(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】安定化したMHC分子
(51)【国際特許分類】
C07K 14/74 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
C07K14/74 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523145
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2022078967
(87)【国際公開番号】W WO2023066932
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506258073
【氏名又は名称】イマティクス バイオテクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】トライバー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュパルト,シュテファニー
(72)【発明者】
【氏名】マウラー,ドミニク
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA54
4H045GA45
(57)【要約】
本発明は、主要組織適合複合体(MHC)タンパク質、およびR1-COOHまたはその塩を含む組成物に関する。本発明は、MHCタンパク質を安定化するための、R1-COOHまたはその塩の使用にさらに関する。本発明はまた、MHCタンパク質を安定化するための方法に関する。本発明はまた、MHCタンパク質、およびR1-COOHまたはその塩を含むキットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)主要組織適合複合体(MHC)タンパク質、および
(ii)R
1-COOHまたはその塩
を含み、
R
1が置換されているかまたは置換されていないヒドロカルビルである、組成物。
【請求項2】
前記ヒドロカルビルがC
2~C
21-ヒドロカルビル、好ましくは直鎖C
2~21-アルキル、分岐C
3~21-アルキル、直鎖C
2~21-アルケニル、分岐C
3~21-アルケニル、直鎖C
2~21-アルキニル、または分岐C
4~21-アルキニルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(i)前記直鎖C
2~21-アルキルが直鎖C
2~8-アルキルであり、
(ii)前記分岐C
3~21-アルキルが分岐C
3~8-アルキルであり、
(iii)前記直鎖C
2~21-アルケニルが直鎖C
2~8-アルケニルであり、
(iv)前記分岐C
3~21-アルケニルが分岐C
3~8-アルケニルであり、
(v)前記直鎖C
2~21-アルキニルが直鎖C
2~8-アルキニルであり、または
(vi)前記分岐C
4~21-アルキニルが分岐C
4~8-アルキニルである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
(i)前記直鎖C
2~21-アルケニルまたは前記分岐C
3~21-アルケニルにおいて、二重結合が前記ヒドロカルビルのC
1とC
2原子との間またはC
2とC
3原子との間にあり、および/または
(ii)前記直鎖C
2~21-アルキニルまたは前記分岐C
4~21-アルキニルにおいて、三重結合が前記ヒドロカルビルのC
1とC
2原子との間またはC
2とC
3原子との間にあり、および/または
(iii)前記ヒドロカルビルが、ハロゲン、特にF、Cl、もしくはBr;-OH;-O-R
4;=O;-NO
2;R
2およびR
3が独立してHおよびヒドロカルビルから選択される-NR
2R
3;ならびにR
4がHおよびヒドロカルビルから選択される-NH-R
4からなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換されており、および/または
(iv)前記C
2~21-アルキル-COOHが、プロパン酸、n-ブタン酸、イソ-ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸、好ましくはプロパン酸、n-ブタン酸、イソ-ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、およびノナン酸からなる群から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
(i)分岐C
3~21-アルキル-COOHが、イソブタン酸、イソペンタン酸、3-メチル-ペンタン酸、または4-メチル-ペンタン酸からなる群から選択され、および/または
(ii)C
2~21-アルケニル-COOHが、2-ヘキセン酸、3-ヘキセン酸、および5-ヘキセン酸からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(i)R
1-COOHの濃度が、約5mM~約100mM、約10mM~約80mM、約15mM~約70mM、約20mM~約60mM、約25mM~約50mM、約30mM~約40mM、約30mM~約35mMであり、および/または
(ii)前記組成物が水溶液であり、および/または
(iii)前記組成物のpHが、pH6~pH8、pH6~pH7.5、またはpH6.4~pH7.5の範囲であり、好ましくは、前記組成物が、ACES、ADA、BES、ビス-トリスプロパン、DIPSO、EPPS、HEPPSO、イミダゾール、MOBS、MES、ビス-トリス、MOPS、トリス、MOPSO、リン酸、PIPES、POPSO、TAPSO、TEA、TES、トリシン、またはHEPES緩衝液からなる群から選択される緩衝物質を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記R
1-COOHまたはその塩が、
(i)前記組成物中に含まれる前記MHCタンパク質を安定化し、および/または
(ii)前記組成物中に含まれる前記MHCタンパク質の融解温度を少なくとも0.5℃、1.0℃、1.5℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、または6.0℃上昇させる濃度で前記組成物中に含まれる、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記MHCが、MHCIまたはMHCII分子、好ましくはヒト白血球抗原(HLA)またはMHCI、MHCII、もしくはHLAの多量体、例えば、二量体、三量体、もしくは四量体である、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記MHCタンパク質が、好ましくは
(i)MHCIの場合、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインの1アミノ酸とアルファ2ドメインの1アミノ酸との間、および/または
(ii)MHCIの場合、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインの2つのアミノ酸の間、または
(iii)MHCIIの場合、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインまたはベータ1ドメインの2つのアミノ酸の間、および/または
(iv)MHCIIの場合、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインの1アミノ酸とベータ1ドメインの1アミノ酸との間
の1つまたは複数の共有結合によって安定化されている、請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記共有結合が、
(i)α-ヘリックスの間、好ましくはMHCIのIMGT84位のシステインとIMGT139位のシステインとの間、
(ii)MHCIのアルファ1ドメインのα-ヘリックスとβ-シートとの間、好ましくはMHCIのIMGT71位のシステインとIMGT22位のシステインとの間、
(iii)好ましくはMHCIの51位のアミノ酸およびMHCIの175位のアミノ酸をシステインに変異させることによって、α-ヘリックスの間、または
(iv)α-ヘリックスとβ-シートとの間、好ましくはMHCIのIMGT71位のシステインとMHCIのIMGT22位のシステインとの間、およびα-ヘリックスの間、好ましくはMHCIのIMGT51位のシステインとMHCIのIMGT175位のシステインとの間
にある、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
(i)前記MHCタンパク質が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、HLA-J、HLA-K、およびHLA-Lからなる群から選択され、好ましくはHLA-Aが、HLA-A1、HLA-A2、HLA-A3、およびHLA-A11、より好ましくはHLA-A
*02、さらにより好ましくはHLA-A
*02:01、HLA-A
*01:01、またはHLA-A
*03:01からなる群から選択され、好ましくはHLA-Bが、HLA-B
*07、HLA-B
*08、HLA-B
*15、HLA-B
*35、およびHLA-B
*44、より好ましくはHLA-B
*07:02、HLA-B
*08:01、HLA-B
*15:01、HLA-B
*35:01、およびHLA-B
*44:05からなる群から選択され、および/または
(ii)1つまたは複数のMHCタンパク質が複合体に含まれ、好ましくは、前記MHCタンパク質が、ビーズ、フィラメント、ナノ粒子、もしくはその他の担体に結合しており、および/または
(iii)前記組成物が、少なくとも1つのペプチド、好ましくは、グリシン-メチオニン(GM)、グリシン-チロシン(GY)、グリシン-ロイシン(GL)、およびグリシン-フェニルアラニン(GF)からなる群から選択されるローディングペプチドをさらに含み、より好ましくはローディングペプチドがGMである、請求項1~10に記載の組成物。
【請求項12】
前記MHCタンパク質が配列番号1および配列番号2を含むか、またはそれらからなる、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
MHCタンパク質を安定化するための、R
1が置換されているかまたは置換されていないヒドロカルビルであり、好ましくは、R
1はC
2~C
21-ヒドロカルビルである、R
1-COOHまたはその塩の使用。
【請求項14】
MHCタンパク質、好ましくはMHCIまたはMHCII、より好ましくはHLAを安定化するための方法であって、以下の工程:
(i)前記MHCタンパク質を含む溶液を提供する工程、
(ii)前記溶液をR
1-COOHまたはその塩と接触させる工程
を含み、
R
1が置換されているかまたは置換されていないヒドロカルビルであり、
好ましくは、
(1)R
1がC
2~C
21-ヒドロカルビルであり、および/または
(2)前記方法が、MHCにペプチド、好ましくはMHC-IもしくはMHC-IIペプチドをロードする工程をさらに含む、方法。
【請求項15】
(i)MHCタンパク質、および
(ii)R
1-COOHもしくはその塩、または
(iii)請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物、および
(iii)適宜ペプチド、好ましくはローディングペプチド、MHCIペプチドおよび/またはMHCIIペプチド
を含み、
R
1が置換されているかまたは置換されていないヒドロカルビルであり、好ましくはR
1がC
2~C
21-ヒドロカルビルである、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要組織適合複合体(MHC)タンパク質、およびR1-COOHまたはその塩を含む組成物に関する。本発明は、MHCタンパク質を安定化するための、R1-COOHまたはその塩の使用にさらに関する。本発明はまた、MHCタンパク質を安定化するための方法に関する。本発明はまた、MHCタンパク質、およびR1-COOHまたはその塩を含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
主要組織適合複合体(MHC)タンパク質クラスIまたはクラスIIは、病原体または内在性タンパク質から得られたペプチドリガンドを、細胞傷害性T細胞による認識のために、抗原提示細胞の細胞表面上に提示する(Rodenko B. et al.:“Generation of peptide-MHC class I complexes through UV-mediated ligand exchange”; Nature Protocols; vol. 1, no.: 3, 1120-1132; 2006)。ネオ抗原などの腫瘍関連ペプチドを提示するMHCクラスI複合体は、現在開発中のがん免疫療法アプローチの重要な標的であり、有効性および安全性スクリーニングのために重要となる。ペプチドリガンドがないと、MHCクラスI複合体は不安定ですぐに崩壊し、分析目的のための可溶性単量体の生産には多大な労力がかかる(Moritz A. et al.: “High-throughput peptide-MHC complex generation and kinetic screenings of TCRs with peptide-receptive HLA-A*02:01 molecules”; Science Immunology, 4, 2019)。MHC分子の安定化は、人工ジスルフィド架橋をMHCに導入することによって達成することができる(例えば、Moritz A.et al., 2019)。グリシンおよびメチオニンからなるジペプチドはさらに、例えば、ジペプチドの存在下でMHC分子をリフォールディングすることによって、MHC分子を安定化することができる(Anjanappa R. et al.; “Structures of peptide-free and partially loaded MHC class I molecules reveal mechanism of peptide selection”, Nature Communications; 11:13141; 2020)。それにも関わらず、例えば、ほんの数例を挙げると、生物学的応用またはハイスループットスクリーニングアッセイのために、空のMHC分子またはそれらの組成物を安定化することが依然として必要とされている。
【0003】
目的の技術的問題は、本明細書で提供される本発明によって解決される。以下に記載したように、本発明はとりわけ、(i)主要組織適合複合体(MHC)タンパク質、(ii)R1-COOHまたはその塩を含む組成物に関し、R1は置換されているかまたは置換されていないヒドロカルビルである。驚くべきことに、実施例において、R1-COOHまたはその塩がMHCタンパク質を安定化することが示された。様々な長さのR1-COOH(異なる数の炭素原子)がMHCタンパク質を安定化したことが示された。さらに、実施例で示したように、直鎖、分岐、飽和、および不飽和R1-COOHがHLA分子を安定化した。実施例は、安定化は異なるMHCタンパク質で観察されることをさらに立証した。さらに、予期せぬことに、R1-COOHは、グリシンおよびメチオニンからなるジペプチド「GM」に結合したMHCタンパク質をさらにもっと安定化したことが示された。
【0004】
R1-COOHまたはその塩は、通常研究室で容易に入手でき、上記のジペプチドと比較して安価である。したがって、本発明は、MHCタンパク質を安定化するための有利な手段およびその使用を提供する。本発明は特に、以下のさらなる利点を提供する:(i)目的のペプチドを容易にロードすることができるMHCタンパク質またはそれらの組成物、好ましくは、MHCタンパク質は、ペプチドを含んでいないか、または非常に短くて、容易に置き換わることが可能なペプチドがロードされている、(ii)MHCタンパク質またはそれらの組成物は、4℃で、または凍結して長期貯蔵しやすい、(iii)MHCタンパク質またはそれらの組成物は、T細胞、T細胞受容体(TCR)、またはTCR様リガンド、すなわち、ペプチド-MHC複合体を認識するリガンドのハイスループットスクリーニングに適している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本発明は、
(i)主要組織適合複合体(MHC)タンパク質、および
(ii)R1-COOHまたはその塩
を含む組成物に関し、R1は置換されているかまたは置換されていないヒドロカルビルである。
【0006】
第2の態様では、本発明は、MHCタンパク質を安定化するために、R1-COOHまたはその塩の使用にさらに関し、R1は置換されているかまたは置換されていないヒドロカルビルである。
【0007】
本発明の第3の態様は、MHCタンパク質を安定化するための方法であって、以下の工程:
(i)MHCタンパク質を含む溶液を提供する工程、
(ii)前記溶液をR1-COOHまたはその塩と接触させる工程
を含み、
R1が置換されているかまたは置換されていないヒドロカルビルである方法に関する。
【0008】
本発明の第4の態様は、
(i)MHCタンパク質、および
(ii)R1-COOHまたはその塩
を含むキットに関し、R1が置換されているかまたは置換されていないヒドロカルビルである。
【0009】
以下に、本明細書に含まれる図面の内容が記載されている。これに関連して、上記および/または下記の本発明の詳細な説明も参照すること。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】サーマルシフトアッセイ(TSA)によって測定されたHLA-A
*02:01_ds22-71の融点。表3で指定した33個の添加物および対照試料のデータ点がプロットされている。酪酸ナトリウムおよびGMジペプチド添加物の点が表示されている。
【
図2】TSAによって測定された、指示した脂肪酸添加物を含むHLA-A
*02:01_ds22-71の融点。値は、2回の測定値の平均である。
【
図3】TSAによって測定された、直鎖および分岐鎖脂肪酸50mMを添加したHLA-A
*02:01_ds22-71の融点。使用した化合物は:5C:吉草酸、イソ吉草酸;6C:ヘキサン酸、4-メチル-吉草酸である。値は、2回の測定値の平均である。
【
図4】TSAにおいて測定された、指示した脂肪酸添加物50mMを含むHLA-A
*02:01_ds22-71の融点。値は、2回の測定値の平均である。
【
図5】TSAにおいて測定された、指示した脂肪酸添加物を含むHLA-A
*02:01_ds22-71またはHLA-A
*02:01_ds84-139の融点。値は、2回の測定値の平均である。
【
図6】パネルAは、HLA
*A02:01 ds22-71の融解曲線を示す。TLAによって測定された、温度勾配における蛍光の変化が示されている。脂肪酸およびGly-Met(GM)ジペプチド添加剤は、図自体の凡例に指示した試料中に含まれていた。示したデータは、3回の測定値の平均である。パネルBは、Aにおけるように測定されたHLA
*A02:01 ds39-184の融解曲線を示す。パネルCは、パネルAおよびBで示したデータから得られたHLA-A
*02:01_ds22-71またはHLA-A
*02:01_ds84-139の融点の表である。
【
図7】パネルAは、TSAにおいて測定された、指示した脂肪酸およびジペプチド添加物を含むHLA-A
*02:01_ds22-71の融点を示す。パネルBは、HLA-A
*02:01_ds84-139および指示したジペプチド添加物の融点を示す。値は、3回の測定値の平均である。
【
図8】TSAにおいて測定された、図の下に指示したpHの最終濃度100mMの緩衝液を添加したHLA-A
*02:01_ds22-71の融点。吉草酸50mMを添加した場合および添加しない場合の並行実験を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
配列のリスト
【0012】
【0013】
