(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】バクテリオファージ調製と使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20241010BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20241010BHJP
A61L 29/16 20060101ALI20241010BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20241010BHJP
A23K 10/12 20160101ALI20241010BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20241010BHJP
A23K 10/37 20160101ALI20241010BHJP
【FI】
A61K35/76
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P1/00
A61L29/16
A61L31/16
A23K10/12
A23K10/30
A23K10/37
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523122
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 US2022046449
(87)【国際公開番号】W WO2023064393
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503128320
【氏名又は名称】ユーエヌエム レインフォレスト イノベーションズ
【氏名又は名称原語表記】UNM Rainforest Innovations
【住所又は居所原語表記】Lobo Rainforest Building, 101 Broadway Blvd. NE, Suite 1100, Albuquerque, NM 87102 USA
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(71)【出願人】
【識別番号】507174983
【氏名又は名称】ザ・ユナイテッド・ステイツ・ガバメント・アズ・リプリゼンテッド・バイ・ザ・デパートメント・オブ・ベテランズ・アフェアーズ
(71)【出願人】
【識別番号】524142596
【氏名又は名称】ヘンリー シー.リン
(71)【出願人】
【識別番号】524142600
【氏名又は名称】デレク エム.リン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100227592
【氏名又は名称】孔 詩麒
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー シー.リン
(72)【発明者】
【氏名】デレク エム.リン
(72)【発明者】
【氏名】ブリット コスケッラ
【テーマコード(参考)】
2B150
4C081
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
2B150AC39
2B150AD01
4C081AC03
4C081AC06
4C081AC08
4C081BB06
4C081CE02
4C084AA19
4C084MA13
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA23
4C084MA31
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA47
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA59
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087MA13
4C087MA16
4C087MA17
4C087MA23
4C087MA31
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA41
4C087MA43
4C087MA47
4C087MA55
4C087MA56
4C087MA57
4C087MA59
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZC75
(57)【要約】
バクテリオファージ調製物は、通常、発酵プロセスから得られた異種バクテリオファージ調製物を含む。そのバクテリオファージ調製物は、医薬組成物へと処方されてもよい。そのバクテリオファージ調製物は、ディスバイオシスを患っているか、又はディスバイオシスを患う危険性が高い対象に、バクテリオファージ調製物を投与することによってディスバイオシスを治療するために使用されてもよい。そのバクテリオファージ調製物は、細菌源を対象に投与する前に、健常対象の腸内環境を整えるか又は事前準備するために使用されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
発酵プロセスから得られた異種起原のバクテリオファージの調製物;及び
医薬として許容される担体、
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
アジュバントを更に含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記バクテリオファージが、ミオウイルス科のメンバー、ポドウイルス科のメンバー、シフォウイルス科のメンバー、イノウイルス科のメンバー、ミクロウイルス科のメンバー、コルチコウイルス科の構成員のメンバー、テクティウイルス科のメンバー、レヴィウイルス科のメンバー、シストウイルス科のメンバー、ルディウイルス科のメンバー、フセロウイルス科のメンバー、リポスリウイルス科のメンバー、プラズマウイルス科のメンバーを含むか、又は上記の科の組み合わせからのバクテリオファージを含む、請求項1又は請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記発酵プロセスでは、以下の:アパム、アチャラ、バゴオン、バラオバラオ、バインクオン、ブレム、ブロンイスダ、チョングッジャン、チンカロック、クルチド、ドクラ、ドエンジャン、トウバンジャン、トウチ、発酵ココナッツウォーター、発酵穀物、発酵ブドウ、発酵パイナップルジュース、発酵豆腐、発酵味噌、魚醤、ガラポン、カンジャン、コチュジャン、グンドゥルッ、ハッカルル、チョットガル、ケフィア、ケンキー、カノムチン、キムチ、コンブチャ、クサヤ、ルフ、味噌、ミキシアン、モクニンチン、ムリ、ナタデココ、ナタデピナ、ネム、納豆、ネムチュア、ンガピ、オギ、オギリ、オンコム、パラッパム、ピユム、ピクルス、ピクルスブライン、ポイ、ポンイェギ、ザワークラウト、塩辛、エビペースト、シンキ、ソウインズ、醤油、スンバラ、タルハナ、テンペ、テンメンジャン、トゥントゥ、又はウスターソースを製造する、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記発酵プロセスでは、肥料又は家畜飼料を作り出す、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記発酵プロセスが、植物材料、植物ジュース、原料、バイオ燃料、又は生物由来廃棄物の発酵を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
表皮組織への送達のために処方される、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記表皮組織が、表皮、粘膜表面、皮膚又は頭皮の少なくと一部、口腔の少なくとも一部、胃腸管の少なくとも一部、鼻腔の少なくとも一部、気道の少なくとも一部、生殖-泌尿器管の少なくとも部分、結膜の少なくとも一部、又は体腔を含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物が、ミクロスフェア、粒子、粉末、顆粒製剤、懸濁液、乳濁液、溶液、エリキシル剤、シロップ、錠剤、トローチ、ビデ、坐剤、カプセル剤、ロゼンジ、ガム、スプレー、体用洗浄剤、シャンプー、パッチ、ストリップ、デントリフィス、点眼剤、又はエアゾールに製剤されたバクテリオファージ調製物を含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
以下の:
発酵プロセスからバクテリオファージを単離し;そして
単離したバクテリオファージを医薬として許容される担体と組み合わせること、
を含む、バクテリオファージ調製物を調製する方法。
【請求項11】
バクテリオファージ調製物を濃縮することを更に含む方法であって、該バクテリオファージ調製物の濃縮が:
調製物中のバクテリオファージの濃度を高めるか;又は
調製物中のバクテリオファージの生理活性を高める、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記バクテリオファージ調製物が、遠心分離、超遠心分離、濾過、サイズ分画、アフィニティー精製、アフィニティークロマトグラフィ、CsCl密度勾配、ポリエチレングリコール処理、クロロホルム処理、又はポリマー内への細菌細胞の取り込みを使用することによって濃縮される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記バクテリオファージ調製物が、UV光、マイトマイシンC、温度変化、高塩分、pHの変化、又は別のバクテリオファージ誘導処理を用いてバクテリオファージ調製物を処理することによって濃縮される、請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
