(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】構造的に強化された導管を用いて溶融ガラスを形成する装置
(51)【国際特許分類】
C03B 5/167 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
C03B5/167
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523193
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 US2022044972
(87)【国際公開番号】W WO2023069232
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】デ アンジェリス ギルバート
(72)【発明者】
【氏名】イサザ ジュアン カミロ
(72)【発明者】
【氏名】スミス クリストファー マイロン
(57)【要約】
溶融ガラスを搬送する内部通路を定める導管を含むガラス製造装置であって、導管は、導管の外周面の少なくとも一部に配置されて取り付けられた少なくとも1つの補強部材を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス成形装置であって、
溶融ガラスの流れを搬送するように構成された内部通路を含む導管と、
前記導管の外周面の少なくとも一部に取り付けられて前記外周面の少なくとも一部の周囲に延びる少なくとも1つの補強部材であって、一対の隣接する電気フランジ間に配置されて該一対の隣接する電気フランジから間隔を空けた、少なくとも1つの補強部材と、
を備えることを特徴とするガラス成形装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの補強部材は、前記導管の上部の周囲に延びる、
請求項1に記載のガラス成形装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの補強部材は、前記導管の周囲を円周方向に延びる、
請求項1に記載のガラス成形装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの補強部材は複数の補強部材を含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載のガラス成形装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの補強部材は中空内部を含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載のガラス成形装置。
【請求項6】
前記補強部材は、該補強部材の中空内部と前記補強部材の外部雰囲気との間に流体連通をもたらす均圧オリフィスを含む、
請求項5に記載のガラス成形装置。
【請求項7】
前記導管は白金を含む、
請求項1から6のいずれか1項に記載のガラス成形装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの補強部材は白金を含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載のガラス成形装置。
【請求項9】
前記導管は清澄容器を含む、
請求項1から8のいずれか1項に記載のガラス成形装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの補強部材は、前記導管にプレートによって取り付けられる、
請求項1から9のいずれか1項に記載のガラス成形装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの補強部材は、隙間によって前記導管から間隔を空ける、
請求項1から10のいずれか1項に記載のガラス成形装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの補強部材の断面形状は矩形又は円形である、
請求項1から9のいずれか1項に記載のガラス成形装置。
【請求項13】
ガラス成形装置であって、
内部通路を含み、該内部通路を通じて溶融ガラスの流れを搬送するように構成された清澄容器と、
前記清澄容器の外周面の少なくとも一部に取り付けられて前記外周面の少なくとも一部の周囲に延びる少なくとも1つの補強部材であって、前記清澄容器に取り付けられた一対の隣接する電気フランジ間に配置されて該一対の隣接する電気フランジから間隔を空けた、少なくとも1つの補強部材と、
を備えることを特徴とするガラス成形装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの補強部材は、前記清澄容器の周囲を円周方向に延びる、
請求項13に記載のガラス成形装置。
【請求項15】
前記清澄容器は白金を含む、
請求項13又は14に記載のガラス成形装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの補強部材は白金を含む、
請求項13から15のいずれか1項に記載のガラス成形装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つの補強部材は中空内部を含む、
請求項13から16のいずれか1項に記載のガラス成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2021年10月20日に出願された米国仮特許出願シリアル番号第63/257,778号の米国特許法第119条に基づく優先権の利益を主張するものであり、この文献の内容は信頼に足るものであってその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、溶融ガラスを形成するための装置に関し、具体的には、溶融ガラスを搬送するための導管であって、導管の崩壊を防ぐ補強部材を含む導管に関する。
【背景技術】
【0003】
