻動物、有蹄動物、ウマ(競馬用のウマを含む)、家禽などを含む家畜からの細胞の培養も提供される。
【0042】
[0051] iPSCを用いて神経前駆細胞(neural precursor cell)を形成する別の実施形態において、iPSCは、対象におけるニューロンの構造又は機能の進行性喪失、言い換えると神経変性を一般的に特徴とする神経変性疾患を有する対象の細胞に由来するか又はそれから得られる。そのような神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、バッテン病及びクロイツフェルト・ヤコブ病を含む障害を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、本開示のシステム及び方法に従って用いるiPSC又はその他の幹細胞は、多発性硬化症の対象又はパーキンソン病の対象に由来するか又はそうでなければそれから得られる。
【0043】
[0052] 幹細胞の特定の供給源に関わらず、幹細胞(例えばiPSC)が得られると、幹細胞を第1の容量の皮質培地又はドーパミン作動性培地と組み合わせてオルガノイドを形成することにより、細胞は皮質又はドーパミン作動性神経前駆細胞(neural precursor cell)に分化する。オルガノイドは、当業者にも認識されているように、典型的には幹細胞に由来する小さな自己組織化三次元組織構築物であり、これは、特定の細胞アイデンティティを呈するように方向づけることができる結果、当該オルガノイドは対応するインビボ器官又は組織を少なくともある程度模倣する。この点に関して、用語「皮質培地」は、本明細書で用いる場合、幹細胞、例えばiPSCを皮質神経前駆細胞(neural precursor cell)に分化させるために用いることができる細胞培養培地をいう。同様に、用語「ドーパミン作動性培地」は、本明細書で用いる場合、幹細胞をドーパミン作動性神経前駆細胞(neural precursor cell)に分化させるために用いることができる細胞培養培地をいう。
【0044】
[0053] 本開示の主題のシステム及び方法に従って用いられる皮質培地又はドーパミン作動性培地は、典型的に、神経前駆細胞(neural precursor cell)を所望の表現型どおりの細胞に分化させて維持するために充分な量の栄養素、成長因子などを含む。よって、用語「有効量」は、本明細書で用いる場合、特定の細胞培養培地に含まれ、所望の表現型、例えば所望のタイプの神経前駆細胞(neural precursor cell)又は神経細胞若しくは組織を生成し及び/又は維持するに充分である栄養素、成長因子などの量をいう。本発明の細胞培養培地の活性成分の実際のタイプ及びレベルは、特定のシステム及び/又は方法に関して所望の細胞タイプ又はオルガノイドの達成に効果的である量の活性化合物を投与するように変動させ得る。当然のことながら、いずれの特定の場合でも有効量は、様々な因子及び所望の細胞タイプへの分化に依存するが、有効量の決定及び調整、並びに当該調整をいつ、どのように行うかの評価は、当業者に公知である。幹細胞を皮質及びドーパミン作動性細胞に分化させるために有用な方法及び細胞培養培地の使用に関するさらなる情報及びガイダンスについては、例えばYaoら、Cell Stem Cell 20: 120-134(2017)(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照。また、Kriksら、Nature 480: 547-551(2011)(これも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)も参照。
【0045】
[0054] さらに、細胞培養培地自体に関して、いくつかの実施形態及び実行において、神経前駆細胞(neural precursor cell)を、第1の容量の皮質培地又はドーパミン作動性培地と組み合わせることは、神経前駆細胞(neural precursor cell)を皮質培地と組み合わせることを含む。いくつかの実施形態において、皮質培地は、有効量のDMEM-F12培地、neurobasal培地、cAMP、BDNF、GDNF及びNT-3を含む。いくつかの実施形態において、cAMPは約100mMの濃度で含まれ、BDNFは約10 ng/mlの濃度で含まれ、GDNFは約10 ng/mlの濃度で含まれ、NT-3は約10 ng/mlの濃度で含まれる。
【0046】