本発明を以下に詳細に説明する前に、本明細書で記載した特定の方法、手順、および試薬は変化し得るので、本発明はそれらに限定されるものではないことを理解されたい。本明細書で使用した用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されたい。別段の定義がない限り、本明細書で使用した技術用語および科学用語は全て、当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0014】
本明細書の本文全体を通じて、いくつかの文書が引用されている。本明細書で引用した文書(特許、特許出願、科学刊行物、製造業者の仕様書、説明書など全てを含む)のそれぞれは、上記または下記に関わらず、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる部分も、先行発明を理由に、本発明がこのような開示に先行する権利がないことの承認として解釈されるべきではない。本明細書で引用した文書の一部は、「参照により組み込まれる」ものとして特徴付けられている。このような組み込まれた参考文献の定義または教示と本明細書に列挙されている定義または教示との間に矛盾がある場合には、本明細書の本文が優先する。
【0015】
以下では、本発明の要素を記載する。これらの要素は、特定の実施形態と共に列挙されているが、追加的な実施形態を作成するために、任意の方法および任意の数で組み合わせることができることを理解されたい。様々に記載された実施例および好ましい実施形態は、本発明を明示的に記載した実施形態のみに限定するものと解釈されるべきではない。この記載は、明示的に記載した実施形態と任意の数の開示されたおよび/または好ましい要素とを組み合わせた実施形態を支持して包含するものと理解されるべきである。さらに、本出願に記載されている全要素の任意の順列および組合せは、文脈が別段の指示をしない限り、本出願の説明によって開示されているとみなされるべきである。
【0016】
定義
本発明を実行するために、別段の指示のない限り、この分野の文献で説明されている化学、生化学、および組換えDNA技術の従来の方法が使用される(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, J. Sambrook et al. eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor 1989を参照のこと)。
【0017】
以下では、本出願で頻繁に使用される用語のいくつかの定義が示されている。これらの用語は、本出願の残りの部分において、その使用の場合それぞれにおいて、それぞれ定義された意味および好ましい意味を有することになる。
【0018】
本出願および添付した特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」には、内容で明確に指示がない限り、複数の指示対象が含まれる。
【0019】
「約」という用語は、本発明の文脈において、および特定の記載した数値を参照して使用される場合、ある値を意味し、その値が記載した値から10%以下、9.5%以下、9.0%、8.5%、8.0%、7.5%、7.0%、6.5%、6.0%、5%以下、4.5%以下、4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%、1.5%、1.0%、または0.5%変化していてもよいことを意味する。例えば、本明細書で使用したように、「約100」という表現は、95および105およびその間の全ての値(例えば、95.0、95.5、96.0、96.5、97.0、97.5、98.0、98.5、99.0、99.5、100.5、101.0、101.5、102.0、102.5、103.0、103.5、104.0、104.5、および105.0)を含む。
【0020】
用語「主要組織適合複合体」または「MHCタンパク質」または「MHC分子」または「MHC」は、本発明の文脈では交換可能に使用されており、一連の細胞表面タンパク質、すなわち、脊椎動物において変化した天然または外来タンパク質に対する獲得免疫の確立において必須の役割を有し、組織内の組織適合性を決定する細胞表面受容体を意味する。MHC分子の主な機能は、変化したタンパク質または病原体由来の抗原に結合し、適切なT細胞による認識のためにそれらの抗原を細胞表面に提示することである。ヒトMHCはまた、HLA(ヒト白血球抗原)複合体またはHLAと呼ばれる。MHC遺伝子ファミリーは、3つの亜群:クラスI、クラスII、およびクラスIIIに分かれる。ペプチドおよびMHCクラスIの複合体は、適切なTCRを有するCD8陽性T細胞によって認識され、一方ペプチドおよびMHCクラスII分子の複合体は、適切なTCRを有するCD4陽性ヘルパーT細胞によって認識される。CD8およびCD4依存性の両方の種類の応答は、T細胞依存性免疫、例えば、抗腫瘍効果に共同して相乗的に寄与し、したがって、特定のMCH-ペプチド複合体に結合するT細胞、またはそれらから単離された、もしくは得られたTCRの同定および特徴付けは、T細胞またはTCRをベースにした免疫療法の開発において重要である。本発明の文脈で使用した「MHCタンパク質」という用語は、完全長MHCおよびそれらのペプチド結合断片の両方を意味する。
【0021】
「MHC-I」という用語は、本発明の文脈では、MHCクラスI分子またはMHC-Iタンパク質およびそれらのペプチド結合断片を意味する。MHCI分子は、MHCI重鎖とも称されるアルファ鎖およびベータ2ミクログロブリン分子を構成するベータ鎖からなる。アルファ鎖は、3つのアルファドメイン、すなわち、アルファ1ドメイン、アルファ2ドメイン、およびアルファ3ドメインを含む。アルファ1および2ドメインは主に、ペプチドリガンドMHC(pMHC)複合体を生成するためのペプチドポケットの形成に寄与する。MHC-Iは通常、細胞質抗原タンパク質から得られ、ユビキチン化後にプロテアソームによって分解され、その後抗原プロセシング(TAP)に関連した特定の輸送体によって細胞質から小胞体(ER)に輸送されるペプチドに結合する。MHCIは通常、8~12アミノ酸長のペプチドに結合する。
【0022】
「MHC-II」という用語は、本発明の文脈では、MHCクラスII分子またはMHC-IIタンパク質およびそれらのペプチド結合断片を意味する。MHC-II分子はアルファ鎖およびベータ鎖からなり、アルファ鎖は2個のアルファドメイン、アルファ1ドメイン、アルファ2ドメインを含み、ベータ鎖は2個のベータドメイン、ベータ1ドメインおよびベータ2ドメインを含む。MHCIIは通常、ER内でインバリアント鎖と呼ばれるタンパク質と複合体を形成してフォールドされ、その後後期エンドソーム区画に輸送され、そこでインバリアント鎖はカテプシンプロテアーゼによって切断され、短い断片がMHCIIのペプチド結合溝に結合したままになり、クラスII関連インバリアント鎖ペプチド(CLIP)と呼ばれる。次に、このプレースホルダーペプチドは通常、エンドサイトーシス区画で利用可能なタンパク質分解されたタンパク質から得られる、より親和性の高いペプチドと交換される。MHC-IIは通常、10~30アミノ酸長のペプチドまたは13~25アミノ酸長のペプチドに結合する。
【0023】
「HLA」という用語は、本発明の文脈では、異なるヒトの間でアミノ酸配列が異なるヒトMHC分子を意味する。しかし、HLAは、HLAの国際的に承認された命名法、IMGT命名法によって特定され得る。例えば、HLA-Aへの分類は、配列アラインメントによって作成された各HLAの公式参照配列に対する所与のHLAの同一性に基づいている。公式HLA参照配列および分類システムについての情報は入手可能である:www.ebi.ac.uk/ipd/imgt/hla/nomenclature/alignments.html。このウェブサイトは、任意の所与のHLA配列の分類方法に関する以下の情報を提供している:「作成されたアラインメントファイルは、以下の命名法および番号付け規則を使用する。これらの規則は、ヒト遺伝子変異について発表された推奨事項に基づいている。これらは、ヒト対立遺伝子変異体の配列に名前を付けて保存する方法を検討している命名法作業部会によって準備された。これらの推奨事項は、Antonarakis SE and the Nomenclature Working Group Recommendations for a Nomenclature System for Human Gene Mutations Human Mutation (1998) 11 1-3において見出すことができる」。したがって、本発明の文脈で使用したHLAという用語は、天然に生じるHLAタンパク質および改変HLAタンパク質全てを意味する。HLA-A遺伝子は6番染色体の短腕に位置し、HLA-Aのより大きなα鎖構成要素をコードしている。HLA-Aのα鎖の変動はHLA機能にとって重要である。この変動は、集団における遺伝的多様性を促進する。各HLAはある特定の構造のペプチドに異なる親和性を有するので、HLAの種類が多ければ多いほど、細胞表面に「提示される」抗原の種類が多いことを意味する。各個体は、両親から1つずつ、最高2つのタイプのHLA-Aを発現することができる。一部の個体は、両親から同じHLA-Aを受け継ぎ、個体のHLA多様性が低下している。しかし、大多数の個体はHLA-Aの2つの異なるコピーを受け取る。同じパターンが全HLA群に当てはまる。言い換えると、一人一人は、現在活性のある1740個のタンパク質をコードする2432個の公知のHLA-A対立遺伝子のうちの1つまたは2つしか発現することができない。HLA-A*02は、特定のHLA対立遺伝子を表し、文字Aは、対立遺伝子が属するHLA遺伝子を表し、接頭辞「*02接頭辞」はA2血清型を指示する。MHCクラスI依存性免疫反応では、ペプチドは、標的細胞、例えば、腫瘍細胞によって発現されたある特定のMHCクラスI分子に結合しなければならないだけでなく、その後、特定のTCRを有するT細胞によって認識されなければならない。MHCクラスI依存性免疫反応では、ペプチドは、腫瘍細胞によって発現されたある特定のMHCクラスI分子に結合しなければならないだけでなく、その後、特定のT細胞受容体(TCR)を有するT細胞によって認識されなければならない。
【0024】
本発明の文脈で使用した用語「MHCタンパク質のペプチド結合断片」は、MHC分子またはHLA分子よりもアミノ酸長が短く、MHCタンパク質またはHLA分子のペプチドに結合する生物学的活性を保持している、MHCタンパク質またはHLAタンパク質またはHLA分子の一部である。MHCタンパク質のペプチド結合断片は通常、Nおよび/またはC末端欠失、好ましくは、MHCの膜貫通ドメインの全部または一部を欠失しているC末端欠失を含む。後者は、発現のときに細胞の膜に挿入されないので、「可溶性MHCタンパク質」とも呼ばれる。MHCタンパク質のペプチド結合断片は、同じ条件下で、それぞれのペプチドに結合する元のMHCタンパク質と同じまたは本質的に同じ能力を有する。あるいは、または追加的に、MHCタンパク質のペプチド結合断片は、1つまたは複数の非保存的アミノ酸置換を含むそれぞれのMHCタンパク質のアミノ酸配列を含むことができる。この場合、非保存的アミノ酸置換は、MHCタンパク質のペプチド結合断片がペプチドに結合する能力を妨害したり阻害したりしないことが好ましい。
【0025】
用語「ペプチド」とは、本発明の文脈では、2~26アミノ酸長のポリペプチドを意味する。MHCタンパク質に結合する予定であるか、またはMHCタンパク質に結合しており機能的なペプチド-MHC複合体を形成するペプチドは通常、MHCがタイプIの場合、8~12アミノ酸長であり(「MHC-Iペプチド」とも呼ばれる)、MHCがタイプIIの場合、13~25アミノ酸長である(MHC-IIペプチドとも呼ばれる)。長さがより短い、例えば、2~7アミノ酸のペプチドはまた、フォールドされたMHC-IまたはMHC-IIに結合することができ、予めロードしたMHCIまたはIIが適切な長さのペプチド、すなわち、MHC-IペプチドまたはMHC-IIペプチドと接触した場合、容易に置き換わることができる(これらのより短いペプチドは「ローディングペプチド」とも呼ばれる)。ローディングペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含むことができ、7個より多いアミノ酸は含まない。ローディングペプチドの例は、グリシン-メチオニン(GM)、グリシン-チロシン(GY)、グリシン-ロイシン(GL)、またはグリシン-フェニルアラニン(GF)である。ペプチドがMHC-I分子またはMHC-II分子に結合するかどうかは、ペプチドの天然起源によって、すなわち、細胞質で合成されて、プロテアソームでプロセシングされるか、またはエンドサイトーシスによって吸収された後にプロセシングされるかによって左右される。さらに、MHC-IまたはMHC-II分子の結合溝に結合するかどうかは、ペプチドの長さによって左右される。
【0026】
本発明の文脈で使用した用語「ローディング」とは、ローディングペプチド、MHC-Iペプチド、またはMHC-IIペプチドがMHCタンパク質と接触して、ペプチドがMHCタンパク質に結合できるようにすることを意味する。ペプチドのMHCタンパク質への結合は、水素結合の形成を含む、非共有結合による結合を意味する。
【0027】
本発明の文脈で使用した用語「ヒドロカルビル」とは、炭素および水素原子だけからなる有機分子を意味し、用語「ヒドロカルビル」における「-イル」は、1個の水素が除去されて別の基に置き換わった、炭素および水素原子のみからなる1価の基を意味する。このような基はまた、「ラジカル」と呼ばれる。ヒドロカルビルの一例は、エチル、-CH2-CH3などのアルキルである。
【0028】
ヒドロカルビルは、分岐または非分岐であってもよく、飽和または不飽和であってもよく、すなわち、分岐飽和、分岐不飽和、非分岐飽和、および非分岐不飽和であってもよい。ヒドロカルビルは置換されていなくても置換されていてもよい。後者の場合、炭素および水素以外の原子は、ヒドロカルビルの炭素原子の1つまたは複数に共有的に結合している。炭素原子に共有的に結合することができる好ましい原子は、ハロゲン、特にF、Cl、またはBr;-OH;-O-R4;=O;-NO2;R2およびR3が独立してHおよびヒドロカルビルから選択される-NR2R3;R4がHおよびヒドロカルビルから選択される-N-R4である。
【0029】
本発明の文脈で使用した用語「塩」は、ヒドロカルビル-COOHのイオン性塩、特にカルボン酸と塩基との反応によって形成され、陽イオン、および陰イオンとして負に荷電したカルボキシ基を含むカルボン酸のイオン性塩に関する。カルボン酸のイオン性塩から構成される典型的な陽イオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムまたはフランシウム、マグネシウム、カルシウムまたはアルミニウムである。
【0030】
本発明の文脈で使用した用語「緩衝物質」は、酸性を維持するために使用した弱酸または塩基に関し、すなわち、溶液、懸濁液および/またはエマルジョンのpH値は、別の酸または塩基の添加後に選択された値に近づく。緩衝物質の機能は、酸または塩基を溶液、懸濁液、またはエマルジョンに添加したとき、pH値の急速な変化を防ぐことである。水溶液、懸濁液および/またはエマルジョンにおいて、緩衝は弱酸およびその共役塩基の混合物または弱塩基およびその共役酸の混合物中に存在している。緩衝物質の例は、限定はしないが以下:炭酸水素ナトリウム、酢酸もしくは酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム、酢酸亜鉛)、ホウ酸もしくはホウ酸塩、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)もしくはその塩、3-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]プロパン-1-スルホン酸(TAPS)もしくはその塩、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)およびその塩、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸(PIPES)およびその塩、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタン-スルホン酸(ACES)およびその塩、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸、N-(カルバモイルメチル)イミノ二酢酸(ADA)およびその塩、コラミン塩酸、N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]-2-アミノエタンスルホン酸(BES)およびその塩、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-トリス(ヒドロキシメチル)メタン(ビストリス)およびその塩、2,2’-(プロパン-1,3-ジイルジイミノ)ビス[2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール](ビス-トリスプロパン)およびその塩、-N-ビス-(ヒドロキシエチル)-アミノ-2-ヒドロキシ-プロパンスルホン酸(DIPSO)およびその塩、N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-3-プロパンプロパンスルホン酸(HEPPSもしくはEPPS)およびその塩、N-(ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(HEPPSO)およびその塩、[2-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-プロパン-2-イル]アミノ]エタンスルホン酸(TES)およびその塩、2 2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタン-1-スルホン酸(HEPES)およびその塩、アセトアミドグリシン、N-[2-ヒドロキシ-1、1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]グリシン(トリシン)、グリシンアミド、2-(ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸(ビシン)およびその塩、プロピオン酸塩、3-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]-アミノ]-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸(TAPSO)およびその塩、2,2’,2’’-トリヒドロキシトリエチルアミン(TEA)およびその塩、3-モルホリノプロパン-1-スルホン酸(MOPS)およびその塩、2-ヒドロキシ-3-(モルホリン-4-イル)プロパン-1-スルホン酸(MOPSO)およびその塩、ピペラジン-N,N’-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(POPSO)およびその塩、サリン-クエン酸ナトリウム(SSC)緩衝液、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-プロパン-1,3-ジオール(異名:トリス、トリスアミン、THAM、トロメタミン、トロメタモール、トロメタン)、イミダゾール、クエン酸もしくはクエン酸塩、例えば、クエン酸ナトリウム)、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸二カリウム、リン酸一カリウムおよび/または任意のその他のリン酸含有緩衝物質、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。アミノ酸(遊離の塩基性または酸性官能基、例えば、メチオニン、アルギニンを有する)、ペプチド、またはタンパク質(遊離の塩基性または酸性官能基を有する)も緩衝物質として使用され得る。
【0031】
実施形態
以下では、本発明の異なる態様をより詳細に明示する。このように明示した各態様は、明確に反対の指示がない限り、任意の他の態様または態様類と組み合わせることができる。特に、好ましいかまたは有利であることが示された特徴は、好ましいかまたは有利であることが示された他の特徴または特徴類と組み合わせることができる。