通常、溶融ガラスを形成するための製造装置は、装置の1つのステーションから別のステーションに溶融ガラスを搬送するように構成された導管を含む。例えば、導管は、溶融容器と攪拌容器などの下流コンポーネントとの間に延びることができる。溶融ガラスは高温かつ腐食性であるため、製造装置の多くのコンポーネントは耐熱性かつ耐腐食性の金属から形成され、白金族金属から選択されることが多い。これらの金属は高価であるため、薄壁であることが多い。ガラスによっては、加工温度が金属の溶融温度に近いこともある。金属が非常に薄いため、コンポーネント構造は有意な強度に欠け、時間と共に崩壊しがちである。
【発明の概要】
【0004】
第1の態様では、ガラス成形装置であって、内部通路を定める金属導管壁を含み、内部通路を通じて溶融ガラスの流れを搬送するように構成された導管と、導管の外周面の少なくとも一部の周囲に延びて金属導管壁に取り付けられ、一対の隣接する電気フランジ間に配置されてこれらの電気フランジから間隔を空けた少なくとも1つの補強部材と、を含むガラス成形装置を開示する。
【0005】
第2の態様では、第1の態様の少なくとも1つの補強部材が、金属導管壁の少なくとも上部にわたることができる。
【0006】
第3の態様では、第1の態様又は第2の態様の少なくとも1つの補強部材が、導管の周囲を円周方向に延びることができる。
【0007】
第4の態様では、第1の態様から第3の態様のいずれかの少なくとも1つの補強部材が複数の補強部材を含むことができる。
【0008】
第5の態様では、第1の態様から第4の態様のいずれかの少なくとも1つの補強部材が中空内部を含むことができる。
【0009】
第6の態様では、第1の態様から第5の態様のいずれかの少なくとも1つの補強部材が、中空内部と補強部材中空内部の外部雰囲気との間に流体連通をもたらす均圧オリフィスを含むことができる。
【0010】
第7の態様では、第1の態様から第6の態様のいずれかの金属導管壁が白金を含むことができる。
【0011】
第8の態様では、第1の態様から第7の態様のいずれかの少なくとも1つの補強部材が白金を含むことができる。
【0012】
第9の態様では、第1の態様から第8の態様のいずれかのガラス形成装置が清澄容器であることができる。
【0013】
第10の態様では、第1の態様から第9の態様のいずれかの少なくとも1つの補強部材をプレートによって導管に取り付けることができる。
【0014】
第11の態様では、第10の態様の少なくとも1つの補強部材が隙間によって導管から間隔を空けることができる。
【0015】
第12の態様では、第1の態様から第11の態様のいずれかの少なくとも1つの補強部材の断面形状が矩形又は円形であることができる。
【0016】
第13の態様では、ガラス成形装置であって、内部通路を定める金属壁を含み、内部通路を通じて溶融ガラスの流れを搬送するように構成された清澄容器と、清澄容器の外周面の少なくとも一部の周囲に延びて金属壁に取り付けられ、一対の隣接する電気フランジ間に配置されてこれらの電気フランジから間隔を空けた少なくとも1つの補強部材と、を含むガラス成形装置について説明する。
【0017】
第14の態様では、第13の態様の少なくとも1つの補強部材が、清澄容器の周囲を円周方向に延びることができる。
【0018】
第15の態様では、第14の態様又は第15の態様の金属壁が白金を含むことができる。
【0019】
第16の態様では、第13の態様から第15の態様のいずれかの少なくとも1つの補強部材が白金を含むことができる。
【0020】
第17の態様では、第13の態様から第16の態様のいずれかの少なくとも1つの補強部材が中空内部を含むことができる。
【0021】
上述した概要及び以下の詳細な説明では、いずれも実施形態の性質及び特性を理解するための概説又は枠組みを示すように意図された実施形態を提示する。添付図面は、さらなる理解をもたらすように含められ、本明細書に組み込まれてその一部を構成する。これらの図面は、本開示の様々な実施形態を示し、明細書と共に様々な実施形態の原理及び動作を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】溶融ガラスを搬送する導管の、(a)最初に供用状態に置かれた時点、(b)高温での動作時間後に導管の上部が崩壊した後、及び(c)崩壊が十分に大きくなって導管の崩壊した上部が内部の溶融ガラスの自由表面に接触し、導管の一端の空隙を導管の別端の空隙から効果的に隔離した状態、の断面図である。
【
図4】周囲に取り付けられた補強部材を示す清澄容器などの例示的な導管の断面図である。
【
図5】周囲全体に配置された補強部材を示す例示的な導管の斜視図である。
【
図6】周囲に部分的に配置された補強部材を示す別の例示的な導管の斜視図である。
【
図7】周囲に部分的に配置された補強部材、及び上死点(TDC)に対して補強部材が定める角度αを示す例示的な導管の断面図である。
【
図8】(a)チャネル、(b)箱型、(c)導管壁との間に隙間を伴わずにプレートで取り付けられた円筒管、(d)導管壁との間に隙間を伴ってプレートで取り付けられた円筒管、及び(e)プレートを使用せずに取り付けられた円筒管を含む、導管壁に取り付けられた例示的な中空補強部材の様々な断面図である。
【
図9】(a)四角形部材、(b)導管壁との間に隙間を伴わずにプレートで取り付けられた円筒棒、(c)導管壁との間に隙間を伴ってプレートで取り付けられた円筒棒、(d)プレートを使用せずに取り付けられた円筒棒、(e)「T」字形補強部材、及び(f)「I」字形補強部材を含む、導管壁に取り付けられた例示的な中実補強部材の様々な断面図である。
【
図10】均圧オリフィスを含んで導管の壁の皺(クリンプ)と対をなす補強部材を示す導管の一部の斜視図である。
【
図11】耐火性支持材料によって取り囲まれた例示的な導管(例えば、清澄容器)の立面断面図である。
【
図12A】補強部材なしで電気フランジによって直接加熱された例示的な導管(例えば、清澄容器)のモデル化した温度分布の斜視図である。
【
図12B】補強部材ありで電気フランジによって直接加熱された
図12Aの例示的な導管(例えば、清澄容器)のモデル化した温度分布の斜視図である。
【
図13A】補強部材なしで電気フランジによって直接加熱された例示的な導管(例えば、清澄容器)のモデル化した電流密度分布の斜視図である。
【
図13B】補強部材ありで電気フランジによって直接加熱された