[0055] 本開示の主題の他の実施形態及び実行において、神経前駆細胞(neural precursor cell)を、第1の容量の皮質培地又はドーパミン作動性培地と組み合わせることは、神経前駆細胞(neural precursor cell)をドーパミン作動性培地と組み合わせることを含む。いくつかの実施形態において、ドーパミン作動性培地は、有効量のneurobasal培地、N2補充培地、B27完全、Glutamax、NEAA、Pen/Strep、BDNF、GDNF、TGF-β3、アスコルビン酸及びcAMPを含む。いくつかの実施形態において、BDNFは約20 ng/mlの濃度で含まれ、GDNFは約20 ng/mlの濃度で含まれ、TGF-β3は約1ng/mlの濃度で含まれ、アスコルビン酸は約200μMの濃度で含まれ、cAMPは約500μMの濃度で含まれる。
【0047】
[0056] オルガノイドの形成を支援するために、ある容量の皮質又はドーパミン作動性培地との神経前駆細胞(neural precursor cell)の初期培養及びその結果としてのオルガノイド形成の後に、ミクログリア、例えば神経幹細胞(例えば人工多能性幹細胞由来(iPSC))に由来するミクログリアをオルガノイドに加える。当業者により認識されるように、ミクログリアは、中枢免疫系においてマクロファージとして機能し、中枢神経系の発生及び維持において重要な役割を演じる。幹細胞が分化してミクログリアを形成できることも、さらに認識されている(Douvarasら、Stem Cell Rep. Jun 6;8(6): 1516-1524(2017)(これは、参照により本明細書に組み込まれる)を参照)。この点に関して、いずれの特定の理論又は機構に拘束されることは望まないが、同じiPSCから並行して分化した後に組込みのためにオルガノイドに添加される、マッチするミクログリア細胞の使用は、ミクログリア前駆体(progenitors)が分化の間に発生中の神経系に移動することを模倣し、そのためにオルガノイド発生の促進に有用であると考えられた。
【0048】
[0057] いくつかの実施形態において、オルガノイドへの組込み後にミクログリアの成熟を促すために、組み合わせたオルガノイド及びiPSC由来ミクログリアをその後、第2の容量の皮質培地又はドーパミン作動性培地(ある量のIL-34及びGM-CSF並びにある量の緩衝液をも含む)とともにクライオバイアルに加える。皮質培地を用いる本開示の主題の方法及びシステムのいくつかの実施形態及び実行において、培地は、約100 ng/mlの濃度のIL-34及び約10 ng/mlの濃度のGM-CSFをさらに含む。ドーパミン作動性培地を用いるいくつかの実施形態及び実行において、IL-34は少なくとも約100 ng/mlの飽和濃度で含まれ、GM-CSFは約10 ng/mlの濃度で含まれる。
【0049】
[0058] ここに記載するシステム及び方法に従って用いるクライオバイアルに関して、用語「クライオバイアル」は、しばしば、低温(例えば-196℃)に耐え得る容器に関して用いられるが、本明細書における用語「クライオバイアル」の使用は、そのような容器に限定されず、密封することができ、細胞及び組織の長期保存に用いることができる充分な耐久性を有する容器をさらに含む。いくつかの実施形態において、本開示の主題に従って用いることができるクライオバイアルは、商業的に入手可能な供給元から得ることができ、例えばThermo Fisher ScientificからのNUNC(商標)Coded Cryobank Vialである。
【0050】
[0059] 上記のように、IL-34及びGM-CSFを含むことに加えて、クライオバイアルに含まれる細胞培養培地には、閉鎖条件下でのオルガノイドの培養中の培地のpHを維持するために、緩衝剤も加えることができる。いくつかの実施形態において、緩衝液は、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を含む。なぜなら、この両性イオンスルホン酸緩衝剤の使用は、クライオバイアル中閉鎖条件下に、ある期間オルガノイドを培養する過程で二酸化炭素濃度が変化する可能性があるにもかかわらず、生理的pHを維持できると考えられたからである。いくつかの実施形態において、HEPESは10~15 mMの濃度で細胞培養培地に含まれる。いくつかの実施形態において(ただし、いずれの特定の理論又は機構に拘束されることを望まない)、HEPESと、より大容量の培地に比して小サイズのオルガノイドとを加えることが、オルガノイドを1月以上支持できる環境を提供すると考えられる。より具体的には、あるいくつかの実施形態において、限定数の細胞(例えば100K)を有するオルガノイドを播種することにより、神経前駆体(neural precursors)が増殖するにつれ、オルガノイドは1月の時間枠内で限定量に成長することが可能になると考えられる。その後、オルガノイドは、クライオバイアル(1~2ml)内の当該容量の培地中で比較的小さいままである(約0.5 mm又は約0.75 mm未満)結果、細胞のサイズ及び/又は数に対する培地容量の比が、閉鎖条件下でオルガノイドの生存の維持を支援する。