【0032】
第1の態様では、本発明は、
(i)主要組織適合複合体(MHC)タンパク質、および
(ii)R1-COOHまたはその塩
を含み、
R1が置換されているかまたは置換されていないヒドロカルビルである組成物に関する。
【0033】
本発明の第1の態様の一実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOH、すなわち、カルボキシル基で置換されたヒドロカルビル残基を含み、R1は置換されていない。一実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOH、すなわち、カルボキシル基で置換されたヒドロカルビル残基を含み、R1は置換されている。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、R1が置換されているR1-COOH、およびローディングペプチド、前記MHCタンパク質に結合したMHC-Iペプチドおよび/またはMHC-IIペプチドを含む。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、R1が置換されていないR1-COOH、およびローディングペプチド、前記MHCに結合したMHC-Iペプチドおよび/またはMHC-IIペプチドを含む。
【0034】
分子「R1-COOH」は、カルボン酸部分または基によって置換されているヒドロカルビル残基(R1)を含み、すなわち、ヒドロカルビルの1水素原子がカルボキシル基、すなわち、-COOHに置き換わっている。したがって、炭化水素基はカルボキシル基に1価で結合している。一実施形態では、R1は、カルボキシ基に結合した飽和分岐および直鎖炭化水素、すなわち、アルキル基、ならびにアルケニルまたはアルキニル基などの分岐および直鎖不飽和炭化水素を含んでもよい。R1は、水素原子を除去することによってヒドロカルビルの1個または複数の炭素原子でさらに置換されていてもよい。R1が置換されている場合、R1はハロゲン、特に、F、Cl、Br、またはI;-OH;-O-R4;=O;-NO2;R2およびR3がHおよびヒドロカルビルから独立して選択される-NR2R3;ならびにR4がHおよびヒドロカルビルから選択される-N-R4で置換されていることが好ましい。特に適切な置換基は、ハロゲン、例えば、F、Cl、またはBrである。R1-COOHはまた、塩、すなわち、カルボン酸基R1-COO-Me+のイオン性塩であってもよく、Me+は陽イオン、特にアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、NH4
+、またはホウ素族の金属イオンである。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質およびリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、またはアルミニウムからなる群から選択されるR1-COOHの塩を含む。より好ましくは、R1-COOHの塩はナトリウム塩である。
【0035】
本発明の第1の態様の一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質およびR1がC2~C21-ヒドロカルビルであるR1-COOHを含む。一実施形態では、R1は直鎖C2~C21-アルキルである。別の実施形態では、R1は分岐C3~21-アルキルである。別の実施形態では、R1は直鎖C2~21-アルケニルである。別の実施形態では、R1は分岐C3~21-アルケニルである。別の実施形態では、R1は直鎖C2~21-アルキニルである。別の実施形態では、R1は分岐C4~21-アルキニルである。R1は直鎖C2~C21-アルキルであることが好ましい。別の好ましい実施形態では、R1は分岐C3~21-アルキルである。別の好ましい実施形態では、R1は直鎖C2~21-アルケニルである。別の好ましい実施形態では、R1は分岐C3~21-アルケニルである。
【0036】
本発明の第1の態様の一実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1は直鎖C2~21-アルキル、好ましくはR1は直鎖C2~8-アルキルまたはC2~7-アルキル、より好ましくはR1は直鎖C2~7-アルキルであるか、またはR1はC3~7-アルキルであり、さらにより好ましくはR1は直鎖C4~6-アルキルである。別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1は直鎖C2~21-アルキルであり、好ましくはエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルからなる群から選択される。より好ましくは、R1はブチル、ペンチル、またはヘキシルからなる群から選択される直鎖C2~21-アルキルである。さらにより好ましくは、組成物はMHCおよびR1-COOHを含み、R1は直鎖C2~21-アルキル、ペンチルである。それぞれの場合において、直鎖C2~21-アルキル、好ましくは直鎖C2~8-アルキルまたはC2~7-アルキル、より好ましくは直鎖C2~7-アルキルまたはC3~7-アルキル、さらにより好ましくは直鎖C4~6-アルキルは、置換されていなくても置換されていてもよく、好ましくは置換されていなくてもよい。
【0037】
別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1は分岐C3~21-アルキルであり、好ましくはR1は分岐C3~8-アルキルであり、より好ましくはR1は分岐C3~7-アルキルであり、より好ましくはR1は分岐C4~6-アルキルである。一実施形態では、R1はイソ-プロピル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、1-メチル-ブチル、2-メチル-ブチル、3-メチル(thly)-ブチル、1,1-ジメチル-プロピル、2,2-ジメチル-プロピル、1-エチル-プロピル、1-メチル-ペンチル、2-メチル-ペンチル、3-メチル-ペンチル、4-メチル-ペンチル、1,1-ジメチル-ブチル、1,2-ジメチル-ブチル、1,3-ジメチル-ブチル、2,2-ジメチル-ブチル、2,3-ジメチル-ブチル、3,3-ジメチル-ブチル、1-エチル-ブチル、2-エチル-ブチル、1,1,2-トリメチル-プロピル、1,2,2、トリメチル-プロピル、1-エチル-2-メチル-プロピル、1-メチル-ヘキシル、2-メチル-ヘキシル、3-メチル-ヘキシル、4-メチル-ヘキシル、5-メチル-ヘキシル、1,1-ジメチル-ペンチル、1,2-ジメチル-ペンチル、1,3-ジメチル-ペンチル、1,4-ジメチル-ペンチル、2,2-ジメチル-ペンチル、2,3-ジメチル-ペンチル、2,4-ジメチル-ペンチル、3,3-ジメチル-ペンチル、3,4-ジメチル-ペンチル、1-エチル-ペンチル、2-エチル-ペンチル、3-エチル-ペンチル、1,1,2-トリメチル-ブチル、1,1,3-トリメチル-ブチル、1,2,3-トリメチル-ブチル、1,2,2-トリメチル-ブチル、2,2,3-トリメチル-ブチル、1-メチル-1-エチル-ブチル、1-エチル-2-メチル-ブチル、1-エチル-3-メチル-ブチル、1-メチル-2-エチル-ブチル、2-メチル-2-エチル-ブチル、1-プロピル(propy)-ブチル、1-メチル-ヘプチル、2-メチル-ヘプチル、3-メチル-ヘプチル、4-メチル-ヘプチル、5-メチル-ヘプチル、6-メチル-ヘプチル、1,1-ジメチル-ヘキシル、1,2-ジメチル-ヘキシル、1,3-ジメチル-ヘキシル、1,4-ジメチル-ヘキシル、1,5-ジメチル-ヘキシル、2,2-ジメチル-ヘキシル、2,3-ジメチル-ヘキシル、2,4-ジメチル-ヘキシル、2,5-ジメチル-ヘキシル、3,3-ジメチル-ヘキシル、3,4-ジメチル-ヘキシル、3,5-ジメチル-ヘキシル、4,4-ジメチル-ヘキシル、4,5-ジメチル-ヘキシル、5,5-ジメチル-ヘキシル、1-エチル-ヘキシル、2-エチル-ヘキシル、3-エチル-ヘキシルまたは4-エチル-ヘキシルからなる群から選択される。それぞれの場合において、分岐C3~21-アルキル、好ましくは分岐C3~7-アルキル、より好ましくは分岐C4~6-アルキルは、置換されていなくても置換されていてもよく、好ましくは置換されていなくてもよい。R1は分岐C4-アルキルまたは分岐C5-アルキルであることが特に好ましい。
【0038】
別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1は直鎖C2~21-アルケニルであり、好ましくはR1は直鎖C2~8-アルケニルまたは直鎖C2~7であり、より好ましくはR1は直鎖C3~7-アルケニルであり、最も好ましくはR1は直鎖C4~6-アルケニルである。一実施形態では、R1は、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、1-ヘプテニル、4-ヘプテニル、5-ヘプテニル、6-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、3-オクテニル、4-オクテニル、5-オクテニル、6-オクテニル、または7-オクテニルからなる群から選択される。それぞれの場合において、直鎖C2~21-アルケニル、好ましくは直鎖C2~8-アルケニルまたは直鎖C2-7、より好ましくは直鎖C3~7-アルケニル、最も好ましくはC4~6-アルケニルは、置換されていなくても置換されていてもよく、好ましくは置換されていなくてもよい。
【0039】
別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1は分岐C3~21-アルケニルであり、好ましくはR1は分岐C3~8-アルケニルであり、より好ましくはR1は分岐C3~7-アルケニルであり、最も好ましくはR1は分岐C4~6-アルケニルである。一実施形態では、R1は1-メチル-エテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル、または1-エチル-2-メチル-2-プロペニルからなる群から選択される。それぞれの場合において、分岐C3~21-アルケニル、好ましくは分岐C3~8-アルケニル、より好ましくは分岐C3~7-アルケニル、最も好ましくはC4~6-アルケニルは、置換されていなくても置換されていてもよく、好ましくは置換されていなくてもよい。
【0040】
一実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1は直鎖C2~21-アルキニルであり、好ましくはR1は直鎖C2~8-アルキニルまたは直鎖C2~7-アルキニルであり、より好ましくはR1は直鎖C3~7-アルキニルであり、最も好ましくはR1が直鎖C4~6-アルキニルである。一実施形態では、R1は、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、5-ヘキシニル、1-ヘプチニル、2-ヘプチニル、1-ヘプチニル、4-ヘプチニル、5-ヘプチニル、5-ヘプチニル、6-ヘプチニル、1-オクチニル、2-オクチニル、3-オクチニル、4-オクテニル、5-オクチニル、6-オクチニル、または7-オクチニルからなる群から選択される。それぞれの場合において、直鎖C2~21-アルキニル、好ましくは直鎖C2~8-アルキニルまたは直鎖C2~7-アルキニル、より好ましくは直鎖C3~7-アルキニル、最も好ましくは直鎖C4~6-アルキニルは、置換されていなくても置換されていてもよく、好ましくは置換されていなくてもよい。
【0041】
一実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1は分岐C4~21-アルキニルであり、好ましくはR1は分岐C4~8-アルキニルであり、より好ましくはR1は分岐C4~7-アルキニルであり、最も好ましくはR1は分岐C4~6-アルキニルである。一実施形態では、R1は、1-メチル-2-プロピニル、1-メチル-2-ブチニル、1-メチル-3-ブチニル、2-メチル-3-ブチニル、3-メチル-1-ブチニル、1,1-ジメチル-2-プロピニル、1-エチル-2-プロピニル、1-メチル-2-ペンチニル、1-メチル-3-ペンチニル、1-メチル-4-ペンチニル、2-メチル-3-ペンチニル、2-メチル-4-ペンチニル、3-メチル-1-ペンチニル、3-メチル-4-ペンチニル、4-メチル-1-ペンチニル、4-メチル-2-ペンチニル、1,1-ジメチル-2-ブチニル、1,1-ジメチル-3-ブチニル、1,2-ジメチル-3-ブチニル、2,2-ジメチル-3-ブチニル、3,3-ジメチル-1-ブチニル、1-エチル-2-ブチニル、1-エチル-3-ブチニル、2-エチル-3-ブチニル、または1-エチル-1-メチル-2-プロピニルからなる群から選択される。それぞれの場合において、分岐C4~21-アルキニル、好ましくは直鎖C4~8-アルキニル、より好ましくは分岐C4~7-アルキニル、最も好ましくは分岐C4~6-アルキニルは、置換されていなくても置換されていてもよく、好ましくは置換されていなくてもよい。
【0042】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1はヒドロカルビルであり、二重もしくは三重結合はヒドロカルビルのC1とC2原子との間、または二重もしくは三重結合はC2とC3原子との間にある(番号付けは、COOH基に結合したヒドロカルビルの炭素に対する)。
【0043】
好ましい例は、直鎖C2~21-1-アルケニル、好ましくは直鎖C2~8-1-アルケニルもしくは直鎖C2~7-アルケニル、より好ましくは直鎖C3~7-1-アルケニル、最も好ましくはC4~6-1-アルケニル、またはC2~21-2-アルケニル、好ましくは直鎖C2~8-2-アルケニルもしくは直鎖C2~7-2-アルケニル、より好ましくは直鎖C3~7-2-アルケニル、最も好ましくは直鎖C4~6-2-アルケニルである。
【0044】
好ましい例は、分岐C3~21-1-アルケニル、好ましくは分岐C3~8-1-アルケニル、より好ましくは分岐C3~7-1-アルケニル、最も好ましくは分岐C4~6-1-アルケニル、または分岐C3~21-2-アルケニル、好ましくは分岐C3~8-2-アルケニル、より好ましくは分岐C3~7-2-アルケニル、最も好ましくは分岐C4~6-2-アルケニルである。
【0045】
好ましい例は、直鎖C2~21-1-アキニル、好ましくは直鎖C2~8-1-アルキニルもしくは直鎖C2~7-1-アルキニル、より好ましくは直鎖C3~7-1-アルキニル、最も好ましくはC4~6-1-アルキニル、または直鎖C2~21-2-アルキニル、好ましくは直鎖C2~8-2-アルキニルもしくは直鎖C2~7-2-アルキニル、より好ましくは直鎖C3~7-2-アルキニル、最も好ましくは直鎖C4~6-2-アルキニルである。
【0046】
好ましい例は、分岐C3~21-1-アルキニル、好ましくは分岐C3~8-1-アルキニル、より好ましくは分岐C3~7-1-アルキニル、最も好ましくは分岐C4~6-1-アルキニル、または分岐C3~21-2-アルキニル、好ましくは分岐C3~8-2-アルキニル、より好ましくは分岐C3~7-2-アルキニル、最も好ましくは分岐C4~6-2-アルキニルである。
【0047】
したがって、特に好ましい直鎖アルケニルは、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、1-ノネイル(noneyl)、および2-ノネニルである。したがって、好ましい分岐アルケニルは、基本鎖として1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、1-オクテニル、および2-オクテニル、ならびにメチル、エチル、またはプロピル分岐を含む。したがって、好ましい直鎖アルキニルは、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、1-ヘプチニル、2-ヘプチニル、1-オクチニル、2-オクチニル、1-ノニニル、および2-ノニニルである。したがって、好ましい分岐アルキニルは、基本鎖として1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、1-ヘプチニル、2-ヘプチニル、1-オクチニル、および2-オクチニル、ならびにメチル、エチル、またはプロピル分岐を含む。それぞれの場合において、直鎖アルキニル、好ましくは直鎖C2~8-アルキニル、直鎖C2~7-アルキニル、より好ましくは直鎖C3~7-アルキニル、最も好ましくは直鎖C4~6-アルキニルは、置換されていなくても置換されていてもよく、好ましくは置換されていなくてもよい。
【0048】
一実施形態では、組成物はMHCタンパク質ならびにR1-COOHを含み、R1はヒドロカルビルであり、ヒドロカルビルはハロゲン、特に、F、Cl、Br、またはI;-OH;-O-R4;=O;-NO2;R2およびR3がHおよびヒドロカルビルから独立して選択される-NR2R3;ならびにR4がHおよびヒドロカルビルから選択される-NH-R4から選択される1つまたは複数の置換基で置換されている。特に適切な置換基は、ハロゲン、例えば、F、Cl、またはBrである。一実施形態では、組成物はMHCタンパク質ならびにR1-COOHを含み、R1はヒドロカルビルであり、二重または三重結合はヒドロカルビルのC1とC2原子またはC2とC3原子との間にあり、ヒドロカルビルはハロゲン、特に、F、Cl、Br、またはI;-OH;-O-R4;=O;-NO2;R2およびR3がHおよびヒドロカルビルから独立して選択される-NR2R3;ならびにR4がHおよびヒドロカルビルから選択される-NH-R4から選択される1つまたは複数の置換基で置換されている。特に適切な置換基は、ハロゲン、例えば、F、Cl、またはBrである。好ましい一実施形態では、R2およびR3がHである場合、-NR2R3はC1炭素原子に結合していない(ヒドロカルビルにおける炭素原子の番号付けはCOOH基に結合したヒドロカルビルの最初の炭素に対する)、すなわち、R1-COOHはα-アミノ酸ではないことが好ましい。好ましい一実施形態では、ヒドロカルビルは、ハロゲン、特に、F、Cl、Br、またはI;-OH;-O-R4;=O;-NO2;R2およびR3がヒドロカルビルから独立して選択される-NR2R3;ならびにR4がヒドロカルビルである-NH-R4から選択される1つまたは複数の置換基で置換されている。好ましい一実施形態では、ヒドロカルビルは、ハロゲン、特に、F、Cl、Br、またはI;-OH;-O-R4;=O;-NO2;R2およびR3がヒドロカルビルから独立して選択される-NR2R3;ならびにR4がヒドロカルビルである-NH-R4から選択される1つまたは複数の置換基で置換されている。好ましくは、R2、R3、およびR4はC1~8-アルキルから互いに独立して選択される。
【0049】
好ましい一実施形態では、R1-COOHまたはその塩は、モノ-カルボン酸である。
【0050】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1-COOHは、脂肪酸、好ましくは天然に存在する脂肪酸である。より好ましくは、脂肪酸は3~9個の炭素原子を含む。さらにより好ましくは、脂肪酸は3~8または4~8個の炭素原子を含む。最も好ましくは、脂肪酸は5~7個の炭素原子を含む。
【0051】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1-COOHは、C3~21-アルキル、好ましくはプロパン酸、n-ブタン酸、イソ-ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、またはドコサン酸からなる群から選択されるC2~21-アルキル-COOHである。好ましい実施形態では、組成物は、MHCタンパク質ならびにプロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、およびノナン酸からなる群から選択されるC2~21-アルキル-COOHを含む。さらにより好ましい実施形態では、組成物は、MHCタンパク質ならびにプロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、およびオクタン酸からなる群から選択されるC2~21-アルキル-COOHを含む。さらにより好ましい実施形態では、組成物は、MHCタンパク質およびペンタン酸、ヘキサン酸、またはヘプタン酸を含む。