バイオリアクター内でバクテリオファージ調製物を好適な細菌種と共に培養することを更に含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記発酵プロセスでは、以下の:アパム、アチャラ、バゴオン、バラオバラオ、バインクオン、ブレム、ブロンイスダ、チョングッジャン、チンカロック、クルチド、ドクラ、ドエンジャン、トウバンジャン、トウチ、発酵ココナッツウォーター、発酵穀物、発酵ブドウ、発酵パイナップルジュース、発酵豆腐、発酵味噌、魚醤、ガラポン、カンジャン、コチュジャン、グンドゥルッ、ハッカルル、チョットガル、ケンキー、カノムチン、ケフィア、キムチ、コンブチャ、クサヤ、ルフ、味噌、ミキシアン、モクニンチン、ムリ、ナタデココ、ナタデピナ、ネム、納豆、ネムチュア、ンガピ、オギ、オギリ、オンコム、パラッパム、ピユム、ピクルス、ピクルスブライン、ポイ、ポンイェギ、ザワークラウト、塩辛、エビペースト、シンキ、ソウインズ、醤油、スンバラ、タルハナ、テンペ、テンメンジャン、トゥントゥ、又はウスターソースを製造する、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記発酵プロセスでは、肥料又は家畜飼料を作り出す、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記発酵プロセスが、植物材料、植物ジュース、原料、バイオ燃料、又は生物由来廃棄物の発酵を含む、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ディスバイオシスを患っているか、又は患う危険性が高い対象のディスバイオシスを治療する方法であって、以下の:
ディスバイオシスの少なくとも1つの症状又は臨床徴候を改善するのに有効な量でバクテリオファージ調製物を対象に投与すること、
を含む、前記方法。
【請求項19】
前記方法が、ディスバイオシスを治療するための第二の医薬組成物を対象に投与することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記のディスバイオシスを治療するための第二の医薬組成物が、抗生物質製剤、プレバイオティクス製剤、プロバイオティクス製剤、シンバイオティクス製剤、糞便微生物相移植物、膜小胞、又は自食作用誘導因子を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗生物質製剤が、リファキシミン、メトロニダゾール、セファレキシン、トリメトプリム-スルホメトキサゾール、ドキシサイクリン、コリスチン、テトラサイクリン、クリンダマイシン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、アンピシリン、アモキシシリン、エリスロマイシン、チニダゾール、ニタゾキサニド、アルベンダゾール、パロモマイシン、キナクリン、ラクツロース、ジサリチル酸ビスマス、ゲンタマイシン、ネオマイシン、又は上記のもの組み合わせを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記プレバイオティクス製剤が、フラクト-オリゴ糖、二糖、単糖、ポリオール、ガラクト-オリゴ糖、イヌリン、短鎖炭水化物、糖アルコール、オリゴフルクトース、又は上記のものの2種類以上の組み合わせを含む、請求項20又は請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記プロバイオティクス製剤が乳酸菌を含む、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記乳酸菌が、ペディオコッカス属のメンバー、ストレプトコッカス属のメンバー、ラクトコッカス属のメンバー、ラクトバチルス属のメンバー、オエノコッカス属のメンバー、ワイセラ属のメンバー、又はロイコノストック属のメンバー、又は上記の属の2種類以上の組み合わせを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・デルブルエッキ、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ジョンソニー、ラクトバチルス・デルブルエッキ、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・サケイ、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノサスGG、ラクトバクテリウム・ラクティス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、サッカロミセス・ブラウディ、サッカロミセス・バイアヌス、サッカロミセス・セレビシエ、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス、バチルス・コアグランス、バチルス・サブチリス、バチルス・セレウス、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ロイコノストック・メセンテロイデス、エッシェリキア・コリ・ニッスル、エンテロコッカス-デューランス、ワイセラ・シバリア、エンテロコッカス・フェーカリス、又は上記のものの2種類以上の組み合わせを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記シンバイオティクス製剤が、プレバイオティクス製剤とプロバイオティクス製剤との組み合わせを含む、請求項20~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記糞便微生物相移植物が、糞便物質全体、部分的な糞便物質、変性糞便物質、微生物叢全体、部分的な微生物叢、糞便濾液、変性微生物叢、又は上記のものの2種類以上の組み合わせを含む、請求項20~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ディスバイオシスが、表皮組織に限局される、請求項18~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記表皮組織が、表皮、粘膜表面、皮膚又は頭皮の少なくと一部、歯又は歯茎を含めた口腔の少なくとも一部、胃腸管の少なくとも一部、鼻腔の少なくとも一部、気道の少なくとも一部、生殖-泌尿器管の少なくとも一部、結膜の少なくとも一部、又は体腔を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記バクテリオファージ調製物が、医療用デバイスに組み込まれる、請求項18~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記医療用デバイスが、ペースメーカー、カテーテル、又はステントを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ディスバイオシスが、細菌の異常増殖を引き起こす、請求項18~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
バクテリオファージ調製物を対象に投与する前に、対象に長期間にわたり絶食させることを更に含む、請求項18~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記の長期間にわたる絶食が、約1~3日間である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記バクテリオファージ調製物が、1若しくは複数回の食物の食前、食中及び食後に投与される、請求項18~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記バクテリオファージ調製物が、経口的に投与されるか、局所的に投与されるか、吸入法によって投与されるか、又は非経口的に投与される、請求項18~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
細菌源を投与するために健常対象の腸内環境を整えるか又は事前準備する方法であって、以下の:
細菌源に対する対象の腸の感受性を改善するのに有効な量でバクテリオファージ調製物を対象に投与すること、
を含む、前記方法。
【請求項38】
前記細菌源が、プロバイオティクス製剤又は糞便微生物相移植物を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記バクテリオファージ調製物が、口から投与されるか、腸に直接送達されるか、又は微生物移植物としてカプセル化される、請求項37又は請求項38に記載の方法。
【請求項40】
バクテリオファージ調製物を対象に投与する前に、対象に長期間にわたり絶食させることを更に含む、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記の長期間にわたる絶食が、約1~3日間である、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記バクテリオファージ調製物が、1若しくは複数回の食物の食前、食虫、及び食後に投与される、請求項37~41のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月13日に出願された米国仮特許出願第63/255,105号の利益を主張するものであり、そしてそれの全体として参照により本明細書に援用する。
【発明の概要】
【0002】
概要
この開示は、一態様において、発酵プロセスから得られた異種起原のバクテリオファージの調製物と、医薬として許容される担体とを包含する医薬組成物を記載している。1若しくは複数の実施形態において、医薬組成物は、アジュバントを更に包含し得る。
【0003】
1若しくは複数の実施形態において、医薬組成物は、ミオウイルス科のメンバー、ポドウイルス科のメンバー、シフォウイルス科のメンバー、イノウイルス科のメンバー、ミクロウイルス科のメンバー、コルチコウイルス科の構成員のメンバー、テクティウイルス科のメンバー、レヴィウイルス科のメンバー、シストウイルス科のメンバー、ルディウイルス科のメンバー、フセロウイルス科のメンバー、リポスリウイルス科のメンバー、プラズマウイルス科のメンバーであるバクテリオファージ、又は上記の科の組み合わせからのバクテリオファージを包含する。