【0051】
[0060] 組み合わせたオルガノイド及びミクログリアを、緩衝液を含む第2の容量の培地とともにクライオバイアルに入れた後、、例えばクライオバイアルに蓋をしてパラフィルムで密封することにより、クライオバイアルを密封して、閉鎖系を創出し、クライオバイアルが外部環境から完全に遮断される。次いで、オルガノイドは、ミクログリア及び培養培地とともに閉鎖条件下で所定期間培養され、クライオバイアル及び該クライオバイアルに含まれる培養細胞は、培養期間中再開封されない。いくつかの実行において、クライオバイアル当たり単一オルガノイドだけが含まれる。いくつかの実行において、培養期間は少なくとも28日間である。いくつかの実行において、培養期間は、全部又は一部が微小重力条件下で生じる。
【0052】
[0061] 初期培養の後、いくつかの実行において、本明細書で記載する方法は、オルガノイドをクライオバイアルから所定期間後に取り出すステップと、オルガノイドを別の組織培養容器で培養するステップとをさらに含む。なぜなら、ここに記載するシステム及び方法により、閉鎖及び/又は微小重力条件下、培養細胞/オルガノイドの生存を維持する様式でオルガノイドを長期間培養することが可能になることが驚くべきことに決定されたからである。いくつかの実施形態において、閉鎖条件で細胞を培養することは、上記の培地を標準的な細胞培養気体条件(例えば5% CO2、20% O2)とともに用いて達成される。いくつかの実施形態において、さらなる培養は、当業者により認識されるように、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、例えばラミニン及び/又はフィブロネクチンで被覆された細胞培養表面に細胞が接着して、標準培養条件下で該表面への細胞及び神経突起の伸長を促進することを可能にするに充分な条件下でさらに行われる。
【0053】
[0062] さらに、本開示の主題のいくつかの実施形態において、オルガノイドを培養するシステムが提供される。いくつかの実施形態において、提供されるオルガノイド培養システムは、神経前駆細胞(neural precursor cell)に由来して形成されたオルガノイドと、人工多能性幹細胞由来(iPSC)由来ミクログリアと、有効量の皮質培地又はドーパミン作動性培地と、緩衝液と、前記オルガノイド、前記ミクログリア、前記皮質培地又はドーパミン作動性培地及び前記緩衝液とを閉鎖条件下に収容するクライオバイアルとを含む。
【0054】
[0063] 本開示の主題は、細胞培養培地及びキットも提供する。いくつかの実施形態において、提供される細胞培養培地は、ここに記載するシステム及び方法とともに用いる上記の成分及びそれらの様々な組合せを含む。いくつかの実施形態において、提供されるオルガノイド培養キットは、本開示の主題のシステムの1つ以上の成分を、キットを用いるための使用説明とともに含む。いくつかの実施形態において、キットを用いるための使用説明は、本開示の主題にしたがうオルガノイドを培養する方法を行うための使用説明を含む。
【0055】
[0064] 本明細書で記載するシステム及び方法を用いることにより、本開示の主題が、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載された宇宙ミッション研究のための長期閉鎖培養系における皮質及びドーパミン作動性脳オルガノイドの生存を、宇宙飛行士の介入なしで可能にすることが見いだされた。さらに、この方法及びシステムは、神経変性障害、例えば多発性硬化症(MS)及びパーキンソン病(PD)についての疾患モデルとしてヒト脳オルガノイドの微小重力中の培養を可能にする。この方法及びシステムは、月へのミッション中の生物学的研究のための長期培養系も提供し、この方法及びシステムは、さらに、近い将来に月を周回する月ステーション、Gatewayに搭載される長期培養を可能する。
【0056】
[0065] さらに、この方法及びシステムは、深宇宙旅行、例えば火星への旅行で行われる研究のために重要であり、ヒト脳に対する重力差及び宇宙放射線の影響を理解するためにも重要であると考えられる。本明細書で記載する培養システムを用いて行われる研究から収集されるデータは、有人火星ミッションを加速し、月ミッションをより安全にして、深宇宙ミッションの対応策の開発に貢献する。この方法及びシステムは、地上での脳オルガノイドの培養も改良し、オルガノイドの維持を地上の科学者にとって時間的により効率的にする。