【0052】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1-COOHは、イソブタン酸、イソペンタン酸、3-メチル-ペンタン酸、および4-メチル-ペンタン酸からなる群から選択される分岐C3~21-アルキル-COOHである。好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1-COOHは、イソブタン酸、イソペンタン酸、および4-メチル-ペンタン酸からなる群から選択される分岐C3~21-アルキル-COOHである。さらにより好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1-COOHはイソペンタン酸および4-メチル-ペンタン酸である。
【0053】
一実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1-COOHは、2-ヘキセン酸、3-ヘキセン酸、および5-ヘキセン酸からなる群から選択されるC2~21-アルケニル-COOHである。好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびC2~21-アルケニル-COOHを含み、C2~21-アルケニル-COOHは2-ヘキセン酸または3-ヘキセン酸である。
【0054】
以下の表2は、選択された化合物の異名を含む:
【0055】
【0056】
R1-COOHのモル濃度はMHCタンパク質のモル濃度を上回ることが想定される。本発明の第1の態様の別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1-COOHの濃度は、約5mM~約100mM、約10mM~約80mM、約15mM~約70mM、約20mM~約60mM、約25mM~約50mM、約30mM~約40mM、または約30mM~約35mMである。好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1-COOHの濃度は、約5mM~約100mM、約10mM~約80mM、約15mM~約70mM、約20mM~約60mM、または約25mM~約50mMである。最も好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1-COOHの濃度は約50mMである。
【0057】
別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1-COOHの濃度は、5mM~100mM、10mM~80mM、15mM~70mM、20mM~60mM、25mM~50mM、30mM~40mM、または30mM~35mMである。好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1-COOHの濃度は、5mM~100mM、10mM~80mM、15mM~70mM、20mM~60mM、または25mM~50mMである。最も好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1-COOHの濃度は50mMである。
【0058】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、組成物は、乾燥した形態で、すなわち、溶液ではないが、例えば、粉末、例えば、凍結乾燥粉末として、ペプチド、好ましくはローディングペプチド、MHC-IペプチドまたはMHC-IIペプチドをロードする前に復元できる状態であるMHCタンパク質およびR1-COOHを含む。好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、溶液、好ましくは水溶液である。さらなる実施形態では、組成物は溶液中に溶かしたMHCタンパク質およびR1-COOHを含む。本発明の文脈で使用した用語「水性」とは、溶媒が水である溶液、および/または外部相が水である懸濁液、および/または分散相もしくは連続相が水であるエマルジョンを意味する。
【0059】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、組成物は、MHCタンパク質および上述の実施形態のいずれか1つに記載されたR1-COOHを含み、組成物のpHは、約pH6~約pH9、約pH6~約pH8、約pH6~約pH7.5、または約pH6.4~約pH7.5の範囲内である。本発明の第1の態様の別の実施形態では、組成物は、MHCタンパク質および上述の実施形態のいずれか1つに記載されたR1-COOHを含み、組成物のpHは、pH6~pH9、pH6~pH8、pH6~pH7.5、またはpH6.4~pH7.5の範囲内である。好ましい実施形態では、組成物は、MHCタンパク質および上述の実施形態のいずれか1つに記載されたR1-COOHを含み、組成物のpHは、pH6.4~pH7.5の範囲内である。さらにより好ましい実施形態では、組成物は、MHCタンパク質および上述の実施形態のいずれか1つに記載されたR1-COOHを含み、組成物のpHは、pH6~pH7.2の範囲内である。MHCタンパク質およびR1-COOHまたはその塩の組成物が指示したpH値とは異なるpHを有する場合、それぞれの所望のpHは、MHCタンパク質およびR1-COOHまたはその塩に加えて、適切な量の緩衝液を添加することによって達成される。適切な緩衝物質は当業界では周知で、以下にもさらに記載されている。
【0060】
本発明の文脈で使用したように、MHCタンパク質はペプチドに結合していてもよい。したがって、組成物は、(i)主要組織適合複合体(MHC)タンパク質、(ii)R1-COOHまたはその塩を含んでもよく、R1は置換されているかまたは置換されていないヒドロカルビルであり、ペプチドは前記MHCタンパク質に結合している。さらに、キットは、(i)MHCタンパク質、(ii)R1-COOHまたはその塩、およびペプチドを含んでもよい。好ましい実施形態では、MHCタンパク質にはペプチドが結合していない。言い換えると、MHCタンパク質は本質的にペプチドを含まない。さらに好ましい実施形態では、MHCタンパク質はペプチドを含まない。
【0061】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、組成物は水溶液であり、ACES、ADA、BES、ビス-トリスプロパン、DIPSO、EPPS、HEPPSO、イミダゾール、MOBS、MES、ビス-トリス、MOPS、トリス、MOPSO、リン酸、PIPES、POPSO、TAPSO、TEA、TES、トリシン、またはHEPES緩衝液からなる群から選択される緩衝物質を含む。好ましい実施形態では、組成物はMHCおよびR1-COOHを含み、組成物は水溶液であり、緩衝物質MES、ビス-トリス、MOPS、HEPES、またはトリスを含む。さらにより好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、組成物は水溶液であり、HEPES緩衝液を含む。
【0062】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、組成物中に含まれるMHCタンパク質は安定性が増大している。好ましくは、組成物は水溶液である。R1-COOHによって安定化したMHCタンパク質を含む組成物は通常、R1-COOHを含まない前記MHCタンパク質を含む組成物と比較される。「増大した安定性」または「改善した安定性」または「安定化した」などの用語は、タンパク質の天然の状態(例えば、タンパク質の3次元構造)が改善され、および/または有利になるように、タンパク質の平衡状態を増大および/または改善する能力を意味する。安定化されたMHCタンパク質は、リフォールディング、精製、滅菌、輸送、または貯蔵などの工程中を含むタンパク質の寿命中に、凝集が少なくなる可能性がある。したがって、本発明の第1の態様の組成物による安定化されたMHCタンパク質は、より長い貯蔵寿命を実現することができる。特に好ましい実施形態では、本発明の第1の態様の組成物による安定化されたMHCタンパク質は、融解温度(Tm)が高い。したがって、特に好ましい実施形態では、用語「MHCタンパク質の安定化」またはその文法的変化形は、融解温度(Tm)が高いMHCタンパク質を意味する。
【0063】
ある特定の実施形態では、本発明の文脈で使用した用語「安定性」は、タンパク質の化学的および/または物理的安定性を意味することができる。いずれも、特に、溶媒、pH値、および/またはその他の賦形剤または界面活性剤などの添加物、組成物中の塩またはその他の低分子などのパラメータに左右される。MHCタンパク質は、言い換えると、組成物中に含まれるMHCタンパク質の化学的および/または物理的安定性の増大をもたらすR1-COOHの添加によって安定化され得る。
【0064】
本発明の文脈で使用した「物理的安定性」とは、タンパク質の化学的組成を変化させないタンパク質の安定性に関し、変性、例えば、温度上昇、表面吸着、タンパク質の凝集および/または沈殿などの方法を含む。ある特定の実施形態では、R1-COOHによって安定化されたMHCタンパク質は、リフォールディング、精製、滅菌、輸送、または貯蔵などの工程中を含むタンパク質の寿命中に、凝集が少なくなることが想定される。タンパク質凝集は、特に、目視または顕微鏡検査、例えば、蛍光顕微鏡、超遠心分離、質量分析、伝導率による粒子カウント(conductivity-based particle count)、レーザー回折、サイズ排除クロマトグラフィー、または電気泳動によって測定され得る。したがって、R1-COOHによって安定化されたMHCタンパク質を含む本発明の第1の態様の組成物は、MHCタンパク質の物理的安定性の増大を示す可能性があり、半減期の延長を示して貯蔵安定性の増大をもたらす可能性がある。貯蔵安定性は、例えば、4℃、室温、または40℃で評価され得る。好ましくは、MHCタンパク質は、4℃で貯蔵安定性の増大を示す。
【0065】
本発明の文脈で使用したタンパク質の「化学的安定性」とは、直接的または間接的な効果としてタンパク質の化学構造の変化を意味することができる。化学的安定性の例は、ペプチド結合の加水分解、アミノ酸残基の脱アミド、例えば、溶液または固体状態のアスパラギン(N)残基の脱アミド、グルタミン(Q)残基の脱アミド、スクシニミド形成、アミノ酸残基、例えば、アスパラギン酸(D)の異性化、アスパラギン酸(D)またはトリプトファン(W)の加水分解、ラセミ化、β-脱離および酸化であってもよい。ある特定の実施形態では、R1-COOHによって安定化されたMHCタンパク質は、前記MHCタンパク質を含むがR1-COOHを含まない組成物と比較して化学的安定性の増大を示すことが想定される。
【0066】
別の実施形態では、R1-COOHによって安定化されたMHCタンパク質を含む本発明の第1の態様の組成物は、化学的安定性の増大および物理的安定性、例えば、4℃での貯蔵安定性の増大を示す可能性がある。別の実施形態では、本発明の第1の態様の組成物中に含まれるMHCタンパク質は、MHCタンパク質の融解温度(Tm)が少なくとも0.5℃、1.0℃、1.5℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、または6.0℃上昇している。別の実施形態では、本発明の第1の態様の組成物中に含まれるMHCタンパク質はR1-COOHによって安定化されており、組成物中に含まれるMHCタンパク質の融解温度は少なくとも0.5℃、1.0℃、1.5℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、または6.0℃上昇している。好ましくは、R1-COOHは、組成物中に含まれるMHCタンパク質の融解温度が少なくとも0.5℃、1.0℃、1.5℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、または6.0℃上昇する濃度で、本発明の第1の態様の組成物中に含まれるか、または添加される。
【0067】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHまたはその塩を含み、組成物は水溶液であり、組成物中に含まれるMHCタンパク質は融解温度(Tm)が上昇しており、(a)による組成物中のMHCタンパク質のTmが(b)による組成物中のMHCタンパク質のTmよりも高い場合、前記MHCタンパク質のTmは上昇している:
(a)MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなる水性組成物、
(b)(a)と同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなる水性組成物。
【0068】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHまたはその塩を含み、組成物は水溶液であり、R1-COOHまたはその塩は、MHCタンパク質の融解温度(Tm)が上昇する量で組成物中に含まれており、(a)による組成物中のMHCタンパク質のTmが(b)による組成物中のMHCタンパク質のTmよりも高い場合、前記MHCタンパク質のTmは上昇している:
(a)MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなる水性組成物、
(b)(a)と同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなる水性組成物。
【0069】
両方の組成物(a)および(b)におけるMHCタンパク質は、ペプチド、例えば、ジペプチドに結合していない。したがって、MHCは本質的にペプチドを含まない。本発明の文脈で使用した「本質的にペプチドを含まない」とは、あったとしても残留量のペプチドがMHCタンパク質に結合していることを意味する。本質的にペプチドを含まないMHCタンパク質は、実施例で示したように、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーによって、ペプチド(例えば、ジペプチド)を除去することによって得られ得る。Tmはまた、以下の実施例に挙げた方法によって決定され得る。例えば、Tmの上昇は、Applied Biosystems7500リアルタイムPCR装置において、20mMトリスpH8.0の緩衝液、または別の緩衝液、例えば、20mM HEPES緩衝液pH7、NaCl 150mMおよびR1-COOHもしくはその塩中で、タンパク質濃度0.1mg/mlで、R1-COOHもしくはその塩の代わりに水を含む同じ緩衝液と比較して決定され得る。この方法では、MHCを安定化するR1-COOH、脂肪酸、グリセロール、ペプチドなどの添加物は溶液中に存在していない。以下のTm上昇は、上述の方法によって決定され得る。本明細書では、組成物の融解温度は、少なくとも0.5℃、1.0℃、1.5℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、または6.0℃上昇していることが好ましい。さらにより好ましい実施形態では、組成物の融解温度は、少なくとも0.5℃、1.0℃、1.5℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、または5.0℃上昇している。融解温度の上昇は、通常2つの試料の比較によって決定され、例えば、Tmは、特に、MHCタンパク質およびR1-COOHまたはその塩を含む組成物を含む試料において決定され、特に、MHCタンパク質、好ましくは同一のMHCタンパク質を含むが、R1-COOHまたはその塩を含まない組成物、または前述の(b)による組成物を含む試料において決定されたTmと比較される。用語「融解温度(Tm)」は、本発明の文脈では、温度勾配において最大のタンパク質アンフォールディング率が観察される温度を意味する。Tmを決定することができる方法の一例が実施例に記載されている。ポリペプチドまたはタンパク質がTmに達すると、タンパク質フォールディングまたはアンフォールディングの自由エネルギー変化ΔGはゼロに等しくなる。この点で、ポリペプチドまたはタンパク質分子は、アモルファス状態に消滅し、タンパク質鎖はそれ自体でリフォールディングすることはできない。一般的な経験則では、Tmの上昇は安定性の最大自由エネルギーデルタG(T*)の増加に関連する。全般的に、Tmが高いタンパク質またはポリペプチドは、Tm値が低いものよりも安定している。熱安定性の増大は、タンパク質変性の減少、したがって、例えば、前記タンパク質の貯蔵状態の改善をもたらす。実施例で示したように、サーマルシフトアッセイ(TSA)は、タンパク質の熱安定性および安定化剤が結合したときのタンパク質融解温度(Tm)の上昇を測定するために使用することができる。このアッセイでは、タンパク質変性は、タンパク質がアンフォールドするときに露出する疎水性残基に結合する色素SYPRO Orangeの蛍光の増加を介して、温度勾配についてモニターされる。タンパク質に結合する安定化化合物は、安定性を増大させ、Tmを上昇させる。例示的方法としてのTSAは、本明細書では20mM HEPES緩衝液pH7.0においてTmを決定するための以下の添付の実施例において開示されている。好ましくは、Tmは示差走査蛍光測定法(differential scanning fluorimetry)(DSF)を使用してTSAによって決定される。特に、Tmは、HEPES緩衝液pH7.0において、加熱上昇速度0.5℃/分、タンパク質の濃度0.1mg/mlで、DSFを使用したTSAによって決定される。タンパク質安定性は、30℃から70℃の温度範囲にわたってモニターされた。蛍光色素SYPRO orange(Bioworld、5×濃度で使用した)の蛍光は、新たな温度で30秒平衡化した後で測定された。分析したタンパク質のデルタTm値は計算することができる。融解温度に関して互いに比較される組成物は、リガンドもしくは任意の安定化剤、安定化添加物、化合物もしくは補助因子などの融解温度を上昇させる効果に必須であると考えられる成分または分析物以外は、同一の成分を含むことが好ましい。例えば、MHCタンパク質を含むが、前記MHCタンパク質に結合したペプチドを含まない組成物は、前記MHCタンパク質に結合したペプチドもR1-COOHも含まないMHCタンパク質と比較しなければならない。MHCタンパク質およびペプチド、好ましくは前記MHCタンパク質に結合したローディングペプチドを含む組成物は、前記MHCタンパク質に結合したペプチド、好ましくはローディングペプチドおよびR1-COOHを含むMHCタンパク質と比較しなければならないことがさらに想定される。
【0070】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、組成物中に含まれるMHCタンパク質は、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなる水溶液である組成物と比較して融解温度(Tm)が上昇しており、組成物の融解温度は、少なくとも0.5℃、1.0℃、1.5℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、または6.0℃上昇している。好ましくは、R1-COOHは、組成物中に含まれるMHCタンパク質の融解温度が少なくとも0.5℃、1.0℃、1.5℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、または6.0℃上昇する濃度で、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液中に含まれる。
【0071】