【0004】
1若しくは複数の実施形態において、発酵プロセスは食品を作り出す。他の実施形態において、発酵プロセスは、肥料又は家畜飼料を作り出す。
1若しくは複数の実施形態において、発酵プロセスとしては、植物材料、植物ジュース、原料、バイオ燃料、又は生物由来廃棄物の発酵が挙げられる。1若しくは複数の実施形態において、医薬組成物は、表皮組織への送達のために処方される。
【0005】
別の態様において、この開示は、バクテリオファージ調製物を調製する方法を記載している。概して、その方法は、発酵プロセスからバクテリオファージを単離し、そして、該単離したバクテリオファージを、医薬として許容される担体と組み合わせることを包含する。
【0006】
1若しくは複数の実施形態において、その方法は、調製物中のバクテリオファージの濃度が高める、調製物中のバクテリオファージの生理活性が増大する、又はその両方であるように、バクテリオファージ調製物を濃縮することを更に包含する。
1若しくは複数の実施形態において、その方法は、バイオリアクター内で、バクテリオファージ調製物を好適な細菌種と共に培養することを更に包含する。
【0007】
1若しくは複数の実施形態において、発酵プロセスは食品を作り出す。他の実施形態において、発酵プロセスは、肥料又は家畜飼料を作り出す。
1若しくは複数の実施形態において、発酵プロセスとしては、植物材料、植物ジュース、原料、バイオ燃料、又は生物由来廃棄物の発酵が挙げられる。
【0008】
別の態様において、この開示は、ディスバイオシスを患っているか、又は患う危険性が高い対象のディスバイオシスを治療する方法を記載している。概して、その方法は、ディスバイオシスの少なくとも1つの症状又は臨床徴候を改善するのに有効な量でバクテリオファージ調製物を対象に投与することを包含する。
【0009】
1若しくは複数の実施形態において、その方法は、ディスバイオシスを治療するための第二の医薬組成物を対象に投与することを更に包含する。これらの実施形態のいくつかにおいて、ディスバイオシスを治療するための第二の医薬組成物は、抗生物質製剤、プレバイオティクス製剤、プロバイオティクス製剤、シンバイオティクス製剤、糞便微生物相移植物、膜小胞、又は自食作用誘導因子を包含し得る。
【0010】
1若しくは複数の実施形態において、ディスバイオシスは、表皮組織に限局される。これらの実施形態のいくつかにおいて、表皮組織としては、表皮、粘膜表面、皮膚又は頭皮の少なくとも一部、口腔の少なくとも一部、胃腸管の少なくとも一部、鼻腔の少なくとも一部、気道の少なくとも一部、生殖-泌尿器管の少なくとも部分、又は体腔が挙げられる。
【0011】
1若しくは複数の実施形態において、バクテリオファージ調製物は、医療用デバイスに組み込まれる。
1若しくは複数の実施形態において、ディスバイオシスは、細菌の異常増殖を引き起こす。
【0012】
1若しくは複数の実施形態において、その方法は、バクテリオファージ調製物を対象に投与する前に、対象に長期間にわたり絶食させることを更に包含する。
これらの実施形態のいくつかにおいて、長期間にわたる絶食は、約1~3日間である。
【0013】
1若しくは複数の実施形態において、その方法は、対象へのバクテリオファージ調製物の投与前、投与と並行して、又は投与後に、対象に1若しくは複数の食物を与えることを更に包含する。
1若しくは複数の実施形態において、バクテリオファージ調製物は、経口的に投与されるか、局所的に投与されるか、吸入法によって投与されるか、又は非経口的に投与される。
【0014】
更に別の態様において、この開示は、細菌源を投与するために健常対象の腸内環境を整えるか又は事前準備する方法を記載している。概して、その方法は、細菌源に対する対象の腸の感受性を改善するのに有効な量でバクテリオファージ調製物を対象に投与することを包含する。
【0015】
1若しくは複数の実施形態において、細菌源は、培養で増殖した、プロバイオティクス製剤である、1若しくは複数(例えば、カクテル)の細菌、又は糞便微生物相移植物を含む。
1若しくは複数の実施形態において、バクテリオファージ調製物は、口から投与されるか、腸に直接送達されるか、又は微生物移植物としてカプセル化される。
【0016】
1若しくは複数の実施形態において、その方法は、バクテリオファージ調製物を対象に投与する前に、対象に長期間にわたり絶食させることを更に包含する。
これらの実施形態のいくつかにおいて、長期間にわたる絶食は、約1~3日間である。
【0017】
1若しくは複数の実施形態において、その方法は、バクテリオファージ調製物を対象に投与する前に、対象に長期間にわたり絶食させることを更に包含する。
これらの実施形態のいくつかにおいて、長期間にわたる絶食は、約1~3日間である。
【0018】
上記概要は、それぞれの開示された実施形態又は本発明のあらゆる実施を記載することを意図するものではない。以下の記載は、説明に役立つ実施形態をより具体的に例示する。当該出願を通していくつかの場所において、ガイダンスが実施例のリストによって提供されるが、その実施例は様々な組み合わせで使用され得る。どの場合であっても、列挙されたリストは、単に代表的なグループとして機能するものであり、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】PBSプラセボ(WAS-PBS)を受けた水回避ストレス(WAS)試験動物には、対照動物と比較して、細菌密度の3.3倍の増大があり(p<0.005)、心理学的ストレス誘発性細菌異常増殖を実証した。しかしながら、バクテリオファージ調製物を受けたWAS試験マウス(WAS-ファージ)における細菌密度は、対照動物と有意に異なることなく、ストレス誘発性細菌異常増殖の阻害におけるバクテリオファージ調製物の有効性を実証した。すべての結果を、対照のもの(1.0と設定)に対する16S rRNA遺伝子コピー数の倍率変化として表した。
【
図2】PBSプラセボ(WAS-PBS)又はバクテリオファージ調製物(WAS-ファージ)のいずれかを受けたWAS試験動物は、ブレイ-カーティス非類似指数によって計測した場合に、対照動物と比較して有意に異なるβ多様性を有する(p<0.01)。これらのデータは、WASを用いた試験が、腸微生物叢全体の組成の変化に関連していることを実証した。
【
図3】バクテリオファージ調製物を受けたWAS試験動物(WAS-ファージ)だけが、Chao1α多様性指数を使用して計測した場合に、対照に対して増強されたα多様性を有したが(p<0.05)、その一方で、PBSプラセボを受けたWAS試験動物は(WAS-ファージ)、対照に対して有意に増強されたα多様性を有することはなかった(p=0.2)。
図1及び
図2からのデータで解釈されたα多様性に関するこれらのデータは、ストレス誘発性腸微生物叢ディスバイオシスの状況における腸微生物叢全体の多様性の増強に対するバクテリオファージ調製物の有効性を実証している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
説明に役立つ実施形態の詳細な説明
この開示は、ディスバイオシスを緩和するためのバクテリオファージの使用を伴う医薬組成物と方法を記載している。
腸微生物叢の状況において、ディスバイオシスは、微生物叢が多数の健康障害や悪条件に関連している異常状態である。ディスバイオシスの微生物叢は、典型的に、健康な微生物叢と比較して、細菌メンバーシップの全体的な多様性の低下、及び選ばれた細菌メンバーの密度上昇を特徴とする。同様に、ディスバイオシスの腸ウイルス叢は、典型的に、健康な腸ウイルス叢と比較して、ウイルスメンバーシップの全体的な多様性の低下、及び選ばれたウイルスメンバーの密度上昇を特徴とする。逆に、より大きい細菌及び/又はウイルス多様性が、健康な腸微生物叢に関連している。それに対して、多くの細菌感染は、典型的に、単一の細菌性病原体が関与し、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)感染症の症例では、ディスバイオシスは、より多くのメンバー、又は腸微生物叢を作り上げている>500~1000細菌種から成る群集全体(その多くが常在する、相利共生的な、非病原性のものである)すらも関与し得る。腸微生物叢は、彼らのヒト宿主と密接に相互作用し、そして、この相互作用が、ヒトの健康に直接影響する。加えて、ディスバイオシスの状況において低い多様性を示す腸生態系の他の関連成分は、古細菌叢(古細菌)、ファージ叢(バクテリオファージ)、ウイルス叢(ウイルス)、真菌叢(真菌)、メタゲノム(遺伝子の総目録)、メタトランスクリプトーム(発現遺伝子の総目録)、メタプロテオーム(タンパク質の総目録)である。
【0021】