【0057】
[0066] 最後に、本開示の主題のあるいくつかの実施形態は脳オルガノイドを含む閉鎖系に具体的に言及するが、本明細書で記載するシステム及び方法は、他の細胞タイプ、例えば肝臓、心臓及び骨格筋に分化するiPSC又はhESCから作製されるオルガノイドにも同様に適用できることが認識される。iPSCから誘導可能な任意の細胞タイプは、本開示の主題に従って培養できる。
【0058】
[0067] 本開示の主題の実施は、そうでないと示さない限り、通常の技術の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA及び免疫学の通常の技術を採用できる。このような技術は、文献に詳細に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual (1989)、第2版、Sambrook, Fritsch及びManiatis編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、16及び17章、米国特許第4,683,195号、DNA Cloning、第I及びII巻、Glover編、1985、Oligonucleotide Synthesis、M. J. Gait編、1984、Nucleic Acid Hybridization、D. Hames及びS. J. Higgins編、1984、Transcription and Translation、B. D. Hames及び& S. J. Higgins編、1984、Culture Of Animal Cells、R. I. Freshney、Alan R. Liss, Inc.、1987、Immobilized Cells And Enzymes、IRL Press、1986、Perbal (1984)、A Practical Guide To Molecular Cloning、Methods In Enzymology(Academic Press, Inc., N.Y.)を参照、Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells、J. H. Miller及びM. P. Calos編、Cold Spring Harbor Laboratory、1987、Methods In Enzymology、第154及び155巻、Wuら編、Academic Press Inc., N.Y.、Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer and Walker編、Academic Press、London、1987、Handbook Of Experimental Immunology、第I~IV巻、D. M. Weir及びC. C. Blackwell編、1986を参照。
【0059】
[0068] 本開示の主題は、以下の具体的であるが非限定的な実施例によりさらに説明される。以下の実施例は、本発明の関する開発及び実験の途中の様々な時期に集められたデータの代表であるデータの集計を含み得る。
【実施例
【0060】
[0069] 神経変性疾患の人々に由来する培養人工多能性幹細胞を用いて、ヒト脳オルガノイドモデルを生成でき、このようなモデルは、神経変性疾患の機序を理解するため、及び宇宙旅行者の中枢神経系(CNS)機能に対する微小重力の影響を研究するための、まだ対処されていない緊急の必要性に対処するために有用であり得ると考えられた。地球低軌道(LEO)における微小重力への曝露は、人体の心血管系、筋骨格系及び免疫系に影響を与えることが示されている。宇宙飛行士のデータ及びマウスモデルからの証拠は、微小重力が、頭蓋内の流体のシフトも引き起こし、白質及び灰白質を変化させることを示唆する。CNS細胞を作製する人工多能性幹細胞(iPSC)技術を活用して、実験を行って、iPSC由来ミクログリアを、一次進行性多発性硬化症(PPMS)、パーキンソン病(PD)の患者及び年齢一致無症状コントロールの細胞に由来する三次元(3D)神経オルガノイドに組み込むヒトモデルを開発した。これらPD及びMSのヒトモデルを国際宇宙ステーション(ISS)で30日間維持した。以下にさらに詳細に記載するように、飛行後サンプルを、トランスクリプトーム及びセクレトーム解析を用いて評価して、神経炎症経路における微小重力が誘導する変化のアセスメントを行った。バルクRNA配列決定解析は、地上コントロールサンプルと比較してLEO中で発現が変動した遺伝子を示した。宇宙飛行サンプルの遺伝子セットエンリッチメント解析(Gene Set Enrichment Analysis; GSEA)も、細胞分裂、DNA修復及びパッケージング、並びにタンパク質の翻訳後修飾の調節不全を示した。これらの実験により、神経変性疾患に関与する神経炎症経路を理解し、治療標的を同定するためのLEOにおけるPD及びMSのヒトアナログモデルの研究が可能になった。