一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、組成物中に含まれるMHCタンパク質は、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較してTmが上昇しており、組成物の融解温度は、少なくとも0.5℃上昇している。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、組成物中に含まれるMHCタンパク質は、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較してTmが上昇しており、組成物の融解温度は、少なくとも1.0℃上昇している。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、組成物中に含まれるMHCタンパク質は、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較してTmが上昇しており、組成物のTmは、少なくとも1.5℃上昇している。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、組成物中に含まれるMHCは、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較してTmが上昇しており、組成物のTmは、少なくとも2.0℃上昇している。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、組成物中に含まれるMHCタンパク質は、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較してTmが上昇しており、組成物のTmは、少なくとも2.5℃上昇している。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、組成物中に含まれるMHCタンパク質は、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較してTmが上昇しており、組成物の融解温度は、少なくとも3.0℃上昇している。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、組成物中に含まれるMHCタンパク質は、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較してTmが上昇しており、組成物のTmは、少なくとも3.5℃上昇している。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、組成物中に含まれるMHCタンパク質は、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較してTmが上昇しており、組成物のTmは、少なくとも4.0℃上昇している。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、組成物中に含まれるMHCタンパク質は、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較してTmが上昇しており、組成物のTmは、少なくとも4.5℃上昇している。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、組成物中に含まれるMHCタンパク質は、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較してTmが上昇しており、組成物のTmは、少なくとも5.0℃上昇している。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、組成物中に含まれるMHCタンパク質は、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較してTmが上昇しており、組成物のTmは、少なくとも5.5℃上昇している。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、組成物中に含まれるMHCタンパク質は、同じMHCおよび20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較してTmが上昇しており、組成物のTmは、少なくとも6.0℃上昇している。好ましい実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、組成物中に含まれるMHCタンパク質は、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較してTmが上昇しており、組成物のTmは、少なくとも4.5℃または5.5℃上昇している。
【0072】
一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、R1-COOHまたはその塩は、組成物中に含まれるMHCタンパク質が、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較して少なくとも0.5℃上昇したTmを有する量で、組成物中に含まれる。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、R1-COOHまたはその塩は、組成物中に含まれるMHCタンパク質が、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較して少なくとも1.0℃上昇したTmを有する量で、組成物中に含まれる。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、R1-COOHまたはその塩は、組成物中に含まれるMHCタンパク質が、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較して少なくとも1.5℃上昇したTmを有する量で、組成物中に含まれる。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、R1-COOHまたはその塩は、組成物中に含まれるMHCタンパク質が、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較して少なくとも2.0℃上昇したTmを有する量で、組成物中に含まれる。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、R1-COOHまたはその塩は、組成物中に含まれるMHCタンパク質が、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較して少なくとも2.5℃上昇したTmを有する量で、組成物中に含まれる。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、R1-COOHまたはその塩は、組成物中に含まれるMHCタンパク質が、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較して少なくとも3.0℃上昇したTmを有する量で、組成物中に含まれる。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、R1-COOHまたはその塩は、組成物中に含まれるMHCタンパク質が、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較して少なくとも3.5℃上昇したTmを有する量で、組成物中に含まれる。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、R1-COOHまたはその塩は、組成物中に含まれるMHCタンパク質が、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較して少なくとも4.0℃上昇したTmを有する量で、組成物中に含まれる。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、R1-COOHまたはその塩は、組成物中に含まれるMHCタンパク質が、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較して少なくとも4.5℃上昇したTmを有する量で、組成物中に含まれる。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、R1-COOHまたはその塩は、組成物中に含まれるMHCタンパク質が、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較して少なくとも5.0℃増加したTmを有する量で、組成物中に含まれる。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、R1-COOHまたはその塩は、組成物中に含まれるMHCタンパク質が、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較して少なくとも5.5℃上昇したTmを有する量で、組成物中に含まれる。一実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、R1-COOHまたはその塩は、組成物中に含まれるMHCタンパク質が、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較して少なくとも6.0℃上昇したTmを有する量で、組成物中に含まれる。好ましい実施形態では、組成物は、MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む水溶液であり、R1-COOHまたはその塩は、組成物中に含まれるMHCタンパク質が、同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなるか、または含む水溶液である組成物と比較して少なくとも4.5℃または少なくとも5.5℃上昇したTmを有する量で、組成物中に含まれる。
【0073】
MHCタンパク質は、ペプチドが存在していなくても本発明の組成物において特に安定しているため、本発明の第1の態様のMHCタンパク質は、好ましい一実施形態ではペプチドに結合していない。本発明の第1の態様の組成物におけるMHCタンパク質は、適切にフォールドされており、ペプチド、好ましくはMHC-IペプチドまたはMHC-IIペプチドの直接ローディングが可能である。
【0074】
驚くべきことに、本発明者らによって、R1-COOHまたはその塩の安定化効果が、ペプチドをMHCにロードする安定化効果と組み合わさることが見出された。驚くべきことに、両方の効果はほぼ相加的であることが観察された。したがって、第1の態様の組成物のMHCタンパク質はまた、ペプチドに結合していてもよい。このペプチドはローディングペプチド、および/または前記MHCタンパク質に結合したMHC-IまたはMHCIIペプチドであってもよい。したがって、一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物のMHCタンパク質は、例えば、本発明の第1の態様の組成物におけるMHCをさらに安定化するローディングペプチドに結合している。好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびジペプチドであるローディングペプチドを含む。さらにより好ましくは、組成物はMHCタンパク質およびGM、GY、GL、またはGFからなる群から選択されるローディングペプチドを含む。最も好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびローディングペプチドGMを含む。別の実施形態では、第一の発明の組成物はMHC-IまたはMHC-IIペプチドを含む。別の実施形態では、組成物はローディングペプチドおよびMHC-IまたはMHC-IIペプチドを含む。
【0075】
本発明の第1の態様のこの実施形態では、組成物は、ペプチドに結合した、好ましくはローディングペプチドに結合したMHCタンパク質およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含み、組成物中に含まれるMHCタンパク質は同じMHCタンパク質を含むか、またはそれからなる組成物と比較して融解温度(Tm)が上昇しており、組成物の融解温度は、4℃~12℃、好ましくは少なくとも4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、6.0℃、6.5℃、7.0℃、7.5℃、8.0℃、8.5℃、9.0℃、9.5℃、10.0℃、10.5℃、11.0℃、11.5℃、または12℃上昇している。好ましくは、R1-COOHは、組成物中に含まれるMHCタンパク質の融解温度を少なくとも4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、6.0℃、6.5℃、7.0℃、7.5℃、8.0℃、8.5℃、9.0℃、9.5℃、10.0℃、10.5℃、11.0℃、11.5℃、または12℃上昇させる量で、ペプチド、好ましくはローディングペプチドに結合したMHCタンパク質およびR1-COOHまたはその塩からなるか、または含む組成物中に含まれるか、または添加される。この文脈では、R1-COOHは、脂肪酸、好ましくは天然に存在する脂肪酸であることが好ましい。より好ましくは、脂肪酸は3~9個の炭素原子を含む。さらにより好ましくは、脂肪酸は3~8または4~8個の炭素原子を含む。最も好ましくは、脂肪酸は5~7個の炭素原子を含む。この文脈では、R1-COOHは、C3~C21-アルキル、好ましくはプロパン酸、n-ブタン酸、イソ-ブタン酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、またはドコサン酸からなる群から選択されるC2~21-アルキル-COOHであることも好ましい。好ましくは、R1-COOH、好ましくは上述のR1-COOHの濃度は、約5mM~約100mM、約10mM~約80mM、約15mM~約70mM、約20mM~約60mM、約25mM~約50mM、約30mM~約40mM、または約30mM~約35mMである。好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1-COOHの濃度は、約5mM~約100mM、約10mM~約80mM、約15mM~約70mM、約20mM~約60mM、または約25mM~約50mMである。最も好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、R1-COOHの濃度は約50mMである。
【0076】
好ましくは、脂肪酸は、好ましくは約20~60mMの濃度の、酪酸、吉草酸、ヘプタン酸、およびヘキサン酸からなる群から選択される少なくとも1つである。好ましくは、脂肪酸は、好ましくは約80~150mMの濃度のプロピオン酸である。好ましくは、脂肪酸は、好ましくは約5~60mMの濃度のオクタン酸である。
【0077】
別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、MHCタンパク質はMHCIまたはMHCIIである。好ましい実施形態では、MHCタンパク質はヒト白血球抗原(HLA)である。別の好ましい実施形態では、MHCタンパク質は、MHCI、MHCII、またはHLAの多量体である。MHCI多量体は、二量体、三量体、または四量体であることが好ましい。MHCII多量体は、二量体、三量体、または四量体であることが好ましい。HLA多量体は、二量体、三量体、または四量体であることがさらにより好ましい。
【0078】
人工ジスルフィド架橋を含む安定化されたMHCタンパク質については記載されたことがある(全体を本明細書に参考として組み込んだ国際公開第2020/053398号パンフレット)。驚くべきことに、人工ジスルフィド架橋によって安定化されたMHCタンパク質はまた、本発明の第1の態様の組成物中に含まれるならば、さらに安定化されることが本発明の発明者らによって見出された。
【0079】
別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、MHCIの場合、MHCは、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインの1アミノ酸とアルファ2ドメインの1アミノ酸との間で安定化されている。別の実施形態では、組成物はMHCおよびR1-COOHを含み、MHCIの場合、MHCは、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインの2アミノ酸の間で安定化されている。別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、MHCIの場合、MHCタンパク質は、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインの1アミノ酸とアルファ2ドメインの1アミノ酸との間、およびMHCIの場合、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインの2アミノ酸の間で安定化されている。別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、MHCIIの場合、MHCタンパク質は、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインまたはベータ1ドメインの2アミノ酸の間、およびMHCIIの場合、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインの1アミノ酸の間とベータ1ドメインの1アミノ酸との間で安定化されている。
【0080】
好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、MHCIの場合、MHCタンパク質は、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインの1アミノ酸とアルファ2ドメインの1アミノ酸との間の1つの共有結合によって安定化されている。別の好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、MHCIの場合、MHCタンパク質は、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインの2アミノ酸の間の1つの共有結合によって安定化されている。別の好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、MHCIの場合、MHCタンパク質は、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインの1アミノ酸とアルファ2ドメインの1アミノ酸との間の1つの共有結合によって、およびMHCIの場合、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインの2アミノ酸の間の1つの共有結合によって安定化されている。別の好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、MHCIIの場合、MHCタンパク質は、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインまたはベータ1ドメインの2アミノ酸の間の1つの共有結合によって、およびMHCIIの場合、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインの1アミノ酸とベータ1ドメインの1アミノ酸との間の1つの共有結合によって安定化されている。
【0081】