図13Aの例示的な導管(例えば、清澄容器)のモデル化した電流密度分布の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に例を示す本開示の実施形態を詳細に参照する。図面全体を通じ、可能な場合には常に同じ参照番号を使用して同一又は同様の部品を示す。しかしながら、本開示は多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に示す実施形態に限定されるものとして解釈すべきではない。
【0024】
本明細書で使用する「約(about)」という用語は、数量、サイズ、組成、パラメータ、並びにその他の量及び特性が厳密なものではなく又は厳密である必要がなく、必要に応じて公差、換算係数、四捨五入及び測定誤差など、並びに当業者に周知の他の因子を反映した近似的なもの及び/又は大きめ又は小さめのものであることを意味する。
【0025】
本明細書では、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして範囲を表していることがある。このような範囲を表す場合、別の実施形態は一方の特定の値から他方の特定の値までを含む。同様に、「約」という先行詞を使用して値を近似値として表している場合、この値は別の実施形態を形成するものであると理解されるであろう。さらに、各範囲の端点は、他方の端点に関連して有意であることも、他方の端点とは無関係に有意であることもあると理解されるであろう。
【0026】
本明細書で使用する、上、下、右、左、前、後、上部、底部などの方向を示す用語は図を参照して使用するものにすぎず、絶対的な向きを意味するものではない。
【0027】
別途明示していない限り、本明細書に示すいずれかの方法については、決してそのステップを特定の順序で実行する必要があるものと解釈すべきではなく、いずれかの装置についても、決して特定の向きが必要であると解釈すべきではない。従って、方法の請求項においてそのステップが従うべき順序を実際に記載していない場合、又はいずれかの装置の請求項において個々のコンポーネントに対する順序又は向きを実際に記載していない場合、或いは特許請求の範囲又は本明細書においてステップを特定の順序に限定すべき旨を別途具体的に示していない場合、或いは装置のコンポーネントに対する特定の順序又は向きを記載していない場合は、いかなる点においても順序又は向きが暗示されるものではない。このことは、ステップの配列、動作フロー、コンポーネントの順序又はコンポーネントの向きに関する論理事項、文法構成又は句読点から導出される一般的意味、及び本明細書で説明する実施形態の数又はタイプを含む、解釈のためのあらゆる可能な非明示基準(non-express basis)に当てはまる。
【0028】
本明細書で使用する単数形の英文不定冠詞(「a」、「an」)及び英文定冠詞(「the」)は、文脈によって別途明確に決定付けられない限り複数形の照応を含む。従って、例えば「あるコンポーネント(a component)」という表現は、文脈によって別途明確に決定付けられない限り2又は3以上のこのようなコンポーネントを有する態様を含む。
【0029】
本明細書で使用する「例示的な」、「例」、又はその様々な形態は、一例、事例又は例示の役割を果たすことを意味する。本明細書で「例示的な」又は「例」として説明する態様又は設計は、いずれも他の態様又は設計よりも好ましい又は有益なものとして解釈すべきではない。さらに、例は明確性及び理解を目的として示すものにすぎず、開示する主題又は本開示の関連部分をいずれかの形で限定又は制約することを意味するものではない。様々な範囲の無数の追加例又は代替例を提示することもできたが、簡潔にするために省略したと理解することができる。
【0030】
本明細書で使用する「備える、含む(comprising、including)」という用語、及びその変化形は、別途示していない限り同義的かつ包括的なものとして解釈されたい。「備える」、「含む」という移行句の後の要素のリストは非排他的リストであり、従ってリスト内に具体的に記載しているもの以外の要素が存在することもできる。
【0031】
本明細書で使用する「実質的な(substantial)」、「実質的に(substantially)」という用語、及びその変化形は、説明する特徴がある値又は記載に等しいこと又はほぼ等しいことを表すものである。例えば、「実質的に平面的な」表面は、平面的又はほぼ平面的な表面を表すように意図される。さらに、「実質的に」は、2つの値が等しいこと又はほぼ等しいことを表すように意図される。いくつかの実施形態では、「実質的に」が、互いの約5%以内又は互いの約2%以内などの、互いの約10%以内の値を表すことができる。
【0032】
本明細書で使用する導管という用語は、一般に溶融ガラスを搬送するように構成された中空内部を定める構造を意味する。導管は、搬送目的で構成することも、又は追加機能を果たすように構成することもできる。例えば、本明細書では溶融ガラスから気体を除去するように構成された構造を清澄容器と呼ぶが、それでもなお、このような構造も一般的には導管群に属する。
【0033】
図1に、例示的なガラス製造装置10を示す。ガラス製造装置10は、溶融容器14を含むガラス溶融炉12を含む。ガラス溶融炉12は、溶融容器14に加えて、原料を加熱して、この原料を以下で溶融ガラスと呼ぶ溶融材料に変換するように構成された発熱体(例えば、燃焼バーナー及び/又は電極)などの1又は2以上のさらなるコンポーネントを任意に含むことができる。例えば、溶融容器14は、燃焼バーナーと、原料に電流を流すことによって原料のジュール加熱を介して電流がエネルギーを加える直接加熱との両方によって原料にエネルギーが加えられる電気ブースト型溶融容器(electrically-boosted melting vessel)であることができる。
【0034】
ガラス溶融炉12は、溶融容器からの熱損失を抑える他の熱管理装置(例えば、断熱コンポーネント)を含むことができる。ガラス溶融炉12は、原料のガラス融液への溶融を容易にする電子及び/又は電気機械装置を含むことができる。ガラス溶融炉12は、支持構造(例えば、支持シャーシ、支持部材など)又はその他のコンポーネントを含むこともできる。
【0035】
溶融容器14は、例えばアルミナ又はジルコニアを含む耐火性セラミック材料などの耐火性材料から形成することができるが、耐火性セラミック材料は、代わりに又はいずれかの組み合わせで使用される、イットリウム(例えば、イットリア、イットリア安定化ジルコニア、リン酸イットリウム)、ジルコン(ZrSiO4)又はアルミナ-ジルコニア-シリカ、或いは酸化クロムなどの他の耐火性材料を含むこともできる。いくつかの例では、溶融容器14を耐火セラミックレンガから構築することができる。