【0061】
[0070] 方法
[0071] 神経幹細胞(NSC)の調製。異なる健常コントロール(HC)個体、一次進行性多発性硬化症(PPMS)患者及びパーキンソン病(PD)患者に由来するiPSCの4つの異なる細胞系統(表1を参照)を、標準培養ディッシュにおいて皮質及びドーパミン作動性の神経前駆体(neural precursors)に分化させた。皮質分化方法(Yao Z, Mich JK, Ku Sら、A Single-Cell Roadmap of Lineage Bifurcation in Human ESC Models of Embryonic Brain Development. Cell Stem Cell 20:120-134 (2017)を参照)及びドーパミン作動性分化(Kriks S, Shim J-W, Piao Jら、Dopamine neurons derived from human ES cells efficiently engraft in animal models of Parkinson’s disease. Nature 480: 547-551 (2011)を参照)は、以前に公開された培養ディッシュ用のプロトコルに従った。簡単に述べると、MS系統及びマッチするコントロールを、組込みフリー、ウイルスフリーmRNA/miRNA法を用いて皮膚線維芽細胞から再プログラミングし、PD系統及びマッチするコントロールを、非組込み型センダイウイルスを用いて皮膚線維芽細胞から再プログラミングした。分化の25日目に、皮質及びドーパミン作動性前駆体(precursors)の両方について、前駆体(precursors)を解離し、液体窒素中に低温保存して、神経前駆体((neural precursor;NPC)の25日目(d25)のストックを創出した。
【0062】
【表1】
【0063】
[0072] IPSC由来ミクログリアの調製。ミクログリア分化のために、以前に公開された培養ディッシュ用プロトコルに従った(Douvaras P, Sun B, Wang Mら、(2017) Directed Differentiation of Human Pluripotent Stem Cells to Microglia. Stem Cell Rep.を参照)。
【0064】
[0073] 脳オルガノイドの調製。低温保存25日目(d25)のNPCを融解し、5mL DMEM/F12で洗浄し、1200 rpmにて5分間遠心分離することにより採集した。細胞ペレットを、1mLの皮質培地(表2を参照)(皮質NPC用)及び1mLのドーパミン作動性培地(表2を参照)(ドーパミン作動性NPC用)に再懸濁した。皮質及びドーパミン作動性NPCを計数後、1×10^5細胞/ウェルの密度で、超低接着(ULA) 96ウェルV底プレート(PrimeSurface(登録商標) 3D培養スフェロイドプレート:超低接着(ULA)プレート、Sbio MS-9096VZ)に播種し、37℃、5% CO2にて一晩インキュベートした。24時間のインキュベーションの後、オルガノイドが形成された。消費された培地を交換して、オルガノイドをさらに24時間インキュベートした。この段階で、宇宙への発射準備のために、iPSC由来ミクログリアを脳オルガノイドに加えた。IL-34及びGM-CSFを加えた皮質及びドーパミン作動性培地を用いて培地交換を1回行って、オルガノイドへの組込み後のミクログリアの成熟を促した(表2を参照)。これらを、次いで、さらに24時間インキュベーション後に、ペイロード及び発射の準備のために、国際宇宙ステーション米国立研究所に輸送した。クライオバイアル用培養培地は、5% CO2なしでの培養のためにHEPESで緩衝化した。DMEM-F12及びNeurobasal培地はThermoFisher (カタログ番号#11330及び21103049)から購入した。N2サプリメント(カタログ番号17502048)、B27(カタログ番号17504044)、Glutamax(カタログ番号35050061)、NEAA(カタログ番号11140050)、Pen/Strep(カタログ番号15070063)はGibco/ThermoFisherから購入した。BDNF(カタログ番号248-BD/CF)、GDNF(カタログ番号212-GD-050)、NT3(カタログ番号267-N3-MTO)及びTGF-β3(カタログ番号243-B3-010)はR&D Systemsから購入した。アスコルビン酸(カタログ番号A4403-100MG)及びcAMP(カタログ番号D0627-1G)はSigma Aldrichから購入した。