ディスバイオシスは、これだけに限定されるものではないが、以下のものを含めた多くの障害に関連している:先進国の慢性非感染性疾患(アトピー、メタボリックシンドローム、炎症性疾患、癌、いくつかの行動障害など)、過敏性腸症候群(IBS関連胃腸、神経学的、及び精神医学的病状、並びにIBS関連神経変性及び精神医学的併発症を含めたIBS)、慢性疲労症候群、繊維筋痛、胃食道逆流疾患、機能的腹痛及び他の機能障害、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患(IBD)、摂食障害、特発性肺線維症(IPF)、自己免疫疾患、COVID-19、COVID-19後長期症候群、間質性膀胱炎、慢性骨盤痛症候群、慢性前立腺炎、慢性副睾丸炎、肝臓硬変症、収縮過多性循環、腹水、静脈瘤、脳症、腎臓機能不全、肝腎症候群、ミクロバイアルトランスロケーション、末期腎疾患、小児脂肪便症、アレルギー、喘息、グルテン過敏症又はグルテン不耐症、心血管疾患、湾岸戦争症候群又は湾岸戦争病、注意欠陥多動性障害(ADHD)、外傷後ストレス障害、不安障害、糖尿病、メタボリックシンドローム、耐糖能異常、漏出性腸症候群、腸バリア機能障害、過敏症障害、嚢胞性繊維症、多重症状障害、環境病、食物不耐性及び食物アレルギー、食品過敏症、多種類食品又は化学物質過敏症、自閉症、外傷後うつ病、神経変性、多発性硬化症、アルツハイマー病、軽度認知障害、パーキンソン病、末梢ニューロパシー、レヴィー小体認知症(DLB)、特発性REM睡眠行動障害(iRBD)、ムズムズ脚症候群、睡眠障害、閉塞型睡眠時無呼吸、起立性低血圧、姿勢矯正症候群、全身性エリテマトーデス、硬皮症、関節リウマチ(RA)、骨関節炎(OA)、皮膚障害(例えば、にきび、アトピー性皮膚炎、乾癬、酒さ、じんましん、尋常性座瘡、水疱性天疱瘡など)、レイノー症候群、骨関節炎、シェーグレン症候群及び他の自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化及び関連する心血管疾患、肋軟骨炎、高ホモシステイン血症、橋本甲状腺炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、膣疾患、歯肉炎、歯周病、歯の髄室の疾患、齲歯、ブドウ膜炎、虹彩炎、痛覚過敏、オピオイド誘発性痛覚過敏、異痛、オピオイド腸管症候群、麻酔薬過敏症症候群、造血細胞移植、保護的な抗細菌作用メカニズムの障害(例えば、塩酸欠乏症、膵臓の外分泌機能不全症、免疫不全症候群など)、解剖学的異常(例えば、小腸閉塞、憩室、瘻孔、外科的盲係蹄、既往回盲切除術など)、運動障害(例えば、硬皮症、糖尿病における自律性神経障害、照射後腸疾病、小腸偽閉塞など)、乳房炎、栄養不足、重病、慢性疾患、口腔粘膜炎、腸粘膜炎、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)感染症、糖尿病、アトピー体質、アレルギー性鼻炎結膜炎、食品アレルギー、好酸球性食道炎、膵炎、ブチラート欠乏、不妊症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝病変(NAFLD)、アルコール性肝障害(ALD)、肝臓癌、肝臓疾患、肝移植、気管支拡張症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、消化器癌、食道癌、胃癌、結腸直腸癌腫、膵臓癌、肝細胞癌腫、手術部位感染症、小腸炎、結腸直腸癌、脂肪肝、移植片対宿主病(GVHD)、口腔扁平上皮癌、サルコペニア、尿路結石疾患、腎臓病、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)、同種異系幹細胞移植、骨病原性障害、真菌転移及び侵襲性疾患の促進、真菌の血流感染(例えば、カンジダ血流感染など)、慢性鼻副鼻腔炎(CRS)、神経炎症、自閉スペクトラム症、弱毒化モルヒネ鎮痛不耐、網膜変性疾患(例えば、網膜色素変性症など)、壊死性腸炎(NEC)、肝性脳症、肝臓硬変症関連認知能力、嗜癖障害、加齢、慢性中耳炎、免疫老化、緊急尿失禁、慢性腎臓病、白斑、インスリン抵抗性、腟微生物叢バランス失調、鼻咽頭癌、高血圧、脂質異常症、特発性頭蓋内圧亢進症候群(IIH)、インプラント周囲粘膜炎(PM)、インプラント周囲炎(PI)閉経期中の心代謝の健康、老年性掻痒症(SP)、原発性胆汁性胆管炎、過敏性頭皮、脂漏性皮膚炎、自己免疫性甲状腺疾患、グラーブ-バゼドウ病、細菌性腟症、性感染症、緑内障、反復流産、反復着床不全、アテローム生成脂質異常症、垂直スリーブ胃切除術、体軸性脊椎関節炎、慢性的な生理的ストレス、加齢に伴う微生物叢多様性の低下、尿路感染症、内臓過敏症、腸の膜透過性、繊維筋痛、統合失調症、注意欠陥/多動性障害、漏出性腸症候群、多嚢胞性卵巣症候群、虚血性脳卒中、動脈硬化プラーク発生、粥状血栓症、顕微鏡的大腸炎、並びに物質使用障害。
【0022】
ディスバイオシスはまた、化学療法、血液透析、(例えば、幼年期における)抗生物質製剤の使用、肥満手術、及び人工呼吸器を装着されていたことにも関連し得る。
ディスバイオシスに関連する障害の症状や臨床徴候としては、これだけに限定されるものではないが、疲労感、低エネルギー、インフルエンザ様疾患、睡眠不足、不眠症、パニック、うつ病、骨量減少、腹鳴、腹部膨満、鼓腸、膨満、胸焼け、消化不良、偏食、便秘、下痢(例えば、難治性下痢、胆汁酸性下痢、抗生剤性下痢など)、迷走神経性腸-脳コミュニケーション、腹痛、知覚異常、刺痛、神経障害、頭がぼんやりした状態、ブレインフォグ、口臭、糖渇望、うつ病、不安症、精神医学的転帰不良、知的障害、集中するのが困難な状態、認知症、軽度認知障害、記憶障害、シナプス可塑性、不機嫌、神経過敏、頭痛、片頭痛、浮動性めまい、疼きと痛み、慢性の広範囲に及ぶ筋骨格痛、息切れ、吐き気又は嘔吐、食欲不振、食欲亢進、にきび、発疹、手足の冷え、望まない体重減少、又は肥満が挙げられる。
【0023】
減少した細菌密度に関連するディスバイオシスのタイプの1つは、小腸の細菌異常増殖(SIBO)であり、そしてそれは、過敏性腸症候群を患っている患者の最大78%に存在する。SIBOは、腸の微生物群集の多様性低下、及び/又は(胃腸管のより遠位端での過剰な細菌密度とは無関係であってもよい)小腸の近位端における過剰な細菌コロニー形成で特徴とする。腸の細菌異常増殖は、胃腸管の近位及び/又は遠位部位における過剰な細菌密度を表す。SIBOの場合では、この異常増殖は、1又はいくつかの細菌種に限定されない。むしろ、多くのディスバイオシスのように、SIBOは、腸微生物叢の多くの又はすべての種を包含することができ、かつ、一般的に、病原性共生生物になる常在非病原性細菌種の高い密度によって引き起こされる。健康な胃腸管では、小腸の近位端は、実質的に無菌であり、遠位端に向かって細菌密度が次第に高くなる。小腸における腸内細菌の高いコロニー形成は、特に小腸のより近位端におけるとき、宿主免疫の誘発に関連し、そしてそれは、高い炎症誘発性/免疫応答、漏出性腸、腸バリア機能の欠陥、及び/又は腸バリアを越えた血流へのバクテリアルトランスロケーションにつながる。
【0024】
よって、SIBO及び腸の細菌異常増殖は、これだけに限定されるものではないが、過敏性腸症候群(IBS)、慢性疲労症候群、繊維筋痛、胃食道逆流疾患、機能的腹痛及び他の機能障害、クローン病、潰瘍性大腸炎及び他の炎症性腸疾患COVID-19後長期症候群、間質性膀胱炎、慢性骨盤痛症候群、慢性前立腺炎、慢性副睾丸炎、肝臓硬変症、収縮過多性循環、腹水、静脈瘤、脳症、腎臓機能不全、肝腎症候群、ミクロバイアルトランスロケーション、末期腎疾患、小児脂肪便症、アレルギー、喘息、グルテン過敏症又はグルテン不耐症、心血管疾患、湾岸戦争症候群又は湾岸戦争病、注意欠陥多動性障害(ADHD)、外傷後ストレス障害、不安障害、糖尿病、メタボリックシンドローム、耐糖能異常、漏出性腸症候群、腸バリア機能障害、過敏症障害、嚢胞性繊維症、多重症状障害、環境病、食物不耐性及び食物アレルギー、食品過敏症、多種類食品又は化学物質過敏症、自閉症、外傷後うつ病、多発性硬化症、アルツハイマー病、軽度認知障害、パーキンソン病、末梢ニューロパシー、ムズムズ脚症候群、睡眠障害、起立性低血圧、姿勢矯正症候群、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、硬皮症、関節リウマチ、乾癬、酒さ、じんましん、レイノー症候群、骨関節炎、シェーグレン症候群及び他の自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化及び関連する心血管疾患、肋軟骨炎、高ホモシステイン血症、橋本甲状腺炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、膣疾患、歯肉炎、歯周病、歯の髄室の疾患、齲歯、ブドウ膜炎、又は虹彩炎、痛覚過敏、オピオイド誘発性痛覚過敏、異痛、オピオイド腸管症候群、麻酔薬過敏症症候群を含めた多くの病状、症状、及び/又は臨床徴候に関連する。
【0025】
SIBO及び腸の細菌異常増殖に利用可能な治療は、例えば、リファキシミン、ドキシサイクリン、オウグメンチン、シプロフロキサシン、メトロニダゾール、ノルフロキサシン、又はネオマイシンを含めた抗生物質療法に限られるが、それは、様々な程度の臨床効果を有し、そのため、すべての患者で成功するわけではない。
【0026】
この開示は、これだけに限定されるものではないが、SIBO、腸の細菌異常増殖、及び細菌多様性の低下又は損失を特徴とするディスバイオシスの状態によって例示されるディスバイオシスの治療のためのバクテリオファージの使用を伴う組成物と方法を記載している。バクテリオファージは、細菌宿主に感染するどこにでも存在するウイルスである。各バクテリオファージは、再生のために細菌宿主に依存し、かつ、限られた範囲の感染しやすい細菌宿主を有する。その細菌宿主を使ってバクテリオファージを複製する方法の1つは、細菌細胞の外部の受容体に接着し、そのバクテリオファージDNAを細菌染色体内に注入するバクテリオファージ、細菌宿主によるバクテリオファージ粒子の複製、及び細菌宿主の溶解を伴い、そしてそれは、新しい宿主がそのサイクルを繰り返すことがわかっている新しいバクテリオファージ子孫の放出を最終的にもたらす。
腸微生物叢などの微生物群集では、バクテリオファージによる細菌の群集全体感染が、高い集団密度を有する細菌種の個体数を下方制御することによって細菌群集組成を調整するのを助ける機構であり、細菌種の多様性を駆動し、かつ、維持するのを助けるプロセスでもある。バクテリオファージは、腸微生物叢において多く存在し、腸内の、腸内細菌とほぼ同じサイズの集団で約1013のバクテリオファージの総量に達する。細菌-バクテリオファージ相互作用は、健康な腸微生物叢を含めた健康な微生物群集の基盤であり、そして、バクテリオファージ-細菌動態における機能不全は、下した細菌多様性と、特定の細菌メンバーの高い密度(すなわち、ディスバイオシス)に関連する。
【0027】