【0036】
ガラス溶融炉12は、例えばガラスリボンなどのガラス物品を製造するように構成されたガラス製造装置のコンポーネントとして組み込むことができるが、ガラス製造装置は、ガラスロッド、ガラス管、ガラスエンベロープ(例えば、電球などの照明装置用のガラスエンベロープ)及びガラスレンズなどの他のガラス物品を制限なく形成するように構成することもできる。いくつかの例では、溶融炉12を、スロットドロー装置、フロートバス装置、ダウンドロー装置(例えば、フュージョンダウンドロー装置)、アップドロー装置、押圧(pressing)装置、圧延(rolling)装置、管引抜(tube drawing)装置、又は本開示の恩恵を受ける他のいずれかのガラス製造装置を含むガラス製造装置に含めることができる。一例として、
図1には、ガラスリボンをその後に個々のガラスシートに加工するために又はガラスリボンをスプール上に巻くためにガラスリボンをフュージョンドロー(fusion drawing)するフュージョンダウンドロー式ガラス製造装置10のコンポーネントとしてのガラス溶融炉12を概略的に示す。本明細書で使用するフュージョンドロー法は、溶融ガラスを成形体の傾斜した、例えば収束する側面上に流し、結果として生じた溶融材料の流れが成形体の底部で交わり又は「融合」してリボンを形成するようにすることを含む。
【0037】
任意に、ガラス製造装置10は、溶融容器14の上流に配置された上流ガラス製造装置16を含むことができる。いくつかの例では、上流ガラス製造装置16の一部又は全体をガラス溶融炉12の一部として組み込むことができる。
【0038】
図1に示すように、上流ガラス製造装置16は、原料貯蔵ビン18と、原料送出装置20と、原料送出装置20に接続されたモータ22とを含むことができる。原料貯蔵ビン18は、矢印26で示すように1又は2以上の供給ポートを通じてガラス溶融炉12の溶融容器14に供給できる原料24を貯蔵するように構成することができる。通常、原料24は、1又は2種類以上のガラス形成金属酸化物及び1又は2種類以上の変性剤を含む。いくつかの例では、原料送出装置20を、原料貯蔵ビン18から溶融容器14に所定量の原料24を送出するようにモータ22によって駆動することができる。さらなる例では、モータ22が、溶融ガラスの流れ方向に対して溶融容器14から下流で検知された溶融ガラスのレベルに基づいて原料24を制御速度で導入するように原料送出装置20を駆動することができる。その後、溶融容器14内の原料24を加熱して溶融ガラス28を形成することができる。通常、原料は、例えば様々な「砂」などの粒子状物質として溶融容器に加えられる。原料24は、以前の溶融及び/又は成形作業からのくずガラス(すなわち、カレット)を含むこともできる。燃焼バーナーを使用して溶融プロセスを開始することができる。電気ブースト式溶融プロセスでは、原料の電気抵抗が燃焼バーナーによって十分に低下すると、原料に接触して配置された電極間に電位を発生させることによって電気ブーストを開始することができ、この結果、通常は溶融状態に入る又は溶融状態にある原料を通じて電流が確立される。
【0039】
ガラス製造装置10は、溶融ガラス28の流れ方向に対してガラス溶融炉12の下流に配置された下流ガラス製造装置30を含むこともできる。いくつかの例では、下流ガラス製造装置30の一部をガラス溶融炉12の一部として組み込むことができる。例えば、後述する第1の接続導管32、又は下流ガラス製造装置30の他の部分をガラス溶融炉12の一部として組み込むことができる。
【0040】
下流ガラス製造装置30は、溶融容器14の下流に配置され、上述した第1の接続導管32によって溶融容器14に結合された、清澄容器(fining vessel)34などの第1の調整(conditioning)チャンバを含むことができる。いくつかの例では、第1の接続導管32の内部経路を介して溶融容器14から清澄容器34に溶融ガラス28を重力供給(gravity fed)することができる。従って、第1の接続導管32は、溶融容器14から清澄容器34への溶融ガラス28の流路を提供する。しかしながら、溶融容器14の下流の、例えば溶融容器14と清澄容器34との間などに他の調整チャンバを配置することもできる。いくつかの実施形態では、溶融容器と清澄チャンバとの間に調整チャンバを採用することができる。例えば、一次溶融容器からの溶融ガラスを二次溶融(調整)容器内でさらに加熱し、或いは清澄チャンバに入る前に二次溶融容器内で一次溶融容器内の溶融ガラスの温度よりも低い温度に冷却することができる。
【0041】
溶融ガラス28からは、様々な技術によって気泡を除去することができる。例えば、原料24は、加熱時に化学的還元反応を受けて酸素を放出する酸化スズなどの多価化合物(multivalent compounds)(すなわち、清澄剤)を含むことができる。他の好適な清澄剤としては、限定するわけではないが、ヒ素、アンチモン、鉄及び/又はセリウムを挙げることができるが、ヒ素及びアンチモンには毒性があるため、用途によっては環境的理由で使用が推奨されない場合もある。清澄容器34は、例えば溶融容器の内部温度よりも高い温度に加熱され、これによって清澄剤が加熱される。溶融ガラスに含まれる1又は2種類以上の清澄剤の温度誘発型の化学的還元によって生じた酸素は、溶融プロセス中に生じた気泡内に融合又は拡散することができる。この結果、拡大して浮力が高まった気泡が清澄容器内の溶融ガラスの自由表面に上昇し、その後に例えば自由表面の上方の大気と流体連通する通気管を通じてこれらを清澄容器から排出することができる。
【0042】