【0065】
【表2】
【0066】
[0074] ペイロード準備、打上げ及び着水。個々の脳オルガノイドを各々、IL-34(100 ng/mL)及びGM-CSF(10 ng/mL)を加えた1mLの皮質又はドーパミン作動性培地を含むクライオバイアル(NUNC(商標)Coded Cryobank Vial, Thermo Fisher Scientific #374088)に移した。次いで、クライオバイアルを閉鎖してパラフィルムで密封し、37℃の一定温度を維持するミニチュアインキュベータであるCubeLabに搭載した。次いで、CubeLabをロケットに積み込み、2日後に、微小重力環境中での30日間滞在のため、ISSへのSpaceX 19商業補給サービスミッションに搭載して地球低軌道に打ち上げた。同様の条件の下で、地上コントロールサンプルを、ケネディ宇宙センターにて維持した。オルガノイドを地球に帰還させるDragonカプセルを太平洋に着水させ、オルガノイドを含むCubeLabを6日後に回収して開封した。
【0067】
[0075] RNA抽出及び配列決定。LEOにて培養した22のオルガノイド、及び地上コントロールの22のオルガノイドを急速凍結し、-80℃にて貯蔵した。RNAを、Qiagen Rneasy Microキット(QIAGEN #74004)を用いて抽出した。収率を最大化するため、RNAを12μLのDI超純水に溶出させた。最小限で10ngのRNAを含むサンプルの超低量インプット調製物を用い、ハイスループット配列決定のためにIllumina NovaSeqプラットフォームを用いてRNAを配列決定した。
【0068】
[0076] 近接伸長アッセイ(Proximity Extension Assay:PEA)を用いる分泌タンパク質の解析。各バイアル(90バイアル)から培養培地を取り出し、-20℃にて凍結した。プロテオーム解析を、Olink (Olink Proteomics AB、Uppsala、Sweden)により、近接伸長アッセイ(PEA)に基づくOlink(登録商標) Explore 1536 Olinkプロトコル技術を用いて行った。このアッセイは、オリゴヌクレオチド標識抗体の対を用いて、90サンプル中で1536タンパク質まで検出できる。出力生データを、Olinkの相対存在量の単位である「Normalized Protein eXpression」(NPX)に変換する。全てのアッセイ検証データ(検出限界、アッセイ内及びアッセイ間正確性データ、定義済み値など)は、製造者のウェブサイトにて入手可能である。セクレトームデータを、Olink(登録商標)Insights Statアプリケーション、及びGOターム分析用のshinyGOを用いて分析した。
【0069】
[0077] 遺伝子発現変動及び遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)。RNA配列決定データを、RパッケージDESeq2を用いて分析し、遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)を、clusterProfiler 4.0、Pathview、enrichplot及びggplot2、並びにGOターム分析用のshinyGOを用いて分析した。
【0070】
[0078] 染色、画像取得及び処理。オルガノイドを、PBS中の4%パラホルムアルデヒド(PFA)溶液を用いて30分間固定した。オルガノイドを、以前に公開されたホールマウント染色用プロトコルに従って処理し、MAP2に対する抗体(Ab5392、希釈1:1000)を用いて染色してニューライトを検出し、ヘキスト染料を用いて核を標識した。標識したオルガノイドを、ZEISS共焦点顕微鏡(LSM780)を用いて画像撮影し、画像を、Imaris画像解析ソフトウェアを用いて処理及び編集した。
【0071】
[0079] 飛行ハードウェア。RADTriage50 (JP Laboratories, Inc.)受動型線量計を、ステーション及び地上の両方で飛行ハードウェアに含めた。LEOユニット及び地上ユニットの両方のRADTriage50装置を、飛行後評価において評価した。
【0072】