別の好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、MHCタンパク質は、α-ヘリックス間の1つの共有結合によって安定化されている。より好ましくは、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、MHCタンパク質は、MHCIのIMGT84位のシステインとIMGT139位のシステインとの間の1つの共有結合によって、またはIMGT51位のシステインとIMGT175位のシステインとの間の1つの共有結合によって安定化されている。別の好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、MHCタンパク質は、MHCIのアルファドメインのα-ヘリックスとβ-シートとの間の1つの共有結合によって安定化されている。より好ましくは、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、MHCタンパク質はMHCIのIMGT71位のシステインとMHCIのIMGT22位のシステインとの間の1つの共有結合によって安定化されている。別の好ましい実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、MHCタンパク質は、α-ヘリックスとβ-シートと間の1つの共有結合によって安定化されている。より好ましくは、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、MHCタンパク質は、MHCIのIMGT71位のシステインとMHCIのIMGT22位のシステインとの間の1つの共有結合によって、およびMHCIのIMGT51位のシステインとMHCIのIMGT175位のシステインとの間の1つの共有結合によって安定化されている。より好ましくは、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、MHCタンパク質は、MHCIのIMGT71位のシステインとMHCIのIMGT22位のシステインとの間の1つの共有結合によって安定化されているか、またはMHCタンパク質は、MHCIのIMGT84位のシステインとIMGT139位のシステインとの間の1つの共有結合によって安定化されている。本発明の第1の態様の別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、MHCタンパク質は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、HLA-J、HLA-K、およびHLA-Lからなる群から選択される。好ましい実施形態では、組成物はHLA-AおよびR1-COOHを含み、HLA-Aは、HLA-A1、HLA-A2、HLA-A3、およびHLA-A11からなる群から選択される。好ましい実施形態では、組成物はHLA-AおよびR1-COOHを含み、HLA-Aは、HLA-A*02、HLA-A*01、またはHLA-A*03からなる群から選択される。さらにより好ましい実施形態では、組成物はHLA-AおよびR1-COOHを含み、HLA-Aは、HLA-A*02:01、HLA-A*01:01、またはHLA-A*03:01からなる群から選択される。最も好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01およびR1-COOHを含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-BおよびR1-COOHを含み、HLA-Bは、HLA-B*07、HLA-B*08、HLA-B*15、HLA-B*35、およびHLA-B*44からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、組成物はHLA-BおよびR1-COOHを含み、HLA-Bは、HLA-B*07:02、HLA-B*08:01、HLA-B*15:01、HLA-B*35:01、HLA-B*44:03、およびHLA-B*44:05からなる群から選択される。
【0082】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、組成物はMHCタンパク質およびR1-COOHを含み、1つまたは複数のMHCタンパク質が複合体に含まれている。本発明の文脈において、用語「複合体」とは、二量体、三量体、四量体、または多量体などの高次のMHCタンパク質を意味する。好ましい実施形態では、組成物は、MHCタンパク質四量体およびR1-COOHを含む。好ましい実施形態では、組成物は、MHCタンパク質四量体およびR1-COOHを含み、MHCタンパク質は、ビーズ、フィラメント、ナノ粒子、またはその他の担体に結合している。
【0083】
好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01およびプロピオン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および酪酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01およびペンタン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01およびヘキサン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01およびヘプタン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01およびオクタン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01およびノナン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および2-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および3-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および5-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01およびイソペンタン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および4-メチルペンタン酸またはそのナトリウム塩を含む。
【0084】
好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01およびプロピオン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01および酪酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01およびペンタン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01およびヘキサン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01およびヘプタン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01およびオクタン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01およびノナン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01および2-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および3-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01および5-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01およびイソペンタン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01および4-メチルペンタン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。
【0085】
好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01およびプロピオン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01および酪酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01およびペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01およびヘキサン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01およびヘプタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01およびオクタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01およびノナン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01および2-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01および3-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01および5-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01およびイソペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01および4-メチルペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。実施例で示したように、MOPSまたはMESなどのその他の緩衝液が本発明では使用され得る。さらに、緩衝液の濃度は変更可能で、当業者は実施例で記載したようなスクリーニング方法を考慮して緩衝液の濃度を適合させることができる。
【0086】
好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01およびプロピオン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および酪酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01およびペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01およびヘキサン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01およびヘプタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01およびオクタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01およびノナン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および2-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および3-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および5-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。さらにより好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01およびイソペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別のより好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および4-メチルペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。
【0087】
好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および100mMプロピオン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および50mM酪酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および50mMペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および50mMヘキサン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および2~50mMヘプタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および10mMオクタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および5mMノナン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および2~50mMヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および50mM 3-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および50mM 5-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。さらにより好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および50mMイソペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別のより好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および50mM 4-メチルペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。
【0088】
用語「HLA-A*02:01_ds84-139」が使用される以下のそれぞれの場合では、これは配列番号1によるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるHLAを意味する。
【0089】
好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびプロピオン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および酪酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびペンタン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびヘキサン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびヘプタン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびオクタン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびノナン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および2-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および3-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および5-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびイソペンタン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および4-メチルペンタン酸またはそのナトリウム塩を含む。
【0090】
好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびプロピオン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および酪酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびペンタン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびヘキサン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびヘプタン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびオクタン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびノナン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および2-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および3-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および5-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01およびイソペンタン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および4-メチルペンタン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。
【0091】
好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびプロピオン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および酪酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびヘキサン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびヘプタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびオクタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびノナン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および2-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および3-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および5-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびイソペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および4-メチルペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含む。
【0092】
好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびプロピオン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および酪酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびヘキサン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびヘプタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびオクタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびノナン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および2-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および3-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および5-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139およびイソペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および4-メチルペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。
【0093】