下流ガラス製造装置30は、清澄容器34から下流に流れる溶融ガラスを混ぜ合わせるための混合装置36などの別の調整チャンバ、例えば攪拌容器をさらに含むことができる。混合装置36は、均質なガラス溶融組成物を提供することにより、清澄容器から出た溶融ガラス内に存在し得るはずの化学的及び/又は熱的不均一性を抑えるために使用することができる。図示のように、清澄容器34は、第2の接続導管38を介して混合装置36に結合することができる。従って、溶融ガラス28は、第2の接続導管38の内部経路を通じて清澄容器34から混合装置36に重力供給することができる。例えば、重力によって清澄容器34から混合装置36に溶融ガラス28を駆動することができる。通常、混合装置36内の溶融ガラスは自由表面を含み、自由表面と混合装置の頂部との間には自由(例えば、気体)体積が拡がる。混合装置36は、溶融ガラス28の流れ方向に対して清澄容器34の下流に示しているが、他の実施形態では、混合装置36を清澄容器34の上流に配置することもできる。いくつかの実施形態では、下流ガラス製造装置30が、例えば清澄容器34から上流の混合装置及び清澄容器34から下流の混合装置などの複数の混合装置を含むことができる。複数の混合装置を使用する場合、これらは同じ設計であることも、或いは互いに異なる設計であることもできる。容器及び/又は導管のうちの1つ又は2つ以上は、溶融材料の混合及びその後の均質化を促すように内部に配置された静的混合羽根(static mixing vanes)を含むことができる。
【0043】
下流ガラス製造装置30は、混合装置36の下流に配置された送出容器40などの別の調整チャンバをさらに含むことができる。送出容器40は、出口導管44を介して成形体42に至る一貫した溶融ガラス28の流れを調整及び/又は提供するためのアキュムレータ及び/又はフローコントローラとして機能することができる。いくつかの実施形態では、送出容器40内の溶融ガラスが自由表面を含むことができ、自由表面からは、送出容器の頂部へと上向きに自由体積が拡がる。図示のように、混合装置36は、第3の接続導管46を介して送出容器40に結合することができる。いくつかの例では、溶融ガラス28を、混合装置36から第3の接続導管46の内部経路を通じて送出容器40に重力供給することができる。
【0044】
下流ガラス製造装置30は、入口導管50を含む上述した成形体42を含む成形装置48をさらに含むことができる。出口導管44は、送出容器40から成形装置48の入口導管50に溶融ガラス28を送出するように配置することができる。フュージョンダウンドロー式ガラス製造装置における成形体42は、成形体の上面内に配置されたトラフ52と、成形体の下端部(根底部(root))58に沿って引き抜き方向(draw direction)56に収束する、対向する収束成形面(converging forming surfaces)54とを含むことができる。送出容器40、出口導管44及び入口導管50を介して成形体トラフ52に送出された溶融ガラスは、トラフ52の壁から溢れ、溶融ガラスの別々の流れとして収束成形面54に沿って降下する。溶融ガラスの別々の流れは、根底部58の下方で根底部58に沿って合流して溶融ガラスの単一のリボン60を生成し、リボン60は、重力及び/又は逆方向に回転する対向する引き抜きロール(
図2を参照)などによってガラスリボンに下向きの張力を加えることによって根底部58から引き抜き方向56に引き抜かれる。溶融材料が冷えて材料の粘度が増すにつれ、下向きの張力及び溶融材料の温度を使用してリボン(以下、ガラスリボン)の寸法を制御することができる。従って、ガラスリボン60は、粘性状態から粘弾性状態を経由して弾性状態に至る粘性遷移を経て、ガラスリボン60に安定した寸法特性を与える機械的特性を獲得する。ガラスリボン60は、ガラス分離装置64によってガラスシート62などの短い長さに分離することができる。或いは、ガラスリボンをスプール化することもできる。
【0045】
接続導管32、38、46、清澄容器34、混合装置36、送出容器40、出口導管44又は入口導管50のうちのいずれか1つ又は2つ以上を含む下流ガラス製造装置30のコンポーネントは貴金属から形成することができる。好適な貴金属としては、白金、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム及びパラジウムから成る群から選択される白金族金属、又はこれらの合金が挙げられる。例えば、ガラス製造装置の下流コンポーネントは、約70重量%~約90重量%の白金と約10重量%~約30重量%のロジウムとを含む白金-ロジウム合金から形成することができる。
【0046】
ガラス製造装置の特定のコンポーネント、とりわけ約1400℃を超える温度、約1500℃を超える温度、約1600℃を超える温度、又は約1700℃を超える温度などの約1300℃を超える温度ではあるが金属成分の融点未満である高温で動作する金属成分では、コンポーネントが受ける高温及びコンポーネントの薄さによってコンポーネントの構造的完全性が損なわれる恐れがある。すなわち、白金及びその他の白金族金属(及び/又はその合金)は高価である。従って、これらの金属を組み込んだ(例えば、接続導管32、38、46、清澄容器34、混合装置36、送出容器40、出口導管44、又は入口導管50のうちのいずれか1つ又は2つ以上を含む)コンポーネントは、コストを抑えるために薄い壁で形成されており、例えば約0.254cm以下の厚みを有する。例えば、純白金の融点は1768℃である。光学ディスプレイ装置の製造で使用されるガラス基板などのアルミノケイ酸塩ガラス向けなどの光学品質ガラス製造装置の中には、白金含有コンポーネントが1600℃を超える温度、或いは白金の融点に非常に近い1700℃を超える温度で動作するものもある。1つのこのような例として、溶融ガラスから気体(例えば、気泡)を除去するために使用される特殊な金属導管である清澄容器が挙げられる。清澄容器は、部分的に満たされていない状態で動作する。すなわち、溶融ガラスの自由表面上に気体雰囲気が維持されることで、溶融ガラスから除去された気体が蓄積して清澄容器から発散できる領域が清澄容器内にもたらされる。しかしながら、少なくともこの気体雰囲気が清澄容器から熱を除去する効率は、清澄容器の下部に接している溶融ガラスよりも低いため、清澄容器の上部は下部よりも高温になる場合がある。また、気体雰囲気がもたらす機械的及び/又は水力学的支持は、溶融ガラスで完全に満たされた同等の導管よりも小さい。時間と共に清澄容器の上部が重力によって下向きに沈み込み、清澄容器の内部通路が狭くなってしまうことがある。この崩壊により、清澄容器を通る溶融ガラスの流れに対する抵抗が増大し、清澄容器の構造破壊(例えば、清澄容器の破損)が起こり得る恐れがある。本明細書で説明する接続導管などの他の容器も、これらの又はその他の理由でこのような結果に見舞われる可能性がある。
【0047】
一例として、