複製及び増殖するバクテリオファージの能力と結びついた、(バクテリオファージが細菌種の成長と密度を調整している)バクテリオファージと細菌との間の共進化的相関は、SIBO、腸の細菌異常増殖、及び細菌多様性の低下と損失を特徴とするディスバイオシス状態、又はディスバイオシスの他の形態に対処する潜在能力をバクテリオファージベースの腸微生物叢介入に与える。そのうえ、バクテリオファージベースの介入は、健康、かつ、多様な腸微生物叢を樹立することによって、より持続的な効果を生じさせることができる。対照的に、多くの既存の抗生物質療法は、腸微生物叢の多様性を低下させ、及び腸の微生物群集を乱して、ディスバイオシスにつながる。
【0028】
従来のバクテリオファージ治療法は、感染症に関与する特定の細菌性病原体に感染するバクテリオファージの使用を伴う。バクテリオファージ治療法の典型的な戦略は、感染部位にて患者から回収し、そして、培養した特定の疾患を引き起こす病原菌に対してインビトロにおいて有効性を示す単一のバクテリオファージ、又は複数のバクテリオファージの「カクテル」を培養することを伴う。各バクテリオファージには限定された感受性宿主があるので、この戦略は、着目の細菌性病原体に感染し、かつ、溶解させることができるバクテリオファージの厳選に依存する。細菌性病原体がバクテリオファージによる感染症に対して抵抗性を発現した場合、この「1種類の細菌に対して1種類のバクテリオファージ」アプローチは、臨床的有効性の喪失につながり得る。
【0029】
バクテリオファージの確立した使用とは対照的に、この開示は、乱れた微生物叢又は細菌多様性の低下若しくは損失に関連するいずれかのディスバイオシス状態を治療するためにバクテリオファージ群集全体を使用する代替アプローチを記載している。本明細書に記載したアプローチは、群集レベルの解決策(バクテリオファージの群集)を使用して群集レベルの問題に対処する。1若しくは複数の実施形態において、バクテリオファージ群集は、発酵植物材料を含めた起源から単離され得る。例示的な発酵植物材料としては、これだけに限定されるものではないが、アパム(appam)、アチャラ(atchara)、バゴオン(bagoong)、バラオバラオ(balao-balao)、バインクオン(banh cuon)、ブレム(brem)、ブロンイスダ(burong isda)、チョングッジャン(cheonggukjang)、チンカロック(cincalok)、クルチド(curtido)、ドクラ(dhokla)、ドエンジャン(doenjang)、トウバンジャン(doubanjiang)、トウチ(douzhi)、発酵ココナッツウォーター、発酵パイナップルジュース、発酵豆腐、発酵味噌、魚醤、ガラポン(galapong)、カンジャン(ganjang)、コチュジャン(gochujang)、グンドゥルッ(gundruk)、ハッカルル(hakarl)、チョットガル(jeotgal)、ケンキー(kenkey)、カノムチン(khanom chin)、キムチ、コンブチャ、クサヤ、ルフ(lufu)、味噌、ミキシアン(mixian)、モクニンチン(mohnyin tjin)、ムリ(murri)、ナタデココ、ナタデピナ(nata de pina)、ネム(naem)、納豆、ネムチュア(nem chua)、ンガピ(ngapi)、オギ(ogi)、オギリ(ogiri)、オンコム(oncom)、パラッパム(palappam)、ピユム(peuyeum)、ピクルス、ピクルスブライン(pickle brine)、ポイ(poi)、ポンイェギ(pon ye gyi)、ザワークラウト、塩辛、エビペースト、シンキ(sinki)、ソウインズ(soweans)、醤油、スンバラ(sumbala)、タルハナ(tarhana)、テンペ(tempeh)、テンメンジャン(tianmianjiang)、トゥントゥ(tungtoh)、及びウスターソースが挙げられる。
【0030】
1若しくは複数の実施形態において、バクテリオファージ調製物は、起源からバクテリオファージを単離することによって調製されてもよい。他の場合では、バクテリオファージ調製物は、(例えば、バイオリアクターを使用した)好適な細菌培養物中のバクテリオファージ群集を増殖させることを含む方法によって調製され、次に、その増殖させた細菌培養物から単離されてもよい。
【0031】
バクテリオファージ調製物としては、ミオウイルス科、ポドウイルス科、シフォウイルス科、イノウイルス科、ミクロウイルス科、コルチコウイルス科、テクティウイルス科、レヴィウイルス科、シストウイルス科、ルディウイルス科、フセロウイルス科、リポスリウイルス科、又はプラズマウイルス科のメンバーを挙げることができる。好ましい実施形態において、バクテリオファージ調製物は、2科以上のメンバーを包含する。
【0032】
1若しくは複数の実施形態において、バクテリオファージ調製物は、バクテリオファージの濃度及び/又は生理活性を増強するために濃縮され得る。バクテリオファージ調製物を濃縮するための例示的な方法としては、これだけに限定されるものではないが、UV処理、マイトマイシンC、温度変化、高塩分、高塩基性、高酸性又は他のバクテリオファージ誘導剤などのプロセスを使用した、それらの細菌宿主から放出されるようにバクテリオファージを誘導する方法が挙げられる。他の実施形態において、バクテリオファージ調製物は、遠心分離、超遠心分離、濾過、サイズ分画、アフィニティー精製、アフィニティークロマトグラフィ、CsCl密度勾配、ポリエチレングリコール処理、クロロホルム処理、又はポリマー内への細菌細胞の取り込みによって濃縮されてもよい。1若しくは複数の実施形態において、周期的な収穫が、バクテリオファージの抽出に適用され得る。周期的な収穫は、ファージ生物学の分野では新規であり、それらのピーク集団密度時に微生物群集から特定のバクテリオファージタイプを収穫するための選択的抽出技術を使用することを伴う。加えて、サンプル中のバクテリオファージの濃度は、1若しくは複数の他の起源から回収されたバクテリオファージを添加することによって、高められ得る。
【0033】
よって、この開示は、標的病原菌に特異的に適合するわけではないバクテリオファージ、及び/又は多様なバクテリオファージ群集を包含する治療を使用する、腸のディスバイオシス(例えば、SIBO又は腸の細菌異常増殖)を治療するための新規な治療法を記載している。腸のディスバイオシスを標的としたバクテリオファージ群集は、これだけに限定されるものではないが、環境サンプル又は発酵プロセス(例えば、発酵植物材料、発酵植物ジュース、発酵食物起源、発酵バイオ燃料、発酵生物由来廃棄物、発酵原料など)を含めたさまざまな起源から回収、混合、及び/又は分離され得、そしてそれは、次に、混合された細菌及び/又はバクテリオファージ群集を意味する細菌培養バイオリアクター内で更に培養、増殖、及び/又は濃縮される。腸微生物叢への多様なバクテリオファージ集団の投与は、細菌群集全体の密度を低減させることができ、その結果、細菌の異常増殖を補正する。この群集レベルでのアプローチはまた、その微生物叢における全体的な細菌の多様性も高めることができ、その結果、多数のディスバイオシスを潜在的に修正し、宿主の腸微生物相関の恒常性を復元し、及び/又は低下した細菌多様性、細菌群集構造のシフト、若しくは病原性共生生物の異常な大量発生に関連する障害を治療する。
【0034】
例示的な実施形態において、多様な、混成バクテリオファージ群集は、水回避ストレスによって引き起こされたディスバイオシスのマウスモデルにおける治療として試験された。ディスバイオシスは、小腸における細菌異常増殖(すなわち、SIBO)を特徴とする。水回避ストレス課題は、上昇した細菌密度によって実証されるように、プラセボ処理マウスにおいてディスバイオシスを引き起こした(
図1、WAS-PBS)。具体的には、WAS-PBS群の回腸は、対照群(1.0±0.3;p<0.005)に対して3.3倍の細菌密度の増大(3.3±0.6)があった。バクテリオファージ群集を用いた処置を受けた群(WAS-ファージ)は、WAS-PBS群より低い細菌密度を有した。WAS-ファージ群は、対照群と有意に異なるものではなかった(n.s.)回腸内の細菌密度(2.4±0.5)を有した。
【0035】
加えて、盲腸微生物叢の配列解析では、Chao1指数によって計測されるように、WAS-ファージ群が、対照(平均=115±16;p<0.05)に対しての1.5倍のα多様性の増大(平均=168±13)があったことが明らかになった(
図3)。WAS-PBS群のChao1指数(平均=144±13)は、対照のものと有意に異なるものではなかった(n.s.)。これらの統計値は、多重比較のためのダンの補正を伴ったクラスカル・ウォリス検定を使用して測定された。実験群間のβ多様性の分析では、WAS試験が微生物叢群集の構成を変化させるのに十分であることが実証された。両方のWAS群、WAS-PBS及びWAS-ファージは、ブレイ-カーティス非類似性を使用して(
図2)、対照群と有意に異なっていた(p<0.01)。α多様性分析と共に解釈される、β多様性データは、WAS-試験が対照に対して(ディスバイオシスを実証する)全体的な微生物叢群集の構成が変化させたことを実証した。更に、バクテリオファージ調製物を用いた処置が、微生物叢に存在する種の多様性の全体的な増大に関連する唯一の処置であり、それがディスバイオシスを修正する際に有用性を有していることを示すものであった。
【0036】
これらの知見は、実験的に誘発した腸微生物叢のディスバイオシスを患っている対象において、バクテリオファージ群集を用いた処置が、健康である未処理対照のレベルまで、回腸の細菌密度を回復するのに有効である証拠を提供する。マウスにおけるSIBOの解消に関するこれらのデータは、腸内微生物のディスバイオシス向けの治療としての、発酵植物材料を含めた起源を使用した人工環境で培養した、多様な、混成バクテリオファージ群集の使用に関する第一の証拠である。
【0037】
よって、この開示は、バクテリオファージ調製物と、ディスバイオシスによって引き起こされた状態の治療のためのバクテリオファージ調製物の使用を記載している。本明細書に使用される場合、「治療する」又はその変形は、状態に関連する症状又は徴候を、任意の程度、低め、限定進行し、改善又は解決することを示す。「治療」とは、治療的又は予防的であり得る。「治療的」及びその変形は、状態に関連する1若しくは複数の既存の症状又は臨床学的徴候を改善する治療を言及する。「予防的」及びその変形は、状態の症状又は臨床学的徴候の発症及び/又は出現を、ある程度、制限する治療を言及する。一般的に「治療的」処置は、対象における状態の出現の後、開始されるが、ところが「予防的」処置は、対象における出現の前、開始される。