好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および100mMプロピオン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および50mM酪酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および50mMペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および50mMヘキサン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および2~50mMヘプタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および10mMオクタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および5mMノナン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および2~50mMヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および50mM 3-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および50mM 5-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。さらにより好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および50mMイソペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別のより好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds84-139および50mM 4-メチルペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。
【0094】
用語「HLA-A*02:01_ds22-71」が使用される以下のそれぞれの場合では、これは配列番号2によるアミノ酸配列を含むかそれからなるHLAを意味する。
【0095】
好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71およびプロピオン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71および酪酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71およびペンタン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71およびヘキサン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71およびヘプタン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71およびオクタン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71およびノナン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71および2-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71および3-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71および5-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71およびイソペンタン酸またはそのナトリウム塩を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71および4-メチルペンタン酸またはそのナトリウム塩を含む。
【0096】
好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71およびプロピオン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71および酪酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71およびペンタン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71およびヘキサン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71およびヘプタン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71およびオクタン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71およびノナン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01および2-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71および3-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71および5-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71およびイソペンタン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。別の好ましい実施形態では、組成物はHLA-A*02:01_ds22-71および4-メチルペンタン酸またはそのナトリウム塩の水溶液を含む。
【0097】
好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71およびプロピオン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および酪酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71およびペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71およびヘキサン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71およびヘプタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71およびオクタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71およびノナン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および2-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および3-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および5-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71およびイソペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および4-メチルペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなる。
【0098】
好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71およびプロピオン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および酪酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71およびペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71およびヘキサン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71およびヘプタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71およびオクタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71およびノナン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および2-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および3-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および5-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71およびイソペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および4-メチルペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。
【0099】
好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および100mMプロピオン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および50mM酪酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および50mMペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および50mMヘキサン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および2~50mMヘプタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および10mMオクタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および5mMノナン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および2~50mMヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および50mM 3-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別の好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および50mM 5-ヘキセン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。さらにより好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および50mMイソペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。別のより好ましい実施形態では、組成物は、HLA-A*02:01_ds22-71および50mM 4-メチルペンタン酸またはそのナトリウム塩および20mM HEPES緩衝液の水溶液を含むかまたはそれらからなり、溶液はpH7である。
【0100】
第2の態様では、本発明は、MHCタンパク質を安定化するために、R1-COOHまたはその塩の使用にさらに関し、R1は置換されているかまたは置換されていないヒドロカルビルである。好ましくは、R1は置換されておらず、本発明の第1の態様の組成物において安定化剤として使用される。本発明の第1の態様の組成物の文脈において具体的に開示された実施形態は全て、本発明の第2の態様によるMHCタンパク質を安定化するために使用されていてもよく、または本発明の第2の態様の文脈において具体的に開示された任意の実施形態と組み合わせてもよい。
【0101】
本発明の第3の態様は、MHCタンパク質またはそのペプチド結合断片を安定化するための方法に関する。ある特定の実施形態では、この方法は、以下の工程:
(i)MHCタンパク質またはそのペプチド結合断片を提供する工程、
(ii)前記MHCタンパク質をR1-COOHまたはその塩と接触させる工程
を含み、
R1が置換されているかまたは置換されていないヒドロカルビルである。
【0102】
好ましい実施形態では、この方法は、
(i)MHCタンパク質またはそのペプチド結合断片を含む溶液を提供すること、
(ii)前記溶液と前記R1-COOHまたはその塩を接触させること
を含み、
R1は置換されているかまたは置換されていないヒドロカルビルである。一実施形態では、MHCタンパク質またはそのペプチド結合断片を含む溶液は水溶液である。
【0103】
MHCタンパク質またはそのペプチド結合断片はフォールドされていてもフォールドされていなくてもよい。したがって、R1-COOHまたはその塩も含めて、溶液中におけるMHCタンパク質またはそのペプチド結合断片の正確なフォールディングを容易にしてもよく、ペプチド、例えば、ローディングペプチドがフォールディング反応に含まれていてもよい。好ましくは、溶液中におけるMHCタンパク質またはそのペプチド結合断片はフォールドされていて、本質的にペプチドを含まない。一実施形態では、溶液中におけるMHCタンパク質またはそのペプチド結合断片はペプチドを含まない。本発明の第1の態様の組成物の文脈において具体的に開示された実施形態は全て、本発明の第3の態様によるMHCタンパク質またはそのペプチド結合断片を安定化するための方法において使用されてもよく、または本発明の第3の態様の文脈において具体的に開示された任意の実施形態と組み合わせてもよい。
【0104】
本発明の第4の態様では、
(i)MHCタンパク質、および
(ii)R1-COOHもしくはその塩であって、R1が置換されているかもしくは置換されていないヒドロカルビルである塩、または
(iii)本発明の第1の態様の組成物
を含むキットに関する。
【0105】
好ましくは、R1は置換されていないヒドロカルビルである。キットは1つまたは複数のペプチドをさらに含んでいてもよい。本発明の第1の態様の組成物の文脈において具体的に開示された実施形態は全て、本発明の第4の態様によるキットに含まれていてもよく、または本発明の第4の態様の文脈において具体的に開示された任意の実施形態と組み合わせてもよい。
【0106】
上記で概説した実施形態によれば、本発明は好ましくは以下の項目に関する。
1.(i)主要組織適合複合体(MHC)タンパク質、および
(ii)R1-COOHまたはその塩、好ましくはナトリウム塩
を含み、
R1が置換されているかまたは置換されていないヒドロカルビルである組成物。
【0107】
2.ヒドロカルビルがC2~C21-ヒドロカルビル、好ましくは直鎖C2~21-アルキル、分岐C3~21-アルキル、直鎖C2~21-アルケニル、分岐C3~21-アルケニル、直鎖C2~21-アルキニル、または分岐C4~21-アルキニルである、項目1に記載の組成物。
【0108】
3.(i)直鎖C2~21-アルキルが、直鎖C2~8-アルキル、C2~7-アルキル、C3~7-アルキル、またはC4~6-アルキル、好ましくはエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルであり、
(ii)分岐C3~21-アルキルが、分岐C3~8-アルキル、分岐C3~7-アルキル、分岐C4~6-アルキル、好ましくはイソ-プロピル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、1-メチル-ブチル、2-メチル-ブチル、3-メチル-ブチル、1,1-ジメチル-プロピル、2,2-ジメチル-プロピル、1-エチル-プロピル、1-メチル-ペンチル、2-メチル-ペンチル、3-メチル-ペンチル、4-メチル-ペンチル、1,1-ジメチル-ブチル、1,2-ジメチル-ブチル、1,3-ジメチル-ブチル、2,2-ジメチル-ブチル、2,3-ジメチル-ブチル、3,3-ジメチル-ブチル、1-エチル-ブチル、2-エチル-ブチル、1,1,2-トリメチル-プロピル、1,2,2、トリメチル-プロピル、1-エチル-2-メチル-プロピル、1-メチル-ヘキシル、2-メチル-ヘキシル、3-メチル-ヘキシル、4-メチル-ヘキシル、5-メチル-ヘキシル、1,1-ジメチル-ペンチル、1,2-ジメチル-ペンチル、1,3-ジメチル-ペンチル、1,4-ジメチル-ペンチル、2,2-ジメチル-ペンチル、2,3-ジメチル-ペンチル、2,4-ジメチル-ペンチル、3,3-ジメチル-ペンチル、3,4-ジメチル-ペンチル、1-エチル-ペンチル、2-エチル-ペンチル、3-エチル-ペンチル、1,1,2-トリメチル-ブチル、1,1,3-トリメチル-ブチル、1,2,3-トリメチル-ブチル、1,2,2-トリメチル-ブチル、2,2,3-トリメチル-ブチル、1-メチル-1-エチル-ブチル、1-エチル-2-メチル-ブチル、1-エチル-3-メチル-ブチル、1-メチル-2-エチル-ブチル、2-メチル-2-エチル-ブチル、1-プロピル-ブチル、1-メチル-ヘプチル、2-メチル-ヘプチル、3-メチル-ヘプチル、4-メチル-ヘプチル、5-メチル-ヘプチル、6-メチル-ヘプチル、1,1-ジメチル-ヘキシル、1,2-ジメチル-ヘキシル、1,3-ジメチル-ヘキシル、1,4-ジメチル-ヘキシル、1,5-ジメチル-ヘキシル、2,2-ジメチル-ヘキシル、2,3-ジメチル-ヘキシル、2,4-ジメチル-ヘキシル、2,5-ジメチル-ヘキシル、3,3-ジメチル-ヘキシル、3,4-ジメチル-ヘキシル、3,5-ジメチル-ヘキシル、4,4-ジメチル-ヘキシル、4,5-ジメチル-ヘキシル、5,5-ジメチル-ヘキシル、1-エチル-ヘキシル、2-エチル-ヘキシル、3-エチル-ヘキシルまたは4-エチル-ヘキシルであり、
(iii)直鎖C2~21-アルケニルが、直鎖C2~8-アルケニル、直鎖C2~7-アルケニル、直鎖C3~7-アルケニル、直鎖C4~6-アルケニル、好ましくはエテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、1-ヘプテニル、4-ヘプテニル、5-ヘプテニル、5-ヘプテニル、6-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、3-オクテニル、4-オクテニル、5-オクテニル、6-オクテニル、または7-オクテニルであり、
(iv)分岐C3~21-アルケニルが、分岐C3~8-アルケニル、分岐C3~7-アルケニル、分岐C4~6-アルケニル、好ましくはメチルエテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル、または1-エチル-2-メチル-2-プロペニルであり、
(v)直鎖C2~21-アルキニルが、直鎖C2~8-アルキニル、直鎖C2~7-アルキニル、直鎖C3~7-アルキニル、直鎖C4~6-アルキニル、好ましくは、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、5-ヘキシニル、1-ヘプチニル、2-ヘプチニル、1-ヘプチニル、4-ヘプチニル、5-ヘプチニル、5-ヘプチニル、6-ヘプチニル、1-オクチニル、2-オクチニル、3-オクチニル、4-オクテニル、5-オクチニル、6-オクチニル、または7-オクチニルであるか、あるいは
(vi)分岐C4~21-アルキニルが、分岐C4~8-アルキニル、分岐C3~8-アルキニル、分岐C4~6-アルキニル、好ましくは1-メチル-2-プロピニル、1-メチル-2-ブチニル、1-メチル-3-ブチニル、2-メチル-3-ブチニル、3-メチル-1-ブチニル、1,1-ジメチル-2-プロピニル、1-エチル-2-プロピニル、1-メチル-2-ペンチニル、1-メチル-3-ペンチニル、1-メチル-4-ペンチニル、2-メチル-3-ペンチニル、2-メチル-4-ペンチニル、3-メチル-1-ペンチニル、3-メチル-4-ペンチニル、4-メチル-1-ペンチニル、4-メチル-2-ペンチニル、1,1-ジメチル-2-ブチニル、1,1-ジメチル-3-ブチニル、1,2-ジメチル-3-ブチニル、2,2-ジメチル-3-ブチニル、3,3-ジメチル-1-ブチニル、1-エチル-2-ブチニル、1-エチル-3-ブチニル、2-エチル-3-ブチニル、または1-エチル-1-メチル-2-プロピニルである、項目2に記載の組成物。