図2に、例えば(a)溶融動作の開始時、並びに(b)及び(c)10、000時間の動作後などの長時間動作後といった複数の時点における例示的な清澄容器34の複数の断面図(長手方向軸に直交する面内)を示す。
図3は、
図2の清澄容器の長手方向断面図である。
図2のビュー(a)には、初期の円形断面形状を定める壁70を含む例示的な清澄容器34を示す。しかしながら、清澄容器は、楕円形、長円形又は別の曲線形状などの他の初期断面形状を有することもできる。図では、
図2のビュー(b)に、溶融ガラス加工温度での長時間(例えば、10、000時間)動作後の清澄容器の上部の下方変位80を示す。いくつかの事例では、
図2のビュー(c)に示すように、清澄容器の崩壊した頂部が内部で搬送されている溶融ガラスに接触するほど十分に下方変位が大きくなることもある。
図3のビューでは、清澄容器の端部が、これらの端部に配置されて取り付けられた電気フランジ82によって支持されることで、支持された端部での清澄容器34の崩壊が防がれて、電気フランジから最も遠い、清澄容器の支持されていない中央部又はその付近で最大変位が発生している。供用から外れた清澄容器について行った実地検証(autopsies)では、長期の高温動作にわたって上部が約18ミリメートル(mm)~24ミリメートル超の範囲で崩壊し得ることが示された。
図2のビュー(c)によって示唆されるように、清澄器(finer)の上部の崩壊が十分に大きい場合には、清澄器の上部が清澄器内の溶融ガラスに接触することもある。清澄器の正しい動作は、溶融ガラスを含まない容積を、清澄器内の、溶融ガラスから除去された気体が蓄積して清澄器から発散できるリザーバを形成する溶融ガラスの自由表面よりも上方に維持することに依拠する。通気は、例えば2つの電気フランジ間などで、この清澄器の上部の溶融ガラスを含まない容積全体を通じて気体が自由に連通することに依拠する。例えば、清澄器の一端に通気孔が位置し、清澄器の崩壊によって清澄器の上壁が溶融ガラスに接触した場合、この接触によって溶融ガラスを含まない容積の一部が溶融ガラスを含まない容積の別の部分から隔離され、このため溶融ガラスを含まない容積を通じた自由な気体の流れが妨げられ、蓄積した気体の通気が妨げられる可能性がある。すなわち、清澄器の上壁部分が崩壊して溶融ガラスに接触すると、清澄器の通気孔から遮断され、従って清澄器から発散できない孤立した気体のポケットが清澄器内に形成される可能性がある。このような閉じ込められた気体が溶融ガラスに再溶融し、又は清澄器内の圧力が上昇することで、容器が破損してしまう恐れがある。
【0048】
溶融ガラス搬送導管の上部を支持するこれまでの試みとしては、導管の外側に溶接されて支持耐火材料に固定された金属タブが挙げられる。しかしながら、タブの配置ではタブ間の崩壊を防げない場合があるため、これらの試みでは崩壊を防げなかった。さらに、これらのタブは、熱膨張及び熱収縮による周囲の耐火物内での導管の移動を不可能ではないにしても困難にして導管の応力破壊を招き、溶融ガラスの漏出による耐火材料の損失がそこに固定されたタブの機能を失わせる可能性がある。崩壊を抑制して溶融ガラス搬送金属部品の寿命を延ばすために、本明細書で後述するような補強部材を追加することによってこれらのコンポーネントを強化することができる。
【0049】
次に、
図4に、
図1の装置において清澄容器34の代わりに使用できる例示的な清澄容器134の断面側面図を示す。清澄容器134は、その入口140と出口142との間を貫通する内部通路138を定める壁136を含む。清澄容器134の断面形状は、円形、楕円形、長円形、又は曲線形状と任意に平面形状とのいずれかの組み合わせであることができる。清澄容器134の入口140は第1の接続導管32に直接的又は間接的に結合され、出口142は第2の接続導管38に直接的又は間接的に結合される。清澄容器壁136には、その周囲に沿って溶接などによって複数の電気フランジ82が取り付けられる。電気フランジは、電気フランジ82間の清澄容器壁136を通じて電流を確立できるように電流源(図示せず)と電気的に連通する金属構造である。電源は交流(AC)電源であることができる。通常、電気フランジは、導管(例えば、清澄容器)壁の外面に取り付けられた1又は2以上の金属リングを含む。複数のリングの場合には、リングが導管の周囲に同心円状のリングを形成することができる。同心円状のリングは、同一平面上に存在することができる。リングは異なる厚みであることができる。例えば最も内側のリングなどの内側リングは、白金、又は約70重量%~約90重量%の白金と約10重量%~約30重量%のロジウムとを含む白金-ロジウム合金などの、導管と同じ材料から形成することができる。内側リングは外側リングよりも薄いことができる。内側リングよりも導管の高温から遠くに位置する最も外側のリングは、ニッケルなどの低耐熱性金属から形成することができる。従って、清澄容器134は、清澄容器壁の抵抗(ジュール)加熱によって直接加熱することができる。また、清澄容器34と同様に、例えば第1及び第2の接続導管32及び38などの他の導管にもさらなる電気フランジ82を取り付けることができる。
【0050】
電気フランジ82は、清澄容器134又は他のいずれかの導管を温度ゾーンに分割するために使用することができ、隣接する電気フランジ間の電流は、導管内の溶融ガラスが隣接するフランジ間で所定の温度になるように制御することができる。本明細書で使用する隣接する電気フランジは一対の電気フランジを意味し、一対の隣接するフランジ間にさらなる電気フランジは存在しない。しかしながら、1つの電気フランジが、第1の隣接する電気フランジの対の一方及び第2の隣接する電気フランジの対の一方として同時に機能することもできる。
図4には、清澄容器134に接合された2つの電気フランジ82を示しているが、清澄容器134は、3つの電気フランジ、4つの電気フランジ、5つの電気フランジ、又は6つ以上の電気フランジなどの、2つよりも多くの電気フランジを含むこともできる。各隣接する電気フランジの対間には、清澄容器の各セクションを異なる温度に制御できるように同じ又は異なる大きさの電流を確立することができる。
【0051】