【0038】
予防的である治療-例えば、対象が症状又は病状の臨床徴候を表す前に、例えば、感染症が無症状のままであるなど、ではあるが、開始された治療-は、本明細書では病状を有する「危険性が高い」対象の治療と呼ばれる。本明細書に使用される場合、「危険性が高い」という用語は、記載した危険性を実際に有しているかどうかわからない対象を指す。よって、例えば、感染状態の「危険性が高い」対象とは、その対象がまだ微生物による感染症のいずれかの検出可能な指標を表していなかったとしても、かつ、その対象が無症状量の微生物を保持し得るかどうかにかかわらず、他個体が感染状態にあると同定された領域内に存在した、及び/又は感染性物質に晒された可能性が高い対象である。別の例として、非感染状態にある「危険性が高い」対象とは、例えば、遺伝的素質、家系、年齢、性別、地理的位置、生活習慣、又は病歴などの状態に関連する1若しくは複数の危険因子を有する対象である。加えて、対象は、例えば、抗生物質治療、急性胃腸炎の発病、外科手術又は全身麻酔のエピソード、長期ストレス、戦闘地域への配属、旅行、病気などの腸微生物叢を混乱させる要因への曝露又は予想される曝露のため「危険性が高い」と見なされ得る。更に別の例として、ディスバイオシスの治療を受けた対象は、ディスバイオシスの再発又はぶり返しの「危険性が高い」。予防的治療は、対象が症状又は臨床徴候を表す前に、又は対象がディスバイオシスの完全な再発又はぶり返しの前兆である前駆症状又は臨床徴候を表すときに開始されてもよい。斯かる予防的治療は、いずれかの再発又はぶり返しの可能性又は重症度の低減、或いはディスバイオシスの軽減に向けられてもよい。例えば、変動エネルギーレベルは、慢性疲労症候群における、差し迫ったディスバイオシスの再発又はぶり返しの前駆症状であり得る。別の例として、パーキンソン病への進行の前駆状態である、特発性REM睡眠行動障害(iRBD)を患っている対象は、その状態が完全なパーキンソン病に発展する前に、治療される場合がある。
【0039】
従って、バクテリオファージ調製物は、対象がディスバイオシスによって引き起こされる状態の症状又は臨床学的徴候を最初に示す前、その間、又はその後、対象に投与され得る。対象が状態に関連する症状又は臨床学的徴候を最初に示す前に開始される治療は、バクテリオファージ調製物が投与されていない対象に比較して、対象が状態の臨床学的証拠を経験する可能性の低下、状態の症状及び/又は臨床学的徴候の重症度の低下、及び/又は状態の完全な解決をもたらすことができる。対象が状態に関連する症状又は臨床学的徴候を最初に示した後、開始される治療は、バクテリオファージ調製物が投与されていない対象に比較して、状態の症状及び/又は臨床学的徴候の重症度の低下、及び/又は状態の完全な解決をもたらすことができる。
【0040】
よって、その方法は、ディスバイオシスによって引き起こされる状態を患っているか、又は患う危険性が高い対象に、有効量の組成物を投与することを含む。この態様において、「有効量」とは、その状態に関連する症状又は臨床徴候を、任意な程度まで、軽減するか、進行を制限するか、改善するか、又は解決するのに有効な量である。
【0041】
本明細書に記載されるバクテリオファージ調製物は、医薬として許容される担体と共に処方され得る。本明細書に使用される場合、「担体」とは、任意の溶媒、分散媒、ビークル、コーティング剤、希釈剤、抗菌剤、及び/又は抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイド、及び同様のものを含む。医薬活性物質のためのそのような媒体及び/又は剤の使用は、当業界において周知である。いずれかの従来の媒体又は剤が有効成分に不適合である場合を除いて、治療用バクテリオファージ調製物におけるその使用が企図される。任意の従来の媒体成分もまた、バクテリオファージ調製物に組み込まれ得る。本明細書に使用される場合、「医薬として許容される」とは、生物学的に又は他の点で望ましくないものでない物質を言及し、すなわち、その物質は、いずれか望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、又はそれが含まれる医薬用バクテリオファージ調製物の任意の他の成分と、有害な態様で相互作用することなく、バクテリオファージ調製物と共に個人に投与され得る。
【0042】
そのため、バクテリオファージ調製物は、医薬組成物中に処方され得る。医薬組成物は、好ましい投与経路に適合した種々の形で製剤化され得る。従って、組成物は、例えば経口、非経口(例えば、皮内、経皮、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内など)、胃腸管若しくは体腔などの臓器内に位置する環を介して、又は局所(例えば、鼻腔内、肺内、乳房内、膣内、子宮内、皮内、経皮、直腸、嚢内など)を含む既知の経路を介して投与され得る。医薬組成物は、例えば、(例えば、スプレー又はエアゾールによる)鼻粘膜、呼吸粘膜、膣粘膜、直腸粘膜などへの投与など、粘膜表面に投与されることも、或いは皮膚若しくは頭皮に適用されることもできる(例えば、クリーム、ゲル、溶液、軟膏、スプレー、又はパッチ)。組成物はまた、持続又は遅延放出を介しても投与され得る。
【0043】
従って、バクテリオファージ調製物は、これだけに限定されるものではないが、溶液、懸濁液、エマルジョン、スプレー、エアロゾル又は任意の形の混合物を含めた任意の適切な形で提供され得る。バクテリオファージ調製物は、任意の医薬として許容される賦形剤、担体又はビークルを含む製剤で送達され得る。例えば、製剤は、例えば、従来の局所剤形、例えばクリーム、軟膏、皮膚パッチ、エアロゾル製剤、非エアロゾルスプレー、ゲル、ローション、手用洗浄剤、体用洗浄剤、シャンプー、外科用若しくは歯科用洗浄剤若しくはリンス、デントリフィス(dentrifice)、点眼剤、吸入器などで送達され得る。
【0044】
経口送達向けに設計された製剤は、これだけに限定されるものではないが、ミクロスフェア(コート、未コート、又はコートと未コートの組み合わせ)、粒子(コート、未コート、又はコートと未コートの組み合わせ)、粉末、顆粒製剤、懸濁液、乳濁液、溶液、シロップ、エリキシル剤、錠剤(コート、未コート、又はコートと未コートの組み合わせ)、トローチ、カプセル剤、キャップレット、ロゼンジ、デントリフィス、チューインガム、又はスプレーを包含する。
【0045】
皮膚への送達向けに設計された製剤は、これだけに限定されるものではないが、ミクロスフェア(コート、未コート、又はコートと未コートの組み合わせ)、粒子(コート、未コート、又はコートと未コートの組み合わせ)、粉末、顆粒製剤、懸濁液、乳濁液、溶液、手用若しくは体用洗浄剤、シャンプー、パッチ、又はスプレーを包含する。
【0046】
目又は結膜への送達向けに設計された製剤は、これだけに限定されるものではないが、ミクロスフェア(コート、未コート、又はコートと未コートの組み合わせ)、粒子(コート、未コート、又はコートと未コートの組み合わせ)、粉末、顆粒製剤、懸濁液、乳濁液、又は溶液を包含し、及び点眼剤として又はスプレーとして送達されてもよい。
【0047】
鼻道又は気道への送達向けに設計された製剤は、これだけに限定されるものではないが、ミクロスフェア(コート、未コート、又はコートと未コートの組み合わせ)、粒子(コート、未コート、又はコートと未コートの組み合わせ)、粉末、顆粒製剤、懸濁液、乳濁液、又は溶液を包含し、及びエアゾール又はスプレーとして送達されてもよい。
【0048】
製剤は、例えば、アジュバント、皮膚透過増強剤、染色剤、香料、風味料、保湿剤、増粘剤などを含めた1若しくは複数の添加剤を更に包含してもよい。
【0049】
場合によっては、治療方法は、例えば、表皮、粘膜表面、皮膚又は頭皮の少なくと一部、歯又は歯茎を含めた口腔の少なくとも一部、胃腸管の少なくとも一部、鼻腔の少なくとも一部、気道の少なくとも一部、生殖-泌尿器管の少なくとも一部、又は体腔などの表皮組織に限局されたディスバイオシスを治療することを伴っていてもよい。生殖-泌尿器管(例えば、膣又は直腸)への送達向けに設計された製剤は、これだけに限定されるものではないが、ミクロスフェア(コート、未コート、又はコートと未コートの組み合わせ)、粒子(コート、未コート、又はコートと未コートの組み合わせ)、粉末、顆粒製剤、懸濁液、乳濁液、溶液、シロップ、エリキシル剤、錠剤(コート、未コート、又はコートと未コートの組み合わせ)、トローチ、ビデ、浣腸剤、カプセル剤、キャップレット、ロゼンジ、坐剤、又はスプレーを包含する。従って、バクテリオファージ調製物は、表皮組織への送達に好適な投与経路による、表皮組織への送達に好適な製剤で提供されてもよい。
【0050】
1若しくは複数の実施形態において、バクテリオファージ調製物は、例えば、ペースメーカー、カテーテル、又はステントなどの医療用デバイスに組み込まれる。本明細書に使用される場合、「医療用デバイスに組み込まれた」とは、バクテリオファージ調製物を医療用デバイスと結びつける任意の様式を指す。バクテリオファージ調製物が医療用デバイスに組み込まれ得る例示的な方法としては、これだけに限定されるものではないが、医療用デバイスの1若しくは複数の構成要素に組み込まれたバクテリオファージ調製物、医療用デバイスの一部に適用されたコーティングに包含されたバクテリオファージ調製物、又は医療用デバイスのパッチ又はリザーバ内に包含されたバクテリオファージ調製物が挙げられる。
【0051】
製剤は、単位投薬形で便利に提供され得、そして薬学の分野で周知の方法により調製され得る。医薬的に許容される担体を有する組成物の調製方法は、バクテリオファージ調製物を、1若しくは複数の付属成分を構成する担体と会合させるステップを含む。一般的に、製剤は、液体担体、細かく分割された固体担体、又は両者と活性化合物とを、均等に及び/又は緊密に会合され、そして次に、必要な場合、所望する製剤に生成物を成形することを包含する。