【0109】
4.(i)直鎖C2~21-アルケニルまたは分岐C3~21-アルケニルにおいて、二重結合はヒドロカルビルのC1とC2原子との間またはC2とC3原子との間にあり、および/または
(ii)直鎖C2~21-アルキニルまたは分岐C4~21-アルキニルにおいて、三重結合はヒドロカルビルのC1とC2原子との間またはC2とC3原子との間にあり、および/または
(iii)ヒドロカルビルは、ハロゲン、特にF、Cl、またはBr;-OH;-O-R4;=O;-NO2;R2およびR3が独立してH、およびヒドロカルビルから選択される-NR2R3;R4がHおよびヒドロカルビルから選択される-N-HR4からなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、項目1~3のいずれかに記載の組成物。
【0110】
5.C2~21-アルキル-COOHが、プロパン酸、n-ブタン酸、イソ-ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸、好ましくはプロパン酸、n-ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、またはノナン酸からなる群から選択される、項目1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【0111】
6.(i)分岐C3~21-アルキル-COOHが、イソブタン酸、イソペンタン酸、3-メチル-ペンタン酸、または4-メチル-ペンタン酸からなる群から選択され、
(ii)C2~21-アルケニル-COOHが、2-ヘキセン酸、3-ヘキセン酸、および5-ヘキセン酸、好ましくは2-ヘキセン酸または3-ヘキセン酸からなる群から選択される、項目1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【0112】
7.R1-COOHの濃度が、約5mM~約100mM、約10mM~約80mM、約15mM~約70mM、約20mM~約60mM、約25mM~約50mM、約30mM~約40mM、約30mM~約35mM、好ましくは約50mMである、項目1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【0113】
8.組成物が水溶液である、項目1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【0114】
9.組成物のpHが、pH6~pH8、pH6~pH7.5、またはpH6.4~pH7.5、好ましくはpH6.4~pH7.5、より好ましくはpH6~7.2、または最も好ましくはpH6.4~pH7.2の範囲内である、項目1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【0115】
10.ACES、ADA、BES、ビス-トリスプロパン、DIPSO、EPPS、HEPPSO、イミダゾール、MOBS、MES、ビス-トリス、MOPS、トリス、MOPSO、リン酸、PIPES、POPSO、TAPSO、TEA、TES、トリシン、またはHEPES緩衝液、好ましくはMES、ビス-トリス、MOPS、HEPES、またはTRISからなる群から選択される緩衝物質を含む、項目8または9のいずれか1項に記載の組成物。
【0116】
11.R1-COOHまたはその塩が、
(i)組成物中に含まれるMHCタンパク質を安定化し、および/または
(ii)組成物中に含まれるMHCタンパク質の融解温度を少なくとも0.5℃、1.0℃、1.5℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、または6.0℃上昇させる濃度で組成物中に含まれる、項目8~10のいずれか1項に記載の組成物。
【0117】
12.組成物中に含まれるMHCの融解温度が、R1-COOHまたはその塩を欠如している同じ組成物中に含まれるMHCと比較して上昇しており、好ましくは組成物の融解温度が、少なくとも0.5℃、1.0℃、1.5℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、または6.0℃上昇している、項目8~10のいずれかに記載の組成物。
【0118】
13.組成物中に含まれるMHCタンパク質の融解温度(Tm)が上昇しており、
(a)による組成物中のMHCタンパク質のTmが(b)による組成物中のMHCタンパク質のTmよりも高い場合、前記MHCタンパク質のTmは上昇しており:
(a)MHCタンパク質、20mM HEPES緩衝液pH7、およびR1-COOHまたはその塩からなる水性組成物、
(b)(a)と同じMHCタンパク質および20mM HEPES緩衝液pH7からなる水性組成物、ならびに
好ましくは、組成物の融解温度が、少なくとも0.5℃、1.0℃、1.5℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、または6.0℃上昇している、項目8~10のいずれかに記載の組成物。
【0119】
14.MHCタンパク質が、MHCIまたはMHCII分子、好ましくはヒト白血球抗原(HLA)またはMHCI、MHCII、もしくはHLAの多量体、例えば、二量体、三量体、もしくは四量体である、項目1~13のいずれかに記載の組成物。
【0120】
15.MHCタンパク質が、好ましくは
(i)MHCIの場合、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインの1アミノ酸とアルファ2ドメインの1アミノ酸との間、および/または
(ii)MHCIの場合、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインの2つのアミノ酸の間、または
(iii)MHCIIの場合、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインまたはベータ1ドメインの2つのアミノ酸の間、および/または
(iv)MHCIIの場合、前記安定化されたMHCタンパク質のアルファ1ドメインの1アミノ酸とベータ1ドメインの1アミノ酸との間
の1つまたは複数の共有結合によって安定化されている、項目1~14のいずれかに記載の組成物。
【0121】
16.前記共有結合が、
(i)α-ヘリックスの間、好ましくはMHCIのIMGT84位のシステインとIMGT139位のシステインとの間、
(ii)MHCIのアルファ1ドメインのα-ヘリックスとβ-シートとの間、好ましくはMHCIのIMGT71位のシステインとMHCIのIMGT22位のシステインとの間、
(iii)好ましくはMHCIの51位のアミノ酸およびMHCIの175位のアミノ酸をシステインに変異させることによって、α-ヘリックスの間、または
(iv)α-ヘリックスとβ-シートとの間、好ましくはMHCIのIMGT71位のシステインとMHCIのIMGT22位のシステインとの間、およびα-ヘリックスの間、好ましくはMHCIのIMGT51位のシステインとMHCIのIMGT175位のシステインとの間
にある、項目15に記載の組成物。
【0122】
17.MHCタンパク質が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、HLA-J、HLA-K、およびHLA-Lからなる群から選択され、好ましくはHLA-Aが、HLA-A1、HLA-A2、HLA-A3、およびHLA-A11からなる群から選択され、より好ましくはHLA-A*02であり、さらにより好ましくはHLA-A*02:01、HLA-A*01:01、またはHLA-A*03:01であり、好ましくはHLA-Bが、HLA-B*07、HLA-B*08、HLA-B*15、HLA-B*35、およびHLA-B*44、より好ましくはHLA-B*07:02、HLA-B*08:01、HLA-B*15:01、HLA-B*35:01、およびHLA-B*44:05からなる群から選択される、項目1~16のいずれか1項に記載の組成物。
【0123】
18.1つまたは複数のMHCタンパク質が複合体に含まれ、好ましくは、MHCタンパク質が、ビーズ、フィラメント、ナノ粒子、またはその他の担体に結合している、項目1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【0124】
19.組成物が少なくとも1つのペプチド、好ましくはグリシン-メチオニン(GM)、グリシン-チロシン(GY)、グリシン-ロイシン(GL)、およびグリシン-フェニルアラニン(GF)からなる群から選択されるローディングペプチドをさらに含み、より好ましくはローディングペプチドはGMである、項目1~18のいずれか1項に記載の組成物。
【0125】
20.MHCタンパク質が配列番号1および配列番号2を含むか、またはそれらからなる、項目1~19のいずれか1項に記載の組成物。
【0126】
21.MHCタンパク質を安定化するための、R1が置換されているかまたは置換されていないヒドロカルビルである、R1-COOHまたはその塩の使用。
【0127】
22.R1がC2-C21-ヒドロカルビルである、項目21に記載の使用。
【0128】
23.MHCタンパク質、好ましくはMHCIまたはMHCII、より好ましくはHLAを安定化するための方法であって、以下の工程:
(i)前記MHCタンパク質を含む溶液を提供する工程、
(ii)前記溶液をR1-COOHまたはその塩と接触させる工程
を含み、
R1が置換されたまたは置換されていないヒドロカルビルである方法。
【0129】
24.R1がC2-C21-ヒドロカルビルである、項目23に記載の方法。
【0130】
25.MHCタンパク質にペプチド、好ましくはMHC-IペプチドまたはMHC-IIペプチドをロードする工程をさらに含む、項目23または24に記載の方法。
【0131】
26.(i)MHCタンパク質、および
(ii)R1-COOHもしくはその塩、好ましくはナトリウム塩、または
(iii)本発明の第1の態様の組成物、および
(iv)適宜ペプチド、好ましくはローディングペプチド、MHCIペプチドおよび/またはMHCIIペプチド
を含むキットであって、
R1が置換されているかまたは置換されていないヒドロカルビルである、キット。
【0132】
27.R1がC2~C21-ヒドロカルビルである、項目26に記載のキット。
【0133】
本出願全体を通じて、「および/または」という用語は文法上の接続詞であり、それが接続する1つまたは複数の場合が生じる可能性があることを包含すると解釈されるべきである。例えば、「このような天然配列のタンパク質は、標準的な組換えおよび/または合成方法を使用して調製されていてもよい」という言い回しは、天然配列のタンパク質は標準的な組換えおよび合成方法を使用して調製されていてもよいか、または天然配列のタンパク質は標準的な組換え方法を使用して調製されていてもよいか、または天然配列のタンパク質は合成方法を使用して調製されていてもよいことを示す。
【0134】
さらに、本出願全体を通じて、用語「含む(comprising)」は、具体的に言及された全特徴、および選択的、追加的、指定されていない特徴を包含すると解釈されるべきである。本明細書で使用したように、用語「含む(comprising)」の使用はまた、具体的に言及された特徴以外の特徴が存在していない実施形態を開示する(すなわち、「構成されている(consisting of)」)。
【0135】
さらに、不定冠詞「a」または「an」は複数を排除するものではない。ある特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという事実だけで、これらの手段の組合せが有利に使用できないことを示すものではない。
【0136】
以下の実施例は、本発明を単に例示するものであり、添付された特許請求の範囲によって示される本発明の範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0137】
[実施例1]
【0138】
以下の実験は全て、組換え体、ジスルフィド架橋安定化HLA-A*02:01、22位と71位との間にジスルフィド結合が導入された、いわゆるHLA-A*02:01_ds22-71を用いて実施された。84位と139位との間にジスルフィド結合が導入されたHLA分子HLA-A*02:01_ds84-139も試験された。タンパク質は、公開された手順(Garboczi et al.; “HLA-A2-peptide complexes: Refolding and crystallization of molecules expressed in Escherichia coli and complexed with single antigenic peptides”; PNAS, vol. 89, 3429-3433, 1992)にしたがって、100mM HEPES、アルギニン400mM、EDTA2mM、還元グルタチオン5mMおよび酸化グルタチオン0.5mMを含有する緩衝液中でリフォールドされた。HLA-A*02:01 ds84-139については、Moritz et al.2019によって記載されたようなリフォールディング反応においてGMジペプチド10mMが含まれた。リフォールディング後、タンパク質は超遠心分離によって濃縮され、サイズ排除クロマトグラフィーによって精製された。脂肪酸は、水に溶解するか、または水で希釈し、NaOHで中和して、0.5M pH7の保存用液を得た。
【0139】
HLA-A
*02:01安定化化合物のスクリーニング
ペプチドを含まない組換え体HLA-A
*02:01調製に最適な貯蔵および取り扱い条件を見出すため、異なる化合物をサーマルシフトアッセイ(TSA)でスクリーニングした。Applied Biosystems7500リアルタイムPCR装置において、20mMトリスpH8.0、NaCl 150mMの緩衝液中でタンパク質濃度0.1mg/mlで測定を実施した。表3で示した添加物を添加するか、あるいは水を対照として添加した。生データをエクスポートし、融解温度の分析はMicrosoft Excelで実施した。タンパク質安定性は、30℃~70℃の温度範囲にわたってモニターした。温度は0.5℃段階で上昇させ、蛍光色素SYPRO orange(bio-world、カタログ番号41900192-1、5倍濃度で使用した)の蛍光は、新たな温度で30秒平衡化した後で測定した。以前の測定値と比較して蛍光の最大増加が観察された温度が、各組成物の融点と定義される。表3に挙げた33化合物のうち以下の2つのみがタンパク質安定性の著しい増大を引き起こした(
図1参照):(i)HLA-A
*0201 ds84-139を安定化することが以前に記載されたジペプチドグリシン-メチオニン、および(ii)ジペプチドグリシン-メチオニンと比較して安定化効果の増大をさらに示した酪酸ナトリウム。脂肪酸によるHLA分子の安定化の増大は、安定化の増大が、グリセロール、アルギニン、またはトレハロースなどの周知のタンパク質安定化剤と比較して示されたので、驚くべきことであった。
【0140】
【0141】
異なる脂肪酸の安定化効果の比較
その他の脂肪酸もHLA分子を安定化するかどうかを試験するために、異なる鎖長の脂肪酸を上述のTSAでスクリーニングした。この実験において、タンパク質精製手順の最終ゲル濾過は、20mM HEPES pH7.0中で行われ、タンパク質はこの緩衝液中で0.1mg/mlの濃度で使用された。脂肪酸は、5~100mMの濃度範囲で添加されるか、または水が対照として添加された。各添加物の最適な濃度で観察された融点を
図2に示す。試験した脂肪酸は全て、HLA分子を安定化する。長さが3~8炭素原子の脂肪酸が強力な安定化特性を有する。安定化効果はさらに、長さが5~7炭素原子の脂肪酸によって増大する。鎖長が延長するにつれて、脂肪酸の最適な濃度は脂肪酸のより低い濃度レベルに向かって移動する。安定化は、分岐脂肪酸または不飽和脂肪酸にも当てはまることを示すために、直鎖、飽和脂肪酸の安定化を、分岐鎖を有する異性体または同じ鎖長の不飽和変異体と比較した。分岐鎖を有する脂肪酸(イソ吉草酸または4-メチル-吉草酸)は、HLA分子を安定化する効果を示した(
図3)。したがって、安定化はまた分岐脂肪酸についても観察されたが、測定された融点は、試験した直鎖がそれらの分岐異性体よりも強いHLA分子の安定化を示すことを示唆している(
図3)。試験した不飽和変異体はまた、HLA分子に対して安定化効果を示した。二重結合(C=C)がカルボキシル基に近ければ近いほど、安定化効果は強かった(
図4)。したがって、ヘキサン酸の不飽和脂肪酸はまた、HLA分子に対して安定化効果を示した。したがって、直鎖、分岐、飽和、および不飽和脂肪酸はHLA分子を安定化した。
[実施例3]
【0142】
安定化は様々なds-HLA構築物について観察される。
脂肪酸の安定化効果は、さらなるHLA分子、すなわち、84位と139位との間にジスルフィド結合が導入されたHLA-A
*02:01_ds84-139についても試験された。22位と71位との間にジスルフィド架橋を有する突然変異体は、いかなるペプチドも添加しなくてもリフォールドされ得るが、84位と139位の間にジスルフィド結合を含有する変種はリフォールディングのためにジペプチドを必要とした。ジペプチドは、TSA測定の前に20mM HEPES pH7.0中におけるゲル濾過によって除去された。実施例2で記載したようなTSA実験を使用して、HLA-A
*02:01_ds22-71に対する脂肪酸の安定化効果をHLA-A
*02:01_ds84-139と比較して試験した(
図5)。非常に短い鎖化合物(4および5炭素)の効果は、HLA-A
*02:01_ds84-139と比較してHLA-A
*02:01_ds22-71において増大していた。それにも関わらず、両タンパク質の融点は、対照条件と比較して5~6℃上昇した。したがって、脂肪酸は両方のHLA分子を安定化した。
[実施例4]
【0143】
脂肪酸はさらに、ローディングペプチドに結合したMHC分子を安定化することができる。
ローディングペプチドおよび脂肪酸の組合せを使用して、前記で定義したようなMHC-IまたはMCH-IIペプチドなどの抗原性ペプチドをその後ロードするためのMHCタンパク質を安定化できるかどうかを試験するために、TSAを実施例1で記載したように実施した。HLA-A
*02:01_ds_22-71_およびHLA-A
*02:01ds_84-139はそれぞれ、脂肪酸、例えば、酪酸ナトリウム、吉草酸、またはヘキサン酸(最終濃度50mM)、およびジペプチド(GM、最終濃度10mM)を添加して、および添加せずに分析した。HLAタンパク質の安定化は、両添加物について観察された。両添加物を含有する試料中では、さらに強い安定化が観察され、脂肪酸がローディングペプチドに結合したHLA分子を安定化することができることを示していた。
図5~7を参照すること。
[実施例5]
【0144】
異なるpHを有する緩衝液中における安定化
40の異なる緩衝液条件(MES pH5.8~7.2;ビストリスpH5.8~7.2;MOPS pH6.5~7.9;HEPES pH6.8~8.2;およびトリスpH7.6~9.0)を用いた並行TSAスクリーニングでは、pH条件と組換えHLAの安定性との間に明らかな関係が検出された。この実験では、20mM HEPES pH7.0に溶かしたHLA-A*0201 ds22-71 0.1mg/mlの溶液に、各緩衝液の1M保存溶液0.1容量が補給された。
【0145】
試験した緩衝液系全てについて、6.4と7.0との間のpH値が最も高いタンパク質安定性をもたらし、より塩基性または酸性の条件に向かうと安定性は徐々に低下した(
図8)。このpH範囲はまた、HLA分子にロードされたペプチドについても最適であることが見出された。HLAが脂肪酸によって異なるpH条件において安定化されるかどうかを試験するために、同じ40の異なる緩衝液条件を用いたTSAスクリーニングを上述のように実施した。吉草酸(50mM)によって得られた安定化効果は、脂肪酸を用いない試験と比較して試験した全pH条件において増大した(
図8)。安定化効果はpH範囲6~7.2において特に増大した。したがって、HLA分子に対する脂肪酸の安定化効果は、様々なpH条件下で観察された。
【配列表】
【国際調査報告】