[0080] ISSでの環境放射線モニタリング(Radiation Environmental Monitoring: REM)法。ISSで用いた放射線検出器は、環境放射線モニタリング(REM)及びハイブリッド電子放射線評価(Hybrid Electronic Radiation Assessor:HERA)装置を含む。REM及びHERAはともに、実験中にISSにおいて作動していた。ISSでのペイロード貯蔵場所に近接するステーションモニタリングログは、ミッション中の放射線曝露の測定のための二次的な方法として、飛行後評価のために提供された。
【0073】
[0081] 結果
[0082] 実験ストラテジの確立。2つのヒト脳オルガノイドモデルを確立して、MSについては皮質であり、PDについては中脳ドーパミン系である脳細胞に対する微小重力の影響を調べた。初期の実験では、PPMS又はPDを有する人及び年齢及び性別がマッチする健常ドナーから得た成体皮膚線維芽細胞又は初代尿上皮細胞を再プログラミングすることにより作製した2つのiPSC系統をオルガノイドシステムあたりに用いた(図1を参照)。次いで、iPSC由来ミクログリア前駆体(progenitors)を作製し、PD系統についてはドーパミン作動性オルガノイド、MS系統については皮質オルガノイドの3D培養物に組み込んだ。
【0074】
[0083] ニューロン前駆体(neuronal progenitors)をU底ウェルに播種してオルガノイドに凝集させ、同じiPSCから並行して分化させたマッチするミクログリア前駆体(progenitors)をオルガノイドに加えて組み込んだ。このプロセスは、胚発生の間にミクログリア前駆体(progenitors)が発生中のCNSへ移動することの模倣を意図した。3Dオルガノイド培養物をケネディ宇宙センター(KSC)の宇宙ステーション整備施設(SSPF)に輸送し、そこで、培養物を個別のチューブ中1mLの培養培地に移して密封し、地上(KSC)及びLEO(ISS)での並行培養のために、飛行ハードウェアに積み込んだ。
【0075】
[0084] iPSC由来脳オルガノイドの成長及び維持には、滅菌環境、37℃の一定温度及び細胞タイプに特異的な培地が必要であった。LEOでの等価な細胞培養研究を容易にするために、30日間の静的懸濁培養の間ISSに搭載されて、37℃の定温を維持し(図2及び3を参照)、画像取得能力を提供する最小化インキュベータであるCubeLabシステム(Space Tango、Lexington、KY)を用いた。
【0076】
[0085] LEOでの3Dオルガノイドの培養を容易にするために、微小重力における解析を混乱させ得る作業上の制限についても考慮した。例えば、ハードウェア引渡しからISSへの設置までの時間は、打上げ延期、宇宙船の打上げ軌道及び宇宙船ドッキング後のステーションのスケジュールに依存して、2.5日から5日までの間で変動し得る。この変動は、標準条件下で維持されていなければ、生物学的実験に影響し得る。パワードアセントユーティリティロッカー(Powered Ascent Utility Locker;PAUL)施設(Space Tango)を設計して利用し、打上げ及びISSへの運搬の間の予期せぬ事象の有害な影響を制限した。CubeLabをPAUL内に設置し(図4を参照)、SpaceX Dragonカプセルに直接接続して、ISSに設置されるまで、温度を維持するための電力及び実験モニタリング用のデータインターフェースを供給した。この能力により、この実験の打上げ前、打上げ発射及びISSへの運搬の各段階の間で、CubeLabのインキュベータ内の環境パラメータを連続的に維持することができた。ISSで、CubeLabは、ISSに搭載された微小重力研究用の再設定可能な実験エコシステム施設内に設置された。この施設及びPAULは、1つのEXPRESSラックロッカー容積を必要とし、実験進行のモニタリングを可能にする機械的、電気的及びネットワークのインターフェースを提供した。
【0077】
[0086] 静的培養での1月間のオルガノイド生存。オルガノイドをクライオバイアル内で1mlの培地中、培地交換なしに約1月間培養した。オルガノイドは、LEO及び地上の両方でサイズが増加した(図5A及び5B)。地球帰還後、オルガノイドの小サンプルを、ラミニン被覆ディッシュ上で新鮮培地中にプレーティングすることにより、生存について評価した。プレートに接着したオルガノイドは堅固な突起伸長を示し、このことは、微小重力中での1月の培養の間にオルガノイドが正常に育ったことを示唆する。皮質オルガノイドは、この細胞タイプに典型的な神経ロゼットを形成した(図5B~5F)。
【0078】