【0052】
投与されるバクテリオファージ調製物の用量は、これだけに限定されるものではないが、対象の体重、身体状態、及び/又は年齢、並びに/或いは投与経路を含む種々の要因に依存して変化することができる。従って、所定の製剤体積中のバクテリオファージの濃度は、幅広く変化することができ、そして対象の種、年齢、体重及び体調、及び/又は投与方法などの要因に依存する。従って、全ての可能な用途のために有効なバクテリオファージ調製物の量を構成する量を、一般的に示すことは現実的ではない。しかしながら、当業者は、そのような要因を考慮して適切な量を容易に決定することができる。
【0053】
1若しくは複数の実施形態によれば、この方法は、対象に約104バクテリオファージ/ml~約1012バクテリオファージ/mlの用量を提供するのに十分なバクテリオファージ調製物を投与することを含むことができるが、1若しくは複数の実施形態によれば、この方法は、バクテリオファージ調製物を、この範囲外の用量で投与することより実施され得る。それらの実施形態のいくつかによれば、この方法は、対象に105バクテリオファージ/ml~約1010バクテリオファージ/mlの用量、対象に約4×1010バクテリオファージ/ml~約3×1011バクテリオファージ/mlの用量、例えば、又は対象に約5×1010バクテリオファージ/ml~約1.2×1011バクテリオファージ/mlの用量を提供するのに十分なバクテリオファージ調製物を投与することを含む。例示的な一実施形態において、約107バクテリオファージ/mlの用量を対象に投与する。
【0054】
単回投与は、一度に全てが投与されても、規定の期間にわたり継続的に投与されても、又は複数の別々な投与で投与されてもよい。複数回投与が使用されるとき、それぞれの投与の量は、同じであっても、又は異なっていてもよい。例えば、1日あたり107バクテリオファージの用量は、107バクテリオファージの単独投与として投与されても、24時間にわたって継続的な、5×106バクテリオファージの2回投与として投与されても、又は合計107バクテリオファージの24時間以内の不均等な投与として投与されてもよい。複数回投与が単回用量を送達するのに使用されるとき、投与間隔は、同じであっても、又は異なっていてもよい。
【0055】
特定の実施形態において、バクテリオファージ調製物は、1週間あたり一回限りの単回投与~複数回投与としてを投与されてもよいが、しかし、1若しくは複数の実施形態において、その方法は、この範囲を超えた頻度でバクテリオファージの用量を投与することを包含する一連の治療を伴うことができる。一連の治療が、特定の期間内に複数回投与を投与することを伴うとき、それぞれの投与の量は、同じであっても、又は異なっていてもよい。例えば、一連の治療としては、初回量である負荷量と、それに続く、該負荷量より少ない維持量を包含することができる。また、複数回投与が特定の期間内に使用されるとき、投与間隔は、同じであっても、又は異なっていてもよい。
【0056】
1若しくは複数の実施形態において、バクテリオファージ調製物は、長期間にわたる絶食後に投与されてもよい。本明細書に使用される場合、「長期間にわたる絶食」とは、普通の食物間の時間より長い時間を指す。本明細書に使用される場合、「絶食」とは、カロリー又は栄養物を入手する機会のあらゆる減少を指す。従って、1若しくは複数の実施形態において、長期間にわたる絶食は、例えば、少なくとも12時間、最短18時間、少なくとも24時間、少なくとも30時間、又は少なくとも36時間など、少なくとも8時間の最短期間にわたる絶食を包含する。長期間にわたる絶食は、例えば、60時間以下、54時間以下、48時間以下、42時間以下、36時間以下、30時間以下、24時間以下、又は18時間以下など、72時間以下の最長期間にわたる絶食を包含する。いくつかの場合において、長期間にわたる絶食は、先に記載した任意の最短絶食期間と、その最短絶食期間より長い、先に記載した任意の最長絶食期間によって定義される終点を有する範囲内の期間にわたる絶食を包含する。特定の実施形態において、長期間にわたる絶食は、12時間~36時間にわたる絶食を包含する。特定の例示的な一実施形態において、長期間にわたる絶食は、24時間にわたる絶食を包含する。
【0057】
絶食は、常在腸内細菌にとって利用可能な食物供給源を低減し、これにより、腸内細菌集団の増殖を阻害する。バクテリオファージ治療に関連して使用されるとき、絶食は、常在腸内細菌を減退させ、その結果、バクテリオファージ治療の投与をより効果的にすることができる。1若しくは複数の代替実施形態において、バクテリオファージ治療は、1若しくは複数回の食事の食前に投与されても、食中に投与されても、又は食後に投与されてもよい。
【0058】
1若しくは複数の実施形態において、バクテリオファージ調製物は、例えば、単回投与~対象の余命の範囲に及ぶ期間にわたり投与されてもよい。特定の実施形態において、バクテリオファージ調製物は、一回限りの単回用量として投与されてもよい。他の実施形態において、バクテリオファージ調製物は、1日間~約1年間、例えば、約3日間~約7日間にわたり投与されてもよい。バクテリオファージ調製物を用いた治療はまた、ディスバイオシスの再発の可能性及び/又は重症度を低減するための再治療として定期的に起こってもよい。
【0059】
1若しくは複数の実施形態において、その方法は、ディスバイオシス治療用の第二の医薬組成物を対象に投与することを包含し得る。例示的なディスバイオシス治療用医薬組成物としては、これだけに限定されるものではないが、抗生物質製剤、プレバイオティクス製剤、プロバイオティクス製剤、シンバイオティクス製剤、糞便微生物相移植物、膜小胞、自食作用誘導因子、又は任意の2種類以上のディスバイオシス治療用医薬組成物の組み合わせが挙げられる。
【0060】
例示的な抗生物質製剤としては、これだけに限定されるものではないが、リファキシミン、メトロニダゾール、セファレキシン、トリメトプリム-スルホメトキサゾール、ドキシサイクリン、コリスチン、テトラサイクリン、クリンダマイシン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、アンピシリン、アモキシシリン、エリスロマイシン、チニダゾール、ニタゾキサニド、アルベンダゾール、パロモマイシン、キナクリン、ラクツロース、ジサリチル酸ビスマス、ゲンタマイシン、ネオマイシン、又は2種類以上の抗生物質の任意の組み合わせが挙げられる。
【0061】
例示的なプレバイオティクス製剤としては、これだけに限定されるものではないが、フラクト-オリゴ糖、二糖、単糖、ポリオール、ガラクト-オリゴ糖、イヌリン、短鎖炭水化物、糖アルコール、オリゴフルクトース、又は2種類以上のプレバイオティクス製剤の組み合わせが挙げられる。
【0062】
例示的なプロバイオティクス製剤としては、これだけに限定されるものではないが、乳酸細菌群のメンバー、例えば、ペディオコッカス(Pediococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、オエノコッカス(Oenococcus)属、ワイセラ(Weissella)属、又はロイコノストック属(Leuconostoc spp.)など、例えば、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・デルブルエッキ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・デルブルエッキ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgarius)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ラムノサスGG(Lactobacillus rhamnosus GG)、ラクトバクテリウム・ラクティス(Lactobacterium lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、サッカロミセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、サッカロミセス・バイアヌス(Saccharomyces bayanus)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pedicoccus acdilactici)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、エッシェリキア・コリ・ニッスル(Escherichia coli Nissle)、エンテロコッカス-デューランス(Enterococcus durans)、ワイセラ・シバリア(Weissella cibaria)、エンテロコッカス・フェーカリス(Enterococcus faecium)、又は任意の2種類以上のプロバイオティクス製剤の組み合わせが挙げられる。
【0063】
例示的なシンバイオティクス製剤としては、これだけに限定されるものではないが、プレバイオティクス製剤とプロバイオティクス製剤との組み合わせが挙げられる。
例示的な糞便微生物相移植物としては、これだけに限定されるものではないが、糞便物質全体、部分的な糞便物質、変性糞便物質、微生物叢全体、部分的な微生物叢、糞便濾液、又は変性微生物叢が挙げられる。
【0064】
1若しくは複数の実施形態において、治療されるディスバイオシスには、例えば、表皮、粘膜表面、皮膚又は頭皮の少なくと一部、歯又は歯茎を含めた口腔の少なくとも一部、胃腸管の少なくとも一部、鼻腔の少なくとも一部、気道の少なくとも一部、生殖-泌尿器管の少なくとも一部、又は体腔などの表皮組織に限局されたディスバイオシスが包含され得る。
【0065】