清澄容器134は、清澄容器壁136の外面に取り付けられた少なくとも1つの補強部材146をさらに含む。補強部材は、清澄容器などの導管の上部を支持し、高温で動作する導管の崩壊を長時間にわたって防ぐように機能する。少なくとも1つの補強部材146は、溶接などによって清澄容器壁に取り付けられた中空金属管であることができる。溶接は連続的なものである必要はない。例えば、少なくとも1つの補強部材はスポット溶接又はステッチ溶接することができ、溶接のスポット又は短いセクションは溶接の隙間によって分離される。補強部材は、清澄容器134(
図5を参照)の中心長手方向軸148に直交することができる。少なくとも1つの補強部材146は、貴金属から形成することができる。好適な貴金属としては、白金、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム及びパラジウムから成る群から選択される白金族金属、又はこれらの合金が挙げられる。例えば、少なくとも1つの補強部材146は、約70重量%~約90重量%の白金と約10重量%~約30重量%のロジウムとを含む白金-ロジウム合金から形成することができる。
【0052】
少なくとも1つの補強部材146は、清澄容器の周囲に部分的又は全体的に延びることができる。例えば、円形の断面形状を有する清澄容器を想定すると、このような状況では、少なくとも1つの補強部材146が、清澄容器壁136の外面に取り付けられた、清澄容器134の周囲全体に延びる円形の補強部材(
図5)、又は清澄容器134の一部の周囲に延びる円弧(
図6~
図7)を含むことができる。清澄容器134の断面形状が非円形である場合には、少なくとも1つの補強部材146が清澄容器と同様の相補的形状を有することができる。例えば、清澄容器134の周辺部が長円形を有する場合には、少なくとも1つの補強部材146の内周の形状も長円形であることができる。
【0053】
図7に示すように、少なくとも1つの補強部材146が清澄容器134の一部の周囲に延びる例では、少なくとも1つの補強部材146が、清澄容器壁の外面に溶接によって固定された、(中心長手方向軸148又は同等物に対して)角度αを定める円弧形状(円形の清澄容器の場合)であることができる。
図6~
図7に示すように、少なくとも1つの補強部材は、清澄容器の上部を覆って上部に沿って配置される。角度αは、清澄容器134の上死点(TDC)に関して対称的に配置される、約360度~約180度の範囲内であることができる。
【0054】
図8に、少なくとも1つの補強部材146に適した様々な非排他的断面形状を示す。例えば、少なくとも1つの補強部材146は、
図8のビュー(a)に示すような矩形又は実質的に矩形の断面形状を有するU字形チャネルであることができ、U字形チャネルは、補強部材のチャネル側を清澄容器壁に向けて清澄容器壁136に取り付けられることにより、補強部材に中空内部を形成する。
図8のビュー(b)には別の補強部材を示しており、この補強部材は、4つの直交する側面が中空内部を定め、1つの側面に沿って清澄容器壁に取り付けられる箱型管である。箱型管は、矩形管又は正方形管であることができる。
図8のビュー(c)に示すように、少なくとも1つの補強部材は中空円筒管である(すなわち、円形断面形状を有する)ことができる。中空円筒管は、中空円筒管と平行に延びる一対の側方プレート148によって清澄容器壁に取り付けることができ、各側方プレート148は、側方プレートの第1のエッジに沿って清澄容器134に溶接されるとともに、側方プレートの対向する第2のエッジに沿って中空円筒管に溶接される。各側方プレート148の第1のエッジから第2のエッジまでの幅は、中空円筒管と清澄容器134との間の距離を制御するために使用することができる。例えば、中空円筒管は、
図8のビュー(c)に示すように清澄容器134に直接接触させて配置することもできる。一方で、中空円筒管は、
図8のビュー(d)に示すように隙間150によって清澄容器から間隔を空けることもできる。また一方、
図8のビュー(e)には、側方プレート148を使用せずに清澄容器に直接溶接された中空円筒管を示す。
図8のビュー(a)~(e)には、清澄容器134を補強するのに適した複数の例示的な補強部材断面形状を示しているが、楕円形又は長円形の断面形状、及び4つ未満の側面(例えば、三角形の断面形状)又は4つよりも多くの側面(例えば、五角形、六角形、七角形、八角形など)を有する多角形の断面形状を制限なく含む他の形状も想定される。清澄容器134には、隙間150の有無にかかわらず、側方プレート148を使用してこれらの様々な断面形状のうちのいずれか1つを取り付けることができる。
【0055】
これに加えて又は代えて、清澄容器134に取り付けられる少なくとも1つの補強部材146は、
図8のビュー(a)~(e)に関して説明した形状と同様又は同一の断面形状を有する中実補強部材であることもできる。例えば、
図9のビュー(a)~(f)には、(a)矩形(例えば、正方形)部材、(b)導管壁との間に隙間を伴わずにプレートで取り付けられた円筒棒、(c)導管壁との間に隙間を伴ってプレートで取り付けられた円筒棒、(d)プレートを使用せずに取り付けられた円筒棒、(e)「T」字形補強部材、及び(f)「I」字形補強部材を示しており、これらのうちのいずれか1つ又は2つ以上を中空補強部材の代わりとすることもできる。補強部材は、少なくとも1つの補強部材が中空であって少なくとも1つの補強部材が中実である複数の補強部材を設けた混成であることもできる。楕円形又は長円形の断面形状、及び4つ未満の側面(例えば、三角形の断面形状)又は4つよりも多くの側面(例えば、五角形、六角形、七角形、八角形など)を有する多角形の断面形状を制限なく含む他の形状も想定される。清澄容器134には、隙間150の有無にかかわらず、側方プレート148を使用してこれらの様々な中実断面形状のうちのいずれか1つを取り付けることができる。
【0056】
清澄容器134の昇温中などにおける補強部材の中空内部内の気体の膨張に起因する少なくとも1つの補強部材の過加圧を防ぐために、少なくとも1つの補強部材146は、補強部材の中空内部と外部雰囲気との間に延びる1又は2以上の均圧オリフィス152を含むことができる。少なくとも1つの補強部材146の過加圧は、補強部材の破裂及び清澄容器134の損傷をもたらす恐れがある。補強部材が清澄容器の周囲全体に延びていない場合には、補強部材の端部が開放されており、均圧オリフィスは管又はチャネルの開放端を含むことができる(補強部材がU字形部材を含み、ステッチ溶接又はスポット溶接が使用され、U字形部材の中空内部と補強部材の外側の大気との間に溶接部の隙間が延びている場合、均圧オリフィスは溶接の隙間を含むことができる)。