[0087] 微小重力はオルガノイドの遺伝子発現プロファイルに影響する。RNA配列決定を、レプリケートサンプル(条件当たりn=2~4)について行い、遺伝子発現データを、DESeq2パッケージを用いて分析した。全てのオルガノイドの主成分分析(図6A)は、ドーパミン作動性オルガノイドと皮質オルガノイドとの間の明確な差異を示した。各オルガノイドタイプに関連するLEOの影響を決定するために、地上 対 LEOの差を、疾患関連細胞(PD又はMS)及びマッチするコントロールについて、各オルガノイドタイプ(皮質又はドーパミン作動性)に関する別個の分析において調べた(図6B~6E)。DESEq2は、padj<0.05及びlog2倍率変化>1及び<-1を有する発現変動遺伝子を同定した。皮質オルガノイドについては、552のLEO 対 地上DEGが非MSコントロールについて見出され、2,828のDEGが、一次進行性多発性硬化症のLEO 対 地上の比較について見出された。非PDコントロールについては160のLEO 対 地上DEGが存在し、パーキンソン病オルガノイドについては4,883が存在した。ミクログリアあり及びなしのオルガノイドについても分析した(図9A~9E)。微小重力により影響を受ける生物学的プロセスに関する正確で深い理解を得るために、遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)を、地上 対 LEO DEGについて行った。図6F~6Iに、高位の発現変動遺伝子セットを列挙した。これらは、LEOにおけるDNA修復、有糸分裂チェックポイント及び成熟との関連を含む。
【0079】
[0088] 微小重力に対する応答は、個人間の変動に依存しておらず、オルガノイドタイプ間で異なる。個体間でゲノムに差があるので、遺伝子発現の差を、発現がドナーに依存して異なるかについて注目して調べた。個人間変動を調べるために、疾患タイプ又はニューロンタイプに従ってオルガノイドをサブタイプに分類せず、4個体全体を考慮した(図7A~7B)。さらに、全コントロール(皮質及びドーパミン作動性)及び全患者(MS及びPD)のDEGを別々に分析した(図10A~10D)。DESeq2は、padj<0.05並びにlog2倍率変化>1及び<-1を有する発現変動遺伝子を同定した。917のDEGは「全ニューロン」について報告され、66は「全コントロール」について報告され、1834は「全患者」について報告された。
【0080】
[0089] 微小重力はタンパク質分泌に影響する。タンパク質の分泌に対する微小重力の影響を評価するため、培養培地を、単一のオルガノイドを含むバイアルから回収し、Olink(登録商標) Target 1536を用いて分析した。全てのオルガノイドタイプが、LEO 対 地上で分泌変動タンパク質(DSP)を示した(padj<0.05、ウェルチの二標本t検定)(図8A~8G)。40のDSPを、ドーパミンニューロンオルガノイドの培地中で同定し、95を皮質オルガノイド培地から同定した。7つのタンパク質は、ドーパミン作動性及び皮質サンプルの両方でLEOにおいてより高いレベルで分泌されていることが分かった(表3)。
【表3】
【0081】
[0090] まとめると、上記の研究及び実験は、PD及びMSの人からのiPSC系統に由来する脳オルガノイドを用いた神経炎症についての今までに類を見ないISS研究である。LEOにおけるこの先駆的な3Dヒトモデルシステムは、iPSC由来CNS細胞の長期間(少なくとも1月)培養を維持することができることを確立し、今までに研究されていなかった脳に対する微小重力の影響について示唆した。ここに報告する基本的な研究は、宇宙及びここ地球の両方における神経炎症及び神経変性の根底にある混乱の理解をよりよくするための新規なヒトモデルを提供する。
【0082】
[0091] 本明細書に記載する全ての出版物、特許及び特許出願は、それぞれの個別の出版物、特許又は特許出願が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に記載されているのと同じ程度に参照により本明細書に組込まれ、それらは、以下のリストに示す参考文献を含む。
【0083】
参考文献
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【0086】
[0092] 本開示の主題の様々な詳細は、本明細書で開示する主題の範囲を逸脱することなく変更できることが理解される。さらに、上記の記載は、説明のみを目的とし、限定を目的としない。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図6-5】
図6-6】
図6-7】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図8-5】
図8-6】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
【国際調査報告】