前述の記載及び続く特許請求の範囲において、用語「及び/又は」とは、列挙された要素の1つ又はすべて、又は列挙された要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味し;用語「含む」、「含むこと」及びそれらの変形は、無制限なものとして解釈されるべきであり、すなわち、追加の要素及びステップは任意であり、そして存在してもなくても良く:特にことわらない限り、「a」「an」、「the」及び「少なくとも1つ」は、互換可能に使用され、そして1つ又は1つ以上を意味し;そして端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0066】
先の説明において、特定の実施形態は、明確にすることのために別個に記載され得る。この明細書を通して、「一実施形態」、「ある実施形態」、「特定の実施形態」、又は「1若しくは複数の実施形態」などへの言及は、その実施形態との関係で記載された特定の特徴、形態、組成物、又は特徴がその開示の少なくとも1つの実施形態に包含されることを意味する。よって、この明細書を通じた様々な位置での斯かる語句の出現は、その開示の同じ実施形態を必ず参照しているというわけではない。更に、特定の特徴、形態、組成物、又は特徴は、1若しくは複数の実施形態における任意の好適な様式で組み合わせられてもよい。更に、特定の特徴、形態、組成物、又は特徴は、1若しくは複数の実施形態における任意の好適な様式で組み合わせられてもよい。よって、ある実施形態との関連で記載された特徴は、その特徴が相互排他的である必要がある場合を除いて、異なる実施形態との関連で記載された特徴と組み合わせられてもよい。
【0067】
離散的ステップを含む本明細書に開示される任意の方法について、そのステップは任意の実行可能な順序で実行され得る。そして、適切な場合、2つ以上のステップの任意の組み合わせが同時に行われ得る。
【0068】
本明細書に使用される場合、「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、特定の状況下で特定の利益を提供し得る本発明の実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態はまた、同じ又はその他の状況下でも好まれ得る。更に、1若しくは複数の好ましい実施形態の記述は、他の実施形態が有用でないことを暗示するものではなく、かつ、本発明の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものでもない。
【0069】
本発明は、以下の実施例により説明される。特定の実施例、材料、量及び手順は、本明細書に記載される本発明の範囲及び要旨に従って広く解釈されるべきであることが理解される。
【実施例】
【0070】
バクテリオファージの多様、かつ、混成群集の調製物を、3%のNaCl w/v溶液中の生キャベツの自然発生的な乳酸菌培養で作り出した。培養物を、18℃にて21日間インキュベートし、次に、遠心分離、濾過、及び濃縮に供して、バクテリオファージの純粋調製物を単離した。サンプルの5000×gにて30分間の遠心分離により、培養物から細菌細胞や粒状物質をペレット化した。(その中にバクテリオファージが含有された)残った上清を、450nmにて濾過して、溶液を濾過-滅菌し、及び残ったすべての細菌を取り除いた。すべての既知のバクテリオファージを捕捉するのに十分に小さいことが知られている細孔径である、3nmの細孔径を有する遠心濾過機を使用して、バクテリオファージを濃縮及び単離した。その後の遠心濾過機の充填と遠心分離によって、バクテリオファージを、元の培養物のレベルの10×まで濃縮した。バクテリオファージを、リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液を使用して、遠心濾過機により浄化した。溶液中のバクテリオファージの存在を、電子顕微鏡検査を使用して確認した。
【0071】
そこでバクテリオファージ調製物を試験するための、典型的な腸ディスバイオシスモデルを樹立するために、C57BL/6マウス(n=6)を、水回避ストレス(WAS-PBS)試験を用いて攻撃して、SIBOを誘発させた。WAS試験は、10日間の1時間処理を伴い、そこでは、プラットフォーム表面の1cm下まで水で満たした透明なプラスチックコンテナの中央の円形プラットフォーム(直径2インチ)に、各マウスを乗せた。並行して、別の群には、WAS試験、並びにバクテリオファージ調製物を与えた(WAS-ファージ;n=6)。WAS-ファージマウスには、WAS試験開始の3日前から始まり、WAS試験の最後の日まで続く、合計13回の処置にわたる、1日あたり約107バクテリオファージ調製物から成る単回処置を与えた。WAS-PBS群には、バクテリオファージ調製物の代わりにPBS強制飼養を与えた。この期間中、対照マウス(n=3)は、彼らのケージ内に滞在したままであった。マウスを、WAS及びWAS-ファージ群が彼らの最後の処置を受けた24時間後に、安楽死させた。組織サンプルを小腸の回腸から採取し、分析までZymo RNA/DNA Shield内に保存した。
【0072】
小腸の回腸内の細菌密度の定量化のために、DNAを、DNeasy Blood and Tissue Kit(Qiagen)を使用した加工によって、約50mgの回腸組織から抽出した。普遍的な細菌マーカーである、16s rRNA遺伝子サブユニットの遺伝子のコピー数を、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を使用して、抽出した回腸DNAで数えた。16s rRNA遺伝子を標的としたプライマー対を使用することによって、当業者は、(18s rRNA遺伝子を使用して同定できる)宿主組織の真核細胞の量に対する、サンプル中に存在する細菌細胞の量を数えることが可能になる。このアプローチを使用することで、真核宿主細胞の数量に対する細菌細胞の数量を比較して、その結果、宿主組織内の細菌密度を計測することによって、異なる組織内の粘膜関連細菌の正確な計数が可能になる。qPCRからのデータを、ΔΔCt法を使用して分析し、そして、結果を、処理を受けなかった対照群に対する倍率変化(平均±SE)として報告する。各群の平均間の差を、多重比較のためにダンの補正を伴ったクラスカル・ウォリス検定を使用して分析した。すべての統計的分析をPRISM(GraphPad Software, Inc., San Diego, CA)を用いて実施した。
【0073】
処置群間のα及びβ多様性の比較のために、約200mgの糞便物質を、それぞれの動物の盲腸から回収し、そして、細菌DNAの抽出と16SシークエンシングのためにUniversity of Minnesota Genomics Center(UMGC)に送った。16S微生物叢シークエンシングは、全微生物群集組成の特性評価を可能にする。16Sシークエンシングデータのバイオインフォマティクス分析を、CD Genomics(Shirley, NY)により手数料方式で実施した。この分析は、処置群間の微生物群集組成を比較し、そしてそれは、群集の多様性(すなわち、α多様性)、並びに群間の非類似性(すなわち、β多様性)の両方の定量的測定をもたらす。この調査に使用するChao1指数などのα多様性の指標は、種の数を定量化し、微生物群集内の多様性の客観的測定をもたらす。逆に、この調査に使用するブレイ-カーティス非類似性などのβ多様性の非類似性は、群間の微生物群集組成の差を比較する、主観的測定である;具体的には、どの種が存在し、かつ、それらの豊富さに基づいて群を比較する。
【0074】
統計的分析のために、各群のα多様性平均の差を、多重比較のためにダンの補正を伴ったクラスカル・ウォリス検定を使用して分析した。すべての統計的分析をPRISM(GraphPad Software, Inc., San Diego, CA)を用いて実施した。β多様性の非類似性を、CD Genomics(Shirly, CA)により手数料方式でPermanovaペアワイズ比較を使用して分析した。
【0075】
本明細書に引用されるすべての特許、特許出願及び出版物、並びに電子的に入手可能な材料(例えば、GenBank及びRefSegにおけるヌクレオチド配列提出、及び例えば、SwissProto、PIR、PIR、PRF、PDBにおけるアミノ酸配列提出、並びにGenBank及びRefSegにおける注釈付きのコード領域からの翻訳)の完全な開示は、その全体の参照により本明細書に組み込まれる。本出願の開示と、参照により本明細書に組み込まれる任意の文献の(単数若しくは複数の)開示との間に矛盾が存在する場合、本願の開示が適用される。前述の詳細な記載及び実施例は、理解を明確にするためにのみ与えられている。それから不必要な制限が理解されるべきでない。本発明は、図示され、そして説明された正確な詳細に限定されず、当業者に明白な変形が特許請求の範囲により定義される本発明内に含まれるであろう。
【0076】
別段の指定がない限り、本明細書及び特許請求の範囲に使用される成分の量、分子量などを表すすべての数字は、全ての場合、用語「約」により修飾されるものとして理解されるべきである。従って、特にことわらない限り、明細書及び特許請求の範囲に記載される数値パラメーターは、本発明により得られることが求められる所望の性質に依存して変化しえる近似値である。少なくとも、特許請求の範囲に等価物の教えを限定しようとするものではなく、各数値パラメーターは少なくとも、報告された有効数字の数に照らして、及び通常の丸め技法の適用により解釈されるべきである。
【0077】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメーターは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示される数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、すべての数値は、それらのそれぞれの試験測定値に見られる標準偏差に必然的に起因する範囲を本質的に含む。
別段の指定がない限り、全ての見出しは、読者の便宜のためであり、そして見出しに続くテキストの意味を限定するために使用されるべきではない。
【国際調査報告】