【0057】
図9に示すように、清澄容器134は、清澄容器の壁136の周囲に延びる皺(例えば、コルゲーション、クリンプ)154を含むことができる。皺154は、清澄容器壁に壁の上部の崩壊を防ぐさらなる支持をもたらすことができる。各襞は、清澄容器134の周囲全体に延びることができる。
【0058】
少なくとも1つの補強部材146の数及び寸法特性は、少なくとも1つの補強部材が取り付けられる導管(例えば、清澄容器134)の構造特性に依存する。例えば、少なくとも1つの補強部材146の数及び寸法特性は、導管の長さ、導管の1又は複数の壁の厚み、導管の直径、耐火レンガ又はブロックなどのアンカー又はその他の支持構造によって導管にもたらされる物理的支持、及び許容できる変形量(例えば、導管の頂部の下方変位)に依存することができる。
図10に示すように、清澄容器134(又は接続導管などの他のいずれかの導管)は、導管の周囲に配置された耐火材料によって支持することができる。例えば、導管は、耐火シート、耐火ブランケット、耐火ブロック、不定形耐火材料(castable refractory material)(不定形耐火材料はスラリーとして注がれた後に導管の周囲で硬化する)、又はこれらの支持材料のいずれかの組み合わせ内に設置することができる。このような支持材料は、ムライト、断熱耐火レンガ、及び断熱ボード(例えば、Fiberfrax(登録商標)Duraboard(登録商標)3000)を含むことができ、導管からの熱損失の制御に役立つように配置される。
図10には、耐火材料ブロック160によって支持された清澄容器134を示しているが、これに加えて又は代えて、上述したような他の形態の耐火材料を使用することもできる。しかしながら、補強部材146を使用すれば、支持耐火材料が存在しない場合でも導管の崩壊を防ぐことができる。従って、熱膨張中に導管が耐火材料内で動くことを可能にするために、形状適合する不定形耐火材料の使用を避けて、耐火材料と導管の壁との間に隙間を構成することができる。この隙間は、導管の熱膨張又は熱収縮中に発生し得るような周囲の耐火材料内での導管及び補強部材の自由な動きを可能にする。
【0059】
少なくとも1つの補強部材146は、複数の補強部材を含むことができる。例えば、清澄容器134には、3つの補強部材、4つの補強部材、5つの補強部材、6つの補強部材、又は6つよりも多くの補強部材などの、少なくとも2つの補強部材を取り付けることができる。複数の補強部材146は、互いに等間隔又は不均一な間隔を空けることができる。第1の隣接する電気フランジ82の対間で清澄容器に取り付けられた第1の複数の補強部材、第2の隣接する電気フランジ82の対間で清澄容器134に取り付けられた第2の複数の補強部材、及び第3の隣接する電気フランジ82の対間で清澄容器134に取り付けられた第3の複数の補強部材146などが存在することができる。
【0060】
本明細書に開示する補強部材146は電気フランジから間隔を空けており、従って清澄容器壁136内の電流の分布においては、たとえ役割を果たすとしてもほとんど果たさない。モデル化では、電気フランジから間隔を空けた補強部材の存在が清澄容器壁内の電流密度に影響せず、従って清澄容器壁内の発熱に影響しないことが示された。
図11A~
図11Bに、他の条件を同一にした補強部材なし(
図11A)及び補強部材あり(
図11B)の場合の清澄器温度のモデル化した結果をそれぞれ示す。容易に明らかなように、2つの温度分布間に区別可能な違いは見られない。同様に、
図12A及び
図12Bに、補強部材なし(
図12A)及び補強部材あり(
図12B)の場合の清澄器電流密度のモデル化した結果をそれぞれ示す。ここでも、2つの電流密度分布間に区別可能な違いは見られない。従って、電気フランジから間隔を空けた補強部材の存在が、清澄容器の温度、従ってその中で搬送される溶融ガラスの温度を変化させることはない。換言すれば、いくつかのガラス製造装置では、清澄容器が、電気フランジに当接する肉厚の壁部分を含むことができる。例えば、電気フランジは、電気フランジの本体から延びる電極部分によって電流源に接続することができる。電流は電極部分を通じて清澄容器壁に入り込み、清澄容器壁を通る最短の電気経路を軽減されずにたどる。例えば、電極部分が電気フランジの頂部から延びるように配置されている場合、2つの隣接する電気フランジ間の最短の電気経路は清澄容器の頂部を横切る。上述したように、清澄容器は清澄容器内(溶融ガラスの上方の)の気体雰囲気を利用する。清澄容器内の気体雰囲気は溶融ガラスよりも熱容量が小さく熱伝導が低いため、清澄容器の上部の高い電流密度が清澄容器の上部を過熱して清澄容器壁を劣化させる恐れがある。従って、電気フランジに当接して配置された清澄容器の肉厚の壁部分を使用して清澄容器壁内の電流を再分配し、従って清澄容器壁の上部の温度を低下させることができる。補強部材146は、電気フランジから間隔を空けているので、電流を導く効果及び/又は清澄容器の温度に影響する効果はない。通常、本明細書に開示する補強部材146は、例えば隣接する電気フランジの中間などの2つの隣接する電気フランジ間にこれらの電気フランジから間隔を空けて清澄容器の中心部分内に配置することができる。
【0061】
本明細書に開示する補強部材を主に清澄容器に関して説明したが、開示する補強部材146は、その様々な形状及び配置全てを、導管上に電気フランジが存在し得るか否かを含め、溶融ガラスを搬送するように構成された崩壊する可能性があるあらゆる金属導管上で使用することができる。例えば、開示する接続導管32、36及び46は、いずれも補強部材146を備えることができる。
【0062】
当業者には、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本開示の実施形態に様々な修正及び変形を行えることが明らかであろう。従って、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその同等物の範囲内に入ることを条件に、このような修正及び変形も対象とするように意図される。
【符号の説明】
【0063】
82 電気フランジ
134 清澄容器
146 補強部材
148 中心長手方向軸
【国際調査報告】